幼女「ふえぇぇん……」 オーガ「……」 (25)
幼女「ふえぇぇん……」
オーガ「どうした。どこかいたいか」
幼女「ふえぇぇん……」
オーガ「はらがへったのか」
幼女「ふえぇぇん……」
オーガ「なかま、はぐれたか」
幼女「パパぁ……ママぁ……」
オーガ「かぞく、はぐれたか」
幼女「グスン……グスン……」
オーガ「よし、おれ、おまえ、かぞく、ところ、つれてく」
幼女「おじちゃん、だあれ?」
オーガ「おれ、オーガ」
オーガ「まず、どうする」
オーガ「このちかく、オーク、住んでる。オーク、どうするか、きく」
オーガ「おまえ、おれ、ついてくる」
幼女「……うん」
……
オーガ「オーク!」
オーク「なんだ、騒がしい」
オーガ「ここだ」
オーク「オーガか。ちょっと待ってくれ。俺はお前と違って夜目が効かないんだよ……」
オーガ「オーク。おれ、こいつ、みつけた」
オーク「だから暗くて見えないと言ってるだろう。どれどれ……」
幼女「あの……」
オーク「おいオーガ、どうしたんだこの女の子は。まさかさらって来たんじゃないだろうな?」
オーガ「こいつ、かぞく、はぐれた」
オーク「……そういうことか。それにしても驚いたな。人間の子供がこんなところまで来るとは」
オーガ「?」
オーク「この辺りは、人間はまず足を踏み入れないようなところだ。そんなところに来るのは珍しいと言っているんだ」
オーガ「オーク、ものしり、オークのくせに」
オーク「減らず口は意外に気の利いたことを言えるんだなお前は。とにかくお嬢ちゃん、君は何処から来たんだい?」
幼女「おひさまがのぼってくる方にある、おおきな木のある村からきたの」
オーク「東の……ああ、確かこの谷を抜けて、川を越えた先に村があったな。木はどうか知らないが」
オーク「とにかく、東の……向こうの方に行けばいい。谷を抜けてしばらくは、月の出ている方に真っ直ぐ行けばいい。そうしたら川があるから、そこを渡れば村はすぐだ」
オーガ「オーク、ありがとう」
オーク「お前だけで大丈夫か?俺も一緒に行こうか?」
オーガ「オーク、狩り、する。いそがしい。たすけ、いらない」
オーク「そうか。じゃあ気をつけて行くんだぞ。お嬢ちゃん、こいつが方向を間違えそうになったら注意してやってくれ」
幼女「うん」
オーガ「オジョウチャン、行く。手、つかまれ」
幼女「うん」
幼女「ふえぇぇん……」
幼女「お金がふえぇぇん……」
オーガ「オジョウチャン、みち、くらい。おれ、オジョウチャン、おぶる」
幼女「……いいの?」
オーガ「おれ、おおきい。オジョウチャンちいさい。だから、へいき」
幼女「……うん!」ピョコン
オーガ「もうすぐ、谷、抜ける」
幼女「うん」
オーガ「オジョウチャン、かぞく、いいひとか?」
幼女「パパとママのこと?とっても優しいよ」
オーガ「やさしい、とても、いいこと」
幼女「おじちゃんもやさしいね!」
オーガ「おれ、やさしい?」
幼女「そうだよ」
オーガ「うれしい。オジョウチャンも、やさしい。おれのこと、やさしい、いった」
……
オーガ「谷、ぬけた。ここから、どっち、いく、だったか」
幼女「おつきさまのある方だって、オークのおじちゃんが言ってたよ」
オーガ「つきのひかりで、まわり、あかるくなった」
幼女「さっきまで暗くてみえなかったけど、おじちゃんっておっきいんだね」
オーガ「おれ、おおきい」
オーガ「川、ついた」
幼女「すごいいきおいで流れてるね……」
オーガ「おれでも、ながされそう」
幼女「わたるのは、無理そうだね……」
オーガ「なにか、方法、ある」
ゴブリン「あれ、オーガじゃん。こんなとこでなにしてんの?」
オーガ「オジョウチャン、家まで、とどける」
ゴブリン「ははぁ、それでこの川を渡ろうとしてるってわけか。じゃあボクに任せて!」
幼女「どうするの?」
ゴブリン「ボクはシャーマンだから、キミたちが水の上を歩けるようにしてあげる」
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