コニー「覚えてるか?」(37)

通過儀礼の時のこと、覚えてるか?

俺はしっかり覚えてるぜ。

つーか忘れたくても忘れらんねぇよ。

あの状況で芋を食える奴なんてお前くらいだ。

後にも先にもあんなバカな奴はいねぇと思うぜ。


サシャ。

あ、コニサシャです

…何だよ、その不満そうな顔。

はぁ?
俺にだけはバカって言われたくないだと?

あ?
敬礼!?

う、うるせぇな!
あれはちょっと間違えただけだろ!
今はもう間違えねぇよ!!

俺は右心臓の敬礼よりも芋の方がよっぽどバカと思うがな。

その証拠に走らされてたのお前だけだろ。

ほれみろ、何も言い返せないじゃねぇか!

と、まあ、そういうわけでお前への第一印象はバカだった。
あと芋な。

けど、狩猟の村の出身っつー共通点もあったし、ちょっとは気になってたんだぜ。

は?
惚れてたのかって?

んなわけねぇよ!

第一印象がバカで芋だぜ?
どこに惚れるような要素があるんだよ。

何だよ、そんなに怒んなよ!
本当のことだろうが!

…まあ、でも、ちょっとくらいは可愛いって思ってたかもな。

……。

おい、何だそのムカつくニヤケ顔は!
ちょっとだぞ、ほんのちょっと!

うるせぇ!照れてねぇ!
赤くなってもねぇし!

…あー、どこまで話したっけ?
そうだ、お前の第一印象までだったな。

訓練兵になってからは、何だかんだでお前と一緒にいることが多かったよなぁ。

俺にもお前にもそれぞれ同性の友達がいたけど、一緒にいて楽しかったのはお前だったな。

やっぱり気が合ったのか?

…お前はどうなんだよ、サシャ。

……。

そうだよな、やっぱりお前もだよな!

あ?
べ、別に嬉しそうになんかしてねぇよ!
そう言うお前こそニヤニヤしやがって、嬉しそうに……え?嬉しい?

……。

ああ、そうだな。
正直に言うと俺も嬉しいかもしれねぇ。

って、話が逸れてんな。

で、一緒にいる時間が長くても俺にとってのお前はただの仲間だったな。

お前もそうだっただろ?

ジャンなんかには「付き合ってんのか?」って何回か聞かれたけどな。

もちろんすぐに否定したけどよ。

へ?
お前も?
ユミルに聞かれた?

ああ、何となく想像つくわ。

…つーかよ、そん時はこれっぽっちもそんな考えなかったわ。

恋人になるとか、そういうの、もっと大人になってからするもんだと思ってた。

あと、スゲー面倒くさそうだと思ってたし。

お前はどうだった?

…へー。
ちょっと憧れてたのか。

別にバカにはしてねぇよ。
お前が食い物以外に興味あるなんてビックリしただけだ!

え?やっぱりバカにしてる?
そんなつもりはねぇけど。

んでさ、全然お前に好きとかそういうことを思ったことなかったんだけどな。

覚えてるか?

初めて兵站行進した時のこと。

あれが終わった後、俺もう死にそうだったんだよ。他の奴らもだったけどな。
メシだって一口も食いたくないくらいだったな。

そんな時でも、お前の食欲は相変わらずだった。

5分もしねぇうちにペロリと平らげやがって、俺んトコに来て言ったんだよ。

「食べないんですか?」って。

いつもならお前にやるメシはねぇぞって言ってやるとこだったけど、さっきも言ったようにその時は一口も食いたくなかったんだよ。

だから「やるよ」って言ったんだよな。

そしたら、お前はいきなり表情を変えやがって、

「駄目です!せめてスープは飲んでください!」
って俺にスプーンを握らせてきた。

いやぁ、あん時はマジでビックリしたわ。

まさかあのサシャがだぜ?

食えって言ったのに、逆に食えって言われたんだぜ?

雨どころか雪が…いや、嵐になると思ったぜ。

失礼だって?
けど多分他の奴に聞いても同じようなことを言うと思うぜ。

…そんで、俺が「何だよ急に」って言ったら、
お前は「少しでも栄養を摂らないと本当に倒れちゃいますよ!?」って怖い顔で言ってくるんだよ。

んで、そんなこと言われちゃ食わねぇわけにはいかねぇと思ってスープを飲んだら、お前、笑いやがったんだよ。

人を馬鹿にしたような笑いじゃなくて、なんつーか、子を見守る親?みたいな笑い方だったな。

……。


そん時さ。
ちょっとだけ、ドキッとしたんだ。


けど、その後に「パンは頂きますね!」って答えも聞かずに俺のパンを食ってるのを見て、気のせいだと思うことにしたんだけどな。

あとは…対人格闘術か。

いつもふざけまくってたけど、何回か真面目にやったよな。

そうそう、教官に怒られてな!

ふざけるのも楽しかったけど、真面目にやるのも嫌いじゃなかったぜ。

だってたまにお前のム……、

……。

いや、いやいや。
やっぱり何でもねぇ。

は?気になる?
べ、別に大したことじゃねぇよ!

いや、本当に。
だから気にすんなよ、なっ?

……。

どうしてもか。
どうしても言えっていうのか。

じゃあ怒んなよ?
ゼッテー怒んなよ?

たまにな、お前の胸が俺に当たって…、

イテ!イテェ!
殴んなよ!怒るなって言ったじゃねぇか!!

さ、最低だと?
だから途中で言うのやめたんじゃんか!
それをお前が無理矢理!

……。

…あー、クソ、俺が悪かったよ。

なんてったって天才だからな!
あんなので成績が下がるような俺様じゃなかったんだよ!話、変えるか。

そういや、ペアでやる立体機動訓練でもお前と一緒になったことがあったな。

おー、覚えてんのか。
さすがに忘れねぇよな。

お前、寝不足でぶっ倒れたんだもんな。

減速してる時だったから大怪我はしなかったけど、失格になっちまってよな。

>>18
上二行消し忘れ
訂正↓


話、変えるか。

そういや、ペアでやる立体機動訓練でもお前と一緒になったことがあったな。

おー、覚えてんのか。
さすがに忘れねぇよな。

お前、寝不足でぶっ倒れたんだもんな。

減速してる時だったから大怪我はしなかったけど、失格になっちまってよな。

あ?
謝んなよ。

あん時も言ったけど、俺は別に気にしてねぇよ。

なんてったって天才だからな!

あんなので成績が下がるような俺様じゃなかったんだよ!

でも寝不足の理由が腹減って仕方なかったからっつーのには、さすがに呆れたぜ。

つーか、おんぶで医務室に運ぶ時も謝り倒してきたよな。

もういいっつってんのに。

それに、お前、泣いてただろ?

は?
そりゃあんな声聞きゃ誰だって気付くわ!

……。

…そん時、さ。

何でか知らねぇけど、こいつのこと泣かせたくねぇって思ったんだ。

俺、バカだったからそれがどんな意味か気付かなかったけどな。



んだよ。

今?

…そんなの、言わなくても分かってんだろ!

泣いてたといえば、所属兵団を選択した時だな。

そうそう、お前が怖い怖いって泣きながら調査兵団に決めた日な。

俺も人のこと言えねぇけどな。
マジで怖かったし、ちょっと後悔してたし。

…お前、あの後もしばらく泣いてたよな。

バカにしてんのかって?

だーかーらー、俺も怖かったって言ったじゃねぇか!

バカになんてできねぇよ。

……。

あん時もさ、泣いてるお前を見ながら、泣かせたくねぇって思った。

それから…。

……。

それからな…。

……。


俺が守んなきゃって、思った。


つっても、あん時はまだ実践経験もほとんどない、ガキだったんだけどな。

お前を守るどころか、自分の身を守るだけで精一杯だったぜ。

情けねぇことにな。

けどよ、お前を守りたいって気持ちは無くなんなかったぜ!

へへっ、いい男だろ!

それから、まあ、色々あって今に至るわけだが。


ああ、本当に色々あったよな。
色々ありすぎた。

あれから何度も壁外調査に行って

何度も死にそうになったし

何度もお前に助けられたな

その分、俺もお前を助けたんだけどな!

……。

…サシャ。

俺は、自分が強いなんて思っちゃいねぇんだ。
バカだし、未だに作戦理解に時間がかかるし。

けど、昔よりもちょっとはマシになったと思ってる。

あー、前置きがスゲー長くなっちまったな。

は?
昔話じゃなかったのかって?

…それもあるけどな。

けど、こっからが本題だ。

なあ。

サシャ。

俺は、エレンみたいに強くねぇし

ミカサみたいに完璧でもねぇし

アルミンみたいに頭がいいわけでもねぇ。

あと、なんだ。

ライナーみたいに頼りがいがあるわけじゃねぇし

ベルトルトみたいに背が高いわけでもねぇし

アニみたいに冷静でもねぇ。

ジャンみたいな指揮ができるわけじゃねぇし

マルコみたいに周りをよく見えるわけでもねぇし

クリスタみたいに優しくもなければ

ユミルみたいに賢くもねぇ。

けど、
けどよ、

お前を守りたいって気持ちと、

その、

好きって気持ちは、多分、誰にも負けねぇ。


だから、だからな。




嫁に来てくれねぇか。

サシャ。


……おい。

何、泣いてんだ。

さっきから笑ったり怒ったり泣いたり忙しい奴だな。

なあ、答えは?




「もちろんです、行くに決まってるじゃないですか!!」

「コニー!」


終わり

コニサシャの幸せを願って

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom