雪乃 「比企谷くんに誕生日プレゼントがあるのだけれど」 (71)

八幡 「ま、マジで!?」

雪乃 「……いきなり大きな声を出さないでくれるかしら、ビックリするでしょう」

八幡 「す、すまん。 えっでも、ホントに? ドッキリとかじゃなくて?」

雪乃 「本当よ」

八幡 「本当に俺宛? というか、あとからプレゼント代に手間賃上乗せして請求したりしない?」

雪乃 「……たかだか誕生日プレゼント貰うくらいでそんなに挙動不審にならないでちょうだい――気色の悪い」

八幡 「ぐっ……」

雪乃 「あなたみたいに誰からも産まれてきたことを喜ばれたことがない人間って社交辞令的なプレゼントでもある種悲惨なほど喜んでしまうのね」

八幡 「…………」

雪乃 「もう気持ち悪いのを通り越してなんだか見てて憐れになってくるわ。どちらにしろ不愉快ではあるけれど」

八幡 「なんなの? 誕生日祝いに今までの傷口に塩塗ってやんよって趣向なの? それとも新たなトラウマで一生忘れられない誕生日をプレゼントしてやるってことなの?」

雪乃 「そんなわけないでしょう。そんなひねくれたことばかり言ってるから誰からも祝って貰えないのよあなた」

八幡 「別に今の俺が悪いわけじゃない気がするけどそれもあながち間違いでもないから始末が悪い……」

雪乃 「だって全てまがうことなき事実でしょう?」

八幡 「ぐぬぬ」

雪乃 「まあ、いいわ。ハイ、これよ」

八幡 「お、おう。ありがt」

雪乃 「おめでとう比企谷くん。またひとつ無駄な一年を過ごしたのね」

八幡 「…………」

雪乃 「そういうのをまさに馬齢を重ねるというのでしょうね……覚えておいたほうが良いわ比企谷くん」

八幡 「それくらい知っとるわ。 私立文系志望なめるな」

雪乃 「…………」

八幡 「…………」

雪乃 「あ、開けないのかしら」

八幡 「お、おう、すまない。こういうの貰ったことがないからどうしたらいいかわからなくて……」

雪乃 「べ、べつに今のは催促ではないわ。もしあとがいいというなら家に帰ってゆっくり開けてもらっても構わない、し……」

八幡 「…………」

雪乃 「その……」

八幡 「いや――今開けるよ」

八幡 (包みも大きくないし大して重くないしなんだろうな)

雪乃 「…………」

八幡 「……ん? ベルト? にしては少し細いし短すぎるか」

――ちりりん

八幡 「なんだ鈴か……って、あの雪ノ下さん」

雪乃 「何かしら比企谷くん」

八幡 「なんすかこれ?」

雪乃 「首輪よ。そんなこともわからないくらい記憶野に障害があるのかしら? それとも目が腐ってるせいでよく見えないのかしら」

八幡 「それくらいはわかるわ!」

雪乃 「なら何がわからないのかしら」

八幡 「『私にはこんなこともわからないあなたが存在する意義かわからないわ』みたいな憐れんだ眼はやめろ」

雪乃 「あら、そんな眼をしてたかしら。謝るわ。わざとではないの」

八幡 「…………」

雪乃 「でも眼は口ほどに物を言うって本当なのね――ここまで正確に伝わるとは思わなかったわ」

八幡 「お前絶対わざとだろ!」

雪乃 「あら、いいがかりはやめてくれるかしら。あなたの被害妄想よ」

八幡 「くっ、まあ、いい。何で首輪なんだ? うちのカマクラのにしては大きすぎる。あれでも一応猫だぞ?」

雪乃 「知ってるわ。あなたの家の猫用ではないもの」

八幡 「それじゃなんだ? うちの家に他にペットは居ないぞ?」

雪乃 「あら、日々あなたの妹に飼われてるペットが一匹居るじゃない。愛嬌もなければ芸もない駄目なのが」

八幡 「おい、それはもしかして俺のことを言ってるのか」

雪乃 「なんだ自覚はあったのね」

八幡 「この野郎……でもわりと正しいから腹立たしい」

雪乃 「……肯定されても困るのだけれど」

八幡 「それにそれはある意味、俺の理想の生活ではないか?」

雪乃 「もはや人としての尊厳すら働かないことに比べればどうでも良いのね……ある意味立派よあなた」

お仕事してくる
このスレは勝手に使ってノシ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom