幼馴染「超能力?」(401)

男「そういうのが使える子どもが増えてるみたい……って、ニュース見てないのかよ」

幼「まぁ、知ってるけど、特殊能力みたいに言われていたから」

男「まぁ、どっちでもいいけど、能力的に超能力じゃないか? 予知とか透視とかだし」

幼「う~~ん、そうかなぁ。でもでも、そういう子って病院とかで暮らしてるんでしょ?」

男「んー、どうかな? あまりに凶悪な能力だったら、そうらしいけど」

幼「そうじゃないのは普通に暮らしてるって感じかな?」

男「ってか、隣のクラスでも居るだろ。大島って女」

幼「大島さんって特殊能力者だったの?」

男「お前……なんでそんなに天然なんだよ。気付けよ、普通に誰でも知ってるよ」

幼「う~~~ん、わたし、そういうの興味無いからなぁ」

男「お前……怖いとか思わないのかよ」

幼「え~~~、わたしは羨ましいと思うよ」

男「なんで?」

幼「だって、特殊能力使えたら絶対便利だし」

男「はぁ……なんていうか、お前って本当にのんきというか、普通嫌がるけどな、超能力者なんて」

幼「なんで?」

男「いや、世間を見てればわかるだろ? みんな超能力者を毛嫌いしてる。怖いし、得体が知れないし」

幼「う~~~~ん、まぁ、とりあえず、わたしは特殊能力者でもいいよ?」

男「なんでだよ。俺の話ちゃんと聞いてたか?」

幼「うん、でも、わたしが特殊能力者でも、男ちゃんは味方だから、べつにいいかなぁと思って」

男「……わ、わからないぞ。もしかしたら、お前から離れるかも」

幼「男ちゃんはそんなことしないよ。弱い者の味方だもん」

男「…………」

幼「あ、照れてる~~」

男「照れてない。もう俺、帰る。とっとと帰る」

幼「あ、待って~~」

 公園前

少女「……」フワフワ

男「……あれ?」

幼「はぁ、やっと追い付いた~~。ん? どうしたの?」

男「いや、あれ……」

幼「ん? あ、女の子だ」

男「今……あの子」ジーッ

幼「あの子がどうかしたの?」

男「いや……」ジーッ

幼「???」

幼「ん~~~~? 男ちゃんはもしかしてロリコン?」

男「違うって! 今さっき、あのスコップ浮かせてたんだ」

幼「え? じゃあ、もしかして」

男「ああ」

少女「……」フワフワ

男「ほら! スコップ浮かせてる!」

幼「わ~~~。本当だ」タタタ

男「お、幼」

 公園

幼「すっご~~~~~~い!」

少女「っ!」ポトッ

幼「今、スコップが宙に浮いてたよね?」

少女「……っ」タタタタタ

少女「……!」タタタタタ

男「……あ」

幼「あらら。逃げられちゃった」

男「ま、これが普通だろう。超能力者ってバレたら悪態つかれるのわかってるし」

幼「え~~~すごいのになぁ」

男「すごいけど、得体が知れないから怖がるんだよ」

幼「……」

男「もう、帰るぞ」

幼「は~~~い」

 夜

男「夜に散歩するのもいいもんだよなぁ」

犬「ワンワン」

男「たま、吠えるな。近所、迷惑だろ?」

犬「ワンワン」

男「たっく、いつもは大人しいのに。まぁ、それだけ散歩が嬉しいのか」

 公園

?「……」

男「んん? あれ、あいつ」

?「……」

男「あいつ、こんな時間になに出歩いてるんだよ、ったく」

犬「……」

男「おい、幼馴染、お前、こんな所でなにやってんだよ。夜遅いんだから家に――」

女「……え?」

男「戻れ……って、す、すみませんっ! 人違いでした! し、失礼します」

女「あ……、ちょ、ちょっと、待って」

男「あ、は、はい! すみません。人違いしてました」

女「あ、い、いえ、それはいいんですけど……ちょっとお聞きしたいことがありまして」

男「え?」

女「あの、この住所ってどこかわかりますか?」

男「んん? これは……安井さんの家、かな」

女「安井?」

男「あ、あれ? 知らないんですか? この住所、安井さん家ですけど」

女「あ、い、いえ! ありがとうございます。できれば、案内しても貰っても」

男「い、いいですよ! もちろん!」

男「(この人、か、かわいいなぁ。なんていうか、俺のタイプだ……)」

女「? どうかしました?」

男「い、いえ、えっとこっちです」

女「あ、はい」

犬「……」

 安井家

男「ここです」

女「あ、ありがとうございます」

男「いえ、お役に立てたのなら……は、はは。じゃ、じゃ、僕はこれで」

女「あ、あの……お名前は?」

男「男です」

女「え?」

男「えっと、男です」

女「おと……さん?」

男「い、いや、お・と・こです」

女「あ、男さんですね。すみません、何度も」

男「いえ」

女「わたしは女です。このたびはありがとうございます。お礼をしたいので、連絡先を」

男「い、いえ、とんでもない! じゃ、じゃあ、僕はここで失礼します!」タタタタ

女「行っちゃった、でも」

女「やっと……見つけた」

 放課後

幼「眠い~~~」

男「散々、授業中寝てたくせに、眠いって」

幼「ねぇ、おんぶしてよ」

男「嫌だ。恥ずかしい」

幼「なんでなんで~~~わたしは恥ずかしくないよ」

男「俺は恥ずかしいんだよ。ったく、ホント、お前は成長しないよな」

幼「そんなことないよ」

男「俺は心配だよ。お前を嫁に貰ってくれる人がいるかどうか」

幼「……べつにそんなの……いなくていいよ」

男「はぁ? 結婚しない気かよ」

幼「そうじゃないけど……お、男ちゃんが……も、もう、いい」

男「……」

 公園

少女「……」フワフワ

男「また居るな」

幼「あっ!」

男「待て」ガシッ

幼「つ、掴まないでよ~~~」

男「お前が行くと逃げるだろ」

幼「ぶ~~~」

少女「……」フワフワ ポトッ

男「これ? 山かな?」

少女「!」

男「おっと! べ、べつに大丈夫、なにもしないから!」

少女「……ぁ、い、いまの、ちがっ」

男「大丈夫、大丈夫。俺の親戚にもそういう能力持った人がいるから」

少女「え?」

男「なんか透視? っていうのかな、そういうのが出来るみたい」

少女「あ……」

男「だから、キミのこと怖がってないよ」

少女「……で、でも」

幼「ねぇねぇ! 今のさっきの見せて~~!」

男「お、おい」

少女「あ……う」

幼「さっきのスコップふわふわすごかったから」

少女「え? す、すごい?」

幼「うんうん! すごかったよ!」

少女「えと……こわくないの?」

幼「うんっ、全然」

少女「……」

男「(こいつ……すごいな)」

幼「見せて……くれないかなぁ?」

少女「い、いいよ。見てて」フワフワ

幼「わ~~~すっご~~~い」

男「おお」

少女「……」チラッ

男「すごいな(顔色確認してるな……ここは笑顔で)」

幼「すごいよ~~~~かっこいい~~~」

少女「……」モジモジ

男「(照れてる)」

男「へー、いつもここで遊んでるんだ」

少女「う、うん」

幼「う、浮かべ~~」

男「そっか。いつもどんな遊びしてるの?」

少女「えと、砂場でお山作ったり、ボールでドッチボールしたり」

男「え? ドッチボール? あ、お友達とね」

少女「す、すみません。友達居ないので、ひとりでやってます」

男「ひとりでドッチボール?」

少女「こ、こうやって」フワフワ ヒュン ガシッ

男「あ……な、なるほど」

男「じゃあ、もう遅くなるし、帰るか」

幼「け、結局、浮かばなかった」

男「当たり前だろ……」

少女「あ、あの……」

男「ん?」

少女「ま、また、来てくれますか?」

男「え?」

少女「あ、す、すみません。わたしなんかと関わったらダメですよね。聞かなかっ」

男「いいよ。また来るね」

少女「あ……はい!」

幼「相変わらず優しいよね。あの娘すごくうれしそうだった」

男「そんなことないだろ。お前だってまた会いに行くだろ?」

幼「そうだけど……男ちゃんは、言い方とかタイミングとかが狙ってるかのように」

男「はぁ? なにボソボソ言ってるんだよ」

幼「う~~~~~いいよ、もう! 男ちゃんなんかロリコンで捕まっちゃえ!」

男「ろ、ロリコンじゃねぇよ! 俺は」

幼「じゃあ、幼女愛好者!」

男「同じじゃねぇか!」

 ―――

少女「ただいま」

母「あら、お帰り」

少女「ママ、ただいま」

母「また公園で遊んできたの?」

少女「うん」

母「じゃあ、手、洗ってきなさい」

少女「は~~い」

母「うがいもするのよ」

少女「わかってるよ~~」

母「お父さんは今日は遅くなるから、先にご飯食べちゃいましょう」

少女「また~~?」

母「うん、しょうがないの。お父さんもお仕事で忙しいんだから」

少女「……」

母「そんな顔しない」

テレビ「(ニュース――未だにテロ首謀者は捕まっていません)」

少女「あー、またこれだ。パパ、この人捕まえる為に働いてるんだよね?」

母「……そうね」

少女「わたし、この人嫌い。パパ、この人の所為で帰ってこないもん」

テレビ「(特に首謀者は特殊能力を複数使用する為、注意が必要とされ――)」

母「……複数の特殊能力、か」

母「少女……特殊能力、使って無いでしょうね?」

少女「……つ、使ってないよ~~」

母「はぁ……(使ってるな、これは)」

少女「……」

母「いい? 特殊能力はとっても危険なの。だから、極力使っちゃいけません」

少女「で、でも」

母「でもじゃありません。今ね、特殊能力者の危ない人が増えてるの」

母「だから、特殊能力を使う人間は危ない人って思われてるの、わかる?」

少女「……」

母「お母さんはいじわる言うわけじゃないのよ? 少女には辛い思いしてほしくなくて言ってるの」

少女「……」

母「はぁ……」

 ―――

 電話

男「あ、安井さん、どうしたんですか?」

男「あー、来年引っ越す? あ、はい」

男「もう、それ、決まったことなんすか?」

男「マジですか。うわー、寂しくなりますね」

男「はい。わかりました。じいちゃんに伝えときます」

男「あ、そうだ。聞きたかったですけど」

男「そっちに女の人来ませんでした?」

男「え? 来てない? おっかしいな。そっちに女の人が尋ねて行ったんすけどね」

男「まぁ、間違いかもです。はい、じゃあ、じいちゃんに言っときます」

 祖父の部屋

男「じいちゃん」

祖父「ん? おう、男。どうした?」

男「安井さん、来年引っ越すってさ。だから、色々話したいことがあると」

祖父「やっぱり、引っ越すか。わかった」

男「じいちゃん、あの家さ、俺にくれよ」

祖父「嫌」

男「えー、なんでだよ」

祖父「あの家は幼馴染ちゃんに貸すって決めてるから」

男「はぁ? なんでだよ!」

祖父「そりゃ、お前より優しいから」

男「……」

祖父「お前がもっとじいちゃんに優しくしてくれたらお前にやっても良かったんだけどなぁ」

男「じ、じいちゃん、肩揉むよ」

祖父「おお? 悪いの」

 夜

男「はぁ……疲れた」

犬「ワン」

男「たま、お前は元気そうだな」

犬「ワンワン」

 公園

女「……」

男「あ……あの人」

女「……」

男「は、話しかけてみる、か」

女「……」

男「あ、あの」

女「あ、おと……えと」

男「男です。女さん」

女「あ、男さん」

男「……あの、結局、安井さん家に行ってないみたいですけど」

女「そうですね」

男「もしかして、尋ねる家間違えたとか……?」

女「まぁ、そんなとこです」

男「あ、あの……どこに尋ねるつもりなんですか? 名前聞けばわかるかも」

女「優しいんですね」ニコッ

男「……い、いえ(な、なんだ? すっごく、癒されるぞ、この笑顔)」

女「でも、大丈夫。もう、見つかったから」

男「あ、そうなんですか」

女「はい」

男「……」

女「……」

男「じゃ、じゃあ、失礼しますね」

女「待ってください」

男「はい?」

女「連絡先教えて下さいませんか?」

男「え?」

女「わたし、貴方に興味持ったみたいなんです」

男「え? ええええ!?」

 男の家

男「け、結局、メアドとか番号、交換してしまった」

男「さ、さっそくメール着てる」

男「や、やばいな。俺、もしかして、春が来てるのか?」

男「興味持ったみたいなんです――って、それって好きってこと!?」

男「あの娘、可愛かったしなぁ。俺の好みっていうか、ストライクだよな」

男「やばいやばい! 嬉しすぎてやばい!」

幼「な~~~~~にがやばいの?」

男「お、幼。な、なんでここに!」

幼「来たらダメなの?」

男「そ、そういうわけじゃないけど」

幼「ねぇ、さっき、なんで奇声なんてあげてたの?」

男「い、いや、べつに」

幼「あ~~~や~~~し~~~い~~~」

男「怪しくない! つか、その伸ばすのやめろ! 餓鬼じゃないんだから」

幼「っさいな~~~~~~! 癖なんだから仕方ないでしょ~~~~~!」

男「対抗して無理に伸ばすな!」

幼「今さっき携帯見てニヤニヤしてたよね?」

男「ひゅ~~♪ ひゅ~~~♪」

幼「下手糞。没収!」

男「お、おい」

幼「女って誰?」

男「……」

幼「クラスメートに居ないよ? こんな名前の娘」

男「……」

幼「だ~~~れ~~~?」

男「し、知り合い」

幼「どこで知り合ったの?」

男「さ、さぁ。どこかなぁ?」

幼「ど~~~こ~~~?」

男「夜の散歩です」

幼「……そっか」

男「も、もう、返せよ。ったく」

幼「決めた」

男「なにがだよ」

幼「わたしも会う!」

男「は、はぁ?」

幼「女って人にわたしも会う!」

男「な、なに言ってんだよ! ダメに決まってんだろ!」

幼「なんでよ? 男ちゃんはその女の人とやましい関係なの?」

男「ち、違います」

幼「好きなの? デートなの?」

男「あ、会ったばかりだぞ」

幼「じゃあ、問題無いじゃん」

男「そ、そうだな…………あれ?」

 翌日――放課後

男「ほ、本当に会う気かよ」

幼「うん」

男「あ、あのな、俺もまだそんなに仲良くないんだよ」

幼「そうなの?」

男「ああ、会ったの二回だけだし。昨日、連絡先教えてもらったばかりだし」

幼「そうなんだ~~~。うん、なら、早めに潰しとかないと」

男「は? はぁ? つ、潰すってなにを潰す気だよ!?」

幼「そりゃあ……色々だよ」

男「や、やめろ。女さんに迷惑かけるようなことやめろ」

幼「大丈夫~~。迷惑はかけないよ? ちょ~~~~っと、男ちゃんとわたしの関係を話すだけだから」

男「あ、うん、まぁ、それなら?」

幼「あ~~~楽しみだなぁ」

 公園

少女「……」フワフワ

男「あ、少女ちゃん」

幼「少女ちゃ~~ん」

少女「あ、幼さん、男さん!」

男「来たぞ」

少女「あ、ありがとうございます!」ペコ

幼「今日こそ浮かばせる! 頑張るぞ~~」

少女「はい。頑張りましょう」

幼「違うよ~~。少女ちゃん。頑張るぞ~~~、だよ」

少女「は、はい。頑張るぞ~~~」

男「変なこと教えるなよ」

少女「……」フワフワ

男「すごいな、自分まで浮かせること出来るのか(すごい才能だけど……恐ろしいな)」

幼「わ、わたしだって~~~! う~~~~~」

少女「が、頑張れ~~~」

男「無理に決まってんだろ……」

幼「う、浮かべ~~~」

少女「も、もうちょっとです~~」

男「(でも、こういう馬鹿みたいなことするから、少女ちゃんに好かれるんだろうな)」

幼「……つ、疲れた」

少女「お、お疲れです~~」

少女「……」フワフワ

男「……(こんな自然に超能力を使えるのは……相当すごいな)」

幼「おお、すご~~い、すご~~い」

少女「え、へへへ」フワフワ ヒュンヒュン

幼「わわ、ボールが空を舞ってる~~」

男「……大したもんだ」

幼「もっともっと他にも見せて~~」

少女「う、うん。見てて」シュン

男「え? 消えた?」

少女「こ、ここだよ」

幼「うわ~~~~すっご~~~い。瞬間移動だ~~~」

男「嘘……だろ? 能力をふたつ持ってるなんて」

少女「あ、あと、こんなこともできるよ」パチンッ

幼「お花畑だ~~~~」

男「え? 指を鳴らした瞬間、風景が一瞬にして変わった?」

少女「えと、次は海」パチンッ

幼「すっごい~~~~うみ~~~~」

男「触ってないのに俺たちまで瞬間移動してる? いや、これは……」

少女「……も、もどるね」パチンッ

幼「わ、公園に戻ってる。瞬間移動ってすごいね~~」

男「いや、これは瞬間移動というよりも」

少女「う、うん、幻覚」

幼「げ、幻覚?」

少女「さ、催眠術みたいなものです~~」

男「……(これは……危険だな……)」

幼「すごいすごい~~かっこいいよ~~」

少女「……」モジモジ

男「少女ちゃん、その、こういうことはあまり言いたくないけど、一つ以外能力は使わない方がいい」

少女「あ……はい……ごめんなさい」

男「(彼女自身わかってるみたいだな……親に言われているんだろう)」

幼「え~~~なんで?」

男「いいんだよ。お前は知らなくて」

幼「ぶ~~~」

男「(ただでさえ、危険視されている能力を三つ……いや、それ以上持ってるかもしれないが)」

少女「あ……ご、ごめんなさい」

男「いや、気にしないで(それが政府にバレたら、ここで暮らせなくなる可能性もありうる)」

少女「……」

 ―――

少女「ただいま~~」

母「あら、おかえり」

少女「……」

母「どうしたの? 今日は元気ないのね」

少女「……」

母「そう……また、誰かにいじめられたのね。誰かお母さんに教えて?」

少女「……いじめられてないよ」

母「……ごめんね、ごめんね」ギュッ

テレビ「(ニュース――特殊能力者の犯罪者は年々増えており、対能力者用の武器――)」

テレビ「(またもテロ首謀者の能力と思われるサイコキネシスで――)」

母「……少女」

少女「うん」

母「あなたは特別なの。あのテロ首謀者よりも強力で危ない能力なの……それはわかる?」

少女「……うん」

母「もし、政府がそれを知ったら、あなたはきっと―――」

少女「……」

母「だからね、あなたには能力を使って欲しくないの。お願い」

少女「……わかった」

 ―――

 夜

男「本当に……ついてくるつもりかよ」

幼「だめなの? わたしが居たら~~ヤマシイコトヤスケベナコトデキナイカラ~~だめなの?」

男「い、今、なんか」

幼「答えて」

男「い、いえ、大丈夫です」

幼「だよね~~。だめって言ったら男の頭ブン殴って止めてるもん」

男「な、なんでそこまで」

幼「もういいから、行くよ~~」

 公園

女「……」

男「あ、居た」

幼「あ、あいつか~~~」

女「こんばんわ、おと……?」

男「なんでいつもそこで詰まるんですか」

女「冗談です。男さん」

幼「う~~~~冗談言い合える仲~~~~」

女「え……あなたは」

男「あ、す、すみません。こいつがどうしてもついて行きたいって言って」

女「……」

男「俺の幼馴染なんですけど、あ、本当にただの幼馴染ですっ!」

幼「な、なにお~~~~!」

女「……」

男「女……さん?」

女「あ、はい」

男「ど、どうしたんです?」

女「いえ、ちょっと、その、すごく可愛い人だなって」

男「え……」

幼「あ、あのあの! 男ちゃんとはどういう関係なんですか!」

男「はぁ? だ、だから、一昨日、道案内してあげたって」

幼「男ちゃんは黙ってて! ど、どうなんですか?」

女「え? あ、はい。一昨日の夜に道に迷ってたところを案内してもらい、それで知り合いに」

男「ほ、ほらな? なに変に勘ぐってるんだよ」

幼「う~~~~じゃあ、男ちゃんとなんで連絡先を交換したんですか?」

女「お礼とかしたかったので……失礼ながら教えて貰いました。まだお礼出来てないですね」

男「き、気にしないで。ほ、ほらな? すごい礼儀正しい娘なんだよ」

幼「ぐ~~~~~ぬ~~~~~ぬ~~~~~」

男「ほ、ほら、もういいだろ? 家帰れよ」

幼「なに? わたしを帰してなにをするつもり~~~?」

女「なにかするんですか?」

男「な、な、なにもしない! 変なこと言うなよ!」

幼「じゃあ~~、わたしが居ても問題ないよね~~~?」

男「ぐ……でも! 女さんに迷惑だろ? お前、変につっかかるし」

女「わたしは構いませんよ」

幼「わぁ~~、ありがとうございます。え? なんだって~~? 男ちゃん、なんだって~~?」

男「く、糞、調子に乗りやがって」

女「仲……良いんですね」ニコニコ

男「え?」

幼「そうなんです! すっ~~~~~~ごっく仲良くて」

男「ま、まぁ、仲悪くないですよ? 兄妹みたいなもんです」

幼「な、なにお~~~! い、いいのかなぁ? そんな態度で?」

男「なにがだよ?」

幼「し、知ってるもんね。昨日、わたしがベッドで漫画読んでる時、ぱんつ見てたでしょ~~」

男「な、な、な、なに言ってんだよ!」

幼「チラチラ見ちゃってさ~~男ちゃんは兄妹のぱんつ見たがる変態なの~~?」

男「へ、へ、へ、変態じゃないわ!」

幼「じゃ、じゃあ、なんで見てたの~~? わ、わ、わ、わたしのことす、す、好きなんでしょ~~~?」

男「そんなことあるわけないだろ? 落ちつけよ、な?」

幼「なんでそこは冷静なのよ~~~~!」

女「幼馴染さんは本当に男さんが好きなんですね」

幼「は、はぁ~~~~~? な、な、なに言ってるんですか?」

女「だって、すごくわかりやすいですし。男さんもそれくらい気付いて」

男「まぁ、ブラコンもいい加減にしてほしいくらいだけどな」

女「ないんですね……」

幼「……うぅ」

女「あ……その顔良い……すごく」

幼「え……」

男「と、とにかくだ。幼、確かに俺がお前になかなか構ってやれなくなるかもだけど」

女「幼さん……連絡先教えてくれませんか?」

幼「え……ま、まぁ、いいですけど」

男「そんな心配すんな。俺はお前を妹としてちゃんと構ってやるから」

女「あの……あと、その、だ、抱き締めさせて貰っていいですか?」

幼「え……」

男「そ、その……女さんとは、もしかしたら……し、進展なんかしちゃって」

女「い、一生のお願いです」

幼「あ、あの、わたし、そういう趣味は」

男「こ、恋人とか、いずれ、結婚なんかも!」

幼「あ、あの、ね? き、気付いてるかもだけど、わたし、男ちゃんが――」

女「あ、あ、あ……もう無理です。ずっと、我慢してたけど、もう無理」

幼「いや~~~~~~~~~~」

男「そ、それから、子どもは何人って―――なに、抱きあってるんですか?」

女「いえ……気にしないでください。あ……この匂い」

幼「ち、ちがっ、男ちゃん! わたし、そういう趣味ないからね!」

女「すっごく、幸せでした……ありがとうございます」

男「は、はは、そ、それは……どうも」

幼「う、うぅ……何もされてないのに、穢された気分」

女「男さん、幼さん、また、会いましょう」

男「はい!」

幼「え……い、いや、わたしは」

女「男さん……わたしが貴方に興味持ったって言ったの、嘘じゃないですからね」

男「え……ほ、本当ですか!」

幼「や、やっぱり! わたしも会います! 会いに行きます!」

女「はい、ぜひ、会いましょう」

 男の家前

幼「あ、あんな人だったなんて」

男「な、なんか俺もキャラ変わったなって思った。前はもっと儚げだったのに」

幼「男ちゃんは儚げな子が好みなの……?」

男「え? べつに」

幼「むぅ~~~~~~水風呂入ったら風邪引くかな」

男「儚げって病気になればいいもんじゃないからな」

幼「はぁ~~~~~なんか自信失うなぁ」

男「なにがよ」

幼「女さん、綺麗だった」

男「あー、そうだな。でも、可愛いくもあったよな」

幼「なんだろ……一生敵わない気がする」

男「そうだな、お前じゃ一生あの可愛さに敵わん」

幼「……」

男「幼?」

幼「なんかさ、男ちゃんの言ってることすっごくむかつくけど」ギュゥゥ

男「あ、あ、ご、ごめん。腕つねらないで」

幼「でも、わかる。抱き締めてる時わかったんだけど、あの娘、すっごく可愛い」

男「お、おい、マジでそっちの道に走るなよ……?」

幼「う、うん。わかってるけど……でも、あの娘なら、それでも」

男「幼、今日は早く寝ろ。うん、それが良い。後、もう女さんにも会わない方がいいかも」

幼「なになに~~~嫉妬? わたしが奪われるのが怖い~~~~?」

男「おじさんやおばさんの為に言ってるんだよ」

幼「ぶぅ~~~~~いいよ、もう。わたしが他のイケメンに取られて後悔してもしらないから~~」

男「その時は……(……どうするんだ?)」

幼「……なに?」

男「そ、その時はイケメンに感謝するよ。こんな間抜けな幼馴染を引き取ってくれてありがとうって」

幼「な、な~~~なにお~~~~~! もう、知らない! 男ちゃんなんか、女さんの!」

男「な、なんだよ」

幼「下僕になっちゃえばいいんだ~~~~!」

男「……下僕かよ」

幼「帰る!」

男「おう、おやすみ」

幼「明日、八時に起こすから! いいね! ふんっ、八時だから! わたし怒らせるからこうなるんだよ!」

男「……三十分遅くなっただけじゃん」

幼「ばいばい! おやすみメールなんてしてあげないから!」

男「わ、わかったって」

幼「おはようメールもしないからね! ば~~か!」

男「……なんなんだよ」

幼「起きて~~~! 起きろ~~~~!」

男「ふが……」

幼「ぶがじゃな~~~い! 起きろ~~~!」

男「お、幼」

幼「やっと起きた」

男「じゃあ、もう八時か? あれ、まだ七時半」

幼「ち、遅刻したらいけないと思って七時半に来てあげたの~~! ばか~~!」タタタ

男「……最近、夢を見るな」

男「あの娘は……誰なんだ?」

 放課後

男「メール確認っと。今日も夜に会うことになってるんだよな」

男「女さんってどこに住んでるんだろう」

幼「……今日も行くの? 夜の公園」

男「ああ、行くよ」

幼「最近、よく公園に行くよね」

男「まぁ、夕方は少女ちゃん。夜は女さんだもんな」

幼「なんだかなぁ。最近、ふたりで遊んでない気がする」

男「そうか?」

幼「そうだよ~~ふたりで遊びにいこうよ~~」

男「べつにいいだろ? ふたりじゃなくても、てか、今度女さんと少女ちゃん入れて四人で遊びに――」

幼「う~~~~~ばか~~~~!」タタタ

男「なんなんだよ」

 公園

男「そっか。超能力使うの親に禁止されたのか。まぁ、その方がいいよ」

少女「……すみません」

男「べつにいいって。な?」

幼「うん、べつに特殊能力が見たくて少女ちゃんに会ってるわけじゃないから」

少女「……」パァ

男「んじゃ、どっか遊びに行く?」

少女「あ、あの……わたしの家で遊びませんか?」

男「え?」

少女「お、お母さんが……その、ウチで遊んで良いって」

幼「いいのかなぁ~~?」

少女「あ、あの、いつも遊んで貰ってる男さんや幼さんが見たいって、お母さんが」

男「……そりゃ、自分の娘と遊んでる奴気になるよな。子どもならまだしも」

幼「そっかぁ」

少女「だ、だめですか?」

男「俺はいいよ」

幼「あ、わたしも。一応、お母さんに連絡してっと」

少女「あ、ありがとうございます! こっちです!」

男「うれしそうだな」

幼「だね~~」

 少女の家

少女「お、お母さん、お兄ちゃんとお姉ちゃんつれてきたよ~~」

男「お、お兄ちゃん」

幼「お、お姉ちゃん」

少女「あ、い、いや、その、すみません! いつもそう呼んでて!」

男「そ、そうなんだ」

幼「お、お姉ちゃんね~~」

少女「ごめんなさい、嫌なら、そのいつもみたいに」

男「嫌じゃないよ! むしろお兄ちゃんってもっと呼んで!」

幼「うん、嫌じゃないよ~~? むしろ嬉しい。で、残念だけど、男ちゃんは帰るから」

男「な、なんで!?」

幼「犯罪者を出さないため~~」

少女母「いつも娘がお世話になっております」

幼「いえいえ、こちらこそお世話になっています」

男「とても娘さんは良い娘です」

少女母「この娘ね、最近すっごく楽しそうなんですよ? いつもお兄ちゃんやお姉ちゃんの話をして」ニコニコ

男「へー(そっか、楽しそうにしてくれるなら良かった)」

幼「そうなんですか~~」クス

少女「え、えと! 二階で遊ぼ~~!」

少女母「あら、ここじゃダメなの?」

少女「だ、だって、お母さんが恥ずかしい話ばっかりするから!」

少女母「あらあら、恥ずかしがっちゃって」

男「(いいなぁ、こういうの)」

幼「いいですね、こういうの~~」

少女母「また、来てくださいね」

男「あ、はい」

幼「また来ます~~」

少女「ばいばい。お兄ちゃん、お姉ちゃん」

男「おう、また、明日な」

幼「ばいば~~い」

 帰り道

男「良かったな。喜んでて」

幼「うん、少女ちゃんが楽しんでくれてるなら、遊んだかいあったよね~~」

男「お母さん、良い人そうだったな」

幼「すっ~~ごく良い人だった」

幼「なのに……特殊能力者ってだけで」

男「それは仕方ない。差別を無くせなんて無理だ。いじめと一緒だな」

幼「でも、助けてあげたいよ~~」

男「幼は相変わらず良い奴だな。俺は結構、そういうのしょうがないとか思っちゃうからさ」

幼「でも、男ちゃんは助けてくれるよ。いつも弱い者の味方だもん」

男「……そういうの結構きついなぁ」

幼「え?」

男「俺はさ、確かに弱い者に対して優しいよ? でも、それは強い者が居ない時だけ」

幼「……それは」

男「あの娘が安全な時は優しくする、でも、危なくなったり面倒になったら離れる」

幼「……」

男「最悪だろ? でも、俺はそういう奴だからさ」

幼「それでも……その優しさに救われた人間も居るから」

男「そうか、まぁ、あんまり俺を買いかぶらないでくれ」

 夜

犬「ワンワン」

男「吠えるな、たま」

幼「前から気になってたんだけど」

男「ん? なんだ?」

幼「なんでたまなの? たまって普通猫じゃない?」

男「いや、俺もそう思ったんだけど、じいちゃんがたまって名付けてさ」

幼「そうなんだ。でも普通犬ってポチでしょ?」

男「俺もそう思ってじいちゃんに内緒でポチに変更しようとしたんだけど」

幼「したんだけど?」

男「まぁ、見ててよ」

男「ポチ!」

犬「……」

男「たま!」

犬「ワン!」

男「たまたま!」

犬「ワンワン!」

男「ちんちん!」

犬「ワン!」タツ

男「こんな具合に――痛!」

幼「最っ~~~~~低!」

 公園

女「あ、こんばんわ。おと……?」

男「そのネタ、まだ続けるんですか?」

女「いや、わかってますよ。弟さん」

男「違います」

女「じゃあ、隣さん?」

男「それも違います」

女「う~~~ん、では、お父さん」

男「あ……良い。パパならもっと良い」

女「ぱぱぁ」

男「すみません、もう一回、良いですか? 録音しますんで」

幼「ふざけるのもいい加減にしてください」

女「男さんって面白いですね」

男「え? そ、そうですか?」

幼「いやいや、ぜんぜ~~ん、つまんないですから」

男「な、なに怒ってるんだよ」

女「あ、きっと、あれですね。わたしと男さんが夫婦漫才してたから嫉妬してたんですよ」

幼「ち、ち~~が~~い~~ま~~す~~!」

女「あ……そんな、顔真っ赤にして……あ、あの、抱き締めていいですか?」

男「はい、俺ならいくらでも」

女「あ、では失礼して」ギュッ

男「え! え? そ、そこは貴方じゃないですじゃないの!?」

幼「ちょっ! ちょっと~~~~~~~! なにやってるの~~~~!」

女「あ……良いです。気持ち……良いです」

男「あ、あの……そういう発言は……ちょっとっ。てか、もう離れ」

女「だめぇ? ぱぱぁ」ギュッ

男「……フッ、そんなわけないだろ? 全く、お前は甘えん坊だな」ナデナデ

女「だから、ぱぱぁ好き」ギュッ

幼「あ、あ、あ、えと、鞄にハサミあったよね? うん、そうだよ。もうそれしかないから」

男「ごめんね。パパ、死にたくない。離れてくれ」

女「そ、そんなぁ……ぱぱぁ」

男「ぐっ……こんな可愛い娘を手放せるのか」

幼「あった、ハサミ」

男「ごめんよ。不甲斐ないパパで」

女「嘘つき……パパの嘘つき!」タタタタタ

女「みたいな感じで良かったんでしょうか?」

男「あ、ああ、だから、助けて」

幼「この辺かな? 心臓って。ん~~~、流石に一突きじゃないと可哀想だし」

女「あの……幼さん、もうそのくらいに。べつにわたし、男さんのことなんとも思ってませんし」

男「え……」

幼「べ、べつに女さんと男ちゃんが付き合ってもどうだっていいし~~」

女「さっきの反応はそんな感じじゃ無かったですよ……なんか嫉妬を通り越して」

男「なんともって……さ、さっきの抱き締めはなんだったの……?」

女「やっぱり、幼さんが一番ですね。ふわふわで甘くて良い匂いです」ギュッ

幼「う、嬉しいような……嬉しくないような……」

男「そ、そんなぁ」

女「まぁ、男さんはだっこよりおんぶって感じですね」

男「お……ん……ぶ? 胸……ばっちこーい!」

幼「男ちゃんは懲りないね。やっぱり、その変なことを考える頭から」

男「じょ、冗談! 冗談に決まってるだろ?」

女「ふふ、本当に仲良いんですね」

男「え、これのどこが仲良いの?」

幼「ま、まぁ、それなりに仲良いよね? 恋人、いや、夫婦に間違うくらいに仲良いよね~~!」

女「はい、本当にそう思います。夫婦って感じですよね~」

男「え……?」

幼「わ、わかる~~? 中学の時もずっ~~と夫婦って呼ばれてたんですよ~~」

女「あ~~、わかります。なんか夫婦ってオーラがします」

幼「そ、そう? えへへ、しょ、正直、わたしは嫌だったんだけどね~~」

女「ふふ、貴方たちの子どもは幸せですね。こんな優しいふたりの子どもだったら」

幼「こ、子どもだなんて~~~えへへ、し、幸せかなぁ?」

女「ええ、絶対、幸せですよ。わたし、幼さんみたいなお母さん居たらすっごく嬉しいですし」

幼「て、照れちゃうなぁ~~も、もう、あなた、どうしましょう?」

男「え? え?」

幼「女さんったらこんなこと言うんですよ~~、あなた。ふふ、わたしたちすっごくお似合いだって~~」

男「あ……なんかもう、この人、妻気取りだ……お、俺の恋の行方は? 女さんルートは?」

女「そ、そんな……男さんったら、ルートが既に決まってるのに、他の子に手を出そうなんて」

男「や、やっぱり、もう決まってるんだ……」

女「残念です……パパさんプレイの時、わたしを見捨てなければ、ルートはわたしだったのに!」

男「そうだったの!? 一見なんの関係も無さそうな演技が重要だったとは……!」

女「わたし……結構、ファザコンなんで。あ、マザコンでもあります」

男「そ、そうだったのか……なんで現実はセーブもロードも出来ないんだ……」

男「で、でも、俺は目指す! 女さんルートは無理でも、ハーレムルートを!」

男「これなら、禁断の少女すらも攻略可能となる! いざ、ハーレムルートへ!」

幼「あなた~~? 浮気はだめだよ~~?」

男「はい」

女「よ、弱……男さん本当にヘタレですね……」

男「……いや、ハサミを見せられるとどうも」

女「まぁ、浮気は感心しませんので、それで良いと思います」

幼「浮気絶対ダメ」

女「ふぅ、まぁ、今日はこれくらいにしませんか? もう遅いですし」

幼「そうですね。そろそろ帰ろうか」

男「女さん、送ろうか?」

女「いえ、家は近いので大丈夫ですよ。それより、幼さんをきちんと送ってくださいね」

男「……わかった」

 ―――

少女「~~♪」

母「今日は嬉しそうね、気持ちはわかるけど」

少女「えへへ、うん! 今日も楽しかったし~~、明日も楽しいから~~」

母「明日、帰ってくる日だもんね」

少女「うん! パパが帰ってくる日だもん」

母「良かったね。パパとの約束を守ったからよ~」

少女「うん! 特殊能力使わなかったら、パパ帰ってくるって!」

母「じゃあ、明日は豪勢にしちゃうから、少女も手伝ってね?」

少女「は~~い!」

 ―――

 翌日――放課後、公園

男「今日……来ないな」

幼「なにかあったのかなぁ? 風邪とか~~」

男「さぁな、まぁ、もう少し待って。来なかったら帰ろう」

幼「……うん」

 一時間後

男「来ないな」

幼「うん」

男「帰るか」

幼「……うん」

 夜――公園

女「へー、いつも、夕方に遊んでる娘が来なかったということですか?」

幼「うん、そう」

男「まぁ、体調崩したのかもしれないし、なんか用事があったのかもしれない」

幼「なんだかな……」

女「少女さん家知ってるでしょう? 行けばいいじゃないですか」

男「え? い、いや、そう簡単に行けるもんじゃないでしょう」

女「そうですか? 本当に仲良いのなら行くんじゃないですか?」

男「……ま、まぁ、そうだね」

女「体調崩してるんなら、お見舞い。用事なら、また今度って感じで」

幼「……う、うん、なるほど~~」

女「というより、連絡先は? 少女さんは幼いみたいですし、携帯は無いとしても、家電があるでしょう?」

男「な、なんか女さんって、結構、積極的なんですね」

幼「ちょ、ちょっと、びっくりした~~」

女「そうですか? まぁ、確かにわたしは何事も行動しないと……とは思ってますが」

男「すごいですね。なんていうか、俺はあんまり積極的じゃないから」

幼「わ、わたしも」

女「……」

男「え……なに、その視線」

女「いえ、普通積極的じゃない人が見知らぬ少女さんに話しかけたり」

幼「……あ、あれはなんというか好奇心が」

女「見知らぬ女の人にナンパなんてしないと思いますけど」

男「……え?」

幼「は? ナンパ?」

男「頼む! そのハサミをしまってくれ!」

男「ちょ、ちょっと待ってよ! 俺、ナンパなんかしてないよ!?」

女「え? でも、いきなり――」

女「よぉ、お前、俺様の最愛の人、幼馴染に超似てるな。超好みだから付き合えや」

女「――みたいなこと言って迫ってきたじゃないですか」

幼「さ、最愛だなんて……でも、浮気は良くないよね~~」

男「言ってないから! 確かに幼に間違えたのは確かだけど!」

女「嘘は良くないですよ。正直、わたし、俺様系好きじゃないんです」

男「そ、そうなんだ。いやいや、そうじゃなくて、嘘ついてないって、俺」

幼「……お、俺様系かぁ。男ちゃんは、俺様系に属するならヘタレ俺様系だよね~~」

男「威張ってる癖にヘタレてんのかよ。嫌だ……ただの痛い奴じゃねぇか」

女「やっぱり、わたしは、いつも優しくて頭とか撫でてくれていざという時に頼りになって頭も良くて」

男「そんな完璧人間居ません」

男「まぁ、そうだよな。明日、来なかったら、少女ちゃん家に行こう」

幼「うんっ、行こう!」

男「よーし! なんで昨日来なかったこと問いただしてやる!」

幼「そうだよね~~すっご~~く寂しかったし、わたし」

女「そうそう、貴方たちはそういうのが似合うんですから」

男「な、なんか、馬鹿にしてない?」

女「いえ、そんな……夫婦でいつもアホみたいな漫才してる方がお似合いだなんて、そんな」

男「や、やっぱり馬鹿にしてる! 幼もなんか言ってやれよ、俺たちはそんな馬鹿じゃないって」

幼「え、えへへ、夫婦がお似合いだなんて~~え、へへ、こ、困るよ~~」

女「うん、やっぱりお似合いです」

男「待ってくれ。俺は違う。俺だけはあの馬鹿とは絶対違うから!」

 ―――

少女「え……? パパ帰って来れないの?」

父『ごめんな?』

少女「なんで! 約束したよ! わたし約束守ったよ~~!」

父『うん、わかってる。今回はパパが悪い』

少女「わたしは約束守ったのに! パパ、約束守ってよ~~!」

父『ごめん』

少女「嘘つき……パパの嘘つき!」

父『ごめん、本当にごめん』

少女「パパなんか! パパなんか大っ嫌い!」

父『あ――』

少女「知らない!」ガチャッ

母「こ、こら、少女!」

少女「……」タタタタタ

 ―――

 翌日――夕方、公園

男「来てないなぁ……」

幼「来てないね~~」

女「来てないですね」

男「女さんもついてきて貰っていいんですか?」

女「はい、言いだしっぺの法則ですから」

幼「よ~~~し、少女ちゃん家に行くぞ~~」

男「そうだな」

 ―――

少女「パパの……嘘つき」

母「……少女」

 トゥルルルルル

母「はい。もしもし」

母「え……夫が?」

母「は、はい! わかりました!」

母「某病院ですね! はい、今すぐに向かいます!」

母「少女! 病院に行くよ!」

少女「え? どうして?」

母「いいから!」ギュッ

少女「マ、ママ?」

 ―――

 少女の家

男「き、緊張するなぁ」

幼「へ、へたれ~~」

男「お前の方がガチガチじゃないか」

女「さっさとインターホン押してください」ポチ

 ピンポーン

男「あ」

幼「あ」

女「……出ませんね。留守ですかね?」

男「そうかもな」

幼「帰ろうっか?」

女「仕方ないですね」

 ―――

 某病院

医者「色々手を尽くしましたが」

母「そ、そんなぁ」

少女「え……パパ、大丈夫なの?」

母「うぅ……少女、少女!」

少女「どうしたの?」

看護婦1「かわいそうに」

看護婦2「まだあんなに小さい子なのに」

少女「ねぇ、ママ」

母「うぅ……ぅ」

少女「どうしてママは泣いているの……?」

 ―――

 公園

男「結局、ここに戻るだな」

幼「なんか、ここが拠点になっている気がする」

女「まぁ、実際そうですね」

男「会えなかったなぁ、少女ちゃん」

幼「お母さんも居なかったし、一緒に買い物とか?」

女「一緒に病院かもしれませんね」

男「……仕方ない、帰ろうか」

幼「そうだね」

 ―――

 病院

母「はい、はい、ありがとうございます」

少女「……」

少女「パパ」

少女「……」

 家

祖母「辛かったでしょう?」

母「ううん、ありがとう、お母さん」

祖母「……少女ちゃん」

少女「……」

母「さっきまでずっと泣き続けてたんだけどね」

祖母「そう」

少女「……ママ、トイレ行ってくるね」

母「え? うん、いってらっしゃい」

 廊下

少女「……」

親戚「ええ、そう、殺されたらしいわ」

親戚「え? そうなの?」

親戚「テロだそうよ。ほら、父さん警察官でしょう?」

親戚「殉職ってこと?」

親戚「そう。傷の具合から例の組織の首謀者に――」

少女「……」

親戚「……能力者の子よ、行きましょう」

親戚「……ええ」

少女「テロ……首謀者」

 棺

少女「……パパ」

父「……」

少女「大嫌いなんて……もう言わないから」

父「……」

少女「パパ……ごめん、なさい……もう、わがまま、言わないから」

父「……」

少女「ぱぱぁ……ぱぱぁ……うぅ、やだよぉ……ぱぱぁ」

父「……」

 外

少女「……」

?「そんなとこでどうしたの?」

少女「え……誰」

?「わたし? わたしは貴方のお父さんの古い知り合い」

少女「パパの?」

?「そう。昔はよくお世話になったわ」

少女「パパは……パパは……」

?「ええ、知ってる。今はパパより、貴方のお母さんに会いたいの」

少女「ママに?」

?「ええ、貴方のママに」

少女「呼んでこようか?」

?「いいえ、心配ご無用。ここまで来たら、自分で呼べるから」

少女「え?」

?「ほら、ちゃ~~~んと見ててね。貴方のお父さんを殺した能力」パチンッ

少女「え……」

母「え?」シュン

少女「マ、ママ!」

?「びっくりしました? 驚きました?」

母「あ、あなたは」

?「お久しぶりですね」

母「ど、どうして、あなたがここに」

?「そんなに警戒しなくても、わたしはただ会いにきたんです」

母「誰に……?」

?「貴方にですよ」

母「どうして……?」

?「部下が何人も死に、捕まりました」

母「……」

?「本当、貴方の夫には苦労させられましたよ。全く」

少女「……」フルフル

?「こちらがいくら仲間に誘っても、断って、こちらが損害受けるんですから、たまったもんじゃありません」

母「なにが……言いたいの?」

?「つまり、埋め合わせが欲しいんです。わたしの仲間になりませんか?」

?「そちらのお子さんも相当な能力者だと伺ってます」

母「……」

?「あ、動かないでくださいね? お子さん、殺しますよ?」

母「……」

?「仲間になるんですか? どうなんですか?」

母「ふざけないで! あなたにあの人を殺されたのよ! 死んだ―――」

?「あまり大声出さないでください。気付かれたどうするんです?」

?「幻覚で貴方の偽物を用意してますけど、大声出されると流石にバレますよ」

母「――――」

?「さぁ、わたしの仲間になるなら首を縦に、嫌なら横に。まぁ、横に振った瞬間――」

少女「……」

?「この子の命は無いと考えてくださいね?」

母「――――」

?「ねぇ、少女ちゃん」

少女「……っ」

?「あなたはおかしいと思わない? この世の中。能力者はみんなから嫌われてる」

?「なにも悪いことしてなくても、悪い奴と決めつけられてる」

?「あなたもなにか心辺りあるんじゃない?」

少女「……友達居ない」

?「そう! 能力者には友達が出来ない。おかしいと思わない?」

?「能力者は他の無能な連中より全然優れているのに!」

?「奴らはわたしたちを怖がって、不当な扱いを強いている。最悪、無罪で殺される」

?「こんなの絶対おかしい。もっとわたしたちはまともな待遇を受けるべき」

少女「……」

?「ねぇ、少女ちゃん。お父さんを殺したことは謝るわ。でも、あれは事故なの」

?「わたしはね、お父さんには仲間になって欲しかったのよ?」

?「でも、あの人はなかなか受け入れてくれなかった……本当……馬鹿な人」

?「あなたは能力者だもの。わたしたちの気持ちがわかるはずよ?」

?「少女ちゃん、わたしの仲間になって?」

少女「ふ、ふざけっ――――――」

?「少女ちゃん、よく考えて? お母さんの命は今わたしが握ってるんだよ?」

少女「――――」

母「――――」パチパチ

少女「―――――(ウィンク……能力を使えってこと?)」

?「さぁ、少女ちゃん、答えて? イエスなら首を縦にノーなら横に」

少女「――――(い、嫌だ。ママを置いて、そんなの!)」

母「――――」ニコ

少女「――――(泣きながら笑ってる……能力……使うよ、ママ)」

?「さっきから、どこを、まさか!」

少女「――――」シュン

?「き、消えた……どこに、そんなに遠くへテレポート出来ないはず」

?「全然……見つからない。どういうこと? あんな小娘がそんな遠くいけるはずが」

?「……わたしが探れないほどに遠くへ行ったというの?」

母「――――」

?「……」パチンッ

母「ぷっはっ……はぁ……はぁ」

?「どういうこと? あの娘はどこへ行ったの?」

母「あなたには追えないわ」

?「へー、このわたしが? 追えない? そんな冗談は良いから教えなさい」

?「なにかからくりがあるんでしょう?」

母「そうね……からくり。そのからくりが解けたとしてもあなたは追えないわ」

?「そう……言わないのね。今のわたしはとてもイラついてるわ。早く答えを言いなさい」

母「……」

?「そう、じゃあ、死になさい」パチンッ

 ――――

男「ああああああああああ!」ガバッ

幼「わわ! ど、どうしたの?」

男「い、いや」

女「叫びながら起きる人初めて見ました。お化けにでも襲われました?」

男「はぁ……はぁ……」

女「茶化す場面じゃなさそうですね」

男「出かけてくる」

幼「え?」

 少女の家前

 忌中 告別式執行 少女家

男「マジかよ……」

親戚「……」ジロジロ

男「あ……」タタタタ

 公園前

男「……」

少女「……」

男「あ……少女ちゃん、なんでこんなところに?」

男「少女ちゃんは確かテレポートで遠くに行ったはず」

 公園

男「少女ちゃん……?」

少女「……」

男「……あ、いや、すごく辛かったと思う」

少女「お兄ちゃん」

男「うん」

少女「わたしのお父さんとお母さん、殺されたんだ」

男「……」

少女「しかも、原因はわたしなんだ」

男「え?」

少女「わたしが超能力者だから、危険だから殺そうとしたんだって」

男「……」

少女「お父さんもお母さんもわたしを庇ってくれたの」

少女「でも、わたしは逃げた。お父さんとお母さん置いて逃げたの」

男「……(違和感……この娘はただそう感じてるのか?)」

少女「もう……やだよ……助けて」

男「え……」

少女「助けて……お兄ちゃん」

男「な、なんだ」

 ―――

少女「もう……やだよ……助けて」

男「……」

少女「助けて……お兄ちゃん」

男「……」

少女「お……兄ちゃん?」

男「……」スタスタ

少女「おにいちゃん、待ってよっ……おにいちゃん!」

男「……」スタスタ

少女「……はは、そっか……そうだよね……そうだよ」

少女「特殊能力者は……嫌われて……当然……なんだ」

 ―――

男「……」

少女「お、お兄ちゃん? 大丈夫?」

男「……少女ちゃん、俺は、なんてことを……」

少女「……お兄ちゃん」

男「ごめん、ごめんね」

少女「え……? なんのこと?」

男「きみは、俺が助け―――」

女「――に近付くなぁ!」ドンッ

少女「きゃっ!」

男「お、女さん? な、なにを」

女「……」

少女「い、痛い……なんで……なんでこんなことするの……」

女「ちっ……こいつで!」バシッ

少女「!」シュンッ

女「くっ! 瞬間移動」

男「女さん! やめろ! そんな警棒みたいなもので少女を殴りつけないで!」

少女「はは……そう……わたしを、狙うの……また、わたしから奪うの」

女「奪う? 奪った癖に!」シュンッ

男「消えた?」

少女「瞬間移動したって無駄だよ? わたしにはわかるの、どこに――え? どこ?」

女「ここ!」バシッ

少女「うっ……こんなので! ……あれ? 特殊能力が」

女「使えないでしょう?」

―――

―――

の間は現実ではなく未来の出来事です

男「お、女さん! やめてくれ!」

少女「くっ……なんで、こんなので」

女「貴方は危険なのよ。すごく危険。だから、ここで処理されるべき人間なの」ガチャッ

少女「手錠……これも、特殊能力が……使えないっ」

男「女さん! なに言ってるんだ!」

少女「……殺すの? お母さんやお父さんみたいに!」

女「そうね。そうした方が世の中の為なんでしょうね」

男「た、頼む! やめてくれ!」

女「男さん、この娘は未来、どんでもない犯罪者になるの」

男「え……?」

女「組織を作り、そのリーダーとなり、そして、わたしの両親を、殺すの」

男「……」

女「それだけじゃない、たくさんの人間が組織によって殺される」

男「……」

女「男さん、こいつはね、貴方の大切なものも奪ったんだよ」

男「え……」

女「貴方がもっとも大切にしていたおじいさん、お父さん、お母さん、そして」

男「……」

女「幼馴染さん」

男「な」

少女「……」

女「そんな奴を生かしておけるの?」

男「俺は……この娘を助けたい……」

少女「……」

女「ど、どうして!」

男「たぶん、この娘が未来、そんな風になったのは俺の所為だから」

女「そんなこと、そんなことない! こいつが勝手に暴走しただけ!」

男「でも、俺は、助けたいんだ」

少女「おにい……ちゃん」

男「ごめんね、痛い思いさせて……」

少女「……」

男「女さん、鍵を」

女「そ、そんなの……だめ……だめ!」

男「……」

女「そ、そんなことしたら! そいつ、貴方を殺すよ? 殺されちゃう!」

男「いいから、鍵を渡すんだ」

女「いや……そんなこと出来ない」

男「渡すんだ!」

女「っ……いや……嫌、嫌わないで……渡すから、嫌わないで」

男「ありがとう」

少女「……」

少女「おにい、ちゃん」

男「ごめん、ごめんな。俺はきみを助けるから」

少女「……」

男「きみを絶対、守るから」

少女「うぅ……うわああああ、おにいちゃん」ギュッ

男「大丈夫。大丈夫だから」

女「なんで……そいつは……」

男「もう、俺は、見捨てたり、しないから」

少女「うぅ……おにいちゃん」ギュッ

女「……未来は変わらないの?」シュンッ

 公園

女「……」シュンッ

女「一時間後だし、居ないか」

女「……」

 男の家

幼「じゃあ、少女ちゃんは――」

男「ああ、親戚に引き取られるそうだ」

幼「そっか、それは仕方ないね……」

男「幼、俺、ひとり暮らししようと考えてる」

幼「え?」

男「少女ちゃんが預けられる家はそこまで田舎じゃないし、近くに大学もある」

幼「もしかして」

男「ああ、そこの大学に入ろうと俺は考えてる。母さんは大学に行かせたがってるし」

男「どうせ、行くなら、少女ちゃんを見守れるそこにしようと思う」

幼「いいの? それで」

男「本当は……少女ちゃんを自分の手で育てたいけど」

幼「うわ……第三者が聞くと、かなり危ない人だ」

男「うるさいな。で、まぁ、そういうわけだから、たぶん、ここから離れると思う」

幼「そっか~~、やっぱり、男ちゃんは弱い者の味方だね」

男「そんなこと……ないよ。俺は、最低だったから」

幼「まぁ、そうなると、男ちゃんのお目付役としては~~ついて行くしかないかなぁ」

男「お目付役って……いや、べつについて来なくても」

幼「なに~~~もしかして~~~少女ちゃんが大人になったら少女ちゃんと結婚するとか言うの?」

男「い、いや、言わないから」

幼「本当かな~~」

男「はぁ……まぁ、俺がなに言っても、どうせ少女ちゃん心配してついてくるんだろうし」

幼「そうだね~~、男ちゃんからそういう心得を学んでますので~~」

男「だから、俺はそういう聖人君子じゃないの。もっと、最低な奴だったんだって」

幼「わかってる……でも、男ちゃんはそれを過ちだったって気付けたんでしょ~~?」

男「……どう、だろ。後悔して、ただ償いたいだけかもな」

幼「それでも……後悔して、そこから成長出来る男ちゃんは、本当に優しいんだよ」

男「はぁ……相変わらず、お前は俺のそういう奴にしたがるな」

幼「そうだね~~」

 夜――男の家前

男「じゃあな、また、明日」

幼「はいはい。夜更かししちゃだめだよ~~」

男「餓鬼じゃないんだからしないよ」

幼「じゃあ、おやすみ」

男「おやすみ」

男「……」

男「俺も家に入るかな」

女「……」シュンッ

男「うわっ」

女「……」

男「お、女さん」

女「こんばんわ、男くん」

男「……こんばんわ」

女「そんなに警戒しないでください。もう、あの娘には手を出しませんから」

男「……」

女「仲直りがしたいんです」

男「え?」

女「あんなことがあって、このまま、男さんや幼さんと別れるのは嫌ですから」

男「そ、そうか」

女「仲直り……してくれますか?」

男「え? あ、うん。女さんが良いなら」

女「ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね」

男「あ、うん」

 公園

男「そうだったんだ……未来予知」

女「はい、わたしは未来予知が出来るんです。それから、瞬間移動じゃなくて、高速移動」

男「やっぱり、超能力者だったんだね」

女「はい」

男「どうして……俺や幼を助けようとしたんだ?」

女「それは、未来で、わたしがあなた達に命を助けられるんです」

男「え? 俺たちに?」

女「はい、特殊能力者であるわたしをいつも優しくしてくれました」

男「……でも、それは未来の話なんだよね」

女「そうですね。それでも、未来に優しくしてくれる人たちが死ぬのは嫌です」

男「……未来は変わらないのか。少女ちゃんはまだ俺たちやそれ以外を恨んでるのかな」

女「いえ、変わりましたよ。少女さんはもう犯罪者じゃありません。立派に社会人として未来に生きてます」

男「そう、なのか? じゃ、じゃあ、もう解決したんだな!」

女「そうですね。男さんはあの時、あんな風に解決するなんて思ってもみませんでした」

男「そっか、あれで正しかったんだな……」

女「はい、とても、正しい判断でした」

男「はぁ、良かった」

女「引っ越すんですよね」

男「え? あ、うん。一人暮らししようと思ってさ。てか、未来予知ってすごいな」

女「なにがですか?」

男「いや、そんなことまで判るんだなってさ。そういや、俺も未来予知みたいな夢見るんだよ」

女「え……?」

男「いや、女さんほど高性能じゃないと思うけどね。最近は見ないけど」

女「ど、どんな未来が見えるんですか?」

男「まぁ、親子の夢とかかなぁ。母親と娘の夢、最初、この夢、少女ちゃんだと思ってけど、違ってたし」

女「……」

男「それから……俺が少女ちゃんを見捨てる未来も見えたよ」

女「え?」

男「あの公園の時ね、本来の俺は彼女を見捨てたんだ」

女「嘘……」

男「ううん、嘘じゃないよ。助けてって言われた時、俺は無視して家に帰った」

女「そんな……」

男「なんで、あんなことをしたのか……たぶん、俺が相当屑だったんだと思う」

女「じゃ、じゃあ……だから、あの人は変わった? あんな風になった?」

男「たぶんね。俺は最低だった。だから、償いたいんだ」

女「……あの人は……本当は……」

男「うん……だから、あの娘を俺は見守ってあげたいんだ」

女「そっか。そうだよね……それが一番かもしれない」

男「ん? 女さん?」

女「ううん、なんでもないです」

男「そう?」

女「男さん、お願いがあります」

男「お願い?」

女「はい」

男「なに?」

女「わたしとデートしてください」

男「え?」

 男の部屋

男「デートってあのデートだよな」

男「ついOKしてしまったけど」

男「週末か……あんなことあったけど、俺、女さんに惹かれてるんだよな」

男「異性であんなにも気になる娘ってあの娘が初めてだし」

男「やっぱり……好きなんだろうか?」

男「まぁ、それを確かめる意味でも良いかもしれない」

男「もし……女さんと付き合うことになったら」

男「幼はどう思うだろうか……」

男「なんで俺は幼のことなんか気にしてるんだ?」

男「そうだよ、あいつは関係無いじゃないか」

男「あいつは、ただの幼馴染で」

男「妹みたいな存在で」

男「そうだよ、あいつはそういう目で見ちゃダメなんだ」

男「……」

男「もう、寝よう」

 夜中―――公園

女「もうすぐ、あの人は外国へ行くことになる」

女「その時、あの人は……」

女「それさえ、阻止出来れば、わたしの計画すべてうまく行く」

女「そして、あの人は気付くはずだ、必然的に。この事実に」

女「その時、わたしは伝えよう」

女「わたしの計画を、求めている未来を」

女「きっと納得はしてくれない。でも、それでもわたしのお願いなら」

 翌日

幼「おっはよう~~~~」

男「……」

幼「おっきろ~~~~」

男「あ……ああ、幼か」

幼「もう、朝ですよ~~」

男「わ、わかったよ、起きる」

幼「あれ? 今日は素直だね」

男「べつに」

幼「ふ~~~~ん?」

男「(べつにやましいことなんて無い。だって、幼と俺はつきあってるわけじゃないんだから)」

 少女の家

幼「もう、少女ちゃん、居ないんだよね」

男「そうだな」

幼「……」

男「まぁ、来年、会えるし、電話もしてるし」

幼「そっか。ちゃ~~~んと電話してるんだ」

男「一応な、メールも結構着てるよ」

幼「ふ~~~~~~~ん」

男「な、なんだよ」

幼「べっつに~~~~~~」

男「お前だってメールしてるだろ」

幼「してるけど……少女ちゃん、最近、男ちゃんの話する時の反応がアレなんだもん」

男「アレってなんだよ」

幼「……教えない」

男「き、気になるだろ?」

幼「ぜっ~~~~~~~たい、教えない!」

男「な、なに怒ってんだよ」

幼「ふんっ! 男ちゃんの女ったらし~~~~~~~!」タタタタタ

男「……な、なんなんだよ」

男「(幼の言葉で、どうしてか……女さんの事で後ろめたく感じた)」

 夜―――公園

女「あ、こんばんわ。おと……?」

男「もう飽きません? そのネタ」

女「確かに飽きたかもしれません」

男「はい、じゃあ、そろそろ普通に男って呼んでください」

女「残念です。ネタにかこつけて、ぱぱぁって呼びたかったんですが、仕方ないですね」

男「はは、ネタって大切ですよね! おと……? って、またですかぁ? 違いますよ」

幼「今日も準備万端。今日はこのハサミを使おうかな~~」

男「じゃあ、そろそろ真面目に話をしましょうか」

女「そうですか……少女さんは、もう、お亡くなりに」

男「亡くなってません、親戚の所へ行っただけです。しかも、そのネタ、洒落になりません」

幼「でも、思ったより元気そうだから、良かったよ~~」

男「そう……だな。あの歳で両親を失うって、相当辛いことだし」

女「……」

幼「空元気……かも、しれないね。だからこそ、支えて行きたいね~~」

男「そうだな。まぁ、俺はなるべく少女ちゃんの家の近くのアパート借りるつもりだし」

女「うわ……ストーカー宣言ですか? 警察呼びますよ」

男「微妙に否定出来ないから、やめてください」

幼「わたしも男ちゃんについて行きたいと思ってるけど……お母さんはOKだけど、お父さんがなぁ」

男「許してくれるだろ? それに幼の家は微妙に金持ちだし」

幼「微妙って」

女「みんな酷いです……!」

男「いや、すごくお金持ち言ったら遠慮するだろ? だから、敢えて微妙にしてみた」

幼「う、う~~~ん、もっと他に言い方あると思うんだけどな~~」

女「……」

女「みんな酷いです……!」

男「最近、なんか寒くなってないか?」

幼「あ~~~、うん、確かに。男ちゃんは風邪引かないようにしてよね~~」

男「いや、餓鬼じゃないんだから自己管理くらい出来るって」

幼「本当かな~~~?」

女「そろそろ、わたしを無視するの、やめてください……これでも、すごく、傷付いてます」

男「あ、いや、言い方的にロクなことじゃないだろうな、と」

幼「あ、はは、またハサミを使うことになるかと思って」

女「最近、わたしへの遠慮というか、敬意が無くなってるような気がします」

女「とにかく、酷いです。ふたりとも、もう少女さんの所に行く気満々らしいですけど」

女「わたしはここに残るんですよ?」

男「あ、そ、そうか」

幼「そうだよね~~女さんはここに住んでるんだし。そう簡単に移住なんて出来ないだろうし」

男「無神経で……すみません、女さん」

女「本当ですよ。もう、わたしのことなんてどうだっていいんですか?」

男「そ、そんなわけないじゃないですか」

幼「そ、そうですよ~~」

女「じゃあ、ある条件で許してあげます」

男「条件ですか……?」

女「べつに、大したことないですよ。ただちょっと、幼さんにはきついかもしれません」チラチラ

幼「え……ま、まさか」ゾワゾワ

男「な、なんだろうか。百合百合しいオーラを感じる」

女「幼さんに精神的なダメージがあるかもしれない条件ですが、飲んでくれますか?」

幼「む、無理に決まってるでしょ~~~!」

女「残念、これの決定権は男さんにあります」

幼「な、なんでよ~~~~!」

男「……し、仕方ないな。許して貰う為にはこれしかないのだから」

幼「か、勝手に決めないでよ~~~! わ、わたしの貞操は、お、おとっ……に、う~~~!」

女「OKってことで良いんですね。では、条件を言いますね?」

男「はいっ! あ、ああ、なんだろう。他人事なのに、このトキメキはっ」

幼「や、やめて~~~! わ、わたしにはお、お、男ちゃんが~~~!」

女「男さん、わたしと付き合ってください」 

男「え?」

幼「え?」

女「いや、だから、男さんはわたしと付き合うんです。男さんはもうOKしてくれましたよね?」

男&幼「えええええええええええええええええ!」

男「な、なに言ってるの? だって、あの、幼と、そのそういう関係に」

女「それなら、決定権は幼さんに委ねますよ。この条件だから男さんに委ねたんですよ」

男「い、いや、そうだけど」

女「じゃあ、今日から彼氏彼女の関係ですね」

幼「ま、ま、待って! 本気じゃないよね~~~?」

幼「そ、そうだよね~~。どう考えたって、今のネタの流れだったもんね~~」

女「わたしは本気ですよ」

幼「え……」

女「わたしは本気で男さんと付き合いたいと思ってます」

幼「は、はは、そっか。でもでも! 男ちゃんは違うよね~~?」

男「え……」

幼「男ちゃんは~~わたしと女さんの、その、百合みたいなの想像してたわけだし~~」

男「そ、そうだな……」

幼「ほ、ほら! だから、女さんと付き合わないよね~~~?」

男「……」

幼「な、なに、黙ってるの……? そ、そんな焦らしても面白くないぞ~~」

男「……」

幼「お、男ちゃんはその条件はネタと思ってたし、女さんと付き合うわけないよね~~」

男「お、俺は」

幼「お、俺は~~? つ、付き合わない? だよね~~?」

女「幼さん、やめてください。そういうの誘導尋問って言うんですよ」

幼「……っ」

女「男さん、幼さんに遠慮しないで答えてください」

男「お、俺は……お、女さんとつき――」

幼「あ~~~あ、馬鹿らしいなぁ~~~! お、男ちゃん、帰ろう? もう夜遅いし!」ガシッ

男「あ……」

女「その手を離してください。幼さん。まだ、男さんが答えてません」ガシッ

幼「……っさい」

女「なんですか?」

幼「うるっさいって言ってるのよ! 帰るの! わたしと男ちゃんは家に帰るの~~!」

女「……逃げるんですか?」

幼「は、はぁ? な、なに? 逃げるって? た、ただ、帰るだけだし!」

女「逃げてますよね? 男さんの答えから」

幼「に、逃げてないもん~~~~~!」

女「じゃあ、聞いてくださいよ。どう考えたって、こんな無理矢理な条件飲むはずありませんよ」

女「わたしの事が好きじゃない限り」

幼「……」チラッ

男「……っ」

幼「聞かない、帰る」

女「どうして、聞かないんですか?」

幼「……」

女「自信が無いんじゃないんじゃないですか? 男さんが、わたしと付き合わないという答えを出す事に」

幼「っさい。そんなわけない」

女「言っときますけど、男さん、週末、わたしとデートすることになってます」

幼「っ!」

男「……あ、いや」

幼「帰る」スタスタ

女「男さんとキスしちゃいますよ」

幼「……」ピタッ

女「このまま、答えを聞かずに帰ったら、今ここで男さんとキスします」

女「いえ、それ以上のことも、男さんとひと――」

幼「やめて! 聞きたくないっ!」

女「じゃあ、ここに居てください。そして、男さんの答えを聞いてください」

幼「……っ」

男「……」

女「男さん、答えてください。わたしと、付き合うんですか?」

男「俺は……」

幼「……」

女「……」

男「俺は……女さんと」

幼「……」

女「……」

男「……付き合いたい」

幼「っ……」タタタタタ

男「あ……幼」

男「……」

女「男さん、落ち込まないでください」

男「俺は……こんなこと、望んで」

女「わたしたちは正式に恋人となったんです」

男「……でも、幼は」

女「幼さんは……あなたに依存し過ぎていたんです」

男「……」

女「デート、楽しみにしています」

男「……ああ」

 公園――

女「いつまでも、好きな男の傍に居て、現実から目を逸らして、幼馴染という肩書に甘えてる馬鹿」

女「好きな癖に妹でそういう対象ではないと自分に言い聞かせて、他の女を好きになろうとする馬鹿」

女「……馬鹿ばっかり」

女「あの人はどうしてわたしを好きになったのか、それすらわからないんだろうな」

女「……」

女「でも、これですべて終わる」

女「わたしの計画は順調に進んでいる」

 男の家

男「週末……明後日か」

男母「男? なにやってるの? 準備しなさいよ」

男「え? なに?」

男母「なにって……幼ちゃんから聞いてないの?」

男「……聞いてない」

男母「結局言ってないのね。あの娘」

男「なんだよ」

男母「だから、幼馴染家、外国に引っ越すのよ」

男「え……?」

男母「そのことは自分で話すから言わないでくれって幼ちゃんに言われてたんだけどね」

男「な、なんだよ……それ」

男母「いやね、元々、幼ちゃんは日本に残るつもりだったらしいんだけど」

男母「幼ちゃん、ずっと日本の大学通いたいって言ってたから」

男母「でも、昨日になって意見変えちゃって、外国に行くことにしたんだって」

男「……」

男母「まぁ、寂しくなるけど、仕方ないわよね。仕事の都合らしいし」

男「……行ってくる!」タタタタ

男母「まだ、時間あるのに」

 幼馴染の家

男「お邪魔します!」

幼母「あら、まだ、時間じゃないわよね? ちょっと早いような」

男「幼はどこに居ますか?」

幼母「幼ちゃんなら二階に」

 幼の部屋前

男「おい、幼! 居るんだろ!」ドンドン

男「開けろって! おい、幼!」ドンドン

幼「……なに」ガチャッ

男「お、お前、なに外国に行くこと黙ってたんだよ!」

幼「……わたし、外国に行くことになったから。これで良い?」

男「ふ、ふざけるのもいい加減にしろよ! こんな大事なこと――」

幼「煩いんだけど」

男「な……」

幼「わたし、荷物色々整理してて、忙しいから」

男「……」

幼「……」バタンッ

男「……」

 男の家

男「……」

 トゥルルル

男「はい、もしもし」

女『男さんですか?』

男「……うん」

女『まだ落ち込んでるんですか? 幼さんならいつか判ってくれますよ』

男「あいつ……外国に行くんだ」

女『え? そうなんですか?』

男「ああ、あいつ、俺に何の相談も無く」

女『そうなんですか。まぁ、でも男さんには関係ないことですし、仕方ないんじゃないですか?』

男「か、関係無くなんか! 俺はあいつとは幼馴染で!」

女『幼馴染っと言っても、所詮、他人ですし』

男「他人って、お前、俺とあいつが、他人……?」

女『そうですよ。幼さんだって、いつかは好きな人が出来て、恋人が出来て、結婚するんですから』

男「……っ」

女『いつまでも、幼馴染面して、傍に居るなんておかしいですよ』

男「……お、おかしい……?」

女『そういうことで他人が干渉して良いのは――――恋人だけですよ』

男「……」

女『男さん、あなたの恋人はわたしですよ。幼さんよりもわたしのことを気にしてください』

男「……そう、だな」

女『はい、あんまり幼さんばかり気にしてると、焼きもち焼いちゃいますよ?』

男「は、はは」

女『それで明後日のデートの話なんですが――――』

男「うん……(これで……良いんだよな。俺は、もう、あいつに干渉しなくて、良いんだよな)」

 レストラン

幼「……」

男「……」

幼姉「あんたらどうしたの?」

男「い、いや、べつに」

幼姉「……ねぇ、なんかあったの?」ボソッ

男「え?」

幼姉「あいつ、急についてくるとか言ってるし」

男「……それは」

幼姉「まぁ、ただの喧嘩ってわけじゃなさそうよね。ついてくるって言うくらいだし」

男「……」

幼姉「ま、最後なんだし、後悔無いようにね」

男「……」

幼「……」

男「幼」

幼「……」

男「反応してくれよ」

幼「……」

男「これが最後なんだぞ!」

幼「……なに」

男「……本当に行くのか」

幼「……行くよ」

男「日本に残るつもりじゃなかったのか」

幼「……」

男「おじさんやおばさん、許してくれてたんだろ」

幼「……」

男「じゃあ、残ればいいじゃないか。日本に残って、少女ちゃんの世話するんだろ?」

幼「……」

男「少女ちゃんの傍に居るんじゃなかったのかよ。無責任だろ。彼女を支えるじゃ――」

幼「やめてよっ」

男「……」

幼「卑怯だよ……そんなの」

男「……」

幼「無責任だって……わかってるよ。こんなの、自分勝手で、最低だって」

男「……」

幼「それでも……わたしは、あなたと居たくない」

男「……」

幼「居れるほど……強くない」

男「……」

 翌日

男母「わかってるだろうけど、明日、向こうに行くそうよ」

男「あ、明日? 早くないか? 荷物は?」

男母「荷物は送るみたいだし。もし、残りがあればウチで処分するから」

男母「長い付き合いなんだし、それくらいいいでしょう」

男「……」

 電話

女『こんにちわ、おと……?』

男「明日……あいつ、向こうに行くんだ」

女『スルーですか』

男「だから、明日のデート無理だ」

女『そうですか』

男「ごめん」

女『いえ、お見送りってことですか』

男「ああ、そうなる……」

女『じゃあ、わたしもついていきます』

男「え……」

女『わたしも幼さんのお見送りに行きます』

男「……それは」

女『わたしだって、短い間でしたが、幼さんとは仲良くさせて貰ってたんですよ』

男「……わかった」

 外

男母「ほら、男、あんたさ男手なんだから、さっさと動きなさい」

男「わ、わかってるよ」

男母「はぁ、ったく」

男「……」

幼「……」

男「それ、重いだろ。俺が持つよ」

幼「いい」

男「……」

 夜――幼馴染の家

幼父「寂しくなるなぁ」

男父「そうだな、でも、休みになったらそっち行くから、案内よろしくな」

幼母「色々ありがとうね」

男母「いえいえ、こっちこそ、男の世話をしてくれたりして」

幼母「お互い様ね」

男母「そういえば、幼母はまだこっち残るのよね?」

幼母「ええ、幼の学校の手続きとか、この家の手続きが残ってるから」

男母「ああ、そうなんだ。じゃあ、また、別に送別会しないとね」

幼「……」

男「……」

幼姉「おいおい、本当にあんたらそれでいいの?」

男「え、えと、俺は」

幼「……」スタスタ

男「あ……」

幼姉「本当になにがあったのよ」

男「それは……」

幼姉「言いづらいって感じか」

幼姉「まぁ、男ちゃんもさ、遊びにきなよ」

男「え、うん。その時はよろしくお願いします」

幼姉「わたしもそっち戻る時はよろしくね」

男「もちろん」

幼姉「なんか……いざ、離れると、やばいな」

男「うわ……幼姉さん、泣かないでよ」

幼姉「べ、べつに、泣いてないよ」

男「いや、どうみても泣いてるから。はい、ティッシュ」

幼姉「あ、ありがとう。はぁ……こういう役目は幼のはずなんだけどね」

男「……」

幼姉「お姉ちゃんが居なくなっても泣かないのよ?」ナデナデ

男「うわ……普段は全然無関心の癖に、姉ぶってるよ」

幼姉「そんなことないよ。男ちゃんはいつまでもわたしの弟なんだから」

男「はいはい」

幼姉「最後にお姉ちゃんと熱~~~~い一晩を過ごそうか」

男「いや、無理です」

幼姉「うわ……淡泊」

男「何度その冗談言ってるんだよ」

幼姉「昔は動揺してたのに、「お、お姉ちゃんなら」とか言ってたのに。成長って残酷だよね」

男「幼姉さんも少しは成長してください」

幼姉「実際、すごくなんでも無さそうにしてるけど、すごく寂しいから、電話してね」

男「うん、わかってる」

男「……よし」

男「ちょっと、いいか」

幼「……」

 外

男「……」

幼「……」

男「あのさ、もう日本に戻ってくるつもり無いのか?」

幼「……」

男「大学卒業したらこっちに戻ってくるとか。そっちで就職難しいだろ」

幼「……」

男「俺、戻ってきて欲しいと思ってる」

幼「……本当に、そう思ってる?」

男「あ、当たり前だろ」

幼「……」

男「お前が居なくなると……俺は」

幼「俺は?」

男「こ、困るっていうか……すごく寂しいっていうか。なんていうか」

幼「……」

男「い、いや、お前とこんな形で別れるし……こんなはずじゃなくて」

幼「……」

男「お、お前が居なくなるってなって、初めて、その、色々気付いたっていうか」

幼「……」

男「お、俺は……お前が――」

 ―――

男「お、俺は……お前が好きだっ!」

幼「え?」

男「俺の傍に居てくれっ……俺から離れないでくれ」

幼「な、な、なななな!」

男「こんなことになって、ようやく、お前の大切さとか自分の気持ちに気付いた」

幼「わ、わ、わ、わわわわ!」

男「俺と付き合ってほしい!」

 ―――

男「え?」

幼「お前が? なに?」

男「あ、いや、お、お前が……(俺は――なにを言おうとしてるんだ? 今のなんだ?)」

幼「……」

男「お前が……(俺には、もう、彼女が居るのに。なにを――言おうと、してるんだ?)」

幼「……泣いてる」

男「え?」

幼「気付いてないの? 男ちゃん、泣いてるよ」

男「な、ま、マジだ。あ、あれ? なんで、泣いてんだ、俺」

幼「ぷっ」

男「わ、笑うなよ。え、えっと、ティッシュ……あ、幼姉さんにあげたんだった」

幼「はい、ハンカチ」

男「さ、さんきゅ」フキフキ

幼「そんなに……寂しい? わたしが居なくなると」

男「え……」

幼「無意識に泣いちゃうくらいに寂しい?」

男「……」

幼「そっか」

男「……」

幼「もしかしたら、心変わりするかもね」

男「え?」

幼「まだ外国に行く気満々だよ? でも、もしかしたら、するかも」

男「に、日本に残るってことか?」

幼「……うん」

男「そ、そっか。そっかそっか!」

幼「な、なにはしゃいでるの。わたし、まだ残るつもりなんて」

男「そっかっ。うんうん!」

幼「……聞いてないし」

幼「ば~~か」

幼「お、お母さん、お父さん、そのお話があります」

幼母「大体、想像つくけど、なに?」

幼父「おいおい、どうした? 明日、昼くらいに出るけど、準備とかあるんだからな」

幼「わ、わたし……日本にやっぱり残りたいです」

幼母「やっぱりねぇ」

幼父「なんで! なんでなんで! お父さん、ようやく、一緒に来てくれると思って嬉しかったのに!」

幼母「男ちゃんとあんたの様子からして一時的にケンカしてそう言いだしたんだと思ったけど」

幼「ご、ごめんなさい。本当に勝手言ってすみません」

幼母「荷物送っちゃったし。まぁ、それはいいんだけど……」

幼「す、すみません」

幼母「あんたの家手続きして……はぁ、本当、この馬鹿」

幼「す、すみません」

幼母「まだ学校の手続きして無いから良かったものの」

幼「うぅ」

幼父「パパは許しませんよ! あいつか! 男か! あの糞女ったらしが~~~!」

幼母「受験あるのかもしれないけど、バイトしなさいよ」

幼「う、うん」

幼母「我がまま聞いてあげるんだから、それくらいは両立させなさい」

幼「は、はい」

幼父「幼! お父さんはな、お前の一人暮らしに反対なんだ! そんな一人暮らしになってみろ!」

幼母「それから、男さん家に迷惑かけるかもしれないけど、なるべく自分でどうにかするのよ」

幼「……はい」

幼父「あの図々しい男がずかずか入ってきて、お、お、おお前を! ゆ、許さんぞ~~~!」

 翌日――朝

幼母「はいはい、準備して」

幼姉「え~~~~幼、残るの?」

幼「う、うん」

幼姉「わたしも残りた~~~~い!」

幼父「それは絶対ダメ」

幼母「わたしだってここに残りたいわよ」

幼姉「あれ? お父さんが単身赴任で外国行けば解決じゃね?」

幼父「や、やめて。お父さん、寂しくて死んじゃう」

幼姉「仲直りしたの?」

幼「え……べ、べつに」

幼姉「ふ~~~~ん、まぁ、お幸せにね」

幼「……」

男母「そうなの、うん、わかった」ピッ

男「幼母さん?」

男母「うん。はぁ……あんたって本当、罪作りだね」

男「は?」

男母「ほら、いいから。お見送り行くわよ」

男「……ああ(結局……あいつは、心変わりしなかったのか)」

 幼家の前

幼母「あ、おはよう」

男母「どうも」

男「……」

幼「……っ」プイッ

男「(そう、だよな……そう簡単に)」

幼姉「ふ~~~~ん、やるじゃん」

男「え?」

幼姉「お姉ちゃん、見直しちゃった。ちゃ~~~んと、仲直り出来たみたいだね」

男「それって」

幼「お、お、お姉ちゃん!」

幼姉「はいはい。まぁ、ふたりともちゃんと電話とメールよろしくね」

男「え? じゃあ、幼。お前……」

幼「べ、べ、べつに! ただ最後まで高校に通いたかっただけだもん!」

幼姉「はいはい、ツンデレツンデレ」

幼「お、お姉ちゃ~~~~ん!」

幼姉「ごめんごめん、で、どうやって口説き落としたの?」

男「え? い、いや、日本に残ってほしいとか、寂しい的なことを……その」

幼姉「へ~~~、やるじゃん」

幼「お、お姉ちゃん!」

幼父「そろそろ、行くからな、準備しとけよ」

幼姉「はいはい。幼、車乗るよ」

幼「あ、うん、お姉ちゃ――」

女「おはようございます」

幼「え?」

男「お、女さん」

幼姉「誰?」

女「はじめまして。女です」

幼姉「ど、どうも。ご丁寧に。えと、知り合い?」

幼「……どうして……あなたが」

女「はい。幼さんが外国に行くということでお見送りに来ました」

幼「……」

男「い、いや、流石に言わないのは……よくないと思って」

幼姉「えと……とにかく、友達なのね?」

女「はい、そうです」

幼「……」

女「幼さん、短い間でしたが、仲良くしてくださってありがとうございます」

幼父「おーい、幼姉? 幼?」

幼姉「ちょっと、待って。今ね、お友達がお見送り来たんだって」

女「色々ご迷惑かけましたが、向こうでも元気で――」

幼「……」

幼姉「あのね、ちょっと、色々あって、幼はこっちに居ることになって――」

女「男さんは任せてくださいね。彼女として、男さんを幸せにしますから」

幼姉「え?」

幼姉「ちょっ、ちょっと待って。男ちゃんの彼女?」

女「はい。わたし、男さんと付き合わせて頂いております」

幼姉「は? 待ってよ。男ちゃん、どういうこと?」

男「え……あの」

幼「お、お姉ちゃん、その」

幼姉「あんたは黙ってて――男ちゃん、あんた、この人と付き合ってんの?」

男「……うん」

幼姉「は? 本当に?」

女「はい、一昨日、付き合い始めました」

幼姉「……なるほど、そういうこと」

幼「お、お姉ちゃん、お父さん、待たせてるし」

幼姉「男ちゃん、この人と付き合ってるのに、幼に残ってほしいとか寂しいとか言ったの?」

男「……そう、ですね」

幼「お、お姉ちゃん? もう、行こうっ」

幼姉「あのさ、ちょっと、男ちゃん、言わせてもらって良い?」

男「……はい」

幼姉「人の妹の心弄んでじゃねぇよ!」

男「……っ」

幼姉「あんた、わかってんの? こいつの気持ちわかっててそういうこと言ったの?」

男「……」

幼「やめてよ……」

幼姉「まぁね、あんたが鈍いの知ってるよ? でもさ、これはやばいって」

男「……」

幼「お姉ちゃん!」

幼姉「あんたもさ、なんで残るの? いつまで男ちゃんにしがみついてるつもり?」

幼「……」

幼姉「告白も出来ずに他の女に奪われて、それでも、こいつの傍に居る気なの?」

幼「……だ、だって、わたし、男ちゃんのこと」

幼姉「好きだから。例え恋人じゃなくても、とか言うつもり? 馬鹿じゃないの!」

幼「……」

幼姉「行くよ。幼」

幼「え……」

幼姉「もう日本に居る理由なんてないでしょ」

幼「そ、それは……」

男「あ、あの……」

幼姉「ごめん、男ちゃんが悪くないことは知ってる。告白しなかったこいつの責任」

幼姉「でもね、こいつの姉として男ちゃんを許せそうにない」

男「……」

 幼馴染の家前

男母「あんた……行かなくていいの?」

男「……」

男母「そう。まぁ、飛行機出るのはまだ時間あるから、ゆっくり考えなさい」

女「……」

男母「ごめんね、なんかごたごたしちゃって。男の母です」

女「あ、いえ、女です。よろしくお願いします」ペコ

男「……」

 公園

男「……」

女「辛いですね……」

男「……」

女「わたしって……ホントに最低です」

男「いや、俺の方が最低だよ……」

女「……」

男「わかってたんだ……あいつの気持ち」

女「……」

男「でも……俺は、いつも、あいつは妹みたいなものだからって」

 ――回想――

男「くんなよ」

幼「え?」

男「こっちくんなよ。おれまでいじめられるだろ……」

幼「うぅ……」

男子1「やーいやーい! ふうふ、ふうふ! バイキン女のだんな!」

男「ち、ちがうにきまってんだろ! おれは! こいつとなんかとけっこんしない!」

幼「……やくそくしたのに……けっこんするって、やくそくしたのに」

男「う、うるせー! おれはおまえとなんかけっこんしない! どっかいけ!」

 ――――――

男「……そうだよ、俺に」

 ――回想――

幼「……」

男子1「こ、こいつのせいだからな! おれじゃない!」

幼「……」

男「幼! 幼!」

男子1「おれじゃない! ちょっと男のわるくち言っただけで、幼がつっかかってくるから! おれじゃない!」

教師「なにしてるの! 早く、保健室に! 救急車を!」

 病院

男「ごめん……ごめん」

幼「……男ちゃん」

男「……おれせいで……ごめん……」

 ―――――

男「あいつと……付き合う権利なんか……」

女「男さん、わたしとキス……してください」

男「え? い、いや、それは」

女「恋人同士なんですから。出来ますよ。ほら」

男「……っ」


女「しないなら、わたしから」スス

男「やめてくれ」

女「……どうして、ですか?」

男「そういう、気分じゃない」

女「……じゃあ、決めてください」

男「え?」

女「わたしか幼さん、どちらを選ぶのか」

男「……」

女「ずっと思ってました。男さん、わたしと付き合ってるのに幼さんのことばかり」

男「ごめん」

女「いいです。なんとなく、男さんの気持ちわかってましたから」

男「……」

女「だから、決めてください。はっきりと」

男「俺は……」

女「はい」

男「ごめん、女さん、俺は幼が好きだ」

女「そうですか」

男「女さんが好きじゃないわけじゃないんだ。ただ、違うんだ。幼の好きと女さんへの好き」

女「……」

男「たぶん、幼とはそういう恋愛とかの好きで、女さんへの好きは……」

女「妹とかに向ける好きなんでしょう? 守ってあげたいとかの好きなんでしょう?」

男「……」

女「驚かないでください。よく庇護欲をそそられると言われますから」

男「だから、ごめん。別れてくれ……勝手なのはわかってる」

女「……」

男「俺はもう行かないといけないから」

女「空港に向かうんですか?」

男「……うん」

女「幼さんを引きとめるんですか?」

男「ああ」

女「……そうですか」

女「わたし、貴方のこと嫌いです」

男「え?」

女「勝手だし、嘘つきだし」

男「……」

女「結局、デートの約束を反故にされましたし」

男「……ごめん」

女「でも……わたしは……もう後悔したくありません」

男「……え?」

女「気持ちに流されて、失いたくないんです」

男「あの」

女「辛いし……最低だし……嫌われたくないのに、嫌われると判っても……」

男「……女さん?」

女「後悔……したくないんです」

男「なにを……」

女「だから、別れません」

男「え……?」

女「別れないと言ったんです。ここに居てください」

男「いや、あの……俺はきみのこと」

女「キスでもしますか? それとも、それ以上のことします?」

男「いや、そうじゃなくて」

女「すべて捧げますよ。でも、初めてなので優しくしてくださいね」

男「だからっ、俺はきみじゃなくて幼のことが――」

女「言わないでください!」

男「……」

女「そんなの……知ってますよ。あなたがどれだけ幼さんを好きなのか」

男「……」

女「そんなの……身に染みて、わかってます……」

女「それでも……わたしは、あなたたちを傷つけても、別れるわけにはいかないんです」

男「……」

女「わたしの傍に居てください」

男「……」

女「あなたを……失いたくないんです、お願いです」

男「……」

女「居てよ……どこにも……行かないで……」

男「……」

女「お願いだからぁ……わたしの所から……居なくならないでぇ」

男「……」

女「ひとりに……しないでぇ……おと……さん」

男「……ごめん」

女「いやっ……! いやぁあ!」

男「……」スタスタ

女「いかないで……おいていかないでっ!」

男「……」スタスタ

女「嘘つき……嘘つきぃ!」

男「……」スタスタ

女「おまえなんかっ大っ嫌い!」

男「……」スタスタ

女「あ……ちがっ」

男「……」スタスタ

女「いやぁ……ちがうの……そうじゃないの……いやぁあああああ」

なるほど
少女に向けてた怒りは母親を殺され祖母、祖父を殺された物か

 男の家

男「母さんっ!」

男母「ギリギリまで待ってて良かったわ。さっさと乗りなさい」

男「ああ! ごめん!」

男母「ほら、早く」

 車

男「……はいっ、まだ居るんですね! はいっ、すぐそっちに向かうので!」

男「幼は!? 居るんですか? 変わってくれませんか!」

男「お、幼姉さん。いえ、違います! 俺は、俺は幼のことが!」

男「待って! 切らないで! 糞!」

 空港

男「間に合った! 糞、どこに! 早く行かないと、時間が!」キョロキョロ

幼「……」

男「居た! 幼!」

女「……」シュン

男「え? 女さん? なんで」

女「ごめんなさい」シュンッ

 ―――

男「……こんなとこに」シュンッ

女「……」シュンッ

男「離してくれ! 幼!」

女「……」

男「あれ? さっきまであそこに居たのに」

 トゥルルルル

男「え? 電話、母さん?」

男「はい、もしもし」

男母『やっと出た! あんたどこでなにやってのよ!』

男「え? 俺は、今、幼を見かけて」

男母『はぁ? 幼ちゃんならあんたがどっかでフラフラしてる間もう出たわよ! 馬鹿じゃないの!』

男「え……だって、まだ、時間」

男母『本当に……あんたは……何のために車とばして……はぁ、もういい。切る』

男「なんで……時間、おかしいだろ……」

女「これで……すべて、終わりました」

       /\___/\
     / ―   ー ::\

      |  --、,   、ー-、  |
      |  ,,ノ(o_o.)ヽ、,  ::|  ほ… 
      |   r‐=‐、   .:::|
     \  `ニニ´  .::/
     /`ー‐--‐‐一''´\



      /\___/ヽ

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    .|  ー,   ー  ::::|  しゅっ

     \ ,,ノ(、_, )ヽ、,,.::::/
     /``ーニ=-'"一´\
       . ,". ',.` .
      .  。. ,


男「お前、なにしたんだよ!」

女「すべてお話します。公園に行きましょう」

男「は? 今ここで話せよ!」

女「始まりと終わり、そこは一緒の方がロマンチックでしょう」

男「はぁ?」

女「いいから。ついてきてください」

女は何がしたいのだろうか?
未来で女を作らない世界にする気か?

 公園

男「どういうことだ……」

女「そうですね……なにから、お話しましょうか」

男「まず、あの現象のことから話してくれ」

女「そうですね。わたしの能力、覚えてますか?」

男「未来予知と瞬間移動……いや、高速移動だっけ?」

女「それ、嘘です」

男「はぁ? 嘘?」

女「はい、わたしの能力は……タイムトラベルです」

男「え?」

女「過去や未来に行ける能力なんです」

男「嘘……」

女「本当ですよ。体験したでしょう? あなたは二時間後の未来に飛んだのです」

男「……」

女「信じられません?」

男「い、いや、さっきのことを考えるとおかしいことじゃない」

女「……信じてくださるのは助かります」

男「あんたは未来からやってきたのか?」

女「はい。今から約23年後からやってきました」

男「……なんの為にやってきたんだ」

女「そんなの未来から過去にきてやることなんて、ひとつしかないですよ」

男「未来を変える為」

女「そうですね」

男「……俺と幼を引き離すのがお前の目的に見えるけど……」

女「そうですね、それが目的です」

男「そんなことして……なにが変わるんだよ」

女「それは後程お話します。まず、一人の少女の話を聞いてください」

女「少女は両親に恵まれてました」

女「優しくていつも少女と遊んでくれる母親」

女「なかなか家に帰ってこないけど、少女を大切に思ってくれる父親」

女「でも、少女は特殊能力者でした」

女「男さんは知らないかもしれませんが、未来では特殊能力者はこの時代より、更に肩身が狭いです」

女「特に活発的に活動していた犯罪組織の所為で、能力者はなにもしてなくても」

女「罪に囚われることが、たびたびありました」

女「特に強力な能力者は――複数能力を持っている人間は、即施設に入れられたり、酷い有様でした」

女「少女も普通とは違う特殊能力者で、タイムトラベルという能力が使えました」

女「幸い、瞬間移動と間違われ、そこまで危険視されませんでしたが」

女「少女に不幸が訪れたのは、彼女が小学生に入ってからです」

女「少女の父は警察官をやってましたが、活発に行動していた組織のトップに殺されました」

女「それから、トップは父を気に入ったのか、少女の能力に惹かれたのか」

女「母に仲間になるよう要求しました。少女も仲間になるように言われました」

女「しかし、母は断りました。少女も断り、少女は能力を使い、未来に逃げました」

女「飛んだ未来では母は殺されてました。親戚もみんな殺されてました」

女「少女は父と母を殺した犯人を殺す為、過去に飛びました」

女「過去では少女の父と母はまだ付き合っていませんでした」

女「それどころか幼馴染という関係に甘え、惰性で一緒に居るという感じでした」

女「そして、わたしが殺したいと願う犯人は、父と母と仲良さそうにしてました」

女「信じられませんでした。どうして、こんなにも仲良さそうにしてたのに父と母を殺したのか」

女「でも、少女は犯人のことを許せませんでした」

女「しかし、殺すことに迷いを感じ、ただ父と母との交流を楽しんでいました」

女「そんな時、犯人の父と母が死にました。どうやら、能力者をよく思って無い人間に殺されたそうです」

女「情緒不安定な犯人は少女の父と公園で出会いました。少女は焦りました」

女「このままでは父が殺される。そう思ったのでしょう。殺すことを決意しました」

女「しかし、父は犯人を庇いました」

女「少女はすべてを話しましたが、父は犯人を守ると言いました」

女「少女は理解出来ず、そのまま、未来に逃げ帰ったのです」

 ―――

少女「……」

 忌中 告別式執行 少女家

少女「なにも、変わらない」

少女「結局、なにも」

?「少女ちゃん、探したのよ?」

少女「お、お前は、なんで、こんな所に!」

?「なに言ってるの~~? お姉ちゃん、ずっと探してたのに」

少女「ふ、ふざけるな! ママを殺しておいてよくも」

?「え? なに言ってるの……?」

少女「そんな……喪服着て! どういうつもり!」

?「……少女ちゃん、もしかして、行ってきたの?」

少女「え?」

?「そっか。うん、そういうこと」

少女「なに、言ってるの」

これ最初から「―――」を見て考えながら見ないと分からないな

分からない人へ
>>48の少女が未来で幼馴染を殺す方で
>>49-50が女の過去
―――を確認しながら>>1から見直そう

?「お父さんが殺されたのは知ってる?」

少女「白々しい……あんたが殺した癖に」

?「そっか……わたし、あの人殺してたんだ……なんか、嫌だな」

少女「いますぐに、あんたも殺して」

?「ちょっと待って! あのね、わたしはあの人を殺してなんか無いわ」

少女「なにを、言って」

?「あの人は……その、あなたを庇って殺されたの」

少女「え……」

?「あまり言いたくないけど、あなたはその能力の所為で狙われてる」

少女「な、なに言って! お父さんを殺したのは!」

?「この世界では違うわ。わたしじゃない。未来は変わったの」

少女「嘘……」

?「嘘じゃないわ。でなければ、わたしがこうして喪服を着てここに居られるわけないでしょう?」

少女「……じゃあ、未来は変わったのに、お父さんは死んだの?」

?「うん……そして、お母さんも」

少女「え……ママも?」

?「……うん」

少女「ど、どうして?」

?「周りから色々言われて、心労が重なって、更にお父さんまで亡くなって……その、倒れてしまったの」

少女「そんな……わたしは……わたしは、なんの為に」

?「大丈夫よ、あなたにはお姉ちゃんがついてるから。わたしがあなたを守るから」ギュッ

少女「……」

?「あの人がそうしてくれたように。次はわたしの番。わたしがあなたを守るから」

少女「……」

この少女=女だろ

少女「やめて」

?「え?」

少女「わたしはあんたなんか認めない! たまたま、パパやママを殺さなかったからって!」

?「少女ちゃん」

少女「あんたは優しいパパやママを殺したんだ……」

?「……」

少女「なにも悪くないパパやママを殺したんだ!」タタタタタ

?「……」

?「どうして……」

?「どうして……わたしは……あの人を、殺したんだろう」

?「……大好きだったのに」

>>296から改変後(男が少女を見捨てない)の未来

 公園

少女「……何故、変わらないの……」

少女「なんで、パパとママは助からないの?」

少女「……そう」

少女「すべてはわたしの所為」

少女「特殊能力者であるわたしの所為」

少女「そう、わたしが居なくなれば」

少女「そうだ、それが、一番の解決方法なんだ」

少女「……」シュンッ

 ―――

女「未来は変わってました」

女「犯人はとてもいい人になっていました。普通に社会人をやっていました」

女「しかし、父と母は死んでいました」

女「そして、その死んだ理由がすべて少女が能力者だったからです」

女「だから、少女は思い付いたんです」

女「自分が居なければ、父や母は死なないじゃないかって」

女「自分が居なければ、苦しい思いをしなくて済むんじゃないかって」

女「そして、少女は決めました」

女「男と幼を結婚させてはダメだと。子どもを産ませてはダメだと」

女「そうして、わたしは過去に飛んだんです」

なるほど

男「嘘……だろ」

女「全部……本当だよ、お父さん」

男「そんなの……そんなの、信じられるわけ……」

女「そう、だね……信じられないかも、しれない」

男「ふざけるな、こんな作り話して、なんの――え?」

女「……どうしたの?」

男「お、おい、なんで透けてんだよ……」

女「あ、はは、もうお父さんにも判るくらい、透けてるんだ」

男「お、おい、嘘だろ」

女「そっか……じゃあ、わたしの計画は成功してるんだね」

男「ふざけんなよ、なんで透けてるんだよ……?」

女「それは、お父さんとお母さんがわたしという子どもを作らないからだよ」

男「じゃ、じゃあ、お前は消えるっていうのかよ……」

女「そう、だね……」

男「待てよ……あんだけ、色々振りまわしておいて……」

女「ごめんね……お父さんやお母さんに嫌な思いばかり、させて」

男「お、おい……」

女「ずっと、ずっと後悔してた……」

男「な、なにが……」

女「お父さんに……電話で、大嫌いって言ったこと」

男「え?」

女「だって、お父さん、嘘つきなんだもん……約束……守ってくれなくて」

男「ご、ごめん、だから」

女「一緒に……デートも、してくれなくて……」

男「次はデートするから!」

女「お母さん、わたしのこと……嫌いになったかな……なったよね……」

男「なってない! なってないからっ」

女「ねぇ、お願いがあるの……」

男「え? な、なんだ?」

女「だっこ……して」

男「わかったっ、わかったから、消えるなよ!」ギュッ

女「やっぱり……お母さんの方が……柔らかくて……良い匂いがする」

男「あ、あいつ戻ってくるからさ! 戻ってきたら、あいつにだっこさせるから!」

女「嘘だよ……だって、お母さん……すっごく、わたし睨んでた……」

男「違う! あいつ、目悪いからさ! 鋭くなるんだ! あいつは、お前のこと大好きだから!」

女「嘘……」

男「嘘じゃない! お前のこと愛してるから! あいつ、お前のこと愛してるから!」

女「ねぇ……約束、して欲しいことがあるの……」

男「なに? なんだって聞くぞ!」

女「お母さんと……結婚……しないで……」

男「え……」

女「……わたしが……産まれたら……ダメ……だから」

男「……」

女「約束、だから……」

男「俺は……」

>>324
娘が死んでも、父と母の絆は残るけど、この場合は全員離れ離れで不幸せになって終わりじゃん

>>333
親が死ななくなる

女「……お父さんは……わたしの……恋人なんだから……浮気したら、ダメ……」

男「ああ、そうだな。俺はお前の恋人だもんなっ」

女「そんな……こと……思ってない癖に……」

男「思ってるよ! 俺はお前の恋人でお父さんなんだから!」

女「嘘つき……でも、大好…………」

男「お、おい」

男「なんだよ……まだ最後まで聞いてないぞ……」

男「……最後まで……最後まで言えよっ」


男「父さんは嘘つきだから……いつもお前との約束、破るから」

男「ごめんな……また、守れそうにない」

>>333
因みに女が生まれなかったら少女に一家全員殺されて居ます。

少女(女)が目的で殺ったわけでは無いし、あくまで一つの理由だから

 数年後――

少女「お兄ちゃん! おっきろ~~~~!」

男「お、起きたから! 超能力でフワフワさせるのやめろ!」フワフワ

少女「おはよう、お兄ちゃん」

男「お、おはよう」

 朝食

少女「今日もリッチな朝食を召し上がれ」

男「少しは節約してください」

少女「いいでしょ~~~お兄ちゃん、その未来予知能力で宝くじ当てたんだから」

男「うるさいな」

少女「てか、卑怯じゃない? その能力で宝くじ当てるとか!」

男「べつにランダムに未来が見えるだけだから、そうそう、当てられないよ」

少女「そうだけど~~」

男「つか、お前だって、宝くじの金でここに居れるんだから文句言うなよ」

少女「そうだよ~~。ふたりっきりなのに、全然、襲ってこないんだもん」

男「当たり前だろ……」

少女「あ、でも、わたしがベッドで寝転がってる時はぱんつチラチラ見てたよね?」

男「み、み、み、見てません!」

少女「やっぱり~~お兄ちゃん、わたしが好きなんでしょ~~~!」

男「最近、マジで幼に似てきたな。真似してんなら、やめとけ、あんな天然馬鹿ひとりで十分だから」

少女「ナチュラルにスルーしないでよ~~~!」

男「さてと、そろそろ、行く時間だろ。空港まで頼むわ」

少女「あの……タクシー代わりにしないでください」

男「本当はむこうまで飛んでほしいんだけど、お前の能力、しょぼいもんな」

少女「あのね~~わたしがどれだけエリートか知らないでしょ~~! すっごいんだよ~~!」

男「でも、飛べないんだろ?」

少女「いくら特殊能力でも限界ってものがあるんだよ……お兄ちゃん」

男「ま、だから、空港までお願いな」

少女「な、なんか、嬉しそうだね……」

男「まぁ、未来の嫁に会うんだから、そりゃあ、嬉しいだろ」

少女「おかしいよ! お兄ちゃん!」

男「なにがよ」

少女「こんな美少女が眼の前に居るのに、あんな遠くに居る年増を選ぶなんて!」

男「あ、それ言ってやろう」

少女「それだけはやめて! もうハサミは見たくないの!」

男「じゃあ、行くぞ」

少女「お兄ちゃん……」

男「ん?」

少女「例え……幼さんと結婚しても……わたしのこと」

男「見捨てないよ。ずっと傍に居てやる。それに超能力者を否定してる奴からも守ってやる」

少女「へへ……だから、好き!」

少女「お兄ちゃん、勉強頑張るのはいいけど、身体に気をつけてよね」

男「わかってるよ」

少女「わたしの為に頑張るのは嬉しいけど、無理しないで」

男「正確にはその他の超能力者とお前と娘の為ね」

少女「そこはわたしの為でいいじゃん!」

男「その他の超能力者は除いてもいいけど、娘だけは譲れないな」

少女「う~~~この親バカ! まだ生まれてもない娘の為とかアホじゃないの~~~!」

男「親バカだよ。アホだよ」

少女「いつか浮気しようね。そして、わたしの子どもも可愛がってね」

男「あの……挨拶並みの気軽さで重いこと言わないでください」

少女「じゃあ、行くよ。ちゃんと捕まっててね。特に腰と胸の辺り」

男「お前……捕まらなくても、移動させれるじゃん」

少女「ノリ悪いな~~」シュンッ

男「……」シュンッ

 空港

男「な、なんか緊張してきた」

少女「ださっ……そんなお兄ちゃんを引き取ってくれるのはわたしくらいしか居ないよ」

男「いや、他にもきっと居る」

少女「居ないよ。わたしにしときなよ」

>>351
いやだから、結婚したらアウトなんだって
男は結婚した上で未来を変えようとしてるみたいだけど

 飛行機

男「……」

少女「すぴーすぴー」

男「ったく、毛布がはだけてるっての」

少女「すぴーすぴー」ニヘラ

男「締りの無い顔してるな……まぁ、幸せなら、それで」

少女「お、おにいちゃん、だ、だめだよ……そこ――むぐっ」

男「こ、こいつ、なに言ってんだよ! い、いえ、なんでもありませんから、はは」

少女「むぐぅ!」

男「お、起きたか」

少女「も、もう……ここは飛行機なんだから、人居るんだよ? むこう着いたらね?」

男「……お前、殴っていいか?」

おまえらの議論聞いてたらなんかシュタゲ思い出したは

 空港

男「着いた……あー、疲れた」

少女「だらしないな~~わたしはこんなに元気なのに」

男「そりゃあ、そうだろうよ……」

少女「あ、幼さん!」

男「え?」

幼「少女ちゃん、久しぶり~~」

少女「お久しぶりです~~」ギュッ

男「……」

幼「久しぶり、男ちゃん」

男「ああ、久しぶり」

           お わ り 

>>353
アウトじゃねえよ
少女がテロリストにならない未来の男は超能力の娘を持って心労で亡くなるから・・・アウトだったわ

おつ

>>1

後日談は?

>>353
結局、これですね。わかりづらいかもしれないけど
男が勉強してるのも、未来を変える為って感じです
ひとりでどうにかなるかよって話ですが、その辺はご都合で

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