八幡(なんだかんだとあったが、俺は由比ヶ浜と付き合う事になった)
八幡(最初は関係性の変化に戸惑ったが、いまでは彼女との今の関係に心地好さを感じている)
八幡(だが最近、気になる事がある。由比ヶ浜の事ではない。それは……)
ピロン
八幡「メール……また雪ノ下からか」
八幡「メアドを教えた記憶のない雪ノ下から毎日メールが60件以上来る……」
八幡「それでもまだ、内容が明らかなストーカーのそれだったなら、無視という対処でも良かったのだが」
FROM:雪ノ下
内容
今日は由比ヶ浜さんとどんな会話をしたのかしら
変なことを言っていないでしょうね?
FROM:雪ノ下
内容
由比ヶ浜さんが行きたいと言っていた場所よ URL
FROM:雪ノ下
内容
これなんかプレゼントにいいのではないかしら 写メ
八幡「応援しているつもり……なんだよな?」
八幡「気負いすぎだろあいつ……」
単なるヤンデレは最近よく見るし
悪いが4時くらいまで書くことはできん
他の人どうぞ
八幡「こういう内容だとおいそれとやめてくれとも言えんし…」
八幡「かといって由比ヶ浜に言うのも気が引ける」
八幡「そもそも由比ヶ浜が雪ノ下に相談してるからこういったメールが来る可能性も否定できん」
八幡「……………とりあえず、明日にでもそれとなく雪ノ下に言ってみるか」
八幡「…………嫌な予感しかしないが」
翌日
八幡「おいーす」
雪ノ下「あら、今日はちゃんと無事に来れたのねヒキガエル君」
八幡「いつもはちゃんと来れないようなニュアンスを持たせるのやめてくんない?いつもちゃんと来てるから」
雪ノ下「あら、あなたの腐った……腐り切った目では迷子になるのも日常茶飯事だったのではないの?」
八幡「いちいち間を取ってまで言い換えなくていいだろそこ。それに俺は迷子になんてなっとらん」
八幡「一緒にいた連中がいつの間にかいなくなることは多々あったが」
雪ノ下「………確かに、それは迷子ではないわね…………ごめんなさい」
八幡「おい、深々と謝るな」
がんばれ
雪ノ下「ところで、由比ヶ浜さんは今日は一緒ではないのかしら?」
八幡「ああ、あいつは今日は掃除当番で、しかも三浦たちと一緒だからちょっと遅れるはずだ。どーせダベってるだろうし」
雪ノ下「………掃除で遅れる彼女を待ったり、手伝ったりする気はないのかしら、この男には」
八幡「そういうのは内心で吐いてくんない?つーかあんなリア充共と一緒に掃除とか無理ゲーだ」
八幡「仮に俺が手伝ったりしたら『え、なんでこいついんの?』みたいになって、それは由比ヶ浜に迷惑をかけることになるだろ」
雪ノ下「…………あなたらしい後ろ向きな思いやりね」
八幡(とりあえず今のところ流れは上々だな)
八幡(さて、じゃあそろそろ仕掛けてみますか)
八幡「……ところで雪ノ下」
雪ノ下「何かしら、後ろ向きガエル君?」
八幡「なんだよそれ、ただの後ろ向いてるカエルになっちゃってるぞ」
雪ノ下「あらそうね。後ろを向いてるカエルさんに失礼だったわね」
八幡「俺はカエル以下か」
雪ノ下「?…………当たり前でしょう?」
八幡「ホントにキョトンとした顔だよこの人」
雪ノ下「そんなどうでもいいことは置いておいて、一体何?何か話したいことがあるのでしょう?」
八幡「自分から話脱線させといていけしゃあしゃあと……」
雪ノ下「何か言った?」
八幡「いや別に」
雪ノ下「……で、何?下らない内容だったら承知しないわよ」
八幡(よし、では……いきますか)
八幡「……あー、正直聞きにくいことではあるんだがな」
雪ノ下「………卑猥なことを一言でも発したら大声で叫ぶわよ」
八幡「ちげーよ。そういうことじゃない」
雪ノ下「では何?」
八幡「最近さ………由比ヶ浜から、なんか相談とか受けてるか?主に俺に関して」
雪ノ下「由比ヶ浜さんから?あなたに関して?」
八幡「ああ、ちょっと気になってな」
雪ノ下「……あなた、遂に犯罪に手を染めたの?この色情魔」
八幡「お前の思考回路は何を想像させた。……とりあえず、そういうことじゃない」
雪ノ下「…………おほん、ではどういうことかしら?」
八幡「……いやな、俺なんかと付き合ってて何か不満はないのかなと気になってな」
八幡「自慢じゃないが、俺が由比ヶ浜の立場だったら、俺なんかと一緒にいて何が楽しいのか全くわからん」
八幡「だから俺達の事情を知っていて、かつ由比ヶ浜と仲が良いお前に聞いてみたわけだ」
飯食ってくる
八幡(よし、とりあえず最初はこんなもんか)
八幡(これで疑念の一つが探れるが、さて反応は……)
雪ノ下「…………そんなこと、あなたが言うものではないわ」
八幡(なん……だと……?)
雪ノ下「確かに、あなたがの言うことは紛うことなき事実よ」
雪ノ下「あなたはつまらないし、面倒くさいし、一緒にいて何が良いのかわからないわ」
八幡「おい」
雪ノ下「……でもね、それでも由比ヶ浜さんはあなたを選んだの。あなたと一緒にいたいと思ってるのよ」
雪ノ下「さっきのあなたの言葉は、あなたを貶めるだけでなく、その由比ヶ浜さんの想いも踏みにじってるのよ」
雪ノ下「そんなこと、私は許さないわ」
八幡(……予想外の反応だ。まさかマトモな説教をくらうとは)
八幡(いやしかし俺をそんな風に貶してるあなたは由比ヶ浜の想いとやらを踏みにじってることにはならんのか、雪ノ下さんや?)
雪ノ下「ちなみに、私は由比ヶ浜さんの想いを理解した上であなたを貶してるから問題ないわ」
八幡「どういう理論だ」
雪ノ下「由比ヶ浜さんの想いを尊重することと、あなたを馬鹿にすることに相関性はないということよ」
八幡「スッゲー屁理屈だな、おい」
八幡「………でも、お前の言いたいことはわかったよ」
雪ノ下「……そう、なら……良かったわ」
八幡(今の受け答えだと普通に良い奴だ。むしろ超良い奴だな。…………これがどうしてあんなにメールを?)
八幡(とりあえず、続けて探るか)
八幡「………でだ、それは理解したんだが、実際どうなんだ?」
雪ノ下「実際って?」
八幡「実際のところ、お前は由比ヶ浜から相談とか受けてるのか?」
雪ノ下「…………黙秘するわ。それは由比ヶ浜さんのプライバシーにも関わることなのだから」
八幡(やはりそうきたか。………だが、それは想定の範囲内だ)
八幡(では、オペレーション『卑屈なヒッキー』発動だ)
八幡「そっか、黙秘権を行使するってことは、やっぱそれらしいことは受けてんだな……」
雪ノ下「………」
八幡「さっきのお前の言いたいことはわかってるが、やっぱ俺はあいつの彼氏としては不充分なんだな」
雪ノ下「それは……」
八幡「いや、いいんだよ雪ノ下。俺は俺なりになんとかしてみる………方向性が全く定まらんがな、ハハハ」
雪ノ下「………これは私の知ってる小説の話なのだけれど」
八幡(お?)
雪ノ下「ずっと想い焦がれていた男と結ばれた女の子は、すごく幸せらしいわ」
雪ノ下「いつも何をしていてもその男のことを考えているみたいだったわ」
雪ノ下「でも、いくつか不満、というか物足りないことがあるの」
雪ノ下「その一つが、名前。男は付き合ってもずっと名字でその女の子を呼び続けたの」
雪ノ下「女の子は、付き合ったのだったら名前で読んで欲しいと思っていたわね、小説では」
八幡「なるほど……」
八幡(フフフ、予想通り過ぎるぞ、雪ノ下)
八幡(結局、お前は泣きと押しに弱い)
八幡(だが由比ヶ浜からの相談内容をおいそれと話すわけにもいかん)
八幡(そうなるとお前が取りそうな行動などただ一つ)
八幡(自分の読んだ小説と称して、それとなく俺にヒントを与えることだ)
八幡(相手が俺の場合、追撃してくる可能性も多少は考慮していたが、上手くいったようだな)
雪ノ下「それと、その男は優柔不断で臆病者だから、女の子と付き合っても全然何も変わらなかったわ」
雪ノ下「女の子は、もっと男の側にいて……例えば手を繋いだり、だ、抱き合ったりしたいと思ってたわね」
八幡「お、おお、そ、そうか」
雪ノ下「それと、これはその、言いにくいことなのだけれど………卑猥なことは、付き合い始めはまだ、怖がっていたわね」
八幡「お、おう……」
八幡(ヤバい、罪悪感がハンパじゃなくなってきた……)
雪ノ下「私にできる話はこのくらいよ。まぁあくまでも小説の話だから通用するかはわからないのだけれど」
雪ノ下「あくまでも小説なのだから、ええ」
八幡「……おう、わかった」
八幡「……サンキューな、雪ノ下」
雪ノ下「あなたから素直な感謝をされると気持ちが悪いわね」
八幡「はいはい、気持ち悪くて悪かったな」
八幡(雪ノ下、お前……普通に良い奴じゃん……というか良い奴過ぎる)
八幡(どうやら俺が考えていたことは杞憂に過ぎなかったようだな)
八幡(なんというか、申し訳ないことをしたな)
八幡(………しかし、あのメールの量だけはなんとかならんのか)
八幡(俺はそんなにダメ男だと思われてるのか……)
八幡(とりあえず、もう少しだけ頑張って彼氏らしく振る舞うか)
八幡(由比ヶ浜……いや、結衣)
八幡「まぁ、とりあえず俺はその小説の男みたいにならんように頑張ってみるか」
八幡「その小説の女の子も少し可哀想だしな」
雪ノ下「…………そう、ね………頑張りなさい………由比ヶ浜さんのためなのだから」
八幡「……雪ノ下?」
雪ノ下「な、なに?」
八幡「いや、どうした急に」
雪ノ下「なんでもないわ……そう、なんでも」
八幡「……?」
雪ノ下「……とりあえず、最初の一歩として、由比ヶ浜さんを迎えに行きなさい」ガタッ
八幡「え?どうせもうすぐ……」
雪ノ下「いいから行きなさい、早く」グイッ
八幡「お、おい!引っ張んな!」
雪ノ下「早 く 行 き な さ い」
八幡「……ったく、わぁーたよ。行けば良いんだろ行けば」
八幡「じゃあ、しばらく頼むぞ。まぁどーせ依頼者なんて来ないだろうけど」スタスタ
雪ノ下「行った、わよね………?」
雪ノ下「……………………………………………………」
雪ノ下「…………うぅ…………くっ……………うぁ………………」
雪ノ下「………本当に………うぐ…………優柔、不断で…………ぐす………臆病者、なのは……………私……………」
雪ノ下「…………なんて………無様で……………哀れな女…………」
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八幡(その日を境に、雪ノ下からのメールは劇的に減った)
八幡(今では来ても一週間に一通から二通程度だ)
八幡(結局あれは、付き合いたての俺に対する再三の警告だったのだろう、そう思うことにした)
八幡(………そしてあの日、由比ヶ浜……結衣を迎えに行って部室に帰ってくると、雪ノ下は既にいつものように小説を読んでいた)
八幡(いつものように雪ノ下に抱き着いた結衣が何故か急にびっくりし、何故か俺に詰め寄ろうとした場面があったが、それは雪ノ下が止めていた)
八幡(それが何だったのかは、今となってはもうわからない)
八幡(雪ノ下と結衣は今でも良い友達だし、奉仕部でも俺はいつものようにあいつに罵倒される)
八幡(だが時々、本当に時々、雪ノ下の俺と結衣をみる姿が、儚く映ってしまうのは気のせいだろうか)
こうして彼ら彼女らの青春は過ぎ去っていく――――
fin
もしもしから遅くてすまんかったな
読んでくれた人たちサンクス
ヤンデレも良いけど、悲恋だっていいじゃない
ちなみに俺はサキサキが一番好きなんだ
このSSまとめへのコメント
乙!