京子「ペルソナ!」(138)

~娯楽部部室~

京子「暇だから恐い話でもしようぜ~」

結衣「恐い話って…真冬だぞ、今」

京子「ストーブで暖かいから、ちょっとヒヤッとした気分を味わいたいんだよ~」

ちなつ「嫌ですよ恐い話なんて…外出ればヒヤっとしますから、出てくればどうです?」

京子「ちなつちゃん!ナイスアイデア!」

京子「じゃ、ちょっと外行って来るね!」ガラッ

あかり「あっ!京子ちゃん扉開けたら…」


ヒュー


京子「さむっ!」バタン

京子「と言う訳で、誰か何か恐い話知らない?」ヌクヌク

結衣「ストーブの前を占領するな」

京子「えー、じゃあ、結衣が私を暖めてよ」

京子「あの時みたいに、私をぎゅっと抱きしめて暖めてよ…」

結衣「なっ///」

ちなつ「あ、あの時ってなんですか!?」

結衣「ち、ちなつちゃん、京子の冗談だから、真に受けちゃ駄目だよ」

京子「まあ、結衣は人より体温低めだから、今抱きついても寒いんだよね」

京子「夏場に膝枕とかしてもらうと涼しいけど」

結衣「人を冷房器具みたいに言うな」ポカ

京子「い、いたいよ、ゆいぃ」

あかり「んー、あかり、1個だけ恐い話知ってるよぉ」

京子「あかりナイス!私の気持ちを判ってくれるのはやっぱりあかりだけだねえ…」ナデナデ

あかり「ふぁっ、京子ちゃんに頭撫でられちゃった///」

ちなつ「あかりちゃん、私が恐い話嫌いだって知ってるよね…」

あかり「んー、けど、これくらいならちなつちゃんも大丈夫なんじゃないかなあ?」

あかり「あのね…」

ちなつ「やっ!結衣先輩恐いですっ!」ダキッ

結衣「ちなつちゃん、まだ話始まって無いから…」

あかり「夜中の0時に合わせ鏡を作って願い事を唱えると…」

あかり「鏡の中からもう1人の自分が飛び出てきて」

あかり「願いを叶えてくれるんだって、恐いよねえ…」

京子「ふんふん、それで?」

あかり「……おわりだよ?」

結衣「……」

ちなつ「……」

京子「あははは、こやつめ」グリグリ

あかり「え、え、京子ちゃん、痛いよ?やめてよぉ」

ちなつ「びっくりするほど、恐くなかったですね…」ハァ

あかり「まあ、あかりだからなあ…」

京子「けど、本当に願い事が叶うとしたら、皆どんなお願いをする?」

結衣「んー…」チラッ

京子「え、どうしたの結衣、私の顔に何かついてる?」

結衣「いや…そうだな、皆で旅行に行きたい…とかかな」

ちなつ「流石、結衣先輩♪」

京子「ちなつちゃんは?どんなお願いするの?」

ちなつ「わ、わたしは…ある先輩ともっと仲良くなりたい…かな?」

京子「ちなつちゃん…そんなに私のことを…」

ちなつ「京子先輩のことじゃありませんから」ニコ

京子「ガーン…」

京子「じゃあ、あかりは?あかりはどんなお願いするの?」

あかり「あかりは…」

結衣「もっと出番が増えたい…かな」

ちなつ「もっと目立ちたい…だよね?」

あかり「ふ、2人とも、酷いよぉ!」プンプン

京子「あはは、あかりは相変わらずだなあ」

あかり「そういう、京子ちゃんはどんなお願いをするの?」

京子「そうだなぁ…色々あって迷うけど…」

京子「娯楽部の皆や、生徒会の皆が、ずっと幸せでいられますように…かな」ドヤァァァ

あかり「きょ、京子ちゃん……」

ちなつ「京子先輩……」

結衣「京子……」

結衣「それで本音は?」

京子「ラムレーズンを1日1個食べたい!」

ちなつ「ですよねぇ」

~夜~

~京子宅~

京子「よし、原稿も完成したし…そろそろ寝るかなあ」

京子「えーと、今何時だ…23時55分か…」


『夜中の0時に合わせ鏡を作って願い事を唱えると…』


京子「……一応、試してみようかな?」

京子「鏡を用意して…と」

京子「そろそろ、時間だ」

京子「えーと、願いごと願いごと…と」

京子「……お願いします、娯楽部の皆や、生徒会の皆が、ずっと幸せで居られますように…」




「う、うう、ヒック」

「うぇぇぇ…」


京子「……あれ、何処かから、泣き声が…?」

京子「って、か、鏡の中に、子供が映ってる!?」


「う、うぇぇぇん…」


京子「なんだろ、この子、見覚えがある……」

京子「あれ、もしかして…」

京子「小さい頃の、私…?」

京子「ど、どうして、小さい頃の私が鏡に映ってるの…?」

「う、うう、ひっく、恐いよお…1人は、やだよぉ…」

「ゆい、あかりちゃん、だれか、だれでもいいから、わたしを助けてよぉ…」


京子「……どうしたの?どうして、泣いてるの?」


「この世界は、辛いことや悲しいことでいっぱいなの……」

「だから、わたしは、恐くて1人では前に進めない……」

「他の誰かを利用しないと生きていけない……」

「だから、助けて欲しいの……」

「誰でもいいの、ゆいや、あかりちゃんじゃなくても、あやのや、ちなつちゃんでも……」

「わたしに優しくして欲しい、わたしを助けて欲しい、でないと私は……私は……」

「う、ううう……グスン」

京子「…………」

京子「……そっか、この子は、私自身なんだ…」

京子「何でかは知らないけど……私の本音が鏡に映ってるんだ……」

京子「誰かを利用しないと、生きていけない……」

京子「……あ、あはは、私、泣き虫だった頃と、変わってないな……」

京子「誰かを利用して……それでやっと立っていられる、弱い人間のままなんだ……」


≪その子の言う事に耳を傾ける必要は無いわ≫


京子「……え?」

京子「か、鏡の中の私が、もう一人増えた……?」

京子「今度の私は、私と同じ年齢みたいだけど……」


≪京子は、弱い自分を克服する為に、努力してきたわ≫

≪結衣やあかりに、守られなくてもいいように、強くなろうとしてきたじゃない≫

≪だからこそ、京子はあんなお願い事をしたんでしょう?≫

≪自分の幸せではなく、他者の幸せを願うなんて、弱いだけでは出来ない事だもの≫

≪…だから、こんな子供の泣き言に耳を傾ける必要は無いわ≫


京子「えっと、あの、だれ?」

≪私は貴女、貴女は私≫

≪貴女が頭を打った時に分離した、もう1人の貴女≫

≪……けど、それではややこしいから……私の事は、歳納さんと呼んで頂戴≫


京子「としのうさん……」

京子「わ、私の中に、こんな大人っぽい私が居たのか、な……?」

京子「け、けど、他人のような気もしないし……」

≪この子供は、京子が成長する上で障害になる……≫

≪だから、消してしまいましょう≫

「う、うう……グスン、貴女も、貴女達も、わたしをいじめるの……?」

「こ、こわいよ……いや……辛いことも、悲しいことも、全部、全部いやなの……」

≪うるさいわね、京子は、もっと強くて、優しいのよ≫

≪子供の貴女が居なければ、京子はもっと強くなれる≫

≪だから、貴女なんて……≫

≪貴女なんて≫


京子「待って、待ってよ……」

京子「子供のままの、弱い私……」


「う、ううう……いやだよ……恐いよ……」


京子「大人っぽい、強い私……」


≪ええ、京子、貴女はもっと強くなれるわ……≫


京子「……」

京子「どっちも、私だよ……」


≪京子?≫


京子「どっちも、私なんだ……」

京子「子供の頃の私の想いがあるから……私は、立っていられる」

京子「歳納さんが居るから、私は前を向いていられる」

京子「だから、だから、私は、子供の頃の私を、否定したくないよ……」

京子「ごめんね、子供の頃の私……」

京子「ずっと、貴女の事を忘れていて、ごめんね……」

京子「もう、大丈夫だから……貴女の事も、ちゃんと抱えていてあげるから……」


「う、ううう……ほんとう?」


京子「うん、ほんとだよ、だから、一緒に行こう?」

京子「利用するだけが友達じゃないって、貴女にも教えてあげるよ」


「……うん」サラサラ

「ありがとう……私……」サラサラサラ


京子「あ……子供の頃の私、鏡の中から消えちゃった……」

京子「代わりに、何だろう、カードが降ってきた……これは」

京子「死神のタロットカード……?」

京子「……そっか…判るよ、カードの中に、子供の頃の私が感じられる」

京子「大丈夫、これからは、寂しくないから……」ギュッ

京子「歳納さん」


≪なに、京子≫


京子「歳納さんも、ありがとう」

京子「何時も、私のことを見守ってくれてたんだよね」


≪……ええ、これからも、京子の事を見守っていくわ≫

≪例え京子が誰かに裏切られたり、傷つけられたりしても……≫

≪京子は一人じゃないから……私がついていてあげるから……どうか、負けないで……≫


京子「ありがとう、歳納さん、凄く、勇気が出るよ」ニコ


≪///≫


京子「あ、歳納さん、照れた」

≪きょ、京子、あ、あの≫

≪次に貴女と会える機会があるかどうか判らないから……言っておきたい事が、あるの≫


京子「どうしたの?」


≪わ、私ね、実は……≫

≪京子の事が……好きなの≫

≪愛してるの……≫


京子「え、え?」


≪自分自身に告白するとか……変なのは判ってるけど……どうしても押えられないわ……≫

≪今まで頑張ってきた京子の心も、あんまり成長してないその身体も、全部が好き……大好き……≫

≪この鏡の壁がなければ……私は貴女に抱きついて、キスしたいとさえ思ってる……≫

≪ごめんなさい、こんな事、言われても、迷惑よね……ごめんなさい……≫


京子「と、歳納さん……」

京子「……歳納さん、鏡の壁に、くっついてくれるかな?」


≪え……?≫


京子「もう、はやくっ!」


≪え、ええ、判ったわ……≫スッ


京子「……」チュッ


≪きょ、京子///≫

京子「え、えへへ///鏡越しでごめんね///」

京子「あの、私も、歳納さんの事、嫌いじゃないよ……」

京子「私とは思えない、格好良さがあるし……」

京子「さ、さっきの告白も、可愛かったし///」

京子「だから、あの、これからも私を好きで居てくれると、嬉しいな……」


≪ありがとう……京子……≫サラサラ

≪こんな、私も、認めてくれて、ありがとう……ずっと、ずっと、一緒よ……≫サラサラサラ


京子「歳納さんも……鏡の中から消えちゃった……」

京子「あ、またタロットカード……今度は女教皇、か」

京子「……歳納さんの存在も、カードの中に感じられる……」

京子「うん、ずっと一緒だよ、歳納さん……」

………

……

~翌朝~

京子「……ふご」

京子「あれ、何か、変な夢見てたなあ……」

京子「……うわあ!?もうこんな時間じゃん!」

京子「は、早く学校行かないと……!」バタバタ


カランッ


京子「あ、あれ、鏡がこんな所に……」

京子「……何だろう、何か大切な事を忘れてるような気が……」

京子「と、今は急がないと!」タッ

~2年教室~

京子「ふぅ……ギリギリ遅刻にならなくてすんだぁ……」

京子「あれ、結衣が居ない……どうしたんだろ」

綾乃『歳納京子』

京子「ん、綾乃、おはよ~」ニコ

綾乃『おはよう』

京子「綾乃、結衣見なかった?まだ教室には来てないみたいだけど……」

綾乃『船見さんの事なんて、どうでもいいじゃない』

京子「え、綾乃?」

綾乃『歳納京子……私を見て』

京子「ど、どうしたの、綾乃……真剣な顔しちゃって」

京子「あ、プリント?プリントならここに……」ガサゴソ

綾乃『……』ギュッ

京子「ふえ///」

京子「ちょっと、綾乃、どうしたのいきなり抱きついてきて///」

綾乃『歳納京子は、私に抱きつかれるの、いや?』

京子「え、嫌じゃないけど…あの、恥ずかしいよ、皆見てるし///」

綾乃『じゃあ、誰も居ないところへ行きましょう、生徒会室とか』

京子「え、ええ!?い、いや、今から授業始まるんだけど///」

綾乃『……放課後、生徒会室に行きましょう』

綾乃『約束よ』

京子「う、うう、判ったから離して///」

京子(ど、どうしたんだろ、綾乃、いきなりあんな事///)

京子(ま、まだ綾乃の体温が身体に残ってて、凄くドキドキする///)

京子「……」チラッ

綾乃『……』ジー

京子(うわあ、綾乃、授業始まってるのに、じっと私の事を見てる///)

京子(というか、さっきは気付かなかったけど……綾乃、ちょっと瞳が赤い?)

京子(カラコンでも入れてるのかな……)

~お昼休み~

~廊下~

京子「う、うう……あれからずっと、綾乃に見つめられてたから、何か疲れた……」グッタリ

京子「結衣の携帯に電話しても出ないし、綾乃は変だし……どうなってんだろ……」


キャッ


京子「ん、何処かから、悲鳴が聞こえたような……」

京子「屋上へ続く、階段から……?」

結衣『……』

千鶴「けほっ……けほっ……」

京子「あ、あれ、結衣じゃん、学校来てたんならどうして教室に……って」

京子「ど、どうしたの、千鶴!く、苦しそうだよ!?」

結衣『ほら、千鶴、京子に言う事があるだろ……?』

京子「え……?」

千鶴「……」

結衣『千鶴、まだ、判ってくれないの?なら、もう一度……』

千鶴「わ、判った、判ったから……と、歳納」

千鶴「あ、あの、今まで、冷たくして、すまん……暴力とかも……すまなかった……」

京子「え、え、ど、どうしたの、千鶴、結衣も……何か様子が変だよ?」

千鶴「そ、それは……」

結衣『千鶴……』ガシッ

千鶴「ぐっ……」

京子「ゆ、結衣!?な、なんで千鶴の首絞めてるの!?やめてよ!」

結衣『すまん、じゃないだろ、ごめんなさい、だろ……』

結衣『お前が京子に冷たく接したせいで、京子がどれだけ苦しんでたか判ってるの……?』

結衣『京子、泣いてたんだよ……それなのに、お前は』

結衣『お前は何も考えずにずっとずっと京子を拒絶して……』グググ

結衣『京子はお前の友達になりたかっただけなのに……!友達に……!』ググググ

千鶴「……!」バタバタ

京子「ゆ、結衣!だ、だめ、千鶴死んじゃう!や、やめて!」ドンッ

千鶴「……」グッタリ

京子「ち、千鶴!?大丈夫!?千鶴!?」

結衣『京子は優しいなあ……そんな女とまで友達になろうとして……』

結衣『大丈夫だよ、私が、手伝ってあげるから』

結衣『当然だよね、私は、京子の王子様なんだし……』

京子「ゆ、結衣、どうしちゃったの……?」

結衣『ねえ、京子、千鶴の事なんてもうう放っておいてさ……いちゃいちゃしようよ……』グイッ

京子「え、ちょ、結衣?」

結衣『京子……きょうこぉ……』スリスリ

京子「ゆ、結衣、どうしたの、ほ、ほんとに様子おかしいよ!?」

京子「そ、それに、瞳が、瞳が赤い……?」

結衣『何も無いよ…ただ、ただ自分の本当の気持ちに気づいただけ……』

京子「本当の……気持ち?」

結衣『うん、私、ずっとこうしてみたかったの』スリスリ

京子「ちょ、ゆい///」

結衣『京子を抱きしめて、髪に顔を埋めて、匂いを嗅いで……』

結衣『私の匂いを京子につけてあげたかったの……』

結衣『ずっと京子を守り続けて……独り占めしたかったの……』

結衣『そして、えっちな事をしてみたかったの……』

京子「ゆ、ゆい?」

結衣『ずっと自分を押えて偽って、友達の仮面を被ってきたけど……』

結衣『……もうそんな必要は無いから』

結衣『だから、ね?京子、いいでしょ……』

結衣『まずは、ちゅーしよ?ね?』グイッ

京子「や、ちょっと、待ってよ!結衣!」

結衣『もう、力じゃ私に勝てないって、知ってるでしょ、京子……』ギュッ

京子「ん、や、やぁっ///」

??「やめろ!」


ドーン


結衣「はぁ……はぁ……や、止めろ、京子を傷つけるな……」

京子「え、え、結衣が、もう1人……?」

結衣「京子、騙されないで、こいつは……」


『どうして、邪魔するの、私』

『昨日、願ったじゃない、京子と愛し合えますようにって、願ったじゃない』

『それが私の本音でしょう』


結衣「ち、違う!私は、こんな形を望んだわけじゃない!」

『あはははは、私は影、貴女の影』

『私に隠し事は出来ないよ』

『私は確かに願っている……無理やりにであっても、京子と愛し合いたいと』

『だから、私は鏡の中から出てきてあげた……』

『貴女に代わって私が願いを叶えてあげる為に……』

『願いを叶える為の障害は、全て取り除く』

『全部全部全部取り除く』

『だから、京子、愛し合おう?ね?』

京子「か、鏡の中から?願い?ひょっとして、結衣、例の合わせ鏡、試したの!?」

結衣「う、うん、昨日、試しに願いを唱えてみた……け、けど!」

結衣「……けど嘘だ、こんな事、望んでない……京子、信じて……」

京子「ゆ、ゆい……」


『京子、ねえ、早く、愛し合おうよ、きょうこぉ……』


結衣「こんな、こんなのは、私じゃない………」

結衣「お前は、私じゃない…!」



『あはははは、否定するんだ、自分の本性なのに』

『じゃあ、もういいや……私は、貴女じゃなくてもいい……』

『貴女とは違う私に、なってやる……』


京子「さ、さむっ!な、なに、もう1人の結衣の身体から冷気が……!」

ユイ「……我は影、真なる我」

ユイ「氷の王ユイ……」

ユイ「私は、私自身の望みを叶える……」

ユイ「さあ、京子、こっちに来て……」

ユイ「そんな結衣は放っておいて、私といい事、しよう?」

結衣「や、やめろ……やめろぉ!」

ユイ「邪魔しないで」

結衣「う、あ、な、なに、身体が、凍りつく……」

京子(ち、違う、このユイは、さっきまでのユイじゃない……!)

京子(何か、人間以上の能力を使ってる……!)

京子「や、やめて!結衣に酷いことしないで!」

ユイ「京子、ユイは私だよ……私の力があれば、ずっと京子を守ってあげられるから……」

ユイ「京子も、それを望んでるでしょ?守られたいって、思ってるでしょ?」

ユイ「京子は、何時も王子様を必要としてるもんね……」

ユイ「だから、ね?こっちに来て……」

京子「け、けど、結衣が……」

ユイ「大丈夫、私は、京子さえいてくれれば、誰も傷つけないから」

京子「ほ、本当?」

ユイ「うん」ニコ

京子「わ、判った……」スッ

結衣「きょ、京子、だめ、行かないで……」

京子「結衣……ごめんね……」

結衣「きょうこ……」

ユイ「ああ、京子、京子京子京子!」ギュッ

ユイ「やっと、やっと私のものに、私だけのものになってくれた……」

京子「ひゃっ、ゆ、ユイ、冷たいよ……」

ユイ「ごめんね、大丈夫、すぐに眠くなって、寒さを感じないようになるから……」ピキ

ユイ「私の腕の中で、ゆっくり眠ってよ……」ピキピキ

京子「ゆ、ゆい……」

京子「本当……だ、凄く、眠く……」ピキ

京子「というか、私の身体、凍って……」ピキピキピキ

ユイ「邪魔されないように、学校も全部全部凍らせてしまおっか……」

京子「え……ゆ、ゆい、やめて……誰も傷つけないって……言ったじゃない……」

ユイ「傷つけないよ、ただ、永遠に眠ってもらうだけ……」

京子「そんな……そんなの……」

京子(どうしよう、私では、私ではユイを止められない……)

京子(どうしたら……)

京子(誰か、誰か助けて……)


≪京子≫


京子「……え?」



≪私を、呼んで≫


京子「だ、誰……?」


≪私は貴女、貴女は私……≫

≪私は何時でも、貴女を見守っているわ……≫


京子「私……もう1人の、私……」

京子「……そうか、思い出したよ」

京子「ペ………」


ユイ「さあ、全部、凍らせちゃおう……」


京子「…ル……」


ユイ「綾乃も、千鶴も、千歳も、ちなつちゃんも……」


京子「……ソ…」


ユイ「……これだったら、京子も寂しくないよね……」


京子「………ナ」


ユイ「京子?」





京子「歳納さん!」


パリーン




アムリタッ


パキーン


ユイ「な、なに?氷が全部吹き飛んじゃった……!?」

結衣「あ、あれは……京子が、2人、いる……?」

京子「と、歳納さん……?」

歳納「京子……」

歳納「京子……京子!」ダキッ

京子「ちょ、と、歳納さん!?」

ユイ「え」

歳納「ああ、もう、こんな、直接抱きつける日が来るなんて思ってもみなかった…!」

歳納「京子、好き、好きよ、大好き……」チュッ

京子「ひゃっ///」

歳納「もう、照れなくてもいいじゃない、私は貴女なんだから……」チュッ

京子「え、け、けど、あの、結衣達が見てるし///」

歳納「いいじゃない、見せ付けてあげましょうよ……」サワサワ

京子「ふ、ふぁっ///と、歳納さん、そ、そんな所に手を入れないでよ///」

結衣「きょ、京子……?」

ユイ「や、やめろ……」

歳納「ふふふ、京子の感じるところは、私、全部知ってるわよ……」サワッ

京子「あっあんっ///」

ユイ「やめろ!」

ユイ「京子は、私のなんだ、京子、私とキスしてよ!私の所に来てよ!」

歳納「駄目よ、京子は私のなの……」チュッ

京子「と、としのうさん、キス、上手すぎだよぉ……」ポー

ユイ「く、くそっ!止めて!」

結衣「そ、そうだ……止めろ!」

結衣「京子は、京子は……!」

ユイ「私だけのものなんだ!他の誰にも……」

結衣「誰にも!」



ユイ結衣「「誰にも渡したくない!」」


歳納「それが、結衣の本音よね?」

結衣「……」

ユイ「……」

歳納「正直に言わないと、京子にもっとえっちな事するけど……」

結衣「……」ビクンッ

ユイ「……」ビクンッ

結衣「そ、そうだ……私は、私は、京子を好きなんだ……」

結衣「今まで隠してきたけど、嫌なんだ、京子が他の子とキスするのが……」

結衣「誰にも、誰にも渡したくないんだ……ずっと京子の王子様で、いたいんだ……」

結衣「けど、けど、もし告白して、フラれたら……」グスン

結衣「それが理由で、友達ですら居られなくなったらと思うと……」ヒック

結衣「もし、京子がもう二度と私の部屋に来なくなったらと思うと……恐くて……」ヒックヒック

結衣「京子は、こんな、こんな臆病な、私、嫌いになったよね……」グスン

結衣「全然、王子様じゃないもんね……」ヒック

京子「……嫌いになんてならないよ、結衣」

結衣「え……」

京子「王子様かどうかなんて、関係ない……」

京子「私は、私は王子様じゃなくて、結衣のことが好きだもん」

結衣「京子……」ゴシゴシ

京子「この≪好き≫が、結衣が期待してる≪好き≫なのか、私にもわかんないけど……」

京子「結衣とは、ずっと一緒にいたいと思ってるよ!」

結衣「きょうこ……」

京子「だから、ね?泣かないで……」ナデ

結衣「う、うん……ありがとう、京子……」

結衣「そ、それに……」

ユイ「……」ビクッ

結衣「もう1人の私も、ごめんね……」

結衣「私が臆病だったから、否定しちゃって……ごめんね……」

結衣「貴女は、私なんだ……」

結衣「貴女の想いは、私の想いなんだ……」

ユイ「……うん」

どっちにするかギリギリまで悩みましてー

結衣「ありがとう、今まで、私の中に居てくれて」

ユイ「……」

結衣「これからも、私の中に、居てほしい……」

ユイ「……ありがとう」サラサラ

ユイ「私を受け入れてくれて、ありがとう……」サラサラ

ユイ「頑張って……私……」サラサラサラサラ

結衣「うん……頑張るよ、私……」

京子「結衣の影、消えちゃったね……」

結衣「消えてないよ……私の中に、ユイがいるのが感じられるから……」

京子「あ、それ、カード……」

結衣「うん、皇帝のカード……京子を守る、王子様になる為のカードだ……」

結衣「京子……私、私……」フラッ

京子「え、ゆ、結衣?」ガシッ

歳納「色々あったから、疲れて寝ちゃったみたいね……」

京子「そっか……」

京子「結衣……」ナデナデ

京子「私を想ってくれて、ありがとうね……」

結衣「……」zzz

京子「と、とりあえず、結衣と千鶴を保健室に連れて行かないと……」

歳納「手伝うわ」

京子「ありがとう、歳納さん」ニコ

歳納「これくらい、当然よ、私は、京子のために居る存在なんだから…」

歳納「寧ろ、もっと一杯頼ってくれた方が嬉しいわ」

京子「そっか……じゃあ、色々頼んじゃおうっかなあ?えっちな事とか……」

歳納「な///」

京子「さっき、言ってたよね、私にえっちな事をするって」

歳納「ち、違うのよ、京子、あれは、その、結衣を影と向き合わせるための口実って言うか……」

京子「あ……口実、なんだ……そうだよね、私になんて、えっちな事したくないよね……」

京子「胸だって、こんなに小さいし……」

歳納「そんな事無いわ!私は小さい方が好きよ!」

京子「もう、歳納さんって本当にえっちだよね……」ニヤニヤ

歳納「……!」

歳納「京子、からかわないでっ」プイッ

京子「もう、冗談冗談……」

~保健室~

京子「あれ、保険の先生居ないや……」

歳納「取りあえず、二人をベッドに寝かせておきましょう」

歳納「千鶴はショックで気を失ってるだけみたいだし、しばらくすれば眼を覚ますでしょう」

歳納「結衣は、新しい自分に慣れるまでちょっと動けないかもしれないけど……」

京子「そっか……」

京子「……早く、元気になってね、結衣」ナデナデ

歳納「…………」

歳納「京子、それじゃ、私はそろそろ貴女の中に戻るわ」

京子「え、え、もう、戻っちゃうの?」

歳納「ええ、ペルソナである私が何時までも外に出てると、貴女の負担になるの」

京子「そ、そっか……」

京子「あ、あの、歳納さん?また、会えるよね……?」

歳納「……ええ、すぐまた、会えると思うわ」

京子「よ、良かった」ホッ

歳納「京子」

京子「ん?どうしたの、歳納さん」

歳納「気をつけて、多分、合わせ鏡のおまじないをしたのは、結衣だけじゃないと思う」

京子「……え?」

歳納「あのおまじないは、願い事を媒介に人間の心の影……シャドウを実体化させる力があるみたい……」

京子「シャドウ……ユイみたいな感じの、もう一人の自分って事?」

歳納「ええ、私みたいに、主人格に受け入れられたシャドウは、ペルソナになるけど……」

歳納「それ以外のシャドウは、願い事に準じて、勝手に動き出す」

歳納「とても、危険な存在だわ、だからもしシャドウと遭遇したら、すぐに私を呼ぶのよ?いいわね?」

京子「う、うん、判った」

歳納「それじゃ、戻るわね……」

京子「あ、待って、歳納さん!他にも合わせ鏡のおまじないした人って、いったい誰が……!」



「多分 三人     」

「ちな     」

「       」

「  あかりに 」

「  気をつけて   」



京子「消え、ちゃった……いや、私の中に、戻っちゃった……」

京子「ふう……なんだか、色々あって疲れた……」

京子「ベッドはもう一つあまってるし、私もちょっと寝ようかな……」

京子「ちょっとだけ……ちょっと、だけ……」

京子「……」zzz

京子「むにゃ、としのーさん……」zzz



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