真「一人スイーツ」 (18)
真「以前に行ったケーキバイキングは最悪だった」
真「あの味のないクリーム、生地、紅茶…添加物&添加物&添加物」
真「思い出すだけで腹が立ってくる」プンスコ
真「雪歩に以前聞いたよ」
真「どうして食べ放題に行かないのかって」
雪歩『食べ放題に質を求めるのは間違い。でも高いお店すべてが美味しいわけじゃない…だからこそ、自分にとって最高のお店を探す楽しみがあるんだよっ!!』
真「あの日から一人ケーキやめぐりが始まった…」
真「今日はこの小さなお店に入ってみよう」
カランコロン
店員「いらっしゃいませー」
真「(どうやら家族で経営しているお店みたいだ。奥で夫婦らしき男女がケーキを作っている)」
真「ケーキ屋めぐりは静かだ…誰にも邪魔されない」
真「テーブルが2つくらいしかないお店が一番。このお店はドンピシャ」
娘店員「(真王子の一人スイーツだ)」ハァハァ
真「(まずは、ケーキを選ぶ…ようなことはしない)ショートケーキとダージリンティーを」
真「店内で」キリッ
娘店員「はいぃっ、しばらくお待ちください///」
真「ありがとうございます」
娘店員「///」
真「長期戦になるから、これくらいのサービスは当然」
真「椅子とテーブルはクッションのある木製」
真「以前行ったお店は鉄製のアンティーク用のテーブルが置いてあった」
真「そもそもお店で食べることを想定していなかったらしい」
真「いまでは菊池真の座った席として人気があるらしいけれど、あの椅子は痛かったよ」
真「ふむ…合板じゃない一枚ものの木のテーブルか…お客がここで食べるのを想定して、そして品のいいものを選んである」
真「雰囲気は最高」
娘店員「ショートケーキと紅茶になります」
真「紅茶はティーポットで来るのか…大きさ的に3杯はいけそう」
真「紅茶をカップに入れると熱くてもてなくなる」
真「それもまたいい…カップが持てるようになるまでゆっくりしてくださいってこと」
真「ん~いい香り」
真「そしてメインのショートケーキは」
真「クリームは完璧な色、艶、そして形」
真「切り口も綺麗に整っている。ショートケーキはそのお店の実力を簡単に知ることができる。一番数が出るショートケーキが美味しければ、たいていのケーキはおいしい。例外もあるけれど」
真「別の例外だと、過去に切り口がぼろぼろのお店があった。でも味は一級品。いまだに通い続けている」
真「このお店のショートケーキは、2層の間にクリームとイチゴのカットが挟まっているタイプ。クリームの層は大き目でイチゴのカットはスライス」メモメモ
真「表面積が増えて酸化しやすい分味が落ちる、リスクのあるカット。でも切りやすい、食べやすいからメリットは大きい」
真「クリームに空気があると酸化しやすくなるから、クリームの出来に左右される」
真「酸化を防ぐにはクリームの密度を高くして空気の侵入をストップする必要がある」
真「そうすると味の濃いしつこいクリームになってしまう。そもそもクリームの層を大きくとるには密度を高くせざる負えない」
真「このお店のクリームは僕を満足させることができるクリームだろうか」
娘店員「(真王子がケーキを真剣に眺めて独り言いっている…かっこいい!!」
真「そういえば上に載っているイチゴは普通のいちごだ。たまにコーティングされていることがあるけれど、あれは歯につくから僕は嫌いだ」
真「いざ一投目」
真「ここまで弾力のあるスポンジは初めてだ」
真「クリームもフォークで弾力を感じるくらいだけれど、スポンジの弾力がすごい」
真「よく見ればスポンジの目が少し荒い」
真「(切った瞬間にサクっていう音とともにすごくいい香りがした気が…)」
真「さぁ、一口目…」
真「(おいしい!!)」モコモコ
真「ケーキは柔らかいほうが美味しいなんて思っていた」
真「コンビニのケーキとかは固いしまずいから、固い=まずいっていう方程式が出来上がっていた」
真「でもスポンジのいい香りが鼻孔に広がって、そのあとでイチゴの酸味とクリームの濃厚な甘みが広がる。重厚な味わい」
真「イチゴは、とちおとめ。おいしい~ん~///」
娘店員「~~///」
店の外
美希「真クンがケーキ食べているの」
響「さっきから呟いているみたいだし、関わらない方が…」
貴音「いまはそっとしておきましょう…私には気持ちが分かります」
真「生地もクリームもしっかりとした味なのにしつこくない。その理由は」
真「生地の目の粗さ、か」
真「生地が荒いから実はそんなに量がない」
真「しつこいと感じる前に食べ終わらせる」
真「ここまでバランスのとれたケーキは初めてだ」
真「でも僕はまだ満足できない」
真「このお店の得意分野はわかった。ならチーズケーキはどうするか。すいません、チーズケーキをください」
娘店員「はい、こちらが当店のチーズケーキです」
真「え?」
真「見た目からしてシュワシュワ」
真「さっきの弾力のある生地とは正反対」
真「どうしてこんな実力を持ったパティシエが!!」
真「ん?あのトロフィーは?」
『テレビチャンプ スイーツ王決定戦 王者』
真「まさかっ!!」ガタッ
真「食べる側のチャンプ!?パティシエ王決定戦じゃなくて!?」
真「食べる側からパティシエ側に!?そんなことがっ!!」
真「自分が求める究極を作るためにっ!?」
真「っと落ち着かなきゃ。まずは目の前のチーズケーキを」
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