ほむら「まどかがそばにいると思ったらおちおち自慰もできやしない」(76)

ほむら「というわけで杏子。私を襲いなさい」

杏子「は?」

杏子「いや意味わかんないし」

ほむら「言葉通りの意味だけれど」

ほむら「はやく私を襲いなさい」

杏子「だからなんであたしがあんたを、その……お、襲わなくちゃならないんだよ」

ほむら「言ったでしょう。まどかに見られていたら自慰を……」

ほむら「! あなたまさか自慰の意味が分からないとか」

杏子「いや、それくらいならまあ」

ほむら「そう」

ほむら「ならここでやってみせてちょうだい」

杏子「はあ!?」

ほむら「本当に自慰の意味を理解しているのか確かめたいの」

杏子「ちょ、ちょっと待て」

ほむら「なにか問題でもあるの?」

杏子「いや大ありだろ」

ほむら「例えば?あなたの自慰を私が見て何か不都合でもあるというの?」

杏子「不都合っていうか……」

ほむら「はっ。もしかして道具を使用するタイプ?」

ほむら「ごめんなさい。さすがにそんな激しいのは持ってないの」

ほむら「それともオカズにする内容が必要?過激なのがお好みかしら?」

杏子「なんつーこと言ってんだテメーは」

杏子「ていうか、普通人には見られたくないものじゃん……その、それ」

ほむら「自慰?」

杏子「う。まあ、それ」

ほむら「それって何よ。ちゃんと言いなさい」

ほむら「はい自慰自慰自慰」

杏子「そ、そんなに連呼すんなよ」

ほむら「自慰自慰自慰」

杏子「やめろ」

ほむら「自家発電一人遊びソロ活動」

杏子「なんだよそれ」

ほむら「Masturbation」

杏子「英語で言っても同じだよ」

ほむら「Selbstbefriedigung」

杏子「何語だよ」

ほむら「masturbarsi」

杏子「巴マミかよ」

杏子「つーかあんた、あの窓?だっけ」

ほむら「まどかよ。誰が窓よ、葬るわよ」

ほむら「ガラスなんてついてないわよ」

杏子「何言ってるんだよあんたは」

ほむら「それで、まどかがどうしたのかしら」

杏子「そのまどかが側にいるなら、この会話も丸聞こえってことだろー?」

ほむら「!」

ほむら「まどかァーーー!」

ほむら「……」

ほむら「大丈夫、今はいないわ」

杏子「なら今やれよ」

ほむら「ダメよ、いつ帰ってくるか分からないじゃない」

ほむら「もし結構いいところまでいっちゃって」

ほむら「そこでまどかが戻ったらどうするのよ。もう絶頂きちゃいまひゅううううってところで寸止め?」

ほむら「そんなの堪えられないわ」

ほむら「枕も下着も濡れ濡れよ」

杏子「だからってなんであたしが」

ほむら「独りえっちは寂しいもんな」

杏子「はい?」

ほむら「いいよ、一緒にイってやるよ」

杏子「……」

ほむら「というわけで私と寝ましょう」

杏子「最初と変わってんじゃねーか」

ほむら「あらそうだったかしら」

杏子「あたしに襲えとかなんとか言ってたじゃん」

ほむら「どうだっていいじゃない。することにはかわりないんだし」

ほむら「というかもう溜まってて溜まっててしょうがないの」

ほむら「だからヤらせろ」

杏子「断る」

ほむら「……」

ほむら「結構ショックだわ」

ほむら「それこそ美樹さやかが病院に行ったけど既にあの少年は退院してて
『ああ、あいつにとってのあたしは日にちを教えるほどでもない仲の奴程度の存在だったんだ』というくらい」

杏子「わかりにくいわ」

ほむら「てかなんで?どうして?私のこと嫌い?」

杏子「嫌いじゃないけどさ」

ほむら「え?なに?好きなの?」

杏子「ま、まあ。す、好き……だけど」

ほむら「ならヤりましょう!」

杏子「断る」

ほむら「だからどうして!!」

杏子「当たり前だろ!あんたのことは好きだけど、なんていうかベクトルが違う!」

ほむら「むぅ」

ほむら「何よベクトルって」

杏子「えっと……だから」

杏子「さやかがあの坊やのことを好きな気持ちと、あたしがあんたを好きな気持ちは違うってことさ」

ほむら「私のことを恋愛的に好きではないということ?」

杏子「ああ」

ほむら「その気持ちが無かったら出来ないの?」

杏子「そりゃそうだろ」

ほむら「あなたの言う恋愛的に私のことを好きではないキュゥべえはさせてくれたのに?」

杏子「……マジで?」

ほむら「嘘だけど」

杏子「嘘かよ」

杏子「つーかもうキュゥべえでいいじゃん」

ほむら「私ケモナーじゃないわよ」

杏子「冗談だけどさ……あんな嘘つくからあんたならもしやと思って」

ほむら「!! あなたは私を変態だと思ってるの?」

杏子「実際変態だろ」

ほむら「あれだけ自慰を連呼してたのは誰よ」

ほむら「私ね。確かに変態だわ」

ほむら「もう変態でいいわ。暁美ほむら改め開けっ放しむらむらよ」

杏子「いや意味わかんないから」

ほむら「社会の窓をあえて開けっ放しにしてむらむら気分を味わうの」

杏子「説明しなくていい」

杏子「……うーん」

杏子「あんた見た目はいいんだからさ、恋愛にももっと積極的になれば?」

ほむら「それで、どうするのよ」

杏子「彼氏つくってすればいいだろ」

ほむら「……ぇ、ぇっちなことを?」

杏子「そこは照れるのか」

ほむら「いやよ。妊娠したらどうするの」

杏子「ここで正論がくるとは思わなかった」

ほむら「中学生で子供を養うなんて無理よ。お金だってかかるし」

ほむら「避妊も100%じゃないわ」

ほむら「だからその場の欲望でする子作りはやめなさい!周りが悲しむわ!」

杏子「なに説教してんのさ」

ほむら「それに、男の人ってよく分からないし」

杏子「……あんたそっちの趣味?」

ほむら「否定できないかもしれなくもないような感じがしないでもない気がするわ」

杏子「どっちだよ」

杏子「まあたとえあんたがそっちの趣味だったとしても」

杏子「さっきも言った通り外見はトップクラスなんだから
もしかしたらひっかかってくれる女の子はいるかもよ?」

ほむら「だから今ひっかけてんじゃない」

杏子「なるほど」

杏子「いや何納得してるんだあたしは」

ほむら「ようやく分かってくれたのね。うれしいわ」

ほむら「さあ二人でイってしまいましょう、円環の理に導かれて……」

杏子「ちょーっと待て!あたしにはそんな気、これっぽっちもないからな!」

ほむら「むぅ」

ほむら「人をその気にさせておいて」

杏子「それは悪かったけど」

ほむら「お詫びに寝てあげる?ほんと?」

ほむら「イイゼ、アンタハアタシガヒキウケル」

ほむら「杏子……」

杏子「おい」

杏子「一人芝居をするな」

ほむら「なら二人芝居をしましょう、ベッドの上で」

杏子「それも断る」

ほむら「……もしかして多数派?」

杏子「ちげーよ」

杏子「てかなんであたしなんだよ」

ほむら「え?」

杏子「他にいるだろ」

ほむら「例えば」

杏子「例えばーって、あんたのクラスの男とか、まあ女とか?」

ほむら「ダメよ」

杏子「なんでだよ」

ほむら「相手が引くじゃない」

杏子「ちょっと待て」

杏子「ならなんであたしは」

ほむら「あなたなら私の気持ちを分かってくれると思って」

杏子「あたしも引いてんだけど」

ほむら「え、本気?」

杏子「ああ」

ほむら「と書いてマジと?」

杏子「読む」

ほむら「え、あなた自宅でするときなんとも思わないの?」

杏子「何を思うんだよ」

ほむら「美樹さやかに見られてるんじゃないか、とか」

杏子「こえーよ」

ほむら「むぅ」

ほむら「あなたを同類と思った私がバカだったわ」

杏子「あんたと同類に思われてたあたしはどう思えばいいんだ」

ほむら「でもそんなことどうでもいいわ。ねえ杏子、ヤらない?」

杏子「遊びに行くみたいに言うな」

杏子「厄介事押し付けたくないけどさ、マミがいるじゃん」

ほむら「え?彼女ってそういう?」

杏子「いや違うと思うけど。優しいから相談くらいは乗ってくれるよ」

ほむら「何をどう相談するのよ。絶対引くじゃない」

杏子「またそれか」

ほむら「っていうかもういいじゃない。ここまで話しちゃったし」

ほむら「杏子も実はだんだんその気になっちゃってるんでしょ」

杏子「なってない」

ほむら「なるほど、これがツンデレね」

杏子「違う」

ほむら「ツンデレは押しに弱いと聞くわ」

杏子「だからツンデレじゃねーって」

ほむら「そうね……」

ほむら「抱いてあげる、杏子」

杏子「……」

ほむら「ドキッ」

ほむら「おかしい。あたしにはそんな気ねえのになんだか、あいつのこと……」

杏子「効果音入れんなアフレコすんな」

ほむら「あたし、ほむらに抱かれたい……」

ほむら「杏子……」

杏子「妄想で話を進めるな」

ほむら「どこが不満なの」

杏子「不満しかないんだけど」

ほむら「もうまどろっこしいわ、押し倒しちゃいましょう」

杏子「暴走す・る・な」

ほむら「むぅ」

杏子「あんたが悩んでるのは分かったけど、あたしは無理だから」

杏子「ここまで知っちゃったからには悩みなら聞いてやるけどさ」

杏子「だから他の誰かを好きになるか、そのまどか?に見られるのを我慢するか……」

ほむら「……」

杏子「おい、聞いてんのか?」

ほむら「私、今気付いたわ」

ほむら「なぜあなたを選んだのか、なぜあなたとこんなにヤりたいのか」

杏子「はあ」

ほむら「私、あなたのことが好きなのよ」

杏子「は?」

ほむら「納得の理由ね」

杏子「いや納得出来ないんだが」

ほむら「どこが」

杏子「全部」

ほむら「むぅ」

杏子「あんたさっきまで普通、いや普通じゃなかったけど普通だったじゃん!」

ほむら「何を言ってるのか理解出来ないわ」

杏子「今までのやり取りでどうやってあたしのこと好きになるんだよ!」

ほむら「ツッコまれてる内に突っ込んでほしくなったの」

杏子「突っ込めるか」

ほむら「道具ならあるわよ?」

杏子「いらん」

ほむら「溜まってるのなら杏子とヤるしかないじゃない」

ほむら「最初はこんな感じだったけれど今は違う」

ほむら「杏子が好きだからしたいの」

杏子「……」

ほむら「ドキッ?」

杏子「それはもういい」

杏子「あんたの気持ちは分かったさ……」

杏子「でもね、あたしにはそんな気持ち、ない」

ほむら「……」

杏子「……今はね」

ほむら「明日になったらある、と」

杏子「違うっ」

杏子「だから今はないんだってば!」

ほむら「むぅ」

杏子「……でも」

杏子「あ、あたしだって人間なんだしさ」

ほむら「人間じゃないわよ?」

杏子「水を差すなよ」

杏子「気持ちとしては人間みたいなもんだから」

杏子「もしかしたらいつかあんたにひっかかっちゃうことが
あるかもしれないこともない気がしないでもないような……あんたは、あたしもかわいいと思うし」

ほむら「杏子……」

杏子「もっもしかしたらの話だけどな」

ほむら「つまり抱いてほしいと」

杏子「それは違う」

ほむら「とりあえずは理解したわ」

杏子「そっか、助かるよ」

ほむら「一週間後くらいには準備万端ということね」

杏子「それも違う」

ほむら「今のは軽いジョークよ」

杏子「あんたのはそう聞こえない」

ほむら「ほんとよ。あなたのツッコミ、私好きなのよ」

ほむら「だからただツッコんでほしかっただけ」

杏子「……」

ほむら「アソコに」

杏子「やめろ」

ほむら「さっきのはほんとだけど」

杏子「もっとやめろ」

ほむら「やめない」

杏子「おい」

ほむら「杏子のことが大好きだから、やめない」

杏子「……」






ほむら「……ドキッ?」

杏子「だからそれはいい」

ほむら「むぅ」

終わり

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