真姫「イエス」 (36)

チュンチュン

真姫「う、うぅぅぅぅぅんん・・・」

真姫が目覚めたのは公園の中だった

優しい太陽の光と小鳥の鳴き声を聞きながら目を覚ました

真姫「やだ・・・何で私こんなところで寝てたの?」

公園の中には丸いベンチが一つ

ベンチに座りながら寝ていた真姫

前日の記憶はない

薄着だが、寒さも感じない

空腹感も何もない

ただただ、なぜか気分が良かった

自分の今の状況がどうでもよくなってしまうほどに

でも一つ、何か違ったような感覚もあったが・・・

辺りを見渡してみる

公園を挟むように白と黒の二つの教会が建っている

それ以外は無限に広がっているようにも見える草原が見えた

太陽の光は明るいのだが直接見ても眩しさを感じない

まるで自分に気力を与えているかのようにも見えた

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ことり「真~姫ちゃん?」

真姫「ひゃっ!ことり!」

どこからか突然現れたことり

真姫はことりは白いワンピースと麦わら帽子を被っているイメージだったが、このことりは真っ黒のワンピースを着ていた

今までことりを見てきた中で最も美しいと思うような綺麗な姿のことりだった

ことり「おはよう、元気?」

真姫「う、うん・・・元気だけど・・・」

ことり「クスクス――真姫ちゃんでもこんなに可愛い笑顔の時代があったんだね♪」

真姫「はっ?」

ことり「あれ?まさか気付いてないの?」

真姫「何?何の話してるの?」

ことり「あらら・・・はい、これで自分の姿を見てみて」

差し出された手鏡

何かと思い鏡の中を覗き込んでみる

そこに映っていたのは・・・






ロリ真姫「えっ・・・これ、私・・・?」

鏡の中には7歳ほどの年齢の女の子が映っていた

誰だこの女の子は・・・いや、誰なのかはわかっている

顔も髪もあの頃と同じ・・・私が小さかった頃と

これで違和感の正体がわかった

確かに考えてみれば足も短いし手も小さいしことりが凄く大きく見える

でもどうやら昔に戻ったのは身体だけで記憶は戻っていないらしい

実際、ことりのことがすぐにわかったし

ロリ真姫「ことり、これどうなってるの?」

意識してみると声も昔のような高い声を出している事がわかった

ことり「う~ん・・・あんまり気にしなくてもいいんじゃない?」

ロリ真姫「気にするわよ!何でこんなになっちゃったの!?」

ロリ真姫「大体ここどこなの?私こんなところ来た事ないし見た事もない!」

ロリ真姫「ことり!何か知ってるんでしょ?教えて!」

ことり「だから、あんまり気にしなくても大丈夫だよ」

ロリ真姫「大丈夫じゃないの!」

真姫「ことりことり!」ゆさゆさ

ことり「う~んもぉ~・・・わがままな子だな~」

ことり「タッチ!」ポンッ

真姫「えっ?」

ことり「真姫ちゃん鬼さんだよ!私を捕まえてみて!」

真姫「それどころじゃないの!」

ことり「もし私を捕まえる事ができたらいろいろ教えてあげよっかな~?」

真姫「や、やってやろうじゃない!」

真姫「待て~!」ダッ

ことり「やぁ~ん♪逃げろ逃げろ~♪」ダッ

この狭い公園の中を何週しただろうか

恐らくもう30分以上追いかけっこを続けている

ことりはずるい。私はこんなに小さいのに高校生のことりに追いつける訳ないじゃない

私もことりも運動はそれほど得意ではない

なのに、私もことりも全く疲れが見えない

ここを走るのはとても気持ちが良かった

まるで自分が風になったような気分だった

永遠とこれが続いて欲しいと思った

ことり「そろそろ追いかけっこはおしまいにしよっか」

真姫「降参したってこと?」

ことり「じゃあ次はトランプやろ!」

真姫「いいから知ってる事を全部話してよ!」

ことり「ふふん、こう見えてことりはトランプが得意なのです」

真姫「聞きなさいよ!」

高い声でことりに怒鳴る

自分でも全く勢いのない、可愛い怒鳴りをしたと実感できた

結局ことりは何も教えてくれず、トランプを始めた

・・・

不思議だ

太陽の光も空気も小鳥の鳴き声も、全てが心地良い

ここでなら不安もなくいくらでも寝ていられるような気がする

ことりともずいぶん遊んだ

かけっこから始まり、トランプ、あやとり・・・

私が目覚めてから何時間経っただろう

日も動いてないし、時計もないからよくわからないけど、ずいぶん時間が経ったと思う

これは本当に嘘じゃなくて3日ほど経ったと自分では思う

その間、睡眠、食事、トイレ、何もしていない、ただ、ことりと遊んでいるだけ

不安ではあるが、もう一生このままでも良いと思ってしまう自分もいた

真姫「ねえことり?」

ことり「何?真姫ちゃん」

真姫「そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」

ことり「う~ん・・・でもなぁ・・・」

真姫「はぁ・・・」

真姫「ことり、膝枕して」

真姫「眠たくないけど、ちょっと寝たい」

ことり「うん、いいよ♪」

真姫「んっ・・・」ボフッ

真姫「ことり・・・」

真姫「な、ナデナデして・・・///」

ことり「クスクス――真姫ちゃん可愛い♪」

ことり「普段からこうやってみんなに甘えればいいのに♪」ナデナデ

真姫「ふ、ふんっ」

ことりの膝枕はどんな最高級の枕よりも気持ちよかった

すべすべのお肌に頬擦りしたい、そんなことしたら怒られちゃうかな?

そっと手をことりのふとももに置いてみる

ことりは白くて綺麗ですべすべで・・・冷たかった

・・・

海未「ことり」

ことり「う、海未ちゃん・・・」

海未「・・・・・・」

海未「全く・・・役目はわかっていますよね?」

ことり「・・・うん・・・」

海未「だったら・・・早く実行してください」

海未「あんまり延ばすと危ないのはことりですよ?」

ことり「わかってるよ・・・でも・・・」

ことり「でも・・・私にはできないよ・・・」ウルウル

海未「ことり・・・」

海未「・・・教会で待っています・・・貴方が無理だというのなら私が代わりにやります」

海未「期限は明日までです」

海未「私は・・・ことりを失いたくない」

海未「明日までに必ず、真姫を連れて来てください」

ことり「うん・・・」

・・・

真姫「ふぁ・・・ぁぁぁ・・・」

ことり「真姫ちゃん、起きた?」

真姫「私、どのくらい寝てた?」

ことり「そうだね・・・8時間くらいは寝てたかも」

真姫「そ、そんなに?」

真姫「・・・・・・」

あれから最低8時間が経過した事はわかった

だが、太陽はこれっぽっちも傾いていなかった

真姫「・・・ことり、教えて」

真姫「ここはいったいなんなの?」

ことり「真姫ちゃん・・・教会に行くよ」

真姫「ことり、泣いてるの?」

ことり「な、泣いてないよ。行くよ真姫ちゃん」

ことりに手を引かれ、教会に向かう

移動中のことりは様子が変だった

前までの明るさがなかった

涙を堪えているような、暗い感じ

それとなくことりに事情を聞こうとしたけどことりは答えてくれなかった

そして、黒の教会にたどり着いた

海未「来ましたね」

ことり「・・・・・・」

海未もことりと同じような黒いワンピースを着ていた

二人の間では何か話が通っているようだった、私は置いてきぼりの状態

真姫「ねぇなになに?二人とも様子が変よ?どうしたの?」

海未「・・・私が代わりましょうか?」

ことり「・・・うん・・・お願い・・・」

ことり「私にはできないよ・・・」

海未「・・・わかりました」

海未「では真姫、行きますよ」

海未に手を引かれる

何故か海未が怖かった

私はことりと繋いだもう片方の手を放さなかった

海未「真姫・・・」

真姫「どういうことなの?教えて」

真姫「ねぇことり。私はどこに連れて行かれるの?」

真姫「ここはどこなの?何する場所なの?」

真姫「あの教会に入ったら私はどうなるの?」

真姫「ねぇ・・・ねぇ!」

ことりは顔をあわせてくれなかった

そっぽを向き、泣いているように見えた

海未「・・・行きますよ」グイッ

海未に強く手を引かれる

ことりと繋いだ手が・・・放れた

真姫「・・・・・・」

真姫「もういい・・・もういいよ・・・」ウルウル

涙を浮かべ、それでも笑ってみせた

涙声で

真姫「・・・バイバイ・・・」

ことりに手を振った・・・

真姫ちゃんを・・・泣かせちゃった

もういいよって・・・

私は何よりも大事な真姫ちゃんの手を放したんだ

真姫ちゃんは笑ってみせて、でも涙を浮かべながら

バイバイって・・・

大好きな真姫ちゃんの笑顔が切なかった

愛しくて・・・悲しくて・・・

綺麗だった空が泣き出しちゃったみたい

いつからかな?

真姫ちゃんのことが好きになったの

最初はちょっと変な子だなとしか思わなかった

でも、μ'sの一員になった真姫ちゃんを見ているうちに

真姫ちゃんの本当の心を知った

普段は気が強いけど、でもホントは甘えんぼで、寂しがり屋さんで・・・

真姫ちゃんをからかって、真姫ちゃんが拗ねて・・・

気が付いたら真姫ちゃんと居た日々を思い出していた

真姫ちゃんが大好きだった

この思いを伝えたかった

でもできなかった

端から見れば真姫ちゃんはにこちゃんと付き合っていた

学年も違うのに、間違えなく私よりもにこちゃんと一緒に居る時間のほうが長い

にこちゃんと一緒に居るときの楽しそうな顔の真姫ちゃん

私は真姫ちゃんと喋ってもあんな顔作らせてあげることできなかったな

私は何度も真姫ちゃんを諦めようとした

でも、時間が忘れさせるのは嘘らしい

・・・

海未「真姫、これに着替えてください」

真っ白のワンピース

輝くほど綺麗な白のワンピース

すぐ近くにはそれとは真逆の真っ黒な教会

教会の門をくぐったら私はどうなるのだろう

いや、今の状況で十分変なんだし、別にもう何が起ころうと驚く気はしないけど

でも、不安だ

寒くないのに、着替える手が震えている

よくわからないけど、海未からの重圧があるような気がする

怖い

怖い

不安だよ・・・私はどうなっちゃうの?

にこちゃん・・・


・・・・・・ことり・・・

・・・

ことり「始まりはいつだっけ?覚えてないけど」

ことり「君に好きって言葉さえ言った事なかったね」

ことり「ねぇ今なら、今ならまだ間に合うのかな?」ウルウル

ことり「ポケットの中、誓いを仕舞い込み」

ことり「君に会いに行くよ」ポロポロ

ことり「・・・・・・」

ことり「やっぱり嫌だよ・・・真姫ちゃん・・・」

ことり「待っててね。私が助けてあげるから」ポロポロ

ことり「私はどうなってもいい。真姫ちゃんを救えるなら」

ことり「だって真姫ちゃんを・・・」

愛してるから

・・・

真っ白のワンピースに着替えた私

海未に手を引かれ、教会の扉に向かう

扉が開く

扉の先には闇しか見えなかった

まるで吸い込まれてしまいそうな

この綺麗な世界の、暗黒の部分を全て集計したような闇が広がっていた

私はこれから、あの闇に溶け込むのかな?

そしたらどうなるんだろう

あの先には私の知り合いは居るかな?

あの先で、本来の世界に戻る事ができるかな?

あの先はこの世界のような心地良い世界なのかな?

海未に手を引かれ、教会の中に入r・・・

「真姫ちゃーん!」

真姫「はっ!」

ことり「真姫ちゃん!」

真姫「ことり・・・ことり!」

海未「こ、こら!真姫!」グイッ

真姫「いや!放して!」

強引に海未の手から逃れる

そして、ことりの元へ、走り出す

ことり「真姫ちゃん!」

真姫「ことり!」

ことりに飛びつく

身体は冷たいけど、心は温かい

ことりの温もりを感じられた

ことり「ごめんね・・・真姫ちゃんごめんね・・・」ウルウル

ことり「真姫ちゃん大好き」

ことり「愛してる、愛してるよ」

ことりはひたすらそう叫んでいた

私は柔らかな笑顔のまま、静かに目を閉じた

ことり「この手はもう放さない」

ことり「愛してる、愛してるよ」ポロポロ

涙声のことりの頭を撫でる

小さく、「いいよ」と呟く

ことり「真姫ちゃん・・・」

チュ

私とことりは白い教会に来た

白い教会の扉の前で、手を、眼を、身体を合わせている

ことり「何でだろうね?」

ことり「愛してるって、たった一言、簡単な言葉なのに」

ことり「何でもっと早く言えなかったのかな?」

真姫「私も・・・ことりの気持ち、気付いてたのに・・・」

真姫「自分の気持ちにも気付いてたのに・・・」

真姫「にこちゃんのせいかな?」

真姫「ことり・・・」

ことり「真姫ちゃん・・・」

私たちはもう一度、口付けを交わした

ことり「この先の扉、ここを進めばね・・・」

真姫「進めば・・・何?」

ことり「・・・まだ、真姫ちゃんには教えられないかな?」

真姫「もう・・・変なところで意地悪よね、ことり」

ことり「ごめんね」

ことり「真姫ちゃん」

ことり「私の想い、受け取ってくれるかな?」

真姫「ふふ・・・」

真姫「『イエス』」

ことり「じゃあ左手貸して」

真姫「はい」スッ

ことりは、私の左手の薬指に赤いリボンを結んだ

真姫「可愛い・・・」

ことり「さあ真姫ちゃん、そろそろ時間だよ」

ことり「この扉の先にみんなが待ってる」

ことり「もうずいぶん長い間みんなを待たせちゃったからね」

真姫「ことりも一緒に来るでしょ?」

ことり「ううん、私は行けない」

ことり「やらなくちゃならない事があるからね」

真姫「そう・・・」

ことり「真姫ちゃん」

ことり「幸せになるんだよ?」

そう言い、ポンポンと私の頭を撫でる

真姫「うん!」

白い教会の扉を開ける

扉の先は真っ白の光

希望が詰まっているようにも見える光

ことりのほうを振り返ると、ことりはどこか悲しげな顔をしていた

それでも、私を強く見守ってくれていた

真姫「いってきます!」

元気良く言うと、ことりが優しく微笑む

幸せを感じながら、光に包まれていった

・・・

真姫「うぅぅぅぅぅんん・・・」

にこ「真姫ちゃん!」

にこ「真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃん!」ギュー

真姫「ヴぇぇぇ・・・ちょ、ちょっと・・・」

にこ「良かった・・・良かったよぉ・・・」ポロポロ

真姫「にこちゃん・・・どうしたのよ?」ナデナデ

私は病院のベッドで寝ていた

聞いた話によると私は信号無視の車に轢かれ、生死を彷徨っていたらしい

あれは・・・なんだったのかな?

身体も元の大きさに戻ってるし、太陽もしっかり動いている

あそこがあまりにも気持ちよすぎたせいか、ここは少し居心地が悪い気がする

ただの夢だったのかな?

でも、夢にしては妙に現実味があったし・・・

キスの感触も覚えてる

真姫「あっ・・・」

左手の薬指

ことりに結んでもらった赤いリボンがある

夢みたいだけど、夢じゃなかったのかな?

真姫「にこちゃん、ことりは?」

にこ「え?ことり?」

にこ「ことりの鳴き声がどうかしたの?」

真姫「いやいや、そのことりじゃなくて南ことりは?」

にこ「南ことり?」

にこ「誰?それ」

真姫「えっ?」

真姫「み、μ'sの南ことりは?」

にこ「μ'sの南ことり?」

にこ「μ'sはほのうみのぞえりまきにこりんぱなの8人でしょ?」

どういうことよ?

真姫「海未・・・海未は?」

にこ「海未ちゃんならそこに・・・」

海未「真姫、目を覚ましたのですね。本当によかったです・・・」

真姫「海未、ことりは?」

海未「はっ?」

真姫「ことりはどこなの!?」

海未「こ、ことりとは・・・?」

真姫「ぇっ・・・?」

真姫「貴方・・・本気で言ってるの・・・?」

海未「す、すみません・・・真姫の言ってる事が理解できないのですが・・・」

誰一人としてことりのことを知っている人間はいなかった

幼馴染の穂乃果や海未、理事長でさえ

ことりとはなんだったのだろうか

私の夢に出てきた幻?

いや、二年生組がμ'sを組んだときからことりの存在を知っている

夢だけに出てきた存在ではないはず

そもそもあれはなんだったのか

本当に夢だったのか?

黒の教会の扉に入っていたら私はどうなっていたのか

この謎が解明する事はなかった

私はたった一人

誰も存在を知らないことりの事を想いながら

少し虚ろな人生を送っている


終わり

参考作品
・Acid Black Cherry イエス

解説
真姫は交通事故に遭い生死を彷徨っていた

夢の世界は生きるか死ぬか決める場所

真姫は死ぬ予定だった

夢の世界のことうみは死神

二人とも死神として真姫を黒の教会(死の世界)に送れと使命された

でも真姫を愛していることりにはそれができなかった

使命に逆らったら存在を消される、それを恐れた海未が代わりに真姫を黒の教会に通そうとしたが思い立ったことりにより阻止される

ことりは真姫を想い本来は死ぬはずの真姫を白の教会(生の世界)に勝手に連れて行った

真姫は無事復活したものの、神に逆らったことりは生の世界でも存在を消されてしまった

現実世界の人間は夢の世界の者達と意志の疎通は不可能なので、ラスト海未は何も知らなかった(逆は可能)

真姫がロリってたのは素直さの象徴。夢の世界の人間は皆素直になる


以上です。ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月07日 (日) 10:41:15   ID: opkwxfu2

やっぱりイエスってABCのから引っ張ってきたタイトルだったんですね

2 :  SS好きの774さん   2014年10月05日 (日) 22:55:34   ID: f2nZOZeP

よく出来てますな、原小

3 :  SS好きの774さん   2014年11月25日 (火) 20:00:42   ID: 9ujPOWF6

.....ぶえん~~~~~~

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