魔王「覚悟するがよい、魔王よ」 その4 (979)

もう、魔王しない。


おバカとマジキチたちが繰り広げてゆく、ちょっぴりダークな王道ファンタジー
いよいよ終盤!4スレ目に突入だよ!



以下は過去スレです




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1346613727

キャラ紹介(簡略化しました)


(偽)勇者一行

魔王 ♂ 歳:不明
勇者となり替わって仲間たちと共に打倒・魔王の旅をする元・魔王ちゃん
大好きなのは人が嫌がる事と自分だけ! 世界は俺を中心に回る!な子。


戦士 ♂ 歳:26
魔王を討つ為にパーティへ入ったムキムキ兄貴な戦士ちゃん(通称:肉ダルマ)
あっちの人かと思われがちだが、詳細は不明。


盗賊 ♂ 歳:22
魔王を討つ為にパーティへ入った捻くれシスコン陰男な盗賊ちゃん
魔王の正体を知っている。終盤に向けてアップし始めたようだ。


僧侶 ♀ 歳:23
魔王を討つ為にパーティへ入った美人で優しい守銭奴貧乳な女僧侶ちゃん
専ら魔王や仲間たちのお説教役。近いうちに凄い魔法を習得するみたい。


女勇者 ♀ 歳:17
魔王打倒を夢見て魔王と共に旅する元気いっぱい本物アホ勇者ちゃん
その実態は神の力を得た女勇者が生み出した複製人間だという。彼女にも力の片鱗が・・・?


魔女 ♀ 歳:15
(自称)天才クールビューティー マジカルキューティクル魔女っ娘ちゃん
面白そうだから仲間に加わったパーティ最年少の後輩。期待のルーキー?


魔剣 不明 歳:不明
魔王に恋する禍々しい力を持った謎の剣。僕っ子な剣です。現在、お喋り機能停止中。

世界を征服しちゃおう組

3 ♂ 歳:不明
自信過剰だが野望はでっかい元・三魔官の一人。三魔官への復讐を誓い、世界をこの手にしようと企んでいるぞ!


女戦士 ♀ 歳:34
逃げ出した魔王を捉えるべく、蘇らされた不死の怪物
元は魔王討伐を目指した過去の勇者の一味の一人だったらしい。その露出の高い装備から痴女と呼ばれる。


武闘家 ♀ 歳:10
勇者(魔王)を狙う謎の生意気ロリ幼女。実は王都騎士団・団長の子。たぶん、悪い子ではない。



三魔官と魔物とアンデッド

1 ♂ 歳:不明
三魔官の一人。ガチムチ肉体派、脱ぐとすごいんです。魔族繁栄の為に人間を滅ぼそうと企む。


2 ♀ 歳:不明
三魔官の一人。色っぽいお姉さまタイプ、すごいエロい。魔族繁栄の為に人間を滅ぼそうと企む。


側近 ♀ 歳:118
魔王様も取り戻そうとしている健気な死霊使いちゃん
一度は魔王に殺されたが、3によってアンデッド?としてデロデロな復活を遂げる。


勇者 ♂ 歳:16
魔王に殺され、勇者の座を勝手に奪われた哀れな本物勇者くん
アンデッドでただのDQN。現在はエルフと共に世界樹を守る?


賢者 ♀ 歳:20
魔王についでに殺されたビッチがアンデッドとして復活を遂げ、賢者へ目覚めた
根元のところはやっぱりクソビッチ。作中最高クラスのおっぱいを誇る。


ペロ ♂ 歳:31
魔王城で働いていた魔物土わらし。元は世界樹を切る仕事を任命されていたが、
とある事情によって魔族から逃亡。側近に義足を与えた後、何処かで幼女をペロペロしている。

世界樹組

エルフ ♀ 歳:不明(見た目年齢なら11~13)
もう1つの世界で世界樹を守り続けてきたエルフ族の生き残り
まだまだ謎が多いミステリアスロリ。しかし、実年齢は・・・。


妖精 ♀ 歳:不明
エルフと共に世界樹を守るちいさな女妖精。明るい性格とは裏腹に相手を傷つける言葉を平気で吐く。


蟹男(クラブマン) ♂ 歳:0歳
世界樹を切る為に生み出された、人間と蟹型魔物の合成魔獣
後にエルフに魅惑魔法をかけられてからは、彼女の元でもう1つの世界に暮らす住人となった。


湯女(女神) ♀ 歳:ないしょ
無念の死を迎えた人間をドラム缶風呂で復活させる謎の女。
しかし、その実態は世界を牛耳る神(自称)であり、世界樹。複製・消去・復元の力を自らの子へ分け与えた。



王都騎士団

団長 ♂ 歳:48
王都騎士団を統べる騎士団長さん
魔法とは違う、不思議な力を操る謎の多い男。世界樹を切ろうと企んでいるようだが・・・。


騎士 ♂ 歳:28
魔王を こうてきしゅ と認め、一方的にライバル視する、騎士道精神旺盛なうざ熱い男
剣の腕だけは団長や重騎士を凌ぐ、騎士団中最高クラス。


魔導騎士 ♀ 歳:17
魔力の質の高さを買われ、王都騎士団へ跳び級で入団した女の子
彼女と行動を共にした仲間はよく死ぬ為、周りから距離を置かれている。騎士くんラヴ。


暗黒騎士 ♀ 歳:27
団長とは血の繋がりがあり、彼を叔父上と慕う闇を纏う女騎士
美女だが、本人は女である事を嫌がり、それをバカにされると途端にぷっつんする危ない人。


竜騎士 ♂ 歳:33
魔物を手懐け、自在に操る技能を持つ魔物使いの男
好んで竜を扱い、背に乗る事から竜騎士と呼ばれる。口調がエセ外人。うさんくさい


重騎士 ♂ 歳:56
王都騎士団中、最年配の男。その屈強な面構えに巨体は大の大人の男が見てもブルっておしっこちびるレベル
剣よりも重火器を好む。団長とは昔からの仲らしく、信頼を置いている。

ひえー、キャラ多すぎじゃね?
とりあえず、簡単に紹介しておきました。本編は今日か明日にでも

魔王城


1「……今の話は本当なのか」

団長「」ニヤニヤ

1「答えるのだッ!!」

暗黒騎士「魔物風情が。これ以上伯父上に近づくな」

団長「おぉーい、これから仲良くしようって相手になんて態度取るのさ?」

暗黒騎士「し、しかし……」

2「お前が本当の事を言ったのだとすれば、私たちが今までしてきたのは」

団長「ああ、無駄な努力だ。良かったね、早い段階で気づけてさ」

2「早いものですか。こっちは多くの同族に怪我をさせてしまった。ましてや死者まで」

竜騎士「だからってオレらに責任取らせルー? ないよネ?」

2「人間が殺したのよ。間接的にお前たちは悪いわ」

竜騎士「ンなアホなー……」

暗黒騎士「叔父上、やはりこいつらと俺たちは相容れない。力づくで」

団長「止せって言ったっちゅーに! やめろバカたれぇ」

暗黒騎士「うっ!?」

団長「……なぁ、三魔官殿。君らは僕に世界樹を失って得る物は何もないと言ったな」

1「そうだ。世界樹が無くなれば人間側にのみ損失が生まれる」

1「マンイーターどもについては我らは対策済みなのだ」

団長「マンイーター? そんな奴らはどうとでもなるさ。確かにとんでもない被害を出してくれそうだが」

団長「そうさね、一番最悪なのは……生き返られなくなる事かな」

竜騎士・暗黒騎士「?」

暗黒騎士「お、叔父上……?」

団長「あっ、つい口が滑っちゃった」

団長「別に僕らが何を得るかなんて、君らにはどうでもいい事だろう?」

1「いいわけあるか! 教えろ!」

団長「魔法が使えなくなる。それがこちらのメリットだ」

竜騎士「……ジョーダン?」

団長「さぁね。実際のところはよく分からないよ」

団長「まぁ、おじさんとしてのメリットはあの女が死ぬ事だけでも十分だけどねぇ」

竜騎士「オレはダンチョーさんが理解不能。アンタ、何がしたイん?」

暗黒騎士「……お、俺は伯父上に何処までも着いて行く! 何があろうと!」

団長「良い子だ。好きだよ」

暗黒騎士「はぁうんっ///」きゅん

2「どうする? 信用できる相手には思えないわ」

1「ふん、ならこちらが奴らを利用するまでよ。絞れる所まで絞ってやろう」

1「了解した。人間よ、貴様らの手を借りてやらん事もない」

団長「さすが~! 魔族のお偉いさんは話が分かって助かるよ」

1「ただし! こちらが貴様らを不要だと思ったら即始末する。文句は?」

竜騎士「有り有りに決まってるYO!」

団長「いや、構わない」

竜騎士「マジすかーッ!?」

団長「……さて、こちらが持つ情報はある程度教えた。次は君たちが僕たちにアレを見せる番だ」

1・2「!」

暗黒騎士「叔父上、奴らは何か隠しているとでも」

団長「正確には隠しているわけではない。そうだろう?」

2「……何故、人間がアレを知っているの」

団長「そこは秘密だ。言う必要はないだろう」

団長「さぁ、見せてもらおうか。成り損ないの魔王とやらを」

魔王城・地下


魔物博士「……吾輩はこの扉を開けたくはない」

1「我らとてそうだ。しかし、世界樹を破壊する今、奴の手を借りねばならんのだ」

団長「そう。アレが持つ力ならば世界樹すら消せる」

2「もう見る事は二度とないと思っていたのだけれど、まさかこんな形でだなんて」

2「扉の向こうへはお前たちだけで入りなさい」

竜騎士「そのままドアをクローズするんちゃう?」

2「そこの男なら簡単に扉を破壊してしまうでしょ。安心なさい」

1「……まぁ、封印されている。動き出す事もないだろうな」

暗黒騎士「叔父上、この先に何が居る? 魔王と言ったが、それは」

団長「魔王であって魔王ではない。魔人とでも言うべきかな?」

1「そんな呼称で例える程に奴は生易しくないぞ」

暗黒騎士「……」

魔物博士「三魔官様よ、もし何かの拍子で奴が解放された場合。吾輩は城の爆破を」

1「えっ、やめてくれ!」

魔物博士「……くれぐれも下手な真似はしてくれるな。解放するには手順がある」

魔物博士「急くのではないぞ、劣等種ども! 後悔するのは貴様らじゃ!」

竜騎士「散々脅しかけられてるYO」

団長「まぁ、だろうねぇ」

封印の扉が開かれた! 団長たちはその先へ進む!

2「……もし、無理矢理封印を破るような真似をした時は地獄ね」

1「ああ、魔王の血を真に受け継ぐ化物だ。恐ろしい事になるのは間違いあるまい」

竜騎士「このダークルーム、嫌な感じがビンビンするで」

暗黒騎士「気を抜けばすぐにでも闇に押し潰されてしまいそうだ」

竜騎士「ヘイ、ダンチョー! そろそろオレらにも何がいるか教えてくれても良い頃だゼ」

団長「あ? ああ、ここにはあの女が生んだ魔王の子どもがいるんだ」

暗黒騎士「それが魔人と?」

団長「奴は魔王にその凶暴性を危険視されたらしくてね。それでこの中に封印されたらしい」

団長「まぁ、今回はそいつの封印を解いちゃおうってワケ。アレが持つ力は世界樹を完全に消せるからな」

団長「僕の野望には必要なんだよ」

竜騎士「ボクの野望って……オイオイ」

竜騎士「ン? チョトストップYO! 世界樹を切る事ができるのは勇者のブラッド引く者だけチガウ?」

団長「アレはお茶目な冗談さ」

竜騎士「Oh…」

団長「確かに僕はあの女勇者ちゃんも欲しいわけだよ」

団長「だが、そいつは別。世界樹を消すとは別の用途があるワケ」

竜騎士「ハァ~~~???」

暗黒騎士「伯父上、この先にまた扉が一つ」

団長「開けろ」

竜騎士「オープンしちゃうの!? いいの!?」

団長「早くしな」

竜騎士「ま、マジかよゥ……こわい……」

暗黒騎士「ふん、軟弱者め。退け! 俺が開ける」

暗黒騎士は扉を開けた。

「!」


扉の先、彼らが目にしたモノとは!

竜騎士「キッズルームですカ、これ」

暗黒騎士「……その様だが。伯父上?」

団長「……」


その部屋には床から壁から天井から、明るい内装で整えられていた。

床には数々のおもちゃが散乱している。奥にはぬいぐるみで出来あがった山が一つ。


竜騎士「は、ハッ! ビビって損しちゃったYOー! 何が魔人カ!」

団長「そうやって油断してる奴が先に死ぬのよね。おじさん、よく見てきた」

竜騎士「やめて」

暗黒騎士「しかし、何処にその封印された者がいる? 玩具しか見当たらない」

団長「そこ」

団長が指差したその先は、ぬいぐるみの山。
よく見てみると山がもこもこと動いているではないか。

竜騎士「粗末な封印だゼ! AHAHAHAHAHA~~~ッ!」

暗黒騎士「伯父上、まさか例の魔人はまだ」

団長「子どもなんだろうな、この様子だと。……やっほー」

団長が山に近づいて声を掛けると、手が一本ぬいぐるみを掻き分けて飛び出してきた。


『ふぇぇ・・・』


竜騎士「あーら、ちっちゃくてプリティーなお手手」

暗黒騎士「こ、このぬいぐるみの山が封印なのか!?」

団長「いや、これは単に埋もれているだけじゃないかな」

暗黒騎士「……本当に、これに世界樹を消す程の力が?」

団長「どうだろうな?」

『ふぇぇ・・・引っこ抜いてよぉ・・・』

竜騎士「おー、よちよち。プリティーでちゅねぇ。ダンチョ、ご対面よろしいカ?」

団長「ダメだ。まだ待て」

団長「初めまして、キミのお名前は何かな?」

『ふぇぇ・・・知らないよぉ・・・』

『お名前なんて、知らないよぉ・・・ふぇぇ』

団長「こいつ少しイラッとくるな」ボソ

暗黒騎士「伯父上、相手はまだ子どもだ。魔物ではあるが」

暗黒騎士「ここは一つ、俺に任せてもらおうか」

竜騎士「あっちゃんはキッズLOVE?」

暗黒騎士「フッ、これでも武闘家ちゃんの子守りをした事がある。問題ない」

団長「そ、じゃあ任せた。おじさんはガキの相手好かないから」

暗黒騎士は手へ近づくと、いつもの仏頂面から想像できない笑顔でにっこり微笑みかけた。
まるで歌のお姉さんのようにフレンドリーに。

暗黒騎士「こーんにちはぁ♪ おっす! 俺、あっちゃん。よろしくな!」

竜騎士「……」ゾゾゾ

暗黒騎士「こっちを見るなッ!! 殺すぞッ!!」

竜騎士「お、おう……」


『ふぇぇ・・・ふええぇぇぇ・・・っ!!』


団長「怖がらせてない?」

暗黒騎士「そ、そんな! …きょ、今日は何をして遊んでいたのかなぁ? あっちゃんに教えてくれよ~」

『ふぇぇ・・・妄想に耽っていたよぉ・・・』

暗黒騎士「ふぅん? どんなのかなぁ、あっちゃん知りたーい!」

『時間止めてあの子のおパンティーをずり下げ・・・ふぇぇ!』

暗黒騎士「……チッ」

団長・竜騎士「こいつ子どもなんだよな?」

暗黒騎士「おら、本題移るぞエロガキが。伯父上!」

団長「お、おじさんの出番きたー?」

竜騎士(一瞬で態度替えやがった)

『ふぇぇ・・・ぼくに何かお用事なのぉ・・・』

団長「ああ、おじさん達は君が持つ削除の力に頼りたいんだ」

団長「世界樹を消す為にね。どうだろう? 君さえ良ければお手伝いしてくれないかな」

『ふぇぇ・・・お外に出なきゃいけないの・・・』

団長「ああ、ダメなのかい?」

『お外は面白くないのぉ・・・ぼくがお外にいるとみんな怒るし、泣いちゃう』

『だから、ぼくはここにいなきゃダメなんだってぇ・・・でも、ここもつまらないよぉ』

団長「うー…イライラしてくるよ。このクソガキは」

竜騎士「まぁ、ぶっちゃけYouはどうしたいのヨ?」

『ぶっちゃけ気が済むまで暴れたいよぉ・・・』

竜騎士「……嫌な予感ガ」

『モツ引っこ抜き、脊髄ぶっこ抜き・・・ふぇぇ・・・』

竜騎士「アカン」

『ふぇぇ・・・レバーを所望するよぉ・・・』

暗黒騎士「伯父上、このガキはあまり宜しくなさそうだが」

団長「いいや、上等さね」

団長「おじさんは君が気に入ったよ。意地でも連れて行かせてもらう」

団長は手へ近づくと小さな声で何か語りかけた。

『ふぇぇ、おもしろいのぉ・・・?』

団長「ああ」

暗黒騎士「伯父上?」

団長「三魔官殿! 聞こえているんだろう?」

≪ 元よりそのつもりなのだろうイヤラシイ男だなぁ ≫

≪ 解放の手順を伝えるぞ。いいか、一つでも間違えてみろ。死ぬ ≫

竜騎士「デッドしないようにソッチサンが何とかしてよネ」

団長「了解だよ。準備はできている」

≪ こちらも貴様らのタイミングに合わせる。……それでは ≫



この瞬間、彼らは最悪の化身を世に再び解き放ってしまったのだ。


『ふぇぇ・・・』

ぎぎぎぎぎ


2「どうやら無事帰ってこれたようね」

魔物博士「ぜ、絶望……吾輩たちはいずれ奴を復活させた事を後悔する!」


『ふぇぇ~・・・』


「!」

団長「ほいほい、無事に帰還しましたー」

1「途中で消されてしまうとばかり思っていたのだが」

1「……再び、お目にかかれましたな。えーっと」

1「魔王さま……」

最悪の化身にして、魔王と湯女の子 魔人!
その姿からは狂気や凶暴性の欠片も見当たらない。4、5歳程度の子ども。

暗黒騎士「かぁわいいぃ~! もう、ぷにぷにだぞ! きゃあ~!」ツンツン

魔人『ふぇぇ・・・汚らわしい手で触らないでよぉ・・・』

竜騎士「襲われるどころか、ここまでハンド出されずYO」

竜騎士「お宅らちょい買い被りすぎでーねノ?」

1・2「……」

三魔官たちは物陰に隠れて魔人を警戒している。

魔物博士「おお、魔王様。吾輩はとんでもない事をしてしまったのかもしれん」

2「ちょっと! 拘束具には触れないで! そこまで自由にさせては!」

団長「こんな重苦しい物まで着けちゃって、よっぽどだね」

団長「それで? 転送装置がある筈だろう。すぐに向こうへ行きたい」

1「……ええい、どこまで知っているのだ!?」

団長「いやぁ、優秀な娘が僕にはいてね。ほら、善は急げよ?」

1「待てまて! 早すぎる! 貴様はそいつ…魔王さまを甘く見過ぎだなのだ!」

1「この方は―――」


ちゅどーん!!


「!?」

魔人『ぐだぐだ言わないでこのおじさんの言う通りにしてよぅ』

魔人『じゃないとぼく泣いちゃうぅ・・・ぐすん』

1「うぉおおおぉぉ~~~!!?」

2「……分かりました、魔王さま。しかし、あまり人間どもを信用なさらない方が」

団長「どうしよう。おじさん悪者にされちゃったよ~、困ったねぇ?」

魔人『ふぇぇ、かわいそうだよぉ・・・ぼくも悲しいよぉ・・・』

2「く、くっ……!」

魔物博士「完全にあの人間にコントロールされておる……まずい……」

団長「ふっ」ニヤニヤ

5~7時ごろに続きでけたら投下しとくで

一方、世界樹の中では・・・。


側近「あへへっ、いひひひひひ!! えへへへへへぇ~!!」

女勇者「あの魔物腐ってるよ!」

盗賊「アイツは確か……」

側近はゆらりと戦士と僧侶へ近づくと、素早い動きで顎を蹴り上げてノックダウンさせた。
間髪入れずに、エルフへ攻撃を仕掛ける。

エルフ「あっ」

盗賊「まずい! ふぐぅっ……!?」どおーんっ

盗賊はエルフを庇って攻撃を受け、壁へ叩きつけられてしまった。

女勇者「師匠!! こ、このぉ~~~ッ!!」

女勇者の攻撃! 鋼の鞭が唸りを上げる!

側近「」ガシッ

女勇者「!?」

さっ、と鞭での攻撃を上体を反らし簡単に回避。後に鞭を素手で掴むと、
そのまま女勇者を手繰り寄せた。

側近「えへぇ~」

女勇者「ひっ!?」

側近の攻撃! 女勇者はお腹に膝での重い一撃を受けた!

女勇者「ぐ、えぇ…………!」ビチャ

側近「むふふぅー……」ニコニコ


僅か1分。仲間たちは側近に叩きのめされてしまった。


側近「あなたたちが悪いんです。そうです。だって魔王様を隠すから」

盗賊「な、何言ってるんだてめぇ……何故生き返っている……」

側近「早く魔王様を返してくださぁい」

エルフ「やめて」

女勇者「だ、ダメだよ。逃げて……!」

エルフ「魔王はここにはいません。あなたは勘違いをしている」

側近「嘘ついても分かるもん」

側近「……どうせ、私が魔王様に近づくとダメだからって、そんなつまらない嘘ついて」

エルフ「信じて」

側近「ああぁ、ああー……魔王様ぁ。ついにご対面ですよぉ……側近はここまで頑張りました」

側近「だから誉めて、ほしいです……///」モジモジ

盗賊「ダメだこいつ完全にイってるぜ!!」

≪ 何ですか、何ですかぁー! 世界樹は置いてけぼりなの!? 酷いよ! ≫

エルフ「あなたは早くみんなを開放してあげて。もう十分でしょう?」

≪ 十分なわけないよ! みんな、勝手ばかりして……! ≫

側近「魔王様ぁ~……」

女勇者「魔王なんてここにはいないの! お願いだから話を聞いてよ!」

側近「……」ブツブツ

女勇者「ちょっとっ」


側近「魔王様私あなたに嫌われてたって一生懸命頑張ります何度叱られても打たれても私はただあなた一筋魔王様がして   欲しい事は何でも側近に申しつけてください私は喜んで足だって目ん玉だってぺろぺろ舐めても構いませんそれで   も失敗しちゃった時は私を殺してくれてもいいんです私何度でも蘇ってあなたさまのお世話をし続けます尊敬とか   そういう気持ちじゃないのかもこれは愛なのでしょうか?私は魔王様にもしかしてお熱?きゃっ恥ずかしいでもで   も魔王様にもそんな私の気持ちにちょーっとだけ気づいてほしいかもなってああ無理を言ってしまってごめんなさ   い殴ってください魔王様になぐられても側近は泣きませんむしろにこにこと喜びますそれぐらい愛しているのかも   しれないああ魔王様子の気持ちを抑えきれないどうしたらこのドキドキを押さえられるの私はなんだかとっても不   安ですそういえば魔王様のために色んなお菓子の作り方を学んで練習したんですよきっと喜んでいただけますよね   気に入らなければまたゴミ箱にでポイしてもいいのそしたらもっと美味しいお菓子を作って魔王様に喜んでもらえ   るように努力しますね側近は魔王様が好きお慕いしてますLOVELOVELOVELOVE寝れない日は最近続きませんでしたか   側近は魔王様の事を思うといつだって眠れないんですよ辛くて辛くてそうだお城へ帰ったらまた絵本を読んで聞か   せますねそしたら魔王様ってばいつもぐっすりご睡眠なさってくれましたよねうふふふふふふふふそんな魔王様の   寝顔を見ているだけで私はいつだって幸せになれましたううん魔王様を見ているだけで最高なんですその声を聞い   ても痺れちゃいますとにかく全部愛しているのお付き合いしていただけないかなそしたら次は結婚しちゃうんだき   ゃあっ恥ずかしい魔王様のために毎朝お味噌汁を作ってお仕事に疲れた魔王様のためにお風呂を用意して美味しい   夕食も作ってそしたらそしたらああ想像するだけで鼻血が出てしまいますよぅ困ったなぁ年々と私たちも歳を取っ   ていって最後は魔王様と一生を終えたい私魔王様と一緒のお墓で眠りたい混ざりあってしまいたい骨まで愛したい   のえへへあ子どもは何人欲しいですか私魔王様の子どもなら喜んでいっぱい生みますお城の中いっぱいになるぐら   い?それとも野球チームを作れるぐらい?何だっていいんですよねぇ魔王様そろそろお顔を見せてほしいです私魔   王様にお会いしたくて仕方がないんですこの気持ち抑えきれません爆発しちゃいそう魔王様魔王様魔王様魔王様魔   王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様魔王様ぁ好き好   き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きだぁい好きですよ」


女勇者「……ま、まともじゃないかもしれない」

盗賊「分かりきった事言ってるんじゃねー! 今がチャンスだ、肉ダルマたち連れて世界樹から出るぜ!」

≪ ダメだって言ってるじゃん! 同じ事何回も言わせないでよね! ≫

エルフ「世界樹の結界が強まっている」

エルフ「!」

≪ 丁度いいよ! そこの変なのにみんな始末されちゃえばいいんだよ! くたばれ~☆ ≫

側近「……へへっ」


側近があらわれた!

盗賊は薬草を口に6、7本放り込むとナイフを持って側近へ近づき、対峙した。

女勇者「師匠! 今の体力じゃ無茶ですよ!」

盗賊「俺が時間を稼ぐぜッ!! お前はそこのエルフと一緒に何とか脱出しろ!」

女勇者「し、師匠ってばぁー!」

エルフ「行こう。匿名希望さんの犠牲を無駄にするわけにはいかない」

女勇者「まだ死んでないからね!?」

エルフ「いいから。私に考えがあるの」

女勇者とエルフは戦士たち3人をずりずりと引き摺り、部屋を逃げ出した!

盗賊「……驚いたな。てっきり何か妨害を働くかと思っていたが」

≪ する必要ももうないからねー! だって、世界樹が出口塞いじゃったし! それにキミも殺されちゃうもんね! ≫

盗賊「さぁな、やってみなければ分からんだろうぜ……」

側近が襲いかかってきた! 側近の攻撃!

盗賊は顔面に飛んできた側近の蹴りを寸でのところで回避し、一回転。
そのまま勢いをつけて切りかかる!

側近「えへぇ~……」

伏せてこれを回避! 続けて足払いで盗賊を転倒させ、義足で何度も踏みつけてくる!

側近「あっはははははははぁ~~~~~~!!!」ダンッダンッダンッ

盗賊「いあ゛ああああああああああっっ!?」メキメキ

側近「どうぞ笑ってくださいよぉ! 私は魔王様にお熱なゴミの負け犬ですっ!」

側近、悲鳴をあげる盗賊へこれまた追い打ちにとサッカーボールキックをお見舞い!
意識が遠のきそうになるも、盗賊は自分の腕をナイフで切りつけ目を覚ました。

盗賊「ふ、深く切り込みすぎた……死ぬほど痛ぇ……!!」

盗賊「くそったれがあああぁーーーッ!!」

薬草をさらに食い、回復も間に合わぬ状態で側近へ仕掛ける!
盗賊、怒涛の連続攻撃! これに側近も爆笑しながら対処!

ナイフに蹴り、肘での攻撃を義足で見事に防御しきる!

盗賊「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!?」

側近「ああぁ…そんなに絶望した顔をしないでくださぁい…」

側近「可哀想だって思えてきちゃうじゃないですか!」

側近は闇の呪文を唱えた! 盗賊をあの世へ直送しようと、側近の影より無数の腕が伸びてくる!

盗賊「!?」

すぱぁんっ!


側近「痛い!」

何処からともなく、側近へ鞭が放たれる! 無数の腕が引っ込んでしまった。

女勇者「やっぱり師匠を置いて逃げるだなんて私にはできません。戦うよ!」

盗賊「このバカ野郎が!!」

女勇者「おバカで結構! 私は私の道を行く。つまりゴーングマイウェイですから!」

盗賊「エルフはどうしたんだ。放っておいたのか!」

女勇者「エルフさんは世界樹に攻撃されないみたいだし、大丈夫」

女勇者「それよりも問題なのはこっちだよ。師匠、ボロボロじゃない…」

盗賊「ああ、勝てる気しないぜ……」

≪ あったりまえぇ~☆ キミ程度の人間じゃあの変なのを傷つけるのは難しいよ ≫

側近「魔王様を早く返して…早く…!」

女勇者「……し、師匠。私もう一度コピーの力を使うよ」

女勇者「そしたら上手くあの敵を惑わせられるかもしれない」

盗賊「だが、世界樹に封じらてたら意味ねぇぜ」

≪ ………… ≫

女勇者「その時はその時だ! 頑張ろう、師匠!」

盗賊「すでに頑張っているぜ」

女勇者は自分と盗賊のコピーを召喚した!

盗賊?・女勇者?「……」

盗賊「コピー体はどうも本体よりステータスが低いようだが。まぁ、戦力としては考えないでおく」

盗賊「世界樹ですら本物と違いがつかない完璧なんだからな。身代わり程度にはなるぜ」

女勇者「隙をついてぶっ叩く! ですねっ」

側近「ふぅ~~~……」ふらり

≪ やっちゃえやっちゃえ~! みんな纏めて倒しちゃってよ~! ≫

側近の攻撃! 目にも止まらぬ速さで女勇者へ蹴りを放つ!
しかし、それはコピーの女勇者。本体ではない。

側近「!」

そこへ女勇者が鞭で足を掬う! 側近は転倒してしまった。
すかさず盗賊がナイフで側近の首を刻みにかかる。が、側近は闇の呪文を唱えた!

側近が骨をバラまくと、それは魔物の形へ変化してゆき合計7体程の魔物が完成した。

盗賊「なにっ――――――」


アンデッド『コンゴトモ ヨロシク』


側近「やってください」

魔物・アンデッドたちは盗賊へ飛び掛かり、牙を剥く!

盗賊「痛ぇ~~~っ!!!」

アンデッド『』ガブガブ

女勇者「し、師匠ぅー!! すぐに次のコピー出して対象を替えなきゃ…」

側近「ふん!」

女勇者「…………う゛えっ!?」

いつのまにか女勇者へ側近が接近しており、蹴り飛ばされる。
起き上がろうとする女勇者を足で踏み抑えこんだ。

女勇者「は、離してよ! ……いだだだだだぁっ!?」

側近「どうして魔王様は私に会ってくれないのですか…やっぱり嫌われちゃった…?」

側近「そんなの嫌ぁ! 振り向いて、魔王さまぁー!」ぐぐぐ・・・

女勇者「きゃああああああぁぁぁーーーっ!!?」メキメキメキ

アンデッド『オレサマ オマエ マルカジリ』モグモグ

盗賊(こんな奴らに食われて俺は死ぬのか……)


まさに絶体絶命。2人は手も足も出ない状態だ。


≪ あっけないなぁー もう少し粘るのかなって期待とかしちゃってたんだけどなぁ。まぁ、ウソですけどね ≫

盗賊・女勇者「   」

側近「しくしく、しくしく……」

?「そんな泣くなよな。泣きたいのは俺の方だぜ」

側近「はっ!? ま、魔王さ―――――――」


戦士「違う俺だあああぁぁぁーーーーーーーーーッッッ!!」


戦士の拳が女勇者を抑えつける側近へヒット! 側近はぶっ飛ぶ!



側近「がぶぶっ……!?」ブシュー

女勇者「戦士さん…………」

戦士「よぉ、待たせてごめんな。そして」

戦士「盗賊ぅ! お前はやっぱり盗賊だな! 俺は信じていたよー!」

盗賊(早いとこ助けてくれねぇかな……)グチャグチャ

その時、盗賊へ攻撃していたアンデッドたちが突風で吹き散らされた!

僧侶「使える……魔法が、使えますよ!! いけます!!」

盗賊「そ、僧侶ちゃん……!」

僧侶「盗賊さん。私もかならずあなたが帰って来てくれると信じていました!」

≪ な、な、なぁっ…!? ≫

≪ 何でキミたち洗脳解けちゃってるの! 何で何で何でぇ! ≫

戦士「気合いだ!! ……というのは冗談で、エルフが助けてくれたんだよ」

≪ ! ≫

戦士「世界樹、お前の洗脳も魔法の許可も、結界を張るも、喋るも、全て魔力が使われている結果だそうだな」

僧侶「全ての記憶を記録する、それだけでも相当な負担がかかっている。そうですよね?」

≪ し、知らないしー……世界樹そんなの知らないしー…… ≫

≪ (ひー……神様魔力使いすぎですよぉー……世界樹はそんなミス絶対しないもの……) ≫

僧侶「所詮は偽りの神。同時に様々な行動を起こす事はできない。限界がある」

戦士「というワケらしいが、正直そんな事はどうでもいい。まずは目の前の状況をだ」

側近「…………どうして」

側近「魔王様じゃない。ひどい! あんまりです!」

アンデッド『ウォオオオオオオオオオオオー……』

僧侶「魔物。なぜ世界樹の中に……」

女勇者「あの、魔女っちはー?」

戦士「誰かさんが強く殴り過ぎたんだろう。起きてくれないねぇのよ」チラ

盗賊「えー……」

僧侶「後で回復を……。いえ、またここで魔法を封じられたりしたら」

盗賊「おい、まだ例の複製の力は使えるんだろうな?」

女勇者「なんとか…」

盗賊「頼むぜ。俺たち3人で魔物を攻撃する。お前はコピーを作り続けて世界樹を撹乱しとけ」

盗賊「奴がコピーに引っ掛かっている間に倒すぜ」

女勇者「あいあいさー!」

女勇者は複製の力で次々と仲間たちのコピー体を作りだしていった。
やはり世界樹は混乱し、手を出せずにいる!

その隙に仲間たちが側近とアンデッドたちへ仕掛けにかかった!

戦士「勇者殿がいなくとも、良いとこ見せてやるぜ」

戦士は素手でアンデッドたちを殴り抜ける。しかし!


アンデッド『…………ふぅ』シュゥゥ


戦士「回復しているのか!?」

盗賊「戦士、そいつらはアンデッドだ! こ、こ、殺しきれないぜ!! ぐふぅ…」

盗賊は側近の攻撃を必死にかわしつつもナイフでの攻撃を狙う。
だが、側近もやはり一筋縄ではいかない相手なのだ。先程のように攻撃を捌かれ、カウンターも貰ってしまう!

僧侶は回復呪文を唱えた!

僧侶「またアンデッド! これでは対処のしようが…」

戦士「いいや、あるねぇー!!」

戦士「僧侶ちゃん、そいつらには回復の魔法を。奴らは体内を無理に活性化させるとその自己再生機能を狂わせて死
ぬ!」

僧侶「えっ!?」

戦士「遅れましたけど、長い休暇からのおみやげっス」

僧侶「…に、にわかには信じられませんが…やってみます!」



側近「魔王様を出して! 魔王様を出してください! ああぁぁっ!!」ドスンドスン

盗賊「し、死ぬぅ……」ボキボキ

ここまでっす

世界樹の前


魔王「何処へ転送されたと思えば、こんな所かぃ」

湯女「お気に召さないかしら? 邪魔をされなければ何処でもいいかと思って」

湯女「そして、貴方の死体は世界樹の下に埋めてあげようかと思いましてね~♪」

魔王「違うな。そこへ埋まるのは貴様よ。さぁ、滅びるがよい…!」

跳びかかった魔王! 魔剣での叩き下ろし攻撃!

湯女「バカの一つ覚えですことね」

片手に槍、そして盾を構えた湯女は魔剣を盾で弾き、槍をずんっ、と魔王へ突き出す。
その一撃を空中で体を捻り咄嗟の回避を取るも槍を腹に掠めて地に落とされてしまった!

魔王「あうっ」ドサ

そこへ湯女は止めを刺そうと槍の切っ先を魔王の頭へ落とそうとする!
だが、魔王は地面の土を乱雑に掴み取ると、湯女の顔へぶっかけた!

不意打ちに反応できず湯女は目の中に砂が入った事で仰け反る。


魔王の攻撃!


魔王「ちぇすとなのだ~~~ッ!!」

湯女「いやぁ……!? ――――――!」

槍を前に出して防御態勢を取るが、勢いよく横一閃をくらわせられ、槍が遠くへ弾き飛ぶ。

魔剣を振り切った魔王へ続けて盾で押しだそうとするも、魔王の反応の方が今度は早い!
盾を蹴り上げ、湯女の防御を完全に崩すと一気に踏み込み、強烈な頭突きをかました!!

湯女「あ痛ーっ!」ゴツンッ!

魔王「こんなものか! こんなものだったか! ぐぎゃばばばばばァ~~~ッッ!!」

頭を押さえてふらつく湯女の胸倉を掴むと、無防備なそのお腹へ魔剣を何度も突き刺す!
大きな穴が空いてしまうかというほどに! 激しく突き! 引き抜くほど彼女の腹から血がどばどばと溢れ出る!

湯女は必死に魔王の拘束から解かれようと足で魔王を蹴り続ける。
だが、その程度の足掻きに魔王が攻撃を止める事はない。

魔王「バーカめ! 余が一度捕まえた獲物を離すと思っておるのか!」

湯女「こ、このっ!!」

湯女は無詠唱で氷の魔法を発動! 胸倉を掴む魔王の手を逆に取り、掴み返すと魔王の手がカチコチに凍ってしまった!

魔王「つめたッ!?」

驚いて手を離してしまい、解放された湯女が新たな魔法の槍を召喚して魔王へ反撃!
連続で行われる突き! 強烈な突きのラッシュ! 魔王は凍った片手を体で庇いつつ、魔剣で槍を受け、回避をとる!


湯女「お上手ですねぇ~。どれだけ耐えられるか試してみましょうか?」

魔王「ぬぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉッッーーー!?」

一瞬の隙を魔王は見逃さなかった。槍を捌きながら手元で魔剣をくるっと逆手に持ち替えると、
力を込めて魔剣を振るい押し返してゆき、足で上手く槍を巻き取って地面へ踏み落とす!


魔王「おおおおおおおおおおぉぉぉこのッ、小癪な豚が!!」


槍を思い切り踏みしめ、体を横に態勢を変えながら軽く跳ね上がり、湯女へ縦回転切りを放つ!

新たにもう片方の手へ槍を召喚した湯女はこれをギリギリで受け流してしまった!
魔王は湯女を蹴ると、その反動で彼女から跳び上がって宙を翻り、一旦距離を離した。



魔王「ぬぅぅ…………はぁ、はぁ。ぜーぜー!」アセダラダラ

湯女「うふふっ」

湯女「消耗していますね、魔王。私には分かりますよ」

魔王「黙れェッ!!」

魔剣で凍った片手を切りつけ、魔法効果を破壊すると元の状態へ回復させる。
その間もじりじりと湯女は両手の槍を手元で遊ばせながら、魔王との距離を詰めてくる。

魔王(魔法専門の魔法使いタイプかとてっきり思わせられておったが、ここまでやりおるとは)

魔王(しかし、若干余の方が近接格闘では上。再び隙をついて猛攻するまでよ……)

湯女は光の魔法を発動させた! 聖なるいかづちが世界樹の下周辺へ無差別に広がり、草木を焼き焦がす。
魔の者である魔王がこの魔法を受けては危険だ!

魔王「一気に蹴りをつけに来たであるかッ」

ボロボロのマントに身を包み、魔剣を前に構えて襲い掛かるいかづちを防ぐ魔王。
いかづちはいつまでも止まる事なく魔王に身を焼く。消耗されつつも、湯女へ向かって進むが迂闊に攻撃へ出れなくなってしまった。

魔王「ああぁぁああぁぁあぁ~~~……」

魔王「ま、魔法の使用を禁ずるッ!!」

湯女「忘れてしまったのかしら。私は神。王が制定するルールなどに神は縛られないのです」

魔王「ふん、戯言を」

しかし、いつまで経ってもいかづちでの攻撃は止まない。魔王のルール魔法が発動しないのだ。

魔王「……何故なのだァー!?」

湯女「さっき、世果樹の中で使用させてあげましたよねぇ。その時に世界樹に記憶させて、解析させちゃった♪」

湯女「その魔法……いいえ、正確には魔法ではないようだけど。どうせあなたのお父さんが私の為に自己開発したものでしょう」

魔王「は!?」

魔王「パパ上が何故貴様なんぞ売女の為に作る! これは余の物だ!」

湯女「ご自由に。だけど、一度破ってしまえば何も心配はいりません。所詮は私の力の真似事だものね。だからダメな
の」

魔王「余のパパ上を侮辱するなァァァーーーーーーッ!!!!」


弱点である光の魔法なんてお構いなしに、怒り狂った魔王は湯女へ攻撃をしかける!
その身をいかづちの中で晒している間、死へ近づく事も気にせずに。

怒りに頭を支配され、冷静に行動を取れるわけが今の魔王にできるわけがないのだ。

出鱈目に、力任せに、魔剣を槍へ叩きつけ、そして何度も弾かれて刺される。
それを何度も繰り返され、さらに光魔法によって身を焦がされ、魔王は見て分かる程までに消耗しきっていた。

魔王「…………」

血反吐を垂れ流し、血塗れになりながらも湯女へ懲りずに向かってゆく!

湯女のカウンター攻撃! 槍を魔王へ突き出しながら、片方の槍を投げだして空いた片手で指をパチンと鳴らす。
爆発魔法がその手へ宿り、そのまま平手を魔王の顔面へお見舞いした!


魔王「~~~…………」ジュウ~


小爆発が収まると、魔王は白目を剥いてその場へ崩れ倒れてしまった。
湯女はお構いなしに倒れた魔王の上空で魔法の矢を召喚し、雨のように一気に振らせる!
追い打ちをかけるかの如く、次々と大量の矢が体へ刺さり、魔王はぴくりとも動かなくなってしまった。

魔王「…………」

湯女「驚いた。ここまで傷つけてまだ死んでしまわないなんて」

湯女「少しだけ、元のあなたへ戻れたのかもしれませんね。感心感心」

魔王を足を使って仰向けの状態にさせ、槍を胸へ向けた。

が、何を思ったか槍を引っ込めて魔王の近くへしゃがんでその顔を優しく撫で始めた。

湯女「ああ、哀れな魔物。魔族の勝手で作られ、生み出され、良いように使われて」

湯女「あの人が私たちの子を受け入れてさえいれば、あなたは生まれる事もなかったのに」

湯女「……はたして、どちらが魔族を上手に導けたのでしょうね。それは神のみぞ知ること」

湯女「あ、私が神様でした♪」


魔王『ぎゃああああああああああああおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ』


湯女「!」

魔王の鋭い爪が湯女の喉を掻き切ろうと伸ばされる! 瞬時に湯女は後ろへ反れ、立ち上がると魔王を睨みつけた。

湯女「こうなる事は予想していましたよ、魔王。あなたは負けず嫌いだものね」

湯女(第2形態。やはり彼の生命に危機が訪れる時に自動的に変化する)

湯女(言うならば、魔王自己防衛モード。とはいえ、それは敵を殲滅するまで止まらないのかしら? ならばただの獣ね)

魔王『      !!』

声にもならない雄叫びをあげて跳ね起き、その身を凶暴な魔物の容姿へ変化させてゆく。
落ちている魔剣を口で咥え取り、4足で立つと迷いなく湯女へ駆け出した!

湯女「さぁ、おいでなさい。私があなたを癒してあげましょう」


もちろんその言葉の意味は魔王の死を意味するのであった。

餓えた野獣の如く、そのギラギラと鈍く光る眼光は湯女のみを捉える!
人間体の時よりも数段も素早さを増し、その動きで彼女を翻弄し、魔法をかわす!

湯女(やはり速い)

湯女(避け際に攻撃を多少加えてもすぐに傷を塞いでしまう。回復速度までもが、速い)

湯女(おそらく急激な身体強化によって体内の代謝までも高くなっている)

湯女「だから何だって話なんですけどね~!」

脅威的、真の化物レベルまで達した魔王の動き。しかし、それは実に単純な動きしか取らないのだ。

真っ直ぐ突っ込んできて魔剣を振るい、爪で切り裂き。湯女はそれを冷静に観察して、容易に回避してみせる。
時々織り交ぜられる攻撃は全て魔王の体に的中するも、すぐに傷は塞がる。

攻撃が当たらない事にイラついたのか魔王はさらに無茶な攻撃を放ちにかかる!

湯女「こういうものは先に折れた方が負けなのですよぉ」

湯女は光の魔法を発動した。すぐ足もとに眩しく輝いた直径5mの魔法陣が展開される。

無我夢中に湯女を狙う魔王にはその魔法陣が目に映らなかったようだ。
上手く湯女へ誘導され、陣の中へ足を踏み込むと魔王は見えない電撃に感電してしまった!


魔王『あぎぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃん……!?』ビリビリ


湯女「いくら回復速度が早くとも、一気に焼かれてしまえばその意味もないでしょう」

湯女「光に浄化されきってしまいなさい、魔の者よ」

電撃から逃れようと身を悶えて陣の中を暴れるも、陣の淵には結界が湯女によって張られ、脱出できない!

しかし、魔剣を持つ魔王にとってはそんな壁はあってないような物!
痛みの中でふと冷静さを取り戻した魔王は口に咥えた魔剣で陣を突き刺し、魔法を破壊した!

湯女「あらら~!?」

よもや自分が張った魔法陣に結界が狂った魔王に容易に破壊されるとは思わなかったのか、
湯女は多少動揺を表情に映してしまった。

そこへ魔王が跳び込む!

即座に槍と盾を召喚し、掴むと魔王の突進を受け止めて槍で体を突き刺す。
だが、魔王は痛みに仰け反ることなく! 両手の爪で湯女を裂いた!!

湯女「っ~~~……!!?」ブシュ…

彼女の背後へ着地し、続けざまに跳び上がりながら魔剣で湯女の背中を切りつける!
ぱっくりと開いた背中の肉は血を巻き散らし、湯女は絶叫した!

魔王『ふんっ』

その様に魔王は鼻で笑い、地面に4つ足をぴたりとくっつけ、力を込め始めた。
一気に魔王の周りに地獄の雷電が放出! 雷電は魔王に纏い始め、さらに力を溜める!

湯女「えぇっ……!」

魔王の異様な様子にようやく気づく湯女。

しかし気づくのに遅すぎたのだ。魔王は既に、彼女へ向かっている!


魔王『■■■―――――――ッッッ!!!』


地獄の雷を身に纏い、全てを焼き払いながら、真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ湯女へ体当たり!
先程の攻撃で体に力を込められずにいた湯女は回避が遅れ、焼かれてしまった!


湯女「ああああぁぁぁ~~~んっ!!!?」プスプス…


寸でで体当たりだけはかわせたものの、纏った雷は重傷となった湯女を攻撃するに十分なものであった。
ボロボロになった湯女はその場に崩れてしまった。

湯女「…………うぅ、こんな、油断した結果だというの?」

魔王『ふーっ、ふーっ、ふーっ……!』

湯女「魔王、あなたの力を見くびっていたのかもしれません」

湯女「どうやら私の負けに終わりそうです。さぁ、あなたの好きなようになさいな」

魔王『ぎゃぼおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ』

勝利の雄叫びをあげ、喜んで湯女へ牙を剥いてかかる!



湯女「う・そ ♪」



突如、天空が眩く輝くとそこから巨大なぶっとい熱線が魔王へ降り注ぐ!
油断していたのは魔王だったのだ。魔王は成す術もなく、天空に住まう竜の息吹に焼かれてしまった。


魔王『ぎゃうう~~~~~~~!?』

しゅううぅー・・・


魔王『あぐっっ…………』

湯女「不意打ちや眼潰しがありならば、これぐらい可愛いものでしょう」

湯女「少々手を焼かれましたがこれで終わりねぇ」

回復呪文を自身へ唱え、魔王へつけられ開けられた傷や穴を治癒。
召喚した槍を全て消しさり、魔王を憐れみを秘めた眼差しで見つめる。

魔王『!』

魔王は傷ついた体に鞭を打ち、無様にも這って湯女へ必死に近づきその細い足を掴んだ。
しかし、ヒールのついた靴で腕を上からぐりぐりと踏まれると、小さく悲鳴をあげて手を離してしまった。

湯女「諦めが悪いなんて男の子じゃないですよ。引き際が肝心!」

魔王『うううぅぅ…うううぅぅ…!』

湯女(いつになっても戦意を喪失してくれない。本当にただの狂った獣か)

湯女「魔王、あなたはどこまで人を殺める事に執着を抱いているの?」

湯女「戦うだけでしか自己を確立させられない。戦って相手を殺めるだけがあなたに満足を得らせているのか」

湯女「本当に可哀想な子……」

魔王『ふぐぐっ~!! んぐーっ!!』

魔王は何とか立ち上がろうとしているが、回復が追いつかず傷が全く癒えない。

そのボロボロな体は見た目以上に中身まで酷くなっていたのだ。

湯女「せめて、神の慈悲なりに、楽に最後を迎えさせてあげましょう」

ゆっくりと魔王の首へ手をまわし、力を入れかけた。

その時――――――!


どかぁ~~~ん!!


湯女「!」

湯女へ一発の砲弾が打ち込まれ、爆発を起こした。
爆発と共に砲弾の破片が湯女と魔王の体へ刺さり、湯女は足を怪我して転んでしまった!

湯女「人間の兵器! 何処から!」

重騎士「今こそが勝機得られる瞬間ッ!! 挟み込んで殺せ!! うおおおおぉぉ」

なんと、王都騎士団の三人がこの場へ戻って来ていたのだ。

重騎士の叫びを合図に、騎士が剣と手斧を構えて湯女へ切りかかる!
さらに魔導騎士が火炎の呪文(大)を唱え始めているではないか。

騎士「これはぁぁぁけっしてズルでも、卑怯でもない! これぞ戦略ぅ!」

湯女「きゃあっ!?」

ぴたっ

騎士「……やはり無抵抗な女性に刃を向けるなど騎士どぉ―――――ぶぅぅ~~~……っ!!?」ドヒューン

魔導騎士「ああっ、騎士くんが!」

騎士は湯女の魔法に吹き飛ばされてしまった!

湯女「素敵な精神をお持ちで。とても感動的です。だけど、無意味ですね」

重騎士「怯むなバカ者! 奴は傷を負っている今しかないぞっ」

魔導騎士の火炎魔法(大)が発動。巨大な火の龍がうねりを上げ、湯女へ牙を剥く!
だが、湯女が片手を横へぶんっと振るうと龍は一瞬にして消え去ってしまった。

魔導騎士「…………」

湯女「上位魔法のくせにやたら軟い物でしたねぇ。あなた、本気でそのつもり?」

魔導騎士「さぁ……」ボソ

湯女「?」

魔導騎士「う、うう……! ボクの魔法じゃ歯が立ちません……」

重騎士「騎士を連れてすぐに離れるがいい! 最大火力でぶち放つぞ!」

重騎士が構える大槍から蒸気がしゅうしゅうと上がり始め、熱で景色が歪む。
砲台からは限界まで溜められた魔力の輝きが漏れだしている。

湯女(魔力を実弾に込めているのか。人間はいつのまにそんな技術を)

湯女「利口な種族ですこと♪」

重騎士「てェ――――――――――ッ!!!」

魔力の色を纏った鈍く輝く砲弾が重騎士が持つ大槍から射出された!
湯女は座りこんだまま、発射されてきた砲弾を見つめ

湯女「時間よ止まって。私だけの為に~」


・・・

重騎士「     」

騎士「     」

時間停止した世界の中、唯一この場で行動する事ができるのは湯女のみ。
砲弾は空中で固定されてしまったかのようにピタリと運動を止め、固まっている。

湯女は余裕を持って立ち上がると、砲弾を触り、向かってゆく方向を無理矢理替えた。

湯女「こっちだと世界樹に当たっちゃって可哀想だから。お返ししますねぇ」

湯女「それにしても歯応えが……直前で魔王と戦ったからかしら」

湯女「まぁ、この子も頑張ってたけどさすがに神様には叶わなかったわねぇ~♪」

魔王『    』

魔王は、以前のように時間停止した世界へ入り込む事もなく、ぐったりその場で倒れたままであった。

湯女「時は動き始める。私だけの為に」

・・・


重騎士「――――――…………はぁっ!?」


どかあああぁぁ~~~んっ!!!


無惨にも、撃った砲弾は撃ちだした重騎士へ当たり、大爆発を起こした。

騎士「重騎士殿ぉーーーっ!!」

騎士「な、なにが……なんなのだ……! なんなのだぁ!?」

魔導騎士「騎士くん落ち着いて……私たちがしっかりしないと」

騎士「だって弾が! 撃った弾が…確かに奴へ向かった弾が…」

湯女「これ以上は無駄だとお分かりいただけましたぁ?」

騎士「うっ!」

湯女「とっとと元の世界へお帰りなさい。ここはあなたたち人間がいては良い地ではないのですよ」

湯女「さぁ」

騎士「……主よ、そして我が父よ。我が騎士道に反する事を御許ししたまえ」

勇ましく吼えると、武器を持ち直して湯女へ向けた。

湯女「どうしましたか」

騎士「私は女を傷つける趣味もない。それは騎士道から、紳士として外れる行為だ」

湯女「まぁ、素敵な人」

魔導騎士「かっこいいよ……!」

騎士「言うな照れるッ!!」

騎士「……だが、我が戦友を傷つけし者を放って逃げ帰るなど言語道断」

騎士「よってあなたは私が切って取らせてもらう」

湯女「考えを変える気は」

騎士「既に、腹は括った! 分かってくれ!」

湯女「では殺しますね」

騎士は手斧を湯女へ投げた! 予想していたと言わんばかりに湯女は首をくいっと傾け、攻撃を回避。
その隙に騎士は疾風如く一気に湯女へ接近し、両手構えで剣を盾に振るう!

しかし、攻撃は湯女が剣へ指をちょんと触れるだけで止まってしまった。

指一本で王都騎士団一の腕前を持つ騎士の剣は止められたのだ。

騎士「!」

力をさらに込めるも、剣はピクリとも動きはしない。
不敵な笑みを浮かべる湯女へ騎士は膝での一撃をお見舞いする!

・・・が、それも空いた片手で受け止められる。

騎士「~~~!」

騎士は、絶望した。

湯女の攻撃! 痛恨の一撃!!


騎士「…………げぇっ!」ドサッ


湯女「こうなる事がどうして分からなかったのでしょう。全くもぉ」

魔導騎士「き、騎士くん……」

湯女「残るは一人、魔法使いさん。あなたは逃げてくれるかしら」

魔導騎士「…………」

魔導騎士「」にや

湯女「あら、何がおかしかったのでしょう?」

魔導騎士「予想したげる。あなたはここで消えてなくなってしまう」

湯女「は?」

魔導騎士「そうね、あと3分もすれば十分だと思うなぁ……」

魔導騎士「残念だったね。あっけない終わりを迎える事になって」

湯女「?」

魔導騎士「魔王にでも倒されるかと思っていた? でも、魔王は予想以上に弱かった」

魔導騎士「ううん、あなたが強すぎたんだね」

湯女「意外と一人になると饒舌になるのですね。お喋りさん」

湯女「私がここで消されるわけにはいかないわ。だってまだその時では―――」

魔導騎士「ボク……ううん、私あなたにはそれなりに感謝してるよ」

魔導騎士「あなたのお陰で、あなたが作ったこの世界のシステムで」

魔導騎士「私は頂点に立つ事ができるんだからね!!」

湯女「…………」

湯女(世界樹、この女の子をすぐに検索して調べて。世界樹。……遮断されている?)

湯女「少しばかり物知りさんのようですねぇ~♪ ちっちゃいくせにやる~」

湯女「良ければ、その兜を取って可愛いお顔見せてくださいな。興味があるの」

魔導騎士「本当にバカな女だよ……」


『ふぇぇ・・・』


湯女「!」

突如、湯女へ向かって禍々しい力が飛ばされた!

湯女(ま、魔力を私へ最大加担! 防御を―――)

湯女「くぅぅっ……!!?」ズガガガガガ

?「やれやれ、いつ見ても気に入らん面だよ。腹が立つ」

湯女「…………はぁはぁ、はぁはぁ!」

団長「元気だったか尻軽女さん。このくず野郎」

魔人『ふぇぇ・・・ふぇぇ・・・』

ここまで。戦いばっかになっちゃったー!

湯女「あ、あらぁ……そちらこそ」

団長「ああ、元気だったよ。お陰さまでね」

団長「第二撃発射して」

魔人『ふぇぇ・・・ぶち込むよぉ・・・』


ちゅどぉーん!


湯女「きゃああぁーーーっ!!?」

団長「……まだ耐えるのかよ。本当にしぶとくて嫌になるねぇ」

暗黒騎士「アレが叔父上を騙し、弄んだ女か」

暗黒騎士「ふん、武闘家ちゃんが可哀想で仕方がない。全くだよ」

竜騎士「なんつー一方的プレイYO……おっかね」

団長「やぁ、魔導ちゃん。お仕事お疲れ様だね」

魔導騎士「ボクだけじゃありません。騎士くんも重騎士さんもいたから」

団長「あー、そういやいたっけね? ま、いっか」

湯女「う、うう……ねぇ、あの子は元気かしら。大切にしてあげてる?」

団長「どうだと思う? 発射」

魔人『ふぇぇ・・・容赦ないよぉ・・・』


ちゅどぉーん!


湯女「…………かはっ」

湯女は三発目の魔人が放った攻撃に耐えきれず、吹き飛ばされてしまった。
そのまま世界樹へ叩きつけられる。

団長「ふーん、やっぱり何百年もブランクがあると削除の力も劣化しちゃうわけね…」

魔人『ふぇぇ・・・力漲らないよぉ・・・』

団長「いや十分だよ。あの女を見てみなよ、ボロボロさぁ…いい気味だ」

団長「おい、片手が消えかかっているぜ? 面白いな」

竜騎士「ダンチョ張っちゃけてるネ」

湯女の左腕が徐々に薄くなり始めた。この世から消えかけているのだ。

それでもなお、団長は魔人に攻撃を止めさせず、その光景を楽しんでいる。

団長「はははははは、あはははははっ!」

湯女「……な、なにが楽しいのかしら。悪趣味な人」

団長「楽しいよ! 楽しいさ! この日を僕はどれだけ待ち焦がれてきたと思っているんだ!?」

団長「お前は僕の生涯で一番の、最悪な、女だ! 貴様のせいで滅茶苦茶にされちまった!」

団長「消えて償えッ」

湯女「あらあら、うふふ……」

湯女はついに、魔力を使い果たしてしまった。
もう次の消去攻撃を防ぐ術は彼女に残されてはいないのだ。

団長「よーし、王国騎士団。退去準備」

竜騎士「もうエンドするカ?」

暗黒騎士「伯父上、俺だけは最後までお供します」

団長「必要ないねぇ。それより君らは魔導ちゃんと一緒に倒れた二人を何とかして」

団長「コイツが消えると同時に世界樹も無くなる。そしたら色々大変だから」

暗黒騎士「……お、叔父上ぇ。分かった! 叔父上の命に従うぞ!」

竜騎士「どーも、オレには分からないネェ……」

魔導騎士「団長。ボクは最後にあの人に言いたい事があるの……いい?」

団長「30秒くれてやる。早くね」

魔導騎士「ありがとうございます」

魔導騎士は団長の傍を離れ、消耗し切った湯女の元へ近寄り、耳打ちした。


魔導騎士「さ・よ・う・な・ら。うふふっ!」

湯女「……まさか、あなたって」


魔導騎士「それじゃあね、バイバイ」

団長「もう済んだ? それじゃあ退いてくれよ」

魔導騎士「うん…頑張ってね、団長……」

騎士たちは倒れた二人を担いで早々避難を始めた。
その場に残るは騎士団長と湯女、そして魔人の三人のみ。

湯女「…………世界樹、私はもうダメみたい」

湯女「今までのツケが回ってきたのかしら。うふふ、悪い事はしていないつもりだったのだけれどね」

団長「くだらんな」

団長「そして何よりも呆気なさすぎる」

湯女「……ねぇ、世界樹が無くなって後悔しない? 大丈夫?」

湯女「きっと大変な事になる。最悪世界は滅びの道を進むかもしれないわ」

湯女「それでも、私を消してしまってだいじょうぶ?」

団長「消えろ」

魔人『ふぇぇ・・・ふぇぇ・・・』

魔人の攻撃! 全てを抹消する怪光線が湯女へあびさせた!
湯女は抵抗する事もなく、目を閉じてその瞬間を待つ。

湯女「自分の子に消されるのも悪くはないのかもしれません」



湯女「それにしても、本当にあなたって面白い人……――――――――――」

魔女「……頭痛ぇ~」

エルフ「おはよう。みんなはもう向こうを加勢しに行った」

魔女「は?」

魔女「そんな事より酷く頭が痛みますのよ。これが話に聞く二日酔いですの……?」

エルフ「違うんじゃないかな。それより、私たちも戻るべきかな」

魔女「あのね、色々言ってるところ申し訳ないんだけれど。私、状況がまだよく分かってませんの」

魔女「蟹男を倒した後からの記憶がとても曖昧で~……うーむー……」

エルフ「……」

魔女「どうしましたの? そこは気遣うところでしょうにー」

エルフ「世界樹内の魔力が大幅に減っている」

エルフ「それにどこか、変かもしれない。こんな事は初めて」

魔女「むむ……確かに魔力が入った時よりも少ないですわね」

エルフ「世界樹が何かアクションを起こす時、かならず魔力を消費する」

エルフ「だけれど、これは異常」

エルフ「まさか」

魔女「何か心当たりでも?」

エルフ「世界樹が、そしてあの人が苦しんでいる」

エルフ「……世界樹が死ぬ」

僧侶「~~~~~~……」

戦士「俺たちで僧侶ちゃんを全力支援だ! 絶対に詠唱の妨害をさせるな!」

女勇者「とは言っても結構今厳しいんですよぉー!?」

アンデッド『『『ぼぉあ~~~~~~~~』』』

盗賊「こっちもだぜ。早いとこ何とかして回復を……!」

側近「右へ3体、2体で左側をカバー。残りは私と共に攻撃してください」

側近「この人間は悪です…魔王様を隠している…最悪ですっ。絶対に許さない」

召喚したアンデッドたちへ冷静に指示を出しつつ、盗賊の攻撃を回避し、隙あらば蹴りを叩きこむ。
腐っても魔王の側近なのだ。彼女の強さと判断力は本物だった。

盗賊「余所見してるほど暇なつもりか!!」

盗賊は側近が攻撃を回避した瞬間を狙い、隠し持っていたナイフをもう片手へ装備。
それを彼女の足首へ投げつける! 見事命中するとバランスを崩した側近はよろけた。

側近「!」

盗賊(あの傷の修復力。そして体のあの腐敗具合。こいつもやはりアンデッド)

盗賊(……だが、俺たちが今まで戦ってきたアンデッドとはどこか違う様子だぜ)

側近の体は確かに傷を高速治癒し、元の状態へ戻ってしまっている。
しかし、彼女が無理に動くたびにその体は軋み、肉がぷつんぷつんと断裂を起こす。

完全な回復であっても、側近自身が与える負担を軽減できずにいるのだ。

側近「きひゃひひひひ」

盗賊「そこだぜッ!!」

先程ナイフの投擲によって傷つけた足首を狙い蹴りをくらわせた!
修復しきっていなかった足は反応に遅れて掬われ、側近は床へ倒れる!

転倒した側近へ盗賊は跳びかかり、そのまま腕を押さえ、膝で足を潰し、拘束した!

側近「いやああぁぁぁぁ! 魔王様助けてください! 押し倒れてしまいましたぁ…!」

盗賊「俺が変な事するみたいじゃねーか! この腐れ魔物が! 暴れるなよ……!」

盗賊「僧侶今だぜ! 今のうちにそいつらの始末を!」

戦士「任せたぁーーー!!!」


僧侶「~~~~…………とっておきの回復魔法、いかせていただきます」キリッ


僧侶は回復呪文(大)を唱えた! 部屋全体にあたたかな輝きが充満する!

途端にアンデッドたちは苦しみ呻き、苦痛に顔を歪ませ体を悶えさせ始めた!
回復の魔法は、不死者・アンデッドにとって唯一にして最大の攻撃!

アンデッドたちはその身を輝きに溶かし、浄化されてしまった!!



女勇者「わぁ、すごい! 久々の活躍ですね、僧侶さん!」

僧侶「その言い方はやめてっ」

アンデッドs『   』シュウウゥ~…

戦士「化け物どもが、こんな簡単に溶けていきやがった」

戦士「アンデッド……対処方法させ分かれば楽勝っス!!」

盗賊「いや、まだだ。生き残ってる奴がいるぜ……」

「!」


側近「あっあっ、ああ、あ…………!?」


アンデッドと化した側近もやはり僧侶の回復魔法には歯が立たなかった。
だが、完全に倒せていたわけではない。浄化されず、只管ワケも分からぬ苦しみに耐えているのだ。

側近「苦しい…苦しいです…魔王様……私、とっても……はぁ、はぁ、はぁ!」

女勇者「僧侶さん! もう一度魔法を!」

僧侶「す、すぐに準備します。盗賊さん、そのまま魔物を!」

盗賊「分かっているぜ!」

側近「いやぁ……消えたくない、消えたくないよぉ……」

女勇者「うあー、やっぱり可哀想かな……」

戦士「奴は魔物なんだ。今さらそういう目で見てどうするんだよ」

戦士「俺たちは平和を脅かす魔物を殲滅しなければ……!!」


ぐらり、と世界樹内部が揺れる。

それを合図に部屋が大きく振動し始め、壁が崩れ、床に穴が空き始めた。
世界樹の崩壊が始まる!


女勇者「な、何なの!? 一体全体どうなってるの! 今度は何がー!」

僧侶「世界樹が壊れている……?」

戦士「いっ、一旦避難するんだ! 部屋を出るぞ! すぐにエルフたちと合流を」

戦士「盗賊! その魔物はもういい! 早くこっちに戻って来るんだ!」

盗賊「言われなくとも――――――」


がくんっ


盗賊・側近「!!」

運が悪かった事に、側近と盗賊が乗っていた床が崩れてしまった。

女勇者「ぎゃわぁ~~~!! 師匠がぁ!!」

戦士「な、なにやってんだお前は!」

盗賊「うぐぅ!?」

間一髪、盗賊は床の端を掴んで落下を防げた。が、

側近「はぁ、はぁ……!」

ひん死だった側近もなんとか盗賊の足に腕を絡めて難を逃れていたのだ。
盗賊は必死に側近を振り落とそうと掴む腕を蹴り続ける。

盗賊「く、くそっ…離しやがれ!! 離せって言ってるんだよ!!」

僧侶「待っていてください! すぐに魔物へ止めを!」

戦士「いいっ!! そんな暇はないから先に2人で外へ出ろ!! 俺が何とかする!!」

僧侶「しかし……」

戦士「邪魔だ行けッ!! 早くしろ」

僧侶「は、はいっ…! さぁ、行きましょう!」

女勇者「い、嫌だよ! だって師匠が…師匠が…!」

盗賊「師匠だ師匠がとごちゃごちゃウゼェ!! 俺の事はどうでもいいから逃げろ!」

女勇者「できないよ!」

盗賊「そういうところがウザいつってんだろ! 二度も言わすかこのバカ女!」

女勇者「うっ……」

僧侶「さ、行きますよ。大丈夫ですから、2人は」

女勇者「うん――――――」


盗賊「うおおおおぉぉぉーーー!!?」ズリズリズリ


側近の重みに耐えきれず、掴んでいた手に限界がきているようだ!
すかさず戦士が盗賊の腕を掴み、助けた!

戦士「よっし、掴んだぁー! 逃がさねぇぞ!」

盗賊「きめぇ! 離せ肉ダルマ!」

戦士「何でだよ!?」

側近「はぁ、はぁ……まだ、まだくたばれない……」

盗賊・戦士「!?」ガクン

側近が盗賊の体をよじ登り始めた。さらに盗賊へ負担がかかり、戦士まで下へ引っ張られる!
戦士は必死に引き直そうと踏ん張っているが、先程の戦闘のダメージがあり全力を出し切れずにいる。

戦士「うううぅぅ……うううううぅぅ! こ、このぉぉぉ……」プルプル

女勇者「やっぱり放っておけないよ、戦士さん! 私も後ろから引っ張るから!」

戦士「んぐぐぐぐぅぅぅ……!!」

盗賊「…………」

この間も部屋の、世界樹の崩壊が止まる事はなかった。
見るみるうちに全てが壊れだし、崩れ。もはや彼らに時間はないのである!

女勇者「師匠……か、かならず助けるからね……っ」

盗賊「いや、もう十分だぜ」

戦士「何言いだすんだお前! 置いて行けって頼みなら受けないからな!」

盗賊「いいんだよ。大丈夫だ、死んでもまた蘇ればいい。いつもみたいに教会で」

戦士「ここが完全に潰れちまったらお前の棺桶だって探すの大変なんだぞ!? ふざけんな!」

僧侶「盗賊さん、気を確かに持ってください! 今回ばかりはどうなるか分からないんです!」

僧侶「生きてください!」

盗賊「……いや、お前らが生きてくれ」

戦士「うあぁ、そういうのやめろ! 馬鹿言うんじゃねぇよ!」

女勇者「ホントだよ! 助けるって言ってるんだから助かってよ!」

女勇者「じゃ、じゃないと…じゃないと私たち……」

盗賊「おい、妹のこと任せていいかな?」

盗賊「アイツだけが気がかりなんだぜ。アイツをどうか助けてやってほしい」

僧侶「妹さんを助けてあげるのはあなたでしょう!? 私たちに任せるなんて卑怯です!」

盗賊「……僧侶ちゃん、卑怯な俺でごめんだぜ」

戦士「お、おい!」



盗賊「せめて最後は……卑怯は卑怯らしく、こいつを地獄へ道連れにしてやる」

側近「!」


盗賊は片手でナイフへ手を伸ばし、取ると戦士の腕を切りつけて自身の手を離させた。
一瞬で盗賊と側近はまるで奈落の底であるような、最下層へ落ちてゆく。

悲鳴も絶叫もなく、ただただ静かに二人は闇の中へ消えてしまった。


戦士「あ、あ、うああ……そ、そんな……うそだ……」

女勇者「え……えっ……?」

僧侶「…………」ガクン

エルフ「世界樹答えて。世界樹、一体どうしたの」

魔女「あんな木に何聞いても無駄ですわよ! それより早くスタコラサッサ!」

エルフ「待って、まだあの人たちがいる」

魔女「~~~……!」

魔女は転送魔法を唱えた。パッ、と戦士たちの元へ瞬間移動。

「……」

エルフ「この部屋も既に崩れ始めている」

魔女「ちょっと! どうしてお通夜ムードかは知らないけれど、逃げますわよ!」

女勇者「……魔女っち、師匠が」

魔女「盗賊ぅ? 何でそこでアイツの名前が出てきますの? ほら、さっさと!」

僧侶「…………」

戦士「僧侶ちゃん、行こう。盗賊の頑張りを無駄にしない為にもな」

僧侶「…………」

エルフ「その人はだいじょうぶ?」

戦士「ああ、俺が背負うから大丈夫。さぁ、行こうぜ。魔女っち頼んだ」

魔女「任されたぁ~~~!!」

エルフ「私も手伝います。場所は世界樹の外になるけれど、問題は?」

魔女「なし! いけますわ! タイミング合わせますわよ……1、2の」

魔女・エルフ「3」

二人は転送魔法を同時に発動、全員を外へ移動させた。
その瞬間、世界樹はさらに激しく揺れ、全てが崩れる。

世界樹の下、残るは団長と魔人のみである。
しかし、そこには気を失い倒れた魔王の姿も。

団長「世界樹が崩壊し始めたようだ。これで世界はあの女の束縛から逃れられる」

団長「僕も、そして君もね魔王」

魔王「  」

魔人『ふぇぇ・・・ふぇぇ・・・!!』

魔人『この子ムカつくよぉ・・・この子も消してしまいたいよぉ・・・』

団長「あ? ああ、別にいいんじゃないの。特に利用価値も薄いようだし、不要だ」

団長「好きにしなよ」

魔人『ふぇぇぇぇぇぇ・・・・・・!』

魔人の口内に怪光線の輝きが満ちる。魔王をも消してしまうつもりだ。

団長「神につづいて、魔物の長もここで消えちまうのねぇ。いや、人生って分からんもんさね」

団長「まぁ、安心しろよ。残った人間も魔物もこの僕が何とかしてあげるからね」

団長「おじさん。ちょっとばかし世界の支配者って奴になってくるから」

魔人『ふぇぇ・・・発射だよぉ・・・』

パッ

魔女「はい、脱出成功ぉ~~~!! ですわっ」

戦士「無事に外へ出られ……勇者殿ぉ!?」

魔人『ふぇぇ・・・いきなりの登場でビックリして引っ込んじゃったよぉ・・・』

団長「……あれあれ、君ら生きてたの。ご苦労様だねぇ」

エルフ「あなたはだれ。あなたが世界樹を、神を殺したの?」

団長「いやおじさんじゃないよ。やったのこっちのちっこい子」

魔人『ふぇぇ・・・よろしく・・・』

エルフ「!」

魔女「何ですのあのチビすけ。魔物のようだけれど、お前は魔物使いか何か?」

団長「さてねぇー……運が良かったね、魔王ちゃぁん。お仲間が駆けつけてくれたよ」

戦士「お前、いつかの騎士団長! てめぇが勇者殿を!」

団長「だぁから、おじさんじゃないっつーの。そそっかしくて嫌になっちまうよ」

団長「さて、魔人くん。我々もそろそろこの場を離れた方がよさそうだ」

団長「下手して崩壊に巻き込まれても、変な場所へ飛ばされても困るからね」

魔人「ふぇぇ・・・おじちゃんおじちゃん・・・」とてとて

団長と魔人は戦士たちに見向きもせずに去っていってしまった。

戦士「あ、あいつらぁ……前から好かねぇ野郎だと思っていたんだ! くそ!」

女勇者「……ね、ねぇ。今ならまだ世界樹が残ってるよ…だから、師匠を」

戦士「よせ! 今行ったら君まで潰れちまう!」ガシッ

女勇者「離してよぉ!! どうして、仲間なんでしょ! 助けに行こうよ!?」

戦士「俺だってそうしたいよ! だけど、だけど……」

女勇者「師匠だって本当は死にたくなかったんだ! だから!」

僧侶「いい加減にして」

僧侶「いい加減にしてよ…………」

戦士「そ、僧侶ちゃんっ」

僧侶「助けに行っても私はあなたを止めないわ。あなたが死のうとどうも思わないから」

僧侶「死にに行きたければ一人で行って……」

女勇者「……あ、うぅ」

魔女「あのぉ~……私、話について行けませんわ」

戦士「お前にはあとで話すよ。今ここでする話じゃあないんだ」

魔女「う、うん」

エルフ「世界樹が……」

内部だけではない、外部に生えた巨大な枝は折れ、樹皮もボロボロになってゆく。
世界樹の下に次々と落下物が降ってくる!

魔女「場所を変えた方がよさそうですわね。ここは危険よ」

戦士「ああ、すぐに避難しよう」

エルフ「妖精、蟹さん。助けられなくてごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

ゴ ゴゴ ゴ ゴゴ ゴ !!


女勇者「な、何……? 世界樹からはもう出たはずなのに」

魔女「揺れているのは世界樹じゃありませんわ。地面が」

戦士「確か、世界樹がなくなると世界は」

エルフ「そう、こっちと向こうの世界は一つになります」

僧侶「一つになるというのは具体的には?」

エルフ「わからない。こんな事初めて体験する」

エルフ「でも一つだけ分かる事、こっちの世界にいるマンイーターたちが」

エルフ「全て世界へなだれ込んで、全て食いつくす」

僧侶「それって……」

戦士「と、とにかくどうしたらいい!? この場から離れるべきか!」

魔女「ちょいと! そこに転がって寝てる勇者はどうしますの!」

戦士「ゆ、勇者殿っ、忘れていたぜ…俺とした事が…!」

僧侶「急いで向こうの世界へ戻りましょうっ」

女勇者「でもどうやって!?」

僧侶「あっ……!」

エルフ「私にもわかりません」

戦士「ああ、そうだったよな! わざわざ言わんでいいんだよっ!」


ドド ド ド ドド ドド ド


地が唸りを上げて大きく揺れ、空は歪み始めた。

霧が一層辺りを濃く覆い始める。


どんっ!と響く大きな音。瞬間、その場にいた全員は異空間へ放り投げ出された。




この日、二つの世界は初めて一つとなる。
これが後の『霧の10日間』と呼ばれる地獄の引き金になるとは、この時誰が思えた事か

朝だと思ったら昼だったでござる、ここまで。

それから、キリがいいところで息抜きに少し短編の番外書きたいなぁーと思ってまして。
本編進めろって人もいるかもだが、許してくださぁぁい


なんだからお題の方を募集させて。その題に沿った番外編を書くぜ
>>73

おつ!

側近たん追悼で勇者になる前の魔王と側近のはなし!
ダメなら安価下!

ここは居酒屋聖飢魔Ⅱ。今日も一仕事終えた魔物たちが安酒を呷るのであった。


店員「こちらがハツにレバー。獅子唐の天ぷらになります」

「どうもです。側近さま、自分次の飲み物いきますけど側近さまいかがします?」

側近「…………」

「あれ、側近さま?」モシカシテゲンカイ? ハヤイナァ

側近「相談してよろしいですかね、下っ端」ガタッ

「!? ……と、唐突ですね。自分でよければいくらでも。それから下っ端とは呼ばないでくださいよぅ」

側近「私、魔王様にプレゼントをあげたいなって思っていたところなんです」

側近「今年で私が魔王様の下へ着いてから5年目。そして、もうすぐ魔王様のお誕生日」

「ははぁ、感謝の意味を込めてって感じで? 一気に重ねてきましたね」

「でもぶっちゃけプレゼントなんて毎年の事ではないですか。いまさら何を」

側近「去年まで私が渡したプレゼント、全部ゴミ箱シュートされちゃってますもん」

「えー……」

「言うのも躊躇してしまいますけど、魔王様ってもう少し魔物の気持ちって奴に応えてほしいですよねぇ…」

「自分も最近頑張って勤務に努めていたら背中蹴り飛ばされたりしてねぇ」

側近「もう! 魔王様の陰口なんて聞きたくありませんよ! 私が許しませんからねっ」

「だって側近さまは嫌になってこないんですか? 側近さまなんていつも魔王様のお傍に立って、色々辛い目にあった
でしょ?」

側近「うっ……」

「ほらぁ」

側近「べ、別に私のことはいいじゃないですか! 魔王様になら何されても文句ないし」

側近「ていうか話題が逸れ過ぎてますよっ。お願いですから相談に付き合ってくださいね!」

「いや、付き合いますけど……。ていうかお誕生日プレゼントですよね」

「魔王様のお誕生日は3ヶ月も先の話なんですが」

側近「ありゃりゃー……?」

店員「ご注文早く言っていただけないっスかねぇ!?」

私が魔王様の側近となったのは今から丁度5年前の話です。

先代の側近が謎の死を遂げ、代々魔王のお付き人をしてきた私が次の側近を任されたわけだけど
・・・そう!先代の側近はなんと私のお母さんなのです!

お母さんの死はショックだったし、遺体を見る事もできなくて悲しかったけれど
私は何代も続いてきたこの誇りある役目を頑張ろうと、当時は躍起になっていました。


夜の帝王「魔王様、この私を側近に置くのが賢明ですぞ? なんせ帝王なのだからね」

魔王「貴様、顔がデカい……暑苦しいッ! 城から出てゆくのだ! それか死ね!」

夜の帝王「はぁ!?」

魔王「むぅー……魔王となったはいいものの。毎日椅子に掛けて勇者を待つのも退屈」

魔王「パパ上はよくこの様な暇な仕事を飽きずに続けておれたわ。アホくさっ」

「魔王様。本日付で側近となる死霊使いの到着が遅れるようです」

魔王「あ? 連絡でも届いたのか。最近の魔物はダメダメであるなァ」

「いえ、それが……何もこちらへ連絡らしきものがなく」

魔王「気に食わんな」

「ひぃ! 魔王様が切れた!」

魔王「この魔王である偉大な余を待たせるとは。いい度胸であるわ、万死に値するぞ…」

魔王「到着次第余に伝えよッ!! その者は即刻ぶち殺すからな。退屈凌ぎである」

「……あ、あのぉ。魔王様? 魔王様は何処へ?」

魔王「お花摘みであるカスッ! 貴様ぁ、気遣いもできんのか。貴様も一緒に死刑」

「へぇ!?」

ぶしゅうううぅぅ~~~・・・

魔王「歯応えもない。まるでチーズのように容易に裂く事ができるわ」

4「ま、魔王子……いえ! 魔王様! 無闇矢鱈に同族を殺しては困ります」

魔王「誰じゃ貴様ァ!!」

魔王は火炎の呪文を唱えた!

4「ギャンッ!!」

1「うわあああああっ、誰かすぐにバケツに水を!」

魔王「ふははははははァーーーッ!! 火だるまの刑である~~~!」

魔王「フッ、少しは退屈しのぎになったぞ。では余はこれにて失礼するわ」

「お、恐ろしい……アレでは一月もせずに魔族が滅びかねんぞ……」

「本当にあの魔王様の息子だというのか。あまりにも違いすぎる……」

「ところで、次の側近となる魔物が今日この城を訪れるそうだが」

「ああ、先代同様に雌の魔物。なんでも死体を操る魔法を得意とする奴らしいぜぇ」

「雌か……あの凶暴凶悪な極悪魔王を抑えてくれる期待は持たないようが良さそうだな…」

魔王「全く、何故魔王の余が下の者どもと共同の便所を使わねばならん……」

魔王「余は王であるぞ。これでは示しがつかないではないか!」

魔王「あー、イライラする……」ジャー


< おええええぇぇぇ……ぎも゛ぢわるぅ……おえっ、うっぷ!


魔王「……」

< はぁ、はぁ……おええぇぇ! 緊張するよ、お母さんお父さん…私無理ぃ…

魔王「おう貴様ァ!! 余にゲロの音聞かせて何が楽しい!?」

< ごごご、ごめんなさい! あの、好きで吐いているわけではなくて…その

魔王「ぶち転がすであるぞ貴様ァー!」


どんどんどんっ!


< ひいぃー!?

< ごめんなさい! ごめんなさい! もう吐きません!

魔王「チッ……」

< うっぷ…………おぇ

魔王「ウガアアアアアッーーーーーー!!!」


どかああぁ~~~んっっ!!


「きゃあああぁーーーっ!?」

魔王「臓物ぶちまけてくれようか!」

「いやです、いやですっ! 許してください!」

魔王「あァ!? …………あァ?」

「うぅ……ひぃ……」ガタガタ

魔王「おう、貴様!」

「は、はいぃ!?」

魔王「ここは雄の魔物専用の便所よッ! 貴様は雌であろうがボケ!」

「……え」

「……えぇ///」


これが私と魔王様、二人が初めて出会った瞬間でした。

「……」ガックリ

魔王「何故こちらの便所に隠れておった。余が用を足す場面を目撃する為か?」

魔王「このド変態めが」

「違うんです! 急に気持ちが悪くなってしまって、急いでトイレに入ってしまって!」

魔王「言い訳するつもりか、変態」

「変態じゃないんです! 信じてください!」

「…………うっ」

魔王「……ま、まだ吐く気か変態。今度は余にゲロ見せつけるつもりかッ」

「はぁ、はぁ」

魔王「何とか申してみてはどうだ! あァッ!?」

「……」ブンブン

「わ、私…昔から人より緊張してしまう性質で…うっぷ!」

「ほんとうに…ごめんなさいっ。悪気があるわけじゃないんです…」

魔王「あー?」

魔王「フン、便器に口を向けよ。貴様の気が済むまで、緊張とやらが解れるまで吐いておれ」

「す、すみません……!」

「うっ、ぐ……ひぃ、ひぃ。はぁ、はぁ……ぐるじっ」

魔王「!」

魔王「なんなら余が背中を摩ってくれても構わんのだぞ」ニヤニヤ

「そんな! ただでさえご迷惑をかけているのに……」

魔王「気にするでない! 余がしてくれると申しているのだ。任せておけ!」

「え、え、いいえ……だいじょうぶっ…大丈夫ですから、結構で」


魔王「破ァッッッッッッ!!!」ドカンッ

「ぶぎゅぶぅぅぅっっっーーー!!?」


どおぉーんっ!



私はこの時、生まれて初めて便器へ顔を突っこまされました。

魔王「むふぅ」ニコニコ

「……い、今の魔王様のツラ見たかよ」

「ああ、滅茶苦茶清々しい顔してたよね……」

魔王「心も体も便所でスッキリである! やはり共同便所で十分だな!」

夜の帝王「ま、魔王様ぁ~~~!」ガシッ

魔王「あァ? 誰だよ貴様」

夜の帝王「お願いします! 私を捨てないで欲しい! 嫌だ、まだ城にいたい!」

夜の帝王「な、なんなら靴の裏でも舐めましょうか! ほーら、よろこんでぇ~…ぺろぺろ」

むぎゅ

夜の帝王「ぐえっ」

魔王「余が貴様のその汚ねェツラを踏んでやっておるのだ。もっと嬉しそうにしろ」

夜の帝王「へ、へへへっ…えへへへぇ……!」

魔王「ダメだな」

夜の帝王「……は?」

魔王「貴様を苛めても何も面白くないッ! ただひたすらキモいのだ!」

魔王「城を出て行け。余は貴様のツラを二度と拝みたくないぞ」

夜の帝王「あ、あ、えっ、ええぇ……!」

夜の帝王「うう……」ガックリ

魔王「貴様らァー! 何こちらをジロジロ見ておるのだ! 尻蹴って空の彼方へぶっ飛ばすであるぞ!」

「ひいぃ~!?」ピュー

魔王「……糞っ垂れめが。一気に気分が落ちてしまったわ」


夜の帝王(お、おのれ! あの野郎、絶対に許さない! 絶対にだ!)

夜の帝王(あんな奴の下に付いてたまるか。こうなったら例のあのワザを盗んで独立してくれるぞ)

魔王「今、帰ったぞ。勇者来た? まだ?」

4「ひぃ、ひぃー……死ぬかと思った……」

1「魔王様! いえ、勇者一行の到着はまだかと」

1「というか、できれば魔王城まで辿り着かない方が良いのでは」

魔王「え、何故?」

1「えっ……」

魔王「魔王の仕事は勇者を亡き者にする事ぞ。勇者が来なければ何もすることない」

1「いやいや!? 他に沢山すべき事がありますぞっ、むしろ暇になるわけが…」

2「止しましょう。だって、魔王様がそう仰っているのだし。これ以上は」

1「あ、ああ」

1「では魔王様。引き続き、勇者の到着をお待ちいただけるようお願いいたします」

魔王「しかし、待っておるだけというのは面白くないなァ」

1「は?」

魔王「うむ、こうしようか。逆に魔王が勇者を攻めに行くのだ! これなら余が暇にならずに済むぞ!」

4「ま、魔王様……それは少し、何というか。セオリーから外れる行為となるのでは」

2「魔王様、私もその意見には反対させていただきますわ。魔王様のお仕事は、その椅子に座る事。それが第一」

魔王「……はぁ」

4「お、お? わりと諦め早くなぁい?」

1「もうわけが分からん……」

魔王「ッ!!」

魔王「余は退屈だぞ、貴様らァーッ!! 何故王たる余がこうも暇でなくてはならんのだ!?」

「!?」ビクゥ

魔王「魔物は殺し飽きた! 早く人間どもをもって来い! 殲滅してくれるから!」

4「……ぶっちゃけ、魔王様に出向いてもらった方が一気に侵略できるんじゃ」

1「うわあああっ、やめろバカ!」

魔物「失礼します。魔王様、件の側近となる者が到着しました」

魔王「あァーん?」

2「今頃のご到着? まぁ、良い御身分だことね」

4「側近ねー。どうせすぐ魔王様にぶち殺されるのが山のオチだろう?」

1「違いあるまい」

魔王「側近だとォ~? 余はその様な者を呼びだした覚えはないが」

魔物「えっ、新しい側近よこせって仰ったばかりではありませんか…」

魔王「あァッ!?」

魔物「いえ、何でもありません!」

魔物「それではどういたしまょうか。その者の処分は」

2「丁度いいじゃない。さっき魔王様が処刑だとか仰っていたことだし」

2「退屈凌ぎにそいつの首を刎ねていただきましょうよ」

魔物「ま、マジですかっ」

魔王「首を刎ねるだけではつまらんな。じわじわ痛めつけて死を懇願する苦しみを与えよう」

4「魔王様、何も拷問じゃああるまいし……」

魔王「余に異議を唱えるつもりか? では貴様の体でどうなるか確かめてみるとしよう」

4「いえ、そいつにやっちゃってください。どうぞ、どうぞ」

1「貴様も中々の屑だな」

4「自分が一番大切なんだよぉ、私は!」

魔物「……それでは、通して宜しいでしょうか?」

魔王「うむ、通すがよい。さて、どこの馬鹿ヅラが現れてくれる事やら……」

魔物「もう入っていいって。大丈夫、何にもされないよ。魔王様悪い人じゃないから(棒読み」ヒソヒソ

魔物「では、通します。中に入れ」

「は、はいぃ!!」

「お、お、お初にお目にかかりますっ! 私、この度魔王様の付き人を任されました! 第八代目側近の…」

「…………あれ?」

魔王「貴様は、さっきの変態ゲロ女」

側近「え……えっ……」

こうして、私は晴れて魔王様の側近となれました。

遅刻については叱られるだけで済んだけれど(だって魔王城複雑なんだもん…)
辿り着くまでにされていた物騒なお話は何故か魔王様によって却下されて


1「処刑を無しにすると? あ、いえ。別に構いませんが」

2「宜しいのですか。この者はあろうことか遅刻して参りましたわ。それはとてもいけないこと」

2「責任というものが、社会の常識というものがあまりにも欠如しているかと」

魔王「余に難しい話をするなッ!!」

2「あ、は、はい……」

魔王「余が判断したのだ。この魔物を殺すには少し早すぎるとなァ」

側近「殺すぅ!?」

魔王「貴様が今日から余の側近となるのだな?」

側近「は、はい!! ……その、予定かと」

魔王「シャキっとするのだゲロがッ!!」

側近「はいぃぃ!!!」

魔王「……フン、今回は手を掛けずにおいてやる。精々余の為に尽くせ」

魔王「そして、余の暇潰しの道具となるがよい!」

側近「はい! ……えっ、道具?」

4「あれ、魔王様。何処へ行かれるのです? 何か私どもへ指示などは」

魔王「知らん! 余はそろそろお昼寝の時間なのだ! 部屋へ戻るッ」

魔王「睡眠妨害などしたらどうなるか分かっておるよな。ではな」

4「マジかよ。仕事丸投げするのかよ……」

2「そんな事今さらじゃないのー」

魔物「ね、優しい人だったでしょ?」

側近「……」

へなへな、ぺたん

魔物「あれ、大丈夫? 腰抜かしちゃったの? おーい、誰か医療部屋に連れてってー」

側近「よ、よかった」

側近「よかったよぉぉぉ~……うわぁーんっ!」

魔物「本当だよ。君初めてだよ? 魔王様に見逃してもらえた唯一の生き残りだ」

側近「お母さんお父さん! 私、ここで一生懸命頑張ります! 見守っていてください!」

側近「うわぁ~んっっ……おえぇ」ビチャ

魔物「あ!?」

魔王「……」

側近「……」ドキドキ

側近「ま、魔王様ぁ!! …今日は空気が淀んでいますね」

魔王「あそ」

側近「えっと~……」

魔王「ところで側近よ。これから貴様だけに重要な話をしようと思う」

側近「えっ!? わ、私にですか! は、はいっ! 何でしょう!?」

魔王「馬鹿者めッ、声がデカすぎである。もっとボリューム絞れ」

魔王「……よし、余たち以外誰も部屋におらんな。聞かれては困るのだ」

魔王「側近、少し耳を貸せ。余の近くへ来るのだ。ほれ、早く!」

側近「はいっ」

側近(魔王様、重要な話って一体……。私だけに話すって、大丈夫でしょうか)ゴクリ

側近「……ま、魔王様。これぐらいの近さでよろし」


魔王「バア゛ア゛ア゛ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッーーー!!!!」

側近「ぎゃあああああぁぁぁっっっーーー!!?」ビリビリ、キーン


魔王「ぐわっはっはっはー。良い反応である! どうだ、鼓膜破れたか!?」

側近「    」

魔王「むぅ、どうした側近よ? おう、ゲロリアン? おーい」

魔王「フンッ! なんと情けのない奴だ。気絶しおったぞ!」つんつん

側近「    」ピク、ピク


この様に、魔王様はとても悪戯好きです。そのせいで私は何度か死に掛けました。
そして何度も泣かされました。

「それで、このプロジェクトに魔王様の許可を貰うべく…」

側近「なるほど分かりました。私が魔王様へまずお話してみましょう」

「ありがとうございます。いやぁ、入ったばかりで毎日大変でしょう?」

側近「いえいえ! この程度で根を上げていては先代側近に笑われてしまいますし」

「頑張り屋さんですねぇ。まだお若いのにー」

側近「ありがとうございます!」


ばきぃっ!!


側近「うぐぅっ……!?」メキメキ

「え、えぇー!? ま、魔王さま……!」

魔王「おう、側近。腕に蚊が止まっておったぞ? 感謝せよ、余が潰してくれたわ」

「あぁ! 本当だ、蚊が潰れてる……でも、側近さまの腕も」

側近「あ、ありがと…ござい、ます…………」ガクガク

魔王「ふははははっ! 気にするな! 今日は気分が良いのだ、この程度の事いつでもしてくれるぞ!」

(それだと側近さまの身が持ちそうにないかも)

側近「…………がくっ」バタリ

「側近さま! 誰かぁー! 側近さまがー!」

魔王「側近め、いくら蒸し熱いからといってこんなところで寝おって。アホか」

側近「    」

「側近さま! 側近さまぁ! うわああああ血も出ているじゃあないか!」

「至急救急班を! メディーック!」

ピーポーピーポー

魔王「あ、あれ? 側近?」

側近「う、うーん……」

側近「ごめんなさい。ごめんなさいまおーさまぁ。わたしひ弱で……」


「全くである!」


側近「へ?」

側近「魔王様ぁ!? いつからそこにいらしたのですかっ」

魔王「貴様がぐっすり寝出してからずっとだぞ」

魔王「やはり側近は面白いなッ、見ていて飽きない」

側近「へ?」

魔王「寝ていても寝言やら歯ぎしりやら、はたまたデカいイビキを掻いてみたり…」

側近「ごめんなさい……///」

魔王「さっきは鼻と口を塞いでやったら顔青くして死にかけておったわ! ふははっは~」

側近「その様な事をなされたのですか!? お、お止め下さいっ」

魔王「ところで腕の調子はどうか? 幾分ましになったのではないか?」

側近「そういえば……何かなさってくれたのでしょうか」

魔王「余が、な!」

魔王「余が貴様の腕を修復してくれたのだ。マジで感謝しておくのだぞ」

側近「魔王様が! えっ、そんな…こんな私の為に…どうして」

魔王「どうしてもクソも、余が貴様の腕をへし折ってしまったのだろう」

魔王「貴様には常に万全の状態でいてもらわねば困る。でなければイジりようが全くない」

側近「……」

魔王「てなわけである。側近のゲロバカよ! さっさと元気になって余を楽しませるのだ」

魔王「勇者が来るまでの一凌ぎになァッ!!」

側近「は、はい! 側近は魔王様の為に頑張らせていただきます!」

魔王「では余はこれにて失礼するぞ。椅子に座っておらねば周りがウザいからな」

がちゃり

側近「魔王様……ただの意地悪な人かと思ってたけれど」

側近「よーし、早く魔王様の為に回復しますよ! おー!」

魔物医者(不良がたまに良い事してうんたら現象、と)

ここまで。短編とか書いておいて分割しちゃってすまん
こんな感じのお話でいいんだろうか?

側近「まず私がすべき事は体を鍛えるですよね!」

魔物「あれ、病み上がりなのに張り切ってるね。大丈夫?」

側近「魔王様のお相手をするには私の体は少し貧弱すぎます。魔法使いタイプだからなんて甘えは通用しない」

側近「時代は近接戦闘もいける魔法使いを必要としているのです! 違いない!」

魔物「魔王様の相手をする子に限られると思うけどね」

魔物「そうそう、体を鍛えるならここなんてどうかな」ス

側近「これは?」

魔物「知り合いが最近開いたムエタイのジム。最近できたらしくて」

側近「へぇ……」

魔物「まだ入会人数が全然みたいでねぇ。せっかくだから覗いてみては?」

魔物「今なら初回入会特典で~~~」

側近「ではさっそく行ってきますね! ムキムキになって帰ってきますよ!」ピュー

魔物「若いって素晴らしい(笑)」


~~~魔王城下町付近・ジム


< エイッヤー イー セイヤ ヨサコイサ アッー

側近「たのもぉーーーっっ!!」バンッ

師範「帰れッ!!!」

側近「えぇ……」

側近「お金ならあるんです。気力もたっぷり。大丈夫ですから!」

師範「むっ、財布に蛇の抜け殻入れてる子なんて久しぶりに見たな」

師範「ウチは漢の魔ムエタイジムだぞ。女子供なんぞダメだ」

師範「すぐに根を上げるに違いあるまい。だから帰れ」

側近「帰れません!!」

側近「お願いですから私の心も体も一から叩き上げてください。このままじゃ生きていけないのです」

側近「どうか、どうかっ!」

師範「……お主、地獄をまだ見ていないな?」

側近「は」

師範「よかろう。何処の誰かさんかは問わん。お主の根性がどう続くか見せてもらうぞ」

側近「と、ということは」

師範「黙って我に着いてくるのだ! ここから先、一歩でも足を踏み出せば……後戻りはできぬ」

師範「来るか!?」

側近「はい!」グイ

師範「ようこそ、漢の世界へ……」

側近「!」


そこには、雄の魔物たちが己の肉と肉をぶつけ合い、血と汗を巻き散らす
むさ苦しく息苦しい、まさに゛むせる゛世界が広がっていたのです。


「アイッ! アイッ! アッー!!」ビシビシ

「もっとぶち込んできやがれやぁ!? あぁん!?」

「ヌアァーイッ!!」

側近「あ、熱いです……ていうか暑い」

師範「ジムの中は窓から扉を閉め切り完全密封。そして」

ぐつぐつ・・・

師範「火山から拾ってきた溶岩石を使ったサウナ。どうだ、ゲキアツだろう?」

側近「意味が違いませんか…」

師範「ふふーん、まさにこれこそが灼熱地獄。まだまだこの程度ではすまんぞ」

師範「お主には入会テストとしてこれから試験を行わせてもらう。信用しきったわけではないからな」

側近「そんな、途中で逃げ出すと思っているのですか! 私は体力はないですが根性無しではありませんよっ」

師範「言い訳などその時に聞いてくれるわ。おい、こっちに来い! 腑抜けめ!」

師範「では早速だが試験を始める。一分だ、一分で我が手に持つ黄金の玉を奪ってみせよ」

師範「始めぇっ!!!」

側近「スタートはやい!?」

側近は闇の呪文を唱えた。無数の手が師範を縛り、玉を強奪する。

側近「にゃははは! やったぁー♪」

師範「…………」

師範「……確かに我は魔法を使って悪いとは言わなかったな。穴を抜けたか」

師範「だぁが甘ちょろ過ぎるぞ小娘が! 誰が玉は一つだと言ったんだ!」

側近「えっ、二つ!? そんなー! ズルくありませんか! ぶーぶー!」

師範「それをお主が言うか。次は魔法ダメだからね」

側近「それじゃあ私なにもできません!」

師範「お主は此処へ何をしに来たのだぁ!!」

側近「はぁはぁ、ひぃ~……」

師範「ふん、無駄な動きが多すぎる。それではすぐにこの部屋の暑さにやられるだけだ」

師範「踏ん張りが足らん! お主はもっと貪欲になれ! ハングリー精神を身につけろ!」

師範「さぁ、ハングリー!」

側近「ハングリー!」バッ

ばきぃっ

側近「あべしっ」

側近「反撃するだなんて聞いていませんけれど!」

師範「誰がして悪いと言った。ここでは我がルールなのだ、そして無駄な動きが多いと言ったばかりだろうが」

側近「ハングリーを前に出せば無駄な動きも多くなるのでは」

師範「知るか! 我の言いなりに動いてばかりではお主には永遠に玉を得る事は不可!」

師範「……もう十分だ。お主には我がジムへ入会する資格は無い。失せろ!」

側近「そ、そんな」

側近「お願いします! 見捨てないで! 何でもしますからっ」

師範「何でも?」ゴクリ

側近「ごめんなさいウソです」

師範「失せろ!!」

側近「ううっ……」

側近(魔王様、私はあなたの為なら何でもできると思っていました。でも)

側近(ああ! 魔王様のお叱りの声が聞こえてくるような気がします…)

側近「……」

師範「どうした小娘。そこに立たれていては練習の邪魔だぞ」

側近「ハングリー!!」ガシッ

師範「むぅ…!?」

師範「お、お主は諦めを知らぬのかっ。まだ我とやり合おうとでも!?」

側近「やってやりますよ!」

側近「ここで諦めて城へ帰っては魔王様に見せる顔がありません。私はあの方の為ならば心を鬼に! 自分にいくらだって
厳しくなれます!」

側近「だから…た、玉を! 玉をあなたから取らなければ!」グググ

側近「」バタッ

師範「どうやら体力の限界。力尽きてしまったようだな」

師範「そして丁度時間切れだ。お主は試験に不合格ぅ!」

側近「み、水……水を……」

師範「……だが。ふん、我はお主のその精神が気に入ったぞ」

師範「覚悟は十分と見た! お主は試合に負けて勝負に勝ったのだ!」

師範「認めよう。ようこそ、我が魔ムエタイジムへ」

側近「   」グッタリ

師範「おい、返事はどうしたのだ!?」

「コーチぃ! その娘っ子は気を失ってやがるぅ、恐らく脱水症状だぁ!」

「誰か氷持ってきて口に含ませてやれやー! 少し外に出しておくべ」

師範「な、情けのない……今の我の言葉を返してくれ……」


その後私はなんとかジムの入会を正式に認めてもらえちゃいました。
特訓はどれもつらいものばかり。何度もバックレそうになりながらも心を鬼に変え、日々己の精神と肉体を鍛えたのです!

これも全ては魔王様の悪戯を耐えるため! ビバ、魔王様!


側近「えいやーっ!」へなへな

師範「お主体硬過ぎだろぉ!? 足上がらなすぎぃ!」

「なんかっスねー、酢をね? 飲むと体柔らかくなるらしいんスよ」

「ささ、一気にグイっと」

側近「本気ですかっ」

ぐいっ

側近「んんんぁぁっ~~~~~~~~!!!?」

側近「  」バンバンッ、バンバンッ

師範「堪えろ馬鹿者め。この程度で根を上げるつもりではなかろうなぁ! あ゛ぁ!?」

「マジ激アツっスね」

側近「じぬ゛ぅ~……」


BGMに、どうぞ
http://www.youtube.com/watch?v=rwer1CiteBg&feature=related

側近「せいやァーッッ!!」シュッ


どかぁ~ん!


師範「そうだ今の動きだ。今お主が手に入れた感覚を忘れるな!」

師範「……うっ」

側近「こ、コーチ! どうしましたか!」

師範「黙って聞くんだ…我は実は追い先短い…そう、病に侵されていたのだ」

師範「死ぬ前にお主と出会えて本当に良かったぞ。我は満足」

側近「病に侵されつつ、私を鍛えてくれていたというのですか? そんなっ」

師範「フッ、気に掛けてくれるな。我は我が望む事をしたまでなのだ……」

師範「いいか。これからお主に全てを、最終試験をはじめ…げほっ、がぼぉー!」

側近「コーチ、お体に触りますよ……」

師範「黙って聞け! この暗殺拳は師範であるこの我を殺して初めて完成する」

側近「えっ、暗殺拳?」

師範「我を殺せ! そして屍を乗り越え、お主が果たさねば成らぬ事を果たして見せろ!」

師範「げぼぉー!?」ぶしゅううう・・・

側近「えっ」

師範「」

側近「あ、あのう」

「……死亡確認。俺たちの師範は今、この場で亡くなったのだ」

「この男は犠牲になったのだ。犠牲の犠牲にな」

側近「はい?」

「側近ちゃんよぉ! お前は俺たちの希望だぁ! 師範が果たせなかった全国制覇を任せてもいいんだよなぁ!」

側近「いやいや!? 勝手に任されても困りますっ」

側近「あ、あ、えっと……その」

側近「とりあえずわたし帰ります! でも、たぶんもうここへは来ません!」

「!?」

側近「本当にごめんなさい! 失礼しましたぁー!」ピュー

「うわ、逃げられちまった!」

「俺たちの希望の星が……」

師範「いいのだ」ガシッ

「!?」

師範「我はあの娘に教えられる事全てを教えた。強くなったな」

師範「お主らも身に付けよ。強靭な精神力を」

「師範ェ……」

「おい、誰だ死亡確認とか言った奴」

魔物「側近ちゃん、最近見違えるほど逞しく見えるよ」

側近「あ、ありがとうございます」

魔物「やっぱり僕が紹介したジムのお陰かい? いやぁ、役に立って良かった良かった」

魔物「……でもさ、言うの躊躇してしまうんだが」

側近「は?」

魔物「最近側近ちゃん城から長く離れていただろう? 魔王様のご機嫌が斜めでさ」

魔物「いや、長い休暇は魔王様の為のものだっていうのは分かる。しかし今月に入って魔王城勤務の同族が200名ほど犠牲
になったのだ」

側近「犠牲に!?」

魔物「そう、犠牲だ。側近ちゃんという名の犠牲の為の犠牲にな」

魔物「犠牲になったのだ。犠牲の犠牲にな」

側近「うあ……私は皆さんにとんでもない事を」

側近「ま、任せてください! 私はこれでも死霊使い! 死んでしまった方々は全てアンデッドとして蘇らせましょう」

魔物「ぐっ……!」

側近「うわぁ、いきなりどうしたんですか!?」

魔物「僕もね、その犠牲の一人となったのさ。見てくれ、これは昨日魔王様に付けられた傷だ」

魔物「酷いもんだろう? 医者からは恐らく今日には息絶えるのではないかと言われたよ」

側近「えぇーっ!? どうしてそんな適当言われてちゃってるんですか!?」

側近「今日という日は本当にどうかしてますよぉー!」ピュー

魔物「ェ……」

魔物「†」

どかーん! ばこーん!


側近「お城の中がとても騒々しいです……これはまさか!」

< ウワアアアアァァァァ イヤアアアアァァァァ

側近「もしかしなくても魔王様がお怒りになっている!?」

4「その通りだ」

側近「さ、三魔官様……何故そんな所へ」

4「決まってるだろぉ! 魔王様から隠れているんだよ!」

4「あの方は鬱憤を晴らす対象がいなくてこの期間相当イラついていたんだ」

4「それもこれも……貴様のせいだ! もうっ、ダメ側近め!」

側近「ぎゃあ、私に丸投げしてしまうんですかぁー!?」

4「当然だろバカちん。魔王様は貴様を気に入っているんだぞ」

側近「えぇ!?」

側近「私なんてダメダメをお気に召していらしたのですか? 魔王様が?」

4「気づいていなかったのか? 貴様が側近となってからは魔王様が魔物に当たり散らさなくなっていた事を」

4「側近、貴様は私たちにとって必要な犠牲なのだ。そう、犠牲だ」

側近「すみませんその言葉今流行っているのでしょうか」

側近(私がいたから皆さんが無駄な死を迎えずに済んでいた。そんなバカな)


―――余の暇潰しの道具となるがよい!


側近「……そ、そういう事でしたか」

側近「やけに私ばかりに当たり散らしたり、悪戯してきたりすると思えば」

側近「ふふふ、うふふふふふっ…」

4「ちょっとどうしたの。早くアイツなんとかしてくれない!?」

側近「…………」

4「おいってば!」

側近「あ~もぉ~! 魔王様ってば私がいなくちゃダメなんですね! 仕方がないなぁ~♪」キラキラ

4「…え?」

側近「三魔官様、ご安心を。私側近は以前のような貧弱な魔物から見事脱する事に成功しました」

側近「いくらでも! この側近が! 魔王様を受け止めて見せましょう! わっはっはー!」

4「あ、うん……頑張って」

側近「よーし! 待っていてくださいね、魔王様。側近は今からあなたの元へ駆けつけます」

側近「そして分かりましたよ。魔王様には私が付いていなければならないのだとね!」ピュー

4「あれ、馬鹿だろう」

「ひぎいいぃぃぃ」ブシュウウウ

魔王「イライラするのだ。あー、イライラする」

魔王「余に近づいた者全て惨殺する! 近づかなくてもだ!」

「一体我らにどうしろと!?」

魔王「喧しいッ!!」

魔王「はぁはぁ……ぐわっはっはぁー! 勇者はまだ余の下へ訪れぬのか!?」

「畜生、早く勇者来てください!」

ばぁんっ!!

魔王「勇者来たかァーーーッッ!?」


側近「魔王様! ……長らくの間、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした」

側近「貴方様だけの側近。ただいま帰還致しましたよー!」


「あの子誰だっけ……」

「いや、知らん」

側近「魔王様。私は今まで貴方様にとってどれ程必要だった存在なのか気づけませんでした」

側近「ですが、ようやくです。ようやく分かりました! 私は貴方様にとって無くてはならない存在だったのですね! 側
近、感激の極みですっ!」

側近「魔王様、正直魔王様の悪戯は悪戯のレベルを超えていました。私は何度貴方様にボコボコにされてしまった事か」

側近「でももう大丈夫! 今ここにいる側近は昔の側近とは違うのです!」

側近「魔王様の為に一から体を鍛え直し、それなりに頑丈になれた事でしょう……っ」

側近「さぁ、魔王様! お待たせしましたよ! どうぞ、側近の胸の中へ思いっきり飛び込んじゃってください!!」

魔王「死ね」

魔王の会心の一撃!


側近「ぎゃああああああぁぁぁーーーっ!?」チュドーン


「一体何がしたかったんだ、この子」

側近「いてて……」

「一撃で昇天しなかっただけ特訓の価値があったんじゃありませんか」

側近「紹介しましょうか。コーチ死にましたけれど」

「いえ、結構です」

「紹介が遅れました。自分は側近様のサポートに回されてしまった魔物です」

「正直いつ死んでしまうか分からないので、とても怖いです。死にたくない」

側近「わ、私は無闇に仲魔を殺すなんて非道は行いません!」

「側近様からではなくて、魔王様にですよ。畜生!」

「うう、こんなの死刑宣告と同じだ……」

側近「あのぅ、別に私の近くにいようがいまいが魔王様の牙は誰にでも向くかと」

側近「この程度で挫けていても仕方がありませんよ! 一緒に頑張りましょうね」

側近「下っ端!」

「励ましているのか貶しているのか、どちらでしょうか」

側近「さて、お互いの顔合わせも済んだ事ですし」

側近「次は魔王様に改めてご挨拶をしてもらいましょうか」

「死にたくない……」

側近「大丈夫ですよ。魔王様優しいし、最近また大人しくなってくれたみたいですし」

「でも殺す時は殺すでしょうあの方は。自分なんて雑魚は指先一つでダウンですよ」

側近「あなたは少し自分に謙遜しすぎかと」

側近「いいですか!? 誰だって死ぬ時は死ぬものなのです!」

「その言葉は励ましじゃありませんよね」

側近「失礼します! 魔王様、今日は紹介したい者がいまして」

魔王「勇者か」

側近「魔王様、勇者からそろそろ離れてみましょうね…」

側近「ここにいる者は今後私の直属の部下となった魔物。下っ端です」

「下っ端です。コンゴトモヨロシク(自分でこのふざけた名前肯定しちまった…)」

魔王「実に貧弱そうだな。特徴も全く見当たらん。人はこういう輩をなんと呼ぶのだったか~」

側近「モブ、でしょうか?」

魔王「そうそれ!」

(開幕早々泣きたい)

側近「今後、この者が直接魔王様に接する機会は少ないかと思いますが」

側近「私のサポートとして間接的に魔王様と魔族へ献上してくれる事でしょう」

魔王「ふむ?」

「は、はい。自分ができる事を逸早く見つけて魔王様の為に尽くさせていただきますっ(おお、腐っても側近様! 良いカ
バーだ!)」

魔王「とりあえず貴様の特技は何なのだ。ここで余に何か披露してみせよ」

側近「ここで魔王様にアピールできれば大きいですよぉー」コショコショ

「え゛っ……きゅ、急に言われても」

魔王「あー……ん?」

側近「何でもいいから見せるべきですっ。このままでは魔王様がお怒りになってしまう」

「うぇっ!? は、はいぃっ(た、試されている。そしてなんという責任重大! 絶対に失敗は許されない状況!)」

「……じ、実は自分はけん玉が得意でして」

魔王「なら早くそのけん玉とやらをこの場で実演してみせるのだ」

「はい!」サ

側近「いつも持ち歩いているのですか、それ?」

「自分の命の次に大切な道具ですのでね」

「では……!」

魔王・側近「wktk」

ひゅー、かちんっ

「ほら!」

魔王・側近「……」

「こ、これは序の口なんですね。はい。次は大技稲妻落としをお見せいたします」

側近「魔王様! ほらほら、次がスゴイ技だそうですよ! わーわー!」パチパチ

魔王「ああ、うん」

「しっかり見ていてくださいね。難しい技ですので、失敗したら御愛嬌……」

「とうっ!」ぐるりんぱっ

側近「おお、見ました魔王様!? 今のは凄かったですね~、私あんなの無理ですよっ」

側近「こ、この通り……下っ端は地味ですがやる時はやるのです」

(地味ぃ!?)

魔王「もう下がってよいぞ。余は眠くなった。さっさと失せよ」

側近「魔王様ぁ、どうか下っ端を悪く思わないでくださいね。彼だって頑張りましたから…」

「うっ……」

魔王「まぁ、努力は認めてやるわ。だが余はこいつ好きじゃないな」

「うわああああ、後生ですから殺さないでください! お願いします!」

魔王「殺さない殺さない」

「えっ」

側近「ほら、魔王様は優しい方だと言ったでしょう? 安心していいんですよ」

(今だけ魔王様が仏に見えてしまう……なんとお優しいのだろうか)

魔王「余は目触りな者にしか手を掛けるつもりはない。貴様には何とも思わんのだよ」

魔王「そう、まるで道端に落ちた枯れ葉のように」

「ありがとうございます!」

側近「いやぁ、良かったですねー!」

「これも側近様のお陰です! 自分、自信が持てそうです!」


~~~

「どう考えても喜べるお言葉貰ってねぇ……!」ガタッ

側近「恐怖のあまり変なテンションになっていたのかと!」

魔王「お菓子モグモグうまー」もぐもぐ

側近「あーっ! 魔王様ってばまた隠れてお菓子なんて食べて!」

魔王「げッ、喧しいのが来おったか……」

魔王「余はここで何も食べてなんかおらん! 貴様の見間違いであるわボケ!」

側近「ウソ仰いです! もう、おやつの時間は3時だとこの前一緒に決めたじゃないですか」

側近「あの時の約束はお忘れになってしまったとでもー?」


~~~

魔王「虫歯痛いーッ!! ムカつくである!!」

側近「わああっ、暴れたらもっと歯が痛んでしまいますよー!?」


・・・


魔王「……ぐすん」ズキズキ

側近「お菓子は午後に。3時だけにしましょうね」

側近「いっぱい甘い物ばかり食べるから痛い目見てしまうのです。ほら、指きりげんまーん」

魔王「……うむ、余はこれで懲りたのだ。もう一杯お菓子食べない!」

~~~


魔王「ぐわはははははァッーーー! 約束など破る為に存在するのだ!」

側近「魔王様ぁ……困りましたねー……」

側近「側近はまた貴方様が虫歯になっても知りませんよ。痛くて転げ回っても!」

魔王「う゛っ」

魔王「側近よ、それだけは嫌なのだ。余はこれ以上あの痛みを体験したくないッ」

側近「では約束をお守りください! 側近だって魔王様が苦しむ姿を見たくはないのです」

側近「私も協力しますから。ね? このままだと虫歯どころか糖尿病という恐ろしい病に掛りかねませんし」

魔王「脅しのつもりかッ!!」

側近「本当ですよ。先代魔王様さえも糖尿病を患っていたのですから、血筋的にも危険性はあるかと」

魔王「ひぃ~~~……」ガタガタ

側近「大丈夫! 側近と一緒に頑張りましょう!」

魔王「うん! うん! 余は頑張るぞ!」

側近「魔王様はとっても良い子様ですね! えらいえらい!」

「とか言っておいて、すっかり甘やかしてるじゃないですか」

側近「だって魔王様にお菓子与えると反応が可愛くて……」

「そこで心を鬼にしなきゃ治るものも治らないと思いますよー」

側近「で、ですよねぇ…はぁ」

側近「ありゃ、下っ端。さっきから何の本を読んでいるのですか?」

「気になりますか。お菓子作りの本ですよ、最近彼女と一緒に作るのが趣味でして」

側近「爆発してください」

「は」

側近「爆発してください」

「……あ、えっと。見てくださいコレ! 低脂肪のお菓子の作り方だって!」

「最近お太り気味な魔王様にピッタリでは」

側近「おお! 下っ端にしてはナイスアイディアです!」

側近「私も帰りにその本買って行こうかなぁ。でも今お金ないんですよねぇ」チラチラ

「か、貸しても」

側近「えーっ! 貸して頂けるのですか! やぁー嬉しいです! 下っ端大好きー!」

「はぁ…どうも(性悪の雌め)」

側近「むふぅ~♪ これで魔王様にお菓子を作ってあげたら喜んでいただけるでしょうか」

「言っておきますけれど本だけでお菓子ができるわけでもないし、簡単ではないかと」

側近「問題ないですよ。これでも手先には自信があるんです」

側近「そうだ! 出来あがった物の味見は下っ端にお願いしますね!」

「マジですか!(ちょっと嬉しいかも)」

側近「ええ、本を貸して頂いてお礼の気持ちを込めて。美味しいのを一杯作ってきますから期待していてくださいねっ」

「はぁーい!」


~~~

「これは炭ですか」

側近「失礼な!」

側近「見た目は確かに悪いかもしれません。ですが、味は良いかも!」

「かもじゃないです、かもじゃ。ご自分ではまだ食べてはいらっしゃらないのですか」

側近「一番の味見は下っ端だって言ったじゃないですか。だからまだなのです!」

「はっ」


~~~

側近『下っ端に……私の初めてを貰ってほしくて』

側近『お願いです。食べて……(はぁと』

~~~


「自分、食ってもいいすか?」

側近「だからお願いしますと言っているではないですか。ていうか、鼻血出てますけれど…」

「いただきますっ!!」


ちゅどぉぉぉ~~~んっ!!


「ぼふぅっ…」ボンッ

側近「きゃあああーーーっ!? 下っ端ぁ!」

側近「ど、どうして爆発が起きたのでしょう…っ? 変な材料を使ったわけでもないのに」

「……」シュ~

側近「クッキーが爆発を起こすなんて前代未聞ですよ!?」

「こちらの台詞です」

側近「うう……」

(割と悲しんでいるじゃないか。ここはお世辞でも美味かったと言わねば)

「口の中で弾けるお菓子が昔あったじゃないですか。それと同じで刺激的かも」

「魔王様なら面白がって食べてくれるかも!(ダメだ! 美味いとは言えねぇ!)」

側近「本当ですか! やった、少し思っていた物とは違ったけれど成功だったのですね!」

側近「早速魔王様に渡してきますよ~!」ピュー

「南無……」

側近「うわあぁ~んっ……魔王様がクッキー見た瞬間ゴミ箱へ投げましたぁー…っ」グスン

「魔王様も悪食ではなかったんですね」

「これに懲りずに色々挑戦してみたらいいではないですか。ある意味才能ありますよ」

側近「え、本当に?」

「そうですよ。純粋に不味いものを作れる奴より才能あります」

側近「下っ端……では、また次に作った時も味見をお願いしますねっ」

「い、いやっ……ああ、もういない!?」


~~~


側近「はい! どうぞ!」

(なんかこれピキピキ言ってる……)

「今度は核兵器作ってきたわけではありませんよね!?」

側近「何を馬鹿な事を言っているんですか。私にそんな物を作る技術はありません」

側近「真心込めて、一生懸命クッキーを焼きました……それだけのつもり」

「じゃあ何でさっきからおええええぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」びちゃちゃ

側近「え、えぇ?」

「……コレが部屋の中に入ってから気分が悪くなりました。禿げそうです」

側近「そんな!?」

「さすがに自分、これを食べて死ぬわけにはいきませんので。今回はちょっと…」

「側近様は食べ物作ったら良くないと自分思えてきました。やめてください」

側近「いえ、私は諦めませんよ!」

「…は?」

側近「何度も作っていればきっと慣れて美味しい物が出来あがるはず!」

側近「付き合ってくれますね、下っ端っ」ガシッ

「いやぁ……」ガタガタ

側近のハウス


側近「完成ですどうぞ食べてくださいぃ~~~っ!」どんっ

クッキー『ォォオオオオオオオオオオオオオオオオ~……』ゴォォォ

「ダークマターじゃないですか……」

・・・

側近「今度こそ!」

クッキー『コッチヲ見ロ オイ、コッチヲ見ロッテイッテルンダゼ』ギュルギュルギュルギュルッ!

「うわああああっ、これシアーハートアタックじゃないですかッ……!?」ガリガリガリ

・・・

側近「えーいっ!」

クッキー『ぷりぷりぷり、あたいは毒を持ってるの』

「却下、実は全然まともな材料揃えてませんよね」

・・・

側近「下っ端が揃えてくれた材料で作りました。今度はしっかりクッキーでしょう」

クッキー『……///』

「もうっ、このクッキー照れてますよ!」


・・・


「分かりました。側近様、これ以上は無駄です。お店で買った物を渡した方が賢明かと」

側近「お願いです見捨てないでください!!」

「土下座したった無駄ですよ! このまま魔王様があなたが作った物を食べたら死にます! 内側から破壊されます!」

側近「えぇ……」ガーン

側近「……私はどうしてこうもダメなんでしょう。一生懸命やっているつもりなのに」

側近「分かりました…下っ端の言う通りもう諦めます…私には向いていなかったようですね」

「……」

「キッチンはこちらでしたね。さぁ、側近様立ってください」

側近「し、下っ端?」

「自分もお手伝いします。それなら問題ないでしょう? ほら」

側近「下っ端ぁ~~~!!」ギュウ

(うへへっへへへっ……飴と鞭で雌なんかチョロいぜ)

側近「できた」

「ええ、できましたね」

側近「できたぁー! ちゃんとしたクッキーが初めて完成しましたよぉー!」

側近「わぁ~い!」バタバタ

「レシピ通り作っていた、材料も問題なかった。なのにどうして今まで変な物が作れていたのか」

側近「そんな事はもうどうでもいいじゃないですか! さぁ、この喜びを分かち合いましょう!」

「はい!」

側近「……いえ、間違えていた。私はどうかしていました! 喜ぶのは魔王様にクッキーを食べて貰ってからです」

側近「でなければ私は今まで何の為にコレを作り続けたか分かりません」

「ま、まぁそうですよね」

側近「早速焼き立てクッキーを魔王様に渡してきますね! きっと喜んでもらえる~るんるん♪」ピュー

「嫌な予感がするのは自分だけだろうか……側近様」


~~~


側近「うふふ、魔王様ぁ~♪」

魔王「あァんッ!? ぶっ転がすぞッ!!」

側近(うっ、丁度魔王様の機嫌が悪い時です……なんてバッドタイミングな)

側近(でも大丈夫。しっかりしてください私。魔王様はお菓子を与えれば機嫌良くなるんだから)

側近「魔王様、今日は側近から貴方様へプレゼントがあります」

魔王「喧しいなァ~~~ッッ!!」

側近「……えっと、その、お菓子を作ってきたので。クッキーを、その」

側近「どうか受け取ってください!! 3時のおやつにどうぞ!!」

魔王「ふんッ」ペチ

ぼとっ・・・

側近「あ…!」

側近「だ、大丈夫ですよ魔王様。今度のクッキーは安全ですから…」

側近「私自身もきちんと味見してみましたし…美味しかったし…」

側近「だから…」

魔王「側近の申す事など信用できん! この前だって毒物食わされそうになったではないか!」

側近「本当に今度のは大丈夫なんです。安心して食べていただいて」

魔王「知るかァ! 側近のモンなんてこうして、こうしてくれるわーッ!!」


さっきまで私と下っ端が一生懸命、真心込めて焼いたクッキーは
無慈悲にも魔王様にペチャンコに潰されてしまいました。


側近「ああああああぁーーー!?」

側近「そ、そんな……」ガックリ

魔王「ふん、側近のクッキーなんぞ無くとも客人から貰ったケーキがあるもんね!」

魔王「なんなら貴様にもちょっぴり食わせてやろうか~? ん~?」

側近「……」

魔王「何とか申してみるのだ。正直に申せば食わせてやるぞォ」

側近「っ~……!」ブワッ

魔王「え」

側近「ううっ……うぅっ……!」ポロポロ

側近「ああうぅー…ごめんなさい、ごめんなさいっ…魔王さま、涙がとまり、ませ…ん……ぐすっ」

魔王「よ、余が貴様を泣かせたみたいではないか馬鹿者! 泣き止むのだ!」

側近「うああぁ~~~んっ……」

魔王「側近貴様ッ! 殺すぞ!? いい加減にしろと申しておる!」

側近「くっきぃー…くっきぃー…! わ、わだじの、ぐっぎー! うわーんっ!」

魔王「……ええい~!」

何を思ったのか、魔王様は自ら踏み潰した私のクッキーを包みから出し、食べてしまいました。
それも全部。きれいに

側近「ま、魔王様! いけませんっ、床に落とした汚い物を…た、食べるなんて」

魔王「別に汚れてなんぞおらんかったぞ! 余が何を口にしようが勝手である!」

側近「でもさっきまでいらないって……」

魔王「気が変わったのだッ! グダグダぬかすな! 吐いて返してやろうか!」

側近「い、いえっ!! ……ど、どうでした。味の方は」

魔王「普通すぎて面白くもない味である。特別美味くもない」

魔王「次にこんな物を余に食わせたら酷い目に合わすからな! もっと努力してくるのだッ」

側近「は、はいぃ!」

側近(……あれ、もしかしてまた作って渡せという事ですか?)

側近「わああぁぁ~……!」パァァ



しかし、現実は非情である。
頑張って作ってきたお菓子は魔王様の口の中に入るより、ゴミ箱の中へ入る確率の方が専らでした。



魔王「ふははははは~~~ッ! 見よ、ダンクシュートであるッ!」だんっ

側近「いやぁああああぁぁーーーっ!?」

~~~


側近「私もこの5年で色々ありましたね。どれも成長のキッカケとなりましたよ」

「重度の上がり症だったんですね、側近様って」

「さて、昔話も散々聞かされた事ですしそろそろお開きにしましょう。すみませーん! お愛想お願いします」

側近「待ってください」

側近「あの、プレゼントの相談の方がまだなんですけど」

(チッ、まだ覚えてたのか……)

「どうせ魔王様なら渡したところで何与えても捨てちゃいますってばー」

側近「そんな事ありませんよ! 気持ちがこもっていれば魔王様だって」

「それで何度も玉砕したんでしょうに。いい加減諦めどころですよ」

側近「いーーーやぁーーー」ジタバタ

「側近さまぁ……仕方がない。とっておきのを教えます」

側近「教えてくれるの!?」

「いいですか、これはもろ刃の剣。初心者にはお勧めできない」

「少し耳貸して頂けませんか」

側近「い、いや、それはちょっと……トラウマがあって」

「別に驚かせやしませんからっ」

側近「は、はい……」


「ゴニョゴニョゴニョ」

側近「!」


「お願いしますからこれを自分が教えたのだと魔王様に言いつける事だけはやめてくださいね? くれぐれも」

側近「はい! はい分かってます! スゴイです下っ端! さっすがぁ~! ヒューヒュー」

側近「では、今回のプレゼントはその手を使わせていただきます! 大成功 ま ち が い な い」

「本当にどうなっても知りませんからね。マジで」

側近「~♪」

魔王城・魔王のお部屋


魔王「今日も勇者は来なかった糞っ垂れがァーーーッッ!!」

魔王「最近の勇者とろ過ぎである! マジうんこ勇者!」

魔王「おまけに側近もいなかったし、余の鬱憤は何で晴らせば良いのだ!?」

魔王「うう、今日はもう寝るっ……」

魔王「?」

大きなリボンに包まれた、これまた大きい箱がそこにはあった。
中からは荒い息が聞こえてくる。

メッセージ『愛しの魔王さまへ! リボンを解いてフタを開・け・て(はぁと』

魔王「……」

『はぁはぁ、はぁはぁ……まだですか、魔王様……♪』

魔王「   」

魔王は黙って箱を持ち上げ、部屋の窓から城の外へ放り投げた!
部屋から地面までの距離は長い。ひゅ~~~っと音と共に箱は落下してゆくのであった。

魔王「……余は疲れていたのかもしれんな」


~~~


魔物A『今日も一仕事終えたなぁ、お疲れ』

魔物B『先輩こそお疲れ様っす。どうすか? 飯でも』

魔物A『うぇ~~~い! イイネ!』

魔物A『あれ、誰かあそこに倒れてない……? ち、血も出てない?』

魔物B『ヤバイっすよ…関わらない方がいい系っすよ…俺ら何も見なかったっす』

魔物A『あ、ああ…何だよアレェ……』



側近「」
ハッピーバースディ! 魔王さま! By. あなたの側近より



おしまい♪

ここまでです。長い短編になったな
もう1つぐらい書きたい気持ちあるが、早く本編進めろって感じだろうか?

とりあえず>>128! 俺に指示をくれ!

本編求む

ダメなら魔剣ちゃんと魔王の日常話

魔剣のドキドキ♪ ゛魔ル秘゛日記♪の巻


AM7:00 朝だよ! 今日も僕の魔王ちゃんは横顔キマってる~! カックイー!

AM7:30 朝ごはんの時間。みんな何食べてるの? 僕も一緒にごはん食べたいな…(´・ω・`)

AM8:20 宿屋からそろそろ出発だって。もう、いつも女勇者の支度は遅いんだから! 僕なんて服着ないんだよ~きゃっ

AM9:15 魔王ちゃんから置いてけぼりにされた……

AM9:40 僧侶ちゃんが迎えにキタ━(゚∀゚)━!! 魔王ちゃんに来てほしかったけど~

AM10:00 ちょっとこの辺で休憩♪ 最近魔女っちの視線が痛いかも…モテるってつらいね

AM10:25 戦士ちゃんが僕に編み物作って見せてくれたよ! なんかきもーい♪

AM10:30 休憩おしまーい! 今日はここから次の町までノンストップだって。ノンストップって?

AM10:53 魔王ちゃんが僕を置き忘れたことに気づいてないの……

AM11:20 みんなぁ……

AM11:22 みんな来た! 戻ってきたよー!

AM11:55 やっぱり僕の居場所は魔王ちゃん。もう忘れちゃいやだからねブチュッ♪(= ̄3(〃▽〃)o キャア♪

PM12:30 待ってましたお昼ごはん! 僕は食べないけど

PM12:32 うわ、魔女っちが鍋に変なの入れた。面白そうだから黙っておこうね…(>_<)

PM13:20 女勇者ちゃんと盗賊ちゃんがお腹痛いとか言い出した

PM14:17 病院って臭いよねー( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` ) え、僧侶ちゃんもお腹痛いの?

PM14:30 教会のお世話に行きまぁーす! 3人とも死んじゃったの!

PM14:39 魔女っちが悪かったんだよ(゚ε゚) 僕は悪くないでーす知りませーん

PM14:40 魔女っちが魔王ちゃんに懲らしめられて死んだ! これが阿鼻叫喚の光景ってやつですね

PM15:00 色々大変だったけれどみんなもう大丈夫みたい。そろそろ出発だよ(*^ー゚)ノ

PM15:18 無事に魔物に勝ちました! 女勇者ちゃんが死んだけどね

PM15:30 戦士ちゃん棺桶持つの大変そう。女勇者ちゃんはもう少し痩せるべきだよ~

PM15:41 宝箱に跳びついた盗賊ちゃんがトラップに殺られた(´ー`)

PM15:43 盗賊ちゃんの棺桶は僧侶ちゃんと魔女っちで持つ事になりました。魔王ちゃんは僕で手一杯だもんね~♪

PM16:00 かさばる荷物だからって捨てられた……

PM16:08 魔王ちゃんカムバック……~(´ー`~)

PM17:00 (;_;)

PM17:21 魔女っちの魔法で帰ってこれたよー! たまにやるぅ!

PM17:34 今日はこのボロ宿にみんなでお泊りだって。みんなと一緒ならどこでも楽しいね~♪

PM18:15 お風呂から上がった僧侶ちゃんが元気なくしてたよ。またおっぱいだって

PM18:30 夜ごはんの時間でーす! でも、僕はやっぱり食べられませーん!

PM18:39 (∩・ω・)∩ ←肉厚そうで美味しそう

PM19:13 みんな帰って来たけどあんまりご飯美味しくなかったんだって。それでも僕はみんなが羨ましいよ~

PM19:40 魔王ちゃんたちがお風呂入りに行って寂しい…。まぁ、女の子チームはいるんだけどさ

PM20:00 あれ、ていうか今の魔王ちゃん女の子じゃなかったっけ? いいのかな?

PM20:14 ゆるふわ女子トークに僕も混ざっちゃいまぁーす! 女子力高いよー

PM20:35 戦士ちゃんが鼻血噴き出して帰って来たの。噴水みたいで綺麗だね(*゚∀゚)=3

PM20:46 続いて盗賊ちゃんも鼻血出して帰って来たヘ(゚∀゚ヘ) そんで死んだ

PM20:50 謎の死が盗賊ちゃんに訪れた……遂に僕たちは殺人事件ったやつに遭遇したみたいだね! 犯人はお前だ!

PM20:51 魔王ちゃんだった

PM21:00 悩殺の容疑で魔王ちゃんを逮捕します! 逮捕したら僕がお世話するね!

PM21:03 魔王ちゃんが村人にナンパされてる……Σ( ̄□ ̄lll)!!

PM21:50 戦士ちゃんと女勇者ちゃんと魔女っちがカード遊びしてる。楽しそう~

PM22:02 魔王ちゃんも途中参戦です! このまえカジノで大活躍だった魔王ちゃんなら楽勝だね!

PM22:19 負けた魔王ちゃんが魔女っちにあたってる。わー、これ以上死人出したら大変だよ~っ

PM23:00 魔女っちが腹いせに僕を解体しにかかってきたよぉー!?

PM23:01 返り討ちにしてやりました( ´ ▽ ` )ノ 新入りのくせに生意気なんだからぁ

PM23:30 僧侶ちゃんが明日のために今日はそろそろ休もうだって

PM23:44 魔王ちゃんももうお眠みたい。みんな今日も一日お疲れさま(*´∀`*)

AM24:00 僕もそろそろおやすみしよっと。あー、明日も楽しい一日になるといいな♪

AM24:03 この日記は読み終えると同時、自動的に爆発します……うそです。おやすみー・:*:・( ̄∀ ̄ )。・:*:・



女勇者「ってな感じの内容なんだけど」

盗賊「アイツどうやって日記書くんだよ」

盗賊と盗賊妹の禁断ゴニョゴニョの巻


盗賊妹「お兄ちゃん、今晩部屋に来てくれないかな」

盗賊「!」

盗賊妹「最近ご無沙汰だったよね。だから私やりたくて」

盗賊妹「いいかなぁ?」

盗賊「あ、ああ……」ドキドキ


~~~


盗賊「……」

盗賊妹「あはっ、お兄ちゃん約束通り来てくれた! 大好き!」

盗賊「ほ、本当にやるのか? どうせ」

盗賊妹「私はお兄ちゃんとどうしてもしたいの。ねぇ、ダメかな……」

盗賊「うっ! うあああっ!」


~~~


盗賊妹「あんっ……ふぁ…お、おにいちゃ……あ!」ギシ…

盗賊「はぁ、はぁ……くっくっく……」

盗賊妹「おっ、お兄ちゃんのいじ、わる……どうしてそんなに焦らすの……?」

盗賊妹「はやく…はやくきてぇ……お兄ちゃん。私、早くお兄ちゃんにここを……」

盗賊「いいのか? そんなに急かしても良い事なんざないぜ」

盗賊妹「きゃあぅ……も、もう限界なの。胸が、体が暑くてもう……っく…」

盗賊「よし、お前が望むのならやってやる。覚悟しな!」


盗賊妹「いやあああああぅぅぅぅぅっ…!! お、おにいちゃあーーーんっっ!!」ビクビク


盗賊「セーフだった。お前は昔から表情に出やすいぜ」

盗賊妹「もぉー! お兄ちゃん全然ババ引いてくれないんだからー!」


兄妹の平和なババ抜き光景である

ちょい悪勇者くんの昔話の巻


遊び人「おちん○んびろろ~~~んwwwwwwwww」

賢者「あら、意外に大きい象さんじゃないのさ?」

女戦士「……」

遊び人「僕ちんこが求めてた反応違うよ!!」

賢者「あははははっ、勇者くんのよりでっけー!」

勇者「うるせぇぞクソビッチが!」

女戦士「二人は元々、恋仲かなにかだったのか?」

賢者「は? 私らが? やだ! 変な冗談言わないでよ、おばさん!」

女戦士「しかし、君の先程の発言を聞くと」

遊び人「あららぁ~ん。戦士のお姉さまってば純粋なのねぇ~んwwwwww」

勇者「俺が勇者でイケメンだったから勝手に向こうが股開いたんだよ」

賢者「はぁー!? 私そんな事してないもん! 口でしてやったぐらいだし!」

女戦士「そういうのは聞いていると疲れるな。ということは二人とも顔見知り程度の関係だったと」

勇者「いや、同じ学校に通ってたぐらいだぜ。こいつはただの肉便器」

勇者「懐かしいなーオイ。昔は俺も悪だったっけよ? 大体悪い奴は俺のダチなんだよな」

遊び人「15の夜にwwwwwwバイク盗んで窓を割るンゴwwwwww」

賢者「そうねぇ、昔は可愛いとこあったのに。今はただの馬鹿になり下がっちゃったけど」

勇者「ああぁっ!?」

女戦士「彼の昔と今はどう変わっていたのかな。暇潰しに聞かせてもらおう」

勇者「俺の武勇伝を暇潰しに使うんじゃねーよ!」

賢者「ホント、マジ大変わりよ。勇者くんこう見えて昔は陰気キャラだったのよねー」

何年か前


「俺ら二人なら1+1でも2000いくべ? 2000だぞ、2000。1000倍パネェ」

「うぇ~~~いwwwwww」

勇者(ああ、俺の席に座られてる……授業もうすぐ始まるのに)

勇者「ねぇ」

「で、で、出たぁーwwwwww勇者の子孫wwwwww」

勇者「そういう言い方はやめてくれよ……」

勇者「俺はみんなと同じ人間なんだ。そういう目で見られるのはキツいよ」

「お高く止まってんじゃねェぞコラ~~~!!」

めきぃっ

勇者「ぎゃばぶぅー!?」ドンガラガッシャーン

< キャーキャー ワーワー

勇者「……痛い」

「おい、余計な騒ぎ起こすなよな。こいつ腐っても勇者なんだぜ」

「後で先生から何言われるかわからねぇよ」

「勇者が怖くて村人Aやってられっかボケェ! いいか、俺の前で二度と自分を特別だと思うんじゃねぇ~~~」

勇者「そんな事思ってもないよ! どうしてそうなるんだ!」

「うるせぇ~~~この、ヌケサクがよォッ!」

勇者「ひっ…」

ビッチ(元賢者)「ちょっと男子! やりすぎだよ!」

「げっ、うるさいのがお出ましだぜ……」

ビッチ「勇者くん。うわ、口切ってるじゃん。大丈夫? 立てる?」

勇者「う、うん…。ビッチさん…」

ビッチ「どうするよ、保健室向かう? 血だけでも止めなきゃね」

勇者「いいよ。俺の事なんて気にしないでいいんだ……」

勇者「でないと君も俺の様に粗末な扱いを受けるハメになるぜ?」

ビッチ「ばーか! 何言ってんのよ。ほら、行くよ」

勇者「ちょ、ちょっと! 授業が!」

ビッチ「授業? そんなの一緒にフケちゃおうぜ」ニコ

勇者「あ…///」

勇者「その、ごめんなさい。俺のせいで」

ビッチ「ん?」

勇者「顔が近いよ!」

ビッチ「あれー、照れちゃって。可愛いとこあるじゃないの」

ビッチ「勇者くんってさ、ぶっちゃけ勇者に見えないんだよね」

勇者「誰からもよく言われてるよ」

ビッチ「守ってあげたくなるタイプみたいな? これも言われるっしょ」

勇者「……お陰で母親からは過保護なぐらい大事にされてる」

ビッチ「いいじゃん。親から命一杯可愛がって貰えるのは幸せな証拠だよ」

ビッチ「血止まったね。さっすが勇者くん、治りが早いぜ~」バンバン

勇者「やっぱり変なのかな。俺はみんなと違う、魔物と一緒なのかな……」

ビッチ「んー? 私はアンタが魔物に見えた事は一度もないわよ」

ビッチ「ねぇ、どうしてそんな自分に引け目感じちゃってるわけ? キモいぞ」

勇者「うっ! なんてストレートな……」

ビッチ「……もっとさぁ、勇者らしく。ていうか勇者である事を誇りなさいよ」

ビッチ「勇者ってだけで一般人とは違う扱いを受けられるのよ? どこだって、お店だって」

勇者「えっと」

ビッチ「私が言いたいのは使える力は有効活用しなさいってこと。勿体ない」

ビッチ「なんなら私に寄越しちゃいなよwww勇者の肩書を」

勇者「な、何も知らないくせに勝手言いやがって!」

ビッチ「あら、怒らせちった? ごめーん、私結構無神経なとこあるから」

勇者「くそっ……」

ビッチ「勇者くんは自分で思ってる以上に特別だよ。なんだってやれる」

ビッチ「……簡単な事から、どう? 私が教えてあげよっか。その肩書の使い方」

勇者「……」ゴクリ

ビッチ「ちょっち耳貸しな。人から聞かれて気分いい話じゃないから」

勇者「う、うん」


ゴニョゴニョ


勇者「なっ、なんだって!」

ビッチ「勇者が善人だって誰が決めたの? いいじゃん。それぐらい」

勇者「よくないよ! 卑怯だ!」

勇者「今のは聞かなかった事にする。俺は今のままで結構だ!」

ビッチ「あーあ、つまらない奴ねぇ。少しは面白くして見せてよね」

勇者「……」ドキドキ

勇者(お、俺は変わりたい。今の俺から)


~~~


先生「これから前回の定期試験の結果を返します。一々ざわつかない様に」

先生「では、勇者くん」

勇者「……」

先生「その、君は勇者だが、知力が足りていないのかな。もう少し努力を」

勇者「そうだ。俺は勇者だ、先生……」

勇者「なぁ、先生。先生なら俺の成績なんとかしてくれるよなぁ」

先生「え!?」

ざわざわ・・・ざわざわ・・・

勇者「ゆ、勇者であるこの俺様が! テメェに命令してやってんだよ!」

先生「勇者くん! 君はなんて口の聞き方をするんだ!」

勇者「喧しいぜ。なぁ、できるんだよなぁ……最悪、お前なんてどうにかできちまうだぜ。この俺様は!」

勇者「てめーらもよく聞けよォ!! 俺はお前らとは違うエリートオブエリート様なんだよッ!!」

「アイツ、どうしたんだ」「気でも狂っちまったか」「勇者じゃねぇ……」

勇者「ふざけた態度で俺に迫ってきたら、問答無用でぶち壊す!」

勇者「俺は……俺は勇者様だぞ、テメェら~~~ッ!!! ぎゃははははははははぁwwwwww」

ビッチ「」ニヤニヤ

勇者(やった)

勇者(やってやった。俺はあの瞬間、俺ではなくなったんだ)

勇者(なんつー気分だよ……堪らねぇなァ! オイ!)

ビッチ「おっす! ゛勇者゛くん!」

ビッチ「意外とやるじゃないの。見直しちゃったよ、私は」

勇者「俺は君に言われたから変わったんじゃないぜ。俺自身の意思なんだよ」

ビッチ「はぁ? …まぁ、なんでもいいけど」

ビッチ「良かったじゃん。私以外にも勇者くんの事見てくれる人が増えたみたいだよ」

じろじろ、じろじろ・・・

勇者「あぁ!? 見てんじゃねぇぞこの糞人間どもがよ!」

ビッチ「……ありゃ~、結構型にハマってんじゃない? 悪い方が」

ビッチ「その調子で頑張りなよ。勇者デビューをさ」

勇者「…………へへッ」


~~~


「うわぁ、泥棒だー! …って、勇者様じゃないですか! どうして!」

勇者「俺様は勇者ちゃんだから人ン家に勝手にあがってもいいし」

勇者「何盗っても文句言われねーんだよ! ばーか!」

「う、ひどい……」


~~~


勇者「そこはこの勇者様が座ろうとしていた場所だがー?」

「ひぃひぃ、ご勘弁を…久々に出歩いたので息があがってしまって…」

勇者「なら地べたに座っていろよ! 老いぼれが街の中を俺に黙って俳諧してんじゃねェ~~~」

勇者「ガッハッハッハッハァ~~~!! 俺は、俺は勇者だァーーーーー!!」

「……おい、アイツ」「ああ、丁度いいぜ」

勇者「この俺様に金たかろうって気かァ? くそだな」

「へっ、勇者様なんだろ。金ぐらい貧しい庶民に分けてくださいよー」

「正義の味方が弱い立場の人間を助けるのは当たり前だべ?」

勇者「俺は俺の味方でしかねぇんだよ! そんなもん糞喰らえ!」

勇者「俺が逆にてめぇらから金を奪ってやんよッ」

「調子に乗っちゃってー……あの臆病者がよぉ」

「きっちりボコらねぇと済まないようだな!」

勇者「おい、やれ」

DQNs「うぇぇぇ~~~~いぃぃぃぃ~~~~wwwwwwwww」

「な、なんだこいつら!」「やべぇ数だ! うわぁ」


ボコスカ!ボコスカ!


「  」「  」

DQN「勇者くんに絡むとか俺らフレンズが許さねぇべよ。あぁん?」

DQN「うぃーうぃーwwwwwww」

勇者「財布の中スッカスカじゃねーかよ。つまんねぇな! おい!」ドンッ

「うっ……」

勇者「ぎゃはははははははぁ~~~wwwwwwwwww」

勇者「テメェらみたいな馬鹿はホモの餌にしてやんぜ、おい」

勇者「今日はケツから鮮血噴水コースだ。二重の苦しみを覚悟しな!」

「う、う、うわああぁぁぁーーーーーーっ!?」

ビッチ「勇者くん絶好調って感じじゃん♪」

勇者「あん? なんだくそビッチ」

勇者「……お前の魂胆ならもう気づいてんだよ。俺に近寄って甘い汁啜るつもりだったんだろう」

勇者「初めから、俺に寄って来た時からよォ~~~。全く食えないビッチだぜ」

ビッチ「女の子って結構怖い生き物だって事を学習しちゃったね」

ビッチ「どうするのよ。私はアンタで遊んでたわ、あいつらみたいにぶっ壊す?」

勇者「俺はよぉ、これでも? ビッチに感謝しちゃってんだぜぇ? キッカケをくれたんだからな」

勇者「今は見逃してやっから失せろボケ!」

ビッチ「ふーん……」ニヤニヤ




勇者「あー! 定期的にヤニ取らなきゃやってらんねー」

勇者「ふー……」スパー

ビッチ「こんばんわぁ♪」

勇者「何しに来やがった。ババアでさえ俺の部屋に通さないっつーのに!」

ビッチ「いやぁ、ここまで頑張ってきた勇者くんにご褒美あげちゃおうかなって」

勇者「ぶっ殺すぞてめぇ! 調子に乗んな!」

ビッチ「まぁまぁ、ほれほれ。お酒はお好き~?」

ビッチ「私が注いであげるからぁ、いっぱい飲みなよ」

勇者「……ど、毒でも入れてるわけじゃ」

勇者「それか俺を酔わせて何か変な事を!」

ビッチ「変な事ってどんな事?」

ぎゅう

勇者「うわー!?」

ビッチ「これから私がアンタにしてあげるのは……気持ちいい事よ」

ビッチ「ねぇ、まずは楽になりなさいよ。ほら、童貞勇者くん」

勇者「ううっ!?」

ビッチ「こーんなに悪く染まっちゃっても、まだ初体験も済ませていないなんて」サスリサスリ

勇者「うわあああああぁぁ!! 俺の貞操に手を出すなあああああぁぁ!!」

ビッチ「もう、可愛いなぁ~♪」

ビッチ「今日はサービスして、いっぱい苛めてあげちゃお~」

勇者「いやああああああぁん!!」

ビッチ「こんなに良くしてあげるんだから、私の事今後ともよろしくね♪」


~~~


母「昨晩はお楽しみでしたね」

勇者「……///」キュン

賢者「てな過去がこの子にはあったんですよねーねー?」

女戦士「何て中身のない話だ。この屑勇者」

勇者「うるせぇぞ! 大体その話だけだとそこのビッチが出しゃばってばっかでつまらねぇ!」

賢者「でも事実よ~。私は勇者くんに色々教えてあげたもんね」

遊び人「お、お、お、おじさんにも色々教えて欲しいなぁ~~~wwwwwwwww」

賢者「エロじじいはノーセンキュー」

女戦士「ちなみに話はそこで終わるのか」

勇者「まだ俺の武勇伝が残っている」

賢者「武勇伝つっても大した事してないくせにね」

賢者「所詮はガキんちょよ、ガキんちょ。面白くないの」

勇者「~~~…!」

賢者「ほら、すぐ怒りだすとこがまるでガキんちょwwwwww」

女戦士「貴重な話を聞けて良かったよ。まるで私には縁がない話だった」

遊び人「およよー、お姉さまんは過去語らないのwwwおせーておせーてwww」

女戦士「そこのつまらないガキんちょ以下の話さ、面白くもない」

女戦士「さ、そろそろ出発するとしよう。魔王たちが遠のく」

賢者「デキル女ぶろうとする、そういう所が嫌いなのよね。おばさんの事」

女戦士「ふむ、自然とそう見えてしまうのかな。君も早く大人になるといい」

賢者「こっ、この!! ばばあぁぁぁ……」

遊び人「お、およよよよ…………wwwwwwww」

勇者「待っていろよ、魔王~~~! 勇者様がテメェの首を直々に頂きに参ってやるからよォ~~~」


本物勇者一行は今日も魔王を追うのであった

ビックバンおっぱい大作戦の巻


女勇者「なんかまた最近胸周りキツくなった気がする」

魔女「あら、奇遇ですわ。私もなのよねぇ」

僧侶「……」わなわな

女勇者「風呂上がりのフルーツ牛乳飲み過ぎが原因かな」

魔女「私は最近開発した新薬のせいかしら~」

僧侶「!」

女勇者「作った薬自分に試してるの? それって危なくない?」

魔女「ふふーん、今回作った魔法薬ってのが女性の゛胸゛! をボインボインにさせるものなのですわ」

僧侶「!!」

魔女「」チラ

僧侶「はぁ、はぁ…………!」

魔女「にしししっ」

女勇者「急に魔女っちきもーい。それよか薬で体を無理矢理成長させるとかよくないって」

僧侶「はうっ…………!」

魔女「あーら、世の中には死に物狂いで胸やら何やらを大きくしたがったり、スタイルを良くしたがる女性がいまして
よ」

魔女「私はそんな哀れで仕方のない女性の味方になってあげようかと思ってて~」

女勇者「うわぁ、魔女っちらしからぬ考えだね!」

魔女「誉められた気がしないのだけれど?」

女勇者「別に誉めてないし?」

魔女・女勇者「ぎゃーぎゃーわーわー!!」ボコスカ

僧侶「あ、あのっ!!」

僧侶「…………魔女さん、折り入ってお話したい事が」そわそわ

女勇者「お悩み相談ならこの勇者にお任せですよー!」

僧侶「いえ、魔女さんでお願いします。すみませんっ」

女勇者「がぁー……んっ 私より嫌みでムカつく後輩魔女を取るだなんて……」

魔女「ええ、私でよければ何でもご相談に乗ってさしあげましょー♪」ニヤリ

僧侶(よっしゃ)グッ

魔女「ようこそ! DOKIDOKIクールビューティ&プリティーキュート魔女っ娘ちゃんの相談室へ。ですわ!」

魔女「さぁ、今日の訪問者は……辛い過去を背負い、しかし胸に重みの一つも持たない来月24歳を迎える顔だけのケチンボ」

僧侶「帰りま……こほんっ」

僧侶「お願いですから真面目に聞いてください。私は本気なんです!」

魔女「あーあー、はいはい。まずはその辺に適当に腰掛けろですわ」

魔女「それで胸無しケチンボさん」

僧侶「殴りますよ!?」

魔女「痛いの勘弁~……まぁ、察するところはズバリそのぺったんこまな板の件ですわよねぇ」

僧侶「は、ハッキリと言わなくとも」

魔女「10代の娘以下じゃあ自信もなくしますわよねー。それにそろそろいい歳のお姉さんだし」

僧侶「」グサッ

僧侶「……私、これからどう生きたら良いのでしょう!? 胸が全てのこの世の中で!」

魔女「どこぞにはそのまな板も需要はあると思いますわよ」

僧侶「私はノーマルな男性と出会いたいんですっ!」

魔女「ふぅん、じゃあ妥当な所でウチのパーティ内から漁ればいいじゃない」

魔女「いじわるバカちん勇者、ムキムキ変態戦士、あと地味なの」

僧侶「あ、いや……別に悪いわけでは……でもその言い方をされると」

魔女「頼むから同性に牙を向けるのはお止しなさいな。私、そっちの趣味はなくってよ」

僧侶「いい加減にしてくれませんかね!」

僧侶「相談に乗ってくれる話はどこへ行ってしまったのですか……」

魔女「うんうん♪ しっかり乗ってあげましょ。任せなさい~大船に乗ったつもりで」

僧侶「泥舟ではない事を主に祈ります」

僧侶「……早いところ、言わせてもらいますと。魔女さんが先程脱衣場で話していた」

魔女(釣れた! 釣れた!)ニヤニヤ

魔女「おやおやぁ、盗み聞きしていたのねぇ~。いけないぺったんこめ!」

魔女「でもま、丁度ナイスタイミーンでしたわね」

僧侶「はい?」

魔女「件の魔法薬は約1名分完成していましたのよ。売り捌こうかと思っていたけどまだ自信もなくて」

魔女「でもでも、熱心なぺったんこお姉さんがどうしても欲しいというのならタダでさしあげますわ」

僧侶「タダ!? ……いえ、タダより怖いものはない」

僧侶「本当にその魔法薬で胸が大きくなるという自信はあるのですかーっ!」

魔女「自信? 私を誰だと思っているの。天才魔法使いさまですわよ。自信がないものを他人に勧める筈がなーい!」

魔女「断言してやりますわ!」

僧侶「なんという……」

魔女「ぷぷぷっ、それでどうしますの。いるの? いらないの?」

僧侶「ほ、欲しい…でも!」

魔女「あ~~~! じれったい女ですわね! 私も飲んで効果を確かめたのだから大丈夫ですわよ!」ガシッ

魔女(飲んでないけど)

僧侶「確かに胸が最近膨らんだという話をしていましたね…。さ、触っても」

魔女「それであなたの気が済むのならご自由に」

もみもみ

僧侶(いやぁ、確実に私以上だわ…………っ)

魔女「ふふーん♪ 僧侶も薬を飲めばすぐにこの魅惑のエロボディを手にできますわよ」ス

僧侶「それが、例の胸を大きくする魔法薬ですか。やけに準備がよろしいですね」

魔女「い、いやぁ~…天才の私ともなれば相談内容なんて受ける前から知れるのよっ」

僧侶「胡散臭いです」

魔女「あー! そういう事言うなら僧侶になんて渡しませんわよ! 私怒っちゃうもんね!」

僧侶「ごめんなさいごめんなさいっ!! 謝りますからそれを…どうか、お恵みを」

魔女「ほい」ポン

僧侶「きゃあー! やっほー!」キャッキャ

魔女「それじゃ、何か結果が出てきたらすぐに私に報告なさい。それでお金はチャラにするから」

僧侶「はーい! やった、やったぁ♪ これで私も…………え、何か結果? 報告?」

僧侶「…………」

僧侶「魔女さんを信用していないわけではないの。いや、微妙に信用できないけれど」

僧侶「それでもいざ飲むとなったら何か受けつけない! どうしよう!」

僧侶「ううん、頑張るのよ僧侶。ここで挫けてはいつになっても胸は膨らまないの!」

僧侶「……では参りますっ!!」グッ


『僧侶ちゃーん』こんこん

僧侶「んぶぶぅ~~~っ!?」


『あれ、変な声聞こえた。僧侶ちゃん今大丈夫ー? 明日の事なんだけど』

僧侶「は、は、はいっ!! 大丈夫です!! どうぞぉ!!」

戦士「……何一人でパニくってんのよ?」

僧侶「そう見えますか!? きっと気のせいではないかとっ」

戦士「はぁ、まぁいいんだけど。明日は北側港へ向かってから防具を新調するべきじゃないかなと思って。で、財布の方
なんだが」

僧侶「あ、はい! すぐに中身の確認します……そこで少し待っていてくださいね」ガサゴソ

戦士「悪いね、こんな時間に尋ねちゃって。他の娘っ子二人は?」

僧侶「…………」

僧侶(まずい。すごくまずいわ)

僧侶(戦士さんの近くに開封した魔法薬が……私ってばどうして床になんて隠し置いたのかしら!?)

僧侶(蹴飛ばされて中身が零れてしまったら。あわわわっ)

戦士「これは……」

僧侶「それは毒です! いけませんっ、飲んでは!」

戦士「えっ」

戦士「いや、俺が言ってんのは下着……」

僧侶「はっ!?」

戦士「うーむ、これはなんともカップの小さい。しかものしかも中にパッドが!」

僧侶「いやあああああぁぁぁーーーっ!!」

僧侶「いやぁ、戦士さん最低です…/// 死んでくださいっ」

戦士「酷くね!?」

戦士「大丈夫だよ。俺は別にこんなじゃ興奮もしないし!」

僧侶「最っ低!!」

戦士(おお、何やら事態を悪化させちまったぞ)

戦士「それよりこの下着が何だって言ったんだ。毒? 別に口に含まないよ。変態じゃないもん」

僧侶「そういう問題ではありません!」

僧侶「もう出て行ってください! お金の確認なら私がしておきますから!」

戦士「いや、でも……むむっ」

戦士「僧侶ちゃん下がるんだ! そこに妙な液体がー!」

僧侶「えっ」

戦士「何だコレ。美容液にしては異常な色だしよぅ」

戦士「こいつに見覚えは?」

僧侶「うっ……し、知りません」

僧侶「お、お願いしますからもう出て行って」

戦士「ダメだ。見覚えが無いのなら誰かがこの部屋に仕掛けた罠かもしれん」

戦士「俺が代わりに処理しておくよ。他に何か不審物は…」

僧侶「ありませんから出て行って!」

戦士「ちょ、ちょっと……!」


がちゃり


僧侶「はぁはぁ…最悪なハプニング。片付けてなかった私にも非はあるけど」

僧侶「それより魔法薬だわ! 今のうちに!」

僧侶「!?」

僧侶「な、ない……持っていかれてしまった……」

戦士「ただいま戻りました。戦士くんです」

盗賊「肉ダルマ、やけに早い帰りだな。話の方は?」

戦士「……」

盗賊「何気持ち悪い顔してんだよてめぇ」

戦士「お前ら最近俺に対しての扱い酷過ぎぃー!」

戦士「いやね、ちょっとコレ見てよ」

盗賊「グラスに入ったただの液体に見えるが。そいつが何だぜ。お前のか」

戦士「ううん、向こうの女子たちの部屋で発見したわけ」

戦士「僧侶ちゃんも知らないって言ってたし、怪しいから俺が預かってきた」

盗賊(という事はつもり、その液体には僧侶ちゃん(他2名除く)の匂いが染みついているのでは!)

盗賊「くっくっく……そいつは俺が預かろう」

戦士「は? もしかしてコレお前の物だったとかじゃねーよな」

盗賊「知らん! だが、それをお前に持たせておくには惜しいんだぜ」

戦士「ワケ分からん奴だなぁ。別にいいけど変な真似はすんなよ。正体不明なんだからね」

盗賊「大丈夫だぜ。ちょっとくんかくんかする程度だ……あ、いや、別に深い意味はないんだよ」

魔剣『盗賊ちゃんも鼻が効くからね!』

戦士「あら、魔剣ちゃん起きてたのかい。勇者殿はどうした?」

魔剣『ベッドから落ちちゃってるよ~。直してあげて~』

戦士「ふふふっ、勇者殿は寝てしまうと無防備だなぁ! なぁ!」

盗賊「そんな抱きついてたら寝相で殺されても仕方がねーからな……ふんふん」クンクン

~~~

僧侶「ど、どうしよう。完全に返して欲しいと言える感じじゃなさそう……」

僧侶「いいえ、諦めてはいけないわ僧侶! あの薬を何とか取り返さなきゃ!」

僧侶「勇気を振り絞って! さぁ!」

女勇者「何そんな気合い入れてるの?」

僧侶「っ~~~!!?」ビクゥ

僧侶「……あ、あなたですか。無駄に驚かせたりしないでくださいっ」

女勇者「えっ、そんなつもりじゃあなかったんですけど……」

女勇者「ところで男子部屋の前で何をコソコソと? もしかして愛の告白を!?」

僧侶「ち、違いますよ!」

女勇者(なるほどなるほど。魔女っちに相談したのはこういう事だったのね! でも私でも良かったのにー)

女勇者「それで、お目当ては誰なの!? 緊張しているなら私が呼んできてあげますよ~」

僧侶「だからそうじゃなくて!」

僧侶(あ、そうだ。これはきっと主が私に与えたチャンスなのよ)

僧侶「……女勇者さん、頼みがあります」

女勇者「はいっ! 誰を呼べば!」

僧侶「そっちはいいんです。ですから戦士さんが持つ魔法薬を借りてきてください」

僧侶「いいですか? けして私が欲しいと言っていたと言わないで、魔女さんが探していたからと伝えるのです」

女勇者「別にいいけど……どして魔法薬? しかも戦士さん?」

女勇者「……何かワケありのようですねぇ!」

僧侶「そ、そう。どうしてもその魔法薬が必要でして」

女勇者「ん~、よく分からないけれど借りてきたらいいんだね。了解です!」

僧侶「頼みましたよ! これは重大な任務です!」

女勇者「おお、何かそれカッチョイイなぁー! では、行ってきます!」

僧侶(本当に大丈夫かしら)

女勇者「男子部屋に夜遅く麗しき10代の娘が登場!」ババーン

盗賊「ひっ!? の、ノックぐらいしてから入って来いアホ!」

女勇者「てへへ。ていうか師匠は何を? 何隠してるの?」

盗賊「ガキに教えるにはまだ早い品だ! お前には教えてやんね!」

女勇者「むっ、いつまでも子ども扱いしてー……」

戦士「勇者殿ぬくい。勇者殿の懐がとっても温かい……」ぎゅう

魔王「う、ううう……うううぅぅ……」

魔剣『僕の勇者ちゃんを汚さないでよー! お髭でジョリジョリしたらダメー!』

女勇者「なんてディープな光景!! もしかしてあの二人の関係って!!」

盗賊「そっちもガキのお前には早い。いや、知らなくていい世界だぜ」

盗賊「ていうかお前はここに何しに来たんだ。用もなしかよ」

女勇者「あっ、忘れてました!」

女勇者「あのね、あのね! 僧侶さんから魔法薬借りてきてって頼まれてきました!」

盗賊「僧侶が? だが魔法薬になんてここで見た覚えねぇぜ。聞き間違えてきたんじゃ」

女勇者「確かに魔法薬って言われたよ? 私物覚えには自信があって」

女勇者「! 僧侶さんから、僧侶さんが魔法薬借りてきてって言ったの言わないでって教えられたの忘れてた……」

盗賊「もうその口で自信あるとか語るんじゃねーぞ」

盗賊(ていうか、何故内緒でそんな事コイツにさせる必要が……裏がありそうだぜ)

盗賊「その理由は僧侶から聞き出さなかったのか?」

女勇者「へ? 何で?」

盗賊「馬鹿もここまでくるとおめでたいぜ……」

盗賊「普通何か疑問に思うだろう。こっそりお前にそんな事させるなんてよ」

女勇者「い、言われてみたら。でも! 私は仲間のことを疑うような事したくないし!」

盗賊「くそバカ」

女勇者「なぁーっ!?」

盗賊「それでもお前俺の弟子名乗る身かよ。人に何かを頼まれたらまずは疑え」

盗賊「世の中お人好しばかりではないぜ……くっくっく」

女勇者「え~…そんなの私のキャラじゃないというか」

女勇者「でも、師匠がそう言うなら一度聞きに戻ってみるよ! さらば!」タタタ

盗賊「これでうるさいのが消えたぜ」


~~~


女勇者「僧侶さぁーん!」

僧侶「戻ってきた! お疲れ様です。はい」ス

女勇者「ん?」

僧侶「いえ、ん? じゃなくて…頼んだ物を」

女勇者「あっ」

僧侶「~~~……」

僧侶「あの、もう分かりました。やはり私が直接」

女勇者「あーあー! 大丈夫! 大丈夫だから私に任せてください!」

女勇者「……ところで、聞きたい事があるんだけど」

僧侶「はい?」

女勇者「どうして魔法薬借りて来いなんて頼むんです? しかも僧侶さんがそれを欲しい事を内緒にしてだなんて」

女勇者「あと、師匠はそんな物は見覚えないって」

僧侶(盗賊さんに早速バラしてるし)

女勇者「僧侶さん。どうして?」

僧侶「えっとー…それはー…」

僧侶「そ、そう! 魔女さんが探していて!」

女勇者「それは戦士さんから借りる時に付くウソだよね。で、本当は?」

僧侶(変なとこで厄介な子!)

僧侶(事実を伝えるのは恥ずかしすぎる。ここは何とか誤魔化さなきゃ)

僧侶「その魔法薬は大変危険な代物なんです。毒かもしれないし、爆発してしまうかも!」

女勇者「ええぇーっ!?」

女勇者「ど、どど、どうしてそんな物がー! まさか魔女っちの失敗作!」

僧侶「そう!」

僧侶「実は魔女さんから持ってくるように言われたのはウソではないのです。私が頼まれまして」

女勇者「危ないなぁ~……でも、だったら早く取り返さなきゃなのにどうして僧侶さんてば部屋の前で」

僧侶(し、しつこい!)

女勇者「それに危険物なら内緒にする必要もないと思う。あとどうして戦士さんがそんな物持ってるの?」

僧侶「うううっ……!?」

僧侶(ああ、主よ! これは嘘をついてしまった私めへの罰なのですか!)

僧侶「……ごめんなさい。実は」

女勇者「でもまぁ、そんなに危ない物なら早く何とかしないと! 色々疑ってごめんなさい!」

女勇者「それじゃあ私は任務へ戻りますんで! 任務に!」タタタ

僧侶「ああっ、待って!」


~~~


盗賊「くんくん……何だかこの液体、匂いを嗅いでいるだけで胸がドキドキしてくるぜ」

盗賊「そうか、これが恋なのか!」

女勇者「ただいま戻りましたぁ~~~~~~!!」ドーン

盗賊「んぐぅーーーぅぅぅっっ!!?」グイッ

ごくん

女勇者「師匠に教えられた通り色々疑ってみたよ! 何にも分かりませんでしたけど!」

盗賊「……あ、あ、のっ、飲んじまった。ちょっぴり」

女勇者「でも僧侶さんが頼んだ魔法薬は実は危険なアイテムでして……師匠?」

盗賊「お前何飲ませやがるんだよ!? 匂いだけ嗅いでただけなのに!!」

女勇者「え、えぇっ?」

盗賊「や、やべぇ……よく分からないものなのに……」

女勇者「あのー師匠ぉー?」

盗賊「何だよ畜生っ」

女勇者「いえ、だから魔法薬は危険なアイテムだから回収を」

盗賊「だったら早く肉ダルマから返して貰えばいいだけだろ! そして出て行け!」

盗賊「ッ!?」ビクン

女勇者「こ、今度はどうしたの!」

盗賊「何でもねぇ……くそ、最近は全くツイてないぜっ…か、体が熱い」

女勇者「風邪でも引いたんじゃ…今日はもう休んだ方がいいよ」

盗賊「そうさせてもらうぜ! 糞っ垂れ!」

女勇者「さーて、私は重大任務を果たさなきゃだね。戦士さん?」

戦士「ンふぅ~~~勇者殿ぉ~~~! ……はぁ、抱き心地最高。ぐぅぐぅ……」

魔王「あ、あ、熱い……」

魔剣『女勇者ちゃん! 勇者ちゃんを助けてあげてよ!』

女勇者「え、えー……アレって私が介入していいものなのかな」

女勇者「とりあえず戦士さんの荷物を勝手に悪いけど漁らせてもらおうかな」ガサゴソ

女勇者「!」

女勇者「これって女の人の写真だよね?」

女勇者「まさか、これが噂に聞いた戦士さんの彼女さん」

女勇者「素敵~……♪」

魔王「あづい゛ぃーーーッ!!」どかんっ

戦士「ほげっ!」

魔剣『勇者ちゃん脱出成功おめでとう! 危なかったよ~』

魔王「何故戦士が余の近くで眠っておるのだ!? 汗臭っ」

魔王「盗賊は何をしていた! この肉の塊を外へ投げて来いッ!」

盗賊「はぁはぁ……体が熱い……」

魔剣『盗賊ちゃん、なんだか気分悪そうな感じかも』

魔王「ええいっ! 使えぬゴミめが! …むっ」

魔王「何故にバカ女勇者がこの部屋におるのだ。おう」

女勇者「……」ポワポワ

魔剣『完全にバカになっちゃってるね~!』

魔王「チッ…何が何やらである。あー、熱い! 戦士のせいで汗ビッショリ!」

そんなところに、偶然魔王は魔法薬を見つけた。

魔王「ふふ~ん、ジャストタイミングではないか。誰の物かは知らんが勝手に飲むぞ」

魔剣『僕が許可するから問題なしっすよ~!』

ぐび、ぐび・・・

魔王「……ほほう、人間が作ったジュースにしては中々にンまぁ~~~いではないか」

魔王「でも、一杯飲んだら夜おしっこ行きたくなるからこの辺にしとくである」

魔剣『勇者ちゃんはいい子だね! 僕がよしよししてあげる!』

魔王「寝る。黙っておれ」

魔剣『もうっ、照れちゃって可愛いよぉ~~~!』

女勇者「……はっ」

女勇者「私何人の物に夢中になってるんだろ、いかんいかん!」

女勇者「早く戦士さんから魔法薬を回収しないと……!」

戦士「」のそ、のそ、のそ…ゴクリ

戦士(俺は、俺は今見てしまった。勇者殿が例の謎液体を飲むところを)

戦士「うわあああ…これで勇者殿に何かあれば俺の責任だ! 畜生め!」

女勇者「せ、戦士さ」

戦士「くそ! こうなったら俺も勇者殿の後を追う……し、仕方がなくなんだ。これは」

戦士「けして間接キッスを狙っての行動じゃあない…俺は…俺は…」グイッ

戦士「勇者殿ぉ~~~~~~!!! がぼがぼがぼがぼぼぼぼぉ~っ……」ごくごくごくごく!

女勇者「!?」

戦士「はぁ、はぁ……よっし!!」

女勇者「あのー……」

戦士「!」

戦士「今の見たの」

女勇者「」コクリ

女勇者「いや、ううん。私なにも見てないよ」

戦士「嘘つくなおいいいいぃぃぃ!! しっかり見てたんだろうがぁっ!」

女勇者「わああぁーーーっ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

戦士「全く、盗み見なんていい度胸してるよ!」

女勇者「あの私どうしたらいい…? みんなには言わないから…」

戦士「当たり前だ! それだけは止してくれ! 俺、またパーティ抜けなきゃなんなくなる」

戦士「ていうか、君はこの部屋に何でいる。部屋間違えてないか」

女勇者「そういうわけじゃ……その、魔法薬を返して貰おうと」

戦士「魔法薬ぅ~~~? って、まさか」

戦士「コレの事ではないですかね……」ス

女勇者「わ、わかんないかも……」

戦士「どうせ魔女の小娘の仕業だと思いきや、まさかマジだったとは」

戦士「どうしよう! 俺も勇者殿もこれ飲んだよ! やっぱり爆発して死ぬのか!?」

女勇者「危険だって僧侶さんが言ってたから……たぶん」

戦士「ああ、そうなった時は教会に連れてってくれぇ」

女勇者「ていうか、それが魔法薬なら師匠もやばいかも!」

戦士「盗賊も飲んだのか! 俺ら全滅だな! なんかどうでもよくなって楽しくなってきたわ」

女勇者「き、気を確かに持ってー!」

戦士「……早く俺が処分しておけば。もう仕方がない、空だけどコレ魔女っちに返しておいて」

女勇者「えぇー!?」

戦士「ある意味処分は終えたって事で。俺らは犠牲になるさ」

戦士「うう、何だか体が熱くなってきたぞ……明日の朝みんな死んでたらマジで頼むな」

女勇者「嫌だよ! 爆発なんてしないよね? ねぇ!?」

戦士「悪い。体調悪くなってきたんだ……俺は勇者殿に寄り添って寝ます。おやすみ」

女勇者「た、大変な事になってしまった」

僧侶「あ、おかえりなさい。そのさっきは……」

女勇者は黙って空になった魔法薬を手渡した。

僧侶「!?」

僧侶「な、中身はぁー!?」

女勇者「……みんな、みんな犠牲になっちゃった。ぐすんっ」

女勇者「うわあああんっ! 爆死しちゃうよおおおおぉっ!」

僧侶(ぎ、犠牲になったって……まさか)

僧侶「ちょっと待ってください! この中身は男性陣が飲んだとでも!?」

女勇者「……はい」

僧侶「いやぁああああああぁぁぁぁ~~~~~~!!?」

女勇者「で、でもね…ぐすっ、戦士さんがお詫びにって…飴ちゃんくれたぁ…ずずーっ」

僧侶「あ、あ、ああ……」

女勇者「…僧侶さんも舐める?」

僧侶「」ガクッ


~~~翌朝


魔女「あらぁ? よく分からないけれど薬は成功って感じ?」

魔剣『わぁ、勇者ちゃんたちのおっぱいがでっかくなってるよ~!』

魔王「何であるかコレ!? 女体化の呪いはまだ続いていたとでもいうのか!?」ボイン

戦士「いやーん! 勇者殿、俺とお揃いっスね! 俺も女体化っス!」ボイン

盗賊「鬱だ……こんなの嫌だ……」ボイン

女勇者「みんな爆死しないで済んだね! 良かったね!」

僧侶「……」

僧侶(私一人を残して、みんな胸が大きくなっている)

僧侶「お願いです! 薬をすぐに作って!」

魔女「すぐすぐ出来る物ではなくってよ。材料も丁度切らしているし」

僧侶「私が獲りに行きますからぁ!」

戦士「ダメだよ。これから大きな移動するんだから」

僧侶「悪夢だわ! ああ、主よ! 何故私にこの様な辛く恐ろしい試練をー!」


僧侶ちゃんの悪夢は3日ほど続いたという。

女魔王のお風呂へGO!の巻


戦士「風呂っスよ、風呂! 俺ら入るの久しぶりっスよねぇ~うははは」

盗賊「それだから肉ダルマの臭いが最近酷かったわけだな。生きる公害が」

戦士「俺ってそんなに臭うの……? 結構傷つくよ、俺?」くんくん

盗賊「俺も髭がだいぶ伸びてきたな」

戦士「似合わねぇなー! 髭は男の嗜みだよ、盗賊くん」

盗賊「髭とか見ててむさっ苦しいんだよ、獣か」

戦士「いいじゃない。野性感漂わすワイルドな男は。俺の事だけど」

戦士「ね! 勇者殿もそう思いませんか!」

女魔王「余は髭生えない体質なのだわ。だから知らんわ」

戦士「なるほど。確かに勇者殿の玉のお肌にムサい髭は似合わない……」

盗賊「……」

女魔王「それよか、余はさっさと湯に浸かりたいの! つまらぬ話はもうやめー!」

戦士「おお、そうだそうだ。それじゃあ服脱いで入りましょうねー。勇者殿の服は俺が脱がしちゃおうかなって…!」

盗賊「待て」

戦士「あ~? いいとこで邪魔すんなよな、お前~」

盗賊「いや…その、勇者は」

戦士「勇者殿? いつもと変わりなくお美しく、おっぱいボヨンボヨンだぜ」

盗賊「それだぜ、バカ! お前何か忘れていないか!?」

戦士「…………あっ」

女魔王「おらァー! 者ども、垢落としまくるであるわよーッ!」スッポンポン

戦士「いやぁあああーーーッ!!? 勇者殿、ちょっとたんまっスよー!」

戦士「ほら、バスタオル巻いて! …うほほほっ」チラ

盗賊「お前勇者なら姿なんでもいいのかよ」

女魔王「何を貴様ら焦っておるの。戦士は目泳ぎ過ぎィである」

戦士「いやぁ、目のやり場に困りましてな…」

戦士「そうだよそうだ。すっかり忘れていたぜ、勇者殿が今は女の体だという事」

盗賊「最近はそれが自然だったから気づかなかったのには同意するが」

盗賊「どうするんだ。今は脱衣所に人はいないが、中に入れば数人はいるだろうし」

盗賊「これから入って来る奴がいるかもだぜ」

戦士「う~ん……これなら勇者殿は僧侶ちゃんたちと一緒の方が良かっただろうか」

盗賊「そいつは俺が絶対許さなねぇ!! ぶっ殺す!!」

女魔王「はぁ、貴様らが何を臆するか余には分からぬが」

女魔王「余も中身は雄よ! だから問題あるまいー!」がらら・・・

戦士・盗賊「あっ!」

盗賊「早まるなバカ!?」がしっ

もみん・・・

盗賊「!」

盗賊(この感触っ、震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!)

女魔王「ッ!?」

盗賊「……いや、これは」

戦士「てめェーッ!! いつまで俺の勇者殿の体に触れてんだよ!? 悔しいから俺も」

女魔王「んぎぎゃあぁ~~~ッ!!?」


女魔王の攻撃!!

戦士・盗賊「」シュ~

女魔王「この糞馬鹿愚か者どもめが! 変態!」

盗賊「俺は別に悪気があったわけでは……」

戦士「嘘つけー」

盗賊「今視力無くなっているの知ってるよなてめぇ!」

女魔王「ええいっ、何でもよい! それより余はどうすればいいのよ!」

戦士「勇者殿。今の勇者殿のお姿は健全な、いいや世界中の男全てを虜にしてしまうほどのワガママボディをお持ちにな
っている」

戦士「胸! 尻! そしてキュートなお顔! ヤバいんスよぉ~全裸なんて見せつけたらみんな鼻血ぶぅーっス!」

女魔王「……」

戦士「あれ、引いちゃった?」

女魔王「少し」

盗賊「まぁ、とにかくだぜ。男風呂に女がいるってのはマズイわけだ」

盗賊「この現状を打開する方法はただ一つ。お前、呪い解けるまで風呂入るな、出てけ」

女魔王「はぁ!? ぶっ殺すわよ!!」

盗賊「それが一番妥当なんだぜ。ぶっちゃけると面倒なんだよ」

戦士「今、俺が盗賊に嫌いになった瞬間だわ」

盗賊「何でだよ!?」

戦士「こうなったら仕方がない。風呂場にいる男は俺が全員追い払うっス」

戦士「勇者殿はお部屋でそれまで待機。盗賊はここで新たに入ってきた客を追い出せ」

盗賊「お前それ勝手過ぎだろ」

戦士「俺ら勇者一行だから!」

盗賊「クズだな!」

戦士「ふんっ、とにかく待っていろ。すぐに俺がアイツら追い出してきますよ…」


がららら・・・


戦士(この手はあまり使いたくはなかったが、仕方があるまい)

戦士「うわあああぁぁぁ、俺のドリルは○○を突くぅぅぅーーー俺に掘り進まれたい奴は掛って来やがれぇーーーッ!!!」

「……キチガイ」「パパ、あのドリルの人何」「穴掘り屋さんだよ。すぐに消えるから」

戦士「……」ポツン

ぽんぽん

戦士「え?」

男「……///」

戦士(うああ、本物がいやがった……)

盗賊「何やら妙な雄叫びが聞こえてきたが」

盗賊「あのバカに構う事はねぇぜ。部屋に戻るぞ」

女魔王「やだやだ! 余は風呂に入って身を清めたいの! 戦士のせいで汗臭いのだぞ!」

盗賊「だから部屋で夜まで待つんだよ。運が良ければその時間に人はいなくなる」

女魔王「もう誰が居っても余は気にせんわ! 許せ!」

盗賊「お前もどうして分かってくれないんだー!?」

わいわいがやがや、わいわいわい

盗賊「! いかんっ、誰か脱衣所へ入って来やがった!」がしっ

盗賊は女魔王の手を引き、棚の裏へ隠れた。
想像以上にそこは狭くて二人の体はぎゅうぎゅうと密着してしまう!

女魔王「どこ触っておるのだァ!」

盗賊「声がでかい! ……俺まで隠れた意味あるのかこれ」

女魔王「知らんわ、早く入ってきた男共を追っ払ってこい!」

どかっ

盗賊「うわぁ!?」

女魔王に蹴りだされ、表へ飛び出る形となった盗賊。視線はやはりそこへ集中した。

「……」「何してんだアイツ」「ていうか、女の子? 割と好みなんだけど」

盗賊「俺は男だタコ! ……いや、待てよ」

盗賊は女魔王を棚裏から引っ張り出して男たちの前へ見せる。

「マジ女の子がきた!」「美しい! でかい!」「何だアレは!?」

女魔王「盗賊!」

盗賊「おい、ここは女風呂だぜ! 俺たちは女だ! お前ら、間違えて入って来たんじゃないのか」

女魔王「は? 何頭おかしい事申しておるのだ、貴様…」

盗賊「いいから黙って見ていろ…」

「あれ、そうなのか。申し訳ないなぁ、すぐに出て行きますね」

ぞろぞろぞろぞろ・・・

盗賊「ふん! 俺の作戦勝ちだぜ……くっくっくっ」

女魔王「洗脳魔法か? 貴様はいつからそんな魔法を」

盗賊「顔面の構造も言わば奇跡の魔法と言うところか。認めたくはないが、俺はよく女に間違われる」

盗賊「……つまりだぜ。俺とお前が風呂へ入っていれば上手く男共の目を誤魔化せるかもだ」

女魔王「かもでは困るのだろうがよ。だが、それで余が風呂へ入れるのなら構わぬ」

女魔王「てなわけでさっさと入ろうぞ~♪」スッポンポン!

盗賊「おいおいおい……!」

盗賊「あの、バスタオル身に付けたままで頼む。別に俺は問題ないがまだ他の奴が」

女魔王「それは為らんのだアホがッ!! 湯にタオルを浸けるのはマナー違反である!」

盗賊(変なとこでうるさい奴だな)

女魔王「ていうか戦士遅すぎであるわ。何ボサっとしておるのよ」

盗賊「こんな下らん事忘れてさっさと体洗ってるんじゃねーの」

女魔王「あァッ!?」がららら・・・

盗賊「だからっていきなり突入するのやめろ! せっかく立てた作戦がおじゃんになる!」

女魔王「ふんッ、おら貴様らァー! ここは女風呂だから出て…け……」


戦士「うわあああっ、勇者殿! 勇者殿ぉ! 助けてください!」ジタバタ

男「ここがええんか!? ここがァー!?」


女魔王「…………」

盗賊「肉ダルマ、お前マジもんだったのかよ」

戦士「そんなわけあるか俺はノーマルだ!!」

戦士「し、しかし見てくだせぇ。俺の頑張りが報われて客が出て行き始めた」

盗賊「体張り過ぎじゃねーのか」

女魔王「ふむふむ! これで余はゆっくりと湯へ浸かれるわけだな!」

盗賊「結果オーライだな。……だがお前、タオルは湯へ浸かるまで絶対取るなよ」

女魔王「やだ!」バッ

はらり・・・

戦士・男「!!」

戦士(俺は今何を目撃してしまったのだろうか。勇者殿の二つの山、そして)

戦士「ふっ――――――――」ブシュウウウ・・・

男「おい! 途中で果てちまったぜこの男…」

盗賊「……お前、あっち系なんだよな。ならあっちの勇者を任せても」

男「え? あ、ああ…よくわからないけど」

盗賊は気を失った戦士を抱えて浴場を出て行った。


女魔王「見よ! この見事な魔王クロールッ!」バシャバシャ

男「さっきの漢は中々の強敵だった。まさか俺の技を防ぎきったとはな」

戦士「」ピューピュー

僧侶「せ、戦士さん!? 一体どうしたんですかっ」

盗賊「何でもないぜ。とにかく俺は勇者を連れ帰って来る、これ以上手放しでいたらどうなるか分からんからな」

魔剣『戦士ちゃんおもしろ~い♪』キャッキャ

魔女「どうしたらこんな鼻血が噴き出せますのよ……」

女勇者「これ、放って置いたら死んじゃうのかな?」

僧侶「死にますから止めてあげてください!!」

盗賊(その光景が見えないのが残念で仕方がない)


~~~浴場


盗賊「くそっ、何で俺がこんな……」←来る途中何度もコケた

盗賊「おらぁー! もう十分だろう! さっさと上がりやがれよ!」

男「あんたか。お帰りなさい」

盗賊「勇者はどうした、このホモ野郎っ」

男「言われた通りしっかり見張っていたさ。問題なかった」

男「ただ、あの女数人ほど病院送りへしやがったがな……」

盗賊「全然問題ありじゃねーかよっ」

盗賊「とにかくアイツは今何処にいる! まだ入ってやがんのか!」

男「いや、あんたの後ろ…………」

盗賊「へ?」

むにゅ

盗賊「!!」

背中に当たる二つの大きな柔らかい感触。
まるで母の愛に触れたような。
そう、丸裸で暖かな日差しの中、優しく風が吹き、木陰で気持ちよく自分が寝ているかのような。

盗賊は幸福を肌で感じ取ったのだ!


盗賊「    」


盗賊「う、う、うおおお……な、なんだぁ……」ふらふら

女魔王を残して一人早々と部屋へ盗賊は帰って行った。

その後、彼が戦士同様鼻血を噴き出して、逝ってしまった話は語るまでもない事だ。

女魔王「ふむ、呪われた身体を逆手に取って雄を殺す。想像以上に使いようがありそうであるな!」

男「あんたのその体は強力な武器となったのさ、上手く使いこなしな」

男「だが気をつけるんだな! ……ホモには効かないぜ」

女魔王「ほ?」



魔王はおっぱいで人を殺せる事を学んだ!

魔剣は人/魔物の夢を見るかの巻


戦士「今日はこの辺りで宿を取ろうか。みんな距離歩いて疲れてるもんな」

僧侶「そうですね。夜まで少し時間もありますし、後は各自自由行動で」

僧侶「ただし無駄金は使わないように!!」

魔女「ケチー」

魔王「守銭奴ー」

僧侶「ただでさえ最近お財布軽いんですよ! 少しは節約する事を覚えてもらわないと!」

女勇者「僧侶さんお母さんみたい」

盗賊「僧侶なら良い奥さんになってくれるよな……」

戦士「少し抜けてるとこある感じだけど」

女勇者「て事は私にも勝ち目ありますよねー!」

盗賊「お前は全体的に抜けてるから」

魔女「にしてもしかし、自由行動と言われてもする事ないっていうかですわ」

女勇者「それじゃあ私と一緒に青春の汗をかこう! あの太陽へ向かってダッシュだぁー!」

魔女「今日は生憎曇り空ですわよ。おバカさぁ~ん」

女勇者「はぁ、やれやれ。こういうのって気持ちとか雰囲気が大切なんだよ?」

盗賊「……バカどもは放っておいて俺たちで宿取ってこようぜ」

戦士「あいあいさー。今日は飯が美味いとこ探そうね」

僧侶「ご飯がいただけるだけ有難いのですから、文句は言えませんよ」

すたすたすた・・・

魔王「……む」ポツーン

魔剣『へいへい、勇者ちゃ~ん! 僕たち置いてかれちゃったねぇ』

魔王「リーダーすら気遣えん愚か者どもめ! あやつらみんなウンコバカじゃ!」

魔王「……む~」

魔剣『あっ! ねぇねぇ、せっかくの自由行動だよ。デートしようっ、デート!』

魔王「何故余が魔剣如きとそんな真似せねばならん!」

魔剣『ダメ~?』

魔王「暇だから。暇だから別に付き合ってやらなくもないである、暇だからなッ!」

魔剣『暇潰しでも何でもいいよ! わぁーい、魔王ちゃーん!』

魔王「やはりウザい…!」

魔剣『見てよ見てよ、魔王ちゃん! あそこの子ども美味しそうだよ!』

魔王「ああ、うん」

魔剣『きっと肉も柔らかくて歯切れも良い感じだよね~』

魔王「……余は人間食べないし」

魔剣『あっ』

魔剣『ご、ごめんね! 僕一人が勝手に盛り上がっちゃって……魔王ちゃんは何見たら楽しくなる? 見に行こうよっ』

魔王「それも特にないである」

魔剣『そんなぁ……』

魔王「しいて申せばな、誰かの不幸を見て笑いたい」

魔王「余は人の不幸が飯より大好物よッ!!」

魔剣『さすが魔王ちゃんだよぉ~~~!!!』

魔王「あと魔剣! あまりその名を呼ぶでないぞ、身元がバレてしまうかも」

魔剣『でも勇者ちゃんどうせ今お尋ね者状態だよ~。どっちで呼ぼうと怪しまれるっていうか』

魔王「貴様は余が偽勇者だと申すのか?」

魔剣『そんな事ないよ、僕にとっての勇者は勇者ちゃんだけなんだもん』

魔剣『…あ、もしかして魔王ちゃんって呼び方まだ好きじゃないの?』

魔王「余は既に魔王である事を捨てた身なのだ」

魔剣(勇者ちゃん、の方がやっぱりいいのかな)

魔剣(本当の事言うと僕としては勇者としてじゃなく、魔王としてのこの人が好きなんだけど)

魔王「」もぐもぐ

魔剣『僧侶ちゃんが無駄遣いダメだよって言ってたよー。いいの?』

魔王「僧侶の奴が申す事など別にどーでもよいのだ。うーむ、最近余も庶民の味に慣れたものよ…」

魔剣『……』

魔王「急に魔剣が黙りこむと気味が悪いである! 何か申せ!」

魔剣『今勇者ちゃんがもぐもぐしてるのって美味しい?』

魔剣『僕、みんなの食べてる物に興味あるよー』

魔王「とか申しておいて、前に戦士の料理食わせたら吐き出したであろうが」

魔剣『そ、それは胃が受け付けなかったというか~……』

魔王「では食わぬ方が良い。女勇者も申しておった、食べ物を粗末にするなと!」

魔王「食えぬずに吐くのならそれは粗末にしておるのと同等だからなァ」

魔剣『ごめんー……』

魔王「全く! 生意気言うからであるぞ!」

魔王「まぁ、だがのぅ。余はこの食い物にそろそろ飽きてきた頃だ」

魔王「だから貴様にくれてやるわ! 残飯処理が魔剣の役割よ、わっはっはァー!!」ポイ

魔剣『ギャアアアッ! 美味ソウな……』ばくっ

魔剣『おええぇぇ~~~!!』

魔王「ふん、やはり人間の食い物は貴様の口には合わぬようだな」

魔剣『どうして~……うう』

魔剣『僕って本当に誰なのかなぁ』

魔王「は?」

魔剣『人間の食べ物は嫌いみたいだし、魔物みたいに人間バリバリ食べられるし』

魔剣『本当は魔物なんかの仲間じゃないかな』

魔王「なら余と同じであるな。余も勇者だが魔物だ」

魔王「貴様は剣だが魔物。余は勇者で魔物……似た物同士か」

魔剣『お揃い!? 僕と勇者ちゃんはお揃い同士!』

魔王「意味が違うわアホ。似ておるだけで何の関係もないからな!」

魔王「魔剣よ、貴様は何も考えなくともただの変な剣である。悩む必要などあるまい」

魔王「何故自分が何者かなどと思う?」

魔剣『どうしてかって言われても、よくわからない』

魔剣『でも、自分が誰なのか。男の子か女の子かもわからないって、とっても気持ち悪いよ!』

魔剣『考え出すと止まらないの! 頭がパンクしそうになって……!』

魔王「悩む必要はないと先程申したばかりであろうが~」

魔王「魔剣はそんな面倒臭い奴であったか? 余の知る魔剣はバカであるぞ」

魔剣『ゆ、勇者ちゃーんっ』

魔剣『でもそうだよね。こんなの僕らしくないよね! うん!』

魔剣「さぁさぁ、次は何しよっか勇者ちゃん!」

魔王「いや、後は帰る」

魔剣「え~……」

女勇者「おかえりなさい勇者さん! 急に姿消えたからみんな心配してたんだよ」

魔剣『勇者ちゃんは僕と一緒にデートしてたんだよ! いいでしょ~』

女勇者「いい! すごく!」

魔女「お喋りな剣とデートなんて中々経験できたものではありませんわねぇ」

魔剣『えへへ、つまり羨ましいんでしょう?』

魔女「それあんたが言っちゃうんですの?」

僧侶「無駄遣いはー……」

魔王「してきた」

僧侶「ハッキリ仰られましたね!? あれ程念押ししたというのに…」

戦士「デートだから。デートで使うお金は無駄じゃないって」

戦士「ていうわけで今度は俺とデート行こうっスね、勇者殿!」

魔王「絶対そういうの申してくると思ってたわ」

盗賊「にしてもてめェ最近魔剣に優しいな。気持ち悪いぜ」

魔王「別に優しくしてやったつもりなど全くない! 勘違いするなよッ」

魔剣『勇者ちゃんは暇潰しに付き合ってくれただけなんだよね。僕はそれで十分なんだよ♪』

魔剣『でも、また今度も一緒にデートしようね!』

魔王「…………暇があれば、である」

魔剣「わぁーい! 勇者ちゃん大好きだよー!」


・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・~~~異空間・いんふぇるの


「…………ま…ゆう……さま…ゆうしゃ」

魔王「」

僧侶「勇者様! 起きてください! 気を確かにっ!!」

戦士「勇者殿!! 勇者殿ぉー!!」

魔王「や、やかまし……」

エルフ「良かった。目が覚めたみたい」

魔女「相当消耗していますわね。早く治療が欲しい感じだけれど」

僧侶「治癒魔法が発動しないんです。まるで世果樹に封じられた時のように」

女勇者「そもそもここどこなの? 私たちってさっきまで世界樹の前にいたよね…」

女勇者「周りに森はないし、砂しかないよ……」

戦士「見覚えは?」

エルフ「ない。そして何が起きているのかも分かりません」

エルフ「でも、ここは私たちがいた世界でも、あなたたちがいた世界でもなく感じる」

魔女「何よそれ? また別の世界が~とか言い出すんじゃないですわよね」

エルフ「それどころかもしかしたら、私たちは何処でもない場所へ飛ばされたのかも」

女勇者「え?」

魔王「ま、魔剣……魔剣は……」

僧侶「魔剣ちゃんならあなたのすぐ傍にありますよ…」

魔王「魔剣っ、魔剣返事するのだ…おい…!」

魔剣『―――――』

僧侶「すぐに、良くなりますよ。この子は元気だからきっと」

魔王「……」



本編へ続く

想像以上に長くなってしまった。短編集でした
次回からは通常通りの本編へ戻ります。付き合ってくれてありがとう

―――あなたは近い将来、大切なモノを守り

―――死ぬ……!


僧侶「……」

女勇者「僧侶さん」

僧侶「はい? どうかしましたか」

女勇者「あの、さっき私ワガママ言ってみんなを困らせちゃったから」

僧侶「…気にしていらしたのですね。すみません。私もあんな酷い言い方することなかったのに」

女勇者「そんな事ない。それに謝るのは私の方だと思う」

女勇者「ごめんなさい」

僧侶「頭を上げてください。いいんです、今はそんなさっきの話なんて」

女勇者「……もしかして師匠を心配していました?」

僧侶「ええ、仲間ですもの心配の一つしますとも。ただ現実になるとは思っていなかったから」

女勇者「へ?」

僧侶「あ、何でもありません! こっちの話」

エルフ「二人が帰ってきました」

戦士・魔女「」

女勇者「何か見つかった!?」

魔女「見つかるどころか何一つ。本当に砂、砂、砂。空は妙な色に変わるばかりだし」

戦士「悪いな、あのまま進んでも果てすら見えなかったから引き返してきたんだ」

僧侶「いいえ、ご苦労様でした」

戦士「勇者殿は?」

僧侶「あちらの方でまだ横にさせています。動けそうな状態でもありませんし」

戦士「無理はさせない方がいいか。参ったな、こういう場面こそ勇者殿に期待を」

魔女「困った時の勇者頼みの癖はやめた方がいいですわよ」

戦士「……参ったな」カリカリ

エルフ「私もそう思う」

エルフ「みんなだって、私だって今何か一つでもできる事はあるはず」

戦士「随分前向きな考えを持つようになったんだな」

エルフ「世界樹から解放されて私は自由になったから。かもです」

女勇者「……ねぇ、世界樹がなくなっちゃったけど私たちの世界はどうなってるんだろ」

魔女「どうなっているのかしらねぇ。言えるのは魔王討伐どころではなくなったぐらいかしら」

女勇者「人間も魔物もピンチなんだ」

僧侶「詳細はエルフさんもご存じではないようですし……とにかくここから出ないと」

僧侶「もう一度探索を行いましょう。今度は私が」

女勇者「自分も行きます! みんなはここで勇者さんを守っていて」

戦士「くれぐれも無茶はしないでね」

魔女「うーむ、今の勇者なら私の天才魔法一撃で葬りされそうですわね。日頃の恨みをここで…」

エルフ「でも魔法は使えません」

魔女「わかってますわよ! 少し場を和ませるジョークを言っただけ!」

戦士「はいはい、和みました。どうもでした」

魔女「な、何ですの…その適当な返しはっ」

魔女「…………でもアイツをボコボコにする奴って一体」

エルフ「彼女は本当に神だったのかもしれない。それに値する力を持っていた」

戦士「神を殺したのはその神が生み出した人間だったのか、皮肉なもんだ」

戦士「王都騎士団長。あの野郎一体どういうつもりでこんなふざけた事を!」

< ウウウ

「?」

エルフ「あの人が苦しんでいる」

戦士「ゆ、勇者殿ー!!」

魔王「~~~……」

魔女「マジみたいですわね。演技でもなさそう」

戦士「バカ! 茶化してる場合か! 勇者殿、水っスよ。飲める?」

水筒を魔王の口へ持っていくと、手で乱暴に払われてしまった。

彼らから顔を背けてシーツを深く頭に被ってふたたび呻く。

エルフ「……」

魔女「たまに優しくしてやったらそんな態度だなんて、どういうつもり?」

戦士「止せ。色々な事があったんだ、魔剣ちゃんも盗賊も…」

魔王「盗賊ガどウした」

戦士「しまった! い、いや何でもないんスよ!」

魔女「どっちみち後で伝えなきゃいけない事ですわ。今でも同じよ」

魔女「勇者、よく聞きなさい。盗賊の変態野郎は死にましたわ」

魔王「なラ教会へ連れてゆキ金払ッて蘇ラセればヨい」

戦士「今回は少し難しいんだ、勇者殿」

戦士「俺たちはあいつの最後をこの目に焼き付けた。裏切ってなんかなかった。最高の仲間のままだったぜ」

魔女「……勝手に死んでこっちのこと放っておく奴のどこが最高よ、バカちん」

魔王「……」

戦士「だから勇者殿、俺らであいつの仇討ちをしよう」

魔女「仇って、盗賊はあの魔物と一緒に」

戦士「王都騎士団の騎士団長。あの男さえ余計な事を働かなければ」

戦士「……悪い、正直言うと誰かに当たり散らしたいだけさ。この、苛立ちか悲しいんでいいのかという気持ちが胸にあ
って」

戦士「何をしていいか分からないんだよ。全部が突然すぎて」

エルフ「だいじょうぶ。心配しないで」ポン

エルフは戦士の頭に手を置き、数回励ますように軽く叩いた。

戦士「頼もしい子だよ、君って」

魔女「私も励ましてやろうか?」

戦士「いらん」

魔女「あー! 乙女の気遣い無下にした! あー! あー!」

魔王「……ガウゥ」

エルフ「二人とも彼から下がって」

戦士・魔女「え?」

魔王「~~~!!」

中で先程よりも強く唸りをあげている魔王。

シーツを掴む手に力が入っており、そこに穴ができる。

戦士「ど、どうしたんスか! 腹痛むっスか!?」

エルフ「近づいてはダメ」

戦士「!」

戦士が魔王へ近づき手を伸ばそうとすると、開いたシーツの穴から人間のものとは思えぬ鋭く輝いた眼光が覗いていた。

戦士「勇者殿……?」

魔女「どうしましたのよ」

戦士「お前は来るな。エルフと一緒に俺の後ろへ下がっているんだ」

戦士(この敵意剥き出しのヤバい感じ、前に屋敷でやり合った)

戦士「……勇者殿、気分が悪いのなら言ってくだせぇ。俺がなんとかするっス」

魔王『うううううぅぅぅー……うううううぅぅぅー……!』

魔女「声がおかしい。いつものアホ声じゃありませんわ」

魔女「これって、あの時の化物の!」

戦士がシーツを無理矢理剥ぎ取ると、そこには魔物の姿へ変貌しつつある魔王の姿。
人間と魔物の姿が中途半端に入り濫りしたそれは化物と変わりがない。

魔王『ぎゃぎゃあああああああぁぁぁ~~~……ッ』

魔女「や、やっぱしですわよ!?」

戦士「……」

エルフ「嫌いにならないであげて」

エルフ「どんな姿だろうと、誰であろうと、嫌いにならないであげて」

戦士「勇者殿、あんた一体何者なんだよ……」

魔王『近寄ルナッ!!』

「!」

魔王『余ニコレ以上、貴様ラ近寄ルデナイゾ……』

魔王(変身魔法が解けただと? うう、無性にこやつらぶっ殺したいぞ…)

魔王は苦しみ悶えながら戦士たちから這って逃れようとする。

三人はその光景を茫然と見ているだけしかできずにいた。

魔女「ど、どういうことかの説明は!? 前にも変な姿へなった事があったはずよね!?」

魔女「それに……今も同じようにっ。あんた、誰ですの! 勇者!?」

魔王『勇者デアルゾ!』

魔女「うっ……」

エルフ「あの人の姿は今は違う。けれどあなたたちが知っている人」

エルフ「忘れないで。これは呪いでも、何でもない」

エルフ「真実だよ」

戦士「アレが勇者殿だというのか? 正体が、アレがか!?」

戦士「俺はあの時信じたのに……あんまりだ」

魔王『はぁ、はぁ……ンググ…離レテオルノダ…!』

戦士「俺たちから逃げるのか!? 騙していたから!!」

エルフ「違う。あの人はあなたたちを傷つけない様にして」

魔女「どう見ても魔物ですわよっ、馬鹿言わないで。今まで私を騙していたのね」

魔女「人ではないから勇者の魔力器官に違和感を感じていた…魔物だから…」

魔女「この嘘吐き野郎。私はお前が信じられませんわ!」

戦士「止せ!」

魔女「ショック受けてもまだアイツを庇う気? 冗談じゃありませんわっ」

戦士「うう……」

魔王『何デモ良イカラトットト下レ阿呆! 余ニ殺サレテシマイタイノカッ』

戦士「いつも殺されているっ!! 少し待ってくれぇ…」

エルフ「ねぇ、みんなに全部本当の事を教えてあげたら?」

魔王『ハ?』

エルフ「あなたのことを包み隠さず全部。そもそも内緒にしていたあなたが悪いと思います」

魔王『余ガ悪イト申シテオルノカァ!?』

エルフ「はい」

魔女「結構よ。今さら言い訳されたところでお前に誰が着いていきますの?」

魔王『無論、全員デアロウ。余ニハソノ自信ガアルワ』

魔王『ダガ真実ナド貴様ヘ語ル必要ハナイ!』

魔女「あーそう! 好きになさい、この魔物!」

戦士「……ゆ、勇者殿」

魔王『何ダヨ薄ノロ!』

戦士「話してくれ。俺は、話してくれれば…いや! 今俺が見てるアンタは嘘なんだって言ってくれたら!」

エルフ「それであなたは満足できるの。信じていられるの?」

戦士「無理に決まってるだろ!! これドッキリかなんかじゃねーのか!? 畜生っ」

戦士「なぁ、俺は一度アンタから離れたよなぁ! 俺はその間でアンタの事を信じようって決心がついたんだぜ!?」

戦士「ど、どうすればいいんだよぉ……!」

魔王『ナラバ今マデ通リニ』

戦士「前に屋敷でアンタと戦った時だってそうだ。薄々気づいていたさ! 勇者殿は人間ではないんじゃないかと!」

戦士「あの偽勇者が言った事……本当だったのかよ!? なぁ!?」

魔王『イヤ、ダカラソレハノゥ……!』

戦士「俺を二度も騙すのは止してくれよ!」

魔王『ウヌヌゥ……』

魔女「行きましょ、戦士。良い機会ですわよ。ここで元・勇者と別れるというのも」

戦士「待ってくれ! ……そもそも、俺は勇者殿が化物だってもうどうでもいい」

戦士「でも…でも…っ」

魔女「信じていたい気持ちはわかりますわよ。ここでコイツとの繋がりを断てば悩んだ末に信じたお前自身を裏切る事に
なるのだから」

戦士「……」

魔女「少し、向こうで休みなさいな。この化物も言っているのだから離れろと」

戦士「化物じゃ……くぅっ……」

魔王『アヤツラ、何様ノツモリカ。余ヲ化物扱イダト? 余ハ勇者』

エルフ「違う。あなたは勇者ではない」

魔王『アァ!?』

エルフ「本当に偽っていた勇者はあなたでしょう」

エルフ「みんなを騙していたんだよ。みんなあなたを信じて今まで着いてきたのに」

魔王『騙シッ……確カニ騙シテハオッタガ! 余ハワルクハナイゾ!』

魔王『大体、戦士モ僧侶モ盗賊モ! 余ニ惹カレテ勝手ニオ供ニナッタノダロガ!』

エルフ「それはあなたが勇者だと語ったから。何故あなたが勇者と語ったのかはわからないけれど」

エルフ「本来あなたは勇者と対峙する立場だよね。そうでしょう、魔王」

魔王『貴様ァ、知ッテイタノカ…!』

魔王『余ハ元・魔王ナノダ。既ニ魔王ノ役ハ何処カソノ辺ヘポイシタ!』

魔王『ダカラ魔王デハ』

エルフ「あなただけが否定したって事実は何も変わりません」

エルフ「魔王はワガママが少し過ぎるね」

魔王『喧嘩売ッテオルノカ先程カラァー!?』

エルフ「これはお説教です」

魔王『ハァ!?』

エルフ「あなたは一度自分がした事を振り返って、反省すべき」

エルフ「それでみんなが全部許すとは思えないけれど。何か一つは変われるはず」

魔王『フン、何故余ガ貴様如キガキニ指図サレネバナランノダ』

魔王『コレ以上コケニシテミヨ。ソノ喉食イ千切リ始末スル』

エルフ「それは困ります」

魔王「ナラ余ヘ話シカケルナー!! 失セヨッ!!」

エルフ「その姿が収まったらみんなのところへ一緒に戻ろう?」

魔王『ウルサイ!!』

エルフ「……」

エルフは魔王の近くに腰かけた。

魔王『ヨホド余ニ殺サレルタイト見タ』

エルフ「殺されるのは勘弁です」

魔王『……貴様トオルト余ハイライラスルッ!!』

エルフ「私はしないから」

魔王『イイ加減ニスルノダボケェーッ!』

魔王の攻撃! エルフは押し飛ばされた!

エルフ「ぐっ……」

魔王『次ハマジデ殺ス! ヨ、余ノコノイライラガ収マルマデ来ルナ』

エルフ「怖いの? 仲間を襲ってしまいそうになる自分が」

魔王『ウルサイウルサイ!!』

魔王『ドウセアヤツラハ人間! 何シタッテ何トモ思ワン!』

エルフ「……そう」

エルフは立ち上がると魔王の傍を離れ、戦士たちの元へ帰った。

魔王『クソ、クソゥ!!』

エルフ「ただいま」

魔女「おかえりなさい。僧侶たちも戻ってきていますわ」

女勇者「ねぇ、どうして戦士さん急にこんな落ち込んでるの?」

女勇者「すごく辛そうだよ……」

僧侶「何があったのか説明していただけませんか」

魔女「説明すればあんた達きっと悲しむし、怒ると思う。ですわ」

僧侶「勇者様、ですか」

女勇者「え?」

魔女「ご明察通り……。私たちは騙されていたのよ、アイツに」

女勇者「ちょ、ちょっとどういう事? 意味不明だよ」

僧侶「正直言えば私も意味不明です。ただ、勇者様の件ではないかと思えて」

僧侶「話して頂けませんか。覚悟は決めました、けして感情的にはなりません」

女勇者「え、えぇ?」

魔女「アイツは魔物でしたのよ。人間じゃあない」

女勇者「……えっ」

女勇者「そ、それって前にお屋敷で勇者さんが魔法で変身した」

魔女「魔法なんかじゃない正真正銘の魔物よ。以前見た時とは違った形をしていたけど」

魔女「そんで人間の姿こそが変身魔法で化けた姿。迂闊でしたわ、気づけなかったなんて」

僧侶「だからあの時ラーの鏡に映されるの拒んだ…」

女勇者「何かの冗談だよ! 魔王を倒して人類に平和をもたらす勇者が魔物なわけ」

魔女「信じられないのなら向こうにいるアイツを見てきなさいな。それが真実ですわ」

女勇者「わ、私は絶対信じないよ…! だって勇者さんなんだよ! おかしいよ!?」

魔女「おかしかったのは私たちの方だったって事かしらねぇ」

女勇者「~~~!」

僧侶「魔法が完全に使用できなくなった事で、変身魔法が解けてしまったのですね」

僧侶「でも、今まではどうやって。確か魔力器官は既に機能していないと」

魔女「変身魔法は一度かければ当人の魔力が底付くまで効果を保つもの」

魔女「そもそもが人間業とは思えませんわね。私たち人間とは違う構造なのかしら」

女勇者「やめてよ、勇者さんを化物扱いするのっ」

僧侶「優しいですね。でも、良い機会です。しっかり考えてみましょう」

僧侶「……本当は本人の口から聞ければ」

エルフ「嫌がってた。もう少し気持ちの整理させてあげて」

僧侶「ええ、体の方も心の方もしばらく休ませてあげましょう」

魔王『はぁ、少し落ち着いてきたである』

魔王『……流石にこの姿では誤魔化しももう効かんか、くそゥ』

魔王『魔法で姿を変えるのもできん。二度と人間へは化けられぬのか』

魔王『まぁ、そこはいっか』

魔王『それよりどうすればあやつら馬鹿どもの信用を取り戻せるかであるわ』

魔王『……ふ、フン! 考えてみたら別にあやつらがおらんでも、余一人で十分ではないか』

魔王『清々したわ。魔王討伐の旅など余だけで』

魔王『ついでに魔剣も! 余と一本で問題あるまい!』

魔王『……待て、今思うと魔王って誰倒せばよいのだ?』

魔王『余は一応元・魔王だし、今勇者だし。魔王いなくね?』

魔王『アレ?』

魔王『既に死んでいるしておくか、それともそれっぽいの倒して良い感じに締めるか…』

魔王『う~ん』

?『んーでェはァ、余が丁度それっぽいボスとなってくれよう、か?』

魔王『へえ?』


?の攻撃! 大きな拳が魔王の顔面を捉え、ぶっ飛ばす!


魔王『んぶぶぶぶゥゥゥ~~~~~~…!!?』

魔王『敵か貴様ァ! 殺してやるであるッ!』

魔王『!』

そこにはかつて、自身が魔王となる為に邪魔であった存在。
同時に親でもあった魔王父が仁王立ちしていた。

父『ゥお前ォー…この手で罰するのはァ、随分久方ぶりの事か』

魔王『ぱ、パパ上だと!?』

父『うーむ、如何にもパパであるぞォ』

魔王(な、なななっ、何でパパ上が此処へ居る!? 確か以前に余が仕留めたはずッ)

魔王『だのに何故なのかァーッ!?』

父『んー一々大きな声で喚くものじゃあなァい。威厳の欠片も、見えぬぞ』

魔王『そんなの今はどうでもよいわ! 貴様死んでおらんかったのか!』

父『息子よォ、貴様は今とーても悩んでおるのだな。パパには全部分かるぞゥ』

魔王『うるさいクソ馬鹿パパ上がッ』

父の攻撃!

魔王『ぎゃうぅー!?』

父『ん~親に向かって汚い言葉を吐くものではなァい。悲しいぞ』

父『よし息子よォーーー、久しぶりにこの父と戯れようではないかァ』

魔王『は? え?』

父『どした? んかかって来ぬのか? では余から行くぞゥ』

魔王『ぱ、パパ上おかしい! 頭イってるであるぞ!?』

父『ん黙れエエェェェェェーーーーーーイィィィッ!!! 真の魔王の力ァ、貴様にとくと味わって貰うゥゥゥゥゥーイ゛ェア゛ア゛ア゛アアアアァァァァァァッッッ!!!!』

ドドド ドド ドド

魔王『!』

魔王父の雄叫びに異空間全体が強烈に歪む! 大気が脅えるように震えて揺れる!
バキバキ、と辺りの砂が吹き飛ぶと同時に地面が現れ、地割れを起こす!
落雷が周囲へ次々と激しく落ちる! うちゅうの ほうそくが みだれる !

魔王と魔王父を囲む様にマグマが噴き出し、地獄の灼熱リングができあがった!

魔王『う、うあ…………』


だが、その地獄の様子に仲間たちが気づく事はなかった。

ゴ ゴゴ ゴゴ ゴ


「!」

女勇者「地面が揺れてる。まさか地震! みんな、テーブルの下へ!」

魔女「おバカ、下へ潜る家具すらないですわよ」

戦士「まさか勇者殿が……」

エルフ「違う。あの人が起こしている現象じゃないです」

エルフ「恐らくこの異空間の中で何かが」

僧侶「もしかしたら出口が現れたのかもしれませんね。探しに―――」

僧侶が後ろを振り返ると、そこには

僧侶母『…………』

僧侶「!!」

魔女「僧侶、どうしましたの? 出口を探すのは私もさんせい…………!!」

魔女「ど、どうしてっ」

戦士「何があった。魔物でも現れたか? おい、僧侶ちゃんもしっかりしろ!」

女勇者「……おとうさん?」

戦士「君までどうした! くそ、こんな時に何だよ! 混乱魔法か!」

エルフ「魔法じゃありません。ただ何が起きているのか私にもわからない」

エルフ「でも、私たちは今囲まれている」

戦士「え!?」

エルフ「人間も、魔物もいます。でもみんな死んでいる」

エルフ「死者です」

戦士「!」

戦士父・母『…………』

戦士「父さん、母さん!!」

仲間たちは各々で゛見えている゛人たちへ恐怖し、悲しみ、喜び始めた。
かつて討ち倒した人間も魔物も次々と姿を現せて彼らを一囲みする。

女勇者「お父さん! 生きていたんだー!」

勇者父『おいで、こっちは絶望も苦しみもない。お父さんと一緒に行こうよ』

魔女「お、おばば……じゃなくてババ様」

ババ様『魔女一族も一人で寂しくはないかい。あたしのとこに来な、鼻たれ娘』

僧侶母『酷いじゃない。あたしをあんな火の海へ放って逃げるなんて』

僧侶「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんない……!」

僧侶母『死ね、死ね。あたしがお前を引っ張ってやるぞ。地獄へ落ちろ、地獄へ落ちろ』

僧侶「許して……許してっ……」

エルフ「気を確かに持って。すぐに脱出しないと、みんな早く」

戦士「俺さ、姉さんができたんだ。その人に色々教えてもらえたんだよ」

エルフ「ダメっ、会話してはダメです」

戦士「姉さんは? 姉さんもいるんだろう? あれ、おかしいな。恥ずかしがって出てこないのかな、はっははは」

少女『私のお友達を、どうして、殺しちゃったんですか』

戦士「!」

少女『お友達だったのに、裏切って、私も、殺して』

戦士「違う! 俺は君を殺してない! そ、それにあれは仕方がなかったんだ!」

戦士「やめてくれ! これ以上近寄らないでくれぇ! うう、ううううぅぅぅ……」

エルフ「なんとか、なんとかしないと、みんなが」

ぐちゃあ

エルフ「!」

足で何かを踏みつけたのか酷い音が聞こえた。足が生温かい液体に触れている。
足を退けてそれを確認すれば、そこには破裂した妖精の死体があった。

妖精『どうじでぇぇぇー…エ゛ルフぅぅぅー…』

エルフ「……怖くない、怖くない。足元には何もない」

蟹男『我が主よ、何故わたしを見捨てるのですか…』ブシュウウゥゥ~…

エルフ「見えない、何も見えない。聞こえないっ」

エルフ(全部幻。私たちみんなを騙そうとしている。騙されてダメ)

盗賊『くっくっくっ、お前ら早く楽になっちまった方がいいぜ』

「!」

エルフ「それは盗賊ではないですっ。お願い聞かないで」

女勇者「師匠……師匠も生きてた……!」

戦士「お、お前……!」

盗賊『お前たちも俺と一緒にこの地獄へ落ちよう。ここはいい、最高だぜ』

盗賊『何も怖いことはねぇよ。自分の意思でちょっとここへ残りたいの思えばいいだけだ、簡単だぜ』

僧侶「地獄……」

エルフ「地獄なんて存在しない。私の話を聞いて」

エルフ(意識が持っていかれそう、ここは一体何なの)

僧侶「そうですね。このまま苦しみが続くならいっその事楽になって」

魔女「死のう、死のう」

エルフ「ここで死んでしまっては絶対ダメですっ、戻ってこれなくなるっ」

女勇者「師匠も死んじゃったし、いいよね」

戦士「俺も父さんたちと一緒に」

死者『あー……あー……』

死者たちが地を這って、彼らの足を引く。
正気を保っていたエルフすら限界が見えてきた。

盗賊『早くこっちに来いよ』

エルフ「魔法さえ使えたらこんな……」


『そっちに行ってはいけないよ。こっちに来て』

『僕たちについてきてー』


死者の声を遮って聞こえてきた、二人の少年と少女の声が仲間たちを正気に戻す。
すると、そこにいた多くの死者たちの姿は最初からいなかったかのように消えていた。

女勇者「あれ」

エルフ「なんとか助かりました」

僧侶「今のは一体何が……」

≪ 世界樹はいんふぇるのの中を流れてる~ みたいな ≫

魔女「ちょっと、聞き覚えありますわ! この声!」

エルフ「世界樹?」

戦士「おいおい、世界樹は神様と一心同体で、その神様が死んだんだぞ」

戦士「いるわけがねぇだろ」

女勇者「でも私にも今確かに聞こえたよ。子どもの声の後に」

女勇者「子どもだけど……どっかで聞いたような、聞かないような」

僧侶「私も聞き覚えがありました。いつも聞いているような…ないような?」

戦士「どっちよ!」

エルフ「まさか今の死者たちは世界樹の記憶が作ったもの? そんな」

魔女「なら、神はまだ完全に消滅していない?」

エルフ「そんなはずはありません。確かにあの人はこの世から存在ごと消された」

エルフ「世界樹なの?」

≪ 世界樹は世界樹だよー。でも、この世界樹は世界樹の記憶にあった世界樹の再現っていうか ≫

「は?」

僧侶「残留思念、のような物ですかね」

≪ この世界樹はただの記憶の塊ですよぉ~。神さまと世界樹の記憶は別だから ≫

≪ 神さまが消えても、世界樹の記憶だけは世界樹が持ってるの~ ≫

戦士「俺、言ってる事が全く理解できん」

魔女「安心なさいな。珍しく私もですわ……!」

エルフ「どうしてこの異空間に世界樹自身の記憶が残留しているの? 世界樹の体自体は崩壊して無くなったのに」

≪ ここ゛いんふぇるの゛は神さまが最初に作った一つの世界っていうか~ ≫

≪ 無限地獄ですか? それなんですよぉ。ぶっちゃけ失敗作な世界だけど ≫

女勇者「やっぱり地獄じゃん! 砂しかないもんね!」

魔女「紛らわしいからあんたは黙ってろですわ」

僧侶「魔法は……世界樹の記憶が残っているのなら魔法はまだ使えるはずじゃ」

エルフ「ダメだと思う。世界樹本体を通してアクセスしなければ私たちは記憶に触れられない」

戦士「なら、ここで今絶賛お喋りしまくり中な世界樹の記憶自身は何の意味もねーと?」

エルフ「たぶん。でも何か情報を手に入れられるかもしれないです」

僧侶「……というか、何故そんな世界へ私たちは飛ばされたのでしょうか」

≪ そーれーはぁ、二つの世界同士が合体しちゃってー、君たちが時空の狭間的なここに偶然入っちゃったんでしょう ≫

≪ 世界樹の記憶自身もぶっちゃけ偶然流れ入っちゃったていうか ≫

魔女「世界の融合に私たちだけ弾かれて隠された空間世界へ飛ばされたのねぇ。何ですのそれ、SFでもありえませんわ
~」

魔女「ていうかさっきの地獄へ引き摺り落とす的なのはどういうつもりですの? マジでビビったんだから!」

≪ いんふぇるの自身が寂しがってここに住人を作りたがってるみたい~ さっきのは世界樹の記憶を無理矢理引き出して
作った感じ? ≫

エルフ「魔法に近い効果を感じました。この世界は既に残った世界樹の記憶を自分の物にしてしまったのかも」

戦士「意思あんのかよっ、無限地獄ってのは!」

女勇者「でも最後に子どもの声に助けられたよね? それもいんふぇるのの意思?」

≪ ぶっちゃけそんなの世界樹にはわっかりませーん。あばばばばばばー ≫

女勇者「なんかすごくムカつく……」

戦士「なぁ、向こうの世界は今どうなっているんだ。大変な事にとかは聞いたが」

≪ 大変大変ちょーヤバっす~。世界滅びてアボーンじゃね?って感じ ≫

≪ つーかマンイーター大量で、聖水枯れて死者続出? そんでま、人間も魔物もピンチ ≫

女勇者「本当にピンチなんだ…」

僧侶「聖水も枯れ、魔法も使えない……死者を蘇らせる事ができなくなった?」

戦士「それに加えて無差別に食い殺しにかかる化物登場か。エルフ、君が言っていた事は」

エルフ「はい、現実になってしまいました」

魔女「難しい自体だこと。それより魔法を使いたいのだけど、どうにかならないの? ですわ」

≪ 無・理! だって記憶貸出の媒介になる世界樹がなくなったんだもん ≫

魔女「お前は世界樹の記憶でしょーに! 良いアイディアの一つはどっかに保管されてないの!?」

≪ あるよ~、たった一つね ≫

僧侶「本当ですか! それなら向こうの世界でも何とかなるもか!」

エルフ「世界樹、その方法は?」

≪ 神さまが前に生んだ復元の子ども使って、神さま復元いいの ≫

女勇者「復元の力…あの人の子どもなんて誰かわからないよ!」

戦士「ていうか待てよ。神様って人間がほいほい復活させられていいもんなのか?」

僧侶「さ、さぁ……」

エルフ「神を蘇らせれば世界樹も蘇り、世界も元通りに?」

≪ はてさて、どうなる事やら予想がつきませーん ≫

魔女「ちょいと! 良いアイディアじゃなかったのかしら!」

≪ 良いアイディアだと思うよー。神さま復活、世界樹も復活。みんなハッピーでしょ? ≫

魔女「……あ、あほー!」

戦士「最初から当てにしてたのが悪かったんだって」

女勇者「でもそれしか方法がないっていうなら試すだけ試してみようよ!」

戦士・魔女「正気?」

エルフ「私も賛成。賭けになるかもしれないけれど、これで何とかなるのなら」

魔女「本当に? あんた、ようやく世界中の呪縛から逃れられたとか言ってたじゃない」

魔女「世界樹の復活って事は」

エルフ「また私があの子へより添い、守り続けなければならなくなる。それでいい」

エルフ「どうせ自由になった私にする事は何もない。だから構わない」

僧侶「そんなっ、悲しいこと言わないでください!」

戦士「……だけどよ、本人がやるって言ってんだ」

エルフ「はい」

僧侶「……わかりました。では復元の力を持つ子を探しだし、神を再誕させましょう」

魔女「それで本当に魔法が使えるようになれればいいのだけど」

女勇者「魔法もそうだけど、入ってきた魔物も追いだせればだよね」

戦士「そういうこった。決まりだな。ていうわけだ、俺たちをここから出してくれ」

≪ なんで世界樹にそれ言うし? ≫

戦士「いや、何でって」

≪ 世界樹はここの支配者じゃないもん。それに出口も知らなーい ≫

魔女「ちょ、ちょい待ちー! だったら私たちどうしろって言うの!」

女勇者「そうだよ。ここから出れなきゃ復元も何もないよ!」

僧侶「お願いです、何か方法は……」

≪ 知らないったら知らなーい! あんましつこいと世界樹怒るぞ! ≫

魔女「この糞木め、燃やしてやりますわよ……!!」

エルフ「だから魔法は使えません」

魔女「知ってますわよ! もうっ」

『こっちだよ、こっちを向いて。僕たちを見て』

「?」

声のする方を向けば、再び先程の少年少女の姿が。
仲間たちを手招いている。

魔女「明らかに怪しいですわ」

女勇者「世界樹がまた変な事してるんだよー!」

≪ いやいや世界樹はあんなの知らないよ。記憶にはあるかもだけど ≫

『僕たちを信じて。こっちに来て、こっちに』

戦士「怪しい……けど、信用できなくもない気がするんだが」

僧侶「彼らは私たちを助けてくれましたよね。もしかしたら」

魔女「安直すぎませんこと? だ、大丈夫かしら…」

『こっちだよ、こっち』

少年少女が招く方へ仲間たちは進み始める。
示される道からは砂が消えてゆく。突如、背後の方で彼らを呼ぶ声が。

『振り向いちゃダメだよ。本当に帰れなくなっちゃうからね』

『僕たちだけに集中して。肩を叩かれて、息を吹きかけられも振り向いちゃダメ』

女勇者「ふふ、振り向きたい……さっきから誰かお尻さわってなーい!?」

僧侶「いいえ、誰も。私の髪も先程から……」

エルフ「いんふぇるのが私たちをここへ取り込もうと妨害を働いてるみたい」

魔女「何よぅ~…キモいですわ……おえ」

戦士「あ、待ってくれ! まだ勇者…どのが」

魔女「ちょー!? 今言い出すことですの!?」

戦士「お前だって本当はあの人を心配してるんだろ。ここに残すわけにはいかない」

女勇者「そうだよ。まだ詳しい話だって本人から聞けてないのに」

魔女「そりゃ、そうだけど……でも」

女勇者「少年少女よー! ストップお願いできますか!」

『大丈夫だよ、ちゃんとあの人の元へ向かっているよ~』

僧侶「あの人とは勇者様のことでしょうか?」

『アレを見て』


少年が指差すその方向に、魔王がいた。


魔王『ッ~~~!! このキチガイ親父がァーッ!!』

父『んー親に向かってェキチガイとはァ、教育が、足らなかったようだァァァアアアアアアアアアアアアオオオオオオォ
ォォゥゥゥゥゥーーーーーーッッッ!!!!』

魔王『げぼぉっ……!?』ビチャチャ

魔物同士、魔王同士の戦いがそこでは繰り広げられていたのだ。
だが魔王は防戦一方で父からボコボコにされている。魔王父の力はまさに圧倒的といえる。


父『どした? そーの程度かァ?』

魔王『ひぃー……パパ上の本気マジやべぇである……』

ここまで。乳は強し

あらためて読み直すと誤字脱字がすごかったぜ
変な個所あれば、すまないがあなたの脳内で直しておいてあげてね!

魔女「何ですの、あの灼熱リングは? それに中にいるのは」

僧侶「魔物でしょうか?」

戦士「片方は俺たち勇者殿だ。もう一匹は見た事もない奴だが」

戦士「アイツもこの異空間に閉じ込められた口か?」

エルフ「もしくは世界樹の記憶を元に作られた幻」

女勇者「世界樹万能だよね。それよか、本当にアレが勇者さん……?」

女勇者「面影の欠片もないよ! 冗談きついなもぉー!」

戦士「……」

女勇者「冗談きっつい」

僧侶「……何となくではありますが分かります。あの方が勇者様だと」

僧侶「本心では認めたくはないけれど」

魔女「誰だってそう思いますわよ。今まで一緒にいた奴が魔物だなんて」

魔女「ここまでの付き合いでしたのよ? 私でさえ割とショックですわ」

女勇者「意外かも。そういうキャラでしたっけ」

魔女「茶化さないで欲しいですわねぇ……」

女勇者「う、うん」

エルフ「時間は掛かるかも知れない。でも」

僧侶「下手なフォローは必要ありませんよ。付いて行くか決めるのは私たちなのですから」

エルフ「ごめんなさい」

戦士「俺、勇者殿を助けてくる。きっと俺たちのように幻に騙されているんだよ!」

女勇者「そうだね。勇者さんに話聞くのは後で……あれ?」

女勇者「さっきの子どもたちがいなくなってないですか?」

僧侶「言われてみれば確かに。困ったわ、はぐれてしまったのでしょうか…」

戦士「あの子らも後で探せばいい! 行くぞ!」

戦士は魔王たちへ近づこうとした、が

戦士「!」

戦士「か、壁があるぞ。見えないが確かにここに……」

見えない壁に二匹への介入を阻まれてしまった!

女勇者「戦士さんパントマイム披露してる場合じゃないと思う!!」

戦士「俺が今ここでそんなのお披露目するお茶目バカ野郎に見えるか!?」

戦士「冗談言ってる場合じゃねぇ…」

戦士(勇者殿、これではあんたと俺たちの距離が益々遠いのてしまったようじゃあないか)

僧侶「魔法の壁? いえ、そんな筈は」

魔女「ここは私たちの常識が通用しない空間ですわ。普通なものの筈がない」

魔女「私としてはあんな嘘吐き勇者は置いて行きたいところよ!」

魔女「…でもっ、お前ら凡人どもが見捨てる気がなくて、先へ進む気がないというのなら」

見えない壁の前に立ち、手を当てて静かにぶつぶつ呟いている。

エルフ「何をしようというの?」

魔女「この魔法壁の解除ですわ! 魔法は使えなくとも、魔力は以前変わりなく私の中に流れている」

僧侶「ご自身の魔力を壁へ注いで介入なさるつもりで?」

魔女「私は天才だから何とかなるものよ。さぁさ、お前たちもボサっとしてないで手伝え! ですわ!」

女勇者「いいですともーっ!」

エルフ「それで私が役に立てるのなら」

戦士「お、俺は! 俺はどうしたらいい!」

僧侶「勇者様に声が届く隙ができるかもしれません。戦士さんはそのまま彼を」

戦士「うおおおおおぉぉぉーーーッ!! 勇者殿俺だ、俺はここにいるぞぉぉぉーーーッ!!」


戦士は壁を叩き魔王を呼び続ける。女性陣は壁へ手を当て解除を急ぐ。
そんな中、魔王と魔王父の戦いはさらに激化してゆく!

魔王『うぬぬゥ~~~……真正面勝負では勝てる気が起きんぞ』

父『んー当り前であろう、このォうつけめェ。父を誰と存じるか』

父『今も昔もォ~魔王なのだよゥ。貴様が魔王に為ろうが為らまいが』

魔王『では余の勇者伝のためにも貴様を完璧にぶっ潰さなければならぬな!』

父『決意したなァア!! 今、その瞬間に貴様は父を越えると決意を固めたのだァァァーーーッ!!』

父『よかろうゥゥゥッ!! この魔王ゥ、全力全快で貴様を滅ぼしてみせようぞォ!!』

魔王父から魔王へ跳びかかる! 一歩足が地へ着くだけで衝撃波が発生し、魔王を襲う!

足元へ注意を払いつつ、魔王は父の隙を探すのだ! しかし、やはり元は魔王!

近・中・遠。どこを取ろうが隙の一つ見せる事はなく、様々な攻撃で魔王を圧倒する!

魔王(なんとイヤらしい戦法かッ)

魔王(あの糞パパ上めが。恐らく余が魔法を撃てない事を知って距離を取る)

魔王(近接戦闘ではあの巨体からも想像できぬ素早く精密な動き……)


父『滅せよオオオォォォォォオオオウウウウウゥゥゥーーーッッッ!!!』


魔王父の痛恨の一撃がズドンと炸裂!

魔王『うげげぇ…がぼべっ……~!?』

魔王(力押しではけして勝てぬ! 隙を見るのではない、余が奴に作るのだっ…!!)

咄嗟に装飾のマントを引き千切り、魔王父へ被せる!
マントの中でもごもごとしている様子を見るとこの攻撃は予想できていなかったのだろう。

魔王は腕を組み、肘鉄を恐らく顔面の位置であろう部分へ叩きこむ!

魔王『ざまァみやがれであるわ』

父『ん~そういった台詞は己が勝利した時にのみだァ。最後まで取っておけィ』

魔王『!』

何が自分に起きたのかも理解する事なく、魔王は地に伏せられていた。

魔王『ま、魔法を使いおったのか……』

父『貴様がそう思うならそうなんだろうな。貴様ん中ではな』

魔王(おのれぇぇぇ~~~!!!)ギリギリ

魔王『余へ攻撃を加えるのを禁ずるぞォッ!!』

\ ルール承認! 魔王への攻撃は許可されない! /

父『うむゥ、やはり我が息子へソレが渡ったかァ~。だがそれはこの魔王が生み出した秘法よ』

父『そしてェ~くだらぬルールに縛られる余ではないのだよッ!!』

天へ向かって右手を突き出し、吼えるとリング内での魔法効果が全て消え去ってしまった。

その光景に魔王が唖然としているところへ魔王父が蹴りを一発お見舞いする!

魔王『ぐふうぅう~~~……!?』

父『全て貴様の思い通りになると思うなよ。人生ィ一度はどうにもならぬ時があるゥ』

父『……もう理解したであろうな。息子よ、貴様には父を越える事など一生掛っても達成できぬと』

魔王『馬鹿も休み休み申せであるぞッ! 余がいつ貴様へ対して諦めを見せた!?』

魔王『余に勝てぬ敵はおらんのだ。余は最強! 余こそ全ての者どもの上に立つ勝者よッ!!』

魔王『この、老いぼれ魔王めが…! 貴様は余が最強の証を手にする為の糧の一つ!』

魔王『言わせてみればただの雑魚ォ~~~~~~!! ――――――んぶっばぁ……?』グチャ


父『ほォう、貴様が申す最強。随分と安い最強のようだァがー……』

魔王『…………』ガクガク


父『吼えるのもその辺で終いにしておけよ、若造』

父『父は貴様をいつでも見ておったぞォゥ。だァが、最近の貴様の弱体ぶりには目も当てられぬわ』

父『ふゥーん、何が勇者かァ。貴様の我儘はその身をも無力とさせおったわィ』

父『パパをあまり……失望させるなァ、愚かな息子よ……』

魔王『!!』

失望の眼差しを向けられた魔王は、自身の人生の中で初めて大きなショックを受けた!
そして、自分に対しふつふつと劣等感が現れ始める。

魔王『パパ上……今までで一番のお説教であるぞ……』

父『余の後を継ぎィ、貴様はァ我ら魔族の先へ続く道を照らす光となるべきなのだ』

父『否、訂正するゥ。貴様は世界を導けェー……』

父『パパやおじいちゃまが達成できなかった、全ての統一を達成するのであるゥゥゥー……』

父『んー…勇者ごっこは十分楽しめたろう。パパはァそろそろ貴様へお勉強してもらいたいのだ』

父『魔王ではなく、一王として。真の意味での侵略者として。このいつまでも漠然とせず阿呆な日常を繰り返す世界の侵
略者としてェ』

魔王『パパ上は余へ何の期待してるであるか?』

魔王『余は今が好きである。無駄に変えてしまうほどにこの世界は阿呆か?』

魔王『余は満足しておるのだ。だから好き勝手するのだッ!!』

父『広く見渡せ! 我ら魔族は今、衰退の道へ片足を踏み込んでおる!』

父『気づかぬか……人間どもは魔王を倒せずとも、魔族へ勝利しようとしているのを』

魔王『何で!』

父『文明の力よ。我らは選ばれし超人類。しかし長き期間において我ら魔族は、人間を卓越した超能力を持つ事だけで…
浮かれておったのだァ』

父『魔族は力、人間は知恵とはよく例えたものよォ…。この先は力だけで解決するものは何も無し』

父『魔族が滅ぼされることも先の話ではなァい。近いうちに我らは敗北する』

魔王『ならパパ上はこうしろと申す気か……? 余たち魔族が人間へヘーコラして仲良くしようよっと!?』

魔王『余へあんな豚どもに頭を下げさせろと!? 勇者と魔王の戦いを無くせとッ!!?』

魔王『ぶっ殺すぞ貴様ァアーーーーーーーッッッ!!!!』

父『うゥーむ…………』

魔王『余が、魔王が求める物は世界の混沌よ! いわばカオスッ! 全てを糞いっぱいの暗黒で埋め尽くす! 人間は全て虐
殺し、踏み潰す!』

魔王『それこそが理想の魔王の形であろうがッ!! 貴様が魔王であると余は絶対に認めぬぞッ!!』

父『んー認めたな』

父『貴様は魔王だと、認めたなァ……ッ!!』

魔王『魔王にも誇りがあるわァーッ!! パパ上だろうと何だろうと、その誇りを汚させる愚か者は余がぶっ壊すぞ…』

魔王『余が魔王として、貴様を滅してくれるゥーーーーーーッッッ!!!』

魔王父が動き出すより前に、魔王は魔王父の腰へ跳びついて地面へ押し倒した。
膝で父の両腕を踏み拘束すると、馬乗りになって無我夢中にその顔を殴り続ける!

しかし、魔王父も負けじと魔王の背へ強力な蹴りを連続で放つ!

前へ仰け反った魔王はそのまま大きく口を開いて牙をむき、魔王父の首筋へ噛みついた!


父『ああああああああぁああああぁあああああああああううううぅぅぅう゛ァァァァーーー!!』


激痛に声をあげ、攻撃の手を止めてしまう! 魔王は犬歯をさらに鋭く突き立てて首の皮を引き千切ってしまった!
真っ赤に染まった肉が見える。そこへ魔王は凶悪にも手を突っこみ、爪で内側をガリガリと引っ掻くのだ!

魔王『ぐわっはっはっはー! どうだ良い気分であろう!? 余は最高に良い気分になってきたぞォー!!』

魔王は空いた片手で父の頭部を鷲掴み、だんだんと地面へ何度も打ち付ける。
逆転した展開と思いきや、さすがの魔王父もやられっぱなしではなかったようだ。

瞬時に火炎魔法を唱えると自身の上に座った魔王が一気に燃え上がる!

魔王『あ゛づいっ! あああ、あ゛づいであるっ……!』

魔王(憎い、こやつが憎いぞ。こんな雄が余のパパ上だと。余は認めぬぞ!)

魔王『ぐぎゃぎゃぎゃああああああああああぁぁぁぁ~~~!!!』

父(そォう、その怒りこそ貴様の力を高めるゥー……!)

父『怒れェ! 貴様は勇者ではなァい! 全てを苦しめ、地獄に引きずり落とせェィ!!』

父『悪の心で自分の中を全て満たすのだァアー! 敵を血みどろへ染めてくれよォ!』

父『甘えなど貴様には必要なァいッ!! 貴様は今の貴様へ甘えておるのだッ!!』

父『光へ染まってしまった自分は殺せ!! 貴様は絶対悪ッ! 闇に染め直せ!! きったない闇色へ塗り替えてしまえェィ
ーッ!!』

魔王『!』

父『貴様こそがァ、全ての魔物の集大成よッ!! 真の化物よォ!!』

父『貴様の中に眠る力ァを出しきるのだァァァアアアッ!!』


魔王『…………』ブツブツブツ

魔王『……~~~~~~~~~~』


父『さぁ、余をォ完全に滅ぼしてみせよッ!!』




魔王『キエエェーーーーーーーーーッッッ!!!』

魔王は火炎の呪文を唱えた! 凶悪な色に染まる火柱が魔王父を焼き、天高く上がる!

魔王『……魔法が使えたである』

魔王『余が! 魔法を! やっと!』

父『んー今の感覚を大切にするのだァ』

魔王『!?』

焼き殺したと思っていた魔王父が背後に涼しげな表情をして立っていた。

魔王『貴様、まだ生きておったかァー!』

父『貴様の体の中には数多くの魔物たちの力が秘められておる』

父『たかが魔力器官の一つ失おうが問題などあるまいて。自分自身に存在する特別な力を利用するのだ』

父『……息子よォ、貴様の力は全てを凌駕する。父は確かにィ教えたぞ、本気の出し方とやらを』

父『んーその力こそが、今システムが狂った我らの世界においての対抗手段となりえるのだァ』

魔王『パパ上、貴様どういうつもりか……』

父『この先貴様には辛い試練が幾度となく訪れるゥ~……』

父『余はァ、試練へ打ち勝つ力を思い出させてくれた。たったそれだけの事よ』

魔王『は? 意味不であるわ、とっとと死ね』

父『待て待てェ…パパにもカッコいいところ作らせろゥ』

父『貴様は真実を知らねばならァん。息子よ。余は、貴様の真のパパではなァい……!』

魔王『ふん、どうも話好きなパパ上で困るわ。もう十分であるぞ』

父『……余の口から答えられるのはここまで。後は適当に魔王城を調べるのだ!』

父『余は、貴様を息子として選択した事を後悔はせぬゥ。貴様で良かった』

父『んー真の魔王として、魔族を導く勇者になるがよい。それこそが父の願いよ』

魔王『魔王か勇者かはっきりしろ』

父「ふふっ」

魔王『……ふん、余はパパ上がパパ上で良かったである』

魔王『礼は申さん。だから安心して余の目の前から消えてなくなればよい』

魔王『これからも余は余の好きなようにしてゆく!』

魔王父はにこにこと満面の笑みで魔王の肩へ手を置いて、立ち去る。



父(我が、自慢の可愛い息子へ栄光あれ)

砂となりその姿を無くし、消えた。


魔王(余の力を最大限出しきる為にも、余は自分自身をよく知らなくてはならないようだなァ)

仲間たちと魔王を遮っていた魔法壁がパッと消えた!
地獄の灼熱リングはなくなり、元の砂漠へ。

戦士「……」

僧侶「……」

女勇者「……」

魔女「……」

魔王『おう、貴様らそこに居ったのか。ふふーん! 見たか、余の魔法!』

魔王『全て元通りかは知らぬが、余はさらに最強の名が似合う勇者へ―――』

女勇者「魔王覚悟ッ……!!」

女勇者は鋼の鞭を取り出し、魔王へ対して戦闘態勢を取った。

彼女だけではない。後ろに控えた仲間たちまでも。

魔王『何のつもりか。貴様ら、まさか余へ攻撃するつもりとか?』

魔王『余が魔物だったからであるか? ふん、その様なこと問題では』

僧侶「何も仰らないでください。確かにそれは今問題ではない」

僧侶「ですが、私たちはあなたと戦わなければならない理由ができました…」

魔女「嘘吐きにもほどがありますわよ。私、何を信じていいかわからなくなってきた。ですわ」

女勇者「っー……!」ガタガタ

女勇者「人間でもないし、勇者でもない。あなたは魔物で魔王だった!!」

女勇者「私は勇者として魔王を倒します……ごめんっ……!」

魔王『全部聞こえておったのかよ。貴様らは余に忠誠を誓ったであろうが…』

魔王『余は確かに魔王ではあった、だが今は勇者である』

戦士「あんたのその変な理屈じゃこの場は収まらないぞ!」

戦士「やはり写真で見た姿、間違いじゃなかったんだ…あんた…」

戦士「魔王なんだよ……っ、俺たちの敵だぞ!? わかってんのかよぉ!?」

魔王『ふむ……』

エルフ「待って、今はここで争っている場合じゃない」

戦士「敵の大将をここで野放しにしておけってか! 冗談じゃない!」

戦士「も、もううんざりだぜ…勘弁してくれよ…」

エルフ「気持ちはわかるけれど、魔王を倒しても今は平和は訪れない」

エルフ「本当の敵は今別にある事をよく思い出して」

魔女「ええ、それはよく分かってますわよ。でもそれとこれとは別でしょ」

魔女「あいつが敵である事には変わりありませんわよ」

僧侶「どうして、勇者様。こんな事になるだなんて……」

僧侶「今まであなたがしてきた事は一体何だったのですか!? ただの戯れ!?」

僧侶「あなたは何故勇者になろうとしたの! 私たちを騙して、その末どうするつもりだったの!?」

魔王『貴様らの言い分はまあ分かった。だが、余の話を少し聞いてから判断しても良いのではない?』

戦士「じゃあ何で魔王だなんて大事な話してくれなかったんだよ!!」

魔王『それ話せば貴様ら付いてこなかっただろう!』

戦士「当たり前だろー!? 馬鹿にしてんのかよぉ!?」

魔女「結局、何が目的かはわからないけれど。ここから信用させようだなんて」

魔女「…ちょっと考えが甘すぎますわよ」

女勇者「みんな、あなたの事とっても大切に思ってた。なのにこんなのズルイよ」

女勇者「すごく残念だし、悔しい。あ、頭の中ごちゃごちゃになってきた……」

魔王『別に余は今さら魔族側に味方するつもりはないぞ。人間の味方というわけでもないが』

僧侶「残念ながら私たちは人間側ですよ。あなたを倒せば魔族へ大きなダメージが入る」

僧侶「魔物を、滅ぼせられる!」

魔王『その様な手間かけんでも、余たちで魔物を全て葬り去ってくれればよいではないか?』

魔王『元魔王の勇者! これ程心強い者も中々おらんぞ~』

女勇者「言われてみれば確かにー!」

魔女「おバカっ」

魔女「あのね、私たちは魔王の暇潰しに付き合うほど暇ではありませんの」

魔女「お遊びなら一人で別のどこかでしなさいな」

魔王『遊びじゃ……ちょっとした気分転換である!!』

戦士「完全お遊び気分じゃねーかよ……!」

僧侶「あなたのせいで私たち人間は大きな被害を出しているんです」

僧侶「あなたが、魔王が世界を制服しようとしなければ」

魔王『……そういう。何でも魔王のせいにされるのが嫌だから勇者になったのだよ!』

僧侶「え?」

魔王『余自身は城から一歩も出ずに、ひたすら戦い挑んでくる勇者を蹴散らしていただけ』

魔王『そういう面倒な事したがったり、してるのは配下ども』

魔王『余はあやつらに何も人間殺せとか数減らせとか命令した事ないである』

女勇者「な、ならその手下たちに言ってよ! 無駄な争いはやめてって!」

魔王『余は興味ない事に口出しするほど暇ではない! そういうの知らんから!』

僧侶「無自覚に被害を広げさせていたのね…配下の魔物たちを自由に動かさせていたから…」

戦士「あんた、それでも王様なんだろ! 国民どうにかしてくれよ!」

魔王「何度も同じこと申させるなよー…興味がないのだッ!!」

戦士「あんたが一言手下にやめろと言えば収まるんだぞ! それに俺たち人間とも歩み寄れたかもしれない!」

戦士「無駄な血も流さずにっ」

魔王『やだねッ!! 余は血が好きだ! 争いが好きだ!』

魔王『平和な世の中にだと~……? そんなの反吐が出るわァーッ!!』

魔女「……完全に魔王の器ですわね。かなりズレてるけど」

僧侶「お願いですよ、本当に……。あなたのその思想さえ変わっていただければ」

魔王『あァ? 余だけが悪いのか? 人間は皆悪くないと?』

魔王『同じ様に魔物大量に殺しておいてそれはないなァー?』

魔王『どちらが先に手を出したのかは知らんが、自分たち棚に上げて話すのはムカつく』

女勇者「そ、それはそうだけど……どっちも悪かったごめんなさい。じゃ、ダメ?」

魔王『知るか! 余に今さらそれ申されても困るわ阿呆ッ!!』

女勇者「じゃあどうしたらいいの!?」

魔女「埒あきませんわねぇ~。いっその事魔王放置でいい気も」

戦士「いや、それは展開的にマズい」

戦士「でも俺は正直あんたの事好きっス。嫌いになれない」

僧侶「血も争いも大好きなこの方ですよ!? 危ないっ」

戦士「だって……」

女勇者「私だって勇者だから魔王倒さなきゃなんだよ!?」

女勇者「あなたが平和を望んでくれれば、倒さずに済むの!」

魔王『やーだぁ』

女勇者「これもうどうしたらいいのー!?」

エルフ「一旦、みんな落ち着こう」

エルフ「今は勇者が魔王を倒すどころの話じゃない。関係なく世界が危ない」

エルフ「ここは人間も魔物も手を取り合って何とかしなきゃだと思います」

魔王『たぶん無理じゃない? 魔物どもは血の気が多いからのぅ』

魔王『死んでも人間に与するとかなさそう』

エルフ「困りました」

僧侶「……では、あなたが人間とのかけ橋になってください!」

僧侶「魔族の勇者として私たちと共に世界の危機を救いましょう。そうする事で人間と魔物の考えを一掃させるんです」

魔女「まぁ、そうすれば文字通りの勇者にはなれますわね」

魔女「でも私たちを騙してきたこいつとまた協力し合うって、そう簡単にできる?」

戦士「……」

魔女「私は難しいと思いますわ。こっちの心情的にも」

魔女「人間側も、そう簡単に魔物の救世主を認めるだなんてのも無理でしょ」

僧侶「いいえ。やってみなければ何もわかりませんし、始まりません」

魔王『でも余がそれすると平和になりかねんのだろう?』

魔王『余は勇者よ。勇者は魔王倒すだけが仕事である』

女勇者「魔王倒せば人間側が平和になるよ……」

魔王『えぇ…だったら余が魔王になって、殺戮せねば』

僧侶「ああっ! もうダメだわ! この人今ここで倒しましょうー!!」

戦士「落ち着け! 僧侶ちゃんっ!」

戦士「全く、あんたみたいな魔王がどうして勇者なんかに!」

魔王『変わった勇者が一人居っても良いだろう。面白いのだ』

女勇者「そのおかげで私たち今めちゃくちゃ悩んでるよっ」

戦士「強大な力もそんな使われ方されたら泣いちまうよ、勇者殿」

戦士「……信用し直すのは時間掛かるかもしれん。だけど俺たちと一緒に来てくれ」

戦士「あらためて、俺たちに勇者殿の力を貸してくれ」

魔王『頼み方がなっておらんようだがァ~?』

魔女「もう面倒臭いし放っておきなさいよー…。私、疲れましたわ」

僧侶「なんだかいつもと変わりありませんね…ふふっ」

魔女「笑い事じゃないと思う。ですわ」

僧侶「でも何だか面白くて……裏切られた気分だったのに、変ですね」

僧侶「勇者様と、みんなでいると私はとても楽しい。…滅茶苦茶だけど」

僧侶「それだけで今までの旅が良かったのかもしれないと思えてきます」

魔王『狂ってるな、僧侶!!』

僧侶「……人が良い事言ったというのに」

戦士「俺らみんな、歪んでるけどあんたが好きなんだよ。勇者殿」

戦士「だからあんたと一緒にまた戦いたいし、冒険したい」

戦士「もう、これだけの理由だけであんたが必要なんだぜ……」

魔王『ふーん…………』

魔女「私はぶっちゃけどーでもいいですわ。結局、屋敷から出てお前たちに付いてきたのは暇潰しに違いないのだし」

魔女「なら、とことん私の暇潰しに付き合いなさいな。勇者」

女勇者「私も今までと同じようにしてたいです。だから」

女勇者「世界救うの、手伝って勇者さん! 私と一緒に本当の勇者になろうよ~!」

魔王『おえっ、何だか急に貴様ら綺麗事ばかり言い出してキモいな……』

魔王『ふん、どうしても余の協力が必要なら全員で余へ土下座せよ!』

「は?」

魔王『余は魔王魔王と貴様ら全員に集られいじめられたのだ。謝れクソども』

「……」

エルフ「あやまるのは、勇者の方だよ」

エルフ「みんな変わりなく勇者として接してくれたんだもの、お礼も言わなきゃダメ」

魔王『断るッ!!』

エルフ「せっかくのチャンスを自分で逃しちゃうの? それはとっても悲しいです」

魔王『貴様は一々うっとおしいなァ! 余が頭を下げるのは在ってはならん事よ!』

戦士「……なら、別の方法でならいいんだな」

魔王『あァん?』

戦士は魔王を思いっきりぶん殴った!

魔王『……』

戦士「みんなも遠慮する必要はねーぞ。俺ら全員勇者殿を殴る権利がある」

僧侶「そうですねっ」

僧侶は魔王へ全力で平手をくらわせた!

魔王『おい……』

魔女は魔王の尻を何度も蹴り飛ばした!

魔王『痛いぞ……』

魔女「うひゃひゃひゃwwwwww ざまぁみろーですわぁwwwwww」

女勇者は二度魔王を殴った!

女勇者「今のは私の分と師匠の分ですよ~! あー、気持ちいいぃ~!」

魔王『……』ピク、ピクッ

魔女「お、おぉ~? 怒った?www ねぇ、怒りましたのー? wwwwww」

女勇者「うぇ~いwwwwwww …あ、ごめんなさい。つい」

魔王『……ぐすんっ』

「!?」

戦士「な、泣いてるーッ!!」

女勇者「泣かしちゃったよ私たち。あの勇者さんを」

魔女「こわい…すごくこわいですわ…」

僧侶「……あの、そんなに痛かったでしょうか。ごめんなさい、手加減せずに」

魔王『貴様らァーッ!! ぐすっ、これで、これでもう良いなァ!? 十分だなッ!!』

魔王『き、気が済んだのならもう行くぞ! ここから改めて余の冒険が始まるのだ…!』

エルフ「よかったね」

戦士「そうっスよ。頑張って世間に勇者殿が勇者だって教えてやりましょうぜ」

戦士「俺が世界救えばみんなきっと認めてくれるっス!」

女勇者「ダメな時は勇者の私がみんなを説得するから大丈夫~!」

戦士「間違ってもダメな時とか言うなよっ」

魔女「これにて一件落着かしら?」

僧侶「とりあえずはですね。でもこれで終わりではありませんよ!」

僧侶「私たちの戦いはこれからです……っ!」

女勇者「おー!」



仲間たちと仲直りした魔王、あらため勇者の戦いはまだまだ続く!

さらば、盗賊! さらば、魔剣! 魔王たちは1人と1本の犠牲を越え、世界を救う冒険へ出るのだ!



魔王「覚悟するがよい、魔王」―――これにて完ッ!!

魔王『勝手に終わらすなやー! ボケー!』

僧侶「戦いはまだまだ続く、ですからね。始まったばかりみたいなものです!」

戦士「さて、始めるにはまずこの異空間から出なきゃなんだが」

戦士「例の子どもたちを探さなきゃかな?」

女勇者「あの子たち、どこ行っちゃったんだろうねー?」

魔女「アレも本当は世界樹の記憶で作られた私たちを惑わすだけの人形かも」

エルフ「でも、やっぱり嫌な感じはしなかったです」

魔王『何ワケ分からぬこと申しておるのだ、阿呆どもが……』


ぴとっ


魔王『むっ』

魔王の背中に少女が抱きついていたのだ。
顔を埋めて懐っこくすり着いてくる。

女勇者「さっそく見つかったー! 探す羽目になんなくて良かったねぇ」

女勇者「ていうか、勇者さんに懐いてる感じ? 魔物なのに」

僧侶「魔物って点は関係なさそうかと……」

魔王『何なのだこのくそガキは~!! 涎つけたら嬲り殺すであるぞッ』

戦士「ゆ、勇者殿。相手はロリっスよ! 国家遺産に匹敵しますぜ!」

魔女「……」

戦士「無言はやめれ、ツッコミ待ちなんだよ。わかってくれよ」

僧侶「どうしましたか。あなた一人? 先程の男の子の方は?」

少女『みんな、ついてきて』

「?」

そう一同に言い残すと、一人で駆けて行った。

焦って全員で追いかけると・・・そこには。



戦士「あの遺跡、まさか……」

僧侶「ご存知なのですか戦士さん?」

エルフ「私たちの世界に、あれと同じ形をした遺跡があった」

エルフ「まさに瓜二つです」

魔女「今まで何も見つからなかったのに……」

少女『こっち。こっちだよ』


少女は魔王たちを遺跡の中へ誘う。

ここまでです。中々投下しに来れなくてすまない
また連日投下できるようになれたらいいんだけどな

遺跡の中


僧侶「入ればまた妨害に会うとばかり考えていましたが」

僧侶「そんな様子も見られないですね…?」

魔王「そもそも今まで妨害らしき妨害に会った試しが余にはないである?」

僧侶「あれ、魔物と戦っていたではありませんか?」

魔王「あいつ余のパパ上なァ」

僧侶「魔王親子揃っちゃってたんですかぁー!? び、びっくりです…」

魔王「余の方がカッコよかったべー?」

女勇者「二人とも油断は禁物ですよ~! へへ、私にしてはしっかりしてる発言でしょう」

魔女「そうですわねー」

女勇者「……ぶー」

戦士「な、どう思うエルフ?」

エルフ「中もあの時私たちが見たものと似ていると思う」

エルフ「というより、そのものじゃないかな」

戦士「俺も君と同じ考えだぜ。あの時の記憶が確かならな」

戦士「本当にここが例の遺跡だってのなら、ペロが設置した転送装置が存在する」

魔女「転送装置? ああ、世界間を行き来する為の」

戦士「…だが、今も装置が作動しているかは保障しきれんな」

女勇者「壊れているのなら修理してまた使えるようにしたらいいんじゃないかな?」

エルフ「機械の故障ならそうしたらいい。でも、ここは二つの世界の狭間であって、異空間」

エルフ「戦士が言う通り転送装置が正常に動く可能性も薄いかもです」

戦士「名前呼んでくれたなぁ。でも゛くん゛とか゛ちゃん゛がケツについた方が親しみ深くて良いぜ」

エルフ「戦士くん?」

戦士「……いい、すごく」

エルフ「女勇者くん」

女勇者「ちゃんがいいですー!」

エルフ「面倒くさいです」

女勇者「何で!?」

魔女「やっぱし、だと思ってはいたけれど」

僧侶「魔女さん?」

魔女「気づいていませんの? あの小娘姿が消えてますわ」

魔王「小娘というのはこの遺跡へ余たちを連れてきたあの馴れ馴れしい豚か」

女勇者「小さな女の子にも容赦ないって最低だよ」

魔王「ぐふふ、余の性分は元来から悪である。女子供にも容赦するなんて言語道断!」

僧侶「そこまで来ると流石ですね。でも勇者と認められるには皆から好かれる優しい心も必要かと」

魔王「糞喰らえだなァ~!」

僧侶「ええ、ええ。最初から期待していませんでした…」

エルフ「あの人間の女の子」

魔女「人間だと断定できるのかしら? 何故?」

エルフ「耳が尖っていません」

魔女「判断基準がそこだけって微妙よー?」

戦士「あの子も世界樹の記憶を元に作られた幻だよな」

戦士「最初からいんふぇるのには生物が住んじゃいなかったんだろ? そもそも暮らせそうにない」

エルフ「恐らく。でも今までの幻は私たちを妨害する目的だけの為に生み出されていた」

僧侶「……考えたくはありませんが、もしかしてという点もありますね」

エルフ「あり得る」

魔王「では最初からこの埃っぽーい遺跡の中に閉じ込める魂胆で呼んでいたとな?」

女勇者「そんな事考えられませんよ。私、あの子からは嫌な感じしなかったもん」

魔女「当てにしていいのやら、ですわねぇ。悪いけどあなたぐらいよ、不審に思っていないのは」

女勇者「みんな疑心暗鬼になりすぎなんだよ! 確かに疑う事は大切だって盗賊師匠も言ったよ」

女勇者「でも、信じる事をしないって悲しいだけだよ」

エルフ「優しい。でもそれだけ」

女勇者「……だ、ダメなのかなぁ」

僧侶「いえ、それも大切だと私も思いますよ。私も勇者様に当てられてすっかりわる~く染まっちゃっていて、つい」

魔王「はぁ!? ぶっ殺すぞッ」

僧侶「そういうのがダメなんです! もう少し綺麗な言葉にしてっ」

戦士「アレっスよ。悪には悪の心で対抗みたいな! 勇者殿の極悪は正義に変わるんだぜ!」

魔王「誉められているのか、貶されておるのか」

ぎゅっ

魔王「!」

少女『……』

女勇者「出た! 謎の少女X!!」

魔女「何よ、その格好良さ気な呼び名は…」

エルフ「君に懐いているのかもしれない。勇者」

魔王「余は乳臭いクソガキに好かれる思い当たりは欠片もなァいッ!!」

魔王「無礼者めが! 断り一つもなく余へベタベタするとは、その首へし折るぞ!」

戦士「勇者殿~…抑えて、抑えて」

戦士「……お嬢ちゃんよ。そろそろ教えてくれない? 俺たちをどうするつもりよ?」

少女『『いんふぇるの』から出してあげたいの』

僧侶「それはとても助かりますが、私たちはあなたがいなければその出方も良く分からないの」

僧侶「……本当に戦士さんが言った転送装置を頼りにするのかも」

少女『』こくり

僧侶「転送装置を?」

戦士「マジかよ。ちゃんとここでも使えるのか? 前回使った時は魔王城まで飛ばされたが」

「え゛っ」

魔王「余のマイホームか?」

戦士「あー……おそらく」

女戦士「一足お先にラストダンジョン入ってズルいですよ!」

戦士「でもラスボスお留守だったんだぜ」

魔女「だって身内ですものねぇ~……」

僧侶「では例え転送装置が正常に動いたとしても、行く着く先は」

戦士「かもかも」

エルフ「魔王の帰還」

魔王「知るか! 余は帰る気全然なし!」

女勇者「じゃあどうするの? 元の世界へ帰れても魔王城はちょっと」

少女『グダグダ言わずに一旦帰って~』

女勇者「だって魔物の住処だよ! 食べられちゃう!」

魔女「現状、魔物でも私たちの相手してる暇ないと思いますわ」

僧侶「私もそう思います。リスクは高いかもしれませんが、ここは」

魔王「やだ! まだ魔王城辿り着くの早いであるー!」

魔王「ていうか、よく戻ってこれたな。戦士よ」

戦士「色々あってというか、その時も転送装置のお世話になったんス」

戦士「とりあえず設置位置は俺が覚えてるからみんな付いてきてくれ」


すたすた、すたすた


魔女「……お前、本当にどういうつもりで私たちを助けてますの」

少女『……』

魔女「確かに脳筋女が言うように嫌な感じはしない。けど少し怪しいわね」

魔女「罠のつもりなら後で承知しませんわよ。私怒るとめっちゃおっかないんだから!」

少女『魔女っちの事だから変な薬を飲ませるの?』

魔女「そんな生易しいのじゃ……って、え?」

女勇者「魔女っち後輩どうしたー!? 置いて行っちゃうよ」

魔女「あ、ああ。すぐ行きますわ……!」

魔女「お前どうして」

魔女(……動揺する事もないわ。これは世界中の記憶を元に作られた幻)

魔女(細かいことを知っていても不思議では、ない、はず)

少女『うふふ』ニッコリ

魔王「これが転送うんたらァ? 想像以上にしょぼ吉であるな」

僧侶「埃を被っていますね。置いてからそれほど時間が経っているのかしら」

戦士「……いや、そんな筈は。でもどうなんだろう」

魔王「ハッキリせんな! どうなのだ!」

戦士「いえ、わからんスっ!」

エルフ「正直で大変よろしい、戦士くん」

戦士「ほう、優しく頭を撫でながら言っても良いのよ?」

魔女「お前本当にロリコンとかじゃあないですわよねぇ。あんまこっち来んな!」

女勇者「エルフちゃんも容易に誉めない方がいいよ~」

エルフ「じゃあそうします」

戦士「いつだってそうだ。悪者にされる……!」

僧侶「まぁまぁ、言ってる場合ではありませんよ。動かし方は」

戦士「ちょい待ちな。なーに、こういう小難しいのは蹴り飛ばせば動くって相場は決まってるのさ」

僧侶「決まってません!! 荒治療にも程がありますよ、勇者様じゃあるまいし!!」

魔王「貴様先程から余に恨みでもあるのかァーッ!?」

僧侶「ないと仰れば嘘になるかも? ふふっ」

魔王「えー……」

戦士「よし蹴るぞ! せーのっ!」

僧侶「だからそういうのは止してくださいってば!」

女勇者「それなら、私が鞭で引っぱたけば」

僧侶「……脳筋にもだいぶ納得がいってきました」

魔女「ね?」

女勇者「なぁーっ!?」

エルフ「二人ともどいていて。私が少し触ってみるよ」

戦士「分かるのか?」

エルフ「分からない。でも荒い動かし方をする気はないから安心して」

エルフは装置の前に腰下ろし、複雑に並ぶスイッチやレバーを慎重に動かしている。

魔女「下手打つと爆発ってオチはそろそろ勘弁ですわよ」

戦士「ありうるな」

魔女「勘弁と言ってるでしょーにっ……!」

女勇者「そういえば、エルフちゃんは向こうへ行ったらどうするの?」

女勇者「私たちと一緒に来る!?」

戦士「エルフが仲間になるには俺たちの旅は危険すぎる。今は魔法も使えないし」

エルフ「それを言えば、みんな魔法は使えません」

エルフ「戦闘で役に立つ事はなくても、他であなたたちの助けになれたら」

僧侶「よろしいのですか?」

エルフ「世界樹が無くなった今、私には何もすることがないから」

魔王「存在価値も糞もないわけであるな。今まで世界樹の為に存在したのだから」

戦士「勇者殿ぉ! 彼女だって精一杯やってたんス! 酷い事言わんでくださいよ!」

魔王「そもそも仲間既に足りておる。必要なーし!」

魔女「足りてるって最近一粋……あっ」

女勇者「じゃあこうしよう。師匠が帰って来るまでの間、私たちに協力してもらう」

女勇者「それならいいでしょ、勇者さん?」

魔王「うむ」

女勇者「はい、仲間ぁー! エルフちゃんゲットぉー!」がしっ

エルフ「いえーい」

戦士「ほらそういう時のプリティな笑顔よ」

魔女「……」

僧侶「彼女も強くなりましたよ。大丈夫、心配はありません」

魔女「゛も゛って何よ」

僧侶「みんなです。あなたも私も。それは力だけでなく精神的にも」

魔女「どうだか。強くなったつもりなだけかもですわよー……」

魔女(魔法が使えない今、私にできる事って……何かしら)

ういぃーん


魔王・戦士「動いたっすげぇー!!」

エルフ「なんとか上手くできました」

僧侶「やりましたね。後は……これを使って」

女勇者「魔王城か、いいのかな。ズルくないかなぁ? こんなすぐにラスダンって…」

魔王「文句あるなら元魔王の余がこの場で勇者の貴様を捻り殺すぞ。あァ?」

女勇者「無理無理無理!! 勘弁!!」

魔王「ふん、ド阿呆が。余だってできれば戻りたくはないのだ。しかし、いんふぇるのに残るのも嫌じゃ」

魔王「こんな砂しかない場所では余は勇者として輝けんのだ!」

戦士「ごもっともっス。早く元の世界へ帰って勇者殿の伝説作り上げてやろうぜ」

僧侶「ところであの子は? ここまで連れてきてくれたお礼を言いたいのですが」

魔女「そういやまたいなくなってる、ですわ。しょっちゅういなくなってどーいうつもりかしら?」

女勇者「きっと照れ屋さんなんだよ! ほら、こんな美人もいるし」

魔女「どこに?」

女勇者「君のめ・の・ま・え(はぁと」

魔女「ははっ、雄ゴリラと雌ゴリラしか私の目の前にはいませんわよ」

女勇者「ゴリラだと!?」

戦士「え、雄って俺なの……?」

エルフ「大丈夫。私の目から見たら筋肉人間だよ」

戦士「何なんだよもうっ」

魔王「阿呆なコントやっとらんでさっさと転送始めろである! 時間はない!」

僧侶「ええ、急ぎましょう。王都騎士団も何かしでかしている可能性もありますもの」

戦士「……一発ぶん殴るぐらいじゃ気が済まんな。一体何のつもりでこんな事を」

女勇者「一度しっかり話合っておかなきゃだよね」

戦士「確か上に乗れば自動的に転送が始まるんだ。ね、簡単」

魔女「魔物の馬鹿な頭でも容易に使えるいい物ねぇ」

魔王「余の事申したのなら貴様をダルマへ変身させてやるである」

魔女「きゃー、勇者様ー! ちょーイケてますわぁー!!」

僧侶「……一度に転送できる人数は決まっていそうですね」

女勇者「どうしてわかるの?」

僧侶「いえ、ほらここに人数制限数が書かれていて」

女勇者「丁寧~……」

エルフ「4人までみたい。どうしよう、もし何かあれば先に転送された人が危険」

僧侶「丁度人数も6人ですし、3人ずつ転送されましょう」

戦士「俺が一番手で決まりだな。他は」

女勇者「私も一緒に行くよ。戦士さんだけに危ない目会わせられないもん」

戦士「やっさしぃ~」

女勇者「勇者だもん! そんで私だもん!」

魔女「ならゴリラブラザーズは決定ね」

女勇者「そろそろ泣くもん……」

僧侶「ではもう1人は私が行きます。勇者様は魔女さんとエルフさんと。構いませんね」

魔王「ガキに挟まれるのかよッ」

魔女「精神的にはそっちもガキですわよ!」

エルフ「私はそれで構わないよ。無茶だけはしないでください」

僧侶「ええ、重々承知しています。では参りましょう」

戦士「おう、こっちはいつでもOKだぜ」

女勇者「後で会おうね! 三人とも!」

戦士たちは転送装置に乗り、先に元の世界へ帰った。

エルフ「無事成功みたい」

魔女「ですわね。それじゃあ私たちも向かいますわよ」

魔王「いや、少し待つのだ……」

魔女「は?」

魔王の視線の先には少女と少年の姿があった。

魔女「今度は少年の方も出てきやがりましたわね」

魔女「ほら、変な事言われる前に行きますわよ」

エルフ「少しだけ待ってあげて」

魔女「でも…」

エルフ「私たちに何か伝えようとしているみたいだよ」

魔王「貴様ら、異様にしつこいなァ。余に話があるとでも? 頼みは聞かんぞ」

少年・少女『……』

魔王「用がないなら失せよ! 余はガキが嫌いであるぞ!」

静かに佇んでいた少年たちだが、様子がどこか変だ。

皮膚がボロボロと崩れてゆき、人ではない何かおぞましい物へ変貌を遂げてしまった。

「!」

魔女「ま、魔物だったのね。妙に落ち着かない奴らだと感じてたら、そういう事…」

エルフ「魔物。確かに魔物。でも、あれは」

魔王「まーた、マンイーターか……!」

魔女「マンイーター? 人食い? 聞いた事ないですわよ、そんなの」

魔王「襲いかかるのならはよーッ! さっさと返り討ちにしてやろうぞ」

エルフ「敵意はなさそうに見えます」

魔王「なにィ…?」

少年マンイーター『僕たちを救って、僕たちを全部殺してください』

少年マンイーター『一人残らず全部。お願い。僕たちはこれ以上おかしくなりたくないの』

魔女「一人って、まるで人間言い方ね。お前らは魔物ですわよ」

少年マンイーター『僕たちを殺さなければ、きっともっと犠牲が増えちゃうんだ』

少年マンイーター『僕たちはみんなを傷つけたくないよ』

魔王「頼みは聞かんと先程申したばかりであるが?」

エルフ「いじわるしないであげて」

魔王「……ふん、まぁ殺すのは好きである。それにマンイーターは気に食わん」

魔王「遭遇した奴ら全て葬ってくれるぞ! わっはっはァー!!」

少年マンイーター『』にっこり

魔王「き、気味悪ッ! 何なのだ、あやつら……」

魔女「もう十分ですわよね、行きますわよ」

魔王たち三人も続いて転送装置へ乗り込み、戦士たちの後を追う。

少女マンイーター『   』ぱくぱく

魔王「あやつ、何か申しておるぞ……」







『 ありがとう 大好きな――――― 』

???


魔王「――――――……到着ゥ~!?」

魔女「みたいですわね。で、ここは魔王城なの?」

魔王「知らん」

魔女「無責任な奴ですわねぇーっ!」

魔王「余はこんなとこ知らん。見覚えないわ」

エルフ「だけど、魔物の気配が辺りからとても感じられる」

エルフ「魔王城だと言われれば信じられてしまう程に」

魔女「ふーん。とりあえずゴリラどもは?」

僧侶「それ、私も含めるつもりですかね……」

魔女「きゃあっ!?」

エルフ「大丈夫だったんだね」

僧侶「ええ、戦士さんと女勇者さんはそこの扉から出て外の様子を見に」

魔王「僧侶は余たちの到着を待ったと。ふん、あやつら勝手に先へ進みおって」

僧侶「ぱっと見たところでは、魔王城という印象には程遠い場所ではあるんですが」

魔女「が?」

僧侶「なんだか……雰囲気が変というか、空気も重苦しくて」

魔女「……確かにそうですわね。まるで向こうの世界の中にまだいる感じ」

僧侶「ええ、ここが密室だからそう感じるだけでしょうか」

エルフ「そんな事はないと思う。私も似たようなものを感じるの」

魔王「余には何も変わりなく思えるが?」

魔女「うそ、だってこんなに変なのよ。段々気分悪くなってきたし、だるいっていうか」

僧侶「そうですね……」

がちゃり

女勇者「ああ、みんな無事に着いたんだね」

エルフ「外はどんな様子だったの」

女勇者「それが……とにかくみんなも一緒に来て。戦士さんも待ってるし」

僧侶「戦士さん、どうですか?」

戦士「あ、ああ。みんなも来たんだな。勇者殿無事で何よりっス」

魔王「どうかしたとでもいうのか。それよりこの場所は見覚えがあるぞ」

女勇者「私たちもすこーし探索してみたんだけど、ここってたぶん王都のお城の中だと思うんだ」

僧侶「魔王城ではありませんが、これもまた厄介な……」

魔女「王都にしては随分な静まりようですわね? こんなに人っていないもん?」

女勇者「人はいた。でもこの階には集まっていないみたいで」

戦士「上の階からは兵士やら一般市民やらが大勢ですぜ。どうも避難しているようだ」

魔王「避難? 一体何から避難を」

エルフ「マンイーターたち、じゃないかと思います」

魔王「あー……なるほど?」

僧侶「とにかく、王都の城の中なら話は早いですね。一度騎士団の方々に会いましょう」

戦士「敵になりかねないんだぜ。そんないきなりで大丈夫かよ?」

僧侶「今回は話合いだけです。何も私たちはこの場へ襲撃に来たわけではないのですから」

女勇者「……」

エルフ「どうしたの」

女勇者「あ、いや……窓から見える景色がいつもと違うかなぁって」

魔女「景色ぃ? ……まぁ、随分と霧が立ち込めてますわね。何も見えないじゃないの」

戦士「だよな。こんな霧向こうの世界でしか見たことないよ」

エルフ「やっぱり」

戦士「エルフ?」

エルフ「戦士くん、やっぱりです。二つの世界は一つの世界になった」

エルフ「あの霧は私たちの世界から流れ込んだものだと思う」

僧侶「……あの霧は嫌な気持ちになってきますね、なんだか」

ここまで、明日続き書きこれるかもです

王「……」

団長「王様、全て私の言う通りに動いてくだされたら上手く行きますよ」

王「この世界は、今一体どうなっておるのだ。魔法は」

団長「何度説明したら気が済むのです? この世界のシステムは崩れた」

団長「今までの常識など全て取っ払って考えるのです」

団長「貴方様が心配するのは国民の事だけでいい。後は私にお任せを」

王「しかし……」

団長「あれ、いいんですかぁ。私がその気になれば騎士団を、魔物たちまでをも動かし」

団長「システムどころかここの国家だってぶち壊してやれんですぜ。もうお分かりでしょう?」

王「お主は何を企んでおるのだ。国を乗っ取る気か?」

団長「それは私の目的である過程の一つですよ。ほら、何事も小さなことから進めて行かないとだよ」

団長「ははっ、我が国の王は賢い人でいらっしゃられる。ここは一つ世界の統一を。いや、新たな平和と秩序の誕生の瞬
間までを静観していてください」

団長「その為の席を今わざわざ取り上げていないのですからね、『王』」

王「構わぬ」

団長「……むぅ?」

王「我の様な老いぼれが口出しするのも野暮であろう。どうぞ、お主の理想を我へ見せてみるがいい」

王「新たな世界をお主が立ちあげると言うのならば、我はただ見届けてくれる」

団長(もともと傍観を決め込むつもりだったのか、老いぼれめ。責任放棄か)

団長「貴方は私にまだ信頼を置いていると?」

王「ふん」

王「いつの時代も、革命家というものは現れる。それは世の中に疑問を持っておるからか」

王「それとも、ただの享楽の為か。どちらでも良い。我はお主が築く世界を見たい」

団長「いいですとも! 頼まれんでもそのつもりですよ!」

団長「正義の名の下に」

王「さがれ……我は少しだけ休ませてもらう」

団長「ええ、どうぞお休みなさい」

暗黒騎士「伯父上、今後の活動は」

団長「国民の信頼を獲得するんだ。魔法が使えない今、おじさんの力は絶対だ」

暗黒騎士「例の゛人喰いども゛を倒す気でいると? 油断はできないな」

団長「ああ、その死をも恐れぬ勇敢な心こそが今国民の心をがっちり!掴めるんだ」

団長「民衆はいつだって強い者に惹かれる。そして絶対の力に」

団長「力こそが正義。おじさんのモットーさ、父からの受け売りだがね」

団長「まぁ、その力も使いどころがある。時と場合を考えて使うのさ」

暗黒騎士「……全ては、叔父上の力はこの瞬間の為の下準備に過ぎなかった?」

団長「さぁ、どうだかね。ところで魔人ちゃんは~?」

暗黒騎士「命令通りに地下に部屋を設けて隔離した。人の目には触れぬはず」

団長「ああ、ご苦労様。あっちゃんしっかりやってんねぇ。偉いぞぉ」

暗黒騎士「あ、はい……///」

???「…………一体どういうつもりなのかしら、団長サン?」

暗黒騎士「貴様ら、伯父上に軽々しく話かけるな……」

団長「いいよ、気にしないで。どういうつもりも何も」

団長「あなたたちを有利な立場にしてあげたのだよ、三魔官殿」

1・2「……」ゴゴゴゴゴ

1「我らに人間の兵の指揮任せるとはな! とんだ大馬鹿がいたもんだぁー!」

2「ええ、貴方のことだしどうせ裏があるとは思うけれどね」

団長「裏なんて。ただ、協力してくれたご褒美をちょっとあげただけじゃなーい」

暗黒騎士「だからと言ってこんな魔物どもを我らの……」

団長「おじさんが良いって言ったらいいんだぜ? 知ってるだろ」

暗黒騎士「うっ……」

2「内側から支配されても知らないわよ?」

団長「この現状じゃあそんなの無理さ」

2「……いつ反逆されてもわからないわよ」

団長「ご自由にどうぞだよ。こっちは魔法も使えない君らなんて怖くもない。それに魔人もいるんだよ」

1・2「ぐふぅ~……」

1(こいつ、やはり最初から我らを監視する為に?)

2(よ、読めないわ……)

団長「精々、身の振る舞いには気を付けた方がいい。おじさんの機嫌一度損ねさせると持ち直すの大変だからね」

団長「じゃあね、用事があったらこっちから会いに行くからサ」

暗黒騎士「くれぐれも下手な真似はしてくれるなよ、薄汚い魔物めが」

すたすた、すたすた



2「……なんだか、気疲れしちゃいそー」

1「指揮官…将軍……うむ、我の事はこれから『ジェネラル・ワン』と呼べ」

2「はい?」

1「その方が響き的にもイケてるし、ナウい。ラスボスの香りもぷんぷんするわ」

2「あんたいつでも呑気よね」

2(考えなし協力を飲んだとはいえ、まさか魔人を簡単に取られてしまうなんて)

2「ふん、こうなればどうにかあの男をぎゃふん!と言わせてみせるわよ」

1「ジェネラル・ワンッ!」

2「犬ころみたいだからやめなさいな。それに将軍ではないでしょーに」

ざわざわ、ざわざわ・・・


「私たちは一体どうなってしまうんだ」「お腹減ったなぁ」「気分悪いよー…」

「おかあさーん! どこー!」「もう避難して2日目になる。俺たちはいつまでこの生活を強いられなければいけないの
だ!」


エルフ「あなたたち以外の人間がいっぱいいる。私は浮いてしまわないかな」

女勇者「エルフちゃんは耳閉まってれば平気だよ。そしたら普通の女の子」

僧侶「勇者様はこれでお姿を隠していないと」

僧侶は魔王へフードつきローブを着せた。

戦士「さすがに人が多い所で魔物の姿を晒すわけにもいかないしな」

魔王「」ムス

魔王「ええい、いつかのゴミ溜めの町を思い出す光景である……」

魔王「あの家畜どもは何故城の中へ居るの? そう簡単に入っても良いのか、ここ」

戦士「恐らくは避難でしょうな。少し誰かに話聞いてみましょうや」

戦士「ちょっとそこの―――」

「どうしてウチの息子を蘇らせてくれないのです!?」

魔王「あーァん?」

親子が兵士に掴みかかっている。母親の腕の中にはぐったりとした子どもが。

「神父様は何故この子を見捨てたの! 神は平等に救いを齎してくれるはずでしょう!?」

「頼むよぉー……たった一人の大切な子どもなんだぁ……」

兵士「お、俺に言われても。みんな混乱しているんだ…ワケの分からない化物も現れて」

「だったらお前たちのような戦える人間が奴らを倒してくれよ! これではいつまで経っても埒があかん!」

兵士「俺だってまだ死にたくはないのだ!! 押しつけないでくれ…」

戦士「……どーも話を聞きに行くのは野暮みたいっスね」

魔女「化物とか言っていたけど、魔物ですわよね?」

エルフ「あなたもさっき私たちと一緒に見た。マンイーター」

エルフ「彼らがこっちの世界へ全てなだれ込んできてパニックになっているのだと思う」

魔女「ああ、例のグロモン」

僧侶「そちらより、私は先程の親子が話していた事が」

女勇者「息子さん…どうして蘇らせてもらえないのかなぁ」

女勇者「あの親子が教会にしつれいなことしていたから、とか?」

僧侶「そんなものは理由になりませんよ。一応教会は皆に平等なのですから」

魔女「~~~~~~……!」

魔女は氷の呪文を唱えた! しかし、魔法は発動しなかった!

戦士「お、お前こんなところで何を」

魔女「やっぱり無理みたいね。こっちに帰れたらもしかするとと思っていたのだけれど」

エルフ「世界樹が無くなった影響の一つ、魔法が使えなくなった」

僧侶「そして、聖水の涸渇ですか」

エルフ「湖に残ったものも既に効果がなくなっていると思います。あとは残りの物だけ」

戦士「安易に魔物に殺された人を復活させられなくなったわけか。これならそこの兵士の気持ちも分からなくもないぜ」

魔女「いわゆる『死の恐怖』という感情の実感を皆が抱き始めてるみたいですわね」

魔王「今まではなかったと申すか? んなバカなぁ」

僧侶「ないと仰れば違いますね。ですが、教会や魔法で死から簡単に生還できるという事は強みでしたから」

僧侶「私たちもこれからは油断できません。世界樹を蘇らせるまでは絶対に死ねないですよ…」

「…………」

女勇者「勇者さんは無駄に人殺さないように注意ね!? 私たちにもだよ!」

魔王「時と場合によるッ!」

(一番の要注意人物だ…)

戦士「それにしても今は避難だけで事なきを得ているが、いつまでもこうしていてはな」

戦士「国はどう対応取ろうとしているんだ?」

僧侶「各国の王や要人が王都に集まるにしても、この状況では移動もままなりませんよね」

女勇者「難しい話ですか? なら私離れてますね…」

エルフ「私たちの今の目的は理解している?」

女勇者「えっ、もちろん。世界樹を蘇らせる為に復元の力を持つ人を探しだす!」

女勇者「でもまぁ…その人が誰かも分からない状況なんだけどさ…」

エルフ「あの人の子どもだから特別な何かを感じられたりとかは」

女勇者「無理無理! 私そういうキャラじゃないし! それに私はコピー…なんだっけ」

女勇者「本当の複製の力を持ってるのは私じゃないからね」

エルフ「ごめんなさい。……あの人と関わりが深かった人」

エルフ「勇者、魔王。そしてもう1人は一体誰なのかな」

女勇者「あっ」

―――『そして、もう1人は勇者と同じ人間。何処かの騎士様だったかしら』

女勇者「確か人間だって答えてたよ。騎士だって!」

エルフ「本当に?」

戦士「騎士なんて言っても世界中にいるよ。それに現役かも分からん」

女勇者「あ、なるほど……」

エルフ「でも多少は絞り込めたとは思うよ。お手柄です」

女勇者「てへへっ、いやぁ私誉めても何も出ないよ~♪」

魔王「貴様ら少し黙ってそこの陰に隠れておれ」

戦士「勇者殿?」

魔王たちは柱の陰や人の中へ隠れた。


騎士・重騎士「……」ずんずん


僧侶(アレは王都騎士団の二人ですか。無事ではいたんですね)

魔女(敵の心配してる場合? あいつらのせいで私らピンチですのよ)

戦士(どうする。誘き出して色々吐かせてやるか)

僧侶(いえ、ここからなら話も聞こえます。様子見しましょう)

重騎士「すまんな、我らが着いていながら」

騎士「かたじけない」

騎士たちは一般市民たち一人一人に頭を下げながら声を掛けている。

二人とも神妙な面持ちで、以前対峙した時のような気迫を感じられない。

女勇者(悪い人、には見えないよね)

魔王(十分悪人のソレである。貴様ほど騙し易い奴もおらんなボケカス)

エルフ(誰か偉そうな人たちと話し始めたよ)

騎士「司令官殿、参謀官殿……」

司令「元だろうに。貴方たちは代わりないようで」

参謀「まさか騎士団の長殿に敵わない日が来るとは思わなんだ。一体どういうつもりなのだ」

騎士「私たち下の者にはまだ何も。黙って自分について来い、と」

重騎士「信用はあったつもりだが。いや、あの男の事よ。全ては国の為の作に」

参謀「では、俺たちはその国の為に役を奪われたというわけか。不必要なのだと」

司令「止したまえ」

重騎士「……」

参謀「何か言い応えしてみたらどうだね? それとも既に我らは貴殿の下に見られているのか?」

参謀「くそぅ、王までがあの男に懐柔されてしまった……! 俺たちは一体何の為に彼を守ったのだ」

騎士「うう……」

司令「気持ちはわかる。だけどな、諦めも肝心さ。人生上手くいかない時もある」

司令「俺たちに下手な気遣いは必要ない、騎士団よ。これからも国の為、平和の為に勤しんでくれ」

騎士「ぎょ、御意!」

重騎士「貴殿らの誇り、意思はわしらが受け継いでみせよう。今は羽根を休めてくれ」

司令「下手な気遣いはいらんと言ったばかりだろうに(苦笑)」

騎士たちは去って行った。

戦士「今の聞いたか。ていうか見たかよ。この国の重役二人が降ろされたって」

魔女「司令官に参謀官。どちらも兵隊を動かすに重要すぎますわよね、それがいきなり」

女勇者「おかしな話なの?」

僧侶「ええ、簡単に進むような事ではないですね。そしてどうも裏には例の騎士団長さんがいるようで」

魔王「あの小汚いくそオヤジ野郎か。あやつはどうも好かん」

魔女「むしろあんたが好いてる奴の方が少ないですわよねぇ」

エルフ「その人間は世界樹を破壊した人。この国を乗っ取ろうとしている?」

戦士「そこまでは分からんが、王様をどうにかしてしまったんだろう? 派手に動くなぁ」

戦士「世界一の王国の騎士団長とはいえ、そこまで上手くできるものか?」

僧侶「どうでしょう。その辺りも調べを入れた方がいいのかしら」

魔王「必要あるまいよ? 知ってどうする、余たちには関係あるまい」

魔女「ぶっちゃけますわね。……まぁ、世界樹が消えて世界中のパニックに乗じて行動し始めたのなら」

女勇者「世界樹を壊したのはそれが目的だったってこと?」

魔女「可能性の一つとしてはね。魔法も使えない、蘇生できない、人喰いの大量発生…」

僧侶「大きな問題としてはそれに霧の発生も加えて4つですかね。王に付け込まれる隙が生まれるのも無理はないかと」

女勇者「でもその司令官さんたちが今降ろされて、誰が新しく着いたんだろうね?」

「面白い話してるね、お前さん達」

女勇者「え?」

「僕がこっそり教えてやるよ。なんでも、小耳に挟んだ噂だが……新たな司令官は」

「魔物だそうだ」

「!」

魔王「むぅ、いつ人間と魔物が手を組んだのだ?」

「組んだ覚えはないよ。あの騎士団長がこっそり魔物たちに通じているらしいぜ」

魔女「……そういえば、あの時も魔物を一匹引きつれてましたわ」

エルフ「あの人を倒したのもその魔物だったと思う」

魔王「あの売女がかッ!? ただの魔物如きにッ!?」

魔王「うがァーッ!! 気に食わんぞッッッ!!!」

戦士「ゆ、勇者殿。今は抑えて」

戦士「その噂どこで聞いてきたんだよ。確かなのか?」

「所詮は根も葉もない噂だよ。ただ、本当だとしたら面白いだろう」

僧侶「笑える話ではないかと思いますよ」

女勇者「もしかしたら国が内側から魔物たちに乗っ取られちゃうかもなんだよ!?」

魔女「まぁ、妥当に考えて魔物もそう狙っていると考えてもよさそうね」

「魔物の国ねぇー…そしたら今のアイテムや武器の需要も変わるだろうな」

戦士「あんた商人なのか?」

商人「そうだよ。町から町を旅しながら色々な物を売り歩いてる」

商人「旅と言っても一人じゃあない。ギルドに頼んで熟練の傭兵に囲んで貰ってね」

戦士「で、今は突然の霧に魔物にでこの城で立ち往生ってところかい? ご苦労だな」

僧侶「……む~」

エルフ「僧侶、どうかしたの」

僧侶「いえ、なんだかあの商人さんの声に聴き覚えがありまして」

僧侶「顔は初めて拝見しましたが、初めてのように思えなくて……」

商人「おほぉ、運命って奴を感じちゃったかな? お嬢ちゃん」

女勇者「僧侶さんマジですか!?」

僧侶「なわけないでしょう! ああっ、思い出した! あなた前に私にインチキ商品売りつけてきた!」

商人「げっ」参照※ その1 序盤など

僧侶「その人インチキです! 信用なりません!」

商人「お、おーい……決めつけは良くないかなぁー……」ピクピク

女勇者「滅茶苦茶動揺してるじゃん!」

戦士「まぁ、待ちなさいって。こいつも今そんな冗談言うような奴ではないだろう」

魔王「適当申していようが、別に興味もない話であるしのぅ」

エルフ「興味がなくても、大変な話だと思います」

僧侶「どうせここから変な物を私たちに売りつけるつもりだったんでしょう。分かってますからね!」

商人「心外だなぁ。僕だってそれなりに誇りを持って品物を売ってるんだぜ?」

魔女「それなりね。とりあえず暇潰しにはなりましたわ。どっか行きなさいな」

僧侶「そうですよ、もうお話は十分ですからっ。大体どうしてあの時と顔が違って」

商人「いや…身分上正体を誤魔化しながらでして」

僧侶「つまり今の様な状況になるのが目に見えていたからですね。まともな商売をしたらいいものを」

戦士「じゃあな、達者で」

商人「ちょ、ちょっと待とうか。君ら見たところだと戦える人たちだろう?」

商人「後生だ! 僕を海向こうの和村まで送ってください!」

魔王「……何処じゃそこォ? 聞いた事もないである」

女勇者「えぇー、前に私たち一緒に行ったじゃないですか。ほら、すごい武器があるって」

魔王「ああ、あの時貴様に騙されてわざわざ赴いたくそド田舎か」

戦士「お、俺がいない時にそんなとこに行ってたんスか!?」

僧侶「ええ。ですが、何故私たちがあなたをそこまで送らなければいけないのですか」

僧侶「正直嫌です」

エルフ「ぶっちゃけました」

商人「いや、本当は何もなければ傭兵たちが送ってくれる予定になってたんだよ」

商人「だけどこんな時だろう? それどころじゃないと言われてさ」

魔女「まぁ、当然ですわね。お前もお前ですわよ。またの機会にしたら?」

商人「そいつは困る! 新しい商品の仕入れもそこであるし、何より僕の故郷だ」

女勇者「えっ、だったら心配だよね…」

魔王「まーたこのバカは簡単に信じおって」

女勇者「でもよく分からない魔物が現れてるんだよ。それにあんな小さな村なら」

商人「小さな村は余計。故郷ってのは本当さ。心配かけてる両親にも会いたい」

商人「な、頼むよ? 報酬は弾むからさ…っ」

エルフ「私たちには他にすべき事がある」

僧侶「ですね。残念ですけれどまた他の冒険者をあたってくださいな」

商人「そ、そんなぁ~~~……」

女勇者「みんなこの人が可哀想だよ。何とかしてあげよう?」

戦士「悪いけどそんな暇は俺たちに今ないよ。なぁ、勇者殿」

魔王「確かにないし、くだらん。だがァー……」

魔王は鞘から魔剣を引き抜いた。

僧侶「あ、魔剣ちゃん……変わりは?」

魔王「何も変化なし、まだ喋らんである」

商人「……お客さんの手、ずいぶん色が悪いね? 大丈夫?」

「!」

戦士「いま、この人風邪気味なんだよ! ね!」

商人「はぁ。にしても変わった剣だな、こんな形状の物初めてだよ」

女勇者「触らない方がいいよ!! ……たぶん危ないから」

魔王「件のド田舎に寄る途中に幽霊船へ乗っただろう。その時のマンイーターがこやつをよく知っていそうだった」

僧侶「そういえばそうでしたね。もしかしたらこの現状にも何か」

エルフ「幽霊船に乗ったマンイーター?」

女勇者「うん。前に私たち会ったんだけど、魔剣さんと顔見知りみたいな感じで」

魔女「もしかして魔剣の製作者だったり~?」

戦士「いや、作ったのは砂漠の町の近くに住んでいた鍛冶屋の親父さんらしいんだが」

魔女「…アレを人間が作った? 作れる物だとは思えませんわよ」

戦士「正直言えば俺もだよ。なんでも魔王に献上する為にわざわざ作ったとか」

女勇者「じゃあ結局勇者さんの為の剣みたいな物だったんだね、魔剣さん」

魔王「ふむ、余はそろそろこやつウザい喋りが聞きたくなった。だから」

僧侶「村へ向かっても構わないけれど、途中で幽霊船へという事ですか?」

魔王「そゆこと」

商人「……何だかよく話がわからないけれど、送ってくれるんだね!?」

女勇者「うん! 私たちに任せなさーい!」

エルフ「私もそのマンイーターと一度話をしてみたいです」

戦士「よーし、それなら決まりだな。目的から少し遠のくが次の目的地は和村だ」

女勇者「次こそ最強の武器が手に入れば大助かりですね!」

僧侶「……それまでの道中は戦闘をなるべく避けた方が良さそうですね」

僧侶「こちらは魔法も使用できないし、武器も心元ありません」

魔王「余がおるではないか。余は魔法も使えるし、最強である」

魔女「は? 使えないでしょー、まぁ制約の魔法ならなんとかなるだろうけれど」

魔王「そっちこそ は? である。貴様はあの時余の力を見なかったのか」

魔女「……? まぁ、よくわからないけれど。戦闘になったら勇者に任せましょ」

戦士「勇者殿、俺も微力ながら協力させてもらうっス!」

エルフ「私もです。頑張るね」

商人「いやぁー! 頼もしいな、キミたちはぁー! 心強いぜ!」

僧侶「調子良すぎます。報酬の方はきっちり後でいただきますから」

商人「そりゃ出すさ。働き次第でね」

魔女「上から見れる立場じゃないですわよ、お前は。大人しくしてなさいな」

魔女「騒いでて魔物に殺されても知らないですわ」

商人「いや、困るよ……だ、大丈夫。僕には色々なアイテムがあるからね!」

戦士「なら、もしもの時はそいつを頼りにさせてもらうぜ」

商人「嫌だよ? 自分の身は自分で守ってくれ。僕は僕の為に僕の物を使うのさ」

女勇者「ケチーっ!!」

商人「ケチで結構。こちとら商人魂を持ち合わせていてな、無駄な消費はしたくないのさ」

僧侶「やっぱりこの人あんまり好きになれませんよ」

商人「さー、気が変わらない内にさっさと出発しよー! 時は金なりだよ、諸君!」

魔女「調子いい野郎ですわ…」

魔王「ムカつくなら殺してしまえばよいのだ。丁度海も通る、途中で魚に餌やりするのだ」

戦士「冗談っスよね?」

戦士「……うーん」

エルフ「戦士くん、どうしたの」

戦士「いや、こっちの世界へ戻って来るのに例の転送装置を使ったろ」

エルフ「うん」

戦士「アレはもともとは魔王城にあったんだ」

女勇者「でもでも! 結局王都のお城の中にあったじゃないですか」

魔女「つまり、魔王城からわざわざパクってきた。とか考えてるのかしらぁ?」

戦士「さっき、魔物がこの国の重役に着いたって話があっただろう」

魔女「……逆に魔物が装置をこの国へ持ち込んだ?」

戦士「手土産に、とか」

商人「先方さんに良く取り扱ってもらうにはお土産を渡すのも常套手段だからね」

戦士「ああ……ていうか人の話盗み聞きしてんじゃねーよ!!」

商人「まぁまぁ、僕だって今だけは君たちの仲間さ。話ぐらいはいいだろう?」

戦士「無関係な奴はだーめ」

商人「へぇ? ケチーぃ」

僧侶「あなたが言う事ですか。それより、そろそろ出口です」

魔王「ちょい待つのだ。城の兵士がおるわ……ぶっ殺して通るかァ!」

エルフ「無益な殺生は今はダメだよ。話せばわかる」

僧侶「その通り、私が行きましょう」スタスタ

兵士「ん?」

兵士「おいおい、避難民は一度中に入ったら外に出ちゃいかんよ」

僧侶「そのぅ、私たちは避難で城へ入ってしまったわけではなく」

兵士「……避難でなければ何だ。泥棒か? 火事場泥棒め!」

僧侶「それも違いますよ!! 泥棒なんて絶対しません!!」

魔女「いまここに盗賊がいなくて良かったですわねぇ」

戦士「お、おいおい……」

兵士「とにかく今外に出ては危険だ。霧も濃いし、それに見たろ。あの凶暴な魔物たちを」

兵士「我々だって君たちを守りきれるかどうか……頼むから中へいてくれ」

兵士「ていうか、君の顔どこかで見た事あるような気がするぞ!」

僧侶「げぇっ」

商人「おや、君たちも何かイケないことやらかしちゃった口かい?」

女勇者「あれは濡れ衣だよ! 私は本物勇者だし!」

魔王「あァーッ!? 喧嘩売っておるのかボケェ!!」

戦士「あ、あんたちょっと静かにしてくれよ! 今怪しまれてんだぜ!」

エルフ「戦士くんも静かにするべきかと」

僧侶「えっと、えーっと……私は! そのっ」

兵士「う~ん……?」じろじろ

商人「兵士さぁーん! やだなぁ、お忘れですかぁ? この子は一昨日兵士さんがぁ」

商人「ごにょごにょごにょ」ゴニョ

兵士「!!……///」

兵士「通るなら早くしろよ!! 俺は何も見てないーっ!! 知らん!!」

商人「ふふーん。チョロいぜ」

女勇者「すごーい。何話してたんですか?」

商人「彼と僕だけの秘密のお話。さぁ、通っていいって言ってるんだ。急がないと」

戦士「口が上手いのか、脅しが上手いのかだな」

商人「偶然僕が彼について知っていただけさ」

商人「情報は商人とって力になるんだ。あとはカマかけ、揺すりで」

魔女「それって商人がすることぉ?」

僧侶「……それよかあの兵士さんに何を話したんですか、嫌な予感しかしません」


魔王たちは城から無事出られたのであった!

王都・城下町


女勇者「ひぃ~……霧で前がよく見えないよ~」

どんっ

女勇者「わぁ!」

魔王「誰だ今余の背中に体当たりしてきた命知らずはァ~?」

女勇者「せ、戦士さんじゃないかな」

戦士「押しつけんなお前ぇー!!」

魔王「全く、このもやもやはいつに慣れんな。あっちの世界より濃い様に思えるぞ」

エルフ「私もそう思う。少しどころじゃなく、本当に前が見えません」

魔女「こんなに酷くて目的地まで辿り着けるのかしらねぇ」

商人「いやいや、着いてくれないと結構困るんだけどな」

魔王「勘違いするでないぞ。貴様を送るのはついでである。ついで」

商人「ついででも何でもいいさ。こっちとしては送ってもらえるだけ助かるんだよ」

僧侶「……ここは今何処でしょうか。方向感覚まで狂ってくるわ」

戦士「平気か? 僧侶ちゃん。みんなも、勇者殿はどうスか!?」

魔王「何ともである。何か霧払いできそうなものはないのかよぅ」

魔女「お前の制約魔法を応用してどうにかできないんですの?」

魔王「恐らくできんわ。ソレは環境に対して命令できる魔法でないと思う」

僧侶「人物や魔物のみを対象にできるのですか?」

魔王「うむ。なんなら、そういう使い方よりはマンイーターどもを退けさせる風に使った方が効果的ではないか」

エルフ「マンイーターが近づく事を許可させない、とか。でもあの時お願いされたよ」

エルフ「全てのマンイーターを殺せと」

戦士「……そんなのいつ?」

エルフ「転送される前に、あの子どもたちが」

魔女「あいつら、元々それが狙いで私たちをこっちに帰したのよ」

女勇者「そんな。でも全部殺せって無茶だと思うんだけど」

僧侶「ええ…難しいでしょうね…」

魔王「余もわざわざ一体づつ探して滅する気はない。どうせなら纏めてだ」

女勇者「それも、どうやって?」

魔王「知らん。そのうち考え付くわ。余は頭良いからなッ」

魔女「うへぇ、本気で言ってますの?」

商人「殺すやら滅ぼすやらって、何やら物騒系な話だね…」

魔王「物騒事は嫌いか? 余は大好きだぞ、乱暴するのも」

商人「まるで悪魔だなー……怖い怖い」

商人「ところで、君はどうして顔を隠しているんだい? 理由が?」

僧侶「この人は今おたふく風邪にかかってまして!!」

魔王「おた?」

僧侶「とにかく、可哀想なので触れないであげてっ」

商人「あ、ああ…そう言う事なら」

僧侶(なんとか勇者様の姿を誤魔化す手段が見つかればいいのですが)ゴニョゴニョ

魔女(魔法でもなければ人間の姿に変身する方法なんてありませんわよ)

戦士(とりあえず、しばらくの間はアレで何とかするしかねーなぁ)

エルフ「……?」

女勇者「どうしたの? 急に立ち止まっちゃって。置いてかれちゃうよ」

エルフ「周りを囲まれています」

女勇者「えっ」

魔王たちは気がつくと数人の人間たちに囲まれていた。

僧侶「……あなたたちは。ここは危険です、お城へ避難した方が」

男「…………」

女「…………」

戦士「こいつら、様子が変だぜ。しかもよく見たら血塗れだ。エルフっ」

エルフ「間違いないよ。彼らです」

戦士「奴らは食った人間の容姿へ変身できるんだ。人目を騙して襲いかかって来る」

女勇者「何かずる臭いー……」

商人「へ、へぇ? な、何だ。何が……」

魔女「お前は私たちの後ろへ下がってなさい。死にたくなければ」

戦士「勇者殿、ここは一本道だ。一気に外まで走りぬけてしまおう……」

しかし、魔王は魔剣を引き抜いた! マンイーターたちと対峙する!

戦士「勇者殿! 危険だぞっ」

僧侶「視界も悪いんですよ、無茶は」

魔王「余は構わんッ!! こやつらは一匹残らず余がぶち殺してくれるわ」

魔王「人喰い如きがデケェ面して歩き回りおって。気に食わんのだ……」

マンイーター『グワアアアアアァァァァーーーーッッ!!!』


マンイーターたちが現れた!

ここまで

マンイーター『くぎゅうッ』ビチャチャ

魔王「気晴らしにもって来いの雑魚軍団よ」

魔王「他にもまだ隠れておるだろう! 出てくるが良い! 余が[ピーーー]ッ!」

魔王はたった一人でマンイーターの群れを相手にしている!
倒して倒しても、キリがない!

魔女「お前は生身でも十分でしょーけどねぇ!! 私たちの事少しは配慮しろですわ!!」

商人「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……っ」

戦士「おいおい、悪霊相手にしてんじゃないんだぞ!」

戦士「勇者殿っ、もう十分! これ以上やっても意味ねぇーっスよ!」

魔王「以前申したはずだぞ戦士ィー! 余は敵を前にして逃走をする愚か者ではないッ」

女勇者「逃げる勇気も時には大せ…」

魔王「その考えは臆病者の考えだなァーッッ!! 強者は常に前だけ見据え、振りかえらん!」

魔王「……ふふーん、あ奴らもノリノリである。ここは相手してナンボじゃボケ」

マンイーターは魔王へ次々と跳びかかって行った! 魔王へ食らいつく為に必死!

魔王「無駄無駄無駄無駄無駄ァ。さらなる力を得た余に貴様らゴミなんぞが」

魔王「数百数千いようがいまいがッ!!」

魔王は足元の石畳を殴りつけた! すると、辺りの地面がボコボコと崩れ
マグマが噴出する! マグマはマンイーターを焼き焦がし、無情に溶かす!

マンイーター『アアアゥゥゥゥ……――――――――――』

戦士「あ、あぢぃ~……みんな近づくなよ……」

エルフ「言われなくてもです」


しゅうううぅぅ~~~・・・


魔王「……ン~、問題一つないのだよ」

僧侶「今のはーーー!?」

エルフ「魔法?」

魔女「!」

商人「あああ、あんたたちぃ! いや、あんた! キミぃ~~~!」がしっ

魔王「んが?」

商人「キミを雇って正解だったよ! 僕の目に狂いはなかったんだ!」

戦士「はん、調子いい野郎だね」

僧侶「……とにかく、さっきの攻撃の騒ぎを聞きつけて新たな魔物が現れる前に」

女勇者「逃げるが得策ですよね。勇者さん、今度こそ魔物いないんだし逃げよ!」

魔王「まだだ。まだこの町にあやつらは居る! 全て滅してくれるのだ!」

エルフ「さっきあなたは言ったよ。一匹ずつ倒しても無意味なんだって」

魔王「だからとて目先におる敵を放って行くのか? 余は間違っていと?」

エルフ「間違ってはいない。でも、時と場合を考えて」

僧侶「そうです。魔物を一掃できる方法を見つけてまたこの町を訪れたらよいのですから」

僧侶「無理は禁物ですよ」

魔王「~~~……」

フィールド


僧侶「外へ出ても、やはり霧のせいで前がよく見えませんね」

女勇者「こうも続くと気が滅入ってきますよねぇ……なんか明るい話でもしよっか」

魔女「その前に、私は勇者に聞きたい事がありますわ」

戦士「さっきのアレか? 俺も気になっていたんだが」

魔女「ええ。言うまでもなく、現状魔法は世界樹を失った影響によって使えない」

魔女「私自身もそれは試したし、他の人らだってたぶんそうでしょ」

僧侶「はい。私も一度試してみましたが、何も」

魔女「だけどコイツはさっき目の前で見せてくれましたわね」

魔女「……特別だから使えた。なんて奇跡みたいな返事は期待しませんわ」

魔王「余だから使えるのだ! 阿呆よのぅ~」

魔女「馬鹿にしないでほしいですわ! 天才の私を差し置いてそんなの絶対許せない!」

女勇者「まぁまぁ、人間誰しも限界があるってもんだよ。天才だろうと馬鹿だろうと」

商人「ふむ? その言い方だとまるで彼が人間ではないみたいな~」

女勇者「人間っ!! 人間だと思いますよっ!! たぶん!」

戦士「たぶんって、おい」

エルフ「……確かに魔法だった。魔翌力の流れも感じ取れた」

戦士「魔翌力自体の供給が止まったわけではないんだよな。ならそれを使って魔法と違ったものを~とか」

魔女「魔翌力は魔法を扱う為のモノよ! …まぁ、機械に使うとかそういったのもあるけど」

女勇者「でもアレは魔法そのものみたいだったよね? ね、ね、勇者さん本当に何したの」

魔王「さっきのは余の中に秘めた力の一つよ。直感でやってみただけ…」

魔王「パパ上から教わった力の使い方を思い出し、実行したまでだ」

僧侶「魔王の力……」

商人「え」

僧侶「いえ、勇者の力ですね!! さすがです」

魔王「まぁのう!!」

魔王(しかし、余自身も先程の力については何も分からんかった)

魔王(魔法のように、地から火を召喚したような。マグマの熱さも肌で感じたし、確かに魔物どもも焼き死んだ)

魔王(魔翌力器官…から魔翌力を消費したのかも知らんが、魔翌力も確かに減った)

魔王「よく分からんけど余は最強で天才というわけであるなッ! なぁ、凡人の雌豚ァ!」

魔女「ぐ、ぬ、ぬぅー……!!」

女勇者「私たち、結構町から歩いたよねぇ?」

魔女「……歩きましたわよー。ひぃ、ひぃ…」

魔女「だのにっ!! いつまで経っても港に着かないー!! どうかしてますわ!」

戦士「どうかしてるのは俺らかも知れんな」

魔女「どういう意味ですのよぅ」

商人「この濃い霧のせいで方向感覚をほとんど失ってしまったんじゃないかな」

商人「もしかすれば、僕たちは同じところをぐーるぐると周っているのかも」

女勇者「うそ! だって直進しかしてないんだよ、そんな筈は」

僧侶「もしくは、妨害を受けているのかも……」

魔王「人喰いどもにか?」

僧侶「かもしれませんし、または他の何者かに」

魔女「魔法でもなければそんな真似できん。ですわ」

戦士「いや、何も魔法だけが罠になるわけじゃあない」

戦士「人間も魔物は…どうか知らんがね。少し頭を働かせれば何かはできるもんさ」

エルフ「知能が高い生き物は力が無くても、工夫や技術で獲物を取るの」

女勇者「獲物って~……え、今もしかして私たちその立場?」

魔王「だとしたら気に食わんなッ」

僧侶「まぁ、考えすぎも良くはありませんが、警戒するに越した事はないですね」

商人「そうそう、なんせ僕の命に関わるしね!」

魔王「やっぱこやつ殺そう。先程から邪魔でしかないわ」

商人「冗談でしょう? ちょっと笑えないな!!」

魔王「余は冗談は好かん。邪魔と思ったのは真よ、[ピーーー]」

戦士「勇者殿ぉ~……っ。ここでこいつ殺したら勇者殿は本当の勇者でなれなくなるっス!」

魔王「何故だ阿呆がッ!! 勇者とて小バエ一匹[ピーーー]事に躊躇せぬだろう!」

僧侶「相手は人間です! 少しは勇者様も情けとか優しさを学んでください!」

魔王「……むぅ、何なのだ。余ばっかし悪いみたい申し方しおって」ムス

商人「この人頼りにいいんだよな? なっ?」

魔女「うっさい話しかけんなですわ! 今、私滅茶苦茶ムカついてますの! その尻蹴るわよ!」

商人「僕の目に狂いがあったようだな」

戦士「何か目印を置いたとしても遠くに動いたら見えないしな、これじゃあ」

僧侶「上手くこの霧を晴らす術があれば。エルフさんは何かご存じでは?」

エルフ「魔法でしか払えないと思うよ」

魔女「ほーら、魔法万能ですわ」

魔王「ふん、魔法魔法と貴様らアレに頼りすぎなのである。情けない」

魔女「あーっ! 魔法バカにした! 魔法を笑ったら魔法に泣く事になりますわよ!」

僧侶「魔法は分かりましたから、他に何か……そうだ」

僧侶「この状況を打破できるアイテムとか。あなたならご存じではないですか?」

商人「えっ、僕かい? あまり頼りにされてもな…こっちは頼る立場なんだし」

女勇者「助け助けられ合いだよ。持ってる知識があるならここで役立てないと!」

戦士「その通り~。あんただっていつまでも経っても前に進めなきゃ困るだろう?」

商人「……まぁ。でも、そう都合良く状況打破できる物なんて」

僧侶「あるんでしょう? 都合よく」

商人「あるっちゃある」

戦士「なら出し惜しみしてねーで、さっさと使いなって」

商人「残念ながら今持ち合わせちゃいないよ。ていうか、入手困難」

商人「『天使の羽根』という手に入れ者の願いを叶えてくれる物があるらしい」

魔王「らしいと申したな。確定した情報ではないというわけか」

商人「そう。だから当てにしない方がいいな」

僧侶「そんな……でも、もしそんな物が実在するなら便利すぎますよね」

魔女「ズルにも程がありますわね」

女勇者「他には?」

商人「……これもあんまりだけどさ、『光の玉』」

戦士「おいおい、それって」

商人「キミたちでも知ってるぐらい有名な品だろう」

商人「魔王が纏いし邪悪な闇の衣を払う、勇者に必要不可欠なアイテム」

女勇者「それは知ってるけど。闇の衣でしょう? 今は霧を払いたいんだよー?」

僧侶「この霧を魔王が纏うような邪悪な装備と同等に見ているのですか」

商人「僕はだがね。素人目から見てもコイツ異常な現象さ」

商人「この霧は世界全体を包んでいる。昼も夜も変わらず、魔王の仕業と考えて妥当じゃないかな?」

魔女「ですってよ~」

魔王「また余のせいかッ……!」

エルフ「この現象は魔王の仕業ではないの。世界樹が」

商人「世界樹ー?」

僧侶「長くなる話ですし、今はその説明はいいでしょう」

僧侶「ですが、光の玉も天使の羽根も早々手に入る様な物ではありませんよね」

戦士「本当にあるのかも分からんもんだしなぁ。ここはパパッと勇者殿が霧をバーっと払ってくれませんかねぇ」

魔王「可能ならば既に実行しとるわボケ。それができたらどれだけ良かったか」

女勇者「あれ、珍しい。『余にできぬ事など何一つないわァー!』とか言ってやってくれるかと思ってたのに」

魔王「余とて全知全能ではない。バカか貴様、バカ」

僧侶「へ、変に謹みがある勇者様だとおかしく感じますね…」

エルフ「みんな、本題からズレてきてる」

魔女「だってしょうがないでしょう? 方法が見つからないのだし」

商人「町に行くだけならキメラの翼があるんだけれど?」

「えっ」

魔王「貴様ァーッ!! 何故知ってて黙っておったのだ糞がッ!!」がしっ

商人「だだだ、だって今の話題は霧を払う方法だったろ!? 町に直接行ける方法とはぁっ」

戦士「前に進めなくて困るだろ? って俺がお前に話振っただろうが!」

僧侶「すっかりそういう便利な物を忘れていましたね…」

魔女「ていうか、お前も最初からそれを使って故郷へ帰ればいいものを」

商人「ダーメ! 貴重な物なんだから簡単に使えんよ! それに」

商人「このアイテム使うには町から出なきゃいけない。あの町の中には既に魔物がいて僕だけで出て行くには危険すぎ
る」

女勇者「ああ、なるほど。でもそれだったら町から出てすぐにそういうの教えてくださいよね!」

僧侶「本当ですよ」

商人「僕の所持品なんだから好きなタイミングで使ってもいいだろ!?」

魔王「戦士、その男を抑えておけ。後は貴様らこいつの懐を探ってある物全て出させるのだ」

戦士・女勇者・エルフ「あいあいさー!」ばっ

商人「いやぁー!!」

僧侶「……な、何も強奪という形にしなくても」

魔女「あの調子だと長時間は出し惜しみしそうだし、妥当な判断だと思いますわよ~」

女勇者「ここかなぁ? この中に……ん」

女勇者は商人の懐から小さな機械を見つけた!

商人「ああぁ~~~!!ちょっとそれはダメーーー!!」

エルフ「これは何ですか?」

商人「……」

商人は黙っているが動揺を隠せずにいる!

戦士「なぁ、コレの事を聞いてるんだ。答えられない物か、それとも俺らに知られたら都合が悪い物か」

戦士「ハッキリしようぜ、商人の旦那ぁ!」

商人「こ、答える義務はないだろう」

魔王「よし! こうしよう!」

魔王「余が5秒数える。そのうちにソレが何か答えないと~~~」

商人「うわあぁぁ、話しますから殺さないでー!」

魔王「さっさと吐けこのウンコ屑ッ!!」

僧侶「―――……あの騎士団の方々に頼まれた?」

魔王「ウソだと分かったら」

商人「嘘じゃないから信じて! ただ持っていてくれって頼まれただけで!」

魔女「ふーん。ならどうして最後まで隠し通そうとしていたのかしらねぇ~?」

商人「うっ…」

戦士「まさかとは思うが、奴らこの男に俺たちの目的や行動を見張らせようとしてたんじゃねーだろうな」

女勇者「だとしたら、私たちが生きてるってよく分かったよね?」

エルフ「あの人たちの目的は世界樹の破壊だった。つまり今世界樹を復活させられたら」

僧侶「都合が悪いですよね、もちろん……」

僧侶は機械を手に取ると、遠くへ投げ飛ばした。

僧侶「予想通りです。盗聴器か何かでしょう」

魔王「だから余は申しただろう。この男を殺すべきだと!」

女勇者「殺す事までする必要はないよ。でも」

女勇者「本当の目的を教えてください。どうしてそんな事引き受けたの?」

商人「……はぁ、もういいか。終わったな」

商人「頼まれたんだよ、彼らからキミらの監視を。ちなみ故郷まで帰りたかったのは本当」

戦士「金積まれて頼まれ、断りづらくてってところの話だろうな。察するには」

商人「よく分かってるねぇ、正解だよ」

僧侶「真面目にお願いしますね。怒りますよ」

商人「いや……別にね、僕もキミらに下心が会って近づいたワケじゃあないよ。本当に頼まれたからさ」

商人「あの機械でキミたちの会話を彼らに盗聴させるだけ。たったそれだけの事だよ」

戦士「それが俺たちにとってかなりマズいの。面倒な事になったな…」

魔王「幸い、重要な話をそれほどこやつの前で話してはおらん。まだいける」

エルフ「だけど、妨害はやっぱりありそう」

僧侶「本格的に王都騎士団の方々と対決する事になりかねないですね」

女勇者「こんなのって絶対間違ってるよね…おかしいよね…」

魔王「いや、間違ってないである。奴らも人喰いついでに滅すぞ」

女勇者「いやいやいやっ」

魔王「勇者の敵になるとは即ちッ 悪になりさがった屑だというわけだッ!」

魔王「理解したなァー?」

女勇者「勢いで通そうとしてもダメだからね!?」

商人「あの、これから僕はどうなるんだい。まさかその辺にポイとかじゃないよな?」

魔女「そんな生易しい事で済むと思っていたの。随分簡単に考えてくれているのねぇ」

魔王「判決を下す。貴様は極刑だ! その首を刎ねて物好きに売り飛ばしてやる」

商人「外道! 外道ぉぉぉー!!」

エルフ「さすがにそれは可哀想です。彼にも家族はいる」

僧侶「ええ、ここでこの方を懲らしめても私たちには何ら得にもならない」

僧侶「ここは慈悲の心を持って許してあげてはどうです。勇者様?」

魔王「やだもん。余はこやつを殺すって決めたもん!」

戦士「……」

女勇者「戦士さん、急に黙りこんで」

戦士「なぁ、もし奴らが俺たちを妨害……ていうか、殺しに来るだとすれば」

戦士「目的地の和村へ先に回り込まれているか。潜伏している騎士が出てくるよな」

魔女「でしょうね。幸い世界樹を蘇らせる話を聞かれたわけではないけど」

魔女「あの場にいた私たちをこのまま生きてうろつかせてたら、向こうも都合悪いっしょ」

女勇者「この世界をこんなにした原因が騎士団長さんにあるって言い振られるのも嫌だろうしね」

魔王「完全に悪人であるな。もう勇者だ何だと言って止める余地もあるまい?」

女勇者「でも殺しちゃうまではないと思う。ボコボコにして懲らしめてやろう!」

商人「……キミたちの、いやそこの勇者くんの強さは僕もさっき見せつけられたばかりだ」

商人「だが、あの騎士団の強さを舐めない方がいいんじゃないかな?」

戦士「問題ねーよ。俺たちゃ何度も奴らとやり合ってる。そのたびに撃退したりしてるし」

女勇者「戦士さんも一人であの美人騎士さん倒したもんね!」

戦士「その通りっス! 俺つよーい!」

商人「一体キミたち何してそんな、アイツらに追われるような…」

僧侶「ちょっとした複雑な事情がありましてね」

魔女「とにかく、勝てない相手ではありませんわ。奴らも魔法を封じられているし」

商人「そこなんだよ」

魔女「は?」

商人「あの王都騎士団の長。騎士団長は周りが魔法が使えない中、魔法を使って例の魔物たちを倒したんだ!」

エルフ「今の状態で魔法が使える事はけしてないと思う。世界樹の記憶がなければ」

魔王「余は何とかなったがなァ」

魔女「お前のは絶対別もんですわよ…」

商人「キミの魔法……まぁ、魔法でいいか。アレだって凄かったよ」

商人「でも騎士団長が放ったモノも相当だったぜ? 見た事もない、あんなの」

僧侶「その話が本当だとすれば、彼はどうやって魔法を……」

魔女「ちょいとエルフちゃん。まーだ私たちに話してない事がお有りじゃなくって?」

エルフ「全て話したよ。私が知っている事はもう何もないはず」

女勇者「何か特別なマシ~ンとか作って、それを使った攻撃とかじゃないの」

僧侶「確かに魔力をそういった物へ注入して射出するものがありますね。可能性は」

商人「僕は確かにこの目で見た。アレはイカサマでも何でもなく、魔法そのものさ」

戦士「自信大アリだな。別にお前が言った事を嘘だと言ったわけじゃあないよ」

戦士「ただ、今魔法が使えるという事実を俺たちは信じられないでいるだけで……」

魔女「……一定の、ごく少数の優れた魔法使いは魔法が使える、とか」

魔女「はたまた、それは魔法のように見えて、魔法ではない何か別の術か。ですわね」

女勇者「そんなのあるの? 忍術? どろんっ」

魔女「さぁね、実際に見たわけでもないしなーんも言えんですわ」

僧侶「とにかく、その話については何処か落ち着ける場所でしましょう」

僧侶「まずはこの霧の平原を抜けることから始めないと」

魔王「話が振り出しに戻りおったわ。だから、早くキメラの翼出せオラ」ぐいっ

商人「待った待った! 暴力は反対だよ! 殺人行為もNO!」

魔女「どこまでも虫が良い奴ですわね~。悪いけどもう優しく接して貰えるだなんて思わないほうがいいですわ」

女勇者「初めからそんな優しくされてなかったような~……」


< …………ヴォー……


エルフ「……」ピクッ

エルフ「人喰いたちの声が聞こえた」

僧侶「えっ! こちらに向かって来ていますか!」

エルフ「来てる。彼らは人間の匂いに敏感。あまりのんびりしてる場合じゃないと思うよ」

戦士「おい! また戦闘に巻き込まれたくなければ!」

商人「ああっ、ちくしょう! 分かったよ、出せばいいんだろう! 出すよ!!」

商人はキメラの翼を取り出し、使用した!

魔王たちは港町へワープ!

港町


女勇者「超便利ですね! 今の!」

僧侶「転送魔法も使えないし、何処かで数枚手に入れておいても後悔はなさそうですね」

エルフ「しょっぱい……」

女勇者「戦士さん!!」

戦士「何で俺? いや、汗掻いてないよ。うそじゃない……」

魔王「潮の香りの事か。貴様は海が初めてか!?」

エルフ「うん」

魔王「ぐわはははっはっはァ~~~!! 経験ないなァ! この井の中の蛙めが!」

僧侶「どうしてそんな事で得意気なんです。勇者様だって最近まで見た事なかったくせに」

エルフ「海。でもその海は何処に」

商人「どこも霧で見えたもんじゃないね。海はすぐそこさ、ここは港だからね」

女勇者「霧で思い出したけど、こんな状態で船なんて出てるのかな?」

戦士「だよな。俺もそれを思ってたとこなんだが」

商人「はははは、キミたち勇者一行なんだろう? 権限で出して貰えばいい」

女勇者「勇者でもそういう無理は通らないと思うんだけど」

魔女「ていうか、別に港に来なくとも真っ直ぐ和村へ飛べばいいじゃない。ですわ」

商人「無理だよ。キメラの翼はある程度距離がある場所へはワープできない」

僧侶「近くの町限定という事ですか? ではここからキメラの翼を使用したら」

商人「そいつも無理だねっ。町の中から次の町へワープするなんてのもアウト」

商人「ここでもし使用すれば、さっきの平原へ戻る事になるよ」

魔王「便利と見せかけた役立たずか。次からこんな物に頼るのもないな」

魔女「魔法ってすっばらしー!」

僧侶「そうも言っていられません。フィールドに出たら前も後ろも分からなくなるのですから」

僧侶「ついでです。町に来たことだし装備を新調しましょう。以前の戦いで失った物も多いですし」

戦士「俺使う武器どうも壊れやすいんだもんなぁ…」

商人「それなら僕の店でお買い求めを~」

僧侶「結構です」

商人「チッ」

防具屋さん


僧侶「ど、どれも高い……高すぎますっ!」

店主「仕方がないんだよ。この現状だ。身を守る為の武器や防具は売れて、売れて」

店主「今じゃ魔法使いだって剣や鎧を着込むぞ」

エルフ「魔法が使えない影響がここまで大きいだなんて」

魔女「当然ですわ。もはや戦闘のみじゃなく、日常生活でも魔法はなくてはならないモノへなり上がっているもの」

女勇者「便利なだけあって、失った時の大きさが凄いんだね…」

店主「あんたらも外の魔物たちに殺されたくなければ良い防具を買うといい」

戦士「つっても、その良い防具とやらはほとんど売れちまってるじゃないか」

店主「まぁねぇ……」

商人「だーから僕のとこで買えばいいってのに!」

魔王「買うとかではなく無償で寄越せ。余たちは貴様を守ってやっておるのだ」

商人「そんなに僕が人が良く見えるかい? 天地がひっくり返ってもそんな事はないよ」

魔王「では、貴様の死体から剥ぐまでだなァー!」

店主「お客さん。喧嘩なら外でしてくれよ…」

僧侶「す、すみません!」

魔女「それでどうしますの? ここで揃えてしまう? 高いけど?」

僧侶「命を守る物です。無理して他まで行って買うわけには……」

店主「あんまり言いたかないんだがね。もし和村へ渡るというのなら向こうで装備を整えた方が賢明だ」

女勇者「まさか最強の武器がお店に!?」

店主「最強かどうかは知らないけど、それなりに質の良い物は揃っているだろう」

店主「ま、うちの店同様売り切れてるかもしれんが」

戦士「僧侶ちゃん。一発賭けに出てみないか」

僧侶「あまり賭けという言葉にいいイメージが沸きませんが…」ジロ

魔王「何故そこで余を見るのだ!」

僧侶「そうですね。海の上で人喰いと戦う事になるとは思えませんし」

エルフ「例の幽霊船というところでは」

女勇者「あそこには人喰いは一匹しかいなかったよ。話せば分かってくれそうなタイプだったし」

戦士「ていうか、その幽霊船とやらに船が寄ってくれるのか?」

「あっ」

戦士「前に話を聞いた時は偶然遭遇する船なんだろう? 出会えない可能性もある」

魔王「いや、かならず遭遇するだろうよ」

魔女「やけに自信ありますわね? 理由聞いとこうかしらぁ」

魔王「あの人喰いは魔剣へまたここへ来いと申した。こちらから向こうへ近づけば、かならず出る」

僧侶「ではその可能性へも賭けてみましょう。魔剣ちゃんの為にも!」

魔女「いつもわーわーとうるさい剣も、いつまでも黙ってられると寂しいですものねぇ」

女勇者「勇者さんもつまらなそうだもんね!」

魔王「余は別に魔剣なんてどうでもよいのだっ! でも喋らんのが嫌だから」

僧侶「それはどうでもいいなんて事ではないというわけですね。素直じゃないんだから」

戦士「あの子が機能してくれれば、この霧の中でも上手く進めるかもしれないしな」

戦士「何とか魔剣ちゃん直ってくれればいいっスね、勇者殿!」

魔王「まぁ、うん…」

魔剣『―――――』

女勇者「勇者ちゃ~ん! 好き~!」

魔王「貴様本気でぶち殺して海に流すわ」ジャキン

女勇者「冗談、冗談っ!! いや、励まそうと…!」

僧侶「長居してしまいましたね、貴重な情報を提供していただき、ありがとうございます」

店主「いいよ別に。気をつけなよ、船乗りたちもこの霧でイラついてるから」


魔王たちは防具屋さんから出た!

魔女「にしても、この脳筋女もしつこく言ってたけど」

魔女「和村というところは本当に良質な装備が多いのかしら。ですわ」

魔王「以前訪問した時はその様な物見る暇がなかったから謎である」

商人「本当だよ。そこには自信がある。僕の故郷の商人や職人は腕がいいのばかりだから」

戦士「それ、あんたも含めて話してないだろうな」

女勇者「お父さんも装備はあそこの村の物ばっかりで。すごい信頼して使ってたみたい」

エルフ「私でも使える物があると嬉しい」

戦士「キミも戦うのか? 無理はしなくていいんだ。戦闘は俺たちに任せてくれても」

エルフ「いつまでも甘えているわけにはいかないよ。できる事は全てします」

僧侶「こんなに小さいのに逞しいですね、エルフさん」

戦士「まぁ、小さいつっても~……実年齢は見た目相応じゃあないんだろ?」

僧侶「えっ」

エルフ「そこの勇者くんと同じぐらいか、もしくはその上かもしれない」

魔王「余と一緒ぐらい? ……ば、ばばあ」

僧侶「というか勇者様がまずいくつなんですかー!?」

女勇者「じゃあエルフちゃんが最年長って事も」

エルフ「みんなのお姉さんだ」

戦士「頼もしいな…はは…」

船乗り「ダメだったらダメだ! 危険過ぎる!」

「?」

商人「そこを何とか頼む! お願いだ、僕の故郷なんだよ!」

戦士「どうした? 旦那」

商人「彼が船を出さないと、どうも頑固で……!」

魔女「出さないのも納得いけますわ。確かに危険だし」

船長「申し訳ないが、この霧の中出港するには無理がありすぎる」

船長「私も乗員やお客を立場上怪我させるわけにはいかんのだ。ここは諦めてくれ」

商人「そ、そんな……」

魔王「余は勇者だ。船出せや!」

船長「勇者って……ややっ、あの時の!」

女勇者「船長さん私たちのこと覚えててくれたの!?」

船長「もちろんだとも。幽霊船を退けてくれた恩人だしね」

魔王「今回はその幽霊船に用があるのだ。だからずべこべ申さずに船出せ」

僧侶「ゆ、勇者様。頼み方がなっていませんよ」

僧侶「…危険は承知でこちらもお願いしています。どうか、出して頂けないでしょうか」

船長「恩人の頼みだ。出してやりたい事はあるが……この霧の中で舵を取る自信はないよ」

船長「すまないが、霧が晴れてから出直してくれ」

戦士「この霧がいつ晴れるってんだ。検討もつかねーぞ」

エルフ「恐らくすぐに晴れる事は絶対にない」

商人「何とかならないだろうか。父や母が、こんな中どうなってるか知りたいんだ」

船長「うっ、そういう事情には弱いけど…無理なもんは無理ー!」

女勇者「じゃあ船一隻貸してー! 自分たちで何とかするからぁー!」

僧侶「無茶言わないでください!?」

船長「……マジだな? どうなっても知らないよ?」

女勇者「おっ、おおっ!」

船長「いいだろう。どうしてもと言うのなら一隻私の船を貸そうじゃあないか」

戦士「太っ腹っスねぇ! 腹だけじゃなくて心意気もぶっといぜ、船長さん!」

魔女「でーぶ! でーぶ!」

船長「貸すのやめちゃおうかな」

魔王「もう遅いわ。とっととその船へ案内するのだ!」

僧侶「ひ、酷い人たち…」

船長へ着いて行く魔王たち。着いたところには一隻の小船があった!

女勇者・魔女「ちっさぁー!?」

僧侶「こらこら」

戦士「俺たち全員で乗れるのか、その船」

魔王「ていうか泥船とかではないであろうな。沈まぬよなァ!?」

船長「おいおい…そんなに言わなくていいじゃない」

船長「問題なく全員乗り込めるだろう。操作もコレならそう複雑なものではない」

エルフ「誰が動かすの?」

女勇者「はい! はぁーい!! 私が動かす! 大丈夫だよ! こういうの得意だからね!」

魔女「ふん、脳筋女如きに扱える代物ではありませんわ。ここは天才美少女の私に~♪」

魔王「余がやりたい! 余がやるー! やぁーらーせぇーろぉ~~~」

商人「僕はまだ死にたくない。海の藻屑にもなりたくない」

僧侶「……戦士さん、お願いできますか」

戦士「OK~」

船長「楽しそうなのは構わんが、あまり海を舐めない方がいいぞ」

船長「和村へなら港から出て南西の方角だ。迷ったら灯台の灯りを頼りにすぐに戻って来るといい」

僧侶「霧で光が遮られたりしませんかね…」

船長「あり得るが、何も無しよかましだろう。いいか? 船の上で騒ぐなよ。落ちたら危ないんだから」

「はーい」

商人「やぁ、キミたちのお陰だよ。何とかなったな!」

戦士「それは着いてから言うことだぞ。道中何があるかわからん」

僧侶「ですね。さて、では乗り込むとしま…」

魔王「余が一番乗りであるゥーーーーーーッ!!!」ぴょん

ざぶーんっ!!

女勇者「ああっ、ずるい! じゃあ私にばーん!」

魔女「ダメですわよ! 私が先に乗るんですの!」

商人「……ホント、何があるか分からなさそうだ」

僧侶「主よ、本当にどうか、私たちをお守りくださいっ」

エルフ「神はもういない。消えました」

僧侶「き、気持ち的なものですよ! いやー、死にたくないわ…」

一方その頃・・・。


1「な、何だと」

1「貴様今何と言った! 魔王が、奴が生きていただと! 出鱈目を!」

団長「おじさんはそういう下手な冗談言うのが苦手さ」

2「想定はしていたわ。あの魔王がそう簡単に息絶えるとは思ってもなかったし」

重騎士「その仲間一味もまだ無事であった。一名いない者もいたが」

団長「ああ、そう。しかし流石僕の親友。盗聴とは機転が効いていたな」

重騎士「何を言う。城内に奴らが入ったと報告をくれたのは友であろう」

重騎士「わしは友の役に立つ出来る限りのことは尽くさせてもらう。それだけだ」

2「……それでどうするの。当然まお…勇者一行は潰すでしょう?」

団長「そうねぇ。どうも魔王ちゃんが力身につけちゃったみたいだし」

団長「あの調子だとおじさんの計画もダメにしてくれそうだし」

重騎士「わしと騎士はいつでも動ける。任せろ」

団長「いや、お前は休んでいるんだ。まだ傷の治りも進んでいないんだから」

団長「ねぇねぇ、そっちで適当に強い魔物見繕ってさぁー? 処理できない?」

1「貴様の為に動かす魔族などもうおらん!! 勝手を言うな!!」

団長「あれあれ? そういう事言っちゃうんだ。おじさん悲しいな」

2「でも1、私たちにとっても魔王は邪魔な存在よ。野放しにはできない」

1「……ではいよいよ我らが動く時が」

団長「いいよ、いいよ! やっぱりこちらで何とかさせて貰うから」

団長「ま、そちらの協力もすこーしいただきたいんだがな」

1・2「は?」

団長「丁度処分に困っていた奴らが2人いたんだよねぇ。な?」

重騎士「まさか、友よ……。あの2人を外へ出す気か……っ?」

重騎士「考え直せ! 奴らを外へ出せば関係のない市民を傷つけるぞ!」

団長「あの凶暴性がいいんじゃあないか。容赦のない、野生の獣みたいなギラギラ感が」

団長「甘い考えじゃ、魔王ちゃんたちを倒すのは苦労するぜ?」

重騎士「う、うう……!」

番人「団長殿、暗黒騎士殿! ……と、魔物か」

暗黒騎士「ここを通せ。奥の2人の騎士に用がある」

番人「か、彼らに話を? いくら貴方がたとはいえまともに会話できるかどうか」

団長「問題ないよ。それより2人を解放する手続きを取ってくれ」

番人「えぇ!? 冗談でしょう!?」

団長「頼んだぞ、っと」


団長たちは番人の言葉を無視して、牢室の中へ入った。


1「……ふん、所詮凶暴な人間とはいえ魔王に勝てるとは思えんな」

団長「ああ、だからこそそちらの博士をお呼びしたんじゃなーい」

魔物博士「……」

団長「博士、あなたにこれから魔改造していただく2人を紹介しようじゃあないか」

2「博士! 何故この男にっ」

魔物博士「ふぅん、ワシは天才マッドサイエンティストよ。人間を弄れればそれで良い」

魔物博士「事情などもう知った事はないわ!」

団長「それでこそですよ。あっちゃん、キミには2人の監視についてもらうよ」

暗黒騎士「お、俺が!? 叔父上……それは、ちょっと」

団長「キミにしかできない事さぁ。流石にお目付け人がいないと彼らはすぐに暴走してしまう」

団長「いいかい? 彼らはただの下種人間だ。下手な気遣いも優しさもいらないからね」

暗黒騎士(し、知っている……だが、アイツらと一緒に行動だと? 同じ部屋の空気も吸いたくないのに)

1「それでぇ? そのきょーぼーな騎士たちは何処に?」

団長「ああ、ここだよ」

団長は重く封じられていた扉の錠を開け、さらに中へ入った。

2「まるで魔人を閉じ込めていた所みたいね」

暗黒騎士「奴ほど強力な存在ではない。だが、騎士団中最強の2人だ」

暗黒騎士「人として間違ったイカれどもだがな……!」

団長「……やぁー、久しぶりだね。元気にしてたかい」

目の前の牢の中にはガッチガチに拘束具を巻かれた2名の男がいる。

片方の男は覆面を覆いかぶされてあり、顔が見えない。足元にはこの場の雰囲気にミスマッチな可愛らしい少女の人形が転がっている。

もう片方の男は口元のマスクから涎をだらだら垂れ流し、彼らをずっと睨みつけて奇声を上げて警戒している。

?「あ゛ぁーあぁぁ~~~!! う゛うぅあうぅぅぅ~~~!!(^q^)」

?「…………」

団長「キミたち暇だろ。そろそろお仕事しよっか」

ここまでです。アンデッドについては近いうちに物語で説明つくだろうから待っててくれ

魔王たちは港町で小船を借り、目的地へ向かう。
いつもの調子で騒がしく。

女勇者「海は広いな~大きいな~、ってか♪」

戦士「予想通りの音痴だなー、女勇者ちゃん」

女勇者「ストレートに酷くありませんか!?」

魔王「おええぇ~……」ビチャチャ

魔女「さらにこちらではゲロのアンサンブル」

エルフ「大丈夫? 変な物を拾い食いしてはダメだよ」

僧侶「いえ、これは船酔いかと。勇者様しっかりー」さすりさすり

商人「何て言うか」

商人「キミらと一緒だと退屈しなくて済むな……」

女勇者「まぁね!」

僧侶「たぶん悪い意味で仰られたのかと」

僧侶「戦士さん、気をつけて運転お願いしますね。海のど真ん中で止まっては大変ですので」

戦士「気をつけてるよ。問題ないって、自分器用ですから」

魔女「そうやって過信している奴ほど何か起こすのよねぇ…」

戦士「こらぁ、もっと俺を頼りにしないか。文句ぬかすならお前だけ振り落とすぜ」

エルフ「戦士くんはそんな酷い人ではないでしょう」

魔女「分かりませんわよー。頭の中じゃ何考えてんだかだし」

魔王「それ貴様が申すか」

エルフ「……」

僧侶「初めての海なのにこうも霧が濃い景色というのは勿体ないですよね」

エルフ「霧が晴れていたら、何が違うの?」

女勇者「地平線まで続く海が見れる! ていうか気分的にも違うぜ~」

エルフ「?」

女勇者「まだまだ冒険は始まったばかりだぁ! ってな感じ」

女勇者「いつかエルフちゃんにもそんな感覚味合わせてあげたいなっ」

エルフ「その時はまたみんなと一緒がいいです」

僧侶「ですね。きっと叶いますよ」

魔王「どうだ、件の大船は見えたか?」

戦士「今ンとこは何にもって感じっス。本当にあっちから現れるような事なんてあり得るんですかね」

僧侶「向こうが敵かどうかはハッキリしていませんが、味方でもありませんからね」

魔女「魔剣に興味があるだけで、私たちはどうでもいいと?」

僧侶「ええ、その様に思えますね」

魔王「……現れぬのならば、こちらから向かってやるまで」

魔王「貴様ら周りをよく見張っておれ! 余は具合悪いから横になってるのだ!」

僧侶「ここで横になられても、揺れますし、変わりはないかと…」

商人「幽霊船ってのはどうでもいいんだよ。僕は無事に帰れるのか…?」

商人「言っておくが、悪いけどもしその船を見つけても僕は関わらないからね」

魔女「あらぁ? 大の大人が怖がってますの? ほーほほほっ」

商人「そういうわけじゃないよ。危険を冒す必要はないからだ」

女勇者「じゃあその時は商人さんを小船に残して、私たちで幽霊船に?」

商人「……まさか冗談でしょう?」

戦士「いや、流石に戦えん奴一人を残して行動するワケにもいかんよ」

戦士「騎士団のことも人喰いのこともあるし、面子を分散しようや」

魔王「この使えんゴミの為に何故そこまでする必要がある? 足手まといだ」

魔王「くだらん我儘をいつまでもほざくのなら、喜んで魚の餌にしてやるッ」

商人「ううっ」

僧侶「勇者様こそですよ。約束は約束です、この方を無事に故郷へ帰しましょう」

魔王「でもォー!」

僧侶「いいんです。その分しっぽりお礼を弾んで頂けば宜しいのですから!」

魔女「あの女、いつから腹の中黒くなったのよぅ…?」

戦士「は? 元からああでしょ、今さら何を言っとるかね」

エルフ「綺麗な薔薇には棘があるという言葉がある」

戦士「そうそう、それそれー」

僧侶「全部聞こえてますからねっ!!」

戦士「勇者殿、申し訳ないですが幽霊船と遭遇しない場合はこのまま島を目指すっス」

魔王「ああァッ!? 主の余より生ゴミ人間を優先するつもりか!」

戦士「ホント申し訳ないっス! …ただ、船の燃料も有限でして」

魔女「当てもないまま幽霊船を探しまわっていてもジリ貧ですものねぇ。懸命ですわ」

魔王「ダメダメェー! 余が先なのだァーッ! 余ぉ~がさぁーきぃ~!」バタバタ

僧侶「きゃあっ! ゆ、勇者様! あまり船の上で暴れないで…っ」

魔王「だって戦士が余の命令を聞かんのだ!! 僧侶からもよく言ってやれ!!」

僧侶「残念ながら私も戦士さんに一票。勇者様、海で遭難するわけにもいかないのですよ」

僧侶「勇者様だっていつまでも船の上は勘弁願いたいでしょう? このままだとゲロゲロになっちゃいますっ」

魔王「それは……絶対嫌じゃ……」

僧侶「では戦士さんの言う通りにしましょ。大人しくしていたら後でアイス買ってあげますからね」

魔王「よし! 真であるな! 絶対であるぞ! 絶対買えよッ!?」

僧侶「はいはい……」

女勇者「僧侶さんが勇者さんのお母さんみたいだ~」

商人「はぁ、彼女が彼の手綱を握っていないとオチオチ安心できないよ」

戦士「てめぇオラぁーッ!! 勇者殿を猛犬みたいに言うんじゃねーよっ!!」ガシッ

商人「ひぃーっ!?」

魔女「バカ戦士!! 舵! 舵ぃー! ていうか前ぇー!!」

戦士「…………へ?」



どかーんっ!!!

小さな孤島


僧侶「……戦士さん、気をつけてくださいと私言いましたよね」

戦士「うん」

戦士「うわあああぁぁぁーーーっ!!! みんな、申し訳ないっ!!」

魔女「それで済んだら警察いらねぇですわ!! 何が頼りにしろよ!?」

エルフ「戦士くん、不注意すぎたね」

魔王「戦士ィー……貴様、久々にやらかしてくれおったな」

戦士「すんませんっ、すんませんっ! 何度謝っても申し訳つかねーっス!」

女勇者「ダメだ。エンジンが止まったままで動き出しそうにないよっ」

魔女「戦士おらぁーッ!!!」

戦士「うう、うあっ……泣きたい……」

僧侶「泣いて済む問題でもありませんし、後悔してもどうしようもありませんよ。どうか泣かないで」

商人「ど、どうしてくれるんだ…僕たちはこのまま無人島に取り残されるのか!?」

商人「船は今何処も出ていないっ、助けだってこの霧じゃ呼べないっ」

商人「い、い、嫌だぁぁぁ……こんなくだらない事で……」

エルフ「まだ諦めるには早すぎる。船が二度と動かないとは限らないよ」

女勇者「そ、そうだよ~! 頑張って直したらまた…」

商人「この中に船の知識がある奴がいるか? 少なくても僕は何も知らないぜ!?」

商人「知識もない奴が適当にそれをバラして弄ってみろ…動く物も動かなくなっちまう!」

女勇者「でも分からないじゃない! もしかしたら奇跡的に直す事が」

僧侶「可能性としてはなくもありませんが、その確率は絶対的に低いと思います…」

魔王「ではどうしたらよい! 誰かどうにかするのだ! 余は知らんぞ!」

魔女「こっちだって知りませんわ! もうっ」

女勇者「ど、どうしよ……」

戦士「」チョコン

僧侶「…………うーん。皆さん、一旦落ち着きましょう?」

僧侶「お腹も空いてるでしょう。丁度いいですし、ご飯にしましょうか」ニコリ

「え?」

商人「今飯を食っている場合かい!? 冗談にしては笑えないぜ!」

女勇者「そ、そうだよ僧侶さん。別にこんな時じゃなくても…」

僧侶「いいえ、こんな時だからこそです。イラついていても仕方がありませんよ」

魔王「だが悠長に構えていても仕方があるまいッ」

僧侶「勇者様は先程いっぱい戻しましたし、お腹も空いてきたでしょう?」

魔王「……」

僧侶「話しあうのは後でいくらでもできます。さぁ、戦士さん! お仕事です!」

戦士「ええっ、この流れで俺が作るの!?」

僧侶「船を壊した罰ですよ、当然です」

戦士「はい……」

戦士は料理の準備を始めた。

商人「おいおいおいおいーっ!!」

魔女「……何だか、急に疲れがでてきましたわぁ」

仲間たちも地面に腰をおろし、休憩し始めた。

商人「はぁ……どうするんだよぉ……」ガックリ

エルフ「あなたは本当にみんなのお母さんみたい」

僧侶「そうでしょうか? 私もまだまだ至らぬところがありますし」

女勇者「お母さぁ~んって、甘えていい?」

僧侶「却下」

女勇者「ぶーっ……」

魔王「本当はこんな事しておる場合ではないのだ。だのにっ」

魔女「お前もまーだグジグジと言ってる。もういいじゃないの」

魔女「魔剣だって逃げはしないわよ」

魔王「だがこのままいつまで経っても喋らないのは嫌ーッ!!」

魔女「あはっ、何だかんだ言って魔剣のこと気に入ってやがりましたのねぇ…」

戦士「できた。どうぞ皆さんお食べ下さい。そしてすみませんでした」

僧侶「だからもう十分ですって。ご飯も作っていただいたのですから、誰も戦士さんを責めたりしません」

戦士「…本当に?」

女勇者「わぁーい! 戦士さんのでっかいおにぎりだぁー!」

エルフ「とても美味しそうです」

魔王「そこからそこまで、全部余のだからなァ!」

魔女「あー、ちょいとぉっ! 勝手に食べ始めんな!」

僧侶「ね? 誰も責めたりたりしないでしょう?」

戦士「そ、僧侶ちゃあーん……!」

商人「食事ぐらいで調子がいいんじゃあないか?」

商人「……まぁ、でも。僕も船を壊してしまった原因の一つだ。悪い」

商人「よし、謝ったからな! これで後腐れなくご飯食べれるな! へへへっ」

戦士「お前……」

僧侶「さ、私たちもいただきましょう。って、戦士さんが全部作ってくれたものですけどね」

戦士「ああ、盗賊の目に狂いはなかったんだな。アイツ見る目があるぜ」

戦士「でも将来絶対尻に敷かれてるな、うんうん」

僧侶「はい?」

女勇者「うわぁーんっ、勇者さんが全部食べちゃったよぉーっ……」

エルフ「一つもいただけなかったです」

戦士「……また作った方が?」

僧侶「……わ、私もお手伝いしますね」

魔王「ぐふぅ~♪ 余は満腹であるぞ! ゲロった分全て取り戻してくれたわ!」

僧侶「それ以上に食べてましたよっ。貴重な食料をよくもー!」

商人「さてと、お腹も膨らませられた事だし、これからについて考えようじゃないか」

魔女「あんたには余韻というものがありませんの? あと30分、いや1時間待てですわ」

商人「長すぎだっつーの!」

エルフ「この島、見るところそこまで大きくない」

戦士「だよな。本当に人もいなそうだ、ていうか生物一匹すら」

戦士「……マジでこんな島でどうしろってんだ。俺のバカ野郎っ」

女勇者「自分責めるのはそこまでにしようよ。戦士さんはもう悪くないよ」

魔王「いや、戦士が悪いのには変わりなかろうが」

戦士「うっ!」

僧侶「はいはいそこまでですよ。どうしましょうか? 少し島の中を歩いてみます?」

僧侶「とはいっても、10分も掛らず終わりそうですが」

商人「それなら僕は船の調子を見よう。素人目でも、おかしくなった部分は分かるかも知れない」

戦士「なら俺が島を歩いてこよう。残りは何かいい案でも考えておいて」

戦士(といっても、まともに考えられる奴が僧侶ちゃんとエルフしかいないけど)

戦士は仲間たちから離れ、一人島を探索しに動いた。

女勇者「いい案と言われてもこの霧立った海だよ? どうやって港まで知らせれば」

魔女「それを今から考えるんですわ。まぁ、お前には期待しないけど」

女勇者「わ、私だって時々こういう事で役に立ってるでしょ!? バカにしないでっ」

魔女「ばーか!」

女勇者「むきーっ!!」

エルフ「喧嘩はよくないよ。せっかく元気になれたのにここで体力を無駄にするの?」

僧侶「その通りです。大人しく、頭だけ働かせてくださいな」

女勇者「無茶言わないでくださいよぅ」

魔女「結局期待できそうにないじゃない…」

魔王「貴様らァー! 余は今から寝るのだ、騒ぐな猿どもがッ」

僧侶「ちょっと! それは勝手にすぎますっ」

魔王「だって余が船ダメにしたわけでないもん。関係ないもん」

エルフ「でも、力を合わせて行動しなければ脱出できないかもしれない」

女勇者「勇者さんも一緒に何か考えてよー!」

魔女「バカねぇ、勇者に助け求めたって、こいつがいい案だすわけないじゃないの」

魔王「あァん…?」

魔女「ごめんなさいですわ」

魔王「……別に考えなくとも簡単な方法があるではないか」

女勇者「本当に!?」

魔王「船は一隻しかないと最初から決まっておったのか?」

僧侶「それって……」

魔王「そう、幽霊船よ」

魔王「幽霊船がこの島に訪れるのを待って、来たらそれに乗り込めば良いのだ」

「……」

魔王「幽霊船での用も済み、船を使って目的地へも渡れる。ほれ、一石二鳥」

魔女「……あんたねぇ、本気でそれ言ってますの?」

魔王「あん?」

魔女「さっきまで全然遭遇しなかったのに、そう都合良くここに現れるとでも?」

魔女「それこそ奇跡ですわよ。却下」

女勇者「えー、私は結構いいと思ったんだけど」

魔女「バカは無視の流れで構わないですわね」

女勇者「ちょーっ!? バカバカって、年上にしつれいだと思わないの!?」

魔女「あーら、バカにバカと言って何が悪いのかしら? 天才の私がわざわざ言ってあげてるのだから感謝して欲しいぐら
いですわ~♪」

女勇者「このアマぁー!! バカつった方がバカだぁー!!」

魔女「やれやら、お前はバカの二乗ですわねー。ほーほほほっ」

女勇者「もう怒った! 許さん!」

女勇者と魔女は取っ組み合いのケンカをしはじめた。

僧侶の攻撃! 会心の一撃だ!

僧侶「いい加減にしなさい! 何度同じ事を言わせれば済むんです!?」

女勇者・魔女「ううぁ~……」ズキズキ

エルフ「いつもこうなの?」

僧侶「いつもというわけでは…まぁ、仲が良いんでしょうね」

僧侶「とにかく無い物を頼りにする方法は置いといて、勇者様他に案は?」

魔王「知らん! 余にこれ以上頼るなアホ! たまには自分たちでどうにかするのだ」

僧侶「たまにはって……あはは、はぁ」

エルフ「僧侶は大変そうですね」

僧侶「他人事みたいに言わないでくださいよ……」

魔女「……ばかちん」

女勇者「っ~~~!!」

僧侶「こーらっ!! …もう、お二人ともいい歳なんですからお子様みたいな真似しないで」

女勇者「だって、魔女っちが悪いんだよ…」

僧侶「どちらもいけません。五十歩百歩です。ほら、魔女さんも謝らないと」

魔女「私は別に悪い事してませんわ。バカと言わせるような事するあっちが悪いの」

僧侶「はぁ……」

女勇者「違うもん! そっちが悪いんだよ! う、ううっ…魔女っちのばがぁっ」グスン

魔女「バカと言った方がバカなんでしょ? やーい、やーい!」

女勇者「こ、の、や゛ろっ……!」

またも懲りずに取っ組み合いのケンカを(ry

僧侶「」ぷっつん

僧侶の攻撃! 女勇者の手を掴み膝を蹴って体制を崩すと、手を捻った!

女勇者「い゛だだだだだだ、だ、だぁーーーっ!!?」

僧侶「……」

そのまま服の裾へ手を伸ばしがっしり掴むと投げつけ、地面へ女勇者を叩きつけた!

女勇者「がふ…」

魔女「あ、あああ、あわわわわわっ」

がしっ

魔女「ひぃっ!?」

魔女も同じように地面へ叩きつけられてしまった! 追い打ちに胸倉を持ち、さらに叩きつける!

魔女「うげぇ…」

女勇者・魔女「」

二人は茫然として、地面へ寝転がったままになっている。

エルフ「すごい」

僧侶「護身術をシスターから教わった事がありまして。まさか躾けに役立つとは」

僧侶「お二人とも、ケンカはやめましょう。わかったわね?」

女勇者・魔女「……」

僧侶「返事」

女勇者・魔女「は、はい」

戦士「んで、結局遊んでただけで特に何も考えられてないと」

戦士「あーあ、こんなに服汚しちゃってさ」ぱんぱん

女勇者「これは遊んでたわけじゃ……」

商人「僕の方も何にもだよ。バラすにしても、しっかりと工具がなきゃね」

エルフ「素人が解体するのは良くないはずじゃ?」

商人「それもそうだけど、何もしないよりマシだと思ってさ…何もしないより」チラ

魔女「何で私たちの方見るのよ!?」

魔王「戦士の方はどうだったよ。幽霊船は見つかった?」

戦士「いや、それは何ともっス。俺もほぼ収穫なし。薪になりそうなのは見つけたけど」

エルフ「ということは、今日はここでお泊りだ」

戦士「やむをえんしなぁ……とりあえず火だけでも起こそう」

僧侶「煙で誰か気づいてくれたら……気づきませんよね、この霧では」

魔王「貴様らは本当に役に立たんな。正直ここまでとは!」

商人「むっ、じゃあキミは何かできるというのかい? 僕たちじゃ思いつかないような事を」

魔王「たぶん可能だが、簡単に貴様ら助けてもつまらん。もう少し足掻け、足掻け」

僧侶「悠長にしている場合はないのでしょう? 魔剣ちゃんの為でもあるんですよ」

魔王「……ふん! 今回は特別であるぞ!」

魔王「~~~~~~……」

女勇者「また魔法だー!」


魔王「キエエェェェーーーアァッ!!!」


魔王は謎の呪文を唱えた!

「…………」

商人「今ので、何かしたのかい?」

魔王「恐らくなァ」

僧侶「お、恐らくって。どういう意味ですか? 呪文はよく分かりませんでしたが、この状況を打破できるものなんですよ
ね?」

魔王「いや、知らん。余もよく分からんのだ」

僧侶「はい?」

魔王「お、おっかしいであるなァー。絶対何かできると思って唱えたのだがなァー?」

魔女「出鱈目で呪文唱えたってことですの? アホらしっ」

魔王「出鱈目ではないわ! 人喰いどもを払った時のような感覚を思い出してしっかり…」

魔王(余の中の力は未知数。まだ力の使い方を理解できぬ状態で適当に呪文を唱えるのは無駄ということか?)

戦士「……」

エルフ「戦士くん、どうしたの。冷や汗をかいてる」

女勇者「戦士さん?」

戦士「お、俺……ちょっと……お手洗いに……はぁ、はぁ……うっ!?」ギュルギュルピー

僧侶「戦士さん? もしかしてお腹を壊してしまいましたか? だ、大丈夫?」

戦士「は、話しかけるなっ…ああ、神よ……ひー この痛みをなんとかして、畜生ッ!!」

戦士は千鳥足で何処かへ行ってしまった。

魔女「結局何も起きないじゃない。期待して損しましたわ!」

魔王「うーむ、おかしい……」

戦士「……」げっそり

エルフ「大丈夫? まだお腹が痛む?」

戦士「いや、もう大丈夫だから…へ、へへへ……」

魔女「本当に死にそうな顔してましたわよ、戦士」

僧侶「まさかさっきの食事で。でもそしたら私たちだって無事なはずが」

僧侶「もしかして戦士さん、先程単独行動した時に変なものを口にいれたとか?」

戦士「俺がそんな危ない真似するわけねーだろっ!」

女勇者「なんだか災難だね、戦士さん。ファイト! だよ」

戦士「さっき一戦くりひろげてきたばかりだ、くそ……マジでくそ」

魔王「とにかく今日は諦めてもう寝るである。起きていても仕方があるまいよ」

僧侶「いえ、さすがにもう少し話しあいましょうよ…」

魔王「だって貴様らいつになっても進展しないではないか!」

商人「念の為、船から救難信号弾を持ってきたんだけど意味もなさそうだしねぇ」

女勇者「あー!!! ていうか、キメラの翼あるじゃん! それ使えば港に帰れるよ!?」

戦士「おおぉ!! すっかり忘れていたぜ! てなわけで、さっさと頼む!」

商人「……へ? 僕かい?」

僧侶「こんなところまで来て出し惜しみとかはやめてくださいね! さぁ!」

魔女「あー、悩み必要もなかったのねぇ」

商人「あ、あのねぇ……」

商人「僕だってアレば即効使っているさ! ないからこうして困っているんだろう!」

「えっ」

商人「残念だけどキメラの翼はさっきの一枚最後だ。隠し持ってたりもしない」

戦士「う、うそだろぉ……」

商人「僕だって嘘であってほしいね」

商人「ていうか、今の今までそんな事にすら気づかなかったとはな」

商人「なぁ、キミらって物事を難しい方から考えようとする癖があるんじゃない? それでいつもこんがらがってるとか」

「うっ……!?」

商人「彼の言う通り今日はもう休んだ方がよさそうだな」

女勇者「はぁ、もうイカダ作って港まで行くしかないのかなー」

魔女「あー、あー。なーんてナイスアイディアなんでしょー」

戦士「もうみんなで泳いで渡ろうぜ」

僧侶「それ冗談ですよね…?」

エルフ「みんな今日はお疲れ様でした。色々あったよね」

魔女「ありすぎて頭の整理が追いつきませんでしたわぁ。こっちに帰ってきたら大変な事が起きてるし」

女勇者「屋敷で暮らしてた頃には想像もつかなかったでしょ?」

魔女「そりゃそうよ。ていうか誰だってそう。まぁ、退屈せずに済んでるけど」クス

女勇者「笑い事じゃないけど、そうだよね……!」

女勇者「まずさ、こうして勇者さんともちゃんと分かり合えたし良かったよ」

魔王「Zzz~~~……」

女勇者「寝るの早っ!?」

魔女「まるでガキですわね、ガキ。本当に何歳なのかしら」

戦士「勇者殿だって色々あって疲れてるのさ。むしろこの人が一番大変だったろう」

エルフ「どうしてかな」

戦士「どうしてって…そりゃ」チラ

商人「ん?」

戦士「いや、何でもない。(アイツがいる前でそれを話すわけにもいかんだろう)」

僧侶「ふああぁ……私もそろそろ……」

戦士「僧侶ちゃんもお疲れさんだよ。俺は今日あらためてキミのしっかり具合を見させてもらったし」

戦士「これなら、アイツも安心してるだろうよ……」

僧侶「……おやすみなさい」

戦士「さぁ、ここを出る事は明日考えよう。俺もそろそろ―――」


ぶぉおおおおーーーーー


戦士「? 何か今変な音がしなかったか」

女勇者「あ、私も聞こえました。船の汽笛みたいな、亡霊の恨みがこもった声の様な…!」

魔女「あーほ。どっちもありえんですわ。だって船は……」

商人「うわああああぁぁぁぁーーーーっっ!?」

戦士「ど、どうした?」

商人「ううう、うえっ、上! 上上っ!!」

「!?」

戦士たちは商人が指差す上空を見上げた。

そこには、さっきまで存在しなかった巨大な船が浮いていた!

暗黒騎士「大人しく待っていたな。その調子でいろよ」

暗黒騎士「先程船乗りたちに聞けば、やはりこの港で船を借りて陸を離れたらしい」

?「……」

暗黒騎士(相変わらず気味が悪い。一体何を考えているんだコイツ)

暗黒騎士(魔物に改造された事によって、より化物に近づいたわけじゃないだろうな)

『あたいたちがぁ~~~化物? んぷぷっ、散々今まで化物扱いしていたのに、そいつぁ今さらよね』

暗黒騎士「!」

今まで黙りこんでいた白い甲冑に身を包み、麻袋を頭に被されていた騎士が話す。
・・・正確には騎士が手に持った少女の人形が。

暗黒騎士「……化物め。白騎士!!」

メリー『そのくっせぇ口を閉じときな売女ーッ! …あたいはメリーさんよ』

白騎士「……」ガクガク

メリー『あたいらに最高のお仕事をさせてあげたいと思うならさぁ~~~、下手に口出しすんのはやめてよネ』

暗黒騎士「そうだな」

暗黒騎士(伯父上に言われた。俺はただコイツらがする事を見届けていろと)

暗黒騎士(最悪、暴走を起こしたとしても止める術がこちらにはある。心配はないんだ)

メリー『随分な自信があるのねぇ? それともあたいらに何か仕組んだのかしら~~~』

暗黒騎士「こ、こいつ! さっきから」

メリー『あひょひょ~~~wwwwwwwwwwwwwww』

メリー『くそみてぇな脳みそで、きたねぇ考えしてんじゃねぇ~~~。じゃないとウチの白ちゃんがぶち切れるで』

白騎士「……!」モゾモゾ

暗黒騎士「止せ! ダメだ、無関係な人間がまだいるんだ!」

メリー『ならよぉ、わかってるよねぇ? ねぇ~~~?』

暗黒騎士「……」

メリー『ふんッ、物分かりがいいビッチね』

暗黒騎士「相方の黒いのはどうした。姿が見当たらないぞ」

メリー『あの子は既に追跡を始めているわ。くすくすっ』

暗黒騎士「勝手に行動させるな。アイツはお前以上に厄介なんだ!」

暗黒騎士「すぐに追う! 居場所は分かるな!?」

メリー『追う? あの子の後を追うだって? その必要はないかもしれないわ~~~』

メリー『だって、あの子だけで全員処分できるかもなんだし?』


・・・


ざぶん、ざぶんっ!

迫りくる波を掻き分けて、その騎士はひたすら海を泳ぎ進む。
纏う鎧はけして軽めの物ではない。騎士は鎧の重さも気にせずに人間離れした動きでさらにその泳ぎを加速させていった。


黒騎士「ゔぇぁあぁうぅぅううぁぁ~~っ! ぱしへろんだす! ぱしへろんだす!(^p^)」

ここまで。もうすぐこのSS書き始めてから1年が経つらしい
そんなことより、とびだせどうぶつの森が今週出るんだ!うほほーい!

にょろっと空中に浮かぶ巨大船から一本の太綱が垂らされた!


商人「あ、ありえない…こんなの初めてだ、空飛ぶ船だなんて…」

戦士「アレが勇者殿たちが乗った幽霊船?」

僧侶「ええ、前は空を飛ぶものだとは思いもしませんでしたが。こんな冗談みたいな」

僧侶「勇者様! 起きてください! 例の幽霊船が…」

魔王「余は既に起きておる……」

魔王「やはり余の申す通りであった。ようやく現れてくれたな幽霊船よ」

エルフ「どういう原理で空を飛んでいるのかな」

魔女「決まっているじゃない…この世界での摩訶不思議現象はほとんど魔法よ…」

魔女「私は決めましたわ。あの船に乗り込むの。きっと何か手掛かりを得られる」

女勇者「それって、世界樹復活についての?」

魔女「魔法も元を辿れば世界樹を通して扱われるもの。ならこの船を浮かせる術を持つ主なら」

女勇者「おお、そういうことなら善は急げさ! みんな行こうよ!」

戦士「待て待てお嬢さん。罠だとは考えられねぇのか」

戦士「いくらなんでも都合良すぎだ。前に君たちが乗っていたとしてもな」

商人「僕も反対意見派だよ。こんなオカルト染みた船に人がいるわけがない!」

魔王「あァ? 最初から船には人間なんぞおらん。居るのは人喰いが一匹だけよ」

商人「だったらなおさらさ! 誰が化物の巣窟へ喜んで足を延ばすものかっ」

僧侶「でしたら、商人さんは島へ残りますか? ここなら魔物へ襲われることも」

女勇者「怖いなら無理しなくていいんですよ~。これは私たちだけの用事で行くんだから」

商人「バカ言え。僕を一人残して行くのはよせ…こんな所じゃ不安で死にそうだ…」

女勇者「ふふっ、なら決まり! 行こう! 戦士さんも大丈夫だよ、悪い人喰いがいるわけじゃないもん」

戦士「今まで対峙してきた人喰いどもにまともに会話できそうな奴は見なかった。そう簡単には信じられないよ」

戦士「でもぉー! 俺は勇者殿がどーしてもって言うのなら地獄の果てまで着いて行きますよ~!」

魔王「いや別に」

戦士「返事がNOでも俺は着いて行くっス。合鴨のように」

エルフ「戦士くん、強引です」

幽霊船・甲板


エルフ「大きな船。それにこんなに空へ近づいたのは初めて」

女勇者「それはみんな同じだと思うな……」

僧侶「皆さん足元に気をつけて! 所々木が腐っているので注意だけは」

僧侶「ちなみにこれフリじゃないですよ?」

魔女「今の状況で誰が喜んで穴作って足挟もうとするのよぅ」

商人「ぐふっ、酷い臭いだ…僕、ハウスダストアレルギーで埃とか無理なんだよ…」

戦士「はぁ、軟な男ねぇー。別に中の方まで付き添うことはないぜ」

商人「でもみんな進むつもりだろう。一人は勘弁してほしいんだよ」

魔王「貴様はガキかァ? うだうだ文句申して、余をそこまで殺る気にさせたいのか!?」

僧侶「う~ん……でしたらこうしましょうか。私たちの中で二人がこの場に商人さんと共に残る」

女勇者「えぇーっ、バラバラになっちゃうの?」

僧侶「といっても二グループに分かれるだけです。問題はないでしょう。勇者様?」

魔王「余は構わん。残る組がどうなろうと」

僧侶「不安にさせないでくださいっ!! ……あー、もう。では私が残る組へ入ります」

魔女「悪いけど私は中へ進むわ。この船に興味があるし、調べもしたいの」

戦士「俺は勇者殿と一緒がいいかなぁ」

エルフ「戦士くんは少し勇者離れした方がいいと思う」

戦士「いや、好きだからとかじゃなくて、勇者殿の身を近くで守る奴がいなきゃいかんだろ」

女勇者「勇者さん除けばまともに魔物と太刀打ちできそうなの戦士さんぐらいだもんね」

女勇者「で、その次に私! なら私が僧侶さんたちと一緒に残るよ。船の中も気味悪いし」

エルフ「女の子ばかりで大丈夫?」

商人「おいおい、僕まで含める気かい? これでも頼りになる男の子だぜ、僕は」

魔女「その言葉が本当ならお前のさっきの我儘を取り消せ。ですわよ」

商人「自分の安全確保が第一なのだ!」フン

女勇者「全然頼りにならないじゃない~……」

僧侶「では皆さんお気をつけて。勇者様、魔剣ちゃんが直るといいですね」

魔王「まぁ、うん」

エルフ「曖昧な返事だね。本当は直って欲しくないの?」

魔王「直ればあやつまたベラベラくだらぬ事喋るからな」

魔女「あら、話してくれないと寂しいとか言ってたのはどの口かしらねぇ」

戦士「魔剣ちゃんは俺らの唯一の癒しっスよ。うるさいぐらいが丁度いい」

エルフ「癒し系剣ですか」

女勇者「勇者ちゃ~ん! 僕勇者ちゃん大好き~!」

魔王「」ギロ

女勇者「だからちょっとした冗談だってば…」

魔王「貴様なんて船から飛び降りて足折れて海に放り投げられて溺れ死ね」

女勇者「随分具体的な! まぁ、それはそうと気をつけてね。あの人喰いも今回は危害を加えて来ないってこともないかも
ですし」

商人「ほら、やっぱり危険なんじゃないか。行かなくて正解」

戦士「守る奴が減るのはすごく助かるな。あんたは静かに待ってなさいよ」

商人「言われなくともさ。それじゃあ達者で~!」

魔女「ホント調子いい野郎ですわね…! 覚えときなさいよっ」

魔王たちは船の内部へ進んで行った。

女勇者「うわぁ、地面があんなに遠い……頭くらくらしてくるよ……」

僧侶「落ちたら危ないですよ。それにしても以前と変わりない様子ですね」

女勇者「ですよね。まるで時間が止まっていたみたい。いつもこうして空に浮いてたのかな」

商人「いつもって…燃料は? 魔力でも底があるんだぞ」

僧侶「少量の魔力で飛べるのかもしれませんね。供給は頻繁には行わないのかも」

商人「はぁ、理想的な機関だな。……」

女勇者「もしかして怖い? 怖いんだ?」

女勇者「大丈夫だよ! 私もすっごく怖いんだ!」

商人「慰めにもなってないんだが」

商人「君たちが言ってる魔剣って何さ? あの勇者くんの腰にぶら下がってた剣かい?」

女勇者「そうですよ。魔剣さんは喋って何でも切れて超万能!」

僧侶「女勇者さん、あまり他人に話さない方がいいかと」

女勇者「あ、ごめんなさい…!」

商人「それが本当だとしたら、その剣一体何なんだ」

商人「ていうかマジで剣なのか? それ」

女勇者「えっ」

商人「だってよく考えなくてもおかしいぜ。剣が言葉を話すなんてさ」

女勇者「でも魔物だって人間の言葉を話すよ? 同じじゃないの?」

僧侶「魔剣ちゃんは一応剣です。本来無機物が言葉を話すなんてありえない」

女勇者「僧侶さんまでそんな事を~……」

僧侶「何でも切れるというのも不思議な話ですよね。魔法すら断ち切れる」

僧侶「それに加えてまともな人間は触れるだけで精神崩壊を起こされてしまう」

僧侶「全ての朽ちていった人間の無念、苦しみ、痛みを取り込む剣。凄い代物だとか、伝説の武器だで済まされる話では
ないのかもしれませんね」

女勇者「魔剣さんは変じゃないです! 良い子だもん!」

商人「……その剣はどこで? 初めから彼が所有していた?」

僧侶「いえ、とある国の遺跡の中に最初は保管されていまして」

女勇者「そうだったんだ。ずっと勇者さんと一緒だったと思ってたよ」

僧侶「最初の頃の魔剣ちゃんは、本当に勇者様にしか扱えない魔の剣でした」

僧侶「今では大人しくなって私たちが見ても、近くにいても影響がなくなったけれど」

商人「ははぁ、商人魂が燃えてきたよ。どうだい? そんな剣なら高値で買い取る」

僧侶「あなたでは持て余すだけです。それに本当に危険な子ですから」

僧侶「命が惜しいのなら下手に触れない方が賢明かと」

商人「マジで……」

女勇者「もうこんな話止そうよ…魔剣さんが悪者みたいだよ…」

僧侶「別にそんなつもりで話したわけではないのですが、すみません」

僧侶「そうよね、魔剣ちゃんは私たちの魔剣ちゃん。何であろうと仲間に変わりはありません」

女勇者「そうだよ! その通り!」

商人「ちょい待ち。さっき気になる事言ってたよな」

商人「魔剣はまともな人間には扱いこなせないと。なら、あの勇者は?」

商人「確かに彼はまともと形容できた人間じゃあない。そいつは性格の問題なのか?」

僧侶「これ以上は詮索しないでください。関係のない話です」

商人「ここまで話しておいてそれはないんじゃないかな?」

女勇者「勇者さんは勇者だから使えるの!」

商人「なら、同じく勇者の君は?」

女勇者「そ、それはぁ…えっと」

『お゛ぇあぁあええぇうううぅぅぅ~…………ッ!!』

僧侶「……静かにしてください! 今、獣のような声が…」

女勇者「魔物!? まさか人喰い! もしかして船の中でみんなが~っ」

僧侶「いえ、船内ではありません。下から、島から?」

商人「何言ってんだ! 島の中には人っ子一人いなかったじゃないか!」

女勇者「僧侶さんっっ!!」

僧侶「武器を構えてください! 声が近づいてきて――――――」


ぎしぃ!!


「!?」

商人「う、うわぁぁぁー……いる! 何か…何かが綱を昇ってきているぅぅっ!!」


ぎしっ、ぎしぎし、ぎしぃ・・・!


幽霊船から伸ばされた太綱が音を立てて軋んでいる。
急いで女勇者が下を覗くと、黒い鎧を身に付けた男がこちらへ素早い動きで上がってきていた!

女勇者「誰か知らない人が! 鎧着けた人間みたいなのがー!」

僧侶「魔物じゃない!? いえ、そんな事は関係ないっ… 女勇者さんロープを!」

女勇者「今解いてるよぉ! でも中々硬くて」

僧侶「解いている場合ではありません。切り落として!」

女勇者「なら帰りはどうするの~っ!?」

僧侶「今はそれどころでは! どう考えても今昇ってきているのは普通の人間じゃない!」

商人「くそ、コイツを使えーっ!!」

商人は女勇者へ鋼の剣を投げ渡した!
女勇者はそれを手に取ると、綱を切り始めた!

僧侶「急いで!?」

ふたたび昇って来る男を確認すると、こちらへ並々ならぬ殺意を抱いた眼差しを向けている。

女勇者「こ、このロープ硬いの…時間が掛りますっ…」

商人「うわあああぁぁぁ、ダメだ! 僕は悪くない! 僕は悪くないぞぉ!」

男はすぐ傍まで近づき始めている! さらに太綱を掴む手に力が入った!

女勇者「もう少しぃ~~~いいいぃぃぃッッ!!!」

黒騎士「\(゚∀゚\) Ahyahyahyahyahyahyahyahyahyahyaaaaaaaaaa~~~~~~!!」

僧侶「!」

僧侶は女勇者の鋼の鞭を手に取ると、上から男の腕目掛けて打った!
パァンっと乾いた音が響く! 男はダメージこそなかったが、炸裂音に動揺して一瞬動きを止めた。

僧侶「これ以上は抑えられません!! お願いします!!」

女勇者「任されましたぁーっ!!」

女勇者! 会心の一撃!
太綱を見事断ち切った! 綱はずるずると地上へ滑り落ちてゆき、それを掴む鎧の男も下へ!


『――――――――ッアアアァオオオオオオオオオオオォォォォォ~~~~~~~…………!』


商人「やったか!?」

女勇者「ざまぁみろってんだー!!」

僧侶「……?」

女勇者「僧侶さん、あの男は」

僧侶「……わかりません。確かに下へ落としたのに」

僧侶「地上に倒れていません。それどころか姿すらないわ……!」

幽霊船内


エルフ「けほけほ」

戦士「大丈夫かエルフ。無理して着いて来なくとも僧侶ちゃんたちのところで」

エルフ「問題ないよ。少し埃っぽい場所を通っただけだから」

魔王「客を持て成すのなら掃除の一つぐらいしておいて欲しいである」

魔女「ところでお前、迷いなくズンズン進んでるけれど心当たりありますの?」

魔王「余は以前この船へ入ったと申したであろう。船長室を目指すのだ」

エルフ「そこに例の人喰いが?」

魔王「うむ、この船を動かしておるのも恐らくは奴であろうな」

戦士は通路の途中にあった部屋の中を覗いた。

戦士「生活のあとがそのまま残っているぞ。まるで突然人だけパッと消えたみたいだ」

魔女「元々は人間の船だったのに、災難ですわね、魔物如きに奪われるなんて」

魔王「その魔物すら、元は人間であったのだ」

魔女「えっ……」

魔王「人喰いどもばかりではない。魔物とは人間が進化した存在ともいえよう。そうだな?」

エルフ「はい」コクリ

戦士「マジかよ! なら、勇者殿! 俺たちは元人間を殺しまくっていたと!?」

魔王「何も全ての魔物が人間だったわけでもない。一部がそうであっただけ」

魔王「人間とは完成された生物ではない。まだ進化の過程の中におるのだ」

魔女「冗談……。羽根でも生えてくるっていいますの? そんな」

エルフ「魔物とは、人間たちが、自身たちの生活を脅かす生物に対してつけた名称」

エルフ「ただ人間の敵でしかないわけではないよ。彼らだってこの世界に生きている立派な住人」

エルフ「そして、あなたたち魔物が人間へ戦いを挑んだ理由。それは」

魔王「うむ、余たちが゛人゛としてこの世へあり続けられる為であろうな」

魔王「魔物だろうが人間だろうが、自分たちと違う形をした異系の者は気味が悪い」

魔王「互いが互いを世界の異物として、何百何千年と長いこと戦ったわけよ」

魔女「それらを怪物と形容するのはとても簡単。でも認め合えることは絶対になかったのね」

エルフ「どちらも他種族を以下だと見下して考えるから当然なんだろうね」

戦士「差別がヒートアップしたあり様か。ひでぇ話だ」

エルフ「私たちエルフの一族にだって同じ事が当てはまります」

エルフ「だから思えるの。私たちも人間も、そして魔物も。種族で分かり合えることはけしてないって」

戦士「そんな悲しい事言うなよな。一部には認めてもいいと思える奴らだっているんだ」

魔王「ふん、その一部が全てを動かしてくれるのか? 形だけの和解はできようが、結局は差別が根付いたままに違いある
まい?」

戦士「いや、えっと、うーん。そこを何とかしたら勇者殿は本当に勇者になれるっス!」

魔王「余に全部任せると?wwwwww」

魔王「元魔物代表で人間代表の勇者とぶち殺し合いあった魔王の余にかぁー!」

魔王「これ以上余へくだらん期待をかけるなッ! 余は任されて放っておかれるが一番嫌いだ!」

戦士「期待もしたくなる! だから勇者してんだろ! あんたはきっと暇潰しで勇者になったわけじゃない!」

戦士「心ではこのくだらねぇ戦いを終わらせようと思っていたんだ!」

魔王「バカか! 余は余が満足することにしか興味持たん! 第一、戦いは好きじゃ!」

魔王「よいではないか、いつまでも好きに争えばよい。余はそちらを望むぞ」

戦士「ゆ、勇者殿ぉ~……」

魔女「基本的に何言ってもこの勇者はブレませんわよ。そこがコイツのアイデンティティーなんだから」

エルフ「ねぇ、勇者は世界樹を取り戻した後どうするの?」

エルフ「またいない魔王を倒すって題目で意味のない冒険ごっこを続けるの?」

魔王「その時は魔王の代理を立てて、そやつをぶっ殺せばよい! それで終いよ」

エルフ「なら、その後は?」

魔王「あ?」

エルフ「あなたの旅は魔王を倒して終わる。でもあなたはその後どうするの」

魔王「どうするって…」

エルフ「勇者と大衆から認められて人間の中で暮らす? それとも魔物の王へ戻る?」

エルフ「争いを求めるのなら、また魔王に戻るしかないよね」

魔王「むーっ……全く先など考えておらん」

魔女「計画性なしにもほどがありますわよ~…一時楽しければお前はそれでいいの?」

魔王「余のスタンスは今を全力で楽しむである。それはきっと、後にも続くのだ」

魔王「だから不意に起きるトラブルも面倒だが楽しみを見つけ、全力で挑む」

魔王「それが余の旅であり、冒険なのだ!」

魔女「そのわりに何でもかんでも面倒臭がりすぎじゃないの…」

戦士「ゆ、勇者殿! 俺は今猛烈に心震わせられたっス~!」

戦士「その馬鹿なぐらいの前向きさがイイ! 勇者殿こそ最強だぜ!」

魔女「どひゃあー! こっちもこっちで酷い筋肉脳ですわね! 頭沸いてるんじゃないの」

エルフ「勇者、あなたがそう考えているのなら、私はこれ以上何も言及しない」

エルフ「あなたの好きなように生きてください」

魔王「その言い回しは、ようは面倒だからどうでもいいと言いたげだなァ…」

エルフ「そうだよ」

魔王「正直なくそチビめ。だから気に食わんのだ、貴様は」

戦士(勇者殿は富も名声も求めちゃいない)

戦士(この人はただ今を充実させたいだけの、真の冒険者だったんだ……!)

魔王「おぅ、貴様らァー! ようやく目的の部屋へ到着である!」

魔王たちは船長室へ入った。

人喰い「ずっとこの時を待っていた。私はずっと、ずっと」

魔女「むっ、人間……の姿だけれど、中身は違いますわねぇ」

戦士「過去に食った人物の姿を模っているだけか。無駄なことを」

人喰い「無駄などではない。私はできるなら、人間へ帰りたい」

人喰い「この醜い姿は誰にも認められない。だから私の居場所はこの船にあるのだ」

エルフ「向こう側の世界にはあなたの仲間もいたはずです」

人喰い「そうだ。彼らとて私と同類だ。だが、心は既に化物そのもの!」

人喰い「人間へ戻りたい、その強い一心と憧れで私は私を完全に見失わずに済んだのだ」

魔女「あーら、どうかしらね。口先だけなら何とでも言えますわ。油断させてパックリさせるつもりでね」

魔王「くだらぬ言い合いをする為にこの船を求めたわけではない。貴様ら下がっておれ」

魔女「ううん、まだ聞いていないことがありますの」

人喰い「散々酷くさげずんでおいて、質問がある? 大した小娘だな」

魔女「……この船が空に浮く理由を教えなさい。興味があるの」

魔王「船は以前出会った時、浮いていなかったである。この術は最近身に付けたのか?」

戦士「どういう意味スか? それじゃあコイツが魔法で動かしてるみたいな」

人喰い「いいや、元から知っている術さ。そして魔法である事は確かだ」

エルフ「魔法が今使えるわけがない。記憶の媒介であった世界樹は崩壊して消えたの」

人喰い「だそうだな。人間め、愚かな事をしたものだ」

魔女「今話して欲しいのはそれじゃない。何故、お前が魔法を使用できるか。ですわ!」

魔女「答えなさいっ……!」

戦士「そう凄んでやるなよ。俺たちは質問する側なんだ、態度を慎め」

魔女「この魔物もどきに何を遠慮しろって!? ……あっ」

魔女「……」

人喰い「君の気持ちは分からないでもない。だけど、少し悲しいな」

魔女「むぅ、ごめんなさいですわ……」

人喰い「我々、人間も魔物も魔法を使用する場合は力の記憶が必要だ」

人喰い「記憶は世界樹へ魔力を受け渡すことで始めて引き出せる」

人喰い「君らが言う通り、世界樹なき今の世界で魔法使うことは容易ではないだろう」

戦士「それが何であんたが使えるって話だよ」

魔女「……その物言いだと、けして今の状況下で魔法が使えない事はないとでも?」

魔女「何度も色々試しましたわ。でも、結果は何も出ず。思い知らされましたわね、自分の無能さを」

魔王「天才(笑)」

魔女「むっ……。でも本当の天才ならここでどうにかできるものよ、悔しいですわ」

エルフ「あなたが落ち込む事はないよ。みんな同じだもの」

魔女「私のプライドが許さないの」

人喰い「―――魔法とは、本来無能な我々が使える技ではない」

エルフ「神の力、そのもの」

人喰い「そうだ。異能の技である魔法は事実神の力である」

人喰い「だからこそ、我々は神へ神にとって栄養源の一つでもある魔力を捧げ、知識を貸してもらっている。力を振るう
為に」

戦士「あのボインの姉ちゃんがサービスして俺らに魔法の使用許可を与えてたのか」

魔王「ふん、無能な貴様らとは違って余は何もなくとも魔法使えるがなァ」

人喰い「いいや、君自信の中にナニかを媒介に記憶を引き出しているのだろう」

魔王「は?」

人喰い「言ったはずだ、魔法は神の力。魔王だろうが、勇者だろうが、仕様は何も変わらん」

魔女「ていうと、勇者の中には何か得体の知れない物が存在して」

魔女「そこから力を、知識を借りていると言いますの? だから魔法が」

エルフ「または魔法のように見えて、本当は違った力なのかもしれない」

魔女「えぇ?」

エルフ「この人が持つ力の一つ、制約の魔法。実際この力に聞き覚えはないでしょう?」

戦士「あれは魔法じゃなかったってか?」

魔王「バカな! しっかり魔力の消費を感じたである!」

魔王「……しかし、パパ上が申しておったな。制約魔法はパパ上が生み出したと」

人喰い「疑似魔法という技を聞いた覚えが過去にある」

人喰い「魔法同様に体内の魔力を消費し力を放つ。しかし、それは魔法であって魔法ではない」

魔女「はぁ、なら超能力の一つだっていうのかしら? オカルトですわね」

戦士「魔法も随分オカルト寄りかと思いますけどねー」

エルフ「その疑似魔法は私たちにも使えるの?」

人喰い「わからない。私は魔法博士ではないのだ」

人喰い「だが、彼の中には様々な者が根付いている。それらを媒介にして力を使用したことには違いないと私は思う」

魔女「ていうことは、勇者は疑似魔法は扱えるけれど、私たちと同じように本物の魔法は使えない?」

人喰い「世界樹が存在しないのだ。当たり前だろう」

戦士「疑似魔法……もしそれについて知れたら、魔法が使えなくても」

魔女「そんな不確定な物に頼らなくても結構よ。だって」

魔女「この人喰いが今使用している空中浮遊の魔法は疑似でもなんでもない」

魔女「さぁ、話を反らさずに教えなさい。どうやって知識を引き出し、何を媒介に魔法を使用していますの」

人喰い「まず最初に答えておこうか。世界樹ではないことは確かだ」

エルフ「世界樹以外が持つ知識から? 他にそんな代物があったなんて知らなかった」

魔王「ならば、さっさとそれを余たちに寄越せ。貴様には過ぎたおもちゃよ」

人喰い「話は最後まで聞いてほしい。というより、実物を見せた方が早いかな」

人喰いは机へ向かい、引き出しから大きな包みを取り出して見せた。

エルフ「それが、媒介?」

人喰い「媒介でもあり、魔法知識を、世界樹の知識を一部引き継いだ物」

魔女「それに直接魔力を注いで知識を借りたということですの?」

人喰い「そう」

戦士「……どうしてお前がそんな物を持っているんだよ?」

人喰い「元々私の物ではない。コレはただの届け物だったのだ」

人喰い「さらに言えば、元は一つだけではない。二振りで一つの剣」

魔女「剣ですって……? ただの剣に何故そんな機能が備わっているのよっ」

魔女「面白おかしい剣は魔剣だけで十分ですわ!」

人喰い「その面白おかしい剣こそが、この剣と対になる物なのだ!」

魔王「魔剣がだとォー!?」

戦士「魔剣ちゃん兄弟いたのかよっ、すげー!」

魔女「この馬鹿ごりら! そこは問題じゃないでしょうに!」

魔女「そっちの魔剣2号は勇者持つ物とは機能が違うみたいですわね。二つでセットのものなら」

人喰い「こちらの魔剣は本来切った相手から魔力を最大限吸い取り、魔力器官を破壊する剣だ。今はその機能も失われて
いるが」

人喰い「世界樹の知識が入っている件については、私も具体的には知らされていない」

魔王「貴様はよ、魔剣について知り過ぎではないか。やけに詳しすぎるのだ」

魔王「魔剣を届けるのが仕事と申しておったが、何処へ運ぶつもりだった?」

人喰い「砂漠の国へ。この二本を合わせる為に」

戦士「兄弟の剣なのに同じ場所作られなかった? それともその剣が遅れたのか」

人喰い「どちらも作られた場所は異なる。製作時期はほぼ変わらんだろう」

人喰い「こちらの魔剣はこの島から近い和村に住む職人によって」

人喰い「そして彼が持つ魔剣は砂漠の国付近に住む職人によってだ」

エルフ「なぜ別々の人が魔剣を作ったの? それでは兄弟とは言えないと思う」

人喰い「……」

魔女「とにかく、話は別としてその魔剣私たちに譲ってくれないかしら」

魔女「それがあれば今の私たちでも魔法が扱えるのでしょ? 必要なのよ」

人喰い「断る!」

人喰い「むしろだ、私は君たちにその子を返して貰いたい!」

魔女「あんた何言ってますの…っ」

戦士「魔剣ちゃんは俺たちのモンだぜ! 返すも何も、もう勇者殿の所有物だ!」

人喰い「違う! 誰の物でもない! 私は二人を自由にさせたいんだ!」

人喰い「これ以上苦しませてどうする!? 彼らを楽にさせてやってくれ!」

魔王「はぁ、貴様が何をしたいのか余にはよく分からんがー」

魔王「その魔剣は今故障中である。十分休憩はさせてやったから、何とかして元の状態へ直せ」

人喰い「え゛ぇっ…!?」

魔王「ん」

魔王は魔剣を人喰いへ見せた。

魔剣『―――――』

人喰い「……こ、この人でなし!!」

魔王「余は人間じゃないもーん! ばーか!」

エルフ「直せますか?」

人喰い「私は武器職人でも、魔剣の製作者でもない! 知るかぁー!」

人喰い「しかも、なんだこのボロ具合!? 一体全体どう扱えばこうなる!?」

戦士「投げたり?」

魔女「捨てたり?」

魔王「であるな。最後に湯女の攻撃を受けて以来一言も喋らんのだよぅ」

人喰い「どうして優しく使ってあげなかったのだ! この子が憎いか!」

魔王「ウザいの一言!」

人喰い「やはり私に返せ! 貴様なんぞ俗物の手の中にあって堪るものか!」

魔王「黙って直せと申しておるのだァ! グダグダ文句申さんで早くせぃ!」

人喰い「……何度も同じ事を言わせるなっ。私では直せん!」

人喰い「魔剣を作った職人ならば分かるかもしれんが、今はもう生きてはいないだろう」

戦士「その職人って和村にいる? でも魔剣ちゃんを作ったのはそいつじゃないんだろ」

人喰い「腕は確かだ。それこそ天から授かったとでもいうような技術を持つ」

人喰い「だがその職人も数百年前の人間。寿命でとうに死んでいるだろうが」

魔王「ではどうするのだ! 魔剣はこのまま喋らずかァッ!?」

人喰い「そんな事は私が許さん……。職人の子孫でも探してどうにかして貰えばどうだ」

人喰い「他に魔剣を手直せる方法は、知らん……」

魔王「使えぬなぁ! 貴様を尋ねて後悔したぞ! どう落とし前をつける!?」

戦士「ゆ、勇者殿。色々聞けたんだし良い事にしましょうや…」

魔王「ふん!」

エルフ「和村へ向かいたいけれど、私たち行く手段を失ってしまったの」

エルフ「だから、この船でそこまで届けて欲しい。お願いします」

人喰い「……そういう事なら、だが約束しろ。かならず魔剣直せ」

人喰い「そして私に返すんだ」

魔王「貴様も分からん奴よのぅ、魔剣は既に余の物だっての!」

魔王「それに魔剣とて余に持たれる事を望んでおる。貴様も以前その様子を間近で見たであろうが」

人喰い「確かにその子の意思で帰りたいと思ったら、私の元へ来いと言った」

人喰い「だがな、娘を滅茶苦茶に扱われて怒らない親が何処にいる!? これ以上この子たちを……」

魔王「待てェーッ!!!」

魔王「……貴様、今何と申した? 娘と聞こえたがァー!?」

人喰い「魔剣は私の子どもだ! 両方とも! くそっ」

「!?」

戦士「ちょ、ちょっと待ってくれよ。剣だぜ? そんな人間言い方…」

人喰い「この子たちは元は人間だっ。それを私が臆病で愚かだったばかりに」

人喰い「化物へ変え、そしてこのあり様さ! は、はははは…っ」

魔女「人間が、剣に…? そ、そんなバカな…っ!」

戦士「本当の話かも、詳しくも知らないけどよ。てめぇこそが人でなしじゃねーか!」

人喰い「ああ、だからこそ神は私に罰を与え、この醜い姿へ変えたのかもしれないな」

人喰い「あひゃーひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」ケタケタ

「……」

エルフ「とにかく、和村へ向かってもらおう? 魔剣を直してあげなきゃ」

魔女「冗談みたいというか、嫌な話ですわね。今のが事実なら」

戦士「魔剣ちゃん何も言わなかったじゃないか! 昔のことなんて!」

魔王「魔剣自身が自分をわかっていなかったのだ。何者かも」

魔王「人喰いよ、貴様には後で事情を聞かせてもらう。力尽くでもな」

人喰い「聞いてどうなる……お前たちに何がわかるんだ……」

人喰い「返せ、その子を返せ……おいてケ……」

エルフ「様子がおかしい。人喰いの本能が現れ出しているのかも」

戦士「しょせんは他と同じ人喰いだって事かよ。牙を剥いてみろ! へし折る!」

人喰い『ウうう……ぐるるルるルるる……』

エルフ「まだ待ってあげて。少しづつ、収まり始めています」

魔女「随分器用だこと。よほど人間に執着していますのね」

魔王「哀れな人間よ。実に哀れで仕方がない」

人喰い「……村へは送らせてもらう。その子は任せた」

言い終えると、人喰いは船へ魔法をかけて目的地に向けてゆっくり動き出した。

魔女「魔法……! 確かに使えているっ。なら私も!」

魔女は火炎の呪文(弱)を唱えた! 魔剣2号が輝き、魔女の手から火が出た!

魔女「きゃあああぁぁぁ~~~……♪ 見た? 見たわよねぇ! 私魔法が使えましたわ! やっほぉー!」

エルフ「おめでとう」

戦士「本当にもう1つの魔剣があればこの先助かるんだがな。どうも貸してくれそうにもなさそう」

魔王「強引に奪い取る手もあるがなー!」

戦士「ダメっスよ。一応その、親子なんでしょ? 誘拐はマズいっス」

戦士「とりあえず話も済んだし僧侶ちゃんたちの所へ戻りましょうよ。説明も色々あるし」

魔女「でっすわねぇ~♪ ぎゅふふぅ~♪」ピョンピョン

エルフ「魔法が使えてよほど嬉しいだね、凄い喜び方です」

戦士「だろうな。あの子にとって魔法は特別中の特別だろうし」

魔女「にゃはははははぁ~!!」

幽霊船・甲板


魔女「おー! 野郎どもー! 今美少女魔女っ娘ちゃんが帰りましたわよぉ~!」

戦士「そのクドいのどうにか縮められないのかよぅ」

僧侶・女勇者・商人「」ばたばた

残った三人は慌ただしく動き回り、地上を見ている。

エルフ「船が突然動いておどろいたのかな? 大丈夫だよ」

戦士「そうそう。何か和村の方まで送ってもらえるみたいで…」

魔女「ていうかねぇ、ぎゅふふwww魔法が使える術が見つかったのよ~! 喜べ! ですわ!」

僧侶「あ、ああっ! 皆さん! 大変ですよ! 浮かれている場合じゃありませんっ!」

魔王「忙しい奴らよのぅ。何か海に落っことしたのかァ?」

女勇者「違う! 違うんだよ! 敵が……!!」

戦士「何!? 何処にいる!」

商人「だから今僕らで必死に探しているんだろうが!?」

僧侶「一度敵は船へ昇ってこようとしたんです、その時は全員で何とか地上へ落としたんですが」

僧侶「そこから何故か姿が見当たらなくて……恐らく、海の中へ逃げたのではないかと睨んでいるんですが」

商人「あの男……潜っているのだとしたら、化物だぞ。見失ってから30分は経つ!」

魔女「なら魔法でパパッと片しちゃいましょ♪ 楽勝よ~、そんなの」

女勇者「えっ、魔法……?」

戦士「とにかく俺たちも敵を探そう。最悪、村に先回りされているかもしれねぇな」

魔王「ていうか敵って何であるか? 人喰い?」

僧侶「いいえ、人間でした。ですが確実にこちら殺す気です」

魔王「騎士団のバカどもか。予想通り現れるとは期待を裏切らん奴ら~」


ざぶんっ、ざぶんっ、ざぶんっ・・・


「……?」

船の真下から水を大きく掻きわける音が聞こえる。
船の移動速度と並行して何かが下で移動しているようだ。

商人「……何処を見てもみつからない理由がわかった。下だ」

商人「船の下に! アイツが隠れていたんだぁ~~~っ! 僕たちはとんだ間抜けだ!」

戦士「このまま村へ先に行く気か!? 何か武器を…」

女勇者「ちょ、ちょっとアレ!!―――――――――――」


ざぶんっ、ざぶんっ、ざぶんっ!


鎧の男が船影から飛び出し、船を泳ぎ抜いた!
しかし、そのまま直進せずにUターンしてふたたび船へ接近!

魔女「アイツの動きなんですの!? 人の泳ぎとかじゃなくて、あれ……」

魔王「まるでトビウオであるな」

魔王は魔剣を構えて、鎧の男を警戒している。

仲間たちは甲板の上にあった投げられる物を持ちだし、男へ狙いを定めている。
それを臆する事もなく鎧の男はピョンピョンと軽快に水面を跳ねてさらに接近! 勢いが強くなってきた!

エルフ「くる」

男は十分な助走が済んだようだ。距離もバッチリ。次に海面から体を出した瞬間、鎧の男は高く真っ直ぐ跳ねあがってき
た!

狂いなく、正確に船を目指す! すぐに仲間たちは物を投擲して男を落としにかかった!
が! 物は全て男に当たる事はなかった。正確には゛当たったが、当たっていない゛!


僧侶「そんな……物が、体をすり抜けて行った……」

戦士「ウソだろオイ!! み、みんな! 離れろ! 奴が来るーッ!!」

魔王「……この位置か」

鎧の男は間違いなく船の下へ突っ込んだ。だが、衝突した音も、かすかな音すら聞こえてこない。

商人「し、失敗して海にまた落ちたんじゃ」

女勇者「なら海面に落ちた音が聞こえても良いはずだよ! それに何にも見えなかった!」

魔女「……すぐに魔剣2号を借りてきますわ。今が必要な時よ」

魔王「待て、今動くな。それから貴様は大股2、3歩ほどその場から下れ」

魔女「は? 何言って―――――――――」


にゅうぅっ!!


黒騎士「アアバアアアバアギャアアバボボボッボボボボボボォォォオオォォッッッーーー!!!」


鎧の男・黒騎士が音もなく甲板の下から、魔王目掛けて斜め方向から飛び出してきた!
そのまま魔王へ突っ込みに掛る! しかし、魔王は冷静に黒騎士を寸前でぶっ飛ばした!


魔王「あああああああああああァァァァァァーーーーーーッッッ!!!」

黒騎士「ぶじゅっ、ぎゃぶぶぇえ゛ぁ…ッ!!?」ガツンっ!


黒騎士は魔女が退いた方向へ仰け反り飛び、床の中へ透けるように消えた。

魔王「ホームランは逃したな」

僧侶「に、人間が……床をすり抜けた……!?」

商人「ひいいぃぃぃ…神さま僕を守って…」

戦士「あの恰好、騎士! 間違いなかったっス! 敵は王都騎士団の誰かだっ!」

女勇者「あんなの騎士でも出来ない動きだよ! ここまで飛び上がるなんて!」

「あ゛あぁああぁあ゛ぇああぁぅうううううぅぅぅッ、きしゃきしゃあ゛ああぁぁぁああああ゛ッ(^p^)」

「!」

商人「化物だ……!!」

黒騎士は上半身のみを床から出し、兜の下からギラギラと魔王を睨みつけて涎を垂れ流している。
ぶつぶつと呟いている言葉はただの獣のうなりにしか判別がつかない。

女勇者「こ、怖いよ……人間じゃないみたいだ……」

黒騎士「”受け身の地獄と死”を 」

魔王「余の断りなく乗船してくるとは、糞っ垂れ騎士めが」

黒騎士「ばああぁあ゛あぁう、ぱしへろんだす! あ゛ぁーあっ、ぱしへろんだす!(^p^)」

魔王「ふん、魚が食いやすいように細切れにしてくれるわ」



王都騎士団処刑人・黒騎士があらわれた!!

更新遅れてすまなかった。明日投下できそうなら続きあげとく
ついでに先週こっそりvipで書いたssをここに載せてみる。時間あるときにでも、暇潰しに読んでみて



まとめサイトで悪いけど 
↓ 男「しずえさ~ん」しずえ「あんあんっ///」原作あり・エロ注意

http://horahorazoon.blog134.fc2.com/blog-entry-3231.html



領主「う、うう…持って行かないでくれよ、頼むよ…」

盗賊妹「……」

盗賊妹もといタイムマスターは飾られた勇者の剣を取り、刃から柄まで舐めるように眺めている。

領主「その宝剣は叔父の代から受け継がれた家宝そのものなのだ。大切にしてきた」

領主「だから、私からそれを奪わないで欲しい! 金ならある! 頼む!」

盗賊妹「―――チッ」

つまらなそうな顔をして剣を床へ叩きつけてしまった。

領主は剣へ跳びつき、大事そうに抱えて震えている。

領主「ああーっ、わ、私の大切な剣! 傷が入ってしまう!」

盗賊妹「大切な剣、結構。わしに関係のない物なら取りもせんし、壊しもせん」

盗賊妹「じゃがのう人間? 貴様の家宝とやらは何ら価値もない。ただのレプリカじゃよ」

領主「……」ガタガタ

盗賊妹「ふん、それでも手放さぬ気が起きぬか。わしには理解できん」

盗賊妹「突然押し掛けて邪魔をしたな。これ以上中を荒す真似はせんよ」

領主「どうして君はこの剣を求めたのだ…ただの泥棒にしては…」

盗賊妹「必要だから求めたまでじゃ。真の我が主の為に討たねばならん奴がいてな」

盗賊妹「人間、貴様らには全く関係の話じゃよ。理由なら今ので十分」

領主「あ、ああ」

盗賊妹「……ところで~、お手洗いは何処かの? 娘の体が排泄したがってるのじゃ」

トイレ


盗賊妹「ふーっ、これでスッキリしたか。全く我慢が効かん体じゃ」

盗賊妹「安心しろ。わしは小娘の体なんぞに興味は沸かん。しかも人間なんぞの」

盗賊妹「ええい、一々喧しい小娘じゃのう! どうにもせんわ!」

?「人間でも魔物でも歳を取ると段々頭が沸いてきちゃうのは一緒なのね~」

盗賊妹「……乙女のプライベート空間を盗み見しておったのか、貴様は」

賢者「大丈夫よ、私もまだ麗しきピチピチ乙女なんだからサ」

賢者「ていうか中身はジジイのくせにキモすぎ。こっちはあんたの事情全部聞いてるわよ」

盗賊妹「それを知ってわしに絡んでどうする。企みには乗らん」

賢者「ちょっとまだ何も話してないよー? 生き急ぐなよ老いぼれ」

盗賊妹「時間を無駄にするのは時を統べる者として許せん事でなぁ。邪魔をするつもりだというなら殺す」

賢者「あらあら、元気がよろしいおじいちゃまですこと。若い体に入ったから?」

賢者「どっちみちサ~…私もあんたも魔法は使えない。でも普通の体のあんたより特別な私の方が喧嘩したら強いに決ま
ってるよね」

盗賊妹「……」

賢者「お互いにここは穏便に話合いましょーよ。それがベストだしょ」

盗賊妹「貴様と何を話し合えと。どうせ一方的な話だろうに」

賢者「はぁ、私ガキと老いぼれが嫌い。話してて一番ムカつくし殺したくなるっつーか」

賢者「―――場所変えよ? こんな便所で座って話す事ないよ。近くに可愛い喫茶店があんの」

賢者「お茶の一杯は奢るわよ」

盗賊妹「ふん、女狐め」

店員「お待たせしましたぁ~レモンティーが二つになりまぁすぅ~」

盗賊妹「かたじけない」

店員「ぶふっwwwwwwwww」

盗賊妹「え?」

店員「し、失礼しましたぁ~……wwwwwww」

賢者「おじいちゃん面白すぎ」

盗賊妹「……」

賢者「まぁ、遠慮しないで飲みなさいよ。それとも緑茶がよかった?」

盗賊妹「これで構わん」

盗賊妹はティーカップを持って、賢者の手へ中身をかけた!

賢者「あ゛あああっつぅぅぅーーーーーー!!?」

熱々のレモンティーによって賢者の手は真っ赤に火傷してしまった。

しかし、一瞬にして肌の色は戻り腫れも引く。

賢者「何すんのよ、このクソじじいが!!」

盗賊妹「……不死の者め。気味の悪い奴じゃ」

盗賊妹「魔法が使えぬ現状でも、貴様らアンデッドは何故動いていられる?」

賢者「死霊操りの魔法は呪いの類に近いんだよ! 体内の魔力が底尽きさえしなければ効果は持続すんの!」

盗賊妹「ふん、便利な体なことじゃのう」

賢者「そりゃどうも。私としては早く元の人間へ戻りたいわ。気持ち悪いもん」

賢者「私の夢は一生楽して遊んで、綺麗なまま死ぬ。それだから」

盗賊妹「なるほど屑と呼ばれる人間か」

賢者「言ってくれるじゃん? この…腐れが…」

賢者「……話題を戻すわよ――――――」

戦士と女勇者が同時に黒騎士へ攻撃する!
だが、二人の攻撃は黒騎士の体をすり抜けて床へ!

戦士「バカな……!」

女勇者「も、もう一度だよ! 戦士さん!」

女勇者は商人から借りた鋼の剣を戦士へ渡して、鋼の鞭を装備し直す。

もう一度二人の同時攻撃だ!

黒騎士「」すかっ

戦士「同じだ。奴の体に剣が触れる瞬間に、奴の実体がまるでそこに無いかのように」

戦士「鋼の剣が奴を通りぬけてゆくっ……!?」

黒騎士「うぼぉおおおぉおおおおっぉおおおおおおおおぉぉぉ~~~ッッ!!」

黒騎士の攻撃! 動きが止まった戦士の背中を蹴り飛ばした!

戦士「がぶぅっー……!」

僧侶「戦士さん! あ、あなたは船中へ隠れて!」

商人「言われなくてもだよ!!」

魔女「僧侶、私はすぐに魔法の媒介となる魔剣を借りてきますわ。奴に物理的攻撃は意味がなさそう!」

女勇者「魔女っち避けてぇーっ!!」

魔女「!」

黒騎士「   」

黒騎士は戦士から奪った鋼の剣を魔女たちへ向けて投げつけてきた!

即座に魔王が三人の壁となり、鋼の剣を掴み直してその場で一回転、勢いを殺さずにそのまま黒騎士へ剣を投げ返す!

黒騎士「ふん」すかっ

魔王(物理攻撃は効かない。だが、余の一撃目は確かに奴の体へ入った)

魔王(すり抜ける能力は完全な魔法が使えぬ現状では確かに厄介。まぁ、余には問題あるまいがよ!)

魔王「貴様のその謎の力、使用を禁ずるぞォーーーッ!!」


\ そのルールは承認できない 不確定である力は縛れない! /


魔王「バカな!?」

\ 行動にしても不思議な力にしても、それをマスターが明らかに理解していないければ /

\ 制限はできない! それがこの魔法そのもののルールなのだ! /


魔王「厄介な……。何故それを先に説明せんのだ!」

エルフ「でも、敵の力をあなたが理解さえすれば、制約魔法を撃てる」

エルフ「考えるのは私に任せて。勇者はその時まで男を抑えてください」

魔王「チィッ!」

黒騎士は獣が発するに似た咆哮をあげ、女勇者へ襲いかかる!

黒騎士の攻撃!

女勇者『』ブゥン

黒騎士「がうぅーッ?」

女勇者「そっちは私が作り出した身代わりだ。勇者さん、戦士さんの状態が整うまで援護!」

魔王「ゴミクズな貴様が余に命令をする立場かァー!?」

魔王の攻撃!

黒騎士「ふぐぐぐぐ…」

黒騎士は魔王の攻撃を皆と同じ様に受け止めず、回避した。

魔王はそれをしつこく追って魔剣を振るう!

魔王(やはりである)

魔王(魔剣での攻撃は奴に届くのだ。だからこそ奴は魔剣による攻撃のみは回避しようとする)

魔王(最初の一撃が通った事も、これで説明がつく!)

黒騎士「…………」ニタァ

魔王「何が面白い。これから貴様が余に切り刻まれ死ぬ光景を思い浮かべたかッ」

女勇者「戦士さん、立てますか。大丈夫?」

戦士「ああ! だけど、奴のあの力は魔法なのか。見た事がない」

戦士「剣は何処へ? すぐに勇者殿を援護しなければ」

女勇者「剣なら勇者さんが向こうへ投げ……あれ」

魔王の猛攻は続く! しかし、黒騎士はそれを人間離れした運動能力で回避して応える。

だが、それにも限界が近づくのだ。黒騎士は壁まで追い詰められた。

魔王「床だろうと壁だろうと、逃げても壊して貴様を引っ張り出す」

魔王(……思い出した。こやつ何故突然表に出て回避に専念するのだ)

魔王(こやつの力ならば一々余の攻撃に対応せんでも、また何処かへすり抜けて消えてしまえば)

女勇者「勇者さん、罠だよっ!!」

魔王「あ!」

黒騎士「オメェはよぉ~~~……既に俺の術中に嵌まっちまってるんだゼェ~~~ッッ!!」

魔王が立つ床の下から勢いよく鋼の剣が飛び出してきた!

魔王(先程投げた剣を……!)

しかし、魔王は特に避けることもなく剣に貫かれた!

黒騎士「たははははァ~~~!! 自分の予想通りに事が進むと気分がいいよォ~~~!!」

魔王「ふん、余にこの程度の武器が刺さる程度で、倒せると思っておるのかよ」

魔王「予想を裏切らせてもらったなァー!」

魔王「……?」

体へ刺さった鋼の剣は、何故か剣自身が生きているかのように動く。
そしてさらに魔王の中へ突き進んで行く! 剣は魔王の中へ潜り込んでしまった!

戦士「け、剣が一人でに!? 勇者殿、どう考えてもおかしい! 早く引き抜くんだ!」

魔王「既にそうしようとしておるわ! だがっ、剣がもう深くに」

剣は魔王の中へずぶずぶと深く突き進み、完全に姿を消した。


黒騎士「ぱしへろんだす!(^p^)」

魔王「!…………」 ドン ドン ドン ドン


魔王の体内で何かが炸裂した音が聞こえて漏れた。

戦士「ゆ、勇者殿……どうしたんです……何が…?」

魔王「……」ふら、ふら

魔王「      」ブシュウウウゥゥ~

戦士・女勇者「!?」

魔王は体の隅々から血を噴き出し、穴から黒煙をあげてその場に崩れてしまった!

エルフ「爆弾ですっ」

エルフ「今のは剣に似せた大型爆弾。体内へすり抜けさせて、爆破されてしまったっ」

戦士「うおおおおぉぉぉぉっ!!! 勇者殿おぉーーーーーーっ!!?」

魔王「…………」プスプス・・・

黒騎士「正確には……げへ、違うんだゼェ。似せた物じゃあない」

黒騎士「オレァよォ~! お前の剣を、爆発させたんだゼ。鋼の剣をヨォー」

黒騎士「そこの魔王が疑い深い性格じゃあなくて良かった。実に単純でよぉ~~~…」

戦士「貴様ァーッ!!」

黒騎士「如何に外側が頑丈だろうと、どんな生物でも中からは弱ァいもんダ。例え魔物野郎だってもナぁー」

女勇者「まだ、まだ勇者さんの息はあるよ! 生きている!」

女勇者「すぐに僧侶さんたちのところへ! ……ここは私が。エルフちゃん!」

エルフ「はい」

エルフは魔王を引きずって船内へ運んだ。

黒騎士「……」

黒騎士「あぁああ゛んぇあいぇぇええええぇ~……げへ、へへへ」

黒騎士「な、な、な、なんだかよォー、簡単だったゼ。魔王殺してきてって頼まれた時はすっげぇぇぇ心配だったのにヨォー」

黒騎士「ところでグミ食べるぅ~? 歯応えがあるやつ…オレ好きなんだよぉぉぉぉ…」

グチッ、グニュニァニァ、クチャァ

戦士「まだ息があった勇者殿を何もせず見逃したのはどういう魂胆だ」

戦士「俺ら二人を片付けてから向かっても十分間に合うとでも考えてるのか?」

女勇者「……」

黒騎士「ええぇぇええええええ゛ぇ~~~…? よく聞こえませんでしたヨォー? も一度言ってくれなァい? ほら、耳元
で」

女勇者「このイカれ野郎……」

女勇者(今までに会った王都騎士たちとはどこか違う。妙な不快感をあいつから感じる)

女勇者「き、気持ち悪い!!」

女勇者「うわあああああああぁぁぁーーーッ!!」

女勇者の攻撃!

戦士「待て、迂闊に攻撃を仕掛けるんじゃない!」

黒騎士「ゲヘヘァ」

放たれた鋼の鞭を狂いなくその手の中へ捉えた!

そのまま鞭を引いて女勇者を手繰り寄せる!

女勇者「!」

戦士「鞭を手放せ!!」

言われてすぐに鞭を手放すと、鋼の鞭はドンっと音を立てて爆発。跡形もなく無くなってしまった。

女勇者「わ、私の武器が……あいつ!」

戦士「ムキになるな。それでは敵の思う壺だろうが」

戦士(武器に触れただけでそれを爆発物に変えていた。直前まで鞭には細工の一つした動きは見せなかったのに)

戦士「あの力とすり抜ける力、共通するものじゃあないだろうな……」

女勇者「えっ」

戦士「魔法の応用で爆発、すり抜け…何か考えられないか」

女勇者「そもそも魔法は今使えないんだよ! おかしい!」

戦士「冷静に考えるんだよ。俺たちがアイツに殴りかかってもそれは無意味なんだ」

戦士「敵の持つ力の穴を抜けて、そこから奴を崩さなければ」

黒騎士「ごちゃごちゃとヨォ~~~……オレの前で相談なんてして、許されると思ってるのかァー?」

黒騎士「答えはNO! オメェたちには頭使わせる隙すら与えないんだゼェ!? オレはァよォ~~~ッ!!」

女勇者「戦士さん! アイツがまた床の中へ! せ、戦士さんっ!!」

戦士「勇者殿制約魔法で奴の力を封じ込めることはできなかった」

戦士「すり抜けではない。何か、別の……床の中に……もぐる…もぐる?」

女勇者「戦士さんってば! 今は考えてる場合では!」

戦士「すり抜けるという考えが間違っていたんだ! 奴は潜航させていたんだ剣も自分も!」

戦士「俺たちの攻撃……武器を体内へ潜航させて攻撃を回避していた!!」

戦士「伝えなければ――――――」


黒騎士『いぇえ゛えええええぇぇぇぇああああ~~~~~~ッ!!』


戦士「うっ!?」

床の中から現れた黒騎士の片腕。それは戦士の足を掴むと、床の中へ引きずり込んだ!

戦士「うあああああぁぁああっ!!?」ガリガリガリ

黒騎士『この上から海面へダイブするとヨォ! 気持ちいいかも知れんゼェ!』

女勇者「戦士さんっ」

女勇者は戦士の体を掴んで、下へ持って行かれそうな体を抑えた!

戦士「お、俺も…人間もコイツの手に掛れば中へ潜り込ませられるのか!」

戦士「あっつ…!?」

戦士は足元へ視線を落とす! そこには木の床をドロドロに溶かし、中から伸ばされた黒騎士の腕が。

戦士「女勇者ちゃん! 溶けている! 奴の腕が伸びている床が…木が、溶けているぞっ」

女勇者「はっ!」

黒騎士『気がついたからなんだ? 木だけ気がついた……ゲヘヘ!』

戦士(足元が、火の中へ突っ込んだみたいに熱い……!)

戦士「こ、の」

戦士は代えの剣を鞘から抜き、女勇者へ渡した。

戦士「俺の右足をこれで切断してくれ!」

女勇者「バカなこと言わないで!!」

戦士「早くするんだぁーーーっ!! このままでは君も下へ引きずられる!」

戦士「早くッ!!」

女勇者「う、うう…くそおおおぉぉぉーーーっ!!」


ぶしゅううう~~ぅううう!


女勇者は戦士の右足を切った! 戦士は黒騎士の拘束から逃れる!

戦士「あ…」

戦士「ぎゃあ゛ぁああああああああああああああああああぁぁぁっぁあぁ」どく、どく

女勇者「戦士さぁんー!!」

黒騎士『オラすっぽ抜けたァー!! ……あれ、足一本? 何だよォ、チッ』

海面へ戦士の片足が落とされた音が聞こえた。

戦士「はぁはぁ、はぁはぁ……!」

女勇者「しっかり、戦士さん。一旦船内へ逃げよう! この大怪我じゃ無理…」

戦士「うううぅぅうう~~~ぐぁう……」

二人は船内の中へ逃走した。

その姿を黒騎士は床から頭だけを出して、ゆったり眺める。

とても余裕を持った顔をしてグミを一気に頬張りながら。


黒騎士「ん~~~ぐじゅ、くちゃあぬちゃ、ぐちゅぐちゅ。ん~~~!」クチャクチャ

黒騎士「ゲフー!」

黒騎士「このグミ以下の歯応えのなさだゼェー…ちと気が緩みすぎじゃあねぇかァー?」

黒騎士「だが、どっちみちッ!! オレェは全員殺すゼェ~!? そうする事で白ちゃんがご褒美くれるんだヨォ~~
~……」


黒騎士は再び床の中へ溶け込み姿をその場から消した。

続き今日中か明日のうちにはこっそり投下予定

魔女「どうして! 緊急事態なのよ!」

人喰い「お前らの勝手にこれ以上私たちは付き合わん」

人喰い「それに、そこの魔王が息絶えてくれれば安全に魔剣を回収できるのだ」

魔女「直す約束はどうするの。お前は魔物でしょう? 人里に入っていけるわけ」

人喰い「マンイーターは人の姿へ化けられるが? 今もこうして貴様の前で人間を装っているぞ」

魔女「ああ言えばこう言う……もう、わからず屋!」

僧侶「勇者様、しっかり! 商人さん勇者様の服を脱がせて! 早く!」

魔王「  」プスプス

商人「う、うああ」

僧侶「っ~……勇者様、今だけは許してっ」

僧侶は魔王の服を剥いで出血をタオルで抑えた。
しかし、服を脱がされた事で魔物の肌が露わになってしまう。

商人「ひっ!」

商人「人間じゃない…な、何だそれ…」

僧侶「今はそれどころではないわ! あなたは勇者様へ水を」

商人「冗談じゃないぞーッ!! 僕は今まで魔物と一緒にいたのか!! お、お前ら」

がしっ

商人「!」

エルフ「このまま勇者が再起できなければ、私たちは殺される」

エルフ「逃げ場はないの。協力して」

商人「く、くそーっ……!」

魔女「……」

魔女は人喰いの前で頭を下げた。

魔女「お願いよ、今その剣を使えたら状況は変わるの」

魔女「それにこのまま敵を放って置いたらこの船だって、お前だって無事で済むかわかりませんわ」

人喰い「頭を下げつつ脅しをかけるとは、面白い小娘だ」

魔女「っ」

さらに土下座をして見せた。

魔女「貸してっ……! 悪いようにはしないっ……!」

人喰い「いい加減頭を上げたまえ」

人喰い「何をしようと私の気は変わらない。諦めて他の手段で奴を船から追い出せ」

魔女「こうなったら力尽くでも!!」

エルフ「彼まで敵に回す必要はないよ」

魔女「でも、魔法さえ使えれば」

僧侶「勇者様、勇者様私の声が聞こえますか! 起きられますか!」

魔王「げほ! おえぇ……」

魔王は口から剣の破片を血とともに吐き出す。
破片には血がこびり付き、黒々しい。

商人「これは僕の鋼の剣じゃないか。何故彼の体の中から」

エルフ「敵が剣を勇者の中へ入れて爆発させたの。原理は分からない」

エルフ「あなたの剣は爆発する仕掛けがついていた?」

商人「まさか。そんな危険な物を僕が持つわけない……確かにただの剣だ」

魔女「爆発魔法の応用かもしれない。だけど、体を透けさせる魔法なんてものは」

魔女「いえ、その前に魔法じゃなかったら……」

がちゃり!

女勇者「みんな助けて!! 戦士さんがっ…」

戦士「……」どくどく

戦士は切断した足の根元から血を大量に吐き出し、顔色が明らかに悪くなっていた。

僧侶「敵に足を!?」

女勇者「ううん、私が……」

僧侶「えっ?」

戦士「いい、俺が頼んだんだよ…わ、悪いけど少し横に…」

魔女「……完全に最悪の状況ですわね」

魔女「あの黒い鎧の男はどうしましたの? 撃退はできた?」

女勇者「まだ、船の中にいる」

商人「終わりだ……。なんだよ、君ら強いんじゃないのかよ」

商人「うわあああああああぁぁぁぁぁーーー!!!」

女勇者「終わりじゃないよ。私は戦えるもの」

エルフ「あなた一人で相手をするのは難しい」

女勇者「それでも私の盗賊師匠なら、同じ事する筈だ」

魔女「あんたは盗賊じゃないのよ! 無茶しないで!」

戦士「ぐぐぁあ゛あああああああああああああああああぁぁぁぁぁーーー!?」

僧侶「お願い、動かないで戦士さん! 止血前に消毒をしなければ」

戦士「はぁはぁ、はぁはぁ……あああ、あああああぁぁぁぁっ!!!」

僧侶「戦士さんっ!」ガシッ

魔女「……」

女勇者「アイツを放っておくわけにもいかないよ。このままだといつかこの部屋に辿り着く」

女勇者「私が食い止めなきゃ」

魔女「そ。好きになさいよ~」

魔女「だけど、脳筋女一人にいい恰好されるのは癪ですわ。腹立つ」

魔女「ここは私もカッコいいとこ見せないとねぇ」

女勇者「こんな時にバカ言わないでよ!」

魔女「あーら、バカと言った方がバカなのよ。ご存知かしらー?」

女勇者「本気で着いてくるつもりなの? 下手した死んじゃうよ」

女勇者「勇者さんや戦士さんみたいになっちゃう!!」

魔女「……ふん、バカも承知千万。行きますわよ」

魔女は部屋を出て行った。慌てて女勇者もそれに続く。

商人「何故彼女たちを誰も止めなかったんだ」

商人「大の男をここまでした相手だぞ。むざむざと殺されに行くだけだぜ!?」

僧侶「彼女たちの意思を尊重しました。あの子たちはいざという時は強い」

商人「だからなんだ! この状況に酔ってるのか! 壊れたか!?」

僧侶「彼女たちが時間を稼いでくれれば、戦士さんは無理でも勇者様なら動けるようになるかもしれない」

商人「そ、その為の犠牲だって言いたいのかよ」

僧侶「犠牲なんて私がいつ言いました。あの子たちは負けません」

僧侶「信じているからと言えば、その言葉は今とても薄く感じてしまうかもしれない」

僧侶「ですが、私はあの子たちを信頼している。信じる者は救われる、ですよ」

商人「あ、ああ、うそ……なんて女だ……」

エルフ「希望を捨てた瞬間から負けは決まってしまう」

エルフ「ならば、早くから後ろを向くより、前だけを見ていた方がいいと思う」

僧侶「ここからしばらくは゛女の戦い゛ですよ、商人さん!」

商人(ひー、こいつらブっ飛んでる……)

魔女「……」ズカズカズカ

女勇者「ちょ、ちょっと! 強気で前に出すぎだよ!」

魔女「お前こそ何をそんなにビクビクしてますの。いつものキチガイ染みた明るさはどこに行ったのよぅ?」

女勇者「キチガイーっ……!?」

女勇者「私そんなじゃないもん! おかしくないもん!」

魔女「たまには自分を客観視してみる事をお勧めしますわ~!」

女勇者「魔女っちだって性格壊れてるよ! 自分を棚に上げて話さないで!」

魔女「ほーほほほっ 私はそれで良いのよぉ。お前は棚の下、私は上」

女勇者「このっ! くそアマぁー!」

魔女「つまらん会話はこれぐらいにしておきましょ。武器を」ピタ

女勇者「う、うん……!」

女勇者は船の中にあった槍の一本を魔女へ渡し、自身は手斧を持つ。

魔女「槍重たいーっ!?」

女勇者「ふふーん。その程度で根を上げてちゃまだまだね~♪ それで?」

魔女「近くで敵の魔力反応を探知しましたわ」

魔女「壁の中か、床の下か。はたまた天井か。既に船内へ入り込んだ事は違いないみたいね」

女勇者「分かってると思うけど、あの騎士に物理攻撃は通らない」

魔女「ええ、だから命一杯引っ掻き回してやるのよ。時間を稼ぐためにも」

女勇者「よし」

女勇者(魔女っち、平然を保ってる感じだけど声が震えてる)

女勇者(不安なんだ。魔法無しで敵と戦うことも、殺されちゃうかも知れないことも)

ぎゅっ

魔女「きゃあぁ!? 手掴むなですわよ! うっとおしい!」

女勇者「いいじゃんいいじゃん。ちょっとしたデート気分~♪」

魔女「っー……///」

魔女「この辺り。一度、ここで廊下へ出た痕跡がありますわね」

魔女「そして向こうの……食堂かしら? そっちへ」

女勇者「その後は?」

魔女「魔力の痕跡は食堂で途切れてますわ。まだ潜伏している可能性があるかも」

女勇者「罠かもしれない。勇者さんを倒したみたいに爆弾が床の中に」

女勇者「それだけじゃないし、不安要素しか見当たらないよ」

魔女「なら、あの部屋は避けて通ってみる? 罠と分かっていて突っ込むのもできれば勘弁願いたいところよ」

女勇者(どうする。師匠ならこんな時はどう考える)


~~~

女勇者「あー、師匠! 向こうにピカピカ光った宝箱が!」

盗賊「落ち着け! ……てめぇ、アレがもし開けた瞬間爆発するような罠だったらどうしたんだぜ」

盗賊「与えられた物、目に着いた物、全てを疑え。信じて馬鹿を見るのはてめぇだ」

女勇者「じゃ、じゃあ師匠。あの宝箱は目に見えて怪しいからスルーですね」

盗賊「いや、時には冒険も必要だぜ! 男の子にゃ大切な気持ちなんだよ!」ガバッ

どかーんっ!

女勇者「し、師匠ーっ!!」

~~~


女勇者「……時には冒険も必要だぜ」

魔女「え? 今何か喋ったかしら? 小声で聴き辛かったですわよ」

女勇者「魔女っちー!!」ぎゅっ

魔女「ひぇっ!?」

女勇者「場合によっては罠と明らかに分かっていても、跳び込まなければならない時があるの」

魔女「今がその時だと……?」

女勇者「いえす!」

魔女「冗談でしょ馬鹿女。早くも死にたいのかしら? 死ぬなら一人で勝手になさいよ」

女勇者「大丈夫だよ」

女勇者「冒険だよ、魔女っち隊員くん」

魔女「はぁ~~~……」

食堂


魔女「やだ、ここ……臭いし鼠とかキモいの出そう」

女勇者「前に見た時はそんなの一匹もいなかったから大丈夫。骸骨はあったけど」

魔女「あら、そうなの? なら安心ですわね」

女勇者「魔女っちにとっては骸骨より鼠なのね…」

女勇者「でも、今は鼠よりあの黒騎士の方が怖いよ。私の死角側はそっちでカバーして」

魔女「既にそんなのしてますわよ。お前こそお喋りに夢中になって注意散漫にならないように」

女勇者「へいへい、分かってますよ。……ねぇ、アレ」

魔女「え?」

女勇者が指差す場所にぐちゃぐちゃになった肉があった。

魔女「生肉ですわね。ここの食糧の一つじゃないかしら」

女勇者「おかしいよ。船の中はこんなに寂れてボロボロなのに真新しい肉があるなんて」

女勇者「前に来たときだって食べ物一つ見当たらなかったんだ」

魔女「なら、あの肉は……」

『そォいつヨォ~~~……お嬢ちゃんたちの″未来″だゼ』

「!」

『あの肉塊のように、お前たちはオォレェにぐちゃぐちゃに解体されチまう』

『そしてその″未来″へ向けての行動は既に行われているゥ~~~ッッッ!!』

女勇者「敵は何処に!」

魔女「魔力痕跡が、動きまわっている! 気をつけて! やっぱり奴は!」


びゅんっ!


壁の中から二人目掛けて石が飛んでくる!
女勇者は魔女を抱えて床へ伏せてそれを回避。石は先の壁へ当たり爆発を起こした!

石に続いて様々な物が壁から飛び出てくる!

女勇者「っ!」

女勇者は斧を盾にして、射出されてきた瓶の爆発から魔女を庇った!
すぐに魔女はテーブルの一つを蹴り倒して、女勇者とともに陰へ身を隠す!

ドン! ドンドン! ドドン!

魔女「何が冒険よ。結果は見えていたわ!!」

女勇者「ぐっ……!」

女勇者「魔女っちごめん! 私、武器が!」

魔女「武器はそのへんの物で代用できる! どっちみち奴に対して武器での攻撃は」

黒騎士「そうッ! 無意味に等しいンだヨォ~~~~~~!!」

背筋にゾゾっと悪寒が走る!

二人はテーブルの裏から転げるように飛び出し、カウンターの裏へ!

黒騎士「臓物ヲォォォよぉぉぉーーーッ!! ぶちまけて派手に死ねッ!!」

先程隠れていたテーブルを爆破させて姿を現す黒騎士。
その手には既に彼女たちを木っ端微塵にする為の包丁に果物ナイフの数々が握られている。

一気に構えた刃物を隠れたカウンターへ投げ刺し、爆発!


ドンドンドンドンドンッ ドン


女勇者・魔女「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」


黒騎士「エヒィ」ニヤリ

爆発と悲鳴が上がるのを満面の笑みで観察し、死体の確認へのろのろと向かう黒騎士。
しかし、裏には何もなかった。ただ爆炎によって黒く焦がされたキッチンの姿のみ。

黒騎士「う゛ぉあおあああぉぉぉー…。あ、あ゛ぁあああぁぁあー…?」

必死に死体探しに躍起になった黒騎士。それを背後から突如槍が襲った!
結果は知れた事、槍は黒騎士の体をすり抜けて煤けたカウンターへ刺さったのみ。

女勇者「ダメか! 不意打ちなら通るかもと思ったのに……!」

黒騎士「コォのガキ!! ぶっ飛ばしてやル!!」

反撃に拳を振り下ろそうとするが、そこへ魔女が女勇者目掛けてタックルをかまして、拳は空を切った。

魔女「はぁはぁ、はぁはぁ……!!」

女勇者「な、ないすかばー……」

黒騎士「(^p^)……」

黒騎士(女ァ、お、お、オレェは! 確かにあいつらがここへ隠れたのを見たァ!)

黒騎士(だがいつのまにヴォレの背後に……。いや、待て)

黒騎士(あの乳がデケェ娘はさっき戦ったときよォ~~~…身代わり?を作った覚えがあるゼェ)

女勇者・魔女「……」

二人と黒騎士の距離は非常に近い。攻撃も逃げるも、行動を起こすのなら今しかない。

魔女「奴は」

女勇者「え!?」

魔女「奴はさっき、あんたを殴ろうとしてきた。確実にね」

魔女「もちろん爆発を自分の前で起こそうとする馬鹿はいないですわ」

女勇者「あの、何が言いたいのか」

魔女「…敵が直接攻撃してくる時が反撃のチャンスかも。奴が体の実体を持っている瞬間なら」

女勇者「物理攻撃が通るかも知れない。絶対ではないかもしれないけれど」

黒騎士「ぱしへろんだす(^p^)」

女勇者「賭けるよ! もっとも、あいつがそんな事してくるか分からないけど」

魔女「さっきのようにお前が作り出した身代わりを使えばもしかしたら」

魔女「…今だけは私が囮になりますわ。合わせてみせて」

魔女は立ち上がると一気に駆け出し、近くの椅子を手に取ると黒騎士へ殴りかかった。

黒騎士「」がしっ

魔女(わざわざ椅子を掴んで防御した! 実体化しているっ)

魔女「椅子を掴んだ手を!!」

女勇者「くらえぇえーーーっ!!!」

黒騎士「」

槍は黒騎士の篭手を破壊し、中の手を貫いた!

魔剣以外での物理攻撃が初めて通った瞬間だ! だが、黒騎士はそれに驚くこともなく笑う。

黒騎士「げへ、へへへ、あぇへへへへ~~~……なぁ、嬉しい?」

女勇者「はっ! すぐに椅子から手を離して逃げてーっ!」

魔女「!」

女勇者は手にした槍を、魔女は椅子の足を手から離して黒騎士から逃げようとした!

だが、彼女たちの行動は遅かった。黒騎士は椅子を爆発物へ既に変化させている!
椅子が先程のものとは比べものにならない大爆発を起こし、二人は爆風に巻かれ壁へ叩きつけられた!



女勇者「あぐっ……!」

魔女「っ~~~!?」

体のあちこちに木の破片が刺さり、肌は黒く焼け、血が流れる。
壁へ叩きつけられた衝撃で肺からの呼吸が苦しくて仕方がない。

至近距離で爆発を受けた黒騎士の姿を探すと・・・テーブルの上に、上半身が中途半端に吹っ飛んだ男の体が乗っかっているのを見つけた。

魔女「死んでる……? あのバカ、こんな事も予想できなかったの!?」

女勇者「だとしても直前までのあの余裕は一体。う、うう…」

魔女「とにかく僧侶たちの所へ戻りますわよ。ほら、肩へ捕まりなさい…」

女勇者「ありがとう…ちょっと自分の足で立てそうにないから引っ張って」

魔女「手間のかかる子ねぇ…」

女勇者「え、えへへー……」

女勇者「痛い! 痛いっ! も、もう少しゆっくり歩いて…」

魔女「我儘言わないの。この部屋すごく焦げ臭いし、床が崩れるかもしれないんだから」

魔女「辛抱なさい。あの二人に比べれば私とお前は軽傷よ」

女勇者「ちぇー。……二人は大丈夫だよね、戦士さんの足治るよね?」

魔女「あの分だと難しいですわね。よく自分の足を切るだなんて思いきった事ができるものよ」

女勇者「あれ、私が切っちゃったんだよ。だから凄く嫌な気分なの…」

女勇者「このままだと戦士さん見るたびに申し訳なくて」

魔女「別にお前が悪かったわけでもないでしょ。一々気にすんな、ですわ!」

魔女「……それにしても急に生臭い匂いがしますわねぇ。あの死体から臭うのかしら」

女勇者「あ、本当。微かだけど」


どたっ、と突然二人は床へ倒れてしまった。


女勇者「いたぁ~っ……もう、魔女っち足元気をつけて歩いてよー」

魔女「……」

女勇者「ねぇってばー?」

女勇者は魔女の手を肩から退ける。その手は既に力なく、琴切れていた。
彼女の背中には剣が突き刺さっていて、刃は腹を抜けている。

女勇者「えっ……何これ……」

『オメェらがよォ~~~、驚くところをオォレは見たくてよぉ』

『滅茶苦茶大サービスしちまったんだゼェ。ゲヘヘ、ゲヘッ』

女勇者「そんなバカなっ……!?」

女勇者「どうしてあなた生きてるの―――――――――」


吹っ飛んだ上半身は綺麗に元通りに生えて、欠損した他の部位も治っている。
そこには完全にぴんぴんとした姿の黒騎士が立っていたのだ。


黒騎士「ちねー(^p^)」


黒騎士の攻撃! 魔女同様に、正確にはおまけして剣を二本女勇者のお腹へ突き刺す!
女勇者は魔女へ覆いかぶさるように崩れ、動きが完全に止まった。

女勇者「……」

黒騎士「ホントはァよォ~~~…テメェのでか乳を堪能してから殺ろうと思ったんだゼェ!?」

黒騎士「だァけどよォゥ、お、おっ、オォレェは紳士だから一撃で綺麗に殺してやったんだゼ」

黒騎士「こ、こ、こ! このままァ! テメェらの死体を弄るのも悪かァねェと思ってヨォ~~~ッ!!!」ビチャビチャ

黒騎士「では、いただきます」ゴクリ

「本番前に前戯はしっかり済ませた?」

黒騎士「いいや、まだ済んでなーイ」


黒騎士「オメェがそれに付き合ってくれるンのかよぉ~~~? えぇえええぇぇ~~~ッ!?」

魔王「こい、キチガイ。黄色い救急車へ死体のまま搬送してくれるぞ……!」


包帯塗れのボロボロ姿で魔王は黒騎士の前に立つ!

魔剣を床に刺して倒れそうな体を支え、もう片方の手に魔剣2号を持ち敵へ刃を向けた!

ここまで。続きは土曜か日曜かにでも

数分前


戦士「う、うう」

エルフ「戦士くんの血が止まらない」

僧侶「勇者様もですが、戦士さんの傷も相当です。……すぐに何とかしないと」

僧侶「魔女さんの話だとあなたの持つその剣は魔法の媒介になるのでしょう? お願いできませんか」

人喰い「何を、と聴きたいのだがね」

僧侶「貸すのが無理だと言うのなら、あなたに回復魔法を頼みたいのです!」

僧侶「事は一刻を争います。以前あなたは魔法が使えましたよね? 復活の魔法を」

僧侶「ならば回復の魔法を使用することも可能では」

人喰い「無論可能だが。何度も同じこと言わせるなよ、私には君たちを治癒してもメリットがなんらない」

商人「彼らが戦闘に復帰できればあの騎士を倒せるかもしれないんだよ! 君だって自分の船をこれ以上荒されるのは不本
意だろう!」

人喰い「船などいつだって修復できるよ。元より幽霊船と呼ばれている、既に船は死んでいるのだ」

僧侶「皮肉なんて今はどうでもいいんです!!」

エルフ「魔法の媒介に使わせてくれるだけで助かるの。直接魔剣へ触れるわけではないから」

人喰い「わからない奴らめ。私の今の役目は船を動かすだけ。それ以上貴様らの言う事なんて聞くもんか!」

人喰い「忘れるなよ……。私はお前たちの味方をしているわけじゃあない。だのに突然助けろなんて虫がいい話だ」

僧侶「そ、それは」

人喰い「もういいだろう。それとも船を下りるか? 海へ降ろしても構わないぞ」

商人「冗談じゃない! ここから泳げってか!? バカな」

僧侶「すみません。魔物から離れていて」

商人「えっ」

僧侶「魔女さんに同じ事を言っておいて申し訳ありませんが、こいつを倒して媒介を手に入れます」

人喰い「ん? 私を倒すのか? 船がどうなっても知らんぞ?」

人喰い「第一、魔法も使えない貴様に私をどうこうする力があるのかよ」

僧侶「っ~……!」

エルフ「ダメ。ただでさえ人喰いの中でここまでコミュニケーションを取れる人もいないのに」

エルフ「殺してしまうには惜し過ぎる。大人しく言う通りにしよう?」

僧侶「言う通りにしていては何も変わりません! 私たちだけでどうあの敵へ対応しろと!」

『僧侶さっきからビビり過ぎィ』

僧侶「へ……?」

魔王「余も、そこの戦士もまだ死んだわけではないのだ。臆するなよ」

僧侶「ああ! 勇者様! 気がついたのですね!」

商人「その傷でよく生きていたもんだよっ! ば、化けもんめ!」

しかし魔王、立ち上がろうとすると足に力が入らず転んでしまう!

商人「そういう下手な演技いらないからさー……」

魔王「ぐぬぬぅぁ……!!」プルプル

エルフ「まだ無理ができる状態ではないみたい。まだ立っては」

魔王「黙れチビ女ッ!! 貴様如きゴミが余の体へ触れるな!」

魔王は壁へ手をついて震える体を無理に起き上がらせた。

人喰い「無様だな。威勢はいいが体はもう着いてこれまい」

魔王「ひーひー……人間如きに余がぁ」ガクガク

僧侶「勇者様、諦めて回復を待ちましょう。それしか」

魔王「余はやれる! まだ元気いっぱい!」

僧侶「元気があるのは分かりましたから……無理は」

人喰い「どのみち、誰かが敵を排除しなければ全員助からないのだろう?」

人喰い「ほら、立って歩いて戦いへ赴けよ。そして死ね!」

魔王「死ぬのは貴様だ屑がァァァーーーッ!!」

魔王は人喰いをぶん殴ってしまった!

商人「ひーっ!?」

人喰い「き、貴様ぁ…何を…」

魔王「僧侶ォーッ! 余はまだこれだけ動けるぞ! 問題あるまいな!」

僧侶「え、そんな無茶な」

僧侶「大体この状態ではまともに戦えません! 今だって腕を振り上げるだけで辛そうだったではないですかっ」

魔王「ピーピー喧しいぞ!」

魔王は机の引き出しから魔剣2号を出し、手に取った。
魔剣と魔剣2号二本を床に刺して体を支えながら部屋を出て行く!

人喰い「我が子があぁぁぁ~~~!!?」

魔王「誰かそこのウザいのを抑えておけ。何、物の数分で戻って来る」

僧侶「そ、その前にあなたへ回復魔法を!」

魔王「いるかァッ!! 余へ回復は不要だと前に答えた筈である」

魔王「ひ、ひーひひひ! ぎゅふ、ふふっ…! 奴を同じ目に、いやそれ以上に苦しめてやるぅ…!」

がちゃり

商人「あ、悪魔のような目をしていたぞ」

エルフ「もう放っておいた方が良さそう。下手にこっちが止めても殺されちゃうよ」

商人「悪魔…魔物だ……。彼は勇者じゃない、魔物なんだ……正真正銘の!」

僧侶「……」

・・・


黒騎士「う゛ぇえええぇぇええええ~~~。せっかく気分良くそこの女をヨォ、楽しめる場面だったのに」

黒騎士「オメェのせいで雰囲気台無しだゼェ!? どう落とし前付けてくレようか…」

魔王「前口上はその言葉だけで十分だろう。ここからは余が貴様の体で楽しむ番よ」

黒騎士「魔王様は男色趣味かよ~~~……へへへ」

魔王「フン、意味不明である」

支えの魔剣を持つ手が震える。力を抜けば倒れてしまいかねないのだ。

一方で敵は傷の修復が完全に済み、ダメージの一つ残っていない。

魔王(あやつ、爛れた皮膚がこの短時間で治癒し終えておる)

魔王(回復魔法か。はたまた……あまり考えたくはないが)

魔王の攻撃! 移動こそスローだが、攻撃速度は通常どおり! 魔剣2号が唸る!
しかし魔剣2号に魔法を破る力はない!

黒騎士「」

黒騎士は素早く2歩下がって攻撃を回避した!

黒騎士(このヤローの回復の早さも以上なモンだゼェーーー)

黒騎士(内部を爆破してぐちょぐちょにシェイクしてやったのにこれダ)

黒騎士(魔王相手に慎重にならざるはえネェ。おまけにその手の魔剣!)

黒騎士(その獲物の前じゃあ俺の″力″も意味がナシ! ……だがよォ)

黒騎士「何故魔剣が二本もあるンだあァ~~~ッ!? 前情報じゃ一本としか聴いてねェんだヨォぅぅぅーーーッッ!!」

魔王「魔剣が恐ろしいか人間? ほらほらァ! 避けねばその腹切り裂くぞッ」

威嚇するように魔剣2号を振り回して黒騎士へじわじわと距離を詰める。
黒騎士も警戒して魔王から離れる。魔王のその動きはそれだけで牽制になっている。

黒騎士「ぐぬぅ…」

魔王(もう一振りの魔剣については確かにこやつも知らぬようだ)

魔王(こっちでの攻撃は当たっても貴様の体をただすり抜けるのみだというのに、必死に避けておるわ!)

魔王(奴の強みは物理攻撃に対しての無敵。しかし、余にはソレを破る魔剣がある)

魔王(上手くこっちの剣で貴様を釣って、隙あらば切り刻むッ! 余の完璧な策ッ!)

魔王「ぐぁはははははっ~~~~!!! ……おえぇ」びちゃ

黒騎士「!」

黒騎士「そりゃそうダよなァ~! 重症患者がァ激しい運動してるんじゃあネェゼッ!!」

黒騎士の攻撃! 魔王のふらついた足を蹴り崩し、さらに鼻の頭へ膝を叩きこむ!

魔王「がぶぶ~っ……」

魔王「」よろよろ

黒騎士「それ見た事かあぁー! オメェのその状態ではオレェには敵わないィ~」

黒騎士「血反吐派手にぶちまけて、逝っちゃってー!(^p^)」

魔王「~~~~~~~~……」

黒騎士「あァ!? 呪文詠唱かァ!? ぐへへへァー!」

魔王「ぐわああああああぁぁぁ、骨まで溶けてくたばれーーーーッ!!」

魔王は炎の呪文を唱えた! しかし、魔法は発動することなく追い打ちをかけてきた黒騎士の攻撃を受けて後方へ仰け反る!

魔王「ぎゃんっ!?」

魔王「はぁ、はぁ……くそぅ!」チラ

魔剣2号は魔法発動の媒介となるのは確か。だが、魔王の魔力器官は既に死んでいる。

いくら正規の魔法呪文を唱えようとその魔法が発動することはけしてない!

黒騎士「どうしィたァ。魔法は誰にも出せねぇ状態なんだぜ、今はヨ」

黒騎士「偶然でも奇跡でも、何か起きてくれるかと信じてたのかァ~~~…えええぇぇぇ~~~ぇ…?」

魔王「うっさいボケぇー!」

魔王「~~~~~~……ッ!!」

黒騎士「フン、何度やろうが結果は同じだと何故学習しない。馬鹿の一つ覚えのように」

黒騎士「頭沸いてんじゃあねぇえかぁあぁ~~~ッッ!!」

突如、黒騎士の体が発火を起こす!

黒騎士「!!」

魔王「油断は隙しか生まぬのだ、頭沸いてんのか貴様ァーッ!! はーはははははッ!!!」

魔王の攻撃! 炎に包まれた黒騎士へ魔剣で傷つける!

魔王(ははぁ、攻撃が入ったッ!)

黒騎士「うぐぅっ…!?」

黒騎士「何でだよぉぉぉ……何で、オレは今あっちぃんだよぉぉぉ……」

黒騎士「お、おぉ、オレにィ! どうして魔法の炎が効いているんだよぉぉぉ~~~ッッ!!?」

黒騎士「くそっ」

傷つけられた肩を手で抑え、壁の中へ跳び込んだ!
追い打ちをかけた魔王の攻撃は壁に遮られて終わる。

魔王(…今、余が放ったのはやはり疑似魔法に近いものなのだろうか)

魔王(そしてその性質が今ハッキリ理解できてきたであるぞ。少々厄介な術である)

魔王「だがッ、今それを深く考え場合ではない! あの男を殺すのが先決じゃ!」

周囲に目を配らせ、黒騎士を探す。ところどころからガンガンと金属が当たる音だけが食堂内へ響く。
天井からは黒炭になった木の欠片がパラパラと落ちる。焦げた匂いは変わらず部屋を漂う。

魔王「この部屋、奴の爆発による被害を受けたのか。前はこんなじゃなかったであるぞ」

魔王(爆発……。敵は何故何ら変哲もない武器を爆弾へ変化させられた?)

魔王(奴も疑似魔法が使えるのならば、爆発魔法の応用だと考えられるが)

魔王(例のすり抜ける術。そして爆弾への変化。この余でさえ扱いに困っている疑似魔法を同時に二つも。奴程度にはた
して使いこなせるだろうか…)

魔王(普通の人間ではない事はもはや分かりきっておる。だが、何か秘密がありそう)

黒騎士が逃げ込んだ壁の部分へ手を当ててみると

魔王「暖かい……」

すぐ隣の部分へ手を触れても、その暖かさはない。黒騎士が潜った部分のみに熱を感じられるのだ。

魔王「やはり奴の潜り込んだココだけがやけに暖かい。徐々に熱も失われつつあるが」

魔王「微かな魔力の痕跡も確かに存在しているぞ。熱……」


『うーらららららららぁ~~~~~~~~~~…………』


魔王「むっ!」

天井から武器が降り注ぐ! 武器は床に当たって爆発するものもあれば、落ちる途中で爆発を起こす物も!

魔王「爆発を起こすにも何らかの条件がある筈!」

『オォレはよォー…身を隠して、テメェを攻撃する事に決めたぜ……』

『目の前に現れてもオレが不利になるだけだもんナァ~…ちくしょー…』

『痛ぇのハよ、勘弁してぇんだヨ……』

魔王「怖気ついたか? 性格の割に下手に動かん奴だなぁ」

『テメェにはこれだけで十分勝てるゼ! オレにはそォの自信がアンだよォ!』

振り続ける爆発する武器! 魔王は魔剣を振るって武器を叩き落とす!
落とされた武器は爆発しない!

魔王「魔剣で切りつけた物は爆発を起こさん。魔法によるものだということが明らかになったな」

魔王「そして! 貴様が何をしてこようが余には無意味なのだ! 雑魚ー!」

魔王は時の砂を使用した!


時間は、黒騎士が壁の中へ逃げる直前まで巻き戻る~~~
~~~

黒騎士「くそっ」

魔王の攻撃! 魔剣でのフルスイングでカウンターまで黒騎士はぶっ飛ぶ!

黒騎士「ぐおあああああぁああああああっっーーーーー!!?」ドヒュー

めぎゃん!

魔王「余の前に現れぬつもりだと申すのなら、強制的に姿を晒させるまでよッ!」

黒騎士「ほ、炎が! おぉ、おお、オォォレを! ゥオレの身を焼いているぅぅぅ~~~ッ!!!」

時間が巻き戻ったことにより、魔王が放った炎は黒騎士へ纏ったまま!
床を転がって鎮火させようも、炎はさらに燃え上がる!

魔王「マヌケめが~!」

黒騎士「ぐぅぅ……!!」

黒騎士(荒い真似しても消えねぇ! い、いつになっても炎が消えねぇ!)

黒騎士「ぐぐああああああああぁぁぁぁーーーッ!?」

魔王の炎は確かに黒騎士を焼いている。ただ、それによって黒騎士の肌が焦がされてはいない。
ひたすら体へ炎が纏わりついているだけなのだ。パニックに陥った黒騎士がそれに気づく事はなかった!

黒騎士「そ、そっ!? そうらぁ! お、オレェはこんな、こんなクソみてぇナ炎に脅える必要はねぇ……!」

黒騎士「体温をッ!! 炎がダメならば、オレェの…体温自身を下げちマえばいいだけだロォがよぉぉぉーーーッ!!」

黒騎士の体温が急激に低下してゆく!

魔王「ほう、そういう事か」

黒騎士「あぇ……ひー!! まだあっちぃゼェ!? 何なんだよチクショー!! 熱が、熱がぁぁぁ あ゛ばばばばああああ
ぁあああぁぁぁあああ…」

魔王「その男が熱変動の疑似魔法を使用する事を禁ずる」


\ ルール承認ッ! 黒騎士は熱変動疑似魔法を使用できない! /


黒騎士「あっ!?」

魔王「墓穴を掘ったな。貴様が間抜けで余は実に助かったのだ!!」

魔王「貴様が先程使っていた疑似魔法は物体の熱を操るものだそうだな!」

魔王「物体の熱を最大限まで底上げ、膨張して爆発。熱膨張って知ってるか?」

魔王「だいぶ原理からは外れているが貴様の魔法の場合だと関係なく爆破できているみたいだなァ…。創作のぶん、魔法
以上に勝手が効いて、自然の法則を無視可能か」

黒騎士「 」

魔王「貴様が床や壁をすり抜けられたのも、やはりそのお陰? 貴様自身の熱を一瞬上げて、固体から液体へ変換」

魔王「部分部分の熱を上げる事もできるの? はぁ、すげー便利であるな」

黒騎士「あ゛ああぁぁあああああああぅぅぅ…(^p^;;)」

魔王「そして今は余が放った炎から逃れようと自身の体温を下げている。何故炎の熱を操作できないかパニくっておる
な、貴様」

魔王「ネタばらしすると、その炎は現実の現象ではないのだ! それこそ余の中に秘められた疑似魔法の一つよ!」ババー
ン!

魔王「教えるのも、貴様の技の解説もここまで。余ってば上出来であろう? むふふっ」

魔王(しかし、並大抵の人間が液体になるほどの熱を受けて何故元の状態へ…ていうか生きていられる?)

魔王は魔剣で杖突きながら、ゆっくり嫌らしく黒騎士へ近づいて行く。

黒騎士は奇声をあげて苦しみながら物陰へのそのそ動いている。

黒騎士「変化ぁ! ね、ねつの…変化がでキねぇぜー…あぁ!?」

魔王「無駄無駄無駄ッ! 余がルールを変更せん限り貴様は疑似魔法を発動できん」

魔王「そしてそれはこれからも一生続く。何故なら、貴様は今ここで死ぬ」

黒騎士「…………う、うぉおおおおおぁああ゛ぁあああぁああああ゛ぁーーーッ!!」

黒騎士の攻撃! 幻の炎に体を蝕われつつも、蹴りを繰り出す!

しかし、魔王のカウンター攻撃が発動!

黒騎士「ふが?」

蹴りを魔剣で受け止め、片方の魔剣2号で足を切り落とす!
さらに二本の魔剣を強く握り構え、黒騎士へ突きのラッシュ!!


魔王「ふんがあああああああああああああぁぁぁぁぁーーーッ!!」

黒騎士「ぎぁやぁあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!!!?」ぶしゅ、ぶしゅうぅぅ


黒騎士の体は肉を抉られ、ハチの巣のように穴塗れと化す!
もはや人間であった原型は既になくなった! ただの細切れの肉塊へ!

黒騎士だった肉を魔王は拾って窓から海へ放った。

魔王「そこに生肉が落ちているが……アレは貴様の未来の姿だったようだな……」

魔王「きゅう」バタリ


黒騎士を撃破した! しかし、限界だった魔王もその場へ倒れてしまった!

今日はここまでで。続き明日いけるかなぁ

木は普通溶けないよな、だよな。その描写も一部手伝ってすげぇ変な事になってるわ


自分で複雑に複雑としていくうちにわけの分からん能力持たせちゃったごめんなさい
演出なんだと割り切って楽しんでもらえれば助かるが、こういうのアウトな人にはすごく申し訳ないよ

熱を操るで無理矢理まとめるなら

分子運動の加速と減速(元の運動量が下限)の操作が能力の本質で
それにより超高エネルギーを一瞬で生み出し
フェーズシフトを起こさせ透過しているように見せているが
実際は別次元に~…ってなんちゃって設定でいいんでないかい?

ただ、文明レベルの低いこのキャラ達だから
熱で溶かしてとかって誤解して言ってるだけとか

エルフ「勇者と戦士くんは重傷。傷が癒えるまでは戦闘に参加は無理」

エルフ「そして」チラ

女勇者「†」魔女「†」

僧侶「……予想していたとはいえ最悪の事態ですね。お二人の死去は私に責任があります」

エルフ「あなただけの責任じゃないよ。止めようとしなかったのは私も」

商人「いくら戦えるとはいえ、10代の女の子を二人も失うだなんて」

商人「辛すぎる! 相手は魔物じゃない人間だったんだよ! ひどい!」

商人「口では何とでも言える。だけど、こんなのって」

人喰い「一先ずはご苦労だったな。障害を上手く退けさせられたのだ。喜べよ」

商人「喜ぶ!? この酷い光景を見てどう喜べばいいのさ、異常者でもあるまいし!」

人喰いは魔王の手から魔剣2号を強引に奪い取った。

人喰い「全く、荒い使い方をしてくれた。元々コレは私の物だ。返して貰うぞ」

僧侶「何度も同じ事を言わせてもらいますが、その剣を」

人喰い「ダメだ。これ以上勝手で使われてたまるものか! この子もそれを望まない!」

僧侶「ですよね……」

エルフ「戦士くんは足をどうにかしなければ、移動もままならない」

エルフ「だけど、勇者なら自然治癒で時間を置けばなんとかなるかも」

僧侶「そうですが勇者様ばかりを頼りにするのも申し訳ない。それに限界だって」

商人「いいじゃないか、どうせそいつは魔物だよ…」

商人「魔物がどうして君らの味方をしているのかも、君らが魔物と行動を共にしているのかもよくわからないが」

商人「魔物は僕たち人間の敵だ。どうなろうと構わないじゃないか?」

エルフ「少なくとも彼は今は敵じゃないです」

商人「僕が知った事かよ。どのみち村へ着けばおさらばさ。危ない旅もここまでだ」

商人「約束通り報酬は弾むさ。じゃあ着いたら教えてくれよ…少し休みたい…」

僧侶「うう……」

エルフ「死者を蘇らせるのは教会という場所で可能だと戦士くんから聞きました」

エルフ「どうかな?」

僧侶「可能です。いえ、可能でした。どうも王都の人々の話ですと教会も残り少ない聖水を出し惜しみしている様子で」

エルフ「教会全体で聖水を一人占めしている状態? そんな、聖水は誰の物でもないのに」

僧侶「死者を蘇らせる聖水は神官たちで清めた物です。権利は向こうが絶対というわけではありませんが…」

僧侶「もしもの時の蓄えでしょうね。一般人がどう頼もうと復活は許可されない」

僧侶「神の教えは、皆に平等だと決まっていたのに……」

人喰い「所詮根元の考えは自分が可愛いということだろう。それにこの状況だ、今各国の重要人物たちを失うわけにもい
かない」

人喰い「教会の動きも妥当だな。その娘たちは諦めるんだ」

僧侶「それだけは絶対に認められません!」

僧侶「この子たちが死ぬなんて早すぎる! 今失うのは惜しいのです!」

人喰い「お前のその勝手で事が上手く通ると思うな」

人喰い「本来、全ての生き物は生まれ、死ぬ。これは世界の理なのだ。どのような死因だろうが、それを受け止めなければな」

人喰い「そもそも、死者を無理矢理蘇らせられるという話がおかしい。私一個人の考えとしてはこの世界に世界樹など不
要」

人喰い「魔法も、聖水も、我々には過ぎた物だったのだ。そう思わんかね?」

エルフ「わからない」

エルフ「でもこのまま世界樹がない世界が続けば、今までの世界のあり方が大きく変わっていくことは想像できる」

僧侶「変わる世界の前に、今は人間、魔物関係なく襲いかかる人喰いが蔓延る世界なのです」

僧侶「このままでは破滅の道を歩むばかりではないでしょうか」

エルフ「うん。人喰いは短期間でその個体数を増加させます。それだけでもとても脅威」

エルフ「この世界で共存できるのならそれも願いたい。だけど、大多数の人喰いは私たちをただの餌としか見ていない」

人喰い「理性そのものが欠如しているからな」

僧侶「ですが、あなたはこうして私たちと会話できるぐらいじゃないですか」

僧侶「まともな人喰いも少なくはないのでは」

人喰い「知るところでは私ぐらいだな。残りのはほとんど死滅しただろう」

僧侶「え?」

人喰い「私も、別に人へ戻る事を固執した為にこうあれているわけではない」

人喰い「その証拠に何度か理性を失ってお前たちへ飛びかかりそうになっているからな」

僧侶たちを振り向いた人喰いは、人間の姿を微かに残し化物へ戻りつつあった。

その開いた口からは涎が溢れている。

僧侶「そんな!」

人喰い「この子のお陰だ」

取り返した魔剣2号を見せた。

人喰い「この子たち魔剣はそもそも我々人喰いの群れを犠牲に作られた剣」

エルフ「だけど、魔剣自体は元は人間だと話を聞いた」

人喰い「そうだ。私の子どもが素体となっている。ようは器というわけだ」

人喰い「器となった時にはこの子たちも既に私同様この化物に!」

僧侶「……それは酷い話ですが、その剣が何故あなたの理性を抑えて?」

人喰い「正直言うとわからない。この子の傍にいると何か安心感のような気持ちが沸いてくるんだ」

人喰い「もしかすれば私個人に対してのみこの力が働いているのかもしれない。我が子だからね……」

人喰い「しかし、この子たちも私を怨んでいるのだろうな。謝っても謝りきれない」

僧侶「そのお話には私たちが立ち入らない方がよさそうですね」

エルフ「僧侶、人喰いは元来から存在した生物じゃないの」

僧侶「いきなり何を」

エルフ「聞いてください」

エルフ「彼らは人間と魔物が生み出してしまった。そして人喰いも元は人間や魔物」

エルフ「魔物は人間が進化した形とも言えます。人喰いは魔物の先へ行く進化の可能性の一つだったのかもしれない」

僧侶「は……?」

エルフ「無理に成長の壁を越えようとした、その弊害に彼らは誕生してしまったの」

人喰い「昔の考えだ。一部の人間や魔物が、進化を繰り返せば我々はいずれ神へ近づく存在へ為り得られると思ってい
た」

人喰い「これは正真正銘、神へ近づこうとした愚か者どもへの神罰か何かなのだろう」

人喰い「だからこそ我々は神の力や奇跡から離れて生きなければならないのだ。神とは火である。あまりに近づけば身を
焦がされるのみ」

僧侶「反宗教的考えというよりは、宗教へ近い考えなのですね」

僧侶「私たちは神へなり上がりたいわけではない。その考えは神の子として実におこがましい」

人喰い「そうだ。子は子らしく、慎ましく、そうでいなければならない」

人喰い「今でこそ私も魔法を頼っているが、今にしっぺ返しを受けるだろう」

エルフ「自分の考えに少し囚われすぎていると思う」

人喰い「何?」

エルフ「戒めることが悪いと言いません。だけど、私たちはもっと自由であっていい」

エルフ「神は束縛する為に力を貸したわけじゃない。私たちへ可能性を見出してほしい」

エルフ「私たちでもっと世界を広げて欲しかったから」

人喰い「それもお前の思想ではないか」

エルフ「違う。あの人から受け売り言葉だよ」

僧侶「あの人……湯女さんですか?」

エルフ「」コクリ

エルフ「誰がどう生きようが私にも誰にも関係はないの」

エルフ「だから好きにしたらいい」

僧侶「今の言葉が本当だとすれば、自由なんですね」

エルフ「そう自由。本当に恐ろしいのは自由がいつか奪われてしまう事だよ」

エルフ「だからこそ、いつだって奪う者から守らなければいけないの」

人喰い「……それが今君たちの行動理由なのかね?」

僧侶「いいえ、違います」

人喰い「えぇ!?」

僧侶「ですが勇者様が仰っていましたよね。行動とは未来を、道を切り開くものだと」

僧侶「その道へ塞がってしまった障害こそが人喰いたち。私たちは人喰いを滅ぼします」

僧侶「そして世界樹を取り戻し、世界のあり方を戻さなければいけない」

僧侶「今の私たちに世界樹は必要不可欠です。今だけは」

人喰い「先を見通しての発言かそれは。馬鹿め、未来と言いつつ何も未来へ向けてはいないではないか」

人喰い「安定を維持しようとばかり、新たな世界を作る為の革命を起こすものかとばかり思っていたのに」

僧侶「ええ、私たちの行動は一歩一歩遅いですから。でも次へ繋いでいけるだけましです」

僧侶「現在の行動の終着は元の世界へ戻す事です。そこから何かをコツコツ始めても遅くはありませんよね」

エルフ「別にいいと思う」

僧侶「一気に欲張らずに行きましょうよ。長い目で見て行きましょ」

僧侶「全てはゆっくりでいいんです。世界の変化はね」

人喰い「ふーん……」

人喰い「長いお喋りになったが、そろそろ目的地へ着く。エルフの少女約束を忘れたとは言わせないぞ」

エルフ「魔剣。わかっています、何とか修理できる人を見つけてくる」

人喰い「絶対だ、絶対。そして私の元へ返せ。いいな」

エルフ「うん」

僧侶「……」

人喰い「そこの女」

僧侶「はい?」

人喰い「私はこれからもお前たちの助けをしようとは思わない」

人喰い「だけど、一つ行動へ賭けてみたくなった」

人喰いは魔剣2号を机に置いて、二人の前へ。

僧侶「よろしいんですか!?」

人喰い「これは私の勝手な行動だ。この子を巻き込んでしまってだがな」

エルフ「あなたはそれを良しとしないはずだった」

人喰い「それは今も変わらない。だから約束してくれないかな?」

人喰い「この子たち魔剣が、いつの日か幸福と感じられる世界を築いてくれる事を」

人喰い「ゆっくりで、ゆっくりでいいんだ。私たちはそれをいつまでも待とう」

僧侶「そんな……」

人喰い「お前がそれを言ったんだ。忘れないぞ」

人喰い「背負ってもらおうか。それが君たちへこの子を貸す代償だ」

エルフ「大き過ぎる」

人喰い「当然だろう。大事な我が子なのだ、どうする?」

僧侶「断るという選択はありません。私は責任を負いましょう」

僧侶「お借りします……!」

僧侶は魔剣2号を貸していただいた! これで魔法が使えるぞ!

人喰い「約束だからな。覚悟して使えよ」

僧侶「魔剣ちゃんとは違って…素手で触れても平気だわ…」

エルフ「機能は既に失われているみたい。媒介程度にはなるけれど」

エルフ「それにしても世界樹の記憶をどこまで引き継いでるのかな」

戦士「 」

戦士へ近づき、時間の呪文を唱えた! しかし、発動しない!

エルフ「だめ。戦士くんの足は戻せそうにないです」

僧侶「……傷なら防げます。今は辛抱してもらいましょう」

エルフは復活の呪文を唱えた! 女勇者と魔女は蘇った!

僧侶は回復の呪文(大)を唱えた! 全員が大幅に回復!


エルフ「ひとまずはこれで何とかなったね」

僧侶「良かった…本当に良かった……。ありがとうございます。あなたのお陰です!」

人喰い「ふん」

僧侶「この剣はお返ししますね」

人喰い「……いや、待てよ。修理できる者を見つけた時に必要になるだろう」

人喰い「もうしばらくは貸す。お前が管理をしておけ」

僧侶「そんな、大丈夫なんですか? もし戦闘が起きたら」

人喰い「だからお前が管理しろと言った。かならずそこの魔王には手を触れさせるなよ!」

人喰い「父としてその男は絶対に認めないぃーッ!!」

僧侶「あ、はぁ……わかりました」

僧侶「エルフさん。皆さんの様子はどうですか?」

エルフ「勇者は疲労が残っていてまだ眠ってる。他は~」

女勇者「うわぁーんっ!! 魔女っち、私たち生きてるよぉっ~~~!」ぎゅっ

魔女「死ぬかと思いましたわぁーっ! あーんっ!」ぎゅっ

\ イキテルッテスバラシー /

僧侶「余計なぐらい元気になってくれましたね!」

戦士「敵は、どうにかできたのか…」

僧侶「はい。戦士さんや皆さんのお陰ですよ」

戦士「いいや! 俺は今回何もできなかったよ、全部勇者殿がやってくれたんだろ」

戦士「ちょっぴり悔しいかも」

エルフ「みんな無事になれたのだから万々歳だよ。喜んで戦士くん」

戦士「にこー」ニコニコ

エルフ「なんだか怖い」

戦士「えー……」

戦士「そうか、媒介の魔剣を貸して貰って俺たちを」

魔女「お前! 私がいくら頼んでも貸してくれなかったじゃないの!」

人喰い「頼まれて貸したわけではない。私が彼女たちへなら貸していいと判断した結果だ」

魔女「はぁ、僧侶め。そのぺったんこでどうやって誘惑しましたのよぅ」

僧侶「魔女さんだけは棺桶の中でもよかったかもしれませんね!!」

僧侶「とにかく皆さんも彼へ感謝してください。私たちだけのお陰ではないのですから」

女勇者「ありがとうございましたぁー!!」

エルフ「改めてお礼を言います」

人喰い「礼を言うぐらいなら金を寄越せ。感謝は気持ちより形の方が嬉しいものだ」

戦士「嫌に現実的な奴だな……。仕方がないから後で勇者殿からサインを貰う許可を」

人喰い「金になる物しかいらない」

戦士「勇者殿のは将来的に価値が出るんだ! もっとも大事にしないなら俺が許さねぇ!」

魔女「あの商人へ払ってもらえばいいじゃないの。助けてやったんだから当然ですわよね?」

女勇者「おっ、なるほどな」

人喰い「やはり我が子を返せ。貴様ら外道どもの元へ置いておけるかっ」

エルフ「約束を自分から無しにするなんて、男らしくありません」

僧侶「ほら、私が管理しますし…お金の足しになんてもしませんから…ね?」

人喰い「うおおおぉぉぉぉっ、親の前で何てことを言い出すのだお前は!」

人喰い「くそ! お前らさっさと船を降りろ!」

魔女「ふん、言われなくともこんなカビ臭いとこ出て行きますわよーだ。べーっ」

仲間たちは船長室を出て行った!

魔王「Zzzーーー…………」スピー

人喰い「なにか大事な忘れ物していないかぁーーー!?」

戦士「ああっ、勇者殿ぉ~~~!!」ガシッ

ぷかぷか・・・ぷかぷか・・・。


波間へ漂う細切れになった肉塊。それへ網が伸ばされ回収される。

暗黒騎士「貴様の相方で間違いないな?」

白騎士「コフーコフー……」

メリー『違いないねぇ。コイツは黒騎士の体サぁ』

暗黒騎士「この男一人で勇者一行を潰せると言ったのはどの口かな、ふふっ」

メリー『ああぁーーーっ!? その喧嘩買ったよぶち殺すで!!』

暗黒騎士(所詮、化物へ堕ちたとはいえ敵わずか。期待した私も馬鹿だったが)

暗黒騎士(このあり様では何度挑もうが結果は見えているな)

暗黒騎士「伯父上、黒騎士の死亡を確認し―――」

メリー『待ちな、クソビッチ』

暗黒騎士「あ゛?」

メリー『黒が死んだと今ほざきやがったように聞こえたが~』

暗黒騎士「…見てわからないのか? それとも相方が死んだ事を受け入れられないか?」

暗黒騎士「くだらない。しかしお前みたいな異常者でも感情的になるがあるんだな」

メリー『ちょっと後ろを見てみなよ、おバカさん』

暗黒騎士「は? ……え!?」


黒騎士「…………ヴォー」ピキピキ


暗黒騎士(ば、馬鹿な! 確かに細切れになって原型も留めていなかったのに!)

暗黒騎士「生きている……!? それに元通りじゃないか!!」

メリー『ふふ~ん! おっバカさぁーん! 目ん玉ついてるんですか? その頭は正常ですか!?』

メリー『きゃああぁぁ~~~!! ここに異常者がいるわぁーんっ! 助けてぇ~!』

暗黒騎士「ぐっ……!!」

黒騎士「迂闊……だったゼェ。オォレは自分の力を過信しすぎてた」

黒騎士「悪い子だァアーーーーーーーッッ!!!」

黒騎士はボートの縁へ頭をガンガン打ちつけて発狂している。

暗黒騎士「よせ! 借り物なんだ!」

黒騎士「うぇぐじぇぐがぎぎぎぎぎぎがぎゃあああああ~~~~~!!!」ガンガン

暗黒騎士「お、おい! この男をやめさせろ! 壊れてしまう!」

メリー『頼み方を学校じゃ習わなかったかい? それじゃあなってないよねぇ』

メリー『……まぁ、いいや。黒ちゃんその程度にしときな。確かにあんたは悪い子だ』

黒騎士「あああぅぅぅー……!」

メリー『だけど、これで学習したよね? 大丈夫サぁ。あんたは次は勝てる』

メリー『黒ちゃんにはご褒美あげないとねぇ。ほーら、チーズだよ』

白騎士は空いた片手で袋の中から一欠けらのチーズを黒騎士の口へ運ぼうとする。
それを黒騎士を顔を横へ向けて嫌がった。

黒騎士「白ちゃあ~~~ん……お、お、お、ゥオレェがそいつを苦手な事は知ってるだろォ~~~……」

黒騎士「甘い物がいいナァ! 俺が好きな甘いのクレ! チョコがイイんだよォ~!」

がしっ

黒騎士「うぇへ?」

黒騎士「んぶぶぶぶっ~~~~~~~!!?」ぐしゃあ

白騎士は嫌がる黒騎士の頭を掴み、甲板へ叩きつけた。
さらに足でぐりぐりとその頭を踏みにじる。

暗黒騎士「お、おい……」

メリー『失敗しておいて何ふざけた事言ってんだぁコラァ~~~ッ!!?』

黒騎士「ん、んん! んーっ……!」グギグギ

メリー『あたしのあげた褒美を受け取れねぇ!? 苦手だあぁ!?』

伸びた黒騎士の体を掴むとボートの縁から上半身を海面へ突っ込んでしまった!

メリー『いやぁああああっはぁぁーーー!! チーズダメなら、好きなだけ海水飲んでおくれよぉ!!』

黒騎士「……」ぶくぶく

暗黒騎士「これ以上やったら死ぬぞ。それぐらいにしておけ…」

白騎士「フーッ、フーッ、フーッ!」

メリー『チッ』

ざぶんっ・・・!


黒騎士「あぁ、はぁ、おぇえっ……!! げぇえええぇええ~~~……」ビチャア

黒騎士「……し、白ちゃあ~~~ん。ごめンよォ。お、お、ゥオレ! チーズ食べルよォ~~~!」

黒騎士は落ちているチーズへ飛びつき、涙を流してそれを食べ始めた。

その様子にメリーさんは満更でもなさそうだ。

メリー『良い子だねぇ~~~、やっぱりうちの黒ちゃんは良い子ちゃんでちゅね~~~。よしよしよし』

白騎士「……コフー」

黒騎士「あ、あへェ、へへへェー……おえ」

メリー『戻さずに全部食べるんだよぉ? まだまだいっぱいあるからねぇ』

暗黒騎士「……」

暗黒騎士(相変わらずわけの分からない奴らだ。不気味すぎる)

暗黒騎士(一秒もコイツら化物と一緒の空間にいたくない。お、叔父上助けて)

メリー『あたしらは、あの魔物の博士とやらに色々体を弄られたんだよ』

暗黒騎士「は?」

メリー『その結果得た力がアンデッド。不死さ』

メリー『とはいえあたしらは完全なアンデッドじゃない。未完全なのサ』

メリー『黒ちゃんの腹の傷をよく見てみな。全体が回復していても傷は微妙に残ったままだ』

暗黒騎士「確かに。しかし、アンデッド。ますます化物へ近づいたな」

メリー『もう否定はしないよ。この体も中々都合が良さそうだしねぇー』

メリー『おら、早く船を動かしな! 勇者どもを逸早く葬りたいんだろう? やってやるからさァ…!』

暗黒騎士「大した自信だな。だが、これから向かう場所は一般人が多い」

暗黒騎士「余計な被害はかならず出すな!! これは俺たち王都騎士団の信頼へ大きく関わる!!」

メリー『そいつは時と場合によりますぅ~~~。ね、白ちゃん』

白騎士「ウボォー」

暗黒騎士「くそがー!!」

女勇者「何だか私たち港の人たちの注目浴びてません? 有名人気分なんだけど」

戦士「そりゃ空に浮く船から降りて来られたら、注目も浴びるさ。俺でも二度見しちゃうね」

商人「はぁ、はぁ」

戦士「おいおい、どうした? もう息があがったのか? 情けないぜー」

商人「君みたいな巨体を肩で持ってるんだ! 息も上がる!」

僧侶「すみません、戦士さん任せちゃって」

エルフ「あなたは勇者背負っていて重くない? 私が代わってもいい」

僧侶「エルフさんが背負ったら潰れちゃいますよ。気を使わなくていいです」

魔女「こんなのさっさと叩き起こせばいいじゃないのよぅ?」

僧侶「勇者様には色々頑張っていただいてますし、このぐらいは」

僧侶「それに結構軽いですしね」

女勇者「勇者さんの体で? 結構筋肉ついてて重そうなんだけど」

魔女「案外中身の方はからっぽだったりして~~~」

戦士「んなバカな、人形じゃあるまいしよ」

戦士「それは置いといて借りた小船はどうする? このままじゃ弁償だよ」

女勇者「商人さんが」

商人「君らにも責任あるだろうがっ!!」

女勇者「ですよねぇ……」

僧侶「謝って済むかはわかりませんが、考えておきましょうね」

エルフ「目的地まではどれぐらい距離があるの?」

女勇者「ここを出て少し歩くよ~。今日は一旦村で休もうよ、夜通しの移動だったから疲れちゃったし」

魔女「私もそれにさんせー。お風呂入りたーい」

女勇者「お客さん、村にはいい温泉があるんですよぉ~」

僧侶「この前は入り損ねてしまいましたもんね。宿のついでにでも」

商人「呑気なもんだねー……ところで話は変わるけど」

商人「僕がそこの勇者が魔物だったと漏らしたどうなるんだい」

「……」

商人「…ふん、曲がりなりにも彼は命の恩人だ。ここは黙っておこう」

戦士「悪いな」

商人「だけどどうして魔物が勇者を? 全く意味が分からないよ」

商人「君たち騙されてるんじゃあないかい?」

魔女「その件はとうの昔に解決しましたわよ。もう済んだ話なの」

魔女「いいじゃない。魔物の勇者がいても。結構面白いわよ」

商人「そういう問題じゃ! はぁ、もういいよ…面倒臭い…」

エルフ「彼に害はきっとないから。信じてあげて」

商人「まったくとんでもない連中に関わっちまった。酷いことばかりだぜ」

女勇者「へへっ、いい経験になったでしょ? 二度とないよこんな事」

僧侶「二度もあっては困っちゃいますね。さ、そろそろ港を出ましょう」

魔王「くかぁ~~~」ジュルリ

戦士「僧侶ちゃんが今スゲェ羨ましい状況なんだよなぁ…ぐす」

僧侶「ご自分の足がどうにかなってから、そういう事を考えましょうね?」

僧侶「添え木…というか歩行の助けになるものを見つけないと」

魔女「どっかぁ~~~ん!!」

魔女は天体魔法を唱えた! 無数に降り注ぐ隕石が人喰いの群れを襲う!

魔女「ふぃ、ほーほほほっ 魔法さえ使えればあんな奴らに脅える必要ないですわー!」

エルフ「魔剣の酷使はしないであげてね。機能が停止した剣なのだから、いつ媒介として使えなくなるかもわからない
の」

僧侶「ですね。せっかくのご好意を無下にして返すわけにもいきませんし」

女勇者「それにしても良かったよね! この剣さえあればまた魔法が使い放題だもん!」

魔女「まさに私に敵なし! そして戦士も脳筋女も出番なし!」

女勇者「私だって魔法使えるし強いもん!」

商人「今の魔法は……」

戦士「隕石落としたのか? 天体魔法ってものらしいぜ。だいぶ上位に位置する魔法なんだっけ」

僧侶「ええ、魔力消費量も膨大ですし、使用できる魔法使いもそうそうはいませんね」

魔女「まさに天才に相応しい魔法よ~! ほーほほほっ!」

商人「僕はその天体魔法とやらを使う魔法使いに一度助けられたことがあるんだ」

商人「今の魔法は彼が放ったものとよく似ていたよ」

僧侶「ではその方も相当の力を持った魔法使いだったのでしょうね」

商人「ああ、それになんと驚く事に、彼は魔物を従えていたんだ……」

魔女「む!」

エルフ「どうかした?」

魔女「いえ、ちょっと……その魔法使いとはその後どうしたの?」

商人「どうもこうも、助けてもらっただけさ。彼はその後砂漠の国へ用があると去って行ったよ」

商人「不思議な魅力がある男だったね。ただ、何となくだけど怖い感じあったんだ」

戦士「砂漠の国……いつかそこで出会った敵の魔法使いも強かったよなぁ」

僧侶「ああ、私たちボコボコにされちゃいましたよねぇ」

商人「僕が知ってるのはこれだけ。ちょっとした思い出話さ。もしかして知り合い?」

魔女「さぁ。もしかしたら、かも。どのみち私には関係ないわ」

和村


女勇者「なんじゃあこりゃあ」

村は滅茶苦茶に荒されていた!

エルフ「おそらく、人喰いたちの仕業じゃないかと」

戦士「酷いありさまだな。村人は無事だろうか」

商人「と、父さん母さん……!」だっ

商人は戦士を放って走りだした!

戦士「うおおっ、ちょっと! いきなり手を離すなぁー!」

女勇者「商人さんのご両親、無事だといいね…」

僧侶「そうですね。それにしてもここまで無惨に荒すだなんて」

魔女「だいぶ村の近くに人喰いの群れがいましたものねぇ。もしかしたら村人は全員食べられちゃってたり」

僧侶「冗談でもそういうは止しましょうよ」

戦士「俺たちはこれからどうする? アイツを追っかけるの?」

女勇者「まずは宿を~」

魔女「こんな状態じゃ期待できるかどうか。温泉も厳しそうね」

僧侶「ですが、どこかで休める場所を探しておかないと。勇者様もまだ寝ていますし」

女勇者「ていうか前みたいに村長が魔物だーってな事にはなってないよね?」

女勇者「あの後はこの村どうなってたのかな」

魔女「どうって、こうなってるじゃない?」

女勇者「そういう事じゃなくてー!」

戦士「よし、俺が少し村を周って……無理か」

エルフ「戦士くんはここに座って待っていて。私たちで周ります」

戦士「うん……」

戦士と寝てる魔王はその辺へ残された。

僧侶「前にあなたが話しましたよね。この村の方々は物騒な事とは無縁な生活を送っていると」

女勇者「言いました。でも、だからってこんなの滅茶苦茶すぎる……」

民家はボロボロの廃屋へ変貌し、畑の作物は食い荒らされ、以前訪れた時とは異常なほど様変わりした村となっていた。

女勇者「戦える人だって少なからずはいたはずだよ、みんな食べられちゃったの?」

魔女「向こうの家の中も酷い状態でしたわ。こりゃ全滅ね」

女勇者「あんまりだよ……うう……」

僧侶「希望を持ちましょう? 皆、どこかへ避難した後かもしれませんよ」

僧侶(それよりこの状態では、魔剣ちゃんの職人探しも無理かもしれない)

僧侶(何か手掛かりの一つでも見つかれば助かるのだけど……ん?)

辺りを見回すと、そこにかつての親方の屋敷が見つかった。

屋敷を取り囲む壁こそ傷塗れとなっているが、比較的に屋敷の外見は荒れていない。

僧侶「あそこは」

エルフ「人の気配を感じる」

女勇者「本当にー!?」

エルフ「行ってみる?」

女勇者「僧侶さん!」

僧侶「ええ、まずは勇者様と戦士さんを連れてきましょう」

親方の屋敷


戦士「確かにこの家だけは踏み入られていない様子だが」

女勇者「でしょ! きっと生き残った人たちがここにいるんだ!」

エルフ「だととてもいいけれど」

魔女「にしても古臭い外見だこと……。生活できるのかしら?」

僧侶「この村は私たちが住む地と違った風習や生活があるんですよ」

僧侶「それが転じて人喰いの侵入を許してしまった感じでもありますが」

僧侶「勇者様、そろそろ起きてくれないかしら…。腕が…」ぷるぷる

一行は屋敷の中へ入ろうと門をくぐ・・・れなかった!

先行した女勇者の鼻が見えない壁に当たってゴンと音を立てる。


女勇者「ふがっ!」

僧侶「え!?」


魔女「何ふざけてるのよ。早く門をくぐりなさいな」

女勇者「痛いぃ~……くぐれないの! 何か見えない壁みたいなのがある!」

戦士「壁って……。魔法の壁か? でも魔法はこの魔剣みたいな特別な媒介がない限りは」

エルフ「使えないはず」

魔女「ちょいと、門だけじゃありませんわ。屋敷を取り囲む壁にも何か見えない物が」

僧侶「全体に? 一体何が」


「騒がしいんでまたあの人喰いどもかと思いきやだよ」


親方「まさか、お前たちを再び見る羽目になるとは……」

僧侶・女勇者「!!」

ここまでっすー


>>402
お、なんだかかっこよさげな能力。いいねいいね! よければ流用させてくれ

エルフ「生存者発見だね。でも、どうして家の周りに障壁を張れてるのかな」

戦士「村の人もこの中へ避難しているのか?」

親方「ああ、全員がいるというわけでもないし、無事だというわけでもないが」

僧侶「……何故あなたがまだこの村に」

女勇者「みんな気をつけてください。コイツは魔物なんだ!」

戦士「魔物?」

魔女「事実だとしたら、人間の姿へ化けているのね」

女勇者「本当の話だよ。この魔物・ヤマタノロチは村の子どもを生贄に出させて食べてたんだから」

女勇者「勇者さんが王都で退治したばかりと思ってたのに! まさか生きてたなんて!」

親方「ふん、そこの魔王の爪が甘かっただけさ。そして私の生命力は伊達じゃない」

親方「その様子だと私の生存を確認して倒しに来たとは思えんな。何の用かね」

僧侶「この村へ立ち寄ったのはあなた目的ではありません。そしてそれを話す必要もない」

僧侶「ですが、また悪事を働いていると分かって見逃すつもりはありませんよ!」

魔女「ほーほ。どうも私の出番のようねぇ。お前たち下がってなさいな」

親方「貴殿らにとって、今私が働いている事が悪事かどうかは知らんがね」

親方「争うつもりは毛頭ない。私に用がないのならここは一旦引いてくれたまえ」

女勇者「え、偉そうに! 害ある魔物を目の前で逃がすほど私はお人好しじゃない!」

女勇者の攻撃! しかし見えない壁に攻撃は阻まれた!

女勇者「痛い!?」

魔女「少しは学習したらどうかしら」

戦士「話はよく理解できんが……懲らしめるなら手伝うぞ」

僧侶「ええ」

親方「…毎度毎度、人の話を聞かん連中だな。そこの魔王が眠っているだけありがたいが!」

僧侶「勇者様もあなたが生きていたと知ればどうするでしょうね。覚悟してくださいよ」

親方「ええいっ、面倒臭い! まずは中に入れ! 外で長話を続けるのは趣味ではないのだよ!」

門を守っていた見えない壁が解かれた。親方は屋敷の中へ向かう。

親方「着いて来い、茶ぐらいは出してやってもいい…」

エルフ「魔力の反応が消えてる。結界が解かれているよ」

魔女「お茶? 毒でも入れられてなければ喜んでご馳走になりますわよ」

女勇者「本気で言ってるの!? ダメだよ、迂闊に誘いに乗っちゃ…前だって」

親方「先に手を出したのは私か? 違うね。そちらが勝手に襲いかかったのだよ」

親方「無駄な争いは好まないさ。安心しろ」

戦士「悪そうな奴には思えんが、油断はしない方がいいかもな」

僧侶「ん?」

敷地内へ入ると、壁の内側にピカピカの鏡が装飾されていた。

エルフ「あの鏡から強い力を感じる」

僧侶「エルフさんもですか? 私も同じことを思っていました」

エルフ「恐らくアレが例の結界の役割を果たしていたのだと予想する。魔力の反応があったことにも納得がつくよ」

戦士「だとしたら相当の鏡じゃないか?」

親方「おい、屋敷の中なら後でじっくり見てくれればいい。目移りが激しすぎるぞ」

女勇者「村の人たちはどこにいるの? まさか牢屋の中に入れてるとかじゃないでしょうねっ」

親方「黙って着いて来いッ!!」

女勇者「ひっ」

親方「いい加減喋るたびに食ってかかられるのも腹立たしい! 私の機嫌を損ねるのもここまでにしろよ」

親方「ふん…」

魔女「お前たち相当恨み買ってますわねぇ~」

女勇者「たぶん、私たちというか勇者さんじゃないかなー…」

僧侶「責任転嫁は感心しませんよ。私たちも同罪です」

応接間


女「お茶をどうぞ。受けにお茶菓子もございますので、ご自由にお取りくださいませ」

魔女「あらぁ、水羊羹じゃなーい! わかってますわね!」

女勇者「毒がー…」

親方「いい加減にしたまえ。しつこい娘だな」

戦士「なぁ、今の姉ちゃんはあんたの配下か? 魔物の」

エルフ「魔物の気配はなかったから人間だと思うよ」

親方「ここの人間だよ。そもそも私は他の魔物たちとは手を組んだ事はない」

僧侶「確かにそれらしい様子は以前も見られませんでしたね」

親方「もっとも、彼らも私には手を貸さないだろう。云わば私ははぐれ者よ」

エルフ「ヤマタノオロチ、合成によって誕生した魔物か」

魔女「噂には聞いていたけどそんなのもいるなんてね。確か合成魔獣(キメラ)かしら」

魔女「人や魔物の勝手で生み出された産物の一つですわね」

女勇者「な、なんか可哀想かも…」

親方「散々敵視しておいて唐突に哀れむのか。理解できないな」

女勇者「それとこれとは別だよ。ちょっと甘い考えかもだけど」

魔女「所詮は他人事ですわ。気にする必要はないわ」

僧侶「…話を変えましょう。もう一度お聞きします、あなたは何故生きているの?」

僧侶「勇者様によって倒されたはずでは」

親方「形だけは、だ。私には首の数ほど命がある。そこの魔王のお陰で一つ消えてしまったがな」

戦士「首の数ほどって……お前不気味なこと言いだすなぁ」

親方「首は全部で八本だ。うち一つを潰され、残りは七本」

親方「気味が悪いだろう? 私もそう思う。まさに化物の体だな」

僧侶「なるほど。そして、勇者様に一度破れた後に再びこの村へ帰って来たというわけですか」

女勇者「懲りもしないで! 本当のことを言って! また子どもたちを食べてるの!?」

親方「どう思うかね?」

女勇者「こいつっ…!」

戦士「よせ、また先に襲われたと難癖つけられるぞ」

戦士「生贄の話は詳しく聞いていないが、また村へ戻ったという事は…そういうことでしょ」

親方「ふふっ」ニヤニヤ

僧侶「濁さないでしっかり真実を教えていただけませんか。場合によってはあなたを残り7回殺さなければならない」

エルフ「私たちで相手できるような魔物じゃないかと思います」

魔女「何言ってますのよ? 私たちじゃなくてもそこの勇者が、こういうの喜んで実行してくれるじゃない」

親方「……彼には私の弱点も見抜かれた。次はないと予想がつく」

親方「大人しく真実を語ろう。人の子にはもう手は出してはいない」

女勇者「本当に、だよね」

親方「この身でそう誓おうじゃないか」

親方「私がこの村へ居る目的こそは人を食らう事ではないと前に話しただろう」

親方「人への″興味″。それだけだ。私は彼らをよく知りたいのだ」

親方「そこに野望も夢もない。ただ私が好きで行っているだけの事よ」

魔女「は? 変わってますわね」

戦士「よくいるだろ、人間観察が趣味とか言ってる奴。あの痛い類だって」

魔女「あー」

親方「っ~~~!」

女勇者「でも子どもを食べるのが好きだって言ってたじゃない…」

親方「美味い物は好きだ。だが、飽きというものがあってね。そういう事さ」

戦士「気まぐれで……ゾッとしねぇ野郎だ!」

戦士「そして、お前自身の今の立場がハッキリしない。お前は人間の味方か?」

親方「村長としては村人たちの味方ではある。人間全体を味方するつもりはない」

魔女「はぐれ者と自称してるし、魔物側につくわけでもないっと」

エルフ「あなたは私によく似ている。そして人喰いたちにも」

親方「人喰い!? ばか、よせ。私はあんな節度ない下品なド下種じゃあないッ」

親方「奴らは人を乱す畜生よ。害あるばかりで益の一つ齎さない存在だ」

僧侶「魔物の中にも人喰いには敵意を抱いている者がまだいそうですね…」

戦士「アイツらとあんたみたいな合成魔獣はどう違うんだよ?」

エルフ「根元から違っている。でも無理に進化を進めようとした結果であることは」

親方「私が失敗作だと? 不完全なただの化物だと? 違う、完璧な生物だ」

親方「望めば人の形にもなれ、魔物へも変われる。そして思考できている」

親方「言わせてもらえば私こそがこの世にとっての″完全″だ!!」

「……」

< プフッwww

親方「今笑った空気読めないバカはどこのどいつだァー!!!」

魔女「うふふ 下手に自信過剰なアホじゃあなきゃね。ですわ」

魔女「思い上がりもいいところよ。所詮人の手によって創造された化物でしょう」

女勇者「今の流れでそんな言い方よくないってば!」

魔女「事実でしょう? つける薬もないくらい最上級バカですわね」

親方「」プッツン

魔女「やーいwwwキレたキレたぁーwwwwww」

戦士「どうしてお前はいつも余計な事言いたがるのかねぇ!?」

親方「……お、怒らせるの大概にしておけよ…お前ぇ…!!」

僧侶「ほら、魔女さん! 謝ってください!」

魔女「やぁーよぉ~」

親方『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ』

戦士「お前! ちょっと魔物になりかけてるじゃねーか! もう煽るな!」

エルフ「すぐに屋敷の外へ避難した方がいい」

女勇者「わ、分かり合えるまではいかなくても、何とかなりそうだったのに!」

親方『全員生きては帰さん! その腸、残さず食って我が糧としてくれるわーッ!』

魔王「ヤマタノオロチ、これの変身を禁ずる」

親方『なにぃっ!?』


\ ルール変更! ヤマタノオロチは魔物態への変身を許可しない! /


僧侶「勇者様!! 起きていらしたのですかっ」

魔王「足がくたくただったから、黙っておぶられておったのじゃ」

戦士「勇者殿、ならさっきまでの俺たちの話は…」

魔王「全て聞いてくれたわ。黙って、口出し一つしてやらなかったぞ。感謝しろ」

魔王「あらためて…久しぶりだなァ、とぐろ巻きうんこ…!」

親方「き、貴様ッ!!」

魔王「小便くさい小娘如きの戯言に一々キレておるなよ。マジガキであるな」

戦士「…この後どうしますか。今のうちに一気にコイツぶっ倒しちまいますか」

魔王「魔法も使えぬのだ。無抵抗の虫をリンチするのは余の趣味ではないわ!」

僧侶「どの口がそれを言いますか」

魔王「だから、せいぜい役に立ってもらおうかァ。別に牢屋へぶち込んでくれても構わんがー?」

親方「がうーッ、くそったれめ!!」

女勇者「ていうか、勇者さんのことだから起きた瞬間殴りかかるとばかり」

僧侶「ですよね…?」

魔王「あーあー! ここにしつれいなバカが二名もおるぞ! バーカ死ね」

戦士「よぉ、そろそろ落ち着いたかい? オロチさんよ?」

親方「……誰かさんのお陰で苛立ちは収まらないが、多少は」

戦士「なら聞きたい。村のあの惨状は人喰いたちによるものか」

女勇者「そ、そうだ、忘れてた。村の人たちは…!」

親方「一度に二つも尋ねてくるなッ」

親方「如何にも村は人喰いたちによって襲われ、知っての通りの状態よ」

親方「家は壊され、作物も荒され…いや、食える物は何でも食い散らされた。木も花も、人も」

女勇者「む、村の人たち…うそ…」

親方「皆が全て食われたわけではない。私とて力を尽くして、奴らから数人は助け出した」

エルフ「消化される前に助け出せたんだね」

親方「ああ、生き残りは全員この屋敷へ避難してもらった。別室の大広間などを見てもらえば生存してるかハッキリする
だろう」

僧侶「助けた…と言いましたよね。あなたが?」

親方「言ったはずだが? 私はこの村の味方なのだ。憎い奴など一人もいない」

戦士「だとしても、さっきまでとんでもない話をしていた奴が起こす行動とは思えないわ…」

親方「すぐに確認するか? 我々で一人一人に気を使っているからな、対面して悪いと思う奴もいないだろう」

女勇者「……あ、あのぅ」

親方「は?」

女勇者「あなたの事、全部許したわけじゃないけど…でも、なんていうか」

女勇者「ありがとうございました。守ってくれていて」

親方「礼を言われる筋合いは」

魔王「礼を言う相手ではなかろうが。それなら日頃の感謝を余へ申すべきなのだ!」

親方「しゃしゃるな貴様ッ!!」

魔王「あァーん!? 七本切り落とせば良かったんだっけかァー!!」シャキーン

親方「よ、よせ……すまん……」プルプル

魔女「青筋浮いてますわよ、こいつ」

「親方さまぁー!」「親方さま、今日も我々を守っていただき感謝ですぞ!」

「あんやぁー、いつ見てもたくましいお体ぁ…///」「お米が足りませぬ!」

女勇者「本当にみんな生きてた! よ、よかったよぉ」

エルフ「健康そうな人ばかりだ。待遇も悪くないみたいだね」

親方「皆、私にとって大切な村民なのだ。心配一つさせたくない」

戦士「優しいじゃねぇか。ほんの少しだけ見直したよ」

親方「フン、だが一度は村の子どもを食らっていた身よ。感心される必要もない」

魔女「心変わりしてるのか、元々なのかよくわかりませんわね。ヤマタノオロチ」

僧侶「大切にしていただかれているだけましですよ。本当に安心しました」

「親方さまぁ…私は毎日が不安で仕方がないのです。娘がいないと、とても」

親方「安心しなさい。あの子はきっと無事だ。私も全力を尽くして彼女を救おう」

「おおぉー…! なにとぞ、なにとぞ!」

魔王「今の男は見覚えがあるな」

僧侶「ゆ、勇者様が人の顔を覚えているですって…!?」

魔王「あ゛ァ!?」

女勇者「前に私たちに助けを求めた女の子の父親ですよね。私も覚えあるよ」

女勇者「…あの時は生贄に出す事を躊躇ってもいない様子だったのに、あれって」

僧侶「……親は、どう足掻いてもその子の親なんですよ」

親方「彼の娘は人喰いに食われたのだ」

女勇者「え!?」

親方「彼には娘が必要だ。このままでは不安で押し潰されるだろう。娘は彼にとって精神を安定させてくれる存在」

エルフ「それもあなたが村長として彼らを観察して分かったこと?」

親方「分からない。ただ、必要なのだろうと思ってね」

親方「依存できる物があればそれは現状助かるだろう」

僧侶「まるであの子を物みたいに思う言葉ですねっ…?」

僧侶「その考えが付きまとうなら一生私たち人間へ理解を深めることはないと思います」

親方「考え方は人よりけりよ。押しつけてくるな」

魔王「おう、とぐろ巻きうんこ」

親方「うぐっ、村人の前だぞ…彼らの理想的象を壊す呼び名はよしてくれっ…!」

魔王「貴様に対しての呼び方などどうでもよい。それより聞きたい事があるのだ」

魔王は魔剣を鞘から取り出し、見せた。

親方「魔を纏う剣だな。随分静かになったものだ…?」

魔王「こやつは今故障中でな、ぺちゃくちゃ喋られぬのよ」

魔王「噂でだが、過去に魔剣を作った人間の子孫がこの村にいたと聴いた。知らん?」

親方「いや、知らん」

魔王の攻撃!

親方「げぼぉーっ……!?」

戦士「ゆ、勇者殿ぉ!?」

魔王「では早く魔剣の為にその者を探せ。余の目的はそれだけよ」

親方「む、無茶を!」

女勇者「そうですよ勇者さん! いきなりそんなこと言われても誰でも困っていうか…」

魔王「これ以上無駄足を踏みたくないのーッ!! 早く!!」

親方「し、しかし! 子孫といえど、魔剣に通じた者かどうか」

魔王の攻撃!

親方「あぎゃっ」

魔王「早くしろォ……」

親方「わ、わかった」

エルフ「勇者、そこまで慌てなくても魔剣は逃げない」

魔王「うるさい! 貴様に魔剣の何がわかる!? 知った風に申すなよッ」

エルフ「ごめんなさい」

魔女「別にそこで謝る必要もありませんわよ。どうしたの、らしくない」

戦士「いや、らしいっちゃらしいけど…?」

魔女「バカ、空気読めですわ」

僧侶「不安なんですよね、勇者様。魔剣ちゃんがいないみたいで」

魔王「……」イライラ

女勇者「きっと職人さん見つかるよ! ここまで来たんだもん!」

魔女「こういう流れで上手く事が運んだのって何度ぐらいかしら」

女勇者「…だ、大丈夫!!」

魔王「貴様らウザすぎる」

魔王「余は虫の居所が悪いって状態である。少し散歩に出るわ」

戦士「なら勇者殿! 俺という付添人が必要でしょうっ」

魔王「片足けんけん野郎がいても鬱陶しい。失せろ」

戦士「うぐぅ…!」

魔王は一人で部屋を出て行った。

エルフ「申し訳ないことを言ってしまった。少し、残念」

僧侶「悪いことは一つも言っていませんでしたよ。気にしないで」

僧侶「勇者様も案外ナイーブですからね……。立ち直りも早いけど」

女勇者「ああ、暴力で解消してますからねぇ…」

戦士「寂しがり屋で傷つきやすい。いいじゃないか、人間臭くてさ」

魔女「アイツは魔物よ? それは変じゃないの」

戦士「変だけど……。なんかね、そう思っちゃうわけよ」

魔王「あーあ、あーあ、胸の内がむかむかしてキモいである」

魔王「盗賊が今ここで尻丸出しにして走りまわった末に爆散すればスカッとするな」

魔王「おう、とうぞ…………」

盗賊は世界樹の崩壊に巻き込まれて死んだ。

魔王「あやつのこと考えたら、もっとむかむかしてきた……ッ!!」


魔王「ウ、ウ、ウオアアアアァァァーーーーーーーーーーッッッ!!!!」ゴォ…


びりびり、びりびり

魔王(…力が着実に戻ってきている感じである)

魔王「余は、余は魔剣に頼らんでも十分最強のままではないか! むしろ魔剣は必要なかった!」

魔王「だのに~ぃっ……魔剣~……一体どうしてしまったのだ、あやつはぁ…」

魔王「余が一杯投げたり、刺したりしたから? 使い方が荒過ぎたかのか!?」

魔王「ううん、余は絶対全然悪くないのだ。悪いのは勝手に壊れた魔剣である」

魔王「余はちっとも悪くない、余はちっとも悪くないぞ……うぅ」

「珍しく弱気な様子ですね」

魔王「あァーッ!? 余の一人の時間を邪魔するハエはどこのどいつ」

僧侶「すみません。しんみりしているところを邪魔してしまって」

魔王「貴様、今の全部聞いておったのか? 死ぬか?」

僧侶「け、結構です…」

僧侶「ふふふ。私も、みんなも、段々と勇者様の事が理解できてきた気がしますよ」

魔王「調子に乗っておるなァ…いいのかそれで…?」

魔王「余が理解できておるのなら、気安く今話しかけようと思わないはずだが」

僧侶「だって勇者様は寂しがり屋じゃないですか」

魔王「僧侶ぶっ殺す!!」

僧侶「口ではその様なことを言われていても、顔は何だか綻んでいますよ?」

僧侶「盗賊さんもそうですが、私たちのパーティって無駄に強がりな人が多いですよね」

僧侶「全部一人で抱えようとしたり、隠し通そうとしたり」

魔王「余もそうだと申したいのかッ」

僧侶「勇者様が一番そうじゃないかなぁと私は思いますね」

魔王「憶測でその様な無礼を申すか…僧侶のバカちん…!」

魔王「もう十分話したであろうが! 邪魔だ、消えろ! 本気で臓物引き抜くであるぞッ」

僧侶「憶測なんかじゃありません。長い旅をあなたと共にしてきて知れたのです」

僧侶「知ってました? 私、最初のころは勇者様のこと大っ嫌いでしたよ」

魔王「うっ…」

僧侶「……今では、私に嫌われることすら嫌がっていますね」

僧侶「ね、寂しがりの勇者様?」

魔王「や、やめろォ~…気持ち悪いぞ貴様っ…!」

僧侶「良かったですよね。皆さんにしっかりあなた自身を認めてもらえて」

僧侶「って、私がこれを言うのもおかしい話ですけれど」

魔王「おかしい…変である…」

僧侶「…魔剣ちゃんはあなたの事を最初から認めて、それでも好きでいてくれたんですね」

僧侶「だから、どんなにあなたがあの子を嫌おうとしても、完全に嫌いになれなかった」

僧侶「違いますか?」

魔王「違うもん……」

僧侶「勇者様、どんどんしぼんでいってますよっ」クスクス

僧侶「私はあなたをここへいじめに来たわけでもないのに」

魔王「貴様が無意識に余を傷つけていたのだッ!! いい加減にしろッ」

僧侶「はいはい」

魔王「……僧侶ぉ」

僧侶「はい」

魔王「余は、たぶん余は今不安なのだ……こわい」

僧侶「ええ」

魔王「よくわからんが、こわいのだ…説明できない…」

魔王「魔剣がいないからというわけでもない…でも何だか…うーん」

僧侶「理由がよく分からない。けれど不安になる。そんな事は誰にでも起きますよ」

僧侶「最近立て続けに色々ありましたもんね。心が不安定になるのも納得がいきます」

魔王「うん…」

魔王「余はこういう時に何をしていいかよくわからん」

魔王「イライラしたら誰かにぶつけてた。でも、こういう変な気分は…」

僧侶「苛立っても人に当たるのはよい行いではありませんけどね…っ」

僧侶「勇者様。私に話を聞いてもらって、少しは気分が紛れませんでしたか?」

魔王「余計に落ち込んだ気がするのだ…はぁ」

僧侶「~~~っ」

僧侶「私も聞き上手というわけではありませんし、何だかすみません」

魔王「全くである……」

魔王「しかし、僧侶よ。貴様はこんな気分の時どう解消しておるのだ?」

魔王「参考までに聞いてやっても構わんぞ」

僧侶「私ですか? 思いっきり泣いて紛れさせていますね」

僧侶「あ、人の迷惑にならないところでですよ? 心配されても困るし」

魔王「僧侶も強がりではないか!」

僧侶「ええ。自分自身のことですから、それはよくわかっています」

僧侶「ですから、勇者様の今の心情も少しだけわかるかもしれない」

僧侶「そう思えたからこそ今こうして励まそうとしていた。それだけです」

魔王「むっ…」

僧侶「お邪魔でしたら私は皆さんの元へ先に帰っていますね」

魔王「待て! まだ行くなァー!」

魔王「もう少し余の隣に居ればよいではないか…特別に許してやるから…」

僧侶「あら、素直じゃない」

魔王「……」

僧侶「お、怒りもしない…何だか怖いです…!」

魔王「余は恐怖の最強無敵な勇者であるし、怖いのは当たり前」

僧侶「そうですね、″勇者″ですね」

魔王「しかし、屋敷内は外に比べると静かで落ち着いておったのぅ」

僧侶「このお屋敷は鏡の力によって保護されているみたいですよ。人喰いの侵入もそれで防いでいるようです」

僧侶「ほら、あそこにも鏡が」

魔王「ラーの鏡ではないか」

僧侶「え?」

僧侶「でもその鏡は前に勇者様が砕いてしまったではありませんか」

魔王「破片を再利用してアレを作ったのであろう。雑魚め、あの様な陳腐な品を使いおって」

魔王「…ラーの鏡は真実の姿を映す物である」

僧侶「そうでしたね。あの鏡の前ならば人喰いの擬態も誤魔化しが効かないのでしょう」

僧侶「前は、あの鏡を使って勇者様の本当のお姿を確認しようとしたんですよね、私」

魔王「であったな」

魔王「だが、もうその必要もあるまい。バレてしまったことだし」

魔王「……驚いた?」

僧侶「ええ、それはもう! ビックリです!」

僧侶「でも今はもう驚きませんよ。こうして手も触れられます」ス

魔王「やめろ、マジできしょい!!」

僧侶「こうして信じていられるのも、今までの旅の重ねなんでしょうね」

僧侶「全く信頼できるポイントが見つかっていたとは思えないけれど…」

魔王「貴様さっきから喧嘩売っておるのか?」

僧侶「……」

僧侶は黙って魔王の傍を離れて鏡へ近づいた。

魔王「えぇっ、もう行ってしまうのかァ!?」

僧侶「あ、いえ…確認したいことがあって…」

魔王「確認~? そんな物見ても楽しくもないぞ」

僧侶「そうかもしれませんが、少し」

僧侶「真実を映す鏡。ならばこの剣の真実を……」

魔剣2号を取り出し、鏡に映した!

すると鏡の中に少年の姿が!

僧侶「!!」

魔王「おう、その剣ッ! 何故貴様が持っておるのだ!?」

僧侶「貸していただいたのです…もしもの時にと…」

僧侶「それより勇者様! 鏡の中に子どもがっ」

魔王「…ふむ、その剣の真実の姿であるな」

僧侶「幽霊船での話は事実だったのですね……。確かに人間だわ」

僧侶「でも、まるで死んでいるように顔が白い…」

魔王「死んでいるように見えるのではなく、死んでおるのだろう」

魔王「てっきり人喰いとなった姿が映されると思っておったが、そこは真実か」

魔王「うむ……」

魔王は魔剣を鏡の前へ翳した!

少年の隣に少女が映る!

魔王・僧侶「!」

僧侶「やはり、あの″いんふぇるの″で見かけた子どもたち」

僧侶「あの場所では世界樹の記憶から死者のみを登場させていましたよね、ということは」

魔王「だが何故こやつを現わさせた? しかも、こやつ二人は余たちを陥れるどころか出口を教えたのだぞ」

魔王「そして、余へ伝えたのだ。″全ての人喰いを殺せ″と!」

僧侶「いんふぇるの自身の意思を彼らの姿を使って伝えたかったのかしら」

僧侶「ううん、そんなはずがない。あの世界はそんな事を望んでいるわけがなかった」

僧侶「では、その言葉はこの子たちの望みそのもの……?」

魔王「ふむぅ~~~…割とどうでもいいな…」

僧侶「えぇっ」


< ユウシャサーン!

女勇者「はぁはぁ、勇者さん! あ、僧侶さんも!」

魔王「騒々しいわ、猿か貴様は? 何事であるか」

女勇者「み、見つかったの! 魔剣さんを作った職人の子孫が!」

魔王「それ真かァッ!?」ガシィ

女勇者「マジのマジです…! だ、だから呼んできてってオロチが…!」

僧侶「勇者様、あとは奇跡が起こる事を祈りましょう」

僧侶「きっと修復できますよ、魔剣ちゃんを!」

魔王「そうでなければこのド田舎まで足を運んだ意味がなぁーいッ!!」

魔王「者ども行くぞ! 余はこの時を待っておったのだ……!」

僧侶「ええ、行きましょう」

女勇者「ところで二人で何してたんですかぁ? 仲良さ気そうに~」

魔王たち三人は大広間へ急いで戻っていた。


その後、すぐに鏡がパリンと音を立てて割れてしまった!


黒騎士『ヲォ~ォオ~…………ッ!』

鏡は偶然割れたのではなかった。壁をすり抜けてきた黒騎士が破壊した!

落ちた鏡の破片を恨みを込めたかのように踏みにじる黒騎士。

その顔は酷く憎悪に塗れている!



黒騎士「…………(^p^#)」

ここまで。続きは週末ぐらいだろうか、その辺を予定
キャラぶれぶれなのはまぁ許してくれないか。猛烈に違和感感じるほど変わった奴はさほどいないだろう

職人「これが曾祖父が打った魔剣だっていうのか」

僧侶「ええ、間違いないかと。ですがどこか浮かない顔をされていらっしゃいますね?」

魔女「僧侶、私たちあの人喰いから偽物魔剣掴まされたんじゃありませんの?」

僧侶「まさか。現に私たちはこの2号を使って魔法を扱えたではありませんか」

エルフ「その通り。この人がそんな表情をしているのは別の理由のせいじゃないかな」

職人「……剣が死んでいるんだ」

職人「俺も武器職人の端くれよ。曾祖父さんに敵うほどの腕があるとまでは言わんが」

戦士「遠まわしに言ってないで、俺らに分かるように頼むよ」

職人「見てわかるってこったな。俺にはこの剣が本来の機能を失っている事が一目見て理解できたんだ」

魔女「確かにアイツも魔剣2号は機能していないと話してましたわね?」

戦士「でも、魔法を使う際の媒介としては使えるんだろ。それだけでも俺には十分価値ある剣だと思うが」

親方「何だと?」

魔女「余計なのが反応してきましたわねー……」

女勇者「オロチ! 悪用するつもりなら許さないよ!」

親方「いい加減その小娘を黙らせろ。私も我慢ならん事がある!」

職人「ふぅ、期待していた分正直残念だった」

魔王「その口振りだと、まるで貴様はこれ以上の剣を作れると言わんばかりに聞こえるが?」

職人「いや、無理だ。形だけなら似せて作れても中身までとはいかんな」

職人「俺は単なる武器職人。魔剣など人が持てんような摩訶不思議な化物は作れん」

女勇者「ば、化物って。そんな!」

職人「まぁ曾祖父もボディを打っただけだろう。中の機能は魔法武器職人か、相当の魔法使いが持たせたとしか思えん」

僧侶「あの、魔法武器とはこういった杖のことを指すのでしょうか?」

僧侶はいかづちの杖を取り出して見せた。

戦士「その杖も魔法が使えなくなってから閃光を放てなくなったんだっけね?」

僧侶「はい、今ではそこらの頑丈な作りをした杖でしかないですかね」

職人「そうだ。お前さんが装備している杖は魔法武器。武器へ魔法効果を付与させた特殊な武器さ」

女勇者「魔剣さんたちもその魔法武器に分類されるの?」

職人「知るか。実際にこの目で見たわけじゃねぇ。だが、感じるところではそんな生易しい剣には思えん」

職人「そいつはおたくらがよく知ってることじゃねぇかい?」

「……」

魔王「戯言はそれぐらいで十分であろうよ。貴様を呼んだ目的は、魔剣について語らせる為ではない」

魔王「そして、その様な類似品の魔剣の事などもどうでもよいわ……ッ!」

魔王「問題は余の魔剣を貴様が直せるかどうか! ただそれだけ!」がしっ

職人「…なんだとぉ?」

戦士「ちょ、勇者殿!! これから頼みごとする相手へそれはマズイっス!!」

魔王「戦士やかましいぞッ!! できるなら早速取りかかれ、できぬならぶっ殺す!」

親方「おい貴様、私の大事な村人へ手を出すというのなら容赦せんぞ……」

魔王「では貴様から殺しても―――」

僧侶「勇者様、悪者へなり下がるおつもりですか。台無しになりますよ」

魔王「……むぅ」パッ

職人「勇者ねぇ、そう、あんたが。勇者も落ちたもんだな」

職人「人へ物頼む時はそれ相応の態度ってのがあるだろ。それに金だ」

女勇者「お、お金取っちゃうの…?」

職人「当たり前だ、お嬢ちゃんは物買うたびに商人へそんなバカ聞いてんのか? 俺も慈善事業をしているわけじゃねぇん
だよ」

僧侶「ははは、ですよねぇー……」

戦士「僧侶ちゃんは何期待してたのよ」

職人「…とりあえずその魔剣を俺に見せろ。話はそれからでいいだろう」

魔王「フン、だーれが貴様のような胡散臭い職人気取りに魔剣を触れさせるものか!」

エルフ「触らせないと修理も何もできない」

魔王「……チィッ!!」

魔王は魔剣を鞘から抜いて、机に置いた。

魔女「素手で触れない方がいいですわよ。とんでもないことなるから」

職人「うむぅー……」

女勇者「おじさん、魔剣さんどうですか? 直りますか!?」

職人「静かにしていろ。こっちは今集中してんだ……刃毀れは目立つが特に変わった外傷はねぇ」

職人「恐らくは中身だ。中身に問題がある」

魔王「ほら、余のせいじゃなかったであろう!」

魔女「なーんでそこで勝手に得意気なってるのよぅ」

戦士「てことは一度バラして見てみなきゃいけないってか?」

魔王「えっ……」

職人「詳しく見るならな。ま、見たところでどうなるかは知らんが」

エルフ「魔剣の内部を人間が触れても大丈夫なのかな」

戦士「確実に危険なことだってのは分かるな。素手で持っただけでアレだ」

僧侶「では唯一何も被害を受けることがない勇者様がお手伝いをなされてはいかがでしょう? 手伝うのだからお安くなり
ますね?」

魔王「貴様はどこまでも浅ましいなーッ!!」

職人「必要ない。返って俺の作業を邪魔されるだけだ」

女勇者「だけど、本当に危険なのかもしれないですよ? 最悪死んじゃったり…」

職人「その時はその時だよ。誰のせいでもなく俺のせいだ。ここは責任を持って俺が剣を見る」

魔女「職人気質って奴ですわねぇ~」

戦士「そりゃ本物の武器職人さんなんだからな。そこまで言うならそうして貰おうや」

全員「……じー」

職人「……」

全員「……じーーー」

職人「あのな、見られてるこっちも集中できねぇ。気が散るってんだ!」

女勇者「だ、だって色々気になるし…職人さんの仕事がどれだけ凄いのかも見たいし…」

職人「企業秘密って奴だ。黙って盗み見してるんじゃねぇぞ!」

職人「はぁ……多少時間が掛かりそうだ。お前さんたちは邪魔にしかならんから外へ出ていろ」

魔王「貴様が魔剣を壊してしまうかも知れん。このまま見ているである!」

エルフ「職人さんなんだから、信用しないと。直る物も直らないと思う」

僧侶「本当にその通りですね。勇者様、ここは任せて私たちは広間で待ちましょう?」

魔王「やだやだやだぁー!」

親方「フン、まるで子供の駄々こねを見ているようだな。お前たち、これぞ体だけ一丁前に成長したガキなのだよ!」

魔女「そいつは私たち全員重々承知済みだから、改めて教えてくれなくて結構よ」

戦士「お、お前! 自分の主のことをそんな軽い目で見てんのか!」

戦士(まぁ俺も同意見だけど……)

魔王「貴様ら薄情極まりないな! よかろう、余が順番にお仕置きしてくれるわァ!」

職人「うるせぇって言ったのが聞こえなかったかァッッッ!!!」

全員「!」ビクゥ

親方「……全くだ。ここは彼に任せてお前たちは出て行くのだな」

職人「親方さん、お前さんもだ。このお笑い集団と一緒に部屋を出ていてくれ」

親方「私もなのか!?」

魔王「はっはぁーーー!! ザマぁ見ろであるわ! 貴様もお笑い集団である!」

女勇者「勇者さん、それ最初に私たちのこと言ってたの忘れてないよね……」

エルフ「これ以上迷惑を掛けていても作業の進行を遅らせるだけ。彼の言う通りに出よう?」

魔女「そうですわ。コントならここじゃなくてもできるでしょうに。ね、親方サマ?」

親方「ぐがぎぎぎっ……!!」

僧侶「喧嘩もここではなくてもできますよ。いえ、続けて欲しくはありませんが」

僧侶「ほら、行きますよ勇者様。我儘を仰られていても魔剣ちゃんは元へ戻りませんもの」

魔王「ぐぬぬっ……。貴様ァ! 絶対だ! 絶対に魔剣をどうにか直せ! よいなッ」

職人「……」カチャカチャ

魔王「聞こえむぐぅーっ!?」

僧侶「し、しつれいしましたぁー! さぁさぁ、向こうでお菓子食べましょうねっ」

魔王「ん~~~っ!!」ジタバタ

女勇者「勇者さん、心配しなくても大丈夫だから。気持ちは分からなくもないけど」

魔王「分かるわけないし……」

魔女「あら、食べないなら勇者の分の饅頭は私が処理しますわよ? 結構好きなのよぉ~♪」

魔王「首へし折るぞ、魔女……」

魔女「沈んだ状態で言わないでくださる? 本気で折られそうで怖いのよ」

戦士「勇者殿! あの人を信じて待ってましょうぜ! 俺らも我慢してるんスよ!」

魔王「うん……」

僧侶「何だかさっきの勇者様へ戻ってしまいましたねぇ。それだけ心配してるとは取れるのですけど」

戦士「ああ、勇者殿は誰よりも心優しいお心の持ち主だからな」

エルフ「それは何の冗談でしょう?」

戦士「エルフ、ここは空気の読み所ってやつだよ……!」

エルフ「空気は読めない。生物が呼吸するための無色透明な気体。詳しく説明すると空気とは複数の気体との混合物であ
りその組成はほぼ一定約8割が窒素約2割が酸素で」

女勇者「やめて! そういうの私は苦手だから!」

エルフ「そう」

僧侶「世界樹から知識を得ていたとはいえ、あなたは物知りですよね。どうでしょう? こちらの世界で子どもたちへ教え
を説いてみるのは?」

戦士「学校の先生か。いいんじゃないの? 愛嬌良い笑顔さえできれば似合ってると思うぜ」

エルフ「学校の先生? 私は人の前で何かを説明するのは苦手」

僧侶「皆、最初はそうなのです。あなたは頭も良い。きっと務まりますよ」

エルフ「ふむ」

魔王「のう、そこのとぐろ巻きウンコ」

親方「私は貴様を皆の前で魔王と公表しても一向に構わんぞ」

戦士「バカ! ちょっとしたあだ名ぐらいで気立たせてんじゃないよ!」

親方「黙れ! ならば私に相応しい高貴なる名を付けてみせろとそこの阿呆へ伝えておけっ」

親方「…それで何かね。くだらない話を始めない事を祈っていようか」

魔王「貴様は、魔剣について、余について何か知っていることはないか?」

親方「……は?」

親方「知るも何も、貴様は勇者を偽って歩く元魔王だろう。自分を忘れるほど物忘れが激しいのか?」

魔王「そういうのではないわボケ。とにかく申してみろ」

親方「それ以上は知らん。私は確かに貴様ら魔族へ生み出された合成魔獣ではあるが、私自身は貴様へ忠誠を誓った覚え
もない」

親方「ましてや私が誕生したのはほとんど最近の話。その魔剣とやらにも心当たる記憶はない」

魔王「はっ、どこまで使えんウンコであるな! もうよい、下れ」

親方「こいつ!」

僧侶「お、抑えてください。ここであなたが勇者様へ危害を与えては…」

親方「できるなら既に実行している!! こいつに変身を封じられていなければな!!」

親方「ぐうっ、どこまで気に食わん奴め……」

魔女「なんか急に休憩に入れたのは悪くはないけど、する事もなく暇ですわね」モグモグ

女勇者「それが平和…じゃないよね今は。それじゃあ私と話でもしてようよ」

魔女「はぁ? お前との会話は頭のレベルに差があり過ぎて私が苦労するのよ。昼寝でもなさい」

女勇者「むっかー……。いやいや、ここは年上の余裕を出して今の聞かなかったことにする」

女勇者「魔女っち前にさ、お兄さんがいるって話てたじゃん? もしかしてさっきの魔法使いの人って」

魔女「あら、おバカがよくそんなの覚えてられましたわね? 反応はしたけど、兄はとっくの昔に死んだと教えたでしょ」

魔女「それに顔も見た事ないし、正直そんなに兄がいたなんて考えられないわ」

女勇者「歳も離れてて、顔も見た事ない、かぁー……。自分の家族なのに不思議だよね」

魔女「そう? 別に知ってるからどうという話でもないでしょうに」

魔女「お前は兄弟とかいなかったのかしら? 仕方がなく話題へ乗ってあげますわ」

女勇者「私? 私は……私はー…………」

女勇者「……あれ?」

魔女「どうしましたの? 変な顔してますわ」

女勇者「あ、あれれ…ねぇ、私ってずっとお父さんと一緒に暮らしてたよね? 他に誰もいないよね?」

女勇者「ん~……?」

魔女「…ちょっと。あなた大丈夫ですの?」

女勇者(何か、ううん、私誰かを忘れている気がする)

女勇者「……」

魔女「もしもーし? お返事はー?」

エルフ「どうかしたの」

魔女「あ、エルフちゃん。実はこの女と話をしてたら急に黙り込んじゃって」

魔女「別に叩いたわけでもないのに。魔剣と一緒で故障起こしたかしらね?」

エルフ「彼女は人間だから壊れない」

女勇者「……あの、私ね? お父さんと一緒に暮らしてたの」

魔女「それはさっき聞きましたわよ。あなた、少し横になって休んでたらどう?」

女勇者「聞いて。暮らしてたの…暮らしてたけど、もう一人誰かがいた気がするんだ」

エルフ「それは母親ではないかな」

女勇者「たぶんそれは違う。お母さんは湯女さんだし」

魔女「……あんま言いたくはなかったけど、お前は本物の女勇者が生み出したコピーでしょ」

魔女「思い出せない存在とはオリジナルの女勇者じゃないかしら?」

女勇者「本物の私…」

女勇者「だ、ダメだよ……やっぱり思い出せないや……」

エルフ「少しづつ記憶を辿って行けばいい。急にその人を思い出そうとしないで」

女勇者「……私はいつからいたんだろう。どうしてお父さんは何も言わなかったのかな」

魔女「あのね、空気重くする為に話をしてるの? 違うでしょ。ただの暇潰しよ?」

魔女「忘れてしまったのならきっとどうでもいい奴ですわ。無理して思い出す必要はないと思う」

エルフ「そうだね。心配ならいつでも相談して」

女勇者「う、うん」

魔王「もう十分待ったであろう。余は魔剣の様子を見てくるぞ!」

僧侶「まだ10分程度しか経過されていませんよ。慌てないで」

僧侶「職人さんも全力で魔剣ちゃんを見てくれている筈です。信じて待ちましょう」

魔王「やれ信じろだ、心配するなだ、貴様らは同じ言葉を繰り返す人形かッ!!」

戦士「だって勇者殿。そう言うことしか俺らにはできんのですよ」

戦士「たまにはこうしてゆっくりするのもいいじゃないっスか。ね?」

魔王「よくない! ええいっ、こういう時こそ暇潰しに敵が襲撃して来たらいいのに!」

僧侶「縁起でもない事仰らないでくださいよっ」

魔王「フン、騎士団であろうと人喰いだろうと今だけ余の前に現れるのを許可してやるぞーッ!!」

戦士「冗談じゃねーっスよ、そいつは!?」

親方「…………?」

親方「おかしい。おい、そこの女僧侶よ。外の結界をまだ感じているか?」

僧侶「え? 結界の魔力をでしょうか? 少し待っていてください……」

親方「早くしてくれたまえ」

戦士「お、おーい……マジで何か起き始めたかぁ……?」

僧侶「魔力が、感じられない。あんなに強かった気配が今は何もなかったように感じられません!」

親方「……鏡だ、結界に異常が見られるのならばラーの鏡に問題が起きたか」

親方「貴様たちも着いてきてくれ。嫌な予感がするんだ」

僧侶「…ま、まさか勇者様。割ってたりしませんよね?」

魔王「ふはははっ! やっぱ来たかァーッ! どんとこいハプニング!」

僧侶「ば、バカな! さっきまではこんな事にはなっていなかったのに!」

壁へ取り付けられた鏡の数々にヒビが入っていた!

親方「やはり貴様の仕業だろう!?」がしっ

魔王「余へ押しつけてくるでないわ阿呆がッ! 何もしてないからな!」

戦士「……見たところヒビだけだが」

親方「結界を崩すには十分な程だ。すぐに修復せねば、人喰いどもが」

親方(どう考えてもコレは自然にできた傷ではない。故意に壊そうとしなければけして…)

親方「!」バッ

戦士「おい、今度はどうした!」

親方「貴様らを屋敷の中へ入れたのは私の間違いだったようだなっ!!」

親方「紛れて余計な者まで入り込んで来たようだ! そいつに覚えは!?」

僧侶「……まさか王都騎士団」

親方「魔力……あるぞ、痕跡が! 奴は地中へ潜っている……それから、屋敷の中だ!」

魔王「何? 潜る?」

僧侶「えっ!?」

戦士「勇者殿、すぐに屋敷から離れるべきだ…」

戦士「もしあの壁へ潜れる騎士だった場合、ここにいる村人たちも危険っス……!!」

短いけどここまで。先週は来れなくて申し訳なかった
次の予定は月曜あたりを

僧侶「あの騎士であるわけがないですよ。確かに勇者様が倒したのだから!」

戦士「だけどよ、俺たちは他に″潜る″力を持つ敵は知らんのだぞ。俺だって信じたくない!」

戦士「とにかく一度女勇者ちゃんたちと合流しなければ」

魔王「ふむ、あ奴が生存しておるであろう理由は一つ思い当たるものがあるぞ」

魔王「アンデッド化しておったとかなァ」

戦士「騎士団のメンバーがだと……?」

親方「それについての推測ならば後で十分だろうが。今は村人の避難を!」

親方「……否、奴らの目的は貴殿らそのもの。今すぐ屋敷から去ってくれまいか」

魔王「頼まれると断りたくなる性分でなァッ!!」

親方「貴様に頼んだ訳ではない! …お前たちも罪もない人間が傷つく姿は見たくはないはず」

僧侶「御尤もです。私たちの魔力を追跡したのであれば、屋敷を離れれば敵も」

戦士「だな。今は何か仕掛けてこなくとも、絶対奴は行動を起こしてくる」

戦士「僧侶ちゃん、あの三人を呼んできてくれ。俺たちはすぐに支度を」

僧侶「了解しました!」タタタ…

魔王「……まーた余の決断なしに動きおる。少しは落ち着けばどうだよ?」

親方「この状況、呑気にしていられるは魔王! 貴様だけだ! 我々は違うッ!」

親方「騒ぎを嗅ぎつけて人喰いが襲撃してこなければいいが……」

戦士「さぁ、勇者殿! 行きましょうぜ!」

魔王「やだ!」

戦士「はぁ!?」

魔王「だってまだ魔剣の修理が終えてないのだ! 今このボロ屋敷を離れるわけにいかんだろう!」

戦士「それは…今は我慢っス!! あとで取りに来たら良い話だし、最悪そこのオロチに配達を」

親方「私はそこまで人もよくなければサービス精神に溢れちゃいないが?」

親方「魔剣を置いて行くのならば、私が有効にアレを扱いこなそうじゃあないか。フフッ」

魔王「ほらー!! 絶対無理である!!」

戦士「あああぁぁ~~~!!! どいつもこいつも融通効かねぇなぁー!!」

親方「……冗談はさておき、奴の気配が消えた」

魔王「ふーん? 余を見失って帰ったに違いあるまいな」

親方「阿呆か貴様はっ。確実に屋敷の中に潜伏しているに違いない」

親方「その男は魔法を使えるのか? しかし、魔法は今…」

戦士「恐らく、疑似魔法って奴じゃないかってのが俺らの考えだ」

戦士「そいつの疑似魔法のせいで、あの黒騎士にゃ下手に剣で切りかかれないし、厄介だが」

戦士「今はこっちも魔法を撃てる! もし敵がアンデッドならば僧侶ちゃんの回復魔法でイチコロっスよ、勇者殿!」

魔王「……そう考えていたのならば、何故貴様は僧侶を屋敷の中へ放った?」

魔王「我がパーティ内で回復を扱えるのは僧侶とあのチビエルフのみよ」

魔王「例の騎士がそれを知った上で屋敷へ潜ったのならば、面倒になるなァー」

戦士「はっ……あ! あああ…やばい?」

エルフ「急に嫌な感じがしてきた」

魔女「あら風邪かしら? やーねぇ、エルフ族も私たちと同じように病気にかかるのね」

エルフ「違う。悪寒がするとかではなくて、何か別の。不安に近いような」

魔女「ふふっ、この屋敷は結界に守られているのでしょ? なら心配もいらないわ」

魔女「その結界が破られたとかではない限りね~」

エルフ・魔女「……」

魔女「何だか自分で言っておいて不安になってきましたわね……」

エルフ「みんなが心配。一旦合流して固まろう」

エルフ「私はあの子(女勇者)を迎えに行ってくるから、あなたは先に」

魔女「ええ。嫌な感じというか、予感が的中しないことだけを祈ってますわ」

魔女(もし人喰いやあの王都騎士団が攻めてこようが、私は今魔法を使える)

魔女(万に一つ、私に怖い物なんてないのよねぇ)

僧侶「魔女さん!!」

魔女「どひゃー!?」

魔女「そ、僧侶! 後ろからいきなり大きな声で呼ばないで!」

僧侶「はぁはぁ、す、すみません……。それより魔女さん! 今すぐお屋敷から離れますよ!」

魔女「え? どして? 魔剣の修理も済んでないのに」

僧侶「幽霊船の上で戦った例の潜る騎士。アレが私たちの後を追ってこのお屋敷の中に侵入しているかもなんですっ! 早
く!」

魔女「げぇ……予感的中~……」

女勇者「職人さぁーん! もうそろそろいいですかぁー!」

職人『うるせぇ!! 何度邪魔するなと言ったら気が済むんだ!!』

職人『少なくともあと30分程度掛かる! それまで声かけるな!』

女勇者「まだそんなに!? 結構かかるなぁ……」

女勇者「しつこく言いますけど、魔剣さんをきっと直してあげて!」

女勇者「お願いしますっ」

職人『…ふん、どうしてこの剣にお前さんらは拘る。異常だ。まるで人間の手術をしてる気分になるぜ、こっちは』

女勇者「私たちの大切な仲間で、勇者さんの大切な相棒だから……なんかコレ言うの小っ恥ずかしいや///」

女勇者「とにかく大事な魔剣さんなの。みんな、あなたを信じて頼りにしてますから!」

女勇者「本当の本当に! よろしくお願いしますねっ!」

女勇者「……あれ、返事は? もしかして集中してます? あのー」


ガタンッ


女勇者(ん? 今の変な音は何かな……)

女勇者「…しつれいしまーす……?」

がちゃり

職人「」ピク、ピク…

女勇者「!?」

女勇者は悲鳴をあげないように両手で口を抑えた。
魔剣を修理していた職人はお腹に穴を開けて椅子から崩れていた。

職人「ううっ」

女勇者「! ま、まだ息がある! しっかりして!」

女勇者「一体何が起きたんですか!?」

職人「あうぅぅぅ…うぐぎぎぎぃぃぃ…!」

女勇者「え? 何か伝えようとしている……。待ってて、今すぐ僧侶さんを」

職人「剣、剣が…! 魔剣が……」

突然職人が血相を変えて傍らに膝立つ女勇者を押した!

女勇者「わぁー!?」

職人「うわああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」ドンドン


どかぁ~~~ん!!


女勇者「ひっ……」

職人の体が爆発を起こした! バラバラになった死体は部屋のあちこちへ拡散する!

その惨状に我慢できずに女勇者は壁に手をついて吐いてしまった。

女勇者「おえぇぇ……へ、変だ…何今の…。どうして……?」

女勇者(おじいさんは最後に″魔剣″と話していた。という事は、コレってまさか)

女勇者「はっ! 魔剣さんが無くなってる……! さ、さっきまでこの人が弄っていた筈なのに!!」

 「逃げましょう」

女勇者「きゃああぁぁぁぁーーーっ!!?」

エルフ「落ち着いて、私だよ。この部屋に留まるのは危険」

エルフ「さぁ急いで」

女勇者「そ、そんなこといきなり言われても」

エルフ「魔剣を探すのは後にして。恐らく敵が中へ侵入した」

エルフ「戻ろう」

女勇者「ま、魔剣さんが職人さんを殺したんじゃ…」

エルフ「それなら普通こんな風に爆発を起こしはしない。もっとシンプルに殺す」

女勇者「確かに悪趣味すぎるけど。でも」

エルフ「……そこの天井付近から魔力の痕跡を感じる」

エルフ「覚えがあるよ。コレはさっき私たちが相手にしていた男のもの」

女勇者「えっ」

エルフ「おそらく、敵は2本の魔剣を奪う為にこの人を始末した」

エルフ「行こう」

女勇者「奪う為って……惨すぎる……!」

女勇者「こ、こんなの人がする事じゃないよ! イカれてる!」

エルフ「言ってる場合じゃ」

女「ああ、お客人方。こちらへいらっしゃったのですか」

女勇者・エルフ「!」

女勇者「お、お茶を運んでくれたお姉さん……。ここに入っちゃダメです! 危ない!」

女「うん? 何を仰られているのでしょうか。ああ、気分がとても良い……」ふらふら

エルフ「どうしたの」

女「ああ、ああ~~~……気持ちが良いの。とても、まるで天国へ昇るかのように~~~」ふらふら

エルフ「下がって」

女「  」ふらふら

エルフ「下がってと言った。これ以上こちらに近づかないで」

女勇者「エルフちゃん何言ってるの? それより部屋の中を見てわかりませんかっ」

女勇者「人が死んだんですよ! 早く逃げて!」

エルフ「ううん、逃げるのは私たちの方かも」ぐいっ

女勇者「!」

エルフは女勇者の手を引くと、走りだした!

お茶運びの女は快楽に満ちた顔をしつつ、それを追いかける!

女勇者「お姉さんが!」

エルフ「振り返ってはダメっ」

女「   」ニタァ

ドンッ ドンドンドンドンドン!

女は前触れなく、職人同様に爆発を起こした!

女勇者「う、うそ……?」

エルフ「様子がおかしかった。何らかの手段で私たちと共に爆破しようと敵が仕掛けた魔法だと思う」

女勇者「いやああぁぁーーーーーーっ!!!」

エルフ「この分だと既に行動を始めている。私たちを殺す為に色々と」

エルフ「出よう、屋敷をっ」

女勇者「う、ううぅっ……」

戦士「僧侶ちゃん!!」

親方「広間だ、部屋に集まる村人たちが心配だ……」

魔王「それよりも魔剣であるわボケー!」

大広間へ急ぐ、魔王たち。

そこに待ち受けていたのは僧侶と魔女を壁際へ追い込む不可解な動きをした村人たち!

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」「いーひひひひひっ」「ふえぇ、気持ちいいよぉ~~~」

「一緒に気持ち良くなろうよー」「こっちにおいでー」「怖がらなくていいんだよ~~…」

魔女「こいつら…急に何を……!」

僧侶「分かりませんが、様子が普通ではない事だけは確かのようです」

僧侶「皆さん、どうされたというのですか……」

村人「お前ら表情おかしいぞ、ついにトチ狂ったのか!」

魔女「こんな時に2号があれば…」

 「へーへー、いひっ。あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃー!!」カチッ


ドンドンドンドンドンドンッ!


村人「ひぃぃ~~~!! ば、爆発しやがった!!」

魔女「新手の洗脳魔法!?」

戦士「お前らすぐに部屋から出るんだ!! もたもたしてんな!!」

僧侶「せ、戦士さん……! 村人さんたちの一部が急に奇怪な行動と爆発を」

戦士「分かっている! おい、オロチィ!!」

親方「う、うあ……っ!」

魔王「この有り様は貴様が仕掛けた物ではなさそうだな」

親方「だ、黙れ……何なのだ……。彼らをよくも……」

戦士「どうにかするより生き残りの避難が先だ! しっかりしてくれ、村長さんよぉー!」

僧侶「皆さん! 外へ逃げますよ! 歩かずに走って! さぁ、急いでください!」

どどどどどどど・・・

「あへぇ~~~~……」「じゅるりぃ」「んほぉーーー しゅごぉぉぉ~……」

魔女「こいつら! 屋敷中にいるわ!」

魔王「無差別に人間を使って余たちを攻撃しておるのか。回りくどい真似を~」

僧侶「オロチ、あなたたちも私たちと共に屋敷を!」

親方「ぐぬぅっ……」

親方「貴様らが村へ訪れさえしなければ、こんな酷いことには! どこまで私と彼らへ迷惑を掛ければ気が済むのだ!」

魔王「文句は今申さんでよい。まぁ落ち着け、とぐろ巻きウンコよ」

親方「落ち着いていられるか! くそっ、皆の衆よ! 門を通って外へ―――」

魔王「落ち着けと余は申しておるのだ。全員むざむざと殺す気か?」がしっ

親方「うっ!?」

魔王「こやつだけではない、貴様らも少し冷静に考えよ」

戦士「勇者殿、そんな場合ではないっス! 早く逃げねぇと後ろから爆弾になった村人たちが……」

僧侶「……いえ、こういう時にこそ頭を冷やすべきですよね」

魔王「うむ。見よ、このボロ屋敷から出るには門を潜って通るしかなかろう?」

魔王「おそらく、爆弾人間どもは外へ追いやる為の囮よ。屋敷の外にこそ敵が狙った何かが仕掛けられておるに違いな
い。先程から姿を現さんのはそれも含めての策であろう」

魔女「でも、なかったら?」

僧侶「あの騎士団相手に考え過ぎて損はありませんよ。敵は魔物ではなく、同じ頭を使える人間なのですから」

僧侶「やり口は人間のものとは思えないほどですがね!」

村人「じゃあ俺たちにどうしろってんだよー!? このままお陀仏にはなりたくない!」

魔王「なーに、解決策は単純明快である」

魔王は屋敷を囲む壁の一部を殴って破壊した!

魔王「別の出口を作って、外へ逃げればよいのだァーッ!! こっちは門の裏側だ!」フフーン

戦士「いや、単純すぎじゃないっスかねぇ」

親方「もう背に腹は代えられん! 皆、急いでその穴から外へ!」

村人たち「「「「わああああぁぁぁぁ~~~~~~~」」」」

僧侶「私たちはあの方々から離れましょう。敵の狙いは私たち勇者一行なのですからね」

魔女「にしても、脳筋女とエルフちゃんは遅いですわねー。もうやられちゃったのかしら?」

戦士「洒落になんねーから。冗談でも言うのやめなさい」

魔王「さてとー……」ス

僧侶「勇者様? どちらへ?」

魔王「決まっておるだろうが。魔剣を取って来るのである」

戦士「今っスか? ちょっと危ないんじゃ…」

魔王「余に危険と思えるものは一つも無し。爆弾人間如きでは傷一つつかんわ!」

魔女「あんた、つい最近その爆発でどうにかなったのにね~?」

魔王「フン! 別にどうという事はなかったのだ! では行くぞッ」

 「あへぁああぁあぁ~~~~」ふらふら

魔王「邪魔だ貴様ッ!!」どかっ

僧侶「あっ!!」


どかぁーーーん!!


魔王「……」プスプス

戦士「……どうも、爆発の威力はやばそうな感じになってきてるな」

魔王「ふがぁーーーッ!!!」


・・・・・・ドカーン


「!」

戦士「今、向こうで爆発した音が聞こえたよな?」

魔女「私にも聞こえましたわ。あの方向には確かオロチと村人たちが」

僧侶「ま、まさか……!」

僧侶「勇者様…敵はもしかしたら、私たちだけを襲っているのではないかも知れません…」

僧侶「行きましょう!!」

魔王「ならば貴様ら三人で向かえばよい。余には関係の無い話よ」

僧侶「大ありです! 私たちがお屋敷の中へ入りさえしなければ、あの方々は!」

魔王「それがどうしたァー!? 勝手に死んだのはあやつら! 余は直接手をかけておらんぞ」

魔王「阿呆どもめ」

戦士「ゆ、勇者殿…マジで言ってんスか、それは…」

魔王「魔剣を取ってきたらさっさとこの村を離れるである。よいな?」

戦士「いやいやいやいやいやっ!! ダメっス! ここはあいつらの仇討ちを!」

魔女「まぁ、正直言うと私もそこの勇者と同意見ですわね」

魔女「こっちに非はあるかもしれないけど、死んでしまったものはどうしようもない」

魔女「それなら、私たちは奴らから逃げて生き延びる方が良いと思いますわよ?」

戦士「うっ……嫌に現実的というか、合理的な考えすんなお前は!」

僧侶「勇者様、勇者様お願いします。どうか考えを変えては――――」

なんと!魔王はとっくの昔に姿を消していた!

僧侶「ああ、迷いすらなく行ってしまったのね…あの人は変なところで真っ直ぐすぎる……」

戦士「……俺らだけでもオロチたちのところへ向かおう。心配だ」

僧侶「ええ。魔女さんは」

魔女「ん、仕方がなーく付き合ってやりますわ。一人で逃げてもどうしようもないし」

戦士「さっすが期待の新人魔女っちだぜ! 付き合い良いよなお前は~!」なでなで

魔女「うわぁーっ!? 触るなワキガ男っ!!」

戦士「ぐぬぬっ…」

暗黒騎士「んーっ! んーーっ!」ジタバタ

白騎士『コォォォ…コォォォ……』

メリー『黒ちゃんてば、予想以上に上手く進められてて安心しちゃったよ~~~。あたしのお説教が効いたかねぇ?』

暗黒騎士「んぐーーーっ!」ジタバタ

メリー『喧しいわよぉおおお~~~? 監視役は黙って監視だけを続けてりゃいいのサ!』

メリー『あたしらの邪魔は誰にもさせねェ~……勇者一行を始末して貰いたいのなら大人しくしてんだねぇ!』

暗黒騎士「ぐぐぐ……」

暗黒騎士(何てことだ、俺とした事が! ああ、叔父上!)

暗黒騎士(この状態では通信も満足にできない。どうにか拘束から逃れてこの化物を止めなければ)

暗黒騎士「もがふふふー! ふがー!」ジタバタ

メリー『ああ? 小便なら下着の中に漏らしてな。今いいとこなんだから話しかけんなヨ』

白騎士「…………」

メリー『ありゃ、白ちゃんそいつぁマジ話かい? 正直村の人間はどうなろうとよかったけど』

メリー『偶然だとしてもさ、わざわざ罠潰してくれんのは頂けないねェ……よーし』

メリー『黒ちゃあーん? 聞こえるかい? 予定変更だ、何があろうとその村にいる奴らは全員殺しなァ』

暗黒騎士「もがもがもがふーっ!?」

こーこまで

王都


1「おい、魔王は倒せたのだろうな。我らが協力しているのだから当然できるだろう?」

1「早く奴がこの世から消え失せねば我ら魔族は枕を高くして寝れないんだぞ!」

1「さっきから何シカト扱いてるんだ!? 我をいじめて楽しいのか!? ねぇってば…」

団長「″人間ども″と慣れ合うのは好まないんじゃなかったっけ? ふふ」

団長「おじさんだって彼の件は気になってるよ。だけど、今はそっちばかりに気を取られていられる場合じゃないんだ
わ」

団長「この王都を中心に、全国をおじさんの手中に納めなければならんのだからねぇ」

1「貴様が一体何を考えて世を統べようと企むのか、よく分からん!」

1「世界征服が夢だったとか子ども染みた台詞を出すつもりならば…」

団長「うんにゃ、そうは言わないが子ども染みた夢には変わりないかな?」

団長「おじさんはね、神が定めた今ある世界を変革しちゃいたいのよぉ~……」

団長「単なる私怨から始まった夢だけど、今ではこれは悪くないと思えるよ」

1「世界を変えるだと? 貴様の怨みとやら置いておき、この世界の何に不満がある?」

団長「ふむ」

団長「いいかい、コイツは僕の持論だよ。このまま世界樹の力を頼るような生活を続けていては我々は永遠に文明レベル
を上げられない。何故か。便利すぎるからだよ」

団長「だからこそ一度僕らはどん底状態まで突き落とさなきゃあいけない。僕ら人間も、魔物でも、性質的には逆境にこ
そ燃える生物だから」

1「フン、では貴様はわざわざ現代の文明レベルを上げる為にこんな回りくどい事をしていたわけかよ。頭の中狂ってん
じゃないのか」

団長「いやぁー、それともう一つほど目的がありまして。はははは」

団長「人類の更なる可能性を伸ばす……即ち進化だ」

団長「キミら魔物は人間が進化した形といえる。えっと、新人類と呼んでいたね?」

1「そう! 我らこそ選ばれし存在であり、全てを支配する頂点なのだ!」

1「まさか、我ら魔族へ対抗する為に進化を狙っているとでも? だとすれば情けない話だ」

団長「対抗? そもそも目じゃないんだよ。人間と魔物と戦いはもう古いぞ」

団長「人間は生物の、世界の頂点を狙える可能性を秘めている。学べるからね」

団長「ああ、勿論キミらも例外ではない。だからこそ人間と魔族は互いに歩み寄り、進化の秘法を手に入れるべきなんだよ」

1「随分と懐かしい言葉が出てきたな…!」

1「″進化の秘法″! かつて地獄の帝王と呼ばれる者が創りだしたもの……なぜ人間がそれを知る?」

団長「その邪神(地獄の帝王)とやらと敵対していた神が僕の妻だったもんでね。色々聞かせて貰ったんだ」

団長「もちろん、魔族がその進化の秘法を求めて過去に様々な実験を行っていたことも」

1「ぬはぁー! 生意気な家畜が…ッ!」

団長「その産物こそが今外でうろついてる人喰いたち。そして、魔剣だろう?」

団長「進化の失敗作とはいえ、魔剣から何かヒントを得られるかと思っていてね。おじさん、あっちゃんたちに回収を頼
んでおいたんだよね~」

団長「だから、魔王倒すのは二の次」

1「魔王がどうでもいいだとぉ!? よくないよくない! ダメ!」

1「進化なんぞ魔王を倒した後でいくらでもどうにかなるだろう!」

団長「まぁねぇ。でもほら、おじさんって興味ある物にしか手つけたくない人だから」

1「知るか! ……それより貴様は何故進化に拘る? 進化の末、頂点に立つことだけが目的か」

団長「先のことは何にも考えてないが? 僕はね、神へ近づく…というか人間自身が神となれる事を信じているんだよ」

団長「たかがエルフの女が神を語れるほどの力を持てるんだ。人間も進化を経て力を持てば」ニヤァ

1「……む? 貴様、進化の秘法を得れば確かに人間は力を得るかもしれん」

1「だが言ったではないか。文明レベルを上げたいと。それでは世界樹の不思議な力を頼っていた現状と変わりなくなる
のでは?」

団長「やっべ、口滑らせすぎちゃった」

1「はい?」

1「……貴様、本当に″人類″の進化を目的としているのか? 何か別の言葉に置き換えては…」

団長「そういえばさ、あっちゃんとの通信が途絶えちゃったのよねぇー。困ったわー」

1「誤魔化すな!」

団長「ん? そちらさまは魔王の生死が気になってるんだろ? なら、通信できなきゃ困るでしょーが」

1「それは……」

団長「まぁ、アイツ等と一緒だから何かトラブルは起きるとは思っていたけどね」

団長「それよりさ。ちょっとこっちの通信機の方聞いてみてよ。こっちはおじさんの娘に持たせた方なんだ」

1「はぁ? ……どれどれ」

通信機『ザーザー…! ザーザー、ザ、ザザッ……! ぶひー』

1「?」

通信機『ぶひー! ぶひー! もぉ~、コケー……ザー、プツンッ』

1「マジ家畜どもの鳴き声しか聞こえなかったわけだが」

団長「ね。アイツはドジだからな、変なとこに落っことしたわけじゃないよねぇ?」

団長「しかし、発信があった場所は農村でも牧場でもないわけだ」

団長「町なんだよ。だいぶ大きなところでさ」

1「ふーん? 別に我らには関係ない話だ。それに貴様がどうなっていようと知ったこっちゃない」

団長「いや、それが結構重要な駒だってことを最近知ってね……。どうしてもこちらに戻さなきゃいけなくなっちったわ
けヨ」

団長「おじさんあの子嫌いだけどね、力には興味があるから」

キン、キンと刃が激しく混じり合う音だけが部屋に反響し合う。

重騎士は珍しく剣を構え、騎士の攻撃を紙一重に捌く。

騎士「おらっしゃぁあああーーーーーッ!!」

重騎士「」ガクッ

騎士「!」ピタッ

騎士「重騎士殿……。手を貸しましょうか」

重騎士「気遣い無用! と、強がっておきたいところだが」

重騎士「どうも体が思うように着いて来なくなったものだ。腰を痛めそうだ(笑)」

騎士「笑い事ではありませんぞ。私が無理を言って貴方へ鍛錬に付き合ってもらっているのです、これ以上は体に響く様
な真似はさせたくない…」

重騎士「そうか。ならお前のその言葉に甘えさせて貰おうか」

騎士「ええ」

重騎士「らしくないじゃないか?」

騎士「は?」

重騎士「随分と大人しくなったと言っている。わしが知るお前はもう少し激情に身を任せる様な騒々しい男だったが、成
長したか?」

騎士「……いや、恐らくはそうならざるを得なくなってきているのでしょう」

重騎士「状況がお前を変えたか。あまり流されるなよ、わしが言えた口ではないが」

騎士「滅相もない! あなたからは様々と学ばせていただいているのだ」

騎士「何か他にも目が着いた点があれば、遠慮なく指摘をお願いしたい」

重騎士「お前は変わらず若いなぁ」

騎士「……今の騎士団に不満がないと言えば、それは嘘になるでしょう」

重騎士「改まってどうしたのだ?」

騎士「いえ、改めて誰かに聞いて欲しいのです。まずいでしょうか?」

重騎士「いや、続けなさい……。誰に告げるつもりもない」

騎士「はい!」

騎士「重騎士殿、私は こうてきしゅ を討つまでは騎士団から抜けるつもりはない」

騎士「奴とは、騎士として最後まで相手をしたいのですよ」

重騎士「お前があの勇者にも、騎士の階級に拘ることも何故かは知らんが」

重騎士「阿呆ということだけはわしにも理解できるな」フー

騎士「それはあんまりだぁ!!」

重騎士「理由を問うても、騎士道精神がー強者がーで全て済ましてしまうのだろう?」

重騎士「お前は昔からそうだ、自分に正直すぎる。毎度の考えなしの行動がそのまま答えだ」

騎士「ぐ、ぬ、ぬぅぅぅ……!!」

重騎士「はっはっは、直せとは言わんよ。お前のソレはいつか何らかの活路を開くやもしれん」

騎士「え、どうしてそう思うのです?」

重騎士「長年の勘という奴だろうな、恐らくはな」

騎士「重騎士殿は今の騎士団、いえ、騎士団長殿を見てどうお考えだろうか」

重騎士「わしはいつの時でもあの男に着いて行くだけよ」

重騎士「盲信だと言われようが、何だろうがだ。それが部下という物ではないか?」

騎士「それではただの便利な道具……げふんげふんっ!」

重騎士「それでいい。わしはあの男にとって利用できる道具であればいいのだ」

騎士「何故です? その考えは納得がいかない。あなたはこうして人の上に立つべき…」

重騎士「偉そうにするのは苦手でなぁ」ニコ

騎士「間違っている……。あなたこそ騎士団長として我々を先立って引っ張っていくべきなのです!」

騎士「今からでも遅くはない! こうなったら下剋上だ! 私をあなたをー!」

ガチャリ

騎士「うっ……!?」

重騎士「そこまでにしよう。これ以上の言葉はわしも許容できそうにない」

重騎士「いやいやと気に食わん者の後ろを着いて行くのは辛かろう。やはりお前は抜けるべきだ」

騎士「……」

重騎士「一度汗を流して来い。それではな」

騎士「う、うう……」

魔人『ふぇぇ・・・お腹減ったよぉ・・・』

魔人『レバ刺しチュルっと頂きながらビールで喉を潤わせたいよぉ・・・』

ぽい!

魔人『ふぇ、ふぇぇぇ~・・・お菓子が投げ込まれたよぉ・・・食べていいのぉ?』

魔導騎士「いいよ」

魔導騎士「気分はどうかな。寂しくはない?」

魔人『やさちいおいたんがいるから大丈夫だよお・・・!』バクバク

魔導騎士「そう、よかったね。もう少しボク、ここにいていいかな」

魔人『ふぇぇ・・・』

魔導騎士「怖がらなくていいの。ボクたちは――なんだから」

魔人『ふぇぇ・・・僕とおねえたんが・・・』

魔導騎士「そうだよ。あらためてよろしくね」

魔導騎士「ボクたち仲良くできそうだよ……うふふっ」

魔人『ふぇぇ・・・!』

商人「はぁ、家の中は酷い有り様だ。恐らく魔物たちに荒されたんだろうな」

商人「父さんも母さんもいなかったし、僕はこれからどうしたら……」

止まらない不安は溜息を漏らすだけで増幅していくようだ。
商人は生存した村人を求めて村の中を一人うろつく。

しかし、村の惨状からしてそれは絶望的だった。

商人「知り合いの家も、悪友のみーくんの家もボロボロだぁ」

商人「うう、みんな喰われてしまったのか……!」ガクッ

商人(そういえば、勇者くんたちは何処へ行ってしまったんだろう。僕一人で心細いじゃないか)

商人「お、おーい……人がいたら返事を、魔物は呼んでないよー……おーい」

し~~~ん

商人「……いやだぁ、こんなのあり得ないだろ。僕がどうしてこんな目に合うんだよっ」

商人「うわあああぁぁぁ~~~~~~……あ?」

面を上げて正面を見れば、そこには村長の屋敷が。

門の前には人影もあるぞ!

商人(人がいる! …さ、最後の希望だ。もしかしたらみんなはいるかもしれない!)

商人「おっ―――――――」


ひそひそ、ひそひそ


商人「!?」

逸る気持ちを抑えて商人は物陰へ身を隠した。
何故なら、屋敷の前に居た人間は船上で彼らと対峙した黒騎士だったのだ!

黒騎士「ヒソ……モンダイナク、ヤレテ…イヒィー……!」


商人(あ、あいつ!)

商人「ウソだろ! 希望どころか絶望が増すばかりじゃないか!」

商人「どうしてあの騎士が生きているんだよ。確か細切れになって海へ落ちたはずだろ!?」

商人「なのに……はっ!」

黒騎士の両手に握られた二本の剣を見てハッとした。

それは魔王が所持していた魔剣と、僧侶が人喰いから貸して貰った魔剣2号!
なぜ敵が魔剣を・・・。

商人「僕には今何が起きているかよくわからない! だってあの魔剣は!」

商人「……まさか、中にみんながいて、アイツらに何かされているんじゃ」

できるだけ黒騎士に気づかれないように物陰から物陰へと移動を繰り返す。

爆発しそうな心臓を抑えて、ギリギリの距離まで接近した。さらに聞き耳を立てる!

商人「はぁ、はぁ」


黒騎士「ゲヘェッ! お、オレはよぉ~~~白ちゃんに言われた通りにしたんだぜ。完璧!」

黒騎士「例の剣は回収し終えたッ! さらに中の奴らヲ爆弾化した……」

黒騎士「お、お、オレぇの力と! 白ちゃんの力が混ざれば! さ、ささ、最強だろォ!!」

黒騎士「……あい、あい、わかっテるヨ。逃げ道は完全に塞いだッ! 前も後ろも、出ようとしたラさ、アイツ等ドカァー
ンだゼ!」

黒騎士「ゲヘァッ!! なんだかよォ~…白ちゃんの言う通りに動くト、全部上手く行くって確信ヲ持てるぜぇ~~~」

黒騎士「わかってるゼぇ、抜かりはねぇ。お、オレは門の前で奴らを待つ。蝿一匹逃がさねぇよゥ!」


商人(や、やっぱりだ! アイツら、中にいるみんなを襲っている!)

商人(誰との会話かは知らないけど…聞く限りでは、屋敷にいるのは勇者くんたちだけじゃない)

商人(い、生き残りがいたんだ! 良かったぁ!!)

商人(……しかし、そうなるとこれ以上僕の村の人たちを脅かす真似は許せないぞ)

商人(奴は屋敷の周りに何らかの罠を仕掛けてる。″蝿一匹逃がさない″らしいからな)

商人(門から出たら黒騎士が。だけど、屋敷から出るには門を通るしか道はない……)

商人(いや、無理矢理壁を越えたり、崩す事で道は作れなくもないんだ……)

商人(…周りに仕掛けたのならば、敵はそれを予め予想して行動を起こしているのか)

商人(裏を掻かれている! 中のみんなも危険を察知しているなら門から出ようなんて考えは起きないはずだ)

商人「……ぼ、僕が何とかして罠を見つけなければ!」

黒騎士は屋敷ばかりを気にして背後に気を配り切れずにいる。
商人は廃屋の中や影に隠れながら屋敷の裏を目指した!

商人「父さん、母さん……っ!!」タタタ

屋敷の裏手


商人「はぁはぁ、ひぃー……こんな事なら、運動しておくんだった!」

商人「さぁ、息を切らしている場合じゃないぞ。奴らの仕掛けた罠を探さなきゃ」

商人(あの黒騎士って奴は僕たちの前でただの武器を爆弾に変えてみせていたな)

商人(奴が仕掛けたというのなら、爆発物という可能性が高くはないか)

商人「でも、武器じゃなくても石ころとか壁自体を爆弾に変えられていたら!?」

商人「探せっ……目を凝らして不審な物をっ……!!」キョロキョロ


< ワーワーキャーキャー・・・・・・


商人「!」

悲鳴が上がった。声の方を振り向けば、そこには壁を崩して外へ避難しようとしている村人たちの姿がある!
後ろには村長である親方の姿も!

商人(や、やっぱりみんな門ではなく裏から……! 本当に生きていたんだ……!)

村人たち商人に気づかず、反対方向へ止まらず一気に走りだした。
親方の制止の声は届かず、皆パニックに陥っている様子だ!

親方「皆の者一旦静まれッ! 静まりたまえェーッ! 落ち着くのだ!!」

親方「わ、私の話を―――」

商人「親方様ぁ!!」

親方「! ……お前は、無事だったのか」

商人「親方様、危険です! 騎士は裏手側にも罠を!」

親方「あぁっ!?」

商人「親方様!!」

親方「ぐぬ…止まれと言っているではないか!! 私の言う事を聞いて止まりなさい!!」

「わあああああああああぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!」

「いやあああああああああああああっぁぁぁっぁぁぁ~~~~~!!!」

村人は我先に前へ前へと走る。時には男が女を突き飛ばし、女は子どもを放って。

阿鼻叫喚の光景が二人の前に広がり、思わず茫然とする。

商人「み、みんな、当たり前だけど死にたくないんだ…」

親方「あのまま混乱に塗れていては助かるものも助からん! すぐに連れ戻すぞ!」

親方は村人たちの後を追う! 遅れて商人もそれを追った!

転んだ者を起こしあげ、足の遅い者の手を引き。

そんな中、彼は見つけたのだ。

商人(…………父さん、母さん!? 生きていた!!)

前を走る集団の中で父と母を見つけた。とっくに死んだとばかり思っていた二人が、生きている!

この状況でそれを喜ぶのは違う。だが、自然に涙が溢れて口元も緩む。

商人「う、うあー……まじか…おおお、そうか。よかった……っ」

商人「本当に、よかったぁ…!」

すぐに二人の元へ駆け寄り、声をかけたい。足を踏み出したその時に、商人は気づいた。

集団が向かうその先へ不自然に置かれている剣の存在に。

商人「ダメだあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

それへ近づかせてはいけない! あからさますぎる! 直感でも剣は罠だとハッキリ感じた!

商人は全力で走って、集団へ突っ込んだ!!

引っ張り、突き飛ばして転ばせ、言う事を聞こうとしない彼らを強引に止める。

しかし、それでも前へ出ようとする人間が。まるで暴れ牛ではないかと思うぐらい勢いが止まらない。

商人「待ってくれ! それ以上先へ進んじゃダメなんだ! 止まれよぉ!!」

止まらない! 村人は足を止めない!

その中には自分の父の姿があった。あったからこそ、商人は勇気が沸いたのだ。

商人は再び走りだした。前の集団を追い越し、剣へ手を伸ばす。

ただ家族を死なせたくはない一心を胸に抱いて。

商人「ふ、んっ…!」ガシッ

剣を取り、胸の中へ抱えて勢いのまま脇道へ転げた!
その時に偶然だろうか、最後の瞬間、商人は父と目があったのだ。


商人「う…うあ゛ぁああああああああああああああぁぁぁああああぁあああああぁぁぁぁ――」


どんっ、ドカーン!!

突然の商人の妨害、そして傍らで起きた爆発。
村人たちの足は止まり、どよめく。中にはまた泣き叫ぶ者たちもいた。

親方「な、なんだと……そんな……」

親方「はっ……」

黒煙が風邪に吹き去り、その場に残っていたのはかろうじて人間だった物の何か。

背後からは親方へ救いを求める声だけが浴びせられている。
しかし、そんなものは頭の中に入って来なかった。

またも大切な村人を一人死なせてしまったのだから。

「親方殿ぉー!!」「親方さまどうか我々を助けて…」「いやあぁぁぁ…」

親方「静まるのだ」

男「……俺の息子だ。コイツは息子の顔だった」

男「目が、最後に合ったんです……。なのに、俺は」ガタガタ

親方「ああ……、わかっている」

男「親方さまぁぁぁ……俺は、こんなの嫌ですよぉぉぉー……!」

親方「下がっていなさい」

男「え?」

親方「下れと言ったのだッ……!!」

地面より生えるようにして黒騎士がその場へ姿を現した。
生きている村人たちの姿を一人一人数えて、舌打ちを一つ。


黒騎士「全員殺せッて命令よぉおー、ちとハードかもしれネぇぜ……想像以上に多すぎた」


黒騎士「だぁぁぁがよォ~~~白ちゃんの頼みとなれバ、オレはやってのけるぜぇへー!!」

親方「……」

親方「解せん。実に解せん男だ、憤りを感じる」

黒騎士「あぁぁぁ~~~? 何ですかぁ? ゥオレに何か用ですかぁ? え?」

親方「たった今、その用事とやらができたな」

僧侶「お二人とも! 例の、黒騎士です……。黒騎士は生きていたようですね……」

戦士「あ、あの野郎! しつこいったらねぇよ!」

魔女「やっぱし裏へ周っていましたのね。村人全員殺すつもりかしら」

僧侶「そうでなくとも、この場に村人の方々を残すのは危険です。すぐに離れさせないと」

戦士「ああ……。僧侶ちゃんたちはそっちを任せる。俺は奴を」

親方「…手出し無用だ、人間!!」

親方「あの男の相手は私が務めよう。貴殿らは皆を頼みたい」

戦士「お前……大丈夫なのかよ?」

親方「どのみち今の貴殿らでは戦力にならんだろう。分かれば下れ」

黒騎士「へっへェーーーッッ!! おっさんがオレとサシでやり合うつもりだとォ? ただのおっさんがァー。へぇー
ッ!!」

黒騎士「5秒で殺す自信がオォレにはあ、あ、あるゼェ……」カチャリ

戦士「アイツ…!」

親方「邪魔だ、早く行け。彼らが待っているだろうが」


戦士たちを急かして逃がすと、黒騎士と親方二人のみがその場に残った。

二人はお互いに距離をゆっくりと縮めながら近づく。

親方の拳が黒騎士の兜へ打ち込まれた! 拳の皮膚は破け、血が流れるが彼はそんな些細な事を気にしない。

生まれて初めての、感じた覚えがない怒りに頭の中を支配されているのだ!


黒騎士「う゛ぇへぇへえええヴぁえー……(^p^ )」

親方「侮るなよ、犬畜生。貴様はこれから我が圧倒的力の前にひれ伏す事だろう」

親方「さて、自信が砕かれる覚悟はできたかね……!?」ピキピキ

黒騎士「ぎゃっひぇひぇひぇはっはぁッーーーーーッッ!!!」

親方「グブオオオオオオオオオァァァァァァァァーーーーーーッッ!!!」

ここまでよ。メリークリスマス

魔王「魔剣は、魔剣は何処へ……何故なのだ?」プルプル

魔王「あのインチキ職人も何処行った! あやつ、まさか魔剣を持ち逃げしたのではなかろうな!」

魔王は部屋の惨状には一切触れる事なく、魔剣の行方しか頭にない!

魔王「最初からあの男は信用なかったのだ。嫌な予感もプンプンしておった…余はここまでのハプニングを求めたわけで
はないぞッ」

魔王「ええいっ、むしゃくしゃするである…」

女『あーはははははははっ!!』がばっ

いきなり魔王の背へ女村人がとびついてきた! やはり様子はおかしい!

魔王「…余が貴様をわざと相手しなかったと気づかなかったようだなァ~」

女『ヒヒッ』

魔王「雑魚の雌豚如きなんぞアウトオブ眼中!」がしっ

魔王は女を背負い投げた! 女は派手に机へぶつかり、気を失ってしまった!

女『  』ピクピク

魔王「フンッ、哀れなモブめ! 貴様が爆発しようが余にはダメージ0であるわ!」

魔王「阿呆騎士に何されておるかは興味すら沸かんが、無駄に命を散らす事もあるまい。騒ぎが収まるまで寝ておれ」

魔王「……にしてもである。マジであの騎士を仕留め損なったというのなら、魔剣をあやつがパクったとか?」

魔王「細切れにして生きていた、考えられるはアンデッド。そしてアンデッドならば魔剣に触れようが危険はない、
か」

魔王「うし」

魔王は全身に力を溜め始めた! 大気が震えだす!

魔王「奴の疑似魔法は既に封じれる事だし、この村ごと一気に破壊したら手っ取り早ーい!」ゴゴゴゴゴ

女勇者「どうしてそうなるんですかぁっ!?」がしっ

魔王「ンむ?」

魔王「貴様おったのか。そこの雌豚以下の存在感よのぅ」

女勇者「ああ、酷い! ていうか、村をぶっ壊すなんてダメだよ!」

エルフ「私もいます」

魔王「お、もっと気づかぬかったわ。よぉ、影薄組」

女勇者「いやいや……。それより勇者さんどうしてまだここに? てっきり脱出済みかと」

魔王「魔剣の回収である」

エルフ「とにかく無事そうでなにより。他のみんなは」

魔王「知らんけど?」

女勇者「あれ、みんなと一緒だったんじゃなかったんですか?」

魔王「それは先程までの話よ。余はあやつらに構っておる場合ではないのだ!」

魔王「貴様らこそ今まで何しておったのだ? かくれんぼ?」

女勇者「私たちは…そのぅ……」チラ


村人たち『あああぁぁああぁ~~~……』ぞろぞろ


女勇者「逃げようとして、ここまで追い詰められちゃったっていうか、なんてかー…」

魔王「かくれんぼにしては鬼が多いなァー!!」

エルフ「あなたとここで合流できたのはとっても幸い。何とかできないかな」

女勇者「殺す以外でお願いします!!」

魔王「はっはっ、他力本願とは情けのない糞どもであるなァーッ!! 大人しくあやつらに殺されておれよ!!」

女勇者「そ、そこをなんとか!」

魔王「……耳塞いでおくがよい」

女勇者「はい?」

魔王は大きく息を吸い込むと、大声をあげた!


魔王『キエエぇぇぇーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!』どーん!


びりびりびりびり・・・


女勇者「ぎゃああぁぁーーー!?」

村人たち『  』

魔王「貴様らは人へ貸しを作るのが得意だな。ほれ、行くぞ」

エルフ「待って」

魔王「あァーん!? まだ何かあるのか、余は忙し」

女勇者「  」ピクピク

エルフ「この通りです」

魔王「丁度良いからそのまま捨ててゆけ! どうせ足引っ張るゴミである!」

エルフ「それはひどいと思う。頑張ってるのに」

魔王「雑魚で真面目な努力家ほど邪魔な者もおらんのだ。余は知らん」

魔王「ところで貴様は魔剣の行方を知らぬのかよ? 白状するのだ」

エルフ「そう言われても困る。本当に何も知らないから」

魔王「貴様も役立たずのうんこであるなァ~~~!! 貴様も女勇者と共に気を失っておれば良かったものを!」

魔王「フン、助かったことを感謝せよ。後は自分たちでどうにかするのだ」

エルフ「待って」

魔王「……余は便利屋しておるわけではないのだがなァッ?」

エルフ「勇者の推測通り、魔剣は例の騎士が持ち去ったと思われる」

エルフ「私も絶対の自信を持って言ったわけではないけどね」

魔王「つまり、あやつを見つけてぶち殺せば魔剣も取り戻せると……」

エルフ「さぁ」

魔王「いや、決まりである。ちまちま探すよりそっちの方が余は好きだ!」

魔王「というわけで貴様も手伝え。糞騎士を見つけるである」

エルフ「手伝う。だけど、交換条件を出します。彼女を背負ってまずは屋敷を出よう?」

魔王「やだッ!!!」

エルフ「魔力感知能力は私の方があなたより上。そういうのは得意だよ」

エルフ「断るのと、彼女を連れて屋敷を出る。どっちが賢い選択かな」

魔王「う、うがああああァ~~~ッ!! だから貴様は好かんのだ、チビがッ!!」

エルフ「あなたも男の人の平均として見れば小さいです」


魔王「」プツン


魔王「ぎゃああああああァァァ~~~~ッッ!!!!」

魔王の攻撃!

魔王の拳がエルフ目掛けて伸ばされる! しかし、エルフは伏せた!

魔王「あァ!?」

村人『がぶぅ~~~…………!』メキメキ、ドヒュー…

魔王の攻撃はエルフの後ろにいた村人へヒット! ぶっとんだ!


エルフ「可哀想なことをしてしまったかな」

魔王「貴様が避けたからであろうがッ!!」

エルフ「勇者、あまり油断はしない方がいいと思う」

エルフ「さっきから辺りで嫌な気配ばかり感じるの。今現れた人間だって」

魔王「貴様ァ~…余をうまく使ってくれたようだなァー…あァん!?」

エルフ「そんなこと今はどうでもいいです。敵に位置が知られている」

エルフ「だからこそ、女勇者くんを連れて脱出しなければいけない」

魔王「粗大ゴミ勇者なんぞ死なせておけばよいものを…!」

魔王「それにしても、ただの人間を操って襲いかからせてくる戦法。覚えがあるというか、懐かしさを感じてくるわ」

エルフ「前にも同じことが?」

魔王「おう、貴様には関係ない! 黙っておれ!」

魔王は女勇者の服の首襟を掴むと、引きずった。

魔王「何をボサっとしておる? さっさと着いてくるのだッ!!」

エルフ「はい」

僧侶「皆さん、逸れている方はいらっしゃいませんか? 全員着いてきていますね?」

「私たちは一体どうなるんだ…」「怖いよぉ…」「おかあちゃん…」

「助けてくれよぉー……」

魔女「だぁー! 一々メソメソしてんじゃねぇ、ですわ! 情けないわねぇ!」

僧侶「彼らは今まで争い事と無縁の生活を送ってきてますからね。仕方がないですよ」

僧侶「だからこそ、関係のない人々を巻き込んだあの騎士は絶対に許せません」

魔女「それは置いておくとしても、こっちにはアイツに貸しがあるの。ぶっ殺しますわ」

戦士「だな」

戦士「でも、今俺たちが優先すべきは村人を安全な場所まで避難させることだからな」

戦士「魔女っちはこれ以上おっかないこと喋って、あの人ら脅えさせんなよ?」

魔女「承知、承知。それより安全な場所って? 村の外でも危険でしょう?」

僧侶「港の方まで行きましょう。あそこならここよりまだマシですからね」

戦士「そうなると、この人数で移動するのは少し大変ねぇ……。俺ら今魔物と戦える状態でもないしよ」

魔女「戦士がでしょ。私は平気よ? だって魔法が使えるし」

僧侶「え? 使えませんよ?」

魔女「は?」

僧侶「お忘れですか? 2号も魔剣ちゃんと一緒にお渡したんですから」

僧侶「戦士さんのお話する通り、私たちも今ちゃんと戦えるかどうかですね……」

魔女「あっ」

戦士「……助けて欲しいのは、ぶっちゃけ俺らも同じってことよ」

白騎士「…フォォ」

メリー『フン、どうもあっちさんも気づき始めたようねぇー』

メリー『暗黒姉ちゃんサ。向こうにも高い魔力感知能力を持った奴がいるって、話に聞いてなかったんですけどぉ? ねぇ?』

暗黒騎士「……」プイ

メリー『かぁーっ……知らねぇなら知らねぇとハッキリ肯定して見せたらどうだい。プライドだけは一丁前なんだから困
る!』

メリー『それと隠し事はウチらの中では無しにしよーよ。言う通りに動いて欲しいならさぁ?』

メリー『あたしらにまだ話してない情報とかあるんじゃないの? え? 喋っちゃいなよ~』

暗黒騎士「……」

メリー『殺すぞこのクソアマぁ~~~ッ!! さっきから何だい!? ダンマリばっかりで……あ』

白騎士は暗黒騎士の口を塞いでいる物を取ってあげた。

暗黒騎士「ぷはっ!!」

メリー『ごっめーん! 喋りたくても喋れないよねぇ、それじゃあ…』

暗黒騎士「今すぐ黒騎士を引かせろ! そして村から撤退するんだ!」

暗黒騎士「お前たちがやっているのはただの虐殺! これ以上関係のない人間を―――」


ぴたっ


暗黒騎士「んぐ、んぐぅ~~~!! ん~~~ん~~~!!」ジタバタ

メリー『やっぱいいや。あんた一回一回口開けばウザいからね』

メリー『安心しな。引く時は引くさ、ウチらも引き際を見極めてしっかりやってんだ』

メリー『適当じゃないんだ、あたしは! 確実にできる事だけをしてんの!』

白騎士「……」コクリ

メリー『まぁ、黙って見てなよ。白ちゃんは完璧だからさぁ~~~、にゅぷぷっ…』

黒騎士「うえへぇぇぇ~~~……あ、あのヨォ、言っちゃあ何だがネ」

黒騎士「オッサン、口ばっかだネェへぇ~~~~~~ッ!!! めっちゃ弱いよぉ~~~うえええぇぇぇん!!」ゲラゲラ

親方「っ……」ボロボロ

親方「これは、違う。私の全力ではないからな……、本当は、強い!」

親方(私としたことがウッカリしてた! 魔王、アイツのワケの分からん呪いのせいで!)

親方は力を振り絞って黒騎士へ攻撃をしかけた!

黒騎士のカウンター攻撃発動! 親方の頭を掴むと地へ叩きつけた!

親方「がっ…!」

黒騎士「″受け身の地獄と死″を……」

黒騎士は親方を踏みつけてぐりぐりといたぶっている!

親方「ガアアアアアァァァァッ!?」

黒騎士「あぁー、もしかしてぇ時間稼ぎのツもりだったとカ? そーいうのオォレ感動しちゃうよぉおおお!!」

黒騎士「げーばばばばばばばぁぁぁ (^p^)」グイ

親方「!?」メキメキ…

黒騎士「どしたましたカァーー? なんかメキメキっ!ていやーな音が聞こえましたがぁー?」

親方(こ、この男は…人間じゃない……。このままでは…わたしは……み、みなを、すくわねばいけないの、に)

黒騎士「丁度このあたりでカナ?」グンッ

親方「ギャンッ!!」ボキィッ!


親方「   」


黒騎士「余計な時間食っちゃったぜぇー。ゴメンよ、白ちゃん」

『気にする必要なんてないよ、黒ちゃん。それより黒ちゃんサ、もっかい勇者ちんとやりあえるかい?』

黒騎士「え゛っ!」

黒騎士「し、し、白ちゃーん……お、お、オレの疑似魔法はアイツにはもう無駄なんだぜ」

黒騎士「アイツのわけわかんねぇ魔法が、封じてくるだよォ~~~ッ!!!」

『だよね。いいさ、黒ちゃんはこれ以上奴の前に姿出さなくていいよ』

『直接攻撃しなくても、引っかけてやりゃあどんな奴でも殺せるしね~~~』

黒騎士「ど、ど、どういう意味かよぉ。オレぇ頭悪ィからわかんねぇ!」

『アンタはあたしの言う通りにしてればいいってハナシ。無茶はすんなよ』

黒騎士「白ちゃんの優しさがオレの中にびんびん伝わってくるぜェ~……へ、へへへ」

『魔剣はどうした? しっかり手に持ってるかい?』

黒騎士「無くさないように鞘に納めてんだけどよ。勇者が持ってた方の魔剣、ありゃあ収まらねぇんだ…」

黒騎士「納めると鞘が割れてよぉー」

『そう。聞いてんのはしっかり持ってるか、だ。どうなんだい? 黒ちゃん大事なトコでいつも爪甘いからねェ』

黒騎士「お、おお。だいじょうぶ! しっかり持って……あリゃ?」

黒騎士「魔剣がねぇええええええーーーーーッ!!! お、おかしいぜ! ゥオレはさっきまで魔剣を……」

「お前が探しているのはコレの事か?」カチャリ

黒騎士「はっ!?」


殺したと思っていた筈の親方がそこに立っていた!

そして、奪った魔剣と魔剣2号を逆に黒騎士から奪っていた!


黒騎士「てンめえええぇぇぇぇ~~~~~~~~~~ッッッ!!!?」

親方「どうした? 怒ってるのか、驚いているのか、ハッキリしたらどうかね……」

黒騎士「何で生きてェ―――」

親方「答える必要はない。それにしても、貴様はいいタイミングでコレを回収してくれたぞ!」

黒騎士「あぎゃぎぎゃああああああぁぁぁぁ~~~ァッ!!」

親方「っくくく……!」

黒騎士がふたたび襲いかかってきた!

しかし、親方の魔法詠唱は既にし終えている! 上空に現れた大量の雷の矢が黒騎士目掛けて一斉発射!


黒騎士「ふえェッ!?」

親方「ふははははははははーーーっ!!!!」

黒騎士は反応し切れずに腕や足を貫かれ、焼かれる!

疑似魔法を展開する隙がない! 残りの矢は側転で軌道を逸れて回避した!

親方「馬鹿めが、逃すものか…」

黒騎士「!」

矢から逃れて体制を整えるつもりが、それが仇となった。

黒騎士の頭の上に現れた暗雲より一筋の巨大なイカヅチが落とされる!

黒騎士「アガガガガガガアガガガガガガガ……」

親方「遠慮なく使わせて貰うぞ! 魔王ッーーー!!」

怯んだ黒騎士へ追い打ち攻撃! 片手に握った魔剣より放つ、親方の


黒騎士「…んぎぎあああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

親方「南無三!」


いなずま斬り! しかし、魔剣に魔法効果は付与されなかったのでただの斬撃攻撃だ!


黒騎士「」ぶしゅうううぅ~~~・・・!

親方「あの世で我が同胞へ詫び続けるがいい!!」

魔王「おう」

エルフ「……」

魔王「何故余がコソコソ隠れて移動せねばならんッ」

エルフ「静かに……」

魔王「もがっ」

エルフは魔王の口を塞いだ。

目の前を洗脳された村人が数人通り過ぎてゆく。

エルフ「もう喋っていい。でも声は小さめでお願い」

魔王「貴様、覚えておけよ! あんな奴らを恐れていては、いつまで経っても前に進めぬではないかっ」

エルフ「今進むのは少しまずいかもです」

エルフ「敵が私たちの様子を詳しく探り始めた。魔力だけでなく、魔法をかけられた村人の目も使って探っているの」

魔王「それもまた疑似魔法か。または2号が既に騎士へ渡っておるのかも知れんなァ」

魔王「……余は思う。今回はあの壁へ潜る騎士一人ではないぞ」

エルフ「私もです。これも確信がないけれど」

エルフ「恐らく、敵は二手に分かれて行動している。船の上で戦った騎士はあなたを恐れて既に屋敷を出たのかと」

魔王「何故そう考えたのだ?」

エルフ「あなたへ挑んでも疑似魔法をすぐ封じられて倒される可能性が高いからね」

魔王「まぁなァ~……で、もう片方が余たちの様子を窺っておるとな」

エルフ「慎重すぎるぐらいに。ずっと見られている気分だもの」

エルフ「それにしても困った。敵の魔力が分散し過ぎて本丸が何処か捜し辛いです」

魔王「のう、敵は今魔力ではなく、人の目を使って″見て″おるのだな?」

エルフ「うん。どうして?」

魔王「フン! 最強な余の力に感謝しろという事である」

白騎士「……フーフー」

暗黒騎士「…ふがふふふ。ふが」

メリー『はいはいはいはい、黙ってなウザい。こっちは今集中してんの』

メリー『おっかしいねぇ~~~…屋敷内の勇者どもの魔力を探っても、パッとしない。まぁ勘づき始めた頃だとは思った
けど』

メリー『人形どもに周辺探らせても姿、匂い、痕跡一つも見つからないのは異常さねェ~…! 忍者でもいるのかよっ
て…』

白騎士「……フォー」

メリー『…ンン? 急に魔力の反応がし出したねェ、奴さんら動き始めたか。それとも見られてんのに気づいてない?』

操った村人たちを使って、さらに周辺を警戒する白騎士。

メリー『屋敷全体を対象にした魔法か、何かか。でなければアッチコッチでこんなに強く魔力が感じるのは―――』

メリー『ンンンン~…っ?』

暗黒騎士「?」

暗黒騎士(白騎士の様子がおかしい。動揺しているようにも見えるが…)

メリー『いた! 勇者兼魔王ちゃんいたけど、コイツはどーいうこったぁ? 何で別々の場所へ配置している人形ども全員
の目に、同時に勇者が映ってるんですかァ~~~?』

メリー『んー?んー? 何で…? 一体何されてんだ、コイツら? さっきの魔力反応が関係しているのかね…? はぁ?』

メリー『ハアァァァァァァ~~~~~~……? コイツら全員、″何が見えてるわけェ″……!?』

白騎士「ふーっ、ふーっ、ふーっ…!!」ガシャン

暗黒騎士「!」

白騎士は突然メリーさんを放り投げて、頭を抱え始めた!

兜の下からいつも以上に荒い息が漏れて聞こえる!

暗黒騎士「ふ、ふが?」


白騎士「ウオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーッ!!」


暗黒騎士「!?」

奇声を上げると、白騎士は体を強くくねらせて暴れ出した!

白騎士「     」

暗黒騎士「ふがーっ!!」

暗黒騎士(自身が許容できない範囲外の出来事に頭がパニックになっているのか)

暗黒騎士(この男、現役時代より抑えが効かなくなっていないか? 精神を安定させる為の人形を自ら放り投げてまで暴れ
るなんて…)

白騎士「フォオオオオオオオォォォーーーーーーッ!!」

頭を壁や床に叩きつけ、手足をじたばた激しく動かすその様子は誰の目から見ても異常。

兜の隙間からは血と涎が流れ、下へ跳び散っている!

暗黒騎士(うわぁ、ばっちい! ……なんとか止めなければ、俺が危ない)

暗黒騎士「ふが―――」


白騎士『ンガァルルルルッ…!!』メキメキ


暗黒騎士「!」

白騎士が四つん這いになって唸り始めると、鎧の背中部分が割れて百の腕が伸び現れた!

腕はどれも人間の物ではない。むしろ、魔物のソレに近いような・・・?

暗黒騎士(なんだアレは!? 化物そのものじゃないか…っ)

暗黒騎士(アンデッド化しただけじゃなかったのか!? ワケ分かんない!!)

白騎士『ハァ、ハァー……』よたよた

落ち着きを取り戻し始めた白騎士は床を這ってメリーさんの元まで行くとまた手へはめ直した。

メリー『ちょっち取り乱しちまったねぇ、ははは…』

メリー『ンフ、楽しくなってきたじゃないかぁ~~~……』

暗黒騎士(こいつ危険だ、本当に人間じゃなくなっている……)

ここまでです。あーあ、もう年末なのね・・・

ここは一体どこなんだ。


俺は今どうなってんだよ。あの時みたいに目の前がずっと真っ暗闇だな。

……そうか俺は知らぬ内にに闇を極めてしまったのか。へへ、納得だぜ。

ああ、何にも思い出せないがもういいのかな。心残りも全くねぇ。


『お兄ちゃん、お兄ちゃん起きて? もうお寝坊さんでしょうがないなぁ…』


いや、あった。俺はアイツをまだ救っちゃいねぇ。

俺は、俺は


『師匠そろそろ起きて! このまま出番ないと超微妙な終わり方になるよ!』

『お前がどうなろうと関係ないけど、お前無しだとパーティバランスが釣り合わないですわよ』


さっきから誰が俺を呼んでいるんだ?

俺はそいつらにまだ必要とされてんのか?

戻らなきゃいけないのか? お、俺は誰なんだ。


『お前はお前だろ。ほら、僧侶ちゃんがお前を待ってるぜ』

『そろそろ起きられてはどうでしょうか? 私だけじゃありません。皆さんが待っていますよ、盗賊さん』


はっ!? 僧侶、ちゃん…!


盗賊「そうだ。俺は盗賊だったんだ……」


……く、くっくっくっ! マジでルート確定してたようだな!

僧侶ちゃん…僧侶ちゃああああああああああぁぁぁぁぁぁんっ!!


『憤怒ゥッ!!』

盗賊「おぐぇーっ!?」メキメキ

『うんこ盗賊くたばれである~! ぎゃはははははァーッ!!』どすんどすん!

『わぁーい! 盗賊ちゃん何度死んでもすぐ復活するねー! まるでゾンビだよ~♪』



盗賊「う、うう…! ぐあああああぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~……――――――――」

盗賊「う、わ、はっ……!?」ガバッ

盗賊「はぁはぁ、はぁはぁ……えー?」

盗賊「何だこれは? 俺は、何故生きてるんだぜ?」

盗賊「確かあの時に俺はあの魔物を道連れにして世界樹の下へ落ちたはず」

盗賊「今度こそ終わりを覚悟して、カッコ良さ気な言葉を残して……それがどうしてだぜ」

?「やっと気がついたようですね、人間!」

盗賊「!?」

側近「あらためて挨拶をしときましょうか。私は魔王様の元側近を務めていた者なのです」

側近「ですから、今はお城に戻れはしないけど。でも! 心は魔族に、魔王様にまだ忠誠を…」

盗賊はナイフを構えた!

盗賊「てめぇ、まだ生きてやがったのか…!」

盗賊(コイツはアンデッド。ギリギリまで僧侶ちゃんの呪文で消耗させてはいた筈だが、ゴキブリ並にしつこい奴だぜ)

側近「むっ、命の恩人に向かって刃を向けるとは恩知らずもいいところですね」

盗賊「何だと?」

側近「あなたは運が良いというか、悪いというか。私と一緒だった事に感謝すべきですね!」

側近「最近まで死んでいたんですよ、あなた」

盗賊「ま、マジで死んでたのかよ……」

盗賊「誰も助けろなんてお前に頼んだ覚えはねぇな。バカかてめぇ」

側近「…恩を仇で返してきた」ムス

側近「別に死体へ戻りたいのなら、お望み通りそうしてあげても構いませんけどね」

側近「あなた一人で私に敵うとでも思っているのですか~?」ニヤリ

盗賊「そいつはやらなきゃ分からねーな…くっくっく…!」

盗賊は側近へ突撃した! 盗賊の攻撃!

側近「……ふー」

盗賊(コイツ! 座ったまま立ち上がる事もしねぇ! おまけに呪文も唱えない!?)

盗賊「舐められたもんだなッ!」

盗賊「―――!?」ガクンッ

側近へあと少しでナイフが届く、その瞬間に盗賊の体は糸が切れたように地面へ倒れた!

腕はおろか首を動かすこともできない。目で側近を視界の中へ捉えるだけで精一杯だ!

盗賊「お、おぉ……!?」

側近「言ったでしょう? あなたは私に敵わないんです」

側近「あなたの体はもう私の物。生かすも殺すも自由って感じなんですね。はい」

盗賊「は、はぁ…?」

側近「えと……体で教えてあげ方が早いかも?」グサッ!

盗賊「!!」

側近は盗賊が落としたナイフを拾って、盗賊の右手を突き刺した!

盗賊「うわあああぁぁーーっ!!」

ナイフはすぐに抜かれたが、傷口から血が大量に溢れだす!

盗賊「ち、ちくしょう! 好きにできんならさっさとトドメ刺しやがれ!」

側近「しーっ。大声出さないで、自分の右手をよく見てくださいよ」

盗賊「……?」

なんと傷口が既に塞がっていた!

盗賊「えっ」

側近「あれ、まだ分かりません? じゃあ次は分かりやすく欠損を」

盗賊「アンデッド……」

盗賊「てめぇ、俺の体に何しやがったぁ!?」

側近「今自分で答え喋ったじゃないですかー。お察しの通りですよ!」

側近「あなたを生ける屍として蘇らせ、私の良いように動く人形に変えました! はっはっは!」

盗賊「……」

盗賊はあまりの出来事に口をあんぐり開けたまま固まってしまった!

側近「あれあれ? 聞こえてましたか? もしもーし……」

盗賊「ポカーン」

側近「魔王様直伝・鼻穴に指ぶっさし! とりゃ!」ズボォッ

盗賊「はっ」フガ

盗賊「嘘だと言ってくれ…マジかよ…」

側近「あのぅ、鼻に指刺さったままシリアスな会話へ入るのはちょっと…」

側近「それにしても私今スッキリした気分なんです!」

盗賊「はぁ?」

側近「あ、私誰かをアンデッド化させるのに自分の血を使って闇の魔法を使うんですけどね?」

側近「何でかどう頑張っても魔法が出てこなかったもんで、この際血と魔力直接飲ませちゃえって。そしたら~」

盗賊「随分思い切った行動起こせるな、てめぇは…!?」

盗賊「それにしても正規のやり方じゃないのに、俺はどうして、こんなっ!」

側近「そうなんですよねぇ、理由はよくわからないんですよ。あー、でも毒気が抜けたというかなんというか」

側近「側近、スッキリ爽快です!!」

盗賊「俺はその反対の状態だぜっ!! よく敵を前にしていい気でいられんなっ…」

盗賊「…ていうかだぜ。何故お前は俺をわざわざ生き返らせた」

側近「あ、えっと…ちょっぴり心細かったなぁー……って…あ、あははは…」

側近「だってですよ!? こんな薄暗くてよく分かんない場所に死体と二人きりだなんて最悪です! 寂しすぎます! 想像
してみてくださいよっ」

盗賊「知るかよこのクソが!! ペット感覚で俺の自由を奪うんじゃねぇ!!」

側近「ふんっ、この際人間で我慢できた私を逆に誉めて欲しいぐらいです!!」

側近「……とにかく。その理由抜きでも今外で何が起きているかもわからないし」

側近「一人でここから出られるか心配なんですよねぇ…」

盗賊「は? え?」

側近「私、極度の方向音痴らしいのでとりあえず案内役が欲しかったというのも理由の一つですかね」

盗賊「……お、俺たちはこんな間抜けと今まで死闘繰り広げてたのか」

側近「怒りますよ」

側近「いいですか。私の目的は魔王様をお城へ連れ戻すこと、ただ一つ」

側近「あなたなら魔王様の居所がわかりますよね? さぁ、案内するのです!」

盗賊「知らねぇ」

側近「…む、ムカつきますけど今まで魔王様と旅をしていたんでしょう? それなら次に向かう町とか」

盗賊「だから知らねぇよ! いつも向かう所は行き当たりばったりなんだよ!」

側近「……無計画すぎます」

盗賊「お前にだけは言われたくねぇ…!」

盗賊「あのバカ勇者の付き人がこんなだったってのは妙に納得が着くな。くっくっく!」

側近「魔王様を勇者と呼ばないで! それに貶さないでください!」

側近「私にとっては大切な魔王様なんですっ。まぁ、あなたみたいな下っ端臭がする人には理解できないと思いますけど
ねっ!」

盗賊「あぁ!?」

側近「あなたならポスト下っ端粋狙えますよー。確実に、ね」

盗賊「意味はよくわからんがムカっ腹が立ってきた…」

盗賊「お前がどうしたいのかは分かった。だが、俺はお前の期待に沿えそうになかったな」

盗賊「さっさと俺を死体へ変えて一人寂しく脅えてるんだなぁ! くっくっくっ…」

側近「あんなに生へ執着してたのに、随分簡単に死にたがる人間ですねぇ」

盗賊「……何?」

側近「ハッキリ寝言で言ってましたよ。死にたくない、俺はやる事が残ってる、僧侶ちゃ~ん……」

側近「…僧侶ちゃあ~ん♪ うぷぷっ」ニヤニヤ

盗賊「てめぇ殺すぜ…ッ!!」

側近「無理ですよ。さっきのでよく分かったでしょう? それに」

側近「よく分からないけど、私も今アンデッドの状態みたいですしね」

盗賊「……自覚がなかったのか?」

側近「最近までは、はい。頭が上手く働かなかったんです」

側近「この足の義足も何なのかって。アンデッドなのに体の修復は中途半端だし」

側近「…まさか、魔物博士が過去に作った不死薬? でもアレは失敗作で廃棄処分したとてっきり…」

盗賊「ワケ分かんねぇ話を一人で言ってんじゃねぇぜ」

盗賊は立ち上がると、この場から去ろうとした。

側近「待ってくださぁーい!!」がしっ

盗賊「うぐぅーっ!?」

足を引っ張られて、盗賊はコケた! 硬い岩へ頭を打つがやはり傷はすぐに収まる。

盗賊(本当に、俺は化物になっちまったのか)

側近「命の恩人を置いて行くなんて最低です! 少し待ってください!」

盗賊「関係ねぇんだよ!! 最初から言ってるが俺とお前は敵同士だぜ、慣れ合いなんて糞喰らえ!」

側近「…確かに私たちは人間と魔物。でも、今は私はそんな争い事に興味はありません」

側近「今度こそ魔王様を連れて帰る。それだけなんです!」

盗賊「ふん、アイツにそこまで拘る理由がわからんな。お前アイツ同類のアホか」

盗賊「それに勇者は、今の状況を飽きてでもなきゃ一生そっちには帰らねぇだろうよ」

側近「ダメなんですよぉ…魔王様はあの方だけなんですからっ…!」

側近「それに……このまま魔王様が帰らなければ、魔王様のお身体が大変なことに」

盗賊「え?」

側近「前に魔王様の魔力器官が機能しなくなった時があったでしょう?」

側近「魔王様のお身体は少し他の生物と特殊で、年に一度薬を投与しなければいけないんです」

盗賊「特殊って…まぁ、特殊だな」

盗賊「だが魔物は大体特殊な体の作りしてる奴ばかりだろ。そんなの」

側近「魔物として見ても特殊なんです!!」

側近「だって魔王様は!――――――あっ」

盗賊「…魔王様が?」

側近「な、なんでもないですよ。人間如きは別に気にしなくていい話ですっ」

側近「今のは聞かなかったことに!」

盗賊「ふーん、事と次第によっては俺が協力するかもしれねぇのにか?」

側近「えっ!?」

盗賊「アイツは嫌いだが、何かあってまた旅の途中でぶっ倒られたら仲間が心配すんだよ」

盗賊「それなら俺が僧侶たちに面倒掛ける前に何とかしてやるだけだぜ」

側近「ほ、本当?」

盗賊「…俺は最近までアイツに迷惑ばかり掛けてたからな。償いみたいなモンだぜ」

側近「――――というわけで、魔王様は普通の魔物とは違うんです」

側近「もしかすれば、魔物を越えた別の何かかもしれません」

盗賊「……今のはマジ話かよ?」

側近「協力してくれるんでしょう? 嘘偽りない話です」

側近「魔王様は完全である前に、あまりにも不完全なお方なんですよ」

側近「だからこそこの側近が一緒にいてあげなくちゃダメなんですよねぇ~♪ えへへっ」

盗賊「…あの謎の変身も、魔力器官が機能しないのに魔法が使えたことも」

盗賊「今ので全部何故なのかわかった気がする。そして」

盗賊「アイツ相手に何人もの勇者が挑もうと勝てなかった理由もだなぁ、く、くくっ…!」

側近「もちろんですよねー!」

盗賊「うるせぇ!! てめぇらは仲間をどうも思わないただの外道集団だ!!」

盗賊「糞野郎どもがッ」

側近「わ、私だってこんな事実知らなかったんですもん…。酷いとは思います」

側近「だからこそ魔王様を大切にしなきゃって! ね!?」

盗賊「はっ、勝手に言ってな!」

側近「それで~……協力の件ですがぁ」

盗賊「…どっちみち、俺もアイツらと一旦合流したい。行けるところまでは行くぜ」

盗賊「協力という形でさっきは話したが、お前が俺に勝手に着いて来い。それでいいな」

側近「え? あー、うーん…よくわからないけど、それで魔王様と会えるなら。はい」

側近「そんなわけで一旦休戦ですね。人間!」サッ

盗賊「あ? コレは何の真似だぜ…」

側近「握手ですよ、握手! 魔王様を連れ戻す為に一緒に頑張りましょうね! えっと」

側近「……下っ端!!」

盗賊「~~~…」

盗賊「俺はお前が大っ嫌いだ。覚えときな」スタスタ

側近「え、ちょっ!? えぇー!! 何なんですかぁ!? あんまりですよ、下っ端ー!」

盗賊「うるせぇ脳無しが!!」



死んだと思われた盗賊と側近の二人。ただでは死にませんTHE似た者コンビ。
昨日の敵は今日の友、二人はそれぞれの思いを胸に魔王一行を目指し始めたのであった!

今年はここまで。色々書くとやっぱりその4内に収まりきらないかなぁ…
下手に終盤に向けて展開急ぐとボロボロになりそうだし、これからもゆったりぐだぐだ書かせてくださいね。すみません

作風もキャラも少しづつ良い方へ直すよう努力してくので、来年も生温かく見守ってくれると嬉しいです。

よいお年を~

親方「魔剣の力はやはり確かな物だったようだな」

親方「そして、もう一振りの魔剣だ。コレさえ持てば魔法を再び使える!」

親方「ふふふふっ! 魔王ォ! この魔剣セットがあれば私は貴様に脅える必要もないというわけだぞ! ぬわぁっはっはっ
はぁー!」

親方「ひ、ひひひ……全ての事が済み終えたら、奴をこの剣でボッコボコにしてやろう」

親方「にひひひひ~……!」

親方は魔剣で自分の手を切りつけた。

魔王のルール魔法効果が消され、変身が可能になった!

親方「にゃあーははははははははァ~~~!! 良い物だコレはぁー!!」

黒騎士「」

親方「ククッ、コイツはまさに鴨がネギを背負ってきたというところかな……」

親方「散々大切な村人を虐殺したのだ。この魔剣は私がいただいて行くぞ」

黒騎士「」

黒騎士「」ピクッ

黒騎士「」ピクピクッ

黒騎士『―――ぅおおぉおおおおぉあああぁあぁああぁ~』

親方「え?」

真っ二つに切り裂いたはずの黒騎士が何事もなかったように起き上がり、欠伸していた!

体には傷一つ残っていない! 完全回復状態だ!

黒騎士「ぶっ殺すます」パキ、ポキ

黒騎士は完全にブチギレているようだ。

親方「……」

親方「~~~~~……!―――――」

親方は即座に呪文を唱え始める! だが、黒騎士の行動の方が素早かった!

黒騎士の攻撃! 親方は呪文の詠唱を中断して魔剣でそれを受ける!

黒騎士「ぎ、ぎぃ!!」グジュ

親方「この剣が持つ効果を理解していないのかね。お前の潜る力は魔剣には通用しないのだよ!」

親方(奴の傷がすぐに塞がっていく。どうも無茶でおかしな動きをすると思えば)

親方「貴様はアンデッドか。しかし、この私がそんな下品な存在に恐怖などはせん」

親方「対処の仕方は、既に心得ているからな……!」

親方は距離を取って呪文を唱える。それは今までのように禍々しい魔力を感じさせない!

黒騎士「殺す殺す殺す殺す、コロスぅーーーッ!!」

地面へ潜り、まるで狙いを定めたサメのように親方へ向かう黒騎士。

親方は慌てない。不敵な笑みをにんまり浮かべて、飛び出て来た黒騎士へ手を向けた!


親方「残念だったなぁ」

黒騎士「!」


親方は回復の呪文を唱えていた! 回復魔法の淡い光が黒騎士の身を包みこむ!

黒騎士「ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁ!?」

親方「アンデッドは細胞を逆に活性化させることで、魔力器官を破壊する」

親方「お前たちは自身のそれに頼らなければ形を保っていられないからな。結果、崩壊を起こすわけだ!」

親方「冥土の土産に持って行くがいいッ」

黒騎士「あああああああああああぁぁぁぁぁ……!!」


黒騎士「ぁぁぁぁ……な、な、なんてヨォ」

親方「は…?」


黒騎士「オメェ、敵のオレを回復させちまうなんてどういう思考回路してんだァー」

黒騎士「おかげでよぉ! 治しきれなかった体ン中の傷が全部塞がったぜぇ!」

親方「何!?」

油断した親方へ黒騎士の攻撃! 顎に蹴りが入った!

ひるんだ親方へさらに追い打ちをかける!

親方「がばぁっ!!」

・・・ぽろり

黒騎士「あ、へ、へ、魔剣は返して貰ったゼ~……。厄介だからな、コイツはぁー」

親方「し、しまった――!」

慌てて手を伸ばすが、黒騎士に掴まれ腕を折られてしまった!

親方「うっ……」

黒騎士「オメェはただ爆破するだけじゃ物足りねェんだゼ!! いっぽー的によぉ、苦しめて、苦しめて! 果てに木っ端
微塵だぁー!!」

親方「な、なぜなのだ……? こ、これはどういうことだぁ……?」

親方「なぜ回復魔法を受けて、なぜ崩壊しないんだ貴様! ま、まさか」

黒騎士「(^q^)」

親方「アンデッドではないのか!」

村人「  」フラリ



エルフ「通り過ぎた。今なら外へ出れる、行こう」

魔王「申されんでもだ!」

2人は村人たちの目を掻い潜ってこっそり外へ脱出した!

エルフ「上手くいったね」

エルフ「でも、私はあなたが何をしたのか理解できなかった」

魔王「目には目を、歯に歯をということわざを知らぬのか? ボケェ」

魔王「疑似魔法に対抗するにはこちらも疑似魔法である!」

エルフ「それはあなただから可能な事だと思えるよ」

魔王「その通りだ! だからもっと余を讃えよ。さぁ、誉めるのだ!」

エルフ「えらいです」

魔王「よし!」

エルフ「――幻視の魔法?」

魔王「うむ。余の中に秘められた疑似魔法…かはよく分からんが力の一つよ」

エルフ「混乱魔法の亜種みたいな感じかな」

魔王「″思い込み″というのは恐ろしい。時にはそれで死ぬことすらある」

魔王「以前、人喰いどもへ向けて余が魔法を放ったであろう? その時はあ奴らが火で焼かれたり、地割れに飲まれたよう
に見えた。そうだな?」

エルフ「うん」

エルフ「あれは単なる幻だったということかな」

魔王「チビエルフのくせして飲みこみが早い。そう、言わばアレは幻である」

魔王「この力の真実に気づいたのは、例の糞騎士との戦いの最中であった。良かったな、余と一緒で!」

エルフ「そこは置いといて」

魔王「あァん!?」

エルフ「村の人たちにはその応用で幻を追わせていると。そうなる?」

魔王「その通り、あ奴らには余の姿を見せておる。敵があ奴らの目を使って追跡してるならば逆に利用してやれば良いだけよ~」

魔王「余は賢いなァ! ふっはっはー!!」

エルフ「でもそんな大きな笑い声をあげたら、気づかれてしまいます」

魔王「やかましい!! 貴様もさっさと魔力を逆探知してそやつを見つけよ!」

エルフ「安心してください。もう探知は終えてる」

エルフ「向こうも探知を恐れて魔力の放出を抑えてたみたいだけど」

エルフ「さっき、ほんの一瞬だけ、まっ黒で膨大な魔力の発生を感じ取れた」

魔王「ハァ? 余には何も感じぬがァー」

エルフ「そう? 私にはまだ肌がピリピリするぐらい感じてます」

魔王「貴様の状態なんぞ一言も尋ねておらんわ、阿呆が。早く案内しろ!」

エルフ「その必要はないと思う。アレを見て」

魔王「あん?」

エルフが示した方向を見ると、霧の中から人影があった。

影は2人へゆっくりとまっすぐ近づいてきている。

魔王「あ奴かァーッ!!」

魔王は引き摺っていた女勇者を放り捨て、影へ突撃する!

エルフ「……でも、少し変かもです」

エルフ「違和感がある。感じた魔力と、ちょっぴり違う」

エルフ「!」

エルフ「勇者待ってっ」

魔王「おーっと手が滑ったなアァ~~~~~~ッッ!!」

魔王の攻撃! 手をピンっと伸ばして、影を狙って刺突した!

?「ごふっ……!」

ぶしゅうーーーーー

魔王「ぎゃははははははぁ~~~ッ!!