ほむら「転校生の鹿目ほむらです」まどか「!?」(926)

早乙女「あ、暁美さん?」

ほむら「鹿目です」

早乙女「え……?」

ほむら「鹿目です」

早乙女「でも……」

ほむら「鹿目ほむらです」

早乙女(書類に不備があるのかしら……)

まどか(わたしと同じ名字!!)

ほむら(朝のホームルームが終わったわ)

ほむら(いつもならこのタイミングでどうでもいい同級生達が色々な質問を投げかけてくるのだけれど)

まどか「わたし鹿目まどか! 同じ名字だね、鹿目さん!」

ほむら「あら、そうなの。随分と奇遇ね。いいえ、ひょっとしてこれは運命なのかしら。きっとそうに違いないわ」

まどか「運命って……。てへへ、よろしくね」

ほむら「こちらこそよろしく」

ほむら(作戦成功ね。まどかの方から積極的に話しかけてきてくれたわ)

まどか「そうだ鹿目さん」

ほむら「……?」

まどか「同じ名字なのに名字で呼び合うとややこしいから、下の名前で呼びあわない?」

ほむら「そうね。私はそれで構わないわよ、まどか」

まどか「よかった! それじゃあわたしはほむらちゃんって呼ぶね!」

ほむら(順調に距離を縮められている気がするわ)

ほむら(作戦第二段階の為にも、このままもっと仲を縮めていきたいところね)

ほむら(お昼休みになったわ)

ほむら(優しいまどかのことだから、きっとここで)

まどか「ねえねえほむらちゃん! 一緒にお昼ご飯を食べよう?」

ほむら(やっふー!!)

さやか「おっ、まどか積極的ー!」

まどか「もうっ、からかわないでよさやかちゃーん」

ほむら(一応美樹さやかの機嫌も取っておいた方がいいかしら?)

ほむら(彼女は弱い人間に対しては優しく振る舞えるところがあるから……)

ほむら「私なんかが一緒してもいいのかしら……?」

まどか「うん! ね、さやかちゃん、仁美ちゃん!」

さやか「おうとも!」

仁美「私もいいと思いますわ」

ほむら「ありがとう……」

ほむら(ちょっと謙虚なふりをすればそれで大丈夫なはず)

ほむら(ここでもう一押し)

ほむら「あっ……。ごめんなさい、やっぱりお昼は一緒にできそうにないわ」

まどか「えっ? どうしてそんな急に……?」

ほむら「お弁当を忘れてしまったの」

ほむら(無論わざと)

ほむら「学校に来るのは久しぶりだったから、食事のことにまで気を配る余裕が無くて……」

まどか「だったらわたしのお弁当を分けてあげる!」

ほむら「そんなことまでしてもらっていいのかしら……?」

まどか「もちろんだよ! だから一緒に食べよう、ほむらちゃん」

ほむら「ありがとうまどか!」

ほむら(ほむー! ほむー!)

さやか「仕方が無い、あたしもおかずを分けてあげよう!」

ほむら「いえ。結構よ」

さやか「何この反応の違い!?」

仁美「そういえば1つ気がかりなことが」

さやか「ん?」

仁美「鹿目さんは今日お弁当を忘れられたのですよね?」

ほむら「ええ」

仁美「ということは当然、お箸も……」

ほむら「ないわね」

まどか「えっ!?」

まどか「はっ、はい、あーん」

ほむら「あーん……」

さやか「ひゅーひゅー! まどかをとられたみたいでさやかちゃん嫉妬しちゃうなー!」

仁美「禁断の愛ですわー!」

まどか「もっ、もう! 2人ともぉ!」

ほむら「まどか。次は私が」

まどか「あ、うん。ありがとう」

ほむら「あーん」

まどか「あーん……。もぐもぐもぐ」

ほむら(幸せだわ)

さやか「ん……? でもよくよく考えると、同じお箸を使っているからってわざわざ食べさせあう必要はないような」

ほむら「そういえば入院していた頃、この中学校に通っている上条という人と話したことがあるわ」

さやか「恭介と!?」

ほむら(危ない危ない。上手く話をそらせたわね)

ほむら(事前に上条恭介と接触しておいてよかったわね)

ほむら(元来の目的は、美樹さやかの契約を阻止するためだったのだけれど……)

ほむら(何がどんな形で役に立つか分からないものね)

ほむら「そういえば彼、上条恭介と名乗っていたわ」

さやか「あー。じゃあやっぱりそれ恭介だ……」

ほむら「下の名前で呼ぶなんて、恋人か何かなのかしら?」

さやか「うえっ!? やっ、やだなー! あたしと恭介はただの幼馴染だっての!」

ほむら「なんだ、そうだったの」

さやか「あいつとあたしが恋人だなんてありえないってーの!」

仁美「……」

まどか(ほむらちゃんとあーん……、ほむらちゃんとあーん……)

ほむら(上条恭介は、決して美樹さやかのことを嫌っているわけではない)

ほむら(いえ……、こんな曖昧な認識では駄目ね)

ほむら(他の世界で、彼が美樹さやかの死を知った際の反応を見る限り……)

ほむら(断言してしまいましょう。上条恭介は美樹さやかのことを、知らず知らずのうちに好いている)

ほむら(ちょっとのきっかけで美樹さやかの恋路はいい方向に転がるはず)

ほむら(美樹さやかの生存は、まどかにとってのベストエンドに欠かせない要素)

ほむら(今までは軽視してきたけれど、今回はこの点にも今まで以上に気を払いましょう)

ほむら(状況を客観的に見て最善手を選ぶのよ、暁美ほむら)

ほむら「そうだわ美樹さん。今度一緒に上条君のところへお見舞いに行かない?」

さやか「い、一緒にお見舞い?」

ほむら「嫌だったかしら……?」

さやか「……ううん。まあ、たまにはそういうのもいいかもね。
      ああもうっ! 恭介の奴、幼馴染と転校生に囲まれるなんて、お前はどこのハーレム主人公だー!」

ほむら(よし、約束をとりつけられたわ)

ほむら(要は上条恭介に美樹さやかのことを異性として意識させられれば……)

ほむら(そうすれば、彼女の恋に関する問題は大方クリアできるはず)

ほむら(そこらへんは、一緒にお見舞いに行く時にちょっと工作をすることで達成しましょう)

仁美「……」

ほむら(さて。今度は志筑仁美ね)

ほむら(美樹さやかの恋路が上手くいくと、今度は彼女の恋が花散ることになる)

ほむら(この点は……、うーん、どうしようかしら)

ほむら(彼女は契約の危険が無いから、急ぐ必要はないでしょうけど……)

ほむら(かといってまどかのことを考えれば、友人の志筑仁美が心に重い問題をかかえることは好ましくないし……)

ほむら(まあ、そこはおいおい考えるとしましょう)

ほむら(それよりも今は―――)

まどか「ほむらちゃん、お口あけて?」

ほむら「ええ。あーん」

ほむら(この天国を満喫するとしましょう)

ほむら(あっという間に放課後だわ)

まどか「ほーむらちゃん! 一緒に帰ろう!」

ほむら「ええ」

ほむら(もうそろそろQBが接触をはかってくる頃ね)

ほむら(このあとの私の行動が上手くいくかどうかが……、全ての成否を分ける!)

まどか「ふふ。帰り道、ほむらちゃんも同じ方向なんだね!」

ほむら「ええ」

さやか「偶然ってあるもんだなー」

ほむら(さて、そろそろかしら)

『助けて!』

ほむら(きた!!)

『助けて!』

まどか「え? え……?」

『助けて! まどか!』

まどか「だ、誰なの? どこ……」

ほむら「げっふう! げっふげっふ!!」

さやか「ちょっと転校生!?」

まどか「!? どうしたのほむらちゃん!?」

『助けて!』

ほむら「じ、持病の心臓病が……、うう……」

まどか「そんな!?」

『助け―――』

ほむら「助けてまどか……」

まどか「う、うん! 大丈夫だからねほむらちゃん。わっ、わたし、保健委員だから……!」

ほむら「ありがとうまどか……」

『助けて……』

さやか「早く病院に!」

まどか「ううん! わたしの家が近いから、とりあえずそこへ連れていってから救急車を呼ぼう!」

『助け……』

まどか「さ、ほむらちゃん。動けるかな? ゆっくりでいいからね」

『……』

ほむら(いよっしゃああああああああ!!)

ほむら(そりゃそうよ! 遠くの誰かより目の前の美少女! 常識よ!)

――――


QB(傷を負って機能低下した身体を引っ張り出してきたのも、無駄骨に終わったようだね……)

マミ「ちょっとQB!? 酷いけがじゃない!」

QB「や、やあマミ。少しドジを踏んでね、使い魔にやられてしまったんだ……」

マミ「じっとしていてね。すぐに治してあげるから」

QB「ありがとう」

QB(ま、駄目になりかけていた個体を修理できただけよしとするか)

――――


まどか「はい、横にねかすよ」

ほむら「うぅぅ……」

ほむら(とうとう合法的に合意の元でまどかのベッドに入り込めたわ!)

ほむら(ついでにまどかとQBの早期接触も避けられたわ)

ほむら(巴マミにまどかの存在を知られずに済んだのも、大きいわね)

ほむら(私の演技力も捨てたものじゃないかも)

さやか「まどか! 今救急車呼んだから!」

まどか「ありがとうさやかちゃん!」

ほむら「あ」

さやか「はい、はい……。本当にすみません。はい……、失礼します」

ほむら「……」

さやか「ふう……。救急車、途中で引き返してもらったから」

ほむら「ごめんなさい……。横になったら、急に楽になって……」

まどか「仕方ないよ! きっと歩いたことで心臓に負担がかかっちゃったんだね」

ほむら「……」

さやか「ま、大事にならなかっただけよしってことで!」

ほむら(全く責められないから逆に良心が痛むわ……)

さやか「さってと。あたしはそろそろ帰ろうかな」

ほむら「私は……」

まどか「もう少し休憩して行ってもいいよ? もし帰るのならお家まで送っていくけど……」

ほむら「……そうね。それならもう少しここにいさせてもらおうかしら」

さやか「2人きりになってもあんまり心臓に負担かけるような激しい運動はするなよー」

ほむら「ちょっと!?」

まどか「??」

さやか「あはは、冗談冗談。それじゃ、おじゃましましたー!」

まどか「あ。玄関まで送っていくね!」

ほむら「……」

ほむら(美樹さやかったら、あんな変な冗談飛ばして……)

ほむら(でもまどかには通じていなかったみたいね。かわいいわ)

まどか「さやかちゃんお見送りしてきたよー」

ほむら「そう」

まどか「ね、最後にさやかちゃんが言ってたのってどういう意味だったんだろう?」

ほむら「さあ。私にもよく分からなかったわ」

まどか「そっかぁ。明日さやかちゃんに聞いてみようかな」

ほむら「それは駄目よ」

まどか「えっ? どうして?」

ほむら「どうしてって、それは……」

まどか「それは?」

ほむら「内緒よ」

まどか「あはは、変なほむらちゃん」

ほむら「ねえまどか」

まどか「んー?」

ほむら「貴女は自分の人生が、貴いと思う?」

まどか「うーん……。そんなこと、考えたこともないかも……」

ほむら「質問を変えるわ。貴女は家族や友達のことを大切にしている?」

まどか「それは……、うん、大切だよ。家族も、友達も」

ほむら「そう……」

まどか「もちろんわたしの大切の中には、ほむらちゃんも入ってるよ」

ほむら「……ありがとう、まどか」

まどか「どういたしまして!」

ほむら「それなら、まどか。今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思っては駄目よ」

まどか「へっ……?」

ほむら「貴女はあなたのままでいてくれればいいの。そうすれば、私が必ず全てを守ってみせるから」

まどか「う、うん……」

まどか(よく……、分からないけど……)

まどか(それでいいのかな……?)

ほむら「さて、と。そろそろ私はおいとまさせてもらうわね」

まどか「大丈夫? 1人で立てる?」

ほむら「ええ、平気よ」

まどか「さっき言った通り送っていくね!」

ほむら「ありがとう」

まどか「さ、行こう!」

ほむら「え……?」

ほむら(手を差し出してきている……。これって、手を繋いでいこうってことよね)

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「いえ、なんでもないわ。行きましょう」

まどか「うん!」

ほむら(まどかを引っ張っていけるぐらいの自分になれるよう心がけているのに……)

ほむら(ふふっ。やっぱり変なところでリードされてしまうのよね、まどかには)

まどか「わっ。夜風が冷たっ!?」

ほむら「大丈夫まどか? 身体が冷えてしまってはいけないわ、見送りはいいから家に入った方が……」

まどか「だーいじょうぶ、平気平気ー!」

ほむら「そう……?」

まどか「うん! だってわたし、保健委員だもん!」

ほむら(好きなのねそのフレーズ)

ほむら(あっという間に着いてしまったわ……)

まどか「ここがほむらちゃんのお家?」

ほむら「ええ」

まどか「でも、表札に暁美って―――」

ほむら(時間停止!!)

ほむら(名残惜しいけどまどかの手を放し)

ほむら(表札の貼り替え!!!!)

ほむら「危なかったわ……」

ほむら「何のことかしら? 表札は鹿目よ?」

まどか「あれ? 本当だ……、見間違いかなぁ」

ほむら「きっとそうじゃないかしら。ほら、鹿目と暁美ってよく似ているから」

まどか「えー、似てるかな?」

ほむら「似ているわ! ほら、目っていう感じが入っているところとか、日本語なところとか……」

まどか「うーん……」

ほむら「……」

まどか「ま、いっか」

ほむら「ほっ……」

ほむら(名字を誤魔化したのは、あくまでファーストコンタクトを円滑にするため)

ほむら(別に誤魔化す理由はもうないといえばないけれど……)

ほむら(でも、駄目)

ほむら(どうして知り合いでもない筈のまどかの名字を騙ったのかという疑問を生じさせる訳にはいかないわ)

ほむら(それに……、運命チックな出会いは大切よ!)

ほむら(まどか! まどか!)

――――


「ほむらちゃんは縛りつけられているんだね」

「まどか……?」

「ううん。さやかちゃんもマミさんも杏子ちゃんも、QBでさえ」

「……」

「だったらわたしが……」

「駄目よまどか! そんなことをしたら、貴女は……!」

「大丈夫。わたしを信じて、ほむらちゃん」

「でも……」

「聞いてQB! わたしの願いは―――」

――――


ほむら(前の世界のまどかは、そうして……)

ほむら「まどかぁ……」

ほむら(守らなくちゃ……)

ほむら(今度こそまどかのことを守らなくちゃ……!)

ほむら(大丈夫。今の私には、とっておきの秘密兵器がある……)

ほむら(たった一度しか使えないけれど……)

ほむら(これさえあれば、必ずワルプルギスの夜を倒すことができる、はず……)

ほむら(だから……、頑張らなくちゃ)

ほむら(さて。現実の問題に目を向け直しましょう)

ほむら(今の巴マミは、表面上は平静を装っているけれど、心の深いところは孤独と不安に満たされている)

ほむら(だからまどかという天才美少女を見つけると、どうしてもパートナーにしたいと考えてしまう)

ほむら(まどかに目をつける趣味の良さは認めるけれど……)

ほむら(やっぱり許せないわ、巴マミ!)

ほむら(今日のところはまどかとの接触を阻止できた)

ほむら(でも、この先も同じように上手くいくとは限らない)

ほむら(色々考えたけれど……、やっぱり、一切彼女に触れないままでいることはできないわね)

ほむら(今夜の内に巴マミに会いに行きましょう)

ぴんぽーん


マミ(お客さん? 隣の人の部屋と間違えでもしたのかしら?)

マミ(ピンポンダッシュという可能性も捨てきれないわね)

マミ(でっ、でも! もし本当に私のお客さんだとしたら!)

マミ(わくわくしてきたわ……!)

マミ「はーい」

ほむら「こんばんは」

マミ「……?」

マミ(誰、この子? やっぱり部屋を間違え――――)

マミ(いえ……、やはり私のお客さんみたいね)

マミ「あなた、御同輩ね」

ほむら「ほむほむ」

マミ「ほ、ほむほむ……?」

ほむら「ほむぅ……」

マミ「??」

ほむら「どう? 少しは肩の力が抜けたかしら?」

マミ「へっ……?」

マミ(あっ。そっ、そういえば……)

ほむら「私に敵意はないわ。だから後ろ手に隠し持っているマスケット銃をしまってちょうだい」

マミ(お見通し、か……)

マミ「分かったわ」

ほむら「ありがとう」

マミ「さて、と。いつまでも立ち話というのもなんだし、とりあえず上がってちょうだい」

ほむら「ええ。お邪魔するわね」

マミ「紅茶の好みはある?」

ほむら「紅茶よりコーラがいいわ」

マミ「そう? コーラなら……、確か冷蔵庫に……、あったあった」

ほむら「ふーん……」

マミ「うん?」

ほむら「ダイエットコカコーラを飲んでも脂肪は燃焼されないわよ?」

マミ「放っておいてちょうだい!」

ほむら「ふふっ。ごめんなさい、冗談よ」

マミ「まったくもう。で……、何の用で私に会いに来たの?」

ほむら「そうね。では単刀直入に用件を言うわ」

マミ「……」

ほむら「私は貴女の魔法少女としてのあり方を変えさせにきたの」

マミ「変えるも何も、貴女が私の何を知っているというの?」

ほむら「全部よ」

マミ「全部?」

ほむら「一般人に与える被害を抑えるため、使い魔も狩っていること。
      周りを巻き込まないよう、自ら孤独な道を突き進んでいること」

マミ「っ!?」

ほむら「魔法少女はかくありきという高潔な理想像を作り上げ、常にそれを目指して動く。
      そういう姿勢自体は尊敬に値するし、それを長年続けてきた貴女の実力は認めざるを得ないわ」

マミ「そ、そう?」

ほむら「でも」

マミ「……?」

ほむら「確かに貴女には才能があるかもしれないけれど、それでも……。
      けっきょくどんなに強くても貴女は、あくまで10も半ばの少女なのよ」

マミ「だから何だっていうの」

ほむら「つまるところ貴女には、そういう生き方ができるだけの心の強さが足りていないわ」

マミ「そんなことないわ。現に私は、何年も―――」

ほむら「1人で頑張ってきたのよね」

マミ「そうよ」

ほむら「でもそのせいで今、貴女の心はパンク寸前なんじゃない?」

マミ「知った風なことを言わないでちょうだい」

ほむら「ごめんなさい。少し無神経だったかしら」

マミ「かもしれないわね」

ほむら「それでも、これだけは覚えていて欲しいの。
      貴女が孤独でいる必要なんかどこにもないってこと」

マミ「……」

ほむら「自ら作り出したルールで自分を縛りつけるのはそろそろ止めにして、
      少しぐらい誰かに寄りかかってみてもいいんじゃないかしら?」

マミ「……1つ、聞かせてちょうだい」

ほむら「何かしら」

マミ「そんなことを言う貴女は孤独じゃないの?」

ほむら「私には……、うん、私もずっと孤独だと思い込んでいたわ。
      はち切れそうになりながら理想の為に戦って……、そういう意味じゃ貴女に似ているのかも」

マミ「……」

ほむら「でも、あることがきっかけで、ふと後ろを振り返る心の余裕ができたの」

ほむら「そこでようやく気がついたの。けっきょく私は1人で戦っていた訳じゃなかった、ってね」

マミ「そう……」

ほむら「クラスの人。ご近所の人。貴女の周りには、たくさんの人がいるわ。
      誰でもいい。手を伸ばしてみれば、きっと握り返してくれる人はいるはずよ」

ほむら(決まったわ! これできっと!)

マミ「じゃあ……、今私が手を伸ばしたら、貴女は……、手を握り返してくれるの、かしら……?」

ほむら(そうくるのね……)

ほむら「そんなの、聞くまでもないわ」

マミ「!!」

ほむら(まどかがいる以上、あくまで仲間としてだけれど)

マミ「本当に……? 本当に私、もう……」

ほむら「ええ。貴女は独りぼっちなんかじゃないわ」

マミ「……変ね……、凄く、嬉しいのに……なんだか……」

ほむら「無理しないで」

マミ「……」

ほむら「1人じゃないって、そういうことよ」

マミ「うっ、ううっ……ひっく、ひっく……ぐすっ……」

ほむら(ふうっ。なんとか巴マミの考え方に影響を与えられたわね)

ほむら(本当はもうちょっとこう、広く周りに気持ちを向かせるつもりだったのだけど……)

ほむら(とにかく、これで少しは気持ちに余裕もできるでしょう)

QB「やれやれ。あのマミをこうも容易く手なずけてしまうとはね」

ほむら「お前は本当に神出鬼没ね」

QB「君はいったい何者なんだい?」

ほむら「さあ。少なくともあなたの味方ではないわ」

QB「だろうね」

ほむら「そうそう。夕方は、せっかくの迫真の演技をあの子に無視されて残念だったわね」

QB「……」

ほむら「助けて! まどか! 助けて!」

QB「……」

ほむら(ざまー見ろね)

QB「げっふう! げっふげっふ!!」

ほむら「!?」

QB「じ、持病の心臓病が……!」

ほむら「……」

QB「なるほど。君の名演技にはかなわないかもね」

ほむら(何よこの憎たらしさは! やっぱりこいつとだけは分かり合えないわ!)

ほむら「……」

QB「……」

ほむら「まあいいわ。そんなことより、ちょうどいい機会だからお前に警告しておくわ」

QB「警告?」

ほむら「今後一切まどかに近付かないで」

QB「それはできない相談だね」

ほむら「そう。それなら力尽くでの脅しに切り替えさせていただくわ」

QB「やれやれ。勿体ないから、できれば僕を傷つけるのは止めて欲しいんだけどな」

ほむら「早合点しないでちょうだい。お前を直接傷つけても無駄だということぐらい分かっているわ」

ほむら「私の脅しの矛先は、魔法少女よ」

QB「魔法少女……?」

ほむら「宣言するわ。もしこの先、お前がまどかに接触をしたら、その度に10人の魔法少女を殺す」

QB「なっ!?」

ほむら「せっかく契約した魔法少女を、エネルギーを生みだす前に始末されたら……」

QB「……」

ほむら「それはもう赤字まっしぐらよね?」

QB「……君に同胞を殺すとができるのかい?」

ほむら「もちろん気は進まないわ。でも、私はまどかのためならなんだってできる」

QB「はあっ……。どうやら嘘はついていないらしい。分かったよ、お手上げだ」

ほむら「賢明な判断ね」

ほむら「ま、どちらにしろお前は、まどかと契約することはできないのだけれどね」

QB「どうしてそんなことがいいきれるんだい?」

ほむら「これから私が24時間体制でまどかの護衛につくからよ」

QB「!?」

ほむら「ストーカーじゃないわ。あくまでまどかのためよ」

QB「僕は何も言っていないよ」

ほむら「ほむぅ……」

ほむら(さて、今日できることは全て済んだわ)

ほむら(1日でできることって、案外多いものね)

ほむら(さて、と。これからすべきことを整理しましょう)

ほむら(まどかの監視及び護衛。これは最重要事項ね)

ほむら(ワルプルギスの夜の撃破。これも同じく超重要だけれど、時期が来るまでは待ちしかできない)

ほむら(美樹さやかの恋路の成就の手助け。前述の二つほどではないにしろ、重要ね)

ほむら(これに関してはできる限り早く済ませた方がいいでしょうし……)

ほむら(明日にでも美樹さやかをお見舞いに誘ってみようかしら)

ほむら(その他、この町に現れる魔女の退治も順次行うべきね)

ほむら(隙をみて志筑仁美の心のサポートも……)

ほむら(杏子は……、たぶん今回は、絡んでこないかしら?)

ほむら(わざわざこの町にくる理由が無いものね)

ほむら(とはいえQBの動き次第では何が起こるか分からないから、油断はできないわね)

――――


QB「まったく、厄介なイレギュラーが現れたものだよ……」

QB「彼女はいったい何者だ?」

QB「僕たちの目的を知っていた点が非常に気がかりだ」

QB「敵性の異星人……、という線は、薄いかな」

QB「敵対している間柄とはいえ、エネルギー問題に頭を悩ませているのは向こうも同じだ」

QB「僕たちの活動を妨害するにしても、普通は別の部分にするだろう」

QB「行動の規範に感情的な面が見え隠れする点を鑑みると、やはり彼女は地球人である可能性が高い」

QB「だが、何かがおかしい」

QB「彼女からは、この世界とのずれのようなものが感じられる……」

QB「まあいい。隙を作る方法はいくらでもある」

QB「そう簡単に鹿目まどかのことを諦められるものか」

――――

翌朝


ほむら(今日もいい天気ね……)

まどか「いってきまーす!」

ほむら(まどかも元気なようで嬉しいわ)

まどか「……」

ほむら(あら? そっちは学校とは反対じゃ)

まどか(ほむらちゃん体調大丈夫かなぁ?)

ほむら「!?」

ほむら(も、もも、もしかして、まどかは私を家まで迎えに!?)

ほむら(こうしてはいられないわ。早く帰らないと)

まどか「おはよう、ほむらちゃん!」

ほむら「おはようまどか。わざわざ迎えにきてくれたの?」

まどか「うん! もしまた登下校中に体調を悪くしたら大変だと思って……。迷惑だったかな?」

ほむら「いいえ。ありがとう、とてもうれしいわ」

まどか「えへへ、よかった!」

ほむら「……ちなみに」

まどか「ん?」

ほむら「私にこんなに気を遣ってくれるのは、まどかが保健委員だから?」

まどか「うーん……、半分は、そうかな」

ほむら(もう半分は!?)

まどか「さ、いこっか?」

ほむら(だからもう半分は!!?)

まどか「おはようさやかちゃん、仁美ちゃん!」

仁美「おはようございます」

さやか「おっ! 朝から2人で登校とは、本当に仲がいいですなー!」

ほむら(たまにはいいことを言うわね)

ほむら「そうそう。そういえば1つ話しておきたいことがあるのだけど」

さやか「ん? あたしに?」

ほむら「ええ」

さやか「何の話だろ?」

ほむら「昨日話していた、上条君のところへお見舞いにいく約束のことよ」

さやか「ああ、あれね」

まどか「!!」

ほむら「お見舞いに行く日、今日にできないかしら?」

さやか「うん。あたしはいつでも大丈夫だよ」

ほむら「それなら今日の放課後に―――」

まどか「わっ、わたしもついていっていいかな……?」

さやか「まどかも?」

まどか「うん……。上条君とはわたしも顔見知りだし、たまにはって思って」

ほむら「……?」

ほむら(気のせいかまどかの視線を感じるわ)

>>254の続き

――――

前周


「客観的に見ればこれが正解なのかもしれない」

「まどかのおかげでこの世界は救われたわ」

「魔法少女も、魔女も、誰もかも」

「それでもね。私にはどうしても今が幸せだと思えないのよ、まどか」

「だから……」

「私は、貴女が託してくれたとっておきを持って、もう一度過去に戻るわ」

「ごめんね自分勝手で」

「でも大丈夫。もうしがらみに縛られたりなんかしていないから」

「今度は好きなように私らしく動いて、きっと最良解に行き着いて見せるわ」

「……今の私って、何なんだろうね?」

――――

こんこん


上条「どうぞ」

さやか「よっ!」

まどか「おじゃましまーす」

ほむら「数日ぶりね」

上条「やあ。今日はずいぶんと賑やかだね」

さやか「へへっ、成り行き上ねー」

上条「皆わざわざこんなところまできてくれてありがとう。ゆっくりしていってね」

まどか「はーい!」

ほむら(よくよく考えると、美樹さやかを異性として意識させるという目的は……)

ほむら(まどかがそばにいたら達成しにくくなってしまうのではないかしら?)

ほむら(こんなに可愛い子がいたら、ついつい目がそちらへいってしまうのが自然)

ほむら(まあ……、そこは腕の見せ所かしら)

上条「それにしてもまさか鹿目さんがさやか達のお友達だなんてね」

ほむら「そうね、できすぎた偶然に私もとても驚いたわ」

まどか「偶然といえば……、わたしとほむらちゃんの名字のことも凄い偶然だよね!」

さやか「確かに鹿目なんて名字、そこまで多いわけでもないもんなー。
      字は同じでも読み方がかのめだったりとかするし」

ほむら(場が温まってきたところで、そろそろ行動に移しましょう)

さやか「そうそう、今日学校で先生がさー」

ほむら(今よ!)

ほむら「ああっ、心臓がどうこうで目眩が……!」

さやか「えっ!?」

ほむら(こうして目眩が原因で倒れるふりをしつつ、美樹さやかのスカートに手をかけ)

ほむら(勢いに任せてスカートを降ろす!)

ほむら(いくら鈍感な上条恭介でもパンツを見てしまえば、美樹さやかを女子として意識し出すこと請け合―――)

まどか「危ないほむらちゃん!」

ほむら「あ」

まどか「えっ」

さやか「ちょっ!?」

まどか「い……、いやぁあああああああ!!」

ほむら(いやあああああ!! 嘘、何これ!?)

ほむら(見られた!? 上条恭介にまどかのパンツを見られた!?)

ほうほうそれでそれで?

ほむら(じ、時間停止時間停止!)

ほむら(今の内にまどかのスカートを上げて、今のを無かったことにしてしまいましょう!)

ほむら(まどかのスカートをあげ―――)

ほむら(っ!? やばっ!?)

ほむら(力任せに引きずり降ろしたから、スカートのホックが壊れてる!?)

ほむら(し、仕方ない! 応急処置としてまどかには私のスカートを履かせるとしましょう!)

ほむら(そそっ、そして私はまどかのスカートを……!)

上条によるまどかNTRだったらと思うと・・・お、おお

さやか「わぁああああっ! 恭介はあっち見てて!」

上条「さ、さやかっ!?」

上条(そんな風に身体を押し当てられると……、むっ、胸が当たって……)

まどか「いやぁあああ……って、あれ?」

ほむら「そんなに慌ててどうしたの、みんな?」

さやか「へ? あ、あれっ!?」

まどか「……? あ、そうだ! ほむらちゃん、心臓は大丈夫なの!?」

ほむら「平気よ。もう、3人ともいったいどうしたっていうのよ?」

さやか「おかしいなぁ……」

上条「さやか……、その、そろそろ離れてくれると……」

さやか「あっ!? ご、ごめん!!」

まどか「うーん……。ま、いっかぁ」

ほむら(よし、なんとか誤魔化せたようね)

上条「……」

さやか「……」

ほむら(あら? なんだかあの2人……)

まどか「さやかちゃんと上条君、なんだか意識しあってるって感じだね」ヒソヒソ

ほむら「えっ、ええ、そうね」ヒソヒソ

ほむら(よく分からないけれど結果オーライ……、なのかしら?)

まどか「ねっ。2人きりにしてあげない?」ヒソヒソ

ほむら(上条恭介が美樹さやかを意識し出したようだし、これ以上いる意味は薄いわね)

ほむら「そうしましょうか」ヒソヒソ

まどか「さやかちゃん、上条君!」

さやか「っ!? ど、どうしたのまどか!?」

まどか「病院を見学してみたいってふと漏らしたら、ほむらちゃんが院内を案内してくれるって言ってくれたの」

上条「へっ、へえー。病院に興味があるんだ?」

まどか「うん。だってわたし、保健委員だから!」

ほむら「ということだから、私とまどかはお先に失礼するわね」

上条「そっか……。今日は来てくれてありがとう、2人とも」

さやか「あ、それならあたしも―――」

まどか「ううん。さやかちゃんはここにいてあげて。
      急に人がいなくなったら、きっと上条君も寂しいよ」

まどか「あの2人、上手くいくといいね!」

ほむら「ええ。本当に」

まどか「さってーとー。これからどうしようね?」

ほむら「本当に院内を見て回る? 迷惑になるといけないから、見て回れる場所は限られるけれど……」

まどか「そうだね、それもいいかも」

ほむら「まどかは本当に熱心な保健委員ね」

まどか「ううん、違うよ。院内を見て回りたいのは、保健委員だからじゃない」

ほむら「それじゃあどうして?」

まどか「ほむらちゃんがどんな場所で過ごしていたのか、それを知りたいなって」

ほむら「!!」

まどか「さ、行こうほむらちゃん。案内して?」

ほむら「ええ!」

――――


ほむら(今日はまどかとたくさんお話しできたわ……)

ほむら(入院していた頃の院内散歩コースとか、お気に入りの自販機とか)

ほむら(あまり話す機会のなかったことも、知ってもらえた)

ほむら(まどかに自分のことを知ってもらえるのって、なんだか嬉しいわね)

ほむら(……ああ、そういえばそろそろゲルトルートが人を襲う頃かしら)

ほむら(深刻な被害が出る前に退治しに行くとしましょう)

ほむら「ん……?」

マミ「また会ったわね」

ほむら「ええ。貴女もこの魔女の存在に気がついたのね」

マミ「数日前から追っていた魔女よ。やっと尻尾をつかめたわ」

ほむら「折角だし共闘でもしてみる?」

マミ「ふふっ、たまにはそういうのもいいかもしれないわね、えっと―――」

ほむら「ほむらよ」

マミ「ほむらさんね。覚えておくわ」

マミ「今日学校でね、ほむらさんに言われた通り、隣の席の子に話しかけてみたわ」

ほむら「そう。どうだった?」

マミ「物凄く意外そうな顔をされた」

ほむら「ああ……」

マミ「でもなんだかんだで、久しぶりに誰かとお昼を食べちゃった。
     しかも明日も一緒にお弁当を食べることになったわ」

ほむら「それはよかったわ」

マミ「貴女の言う通りね。私は知らず知らずのうちに、自ら視野を狭めていたのかも」

ほむら「仕方のないことよ。だって人間の目って、前にしかついていないんだもの」

その言葉とともに、私はエル字の黒から小さな鋼の塊を放ち、巴マミの背後に迫っていた触手を散らした
奇怪な触手は複数の断末魔とともに、使い魔の群れへとその姿を戻し、そのまま溶けてなくなった

マミ「そうね。でもだからこそ」

巴マミは、マスケット銃を持った手を、私の顔からやや横にずれた位置に向けた

ほむら「……?」

後ろを振り返ると、そこにはハサミを高く構えた使い魔の姿が

マミ「誰かと繋がる意味があるのかもしれないわね」

使い魔は、私に危害を加える寸前ではじけ飛んだ

ほむら「そう。どうだった?」

マミ「物凄く嫌そうな顔をされた」


にしかみえなかった

――――


まどか「ふうっ。今日は楽しかったなぁ」

まどか「さやかちゃん、あれから上手くいったかな?」

まどか「ずっと好きだったんだもん。きっと上手くいくよね」

まどか「……」

まどか「わたしもほむらちゃんともっと仲良くなれたらいいなぁ……」

まどか「はあっ……、そろそろ部屋着に着替えようかな」

まどか「……あれ?」

まどか「制服のスカートの内側についてる、名前を書く用の小さな白いフェルト布……」

まどか「暁美ほむらって書かれてる……」

まどか「どうして……?」

まどか「だってほむらちゃん、鹿目ほむらって……」

まどか「そういえば転校初日、先生がほむらちゃんの名前を正そうとしてたような……」

まどか「何か、事情が……、あるのかな……」

まどか「でも事情って一体……」

――――

同時刻


杏子「ん……?」

QB「やあ」

杏子「なんだテメェか。わざわざあたしをたずねてくるとは、いったいどういう風の吹きまわし?」

QB「君に伝えておきたいことがあってね」

杏子「名指しでかぁ? ……お、ガリガリ君当たりじゃん。ラッキー」

QB「見滝原に妙な魔法少女が現れた」

杏子「ふーん。で?」

QB「その妙な魔法少女は、食べ物を粗末にした」

杏子「なんだって!? こうしちゃいらんねぇ! ぶっ倒しに行く!」

QB「……」ニヤリ

杏子「……なんて言うわけねーだろ。んな面倒くさい。
    そいつが目の前にいりゃ、文句の1つも言ったろうけどよ」

QB(さすがにこれだけで彼女を動かすのは無理か……)

QB(好戦的で実力もある佐倉杏子……)

QB(彼女は、あのイレギュラーの目の鹿目まどかから引き離すために使える存在だ)

QB(まだ引き下がるわけにはいかない)

杏子「……んだよ。目障りだ、用が済んだんならとっとと消えた消えた」

QB「その妙な魔法少女について、もう1点伝えたいことがある」

杏子「伝えたいこと、ねえ」

QB「彼女は僕にこういった主旨のことを言ったよ。自分は目的の為なら魔法少女を殺すこともできる、とね」

杏子「は……?」

QB「それからこうも言った」

杏子「……」

QB[場合によっては、この先自分は10人以上の魔法少女を殺すことになるだろう、とね」

杏子「……つーことはつまり、ご近所にいるあたしが、その殺人魔法少女に狙われる可能性もあるわけだ」

QB「そうなるだろうね」

杏子「巴マミはどうした。あの綺麗事好きがそんな存在を黙って見過ごすとは思えない」

QB「どうやら彼女は、マミに対しては表向き友好的な態度を示しているようだ。
    もっとも、その内心はうかがい知れないけどね」

杏子「ま、油断させてブスリって狙いがあるかもしれないわな。
     マミと正面からやり合うのは普通割に合わないだろうし」

QB「君は黙ってしかけられるのを待つのもいい」

杏子「……」

QB[彼女の手の届かないどこか遠くへ逃げるのも自由だ」

杏子「……はっ、冗談」

QB「とにかく僕は、それなりに付き合いの古い君にだけはこの情報を伝えておきたかった。それだけだ」

杏子(無表情でよく言うよ。気色悪い)

杏子(だがまあ、そんな存在を黙って見過ごすというのも、気分は良くないな……)

杏子(寝首をかかれでもしたら洒落にならない。久々に見滝原に出向いてみるか)

QB(嘘はついていないよ。嘘はね)

――――


マミ「2人でならこの魔女も大したことなかったわね」

ほむら「油断は禁物よ?」

マミ「分かってる」

ほむら「それじゃあはい、これ。このグリーフシードはあなたが受け取ってちょうだい」

マミ「それは駄目。2人で倒したのだから、半分ずつ穢れを吸わせ合いましょう」

ほむら「いいのよ。私にはもうグリーフシードは必要ないから」

マミ「グリーフシードが必要ない……?」

ほむら「ええ。その……、少し込み入った事情があるのよ」

マミ「ふーん……」

ほむら「それじゃあ私はここで」

マミ「ええ。今日はお疲れ様」

ほむら「お疲れ様」

ほむら(ふふっ。なんだかんだで全てが順調にいっているわね)

ほむら(美樹さやかの問題も、よく分からないけれど上手くいった)

ほむら(ワルプルギスの夜だって、前の世界で手に入れたこれがあれば倒せるはずだし……)

ほむら(いける! 今回はいけるわ!)

ほむら(まどかと過ごすハッピーエンドはきっとすぐそこよ!)

――――

翌日


まどか「おっはよー!」

ほむら「おはようまどか。今日も迎えに来てくれたのね」

まどか「うん!」

ほむら(ああまどか、なんて健気でかわいいのかしら)

まどか(名字のことは気になるけど、なんて切りだせばいいんだろう……)

まどか「ほむらちゃんの本当の名前…暁美って言うんだね」

まどか「どうして嘘を付いてたの?」

ほむら「…まどか、私は未来から来たの」

まどか「えっ」

ほむら「確かにこの時代の私は暁美だったわ、けど未来私は違う」

ほむら「私たち、結婚してるのよ」

まどか「さやかちゃん仁美ちゃん、おはよー!」

さやか「おはよ!」

仁美「おはようございます。今日もお2人で、ですのね」

まどか「てへへ」

さやか「あー。そうだまどか。ちょっとだけ耳貸してくれないかな」

まどか「耳を?」

さやか「実はね……その……」ゴニョゴニョ

まどか「ふんふん」

さやか「で……最終的に……」ゴニョゴニョ

まどか「えっ!? えええっ!? さやかちゃん上条君と付き合―――」

仁美「!?」

さやか「しっ! しーっ!」

まどか「あ。ごめん……」

仁実持てそうだし上条にこだわる必要ないだろ

自分なら
自分(まじかよ・・・じゃあ、あの子狙いに行くか・・・)
で終わるが

>>599
仁美が寝とりによって燃えるタイプだとしたらどうする…?

人間ワープが可能だとしたらどうする…?

あー、これはもしかして最悪の「新しい人が来たのでそっちに任せてやめます」パターンか
それだけはやめてくれよ

>>605
えっマジか

ごめんなさいでしゃばらないから続きかいて下さい
期待してるんです

と言うか期待のあまりイッちゃったんです
そうろうなんです許してください

>>595の続き

――――


まどか「でもこんなに急に……、びっくりしちゃった」

さやか「あはは……。あたし自身驚いてるよ」

仁美(そうですか……。さやかさんは、上条君と……)

ほむら(いったい美樹さやかに何があったのかしら?)

ほむら(“上条君とつきあ”までは聞こえたのだけれど)

ほむら(人間関係は難しいわね……)

ほむら(後でこっそりまどかに聞いてしまおうかしら)

ほむら「えええっ!? 2人が付き―――むぐぐっ」

まどか「大声出しちゃ駄目ー!」

ほむら「……ごめんなさい。あまりに驚いたものだから、つい」

まどか「だよねぇ。かくいうわたしも、さっきはつい声に出しちゃったし」

ほむら(それにしても、悩み続けていた難題の1つがこうも容易く片付くとはね)

ほむら(難題、か……)

ほむら(もしかしたら、まどかだけを守ろうとするかつての私のあり方は……)

ほむら(逆にその目的の妨げになっていたのかもしれないわね)

――――


ほむら(……今日は何事もなく学校生活が過ぎたわね)

ほむら(さ、そろそろ下校の時間)

ほむら(昨日みたいにまどかとの幸せ下校タイムを満喫―――)

まどか「ごめんほむらちゃん! 今日保健委員の仕事でどうしても居残りしなきゃならなくって!」

ほむら「!!?」

まどか「ほむらちゃんは2人と一緒に先に帰っててくれるかな?」

まどか(ほむらちゃん達が帰り次第、早乙女先生にほむらちゃんの名字のことを聞いてみよう)

まどか(ほむらちゃんには悪いけど、やっぱりどうしても気になるから……)

ほむら(ちょ、ま、待ってまどか!)

ほむら(今までどのループでも、この日付に保健委員の仕事が入ったことはなかった!)

ほむら(つまりまどかのこの言葉は、嘘……)

ほむら(う、嘘をついてまで私と帰りたくないの、まどか……?)

ほむら(嫌われるようなことしてしまったかしら……)

ほむら(死にたい……)

ほむら「はあ……」

仁美「元気を出してください、ほむらさん」

ほむら「まどかぁ……」

さやか「こりゃ重症だね……」

仁美「ですわね……」

さやか「……おっと、それじゃああたしはここで!」

仁美「その方角ということは、もしかしてこれから病院に?」

さやか「ま、暇つぶしに恭介でもからかいに行こうかなーって」

仁美「そうですか。では、また明日お会いしましょう」

さやか「うん。また明日!」

ほむら「ほむ……ほむ……ほむ……」

仁美「ほっ、本当に大丈夫ですかほむらさん?」

ほむら「もう駄目かもしれないわ……」

仁美「……人間関係って難しいですものね」

ほむら「そうよね……」

仁美「私も……」

ほむら「……?」

仁美「いえ、今更言ってもどうしようもないことですわね。忘れてください」

ほむら「そう?」

ほむら(余裕が無くてきがつけなかったけれど……)

ほむら(志筑仁美、もしかして美樹さやかと上条恭介のことに勘付いているのかしら?)

仁美「では私はここで」

ほむら「……あまり思い詰めては駄目よ」

仁美「何のことでしょう?」

ほむら(そう簡単には口を割らない、か……)

ほむら(まあ出会って数日だし、無理もないかもしれないわね)

ほむら(彼女に関しては、時間をかけて心を溶かしていくとしましょう)

ほむら「何かあったらいつでも言ってちょうだいね」

仁美「ありがとうございます。では、ごきげんよう」

ほむら「さようなら。また明日学校で」

ほむら(……さ、志筑仁美もいなくなったことだし)

ほむら(そろそろまどかの監視をしに学校へ引き返しましょう)

――――


仁美「はあっ……」

仁美(お稽古ごとに、塾に、マナー講座……)

仁美(あれをしろ、これをしろと、私は親から雁字搦めにされて生きてきましたわ)

仁美(しかもおかしなことに、そんな状態に長いこと疑問を持ちもしなかった)

仁美(だって親の言葉に従ってさえいれば、全てが上手くいっていたから)

仁美(まるで生きた着せ替え人形ですわね)

仁美(でも……)

仁美(ふとした機会に、上条君の演奏を聞いた時)

仁美(誰に言われるでもなく、強く思った)

仁美(ああもっとこの演奏を聞いていたい、と)

仁美(そんなこと、生まれて初めてでしたわ……)

仁美(自分の本心から何かをしたいと、そう強く願ったのは……)

仁美(だから私は……)

仁美(……でも、けっきょくこれで元の自分に逆戻りですわね)

仁美(さやかさんと上条君のことを邪魔なんて、できる筈もありませんもの)

仁美(また言われたことをこなすだけの生活に―――)

杏子「くそっ、あいつめ舐めやがっ……って、うわっ!?」

仁美「きゃっ!?」

仁美(急に人が!? こっ、このままだと転……ばない?)

杏子「悪いね、大丈夫だった?」

仁美(あ……。私、この方に受け止められて……)

杏子(ったく、あのイレギュラーめ!)

杏子(心ここにあらずって様子な癖に、妙な術でたやすくあたしの攻撃を全部かわしやがって!)

杏子(うぜぇ、超うぜぇ! しかもあいつからは一切反撃しなかった余裕が更にうぜぇ!)

杏子(……でも、ま。一番うざったいのはQBのやつだな)

杏子(何が魔法少女を殺す魔法少女だ!)

杏子(悔しいが、自力で劣る様子のあたしを、あいつは一切殺そうとしなかった)

杏子(QBの奴め……、あたしとアイツを潰し合わせるためにホラを吹いたな!)

杏子(今度会ったら全治100年の刑決定)

仁美「はい……。大丈夫ですわ」

杏子(……っと、いけない。今はこいつだな)

杏子「本当に大丈夫か? 何か今にも死にそうです、って顔してるけど」

仁美「えっ?」

仁美(今日一日、誰からも表情の変化を悟られなかったのに、どうして……)

仁美(ああ、そっか。きっと私、緊張の糸が解けて表情が保てなくなって……)

杏子「ちょっ、マジで大丈夫か!?」

仁美「……」

杏子「やっぱどっか怪我でもしたんだろ! 泣きそうになってるよ!?」

仁美「本当に何でもありませんわ……」

杏子「何でもないって……、ああもうっ!」

仁美「っ!?」ビクッ

杏子「このままだと、他でもないあたしの夢見が悪いんだよ!
     変に遠慮しないで良いから、あたしの今日の快眠の為にも正直なことを―――」

仁美「う、うくっ、うううぅ……」

杏子「へ……?」

仁美「ぐすっ、ぐすっ……」

杏子「ちょ、悪かった! 大声出したのは悪かったから泣くなって!」

仁美「違います……、違うんです……」

杏子「……?」

仁美「私は、ただ……悔しくって……」

杏子「悔しい?」

仁美「やっと、自分で生き方を決められると、思っ……たのに……」

杏子「……」

仁美「でも……、さやかさんの為にもこれでよかったと思う自分もいて、なんだかよく分からなく―――」

杏子「あー、なんだ。事情はよく分からないけどさ……」

仁美「……」

杏子「食うかい?」

――――


杏子「なるほどねえ……。するとアンタ、着の身着のままのあたしとは真逆のお嬢様なわけか」

仁美「そんなにいいものじゃありませんわ……、本当に、着せ替え人形みたいな……」

杏子「あたしの知ってる人形って奴はこんな風に泣いたりしないけどな」

仁美「えっ……」

杏子「ま、なんだ。たまには逃げちまってもいいんじゃないの?
     お嬢様な自分をぶち壊したいんなら、ちょっとは肩の力抜いてみてもさ」

仁美「……」

杏子(ま、あたしもある意味ではコイツの同類なんだけどな)

杏子(どうしても逃れられないルールみたいなものに、行動の一部を制限されてる訳だし)

杏子(だからかコイツの気持ちは、妙によく分かっちまう)

杏子(自分とはまったく違う境遇のはずなのにな。変な話だよ)

杏子「アンタ、この後の予定は?」

仁美「七時から……、お花のお稽古が……」

杏子「んじゃ、今からちょっと不良してみない?」

仁美「不良する……?」

杏子「稽古なんかさぼってどっか遊びに行こうよ」

仁美「どうしてそこまでよくしてくれるんですの……?」

杏子「へっ!? あっ、妙な勘違いはしないでくれよ!」

杏子「実はあたしもむしゃくしゃしててさ……、愚痴をこぼす相手の1つも欲しかったんだ」

仁美「まあ、そうでしたの?」

杏子「そういうこと。だからほら」

仁美(不器用に優しい人……)

仁美(こういう方とは、初めて接しますわ……)

仁美「ふふっ。分かりましたわ。では、エスコートをお願いしてもよろしいでしょうか」

杏子「よしきた、任せな!」

仁美(……自分が本心からしたいと思えることって、案外早く見つかるものですわね)

――――


まどか「……つまり入学手続きの書類には暁美という名字が?」

早乙女「そうなのよ。でも、もしかしたら何か家庭の事情があるのかもしれないから……」

まどか「はい。本人には追求しません」

早乙女「そうしてもらえると助かるわ」

まどか「失礼しました」

まどか(やっぱりほむらちゃんは嘘をついているのかなぁ……?)

まどか(ああーっ、もう。悪い子だなぁ、わたし……)

まどか(大切なお友達のことを、こんな風に探るような真似して……)

まどか(だけどそもそも、どうしてスカートが入れ換わっていたのかもさっぱりだよ……)

まどか(ほむらちゃんのことを信じたいけど、ここままじゃわたし……)

まどか(ほむらちゃんの前で笑顔でいられる自信が……)

QB「悩み事かい?」

まどか「えっ!? な、何!? 喋る動物!?」

まどか(……でも、この子。どこかで……、そうだ、夢の中で見たことがあるような……)

QB(佐倉杏子が黒髪のイレギュラーに戦闘を仕掛けている今がチャンスだ)

QB「鹿目まどか、君は」

ほむら(時間停止!!!)

QB「」

まどか「」

ほむら(まどかを見つめて目の保養!!)

まどか「」

ほむら(QB蜂の巣にした後で窓からポイ捨て!!)

QB「」

ほむら(ギリギリセーフってところね)

まどか「あっ、あれ? いない!?」

ほむら(戸惑わせてしまってごめんなさい、まどか)

ほむら(だけど私は……)

ほむら(私、は……)

ほむら(……)

ほむら(……)

ほむら(……本当にこれでいいのかしら)

ほむら(何も知らせず、何も選ばせず)

ほむら(ただ私の思う幸せを押し付けるだけで、本当にいいのかしら……)

ほむら「まどか……」

まどか「ひっ!? ……って、なんだびっくりした、ほむらちゃんかぁ」

ほむら(地味に傷ついたわ……)

まどか「でも……、どうしてこんなところに?」

ほむら「貴女に大切な話があるの」

まどか「大切な話……?」

ほむら(話さないって、本当はそう決めてた)

ほむら(まどかの命を守ることだけを目的としていた以前の私なら、きっとそうしてた)

ほむら(だけど今の私は、違うから)

ほむら(前の世界のまどかの願いの影響で、違う私になったから)

ほむら(だから……)

ほむら「私ね、未来から来たんだよ?」

――――


前周・まどかの契約時


「まどか、君はどんな願いで魔法少女になるんだい?」

「わたしはね、QB。どんなしがらみにも縛られない存在になりたい」

「どんなしがらみにも縛られない存在……?」

「たとえば、魔法少女の定めや、魔女が絶望を食べると言うルール」

「物理法則、不要な義務感、辛い定め」

「何もかもに縛られない、そんな存在になりたい」

「そうすれば……きっとわたし、魔法の力で皆を解き放ってあげられると思うんだ」

「ちょっと待ってまどか! そんな願いをかなえたら、貴女は……」

「うん。もしかしたら、肉体というしがらみを越えて……、消えちゃうかも」

「そんなの……、そんなのって……」

「でもね、ほむらちゃん。それで皆が救われるなら、わたしはそれで幸せだから」

――――


ほむら「契約を結んだまどかは、空に溶けて消え始めたわ」

まどか「……」

ほむら「私は、消えかけるまどかを必死に抱きしめようとして……」

ほむら「だけど桃色の髪に触れた瞬間、貴女は跡かたもなくその姿を消してしまった」

ほむら「ただ一つ、生きた痕跡を、こんな小さい形で残して……」

盾形の収納機から、小さくティッシュにくるんだ“あるもの”をとりだす
私はそれを自分の掌の上に乗せると、そのまま手をまどかの方に差し出し、そっとティッシュをほどいた

まどか「桃色の……何?」

ほむら「桃色の弾丸よ」

今私の手の平の上にのっているのは、桃色の弾丸
全てのしがらみを越えたまどかが、最後に私の手の中に残してくれた、彼女の欠片
きっとこれさえあれば、ワルプルギスの夜だって解き放てる
たった一度しか使えない私のとっておきの秘密兵器

ほむら「前の世界で、私をはじめとする全ての魔法少女はね」

ほむら「ソウルジェムの穢れをとらなければ魔女化するという定めから逃れられたの」

ほむら「世界中の魔女は人を襲うことを止めた」

ほむら「加えて私は、まどかを守らなくてはいけないという義務感からも、解放された」

ほむら「そうして気持ちに余裕ができて、やっぱり思ったことは……」

ほむら「こんなの、まどかにとって本当に幸せな世界じゃないという、そんな自分勝手な気持ちで……」

ほむら「ねえ、まどか。私、自分勝手なのかな……?」

ほむら「せっかくまどかが平和な世界を作ったのに……」

ほむら「それが私の理想と違うからって、こんなことして……」

ほむら「なんだか自分が正しいのか分かんなくなっちゃったの」

ほむら「まどかなら―――」

まどか「分かんないよ……。だってほむらちゃんの話しに出てくるまどかは、わたしじゃないもん」

ほむら「あ……」

まどか「でも、今の私ならこう思うかな……」

ほむら「……」

まどか「ずっとほむらちゃんの隣にいたいって」

ほむら「まどか……」

まどか「もしかしたら……前のわたしも……」

ほむら「……?」

まどか「寸前で、同じことを思ったんじゃないかな?」

ほむら「えっ……?」

まどか「ほむらちゃんに、もう一度やり直して欲しいって」

まどか「だけどそう感じる一方で、これ以上ほむらちゃんを自分で縛りつけるのは、やっぱり嫌で」

まどか「だから、自分の力のかけらを残して、賭けてみたんじゃないかな」

まどか「わたしを救うという義務感から逃れたほむらちゃんが、それでもわたしの隣を求めてくれることに……」

ほむら「……」

まどか「だからね。ほむらちゃんは自分勝手なんかじゃない。自分勝手なんかじゃないんだよ」

ほむら「……うん。ありがとう、まどか」

まどか「こちらこそありがとう、ほむらちゃん」

まどか「ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「うん……」

まどか「どうしてわたしの名前を使ったの?」

ほむら「それはその……、そうすればまどかの気を惹けるかと思って」

まどか「なーんだ……。別に深い意味はないんだ」

ほむら「っ!? い、いいい、いいえ! まどかが望むなら、深い意味でもなんでも」

まどか「じゃあさ、スカートが入れ換わってたのはどうして?」

ほむら「それは……、って、どうして気が付いているの!?」

まどか「しっかり暁美ほむらって名前が書いてあったよ」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃんって実はうっかり屋さん?」

ほむら「かも……、しれないわね。でもまどかだってあんまり人のことは言えないのよ?」

まどか「えっ?」

ほむら「最初の世界ではまどかの魔法のミスで酷い目にあったんだから」

まどか「そっ、そうなの!? 駄目じゃん別のわたし!」

ほむら「だから私達、そう言う意味じゃ……お似合いなんじゃないかしら」

まどか「あははっ。ドジっ子カップル? 毎日退屈しなさそうだね」

ほむら「そうね。とっても楽しそう」

>>784の続き

――――

まどか「……1つ、考えたんだけど」

ほむら「……?」

まどか「その弾丸は、もしかしたらヒントなんじゃないかな」

ほむら「ヒント?」

まどか「そう、ヒント。色々な縛りを抜けたわたしが、ほむらちゃんに残したヒント」

ほむら「それってどういう……」

まどか「つまりね! これは1つのやり方を示してくれているんだと思うの」

まどか「全てのしがらみから解き放たれるという願いほどは、鮮やかにいかないかもしれないけど……」

まどか「例えばホラ、何かをしがらみから解放できる力が欲しいって、わたしがQBにお願いしてさ」

まどか「そうして得た力を、その都度わたしが弾丸に込めて、ほむらちゃんがそれを撃って回れば……」

まどか「きっと数え切れない人や魔女さんを救うことができると思うんだ」

ほむら「……? その願い事なら、まどか1人でもなんとかできるんじゃ……?」

まどか「ほむらちゃんはそれでいいの?」

ほむら「??」

まどか「……ほむらちゃんのの馬鹿ぁー」

ほむら「えっ? えっ?」

まどか「だからその……、わたしとほむらちゃんの共同作業ってことにしちゃえば……」

まどか「ずっと一緒にいる口実が生まれるでしょう?」

ほむら「!!!」

ほむら(まどか、なんて積極的なの!?)

ほむら(もう私本当に鹿目ほむらで良いんじゃないかしら!?)

まどか「ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「分かってるわ。ずっと私はそれを阻止し続けてきたというのに、
      今更自分が契約していいのか。そう悩んでいるんでしょう?」

まどか「うん。なんだかほむらちゃんの頑張りを無駄にするようで、今更だけど気が引けちゃって」

ほむら「いいのよ。だってその願い事なら、まどか自身も魔女化のルールから解き放つことができるもの。
      契約の阻止は、あくまで目的でなく手段。貴女が幸せにさえなれるならなんだっていいの」

まどか「そっか……。じゃあ、QBを呼ぶよ」

ほむら「ふふっ。貴女の契約を大人しく見守るだなんて、なんだか不思議な気分」

――――


QB「おめでとうまどか! 君の願いは、今エントロピーを越えて成就された!」

まどか「わあー、頭の中に魔法の使い方が浮かんでくるよ、ほむらちゃん!」

ほむら「素敵よまどか」

まどか「えへへ」

ほむら「それにしても大きなソウルジェム……」

まどか「そのソウルジェムの大きさが、そのままほむらちゃんの気持ちの大きさなんだよね」

ほむら「……まあ、そう言えなくもないわね」

まどか「ふーん。へーぇ。そっかー」

ほむら「なっ、何なのその顔は……?」

まどか「何でもー。ただ、わたしにもこんなに想ってくれる人がいるんだなって、それが嬉しくって」

ほむら「もうっ、まどかったら……」

QB(出る幕が無い……)

――――


マミ「あら……? 綺麗な桃色の……、あれは花火?」

杏子「ねー、そんなことよりケーキまだ? 花より団子ー!」

仁美「ですわー」

マミ「どうでもいいけど貴女達、どうしてそうも図々しいのよ!?
    佐倉さんとはそういう間柄じゃないし、ええと、志筑さんとも今日はじめて話すし!」

杏子「まあまあ、かたいことなしなし!」

マミ「もうっ!」

マミ(……とはいえ、1人よりはずっといいけどね)

仁美「この紅茶、安物ですわ……」

マミ「むきーっ! やっぱり前言撤回!」

――――


ほむら「よし、初仕事完了ね」

まどか「だね!」

QB「はあっ……。まさか空に桃色のミサイルを撃ちあげただけで、
    宇宙のエネルギー問題を解決してしまうなんて……」

QB「全くめちゃくちゃだよ、鹿目まどかは……」

QB「でも、どうしてだろう」

QB「何故だかとっても痛快な気持ちだ……」

――――


「ほむらちゃん」

「なあに、まどか」

「わたしはこれから、世界中の魔法少女や魔女に会いに行く」

「そう」

「きっと全てが終わるまでには長い長い時間がかかると思う」

「ええ」

「改めて聞くけど……、本当に、本当にその作業に付き合ってくれるの?」

まどかは、少しだけ不安そうに小首を傾げた
私は不器用な笑顔でそれに応える

「もちろんよ。それがまどかの幸せなら、何年だって」

「ありがとう……」

「今、わたし達の周りの空間から重力を大部分切り離したよ」

まどかがタンと音を立てて地を蹴る
ふわり、彼女の身体が低空に舞った

「いこう、鹿目ほむらちゃん」

白い手袋に包まれた小さな手が、私に差し出される

「ええ」

私は1つだけ深くうなずくと、彼女の手を握りしめ、同じように地を蹴った



右手には白手袋を
左手には黒鉄を
弾倉には、桃色の弾丸を
唇には、

「えへへ」

赤みがかった桃色の―――





おわり

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