唯「どういう意味かな?」 梓「そういう意味です」(77)

――早朝 通学路にて

唯「お、あずにゃーん」

梓「あ、おはようございます」

唯「朝からあずにゃんに会えるなんてラッキー!」ダキッ

梓「もうやめてください、こんなところで」グイッ

唯「えーケチー」

梓「先輩もあと半年もすれば大学生なんですから、子供みたいなことばかり言ってちゃ駄目ですよ」

唯「後半年かー。ううむ」

梓「もうちょっとで文化祭ですし、練習もバシバシ行かないとですね」

唯「どんとこいだよ、あずにゃん!」

梓「あれ、思っていた反応と違いますね」

唯「どんな反応をすると思ってたの?」

梓「てっきり『いやだよぉ』とか言うかと」

唯梓の予感
期待支援

唯「まあお茶の時間が短くなっちゃうのは嫌だけどねー」

梓「はあ……やっぱりですか」

唯「でも練習はちゃんとするよ?」

梓「……いつになくやる気ですね?」

唯「今日の私は今までの私とは違うのです」

梓「へえ、そうですか」

唯「さてはあずにゃん、信じてないね?」

梓「理由もなしに唯先輩が練習に励んでくれるとはとても思えませんからね」

唯「理由? 理由ならちゃんとあるよ」

梓「へえ、じゃあ言ってみてください」


唯「だって、新入生に良いとこ見せたいしー」

梓「ふむ」

唯「練習しないとあずにゃんに怒られちゃうしー」

梓「ふむ」

唯「あずにゃんに後輩を作ってあげたいしー」

梓「……ふむ」

唯「それにー」

梓「それに?」

唯「あずにゃんに良いとこ見せたいから」チラッ

梓「……」


梓「……そんな適当なこと言っても練習時間は減らしませんよ?」

唯「ま、あずにゃんとならいつまで練習してもいいけどねー」

梓「え」

唯「うん」

梓「……」

唯「……」




梓「……どういう意味です?」

唯「……そういう意味だよ?」




ご愛読ありがとうございました





――放課後 部室にて


梓「こんにちはー」

唯「おーあずにゃんや、いらっしゃい」

梓「あれ? 他の皆さんは?」

唯「お掃除だってー」

梓「あーなるほど」

唯「まあまあ、こちらへお掛けなさい」

梓「どうも」


唯「……」ポリポリ

梓「……」

唯「……」ポリポリ

梓「……」

唯「……」ポリポリ

梓「……それポッキーでs」

唯「そうだよ! 食べたい!?」ガバッ

梓「え、遠慮しときます」

唯「えー何で? イチゴだよ? 美味しいよ?」

梓「イチゴですか」

唯「うんうん、期間限定の」フンフン

梓「えーと。じゃあ一本頂きます」

唯「ふふ、でもね? あずにゃん。世の中、頂戴といえば貰えるほど甘くないよ?」

梓「何ですか、突然」

唯「欲しいものは自分の力で手に入れなきゃね」

梓「?」

唯「ふふふ」パクッ

梓「!」

唯「さあ己の力で手に入れてみよ!」

梓「これはまさか……」

唯「そう、ポッキーゲームだよ!」


梓「じゃあ結構です。私トッポ持ってるんで」

唯「ええええ!?」

梓「やっぱりトッポは美味しいです」ポリポリ

唯「うぐっ……」

梓「……」ポリポリ

唯「……」

梓「……」ポリポリ

唯「……」

梓「……一本交換します?」

唯「え。あ、うん」



唯「あ、トッポも美味しいね」ポリポリ

梓「このイチゴ味もなかなか行けます」ポリポリ

唯「……」ポリポリ

梓「……」ポリポリ


唯「皆が来るまで数本だけ残しておこうっと」

梓「あ、じゃあ私も」

唯「りっちゃんたち遅いね」

梓「そうですね」

唯「早くムギちゃんのケーキが食べたいね」

梓「そうですねぇ」

唯「……」

梓「……」

脳内再生余裕ですね、これは



唯「ま、遅いなら遅いで良いけどねー」

梓「何でです?」

唯「そりゃまあ、うん」

梓「?」

唯「……ほら、今あずにゃんとさ」

梓「え」

唯「ね、まあ、うん」

梓「……」





梓「……どういう意味です?」

唯「……そういう意味だよ?」

けいおんとかクソアニメ終ったじゃん

まだ書く奴いたんだwww





唯「にしても本当に遅いねぇ」

梓「そうですね……」

唯「あ、そうだ」

梓「どうかしました?」

唯「今日の運勢まだ見てなかったなーって」

梓「今日の運勢?」

唯「うん、星座占い。携帯で見れるやつだよ」

梓「唯先輩はそういうの気にしそうですね」

唯「毎日見てるよ!」

梓「私にも見せてください」

唯「じゃあ隣おいで?」

梓「はい」ピトッ

しえ

ピトッ


唯「えーっと、射手座、射手座っと」ポチッ

梓「お、たくさん星がついてますね」

唯「恋愛運が満点だよ!」

梓「あ、文章も書いてあるんですね」

唯「えっと、なになに……」

『いとしのあの子と大接近! お近づきになるチャンス! ラッキーアイテムはチョコレート』



唯「……」

梓「……」

唯「え、えっと、あずにゃんは何座だったっけ?」

梓「……蠍座です」

唯「さ、蠍座蠍座ーっと」

梓「あ、蠍座も星がいっぱいですね」

唯「おおー。ほとんど満点だね!」

梓「えーと文章は」

唯「なになに……」

『憧れのあの人に愛を伝えるチャンス到来! ラッキーアイテムはイチゴ』



唯「……」

梓「……」

唯「……ねえねえ」

梓「……何ですか?」

唯「もう一本だけ、トッポと交換してくれない?」

梓「そのイチゴポッキーとですか?」

唯「うん」

梓「……」

唯「……」

梓「仕方ないですね」

唯「うん、ありがとう」

しえん


唯「……」

梓「……」

唯「にしてもさ」

梓「はい?」

唯「やっぱり運勢占いって当たるんだね」

梓「え」

唯「ね」

梓「……」

唯「……」


梓「……どういう意味です?」

唯「……そういう意味だよ?」



ごめんなさい飯行ってきます

ただいま戻りました
支援どうもありがとう




――放課後 帰路にて


唯「うわー。もう真っ暗だね」

梓「いつもより遅くまで練習しすぎちゃいましたね」

唯「でも、りっちゃんたちは結局来なかったねー」

梓「何かあったんですかね」

唯「うーん、もしかしたら、ムギちゃんあたりが空気を読んでくれたのかも」

梓「え」

唯「うん。まあ、うん」

梓「……」テクテク

唯「……」テクテク


唯「時にあずにゃん」

梓「なんですか」

唯「あずにゃんって読書家?」

梓「うーん、まあ読書家というほどではないですが、それなりには読んでますよ」

唯「じゃあ、そーせきさんは読む?」

梓「夏目漱石ですか?」

唯「そうそう」

梓「全部ではないですけど、何冊か読んだことはありますよ」

唯「そっか」

梓「はい」


唯「じゃあ、ちょっと上を見てみて」

梓「上って空ですか?」

唯「うん。ほれ、あの辺を」

梓「あ、凄い。月が綺麗ですね」

唯「え」

梓「今日って満月だったんですねぇ」

唯「……」


梓「どうかしましたか?」

唯「え、あ、うん。あずにゃん、今何って言ったの?」

梓「? どうかしましたか?」

唯「その前!」

梓「今日って満月だったんですね?」

唯「もうちょい!」

梓「月が綺麗ですね?」

唯「そうそれ!」

I love・・・


梓「それがどうかしました?」

唯「……もっかい言ってみて」

梓「もう、何ですか」

唯「いいからお願い」

梓「月が綺麗ですね」

唯「……」

好きの意志ありきだろう

つまんねーなー

こういう人ってつまんねーとか一々書かなきゃ気がすまねーのかな
そうだとしたら物凄く悲しい人間だな


唯「どういう意味かな?」

梓「何がです?」

唯「えっ」

梓「はい?」

唯「……」

梓「?」


唯「何でもないよ、あずにゃん……」

梓「えー。もう、何ですか」

唯「……」

梓「変な唯先輩」

唯「……」テクテク

梓「……」テクテク

いい感じだな
このまま続けてくれ

俺は面白いと思う
続けてくれ


唯「……あずにゃん」

梓「今度は何です?」

唯「……憧れの人、いるの?」

梓「え」

唯「いるの?」

梓「……いますよ」

唯「そっか」

梓「はい」

唯「……」テクテク

梓「……」テクテク

なんか好きだなこういうの

梓「あっ」

唯「どうしたの、あずにゃん」

梓「今、分かりました……」

唯「何が?」

梓「い、いえ。何でも」

唯「?」

梓「……」テクテク

唯「……」テクテク


唯「あ、着いちゃった」

梓「ここでお別れですね」

唯「うん。また明日ね……」

梓「はい。また明日」

唯「……やっぱり待って」

梓「何です?」

唯「うん、あのさ……」

梓「はい……」


唯「あのね……私ね……」

梓「はい」

唯「私……」

梓「……」

唯「……」

梓「……先輩?」

唯「……ううん。やっぱり何でもないや」

梓「……そう、ですか」


唯「ごめんね、引きとめちゃって」

梓「……いえ、いいんです」

唯「またね、あずにゃん。今日は楽しかったよ」

梓「はい。私も楽しかったです」

唯「じゃあ、バイバイ……」

梓「また、明日……」


唯「……」テクテク

梓「……」

唯「……」テクテク

梓「……待って下さい」ダッ

唯「どうしたの、ってうわあ」

梓「……」ガバッ

唯「びっくりしたあ。あずにゃんから抱きついてくるとは」

梓「ごめんなさい」

唯「ううん、いいよ」

梓「……」

唯「……」

しえん

ゴク…


唯「どうしたの、かな?」

梓「はい。言いたいことがあって」

唯「言いたいこと?」

梓「はい。言ってもいいですか?」

唯「うん、いいよ」

梓「……」

唯「……」

しえん






梓「月が綺麗ですね」





唯「え」

梓「月が綺麗です、先輩」

唯「そう、だね。とっても」

梓「はい、とっても」

唯「……」ギュッ

梓「……」ギュッ





唯「……どういう意味、かな?」

梓「……そういう意味、です」


おしまい!


やはり唯梓だな

これは原作のノリに近い感じの唯梓だったな


おもしろかったよ

結局どういう意味だったの?

>>59
もう一度読み直して見るんだ

えっ

読んで下さった方、支援して下さった方、どうもありがとう
つまらなかったって言ってた人、ごめんね

地の分入りのガチSSを書いている最中で、そっちが詰まっちゃったから息抜き気分で立てました
最終回終わって、本当にSSが減ったからすげー哀しいです
俺は唯梓派だけど、あれだけ乱立してた唯憂スレすら減ってるのは本当に空しい
もっとSSを書いて欲しい。ついでに唯梓の良さにも気付いてもらいたい。

皆支援本当にありがとう。
また気が向いたら立てますね。

>>62

もう一回読み直したらよく練ってあるなと思った
これからも続けて下さい

>>59
説明したいけど自分で説明しちゃうと哀しいから 月が綺麗ですね でググってみるといいよ。
やっぱ分かりにくかったかな。
ごめんよ。

すげー良かった
また唯梓を頼むよ


いい
>>1

>>64
ようやくわかった
素敵やん

乙!良い雰囲気のSSだった
また唯梓を書いてくれ
待ってるぜ!

>>1
綺麗に終わった
良いな、こういうの

夏目漱石の時代は愛とか直接的な表現嫌ってたんだっけ
マジで江戸時代なんかでは月が綺麗ですねで愛の告白が伝わったのか気になるわ


やっぱ唯梓は良いよな

>>71
さすがにこれは漱石の
おしゃれな言い回しなだけなんじゃないかな?

告白の台詞っていうか
ひと組の男女の間で交わされる
「月が綺麗ですね」「ええ…」
ここにある雰囲気はたしかに素敵だけどね
もうそんな会話をする頃には
お互い気付いてるみたいなwww

感情表現がなかった分、お見合いとか
そういう出会い方が一般化したんじゃない?

>>71
「I love you」を和訳しろと生徒に出題

「『私はあなたを愛しています』です」と生徒答える

「…そんなんセンスねえよそう言う時は『月がきれいですね』とか言うもんなんだよバーカバーカ」

あっさり答えられて引っ込みつかなくなったので苦し紛れなことを言ったというお話
漱石は江戸っ子だったせいでついつい反骨精神が出てしまうのだ

>>1
綺麗なSSでした

二葉亭四迷は「もう死んでもいい」と訳したって話もあるよね
こういう感性が欲しい
世界が広がるだろうな

sageミスった
これはワロエナイ

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