男「お化けなんて怖くねぇぜ!!」(540)

男「やべぇ・・・道に迷っちまった」
*
男「しかもこの辺街頭全然ねーし!真っ暗なんですけど!!」
*
男「まいったなー・・・」
*
がっくりと項垂れた男の足元がぼうっと明るくなる。
*
男「お・・・?なんか明かりが・・・」
*

人魂「・・・」

男「・・・」

人魂「・・・」

男「あ、明るくなったわ。サンキュサンキュ」

人魂「」

男「何ここ霊園近いの?通りで暗いわけだわ。ちょっと明るいとこまでついてきて」

人魂「・・・」スイー・・・

男は、「視える」性質だった。
*

-CASE1 皿屋敷のお菊さん-

友「おい、男。知ってるか」

男「あー知ってる知ってる。超知ってるわー」

友「そうか」

男「ごめん知ったかぶりですなんですか教えてください友様」

友「ったく・・・あのな、町はずれにボロッボロの潰れた寺があるだろ?」

男「あぁー・・・あるな」

友「なんでもあそこの井戸に、幽霊が出るらしいぞ」

男「おっ、なに貞子?」

友「いやもっとクラシカルなやつらしい」

男「あー・・・皿を数える的なやつ?」

友「そうそう、そんなかんじそんなかんじ」

男「お菊さん・・・とかそんな感じの名前だったよな」

友「そうだな」

男「あれたしかデビュー戦が江戸時代ぐらいの人だろ?超ベテランじゃん」

友「だな」

男「よっしゃ、分かった。今晩行ってみるわ」

友「うへ。またかよ」

友「毎度毎度のことだけど、お前怖くねーの?」

男「何が?」

友「だっていくら噂話だからってよ、夜の寺とか超怖いじゃん」

男「いや寺にいるお化けとかケンタッキーにいる鶏みたいなもんだろ」

友「それもそうk・・・いや一瞬納得しかけたけど違うわー、なんか違うと思うわー」

男「とにかく、情報ありがとな!」

その夜、男は友に聞いた通り町はずれの寺へやってきた。

男「井戸・・・ってアレか」

男「めっちゃ封鎖されてますやん。近づけませんやん」

男「おーい、お菊さーん。聞こえますかー」

男「あ。ダメだわ。これいつもの無駄足だったパターンのやつだわ」

がっくりと肩を落とし、振り向いたその時。

井戸「いちまーい・・・にまーい・・・」

男「おっ、よかったー。なんだいるんじゃーん。返事くらいしてよー」

井戸「はちまーい・・きゅうm男「一枚足りない!!」

井戸「」

男「ほらー、出ておいでよー」

男が呼びかけると、絵にかいたような「うらめし」そうな女の幽霊が出てきた。

お菊「・・・」

男「あ、はじめまして。あなたがお菊さん?」

お菊「・・・」

男「うわ顔ボコボコですやん」

そういうなり物凄い勢いで首を絞めようと近づいてくるお菊。

男「だらっしゃー!!」

お菊「!?」

男はそのままお菊に抱き着く

男「どうだ!ビビっただろ!!俺をただの視えるだけの奴だと思うなよ!!」

お菊「・・・!・・・!!」

男「あっ、抱きしめたらわかった。姉さんあんた顔どころか背中までバッサリいかれてるやん」

男「やっぱり話の内容通りみたいだな」

男「主人の皿を割ってしまったあんたはその怒りを買い主人に嬲り殺される」

男「それからずっと皿を数え続けているが、どうしても一枚足りない・・・」

お菊「・・・」

男「いや、数えてないで探そうよ」

お菊「」

男「そりゃ皿割ったくらいで人を殺すようなマジキチは論外だけどさ」

男「補充しないで皿数えたってそりゃいつまでたっても1枚足りないにきまってるじゃないっすか」

お菊「・・・うぅ」

男「お化けってあれなんだよね。全体的に当て付けがましいんだよね」

お菊「・・・」

男「アタシはコイツのせいで死んだんだぞー!見ろコイツをー!!」

男「・・・そんなこと言われてもこっちは困るんだよ!!」バンッ!!

お菊「」ビクッ

男「そんなのはさっさと成仏して直接相手に言ってやれよ!!」

お菊「ヒック・・・ヒック」

男「すすり泣くな!!」バンッ

お菊「ヒィィ・・・」

男「あっごめん、ヒートアップしすぎた」

お菊「」ビクビク

男「それによく考えたらお化けだもんね。お皿なんて買いに行けないもんね」

男「ごめん完全に言い過ぎた。思慮が浅かった。反省する」

お菊「」スゥー・・・

男「あぁコラ消えるな!!もうちょっと話聞いて!!」ガシッ

お菊「・・・!」ジタバタ

男「暴れないで!ちょ、江戸時代の女子パワー半端ねぇー!!」グイー

お菊「放せ・・・!」グググ

男「だぁー、待て!せめてその傷の手当てくらいさせろや!」グググ

お菊「・・・!」

予想外の言葉にお菊の身体の力が抜ける

男「うおぉ!!急に力抜くなって!!」スポーン

男「・・・ほれ」

お菊「・・・それは?」

男「メンタム」

お菊「めんたむ・・・?」

男「ほれ、顔出せよ。いくらお化けだからって女がそんな顔してちゃ見てらんねぇよ」

そっと顔を差し出すお菊

男(・・・ところでお化けにもメンタムってきくのか?)

そう思いながら薬を傷口に塗ってみると、不思議なことに顔の傷はみるみるふさがり、腫れ上がった彼女の顔は瞬く間に元に戻った

男「えっ」

男(すげぇなロート製薬・・・一生ついていくわ) ※ステマではありません

お菊「・・・治ってる」

男(うっ・・・顔が元に戻ったらすごい美人だった)

お菊「あなたは・・・医家ですか?」

男「イカ?いやどうみても人間だろ」

お菊「フフ、面白い人・・・」

そういうと後ろを向いてするりと着物をはだけさせるお菊。

男(あ、そうか背中も・・・ってよく見たら骨とか内臓っぽいのまで見えてる気がするんだけど。こんなのメンタムで治るのか?)

そう思いながらもメンタムを塗る男。

男(やべぇ治った・・・ロート製薬の科学力半端ねぇ) ※繰り返しますがステマではありません

手の届く範囲で背中を確認するお菊。

お菊「傷が・・・ない」

男「あぁ、まさかこんな一瞬で治るとは」

お菊「あぁ・・・うれしや・・・!」

着物をはだけさせたままくるりとこちらを振り向く

男(はい丸見えいただきました!ありがとうございます!)

お菊「ありがたや・・・」ギュッ

男(おっほ!生乳&抱擁までいただきました!こちらこそありがとうございますっ!!)ムフー

お菊「この姿になって早300有余年・・・これほどの施しをうけたのは初めてでございます」

男「ええんやで」(その目は暖かかった)

お菊「///」

男「あとほら、よかったらこれ使ってくれ」

お菊「これは・・・」

翌日。

友「・・・で、どうだったんだ?」

男「んー?あぁ、いたいた。顔ボコボコだったからメンタム塗ってきてやったわ」

友「効くのかよそれwww」

男「お前ロート製薬なめんなよ」

友「ステマ乙」

男「まぁ・・今でも皿数えてんじゃねぇかなぁ」

お菊「にじゅういちまーい・・・にじゅうにまーい・・・フフ、これだけ数えておけば明日は休めそう・・・」

お菊は、昨晩男から貰った大量の皿を数えていた。

-CASE1 皿屋敷のお菊さん END-

-CASE2 トイレの花子さん-

友「男!」

男「知ってる」

友「そうか」

男「すみませんでした関口宏の知ってるつもり?!でした」

友「あー懐かしいわーまた明日から学校だわー」 ※分からない人は近くのオッサンに聞いてみよう

男「で、今度は何ですか?」

友「トイレの花子さんて知ってるか?」

男「ロリコン乙!」

友「お前話が飛躍しすぎだろお前」

男「で、今度はどこに出るんだよ!」

友「食い気味だなぁ」

男「隣町の小学校の旧校舎?」

友「おう」

男「バカめ。今日び小学校に侵入すると捕まるのだぞ」

友「いやそんなこと言われても」

男「まぁ行くけどね。花子さん会いたいし」

友「ロリコン乙!」

数日後・・・

男子1「あっ兄ちゃんwwwまたジュースくれんのwww」

男「おぉ、飲め飲めwww」

男子2「まじブルジョワwww一生ついていくっすwww」

男子3「くっ・・・キンキンに冷えてやがるっ・・・!」

男「で、さっきの話マジなのwww」

男子1「マジマジwww校舎裏の林のとこのフェンス破けてっからwwwそこから入れるからww」

男子2「あそこにある俺の聖剣触ったら殺すしwww」

男子1「はぁ?www俺の闇の鎌のほうがつえーしwww光より闇のほうがつえーしwww」

男「お前ら喧嘩すんなってwww大丈夫だよとらねぇよwwwだってただの木の枝だしwww」

男子2「違うしwww聖剣だしwww」

男子3「染み込んできやがるっ・・・!身体にピースっ・・・!」

その夜、男は隣町の小学校にいた。
*
男「ここか・・・確かにフェンスが破けてるな」
*
大人一人がやっと通れるくらいの穴をなんとか潜り抜ける。
*
男「あれが旧校舎だな」
*
校庭の隅にひっそりと佇む木造校舎。

男「用務員室は・・・ここか」

少年たちに教えてもらった通り、用務員室の窓を持ち上げながら横に引くと中に入ることができた。

男(・・・セコムとか、大丈夫だよな?)

ビクビクしながら階段を上る男。聞いた話によると、2階の女子トイレに花子さんが出るらしい。

男「・・・ここか」

男(俺は今女子トイレに足を踏み入れようとしている)

男(この校舎が現役だった頃は、ここで数多くの少女が用を足していたんだよな・・・)

男「・・・」

男「2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97・・・」

男は一番奥の扉を開ける。

男「便器の周りを3回まわって花子さんを呼ぶ・・・」グルグルグル

男「花子さーん」

トイレ「・・・」

男「へんじがない。ただのしかばねのようだ」

仕方なく男が振り返ると、そこには逆さまになった少女の顔があった。

男「うぉ!」

花子「お兄ちゃん・・・あそぼ?」

男(くぅー!!「お兄ちゃん」いただきました!!)

よく見ると、少女はトイレのドアに足を引っ掛けてぶら下がっているらしい。

男「あーこうもりね!懐かしいなぁ!!」

男(はい、丸見えいただきましたー!!)

花子「ねぇ、お兄ちゃん・・・あそぼ?」

男「よしきた!何して遊ぶ!?」

花子「こっちにきて・・・」

いうなり花子さんは、男の腕をすごい力で引っ張る。

男「ぐあぁぁーーー!!昭和の女子も力がパネェーーーー!!」グギギ・・・

花子「ねぇあそぼ・・・あそぼ・・・」

男「ちょっと待てって!そんなにひっぱったら遊べないって!!」

花子「遊んでくれないの・・・?」

男「いやだから引っ張るのやめ」

花子「遊んでくれないなら・・・死んじゃえ」

男「だから待てってんだろ!!」ゴン

男のゲンコツが少女の頭に落ちる

花子「いたっ!!・・・ふ、ふえええぇぇ~~~」

男「お兄ちゃん待ちなさいっていってるでしょ!そりゃ怒るよ!!」

花子「うえぇぇ~~~ん!!」

男「子供だからってふざけ過ぎると大人は怒るんだぞ!!」

花子「ごめんなさいぃー!!」ビエー

男「ほら・・・かばやきさん太郎あげるから泣き止みなさい」

花子「ひっく・・・うえぇ・・・」

男「ダメだよ花子ちゃん。人の話はちゃんと聞かなくちゃ」

花子「だって・・・ひっく、私の話なんて、えっぐ、誰も聞いてくれないもん」

男(そうか・・・たしかこの子は周りに虐められて自殺したんだっけ)

男「花子ちゃん・・・さびしかったんだな」ギュッ

花子「ふぇ?」

男(おっほ!幽霊じゃなかったら確実に事案発生だよこれ!!) ←校舎に侵入している時点で事案発生です

男「大丈夫・・・今はお兄ちゃんがそばにいてやるからな」

花子「えっ?あ、ありがとう・・・///」

男「そっかー・・・辛かったね」

花子「うん・・・・先生も、お父さんもお母さんも、誰も助けてくれなかったの」

男「いつの時代にもいるんだな、そういう大人たちが」

花子「お兄ちゃんは私が怖くないの?」

男「怖くない怖くない!今ここにいることで一番怖いのはセコムのおじさんたちだよ」

花子「せこむ・・・?」

男「悪いおまわりさんさ」

花子「???」

男「さ、そんなことより!一緒に遊びたいんだろ?花子ちゃん」

花子「う、うん」

男「何して遊ぼうか!?」

花子「で、でも私・・・よく考えたらお人形遊びとかしかやったことがなくて・・・」

男「あーわかるわー。お兄ちゃんも一人遊びよくやるからわかるわー」

花子「お友達・・・いなかったから」

男「今はお兄ちゃんがいるだろ」ニッコリ

花子「う、うん///」

男「そうだなぁ・・・じゃ、これ。やってみる?」

花子「なぁにこれ?」

男「DS」

花子「でぃー・・・えす?」

花子「えいっ!!」

男「あっ、ちょっとやめてトゲこうらマジやめてマジ」

花子「見てみて!ほら、また私が一番だよ!!」

男「ないわー、ゲーム初体験の昭和少女にいきなりマリカー負けるとかないわー」

花子「これ、本当にくれるの!?」

男「あぁ。それならお兄ちゃんが来れないときでも一人で遊べるだろ?」

花子「ありがとう!いっぱい練習するね!!」

男「うん・・・でもあまりやりすぎるなよ。目が悪くなるからな。ゲームは1日1時間だぞ」

花子「・・・お兄ちゃん、優しいね」

男「そうか?」

花子「私、大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになりたいな///」

男「幽霊って大きくなんの?」

花子「」

男「でも・・・ありがとうな。花子ちゃん。お兄ちゃんうれしいよ」ナデナデ

花子「///」

翌日、旧校舎裏。

男子1「おいwwwお前もっとそっちいけしwww先生にばれるだろがwww」

男子2「ちょwww押すなしwwwDS落とすしwww」

男子3「このコース・・・一見ドリフト系が有利・・・しかしっ・・・!あえて選ぶっ・・・グリップ系、カロンっ・・・!」

男子2「お前ワリオスタジアムでカロンはねーしwwww」

男子1「よしwwwじゃあ始めるぞwwwって、おい・・・なんか4人いね?」

男子2「はぁwww3人しかいねーs・・・なん・・・だと」

男子3「伏兵っ・・・!まさかのカロン重複っ・・・!やられたっ・・・!」

花子「あっ・・・私と同じの使ってる子がいる・・・負けないんだから」

-CASE2 トイレの花子さん END-

次の話を書いてる途中かな?
DS持ってるからメンタム買ってくるわー

>>46
あっ、書き込みあった
うれしいありがとう



-CASE3 紫のおばあさん-

男「紫ババァ?」

友「おう」

男「ギニュー隊長のお母さんか何か?」

友「かもな」

男「あっ返事がてきとう」

友「なんでも夜中に現れて、時速300kmで走って追いかけてくるらしい」

男「すげぇwwwギニューじゃなくてバータの一族だったwww」

友「場所によっちゃジェットババァともいうらしいぞ」

男「ジェットはないわー。せいぜいN700系くらいだわー」

友「いやどうでもいいけど」

男「しかもババァとかないわー。食指が向かんわー」

友「食指ってお前・・・」

男「大体街中で300km/hとか往年のシューマッハでもなかなか出されへんぞ」

友「なんで関西弁」

男「ワイは浪速のシューマッハや」

友「いや知らんけど」

その夜。

男「うへー、そろそろ原付だと夜寒くなってきたな」ブロロロロ

男「ん?」

紫婆「う~~~~↑ォォォーン↓」(ドップラー効果)

男「」

男「えっ」

男「今のってもしかして・・・」クルッ

紫婆「キエエエーーーッ!!」(迫真)

男「ぐわあああああああっ!!」キキーッ!!

数分後、そこには紫婆を正座させる男の姿があった。

男「おい聞いてんのか!?いきなりあんなことしたら危ないだろが!!」プンスカ

紫婆「・・・」

男「だいたい恥ずかしくないのかよ!?孫くらいの年齢の男に怒られて!」

紫婆「・・・」

男「ダメだこいつボケてやがる」

紫婆「まだボケとらんわい!!」

男「だったら返事くらいしろ!!」

紫婆「・・・フン!」

男(あぁーめんどくせぇ・・・)

男「しかし、アレだな・・・アンタ、巷で話題の紫ババァだろ。どのへんが紫なのか分からんけど」

紫婆「・・・」

男「なんでそんなんなってまで走り続けてるんだ。走ってないと息できないのか?マグロみたいだな」

紫婆「違うわい」

男「・・・よかったら、話聞くぜ?」

婆「フン、お前みたいな若造に話すことなんぞ」

男「そうはいったって、アンタみたいなのと話せる人間なんてそうはいないだろ。少しくらいいいんじゃないか」

婆「・・・」

男「ほら、ついてきなよ。うちに来ればお茶くらい出せるから。飲めるのか知らんけど」

そういうと原付にまたがる男。

男「そんなことやってる理由の一つや二つあるんだろ?話を聞くくらい・・・って、いねぇ」ブロロロロ

紫婆「う~~~~↑ォォォーン↓」(ドップラー効果)

男「速えぇよ!!『ついてこい』っつったのにいきなりオーバーテイクしてんじゃねえよ!!」

男宅。

男「ほい・・・あっ、粗茶ですが」

紫婆「あそこにあるの移し替えただけじゃないか」 ←ペットボトルを指差す

男「一人暮らしなんだから急須なんてないって」

紫婆「フン・・・・」

男「で・・・何か話す気になった?」

紫婆「・・・」

男「まぁ別に無理にとは言わないけどさ。でも、わざわざここまでついてきたってことは何か言いたいことがあったんじゃないの?」

紫婆「・・・まずい茶だ」ズズ

男「やれやれ・・・あ、そうだ。いいものあるからちょっと待っててな」

男「ほら」

紫婆「何じゃ、これは」

男「マッサージクッションだよ。年中あんな感じで走ってるんだろ?ちょっと足乗せてみ」

紫「枕に足を乗せるなど・・・!」

男「いやクッションだから大丈夫だよ。ほらほら」

紫婆「!?なんか動いとるぞ!」ウィーン

男「中にこういう機械が入ってるんだよ。足揉まれてるみたいで気持ちいいだろ?」

紫婆「・・・お、おぉ・・・」

男「幽霊?だから大丈夫なのかもしれんけどさ、身体は大事にしろよ?」

(身体は大事にしろよ?)

紫婆「・・・っ!!」

気が付くと、紫婆はうっすらと涙を浮かべ目頭を押さえていた。

男(えっ、ババァ泣いてる!なにこれ超困るんだけど!)

男「あ・・・ごめん、嫌なら言えばよかったのに」アセアセ

紫婆「フッ・・・ちっとばかし、昔のことを思い出してしもうたわい」

男(あっ、これよくある昔語りが始まるパターンのやつや)

その後、紫婆が話してくれた内容はこうだ。

彼女は昔、徒競走の選手だったこと。1940年の東京オリンピック出場を目指していたこと。

しかし、戦争でオリンピックは開催されず、自分を支えてくれた人も戦争で死んでしまったこと。

それでも夢をあきらめずに走り続けようとする彼女に、戦争中の周囲は大変冷たかったこと。

そして・・・終戦間際、志半ばにして自らも空襲で命を落としたこと。

よくある、戦争悲話だった。

男「やめろよ~、俺の涙腺が壊れちゃうだろ~」オロローン

紫婆「昔の話じゃ。お前さんの『身体は大事にしろ』っていうのを聞いて、あの人のことを思い出しちまった」

男「そっか・・・婆ちゃんも、辛い思いしてたんだな」

紫婆「仕方ないさ。戦争だからね」

男「でも、だからといってそれで人を脅かすのはよくないと思う」

紫婆「わかっとる・・・が、どうにもワシの中の執念というか怨念がそうはさせてくれないみたいでの」

男「せめて見た目どうにかできないのかねー。お化けじゃないにしろ、婆さんがあんな速度で走ってたらそりゃビビるって」

紫婆「ふむ・・・」

男「どうせ実体はあってないようなもんなんだろ?どうせならもっと若っ・・・!?」

次の瞬間、紫婆の20代くらいの姿に変化していた。

紫女「ふーむ、普段は意識しとらんかったが、確かにこの頃の身体のほうが走りやすい気がするわい」

男(なんてこった・・・!しなびたレーズン系ババァが一瞬で瑞々しいパッションフルーツ系女子に・・・!)

紫女「?どうした」

男「時の流れってさ・・・残酷だよな」ホロリ

紫女「?」

数日後。

紫婆「おーい、男、おるか」

男「ほいほーい・・・なんだ、今日はババァ姿か」ガッカリ

紫婆「またあのまっさーじくっしょんとやらを貸しておくれ・・・なんじゃ、何をガッカリしとる?」

男「別に・・・さああがってくれよ、婆ちゃん」

紫婆「なんじゃ、若い頃の姿のほうがよかったか?」

男「そりゃまあ、俺も健康な男だし」

紫婆「仕方ないのう・・・///」

紫女「ほら、これでいいかっ」

男「あ、ごめん。いまのババァ姿で頬を赤らめた時の表情がちょっとトラウマになりそう・・・」オエップ

紫女「肝臓ぬきとるぞ」

-CASE3 紫のおばあさん END-

本日はここまでです

因みに紫ババァは追いかけられた時に「ムラサキ!ムラサキ!」っていうと追い払えるので紫ババァだそうです


次回はてけてけいきます。

あっ
うれしい支援されてる


ありがとうございます
続きいきます

-CASE4 踏切のてけてけ-

男「やべぇ遅刻する!!」ドドド

『えーただ今○○線は途中駅で発生した人身事故のため運転を見合わせ・・・』

男「はい詰んだ!俺の期末テスト今詰んだよ!!」

男「くっそー・・・飛び込みなんてやらかしやがってー」

男「そういや・・・」

男(その昔、ある女子高生が踏切を渡ろうとして電車にはねられた)

男(彼女の下半身は列車にひかれ、吹き飛んだ上半身も傷口が寒さで塞がりなかなか死ねず、彼女は地獄の苦しみを味わったという)

男(まぁ普通はそんなことあったら即死なんですけどね)

男(以来その踏切には、下半身を探し求め上半身だけのJKの幽霊があらわれるという)

男「俗にいうところの、キチョマン悲話やな・・・」

男「あと下半身を求め続けるJKって超エロい」ニッコリ

その夜。

男「思い立ったら即実行!!」

男「とりあえずウチから最寄りの踏切に来てみた・・・が」

人魂α「・・・」ウオォン

人魂γ「・・・」オロローン

男「なんかいっぱいいるな・・・あの新入りっぽい人魂、もしかして今朝の人かな」

??「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」

男「うぉ、びっくり」

??「痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い痛゛い」

男「あぁ、間違いなくアレですね。腰から下ズルズルですわ。間違いないっすわ」

てけ「死゛なぜえでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」

男(もう死んでるで)ニッコリ

男「秘儀!メンタムオーバードライブ!!」ドギャァァァッ

てけ「ア・・・・ア゛アァ・・・・」

男「ロート製薬の力、思い知るがよい」 ※何度も言いますがステマではありません

てけ「い、痛くない・・・あ、足・・・足がない・・・ないよ・・・?あたしの足・・・嫌ァァァァァァア!!」

男(アカン)

男「ほら、もう大丈夫だよ」ギュッ

てけ「足・・・足がないの!私の足がぁぁ!!」

男(足どころか骨盤から下丸々ありません)

てけ「私の足、どこにあるの!!?」

男「う、うーん・・・もう荼毘に付されちゃったんじゃないかなぁ」

てけ「嫌ぁぁぁあ!!」

男「大丈夫、落ち着いて」

てけ「足・・・足を頂戴・・・足を・・・」

男「分かった、まかせろ」

てけ「お前の・・・お前の足をよこs男「それ以上いけない!」

てけ「」

男「やめてくれ・・・こんな可愛らしい顔立ちの君に、俺のスネ毛が生えた足を移植するのは」

てけ「えっ」

男「精神衛生上よろしくない」キリッ

てけ(・・・あれ?ていうか私今男の人に抱きしめられてる!?)

てけ「ちょっ、放してくださいっ!///」ドンッ

男「あっ、下半身ないのに俺を突き飛ばしたりしたら・・・」

てけ「ふにゃっ!!」ゴチン

男(言わんこっちゃない・・・)

てけ「い、痛いですー」ズーリズーリ・・・

男「お、おぉ・・・俄然ホラー感増すね。這い寄ってこられると」

てけ「あの・・・私・・・」

男「大丈夫。わかってるよ。いままで苦しかったね」ナデナデ

てけ「う、ううぅぅ~~~!」ウエーン

男「もう、痛くない?」ヨシヨシ

てけ「はい・・・すごいですね。メンタム」

男「前例があったからね」

てけ(前例?)

男「さて・・・それはそうと、君に足を用意してあげるって話だけど」

てけ「・・・」

男「悪いけど、時間をくれないか?そうだな・・・半年くらい」

てけ「半年、ですか」

男「あぁ・・・すぐには用意できないんだ」

てけ「そうやって・・・私から逃げようと」

男「違うって・・・約束するよ。新しい足ができるまで、俺は毎週ここに来る。君に会いに」

てけ「えっ・・・///」

男「頼む・・・信じてくれ」

てけ「・・・約束、絶対守ってくださいね?もし逃げたら、割とリアルに呪い殺しちゃいますよ?」

男「あぁ、構わないさ。それにしても場所が良くなかったな・・・この踏切、ホルモン焼き屋の真横じゃん」

てけ「」

それから毎週、男はてけてけに会いに行った。

さらに、彼女の足を用意するために男は新たにバイトを始めお金を貯め始めたらしい。

そんな彼の姿に、(もう人じゃないけど)少女が恋心を抱くまでそう時間はかからなかった。

そして半年後・・・

男「よっ!てけちゃん元気ー?」

てけ「あっ・・・男さん・・・///」

男「いやー待たせたね!例のもの、やっと準備できたんだよ!!」

てけ「本当ですか!?」

男「うん、それで今からウチに来てもらいたいんだけど・・・」

てけ「・・・」

男「てけちゃん、そこから動ける?」

てけ「・・・」フルフル

男「ですよねー地縛霊の類ですもんねー」

男「困ったな・・・どうしよう」

てけ「その・・・私っ、実は踏切さえあればどこにでも行けるんですっ!」

男「いやウチに踏切とか物理的に無理っしょ」

てけ「そ、その・・・おもちゃの踏切とかでも・・・」

男「え?あっ、そんなんでいいの!?」

男「・・・買ってきたよー」プラレール

てけ「す、すみません」

男「で、これどうすればいいの?」

てけ「あ、あのっ・・・お部屋の中に置いといていただければ・・・あとで伺いますのでっ!!」

男「オッケー、分かったよ。じゃ、先いってるね!」

てけ「はい・・・ではまたあとで」

男「30分後くらいに来てねー!」

てけ(あぁー、私今から男さんの部屋に!!)

てけ(ていうか冷静に考えて男の人の部屋なんてはじめてだよぉ)

てけ(どうしよう格好とか変じゃないよね?・・・っていつもおなじ格好だけど)

てけ(ああっ!緊張してきたぁ~!)

てけ(も、もし男さんとあんなことやこんなことになったらっ・・・!///)

30分後。

てけ「お、おじゃましますぅー」ヌゾー・・・

男「お、来た来た・・・相変わらずホラーだなぁ」

てけ「あ、あのっ!!」

男「まぁまぁ、その辺座っ・・・寄っかかってー」

てけ「は、はいっ!失礼しますっ」ポフン

てけ(あぁー、このクッション男さんの匂いがするよぉ///) ※例のマッサージクッションです

男「じゃ・・・目を瞑って?」

てけ「えっ!?」ドキッ

男「いいって言うまで開けちゃだめだよ」

てけ「は、はいっ・・・!」ドキドキ

目を瞑ると、ガサゴソと何かを開ける音が聞こえる。

男「・・・うん、サイズもぴったりだ」

てけ「・・・///」ドキドキ

男の手が、優しく脇腹の辺りに添えられる。

てけ「ひゃんっ・・・!」

そのこそばゆさに、思わず声を漏らすてけてけ。

俺「じゃ・・・メンタム塗るよ」(多分これでくっつくだろ)

てけ「はい・・・あ、あのっ!」

男「うん?」

てけ「優しく・・・してくださいね///」カアッ

男(たまらん)

引きちぎられた腹部の辺りに、優しくメンタムを塗りこまれる。

もうかつての下半身はないが、もしあったらいろいろとすごいことになっていただろう。

てけ「んっく・・・はぅん・・・」

男「ちょ、エロい声やめてください興奮してしまいます」ムッハー

てけ「はぁう・・・ご、ごめんなさい!目を瞑ってるとどうしてもくすぐったくて///」

男「じゃ・・・足、つけるよ・・・」

てけ「はい・・・///」

少しづつ、下腹部に何かが近づいてくるのを感じる。

男「頼むぜロート製薬・・・パイルダーオン!!」ガチーン

てけ「あうぅぅぅうんっ!!」

思わず大きな声を上げてしまった。

恥ずかしさで顔を真っ赤に染めるてけてけ。

てけ「あっ、やだ!そ、その・・・ごめんなさい!!」

男「oh…」

てけ「あ、あの・・・男さん?」

男「素晴らしい・・・想像以上だ・・・」

てけ「もう、目をあけても?」

男「ああ、開けてごらん」

彼女がそっと目を開けると、そこにはかつてと同じように、いや、もっと美しい2本の脚がついていた。

男「すごく、キレイだ・・・」

てけ「本当・・・って、きゃあっ!な、これ、何にも履いてないじゃないですかっ!!///」

男「・・・まぁ、それダッチワイフだからね」

てけ「えっ」

てけ「・・・えっ」

彼女が目にした空き箱には「オリエント工業」の文字が入っていた。

男「いやー、下半身だけのオーダーメイドだからねー。結構お金かかったよー」

てけ「いやああああっ!!男さんの変態っ!!」

男「いや、でもそれ一般人が手に入れられる中では最高性能の下半身だと思うけど・・・」

てけ「こ、こんなのつけて私を夜のおもちゃにするつもりなんですねっ!ふ、不潔ですぅ!!」

男(耳年増だなぁ・・・ちょっとからかってみるか)

男「・・・でも、さっきのてけちゃん見てたら本当にちょっと興奮してきたよ」

てけ「ふぇっ・・・!?///」

男「君の言う通り、夜のおもちゃにしちゃおうかな~」ワキワキ

てけ「は、はうぅ・・・」ビクビク

男「・・・なんてね、冗談だよ」

そう言いながらバスタオルを投げる男。

男「とりあえず、それ巻いておきな。何か着るもの買ってくるから」

てけ「え・・・?あ、そ、その」

男「あ、間違っても外に出ちゃだめだよ?下手すると下半身だけ歩いてるみたいになるから。新しい都市伝説誕生しちゃうから」

てけ「あ、あのっ」

ギュッと男の袖をつかむてけてけ。

男「ん?」

てけ「こ、これ・・・下半身ついたらなんか変な気分になってきたんですけど・・・///」プルプル

男「・・・えっ」

てけ「本当に・・・私を夜のおもちゃにしてくれますか・・・?」ハァハァ

男「ちょ、えっ、ちょま」

てけ「お、男さんっ!!」ガバチョ

男「ぬわーーーっ!犯されるーーー!」ジタバタ

てけ「て、抵抗は無意味です!私と同化しろーっ!」グヌヌ・・・

男「出たよお化け女特有の強い力!!」ヌググ・・・

てけ「えっ」

男「えっ」

てけ「お化け女、特有の・・・?」

男「あ・・・うん、まぁ今まで相手にしてきたの(お菊さん、花子さん、紫婆)はみんな結構力が強かったなぁ・・・」

てけ「そ・・・そんなっ・・・わ、私の男さんがっ・・・」フラリ

男「だ、大丈夫っ!?」

てけ「ふ・・・フフフ・・・グッバイ私の初恋・・・ハロー新しい下半身・・・」ガクッ

男「し、しっかりしろっ!!死ぬなーー!!」 ※もう死んでます

数日後

友「なぁ男、てけてけって知ってるか」

男「・・・おう」

友「アレってさー、なくした自分の足の変わりに他の人間の足もってくらしいけどさー」

男「ああ、やばいよ」

友「それ、相手がオッサンとかだったらやばくね?」

男「ああ、やばいよ」

友「オッサンの下半身を狙う女子高生!か・・・なんかAVのタイトルみたいだな」

男「ああ、やばいよ」

友「お、男・・・?どうしたんだ、大丈夫か」

男「ああ、やばいよ」

その後、てけてけは男の下半身だけを狙い続けるようになったという。(性的な意味で)

-CASE4 踏切のてけてけ END-

-CASE5 わたし、メリーさん-

てけ「・・・男さーん・・・起きてますかぁ」

男「・・・」

てけ「寝てたら食べちゃいますよぉ~(性的な意味で)」

男「・・・」

てけ「はぁはぁ・・・お、男さんっ!いただきますぅ!!」ガバチョ

その瞬間、パッと部屋が明るくなる。

てけ「へっ?あっ、はわっ!?」

男「あの・・・てけちゃん?」

てけ「えっ?男さんが二人・・・?」キョロキョロ

男「そっちは布団を丸めたのにタオルケット被せておいただけだよ」

てけ「あ・・・本当だ」ペラ・・・

男「あのさぁ、てけちゃん。寝込み襲うのはやめてっていったよね?」

てけ「はぅ・・・」

男「あの時も言ったけど、本当そういう目的で君の下半身つけてあげたんじゃないんだからね?」

てけ「あうぅ・・・」

男「あんまり続くようだと・・・」

てけ「ああぁ・・・このお布団男さんの匂いがするよぉ・・・」スーハースーハー

男「ダメだこいつ」

翌日の夜。

てけ(よし・・・昨夜はバレちゃったけど今日こそは・・・)

てけ(声を出さないように・・・)ソーット

てけ(うふふ・・・潜入成k・・・あれ?」

てけ「ゴミ捨て場・・・だと?」

てけ「あっ!あのプラレールが捨てられてる!!男さんひどいっ!!」

てけ「一生呪ってやるーっ!!って、あら?」

人形「・・・」

てけ「うわ~、可愛いお人形・・・」ホワー

てけ「まだこんなに綺麗なのに一体誰が・・・」ヒロイ

人形「ちょっと、気安く触らないで下さる?」

てけ「」

メリー「私、メリーさん。貴女は?」

てけ「あ、はい。私、てけてけって呼ばれてます。はい」ペコリ

メリー「ふーん・・・あら、貴女も半分お人形さんなのね」

てけ「へっ?あ、あぁこれ?えへへ・・・」

メリー「そういえば貴女、さっき一生呪ってやるとか言ってたわね」

てけ「え・・・あ、はい」

メリー「よかったら手伝ってあげてもよくてよ?」

てけ「ほ、本当ですかっ!」

メリー「ええ」

てけ(男呪う→男死ぬ→幽霊になる→永遠にイチャラブできる)

てけ「よ・・・よろしくお願いします・・・!!」グイ

メリー「食い気味ね」

数日後。

男「あぁぁ、腹痛いヤバい死ぬ死ぬ!!」

<ゲンジツヲーシンジテモムクワレナイノナライマハソット

男「ぐあぁ~~~誰だこんな時に携帯鳴らしやがってぇぇ!」

<イーキーヲヒソーメ・・・ピッ

男「はいもしもしぃ!?」

?『・・・わたし、メリーさん』

男「ごめん今取り込み中だから!!」ブツッ

メリー「」ツーツーツー

男「トイレッ!!」バターン

花子「あっ・・・お兄ちゃん!!」

男「花子ちゃんんんん!?あぁぁあ話はあとだそこどいてぇぇえ!」

花子「ぐすっ・・・お、お兄ちゃーん!でぃーえすが動かなくなっちゃったよぉ~~!」ビエーン

男「んほおぉぉぉ!!わかったから一旦どいてぇええ!」バターン

<ゲンジツヲーシンジテモ・・・

男「今出れるか!!」ピッ ←でも律儀に出ちゃう

?『わたし、メリーさん・・・今駅にいるの』

男「俺男!いま便所にいるの!!」ブツッ

メリー「」ツーツーツー

男「ま・・・間に合った・・・」ジャーゴボゴボ

花子「お、お兄ちゃん・・・ヒック、でぃーえすが・・・でぃーえすが・・・」

男「あぁ大丈夫だよ花子ちゃん。充電が切れただけだから」

花子「また動くようになる?」

男「充電すればね」

花子「よかったぁ・・・壊れちゃったのかと思った」ホッ

男「そういやさっきの電話・・・」

<ゲンジツヲー・・・

男「またか・・・はい、もしもし?」

?『わたし、メリーさん。今あなたのおうちの前にいるの」

男「あーはいはい。こっちはいま便所から出てきたとこですよー・・・ってもう切れてやがる」ツーツーツー

男「うーん・・・なんかまだ腹がすっきりしないなぁ」サスリサスリ

<ゲンジツヲーシンジテモー・・・ピッ

男「・・・」

?『わたし、メリーさん。今あなたの後ろにいるの』

男「・・・」ブッ ←屁

メリー「かはッ・・・!」

男「何回も何回も電話かけてくるんじゃねぇぇぇえ!!」ビキビキ

メリー「ひっ・・・!」

男「人が腹痛くて便所に行こうかってときによぉ、何考えてやがる!!」プンスカ

メリー「そ、そんなの私には関係な・・・」

男「関係ないだぁ?」ビキビキ

メリー「ヒィィ・・・」

男「・・・花子ちゃん。ちょっとおいで」

花子「なぁに?お兄ちゃん」ピョコ

男「ほら、このお人形さんあげるよ」ニッコリ

メリー「えっ」

花子「わーい、ありがとう!!」ダキッ

メリー「ちょ、ちょっと」

男「DS充電しておいてあげるからさ、今日はそのお人形さんで遊んでくれるかな?」

花子「うん、わかった!」

メリー「えっえっ、あ、あの」

花子「あなた、メリーちゃんっていうのね?・・・とっても可愛い・・・」ニコォ

メリー「えっなにその笑顔こわい」

<さ、お洋服ぬぎましょーねー

<ちょ、やめ

<はいはい、どこが痛いんですかー

<ちょ、どこ触って・・・あんっ

<んー、ここかなぁ?うわぁとっても甘ーい

<いっ・・・や、やめてぇええ!あううんっ!!

男「Marvelous.」

メリー「も、もうお嫁にいけない」エグエグ

花子「お兄ちゃん本当にありがとう!!」ホッコリ

男「いいって事よ」スッキリ

メリー「こんな・・・こんな子供に汚されるだなんて」メソメソ

花子「よしっ!メリーちゃん!!一緒にかえろっ!」ガシッ

メリー「待って・・・助けて、嫌ぁぁーーー!」ジャーゴボボボ・・・

男「あ、花子ちゃんDS・・・って、帰っちゃった。すっかり新しいおもちゃが気に入ったみたいだな」

男「花子ちゃん・・・幽霊?同士、仲良くできるといいな」暗黒微笑

男「しかし一人であんな『お人形遊び』をしていたとは・・・初めて聞いたときは正直ちょっと引いたぜ」

男「こりゃマリカーなんかよりカスタム少女をあげたほうが喜んだかもな」

男「うーん、現代社会の闇は深い。いや花子ちゃん昭和世代だけど」

一方その頃・・・

てけ「メリーさん遅いなぁ・・・」

てけ「あぁー、早く幽霊になった男さんとイチャイチャしたいな~」ニコニコ

-CASE5 わたし、メリーさん END-

支援ありがとうございます
本日はここまでです

次は口裂け女あたりでもやろうと思ってます
何か他にいいお化けがいたら教えてください

口裂け女編が急遽なくなってこれまでの総集編やるんだろ?
そして次の話がピアノお化けになるんだろ?

みなさん保守と要望ありがとうございます
>>142の案が一番近かったのですが、昨日HDDが飛んですべて台無しになってしまいました
これは間違いなく呪いだと思われます

大分時間があいてしまいましたが、とりあえず口裂け女編だけいきたいとおもいます

-CASE6 雨の日の口裂け女-

友「男ー、明日なんだけど、ちょっと買い物付き合ってくれねぇか」

男「あ、すまん。明日は・・・」

友「おっ、と。そうだったな。わりぃ。明日は一人で行くわ」

男「すまんな」

友「いや、忘れてたのはこっちだし。気にすんなよ」

翌日。

男「・・・」

男(なんでお前のところに来るときは、いつも雨なんだろうな)

男は、傘を差しながら墓前に手を合わせる。

ここに眠る彼女が亡くなったのは、ほんの3年前のことだ。

幼馴染は昔から勉強のできる奴だった。

物心がついてから中学校を卒業するまで、2人はよく一緒に遊んでいた。

男「やべーよ、夏休みの計算ドリル全然おわってねーよ」

幼「だから毎日ちょっとずつやっておけといったじゃないか」

男「いや、俺だって夏休みの友は全部やったんだぜ?ただ、昨日学校の準備してたらランドセルからこいつが出てきてさぁ・・・」

幼「夏休み前に配られたプリントに書いてあったよ・・・」

男「そんなもん初日に紙飛行機にして飛ばしちまったよ」

幼「だめじゃないか」

男「なぁ頼むよ幼馴染。ドリル写させてっ!」ドゲザ

幼「だめだよ」

男「ケチ!!」

幼「丸写ししたら先生にばれるじゃないか・・・」

男「ちゃんと適度に間違えるから!ね!?」

幼「だめ」

男「んもう!」

男「なぁ~頼むよ!一生のお願い!」

幼「こんなことで一生のお願いを使わない方がいいよ」

男「お願い!なんでも1つだけ言うこと聞くから!!」

幼「・・・なんでも?」

男「おう、きくきく!!」

幼「いやぁ、でもたった1つじゃぁ・・・」

男「じゃ、じゃあ2つ!2つ聞くから!お願いします!!」

幼「よーし、じゃ、この紙にサインして」ハイ

男「へっ?けいやくしょ・・・?」

幼「後になってなかったことにされるのはいやだから」

男「そんなことしねぇよ・・・ほい、これでいいか?」

幼「いいよ・・・じゃ、いま計算ドリル持ってくるから」

男「さすが幼馴染様・・・後光が差して見えるぜ・・・!」

幼「はい・・・これ」

男「す、すげぇー・・・範囲外のとこまでやってある・・・」

男「ありがとなぁ~幼馴染~」ウツシウツシ

幼「まぁ、こっちも『いいもの』もらったしね」

男「あんまりきっついお願いはいやだぜ~」

幼「おや、なんでもしてくれるんだろう?」

男「うへ・・・」

しかし夏休みが終わっても、幼馴染がその契約書を使うことはなかった。

月日が経って俺たちは中学校を卒業し、それぞれ別に高校へ進学することになった。

市外の進学校へ進んだ幼馴染だったが、入学して数か月が経った頃、彼女が学校へ行かなくなったという話を風の噂に聞いた。

男はふと、高校の帰り道に幼馴染の家に寄ってみることにした。

ピンポーン・・・

男「・・・誰もいないのか?」

もう一度呼び鈴を鳴らす。しかし返事はない。

男「仕方ないな。また機会があったら寄ってみるか」

そう思って振り返ると、ちょうど彼女の母親が現れた。

幼母「あら・・・男くん」

男「あ・・・どうも、ご無沙汰してます」

幼母「あの子に何か用?」

男「いやー、たまたま近くまで来たんで・・・ちょっと寄らせてもらいました」

幼母「そう・・・でも、ごめんなさいね。今、あの子具合がよくなくて」

男「あ・・・そうだったんですか、すみません」

幼母「一応、男くんが来たことは伝えておくわね」

男「あ、はい。じゃあ、お大事にと伝えておいてください」

そのまま幼馴染宅を後にする。

男(うーん、あいつ、どうしたのかなぁ)

幼馴染から電話がかかってきたのは、その日の夜だった。

男「はいもしもし・・・どうした?」

幼『・・・』

電話口の彼女は一言も発しない。ただ、電話からは時折すすり泣くような声が漏れてくる。

男「おい・・・大丈夫か?しんどいんだったらまた今度・・・」

幼『男・・・これから、会えないか』

外は小雨が降り始めていたが、幼馴染のただならぬ様子に男はすぐさま自転車で家を後にする。

指定された場所につくと、そこにはすでに彼女の姿があった。

男「はぁ、はぁ・・・すまん、待たせたな」

幼「いや・・・急に呼んだのはこっちだし・・・」

久々に見る彼女の顔は相当にやつれていた。髪も伸びておりボサボサだ。

幼「・・・久々に外に出るのに、随分勇気がいったよ」

男「随分その・・・変わったな、お前」

幼「男は何も変わってないよ」

二人は近くのベンチに腰掛ける。足元に屋根から落ちる雨の飛沫が飛ぶ音が響く。

しばらくの間沈黙が続いた後、先に口をひらいたのは幼馴染だった。

幼「そっちの高校生活はどうだい?」

男「ん・・・まぁこんなもんかな。友達もできたし。相変わらず、数学はワケ分かんねーけど」

幼「はは、本当に男は昔から算数・数学が苦手だからな」

男「この調子じゃ、この後の物理も相当やばそうだ」

幼「そうか・・・」

男「お前は?」

幼「・・・」

男「・・・学校に行ってないって、聞いたぞ」

幼「・・・あぁ」

男「何かあったのか?」

幼「いや、ちょっと体調が優れなくてな」

男「おばさんもいってたけど・・・相当良くないのか?」

幼「いや・・・」

そういうと、彼女は俯いてしまう。

男「・・・電話口でお前、泣いてただろ」

幼「あぁ、バレてたのか。まったく、情けないな」

男「無理、してんじゃないのか」

男がそっと幼馴染の背中に触れると、彼女はビクッと身体を震わせる。

そのまま背中をさすり続けると、次第に嗚咽が漏れてくる。

幼「う・・・く、ひぐっ」

男「・・・」

黙って背中をさすり続ける男。

幼「うっ、ううぅ~、ぐすっ、・・・あぁ、顔がグシャグシャだ。頼む、見ないでくれ」

男「・・・おう」

どれほど時間が経っただろうか。雨が大分止み始めた頃、彼女はやっと泣き止んだ。

そしてゆっくりと、口を開く。

幼「なぁ男・・・」

男「ん?」

幼「私はその・・・変な女か?」

男「いやぁ・・・別にそう思ったことはないけど」

幼「はは、よくしゃべり方が男っぽいといわれるけどな」

男「大丈夫、そこはきっと萌えポイントだよ気にすんな」

幼「現実の女はそうもいかないさ」

男「いや、でもホント気にするほど変でもないと思うけど」

幼「男は昔から一緒にいるからな。それほど違和感がないだけだろう」

男「かもなぁ」

幼「そうだよ」

男「・・・もしかして、そのことで何か言われてるのか?」

幼「随分と核心をついてくるじゃないか」

幼「やっぱり進学校といってもね、周りにいるのは年頃の男女だ」

幼「人より勉強ができるだけだと、どうしても浮いてしまう」

男「・・・お前、いじめられてんのか?」

幼「今までは、男が私の隠れ蓑になっていてくれてたんだな」

幼「一人になって分かったよ。私は相当、変わった女らしい」

幼「しゃべり方も男っぽければ、化粧もしない。放課後に友人と買い物に出かけることもない」

幼「私な、クラスじゃ幽霊扱いされてたんだよ」

男「・・・」

幼「まぁ仕方ないさ、悪いのは私だからな。勉強だけに感けすぎた」

幼「・・・なぁ男、あの時の『契約書』、今使わせてもらおうかな」

幼馴染が取り出したのは、くたくたになった一枚の古い藁半紙だった。

男「お前・・・よくそんなもん持ってたな」

幼「物持ちはいい方でね。・・・この契約によると、男は私の言うことを2つ聞いてくれるらしい」

男「ぐ・・・」

幼「幸いなことに使用期限もないようだしね?使わせてもらうなら、今だ」

男「仕方ねぇな・・・いいよ、使えよ」

幼「そうか・・・・じゃ、まず一つ目の命令だ」

幼「男・・・私と、付き合ってくれ」

予想外の言葉に、男の心臓がドキリと高鳴る。

男「・・・は?」

幼「もちろん、今までのような付き合いじゃない。ちゃんとした『男女』としての付き合いだ」

男「・・・」

幼「ただ、この命令には特別に拒否権を与えよう。もし男が断ったのなら、この話はこれでおしまいだ」

数分の沈黙が続き、男がゆっくりと口を開く。

男「・・・すまん」

幼「だろうな」

幼馴染がニコリと微笑む。

男「正直、お前のことをそういう目では見れない」

幼「ああ、分かってたよ。正直に断ってくれて、ありがとう」

男「お前のことは、好きだよ。ただ・・・」

幼「そういう感情ではない、か」

男「・・・あぁ」

幼「いいよ。その言葉が聞けただけでも、ここに来た意味があった」

幼馴染はそういってベンチから立ち上がる。

幼「男、今日はありがとう。・・・私、もう少し頑張ってみるよ」

男「あ・・・もう一つの命令は?」

幼「それはまだとっておこうかな」暗黒微笑

男「うっ・・・わ、分かったよ」ゲンナリ

幼「貴重なカードだ。ここで切るのはもったいない」

そして、その晩二人はここで、別れた。

そしてそれからさらに数か月の時が流れた。

冬休みを目前に控えた12月、Xマスに浮かれる学校中に突如「口裂け女が出た」というウワサが広まった。

友「おい男!口裂け女の話、聞いたか!?」

男「おぉ、聞いた聞いた!」

友「さっき詳しい話を聞いたらよ、なんでも3丁目の橋のあたりで見た奴がいるんだって!」

男「3丁目!?うひょーマジかよ!俺んちから改札出てすぐじゃん!」

友「えっ、おまえんち何改札あんの」

男「いやないけど。あぁ~、この際もう口裂け女でもいいから付き合ってくんねぇかなぁ~」

友「男氏貪欲ぅ~!!」ヒュー

男「世間はもうじきXマス・・・口裂けてるのにさえ目を瞑ればヤツも身体は女だぜぇ~」グヘヘ

友「男氏性に貪欲ぅ~!!」ウヒョーイ

男「よし、思い立ったが即実行!早速今日の放課後現場に行ってみるぜ!!」

友「即レイプですね、わかります」

男「盛り上がってきたぜ!股間が」

友「おまわりさんこっちです」

その夜、男は噂の橋に向かう。

男「おぉ~、寒ぃ・・・畜生、雨まで降ってきやがった。折り畳み傘持ってきて正解だったな・・・」

男「ホワイトXマスなんて幻想に浮かれてる連中に俺の呪いが通じたのか?」

男「それにしても、人っ子一人いやしない・・・」

男「ん・・・?」

よく見ると、雨の中ひとりポツンと女が立っている。

男(あれは・・・ひょっとして)

ここからでは顔を確認することができない。

男は声をかけてみることにした。

男「・・・あの」

女「・・・」

女はふっと顔を上げる。マスクをしているが、男はすぐに幼馴染だと分かった。

男「やっぱりお前か。どうした、こんなところで」

幼「・・・」

男「ほら風邪ひくぞ。いやもうひいてんのか?マスクしてるし」

幼「・・・」

男「なんだ、病院の帰りか?ほら、傘あるからこっち来いよ」

幼「ワタシ、キレイ?」

男「は?」

幼「ねぇ、ワタシ、キレイ?」

彼女がマスクを外すと、そこには真紅の口紅が顔の半分いっぱいに塗りたくられていた。

男「うっ・・・お、お前!?」

幼「ねぇ見て、男・・・ホラ、私、お化粧するようになったんだよ・・・」

男「ちょ、おい!お前っ・・・」

幼「ねぇワタシ、キレイになったよね!?キレイだよね!?ねぇ!!」

男「どうしたんだよ、おい!」

幼「みんなワタシのことキレイって言ってくれるよね!!あははは!」

男「幼馴染っ!」

幼「男、今度の命令は絶対だよ!私と付き合って!付き合って!付き合って!」

幼「あははははは!やっと!やっと男と一緒になれた!!」

そういうと、彼女は向こうへ走り去ってしまった。

男「待てっ、!おい!!」

・・・それが、男が見た彼女の最期の姿となった。

翌日、彼女は川の下流で遺体となって発見される。

憔悴しきった彼女の母から聞いた話によると、幼馴染は俺と会ったあの日から再び学校へ行くようになったらしい。

しかし、周囲に溶け込むことができず、勉強の成績も下がり始め、ついには重度の鬱病を発症。

妄想や自傷行為が目に余るようになり、両親の手に負えなくなった彼女は数週間前から精神病棟に入院していたそうだ。

やがて症状が寛解し始め一般病棟に移された矢先、彼女は病院を抜け出した。

棺の中をのぞくと、うっすらと化粧を施された彼女の顔が花に囲まれている。

最後に会ったあの時とは違い、唇にはうっすらと東雲色の紅がさされている。

男(お前・・・どうして)

もう、その答えを聞くことはできない。

もし、あの日彼女の言葉を受け止めていたら、結果は変わっただろうか。

彼女は、自分を恨んでいるだろうか。

その後、男はすっかり塞ぎこんでしまった。

食事も喉を通らず、学校へも行きたくない。

布団に入って目を閉じてみても、幼馴染の顔が浮かんで眠れない。

自責の念に苛まれる男の元に、ある夜、目を疑うようなものが現れた。

幼「・・・」

男「・・・お前」

そこに立っていたのは、死んだはずの幼馴染だった。

幼「・・・」

男「そうか、きた、のか・・・」

男の言葉に反応するでもなく、彼女はすっと枕元に座る。

身体は縛られたかのように動かない。彼女の手が横顔をなぞる。

ひやりとした冷気のようなものが頬を伝う。

そして、静かに幼馴染の顔が近づいてくる。

そっと、唇を重ねる二人。

気付けば、男は涙を流していた。

男「すまん・・・本当に、すまん」

幼馴染はふっと笑い、こちらを見る。

その瞬間、身体の自由が効くようになった。

男「幼馴染っ!」

彼女を抱きしめようとする男の手は、むなしく空を切る。

男「おい、幼馴染っ!」

いくら手を伸ばしても、彼女には届かない。

幼「男・・・ありがとう。もう、大丈夫だ。最後まで、迷惑をかけてすまなかった」

男「・・・!」

男は口を開いたが、言葉を発することができない。

幼「最後の命令だ、男。お前は私の分まで、ちゃんと生きてくれ」

幼「いいか、約束だぞ。もし死のうとしたらまた化けて出るからな」

幼「・・・結局、お前にも上手く甘えることができなかったんだな、私は」

幼「お願いだから・・・いつもの男に戻って、これからも過ごしてくれ」

幼「ありがとう・・・もう、行くよ」

そういうと彼女の姿はふっと消えてしまった。

しとしとと、雨の降る音だけが部屋に響いていた。

3年前の、冬の夜のことだった。

男(まったく・・・一方的に言いたいこと言いやがって)

男は雨の中線香に火をつける。

男「この雨女め・・・線香がシケっちまって全然火がつかんぞ」

幼「別にいいよ・・・煙いだけだし」

男「いや、一応立てるべきだろ、お前の命日なんだから」

幼「そうはいっても、誕生日のロウソクなんかとはわけが違うしな」

男「ていうかお前さ・・・あの時のあの流れは成仏するカンジだっただろ・・・」

男「なんで、化けて出てんの?」

幼「そりゃ、愛するお前が早死にしないように見張っておくためだよ」

男「へぇそうかい。そいつはどうも」

幼「あの後ちょっと目を離したらすぐに私の後を追ってこようとしたしな、お前」

男「そりゃ、ナーバスになってるときにあんなことされたらそうもなるわ」

幼「意外にメンタル弱いよな、男は」

男「錯乱して口裂け女やってたお前にいわれたくねぇ」

幼「存外楽しかったぞ?アレは」

男「あぁ、そうかよ。幽霊になってから、いろいろとふっきれたようで」

幼「まぁな。もう生前の面倒なしがらみはごめんだ」

男「親より早死にしやがって。おばさんとおじさんがどれだけ悲しんでたと思ってるんだ」

幼「はいはい。ちゃんと親が死ぬまで賽の河原で石積んでおきますよ」

男「あーこの娘中央特快地獄行きですわー、地蔵菩薩もこいつだけは途中駅通過ですわー」

幼「うるさいな。お前がこっちに来るまでは、私は成仏するつもりはないぞ」

男「幽霊の幼馴染に愛されて夜も眠れんわこっちは」

幼「それにお前、あの日私が枕元でキスしたとき、ちょっと興奮してただろ」

男「何をバカな」

幼「バレてないとおもったか?」

男「・・・」

幼「言っておくが、割と全部分かってたからな」

男「幼馴染さんのエッチ!///」

幼「人を振っておいて、しっかり興奮するとはなんて奴だ。挙句の果てには抱きつこうとしてくるし」

男「ちげぇよバカ、あの時はマジでちょっと感極まっておかしくなってたんだよ!」

幼「あぁ、これなら生身のうちに夜這いをかけておいてもよかったかもな」

男「勘弁してくれ」

幼「ま・・・いいさ。時々こうして顔を出してくれるだけでも、私はうれしいよ」

男「そうかい」

幼「いまでも私と付き合う気はないか?」

男「付き合ううんぬんより、お前もう死んでるじゃねぇか」

幼「あぁ、ずっと女子高生の身体のままだぞ。うれしいだろ」

男「生憎、お前のおかげで『視える』ようになってから俺はモテモテでな」

幼「お・・・浮気をするつもりか」

男「なんだよ、浮気って」

幼「もう男には私がツバつけてあるからな。横取りは許さん」

男「怖いわー、幽霊女の嫉妬とか超怖いわー」

幼「今度は本物の口裂け女にでもなって出てやるか」

男「おいばかやめろ」

幼「冗談だよ」

男「まったく・・・じゃ、そろそろ行くな。あ、あそこにいるのおばさんじゃねえか?」

幼「ホントだ・・・母さんにも、よろしく」

男「幽霊になった娘さんがよろしくって言ってましたよ、なんて言えるかボケ」

幼「はは、確かに」

そして翌日・・・

友「うへぇー、昨日の雨はまいったぜー」

男「そういやお前出掛けるって言ってたもんな」

友「・・・なぁ、お前が昨日墓参りに行ってた幼馴染ってどんな娘だったんだ?」

男「そうだな・・・頭がよくて、男みたいな話し方だったな。顔もそんなに悪くなかった、と思う」

友「へー」

男「あとたまに口が裂ける」

友「なにそれこわい」

友「お前、その娘のこと好きだったの?」

男「うん」

友「そっか・・・」

男「永谷園の麻婆春雨と同じくらい好きだったわ」 ※ステマではありません

友「あーごはん進んじゃう系か」

男「せやな」

友「つまり今のはアレですね、『夜のオカズに最適です』っていうメタファーですね?」

男「キャー、友さんのエッチー」

友「今でも幼馴染は夜になると毎晩男のもとに現れあんなことやこんなことを・・・!」

男「絶好調ですね」

友「ちょっとここに呼んでみろよ」

男「いやぁ、今日は無理だろうな」

友「そうなのか?」

男「ああ、あいつ、雨女だからさ。雨の日しか出てこないんだよ」

友「ふーん・・・」

男はふっと窓の外を見遣る。

冬空は、昨日とはうって変わって青く澄み渡っていた。

-CASE6 雨の日の口裂け女 END-

本日はここまでです

要望があったお化けたちも頑張って書きたいと思います

乙っす
今までから考えられないシリアスさでビックリしましたが
こういうのも大好きです
でもそういう存在が居るなら幽霊に浮気っぽいことするなよwwww

>>211
男さんの行動理念は基本困ってる幽霊に救いの手を差し伸べること
+役得でちょっとエロいことしちゃえってカンジですね

基本優しいのでみんなに好かれるんでしょうねもげればいいのに

書き込みありがとうございます
意外に男の着メロ気づいてくれる人がいてうれしいです

今日は要望を2回いただいている貞子いきます

-CASE7 呪いの宅配業者-

男「呪いのビデオだぁ?」

友「あぁ、どうやら本物らしいぞ」

男「そんな、今更VHS持ってこられてもなぁ・・・」

友「まぁ、なぁ」

男「デッキなんて10年以上前に捨てちまったし・・・」

友「で、だ。帰りにちょっとハードオフ寄ってデッキ見てみないか?」

男「えー、そこまですんのかよ」

友「実はこれ以外にも親父の部屋から昔の裏ビデオが出てきてさぁ」

男「よし、デッキ代は半分持とう」

その夜・・・

友「よーし、接続OK!」

男「どっちから見る!?」

友「そりゃもちろん・・・こっち(裏)よぉ!」

男「さすが友さん!!」

友「よーし、いくぞー」ガチャッ、ウィーン

男「wktk」

<Nooooooooo!I can't take it!Ahhhhhhhhhhhh!!!ブシャアアアアアアアアアア

男「」

友「」

男「お・・・おぉ」ドンビキ

友「親父・・・お前・・・スカ○ロって・・・お前・・・」ドンビキ

男「しかもここで止まってたってことは、ここで抜い・・・いや、やめておこう」

友「・・・」

男「・・・呪われてるほう、みようか」

友「・・・うん」

友「・・・今のもある意味では呪いのビデオだったと言える」

男「・・・親父さんだって男なんだ、他人の趣味にどうこういうのは野暮だぜ」ガチャッ、ウィーン

友「きっついわー・・・昔腐ったマヨネーズ気付かずに食った時よりきっついわー」

男「お・・・始まった、のか?」ザー

友「・・・やっぱり、砂嵐なんだな」ザー

男「何も写らねぇな」ザーーーー

友「あぁ」ザーーーーーーーーー

男「こう・・・昔ファミコンやる前にさ、テレビ2chにしたじゃん?」

友「あぁー、赤白黄じゃなくてRFスイッチのやつな」

男「あれ思い出さね?」

友「わかるわー」 ※わからない人は近くのオッサンに聞いてみよう

90分後・・・。

友「なんだよ、やっぱりただの噂かよ~!あぁーデッキ代損した!!」

男「しかも見せつけられたのがアレっていうのがな・・・」

友「言うなよ・・・あぁー明日からまともに親父と会話できねーわー」

男「現代社会の闇は深いな。あ、俺明日1限だからそろそろ帰るわ」

友「おやすみー・・・」

男宅。

男「ふぃー、疲れたー。まさに骨折り損のくたびれもうけってやつだな」ヤレヤレ

男(しかし・・・期待していた裏ビデオがまさかアレとは・・・)

男(ちょっと口直しにXVIDEOSでも見ておくか)

男はPCを立ち上げる。

男(うーん・・・そういやぁ新しいオナホも欲しいんだよなぁ)カチカチ

男(ネットで買うかぁ・・・でも最短発送3日かぁ)ポチポチ

男(正直今すぐ使いたい・・・ん・・・?これは・・・)

男(SDKデリバリーサービス?)

男はサイトの中にある地味なリンクに目をつける。

男(「即日配送」はともかく「当日到着」って・・・ちょっとリンク先のページ見てみるか)

何気なくリンクをクリックすると、真っ黒い画面に動画が埋め込まれていた。

男(あー広告だよ・・・こういうのウザイからやめてくんねーかな・・・ん?)

動画が始まると、そこには砂嵐が写されている。

数秒後、その砂嵐は急に途切れ、画面の中に赤い箱が映し出された。

男(なんだ・・・コレ)

そしてその箱の中から、白い手がこちらに向かって伸びてくる。

男「うぉ!」

その手が、男の額にピタリと触れたその時。

?「SDKデリバリーサービスのご利用ありがとうございます!!」ニョキー

PCの画面から、髪の長い色白の女の子が飛び出してきた。

男「ちょ、ちょちょちょちょちょ!!?」

?「初めまして!あなたが当社の最初のお客様です!パチパチパチ!!」

男「ちょ、ちょ、うわ、ごめん、待って!!」

?「あ、初めまして。私代表取締役の貞子と申します!!」メイシドゾー

男「パンツくらい履かせてぇぇぇぇ!!」イヤアアアアアアアアアア

貞子「いやー、この事業はもうだめかなーって、そろそろ店をたたもうかと考えてたところだったんですよぉ」

男「悲しい・・・何が悲しいって見られたことよりもノーリアクションだったことが悲しい・・・」シクシク

貞子「大丈夫ですか?今からでも顔を赤らめておきましょうか?」

男「もう遅いですぅ」エグエグ

貞子「すみませーん、何分初めてのお客様なのでテンションが上がっちゃって↑↑」

男「あ・・・そういえばキミ、『貞子』っていってたね?」

貞子「はい!」

男「貞子って、あの貞子?」

貞子「どの貞子です?」

男「あの、呪いのビデオの」

貞子「あぁ!あれは私をモチーフにしたフィクションですよ!」

男「え、そうなの?」

貞子「はい!昔、私が間違えて鈴木さんちのテレビから顔出したときにあのアイデアが浮かんだそうで!」

男「へ、へぇ~・・・」(誰だ鈴木さんって) ※鈴木光司氏

貞子「まぁ、出演料はもらってないんですけどね!ひどいですよね!」プンスカ

男「それで・・・えーっと、なんだっけ?SDKデリバリーサービス?」

貞子「はいっ!即日配送から当日お届けまで自慢のスタッフ、っていうか私ですが懇切丁寧にご対応させていただきます!」フンス

男「あ、あぁそう・・・ちなみにそれは、制服?」

貞子「かわいいですか?フリフリしててかわいいですよね~」エヘヘ

男(アンミラかぁ・・・懐かしいなぁ)

貞子「それで!早速ですがどのようなモノの配送をご希望で!?」

男「え・・・いや、えっとその」(オナホの配送だなんて言えねぇ)

貞子「あ、大丈夫ですよ。何ならブラウザのキャッシュみれば分かりますんで」

男「」

貞子「えーっと・・・」

男「らめええええええええええええええええええ!!」

男「もうお嫁に行けない・・・」メソメソ

貞子「大丈夫ですよぉ。男の人の趣味にどうこう言うほど私は野暮じゃありませんから!」

男「・・・どっかで聞いたセリフだな・・・あ、俺だ」シクシク

貞子「料金を直にいただければすぐに配送いたしますけど!!」

男「え・・・いや、でもまだ本体の決済が・・・」

貞子「あ、お金なら会社の倉庫に直接おいてくるから平気ですよ!!」

男「それって平気なのかなぁ・・・」

貞子「今なら初回特典で10%サービスしますよ~」

男「じゃ、じゃあ・・・はい」ゴセンエン

貞子「毎度どうもー!では、5分後くらいにお届けに上がりまーす!!」ヒューン

男「大丈夫かなぁ・・・」

5分後

貞子「ピンポーン!ごめんくださーい」ニョキー

男「ちょ、もう出てる出てる!『今開けまーす』くらい言わせて!」

貞子「はい、これお届けの品でーす」オナホ

男「あ、ありがとう・・・」(恥ずかしい・・・)

貞子「じゃ、こちらにハンコいただけますかっ!」ココネ

男「あ・・・サインでもいいかな?」

貞子「あ、大丈夫ですよっ!」

男「じゃ・・・」

貞子「あ、ボージュプリー語でお願いしますね!」

男「書けねぇよ何それ」

貞子「はい・・・では確かに!」

男「ご苦労さまですぅ」

貞子「またのご利用をお待ちしておりますっ!!」ヒューン

男「なんか、嵐のように去って行ったな・・・」

男「・・・とりあえず、使うか」ガサゴソ

数日後

友「やべぇ・・・音響物理の参考書なくしちった・・・」

男「はぁ!?お前あれ明日の試験で持ち込みするやつだろ!?コピー不可なのにどうすんの?」

友「どうしよう・・・」

男「学生課には届けたのか?」

友「まだ届いてないって・・・」

友「あぁ~やばいよ、アレ落としたら来年再履修だよ~」

男「えっ・・・でもあの講義、確か来年の必修科目とかぶってるぜ・・・」

友「だから・・・留年・・・」

男「ちょ、ネットの書店とかで探してみろよ!!」

友「もう間に合うわけないだろ!!」ビエーン

男「大丈夫だ、在庫さえあれば俺が何とかする」

友「お、男ぉ~」グスグス

男「ほら、探すの手伝え」

2人はスマホを手に検索を始める。

男「・・・あった!在庫あり1!」

友「ダメだ・・・最短発送3日だ・・・詰んだ」

男「いや、大丈夫だ。今日の夜には届けてやるから」

友「どうやって?」

男「まぁ待ってろ。届いたらすぐに電話するから」

男は家に帰り、すぐさまPCを立ち上げる。

男「えーっと、履歴履歴・・・あった!」

男「おーい!貞子ちゃーん!」

貞子「はいっ!SDKデリバリーサービシュ・・・サービスのご利用ありがとうございます!!」ニョキー

男(噛んだな)

貞子「配達をご希望ですかぁ?」

男「うん、いますぐこの参考書、配達してもらえるかな?」

貞子「承知しましたー!しばらくお待ちくださーい!!」ヒューン

男(頼むぜ・・・貞子ちゃん)

5分後

貞子「ピンポーン、お届けでーす!!」

男「やった!貞子ちゃんありがとう!!」ナデナデ

貞子「ふふん、安い・早い・美味いがウチのモットーですから」エッヘン

男「まて最後の美味いってなんだ」

男「でも本当にありがとう、助かったよ!」ハイ、サイン

貞子「喜んでもらえて何よりです!」ドーモー

男「・・・ところでその後、お仕事入った?」

貞子「いやー、それがさっぱり!そもそも私、ごく一部の人にしか視えませんからね!!」タハハ

男「あぁ・・・それはまぁ、たしかに」

貞子「よかったらお客さん紹介してくださいよぉー!」

男「そうしてあげたいのはやまやまだけどなぁ・・・貞子ちゃん視える人なんて、そうはいないぜ・・・」

貞子「あ、別に人間じゃなくても結構ですよ」

男「あ、そうなの?」

貞子「はい」

男「だったら何人かアテがあるわ」

貞子「さっすがー!その人たちにも是非ご利用いただけるよう宣伝してくださいねっ!!」

男「うん、約束するよ」

貞子「やったー!新規顧客ゲットだぜ!!じゃ、毎度ありがとうございましたぁー!!」ヒューン

男「うーん・・・いやこれ地味に便利だわ」

<ゲンジツヲーシンジテモー ピッ

男「あいもしもし、おー友か。どうした?」

友『男、今までありがとう・・・。これからはお前のこと、先輩って呼ばないといけないんだな・・・』

男「あ、参考書今届いたよ」

<バターン

友「『男素敵!!愛してる!!』」ハモリ

男「うおおおお!!ドアのすぐ外まできてたのかよ!!」ドキーン

男「ほらよ」

友「すげぇ・・・!いったいどうやって」

男「ふふん、俺様にかかればこんなもんよ」

友「さてはお前、俺の参考書隠してただろ?」

男「バカいえ。新品だろうが、それ」

友「本当だ・・・いやでもマジに助かったよ。今度なんかおごるぜ」

数日後・・・

男「んー・・・課金しようかなぁ・・・でもイベ終わったばかりだしなぁ・・」←ソシャゲ中

貞子「ピポ!お届けです!」ニョキ

男「うぉ!びっくりした!・・・って、小さっ!スマホから出てくると小さくなんの!?」テノリサダコ

貞子「受け取りのサインおねがいします!」ココダヨ

男「は、はぁ・・・でも俺なんか頼んだっけか?」カキカキ

男「なんだこれ・・・」ビリビリ

男「あ・・・踏切・・・」

てけ「男ざぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ~~~~ん!!」ヌゾー

男「おおう、こんばんわてけちゃん」

てけ「どうじてですがぁ゛~~!どうじで私を捨てたんですがぁ゛~~~」エグエグ

男「い、いや別に捨てたわけじゃ・・・」

てけ「ずっと男さんの部屋にこれなくて寂しかったですうううう」ウエーン

男「は、はぁ・・・ご、ごめんね?」ナデナデ

てけ「あとなんで死んでないんですか」

男「えっ」

男「あぁ・・・メリーさんか・・・」

てけ「男さんを呪い殺してくれるようにお願いしたのに~」

男「なんて物騒な娘だろう。まさか恩を仇で返すとは」

てけ「メリーさんをどこにやったんですかっ!!」

男「彼女なら今頃お友達とよろしくやってるんじゃないかなぁ」

てけ「えっ」

男「しまった、貞子ちゃんに花子ちゃんのとこには小さい姿のまま行かない方がいいよって言っておかないと・・・」

てけ「そんな・・・男さん、まさかあんな小さな女の子を・・・う、う、うぅぅ・・・」

男「てけちゃん、どうした?」

てけ「お、男さんの鬼畜うぅぅぅぅぅぅ!」ウワーン!!

男「・・・あ、行っちゃった。あれ絶対なんか誤解してるよ」

さらに数日後・・・

貞子「ピンポーン、SDKデリバリーサービスでーす」

男「はーい、今日はどうしたの?」

貞子「いやー、実は今日はご報告がありまして」

男「へぇー、何?」

貞子「実はですね、先日からSDKデリバリーサービスの本社が移転しまして」

男「ほうほう」

貞子「で、私のほうも面倒くさいんで本社住み込みにしたんですよ」

男「ふーん、井戸に住んでるんじゃないんだ」

貞子「あんな暗くて狭いとこ無理です!」

男(お菊さんDIS・・・)

貞子「でですね、数日前から男さんのこのPCにですね、本社ごと引っ越しさせてもらいました」エヘヘ

男「・・・ん?」

貞子「いやー、やっぱり新しいところはいいですねー」ノビー

男「・・・」ダラダラ

貞子「?どうかしました?」

男「そそそ・・・それって、も、も、も、もしかして・・・そっち側から俺・・・視えてた・・・?」

貞子「え?あ、まぁ、はい。普通に視えてましたけど」

男「い、嫌ァァァァァァァァァァッ!!」

貞子「だーいじょうぶですって!前にもいいましたけど、男の人の趣味に口出したりしませんから!!」

男「殺して・・・いっそ殺して・・・」ブクブク

貞子「よーし、これからもバリバリ働きますよー!!家賃収入期待してくださいね!男さん!!」

-CASE7 呪いの宅配業者 END-

本日はここまでです
そういえば貞子さんは公式設定でふたなりらしいですね
夢がひろがリング

-CASE8 A Queen of the Night-

友「男、知ってるか」

男「知らんなぁ」

友「そうか」

男「・・・」

友「・・・」

男「えっ」

友「どうした?」

男「何だよ!教えてくれないのかよ!」

友「おこなの?」

男「おこじゃないけどそこまで言ったなら言えよ気になるだろ!」

友「はは、悪い悪い。いや実はな・・・」

男「お化け屋敷ぃ?」

友「あぁ、次の学祭でオカルト研究会が講義棟借し切って開催するらしい」

男「へぇ、講義棟ごと。そりゃあすごい」

友「だろ?でな、どうやら人手が足りないらしくて」

友「誰か手伝ってくれるやつはいないか、ってんでお前の名前を挙げといたぞ」

男「おいこら待て。それに関してはおこだわ。激おこだわ」

友「まぁ聞けよ。話によるとな、手伝ってくれたやつには報酬が出るらしいぞぉ」

男「えぇー、どうせ500mlポカリ2本とかでしょぉ?」 ※作者体験談

友「いや、それがスキー旅行らしい」

男「」

友「旅費も半分持ってくれるらしいぞ」

男「あ、やばいわー。やっぱお化けつったら俺しかいないわー、いやーマジ適任だわー」

友「男さんちょれーっす」

その日の夕方。

友「で・・・この教室で打合せをやってるらしいんだけど」

<ドヨーン・・・

男「やだぁ・・・入る前からすごい負のオーラ漂ってるわよ」

友「あぁ、まったく禍々しいぜ」

男「たのもう!」バンッ

メガネ「あ・・・あ・・・あ、ぁ・・・」

アホ毛「ひっ・・・ひっ・・・」

女「・・・うふ、ふふうふふふ」

男「」

友「」

男「おぉ、もう・・・」

女「・・・はっ!あ・・・ど、どちら様でしょうか・・・?」

友「あ・・・あの、学祭のお手伝いの件で話を聞きにきたんですが・・・」

メガネ「救世主<メシア>アァァッッ!!」

アホ毛「あ、あぁぁぁっ・・・!(感涙)」

友「」

-事情説明中-

友「ははぁ、なるほど・・・ここ数日人手が足りなさ過ぎて全員オーバーワーク気味だった、と」

女「は、はい・・・本当はもっとメンバーがいるんですが・・・みんな就活とか実験で忙しくて・・・」

メガネ「固定で参加できるのが僕たち1年生と、そこにいる会長くらいしかいないわけです」

男「会長?」

女「あ・・・申し遅れました。私がオカルト研究会会長の月館といいます」

男「とりあえず・・・俺たちは何をお手伝いすれば?」

月館「は、はい。当日の設営とかは他のメンバーもくるので大丈夫なんですけど・・・如何せん事前の手配が間に合わなくて・・・」

メガネ「あ、それと・・・ホームセンターからの資材運搬が今大変で・・・」

友「えっ、ホムセンなら軽トラとか借りられるでしょ?」

アホ毛「うちの研究会、誰も運転免許を持ってないんですぅ・・・」

友「なんと」

男「なるほど。それなら友が免許もってるからいけそうだな」

メガネ「救世主<メシア>アァァッッ!!」(5分ぶり2回目)

アホ毛「素敵ですっ・・・!(恍惚)」

友「なにこの、なに」

月館「あとは・・・学生課と実行委員への・・・申、せ・・・はぅ」フラッ

アホ毛「あっ!大変です、会長がまた貧血を!!」アタフタ

メガネ「い、医務室に運ばなくちゃ!!」アワワ

アホ毛「台車!台車もってきてくださいっ!」オロオロ

男「えっ、人間を台車で運ぶの!?」

友「大丈夫かなぁ・・・これ・・・」

月館「す・・・すみません・・・」

男は彼女を背負って医務室へ向かう。

男「あ、平気平気」

それにしても、背中におぶった彼女の身体は信じられないくらい軽い。

両肩からぶら下がる手や、顔色も心配になるくらいの驚きの白さだ。

男(なんていうか・・・彼女、まるで生気がないな)

男は黙って医務室の扉を開ける。

男「失礼しまーす」

校医「はーい、どしたかなー?」

男「あの・・・彼女が貧血みたいで」

校医「どれ・・・ありゃ、またキミか」

月舘「すみません・・・」

校医「とりあえず、横にしてあげて」

男はそっと彼女をベッドの上に降ろす。校医の台詞からすると、彼女はちょくちょくここの世話になっているらしい。

校医「一回病院でちゃんと検査したほうがいいよ」

校医の言葉に、彼女は小さく頷くだけだ。

男「・・・寒いんですか?」

よく見ると、彼女の身体が小刻みに震えている。

校医「貧血を起こすと代謝が落ちるからね・・・布団かけてあげて」

言われるがまま、布団をかけてやる男。

校医「今日はタクシーでも呼んで、もう帰ったほうがいいよ」

月舘「はい・・・」

男「あ・・・だったらさっきの友達に車回してもらえないか頼んでみますよ」

月舘「えっ・・・」

校医「おっ、送り狼かい?」ケラケラ

男「違いますって・・・あ、もしもし友?うん、いま医務室・・・で、車をさ・・・そう、うん・・・うん、わかった」

男「OKだって」ニコ

月舘「あ・・・あの、でも」

校医「いいじゃん、乗せてもらえば。タクシー代だってばかにならないんだしさ」

月舘「・・・」

男「よーし、じゃあ俺いったん教室行ってきます!またあとで迎えにくるんで!」

その後の車中

友「いやー、しかし今日の時点でメンバー5人だけかー」ブオーン

男「これじゃハンドボールもやられへんぞ」

友「フットサルならちょうどいいんじゃない?」

男「あ、そうか・・・じゃ、さっそく相手チーム探しを・・・」

月舘「あの・・・フットサルじゃなくて、お化け屋敷です・・・」

男「そういえばさっき当日の設営は大丈夫って言ってたけど・・・あと何人くらいくるんですか?」

月舘「あ、はい。・・・前日までには3年生と4年生合わせて15人くらいは・・・」

友「つまり現状の戦闘力は1/4ってことか・・・」

月舘「すみません・・・本当は私がもっとしっかりしなくちゃいけないんですけど・・・」

男「まぁ、まだ学祭まで1か月近くあるしいけ申すいけ申す」

友「・・・このへん、かな?」

月舘「あ、はい・・・あそこの歩道橋のところで降ろしてください」

友「いえっさー」

男「大丈夫ですか?歩けそう?」

月舘「あ・・・さっきまで医務室で休んでたので、平気です」

月舘「今日はどうもありがとうございました」ペコリ

男「いいってことよ」フンス

友「いいってことよ」フンスフンス

月舘「・・・二人が手伝いにきてくれて、うれしいです。これからも、よろしく」

男「うぃ、よろしく!」

<よっしゃ、このまま飯食いに行こうず!男の金で

<ゑっ

ブロローーン・・・

月舘「・・・」

男「いやー、月舘さんのあの様子じゃ、俺らも相当頑張らにゃならんぞー」

友「がんばれー、男の活躍にすべてがかかってるぞー」

男「不思議だわー、お前のその他人事っぽい発言が超不思議だわー」

友「あ・・・お化け屋敷ってからには、お前の知り合いの幽霊とか呼んだらどうよ?」

男「いやぁ・・・あいつら見えたり見えなかったりするからなぁ」

友「なはは」

それから1週間後

男「よし、学生課への申請はこれでOKだな!メガネくーん、実行委員に暗幕の申請出したー!?」

メガネ「い、今出してきましたけど10枚までしか借りられないそうです!!」ゼェハァ

男「なにィ!?学祭実行委員会ケチくせぇな!!仕方ない、アホ毛ちゃん、ネットでレンタル業者のリスト出してー!」

アホ毛「は、はいぃ!!」ドタバタ

友「いいねぇ・・・青春だねぇ」

男「お前も働け!!」プンスカ

アホ毛「あっ、男さん大変です!!月舘先輩がっ」アワワ

月舘「・・・」グッタリ

男「うぉ、月舘さん帰ってこーい!!ああ、ダメだ。メガネ君!俺月舘さん医務室連れてくから友と買い出し行ってきて!」

メガネ「は、はいっ!」

友「金はー?」

男「とりあえず俺のから出しといてくれ!」サイフポイー

友「よっしゃ!メガネ君行こう!ついでに茶でも飲んで来よう!!」

メガネ「は、はいっ!・・・えっ」

男「寄り道すんじゃねえええ!買うもん買ったらさっさと帰ってこい!!」ビキビキ

アホ毛「男さぁぁ~ん、プリンタが紙詰まりしちゃいましたぁ」ウエーン

男「キエエエエエエエエ!!」ビエーン

男「つ・・・疲れた」ゲッソリ

友「おう、お疲れ」

男「友か・・・」

友「いやぁ、頑張ってんな。もはやオカ研のリーダーは男と言っても過言ではないな」

男「バカ言え、リーダーは月舘さんだ・・・」

友「メガネ君もさっき買い出しにいく車の中で言ってたよ。『なんで男さんはあんなに頑張れるのか』って」

男「そりゃ・・・男が一度引き受けた仕事だ。全力でやらないとカッコ悪いだろうが」キリッ

友「そうか?」

男「そうよ」

友「そうなのかしら?」ウフン

男「うふん当たり前じゃない」アハン

友「・・・お前は優しいからな」

男「は?」

友「月舘さんのあの様子を見て、手伝わずにはいられないんだろ」

男「・・・」

友「彼女、今年で最後の学祭だからな。何か、思い出に残るようなことしたいんだろうな」

友「ま、講義の出席だけは出しといてやる。お前も、あんまり無理し過ぎんなよ」

男「あぁ・・・悪いな」

友「これが終わったら冬休みにはスキー旅行だ。こっちもせいぜい頑張るさ」

男「おう、頼んだぜ」

友「あいよ」

そして迎えた学祭前日。

<ワイワイガヤガヤ・・・

男「すげー・・・あれが月舘さんのいってた3,4年生メンバーか」

友「これだけいれば、明日の朝のリハーサルまでに設営は間に合いそうだな」

男「オカ研なのに幽霊部員・・・なんか自己頓着めいてるな」ウーン

友「うっ、ちょっと面白いじゃねぇか・・・」

月舘「二人とも、どうもありがとう。これで無事本番を迎えられそう・・・」

男「いやー、間に合ってよかったですよねー」

友「あとは明日の搬入だけだなー。トラック借りてるんだろ?」

男「えぇ、友さん専用マシン(幌付き)を手配いたしましたよ!こいつで明日はいっちょ頼みますよ!!」

友「運転はまかせろー」バリバリ

男「やめて」

メガネ「あっ、男さん」

男「おぉ、メガネ君おつかれー。・・・だいぶ寝てないみたいだけど大丈夫?」

メガネ君「はいっ!当方機関部に異常なし!総員、ワープに備えろ!!」フヒヒ

男「これはアカン」

友「人間が限界を超えた瞬間である」

アホ毛「あ、男さーん」

男「あ、アホ毛ちゃんもおつかれー・・・なんかアホ毛くたってなってるよ」

アホ毛「わたし、あした、けーき、たべるの、うまい」ヌヒヒ

男「アカン」

友「二人とも今日は帰って寝るべきなんや」

男「お前も明日は朝から搬入があるんだから、早く帰って休んどけよ」

友「おう・・・じゃ、ついでだからこの2人も送ってくわ」

男「おーう、頼んだ」

メガネ「宇宙船フラミン号!応答せよ!!」ウヒョヒョー

アホ毛「くりーむ、ついてるの、あまいの」ムホホ

月舘「皆・・・本当に、ありが・・・」

その言葉を最後まで発することなく、月舘さんは地面に倒れこんだ。

男「え、ちょ・・・月舘さん!?ちょ、ちょっと男子ー!先生呼んできてー!!」

友「お前お前、お前だよ」

男「あ・・・だめだ本気で反応がない!友、車!これ病院いったほうがいい!!」

友「ん、分かった!ちょっと待ってろ!!」

・・・その夜、月舘さんは緊急入院することになった。

それから数日。

前日から合流した3・4年生メンバーの協力もあり、お化け屋敷は成功裡に終了した。

しかし、それを一番見届けたかったであろう彼女は、当日を病院のベッドの上で過ごすこととなってしまった。

学祭終了の翌日、後片付けを終えた男がやりきれない気持ちで道を歩いていると、どこからか子供の声が聞こえてきた。

『うーさぎうさぎ、なに見てはねるー』

『十五夜お月さまみてはーねーる」 

男「・・・そうか、もうすぐ十五夜か」

男は、彼女の入院する病院へ向かうことにした。

男「・・・月舘さん、いますかー?」

月舘「あ・・・男くん」

そこにはベッドの上で点滴を受けている彼女の姿があった。

男「お見舞い、買ってきたやでー」ハイー

月舘「ありがとう・・・これは、お団子?」ミタラシダネ

男「うん。もうすぐ十五夜だから」タベテイイヨ

男はベッドの横の丸椅子に腰かける。

男「お化け屋敷、大成功でしたよ」

月舘「うん・・・アホ毛ちゃんからメールがきてた」

男「はは、アホ毛ちゃん、最終日は涙ぐんでて」

月舘「そっか・・・」

彼女は手元の団子に目線を落としながら呟く

月舘「私も・・・皆と一緒にやりたかったな」

男「・・・みんな、月舘さんがいなくて寂しそうでした」

月舘「ごめんね・・・」

男「まぁでも!月舘さんが退院したら、すぐに打ち上げやろうって、みんな言ってましたよ!」

月舘「・・・」

男「当日の写真とかいっぱい撮ったんで、それを見ながら・・・」

月舘「私ね・・・」

男の言葉を遮るように、彼女は口を開く。

月舘「私・・・退院できないかもしれない」

男「・・・えっ?」

月舘「私ね、血液の成分が他の人と比べてちょっと変わってるの」

男「・・・」

月舘「私・・・吸血鬼なの」

男「!」

月舘「皆信じてくれないけど、私は吸血鬼。きっと私は、血を飲まなければ生きていけない」

オカルトオタクの不思議ちゃん。普通の人なら、彼女に対する印象はこうだろう。

しかし、いままで数多くの『体験』をしてきた男にとって、彼女から発せられたその言葉は、真実味を帯びて聞こえた。

月舘「可笑しいでしょ・・・笑っていいんだよ、頭が変な人だって」

男は静かに上着の袖を捲り、その腕を差し出す。

男「はい」

月舘「・・・えっ?」

男「一本、いっとく?」ニコ

月舘「・・・」

男(あ、やべぇすべった死にたい)

月舘「あの・・・」

男「あ、いや普通に信じてますよ。月舘さんの話」

月舘「え?」

男「俺も視えるんで。幽霊とか、お化けとか」

あっけにとられた表情で男を見る彼女。

男「実際にそいつらに触れたり、会話することだってできるし。だから別に吸血鬼がいたところで、そんなに驚かないっす」

月舘「そんな、無理に話を合わせなくても・・・」

男「いや本当に・・・証明できないのがもどかしいけど。月舘さんの言ってることが本当なら、俺の言ってることも信じてくれますよね」

その言葉に、一瞬驚いた表情を見せるがすぐに微笑みを浮かべる彼女。

月舘「そうだね・・・うん、信じるよ」ニコ

初めて見る彼女の柔和な笑顔に、男はほんの少しだけ驚く。

男「・・・せや、団子。食べな!」

月舘「あ・・・うん、いただこうかな」

男「あ、手が汚れるといけないから俺が開け・・・つっ!」

パックを開ける際に手元が滑り、男の指先に小さな傷ができる。

男「・・・っぶねー、団子はセーフ」ホッ

月舘「フフ・・・ちょうどいいね」

男「え」

とりあえず雪女が来るまで待機してるわ

月舘さんは男の腕を掴み、もう片手で髪をかきあげながらその指をゆっくりと口元に寄せる

月舘「んぁむ・・・」

男「ちょ・・・月舘さん」

男の傷ついた指を咥え、じわりと滲む血液を彼女は何度も舐めとる。

月舘「ちゅっ・・・ちゅぷっ・・・ぷは・・・れる・・・」

男(やだエロい)

月舘「・・・もう、止まっちゃったね」

男「う、そうですね・・・」ドキドキ

月舘「ありがとう、少し元気がでたよ」

その言葉通り、彼女の顔色は先ほどとは見違えるほど良くなっていた。

男(あんな少量の血液でいいのか・・・)

月舘「じゃ、お団子いただくね!」

男「あ、どうぞ・・・召し上がれ」

男「・・・それにしても、あんなにちょっとでいいんですね。血」

月舘「なに、もっと吸ってもらいたいの?」

串を咥えながら悪戯そうな顔でこちらを見る。出会ってから1か月、これほどまでに快活な彼女を見たのは初めてだった。

男「そんな顔もできるんですね」ウーン

月舘「えっ・・・」ドキッ

男「いやー、いつも調子の悪そうな月舘さんしかみてなかったから、なんか新鮮です」

月舘「う・・・あ、そ、そう?///」

男「こんなに元気な月舘さんみたら、メガネ君とかアホ毛ちゃんびっくりするんじゃないですか」

月舘「そ、そうかな」

男「下手したら本人だと気づかれないかもしれませんよ」

月舘「あはは」

男「この様子なら、きっとすぐにでも退院できますって」

月舘「・・・ねぇ、男くん」

男「なんです?」

月舘「退院したら、さ。ちょっと話をしたいな・・・あ、その、さっきの幽霊が視える話・・・とか」

男「おっ、さすがオカ研会長。やっぱりそこに食いつきますか」

月舘「いや、あの・・・うん、退院したら、連絡するね」

そして3日後の夜、退院した彼女からその日のうちに男の元へ連絡が入る。

男「こんばんはー」

月舘「こんばんは。おかげで、無事退院できたよ」

男「さすが『吸血鬼』。回復力すごいっすね!」

月舘「・・・そのことなんだけど。人がいるとこじゃなんだから、ちょっと出ない?」

男「あ、はい」

二人は近くの河原へ向かう。

男「すげー!!超月明るい!こりゃウサギもテンションあがりますわ!!餅つき待ったなし!!」

月舘「ねぇ、男君・・・」

男「はい?」

月舘「この間の病院での話だけど・・・」

男「あぁ、幽霊が視えるって話ですよね!」

月舘「・・・ううん」

男「へ?その話じゃないんですか?」

月舘「あんなにちょっとでいいのか、って話」

男「?」

月舘「あんなにちょっとの血でいいのかって、言ってたでしょ。・・・単刀直入にいうね。私、もっと男君の血が飲みたいの」

男「えっ」

月舘「足りないの。全然。あれっぽっちじゃ。本当はね、もっといっぱい飲みたかったんだよ」

男「・・・それは、俺が死ぬレベルに?」

月舘「そこまでじゃないけど・・・でも、貧血にはなっちゃうかもね」

そういって笑う彼女の口元には、八重歯というにはあまりにも鋭い犬歯がのぞく。そしてその瞳は、妖しいほどに紅く輝いていた。

男「あ、あぁ・・・アレですか、満月の夜でガチのやつになっちゃったカンジですか?」

月舘「うーん、というよりは、あの時初めて他人の血を舐めたのがいけなかったみたい」

男「えっ」

月舘「あれからね、時々身体が疼くの。『もっと男君の血が欲しい』って・・・」

男「こわE」

月舘「あ、でも大丈夫だよ!ホント。死ぬまで吸ったりしないから!その・・・ほんの、500mlくらい?」

男「いやそれ全血献血のMAX量より多いんですけど」

月舘「ね、お願いっ!飲んだらちゃんとレバーとかアサリとかホウレンソウとか買ってあげるから!!」ネッ

男「アカンこの人ワイに血液の安定供給をさせるつもりや」ガクブル

月舘「す、すぐ終わるから・・・ね?」ハァハァ

男「なにこの、マジでレイプされる5秒前」

<イイヨネ!モウイイヨネ!!?

<ナニガ!?イヤー!オーカーサーレールー!

<ウヘヘー!クチハイヤガッテモカラダハショウジキジャネーカー!

<ツキダテサンキャラカワッテル!ヤバイコレスゲーチカラノヤツダ!!

<イタダキマス!カプッ!!

<イテエエエェェェェェェ!!

-10分後-

月舘「・・・(恍惚)」

男「・・・(蒼白)」

月舘「すごく・・・よかった///」

男「すごく・・・痛かった」シクシク

月舘「もう私、男君(の血)じゃないとダメみたい」

男「アカン・・・これ以上はアカン・・・」

男(でも、ま・・・この笑顔が見れるなら、たまにはいい・・・か)

彼女は満足そうにこちらを振り向く。月の下で照らされるその顔は、今までにないくらい魅力的な笑顔を湛えている。

月舘「また来月吸ってもいいかな!?」

男「だめどす」

月舘「ケチッ!」

男「全血献血の場合は次回は4か月以上経ってからって決まってますっ!!」 ※日本赤十字社より

月舘「そんなこと言っていいのかな~?スキー旅行、連れてってあげないよ?」

男「えっ」

月舘「今回泊るの、うちのロッジだし」

男「な、なんというブルジョワジー・・・これが格差社会か」ガクガク

月舘「血をくれないと、ご褒美連れてってあげないよ・・・?」

男「鬼や・・・鬼が・・・おるで・・・」ガクリ

月舘「やだなぁ、私はただの鬼じゃなくて吸血鬼・・・って、男くん?」

男「血が足りねぇ・・・食い物だ・・・食い物もってこい・・・」グフッ・・・

数日後

友「しかしすげぇなぁ・・・スキー旅行に自前のロッジって。月舘さんち、お金持ちだったんだな」

男「スキー旅行は有難いけど・・・代償がでかすぎる・・・」ゲッソリ

友「まぁ、確かに学祭準備大変だったもんなぁ」ウンウン

男「それだけじゃないんや・・・それだけじゃ」ガクガク

友「?」

<あ、男くんと友くーん

男「」

友「あ、月舘さんだ」

月舘「今度のスキー旅行、メガネ君とアホ毛ちゃんも来るって!」

友「おー、そりゃ賑やかになりそうだ。それにしても月舘さん、学祭前と比べてずいぶん元気になりましたね」

月舘「男君のおかげかなっ!」ウリウリ

男「やめてください死んでしまいます」

友(・・・ま、男のあの頑張りようを見れば月舘さんが惚れるのも無理ない、か)

月舘「ねー、一緒に学食行こう!奢るよ、レバニラ炒めとかアサリバターとか・・・」

男「あ・・・大丈夫です、自分コンビニでおにぎりとか食べてますんで・・・」

月舘「そんなのばっかり食べてると血にならないよ、私が言うんだから間違いない!」

友「さすがに元重症貧血患者の言葉には重みがありますなぁ」ウーン

男「ちがうんや・・・ちがうんやで、友・・・」

月舘「あ、男くん唇割れてるよ」ヒソヒソ

男「っ!」

月舘「ちょっと見せてごらん?」ニコォ

男「友っ!すまんが俺は行くぞ!メシはまた今度な!!」ダッシュ

月舘「あ・・・逃げられた」チッ

友「アイツ、なんで唇押えながら走ってんだ?・・・あ、コケた」

月舘「大変!男君ッ!そこを動くなッ!!」

<イヤー!!ヤメテ!コナイデー!!

<WRYYYYYYYYYY!!

<ヤダアアアアアアアアアア!!ナンデシガイセンヘイキナノー!?

友「あ・・・月舘さん、あんなに脚速かったのか」

友「まったく・・・モテる男はつらいねぇ」

-CASE8 A Queen of the Night END-

本日は以上です

>>322
書き込みありがとうございます
次回あたり、雪女いきたいとおもいます

猫娘と幼馴染続編はその後くらいです

支援ありがとうございます

今日で完結させます

-CASE 9 風花の記憶-

男「やべぇ!遅れる!!」ドドド

<あ、男だ。おーい、こっちこっち!!

男「見つけた、あっちか!!」ゼェハァ

<手荷物検査場はあっちですー

男「あぁー、反対じゃねーか!!」ウエーン

月舘「おはよう、男くん」

友「よう、お疲れ」

男「あかん・・・出る、なんか出る・・・」コヒューッコヒューッ

友「寝坊でもしたのか?」

アホ毛「きっと楽しみで昨夜の夜寝れなかったんですよね。分かります」

友「遠足前の小学生かお前は」

男「いや・・・ただ電車が遅れてて・・・途中からタクシーにしたら道も混んでて・・・」エグエグ

友「ついてねぇな、お前は」

月舘「全員そろったね。よし、じゃあ保安検査場にいこう」

アホ毛「はいはーい、メガネ君もいきますよー」

メガネ「・・・」

係員「んん・・・?ちょっと鞄開けてもらっていいですか」

男「へ?あ、あぁ・・・はい」

月舘「あ、男くん引っかかった」

友「おいしいやつだなー」

保安院「これは・・・おもちゃの踏切、ですか?」

男「」

アホ毛「ぶふぅ」プークスクス

友「なんでだよwwwwwwなんでプラレール出てくるんだよwwwマジで小学生かお前www」

>>353

保安院 → 係員


係員「乾電池が入ってるようなので・・・機内に持ち込みできn」

男「処分しといてください」即答

係員「かしこまりましたー」ポイー

男「・・・ごめん、知り合いの悪戯らしい」

友「ええんやで・・・あっちについたら、電車も買うたるさかいな(その目は暖かかった)」

男「いらねぇよ!!(憤怒)」

<トウキハマモナクリリクイタシマス・・・

友「いやー、飛行機なんて久しぶりだな」

男「あぁ、高校の修学旅行以来か」

<please fasten your seatbelts...

男「ん、メガネ君どうした」

メガネ「おかしい・・・おかいんや・・・そもそもこんな鉄の塊が飛ぶこと自体おかしいんや・・・俺、俺もうꀀ*セ*餀*脀*メ*褀*サ*ニ** 鐀*メ*騀*ꀀ*ツ*?*蜀*カ*「*カ*蔀** ?*メ*鰀*セ*言*ニ*踀*セ*騀** 阀*ク** 阀*キ*需*阀*?*ト*?** ?*チ*ヌ*」

男「これはアカン」

男「ついた・・・これが試される大地・・・」

友「思ったより寒くないな。あんまり試されてる感ない」

メガネ「フフ・・・僕にとっての通過儀礼<イニシエーション>は無事満了しましたがね・・・」ゲッソリ

男「はは、おもったより揺れたね」

月舘「じゃあ友君、運転おねがいしていいかな?」

友「OK!よっしゃ荷物乗せるやでー!!」

アホ毛「・・・」

友「おぉー・・・これが雪道か」グググ

男「おい、あんまりスピード出すなよ」

月舘「いや、助かるよ。電車とバスだと移動だけで半日かかるからね」

メガネ「すごい雪だなぁ・・・」

男「あれ?アホ毛ちゃんアホ毛がくたっとなって・・・」

アホ毛「・・・いま話しかけないでください」ウップ

男(えぇー、まだ空港の駐車場すら出てないのに・・・)

-数時間後-

男「あ、あれですか?」

月舘「うん、そうだよ」

メガネ「クマ出没注意の看板があるんですがそれは」

友「冬眠してるし大丈夫じゃない?」

アホ毛「横に・・・横にならせてくらはい・・・」ゲッソリ

月舘「・・・そうだね。じゃ、中に入ろう」

男「おー、こりゃすごい」

友「テレビとかでよくみる山荘みたいだなー」

男「殺人犯なんかと一緒にいられるか!俺は部屋に戻るぞ!!」

メガネ「男さんフラグ立ててどうするんですか」

月舘「今日は私たちしかいないみたい」

男「一般の人でも泊まれるんですか?」

月舘「うん・・・別荘ってわけでもないから。冬の間は管理人さんもいるし」

男「へぇ」

友「お、荷物も届いてるな。早速ひと滑りいくか?」

男「いやー、もう夕方になるし今日のところはメシくって休もうぜ」

友「・・・そうだな。アホ毛ちゃんもあの様子だし」

男「そういえば、夕飯は?」

月舘「鍋にしようかと思ってる」

男「お、鍋ですか」

友「ビールならここにあるぞォォーッ!!」

その夜・・・

男(う・・・飲みすぎたか)

男はふいに尿意に襲われ目覚める。

男(しかし夜はやっぱり冷えるな・・・)

手さぐりで扉を探す男。

男「・・・ん!?」

その時手に触れた壁は、異様なほど冷たかった。

男「・・・」

男はそのまま部屋を出る。と、1階のラウンジで月舘さんが見知らぬ女と対峙しているではないか。

男「月舘さん!」

男の呼びかけにも、彼女は反応しない。

急いで階段を降りる。

男「月舘さんっ!」

月舘「男くん・・・近づいちゃダメよ。彼女は、雪女」

雪女と呼ばれた彼女が、ゆっくりとこちらを見る。

雪女「ほう・・・彼か」

その声は、まるで氷のように冷たく、透き通っている。

雪女「なるほど。彼がお前に血を?」

月舘「・・・」

雪女「まぁ、言わなくても分かる。これは是非話しておかなくてはな」

男「・・・話?」

雪女「キミのおかげで、この娘は完全に私たちの『仲間』になったんだよ」

男「・・・それは、彼女が『吸血鬼』になったということか?」

雪女「そうだよ」

月舘「男くん・・・これ以上先は、聞かないで」

雪女「いいじゃないか、教えてやれば。彼は何も知らないんだろう?」

月舘「やめて」

男「月舘さん・・・それは、俺に話せないようなことなのか?」

男の言葉に、彼女は黙って俯く。

男「いいよ、続きを話してくれ」

月舘「・・・っ!」

雪女「ふむ・・・キミの言うとおり、彼女は『吸血鬼』となった。もう人間ではない」

男「・・・月舘さんは、生まれた時から吸血鬼だったんじゃないのか?」

雪女「そうだよ。ただ、彼女の場合はすこし事情が異なるがね。キミの血を吸わなければ、彼女が吸血鬼として目覚めることはなかった。それどころか、もう余命幾許もなかっただろう」

なるほど。血を吸ってから彼女のあの変わりようは、どうやら吸血鬼本来の力に目覚めたということらしい。

雪男「ともあれ・・・彼女はもう普通の人間じゃないぞ。見た目はか弱い少女だがな、中身は立派な化け物だ」

男「そんな言い方するなよ」

雪女「キミたちの視点に立った発言だ。それに、化け物が化け物と自らを形容することに何の問題がある?」

男「・・・」

雪女「キミは何のつもりなく彼女に血を与えたんだろうが、もう彼女は普通の人間としては生きられないぞ」

男「!」

雪女「人間の寿命は短いからなぁ。あっという間に死ぬぞ。大事な友人も、愛する者も。まるで春の雪のように消えてなくなる」

男「・・・雪は融けても、また積もるだろう」

雪女「だがそれはもうかつての雪ではない。ましてや一度融けた雪にもう一度触れることなど・・・キミは気付いていないようだがな、この娘はキミに惚れているんだよ」

男「!」

月舘「・・・ッ」

雪女「キミたち人間の寿命はせいぜい80年、彼女はそれより遥かに長く生き続けなければならない」

雪女「ことのほか堪えるぞ、孤独というのは。いっそ全てを忘れてしまいたいくらいに」

雪女「化け物といえども、感情もあれば記憶もある。愛する者との別れ、一人残される時間は果てしなく続く拷問のようだ」

雪女「久しぶりにこの娘がここへ来たかと思ったら、まさか化け物になってるとはね。人間のまま、死ねばよかったのに」

男「おい」

雪女「・・・バカな娘だよ。態々私と同じ道を選ぶことはないじゃないか」

月舘さんは俯いたままだ。顔は見えないが、かすかにすすり泣く声が聞こえる。

雪女「キミに忠告しておこう。化け物と人間は、本来干渉しあうべきではない。キミのその力はやがてキミの心を引き裂くだろう」

男「どうかな」

雪女「・・・ふふ、手が震えてるぞ」

男「・・・寒いんだよ。お前のせいでな」

雪女「これは失礼・・・では、私はそろそろ退散させていただこう」

そういうと、彼女の姿はすっと消えた。

男「・・・月舘さん」

声をかけた途端、彼女は男の胸元に顔を埋め、堪らず嗚咽を漏らす。

男はその頭を、ただ撫で続けるしかなかった。

雪女(彼女はもう普通の人間じゃないぞ。見た目はか弱い少女だがな、中身は立派な化け物だ)

雪女(化け物と人間は、本来干渉しあうべきではない)

男(・・・干渉すべきではない、か)

翌日。

メガネ「いやー、昨夜は寒かったですねー」

友「うん、さすがに夜は試されてる感あった」

アホ毛「あ・・・あの、友さん、昨日はありがとうございましたっ!」

友「んー、車酔い、治って良かったねー」

男「お、そういやお前、アホ毛ちゃんの看病してたもんな」

アホ毛「お見苦しいところをお見せしました・・・」シュン

友「はは、まあ、姪っ子とかの世話で見慣れてるし平気平気」

友「・・・じゃ、全員準備はできたかな?」

メガネ「はい、ボードも着替えも載せましたよ!」オケデス

アホ毛「あの・・・私また酔うとアレなので、できれば助手席に座りたいです///」

友「あ、そうしなー」

男「うん、俺もそのほうがいいと思う」

メガネ「会長はどこ座ります?」

月舘「・・・え」

男「・・・」

月舘「あ・・・わ、私は」

メガネ「あーじゃあ男さんの隣でいいですよ!僕後ろで荷物見てるんで!」

月舘「え・・・うん」

男「何なら俺が見てるよ?」

メガネ「いや、こういうのは後輩の仕事ですから!」フンス

月舘「あ・・・ありがとう」

友「よし、じゃ乗った乗ったー!はやく滑りに行くやで!!」GOGO

メガネ「イーヤッハァーッ!!」ズサー

友「おぉ、メガネ君俄然輝いてるね」

男「あぁ、あんなにアクティブだったんだな」

友「どっちかっていうと、ボードよりスキーってイメージだったけど」

男「人は見かけによらず、だな」

アホ毛「あの・・・友さん、向こうで一緒に滑りませんか」

友「ほいほい。アホ毛ちゃんはスキー滑れるの?」

アホ毛「じつはあんまりやったことがなくて・・・・よかったら、教えてください」

友「まぁ自分もあんまり上手くはないけど、いいよ。じゃ、向こういこっか」

アホ毛「はい!///」

男(なんか二人ともいい感じだな)ウンウン

月舘「みんな、楽しそうだね・・・」

男「あ、月舘さん・・・そうですね」

月舘「・・・」

男「・・・」

月舘「昨夜の、ことだけど」

月舘さんがゆっくり口を開く。

月舘「昨夜はその・・・ありがとう」

男「ん・・・うん」

月舘「あの・・・気にしないでね?私が自分で選んだことだし」

男「・・・」

月舘「・・・ねぇ、男くん」

男「・・・うん?」

月舘「もし、私が告白したら・・・男君、付き合ってくれる?」

男「・・・どうですかね?」

月舘「私・・・男君のこと、好きだよ」

男「・・・うん」

月舘「好き・・・・ひっく、本当に、好き、なの・・・」

あふれ出る涙も拭わず、彼女は想いを打ち明ける。

男「・・・一緒にいたいとは、思うよ。でも」

男の言葉に、雪女の言葉がよぎる。

雪女(人間の寿命は短いからなぁ。愛する者も。まるで春の雪のように消えてなくなる)

雪女(ことのほか堪えるぞ、孤独というのは・・・)

男(ずっと一緒にいたいと願っても、それは彼女からみればほんの一時にしかすぎない)

男「俺・・・すぐに死んじゃうぜ?」

月舘「いいよ」

男「あと何十年先か・・・わからないけど、俺が死んだら、きっと月舘さん、一人だぜ」

月舘「・・・いいよ」

月舘「もう、普通には生きられないし。だったらせめて、今は傍にいてほしい」

まっすぐに、男の目を見つめる彼女。

男「目・・・腫れてるよ」

月舘「・・・たくさん、泣いたから」

男「人には見せられないな」

月舘「うん・・・でもこうやってれば見えないから」

昨夜と同じように、胸元に顔を埋める彼女。

男はそのまま、ゆっくりと彼女を抱きしめる。

メガネ「」

友「」

アホ毛「///」

男「」

月舘「・・・あ」

友「あ・・・その、なんだ。邪魔・・・だったか?」

男「あ・・・え、いや」

アホ毛「あぁ、あの、会長!そうですね、やっとですね!わわわわたし、分かってましたから!」

月舘「ちょ、アホ毛ちゃん何をいっ・・・」

メガネ「ええんやで(半ギレ)」

友「そうか・・・最後に男を勝ち取ったのは幽霊ではなく生身の女だったか」ウンウン

男「お前ら・・・」

この瞬間が、ずっと続けばいい。

そんな思いも、流れる時間を止めることはできない。

それなら、せめて忘れないように、この雪を覚えておこう。

-CASE 9 風花の記憶 END-

-CASE 10 いぬのきもち ねこのきもち-

-1か月前-

男「犬だぁ?」

男母『そう、こないだお父さんが保健所から貰ってきたの。ハスキーよ、ハスキー』

男「またそんなでかい犬を・・・」

男母『いいのよ、どうせアンタの部屋あいてんだから』

男「おいおい、ってことは今俺の部屋犬小屋代わりかよ」

男母『とにかく、今度会いにいらっしゃい。すごくかわいいんだから!』

男「へいへい・・・」

・・・

男「ただいまー」

犬「わん!わんわん!」テケテケテケ

男「おぉ、お前が例のハスキーか。よしゃしゃしゃ・・・」ナデナデ

犬「クゥンハゥンオゥフ」ウットリ

男母「あらおかえり・・・かわいいでしょ、そのコ」

男「あぁ、まだ小さいんだな」

男母「名前はエルっていうの」

男「ふーん・・・どこぞの探偵みたいな名前だな。心臓麻痺で死ななきゃいいけど」

男母「縁起でもないこと言わないでよ」

男「悪いけど、今日は夕飯くってきたからこのまま部屋に戻るよ」

男母「あらそう・・・じゃ、エル。お兄ちゃんと仲良くするのよ」

エル「わんっ!」

男「あ、そうか・・・今はコイツの部屋だったな・・・」

その夜・・・

?「・・・ちゃん、お兄ちゃん・・・」

男「ん・・・んん?」

?「起きて・・・起きて・・・」

男「んん・・・なんだよ・・・って」

男が目を開けると、そこには小学生くらいの男の子が座っていた。

男「お・・・誰、君?」

?「ボクだよ、お兄ちゃん」

よく見ると、先ほどまで目にしていた首輪と、頭には犬耳が生えている。

男「・・・どう見てもエルです。本当にありがとうございました」

エル「よかったー・・・もしかしたら、お兄ちゃんとなら話せるんじゃないかってずっと思ってたんだ!」キラキラ

男「そうかー、動物のカンってやつはすごいんだなー」ナデナデ

エル「えへへ」シッポフリフリ

男「で、どうしたんだ?こんな夜中に」

エル「うん・・・近くで、誰かが泣いてるんだ」

男「泣いてる?」

エル「うん、とっても苦しそうで・・・お兄ちゃん、お願いだから探すのを手伝って」

男「まぁ・・・気になるならちょっと見てみるか。何かあるかもしれないし」

エル「ありがとう!お兄ちゃん大好き!!」ペロペロ

男「その形態のときに顔を舐めるのはやめなさい。腐った方々が寄ってくるから」

-家の軒下-

エル「この中みたいなんだけど・・・」

<ニャー・・・

男「ん・・・これは、猫か?」

エル「僕の力じゃこれ、はずせないんだ」

男「この格子か・・・ぐぬぬぬぬぬ・・・」ボキッ

男「」

エル「とれた!お兄ちゃんありがとう!ボク、中見てくるね!!」

そういうとエルは、するりと軒下の中に入って行ってしまった

男(やべぇよ・・・やべぇよ・・・親父に怒られる・・・)ダラダラ

エル「おいいひゃん、いら!」(お兄ちゃん、いた!)

そういうとエルは、小さな黒猫をくわえてでてきた

エル「はふはり、ねこひゃんらっらよ」(やっぱり、猫さんだったよ)

男「キミ今のその姿なら手を使いなさい、前足を」

エル「あっ、そうか」テヘヘ

よく見ると、黒猫は脚のあたりを怪我している。

男「ふーむ・・・その辺の野良猫にやられて、隠れてたのかな」

エル「大丈夫?治せる?」

男「とりあえず消毒して包帯でも巻いておくか・・・いったん部屋につれていこう」

エル「うん!」

その後救急箱を手にした男が、部屋に戻ったときに目にしたものは。

男「」

少女「・・・」

猫耳の、少女だった。

エル「あ、お兄ちゃんおかえりー」

男「エル・・・その娘は?」

エル「さっきの猫さん!」

男「ですよねー・・・」

少女「・・・」

エルより少し年上に見えるその少女は、黙って脚をこちらに向ける。

エル「あ・・・ここをケガしてるんだね」

そういうと、エルは少女の太ももあたりをペロペロと舐め始める

少女「・・・っ、くすぐったいわ」

エル「あ、ごめんね」シュン

男(たまらん)

エル「お兄ちゃん、どう?」

男「あとはお兄ちゃんにまかせたまえよ」ツヤツヤ

消毒後、傷口にガーゼを当て包帯を巻く。

男「これでよし・・・と」

エル「よかったね!」

少女「ええ・・・ありがとう」

男「さて・・・そうはいっても、コイツどうしようかなぁ」

簡単な治療をしたとはいえ、まだ怪我が治ったわけではない。このまま外に出せば、また野良猫に襲われるかもしれない。

男「仕方ねえ、母さんの情に訴えてみるか」

翌日・・・

男「おはよう」

男母「おはよう・・・ってあら、アンタどうしたのその猫」

猫「・・・」モフモフ

男「昨夜の晩、エルがくわえてきてな。怪我してたらしくて、ずっとエルに抱ついてて離さないんだよ」

エル「わぅん」

男母「あらそうなの・・・それにしても、ずいぶん仲良しねぇ」アラアラ

男「どうするよ、母さん」

男母「そうね・・・名前を決めなくちゃ」

男(ちょろい)

男母「カッツェはどう?」

男「母さん本当にワンダープロジェクトJ好きだな」 ※わからない人は近くのオッサンに(ry

男母「うん、決まりね!あぁー、じゃあ早速キャットフード買ってこなくっちゃ!」ドタドタ

男「え、ちょ・・・俺の朝メシは?」

エル「わんわん!」シッポフリフリ

男「・・・というわけで、しばらくうちにいてもいいから」

カッツェ「・・・そう」

エル「よろしくね!・・・カッツェ!」

エル「・・・」

そういうと、カッツェはエルの首のあたりを舐め始めた

カッツェ「あなたも、ありがとう助けてくれて」ペロペロ

エル「あはは!くすぐったいよー!」

男(たまらん)

カッツェ「私、もうエルから離れない」ギュッ

エル「うんうん!じゃあずっと一緒だね!」ペロペロ

カッツェ「くすぐったい・・・」ペロペロ

男(ふぅ・・・)

それから半年後、2匹(2人?)は未だ仲良くしていると母さんから連絡があった。

久しぶりに男が実家に帰ると、そこには大きく成長したエルの姿があった。

エル「この匂い、兄さんだとおもったよ」

男「おぉ、もう・・・高校生?くらいになって」ナデナデ

エル「あはは、やっぱり兄さんに頭を撫でられるとうれしいな」シッポフリフリ

男「おっと、舐めようとするんじゃねぇ。腐った(ry ・・・そういや、カッツェはどうした?」

男がそういった瞬間、静かに部屋の窓が開いた

カッツェ「・・・」

男「お、おぉ・・・こちらもすっかりお姉さん?になられて」

カッツェはすでに、社会人くらいの風貌だろうか。

静かにエルに近寄ると、そのまま身を委ねる。

カッツェ「ただいま、エル」

エル「お帰り、カッツェ」

男「やだ、なにこのレディコミっぽい雰囲気」

カッツェ「また、新しい傷ができちゃった」

エル「見せてごらん」ペロ

カッツェ「ちょっと・・・くすぐったいわ」

エル「嫌?」

カッツェ「ううん・・・嫌じゃない」

男「なにこれ死にそう」

男「それにしても、二人・・・いや、二匹とも大きくなったな」

カッツェ「そうかしら、普通だと思うわ」

エル「兄さんこそ、どうしてそんなに変わらないの?」

男「そりゃまあ、俺は生粋の人間だしなぁ」

エル「そっか!」ナルホドネ

カッツェ「でもエル、あなたは大きくなりすぎよ」

エル「はは、ごめんよ」ポリポリ

カッツェ「でもいいわ。この方が落ち着くから」ギュッ

エル「カッツェは甘えん坊だなぁ」ヨシヨシ

カッツェ「そんなことない・・・エルだからよ」ギュー

男「砂吐きそう・・・」

そして今も、二匹は仲良くじゃれあっている。

いつの日か、この2匹にも別れの時はやってくるだろう。

だから、せめてその時まで、安らかな日々が続けばいいと思う。

願わくば、自分のまわりにいる全てがそうあってほしい。

そう願わずには、いられなかった。

-CASE 10 いぬのきもち ねこのきもち END-

-FINAL CASE 邂逅-

友「なぁ男、悪霊っていると思う?」

男「悪霊・・・かぁ。今まであった中にはいないと思うけど」

アホ毛「絶対いますよ!きっと」ググ・・・

男「アホ毛ちゃん食い気味だなぁ」

友「だよなー、なんたってウチの冷蔵庫のプリンがなくなってたのも悪霊の仕業なんだもんなー」ジトー

アホ毛「・・・ソウデスヨ」

男「でもなぁ、実際何をもって悪霊とするかなんだよなぁ」

友「そりゃーアレだろ、人を呪ったり、危害を加えるようなやつはみんな悪霊だろう」

男「なんか害獣みたいな定義だなぁ」

友「でも動物はある意味仕方ないだろ。生きるためだし。でも悪霊ってそんなんじゃないじゃん。恨みがあるなら恨んでる奴だけ呪えよ、って話で」

男(まぁ、それに近い話は前にお菊さんにしたことがあるな・・・)

-その夜-

男(月舘さん、まだ起きてるかなぁ。・・・ん、アレは?)

男が目にした先に、小さな女の子が立っていた。

男「君・・・こんな時間に・・・どうしたの?」

女の子「・・・お兄ちゃん?やっぱりお兄ちゃんだ!!ねぇお兄ちゃん!!はやく!早くパパに会わせて!!」

男「お兄ちゃん・・・?それに、パパって一体・・・ッ!?」

男が振り返ると、そこには自分に瓜二つの男が立っていた。

男霊「よう、俺」

男「お前・・・」

男霊「すげぇだろ。ドッペルゲンガーってやつかな。だとすると、もうすぐ死ぬな、お前」

もう一人の男が、ケラケラと笑う。

男「お前は一体・・・」

男霊「言っただろ。俺はお前。まぁ、生霊みたいなもんだよ」

男「何故、お前はここにいるんだ」

男霊「さぁなぁ・・・ていうか、今更になってそれを聞くか?だったらお前に視えてるアレらは、なんでそこにいるんだ?」

男「・・・」

男霊「お前が俺たちを『視える』ように、俺もお前たちに『視せる』ことができるもんでね」

女の子「お兄ちゃんが、二人・・・?」

男「この子をどうするつもりだ?」

男霊「なに、ちょっとその子と父親の望みをかなえてあげるだけだ」


男「望み?」

男霊「あぁ。その子を死んだ父親のところに、行かせてやろうと思ってな」

男「な・・・・っ!」

男霊「もう半年も前の話さ・・・父子家庭だったらしくてな。その子を残して、父親は事故で亡くなったらしい」

男霊「唯一の身寄りだった父を亡くしたその子は、今じゃ施設暮らしだ」

男霊「見てられなかったよ・・・毎晩父親を求めて、泣きじゃくる姿は」

男「・・・父親のところにってことは、つまり。この子を、死なせるつもりか?」

男霊「あぁ」

男「やめろよ!」

男霊「何故だ。その子の父親も、その子自身もそれを望んでいるんだぞ」

男「本当に子供を愛しているなら、死んでほしいなんて思うわけがないだろ!!」

男霊「馬鹿いうな。そんなドラマや小説みたいな話が罷り通ると思うなよ」

男霊「・・・親の愛ってのは、お前が思ってるような単純なもんじゃない。小さな子供一人遺して、そのまま逝くことができない親なんてざらにいる」

男霊「そしてまた、分別もつかないこんな小さな子供には、親の死という事実は受け止めきれない」

男霊「お前の言う『この子を殺すな』っていうのは、他者から押し付けられたエゴだ」

男霊「お前なら、分かってると思ったんだがな」

そこまで言うと、男の霊は女の子にそっと手をかける。

男「馬鹿野郎!やめろ!これ以上、生きてる人間に干渉するな!!」

男霊「お前こそ、これ以上『こっちの世界』に干渉するな」

男「!!」

雪女(キミに忠告しておこう。化け物と人間は、本来干渉しあうべきではない)

雪女(キミのその力はやがてキミの心を引き裂くだろう)

男「待て!!お前の言う『父親に会わせることがこの子の幸せ』ってのも、お前のエゴじゃないのか!!」

男霊「その答えは、当事者にしか出せないことだ。さぁ、いこう。パパが待ってるよ・・・」

男「やめろ・・・やめてくれーーーーーーーーーっ!!」

・・・気が付くと、男は病院のベッドの上にいた。

隣から、目を覚ました俺をみた月舘さんが、泣きながら抱きついてくる。

男母「よかった・・・心配させるんじゃないわよ、このバカ息子」

男「母・・・さん」

聞いた話によると、男は道端で車に轢かれそうになった女の子を助け、そのままトラックに撥ねられたらしい

女の子は助かったが、男は手足を骨折のうえ頭を強打しそのまま救急搬送。

あの夜から、2日が経っていた。

男「すげぇ・・・ミイラ男だな、これじゃ」

月舘「よかった・・・本当に、よかった」

男母「まったく、無茶しすぎよアンタ。一歩間違えたら死んでたんだからね」

男「んん・・・」

麻酔のせいだろうか、まだ少し頭がぼんやりしている。

男母「それにしても、こんなに綺麗な彼女ができたなら早く紹介しなさいよね」

男「・・・はぁ」

男母「ま、私はお父さんに連絡してくるから。意識も戻ったことだし、あとは若い者同士ごゆっくり(はぁと」

そういうと母は、病室を出て行った。

男「なにがごゆっくりだよ・・・イテテ」

月舘「本当に・・・大丈夫?」

男「うん・・・」

月舘「無茶しないでよ・・・男君は、ただの人間なんだから」

男「うーん、まさか吸血鬼の彼女に怒られるとは」

月舘「好きな人が無茶して死にかけたらそりゃ怒るよ!」プンスカ

男「はは・・・でも、いつかは先に死ぬんだぜ、俺」

月舘「それとこれとは話が別!!ていうか多分その時も怒るけど!」プンスカ

男「うへ・・・こりゃ安心して死ねないな」

男「そういえば・・・あの子はどうなった?」

月舘「うん・・・なんでもあの子、ご両親がいないらしくて。そのまま施設の方が迎えに来たそうだよ」

男「・・・そっか」

俺は、結果として一人の命を救った。

しかし、それがあの女の子の「救い」になったのかはわからない。

男には「視える」のだ。死んだ後の人間の、人ではないその者たちの感情まで。

生きていてよかった・・・その言葉は死に終わりを置いたときに初めて生まれる。

あの子の思いが、死してなお残り続けるのなら。あの時助けるべきではなかったのではないか。

もう一人の「男」が、言うように。

その答えを出すことができないのが、生きている人間の限界だ。

そして男は、まだ生きている・・・

迎えた退院の日。

男「よし・・・荷物はほとんど母さんが持って行ってくれたから、あとは小物だけだな」

男「しかし意外と嵩張るなぁ。・・・そうだ、貞子ちゃんに頼むか」

男霊(お前こそ、これ以上『こっちの世界』に干渉するな)

男「・・・いや、やっぱり今日は、自分で運ぼう」

-幼馴染の墓-

男「いやー参った参った・・・危うくお前のとこに行くとこだったよ」

男「それと・・・実は俺、彼女ができたんだ。お前には、言っておかなくちゃな。頼むから、呪いなんかかけないでくれよ」

男「いや・・・お前にはもう、ひとつ呪いをかけられてるよな。『視える』ようになるって呪いをさ」

男「なんてな・・・お前にこんなこと言っても仕方ない、か」

男「おい、聞いてるか・・・あぁ、今日は晴れてるからな」

男「また、雨の日に来るよ。お前も、元気でな」

-男の部屋-

男「・・・最近、婆ちゃんこないな。羊羹も用意したのに」

男「マッサージクッション、あんなに気に入ってたのにな」

男「・・・」

男は静かに踏切の前に立つ。

男「おーい、てけちゃん・・・」

呼びかけても、返事はない。

男「てけちゃん、俺・・・」

男の言葉は、けたたましく鳴り始めた踏切の警報音にかき消された

隣町の小学校の旧校舎。

警備員「こら!君っ!」

男「やべっ!」

警備員「待ちなさい!どこから入った!!待てっ!!」

男「すみませーん!!」

町はずれの廃寺。

男「・・・お菊さん」

男の呼びかけが、虚しく響く。

男「もう傷は、痛まなくなったかな・・・メンタム、ここに置いていくぜ」コト

男「・・・また、皿がなくなったら、いつでも来なよ。新しいのあげるから、さ」

・・・

友「お前、まだ心霊スポット巡りしてんの?」

男「うーん、そろそろ止めようかと思ってる」

友「お・・・そうなの?」

男「あぁ・・・やっぱりなかなか『視えない』もんだぜ。お化けなんて」

友「なんだよ、今まで見えてたんじゃなかったのか?」

男「さぁなぁ・・・本当にいるのかどうかも、分からんしな」

友「なん・・・だと。今まですっかり騙されたぜ」

男「いやお前最初から実は信じてなかっただろw」

友「だってwww実際にお化けなんて見えたら怖いだろうがwwwwあーもうトイレいけない!!(半ギレ)ってなるっつーのwww」

男「あいつらに関わるのが良い事なのか悪い事なのかは、俺にも分からん」

男「ただ、一つだけ言えることは、アイツらはただ在るように在るだけなんだろうな。だから」

男「・・・お化けなんて怖くねぇぜ!!」

-END-

以上です。足かけ2週間ご支援どうもありがとうございました。

要望をいただきながら取り上げられなかったコロボックル、お岩さん、ピアノお化け、死神とか天使、濡れ女とか二口女の人、あるいは幼馴染ルート・てけちゃんルートを期待してた人ごめんなさい。

ありがとうございます
以下、蛇足につきsage進行にて

-THE AFTER-

(・・・男さん、本当に私たちのこと、視えなくなっちゃったんですか・・・?)

(お兄ちゃん・・・)

(男・・・)

カーテンから漏れる光に、男は目を覚ます。

男「朝か・・・」

時計を見遣る。時刻はすでに10時を回っている。

友「お、起きたか」

男「あぁ・・・やべぇ、また研究室泊りになっちまった」

ボサボサの頭を掻きながら、眠たそうにつぶやく。

友「お前、昨日家に帰ったんじゃなかったのか?」

男「ん・・・ちょっとあの後実験が盛り上がっちまってな」

友「もう3日も研究室に籠りっぱなしじゃねぇか」

男「あぁ・・・さすがに今日は帰るよ。風呂入って布団で寝たい」

友「そうしろ。月舘さんも心配してたぞ」

男「・・・んん」

あれから2年。男は4年生になり、卒研の真っ最中だった。

フラフラの足取りで家に帰ると、そのまま布団の上に倒れ込む。

男(あぁ、くそ・・・風呂・・・)

そう思いつつも、男の意識は地面に吸い込まれるような感覚とともに落ちていき・・・

数時間後、携帯の着信音で目を覚ます。

男「・・・もしもし」

月舘『あ・・・ごめん、寝てた?』

男「うん・・・」

月舘『今日はもう、部屋にいるの?』

男「うん」

月舘『じゃ・・・ごはん、作りに行くから』

男「うん・・・ありがとう」

月舘『何かいるものある?』

男「ん・・・じゃあ、ごめん。シャンプーを」

月舘『いつものやつ?』

男「うん」

月舘『分かった・・・じゃあ、買ってくね』

そういって、男は電話を切る。

男(・・・シャワーくらい、浴びておくか)

男は怠そうな足取りで浴室へ向かう。

蛇口を捻った途端勢いよく吹き出す水が男の目を覚ます。

男「・・・」

残り少なくなったシャンプーの容器からは、ゴボゴボとわずかな泡が出てくるだけだ。

そしてその泡は、暖かくなり始めたシャワーの湯に流され男の掌から消えていった。

男(・・・あの頃のことは、すべて夢だったのか?)

思い出される2年前の記憶。

あの時まで、確かに。男の目には「視えて」いた。

男「・・・」

入浴を終えバサバサとタオルで頭を拭っていると、玄関チャイムの鳴る音が聞こえてきた。

<ピロリン ピロリン ピロリン ピッ

月舘『おーい、男くーん。買ってきたよー』

男「はーい、今開けます」

1週間ぶりに見るモニター越しの彼女の顔に、思わず男の顔が綻ぶ。

月舘「やっほ、久しぶり」

男「ほんと。1週間ぶりかな」

月舘「寂しかった?」

男「卒研忙しかったから。そんなに」

月舘「ひどい!!」

子供の様に頬を膨らせて怒る彼女を見て、思わず笑う男。

月舘「そんなひどいことをいう男君には今日の食材費とシャンプー代、全額払ってもらいます!」プンスカ

男「え、いや普通に出すけど・・・」

月舘「配送料、技術料込みで15000円になります!」

男「やっほー!ぼったくりだ!!ていうか技術料ってなに!?」

月舘「これから私が作る夕飯に対する技術料!」

男「なんと」

男「・・・ちなみに今日のメニューは?」

月舘「えっとね、深川めしとほうれん草のおひたし!!」

男「渋い!そしてやはり鉄分重視のメニュー!!」

月舘「おみまいするぞー!おみまいするぞー!!」

・・・夕飯を食べ終わり、彼女の入れてくれたお茶を啜る。

男「ふぅ・・・ごちそうさまです」

月舘「ふふ、お粗末様」

男「ここ3日間、カロリーメイトとウィダーだけだったから体中に米が染み渡るぜ・・・」

月舘「いやお米は染み渡らないでしょ・・・やめてよね、不健康な生活は。男君は私の大切な『嗜好品』なんだから」

男「『嗜好品』たって、いつもいつも嗜む程度じゃすまないじゃないですかやだー!!」

月舘「やめてよね、不健康な生活は。男君は私の大切な『主食』なんだから」

男「言い直した・・・だと」

そういうと、彼女は男に覆いかぶさってくる。

男「ちょ、ちょっと今日は・・・」

月舘「・・・大丈夫、今日はそっちじゃなくて、こっち」

ゆっくりと彼女が唇を重ねてくる。

男「ん・・・」

・・・

「おーおー、みせつけてくれちゃって・・・いや眼福眼福」

「・・・」

「おっと、そんな顔するなって。笑ってたほうがかわいいぜ?」

「・・・」

「大丈夫、約束は守ってやるよ」

・・・

隣で横たわる彼女に、そっと毛布をかける男。

月明かりに薄らと照らされる彼女の身体は、息をのむほど美しい。

脱ぎ散らかした服を纏い男が洗面台の鏡をのぞいた時、目を疑うようなものがそこに写っていた。

男霊「よう、元気か。俺」

男「お前・・・」

男霊「さっきはいいモン見せてもらったぜ?」

男「・・・何しに来た」

男霊「つれないねぇ~久々の再会だってのに」

男霊「いやホントつれないなー、お前。あれだけ慕ってくれた『化け物連中』には、もう構ってあげないのか?」

男「それは・・・」

男霊「『視えなく』なったんだろ?あの日から」

男「・・・!」

男霊「言っとくが、お前が俺たちを『視えてた』のは幼馴染の呪いのせいなんかじゃねえぞ」

男霊「あれはな、お前自身の能力だったんだよ」

男「!!」

男霊「確かにあの時だよ。お前がこっちの世界に『干渉』できるようになったのはな」

男霊「『俺のせいで幼馴染は死んだ。もう一度アイツに会って話がしたい・・・』だったか?」

男霊「あの時のお前の想いが、お前のその力を呼び覚ましたのさ」

男「・・・」

男霊「ま・・・正確に言うとな、お前の力は実はただ『視えてる』わけじゃない」

男霊「思い出してみろ・・・お菊さん、花子さん、紫婆にてけてけ・・・全部、お前が意識し始めたその日に出会ってる」

男「・・・!」

男霊「気づいたか?お前の能力はな、『自分が意識したものを現実として視えるようになる』能力なんだよ」

男「そんな・・・まさか」

男霊「いやぁ、誇大妄想狂ってやつか?はは、そういやちょっと前にそんなゲーム、あったな」

男霊「とにかく、だ。もうそれ、いらないだろ?」

男「・・・は?」

男霊「もうこっちの世界に『干渉』するのはやめるんだろ?」

男「待ってくれ、言ってる意味が・・・」

男霊「・・・じゃあな。次会うときは、お前が死んだ時だ」

そういうと、男の霊はふっと姿を消した。

男(何だったんだ、今のは。一体、どういう・・・っ!)

リビングに戻ると、そこに寝ていたはずの彼女の姿がなかった。

男「・・・月舘、さん?」

男は、携帯を手に取った。

『お客様のおかけになった電話番号は、現在使われておりません』

男「・・・馬鹿、な」

男はそのまま友に電話をかける。

友『ん~・・・なんだよ、こんな夜遅くに・・・』

男「友・・・月舘さんのことなんだが・・・」

友『はぁ・・・?お前、なんで今更そんな話を』

男「今更・・・?」

友「だって、もう2年も前の話じゃないか。彼女が亡くなったのは」

友の言葉に、男の手から携帯が滑り落ちた。

男(馬鹿な・・・月舘さんが、死んだ?)

動悸が止まらない。身体に力が入らない。

男(そんなはずはない・・・現に、俺の携帯には彼女とのメールが・・・)

ない。

ない。なにも、ない。

メールも、着信履歴も、彼女と撮った写真も。

状況を理解した男は、床に頭を打ち付けながら慟哭する。

翌日、男の様子を心配した友が訪れる。

友「おい、お前・・・昨夜はどうしたんだよ、一体」

友の問いかけにも、男は虚ろな目をしたまま視線を宙に浮かべたままだ。

男「いたんだ・・・昨日まで・・・月舘さんは、俺のとなりに」

友「お、おい・・・久々にそういうネタか?まぁショックだったのはわかるけどさ、わざわざ彼女を・・・」

男「嘘じゃない!お前も一緒に行っただろうが!!スキー旅行に!!」

友「あ、あぁ・・・確かにいったな。アホ毛ちゃんと、メガネ君で」

男「あの時泊まったのは一緒にいた月舘さんのロッジだったろうが!!」

友「な、なに言ってるんだ・・・あれは、公営の宿泊施設だったじゃないか・・・」

男「そ、そんな・・・」

友「なぁ男・・・お前、卒研で根詰めすぎなんだよ。教授には俺が言っとくから、少し休んだらどうだ?」

男「・・・嘘だ」

友「嘘じゃないよ・・・月舘さんは、あの日救急車で運ばれて・・・1か月後に、亡くなっただろ」

男「あ、ああぁ・・・」

目の前が真っ暗になる。

いままで視えていたのは、すべて幻想だったというのか・・・

友が帰った後、男は部屋で一人項垂れる。

何もやる気が起きない。いっそこのまま死んでしまいたいくらいだ。

男(はは・・・今死んだら、また皆に会えるかな・・・)

そして、男はドアノブにタオルをかけ、首に巻きつける。

男(頼むぜ・・・今度こそ本当の『一生のお願い』だ・・・皆に、会わせてくれ)

そのまま、男は上体を前に倒す。

次第に首が締まり、心臓の鼓動が頭にジンジンと響くと同時に視界がぼやけ始める。

男(・・・う・・・ぁ)

突如感じる、首元の違和感。

その違和感はやがて痛みに変わり、じわりとタオルに暖かいものが広がる。

男(・・・血?)

男「ゲホッ!ゴホゴホッ、カハッ、くひゅっ、っはぁ゛!!」

咽ながら喉元を抑える男、タオルには血が滲んでいる。

男(間違いない・・・これは)

男「月舘さんの・・・残した、痕だ」

自らの身体に刻まれた彼女の痕跡に、男は涙を流す。

?「・・・まったく、私の時と何も変わってないじゃないか」

外は、雨が降り始めていた。

男「お前・・・!?」

幼「やれやれ、私の次は彼女の後追いかい?あんまり同じようなことやってると、いい加減女々しいぞ」

男「幼馴染っ!!」

幼「おいおい、彼女持ちが女子高生に抱き着くとは、不埒な奴だな」

男「お前は・・・俺が・・・俺が、創り出した、幻想なのか?」

幼「・・・ここに来るのは、少々骨が折れたよ」

幼馴染がにやりと笑う。

幼「彼女たちの助けがなければ、ここには来れなかっただろうね」

男「彼女たちって・・・」

<ちょ、幼馴染さんっ!本当にそこに男さんいるんですかっ!!わっ私もっ!!

<あぁダメだよてけお姉ちゃん、手を放したらあばばばば

男「てけちゃん・・・?みんな・・・」

てけ「だらっしゃー!!」ボイーン

男「て、てけちゃ」

てけ「うおおおおお!男さんげっとーー!」ズサー

男「げふぅ」ゴチン

てけ「あぁぁぁ、男さん!男さん!!男さん!!!男さん、男さん、男さんっ!!男さんだよぉクンカクンカスーハースーハー」(迫真)

花子「ちょっとてけお姉ちゃん!最後まで順番に抑えとくって約束だったでしょ!!おかげでメリーちゃんの首がとれちゃったんだからね!!」プンスカ

メリー「問題ないわ・・・私、多分3人目だから」(意味深)

男「花子ちゃん・・・メリーさんも・・・」

紫婆「まったく老体に無理させおって・・・」

お菊「お久しゅう・・・」

男「お菊さん、婆ちゃんまで・・・」

2年ぶりの、再会だった。

男「・・・やばい、まさかの少年誌的展開に、俺泣いちゃいそう」ポロポロ

花子「ふふ、もう泣いてるよ、お兄ちゃん」

てけ「あぁ~男さんの涙ペロペロ!!」ペロペロ

幼「だめだよ、てけちゃん。男はもう一人身じゃないんだから」

てけ「涙くらいいいじゃないですかあああぁぁぁぁぁぁぁ!」(悲哀)

男「はは・・・変わらないな、皆」

男「それより、どうして・・・」

幼「ふふ、つれないじゃないか、男。これだけ私達を魅了しておいて、一方的に関わりを絶つとは」

てけ「そうですよっ!!どれだけ話しかけても触れないどころか気付いてすらくれないし!!」プンスカ

花子「おかげでずーっとでぃーえすできなかったんだからね!!・・・ま、まぁ、メリーちゃんが傍にいてくれたからいいけど・・・」

メリー「花子ちゃん・・・///」ポッ

男「あ・・・すまん。でも、俺、なんでいきなり皆が『視えなく』なったのか、分からないんだ」

幼「女たらしだったからじゃない?」(適当)

男「!?」

てけ「うふ、うふふふふふふふ・・・」ギリギリ

お菊「・・・」ニッコリ

紫「儂もそう思うわい」ヤレヤレ

男「婆ちゃんまで!?」

幼「まぁ冗談はさておき・・・」

てけ「冗談なんかじゃないですよっ!副会長として言わせてもらいますけどね、これはあんまりにも酷い仕打ちですよっ!!」プンスカ

男「え、ちょ・・・副会長ってなんの・・・?」

てけ「男さんに誑かされた被害者の会ですっ!」

男「」

幼「てけちゃん・・・気持ちはわかるけど、今は話が進まないから・・・」

てけ「う・・・か、会長がそういうのなら・・・」ショボン

男(お、お前が会長なのかよ・・・)ガクガク

幼「なぁ男・・・私達が視えなくなる前に、何か起きなかったか?」

男「・・・あぁ、お前にも報告したと思うが、あの時ちょっと事故に遭ってな」

幼「その時と今回で、何か共通していることは?」

男「ある・・・あの時も、そして今回も。俺の姿をした霊が現れた」

てけ「男さんの霊!?こ、こうしちゃいられない!今すぐ捕縛を・・・」

幼「てけちゃん?」ニッコリ

てけ「」

男「もしかして・・・アイツが原因なのか?」

幼「そこまでは分からないが・・・私達が視えなくなったことも、この世界に男が飛ばされたことも、人間の仕業とは思えないな」

男「この世界・・・?」

幼「今までの会話で薄々気づいているとは思うが、ここは現実世界じゃない。おそらく、男の見ている夢のようなものだと、思う」

男「俺の見ている・・・夢?精神世界ってやつか」

幼「もっとも、彼女がいなければここの存在すら分からなかったと思うけどね」

貞子「あっ、オーナーお久しぶりです!」ニョキ

男「貞子ちゃん!」

貞子「被害者の会、会員ナンバー6貞子でっす!」

男「・・・ブルータス、お前もか」ガックシ

幼「モテる男は辛いなぁ、男?」フフフ

男「でも、どうやって俺がここにいることを?」

貞子「・・・ネットは広大だわ」キリッ

男「あぁ、そうすか・・・」

貞子「フフン、仮想世界のことに関しては私の右に出るものはいないですよ!」エッヘン

幼「と、いうわけだ」

男「そうか・・・貞子ちゃん、お願いだ!俺を元の世界に戻してくれ」

貞子「高いですよ?」

男「今までとこれからの家賃、チャラにしてあげるから!!」

貞子「本社建て替えも要求する!!」

男「う・・・ぐ、研究室のPC、引っ越していいから・・・」

貞子「・・・仕方ないですねー、今回だけですよ?」

男「ありがとう!本当に・・・助かるよ」

幼「ちょっと待って」

男「どうした?」

幼「男がさっき言ってた男自身の霊の話・・・彼の存在をどうにかしなければ、今戻ってもまた同じようなことがおきるかもしれない」

男「そうだ・・・アイツが言うには、お前らを作り出したのは俺の『能力』のせいらしい」

てけ「えっ」

男「俺には自分の意識したものを現実として視ることができるようになる力があるらしい・・・お前の死をきっかけに、その能力が芽生えた、と言っていた」

紫婆「何を馬鹿な。お前に会う何十年も前から、ワシゃおったぞ」

幼「・・・だけど、その記憶すらもしかすると男に創り出されたものかもしれない」

花子「つ、つまり・・・お兄ちゃんは実はお兄ちゃんじゃなくて私達のお父さんかもしれないってこと?」

てけ「な・・・・なんですって!それじゃまさか近親相k」

幼「てけちゃん?」(迫真)

てけ「」

男「もし仮にその話が本当だったとして・・・お前たちは」

幼「男。私たちはただ在るようにここに在るだけだ。元がどうだったのかは、関係ない」

花子「そうだよ。お兄ちゃんと遊んだこと、私ちゃんと覚えてるもん」

てけ「・・・この足は、確かに男さんが私にくれたものですから」

お菊「私の、身体の傷も・・・」

紫婆「あの不味い茶と、まっさーじくっしょんもな」

男「みんな・・・」

メリー「私は眼前で放屁をされたのだけれど」(半ギレ)

男「」

幼「とにかく・・・男がそれを気にする必要はないさ」

男「俺は・・・まだ、お前たちと関わり続けてもいいのか・・・?」

幼「男はどうしたいんだ?」

男「俺は・・・」

「・・・あれー?まだ死んでねぇと思ったら、なんか面白ぇことになってるな」

男「っ!お前!!」

男霊「いやー、首を吊らせるとこまではいったのに・・・やっぱり直接殺んないとダメか。それにしても惜しかったなぁ」

花子「お兄ちゃんが・・・二人」

幼「君か、男の言っていた霊は」

男「そうそう。久しぶりだな。幼馴染」

幼「私は君のことなど知らないが」

男霊「幼馴染なのに辛辣ぅ!」

紫婆「ふむ・・・性格はこっちのほうが捻くれてそうじゃの」

男霊「あ、そんなこと言っちゃう?婆ちゃんの若い頃の姿、結構好きなんだけどなー」

紫婆「・・・どうやら、たらしというところは同じらしい」

男霊「・・・まぁいいや。あの子との約束もあるし」

男「・・・約束だと?」

男霊「・・・なぁ、お前さー、本当そろそろ死んでくれねぇかな?次の仕事、いけないんだけど」

男「何故、俺の命を」

男霊「そりゃーお前、俺が『死神』だからだよ」

男「!!」

死神「いやー、2年前のあの時は仕留め損なってさ。悪かったな」

男「あの時・・・」

死神「無駄に入院費払わせちまった。あぁ、2年分の学費もか。ま、その間彼女のいいことできたようだし、勘弁してくれや」

男「ふざけるな!!」

死神「いやふざけてないって。これ仕事なんで。それに、あの時お前が助けたあの子からも、お前を殺すようにお願いされてるしな」

男「な・・・」

死神「いやー、相当恨んでたぞー。なんであの時私を助けたのか、って」

男「そんな・・・」

幼「男、これ以上奴の話を聞くな」

死神「まぁ、分かんねーと思うけどさ。俺のやってることと、お前のやってることは表裏一体なわけ」

死神「お前が人や化け物を生かそうとするのと、俺がお前らを消そうとするのは」

そういうと、死神は両手を広げる。

死神『おいで、てけちゃん・・・』

てけ「・・・」

男「てけちゃん・・・だめだ、行くな!」

てけ「男さんが・・・呼んでる」

そして、死神の手が彼女に触れたとき、その姿は霧散してしまった。

花子「ひっ・・・!」

男「な・・・」

ニタリと笑いを浮かべたもう一人の男は、ぬるりとした動きで次々と皆に触れていく。

男の目の前で、声もあげることなく消されていく彼女たち。

男「やめろ!!」

死神「あとはお前だけだ」

そう言って死神の手が男に触れたとき、男の身体がピクリとも動かなくなる。

そして気がつくと、あの夜の、洗面台の前に倒れた自分の姿が見える

男(あれは・・・俺か!?)

死神「・・・生身のお前には、俺じゃ直接手を出せないからな。そこで、彼女の登場というわけだ」

そこへやって来たのは、忘れもしない。2年前に自分が救った、あの少女だった。

少女「・・・」

その手には、小さなナイフが握られている。

死神「さぁ、自分の助けた少女にその喉笛を掻き切られる瞬間、とくとご覧あれ」

身体が動かせず、声も出せない男にはどうすることもできない。

少女が男の横に座り、その首元にナイフを当てる。

このまま、ただ自分が殺されるのを見つめているしかないのか・・・そう思った瞬間だった。

不意に少女が、死神に向かってナイフを投げる。

死神「ぐ・・・ぎゃああああああああああああ!!」

少女「残念。相手が悪かったわね」

死神「何故だ!!何故お前が、こんな・・・」

少女「決まってるじゃない。このままじゃ、お父さんに会えなくなるもの」

死神「おのれ小娘め、いつから・・・」

少女「あら、気付かなかったの?よくそれで死神なんて演じようと思ったわね」

死神「おのれえええええええええええ」

少女「消えなさい」

そして、少女の口元が僅かに動いた次の瞬間。

死神の姿は、闇の中に消えていった。

男(・・・これは、歌?)

男(なんだろう・・・この歌、どこかで・・・)

男(・・・)

薄れ行く意識の中で男が目にした少女の姿は。

男(あぁ・・・まるで・・・『天使』じゃないか・・・)

そして、男は目を覚ます。

男「ん・・・?」

少女「・・・気がついた?」

男「き、君は・・・」

少女「ふぅん・・・やっぱり、写真で見るよりカッコいいね」

男「・・・えっ?」

少女「さっきのアレは、死神なんかじゃない。大体、もし本物の死神だったとしたら命を仕留め損なったり、直接手が下せないわけがないじゃない」

少女「法儀式済みのナイフ1本で消滅するような、低級な悪霊よ」

男「あの・・・君は?」

少女「・・・始めまして、『お父さん』」

男「」

男「ば、バカな・・・そんな覚えは・・・だってこれ、俺が中学生くらいじゃないとおかし・・・えっ・・・えっ?こマ?」ガクガク

少女「この時代まで『飛ばす』のは、結構苦労したんだから。でもまぁ、おかげで若い頃のお父さんにも会えたことだし、良しとしますか」

男「き・・・君は、未来の俺の・・・娘?」

少女「中身はね。今はこの子の身体を借りてるけど・・・本当だったらまだ生まれてすらいないわ」

男「うわぁビビった!マジびびった!知らない少女にいきなり『お父さん』と呼ばれる恐怖!!寿命が5年は縮まったわ!!」

少女「大丈夫よ。40過ぎてもピンピンしてるから」

男「あ、あぁそう・・・なんだ」

少女「さ・・・そろそろ皆も、戻ってくる頃だと思うわ」

男「皆って・・・」

てけ「・・・はれ?男、さん?」

男「てけちゃん!」

紫婆「・・・どうやらまだ、成仏はせんかったようじゃの」

花子「う、うぅ・・・メリーちゃん、大丈夫?」

メリー「うん、花子ちゃんは・・・?」

男「みんな・・・!よかった・・・本当によかった」ポロポロ

幼「・・・一瞬何が起きたのかは分からなかったが、どうやらここに戻れたのは彼女の歌のおかげらしい」

花子「そういえば・・・歌声が聞こえたような」

てけ「私も・・・」

少女「これが、私の能力。ね?お父さん」

幼「」

てけ「」

てけ「ちょ・・・え・・・?お、男さん・・・今お父さんって・・・えっ?もしかしてこの子、か、かかかかかくし子・・・?」アワワ

幼「男・・・お前・・・」

男「まぁそういう反応になるよね」

てけ「わ、私のことはマッマって呼んでもいいのよ!!??」(使命感)

男「てけちゃんはちょっと落ち着こうか」

幼「・・・なるほど、男の未来の娘さんか」

男「未来から精神を飛ばしてこの時代の人間に憑依させ、さらに悪霊を屠り、霊たちを呼び戻す・・・とんでもねぇな、チートじゃねぇか俺の娘」ガクブル

幼「本当・・・鳶が鷹を生むどころか、スペースシャトルでも生んだような話だよ」

てけ「バトル物によくある戦闘力のインフレでもおきてるんでしょうかねぇ・・・もう全部この子でいいんじゃないかな」

男「確かに、そういう雰囲気はあった。ついさっきまで」

幼「男がこの2年間、私達の姿が見えなくなったのも、あの悪霊のせい?」

少女「うん、多分ね。・・・何せお父さんは、私やお母さんと違って『視える』だけのただの人間だから・・・」

男「いやそれでも十分特異だと思うんですけど。やっぱり未来じゃ霊力のインフレでも起きてるんですかねぇ」

少女「そうやって、その能力で『いろんな子』に手をだすから呪われるんじゃない?」ジトー

幼「あぁ・・・」

てけ「あぁー」

紫婆「うむ」

男「お前ら・・・」

少女「じゃ・・・私はそろそろ帰るわ。時間があるうちに、この子の身体を元に戻さなくちゃ」

男「そうだ・・・この子の父親は・・・」

少女「この子のご両親がいないのは本当よ・・・でも、大丈夫。お父さんのことを、恨んだりはしていないわ」

少女「この子には、友達もたくさんいるし。心配しなくても大丈夫」

男「そっか・・・それなら少し、救われた気分だよ」

少女「さぁ・・・そろそろお母さんも目を覚ますわ」

男「お母さんって、もしかして・・・」

男の問いかけに僅かな笑みを浮かべると、少女はふっと姿を消した。

男「行っちまった・・・か」

貞子「あぁ~行っちゃった!?んもう、あの歌録音して配信しようと思ったのに!!」チッ

紫婆「文字通り金の亡者じゃのう・・・」

・・・

月館「ん・・・おはよう・・・」

男「・・・おはよう!月館さん」

月館「いけない・・・洗い物しないで寝ちゃった」

男「・・・いいよ」

月館「ごめんねー・・・」

てけ(ちょ、ちょっと!!なんであの人服着てないんですか!!)ヒソヒソ

幼(・・・それを聞くのは野暮ってもんだろう、てけちゃん)ヒソヒソ

てけ(まさかあのひとが、さっきのあの子のお母さんなんですかっ!?)ヒッソヒッソ

幼(さぁね・・・)ヒソォー

男は、寝ぼけ眼の彼女を抱きしめる。

月舘「・・・?ふふ、どうしたの」

男「ん・・・ちょっと怖いお化けの出てくる夢を見てね」

月舘「あら、お化けなんて怖くないんじゃなかったの?」

男「・・・視えることより、視えないことの方が怖いかもしれない」

月舘「変な男くん・・・」ナデナデ

てけ(あぁー男さん・・・私の男さんが・・・)エグエグ

幼(もうよそう・・・正直私も、ちょっと辛くなってきた)ドンヨリ

メリー(砂吐きそう・・・)

貞子(●REC)

紫婆(こらやめんか)

数年後・・・

少女「ただいまー」

てけ「あっ、おかえりなさい。おやつにする?それとも、わ・た・し?」

少女「おやつ!」

てけ「」

幼「だめだよ、帰ってきたらまずは手を洗わないと」

少女「うん!」

少女「洗ってきたよー!おやつ、おやつ!」

てけ「・・・どうせ・・・私は・・・」ブツブツ

少女「あれ?てけちゃんどうしたの?」

幼「多分、てけちゃんは君と一緒に遊びたかったんだと思う」

少女「そっか!じゃあおやつ食べたら一緒に遊ぼっ!」

てけ「・・・!うんっ!」パァァ

少女「で、はひひへあほふ?」モグモグ

幼「全部飲み込んでから喋ろうね」

少女「・・・で、なにして遊ぶ!?」ゴクン

てけ「いつものやつ!」

少女「おっけー!じゃあ今日は私が最初にコンロ役やるね!!」

てけ「おっけー!」

てけ「カチカチカチ・・・ぼっ」

少女「ふははー!へそで茶をわかすわー」ピー

幼(・・・これ何が面白いんだろう)

少女「はい幼馴染ちゃん!お茶がはいったよ」

幼「あ・・・ありがとう」

少女「じゃ、つぎはてけちゃんがコンロ役ね!」

てけ「わかったわ!」

少女「ふははー!中華の火力を閉じ込めたー!!」クックドゥ

てけ「あぁんっ、そっちはハイカロリーバーナーなのぉ!!」ビクンビクン

幼(解せぬ)

少女「あっ、ガス漏れだっ!!幼馴染ちゃん、警報機役ね!!」

幼「えっ・・・あ、ピーピー・・・ガスガモレテイマス・・・ピーピー・・・」

少女「大変だっ!はやく元栓をしめなきゃ!!」キュッ

てけ「ああっ!ありがとうございますぅ!!」ビクンビクン

幼(何してるんだろう・・・私)

男「おーい、いい子にしてるか?」ヒョイ

少女「あっ、パパ!」ドヒューン

てけ「パパー!///」ドヒューン

男「ぐへぇ」ドカッ

幼「だ、大丈夫か?、男」

男「だ・・・大丈夫だ・・・問題、ない」ガクガク

幼「奥さんの様子は?」

男「あぁ順調だよ・・・いよいよ来週だな」

少女「えへへ、ついに私もお姉ちゃん!!」ブイ

てけ「うんうん、弟くんが生まれたらみんなで遊ぼうねうふふ」(意味深)

幼「早いものだな・・・男が二児の父とは」

男「・・・そうだな」

幼「この娘が将来、あの時の私達を助けに来ると考えると何か不思議だな」

男「あぁ」

てけ「弟さんが大きくなったら私にくださいね!お、お、お義父さん///」

男「ゑー」

幼「おや、てけちゃん浮気かい?」

てけ「浮気じゃないですっ!!男さんはもう結婚してるから・・・せめて男さんの子供を小さいうちから育てて娶ってもらうんです!!」

男「逆光源氏か・・・」

幼「ふふ、私は待つよ・・・男が死ぬその日まで」

てけ「NTRってやつですね!」

幼「むしろ私は寝取られた側だと思うんだけどね・・・それに、死んでからなら寝取ったことにはならないだろう」クスクス

男「子供の前でそういう話するのやめようよマジで」

少女「?」ポカーン

男「さ、そろそろおばあちゃんちに行くか」

少女「うん!エルとカッツェ元気かなー」

てけ「ばいばい、また遊ぼうね~」フリフリ

少女「うん、またね~」フリフリ

男「お前たちも、今日はありがとな」

幼「いいよ、好きでやってることだし」

てけ「未来への投資です」キリッ

男「いろいろあったけど、皆に会えて、俺良かったよ」

幼「それは私達もだよ、男」

男「・・・さぁ行こう、おばあちゃんが待ってる」

幼「うん!」

男「皆、またな!」

-END-

以上です
収拾がつかなくてあそこで完結しましたが、作者的な見解はこんな感じで・・・
アイディアをいただいた皆さん本当にありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年10月01日 (火) 02:00:06   ID: 2POt049U

最高でした!

2 :  SS好きの774さん   2013年12月24日 (火) 07:42:27   ID: QPxAk7nN

あぁ、最高だ!

3 :  SS好きの774さん   2014年03月09日 (日) 20:15:18   ID: 5LPMkpJo

最高でした(*´ω`*)

4 :  SS好きの774さん   2015年08月07日 (金) 05:35:56   ID: mMAj6QVb

最高や…

5 :  SS好きの774さん   2015年08月07日 (金) 05:37:21   ID: mMAj6QVb

最高や…

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