忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」 (697)

※注意事項は、必ずお読み頂くようお願いします。(特に、◎の箇所は強くお願いします)

◎本作品は、百合がメインではありません。
 きんいろモザイクに、百合以外何も求めないという方は、読まないほうが良いかと思われます。

◎本作品は、きんいろモザイクの、とある最初期設定を草案としています。
 そのため、いわゆる「TSモノ」が苦手な方も、このSSは読んでいられないかもしれません。

・作者は、アニメは観ていますが、漫画はまだ読んでいません。
 所々でキャラの口調や呼称がおかしい点があるかと思いますが、その場合はご指摘頂けると幸いです。

・所々で地の文が挟まれたり、話がコミカルになったりシリアスになったりするかと思われます。


以上、4点が大丈夫という方のみ、お読み頂けると幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377977875

「ハロー!」

「コニーチハー!」


「ハロー!!」

「コニーチハー!!」


 この日、イギリスのとある場所で現出した光景は、見た人の胸を打ったという。
 異なった言語を、お互いが送り合い、別れを告げる――
 言語の壁を飛び越えて、彼女たちは互いの心に、確かに近づいたのだ。


「……シノ」

 去っていく車を熱い視線をもって見送りながら、少女は静かに決意する。


「――いつか、私も」

――二年後


母「忍、忘れ物は大丈夫?」

忍「はい、大丈夫ですっ!」ニコッ

母「……行ってらっしゃい」

忍「はい、行ってきます!」ガチャッ


バタン・・・


母「……うーん」

勇「どうしたのお母さん?」

母「ああ、勇。いや……なんというか」


勇(なるほどね……)

勇「――シノなら、大丈夫でしょ」

母「ええ、そうなんだけど、そうなんだけど……!」

母「色々と惜しいな、って……」

勇(――それは、ちょっと同感かも)


――集合場所


忍「……はぁはぁ」

忍「ま、まだ誰も来てないみたいですね」

陽子「遅いぞ、シノー!」ガシッ

忍「ひゃぁっ!?」ビクッ


忍「よ、陽子ちゃん」

陽子「うーん……なんというか、あれだ」

陽子「――やっぱり、そのカッコなんだな」

忍「……はい」

忍「ま、まぁ……わ、私たちの通う高校は、校則ゆるいことで有名ですし」

陽子「……『私』?」ピクッ

忍「さ、さすがに高校生ですし!」

陽子「――おおう」クラッ

陽子(シノの高校生活は……もしかして、私たちにかかっているのか!?)アセアセ


綾「なに中途半端に重い表情してるのよ」

陽子「うわっ、あ、綾!?」ビクッ

忍「おはようございます、綾ちゃん」

綾「……お、おはようシノ」

綾「――ええと、その」

綾「に、似合ってる、わね」

忍「本当ですか! ありがとうございます!」

(↓小声)

陽子「……いいか、綾?」

綾「な、なによ?」

陽子「もしかしたら、私たちは、結構な責任を背負っているのかもしれない……」

綾「――わ、分かってるわよ」

陽子「まず、だ。シノの服装でおかしな所はないか?」

綾「……大丈夫じゃない。その――む、胸も」

陽子「ああ――中学の頃より、明らかにスキルアップしてるな……」

陽子「と、ともかく、何としてでもフォローするぞ! 友達として!」グッ

綾「ええっ!」グッ

(↑小声)


忍「もう、二人で何を内緒話してるんですか?」

陽子「い、いや、その」

綾「……シノ」ガシッ

忍「なんですか、綾ちゃん?」

綾「わ、私たちも頑張るから!」

綾「シ、シノも頑張るのよ!」

忍「……ああ」

忍「はい。大丈夫ですよ、綾ちゃん」

綾「……ふぅ」

陽子「――ありがとな、綾」

綾「べ、別に陽子のためじゃっ……!」

忍「二人とも、仲良しさんですねぇ」

綾「シ、シノまで!」



――高校


綾「……とりあえず」

陽子「三人とも、同じクラスだっていうのは救いだな」

綾「ええ」

綾「最初の1年間の振る舞いが問われている、と言っても過言ではないんだから……!」ゴゴゴゴ

陽子「――そう、だな」

忍「……ふふっ」ニコニコ


忍(私は、本当にいいお友達に囲まれてます)

忍(陽子ちゃんと綾ちゃん。この二人と、同じ高校で、同じ時を過ごせるなんて――)

忍(それに……)

忍「今日は、私のホームステイ先の子もやって来るそうですし」

陽子「……は?」ピタッ

忍「楽しくなりますねー……ふふっ」

綾「……はい?」ピタッ

陽子「ちょ、ちょっと待った!」

忍「? どうしたんです、陽子ちゃん?」

綾「ど、どうしたもこうしたもないわよっ!」

忍「あ、綾ちゃんまで……」

陽子「なんで、私たちに知らせてくれなかったんだ!」

忍「え……昨日、メールで送っておいたはずですけど――あっ」

忍「――ごめんなさい、送信失敗したまま寝てしまったみたいです」

綾「……あ、あはは」

綾「もう、シノらしいわねー」クスクス

陽子「おい、綾!? なんだその、この場にそぐわない菩薩顔は!?」

綾「あら、陽子? もう、そんなに騒いでもしょうがないじゃない……うふふ」ニコニコ

陽子「あ、綾が壊れた……!」


烏丸「皆さん、そろそろ教室に入ってくださーい」

陽子「あ、す、すみません」

綾「もう、忍ったら、おバカさん」コツン

忍「えへへ、綾ちゃん、つつかないで下さいよー」

陽子「二人とも、現実は待ってはくれないんだぞ……!」



――教室


(↓ヒソヒソ話)

綾(ど、どどどうするの陽子!? こ、このままじゃ――!)アセアセ

陽子(現実に戻ったら戻ったで、分かりやすいな綾は……)アキレ

綾(なんで陽子はそんなに落ち着いてるのよ!?)

陽子(そのセリフ、そっくりそのまま、さっきの綾に返すぞ!?)


烏丸「二人共ー? 初日から仲良いのはいいけど、話は聴いてくれると嬉しいな」

陽子「あ、す、すみません」

綾「ご、ごめんなさい」


(↓さらにトーン下げる)

陽子(ああ……忍から聞いた感じ、ホームステイ先の子は忍の『あれ』を知らないままだろう)

綾(それは、私も同感だわ)

陽子(そして、そのままここにやって来るということは……だ)

綾(――ゴクリ)

烏丸「さて、初日からですがっ!」

烏丸「今日は皆さんに、重大な発表がありますっ!」

女子「そ、それは?」

烏丸「な、なんとっ!」


烏丸「イギリスからはるばる、このクラスに転入生がやって来ましたー!」

全員「……え、えええええ!?」ザワッ


男子A「な、なぁ、フツー新学期初日から転入生来るか?」

男子B「……ま、まぁ、この学校ユルいからね」

男子A「――そ、それもそうか」

男子B「それでいいのかな……?」


陽子「くっ、この学校の風紀の緩さがここに来て仇となるとは……」

綾「と、ともあれ、もうこうなったら……覚悟を決めるしか!」



烏丸「それでは! カータレットさーん?」

アリス「ハイッ!」

全員「……おお!」



烏丸「それでは、自己紹介をお願いします!」

アリス「えと――は、初めまして! アリス・カータレットといいます!」

全員(……か、可愛い!)


アリス「イギリスからやって来ました! み、皆さん、よろしくお願いします!」

全員(……日本語うまっ!)



アリス「――あっ!」

陽子「!」

綾「!」

忍「……!」

アリス「シ……シノー!」ダッ

忍「――ア、アリス!」ダッ

全員(え、えええっ!?)


アリス「ずっと――ずっと、会いたかったよー!」ダキッ

忍「アリス……私も、会いたかったです」ダキッ

アリス「シノー!」クルクル

忍「アリスー!」クルクル

陽子「……だ、大丈夫、か?」

綾「と、とりあえず」

陽子「まぁ、クラス内はざわついているけど、それはいいとして」

綾「――あの子の様子、大丈夫よね?」






「……あれ?」


 その時、少女にとある疑念が芽生えた。
 おかしい。何かヘンだ。

 抱きついた時の感覚。
 ずっと会いたかったはずの人に会えたことは、何とも素晴らしい。
 しかし……しかしだ。

 少女は、目の前の光景を見た。
 2年前には平坦とも言えた「そこ」は、歳相応の成長を遂げていた(「自分と比べて、なんて大きい……」という感情は、今は措く)

 やはりヘンだ。
 この「部位」の感覚は……?

「ねぇ、シノ……?」
「なんですか、アリス?」


「――こ、この辺りの感触がなんか」






陽子「せ、先生!」ガタッ

烏丸「ひゃっ!?」

綾「も、もうそろそろ、HRも終わりの時間です!」ガタッ

綾「そ、そろそろ、号令をとった方がよろしいのでは?」

烏丸「……そ、それも、そうですねぇ」

烏丸「そ、それでは皆さん、き、起立!」




――休み時間


陽子「……や、やぁ、シノ!」

綾「へ、ヘロー、カータレットさん!」

陽子(綾……焦りのせいか、初対面の人ともこんなにあっさりと――)


忍「あ、陽子ちゃん、綾ちゃん!」

アリス「……ヨーコ? アヤ?」

陽子「あ、ああ。ええと……な、ないすとぅーみーとぅ?」

アリス「――Hello! Nice to meet you!」

陽子「うお!? 完璧な発音!」ビックリ

綾「と、ところで、シノ?」

忍「なんですか、綾ちゃん?」

綾「――こ、このカータレットさんが」

忍「はい。ホームステイ先の子です!」

アリス「シノー!」ダキッ

忍「アリス~!」ダキッ

綾(――まずい!)

陽子(抱きついた!)


アリス「……」

アリス「えへへ」

忍「?」

アリス「シノ、やっぱり温かいや」

忍「……アリスも、お日様みたいに温かいです」

アリス「シノ――」

忍「アリス――」


綾「……だ、大丈夫みたいね?」ホッ

陽子「で、でも、さっきのは?」

アリス「……ねぇ、シノ?」

忍「はい、アリス?」


アリス「今日、シノのお家、行ってもダイジョウブ?」

陽子「!」

綾「!」

忍「……今日、来るんでしたね」

忍「ええ。ダイジョウブですよ!」

アリス「やったー!」

忍「わー!」


陽子「……急展開、ってやつ?」

綾「ええ――それも、限りなく危ない、わね」

二人「…………」

――すっとばして下校時刻


アリス「シノのお家は、どんな所なんだろうなー」

忍「アリスが気に入ってくれるといいですけど……」

アリス「ダイジョウブ! シノの所なら、どこだって幸せだよ!」

忍「ア、アリス~!」ダキッ

アリス「シノ~!」ダキッ


陽子(――通算・10回目くらいのやり取り)

綾(なし崩し的に、私たちも上がらせてもらうことにはなったけど)

陽子(状況、依然として悪し)

綾(一刻の予断も許さないわね……)



――大宮家

勇「あら、いらっしゃい」

陽子「勇姉!」

勇「あら、陽子ちゃん。こんにちは」

綾「……こ、こんにちは」

勇「あら、こちらは――」

陽子「ああ、綾だよ。私たちの友達の」

勇「あらあら……初めまして」

綾「は、初めまして!」


綾(す、凄まじい美人――!)

綾(だ、ダメよ綾! こ、ここで押し負けちゃ――!)

綾(し、忍のピンチを救うためにも!)

綾(……よ、陽子も見てるし!)ジーッ

陽子(何故、こっちに熱視線を送る、綾……)ビクッ

アリス「わー、シノのお家、広いねー」

忍「ふふっ、アリスのお家の方が大きいですよ」

アリス「もー、シノってば……」


陽子(って、おーい!)

綾「シ、シノ! な、なんで、アリスまで!」

勇「あら? もう挨拶済ませて、入ったわよ?」

陽子「い、勇姉……アバウトすぎだよ」


勇「お母さん出かけてるから」

勇「みんな、とりあえずリビングでお茶にでもする?」

陽子「そ、それいいな!」

綾「さ、賛成です!」

アリス「日本のお茶……飲みたいっ!」ワクワク

忍「……」


忍「あの、私ちょっと、部屋で支度してから行きますね」

陽子「!?」

綾「!?」

勇「……あら、そう」

勇「それじゃ、また後でね」

忍「はいっ」


陽子「」

綾「」

勇「……」

勇「――それじゃ、私たちはお茶にしましょうか」

アリス「お茶!」

陽子「……」

綾「……」

二人(な、なんてことに……!)



――大宮家・リビングルーム


勇「どう? 美味しい?」

アリス「うん、とっても!」

アリス「イサミ、すごく上手!」

勇「ふふ、ありがと」

陽子「……お、美味しいなー」

綾「そ、そうねー、このお茶菓子もまた」

アリス「……二人共、声震えてない?」

二人「そ、そんなことは!」

勇「……あ、そうだ」

勇「アリス。トイレはそこの突き当りだから」

勇「お茶飲むと、トイレ近くなっちゃうだろうから……気をつけてね?」

アリス「――あ」

アリス「うん。ありがとう」

陽子「……!」ハッ

アリス「じゃあ私、ちょっと行ってくるね」ガチャッ

勇「行ってらっしゃい」ヒラヒラ


綾「――ああ」

綾(こ、このままじゃ、もしかしたら――!)

陽子「……なぁ、勇姉?」

勇「ん? どうしたの、陽子ちゃん?」

陽子「もしかして、だけど」


陽子「アリスに、きっかけ作ったりした?」


綾「!」ハッ

勇「……」

勇「鋭いわね、陽子ちゃんは」

陽子「――勇姉、やっぱり」

勇「ねぇ、二人共? 綾ちゃんも」

綾「は、はいっ」

勇「……二人が、シノのために凄く頑張ってくれてるのは、よく知ってる」

二人「……」

勇「でも――」


勇「きっと、どこかで……歯車は回らないといけないと思うの」

陽子「……勇姉」

綾「――陽子」



 
 ――私は、一つの「禁」を破ってしまった。
 それは、「日本に来たら、決して嘘はつかない」ということ。

 日本人は、嘘が嫌いだ。
 だから、私はその「禁」を作った、のに――


「……シノ」


 吸い寄せられるように、脚は階段を昇る。
 一歩、一歩。
 トイレの場所を教えてもらいながら、私がやっていることは――


「シノ……」

 大好きな人の名前。
 それを何度も何度も紡ぎ出しながら、私は一つの扉の前に立つ。

 疑念は晴れてくれなかった。
 いや、むしろシノが好きだからこそ、その疑念は大きくなっていった。
 教室で、抱きついた時のシノ。
 その時の――感触は。

「――シノ?」

 コンコン、とノックする。
 本当は、ノックすらしたくなかった。
 すぐに入って……確かめたかった。
 それでも、私の中の理性はそれを押しとどめてくれた。

「……アリス」

 中から、シノの声がした。

「――いいですよ。入って、下さい」

 いつもと何ら変わらない、シノの口調。
 シノはどんな表情をしているのだろう……?
 心拍数が上がって仕方がない。




「……シノ!」

 バタン、と。
 大きな音を立てて、ドアは開いて、


 そして。


 目の前には、ベッド。
 その上にいる、大好きな人。
 会いたくて会いたくて、仕方がなかった人。

 その人は今、私の前で、私と真っ向から視線を交わす。

「……私、謝らないといけませんね」

 シノは、ちょっと照れくさそうに、そう言った。
 その顔も、愛しかった。

「――シノ」

 ベッドの上に転がっているのは、何だろう?
 おそらく――「詰め物」だろう。
 それは、多分、きっと……

「……ね、アリス?」

 さっきからシノは、脱いだ服を上半身に当てている。
 思考が暴走しているせいか、私はそんなことも考えられなかった。
 裸のシノが、目の前にいる。

 それ、なのに――


「――私のこと、嫌いになっちゃいましたか?」


 ハラリ、と。
 そんな音を立てて、服は静かにベッドの下に落ちる。
 つまり、私の目の前には、上半身裸のシノがいる――




「……シノ」

 
 目の前の光景に、必死に目の焦点を合わせる。
 春の陽光に照らし出され、シノの身体はとても綺麗だった。
 純白の肌は、陽子や綾と比べても遜色ないくらい……「女の子」らしかった。
 でも、ただ一点。


 胸部の膨らみは、そうそれこそ……
 私よりも、無かった――



「陽子ちゃんや綾ちゃんは、私のことをすごく頑張ってフォローしてくれました……でも」


 そこで、一呼吸置いて、


「『ボク』は、アリスに隠し事、したくなかったんです」


 そう言い切った目の前のシノは、どこか儚げで……とても綺麗で。


「……シノ」




 4月某日。日本でのホームステイ初日。
 天気は晴れ。部屋にはシノと私の二人きり。
 そんな、場所で。
 
 私は、大切な人のことを、知った――

ここまでになります。
SS速報では、これがきんいろモザイクの初SSになるんでしょうか?(違ったらごめんなさい……)

所々、設定が都合よく改変されてます。
始業式での再会とか、アリスからの手紙を読む下りのカットとか。あと、どこかコミュニケーションに積極的な綾とか。

きんいろモザイクの初期設定案を見ていたら、創作意欲が湧いてしまい、つい書いてしまった次第です。
百合が好きというファンの方、ごめんなさい……ただ、綾だけは平常運転(?)だったような。

それでは、この辺で。
続きをどう書くか、今思案中です……。

>>15
きんモザの初SSの「忍「私たちの願い事」」はここで書かれたよ。
昨日も陽綾のSSが完結したし、今もカレン×久世橋先生のスレがある。

――二人が出会って別れるまでに、抱いた想いに嘘はない。

 初めてアリス・カータレットが「少女」と接触した時、アリスはとても臆病だった。
 それが、異国の地で生活する「少女」に、どれだけ不安を与えただろうか。

 しかし、「少女」はそんなアリスの態度に気を害した風もなく、いやむしろ――

「――アリス! ハロー!」
「……コ、コニチハ!」

 ホームステイに来た「少女」のその柔らかな物腰に、アリスは心から安心し、大いに交流を楽しんだ。
 それが、アリスの心に、一つの「想い」を生ませる契機となった。


 そして、今。
 アリスは自身の頭の中で、その時の光景がクルクルと回っているような感覚に囚われていた。
 映画フィルムのごとく高スピードで回る、あのイギリスでの日々。

 何故、気付かなかったんだろう。
 あれからたった2年経っただけで、おおよその日本語は修得できたのに。
 そのフィルムの一部だけ、どうして今まで注目しなかったんだろう……?


「……アリス、イギリスはいい国ですね」

「――イ、イエス?」

「はい。『イエス』です!」



「いつか、アリスも日本に来てくれると、凄く嬉しいです」

「――ニポン?」

「……ええ、その時は」


「その時は、『ボク』がアリスと一緒にいますから……」



 改めて、思い出す。
 この1ページを、自分は都合よく記憶から排除してしまっていたのか……?

 そうだ、今なら分かるはずだ。
 少なくとも一般的な日本人なら、自分のことを「ウチ」とか「私」とか「あたし」とか言うはずなのに――

 「少女」は、「ボク」と呼んだではないか。

 ホームステイで触れ合った時間の中で、アリスが「少女」の一人称を聞いたのは、ほぼ全くなかった。
 触れ合っていく中で「少女」は、少し油断してしまったのかもしれない。
 そう言った後で、ハッと「少女」が口元を抑える光景も、脳内で鮮やかに蘇ったから――

 自分の親はどうだろうか? 父も母も、「少女」のことを知っていたのだろうか?
 今、それを確かめる術はない。
 だから――

アリス「……勇! お茶!」

勇「えー、また飲むの?」

勇「アリス、今夜はトイレで寝ることになっちゃうかもよー?」コポコポ

アリス「そ、そんなことはっ!」アセアセ

アリス「……ああ、日本茶美味しいですねー」ズズーッ

勇「あはは、アリスったら……」


勇(――ヤケ飲みにしても、どこかで区切りつけなさいね?)ヒソヒソ

アリス(……わ、分かってるもん!)ヒソヒソ


忍「ふふ、アリスはお茶が大好きですねぇ」

忍「私も、本場イギリスの紅茶が飲みたくなっちゃいました……」

アリス「――シノ」キュッ

アリス「そ、それなら、たしかお土産があったから!」

アリス「ね? あ、後で淹れてあげる!」

忍「わぁ、ありがとうございます」

忍「アリス~!」ダキツキ

アリス「……あ」

アリス「――ご、ごめんなさい。わ、私、ちょっとトイレに!」ガタッ

忍「――あ」スカッ



勇「……ふむ」

勇「やっぱり、アリスも――『女の子』ねぇ」

忍「――『女の子』ですね」ハァ

勇「シノも、心は『女の子』なのにねぇ」

忍「……でも」

忍「やっぱり、壁ありますよね……」

勇「それはまぁ、しょうがないわね」

忍「――はぁぁ」タメイキ


――廊下


アリス「……」

アリス(――さっき)

アリス(私、シノの抱きつきから逃げちゃった)

アリス(……シノは、シノは)



――『ボク』はアリスに、隠し事、したくなかったんです。


アリス(……!)カァァ

アリス(あ、あの時のシノが綺麗だったとか、む、胸を除けば完全に『女の子』だったとか!)

アリス(そ、そういうことは、今はいいのっ!)ブンブン


母「あら、アリスちゃん? どうしたの?」

アリス「――わわっ!?」

母「随分と大きく身体を動かしてたような……」

アリス「ぜ、全然、なんでもないよ!」

母「そう……?」

母「――まぁ、『シノ、シノ』って声はちょっと漏れちゃってたから」

アリス「」

母「ありがとね、随分とあの子のことを慕ってくれてるみたいで」ニコニコ

アリス「……だって」

アリス「シノは、私の大切な――」

アリス「大切な、人だもん!」


母「……そうね」

母「ところで、アリスちゃん?」

アリス「な、なに?」

母「……今日から、家に来てくれるのは大歓迎なんだけど」

アリス「う、うん」


母「――寝床、どうする?」

アリス「……あ」



――夜も更けて


勇「……これでよし、と」バサッ

勇「こんな感じでいい?」トントン

アリス「う、うん」

アリス「――あ、あの」

アリス「に、日本のお布団、好きだから!」

勇「そうなの! それは良かった」

アリス「――ふふっ」

忍「お姉ちゃん、ちょっといいですか?」コンコン

勇「あ、シノ。どうぞ」

忍「はい……」ガチャッ

忍「――あ」

アリス「シ、シノ」

忍「……アリス」


忍「お姉ちゃんと一緒に寝るなんて、羨ましいです……」

アリス「……え?」

忍「私も昔は、よく一緒に寝てましたけど」

忍「お姉ちゃん、優しいから。きっと、アリスもよくしてもらえますよ」

アリス「シ、シノ……」

忍「ああ、そうだ。お姉ちゃん、ちょっと本を借りてもいいですか?」

勇「ええ。大丈夫よ」

忍「ありがとうございます!」

忍「それじゃ、また」ガチャッ

忍「――楽しんで下さいね、アリス」パタン


アリス「……」

勇「さて、シノとの挨拶も済んだところで」

勇「私たちも寝ましょうか、アリス?」

アリス「――」

勇「……」


勇「――シノ、全然胸ないでしょう?」

アリス「!?」ハッ

勇「パジャマ姿になっても、一見、女の子と変わりないのに」

勇「シノったら……」

アリス「……勇」


勇「ねぇ、アリス?」

アリス「……」

勇「たしかに私は、正真正銘の『女の子』よ」

アリス「……」

勇「胸だってちゃんとあるし、髪だって普通に長くしちゃう」

勇「たしかに、一緒の部屋で寝るのなら、普通は同性同士で寝るわね」

勇「――普通は」

アリス「……勇」

勇「アリス――私は大歓迎よ。あなたがこの家に来てくれたこと、シノとまた会って嬉しがってくれること」

勇「そして、この部屋で寝ることだって」

アリス「……」

勇「――でも」


勇「敢えて、訊くわ」

勇「本当に、それでいいの?」

アリス「……!」







 ――どうやら、私はアリスに距離を置かれてしまったらしいです。

「……ふぅ」

 ベッドに寝転がり天井を見つめて、私は今日のことを思い出します。
 高校生活が始まったこと、クラス分けで陽子ちゃんと綾ちゃんと一緒になったこと。
 そして――


 ――シノ~!


 アリスと、再会したこと。

「そろそろ、寝ましょうか」

 そう独りごちて、私は置きあがりました。
 部屋のドアの近くにある電灯のスイッチを切るために。


「……アリス」

 それなのに、何故でしょうか。
 ベッドからドアまでのほんの僅かな距離が、酷く遠く感じてしまうのは。
 こんなに、足取りが重いのは。

「……はぁ」

 おかしいですね。
 「こういう風」になってから、大抵のことは解決してきました。
 それも、大体は陽子ちゃんと綾ちゃんという心強い友達のおかげで。

 ああ、それなのに。

「――解決、出来るかなぁ」

 この、チクリとする胸の痛みは……。


 さて、ようやくスイッチに辿り着きました。
 これを押して、後はベッドに戻るだけ。
 眠りに入るのが早い私は、明日までの数時間を、そこで過ごします。

 当然、一人で。
 そう、いつも通りです。
 お姉ちゃんと寝ていた頃ならいざ知らず、私だってもう――「お姉さん」です。
 だから……だから。

「シノ!」

「――アリス?」

 私は、目をパチクリとさせてしまいました。
 スイッチに指をかけた私は、その姿勢のまま、突然の「闖入者」に呆然の体です。
 そこには、金髪少女がいました。
 もちろん、雑誌の切り抜きの金髪少女とは、一味も二味も違います。

 だって、アリスは――

「……シノ!」
「へ?」

 ついついそんな感慨に耽っていると、アリスは私にズイッと近づいてきました。
 すぐ近くに、アリスの顔があります。
 その目はどこか、潤んでいるようにも見えて――

「――泣いてた、の?」
「アリス?」

 いやいや、むしろ泣いていたのはアリスでは、と返そうとしたところで気づいてしまいます。
 アリスの目が潤んでいるように見えたのは、もしかすると……

「……ちょっと、目にゴミが入っただけですよ」
「嘘。それ、よくある言い訳だって、勉強したもん」

 アリスには、全くごまかしがききません。
 自分の手で目に触れてみれば――ははあ、なるほど。

「ちょっと、塩辛そうな水ですね」
「――シノ!」

 私が手で目を擦り、顔を上げると――






 ……私は、何をしているんだろう?
 気づいたら、シノに深く抱きついていた。

 どこか冷静な私の頭は、顔が触れている箇所の平坦っぷりに気づいてしまう。
 そうだ、胸板こそ柔らかいけれど――シノは。

「ア、アリス……?」

 その声に、ハッとする。
 顔を上げれば、そこにはシノの顔があった。
 2年前より、ちょっとだけ伸びた髪。
 大きな目も優しそうな顔つきも、あの時と全く変わらない。

「――わ、私は」

 再び抱きつく時、少しためらった。
 そして、そんな自分がちょっと嫌いになりそうになる。

 けれど、今は――


 シノが、泣いてる。


「……シノと、一緒に、いたい」

 再び抱きついた私は、一つ一つ区切るように、言葉を重ねる。

「でも、でもですよ」

 するとシノは、いつものほんわかとした口調を少し崩しながら、私に言葉を返す。

「私、は……私は」


「――本当の『女の子』じゃ、ありません」


 知っていた。
 そんなことは承知の上で、私はこうしてシノに抱きついている。


「だから……アリスが嫌、なら」
「私は、何も――」

 なのに、どうして――
 どうしてシノは、そんなに気を遣うの……!

 大きく息を吸って、私は言う。

「……勇! 布団、持ってきて!」






勇「はいはーい」

忍「……お、お姉ちゃん!?」

勇「よっ、と――とりあえず、ここに敷いておくわねー」トントン

アリス「ありがとう、勇」

忍「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!?」アセアセ

勇「――お母さんにも、一応言ってきたわ」

忍「……!」ハッ

勇「忍、さっき言ってたよね? 『私はもう、お姉さんだから』って」

忍「――」

勇「だったら」


勇「――ここで一緒に寝て、『何か』起こさないという意志が必要になるの」


忍「……」

忍「起こす、わけ」

忍「ないですっ」

勇「――ふむ、よろしい」


勇「それじゃ、そろそろ私は行くから」

アリス「あ、あの、勇……」

勇「――アリス」

勇「おやすみなさい」ガチャッ

アリス「――あ」

アリス「お、おやすみなさい!」

勇「ふふ、じゃあねー」パタン

――その後

忍「そ、それじゃ」

忍「電気、消しますね」

アリス「う、うん」

忍「……それじゃ」カチッ

忍「おやすみなさい」トコトコ

アリス「――お、おやすみシノ」


アリス「……」

忍「……」

アリス「……」

忍「……」


アリス「――シノ、起きてる?」パチッ

忍「――私、すぐ寝ちゃうはずなんですけどねぇ」パチッ

アリス「……眠れそう?」

忍「大丈夫ですよー」ニコニコ

忍「ただ、今日はちょっと――」


忍「アリスが来てくれて、嬉しくなりすぎちゃったみたいです」エヘヘ


アリス「……」

アリス「それじゃ、私もシノと一緒にいられて、舞い上がっちゃってるみたい」

忍「ふふ、私たちお揃いですね」ニコッ

アリス「うん、お揃い」ニコッ

忍「……」

アリス「……」

忍「――アリス?」

アリス「な、なぁに?」ピクッ

忍「明日、着替える時は、言って下さいね」

アリス「……!」ハッ

忍「私、その時は廊下に出ますから」

忍「――もう、アリスも私も、『お姉さん』ですからね」

アリス「……」

アリス「本当に」

アリス「そう、だね」キュッ

忍「はい」

アリス「……シノ、さっきはごめんなさい」

忍「へ?」

アリス「その――リビングで、かわしちゃって」

忍「……ああ」

忍「大丈夫ですよ、特に怪我とかはありませんでしたし」

アリス「そ、そういう問題じゃなくて!」ブンブン

忍「――それに」


忍「さっき、アリスは来てくれました」


アリス「……」

忍「それでもう、大満足です」

アリス「――シノ」

忍「さぁ、そろそろ寝ましょう」

忍「――遅刻したら、叱られちゃいますから」

アリス「……うん」


アリス「おやすみ、シノ」ニコッ

忍「おやすみなさい、アリス」ニコッ



 ――こうして、大宮家の夜は更けてゆく。
 秘密を知った少女と、自らそれを明かした「少女」。
 そんな「少女」の家族や友人等を巻き込んで――


 明日から、学校生活の幕が上がる。



――同時刻

「……」

「――えと、初めましてデス!」

「……ふぅ」


「ニホンゴ、難しいネー」

ここまでになります。

陽子や綾の出番は、次に譲るとして、忍とアリスに焦点を当てた話です。
最後に現れたキャラは果たして……いやもう、隠すつもりは全くありませんが。
ちなみに、彼女は勉強をしていると思って下さい(描写を入れ忘れました)。

きんいろモザイクらしからぬ特殊なSSですが、どうぞよろしくおねがいします。



>>16
調査不足でした……ご指摘、ありがとうございます。

 ~幕間~


 ――帰り道。


 大宮家にて、アリス・カータレットと大宮忍が決定的な状況に直面している時。
 猪熊陽子と小路綾は、帰途についていた。

 二人も残っていたい気持ちはやまやまではあったが、忍の姉である大宮勇に押し切られた格好だ。
 いつものように二人で道を歩きながら、陽子はどこか拍子抜けといった表情を、綾は見るからに焦りの表情を
 それぞれ浮かべていた――



綾「――ね、ねぇ、シノ大丈夫かしら?」アセアセ

陽子「……」

綾「わ、私たちが最初に思い描いてた大まかな計画が」

綾「なんだか、最初から無かったことになっちゃいそう……」

陽子「――綾」


陽子「気づいてないのか知らないけど、さっきからその話題ループしてるぞ?」アキレ

綾「……え?」

陽子「まったく」

陽子「綾は、本当にシノが心配なんだな」

綾「――だって」

綾「中学の頃、初めて声をかけてくれた相手だし……」

綾「それに、今は友達じゃない。助けるのは当たり前よ」

陽子「――へぇ」

綾(初めて声をかけてくれたのは……今、目の前にいるのもそうなんだけどね)ジーッ

陽子(おおう、綾の視線がまた――)ビクッ


綾「――結局」

綾「体よく、追い出されちゃったみたいな感じね」

陽子「ああ、そうだな……」


勇『――だから』

勇『今日のところは、もう二人だけにしておいてあげたいんだけど……』

勇『二人共、それでいいかな?』



陽子「――勇姉の考え」

陽子「間違えて、ないのかな?」

綾「……そもそも、私たちが慎重すぎるのかもしれないって思ってきたわ」

綾「高校に上がったからって、気合を入れすぎるのも良くないかもしれないし……」

陽子「ああ――」

陽子「……ところで、綾?」

綾「なによ?」

陽子「偶然に乗っかって、私たちにも出来ることがありそうだぞ」

綾「……どういうこと?」

陽子「――カラスちゃん!」


烏丸「あら……うちのクラスの、ええと」

陽子「猪熊です」

綾「こ、小路です」ペコリ

烏丸「こんにちは、二人共」

烏丸「今、帰りなの?」

陽子「ん……」

綾「――先生、ちょっといいですか?」

烏丸「……?」


陽子「――単刀直入にいくけど」

綾「先生……シノ――大宮さんのこと、ご存知ですか?」

烏丸「――大宮忍さんね」

二人「……」

烏丸「知っているわ、あの子のことは」

烏丸「正直、なかなか信じられないけれど……」

陽子「だよねぇ……」

綾「あれで、『女子』じゃないとか……」

烏丸「――まぁ、色んな子がいるからね」

二人(……なんて理解者!)ジーン


烏丸「でも、ちょっとした悩みはあるの」

綾「と、いうと?」

烏丸「二人は、大宮さんと同じ中学だったのね?」

陽子「それは、まぁ……」

烏丸「――直接的な言い方になっちゃうんだけど」

烏丸「ほら、体育とかトイレとか、水泳とか……」

二人「」


烏丸「大宮さんは、どうやってきたのかなー、なんて……」

烏丸「ば、場合によっては、個人的に彼j……大宮さんとお話しすることも考えてるんだけど」

綾「――よ、陽子、お願い」グイグイ

陽子「い、いや、正直、私だって恥ずかしいよ」グイグイ

綾「私は、もっと恥ずかしいわ! だって、じょ、女子だし……」カァァ

陽子「こ、こんな時だけ女らしさを武器にすんな!」カァァ

綾「陽子、適任」グイッ

陽子「綾、逃げんな」グイッ

綾「というより、初めからこういう話をするために先生を呼び止めたんでしょ?」

陽子「――いやぁ、いざ話すとなると照れちゃってさぁ」エヘヘ

綾「ヘタレね」ジトッ

陽子「綾には言われたくないぞ……?」ジトッ



烏丸(……二人共、仲良しねぇ)クスッ


烏丸「まぁ、なんにせよ」

烏丸「――ほら、意外とこういうのって、上手くいくと思いますし」

陽子「どういうこと?」

綾「で、でも、楽観的にすぎるのは危険じゃあ……?」

烏丸「――たしかにそうかもしれないけれど」


烏丸「あまり気を張りすぎると、逆に大宮さんのためにならないかもしれないな、って」

二人「……!」


陽子(――もしかして、勇姉は)

綾(遠回しに、ちょっと私たちを諌めていた……?)

烏丸「でも、安心しました」

烏丸「大宮さんに、こんないいお友達がいるのなら」

烏丸「――間違いなく、大丈夫だって確信できるから」

陽子「カ、カラスちゃん……」ジーン

綾「せ、先生……」ジーン






――その頃


「……」

「――ここが」

「明日から通う、学校デスカー」

「……」


「いいコト、いっぱいあるといいですネー」

その頃の綾と陽子と、烏丸先生の話でした。

さて、三人の信頼関係が着実に築かれていく一方、校舎の前に佇む少女はどう動くか――
全く考えていないので、これからじっくり模索していきたいと思います。

それでは。
ようやく復活したので、投下させて頂きました。

おつー
金モザはアニメしかしらないんだけど、没案なんてあったのね
このシノはGIDなのかな?
原作没案でも性同一性障害なのか単なる男の娘なのか

>>31
いわゆる、「男の娘」って感じです。
ちょっと描写にムラがあるせいで、どうにもシリアスに寄りすぎるきらいがありますが、GIDのような問題を扱う話ではありません。というか、それじゃ重すぎて書いてる方も気が滅入ってしまいそうですし……。







――ほら、またこの光景。

 視界いっぱいに広がる、草木の緑。
 ドアの近くに佇み優しい表情を浮かべる、大好きな父と母。
 草原を走り回る愛犬と、それを追う――私たち。


「……アリスは、お人形さんみたいですね」

 そう、ここでシノがこう言うんだ。
 木陰に背を預けながら、二人で話す一時に。
 包み込むような優しい笑顔で、私に語りかけてくる。

「ふふ、お人形さんみたいで、とても可愛いです」
「――シ、シノだって可愛いよっ!」

 シノが私を褒めてくれればくれるほど、私の顔の赤みも増していく。
 だから、私はいつも照れ隠しをするんだ。

「シノみたいな女の子、なかなかいないよ……」
「――女の子、ですか」

 何故かここで、シノはいつもどこか複雑そうな表情をする。
 当時の私は、そんなシノはどこか儚げで、より魅力を感じたから気に留めなかったけれど。

「……わ、私っ!」

 そんなシノを見ていると辛抱たまらなくなって、私は更に言葉を続ける。

「シノに、また――会いたいからっ!」

 もうすぐ、日本に帰ってしまう、私の大好きなシノに。
 一気に、言葉を畳み掛ける。


「いつか、日本で――シノと、一緒に……!」



 そこで、記憶は途切れる。
 その時、私はどんな言葉を続けたのか。
 そして、シノは――どんな……

 ――朝

忍「――ん」パチッ

忍「……」ノビー

忍「朝、ですかぁ……」ファァ


忍「――はぁ」

忍「あ、そうだ」

忍「早くしないと、陽子ちゃんたちとの待ち合わせが……」

忍「準備しなくちゃ、ですねぇ……」プチプチ

忍「……」ゴソゴソ


アリス(シノ……シノ)

アリス(日本に来て、シノと会えて)

アリス(それなのに……それなのに)

アリス(何か、忘れてるような、気がするんだよ……)


アリス「――シノっ!」ガバッ

アリス「……あ」

アリス(そうか、私、シノのお部屋で……)チラッ

アリス(――シノ、まだ寝てるのか、な……!!?)ビクッ





 左方向を見て、アリスは瞠目した。
 そこにあったのは、自分の声に驚いてか、少し目をパチパチとさせるシノの姿。
 差し込んでくる朝の光は、そんなシノの肌の白さを一層際立たせる。

 ――不覚にも、アリスは見とれてしまった。
 上半身裸のシノは、まるで和風少女の完成形みたいで。
 ベッドの上に散らばっている様々な「グッズ」も、視界に入りながらアリスはシノの美しさに見惚れてしまっていた。

 そう、だから……シノの姿の「意味」に気づいた時、アリスは余計に恥ずかしさを覚えることになる。





アリス「……」

アリス「あわ、あわわ……」

アリス(シノが、シノが……は、裸で……!)カァァァ

忍「あ、アリスー。おはようございますー」ヒラヒラ

アリス(シ、シノ、まさか寝ぼけてる?)

忍「もぅ、アリス遅起きさんですねぇ」

忍「私、先に着替えちゃいますよー……」スッ

アリス(シ、シノが、ズボンに手を――!?」

アリス「ひっ……」

アリス「きゃぁぁぁぁ!」ドタタタッ

忍「……!」ハッ

忍「ア、アリス!? ど、どうしたんですか!?」アセアセ

アリス「シノの、バカ! バカ!」

忍「アリス、一体どうし――あっ」

忍「……ま、まさか」


アリス「もういい! わ、私! 廊下で着替えるからぁ!」ガチャッ

忍「ちょ、ちょっと! ろ、廊下って、それじゃあ!」バタン

忍「――行っちゃいました」ハァ


勇『ちょ、ちょっと、アリス!? な、なにしてるの!』

アリス『だって、だってシノがぁ……』グスッ

勇『シノが……』

勇『――なるほど、なんとなく把握したわ』

勇『とりあえず、廊下じゃマズいから、私の部屋に来なさい』

アリス『――うう、勇ぃ』

勇『シノ。ちょっと後で、お話しね』


忍「あわわ……」

忍「――お姉ちゃんと『お話』することに、なっちゃいました」

忍「ともあれ」ゴソッ

忍「まずは、今日どういう準備をしましょうか……これはここに詰めて、そして――」ブツブツ



――集合場所


忍「……二人共、おはようございますー」フラフラ

陽子「お、おお、シノ……」

綾「な、なんだか、随分やつれてない?」

忍「あ、あはは……」

アリス「……」ツーン

陽子「そして、アリスは」

綾「『ツーン』って感じね……」


陽子「――え、昨日」

綾「同じ部屋で、寝たの……?」キョトン

忍「はい」

忍「いや、最初はちょっと……ということで、お姉ちゃんの部屋の予定でした」

陽子「まぁ、勇姉が適任だよなぁ」

綾「――でも、アリスが選んだのよね?」

アリス「わ、私は、シノと一緒にいたかったわけじゃ――」アセアセ

アリス「……あることにはあるけど」プイッ

陽子「おいおい……」

綾「アリスったら、さっきからどこか素直じゃないわねぇ」

アリス「だ、だってだって!」

アリス「シ、シノが『約束』破るからぁ」カァァ

忍「うう……か、勝手に着替えたのは謝ったじゃないですかぁ」

陽子「……へ?」

綾「――ん?」


アリス「で、でもでも!」

アリス「シノの裸のせいで、私は朝から大迷惑だよ!」

忍「え……私の裸、ダメでしたか?」

アリス「そ、そういう表情しないでっ!」アセアセ

アリス「――だって」

アリス「シノの裸、綺麗すぎて……頭から」

アリス「じゃなくてっ! わ、私の居る所で着替えないって、シノから言ったんじゃない!」

忍「うう……それは謝ります」

忍「というわけで、今度からアリスの居る所では裸にならないようにします!」

アリス「そ、それは当たり前だよお!」ガーン


陽子「……なんていうか、なぁ」

綾「アリスは怒ってるようでいて、顔は別の意味で真っ赤だし」

陽子「シノも謝ってるようで、アリスの反応を楽しんでそうで」

二人(いいコンビ、なのかなぁ(なのかしら)?)




綾「しかし、実際の所、二人一緒の部屋でなんて大丈夫なのかしら?」

陽子「そりゃまぁ――普通は、ないだろうけど」

綾「まぁ『普通』は、ね」

綾「――それじゃ、私と陽子が一緒に寝るのは、普通よね?」チラッ

陽子「ん? そりゃまぁ、そうなんじゃないのか?」

綾「……」



――よ、陽子の身体が綺麗過ぎるのが悪いっ!


――分かった分かった! これから、綾の前じゃ裸にならないようにするよっ!



綾「――!」カァァァ

陽子「おーい、綾ー? 顔、真っ赤だぞー?」

綾「べ、別に、陽子の裸なんてどうでもいいわよ!」

陽子「いや、なんだよいきなり!? ていうか、恥ずかしいよ!」ビクッ

ここまでです。

今回も彼女の登場にはなりませんでしたが、次回辺りには登場するかと。
もうすぐきんいろモザイクの放送も終わりますね。
最後まで、楽しみたいものです。

今後、色々と不自然な展開になりそうですが、それでも付き合っていただければ、と。

それでは。

 ――幼い頃に交わした、「約束」。

 それを守るために、私ははるばるこの地に来た。
 元々、パパが日本人だったため、日本へ来る度にどこか懐かしさを覚えたものだ。

 今、私はそんな「第二の故郷」で、とある人物を待ちぶせしている。
 もうそろそろ、見えてくる、はず。

「……あ」

 来た。
 三人の女子に囲まれ、私の大切な幼なじみが。

 昔、私よりも高かった身長は、今では10㎝超の差がついている。
 ついでに胸も……うーん、あの子の姿はどう見ても「エレメンタリースクール」にピッタリなのに……。

 さて、行こう。
 声をかけて、驚かせてやるんだ。

 と、息を巻いて向かった矢先――


「そういえば、この辺りで金髪少女見たなぁ……」

――朝・いつもの駅前


 忍「そ、それは本当ですか、陽子ちゃん!?」ズイッ

 陽子「シ、シノ、顔近いって……」

 綾「こ、こらシノ! よ、陽子が困ってるでしょ!」アセアセ

 忍「あ、す、すみません……えへへ」

 陽子「ふぅ――全く、シノは金髪少女の話題になると、眼の色が変わるんだから」アキレ

 綾(……陽子の顔、ちょっと照れてる?)チラッ

 綾「よ、陽子のエッチ……」プイッ

 陽子「は?」キョトン


 アリス「金髪少女――」

 アリス(ってことは、私と同じ……)チラッ

 忍「?」キョトン

 アリス(――シノ)

 
 アリス(大宮家のお世話になるようになって、早数日)

 アリス(初日といい初夜といい、とんでもなく驚いたし、正直、まだ戸惑っちゃうけど……)

 アリス(――それでも)


 アリス「シノには、私がいるからね……!」グッ

 忍「ええ、アリスッ!」グッ

 陽子(な、なにやら熱い雰囲気だ……)

 綾(いや、熱いのはアリス一人だけだと思うけどね……)


 陽子「ああ、そうそう。そういえば」

 陽子「この前見た金髪少女も、こんな感じだったなぁ」ポンッ

 陽子「ほら、さらさらした長いロングヘアーに、ユニオンジャックのパーカー!」

 陽子「そして――」

 綾「って、陽子!? いきなり女の子と、ふ、不純よ!」

 忍「陽子ちゃん、知らない女の子捕まえて……」

 陽子「え……い、意外と堪える反応するな、君たち」


 アリス「……あれ、カレン?」

 少女「――あっ!」ピクッ

 カレン「アリスー!!」

 アリス「カレン!」

 忍「わぁ、よく見たら、すっごく可愛いです!」

 綾「え、英国少女、よね? そのパーカー的に」

 陽子「……はは、不審者か」ズーン

 綾「陽子――そろそろ立ち直って」

 忍「き、金髪……!」

 忍(アリスとはまた違った感じの……)

 忍(タレ目なアリスと、ツリ目なカレン……あぁ、どっちも捨てがたい……!)ハァハァ

 綾「ね、ねぇ、シノの顔が凄いことに……」

 陽子「ああ――まさに、シノにとっての『ハーレム』なんだろうさ」


 カレン「改めまして! 九条カレンと申すデス!」

 陽子「え、『九条』?」

 綾「ってことは――日本人とのハーフ、かしら?」

 カレン「ハイッ!」

 カレン「遠くイギリスから、アリスを追ってやって来マシタッ!」

 陽子「おお、アリスモテモテだな!」

 忍「き、金髪ぅ……」エヘヘ

 陽子(モ、モテすぎるのも、心配だな……)ハハハ


 陽子「――あれ、その制服?」

 綾「うちの、よね?」

 カレン「ハイ! 今日から、転校シマスッ!」

 二人「えええっ!?」

 綾「ああ……金髪が二人……アリスとカレン」

 アリス「……」

 カレン「――アリス、どーしたデスカ?」

 アリス「べ、別になんでも」

 カレン「フーン……」


 カレン「アリスー!」ダキッ

 アリス「ひゃっ!? カ、カレン!?」

 カレン「フフッ、相変わらずちっこいデース!」

 アリス「む、昔は私のが大きかったよっ!」

 カレン「昔は昔、今は今、デス!」

 アリス「むー……」


 陽子「おお、あれが……」

 綾「英国流の挨拶、かしら?」

 綾「……」

 綾(ということは、国が違ったら――)


 ――陽子、久々のハグ!

 ――おお、綾。久しぶりだなぁ


 綾(なんて、ことにも……)チラチラ

 陽子(最近、綾の様子がおかしいと思うのは、気のせいじゃあるまい――)

カレン「あっ!」

 忍「ああ、カレン……金髪……」

 カレン「――シノ!」

 忍「え?」

 忍「わ、私の名前、知ってるんですか?」

 カレン「ハイ!」

 カレン「アリスがよく、話してマシタ!」

 忍「わぁ……!」

 カレン「シノー!」ダキッ

 忍「カレンー!」ダキッ


 陽子「!」

 綾「!」

 アリス「……あ!!」








 ……ん?

 この感じは、なんだろう?
 何かがおかしい。

 改めて、シノの胸の中で、彼女の佇まいを思い起こしてみる。
 うん、どこからどうみても女子。そして、和服が似合いそうな、和風美少女。
 ……だったら、なおさら。

 「――シ、シノ?」

 陽子「さ、さぁさぁ二人とも!」

 カレン「!」

 綾「そ、そろそろ学校に行かなきゃ!」

 綾「ち、遅刻しちゃうわよ……!」

 カレン「……」

 カレン「そ、そーデスネッ!」

 カレン「い、いきマショ!」

 アリス「……カレン」


 忍「――やっぱり、ですか」

 アリス「し、シノ?」

 忍「うーん……どうなりますかねぇ?」

 アリス「……」

 アリス(シノ――さっきの緩みきった顔つきとは、全く違う)

 アリス(そういう表情をする必要が……シノにはあったんだろうね)

 アリス(私と、再会したときも――)キュッ

――通学路


 カレン「……」

 カレン(何かがおかしいデス)

 カレン(そう、さっきシノとハグしたトキ)

 カレン(――何かが、足りない、ようナ)

 カレン(それこそ、ペッタンコなアリスはおイトイテモ)

 カレン(それとはまた違う、ナニか……)


 陽子「カ、カレンがさっきから考えこんでるな」

 綾「危ない兆候のような気もするけど……」

 陽子「まぁ、綾。勇姉もああ言ってたことだし――」

 綾「ええ……気を張りすぎることはない、わね」


 忍「……」テクテク

 アリス「……」トコトコ

 アリス(さっきから、心なし)

 アリス(シノの表情がシリアスだよぉ……)

 アリス(――カレン、「気づいちゃった」かなぁ?)アセアセ

 忍「……」ジッ


 カレン「……マサカ」

 カレン(まさか、ネ……)

 カレン(――そう、だとシタラ)


 カレン「……なんだか、恥ずかしいデース」

 忍「せ、赤面する金髪少女……!」ハァハァ

 アリス(あ、いつものシノだ……)ホッ

今回は、ここまで。

最後のアリスは安心してるけどそれでいいんでしょうかね……?
今回はカレンとの出会いのお話でした。さて、カレンは果たして……?

それでは。
読んでくださる方に心からの感謝を。

――廊下

「……」

うん、やっぱりおかしい。
さっきの感触は、なんといっても。
私自身、胸にパッドを当てることに抵抗がないおかげか、さっきのシノとの抱擁には――

 大いに疑問を抱いた、と言わざるをえマセン……!

「ムゥ……」

 しかも、あの大きさ。
 シノの体格からしたら、もう少し小さくたって――!
 これじゃ、私の自信が、ちょっとなくなりマース……。

「お、おい、転校生が自分の胸をツツいて物憂げ顔だぞ……?」
「うーん――何か、彼女にも思う所があるんじゃないかな?」
「……はぁ。アンタたち、鼻の下伸ばしすぎ」


「――あ、着きましたネ」



――忍のクラス



カレン「タノモー!」ガラッ

陽子「おう、カレン」

綾「どうしたの、私たちのクラスに用事?」

カレン「ハイ!」トコトコ

カレン「ヨーコやアヤヤもいますし!」

綾「だ、だから、私は『アヤ』!」

陽子「いーじゃん、アヤヤ可愛いし」

綾「……」ハッ

綾「陽子が、そう言うなら」プイッ

陽子「?」


カレン「トコロデ」

カレン「シノは、どこにいますカ?」

綾「――アヤヤ、か……うふふ」ニコニコ

カレン「アヤヤ?」

綾「――!」ハッ

陽子「シノなら、そこの前の方の席にいるんじゃないかなぁ……あ、いたっ」

カレン「ヨーコ、ありがとデスー!」


綾「……」ズーン

陽子「――おい、『アヤヤ』?」

綾「も、もう……」ガタッ

綾「『アヤヤ』禁止ー!」ダダダッ

陽子「ええ……」

カレン「シノ、こんにちはデス!」

忍「――あ、カレン」ニコッ

アリス「カレン!」

カレン「アリスも、デスー!」ダキッ

アリス「ひゃぁ!? か、カレン、くすぐったいよぉ」

カレン「……」

アリス「?」

カレン「――やっぱり」フニフニ

アリス「え、え?」

アリス(な、なんで私の胸の方に視線が……?)

アリス(あ、あと、なんだかほんのちょっとだけ鼻で笑われた、ような……?)ハッ

カレン「ところで、シノ?」

アリス(しかもスルー!?)ガーン



カレン「……」ジーッ

忍「? どうしました、カレン?」

アリス(ああ、今度はシノの胸を――!)

アリス(カ、カレン! そ、そこは、私の場所――じゃなくてっ!)カァァ


カレン「――うん、やっぱり」

カレン「シノ!」ズイッ

忍「ひゃっ!? な、なんですか、カレン?」ビクッ

カレン「……」

忍「?」


カレン(どこからどう見ても、可愛い女の子デス……)

カレン(こけしのような黒髪も似あってますし、落ち着きもアル)

カレン(――じゃあ、さっきのは?)


陽子「よ、よう、カレン」

カレン「――あ、ヨーコ」

綾「そ、そろそろ授業始まっちゃうわよ?」

綾「自分のクラス、戻ったほうがいいんじゃない?」

カレン「……」

カレン「わかりマシタ。ソレデハッ!」ダダダッ

陽子「――アリスに続き」

綾「――二人目、ね」

忍「……カレン、可愛かったですー」エヘヘ

アリス「……シノ」ムッ

カレン「シノ、こんにちはデス!」

忍「――あ、カレン」ニコッ

アリス「カレン!」

カレン「アリスも、デスー!」ダキッ

アリス「ひゃぁ!? か、カレン、くすぐったいよぉ」

カレン「……」

アリス「?」

カレン「――やっぱり」フニフニ

アリス「え、え?」

アリス(な、なんで私の胸の方に視線が……?)

アリス(あ、あと、なんだかほんのちょっとだけ鼻で笑われた、ような……?)ハッ

カレン「ところで、シノ?」

アリス(しかもスルー!?)ガーン



カレン「……」ジーッ

忍「? どうしました、カレン?」

アリス(ああ、今度はシノの胸を――!)

アリス(カ、カレン! そ、そこは、私の場所――じゃなくてっ!)カァァ


カレン「――うん、やっぱり」

カレン「シノ!」ズイッ

忍「ひゃっ!? な、なんですか、カレン?」ビクッ

カレン「……」

忍「?」


カレン(どこからどう見ても、可愛い女の子デス……)

カレン(こけしのような黒髪も似あってますし、落ち着きもアル)

カレン(――じゃあ、さっきのは?)


陽子「よ、よう、カレン」

カレン「――あ、ヨーコ」

綾「そ、そろそろ授業始まっちゃうわよ?」

綾「自分のクラス、戻ったほうがいいんじゃない?」

カレン「……」

カレン「わかりマシタ。ソレデハッ!」ダダダッ

陽子「――アリスに続き」

綾「――二人目、ね」

忍「……カレン、可愛かったですー」エヘヘ

アリス「……シノ」ムッ

>>48 >>49 内容重複。ごめんなさい。

――次の休み時間


アリス「……カ、カレン」

カレン「OH?」

カレン「アリス……どうしたデス?」

アリス「そ、その」

アリス「――カレンに、お話ししたいことが、あって」

カレン「……」

カレン「実は、私も――」

アリス「カレン――!」

カレン「そこで、なんデスガ……」


――大宮家


勇「――はい、カレンちゃん」

カレン「おおー、ジャパニーズ・ワガシッ!」

勇「ふふ、お口に合うといいんだけど……」

カレン「とってもおいしいデース! Delicious!」グッ

勇「良かったよかった」

忍「……」

アリス「シ、シノ?」

忍「――アリス」

忍「カレンだけ、私の家に誘った、ということは」

アリス「……う、うん」

アリス「ま、前に陽子から聞いたんだけど、シノ――まだ、クラスの人たちには」

忍「ええ……『中学の頃のような』ことは、まだしていません、ね」

アリス「――カレンには、早い所」

忍「明らかにしておいたほうがいい、ですよねぇ……」

カレン「二人トモー? 何をコソコソ話してるデスカー?」

アリス「カ、カレンッ!」

忍「――あの、カレン」

カレン「ンー?」

忍「……後で、私の部屋に来て頂けますか?」

カレン「……」

カレン「Yes,Of Course!」グッ

アリス「――シノ、いいんだね?」

忍「……何度やっても、慣れませんけど、ね」

アリス(――シノ、顔赤くしちゃって)

アリス(わ、私が精一杯フォローしないと、だね!)

勇「……ふふ」

勇(うーん、私の出番は必要なし、かな?)



――忍の部屋


カレン「おじゃまシマース!」ガチャッ

カレン「へぇ、ここがシノの部屋ですカー」ジーッ

アリス「も、もう、カレン! そんなにジロジロ見ちゃダメだよ!」

忍「あはは、いいですよ、アリス」

忍「――カレン」プチプチ

カレン「?」

カレン「……シノ、どーして服を脱いでるですカ?」

忍「――私とカレンが」プチプチ

カレン「……!」

忍「本当の、『お友達』になれるようにする、ためにです」スルッ

カレン「シ、シノ……! ま、まさか、それは――」


ストン・・・


カレン「……」

忍「……」

カレン(きれいな肌、デース)

カレン(なんというか、人形以上に人形らしいというか……それくらいにきめ細やかな肌デス)

カレン(――しかシ)

カレン(……ベッドの横に積まれた『モノ』は、一体)

アリス「ふぁぁ……」クラッ

アリス(シノ――相変わらず、綺麗だよぉ)カァァ

アリス(でも、でも……『女の子』じゃない、なんてぇ……!)ブンブン


カレン(このアリスの反応)

カレン(……シノ、やはり)


忍「――カレン?」

カレン「――シノ。おっぱい、ないんデス?」

忍「あはは」ニコニコ

忍「昔、小学生の頃は、陽子ちゃんと一緒だと思ってたんですよ?」

忍「でも陽子ちゃんったら、今はあんなにおっきくなっちゃって――」

カレン「……そう、なんですカー」

カレン「なんと! 大宮忍は――『男の子』だった、トハッ!」

忍「……ごめんなさい、カレン」

カレン「な、なんのことですカ?」アセアセ

忍「私、さっきカレンに抱きついちゃってもらいました」

忍「その時、凄く嬉しかったです。ただ――」

忍「……私が、『女の子』じゃないって、知らなかった、ですよね?」

カレン「そ、それは、マァ」

カレン「正直、そこらの女の子より『女の子』らしいモン」

忍「――だから」

カレン「あ、謝らなくて大丈夫デス!」

忍「……あ」

カレン「わ、私も、嫌じゃ全然なかったデスッ!」

カレン「た、ただ……!」

カレン「――パパ以外の男の人とハグするのなんて、初めてだった、カラ……」カァァ

忍「カ、カレン……」


忍「カレンー!」ダキッ

カレン「キャッ!?」ビクッ

カレン「シ、シノ! わ、私、心の準備というモノ、できてナイ、デスッ!」

忍「……嫌、ですか?」

カレン「そ、そうじゃなくテー……あぁ、モォ」カァァ

アリス「……」

アリス(シノが! アリスに! 抱きついた!)アセアセ

アリス(……ううう)

アリス(次は、私が……!)ズイッ

アリス(でも)


アリス「そういえば、私もパパ以外の男の人とハグしたこと、なかったよぉ……」カァァ



――廊下



勇「……」

勇「――恋敵登場、かしらね?」

勇「しかしまぁ、この子たちがフツーのラブコメみたいな展開になるとは、到底思えないけれど」


勇「まったく、可愛い子たちなんだから……」クスッ

今回はここまでです。

さて、カレンに身バレし、次なるシノたちの進む道は――
しかし、シノが服を脱ぐシーンは、書いててちょっとクルものがあることを認めざるを得ない……!

それでは。


細かいけどもカレンに!じゃね?

ごめんなさい、遅れてます。
今夜、投下予定です。
もし立て込んだりして出来なかったら、申し訳ありません。

>>54
ご指摘、ありがとうございます。

 ――ちょっと昔の話をしてみよう。

 そういえば、あの姉妹――おっと――「姉弟」とは、随分と長い付き合いになる。
 小学1年生の頃に初めてその子と会った時、まだ小さかった私は目をパチパチとさせたっけ。

「陽子ちゃん、よろしくお願いしますね」
「おう、シノ! よろしくな!」

 でも、その時はまだ「ちょっとした」違和感に気付かなくて。
 だから、シノと触れ合っていく中で――

 まさか、「そういうこと」だとは思わなかったわけで――


 きっかけは、渡り廊下。
 たしか、4月の中頃だったような気がする。
 シノと出会ってから、日がまだまだ浅い頃だ。

「――あれ、陽子ちゃん?」
「よう、シノ」
「どうしたんですか? ここは、お兄さんやお姉さん達のクラスしかありませんよ?」

 つまり、上級生のフロアだと言いたいんだろう。

「あー、いやまぁ……なんとなく?」

 まあ私は、本当に理由もなくただぶらついていただけ。
 だから、寧ろシノがなんでここにいるのか気になった。

「そーいうシノは、どうしてここにいるのさー」
「あ、それは……」


「シノ!」

 交わされる会話は、突如途切れる。
 シノが、誰かに抱きつかれたせいだ。
 その人は、当時は小学3年生だったはずだけど……もうすでに、どこか上級生っぽくもある人だった。
 何より、凄く綺麗だった。

「……あれ?」

 つい、見惚れてしまっていた。
 おっと、油断した。
 近くには、そんな美人の顔がある。

「こ、こんにちは」
「あら、こんにちは――ねぇ、シノ?」
「なんですか、『お姉ちゃん』?」

 なるほど、この人はシノのお姉さんだったのか。
 合点した私は、「似てるようで似てない――『姉妹』だなぁ」と心のなかで思う。
 ……うん、この頃までは知らなかったんだな。

「この子……シノのお友達?」

 そんな、美人さんの問いかけに、


「はい! 陽子ちゃんは『ボク』のお友達です!」


 世界が、揺れた。
 まだまだ小さかった当時の私も、なんだか急に立っている場所がわからなくなった記憶がある。

 目の前にいるシノは、短めのおかっぱ頭に、大きな目(ただ、お姉さんと違ってタレ目)。
 どこから、どう見ても――


「な、なぁ、シノ?」
「――あっ!」
「あーあ、もしかして……今、バレちゃったの、シノ?」
「……うう」


 4月の中頃。
 私たちはそうして、後に公然となる秘密の共有者となった――



「……ってわけなんだ」
「なんだか、妙に勇さんに対する評価が高いわね……」
「どうした、綾?」
「な、なんでもないわよっ!」

 時は移って、現在。
 私と綾は帰り道で、そんな話をしていた。
 今頃、シノの家にはカレンが行って――

「それで、どうしてこの話を?」
「いや……たしかまだ、綾に言ってなかったよね、って思って」
「――まぁ、たしかに初耳かもだけど」

 そう言うと、綾は居住まいを正して、

「どうして、今?」
「……分かるだろ、綾?」

 私は一呼吸置いて、

「アリスに続き、カレンにもシノの『秘密』は明かされるはず」
「それはもう、確定事項でしょうね」
「……だったら、尚更」


「私が、一番信頼する『友達』に、全てを打ち明けときたいって思うじゃん」


「……は、はぁ!?」

 そんな風に言うと、何故か目の前の綾が爆発しそうな表情をとる。
 爆発しそうな……うん、つまり、とっても赤い顔になる。

「な、何をいきなり……」
「いや、たしかにこの話をしても、今更大した変化もないだろうけど」

 私は、そこでしっかりと綾を見つめる。

「――それでも」
「まったく、陽子ったら」

 少し赤みが引いた顔を、いたずらっぽく緩めて、言う。


「今更私が、あなたやシノから離れるとでも?」
「……まるで、綾に付き合ってきたのが私やシノみたいな言い草だなぁ」
「むっ……」

 そうそう、そんな感じがいい。
 ちょっと雰囲気が堅くなってきた感じもあったし、少し綾をからかうことで立て直し。
 まぁ、そこが私のダメな所でもあるんだろうけれど……ともあれ。

 明日から、どうなることやら――










 ――翌日・集合場所

忍「……おはようございます!」

陽子「おっす、シノ」

綾「お、おはよう、シノ」

綾「そ、それで昨日は……」

アリス「あ、綾! わ、私たち、別に何にもなかったよ!」ブンブン

綾「――え? いや、カレンのことなんだけど……」

アリス「」


陽子「……アリス、何を早とちりしてそうなったんだ?」

アリス「き、聞かないでよぉ」カァァ

忍「はい。アリスは昨日も今日も可愛いですよ」

アリス「……シ、シノー」キラキラ

陽子「――まぁ、この二人はもういいか」

綾「というより」

綾(アリス……実際、シノの「性」について、どう思ってるのかしら?)

綾(――まぁ)


アリス「シノに会えて良かったよー!」ダキッ

忍「アリスー!」ダキッ

綾(……なんともなさそう?)

陽子(いや、よく見ろ綾)

綾(な、なによ?)

陽子(――アリスの、手)

綾(……!)

陽子(シノの腰回りに、ちゃんと付いてない)

綾(……あぁ、やっぱりまだ)


カレン「お、オハヨーゴザイマス……!」ハァハァ

綾「あ、カレン」

陽子「おっす」

カレン「……」ドキドキ

陽子「? どした?」


忍「カレンー!」

アリス「シ、シノ!?」ガーン

カレン「……シ、シノ」ビクッ

忍「昨日は、ぐっすり眠れましたか?」

忍「日本の生活に、早く慣れるといいですねー」

アリス「シノ……それ私には、言わなかった台詞」ウルッ

陽子(うわぁ……あれは)

綾(アリス――疲れちゃいそうな性格してるわねぇ)


カレン「……ア、アノ」

忍「さぁ、学校生活二日目です!」

忍「カレンのクラスにも、遊びに行きたいですねぇ」

カレン「シ、シノ……ええと」モジモジ

忍「はい?」

カレン「……」


カレン「い、一回ダケ」

カレン「――ギュッと、シテ?」ポッ

アリス「……!!?」

陽子(うおおお!?)

綾(え、なにこの展開は……!)

忍「……」

忍「はい、わかりました」

カレン「……」ドキドキ

忍「――カレン」ギュッ

カレン「!」ビクッ

忍「……さらさらの、金髪」

忍「綺麗ですねぇ……」

カレン「……」


カレン「も、もう、イイ!」バッ

忍「え?」

カレン「……」

カレン「わ、私! さ、先に行きマス!」

忍「ちょ、ちょっとカレン!?」

アリス「……」

アリス(カレンが、シノに……ギュッと)

アリス(シノが、カレンを……ギュッと)

陽子「……なぁ、私はカレンよりむしろ」

綾「アリス――健気な子」

陽子(健気、というより、なんだかなぁ……)




――ちょっと離れて




カレン「……」ハァハァ

カレン「――ド、ドキドキ、しまシタ」

カレン(ま、まさか、異を決してやってみたことがこんなニモ)

カレン(……シノに、抱かれたダケで)

カレン(身体が、ギュンと、火照ッテ)

カレン(――あれで、どうシテ)


カレン「……『Man』なんですカァ」カァァ

ここまでです。
トリップつけました。

互いに気持ちを結び合う陽子と綾。
気持ちを結ぼうとして引いたカレン。
さて、二人の英国少女はいかに和風少女と気持ちを結ぶのか……。

というまとめっぽいことを書いても、結果的には赤面するカレンちゃんが書きたかっただけかもしれません。
楽しかったです。

それでは。

 ――4月下旬。

 大宮忍たちが高校に入学して、早1ヶ月が過ぎようとしている。
 この間に、アリス・カータレットが忍に会うためにイギリスから来日したり、九条カレンがそんなアリスを追って忍たちと知り合ったり……
 と、過ぎた時間の短さに比して、非常に濃い日々を送っていた。

 さて、そんな面々の調子はどうだろうか。

 大宮忍は、そんな2人の英国少女に会えたことで、頬を緩めることがとても多く非常に満足な毎日である。
 アリス・カータレットは、そんな忍と会えてとても嬉しく思う一方で……一抹の想いもまた、抱えていた。
 九条カレンは、アリスと同じような想いの感じ方に、彼女よりも敏感であった。

 猪熊陽子は、そんな3人(主に忍だが)を心配しつつ、楽しみながら見守っている。
 小路綾は、陽子と同様ではあるが、心配の比重が多いように見受けられる。


 さて、このようにそれぞれ捉え方は違えど、概ね満足な日常を送っている中で――


「……なぁ、今のって」
「うーん……」


 ちょっとした、「予兆」も表れてきていた。

 ――廊下



 男子A「……最近は、転校生ブームなのか?」

 男子B「なんだ、いきなり。何かの漫画の影響か?」

 男子A「何言ってんだ。うちの学校のことに決まってるだろ」

 男子B「――あぁ、なるほど」


 男子B「うちには、アリス――さん?――がいて」

 男子A「別のクラスには、九条さんという人も来たらしい」

 男子B「……ああ、時々うちのクラスに来てる」

 男子A「そう、あのユニオンジャックのパーカーの――」

 男子B「え、あれユニオンジャックとかいうかっこいい名前だったのか?」

 男子A「……ほんのちょっとでもいいから、イギリスのことは知っておくべきだろ」

 男子B「??」


 男子A「でも、こんなにイギリスから転校生が来てると――」

 男子B「いいじゃん、外国人と仲良くなれるし」

 男子A「単純なヤツだな……まぁ、それでいいんだろうけど――わっ!?」

 忍「ひゃっ!?」



 ドンッ!



 男子A「だ、大丈夫か?」

 忍「は、はい。ご、ごめんなさい」アセアセ

 男子B「――あぁ、大宮さんか」

 忍「えへへ、慌てちゃってました」

 男子A「そか。俺は大丈夫だから」

 忍「良かったです」

 忍「それでは、また」ペコリ

 男子B「じゃーなー」

 男子A「ああ、ビックリした」

 男子B「意外と慌てることもあるんだな、あいつ」

 男子A「そう……だ、な」ピクッ

 男子B「どうした?」

 男子A「――俺達って今」

 男子B「トイレに行く途中だろ?」

 男子A「……大宮さんは、今」

 男子B「え、あいつなら教室に戻る途中だろ?」

 男子A「――気付かないのか?」チラッ

 男子B「えっ……」チラッ

 男子B「あっ!」ハッ



『男子トイレ』



 二人「」

 男子A「ま、まさか、なぁ」

 男子B「な、なぁ?」

 二人「……」



 ――教室



 陽子「……と、いうわけで」

 綾「何が、『と、いうわけで』なのよ」

 陽子「わ、分かってるだろ?」

 綾「それは、まぁ」

 忍「え、お二人とも、どうかしたんですか?」

 アリス「ふ、二人とも、ちょっと顔が真剣だよ……」

 陽子「――シノ」

 忍「は、はい」

 綾「中学生の頃のこと、覚えてるわよね?」

 忍「……中学生、ですか」

 忍「あぁ、アリスの所へ行きましたねぇ」キラキラ

 アリス「私が、シノと会った時……!」キラキラ

 陽子「じゃ、なくてだな……」ハァ

 陽子「その――シノの、あの」

 綾「身体のこと、でしょ?」

 忍「え、私、健康ですよ?」キョトン

 アリス「シノ……綾が言いたいのは、そういうことじゃないと思うよ?」

 忍「――冗談です」


 忍「ええ、覚えてますよ」

 陽子「……」

 忍「でも、皆さんとても優しかったですし」

 忍「いい人たちでしたねぇ……」

 綾「シノ……」


 陽子「――傍から聞くに」

 陽子「シノは、『どっち』なんだと」

 綾「そう、言われてることもあるらしいのよ」

 忍「そうですかー」

 綾「って、随分と軽いのね……」

 忍「ええ、だって……」

 忍「安心してますから」ニコッ

 陽子「安心……?」

 アリス「シノ……?」



ガラッ



 男子AB「――あ」

 忍「あっ!」ガタッ

 忍「お二人とも、先程はごめんなさいでした」ペコリ

 男子A「い、いや、別になんともなかったし」

 男子B「む、むしろ……いや、なんでもない」

 忍「それは良かったです!」

 男子A「――大宮、さん」

 忍「はい?」キョトン

 男子B「――応援、するよ」

 忍「……!」

 忍「ありがとうございます!」ニコッ

陽子「……おお」

 綾「よ、よくあんな普通に男子と話せるわね」

 陽子「いや、そこじゃないよ!」

 アリス「シ、シノが……男の子と……」アワワ

 陽子「いや、そっちでもないよ!」

 忍「ただいまです」

 陽子「なんというか」

 綾「心配、するまでもなかった、ってことかしら?」

 アリス「わ、私は心配だよぉ」ウルッ

 陽子「アリス、それは違うんだよ」


 陽子「ともあれ、シノ」

 陽子「――さっき、トイレに行くと席を立った時、あの二人とすれ違ったんだな?」

 忍「はい」

 忍「私、慌ててたのでぶつかってしまって……」

 陽子「そうか……それで、あの二人は」

 綾「『察した』のかしら」

 アリス「シノが――その――」

 アリス「……私たちと『同じ』じゃない、ことに?」

 陽子「――かもな」


 忍「それでも」

 忍「あのお二人は、分かってくれたようですし」

 忍「――大丈夫ですよ、アリス!」ニコニコ

 アリス「シ、シノぉ……」ウルウル


 綾「……ま、大丈夫みたいね」

 陽子「まぁ、なんだかんだで中学の時も――」



『いやまぁ、なんというか……面白いこともあるよね』

『いいじゃん、そういうのも!』

『大宮さん、それなのに髪サラサラなんだ……羨ましー』



 陽子「――私たちはホント、周りの人に恵まれてるなぁ」

 綾「感謝しないとね」

 忍「はいっ!」

 アリス「……」

 アリス(そうだよね――シノは、『違う』んだよね)

 アリス(最初、私がシノに会いたかった理由は……)

 アリス(今と、なっては――)キュッ




 男子A「――あれで、あの容姿で……」

 男子B「あの可愛さで、か――凄いな」

 男子A「……だよな、うん」

ここまでです。

今回はカレンちゃん登場なしでした。次回、出る予定です。

きんモザの世界観なら、優しさで解決することも多いんだろうなー、と。
実際、原先生が最初期案で描いたらどうなっていたのか、非常に気になります。

次回は、赤面率が上昇する……かも。
それでは。

 ――最近、うちの高校にも「ブーム」が来ているらしい。

 さっき、廊下ですれ違った二人の男子も、そんなことを言っていた。
 なるほど、彼らのクラスにもまた、イギリスからの転校生がいるらしい。
 そして……

「ハァ……」

 さっきから、私の近くで溜息を漏らす子も、イギリスからの転校生。
 そんな彼女は、どうも朝から様子がおかしい。

「あ、あの……?」
「――」

 ムクリ。
 あ、身体を起こした。
 しかし、こうして改めて見ると、やっぱり日本人とは違う。
 サラサラの金髪も、パーカーの着こなし方も……といっても、ハーフらしいけれど。

「お尋ねしても、よろしいデスカ……?」
「はい?」
「May I ask you a question……?」
「うわ、やっぱり英語上手いね」

 さて、そんな彼女の「お尋ねしたいこと」とは何なのだろう。
 これまでの様子を勘案して、思い浮かぶことといえば――

「……まさか、とは思うんだけど」
「ハイ」
「――『恋煩い』じゃあないよね?」
「!」

 まぁ、冗談のつもり。
 フツーに考えれば、転校して間もないこの時期に誰かに一目惚れって――どんな漫画やアニメなんだか。
 ……冗談、だよ?


「……」
「恋煩い……」
「Love sickness……?」
(聞いたことのない英語だ……)


 私がこう言うと目の前の彼女は、先ほどとはまた違った意味でおかしくなった。
 さっきまでが「静」な不調といえば、今は「動」の不調。
 いきなり顔を赤らめて、オロオロするばかりなのだった。


「……あー、なんというか、藪蛇?」

 この場合、使い方が正しいのか知らないけど。

「そ、そんなことありまセン!」

 あ、いきなりムキになった。

「と、とにかく! た、確かめに行ってきマス!」

 と同時に、バタバタと教室を出て行ってしまう始末。
 廊下に消えゆく彼女を見て、私も溜息を一つ。

「……ありゃ、重症ね」

 

――教室


忍「はぁ……陽に照らされる金髪少女も素敵です」ウットリ

アリス「シ、シノ? 目がちょっと怖いよ?」ビクッ

忍「いえいえー」

アリス「……もぅ」クスッ


陽子「――相変わらずの光景だなぁ」

綾「もう慣れたものね……今までシノは雑誌の女の子に対して呟いてたけど」

陽子「もう直接の対象が近くにいるからな……道理で、蕩け度が増してるわけだ……」



ガラッ



カレン「……」

陽子「あ、カレンだ」

綾「な、何だか、ちょっと様子がおかしいわね」

陽子「……言われてみれば」

カレン「――ヘイ、ヨーコ、アヤヤ!」ニコッ

陽子「あ、笑った」

綾「だから、私は『アヤ』なのに……」


陽子「どうしたんだ?」

カレン「What? なんデスカ?」キョトン

陽子「いや、その――」

綾「さっき、ちょっと表情が硬かったように見えて……」

カレン「心配いりマセン! ダイジョブデス!」エヘヘ

綾「そ、そう?」

陽子「……そ、そっか」

カレン「――ところで」チラッ


忍「この髪も、サラサラですねぇ……」ナデナデ

アリス「く、くすぐったいよぉ……」

忍「アリスは、本当に可愛いです……」

アリス「――シノは、ズルいよ」カァァ


カレン「……」

陽子(あ、表情が)

綾(少しずつ、さっきみたいに……)

カレン「ヘイ、二人とも」

忍「あ、カレン!」

アリス「カレン、どうしたの?」

カレン「――その」

カレン「私も、髪には自身あるデス」エヘン

アリス「……!」


カレン「シノ、触ってもいいデスよ?」チラチラ

アリス「だ、ダm」

忍「はい! ありがとうございます!」ナデナデ

アリス「」


忍「いやー」

忍「カレンの髪も、サラサラで綺麗ですねぇ……」ウットリ

カレン「……」

カレン(うん、大丈夫デス)

カレン(顔が赤くなってる感じもなく、胸が高鳴ってるわけでもナイ)

カレン(――やっぱり、LoveSicknessなんてありえまセン!)

カレン(そ、そもそも、シノは……私たちとは、ちがッテ)


忍「……んー」ポフッ

カレン「!?」

アリス「!!?」

カレン「……シノ、なにしてるデスカ?」

忍「カレンの髪……香りもいいですねぇ」

アリス「シ、シノが……!」

陽子「髪に顔を埋めて――!」

綾「……」



陽子『綾の髪、なっがいなー、サラサラしてる』

綾『あ、もう、陽子ったら!』



綾「……」ジーッ

陽子「――なにか?」

綾「な、なんでもないわよ!」プイッ

陽子(慣れたとはいえ、時々綾が怖いよ……)

カレン「シ、シノ……あの、デスね」

忍「……」

カレン「く、くすぐったい、デスし、そ、それに……」

カレン「――うう」

アリス(カレン……顔が真っ赤だ)

アリス(――シノもシノで、いつまでカレンの髪に顔を)

アリス(むぅ……)


忍「――ふぅ、満足です」

忍「ありがとうございます、カレン」

カレン「よ、You are welcome……どういたしまして、デス」

忍「わ、カレン……英語、上手ですねぇ」ニコニコ

カレン「……そ、そんな、コトは」アセアセ

陽子(慣れないことされたせいか、カレンの反応が敏感だな……)

綾(そして、それを見るアリスの健気でいじましい瞳ときたら……)


カレン「……」

カレン「シノ」

忍「はい?」

カレン「――」

カレン「やっぱり、なんでもないデス」

忍「そうですか」

忍「いつでもなんでも、言ってくださいね」

カレン「……」

カレン「そういうとこ、ズルいと思いマス」カァァ

忍「??」

アリス(――カレン)

アリス(まさか……まさか、だよね?)

カレン「――そろそろ、戻りマス」

忍「あ、そうですか。それではまた後で会いましょう!」

カレン「……ハイ」



ガラッ



アリス「……」

アリス(カレンが――カレンが)

アリス(おかしいよぉ……!)ガーン


陽子「――ありゃ、かなり」

綾「ええ、何だかすごかったわね」


 
――あ、帰ってきた。

 教室に脚を踏み入れた彼女は、なるほどどこか様子がおかしい。
 具体的には、さっきよりも顔の赤みは増し、足取りもおぼつかなく、なにより――


「お帰り……ところで、どうしたのその髪?」

 彼女の自慢であろう髪の形が、崩れていた。
 何故だろう、手入れを欠かすことなどなかっただろうに。

「――このままで、いいデス」
「そう?」

 やっぱりよくわからない。


 ただ、言えることはありそう。

「どう、九条さん?」
「――何が、デス?」


「Love sickness」
「!」
「実際には、どうだったのかなー、って」
「……」

 彼女が教室を去ってから電子辞書で調べた言葉。
 それを投げたら、彼女は押し黙ってしまった。

 下を見る彼女は、何を思っているんだろう。
 私は、追及しないことに決めた。


 しかし、まぁ。

(最近の、イギリス人は進んでるのかなぁ……?)


 日本では『草食系』なんてのも現れてるのに、彼女ときたら――


(……そういうのじゃ、ありまセン)

(私が、シノに感じてるのは――もっと、そう、もっと別ノ)

(……何か、なんデスが)

ここまでです。

予告通り、赤面率高めでした。
果たして、カレンがシノに思う所はなんなのでしょうか……自分で書いていても、どう表現すればいいのやら。

読んでくださる方、ありがとうございます。
それでは。


あ、ちなみに、カレンと話している女子生徒は、ほのかちゃん(?)とは別と考えていただいて構いません。

つらつらと書いていたら、とても長くなってしまいました。
ゆっくりと投下していきます。





 ――人の想いに関わらず、時は過ぎゆく。

 いつしかカラッとした陽気はどこかへ行ってしまい、蒸し暑い時期がやって来た。
 湿気は多く、紫陽花こそ綺麗であるものの、人々の気分は一様に重くなる――梅雨の到来だ。
 とりわけ、梅雨の時期の6月というものは、例外なく学生が最も気落ちする月でもある。

 すなわち――


「……あれ、おかしいな。何度見ても、カレンダーに『赤』がないぞ?」
「陽子――いくら見ても『赤』は浮かんでこないわよ……」


 こんな時期。



――朝・大宮家



忍「それじゃ、行ってきます!」ガチャッ

アリス「いってきまーす!」

母「はいはい、行ってらっしゃい」



バタン・・・



母「……」

母「二ヶ月、か――」

勇「どうしたの、遠い目しちゃって?」

母「勇……」


母「ううん、ちょっと考えただけ」

母「あの子――忍は、高校生活を充実させられてるのね、って」

勇「それは、まぁ」

勇「――この前、クラスの男の子と何かあったみたいだけど」

母「……え?」ピクッ

勇「もしかして、ね……」

母「……」

母「――勇。あの子は、おとk」

勇「ああ、そういえばね。アメリカで同性婚が出来るようになったとか」

勇「今朝、ニュースでやってたよ」

母「……」

母「――ああ」フラッ

母「それは……あの子も幸せになれるのね」

勇「ごめん、ちょっと冗談が過ぎたかも」


母「え?」

勇「ホントは、ただ男の子に……その」

勇「まぁ、そりゃそうなるよね……」

母「――感付かれた、とか?」

勇「という話を、この前シノが楽しそうにしてくれたわ」

母「そう……」ハァ


母「――あの子は、そうね」

母「心配することなんて、ないのね……」

勇「そうそう」

母「……ところで、勇?」

勇「なぁに?」

母「あなた、学校は?」

勇「……」


勇「私、今日は撮影だったような、そんな気がするんだ……」エヘヘ

母「さぁ、早く制服に着替えなさい」



――通学路



忍「……今日も、凄い雨ですねぇ」トコトコ

アリス「そうだねー」トコトコ

アリス「こういう天気だと、髪のお手入れが大変だよ」

忍「アリスはいつも鏡とにらめっこしてますからね」

アリス「……」

アリス(そういえば、シノがそういうことしてるの見たことないような……)

アリス(――あれ? それなのに、シノってこんなに綺麗な髪なの?)

アリス(それに――なにより、シノは)


忍「? どうしたんですか、アリス?」

アリス「……女であることに、自信を無くしちゃいそうだよ」ズーン

忍「??」キョトン




――集合場所



綾「おはよう、シノ、アリス」

忍「あっ、綾ちゃん! おはようございます!」

アリス「……おはよう」ズーン

陽子「……おう、おはよー」ズーン

綾「――アリス、随分とブルーね」

忍「陽子ちゃんもです……」


綾「ははぁ、髪の手入れ、と」

アリス「うう……」ハァ

綾「それは、まぁ」

忍「はい?」

綾「――いい、アリス? シノはね、色々と『特別』なの」

綾「いちいち比べると、かなり胸がズシッとなっちゃうわよ……はぁ」タメイキ

アリス「……綾、ありがとう」

忍「私、『特別』なんかじゃないですよー」


綾「でも、まぁ……」

陽子「……な、なんだよ?」

綾「アリスの落ち込みの理由に比べて、陽子ったら子供っぽいのね」クスッ

陽子「う、うっさいなぁ! 私みたいに思ってる、全国の高校生に謝れ!」

綾「開き直り方もまた、なんというか……」

陽子「うう……」

陽子「ど、どうせ、私は手入れなんて殆どしてないよ!」

綾「……」



――もう、陽子ったら、ドライヤーかけて寝ないとダメでしょ?――

――いいって、だって毎朝こうして綾がセットしてくれるし――



綾「――アリね」グッ

陽子「多分、ナシだ」アキレ



忍「そういえば、カレンはまだ――」

カレン「ここにいるデス!」ダキッ

忍「わっ!?」

カレン「シノ、グッドモーニング!」

忍「ぬ、濡れちゃいます……カレン」

アリス「――む」

綾「……アリスも気が気じゃないわね」

陽子「はぁ――こんな雨じゃジョギングも出来ない……そして、毎日学校……」ズーン

綾「別の意味で、気もそぞろね……」

陽子「――しかし、カレンも慣れたよなぁ」

綾「? あぁ、シノのこと?」


カレン「シノは本当に髪が綺麗デス……」ナデナデ

忍「さ、触ったらくすぐったいです……」

アリス「もう、カレン! シノの髪が崩れちゃうでしょ!」


陽子「ほら、もう――普通の付き合いだ」

綾「『女子』同士の?」

陽子「……そ、そこは、まぁ」

陽子「ほ、ほら。10人に訊いたら10人が『女の子』って応えると思うぞ?」

綾「……それは、そうだけど」

綾「本当に、慣れたのかしら?」

陽子「? どうして?」

綾「いや、なんとなく……だけど」




――高校付近の道




カレン「ところで、アリス? 髪のセットには何分ホド?」

アリス「カ、カレンこそ」

カレン「――ノーコメントデス」

アリス「ち、ちなみに、シノは今朝は0分だったよ!」

カレン「……Really?」ピクッ

アリス「ホントにホント」

忍「ああ――雨の中に、二人の金髪少女が……」エヘヘ


陽子「なぜ、シノを出して張り合うんだアリス……」

綾「まぁ、言いたくないこともあるわよねー……って」

綾「危ない、みんな!」

全員「!?」



キキーッ

バシャッ!



綾「……あぁ」

陽子「な、なんとか、避けられたな……」

カレン「スピード、出しすぎデス!」

アリス「もう、こんな雨の日なのに……」

アリス「シノは大丈……夫……」

アリス「」

陽子「あっ」

綾「あら……」

カレン「……Oh」


忍「――ちょっと、遅かったみたいですね」ポタポタ

忍「あぁ、反射神経が足りませんでした……」ハァ

アリス「シ、シノが……」

陽子「うひゃー、こりゃずぶ濡れだ」

綾「……だ、大丈夫、シノ?」

忍「はい、ちょっと寒いだけです」

忍「でも、服は随分と濡れちゃいましたね……」

アリス「……あ」

アリス(シ、シノ……なんだか)

陽子「色々と、マズい格好だな……」

綾「特に、『女子』にとっては、その」

綾「――透けるっていうことは、なかなかの」

陽子「ああ……薄着の時期ってのが、災いしたな」


アリス(――ま、まともにシノを見れないよぉ)アセアセ

忍「アリスは、大丈夫でしたか?」

アリス「ひゃっ!?」ビクッ

アリス「わ、私は大丈夫だから! シ、シノ、今はダメ!」カァァ

忍「……?」


陽子「――そういえば」

綾「カレンは、どこに……?」

カレン「」

陽子「あ、固まってる」

綾「道理で、さっきから声がなかったわけね……」

カレン「――シ、シノが」

カレン「うう……」カァァ

陽子(さ、さっきまでの積極的なカレンはどこに……?)

綾(ほら、やっぱり慣れたわけじゃなさそう……)



――教室



忍「おはようございます」

女子「あぁ、おはよ……う……」

女子「」

陽子「シ、シノ! 呑気に教室に入ってる場合じゃないって!」

綾「と、とにかく! その濡れたのを何とかしないと……」

忍「――あ」

忍「すみません、ちょっとボーッとしちゃってました」ペコッ

陽子「シノ、大丈夫なのか……?」

綾(まさか、さっきので風邪になったんじゃないでしょうね……)


アリス「あ、いた! 先生!」

カレン「……」

アリス「カレン! 固まってないで!」

カレン「――やっぱり、恥ずかしいデス」カァァ

アリス「もう!」


烏丸「あら、どうしたんですか……って!」

烏丸「大変! 大宮さん、その格好は……?」

忍「あ、先生。おはよう、ございます」

烏丸「――しかも、体調まで」

陽子「ああ、カラスちゃん。実は、さっきね……」

烏丸「そう、だったの――」

烏丸「いずれにしてもその格好じゃ危ないわ……とりあえず、更衣室、に」

忍「……?」キョトン

烏丸「――わ、私が見張っておくから、『女性用』の教員の更衣室を使って」


陽子(さすがカラスちゃん、話が分かる)グッ

綾(――けれど)

綾(今更ながら、シノって本当に『女の子』ね……透け具合といい、見えてるものまで)

カレン「あ、あぁ……もう見れまセン!」ブンブン

アリス「カ、カレン! 恥ずかしいのは私も一緒だよ!」アセアセ

綾(――あの二人が慌てるわけね)

陽子(付き合いが長い分、こういうことにも「慣れ」てしまったような気がするのがちょっと怖い……)ハァ



――その頃、教室



女子A「大宮さん、大丈夫かな……」

女子B「相当酷く濡れてたよね……」

女子A「――恥ずかしいだろうな」

女子B「――まったく」

男子A「……それは」

男子B「うーん……どう、なんだろうな?」

女子A「? 何いってんの、二人とも?」

女子B「『女の子』は複雑なんだよ?」ジトッ

男子A「わ、悪い。なんでもない」

男子B「……ただ、大宮さんは」

男子AB「……」

女子AB「??」



――保健室



陽子(こうして、なんとかシノの着替えも終わり)

陽子(念の為に熱を測ったら、案の定……)

綾「――シノ、大丈夫?」

忍「うう……いきなりの風邪は、ちょっとキツいかもしれません」ケホケホ

アリス「シ、シノが……」


養護教諭「みんな、もう少しでHRよ?」

陽子「あ、そ、そういえば……そっか」



カレン「――わ、私、残るデス」

綾「カレン?」

陽子「おいおい、授業始まるんだぞ?」

アリス「じゅ、授業には出ないとだよ!」

カレン「……さっき、チラッと教室を覗いタラ」

カレン「一時間目は自習、って黒板二」

陽子「そ、そうなのか」

綾「それなら……」

アリス「……」

アリス「わ、私もっ!」

陽子「アリス、残念だけど私たちは授業!」

綾「それに、今日の宿題、アリス当てられてるでしょ?」

アリス「……うう、そうだったよ」


カレン「先生!」

養護教諭「……しょうがないわねぇ」

養護教諭「でも、我慢して?」

カレン「……!」

養護教諭「いい? 大宮さんは風邪なの」

養護教諭「だから、うつっちゃう可能性だってあるのよ?」

カレン「で、でモ……!」

養護教諭「――大宮さん、もしも誰かにうつしたら、悲しむんじゃない?」

カレン「!」

養護教諭「――さ、教室に戻りなさい」

養護教諭「ごめんなさい、なんとかしてあげられたらとは思うのだけど……」

カレン「わかり、マシタ」


アリス「うう、シノー……」

陽子「さ、行くぞアリス」

カレン「……」

綾「失礼します」ペコリ

養護教諭「はい、またね」



――廊下



アリス「……シノ、心配だよぉ」

陽子「大丈夫だって、アリス」

綾「そうよ。シノ、ああ見えて頑丈なんだから」

カレン「……」

陽子「――カレン」

カレン「ハイ?」キョトン

陽子「どうして、残りたいって言ったんだ?」

カレン「……」


カレン「――シノが、心配だったからデス」

綾「……そうよね」

陽子「そう、だよね」

アリス「――カレン」

カレン「さ、帰って自習しないとデス!」

カレン「それでは、お先二!」ダッ

陽子「お、おい!?」


陽子「……一体、なんでいきなり」

綾「――もしかして、ね」

綾(なんとなく、カレンの横顔に理由はあるような気はする)

綾(恥ずかしさの中に、優しさがあるような――うん、まるで)


綾(……まさか、ね)



アリス「……シノ」キュッ

ここまでになります。

冒頭に書いたように、とても長くなってしまい、冗長だったかもしれません……。
楽しんでいただけたら幸いです。
カレンの想いは、果たして……?

それでは。
暑かったり寒かったり安定しませんが、体調にお気をつけて。

今回はちょっと短めで。
アリスとシノのお話です。



――二ヶ月。

 この期間を長いとみるか短いとみるかは、人それぞれだろう。
 しかし今、ここで眠る英国少女にしてみたら、それは長いものだった。

 慣れない異国での生活は、本人の考える以上に心理的な負担がかかるものだ。
 幸い彼女の場合は、近くに頼れる和風少女が居るから、そうした負担も軽減されているが……。



 果たして、彼女が目を覚ます――











――大宮家・忍の部屋


アリス「……ふぁぁ」

アリス(朝、かぁ)

アリス(さ、顔を洗いに――あっ、そうそう)ピタッ

アリス(シノはちゃんと起きてるかなー、っと……)チラッ

忍「――あ」


アリス「」


 ――差し込んだ陽に照らされる、白い肌。
 胸部は全く平らだけれど、それが逆に綺麗さを際立たせている。

 上半身裸の同居人は、その手をパジャマズボンに伸ばしていた。
 そんな隙間から、妙にお洒落な――


アリス(じゃ、なくてっ!)ブンブン


アリス「な、なに、を……」

忍「え、ええと……」

忍「お、おはようございます、アリス」

アリス「――な、何やってるの、シノ!」アセアセ


アリス「あ、朝は私が顔を洗いに行ってる間に着替える、って約束でしょ!?」

忍「……」

忍「ごめんなさい、寝ぼけちゃってたみたいです」

アリス「い、いいから、早く何か着てよぉ……」カァァ

忍「――ところで、アリス」

忍「今日は、こっちがいいですか? それとも……」スッ

アリス(寝ぼけ眼でシノは、私の前に二つの「モノ」を出した)

アリス(それぞれ、セットになっていて、どっちも膨らんでいる)

アリス(それは、多分……)


アリス「――な、何見せてるのぉ!?」ビクッ

忍「――あ」

忍「ご、ごめんなさい」ペコリ

忍「えへへ……」ニコニコ

アリス(だ、ダメ……寝ぼけてるんだ……!)ガーン


アリス「と、とにかく! 私、外に出るから!」

アリス「その間に着替えておくこと! いい!?」

忍「はぁい……」

アリス「――」バタン




――廊下



アリス「……はぁぁ」タメイキ

アリス(あ、朝から目に毒だよ……)

アリス(相変わらず、何であんな真っ白で綺麗な肌で――)

アリス(下着もお洒落で……!?)


アリス「じゃ、じゃなくてっ!」ブンブン

アリス「……うう」

勇「朝から何事、アリス?」ガチャッ

アリス「ひゃっ!?」ビクンッ

アリス「あ、い、勇。おはよう」

勇「おはよ。でも、まぁ」

勇「随分と大きな声出してたわねぇ」クスッ

アリス「――ごめんなさい、起こしちゃった?」

勇「ううん、いいのよ」


勇「……やっぱり」

勇「一緒の部屋、大変?」

アリス「そ、それは、その……」

アリス「――今日は、シノが着替えちゃってて」

勇「ほほう……」


勇「で、アリスはシノの裸見ちゃったわけだ」ニヤニヤ

アリス「い、勇! 直接的すぎるよぉ……」

勇「――あの子の肌、凄い綺麗よねぇ」

アリス「……う」

勇「ホント、ヘタすると私より――」

アリス「……私は、シノを見る度に、女としての自信を無くしそうだよぉ」

勇「あら? アリスだって、十分に女よ?」

アリス「そ、そうかなぁ……」

勇「だって、『可愛い』じゃない」

アリス「……」

アリス「――それ、女らしさ?」ジーッ

勇「さ、そろそろご飯食べないと」

アリス「勇……」


勇「あ、そうそう」

勇「シノの下着も見ちゃったんだろうけど……」

勇「あの子のアレ、『女子用』だからね?」

アリス「……」

勇「それじゃ、また後でねー」

アリス「……し」

アリス(知ってたよ……)

アリス(だ、だから、こんなに自信を失くしてるわけで……)

アリス(だって、あ、あんなによく似合うものを探すのが難しいのは、なにより「女」である私が――!)


忍「……アリスー?」

アリス「ひゃぁっ!?」ビクンッ

忍「お顔、洗いに行ったのでは?」

アリス「……い、勇に会って」

忍「お姉ちゃん、もう起きてるんですか!」パァァ

忍「それじゃ、朝ごはんです! さ、アリスも行きましょう!」

アリス「う、うん……」

アリス「……」


アリス(胸、どっちを詰めたんだろ?)

アリス(そ、それに、さっきの下着を付けて学校に行く、んだよね?)

アリス(――うう、頭がパンクしそうだよぉ)カァァ

忍「アリス? どうかしましたか?」キョトン

アリス「――シノのせいで」

アリス「身体が妙に熱いよ……」ハァ

忍「もしかして熱ですか!? それは大変です!」

忍「い、今、体温計を……」

アリス「だ、大丈夫だから!」

アリス(というより、シノを見るとどうしてもさっきの姿が思い浮かんで――)


アリス(あぁ、これじゃまるで、私が変態さんみたいじゃない!)アセアセ

忍「……ちょっと、ズレちゃいましたね」

アリス(そ、そういうこともしないでぇ……!)カァァ

ここまで。

最近、カレンちゃんに色々な意味で振り回されているアリス中心の話でした。
実際、同性同士の共同生活だけでも大変なのに、それがこうもなってしまえば……
アリスの赤面率は増すばかりですね……。

それでは。
アニメが終わっても、こうしてSSを見てくださる皆様に感謝します。

 ――梅雨が明けて、少し経つ。

 どんよりとした曇り空が、カラッとした晴天に変わった。
 学生たちにとって、梅雨明けというものは二重の意味で嬉しいものだ。

 一つは、なによりどんよりとした気分が晴れること。
 人によっては校庭で遊んだり、中庭で青春を謳歌することだろう。

 二つは――


「やっほー! ようやくカレンダーに、『赤』が蘇ったぞー!」
「……陽子、そればっかりね」


 と、猪熊陽子が代弁してくれている通りなので、割愛。


「とはいえ、気は抜けないんじゃない?」
「へ? なんのことだ?」

 この世の春とばかりにステップを踏む陽子の一方で、綾の声音は冷静だ。
 コホンと一息つくと、彼女は陽子の目をしっかりと見つめ、


「――期末試験、近づいてきたわよ……」
「私の春を返せぇー!」
「よ、陽子! い、いきなり近づかないで!」


 綾のすぐ近くまで、にじり寄る陽子。後退りしながら、顔を赤らめる綾。
 そんな二人の胸中に、芽生えた想いは一つ。


「「勉強、しなきゃ(しましょう)!」」




――昼休み・教室


忍「勉強会、ですか……」

綾「そう」

陽子「さすがに、ちょっと頑張らないとなー」

アリス「……陽子、成績良くなかったの?」

陽子「――ちゅ、中間のことは無かったことに……」

綾「現実から目を逸しちゃ、ダメよ?」

陽子「ぐっ……あ、綾、シビアなやつめ」



忍「わぁ、楽しそうですねぇ」ニコニコ

綾「――た、楽しそう?」

陽子「あー、シノは私以上に、真剣味が足りませんなぁ」

綾「……寧ろ、私はあの点数でここまでのほほんとしていられるシノが、羨ましくすらあるわ」ハァ

忍「?」キョトン


アリス「シ、シノはやれば出来るよっ!」アセアセ

陽子「え? アリスはシノのそんな姿を知ってるのか?」

アリス「……」

アリス「わ、私の『第六感』がそう言ってるの!」キリッ

綾(何故、スピリチュアルに……)

陽子(要は、「シノのことは私が誰よりも知ってる」と……やれやれ)

カレン「アリスッ!」ダキッ

アリス「わっ、カレン!」

カレン「んー、相変わらずちっこいデスねー」

アリス「……カ、カレンは大きくなりすぎ」

カレン「え、それはどーいう意味で、デスか?」

アリス「――い、言いたくないもん」

カレン「height or bust?」

アリス「……No Comment!」カァァ


陽子「いやー、さすが本場の英語は一味違うなぁ……」

綾「聞き取れなかったけど、アリスの表情からなんとなく分かるわね……」

忍「金髪少女の英語……なんて素敵な……!」パァァ

綾「あぁ、シノはどうあっても幸せなのね……」タメイキ


カレン「勉強会、デスか……」

綾「ええ、そうよ」

陽子「そういや、カレンの成績はどうなんだ?」

カレン「私ノ?」

カレン「ウーン……『ソゥソゥ』デスね」

綾「――あぁ、『So So』」

陽子「なんて意味だっけ……」

綾「陽子――あなた、本当に」ハァ

忍「うーん、カレンは『想像』以上に可愛いですねぇ……」

綾(すでにこの子は、一つ突き抜けているわ……!)ビクッ


カレン「私も参加してもいいデスか?」

陽子「勿論!」

綾「Of Course、よ」

アリス「カレンも……」

カレン「? アリス、どうしまシタ?」

アリス「う、ううん、なんでも……」

カレン「シノも来ますよネ?」

アリス「!」ハッ


忍「ええ、勿論です!」

忍「みんなで楽しく勉強しましょう!」

カレン「イエース!」

アリス「……」

陽子(なんだかなぁ……)

綾(傍から見てる分だと、どこか切なくなってくるわね……)

綾(でも、まぁ――)

アリス「もう、カレン! あまりシノに触っちゃダメだよ!」

カレン「アリスも触ればいいんデスよー」

忍「えへへー……」ポワポワ

アリス「……」

アリス「――わ、私は、カレンと違って大人だもん!」

カレン「……その、『大きさ』デ?」

アリス「」

アリス「どこが、かな?」ジッ

カレン「ご想像にお任せしマス!」

アリス「……むぅ」プクッ


陽子(触ってる、と言っても)

綾(カレンはシノの髪ばかりで)

綾(……身体と身体のスキンシップでわけじゃ、ないわね)

陽子(この前の雨の日のこと、まだ引きずってそうだなぁ……)


アリス「わ、私だって、いつか大きく……!」

忍「アリスはそのままで、十分すぎるほど可愛いですよー」

アリス「……」

アリス「シ、シノ……!」ダキッ

忍「アリス!」ダキッ


陽子(と、そんな考えも)

綾(この二人を見るだけで、消えちゃうわね……)




――後日・大宮家


綾「結局」

陽子「みんなの意見をつき合わせた結果」

カレン「シノの家になりマシタね……」


綾「ところで」

綾「私たち、もう少し待たないといけないのかしら?」

陽子「そうだなぁ……」

陽子「『色々』と、大変だろうし――」

カレン「何が、色々なんデス?」

綾「そ、それは……」カァァ

陽子「……」プイッ

カレン「??」

陽子「――なぁ、カレン」

カレン「ハイ?」

陽子「シノの部屋、あまり物色しないでおいた方がいいぞ?」

カレン「物色、デスか」

カレン「ハイ! 大丈夫デス!」

陽子「――それこそ、妙な『詰め物』とか、妙な『下着』とかが……」

カレン「」

綾「ちょ、ちょっと陽子! 言い過ぎよ!」

陽子「綾……カレンにこそ言っておくべきことだろ?」

綾「……そ、それは、そうだけど」


カレン「――ツメモノ」

カレン「――シタギ」

カレン「……」カァァァ

綾(ほら、言わんこっちゃない)

陽子(カレンは一旦スイッチ点くと、長いからなぁ……)


忍「みなさん、お待たせしましたー」

アリス「さ、どうぞ」

陽子「おう、オツカレさん!」

綾「お邪魔します」

カレン「……アリス?」

アリス「? どうしたの、カレン?」

カレン「――部屋の整理、付き合ってたデス?」

アリス「ちょ、ちょっとだけ、ね」

アリス(ちょっと、「踏み込んだ所」はシノ一人に任せちゃったけど……)

カレン「そう、デスか……」

カレン「……」タメイキ

忍「? カレン、どうかしました?」

カレン「――な、なんでもないデス!」ブンブン

カレン「……」カァァ

忍「??」キョトン

アリス「……カレン」



――大宮家・忍の部屋


陽子「さ、バンバン解こう!」

綾「へぇ、やる気満々なのね」

陽子「……今回のテストで成績落としたら」

陽子「なんだか、嫌な予感がして……」

綾「――まぁ、『追試』は嫌よねぇ」

陽子「ぐ、具体的に言わないでくれぇ……」ヘナヘナ

アリス「さ、シノはまず数学だね」

忍「はい」

カレン「いやいや、英語じゃないデス?」

忍「あ、そっちも……」

アリス「カ、カレン! シノは数学の方が悪いんだから、まずは――」

カレン「英語なら、私も教えられるデス。シノの味方になれマス」

忍「あぁ……それは」


アリス「数学!」

カレン「英語デス!」

二人「……」ムーッ

忍「あぁ……見つめ合う二人も可愛いですねぇ……」


陽子「いやぁ、モテるって大変なんだなぁ……」

綾「――」




――たしかに、私は女子からモテるけど――

――モテたって、私にとっては綾だけが!――




綾「なんて、ね」ハァ

陽子「……意味深な溜息つくの、やめようよ」ハァ



忍「……」カキカキ

カレン「シノ。そこは、形容詞だから名詞の前デス」

忍「――あ」

忍「ありがとうございます、カレン」ゴシゴシ

カレン「エヘヘ……」


アリス「――シ、シノ! そこスペルミスだよ!」

忍「あぁ、本当」

忍「ありがとうございます、アリス」

アリス「え、えへへ……」

カレン「――アリス、やりますネ」

アリス「カレンこそ」

アリス「――というより、カレンは別の科目、大丈夫なの?」

カレン「私デスか?」

カレン「今日は、シノのお手伝いに専念しマス!」

アリス「……そっか」


カレン「でも、ちょっと疲れたデス」

アリス「え、ええ!?」

カレン「シノ、ベッド借りてもいいデスか?」

忍「はい、どうぞカレン」

カレン「よっこらせ、ット」ポフッ

カレン「……寝心地いいデス」ウットリ

忍「ありがとうございます」


アリス「じゃ、じゃあ、続きやらないとだね!」

忍「そう、ですねぇ……」

忍「――私も、休みたくなっちゃいました、けど」

アリス「シノ! 集中だよ、集中!」

忍「うう……アリス先生は手厳しいですねぇ」


カレン「……」

カレン(気持ちいいデス……)

カレン(こうして転がってると、疲れが吹き飛んでいっちゃいマス)

カレン(――あ)

カレン(これって……)


カレン「シノの、匂い……?」ピクッ


カレン(……)アセアセ

カレン(――何を動揺してるのデスか)

カレン(友達のベッドなんて、誰でも借りマス)

カレン(あぁ、気持ちいいデス……いい匂いデス……)

カレン(――アレ?)




カレン(どうして、身体が火照ってるデスか……!?)カァァ



陽子「お、おい? なんかこの部屋、ちょっと暑くないか?」

綾「言われてみれば……」

綾「――なんとなく、原因はわかったような気もするけどね」

陽子「ん……ああ、そういう」

カレン(こ、これはただ休んでるダケ)

カレン(そう、だから、こうして熱くなるのはおかしくて、シノがいい匂いだからッテ、それは変わらなくて……)

陽子「シノー、クーラーの温度下げても大丈夫かー?」

忍「はい! 大丈夫ですよ」

綾「カレン……身体中、真赤ね」




――後日・試験返却日



忍「……あ」

アリス「凄いよ、シノ!」

アリス「英語も数学も、中間よりよくなってる!」

忍「ふふ、アリスたちのおかげです!」

アリス「良かったよぉ……」

忍「アリス!」ダキッ

アリス「シノ!」ダキッ



男子A(今までなら、女子同士のスキンシップだからってことで軽く見てたけど)

男子B(今となっては、なぁ……)

女子A「もう、鼻の下伸ばしちゃって……」

女子B「なんか複雑そうな顔してるよね……」

陽子「見ろ、綾!」

綾「あら、結構良くなってるわね……」

陽子「これで――これで、夏は自由だ!」

綾「そうね、これで夏休みが無事にやってくることになるわね」

綾「――カレンは、どうだったのかしら?」

陽子「ん、カレンか……」

陽子「――なんとなく、予想付くような気がするのは私だけかな?」

綾「安心して、陽子。多分、私も同じ――」




――別クラス



カレン「……」ズーン

女子A「あ、ねぇ九条さん」

カレン「……」

女子A「ちょっと見せっこしない?」

カレン「――ン」

カレン「いいデスよ」

女子A「わーい……って」

女子A「ご、ごめんなさい」

カレン「イエ……」


女子A(九条さん……道理で、沈んちゃってるわけだ)

女子A(うう、うかつだったなぁ……バカ、私のバカ!)



カレン「……」

カレン(誰にも、言えマセン)

カレン(それこそ、アリスにダッテ)

カレン(……)


カレン(テストの間ずっと、シノの匂いが忘れられなかった、なんて)

カレン(そんな「匂い」が、やっぱりアリスのものとはチガって、余計に強く記憶に残っちゃった、ナンテ)

カレン(……テストの結果は、どうでもイイデスが)


カレン「……シノ」ボソッ

カレン(忘れられマセン……!)カァァ

ここまでになります。

今回はカレンちゃんメイン? でしたでしょうか。
本SSに限り、カレンちゃんの赤面率の高さはメーターを振り切れてると思います。

しかし書いてると、どうもパターンが固定化されてきた感があります。
このままマンネリ一直線にならなようにしないとですね。

それでは。
いつもありがとうございます。

お待たせしました。投下します。
今回は、本編の前座に当たります。



 ――鐘の音が鳴り響く。


 はたと気が付き、早乙女教師は一旦、話を区切った。
 眼前に座る生徒たちの瞳が、鮮やかな光を灯したことをありありと感じ取ったからだ。

 コホンと、一息。
 そして、生徒たちの方へ、自分も満面の笑みを浮かべながら、告げる。


「……皆さん! 夏休みの始まりです!」
「うおおお!」


 その瞬間、教室は確かに揺れた。
 夏休み。この言葉を聞いて、浮足立たない生徒はいない。

「羽目を外しすぎないよう、楽しんで下さいね」

 と言い、一礼の後、早乙女教師は教室を静かに出て行った。


 ――テクテク。

 廊下を歩きながら、可愛い教え子たちの嬉しそうな表情を思い出し、笑みが漏れた。
 と、同時に。

「……私も、昔はあんな感じだったなぁ」

 愛しくもあり、切なくもあり――




――未だざわめく教室



陽子「よっしゃ! 夏休みだ!」ガッツポーズ

綾「ある意味、一番ノリがいいのは早乙女先生だったわね……」

忍「ふふ、烏丸先生は可愛いですから」ニコニコ

アリス「――夏休み、かぁ」


カレン「Hey!」ガラッ

陽子「おっ、カレン!」

綾「なんとまあ、分かりやすいテンションの高さね」

忍「カレンー」ホワホワ

アリス「……あれ? カレン、その手に持ってるのって」

カレン「ハイ!」スッ


陽子「おお……これは」

綾「海、かしら?」

カレン「そうデス!」

カレン「この前、ハワイへ行った時、撮ってきた写真デス」フンス

アリス「うわあ、カレン楽しそう……」

忍「――金髪少女の、水着姿」パァァ

アリス「……むぅ」


アリス(よくよく見てみると)

アリス(カレンのスタイルは、いい)

アリス(ちゃんと胸もあるし、もちろん腰回りだって細い)

アリス(――シノは、「どっち」なんだろう?)チラッ


アリス「ねぇ、シノ? 私が水着を着たら……」

忍「アリスの水着、ですか?」

忍「――すごく、可愛いと思います!」ニコニコ

アリス「そうじゃなくてぇ……」

アリス(でも、何だか恥ずかしい質問だから、置いとこうかな……)

カレン「シノは、大きいのと小さいの、どっちが好きデス?」

アリス(って、カレンー!?)アセアセ

忍「私、ですか……」

忍「――そうですね」

忍「どっちにも、どっちの良さがある、と思います!」ニコニコ

カレン「シノは優しいデス!」ニコニコ

忍(正直な話、金髪少女の水着姿というだけで、胸が高鳴ってしょうがありません……!)ハァハァ


カレン「……」ジーッ

アリス「……カレン、どうして私をそんなに見てるの?」

カレン「これからデース!」グッ

アリス「むぅ……」


陽子「はは、あの3人も相変わらずだなぁ……」

陽子「カレンもかなり慣れてきたみたいだし――って、おい? 綾?」

綾「……」

綾「私、カレンより高いわよね?」

陽子「身長? そりゃ、そうだろ」

綾「……ない、これはないわ」ワナワナ

陽子「あ、綾?」


綾「――はぁ」タメイキ

カレン「どうしたデスか、アヤヤ?」

綾「……」ジーッ

カレン「Oh?」


綾「――はぁ」

カレン「……アァ」ポンッ

カレン「アヤヤ! バストを気にすることありまセン!」グッ

綾「……とは、言ってもねぇ」チラッ

陽子「ん?」ピクッ

綾「――近くでいつも見せつけられてれば、嫌にもなってくるわね」

陽子「わ、私のせいなのか!?」ガーン

カレン「と、いうワケデ」

カレン「今年の夏休みは、海へ行きまセンカ?」

陽子「海、海か……いいなぁ!」

忍「気持よさそうですねぇ……」パァァ


アリス「海……」ズーン

綾「海……」ズーン


カレン「――なにやら、二人は行きたくなさそうデス?」

陽子「ああ、理由は多分……」

忍「二人とも! 気にしなくても、楽しいですよ!」

二人「フォローになってない(よぉ)!」ガバッ



カレン「海がイヤなら……ホット・スプリング!」

アリス「温泉……?」

綾「また、妙な所をついてきたわね……」

陽子「温泉か――夏の温泉もいいかもなぁ」

忍「――温泉、ですか」


カレン「日本の温泉は、かなりイイと聞きマス!」

カレン「そこに行くことは、とても魅力あるデス!」キラキラ

綾「温泉、ねぇ……」

陽子「たしかに『いい』とはいえ、なぁ……」

アリス「温泉、良さそうだけど……二人とも、なんだか煮え切らないね?」

二人「いや、なんて言ったって……」チラッ

アリス「――!」ハッ

忍「皆さんが温泉に行くのなら」

忍「私は、温泉の外でお待ちしてますね」

忍「ご一緒できないのが残念ですが……」


アリス「ご、ごめん、シノー!」ダキッ

忍「ア、アリス?」パチクリ

アリス「気づけなかったよ……」グスッ

アリス「うう、一番近くにいたのに……」

忍「――いいんですよ、アリス」ギュッ

アリス「シノぉ……」ギュッ


陽子「――アリスも、まだ甘いな」

綾「まぁ、シノも楽しそうだし――カレン?」

カレン「……」

カレン「――配慮が足りなかったデス」ズーン

陽子「ま、まぁまぁ、そう気にしないでって」

綾「シノなら大丈夫よ。あの子、昔からああいう優しい子だから」

カレン「――デモ」


カレン(アリスをからかってる時とは、チガウ)

カレン(シノがちょっとでも落ち込んだと思ったら、感じてしまうこのカンカク……)

カレン(――ムゥ)キュッ



忍「それなら!」ポンッ

忍「お泊り会はどうでしょう?」

アリス「お泊り会……?」

陽子「あぁ、休みの定番だな!」

綾「でも、誰の家に……?」


カレン「ウーン……私の家は厳しいかもしれまセン」

陽子「そっか」

カレン「ハイ」

カレン「7月から8月には、パパと仕事の付き合いがある人とのパーティーがありマス」

カレン「その準備も大変だから、私の家は無理みたいデス……」

綾「そ、そう、なの……」

陽子(なんて、お嬢様だ……!)

綾「陽子は?」

陽子「あぁ、うちは――弟や妹がうるさいだろうし」

陽子「ちょっと厳しいかもだな……綾は?」

綾「わ、私は、その……」

綾「へ、部屋の整理が大変だから――」アセアセ

陽子「へぇ、意外だな。綾って、整理好きだと思ってた」

綾「ま、まぁ、ちょっとね……」

綾(家に沢山の人を呼ぶことが恥ずかしい、だなんて言えないわよね……)ハァ



陽子「と、なると」

綾「流れ的に……」

忍「私の家なら大歓迎です!」ニコニコ

アリス「いいの? イサミやママに許可をとらなくて……?」

忍「二人ならすぐに納得してくれます!」

アリス「シノがそう言うなら……」


陽子「それじゃ、シノの家で!」

綾「お泊り会か……なんか新鮮でいいわね」

カレン「……シノの家、デスカ」ボソッ

綾「カレン?」

カレン「い、いや! なんでもないデス!」ビクッ

カレン「楽しみデス」ニコニコ

綾「……」

綾(カレン、大丈夫かしら……?)

陽子(確実に慣れてきたとはいえ、時々シノがからむと、一気に変わるからなぁ……)

綾(まぁ、カレンにとっても大きな一歩になるでしょ……)

陽子(そうだな――大丈夫だよな、うん)コクコク


アリス「……シノの家で、お泊り会」

アリス(シノの家に、人が沢山来る……)

アリス(なんだろう――ちょっと、胸がチクリとするよ)キュッ

アリス(……なんでだろ?)キョトン

忍「? どうしました、アリス?」

アリス「!」ビクッ

アリス「な、なんでもないよぉ!」カァァ

忍「??」


カレン「……」

カレン「楽しみ、デス」ボソッ

カレン「――」キュッ

ここまでになります。

お泊り会という本編の前座でした。

さて、それぞれがそれぞれの想いを抱えて、いざ大宮家へ。
次回の構想はある程度できていますので、早めに投下できるかと。
ただ、予期せぬ仕事がある可能性もありますが……

それでは。
読んでて楽しい、という反応は非常に励みになります。自分も書いてて楽しいので。
ありがとうございます。

――シノの家に、泊マル。

 イギリスにいた頃、私とアリスは姉妹のようなものでシタ。
 同じ本を読み、同じ遊びをして、同じベッドで寝ることモ……。

 そうデス、考えてみれば当然デス。
 私たちは、「友達」だったのですカラ。

 だから、今回だって同じことデス。
 ハイスクールで出来た友達の家に、泊マル。
 それだけのコト――

「……なのに、どうシテ」

 私は、こんなにも落ち着かないのデショウ?

 ケータイを開いて確認してみれば、日付は夏休みに入ったばかりということを示してマス。
 そして、明日ハ――


「――モヤモヤしマス」




 ――と。

 そんな一人の英国少女を例外として、他の面々は特に変わりなく明日を楽しみにしていた。

「いやー、シノの家に泊まるの久しぶりだなー!」

 と、ある少女は浮き足立っており、

「……お泊り、か。なんだか、『友達』って感じ」

 と、友達の大切さを噛み締めている少女もいて――


「シノの家で、お泊り会……」

 おっと、この英国少女もまた例外のようで――







 ――当日・大宮家前





 陽子「……なんだか、久しぶりに来たような」

 綾「まあ、4月の頃は、主にシノ関係でゴタゴタがあったしね……」

 カレン「……ゴタゴタ」ハッ

 陽子「ん? どした、カレン?」

 カレン「あ、ああ、いや、ソノ!」アセアセ

 カレン「……No Problem、デス」カァァ

 綾(いや、その頬の赤みは『問題なし』じゃないわ……)

カレン「思エバ」

 カレン「あの時、シノの部屋に正体サレテ」

 カレン「……それ、カラ」

 カレン「……」カァァ

 綾「もう。陽子がおかしなこと言うから、カレンがおかしくなっちゃったじゃない」

 陽子「私のせいじゃないよな!? さっきまでの会話見なおしてみろ!」

 綾「……」



 ――陽子との会話といえば、初めて会った時のことは未だに……――


 綾「陽子が悪い」プイッ

 陽子「どうして、頬を染めるんだろうな……?」



 忍「皆さん、おまたせしました」ガチャッ

 アリス「……」カァァ

 陽子「おおー、お疲れさん!」

 綾(アリスのあの顔――整理、手伝わされたのね)

 カレン「? アリス、顔が『茹でダコ』みたいデス?」

 綾(こっちの英国少女は、日本文化にちゃっかり馴染んできてるし……)


 アリス「……そ、それは、その」

 忍「アリスは、私の部屋の整理をしてくれてたんです」

 忍「あと、洗濯なども――」

 アリス「も、もうその話は止めてぇ……」ブンブン

 忍「どうしてですか、アリス?」

 アリス「……」カァァ



 アリス(言えっこない)

 アリス(洗濯を畳んでいる時に、シノの下着と私の下着を比べて)

 アリス(溜息をついていた所を、ニヤニヤしたイサミに見られたことなんてぇ……!)

 勇「いやー、アリスのもアリスので、味があると思うよ?」

 アリス「そうは言っても、シノのアレはどう考えてもその辺の女子のレベルを超え……て?」

 アリス「」


 忍「あ、お姉ちゃん」

 勇「やっほー、みんな」

 陽子「イサ姉!」

 綾「お、お邪魔します!」

 カレン「……イサミ」

 アリス「……」

 勇「さ、みんな入って入って」

 勇「いやー、この子たちったら昨日から張り切っちゃって」

 勇「シノが服の整理する横で、アリスったらもう――」

 アリス「イ、イサミ!」アセアセ


 陽子(――相変わらず、イサ姉には誰も敵いそうにないな)

 綾(アリス……姉妹二人に弄られてれば、あんなに敏感な反応になるわけね……)


 カレン「……」カァァ

 カレン「アリス? 顔、赤いデスよ?」キョトン

 アリス「あ、カレン……もう、困っちゃうよ」

 アリス「全く、シノもイサミも、まった、く……」

 アリス「――あ」


 カレン「どうしたデス?」

 アリス「う、ううん、なんでもないよ」

 カレン「そうデスか?」

 カレン「とにかく、あまり顔を赤くするのは身体によくないデス! 注意しまショウ!」

 アリス「……カレン」


 アリス「――行っちゃった」

 アリス「……」

 アリス(まさか、気づいてない?)

 アリス(カレンの顔――ううん、あれはきっと暑さのせいだ)

 アリス(そうでないと、あの、カレンが――)


 アリス(あんな、どこまでも女の子らしい表情をするわけが、ないもん)キュッ



 ――忍の部屋


 忍「さ、どうぞ皆さん」

 陽子「うわっ、整った部屋だなぁ……」

 綾「陽子の部屋は――」

 陽子「うー……お、弟とか妹とかがだな」

 綾「なんだ、言い訳ね……」

 陽子「ドライな反応!」


 カレン「ヘェ……」

 カレン「私の部屋もこれくらい整えたいものデス」

 アリス「カレンって、そんなに散らかすタイプだっけ?」

 カレン「――最近は、チョット」

 アリス「?」

忍「でも、ほとんどはアリスのおかげでもあるんですよ」

 忍「顔を赤くしながら掃除をしてくれる金髪少女……」パァァ

 陽子(うーん……やっぱり、安定のシノだな)

 綾(というより、当然のようにアリスが『顔を赤くしたワケ』とかはスルーされるのね……)


 アリス「シノがどうかした?」

 カレン「!」

 カレン「い、いや、なんでもないデス!」

 アリス「そう……?」


 カレン(――どうして、私はこうなのでショウカ?)

 カレン(どうも、昨日からおかしいデス……)

 カレン(シノが気になる、のはたしかとはイエ)

 カレン(だからといって、部屋の掃除を疎かにする、ナンテ……)


 アリス(カレンはこう見えて、意外としっかりする所はしっかりしてる)

 アリス(そんなカレンが、部屋を散らかしちゃう、なんて……?)

 アリス(それに、さっきの視線――あれは、シノに向けられていた、よね?)

 アリス(……どういう、ことなんだろ?)


 陽子「……おい、シノ。非常に言い難いんだけど」

 忍「え? どうかしましたか、陽子ちゃん?」

 陽子「――これ」スッ

 忍「あっ……」


 綾「も、もう、シノ! なんでこういうモノを出したままにしちゃうのっ!」

 忍「ご、ごめんなさい!」

 忍「――ちょっと、最近フィット感が薄くなってきて」

 綾「か、解説しなくていいからっ!」カァァ


 陽子「うーむ……」ジーッ

 陽子(こうして見てみると、シノは本当にバランス考えるんだな……)

 陽子(特に、こう――自分の身体つきと胸のバランス、みたいなものを……)

 綾「って、なに陽子も真面目に見てるのよ!」

 陽子「……いやー、つい興味本位で」

 綾「もうっ……」プイッ

 アリス「――あぁ」

 アリス(何度間近で見ても、やっぱり慣れないよぉ……)

 カレン「……シノ、の、モノ」

 アリス(カレン……)

 カレン「――アリス、顔真赤デース」

 アリス「……カレン」

 カレン「わ、私! ちょっとお手洗い借りたいデス!」」

 忍「はい、どうぞカレン」

 カレン「サンクス!」


 アリス「……」

 アリス(言えそうにない)

 アリス(「それは、今のカレンにだけは言われたくないよ」なんて……)





 ――大宮家・リビング



 それから、しばらく時間が経った。
 その間も、主にシノの「道具」に関わるすったもんだがあったり、それに伴って各人の表情も変化した。

 とりわけ、二人の英国少女。
 彼女らは、その変化に何を感じただろうか――



 アリス「……ふぅ」

 忍「お腹いっぱいですねぇ……」

 陽子「美味しかったな、シノのお母さんの料理」

 綾「……陽子は、あれじゃ足りなかったんじゃない?」クスッ

 陽子「なっ、綾! 私はそんな大食いキャラじゃあ――」

 忍母「あらあら、陽子ちゃんはよく食べる子よ?」

 陽子「」

 陽子「お、おばさん……もう」カァァ

 勇「もう、お母さんったら。陽子ちゃんの赤面はレアなのよ?」

 忍母「あらあら、ごめんなさい」


 綾「……」

 綾(陽子って、あんな風に顔を赤らめるんだ……)

 綾(――ちょっと、得しちゃった)

 陽子「……おい、なんだ綾? その目は?」

 綾「なーんでも?」ニコニコ

 陽子「……」ハァ

 カレン「……I'm Full! 満腹デース」

 アリス「カレン、よく食べてたね」

 カレン「アリスももっと食べないと、色々大きくなれマセンヨ?」

 アリス「……『色々』って?」

 カレン「想像次第、デース!」

 アリス「――昔は、私のほうがお姉さんだったんだよ?」ジトッ

 カレン「それで、今ハ?」

 アリス「……カレンの、いじわる」プイッ

 カレン「アリス、可愛いデス」ナデナデ

 カレン「……」





 ――夕食が終わり

 しばらく、談笑の時間があった。

 テレビを点けて、適当にチャンネルを切り替えていたら
 高校生の女子グループが音楽をやっているアニメに遭遇し、ついつい見入ってしまったり。

 話し合いの結果、シノが一番先に入浴すると決まると、二人の英国少女が揃って顔を赤らめたり。


 そんな、楽しい時間はあっという間に過ぎてゆき――


 
 忍「それじゃ、そろそろ寝ましょうか?」

 陽子「えー、まだ早くないか?」

 綾「陽子はだらしないわね……早寝早起きは生活の基本よ?」

 陽子「うーん……たしかに、『寝る子は育つ』って言うしなぁ」

 綾「……」ジッ


 綾(寝る子は育つ、ね)

 綾(それじゃ夜が遅い陽子の、色々な所のその『成長』は)

 綾(なんなのかしらね……)

 陽子(綾の視線が重い、重いぞ……!)



 カレン「……そう、いえバ」

 カレン「寝る場所は、決めたデス?」

 忍「あっ、そういえば……」

 忍「アリスは、いつも通りで大丈夫でしょうけど……」
 
 陽子「それじゃ、私は一階に布団でも敷いて……」

 綾「――」

 綾「そ、それじゃあ私も、陽子と一緒に……」

 勇「ちょっといい、二人とも?」

 陽子「わっ、イサ姉!?」ビクッ

 綾「ど、どうしました?」ビクッ

 勇「――うちの部屋、空いてるわよ?」

 綾「……!」

 陽子「おー、いいなぁ、イサ姉の部屋!」

 陽子「それじゃ、行こうか!」

 勇「陽子ちゃんははっきりしてて良いわね……」

 綾「……あ、あの」

 綾「その……」モジモジ

 勇「――綾ちゃんも大歓迎よ?」

 綾「――あ」

 綾「ありがとう、ござい、ます……」

 勇「ふふっ」ニコッ


 陽子(あちゃー……綾は相変わらずだなぁ)

 陽子(まぁ、慣れない相手とは会話が成立しなかった頃に比べたら、ずっと進歩してるか……)

 綾「――陽子」キュッ

 陽子「うわっ!?」

 綾「一緒に、行くわよ……?」モジモジ

 陽子「あ、当たり前だろ!」

 陽子(こりゃ、守ってやらないとだなぁ……)


 忍「それじゃあ、私の部屋にはアリスと――」

 カレン「……」モジモジ

 忍「カレンも、どうぞ!」ニコニコ

 カレン「――私、モ」

 カレン「シノの、部屋二……?」

 忍「はいっ! 是非!」

 アリス「カレン、スペースは大丈夫だよ」

 カレン「……」


 カレン(落ち着くデス、私)

 カレン(何もおかしいことはありマセン。ただ、友達の部屋にお泊りするだけデス)

 カレン(アリスだっているじゃないデスカ)

 カレン(――シノ)

 忍「どうかしましたか、カレン?」

 カレン「い、いえ! なんでもない、デス……」

 カレン「……」

 アリス(――カレン)

 

 ――勇の部屋


 勇「よいしょ、っと」

 勇「二人の布団、この辺でいいかしら?」

 陽子「ありがと、イサ姉!」

 勇「ふふ、ありがとう陽子ちゃん」

 綾「……」

 綾「あ、ありがとう、ございます……」

 勇「……」

 勇「それじゃ、綾ちゃんがここで、陽子ちゃんがあっちで」

 陽子「うん、分かった!」

 綾「え……え?」アセアセ

 勇「綾ちゃん、モテモテね? 私と陽子ちゃんに挟まれるなんて」

 綾「は、挟まれるなんて……そんなっ!」

 陽子「おー、綾がハーレム? シノとアリスたちみたいな?」

 綾「よ、陽子もおかしなこと言わないでぇ!」カァァ

 勇「ふふっ……」



 ――忍の部屋


 忍「……それじゃ、カレンはこっちで」

 カレン「ハ、ハイッ!」

 アリス「……」

 アリス「シノ、カレンはここじゃちょっとシノから遠いんじゃないかな?」

 カレン「……!」

 アリス「た、ただでさえ、シノの部屋には、その――いろんな『モノ』があるわけだし」

 忍「それもそうですね……」


 忍「それじゃ、カレンはここで!」

 カレン「――ハ、ハイ……」

 カレン(ここ――シノが近いデス)

 カレン(アア……)

 アリス(――カレン)

 アリス(モヤモヤしてるなら、ちょっとくらいはっきりさせたほうがいいかもね)

 




 それから、時間が経って――



 ――勇の部屋


 陽子「……」スースー

 勇「あら、陽子ちゃん。意外と早く寝ちゃったわね」

 綾「……」

 綾「よ、陽子は、ちょっと疲れてたみたいです」

 綾「あ、朝に、ランニングしてきた、って言ってましたし」

 勇「ふーん……」ニコニコ

 綾「……」



 綾(陽子のバカバカ!)

 綾(い、勇さんと二人きりでどんなことを話せばいいのかわからないじゃない!)

 勇「……綾ちゃん」

 綾「は、はいっ!?」

 勇「髪下ろすと印象変わるのねぇ……可愛いわ、そっちも」

 綾「あ、ありがとう、ございます……」


 勇「――ね?」

 綾「はい……?」

 勇「陽子ちゃんとは、どうなの?」
 
 綾「」


 綾(お、落ち着きなさい小路綾)

 綾(何を言われたの、今? 陽子と私が、どうって……?)カァァ

 綾「わ、私と陽子は、ですね! べ、別に、その――」

 綾「お、おかしなことはなく、いえ、むしろ、普通過ぎるくらいといいますか……うう」

 勇「――いい友達なのねぇ」

 綾「そう、それです!」コクコクッ

 勇「ふふっ……」

 勇(物凄く顔が赤くなってることは言わないでおきましょうか)


 勇「陽子ちゃんはね」

 綾「……?」

 勇「とても、可愛い子よ」

 綾「はい?」

 勇「小さい頃からよく一緒にいてね」

 勇「シノともよく遊んでくれて……」

 綾「……」

 勇「だから」

 勇「――綾ちゃんも、そんな風に思ってくれてたら」

 勇「私も、きっと陽子ちゃんも嬉しいだろうなぁって」

 勇「なんて、ね」

 綾「……」


 綾「あ、当たり前、です」

 綾「よ、陽子は――色々と困ったところもあるけど」

 綾「……いい、友達です」

 勇「ありがとうね、綾ちゃん」


 勇「――さて、それじゃそろそろ寝ましょうか?」

 綾「――あ」

 綾「は、はい」

 綾「お、おやすみ、なさい……」

 勇「はい、おやすみ」


 綾「……」スースー

 勇(――まったく)

 勇(どうして、シノの周りにはこんな可愛い子ばかり集まるのかしらねぇ……)クスクス

 勇(――さてさて、シノの部屋はどうなってることでしょう)



 ――忍の部屋


 忍「……」

 忍「――ん」モゾッ

 カレン「……」

 カレン(眠れマセン……!)アセアセ

 カレン(すぐ近くで、シノが寝息を立てている、それだけナノ二!)

 カレン(うう……)カァァ


 
 アリス「――カレン?」

 カレン「!」

 カレン「ア、アリス……?」

 アリス「大丈夫? さっきからうんうん唸ってるけど?」

 カレン「だ、大丈夫デス!」

 カレン「け、決して、シノの寝息ガ――」

 アリス「シノの……なに?」

 カレン「――あ」

 カレン「な、なんでもありマセン!」

 アリス「……」

 アリス「――カレンは」

 カレン「?」

 アリス「シノのこと、『好き』なんだね」

 カレン「……」

 カレン「――ハイ、そうなのかもしれマセン」

 アリス「そう、だよね……」


 アリス「――シノ、可愛いもんね」

 カレン「ハイ……」

 カレン「正直、高校のどんな女子よりも可愛いデス」

 アリス「同意するよ……同時に、何故か虚しくもなるけど」ハァ

 カレン「ハイ……」ハァ


 アリス「――カレン」

 カレン「……アリス?」

 アリス「私も――」

 アリス「シノが、『好き』だよ」

 カレン「……」

 カレン「分かってマス」


 カレン「――アリスは可愛いカラ」

 カレン「きっと、もっと好かれるデス」

 アリス「カレンだって、すごく可愛いよ」

 アリス「――今だって」

 カレン「……見ないで下サイ」カァァ

 アリス「せっかく可愛いのに……」

 カレン「――アリス」

 アリス「なぁに?」

 カレン「私、日本に来て良かったデス」

 カレン「アリスに会えて、シノとも出会えて……陽子やアヤヤみたいないい子にも会えテ」

 アリス「カレン……」

 カレン「なんだか――」


 カレン「毎日がキラキラ、輝いてるみたいデス……」



 ――そう言うと、満足したようにカレンは寝息を立て始めた。

 私はそのあまりの寝付きの良さに驚きながら、布団に潜り込んだ。
 
 こうして、カレンと話しあえて良かった、と素直にそう思う。


 「――温かい」

 たしかに、カレンがシノに『好き』といったのは、ちょっと動揺した。
 何故かわからないけど、たしかに。

 けれど。

 それを上回るくらいに、嬉しかった。
 カレンは、日本での生活を心から楽しんでることが、恥ずかしそうな声音からひしひしと伝わってきたから――


 「さぁ」


 寝よう。

 そして、また明日も――「おはよう」って言おう。

 何もない毎日が、こんなに楽しくなるなんて、思わなかった、なぁ――










 忍「……」パチッ

 忍「――『好き』?」キョトン

 忍「私は、二人とも好きですよー……」エヘヘ

 忍「……」スースー

>>132
☓正体→○招待でした。

ここまでになります。
とても長くなってしまいましたね……

英国少女二人の会話により、ついに核心に迫ったか……と言いながら、次回からまたいつも通りの日常が始まる予定です。
好き、と「好き」は、何か違うと思うタイプらしいですね(意味不明)

色々と情報を入れ過ぎたので、読みにくかったかもしれません。
楽しんでいただけたら、非常に嬉しいです。

それでは。
もう放送が終わってから1ヶ月ほど経つんですね……。

 ――ここは、どこでしょう?
 
 私は、草原に佇んでいます。
 綺麗な草木が辺り一面を覆うこの場所は――


「……あれ、は」

 目を凝らすと、二つの人影が見えました。
 二人は、私の方へ向かって走っているようです。
 揺らめく二つの金色は、私の目も、心も捉えて離しません。

 
「……!」
「――!」

 二人は、何かを叫んでいるようですが、残念なことにその声は私には届きません。
 とても可愛らしい声なだけに、意味がわからないことがとても残念です。
 それにしても……ああ、なんて綺麗な金髪――


 気がつくと、目の前の光景がちょっとだけ変わっていました。
 私は、草原に寝かされています。
 というより、押し倒されている、という方が正しいでしょうか。

 上にいるのは――なんということでしょう。

「……シノ!」
「――シノ!」

 ここが、天国なのでしょうか。
 私の上にいるのは、なんと先ほどの二人の金髪少女。
 吹き抜ける風が二人の綺麗な髪をはためかせ、幻想的な一瞬を見せつけます。

「……ああ、そうですか」

 つい、独りごちてしまいます。
 私は、この二人が――



「好き、なんですね……」
「――シ、シノ?」




――大宮家・忍の部屋


忍「……あ」

カレン「ど、どうした、デスカ……?」アセアセ

カレン「顔、真っ赤デス」

忍「――あれ?」キョトン

忍「草木は? 風は……どこに?」

カレン「何、言ってるデス?」

忍「――あ、でも」


ギュッ!


カレン「」

カレン「シ、シノ……い、一体、ナニを?」

忍「えへへー」スリスリ

忍「金色は、ここにありました……」

カレン「シノ、くすぐったいデス……あの、ソノ」

カレン(あ、朝から一体、ナニがどうなってるデスカ!?)アセアセ


カレン「シ、シノ……!」

忍「――あ、そうでした」

忍「着替え、なくてはいけませんね……」

カレン「!?」

忍「……よいしょ、っと」プチッ

カレン(シ、シノ……む、胸元が、見えちゃってマス……!)

カレン(――以前、一度見たことありますが、本当に平らデス――)

カレン(じゃ、なくテ! こ、このままじゃ……このまま、ジャ)ブンブン


アリス「……うーん」

アリス「――ふぅ、今日もいい天気」

アリス「さて、二人、は……」チラッ

アリス「」


カレン「ア、アリス! た、助けるデス!」アセアセ

アリス「……シノが、カレンの、上に、乗って」ブツブツ

カレン「は、早くシテ!」カァァ

アリス「そっか、シノはそういう――」ハッ

アリス「ご、ごめんカレン! シノ、また寝ぼけてるでしょ!」グイッ

忍「……あ」

忍「えへへ、ごめんなさい」ニコニコ

アリス「――はぁ」

アリス(……って、また胸元はだけてる!?)

アリス「と、とにかく! ちょっと廊下に出て、着替えて!」カァァ

忍「ええー……」

忍「――私、もっと二人と一緒に」キュッ

二人「……え(ハイ)?」

忍「でも、まずは着替えないとですよね」

忍「また、後で……ふふふ」ガチャッ



バタン・・・



カレン「……」

アリス「――カレン?」

カレン「ア、アリス? ちょっと目が怖いデス……」

アリス「シノと、何があったの?」ジーッ


カレン「……朝、起きたら、デスネ」

アリス「うん」

カレン「シノが、私に抱きついてきたデス」

アリス「うん……」

アリス「え?」ピクッ

カレン「何かうわ言のようなことを言いナガラ」

カレン「私に頬を、すり寄せテ……そ、それ、デ」カァァ

アリス「……」

カレン「『金色』がどうとか、草木とか風だとか……アリス?」

アリス「……」


アリス(実は、昨日私がカレンと話して、さぁ寝ようと思った時)

アリス(シノの所から何か聞こえた、気がしたんだ)

アリス(……好き)

アリス(そんな言葉だった、ような気がして……それで)


カレン「あぁ、どうしまショウ……?」

カレン(赤みがとれてくれマセン!)カァァ

アリス「……カレン」

カレン「アリス……」

カレン「シノは、どうしちゃったデスカ……?」

アリス「――多分、なんだけど」

カレン「ハイ」

アリス「シノは、シノは……」


アリス「私とカレンのことが好きになっちゃったんだと、思うの――」カァァ



――数分後


忍「……」ガチャッ

カレン「あ、シノ。お帰りデス」

アリス「もう、シノってば……反省してる?」

忍「――」


忍「ご、ごめんなさい!」カァァ

カレン「わっ、シノ!?」ビクッ

アリス「……もう、寝ぼけた後はいつもこうなんだから」

アリス(――でも)

アリス(今日は、いつもよりずっと――)


忍「……カレン」

カレン「は、ハイ!」

忍「私のこと――嫌いになっちゃいましたか?」ウルウル

カレン「……ハイ?」


アリス(破壊力が、ありすぎだよっ!)カァァ


忍「私――昨日、気づいちゃったんです」

カレン「そ、それは、どういう……?」

アリス「――シノ」

忍「……」


忍「二人のことが、好き、だってことに」


カレン「……」

アリス「……」

カレン「――シノ」

忍「は、はい!」

カレン「――私たちも」

アリス「シノのこと、『好き』だよ……」

忍「……」

忍「二人ともっ!」ダキッ

二人「わっ!?」


忍「えへへ……金髪少女、温かいです」スリスリ

カレン「い、いきなり抱きつかれたら……こ、困りマス……」

アリス「――シノも温かいよ」

忍「アリス、ありがとうございます……」

忍「えへへ……」

二人「……」



アリス(うーん……)

アリス(シノの好き、と、私たちの『好き』)

アリス(きっと、同じようで、ちょっと違う――いや、好きだってことに変わりはないし)グルグル


忍「アリスー……」

アリス「きゃっ!」


アリス(シノにこうやって抱きつかれると、凄く気持ちいいし……)


カレン(シノ……いきなり、どうしたデス?)

カレン(いつもこうしてスキンシップとることはありますが――今日はちょっと、情熱的というカ)

カレン(一体、どうしテ?)


忍「カレンの髪、サラサラですねぇ……」

カレン「シ、シノ! そ、そこ、くすぐったいデス……」ピクッ


カレン(デモ)

カレン(――今は、このままでも)ギュッ

カレン「――シノ」

忍「は、はい!」

カレン「――私たちも」

アリス「シノのこと、『好き』だよ……」

忍「……」

忍「二人ともっ!」ダキッ

二人「わっ!?」


忍「えへへ……金髪少女、温かいです」スリスリ

カレン「い、いきなり抱きつかれたら……こ、困りマス……」

アリス「――シノも温かいよ」

忍「アリス、ありがとうございます……」

忍「えへへ……」

二人「……」



アリス(うーん……)

アリス(シノの好き、と、私たちの『好き』)

アリス(きっと、同じようで、ちょっと違う――いや、好きだってことに変わりはないし)グルグル


忍「アリスー……」

アリス「きゃっ!」


アリス(シノにこうやって抱きつかれると、凄く気持ちいいし……)


カレン(シノ……いきなり、どうしたデス?)

カレン(いつもこうしてスキンシップとることはありますが――今日はちょっと、情熱的というカ)

カレン(一体、どうしテ?)


忍「カレンの髪、サラサラですねぇ……」

カレン「シ、シノ! そ、そこ、くすぐったいデス……」ピクッ


カレン(デモ)

カレン(――今は、このままでも)ギュッ

>>153>>154 
連投してしまいました。






――大宮家・廊下


>シノモアリスモ、ダイスキデス!

>チョッ、シノ! ソコハ・・・

>モウ、カレンバッカリ! シノ、コッチモ・・・



勇「……」

勇「――まったく、もう」タメイキ

勇(なんというか……来るべき時が来た、というか)

勇(……シノは、ねぇ)


勇「好きと『好き』……つまり」

勇(それが恋愛感情なのか、純粋な好きという感覚なのか――それが、分かってないのよね……)

ここまでになります。

次回からいつも通りになると書きましたが、実際には普段通りの日常が少し変わってしまいましたね……
当初の予定から、かなり外れてしまいましたが、書いてみたくなったもので。
果たして、受け入れられるのやら……

今後、こうして恋愛色強めになる、ということはないですが
シノの二人に対する想いははっきりさせておきたかったので、今回はこうした話になりました。
楽しんでいただけれたら、幸いです。

それでは。
のんのんびよりが、今期の癒やし枠ですね……。

――大宮勇が自分の部屋から出て目にした光景は、半ば予想していたとはいえ、なかなかにショッキングなものだった。


忍「……お二人とも」

忍「ずっと、一緒にいましょうね……」ギュッ

アリス「も、勿論だよ、シノ!」コクコクッ

カレン「……シノが、こんな近く二」アセアセ


勇(……さて)

勇(とても微笑ましい光景ではあるけど――考えていかないといけないわね)


勇(今後、シノがどうやって過ごしていくか……ほんの少しでも)



と、実姉がいもう……『弟』のためを思って考えていた頃。



――勇の部屋


陽子「……」スースー

綾「――ん」

綾「朝……あれ、勇さんは?」

綾「ま、いっか――」フニッ

綾「……なに、今のは」


陽子「――んん」ピクン


綾「」

綾「……」フニフニ

陽子「ん――ぁ」ピクピク

綾「――!」ハッ


綾(落ち着きなさい、小路綾)

綾(状況を冷静に確認するのよ……さて、私の布団に陽子が寝ている理由は――)

綾(――冷静に考えられるわけ、ないじゃない!)カァァ


綾(ってことは、さっきの感触は――!)

綾(……凄く、柔らかかったわね)シミジミ

綾(じゃ、なくて! ああ、もうっ……)ブンブン

陽子「……ん、綾?」

綾「ひゃぁっ!?」ビクッ

陽子「な、なんだよ――朝から」

綾「あ、朝から、積極的なのはどっちよ!?」アセアセ

陽子「……あ」

陽子「悪い、寝ぼけて綾の布団に入り込んじゃってたんだな」

綾「も、もうっ……!」プイッ


陽子「ところで」

綾「な、なに?」

陽子「積極的って、どういう意味で?」

綾「……」

綾「――知らないわよ! 陽子のバカ!」カァァ

陽子「え、ええ……?」


綾(――良かった)

綾(いや、私の今の体温からすれば、一概に良いとも言えないけど)

綾(……どうやら、気付かれていないみたいね)


陽子「あ、そういえばさ、綾?」

綾「なに、陽子?」

陽子「――何か、朝から違和感があって」

綾「……どこに?」

陽子「いや――何だか、胸の辺りg」

綾「き、気のせいよ! そうに決まってるわ!」ズイッ

陽子「そ、そっかぁ……?」

陽子「いや――やっぱり、下着付けて寝るべきだったかなぁ、と」

綾「……」


綾(そうね、そうよね)

綾(大きい人って、そうする傾向あるものね)

綾(良かった、陽子は私がしたことに――)ペタペタ

綾(……おかしい、なんで悲しくなってくるんだろう?)ウルッ


陽子「ところで、綾?」

綾「なに?」

陽子「――イサ姉、どこ行ったんだろう?」

綾「……さっき、考えてたわ」

綾(陽子のせいで、完全に吹き飛んでしまっていたけど)



――廊下


陽子「とりあえず、廊下に出れば」

綾「何かは見つかるでしょうね――って、陽子! ズボン!」

陽子「なんだよ、ズボンって……あっ」

陽子「……」ゴソゴソ

陽子「――サンキュ」カァァ

綾(あぁ、もう! どうしてそこで顔を赤らめるのよ!)

綾(別に、「ズボンから下着がちょっとだけはみ出て、柄まで見えそうになってた」なんて言ってないのに!)カァァ

陽子(……気をつけないと、なぁ)タメイキ



――忍の部屋前


陽子「なんだかんだで、シノの部屋」

綾「――シノ?」コンコン

勇「はーい?」

綾「……シノ、随分と大人びた声になったわね?」

陽子「綾――ボケなのか? ボケなんだよな?」アキレ


勇「はい、どうぞ。二人とも」

綾「あ、ありがとうございま……す……」

陽子「――綾? どうした……ん……だ」



忍「――んー」

忍「お二人とも、いい匂いです」スーッ

アリス「だ、だから――シノ、恥ずかしいし」

カレン「くすぐったいデス……」カァァ


忍「もう」

忍「――三人で、お風呂入れたら、ですね」

アリス「な、何言ってるの!?」ハッ

カレン「そ、それは無理デス! impossible!」ブンブン

忍「……はぁ」

忍「こういう時だけ、『身体』がちょっとだけ憎らしいです……」キュッ

アリス(シノ――なんて表情を)

カレン(……起きてから、体温がおかしいデス!)カァァ

忍「……ええと?」

陽子「イサ姉――あれは?」

勇「それが、ねぇ」

勇「私が入ってきたことにも気付かないで、さっきからずーっとああしてるのよ」

陽子「おお……もう」


綾「――で、でも、それって」

勇「なぁに、綾ちゃん?」

綾「シ、シノが、その」

綾「……二人のことを、『好き』になってしまった、とか?」

勇「――多分、ね」


陽子「シノ……」

陽子(いつかこうなる時が来るとは思っていた……!)

陽子(幸い、色恋沙汰でシノがおかしなことに巻き込まれたりはしなかったけど――まさか)


忍「うーん……二人とも、微妙に髪質が違うんですねぇ……」ナデナデ

アリス「だ、だから、くすぐったいよぉ……」カァァ

カレン「――シ、シノ、そこ、はァ」ピクッ


陽子(――英国少女が、その鍵を握っていたとは、なぁ)



――その後。

状況が落ち着いた辺りで、シノのお母さんの振る舞った手料理をご馳走になり、お泊り会は解散の運びとなった。

私と陽子の間で色々なことが――じゃなくて!
シノとアリスとカレンという三人少女の関係が、大きく発展を遂げた、そんなお泊り会だった。

……その発展が、おかしな事態を招かなければいいのだけど。

忍「……えへへ」ニコニコ

アリス「シノ、凄く嬉しそうだね……」

忍「だって!」

忍「私がいて、アリスがいて、カレンがいて――」

忍「……考えるだけで、ドキドキしてしまうんです!」エヘヘ

アリス「そ、そっか。良かったね」

アリス(嬉しがってるシノを見るのは、凄く嬉しい……んだけど)


忍「アリスはいつも会えますから、それはとても歓迎すべきことなのですが」

忍「カレンも、いつでも会えたらいいですねぇ……」シミジミ


アリス(――ちょっとだけ、複雑だよ、シノ)キュッ



――帰り道



カレン「……」トコトコ

カレン「――I miss you」ボソッ

カレン「また、すぐに会えますよネ……シノ?」

お泊り会編、これにておしまい。

シノが何かと暴走してばかりいたように思いますが……結局、シノとアリスとカレンの三人はどうなっていくのでしょうか?
自分も今後、どう書いていけばいいのか、迷うばかりです。

それでは。

投下します。

今回、全体が地の文なので、読みにくいかもしれません。ご容赦下さい。

 大宮家での「お泊り会」が終わり、五人の少女はそれぞれの生活に戻っていった。

 帰途につく中で、小路綾は猪熊陽子に顔を赤らめることが多かった。
 恐らく、その日の朝の一件が尾を引いていたのだろう。
 そんな綾に、陽子は呆れながらも優しく接していたのはいつもの通り。

 九条カレンは、どこか足運びが覚束なかった。
 途中でピタッと止まったかと思うと、次の瞬間にはテクテクと歩き出し、また止まる。
 そして、止まるとすぐにカァッと顔を赤らめる。その繰り返し。
 彼女にとっても、大宮忍の部屋での出来事が影響していることは疑いない。

 そして――


「……シノは、ずるいよ」
「アリス? どうしたんですか?」


 客人が帰り、大宮家にもまた、いつもの風景が見られるようになった。
 忍は、居候の少女の言葉を聞き、キョトンとした表情を浮かべてみせる。
 見れば、アリスは忍のベッドで枕を抱え、そこに顔の一部をうずめていた。
 「なんて可愛らしい」と、忍は心の中で思う。

「だって……だって」


 アリスは、何かを言おうと身体を振ってみせるが、何も言葉が見つからない。
 何かを訴えたい。けれど、その「何か」を、どう言葉に乗せるか。

「――いきなり、あんな」


 大胆なこと、と言い終わる前に、近くに体温を感じた。


「落ち着いて下さい、アリス」
「……シノのせいで、全く落ち着けないよ」


 今朝方と同じように抱きしめられ、アリスは顔を赤らめながら訴えた。
 そんな彼女を、忍は愛おしそうに撫でた。


「私、アリスと会えて、本当に良かったです」
「わ、私も、だけど……」


 アリスはふと、今朝の風景を思い返してしまった。
 あの時の、大宮勇の言葉。


 ――少し、考えないといけないわね――


 こう呟いた勇は、どこか困ったように、それでいてとても愛しそうだった。


「――シノは」
「はい?」
「シノは……本当に」


 アリスはそこで、ギュッと抱きしめ返しながら、


「女の子じゃ、ないんだよね……?」


 おかしなことを言ってしまった、と思う。
 今まで、何度も見てきたではないか。
 平坦な胸、そこへの詰め物、そしてそして――

 数え上げればキリがないそんな確かな根拠を
 しかしアリスはどこかで認めるのを拒んでしまっていたように思う。

 だって――
 今、自分を撫で回す手のひらは、こんなに綺麗で、男性特有の無骨さなど全くない。
 その端正さは、女性の自分から見ても嫉妬しまうほどに完成されている。

 それに、髪だってそうだ。
 忍はよく、自分の髪を撫でては称賛する。
 けれど、忍自身の髪も、女性が自信を無くしてしまうくらい整っていることも、アリスはよく知っていた。


 アリスは――おそらく、カレンも――恐れていた。

 大宮忍は、男性である。
 
 この確かな事実を認めることを、自分はどこかで拒んでいる。

「――アリスは、おかしな事を言いますね」


 忍は、アリスの発言を意に介した風もなく、一旦アリスから腕を離した。
 そして、アリスの前に周りこんで、座り込む。


「そうですよ、確かに私は――」


 そこで、一旦区切り、


「『ボク』は、男です」


 それはいつか、アリスの故郷で言った一人称。
 あの時、忍はハッとして口を塞いでしまった。
 けれど、今はもう――


「……そうですね、たしかにアリスと会う時までは」


 忍は、どこか懐かしそうに、言葉を紡いでいく。
 その仕草もまた、どこまでも女性らしい。


「こうして、自分のことで悩むことだって――あったかも、しれません」


 似合いませんよね、と忍はアリスに微笑んでみせた。


「その度に、陽子ちゃんや綾ちゃんに心配してもらって」


 楽しそうに言葉を続ける忍の表情からは、いつかの憂いなど窺えなかった。


「――アリスと、こうしてまた会えて」


 再び、忍は静かにアリスを抱き寄せる。


「それだけで、なんて嬉しいか……」
「……もう、シノってば」


 アリスは、顔を赤らめながら、笑った。
 何だか、迷っている自分が恥ずかしくなってしまう。


 ここにいる忍は、たしかに――



 ――ハロー!――

 ――コニーチハー!――


 心を触れ合わせた、大切な相手なのだから。

 性別がどちらであろうと、それはたしかに――



「シノは、シノだもんね」


 それだけで、十分ではないか――

「――もう、二人ともお熱いんだから」

 廊下にて、私――大宮勇は呟く。
 扉を開けると、シノとアリスが抱き合っていた。
 まるで、世界に二人だけしかいないような、おとぎ話のごとき空間。
 声をかけようとしたけれど、つい扉を閉めてしまうほどには、触れてはいけないオーラが漂っていた。


「はぁ……これからのことで、ちょっと話したかったんだけどなぁ」


 私は、溜息をつく。
 シノが、アリスやカレンちゃんとの親交を重ねることに、私は全く異存はない。
 というよりも、いも――『きょうだい』の幸せを祈ることは、当然だし。


「けれど――」


 どう、伝えるべきなのだろう?
 それとも、私が心配しすぎなのだろうか。

 社会的に見たら、男性が女性二人と過度なスキンシップを重ねているようだし。
 いや、シノのことがより明るみに出ると……

 こんな、あの子たちの幸せな関係に、障害が現れたら――


「……なんて、杞憂に終わるだろうけれど」


 こんな、愚にもつかない思考をグルグルとさせて、良いことなんてないだろう。
「悩みの9割は、現実には起きない」と、偉い人も言ってたような気がするし。



「――ま、いっか」


 いずれ、軽いノリで持ちかけてみよう。
 こんなに改まって、話しても、


「なんといっても、楽しくない」


 それが、何よりも大切だろうし――


 ――その夜。


「ハァ……」


 リビングで、私は溜息をついてしまいマシタ。
 ケータイの画面を見ながら、私は今日のことを思い返しては、熱くなりマス。


「――風邪、じゃないノニ」


 夏風邪はタチが悪いと聞きますが、それ以上に今の私はおかしい、ようナ……


「カレン、どうしたんだい?」
「あ……パパ」


 そんなことをしていると、後ろからパパに声をかけられマシタ。
 私はチラッとケータイを見て、


「――私、なんだかおかしい気がシテ」
「どうしたんだろう……もしかして、その携帯電話に、なにか?」


 さすが、パパ。私のちょっとした挙動に、敏感に反応しマシタ。


「少し、見せてもらっても、いいかな?」
「ハイ――」


 私は、ケータイをパパに渡しマス。
 さっきから見ていた画像は、そのままにシテ――


「……これは、集合写真かな?」


 その通りデス。
 シノのお家で撮った、みんな揃っての集合写真。
 私やアリス、アヤヤといった面々は顔を赤らめているのが見て取れマス。


「ほほう、仲良いことは良きこと、か、な――?」


 パパは、画面を食い入るように見つめマシタ。
 何かに、気付いたのでショウカ……?」


「――失礼かもしれないんだが、カレン?」


 パパは、目をパチパチとさせナガラ――


「……この子は、もしかして」


 気づいて、しまったようデス。
 いや――もしかしたら、どこかで私はそれを望んでいたのかもしれマセン。


「まさか――」


 ああ、パパが……

 言って、しまいそうデス――
 

「シノ――」


 私は、今ここにはいない「友人」の顔を思い出し、胸がキュッとなってしまったのデシタ。

ここまでです。

たしか、カレンは自分のマンションを所有してそこに住んでいたような気がしますが、このSSでは同居している設定と
思って下さい。それとも勘違いだったかな……。

前回で「お泊り会」が事実上終わりましたが、今回はそのまとめとも言える回だったと思います。
心情描写に文章を割きたかったのは、そのためです。

さて、九条家に何やら動きがありそうですが……それはまた、次回以降に。


それでは。
読んでくださる人に、感謝です。

投下します。ただ、今回もまた地の文で、かなり幕間的な要素が強いので、楽しんで頂けるかどうか――





 ――聞いたことが、ある。


 私は、「あの時」のことを思い返していた。
 あの日……カータレット氏はえらくご機嫌で、私はそんな彼女に尋ねた。


「どうしたんだい、えらく機嫌がいいけれど」
「えぇ、実はね……」


 聞けば、今日は日本からホームステイに来る子がいるそうな。
 なるほど、そういうイベントがあれば心も躍るわけだ。
 

「へぇ、それはいいねぇ」
「でしょう? けれど――」


 どうやら、娘――アリスちゃんは乗り気じゃないとか。
 私は頭のなかで、まだ小さな彼女の姿を思い浮かべた。
 ……たしかに、飼い犬に寄り添い、縮こまっている姿が絵になりそうだ。


「まあ、アリスちゃんも変わると思うよ?」
「まぁ、どうして」
「だって――カータレットさんが呼ぶ人が、悪い人なわけがないからね」
「もう……」


 少し照れた彼女を見て私は、よりその考えを強めたものだ。




 ――数日後



「やぁ、カータレットさん」
「……あ、こんにちは


 暇が出来たので、カータレット家を訪れた私に
 いつものようにカータレット夫人が挨拶をしてくれた。
 しかし、どこか様子がおかしい……ような。


「何かあった?」
「ええ――まぁ、ね」


 彼女は意味深な言葉を紡ぎ、ぼんやりと外を見つめた。


「そういえば、ホームステイに来た子は?」
「今は、アリスと街に出てるわ。帰りは遅くなりそうね……」


 遠い目をしたままの彼女を見て、一つの考えが浮かんだ。
 ――あまり、想像したくはないものではあったけれど。


「もしかして……ホームステイに来た子が、問題を?」
「――そういう、わけじゃ」


 そう言って、スッと目を伏せる彼女を見て、私は何かを感じ取った。
 ホームステイに来た子は、いわゆる問題児的な子じゃない。
 だと、したら……

トリップをちょっとまちがえてました。






「その子が、なにか」
「――そうね」

 すると、カータレット夫人は立ち上がり、やおら引き出しを開けたかと思うと
 何かを取り出し、テーブルに戻ってきた。
 見るに、写真だと推察する。

「九条さんなら、いいわ」
「……そう、言ってもらえるなら」

 見れば――予想通りと言うべきか――そこには、アリスともう一人が写っていた。
 顔立ちから見て、東洋人だろう。
 自らも日本人である私は、写真の中の人物を日本人と推測した。

「ほぉ、可愛い子だね……少し経てば、正統派の大和撫子にでもなりそうだ」
「ナデシコ……? どういう意味なのかはよくわからないけれど」

 コホンと一息つき、カータレット夫人は写真の中の日本人少女を指さす。

「貴方は、この子をどう思う?」
「さっき言った通り、大和撫子……つまり、日本的美人になりそうだ、と」
「――そう、そうよね」

 そう、彼女は意味深な表情を浮かべてみせた。
 どういうことなのか、私にはなおも分からない。

「……見ちゃった、の」
「見ちゃった? 一体何を?」

 単刀直入な私の質問に、カータレット夫人は一度目を瞑り
 覚悟をしたかのように見開いて、言った。


「間違いで、その子と脱衣所で遭遇しちゃって」
「うん」
「――その」


「胸がね、全く平坦で……」




 ――九条さんは、帰っていった。
 とても複雑そうな難しい表情を浮かべながら。
 無理もない、と思う。
 私にとっても、また……

「――ママ?」


 ハッとする。
 見れば、そこにはアリスとシノがいた。
 二人ともキョトンとした表情で、私を見ている。


「おかえりなさい、二人とも」


 笑顔を浮かべて、私は二人を頭を撫でる。
 そうされながら、笑顔を見せる二人は――


「……さ、もうそろそろ夕食ね」


 とても、愛しい。
 それは、本当だ。
 アリスは言うに及ばず――もちろん。


「シノ。イギリスの街は、どうだった?」
「はい! 凄く楽しかったです」


 皆さん優しくて、後、アリスが色々と案内してくれて……あと、後は――!

 一生懸命に、とても楽しそうに話すシノ。
 その姿を見て、「愛しい」という感情を持たないわけがない。
 ……ただ。


「そう、それは良かったわね」


 シノ。
 日本から来た、可愛いホームステイのお客さん。
 娘のアリスと仲良く、とても楽しそうにしてくれて――


「いっぱい、イギリスを味わってね」


 そんな、シノは……


「はい! ぜひとも!」


 ……「どっち」なんて。

 些細なことのように思える、けれど――


(とりあえず、アリスには言わないでおきましょう……)

(とりあえず、カレンには教えないでおこう……)


 車を走らせながら、私は決めた。
 カレンはホームステイ先の子と会ったことはないはずだ。
 今は――「こういうこと」は言わないでおいたほうが良いだろう、と感じたのだ。


(――アリスちゃん)


 写真のアリスちゃんは、どこか照れたような表情を浮かべていて――
 その対象が果たして、「同姓」か「異性」かで、意味合いも変わってくる、だろう。


(いつか――)


 向き合う時が来るのかもしれない、と私は予感した。






 ――それから、少し経って。


「お、おじさん!」

 我が家に、アリスちゃんがやって来た。
 真剣な表情で、私に近寄ってきたと思うと――


「私に、日本語を教えて下さい!」


 これが、一つの転機。
 この時私は、「予感」が「確信」に変わったことを、実感した――

一旦、ここまでにします。
前述したように「幕間」という感じの話なので、楽しんで頂けたかどうか……

ここで書きたかったのは、アリスのお母さんは決してシノのことを色眼鏡で見たりはしなかった、ということ。
そして、カレンのお父さんは、前々からこうなることを予感していたということ。
以上、2点でした。

こんなお話だったので、次回は早めに投下する予定です。
それでは。




――その日



忍「あれ……?」キョトン

アリス「どうしたの、シノ?」

忍「ああ、アリス――今日も可愛いですねぇ」ダキッ

アリス「も、もう、シノ!」

アリス「だ、抱きつくのは後にして、質問に応えて!」アセアセ

忍「うう……最近、アリスがつれません」

アリス「……」


アリス(そう何度も抱きつかれて)

アリス(甘い声出されながら頭を撫でられるのなんて――)

アリス(……中毒になっちゃったら、困るじゃない)カァァ

忍(まぁ、このアリスの恥ずかしそうな表情だけで大満足ですけどねぇ……)エヘヘ


忍「ええ、実は……」スッ

アリス「――メール?」

忍「はい」

忍「えと……アリスの所にも来てないですか?」

アリス「私――あっ」ポチポチ

アリス「来てる、一通」

忍「そうですか……それで、送り主は?」

アリス「――カレン」

忍「私も、です」


アリス「でも、どうして突然?」

忍「さぁ――それはよく、分かりませんが」

忍「中身を見る限り、何かの遊びのお誘いみたいですね」

アリス「あ、ホントだ――なになに」



『山、行きマショウ! 海がダメなら、山デス!』



アリス「……山、行きたいんだね、カレン」

忍「まぁ――海となると、色々と残念ですからね」

アリス「……」

アリス(そっか、シノは――)

アリス(そ、それに正直――私も、多分、アヤも)ペタペタ

忍「……どうしたんです、アリス? ちょっと悲しそうです」

アリス「――シノは、気にしなくていいんだもんね」ズーン

忍「――あぁ」

忍「私は、アリスのような小さいのも好きですよ?」

アリス「……!?」カァァ

アリス「シ、シノは直接的すぎっ!」

忍「うーん……本音なんですけどねぇ」

アリス(も、もう……!)プイッ




――同時刻



陽子「あ、メールだ」

綾「私にも」

陽子「……カレンから?」

綾「――ええと」

綾「『山へいきましょう』ってことで、いいのかしら?」

陽子「そう、なるな」


陽子「そういえば、夏休みに入る前」

陽子「『海はヤダ!』って声が、かなり大きかったよな?」ジッ

綾「……陽子、その視線はなに?」ジトッ

陽子「気にするもんでもないのに、なぁ」

綾「――陽子には、わからないわよ」プイッ

陽子「そっかぁ?」

陽子「私は、綾の胸、可愛いと思うけどなぁ……」

綾「な、なな……!」カァァ

綾「よ、陽子のエッチ! 変態!」プイッ

陽子「うわぁ――ムキになっちゃったよ」

綾(バカ、バカ……!)




――同時刻




カレン「……それじゃ」

カレン「パパ、お願いしマス」

カレン父「うん、分かった」

カレン父「山までの足は、任せてくれ」

カレン「心強いデス……」

カレン父「それで、カレン?」

カレン「ハ、ハイ?」

カレン父「――『あの子』も、来るんだよね?」

カレン「……Of Course」

カレン父「うん、分かった」


カレン「あ、あの……パパ?」

カレン父「なに、心配することじゃないって」

カレン父「……」

カレン父(ただ、カレンが「その子」に対して)

カレン父(何か、特別な感情をもってそうなことは否めない……)

カレン父(――親として、私はどう思ってるんだろう?)




そんなこんなで日は流れ。
各人の予定のすり合わせが行われた結果――


「その日」は、意外と早く訪れることとなった。




――待ち合わせ場所



忍「おまたせしましたー!」

アリス「お、おまたせー!」

陽子「よっ、二人とも!」

綾「もう、ちょっと遅れ、て――」

綾「……シノ、あなたそのカッコは」

陽子「――うひゃぁ」

忍「そ、そんなに見られると照れちゃいます」テレテレ

アリス「シノ……二人は、そういう目で見てるんじゃないと思うよ?」


陽子「なぁ、綾? 今って夏だよな」

綾「それは、夏よ。ただ――」

陽子「……目の前にいるシノは、どこの季節に?」

綾「それ以前に、ここは日本よね……?」


忍「うう……陽子ちゃんと綾ちゃんがいじめますー」グスッ

アリス「だ、大丈夫だよシノ! 私はシノの味方だからね!」

忍「……アリス」

忍「アリスは、似合ってると思いますか?」

アリス「……」

アリス「に、似合ってるに決まってるよぉ」

忍(ちょっと目を逸らしましたね……)ハァ


綾「そういえば、今日の主催者は……」

陽子「カレンか。そういえば、ちょっとおそ――」

陽子「……」

綾「どうしたの?」

陽子「いや、あれ――」

綾「……あっ!」


カレン「みなサーン!」

アリス「カ、カレン!?」ビクッ

忍「す、凄く大きな車ですね……」

カレン「パパが頑張ったデス!」

綾「す、凄いわね……」

陽子「なんというか――お嬢様だったんだなぁ」





 ――着いた。


 運転席から、私はカレンの友達を見下ろした。
 皆、歳相応に可愛らしい子たちだった。なにより、良い子そうだ。
 私は、胸を撫で下ろす。
 父親たるもの、娘が心配なのは古今東西変わらない。

 ……ただ。


「わぁ、凄いです!」
「シノー!」


 窓からカレンは、「その子」に向かって手を振った。
 なるほど、たしかに可愛らしい。
 イギリスに来た頃から数年経ち、より「女の子」らしさに磨きをかけている……。


「……パパ?」


 ハッとした。
 見れば、カレンは少し不安げな表情を浮かべている。
 恐らく、私から「彼」への視線を感じ取ったのだろう。


「大丈夫だよ、カレン」


 私は娘に微笑みながら、


「――ちょっと、気になっただけだから」


 車を、停めた。




――数分後


陽子「いやー、改めて凄いなこの車……」ジーッ

綾「陽子。あんまりジロジロしちゃ――」

陽子「うわっ、こんなところに引き出しが!」パカッ

綾「ああもう、言ったそばから!」


アリス「ふふっ、陽子は元気だねぇ」

忍「そうですねぇ……」

カレン「……」

忍「? カレン、どうかしましたか?」

カレン「な、なんでもないデス」

カレン「今日は、楽しみまショウ!」

忍「はいっ!」


アリス「……」

アリス(そういえば)

アリス(さっき車に乗る時、カレンのお父さん――)

アリス(少し、複雑そうな表情をしてた、ような……)




――さらに数分後



カレン「着いたデース!」

陽子「おおっ、これは……!」

綾「綺麗な所ねぇ」

忍「ふふ、車じゃないと、こういった所までは来られませんからね」

アリス「川、かぁ……」


アリス(意外と、水着で泳いでも楽しそう……)

アリス(――ダメダメ! 水着のことを考えただけで、悲しい気分になるのは)

カレン「アリス、大丈夫デス!」

アリス「カ、カレン!?」ビクッ

カレン「――アリスのママが、『アレ』ナラ」

カレン「娘のアリスにだって受け継がれるはずデス!」

アリス「……カレン、どういう意味かな?」ジトッ

カレン「タダ」

カレン「ちょっと時期は、もうオソ――」

アリス「カレンッ!」プンスカ


忍「ふふ、仲良しさんですねぇ……」

忍(金髪少女と綺麗な川、という光景もいいですね――)エヘヘ

カレン父「……」

忍「あ、カレンのお父さん」

カレン父「――今日は、楽しんでほしいな」

忍「はい! ありがとうございます!」ニコッ

カレン父「……」


カレン「――」

アリス「カレン?」

カレン「――シノッ!」ダキッ

忍「ひゃっ!?」

カレン父「!」


カレン「ふふ、シノー? 油断大敵、デス!」

忍「ちょ、カ、カレン……くすぐったいですってばー」

カレン「相変わらず、綺麗な肌デス……」ナデナデ

カレン「嫉妬しマス」

忍「カ、カレンだって、お人形さんのように綺麗じゃないですかー」

カレン「……」

カレン「も、もう、シノ!」カァァ



アリス「……ああ」

アリス(「お人形さんのように」って、その言葉は私に言ってくれてたのに……)

アリス(カレンに取られちゃったよぉ……)

アリス(――あれ?)

カレン父「……」

アリス「あ、あの……おじさん?」

カレン父「!?」ハッ

カレン父「あ、ああ、ごめんアリスちゃん」

アリス「どうしたの……あっ」

アリス「シノが気になるの?」

カレン父「……」

カレン父「ま、まぁね」

アリス「……?」




 ――少なからず、動揺した。

 カレンが、私の目の前で抱きついた時。
 私は、たしかに心が揺れるのを感じた。

 しかし――実際に間近で見れば見るほど信じられない。


「もう、カレン……くすぐったいですよぉ」
「ふふっ、シノは可愛いデス……」


 娘のスキンシップを受け、浮かべる表情といい仕草といい。
 完璧に、女性のそれではないか。


「――カータレットさん」

 呟いたのは、彼女の名前。
 遠い異国の友人と、私は芯から心を通わせたように思う。
 自分の娘と「あの子」のふれあいを見れば、それは混乱するだろう――






――それから




綾「ちょ、ちょっと陽子、危ないってば……」

陽子「大丈夫だって――よっ、と!」

陽子「ほら、綾もおいでよ」

綾「こ、怖いわよ……」

陽子「大丈夫だって」

陽子「私がいるんだから、こんな石ころへっちゃらだよ」

綾「……」


綾(――私がいるんだから、か)

綾(こんな岩場を、よくもまぁ)

綾(こういうことを、無意識に言ってるんだから……)

綾「何だろう、癪だわ」

陽子「癪なのはいいけど、転ぶなよー?」

綾「わ、分かってるわよ!」

綾「――きゃっ!?」

陽子「よ、っと」

陽子「大丈夫か?」

綾「え、ええ――」

綾「!」ハッ

陽子「?」


綾(よ、陽子の腕に抱えられてる……!?)

綾(ち、近い! 陽子、近いってば!)

陽子「なんだ、どうかしたか?」

綾「バ、バカぁ……」

陽子(いやー、今日の暑さは酷いんだなぁ……)

陽子(なにせ、綾がこんなに顔を真っ赤にしてるし――)

綾(陽子の、バカ……)モジモジ



――その一方


アリス「待っててシノ! 今、自分で捕るから!」

忍「ええっ、アリス!?」

忍「あ、危ないですよ」

アリス「いいの!」

カレン「……釣れまくりデース!」

アリス「――カレンに、負けたくないもん!」

忍「ア、アリス! そ、そんな所まで!」

カレン「あっ、シノ!?」





 ――二人の子が向こうに探検に出かけて。


 こちらには、私と娘、それからもう二人が残った。
 その場にいれば、なるほどこの三人はとても仲が良いんだな、と実感する。
 カレンも、良い友達を持ってくれた――。


「アリス……そこは危ないですってば」
「いいの、シノ! 止めないで!」


 ――昔からかもしれないけれど。
 アリスちゃんはカレンとの勝負事になると、ムキになりがちだ。
 そういう所は微笑ましい……いや、待った!


「ふ、二人とも! さすがにそこは危ない――」


 ドボン!


「――よ?」


 何とも、間の抜けた音がした。
 視界には、アリスちゃんしか入らない――ということは、だ。

「シ、シノー!?」


 カレンも、私と共に水に分け入った。
 アリスちゃんは慌てて、救出を試み始めていた。


 ――ザブン。


「え、へへ……」


 私たちが辿り着くとほぼ同時に、「彼女」は浮かんできた。


「ちょ、ちょっと無理しすぎちゃいました……」
「も、もう、シノったら」


 そんな「彼女」を、アリスちゃんは抱き上げる。
 しかし、小柄な彼女の手には余るようで、すぐさまカレンが補助に回った。


「カ、カレン。私一人で大丈夫だよぉ」
「アリス。その台詞は、145センチほどになってから言うべきデス」
「そ、そんなぁ!?」


 カレンのからかいに、アリスちゃんは涙目になってしまった。
 相変わらず、微笑ましい光景だ。
 ――しかし。


「……これ、は」


 私は、瞠目してしまった。


「――ちょっと、冷たいですね」
「シ、シノッ! 早く向こう、に……」
「アリス、どうした、デス……カ」


 娘たちも、ピタリと動きを止めてしまった。
 知らぬは当人ばかり。
 「彼女」は、キョトンとした表情を浮かべている。


 濡れた服から、彼女の「下」が透けてしまっていた。
 いくら西洋風に着飾ったとはいえ、夏ということもあり、生地は薄手だ。
 そのため、透けた部分がより一層目立ってしまっている。


 胸元から、薄い桃色の下着が浮き出ていた。
 身体のラインも明瞭に表れ、「女性」らしさが如実に出ている。
下手をすれば、下半身まで見えてしまう。

 ――なるほど。
 透けたレベルでこれなのだから、脱衣所で遭遇したカータレットさんの驚愕ぶりが目に見えるようだ。


「パ、パパは見ちゃダメデス!」
「うわっ!?」


 いけない、ついついぼんやりとしていた。
 気づけば、顔を真っ赤にした娘が私の袖をギュッと掴んで、抗議していた。

「――エッチ、デス」


 カレンは、ジトッとした目で、私を捉えている。
 その仕草は、何とも女性らしく、密かに娘の成長具合に驚いてしまう。


「そ、そういうつもりじゃ……」


 いや、そもそもカレン、「あの子」は私と同じ――
 なんて言葉がちょっとでもよぎったのが恥ずかしいほどだ。
 そんな差異は――


「……ちょっと、濡れちゃいましたねぇ」


 あそこで、どこか色っぽさすら出ている「彼女」にとって、何の意味もないことだろう。


「あ、ああ……」

 
 赤く染め上げ、茫然自失の体といったアリスちゃん。
 そんな彼女と、私の娘が立ち直るのには時間がかかりそうだ――


「いや、私も、か」


 囚われてしまった、気がする。
 なるほど、これは――






 ――それから。


「あ、ありがとうございます」
「いや、いいんだ。風邪でもひいたらことだからね」


 私は「彼女」を連れて、車に戻っていた。
 カレンたちも付いてきたいと言っていたが、敢えて拒んだ。
 二人で待っていて、と言った時のカレンの淡い表情が印象深い。

 娘に、すまないと感じるのは親心だろうか。
 ……それでもやはり。


「重く、ないですか?」
「――いや、全く」


 少し、恥ずかしそうな口調で訊いてくる。
 きっと、背中では赤く切なそうな……「女の子」の顔が見られることだろう。
 そうした事もまた、私の認識を崩しそうで――


 だから――

 私は、足を止めて、


「『女の子』みたいに、軽いよ――」


 瞬間。
 時間が止まった、ように感じた。
 私の肩にかかった手がピクッと動き、止まる。
 少し重みが増したのは、緊張のせいだろうか。


 時間にすればわずか数秒だったろう。
 しかし私には、10分以上にも感じられるほどだった。


「……気付いたんですか?」


 ポツリ、と。
 そんな消え入りそうな声で、後ろの「彼女」が言う。
 

「いや――カータレットさんから聞いていたんだ」
「アリスの……そう、だったんですか」


 言いながら、再び歩き始める。
 あまり止まってもいられない。風邪をひかれては困る。


「――あ、あの」
「ん?」


 消え入りそうな声は、先ほど私に感謝をしてくれた時とは別人のようで。
 チクリと胸が痛んだ。


「……どう、ですか?」
「どう、って?」
「あ、あの、その――」


 モジモジとしている様子が、よく分かった。
 背中越しの会話をしながら、私の足は目的地へと向かう。


「……だ、だから、その」
「もし君が、『気持ち悪いですか?』というようなことを言うのなら」


 ハッとした様子が、背中から感じられる。
 私は言葉を紡ぐのを止めない。


「それは、Noだ」
「で、でも……カレン、と触れ合っていたのは、その」


 男なんですよ、と。
 「彼女」は、言った。

 恐らく、今日のような特殊な状況が、彼女をしおらしくさせていたのだろうと思う。
「父親」の目の前で、「娘」と――「男子」がスキンシップをとる。
 その光景を見て、何も感じなかったかといえば……


「――そうだね、確かに複雑な気分にはなったよ」
「……!」
「でもね」


 私は、歩みを止めない。
 目的地は、すぐそこだった。


「――そんな気分よりも、何よりも」


 
 そこで私は、「彼女」をゆっくりと降ろした。
 そして、しっかりと向き合う。

 「彼女」は顔を赤らめながら、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
 どこからどう見ても「少女」そのもので――


「カレンが、あんなに嬉しそうだったから」
「……!」
「それでいいんじゃないかな、と」


 そうだ、それでいいのだ。
 なんとなく、私は納得していた。
 よくわからないモヤモヤとした感覚は、面と向かってこう言ったことで霧消したように思える。


「――で、でも」
「いいんだよ」


 それは確かに、親の目の前で娘と異性が抱き付き合っていれば、感じることがないわけではない。
 けれど、それ以上に――


「……『二人』も、そう思っているんだろう?」
「えっ!?」


 慌てて、「彼女」は振り向いた。
 物陰から、ガサガサと音がして、


「……見つかっちゃいマシタ」
「ご、ごめんなさい」


 可愛らしい金髪少女が現れた――

 


――帰り道


綾「……」スースー

陽子「……」ムニャムニャ

カレン「二人とも、よく寝てるデス」

アリス「何だか、凄く満足そうだよね」

忍「お二人とも、本当に仲良しですから」


カレン父「……」

カレン父「三人とも、ちょっといいかな?」

カレン「?」

アリス「は、はい」

忍「な、なんでしょう、か?」

カレン父「……」


カレン父「――これからも、普通にしてて大丈夫だから」

忍「……!」ハッ

カレン父「さっき、私が『忍ちゃん』にした質問も」

カレン父「全部、気にしないでいい」

忍「――で、でもっ!」

カレン父「……むしろ」

カレン父「気にして、カレンとギクシャクすることの方がずっとイヤだから」

カレン「……パパ」


アリス「……」

アリス(ママ――)

アリス(ママも、気づいてたんだね……)

アリス(それじゃあ……)


アリス(私はシノと、『仲良く』してて、いいのかな――?)キュッ



――大宮家


忍「……ふぅ」

忍「楽しかった、ですね――」ニコニコ

アリス「う、うん」

アリス「……」

忍「? どうしました?」

アリス「――シノ」

アリス「……私たち」

アリス「大丈夫、なのかな?」

忍「……」

忍「はい?」キョトン

アリス「……」


忍「――アリス」ダキッ

アリス「わっ!?」

忍「大丈夫ですよ」

忍「こうして抱きしめているだけで、安心です」

アリス「そ、それは!」

忍「無敵です」フンス

アリス「――もう、シノったら」

アリス(ああ、なんだか)

アリス(……シノが「無敵」なんて言うんなら、大丈夫かな、って思っちゃうよ)

忍「……」


――九条家


カレン「あ、あの……パパ?」

カレン父「――カレン?」

カレン「……こ、これから、モ」モジモジ

カレン「仲良く、してて――?」

カレン父「……」

カレン父「カレン」

カレン「ハ、ハイッ!」

カレン父「……娘の幸せを願わない父親なんて、いないよ」

カレン「……!」

カレン「――パ、パパッ!」

カレン父「よしよし……」


カレン父(――しかし)

カレン父(あれで、「男の子」)

カレン父(……カータレットさん、世界は広いですね)トオイメ

ここまでになります。
……正直、ここまで長くなるとは全く思ってませんでした。
いざ川遊び編を書いてみようと思い立ち、気づけばメモ帳に溢れかえらんばかりの文章が……
こんなに長くして、読んでくださる人には感謝ばかりです。

さて、こうして夏休み編は終わり――おっと、お祭りという大事なイベントが。
次回がどうなるかは未定ですが、「お祭り」になるかもしれません。
……もしかしたら、二学期入ってしまうかもしれませんけれど(小声)

それでは。
こんなに長くても書いてしまうということで、改めてこのSSが好きだということを実感しました。



『看病』


アリス「……はい、タオル替えるね」

忍「アリス、ありがとう、ございます」ケホケホ

アリス「無理して喋ったらダメだよ」

忍「――は、はい」

アリス「……」


アリス(夏風邪)

アリス(先日の川遊びで、盛大に転んで水浸しになったことが原因なのかな)

アリス(顔の酷い赤みは取れたものの、シノは相変わらず咳が酷い……)


忍「……アリス?」

アリス「なぁに、シノ?」キョトン

忍「体温、計って頂けますか?」

アリス「――ああ」

アリス「体温計だね。持ってきた、から……」スッ

アリス「これ、脇に挟むタイプ?」

忍「はい」

アリス「……」チラッ


アリス「ねぇ、シノ?」

忍「なんですか?」

アリス「自分で、挟めない、かな……?」アセアセ

忍「――うーん」

忍「少し、厳しいかもしれませんね」ケホケホ

アリス「そ、そう?」


アリス「……」

アリス「――じゃ、じゃあ」

アリス「ボ、ボタン、開けるね」

忍「お願いします」

アリス「……」

アリス(――どうしよう)

アリス(手が震えて、上手く外せない)

アリス(一つ、外せば)

アリス(それだけで、シノの肌が――)

アリス(……うう)


忍「――アリス」

アリス「!?」ビクッ

忍「大丈夫、ですよ」

忍「私は、その――」

忍「……気にしません、から」カァァ

アリス(そ、そこで顔を赤らめないでぇ……)


アリス「……」

忍「アリス」

忍「いいんですよ……」

アリス「――」

アリス「シ、シノ、やっp「私がやってあげるわ」


アリス「」

忍「あっ……」

勇「まぁ、アリス。顔が真っ赤」

勇「シノの風邪が伝染ったかもしれないわね……さ、休んで休んで」

アリス「イ、イサミ……?」

勇「私の部屋のベッド、使っていいから」

アリス「……」

アリス「わ、分かったよ」

アリス「――シノ、また、ね」



パタン



忍「……」チラッ

勇「――ねぇ、シノ?」

忍「なんですか、お姉ちゃん?」ケホケホ

勇「ずいぶんと、思い出したように咳をするのね?」

忍「……」

勇「それに、昨日は酷かった鼻水も」

勇「真っ赤だった顔色も」

勇「どこに行ったのかしら?」

忍「――」

勇「……やっぱり」ピピピ


『37.2』


勇「……」ジーッ

忍「え、えへへ」

勇「――もう」

勇「アリスをからかったら、可哀想じゃない」

勇「腹黒いシノと違って、アリスは純粋なのよ?」

忍「……そう、ですよね」タメイキ

忍「ただ」

勇「?」


忍「目の前で、アリスが顔を赤らめながら」

忍「ボタンを外していく様子を見てたら」

忍「――つい、魔が差して」ニコニコ

勇「……」チラッ

勇「こんな平坦な胸を見て、何が楽しいのか……」ハァ

忍「あ、酷いです、お姉ちゃん!」ガーン


勇「とにかく」

勇「あまり、アリスを困らせないこと」

勇「――そりゃ、まぁ」

忍「かわいいですよねぇ……」ポワポワ

勇(同意せざるを得ないのが、悲しいところよね……)


勇「さ、次は身体を拭きましょう」

忍「あ、そ、それは大丈夫です」

勇「ううん、一応ね」

忍「一応、って?」キョトン

勇「――後で、『また』魔が差して、なんてことがあったら」

勇「アリスが可哀想だから」

忍「……」

忍「――きょうだいの心配は?」ジーッ

勇「その、腹の黒さがちょっと、ね」

忍「うう……」

勇「こうして身体を拭いてると」

勇「ついこの前まで、一緒にお風呂に入ってたことを思い出すわね……」

勇(風呂場では、尚更この子の性別を意識せざるを得なかった、ってことも――)

忍「――お風呂、ですか」

忍「アリスやカレンと、入れたら」

勇「――いい、シノ?」

勇「偉い人も言ってたわ。『越えちゃいけないラインを考えろ』って」

勇「世の中には、『超えられない壁』というものも存在するし……」

忍「お、お姉ちゃんの方が、ずっと腹黒いです……」ウルウル

勇「はいはい」


勇「さ、もういいわ」

忍「ありがとうございました」

勇「うん」

勇「さ、上着を着t」



アリス「シノ! 私、飲み物を注いできた、よ……」ガチャッ

アリス「」

勇「……」アレ?

忍「あっ」


アリス「い、いや、え、ええと……」アセアセ

アリス「――」カァァ

勇「……アリス」

アリス「は、はいっ!」

勇「部屋に入る時は、ノックをしないと、ね?」

アリス「そ、そうだったね! たしかに!」

勇「さ、ここにいたら風邪が伝染っちゃうわ」

忍「……アリス」ニッコリ

勇(こ、この子……凄く喜んでる)


アリス「……」

アリス(上半身裸)

アリス(シノ 笑顔 イサミ 飲み物)グルグル

忍「混乱してるアリスも可愛いです……」

勇「――しょうがない。連れ出しましょう」

勇(アリスの手、熱い……)


アリス(カレン ごめん 私 シノ)トコトコ

勇「この子も、大変ねぇ……」ハァ

忍「えへへ」ニコニコ

こうして、アリスの混乱は続く――

表題を付けたように、ちょっとした短編をいくつか投下しようと思いましたが、思ったより長くなってしまったので
また後ほど別のものを投下します。

それでは。

後ほどと書きましたが、今しばらくは無理そうですね……ごめんなさい。


忍「……はぁ」

アリス「……」

アリス(シノの憂い顔――)

アリス(何を、考えてるんだろう……私にできることって、あるのかな?)

アリス(――シノ、心配だよ)

忍(アリスとカレンに囲まれて、ゆっくり眠りたいですねぇ……)

『写真と娘と……』


カレン「……」

カレン「――ハァ」

カレン(こうして、過ごしてるト)

カレン(夏休みって、長いデス……)

カレン(――アリスたちといた時は、ずっと短く感じたノニ」

カレン(……シノ)

カレン(どうして、ここで変な気分になるんでしょうカ……)


カレン父「……」

カレン父(――カレン)

カレン父(どうして、そんな赤い顔をしているのか。風邪でもひいたのか)

カレン父(……そんなことを、普通の父親なら思うんだろうな)スッ


カレン父(――あの時の、写真)

カレン父(皆で撮ったものの中に……同じような娘が写っている)

カレン父(――『彼女』の隣で、アリスちゃんと共に顔を赤らめている、カレン)

カレン父「……はぁ」タメイキ

カレン父(あの時は、格好つけてしまったものの――)

カレン父(実際は、かなり戸惑っているんだな、私も)


カレン「……パパ?」

カレン父「!?」ビクッ

カレン「何を見てるデス?」ズイッ

カレン父「……カレン」

カレン「――あ」

カレン「あの日の写真、デス……」

カレン父「……」


カレン父「なぁ、カレン」

カレン「パパも、シノのことが気になりマスカ……?」

カレン父「あの時ああ言ったが、私h」

カレン父「……なんだって?」

カレン「あぁ」

カレン「パパも、シノのことガ……」カァァ

カレン父「いや、カレン。落ち着きなさい。君は正常な判断が――」

カレン「必死になる所が怪しいデス」ジーッ

カレン父「」

カレン父「いいかい、カレン」

カレン「……シノが好きでも、私ハ」

カレン父「私は、男だ」

カレン「……知ってマス」プイッ

カレン父「――忍ちゃんは」

カレン「言わないでくだサイ……」

カレン父「……」


カレン「――そうデス」

カレン「私は、おかしくなってるんデス」

カレン父「……カレン」

カレン「――シノが、シノが」

カレン父(……娘なりに、事実と向きあおうとしてるんだな)

カレン父(いや、心配したよりも、進んd)

カレン「私に、ハダカを見せて、くれたノニ」

カレン父「……」



カレン父「え?」ピクッ

カレン「あの時」

カレン「私、二――」

カレン父「カ、カレン、お、おお、落ち着きなさい」アセアセ

カレン「パパの方が、ずっとガタガタしてマス……」

カレン父「は、は、ハダカ、を?」

カレン「――シノが」

カレン父「……」

カレン父「――そ、それは、まさか!」

カレン父「風呂に入ったとか、そういう……?」

カレン「……?」キョトン

カレン「!」ハッ

カレン「ち、ちがいマス!」ブンブン

カレン「パパのエッチ!」カァァ

カレン父「ぐっ……!」

カレン父(な、なかなか、ダメージが大きい)


カレン「……私」

カレン「上半身裸のシノを、見たんデス」

カレン父「……そう、か」

カレン父(そういうことなら、まぁ……)

カレン父(――あれ、いいのか?)ピクッ


カレン「シノは、顔を赤くシテ」

カレン父(いやいや)

カレン「私も顔を、真っ赤二――」

カレン父(え、ええー……)


カレン父(なんというか、その)

カレン「あぁ、どうすれば……こんな風に、赤くなるのを止められるデスカ?」カァァ

カレン父(――日本って凄いんだぞ、カータレットさん)

つらつらと書いてたら、もう一編書けていましたので投下します。

今後、原作のイメージを壊さない程度で、物語が少しずつ変節するかもしれません。
それでも、よろしいでしょうか? 不安ですが……。

それでは。
今日はもう、寝ます。

というわけで、お待たせしました。
投下です……が。


今回は、アリスやカレンは出てきません。
また、全てが地の文で、非常に長ったらしく感じると思います。
それでも楽しんで頂ければ、とても嬉しいです。


それでは。

『いつかのあの日』


 ――陽子ちゃんは……

 あれ? なんだ、これ?

 
 ――ボク、は……

 おおう、よくわからないけど、何かシリアスっぽい雰囲気?
 って、何か見たことある顔なのに、随分と髪が短い……って。


 ――ボクも……

 ああ、なんだ。
 そっか、妙にしっくり来たぞ。

 これは、あの時の……



『はーい、笑って! 3、2、1……』

「――」
「……ねぇ――こ」


 身体が揺さぶられるような感覚がして、ぼんやりとした視界がくっきりと映し出される。
 今度は……さっきより、ずっと髪が長い顔見知りがすぐ近くにいた。


「……なんだ、綾か」
「『なんだ』って……あなたねぇ」


 ハァ、と溜息を一つ。
 目の前の友人は、怒ったような呆れたような目で、私を見つめる。


「――宿題、手伝ってくれって言うから来たのに」
「そう、だったっけ……ごめん」


 私が返すと「まったく、もう」と、綾は横を向いてしまった。
 綾の良い所は、何だかんだ言いつつも根に持たない所だ。
 そんな綾に、私は甘えることも多い。


「ああ、ノートがグシャグシャじゃない……」
「そりゃまぁ、突っ伏して寝ちゃってたし?」
「『何が問題なの?』みたいな顔しないでよ……」


 ハァ、と再び溜息を一つ。本日、二つ目?
 とはいえ、綾の憂い顔の理由も分かる。


 8月31日。
 この日付に何を感じるか。
 私に言わせれば、この3つの数字ほど心を惑わせ、痺れさせるものはないんだけど。

 貴方は、どうだろう?
 その感じ方によって、普段の行いが見えてくる――


「……また、ロクでもないこと、考えてるでしょ?」
「きっと、綾は『恐怖』なんて感じないんだろうなぁ」
「何言ってるのよ……」


 ハァ、と溜息を――しつこいか。
 さて、気を取り直して、と。


「ちょっと、休憩しよう」
「どうしてそうなるのよ!」


 綾は、溜息に飽きたのか、今度はツッコミに切り替えてきた。
 いやー、普段なら私がツッコミで綾が天然ボケって感じなんだけど、私の起き抜けは立場逆転するんだよねぇ……。



「まったくもう、陽子ったら……」
「とか言いつつ、ノリノリじゃないか」


 私のベッドに座り、足をパタパタとさせる綾を見るに、言葉とは裏腹にどこか楽しそうだった。
 座布団に座りながらそのことを指摘すると、綾の頬に何故か少し赤みが差す。


「気、気のせい、でしょ」
「そうか……」


 こういう時に、深入りすると思わぬ事態を生みかねない。
 だからいつもこの辺りで引くんだけど、そうするとこれまた何故か、綾の表情は少し不機嫌そうになる。
 中学以来の付き合いだけど、こういう所はちょっぴり慣れなかったり。

(そういえば……)


 中学以来、か。
 そんなフレーズに気を取られながら、本棚を見上げてみた。

 そのためか、すんなりと「それ」は視界に入り込んできた。


「……」
「陽子?」


 誘われるように、私は本棚に向かう。
 「それ」を取り、再び座布団に戻ると、


「……『〇〇小学校 卒業アルバム?』」


 綾が、そこに書かれた文字を読み上げた。
 そう。いかにもこれは、卒業アルバム。
 それもまだ――


「――何か、さっき居眠りしてる時にさ、ちょっと昔のことを」


 思い出しちゃってね、と我ながら照れくさそうに言った。
 綾は、足を止め、少しばかり真剣そうな表情になる。


「……もしかして」
「そっ。その『もしや』」


 おどけた口調で、私は勉強机にアルバムを開く。
 綾もベッドから下りて、私の近くに腰を下ろした。
 長い髪が私の頬をくすぐり、またさっきの「光景」を意識する。


「――これって」


 綾が目に留めた写真には、白色が目立つ。
 体操着服姿の私たちが、そこにはいた。

 男子たちに混ざって我ながら元気よくピースサインをする私。
 そして、そんな私にピタッとくっついているのが――



「そ、昔の……」


 ページを繰って、私は、


「――私と、シノ」


 あの日に、帰る――


 

 ――考えてみれば、あの日も夏だったっけ。

 

「ホント、大宮は猪熊と仲良いよなー」


 写真は、卒業アルバムに載せられるらしい。
 そんな話を適当に聞き流していると、後ろからそんな声がした。


「だよな。ずっと昔から、仲良いんだ」


 重なるようにして、もう一つ。
 チラッと、隣を見る。
 予想通りというべきか、笑顔の私の友人が――


「はいっ! 仲良しです!」


 後ろの男子に、元気良く応える。
 そして、さっきまで引っ付いていた私から離れると、


「でも、二人も仲良しですよね?」
「いやまぁ、そうだけど……お前と猪熊って」
「そうだな、仲良しだな」


 そんな風にして、三人で笑う。
 私は、そんなシノを見る度に、何だか複雑な気持ちになっちゃってたっけ。




 ――帰り道



 当然のように、私とシノは一緒に帰っていた。
 イサ姉に、「シノをよろしく」と言われていたこともあったけど、何よりも――


「今日も、楽しかったですねぇ……」


 正直、一緒にいて落ち着いたんだな、これが。
 エヘヘと笑いながら楽しそうに話すシノを見てると、どうにも放っておけない。

 元々私は、男勝りな性格だってことは自覚していたから、男子といることもあった。
 勿論、女子とだって一緒にいられた。

 けれど、なんというか、色々と――


「……ねぇ、陽子ちゃん」


 シノは、特別だった。


「ん? どした?」


 私はシノを振り向いて、「あれ?」と思った。
 シノの目は、私の目に向けられてはいない。
 それは――


「――陽子ちゃんは、大きくなるんですね」

 向けられた目線と、その言葉の意味するもの。
 「男子」にそんなことをされたら、普通なら顔を赤くして、少し嫌な気分になるだろう。
 嫌な思い出として、記憶のくず箱にでも放り込んでしまうはずだ。


 けれど私は、その時のシノの表情を忘れられそうにない。


「そうだな、きっとまだまだ――」


 当時、何の恥じらいも躊躇もなく、大真面目にそんなことを言えていた。
 シノ相手だと、普通の男子や女子相手とは、全く違う会話になるから。


「……ボクとは、違うんですね」


 自分の目線を下に向けて、シノは呟いた。
 「違う」。そうだ。私とシノは、違う。

 

 胸に付けるための、女子特有の「アレ」を、親と連れ立って買いに行ったのはいつだっけ。
 さっぱり記憶に無いけれど、初めて「それ」を付けて学校に行った時のシノの表情だけは、とてもよく覚えていた。


 残念そうでいて、何だか嬉しそうな、本当に複雑そうな表情。
 それを見て、私は「どうしてだろう?」と、純粋に疑問に思った。
 どうしてシノは、「違う」のだろう、と。


 髪は短かったものの、正直な話、他の誰よりもシノは女の子らしかった。
 見た目からしても、初めて会った時に感じた「可愛い子」そのもので。
 今日の授業みたいにシノが男子と話すことがあっても、やっぱりそんな男子とはどうも違う。

 
「陽子ちゃん……」


 だから。
 そんな上目遣いで、頼るような声を出されると、返答に困った。
 いも……弟をこよなく愛するイサ姉の気持ちが、凄くよく分かる気がした。


 そんなポーズのまま発せられた言葉は、声も含めて、今でも私の脳裏に焼き付いている。


「――ボクも、大きくなれない、でしょうか?」






「――それで、陽子は何て応えたの?」


 何となく、そんな昔話をしてしまっていた。
 いやまぁ、休憩時間だしね。


 とはいえ、この質問……なんて答えたものか。
 

「いやまぁ……なんというか、その」


 ついつい照れてしまう。
 思えば、あの日の私も、なんて若かったことか。


「ほら、私たちは、普通に大きくなるだろ……」
「――『普通に』、ね」


 あれ? なんで綾は、凄く悲しそうな表情をしているんだ?
 まぁいいや。話を続けよう。


「で、シノは、普通には大きくならない。当たり前だ」
「まぁ、ね」


 綾の表情はいちいち気にかかったけれど、それはそれとして。
 コホンと一息。


「で、だから私は言ったんだ」
「ええ」



「だったら、何か詰めちゃえば、って」


「……」

「え?」




「ほら、シノは私みたいには、その……ならないから」


 その時、私は大真面目にシノと話し合っていた。
 帰りの通学路で、大真面目に見つめ合う、二人の小学生。
 傍から見たら、おかしな光景に映ったことだと思う。


 でも。
 その時の私は、心からシノの力になりたかった。


 さっきの体育の授業の時、男子にからかわれた(?)とき。
 シノが一瞬見せた、なんとも言えない表情が、ずっと忘れられなくて。


「――大きくすれば、いいんだ」

 



 その翌日――



 シノは放課後、私を人気のない校舎裏に連れて行った。
 そこでいきなり服を脱ぎ始めるものだから、私はとても焦ったっけ。


「ちょ、ちょっと、シノ!?」
「し、静かに、陽子ちゃん」


 と言われても、恥ずかしそうに頬を染めながら、上半身裸になられても困るんだけど……!
 そんなあれこれを飲み込んで、せめて私は視線を逸らす。
 視界の隅っこで、本当に「男子」とは思えないほど白い肌が見え隠れした。正直、すっごく困った。


「……もう、いいですよ」
「う、うん……?」


 シノに促され、再びシノと視線を合わせた私が見たものは――





「――陽子が、今のシノの」
「そう。そういえば、綾には言ってなかったっけ?」


 中学時代は、色々とそれ以外にすることあったからなぁ。
 最終的に、何ともあっさりと受け入れられた、「大宮忍カミングアウト作戦」。
 綾にも手伝ってもらったっけ。

 あぁ、だから今まで話すことなかったんだ。タイミング外しちゃってたんだな。


「……ということは」
「シノは勉強とかはダメダメな割に、メチャクチャ器用でね。凄くその出来は良かった。
 で、その時も、シノの胸はもう、フツーに膨らんでるように見えた」


 あの時は、本当にビックリした。
 目の前に、いきなり正真正銘の女子が現れたんだから。


 とはいえ、それからシノの、その、女装能力にはますます磨きがかかっていった。
 今となっては、どこからどう見てもごくごくフツーの女子高生になり
 毎度のようにアリスやカレンを騒がせているのは周知の通りってわけだ。






「ふーん……」


 さて、話を終えると少し疲れた。
 麦茶でも飲もうか、と下に取りに行こうと立ち上がると、


「――陽子とシノって、本当に仲良かったのね」


 綾がそんな事をいうので、少しキョトンとしてしまった。


「何言ってんだ、当たり前だろ。シノは私にとって、特別なんだから」


 さて、麦茶麦茶、っと。
 ちょっと行ってくる、と綾に言って、私は下に降りていく――





「……」
「『特別』ねぇ……」
「――」


 陽子がいなくなり、私は彼女のベッドに寝転んだ。
 ぼんやりと白い天井を見つめていると、そこに昔の「二人」の姿が見えるような気さえした。

 それくらいに、陽子の話はシノへの愛情でいっぱいだった。


「シノ」

 
 つぶやきは、止まらない。
 枕に突っ伏しながら、私は今のシノのことを思い浮かべる。


「アリスやカレンは言うに及ばず」


 金髪少女二人を骨抜きにして。



「……陽子までって」


 さっきの話をしている時の陽子は、まるで。
 保護者のような、姉のような……そして、また。


 ゴロゴロと寝返りを打ちながら、私は普段なら決して言わないことまでつぶやいてしまう。




「あなた、本当に罪な『女』よ……」

ここまでになりますが、何とも長いですね……。

地の文でいっぱいにするのは、なかなか厳しかったです。
でも、何だかとても楽しかったです。


そんなこんなで、アリスやカレンからシノへ向いていた矢印に、新たな(というより元からあった?)矢印が現れました。
こりゃ、綾の立場が危ういですね……。
とはいえ、今後はまた金髪少女と和風少女の絡みという、主流に戻っていくと思います。


それでは。
いつもありがとうございます。

投下です。

――とはいえ、今後は――

なんて書いたくせして、随分とおかしなことになりました。
この次の展開は、しばらく考えることになりそうです。

 ――あっ。


「……」

 朝。
 私はいつものように、目を覚ましました。

 横を見遣れば、布団で寝息を立てる、可愛らしい英国少女の姿が。
 その姿に笑みを隠せなくなってしまいます。ここまではいつも通り。


(――さっきのは)


 目の前にいたのは、活発で優しい女の子。
 その子に、私はお世話になりっぱなしで――


(……なんだ)


 答えは明らかです。
 あの子に、決まっているじゃないですか。


「……」


 いつもと違うのは、そんな所でしょうか。
 さて――
 時計が指す日付は、9月1日。

 今日から、学校が始まります。







「……」
「ねぇ、シノ」


 あっ。
 隣を見ると、アリスが少し不安そうな表情を浮かべていました。
 いけない、何か聞き漏らしてしまったのでしょうか。


「――何か、あったの?」


 鋭い。
 日本人に比べて外国人はストレートという話は、本当だったのでしょうか。
 それはともかく、私はアリスに心配をかけてしまったようです。


「い、いえ、なんでも――」


 ――シノは、ずっと私の――


「――なんでも、ないです」
「……?」


 うーん、困りました。
 何だか、よく分かりません。

――集合場所


陽子「……」

陽子「あれ?」

陽子(私が一番?)

陽子(へぇ、珍しいこともあるもんだ)

陽子(……)


陽子(あっ、来た来た)

陽子(――シノと、アリスか)

陽子(シノか……)


アリス「ヨウコッ!」

忍「……」

陽子「よっ、アリス」

陽子「……シノも、おはよ――?」

忍「――」


忍「……あっ」

忍「陽子ちゃん、おはようございます」

陽子「……?」


 ――なんだ?


 シノの調子が、おかしい。
 夏休み明けだからか?
 いや、でも……うーん。


「……」


 そういえば、こんなことが昔もあったっけ。
 で、私は、そんなシノに――


「……」
「あっ――」
「!!?」
「あっ、おはようござい……マ、ス?」

 額と額を合わせてみる。
 シノは――うん、熱はなさそうだ。
 ということは、風邪とかじゃないってことか。一安心一安心。


「ん、良かった。熱はないみたいだね」


 とりあえず、「診断結果」をシノに笑いながら伝える。
 問題はなさそうで、なによりだ。


 ……ん?


「……ヨウコ?」
「えっ、ええ?」


 戸惑う金髪少女が二人。
 あっ、カレンも来てたのか。

「おはよ、カレン」
「は、はい、おはようござい、マス」
「……?」


 ん? 様子がおかしい?
 アリスもカレンも、何やら酷く戸惑ってるみたい、だけど……。


「……あ、ありがとうございます、陽子ちゃん」


 って、どうしてシノも変な顔してんのさ。
 え、なにこの状況? もしかして、私が変なコトした、みたいな……?


「――おはよう、みんな」


 首をひねっていると、聞き慣れた声が聞こえた。綾だ。


「あぁ、綾。おはよ」
「……いや、なんというか、その」


 綾に挨拶したらしたで、何故か綾は視線を逸らした。


「いやまぁいいわ。行きましょう」
「ん、そうだな」


 ほらみんな、行くぞ、と三人に声をかけ、私は歩き出した。



「……」


 歩きながら、私はさっきの光景を思い返していた。
 カレンに声をかけようとしたら、見えてしまった「それ」に心を奪われてしまった。


 シノと陽子の付き合いの長さを鑑みれば、ごくごく普通の光景だったかもしれない。
 ただ――私には、どうしても昨日のことが気になっていた。



「でさー、またうちの弟と妹が――」
「ふふ、陽子ちゃんのお家はいつも賑やかですねぇ」


 笑い合う二人は、どこまでもいつも通り。
 シノの表情も、いつものおっとりとした可愛い笑顔。

 ……だからこそ尚更、さっきの表情が気になった。


(――やれやれ)


 心のなかで嘆息してしまう。
 だって、目の前の二人の金髪少女だって――


 二人の「顔」を、見たんだから。



 ――さっきの、アレは。


 結局、学校に着いても、離れてくれまセン。


 シノとヨウコの付き合いは、私とアリスと同じくらいカモ。
 そう考えれば、さっきのもごくごく当たり前のスキンシップ――


「……んん?」


 ナニかがひっかかりマス。
 それは、一体――?


「あっ」


 そうだ、わかりマシタ。
 恐らく――


 ――ん、良かった――

 ――……――


 陽子に額を当てられていた、シノの表情が。
 何故か、本当に「何故か」。


 ほんのりと赤くなっていたから、デス――











――教室


忍「……」

陽子「――昨日、昔のアルバムを見てたらさ」

忍「……」

陽子「シノ?」

忍「!」


忍「あ、ご、ごめんなさい……」

忍「――その」

陽子「ん、大丈夫」

陽子「……どしたの? 風邪じゃなさそうだけど、体調悪い?」

忍「……」


忍「思い、出しちゃった、みたいで」

陽子「……え?」





――廊下



アリス「……はぁ」

アリス(一体、さっきのは、なんだったんだろ?)

アリス(陽子と、シノが――)

アリス(……こんなに気にするのは、おかしいよね)

アリス(――だって、あの二人は、ずっと)


アリス「シノ、陽子、ただいm」

忍「陽子ちゃんに、私のはだk」

陽子「ハイ、ストップ」

アリス「」


忍「……」

陽子「ごめん、シノ。その話は、ナシで」

忍「――」

陽子「よし」

忍「……ふぅ」


忍「酷いです、陽子ちゃん。いきなり口押さえるなんて」

陽子「い、いやまぁ、その……」

陽子「――さすがに、なぁ」

忍「……?」


アリス「……」

アリス「――二人とも! もうすぐHR始まるよ」

陽子「あ、あぁ、アリス。分かった、サンキュ」

忍「アリス、ありがとうございます」

アリス「ふふっ、どういたし、まして……」

アリス「……??」


 

 ――さっきのは、一体?


 私の頭で、さっきの二人がグルグル回る。
 「はだ――」なに?
 それに、あの時の二人――


(どっちも、顔が真っ赤で)


 シノも陽子も、おかしい。
 夏休み明けで、陽子もシノも体調を崩したとか?
 それなら、顔の赤みも納得が――


(いかないよ……)


 目の前で、烏丸先生が何かを話している。
 私は、それが全く聞こえなかった。
 耳に言葉が入るのに、それはすぐに抜けていって――


(シノ……ヨウコ)


 結局、二人の姿だけが脳裏に焼き付いたままだった。



 ――焦った。


 さっき、シノにあんなことを言われた時。
 咄嗟に、シノの口を塞いでしまった。


 でも、どうだろう?
 いつもの私なら、あんなことしたか?
 どうして反射的に、あんな行動を……?


(わかんないなぁ……)


 カラスちゃんが何かを話している。
 それはともかく、さっきの行動がさっぱり分からない。
 我ながら、どうかしてる、ような……。


(――でも)


 原因というかキッカケというか、それは分かる。
 ――昨日、部屋で綾と見た、「アレ」のせいだ。








 ――朝。


 起きたばかりの頭に、昔の陽子ちゃんの姿がありました。
 陽子ちゃんは、凄く恥ずかしそうに目を逸らしていました。


 ……あの時のことは。
 私もよく、覚えています。
 どうして、あんな行動に出たのか。
 小学生の頃とはいえ、上半身裸の姿なんて、それこそ家族とアリスやカレンにしか――


(――あっ)


 思い出して、しまいました。
 あの時交わした、会話を……。




 ――ボクは、陽子ちゃんを『特別』だと思ってます――

 ――……私だって、シノは『特別』だよ――



(……ああ)


 どうしてか、私は、非常に居たたまれない気分になってしまいました。
 これは……。






 ――二学期が始まった。


 烏丸先生の話を耳に挟みながら、私は4人の大切な友人のことを考え続けていた。


 シノとアリスとカレン。
 やっぱり、この3人の組み合わせが、一番目立っていた。
 けれど。


(……どうなるの、かしら?)


 これからのこと。
 シノ。陽子。アリス。カレン。
 そして――私。


 私たちは、これから……












(そりゃまぁ、シノは私にとって『特別』だ)

(陽子ちゃんは、私にとって『特別』です。そんなこと、当たり前です)

(シノにとっての、アリスやカレンへの『特別』とは、違う)

(アリスやカレンと、ずっと一緒にいる。私は、そう二人に言いました。その『特別』とは、陽子ちゃんは違います)



(そうだ、シノと私は長い付き合いじゃないか)

(アリスやカレンと同じ、そんな付き合いだったじゃないですか)



(――だから)

(――そうです)



((別に、おかしなことじゃないんだ(です)――))

どうしてこうなった。

今後の展開を漠然と考えていたら、こんなことになってしまいました。
果たして、陽子とシノは……そして、他の3人は。
それは、今後の思いつき次第になりそうです。


それでは。
いつもありがとうございます。

 ――大宮と猪熊って、仲良いよなぁ――

 ――昔からずっと、一緒だもんねー――



(……いやいや、ちょっと待て)


 どうしてこのタイミングで、こんな記憶が浮かんでくるんだ。
 そりゃまぁ、イサ姉に頼まれたこともあって、私とシノは一緒にいることが多かった。
 だから、私にとっては、当たり前で……。



「……」
「――陽子」
「あ」


 隣を見ると、綾が心配そうな表情をしている。
 いけない、帰り道でぼんやりとするなんて。


 結局、5人で帰っている間、私はずっとおかしかったと思う。
 シノも、何だか様子が変だったし。
 ……なんだか、アリスやカレンには悪いことをしたような気がしてならない。
 あの二人が、シノを『特別』と思っていることは――


「ごめん、綾」
「……」
「な、なんか、寝付けなくってさー。それで、カラスちゃんの間延びした声で話されると眠くてしょうがなくて――」


「陽子、ちょっといい?」


 やれやれ。
 誤魔化しなんて、綾に通用するわけがないんだよね。
 この友人の鋭さは、私にだってそれなりに分かっているつもりだった。


「……なに?」
「その――はっきりさせたほうがいいんじゃない?」
「……」


 どういうこと、なんて突っ込むのは野暮か。
 私とシノと、付き合ってきてくれたんだから、そりゃ察するはずだ。


「――そう、なのかな」


 思い返す。
 抜けるように白い、およそ男とは思えない肌のシノ。
 男子に何か言われても、嫌な顔一つせずに話しに行くシノ。

 ……私のためにも、シノのためにも。



「ありがとな、綾」


 肩をポンと叩き、私は彼女に礼を言う。
 そして、すぐさま行き先を変えて、駆け出した。
 どこに行くかなんて、決まっている。


 と、後ろから、綾の声がした。


「あ、あなたがおかしいと、私たちも困るんだから……」


 その言葉に、私は何だかとても嬉しくなる。
 でも、敢えて振り向かずに、そのまま走っていく――

「……まったく」

 陽子が走り去っていくのを見て、私は溜息をついた。
 これで、良かったんだろう、多分。
 陽子と「あの子」がはっきりしないと、どうにも私やアリス、カレンも落ち着かないし。

 ……うん、それだけ。

「――陽子、シノ」


 それだけ、なんだ、きっと。
 だから、今締め付けられるようなこの胸の感覚も、気のせいで――


「……はぁ」


 帰ろう。
 そして、後でやって来るはずの連絡を待とう。


 ――ベッドにでも寝転べば、こんな感情は飛んでいってしまうだろうから。


「……」


 ケータイを閉じると、私は支度をします。
 制服のままだったので、私服に着替え、鏡の前で確認。
 ……普段なら、確認なんてしないのですが。


 階段を降りて靴を履き、ドアに手をかけたところで、


「シノ……?」


 後ろから、声がしました。
 その愛しい声に、私はピタッと止まります。


「アリス――」


 振り向けば、そこには不安そうな表情を浮かべる大切な女の子の姿。
 彼女は、胸の辺りでギュッと握りしめ、何やら耐えているように見えました。
 ……何に耐えているのか、何となく分かることに、罪悪感を覚えます。

「ちょっと、陽子ちゃんと会ってきます」


 そう言うと、彼女はハッと顔を上げました。
 その表情に、心が揺れるのを、確かに感じました。


「……それでは」
「シノ」


 ピクッと止まり、私は再びアリスの方を振り向きます。
 彼女は、目を彷徨わせた後で、


「――な、なんでも、ない、よ」


 何かを言わんとしているのは、私がどんなに鈍くても分かりました。
 ただ、敢えて追及はしません。


「大丈夫ですよ、アリス」


 ガチャッとドアを開け、私はもう振り向かずに、ゆっくりと、

「……アリスはずっと、『特別』ですから」

 ドアを、閉めました。



――公園


陽子「……」

陽子(ここの公園――)

陽子(それこそ昔、シノやイサ姉と一緒に、遊んだっけ)

陽子(今はもう、小学生とかいないんだ……時の流れを感じるなぁ)

陽子(――あの頃からもう、髪こそ短かったものの、シノは)

陽子「……」


忍「……陽子ちゃん」

陽子「……よっ、シノ」

忍「ごめんなさい、待ちました?」

陽子「いやいや、私も今来た所だし」

忍「それは、良かったです」

陽子「……」


陽子「――ちょっと、さ」

忍「?」

陽子「ブランコ、乗らないか?」




――ブランコを漕ぎながら


陽子「……」

忍「……なんだか」

忍「懐かしい、ですね」

陽子「そうだなー」

陽子「シノ、立ち漕ぎ出来なかったよなぁ」

忍「あっ、陽子ちゃん酷いです」

忍「い、今なら、出来ます……!」プルプル

陽子「こらこら、震えてるからやめなさい」


忍「……」

忍「――あの」

陽子「ん?」キョトン

忍「何だか、懐かしい、ですね……」

陽子「そう、だな……」

二人「……」



 ――二人でブランコを漕いでいる間、私はというと、昔のことが頭に浮かんでは消えていくばかりだった。


 私とシノは、イサ姉の言葉があったからこそ、一緒にいた――なんて。
 やっぱり、自分は騙せない。
 帰り道で思っていた「言い訳」めいたことは、この時間で全て吹っ飛んでしまっていた。


 隣で楽しそうに、ブランコを漕ぐシノ。
 そんな友人の笑顔を見てれば、「言い訳」なんて勝手に崩れてしまうのに。


「……陽子ちゃん」


 ぼんやりとシノを見ていると、シノが声をかけてきた。
 シノがブランコを漕ぐのをやめ、身体ごと私に向ける。


「呼び出したのは、何でですか?」


 その口調は思ったより真剣だったので、私もブランコを止めて、シノと向きあった。

 元々、呼んだ理由なんて、なかったも同然だった。
 ただこうして、高校生になってから二人だけで過ごしたことが無かったことを思い出しただけで。


「――シノと、話したくって」
「お話、ですか……?」


 私はシノに、何を話したかったんだろう。
 そんなもの、大して考えてない。
 だから、この会話だって、行き当たりばったりだろう。上等だ。


「……私は、さ」


 ブランコから降りて、私はシノの前に移動する。
 シノは、ブランコに腰掛けながら、私の顔をジッと見つめる。
 ……よくもまぁ、整った顔立ちをしているものだ。


「シノが、『特別』で――」
「……」
「好き、だよ」


 あ、意外とあっさり言えた。
 こんな言葉を言うだけでも、かなりまごつくと思ったんだけどな。

 で、シノはというと――


「私も、陽子ちゃんのことは、好きですよ」


 意外とあっけらかんと、シノも同じことを言ってくれた。
 お互い、ちょっと顔に赤みが差していただろうけれど、戸惑うことなしに。


 ……あ、そっか。


 なんだか、さっきまでの私がバカみたいに思えてきた。
 「はっきりさせたら?」という友人の言葉が、とても有りがたく思えてくる。


 なんだ、全く普通だ。
 当たり前のことを、当たり前だって確認しただけ。
 だから、私とシノは、殆ど様子をおかしくしていないんだ。


「……いやー、なんだかなぁ」
「照れますねぇ」


 お互い、笑い合う。
 シノの冗談めかした言葉も、何だかストンと胸に落ちた感触がして、気分がいい。
 ……だから。


「――ねぇ、シノ?」
「はい?」
「これから、街にでも行ってみよっか」
「……ぜひ!」


 さて、久々に「デート」とでもしゃれ込もうか。
 シノの手を引いて、私たちは笑いながら駆け出す。


 ……何だか、昔に戻ってきたみたいだ。







――翌日


カレン「……あっ」ピタッ

陽子「よ、おはよ、カレン」

カレン「――おはよ、ございマス」

陽子「どうした?」

カレン「い、イエ」

カレン「……もう、調子が良くなったみたいで、なによりデス」

陽子「ありがと」


陽子「――あ、そうそう」

カレン「……?」

陽子「私、シノのこと好きだよ」

カレン「」


カレン「そ、それは一体、ど、どうイウ……?」アセアセ

陽子「日本語ってややこしいけどさ」

陽子「――『Like』ってこと」

カレン「――あ」ハッ

陽子「悪かったね、カレン。はっきりさせないから、不安になっちゃっただろ?」

カレン「そ、そういうコトハ――」

陽子「いいっていいって」

カレン「……」


カレン(陽子が妙にテンション高いデス)

カレン(――なんだか、安心しマシタ)エヘヘ



忍「陽子ちゃん! カレン!」

陽子「おお、シノ! アリスもおはよ!」

アリス「……おはよう、陽子」


忍「……」

陽子「?」

忍「――よいしょっと」ピトッ

陽子「……?」ピクッ

アリス「!!」

カレン「!?」



忍「……うん」

忍「熱はないみたいですね、陽子ちゃん?」ニコッ

陽子「……お返しのやり方が、単純だなシノめ」

忍「ふふっ」



綾「……」

綾(はぁ)タメイキ

綾「おはよ、みんな」

陽子「よっ、綾」

忍「おはようございます」

アリス「」

カレン「……え、エエ?」

綾「相変わらず、こっちは二人とも呆けてるわね……」

綾「それよりも、陽子、シノ。昨日から言いたかったんだけど……」

陽子「?」

忍「?」


綾「……公衆の面前で、ああいうことは」

陽子「そうだなぁ……」

忍「綾ちゃんの言うとおりですねぇ……」

二人「……」ニコニコ

綾「――」














 そんな感じに、二人のちょっとした問題は決着がついた、みたい。
 何の戸惑いもなく笑い合う二人を見て、私は安心したような、まだ不安なような……複雑な気持ちだ。


 まあ、これで良かったんだろう。
 はっきりしてもらわないと、私(たち)は居心地が悪いし。
 ……ただ


「……シ、シノと陽子が」「『Like』、デスカ……」


 この二人は、慣れるのに時間がかかりそう。


 ……私?
 そうね、私は――


「私も、陽子ちゃんみたいに大きくなりたいですねぇ……」
「――シノ。そういう話はもう」
「え、身長の話ですよ?」
「……!!」


「こ、このっ!」
「陽子ちゃん、顔真っ赤です」


 
 ……私『も』、この二人に慣れることから始めないと、いけないかもしれないなぁ。

陽子とシノのお話は、これにて一旦おしまい、と。

え、綾のこれから?
大丈夫大丈夫。
……ちょっと、道が険しくなっただけかもしれないから。


結局、陽子とシノの関係は、友人としての「好き」の範疇だったんだな、とお互いに確認し合うという話でした。
最後のシーンだけ見ていると、本当にそれだけなのか? という疑問を感じる方もいると思いますが……。
今後、どうしましょうか。


それでは。

「……」


 移動教室中のことだった。
 私たちが「それ」を見たとき、一瞬、世界が凍りついたような気がした。



「あの――!」
「……!?」



 視界の中で躍る金髪。
 止まった時間。
 息を呑んでしまう、私たち。


 あの光景が、離れてくれそうにない――





 その時は校舎を跨いでの移動で、私たちは昇降口で靴を履きかえていた。
 お昼休みの終わりのことで、慌ただしく生徒が出たり入ったりしていた。


「……ん?」


 いの一番に反応したのは、陽子だった。
 なにやら神妙な顔つきになったかと思うと、キョロキョロと辺りを見回し始める。


「どうしたのよ、いきなり」
「……綾。聞こえないか?」
「どうしたんですか?」
「ヨウコ?」


 シノとアリスもやってきて、陽子を囲む格好となった。
 そろそろ教室に移動しないと、先生に怒られちゃうわよ――
 と、そんなことを言いかけた私は、


「カレンと、誰かの声だ」


 その言葉に、言葉をなくしてしまった。




「――!」
「……?」


 陽子が先導して、私たちを連れて行く。
 ここは、校舎裏。
 普通、学校関係者はなかなか使うことのない場所だった。


「――やっぱり」
「ね、ねぇ、陽子……やっぱり、覗き見なんて」


 彼女の袖を引っ張りながらそんなことを言うものの、

「あっ、やっぱりカレン――と」
「……どちらさま、でしょう?」


 まったく、アリスとシノまで陽子に巻き込まれてるんだから。
 そう、だからしょうがない。
 3対1じゃ、勝ち目がないのだから――


「なんだ、綾も結構やるな……」
「ち、違うわよ!」


 声を押し殺しながら、私は視界の中の二人を見つめる。


 改めて状況を見てみると、一方がカレンなのは確実だった。
 あの特徴的な金髪とパーカーで、彼女でないわけがない。


 そして、もう一方は――


「……誰?」
「うーん、見たことのない……」


 男子用の制服を着ていることくらいか。
 なるほど、男子生徒とカレンか。
 ふーん……
 ……。


「――つ、つつ、つまり?」
「綾、落ち着け」


 れ、冷静になれるわけがないじゃないっ!
 つまり、その……「そういう」こと、よね?


 人気のない場所。
 男子と女子。
 見つめあったまま動かない、二人の姿。



「……カレン」


 私が必死に落ち着こうとしていると、すぐ近くから声がした。
 見れば、アリスは胸の辺りで手を握り締めている。
 ……やっぱり、英国少女にもわかるのね。


 そして――


「――」


 シノは、静かに、二人を見ていた。
 その瞳は透き通っているように見えるほどきれいだった。
 けれど、普段浮かべている笑んだ表情は、窺えなかった。


 アリスはなんとなく心中がわかる気もするけれど、こういうときのシノは本当にわからない。
 彼女が真剣になることなんて、滅多にない。
 こんな、心から神妙な顔つきをすることなんて、それこそ――


「……あっ」


 陽子の声で、我に返る。
 再び二人を見れば、男子生徒の方が頭を勢いよく下げていた。
 対するカレンの表情は――ここからでは、よく見えない。

「カレン、焦ってる……」


 ただ、アリスにはわかったらしい。
 付き合いの長さがそうさせるのか、感覚で掴んだのかもしれない。


「――」


 一言も漏らさずに、じっと見つめるシノの姿もとても印象的で。
 私は、移動教室のこともすっかり忘れてしまっていたような気がする。


「……」


 一瞬の間を置いて、


「……」


 カレンが、ペコリと頭を下げた。


 対する男子生徒は、頭を掻くと、手を振って駆け出した。
 昇降口の方向だろう。
 ……つまりそういうこと、なのかな?


「――いやー、カレンもやるねぇ」


 いつもなら調子のいい陽子の声も、なんだか震えてるように感じた。


「はぁ……カレンが遠くに行っちゃったような気がするよ」


 ため息をつくアリスも、今の光景に心奪われているようだった。
 まあ、無理もない。


 一緒にいると忘れてしまいがちだけれど、カレンはとびきり可愛い。
 けどまぁ、今日みたいなことは経験したことはなかったのかもしれない。
 顔を上げても、ずっとその場から動かないのだから……。


「――青春だねえ」


 陽子は、無理して声を出さなくてもいいと思う。
 あなた少し、恥ずかしそうよ?


「……シノ」
「……」
「シノ!」
「――あ」


 私はというと、もう一人の友人が気がかりだった。
 ぼーっとした表情を浮かべるシノは、まるで……本当に、こけしのように動かなかった。


「ごめんなさい、綾ちゃん」
「……大丈夫?」
「はい」


 私に向かって笑顔を作ってみせると、再びカレンを見つめ直した。
 ……全く、大丈夫じゃなさそうだった。

 その笑顔が作り物だってことくらい、私にだってわかる。

――放課後


忍「……」

アリス「シノ……」

陽子「どうしたんだろうな? さっきからずっと、こんな感じだけど……」

綾「……」


綾「シノ」

忍「――あ」ハッ

綾「今日は、五時間授業」

綾「帰りましょう?」

忍「……」

綾「カレンももうじき、やってくるでしょうし」

忍「――カレン」ピクッ



カレン「みなサーン!」ガラッ

陽子「あ、来た来た」

アリス「……」

綾「ほら、来たわよ?」

忍「……」コクッ

カレン「――?」


カレン「シノとアリスの調子がおかしいデス?」

陽子「ま、まぁなー」

綾「ちょ、ちょっと、ボーっとしてるみたいね」

カレン「Hnn……」


アリス「……」

アリス「ねぇ、カレン?」

カレン「What?」

アリス「……」

アリス「やっぱり、いいや」

カレン「……」キョトン


忍「――カレン」スクッ

カレン「なんデスカ、シノ?」

忍「……」


ダキッ


カレン「……!!?」

アリス「!?」

綾「あ」

陽子「!」

忍「……」ギュッ

カレン「シ、シノ……」

カレン「が、学校で抱き着くのは、チョット――恥ずかしいデス」

カレン「そ、そういうのは、家デ」カァァ

アリス「カ、カレン、何言ってるの!」アセアセ

忍「……」


忍「――カレンは」

忍「私を、置いていっちゃいますか……?」

カレン「……」


カレン「もしかシテ」

カレン「……見ちゃった、デス?」

忍「……」

カレン「――みんな?」チラッ

陽子「い、いやぁ、その……」

綾「ごめんなさい、見ちゃったの」

アリス「カレン――あれってやっぱり」

カレン「……」


カレン「ハイ」コクッ

カレン「同じクラスの人デス」

陽子「ああ……」

綾「つまり――」

カレン「――『I got asked out.』」

アリス「……告白、されたんだ」

カレン「YES」



忍「……」ピクッ

カレン「シノ――どうしたデスカ?」

忍「――カレンは」

忍「その方と、お付き合いするんですか?」

カレン「……」

カレン「気持ちはたしかに嬉しかったデス」

カレン「デモ……」

カレン「私ハ……」

カレン「――」カァァ



綾(……)

綾(「どう伝えればいいのかわからない」って感じね、あの顔の赤さは)


陽子「……」

陽子(ちょっとシノ、抱き着きすぎじゃあ……)アセアセ

陽子(――なんて、別に思わないけどさ)

陽子(ちょっと、胸をよぎっただけで……)ハァ

陽子(やれやれ……)タメイキ


アリス「……」

アリス「ふ、二人とも!」

忍「?」

カレン「――アリス?」

アリス「あ、あんまり、抱き着いてると、その……」

アリス「誰かに見られちゃうよ?」

カレン「……」

カレン「――!」


カレン「し、シノ! そ、そろそろ……!」

忍「ダメです」

カレン「え?」

忍「カレンを、離したくないです」ギュッ

カレン「……」

アリス「シ、シノが……」

陽子(意外と、「重い」タイプだったのか、シノ……)

綾(――これって、傍から見たら女の子同士の抱き着きあいにしか見えないわよね)

綾(……)チラッ


陽子「……そ、そこまでにしといた方が」

忍「陽子ちゃんの頼みでもダメです」

陽子「い、いや、そのー……」

忍「――陽子ちゃんも大事ですから」

陽子「……」ハッ

陽子「そういう問題じゃなくて!」カァァ

綾(とか言いながら、顔を赤らめるのね……)ハァ

アリス(――カレンもヨウコも)

アイス(ずるいよぉ……)

 ――結局。


 シノが解放してくれるまで、何分かかったことヤラ。
 ベッドに寝転びながら、今日のことを思い返してみレバ――


『九条さん……その――』

『……』

『I'm sorry……いえ』

『ごめんなサイ、デス……』


 告白されるって、意外と照れマス。
 確かに、気持ちは嬉しかったデス、ガ……


『カレンは……』

『カレンは、離れませんか?』


 シノの表情といい、口調といい……抱き着きの強さとイイ。


「ちょっと怖いデス……シノ」


 でも。


 嬉しかったこともまた、事実だから仕方ありマセン……。





――忍の部屋


忍「……アリス」

アリス「なぁに?」

忍「どうしたんですか、今日は」

忍「アリスの方から、私の膝に乗ってくる、なんて」

アリス「……」


アリス「だって」

アリス「いきなり抱き着かれると、ビックリしちゃうから」

忍「そう、ですか」

忍「――アリスは、可愛いですねぇ」

アリス「……」


アリス(本当は違うんだよ、シノ)

アリス(あの時――カレンに抱き着いたときの、シノが、その)


忍「……えへへ」ギュッ


アリス(カレンに持ってかれちゃうんじゃないかって)

アリス(……心配になった、だけで、だから、これは)

忍「……」ニコニコ

アリス(私の、わがままなんだ――)

>>257
×アイス→○アリス
誰だ、これ……。


こういう状態になった以上、陽子はシノにどう接していくのか……
あと、結局綾はどうなっていくのか――。

行き当たりばったりの、カレン告白騒動でした。


意外と早く投下できましたが、もう少し煮詰めた方がよかったかなー、とも思います。
それでは。


いつもありがとうございます。

 ――秋。

 夏休みも終わり、蝉の声にも懐かしさを覚えるようになる時期。
 そんな蝉に変わって現れる鈴虫の声は、私たちを落ち着かせてくれる。


「……秋といえば?」


 私が窓の外を見つめながら、そんな感慨に浸っていると、すぐ近くの友人がそんな問いかけをしていた。
 顔を向けてみれば、そのお相手は、金髪少女と和風少女(……「一応」、嘘はついてないわよ?)
 いの一番に声を上げたのは、金髪少女の一人だった。


「はい! 『読書の秋』!」


 満足した笑みを浮かべる少女――アリスは、見ているこっちからしてもとても微笑ましく感じられた。
 

「正解! はい、次!」
「ハイ!」


 次もまた、金髪少女……ん?


「『運動の秋』、デス!」


 そんな風にエヘンとしてみせる少女――カレンは、その仕草がとても似合っていた。


「はい、正解! 最後は……」


 陽子は、まだ発言していない和風少女に照準を合わせる。
 和風少女――シノは、逡巡した挙句、


「……『金髪少女の秋』!」
「なわけあるか!」


 私の友人の二人は、すぐさまボケとツッコミを見せてくれた。
 うん、いつも通り安心できる光景だ。

 というより、シノ……まさか。


「ねぇ、シノ? あなたもしかして……知らない?」


 心配しながら問うた私に、シノはキョトンとしてみせた。


「……ええと、分かりません!」


 そんな自信たっぷりに言われてもなぁ……。

「――まさか、とは思うけど」
「シノ……あなた」


 陽子も私も、少し呆れてしまった。
 そりゃ、シノがその容姿らしい知見を持っているとは言いがたかったけれど……まさか、ここまでとは。


「えへへ……やっぱり、どうしても金髪少女が好きで」
「ごめん、全く言い訳になってないぞ」


 陽子の指摘ももっともだ。
 しかし、日本で15年以上生活してきたシノが、二人の金髪少女に日本語的知識で負けている……。


「……私ですら、当たり前と思ってしってることを」
「陽子……あなた、意外と客観的に自分を見れたのね」
「あっ、綾! バカにしてるだろぉ!」


 さて、陽子をからかうのは後回し。
 ともあれ――何だか、シノがこのまま知らないことだらけっていうのもなんだし。


「……ねぇ、みんな?」


 私は、一つの提案をしてみることにした。
 「なんだなんだ?」と、私を見つめる8つの瞳。
 それらに向かって、


「今日、ちょっと図書館に寄って行かない?」

――放課後・学校図書館


忍「……わぁ」

アリス「本が、いっぱい」キョロキョロ

カレン「面白そうデス!」ニコニコ

綾「もう、カレン。ダメよ?」

綾「ここでは静かにするのがマナー、なんだから……」

カレン「ハーイ!」

陽子「……」ジーッ


忍「……あ、これって!」

アリス「どうしたの、シノ?」キョトン

忍「えへへ」ニコニコ

忍「世界の美女名鑑、ってあります」ペラペラ

アリス「表紙は……」

カレン「OH! ビューティフルデス!」

忍「金髪、っていいですよねぇ……」パァァ

カレン「……シノは、こーいう人が好きなんデスカ?」ジーッ

アリス「……」ジーッ

忍「――あ」

忍「もう、お二人のことが一番! ですよ」ダキツキ

二人「……あ」

忍「二人とも、特別です」ナデナデ

アリス「……シノ」

カレン「く、くすぐったいデス――」


アリス(……二人とも、特別)

カレン(どっちも、一番……)

二人(最近は、なんだか複雑(デス)……)ハァ



綾「はぁ、まったく……」

綾「シノったら、相変わらず趣味にばっかり走るんだから……」ペラペラ

陽子「……」

陽子「なぁ、綾? ちょっといいか?」

綾「? どうしたの、陽子?」キョトン

陽子「――いや」

陽子「珍しいな、って思ってさ」

綾「……珍しい?」

陽子「いや、だって――」

陽子「あの、人見知りの綾が」

陽子「自分から提案して、みんなを集めてるんだ」

綾「よ、陽子……私、そんな情けなく見えてたの?」

陽子「……」

綾「目を逸らした!?」ガーン

陽子「そりゃ……中学生の頃のお前を知ってれb」

綾「や、やめてぇ……」アセアセ


綾「――ええ、そうよ」

綾「どーせ私は、人見知りの恥ずかしがりやよ」ハァ

陽子「いや、そこまで言ってないんだけどな……」

綾「……」

綾「あの子たちを、見てたら」ジーッ

陽子「……?」チラッ


忍「わっ、この方、凄い髪型です」

アリス「あっちじゃ結構一般的だけどね」

カレン「家の近くで見たことありマス!」

忍「……ふふ、幸せです」

アリス「……ところで、シノ?」

忍「はい?」キョトン

アリス「――ごめん、なんでもない」

忍「??」


カレン(……アリスは、言いませんデシタガ)

カレン(3つの椅子の中央に座っているシノが、私たち二人にくっつきすぎなような気がしマス……)

カレン(い、いや! だからって、その、シノのSmellがGoodだとか、そうイウ……!)アセアセ

カレン(――ハァ)カァァ

アリス(……カレン、顔真っ赤)

アリス(わ、私は普段一緒の部屋で寝てるから慣れてるけれど)

アリス(……シノって、いい匂いするんだよね)

アリス(意識したら、何だかヘンな気分になっちゃったよ……)カァァ



綾「……ほら」

綾「なんだか、放っておけないでしょ?」

陽子「あー……」

陽子「なんというか、その」

陽子「可愛い? な、たしかに」

綾「ね?」

綾「だから」

綾「私も、ちょっとあの子たちを見ていたら」

綾「……少し、リードしてあげないと、というか」

陽子「……綾も、変わったんだな」

綾「そ、そんなことはっ」アセアセ

陽子「いやいや」ナデナデ

陽子「――かっこよく、なった」ニコッ

綾「――!」


綾(そ、その表情でそんなこと言うのはズルい!)

綾(なにより、かっこいいのはいつだって……陽子だったじゃない!)

綾(と、いうより! なに、ドサクサに紛れて、ああ、頭を撫でるのよ!)


綾(ああ、もう! 考えがまとまらない!)

綾(わ、私は、ただ……)

綾「陽子に、憧れて」ボソボソ

陽子「ん?」

綾「――!」カァァ

綾「も、もう知らない!」プイッ

陽子「えぇー……聞かせてよ~」

綾「絶対、ダメ!」

陽子「ちぇー、じゃあいいや」

陽子「それじゃ、私もシノたちのトコ、行ってこよーっと」テクテク

綾「……え?」


陽子「おーい、何見てんのー?」

忍「あ、陽子ちゃん!」

忍「これです、これ!」ズイッ

陽子「おー……金髪少女だー」

陽子「って、シノ! ここに来たのは、日本のことわざとか調べるためだろ?」

忍「……あ」

忍「ごめんなさい、ついつい」エヘヘ

陽子「ついつい、って……全くもう」

アリス「よ、ヨウコ! シノをイジメないで!」

カレン「そうデス! 私たちがシノに教えられマス!」

陽子「……金髪少女に日本のことを教わる、日本の和風少女」

陽子「なんだかなぁ……」タメイキ

忍「ありがとうございます、お二人とも」

忍「でも……陽子ちゃんの言う通りだとも、思うんです」

忍「陽子ちゃんは――いつだって、私には正しいことしか、言いませんから」

陽子「……シノ」

陽子「全く、照れるって」エヘヘ

忍「ふふっ、可愛いですよ、陽子ちゃん」

陽子「――!」カァァ


アリス「」

カレン「」

アリス「……カレン」ツンツン

カレン「なんデス、アリス?」

アリス「なんだか」

アリス「二学期が始まってから」

アリス「ヨウコとシノが、すっごく仲良さそうだよぉ……」

カレン「……そう、デスネ」


カレン「でも、元々」

カレン「私たちと過ごした時間よりも、ヨウコとの時間の方ガ」

カレン「……シノにとってBigなのは、当然デス」

アリス「そう、だよね……」

アリス「……はぁ」

カレン「……ハァ」



綾「……」

綾(私は、そうして「かっこいい」あなただからこそ)

綾(――どこかで、近づけないと、思ってしまうのかしら?)

綾(よくわからないけれど……)


綾(なんだか、モヤモヤするわね……)ハァ



陽子「綾もこっちおいでよー!」

忍「綾ちゃーん!」

綾「……はーい」パタン

綾(でも、今は)

綾(こうして、一緒にみんなといられるだけで幸せ)

綾(それでいいのかも、ね)テクテク






――その周辺



男子1「おい、あの3人」

男子2「ん? なんだよ?」キョトン

男子1「すっごく、引っ付いてるけど……」

男子2「ホントだ――うわっ、あれもう……」

男子2「ほとんど顔と顔が触れてんじゃん」アセアセ


男子1「……もし、かして」

男子2「もしかすると」

2人「あいつらってレz「それはないって」


2人「!」

男子A「ありゃ、うちのクラスのヤツだ」

男子B「まぁでも……見たら、なんだか勘違いするのも、無理ないかも」

男子1「ど、どういうことだよ」

男子2「ど、どう見たって、その……さ、3人の女子が」

男子B「……」

男子A「――大宮さんのこと、か」

男子1「そ、そう! あの、黒髪のこけしみたいな――」

男子A「いいか」

男子B「……ショック、かもね」

2人「……え?」



男子A「――あいつは」

男子B「――大宮さんは」





 ――その日。


 忍たちの通う高校内の図書館に、ほんの小さな悲鳴が起こったらしい。
 すぐに消え失せてしまうような儚い声だったものの、当人たちのショックは大きかったそうな。


 そんな二人の反応を見ながら、男子Aは考えていた。


 (――どっかの高校の文化祭で、女装コンテストとかやってたっけ)

 (優勝者の画像を見たことがあるけど……全く)

 
 視線の先には、相変わらず金髪少女と一緒に引っ付いているクラスメイトの姿。
 それを見て、嘆息してしまうのだった。


 (――大宮さんに、敵うわけがない!)

ここまでです。

年内に一本だけ書いておきたかったので、書いた次第です。
……しかし、陽子との関係の話に一応の決着がついたためか、今後どう進めればいいのか思案中です。
かなりグダグダとしたお話になってしまいそうですが、それでも読んで下さる方がいればいいのですが……。

とはいえ、書いていて楽しいのは事実なので、今後も書いていきたいですね。
それでは。また来年。

 ――どうして、こうなった。


 私の中に渦巻く思いを言い表すなら、こんなものだと思う。
 いや、そもそも何となく、こういった予感はしていたんだけど。


「えへへ、アリス~!」
「シ、シノ!? そ、そういうことは……でも、いいよ、私も」


 目の前では、普段より更に深い笑顔のまま、アリスを抱きしめようとしているシノ。
 対するアリスも、何かあまり似つかわしくない(すまんアリス……)
 色っぽい表情を浮かべている。


 ……うん、決して普段なら見られない光景だ。


「シノー! アリスー! 仲間に入れるデース!」


 そして、そんな輪に加わろうとするカレンも、顔を赤く染めている。
 そんなカレンは、いつもの明るさはそのままに、「甘え」の色も濃くなっているような……。


 ――さて。


 そんな3人の「姦しい」(以前、綾に教えてもらった表現)光景を見ていると、


「……陽子ぉ」


 考えている間に、何故か私の首筋に手をかける友人の姿がそこにある。


「私、だってぇ……」


 私は、普段と今との綾のギャップに、正直ビクッとした。
 涙目のまま私を見つめる綾の表情。
 恐らく、男子が見たら卒倒するだろう――いや、そもそも綾が男子と話してる所なんて見たことないけどさ。


「――ホントに」


 私は、そんな綾の視線に出来る限り応えながら、再び思う。



 ……どうして、こうなった。







――数時間前




陽子「うわあ……」

綾「大きいわねぇ……」

カレン「そうデスカ?」

アリス「カレン、お嬢様だもんね」

忍「お嬢様な金髪少女――」


陽子「いやまぁ、この前のカレンのお父さんの車に乗せてもらった時から思ってたけどさ」

綾「いざ見せられると……本当に」

忍「お嬢様というのも……いいですねぇ」

アリス「シ、シノ!?」

カレン「――」


陽子(もうすぐ、文化祭)

陽子(学生の文化祭というのは、そりゃ多くの生徒にとっては嬉しい)

陽子(というわけで、テンションを高くして、文化祭のあれこれについて話し合っていたら――)


カレン「私の家で、パーティーしマショウ!」


陽子(と、カレンが言うので)

陽子(『前日祭』ということで、カレンの家にお邪魔させてもらうことになった)

陽子(厳密には、すぐ翌日というわけではないけど……まぁ、その辺りは置いといて)

陽子(私たち全員が同意して、今こうして、カレンの家の前にいるというわけ)



カレン「それでは、どうぞ入ってくだサイ」

カレン「明日まで、私以外には家にいまセン」

陽子「――お父さんもお母さんも?」

カレン「ハイ!」

綾「高校生だけで泊まり込み、なんて大丈夫かしら?」

カレン「もう、アヤヤはおカタイデスネ……」

綾「わ、私は、別に!」

陽子「ははっ、綾はマジメだからなぁ」

綾「よ、陽子までっ!?」

忍「もう、アリス? そんな顔しないでください」

アリス「だって……シノが、シノが」

アリス(カレンが「お嬢様」だって、そんな目をするからぁ――!)

忍「もう……」ダキッ

アリス「ひゃっ!?」

アリス「も、もう! シノ!」カァァ

忍「ふふっ……」ナデナデ


陽子「おーい、そこの二人組ー? 話、聞いてたかー?」

忍「明日までは、皆さんと一緒ですね」

アリス「カレンのお家にお泊りなんて、久しぶりだなぁ……」

綾(あ、そういえばシノ、こういう所はちゃっかりしてたわ……)

陽子(たまーに、シノの底が見えなくなるんだよなぁ……)




――カレンの部屋


カレン「さぁさぁ、入ってくだサイ!」

陽子「……なぁ、カレン?」

カレン「?」

綾「これ――カレンの部屋なの?」

カレン「ハイ! 全て私の部屋デス……」

二人「……」


忍「私とお姉ちゃんの部屋を合わせたくらい、でしょうか……?」

アリス「いや、多分シノのお家の2階部分全てくらいじゃないかな?」

陽子「いや、ひょっとしたらそれ以上……」

綾「――みんな、言っていてもしょうがないわ。正直、よく分からないもの」

綾「本当に、お嬢様なのね……」

カレン「私、『miss』だったデスカ!」

忍「??」

アリス「『お嬢様』って意味だよ、シノ」

 ……まぁ、こういった流れがあって。


 私たちは、カレンの部屋(うん、「部屋」だ)で、ゆっくりと過ごしていた。
 巨大なベッドのふかふか具合にビックリしたり、備え付けられたテレビの画質に度肝を抜かれたり……まぁ、色々とあって。


「さて、それじゃあ――」


 そう、ここから全てが始まった……。



「『Ceers!』と、いきマショウ!」


「……『ちあーず』?」
「シノ、『カンパイ』って意味だよ」


 カレンの言葉にシノがキョトンとし、アリスが説明する。
 シノの通訳への道は、長く険しいものとなりそうだ。
 いやまぁ、私も知らなかったけどさ。


「……『チアーズ』って言うのね」


 ほら、綾が知らないことを私が知ってるわけないし。




「それじゃ、『カンパイ』!」


 カレンがそう号令をかけ(うん、間違いなくその日本語、最初から知ってたな……)、私たちのグラスがカチンと音を立てる。
 部屋のテーブル(これもまた大きいんだ……)に並べられた飲み物は、どれもフルーツ系のものかな?
 

「わぁ、美味しいです……」
「カレン、これ好きだったもんね」


 上機嫌なシノとアリスに、カレンが微笑みかける。


「Yes! パパもこれ、好きなんデス!」
「へぇ、お父さんも……」


 綾も気に入ったらしい。
 うん、私もこの味は好きだ。


「本当に美味しいですねぇ……」
「ふふ、シノもイギリスのジュース気に入ってくれたんだね」


 ああ、こんなところにも見られる日英交流よ……。
 そんな二人の笑顔に綾もクスっと笑い、カレンは次々に飲んでいき、私もそれを見て微笑ましく思う。

 ……そして。


「――ほら、アリス」
「ああ、そ、そんなことっ……シノォ」


 今、目の前で展開される光景。
 その二人の友人は、お互い色っぽい表情を浮かべながら、抱きついたまま離れない。


「陽子の、バカァ……」


 で、さっきからグスッとしながら、私のすぐ近くに顔を寄せる綾。


「――なぁ、カレン?」


 綾には悪いけど、一回確認しておきたかった。


「? どうしたデスカ、ヨウコ?」


 シノたちの方へ向かったカレンが、私の方を見てキョトンとしている。
 私は、ジュースの入った缶を掲げてみせて、


「下の方に小さく、『Alcohol 3%』とか書いてあるように見えるんだけど……」


 底の部分を指し示しながら、聞いてみた。


「……アァ」


 カレンは得心がいったという表情で、ポンっと手を打った。


「Sorry……それ、パパも好きなものだったんデス」
「……つまり?」
「私が間違えて、『含まれている方』を持って来ちゃったんデス……」


 ――ああ、なるほど。

 要するに、お父さんの飲む方と間違えてしまった、と。
 まぁ、パッケージが似ていることは珍しくないのかもなー……。


「もう、陽子! 私を無視してぇ……」


 カレンと話していると、更に綾が顔を寄せてきた。
 っていうか、近い近い!


「あ、綾……一旦、引いてくれ」


 荒っぽくならないように綾の手をどかして、彼女の肩を掴み、元の場所へゆっくりと戻した。
 そんな私を綾は「うー……」と、恨めしそうに見ていた。


「ほら、アリス……顔、真っ赤ですよ?」
「あぁ、シノ! な、舐めちゃダメぇ……!」

ふと目の前を見てみると、シノがアリスの首筋を舐めていた。
 シノが舌を動かす度に、アリスの身体が艶めかしく跳ねる。
 ――本当に、男子が見たら、倒れこんでしまう勢いだ(二回目)。
 というよりこれって、冷静に考えたら――


「酒に酔った男女が、互いの身体をつつき合う、過剰なスキンシップ」


 とかいうやつじゃないか?
 表向き、女子同士のじゃれ合いだけれど、そういった意味でも問題になりそうだな……。
 ほら、「酔った勢いで――」とかいう話も聞くし。



「……はぁ」


 そんな二人にカレンが混ざり、「シノ! 私も舐いいデスカ?」「カ、カレン! ダ、ダメェ……!」
とか話している光景を見て、「陽子ぉ……」と再び近づいてこようとする綾を見ながら、嘆息してしまった。
 なんで、こんなよくわからない分析をしているんだ、私は……。



 実のところ、私はアルコールを以前にちょこっと飲んだことがある。
 あれは、そう……高校に入学が決まった頃のことだったっけ。
「記念だ」といって、父さんが注いでくれたビールを飲んで、「おおイケるじゃん」とか思っちゃったんだ。


 グビグビ飲んだわけじゃないけれど、その時にわかったことは、私は酒が強いということ。
 うんまぁ、父さんと母さんを見てたら、何となくわかるけどさ……遺伝したんだな、きっと。


 そして、わかったことがもう一つ。
 それは私が「傍観者タイプ」だということ。
 こうして、顔を真っ赤に染めて、それぞれの反応を示す友人たちを見て思った。
 私だけが妙に冷静に、いわば「観察」している。


 もしかしたら、試験前に飲んだら問題もスラスラと……いや、それは絶対にやめておこう。


 だから――


「……もう、陽子ったら、またボーッとしちゃって」


 いや、色んな意味でボーッとしてるのはそっちだよ、というツッコミは抑えて、私は再び綾と向き合う。
 なるほど、綾は泣き上戸タイプらしい。目に浮かんだ涙を見て、そう感じた。
 シノは典型的なテンションが上がるタイプで、アリスは普段と違う態度を見せるタイプ。で、カレンは甘えに転じるタイプか。
 色んな反応があるんだなぁ……。


「――ねぇったら!」


 ヤバい、つい綾への警戒を怠った!
 綾は首筋に手を回す動作を途中で止め、私にぶつかってきた。
 その細い身体のどこにそんな力があったのか。
 気づいたら、私は綾に押し倒される格好になってしまった。


「……なぁ、綾?」
「――」
「なんかさ、泣きそうな顔、してるよ?」


 そりゃ、泣き上戸タイプなら、そうだろう。
 けれど、なんだか……綾の涙目は、それだけじゃないような気がした。

「――だって」


 綾は少し首を振ってみせると、再び私に顔を寄せる。
 近くにやって来た友人の顔に、私は出来る限り真摯に応じようと思った
(さっきから綾をどこか蔑ろにしていた罪悪感かもしれない)。


「陽子が……陽子が!」


 悪いのよ、と綾は絞りだすように言う。
「?」としてしまったのは言うまでもないだろう。
 私が、悪いことを?


「――ごめん、綾。何か悪いことしたんなら謝るよ。ほら、私ってバカなトコあるからさ」


 普段なら冗談めかして言うところをスラスラ言ってしまえたのは、綾の表情が真剣だったこともあるだろうけど
 恐らく私にもアルコールの効力が出てきていたんだろう。
 ほら、何かお酒を飲むと、饒舌になったりする人はいるみたいだし。


「だから……泣かないで?」


 泣き上戸なことを分かりながら、こんなことを言うのは酷だろうか。
 とはいえ、綾のことを放っておけなくなっちゃったみたいだ。


「――そういう、所が」


 少しの間の後に、綾は再びグスッと洟をすすりながら言う。


「そういう所が、ズルいのよ、陽子は……!」


 そういう妙な所で気が利いて、変な所で優しくて、それでそれで――
 堰を切ったようにまくし立てる綾は、本当に別人のようだった。
 なるほど、酒は麻薬なわけだ。


「あ、あはは……そ、それはともかく、その――」


 そろそろ重いんだけど、なんて台詞が過ぎってしまったことに罪悪感を覚えた。
 とことん、今の私は甘くなっているらしい。


「……話、聴くよ。だからさ、その……この体勢じゃ、色々と」


 恥ずかしいよ、と言ったら、綾はキョトンとした、ように見えた。
 そして、


「――!」


 ほんの一瞬我に返ったのか、バッと私の上から向こうに跳ねた。
 そして、数秒間、顔を伏せたままだったものの……


「――聴いて、くれるの?」


 その上目遣いの表情を見るに、うん、やっぱりまだ酔っ払ってるんだな……。

向こうで、姦しくスキンシップをとっている友人たちの声が聞こえてくる。
 ……うん、正直、向こうが気になってしょうがないところもあった。
「だ、ダメッ!」「OH……シノ、大胆デス」「アリス……ここは小さい、けれど」なんて、気にならないわけがないだろう。
 というか、ホントにシャレにならないだろ!
 まずいな、そろそろ――


「綾、ごめん! ちょっとまって、て……」


 私が3人組に割って入ろうと立ち上がると、綾は私の服の裾をキュッとつまんだ。
 その力は弱かったけれど、なぜだか振りきれなかった。


「……いつも、そう」


 私が綾を向いたままでいると、綾は俯きながら訥々と話し始めた。


「いつも――シノ『ばっかり』」


 ……シノ?


 そりゃそうだろう、綾。
 私たちは、シノを友人としてサポートするということを誓い合った仲じゃないか。
 シノのことが心配なのは当たり前――
 ……『ばっかり』?


「陽子は、私を見てくれないの……?」


 綾は、顔を上げ、涙目のまま心細そうに私を見つめる。

 服をつままれた時に思い出した。
 それは、中学生の時に綾が転校して、クラスに馴染めずにいた頃のこと。
 「一緒に帰ろう」と呼びかけた下校の際に、後ろから私の制服の裾を摘んできた思い出が蘇ったから……
 私は、それを振りきれなかったんだ――。


「――シノは、私より、大事?」


 綾の目に、私は射止められてしまったような気がした。
 その透明な涙が、私の心にそのまま落ちてくるみたいな、そんな感覚。
 ……うーん、これは、なぁ。


「……いいか、綾?」


 私は、綾の肩を優しく掴んだ。
 ビクッとする綾に顔を寄せ、はっきりと言う。


「私は、シノのことは――」







 ――あれ?


「……?」


 目を開けてみると、辺りはシーンとしていました。
 近くには、少しだけ服装が乱れた、愛する二人の金髪少女。
 二人は仲良く手を繋いで、スースーと寝息を立てています。
 

「――可愛いですねぇ」


 そんな二人の頭を撫でると、「うぅん」と声を上げて、寝返りを打ってしまいます。
 本当に、愛しくてたまりません。
 正直、「その服装をもう少し……」と邪な気持ちが働いてしまいましたが、さすがにマズいという気持ちは私にもありました。
 だから、優しく見つめるにとどめておくことにしましょう。


 さて、視線を変えてみると、そこには――


「……あ」


 二人の、友人の姿がありました。
 陽子ちゃんは壁に頭を寄せながら、静かに眠っています。
 そして、そんな陽子ちゃんの膝に――


「――よう、こ」


 ちょうど膝枕になる格好で、綾ちゃんも眠っていました。
 そんな二人の姿は、こちらの金髪少女二人組とはまた違った意味で、絵になりそうな光景です。


「……」


 ゆっくりと、私は立ち上がりました。
 その際、少し頭がズキンとしたことで、「もしかしたらさっきの飲み物は……」とようやく得心がいきました。
 道理で、理性が言うことを聞きにくくなっていたわけです。


 そして、二人の元へと歩いていきました。
 足取りは確実に、誰も起こさないように静かに、静かに――

「――陽子ちゃん、綾ちゃん」


 ――私は、シノのことは――


 なぜだか、この言葉は脳裏に残っているようです。
 アリスやカレンとじゃれ合っている中、どうしてかこの陽子ちゃんの声だけが――


「……もう」


 スッと、陽子ちゃんの髪の毛に手を伸ばします。
 「んん」とほんのちょっと声を上げますが、起こさない程度の加減のまま、ちょっぴり撫でました。
 続いて、綾ちゃんの綺麗に揃えられた髪にも――


「……」


 どうしてでしょうか。
 どこか複雑な気分がしてしまうのは。


 その答えは、また後で考えましょう。
 とにかく今は、ゆっくりと寝ることが大切なような気がしました。


 金髪少女の元に戻り、私は静かに二人の間に横たわります。
 二つのいい匂いをすぐ近くで感じられる喜び。
 それを噛み締めながら、私は再び目を閉じて――










 ――シノの、ことは……――



 



 ――大事な、『友達』だって、そう思ってるよ――

ここまでです。
酒に酔った勢いで書いたら、長くなってしまいました。


今回の構想は、ネタが浮かばないので本棚を見てみたら『ひだまりスケッチ』の1巻が見えたことに起因します。
「そういえばチューハイ飲んでたっけ……」という漠然とした思いつきで、書いてみたらかなり筆が乗ってくれました。
あくまで自分の中でのキャラが酔ったイメージで、皆さんのイメージとは異なるかもしれません。


それでは。
次回はおそらく文化祭かもしれません。

文化祭。
 私たちのような高校生にとって、何とも胸が躍るイベントではないでしょうか。
 中学の頃は綾ちゃんと陽子ちゃんと、楽しんだ記憶があります。
 そして、高校では――

「……? シノ、どうかしたの?」
「いえいえ」


 いけません、ついつい凝視してしまっていました。
 朝の光を浴びて、視界の中で映える金色の髪。
 それはまるで、奇跡のようなバランスで――


「こらこら、シノ」
「わっ」


 ポンッと肩を叩いたのは、大切な私の友達でした。
 陽子ちゃんは溜息をつきながら、


「公道で、あんまりジーッと見ちゃダメだろ?」
「うう……すみません、陽子ちゃん」
「――ま、聞き分けのいいのは、シノの良い所だけどな」


 そう冗談っぽく言って、ヘヘッと笑う陽子ちゃん。
 そんな彼女に、私は何度助けられてきたでしょうか……。






 ――少し離れた所から、私は先を行く三人を見つめていた。
 シノの冗談にアリスが顔を赤らめ、それを陽子が優しくたしなめる。
 そんな、どこまでも仲睦まじい三人組を。


「――うーん」
「どうかしマシタ、アヤ?」
「ひゃっ!? カレン?」


 ビックリした。
 その特徴的なカタコト口調に反応してそちらを見れば、予想通りそこにいたのはカレンだった。
 カレンは、相変わらず可愛らしいキョトンとした表情を浮かべながら、私を見つめている。


「うーんと、ね……その」
「シノとヨウコ、デスカ?」
「……わかっちゃうの?」
「バレバレデス」


 そう言って、クスクスと笑ってみせる。
 相変わらず、憎めない英国少女だ。


「But……アヤは心配しスギデス」
「そう、思う?」
「ハイ」


 そう言って、腕を広げてターンし、笑顔を浮かべてみせる英国少女。
 そんな彼女は本当に自由で、その奔放さが私はちょっと羨ましい。


「私とアリスは、シノが好きデス」


 ほんの少しボリュームを落として、カレンは私に言った。
 さっきまで浮かべた満面の笑みを浮かべながら、はっきりと。

「うん、知ってるわ」
「アヤは、どうなのデスカ?」
「――そう、来るのね」


 そっか、私の気持ちか。
 前方を見れば、彼女は二人の友人と喋りながら、屈託のない笑顔を見せている。


 ――どうして、陽子は……私の、こと――


 ふと思い出した記憶は、私の体温を上げるのには十分すぎた。
 いけない、まだあの時のことを忘れられていない……。
 

 でも、あの時の問いかけを、本当に忘れていいのか。
 そのことを、帰った後で考えた。
 その結果……私は、「ちょっとした」答えを出したのだった。


「……ありがと、カレン」
「What?」
「思い出させて、くれて」


 そう言って、私は空を見上げる。
 本日は晴天なり――
 文化祭初日に、おあつらえ向きの天気だ。



「わぁ……」
「ついに、って感じだな」
「すごーい……」


 校門には、色とりどりのデコレーションが施されており、観る人の気分を上げていた。
 一方から一方へかけられたアーチが掲げるは、「ようこそ! 〇〇高校文化祭へ!」というアート。
 後からやって来た綾とカレンも、それを見てウットリとしている様子だった。


「――綾は、こういうロマンチックなの好きだもんな」
「……陽子」
「? どした?」

おや、おかしい。
 いつもならこんな風にからかったら、「そ、そんなこと!」とか言って顔を赤らめるようなものだけど……。


「――そ、その」
「……」


 モジモジとする友人は、何を思っているんだろう。
 付き合いの長い方の私も、時々分からなくなってしまう。


「……や、やっぱり、なんでもない!」


 逡巡した末に、綾はピューッと昇降口へ走って行ってしまった。
 しかしまぁ、後ろから見ても耳が真っ赤だ。
 まるで、カレンの家での「前日祭」の時みたいに――



 ――私だって、陽子が……!――


(……な、何を思い出してるんだ、私は!)


 いかんいかん、これはマズい。
 どうして、あの光景がフラッシュバックするんだ!


「……陽子ちゃん」
「シノ?」
「あ、大丈夫ですよ、アリス。今日も可愛いですね」
「……それ、寝起きから10回くらい聞いたよ」

短いですがここまでです。
リハビリ兼プロローグ的な何か。
本番の方は、しばしお待ちを。

ここ最近、体調を思いっきり壊してしまっていたため、遅れてしまい申し訳ありませんでした。
あぁ、二期が楽しみだ……(遠い目)

 ――で。

 私たちの出し物は何かというと、少し説明に困る。


「甘味処!」
「メイド喫茶!」


 こんなやり取りと睨み合いの末、えらく変則的な結論に落ち着いた。
 すなわち、2つを同時並行する、ということに。
 この提案への決を採った時の委員長の困惑顔は、未だに忘れられない……。

 そして、もう一つ。
 私たちにとっては、とても重要なことがまだ残っていた。
 2つの出し物を並行して進めることはともかく、そこには「役割」というものがある。
 例えば、男子なら看板を作ったり、買い出しにすすんで行ったり。
 そして、提案の都合上、女子が目立つ役割――すなわち、メイドさんだったりを担当することになる。


「……ええと、その」


 壇上の委員長が困惑した。同時に、烏丸先生も最前列を見つめる。
 クラスメイトの視線も、「その子」に集中することになる――


「……ど、どうしますか、その」
「そ、そうですねぇ――」


 委員長と先生が困惑を声に混ぜながら、協議する。
 それはまぁ、しょうがないことなんだろう。


 なぜなら――


「……シノは、どうなるんだろう?」


 私の友人――陽子がポツリと呟いた。
 それはきっと、クラスの皆が思っていることだったと、私は思った。


「皆さんは、どう思いますか?」


 先生と簡単な話し合いを終えて、委員長が私たちに視線を移す。
 周囲を見てみれば、ある人は顔を赤らめているし、ある人はどこかにやけているようにも見える。
 十人十色の反応を見て、委員長は最後に、「本人」と目を合わせた。


「……大宮さんは?」
「私、メイドさんやりたいです!」


 そうして当人――シノがハキハキと応えた時、クラス全体が妙に脱力したことは言うまでもないことだろう。

「とはいえ……大宮さんは、ええと」
「そうだよシノ。シノは……その」


 逡巡する委員長の言葉を、シノの隣にいるアリスが継いだ。
 二人とも、顔が真っ赤になっている。無理もない。

 そう、何といっても、シノは――


「……よう、お前どう思う?」
「ええと俺は――」


 耳に入ってきたのは、いつだったかシノと話していた二人の男子生徒の声。
 私がそっちを向くと、二人もまた顔を赤らめながら、ひそひそと話していた。


「常識的には……無し、だけど」
「俺からすれば――有り、かなぁ」


 聞き耳を立てながら、もしかしたらこれがある意味、クラスの総意なのかもしれないと、私は思った。
 しばらく時間が経ってから、


「皆さん」


 委員長がコホンと咳払いをして、言う。


「――臨機応変に、いきましょう」


 明快な回答を好む委員長らしからぬ結論だったけれど、クラスは全員が頷いた、ように見えた。
 委員長、お疲れ様……。

――学校祭当日・校門前


綾「……なんてやり取りもあったけれど」

陽子「結局、どうなるんだろうなぁ」

アリス「……」

アリス(シノからすれば、メイドさんをやりたいのは当たり前、なんだろうけど……)

忍「えへへ……」

忍「メイドさん……」パァァ

アリス(あまりにも嬉しそうなシノの表情を見てると、何も言えないよぉ……)


綾「あら、そういえばカレンは?」

陽子「あぁ、さっき『OH! 待ち合わせ時間に遅れてしまいマス!』って、走っていった」

綾(い、いつの間に……)



――教室前


アリス「あっ、委員長さん」

委員長「……あぁ、カータレットさん」

委員長「そして――大宮さんたち」

忍「あの! それで、メイド服は、どちらに!?」ハァハァ

陽子「シノ、落ち着け」

綾(あぁ、ここまで嬉しそうなシノを見ると、辛い……)キュッ


委員長「……ちょっと、いいかしら」ヒソヒソ

陽子・綾「?」

委員長「結局」

委員長「……色々と、職員会議で協議された結果」

委員長「『男子』は、裏方作業に徹するべきだ、って結果になったみたい」

二人「」

忍「メイドさん、メイドさん~♪」

アリス「シ、シノが歌を……」

委員長「……それで」

委員長「そのことを、その――大宮さんに言っていいもの、なのか」チラチラ

委員長「……」キュッ

綾(委員長、苦しそう……)

陽子(色々と苦労してたもんなぁ……)


男子A「……ん?」

男子B「あれ、委員長たち、どうした?」

委員長「!」

陽子「よ、よぅ、二人とも」

綾(だ、男子……!)アセアセ


男子A「……あぁ」

男子B「もしかして委員長――あのこと?」

委員長「……えぇ」

男子A「ふーん」


男子A「おはよ、大宮さん」

忍「あっ、おはようございます!」ペコリ

アリス(シ、シノが男の子と……)

アリス(あれ、でもシノ自体、『女の子』じゃないから、これは自然で、ええと……)グルグル


男子B「……」

男子B「今、女子なら別のあそこの空き教室で着替えてるよ」

委員長「!?」

忍「わぁ、そうなんですか! 綾ちゃん、陽子ちゃん、早く行きましょう!」

男子A「待った」ポンッ

忍「はい?」


男子A「いいか、大宮さん」

男子A「……今、この教室の中に烏丸先生がいる」

男子A「話してから――そことは別のトコで着替えることになりそうなんだ」

委員長(……先生!?)

陽子「お、おい、それどういう――」

綾(ど、どうなってるの……?)

忍「……あ」

忍「そう、でしたね――私としたことが」

忍「お二人とも、ありがとうございます」ペコリ

忍「それじゃ陽子ちゃん、綾ちゃん、アリス、また後ほど」タタタッ



委員長「……どういうこと?」

男子A「ん、簡単なこと」

男子B「俺たちがカラスちゃんに、『大宮さんには、何としてでもメイドさんをやらせてあげてほしい』ってお願いしただけ」

陽子「……それ、って」

男子A「職員会議だか何だか知らないけど」

男子B「大宮さんが、マズいこととか起こしそうにないことくらいは、わかってるつもりだし」

綾(……こ、この人たち)


アリス「あ、あの……」

アリス「それじゃシノは――メイドが出来るってことに?」

委員長「……いいの? 烏丸先生は、それで」

男子A「先生はかなり迷ったけど、最後は俺たちの提案に乗ってくれた」

男子B「まぁ、『久世橋先生に怒られちゃいますねぇ』とか溜息はついてたけど」

委員長「――バレたら、あなたたちだって危ないんじゃないの?」

男子A「ま、別に」

男子B「中学とかと違って、内申なんて無いしなぁ……」

男子B「それに、生徒がやりたいことできない学校祭って、どう思うよ?」

委員長「……それは」


陽子「……ま、いっか」

綾「ちょ、ちょっと、陽子?」

陽子「そんじゃ綾、アリス、私たちはそこの教室に着替えに行こう」

アリス「……シノ、大丈夫なのかな?」

陽子「いいっていいって」

陽子「なにかあった時はカラスちゃんと、そこの二人が責任取ってくれそうだし」

男子A「おお、プレッシャーだぞ」

男子B「ま、なんとかなるだろ」

陽子「それじゃ……委員長も、お疲れ様」

陽子「また後でなー」タタタッ

綾「あ、ま、待ちなさいって陽子!」

アリス「ヨウコー!」

委員長「……」

委員長「で?」

男子A「なにか?」

委員長「正直なところは?」

男子A「……」

男子B「……」


男子AB「大宮さんのメイド服姿に、めちゃくちゃ興味があったから」


委員長「……後で大宮さんが問題にならなくても、あなた達は職員室に突き出すことにしましょう」アキレ

男子A「おいっ!」

男子B「委員長はマジメだなぁ」

今回はここまで。

結局、欲望に人は勝てないというお話(嘘はついていない)。
ちょっとオリキャラがでしゃばり過ぎた感がありますね……次回は、主人公勢中心で回したいと思います。
あ、次回はカレンも登場予定です。

今更ながら原作をちょこちょこと読み始めてみると、シノたちの学校祭にイサ姉たちは来てないんですね。
アニメスタッフは、本当に素晴らしい改変をしたんだなぁと改めて感嘆しました。


それでは、また。

ごめんなさい、もうしばらくかかりそうです。




小ネタ



忍「……」ズーン

アリス「だ、大丈夫だよシノ!」アセアセ

アリス「つ、次のGreeceには勝てる確立高いよ?」

忍「――その、次は?」

アリス「……」

アリス「こ、Columbiaは、うぅ……」

忍「……」


忍「あぁ」タメイキ

忍「私たちのチームも、アリスの所と当たれればいいんですけどねぇ……」

忍「そう、夢の英国!」パァァ

アリス「……」

アリス(シノ、EnglandとUnited Kingdomの区別ついてる、よね……?)ドキドキ





書いてて、シノはスポーツに興味持ってる姿が想像つかないことに気づきました……。

訂正:☓立→○率

GL突破は難しいかもしれませんが、応援したいです。

少し書けたので、投下したいと思います。
地の文ばかりで読みにくいかもしれません。

あと本当に今更ですが、>>32の時点でシノとアリスのコミュニケーションが成立するはずありませんね……ミスでした。
それでは、小出しにしていきます。

 ――AM9:00


「わー、そっちの服、可愛い」
「ありがと。でも、そっちも凄く似合ってるよ」


 教室のあちこちで、互いに互いを褒め合う声が聞こえてくる。
 ワイワイガヤガヤと、本番は始まっていないのに、もう学園祭のような感覚だった。


「……みんな、キレイ」
「いやー、アリスが和装してると、面白いなぁ」


 私が呟くと、ふんふんと納得したように頷く陽子がすぐ近くにいた。
 そちらの方へ目を向ければ、いやはやなんとも――


「陽子、凄く似合うね」
「そっか? へへ、ありがと。アリスも可愛いな」
「うん! 何か、『頼れるアネキ!』って感じ」
「……実の弟たちにも、そんな風に思われたらいいんだけどなぁ」


 素直に思ったことを言うと、陽子はクルッと後ろを向いて、頭を掻いていた。
 おそらく、照れ隠しだろう。
 察した私は、メイド服組の方へと目を転じる。


「綾!」
「……うぅ」


 声をかけると、綾は恥ずかしそうにモジモジとしていた。
 しかし、陽子が「頼れるアネキ」なら、綾は「花畑の百合」みたいだった。
 たおやかで、折ってはいけない雰囲気、というか……要するに、


「綾も凄く似合う!」


 ということだった。


「ア、アリス! そ、そんな大声出さないでぇ……」


 私が笑顔で呼びかけると、綾はガクガクと震えてしまった。
 元来、恥ずかしがり屋の性分の綾にとって、物凄く大変なんだなぁ、と一人頷く私だった。

 実のところ、前日に実物を着てみる人もいたりした。
「着たい人はどうぞ」というノリで。
 私たちは、採寸だけして、そのまま下校するという感じで、今日を迎えた。


 何故かといえば、そこでプルプルとしている彼女が身をもって証明してくれているし、
「あぁ、あいつらも、もーすこし嘘をだな……」とか未だに後ろを向いて呟いている彼女もいる。


(……みんなカワイイ)


 そんな人たちを見て、嬉しくなっていると――


「はい、みんな! そろそろ着替え終わった?」


 あっ、壇上に委員長の姿が。
 パンパンと手を叩き、さながら教師のように見える。


(……委員長も甘味処)


 そういえば、私はシノたちと以外、あまりお話をしたことがないような気がした。
 メイド喫茶と甘味処で別々に別れちゃうけど……それは、裏を返せば、


(色んな人と沢山お話する機会!)


 ということになる。
 私は、今更ながらそんなことに気づき、一人胸を躍らせた――


「……うぅ、慣れないわね」
「もう、そろそろちゃんと立てって。綾も凄く似合ってるぞ」
「――あ、あなたのそういう所が!」
「またか!」


 ――後で、二人の会話を耳に挟み、「綾は大丈夫かな……」と思うのだった。
 楽しくないと「お祭り」にならないから。


「……そーいえば」
「な、なによ」
「シノ、どーしたかなーって」
「あっ」
「あっ」


 私と綾の声は、ピタリと重なった。

 そうだ、シノはあれから――!


「……うん、全員、着替え終わってるみたいだし」


 委員長はそう言うと、扉の方を見て、


「入っていいわよ」


 と、優しく言った。


「わぁ、皆さんよくお似合いで」


 ほんわかとした口調で入ってきたのは、シノその人だった。


「……」
「へぇ……甘味処って、こういう感じなんですねぇ」


 女子の視線を一身に浴びせられながら、シノはどこまでもマイペースだ。
 さっきまでのザワついた感じは一瞬で立ち消え、全員が黙りこんでいた。ゴクリと唾を飲み込む音も聞こえる。
 きっと、シノは気づいていない。


「――改めまして、大宮忍です!」


 ニッコリと微笑んで、壇上でペコリと頭を下げるシノ。
 そんな彼女に、誰もが心奪われているなんて――



「……嘘、でしょ」
「あれが――おとk」
「シッ! 悲しくなるから言わないの!」


 静寂の後で、さっきまでのザワつきが戻ってきた。
 けれど、そこにあるのはさっきまでと、ちょっぴり違う感じもする。


「私たちは私服姿を見慣れてるから何だけど……」
「シノって、本当に恐ろしいのね……」


 改めて感じ入った、とばかりに友人二人が頷いた。
 私も便乗させてもらう。

「ええと、こういう格好で接客をするのは初めてなので……」


 にこやかな表情は全く崩さないままで、少しばかり頬を赤らめてモジモジとしてみせるシノ。
 何という反則級。しかし、当のかr――いや、敢えて――「彼女」は、それに気づきもしない。


「皆さん、よろしくお願いします!」


 そう言って、シノは再度頭を下げた。
 再び顔を上げると、視線が私とバッチリ合った。


「……」
「――!」


 その柔和な笑みを、私は忘れられないだろう。
 今まで見たシノの顔の中で、一番キレイで、奥底にまで引きこまれそうな、その微笑みを。
 つい気恥ずかしくなって、プイッと横を向いてしまう。顔が赤らんだのを確かに感じた。


「はーい、それじゃ大宮さんの挨拶はおしまい、ってことで」


 いいわね? と、委員長が皆に確認を取る。
 再び黙りこむ一同は、どこか困惑気味ではあった。
 それはそうだろう、事前に決を採ったとはいえ、実際に見るのとそうでないのとでは大違いだ……。


「……」
「よ、陽子?」


 静寂の中、隣の女の子が「パチパチ」と手を叩き始めた。
 たった一人だけの拍手は、しかし、静かな教室内によく響いた。
 それに倣って、私も同じ音を鳴らす。
 困惑気味だった綾が、私たちの後についてくる。
 そして、最後には全員を巻き込み、大きな輪になった――

 ――AM9:30


 シノを迎えた後、最後の調整に向かっていた男子たちも戻ってきていた。
 全ての席が埋まる――おお、何だかんだで皆、楽しみなんだなぁ。
 そうして、隣同士でワイワイとやってると、カラスちゃんがゆっくりと入ってきた。


「はい、皆さん! 今日までお疲れ様でした」


 そして響く、優しい声。あぁ、これだけで癒される……。
 周りを見れば、例えば「ホントきつかったよねー」なんて言いながら、頬が緩みきった女子の姿がある。
「もうこんな力仕事、二度とやりたくねー」なんて言う男子も、素晴らしい笑顔だった。


 私は、そんな皆を見てしみじみと思う。
 学園祭ってのは、そういう行事だよなぁ、と。


「そして、今日からが本番です!」


 教壇上で満面の笑みを浮かべるカラスちゃんは、本当に楽しそうだ。
 その気持ちは、きっと全員が持ち合わせているんだろう。


「皆さん、楽しみましょう!」
「おおーっ!」


 カラスちゃんがガッツポーズを取るのと同時に、私たちも腕を大きく上げた。
 いやぁ、始まる前からワクワクするね!


「この服で、接客、なんて……」


 ちょいと近くのお嬢さんは、振り上げた腕がプルプルと震えてますけど……。



 さてと。
 何か色々なおカタい注意事項とかを言った後で、カラスちゃんは「それでは!」と教室を出て行った。
 チラッと時計を見れば、9時40分。うん、まだちょっと余裕アリ。


「陽子、私、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「ん、行ってらっしゃい」
「うん!」


 律儀にそう言ってくれたアリスに返事をし、私は机に頬杖をついた。
 少し、この余韻みたいな感覚に浸っていたい……。

「あ、あのさ、大宮さん……」


 ん? 聞き覚えのある声だな。
 見れば、シノが今朝私が話した二人の男子といる。


「はい、なんでしょう?」
「……えぇと、その」
「一緒に写真、撮ってくれるかな?」


 モジモジとした様子の二人は、こっちから見る限り、頬の赤みがバレバレだった。


「はい、いいですよ」


 キョトンとした様子のまま、シノは立ち上がった。


「それじゃまず、俺からでいいか?」
「おう……3、2、1」


 パチリ、とケータイの音が鳴る。
 ちなみにポーズは、シノと男子が近くで一緒に立っているというごくごくシンプルなもの。


「終わったぞ」
「そんじゃ次な……いいか、大宮さん?」
「えぇ、大丈夫ですよ」


 再度確認する男子に、晴れ晴れとした笑顔を見せるシノ(メイド服Ver)。
 自分の望んだ服を着られて、ご満悦といった風だ。


「そ、そっか」


 おいおい、自分から声掛けといて、そんな顔赤くするなって……。
 やれやれ、と私は溜息をついた。
 中学時代まで、シノと個人的に写真を撮ろうなんて言い出す男子はいなかった。
 あの二人が特殊なのか、はたまた――


(シノが、私たちの想像以上に「女っぽさ」に磨きをかけているのか……)



 と、机に頬杖を付きながら、何となく時計を見れば――9時50分!?
 ヤバい、そろそろ最後の打ち合わせを甘味処班で行わないと……!


「い、委員長! そろそr」
「そこの二人、何してるの!」
「……あれ~?」


 当の委員長、何やら男子二人組にご不満の様子。


「まったく、学園祭直前なのに、そんなにほうけて……」


 委員長が呆れた様子で溜息をつく一方で、シノたちは、


「……」
「……」
「わぁ……」
「な、なによ?」


 委員長を静かに見つめていた。
 キョドった様子の委員長は、なかなかレアだ。

「いや、お前さ」
「なんというか――似合うな」
「はい! とてもお似合いです!」
「……な、ななっ」


 何言ってるの! と、震えた声が私に届く。
 あちゃー、あの三人……直前だってのに、ややこしいことしてる場合かっての。


「おい、委員長! そろそろ」


 私が声を張り上げ、呼ぶ――


「……あ、あの」


 ――前に小さな声が、届いた。

尻切れトンボ感が半端じゃありませんが、今回はここまでです。
気づけば、放送終了から一年経ちそうなんですね……時の流れは、あっという間です。

それでは。
久世橋先生、誰になるのかなー、などと思いながら。

それじゃ、今回も地の文付きで投下します。
少し、雰囲気が変わりました。とはいえ、シリアスになったというわけではない、と思います。
どちらかというと少女漫画のような……まあ、投下しましょう。

 

 ――AM9:48


(あぁ、そろそろ時間が……)


 私は焦った。
 昔から、時間通りに事が運ばないと、すぐに困ってしまう性分だった。
 予定通りにやるべきことをテキパキとこなす。
 その流れが崩れると、途端にポツンとしてしまう。


 10分前になるまで、2分足らず。
 シノの元へ男子二人が行ってから、ハラハラと見ていたけど、そろそろ時間だ。
 シノを呼んで、メイド喫茶側も最後の打ち合わせを行わないといけない――


(……どう、すれば)


 チラッと見れば、和装をした「彼女」は、どこかボンヤリとしている。
 ダメだ。こういう時のあの子は、あまり頼りにならない……。


「……うぅ」


 ゆっくりと、私は立ち上がった。
 ただでさえ衣装のせいで恥ずかしかったのに、心臓の鼓動は倍加したようにすら感じる。
 どうすればいい? 「男子」となんて、話したこともない気さえする。シノは例外中の例外で。



 ――綾、変わったよな――



(……陽子)


 電流が、身体に走ったような気がした。
 「図書室に行こう」と提案した私に、彼女はそんなことを言った。
 その名の通り、太陽のような笑顔で。
 その言葉が、私の中でずっと響き続けている。


「……」


 ゆっくりと、彼らに向かう。
 少しばかり逡巡していた間に委員長まで加わり、どうやら事態はよりややこしいことになっているようだ。
 ……それでも。


(足は、止めない……)


 そう、私は「変わった」はず。
 大丈夫だ、落ち着くのよ私。
 もう、中学時代の私は、いない――!
 四人の近くにまで行き、スゥっと息を吸い、


「……あ、あの」


 我ながら何て、か細い声。
 ちゃんと伝わっただろうか?

「……?」
「あ、綾ちゃん」


 三人の疑問符を浮かべた顔と、シノのほんわかとした表情。
 一瞬、萎縮する。けれど、踏みとどまった。
 私は、ゆっくりと話す。噛まないように、噛まないように……。


「そ、そろそろ……時間といいますか、その」


 え、なにこれ? 
 私の口からちゃんと出ているわよね?
 ダメだ、言いたいことはまとまっているはずなのに、頭がグルグルして――


「……あ、集まって、ですね、あの」


 ――言葉が、上手く出ない。


 すぐ近くにいる男子は、キョトンとしている。
 うっ、男の人の視線……どうしよう、なんでこんなに怖いんだろう。
 陽子やカレンなんて、あんなに当たり前のように男子とも会話している。
 シノは別としてもアリスだって、支障をきたしてない、のに。


 私だけ、取り残されたの?


 なんてことだろう。
 結局、私は変われていない……。




「時間……あぁっ!」


 ビクッとした。
 眼前の委員長が大きな声を出したからだ。
 そして、キッと男子たちの方へ視線を向ける。


「あなたたち、もう直前も直前じゃないの!」
「うわ、ホントだ」
「そろそろ男子組の方へ向かうか」
「おう」


 大宮さん、ついでに委員長もガンバ! 
 そんなことを言いながら、男子たちは去っていく。
 ……あぁ、良かった。とりあえず、「男の人」はいなくなった。
 何だかよくわからないままホッと息をつくや否や――


「小路さん、サンキュー!」


 ……え?
 完全に、油断していた。
 もう、「責務」は終わったのだとばかり思っていた。

 声に反応し振り向いてしまうと、二人の男子が笑っていた。
 視線はバッチリ合ってしまう。
 でも何故か、私は震えてもいない。ピクッときたものの、すぐに止まった。
 すぐさまペコリ、と頭を下げる。
 そうするのがベスト、という気がして。


「全く、最後まで……」


 顔をあげると、呆れ顔で呟く委員長の姿があった。ほんの少し、顔が赤くなっている。
 きっと、時間のことを失念していたからだろう。
 私は――今、どんな表情をしているのだろう。分からない。
 少しだけ頬が熱いけれど、気恥ずかしさはあまり感じられなかった。


「それじゃ、私も甘味処班へ……っと、小路さん。ありがとね」
「い、いや、その……どういたしまして?」


 再びペコリ。
 顔を上げれば、クスクスと笑いながら委員長が去っていこうとしていた――


「初めて見たわ。小路さんが男子と話した所」


 ――!?
 またしても、不意打ち。
 私がクルッと振り向けば、委員長は甘味処班の人たちを集めていた……。

 
 
(……からかわれた?)



 いや、さすがに考え過ぎか。委員長にも悪いだろうし。
 思い返してみて、普段、アリスが異性と話すレベルの10分の1位だと分析する。
 陽子やカレンと比べるのは、まだまだ無理だけど……。


「……あれ?」
 

 何を「分析」しているんだろう、私は。
 そもそも、何をやらかしていたんだろう。
 ――思い返しても、赤面しない。
 「しっくりときた」という文章表現が、これほどピッタリ当てはまる状況はあっただろうか。
 当たり前のことを、当たり前にしただけなんだから……。



 「……綾」


 ハッと振り向けば、そこには陽子の姿。
 浮かべている表情は、今まで見たこともないほどの優しさを湛えていた。
 穏やかに、彼女は言う。


「おめでと」
「!?」


 そして気づけば、頭を撫でられている……。
 へぇ、陽子の手は、「女の子」してるのね。綺麗で心地いい……あれ?
 な、何をしているの、この子は!


「よ、陽子!」
「昔からの『親友』が変われた記念だ。少し、許してよ」


 私が顔を真っ赤に染め上げて抗議しても、意にも介さない陽子。
 ど、どうすれば……あっ、そうだ!
 甘味処班に、この子を送り込めば――!



「……」


「変われたんですね。綾ちゃん」


 私が黙りこくっていると、これまた優しい声が聞こえてくる。
 さっきの「男子」と比べると、全く声のトーンが違う。声変わり、という現象がシノには起こらなかったとしか思えない。
 そう。だから私は、この子をある意味で「女の子」と見なすことが出来ている。


「私、初めて見ました。綾ちゃんが勇気を出して、踏みだそうってした所……そして、実際に踏み出した所も。凄いです」


 私も、考えないといけないのかもしれませんね――
 シノはそう言った後で、ポツリと意味深なことを呟いた。
 この子は何を「考える」のだろうか?
 私たちのグループは、今のところ良好な関係としか考えられないけれど……。


「もうっ、猪熊さん! 早く来ないと、話し合いが出来ないわよ!」
「あ、ごめん委員長!」


 あっ、陽子の手が頭から離れる。
 何も感触が無くなった頭は、熱を帯びていることが感じられた。
 陽子の手は、太陽のように温かい――名は体を表すというのは本当らしい。


「そんじゃな、二人とも! 楽しもう!」


 そう言うと、ピューッと甘味処班へと向かっていくのだった。


「……」
「ねぇ、シノ?」


 私は、どこかボンヤリとしている「彼女」に呼びかけた。
 どういうことなんだろう? もしかして、見えない所で軋轢が生じていたとか?
 ……まさか、ねぇ。


「――メイド喫茶班の所、行かなきゃ」
「……あっ」


 何か考え込んでいたようなシノは、パッと顔を上げた。


「そうですね、ありがとうございます綾ちゃん!」


 そう言うと彼女もまた淑やかに、メイド喫茶班に合流した。



「……」


 勿論、本当に言いたかったことはこれじゃない。
 けれど今は――


「学園祭、楽しまないとね!」


 そして、私もシノを追うような形で、メイド服班に向かうのだった。



 その頃になると、メイド服でいる自分というものがあまり気にならなくなっていた。
 さっきまでの気恥ずかしさが、嘘のように雲散霧消した。
 思い返すのは、「ありがとな!」と言ってくれた男子たちと、「初めて見た」と優しく言ってくれた委員長――


(……神様がくれたご褒美?)


 そうならいいな、とロマンチックなことを考えながら、私は時計をチラリと見る。
 AM9時53分――いよいよ、なのね。

ここまでになります。
……いや、ここまで書いて、まだ肝心の本番が始まっていないことは凄いですね。
次回は台本形式(?)中心で行っていく感じになる予定なので、トントンと進めば……いいですね。

「少女漫画的」といっても、別に綾が件の男子に好意を抱くとか、そういう展開は考えていません。
ただ少女漫画って、主人公の女の子も成長していく側面があるので、そう評しました。
そもそも「きんモザにそんな要素いるかな……」とか考えていましたが、書いていたら筆が乗ったので、綾の心情描写に特に文章を割きました。
もしかしたら自分の無知で、綾も男子と普通に話していたりする、のかなぁ……。
陽子やカレンはそういうイメージが強いのですが、皆さんはどうでしょう?

おっと、長くなりすぎました。
それじゃ、ここまで。次回から、本番スタートです。




――開演


男子A「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい!」

男子B「とびきりのメイドさんと……えっと」

男子B「和装姿の人? が接客してくれますよー」

男子A「……お前、なんか他に言いようはないのか?」アキレ

男子B「それじゃ、そっちは思いつくのか?」

男子A「悪い、無理だ」




――甘味処班



委員長「あ、あの二人は……」プルプル

陽子「まぁまぁ委員長」

陽子「受付なら、あんな感じのお調子者の方がいいと思うよ」

陽子「堅苦しいのは、お祭りに似合わないだろうし」

委員長「……まぁ、猪熊さんの言うことも一理あるわね」

委員長「それじゃ、私たちは臨機応変に接客といきましょうか」

陽子「おー」ニコニコ


アリス「……」

陽子「ん、どうかしたアリス?」キョトン

アリス「う、ううん」

アリス「……陽子って、あの二人と仲良しなのかなーって」

陽子「えっ」

アリス「……」ジッ

陽子(受付のヤツらのこと、だよね……?)

陽子「いやまぁ、普通に話す程度だって」

アリス「……」

アリス「そっか」クスッ

アリス「それじゃ陽子、そっちの班も頑張ってね!」ニコニコ

陽子「……」


陽子(……アリス?)

陽子(今の問いかけはなんだろう?)

陽子(うまく言えないんだけど、なんだか)

陽子(少しだけ、私とあの二人が仲良しであってほしいなー、って)

陽子(そんな感じが……)

陽子(ま、いっか)



――メイド喫茶班


綾「……あぁ」

綾「ついに、この時が」プルプル

忍「綾ちゃん、大丈夫ですか?」

綾「あ、あぁ、シノ……」

綾「大丈夫よ。さっき何とか――」

綾「……」ガクガク

忍「ホ、ホントに大丈夫ですか?」


綾(……男子とまともに話したことなんて久しぶりだった)

綾(小学生の頃以来かもしれない……ああ、だからこんなに緊張を)

綾(いや、きっと違う)

綾(その後、大切な友達……陽子が起こした行動のせい、よね)


綾(おかしいわね、まるで)

綾(カレンの家で、間違ってお酒を飲んだあの時みたいに考えが回らない……)

忍(綾ちゃん……心配です)キュッ



――数分後



男子A「いらっしゃいませー!」

男子B「お客さま二名、来店!」

忍「!」

綾「!」


客A「へぇ、なかなか凝ってるな」

客B「文化祭に本格的なのっていいわねー」

綾(お、男の人と女の人……)

綾(どうして、二人とも女性じゃないのよ……)アセアセ

忍「……あっ」

忍「いらっしゃいませ、お客様!」ニコッ

忍「こちらへどうぞ!」

客A「ああ、ありがとう」

客B「ふふっ、可愛いわね」

忍「ありがとうございます!」ペコリ


綾「……」

綾(ああ、私が動けないうちに、シノが案内を……)

綾(どうしてこう、身体が動かないんだろう)

綾(どうしても萎縮するこの身体が恨めしい――)



――昔からの親友が変われた記念だ――


綾(……あの言葉)

綾(嬉しかったはず、なのに)

綾(私は全然、それに見合うようなことを――)


忍「考え過ぎちゃダメです、綾ちゃん」


綾「……!」ハッ

忍「実は私も、色々考えてしまってます」

忍「――多分、綾ちゃんにも想像が付くようなあれこれを」

綾「……シノ?」

綾(なんだろう――)

綾(さっき、私に声をかけてくれた時も、今のように意味深長な表情をしていた……)

綾(優しさと愛しさがいっぱいの顔つきに――迷い?)


忍「私は」

忍「綾ちゃんが『踏み出した』所を、この目でしっかり見ました」

忍「そして私は、今の綾ちゃんなら今まで出来なかったことだってなんでも出来ると思ってます」

綾「!」

忍「……綾ちゃんは、私の言うことが信じられませんか?」ジッ

綾「……」


綾(そう、よね)

綾(私と陽子とシノ、三人)

綾(中学の頃に知り合って、これまでずっと一緒だった)

綾(……私が、シノの言うことを信じられない?)


綾「そんなわけ、ないじゃない」

忍「ふふっ、それでこそ綾ちゃんです!」ニコッ

綾「……」

綾「もう、シノったら」

綾「私を励ましてくれるのはとても嬉しいけど」

綾「お客様にお水を出すの、忘れてるでしょ?」

忍「あっ!」ハッ


綾(まったく)

綾(妙な所で鋭くて、おかしな所で抜けている)

綾(そんな、この子が――)

綾「大丈夫、私がやるから」クスッ

綾(こんなに大きな存在だった、なんてね……)

忍「……」

綾「す、すみません、お客様! 遅れてしまいまして……」プルプル

客A「ああ、大丈夫。そう緊張しないで」

客B「いいのよ、気にしてないから」

綾「あ、ありがとう、ございます……」アセアセ

忍(――綾ちゃん)


忍(大丈夫です、綾ちゃんなら)

忍(きっと、これからもどんどん変わって行けます)

忍(――私、も)



――甘味処班


陽子「いらっしゃーい!」

アリス「お茶ですっ!」

客C「おお、綺麗な金髪……」

客D「留学生?」

アリス「い、いえ! ここの生徒です!」

客C「すげー、日本語上手いね……」

客D「もう立派なバイリンガルね」

アリス「あ、ありがとうございます!」


陽子「……」

陽子(そういや、アリスはバイリンガルになるのか)

陽子(カレンはお父さんが日本人だし、そう考えるとアリスって何気に凄いな……)

陽子「今更か」

アリス「陽子! お客さま!」

陽子「ん、おう」

陽子「いらっしゃいませー!」

 ――接客に追われながら、私は充実した気分に満たされていた。
 少なくともうちのクラスは、全員やってきて文化祭に参加している。
 このことだけでも、何故か嬉しくなるんだよね。
 それに、こうして人と接していると、
 やっぱり私は人と話すのが好みだということがアリアリと分かって、嬉しくなったり。


(……祭り、かぁ)


 なるほど、大昔から今まで、多くの人に親しまれてきたわけだ。
 ホントはこういうあれこれを考えるのは綾の役目なんだけど、アイツはそれどころでもなさそうだし。


「い、いい、いらっしゃいませ」
「綾ちゃん、ファイトですっ」


 ほら、声も手も震えている。
 でも、縮こまってないし、しっかり目の前を向いている。
 近くには、お互いにとって大切な友達だって付いている。


「人は変われる」なんて、CMとかではよく聞くフレーズだけど、大切な友達がそれを実践したなんて格別だ。
 私まで、何だか熱くなってくる。


「お客様、二名!」


 おっと、外のお調子者たちが声を上げた。
 どうやら、客足は途絶えることもないらしい。
 まぁ――休みたいなんて、全く思わないんだけどさ。


「いらっしゃいま……」


 そして――



――同時刻


男子A「……うーん」

男子B「なんだよ?」

男子A「いや――今のサングラスの人、どっかで」

男子B「ああ、あの人か。あのスタイルとか、モデルみたいだよな」

男子A「……モデル?」

男子A「ああ、そっか」

男子B「悩んだと思えばあっさり納得するのな……」




 ――やってきたのは。


「やっほー、陽子ちゃん」


 耳に響く、陽気な声。
 私にとっては、シノと同じくらい長い付き合いになる人。
 サングラスをかけていても、そのスタイルの良さとか諸々が突出している。


「イ、イサ」
「ストップストップ。一応、内緒ってことで」


 つと、私の唇に綺麗な指が当てられた。
 絹のようにつややかなその指に、私の声帯は参ってしまったとみえる。

「もう……正直、隠すつもりないでしょ?」
「ふふっ、まぁバレたらちょっと困るし」
「バレたらバレたでいい、とか思ってるわね……」
「お客様ー! こちらに空き席がございます!」


 お客様――イサ姉とお友達は、そんなことを言いながら、空いた席に案内されていく。
 メイド喫茶側も含めて、店内の視線がイサ姉に集中していた。
 いや、分からないでもないけどさ。というか、妥当?


「あっ、お姉ちゃん!」


 イサ姉が席につくと、すかさず動き出そうとするメイド喫茶側の住人。
 おいおい、こっちに来ちゃダメだろ。メイド喫茶側に、お客さんが来店してるし。


「シノ。イサ姉は、甘味処班の席だから」
「えぇ~……陽子ちゃんはケチンボですね」


 こっちに来ようとするシノの頭に、私は軽く手を載せて通せんぼする。
 すると上目遣いで、シノは膨れ面をしてみせた。
 うん、全く迫力がないし、むしろ……。

 
「――あ、後で何かおごってあげるよ」


 やばい、ついドギマギとしてしまった。
 正直、シノの不意打ちほど卑怯なものはないと思う。
 

「わぁ、本当ですか?」
「……100円くらいまでなら」
「やっぱり、ケチンボです」


 私がそう返すと、シノは嬉しそうに破顔する。
 そのままクルッと身を翻し、すぐさまお客さんの元へと向かっていった。


「はぁ……」
「おーい陽子ちゃーん、注文おねがーい」


 私が軽く溜息をつくと、図ったかのようなタイミングで聞き慣れた声が響いた。
 顔は見えないけれど、絶対ニヤニヤしてる。間違いない。


「さて、と……」


 それじゃ私も、本業に戻りますか。
 せめて、イサ姉に負けないくらいの笑顔で仕返ししてやろう……。


「……陽子」
「全く、あの子ったら」


 ……背中に感じる二人分くらいの視線は、敢えて無視。ごめんね。




「はいお客様、ご注文の宇治抹茶になります」
「わぁ、美味しそう」
「ありがとう」


 私が注文品を差し出すと、さっきやって来た二人は美味しそうに飲んでくれた。
 正直、高校の文化祭で出せる品物は知れたものだけれど、何か良い気分だ。
 やっぱり、お祭りが好きなんだな、私は。

「前よりずっと、仲良さそう」
「昔から仲良いだろ? だからイサ姉も、私にシノの保護者役みたいなものを任せたんだし」
「何だか、心から信頼し合ってるような……」
「――漫画の読み過ぎだって」


 溜息をつくと、外から「お客様一名!」の声がした。
 それがまたいかにも男子って感じで、またしてもさっきのシノの表情が脳裏をよぎる。
 いけないいけない、これじゃ接客が出来ないって。
 

「それじゃ私、お客さんの所に行かないと……」
「へぇ、あなたが『陽子ちゃん』ね?」


 へ? なんだなんだ?
 声のした方を見れば、そこにはイサ姉のお友達の姿が。
 興味深そうに私を見つめながら、彼女は言う。


「いつも勇から聞かされてるわ。『かっこいい、けれど凄く可愛い子なのよ』ってね」
「……」


 おいおい。
 困ったな。
 動揺するようなことでも、何でもないはずなのに。
 どうして顔が熱いんだろうね?


「あ、ええと――ありがとう、ございます?」


 なんだこの尻切れトンボな挨拶は!
 内心で自分を罵倒する私は、フラフラと新規のお客さんの元へと向かおうとする。


「ちょっと猪熊さん! 足、フラついてるわよ!」
「あ、ああ、ごめん……委員長」
「顔も赤いわね? 大丈夫?」
「……な、なんとか」


 ああ、もう……。
 イサ姉だけでも大変だってのに、お友達まで――!
 これじゃ、綾のことを励ます権利なんて……ない、のかな?






「……なかなか性悪ね?」
「勇ほどじゃないわよ。あんた、いつも年下をあんな風にからかってるの?」
「まぁ、程々に?」
「――はぁ」


 つい、ため息をついてしまった。
 目の前のモデル兼友人は、どこまでも飄々としている。
 この子と話してると、いつも「狐につままれた」ような気がするのは何故だろう。
 私のことはともあれ、今しがた話していたあの子は不憫だ。
 というか、この子の「きょうだい」って――


「……あの子が」
「そう、『妹』よ」
「世の中って、広いねぇ……」


 メイド喫茶側へと目を転じれば、そこでは喜色満面といった風に接客に励む少女の姿が。
 ……うん、どう見ても立派な女の子だ。

「勇。おと……妹さん、大事にしなさいよ?」
「あら、心配するなんて珍しい」
「はぁ……」


 目の前ではしゃぐ「お姉ちゃん」は、「きょうだい」のことを心配してはいないらしい。
 今日ここへ来たのも、ただ単純に、楽しみたかっただけというのは嘘じゃないとみた。
 まぁ、こういう「お姉ちゃん」の方が、下の子は楽しめたりするんだろう。きっと。


「……思ったより、ずっと本格的ね」


 そんなあれこれを思いながら、私は教室内を見回した。
 喫茶店の看板も、飾り付けも、なかなか気合が入っている。
 ……私も、もっと本気を出せば、文化祭に燃えられたのかもしれない。


「受験生でさえなければ、とか思ってる?」
「……モデル兼占い師?」
「褒め言葉と受け取っておくわね」


 目の前で、楽しそうにはしゃいでいる友人を見て、つい笑ってしまった。
 まぁ、過ぎていった日々に後悔するのは意味もないことだし、無粋ってものかも。
 今日は、せっかくの「お祭り」なんだから――

とりあえず、ここまでです。
散々遅れて、申し訳ありません。

今回からやっと、文化祭に入りました。
どこか意味深な描写が多かったと思います。
けれども、伏線として活かされるのかは決めていないという場当たり的な思考の中で書いています。
手探り状態ですね……。

次回は、ほんの少し波乱があるかと思います。
相変わらず冗長ですが、読んで下さる方々には本当に感謝しています。

それでは、また。
漫画も5巻が発売しましたね。




――受付


男子A「いやー、まさか本物のモデルがここにいるとは……」

男子B「たしかに……どこかで見たことがあるとは思ったけど」

男子B「まさか、お前の家で見た週刊誌の表紙だったなんて」

男子A「妹が置きっぱなしにしてたんだな、あの雑誌」

男子B「……世間は狭いってヤツ?」

男子A「どうだろうな――正直、あの人が大宮さんのお姉さんだって方が」

男子B「コメントしにくいな……」


男子B「――っと、いらっしゃいまs」

カレン「女子高生一名、入りマース!」

男子A「……」

男子B「……」


カレン「どうかしたデスカ?」

男子A「あ、いや――たしか」

男子B「たしか編入生、だよね?」

カレン「ハイ! 九条カレンと申すデス!」

男子A「……いつも、大宮さんたちと一緒にいる」

カレン「Yes!」

男子B「ああ、いつもお菓子を恵まれてる……」

カレン「皆さん、親切デス!」

男子AB「……」

男子AB(明るい子だなぁ)


男子A「ま、気を取り直して」

男子A「いらっしゃい、ようこ、そ……」

男子A「――!?」

男子B「お、おいおい……あれって」


カレン「?」

カレン「Classroomで、何か――」

カレン「!」



(あぁ……やっと、少し慣れてきた、かも)


 相次ぐお客様の対応に追われてとても疲れたけれど、それ以上に充実感がある。
 何だ、私も意外と出来るものだ。


(後はこのまま、何も起こらずに終われば――)


 そう、私がゆっくりと呼吸をしていると、


「あ、あの! これ俺のメアド、なんですけど……」
「――へ?」


 唐突な異変に、私の口からつい、呆けた声が出てしまった。
 何があったの?


「……私、ですか?」
「はい! あの……凄く、可愛いですっ」


 緊張しきった男子の声に対し、当惑気味な「女子」の声がする。
 その声は、私がいつも近くで聞いていて、ついさっき私を精一杯励ましてくれたものだった。
 私は頭をクラクラとさせながら「現場」へと視線を転じる。

 
 何やら、面倒事が起きているようだった。
 クラス中の視線が、当人たちに集まっているように感じられる。


 メモのようなものを渡す私たちと同い年くらいの男子は、
 顔を真っ赤に染めながらメイド服に身を包んだ相手を褒め称えている。
 刈り上げたヘアスタイルから見るに、どこかの運動部員かしら? この学校の生徒じゃないみたいだけれど……。
 もう一人の方はこの位置からではよく見えなかったので、私は静かに移動した。
 果たして、そんな彼と相対しているのは――


「……シノ!?」


 愕然とした。
 メモに目を落とすお相手は、いつも一緒にいる大切な友達だった。


「――そう、ですか。私に」
「はい! メチャ可愛くて……付き合って、くれませんか?」
「……」


 シノはペコペコと頭を下げる男子を静かに見つめている。


 いつのことだったろう。
 私たちは、カレンが男子に告白されている場面を覗き見してしまったことがある。
 その時は、私の好きな少女漫画のワンシーンみたいだ、と感じた。


 そうだ、と私の中に、ある意味で理不尽な思いが湧く。
 ここは共学で、こういったイベントがあるのは構わない。きっと、他のクラスか上級生の教室でも、似たようなことがあったりもするのだろう。
 でも――と、私はそこで思う。


 でも、よりによって、どうしてシノなんだ、と。


 ある意味、八つ当たりなのかもしれない。
 私の視線にある見覚えのない男子生徒は、きっと一生懸命なのだろう。
 その懇願の様子からすると、決して軽い気持ちではないことがありありと分かった。
 だから――私の胸も、キュッとしてしまう。
 どうして……どうして、シノなの?



「……」


 気づけば、身体が勝手に動き出していた。
 男の人がいる、といったような考えは働かなかった。
 それ以上に、どこか放心しているように見えるシノのことが心配だった。


(待ってて、シノ――!)


 静かに、けれど急いで二人の元へ向かおうとすると、


「ごめんなさい、少しいいかしら?」


 聞き馴染みのある声が、した――
 






 
 ――ずっと昔から。
 それこそ、陽子ちゃん以上に馴染み深い声が聞こえました。
 

「私、ここの高校のOGなんだけれど……」
「は、はぁ……」


 その声につられて、私は目の前の方から頂いたメモから目を離しました。
 見れば、すぐ近くに大切な人がいます。
 長い髪。昔から憧れていた、綺麗でどこまでも女の子らしいスタイル。
 そこにいたのは、何を隠そう、私のお姉ちゃんでした。


「実は今、うちの高校、いわゆるナンパ活動に厳しくなっちゃったみたいで」
「……へ?」


 呆ける男性の前で、お姉ちゃんはゆっくりと言葉を紡ぎます。
 そのすぐ後ろには、こっちに来ようとしてくれた綾ちゃんの姿がありました。
 男性がいるのにも関わらず、こちらに来て私を助けようとしてくれたのでしょうか。
 どうやら私の考えていた以上に、綾ちゃんは変わっているようです――
 

「それでね、ええと……今、怖い先生がこの階を見まわってるのよ」
「……?」


 お姉ちゃんの言葉に相手の男性は、ほんの少し訝しげな視線を向けました。
 無理もありません。お姉ちゃんは、この高校のOGではないのですから。
 だから今、お姉ちゃんが言い淀んだことに疑問を持ったのでしょう。


「だから、その――」


 尚も歯切れの悪いお姉ちゃんは、こちらから見ていてもドギマギとした様子でした。
 ああ、そろそろまずいかもしれません。
 このままでは――ちょっと、ややこしいことになってしまいそうです。
 これ以上、お姉ちゃんに任せきりではいけません。


「あ、あの」


 私がそう、口を挟もうとすると――



「あ、烏丸先生!」
「見回りですか!?」


 外から、男の人の声がしました。
 見れば、受付係のお二人が椅子から立ち上がっています。
 ……あ。あの、金髪は。
 近くにいるのは、私たちの大切なお友達のようでした。


「……あ、そうそう! この烏丸先生っていうのがその怖い先生でね」


 彼らの声にひかれるような形で、お姉ちゃんは再び、ゆっくりと話し始めました。


「見つかると面倒なことになっちゃう、かも――」
「……マジすか」


 参ったな、と目の前の方は呟きました。
 見るからに残念そうな表情です。
 そんなことを思っていると、クルッと私の方へと視線を向けました。


「それじゃ、今日は帰ります。連絡先、気が向いたら……」


 ドギマギしながらそう言って、ペコリと頭を下げます。
 そして荷物をまとめると、教室から急いで出て行きました。


「……」
「シノ」


 その声に、ハッとしました。
 見れば、目の前でお姉ちゃんが複雑そうな表情を浮かべていました。


「――その、メモ」
「あ、これ、ですか……」


 お姉ちゃんが指摘したのは、やはりこのメモでした。


「……どうするの?」


 私が目を落としていると、お姉ちゃんが問うてきます。
 その声は――どこまでも複雑そうでした。
 非難しているわけでもなければ、歓迎しているわけでもない。
 お姉ちゃんにしてみても、今回の「一件」は予想外だったのでしょう。無理はありません。


「……一応、持っておこうと思います」


 声がつっかえないように、私はゆっくりと声にします。
 そのメモを大切にポケットの中に入れて、お姉ちゃんと視線を合わせます。


「……そう」


 お姉ちゃんはそう言うと、身を翻しました。


「――私は、シノがどう対処しても、いいと思うわ」


 もう高校生なんだし。
 そう言いながら、お友達の座るテーブルの所へと戻って行きました――

 

 ――シノが、告白された。
 カレンが告白されている所は私も皆と一緒に見て、「ああ、そっか」と納得していた。
 イギリスにいた頃から、カレンはどこか異性からモテやすいのかも、と思っていたからかもしれない。
 けれど……シノは。


「……ビックリしたぁ」


 近くで見ていた陽子は、そう言いながら脱力していた。
 私は、どこか遠くで起こった出来事のように、未だに実感が持てずにいた。


 シノが男子生徒に告白される。
 これは、ある意味でとんでもないことだった。
 ホームステイの日々を送っていても、納得できていない事実として――


 やっぱり、シノが「男の子」だということがあるから。


「……なぁ、アリス?」
「なぁに、陽子?」


 声を震わせながら、陽子が私に問うてくる。いや、きっと私の声も同じだったと思う。
 目の前の友人は、私と視線を合わせながら、


「――シノって、やっぱり『女の子』なんだな」


 と、恥ずかしそうに言った。


「……うん。そうだね、陽子」


 私も、どこまでも恥ずかしくなりながら、そう返事をする。
 そして、私は再び「現場」に目を転じながら思う。


(……シノ)


 私は、シノのことが「好き」なんだよ、と想い続けながら。






 ――とんでもない所を見てしまいマシタ。
「Amazing!」と、私の故郷では言うのでショウ。
 ただ……目の前で、私が見た光景は、『信じられない!』というレベルを遥かに超えていマシタ。


「……はぁ。びっくりした」
「でまかせでカラスちゃんの名前出しちゃったけど……ま、いっか」


 呆けた頭のままでいると、目の前の男子二人はそんなことを言っていマス。
 私はそれを見ながら「あぁ、『男子』ってこういう声だった」と実感しマシタ。


(……シノが)


 そう思いながら、私の頭の中ではいつかのあの光景がフラッシュバックしマス。
 人気のない校舎裏。目の前で深々と頭を下げる男子生徒。
 それに対し私は、嬉しく思ったのは事実デシタ。
 ……デモ。


(私は、ヤッパリ)


 あの時、頭の中をよぎったのは、いつも見ているオカッパ頭の「女のコ」。
 だから私は、あの時断りマシタ。
 今、私の頭はグルグルしていマス。
 例の男の人が出て行ってから、教室内はどこかざわついていマシタ。
 それも、イサミがテーブルに戻ってからは消えてしまったようデス――



「……私、戻りマス」
「ん? あ、あぁ、そっか」


 近くにいる受付係の男子生徒二人にそう言って、私はフラフラと廊下を歩き出しマシタ。
 どこへ向かうといえば――


(……私、は)


 今日、『あの』お芝居をブジに終えられるのでショウカ?
 目の前であんな光景を見せられても、私はあのシーンを演じられるのでショウカ?


 不安ですが、仕方がありマセン――そう、自分に言い聞かせマス。


 今日のお芝居の内容は、アリスを含めて誰にも伝えませんデシタ。
 かえって、良かったのかもしれマセン。
 ――だって。


(こんな気分のまま、お芝居ナンテ……)


 まともに出来る気がしないのですカラ――

とりあえず、ここまでです。
「一波乱」のお話でした。
今回のような展開は、このSSを書き始めてから、どこかで絡めようと思っていました。

次回は、カレンの演劇の話になると思います。
原作とはかなり異なったものになると考えていますが――ご容赦頂ければ、と思います。
このような設定で、読んで下さる方がいるだけで嬉しいものです。
……原作も、もしかしたらこうした設定(もちろん、違いはあるにせよ)で始まっていたのかもしれませんね。
見てみたいものですが、無理でしょうね……(諦め)。

それでは、また。
いつもありがとうございます。

カレンの演劇の話は、次回以降になると思います。ごめんなさい。



「それじゃ、陽子ちゃん。後はよろしくね」


 お友達との一服を終えてから、席を立ったイサ姉はそんなことを言った。
 口元は笑っているんだけど、どこか複雑そうな目つきをしている。


「……ん。まぁ、大丈夫だと思う、よ」


 頭をかきながら、私はそう返事をする。
 いけない、軽く流そうとしたのにどこか歯切れの悪い返事になってしまった。
 ……いやまぁ、無理もないんだろう。多分。


「うん。陽子ちゃんなら、あの子を任せてもいいと思えるわ」
「……だ、だからさぁ」


 あぁ、どうしてこういうことを言われると、瞬時に顔が赤らむのか。
 以前――そう、少なくとも一学期の間には決してなかった。
「あの子」絡みのことでからかわれた時に、こんな反応をすることなんて。


「――シノのサポート、ホント頼むわね」
「……あ」


 ポンっと肩を叩かれた。
 フワッとした風と共に、イサ姉は出口へと向かっていく。
 私の見た後ろ姿は、相変わらず綺麗なものだった。


「……」
「応対、ありがとね」


 おっと、見とれてしまっていた。
 声のした方へ振り向けば、イサ姉のお友達の姿がある。


「まぁ、えぇと……あまり緊張しないで。なんとかなると思うから」


 それじゃね、と手を振りながら去っていく彼女を見ながら思った。


(……励まされた、のかな?)


 疑問符つきの思いのまま、私は店内を見渡した。
 さっきの「一件」が起きてから、それほど時間は経っていない。
 店内は和洋入り混じった様子で、まぁ人入りはそこそこってとこか。
 ……ただ。


「……シノ、が」
「わ、私が、しっかりしない、と」


 私の大切な友達は、どうやらショックから立ち直れてはいないらしい。
 まぁ、無理もない。
 恐らく、アリスと綾で受けているショックの質みたいなものは違うんだろうけど。
 ――そして。


「お待たせしました! カフェラテになります!」
「おお、美味そう!」
「へぇ、学祭のものにしてはなかなか凝ってるわね……」
「ありがとうございます!」


 ペコリと一礼する「アイツ」は、さっきのこともどこへやら、完璧な接客をこなしていた。
 お客様に対する態度も良く、こっちから見る限り笑顔もしっかりしている。
 ……そう、だからきっと。


(――そっか)


 私とイサ姉しか気づけなかっただろう。
 付き合いの長さでいえば、あの人の次くらいに長い私くらいしか。


「……ねぇ、委員長?」
「どうかした、猪熊さん?」


 甘味処班のリーダーたる委員長に、私は声をかけた。


「少し、休憩してもいいか?」
「――ん、そうね」


 チラッと時計を見る委員長。
 次いで彼女は、店内を見回す。
 そしてまた私と向き合うと、


「実は、そろそろ節目としてはアリかな、と思ってたのよ」
「……そっか」
「今、来店しているお客様が出て行かれたら、休憩にしましょうか」


 委員長はそう言うと、クスっと微笑む。
「どうかした?」と私が聞くと、こう返した。


「……大宮さんのこと、心配?」
「っておいおい、委員長までそれか?」
「あなたが一番、付き合いの長いことは聞いてるしね」


 笑みを浮かべながら、委員長はゆっくりと言う。


「だから、他の子が気づかないことも……気づけちゃうんでしょう?」
「……」


 鋭い。
 ただの「真面目系キャラ」じゃないとは前から思っていたけど、やるな。


「さ、そうと決まれば休憩までベストを尽くしましょう」


 最後まで優しげな表情のままで、委員長は元の業務へと戻っていった。
 

「……うん」


 私もそう返事をして、接客対応へと足を向ける――

 

 ――AM12:00


「それじゃ、休憩ー!」


 ……あ。
 どうやら、一旦おしまいのようです。
 パンパンと手を叩く委員長の姿も、やりきったという充実感でいっぱいのように思えます。
 ――当然、私も。


「や、やっと……終わりなのね」
「お疲れ様、綾ちゃん」


 声を震わせながら言う綾ちゃんに、私は笑いながら返しました。


「今日は凄かったです、綾ちゃん。本当に、間違いなく『変わった』と思います!」
「……あ、ありがとう。でも、シノ」


 はしゃぎながら言う私に対して、綾ちゃんはどこか複雑そうでした。


「あ、あなたは……その」
「あっ! 甘味処班のお二人も!」


 今度は甘味処班の方へと目を向けて、私はそう口に出していました。
 陽子ちゃんもアリスも、やり遂げたという感じで、こちらへと向かってこようとしています。
 私は、そちらへ視線を転じながら、お二人の姿を待っていました――







 ――「その」の後、何を言おうとしていたのだろう。
 考えなしに私の口から飛び出した言葉に、当の私自身が驚いてしまった。


 とはいえ、具体的な内容なんてどうでもよかったのかもしれない。
 当然、さっきのことについて聞こうとしていたに決まっているのだから。


 相手の男子生徒は、シノの連絡先を知らない。
 つまり、シノが連絡しない限り、よほどのことがない限り二人はもう接触しない――


(……どうして)


 さっきの、やるせない気持ちが、また蘇る。
 どうしてシノなんだろう、と。
 仮にシノが正真正銘の「女の子」なら、私はこんなことは考えなかったはずだ。
 この行き場のない思いに、私はどう対処すればいいのだろう……。



「それじゃ、食べ物屋回ろうか!」


 私のすぐ隣で、陽子は満面の笑顔で言う。
 いつも「早弁」をしている彼女は、食べ物のことになると一味違う。
 それは、普段の付き合いの中でよく分かっていた。


「わぁ陽子ちゃん、私、おごられちゃうんでしょうか?」


 私の二つ隣にいるシノは、手を叩いてそんなことを言う。
 ポワポワとした笑顔は、いつも私の見るものだった。
 ……まるでさっきのことなんて、なかったことみたいな。


「……アリス」


 ハッとした。
 見れば、綾が私に顔を向けていた。
 その評定は、どこまでも複雑そうで。
 ……今の私も、同じような表情をしているのだろう。


「ど、どうしたの綾?」


 慌てて、私は応じる。
 目の前の彼女は、逡巡する様子の後で、私に言う。
 そして、私の耳元に口を寄せて、


「……さっきのこと、どう思う?」
「――!」


 驚いた。
 どうやら綾は、私と全く同じことを考えていたらしい。
 陽子とシノの二人はどこ吹く風で、おいしいクレープ屋のこととかを話していた。


「……綾」


 今度は私が綾の耳元に口を寄せて、ボソボソと言う。
 それに対し、綾はコクリと返事をすると、


「よ、陽子! シノ!」
「ん? どうかした、綾?」
「そ、その――ちょ、ちょっとアリスとお手洗いに行ってきたい、んだけど……」


 顔を赤らめながら、綾はそう続ける。



 ここで、私は驚いた。二回目だ。
 こういう、いかにも恥ずかしくなりがちなことを、綾が即座に言い出したことに。
 ……綾も、間違いなく変わっているんだ。
 そんなことを感じた。


「ん、わかった。それじゃ、待ち合わせ場所は――そうだな、中庭でいいか?」


 対する陽子は、いつものように気さくな調子で綾に返す。
「わ、わかった!」と綾は応じた。


「アリス、行きましょう」
「う、うん。わかった」


 綾に連れて行かれる格好で、私は二人から離れていった。
 その合間にチラッと、視線を向ける。


「行ってらっしゃい、お二人とも」


 そこには、いつものように、私の大好きな笑顔を浮かべるシノがいて――


「……」


 それを見てから私は、ゆっくりとそこから離れていった。

ここまでになります。

カレンの演劇に一気に話を飛ばそうと考えていたのですが、いざ書いてみると思いました。
一旦、その場面に至るまでにある程度の決着みたいなものを付けておいたほうがいいのではないか、と。
とはいえ、読者の方によっては冗長に感じられるかもしれませんが……。

次回は、とりあえず分かれた二人組同士で、あの「一件」について色々と語ってもらう予定です。
進捗次第では、次回にカレンの演劇の話が書けるかもしれません。

それでは。
いつも読んで下さる皆様に感謝を。





――廊下・ベンチ


陽子「おまたせ、シノ」スッ

忍「わぁ、ありがとうございます!」パァァ

陽子「わたあめだけど、良かったかな?」

忍「はい、嬉しいで……」ピタッ

陽子「私とお揃いってことで……ああ、美味しー」モグモグ

陽子「ん? どうかした?」

忍「よ、陽子ちゃん……」フルフル


忍「これ、おいくらでした?」

陽子「ん……そうだな」

陽子「500円だったよ」パクッ

忍「――わ、私、払いますね」アセアセ

陽子「ちょい待った。シノ、本気にしてる?」

忍「??」キョトン


忍「で、ですが」

忍「お祭りとかだとわたあめって……」

陽子「あれ実際、かなり高めにしてるんだってさ」

陽子「で、かなり儲けられるんだって」パクッ

忍「……」

陽子「だから、ホントは100円だよ」

忍「――おごって、くれるんですか?」ジッ

陽子「さっき約束しただろ?」

忍「……ありがとうございます」ニコッ

忍「やっぱり、陽子ちゃんはイジワルですね」クスクス

陽子「褒め言葉?」

忍「はい」パクッ


陽子「ああ、美味しかった」

忍「はい、とても……」ウットリ

陽子「あの二人、どうしてんのかな」

忍「もう、陽子ちゃん? お手洗いに行ったことを気にするなんてはしたないですよ」

陽子「ねぇ、シノはどうしてると思う?」

忍「そうですね。きっと、人気のない裏庭辺りで……」ハッ

忍「――本当に、イジワルですね」クスッ

陽子「引っかかるシノが悪い」ニコッ

忍「お二人に心配をかけてしまったのでしょうか」

陽子「そりゃそう思うよ」

陽子「……シノが悪いんじゃなくて」

忍「……」

陽子「あー、あの男子が悪いわけでもないよ」

陽子「そうだな、誰も悪くない。で、シノがそうなるのも仕方ない」

陽子「そんな感じじゃないかな」

忍「何だか納得いかないような……」

陽子「こらこらシノ」


陽子「私はずっと一緒にいて、シノがどれだけ優しいのか知ってるよ」

忍「……陽子ちゃん」

陽子「で、我慢するタイプだってのも」

忍「――」ギュッ

陽子「右手」

忍「!」ハッ

陽子「大丈夫? 長い間、握ってただろ?」


忍「……気づいちゃいましたか」

陽子「まぁ、ね」

陽子「ずっと一緒にいた私やイサ姉が気づかないわけがないよ」

忍「実は、ちょっと赤くなってしまいました」

陽子「やっぱり……」ハァ

陽子「昔から」

陽子「緊張したりパニクったりすると、それやっちゃうんだよね」

忍「これは、癖みたいなものですね……」

陽子「まぁ、それで感情を抑えられるシノは強いと思うよ」

忍「ありがとうございます」

陽子「けど……」

陽子「たまには、シノから頼ってほしいかな」

忍「ごめんなさい」ペコリ

陽子「謝らない謝らない」

陽子「――シノは凄いよ」

忍「……ありがとうございます」

忍「それでは、お言葉に甘えて」ヨッコラセ

陽子「わっ、ちょ、シノ!?」アセアセ

忍「膝枕、してもいいですか?」ジッ

陽子(うっ、上目遣い……)

陽子(しかも、こういう時だけ色っぽく赤面までしてみせるって)

陽子「たまに、シノが怖いって思うことがあるよ」

忍「ふふっ、陽子ちゃんってば」コロン

陽子「……」

陽子(傍からだと、どう見えるんだろ?)カァァ


陽子(ま、まぁ、あれだ……)

陽子(シノを膝枕してあげたことなんて、それこそ――)

陽子「記憶にないぞ」

忍「ええ、私も驚いてます」ウットリ

陽子「……知ってただろ?」

忍「ご想像にお任せします」

陽子「シノはイジワルだ」

忍「陽子ちゃんには言われたくありません」クスッ


忍「……」

忍「陽子ちゃん」

陽子「な、なに、シノ?」ドギマギ

忍「――私」


忍「どうしたらいいんでしょうか?」


陽子「……」

忍「あんな風に、気持ちを伝えられたのは初めてです」

忍「男性の方と一緒にお話ししたりすることは、もちろんありましたけれど」

忍「……まさか、自分がこうなるとは思ってもみませんでした」キュッ

陽子(そりゃまぁ――)

陽子(カレンが告白されるのとは、色々と意味合いが違うからなぁ)

陽子「……」

忍「陽子ちゃん」

陽子「――私は」

陽子「そうだな……シノが自分なりに行動すればいい、と思うよ」

忍「……そう、ですよね」

陽子「でもね」


陽子「私はシノがどんな行動をしても、それを全力で応援するよ」


忍「――!」ハッ

陽子「それだけはホントだから」ニコッ

忍「……もう」


忍「本当にイジワルで……お優しいんですから」

陽子「まったく……」


忍「……」

忍「ねぇ、陽子ちゃん?」

陽子「ん? なに?」キョトン

忍「――いえ、なんでもありません」フルフル

陽子「もう、なんだよ。気になるぞ?」

忍「ふふっ、内緒です」

陽子「隠し事、か?」

忍「……」キュッ


忍「ご想像にお任せします」ニコッ



――裏庭


綾「……シノは、どうするのかしら?」

アリス「まさか相手の人は、シノのことを……」アセアセ

綾「いや、それはないと思うわ」

綾「――さすがにシノの『素性』を知っていて、告白したとすれば」

アリス「もう、私たちの手に負える範囲を超えてるもんね……」

アリス(ただでさえ混乱してるのに……)

綾(ああ、もう……どうしてシノなのよ)

綾(カレンが告白された時とは、わけが違うのよ……)ハァ


綾「……ええとね、アリス」

アリス「なに、綾?」

綾「アリスは、どう思った?」

アリス「……」

綾「シノが、そ、その……告白、された時」

アリス「――カレンに続いて、シノまで遠くに行っちゃったなぁって」

綾「ええ。正直、私も同じようなことを考えたのは否定できないわね……」

綾「でも、それだけじゃないんでしょう?」

アリス「……うん」コクリ

綾「そうよね」

綾「私もビックリしたもの」

綾「……シノが告白される、なんて」

アリス「考えたこともなかったよ」

綾「ええ」


アリス「……綾は、どう思った?」

綾「今度は私の番、ね」

綾「そうね……私もホントは、今も気が気じゃないのよ」

綾「色々と考えが走っちゃってて、抑えられない状態というか……」

アリス「わかるよ、それ」コクコク

綾「――シノは、本当に大切なお友達で」

綾「あの子がいなかったら、私も今日、乗り切れたかどうか……」

アリス「うん、シノは凄いよ」

アリス「無理してないか心配だけど……」キュッ

綾「そうよね……」


アリス「そっか。綾もシノが好きなんだもんね」

綾「も、もちろん」カァァ

綾(アリスの『好き』とは、きっと意味合いが違うけれど……)

綾(きっと、この子もそれを分かっているんでしょうね)

綾「ねぇ、アリス?」

アリス「ん? なぁに?」

綾「戻ったら、シノに何て声を掛けましょうか?」

アリス「……もう、綾ってば」クスッ

アリス「いちいち考えなくても、私たちは大丈夫だよ」

アリス「――いつも通りにしてれば」ニコッ

綾「アリス……」

綾(気丈に言うアリスを見ながら、私は気づいてしまった)

綾(彼女の笑顔が、翳ってしまっていることに)

綾(それなら――)

綾「そうね、アリスの言うとおりね」

綾「それじゃ、そろそろ戻りましょうか」ニコッ

アリス「うん!」

アリス「……良かった。綾が笑って」

綾「アリスのおかげで、ね」

アリス「ふふっ、綾ってば」クスクス


綾(それなら、私もそれに倣おう)

綾(アリスも私の表情に気づいてるのだろうし……それならそれで)


綾(お互い様、ということで)







 ――さて。
 二人が戻ってきた所で、私たちはその場を移動した。
 行き先は、講堂だ。
 そこで私たちの友達が劇をする、ということは知っていた……けど。


「そういえば……」
「な、なによ、陽子」


 講堂の目の前で、立ち止まる。
 ふと、思いついたことがあった。
 近くの綾に視線を向ければ、何故か綾が照れ出した。
 それに気づかない振りをしながら、私は、


「なぁ、カレンって何の劇をやるんだ?」
「……そういえば」


 私の質問に応えて、綾は鞄から冊子を取り出す。
 言うまでもなく、文化祭のパンフレットだ。
 手際よく、該当のページを綾は見つけ出した。


「あったわ、カレンのクラス」
「そっか。で、演目は?」
「……演劇、としか」
「マジか」


 綾に促される形でパンフに目を通した私は、呆気にとられてしまった。
 たしかに綾の言うとおりだった。


「カレン……一体、何をするんだろう?」
「そもそも、何の役をするのかしら……」


 腕を組み、考えこんでしまう。
 そういえば、カレンは「劇やりマス! ショーデス!」としか言っていなかった。
 なんやかんやで、今日まで詳細は明かされなかった、ってわけか。


「ねぇ、アリス? アリスは何か聞いていませんか?」
「うーん……私も何も聞いてないよ」


 先頭を行く私と綾の後方で、シノがアリスに訊ねていた。
 私たちだけでなく、シノとアリスまでも聞いていない、という。
 ……なんだろう。

「なんだか胸騒ぎがするな……」
「奇遇ね、陽子。私も似たようなことを考えている気がするわ」


 自慢じゃないけど、私の『嫌な予感センサー』は外れたことがほとんどない。
 頼むから、今回は「はずれ」であってほしい……。


「うーん……考えていても始まりませんし」
「そうだよ、二人とも。中に入ろ?」


 私たちが考えていると、シノとアリスが私たちを促した。
 まぁ、確かに二人の言う通りだ。考えこんで当たるような問題でもない。


「それじゃ行くか、綾」
「ええ、そうね」


 隣で考え込んでいた様子の綾と一緒に、私はゆっくりと講堂に足を踏み入れる――



 ――そして。


「ず、随分と人が多いな……」
「空席、あるのかしら……」


 講堂内を見渡せば、かなりの客入りということがありありと分かった。
 私が見る限り、ポツリポツリと空いた席はあるものの、四人が一気に座れるスペースは、というと……。


「あっ、大宮さんたち」


 ん? 聞き覚えのある声がする。
 声のした場所を探せば、そこにいたのは――


「受付の二人組か」
「なんだ、空席でも探してるのか?」
「まぁね……というか、何するのか知ってる?」
「さぁ、俺たちも知らねえ」


 さっきぶりの二人組だった。
 取り留めのない会話の後で「俺たちが詰めるから、ここ入ってもいいぞ」と移動してくれた。
 あっ、ちょうど四人分だ。


「サンキュー」


 軽い調子で返事をして、私は三人を促して列に分け入った。
 私、シノ、アリス、綾の順に座る。


「いやー、助かった助かった」
「何かおごってくれてもいいぞ」
「無理。私がおごるのは、きっと一人だけだし」
「……え?」


 ん? 何か変なこと、言ったっけ?
 いや、目の前でピクッとしてから動きを止めた男子が、よく教えてくれているみたいだ。
 ……ああ。


「わぁ、陽子ちゃん。私、照れちゃいますよ?」
「……え、大宮さん? マジで?」
「ち、違う! シ、シノ、何言って」
「ふふっ、陽子ちゃんにおごられちゃって幸せですねぇ……」

 ――さて。
 そんな一騒動(?)があってから、少し経った。
 そろそろ時間になる。


(……頼むよ)


 私は、知らず知らずのうちに手を握りしめていた。
 まるで、隣にいる「彼女」の癖が移ったように。
 何でかって? 
 そりゃまぁ、「センサー」が外れるのを祈ってるからだよ……。



 ビー、とブザーの音が鳴り響いた。
 そして、静かに幕は上がり――


「あぁ……」


 声が漏れた。
 目の前には、花畑が広がっていた。
 その脇に設置されたベンチに、二人の男女が座っている。
 男子の方は紳士的な格好をしていて、もう一方の女子の方はドレスで着飾っていた。
 どこかの王妃が着ているようなイメージをもたせるのに、十分すぎる出で立ちだった。


「……さすが、ですね」


 左隣から、心の底から感心したとばかりの声がした。
 シノもそう思ったか。いやきっと、シノだけじゃない。


「……あっ」
「凄い、わね」


 とはいえ、多分アリスと綾だけでもない。


「おい、あれってまさか……」
「そっか、さっきの」


 受付係もよくわからない反応をしているけど、この二人だけでもない。
 構内にいる観客全員が、同じことを考えているに違いない。


 普段は飄々としているあの子は、その実とんでもなく可愛い。
 それをよく知っている私たちは、そのギャップで余計に心を揺さぶられるんだと思う。
 普段のあの子を知らない観客も、嘆息するに違いない。現に、前からも後ろからも唾を飲み込んだような音がしている。


 舞台で淑やかに座っているのは、私たちの大切な友達――九条カレンだった。
 いつになく真剣なその表情は、ただ緊張しているというだけではなさそうだった。
 私は舞台の小道具と、カレンのそんな表情を見ながら、


(……「センサー」、当たっちゃったかぁ)


 そう、確信してしまった――

ここまでになります。
二期の日程も久世橋先生の中の人も決まったようですね……時の流れは早いものです。ごめんなさい、遅れました。

気づけば、地の文は陽子視点のものが圧倒的に多くなりましたね。
一番書きやすいもので……いずれ、嘘つきブラザーズも出るかもしれません。
あと、いつの間にか主人公的な立ち位置になったようにも感じます。

それでは、また。
陽子の「センサー」は、どこまで当たるのでしょうか……。

 すみません。
 >>385>>386の間に、この文章を挿れておきます。外されてしまっていました。




 左隣にいるシノは、満面の笑みを浮かべながら穏やかに言葉を紡ぎ続ける。


「けれど、陽子ちゃん? ホントに私だけでいいんでしょうか……」


 その後で、赤面と上目遣いの強烈コンボ。
 さっき見たばかりとはいえ、この技に私は勝てる気がしない。


「だ、だから、シノ……ええと、あのさ」
「そっか、猪熊が……」
「大宮さんの……ふーん」
「二人とも、静かにするっ!」


 シノを相手にするだけでも大変なのに、右側の二人まで来られちゃ泥沼化は必至だ。


「まぁ、なんだかんだで、か」
「猪熊がいるなら何とかなるか……さっきのことも」


 私がそう言っても説得力はなかったらしく、なんだか得心が行ったような反応を返されてしまった。
 というか、やっぱり「さっきのこと」を気にするのは私たちだけでもなかったらしい。当然といえば当然だけど。


「……もう、知らんっ」


 男子から視線を逸して、シノへと視線を戻す。
 相変わらずの表情を浮かべながら「陽子ちゃんは可愛いですねぇ」と、ほんわかに言われてしまった。
 私は「シノのイジワルめ」と返して、頭を垂れた。
 やれやれ、左右からの攻撃をかわすのは疲れる――


「陽子……やっぱり、シノに」
「あ、あなたねぇ……」


 ――まだ、休めないのか。
 溜息をつき、私は再び元の体勢に戻る。
 明らかに顔が熱い。熱でも出たんじゃないか。
 まぁ、いいや。
 気を取り直してから、綾とアリスの方へ視線を向け、



「わ、私とシノは、そ、そういうんじゃないからっ!」


 噛んだ。恥ずかしい。

おつ!

ラッキースケベされた陽子もみてみたい

レス、ありがとうございます。
>>390
ラッキースケベを書きたいと思っていますが、なかなか入れる場面が思いつかず……。
ともあれ、次回辺りで文化祭は決着すると思うので、それから考えますね。ありがとうございます。




――開演から遡って・空き教室


女子1「……これでよし、っと」

女子2「おー……何度見ても、惚れ惚れするね」

カレン「――そ、そうでショウカ」アセアセ

女子3「こりゃ、本物のお嬢様……いや、お姫様」

女子1「観客席が沸きそうだねっ」

カレン「……」


カレン(あれから時間が経ったノニ)

カレン(さっきのシノのことが気になって、しょうがないデス……)キュッ

カレン(シノは、あれからどうなったのでショウカ……)

カレン(――確認するのが怖くて、すぐに飛び出してしまいマシタ)


女子1「く、九条さん……大丈夫?」

カレン「……!」ハッ

カレン「ご、ごめんナサイ」

女子2「まぁ、九条さんも緊張するよね」

女子3「でも、大丈夫。何か失敗したとしても、今の九条さんなら」

女子1「多分、どんな振る舞いでも絵になるから……」

カレン「……ありがとうございマス」

カレン(この人たちに言えるわけでもありマセン……)

カレン(ホントは劇のことよりも、さっきのことが気になってる、ナンテ……)

カレン(ここまで準備してきてくれたクラスの皆さんに申し訳ないことデス)



カレン「……台本を取って頂けマスカ?」

女子2「ん、分かった。はいっ」スッ

カレン「Thanks……」

カレン「――」パラパラ

カレン「や、ヤッパリ、こういうシーンハ……」

女子1「まぁ、その辺は適当に」

女子2「そう気張らなくっていいよ」

女子3「どう演技しても、絶対大丈夫だから」

カレン「……」


カレン「ハイ、わかりマシタ」コクリ

トリップ間違えてました。




――集合場所



女子1「みんなー、終わったよー」

女子2「見て驚け!」

女子3「あんたが主役みたいになってるね……」

カレン「……お、お邪魔するデス」モジモジ


「わっ」「凄いキレイ……」「なんだあれは……」「く、九条さん、やっぱり」


カレン「……」

カレン(どうしてなんでショウカ)

カレン(皆さん、私をとても褒めてくれてマス。嬉しくないわけがありマセン)

カレン(……ナノニ)


「やっぱり似合うな、九条さんは」


カレン「あ」

男子「今日は、よろしくな」

カレン「……」

カレン「ハイ」コクリ

男子「うん」ニコッ

男子「それじゃ俺、ちょっと台本読んでくるから」

カレン「――ファイト、デス」

男子「そっちもな」


女子1「へぇ、スーツ姿ってのは初めて見た」

女子2「意外と似合うもんね」

女子3「同感」

カレン「……」

女子1「まぁ、九条さんには敵わないけど」

女子2「そりゃまぁ、仕方ないよね」

カレン「そ、そんなコトハっ!」アセアセ

カレン「ない、デス……」


カレン(だから、シノたちには言えませんデシタ)

カレン(私がヒロインで、「彼」がヒーロー)

カレン(私が主役ということもそうですが、何より「彼」のこともありマシタ)

カレン(シノたちは――あの時、「彼」を見ているのデスカラ)

――本番前・舞台袖


男子1「それじゃそろそろ行くぞー!」

男子2「主役ー!」

男子「おう」

カレン「……ハ、ハイ」


男子「よいしょ、っと」コシカケ

カレン「……」

男子1「それじゃ、ブザー鳴ったらスタートで」

男子2「ガンバ、二人とも」

男子「ありがとよ」

カレン「が、ガンバリマス」モジモジ

男子「……」


男子「緊張してる?」

カレン「……Yes」

男子「無理もないよな」

男子「まぁ、あれだ」

男子「今の九条さんなら、どんなミスしても大丈夫だと思う」

カレン「それ、さっきも言われマシタ」

男子「みんな同じようなこと思ってるよ」

カレン「そう、でショウカ」


男子「おっ、鳴ったな」

カレン「は、ハイ……」

カレン(幕が上がり始めマシタ)

カレン(私の目の前に、多くの人が現れテ――)

カレン「あっ……」

カレン(シノたち――)


――観客席


陽子「……あ」

忍「あの方は――」

アリス「そうだ、カレンに」

綾「……そうね、あの時の」

綾(もしかすると、だからこそ……)

陽子(カレンは、私たちに知られたくなかったのかも……)


カレン「……」

カレン「今日は、帰らなくていいのデスカ?」

男子「ええ」

男子「――今日一日は、あなたのものです」

陽子(胸やけしそうなセリフだ……けど)

陽子(主役が言うと、妙に堂に入ってるというか)

忍「……カレン」

綾「お話の世界みたいね……」カァァ

アリス「あ、綾? 顔、赤いよ?」



――時間が経って


陽子(劇の内容は、よくある男女恋愛モノで)

陽子(身分違いの恋だとかそれによる両家の確執、でもって最後は困難を乗り越えてハッピーエンド)

陽子(……どこかで見たことがあるような要素のごった煮、というイメージだった)

陽子(私は、評論家でもないからよく分からないけど)

陽子(筋書きはともかく、主役の演技が凄い)

陽子(まるで本当に「叶わぬ恋」みたいな鬼気迫る感がある、というのも)

陽子「当たり前か……」

綾「二人とも演技が凄いわね」

アリス「うん」

アリス「カレンも本当に上手だけど、男子の方が本気って感じがするよ」

アリス「……まぁ」

綾「無理もない、わね」


忍「……」

陽子(――シノ)



――舞台


男子「私の想いは、永遠に叶わないのかもしれません……」

カレン「そんなコト」

男子「でも……あなたを諦めることなど」

カレン「――」チラッ

カレン(シノ……)

カレン(あれからどうなりマシタカ? 相手の方と……)

男子「あなたを思うだけで、一日が終わってしまいます」

カレン「……あ」ハッ

カレン「わ、私も、デス……」

カレン(一日が、すぐに終わってしまいマス……)アセアセ

――更に時間が経って


――舞台


カレン「本当に……私で、いいのデスカ?」

男子「はい。もちろんです」

男子「さぁ、ここから抜け出しましょう」

カレン「……」

カレン(――「ここで」)



カレン(「ここで、軽くハグ」)



カレン(台本に書かれていた、ラストシーンの文章……)

カレン「……」キュッ

男子「……?」

男子「どうかなさいましたか?」キョトン



>ナンダナンダ?
>アクシデント?



男子「……九条さん、大丈夫?」ヒソヒソ

カレン「わ、私、ハグ、出来マセン」アセアセ

男子「……」

カレン「ご、ごめん、ナサイ」

カレン「――うっ」グスッ


カレン「シノ……」




――観客席



男子A「お、おい、あれって……」

男子B「泣いてる?」

陽子「!」ハッ

アリス「!?」

綾「カ、カレン……?」

陽子「――あぁ」

陽子(センサーを今日ほど憎んだ日はない……)


忍「……カレン」

陽子「シノ……」

忍「――」キュッ




――終演


「皆さん、ご観賞ありがとうございました!」


陽子(結局、あれから慌てた様子のナレーターが締めの言葉を述べて)

陽子(二人の主役は舞台袖に戻っていった)

陽子(最後の、全員揃っての挨拶まで少し時間がかかったけど)

陽子(カレンも中央で、お辞儀をしてくれた)

陽子(こうして、カレンのクラスの演劇は幕を閉じた――)


男子A「よかったな」

男子B「うん、特に主役二人の演技が凄かった」

陽子「……」

男子A「猪熊」

陽子「な、なに?」

男子B「あの主役の子、お前の友達なんだろ」

陽子「……そうだよ」コクリ

男子A「話、聞いてあげた方がいいぞ」

陽子「うん……」


男子A「それじゃな、大宮さんたち」

男子B「また後で」

陽子「……」

アリス「カレン、大丈夫かな」

綾「やっぱりあれって……」

忍「泣いて、ました」

忍「目が潤んでました……」

陽子「シノ……」




――それから


放送「これにて、第〇〇回文化祭を、終了します!」

アリス(放送……)

アリス(そっか、これでおしまい)

綾「お疲れ様、みんな」

陽子「これで後は片付けだな!」

アリス「うん、そうだね……みんなお疲れ様」

忍「はい、お疲れ様――」

忍「あっ、携帯電話が……失礼します」カチカチ

忍「……」ピクッ

アリス「?」


忍「皆さん、ごめんなさい」

忍「少し、席を外しますね」ペコリ

陽子「? どうかしたのか、シノ?」

忍「いえ――」

忍「すぐに戻りますから」タタタッ

綾「あ、し、シノ?」キョトン

アリス「……」


陽子「まぁ、なにはともあれだ」

陽子「片付けよう、二人とも」

綾「……ええ、そうね」

アリス「う、うん」


アリス(……あ)

アリス(そろそろ、ゴミが溜まっちゃった)

アリス「陽子、綾。ゴミ箱、捨ててくるね」

陽子「お、サンキュ……でも」

綾「重くないかしら」

アリス「大丈夫だよ。今、捨てにいくなら私一人でも」

アリス「それに、みんな忙しそうだし」ニコッ

陽子「そっか、それなら頼む」

アリス「うん!」ヨッコラセ


アリス(……ゴミ捨て場は)テクテク

アリス(うん、あった。あそこだ)

アリス(……シノ、どこへ行っちゃったんだろう?)

アリス「よいしょ、っと」

アリス「ふぅ、これでおしまい――」


「……シノ」「カレン……」


アリス「!?」ピクッ

アリス(こ、この声は……)

アリス(裏庭、だよね?)

アリス「……」

アリス(カレン――やっぱり)キュッ


カレン「少し、このままでいさせてくだサイ……」

忍「……」

忍「わかりました。大丈夫ですよ、カレン」ナデナデ

カレン「……シノ」ギュッ



アリス(カレンが、シノにハグしていた)

アリス(私は動揺するより先に、納得してしまった)

アリス(仮に私がカレンの立場でも、同じことをしたと思うから……)


アリス(――でも)

アリス「シノ、カレン……」

アリス(やっぱり、すごく複雑な気持ちだった――)キュッ

ここまでになります。
カレンの演劇まで、一気に書きました。

今回で一応、文化祭の行程自体はおしまいです。
色々とすっ飛ばした感は否めないですが、ご容赦下さい。
次回は、忍視点でカレンとの会合を書きたいと思っています。

それでは、また。
いつもお読みいただきありがとうございます。

――アリスが来る前・裏庭


忍「……」

忍「ここ、ですよね」

忍「――」カチャッ


忍(文面は「中庭に来てくだサイ。シノ一人だけで」……)カチカチ

忍「……」パタン


忍「大丈夫ですよ、私一人だけです」

カレン「!?」ビクッ

忍「もう、カレンったら。私がカレンのことに気づかないと思いましたか?」クスッ

カレン「……シノ」モジモジ

忍「陰からチラチラと見ていても、わかっちゃいますよ?」

カレン「――ごめんナサイ」

忍「謝らないで下さい」

忍「……大丈夫、ですか?」

カレン「……」

カレン「正直、参っちゃってマス」タメイキ

忍「ですよねぇ」


カレン「――何からお話ししまショウカ?」

忍「カレンが話したいこと、全部言ってください」ジッ

カレン「……」

忍「私は、じっくりと聴きます」

忍「途中で言葉を挟んでしまうかもしれませんが……それで、どうでしょう?」

カレン「――ハイ」コクリ

カレン「ありがとうございマス、シノ」


カレン「これはシノだけではないのデスガ」

カレン「まず、内緒にしていてごめんなさいデシタ」ペコリ

忍「……」

カレン「私たちのクラスで、その……ああいった劇をすると決まってカラ」

カレン「最初にモメたのは、どの二人が主役をするかデシタ」

カレン「――それで結局」

忍「……投票」

カレン「Yes」コクリ

カレン「つまり、『誰が主役とヒロインになってほしいか』といった投票会が開かレテ」

カレン「結局、私と『彼』がそうなりマシタ」


カレン「初めは、断ろうと思ってマシタ」

カレン「シノたちと一緒にいる時間の方がずっと大事で……とても楽しかったからデス」

カレン「……それに、相手が相手というのもありマシタ」キュッ

忍「――カレン」

カレン「But」

カレン「クラスの人たちは『それでもいい。九条さんが主役なら、どんな演技をしても絵になるから』ト」

カレン「そんな風に言われたら、せっかく仲良くしてくれる皆さんに申し訳ありマセン」

忍「……カレンは、優しいですから」ニコッ

カレン「……」


カレン「それから、あまり練習もしないまま本番を迎えマシタ」

カレン「……それからのことは、シノたちが見ての通りデス」

忍「……」

カレン「私が一番辛かったノハ」

カレン「――クラスの人が、誰も私を責めなかったことデス」

カレン「特に、相手の方にはとんでもない迷惑をかけてしまいマシタ」

カレン「それ、ナノニ……」ウルッ

忍「!」ハッ


カレン「相手の方は、何も言いませんデシタ」グスッ

カレン「た、ただ、『こっちこそごめん。台本に、やりすぎだって注意できなかった』ッテ……」

忍「……」

カレン「わ、私、最初に台本をもらって、相手が『彼』だと分かってイテ」

カレン「それでも、そう演技出来るって思ってマシタ。今日の朝までは、絶対に出来るつもりデシタッ」

忍「――カレン」


カレン「……But」

カレン「今日の午前中、私ハ――」






――アリスが教室を出てから・教室前の廊下



委員長「猪熊さん、小路さん。男子が片付け終わったみたいだから、ここ掃いてもらえる?」

陽子「ん、ああ。わかった」

綾「りょ、了解」


陽子「……」ホウキ

綾「……」チリトリ

陽子「なぁ、綾?」パッパッ

綾「なぁに、陽子?」サッサッ

陽子「――カレン、心配だな」

綾「ええ、そうね……」

陽子「……綾?」キョトン

綾「ごめんなさい。少し、考えることがあって」

陽子「そっか……」

陽子(……あぁ、もう)

陽子(『センサー』が当たったことは、まぁ仕方がないと割り切った)

陽子(出来事って起こるときは起こるものだと思うし……だけど)


――お前、あの子の友達なんだろ?――

――話、聞いてあげろよ――



陽子(正直、あの二人に言われなくたって分かってる)

陽子(そんなの、当たり前だ。友達のために何かをする、なんて……)

陽子(なのに――なんだか、私は調子が振るわない)グルグル

陽子(どうしてなんだろう……)



陽子「はぁ……」タメイキ

綾「――そっか、こういうことなら」

陽子「あ、綾?」

綾「陽子。どうして、カレンは泣いたと思う?」ジッ

陽子「な、なんだ、いきなり?」

綾「考えてみて」

陽子「……そ、そりゃあ」

陽子「相手が例の男子だし、あの場面がどういう台本だったのかは分からないけど……」

陽子「恋愛モノは、やっぱりキツかったってことじゃないのか?」

綾「ええ、そうね。私もさっきまで、似たようなことを考えていたわ」

綾「――でも、本当にそれだけなのかしら?」

陽子「……え?」ピクッ


綾「私たちと行動を共にすることが多かったにしても」

綾「演劇をするんだったら、数回くらいは『通し稽古』を行うでしょう?」

綾「カレンや他の人たちの演技を見ても、さすがにあれが初めての『通し』だなんて信じられない」

陽子「……たしかに」

綾「それならそういった機会に、『こういう演技は出来ない』ということを台本担当の人に伝えるはず」

綾「別に伝えても良かったはず。普段のカレンなら、気軽な感じでそういった主張をすると思うし」

陽子「――そ、そうだな」


綾「ということは、カレンは台本の流れを知っていた上で、今日……」

陽子「泣いた、ね」

綾「そうね、辻褄が合わないわ」

綾「それなら今日の演劇前に、カレンに『何か』が起きたと仮定したらどう?」

陽子「……何か」

陽子「ダメだ、思い付かないよ」

綾「そうね、私もさっきまで同じだったわ」

綾「――『シノ』のことに、考えが及ぶまでは」

陽子「!」ハッ

綾「陽子には、今更言うまでもないことよね。アリスとカレンがシノのことを――『好き』ってこと」

陽子「う、うん……」

綾「それなら今日のあんな場面を見せられて、カレンが平然としていられるわけがないと思わない?」

陽子「ってことは」

綾「そう……カレンが、あの時の光景を見ていたとしたら」

綾「壇上でのカレンの行動についても、辻褄が合うの」

陽子「だ、だったら。劇の直前にでも、台本係に『やっぱりやめて』って……」アセアセ

綾「そうね。でも何となくだけど――カレンは、人の期待を裏切れない子だと思うの」

陽子「――」ハッ

綾「……推理でも何でもない、ただの想像よ」

陽子「いや……」


陽子「びっくりしたよ、綾。よくそこまで考えられるな」

綾「……あまり、気は進まないけどね」

陽子「いや、凄いよ。だって、私には全然分からなかったし」

綾「あのね」ジトッ


綾「いい、陽子? あなたがしっかりしていてくれれば、私がこんな『想像』を話す必要なんてなかったの」

陽子「……綾?」

綾「私が知ってるあなたなら」

綾「今の私の話なんて全部とばして、『とにかくカレンの話を聞いてあげよう』なんて私たちを巻き込んで飛んでいったはずよ」

綾「――あの二人に言われなくても」

陽子「――!」ハッ


綾「シノの一件があって、調子が狂っちゃった?」

陽子「……そう、かも」

綾「それじゃ、もう悩むの禁止」

綾「いい? あなたのためじゃなくて、私たち皆のためなんだからね?」ビシッ

陽子「……うん」


陽子「ありがと、綾。少し、目が覚めた」

陽子「綾のためにも、調子戻すよ」パッパッ

綾「……まったく」サッサッ

綾「そういうことを臆面もなく言うから、陽子は困るのよ……まったく」カァァ

陽子「ん、ホントにありがと」ニコッ

陽子(……そうだ)

陽子(二学期に入ってから、シノのことで動揺することが増えて)

陽子(今日、色んなことが立て続けに起きて……私も、かなり参ったのかも)

陽子(――でも)

陽子「私が、しっかりしないとだな……」グッ

綾「――ところで」

綾「私は、アリスのことも心配なのよ」

陽子「アリスが? そりゃまた、どうして?」キョトン

綾「……いい、陽子?」ジッ

綾「今日、シノに起きたことと、前にカレンに起きたこと」

綾「――わかるでしょ?」

陽子「……あ」



――再び裏庭



忍「――やっぱり、あれはカレンだったんですね」

カレン「ご、ごめんナサイ。中に入れなくて、ソソクサト」

忍「いえ……」

カレン「シ、シノが、相手の方にどうResponseするノカ」

カレン「それが気になったら、げ、劇に集中出来なくナッテ――!」

カレン「そ、ソレデ……」ポロポロ

忍「いいです、カレン。ほら、顔が水だらけですよ?」

忍「今、拭いてあげます」

カレン「シノ……」グスッ

忍「大丈夫ですよ。このハンカチ、今日は使ってないので……」フキフキ

カレン「――シノは、優しすぎマス」

忍「カレンには負けます」ニコッ

カレン「わ、私はトモカク……」

カレン「――シノだって、すごく疲れてマス」

忍「……そう、見えますか?」ピタッ

カレン「ハイ」

忍「そう、ですか……」フキフキ



忍「実は、私もかなり参っちゃってるみたいで……」

カレン「……ヤッパリ」

忍「カレンも見ていたのなら、分かりますよね」

忍「相手の方は――どこまでも『男の子』でした」

カレン「――!」ハッ

忍「私、どうすればいいのでしょうか?」

忍「困ってしまいました……ああ、どうしましょう」タメイキ

カレン「……シノ!」

ダキツキ


忍「カレン……」

カレン「ムリ、しないでくだサイ」

カレン「シノは、いつもムリしてマス」

忍「そんな、ことは……」

カレン「ダッテ」

カレン「……私やアリスは、いつもシノに色んなカオを見せマス」

カレン「悲しい時、嬉しい時――今のように、泣いた時ダッテ」

忍「……」

カレン「ヨウコやアヤだって、シノには色んなカオをしマス」

カレン「……シノは、私たちに悲しいカオをしマセン。いつも、笑ってマス」

忍「――それ、は」

忍「私は、皆さんと一緒にいる時は、ただ、楽しいから」アセアセ

カレン「そうやって『ムリ』を重ねるカラ」

カレン「……まだ泣いてる私が、シノにハグしてるんデス」

忍「……!」ハッ


忍「――カレンには、隠し事出来ませんね」タメイキ

カレン「その『隠し事』は、私だけにデスカ? それもDoubtデスネ?」

忍「だうと?」キョトン

カレン「『嘘』って意味デス」

忍「……」

カレン「シノ」

カレン「……どうすれば、シノはムリをしないでくれマスカ?」ジッ

 ――そう言って、カレンは私を見つめてきました。
 上目遣いで。
 私がさっき、陽子ちゃんにした行為です。
 ただ、今のカレンには、あの時の私のような「計算」が全く感じられません。


 私も、ゆっくりと彼女の瞳を見つめます。
 見れば見るほど綺麗な光彩を帯びていて、吸い込まれそうになります。
 そして、カレンの顔の下部にある唇もまた抜けるような赤さで、魅力的でした。


「――シノが、ムリしないでくれる方法」


 そう呟いて、カレンは私にその綺麗な顔を近づけてきます。
 ただでさえ近かったその距離は彼女が詰めることで、文字通り目と鼻の先にあります。


「シノは、どう思いマスカ?」


 カレンは、気づいているのでしょうか。
 恐らく、意識してはいないでしょう。
 まだ涙に濡れた瞳。
 私の首にかかる、滑らかな腕。
 抜けるように赤い唇。
 絹のように淑やかな、その金髪。


 そういった全てが、私の――


「……シノ」


 ――理性を、粉々に砕こうとしていることなんて。

忍「……あ」

忍(その瞬間、私は気づいてしまいました)

忍(間違いありません……あの金色は)

カレン「シノ……?」

忍「――カレン」ポンッ

カレン「アッ……」

忍(私の手が、カレンの肩に触れました)

忍(そして、ほんの軽く押します)クイッ


忍「もう、あまりに勢いよく抱きついてくるから……」

忍「綺麗な金髪が乱れてしまってますよ?」ナデナデ

カレン「……シノ」

忍「……」

忍「ごめんなさい、カレン」ペコリ

カレン「!」


忍「私、カレンが『好き』です」

忍(いけない……)ハッ

忍「それは、本当です。信じてくれますか?」

忍(笑顔です、笑顔――)ニコッ

カレン「……ハ、ハイ」コクコク

忍「――でも、いや、だからこそ」

忍「その……こういったこと、は」

忍「出来ません」

カレン「……?」

カレン「!」ハッ


カレン「わ、私、ハグしたダケデ……Uh」

カレン「き、きs」カァァ

忍「ストップです、カレン」フルフル

忍「……どうですか? 落ち着きましたか?」

カレン「……」

カレン「Yes」

カレン「シノのお陰で、本当に助かりマシタ」

忍「それは良かったです」

忍「それでは、一緒に帰りましょうか」

カレン「――イエ」

カレン「わ、私! ちょっとクラスの人たちの所へ――」アセアセ

忍「……そう、ですか」

忍「分かりました」

カレン「……」ジッ

カレン「シノ」

忍「はい?」


カレン「――I like you very much」







 ――そう言って、カレンは走っていきました。
 私は、そんな彼女の後ろ姿を見つめながら、さっきの英語に思いを馳せます。


(あいらいくゆー……?)


 さすがの私でもI Like Youの、それぞれの意味くらいは知ってます。
 私 好き あなた……


(じゃあ、最後のべりーまっちは)


「あなたが大好き、だよ。シノ」
「そういう意味だったのですか。さすがは、アリスです」


 私の悩みに颯爽と答えてくれたのは、大好きな金髪少女でした。
 アリスは、ゆっくりと私に近づいてきます。


「つまり、カレンはシノが大好きってこと」
「えへへ、照れますね」
「ただの『好き』じゃない、っていうことを強調したんだよ」
「……」


 黙り込んだ私に、アリスはしっかりと視線を合わせてきます。


「シノ、カレンとハグしてたね」
「……アリスも一緒に来ればよかったのに」
「うん、そうしたいと思ったよ。カレンと、その……キ、キス、しそうになるまでは」


 そう言うと、顔を赤らめながら地面に視線を落としてしまいました。


「私ね、どうすればいいのかわからないの。もちろんカレンのことは心配だし、いつも笑ってるシノが顔を曇らせてることも 心配だよ」
「……アリス」
「で、でも……私、もう二人に置いていかれちゃったし。二人とも告白されたのに、私だけ……」
「――!」


 アリスはブラウスをギュッと掴みながら、身体を震えさせています。
 その目に、さきほどのカレンと同じような光がきらめいたのは見間違いではないでしょう。
 アリスもまた、目を潤ませていました。


「どうすればいいんだろう、って……そう思ったよ? でも、私は、もう――」

 次の瞬間。
 私の腕には、柔らかな感触が広がりました。
 顔には、可愛らしく風になびく金髪が触れています。


「シノ……」


 腕の中から、アリスが小さく声を出しました。
 私は、ギュッと抱きしめます。腕の中にいる、ガラス細工のように脆く柔らかい彼女を壊さないように。


「私はアリスが置いていかれた、なんて思ってません」
「……」
「それはですね、アリス」


 そう言いながら、私は少し腕を緩めました。
 そして、腕の中から現れたアリスの瞳と、視線をしっかりと合わせます。


「アリスの可愛さに、皆さんがまだ気づいていないってだけです。
 そして、私以上にアリスの可愛さを知っている人はいません」
「……シノ」
「これだけは、自信があるんですよ?」


 そう言って、にこやかに笑ってみせます。
 大丈夫、もう大丈夫です。
 さきほどカレンに指摘されたようなムリ、なんてことは――


「それじゃ、シノ。私には……」


 ――ない、はずです。


「え、えっと……キス、して」


 ない、はずでした。過去形です。ごめんなさい、ムリでした。


「な、なんて――私、言わないよ?」


 そして、アリスは顔を赤らめながら上目遣いをしてきました。
 どうすればいいんでしょう? 
 正直な話、私の理性はさきほどから揺さぶられていて、壊れる寸前一歩手前にあるような気がします……。


「だって……そうしたら」


 全部、壊れるような気がしちゃうから。
 アリスは静かに、そう言いました。


「……」
「ご、ごめんね、シノ? からかったわけじゃないよ」


 私だって、ホントはね――
 そこまでは聞き取れましたが、それ以降は聞き取れませんでした。
 それが何故なのかは、すぐ近くで、頭上に湯気をあげて黙りこんでしまった金髪少女を見れば一目瞭然でしょう。


「……と、とにかく!」


 しばらく唸った後で、アリスは頬を染めながら、私を決然と見つめます。厳しい表情です。
 ちなみに、まだ私の腕の中にいるので、その厳しさは可愛らしさに巻き込まれて消えました。
 いけない、真剣にならなくては――


「シノ! 私も、シノのことが好き――『大好き』なんだからね!」


 真剣になった反動で、私の理性は余計に強いダメージを受けました。


――裏庭


アリス『あれ、メールだ……あっ』

アリス『ごめんね、シノ。今日は、一緒に眠れないみたい。イサミたちにも伝えておいてほしいかな』

アリス『え、どこに泊まるかって? それはね――』


忍「……」

忍「ああ――」ハァ

忍(どう、しましょう)

陽子「――いたっ!」

綾「もう、シノ! さっきアリスが教室に戻ってきて」

陽子「シノが裏庭で倒れてるって聞いて、飛んできたんだよ」

綾「あと、カレンも元気そうに『先に帰る』って言ってきて……」

陽子「何が何だか――って、シノ? 聞こえてるか?」ズイッ

忍「……陽子ちゃん、綾ちゃん」


忍「私、色々と参っちゃいました」タメイキ

陽子「へ?」キョトン

忍「正直な話、もう今日は疲れて、本当にくたびれてしまいました」クタクタ

綾「シ、シノ?」アセアセ

忍「――だから」


忍「お二人とも、私に肩を貸して頂けませんか?」




――その後・廊下


陽子「もう、大丈夫か?」

忍「ええ、ありがとうございます」ヨッコラセ

綾「珍しいわね。シノがあんな風に、誰かに頼るなんて」

陽子「基本、私たちが『大丈夫か?』とか言わないと、頼らないのになぁ」

忍「……」

忍「その考えを、さっき大きく揺さぶられてしまいまして」

陽子「――そっか」

綾「シノは、頑張り屋さんだから」

綾「……憧れてるのよ、私は」カァァ

忍「ありがとうございます」

忍「――はぁ、疲れました」


委員長「あ、猪熊さんたち!」

陽子「あ、委員長」

委員長「もう。急にいなくなって帰ってこないからどうしたかと」ハァ

綾「ご、ごめんなさい」モジモジ

委員長「まったく……でも」チラッ

忍「――あ」ハッ

忍「委員長……ごめんなさい」

忍「私、ちょっと――理性が大変だったもので」

陽子(な、何を言ってるんだシノ……)

綾(普段のシノのボケとは何か違うわ――『天然』というより『素』というか)


委員長「……まぁ、無理もないわね」

委員長「あんな状況になったら、誰だってそうなると思うし」

忍「――委員長」

委員長「……ただ」


委員長「少し、カータレットさんにも気を配ってあげたほうがいいわ。先に下校したんだけど……さっき戻ってきた時、どこか物悲しそうな表情をしていたから」








 ――木枯らしが吹いていた。
 晩秋の寒さに見を震わせながら、私はゆっくりと「彼女」の家に向かって歩いていた。
 今日、おじさんはいないらしい。
 というわけで、私たちは二人きりでお泊り会ということに――


(……何年ぶりだろう)


 あっちにいた頃、私たちはシスターのように過ごしていた。
 家族ぐるみの付き合いで、本当に血の繋がったきょうだいのように……。


 私は、彼女の泣いた姿を見たことがある。
 シノたちがビックリしたのは無理もない。今日、初めてそういう姿を見たのだろうから。
 ただ、彼女だって普通の女の子だ。笑っていることが多くても、泣くことだってある。


 シノたちの知らない彼女の姿を、私はよく知っている。
 だからこそ、私は困っている。
 私は、今日のシノじゃないけど、誰よりも彼女のことをわかっている自信がある。
 ……だから。


(――シノ)


 私は、「好き」だよ。 
 ずっと一緒にいたいと思ってるよ。
 ――でも。



 それは、私だけじゃ叶えられないことなんだよね……?



 笑顔を作ろうとしても、なかなか作れない。
 会うまでには何とか形作れると思ったけど……仕方ない。
 マンションの前に着いて、私は彼女に電話をかける。
「着いたら電話をして」と、言われていた。



 二言三言の会話の後で、私は携帯電話を切る。
 そして、待つこと数秒――




「……アリス」


 マンションのエントランスから、聞き馴染みのある声がした。
 ゆっくりと、私は彼女へと視線を向ける。


 トレードマークと言ってもいいユニオンジャックのパーカーは、少しクシャッとしていた。
「さっき、抱きつかれたせい?」と聞くと、「ハイ」と返ってきた。
 そして「やっぱり見ていたデスネ」と、クスクスと笑いながら言った。
 そんな彼女の姿を見ていると、何故か故郷のことが脳裏をよぎった。
 きっと、今日、色々なことがあったせいだろう。
 そう納得して、どこか愛おしい気持ちになりながら私も自然に微笑むことが出来た。


「――アリス」


 お互いに笑い合った後で、綻んだ口元はそのままに彼女は続ける。
 

「『Council of War』といきマショウ」
「『作戦会議』……それって、やっぱり」


 私が言葉を継ぐと「Yes」と彼女――九条カレンは首肯して、


「The Subject:『私たちが、これからもずっとシノと一緒にいるためには、どうしたらいいか』デス」

ここまでになります。
今回はおぼろげに頭の中に浮かんでいたアイデアを全部書き出しました。
結果、長さはもとより、展開としてもかなりチグハグなものになってしまったかもしれません……。

色々と触れたい要素はありますが、何よりここまで放置(?)されてきた金髪少女の「逆襲」を書きたいと思っていました。
ここの所、ずっと陽子が主役になっていましたし……それはそれで、とても面白かったのですが。
結局、この三人(アリス、忍、カレン)の関係に答えは出るのでしょうか……。

それでは、また。
二期まであと二ヶ月ちょっと……。




――校舎


委員長「……うん」

委員長「大体終わったわね」

委員長「今残ってるみんな、お疲れ様」


忍「……あ」

忍「お掃除、終わりましたね」

陽子「うん、おつかれシノ」

綾「おつかれさま」

忍「ありがとうございます、陽子ちゃん、綾ちゃん」ニコッ


忍「学園祭が終わりましたけど」

忍「これからどうしますか?」

陽子「……うーん」

綾「アリスもカレンも帰っちゃったし」

忍「――」

忍「私は、陽子ちゃんと綾ちゃんとご一緒したいです」

陽子「……シノ」

忍「お二人がいなかったら」

忍「今日あった、色々なことを乗りきれなかったと思いますし」

忍「ありがとうございます」ペコリ

綾「シ、シノ……もう、照れるじゃない」

陽子「まあ、シノがそう言ってくれるんなら」

陽子「帰り、どこか一緒に行く? そういえばシノと綾と、3人で過ごすのは久しぶりだね」

忍「はい、嬉しいですっ」ニッコリ


陽子「――と、いうわけで」

陽子「悪いね二人とも。私は、二人と一緒にいるから」

男子A「うわ、マジか」

男子B「『大宮さんたちも打ち上げ、どう?』って誘おうと思ってたのに」

男子A「……まあ、猪熊はともかく、二人は疲れてるみたいだし」

陽子「なんで私だけ別なんだよ?」ジトッ

男子B「お前が二人をリードしろってことだよ」

男子A「猪熊は鈍感だなぁ」

陽子「い、言わせておけば……」プルプル

委員長「はいはい」

委員長「まったく、あなたたちは……打ち上げは自由参加なんだから、無理に誘おうとしないの」


忍「……あ」

忍「お二人とも、今日はありがとうございました」ペコリ

男子A「……ま、まぁ」

男子B「お、大宮さん……その」

忍「はい?」

男子B「……あまり」

男子A「気にしない方がいいかなって」

忍「……?」キョトン

男子B「そ、その」


委員長「要するに」

委員長「大宮さんにあまり無理しないでって、言いたいみたいよ」

忍「……あ」ハッ

忍「気をつけます。今日は、打ち上げ出られなくて申し訳ありません」

男子A「……気にしないでくれ」

男子B「うん」

忍「はい、そうさせていただきますね」


忍「それでは皆さん、お先に失礼します」

委員長「うん、それじゃあね、大宮さん」

綾「ご、ごめんなさい……せっかくの機会なのに」

委員長「大丈夫よ、小路さん。今日、本当にお疲れ様」

陽子「それじゃな、三人とも。また後で」

委員長「うん、それじゃあね」


委員長「……あなたたち、言いたいことくらい、はっきり言いなさいよ」アキレ

男子A「う、言い返せねぇ……」

委員長「――ほら。二人とも、打ち上げの前にちょっと行かなきゃいけない場所があるのよ」

男子B「……え?」

委員長「久世橋先生が呼んでるって、さっき烏丸先生から聞いたわ」

男子A「……マジ?」

委員長「そう」

委員長「――大宮さん本人を行かせない代わりに」

委員長「あなたちに着いてきてもらうわよ」

男子B「……まあ」

男子A「大宮さんたちの代わりに、だったら仕方ないか」

委員長「……本当に、よくわからない所で一途ね」タメイキ




――それから。
 私たちは近くのファミリーレストランで、ささやかながら打ち合げをした。
 適当に料理を頼んで、思い思いに食べるという感じで。
 なんといってもよく食べたのが陽子で、「これ美味いな……」なんて言っている内に、テーブルから料理が消えていった。
 シノは、「ふふっ、陽子ちゃんは相変わらず食いしん坊さんです」と、陽子をからかいながら、自分の取り皿に料理を取っ ていく。
 ……私は、というと。


「もう、陽子。私が取ろうと思っていたのに……」


 そんな風に友達をからかいながら、自分の取り皿に料理を載せていったりしていた。

 色々と言いたいこと(さっき、陽子に話した『想像』のこととか)はあったものの、今それを俎上に載せるのは無作法と感 じていた。
 ……せっかく、ささやかながらの『打ち上げ』なのだから。



「……陽子ちゃん、綾ちゃん」


 そんなことを思っていると、ふとシノがそんなことを言った。
 陽子は口に食べ物をくわえたままで、私はスプーンを取り皿にあてていた。


「私、アリスとカレンを悲しませてしまったかもしれません」


 どうすれば、いいでしょうか。
 迷うことなくシノは、シノにとっての本題を私たちに訊いてきた。


「……シノはさ、妙な所で真面目すぎるんだよ」


 最初に口を開いたのは陽子だった。
 いつも通り飄々とした口調のまま、シノに向けて陽子は言う。


「こう言っちゃ悪いかもしれないけど。授業中のシノみたいに、もっと適当に考えてみたらいいと思うよ?」
「た、たしかに授業中はお昼寝とかしてますけど……アリスやカレンに対しては」
「シノ、声が強張ってるわ」


 陽子に対してシノが言い返そうとしている所に、私は言葉を挟む。


「シノがアリスやカレンに対して、どれだけしっかりと考えているか、私は知ってる」


 でもね、と私は続けて、


「だからこそ――シノは、緊張しちゃダメだと思うの。シノが緊張してると、きっとあの二人も困っちゃうわよ」


 ここまで言ったところで、私は気付いた。
 こんなに自分の意見を言ったことなんてなかった、ということに。
 見れば、陽子は私の方へ嬉しそうな視線を向けている。
 ……どうしよう。何か言い返したほうがいいのかもしれない。
 と、思いながら私は、


「……だ、だから。『適当に』やりましょう、シノ?」


 陽子の言を借りながら、私もまた顔を赤らめてテーブルへと視線を落としてしまうことになった……。




――カレンの部屋


カレン「……私は、シノが『好き』デス。アリス」

アリス「――」


アリス(カレンの部屋へと上がって、彼女に飲み物を出してもらってから)

アリス(すぐに、私はカレンからそう言われた)


アリス「……」

アリス「私も、シノが『好き』だよ。カレン」

カレン「私も、よく知ってマス。アリス」

アリス「……」


アリス「私は」

アリス「きっと、シノに対して」

アリス「……カレンも同じ気持ちなんだと、思うんだ」

カレン「……」

カレン「いいデス、カレン。話してくだサイ」


アリス「――きっと、だけど」

アリス「カレンもシノのことが好き……いや、大好きで」

カレン「……」

アリス「そして」

アリス「シノと一緒にいたい、って、そう思ってると……私は思うんだ」

カレン「アリスは、よく分かってマス」

アリス「――多分」


アリス「カレンも、カレン一人だけじゃ、シノの『想い』をかなえられないって」

カレン「……」

アリス「そう、思ってるんじゃないかなって」

アリス「……これは、私もそう思ってたんだけどね」

アリス「だから、きっとカレンもそう思ってるんじゃないかなって」

アリス「――どう? カレン?」


カレン「……Oh」コクリ

カレン「アリスはまるでエスパーみたいデス!」

カレン「……そうデス。私もシノが大好きデス」

アリス「……」

カレン「But」

カレン「私『だけ』じゃ、シノの気持ちに応えられないと思ってマス」

アリス「……カレンは、どうしたいと思う?」

カレン「――」

カレン「私は、シノが『好き』デス」

カレン「……多分、今日の劇の相手の方が、私に寄せてくれていたのと同じような気持ちだと思いマス」

アリス「――!」ハッ

アリス「……つまり」

カレン「私はきっと、そういう意味でシノが『好き』なんだと思いマス」

カレン「……デモ」

カレン「シノは、そういう風に思われたくないんだとも思いマス」

アリス「……」


カレン「アリスは、さっき私と同じような気持ちだと言ってマシタ」

アリス「……うん」

カレン「アリスも、シノのことが……」


カレン「『Love』、なんデスカ?」


アリス「……」

アリス「私は」

アリス「きっと、シノのことが『Love』なんだと思うよ」

カレン「……」

アリス「でもね」

アリス「――シノにキ、キス、とか」カァァ

アリス「そういうことを考えられないのも、ホントなんだ」

カレン「……アリス」

アリス「だ、だから」

アリス「――わ、私は、カレンと一緒に」

アリス「シノと……そうだね」

アリス「陽子や綾とも違った関係だけど」

アリス「シノと――『そういう関係』でいたいかなって」

アリス「思うんだ……」


カレン「……」

カレン「やっぱり」

カレン「アリスは私の、Big sisterデス」

アリス「……カレンと同じ、なのかな」

カレン「Yes」


カレン「私も、シノのことが『好き』デス」

カレン「アリスと同じような気持ちなのもホントデス」

アリス「……」

カレン「今日、色々と疲れたでショウ?」

アリス「う、うん……」

アリス「シノにもカレンにも――色々あって」

アリス「私も置いてかれ――い、いや! 私も疲れたなって」アセアセ

カレン「……アリス」


カレン「私と、オフロに入りませンカ?」ニコッ



――大宮家


忍「……」

忍「ただいまです」ガチャッ

勇「あっ、シノ……」

勇「大丈夫? 今日、疲れたでしょ?」ニコッ

忍「……はい」

忍「私のこともそうなのですが……それ以上に」

忍「カレンが――それに」

忍「アリスは今日、カレンの家に泊まるそうです」

勇「……そっか」


勇「それじゃ、お風呂に入ってきなさいな」

忍「え?」

勇「疲れた時は、お風呂が一番いいと思うわよ」

忍「……そう、ですね」

忍「ありがとうございます、お姉ちゃん」

勇「ん」ニコッ



忍「……」

忍(あの二人は、どうしているでしょうか)

忍(――アリス)



――カレンの家


アリス(シノ、どうしているかな)

カレン「シノは、どうしているでショウ」

アリス「……あ」

カレン「ほら、アリス。もうそろそろ、オフロが湧きマス」

カレン「……今日は、ゆっくりお休みしまショウ」

アリス「う、うん……」


アリス(――シノ)

祭りの後で、の話。

このSSは、一応一年時で区切りとしようと思っていましたが、書いている内に二年時も書きたいという思いが……。
どう思われるでしょうか?

それでは、また。
次回は、それぞれの「思い」の見つめなおしの話になると思います。

>>420 訂正です。

☓いいです、カレン→○いいです、アリス

レス、ありがとうございます。
久世橋先生をどう絡めるかで悩んでいますが、思いついたら書いていきたいと思います。



――九条家・浴室


アリス「……」チャプン

アリス「はぁ」

カレン「ああ、気持ちいいデス――」ウットリ

カレン「? どうしたデス、アリス?」キョトン

アリス「……」


アリス(たしかに、気持ちがいい)

アリス(カレンのお家のお風呂は、ホントに広くて)

アリス(浴槽は私とカレンの二人が入っても、まだまだ余裕がある)

アリス(誰かが、入れそうなくらいに……)


アリス「……シノも、お風呂に入ってるのかなって」

カレン「……」

カレン「アリス、シノとお風呂に入りたいデスカ?」

アリス「うん。今日、ホントに疲れただろうし、しんぱ――」ハッ

アリス「って、カレン!? な、何言ってるの!?」アセアセ

カレン「Hnn、そうデスカ。アリスはシノと……」

アリス「ち、違うよぉ」カァァ


カレン「そうデスネ」ジーッ

カレン「アリスの体格なら、シノと一緒に入っテモ」

アリス「カレン」ジッ

アリス「……お、怒るよ?」グスッ

カレン「冗談デス」

アリス「むぅ……」プンスカ

カレン「正直な所」

カレン「全く、そういうことを考えなかったというワケではないでショウ?」

アリス「……」


アリス(シノに会いに、日本行きを決意した時)

アリス(『日本といえばお風呂! お風呂といえば、みんなで! 日本に行って、シノと一緒に――』)

アリス「……考えたこと、あるよ」

アリス「で、でも。その時は、まだ――」モジモジ

カレン「シノが……『男の子』だって、知らなかったデスネ」

アリス「……うん」

カレン「――私も考えたことがありマシタ」

カレン「シノが『女の子』なら、一緒に入っていただろうなッテ」

アリス「……カレン」

カレン「But」

カレン「一緒にお風呂に入れないからとイッテ」

カレン「――『シノとアリスと、ずっと一緒にいたい』」

アリス「……!」ハッ

カレン「私のお願いが叶わないわけではありマセン」

カレン「むしろ――私たちがシノとの『違い』を意識してしマウト」

カレン「一緒に居づらくなってしまうかもしれマセン……」


アリス「――カレン、変わったね」

カレン「What?」キョトン

アリス「前のカレンだったら」

アリス「こういうお話をしてる間に、顔が真っ赤になってたもん」

アリス「今じゃ、まるで『お姉さん』っぽくなってるよ」

カレン「……」

カレン「I decided the resolution」

アリス「『覚悟を決めた』……そっか」

カレン「ハイ」

カレン「……一緒にいるといっテモ」

カレン「なかなか、キモチの面とかでカンタンなものではないと思いマス」

カレン「こうして強がってますケド、私だって不安でいっぱいデス」キュッ

アリス「……カレン」

カレン「アリスは、カクゴできてマスカ?」

アリス「……私、は」


アリス「そうだね」

アリス「……『カレンとシノと、ずっと一緒にいたい』」

アリス「その気持ちだけはホントだよ」

カレン「よく知ってマス」コクリ

アリス「――カレンみたいに、覚悟? 決めたわけじゃないけど」

アリス「ずっと一緒にいられたらなって……」

アリス「それだけ、かな」

カレン「……アリスは気負わずにいられてマス」

アリス「そ、そんなことないよ」モジモジ

アリス「シノと一緒に寝てると、朝起きた時とかいきなり脱ぎだしたり――」ハッ

アリス「い、今のなしっ!」ブンブン

カレン「一緒に、朝、脱ぎだした――」

カレン「……アリスは、Hデス」カァァ

アリス「カレンだって、やっぱり顔赤くしてる」カァァ


カレン「やっぱり、アリスだけじゃシノと一緒にいるのはキケンデス」

アリス「カレンだけじゃ、きっとシノと一緒に寝起きするだけでおかしくなっちゃうよ」

カレン「……私が、一緒にいてあげマス」

アリス「……私が、一緒にいてあげる」

二人「――」




 ――それから、私たちはひとしきり笑った。
 一緒に笑っていると、お互いに持っていたような不安が消えていくように感じる。


 結局、私たちはいくら強がりを言っても、最後には照れてしまう。
 ……それなら「一緒にいよう」と思うのは当然なんだろう。


(――シノ)


 私たちは、もう決めてるよ。大丈夫だよ。
 ……そっちは、元気にしてるかな?









――その頃、大宮家・洗面所



忍「……ふぅ」

忍(やっぱり、疲れましたね……)

忍(妙に身体が重いですし――あっ)ポトッ


忍「いけない、外し忘れてました」

忍(いつもなら、部屋で外してくる『詰め物』が落ちました)

忍(拾おうと身体を動かして――)


忍「……」

忍(洗面所の鏡に、私の姿が映し出されました)

忍(まっ平らな胸に、我ながら白い肌――)

忍(普段なら意識することのない自分の身体に、今日は……)

忍「……お風呂、入りましょう」

忍(自分で自分に言い聞かせるようにして)

忍(私は残りの衣類を脱いで、浴室の中へ)

忍(そして軽く身体にお湯を当てた後で、ゆっくりと湯舟に浸かります――)


忍「……」チャプン

忍(アリスたちも、今頃お風呂に入っているのでしょうか)

忍(お二人は、どんなお話をしているのでしょうか……)



――どうすれば、シノはムリをしないでくれマスカ?――

――キス、して……な、なんて、私、言わないよ?――


忍「……」

忍(いけない、理性が飛びかけてしまいました)フルフル

忍(――本当に、どうすればいいのでしょうか?)

忍(陽子ちゃんに言おうとした『隠し事』が)

忍(まさか、こんな形で関係してくるとは思いませんでした……)


忍「……」

忍(この身体――)

忍(白い肌、平らな胸……そして)

忍(――本当に)


忍(私は、二人と――)




――大宮家・廊下



忍「……あぁ」

忍「のぼせて、しまいました」フラフラ

忍母「シ、シノ!? 大丈夫?」

忍「……あ、お母さん」

忍「大丈夫、ですよ」

忍母「もう、そんなにフラフラしながら言われても説得力ないわよ?」

忍母「ほら、リビングで冷たい麦茶でも飲みましょう」

忍「……はい」




――リビング


忍「……ふぅ」ゴクゴク

忍「ありがとうございます、生き返りました」

忍母「良かったわ」

忍「はいっ」ニコッ


忍母「……ねぇ、忍?」

忍「?」

忍母「勇から聞いたんだけど」

忍母「――告白されたって、本当?」

忍「……」

忍「はい、本当です」


忍母「……忍は、どうしたい?」

忍「実は、まだ考えがまとまらなくて……」

忍「相手の方の連絡先は、持っているのですが」

忍母「……私も、勇と同じ気持ちだと思うんだけど」

忍母「どう、対応してもいいと思うの。それは本当よ」

忍「ありがとうございます、お母さん」

忍母「……ただ」


忍母「アリスちゃんやカレンちゃんは、どうするのかなって」


忍「――」

忍母「……あ」

忍母「ちょっと焦っちゃった。のぼせてるのに、こんな話題を振っちゃってごめんなさい」

忍「……いえ」

忍「私も、そのお二人のことで、色々と悩んでいるので……」

忍母「――無理、しないでね」

忍「はい」


忍「それでは、私はお部屋に」ペコリ

忍母「……忍」

忍「?」

忍母「私たちは、いつだって忍の味方だからね」

忍「……」

忍「ありがとうございます」ニコッ

 


 ――シノは、『男の子』だ。
 その事実を、私はあの子と最も長い付き合いであろう陽子ちゃんよりも、よく知っていると思う。
 当たり前だ。家族、なんだから。


「……」


 階段から音が聞こえてきた。
 寝転びながら雑誌を読んでいた私は、ゆっくりと身体を起こす。
 案の定、足音はこっちへ向かってきた。


「お姉ちゃん、いますか?」


 コンコン、とノックの音がする。


「いいわ、入って入って」
「お邪魔します」


 カチャリという音とともに、シノが部屋へと姿を現した。
 ……お風呂あがりのシノには、見る人の心を突く「何か」がある。
 本人はそこまで意識しているわけじゃないんだろうけど、相当な「女の子」らしさだった。


(……あの子にも同情するわね)


 今日、本気でシノに告白した彼を思い、私は軽く溜息をついてしまった。
 無理もない。この子を自分と同性だなんて、あの子が思うわけがない。


「シノ、どうかした?」
「……お姉ちゃんがよかったら、なんですけど」


 モジモジと少しだけ恥ずかしそうな素振りを見せながら、シノは切り出す。


「アリスがいないので、寂しくなりそうで……今日、ここで寝かせてもらってもいいでしょうか?」

ここまでになります。
カレンとアリスは自分の気持ちを整理したようですが、果たしてシノは……?

行き当たりばったりですが、いつもありがとうございます。




――時間が流れて


カレン「……そろそろ、寝まショウカ」

アリス「あっ、そうだね」

カレン「お布団、敷きマスカ?」

アリス「ありがと、カレン」


カレン「えっと、布団ハ――」キョロキョロ

アリス「わ、やっぱりカレンのベッドおっきい……」

アリス「ダブルベッドでも、ここまでのサイズは……」

カレン「――と、思いマシタガ」

アリス「カ、カレン?」ピクッ

カレン「アリス、Please come in!」

アリス「え、えぇ……?」アセアセ



カレン「……」

アリス「……」

アリス(結局、入っちゃったけど)

アリス(なんでだろう、妙に落ち着かない)

アリス(そ、そっか。いつもお布団だから、久しぶりのベッドで――)

アリス(……いや、違う。きっと)

カレン「やっぱり、シノと一緒に寝たかったデスカ?」

アリス「!?」ビクッ

アリス「そ、そんなことないよっ」アセアセ

カレン「声、裏返ってマス」

アリス「……」


アリス「こうして」

アリス「カレンと一緒に寝るのは、久しぶりだから」

アリス「ちょっと、焦っちゃった」

カレン「――アリス」


アリス「ホントはね」

アリス「最初、日本にホームステイしようって決めた時」

アリス「……『カレンも一緒に来られたらなぁ』って」

アリス「ずっと、思ってたんだ」

カレン「……」

アリス「だから」

アリス「こうして、一緒にいられるのは幸せだなぁ、って」

アリス「……カレンと一緒にいるのは、すごく落ち着くよ」ニコッ

カレン「――アリスが、そういう子ダカラ」

カレン「私だけが、シノと一緒にいる、ナンテ」

カレン「そういう、独占欲? みたいなモノが持てないんデス」モジモジ

アリス「あれ? さっき、アリスだけがシノと一緒にいるのはキケンだ、って……」

カレン「……アリスはイジワルデス」プイッ

アリス「冗談だよ」クスッ


アリス「――私も」

アリス「私だけがシノを独り占めしたい、なんて」

アリス「思ったこと、ないよ?」

カレン「……前に、ヨウコとシノが接近した時、物凄く焦ってマシタ」

アリス「た、たしかにそうだけどっ」アセアセ

アリス「……でも」

アリス「なんだろうね。今日、シノがああやって告白されて」

アリス「それで、普段あんなに丈夫なシノが……」

アリス「私が見た中で、初めてあんなに疲れちゃってるのを見てから」

アリス「……一緒にいてあげたい、って初めて思ったんだ」

カレン「一緒にいたい、じゃナクテ」

アリス「うん。私だって、シノを守れるんだって」


アリス「――そう思ったら、何だか」

アリス「いちいち、焦ったりしてちゃダメかな、って」

アリス「……でも、ここでこう言ってても、どうなるかわからないけどね」

カレン「つよがりを言うのは、お互い様デス」クスッ

アリス「――カレン」

カレン「What?」

アリス「一緒に、いようね」

カレン「……」


カレン「こっちこそ、デス」ニコッ




――その頃・大宮家



勇「布団、敷いたわよ」

忍「ありがとうございます、お姉ちゃん」

勇「今日、本当にお疲れ様。疲れたでしょうし、早めに寝ましょうか」

忍「そうですね」

勇「それじゃ、電気消すわよ」

忍「はい」


勇「……」

忍「……」

勇「それじゃ、おやすみ――」

忍「は、はい」

勇「――の、前に」

勇「ほら、話してみなさい」

忍「……」

勇「そうして何かを抱えたような表情のままだと」

勇「あの子たちも、心配するわよ?」

忍「――そう、ですよね」

勇「……」


忍「――陽子ちゃんにも、綾ちゃんにも」

忍「アリスやカレンにも、言えてません」

忍「……今日、お母さんにはお話ししようかと思いましたけど」

忍「結局、話せないままでした」

勇「言いにくいことなのね?」

忍「はい」

忍「お姉ちゃんにも、言おうか迷いました」

忍「今日、促されなかったら、隠したままだったかもしれません」

勇「……」


忍「最初の『隠し事』は」

忍「アリスに言えなかった、その――『性別』でした」

忍「……そうですね、『隠し事』が増えちゃいました」

勇「――今日、シノがされた」

忍「はい。あの告白と関係しています」

忍「私は、目の前にきたあの方を、じっと見ていました」

忍「そして、思いました。『あ、この人も――』って」

勇「この人も?」

忍「……やっぱり『同性』ですから、何となくわかってしまいました」

忍「『この方も、私が、あの二人に抱いているのと同じ気持ちなんですね』と」

勇「……!」ハッ


勇「シノ。ひょっとして……」

忍「……」

忍「はい、私――」


忍「――ボクは『男』としてあの二人を見ているのかもしれない、と思いました」


勇「……」

忍「一度、そう思ってからは」

忍「なんだか、落ち着かなくなってしまいました」モジモジ

忍「――アリスやカレンが私に向けてくれる『好き』と」

忍「私が二人に対して持っている『好き』は……もしかしたら」

勇「ストップ、シノ」

忍「お、お姉ちゃん?」ピクッ


勇「……何となく」コホン

勇「シノの悩みは、そういう感じだと思ってたの」

忍「お姉ちゃん……」

勇「つまり」

勇「その……シノは」

勇「あの二人が――異性として、好きなんじゃないかってことね?」

忍「……はい」

勇「えっと、その――」

勇「いやらしい意味で、ってこと?」

忍「そ、そういうわけじゃ!」アセアセ

勇「……そっか」

勇「それなら、大丈夫じゃない?」

忍「わ、私は、あの二人とそういうことは――」

忍「え? お、お姉ちゃん?」


勇「だって」

勇「私の知ってるシノは、そういうことを考えられない子だもの」

勇「だったら、いいんじゃない?」

忍「……で、ですけど」

忍「この前、カレンの家にお邪魔した時、あ、あの二人に……」

忍「ほんの少し、行き過ぎたことを……」

勇「あ。もしかして、お酒のせい?」ニヤニヤ

忍「――わ、わざとじゃないですよ?」

勇「分かってるわよ……お母さんには、内緒にしてあげるわ」

勇「まあ高校生なら、そういうこともあるでしょ」

忍「……もしかしてお姉ちゃんも?」

勇「それは秘密」クスッ


勇「ね? わかるでしょ」

勇「……シノは、あの二人が好き過ぎるのよ」

忍「過ぎますか」

勇「シノ、変な所でマジメだから」

忍「……それ、陽子ちゃんや綾ちゃんにも言われました」

勇「さすがに、お友達はしっかり見てるわね」

勇「――だから、なるようになるの」

忍「……はい」


勇「今日の、あの男子に感謝した方がいいわね」

忍「あの方、ですか」

勇「おかげで」

勇「……シノの悩みが、はっきりわかったと思うから」

忍「……」


忍「お姉ちゃん」

勇「なぁに?」

忍「……私」


忍「アリスとカレンと、ずっと一緒にいてもいいんでしょうか?」


勇「……」

勇「シノが、そう決めたなら」

勇「私は応援するわよ」

忍「……い、いやらしいこと、とか」アセアセ

忍「考えたらどうしよう、って――」カァァ

勇「もう開き直っちゃいなさいよ」

勇「『あ、そういえば自分って男だからしょうがないか』って」

勇「そんな感じで」

忍「……い、言うのはカンタンですけど」

勇「大丈夫、大丈夫」

勇「――正直、シノがそういうことを悩むようになったことも」

勇「ある意味、成長だと思うわよ?」

忍「……」


勇「――さて」

勇「そろそろ、寝ましょうか」

忍「は、はい」

勇「明日は、アリスも帰ってくるでしょうし」

勇「一日遅れの、私たちの打ち上げ会とでも行きましょうか」

忍「――楽しみです」

勇「ええ」

 ――そう言ってからすぐに、お姉ちゃんのベッドから寝息が聞こえてきました。
 かなり、お疲れのようです。
 私も、そろそろ寝ないといけません。


「開き直り、ですか」


 ……正直、自信はあまりありません。
 たしかに私は、金髪少女――いや。
 今はもう、あのお二人が大好きです。


 以前、私の家に陽子ちゃんたちが泊まってくれた時。
 私はアリスとカレンに抱きついて、離すことが出来なくなりました。


 あの時は、今のように考えてはいませんでした。
 純粋に、好きでした。


(……純粋、に)


 いけません、そろそろ寝ないとです。
 明日、元気な姿をアリスに見せないといけません。


(アリス、カレン――)


 ずっと、一緒に……。



 ―


 
 ――夢の中。


 黒髪の少女は、花畑にいた。
 きらびやかな景色に目を細めて、同時に気配を感じる。


 そこにいたのは、二人の金髪少女だった。
 彼女たちは手を振りながら、黒髪の少女を招く。
「こっちにおいでよ」と。


 少女は、走りだした。
 そして、すぐさま二人の元へ辿り着くと抱き寄せた。
 肩をぶつけ、頬を寄せ合い、「好き」という感情を思い切りぶつけ合う。


 ふと気づくと、二人が上目遣いに黒髪の少女を見つめていた。
 頬を赤らめたまま、彼女たちは誘う。


 自分の口元へ。


 誘われるまま、黒髪の少女は、金髪少女の口唇へと自分のそれを寄せて――




忍「!」パチッ

忍「――あ」

忍「……」アセアセ

忍「や、やっぱり……」


忍「わ、私は――」カァァ

ここまでになります。
停滞した展開が続いていると我ながら思いますが、次回で何かが動く予定です。
どうなるかは未定ですが……。

SS速報に、新しいきんモザSSが立ち始めているようで嬉しいです。
二期が始まれば、相当多くなりそうですね。
……それまでに、このSSに一応の目処が立てばいいのですが。

それでは。
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。




――九条家


カレン「おはようございマス、アリス」ニコッ

アリス「おはよ、カレン」ニコッ

アリス(ベッドの上で、私とカレンは挨拶を交わした)

アリス(ビックリしたのは、私が身体を起こすと同時に、カレンも起きてきたことだった)

アリス(……まるで)


アリス「考えてみたら」

カレン「What?」キョトン

アリス「……私とカレンは、もう『一心同体』みたいなものなのかな」

カレン「アリス……」

カレン「私のコト、そんなに好きデスカ?」カァァ

アリス「……」

アリス「うん、大好きだよ」ニコッ

カレン「わっ、からかったのに通じてマセン……」ガーン

アリス「カレンとは、これからもずっと一緒」

アリス「……そうだよね?」

カレン「――ハイ」コクリ


カレン「それデハ」

カレン「シノに、メールしてみまショウカ」ピッピッ

アリス「……うん」

カレン「私がアリスと一緒に行くと言っタラ」

カレン「シノ、ビックリするでショウカ?」

アリス「うーん……どうだろ」

アリス「ただ――嫌がったりは、絶対にしないよ」

カレン「Thanks、アリス」



――大宮家・勇の部屋


忍「……メール」カチカチ

忍「……」

勇「? シノ?」

忍「お姉ちゃん、おはようございます」

勇「あ、うん。おはよ」

忍「……」

勇「どうかした?」

忍「――そ、そのですね、えっと」

――それから・道路



カレン「……Hnn」

アリス「シノから返信きた?」

カレン「いえ……」

カレン「来マセン」

アリス「ま、まだ寝てるのかな?」

カレン「シノ、昨日はお疲れデシタ」

アリス(それを言うなら、カレンだって……)


アリス(でも、シノ……何だか引っかかるなぁ)

アリス「今まで、お昼前には絶対に起きてたもん」

カレン「……電話、してみまショウカ?」

アリス「あ、でもでも! やっぱり、寝てる所を起こしちゃうのは悪いかなーって」

カレン「アリスは優しいデス」

アリス「……もう」カァァ



――大宮家・前の道路


アリス「……つ、着いちゃった」

カレン「……」

カレン「会ったら、何を言えばいいのでショウカ」アセアセ

アリス「もう、カレン。そんなこと考えなくていいよ」

アリス「……シノなら、何を言ってもちゃんと」


忍「……あ」ガチャッ

アリス「ちゃん、と……」

アリス(玄関のドアの前に、大好きな人が現れた――)

カレン「シ、シノッ!」

忍「……おはようございます、お二人とも」ニコッ

アリス「お、おはよ、シノ」

アリス(おかしいな……シノ、笑顔がなんだか)

カレン「だ、大丈夫デスカ?」アセアセ

忍「……」

カレン「な、何だか、様子がおかしいデス」

カレン「メールに返信も来なかったデス」

忍「――」

アリス「……シノ」


忍「ごめん、なさい……」


アリス「!?」

カレン「シ、シノ……?」

カレン(目が、潤んでマス……?)

アリス(口元は笑ってるのに――目だけが何だか)

忍「少し、外出します」

アリス「……?」

カレン「そ、それなら、私たちも一緒に――」


忍「……それは、ダメです」

カレン「……」

アリス(目だけが……とても、悲しそう)


忍「ごめんなさい」

忍「それでは……」

カレン「シ、シノ!」

忍「……」

カレン「あ、あの――」


カレン「I'll be waiting for you no matter what!」


忍「――!」ハッ

カレン「何があっても」

カレン「ずっとシノを、待ってマス」

アリス「私もっ」

忍「……もう」


忍「本当に……なんて」


アリス(「なんて」の後は聞き取れなかった)

アリス(その後、一瞬の間にシノは私たちの前から姿を消していた)

アリス(……いつか、かくれんぼで見た「ニンジャ」のように)

勇「二人とも、おはよ」

アリス「……イサミ」

カレン「イサミ、一体……シノは、どうしちゃったんデスカ?」

勇「そうね」

勇「二人とも、入っていいわよ……あの子を待ってたいでしょう?」




――街中


陽子「……はぁ」タメイキ

陽子(結局、何だかモヤモヤした気分は消えないままだ)

陽子(あれだけシノに「適当に!」なんて言った癖に、当の私はこの有り様)

陽子(まだ、調子狂ってんのかなぁ……)

陽子(ん? そういやこのショッピングモール……)

陽子(前に、シノたちと一緒に――)

陽子「行ってみるか」



――エントランス



陽子「……ん?」

男子A「あっ」

男子B「……昨日ぶり、だな」

陽子「おっす」


陽子「校外で会うのは初めてか」

陽子「何か用事あったの?」

男子A「いや、特にはないな」

男子B「何となく、足が向いただけというか」

陽子「ふーん……」


男子A「それじゃ、俺たちは適当に館内回るけど」

男子B「猪熊はどうする?」

陽子「うーん……そうだね」

陽子「特に目的あるってわけじゃないし、私は――」

男子A「? そっちに何か……あっ」

男子B「あれは……」


忍「……」

陽子「シノ!」

忍「――陽子ちゃん」

陽子(……目が、潤んでる?)ピクッ

男子A「お、大宮さん」

男子B「何かあったのか?」

忍「い、いえ」

忍「……悪いのは、私ですから」

陽子「シ、シノ……?」

忍「あ、あの子たちに……」

忍「……」

陽子(……困ったな)

陽子(どうしたもんか――)

男子A「とりあえずさ」

男子A「そこの喫茶店にでも入る?」

陽子「……え?」キョトン

男子B「大宮さん、何かかなり寒そうだし」

男子B「それだったら、ちょっと一服でも……」

忍「……」

忍「そ、そういうこと、でしたら……」

陽子「え、え?」



――喫茶店


忍「……暖かい」

男子A「うん。暖房が効いてるな」

男子B「これで注文した紅茶でも飲めば、少し落ち着くんじゃないか」

忍「はい……」

陽子「……」


陽子(奥の席に私とシノが座り、対面には二人が座った)

陽子(流れで私も着いてきちゃったけど、さっきからどう話を切り出せばいいのか分からない……)

陽子(やっぱり綾の言うように、まだ私はキッパリできてないんだな……)


陽子「――あ、あのさ、シノ」

忍「陽子ちゃん……」

陽子「どうかした? 目、ちょっと赤いよ?」

忍「……」

男子A「……えっと」

男子B「連れてきておいて何だけど……もし、込み入った話になりそうなら、出てった方がいいか?」

陽子「……あー、そうだなぁ」

忍「いえ。お二人にも聞いて頂きたいです」


陽子「シノ……?」

忍「――お願い、できますか?」

男子A「……そういうことなら」

男子B「まあ、聞くくらいなら全然構わないぞ」

忍「……ありがとうございます」

陽子「……いいの、シノ?」

忍「はい」

陽子「――」

陽子(この二人に、ねぇ……)

陽子(たしかに男子の中じゃ、シノとの接点は多いけどさー)ジッ

男子A「なんだ、猪熊?」

男子B「言いたいことあったりするか?」

陽子「……いや、なんでも」ハァ



忍「――まず、初めに」

忍「私は、その……好きな方が、います」

陽子「……言っちゃうんだ」

男子A「す、好きな人が……」

男子B「それって――」

忍「はい」

忍「……大好きな、金髪少女が」

男子A「金髪、少女……」

男子B(ってのは、もしかしなくても……)

陽子「……シノ」


忍「私、は」

忍「純粋に、その子たちが大好きです」

忍「そう、思ってました……」

陽子「……え?」

忍「――でも」


忍「キス、する夢を見てしまいました」


陽子「!」

男子A「キス……」

忍「それから、ずっと」

忍「その子たちのことが頭から離れなくなってしまって」

忍「……い、いやらしい目で、見てるんじゃないかって」

男子B「いやらしい……」

忍「そんなことを、思うようになって……そ、それで」

陽子「シノ、無理すんな」

忍「そ、そうだったら」

忍「あの子たちにハグしたりしている時、こんな風に思うことなんてな、なかったのに……」

忍「――私は、あの子たちを好きでいることは」

陽子(……何て言えばいい?)

陽子(私はシノに、何を言えるんだ?)

陽子(昨日、綾と言えることは全部言ったはず……なのに)


男子A「え、普通じゃない?」

男子B「気にすることじゃないと思うけど」


陽子「」

忍「……は、はい?」

男子A「だってさ」

男子A「好きな相手を思って、おかしくなることなんていくらでもあるし」

男子B「うん、普通のことだと思う」

忍「……??」

陽子「お、おい、二人とも」


男子A「それに」

男子A「相手だって大宮さんを、えっと……好き、なのは確かなんだよね?」

忍「……そ、それは、そうだと思いたいですけど」

男子B「だったら、尚更だよ。それ、両想いってことだよ」

男子B「――というか、羨ましい」ボソッ

男子A「おい、本音漏れてんぞ」

男子B「……お前もそうだろ」プイッ

陽子(なんだろう……この置いてきぼり感は……)


男子A「それならさ、きっと」

男子A「大宮さんの……それが『いやらしい』ことだとしたって」

男子B「相手は受け止めてくれるんじゃないかな、って……俺は思う」

忍「……」

男子A「キス、か……」

男子B「おい、遠い目するのやめろ」

男子A「だってさ……両想いの相手とキス、なんて」

男子B「……ダメだ、俺も羨ましい」タメイキ

陽子(本音、ダダ漏れだな……)


忍「……キスも、いやらしいことも」

忍「あの子たちなら、受け容れてくれる……ですか」

男子A「と、思うよ」

男子B「そもそも、そこまで『そういうこと』で悩める大宮さんを、その相手が見放すことなんて考えられないって」

忍「……そ、それは」ハッ

忍「すみません、メールが……」ピッピッ

忍「――あ」

忍「申し訳ありません、みなさん。私、急いで帰らないと……」アセアセ

男子A「相手の人絡み?」

忍「はいっ」

忍「わ、私! あの子たちに、酷い所を見せちゃいました」

忍「だ、だから……えっと」

忍「お先に、失礼しますっ」

男子B「紅茶、どうする?」

忍「お、お金は今度、お返しします」

忍「それではっ!」ダッ



陽子「……」

男子A「わ、行っちゃった」

男子B「なんというか、意外と思い切った所あるんだな……大宮さん」

陽子「――なんだかなー」ジッ

男子A「? どうかしたのか?」

陽子「いや……」

陽子「あっさり、シノを勇気づけちゃうんだなぁ、と」

男子B「……まぁ、大宮さんはある意味、俺たちと『同じ』だから」

男子A「そうだって、何となく……『男』ならその気持ちが分かるってだけだよ」

陽子「――そっか」


陽子「男子、か……」

陽子(私は、イサ姉の次くらいに、シノのことを分かってるつもりだった)

陽子(今でも、そう思ってる……でも)

陽子(きっと、私やイサ姉が似たような励まし方をしたとしても……)

陽子(届かない範囲っていうのも、あるのかな)

男子A「で? 猪熊、これからどうする?」

男子B「俺たちは飲み物片付けたら、適当にブラつくけど……」

陽子「ん、私は帰るよ。それで――」


陽子「シノからの連絡、待ってようと思うんだ」クスッ


男子A「……やっぱり、親友だな」

男子B「まったくだ」

陽子「まぁ、ね」




――大宮家


勇「……お帰り、シノ」

忍「た、ただいま、お姉ちゃん」

勇「あの子たち、シノの部屋で待ってるわ」

忍「わかりました」

勇「……へぇ」ジッ

勇「さっきより、だいぶ調子が戻ってきたみたいね」

忍「私と『同じ』人に、励まされちゃいまして」

勇「――そっか」

勇「それじゃ、行って来なさい」



――忍の部屋



忍「……」

アリス「あっ」

カレン「シノ!」

忍「……」

忍「ごめんなさい、お二人とも」

忍「――」グスッ

アリス「シ、シノ!?」ビクッ

カレン「な、泣いちゃダメデス! 私たち、何も怒ってマセン!」アセアセ


忍「……ありがとう、ございます」

忍「で、でも――私、さっき」

忍「大好きな二人を置いて、飛び出して――」

アリス「……シノ。ここに座ってくれる?」ポンポン

忍「……アリス?」

カレン「ここデス」

忍「ベッドの上……?」


忍「……」

アリス「ああ、シノの隣だぁ……」ニコニコ

カレン「気持ちいいデス……」ウットリ

忍(右にアリス、左にカレン……)

忍(お二人が、私の肩に寄りかかって、頬を擦りつけています……)

忍「――『普通』ですか」

アリス「え?」

カレン「シノ、どうかしマシタ?」

忍「ねえ、アリス? カレン?」

忍「そ、その……もし、私が」

忍「お、お二人に、えっと――」

忍「い、『いやらしいこと』をしたら……」

忍「どう、思うかなーって……」カァァ

アリス「」

カレン「」


アリス「ど、どど、どうしたのシノ?」カァァ

カレン「い、いやらしいことって、え、エェ……」カァァ

忍「ご、ごめんなさい」

忍「その――た、例えば、えっと」

忍「キス、とか……い、いえ! 私、しませんけどっ」ブンブン

アリス「シノと……」

カレン「キス、デスカ……」

二人「……」ジッ

忍(お二人が、私を見つめてきました)

忍(愛しくてたまりません……だからこそ)

忍(私は、どうしたらいいのか迷って……涙まで流して……)


忍「……いえ」フルフル

忍「やっぱり、聞かなかったことにしてください」

アリス「……シノ」

忍「私は」

忍「やっぱり、お二人が心から大好きです」

カレン「シノ……」

忍「……だから」


アリス「……ねぇ、シノ?」

忍「は、はい?」

カレン「シノ、私たちといやらしいコト、したいデスカ?」

忍「そ、そんなことは!」アセアセ

忍「……ちょ、ちょっとある、のかもしれません」カァァ

カレン「シノは素直デス」

アリス「そっか、シノ、したいんだ……」

忍「あ、あまり繰り返さないでください……!」

カレン「……それじゃ、シノ」

アリス「ちょっと目、つぶってくれる?」

忍「……え?」

アリス「いいから」

忍「――」

カレン「せーのっ」

アリス「せっ」


ピトッ


忍「」

カレン「……どうデシタ、シノ?」モジモジ

忍「」

アリス「い、いやらしいことってきっと……これ、かなぁって」アセアセ

忍「……な」


忍「何するんですかぁぁぁぁ」ガタッ

カレン「わっ、シノが泣き始めマシタ」

アリス「シノ、ごめんね? 歯、当たっちゃった? 痛かった?」

忍「ほ、ほっぺたが熱くてたまりませんっ」アセアセ

カレン「いやー、さすがにその……く、クチビルは」カァァ

アリス「て、照れちゃうよぉ……」カァァ

忍「だ、だからって……もう」



ダキツキ



カレン「……シノ」

忍「こうなったら」

忍「せ、責任とって、ずっと一緒です!」

アリス「……」

忍「お二人とも、離れちゃダメですからねっ」

アリス「――うん」


アリス「ぜんっぜん構わないよ、シノ」ニコッ

カレン「願ったり叶ったり、デスッ!」ニコッ

 ――こうして、私たちは一緒になりました。


 お二人からの「不意打ち」は、私の中でもなかなか処理できないことでしたけど……。
 そのことも、二人の愛しさにとって代えられてしまいました。


「……」


 いつも通り、目が覚めます。
 脳裏には、先ほどの夢の映像が焼き付いていました。
 二人のほっぺたに、私が……口づけをするシーンが。


「――アリス、カレン」


 隣で眠っている二人の大切な金髪少女。
 その姿を見ながら、私はベッドから下りて――


「……ん」
「んぅ……」
「――あ」


 やってしまいました。
 二人のほっぺたに、一回ずつ。
 その直後、私の顔がとても熱くなりました。
 どうして、寝起き直後の私はこうなのでしょうか。自分で行動もコントロールできないなんて……。


「……ま、まぁ、いいですよね」


 あの二人曰く、「普通のこと」。
 お姉ちゃんによれば、「開き直っちゃっていいこと」。
 そうです、大丈夫です……多分。


「さて、と――」


 その足で、私は窓に向かいます。
 そこにかかっているレース状のカーテンをパッと開いて、


 眩しい朝日が差し込んできました。


「……おはよ、シノ」


 私たちの、新しい日が始まります。


「シノ、おはようデス……」


 寝ぼけた顔のまま、二人が挨拶をしてくれました。


 こうして、私たちの日々は続いていくのでしょう。
 ずっと、このままでいてくれたら……いえ、違います。


「おはようございます――」


 ずっと、このまま一緒にいます。


「――大好きなアリス、カレン!」


 そう、決めたのですから……。

ここまでになります。
ここで一旦、一区切りとします。最後の描写も、おしまいを意識したためです。
何はともあれ、これで三人は両想い(?)になりました。

まだ色々と書いていないイベントもあるので、今後それを書いていきたいと思います。
まさか、ここまで長引くとは思っていませんでした……。

それでは。
……陽子のラッキースケベ書けるかな。






――これにて一旦、本編は終了です。




――「アリスとカレンと一緒になる」というTrue Endを迎えたため、追加エピソードが表示されました。



     『本編』

   ニア 『追加エピソード』





――『追加エピソード』が選択されました。



   『追加エピソード』

   ニア「モザイク少女たちのそれから」

    「告白のお礼」

    「幼なじみ・再考」

    「秘かに進行する校内事情」

    「12月23日  ~クリスマス前日~」
    
    「 2月14日 ~バレンタイン当日~」

   




――「モザイク少女たちのそれから」を開始します。




――勇の部屋



勇「……朝、か」

勇(目をこすりながら、ふと思う)

勇「そういえば、今日は『三人』なのよね」

勇(結局、昨日カレンちゃんは泊まっていくことになった)

勇(使っていない布団を一つ出して、そこであの子は寝ることにしたみたい)


勇「……いきますか」

勇(普段着に着替えて、身体を伸ばして目を覚ます)


勇(廊下に出て、何となく思う)

勇(昨日から、シノたちはどうなったんだろう、と)

勇「……行ってみないとわからないわよね」

勇「おはよ。三人とも、起きてる?」コンコンッ

勇「……入るわよー」ガチャッ



――忍の部屋



勇(ノックをしてから部屋に入った私が見たものは――)



アリス「シノと隣……あったかい」ウットリ

カレン「シノのほっぺた、気持ちいいデス……」スリスリ

勇(……アリスは肩に寄っかかり、カレンちゃんは軽く頬ずりしていた)

勇(当のシノは、というと……)

忍「」

勇(あっ、固まってる)


忍「――そ、その、ですね」モジモジ

忍「えっと……は、恥ずかしい、です」カァァ

アリス「え? シノ、いつも私たちにこうやって――」キョトン

忍「あ、あれはっ」

忍「……まだ、『こういうこと』を自覚してませんでしたし」カァァ

カレン「Oh、シノが照れてマス……」

アリス「いつも、私やカレンの役だったのに……」

勇「シノは基本的に無自覚なまま、あなたたちのことが『好き』だったからねぇ」タメイキ


アリス「あっ、イサミ!」

カレン「いつからそこニ?」

勇「ノックしたのに、気づかれなかったから……」

勇「ところで、シノ?」

忍「な、なんでしょうかお姉ちゃん?」

勇「――もう」



勇「『男』でしょ?」



忍「……!」ハッ

アリス「わっ!」

カレン「イ、イサミ……」

勇「シノのことを、こんなに『好き』でいてくれる二人のお相手さんに」

勇「……あなたがしっかりしないとダメじゃない?」

忍「――その通りです」

忍「お姉ちゃんの言う通りです」

忍「私、頑張ります!」グッ

カレン「おお、シノの顔がSeriousニッ!」

アリス「ありがと、シノ。でも、大丈夫だよ?」

忍「……アリス?」

アリス「さっき」モジモジ



アリス「私とカレンの、その――ほ、ほっぺたに、キスしてくれたでしょ?」カァァ



忍「」

勇「あら……」

カレン「シノ……そ、そんなことして、くれたのデスカ?」

アリス「うん、私、見てたもん」コクコク

アリス「――寝たフリしちゃったけど」クスッ

カレン「……シノが、私ニ」クスッ

カレン「何だか、変な気分、デスネ」カァァ

アリス「ふふっ、アリス。嬉しそうだけど、恥ずかしそうだね」


忍「……うう」

忍「お姉ちゃん、私――」

忍「やっぱり、とても恥ずかしいです……」カァァ

勇「我慢しなさい。そんなままじゃ、『一緒にいたい』っていう望みは叶わないかもよ?」

忍「そ、それはっ」

忍「……ダメ、です。嫌です」


勇「……やっぱりシノは、どこかで開き直りが足りないのね」

勇「まあ、昨日シノが頑張ったから、今の状況があるわけだけど」

忍「開き直り、ですか……」

忍「――『男』なんだから」ボソッ

忍「……」カァァ

勇(時間、かかりそう……)


アリス「……」

アリス「わ、私!」

忍「アリス?」

アリス「シノが望むなら……な、何でも、叶えるよ?」

忍「……な、何でも、ですか」

勇(とはいえ、私がシノの立場だとしても、この子たちには敵いそうにないわね……)


カレン「Me too! 私もデス!」

カレン「シノ、ご飯にしマス? オフロにしマス?それとも……」

カレン「この後なんでしたっけ、アリス?」

アリス「うーん……私も、わからないなぁ」

忍「それとも――『金髪少女』?」

カレン「あっ、それアリデス! そうしマショウ!」

アリス「シノ、やっぱり知ってたんだ」

忍「……ま、まあ」

勇(正解を言うのは野暮ってものよね……)

とりあえず、一旦ここまでです。

これからどうなるのかは、色々と未定で、手探りで進んでいく感じになるかと思います。
一応、本編はTrue Endを迎えたという形で、後日談が解禁されたというイメージです。
Bad Endだったら三人はどうなっていたのかと言われたら、考えるのが怖いですね……

「モザイク少女たちのそれから」は、もう少し続く予定です。
他のエピソードも、これからどうなっていくのかは未定です。タイトルごと消滅するかもしれません……。

それでは。
いつも読んで頂いているおかげで、このSSもここまで続けられました。ありがとうございます。

この形式とか今後の展開で、何かアイデア等お持ちでしたら、お願いします。
楽しいけど、難しいので。

>>463
☓ふふっ、アリス→○ふふっ、カレン
申し訳ありません……。




――忍の部屋



勇『それじゃね、シノ。私、ちょっと用事があるから……」

勇『三人とも? 大丈夫だと思うけど――』



忍「……」

カレン「アリス? シノと二人きりになるからって、変な事したらダメデス」

アリス「わ、私は、そんなこと……」アセアセ

カレン「Hnn……前に私の家に来たとき」

カレン「『シノとキスなんて考えられない』って言ってマシタ」

アリス「そ、それは……」

アリス「――シノが、嫌がるかなって」カァァ


忍「……わ、私は、えっと」

忍「たしかに、お二人に『そういうこと』をしたいとは思ってませんでしたけど……」

忍「でも、実際されてしまうと、困っちゃいますね」モジモジ

カレン「私たちだけがスルだけじゃなくて、シノもしてくれマシタ」

アリス「もう、シノったら……寝てる時にするなんて……」

忍「……お、起きてるときは、まだちょっと」カァァ

カレン「こういうコトは私たちの方がセンパイデスネ、アリスッ」

アリス「でも、カレンが一緒にいなかったら……」

アリス「キ、キスなんて」

カレン「あっ、そういうコトなら、シノとアリスを二人きりにさせても安心デスッ」

アリス「……カレンだって、シノと二人きりだったら絶対照れるくせに」ボソッ

カレン「……」

カレン「No Commentデスッ!」プイッ

アリス(わっ、照れちゃった……)

忍「……」


勇『大丈夫だと思うけど――』



勇『あなたたち以外の人たちへの接し方、考えておきなさいね』



カレン「……あっ、そろそろ」チラッ

カレン「パパが待ってる時間デス」

アリス「あっ、そういえば……」

カレン「『シノの家に泊まりたいデス』って突然言ったノニ」

カレン「パパは、優しいデス」

アリス「ふふっ、カレンはおじさん大好きだね」クスッ

忍「……」




――それから・カレンの家の近く



忍「……」ハッ

カレン「――What?」

アリス「ど、どうかしたの、カレン――あっ」


カレン父「……」


忍(カレンのお父さん……)

忍(その、すぐ隣にいらっしゃるのは――)



アリス母「アリスー! 元気にしてた?」



アリス「……マ、ママ!?」

アリス母「うん、たしかにアリスのママよ」

アリス「……!」ダキツキッ

アリス母「あらあら……」

アリス「ひ、久しぶり……会いたかったよぉ」

アリス母「ふふっ、アリスは甘えん坊さんなんだから」ナデナデ


カレン「Oh、アリスのママデス……」

アリス母「久しぶりね、カレンちゃん」

カレン「Long time no see! お久しぶりデス!」

アリス母「ふふっ、相変わらず元気……」

アリス母「――それに」チラッ


忍「……お、お久しぶりです。アリスのお母さん」モジモジ

アリス母「……」ジーッ

忍「ど、どうかしましたか?」

アリス母「――女の子らしくなっちゃって」

忍「そう、でしょうか……」

アリス母「前にお家に来てくれた時に比べたら、ずっと」

忍「――あ、ありがとうございます」ペコリ


カレン父「……」

カレン父「カレン、それにアリスちゃん」

カレン「パパ?」

カレン父「……その」

カレン父「忍ちゃんと私たちで、少し話したいんだ」

忍「!」

アリス「……ママ?」キョトン

アリス母「ええ。少しだけだから、大丈夫よ」

アリス母「二人は、カレンちゃんのお部屋で待っててくれる?」

アリス「……う、うん」


カレン「? パパ、どうしたデス?」

カレン父「……大丈夫だよ、カレン」

カレン「――待ってマス」

カレン父「ああ……」

カレン「それじゃ、アリス! いきまショウ!」

アリス「わっ、カレン……」

カレン「アリスのママ! See you later!」

アリス母「ふふっ、また後でね」

カレン「Yes!」

アリス「……ま、またあとで!」



忍「……」

カレン父「……忍ちゃん」

アリス母「ごめんね、いきなりでビックリしたでしょう?」

忍「――いえ」

忍「実は、何だか『予感』はしてたんです」

忍「……カレンのお父さんと会われたのは、昨日ですか?」

アリス母「あら、やっぱりバレちゃってた?」クスッ

忍「何となくです」


カレン父「……それじゃ」

カレン父「私たちが、どうして会ったのかもわかるかな?」

忍「……はい、多分」

カレン父「そうか……」


カレン父「――色々、考えてはいたんだが」

カレン父「単刀直入に聞きたい」

忍「……」

カレン父「――君は」



カレン父「カレンとアリスちゃんと、どうなりたいんだい?」

忍(――私たち以外の人たちへの接し方)

忍(さすがお姉ちゃん、きっとこういうことになるのを予感してたんですね……)

アリス母「もう、九条さん。いくらなんでも直球すぎ」

アリス母「……でも、私も聞きたいな」

アリス母「わざわざイギリスから来たし……っていうのは冗談で」クスッ

アリス母「――アリスと忍ちゃんが、どうなりたいのかなって」

忍「……」


カレン父「……忍ちゃんは、その」

カレン父「カレンとアリスちゃんと――『一緒にいる』と決めたんだろう?」

忍「……カレンからですか?」

カレン父「ああ。昨日、あの子から連絡がきたんだ」

アリス母「それで、お父さんが手配してくれた飛行機で、私が来たの」

アリス母「アリスはもちろん、カレンちゃんも大切な『娘』のような子だから」

忍「……そう、ですよね」


カレン父「それで、聞きたいんだ……ずっと、あの二人と一緒にいるということは」

アリス母「ええ。もしかしたら、ちょっと厳しいことになっちゃうかもしれないって」

カレン父「……忍ちゃん。君は、カレンと」

アリス母「アリスと、本当にそうなれると思う?」

忍「……そ、れは」




忍(――ダメです、さっきから頭が真っ白に)

忍(すぐ近くにいた金髪少女たち……)

忍(それがいなくなってしまうと、こんなにも切ないものだったのでしょうか……)

忍(……でも)



――『男』でしょ?――


――そんなままじゃ、『一緒にいたい』っていう望みは叶わないかもよ?――



忍(……あの、二人と)




忍「――まず」



忍(ずっと、一緒に――)



忍「お二人とも、ありがとうございます。そして……」



忍(――います)

>>473
☓お父さん→○九条さん



忍「ごめんなさい」ペコリ

カレン父「……!」ピクッ

アリス母「あら」

忍「……正直に言いますと」

忍「きっと、私もあの二人も……お二人の仰る『厳しさ』が分かってないんだと思います」

忍「ずっと三人で一緒にいたい……という気持ちは嘘ではありません」

カレン父「……たしかに、そうだ」

カレン父「正直に言うと、やっぱり私は不安なんだ」

忍「……」

アリス母「ええ、実は私も……」

アリス母「前にホームステイに来てくれた時に」

アリス母「あなたとアリスが一緒にいる所を見て、『ああ……』」


アリス母「『やっぱり、女の子同士仲良しね』って、思ったから……」


忍「……」キュッ

アリス母「でも、忍ちゃんは……」

忍「――たしかに」

忍「私は、お二人とは……違います」

忍「一緒にいる、と言ったら、それは……」

忍「『女の子』同士が言う言葉とは、きっと変わってしまうんだと思います」

アリス母「……忍ちゃん」

カレン父「……」


忍「――でも」

忍「私は、あのお二人と……ずっと一緒に、いたいです」

忍「きっと、大変なこともいっぱいあると思ってます……それでも」

忍「カレンとアリスと一緒なら、乗り越えていけそうな……そんな気がするんです」

カレン父「……忍ちゃん」

アリス母「……」

忍「――たしかに、私は『男』です」

忍「それは、事実です」

忍「でも、あの二人とも――」



忍「――『大好き』なことは、本当です」

カレン父「……」

アリス母「……」

忍「――ごめんなさい」

忍「私のせいで、お二人の大切な方を……」アセアセ

カレン父「……いや」

アリス母「ビックリしたわよ、忍ちゃん」

忍「は、はい?」


アリス母「私」

アリス母「きっと、ドギマギしたままか、それとも照れたまま笑ってごまかしちゃうかと思ってたの」

忍「……私、信用ありませんか?」グスッ

アリス母「ううん、正直……」

カレン父「いきなり保護者二人に出てこられたら、動揺するのが普通だろうからね」

忍「――」ピクッ


アリス母「……まあ」

アリス母「私は、納得したわ」

アリス母「アリスもこれから、大変ねぇ……」

カレン父「――私はまだ、複雑な気持ちではあるんだが」

カレン父「何にせよ、忍ちゃん」

忍「は、はい」モジモジ

カレン父「今の君の話を聞いて」

カレン父「言葉にしにくいんだが……少し、安心感が生まれたのも本当だ」

忍「あっ……」

カレン父「だから――」


カレン父「――カレンを、よろしく頼むよ」ペコリ

アリス母「私からも、アリスをよろしく頼むわ」ペコリ

忍「――お二人とも、よろしいんですか?」

カレン父「カレンが、忍ちゃんやアリスちゃんのことを話すとき」

カレン父「見てるだけで嬉しくなるほどに、楽しそうだからね」

アリス母「あら、羨ましい。私は、そういった話をアリスから聞いてませんけど?」

カレン父「きょ、今日は、ゆっくり聞けると思うよ」

アリス母「ふふっ、それは嬉しいわね……」クスッ

アリス母「ね、忍ちゃん」

忍「は、はい」

アリス母「――『男』に」

忍「!」ハッ

アリス母「二言、ないわよね?」

忍「……はい」





忍「絶対に、離れませんし、離しません」

忍「……お二人とも、私が幸せにします。いえ」



忍「幸せに、なります――」




――その後・マンションエレベーター



忍『……あっ、ごめんなさい』

忍『アリスたちには私が先に帰ったと……え?』

忍『いや、実は――』

忍『今お会いしたら、きっと照れて会話ができないと思うので……』



カレン父「……忍ちゃん、か」

アリス母「何だか、ビックリしたわ」

カレン父「? それは一体?」

アリス母「もう、わかってるでしょう?」

アリス母「……忍ちゃんの、マジメな顔を見たんだから」

カレン父「……たしかにな」


アリス母「あんなこと言われちゃったら」

アリス母「……信じないわけには、いかないわよね」

カレン父「……そう、だね」

アリス母「ね、九条さん?」

カレン父「?」

アリス母「今日中に、イギリスに帰って」

アリス母「主人に、私の口から伝えてあげたいんだけど……出来るかしら?」

カレン父「……出来るさ」

カレン父「だから、久しぶりに……アリスちゃんとカレンと、一緒にいてあげてくれると嬉しい」

アリス母「ふふっ、喜んで」ニコニコ




――その頃・街中



忍「……」

忍「――ああ」


忍(は、恥ずかしい……!)カァァ

忍(さ、さすがに、あのお二人の前で、そんな姿は見せてはいられませんでしたけど……)

忍(これは――)


忍「……お姉ちゃん、やっぱり私、まだまだです」タメイキ

『モザイク少女たちのそれから 中編』でした。
次回、少し空気が重かった(?)今回とは違って、かなりコミカルな感じの話を構想しています。それで『後編』とする予定です。
……どうなるかは、結局未定のままですが。

今回の話では、アリス母→もう完全に準備していた、カレン父→準備はしていたものの、しかし……というイメージでした。
こういった話(「娘さんを僕にください」のような)をどこかで書く必要があると思ったので書きましたが、ちょっと駆け足だったかもしれません。

それでは。
「一夫多妻制」について調べたら、イスラム教圏の国々が多いそうで……イギリスは、そうではないようですね。
とはいえ、シノたちの「これから」は、きっと結婚しなくても……大丈夫、だと思いたいですね。




『モザイク少女たちのそれから 後編』




 ――理性が壊れる瞬間というのを、皆さんは体験したことはあるでしょうか?


 私は、何度もありました。
 言うまでもなく、その原因は大好きな金髪少女二人です。
 抱きついたり抱きつかれたり、見つめたり見つめられたり、本当に大変でした。


 ……今、私はかつてないほどに危ない状態にあります。


「シノ、私の格好、似合ってマスカ?」
「うう、や、やっぱり私……胸が」
「アリス? そういう時はPADを――」
「い、言わないでぇ……」


 目の前で顔を赤くして、一方は楽しそうに、もう一方は恥ずかしがっています。
 私はそれを見つめながら、忌が遠のいていくのを必死に抑えています。



 もう一度。
 今、私はかつてないほどに――


「シノッ! 私、気合い入れてきたんデスッ」
「カ、カレン……シノ、何だか凄く赤いよ」



 ――危ない状態に、あります。




――遡って・電話越し



忍「……カレンが、また私の家に?」

アリス『うん。もう一回、シノに会いたいんだって』

忍「そ、そうですか……」

忍「ごめんなさい。突然、帰ってしまって」

アリス『ううん、大丈夫だよ』

アリス『ママと、おじさんから聞いたから』

忍「……アリス」


アリス『それじゃ、また後でね、シノ』

忍「……は、はい」

アリス『あ、そうだ』

忍「?」

アリス『……えっとね、シノ』モジモジ



アリス『私の水着って、ある、かな……?』




忍「……カレンが、またここに」

忍(ああ、まだ気持ちの整理なんて、全然ついていませんのに……!)アセアセ

忍(――いえ、いけません)

忍(今日中に落ち着けなかったからといって、明日以降にまでズルズル引きずるのが見えています)

忍(私は、変わらないといけません……)


忍「――あの子たちの、ために」




――少し経って



カレン「シノー!」ニコニコ

アリス「シノ、ただいま」

忍「おかえりなさい、お二人とも」

カレン「急に帰っちゃうから、ビックリしマシタ!」

忍「ご、ごめんなさい……」

忍「ちょっと照れてしまいまして……」カァァ

アリス「……シノ」

忍「でも」

忍「今は――私も、覚悟を決めました」

忍「お二人のためなら、なんだってします」

カレン「……なんだって」

アリス「します……」

忍「……?」キョトン


カレン「――そ、それじゃあ、シノ」

カレン「私とアリスから、希望したいことガ」

忍「それは……?」

アリス「えっと、ね……」



カレン「今晩」

アリス「私たちと一緒に――」


アリス「お、オフロに入って……くれないかなって」カァァ




――少し経って



勇「え? 私の水着?」

忍「は、はい」

勇「……うーん」

勇「たしか、この辺りに……あった!」ゴソゴソ

勇「でも、シノとサイズ合うかしら?」

忍「じょ、上半身は、一応着けておくだけですから……」

忍「サイズとかは、きっと……何とかごまかせるかと」

勇「……うん、そうよね」

勇「それじゃ、貸すわ」

忍「ありがとうございます……」


勇「――ねぇ、シノ?」

忍「な、なんでしょうか?」

勇「……さっきから」

勇「明らかに挙動不審なことに気づいてる?」

忍「!」

勇「ずっと全身を震わせて」

勇「手を動かすときも、ロボットみたいにギクシャクしてるわよ」

忍「……そ、それは」

勇「……まぁ、でも」

勇「さっき、あの二人と話したら頑張ったみたいね」

忍「……あれは、偶然です」

勇「もう、謙遜はいいけど……」

勇「胸を張りなさい。あの子たちのために頑張ったのよ?」

忍「……」


忍「いつも、お姉ちゃんには勇気づけられてばかりです」

勇「ふふっ、そう思ってくれるの?」

忍「……本当に、ありがとうございます」

勇「もう、堅苦しいんだから……」

勇「でも、シノのそういう所、私は大好きよ」クスッ

忍「……はいっ」ニコッ



――忍の部屋



忍「……」

アリス「お、お湯……そろそろ沸きそうだね」

カレン「そろそろデス」

忍「――そ、それでは」

忍「私が、先にお風呂に入ります」

忍「お二人は、後でいらっしゃるということでいいんですよね」

アリス「う、うん……それで」

カレン「Yes! シノ、それでいいデス」ニコニコ

忍「……わかりました」

忍「それでは、お先に――」



アリス「……」

カレン「……」

アリス「そ、それじゃ、着替えようか」

カレン「ん、そうデスネ」

カレン「……」

アリス「カレン?」

カレン「――な、何ダカ」

カレン「やっぱり、とっても恥ずかしいなッテ……」

カレン「今更、思ってしまいマシタ」カァァ

アリス「……カレン」




――浴室・脱衣所



忍(……えっと、ここをこうして)

忍(こ、これで、大丈夫ですよね……)

忍(一応、形としては上出来だと思います……多分)


忍「……下半身」

忍(一応、タオルを巻いておきましょうか)

忍(湯舟に入る時はマナー違反かもしれませんけど……背に腹は代えられません)


忍「……ふぅ」チャプン

忍(ああ、温かい……)

忍(――お二人は、準備できたでしょうか?)



アリス「シノ?」コンコン

忍「――あっ」

カレン「来マシタ!」

忍「は、早いですね……」

忍「いいですよ、どうぞ」

カレン「ハイッ!」ガラッ

アリス「カ、カレン……ちょっと早すぎ――」



忍「……」

カレン「――ワッ」

カレン「シノの水着……凄く、おシャレデス」

忍「お、お姉ちゃんのを、お借りしました……」モジモジ

アリス「いいなぁ、シノ……」

カレン「アリスはスクール水着デス」

アリス「も、もう! カレンみたいにお引っ越ししたんじゃなくて、私はホームステイしてるんだから」

アリス「準備、できなかったの」カァァ

カレン「バカにしてるわけじゃありマセン。アリスは可愛いデス」

アリス「……カ、カレン?」

忍「え、ええ……凄く可愛いですよ」

アリス「シノ……」モジモジ


忍(カレンの水着は、白いビキニ仕様でした)

忍(そして、パレオが彩りを添えています)

忍(……普段からの可愛さが、さらに増しているように感じました)

忍(アリスは、私たちの学校の水着)

忍(恐ろしいくらいに、アリスに似合っています……)

カレン「それじゃアリス、浴槽に入りマショウ!」

アリス「わっ、カレン!?」

忍「お、お二人とも、気をつけ――」



チャプン



忍「――て」

カレン「ふぅ、温かいデス……」

アリス「もう、カレンったら……でも、気持ちいいね」

忍「」


忍(隣に、二人の水着姿の金髪少女……)

忍(どうしましょう、頭の中がグルグルして、何もまとまりません……)

カレン「……何ダカ」

カレン「シ、シノと一緒にオフロに入ってるってコトガ……」カァァ

アリス「う、うん。凄く恥ずかしい、よね……」カァァ

忍「わ、私は……その」

忍「……やっぱり、とても恥ずかしいです」

カレン「ヤッパリ……」

アリス「そうだよね、シノだってそうなるに決まってるよね……」

忍「――でも」


忍「こうして、お二人と一緒に、お、お風呂に入るなんて思ってもみなかったので」

忍「一緒にいられることが、とても嬉しいです……」

忍「――」ダキッ

カレン「ワッ!?」ビクッ

アリス「シ、シノ……!?」アセアセ


忍「――ごめんなさい」

忍「なんだか、とても抱きつきたくなってしまいまして……」

アリス「わ、私は、大丈夫だけど……」

アリス(シノの肌が、ちょ、直接当たってるよぉ……!)カァァ

カレン「シノ……嬉しいデス」

カレン(シノのSkinが私に触れて……や、柔らかすぎマス!)カァァ


忍「……ねぇ、お二人とも?」

アリス「な、なにかな、シノ?」

忍「どうして、『一緒にお風呂に入ろう』と?」

カレン「……それハ」

カレン「私が考えマシタ。シノとDirectに、もっと繋がりたいって思ったからデス」

アリス「……私も、カレンと同じだったよ」

忍「そう、だったんですか……」

忍「――ふふっ、こうして抱きついていると」

忍「お二人の温かさが、よく分かります」

アリス「それは……お風呂が熱いから」

忍「いいえ、体温じゃありません」

忍「……凄く、落ち着きます」

カレン「シノ……」


忍「……」

忍(意外と)

忍(さっき、カレンとアリスの親御さんに会った後から、落ち着いています……)

忍(――覚悟、のようなものができたんでしょうか?)


カレン「シノ? ちょっと、こっちを見てくれマスカ?」

忍「はい?」

カレン「えっと、デスネ……」モジモジ


カレン「シノ、モンモンとしマスカ?」カァァ

忍「」

カレン「――私の、水着姿を見テ」

アリス「ちょ、ちょっとカレン!?」

カレン「? アリス、シノを見てモンモンとしマセンカ?」

アリス「……そ、それは」

忍「え、えっと……?」アセアセ


アリス「あ、あのね、シノ?」

アリス「その――私を見て、悶々と? する?」

忍「……そ、それは、ですね、ええと」

カレン「シノ?」

アリス「シノ?」

忍「……」



忍(――理性が壊れる瞬間というのを、皆さんは体験したことはあるでしょうか?)




ーー



アリス「わっ、シノが……」

カレン「シ、シノ! 大丈夫、デスカ?」

アリス「体中、真っ赤だよぉ……」

カレン「シノ……」

忍(――ごめんなさい、アリスのお母さん、カレンのお父さん)



忍(『これからいろいろ大変』なんて、軽々しく言ってしまって……!)カァァ

ここまでです。
とりあえず、これにて後編は終了です。
「忍とアリスとカレンの三人でお風呂に入る」という漠然と考えていたアイデアを書き起こしました。

あれこれと大筋を考えても、展開を創りだすのは難しかったです。
出来る限り頑張リましたが……楽しんで頂けるかどうか。

それでは。
次回以降、何をどう書くかは未定です……どうしようかな。




 ――あの時、身体に電流が走ったのを確かに感じた。


 そもそも、偶然もいい所だった。
 別の高校に行った友達が、学園祭に誘ってきたから。
 そんな理由で「それじゃ行くか」と、どこまでも軽い気持ちでやって来た。

 一緒に行くはずだった男友達は、「急用が入った」とかでドタキャンしてしまった。
 でも彼にも、誘った友達にも、「急用」が何なのかは分かっていた。
 だから何も文句は言わず、後で思いきり彼をからかうことで帳消しにした。
 ……最近付き合い始めたらしい彼女の相手を務めるのは、なかなか大変そうだなぁ、と思った。


 からかいながら、じんわりと思った。
「ああ、羨ましい」と。
 そんな風に感じたのは、初めてのことだった。


 そして今。
 彼は、公道を歩いていた。
 肩にはズッシリとした重みがある。
 今日の練習はキツかったな、と強く思った。
 


「……」

 
 何度目になるかも分からないくらいに、開けては閉めてを繰り返したケータイ。
 再び、受信メールを見直した。
 送信日時は、昨日の午後9時。


『こんにちは。こちらの宛先でよろしいでしょうか……?
 先日は、色々とバタバタしてしまい、本当にごめんなさい。
 よろしければ明日――』



「――ここ、だよな」


 待ち合わせ場所に指定されていた公園に到着する。
 柄にもなく、15分前行動なんてものをしてしまった。
 予定時刻まで、まだ余裕がある。
 予想通り、相手は来ていない。


「……」


 肩にかけていた練習用具が詰まっていた鞄を、足元に投げ出した。
 そしてベンチに座り、空を見上げてみた。
 さっきから、太陽が雲に覆われたり、また出てきたりと忙しい。
 まるで、今の俺の気持ちみたいだな――
 そんなことを思い、苦笑してしまう。


 今は太陽が出ており、文字通り晴れやかな空気が満ちていた。


(――隠れないでくれ)


 なぜだか強く、そんなことを思った。
 ずっと晴れていてほしかった。
 空がそのままでいてくれたら、もしかして……。



「こんにちは」
「……あ」


 その声に、弛緩していた身体が跳ね上がった。
 忘れもしない、この甘い声は――


 いつの間にか自分の目の前に、相手がやって来ていた。
 当然、あの時のようなメイド服ではなく、私服姿だった。
「私服姿も可愛いな」と、ごく自然に彼は思った。


 何の前触れもなくやってきた「彼女」に、少し驚いたものの、すぐさま嬉しさが全身を支配した。
 ああ、また会えたんだ――


「……こちらに座っても、よろしいですか?」
「もちろん」


 流れるような動きで、彼の隣に「彼女」が座る。
 凝視しなくても分かる。
 その相手は、本当に――


「えっと、その……改めまして。大宮忍といいます」


 ――可愛かった。





『告白のお礼』




――公園



忍「……今日は、ありがとうございます」ペコリ

男子「いや、こっちこそありがとう」

忍(お互いに、自己紹介をし合ったところ)

忍(どうやら、私と同い年の方ということが分かりました)


男子「……むしろ、会ってくれるなんて思わなかったから、すげえ嬉しい」モジモジ

忍「あ、会わないなんて……そんな失礼な」

男子「いや、だってさ……」

男子「あ、あんなことされたら、困るだろ?」

忍「……そ、そんなことは」アセアセ

男子「ホント、ごめん」ペコリ

忍「謝らないでください」


忍「――」チラッ

忍(足元にはスポーツ用の鞄)

忍(刈り上げたヘアスタイル……)

忍「――もしかして」

男子「?」キョトン

忍「野球部の方ですか?」

男子「うん、そうだよ」コクリ

忍「……凄いですね」

男子「いやいや、フツーだって」

男子「……ただ昔から、野球好きでさ」

男子「バットにボールが当たった時のあの感触も」

男子「グローブにしっかりとボールをキャッチした時の気持ちよさも……」

男子「全部、好きなだけだよ」ニコッ

忍「……」

忍(野球について話す、その姿は)

忍(とてもキラキラしていて、笑顔もきまっていました)

忍(……きっと)


男子「いやー、今日もさ。部長の打ったボール、キャッチできて、すげえ嬉しくて……」


忍(――他の「女の子」にも、好かれるでしょう)


男子「――あ」ハッ

男子「ごめん。ちょっと熱くなりすぎた」カァァ

忍「いえ、お気になさらず」

忍「……むしろ、凄く楽しそうで、私も楽しくなりました」

男子「マジ!?」

忍「ええ、ホントです」ニコッ

男子「……」


男子(そう言って笑ってくれた)

男子(そういえば、さっきからずっと太陽が出ている)

男子(……もし、かして)


男子「あ、あの――」アセアセ

忍「はい」

男子「……本題」

忍「!」ピクッ

男子「入っても、いいかな、って」

忍「……」


忍「はい」コクリ


男子「……えっと」

男子(落ち着け、俺……太陽も味方してくれてるぞ)

男子「俺は、その……お、大宮さんが好きだ」

忍「……」

男子「そ、それで」アセアセ

男子「できれば――付き合いたい、って今でも思ってる」

忍「……」

男子「嘘じゃなくて、ホントに心からそう思う」

男子「……好きだ」

忍「……」

 ――彼が話している間、太陽は姿を現し続けていた。
 緊張して噛みそうになりながらも、彼は素直にその気持ちを口に出していた。
 たしかに、太陽が味方してくれていたのだろう。


 その、すぐ後で――。
 雲が、太陽を覆った。
 ほんの少しだけ、辺りが暗くなった。


 彼がそれに対し、少しだけピクッとした瞬間――


「ごめんなさい」


 ペコリと頭を下げる「彼女」が、そこにいた。




忍「……あの」

忍「実は……私には、もう」

忍「お相手が、います」カァァ

男子「……あ」

忍「ま、まだ一緒になったばかり、なのですが」

忍「私は、その子た――いえ、その子が大好きで」モジモジ

男子「……」

忍「で、ですから」


忍「私は、お付き合いできません……」


男子「――そっか」

忍「わざわざ来て頂いて、こんな返事で」

忍「本当に、ごめんなさい……」

男子「いや、気にしないでくれ」

忍「で、ですが……」


男子「――あー、なんだか」

男子「うん、突っ走りすぎてたんだな、俺」

忍「……」

男子「実はさ、誰かを『好き』になるのって初めてで」

男子「今まで彼女持ちの友達とかと話してても、何だかピンと来なかったんだよ」

男子「『何か違うな』って、思ってきた」

忍「――」

男子「でも」

男子「今日、こうしてきっちりと気持ちを伝えられて」

男子「ホントに何となくだけど――」


男子「好きな相手と一緒にいる、っていうのがどんなに大事かってのがよく分かった」


忍「!」

男子「――ような、気がしたよ」

忍「……あの」

男子「ありがとな、えっと……大宮忍さん」ペコリ

忍「あっ……」

男子「上手く言えないんだけどさ……何だか」

男子「凄く、サッパリしたんだ」

忍「……そん、な」


男子「それじゃ俺、そろそろ行くよ」

忍「……」

男子「大宮さん」

忍「は、はい」

男子「――その、相手の『男』と」

忍「……」

男子「幸せになってくれよ?」

男子「そうなってくれなきゃ……俺が困る」

忍「――ええ」

忍「絶対に、幸せになります」コクリ

男子「……ありがと」


男子「それじゃ、いきますか」

男子「うわ、太陽消えてから寒くなったな……」ブルッ

男子「――じゃあ、また」

忍「……」




――咳が、漏れ出る。


 身体を震わせながら公園の出口へと向かう途中で、ふと気づく。
 考えてみれば、太陽が出ている時だって寒かった。
 当然だ。もう秋は通りすぎて、冬がその出番を今か今かと待っている時期なのだから。


(どんだけ緊張して……)


 くしゃみしながら、思う。


(どんだけ嬉しかったんだよ、俺は……)


 身体は冷えながら、まだ頭と心は熱かった。
 とはいえ、さっきから急に熱くなったり、急に冷え込んだりする。
 そのジェットコースターぶりに、油断してしまいそうになる――


(……油断、しちゃ)


 ダメだ、と彼は強く思う。
 せめて、公園から出るまでは、嬉しさでいっぱいのままであってほしい。
 そうだ。彼女持ちの、あのドタキャン野郎の気持ちが分かったんだ。
 それでいいじゃないか――




「……ありがとう、ございましたっ!」


 ビクッとした。
 コーチや監督に怒号を飛ばされた時のように、身体が震えた。
 その声は、そういった人の野太いものに比べて、ずっと甘かったのに――


 ゆっくりと、振り向く。
 そこにはベンチから立ち上がり真剣な表情をしている、大好き「だった」相手の姿があった。
 自分も寒いだろうに、その姿からは全くそういった気配を感じさせない。


「わ、私もっ! 『好き』っていうことが、よく分かっていませんでした!」
「……!」
「でもっ! いざ私がこ、告白されて……それでやっと分かりました!」


 真剣な佇まいでありながら、緊張は全く隠せていない。
 さっきから相手の口から出てくる言葉は、何だかまとまりのないものに感じられた。


 でも彼の心に、ビシビシと響いてくる力は、たしかにあった。


 コホンと、「彼女」は一息ついて、ゆっくりと言う。


「私は、えっと……そ、そちらとはお付き合いできません。ですが……」


 そこで、相手としっかりと視線を合わせ、



「そちらが気づかせてくれなかったら、私は……きっと、幸せにはなれませんでした。本当に、そう思います」



「……」


 最後まで、相手の話を聴いた。
 もし、彼が複雑な心境になっても無理はないだろう。
「自分が告白されなかったら、相手を『好き』だとは分からなかった」と言われても、どう反応すればいいのか。



「――参ったな」



 クルッと、相手に背を向けた。
 後ろで、ピクッと反応する「彼女」の姿が目に見えるようだった。


「大宮さん。そういうこと、言われちゃうと」


 大丈夫だ、まだ口調に変化はない――
 しっかりと、最後まで伝えなくては。



「嬉しくなったり悲しくなったり、どうすればいいか分からなくなるって」
「……ごめんなさい。それでも、絶対にお伝えしたかったんです」


 彼の背に、「彼女」の言葉が被さってくる。
 それを聞きながら、思った。
 きっと「大宮忍さん」も、どう伝えればいいかで悩んだんだろう、と。
 ただ断れば済む所を、しかしそう割り切ることは出来なかったんだろう、と――。


「……あのさ、大宮さん」
「はい」


 再び、彼は相手と視線を合わせる。
 彼の表情を見て、「彼女」は少しだけピクッとした、ように見えた。
 正確には、彼の目元を見て――


「もう一度、言うけど……」


 気づけば、辺りは少しだけ明るくなっていた。
 太陽は雲に挟まったり、その外に出たりしていた。
 折しも今、太陽は完全に雲から離れていた――


「絶対に、幸せに、なってくれ」


 言葉を区切りながら言って、笑顔を見せる。
 目元を少しだけ潤ませながら、しっかりと。


「……はい。お約束、します」


 相手――大宮忍も、笑った。
 それだけで、彼にとっては十分だった。
「じゃあな」と二度目の別れの挨拶をして、彼は公園を出て行った。
 その背中は、最後までしっかりと伸びていた。




――公園


忍「……」

勇「お疲れ、シノ」

忍「――お姉ちゃん」

勇「大丈夫だった、みたいね」

忍「……はい」


勇「――さっき、相手の子とすれ違ったわ」

忍「……」

勇「声は出してなかったけど……泣いてたわ」

忍「そう、ですか……」

勇「――でもね」

勇「何だか……清々しい感じでもあったの」

忍「――!」

勇「いい子、だったのね……」


勇「それを見て、『あーあ。シノ、もったいなかったかもなぁ』って」

勇「ちょっと、思っちゃった」クスッ

忍「――もう、お姉ちゃんったら」ニコッ

忍「私は、あの方とお約束したんですよ?」

勇「え、なになに?」

忍「それはですね……」




――


男子「あっ、もしもし?」

男子「前に話した子なんだけど……振られちまったよ」

男子「いやー、イケるとちょっと思ったんだけど……そんな上手くいかねえよなぁ」

男子「え、慰め会? いやいやいいって、そんな気を遣わなくて――」

男子「……そんなに言うなら、後でサイゼ行くか。うん、それでいいよな」

男子「ありがとな……ああ、後さ」



男子「――ありがとな、学園祭に誘ってくれて」

男子「おかげで、あの子を好きになれた。ホント、ありがとう」

男子「……え?」


男子「『あーあ、あたしも彼氏ほしいなぁ』って……」

男子「『どう思う?』なんて言われてもなぁ……うーん」

男子「……っていうかお前、いつもそればっかだな」クスッ




――



忍(……絶対に)

忍(絶対に、幸せになります。だから……)


忍(いつか、そちらも――)



忍(幸せに、なってください……)

以上、『告白のお礼』でした。
今回、カレンとアリスはお留守番です。期待された方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。
帰宅したシノにハグしている彼女たちの姿を想像して頂ければ幸いです。
次回は、思い切り動いてもらう予定です……「予定」ですね。

ただでさえオリキャラを投入してしまっているので、本来ならこのパートはもう少し短くしてサッパリと終わらせるつもりでした。
でも書いてみたら、思った以上に感情移入してしまい、長くなってしまいました。
いつか彼もシノが言っているように「幸せになる」でしょう、きっと。

……最後まで、彼はシノの「正体」は分からないままです。
「相手の女子から教えてもらってるんじゃ?」という疑問を持たれた方、どうかお見逃しを……。


長文になってしまいました。それでは、この辺で。
二期まで一ヶ月を切りましたね……楽しみです。

 ――私たち、一緒にいることになりました。


 シノからそんな知らせが私たちのもとに届いたのは、文化祭から間もない時のことだった。
 後で聞いたら、どうやら私だけでなく陽子もちょっと困ったらしい。
「どうして困ったの?」なんて聞くつもりもなかった。
 きっと、私と彼女の「困った理由」は、ほとんど同じものだろうから。


 というわけで、私たちは――




『幼なじみ 再考』



――高校


カレン「シノ!」

忍「なんですか、カレン?」

カレン「……」チラッ

カレン「あっちの席で、Coupleが『アーン』っていうのをしてマス」

忍「……ああ、お二人はお付き合いしてるみたいですから」

カレン「というわけで、シノ」

カレン「私にも――」ジッ

忍「あっ……」

忍「カ、カレン……」モジモジ


アリス「カ、カレン!」

アリス「シノが困ってるからダメだよ!」

カレン「Hnn……そうデスカ」

カレン「――アリスがさっきから、あっちの方をチラチラ見てるカラ」

カレン「私も、乗っからせてもらったのデスガ……」

アリス「き、気になるのはホントだけどっ!」アセアセ

アリス「――もう、お家でずっと、甘えてるでしょ?」

カレン「……アリスは優しいデス」ニコッ

カレン「それじゃ、シノ。『アーン』はまた今度、というコトデ」

忍「」

アリス「あ、固まってる……」

陽子「……」

綾「……」

陽子(ああ、そうだった)

陽子(私たちは、いつも通り一緒にお昼ご飯を食べている)

綾(……でも)

綾(何だか――)



忍「――あ」ハッ

忍「だ、大丈夫です」

忍「私はずっと、お二人と一緒に『幸せになる』と決めたのですから……」ニコッ

カレン「……嬉しいデス」

忍「ええ、カレン」

カレン「そういうことなら、えっと……」

カレン「――や、やっぱり、『アーン』って」

忍「……」カァァ

アリス「カレン!」

カレン「……アリスは、おカタイデス」

カレン「もしかして――アリスも恥ずかしいのデスカ?」

アリス「……そ、それはっ」カァァ

忍「お、お二人とも」

忍「……そ、そういうのはお家の中で、ということではいけませんか?」

カレン「――シノ」


忍「た、たしかに」

忍「私は、あの日に『彼』とお会いしてから、お二人に対する覚悟を決めました」

忍「……で、でも。やっぱりまだ、恥ずかしいです」

アリス「……シノがそうしたいなら、それで大丈夫だよ」

忍「アリス……」

アリス「――だって」

アリス「シノは、私『たち』の大切な……」

アリス「お相手……だから」カァァ

カレン「Yes! シノは私たちのPartnerデスッ!」

忍「――あ、ありがとうございます……」モジモジ


綾(――三人だけの世界が作られてるような……)

陽子(いやまぁ……私も綾も、『相手』はいたことないから分からないけど)

綾(お話で見た時も、こういう感覚はあったみたいね……)

陽子(きっと綾と今の私は、同じような気持ちなんだろうなぁ……)

カレン「……あっ、そうデシタ」ポンッ

カレン「シノ、アリス? 今日の放課後は、空いてマスカ?」

アリス「……え?」キョトン

忍「放課後、ですか……ええ、空いてます」

カレン「――じ、実ハ」

カレン「パ、パパが……アリスとシノに会いたいみたい、デス」

忍「――あ」

アリス「――そっか」

カレン「ハイ。良かったら今日の放課後……お願いできマスカ?」

アリス「うん、勿論!」

忍「ええ、大丈夫です」

カレン「All right! 安心しマシタッ!」ニコッ

忍「……ということはもしかしたら」

忍(アリスの、お母さんも……)


陽子「……」

綾「……」

陽子(――シノとアリスと、カレンのお父さんが)

綾(……『娘さんを、ぼくに下さい』?)

綾(い、いや! 発想が飛躍しすぎでしょ、私っ!)ブンブン


カレン「シノ、大丈夫デス。前みたいに、パパにケツイを示す必要はありマセン)

忍「そ、そう、ですか……」

綾(――って、もう実行済み!?)ビクッ

陽子(うひゃあ……何だかシノが遠くに行っちゃったような気がする)


カレン「――それでは、シノ!」

カレン「また後でお会いしまショウ!」

忍「……は、はい」

アリス「ねえ、カレン……もしかして」

カレン「アリス? そこから先はSecretでお願いシマス!」

アリス「――そっか、わかったよ」


カレン「それじゃ、マタ――oops!」

陽子「?」

綾「?」

カレン「Sorry、お二人トモ……」

カレン「今日、シノやアリスとばかりお話ししてしまいマシタ……」

カレン「――ゴメンナサイ」ペコリ

陽子「いやいや、いいってカレン」

綾「ええ、そうよ」

綾「その――シノと、『一緒にいる』ことを決めたんでしょう?」モジモジ

綾「それだったら、会話が多くなるのも無理ないわ」

カレン「……Thanks、お二人とも」ニコッ

カレン「それではマタッ!」


忍「……行っちゃいましたね」

アリス「うん……」

陽子「……ってことは」

陽子「シノ。今日は、私たちと一緒には帰れない、のかな?」

忍「あっ、陽子ちゃん……ごめんなさい、そういうことになるかと」

忍「――あちらのお父さまに呼ばれたら、お断り出来ませんし」アセアセ

綾「たしかに、それもそうよね……」

忍「綾ちゃんも、ごめんなさい」

綾「ううん、気にしないでシノ」

綾「――ちょ、ちょっと遠くに行った気がしただけだし」カァァ

陽子(それは綾にとって「ちょっと」なのかな……?)


アリス「ヨウコ、アヤ……」

アリス「ごめんね」

陽子「え、アリスまでどうかした?」

アリス「――いや」

アリス「だ、だって」


アリス「『幼なじみ』のシノを、私とカレンがその……と、取っちゃったから」


陽子「……」

綾「……アリス」

アリス「ご、ごめんね。おかしなこと言っちゃって」

陽子「――いや、大丈夫だよアリス」

綾「わ、私たちは……シノやあなたたちが」

綾「幸せになってくれれば、それで――本当に嬉しいんだから」ニコッ

陽子(……綾)

アリス「……あ、そっか」

アリス「きっと――私は今日、向こうにお泊りすることになるかも」

忍「ええ……きっと、そうなるでしょうね」

アリス「シノ、どうする?」

忍「――私、は」

忍「そうですね、少し考えたいと思います」

アリス「うん、それでいいと思うよ」

忍「ええ」コクリ


綾「……」

陽子「……」

綾(シノが、ご挨拶を……)

陽子(もうすでに、一度済ませているらしいとはいえ……)


綾(……本格的に)

陽子(シノが――『女の子』と、付きあおうとしてるんだな……)









 ――それから、放課後を迎えた。


 カラスちゃんの話を聞いてから、私たちはいつも通り下校した。
 その間に、シノたちはカレンのマンションへと向かっていった。

 で、私と綾は、互いの家に帰った。
 実のところ、かなりモヤモヤした感覚は残っていたけど……


(ま、あの三人なら大丈夫か)


 と、自分で納得することにした。
 きっと、綾もそんな風だったんだろう。



 少ししてから、メールが来た。
 差出人は、私たちの大切な友達。
 宛先を見るに、どうやら私だけじゃないらしい。


 メールを開くと、そこには――



『陽子ちゃん、綾ちゃん。
 出来たらでいいのですが……今夜、お会いできませんか?』

一旦、ここまで。
次回でおしまいになるか、もしかしたらもう少しかかるかもしれません……
それでは。

――ボクは、男です。


 生まれて初めて、世界が反転するような感覚を味わった。
 頭が地面に、足が空に、そして身体が浮遊して……。


 私は頭をクラクラとさせながら、目の前で恥ずかしそうにしているおかっぱ頭の『女の子』を見る。
 女の子――大宮忍、さんは少し照れくさそうな笑みを零していた。
 ほんのりと赤く染まった頬。
 柔らかい立ち居振る舞い。
 髪こそ短いものの、どこからどう見ても「女の子」そのものだった。


 ――その……男子、苦手だって言ってたよね?


 ついつい見とれていると、すぐ近くから声がした。
 綺麗な赤髪の子――猪熊陽子、さんだった。
 いつものハキハキとしたトーンが、少し落ちていた。


 ――シノは男子だけど、私の大切な……ホントに大切な友達なんだよ


 そう言いながら、猪熊さんは大宮さんを見つめる。
 その視線に、大宮さんも応えた。
「優しさ」という言葉は、今のこの二人に完璧に一致するといっても間違いないだろう。
 見てる私まで、少しドキッとした。


 ――で、なんだけど。シノも一緒にいて大丈夫かな、って


 その時の猪熊さんの表情を、私は今でもよく覚えている。
 口元は綻ばせたまま、普段強気な目元を少し垂らし、視線は私一直線。


 羨ましい、と思った。
 何が? と聞かれると困るけど、本当に何となく。
 この二人が……とても羨ましく感じた。


 コホン。
 私は一息つくと、二人の「女の子」に向けて――



「……う、嬉しい、です」




『幼なじみ 再考 後編』



――大宮家・忍の部屋



忍「えっと……今日は、わざわざありがとうございます」ペコリ

陽子「堅苦しいって、シノ」

綾「そうよ。私たちがあなたの相談事を断れるわけないじゃない」

忍「お二人とも、本当に……」


陽子(結局)

陽子(明日は学校が休み、ということもあって)

綾(話し合った結果、シノの部屋が集合場所になった)

綾(もし、相当遅くにまでなったら、泊めてもらうようにお願いした)


陽子「――それで?」

綾「何か、あったの?」

忍「……じ、実は、ですね」

忍「そ、その――」


忍「私、もしかしたら……日本から離れちゃうのかも、って」



陽子「……あ」

綾「そう、なのね……」

忍「……あまり驚いてませんか?」

陽子「うん……まあ」


綾「あの二人と一緒にいる、のなら」

綾「……もしかしたら、シノがイギリスに行くことも有り得るのかなー、って」

綾「そんなことは、思ってたの」

陽子「私も……それだったらシノ、カラスちゃんに特別授業申し込まないとなーとか」

陽子「考えたりしてた」クスッ

忍「うう、陽子ちゃん……耳に痛いです」ウルッ


忍「――それで、ですね」

忍「えっと……色々とこんがらかっちゃうんですけど」アセアセ

陽子「大丈夫大丈夫、夜は長いから」

綾「陽子……あなた、また夜更かしを」ジトッ

陽子「もう、綾は優等生すぎるって」

綾「そ、そんなことは……」アセアセ

忍(――ああ、落ち着きます)

忍(このお二人といると……凄く)

忍(……ああ、私は本当に)

忍「……カレンのお父さんと、アリスのお母さん」

忍「お二人に、まず『イギリスに来る気は?』といったことを尋ねられました」

陽子「なるほど……」

綾「シノは、なんて?」

忍「――すぐには、応えられませんでした」

忍「イギリスは、お二人もご存知の通り私にとって大切な場所です」

忍「でも、すぐにはお返事が……」モジモジ

陽子「うーん……そうだよねえ」

綾「無理もないわよね」


忍「――『ずっと、一緒にいる』」

陽子「……あ」

綾「シノ……」

忍「『そう、言っていたね。それは』――」



忍「『結婚、を意味しているのかな?』」



陽子「!」

綾「!」

忍「……と、カレンのお父さんが尋ねました」

忍「恥ずかしながら、私はそこで固まってしまって」

忍「一分が何十分くらいに感じてしまいました」カァァ

陽子「……け、結婚」

綾「シ、シノが……?」


綾「い、いや! 落ち着きましょうっ」ブンブン

陽子「……あ、綾が一番落ち着いてないって」

綾「あ、あなただって、声が裏返ってるじゃないの」

陽子「う……」アセアセ

忍「綾ちゃん……」


綾「そ、それで」

陽子「な、なんて応えたんだ?」

忍「……固まってしまった後」

忍「――『本当に有り難いのですが』」

忍「『私はまだ、あのお二人と結婚するという決意は出来ていません』」

忍「『今は、こうしてお二人のことを前よりも、もっと深く知っていきたいし、そういう時期と私は思っています』」

忍「……といった感じでした」

陽子「す、凄いな……」

綾「な、何だか、一足跳びにシノが遠くへ行っちゃったような気さえするわ……」

忍「い、いえ! 実際は噛み噛みで、とてもとても……」アセアセ

陽子「もし、そうだとしても」

綾「……凄いわ。シノ」

忍「うう……」カァァ

綾「……」ジッ


――この学校のこと、分かりますか? それならボクが教えて――


綾(……誰よりも早く、私に声を掛けてくれたのはシノだった)

綾(あの時はシノには失礼なことに、結局、成り行きで陽子に頼りきりになっちゃったけど……)

綾(当時から、シノの積極性とか気配りは凄いと思ってたのよ……)

綾(この前の文化祭の時だって……あなたがあんなことを言ってくれなかったら……)


忍「? 綾ちゃん?」キョトン

綾「……シノ、ちょっといい?」コホン

綾(だから――)


綾「――私も、よく知らないことだけど」


綾(今度は私が……助ける番、よね?)



綾「イギリスって、その……『一夫多妻制』じゃないわよね?」

忍「いっぷたさい……」

陽子「えっと……『一人の男の人相手に、女の人は何人でも結婚できる』みたいな感じじゃないかな」

忍「なるほど……一つ、勉強に」


忍「あ」ハッ

綾「気付いた、シノ?」

陽子「――ってことは」

忍「私……あのお二人と結婚できないじゃないですか」モジモジ

陽子「そうなるよなぁ……」

綾「――いえ、でも」

綾「そのことをイギリスに住んでいるお父さん方が知らないわけない、わよね」

陽子「あ、そっか……」

忍「そ、それでは、どうして……?」

陽子「――ね? 名探偵綾?」

綾「そ、その呼び方やめてってば」アセアセ

陽子「文化祭で見せたキレを、もう一度お願い」

忍「……文化祭で見せた?」キョトン

綾「シ、シノ、なんでもないのよ」カァァ


綾「……えっと」

綾「実際は結婚できないにも関わらず、シノが結婚できるか聞いてきた」

綾「それをシノに聞く理由――」

綾「……そういえば、シノ。あなたがお話ししている間、アリスたちは?」

忍「あっ、お二人はお風呂に入ってました」

陽子「……つまり、シノだけを相手にしていたんだ」

忍「はい」コクリ

綾「――そういうことなら」

綾「もしかしたら」

忍「はい」

綾「……あの二人が、シノの近くにいたら」

綾「そんな質問をされてシノが困ったら、すぐに突っ込みを入れて」

綾「あやふやなまま、なし崩し的にお話が終わっちゃうだろうから……」

綾「シノが――あなたが、心からどう思っているのかを相手は聞きたかったんじゃないかしら」

忍「私、が……」


綾「アリスとカレン」

綾「……その二人をどう思っているのかって、きっと相手の親御さんは凄く気にすると思う」

綾「きっと、何度確認しても足りないくらい……」

陽子「そっか、だから――」

綾「辻褄の合わない質問をしてでも、何度も確認したいんだと思うの」

忍「……わぁ」


忍「綾ちゃん、凄いです」

忍「私――頭の中がボーっとしてしまって、何も思いつきませんでした」

綾「……ありがとう、シノ」

綾「でも私は、シノに『お返し』ができてないから」モジモジ

忍「?」

綾「いつも私を励ましてくれる、あなたに」

綾「……少しは『借り』を返せているのかしら?」ニコッ

忍「――綾ちゃん」ニコッ


陽子「……」

陽子「はぁ……」タメイキ

勇『みんなー? お風呂、湧いたわよ』コンコン

忍「あっ、お姉ちゃん!」

勇『開けるわよ』ガチャッ


勇「やっほー、陽子ちゃんに綾ちゃん」

陽子「イサ姉……」

綾「こ、こんばんは」

忍「……」

勇「お風呂、誰が一番先に入る?」

忍「――あ」


忍「そ、それなら、私でもいいでしょうか?」

陽子「うん、いいよ」

綾「どうぞ」

忍「ありがとうございます」

忍「それでは」ペコリ

陽子「……」

綾「……」

勇「――何だか、シリアス?」クスッ

綾「ええ、少し……」

綾「その――勇さんも、今の話を?」

勇「そうね。あなたたちが来てくれる前に、私と私たちのお母さんには話してたわ」

勇「――『結婚』なんて言葉が出てきたら、さすがに保護者には、ね」

綾「そう、ですよね……」


陽子「……」タメイキ

勇「どうかした、陽子ちゃん?」

綾「さっきから溜息が多いわね」

陽子「――いや、なんだか」

陽子「最近、自信をなくしそうになるからさー」

勇「自信?」

陽子「だって……」


陽子「この前」

陽子「シノが、アリスとカレンと一緒にいることで、すっごく悩んでた時」

陽子「……私、シノに何も言えなかったんだよ」

勇「……へぇ」

陽子「結局、偶然会ったヤツらに背中押されて、アリスたちとこういう関係になってシノの悩みは消えたみたいだし」

陽子「文化祭の時だって今だって、私はシノのこと……支えられてるのかなって」

陽子「最近じゃ、綾の方がずっと凄いしさー」

綾「……陽子」

勇「陽子ちゃん」

陽子「イサ姉……」


勇「……可愛いわね」クスクス

陽子「……へ?」キョトン

綾「い、勇さん?」ピクッ

勇「いやー、たしかに陽子ちゃんはシノといた時間なら、私たち家族の次くらいに長いし」

勇「きっと、『シノのことなら何でも知ってるはず』って思ったりしてるでしょ?」

陽子「そ、そんなことは……」アセアセ

陽子「ちょびっとある、のかも……」カァァ

綾「……そう、なのね」

勇「何だか、そうやって自信持っちゃってると」

勇「きっと、どこかで空回りしちゃうと思うの」

陽子「――う」

勇「……私だって、そうよ」

陽子「イサ姉が?」

勇「だって」

勇「……陽子ちゃんと一緒で、私だってあの時」

勇「シノたち三人が一緒にいるように、背中を押しきれなかったから」

綾「そ、そこは、陽子も勇さんも……シノは、その、『男子』ですし」

綾「その時、話していた相手も男子、ということは聞いています」

綾「そういう面でちょっと不利? でも……仕方ないと思います、けど……」

勇「ありがとね、綾ちゃん。でも――」

陽子「うん。やっぱり……何だか悔しい、ような」モヤモヤ

勇「そう、悔しいのよね」クスッ

綾「そ、そういうものなんですか……」


綾「――ただ」

綾「その……」チラッ

陽子「綾?」キョトン

綾「よ、陽子がいなかったら、色々と大変だったと思います」

綾「私とシノを引き合わせてくれたのは……陽子、あなたよ」

陽子「……それ、は」

綾「自信、持って」

綾「文化祭の時、『本調子でいてくれないと困る』と言ったでしょ?」

綾「私だけじゃ、色々と限界だし、それに――」

陽子「??」


綾「あ、あなたが元気でいてくれなかったら、落ち着かないのっ!」カァァ


勇「……あらあら」

陽子「綾……」

綾「――ああ」

綾「もう、恥ずかしい……」カァァ

勇(綾ちゃんったら……)

勇(シノのことも陽子ちゃんのことも、大好きなのね……)


陽子「綾、ありがとな」ナデナデ

綾「!?」ビクッ

綾「な、何を……?」

陽子「いやぁ」

陽子「――何だか、文化祭が終わってから」クスッ

陽子「かっこよく見えることが増えちゃって……つい」ナデナデ

綾「あ、あなたねぇ……!」カァァ

勇(――大好き、か)




――大宮家・浴室


忍「……」チャプン

忍(――相変わらず、平らな身体です)ペタペタ

忍(陽子ちゃんのように、出る所が出ているような体つき)

忍(昔も、それに今も憧れています……でも)


忍「私は、これで……」

忍(いいんですよね、アリス、カレン?)チャプン




――その頃・九条家



アリス「……」タメイキ

カレン「アリス、溜息つきすぎデス」

アリス「だ、だって……」


忍『……あ』

アリス『シノッ! お話、終わった?』

カレン『お風呂から出マシタッ! シノも――』

忍『ご、ごめんなさい、お二人とも……』

忍『す、少し――考えたいことが、ありまして』

カレン『?』

忍『で、ですからっ!』

忍『ま、またのちほどっ!』ダッ

アリス『――シノ!?』


アリス「――結局」

アリス「あれからしばらく経つのに、メールも来ないし」

アリス「私、ちょっと怒ってるんだよ?」プンスカ

カレン「What?」

アリス「だって――」


アリス「悩みがあるのなら」

アリス「私たちに相談してくれればいいのに……もう」

アリス「私たちとシノは『パートナー』なのに……」

カレン「――アリスはCuteデス」クスッ

アリス「……カレン? バカにしてない?」ジトッ

カレン「NoNo」

カレン「『おませさん』でも多分いいんじゃないでショウカ……」ニヤニヤ

アリス「カレン!」プンスカ

カレン「……Maybe」

カレン「シノにはきっと、事情があったと思いマス」

アリス「事情?」

カレン「私のパパやアリスのママ」

カレン「二人と話したことは――もしかしたら、私たちには話し辛いことだったのかもしれマセン」

カレン「アリス? そういう時、アリスは無理してシノから聞き出したいデスカ?」

アリス「……うう、それは」モジモジ

カレン「私は、シノのこと信じてマス」

カレン「もしもホントに困って、私たちの手も借りたいということになったナラ……」

カレン「その時、アリスも一緒にHelpしまショウ?」

アリス「……」


アリス「うん、そうだね」

アリス「……何だかカレン、かっこいいよ」ニコッ

カレン「アリスは時々、Calmじゃなくなりマス」

アリス「れ、冷静じゃない……?」アセアセ

カレン「Yes」

カレン「ちょっと頭がカッとなってしまうと、なかなかやり直しがきかなくなるみたいデス」

カレン「……シノのことにナッタラ」

アリス「そ、それは――」カァァ


カレン「But」

カレン「アリスとは違っても、私にだって似たような所ありマス」

カレン「そういう時、アリスは昔から何度も助けてくれマシタ」

カレン「――今でも、『お姉ちゃん』って思うことある、って言ったら信じてくれマスカ?」

アリス「カ、カレン……」



カレン「……いいデスカ、アリス?」


カレン「私たち三人は――『チーム』デス」


アリス「……!」

カレン「私はシノが困った時、アリスが困った時に助けマス」

カレン「だからアリスは――私が困った時、シノが困った時に助けてくだサイ」

カレン「シノは私たちから言わなくても、私やアリスが困っている時、絶対に放っておきマセン」

カレン「いいデスカ?」

アリス「……」


アリス「お安いご用だよ、カレン!」ニコッ

カレン「それでこそ『お姉ちゃん』デス、アリス!」ニコッ

ちょっと長くなった感がありますが、ここまでです。
綾のどこが探偵なんだ、と書いていて何度も突っ込みを入れたくなりましたが、とりあえず混乱してるシノの考えを
整理してあげている感じでした。

今回は三人が一緒にいることを決めた後で、幼なじみ二人+姉一人がどう感じているのかを書きたいと思っていました。
特に陽子の描写を考えていたので、今回書けて良かったと思います。
アリスとカレンについては、いつも通りなやりとりを繰り返して、少しずついろんなことを積み重ねているようなイメージでした。

それでは。
今回が比較的堅かったと思いますが、次回は柔らかい話になる予定です。




――書店前



忍「……」


カレン父『そうか……結婚、するつもりはないか』

忍『……い、今は、まだ難しいかもしれません』モジモジ

アリス母『今は、ってことは……いずれ?』

忍『……』

忍『――結婚』カァァ

アリス母『あら、真っ赤になっちゃった……』

カレン父『無理もないか……』


カレン父『――ところで、忍ちゃん?』

忍『はい……?』ピクッ

カレン父『結婚、するつもりがないなら、それはまあともかく』

カレン父『――あの二人と、どうなりたいのか』

忍『……』ハッ

アリス母『うん、そうね。アリスとカレンちゃん』

アリス母『……二人と、これからどうしていくのかは考えておいた方が……』

アリス母『というよりは、考えてほしいかな』クスッ

カレン父『――親として、ね』

忍『――は、はい』

忍『がんばり、ます……』ペコリ


忍(あの日……お二人と話したこと)

忍(結婚、という言葉が先走ってしまって、陽子ちゃんたちにも話せてませんでしたけど)

忍(……考えてみれば)

忍(アリスやカレンの親御さんが気にするのも、当たり前なんですよね……)


忍「……そうと決まれば」

忍(あの話をしてから、すぐに12月がやってきました)

忍(12月といえば、陽子ちゃんと綾ちゃんと昔からイベントを開いてきました)

忍(もちろん、12月の終わりの方の……)


忍「クリスマス……」


忍(クリスマスといえば、私にとっては陽子ちゃん、綾ちゃんと一緒に過ごす日でした)

忍(もちろん、お姉ちゃんやお母さんたちもですけど……)

忍(――とはいえ、今年は)


忍「――クリスマス・デート」ボソッ

忍「……」カァァ



――書店内


忍「……」

忍(思った通り、クリスマス特集コーナーがありました)

忍(いわゆるデートのことが書かれた雑誌類が揃っています)

忍(『たまには県外! オススメの場所』『たまには贅沢? 美味しくてお洒落なお店』……)

忍(……こ、これは、大人の人向けでしょうね)アセアセ

忍(やっぱり、お財布は少し厳しいですし……)


忍「……あ」ピタッ

忍(『学生向け! 地域オススメデートスポット』)

忍(……他の雑誌に比べると、かさばっていません)

忍(それにお値段も……あと、何よりも)

忍(『お財布が厳しいあなたに!』)

忍(……これ、でしょうか)スッ



――忍の部屋


忍「……」ペラッ

忍(――なるほど、この場所ですか)

忍(たしかにここは、カップルの方が多く集まっていますね……)

忍(……あ、こちらの施設も)ペラッ

忍「うーん……」

忍(どこが一番いいのか、なかなかわかりません)

忍(ああ、困りました……)アセアセ

忍(たしかに、あまりお金がかからなそうな所を紹介してくれてるとは思いますけど……)


アリス「シノー、お風呂上がったよー」ガチャッ

忍「ひゃあっ!?」ビクッ

アリス「わっ!? ど、どうかした?」ビクッ

忍「い、いえ……その」

アリス「……あ」

アリス「シノ、何か読んでたの?」

忍「……え、ええ、まあ」

アリス「どんな本?」ニコッ

忍「……」

忍「ひ、秘密、です」

アリス「……!」ハッ


忍「――わ、私も!」ガタッ

忍「お風呂に、入ってきますね」

アリス「シ、シノ?」

忍「……アリス」ピタッ


忍「絶対に見たらダメですよ、絶対ですからね」アセアセ

アリス(――って、そんな何かのフリみたいなことを言いながら)

アリス(シノはお風呂に入りに行った……)

アリス「……秘密」チラッ

アリス(シノが秘密にするもの)

アリス(それって一体、なんなんだろう……)

アリス(――シノは、『男の子』)

アリス(男の子が、秘密にするもの……)


アリス「――!!」ピクッ


アリス(ま、まさか……!)

アリス(えっちな本……!?)カァァ


アリス「……」(←本に手を伸ばす)

アリス「――!」(←すんでのところで押し留まる)

アリス(ダ、ダメだよ、私!)カァァ

アリス(シ、シノが嫌がることをするなんて、絶対ダメ!)

アリス(……で、でも)

アリス(シノ……どんな子が好みなんだろ)

アリス(そ、そうじゃなくてっ!)ブンブン

アリス(わ、私とカレンをおいて……浮気?)

アリス(そ、そうでもなくてっ!)ブンブン

アリス「……ああ」

アリス(どうしようどうしよう……)アセアセ

アリス(こんなに寒い時期なのに、暑いよぉ……)カァァ



――少し経って


忍「ふう、いいお湯でした……」ガチャッ

アリス「……」ズーン

忍「ア、アリス?」

アリス「――ねぇ、シノ?」

忍「な、なんですか?」ビクッ

アリス「……そ、その」

アリス「シノが『秘密に』したいなら、答えなくてもいいんだけど……」

アリス「あ、あの本って……えっと」モジモジ


アリス「……えっちな、本?」カァァ


忍「」ビクッ

アリス「シノ……?」モジモジ

忍「――!」ハッ

忍「い、いいえ! 決してそうではありません!」

アリス「――でも、男の子が秘密にするのって」

忍「そ、そうとも限りません! 多分!」

アリス「……そ、そうなんだ」

忍「……」


忍(やっぱり、言ったほうがいいのでしょうか?)

忍(隠したのも、何となく秘密にしておいた方がいいと思っただけですし……)

忍(――でも、雑誌の中に『相手には秘密にしておいた方が効果てきめん!』なんて書いてありましたし)

忍(……やっぱり、今は)


忍「ごめんなさい、アリス」

アリス「ううん、怒ってないよ」フルフル

アリス「……えっちな本を読んでても、私はシノのこと嫌いになんてならないから」

忍(うっ、そう言いながら何だかとても悲しそうな顔に……)



――翌日・校内の廊下



忍(はぁ……)タメイキ

忍(結局、休み時間になるたびに)

忍(こうして隠れて、本を読み込んでしまってます……)ペラッ

忍(でも、注意深く読んでも、結局どうしたらいいのかわからないままです……)

忍(誰か、教えて頂けないでしょうか……でも、陽子ちゃんや綾ちゃん、それに二人の金髪少女も)

忍(きっと、こういった本は読んだことがないと思ってしまいますし……)


――えっちな本を読んでても、私は――


忍(……アリス)

忍(アリスは、やっぱり今日も複雑そうでした)

忍(健気に笑ってはくれるものの……不安そうで)


忍「……どうしましょう」テクテク

男子A「うわっ!?」ドンッ

忍「ひゃっ!?」ドンッ


バサッ


男子B「だ、大丈夫か!?」

男子A「あ、ああ……って」

男子A「大宮さん……」

忍「ご、ごめんなさい」アセアセ

忍「本を読んでて気づけなくて……」

男子A「い、いや、大丈夫だよ」

忍「うう……」シュン

男子B「――あれ?」

男子B「本がめくれてる……」

忍「あっ!」

男子B「――これは」

男子A「ま、まさか……」

忍「――え?」


男子B「あ、ごめん。見ちゃって」

忍「い、いえ……」モジモジ

男子A「……何だか、懐かしいな」

男子B「ああ――中学時代の思い出が」

男子A「トラウマじゃないのか」

男子B「うっせ」

忍「もしかして、読んだことが?」

男子A「ん、ああ、まあ……」

男子B「俺も、まあ、一応……」

忍「――」


忍「あ、あの」モジモジ

男子A「ど、どうかした?」

忍「――もし、なんですけど」


忍「よろしければ、お昼休み……お時間を頂けませんか?」



――昼休み


陽子「弁当だー!」

綾「あなた、ほとんど食べ終わってるでしょ……」

陽子「甘いね、綾。この時間のために、少しは残してるんだよ」

綾「……まあ、陽子らしいわね」

綾「でも、授業中に食べるのは――」

陽子「た、食べないと、集中できないんだよ!」カァァ

綾「陽子は変わらないわね……」タメイキ


カレン「お邪魔しマース!」ガラッ

アリス「あっ、カレン」

忍「お疲れ様です」

カレン「シノッ!」ダキッ

忍「カレン」ダキッ

アリス「――あ」ハッ

アリス(わ、私……二人の間に入って、大丈夫なのかな?)

アリス(昨日、シノを疑っちゃったし……それで朝も、何だかぎこちなくなっちゃったし)

アリス(うう……)

忍「アリス」

アリス「!」ピクッ

忍「どうぞ」ニコッ

カレン「ココ、空いてマス」

アリス「――あ」

ダキッ

忍「あ、こんな隙間にすっぽり入っちゃいました」

カレン「アリスは可愛いデス」

アリス「……カレン」ジトッ

カレン「素直に受け取ってくだサイ」

アリス「むぅ……」

忍「――こうして、三人で寄り添い合ってると、落ち着きますね」クスッ

カレン「温かいデス……」エヘヘ

アリス「うん……」ニコッ


陽子「――別世界、いってんなー」

綾「あの子たちが幸せそうにしてると、何だかこっちまで嬉しくなるわね」

陽子「うん、それはそうだけど……何か寂しくない?」

綾「否定はしないわ……でも」

綾「陽子だって、嬉しさの方が寂しさを上回ってるでしょ?」

陽子「……そうだなぁ」


カレン「それじゃ、ランチタイムデス!」

アリス「うん!」

忍「――皆さん」

忍「私、少し用事があるので、外に出ますね」

四人「!」

忍「ご、ごめんなさい……」

忍「約束が、あるので」

陽子「――あ、ああ」

陽子「昼休み中には帰ってくるよね?」

忍「はい」

綾「それなら、ここで四人で待ってるわ」

綾「行ってらっしゃい」

忍「……ありがとうございます!」

忍「それではっ」


アリス「……ああ、シノが」

カレン「Hnn……何かあるんでショウカ?」

陽子「ほら、二人とも私たちと一緒に食べよう?」

綾「お昼ごはんは楽しく食べるものよ?」

アリス「陽子、綾……」

カレン「Yes! それじゃ、たべマショウ!」

アリス「……うんっ!」

一旦、ここまで。
次回が終わったら準備段階終了、本番に移る予定です。
……正直、アリスの立場を思うと、気が気ではないかもしれませんね。

それでは。




――図書室


男子A「……あ、来た」

男子B「おっす」

忍「ど、どうも……」モジモジ

忍「わざわざ、ありがとうございます」ペコリ

男子A「いやいや、大丈夫」

男子B「……だってさ」

男子B「一応、友達、だよな?」

忍「……!」ハッ

男子A「まあ、『友達』の初デートだし」

男子B「協力するよ」

忍「――あ、ありがとうございます」カァァ

男子A(うわ、照れまくってる……)

男子B(正直、外見だけだと男子を困らせるのには十分すぎるな……)


忍「と、ところで」

忍「ホントに図書室でいいんでしょうか?」アセアセ

男子A「ああ、大丈夫」

男子B「昼休み始まったばかりで、ほとんど人もいないから」

男子A「ちょっと声抑えてればいいって。この時期、外は大宮さんだってキツイだろ?」

忍「……それもそうですね」


忍「それでは、本題に……」

男子A「……懐かしい」ボソッ

男子B「というかこれ、ほとんど変わってねえな」

忍「?」キョトン

男子A「あ、ごめん。こっちの話」

男子B「まあ、それはともかく……始めるか」

忍「は、はい」

忍「お願いしますっ!」スッ

男子A(おっ、小さめのノート……?)

男子B(それにボールペン……これは)


忍「頑張ります……」ゴゴゴゴ


男子AB(本気だっ……!)



男子A「――それで」

男子A「俺が見た限り、このルートが一番良さげだった」

男子A「ほら、オシャレな店もたくさんあるし……」

忍「たしかに……」カキカキ

男子B「おい、ちょっと待った」

男子B「ここ、いいけど……想定金額見てみろって」

男子A「……う、まさかの」

忍「……5桁、ですね」タメイキ

男子B「これ、安さを売りにしてるのは確かだけど、それでも幅あるんだって」

男子B「……なるべく、安いほうがいいんだよな?」

忍「で、できれば……」コクッ

男子B「――それなら、こっちの」

忍「ああ、そこは私も聞いたことが……」カキカキ

男子A「ああ、ちょっとめくらせてくれ。これもアリかも」

男子B「あっ、そういやここもあったか……」

男子A「かなりいいだろ?」

男子B「……いや、もう少し」

忍「なるほどなるほど……」カキカキ



忍「……」カキカキ

忍「ありがとうございました」

男子A「いやいや、いいって」

男子B「途中からグダってた気がするけど、大丈夫だったか?」

忍「ええ、本当にありがとうございました」

忍「……凄く、嬉しいです」ニコッ

男子A(……ああ)

男子B(今更だけど……ホントに『男』なんだよな?)アセアセ


忍「――ところで」

男子A「?」キョトン

忍「お二人とも、その……」

忍「どなたかとお付き合いされたことが?」

男子A「」

男子B「」


男子A「……中学時代」

忍「は、はい」ピクッ

男子A「実は、好きなヤツがいて」

男子A「告白しようと思ってたら……えっと」モジモジ

忍「……?」

男子B「ああ、相手にはもう彼氏がいたってオチ」

忍「そ、それは……」

男子A「お、おい。最後まで言わせてくれって」

男子B「いや、辛そうだったし」

男子B「俺も似たようなもんだったしな。見ててキツい」

忍「……そちらも?」

男子B「まあコイツとはちょっと違うけど、似てるよ」

男子B「――相手に告白出来なかったってトコは、同じだし」

忍「……!」


――あ、あの……凄く可愛いです――


忍「……」

忍(告白も出来なかった……というのは)

忍(きっと――相当、辛いのでしょうね)


男子A「そうそう。それで、同じ本……今、大宮さんが持ってるヤツ」

男子B「それ使って、一緒にすり合わせて考えたんだよな」

男子B「――後で、全部ムダになるなんて知らずに」

忍「そ、そんなことは!」

忍「お二人にも、いつか……お相手が出来るはずです」

忍「――こうして、親切に教えてくださるんですから」

忍「その時は、この本のことだって、きっと使えるはずです」

男子A「……そ、そうかな」

男子B「だったら、いいけどなぁ……」

忍「はい! 絶対です!」

男子A「――ありがとね」

男子B「何というか……高校に入ってから、相手の見込みすらないんだけどな」

男子A「俺もだなぁ」

忍「そ、そうだったんですか……」


男子A(――思えば)

男子B(中学時代、俺やコイツが好きだった女子のタイプって……)


忍「で、でも! お二人なら、いつかきっと……大丈夫だと思います!」カァァ


男子AB(今、目の前にいる子みたいな……)

男子A(まあ、もう相手いるし……)タメイキ

男子B(そもそも大宮さん、男だしなぁ……ああ)タメイキ

忍「??」キョトン

男子A「それじゃ、そろそろ戻るか」

男子B「そうだな。飯食う時間、なくなっちまうし」

忍「そうしましょうか」




――廊下



男子A「――あれ?」

男子A「お前、ほとんど休み時間中に食っただろ」

男子B「……そっちは授業中にな」

忍「お二人とも、陽子ちゃんに似てますね」クスッ




――教室



カレン「……シノ、ちょっと遅いデス」

アリス「な、長引いちゃってるのかな?」

綾「大丈夫よ、二人とも。そう心配しないの」

陽子「そうだよ、二人とも」

陽子「すぐ帰ってくるって、シノのこと信じてあげなよ」

カレン「わ、私は最初から信じてマス……アリスは心配性ですケド」

アリス「カ、カレン!」


綾「あ、帰ってきたみたいね」

陽子「……あれ?」


男子A「それじゃ、そのルートでいい?」

忍「ええ、ありがとうございました」

男子B「……まあ」

男子B「大丈夫だろ。あの二人なら、大宮さんと一緒にいるだけで幸せだろうし」

男子A「……恥ずかしそうだな」

男子B「うっせ」

忍「本当に、ありがとうございました」ペコリ

忍「それでは」

男子A「うん」

男子B「おう」


忍「お待たせしましたっ」

綾「お、お疲れ様」

アリス「ちょっと心配したよ」

カレン「『ちょっと』じゃなかったデス、アリス」ニヤニヤ

アリス「……カレンだって不安がってたくせに」

カレン「アリスほどじゃありマセン」

アリス「……もう」プイッ


陽子「……」ジッ

男子A「?」

男子B「なんだ、猪熊?」

陽子「――いや」

陽子「二人と一緒にいるとは、思ってなかったからさ」

男子A「いや、まあ……」

男子B「ちょっと、他人事とは思えなかったし」

陽子「……そっか」タメイキ

男子A「お、落ち込むなって」

男子B「そうだよ、偶然分かることだったってだけだし」

陽子「べ、別に、そういうわけじゃ……」アセアセ

男子A「それじゃ、俺たち飯食うから」

男子B「沈むなよー」

陽子「だ、だから……」


綾「……何を話してたの?」

陽子「い、いや……何でも」

忍「……私は、陽子ちゃんのこと頼りにしてますよ」

陽子「!」ピクッ

忍「ホントです」

陽子「……聞こえてた?」

忍「ちょっとだけ」

陽子「――照れるなぁ」カァァ

忍「可愛いですよ」クスッ

陽子「シ、シノ……」アセアセ


アリス「……はぁ」

アリス(昨日のえっちな――い、いや!)ブンブン

アリス(シノの内緒にしてる本のことも……色々と不安だけど)

アリス(昨日に比べたら気が晴れたみたいだし、良かった、かな?)カァァ

カレン「……アリス、Hな気分デスカ?」

アリス「う、うん、ちょっとだけ――」

アリス「カ、カレン……!?」ビクッ

カレン「アリスが何を考えてるノカ」

カレン「表情を見てれば、分かりマス」ニヤニヤ

アリス「わ、私は、別にHじゃ……」

カレン「Really?」

アリス「……め、Maybe」

カレン「やっぱりデスカ」クスッ

アリス「……もう」カァァ


忍「……」

忍(――やっぱり)

忍(私、アリスを変な気分にさせてしまってたみたいです……)

忍(何だか、悪いですね……でも)

アリス「そ、それじゃカレンも、え、えっちな……?」アセアセ

カレン「アリス? 声が裏返りすぎてて何を言ってるのかわかりマセン」

アリス「き、聞こえてるくせに……」


忍(――あれ?)

忍(なんでしょうか、こう……)


アリス「カレンのバカぁ……」カァァ


忍(今のアリスを見てると……ゾクッとする感覚が)

忍(い、いえ! 私は何を考えてるんですか!)ブンブン



綾「……今、一瞬だけシノの顔が変わったような」

陽子「気のせいじゃないんだろうね、きっと……」

陽子「――シノ、時々ああいう風になるからなぁ」ヤレヤレ

準備編、これにて終わりです。
ずいぶん長引いてしまいましたね……二期始まる前に、クリスマス編は一段落させたいのですが、どうなることやら。
最後にシノが鬼畜の片鱗みたいなものを見せましたが、おそらくこのSSのシノは基本的にどこかポンコツなままだと思います。

陽子はこれからどうなっていくのか……。
そもそも、以前書いたようにラッキースケベ的な描写は本当に書けるのか……。
色々と不安要素はありますが、書いていきたいですね。

それでは。
このSSでの、久世橋先生の出番も近い……?




――下校後・大宮家


忍「……」

アリス「シノ、今日は私が先にお風呂でもいいかな?」

忍「あっ、大丈夫ですよ」

アリス「……」

アリス「あ」ピクッ

忍「? どうかしましたか?」

アリス「……い、いや」

アリス「な、なんでも、ない、よ……うん」モジモジ

忍(明らかに何かありそうです……)

アリス「そ、それじゃ、お先にっ!」

忍「は、はい……」


忍「――どうかしたのでしょうか?」



――廊下


アリス「……ああ」トコトコ

アリス(シノが、えっちな……ううん)

アリス(私に内緒にするような本を読んでる、ってことを思い出したら……)

アリス(もしかして……シノ)

アリス(こうふん、したいのかなって……)カァァ

アリス(――前に、日本についての本で読んだことがあったっけ)

アリス(女の人が男の人より先に入ったら……あ、後で)

アリス「私のお湯、を……シノ、が」ボソッ

アリス「……」カァァ

アリス(そ、そんなことない、よね……うん)


勇「――アリス?」

アリス「わぁっ!?」ビクッ

勇「どうかした? 凄く顔、赤いわよ」

アリス「イ、イサミ……だ、大丈夫、だよ。うん」コクコク

勇「――ははぁ」ジーッ

アリス「な、なにかな?」ピクッ

勇「わかったわ」

勇「……シノに注意しないとね」

アリス「ち、違うよ、イサミ! こ、これは……私が」

勇「いいのいいの。少し、お話ししておきたいし」

勇「それじゃ、ごゆっくりー」ニコッ

アリス「……ああ」

アリス「ごめんね、シノ……」カァァ




――忍の部屋


勇「で? アリスに何かしたの?」

忍「な、何もしてません」アセアセ

勇「……ふーん」

勇「ところで、シノ?」

忍「な、何でしょうか、お姉ちゃん?」

勇「……そのカバー掛かってる本、買ったの?」

忍「!」ピクッ

忍(あっ、慌ててたせいで、隠しそこねました……)アセアセ


勇「ね、見せてくれる?」

忍「……そ、その」モジモジ

勇「もしかして……Hな本?」

忍「そ、そんなことは――!」

勇「それで信じられると思う?」

忍「……あ」ハッ


勇「――いい、シノ?」

勇「『男の子』が、そうやって強く否定する時は」

勇「……女の子は、何か勘ぐっちゃうものよ」

勇「特に、それが……そういう本絡みの時は」

忍「――アリス」キュッ


勇「どれどれ……ああ、この本」

忍「し、知ってるんですか?」

勇「ううん。クラスの子たちが読んでたなぁ、って思いだして」

忍「……お姉ちゃんは、読んだことは?」

勇「――私には、相手はいないしねぇ」クスッ

勇「というわけで、私じゃ参考にならないでしょうね」

忍「な、何だか、お姉ちゃんは、こういうこと絡みだと強そうですけど……」

勇「……シノの中での私のイメージは、どうなってるのかしら」タメイキ


勇「まあ、とにかく」

勇「いい? あまりアリスを困らせちゃダメよ?」

忍「……そ、それは思いますけど」

勇「付き合い始めの時、一番怖いのは」

勇「お互い、まだ感情のコントロールに慣れてなくて……それで少しギクシャクしたりして」

勇「それで、色々とダメになっちゃうことなんだから」

忍「――お姉ちゃん、本当に未経験なんですか?」キョトン

勇「もう、シノったら。仕事柄、そういうお話を聞くことが多いだけよ」

勇「それじゃね」

忍「……は、はい」

勇「――まあ、ちょっと怖いことも言っちゃったけど」

勇「アリスとカレンちゃんなら、シノから離れることなんてないと思ってるのよ」

忍「……お姉ちゃん」

勇「まあ、だからこそ……二人の気持ちも、きちんと考えてあげてね」ガチャッ



パタン・・・



忍「……」

忍(お姉ちゃんは、本当に頼りになります……)

忍(――この本)

忍(もう、12月も1週目が過ぎました……)

忍「……」



――少し経って



アリス「……た、ただいま。シノ」

忍「……アリス」

アリス「え、えっと」

アリス「は、入ってきても、大丈夫、だよ」アセアセ

忍(ああ、声が上ずって……)

アリス(――い、言えっこないよ!)

アリス(お、お湯のこと、なんて……!)カァァ


忍「――ちょっといいですか、アリス」

アリス「……シノ?」

忍「私、迷ってました」

忍「……アリスたちに内緒で進めて、当日にビックリさせたいなって」

アリス「――え?」


忍「こちらの本、なのですが……」

アリス「――あ」

忍「中身は……」ペラッ

アリス「……!」

アリス(え、えっちじゃない……これは)

アリス「……デ、デート?」アセアセ

忍「そうです」

アリス「……クリ、スマス」モジモジ

忍「ええ」

アリス「……」カァァ

忍「ごめんなさい、アリス」

忍「そ、その……やっぱり私も、一応『男子』ですから」

忍「――心配、かけてしまいましたよね」タメイキ

アリス「シノ!」



ダキッ!



忍「――アリス?」

アリス「い、今は、私の顔見ないで」

アリス「……きっと、すごく恥ずかしいことになってるから」カァァ

忍「そ、そうですか……」カァァ


アリス「もう、シノったら……」

アリス「シノがもったいぶったせいで、わ、私……」

アリス「――変な気分に、なっちゃってたんだよ」

忍「変な、気分……」

忍(――って! わ、私は、何を想像してるんですか!)ハッ

忍(す、少しだけ、興奮してしまいました……)アセアセ

アリス「シノ?」キョトン

忍「……ごめんなさい、アリス。ちょっと動揺してしまいました」コホン


アリス「――ね、シノ?」

忍「アリス?」

アリス「シノのプラン作り、手伝おうか?」

忍「……」

アリス「――もし、一人でやりたいなら大丈夫だよ」

忍「――アリス」

アリス「あっ、気にしないで……それはね」


アリス「私もカレンも……」モジモジ

アリス「シノが一生懸命考えてくれた計画なら、嬉しくなるに決まってるから」カァァ

 ――さて。

 どこまでも愛しくてたまらない「天使」を思い出しながら、私は今日を迎えました。
 期末試験というのものがあったような気がしますが、きっと何かの間違いでしょう……。
 仮に赤点だとしても、後悔はしません。
 というよりは、きっと全く後悔なんて出来ないと思います。


 なぜなら――


「シノ! 待ってマシタ!」
「わっ!」


 待ち合わせ場所に着いた瞬間、私の身体に心地よい重みがかかりました。
 確認するまでもありません。この金髪を見れば、それだけで十分です。
 そして、すぐ後に、とても芳しい香りが漂いました。
 ああ、今日もこの子は可愛らしい――


「カ、カレン! 抱きつきすぎ」
「もう、アリス? スキンシップは大事デス」
「そ、それはそうだけど……」


 いつものようにやり取りして、いつものように笑ったり照れたりするお二人を見ながら、私は胸がいっぱいになる気がしました。
 そう。このお二人と、初めての――
 そんなビッグイベントを前に、勉強なんて出来るわけがないのでした。
 ……ごめんなさい、烏丸先生。


 いいえ、今日は勉強や試験のことは忘れましょう。
 この大好きなお二人と一緒にいられる嬉しさを噛み締めましょう。


「……それではお二人とも、いきましょうか」


 そう言って、階段に向かいながら二人を振り返ります。


「初めてのデート……クリスマスデートです」

ここまでです。
二期が始まりましたね。書いている間に放映されていたようで、今から楽しみです。
とはいえ、まさか二期が始まってからも続くことになるとは……

今更ですが、このSSでシノたちの1年次の担任は烏丸先生という設定です。
2年次から、どうなっていくのは未定です。

それでは。
次回は、クリスマスデート本番の予定です。

『12月24日 クリスマス・イブ』



――駅構内



カレン「Uh、楽しみデス!」ニコニコ

アリス「うん、そうだね、カレンッ!」ニコニコ

忍「ふふっ――お二人とも、はしゃいじゃって……」ペラッ

アリス「あ」

カレン「シノ? その小さなノートハ?」

忍「えっと……これは、魔法のノートです」モジモジ

アリス「魔法、の……」

カレン「Magical Notebook!」ビシッ

忍「わっ、さすが綺麗な英語……」

アリス「わ、私だって、出来るもん!」アセアセ

カレン「アリス? こういうのは、最初にやった人の勝ちデス!」ニッコリ

アリス「……むー」ジーッ

忍(――本当に)

忍(愛しくて、たまりません……)カァァ


忍(さて……)

忍(あのお二人と話した通りの目的地は――)

忍「お二人とも、次の特急に乗りましょう」

カレン「特急……」

アリス「Special Expressのこと、だよ。カレン」

カレン「Oh、ちょっと忘れちゃってマシタ」

アリス「ふふっ、今度は私の勝ち」エヘン

アリス「ね、シノ?」

忍「――ええ」

忍「アリスの英語も、とても可愛らしいですね」

アリス「ありがと、シノー……って」

アリス「か、可愛らしい……?」

忍「あっ、もうすぐ電車が来ますよ」

アリス「……シノ」ズーン


カレン「――アリス」

アリス「カレン……」

カレン「やっぱり、アリスは――可愛い、デス!」ナデナデ

アリス「カレン!」

カレン「え? どうして怒るんデスカ?」

アリス「わ、私だってシノに――綺麗、って」カァァ

アリス「も、もういいっ!」プイッ

カレン「……アリスはアリスデス」クスッ

アリス「もう……」

忍「ごめんなさい、アリス」

アリス「……シノ?」

忍「アリスの英語も綺麗ですよ」

アリス「……あ」

忍「――でも」

カレン「アリスの姿は可愛い、と、そう言いたいんデスカ?」ニコッ

忍「さすがカレンです」ニコッ

カレン「ふふっ、私はアリスのことはなんでも――」


アリス「ふ、二人ともっ!」プンスカ




――『自然公園前』駅・改札



アリス「……あ」

カレン「綺麗、デス……」

アリス(駅前には大きなクリスマスツリーが飾られていて)

アリス(駅前の商店街の屋根には、カラフルなイルミネーションが施されている……)

アリス(すっごく、オシャレだった――)


忍「ええ」

忍「えっと……この駅前商店街がイルミネーションを始めたのは今から10年程前。
  それから若いお客さんがたくさん来るようになって、活気が――」ペラペラ

カレン「ワッ!? シノがガイドさんみたいニ……」ビクッ

アリス「さすが、魔法のノート……」

忍「……と、いうことみたいですね」パタン

忍「若いお客さん、というのはつまり――」

カレン「ツマリ?」

アリス「つまり?」

忍「――えっと」アセアセ


忍「わ、私たちみたいな、カップル――」カァァ

忍「そ、それでは参りましょう!」

カレン「わ、やっぱり私タチ……」アセアセ

アリス「カップル、なんだよね……」アセアセ




――商店街



アリス「わぁ……」

カレン「実際、中にはいってみるト――」

忍「迫力、ありますねぇ……」

忍「あ。このお店とか、どうでしょうか?」

アリス「あっ、可愛いビーズ!」

カレン「キラキラデス!」パァァ

忍「ふふっ」

忍「……前に、お二人がこういうお品物が好きと話してましたから」

アリス「……もしかして、シノ?」

カレン「事前に……リサーチしてくれたのデスカ?」

忍「勿論です」クスッ

忍(図書室での打ち合わせが、本当に助かりました……)


カレン「――シノ」

アリス「大好き!」ダキッ

忍「わぁっ!?」

忍(だ、抱きつかれて――!?)

カレン「……ハァ」ウットリ

アリス「カレンも私も……一緒にハグしたくて、たまらなかったんだよ」

忍「そ、そうです、か……あはは」


「あらあら、仲良しねぇ」「最近は、友達同士でクリスマスを過ごすのかしら?」
「かわいー」


忍「――と、とにかく」

忍「中に、入りましょう、お二人とも!」

カレン「えー、もう少しクライ……」

アリス「は、離れちゃうの?」

忍「あ、後で、いくらでも……」モジモジ

カレン「Oh、それは素晴らしいデス!」ニコッ

アリス「シノ……嬉しい」ニコッ

忍(――いけません)

忍(愛しさと恥ずかしさで、頭が爆発しそうです……)カァァ




――店内



店員「いらっしゃいませー」

忍(入った先は、個人経営の小物屋さん)

忍(オススメ度:星5つ……デートスポットには最高の場所、とか)

カレン「あっ、これ可愛いデス!」

アリス「こっちのお人形さんもかわいー……」

忍「お二人とも、楽しんでますね」


忍「――あ。これとかアリスに」

アリス「わっ……この花柄、凄く好き」

忍「これは、カレンですね」

カレン「こ、これは……」

カレン「ユニオンジャックの、マフラー……」ジーッ

忍「お好きではないですか?」

カレン「た、たしかに、好きデス。大好きデス」コクコク

カレン「――でも」

カレン「これ、ちょっとPriceが……」

忍「あっ、たしかに――」

忍(5000円超え、ですか……)

忍(うーん――これから色々と節約することを決めて、今日は、お二人にプレゼントしようと思っていたのですが)


店員「ああ、それなら、まけてあげてもいいよ」

忍「わっ!? ほ、ホントですか?」ハッ

店員「うんうん」ニコニコ

店員「せっかく、お友達同士で来てくれたんだし」

忍「おともだ、ち……」

カレン「? 私たち、やっぱりFriendsなんデスカ?」キョトン

アリス「ま、まあまあ、カレン」アセアセ

店員「?」キョトン


忍「――それでは、カレン」

忍「買いましょう、それ」

店員(おっ、踏み込むねぇ、この子は……)ニヤッ

カレン「――いいんデスカ、シノ?」

店員(結局、この子が買ってくれれば、それはそれで……あれ?)

店員(「いいんですか」……?)キョトン

忍「ええ」

忍「――私が、買って差し上げます」ニコッ

アリス「わっ。シノの顔が……」ビクッ

カレン「な、何だか――かっこいい、デス」カァァ

店員(え? え?)アセアセ

忍「それでは、店員さん」クルッ

店員「わっ!? は、はい」ビクッ

忍「こちらの花柄のお人形と、こちらのマフラーをお願いします」

店員「ど、どうもー」


カレン「――シノ、男らしいデス」ニコニコ

アリス「う、うん……嬉しいなぁ」ウットリ

店員「!?」ピッピッ

店員(お、おと、こ……?)

忍「? どうかしましたか?」キョトン

店員「い、いえいえ……」

店員(き、聞き間違いよね? そうに決まってるわよね?)アセアセ

店員「――お、お買い上げ、ありがとうございましたー」

忍「はい、どうもありがとうございました」

カレン「シノ! プレゼント、ありがとうございマス」

アリス「……好きな人からの、クリスマスプレゼントだぁ」パァァ

店員(す、好きな人……)

店員(い、いえ! これはつまり――そう! バレンタインの「友チョコ」みたいなもの、よね?)ブンブン

忍「……ふふっ、どういたしまして」ニコッ

店員(こ、こんな笑い方する子が――おと)

店員(い、いや! もうやめましょう……)タメイキ




――店外



カレン「……何だか、あの店員さん、様子が変わってマシタ」

アリス「うん。何かおかしなことしちゃったかな?」モジモジ

忍「それはないと思いますけど……」


忍「――まあ、ともあれ」コホン

忍「お二人とも、お腹は空いていませんか?」ニコッ

ここまでです。
気がつけば、もう2期も2話まで終わっていました。
久世橋先生が可愛くて、本当にたまりませんね……。
勿論、メインキャラもその他のキャラもみんな可愛くて、観ていて本当に安心できます。

さて、このSSでは、まだ1期ですが……。
久世橋先生の登場も、このデート回が終わったら近いと思います。
もうしばらくはデートの話で、「砂糖を吐く」ようなシチュエーションは、これからどんどん増えていくでしょう。

それでは。




――街中


忍「――うーん、おかしいですね」

アリス「どうしたの?」

忍「この辺りに……クレープ屋さんのスタンドがあるはずなのですが」

カレン「クレープ!? 大好きデス!」キラキラ

忍「ですが――ちょっと見当たりませんね」

アリス「そうなんだ……」

カレン「Uh……ちょっと残念デス」

忍「ごめんなさい」ペコリ

アリス「ううん。シノが謝る必要は、全然ないよ」

カレン「ハイ! 私たちはシノと一緒にいるダケデ――」ニコニコ

アリス「ホントに嬉しい……」ニコニコ

忍「……あ、ありがとうございます、お二人とも」カァァ


カレン「何だか、街中がオシャレデス」テクテク

アリス「クリスマスだね……」トコトコ

忍「そうですねぇ……」テクテク

カレン「あっ――あの人たち、腕を組んでマス」

アリス「わっ、大胆……」カァァ

忍「ふ、二人とも。あまり見ちゃダメですよ?」アセアセ

カレン「シノ、顔赤いデス」

アリス「……照れちゃった?」

忍「そ、そんなことはっ……」プイッ


忍(……一緒にいるのは当然、楽しいですけど)

忍(体温が上がりきって風邪でもひかないかどうかは……心配ですね)タメイキ

カレン「――シノ? ちょっと、シツレイしマス」ズイッ

忍「は、はい?」ピクッ

忍(カレンが私に近づいてきました)

忍(隣では、アリスがキョトンとした表情を――そして)


カレン「ソレッ!」バッ


忍(私の腕が、宙に浮かぶような感覚に――)

忍(一瞬の後、私の腕には艶やかで細い腕と一緒に――って!?)


忍「カ、カレン……?」アセアセ

カレン「ごめんなさい、シノ。ちょっとやってみたくなったデス」

アリス「わ、わ……カレン」

カレン「シノがイヤなら、すぐにやめマス」ジッ

忍「――!」

カレン「……周りを見てたら」

カレン「少し、浮足立ってしまったみたいデス……」モジモジ

忍「――い、嫌というわけでは、全然」

忍「ちょっと……ビックリしてしまいました」

カレン「それじゃ、このママ?」

忍「――は、はい。大丈夫です、よ」カァァ

アリス(言いながら、シノの顔は真っ赤になる)

アリス(イルミネーションの光に照らされて、その姿が私の目にはしっかりと映っちゃうから――)


アリス(シノを心配に思うより先に――)


アリス「……」ズイッ

忍「わっ!?」

アリス「カレンが右、なら」アセアセ

アリス「わ、私……左もらっても、いい、かな?」カァァ

忍「――アリス」

カレン「Oh、アリスが意外と大胆デス……」

アリス「カ、カレンがそんなことするから当てられちゃったの!」モジモジ

カレン「アリス? ツンデレって、きっとそういうものじゃないと思いマス」

アリス「べ、別に、私――ツンデレ? じゃ……」カァァ

忍「金髪のツンデレ少女――」

忍「意外と、というより……鉄板の組み合わせかもしれませんね」

アリス「え、シノ? なにか?」キョトン

忍「あっ……い、いえ」アセアセ


忍(――なんて、そんなトリップしている場合ではありません)

カレン「シノの右腕、気持ちいいデス……」

アリス「ひ、左腕だって――凄くいいもん」

忍(右からはウットリとした声が、左からは何とも可愛らしい声が――)

忍(両方の耳から私の頭に響いて、おかしくなってしまいそうです……)アセアセ


アリス「……でもさ、ちょっと思ったけど」

カレン「?」

アリス「カレン――やっぱり変わったよね?」

忍「!」ハッ

カレン「私、デスカ?」

アリス「うん」

アリス「――今までなら、シノがこういうことをして」

アリス「それでカレンが、照れちゃって……」

忍「……」

カレン「――たしかに、そうデシタ」

カレン「デモ……私、もう分かっちゃいマシタ」

カレン「シノが、大好きだって、コト」カァァ

忍「――!」

アリス「そっか、だから……」

カレン「Yes! もう、ハグでもキスでも、何でもできマス」エヘン

アリス「カ、カレン……ちょっと声、おっきいよ」

カレン「――あっ」ハッ

カレン「キ、キスはまだ……ちょっと照れマスネ」カァァ

アリス「もう……」カァァ


忍「」

アリス「わっ、シノが固まってる……」

カレン「Hnn……何だか、ヤッパリ私とシノが入れ替わりになってしまったのでショウカ?」

忍「い、いえ……えっと」アセアセ

アリス「そういえば、前にカレンがシノのお家に泊まった時からだよね?」

カレン「何だか、ちゃんと聞いたことはなかった気がしマス……」

アリス「何かあったの?」

忍「――う」ピクッ


忍「じ、実は、ですね……その」

忍「お姉ちゃんの言った通り――アリスやカレンが、ただ『好き』だったって、それだけだったので」

アリス「……シノ」

忍「で、ですけど」

忍「文化祭とか色々あって……アリスやカレンが、何だか心配になることが増えて」

カレン「ママみたいデスネ……」クスッ

忍「……だ、だから」


忍「私――ボク、が」


二人「!」ハッ

忍「ふ、二人を守らないと、って――そう、思って」

忍「『守りたい』って思ってたら、な、何だか……とても、恥ずかしくなってしまって」アセアセ

忍「だ、だって……お二人の親御さんに、け、結婚なんて、たとえ冗談としても……」モジモジ

アリス「シ、シノ、ありがとう。もうわかったよ」

カレン「これ以上は体調悪くしそうデス……」

忍「あ、ありがとうございます……」カァァ

アリス「――そっかぁ」

カレン「やっぱり、さっきのお店でも思いマシタガ……」

カレン「シノ……何だか、『男』らしくなってマス」

忍「――わ、私は、やっぱり」

忍「『女の子』で、いたかったんですけど……」タメイキ

アリス「うん。シノは女の子だよ」

カレン「そして、男の子デス」

忍「――な、何だかそれはそれで、照れちゃいますね」カァァ


カレン「まあ、何にシテモ――」ダキッ

忍(み、右腕にカレンの細い腕が……強く)

アリス「私たちは、ずっとシノと――」 ダキッ

忍(左腕にアリスの、カレンより細い腕が――)


カレン「Be with Us! デス!」ニコッ

アリス「一緒にいてね、シノ?」モジモジ

忍(左右から、大好きな金髪少女が軽く頬を染めながら)

忍(カレンは笑顔のまま、アリスは少し照れくさそうに――)

忍(――上目遣い、とは何て卑怯なものなのでしょうか)


「わっ、あの子たちかわいー」「最近の子はダイタンね……」
「友達かな?」


忍「」

忍「お、お二人とも……そろそろ、向かいましょうか?」

忍「お腹が空いている所、申し訳ないのですが――」

忍(ケータイの時刻表示は――6時ちょっと過ぎ)カチカチ

忍(今からなら……『予定』通りに見れますね)


アリス「シノ? これからどこに行くの?」キョトン

カレン「Where do we go?」キョトン

忍「――それは、ですね」



――このルートなら、きっとこれがハイライトかな――

――お金もかからない割には評判メチャクチャいいみたい――



忍(そのアイデア……今、使わせてもらいますね、お二人とも)グッ



忍「駅の名前にもあった場所――名所・自然公園です」

ここまでです。
胸やけされた方には申し訳ありません。
それは自分も同じですので……。

砂糖に砂糖をまぶすような展開が続きます。
次回はおそらく、そこにハチミツでもかかるんじゃないでしょうか? 漠然と思い浮かべてる段階です