魔王「ど、どうやら勇者は私のことが好きらしい」(766)



側近「好きなどと、突然言われても困る」






勇者「なんだろう、この胸の高鳴り」の続編。


 魔族領。某国。
 とある町。中央広場。

 ワーワーキャーキャー

第一部隊所属兵士「おー、ちびっ子沢山、楽しそうだなー」
第一部隊略「にしても……群がられてるなぁ、……」ファァ

第一略(やべ、眠い。とりあえずセルフビンタで起きよう)バチン

第一「……いたい」ヒリヒリ

第一A「ちょ、何やってるのお前」プッ
第一B「自分にビンタとかおま、第三の変態じゃあるまいし」ケラケラ

第一「眠気覚ましにやってみたら加減ミスって痛いマジ後悔」ヒリヒリ
第一「でもこれで痛いのが嫌いな俺は第三の変態と同じ土俵にはいないと証明されたのです」ヒリヒリ キリッ


第一C「頬押さえてキメ顔すんじゃねぇよ」ハァ フォン


第一「お、治癒魔法?あんがと」フワッ

第一B「戻ったか、C」
第一A「町の資料室行ってたんだろ?収穫は?」


第一C「そこそこ。それより不味いのは魔物の侵入が増えてる事だな。ここ一年で右肩上がり」

第一「角度にすると?」

第一C「六十度ぐらい」

第一「なにそれまずい」
第一B「小物合わせてって言っても多すぎ」
第一A「防壁の劣化が原因じゃないか?小型なら空いた穴から入り込めるだろうし」

第一C「当たり。特に魔物が多い山側の壁と柵はもうボロボロ。原因ははっきりしてるんだがいかんせん人手がな、」

第一B「この町だけじゃないからな、こうなのは。兵の派遣は修復より討伐優先だし」

第一「壁かぁ……障壁で代用出来れば手っ取り早くすむけど、維持が大変だし魔力は大型の魔物引き寄せちゃうからなー」

第一A「壁の修復はほとんど人力になるだろし、時間がかかりそうだな」

第一B「一応魔王様にも伝えておくか」

第一C「ああ。常駐兵の奴らや町の役人は『魔王様の耳に入れるような状態じゃないから』って言ってたけど」

第一B「……この国、自分の町ぐらい自分達でなんとかしてやるよ精神強い奴多いよな。--ま、旧政権であんだけヒトが死んだらそうなるか」


第一「魔王様達ってやっぱ国の最高戦力だし、もしもの事態に備えて出来るだけ頼らないようにしてるだろなー」

第一A「あの魔王が死んで二年しか経ってない今、平和ボケするには早すぎるか」

第一「つい最近もちょっとした修羅場だったわけだし」ケラケラ

第一B「--で?その魔王をぶっ殺した英雄コンビは、」
第一A「この国最高戦力に惚れたコンビは、」
第一C「寧ろこの国の最高戦力に数えられそうなコンビは、」

第一「見ての通り、広場のど真ん中で町のちびっ子達に群がられてますが」ケラケラ



 ワーワーキャーキャー キャッキャ キャッキャ

相棒(半竜化)「がおお!たべちゃうぞお!」

ちびっ子達「怪獣だあ!」「怪獣がきたぞ!」「倒せー!」ピョイピョイピョイ

相棒「うひゃあ!飛びついてきた!いくらちびっ子でも複数は卑怯だぞー」ケラケラ フリフリ

ちびっ子達「みんなー!振り落とされるなよー!」「しがみつけー!」「わぁ、竜族さん力持ち!」

ちびっ子達「援護だ援護!」「いくよー!」「僕達もいこう!旅人さん!」ピョイピョイピョイ


勇者「よしきた!」ピョイ

相棒「ちょ、何で来ちゃうの!」グラッ ドサッ

ちびっ子達「怪獣を倒したぞ!」「俺達でやってみせた!」「わたし達は強い!」「やったあ!」「怪獣撃破っ!」「がおお!」ワーワーキャーキャー

相棒「むぅぅ、動けないー」バタバタ
相棒「負けたー、命だけは助けてくれー」ケラケラ

ちびっ子達「いいぞ!」「いいよっ!」「もう悪さするんじゃないぞ!」「じゃあこれから怪獣は俺らのともだちな!」「ともだちともだち!」「竜族さんとともだちかぁ、えへへ!」ワーワーキャーキャー

相棒「わかったー、ともだちになるー」ニコニコ

勇者「相棒にちっちゃなお友達が一気に出来た。羨ましい」ニコニコ

ちびっ子「ちっちっち!間違いだ!」

ちびっ子達「旅人さんはもうともだちだ!」「なんせ一緒にたたかった仲!」「戦友と書いて」「ともと呼ぶ!」「よって旅人もともだち!」「ともだち!」ワーワーキャーキャー

勇者「わー、俺にも一気に出来たー」ヘラリ

ちびっ子達「ねーねー、旅人さんは怪獣にならないの?」「白いお姉ちゃんは怪獣だろ!ってことは兄ちゃんも怪獣なんだろ?」「怪獣なんだろ!?」「変身して変身!」「フードかぶってないでさ!」「へーんしん!へーんしん!」


勇者「うーん、俺も怪獣に変身するのは憧れるけど、竜族じゃないんだ。ごめんね」


相棒「ポロッとバラしちゃ駄目だよ」コソッ
勇者「わかってる」コソッ


勇者(村人さん達……本当は第一部隊ってとこに所属してたお兄さん達に言われてるもんなぁ)
勇者(極力人間だってバレない方が良いって。魔族領では、人間は怖い存在って認識だから)

勇者「本当に、変身出来たら一番良いんだけどなぁ」シュン

ちびっ子達「そっか、怪獣にはなれないのか」「気にするなよ、俺達だって怪獣になれないんだから」「変身は誰だって憧れるものだよ」「だいじょうぶ!旅人さんだって変身できるよ!」「?」「どうやって?」

ちびっ子「へんっしんっ!」ピョイ

勇者「」バサッ

ちびっ子「ほら!旅人さんの髪きれいな金色でしょ!一度ちゃんと見てみたかったんだっ!」ニコニコ

ちびっ子「--あれ?、でも……耳が、」

勇者「」
相棒「」

勇者「あ、あ、っと……これは、その、」
相棒「えっとこれは……」


ちびっ子達「耳が、尖ってない」「まさか、」「うそ、」「そんな、」「こんなことって、」「旅人さん……!」

勇者「…………」シュン



第一「あ、バレた」
第一A「バレたな」
第一B「まぁバレないとは思ってなかった」
第一C「一応ここの兵や町の役人には魔王様の客だって伝えてるし」

第一C「--でも、ちょっとした騒ぎにはなるだろうし助けにいくかな」



ちびっ子「っ!」
ちびっ子「待て!これはパターンDだ!」

ちびっ子達「!!!」ハッ

ちびっ子「まさか人間?」
ちびっ子「え、でも人間がこんな所にいる?」
ちびっ子「じゃあアレだよ!気のせい!」
ちびっ子「耳の尖り成分が少ない家系かもしれないよ?」
ちびっ子「確かにそうかも」
ちびっ子「沢山間違われて大変だったろうなぁー」
ちびっ子「僕達だけでもふれないでいてあげようよ」


第一「」ジー
第一A「」ジー
第一B「」ジー

第一C「そ、そんな目で見るな!村での会話がこんなところで再現されるとか思うか!!つかパターンDって、え?これ有名なの!?この流れ有名なの!?」



勇者「…………」
勇者「ありがとうみんな」

勇者「でも俺魔族でもないよ」ポロッ

ちびっ子達「え?」

勇者「」

相棒「ポロッとバラしちゃ駄目だよって言ったのに」

勇者「」シュン

ちびっ子「え、魔族じゃない、って、ことは……」

ちびっ子達「うおお!すげぇ!」「魔族じゃない!」「ってことは!」「人間!」「種族人間!」「初めて見た!」ワーワーキャーキャー

勇者「………がおお、たべちゃうぞー」

ちびっ子達「ふおお人間ヤバい!」「ヤバいぞ!」「デストロイだ!」「どうしようどうしよう!」「私達おかされちゃうんだ!」「えろどうじんみたいに!」ワーワーキャーキャー


勇者「……ちょっと今」
相棒「聞き捨てならない言葉が」

ちびっ子達「えろど?」「おかされるって何?」「餌炉導陣?」「必殺技名?」「わかんない」「知らないおじちゃんが言ってたの」

勇者「……詳しく」
相棒「……詳しく」

ちびっ子(ロリ)「えっと、さっきね、こっちに来る途中」「知らない変なおじちゃんが話しかけてきたの」「よくわからないことばっか言ってたの」「健康診断だって体さわられたね」「うん。それで、ちょっと怖くなったから」「走って逃げたの」

勇者「」グルリ
相棒「」グルリ



第一「あ、瞳孔ガン開き顔でこっち見た」
第一「言いたいことはわかるめっちゃわかる」ウンウン

第一C「ちょっと俺常駐兵に通信いれるわ」フォン
第一B「まだ近くにいるかもな。探せるか?」
第一A「探したるわ」キュイン

第一「頑張れAー」
第一「即滅してやるからー」カッ

第一C「気持ちはわかるがあの二人みたいに狂気系の目つきするのはやめろ」


ちびっ子達「あれ?あのお兄さん達、お城の兵士さん達だよな」「何してるのかな?」「なんか怖いね」「……なぁ、さっきの話って」「不審者、ってやつでは」「お母さんや先生に言わなきゃいけないタイプの」

勇者「怖くないよ、あのお兄さん達は悪いヒトを捕まえようとしてるんだ」

相棒「あのね、そのおじちゃんは変態っていう種族でね、魔族や竜族、人間なんか比べものにならない程危険なんだよ」

勇者「だから近付いちゃ駄目だよ。もし近付いてきたら、すぐに逃げなきゃ駄目なんだ」

ちびっ子達「やっぱりそうだ、不審者だ!変態なんだ!」「お前ら他に何かされなかったか?」
ちびっ子達(ロリ)「えーっと、……思い出した!パンツぬぎぬぎしてたね!」「あ、そうだね!お風呂じゃないのにね!」

勇者「」
相棒「」



第一「」

第一C「よし、絶対捕縛する」

第一B「こりゃ捕まえるまで町から出れないな」

第一A「将来その胸いっぱいに夢を持つ可能性のある少女達に手ぇ出すクソは絶対許さん」


第一C「……意味に気付いて殴りそうになったが我慢する」
第一B「そうしろ」

第一A「--あ、」キュイン

第一A「いたかも。……わー、マジか下半身丸出しのままだわ」

第一B「露出狂とかないわー」
第一C「アウトー」

第一A「この時点で即捕縛ものだけど、こともあろうにコイツ民家の窓に張り付いてる」

第一B「……視線感じて窓見たらおっさんと目があった。しかも下半身丸出し」
第一C「トラウマになるわ」

第一A「転移の座標は、」
第一「俺に。行ってくる」フォン

第一A「はいよ」フォン

第一「悪い変態は滅すべし」ヒュン



勇者「」ザワッ
相棒「」ザワッ


第一B「ちびっ子達がビビるぞ魔力出すな。こっちの声拾ってるのお前らだけなんだから」

第一C「お前らまで行ったらあの変態冗談抜きに消し飛ぶじゃねぇか。変態は俺達に任せてちびっ子達と戯れときなさい」



勇者「はーい」ポソッ
相棒「はーい」ポソッ

ちびっ子達「見たか今!あの兄ちゃん転移したぞ!どこ行ったんだろう!」「早かったな魔法陣の展開!すげぇ!」「いいなぁ、私も魔法上手くなりたい」「練習あるのみだって町の兵士さん達が言ってたよ」「僕、精一杯練習して魔法使うの上手くなって!いつかはお城の兵士になるんだ」「俺も俺も!」ワーワーキャーキャー

勇者「あのお兄さんは変態を倒しに行ったんだよー」
相棒「また一人変態が消え、町は平和になるのであったー」

ちびっ子達「マジか!」「やるなあの兄ちゃん達!」「頑張れ転移した兄ちゃん!」「どうか変態を倒して下さいっ」「怖いね、私達変態さんに会っちゃったんだね」「ねー」ワーワーキャーキャー

ちびっ子「あ!」

ちびっ子「コイツ等が変態に遭遇してたってことでうっかり忘れてたんだけど!」

ちびっ子「人間!旅人さん人間なんだぞ!」

勇者「耳の尖り成分が欲しい」シュン
相棒「分けられるなら分けてあげるんだけどね」


ちびっ子達「そ、そうだ!」「そうだった!」「にんげん!」「人間は怖い!」「怖いっていうあの人間だ!!」ワーワー

ちびっ子「そうだぞ!俺達はあの人間のともが出来たんだ!いろんな奴に自慢出来るぞ!」

勇者「!」

ちびっ子達「一日で怪獣と人間を友達にするなんて!」「なんて日だ!」「今日は良い日だ!」「お兄ちゃんホントに人間なの?」「全然怖くないよ?」「尖り成分が少ない家系じゃなくて?」ワーワーキャーキャー

勇者「人間だよー。ともだちには怖いことしないよー」ニコニコ

ちびっ子達「ともは良い人間だ!人間だけど怖くない!」「人間かぁ、ねーねー、この町には何しに来たのー?」「竜族さんと一緒に観光?」「探検?」「あ、そうだ!お城には行った?」「魔王様や側近様には会った?側近様も竜族なんだよ!」

勇者「この町にはね、あっちにいるお兄さん達のお供で来たんだ。あと、観光で合ってる」

相棒「せっかくこの国に来たんだから色々見て回れって、魔王様と側近さんに言われたんだ、私達」


ちびっ子達「あっちにいるお兄さん達は、お城の兵士さんで」「そのお供で」「魔王様達に言われたってことは」「知り合い!?」「もしかして魔王様達とお友達!?」「すごいよすごい!」ワーワーキャーキャー

勇者「うん、お友達になったよ」ニコニコ
相棒「今はお友達やらせてもらってるねー」ニコニコ

ちびっ子達「うおおマジか!」「すげぇ!魔王様達と友達すげぇ!」「お城のヒトなんだ、お姉さん達はお城から来たんだ!」「お兄ちゃんとお姉ちゃんは魔王様と側近様好き?私は大好きだよ!」「私だって好き!」「僕だって!大好きだよ!」「魔王様格好良くて強いもんな!」「側近様も格好良くて強くて変身できるもんな!」「憧れるよな!」「な!」ワーワーキャーキャー

勇者「俺も好きだよ。魔王様のこと」
相棒「私も好きだよ。側近様のこと」

勇者「しかもこれからもっと好きになると思う」
相棒「おまけに上限が見えないよね」


ちびっ子達「おお!とも達とは良いさけが飲めそうだ!」「酒って、僕らはまだ飲んじゃ駄目だよ」「ジュースと書いてさけと読むんだ!」「……あ、そう」「好きなんだってー!」「私達と同じだねー!」「魔王様達ってお城ではどんな感じ?」「ききたい!」「ききたいききたい!」「格好良いだろやっぱ!」ワクワク ワーワー

勇者「何から話そうかな、」ニコニコ
相棒「といっても、私達も出会って間もないから語れることは少ないけどね」ニコニコ



第一B「堂々と好きって言えるようになったんだな」

第一C「感慨深いものがあるな……」シミジミ

第一B「保護者の顔になってっぞお前」

第一A「うええ……誰かアイツ止めて」
第一A「変態縛って吊しあげてなんかもう視覚的にえぐいアブノーマル的な意味でキツいんだけどおお」





 魔王城。

第三所属兵士5「」ニヤニヤニヤニヤ


魔王『--で、あるからして。い、いくら好きだと言われても、出会ったばかりの相手と……その、こここ交際する、というのは』


勇者『……………』
相棒『……………』

魔王『もう何言えば良いかわかんないよ、あなたからも何か言ってよ……』コソコソ

側近『う……』

側近『…………、突然言われても、交際は、出来ない。が、こういうことは、その、』

側近『お友達から始めるのが、筋では、ないのだろうか』

勇者『…………』コクン
相棒『…………』コクン

魔王『……あなた達には恩があるわ。今回のことも、あの魔王を倒してくれたことも』

勇者『……恩だと、思わなくて良い、です』
相棒『……今回のことも、やりたくて、やったわけだし』

魔王『……お父様が言っていた通りの事を言うのね』
魔王『じゃあ私達もやりたいようにさせてもらうわ』

魔王『あなた達二人を正式にこの国の客として迎えます』

魔王『あなた達には、お父様や皆で作ったこの国を見てほしいの』

側近『先代様も、そう望んでいた』


魔王『だから……その……好きなだけこの城にいてもいいわ』

勇者『…………』
相棒『…………』

魔王『……お嫌かしら』

勇者『……嫌じゃないです!寧ろ、』
相棒『……散々迷惑かけたのにこんな好待遇で良いのかな、って』

側近『国のトップが良いと言っているんだから、良いに決まっている』

勇者『………うん、』
相棒『………それじゃあ、』

勇者『よろしくお願いします!』ペコッ
相棒『よろしくお願いします!』ペコッ


第三略5「」ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ

第三6「お前凄まじくニヤニヤしてるな気色悪いぞ」

第三3「でも5くんが気色悪いのはデフォだもんねぇ」
第三2「な」

第三4「何の記録映像見てたんだ?」


第三5「びしょ濡れ魔王様達と勇者さん達、正座での座談会in庭園」

第三4「あー」
第三6「それはニヤニヤ許すわ」

第三5「だろだろ?」

第三3「でも気色悪いよねぇ」
第三2「な」

第三5「このコンビ俺の扱い酷すぎだと思うの」

第三6「理由は自分の胸にお訊き」
第三4「同感」

第三2「そういやぁ1どこ行った?」
第三3「近くにいるんじゃないかなぁ」

第三3「僕らもお喋りはほどほどにして、真面目にお掃除頑張らなきゃね~」

第三4「あの一件で城内は滅茶苦茶だもんな。血痕は残ってるしあの魔王関連の事だから民間の業者呼ぶわけにもいかないし」

第三6「無いとは思うけど何か残ってたらそれこそ厄介だからな。結局、魔法でのチェックより俺達みたいのがやる視認での確認が一番確実か」


第三1「うひゃああああああああ!!助けて、助けてぇえええへぇぇえるぷ!へるぷぅうううう!!ああああああああ!!!」


第三ズ「」ビクッ


第三6「……おー、1がパニクってる。さては蜘蛛が出たな」

第三4「え、マジでああなるの?」
第三2「虫怖いって冗談だと思ってた。俺達が一緒の時は顔がひきつるぐらいだったし」
第三3「おまけに涙目だったね。悲鳴まではあげてなかったはずなのに」

第三5「一対一での遭遇だとああなるんだよ、どんまい1」


 カサカサカサ
第三1「無理無理無理デカいデカすぎやめて来ないでうわああ誰かぁあああああ!!いやぁあああああああああああ!!」


第三4「……助けに行ってやろうぜ」

第三ズ「おー」





 魔王城。
 執務室。

魔王「隣国の馬鹿王、逃げたそうね」

側近「ああ。……あの宰相が死んだからな。空いた王座を巡って争いが起こる所か、幹部はほとんど姿をくらましたらしい」


側近「……おそらく、次は自分だと思ったのだろう」

魔王「……確かに、……あの様子じゃ、次何かあれば勝手に行っちゃうわね」

側近「……そうだな」

魔王「………………」
側近「………………」

魔王「…………今、あの二人は?」

側近「第一の四人と共に町の視察だ」

魔王「そう……」

魔王「…………、ねぇ、」
側近「わからんぞ。わからんからな。俺に訊くなよ」

魔王「何よ私のお兄様ポジションのくせに!可愛い妹の相談ぐらい聞きなさいよ!!」

側近「そっちこそ可愛い妹ポジションなら兄のこの複雑な気持ちもわかれ!こっちが相談したいぐらいなのに!」

魔王「むううううう!!」プクッ

側近「いい年して膨れっ面するのは止めろ!」


 コンコン

魔王「!!」
側近「!!」

部下「失礼します」

魔王「あら部下。何か報告でも?」キリッ
側近「…………」キリッ

部下「はい。密偵から通信が入りました」
部下(……会話が外に筒抜けだったってことは言わない方が良いんだろうな)

部下「勇者一行についてとなります」

魔王「」ビクッ
側近「」ビクッ

部下「…………、」
部下(あの日以来、魔王様と側近様、勇者さん達のことすごく意識してる)

部下(対して勇者さん達は、言いたいこと言ってすっきりしたのかけろっとしてたけど)

部下「確認のため一応言っておきますが、勇者さん達の方ではなく、先日人間領から魔族領へ入った勇者一行についてとなります」

魔王「え、ええ。そうよね。話してちょうだい」


部下「勇者一行は隣国へ入ったようです。進行方向から、向かう先は王都かと」

魔王「そこにはもう魔王なんていないのに。……人数の調べはついた?」

部下「はい。勇者の男、剣士の男、賢者の女と魔法使いの女、計四人です」

側近「強さは?」

部下「密偵の接近を許さない程には。--確定情報ではなく、あくまで個人的な意見との言い分でしたが、」

部下「魔法は第一、武術は第二のレベルを有している、と」

魔王「警戒すべき対象のようね、」

魔王「--思えば、あの二人、こちらに何の情報も与えず乗り込んできたってことね」

側近「第一が絡んでいたとしても、見かけぬ者がいたとあれば何かしら知らせがあるというのに」

部下「その点はついては激しく落ち込んでいました。気付いた時には城に侵入されていたと」

魔王「あの実力なら、うちの密偵にバレず城を目指すことは可能でしょうけど」

部下「『私の悪者センサーにかからないから、きっと悪いヒトではない』、と言っていましたが」

部下「本当に、その通りのようで。良かったですね」クスッ


魔王「……からかってるわね?部下のくせに生意気よ」

部下「いいえ。『ここ数日の魔王様達は見てるだけでニヤニヤ出来る』とか城の者に言われているお二方に、そんなたいそれた真似しませんよ」クスクスッ

側近「…………、」
側近「第二部隊がそろって城に戻るそうだが、」ボソッ

部下「!」ビクッ

魔王「……勝負パンツ」ボソッ

部下「~~~!!」カァァ
部下「ひ、卑怯ですよそのネタを出すのは!!」アセアセ

魔王「身近に良い相談相手がいたようで助かるわ」フォン

部下「……え?」

 ガチャ

部下「なっ……扉に鍵を!?」

側近「…………」フォン

 ピシピシッ

部下「転移魔法の妨害まで……!」

魔王「……ええ、そうよ。実はと言わなくてもわかる通り、私達、色恋沙汰に疎くて困ってるの」ニッコリ


魔王「まずは参考に、貴女の話、詳しく聞かせてくれないかしら」

部下「ひ卑怯です横暴です職権乱用です!」

側近「安心しろ」フォン パキン

側近「妨害は万全だ。声が外にもれることは無い。この部屋は完全に隔離されている」
側近「だから長居は進めないぞ。なんせ空気も遮断しているからな」

部下「通りで部屋の外から何も聞こえなくなったと思いました!何でそんな面倒で高度な魔法使っちゃうんですか!」

側近「…………、やるからには何事にも全力でを信条に生きて」

部下「嘘ですよねそれ!側近様基本は真面目ですけど手抜く時はこっちが心配するぐらい抜いてくるじゃないですか」

魔王「観念なさい。伊達に数年前まで戦闘馬鹿と言われてないし下手したら脳筋族の仲間入りを果たしていた私達よ」

魔王「……そうね、もし貴女が話してくれないのなら、『ムキッ☆何でもアリだよ!国の最強決めようぜ選手権』なんて頭の悪そうな大会主催するわよ」

側近「もちろん俺達も参加するからな。立場なんて考えないぞ。負けたら通信回線全開で恋愛遍歴語ってもらうからな」


部下「私が考えていた以上に動揺され尚且つ切羽詰まっていることに心底驚いています!」

魔王「自分で言いながらアレ?これ本当に面白そうだな、なんて思ってたりするからね」

側近「今まさにルールはどうしようかと考えていたりするぞ」

部下「わかりました!わかりましたから止めて下さい考え直して下さい!」

部下(ああもう!目が本気すぎて!!二人同時に変なこと言い出しておかしくなるのやめてほしい!)

魔王「……え……?部下が話してくれるなら恋愛遍歴語るのは無しでいいから、その……開催自体も考え直さないと駄目?」

側近「きっと楽しい」

部下「考え直して下さいね絶対!!!」

魔王「…………」シュン
側近「…………」シュン

部下「悲しげな顔をするのはやめて下さいっ!!」


 数分後。

部下「--それで?私は何を話せばいいんですか?」

魔王「異性として好きな相手は第二の副隊長ということで間違いないな?」

部下「!!ど、ド直球にもほどがありますよ!!というか誰から聞いたんですか私まだ誰にも……!!」

側近「『だってバレバレなのよ?若いって良いわね』、と、にこやかに話してくれた者がいてな」

部下「庭師さぁぁああああん!!?」

魔王「有り難いことに庭師も兼任しつつ第一部隊の副隊長に復帰してくれるそうよ」

部下「それはそれは良かったですぅうう!!!」ヤケクソ

部下「ああもうっ!そうです!私第二部隊の副隊長さんのことが異性として好きです!大好きです!」

魔王「…………」チラッ
側近「…………」コクン

魔王(あの時彼女が話していたのは第二の副隊長のことだ)

側近(よくよく思い出してみれば、奴はよく部下の動向を訊いていた)

魔王(そういえば、部下の視線はよく第二のに向いていたっけ)


魔王(ふむ、そうか、)
側近(これが、巷でいう、)

魔王(両想い、というやつか)ウンウン
側近(両想い、というやつか)ウンウン

部下「なんですか、二人して視線合わせて頷いてぇ!」

魔王「気にしないで。……まずは、そうね、キッカケを教えて。何事にも始まりがあるでしょ?」

部下「……キッカケといっても……気付いたら好きになっていたとしか、」

側近「そうも簡単にヒトを好きになるはずがないだろう。必ず始まりがあるはずだ」

部下「……始まり、」

部下「……えっと、最初は好きとかじゃなく、ただ気になって見てただけなんです」

魔王「何が気になった?」

部下「…………、」

部下(何が気になった、って……)
部下(………………、確か、)




 回想。

第二部隊所属兵士『ふくたいちょー!おーなーかーすーいーたー!』『何か食べないと死んじゃう』『発狂しちゃう』『むごごががが!』『あ、発狂した』チマチマワラワラ

第二部隊副隊長『はいはい、ご飯にしましょうね。あ、発狂した子には無しですからね』マッチョマッチョ

第二『むごっ!完治です僕は空腹ですご飯と少しの休息と副隊長との組み手を所望します』『俺も俺もー』『私も私もー』

第二副隊長『わかりました。明日は非番ですし、好きなだけ付き合ってあげますよ』ニコニコマッチョ

第二『わあい!』『わーい!』『やったー!』

 テクテク

第二副隊長『--おや?』
第二副隊長『そっちの二人はどこへ?』

第二『……あ、副隊長……俺ですか……?むしゃくしゃしたので外走りにいこうかと』『俺はむしゃむしゃしたから走ってくる!食後の運動!』

第二副隊長『そうですか。外は雷雨です。くれぐれも、』

第二『……大丈夫です……、ちゃんと避けます』『心配しなくてももう自分から当たりにはいかねぇよ!』


第二副隊長『それなら安心ですね。では、風邪をひかないよう注意して下さい』

第二『了解……』『はいよー!』


部下『……驚きです。ここまで体格と性格が合わないなんて……』





 現在。

部下「最初は、不思議なヒトだな、と思ったんです」
部下「それからは見かける度に視線で追っていて、」

部下「ある日、彼の笑顔につられて笑ってしまったことがありました。凄く楽しそうで、私まで楽しい気持ちになれました」

部下「多分……それが始まりです。私が彼を好きだと自覚し始めたのもその頃でしたから」

部下「誰かを好きになるって、案外簡単に起こり得ることなんだと思います」ヘラリ

魔王「興味深いな、」
魔王「第二のと二人っきりで話したことは?」

部下「無いです。大人数でも緊張しちゃうのに、二人っきりなんて……」

側近「…………、好きにも種類がある。俺にも笑えばつられて笑ってしまう相手はいるし、緊張して上手く話せない相手もいた」


側近「それをふまえると、ますますわからなくなるな。異性として好きっていったい何だ?」

部下「ううう、そう言われると、何と答えていいのやら……」

魔王「難しいわね、好きって」
魔王「鍛錬ばかりやってないで、少しはそちらの方面も経験しておけば良かったわ」

側近「それもそれで難しいな、」

魔王「何故?」

側近「………………」
部下「………………」

部下(あー……)
部下(先代様、子煩悩だったからなぁ……)

魔王「だから、何故ってば」

側近「………、何故かというと、」ピコーン

側近「経験しようにめ相手がいないだろう。なんせ身近にいた外見年齢が近い男は俺しかいなかった」

魔王「……確かにそうね」
魔王「でも悔いは残るわ。男友達というものを作っていればこうも悩まなかったはずなのに」


魔王「まぁ過去を嘆いても仕方ないわ」

魔王「部下、率直に訊くわよ?」

部下「は、はい。なんですか……?」

魔王「勇者達って私達のこと異性として好きってことで間違いはないのかしら」

部下「間違い所かベタ惚れじゃないですか」スパッ
部下「誰がどう見ても勇者さんと相棒さん、魔王様と側近様のこと大好きですよ」

魔王「……………」
側近「……………」

魔王「だって、前と違って、今は顔合わせても、その……普通よ?皆と同じように対応しているように見えるけど」

部下「え、皆と同じように見えるんですか……?」

側近「いや、第一の四人には違うな。あちらの方に好意を持っているように見える」

部下「………………、」
部下「兄さん達への好きと、魔王様と側近様へ向けられる好きは全くの別物だと思いますが」

部下「……あの、ですね。そもそも、前提から疑問だったんですが」

部下「友達から始めよう、って話し合って決めたはずなのに、何故今になってそう悩んでるんですか?」


魔王「………………」ザワッ
側近「………………」

部下「え、あ、私、何かマズいことでも、」

魔王「……………ないのよ、」ボソッ

部下「?」

魔王「…………領主の娘で、自分で言うのもなんだけど、私はお嬢様だったわ。おまけにあの情勢。挙げ句の果てに趣味は鍛錬……」

魔王「そんな私に……友達なんているわけないじゃない!」ジワッ

部下(ちょ、え、泣っ、えぇぇええええ!!!?)

側近「忘れてたんだ……、知識はあった、が……いつも一緒だったからその……全く寂しさを感じなくて、」アワワワワ

魔王「今となっては魔王よ、国の代表よ……!皆良くしてくれるわ、でもそれは友達としてじゃない!そうでしょ!?」

部下「」アワワワワ

魔王「そんな私なんて、私達なんて!自分を好きと言ってくれるヒトにどう対応するか以前に!」

魔王「お友達にどう接していいかすらわからない残念なぼっち野郎なのよ!!」ブワッ

側近「」チーン

部下「」




 とある町。

第一C「!」ピクッ

相棒「んー?Cさんどうしたー?」

第一C「妹に助けを求められた気がしたんだ。けど同時に、」
第一C「多分俺の手に負えない気がすると思った」

第一B「今日もシスコンセンサーは絶好調だな」

相棒「部下さんどうかしたのかな?……大丈夫かな、」

第一C「大丈夫だろ。今日は休みとか聞いてないし、魔王様達が執務室に閉じこもってる日にアイツが城から出るわけないし」

第一B「側近様が魔王様の補佐なら、部下は二人の補佐みたいなもんだもんな、」

相棒「良かった。じゃあ発動はしないね」

第一C「……発動?」

相棒「うん。部下さん攻撃系の魔法苦手だって言ってたから、勇者と一緒に自動攻撃型の魔法作ったんだー」

第一C「え、ちょ、」
第一B「……おいおい、」


相棒「でも一回限りだし、牽制しか出来ないから本当に危ない時は役に立たないかも」

第一B「部下に魔法仕込んだってことか?」
部下C「それ、アイツは知ってんの?」

相棒「知ってるよ。お詫びもかねておまじないかけさせてって頼んだんだ」

第一C「……発動条件は?攻撃型って、どんなの?」

相棒「初めて作った魔法だから威力は無いよ。本当に、牽制しか出来ない」

相棒「発動条件は、部下さんが怖がること。あと敵意。怖がった部下さんがその対象に敵意持ったら、自動攻撃するようになってる」

相棒「大きさは恐怖心に比例するように設定したんだ。だから、」フォン

 ピョコン

相棒「小さな恐怖と少しの敵意だったら、これぐらいの小さなトゲしか出ないよ」ピコピコ

相棒「急所は絶対に外すようにしてるし……やっぱりもう少し頑張って作るべきだったかも」シュン

第一C「いや、ありがとう。その手の魔法は高度過ぎて出来ないから助かるわ」

第一B「しかし器用だよな。俺達も魔法には自信あるけど、お前等は別格だな」

相棒「でも、どちらも治癒魔法が苦手ってことが……勇者は私より魔法の扱い上手いのに、」


相棒「お互い、ちゃんと治癒魔法が使えるようにって練習してるんだ」

相棒「だって、みんなが怪我したらすぐに治してあげたいから」ヘラリ

第一C「お前らって奴は……」ジーン

第一B「誰にも向き不向きが、ってか。治癒魔法自体、上達は生まれもっての素質だからな、」ケラケラ

第一B「ま、無理はすんなよ?お前らには治癒魔法使える友達がいるんだから、存分に頼れ」

相棒「えへへ、ありがとう!」ニコニコ





 とある町。
 兵士詰め所前。

勇者「みんな良いヒトだ!」

第一「流石に勇者ってバレたら怖がるかもしれないけど、今の旅人さんは魔王様が正式に客って認めた無害な人間の旅人さんだからねー」

第一A「一応、勇者だって言うのは控えろよー?俺達も城の奴らも旅人ってことで通すからさ」

勇者「構わない。……勇者なんて、もう辞めようと思ってたから」


第一A「え、何で?勇者って人間領じゃちやほやされるんだろ?」

第一「勇者様勇者様ーって崇められるんじゃないの?」

勇者「いや、俺達は特殊だったからさ」
勇者「寧ろ指名手配犯かってぐらい恐れられてたかも。だから好意的に対応されるのが嬉しくて」

勇者「おまけに、あっちでは俺達、二年前に死んだことになってるんだ」

第一A「死ん!?」
第一「また何で、」

勇者「問題ばかり起こしてたからかな。あの魔王を倒してピンピンしてる俺達みたいな勇者一行は、普通のヒト達にはもう恐怖の対象にしかならないんだよ」

勇者「だから俺達は、命を賭けて魔王と戦い、見事相討ちに持ち込んだ勇者一行として、勇者協会に記録されてる」

第一A「じゃあ人間領で旅人さん達は、公式に死んでるってわけか」

勇者「うん、そう」ヘラリ

第一「だからあの時宰相も本気で驚いてたわけか……」

勇者「せっかく勇者になったからって名乗り続けてたけど、この際正式に勇者の称号取っ払ってもらおうかなって」


勇者「問題はそれが勇者協会でしか出来ないってことで。人目につかないようあそこまで行くのが面倒だからなぁ、」

第一A「いいのか?勇者になるって結構大変なんだろ?人間領では特権階級だってきくし」

勇者「一応、相棒にも相談してみる」

勇者「けど、俺達似てるし、意見は同じだろうなぁ、」

勇者「……どうせおじさん……先代様が助けてくれなかったら死んでたんだ。生き残ったって言っても公式では死んだことになってる、」

勇者「勇者一行だった俺達は、あの時、死んでしまった。それで良いんじゃないかって、思うんだ」

第一「……………」
第一A「……………」

勇者「ごめん。俺、暗い話しちゃ--」
第一「もう住んじゃえよこの国に!」
第一A「もういいよこの国の子になれよ!」

勇者「えー、そりゃ魔王様達には好きなだけ城にいて良いって言われたけど、流石にずっとは迷惑になるし、」

第一A「市民権下さい言えばいいのに」

勇者「いやいや、それは無理だよ。相棒は側近さんがいるからいけるかもとしても、俺は……この国のヒト達が怖がっちゃう」

第一「良い考えがあるよ」

第一「旅人さんが魔王様と結婚」

勇者「」ボフッ
勇者「け、けけけ結婚、って!まだ俺その、友達になったばかりだし……!」アワワワワ

第一A「お、真っ赤。やっぱり外面だけだもんな、魔王様前にして普通でいられるの」ニヤニヤ
第一「魔王様も鈍い所あるしさ、ちゃーんとおさないと、伝わらないぜー」ニヤニヤ

勇者「うううう、」

第一「ごたごたが片付いたら隙だらけになるだろうし、そこが狙い目だな」

第一A「旅人さんを応援するためにも早いとこ片付けないとなー」

勇者「……うん、そうだよな。俺も、頑張って力になるよ」

勇者「……もうみんなに、怪我してほしくないし」

第一「…………」
第一A「…………」

第一A(確かに目が死んでる事多いけど何で穏やかな顔で目が死んじゃうの。なんですぐヤンデレ顔になっちゃうの)

第一(下手に死にかけたら大変なことになりそうだなぁ)ケラケラ

第一「ま、旅人さん心配させないためにも気をつけないと、だよな」

第一A「おう」



第一C「おーい!」



第一A「お、」
第一「んー?」
勇者「あっ!」



第一B「そろそろ城に戻るぞー!」
相棒「戻るぞー!」



第一「だってさ、」
第一A「じゃあ戻るか。報告も有るし」
勇者「了解ー!」

勇者「……………、」

勇者「お兄さん達と情報収集に出るのは楽しいけど、やっぱり早く見つかってほしいな、」

勇者「あの宰相に手を貸してた悪いヒト達はさ、」


 魔王城。
 庭園。

第一副隊長「~~♪」ルンルン フォン

 ドバッシャァァァア!!

第一弟「!!?」
第一弟「庭園に滝!?ちょ姉ちゃん!水あげすぎだって!!」タタタタッ

第一副隊長「大丈夫よ~。ほら、この子も嬉しそうでしょ?」

植物「ぐおぉ」ルンルン

第一副隊長「お水だけじゃなく、あなたの好きな弟くんも来たことだし、良かったわね~」

植物「ぐおー!」ズルズル

第一弟「…………、」
植物「ぐおぉ!ぐおぉ!」スリスリベチョベチョ

第一弟(意志のある巨大植物……)
第一弟(大きな赤い花は綺麗だし懐かれてることに悪い気はしないけど)ベチョベチョ

植物「ぐおぉ!」アーン

第一副隊長「いくら好きだからってお口に入れちゃダメよ~」

植物「……ぐおぉ」ションボリ


第一弟(俺はこの子にとってただの食べ物なのかなぁ……)ハァ

第一弟「姉ちゃん、さっき通信が入ってさ……第三部隊隊長権限で、この子が根をはる一帯が正式に立ち入り禁止になったんだ」

第一副隊長「余計な事をするんだから」

第一弟「余計どころか必要なことだよ」ポンポン ナデナデ

植物「ぐおぉぐおぉ!」ルンルン

第一弟「柵で囲って、この子にもちゃんと状況を教えてやらないと」

第一副隊長「危ない子じゃないのに……」

第一弟「そうだけどさ。知らないヒトから見たら立派な赤い花の茨怪獣だよ」

第一弟「魔物の残骸を全部養分にして、そりゃ掃除の手間が省けたけど、」
植物「ぐおぉぐおぉ」スリスリ

第一弟「この子、成長早すぎだし、やっぱり普通じゃないよ。苗はどこから取ってきたのさ」

第一副隊長「死んだあのヒトの遺品よ」クスクスッ

第一弟「あー……」
第一弟「まったく、変なものばっか持ってるんだから」ハァ

植物「ぐおぉ……」シュン


第一弟「!あっと……変ってのは言葉の綾で……、酷いこと言ったね、ごめん」

植物「……ぐおぉ!」スリスリ シュルルル

第一弟「巻きつくのはほどほどにしてくれよなー」

第一副隊長「懐かれてるわね。ふふっ、弟を選ぶなんて見る目のある女の子ね」クスクス

第一弟「この子女の子なの?」

第一副隊長「ええ、多分」

第一弟「多分、って。まぁいいや」

第一弟「第一の先輩達、戻るって連絡あった。勇者さん達も一緒」

第一副隊長「--そう。美味しいお茶を用意して、報告、聞かなくちゃ」

第一弟「あと、第二のみんなも戻ってくるよ」

第一副隊長「…………、」

第一副隊長「……第二の隊長も?」

第一弟「隊長も」

第一副隊長「…………」ハァ
第一副隊長「いやね、暑苦しくなっちゃうわ……」


第一副隊長「でも、第二が戻れば部下ちゃんが喜ぶし、いっか……」ボソッ

第一弟「え?」

第一副隊長「なんでもないわ」クスクス

植物「…………」アーン

第一副隊長「--あ、こら駄目でしょ?お口に入れちゃあ」

第一弟「ん?……って牙ぁ!?やめろってヒトは喰うなぁ!!」

植物「ぐおぉぐおぉ!」ルンルン





 魔王城。
 第三部隊隊長執務室。

第三副隊長「ということで、第二が戻ってきます」

第三隊長「だろうな。……だって俺ここ数日通信回線全部閉じてるし」

第三副隊長「……ご愁傷様です」


第三隊長「悪い奴じゃないんだが、アイツにも喧嘩ふっかけるから厄介なんだよ」

第三副隊長「……仲直り、されたんですね。良かったです」

第三隊長「?」

第三副隊長「第一の副隊長さんとです。……あれからずっと、ぎくしゃくしてたじゃないですか」

第三隊長「ああ、それか。……勇者の奴らのおかげだろうな、お互い、第一の馬鹿の存在はそれなりに大きかったし」

第三副隊長「同期だったんですよね」

第三隊長「おう。……『奴は同期だから』なんて言うけど、何でそんな理由で喧嘩ふっかけちまうのかね、第二のは」

第三隊長「まったく……、アイツは穏やか気取ってるけど、根は負けず嫌いで激情家なんだよ。苛つかせると面倒になるってのに」

第三副隊長「よく知ってるんですね」

第三隊長「そりゃ付き合いだけは長いんだ、お互いの性格ぐらいは把握してるさ。顔見りゃ何企んでるかわかるし」

第三副隊長「…………、」
第三副隊長(そんな所に第二の隊長は嫉妬してるんだと、教えた方が良いのだろうか)

第三副隊長「見てて面白いので言いませんけど」ボソッ


第三隊長「何か言ったか?」

第三副隊長「いいえ、何も」ニコッ





 翌日。
 魔王城。廊下。


第一B「んじゃ報告行ってくるわ」
第一C「そっちは適当にぶらぶらしときなさい」

勇者「はーい」
相棒「はーい」



第二肆「……………あ、第一だ」

第二伍「マジで!?ってことはやべぇ!向かう先は第一んとこの執務室か!?そうなのか!?よし足止めだ!行くぜ肆!!」

第二肆「……あっちが話に聞く勇者とその相棒……強そうだ……お手合わせお願いしますって言えば受けてくれっかな……」

第二伍「なに!?勇者だと!?」カッ


第二伍「--あ!アレか!あの金のと白いの!強そうじゃんか!くぅう!!闘いてぇ!!」ブンブン

第二肆「……でも、今回は足止めに回るか……副隊長のためにも」

第二伍「あっちは何時でも闘ってくれそうだしな!!それだってのに副隊長には今しかねぇ!!おまけに本番はこれからだ!」

第二肆「……でさ、足止めって、どうする……?」

第二伍「そりゃお前簡単だよ!何時も通りに決まってるじゃんか!まずは挨拶!!」

第二肆「……何時も通り、ねぇ……そうするか」

第二伍「おう!じゃあさっそく行こうぜ!!」



 ズダダダダダダダッ!!

第二伍「だーいーいーちー!!」ダダダダッ
第二肆「……………」ダダダダッ


第一A「うわ、」
第一B「げっ、」
第一C「あー、」


第一「脳筋が走りよってくる。逃げますか?」

第一「はい」フォン

第一C「いやいや、流れるように逃げようとするな。用事があるからこっち来るんだろ?」

第一B「どうせろくな用じゃねぇよ」

第一A「同感」

第一C「話ぐらい聞いて、」


第二肆「……暇だろ、暇だよな……」ドンヨリキラキラ
第二伍「久々に模擬戦しようぜ!!」キラキラ


第一C「よし逃げるぞ」フォン
第一B「賛成」フォン
第一A「賛成」フォン
第一「大賛成」フォン

第一「さらばだ脳筋共」

 ヒュン


第二肆「……甘い、」フォン
第二伍「……わたあめより甘いぜ第一!!」フォン





 魔王城。大広間。

 スタタタッ
第一B「この距離ならすぐ来やがるな、」

 フォン

第一A「あの察知力で空間把握系の魔法使ってるわけじゃないことが怖い」

 フォンフォン

第一C「一応空間把握(物理)だろ。身体能力上げて対象の気配探知すんだから」

第一A「いやただの野生のカンだから空間把握系使う奴らはみんな違うって言うから」キュイン

 フォン
第一「よし、完成」

第一A「--来るぞ」



 ズダダダダダダダッ
 ヒュン ピョイ

第二肆「……みいつけた……」
第二伍「逃げるにしては近過ぎだぜ第一よお!!!って、」

第一「そして発動」フォン

 ガコン!

第二肆「あ」ゴン
第二伍「おあああ!?」ゴン

第二肆「頭打った………」
第二伍「いてえ!なんだこれ檻じゃねぇか!!!?即閉じ込めな魔法は卑怯だぞ!!」ゴンゴンゴンゴンゴンゴン

第一C「卑怯もくそもあるかよ。出会い頭に闘い挑んでくるくせに」

第一B「戻ったばかりのくせに何でそんなに血気盛んなんだよ」

第一A「だから脳筋部隊って言われるんだよ」

第二肆「……いやだって……アレが俺達の挨拶だし……」
第二伍「なんだお前等!ちょっと会わない内に久々の再会で挨拶一つしない寂しい奴らになっちまったのか!!」

第一ズ「…………」ハァ


第一「お久」
第一A「久しぶり」
第一B「ひさ」
第一C「久しぶり。相変わらず元気そうだな」

第二肆「……大変だったみたいだな……無事で良かったよ……」ヒュ ドゴン

第二伍「四人で軍勢相手にするとかやるじゃねぇか!!かっこいいぜお前等!」ヒュ バキン

第一「……あーあ、せっかく作ったのに。物理で魔法壊すのは相変わらずだな」


第二伍「気がのらねぇなら良いけどさ、模擬戦」
第二肆「……とりあえず、最大目標は達成したしな……」

第一C「目標?」

第二伍「訊くなよ。俺達嘘つくのド下手だから」

第二肆「副隊長……、そっちの副隊長に用がある……」

第二伍「お前肆言うなよ!ちょっとした相談らしいからすぐ終わるだろうけどそのちょっとぐらい誰かに邪魔されずにゆっくり相談してほしいんだよ!!」

第一B「嘘がつけない以前の問題」
第一A「正直すぎることに定評のある第二」
第一C「言っちまうなら最初から言えば良いのにって思う」
第一「仕方ないよ馬鹿だもの」


 魔王城。
 第一部隊執務室前。

第二壱「へくちっ」
第二弐「くしゅん」
第二参「っしょい」

第二壱「誰かが噂してるんです。断じて風邪ではありません」

第二弐「そうだよだって馬鹿は風邪ひかないんだよ」

第二参「何言ってんだ。俺達は馬鹿だから風邪ひかないんじゃないぞ。第二所属だから風邪ひかないんだ」

第二壱「そうですその通りです」
第二弐「参ちゃんすごい!それ盲点だったよー!!」
第二参「へっへーん!」


 ガチャ

第二副隊長「では、失礼します」

第一副隊長「ふふっ、頑張って、ね?」

第二副隊長「はい!」


第二副隊長「--おや?」


第二ズ「ふくたいちょー!!」

第二副隊長「三人そろって、どうしました?」

第二弐「いくよみんな!」
第二壱「せぇ、」
第二参「のっ!!」

 フォン ボフン ファサッ

第二副隊長「これは、花……?どうしたんですか、こんな大量に」

第二壱「種類は用意したです!」
第二弐「みんなで走り回って集めたんだよ!楽しかったよ!」
第二参「行くんだろ副隊長!!俺達にはこんなことしか出来ないけど!」

第二壱「僕達、応援してますから!」

第二弐「だから、好きなお花、選んで、ね!」

第二副隊長「みんな……」

第二壱「いってらっしゃい!です!」
第二弐「いってらっしゃい!だよ!」
第二参「いってらっしゃい!だぜ!」

第二副隊長「……ありがとう。これ、貰ってくいくね、」ファサッ

第二副隊長「じゃあ、いってきます!!」


 魔王城。
 庭園。

勇者「!!!」
相棒「!!!」

植物「ぐおぉ」ズルズル

勇者「かかか、怪獣だぁああああ!」キャッキャ
相棒「怪獣だ!赤い花の茨怪獣だぁあああ!」キャッキャ

植物「ぐおお?ぐお!」ペコッ

勇者「!!--うん、初めまして!」
相棒「初めまして!」

勇者「意志がある!植物なのに!」キャッキャ
相棒「魔物というわけでもないみたいだ!喋ってるし!」キャッキャ

植物「ぐおっ、ぐおー?」

勇者「弟……?あ、少年のことか。……ごめん、今日はまだ見てないや」

植物「………ぐお」シュン

勇者「う……悲しそうだ」
相棒「任せて」フォン キュイン


相棒「…………あ!大丈夫、近くにいるよ。きっと君を捜してる」


 タタタタッ


植物「!!!」ピクッ ズババババッ

勇者「地面から蔓が出てきた!!太い長い凄い!!」キャッキャ
相棒「見た見た!?この蔓の先口になってるみたいだよ!小さな牙があった!」キャッキャ


第一弟「うわあああああ!!?なにこれなにこれっ!?」グルグル ヒョイ

第一弟「え、これ植物!?何で植物なのにこんなに動き回れるの!?」ブラーン

植物「ぐおっぐおっ!ぐおおっ!!」スリスリ


勇者「ふむふむ。少年に会いたいと思ってたら自然と動けたんだって」

第一弟「勇者さん!?--あ、っと旅人さんで通すって決まったんだっけ、」
第一弟「ああもうそんなことより!この子が何言ってるかわかるんですか!?」

勇者「うん」

植物「ぐお……」シュン


相棒「少年、その子に声かけてあげてよ。迷惑だったかなって凹んでる」

第一弟「相棒さんもわかるんですか!?」

相棒「うん」

第一弟「うう……」
第一弟「ごめんな、言葉がわからなくて。成長が物凄いから付き合いとしては短いけど、俺はキミが苗の時から一緒なのに」ナデナデ

植物「ぐおお!ぐおぐおっ!!」ブルブル
第一弟「うわああ!?揺れる揺れる!!」グラングラン

勇者「私が悪いって言ってる。頑張ってあなたと話せるようになりたいって」

相棒「あ!蔓で少年掴まえたままだよー、揺らしすぎると目、回しちゃうよ」

植物「!!!」シュルルル

第一弟「……うあ、目眩が、する、」ストン
植物「………ぐお」シュン

第一弟「……今のはわかるよ、ごめんなさい、だね?」

植物「…………ぐおぉ」

第一弟「大丈夫だよ。--でも、危ないからヒトを掴まえたまま振り回すのは気をつけること。いいね?」

植物「ぐおっ!」スリスリ


第一弟「体は大きいのに、甘えん坊なんだよなー。やっぱり植物としては若いからなのかな、」ナデナデ

勇者「少年少年。この子どこから来たの?いつから庭園の子になったの?」キラキラ

相棒「ちょっと前まではいなかったよね。ここ数日気配が大きくなったように感じたんだけど」キラキラ

第一弟「少し前に姉さんが苗を持ってきて。植物の一種だと思うんですけど、詳しくはわからないんです。すみません」

第一弟「魔物の残骸を養分にしたからか成長が早くて、今はこの通りです」

勇者「初めて見るなぁ。人間領でもこんな植物がいるなんてきいたことないし」

相棒「魔族領だからかな魔族領って凄い」

植物「…………、」ジー

植物「……ぐお?」

勇者「ああ、うん。そうだよ、違う」

相棒「頭の良い子だね。もう種族差に気付いたみたいだ」

勇者「俺が多分人間って種族。相棒が竜族で、少年は魔族」

植物「ぐぉっ、ぐお……」


勇者「大丈夫。これから学んでいけばいいよ」
相棒「私達だって知らないことが沢山あるんだから」

植物「ぐおっ!」

第一弟(……俺も、早くキミの言葉をわかるようになりたいな)ナデナデ
植物「ぐおっ」ルンルン

植物「!!」ハッ

植物「ぐお!ぐおおっ!!」ブルブル

勇者「--え?そういえば?約束破っちゃった?」
相棒「ここから出ちゃ駄目って言われてたのに、って?」

植物「ぐおっ……」シュン

第一弟「ああ、そうだったね」

第一弟「でも、今回は説明不足な所もあったし、お咎め無しってことで」

第一弟「まずは戻ろうか。それでいい?」


植物「ぐおっ……ぐおぉ」ワサワサ

勇者「あ、眠いの?」
相棒「心無し花の色が薄く見えるよ」

第一弟「戻ったらまずは休息だね。お水も用意するから、もう少し頑張ろうな」

植物「ぐお!」ズルズル

第一弟「旅人さん達はどうします?暇なら一緒に、」

相棒「ついてく!」
勇者「俺達ピクミ○!」





 魔王城。
 庭園。立ち入り禁止区域。

植物「」zzz

勇者「寝ちゃった」ゴロゴロ
相棒「寝ちゃったね」ゴロゴロ

第一弟「疲れてるんですね、」
第一弟「植物なのにあんなに動けば、そりゃ疲れると思いますけど」


勇者「第一の隊長さんなんだっけ、この子の苗持ってたの」

第一弟「はい。……不思議な物ばかり持ってる変なヒトだったんです」クスクス

相棒「あの時のお兄さんかぁ……ちゃんと話してみたかったなぁ、」

勇者「この植物本当に植物なんですかとか訊きたい。こんな格好いい植物が存在するなんて」

相棒「この子が沢山群生してる地域とかあるのかな。凄く行ってみたい」

勇者「わらわら出てくるってことか?なにそれそんな場所わくわくが止まりそうにない」

第一弟(…………さすがにそれはちょっと怖いかもなぁ)

相棒「あ、そうだ少年。第二部隊のヒト達が戻ったって聞いたけど」

相棒「挨拶、しにいこうと思うんだけど。ほら私達、居候の身だし」

勇者「そうだよな、特に隊長さんと副隊長さんの所には早めに行かなきゃ」

第一弟「第二部隊、ですか……?」

第一弟「あー、多分第二のヒト達は自分から旅人さん達の所に来るというか、その……」

第一弟「すごく、好戦的なヒト達なので、ちょっとお手合わせお願いしますとか、言われちゃうかもしれません」

勇者「」
相棒「」


勇者「どうしよう相棒俺この城に永住したい」

相棒「なにこの城私達の好み把握しすぎ」

第一弟「……え、あ、え……?」

勇者「お手合わせお願いしますとか長い事言われたことない」

相棒「ほとんどお願いします言う側だったからねー」

第一弟(あ、そうか)
第一弟(旅人さん達、魔王様達と闘いに来たんだった)

第一弟(脳筋って言われてる第二のヒト達だけど、きっと仲良くなれるだろうな)ウンウン

勇者「わくわくしてきた、」
相棒「挨拶がてら行っちゃう?」
勇者「行っちゃう!」

第一弟(殺すとか倒すとかが目的じゃなくて、ただ純粋に闘う事が好きなんだろうなぁ、)

勇者「じゃあ少年、俺達挨拶に行ってくるよ!」キラキラ

第一弟「はい。この子の事、いろいろ手伝ってくれてありがとうございました」

相棒「いえいえ。好きでやったんだし楽しかったから、また誘ってほしいな」

勇者「!」ピクッ


第一弟「はい!」
第一弟「って、あれ?旅人さん?」

相棒「どしたの?」

勇者「あっち、魔王様がいる」ジー

勇者「どこ行くんだろう……」

相棒「ほんとだ。庭園の奥……あっちはまだ行ったこと無いね」

第一弟「あの方向は……、霊園です」

第一弟「お墓参り、みたいですね」

勇者「……………、」
相棒「……………、」

相棒「勇者ごう!」
勇者「!!?」

相棒「お話チャンスだ!」
勇者「いやいやいや!忙しいかもだし!」

第一弟「半分息抜きに出てると思うので大丈夫かと」

勇者「息抜きなら尚更ゆっくり……!」

相棒「いいじゃん、おじさんのお墓参りも出来るし」


勇者「お墓参りならお前も一緒に……!」

相棒「うん、次、一緒に行こうよ。花持ってさ」

勇者「うう、」

第一弟「行って下さい。魔王様も、良い気分転換になると思いますし」

勇者「…………、」

勇者「わかった、行ってくる」キリッ

相棒「いってらー」
第一弟「頑張って下さいねー」

勇者「おー!」タタタタッ



第一弟「行っちゃいましたね」
相棒「うん」

相棒「じゃあ私は、一人でぶらぶらしてみようかなー」

相棒「またね少年ー」
相棒「植物にも、また来るよって伝えておいてねー」

第一弟「了解です!」


 魔王城。
 第三部隊執務室。

 ズダダダダダダダ!!

 騒々しい足音に、第三部隊の隊長は立ち上がった。

第三隊長「…………」ハァ

第三副隊長「あ、来たようですね」

第三隊長「ああ、来たな」フォン

 歩み寄った扉に手をかざし、瞬時に障壁を形成。赤い光が扉を包んだ。

第三副隊長「そこまでしっかりやらなくても」

第三隊長「また壊されたらたまらんからな」


第二部隊隊長「第三のぉぉおおお!!」ズダダダタッ

 ドゴン

 足音の主は、その勢いのまま扉へとぶつかったらしい、

第二隊長「あれ!?開かない!?何でだ!何でだああああああ!!」ドゴン


 ビリビリビリ

 連続での衝撃に障壁が揺れた。

第三隊長「障壁無しだったら粉々じゃねぇか……」

第三副隊長「隊長の障壁越しでこの威力……相変わらずの馬鹿力」

第二隊長「むむっ!?これはまさか第三のの障壁か!!?そこにいるのか第三の!!いるんだな第三のおおお!!!」ゴンゴンゴゴゴゴッ

 ビリビリビリビリ

第二隊長「言いたいことがある!聞いてくれ第三の!!」ゴゴゴン


第三隊長「…………」ハァ

第三隊長「副隊長、転移の用意頼めるか?」

第三副隊長「はい」フォン

 形成された転移魔法陣が、二人の足元へ広がる。


第二隊長「第三の!私はっ……!!」

第二隊長「お前の子を産みたいぞぉおおお!!!!!!!!」


第三隊長「…………」フォン

第二隊長「障壁が消えた!!!おおおっ!!ついに私の想いに応えてくれるんだなぁ!!好きだ第三のぉお!!」


第三隊長「お前のことは同僚以上には見れないって前に言ったろ」


第三隊長「副隊長、転移」
第三副隊長「お任せあれ」フォン

 ヒュン

 ドゴン!

 転移魔法陣が発動したのと同時に、執務室の扉は砕け散った。

第二隊長「なに!!?何故だ第三の!!」

第二隊長「ぬおっ!いない!!!む、魔法陣の痕跡……さては転移したな!!恥ずかしがり屋さんめ!」

第二隊長「…………、」チラッ

第二隊長「また扉を壊してしまった。直さねば」ガチャガチャ


第二隊長「………………、」
第二隊長(うう……直すの、無理かも)シュン

 砕け散った扉の破片を手に、うなだれるしかなかった。

第二隊長「……おまけに、また逃げられちゃった……」

第二隊長「どうして逃げちゃうかなぁ……あたしって、やっぱり女の子らしくないからかな、」スッ

 服の上から自身の腹部に触れれば、思っていた通りの感触が返ってくる。

第二隊長「腹筋だってバキバキに割れてるし……、力も強いし………」

第二隊長(…………駄目だよね、弱気になっちゃ)グッ

第二隊長「ええい!!めげぬ!!なんのこれしき!!めげてたまるかぁあああああ!!!!!」


第二隊長「愛してるぞ第三のぉおおお!!!」

地の文いれるとこんな感じ。後半地の文多用するかも。出来るだけ最小限を意識するけど読むの面倒に感じたのならごめん。

今日はここまで。
植物のモデルは某怪獣。


 霊園。

魔王(…………勇者の、気配)クルリ

魔王「……ついてきたの?」

勇者「……すみません、お姿を見かけたもので。…………迷惑ならすぐに、」

魔王「迷惑じゃないわ。だからその……せっかくだから、こっち来て少し話さない?」

勇者「はい」タッタッタ

魔王「…………、」
勇者「…………、」

魔王「……この墓石の下に、お母様とお父様が眠っているの」

魔王「……周りは、全部。この領……この国を守るために死んでいったヒト達が眠っているわ」

勇者「……沢山、死んだんですね」

魔王「そうね。沢山、沢山死んだわ」

魔王「……見てわかると思うけど、うちの兵、皆若いでしょう?若すぎるぐらいに」

勇者「そうですね。--兵士だけじゃない、町でも、一定の年齢層のヒトはほとんど見かけませんでした」

魔王「みんな、女子供……若者を優先して生かせたから」


魔王「……特に、兵士はね。自分が何時死んでも良いようにって、新兵の育成に余念が無かった」

魔王「『明日、自分は死ぬかもしれない』。それが、皆の口癖だった。だから、自分がいなくなった後、お前達がなんとかするしかない、そう言って」

魔王「その口癖を聞かない日は無かったわ。それが何時しか日をあけるようになって……気付いたら、誰一人口にしない言葉になってしまった」

魔王「必死だったからかもね、残った私達は、思ってた以上にあっさりその事実を受け入れた」

勇者「…………、」
勇者(強いな、みんな。俺は、今もきっと、受け入れる事は出来ない)

魔王「悲しむ暇なんてなかったから、すぐに受け入れるしかなかったの。私達には、繋いでくれた今を未来へ繋げる義務がある」

魔王「……受け入れたつもりでも、本当は、悲しむ事も悼む事も、まだちゃんとしていないだけかもしれないわね」

勇者「…………、」

魔王「……おまけに、私は若すぎる上に女魔王。おかげで他国にはナメられるわ喧嘩を売られるわで、ふふっ、自国だけでも大変なのに、」

魔王「それでも、魔王をやめたいだなんて思ったことは無いわ。私は、この国を、この国に住む人々を、この手で守りたいから」

魔王「……ねぇ、勇者」

魔王「貴方の目には、私達の国がどう映っているの?」

勇者「…………、俺の目から見て、」

魔王「--ごめんなさい。無理に答えなくても良いわ。全部見たわけじゃないだろうし、何より魔王の私がこの質問をするのはフェアじゃないわね」


勇者「相棒といろんな国を渡り歩きました。いろんなヒトを見てきたつもりです。--もちろん人間領内での話、ですけど」

勇者「ここに住んでるヒト達は、ちゃんと楽しそうに笑えていました」

勇者「だから、良い国と映ります。もう不幸を感じさせない、良い国になると思います」

勇者「少なくとも、俺は好きですよ、住みたいくらいには」

魔王「…………今、住みたいって、言った?」

勇者「!!」
勇者「あ、い、いやその!冗談!今の冗談ですからっ!もちろん良い国って言った事が冗談ってわけじゃなくて住みたいって言ったのが……!とにかく気にしないで下さい!!!」

魔王「え、気に入ってくれたのなら市民権あげるけど」

勇者「すみません生意気言ってすみま……え?」

魔王「だってお父様、貴方達がこの国を気に入ったらすぐに住めるようにって色々手を回していたもの」

魔王「ほら、この国のヒト達、人間って聞いてもそこまで敵視しないでしょ?そりゃ中には敵視するヒトもいるし怖がるヒトもいるけど」

魔王「兵だって、勇者とわかっても問答無用で切りかかったりしないし」

勇者「……比較的緩い国民性なんだと思ってました」


魔王「貴方に緩いだなんて言われたくないわよ」クスクスッ

勇者「えー、俺、緩いですかー?」

魔王「緩いわよもう連れも一緒にゆるゆるよ」ケラケラ

勇者「俺達がゆるゆるなら、ここの兵のヒト達も負けず劣らずゆるゆるかと」ケラケラ

魔王「くっ、否定は出来ないわね……!」

魔王「--!!」ピコーン

魔王(まさか、この会話の流れは、)
魔王(でも待って!まだこの会話には足りないものがある!)

勇者「…………、」

勇者(魔王様が突然百面相……)
勇者(どうしたんだろう、俺何かしたかなー)

魔王「--そう、敬語よ」

勇者「?」

魔王「……ねぇ、私達って、…………お友達、よね?」

勇者「はい」


魔王「お友達なら、その……敬語とか抜きに、遠慮なく普通に喋るものじゃ……ないの?」

勇者「いいんですか?」

魔王「だってそれがお友達なんでしょう?良いに決まってるじゃない!」

勇者「そっか、魔王様がそう言うならそうするよ」ニコニコ

魔王「遠慮もいらないわよ!さぁ!私に何を言っても良いし、何をしたって構わないわ!!!それがお友達!」

勇者「………………、」ニコニコ

勇者(絶対何か勘違いしてるよな、)

勇者(うん、勘違いしてる。してるって、絶対。何をしたって構わないって……何を、したって、構わない、って……!!)

勇者「ちょっとごめん」クルリ

魔王(後ろ向いてどうしたのかしら。私何かしたっけ、)

勇者(…………、落ち着け。平常心平常心)

勇者(顔、赤くないよな。うん、友達に赤くなるのは違う。違うから、うん)

勇者「……………」クルリ

勇者「あの、親しき仲にも礼儀ありという言葉がありまして、」


魔王「!!!」

魔王「……そ、そうよね!ごめんなさい!」

魔王(失敗した…!そうじゃないのね友達って、)
魔王(あああ難しいわ友達!いったいどんな付き合い方をしたらいいのよ……!?)

勇者「……あの、魔王様。もしかして何か勘違いしてない?」


魔王「」


勇者「!?」

勇者(魔王様が固まった!?やっぱ駄目だったんだ!口に出しちゃ駄目な話題だったんだ!!)アワワワワ

魔王(どうしようどうしようどうしよう図星よこれは誤魔化すべきなの正直に言うべきなの!?)アワワワワ

勇者(どどどどうしようどうしようとりあえず何か言わないと!)
魔王(とりあえずそう何か言わないとあああここはもう腹をくくって!)


勇者「あのっ」
魔王「あのっ」


勇者「……………、」
魔王「………、私から、いいかしら」

勇者「……」コクン

魔王「…………私は、その、実は、お友達っていう関係のヒトがいたことないの」

魔王「だから、少しおかしなこと言うと思うわ、ごめんなさい」

勇者「……なんだ、」ヘラリ

勇者「もっと重大なすれ違いか、魔族独特の文化なのかと思った!」ケラケラ

魔王「笑わないでよ!」カァァ

勇者「ごめんごめん、」
勇者「でも、俺もこんなんだから友達っていう友達は少ないかなー」ケラケラ

勇者「あ、となると、俺達が魔王様の初めての友達か。それはそれで嬉しいかも」

魔王「ううう!そうよ、貴方達が私の初めてのお友達よ!」

魔王「だから、ちゃんと責任とりなさいよね!お友達と、どう接していけばいいか私に教えること!いい!?」

勇者「あははっ、うん!いいよ!!友達だもんな俺達!!」

魔王「そうよ、私達は、お友達、なんだから!」モジモジ


魔王「……その、あの、ね、まず、こんな感じで合ってるの?話し方とか、話す内容とか、距離とか、」

勇者「良いんじゃないかな、話し方とか内容とか、おかしくはないと思う。一緒にいて楽しいのが友達だし、」

勇者「でも距離は--」

魔王「距離は?」

勇者「これ以上近いと、ちょっとまずいかもしれない、です」

魔王「どうして?」ズイッ

勇者(………近い、)ドキドキドキ

勇者「……俺達、友達は友達ですけど、」

勇者「一応、俺が魔王様のこと大好きだってことには、変わりない、ので……」

魔王「~~!!」カァァァ

 ヒュン ササッ
魔王(落ち着きなさい、私!)ドキドキ

魔王「こ、こここれぐらいなら良いかしら!!!?」ヒョコ

勇者「…………、」
勇者(誰の墓石の後ろに隠れているんだろう……)


勇者「遠すぎだと思う。この距離は普通に会話する距離じゃないよ」ヘラリ

魔王「そ、そうね!」オソルオソル

 テクテク ピタッ
魔王「こ、これぐらいかしら!」

勇者「……二歩進んだぐらいじゃさっきと変わらないよ!えっと……側近さんより少し遠いぐらいの距離だと思う」

魔王「は、把握したわ!」スッ

勇者「…………、」
魔王「…………、」

勇者「あ、」

魔王「な、なに?」

勇者「今度ここに相棒連れてきて良いかな?」

勇者「今度はお花もって、ちゃんと挨拶したいんだ。来たよ、って」

魔王「!!…………ふふっ、ありがとう」

魔王「もちろんいいわ。自由に出入りしてもらって構わない」


魔王「きっと、皆も喜ぶだろうし」ニコッ

勇者「!!!」クルリ

魔王「--え?ど、どうかした?」

勇者「不意打ちの笑顔は心臓に悪いと思うのです」ドキドキドキドキドキドキ

魔王「~~~っっ!!そういうこと言うの禁止ー!!」ドキドキドキ





 魔王城。
 三階庭園側廊下、


第二副隊長「っ……、部下さん!!」

部下「え?」クルッ

部下「!!--第二の、副隊長さん!国境への遠征お疲れ様です」ペコッ

部下(どうしよう、魔王達があんなこと言わせるから、いつも以上に意識しちゃう。顔、赤くないよね、)ドキドキ

第二副隊長「…………、」キッ

第二副隊長「--これほど、副隊長の肩書きを邪魔に感じたことは無かった、」


部下「--え?」

第二副隊長「あなたが危ない時、私は何も出来なかった。副隊長として任された場で、皆をまとめる責があると、自分の気持ちを必死に押し殺して、」

第二副隊長「でも、もう駄目だ、次は我慢出来ない、」

部下「副隊長……さん?」

第二副隊長「部下さん!」

部下さん「は、はい!」

第二副隊長「正式にあなたを守る権利を私に下さい!!」

部下「え、え……?」

第二副隊長「……結婚を前提に、私と交際してくれませんか」スッ

部下(今、何が起こってるの、)
部下(副隊長さんが、私に花を差し出して、)
部下(真っ赤な顔で、私を見つめてる……!?)カァァァ

部下(まさか、そんな、嘘、副隊長が、私に交際を申し込んで、え……?)

部下「わたし、私で、その、あってますか、違うヒトじゃなくて、」

第二副隊長「違いはありません、ずっとあなたのことが好きでした」


部下「」ボンッ

第二副隊長「立場などお気になされず、その、断るなら、っ、すぱっと、断っていただいても、」フルフル

部下「私も、」スッ

第二副隊長(部下さんが、花を、受け取って……!!?)

部下「ずっと、あなたのことが好きでした」ニコッ



 魔王城。
 三階庭園側廊下、
 --その曲がり角の先。

側近(えらい所に居合わせてしまった……!!)ドキドキドキ

側近(まずいぞこの状況……!!どうする、思わず全力で気配を消してしまったが、)

側近(今更、この真っ只中に出て行くのはもってのほか!!物音一つどころか、指先すら動かそうと思えない!)

側近(転移など、放出される魔力で確実に存在がバレる!!)

側近(くっ……事が過ぎ去るのを待つしかないか……!!)


 魔王城のどこか。

第一C「!!!」

第一「どうした?」

第一C「今、何か重大なことが起きた気がする」

第一「何関連?」

第一C「妹」

第一「はいはい今日もシスコンセンサーは絶好調」





 数分後。

 魔王城。
 二階庭園側廊下、曲がり角の先。

側近(………………、)

側近(…………、行った、か)フゥ

側近(しかし、俺は、何て所に居合わせてしまったんだ。……ヒトの……こ、告白現場になど、)


側近(……会話の内容を思い出せないのは、それほどまでに動揺していたということか……)

 ユラユラ

側近(--ん?窓の外で何かが揺れている。--白い…髪?まさか!)

側近「…………………、」スタスタ


相棒「!!」ビクッ


側近「なんて所にいるんだ。壁の装飾を足場になんかして」

相棒「あ、えっと、これには訳がありまして」

側近「話してみろ」

相棒「庭園にいた私は部下さんの姿を発見。暇だったので驚かそうと進行方向上にあり尚且つ足場がしっかりしたここで待機中--」

側近「ああなったと、」

相棒「はい」ヘラリ

相棒「思わず全力で気配消しちゃいました。--実は側近さんも、だったり?」

側近「ああ。--まさか俺以外にも居合わせてしまった間の悪い奴がいたとは」

相棒「あははっ、そうだね」


側近「……………、」ジー

相棒「……………」
相棒(……あ、あれ?側近さんが無言で私を見てる。何でだ)ドキドキ

側近(--これは会話のチャンスなのではないだろうか、)
側近(俺達は友人関係として落ち着いたはずだ。友人ならば、何か会話があるはずだ)

側近(しかし、直前の出来事を話題にするのは……俺が耐えられそうにない)

相棒(おまけに眉間に皺寄せて。睨まれてるのかなこれって。やっぱり壁登ったこと怒ってるのかな。ここはすぐに謝っておこう)

側近(せっかくの機会だ、付き合い方を知るためにも、)

側近「…………ひ、暇か」
相棒「壁登ってごめんなさい!」

側近(あ、え?壁登ってごめんなさい?)
相棒(あれ?今、側近さんが何か言ったような)

側近「………………」

相棒「……あの……さっき、何て」

側近「………………暇か、と訊いたんだ」

相棒「あ、はい。部下さん見かけてイタズラしかけるぐらいは暇です」


側近「そうか、なら、その……」

側近「……お前が良しとするなら……少し話さないか」

相棒「!!喜んで!」

側近「……よし、じゃあ」ピョイ

側近「歩きながらでも、どうだ?」スタッ

相棒「あっ、側近さんが窓から飛んだ」ピョイ

相棒「意外だー、壁登ったり窓から飛んだりしたら怒るタイプだと思ってた」スタッ

側近「俺だって壁は登るし窓からは飛び降りる。だから、さっきのごめんはいらん」

相棒「そっかぁ、睨んでたから怒ってるのかと思った」

側近「……俺は、睨んでいたのか」

相棒「眉間に皺よせてじーっと見られてた、ってのが正しいのかな」

側近「…………睨んでるつもりは無かったのだが……すまんな。考え事をしている時はどうもこうなってしまう」

相棒「じゃあ、眉間に皺寄せてる時は考え事してるってことなんだね。覚えておくよ」ニコニコ

側近「………………」ジー


相棒「……えっと、また考え事?」

側近「--俺はそうすぐに指摘される程表情に出るのか」

相棒「うん」

側近「………気をつけることにする。--いや、な。竜族か、と思って」

側近「同族に会うのは初めてだ」

相棒「竜族の里で生まれたんじゃないの?」

側近「先代様に拾われるまでの記憶が無いんでな、生みの親も生まれた場所も全く覚えてない」

相棒「そっか」
相棒「でも、良い家族に巡り会えて良かったね」

側近「ああ」

相棒(記憶が無いから、知らないから、白い私を気持ち悪がらなかったのか)

相棒(しかしまぁ、側近さん強いんだよなぁ、竜族ってこんなに強かったっけ)ジー

側近(何故俺はこうもまじまじと見られているのだろう)

相棒「あ、わかった」ピコーン
相棒「黒い竜族見たこと無いや」


側近「……黒い竜族?」

相棒「側近さんレア種かもしれない。おかしいと思ったんだ、竜族にしては魔力強すぎるし。竜族って、身体能力はずば抜けてるけど、魔法の扱いは基本下手なんだよね」

側近「待て、黒い竜族、それ以前に、」

側近「本当に色とりどりのカラフルなのか竜族というのは」

相棒「まぁ、うん。人間や魔族だって十分カラフルだと思うけどね」ケラケラ

側近「レア種云々は置いといて、もし俺が黒髪じゃなければ、」

側近「魔王の奴は自分も変身出来るなんて思わなかったのか……!」

相棒「え、変身って、え……?」

側近「俺はアイツが幼い頃からの付き合いでな、髪といい目といい同じ色だったものだから、」

側近「いつか自分も竜化出来ると思っていたらしい」

相棒「」ブフッ

側近「今でも竜化すると年甲斐もなく物欲しそうな視線を向けてくる」

相棒「なにそれ!あははっ!似てる、似てるよ。変な所に凄い憧れ持ってる所とか、そっくりだ!」


側近「誰に?」

相棒「勇者に!私もよく羨ましい羨ましい言われるんだ。変身にも憧れてるし!」

側近「出来たばかりの友達にしては、おかしな共通点がある」クスッ

相棒「友達、かぁ……えへへ、おじさん、じゃなかった、先代様が言ってたんだ」

相棒「『私の子供達を紹介しよう。きっと仲良くなれる』って」

相棒「私達、良い友達になれるかもね」ヘラリ

側近「そうだな」クスッ






 隣国。
 魔王城。王の間。

剣士「穴だらけの警備に弱い兵士。仮にも魔王城がこれでいいのかよ」

僧侶「良いじゃないですか、楽で」

剣士「でも欲求不満でさ。ここむさ苦しいんだよ、男しかいなくて」


僧侶「十分楽しんでいたようですけど、男でも」

 視線を向けた先には、物言わぬ兵士が転がっていた。

隣国兵士「」「」「」「」「」

剣士「まぁちょっとはな。もうすこし粘ってほしいってのが本音だが……よっ」ザンッ

 戯れに振り下ろされた剣が、死体をさらに傷付ける。

隣国兵士「」グチャ

剣士「中身はあまり変わらないんだな」ケラケラ

僧侶「神に仕える身として、遺体を虐げるのは止めて下さいと一応言うのですが、」

僧侶「魔族ならヒトではないですし、ご自由にどうぞ、って感じですね」

剣士「……同じパーティメンバーながら、アンタみたいな僧侶ってどうかと思うぜ」ケラケラ

僧侶「ゲスに言われたくないです」ケラケラ

剣士「言ってくれるよなー」ケラケラ

剣士「あーあ、良い感じにいたぶりがいのある奴とか転がってないかなー」


 王の間、近くの一室。

 コソッ
隣国兵士(やばいやばいやばいアイツ等はやばい)

 勇者一行の襲撃から逃れた兵士達は、一室にまとまり身を潜めていた。

隣国兵士(この前の勇者とおっぱいよりやばい)(性格の悪さが滲み出てる)(バレたら惨殺されるな。かじられる所じゃねぇぞ)(私達じゃ勝てないな、残りの二人が何時戻るかわからないし)

少女(…………)ガクブル

隣国兵士(大丈夫、君だけは必ず生きて逃がすから)(安心しろよ、俺達意外とやるんだぜ?)(最後の王族の護衛か、燃えるな)(ロリ少女ってことがまた燃える)(王族にロリ少女言うな)

ロリ少女(……よろしく、おねがい、します……)

隣国兵士(おう)(任せろ)(ロリのために)(ロリのために)(だからロリ言うな)





 王の間。

勇者男「今戻った」

魔法使い「ちゃんと成功しましたよぉ!予定通り、みんな人形です!」ルンルン

僧侶「じゃあもうこの国に用はありませんね」


剣士「次は本命のお隣さんかー」

魔法使い「はいっ!承った任務は隣国の魔王と竜族の身体を奪うことですから!」

剣士「せっかく協力してやったのに、この国マジ弱いよな。普通追い返されるかー?」

剣士「あの宰相も死んでやがるし、ホントにあの魔王んとこで幹部してたのかよ」ケラケラ

僧侶「対等でいようと嘘をついていたんでしょう?魔物風情が人間様と対等でいようなんて、考える自体おこがましいことなのに」

勇者男「気になるのはこの国が負けた原因だな。何かイレギュラーな存在があったと見える」

魔法使い「そうですね!皆さん何故か異常に怯えてましたし!」

剣士「まぁイレギュラーでも何でもいいや。からかいがいがある奴なら大歓迎!」

僧侶「ふふふっ」

僧侶「どうせなら、どうやって人形にするのか話した方が良いのでは?」

僧侶「物陰で必死に耳をそばだててるネズミは、一番ソレを聞きたがってる」



「!!!」


 王の間、近くの一室。

隣国兵士(やべ、バレてるのか!?)

隣国兵士(--いや、違う)(私達じゃない)(なら、)



 物陰。

密偵班長「逃げろ新人、」

密偵新人「何故ですか班長?」

密偵班長「わざわざ聞かせるように話してる」

密偵班長「近付きすぎたんだ。くそ、俺達の存在はもうバレてる」

密偵新人「了解、逃げます」

密偵新人「あ、でも班長は?アイツ等悪いヒト達っすよ。私の悪者探知センサーがずっと警告音鳴らしてますもん」

密偵班長「死体いたぶる時点で誰の悪者センサーにでも引っかかるよ」

密偵新人「じゃあ確実に悪者っすね。ならさっさと逃げましょうよ、班長も」

密偵班長「……いいから行け。集合場所には寄るな。そのまま真っ直ぐ城に報告」


密偵班長「傍受の恐れがあるから通信回線は開くなよ。あと、うちの兵士でも信用するな。あの様子じゃどこに人形が紛れてるかわからない」

密偵新人「確かに、あの人形にしてしまう魔法は普通じゃないです。けど、班長は、」

密偵班長「俺は後から行く。必ず合流するから、早く行け」

密偵新人「……わかりました」ヒュン

 新人が走り去ったのを確認し、班長は深く息を吐いた。

密偵班長(--これは、退き際を見極められなかった俺のミスだ)

密偵班長(身体能力は新人の方が上、一人だけなら逃げ切れるかもしれない)

密偵班長(そのために、俺は、)

 --こちらに近付く足音が聞こえる。

密偵班長(真っ先に新人を追わない分、状況は最悪じゃない)

密偵班長「なんとかひきつけて、囮になるしかないよな……」


剣士「ネズミさんよ、隠れてないで遊ぼうぜ」ニタリ


密偵班長(どうせ惨殺が決定されてるなら、出来るだけ長く、時間を稼いでやるさ)


僧侶「時間を稼ごうなんて馬鹿な考え、まさかしてないですよね」

密偵班長(そんなの、してるに決まって、っ!?)ゾクッ

密偵班長(背後に気配!?)

隣国兵士「」ブンッ

 反射的に振り返れば、今まさに振り下ろされようとしている剣、

密偵班長(避けきれな--)

 ザシュ
密偵班長「くっ、」ボタボタ

密偵班長(やられたのは肩か……くそっ、相手は人形にされたこの国の兵士、)

密偵班長(人形にされたことには同情するが、また眠ってもらう、)フォン

 ドスッ

剣士「魔法はやめろよ。死んでる相手をさらに傷付けるって、酷い事だと思うぜ」

密偵班長「----、」ゴポッ

剣士「可哀想な奴らなんだよ。俺達にさくっと殺されさらっと身体を再利用され」

剣士「せっかくキレイな状態で死ねたんだから、大事に扱ってやれよな」


剣士「まぁ俺は好きなようにするけど」ニヤニヤ

密偵班長「  、」フォン

 バシュン

密偵班長(!?……なんで、魔法が、使えない、)

僧侶「悠長に喋る前に、まずはその魔物の魔法を無効化することが先でしょう」スタスタ

剣士「それはお前の仕事だろ?」ケラケラ

剣士「--で、お前は後ろから思いっきり胸刺されてるのに、まだ頑張るつもりだったと」グリグリ

密偵班長(……ああ、くそ、まずい、)ボタボタボタボタ

剣士「いいね、好きだぜ。諦めない奴。でももう少し強い方が好きなんだよな」ニヤニヤ

 ズルッ

密偵班長(確かに、時間を稼ぐなんて考え自体、甘かった……)ドサッ

 倒れた彼の周りを、勇者一行が囲む。

勇者男「まだ殺してないよな」

魔法使い「そうですよ!今死なれたら困ります!」


剣士「大丈夫だって」ガシッ
密偵班長「…………、」

 髪を掴まれ、無理やり顔を上げさせられた。

剣士「あと5分ぐらいは頑張れるよな。そうだろ?」

密偵班長「…………」キッ

剣士「おいおい、やめろよ。死にかけで虚ろのくせに、いっちょまえに睨んでくれると、もっといたぶりたくなるだろ?」ニタリ

勇者男「あとで好きなだけ遊べばいいだろう。--魔法使い」

魔法使い「了解です!」フォン

密偵班長(……いったい、何を、)

 魔法使いの手が、班長の額へと伸び、

魔法使い「少し痛いですよ、我慢して下さいね?」

 触れた。

密偵班長「ぅ、あ、ああああああああああ!!!」ビクン

魔法使い「うーん、どれでしょうか」


密偵班長(何だこれ、痛い、頭の中を、直に、かき回されているような、痛みが、)

勇者「早くしないとショック死するぞ」

僧侶「たかが魔物一匹、死んだら次を探せば良いじゃないですか」

魔法使い「うーん、うーん……」

密偵班長(……俺、は……何を、されて)

魔法使い「惜しいですが、外れですね!」パッ

剣士「だってさ、お疲れ」

密偵班長「……ぅ、く、」
密偵班長(……新人、……ちゃんと、逃げてる、よな……)

剣士「放っておいても死ぬだろうけど、俺はお前の事好きだからな」スッ

 班長の首には、剣が添えられていた。

剣士「同じようにお前の事が好きな奴に、届けてやるよ」

密偵班長(頼むから、無事で--)

剣士「お前の首、」

 ザンッ


剣士「おっと、危ね」ヒョイ

僧侶「……」フォン

 ザシュ
密偵新人「--っ!!」フォン

 放たれた魔力は、閃光となって弾ける。
 辺りが白い光で染まったのは、一瞬。その一瞬で、乱入者は血溜まりの主を連れ去った。





剣士「--で、逃げられたわけだけど。仕方ないから追っていい?」ワクワク

僧侶「追いたいからわざと逃がしたんでしょうに」

魔法使い「はうう、目がチカチカします」

勇者男「--追うな。どうせ長くは生きられないんだろう?」

剣士「まぁ、うん。そうだけどさ」
僧侶「遅延性とはいえ、かする所か刺さってますし」

勇者男「魔法使い、」

魔法使い「了解です!城内の人形さん達には、老若男女問わず、魔族だけを殺すよう設定します!」フォン


勇者男「瀕死と手負いを逃がす程、この城の警備は甘くない」

剣士「なぁいいだろ?あとで好きなだけ遊べって言ったじゃねぇか。すぐに済ますからさ、絶好のシチュエーションなんだよこれって」

勇者男「駄目だ。あの魔族は外れだが、奪った記憶に当たりの候補はいるはずだ。そうだな?」

魔法使い「はい!魔王と竜族に近い魔族の候補は出ています!大本命は直属の部下ですね!兵士と言うより文官の女で、とても弱そうです!」

勇者男「上手く攫えば仕事は格段に楽になる。まずは仕事だ。済み次第好きなだけ楽しめばいい」

剣士「……仕事仕事って、ま、受けた以上優先しなきゃいけねぇか。おとなしく諦めますかね」

僧侶「勇者様、すぐに隣国へと向かいます?」

勇者男「ああ。……お前も、そうだな、嫌がらせぐらいなら、許す」

僧侶「それはどうも」ニコッ

剣士「いいよな、魔法が得意な奴は」ブツブツ

魔法使い「ではでは!お隣りの国へ、出発ーしんこー!」ニコニコ


 隣国。魔王城内。

 タタタタ、タッ
密偵新人「っ……は、はっ……っぐ、」ゲホッゲホッ

 その足は、激しい咳に負け止まった。

密偵新人「うう、っ」ゴポッ ケホッ

 止まらない咳に伴い零れた血をきっかけに、新人は抱えた班長ごと倒れ込んでしまう。

密偵新人「ううう……、班長、」

密偵班長「」

密偵新人「班長、すみません、私、」

密偵新人「もっと、早く、行っていれば、」グスッ

密偵班長「」

密偵新人「班長の班長が、傷付かないで、すんだかもしれないのに、」

密偵新人「班長の班長、ごめんね……!」ポロポロ

密偵班長「……あのさ、俺の眼鏡を下ネタみたいに呼ぶの、やめてくれない……?」


密偵新人「うわぁああん!はんちょー!ごめんなさいー!!」

密偵班長「……眼鏡を掴むな、ヒビ入ってるだけだから、ああもう、乱暴にするとヒビが広がっちゃうでしょうが……」

密偵新人「班長、班長。私、命令違反しました。本音と建て前二つの理由があります、どちらから聞きますか?」

密偵班長「……じゃあ本音」

密偵新人「思いの外人形になった兵士が多かったのと、方向音痴の私がたった一人で国に帰るのは難しいと判断しました」

密偵班長「……建て前」

密偵新人「嫌っすー!!班長が死ぬのは嫌っすよー!!班長絶対私逃がすために死んじゃいますもんー!!そんなのやだー!!」ポロポロ

密偵班長「…………お前、それ……ちょっと嫌な奴だぞ……」

密偵新人「!」

密偵新人「ひ、酷いっすよ班長!普通建て前から訊くじゃないですか!意地悪だ、班長の意地悪!」ゲホッ

密偵新人「」ゲホッゴホッ ボタボタッ

密偵班長「……傷、見せてみろ」

密偵新人「……そ、そんな、その、服脱げってことですか?待って下さい私まだ心の準備が、ああでも班長になら、見せても、良いかなって、思うんですけど……!」

密偵班長「……こんな時に、ふざけるな」


密偵新人「じゃあ真面目にお断りします」

密偵新人「きっと班長は、死にかけのくせに、私に治癒魔法をかけようとする」

密偵新人「使う元気があるなら、自分に使えば良いじゃないですか」

密偵班長「……俺はもう、保たないよ。だから、おとなしく言う事をきけ」

密偵新人「やです。だって私も、」ケホッ

密偵班長(--まさか、)

密偵班長(俺を助けるために、乱入して受けた傷は、)

密偵新人「……毒、なんですかね。あはは、傷だけじゃなく、体中痛くて、視界も、歪んでるんです、」

密偵班長「………お前ってやつは、………馬鹿だよなぁ……」

密偵新人「班長、私新人なんです。新人は馬鹿なミスをするものっすよ」

密偵新人「言われた事だけをやれば良いのに、独自の判断で結局馬鹿をやる、私って手がかかる新人なんです」

密偵新人「だから、あんまり怒らないで下さいね。私って、アレです、褒めた分だけ伸びるタイプです、きっと。班長が褒めてくれるんだったら私、木に登って空だって飛んでみせますから」

密偵班長「……あの状況で、俺を連れ出せた事は、結果はどうあれ、評価する。すごいよお前、よくやった」

密偵新人「…………、」


密偵新人「えへへ、へへへへ、」ニコニコ

密偵新人「やったぁ、班長が、褒めてくれた……」ゲホッ ボタボタ

密偵班長「……………、なぁ、一つ、訊いていいか?」

密偵新人「うへへ……何ですか……?」

密偵班長「何で、こっち側を選んだ?お前の実力なら、兵士として、上を目指せるだろ……?」

密偵新人「ふへへ、それを訊いちゃいます?へへへへ、訊いちゃうんすね……?」

密偵班長「…………、お前が答えられる内容なら、ききたい」

密偵新人「……じゃあ言いますよー。理由は、班長がいるから、です」

密偵班長「……へ?」

密偵新人「班長の側にいたくて、私、密偵になったんです」


隣国兵士「…………」
隣国兵士「…………」

 動けないでいる二人に、複数の人影が近付こうとしていた。


密偵新人「だって私、班長のことが--」



 魔王城。


第一C「」ブツブツブツ


相棒「何でCさんは壁にすがりついてぶつぶつ言ってるの?」

第一「それはね、妹を持つ兄に訪れる試練が、ついに来てしまったからだよ」

第一A「そうそう、部下もついに嫁に」

第一C「黙れ!!まだ決まってねぇよ!!!」

勇者「Cさんが荒れてる……」

第一B「年頃の妹が兄を食事に誘って『話があるの』なんて言ったら、答えは一つしかないだろ」

第一C「あああああああああ!!」

第一「今度の休みだっけ?もう数日もないな」

第一C「あああああああああ!!」ゴンゴンゴンゴン

相棒「そそんなに壁に頭打ちつけちゃ駄目だよ!」

第一A「覚悟を決めろよシスコン」


第一C「あああああああ!!少なくとも俺より強くなきゃ、絶対認めてやらんからな……!!」

一同「……………」

第一B「いや、お前兵士だしおまけに第一部隊所属だろうが」

第一A「民間人は全てアウトに」

第一「部下ちゃんは兄貴を嫌いになっていい」

第一C「……うわああああああああ!!!」ダダダダダッ

勇者「Cさんが走り去ってく!」アワワワ
相棒「ちょっと泣いてた!」アワワワ

第一B「確かその日非番なのはCだけか。俺達は討伐任務入ってるし」

第一A「索敵任せろー」
第一「狩るぜ狩るぜー」

勇者「……俺達もついてって良い?その討伐任務」

第一B「え、別にいいけど、楽しくはないぞ?山に入ってひたすら増えた魔物狩るだけだし」

相棒「……私達、頑張るから。もし早めに終わったら、Cさんの様子こっそり見に行こうよ」

第一「討伐に参加しなくても、二人でこっそり見に行けばいいじゃんか」


勇者「ハラハラするから無理」
相棒「絶対あわあわする自信がある」

第一A「--ま、正直、同郷だからな。チビっ子時代から見てる部下がどんな男連れてくるか心配ではあるけど」

第一「変なの連れてきたらちょっと無言になっちゃうぐらいには気になる」

第一B「……さくっと済ませて隠れて様子見に行くってのもアリか」

勇者「じゃあ、決まりで?」

第一B「決まりで」

第一(…………そういえば、)

第一(最近、第二の連中がそろってマスクして顔を合わせる寸前で逃げてくけど、)

第一(何か関係があったりして、--なんてな)


 数日後。早朝。
 とある山。

第一「グーっとパーっで別れましょ!」グー

 グー! パー! パー パー

第一「よし、決まり!俺、相棒さんペアと、旅人さんABグループに決定!」

勇者「おおっ!別れたな相棒!しっかりやれよ!」キャッキャ
相棒「らじゃー!そっちもね!」キャッキャ

第一B「朝っぱらから何でそんなにテンション高いんだ」ファァ

勇者「爽やかな朝。魔力溢れる山!」
相棒「そうだ気分はピクニック!」

第一A「ピクニックにしてはやけにピリピリした山だよな」フォン

 ピリリリ

第一A「反発強いな、通信乱れるぞこりゃ。転移も、目的地と大幅な誤差出るかも」

勇者「走るから平気!」
相棒「飛ぶから平気!」

第一「ぶっちゃけ戦力過多だし、結構な何事あっても午後には終わるんじゃないかな。--で、お二人さんはその午後のイベントを楽しみにしているわけで」


第一B「ああ、だからこのテンションね」

勇者「どんなヒトかな」
相棒「きっと優しいヒトだよ。部下さんがそうだから」

第一B「これで部下が悪い男連れてきたら最悪だな」

第一「相手が?」ケラケラ

第一A「そりゃあ、もれなく兄貴分とセコムがついてきますもの。騙される奴も悪いが、騙す奴はさらに、だろ」ケラケラ

第一B「……散々からかってきたくせに、お前も大概だよな」

第一A「いやだって……一応俺も、弟みたいに思ってるからさ」テレワライ





 午後。
 とある町。喫茶店。

部下(A後ではっ倒す!)
第一C(A後で殴る!)

部下「…………、」
第一C「…………、」


部下「今、兄さん一瞬怖い顔したね」
第一C「お前もな」

部下「…………」
第一C「…………」

部下(何でだろう、会話が上手くできない)
第一C(何時切り出すかヒヤヒヤして上手く話せない)

部下(……どうしよう、話があるって言ったのに、雑談しかしてないや)

部下「…………」チラッ

第一C「…………、ど、どうした?」

部下(お兄ちゃんの喋りがぎこちないのは、やっぱり私の話を気にして、)

部下(先に、言うべきなの?でも、彼との約束の時間はまだ先だし、)

部下「…………」モジモジ

第一C「………………、」

第一C(俺、なんかもうこの緊張感で死にそう)

第一C(…………まるで走馬灯のようだ。妹ととの記憶が、脳内を駆け巡る)

第一C(おにーちゃんおにーちゃんって、俺の後をついて回った妹)


第一C(大きくなったら、お兄ちゃんと結婚するって言っていた妹)

第一C(怪我して帰ると、涙目で覚えたての治癒魔法をかけてくれた妹)

第一C(回廊の一件に怒って、俺の腹に拳をぶち込んでくれた妹)

第一C(そうだよな、昔も、今だって可愛い妹は、こうも立派に成長したんだ。もう子供じゃない。可愛らしい、大人の女性に……)

第一C「……成長早い」グスッ

部下「!!あ、え、ど、どうしたの……?」

第一C「……ごめんな、お兄ちゃん、酷いこと考えてた」

第一C「どんな奴でも良い……お前が、選ぶ奴なら、誰だって……」

部下「お兄ちゃん……やっぱり、何の話か、わかってたの……?」

第一C「おう……わざわざ話があるなんて、もう男しかないだろ……」

第一C「……最初は、俺より強くないと認めないって思ってた、……けどさ、ヒトの良さなんて、強さが全てじゃないもんな……」

第一C「いざとなったら、お兄ちゃん頑張るからな……二人まとめて守ってみせるからな……」

部下「……お兄ちゃん……」ウルッ

部下(……うう、言えない。お兄ちゃんよりずっと強いから大丈夫だなんて、今は言えないよ……)

第一C「……今日は、話だけじゃないんだろ?」

部下「……うん、紹介するつもりだったの。彼も、ちゃんと挨拶したいって」

部下「……その……会ってくれる、よね?」

第一C「おう。もちろん、だ……!」

部下「……良かった。もしかしたら、会ってくれないんじゃないかって、」ホッ

第一C「……会うさ、会うに決まってる……」

部下「……あの、ね、約束してる時間はまだ先だけど、……私、お兄ちゃんが会っても良いって言ってるって、彼に伝えてきて良いかな?」

部下「今日のこと、決めた日からずっと、緊張してるみたいだったから」

第一C「……うん。いいぞ」

部下「すぐ戻るから、待ってて」


 タタタタッ カランカラン


第一C(……外に、出たのか)

第一C「………………、」
第一C(……今の内に、心の準備をしておこう)

第一C(どんな奴でも、受け入れられるように……)


 喫茶店の前。

部下「--はい。私、待ってます、」


部下(……通信は済んだ、けど……すごく、緊張してたなぁ)

部下(でも、『……部下さんとの、結婚を前提にしたお付き合い、お義兄さんに認めてもらえるよう、私頑張りますから』、だなんて……)

部下(……夢じゃないよね、……ああ、もう、緊張もするけど、やっぱり、嬉しい)

部下(ああ、駄目、私、顔緩んでないかな。--平常心、平常心。彼もお兄ちゃんも凄く緊張してるのに、私だけ笑ってちゃ、駄目)


「お、アレって……」

「うん、そうだよな。ついてるなぁ、俺」

「ねぇ、そこのお姉さん!」タタタタッ


部下(……え?誰?周りには誰もいないし、)キョロキョロ

部下「……私、ですか?」

「うん、そう。君」


剣士「今、時間ある?良ければ俺と、お茶しない?」ニコッ


部下「ごめんなさい。連れがいるので」

部下(……これってナンパ、ってやつだよね。うわぁ……初めてナンパされちゃった)

剣士「お連れさんは女の子?」

部下「いえ、兄です。中で待たせているので、もう行きますね。ごめんなさい」

剣士「待って」ガシッ

部下「あ、あの……」

剣士「せっかく出会えたんだ、このまま別れたくない」キリッ

部下「……すみません、手を離して下さい」

剣士「離したくない」グイッ

 掴まれた腕が強く引かれ、剣士の胸に収まる形となってしまった。

部下「や、やめて下さい!離して!」バタバタ

第一C「……何を、している、か」ザワザワ


部下「あ、お兄ちゃもがっ」
剣士「はーい、ちょっと黙ってようか」
部下「むーむー!」バタバタ


 口を塞がれた上に、拘束から逃れることが出来ない。

第一C「遅いと思って、様子を見に来てみれば、」ザワザワ

第一C「嫌がる妹を、無理やり、抱きすくめるとは、どういう、つもりだ」ギロッ

剣士「どういうつもりかと訊かれても、こういうつもりとしか」チュ
部下(やだっ、今頭にキスされた!)バタバタ

第一C「っっ!!きっさまああああ!!!」ブチッ

剣士「怒るなよ、おにいさん」

第一C「誰がお義兄さんだ!!!」

第一C「認めん!妹が何を言おうと貴様なんぞに大事な妹を任せられるか!!」

部下「むーむー!!」
部下(お兄ちゃん違う!!このヒトじゃないよ!!このヒト初対面でナンパしてきたただの変なヒトだよ!!)

剣士「大事な妹、ねぇ……」
剣士(うーむ、察するに、彼氏と間違われてる?)

剣士「これはまた、面白いシチュエーションだな。……でも、まぁ」スッ

部下「むーむー!!ぷはっ!お兄ちゃん違う!このヒトは彼じゃないよ!!」

第一C「じゃあ何だ!誰だこの野郎!」


部下「知らないヒト!ナンパされてそれで、」

第一C「よしわかった!殴っていいってことだな!」グッ

部下「民間人殴っちゃ駄目だよ!ここは穏便に、」

剣士「穏便には、すまないだろなぁ」フォン

 剣士の手には剣があった。その刃は部下へと向けられている。

部下「!!」
第一C「!!」

第一C「--目的は、」

剣士「この子を攫おうと思ってね、」

部下「…………あなた、魔族じゃないですね」

剣士「やっぱ近くで見られたらバレるよな。確かに俺、ちょっと耳尖ってるように見せる魔法かけてるよ」

第一C「人間か」

剣士「--なぁ、兄妹っていいよな。しかも、仲の良い、兄妹って」

第一C「…………、」

剣士「迷うんだよ。今もさ、ずっと考えてる」


部下「…………」フォン
剣士「おとなしくしてろよ、な?」スッ

 首の皮が浅く切られ、血が滲んだ。

剣士「うっかり殺しちまうかもしれない、だろ?」

部下「…………」キッ

剣士「良い目だな、絶望した泣き顔は、きっと、さらに良い」ニヤニヤ

 狂った愉悦が、部下の目を覗き込む。

部下(--この、ヒト、)ゾクッ

剣士「よし、決めた。目の前で、兄貴が殺されるの、見せてやるよ」ニタリ

部下(--怖、い、)

 その瞬間、部下に仕掛けられた魔法が発動した。





 とある山。

勇者「----、」ザワッ


第一B「ん?どうした旅人さん、そんな魔力出して」

勇者「最大出力、」

 勇者の足元に魔法陣を形成される。

第一A「ちょ、待てって!ここからの転移は、」

勇者「近くまで行ってあとは走る。部下さんが危ない」

第一A「え、」
第一B「!!部下に、仕掛けた魔法が?」

勇者「うん」ヒュン

 転移魔法が発動、その場から勇者の姿はかき消えた。

第一B「討伐は終了、あとは合流だけよな。--合流する暇はないけど」フォン

第一A「二人に通信は、」

第一B「一応、頼む。--町の座標はわかってるんだ。近くまで飛べりゃあいい」

第一A「了解」


第一B「……最大出力、ね。大事になってなければいいが」


 発動した魔法は鋭い棘となって剣士を襲う。

 ドスッ
剣士「うおっ!?」

第一C(二人が仕込んでくれた魔法か!)

第一C「部下!」フォン
部下「っ!!」

 黒い棘は確かに剣士の腕を貫いた。
 怯んだその隙に部下は拘束から逃れ兄の元へ駆け出す。

剣士「--!」

 その背を剣士の手が追う--が、動いたのはCもだ。

第一C「させるか、」

 駆け寄り伸ばした左手は妹の手を掴む。
 空いた左手に収束した魔力は衝撃波となって剣士を襲った。

剣士「」チッ

 避けられず、剣士は吹き飛び壁へと叩きつけられる。

部下「ごめなさい……私、捕まっちゃって、」


第一C「いいよ、無事だったんだし。首、見せてみろ。今治癒を--っ」
部下「!!」

 お互いその場から飛び退いた。二人の間を斬撃がかすめ行く。

剣士「ははっ、吃驚した。察知出来ない魔法とか初めてだよ」

第一C(--無傷?いや、血痕は残っている)
部下(魔力反応は無かった、治癒魔法じゃない)

剣士「見てくれよ、腕に穴開いちまった」

 見せつけた腕には確かに傷があった。
 だがそれは貫いたにしては浅く--血痕だけを残し、

部下(--治った?これは治癒魔法じゃない!)

剣士「あ、穴見せる前に治っちまったか」

第一C(自己治癒能力……?早すぎる、このスピードは、)

第一C(旅人さんと、同じ……!)

剣士「むかついたからさ、とりあえずおそろいにしようと思ったのに、よっ!!」ヒュン

第一C「さがってろ部下!」フォン

 バチバチバチッ
 展開した障壁が、剣を受け止めた。


第一C「」フォン

 間髪入れず風の刃が剣士を、

剣士「障壁、堅い、」ヒュン

 かすめることもせず、地面を抉る。

第一C(くそっ、ちょこまかと!)フォン

剣士「魔法の展開は早いくせに、ちゃっちい魔法を使う」ブン

 剣の一振りで魔法はかき消された。

剣士「ああ、そうか。周りにいる魔族を気にしてるわけか」

第一C(畜生、その通りだよ。こんな町中で広範囲高威力の魔法は使えない)

部下(巻き込む可能性と……何より高威力の魔法は周囲の魔法濃度を一気に跳ね上げる……もし近くに耐性の低いヒトがいるのなら、余波だけで、)

剣士「おかげで、楽が出来そうだ」ニタリ

部下(駄目、このヒトは、加減なんかしちゃ駄目な相手だ……!!)

部下「--っ、お兄ちゃん!魔法使って!!」フォン

 部下を中心に魔法陣が広がる--形成、展開されたのは、


第一C「オーケー、でかいのいくわ」キュィィィイン

 高音が空気を震わせる。溢れ出した魔力を遮るのは部下の障壁だ。

剣士「…………へぇ、やっぱサポート系が得意だったか」スッ

 切っ先は二人でなく部下が形成した障壁に向けられていた。一度、二度と斬りつける。

第一C「妹の障壁強度をなめんな」キュィィィイン

剣士「でも、何時まで保つかね」ボソッ


部下「」ケホッ


部下(--え、私、どうして、血を、吐いて)ボタボタ

第一C「!!?」

部下「あ、うっ……」ゴポッ

第一C(--首の傷、まさか毒を!)


剣士「おやや、術主がこれじゃ魔法に障壁は耐えられないねー」ニヤニヤ

第一C「…………やれるか」キュィィィイン

部下「やれる、」キッ

第一C「さすが、俺の妹」フォン

 --無音が世界を支配した。
 そんな気がしたのも、その一時のみ。


剣士「--へ?」


 ズドォォォオオン!!!
 轟音と閃光。放たれた魔法は空間破壊。攻撃系魔法の最上位に位置するそれは、指定された空間、その場にいる何もかも砕き、弾け飛ばす。

第一C「二段目」フォン

 ゴォォオオオオ!!!
 剣士がいた、はずのその周辺が吹き上げた業火に包まれた。

第一C「…………、」

剣士「」

 業火の中の人影を確認し、Cは部下へと視線を向けた。


部下「はっ、っ、はぁ、うぅ……」

 膝を折り、倒れた部下は苦しげに喘ぐ。

第一C「障壁の展開、代わる。だからもういい、休め」フォン

部下「……うん、……ごめんね、お兄ちゃん、」

 揺らめきだした障壁の内側に、新たな障壁が形成されていった。

第一C「治癒もかける、解毒も、任せろ。お兄ちゃんは治癒系が一番得意だ」ヘラリ

部下「……そこに心配はないよ、だって私のお兄ちゃんだもん、」ニコッ


剣士「典型的な魔法使いタイプはやりやすいよな」


第一C「--!!!!」フォン

 ドスッ

剣士「こんなに接近してんのに、魔法が剣より早いわけないだろ」


部下「おまえっ……!!」フォン
第一C「--、」フォン

 Cは腹部に刺さる剣を無視し、剣士へと手を伸ばす、触れ、魔法を発動、

剣士「わかってないな、」フォン

 バチバチッ
 障壁が弾いたらしい、火花が散った。

第一C「……………、」ボタボタ
部下「うぐっ……お兄ちゃ……」ケホッゲホッ

剣士「まず、俺だって魔法が使える。おまけに多少の怪我はすぐ治る」フォン

部下「きゃうっ!!」バチバチバチッ

第一C「て、め、ぇ……!!」ボタボタ

剣士「相性が悪かったな。お前みたいな魔法使いタイプは、すぐ標的から意識をそらす。接近戦も弱いし」

剣士「ま、今回は場所も悪いし足手まといもいたからな。うん、強いよお前。あの魔法、かなりキいたぜ?」

第一C「………っ、」キッ

剣士「……やっぱ兄妹だな。目がよく似てる」ニヤニヤ

剣士「なぁ、どっちがいいと思う?」


剣士「このままお前の心臓かっさばいて妹ちゃんを泣かせるか」スッ

剣士「妹ちゃんの首をはねてお前が泣くか」

第一C「…………」ギリッ

剣士「お前ら、運が悪かったんだよ。ちょうど彼女が魔王と竜族に近い魔族だったから、俺達に狙われた」

第一C「--!!!」

剣士「だからさ、選ばせてやる。どっちを泣かせるか」


第一C「…………すな、」ボソッ


剣士「あ?」


第一C「……殺すな、」


剣士「何言ってんだお前」


剣士「『殺さないで下さい』、だろ?」



第一C「……お前に言ったんじゃねぇよ」


剣士「は?--っ」ゾクッ

剣士(何だ、この寒気は!?)


 「--なんで?」


剣士「--っ!!」

 --声が聞こえた。驚く程の至近距離から。


 「なぁ、どうして、」


 突如現れたその乱入者は、ゆっくりと、剣士を振り返った。


勇者「殺しちゃ、駄目なんだ?」


 純粋な憎悪がその瞳に宿っていた。

>>125
ミス。場面切り替わるのに
 とある町。
表記を入れ損じた。

最低限最低限とずっと呟いてるけど地の文多いかもしれないごめん。SS難しい。

今日はここまで。そろそろ後半。前作より長くなりそう、のんびり付き合ってくれると嬉しい。

レスありがとう。
前回更新分のミスの多さに悶絶した。気をつける。

文は少しずつ自重しない方向にいくことにした。


剣士(……コイツは、ヤバい、)

 剣を握る手に力がこもる。すぐさま引き抜き応戦するつもりだった。

剣士(おいおい嘘だろ。剣が、動かない、)

第一C「……頼む、我慢、しろ、」

勇者「…………、」ボタボタ

剣士(たかが、掴まれてるだけだろ、素手で、刃を)

 強く握りしめているのは一目でわかった。手からは滴り落ちる血液の量は浅くは無い傷を作ったことを示している。

剣士(ふざけんな、相手は同じ、)

勇者「……嫌だ」ザワッ

剣士「!!!」

 考えるより先に身体が動いていた。剣は放棄し、後ろへ飛び退く。

勇者「…………」

剣士(今離れなかったら、確実に身体のどこかを、持って行かれていた、)


勇者「……、なんて、な。言うことは聞くよ。理由があってのことなんだろうし」

第一C「……、情報を、引き出さなきゃならない。頼めるか?」

勇者「治癒は、」

第一C「自分でやる」

勇者「わかった。死なないで」ヒュン

剣士(来る!!)フォン

 ガキィン
 腕を狙って振り下ろされた剣をなんとか受け止めた。

剣士(手ぇ怪我してる割には、強い押しだな!)

 急場しのぎで生成した剣だ、長く刃を合わせるには強度が足りない。

剣士「お前、人間のくせに、魔族の味方かよ……!!」

勇者「………それは、悪いことか?」

剣士「ああ、悪い、ね……!!」

剣士(チャンスはある。殺す気は無いに加え、コイツは馬鹿だ。剣の刃を握った。仕込んだ毒効き始めるのも、--!!)

 柄を握る手を見て気付いた。血が、止まっている。治癒を使ったようには見えなかった。そもそもあの毒は、治癒魔法を妨害するように出来ている。


剣士「まさか、」フォン
勇者「!」

 放った魔力は棘となり、勇者の頬をかすめた。細い切り傷は一瞬にして消える。

剣士「……お前、俺と同類だろ」

勇者「…………、」

剣士「その自己治癒能力。そして、治癒魔法が効きにくい身体、してんだろ?身体能力や魔力も高い」

勇者「……何を、知って、」

剣士「対魔族として作られた人間兵器が、ここで何してんだ?」

勇者「!!!」

剣士「図星かよ!!」

 剣を跳ね上げれば、あっけない程に、剣は勇者の手から弾き飛ばされた。

剣士「ははっ!!死ねよ!!」
第一B「死なねぇよ」

 掌底が剣士の顎に叩き込まれる。

剣士「がはっ…」

 その一撃が決め手となり、剣士は地に付した。

勇者「……殺したら、駄目なんだってさ」

第一B「じゃあ死なない程度に縛るか」

勇者「それなら俺にも出来る、から、Cさんと部下さんの所に行ってくれ、」

勇者「絶対、死なせないで」

第一B「わかった」

第一B(--合流してみれば、こうだ。こんな事になって、ブチギレしてると思ったら……その上でもいったか?)

第一B(ヤンデレ顔にしても、もう少し感情はあった。だが、あの目はどうだ)

第一B(まるで感情がない。冷たく、暗い……それこそ人形みたいじゃねぇか)


第一A「B!!手伝え!」


第一B「!!!」

 Aの治癒魔法を使いこなす能力は決して低くはない。むしろ高い部類に入る。そのAが、手伝えと言った。

第一B「おいおい、間に合わないとか、言うんじゃねぇよな」

 駆け寄れば、血溜まりはさらに広がっていた。

第一A「……治癒魔法が、効かないんだよ」


第一C「………毒、の、効果だな、こりゃ……」

第一A「面倒な物食らってんじゃねぇよお前!!」

第一C「……部下は?」

第一A「軽度。お前と違って死にはしない」

第一C「……なら、いいか」

第一A「なら、いいか。じゃねぇよ、何死ぬ気でいるんだよ」

第一C「……はは、悪い……実は、かな、りヤバい。……俺、死ぬかも」

第一B「だから死なねぇよ、って」

第一B「第一の嫌がらせ担当なめんな。すぐに解毒してやるから根性出せ。--で?噂の彼氏は見たか?」フォン

 赤い雫のような光が、傷口へと入り込む。

第一C「……見てない」

第一A「無いと思うけど部下が変なの連れてきたらどうすんだよ。根性出せよ馬鹿兄貴」

第一C「よし、俺頑張る」キリッ

 グォオオオオオオオ!!!

第一ABC「!!!?」


 何かが吼えたらしい轟音、翼を広げた影が彼らに接近していた。

第一A「なにあの白い竜、」
第一B「すっげ、」
第一C「………マジか」ケホッ ボタボタ


第一「落ち着け!落ち着けって相棒さん!!ほら見ろ生きてる!!なんかズタボロだけど生きてるから!」

白い竜「…………、」

 竜の暗い赤の瞳が、確認するようにCと部下を見た。


第一A「なに?背中に乗ってんのアイツ?」
第一C「白、の竜ーの、背にー、のってぇー」ゲホッ ボタボタ
第一B「お前結構余裕だな」


相棒「Cさん!!部下さん!!」スタッ タタタッ

 一瞬にして、竜は一人の女へと姿を変えた。見慣れた姿が四人へと駆け寄る。


第一「ちょ、いきなり姿変えたら落ちる、って!!」スタッ

第一「ナイス着地!俺!」キリッ


相棒「死んじゃ嫌だ!死んじゃ嫌だよー!!」

第一C「……大丈夫、妹も俺も、死なないって」

第一A「治癒得意な奴が三人いるんだ。安心しろよ、必ず助ける」

第一B「……相棒さん、旅人さんの所に行ってやってくれ。アイツ、様子がおかしかった」

相棒「……勇者が?」

 相棒が振り返った先に、勇者はいた。

相棒「……縛られてる知らないヒトの上でひたすらジャンプしてるけど、一応様子がおかしいに入るのかな」

第一B「……悪い、気のせいだったわ。いつもの目死んでる顔だわ」

第一「なに?あのトランポリンが部下ちゃんとCこんなにした犯人?」

第一A「そうだな」
第一B「当たり」

相棒「……じゃあ私も踏んでくるね」ザワッ

 ゆらりと歩き出す背に、

第一C「……いや、ほんとに……殺しちゃ駄目だからな……?」


 剣士の上。

勇者「……二人は大丈夫?」ピョン

相棒「大丈夫だよ。死なないって、言ってた」ピョイ

勇者「……そっか」ピョン

相棒「……Bさん、気付いてたよ」ピョン

勇者「マジか、気をつけないとな、」 ピョン

相棒「何か言われたの?」ピョン

勇者「言われた。俺、対魔族として作られた人間兵器らしいよ」ピョン

相棒「ふーん、対魔族ってことは魔族を殺すためにー、ってやつ?」ピョン

勇者「だろうね」ピョン

相棒「人間兵器かー、じゃあ変形とかするのかな」ピョン

勇者「……出来るかな変形。そうだよな俺兵器なんだろ?なら変形合体とか出来るんじゃないかな!」ピョン キラキラ

相棒「可変機?可変機?」ピョン キラキラ

勇者「うおお!!たまらん響きだ!何時かの日のためにイメージトレーニングを積んでおこう!」ピョン


相棒「えへへっ!そうだね!」ピョン ケラケラ

勇者「ふへへへっ!」ピョン ケラケラ

相棒「…………」ピョン

勇者「…………」ピョン

相棒「……勇者は、昔の事、思い出しちゃ駄目だと思う」ピョンピョン

勇者「……うん、俺もそう思う」ピョンピョン





第一(あの二人、ひたすらピョンピョンしてるなぁー)

第一C「…………」

第一A「おい、寝るなって、死ぬぞー」

第一C「………………、」

第一B「意識ある方が効くんだから、間違っても寝るなよー」

第一C「……………………、」


第一「……部下ちゃんの彼氏かぁ」ボソッ

第一「……クッチャクッチャーッス部下の彼氏させてもらってるチャーッス。俺達ィぶっちゃけ愛し合ってるんでぇ、邪魔しないでほしいってーかぁクッチャクッチャ」

第一「むしろあんた邪魔?みたいなチャーッス死んで万々歳ってやつみたいなクッチャクッチャーッス」

第一C「……………いやだ、そんな、何か食いながら挨拶する彼氏、絶対、嫌だ……」

第一C「チャーッスとか、そんなカタカナ過ぎる挨拶してくる彼氏、認めたくない……」

第一「意外と良い奴かもよ?」

第一C「嫌だ……嫌だ、やっぱり、認めたくない……彼氏とか、そんじょそこらの男に、妹を任せたくない……」ケホッ

第一「じゃあどんな彼氏なら認めるんだ?」

第一C「……俺と同じか、それ以上に妹の事が好きで、真面目で、包容力があって、聞き上手で、一定の収入があって、優しくて、それでも時には厳しくて、人望があって、いつも穏やかで、」

第一B「理想高すぎる女子か」

第一C「なにより、一番に……俺より、強くなきゃ、認めたくない」

第一A「…………お前なぁ」

第一C「妹を守れる男じゃなきゃ、認めたくない……!」


第一「はいはい、死にかけでもシスコンは絶好調」ケラケラ

第一「そんな彼氏、そうそういるわけないし。こりゃ見つかるまで生きるっきゃないな。お前が部下ちゃん守るしかないよな」

第一C「……だよな……妹を、安心して任せられる男が現れない限り、死ぬわけには、」


「部下さんっ!!」


第一ズ「!!!?」

 駆け寄ってくるその人は、紛れもなく、

第一A「第二の、副隊長?」
第一B「なんでこんな所に、」

第一(!!!おいおい、まさか、)

第一C「…………」

第二副隊長「どうして、こんなことに……」

 抱き起こした部下が意識を失っているだけだとわかると、安堵したようにため息をつく。
 が、Cの方へ視線を向けると、その表情はまた青ざめた。

第二副隊長「C、さん……」


第一C「…………、」

 --わかってしまった。
 部下を心配するその顔が、同僚や友人に対するそれと違う事を。


第一C「……妹の彼氏?」

第二副隊長「はい」

第一C「……遊びで付き合ってるわけじゃないよな、」

第二副隊長「真剣に、結婚を前提にしたお付き合いをさせて頂いています」

第一C「……妹のこと、好きか」

第二副隊長「愛しています」

第一C「そっか…………」

 血溜まりの中にあった手が、副隊長へとのばされる。

第一C「第二の、副隊長、」

第二副隊長「はい」

 握った手は冷たい。
 その事実に驚く前に、爪が食い込む程強く、握り返された。


第一C「認める、」

 虚ろだが、確かな意志を持った視線と、重なる。

第一C「……妹のこと、任せた……幸せにしてやらないと、祟るから、な、」

 かくんと、手から力が抜けたのを感じた。

第二副隊長「C、さん?」

 まるで最初からそうであったかのように、瞼は堅く閉じられていた。

第二副隊長「そ、んな……Cさん……、お義兄さん!!!」

第一A「わぁああああああ!!やめろ耐えろ死ぬなCー!!!!!」アワワワワ
第一B「うわああああ!!!諦めんな馬鹿野郎ー!!!」アワワワワ
第一「あああああ!!理想の彼氏きちゃったから!理想の彼氏きちゃたからー!」アワワワワ

第一A「真面目、包容力抜群、聞き上手、優しくて時には厳しい、いつも穏やか!」

第一B「通称第二部隊の良心!人望厚いわ副隊長職だわそして滲み出る部下への愛!」

第一「Cの俺より強いという大人気ない条件を楽にクリア出来るその実力!!全兵士の中で最高物件の一人に数えられるガチムチマッチョ!!」

第二副隊長「え、……え?」

第一「これは任せちゃう!!」
第一A「そして諦めちゃう!!」
第一B「よって死んじゃう!!!」


第一B「--ってことで、副隊長。何かCを心配させる事言って起こせ。でないとコイツマジで死ぬ」

第二副隊長「なっ……!!」

第一「冗談抜きに早く。部下ちゃんに対する下ネタ系だとキレて飛び起きるかも」

第二副隊長「そんな、私は……部下さんと、お義兄さんと、仲良く三人で暮らしていきたいとしか、それが今の最大の願いなのに……!!」

第一「ごく自然に兄も家族計画に含まれていてびびった」

第二副隊長「だって、最愛の部下さんのお兄さんですよ!?好きになるに決まってるじゃないですか!!側にいてほしいじゃないですか!大好きなお兄さんと一緒なら、部下さんだって喜んでくれるはずです!!!」

第一「なんてこった」
第一B「やっぱり満点の男なんていないんだな」

第一A「ああああ!んなこと言ってねぇでさっさと『俺が揉みしだいて部下のまな板のような胸を少しは大きくしてやるよ!』とかぶはっ!!」バキッ

第一C「…………!!危ねぇ、綺麗な川渡りそうになってた……」

第二副隊長「お義兄さん!!」

第一(よくやったよA)ナムナム
第一B(お前偉いよA)ナムナム

第一A「」チーン


 剣士の上。

相棒「あ、Aさんが殴り飛ばされた」ピョン

勇者「さすがAさん」ピョン ナムナム

相棒「これでCさんは大丈夫だね」ピョン ピョイ

相棒「ちょっと功労者を介抱してくるよ!」タタタタッ

勇者「おう、いってらー」ピョン

勇者「………………」ピョン ピョン

勇者「……あ、膝枕してもらってる」ピョン

勇者「なんて幸せそうな顔をしているんだろう」ケラケラ ピョン





 魔王城。
 病室。

城門兵後輩「よう、従兄弟がお見舞いに来たぞ」

密偵新人「なんだ、後輩じゃないっすか面白くない。あー、やだやだ、班長に会いたい、報告長い。早く帰って来て下さい班長ー!」

後輩「班長班長言いやがってくそっ!!俺だって早く先輩の所に戻りたい!!」

後輩「先輩が行ってきなさいって言うから!どうせ元気なのに案の定元気だし!」

新人「そのせんべいだけ置いてお戻り!あとで班長と食べる!」

後輩「こちとら班長によろしくって言伝頼まれてんだ!任務を遂行するまで帰れん!」

新人「面倒だな!」

後輩「おうさ面倒!だからせんべい食べながら待ってる!」ガサゴソ

後輩「ほら!新人もお食べよ!」
新人「うむ!頂こう!!」

後輩「………」パリポリ
新人「………」パリポリ

後輩「よく生きてたな」モグモグ

新人「まぁ、うん。死ぬかと思ったけど、隣国の兵士に助けられた」モグモグ

後輩「良かったな、班長も一緒に戻れて」パリポリモグモグ

新人「うん、良かった」パリポリモグモグ

新人「……でもマジ告白の邪魔された」

後輩「……どんまい」


 魔王城。
 執務室。

魔王「隣国の上層部はほぼ全滅、ね」

密偵班長「はい。城は勇者一行により落とされ、兵士も総じて人形化。現在隣国の魔王城は人形の巣窟となっています」

魔王「……隣国も、終わったわね」

班長「終わらせたくない兵士達に、俺達は助けられたわけです」

魔王「協力はしないわ。確かにあなた達を助けてもらった恩はある。けれど、その恩一つであの馬鹿魔王がやらかしたを水に流すなんて出来ない」

班長「……俺達が受けた恩は、魔王様に直に意見を届けるという事で返します」

班長「あちら側もわかってますよ、こちらがそう甘くはないことは。だから、回廊の件、隣国の裏にいた--協力関係にあった人間領の一国についての情報は、全て渡すと言ってきました」

魔王「一兵士の権限で?」

班長「いえ、次期魔王の権限で、です。末席とはいえ、唯一の生き残りと聞いています。血を重んじる隣国、彼女が魔王の後釜に座るかと」

魔王「……ぶん殴りにくい国になるってわけね」

班長「そうですね」


魔王「……要は丸投げでしょ?わかったわよ」

魔王「どうせ本命はこの国、狙いは私達。隣国の敵はこの国の敵でもある。まとめてぶん殴ってやるわ」

班長「まずは勇者一行ですね。あの剣士が捕縛されたのことですが、側近様は今そちらに?」

魔王「ええ、部下が狙われたみたい」

班長「……魔王様と側近様に近しい魔族。確かに、俺が知る範囲では部下さんが一番近い」

班長「魔法使いの使う魔法は、普通の魔法とは違います。あの時見られていたのは、おそらく俺の記憶。部下さんの記憶から探り出すのは、魔王様達についてと考えるのが妥当」

班長「ならば、あの魔法使いが使う人形の魔法は、俺達が知る物と全くの別物かもしれません」

班長「気をつけて下さい。あの勇者一行は強い、特に勇者は相当な手練れです。魔法使いが使う魔法もある、絶対にお一人で行動するのはお止め下さい」

班長「戦う時も、必ず何人かはお側に。側近様も、です」

魔王「わかった、覚えておく」

班長「……やはり、魔王城で迎え撃つおつもりで?」


魔王「魔王城も一種のシンボルよ。城主の私がいる方が、勇者一行を真っ直ぐこちらへ向かわせることが出来る」

魔王「下手に場所を変えて民間人に手を出されたら、たまったもんじゃないわ」

班長「わかりました。--では、俺は通常任務に戻らせて頂きます」

魔王「…………隣国へ?」

班長「はい。魔法回廊と今回の件は、隣国に核心の情報があると見ています。……隣国の通信妨害は酷い--原因はあの勇者一行でしょうが--こうなれば自分の足を使うしかないので」

魔王「…………、」

班長「ご安心を。もうヘマはしません。ですが、新人は休ませたいので置いていきます」

魔王「怒ると思うわよ」

班長「そうならないよう、すぐに戻ります。早急に叩かねばならない相手ですから」

魔王「無理させるわ。……お願いね」

班長「はい」


 とある町。

勇者男「剣士が捕まった」

魔法使い「わぁ!それは大変です!」

僧侶「……とんだ間抜け」

勇者男「だが、剣士のおかげで手に入れた物が二つある」

僧侶(一定時、剣士の視界を奪ったというわけね。……さすが、勇者)

勇者男「一つは、大義名分。捕らわれた仲間を救うため、魔王城に乗り込む。勇者らしい、立派な行為だ」

僧侶「魔物の駆除に、大義名分だなんて」

魔法使い「勇者様にもいろいろあるんですよ!怒らないで下さい、僧侶さん!」

僧侶「怒ってなんか……」

勇者男「もう一つは、情報。イレギュラーの存在がわかった。--人間に愛想が尽きたのか。こんな所にいるとはな」

勇者男「この国には、あの勇者と女竜族がいる」

僧侶「!!」
魔法使い「!!」

魔法使い「勇者と女竜族ですか!?魔王と相討ちになったっていう!うわぁー、生きてたんですね~!」


僧侶「……人間を裏切るなんて、最低」

勇者男「相手にするな。奴らは強い。そもそもこちらは戦う事が目的ではない」

勇者男「近しい者を捕らえることは失敗した。が、最も楽な手段が潰されただけだ。--出来るな?魔法使い」

魔法使い「うう~、アレをやるんですね……了解です。あと二人ぐらいならまだ保ちますし!」

勇者男「明日、早朝。魔王城に突入する。人形の操作は全て依頼主に委譲しろ。無駄な魔力消費を抑えたい」

魔法使い「はいっ!では主様に委譲しますっ!」

勇者男「僧侶。お前には撹乱を任せる、好きにしろ」

僧侶「わかりました」

勇者男「こちらが突入したとわかれば剣士も動くだろう。魔王と竜族を魔法使いの前に引きずり出せさえすれば、勝ちも同然」

勇者男「勇者がいるからといって、計画に変更はない。やるぞ」





 魔王城。
 牢屋。

剣士「……………、」ブゥゥウン


剣士「…………、」ゥゥウン

 ブゥゥウウウウウン

剣士「……ああ、あああああ!うるせぇええええ!!耳元!耳元に虫の羽音がああああ!!!」バタバタゴロゴロ

 ブブブブブブ
剣士「ふっざけんな拷問でもされると思ったら滅茶苦茶変な魔法かけやがってぇええ!!耳元で虫の羽音がする魔法とか嫌がらせにしか使えねぇじゃねぇかぁあああ!!」バタバタゴロゴロ

剣士(くっそ、誰だ、俺に変な魔法かけたやつは、)ゥゥウン

剣士「く、っそお……」ブブブブ

剣士(…………、)ゴロン

剣士(縛られた上に目隠し。自由なのは口だけか。今は喋るか転がるかしか出来ねぇ……、)ブブン

剣士(……ここは、おそらく魔王城。敵の本拠地ど真ん中ってことか)

剣士(アイツ等は今頃侵入の準備か。……そりゃあ、急がないとマズいよな。仕掛けに感づかれても困る。なにより、あの勇者とその相棒がいるのがマズい)ブン

剣士(噂じゃ生きてるって話だったが、こんな所にいやがるとはな。……アレはさすがに俺の手には負えねぇ)ブン


剣士(あの勇者は俺達と同類だ。……人間に複数の魔法を同化させ、身体能力、魔力を飛躍的に高める研究、その--被験体)ブン

剣士(一部を除き、人間は魔族に比べ魔力の保有量、身体能力共に劣る。対抗手段として作られたのが、俺達)ブブブブブン

剣士(人間に無理やり魔法を同化させるわけだ、拒絶反応で死ぬのが普通。死なないでも廃人。苦しみながら生き残った一握りの成功例のために、どれだけの人間が死んだことか)ブブブブ

剣士(死にすぎた、いや、殺されすぎたからな。元々同化率の高い子供を対象に行われていた。今となっては禁忌の実験)ブブブブ

剣士(あの勇者もその被験体。あの実力からすると最高傑作と言っても良い。それが今や勇者協会の鼻つまみ者になっているとは。面白いな)ブブブブ

剣士(……通りで毒も効いた様子がない。治癒系魔法全般の同化に成功してるのか。同化した魔法が外部からの治癒を阻害し効きが悪くなるのが難点だが、)ブブブブ

剣士(治癒魔法が補助ですむ程の自己治癒能力を会得出来る。俺と同じだ、俺以外でこのタイプの成功例は初めて見る)ブン

剣士(僧侶でさえ、治癒魔法の同化には成功していなかった)ブン


剣士(成功例は誰しも精神に異常をきたし、誰しもが自分がおかしいと自覚がある。--が、あの勇者は群を抜いて異常だ。あの目はこの俺でさえ異常に感じる)ブン

剣士(確かに最低最悪と言われるだけはある。あんなもん、ただの化け物じゃねぇか)ブブブブブン!

剣士「………………、」

剣士(人の上でひたすら跳び続けるあの執念も異常だった。むかついたが、相手にしたくはない)

剣士(となると、さっさと仕事終わらせて逃げるのが上策ってわけだが)

剣士(……………、)

剣士(一度助かったと思わせて、また絶望させるのも良い)


剣士「ああ、楽しみだなぁ」ニヤニヤ


第二壱「…………」ジー
第二弐「…………」ジー
第二参「…………」ジー


 翌朝。
 魔王城。城門。

城門兵先輩「…………、」パリン

 半分に割ったせんべい、一つは自分の口へ、もう一つは後輩へ。

先輩「ん」
城門兵後輩「ありがとうございます」

 手渡されたせんべいを口に入れる。
 半分でさえも大きいソレは全て入らず、口から一部が飛び出る形になっていた。

後輩「………む、」モゴモゴ ピクッ

 察知した気配に、後輩は愛用の銃を手に取る。
 視線は堅く閉められた門。

先輩「きちゃみたいれ」モゴモゴ

後輩「ふぁい」モゴモゴ

 構えた銃、照準は門。

先輩「…………」ゴクン

先輩「来る、」


 ドゴン!
 瞬間、門が弾け飛んだ。

後輩「いひらす」フォン

 巻き起こる砂埃。
 その中心に弾丸が連続して撃ち込まれる。

後輩「…………」モゴモゴ

 ドパパパパパ!
 射撃音に終わりはない。
 後輩の左右に浮かぶ魔法陣から、同じく魔法で形成された弾丸が撃ち出されていた。

後輩「…………」ゴクン

 手応えは無い。
 全て障壁で防がれているらしい。赤い壁が見える。

後輩「じゃあ、違うの、撃ち込んでみますか」フォン

 わずかに途切れた射撃、その間を狙うように巨大な火球が二人へと迫る。

先輩「任せて」フォン

 展開された障壁へとぶつかり、爆発。
 四方に広がる爆煙に視界は遮られる。

先輩「嫌ね、曇り空に煙まで。朝なのに暗いじゃない」


後輩「まぁ、見えてはいるんすけどね」フォン

 後輩の目は、煙の中を駆ける人影を確かに捉えていた。
 左右に展開された魔法陣は広がり、銃口と共に方向を空へと向ける。

後輩「…………、」

 撃ち出された弾丸は空へ昇った。
 絡むように三つは重なり一つの大きな球体変化する。
 それも、すぐに破裂した。

 降り注ぐはまるで霧雨。

先輩「雨にしては、よく追うわよね」

後輩「一つ一つが追尾型の弾丸ですから」

 連射以上の破裂音が響き渡る。
 長く続くはずだった、
 が、突如、その音は何かに飲み込まれたかように消え失せる。

先輩「--やるじゃない、」フォン

 ドゴォオオオン!!
 瞬間的に広がる衝撃波。
 障壁が激しく揺れた、弾かれた弾丸が周囲で破裂する。

先輩「!!避けて!」
後輩「!!」


 その場から転がるように飛び退いた直後、障壁に剣が突き刺さる、
 だけでなく、障壁を突き抜けたその剣は、二人をかすめ地面に深々と刺さった。

先輩「ごめん、これは防げなかった」

後輩「……本気でないとはいえ、先輩の障壁を通過出来る魔法剣。これは得るべき情報っすよ」

 追撃はこない。
 視界は晴れないが、視認せずともわかる。

先輩「………こちら城門」フォン

 繋げた通信回線に呼び掛ければ、すぐに複数から応答があった。

先輩「突破されました。二手に別れ城内に侵入したと思います」

後輩「気を付けて下さい。相手は障壁を通過する魔法剣を使います」

 その言葉に、侵入者の力量を悟ったらしい。応答した面々の声音が真剣な物へと変わる。

先輩「手筈通り、私達は待機。城内を頼みます」

後輩「……………、」

 風に流され消えた煙。
 晴れた視界に、破壊された城門や大きく抉られた地面が映る。


後輩「……修繕費、どうなっちまうんだろう」


 魔王城。
 庭園。

植物「…………?」

 好きな気配は覚えている。
 どれも違う、感じたことのない知らない気配が近付いていた。

植物「ぐお?」

 赤い花がぐるりと振り返った。
 茎--というより幹と言った方が正しい--に絡みついた茨の蔓がわさわさと揺れる。

植物「…………、」

 見たことのない女のヒトが歩み寄ってくる。
 そう理解した。同時に、

弟〈出会ったら、まず挨拶〉

 大好きな弟がそう言っていたのを思い出す。
 上手に出来ると、彼は褒めてくれた。

植物「ぐおっ!」ペコッ

 ヒトで言う頭を自身の赤い花に見立て、植物はお辞儀して見せた。

僧侶「……なんて、」


 感じる視線は嬉しくなかった。
 初めての感情に戸惑う。

僧侶「汚らわしい、化け物」フォン

 魔法陣がきらめくのを、見た。





 魔王城。
 第三部隊詰め所前。

第三2「おーおー、始まったみたいだな」
第三3「騒がしくなるねぇ」

第一弟「…………心配だ、」ポツリ

第三2「あの赤いのが?」

第三3「植物ちゃんには少なくとも数日、庭園の隅で隠れるよう言ってあるんでしょ?」

第一弟「はい。何時戦闘が始まるかわかりませんし、おとなしくしているようキツく言い聞かせてます」

第一弟「でも、何が起こるかは理解していないと思うんです。あの子は敵意や殺意……悪意の類をまだ知らない」

第三3「そうだねぇ……ここで植物ちゃんにそんな感情抱くヒトなんかいないもん」

第三2「まぁ怖がられることはあってもソレは無いよな」

第一弟「それに……あの子は目立つ。距離があっても、庭園の隅に咲いた綺麗な赤い花には目がいっちゃうんです」

第三2「赤い花の怪獣だからな、あの大きさは」

第三3「綺麗だけど怪獣の領域だよね、あの大きさは」

第一弟「…………やっぱり、心配だ。何かあってからじゃ遅いし、いやでも……」

第三3「いいよう、行っておいで」

第三2「他の奴らにはちゃんと言っておくからさ。周りじゃドカンドカンやることになるんだし、流石のアイツもビビるだろ」

第三3「戦力が足りてないわけでもないんだし。植物ちゃんの側にいてあげなよ、ね?」ニコッ

第一弟「……すみません。俺、行きます!」タタタタッ

第三2「おう」
第三3「植物ちゃんによろしくー!」ニコニコ



第三2「…………あ、やべ。弟に通信回線繋げとくの忘れた」
第三3「あちゃー、困ったねぇ。弟君回線繋げるのちょっぴり下手だもんね」

第三2「……合流して、こっちに侵入者が来なかったら……様子見に行くがてら回線繋げに行くか」
第三3「賛成~」


 魔王城。
 庭園。

第一弟(……庭園が、燃えている?)タタタタッ

 焼け焦げたにおい。
 激しい戦闘音は城内だ、ちゃんと耳に届いている。
 どちらかと言えば騒がしいはずだが、何故か静かに感じてしまう。

第一弟(さっきから、胸騒ぎがする。)

 あちらこちらで燃えているのは、戦闘で流れた魔法がそうさせたと考えた。

第一弟(今、庭園には植物しかいないのに……わざわざ狙われるわけ、ない)

 自然と足は速まっていた。

第一弟(どうして、あんなに目立つ赤い花がどこにも見えないんだろう)

第一弟(……大丈夫だ、またどこかに移動しているだけだ、もしかしたら戦闘音に驚いて隠れているのかもしれない)

第一弟(早く探してあげないと、)

 庭園の奥、開けた場所に出る。
 出迎える植物がいるはずだった。

第一弟「--あ、」

 そこには女が一人、立っていた。


植物「」ゴォォオオオ

 そして、炎に包まれているのは。

僧侶「--またゴミが」フォン

 女が振り返る。
 人間だ。

第一弟「植、物……」

植物「」ズシン

 魔法を形成する女の背後で、植物だった物は崩れ落ちた。

僧侶「一緒に燃えなさい」フォン

 放射される炎に手をかざした。
 触れた、瞬間。魔法は発動。

第一弟「…………」フォン

 溢れた出た濁流が炎を消し去り、

僧侶「!」

 僧侶を飲み込む。
 一瞬にして辺りは水浸しになった。


僧侶(……油断していたとはいえ、この私をずぶ濡れに……!魔物が、よくも……!)

僧侶「許さない、」

第一弟「許、さ、ない……?」

僧侶「!!」

 声は後ろから。

第一弟「それは、こっちの台詞だ、」

 跪くその手には亡骸があった。
 湿ったそれは、軽く握るだけで崩れる。

僧侶(ガキだと思ったけれど、随分な目をする)

第一弟「絶対、許さない」

僧侶「自ら進んでゴミ片付ける、この善行を理解出来ないなんて、やはり、ヒトの姿は形だけなんですね」

第一弟「…………、」キィイイイン

 魔力が溢れ出す。
 高威力魔法形成時特有の高音が、広がっていく。


第一弟「殺してやる」


僧侶「殺す、ですって」キィイイイン

僧侶「口だけは達者なこと」

第一弟「」ヒュン

 先に踏み込んだのは弟。
 殺意を持ったその手は僧侶へ向かう。

 バチバチバチバチバチバチッ!!!
 高威力魔法同士の衝突。
 激しい火花が散る、余波は暴風となり吹き荒れる。

第一弟「--、」

 空いた左手が僧侶の魔法に触れた、一瞬にして無数の切り傷が刻まれる、

第一弟(魔法、消去)

僧侶「なっ、」

 同時に僧侶の魔法は消滅。
 すぐに魔法を展開しようとするが、

第一弟(威力増加、)フォン

 さらに威力を増した魔法が僧侶に襲いかかった。


僧侶「!!」フォン

 障壁すら半端のままに、僧侶は弾き飛ばされる。

第一弟(追撃、)キイイイン

第三2「魔力濃度高いわけだよな、弟がマジになってる」

第一弟「!!」
第一弟(第三の……、)

第三4「とりあえずさ、落ち着けよ弟。らしくないぞ」

第一弟「…………皆、さん……」

僧侶(新手、来た!また、駆除すべき魔物が増えた!!)

第三3「こっちを睨んでる女が侵入者ってやつかなぁ?」

第一弟「は、い」

第三3「ねぇ、弟くん、どうしたの?4くんの言うとおり、らしくないよ」

第一弟「俺の、せいで……植物が……!俺がちゃんと、側にいてあげなかったから……!!」

第三3「植物ちゃんが?」

第三4「まさか、あのべちゃべちゃの黒い塊って植物?」


第一弟「…………はい」

第三2「見事にフラグ回収して襲われたってか」ウンウン

第一弟「…………」グスッ

第三2「--で、本体は?隠れてるんだろ?」

第一弟「……え?」

第三4「一部がああなら、怪我してるよな。……植物に治癒魔法って効くのかな」

第一弟「一部って、え?」

第三3「戦闘は僕達に任せて、弟くんは植物ちゃんについててあげなよ」

第一弟「それって、どういう、こと、ですか?だって、植物は!」

第三4「?見当たらないし、隠れてるんだよな?」

第一弟(何を、言って……?)

第三3(弟の様子が変、心当たりがあるとするならば、)
第三3「--あ、そっかぁ!第一の副隊長さんが、弟くんにはまだ秘密にしてるって言ってたねぇ!」

第三2「え、なに?お前一番懐かれてるくせに知らなかったのか?あの黒こげは植物の一部に決まってるじゃねぇか」



第三「だってアイツの本体さらに馬鹿でかいんだから」


第一弟「」

第三3「死んじゃったと思ってたの?」

第一弟「」コクン

第三3「大丈夫だよ。あの黒こげの下、よく探してごらん?きっと、いると思う」

第一弟「……!!」タタッ

 駆け出す弟--に襲いかかる魔法は

第三4「危ないな」フォン

 障壁によって遮られる。

僧侶(--むかつく、むかつく、)

第三2「じゃあ、いっちょやるか、」フォン
第三3「そうだねぇ」フォン

 愛用の武器は手に、その切っ先を僧侶へと向けた。

僧侶「むかつく」ザワッ


 溢れ出した魔力が黒い淀みとなり、漂う。

第三4(視認出来る魔力を持つか、城門組の報告通り)

第三4「弱い相手じゃなさそうだ」





第一弟(--これが、一部?)

 燃えた亡骸をかき分ける。

第一弟(この下に、いるかもしれない、って、)

 ピョコン

第一弟「--あ、」

 見覚えのある蔓が飛び出した。
 どうやらそれは地面に繋がっているらしい。

第一弟「う、うぅ……」グスッ

 鋭い牙が覗くその先端は、蛇に似ている。

第一弟「植、物……」


 声に反応したらしい。
 伸ばした手に、こつんと当てられた。

第一弟「ごめん、ごめんな……怖かっただろ……もう大丈夫だからな……!」

植物「…………くおっ!」

第一弟「でも、本体が地面にいるなんてきいてないんだからな……!」






 魔王城。
 牢屋。

剣士(……始まったか)

 ヴゥウウウン
剣士(……俺の適応能力を褒めたい。たかが虫の羽音、もう気にならない。どうせしばらくたったら自然消滅する魔法だろうし)

剣士(さて、勇者の奴は……お、ちゃんと繋げてるな。何時でも人の視界もってく代わりだ、魔力、持ってくぜ)フォン

剣士(この場そのものを一気に吹き飛ばしたい所だが、形成に時間がかかる魔法は、外にいるだろう看守に気付かれるかもしれない)

剣士(まずは適当な場所に転移。そこで拘束と目隠しをなんとかして、参戦)

剣士(こちとらストレスたまってんだ、暴れさせてもらうぜ……!)ヒュン


第二壱「標的の逃走を確認」
第二弐「追尾開始」
第二参「任務続行を報告」






 魔王城。
 病室前。

剣士(さぁて、拘束具は勇者の魔力使ってぶち壊した)

剣士(勇者の魔力は……もういらねぇな、拘束具を外したことで俺自身の魔力も回復するし)

剣士(目隠しも外して、と)スルッ


剣士「あ」
密偵新人「あ」


新人「何でこんな所に、……ああ、そうか、逃げ出したってわけっすね」

剣士「なんだよ、生きてたのかお前」


新人「とりあえず、アレです」

新人「班長の仇、とらせて頂きます」

剣士「お、もう一人はちゃんと死んだか。良かった良かった」

剣士「じゃあ安心して後を追わせてやるよ」ニタリ

新人「後?今すぐ追いたいに決まってるじゃないですか。班長ってば私を置いて一人でさっさと行っちゃうし」

剣士「へぇ……なら、」

新人「というか、『もう一人はちゃんと死んだか』って何のことですか。もう一人って班長の事ですか失敬な、班長は生きてますよピンピンしてますよ」

剣士「は?」ポカーン

剣士「……いや、お前さっき仇って言ったじゃん」

新人「…………」

新人「その場のノリですよ、言葉の綾です。そりゃつい言っちゃいますよ大怪我させた張本人が目の前なんすから」

剣士「………なんだそりゃ」

新人「とにかく私忙しいんです。さっさと死ぬかおとなしくお縄について下さい。仇よりも私班長の所に行きたい」

剣士「……あー、うん。じゃあ行かせないことにするわ」


剣士「馬鹿言ってるのも今の内--ってな、」ピクッ

 剣士の動きはピタリと止まった。

剣士(………………、)

 凝視するのは、新人の後ろ。
 廊下の曲がり角。

剣士(………なんだ、突然寒く)

新人「あ、息白い」ハァー

 立ち込める白いもや。
 足元から這い上がる冷気。
 それは間違いなく曲がり角の先から流れ出していた。


「逃げたみたいだ」

「探さなきゃね」


剣士「!!」ビクッ

 剣士の耳は、はっきりとその会話を拾った。


「あ、大変だ。殺していいか許可もらってない」


「うっかりしたね。仕方ないからそのまま生体トランポリンとして使おうよ」

「ひたすら跳ぶか。どれだけ高く跳べるか勝負しようぜ」

「いいよ。ついでにどっちが先にバランス崩してトランポリンから落ちるかも、勝負しようよ」

「それいいな」


剣士「うあ、ああ……」
剣士(感じる……歪みきった魔力を……!)


「どこだろな」
「どこだろね」

「でも近いよな」
「うん、近いよ」


剣士(嘘だろ、早すぎだろ、何ですぐに来ちゃうんだよ、)

 ひたり、ひたり。
 足音が近付く。

新人「ひんやり涼しいなぁ」


「いるね」
「いるな」

「この先に、」
「この曲がり角の先に、」

「いるよね」
「いるよな」


剣士(ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい!!)
剣士(逃げないと、そうしなければいけないのはわかってる、だってのに!)

剣士(足が……震えて動けない……!)ガクブル

 足音が止まった。
 声が聞こえない。
 不自然な静寂。

剣士(……く、る……)

 そして、現れたのは腕だった。
 ゆっくりと伸ばされるそれ、動く指先は角をとらえる。

 みしりと壁が軋む音がした。

剣士(いる、曲がり角の先、アイツが、いる……!)


 瞬きすら躊躇う。
 現れるであろう、その曲がり角から目が離せない。

剣士(出てくるなら、早く、出てきやがれ……!)ドッドッドッ

剣士(ああくそ、心臓がうるさい)ドッドッドッドッドッ

 この静寂、自分の心臓の音が周りに聞こえるのではないかと錯覚する程だ。

剣士(--落ち着け、落ち着け……返り討ちにしてやれば、いい話だ……)

 深く息を吸い、吐いた。
 瞬き、その一瞬。

剣士「ひぃ……!」

 その一瞬で、それは姿を現していた。
 見開かれた目が、
 光の感じない赤い目が、こちらを見ていた。
 半笑いの口が、


勇者「 み い つ け た 」ニタリ


剣士「ひっ……ぎゃあああああああああああああ!!!!」ダダダダダダッ

新人「あ、逃げた!」

ごめん。間があいた。これから通常投下に戻る。


 逃げる五人を黒い人型の魔物が追う。
 振り返れば、横倒しになった頭がニヤニヤと笑っていた。

第三6「変だよな、首折れてるのに」
第一B「急所じゃなかったんだろうな」

第一「これで触角とかあったら確実じょうじだ!!やべぇ勝てる気がしない!!」

第一C「何だよじょうじって!誰の名前だよ!」

第三6(?)
第一B(また変なこと言い出した……)

第一A『百メートル直進後右の通路へ!出口までまだあるけど頑張れ!』

第一C「--了解!おいみんなAから通信!この先右!」

第三5「見てろよ?曲がった瞬間Cの首もがれるから」

第一「そんなこと言うなよ変態。下半身とサヨナラに一票」

第一C「何いきなり不吉なこと言い出してんの!?」

第三5「せめて変身出来れば……」

第一「出来ちゃったらうちの最高戦力達が興奮のあまり発狂しちまうだろ」

第一C「……………」
第一C(と、とりあえず角は気をつけて曲がろう……)ドキドキ

>>203ごめん誤爆したごめん違え小話の一部です。無かったことにして下さい。


勇者「………………」
相棒「………………」ヒョコ

勇者「逃げちゃった」シュン
相棒「逃げちゃったねー」

新人「あっ、例の勇者さんと相棒さんですよね。登場がプチホラーで誰かと思いました」

新人「ついでに初めまして、ですよね。ゆっくりと自己紹介したい所ですが、」

新人「逃げたあいつ、頼めますか?」

勇者「合点」ヒュン
相棒「承知」ヒュン

新人「よし、あいつの件はよしとして。私は班長を追いかけるぞー!」





 走る、全力で。
 足音は無い、
 が、接近する気配はあった。

剣士(なんで、なんでなんでなんで!!)ズダダダダダダダ


相棒「遊ぼうよ」


 そして、聞こえる声は不自然に近く感じる。


勇者「遊ぼうって、」


剣士「さっきまでひたひた足音たててたくせに何で無音で走れるんだよ!!」

剣士(振り返れねぇ!絶対!笑ってる、あの目が、笑ってる!!)


勇者「遊ぼうって!なぁ!俺達とさぁ!!!遊ぼうって!ひゃは、ひゃはははははっ!」

相棒「楽しいって!だからさぁ!遊ぼうよ!!なぁ!ははっ!あははははははは!!」


剣士(しかも二人っ!!なんだよコイツら二人そろってキチガイ属性かよ!)

相棒「はは、あはっ!いいよ、追いかけっこか!捕まったら負けでいいんだな!!それでいいんだよなぁ!!」

勇者「追いかけっこ!?追いかけっこか!ひゃは!追いかけっこならさぁ!!」


勇者「足だけあれば、充分だよな」


剣士「!!」ゾクッ


 直感が身体を反転させる、
 ガキィン
 防いだ斬撃、剣は弾き飛ばされた。

剣士「…………、」
剣士(今、防がなければ……右腕を、持ってかれてたな……)フォン

 形成した剣は手に。


勇者「…………」ザワザワ

相棒「……なんだ、追いかけっこは終わり、かぁ……」ザワザワ


剣士(鏡なんて見ないからな……俺も、こんな顔で笑ってたのかね、)


勇者「じゃあ、手も、いらないな」


剣士「ははっ、んなの、違うだろ」


相棒「安心しなよ……絶対、死なせない」


剣士「勇者一行の顔じゃ、ねぇよ」


 魔王城。
 王の間。

剣士『勇者一行の顔じゃ、ねぇよ』


第一「何であんなに歪んだんだろうな、って考えちゃうよなー」

第一A「映像越しでも溢れ出る狂気。……確かにさ、人間に向けて良い勇者一行の顔じゃないよな」キュイン

第一B「何考えてるかわからない時あるよな、」

第一B「剣士の上でぴょんぴょんやってた時はこうじゃなかったけど」

第一B「ぶちギレとか、そういう類のものじゃないと思うわ、これは」

第一「……何を重ねてるんだろう」


魔王「………状況は?」カリカリ

第一A「はい、侵入者は三人……逃げ出した剣士を含め四人としておきます」

第一(……二人そろって机持ち込んで執務か……)

第一(そうだよな、執務室で待ち構えるわけにはいかないし、狙われてるってわかってる以上先陣切って迎え撃つわけにもいかないし、仕事はたまるしで)ウンウン

第一A「--僧侶の女は庭園にて弟、第三と交戦中。剣士の男は旅人さん達と……交戦中」


魔王「……勇者だし、人間側だから、交戦するのだけは止めたんだけど」

魔王「やっぱり、行っちゃったみたいね。有り難いんだけど、これで良かったのかしら」

魔王「あんな顔までさせて、」

第一「ドン引き、しないんですねー」

魔王「理由があるもの。あなた達に懐いてたじゃない、あの二人は」

側近「それに、俺達もヒトの事を言えない」ボソッ

側近「……侵入が確認された四人がいるなら、協力者が他に存在しない限り、部下達の方には行ってないと考えていいか」カリカリ

第一A「あちらからの通信は無いですし、なにより第二の副隊長がついてますから」

第一A「一つ、危惧することが。魔法使いの女ですが、存在が希薄すぎます。捉えられないわけではないですが、あの希薄さはおかしい」

第一B「ヒトじゃないのかもな」

第一A「交戦せず物陰で震えているようです、が……無視は出来ないかと」

側近「わかった。誰かそちらに回そう」

魔王「それで、侵入した勇者は?」

第一A「!!……あ、今、ちょうど。この広間へ続く扉の前で」

第一A「うちの副隊長と……第二の隊長が、遭遇しちゃったみたいです……」ウワァ


 少し前。
 魔王城内。

勇者男「剣士は逃げたか、」

魔法使い「あ、勇者様、魔力貸してあげたんですね~」

魔法使い「僧侶さん、中心で騒ぎを起こすと思ったら、何故か城の隅に行っちゃいましたし、」

魔法使い「剣士さんはちゃんとやってくれると良いですね!」

勇者男「……所詮同類だ。期待はしていない」

魔法使い「私もですかぁ?」

勇者男「ああ」

魔法使い「えへ、ですよね~!」

勇者男「だが、やるべきことはやってもらう」

魔法使い「わかってますよぉ!では、私は勇者様の邪魔にならないよう、こっそり隠れてますね!」タタタタッ

勇者男「…………」

勇者男(人形を作り出すあの者も、また人形)

勇者男(……面倒極まりない。勇者協会も、回りくどい事をする)


「む!!どうやらここに来たようだぞ第一の!!」

「もう少し静かに話せないのかしら」


勇者(女の声、二人分の気配)

勇者(魔王は近い。おそらく、この先の扉の向こう。ここで姿を現すとなれば)

勇者「相当出来ると見て良いか?そろそろ退屈していた所だ」


第二隊長「おおっ!貴様だな!侵入者というのは!!」
第二隊長「よくもこんな時に来てくれたな!!タイミング悪すぎだぞ!!」

第二隊長「ヒトがせっかく我が永遠のライバル第一のから女子力とやらを盗んでやろうと企んでいたのに!!」ビシッ チャプン

第二隊長「見ろ!!お茶会の最中だったんだぞ!!」チャプン

第一副隊長「いつまでティーカップ持ってるつもりなのかしら。気を付けないと零れるわよ」アキレ

第二隊長「ならば飲むしかあるまい!!」グイッ

第二隊長「ぷはー!!なかなかの味だ!!第一の!誉めてやろう!!--それで、茶菓子はないのか!?」

第一副隊長「…………走って取ってきたら良いじゃない。ついでにティーカップ置いてきなさい。割ったら怒るわよ」

第二隊長「持ってないのか!むう!侵入者を前にこの場から離れる事などできん!仕方ない、茶菓子は諦めよう!」


第一副隊長「……はぁ、」

第二隊長「何だ!?ため息か!?ため息一回事に女子力が1ポイントずつ減ると誰かが言っていた気がする!」

第二隊長「ふははは!第一の!貴様の1ポイントは私がいただいた!」スウゥゥゥ!

第一副隊長「燃えればいいのに」ボソッ

第二隊長「なにっ!?怨嗟だと!?そんなもの吸い込むわけにはいかん!吹き飛ばしてくれる!」フウゥゥ!

第一副隊長(爆散すればいいのに)


勇者男「………………、」

勇者男「……美しい、」

勇者男「そこの、美しいお方!私と結婚し、生涯共にいてはくれないだろうか!」





 魔王城。
 王の間。

第一A「扉の外は正直カオスな展開です」


第一B「勇者ってなんなんだろうな」
第一「勇者って基本アホなのかな」

魔王「…………、」カリカリ
側近「…………、」カリカリ

第一(見なかったことにしてる……)



 王の間、扉の向こう。

第二隊長「結婚だと!?私とか!?」

勇者男「すまない顔は好みだが腹筋に興味はない」

第二隊長「」シュン

第一副隊長「ってことは……私、かしら?」

勇者男「はい。美しい、貴女。貴女さえいればいい。魔王や竜族など、もうどうでもいい」

勇者男「俺と一緒に、来てくれないか?」

第一副隊長「ふふっ、お気持ちは嬉しいんだけ」
第二隊長「第一の、第一のっ。やっぱり腹筋割れてる女ってダメなのかなぁ…?」クイクイッ


第一副隊長「……………」
第二隊長「需要ないのかな……、腹筋女って需要ないのかなぁ……」クイクイッ

第一副隊長「子供みたいに服の裾を引っ張るのはやめなさい」

第二隊長「だってだって、初対面の人間に興味無いって切り捨てられちゃったし、」

第一副隊長「ああ、もう。大丈夫。腹筋だってどこかしらに必ず需要があるわよ」

第一副隊長「それに、顔は好みって言われたでしょ?黙ってれば可愛いんだから永遠に黙ってれば良いのにって、私ずっと思ってたわ」ニコリ

第二隊長「なんだと!私可愛いのか!?第一のから見て私は可愛いのか!!ふふっ……ふはははっ!さすが私っ!!」

第一副隊長「口を開いた瞬間から爆散したら良いのにってずっと思ってるわ」ニコリ

第二隊長「」シュン

第二隊長「だがめげん!!」キリッ

第一副隊長(うざい)


勇者男(ふむ、邪険にしながらも結局構ってやるS系お淑やか美女と腹筋元気っ娘の絡みか、悪くない)


 王の間。

魔王「……………」カリカリ
側近「……………」パラパラ カリカリ

第一A「……第二の隊長だけだよな、副隊長にああして絡めるのって……」

第一(あの勇者今真面目な顔してアホなこと考えたな)

第一B(……需要ならここに)



 王の間。扉の向こう。

第一副隊長「……それで、返事の続きだけど」

第一副隊長「お気持ちは嬉しいんだけど、お断りさせていただくわ。だって私達、まだ出会ったばかりじゃない」

第一副隊長「おまけにあなたは勇者で、狙いは私が大好きなこの国の魔王様とその側近様」

第一副隊長「私がいれば、なんて、まるで脅しじゃない。私が身代わりになれば魔王様達には手を出さない、そう聞こえるわ」

第二隊長「なんだと!?ならん!それはならんぞ!!魔王様達や第一のには」
第一副隊長「あなたは黙ってて」

第二隊長「」シュン


勇者男「……確かに、そうともとれる。使う言葉に誤りがあった、すまない」

勇者男「だが、俺は本気だ。貴女が否と言うだけで魔王様には手を出さない。この城の兵や、民にだって」

第一副隊長「そう。じゃあ、この国で誰かを傷付けるのはやめて下さらない?」

勇者男「了解した。武装は解除する」フォン

第一副隊長(へぇ……言葉通り、本当に手持ちの武器を消してみせるのね)

勇者男「君の姿を近くで見たい。もう少し側に寄っても」

第一副隊長「駄目ですわ」ニコリ

勇者男「ふっ……身持ちが堅いな」

第二隊長「なんだ!?戦わないのか!?」
第一副隊長「うるさいから黙ってて」

第二隊長「」シュン

第一副隊長「でも、そうね。情報を提供してくれるのなら、一歩だけ、近付くのを許すわ」

勇者男「この俺を釣るか。……ますます貴女が欲しくなった」クスッ

勇者男「貴女なら、俺の妻達ともすぐに仲良くなれるだろう」


第二隊長「!?」
第一副隊長「………………今、妻達、と仰いました?」

勇者男「ああ。言ったが」

勇者男「貴女は……実に好みだ。そうだな、第三夫人として迎えたい」

第一副隊長「…………正妻ではなく、愛人として?」

勇者男「面白い冗談だ。確かに貴女は美しいが……」

勇者男「すまない。私は勇者協会を支える格式高い家の出身でな。妾にとるならまだしも、魔族を正妻にとるなんて有り得ないことなのだ」

第二隊長「…………」ザワッ

勇者男「安心してくれ、例え魔族とはいえ、貴女を奴隷のようには扱わない。扱わせない。地位の高い者は美しい魔族を飼う事が多い。私の妾とあれば、貴女はそれなりの地位につくことになる」

勇者男「私の一生をかけて、貴女を全力で愛でよう。何一つ不自由はさせない」

第一副隊長「この話、お断りさせてもらうわ」

勇者男「やはり、住み慣れた場所を離れるのは辛いか。同族が恋しいのなら、魔族の奴隷を好きなだけ側につけよう」

勇者男「寂しいのなら、友人を共に連れても良い。見目麗しいのが条件となるが、そこの貴女なら、合格だ。体つきが許容範囲内なら求婚していた。本音を言うと二人セットで欲しい」キリッ

勇者男「……美しい貴女が思っている以上に、俺に求婚されるということは、この上なく名誉な事なのだ」
勇者男「どうだろうか、受け入れてくれる気に--」

第一副隊長「とりあえず死ねよ、と思いました」ニコッ

凄く待たせた。
ごめん。


勇者男「辛辣だな……だが、美女に吐かれる毒というのも、悪くない」

第一副隊長「ごめんなさい。あなた、不快なの」

第一副隊長「だから、お喋りはもう終わりにしましょう」ザワザワ

第二隊長「…………」ザワザワ

勇者男「待ってくれ。俺は貴女と争う気は無い。美女を傷付けるなど出来ない。魔力を抑えてくれないか?」

勇者男「抑えてくれるのなら、そうだな。欲しくないか?情報が」

第一副隊長「!!」
第二隊長「!!」

勇者男「元々、乗り気では無い任務だ」

勇者男「美女とお茶が出来るなら、私は口が軽くなるだろう」

第一副隊長「…………、」

第二隊長「第一のっ、第一のっ、どうするんだ?」

第二隊長「お茶するのか?私はお茶の続きがしたいぞ!でもコイツの参加はなんか嫌だ!」

第二隊長「だってコイツ変だもん!」ビシッ


第一副隊長「お願いだからちょっと黙ってて。あとあなたも大概だから。変だから。面倒だから」

第二隊長「……………」シュン



 王の間。

第二隊長『だがめげん!』クワッ


第一A「第二の隊長揺るがないな……」

第一「こりゃ勇者の方は安心かなー」

第一B「魔王様達を除けば、魔法で城内最高火力叩き出す副隊長と、拳で最大火力叩き出す第二の隊長だ」

第一B「何かあっても大丈夫だろ、うん」

第一「俺達の出番は無さ、」ピクッ

魔王「…………、」
側近「…………、」


第一A「--庭園。ちょっとマズいことになったかもしれない」キュイン

第一「出番、くるかー?」


第一B「………、剣士も、あの進行方向だと件の庭園についちゃうな。--で、魔法使いは?」

第一A「来ないで下さいって泣き叫びながら城内逃げ回ってる」

第一B「何しに来たんだそいつ……」

 呆れて言った、その瞬間。

 グオオオオオオオオオオッ!!!
 地響き、そして咆哮が城を揺らした。


側近「……俺じゃないぞ」

第一A「いや、わかってますって」




 ちょっと前。
 庭園。

第三2「もう少しやると思った、」

 と、欠伸。

第三3「キミ、期待以下だねぇ」ニコニコ

 と、笑う。


僧侶「………………、」ズタボロ

 その差は歴然だった。

 外見、全く乱れの無い二人に対し、
 僧侶は傷だらけで立ち上がることも出来ない。

第三4「結構早かったなー、」

第三4(まぁ、本調子の二人に一人で勝てるなら相当だけど、)

第三4(弱くはないのレベルなら、善戦はした方か?)

僧侶「く、そ……!」フォン
第三4「はい、妨害」フォン

 魔法は展開の段階で潰される。
 力でも、魔法でも、勝てない相手だった。

第三2「おとなしくしてろって。馬鹿でもわかるだろ。この力の差はよ」

僧侶(--馬鹿、ですって、)

第三3「そうだよぅ。まぁ、その強さで城に乗り込む時点で結構なお馬鹿さんだけど」

僧侶「……っざ、けんな……」ザワッ

第三4(……ん?魔力の質が……変わった?)


僧侶「……の、……みが……」ザワザワ

第三2(魔力濃度、また上がるか)ピリッ
第三3(へぇ……まだ底じゃなかったわけね)ピリッ

第一弟(…………あの魔力、構成、)

僧侶「世界の、ゴミがああああああ!!!」フォン
第三4(速い、妨害出来ない!)

 僧侶の身体が淡く発光する。
 弾かれるように飛びかかった、

第三2「よっと、」ヒョイ

 僧侶の手は宙をかく。
 なりふり構っていられないのか、それは人の動きというより、

第三3「獣みたい。悪あがきにしてはもう少し速く--」

第一弟「そいつに触れないで下さい!」

第三3「え、」

僧侶「……………、」

第一弟「とにかく離れて!今そいつが使っている魔法は危険です!」

第三2「お、おう」


 僧侶から距離をとった二人。
 依然発光したまま、僧侶は動かない。

第三2「で、弟。何?あの魔法」

第一弟「あれは、」
第三4「第一の専売特許ってやつだろ?」
第三4「共倒れ道連れ、第一が使うえげつない魔法」

僧侶「………、ふふ、ふふふ」

僧侶「そう、そうよ、ゴミに教えてあげる、この痛みを、」ヒュン

第三2「あ、やべ」
第三3「4くんそっち行った!」

第一弟「解除して下さい!触れた瞬間発動します!」

僧侶「まずはお前だ!」
第三4「こんなんばっかだと人間が怖くなるよなー」フォン

 触れようとした右手は合わされ、
 バシュン
 発動していた魔法は無効化される。

僧侶(解除--出来ないとは思っていない)


 僧侶の左手が鋭く尖る、
 魔法は無効化された--が、左手は別の魔法が展開発動されている。

僧侶(やれる!)
第三4「……………」ユラリ

 刃物へと変わった左手が、4へと迫--

「やっと出番かー」


僧侶「え、」ザシュ

 鮮血が散る。
 斬りつけられたのは僧侶だ。

僧侶(どこから、出てきた、)フラッ

 何が起きた、この状況が理解出来ない。
 一人だったはずだ、それが今、二人に増えている。

僧侶(--ああ、そうだ)

 4の姿が揺らめくのを見た。
 その瞬間だ、斬られたのは。

僧侶(そうか、そうか……!!)

 覚えがある、そんな魔法。



僧侶(ずっと、その影に、潜んでいた!!)パタッリ


第三1「いや、出番無いと思って焦ったわ」

第三4「カウンター係なんだから無い方が良いだろ。俺の安全的に」

第三2「おー、見事に決まったなー」ケラケラ

第三3「1くんカッコイー!!」ケラケラ

第一弟「あ、やっぱり後ろにいたんですね!」


僧侶(…………ああ、あ、身体が動かない)

僧侶(--私が、負ける?死ぬ?)

僧侶(世界のゴミ、魔族に、負け……)

僧侶(て、たまるか……!!)フォン

 フォン フォン フォン フォン


第三4「お、まだ動くか」
第三1「下手に動くと出血で死ぬぞー」
第三2「しつこいとモテんぞー」
第三3「僕より可愛くない子はタイプじゃないなー」

第一弟「……これは、召還……魔法陣?こんなに、大量に、」

 フォン フォン フォン フォン フォン

第一弟「えっと、和やかに話してる場合じゃあ、」

僧侶「みんな死ねえええええ!!」ザワッ

第三5「呼ばれてないけどじゃっじゃじゃーん!!!」フォン


僧侶「!!?」シュルン


第三5「よいっと!!縛られる方が好きだが、縛る方もまぁ嫌いじゃないぜ!!」キリッ

第三1「変態きた」
第三2「なんで来た」
第三3「うざいきもい」
第三4「もう喋るなよ」

第三5「ありがとう」ゾクゾク

第一弟「……えっと、あの、召還魔法陣、発動しちゃってます……」


 僧侶は拘束されている。
 だが、召還魔法は完全に発動していた。

第一弟「庭園に魔物に溢れちゃいます……」

僧侶(今に見てろ。私の魔物は、そこらの魔物とは違う、)

僧侶(私の代わりに、必ず、駆除して)

第三5「ああ、大丈夫。わざとわざと」ケラケラ

 軽い足取りで5は弟へと近付く。

第三5「植物ちゃーん」

 いや、正しくは、植物だ。

第三5「そろそろ弟に本体見せちゃって良いんじゃない?」

弟「え……?」
植物「くぉ……、」

第三5「地上はこれから魔物で溢れるぞ。それはそれは、美味しそうな感じのが」

植物「くおっ!?」フリフリ

第三5「お、乗り気だな。じゃあ、」

第三5「食事の、時間だ」


 同時刻。
 廊下。

剣士「やっぱ無理だってえええええ!!!!」ズダダダダダダッ

勇者「…………」シュタタタタ
相棒「…………」シュタタタタ

 長い廊下を全力で駆ける。
 追走する二人は、ただ一点、剣士の背中を見ていた。

剣士「あああ無理無理無理無理!!なんなんだお前ら!!俺何もしてないじゃん!!ここでは俺まだ何もしてないじゃん!!!」ズダダダダダダダッ

剣士(無理、絶対無理。一瞬応戦しようかと考えたこの一瞬すら無駄すぎる!)

剣士(つか勝てるわけだいだろなんだこのキチガイズ人間領にいる時からひたすら悪名高かったけどなにこれマジなにこれ!)

剣士(ああくそっ初めて!こんなに怖いの俺初めて!恐怖心とかもうとっくにぶっ壊れてると思ったけど普通に大丈夫だったやったね畜生!)

剣士(どうするどうする、逃げるだけじゃ駄目だ、捕まる--いや、誇張無しにだるまにされるのも時間の問題、)

剣士「もうどこかに体の良い人質とか転が--っ」ザシュ

 かすめた刃は首の皮を深く抉りとった。

勇者「何て言った、」ザワザワ
相棒「今」ザワザワ


剣士「ちょっと口が滑っただけだろうが本気にしてんじゃねぇー!!」
剣士(俺みたいな自己治癒能力持ってる奴じゃなかったら死んでる!今の絶対死んでる!!)

 全力疾走しているにも関わらず、身体は冷え切っていた。
 特に背は、刺さる視線が痛いほどに冷たい。

剣士(マジもうどうするよ、)ピクッ

剣士(--お、近くに僧侶がいるな。この先、外か?魔力を感じる)

剣士(なんだよ、キレてるのか?召還魔法なんて使って……ん?召還魔法?)

剣士(いける、魔物に紛れて逃げきってみせる!!)

 この先、一直線。
 前方はガラス窓。その下には庭園が広がっている。

剣士「うおおおおお!!」

 走る、走る、走る。
 目前に迫るガラス窓を、

剣士(最後のガラスをぶち破れ!!)

 突き破り、庭園へと落ち、

剣士「なっ!!?」

 グオオオオオオオオオオ!!


 鼓膜を震わせたのは咆哮。
 地面を突き破り現れた巨大な何かが身体をかすめる。

剣士(なんだよこれ……!!)

 驚きのあまり、追跡者の存在を忘れてしまった。
 降ってきたのは並んだ両足。

剣士「ぐえっ!!」
勇者「生体ートランポリーン!」

 勇者と相棒が、その背を踏みつけ、落ちた。

相棒「踏ーみつーけた!」

 踏みつけたことに満足したのか、
 二人はようやく、変わってしまった庭園の光景に気付く。

勇者「あ、」

 まず、庭園に魔物がいた。
 召還魔法だとはすぐにわかった。
 宙に浮かぶ魔法陣から、魔物が今まさに出ようとしていた。

相棒「あ、え、」

魔物「」グシュ


 だが、魔物は魔法陣から完全に抜け出る前に潰された。
 喰い潰された。

勇者「……うあ、」

 立派な木の幹といった太さの見覚えのある茨の蔓が、
 魔物を次々と喰い潰していく。

相棒「……ああ、」

 蔓の先は裂け、覚えのある可愛らしい牙が並んでいるはずのそこは、
 蔓の太さに比例し鋭く大きな牙が並んでいた。

勇者(蔓は、一つじゃない、)
相棒(全部で、五つ、)

 蔓、その先、口というべきそこから滴り落ちるのは、魔物の赤い体液。

 庭園は真っ赤に染まり、魔物の断末魔と咀嚼音だけが響いていた。

 その断末魔も、咀嚼音の大きさに負けている。

 グチュ、ベチャ、グチャ、

勇者「」
相棒「」

蔓「…………」ズルリ


 大きさに見合わず素早い動きをするそれ。動きは蛇に似ている。
 鎌首をもたげるように、それは二人へと向いた。
 外見からは目が存在するようには思えない、だが、見ている。

 食いちぎられた魔物の一部が、口から零れ、べしゃりと音を立てた。

 剣士の上。
 目を見開いたまま固まる二人の頭上で、大きく口は開かれる。


蔓「くおっ!」ルンルン


勇者「~~~!!!」
相棒「~~~!!!」

 そして、五本の蔓の中心。
 幾多の茨に包まれた丘というべき巨体が振り返った。
 それは、ドラゴンと大樹が同化したような、異形の姿をしている。
 口から覗く牙は、蔓とは比べものにならない程大きく凶悪に尖っていた。

 その、つぶらな瞳が、
 蔓と同じく、二人を認識する。


植物「ぐおっ!!」ルンルン


勇者「きゃああああああああああああああああああ!!!!!」ピョピョピョピョン
相棒「きゃああああああああああああああああああ!!!!!」ピョピョピョピョン

剣士「」ビクン

勇者「怪獣だあああああああ!!!」キラキラキラキラキラキラキラキラキラ
相棒「怪獣だあああああああ!!!」キラキラキラキラキラキラキラキラキラ

剣士「」チーン



第三5「植物ちゃん、またデカくなったなー」
第三5「こりゃまた、甘噛みされたい口に成長しちゃってー」

第三3「ふふふ~、今すぐ食いちぎられて来いよ」


 キャーキャーキャー!!!
 キャーキャーキャー!!!


第三4「うわ、すげぇ……前見た時より大きくなってるじゃんか……」

第三1「魔王様の許可取ってるよなこれ……植物の域越えたぞ」

第三2「なぁ、」


 カッコイイカッコイイカッコイイウワァアアアア!!
 カッコイイカッコイイカッコイイウワァアアアア!!


第三4「植物無双……、でもま、城のセコムには最適だと思う」

第三1「確かに。こんなのがいる城俺なら絶対侵入しないわ」

第三2「なぁってば、」


 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!


第三1「つかさ、どうするあれ。そもそもどうしたんだあれ。テンション振り切れてるぞ」

第三4「物凄いキラキラしてるなー。……誰か踏みつけながら」

第三1「侵入者じゃねーの?」

第三4「ならいいか」

第三2「1、4」

第三1「?」
第三4「え?」


第三2「さっきから呼んでるのに、無視するなよ」

第三4「あ、悪い!あまりの光景にちょっと驚いてて、」
第三1「すまん。見入ってた。--で、どうした?」

第三2「ちょっとやばいかも」

第三4「何が?」

第三2「弟が息してない」


弟「」チーン


第三2「植物が本体見せた辺りから息してない」

第三1「」
第三4「」

第三2「こんなに吃驚するとは思わなくてさ。どうしよう、これ」

第三1「どうしようこれじゃねぇえええ!!!!ああああ弟ー!!!」

第三4「うわああああ!!!生きろ弟!!生きて弟ー!!!!!」フォンフォンフォン

第三2「治癒頼むなー」

第三2「……いや、うん何治癒するのかはわかんないけどさー」ケラケラ


 王の間。

植物『ぐおっ!』ルンルン


魔王「側近!」ガタッ

僧侶「なんだ!」ガタッ

魔王「じゃんけんするわよ!」

側近「いいだろう!恨みっこ無しだからな!」

魔王「ええ!--じゃあいくわよ!最初はぐー!」


第一A「いやいやいや、ちょっと待って下さい。何で突然じゃんけんだなんて」

第一B「……………、」

第一「…………魔王様ー、側近様ー」

第一「表向きの理由は?」

魔王「……城主として、庭園の様子は気になるわ」

側近「あのような巨大生物の存在を俺達が認知していないのは問題だろう」

第一「正直な話?」


魔王「なにあれ凄い生で見たい」キラキラ

側近「とても興味深い」キラキラ

第一A「………………、」
第一B「………………、」

第一A「なぁ、庭園にも巨大生物にテンション上がってる二人組いるんだけど」コソッ

第一B「なんか変な所は似てるよな」コソッ


魔王「……だからじゃんけん……勝った方が先に見に行こうって、」

側近「恨みっこ無し……公平なじゃんけん……」

第一B「いや、王の間なのに側近しかいなかったらおかしいだろ」

側近「俺は魔王戦前の前座というか、」

第一(前座がラスボスと同じ強さとか嫌だなぁ……)

魔王「チラッと見たらすぐ戻るようにするから!!交代で見に行けば……!」

第一A「そもそも狙われてるのが二人だから、念の為に俺達がここにいるんですけど」

第一B「不用意に別れられちゃ困るよな」

第一「結構な人数にとりあえず離れるなって言われてるのにな」


魔王「…………ごめん」シュン
側近「…………すまん」シュン

第一ズ(目に見えて落ち込むなよ……)

第一「………んー、でも、よく考えたらさ」

第一「侵入者は全員誰かしからが対応してるんだし、魔王様達がここにいる必要も無いんじゃない?どうせ誰一人ここにはたどり着けないよ」

第一A「……まぁ、一番強いであろう勇者の男はちょっと頭おかしいに加え副隊長達が対応してますし」

第一A「僧侶の女は動けない、剣士の男は……B、生きてるか、あれ?」

第一B「生きてる。まだ魔法生きてるから確実だな」

第一「しぶといなぁ」ケラケラ

第一A「同感」ケラケラ

第一A「で、ネックなのが魔法使いの女なんですけど。逃げ足だけは早くてまだ捕縛には至ってない」

第一B「行きたい場所には侵入者の二人がいるって言っても、戦力が集中した庭園。--この際もう良いんじゃねーの?見に行っても」

魔王「……いいの?」

第一「俺達も一緒に行けば良い話だからねー」
第一A「副隊長には俺から連絡しておきますよ」


魔王「…………」チラッ
側近「…………」コクッ

第一B「転移はちょっと危ないな、僧侶の魔法で空間変に歪んでるし。ここはのんびり歩いて、」

魔王「さあ行くわよ!しっかりついて来なさい!」キリッ
側近「少し走るぞ!!」キリッ

 ヒュン バタン ピョイ

第一ズ「………………」

第一A「……あーっと、奥の扉から出て窓から二人そろって飛び降りて、」

第一「最短コースですねー、少しの走りじゃなかったですねー」

第一B「……まったく、あの二人の全力疾走にしっかりついて行けるかよ」ハァ





 庭園。

植物「ぐおっ、」スリスリ

第一弟「……………、」


第一弟「植物、えっと……この姿が、本体?」

植物「ぐおっ!」コクコク

第一弟「そ、そっか……じゃあ、今までずっと一部だけ地上に出して、本体は地下にいたってこと?」

植物「ぐおっ」

第一弟「こんなに大きいのに、……辛くなかった?……ごめんな、俺、赤い花の方が本体だと思ってたから」

植物「ぐおぐおっ、」フリフリ
植物(--辛くはなかった。私、土の中が好きなの)

第一弟「辛くはなかった、ってことかな」

植物「ぐおっ、ぐおっ!」スリスリスリスリ
植物(でも、あなたがいるから地上も好き。大好き。みんなもいる。好き)

第一弟「ははっ、くすぐったいって」

植物「…………ぐお……ぐおっ」スリスリ シュン
植物(……でも、この姿は大きすぎて、あなたに絡みつけない。うっかり絞め殺してしまいそう)

植物「ぐおお……、ぐおぐお……」
植物(それに、この姿だと私は私自身の唾液無力化出来ないの……これじゃ、あなたをべちょべちょにすることも出来ない)

植物(べちょべちょにしたら、きっとあなたはでろでろになっちゃう。それはやだぁ……)


第一弟(落ち込んでるな、やっぱり初見で俺が倒れたこと気にしてるのかな)

第一弟「……植物、確かに、お前の姿見て一時意識手放したけど、本当に吃驚しただけなんだ」ナデナデ

第一弟「この姿でも、植物は植物だ。……一部だけでも、怪我させた。守ってやれなくてごめん」

植物「ぐおっ……」
植物(弟……)

第一弟「本当に、嬉しいよ。生きててくれてありがとう。--赤い花も綺麗だったけど、今の植物も好きだよ」ナデナデ

植物「!!」グパッ

第一弟「…………でも、」

 大きく開かれた口が迫る。
 ヒト一人簡単に丸呑み出来そうだ。
 --いや、丸呑みどころか、

第一弟(牙、一つ一つが俺の身長より少し小さいぐらいじゃないか)

 この牙によって、獲物はすぐに刻まれるだろう。

植物「…………」ダラダラ ボタボタ
第一弟「……………」

植物「ぐおっ!」アーン

第一弟「食べちゃうのは駄目だからな!!絶対駄目なんだからな!!!」



第三4「事情を考えれば微笑ましいシーンなんだけどな、あれ」

第三1「怪獣の捕食シーンにしか見えないのが辛い」

第三2「まさに絶対絶命喰われる一瞬って感じだよな」



勇者「~~!!」ピョピョンピョン
相棒「~~!!」ピョピョンピョン

第三3「あ、楽しそうだねぇ。僕も踏みたいなぁ」

相棒「いいよ!」ピョイ
勇者「全力でどうぞ!」ピョイ

第三3「ふふ~、ありがとう~」ピョイ

第三「よいしょ、っと!」ドスン
剣士「」チーン



第三4「ゆ……旅人さん達は植物見てキラキラしてるしひたすら跳ぶし」

第三1「ああ……混ざっちゃったよアイツ……爽やかに悪意こめまくった踏みつけだな……」


第三2「面白そうだから俺も混ざってくるわ」タタタタッ

第三4「………………、」
第三1「………………、」

第三1「ま、いいんじゃね?アイツCと部下さん殺りかけたって話だし」

第三4「だな。もっとやれもっとやれ」


第三5「んー、どうしたもんか、一応あっちも縛っとくべきなのかねー」


第三1「なんだ、食いちぎられに行ったんじゃないのか」

第三5「行ったんだけどさ、自信無いからって植物ちゃんに甘噛み拒否された」

第三4「マジで行っちゃう所がいっそ清々しいよ。多分お前は自分の性癖が原因で死ぬと思う」

第三5「本望だ。死んでからもお前ってホント馬鹿なんて言われそうで嬉しい!」キリッ

第三4「もうやだお前」ハァ

第三1「はぁ………で?剣士の方も縛るって?」チラッ


 キャッキャ キャッキャ ピョンピョコピョン
剣士「」チーン


第三1「僧侶より瀕死なんだし必要無いんじゃねーの?」

第三5「俺もそう思うんだけどさー、念のためっていうか」

第三5「なんせ魔王様達、来ちゃったし」

第三1「は!?」
第三4「へ!?」

第三5「ほら、あっちあっち」


魔王「…………」キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ
側近「…………」キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ


第三1「うわぁ……」
第三4「……あんなに輝いてる二人見るの俺初めて……」

第三5「植物ちゃん可愛いからな、見とれる気持ちはわかる」

第三1「……………」
第三4「……………」

第三1「感性の違いって凄いな……」

第三4「…………そうだな」

植物ちゃんモテキー

>>263の僧侶でびっくりしたが、側近か

>>273
指摘ありがとう。

>>263
痛恨のミス。
×僧侶 ○側近。
これだから同じそは。

すみません気を付けます。


 王の間。
 扉の向こう。


勇者男「美女とお茶をする!この最高の時間をくれるなら俺自身のトップシークレットを教えてやってもいい」キリッ

勇者男「ふっ……少し恥ずかしいがそれほどまでに俺は貴女を評価しているというわけだ」

第二隊長「第一の、第一のっ。やっぱり私嫌だ。アイツなんか気持ち悪い!」クイクイ

第二隊長「それにお前から女子力を盗むのに不都合だ!」

第一副隊長「はいはい凄い凄い」

第二「え、私って凄い!?何が凄いんだ第一の!私の何が凄いんだ!?」

第一副隊長「はいはい凄い凄い」

第二隊長「だから何が……!」

勇者男「会話を放棄したか……、うむ、まとわりつく姿がまるで主人に構ってほしい犬のようだ」

勇者「これもまた良し」


第一副隊長(……帰りたい、)


 フォン
第一副隊長(--通信?Aからね、)

第一A『副隊長。魔王様と側近様が庭園に向かいました』

第一A『……俺達も聞いてませんよ。あんな巨大生物庭園で飼ってたなんて』

第一副隊長「可愛いでしょう?」

第一A『…………ノーコメントで』

第一A『とりあえず俺達も庭園に向かいます。……えっと、頑張って下さい』

第一副隊長「………………ええ」ハァ

第二隊長「通信か?」

第一副隊長「そうよ」

勇者男「魔王の件と見たが。扉の向こうの気配が全て消えたからな」

勇者男「--剣士と僧侶にトドメをさしにでも行ったか?」

第一副隊長「だと言ったら?止めるの?」

勇者男「いや、殺したければ殺せ。止めはしない」

第一副隊長「あら、仲間を見捨てるの?」


勇者男「所詮仕事上のみの関係だ」

勇者男「それより、良いのか?魔王の元へ行かなくても」

第一副隊長「……どうして?」

勇者男「魔法使いは魔王と竜族がいる方向へ向かっているのだが、」

勇者男「……俺も行かねばならんな。--安心してくれ。貴女が良しとするまでこの城の者には手を出さない。神に誓う」

第一副隊長「…………」

勇者男「これも仕事だ。俺は見届けなければならない。どうだ?一緒に行かないか?」

勇者男「俺との散歩に付き合ってくれるのなら、魔法使いが使う魔法について教えてやろう」

第一副隊長「……いいわ。行きましょう」

第二隊長「私も行くぞ!お前なんかと第一のを二人きりにしてたまるか!」

勇者男「良いだろう。腹筋女とはいえ君もアリに思えてきた」

第二隊長「なに……?いやだが私には想い人がだな……」アワアワ

第一副隊長「……………」
第一副隊長(……どうしてこんなに疲れるのかしら)ハァ


 庭園。

魔王「……小さい頃、」

魔王「怪獣が欲しいと父様にねだったことがあるわ」

側近「覚えている。あの時、俺が竜化出来るから我慢しろと誤魔化されていたな」

魔王「ええ。あの頃は私もいつか竜化出来ると思ってたから見事に誤魔化されたけど。今思えば根本的におかしいわ」

魔王「竜と怪獣は同ジャンルではないの。燃える方向性が違うの」

魔王「まったく、父様ったら……許すけど」

第一弟「植物、前にも会ったよね。あちらが魔王様と側近様」
植物「ぐおっ!」ペコッ

魔王「許すけど!」キラキラ
側近「…………」キラキラ

第一弟(……あ、喜んでる。大きいから少し心配したけど、植物、ずっとここにいても良さそうだ)


魔法使い「…………」コソッ
魔法使い(うう……ここのヒト達しつこいし、怖いです……)

魔法使い(逃げ切ったかな……こんな所まで来ちゃったけど、どこだろうここ……)キョロキョロ

魔法使い「!!」ビクッ


魔法使い(あわわわわわ……化け物が、います……)ビクビク
魔法使い(それに、剣士さんと僧侶さん、ズタボロってやつじゃないですか)

魔法使い「!!」
魔法使い(あ、あれは魔王と竜族!)

魔法使い(うう……魔法なんか使ったら絶対私の存在バレちゃいます……)

魔法使い(でも、でも、やらなきゃ……勇者様も、すぐ近くにいるし……)

魔法使い「……いきますよー!」フォン

 キィイイイ

魔王側近「!!」ザワッ
勇者相棒「!!」ザワッ

第一ズ「…………」フォン
第三45「…………」フォン
第三123「…………」ギロッ

第一弟「…………」キッ
植物「ぐるるるるるる」グワッ
蔓×5「くるるるるるる」グワッ

魔法使い「ひぃぃい!」キィィン
魔法使い(みんな一斉にこっち見たあ……)ガクブル


 庭園。

勇者男「--この国は、平和なんだな」

勇者男「敵が魔法を使おうとしてもまずは妨害や相殺を一番に考える」

勇者男「すぐに術者を殺しはしない。戦場では通用しない甘い考えだ」

第二隊長「お前は好かんが同感だ!でも違うぞ、ここは戦場では無い」

勇者男「……そうだな、殺せば良いだけの話ではない」

勇者男「そして、魔法使いが庭園にいる今、貴女や君がこうして歩いているのは、」

勇者男「余程信頼している。庭園にいる者を、」

勇者男「確かに、信頼に値するレベルの者が集まっているようだ」

 キィイイン
第一副隊長「!!」ピクッ
第二隊長(……魔法か、)ピクッ

勇者男「--だが、」

勇者男「魔法使いが使う魔法は、少々特殊でな」


魔法使い「あわわわわ!こ、ここ怖いよぉ……」グスッ

魔王「…………」ギロッ
側近「…………」ギロッ

魔法使い(怖いけど、視線を外しちゃダメ)ガクブル

第一B「代表して警告しておくが、発動した瞬間一斉攻撃だからな」

魔法使い「ひっ………」ビクッ

魔法使い「でも、やらなきゃいけないんですぅう!!」ガクブル キッ



第一副隊長「--特殊、というと?」

勇者男「初見で防ぐのは不可能だ」

第一副隊長「そんな魔法あるわけ、」

勇者男「……美しい貴女、何度でも言うが、俺はこの城の者を傷付ける気は、ない!」フォン

第一副隊長「!」
第一副隊長(魔法!?速い!)


 男の魔法は、宣言通り誰も傷付けない。
 ただ、魔王と側近を分けるように、
 その間に巨大な障壁を出現させただけだった。



魔王(障壁、--あれが侵入した勇者ね!?)
側近(無意味とは思えない。壊す、)フォン



勇者男「すぐに殺さないここでは、初見で防ぐことは不可能。その訳は、」

勇者男「魔法使いの視界に入ってさえいれば、魔法は発動するからだ」

第一副隊長「!!」フォン
勇者男「……」フォン

バシュン
第一副隊長(私の魔法を妨害した!?)
勇者男「やめろ、間に合わない」



魔法使い「いきます!」フォン


 魔法形成時の高音が止まった。
 同時に、魔法使いの背に浮かぶ魔法陣が溶けるように消える。

 攻撃的な魔法は、展開の終わり、発動その一瞬前ですら判断出来る程に空気が変わる。
 だが、この魔法は違った。何も変わらない。

 この系統の魔法を知る者以外、魔王や勇者達でさえ不発を疑った。

 生温い風が--

第一(!!この感覚、知ってる!)ゾワッ

第一「魔法は発動してる!!!!!」

 吹き抜けた。


魔王「っ、」クラッ
側近「う、」クラッ

 ぐらりと、身体が傾ぐ。

勇者「!」
相棒「!」

 倒れた。


勇者男「起きろ!剣士!僧侶!!」フォン
第一副隊長(治癒魔法……!!)



 ブチブチッ

第三5(俺の拘束が破れた!?)
第三5「みんな、気をつ」

僧侶「どけぇ!!」フォン
第三4「なっ!?」

第三23「4っ!!」ガキィン

 5が魔法で形成した僧侶を縛る縄は、完全に千切れていた。
 牽制にしては重い一撃は二人の剣によって防がれる。

第三1「ホントしぶといな!!」フォン

 放たれた火球はかすりもしない。
 俊敏に距離をとった僧侶は身を翻し、向かうは。

第三1(おかしいだろ、今の何の魔法だったんだよ、)
第三1(何で魔王様達倒れたんだよ……!)



第一副隊長「あなた……やってくれるわね……!!」


勇者男「貴女は美しいから、治癒魔法を一瞬で妨害する事など出来ないと思っていた」
勇者男「そして、これから貴女の魔法のみ、妨害させてもらう」フォン

第一副隊長「っ、何を考えて」バシュン

勇者男「貴女は見ていてくれ。どうなるのかを、」
勇者男(……これで義理は果たした。あとは………成功しようがしまいが、手を貸すのは撤退時のみ)

第二隊長「………………」ザワザワ

勇者男(……まさか、このタイプだとはな、)



剣士「仕返しは後できっちりやるからな!!」ヒュン

第一A「ふざけんな、何で倒れた!?何の魔法だよ今の!!」
第一B「くそっ!あのクソ剣士ちょろちょろ動きやがって!!」フォン

第一「あの魔法!俺が知ってるやつと同じなら!」
第一「強制的に身体から魂を弾き出す魔法だ!」

第一「二人は動けない!!守れ!!敵を近付けさせるな!!!」

一同「!!!?」

第一(--!!あの二人、何で倒れて……、まさか!!)


魔法使い「長くは保ちません!早く殺して下さい!!」

魔法使い「欲しいのは身体です!」



第一A(やばい、側近様は間に合う。けど、)
第一B(障壁が邪魔だ、魔王様まで手が回らない!!!)



僧侶(敵の人数が多い。--狙うは、勇者様が障壁で孤立させた、)

蔓「ぐおおお!!!」グワッ
第一弟「させるか!!」フォン


 地面から突き出した植物の蔓、そして弟が二人を止めようと迫り駆ける。が、


僧侶「邪魔をするなぁああ!!!」フォン


 踵を返した僧侶が吠えた。
 燃やしたはずの植物、自分に膝をつかせた魔族。
 その存在は、酷く彼女の癇に触る。

僧侶(殺す、殺す殺す殺す殺す殺す!!!)


剣士「頼むぜ僧侶!」
剣士「俺は、」フォン

 側近--竜族は障壁を隔てた向こう側だ。
 この状況、二人を狙うのは難しい。
 狙うは一人。勇者の男は、その一人を上手く孤立させた。


魔王「…………」


 魔王、そして側近。
 二人は強い。
 だが、いくら強くても意識が無ければ--

 魔王は動かない。
 魂の抜かれた身体は動けない。

 --動かなければ、その命を狩り取ることは容易い。

 剣士はとっては、さらに。


剣士「死んでもらうぜ!魔王様よぉおお!!!」


 形成された剣が、突き刺さった。


 そのまま、切り上げる。

剣士「--あ、」

 宙を舞う腕、握られたままの剣は、紛れもなく剣士の物。

魔王()「……………」

 飛び散った血は魔王の顔を赤く染めた。
 見開いた目、その金色の瞳に光は無い。

剣士(うそ、だろ……?)

 金色ながら暗い闇を思わせるその目に、見覚えがあった。

魔王()「三度目は、外さない」

剣士「うあ、あ……」
剣士(なんでだよ、しばらく動けないはずだ、そんな魔法だ、)

剣士(弾かれた魂は、すぐには戻れない。そんな、魔法だろ……!!)

魔王()「お前……魔王様を斬ろうとしたのか、」

 ゆらりと魔王が立ち上がる。

魔王()「魔王様を殺そうとしたのか、」


剣士「……お前、魔王じゃねーな、」

 声が震える。
 だが、確信はあった。
 ついさっきまで、この背筋が冷える視線と声から逃げようと全力で走った。

剣士(あの馬鹿魔法使い……失敗してんじゃねーか!)


 視界の隅で勇者の男が作り出した障壁が崩れ落ちるのを見た。

 僧侶の悲鳴が聞こえる。


魔法使い「そんな……だってちゃんと、対策はしてました……!!」

魔法使い「抜け出た魂はすぐに身体を探す!!身体だって魂を探すから、すぐに戻らないように!!」

魔法使い「確かに術の性質上同質の魂を持つ二人がすぐに入れ替わり、目覚める可能性はありました!!だからちゃんと遮断した!勇者様の障壁で!」

魔法使い「それなのに、こんなの……おかしいです!!」

魔法使い「世界に四人しかいない同質の魂を持つ者が!四人そろって同じ場所に存在するなんて、そんなの!有り得るはずがない!!!」


勇者男「有り得たからこのような短時間で立ち上がり、動けるんだろう」

勇者男「……運はこの国に味方したか。ははっ、この任務は、失敗だ」

脱字に気付いた。
>259
弟に第一つけるの忘れてた。
>>279
魔王が父様言ってる。正しくはお父様

気を付ける言ったばかりなのにすまん。
今日はここまで。植物モデルはビオランテ。可愛い。



魔王()(………コイツ、今、俺に言った……?)
魔王(……俺が、誰、だって……?)


第一A「……うわぁ、マジかよ……、」
第一B「おいおい、我らが魔王様の目が死んでるじゃねーか………」

第一「わー、目が死んでるのは魔王様だけじゃないやー」



側近()(……少年と植物は守れた、けど、)
側近()(……何時もと違う、感じがする)


第一弟「…………側近様じゃ、ない、ですよね」

植物「ぐおっ?」キョロキョロ
蔓×5「くおっ?」キョロキョロ

植物蔓×5「?」キョトン



相棒()(長く意識を失ったつもりは無いが、)
相棒()(この違和感は、いったい……)


第三1「相棒さんやたらキリっとしてるな」
第三4「あの眉間の皺滅茶苦茶見覚えあるんだけど」
第三2「--あ、見ろよ。最後の一人がようやくお目覚めだ」



勇者()「……………」ユラリ

勇者()「魔力の制御が上手く出来なくなったのは、これが原因ってわけね」ザワザワ

勇者()「……まぁ、やけに雰囲気の変わった二人と、自分の姿を見れば大体察しがつくけど、」ザワザワザワ


第三3(………ノーコメントで)
第三5(……笑うな俺。笑うな俺)


勇者(魔王)「アテが外れたのなら好都合。全力で反撃させてもらうわ」ザワザワザワザワザワ

第三2(笑っていいかな。だって威厳たっぷりに女口調で男が喋ってるわけだし)

第一(やっばい笑いそう。ごめん旅人さんごめん)フルフル
第一(すごく面白い絵だよこれどうしようこれ)フルフル


勇者男「反撃される前に撤退させてもらうがな」フォン

勇者(魔王)「させるとでも?」フォン


 瞬間展開、発動した魔法が激しくぶつかる。
 余波が暴風となり吹き荒れた。


勇者(魔王)「跡形もなく消し飛ばしてあげるわ!」
勇者男(チッ……魔法の押し合いでは部が分が悪い)フォン



第三4「2、3!!お前らは俺達の後ろに!」フォン
第三1「障壁前提の威力だなこりゃ!」フォン
第三5「身体が変わっても魔法の強さは変わらないか、」フォン

第三2「ぷぷっ」
第三3「2くん……緊張感は大事にしようよ」



魔王(勇者)(俺って分裂出来たっけ、)ヒュン

剣士「--っ、その姿でも殺意は変わんねぇのな、」
剣士(勇者のやつ、頼むから早く発動させろよ!これ相手に避け続けるのは無理だって!!)



側近(相棒)(何で私が二人いるんだろう)」
僧侶「うう……」パチッ
僧侶(私……負けた……?竜族、に、)


側近(相棒)「寝とけばいいのに。……でも、起きたなら、警告」
側近(相棒)「動いたら、足からもらう」ザワッ

僧侶「!?」


第一弟「植物、魔法の余波が凄いけど、平気?」

植物蔓×5「?」キョトン

第一弟「平気みたいだね。良かった……」ホッ
第一弟「…………、」チラッ
第一弟(……入れ替わったのなら、このヒトはきっと、相棒さんなんだ……)



相棒(側近)(…………、これは、いや、考えるのは後だ、)
相棒(側近)「第一!!魔法使いの捕縛は任せた!!俺は転移を妨害する!!」フォン

第一A「了解!」
第一A(相棒さんがキリっとしてる!)

第一B「魔法使い、放心状態みたいだし捕縛は簡単そうだ」
第一B(相棒さんがキリっとしてる!)

第一「相棒さんがキリっとしてる!」
第一(任せて下さい!)

第一(あ、言っちゃった)

>>297
ミスの多さなんなのごめん。

魔王()(………コイツ、今、俺に何て言った……?)
魔王()(……俺が、誰、だって……?)

()と何て脱字。


側近(相棒)(私がキリッと?)キョトン

側近(相棒)(--あ、ほんとだ。あっちの私がキリッとしてる!)

側近(相棒)「勇者、大変あっちの私が……って、勇者お取り込み中だった」

側近(相棒)(おまけになんだか勇者が変だ。魔王様みたい。好きすぎて口調が移ったのかな)

側近(相棒)「側近さんも、どこ行っちゃったんだろう……」


第一弟「……、あのっ、相棒さん!」


側近(相棒)「なに?少年」

第一弟(うう、中身は相棒さんってわかってるけど見た目は側近様だから正直気味悪い……)

第一弟「……相棒さん。側近様、いますよちゃんと。あっちに」

側近(相棒)「あっちにいるのは私だよ?二人いるのも変だけど」

第一弟「中身は側近様なんです」

側近(相棒)「中身?」

第一弟「えっと、中身というか魂というか、」


蔓「くお?くおっ!」
蔓(見た目は側近様なのに、中身は相棒さん、不思議!)

側近(相棒)「え、植物、今なんて……」

蔓「くおっ!」フォン
蔓(姿を映せば、わかるよね!)

 ぱかりと開いた口。
 その口内はすぐに鏡面へと姿を変える。

 映ったのは一人の男。
 鏡であることを証明するように、背後の景色まで完全に映っていた。

側近(相棒)「……………」クルリ

 振り返れば鏡の中の男も振り返る。
 どう確認しても、映る物は自分の周りにある物ばかりだ。

側近(相棒)(あっちの私、中身が側近さん。なら、こっちの私は?)アワワ

側近(相棒)(中身が私なだけで、映る、姿が本当なら、私、私今、)アワワワワワワ


第一弟「植物……!魔法使えたんだね!すごいよ!!」

蔓「くおっくおっ!!くおおっ!」
蔓(えへへ!弟が褒めてくれた!嬉しい!)


側近(相棒)(側近さんの、中身に、なってるってこと?」

側近()「~~~」フルフル

側近(相棒)「ひゃわああああああああああああああ!!!?」



魔王(勇者)「!!?」
魔王(勇者)(相棒?--いや、この声は側近さん?)

魔王(勇者)「どうしたんだろう……」ヒュン

剣士「…………いっ、」
剣士(くそっ、またかすった。両腕そろって飛ばされるのも時間の問題、)

剣士(野郎の情けない悲鳴聞いてる場合じゃねぇのに、)

魔王(勇者)「……………」チラッ
魔王(勇者)(分裂した俺といい、やけにキリッとした相棒といい、)

魔王(勇者)(……相棒っぽい側近さんといい、なんだろう、この違和感)

剣士(……こいつ、もしかして)

剣士(現状の把握が全く出来てないんじゃないか?--いや、この場にいて俺があれだけ言ったのにわからないなら、ただの馬鹿だろ)


魔王(勇者)(俺の身体、こんなに動かしにくかったっけ、)

剣士(--だが、馬鹿に賭けるしかない)

剣士「よお、勇者」

魔王(勇者)「……………」

剣士「魔王の……女の身体に入った気分はどうだ?」

魔王(勇者)「……あ?」

剣士「お前、勇者なんだろ?女の身体動かしてる気分はどうだって訊いてんだよ」

魔王(勇者)「--、」ピタッ

剣士「黒髪に金目、かなりの上物だよな。その身体は、」

魔王(勇者)(……俺の髪、黒だっけ。……服、黒い、ドレス?魔王様が着てた、……え、俺今スカートなの?あれ?気付いたら突然下半身スースーするようになった!!)

魔王(勇者)(いやいやいや何で!?何で何で何で!?おかしい、身体がおかしい!おかしいよ!!だって胸ある!俺男なのに!男なのに!!)

魔王(勇者)(え、え?ってことは、俺、俺--)

剣士「中身がお前ってのが勿体無--」

魔王(勇者)「うわああああああああ!!俺が女の子になってるー!!?」



側近(相棒)「ひゃわああああああああああああああ!!!?」


第一ズ「ぶふっ」「ぷっ」「ひっ、く」
第一ズ(駄目だ笑うな笑うな俺笑……)(いくら中身が相棒さんでもこれは……!!)(側近様がひゃわあ言った!凄い悲鳴あげた!)

第三ズ「ぷ、」「っぶっ、」「……っ」「ひゃひゃひゃひゃ!」「少しは……我慢、しなよう、2くん……」



勇者(魔王)「っ!?--な、なんて声上げるのよ側近!力抜けちゃうじゃない!」


相棒(側近)「俺じゃないわ馬鹿!というかお前も勇者の身体でその口調はなかなかエグいとわかれ!」



魔王(勇者)「うわああああああああ!!俺が女の子になってるー!!?」



相棒(側近)「お前は最初から女だろうってああ違う!中身は勇者か!!」

勇者(魔王)「なに!?勇者今気付いたの!?遅すぎるわよ!!」
勇者(魔王)(あ、自分が喋ってる声改めて聞いたらこれは酷い。勇者に悪い気がしてきた………)


勇者男(--混乱してきたな!これは好機!!)フォン

 キュイイイイン
勇者男「逃げさせてもらう!!」フォン


 瞬間、閃光。
 光に紛れ輝く魔法陣は、術者の勇者の男を含め侵入者達の足元で輝く。

 強い光に辺りが満たされてもなお、魔王は攻撃の手を緩めない。

 相殺はせず、勇者の男は障壁で防ぎ続ける。
 待つのは数秒後の、発動。


勇者(魔王)「残念だけど転移魔法はしっかり妨害してるのよ!」

勇者男「悪いが転移魔法ではない!」

 キィィイイイン

相棒(側近)(転移の反応ではない、--面倒な方法を使う、)


 そして、魔法は発動した。
 侵入者達の足元に広がる魔法陣がぐにゃりと歪む。
 次の瞬間には、その対象を包むように渦巻き出した。

勇者男「転移と召還を同時に妨害するのは、その性質上、不可能」


勇者男「さらばだ」ヒュン
僧侶「…………、」ヒュン
剣士「……馬鹿で良かったわ」ヒュン


 発動した召還魔法は、召還に応じた侵入者三人をこの場から連れ去った。


魔法使い「………へ?」


 妨害され応じ損ねた、一人を残して。


第一A「まぁ、一人だけならなんとか妨害出来るよう対策はするよな」
第一B「召還魔法を無理やり転移に応用して乗り込んで来た二人を知ってるわけだし」
第一「うんうん。その二人を知らなかったら、寂しく一人置き去り状態には出来なかったかなぁ」


魔法使い「……あ、あわわわわわわ………」ガクブル


第一B「とりあえず、あれだ。周り見てわかるだろ?完全に敵地だって」

第一A「怪獣も怖いがヒトはもっと怖いぜ。だからさ、使った魔法について全部話そうか」

第一「おとなしく全部話せば手荒に扱わない。けど、話してくれないのなら……そうだなぁ……」

第一「特に俺は、あんたに何しちゃうかわかんないやー」ニコリ


 城内。

第一副隊長「まったく、ヒトをこんな所に連れてきて。どういうつもり?」

第二隊長「すまん。だがお前がいなくても大丈夫だと判断した」

第二隊長「魔王様達も、魂が抜けた割には気配が濃かったからな。あのレベル相手なら大事には至らない」

第二隊長「--ほら、合ってただろ?」

第一副隊長「あなたがあの場から連れ出す前までは大丈夫だったけれど、もし戦力が足りないとなれば問題よ」

第二隊長「第一の。それをお前が言うか?」

第一副隊長「…………理由を聞かせてちょうだい。魔王様達を放って私を連れ出した理由」

第二隊長「--むかついたからな」

第二隊長「…………あの男は、言った通りお前にもこの城の者にも手を出さなかっただろう」

第二隊長「だが、お前を絶えずマークし続けたのはいただけない。とてもむかついた」

第二隊長「状況と相性がよろしくない。下手したら連れていかれるかもしれんと考えたら、つい」

第一副隊長「…………、」

第二隊長「悪かった」

 キィィン
第一副隊長(庭園から、強い魔力。転移?にしては、)

第二隊長「…………、」フォン

第一副隊長(--通信回線、)

第二隊長「壱弐参、任務続行。逃がすな」
第二隊長「肆伍、そのまま僧侶につけ」

第二壱弐参『了解』
第二肆伍『了解』

第二隊長「例え転移が成功しようにも、この国から出ることはないだろう。--」ピクッ

第一副隊長「………成功、したようだけど。……あなたも行くつもり?」

第二隊長「あの男には私がつく。変だしむかつくからな」

第一副隊長「…………」

第二隊長「行ってくる。帰ったらお茶が飲みたい」

第一副隊長「……私ね、あなたのそういう所が好きじゃない」

第二隊長「お茶をねだるのは駄目か」
第一副隊長「違うわよ」

第二隊長「…………、これでも隊長だ。冗談を言える分私はマシな方だ」


第二隊長「それに、私はポジティブだからな、他は好きだと考えることにするよ」

第一副隊長「なわけないでしょう」

第二隊長「だがめげん」ヒュン


第一副隊長「……………、」


第一副隊長(行ったか、)

第一副隊長「これだから好きじゃないのよ。あの脳筋馬鹿」

第一副隊長(仕事になるとすぐああなるんだから、)

第一副隊長(……魔法の第一、脳筋の第二、器用貧乏の第三、なんて言うけど、)

第一副隊長(馬鹿が集まってるから脳筋部隊、だなんて。そりゃあ、脳筋の方がまだ印象良く聞こえるけれど。本来は、)

第一副隊長(……第二部隊は、一つの事しか考えられない、ヒトとして一部欠けた者達が集まる、)

第一副隊長(相手を殺すとだけ考え、許可の命令を待つ、殺し特化の戦闘部隊)

第一副隊長(……犬みたいにまとわりつかれる方が断然マシよ。それに、)

第一副隊長「この私が、魔法を封じられて、むかついてないとでも思ってるの?」ザワッ

第一副隊長「あの馬鹿男……一撃、必ずぶち込んでやるんだから……!!」



魔法使い「うわぁあああん!!勇者様のばかぁ!ちゃんと連れてって下さいいい!!」ポロポロ

魔法使い「怖いよ怖いよふええええん!ちゃんと話すから痛いことしないで下さいー!!」ガクブル ポロポロ


一同「………………」


勇者(魔王)「実質殺されかけたもの。同情は出来ないわね、」

第一「魔王様すみませんホント申し訳ないんですけど、その姿で魔王様やられるの辛いです。俺達辛いです」

一同(同意)コクコク

勇者(魔王)「しょ、しょうがないじゃない入れ替わっちゃったんだもの!」

相棒(側近)「……口を閉じるだけでいい。俺からも頼む」

勇者(魔王)「うう………わかった」シュン

相棒(側近)「まずは入れ替わった魂を元の身体に戻す方法だな。--この類の魔法は初めて見る、俺にはさっぱりわからん。魔王もな」

勇者(魔王)「……」コクン

第一「知ってるのはボロクソに泣いてる魔法使いと俺だけ、か」

第一「といっても俺はちょっと知ってるだけでこの魔法使えないし、魂を戻す魔法構成もさっぱり」


第一B「本人にまた同じ魔法使わせるのは危険だよな、けども俺達にもどうにもならない」


魔王(勇者)「」プシュー
側近(相棒)「」プシュー


第一B「あっちももうすぐ復活するだろうが、知ってるようには思えねぇな」

第一A「こりゃ俺達が魔法の構成見て再現するしかないな。--4、5。お前ら魔法得意だろ。手伝え」

第三4「了解」
第三5「おーけー。正直このままの方が面白いんじゃないかって」バキッ

相棒(側近)「…………」ゴゴゴゴゴ

第三5(……やだ、相棒さんの顔でゴミ虫を見るような目をされるのかなりイイ)ゾクゾク

第三1「5、真面目にやんないとお前の班の奴らに言いつけるぞ」

第三5「ごめんなさい」

第一A(……ああ、わかるぜ側近様。今まさに自分が相棒さんで相棒さんのたわわに実りすぎたおっぱい様がもう近すぎて辛抱たまらんって感じででもここでおっぱい様に手を出すにはプライドがって苛ついてるんだろここは勇気をだしてそのおっぱい様を)

相棒(側近)「例えお前でも殴るぞ」

第一A「すみませんでした」


第一B「止める奴がいないんだから自重しろよ」

第一A「反省」

第一B「ったく……、--で、話を戻すと。再現するには魔法の構成式を出してもらわないとな」

第一B「出してくれるよな、魔法使いさんよ」

魔法使い「あ、え………っと、」

第一「嫌って言える立場?」

魔法使い「うう……で、出来ないんですう……ごめ、ごめんなさいい……」ポロポロ

魔法使い「わたしっ、魔法使いとしては、全然ダメダメで、構成式とか、理解してっ……魔法、使ってなくて……!」

第一「あんたの理解はいらない。展開までの流れを出せって言ってるんだよ」

魔法使い「出来ないんですってばぁ!!例え出来たとしても、再現は不可能ですっ……!!!」

魔法使い「だって、目が違うんです……!私の魔法は、見たヒトの魂に合わせて、調節して初めて発動するんです……!いきなり発動なんて無理だし、そもそも魂が見えないと駄目だし……!」

第一「んー流石に目玉ちょうだいは無いなぁ」

魔法使い「ひぃいいいい!?いや、嫌ですうう!!私の目だから見えるんですっ……私だから見えるんですうう……!」

第一「取りはしないって。落ち着けよ」ケラケラ


第一B「再現不可能、となると。こりゃ、危険なんて言ってられないか?」

相棒(側近)「……同じ魔法をもう一度使わせるしかないな」

相棒(側近)「身体から出しさえすれば自身の身体に勝手に戻る、と認識しているが」

第一「……あってます。けど、いまいち信用がなー」

魔法使い「あ、あの……」

魔法使い「大変、申し上げにくいの、ですが、」

魔法使い「私、もう、あの魔法使えそうにありません……」

第一「何で?」

魔法使い「元々、余裕の状態じゃなかったのに、情報が手には入らなかったから、魔力を沢山使いすぎて、」

魔法使い「魔王と竜族と近しい、魔族の女の魂探って、目標の魂情報を抜き出して、……そうやって、時間をかけて準備する魔法なんです……これ……」

第一「…………あのさ、」

第一「魂弄られんの凄い辛いし、傷でもついたら治癒魔法なんてもんは一切効かない死ぬかぶっ壊れるかの2択なんだけど」

魔法使い「そうです、けど……、どっちでも良いって……、駄目になったら捨てて次を探せば良いって、皆さん言ってましたし……」

第一A「っ、」ザワッ
第一B「A。抑えろ」


第一「…………部下ちゃんが狙われた訳がよーくわかった。確かに、戦闘向きには見えないもんなぁ、魔王様達の近くにいるにしては」

勇者(魔王)「…………」
相棒(側近)「…………」

第一「部下ちゃんに辿り着くまでに誰かに同じ事やってきたってことも、わかった」

魔法使い「で、でも、そのヒトは結局ハズレで、多分死んでると思いますけど、私が殺したわけじゃあ……!」グスッ

魔法使い「そもそも、魔族の女も、上手く攫えていれば……、失敗なんかしたから、私がこんな目にあっちゃっぶ!!」ブニッ

第三5「はいはーい、魔法使いちゃーん、喋るのは訊かれたことだけにした方が身のためよー」フニフニ

魔法使い「むむむむ」ムニムニ

第三5「魔族の出生率は知ってるだろー?一人っ子でよくやった二人っ子はホントよく頑張った三人っ子なんてもう滅多にいないんだぜー」フニフニ

第三5「でー、君が今話していた魔族の女は二人っ子で、兄妹なんだ。おまけにその兄妹と同郷でずっと一緒に育ってきた野郎が三人もいるわけだけど」フニフニ

第三5「君は目の前のその三人に喧嘩を売る勇気はあるわけ?」フニフニ

魔法使い「!!!!」ビクッ


第一A「……………」
第一B「……………」
第一「……………」

魔法使い「……!!」ガクブルムニムニ

第一「……止めなくて良いのにー」

第三5「聞いてて楽しいもんじゃないだろ?」フニフニ

魔法使い「…………、」ガクブルムニムニ

勇者(魔王)「……怒ってる?部下を秘書扱いしてる事」

第一A「まさか。アイツが望んでやってることですし」

魔法使い「…………」ムニムニ
第三5(あれ?震えが止まった)フニフニ

魔法使い「」カクン ムニムニ
第三5(おっとー?意識がないぞー?)フニフニ

勇者(魔王)「……そうね、馬鹿な事を訊いたわ」

勇者(魔王)「……皆に言うわ。嫌になったらすぐに離れなさい。離れたとしても、罰はない」

勇者(魔王)「けれど、離れない内は……好きでやってると見なすから。覚えておきなさい」

第三5「はい、って元気良く答えたいシリアス風味な雰囲気で言うのも悪いんですけど」フニフニ


第一「いや、いくら魔王様でもやっぱり旅人さんの身体だからどう頑張られても笑いを堪えるのに必死で」フルフル

勇者(魔王)「なっ……私だって、私だってね……!!」

相棒(側近)「諦めろ。今のお前は勇者なんだから」

勇者(魔王)「うう……」シュン

第三5「じゃあ報告してオーケーってことね、」

第三5「魔法使い、意識無いんだけど」フニフニ

第三5「まったく、お前等が脅すからだぞ。気絶しちゃったのは」

第三4「……違う原因だろ」

第三4「呼吸は浅いし顔色悪いし……体温も低い。魔力の使いすぎで意識飛ばす典型的な症状だ」

第一A「…………大当たり」キュイン

第一A「魔力枯渇寸前ってぐらいだな。さっきまでペラペラよく喋れたなってぐらい」

第一A「気になるのは、空間視野で見るコイツの存在が、前に確認した時よりさらに薄くになってるって事だな。すすいだらキュキュッと落ちそう」

第一「すすいでみる?」

第一B「キュキュッと落ちたらそれはそれで問題だろ」


第三4「魔力ぶち込んでやればすぐに目覚めるだろ。ここは俺がやる」

第三4「部下さんをああ言った相手に治癒魔法かけるの嫌だろうし」

第一「良い奴だよなお前。……掘られるんじゃないぞ」

第三4「一言多いよ馬鹿野郎」

第三4「もうお前等第一は、魔法使いが目覚めるまであっちの面倒をみてろ」



側近(相棒)「側近さんになってしまった」

魔王(勇者)「女の子になってしまった」

側近(相棒)「あ、やっぱり勇者なんだ」

魔王(勇者)「女の子になってしまったが、一応俺は勇者です。……やけに相棒っぽいと思ったら、本当に相棒だったんだな」

側近(相棒)「うん。そうだよ」
側近(相棒)「でも勇者、女の子になったとか言ってるけど、正しくは女の子で魔王様になってるんだよ」

魔王(勇者)「え?」

側近(相棒)「ほら、鏡」フォン

魔王(勇者)「…………、相棒」

側近(相棒)「なに?」

魔王(勇者)「これマジ?」

側近(相棒)「マジ。さっき一瞬意識飛んだでしょ?アレで私達魂入れ替わっちゃったんだって」

魔王(勇者)「そっかー、」

魔王(勇者)「…………、」

魔王(勇者)「~~~~、」

魔王(勇者)「うひゃあああああああああ!!?」



第一ズ「……………、」

勇者(魔王)「……そんなに嫌なのかしら。私の身体……」

第一B「嫌じゃなくて、アレは確実に別の理由が……」

第一(側近様もそうだけど、男が突然女の子になっちゃうとなぁ、)
第一(しかもベタ惚れしてる相手となると、)

第一A(突然自分におっぱい様が爆誕したようなもんだからなぁ……しかも美乳。相棒さんよりは小さいとはいえ、細い身体には充分--いや、立派に私はおっぱいだと主張している素晴らしいおっぱい様が)

相棒(側近)「三度目は警告なしだぞ」

第一A「すみませんでした」




魔王(勇者)「俺達は入れ替わったと」

側近(相棒)「うん。魔王様が勇者で側近さんが私で私が側近さんで」

魔王(勇者)「俺が、魔王様…………」

魔王(勇者)「……………。」
魔王(勇者)(俺が、今、魔王様……)

魔王(勇者)(この身体は魔王様のもので)
魔王(勇者)(中身は俺だけど身体は魔王様で……)

魔王(勇者)(……魔王様の手、綺麗だなぁ。あ、俺よりちょっと小さいかも)ジー

魔王(勇者)(ってことは、この黒髪魔王様のか。うわぁこんな近くにあるよどうしよう指でくるくる出来る出来ちゃった)クルクル

魔王(勇者)(んー、やっぱり身体が軽い。当然だよな、魔王様細いもん。俺より軽いのは当然で、そもそも身体の作りが違うわけだから、!)

魔王(勇者)(身体の作りが、違う……!!そうだよ、この身体は……ってことは、ってことは……!!)

魔王(勇者)「…………………、」グスッ

側近(相棒)「ど、どうしたの勇者。魔王様の顔が泣きそうになってるよ心苦しいよ」

魔王(勇者)「…………ぅぅ、」フォン


側近(相棒)「魔法?黒い布なんか出してどうしたの、--目の上に巻いて、……目隠し?」

魔王(勇者)「…………うん」メカクシ

側近(相棒)「何で?目隠ししたら何も見えなくなっちゃうよ?」

魔王(勇者)「……………いいんだ、見えない方が」グスッ

魔王(勇者)「だって俺は……」

魔王(勇者)「…………不埒なことを、考えてしまったのです……」

側近(相棒)「…………勇者……」ホロリ


第一A(旅人さん……!)ホロリ
第一B(旅人さん、お前……!)ホロリ
第一(魔王様の身体じゃなきゃ抱きしめて慰めてたぐらい……!)ホロリ


勇者(魔王)「側近、勇者は何て?耳塞がれたら聞こえないんだけど」キョトン

相棒(側近)「いいんだ、聞くな」
相棒(側近)(勇者、お前って奴は………)ホロリ

第一弟(…………旅人さん、)ホロリ
植物「ぐおっ?」キョトン
蔓×5「くおっ?」キョトン


第三1(それが正しい反応だって……)ホロリ
第三4(間違ってないよお前は……)ホロリ


第三2「……正直な話、とりあえず揉むよな」

第三3「そうだねぇ、とりあえず揉むねぇ。流石に入れ替わった本人を目の前にしてはやらないだろうけど」

第三2「そこで思ったんだけどさ、」

第三2「女もやっぱとりあえず触ってみようとか思うのか?だって股からちんこ生えてんだぜ?」

第三3「うーん、どうだろう。少なくとも、魔王様や相棒さんはそんな素振り全く見せてないねぇ」

第三2「よく考えたら今ここにいる女って魔王様と相棒さんぐらいじゃねぇか。あと植物」

第三2「植物は論外として今の相棒さんは側近様の身体だからなぁ、側近様怖いし流石に訊けないか」

第三3「だからと言って魔王様に訊いたりしたら、2くん側近様にぶっ飛ばされちゃうよ~」

第三3「だよなぁ……仕方ないから今度5の班の奴らに訊いてみるわ」

第三5「うちの俺女と痴女とヘタレに何てことを訊こうとしてるんだお前6と痴女は真顔でとりあえず握る言うに決まってるだろ!」

第三5「そして俺はとりあえず揉んで何すんのよ馬鹿!って顔真っ赤にした身体の持ち主にビンタされるが良いのかこれお前の身体だろ!って言い返しつつまた色々触りだした俺の鳩尾に一撃入れた彼女に私の身体だからいいのよこのクズって睨まれたい」


第三3「2くん、それってドストレートにセクハラ発言だってことわかってるよね?」
第三3「あと5、お前は喋るなもう喋んな」

第三4「旅人さんがああだというのにコイツ等ときたら……」
第三1「汚れきってんじゃねーか……」



勇者(魔王)「ああもうっ、いったい何だっていうのよ!」ジタバタ

相棒(側近)「ちょ……暴れるんじゃない!--あ、こら待て!」

勇者(魔王)「勇者!」タタタッ


側近(相棒)「あ、勇者が来た、じゃなくて魔王様が来た」

魔王(勇者)「!!」ビクッ

勇者(魔王)「目隠しなんてしてどうしたって言うのよ!何か言ってたみたいだけど、側近が私の耳塞ぐから聞こえなくて……」

勇者(魔王)「ねぇ、私の身体って私が知らないだけで不備があるとか?私の身体って泣く程辛いの?」

魔王(勇者)「………違う、そうじゃなくて……俺が、悪いんです……」フルフル

勇者(魔王)「どうして?あなたが何をしたって言うの」

魔王(勇者)「~~~~~~~!」フルフルフルフル


側近(相棒)「やめて魔王様!これ以上は……これ以上は勇者が……!!」グスッ
相棒(側近)「やめなさい!頼むから訊くのはやめてあげてくれ…!」グスッ


勇者(魔王)「二人がそこまで言うなら……」
勇者(魔王)(気になりはするけど……)


第一A(二人共良い子や……)ホロリ
第一B(4人揃うとカオスさが増すな……)
第一(何か話を振らないと……魔王様絶対まだ気になってる……)アワアワ

第一「あ!そうだ。……旅人さん達ー」

魔王(勇者)「……………?」
側近(相棒)「なに?」

第一「この類の魔法について知ってたりする?」

魔王(勇者)「……ごめん、知らないや」
側近(相棒)「魔法が発動した時のあの感覚も初めてだった」

第一「魂云々の話は?」

魔王(勇者)「……一般的な知識ぐらいかな。入れ替わりとか、こういう事象が存在するなんて知らなかった」

側近(相棒)「同じく。これって戻れるのかな、色々とまずいよ特に勇者が」

相棒(側近)(正直俺も相当まずいことになるがな)


第三4(……出さないだけで側近様も相当まずいことになってるんだろうなぁ、)
第三1(相棒さんの身体ってある意味凶器だしな……)


第一「よし、じゃあ、うちの隊長受け売りのぷち魂講座といきますか。どうせ魔法使いに目覚めてもらわないと、元に戻る方法はさっぱりのままだし」

勇者(魔王)「……あまり時間はかけたくないのだけど。いざとなったら、この身体借りさせてもらうわよ。勇者」

魔王(勇者)「相棒、いざとなったら俺を縛ってくれ。俺が何も出来ないように」ボソッ

側近(相棒)「……わかった、任せて」ホロリ


第一「んー、すでにガンガン使っておいて言うことでも無いけどさ。いくら同質の魂って奴でも本当は魔法使う事も推奨出来ないだよね」

勇者(魔王)「何故?」

第一「やっぱり自分の身体じゃないから、というか……」

相棒(側近)「同質の魂というのもな……そもそも、ヒトを人形に--生体を操作する類の魔法であるように、生きたヒトの身体を他の誰かが動かすことなど……」

第一「通常じゃ有り得ない。けれど有り得てしまうのが、同質の魂ってやつ」


第一「自分のそっくりさんは世界に三人いるって言うけど、アレ本当なんだよ。魂の話になるけど」

第一「そっくりなのは魂の形質。身体はその主の魂に合うように作られてるから、同じ形質なら別の魂でも問題なく動かせる。一応は」

勇者(魔王)「一応は、って?」

第一「やっぱり、ヒトの身体だから。自覚があろうと無かろうと、身体の持ち主は限界を知ってる」

第一「例えば、旅人さんは自分の身体の限界と自分がやってはいけないことを知っている。知っているから、無意識にでもやらない」

第一「でも、今旅人さんの身体にいる魔王様はそれを知らない。魔法って身体より魂で使ってるから、言い方が悪くなるけど、使った魔法が身体の自爆スイッチを押すことになるかもしれない」

魔王(勇者)「自爆スイッチ怖い」
側近(相棒)「自爆スイッチ怖い」


相棒(側近)「確かに……魔法には相性がある。……悪かったな、この身体で考え無しに魔法を使った」

勇者(魔王)「私も……ごめんなさい。自分の身体と同じように魔法を使ってしまったわ」



側近(相棒)「謝らなくて大丈夫だよ。だって爆発しなかったし、緊急だったんだし」
魔王(勇者)「そうだよ。俺達も武器出すぐらいは魔法使ったし、」

魔王(勇者)「なにより俺の身体のせいで魔王様が吹き飛んだら、もう立ち直れないよ」ヘラリ

勇者(魔王)「もう……見た目は私のくせに、」
勇者(魔王)「……あなたに無用な心配をかけないためにも、ちゃんと戻らなきゃね。元の身体に」


勇者(魔王)「それにしても、」


勇者(魔王)「私ってヒトの目からこう映っていたのね。なんか新鮮」ジー

勇者(魔王)「うーん、」ツンツン

魔王(勇者)「えっと……俺の頬……じゃなくて魔王様の頬だ、……つついたりなんかしてどうしっ!?」ゾクッ
魔王(勇者)(あああ!?今魔王様が首ツツツーってやった!ゾクッときた!)アワワワワ

勇者(魔王)「私、昔からくすぐったがりでね、」ツツツツ-
魔王(勇者)「ひゃあああ!?」ゾクゾク

勇者(魔王)「やっぱりくすぐったがりなのは身体のせいか……ふむ、」コチョコチョ

魔王(勇者)「ちょ、ひゃ、ままま魔王様待って駄目だって駄目くすぐっ……ひゃああああ!!」ゾクゾク


勇者(魔王)「そこまでくすぐったいの?……そういえば」

勇者(魔王)「私、誰かに全力でくすぐられたことなかったわね……」ワキワキ

魔王(勇者)(--わ、わかる。見えなくても、この気配は……!!)

魔王(勇者)(だ、誰か助けて……相棒……!)


側近(相棒)「うわぁ……大きい方だとは知ってたけど、私の胸ってこんなになってるんだ、」ジー

相棒(側近)「…………、あの、だな」タラリ

側近(相棒)「………………」ワキワキ


魔王(勇者)(相棒ぉおおお!!?側近さん逃げて!逃げてぇえ!!!)



第一ズ(……面白くなりそうだから黙っておこう)
第三ズ(……面白くなりそうだから黙っておこう)

第一弟(……ここからは、俺や植物が見てはいけない展開になりそうだ)

第一弟「--植物、今日はもう疲れただろ。そろそろ休もうか」
第一弟「とりあえずさ、移動しよう。みんなも城も、大丈夫だから。ね?それに、ちゃんと俺も一緒に行くから」

植物「……?ぐおっ、ぐおっ!」コクン


勇者(魔王)「勇者、少しの間で良いから、ちょっと付き合ってくれない?」

魔王(勇者)「ひっ、すみませんごめんなさい待って下さい魔王様!!」ジタバタ

勇者(魔王)「もうっ!暴れない!別に痛い事するわけじゃないんだから!」グイッ

魔王(勇者)「うわっ!?」グラッ
魔王(勇者)(まずい、バランスが崩れて--)

勇者(魔王)「あっ…!」グラッ

魔王(勇者)(魔王様を下にするわけには!)グイッ

 ドサッ

勇者(魔王)「……倒れたのは私のせいなのに、あなたが私をかばうことないじゃない」

魔王(勇者)「……えへへ、身体が勝手に、」ヘラリ

勇者(魔王)「それ、私の身体なのに?」クスッ

魔王(勇者)「あ!……ごめん、俺、」シュン

勇者(魔王)「ありがとう。おかげでどこも痛くないわ。あなたは平気?」

魔王(勇者)「うん。大丈夫」

勇者(魔王)「ならば続きといきましょうか!」ニヤリ


魔王(勇者)「!!」
魔王(勇者)(まずい……この状況、魔王様が俺の上にいるから、)

魔王(勇者)「だ、駄目です!絶対駄目!」アワワワワ

勇者(魔王)「あ!--ごめんなさい、そうよね。これじゃ駄目だったわね」

勇者(魔王)「さっき指摘されたばかりだというのに、忘れてたわ。今は勇者の身体、男の身体でこの口調はおかしい」

勇者(魔王)(そう、今の私は勇者なんだから、男……一般的な男の口調なら勇者もきっと納得してくれるはず)

勇者(魔王)「悪いな勇者。これで良いか」ニヤリ

魔王(勇者)(そ、そうじゃなくてー!!!!)アワワワワ



第一A(あかん。これはあかん)

第一B(おー、あんな顔も出来るんだな。ふにゃふにゃしてるかヤンデレのどっちかな旅人さんが悪そうだ)ケラケラ

第一(見た目だけなら魔王様に馬乗りになってる旅人さん。どう見ても魔王様襲われてます)ケラケラ



勇者(魔王)「じゃあやるか」ワキワキ

魔王(勇者)「何を!?……あ、う、あああああ駄目ホント駄目だよこれぇえええ!!」


勇者(魔王)「何が駄目なんだよ!」

魔王(勇者)「いやだってみんなもいるんだよ!?」
魔王(勇者)(この状況ヤバいこの状況ヤバい!服乱れてる気がする!これ魔王様の身体なのに……!)

勇者(魔王)「なんだそれ、誰もいない所だったら良いって言うのか?」
勇者(魔王)(くすぐるだけなのに……)

魔王(勇者)「~~~!!」グイッ
勇者(魔王)「きゃ!?」ドサッ

魔王(勇者)「駄目」キリッ

勇者(魔王)「さっきと位置が逆……」

勇者(魔王)「…………確かにこの位置はちょっと恥ずかしいかもね」クスッ

魔王(勇者)「…………、」ドキドキドキ
魔王(勇者)(友達友達俺達は友達。じゃれてるだけ。俺達友達!)



第一A「今の魔王様の声はモロ自分の声なのに完全に魔王様認識出来るのが凄い」

第一B「声は脳内変換。逆に自分の顔見なくて済む目隠しの効果が大きかったんじゃねーの」

第一「それにしても好きって偉大だなー」


側近(相棒)「……………、」ジー

相棒(側近)「……………、」

側近(相棒)「女の子には、羨ましいってよく言われるんだ。部下さんにも少し分けろって言われて、」

側近(相棒)「こうやって、」ガシッ

相棒(側近)「ひっ!」ビクッ

側近(相棒)「すっごい揉まれたんだー」モミモミモミモミモミモミ

相棒(側近)「うう……!」カァァア
相棒(側近)(この身体はコイツのものだしどうしようとコイツの勝手だだがしかしだがしかし……!)フルフル



第三1「すげぇ……相棒さん側近様羞恥で殺そうとしてるんじゃね?」
第三4「あの凶器を本気で揉みにかかった部下さんもすげぇよ……」



側近(相棒)「……側近さんの手、大きいね、同じ竜族なのに」モミモミモミモミ

側近(相棒)「にも関わらず手から余る私の胸。もう……何でこんなに大きくなっちゃったんだろう………」モミモミモミモミ

相棒(側近)「………………」グスッ


側近(相棒)「そういえば女の子にはよく揉まれたなぁ……だからかな、いやでもよく揉まれるようになったのは勇者と旅するようになってからだし」モミモミモミモミ

側近(相棒)「動きにくいし重いし、……いらないとは言わないけどこんなに大きくなられてもなぁ……」モミモミモミモミ

相棒(側近)「……………頼む、」

側近(相棒)「?」モミモミモミモミ

相棒(側近)「……頼む、から……もう勘弁して下さい…………」フルフル



第三2「新兵時代、女子更衣室の前を通った時さ」

第三2「『きゃー○○胸大きいー!揉ませてよー!』『や、やめてよぉ!』『私にも揉ませろー!』とか女の子がきゃっきゃうふふしてる声が聞こえるわけよ」

第三2「で、思うわけだ。何で女って躊躇いなく人のおっぱい揉めるんだ?そんで何で揉ませるんだ?やっぱり同性だからか?」

第三2「更衣室の会話聞いたあの時、俺は心底女に生まれたかったとも思った」

第三3「2くんが男の子してる事がよくわかるエピソードありがとう。気持ちはわかるし確かに不思議だよねぇ」

第三3「今回の相棒さんは自分の胸ってこともあるし、魔王様も………あれは姿が自分だから出来る事だろうし一概には言えないけど」

第三3「女の子って何であんなに大胆なんだろうって思っちゃうよねぇ」


第三4(……アレ見た目だけなら、顔真っ赤にして動けないでいる相棒さんに側近様がただただセクハラしてるだけだしなぁ)

魔法使い「……………ぅ、」

第三4「あ、」

魔法使い「……………」

第三4「目、覚めたみたいだな。気分はどうだ?」

魔法使い「……私、魔力、切れてたのに」

魔法使い「あなたが治癒魔法を……?」

第三4「まぁ、うん。君の魔力性質に変換して補充したつもりだけど……その様子じゃ上手くいったみたいだな」

魔法使い(私……人間なのに……、この魔族、私に治癒を……)

魔法使い「どうして、助けたんですか……?」

第三4「どうしてって……助けるだろ普通」
第三4(早く目覚めてもらわないと困るわけだし)

魔法使い(え、普通?助けるのが普通?私人間なのに……!)
魔法使い(みんな、怖いけど、このヒトは怖くない……!)キュン

第三4「目覚めてすぐで悪いけど、魔法は無理そう?」

魔法使い「ご、ごめんなさい……」


第三4「そっか、どうしたもんかな」

魔法使い「……怒らないんですか?」

第三4「出来ないんだろ?なら仕方ないじゃんか」
第三4(魔法以外の他の方法があればいいけど、)

魔法使い(優しい……)キュン

第三4「入れ替わった魂を戻す方法、何か知らないか?」

魔法使い「あのっ、魔法以外でですか?」

第三4「魔法以外でも、もう何でもいい。知ってたら教えてくれないか?」

魔法使い「魔法以外でいいなら、ありますっ!」

魔法使い「魂は本来の身体を、身体は本来の魂をちゃんと覚えています。ですから、」

魔法使い「魂に本来の身体を教えてあげれば、魂は勝手に本来の身体に戻っていきます!」

第三4「その方法は?」

魔法使い「体液の直接交換です!」

第三4「…………へ?」

魔法使い「体液の直接交換です!!」


第三4「……直接?」

魔法使い「はい。そうじゃないと認識出来ないんです!」

第三4「………………、わかった。ありがとう」


第三1「なぁ、今の俺の聞き間違いとかじゃないよな」
第三4「おう、聞き間違いじゃないぞ」

第三4「1、2達呼んでくれ」

第三4「おーい第一ー、ちょっと来てくれー。相談したいことがある」

第一ズ「おー」「何だー?」「何かわかったー?」

第三1「2、3、5……は口に何貼り付けてんだ怖いな三人まとめてちょっと来い話がある」

第三235「おう」「なあにー?」「むむー」



第三4「……………集まったな、」

第三4「魔王様達の魂を元の身体に戻す方法が、わかった」



第一「……………、魔王様、旅人さん、じゃれるのも良いけどちょっとこっち来て下さい魂を戻す方法がわかりマシタ」

第一A「側近様、魂を戻す方法がわかりましたよ」
第一B「相棒さん胸揉むの止めてちょっとこっち来てくれ」


勇者(魔王)「わかったの!?」
魔王(勇者)(友達友達友達友達俺達友達……え、わかったの?)

側近(相棒)「わかったの!?」パッ
相棒(側近)(やっと解放されたもう嫌だ……)グスッ


第一「落ち着いて聞いて欲しいんだけど」

第一「魂は自分の身体を覚えていて、身体も自分の魂を覚えている」

第一「だから、魂に自分の身体を認識させれば、この身体は自分の身体じゃないと魂に認識させれば」

第一「勝手に戻る、と」

勇者(魔王)「その方法は?」

第一「…………、体液の、直接交換」

勇者相棒魔王側近「…………え?」

第一「体液の直接交換。直接じゃないと駄目なんだってさ」


相棒(側近)「……それは、お前、まさか……」アワワワワワ

勇者(魔王)「あ、あのそそそれって、」カァアアアア

側近(相棒)「~~~」カァアア
魔王(勇者)「」フラッ パタッ チーン

第一「……ご想像通り、というか、……」

相棒(側近)「」
勇者(魔王)「」

側近(相棒)「ゆ、勇者起きてよ一人にしないでよー!」ユサユサ
魔王(勇者)「……………、」



 コソッ
第一A「……魔王様も側近様も色恋沙汰とは無縁に生きてたわけだし、少しはさ、って思うんだよ」
第一A「勇者さんと相棒はちょっとアレだけど悪い奴らじゃないし、正直応援してた」

第一A「でもこれは……早すぎだと思うの。もう少し段階を踏んでさ……」

第一B「……初めてが中身は違うとはいえ自分とか、」

第一「……くそっ…ニヤニヤ出来る状況のはずなのに……ニヤニヤする状況のはずなのに……複雑だ俺」



勇者(魔王)「そ、そうよ!」

勇者(魔王)「きっ……きす、というのは、どこかの国では、そのっ、挨拶みたいなものだって、いうし……!」フルフルフルフル

相棒(側近)「あ、ああそうだな!元に戻るためだ、キスなんて挨拶だと、考えたら……!」


第三2「いやでも体液の直接交換なんだし、挨拶レベルじゃ駄目だろ」

第三2「絶対アレじゃん。舌入れる方。ディープキス。所謂ベロちゅー」


勇者(魔王)「ひぅっ!!」
相棒(側近)「ひうっ!!」


魔王(勇者)「相棒」
側近(相棒)「なに?」

魔王(勇者)「俺もう駄目かもしれない」
側近(相棒)「そうなんだ私もだよ」

魔王(勇者)「」チーン
側近(相棒)「」チーン


第三1「お前って奴はちょっとぐらいオブラートに包んで言えないのか!」


第三2「でもベロちゅーしないと戻んないんだろ?」

第三4「ベロちゅー言うな言う度にダメージ受けてるんだぞ魔王様達!」

第三2「--あ、違うか。もう一つあるじゃん。ベロちゅー意外の方法」

第三4(全く気にしちゃいねぇ……!)

第三2「上が無理なら下があるだろ。セッ

相棒(側近)「」フォン

 ぶふぉ!!」ドサッ

第三2「げほごほっ……っう、ああ……、……涙と、鼻水が……とまんね……」ダラダラボロボロ

相棒(側近)「続きを口にするならば、花粉症の症状ではすまさないからな」ゴゴゴゴゴゴ

第三2「うう……側近、様、ひっ……で……」

第三3(側近様に魔力の塊ぶち当てられたのか、2くん魔力耐性低いから……)

第三3「……でも、これは2くんが悪いよう」セナカ ナデナデ

第三3「僕2くんのこと好きだけどそのデリカシーの無さは問題だと思うなぁ」ナデナデ

第三4「同感。だから治癒は使わないぞ。ちょっと苦しんで反省しろ」

第三2「……うう…………」ダラダラボロボロ


勇者(魔王)(あうう……まさか、……し、舌を入れなきゃいけないなんて、)
勇者(魔王)(初めてなのに、キス自体、初めてなのに、いきなりそんな高難易度……!)

勇者(魔王)(……でも、)

勇者(魔王)「……戻れる方法がわかったのに、悠長に悩んでる場合じゃない」

勇者(魔王)「あの勇者達は第二が追ってる、逃がす気はない」

勇者(魔王)「そして、そろそろ隣国へ行った密偵からなにかしらの情報が届いても良い頃」

勇者(魔王)「私の国に手を出した馬鹿をぶん殴りに行かなきゃならないのに、こんな……こんなことでっ……迷ってられない!」キッ

相棒(側近)「…………!!」グッ
相棒(側近)「ああ、そうだな……俺達は、やらねばならない大事な仕事が残っている、」キッ

魔王(勇者)(……そうだ、誰も傷付かない安全な方法で戻れるってわかったのに!)

側近(相棒)(……うん、そうだよ。私の気持ちぐらいで、躊躇ってる場合じゃないんだ!)

魔王(勇者)「…………」キッ
側近(相棒)「…………」キッ

勇者(魔王)「………側近!勇者!相棒!私が何を言うか、わかるわね?」


相棒(側近)「ああ。俺は大丈夫だ」キッ

魔王(勇者)「ごめん。でも俺、もう大丈夫。いける!」キッ

側近(相棒)「私も平気。何時でもいけるよ!」キッ


勇者(魔王)「ありがとう。良い返事よ」

勇者(魔王)「……外見は自分、鏡相手にやっていると思えばいい!」

勇者(魔王)「だから、やるわよ。やってやろうじゃない!!」


勇者(魔王)「ベロちゅーとやらをね!!」



第一「あ、ごめん俺泣けてきたわ」グスッ

第一A「初めてなのに、少なくとも魔王様と側近様は初めてなのに……!」グスッ

第一B「あの反応見る限りあの二人もだろ」グスッ

第一A「初めてなのに鏡相手とか言うなんてさ……!旅人さんと相棒さんなんてベタ惚れなのに何の因果でベタ惚れの相手が中身の自分と初めてのキスしなきゃいけないんだよ……!」

第一「Cがいなくて良かったのかもな、アイツ号泣しそう」

第一AB「同感……!」


 視界は黒一色。
 目隠しにと形成した黒い布は光すら遮り、暗闇だけを与え続けていた。

 視覚で得られる情報は皆無。
 だが、気配と声は、彼女がすぐ目の前にいると知らせていた。


勇者(魔王)「……まだ目隠し?」

魔王(勇者)「……ごめん。俺、魔王様の事好きだから、色々見ちゃうんだ。だから目隠し」

勇者(魔王)「見ちゃうものなの?」

魔王(勇者)「見ちゃうものなの。やっぱ男だからね、俺」

勇者(魔王)「……………、」

魔王(勇者)「やっぱり、軽蔑したかな」

勇者(魔王)「しないわよ、それぐらいで。そりゃあ、色々見られたら困りはするかもしれないけど……私、そこまで、無知じゃないわ」

勇者(魔王)「それに、目隠しまでして、私に気を使ってくれてるじゃない。……ふふっ、こうして見ると、目隠ししてる私って笑えるわね」

勇者(魔王)「……ねぇ、見えないって不便じゃない?」

魔王(勇者)「意外といけるもんだよ。気配とか、声と、か……」

 肩に手が置かれた。その感覚に言葉が詰まる。


勇者(魔王)「触れられる感覚とか?……少し、驚かせてしまったみたいだけれど」

魔王(勇者)「ははっ、緊張してるからかな。上手く察知出来なかったみたいだ」

勇者(魔王)「そうよね。ふふっ、ドキドキしてるのは私だけじゃないのに」

魔王(勇者)「…………、」
勇者(魔王)「…………、」

魔王(勇者)「……ごめん、こんな形になって」

勇者(魔王)「……何故謝るの?巻き込んだのはこちらなのに」

魔王(勇者)「なんか、俺だけ得した感じだから。友達相手にそう思うのは駄目なのに」

勇者(魔王)「私は、」

勇者(魔王)「あなたの事は嫌いじゃないの。友達として、凄く仲良くなれそうで、寧ろ好き」

勇者(魔王)「でも、異性としては、まだわからないわ。あなたが私に向ける好きと、私があなたに向ける好きは、違うかもしれない」

魔王(勇者)「…………、魔王様、」

勇者(魔王)「けれど、」

勇者(勇者)「嫌じゃないの。凄く恥ずかしいけど、嫌悪感は無いわ。だからあなたも気にしないで、犬にでも噛まれたと思いなさい」

魔王(勇者)「……犬って……あはは、了解。これはノーカウントってことで」


勇者(魔王)「……勇者、口開けなさい」

魔王(勇者)「……ここは俺からいくべきじゃないのかな」

勇者(魔王)「馬鹿。お互い緊張して震えてるのに、ここは巻き込んだ私から行くのが筋ってものよ」

魔王(勇者)「えー」

勇者(魔王)「えー、じゃない。やり方とか知らないから、やりやすいようにするの」

勇者(魔王)「だから、おとなしく従いなさい。ほら、さっさと口開ける。魔王命令なんだから」

魔王(勇者)「魔王命令ね、--わかった、従うよ。これで良い?」

勇者(魔王)「……そのまま、口開けたまま。喋らず、動かないで、良いわね?」

 頷くと、肩に置かれた手に力が入るのを感じた。

勇者(魔王)「いくわよ、」


 気配が近付く。
 吐息を感じた。

 不思議な気分だ。くらくらする、何も考えられなくなる。

 唇が合わさるまで、舌が絡み合うまで、
 あと、一秒。

これはラブコメこれはラブコメこれはラブコメ。今日はここまで。


 目の前にあるのは紛れもなく自分の顔のはずだが、
 それが全く別人の顔に見えてしまうのは、やはり中身が違うからなのだろう。

 耳まで赤い自分の顔を見て、さて私はと思う。
 彼の顔を同じく真っ赤にさせているのだろうか。


側近(相棒)「ぷくくっ……」

相棒(側近)「何がおかしい、」

側近(相棒)「私の顔、真っ赤だなーって。ただでさえ目も赤いのに、」

相棒(側近)「……仕方ないだろ、慣れてないんだ。こんなこと」

相棒(側近)「……お前は、割りと平気そうに見える」

側近(相棒)「そうかな?……ふへへ、気を抜くと足がっくがくになりそうだから頑張ってるよ、一応」

側近(相棒)「--証明すると、」

相棒(側近)「お、おい……!」

 取った手を胸に当てると、彼は慌てたように手を引こうとした。

側近(相棒)「これ、側近さんの身体なのに。そう慌てなくても、」

相棒(側近)「だがな、…………って、お前、これ」

 伝わる鼓動に気付いたらしい、

側近(相棒)「……証明、出来た?」

相棒(側近)「ああ。……お互い、凄い事になってるな、」

側近(相棒)(--あ。側近さん、笑った)

相棒(側近)「!……どうした?鼓動、また一段と早くなったぞ」

側近(相棒)「……自分の顔なのになぁ。……側近さんが笑った、って思ったら、」

相棒(側近)「~~~!!」

側近(相棒)「あははっ、まだ赤くなれるんだね。顔」

相棒(側近)「お前が、そういうこと、言うから……!」

 ごめん、と言う代わりに笑ってみせた。
 すると彼は、迷うように口をもごもごと動かした後、

相棒(側近)「……………俺は、」

相棒(側近)「……こういった、色恋沙汰とは、無縁に生きてきた」

相棒(側近)「だから、正直な所、まだわからないんだ。好きとか、どうとかは」

相棒(側近)「……お前は、不可思議で変な奴だと思ってはいるが、その……嫌いではない。友人としてなら、良い関係を築けそうだと、はっきりと言える」

相棒(側近)「--すまんな。俺がこうなのに、こんなことになってしまって」

相棒(側近)「これは、お互いが好意を持つ仲でする事だろう、」

側近(相棒)「ごめん、はこっちの台詞だよ。私が相手じゃ嫌かも--」

相棒(側近)「嫌じゃない!」

側近(相棒)「!!」

相棒(側近)「……あ、……というか、その、とても、それこそ死ぬ程恥ずかしいが、嫌悪感は一切無い。それだけはわかってくれ」

側近(相棒)「………………了解、」

相棒(側近)「それと、だな。頼みがある、……目を、閉じてくれないか」

側近(相棒)「…………うん、わかった」

 目を閉じた。
 躊躇うように迷った手が、そっと、肩に置かれる。

相棒(側近)「……………、」


 近付く気配。
 吐息を感じた。

 不思議な気分だ。くらくらする、何も考えられなくなる。

 唇が合わさるまで、舌が絡み合うまで、
 あと、一秒。




魔法使い「……はわわわ……そ、そんな関係だったのですね、」

魔法使い「私が見てきたヒト達は皆傷口を合わせる事で元に戻っていたから……」


一同「」

魔王勇者「」ピタッ
側近相棒「」ピタッ


第一「--え、直接ってそれもアリなの?」

魔法使い(さっきの怖いヒトだ……ちゃんと答えなきゃ痛いことされちゃう……!)

魔法使い「は、はい!傷口を合わせる事はありです!でも少しとはいえ痛みを伴いますから今のこの方法の方が……!!」


魔王勇者側近相棒「」ザシュ


第一A(ひぃ……!滅茶苦茶深く切った音がした……!)


魔王勇者側近相棒「」ボタボタボタ



第一B(絶対切りすぎてる!絶対深くいきすぎてる!)


魔王勇者側近相棒「」ギュ




魔王「戻ったわね」
勇者「うん、戻った」

側近「戻ったか、」
相棒「戻った戻った」

側近「--みんな手出せ。まとめて治癒魔法をかける」フォン

勇者「俺はいいや。すぐ治るし」
勇者「あ、そうだ魔王様ごめん。手怪我させた」

相棒「私も。ごめん側近さん、かなり深くいったかも」

魔王「……私もごめんなさい。でも、お互い様よ。痛みなんて治ったらすぐ消えるわ。傷だってね」

側近「俺からも、すまないと言わせてくれ。傷跡は絶対に残さない」フォン フォン


側近「--これでよし」


相棒「ありがとう。もう痛くない」
魔王「ありがと。……勇者は?治った?」

勇者「うん。この通り」ヒラヒラ

魔王「早いわね。でも、治ったのなら良かったわ」

魔王「じゃあ私と側近は一度執務室に戻るから」
側近「悪かったな、人間との戦いに巻き込んで。あとはこちらでやるから休んでろ」

勇者「好きでやってるからいいのに。な」
相棒「うん、そうだよ。……でも、お言葉に甘えてちょっと休んでる」

側近「そうしてくれ」

側近「--第三。魔法使いは任せた。処遇は追って伝える」フォン

魔王「じゃあ、またね」

 ヒュン

相棒「うん、」
勇者「またね」



勇者「………………」
相棒「………………」


第一B「お、おい。あの二人微動だにしないぞ大丈夫か」

第一A「大丈夫じゃない気がする!これは絶対に大丈夫じゃない気がする!」


勇者「…………」フラッ パタッ
相棒「…………」フラッ パタッ


第一「やっぱりそうだよな!!」


勇者(うわあああああああああああ!!うわああああああああああああああ!!)ゴロゴロゴロゴロ

相棒(ひやああああああああああ!!あああ!うわああああああああああああ!)ゴロゴロゴロゴロ


第一B「お、別パターンきた。悶えてるのか!これ悶えてるんだな!」

第一A「やっぱりこれで良かったんだと思うけど少し惜しい気もしたのが正直な感想」

第一「とりあえず落ち着くまで見守ってやるか」


 執務室。


魔王(私っ……私今!今ああああああ!きゃあああああああああ!!ああああああ!!)

側近(うわあああああああああああ!あああああ!俺は今、今、……あああああ!!)



密偵新人(班長に頼まれてとんぼ返りしてみたら)

密偵新人(魔王達がうずくまって動かない。何があったんだろう……)

密偵新人(とりあえず落ち着くまで待っていよっと)





勇者相棒(--あの、時、寸前で止まった、けど、けど……!!)

魔王側近(……寸前で止まった、はず、だった、けど……!!)



勇者相棒魔王側近(あの時、確かに、)


勇者相棒魔王側近(唇は、触れてた……!!)


 庭園。

第三1「…………」ジー
第三2「…………」ダラダラボロボロ
第三3「…………」ジー
第三4「…………」ジー
第三5「…………」ジー


魔法使い「……………」ガクブル

魔法使い(いやああああ!囲まれてるう!怖いよ怖いよー!!)


第三1「やらかしたな、あんた」ボソッ

第三2(……魔法使いこの野郎魔法使いこの野郎)ダラダラボロボロ

第三3「あそこで言うタイミングじゃなかったよね」ボソッ

第三4「あれは余計だったな」ボソッ

第三5「せっかく全力でバレないように映像記録してたってのにさ」ボソッ


魔法使い(みんな私を睨んで……優しかったあのヒトまで……!!)

魔法使い(うわあああああああああああん!!やっぱり魔族なんて嫌いですうう!!)


第三1「俺達魔法使いを牢屋ぶち込……連れて行くから、そっちよろしくなー!」

第三3「はーい、いくよぉ~」グイッ
魔法使い(いやああああああ……)ズルズル

第一「おー、任せたー」



勇者「」ゴロゴロゴロゴロ
相棒「」ゴロゴロゴロゴロ


第一B「……ま、よく考えりゃそうだよな。血もアリだって」

第一A「うーん、やっぱ二人の事はどうしても贔屓して見ちゃうからな。おかげでこっちまで冷静でいられなくなる」

第一「……あー、わかったこれ。手のかかる下の兄妹が出来た感じだ」

第一「兄貴担当はCなのになー、部下ちゃんのせいだこれ」ウンウン

第一「--よし、なんか悔しいから追い討ちかけてくるわ!」タタタタッ

第一A「は?」
第一B「へ?」


第一「旅人さーん、相棒さーん」タタタタッ


勇者「」ゴロゴロゴピタッ
相棒「」ゴロゴロゴピタッ

第一「----」ボソボソ

勇者「………~~~!!!」ボフッ
相棒「………~~~!!!」ボフッ

勇者「」チーン
相棒「」チーン


 タッタッタッ
第一「ふぅ、満足、」スッキリ

第一B「何言ったお前何言ったお前ー!!」
第一A「落ち着くまで見守る言ったじゃんかー!!」

第一「通称を教えてたんだよ。同質の魂の」

第一「なんせ、世界で4つしか無いんだ。こんなだだっ広い世界で、出会うことすら奇跡に近い」

第一「そんな奇跡の出会いを、世間様は、『運命の人』なんて言うよな」

第一A「……………、」
第一B「……………、」

第一A「……隊長らしい教えだよソレ」ケラケラ


第一B「あのヒト、そういうの好きだったからなー」ケラケラ

第一「いやぁ、あの二人こんなのに弱いかなと思って。さらに意識させてみました」ケラケラ

第一「……でも、一応間違ってはいないらしいんだ。隊長曰わく、だけど」

第一「とりあえず、やたら縁深くなるのは確かなんだってさ。魂が同じな分色々似てるから、出会えばすぐに滅茶苦茶仲良くなるか、同族嫌悪で滅茶苦茶仲悪くなるかのどちらかで」

第一「男女均等に生まれるわけでもなく、出会えないまま先に死ぬことが多いんだ、全部が全部ゴールインとはいかない」


第一「--類は友を呼ぶってのもホントらしくてさ。例えば第一、第二、第三部隊。集まる奴らの魂の形質はよく似てるって言ってたよ」

第一A「わかるってことは、隊長は魔法使いと同じ目を持ってたってことか」

第一「いや、魔法で視える目に出来るだけで、常時とはいかないんだってさー。で、使うと倒れると」

第一B「変な魔法使う度に倒れてたもんなー、隊長ー」ケラケラ

第一A「確かに、そうだったわー」ケラケラ フォン

 パキン パキン

第一「--お、空間隔離?傍受防止ってやつ?」ケラケラ

第一「あーあ、第三がいなくなった途端、コレだよ」


第一A「……………、」

第一A「お前、一人だけ発動に気付いてたよな」

第一A「どこかであの魔法が発動されるのに立ち会ったってことだよな」

第一B「目が特別どうこうとはいえ、魂を身体から強制的に弾き出す魔法が存在する。そんな魔法がどれだけ危険かは馬鹿でもわかる」

第一B「魔力の行使は魂がやってるものだからな、強力な魔法を使う者程、魂の重要性は熟知している」

第一B「うちの隊長はお喋りで馬鹿の変人だったが、遊びで魂を弄ぶような真似はしないヒトだった」

第一A「隊長は俺達四人によく構って、それぞれ資質にあった魔法を教えてくれた。--これがお前の資質にあった魔法だって言うならそれで納得したよ」

第一A「でも、違うだろ。お前はこの魔法を知ってはいるが、使えない。なら、お前は隊長に魔法自体を教えてもらったわけではない、」

第一B「となると、だ。お前、俺達に言ってないことあるだろ。例えば、お前自身が、あの魔法を受けた事がある、とか」


第一(………やだやだ、これも部下ちゃんのせいだ。余計な事までつい言っちゃってさー)ハァ


第一「残念。半分外れ。言ってない事はそりゃあ山ほどあるけど、それはお前らも同じだろ?」

第一「そもそも俺は、あの魔法を受けたことはない。魂が入れ替わる不思議現象も、魂が身体から放り出される危険現象も、俺はどちらも経験してない」

第一「でも、あの類の魔法を実際に目にしたことはある。使ったのは隊長。もちろん、遊びで使ったわけじゃない」

第一B「じゃあ何で」

第一「これ以上は俺の権限じゃ喋れないな。隊長命令だし」ケラケラ

第一A「……………」
第一B「……………」

第一「これで納得してくれないと、こっちの様子に気付いた二人がデレデレモードからヤンデレモードに切り替わっちゃうだろー?」

第一A「……納得することにするわ。隔離、解除する」フォン

 バシュン

第一B「まったく……秘密主義も大概に--」


勇者「……………」ジー
相棒「……………」ジー


第一B「っお!?」ビクッ
第一A「ひぃ!」ビクッ


第一「……あー、ほら言ったじゃん切り替わっちゃったじゃん」ケラケラ

第一B「ああもう!何でもないからその目やめろ!」

第一A「うああ怖い流石に死んだ目に真っ直ぐ見られるのはマジ怖いって!やめてホントやめてー!!」

第一「もったいないなー、せっかくのデレデレモードだったのに」ケラケラ

第一「…………………、」



第一隊長『--今、俺がお前に何をしたとしても、気にすんなよー』

第一隊長『これはもうお前の命だからさ、好きに使っていい。ホントだって』

第一隊長『ただ、俺がやったことは口外禁止な。これ、隊長命令』

第一隊長『理由は、わかるだろ?この魔法はマジで危険だからな。世界が変わるぐらいに』


第一隊長『ほら、何をしてでも死人を生前そのままに生き返らせたいと思う輩なんて、世界にはわらわらーっと沢山いるだろ?だから、な?』ケラケラ



第一(俺、魂かじられて一度死んでますー、んで、ちょうど同質の魂だった隊長の魂削って貰って生き返りましたー、なんて)

第一(言えないよなー)ケラケラ

再開。就寝前だから少しだけど。年末年始でがっつり投下する予定。


 とある町。


剣士「ああああ!くっそ、」

剣士「こうなったら、町の一つぐらいぶち壊してやらないとと気が済まねぇ!」

僧侶「同感です、任務は失敗とはいえ、私達にはまだやれることがある」

僧侶「少しでも多くの魔族を……殺さなきゃ、」

勇者男「………………、」
勇者男(どうせ、止めても勝手にやるのだろう、)

勇者男「……いいだろう。好きにしろ」

勇者男「ところで、」

勇者男「剣士、お前の頭に乗っている虫は何だ」

僧侶「気持ち悪いペットですね」

剣士「--は?」

勇者男「羽音が煩わしくないのか、耳元で飛ばれて」

剣士「……………、」

剣士「これ、耳元で虫の羽音がする、ひたすら嫌がらせにしか使えない魔法だと思ったけど」

剣士「え、なに?本当にいるわけ?虫」

僧侶「あなたの顔の前を平然と飛んでますけど、見えないんですか」

剣士「な……どこだよ!」

僧侶「……へぇ、視認は出来ない、そういう魔法なんですね」

剣士「取ってくれ」

僧侶「いやです気持ち悪い」

剣士「勇者、取ってくれ」

勇者男「…………術者をなんとかすれば消滅する魔法だ」

剣士「いや、今すぐどうにかしたい」

僧侶「今、頭上を斬れば殺せますよ、虫」

剣士「…………」ヒュ ベチャ
剣士「……手応えあった。仕留められたんだよな」

勇者男(…………汚い、)
僧侶「汚い……寄らないで下さい。頭が虫の欠片でべちゃべちゃ」

剣士「…………」スッ ネチョ

剣士「術者許さん絶対殺す」


 隣国魔王城。


隣国兵士Ⅰ「おーい、ひび割れ眼鏡ー。通信回線復旧したぞー」

密偵班長「誰がひび割れ眼鏡だ」

隣国兵士Ⅰ「あ、悪い。もうひび割れしてないな。眼鏡替えた?」

密偵班長「ああ。一度城に戻ったからな」

隣国兵士Ⅰ「いやー、しかしアレだな。アンタ結構丈夫だねぇ。瀕死だったくせにすぐに動けるようになれるんだから」

密偵班長「治癒魔法使ってくれたそっちの術者の腕が良かったんだよ」

隣国兵士Ⅰ「まぁそれもあるけどさー」ケラケラ

隣国兵士Ⅰ「……しっかし、大変だよなー、そっちの国は変に人気があって」

密偵班長「……………」

隣国兵士Ⅰ「魔法回廊だけじゃないからな、国内に仕掛けられてるのは。余程のお気に入りだったってわけだ」

密偵班長「言っとくけど、俺からアンタらに情報渡すことは無い」

隣国兵士Ⅰ「悪い悪い。俺、一般兵のくせに、国がこんなんなるから極秘事項ーとか他国の秘密ーとかに触れちゃったわけだから」

隣国兵士Ⅰ「知っちゃったことにはその国のヒトに真偽を確かめたくなっちゃうわけで」


密偵班長「……………、」

隣国兵士Ⅰ「人形とかの魔法ってさ、身体に染み着いてる記憶をベースに動くわけで。一般人より戦い慣れしてる奴の方がやっぱり強い」

隣国兵士Ⅰ「だから、キミ等の魔王様が狙われたのはわかる。強いから」

隣国兵士Ⅰ「でもまさか、強さに理由があったなんてなー。そりゃ欲しくなるか、」

密偵班長「口が軽いと長生き出来ないぞ」

隣国兵士Ⅰ「ははは、ご忠告どうも。言いふらしたりはしないから安心してくれ」

隣国兵士Ⅰ「あーあ、今頃キミ等の魔王様はアレか?乗り込もうとしてるのかな?」

密偵班長「………………」


隣国兵士Ⅰ「うちの国とまさかのタッグを組んだ、」


隣国兵士Ⅰ「人間領のお国さんに、さ」


 魔王城。
 庭園。


勇者「空気が重かった」ズルズル
相棒「お兄さんを問い詰めてた」ズルズル

第一「大丈夫だって。気にしない気にしない。んな大事じゃないからさ」

勇者「ほんとに?」

第一「ほんとほんと」

相棒「なら良かった」ヘラリ

勇者「だな」ヘラリ


第一B「何でほふく前進で近寄ってくるんだ」
第一A「しかも早いやたら早いおまけにヤンデレ顔だからリアルホラーを間近で見ちゃった俺くらっときた」


勇者「お兄さん、俺達、これからどうしたらいいかな」

第一「これから?」

相棒「休んでろ、って言われたけど、私達元気だし何か出来ること無いかなって」

第一「…………んー、どうしたもんかな。魔王様達や俺達はさ、人間領側の奴らとお前等が戦うのはあまりよろしくないって考えてるんだよ」

勇者「俺が勇者だから?」

第一「まぁ、それもあるかな」

勇者「…………、」

第一「でも、一番の理由は……二人が戦っちゃうとさ、俺達の代わりに手を汚した事になるからだな」

相棒「私達は自分の意志で動いてるのに?」

第一「二人は俺達側だってのはわかってるけど、なんか良いように使ってる感じで……それが嫌なんだよ」

勇者「……わかった、おとなしくする」

相棒「うん。私も、おとなしくする」


第一B「----あ、」ピクッ


勇者「?」
相棒「?」


第一B「俺の蟲死んだわ」

第一A「やっとか。あの剣士結構粘ったな。お前の嫌がらせ魔法をここまで放置するとか」


勇者「?虫?」


第一「ほら、あのクソ剣士の周り飛び回ってた奴」

相棒「あれBさんの魔法だったんだー」

第一A「対象の耳元でずっと羽音聞かせてるんだよ。時々童謡っぽく飛んだりする地味でも精神的に辛い嫌がらせ」

第一B「嫌がらせだけじゃねぇよ。取り付かせた瞬間から、あの剣士が考えてた事全部記録してる。……ま、死なないと術者の俺の所に情報持って来ないけどさ」

勇者「Bさん怖い魔法使うねー」

第一B「お前に言われたかねぇよ」ケラケラ

第一A「こいつ、普通の攻撃魔法より毒とか麻痺とか状態異常系の嫌がらせ的な魔法が得意。あと変な蟲作る」


第一「ここだけの話、Bは腐海の環境を再現出来るんだぜ」コソッ

勇者「腐海ってあの!?」コソッ
相棒「あの腐海!?」コソッ

第一「範囲はかなり狭められての完全にプチ状態だけど、あいつ何時か王○も作っちゃうと思う」コソッ

勇者「Bさんすごい」キラキラ
相棒「Bさんすごい」キラキラ


第一B「おい、お前は二人に何吹き込んでんだよ」


第一「Bはこういう魔法の資質があるんだーって説明」


勇者(青目の○蟲静かに眺めていたい)キラキラキラキラ
相棒(実寸大がいい沢山いると尚良い)キラキラキラキラ


第一B(……何言ったらあの怪獣植物見るような目で見られることになるんだ)ハァ


勇者「あのさ、資質ってことは、Bさんはこういう類の魔法が生来的に得意ってこと?」

相棒「治癒魔法とかも生来的な資質だもんね。魔法って得意不得意あるし」

第一B「そうみたいだな。ま、俺も隊長に教えられるまで自覚なかったんだけどさ」

勇者「じゃあ、Aさんは空間把握系で、Cさんは治癒系?」

第一A「正解。Bと違ってわかりやすいと思うけどさ」

第一「ちなみにCのステータスはユニコーンと同じ」

第一B「また訳わからんことを」

相棒「じゃあ、」

第一「あ、そうだ。B。蟲からゲットした情報まとめなきゃいけないんだろ?」


第一B「そうだけど、……まとめた情報魔王様んとこにあげる前に、」


 フォン ヴゥン
魔王『第一、』


第一A「お、通信きた。やっぱ密偵側の方が情報早いよな。Bはサブみたいなもんだし」


魔王『私達少しの間城を開けるわ。ちょっと殴り込みに行ってくる』


第一A「了解です」
第一B「了解」
第一「はいはーい、了解ですー」


魔王『勇者、相棒。そこにいるわね?』


勇者「はい」
相棒「いるよ」


魔王『私達について来ちゃ駄目よ。絶対に。殴り込みに行くのは人間領の国だから』


勇者「……駄目なのは、俺が勇者だから?人間だから?」


魔王『友達だから。……もう巻き込んでるけど、私の敵を消すのにこれ以上あなたの手を汚したくないの』


勇者「……うん、わかった」


魔王『…………相棒も。返事は?』


相棒「わかった。行かない。……ちゃんと無事に、二人で戻って来てね」


魔王『ふふっ、わかってるわよ。安心して、私達強いから』

魔王『じゃあ、留守は任せたわ』プツッ


勇者「--行ったな、魔王様達」
相棒「そうだね。反応、城から消えたし」


勇者「……ねぇ、お兄さん達。俺達おとなしくしてるから、訊くだけはいい?」

第一B「魔王様達が何で人間領に行くのかとかか?」

相棒「それもあるけど。……何で人間領側魔王様と側近さんの身体を欲しがるのか、とか」

第一A「……人間領に行くのは、今回の事が人間領の国と隣国がタッグを組んだってわかったからだろうな」


第一「側近様を欲しがるのは、強いから、としか答えようがないよなぁ。でも、」

第一B「魔王様を欲しがる原因の心当たりはある。……けど、それは魔王様本人から言うのを待ってくれ」

勇者「………………、強さだけが目的じゃなく、強さの元が欲しいのかな。そうなら、…………俺がついてく理由になってしまう」

第一「行くなよー、振りじゃないからなー」

勇者「わかってるよ」

相棒(……もしかしたら、私が知らないだけで黒の竜族は、)


 フォン
 ガガッ ガッ


勇者「通信回線……俺達に?」
相棒「誰だろう、こっちから繋げないと繋がらないぐらい、不完全……」フォン


『たすけて』
『たすけて、お兄ちゃん、お姉ちゃん』


勇者「!!--この声、」
相棒「あの町で、友達になったちびっ子達の……!」


ちびっ子『お兄さん達、お城の人達と知り合いで、魔王様達とも友達なんでしょ!?助けてって言って、おねがい……!』
ちびっ子『町のっ裏山に……怖い人……いてっ、』
ちびっ子『あいつ死んじゃうよ、殺されちゃう……!町の兵士さん達みんなやられちゃった、血がでてる……!』


第一「……あの町の子か」

第一B「おいおい、何があったって……」

第一A「俺あの町の兵士に通信入れて」



剣士『おいおい、マジかよ。穴だらけ傍受し放題の通信回線あると思ったら、繋がる先はお前等か』

剣士『え、なに?このガキお前等の友達?マジで?年齢考えて友達作れよ』



勇者「--お前、何してんの?」ザワッ


剣士『ガキ人質にとって町を魔物だらけにしてぶっ壊そうとしてんの』

剣士『ほら、まさかこれだけされて何もせず帰るとか、出来ないじゃん』ケラケラ


相棒「…………」ザワザワ


剣士『なぁ、もしかして、もしかしてさ!お前等にも効いたりするの?』

剣士『こういう、人質とか。小さなお友達が人質になりましたーとか、はは、なぁ、』

剣士『もしさ、こういう手が効いてくれるんなら、』

剣士『今度こそ、ちゃんと遊ぼうぜ。勇者さんよ』


剣士『お友達の命と町の命運、賭けてさぁ!!!』ケラケラケラケラ



第一B(何やってんだよ第二……まさかやられたっていうんじゃ、)

第一A(第二をつかせた時点ですでに仕留めているもんだと、)

第一(まずいな……仮にまだついていたとしても第二の奴らに救出は出来ない)



勇者「--うん。効くよ。だって俺友達少ないし」

勇者「だからさ、ちゃんと待ってろよな。お前の遊びに付き合ってやるから」



剣士『はは……はははっ!!マジかよ、ひゃはははは!!わかった、待ってるよ、すぐに来いよ!!来なかったら、』


剣士『この通信回線繋げてる馬鹿なガキ共を、探しに行くからな?』


 プツッ


勇者「…………お兄さん達、ごめん。おとなしくしてるつもりだったけど、出来ない」

相棒「勇者。すぐにでも転移出来るよ。あの町に」フォン

勇者「頼む。行こう」

相棒「----」フォン

 ヒュン



第一「城は第三に任せるか」

第一B「通信入れた。了解だってよ」
第一A「転移魔法陣は展開済み、いつでもいける」

第一「じゃあ行くかー」



第一「事の次第……どう転ぶかによっては、本気で魔法ぶっ放すからな。第二」ボソッ



 とある町。
 付近の山。


剣士「お早い到着で嬉しいよ」

人質の少年「……旅人っ!」

剣士「おっと、間違っても動くなよちびっ子。お兄さんコイツに片腕落とされて、今腕一つしかないから」

剣士「首飛ばすしか、お前をおとなしく留めておく方法無いんだ」ニヤニヤ

略少年「--!!」ガクブル

勇者「必ず助けるから、安心してよ。な?」

少年「………!」コクン






第一(人質は子供一人。あの時仲良くしてた町の子か)チラッ

町の常駐兵「すみません、我々の力不足で……子供を人質に」

第一「いや、アレ相手に死人出してないですし、元はといえば逃がした俺達に責任があります」


相棒「負傷者は全員安全圏に運んだよ。子供も全員保護したって通信あった」

第一「じゃああの子救出して、剣士の足元の……クソの旧魔王印召還魔法陣をなんとかすれば問題解決ってことか」

相棒「--くそっ、私まで接近したらさらに魔力濃度上がるから、」

第一「Bはアイツの前に出せないな。恨みもってそうだし」

相棒「スキを見て必ず……助ける。せっかく出来た、小さな友達なんだから」





剣士「なぁ、お前何でこの国の味方してんだ?マジで人間に愛想つきたってか?」

勇者「…………」

剣士「教えろって。俺が訊いてるんだからさ?」ニヤニヤ
少年「っ……」ビクッ

勇者(剣を、子供の首に触れさせて……脅しか、)

勇者「……別に愛想がつきたわけじゃない」

剣士「じゃあ何だ?まさか魔王に惚れたとか言うんじゃないよな」

勇者「…………」


剣士「まさか、とか言ったけどよ。見てればわかるって。お前魔王に惚れたんだろ。美人で金持ち。最高の逆玉だからな」

勇者「………………、」

剣士「ははっ!逆玉っても笑えるよ!人間で、勇者協会に登録された正真正銘の勇者のくせに!よくもまぁ魔王なんかに惚れられるよな!!」


少年「!!?」

常駐兵「!!?」


少年「……旅人、お前……勇者だったのか……?」

勇者「………」コクン

少年「………………っ」

勇者(……畏怖の対象を見る、目。……慣れてるだろ、そんな目で見られることは)



常駐兵「……本当なんですか?」

相棒「……うん」

第一「本当。魔族にとって勇者のイメージは最悪ですから……混乱をさけるために伏せていました。魔王様の判断です」

常駐兵「…………」


相棒「勇者は、勇者だけど……信用してほしい。あの子を必ず助けるから、あの子は友達だから」

常駐兵「……信用します。魔王様の客であることに変わりない」

相棒「ありがとう」


第一(……そりゃあ大人は、しかも兵士は、魔王様の客とわかれば切り替えは可能だろう。でも子供は……)

第一(身分を隠さず最初に出会ったのが俺達で、次が魔王様達や城の奴らだ……特殊なのは俺達の方)

第一(あんな目で、まして子供に、見られてほしくなかったから伏せた事なのに……あのクソ剣士、)


常駐兵「正直魔王様に惚れてるっていうのが最も聞き捨てならないんですが本当ですか」

第一「そこスルーするかと思ったこの国の兵士みんな魔王様の事好きなの忘れてた」

常駐兵「本当ですか魔王様に色恋沙汰ですかまさか公認ですかどこまで進展してるんですか我々が知らないうちに大人の階段上ってらっしゃったということですかくそっ!くそっ!!」

第一「話が一気に飛躍したぞおい、好きというかこの人が特殊すぎるだけだ」

常駐兵「会員No.0036」

第一「うわやべぇ魔王様ファンクラブの人だ500以内はロリ時代からの会員って話なのに何そのナンバー真性ガチの人じゃねぇか」

相棒「と、友達ですからまだ友達ですから!」


剣士「この国の魔王も兵士も馬鹿じゃねぇの!?勇者と仲良くお友達ごっこかよ」



常駐兵「魔王様を馬鹿にしたクソは斬ってきます」ユラリ
第一「勝てない相手なんだからやめて下さいあんた死ぬって」



剣士「……いいのかね、人間で勇者だ。ここは魔族領だぜ?どんなやましいこと考えてここに来たかもわかりゃしねぇ」

勇者「……………」

剣士「ああ、そうだ。きかせてくれよ」

剣士「魔王の身体は、良かったか?戻ったとはいえ、さっきまで女の身体に入ってたんだもんなぁ」



常駐兵「…………」キッ
第一「誤解だって性的な意味じゃないから無言で俺の胸ぐら掴んで揺らすのやめて下さい」グラグラ

相棒「……あいつ、」ザワッ


剣士「良いよなぁ、お前。どうせ、ヤることはヤらせてもらってんだろ?」


常駐兵「!!」クワッ


第一「いやだから誤解だってまだそんな関係じゃないしなんだかんだで魂入れ替わってたんだよ魔王様とアイツ。だから、」グラグラ



剣士「相棒の女もエロい身体してるし、二人旅はさぞかし楽しかっただろうな。なぁ、俺にどっちの身体が良かったか教えてくれよ」


相棒「」ブチッ
相棒「言わせておけばこの野郎!!」


剣士「あ?女がしゃしゃり出てく」

相棒「何がやることやっただ!!勇者をてめぇみたいなゲスを一緒にするな!!」

相棒「ああそうだよ二人旅は最高に楽しかったよでも勇者は一度たりとも私に手を出したことなんてなかった!」

相棒「私と勇者はな!混浴のお風呂で水遊び出来るぐらいの関係だ!!勝手に決めつけるな!」


第一(……いや、わかるけど。言いたいことはわかるけどそれなんか違うよ相棒さん……)

常駐兵(混浴で水遊び……!?素っ裸でこの身体相手に水遊びだと?)


剣士「え、勇者お前不能なの?」

勇者「……」


相棒「よくも勇者の気持ちを汚しやがって!!勇者と魔王様はまだ友達だし手すら緊張して自然に握るだなんて出来ないだろうしそもそも勇者が魔王様にほいほい触れられる程の度胸があると思ってるのか!!」


剣士「えっ」
少年「えっ」
常駐兵「えっ」

勇者「」

第一「あー、その、相棒さんちょっと、」


相棒「魂が入れ替わって魔王様の身体に勇者の魂が入っちゃった時も!!勇者だって男だ、少しぐらいやましい事考えて当然なのに、それぐらい誰も軽蔑なんかしないのに!!魔王様だって許してくれるはずなのに!勇者は、勇者は……!!」

相棒「やましい事考えた自分を責めて、見ないようにってすぐに目隠しして!挙げ句の果てには!--触れられないようにって、私に縛ってとまで………言ったんだからな……!!」


剣士「えっ」

少年(勇者………)
常駐兵(勇者……そうか……君は……)ホロリ

勇者「」

第一「もうやめて相棒さん君の相棒君の言葉で死んじゃう」


相棒「わかったかこの野郎!勇者はてめぇみたいな汚れじゃない!!」


剣士「汚れじゃないな。ただのへたれだな。訂正するわ」

勇者「」


第一(……言葉ってヒトを殺せるよなー)シミジミ





 とある町。
 郊外。


 炎の柱が天に向かって伸びていた。
 その業火の中心に、男が一人。


勇者男(この火力は……辛いな。俺の障壁越しでここまでの熱量を、)

勇者男(ふっ……これで本気でないという事が恐ろしい)


第一副隊長「…………」フォン


勇者男(!!火力が増していく。このままでは……洒落にならんな)


 ヴゥヴヴ
勇者男「?」

勇者男(--ふむ、通信か。……人間領、あの国の王か?十中八九、要件は、)

勇者男(……とりあえず、繋げてはやるか)フォン


人間領国王『勇者か!?すぐに戻ってきてくれ!!魔王と竜が……!!』

勇者男「…………襲ってきたのか」

略国王『そうだ!転移でも何でもいい!早く戻れ!!協会へ要請したが間に合わない!このままでは……!!』

勇者男「悪いが、すぐには戻れない」

国王『!?何故だ!!国の一大事だぞ!?』


勇者男「忙しいんだ。こっちは、」



勇者男「美女に、身も心も焼き焦がされそうでね」キリッ


国王『--は?』


勇者男(おっと、美女の炎に気分が高揚したか、つい本音が)

勇者男「失礼。通信回線に乱れがあるようだ。切らせてもらう」フォン

国王『お、おい勇者!おいっ!!』プツッ



勇者男(--さて、ずっとこのまま、というわけにもいくまい)スッ

 構えた剣が輝き出した。

勇者男(斬る、)


「今の相手、件の国王とやらか?」


 炎の遮る障壁の向こうに、人影を見た。


勇者男「……………」ピタッ

勇者男(……恐ろしいヒトだ。薄い被膜状の障壁でこの炎の中を)

第二隊長「あとさっきの美女云々、第一のにも聞こえてるぞ。舌打ちしてたぞ。ざまぁみろというやつだ」


勇者男「……本当に、顔と強さだけは実に好みだ。君は」


第二隊長「お前は変だが実力は認めてやる。第一のに楽々こんがり焼かれなかったからな」

勇者男「身まで焦がされればいくら俺でも死んでしまうんでね」

第二隊長「隙を見せなかったことも褒めてやる。見せたら殺してやろうと思っていた」

勇者男「可愛い顔をして苛烈な事を言う」

第二隊長「可愛いだと?……第一のに可愛い言われたからもういいもん。お前の可愛いなんかいらん」

勇者男(…………もういいもん、だと……)

第二隊長「……そろそろ時間だ。それに、お前が炎を斬ったらなんか第一のの炎が負けたみたいで癪だ」

第二隊長「私が突入したから第一のは自ら魔法の展開を治めるだろう。話はそれからだ」

勇者男「話、ね……。いったい何の話かな」

第二隊長「お前は変でふざけた奴だが、喧嘩を売ってきた人間領の国側ではない。国王側の勇者ではない」


第二隊長「お前は何故この国に来た。本当の目的について話してもらおうか」


勇者男「……………」


 数分後。

 ゴォオオオオオオオ
勇者男「炎、火力を増しただけのようだが」

第二隊長「何でだ!?何でだ第一のおおおおおおおお!!!!!?」



 さらに数分後。

 ゴォオオオオオオオオオオオ
勇者男(剣の手入れでもするか)フキフキ キュッキュ

第二隊長「何でだ?私がいることわかってるよな!?何で魔法の展開を止めない?もしかして第一の怒ってる?まさか前に茶菓子を盗み食いしたのバレてる?」

第二隊長「……ううう……だ、だって、美味しそうだったんだもん!目の前にあったんだもん!!」



 またさらに数分後。

 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオ
第二隊長「ごめん……ごめんよ第一のぉ……出来心だったんだ……もうしないからぁ……」グスン

勇者男(……膝に顔を埋めている……泣いているのか……?)

勇者男(ちょっと可哀想になってきた……)


 さらに数分後。


第一副隊長「…………」

第二隊長「……許してくれ第一の……」

第一副隊長「…………」

第二隊長「お詫びに第一のが見ていた情報誌に載っていた一日限定5斤のふわふわ食パン朝から並んで買ってくるから……」

第一副隊長「今後私に気付かれるような盗み食いは控える事ね」

第二隊長「はい……」



勇者男(この二人をセットで眺めていられるこの国の者が本気で羨ましい)




第一副隊長「--さて、本題に入るとしましょうか」

勇者男「……………、」

第一副隊長「あなたは国王側で動いているわけではない」


勇者男「肯定しよう。美女の問いだ。正直に応えるしかあるまい」

第二隊長「お前ほんとに嫌な奴だな」

勇者男「俺は国王側というより、協会側の人間だ。勇者協会の依頼を受け、国王の計略に乗った」

第一副隊長「その依頼の内容は?」

勇者男「すぐにわかるさ」


第二隊長「----」ピクッ


第一副隊長(……通信か、)


第二隊長「わかった。肆、伍。殺せ」


勇者男「…………」
第一副隊長「…………」


第二隊長「--そうか。よくやった。--処理は第一部隊の者に任せろ」

第二隊長「第一の。一人借りるぞ」

第一副隊長「ええ」


第二隊長「ああ、一応お前にも言っておくが、」

第二隊長「僧侶は死んだぞ」





 とある町。
 付近の山。


 一瞬だった。


第一B「…………」

僧侶「」


 僧侶の女は、一瞬にして殺された。


第一B(喉を裂かれ心臓を一突き)

第一B(……違うか。きっとコイツは、殺されてから存在に気付いた。じゃないと、)

第一B(なす術なく殺される怒りも、死に行く絶望もない。こんな……戸惑った顔の死に顔には、ならない)


第二肆「B」

第一B「……何」

第二肆「隊長はお前が適任と判断した」

第一B「………、」

第二伍「お前の上官の許可は取った。処理は任せる」

第一B「……了解」


 答えた。
 瞬間には、二人分の気配は消えていた。


第一B(処理ね……、)フォン


 僧侶を中心に小さな魔法陣が展開される。

第一B(……発動)フォン


 僧侶の身体に灯った小さな炎はすぐに広がり、僧侶の身体を包んだ。


第一B(……確かに、俺の方がきれいに処理出来るよな)


 フォン
第一A『……俺、第二の隊長が何考えてるのかわからないけど』

第一A『すぐに仕留めなかったの、お前に追わせて死体の処理の手間を省くためとかに思えてくる』

第一B「なわけないだろうけど、その可能性が0じゃないってのがなー」

第一B「……A、剣士の方はどうなってる?」

第一A『シリアスがサヨナラした。安定して馬鹿が始まってる。映像と音声繋げる』


 フォン ヴヴン
相棒『「私と勇者はな!混浴のお風呂で水遊び出来るぐらいの関係だ!!」』


第一A『……………』
第一B「……………ほんとだ。始まってるな」

第一A『……いくら仲良い兄妹でもその年でそこまでは出来ないと思うの』

第一B「確かにある意味勇者だな相棒さんの身体に何も感じないとか」

第一B「…………はは、多分、第二がああだからだろうな。二人のヤンデレモードに慣れたのは」


第一A『いや俺慣れてないから。そもそもあの二人は目死んでても意志はあるだろホラー的な意志が。……第二は、意志すら無いけど』

第一B「……あー、くそっ。何時ものアイツ等知ってる分、現場で会うとキツいんだよなー……」

ついに年明けた。あけおめ。こんなに長くかかるとは思わなかった。反省。
明るかったり暗かったり登場人物多すぎだったりで変な話になってるのに、付き合ってくれてありがとう。待ってくれてありがとう。正月休みが勝負だから頑張るよ。

保守ありがとう。
うがい手洗いは大事。謝るのは終了後にする。
時間かなりあいたから簡単な状況。


勇者「相棒の言葉責めが辛いあと剣士死ね」
相棒「気付いたら勇者がチーンあと剣士死ね」

剣士「人質とったし旧魔王政権時代の魔法陣発動させて町を魔物に溢れさせてやるぜ!」
人質の少年「怖い」ガクブル

第一「魔法陣はどうにか出来る。人質救出したいあと剣士死ね」
常駐兵「魔王様ファンクラブ会員No.0036。あと剣士死ね」


魔王「人間領の王城に殴り込み。喧嘩売ってきた理由はわかる。あと剣士死ね」
側近「完全竜化で同じく殴り込み。あと剣士死ね」


第一A「空間把握魔法使用中。Bに状況報告。魔法使いの気配の薄さが気になる。あと剣士死ね」


第一B「僧侶火葬後。第二隊長何考えてんだ。剣士から得た思考情報整理中。あと剣士死ね」


第一C「負傷したため参戦せず。もう剣士死ねよ」
部下「同じく参戦せず」

第二副隊長「最愛の部下さんとお義兄さんを傷付けた剣士絶許」

 
第一副隊長「勇者男の真意が知りたい」
勇者男「協会の命令で動いてる。真意はもう少し待ってくれ百合に目覚めそうなんだ」
第二隊長「勇者男きもい」


第二壱弐参「命令待ち」
第二肆伍「任務完了。指示待ち」


第一弟「城で植物と待機」
植物「ぐお」(弟と一緒。嬉しい)

第三ズ「牢屋で座談会。お題は『俺達の初恋』」
魔法使い「牢屋で囲まれてる怖い」ガクブル


密偵班長「隣国。大方の情報は流した」
密偵新人「班長と合流きゃっほう」
隣国兵士「またあのおっぱい竜族に会いたいなぁ」


城門兵先輩「城の損壊箇所調査中」
城門兵後輩「屈んだ先輩の胸元から覗く深い谷間をうっかり凝視してしまった。低身長童顔の巨乳とか犯罪だろ」


第三隊長「今回空気だけどちゃんと仕事してる」
第三副隊長「私は今回もですが同じく」


第一A『……オンとオフが半々で混ざるとちょうど良いんだけどな』

第一B「はは。確かに」

第一B「……なぁ、第二のチビ達は剣士についてるだよな」

第一A『ついてる。けど、動かない。何してんだか、--仕留められるはずなんだよ、動かないのはおかしい』

第一B「……子供が人質になる前にやれたはずだ。人質がいた方が命令を遂行しやすい、なんて考える程アイツ等は腐ってない」

第一B「人質の可能性は報告したはず、それでいて命令を下さなかったのは第二の隊長……」

第一B「…………………、」

第一B(蟲から得た--剣士の思考情報から察するに、僧侶を泳がせたのは国内の魔法陣の在処を確認するため)

第一B(--僧侶が発動する直前に仕留めたのは、発動後の処理が面倒だからか)

第一B(密偵組から得た、旧魔王政権が仕掛けた魔法陣の在処の情報。それを元に破壊に動いているのは城内にいる奴らを除いた第三部隊)

第一B(在処が全くわからなかっただけで、存在すると確定出来れば探し方はある。それに、この程度の魔法陣なら破壊に問題は無い)

>>486>>487の間に以下本編。って入れるの忘れてた。登場人物並べるとその多さに若干引く。

 
第一B(……剣士だけなんだよな、剣士さえどうにかなれば、一段落)

第一A『--何か考え中の所悪いけど、マズい展開になった』


剣士『じゃ、人質解放の条件な』

剣士『勇者、剣くれてやるからガキの代わりに死んでくれよ』


第一B「!!!」
第一B(やらかすよな、このクソ剣士)

第一A『B、お前は現場に来るな。ってさ。顔知られて恨み買ってるし俺も同意見。巻き込まれるだけだ』

第一B「行く。見つからなければいいだろ。どんなチャンスがあるかわからない」

第一A『……間違っても出て来るなよー』

第一B「わかってる」

第一B(--蟲から得た思考情報には、旅人さんについてもあった)

第一B(アイツはただの緩いアホの子で、馬鹿みたいに純情で、)

第一B(……人間でも、勇者でも、対魔族として作られた存在だとしても--魔王様達や俺達の、友人なんだ)

第一B(簡単に死なせる程、どうでも良い存在じゃねぇんだよ」

 

 とある町。
 付近の山。


剣士「勇者、剣くれてやるからガキの代わりに死んでくれよ」

勇者「…………、」


少年「--!!」

相棒「!!」
第一「……っざけんなよあのクソ」
常駐兵「なっ、」


剣士「ほらよ」フォン
勇者「…………」パシッ


 魔法によって生成された短剣が勇者の手元に現れた。
 逆らわず、手に取る。--短剣の刃は黒く濁っていた。
 なんらかの仕掛けがあることは、わかっていた。


剣士「ソレでさ……そうだなぁ、首、ざっくりいってもらおうか」

剣士「ちょっと血が滲むとか、そんなんじゃ駄目だからな。やるなら派手に、周りを真っ赤に染めるぐらいにな?」

 
剣士「お前がやってくれなきゃ、コイツがそうなるだけだけど」ケラケラ

少年「……っ」ガクブル

勇者「………………、やれば、その子は解放するのか?」

剣士「おう。派手な自殺を見せてくれた礼にはちゃっちいけどな」

勇者「……わかった」

少年「……え、」


第一「お前何言って!」


剣士「外野は口出すんじゃねぇぞ!!」


第一「……このっ、」


相棒「…………勇者?」


 お互いだけがわかる、怯えが混ざったその声。
 勇者は、剣士から相棒へと視線を移した。真剣なそれが、彼女の視線と重なる。

勇者「俺は、俺なんかより、この子の方が大事なんだ」

相棒「………そっか。……ごめん、とは言わないんだね」

勇者「ああ。言わない」


少年「っ……何言ってんだよ、だめだろ…、それは、駄目だろ、勇者……!!」

剣士「黙ってろって、死にたいのかよ」

少年「--っ、」ビクッ

少年「……それでも、嫌だ……友達なのに、ともなのに……俺のせいで、嫌だぁ……」ボロボロ


勇者「泣くなって。……必ず、助ける。約束する」

少年「……勇者ぁ……」

勇者「だから……目、閉じて」


 短剣を自身の首へ。
 刃を当てる、触れただけで浅く切れたのだろう。血が滲み出した。


剣士「マジで?マジでやってくれんの?」

剣士(はははっ!やっぱり馬鹿だ、自己治癒でどうにかなると思ってんのかよ!)

 
剣士(ネタは上がってんだ。俺と同類ならやり方はある!)

剣士(早くやれよ!その剣でつけた傷は、)

剣士(絶対に、治らない!!)


少年「……なんで、目……」

勇者「……見て、いい気分になる物じゃないから」


 勇者は、自ら首を掻き切ろうとしてなお、穏やかに笑ってみせた。


少年「!」


 勇者が短剣の柄を握り直したのを見て、少年が感じたのは強い恐怖。
 自らの死の恐怖よりも強い。本気だとわかったからだ。


少年(怖い、嫌だ……!!)


 初めて直視する、誰かの死。自分のために友人が死ぬ。恐怖と自責で見ていられず、言われるがままに目を閉じてしまった。

勇者「----」スッ

 
 少年が目を閉じたのを確認し、勇者は、

 躊躇いも無く、自らの首を、深く深く掻き切った。


勇者「…………」フラッ


 吹き出すように溢れる血は、傷の深さを示す。血濡れた手から短剣が落ちた。


剣士「ははっ……、」

勇者「」ドサッ


 よろめき、勇者は俯せに倒れた。
 誰の目から見てもわかる。致命傷どころではない、即死の傷だ。


第一(なぁ、違うよな、何か考えがあるんだよな、何か仕掛けが、)


 勇者はピクリとも動かない。
 血だけが溢れ、広がる。


第一(何で、血、止まらないんだ)

 
第一(おかしいだろ、あんなに強いんだ。自己治癒力なんて、治癒魔法がいらないぐらいなのに、)

第一(こんな形で終わるとか……無いだろ……!)

剣士「治ると思ったか?ばーか!!治らねぇよ!お前が何なのかわかってるのに、剣に何も仕掛けないとか有るわけ無いだろ!!」

剣士「--はは、ははははは!!おら、歩けよガキ!!近くで見てやろうぜ!お前のために死んだ馬鹿をよ!!」

少年「ひっ……」


 剣士に押された衝撃で目を開けてしまった少年は、血溜まりの中に倒れる勇者を見た。


少年「う、あ……勇者……」


 無理やり前進させられる、勇者に近付く。剣士は笑っていた。


少年「やだ……いやだ……ひっ……っ、ゆ……しゃ……」ボロボロ


 踏み入れた血溜まり、これは勇者の血だ。
 死んでしまったと理解した。自分のために、死んだと。


少年「うあ、ああああああ!」

 
剣士「マジで死んでるよ!ははは!!馬鹿じゃんコイツ!!あの勇者が!死んでやがる!!」


 勇者の頭を踏みつけた。
 動かない、勇者の反応は無い。


第一「----」ザワザワ
相棒「待って」


剣士「最高だ!最高に笑える!!」
少年「--!!」ゾクッ


 突如襲った寒気に少年は身を震わせた。
 剣士は気付かない。


相棒「今だ」ヒュン
第一「!!」
常駐兵「……!!」


 剣士だけが気付かない。


剣士「ははは!!はははははははははは----あ?」

 
 血溜まりが不自然に揺らめいた。
 瞬間、少年の足元から身体を伝い滑るように上るのは赤。


剣士「なに!?」
相棒「離れろ!」


 割り込んだのは相棒。
 反応した剣士の剣から、幾筋ものそれが重なり、少年を守った。


剣士「--は、はは、嘘だろ、」


 血溜まりの中、指先が動く。

 人質は相棒の手によって奪われた。少年は抱えられ、常駐兵へと預けられる。


常駐兵「大丈夫か?」

少年「----」


 少年の呆然とした視線は血溜まりから離れない。
 指先が動いただけではない。手の平は地面を弱々しく押し、上半身を起こした。

 
相棒「立てる?」
勇者「……………」


 相棒が差し出した手を借り、勇者は立ち上がった。


相棒(……勇者、傷口を押さえている。血は止まってない……治癒が追い付かないんじゃない、治癒が行われていないのか)


剣士「いや、死んでただろ……!何で生きてんだよ!!」フォン


 剣士は魔法を発動。
 輝く魔法陣、


第一「させるか!」フォン


 その中心に光の刃が刺さる。
 破壊された魔法陣は崩れ消えた。


剣士「お早い破壊だなおい!」

第一「次はテメェだよくそが……」ザワザワ

相棒「勇者は休んでて。私が殺す」ザワザワ

 
剣士「ああくそっ、意味わかんねぇよ。なんなんだよお前等……」
剣士(分が悪い--が、やるっきゃねぇよなぁ……)


第二隊長『動くな。ここは我々第二部隊に任せてもらう』


 突然割り込んだ女の声。ここにはいない第二部隊隊長の物だ。


第一「は!?人質も取られて今更何言って--っ」
 ヒュン
第二参「隊長命令だ。動くな」

 ヒュン
第二弐「…………」
相棒「……………」
相棒(この女の子……第二部隊か、)


 現れた小さな影は第二部隊。
 命令のままに二人の前に立ち、制した。

剣士(これはチャンス、)


第一「逃げ、」
第一参「動くな第一。動けば実力行使も辞さない」

 
剣士(逃げる、)ヒュ


第一「…………逃げられたんだけど」

第二隊長『壱、弐、参、戻れ』
第二弐参「--了解」ヒュン


第一「説明もしないまま消えるのかよ!第二!!」

 フォン
第一副隊長『落ち着きなさい。第二の事情はちゃんと説明するわ』

第一「副隊長……何なんですかあれ、」

第一副隊長『……とにかく、追わない事。旅人さん達も……Bも、ね』

第一「なんだあの野郎来るな言ったのに近くにいるじゃんか」


 少し離れた木陰。

第一B「……了解」
第一B(第二の壱のやつはこっちに来やがったし、お見通しってか、)


第一副隊長『ここは第二に任せるわ』

 
第一「今度はちゃんと仕留めるんですか?」

第一副隊長『ええ。……仕留め損なうなんて、彼に限って絶対に無いわ』








 とある町。
 郊外。


第二隊長「知っての通り、うちの部隊は特殊だからな」

第二隊長「所属している者はヒトとして欠けている。または欠けていた。この私であっても」

第二隊長「欠けているのは感情。倫理。心が無いと同じだ。心が無いのなら、それはもうヒトではない」

第二隊長「私は、第二所属する者を皆、ヒトにしたい。日常でのみヒトになるだけでは足りない」

第二隊長「任務では感情など不用と言うが、それは元々感情を持っている者だけに言えることだ」

第二隊長「感情論で物を語れないとなると、土壇場で犯す間違いはもう取り戻せない」

第二隊長「ヒトを好きになれない我々が国を守るなど……出来るわけが無いからな」

 
第二隊長「それにしても、部下の存在には助かった。おかげでうちの副隊長の成長は目まぐるしかったぞ」

第二隊長「奴は最もヒトに近かったからな。誰かを好きになれる程には」

第二隊長「あとは、日常だけではなく任務に感情を持ち込めれば、晴れて奴はヒトになれる」

第一副隊長「……だから剣士を泳がせてたわけ?」

第二隊長「ああ。時間を稼いでいた」

第二隊長「任務に感情を持ち込むのは是としない奴が、憎しみで吹っ切れる時間をな」

第一副隊長「民間人の子供が巻き込まれたのに?」

第二隊長「怪我をしたとしても、死なせるつもりはなかったさ。一応はな」

第一副隊長「………私自身も、子供を巻き込んだ事は許せないんだけど」

第二隊長「許さなくても良い。私はそんな考え方をするお前が好きだからな」

第二隊長「好きだが、私はそうは考えられん。目的のためなら、子供を危険にさらす事など厭わない」

第二隊長「--奴がちゃんとしたヒトになれれば、隊長を任せられる器になったと同じ」

 
第二隊長「奴ならば、間違わずにこの部隊を率いる事が出来るだろう」

第一副隊長「…………まるで、自分がもうすぐ死ぬみたいに言うのね」

第二隊長「常にそのつもりだからな」ケラケラ

第一副隊長「…………」

第二隊長「副隊長はな、きっと、第二所属とは思えない程に出来た隊長となる」

第二隊長「安心してくれ、命は軽いと考える隊長は、私で終わりだ」


勇者男「……君をそうさせたのが、旧政権……あの魔王か」


第二隊長「…………、」
第一副隊長「国王との話は終わりかしら?」


勇者男「いや、そちらはタイミングを見計らっている段階でね。終わったのは、私にとっては国王より偉い、協会の人間との話だ。聞いていたからわかるだろうに」


第一副隊長「そりゃあ、筒抜けだったからね」

勇者男「美女相手に内緒話などサプライズ以外にする気はない」キリッ

第二隊長「お前凄まじくうざい奴だな」

 
勇者男「いやしかし、不思議なものだ。あの魔王に狂わされた者は多いと聞く。それでいて、この国の魔王によく仕える気になったものだ」

第一副隊長「あの子はあの魔王とは違う。関係なんて、」

勇者男「無いなどとは言えないだろう。--あの勇者と白い竜族は知っているのか?」

勇者男「お前達が殺したあの魔王と、この国の魔王は、」





 人間領。
 とある国。王城。王の間。


国王「そん……な、私の計画が……!あの魔王の……唯一残った血縁を……!この手に……!!」ガクブル

魔王「……やっぱり、欲しいのは血だったってことね」

魔王「あの魔王に子はいない。両親は死んだ。存在したのは、姉が一人」

魔王「その姉--私のお母様も、もういない。魔王は死んだ。姪に当たる私だけが、唯一の血縁」

魔王「悪いけど、あんなクソ魔王、一度も叔父だと思った事は無いわ。そして、大嫌いなその男の血縁だから私の国に喧嘩を売ったとあっては……もう、わかるわよね、」ザワザワ

国王「ひぃ……!」ガクブル

魔王「私をここまで怒らせたこと、死んで後悔しなさい」

おおお久しぶりお帰りー!!そして剣士死ね
勇者は大丈夫か…

>>499の最後は第二参かな?

>>506
指摘ありがとう。
私はまたやらかしたようだ。

>>499最後は第一ではなく第二参。

 

 とある町。
 付近の山。


勇者「…………」ボタボタ

第一「血、まだ止まってないじゃん。傷押さえてる手真っ赤だし」

相棒「勇者、顔色もまずいよ。血の気ないよ」

第一A『馬鹿お前反応消えたからマジで死んだと思ったぞ!』

勇者「…………」ボタボタ シュン

第一B「………………、」
第一B「自己治癒、出来そうか?」

勇者「…………、」フォン

 フヨフヨ
血文字:わからない。治らない事はないと思うけど、まだ治癒始まってない

第一「赤い文字がふよふよって……旅人さんの血ってのがまた……」

相棒「……ちゃんと治るんだよね」

勇者「……」コクン
血文字:大丈夫。治らなくなったのは初めてじゃない


相棒「喋れないぐらいなんて、初めてだよ」

勇者「……」ヘラリ
血文字:自分でやったことだけど、損傷が激しくて。ほんと大丈夫だから

第一B「……ちょっと傷口見せてみろ。治癒魔法が駄目でも手当てぐらいは出来る」フォン ポンッ

第一「あ、包帯ですね。白いですね」

勇者「……」スッ ダラダラダラ

第一A『いやあああ血ぃ出過ぎいい』

第一B「ざっくりやりすぎだろ……」クルグルベチョベチョダラダラ

第一「あらやだ、巻いた側から真っ赤にぐっちょり」

相棒「勇者、もう少し我慢しなさい」

勇者「…………」エー
血文字:そんな無茶なー

第一B「……」ズルズルダラダラポイッ ベチョ

第一A『あ、包帯解きましたね。真っ赤でぐっちょり正直グロいですね』

第一B「…………」フォン

 
第一A『諦めたかに見えましたが出したのは新品。再チャレンジか?』

第一B「………………」パシッ

勇者「…………」ダラダラ
相棒「…………」ドキドキ

第一B「………まぁ、あれだ」ジー


第一B「全力で絞めれば止まるだろ」


第一「息の根がな」ケラケラ

勇者「」ダラダラ アワワワワワ
血文字:すすすみません我慢しますなんかその我慢します許して下さい

相棒「許して勇者は出来心だったんだ許してあげてぇえ!!」アワワワワワ

第一A『待て待て目が本気!!Bお前目が本気!!!』

第一B「冗談だって」

第一「その割りには笑わねぇのな」ケラケラ

勇者「」
血文字:あわわわわわわ
相棒「」アワワワワワ

 
第一B「冗談だって言ったのによ、」フォン

 ズボッ バチッ
勇者「」

相棒「」
第一「」
第一A『ぎゃあああああ!!おまB何して何傷口に指突っ込んであああ痛い痛い痛い!』

第一B「………」ズルッ ベチョ

勇者「」

第一B「……」ホウタイ クルクル

勇者「…………」キョトン
血文字:あれ?自己治癒始まった

第一B「そりゃ良かったなー」クルクル パチン

第一「え、治癒魔法?」

第一B「かけてない。自己治癒始まったのはただの偶然だろ」

相棒(…………違う、Bさんは何か目的を持って魔法を使った)

第一「じゃあ今のズボッ!は?」

第一B「嫌がらせ。捨て身の作戦に腹が立ったから」

 
第一A『やだこいつ旅人さんに対する遠慮がなくなっちゃってる……!』

勇者「……」ヘラリ
血文字:ごめん。捨て身って言っても無事だったわけだし、許して

第一B「…………」

血文字:手当ても、ありがとう

第一B「……どういたしましてー」

相棒「とにかく、さ。良かったね勇者。治るよー」

勇者「…………」
血文字:うん。出血は止まったし、いやでも喋るまでにはもう少しかかるかなー

相棒「そっかー、大変だねー」

勇者「…………」
血文字:……実はこれちょっと楽しい

第一「双子吸血鬼の父であり色白美女な婚約者までもいる吸血鬼子爵を思い出した」

第一B「またわからない事を言い出して」

 タタタタッ
常駐兵「待ちなさい、君っ!」
少年「勇者っ!」タタタッ

 
勇者「…………、」

常駐兵「すみません。避難させるはずが……どうしてもときかなくて」

第一A『ちびっ子組心配してるぞ、早く戻ってやらないと』

第一「あ、お前今町にいるんだっけ」

第一A『おう。状況状況って囲まれてますが一部シーンにつきましてはカットしております』

第一「ですよねー」


少年「…………」

相棒「怪我はなさそうだね。良かった」

勇者「…………、」
少年「…………、」フルフル

相棒「ごめんね、勇者、今喋れないんだぁ」

少年「……首………傷……」

勇者「……………、」ヘラリ

少年「……ごめんなさい……!」グスッ

勇者「!」

 
少年「ごめんな……さい…!!俺のせいで……!!」

勇者「…………」
血文字:謝らなくていいよ。無事ならそれでいい。俺だって無事なんだし、な?

少年「……死んじゃ……た……って、思った……」

少年「せ……かく、とも、友だちに、なったのに……!」ボロボロ

勇者「………」スッ
少年「!!」ビクッ

少年「ご、ごめん……おれ……!!」ボロボロ

勇者「…………」
血文字:ごめんは俺の方だ

相棒「勇者……」

勇者(--泣くなー、って、頭撫でようとした、)

勇者(怯まれたのは、俺の手が血で汚れてるからか……はは、忘れてた)

勇者(勇者でもあるもんな、俺は)


勇者「………」
血文字:怖いもの、沢山見せた。ごめ--


第一「ちょいと手を借りまして」ヒョイ

 フキフキ
第一B「……」

勇者「」
血文字:--いや、あの、

相棒「いや、あの、その、お兄さんちょっと」

第一B「許すけど、何で俺の服で勇者の手を拭いたのか訊かせろ」

第一「血濡れNGだからtake.2行こうかーと思って。AかCいたらそっちで拭いたけど残念ながらいないし」

第一A『お前酷いな』

第一B「許すけど、許すけどさ!」

相棒「ふふっ、」
勇者「……」クスッ

少年「…………っ、」グッ

少年「勇者っ!」

勇者「…………」
血文字:なに?

少年「言い訳、させてほしい……!」

 
少年「俺は……子供だ!かあさんが怖いし、雷が怖い……ピエロも怖い!」

第一A『ピエロ怖いの気持ちはわかるわー』ボソッ

少年「さっきも、怖かった……血も、怖い……お前が勇者ってきいた時も……怖かった、」

勇者「…………」

少年「けど……それは、俺が子供だからだ……俺、すぐ大きくなるから、必ず、大きくなって、そして……!」

少年「何があっても、ともを怖がらなくなる!絶対に、お城の兵士さん達みたいに、俺も!!だから……!!」

少年「待ってて、ほしい……すぐ、だから、勇者も、相棒だって……俺のっ……友だちでっ……」グスッ

少年「っ……ひっ……ごめん……怖がってごめんなぁ……ゆうしゃあ……すぐだから、まっててぇ……!!」ボロボロ


勇者(……はは、そっか)

相棒(待ってて、か)


相棒「うん、わかったよ」ナデナデ

勇者「…………」ヘラリ


血文字:待ってる。ずっと、待ってるから

 

 少し前。
 とある町。療養所。


第一C(--意識、飛んでたみたいだな)パチッ

第一C(あー、確か城は戦いになるからーって、部下と一緒にここに放り込まれたんだっけ)

第一C(どれぐらい寝てたんだか……とりあえず起きて、通信--)ムクッ


第二副隊長「…………」ジー


第一C「ひいっ!!?--ちょ、な、何で床で正座してるんですか副隊長!」

第一C(何なのこの威圧感!至近距離にガチムチマッチョ………って、ああ、そうだ、)

第一C(妹の彼氏だったわこの人……)


第二副隊長「……もう少し、寝ていて下さい」

第一C「いや、怪我自体治ったようなもんですし」

第二副隊長「この国屈指の治癒魔法の使い手である貴方に、私が、治癒魔法は万能ではないと説明させたいのですか」

第一C「あー……っと、了解。安静にします……」

 
第二副隊長「……………」

第一C「……………」
第一C(気まずい……どうしよう、凄く気まずい……!!)

第二副隊長「……部下さんは今、寝ています。治療は全て終わりました」

第一C「じゃあ……妹についてやってくれ。その……彼氏、なんだし」

第二副隊長「了承は得ています。お義兄さんと二人きりで話がしたい、そう言いました」

第一C「……もしかして、正座のまま俺が目覚めるのを待ってた、とか、」

第二副隊長「はい」

第一C(ま、マジか……)

第二副隊長「本題に入ります。--Cさん、貴方も、」

第一C「?」

第二副隊長「第二部隊の異常性についてはご存知のはず。……そうですね?」

第一C「……任務となるとヒトが変わるってのは、知ってる。普段の顔を微塵も感じさせないぐらいに……切り捨ててますよね、色々と」

第二部隊「切り捨ててはいません。欠けているだけです、最初から」

第二部隊「自分の命も、仲間の命でさえも駒と見なし、任務を遂行する。それが第二部隊です」

 
第二副隊長「第二部隊に所属する者は、ヒトとして欠けています」

第二副隊長「それは、この私もです」

第一C「…………、今も、か?」

第二副隊長「……私もヒトとして欠けて--いました。今のこの考え、感情が……ヒトとして正常だそうです。隊長が……そう言っていました」

第二副隊長「任務外ならまだしも、任務中でさえずっと部下さんの事を考えてしまって」

第二副隊長「気付いたら--ヒトの命が軽いとは、思えなくなっていました」

第一C「…………何で、そんな話を俺に?」

第一C「まともになったんなら、わざわざ話さなくていいだろ。今は違うと言っても、昔そうだったって言われたら、」

第一C「……実の兄としては、そんな男に大事な妹任せたくないって思う」

第二副隊長「フェアじゃないと思ったので。あの時は何だかんだの成り行きで認められたみたいなものですし」

第一C「真面目だな。さすが、第二部隊の良心」

第二副隊長「ありがとうございます。貴方は生きて、どうか私が部下さんを任せるに値する男か見極めて下さい」スッ

第一C(……目つきが変わった、)

 
第二副隊長「私はこれから、初めて任務に私情を挟みます」

第一C(……第二のこれを知っているから、旅人さん達があんな目をしてもすぐに慣れることが出来たんだろうな、)

第二副隊長「任務に私情を挟むなど、やってはならない事だとは十分承知しています。ですが私は、」

第一C「……逆の立場なら、俺も、」

第一C「大好きな彼女傷付けられて、私情を挟むなってのは無理だろうな、」

第二副隊長「……………、」

第一C「……すみません。部隊は違うとはいえ、上官に色々言ってしまって」

第二副隊長「……いえ、確かに立場は私が上ですが、ヒトとしてはCさんの方が格段に上です」

第二副隊長「私には、感情のコントロールというものはまだ難しく感じるので」ニコッ ザワザワ

第一C「…………、」

第二副隊長「最後に一つ、確認させて下さい。貴方が剣士との戦いで使ったあの魔法は、もう解除されてますよね」

第一C「……してる。もう剣士が死んでも俺は死なないし、俺が死んでも剣士は死なない」

第二副隊長「わかりました。……言える立場には無いですが、捨て身の作戦はお控え頂きたいと思っています」

 
第一C「善処するよ」

第二副隊長「あなたが死ねば部下さんが悲しみます」

第一C「…………了解、気を付ける」

第二副隊長「……私は、少しの間、ここから離れます」

第二副隊長「安静にしていて下さい。不必要に動けばわかります、魔法を使用してもわかります。私は第二部隊所属です」

第一C(…………第二の超感覚怖い)

第二副隊長「私ではCさんを怒れないので、部下さんと第一部隊副隊長さんと第一の皆さんに怒ってもらいます」

第一C「おとなしく寝ます」

第二副隊長「お願いします。--では、失礼します」フォン

 ヒュン

第一C(……転移したか)

第一C(にしても……似てるようで、やっぱり違う)

第一C(任務時の第二と同じに見える目つきをしていても、旅人さん達はどこかが壊れてる感じがするもんな、)

第一C(…………、)

第一C(いやでもいくらなんでもガチムチマッチョなヤンデレ笑顔は怖いです)

 

 現在。
 とある町。付近の山。


第二副隊長「…………、」

剣士「」ハンブン


第二隊長『副隊長、憎しみのままにヒトを殴った気分はどうだ?』


第二副隊長「力の加減が上手く行かず、一撃で半身を飛ばしてしまいました」

第二副隊長「気分は晴れません。……足りません」

第二副隊長「この男が、片腕を失っておらず、逃げ切ったとでも思ったのか油断もしておらず、」

第二副隊長「万全の状態で戦いたかったと考えてしまいます」


第二隊長『そうか、考えているのか』ケラケラ


第二副隊長「私はおかしいでしょうか」


第二隊長『いや、それでいい』

 
第二副隊長「…………、」


第二隊長『副隊長、』


第二副隊長「何でしょうか」


第二隊長『お前の命は軽いか?』


第二副隊長「……いいえ。昔と違い、自分の命を捨てて任務を遂行しようとは考えられません」


第二隊長『他人の命は軽いか?』


第二副隊長「いいえ。……しかし、皆が皆等しく重いとは思えません」

第二副隊長「……私が来るまでに、子供が一人、人質になったと報告を受けました」

第二副隊長「私に殺させたかった隊長の意向は理解します。が、その判断には賛成しかねます」


第二隊長『そうか……よく言った。よく言ったな、副隊長』

第二隊長『お前はそれでいい。それでいいんだ』

今日は終わり。あと6シーンぐらいやってエピローグ。
ここまで来たんだもう消滅してなるものか。

 

 人間領。
 とある国。王城。王の間。


国王「く、くるなぁ!」バタバタ

魔王「……追い回すのは趣味じゃないのだけれど、」

国王(まだだ!相手は魔族、それも魔王だ!魔王が人間領に攻めてきたとあらば、勇者協会は必ず動く!それも迅速に!)

国王(例え国が滅び、何人、何十人、何百人--どれだけ人間が死んでもいい!私だけ生き延びれば……!)

 ドスン
黒い竜「…………」グルルルルル

国王「ひいっ!!何故竜が……!兵士共は何をやっている……!!」

魔王「あら側近。あなたがここにいるという事は、獲物はコレしか残ってないのね」

黒い竜「…………」フォン パシュン
側近「--そうなるな、」チミドロ

魔王「そのままでも良かったのに」

側近「もうあの姿で脅す相手はいない。それに、コレはお前の獲物だろう」

魔王「そうね」

 
国王「……魔王が人間領に侵攻か……はは、戦争になるぞ……!」

国王「いいのか!?私を殺せば勇者協会も黙ってはいない!!貴様等のちっぽけな国などすぐに滅ぼされるぞ!」

魔王「……侵攻……戦争、だなんて。先に仕掛けたのはそっちでしょうに」

魔王「私は、この国が欲しいわけでもない、領土を広げるつもりもない。私の国は、お前がちっぽけと言ったあの世界だけ」

魔王「だから、これは報復よ」フォン

 バチバチッ
国王「!!か、身体が動かない……!」

魔王「何人、死んだと……思ってるの。お前が味方した隣国との戦い……国境で死者が出てないとでも思っているの、」

魔王「民間人にまで手を出して……下手したらさらに死んでいた可能性もあった」

国王「違う!確かに手を組んだが……実際手を下したのはあの宰相だろう!私のせいじゃない!!」

国王「そもそも魔法回廊や国内の魔法陣はお前の叔父が!」

魔王「そうね。仕掛けたのはあの魔王。でも、利用したのはお前達よ」

魔王「……勇者一行を使って隣国を乗っ取りにかかったのは正直驚いたわ」

魔王「本命は私の身体……確かに、私と掛け合わせれば……それなりに、ね」フォン

国王「!!」ギリギリギリ
国王(突然息苦しく……!!魔王の魔法か……!?)

魔王「生体操作……ヒトを操り人形のように操作する魔法も、人間領ではこんなに盛んなのね」

魔王「倫理に反するからって、魔族領では禁忌扱いなんだけど……この城ではよく見たわ。--私達、この魔法が大嫌いでね」

魔王「ヒトをヒトとも思わない……そんな魔法を平気で使う……これじゃ人間を種族ごと嫌いになりそうよ」

国王「……かっ……はっ……」ギリギリギリ
国王(息が……!)

魔王「……勇者がいてくれなきゃ、嫌いになってた」


 フォン
勇者男『それは有り難い。人間が皆醜い阿呆だと思われては困る』


国王(映像と通信……勇者か……!助け……!!)

魔王「--あなた、どういうつもり?どうしてもコレ側で動いているとは思えないんだけど」

国王「!?」

勇者男『協力しているようにと見せろと勇者協会に依頼されていた。--頃合いだからな、ネタバラシといこう』

国王(……は?)

 
勇者男『旧政権……あの魔王は我々も脅威と認識していた。--まぁ、あの勇者と竜族によって打ち倒されたが』

勇者男『平和というのは素晴らしいな。あの魔王が倒れたおかげで、人間領への侵攻は格段に減った。無くなったと言える程に』

勇者男『国境に接する地に出来た国々が非交戦的なのも幸いしたな』

勇者男『無論、一国を除くが』

勇者男『美しき魔王、貴女の国のお隣がそれに当たる。隣国には……あの魔王の元で宰相を務めた魔族がいたらしいな、』

勇者男『魔族領での小競り合いなら無視しよう、だが、事も有ろうに人間領と繋がった』

勇者男『ただの貿易ではない……そうだろう、国王よ』

国王「っ……さかっ、きっ…さま!私をっ、騙したのかっ……!!」

勇者男『ほう、統一性に欠ける矛盾した文書での依頼を勇者協会が真面目に受理し、尚且つ私のような勇者に話が行くとでも思ったのか?』

勇者男『勇者協会上層部からの正式な依頼で無ければ、貴様のような小汚い男と顔を合わせる所か通信回線すら繋げるのも御免だ』

国王「お……のれっ……!!」ブルブル

 
勇者男『勇者協会の基本指針を知っているか?--現状維持だ』

勇者男『貿易ならまだしも一国の転覆を狙い、あの魔王の手の者と関係する。人間領にまで余計な火種を振り撒かんとする貴様のような王は、協会にとって邪魔以外の何物でもない』

勇者男『計画が成功すれば、そうだな、甘い汁は協会が存分に啜ろう』

魔王「…………」

勇者男『貴様の末路は決まっていた。成功すれば我々協会が、失敗すれば……このように、美しい魔王と竜族に殺される事になる』

国王「~~~!!」ブルブル

勇者男『ところで竜族、男なのが悔やまれ顔をしているな。女性ならさぞ美しい顔をしていただろうに。姉か妹がいないか?』

側近「死んでくれないか」

勇者男『悪いが男の暴言は受け付けていない』

魔王「死んでくれない?」

勇者男『やはり毒は美女から受けるに限るな』ウンウン

勇者男『--さて、魔王と竜族よ。もうすぐ城を勇者協会による軍が囲むだろうが、その者達へと手を出すことは推奨しない』

勇者男『もし手を出せば、勇者協会は貴女の国を敵と認識する』

 
勇者男『国王を殺した後は、そうだな。勇者協会による軍勢に圧倒され、おとなしく自国に逃げ帰った。という筋書きになるか』

魔王「!!」
側近「……俺達は、お前達人間の都合の良いように踊らされていたというわけか」

勇者男『貴女は一国の主としては若い。……若すぎる。これも経験だ、わかってくれ』

勇者男『美女がいるこの国が滅ぶのは俺としても困る』

魔王「……わかった。城の外の者には手を出さない」

勇者男『ありがとう。--ところで、竜族。まだ姉か妹がいるかの返答をもらってないのだが』

側近「……本当に、死んでくれないか」

勇者男『ふむ、否定と受け取ろう』

側近(なんなんだコイツは……)

勇者男『--要件は以上だ。邪魔して悪かったな』プツッ

魔王「……………」
側近「……………」

魔王「……馬鹿、みたい」フォン

国王(--!?息苦しさが無くなって--え?)
国王「ああ……火、火があああ!!」ボォォ

 

魔王「…………」フォン

 ゴォオオオ
国王「あああ!!燃える!この私が、燃えてえええあああ!!!」

国王「おのれぇえ!悪しき血と滅びの黒よ!!地獄にっ……落ちろおおお!!!!」ゴォオオオ


国王「」ゴォオオオ


消し炭「」ゴォオオオ



魔王「…………、」

側近「…………、」





側近「……国に戻る前に……少し、話せるか?」

魔王「……私も、あなたと……二人だけで、話したいと思ってた」

 

 とある町。
 郊外。


第一副隊長「……現状維持、ね。人間領は余程豊かなのね」

勇者男「そう嫌みを言わないでくれ。貴女の予想通りだ。人間領では魔族領以上に貧富の差が激しいだろう」

勇者男「協会が言う『現状維持』とは、協会に属し関連する富裕層の生活だ。それ以上望まない程に満ち足りている、だからこの現状を維持したい」

第二隊長「……腐ってるな」

勇者男「ああ、腐ってる。私もその一員だ」

第二隊長「死ねばいいのに」

勇者男「妻達や沢山の奴隷達が待っている。死ぬわけにはいかない」ケラケラ

第一副隊長(このヒト……)

第一副隊長「ねぇ、あなたが魔族領に来たのは……本当に、協会の依頼を受けたからなの?」

勇者男「……ああ、そうだ」

勇者男「それにしても、貴女は心から欲しく思ってしまうな。どうだ?俺の妻となり一緒に人間領へ」

第一副隊長「死んでちょうだい」ニコッ
第二隊長「第一のはやらんぞ!」

 
勇者男「いいさ。考えておいてくれ。後悔はさせない」

勇者男「さて、任務は完了した。美女とも出会い、最高の仕事だった」

勇者男「名残惜しいが帰るとするか」

第二隊長「ああ帰れ!隠れて居座られるのは困るから国境までついていってやる!!塩をくれ第一の!!」

第一副隊長「魔法使って自分で呼び寄せない」

第二隊長「わかったぞ!!」フォン シオシオー

勇者男「これはいい。腹筋にさえ目を瞑れば好みの顔に送ってもらえるのか。しかし俺としては貴女の方が」

第一副隊長「死んでちょうだい」ニコッ
第二隊長「第一のはやらんと言ったはずだ!!」シオアタック

勇者男「塩を投げないでくれ。食物で遊ぶな」

第二隊長「お前が正論吐くと無性に腹立たしいな!!」シオアタック


第一副隊長「連れは、協会側では無かったって事かしら」


勇者男「--ああ。国王側だ。……魔族領にも『戦闘奴隷』という言葉は存在するのか?」

第二隊長「…………」
第一副隊長「ええ」

 
勇者男「剣士と僧侶はまさにそれだ。戦う事でしか生きられない。危険な者達だ」

第一副隊長「だからあなたは、一人、町の近くにいた。召還魔法陣の事は知っていたんでしょう?」

第一副隊長「最も被害を受けるであろうこの町を守るつもりで、この場に立った」

勇者男「買い被らないでくれ。この国の兵は強い。僧侶と剣士如きに被害など出させるわけがない」

第一副隊長「私に嘘をつくの?」

勇者男「まだ見ぬ美女やこれから成長し立派な美女になる可能性を持つ少女、いずれ美女の親になるかもしれない可能性に溢れた者達をそう簡単に死なせるわけにはいかない。この国では美女をよく見る。別荘を持ちたいぐらいだ」

第二隊長「お前は揺るがないな」シオアタック

第一副隊長「疑問に思わなかったら本気で燃やしてたわ」

勇者男「あなたの情になら喜んで燃やされよう」

第一副隊長「魔法使いはどうするの?」
第二隊長(おお、ついにスルーしたか!)シオアタック

勇者男「魔法使いか、あれはもう保たん。元より一度は死んだ女だ」

勇者男「いや、正しくは死ぬ間際に生かされた人形だ」

 
勇者男「能力の使用を条件に、人形となり生きている。延ばされた命とはいえ、能力の仕様上長くは保たない。そろそろ死ぬだろう、そうでなければ術者が死ぬ」

第一副隊長「どういう事かしら」

勇者男「どうやらこの類は人間領の方が進んでいるらしいな」

勇者男「生体操作の類は表上禁忌とされているが、秘密裏に研究は進んでいる。魔法使いの人形化は生体操作の発展型……と言えるかは方向性上疑問だが」

勇者男「魔法使いは術者の命を食らって生き延びている。そんな魔法だ。術者が魔法使いを切り離せば、魔法使いは死ぬ」

勇者男「逆に、長らくその魔法を続けると術者が疲弊し死ぬ。意志を持つ人形の負担は大きい」

第一副隊長「それは、生体操作……人形の魔法というより、もっと別の……」

勇者男「死者蘇生に近いな。死者を生前のまま繋ぎとめる事が出来る」

勇者男「死した最愛の人を命を削り自分に繋ぎとめる事も出来る。……人間が編み出した、最高で最悪の魔法だと思っている」

第一副隊長「魔法使いの術者の目的は?」

勇者男「さあな。国王側ではなく、協会側でもない。独自の目的で動いているようだ」

 
勇者男「……私利私欲を貪る醜い者共に力を貸しその恩恵を受け……多くの者を狂わせてきた魔法使いなど生かす価値は無いと言ったんだがな」

第一副隊長「知り合い?」

勇者男「妻候補の一人だ。なかなか首を縦に振ってくれないがそこがまた良い」

第一副隊長「…………」ハァ
第二隊長「…………」シオアタックシオアタックシオアタックシオアタック

勇者男「やめてくれしょっぱい身体になってしまう」

第二隊長「帰れ」シオアタック

勇者男「ふむ、確かに喋りすぎたな。帰るとしよう。魔法使いは好きに処分してくれ」

勇者男「……最後に訊くが、やはり妻には--」

第一副隊長「死んでちょうだい」ニコッ
第二隊長「もう帰れ」シオシオバシャーン

 

 少し前。
 魔王城。牢屋。


第三4「」モクモク

第三1「え?トランプタワー?」

第三3「わぁ~、4くん器用だねぇ~」

第三2「すっげ、障壁で振動と完全シャットアウトか」

第三4「……昔5箱使って作ったトランプタワーの時もこうして、」

第三1「え、5箱?」
第三3「……えっと、一人遊びも楽しいしね~」

第三2「は?5箱?大丈夫かお前かなり引きこもった遊びしてたんだな、ちゃんと友達いたか?」

第三4「」パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ パタン

第三1(か、完全崩壊……)

第三4「」グスッ
第三3「も~、駄目だよ2くん。そんなヒトを傷付けるようなこと言っちゃ~」ナデナデ

第三2「すまん。気になったからつい口に出しちまった」

 
第三2「で、4お前小さい頃ちゃんと友達いたか?やっぱりぼっちだったのか?」

第三4「」
第三3「もうっ!2くん!!」


魔法使い「嫌ですっ!!」


第三2「あ?」
第三134「?」


魔法使い「まだ死にたくない……!!だって私、ずっとヒトに使われ続けて……!!約束したじゃないですか!この任務が終わったら解放してくれるって!!」

魔法使い「あなたの命をくれるって!!」


第三2「なんだ?一人芝居か?」
第三3「……違う。でも、通信じゃない」
第三1「おい4、しっかりしろ。何か見えるか?」ツンツン

第三4「!!」ハッ

第三4「……ま、待ってくれ」ジー

第三4「……なんだ、これ……魔法使いの身体から糸みたいな--生体操作?でも、」

 
魔法使い「嫌、やです……やめて、…………いやああああああああ!!あ」

魔法使い「」パタン


第三ズ「!!!?」

第三1「おいおい、まさか死んで?」

第三4「--死んでる。絶対。脈も呼吸も……確認しなくても皆わかるだろ?」

第三123「……………」

第三4「魔力を一切感じない、さっきまで動いて、叫んでたのが不思議なくらいに」

第三4「かなり時間の経った死体と、同じ気配だ……」






 とある町。
 付近の山。

勇者(……んー、暇だなぁ、)

勇者(みんな戻れって言ったけど、一人で先にー、ってのも何か寂しいし、)

 
勇者「…………、」
勇者(俺だって、あのレベルの魔法陣すぐに壊せるのに、)

勇者(あのクソ魔王が仕掛けた召還魔法陣……密偵さん達の情報で全ての位置が特定出来たから、各自潰していこうって話になった、)

勇者(町が近いからか、この山に仕掛けた魔法陣の数が尋常じゃなくて、ぷちぷち潰していかないとで……でも俺は怪我してるからってそのぷちぷち潰す手伝いすらさせてもらえず、)

勇者(一人、ぽつーん。……見かけたらすぐ手出すからって相棒にすら一緒にいるの拒否されるし)

勇者(先に戻るか安静待機とか、寂しいし暇なだけじゃんか……)


勇者「……」ピクッ
勇者(気配、誰か後ろに……)クルッ


魔法使い「……………」


勇者「…………、」

血文字:誰だ?お前は、魔法使いじゃない


魔法使い「当たり。最後に身体を借りているだけ。私は魔法使いじゃない」


勇者「…………、」

血文字:俺に、何か用?

魔法使い「ずっと疑問だったから、訊いてみたくて」

勇者「…………、」
勇者(なんでだろう。心がざわつく、なんだ、これ……)

魔法使い「やっぱり、知っている人間の目には気付くのかな、」

勇者「…………、」
勇者(よくわからない、けど……とりあえず相棒に相談、)フォン


魔法使い「ねぇ、勇者」


魔法使い「あなた、何で生きてるの?」


魔法使い「××のくせに」



勇者「----」パキン




 とある町。
 付近の山。

第一A『--第三から通信があった。魔法使いが死んだらしい』

第一B「殺したのか?」

第一A『いや、何もしてない。突然死んだそうだ。死因は不明。牢屋でいきなり叫んでいきなり死んだんだと』

第一B「なんだそりゃ」

第一A『これから副隊長にも通信入れる』

第一B「そこは先に副隊長からだろう」

第一A『もう一つあるんだ。お前が一番近い』

第一B「?」

第一A『旅人さんの反応が消えた。……俺の空間視野から逃れるようにしてるだけならいい。……けど、なんか胸騒ぎというか』

第一A『旅人さんの近くで変な反応を感じたんだ。確認しようと思ったら旅人さんの反応が消えた』

第一B「相棒さんには?」

第一A『もう言った。……私が様子見てくるから大丈夫、気にしないで、探さないでってって言ってたよ』

第一B「……俺も行く。旅人さんの件はもう言うな。あいつにも、Cにも。お前も探さなくていい」

第一A『……了解。頼んだ』プツッ


第一B「…………………、まさか、な」タタタッ

ここまで。
あと大きいの4シーンでエピローグ。

魔王どうやらの盛大なネタバレになるからそのSS内で関係無い言ったけど一応勇者過去話完結投下済み。
もし覚えがある方は読んでくれてありがとう。覚えが無い方はすまん余計な話したスルーしてくれ。

ごめん。凄くごめん。
投下時期が魔王どうやらとかぶってた負い目と個人名あるの気にして関連あるって言い辛かった。
勇者「独り身だがショタを引き取ろうかと真剣に考えている」ってやつ。
もし興味持ってくれたら暇潰しに使ってもらえると有り難い。
でも読まなくてもわかるように話は作る。

 

 とある町。
 付近の山。


魔法使い「いや、違うか。何で生きてるの、じゃない」

魔法使い「ただの魔法のくせに、何故存在し続けているの?」

勇者「----、」


勇者〈--せっかく封じた記憶を抉り出そうとするのは、やめてくれないかな〉


魔法使い「はは、なにそれ、喋ってるの?あなたは目の前にいるのに……音みたいな声ね」

勇者〈…………〉

魔法使い「雰囲気も、いつもの勇者と違う。勇者はもっと馬鹿っぽくて緩い……どこか壊れた感じがしていたのに」

魔法使い「あなたこそ、誰?二重人格というより、防衛本能?」

勇者〈……はは…、本、能?俺が魔法だと知っているくせに、そんな言葉を使うのか〉

魔法使い「…………」

勇者〈……俺に本能なんてもんは無いよ。あるのは……そうするようにした、仕掛け、だ〉

 
勇者〈今の俺は……弱い俺が全部思い出さないように作った、最後の障壁って所か〉

魔法使い「全部思い出したら、消えるわけ?」

勇者〈知ってるくせに、決定打を言わないのは何で?〉

魔法使い「質問してるのは私よ」

勇者〈……ヒトってのはわからないなぁ。俺を壊したいから接触してきたと思ったのに〉

魔法使い「……一緒にいるって約束したヒトがいるのに、好きなヒトも出来ているのに、」

魔法使い「それが存在し続ける理由にはならないってわけ?」

勇者〈何、言ってるのさ。俺はヒトじゃない。生物でもない。ただの魔法なのに、〉

勇者〈この感情が、報われるわけがない〉

魔法使い「あんたは……!」

 
勇者〈それに、〉

勇者〈ヒトは、嘘つきだからな〉

勇者〈俺が、一緒にいたいって、一緒に連れて行ってくれって、〉

勇者〈……一人にしないでって、言っても、言ってくれても、〉

勇者〈どうせ、俺だけを置いて、どこかに行っちゃうんだろ、〉

勇者〈彼女も、魔王様も、みんな、〉

勇者〈……だから、望まない〉

魔法使い「あなたが何時までもそうだから……あの人は……!」

勇者〈誰かの死を思い出してしまった俺は……いや、俺達は、きっと、〉

勇者〈そう長くは……保たない〉

 
魔法使い「……似てると思った、けど、やっぱり同じってわけ」

魔法使い「どちらも、生きていたくない意志を、隠して……」

魔法使い「……いいえ、違う」

勇者〈……………?〉

魔法使い「あなた達はお互いを好きにならなかった、別のヒトを好きになった」

魔法使い「あなたが彼女を好きになったら、一緒に堕ちるだけだもの」

魔法使い「自覚しなさい、あなた達はまだ」

勇者〈やめてくれ、やめろよ〉


勇者〈俺はもう、生きたくないんだ!〉



  『勇者、』



勇者〈!!〉


相棒「ゆーうーしゃー」

 
勇者「………」

相棒「どうしたの?ぼーっとして」

勇者「俺、今何してたんだろう」

相棒「……何って、ぼーっとしてたんじゃないの?」

勇者「いや、何か……誰かと話してたような、」

相棒「……誰もいないよ?勇者、一人だったし」

勇者「……ま、まさか……俺はついに白昼夢とやらを見て……!?」

相棒「なんてこった……!まさか首の傷が原因!?

勇者「そ、そんな……!あれいやでも俺もう喋れてる気がする!」

相棒「気がするじゃないよ!喋れてるよ!」

勇者「…………」
相棒「…………」


勇者「完治いえーい」
 ハイターッチ
相棒「完治いえーい」

勇者「--さて、完治したわけですが、首の包帯どうしよう。あとこの会話用に維持してる血の塊も!」フォン

血文字:どうしようこれ!

相棒「包帯は巻いたままだとみんな心配するもんねぇー。血の塊は……」

勇者「Bさんありがとう。包帯外しまーす」クルクル

血文字:あとこれ、血だからやっぱり血のにおいが凄い!

相棒「そりゃあ血だし、水じゃないんだし。もう放棄するしか」

勇者「だよなー」フォン

血文字:さらばだ! バチョン

勇者「これで憂いは無くなったな」

相棒「そだねー」ケラケラ

勇者「………………」
相棒「………………」

勇者「相棒、」

相棒「なにー?」

勇者「俺、おかしかったろ」

相棒「…………、」

勇者「隠さなくていい」

相棒「……うん。なんか、勇者が勇者じゃないように見えた」

勇者「そっか。気を付けないとなぁ」ヘラリ

相棒「……ねぇ、勇者」

勇者「なに?」

相棒「私と組んだ時の事、覚えてるよね」

勇者「忘れないよ。竜の里の御神木の枝折った事カミングアウトしてくれたんだから」

相棒「やめて思い出した良心が痛む」

勇者「ごめんごめん。ちゃんと覚えてる。出会いや、闘った事、相棒が相棒になってくれた時の事も、全部。全部覚えてる」

相棒「ずっと一緒だ、って言ってくれたよね」

勇者「言った」

相棒「……もう一度、約束しよう」

相棒「私を置いて、どこかに行かないでね、勇者」

勇者「……うん、わかった」


勇者「約束、だ」

 

 近くの木の陰。


第一B「…………、」

第一B(これ以上……詮索出来るわけ、ないだろ……)


 --少し前。
 とある町。付近の山。


相棒「やっぱりそうだ。止めてもBさんは来るって思ってたんだー」

第一B「……旅人さんを探さなくていいのか?」

相棒「大丈夫だよ。勇者は死んでない。気にしないで」

第一B「んなこと、出来るかよ」

第一B「……俺の蟲は、当時の思考を伝える。旅人さんと遭遇した後の剣士の思考を、俺は全部見た」

第一B「相棒さん……、何であいつが、死なないってわかった」

相棒「……………勇者は、『ごめん』って言わなかった」

相棒「だから、死なない。そう信じられたんだ」

 
第一B「……前に話してくれたな。お前等の出会いの話」

相棒「そうだね。ずっと一緒だって、勇者は言ってくれたから」

第一B「……でもな、違うだろ。死んでるはずだ、死んでたはずだ。あの傷で生きてるわけが……ない」

第一B「一番近くで見たのが剣士だ。その剣士が死んだと認識した」

第一B「見ていた俺達も……死んだと思った」

相棒「でも、死んでなかった」

第一B「剣士の思考を全て見た。さっき、言ったろ。剣士はあいつを自分と同じ戦闘奴隷だと考えていた」

第一B「……戦闘奴隷ってのは魔族領にも存在する。人間領に存在することも驚かない」

第一B「人間領出身だ、対魔族を目的に身体を弄られてる事も、驚かない」

第一B「旅人さんの自己治癒能力は剣士と同じだと思った。最初は。--だが、剣士は……治癒魔法は効きにくいだけで、効果はあるらしい」

第一B「治癒魔法が効きにくいと、全く効かない、それどころか魔法を弾くってのは意味が全く異なる」

第一B「前者は、先に発動した同一魔法が遅れて発動した魔法を阻害し、効果を減退させる。剣士の速すぎる自己治癒力は、治癒魔法を身体に同化していたから」

 
第一B「同化した魔法が阻害するから、効きが悪い」

第一B「治癒魔法の同化自体信じがたいが、剣士という実例がある。確かに、理論上、可能だしな」

第一B「旅人さんは、それに当てはまらない。旅人さんは治癒魔法自体を……弾く」

相棒「……………、」

第一B「……確信は無い。それ以外に考えつく、これなら有り得ると思う可能性の方が現実的だ。俺も、そっちであってくれと、」

相棒「Bさんが、」

第一B「…………」

相棒「……Bさんが、勇者に使った魔法、ちゃんと効いてた、ね」

相棒「治癒魔法じゃないんでしょ?」

第一B「……俺が、旅人さんの傷に指突っ込んで使った魔法はな、」


第一B「構築された魔法を破壊、し続ける魔法、その、無効化だ」


相棒「……剣士は勇者に同化した治癒魔法の破壊を狙ったわけか」

第一B「……だろうな」

相棒「私、Bさんの言いたい事、わかるよ」

 
相棒「基本的に、治癒魔法は生物にしか効かない。それを弾くのなら、」

第一B「効かなくても、弾きすらしても、原因の可能性はすぐに思い付く。いくつもだ」

相棒「--勇者は、人間じゃないかもね」ヘラリ

第一B「----、」

相棒「魔族でもない、竜族でもない……天使だったらどうしようか、精霊だった、ってオチかもしれない」

相棒「私さ、勇者が何であっても、一緒にいてくれたらそれでいいんだ」

相棒「私、気付いたら一人ぼっちだったから。誰かがずっと一緒にいてくれた気はするけど、誰だかわからなくて」

相棒「誰かはもういないし、寂しいって口にすることも駄目な気がしてた」

相棒「私も勇者も、記憶が無いんだ。昔の記憶。生まれてから一定の期間、小さいから忘れてるだけ、なんて言えない期間」

相棒「きっと、思い出しちゃいけない記憶なんだ。私はきっと、思い出せない。誰かが封じてくれたんだと思う」

相棒「勇者は、時々思い出しそうになる。自分で封じた記憶だからだろうね、」

相棒「思い出しそうになった勇者は、勇者だけど勇者じゃないように思えて、少し、怖い」

相棒「おまけに、勇者は思い出しそうになった時の自分を覚えてないから、」

 
相棒「もし完全に思い出しちゃったら、勇者が消えちゃいそうで……凄く、怖い」

第一B「……旅人さんの反応が消えたのは、本当に大丈夫なのか」

相棒「私は、Bさんが勇者本人に疑問をぶつける事の方が危険だと、判断した」

第一B「……悪かった、思慮が足りなかった」

相棒「……謝らせたいわけじゃなかった。私こそ、ごめん」

第一B「…………、なぁ、相棒さん」

相棒「……なに?」

第一B「俺は、あいつが何であっても、構わない。接し方を変える気はない」

相棒「……Aさんが『勇者に対する遠慮が無くなってるー』って、言ってたけど」クスッ

第一B「それはそれ。これはこれだ。心配させた旅人さんが悪い」ケラケラ

相棒「あはは、そうだね」ケラケラ

第一B「…………、」

第一B「……行ってやれ。旅人さんの所に」

第一B「俺は言わない。誰にも。……俺も、何も知らない事にする」

相棒「……わかった。ありがとう、Bさん」

ごめん短いけどここまで。
ショタ読んでくれてる、読んでくれた方いるみたいで、ありがとう。
シリアスは嫌いだ。

 

 人間領。とある国。
 王城。王の間。


魔王「…………」ズルズル

側近「……その二脚の椅子、どこから持って来た」

魔王「近くの部屋から。ほら側近、あなたはそっち。私はこっちに座るから」ストン

側近「広間のど真ん中に椅子が二脚。不自然極まりない配置だな」

魔王「いいじゃない。どうせ全部燃えちゃうみたいだし」

側近「--城は外の者共に火をかけられた。最上階のここも……いずれ燃えるか」ストン

側近「不自然な配置の椅子に他国の魔王と側近が並んで座る--なんて構図、端から見たら笑えそうだな」

魔王「いいじゃない。私達しかいないんだから、誰も見ちゃいないわよ」

魔王「……下が燃えてるから、温度上がってきたわね。熱いのは嫌だし、最上階だけ少し冷やしておこうかしら」フォン

 パキパキパキパキ

側近「冷やしすぎだ。一面に氷を張らせてどうする」

魔王「いいのよ。これで」

 
魔王「少しは見栄えが良くなるでしょ?赤くないんだから」

側近「………確かに……もう赤くはない、か」

魔王「…………、」フゥー

魔王「……けど、確かに冷やしすぎたかも。息、こんなに白い」クスッ

側近「…………、」

魔王「話、あなたからどうぞ」

側近「………わかったことがある。俺の血筋についてだ」

側近「竜族にも……と言うのはおかしいな、ちゃんと血統があった。俺と同じ黒の竜へと変化する者達が、いた」

側近「黒の竜族……その一族は滅んだらしい」

魔王「あなたは……その一族の最後の一人ってこと?」

側近「わからない。一番古い記憶は拾われた日の物だからな」

魔王「……私に兄が出来た日、ね」

側近「はは、そうだな」

側近「…………、」

 
側近「……黒だから、」

魔王「?」

魔王「黒だから、滅んだそうだ」

側近「黒の竜族は滅びを招く。一族はまとまって、隠れるように暮らしていたらしい」

側近「まぁ、全部人間から聞いた話だ。真実かは知らん」

魔王「黒の竜族か……、強そうね。私のおまけじゃなかった、って事で良いんじゃない?」

魔王「滅びを招くー、とか、そんな信憑性の無い話信じるようなヒトじゃないでしょ、あなたは」

側近「そうだな。滅びなんぞ知るか、と言った所だ。ただ、」

側近「俺の一族は……死んだか、と思ってな」

魔王「…………、」

側近「お前がいてくれて良かった」

魔王「ふふっ、妹との有り難みをしかと噛みしめなさい」クスクスッ

側近「そうだな。--では、お次は妹殿の話を聞こうか」

魔王「……あー、そうだったわね、……愚痴になる、かも……」

魔王「……その通り、なのよね。私、若いし、経験なんて無い……変に力があるから、結局力押しでどうにかって考えてしまう」

 
魔王「……今回の事は、良い勉強になったわ、なんて言えればいいんでしょうけど、」

魔王「……………、」
側近「…………原因は、俺にも半分あるな」

魔王「あああああ!!もう!!悔しいわよ、凄く!ヒトが死んでるのに!!負傷者もいっぱい……何で私……、策士とか……なんというかその……理知的な、魔王じゃないのよ」

魔王「何で最終的に思考停止して『よし、殴ろう』とか思っちゃうのよ!!馬鹿じゃないの!?この脳筋!!私の馬鹿っ!!」

側近「…………すまん多分いや確実に俺の役目だ。策とか……なんかこう……力でごり押ししないで済む方法を考えるのは」


魔王「……私も、あなたも……そろって向いてないのはわかってるわよ。だって私達……完全に武官タイプじゃない……」

側近「………………」

魔王「……でも、やらなきゃいけないのはわかってる。……やりたくないなんて思わない」

魔王「あなたもそうでしょ?私達がやるの、私達の国は、私達が守るの」

側近「ああ。それだけは絶対に揺るがない」

 
魔王「それが聞けて良かった。けど、…………私達にはもう一つ……結論というか、方向性を決めなきゃいけないことがある」

側近「……………だな。いずれ変わる可能性があるにしても、このままでこのままの関係はフェアじゃない」

魔王「--思えば、綺麗な所しか見せてなかったな、って」

側近「……返り血、凄いぞ」クスッ

魔王「あなたもね」クスッ

魔王「よし、本人と面と向かって何も言えなくなるっていうオチは嫌だし……国に帰る前に話つけるわよ!」スクッ

魔王「とりあえず隅に行くわ!いくらあなたでも近くにいられると、私何言い出すかわからないし恥ずかしい!なんかこう……恥ずかしいものがあるわ!!」

側近「お、おう」

魔王「よし、気合い入れて通信よ!!映像付けて顔見ながら話してやるわ!!」ツカツカツカ

魔王「待ってなさい勇者!今通信回線ぶち込んでやるからっ!」スミッ

側近(隅っこに座り込んで通信か……まったく、)クスッ

側近(まぁ俺も……恥ずかしいのには変わりない)

側近(ここは魔族領に近い。……問題無く、繋がるはずだ)

側近(……繋げる先は--相棒)フォン

 


 魔族領。
 とある町。付近の山。


第一A『なんだよ旅人さん!さっきの今で結構心配したんだからな!倒れてるかもってさ!』

勇者「ごめんAさん。……治癒したばかりで魔力が安定してなかったから、うっかり反応消えちゃったんだと思う」

第一A『……ならいいけどさ、』


第一B「--傷、治ってるな」


勇者「あ、Bさん。完治した!手当てありがとう!」

第一B「おー」

第一B「--で、相棒だけか?あいつはまだ戻ってきてないのか?」

相棒「……お兄さんはまだだねー、私が1番で、通信だけならAさん2番Bさんは3番目に合流ー」

 フォン
第一『マジか、皆合流済みってか』

第一『あらかた潰し終えたし、俺も合流しようかなー』フォン

 


 魔族領。
 とある町。付近の山。


第一A『なんだよ旅人さん!さっきの今で結構心配したんだからな!倒れてるかもってさ!』

勇者「ごめんAさん。……治癒したばかりで魔力が安定してなかったから、うっかり反応消えちゃったんだと思う」

第一A『……ならいいけどさ、』


第一B「--傷、治ってるな」


勇者「あ、Bさん。完治した!手当てありがとう!」

第一B「おー」

第一B「--で、相棒だけか?あいつはまだ戻ってきてないのか?」

相棒「……お兄さんはまだだねー、私が1番で、通信だけならAさん2番Bさんは3番目に合流ー」

 フォン
第一『マジか、皆合流済みってか』

第一『あらかた潰し終えたし、俺も合流しようかなー』フォン

 

第一『エンタングル!!』


第一B「何の掛け声だ何の」

勇者「あ、これは知ってる」
相棒「転移に一票」

第一B「は?」

 ヒュン
第一「んじゃ、お仕事も終わったしみんなでぶらぶら山降りる?」スタッ

第一「それとも一発転移?」

第一B「ほんとに転移して……まぁいいや」

第一B「A、現在の状況は?副隊長から何か連絡あったか?」

第一A『勇者の男は第二隊長につつかれて国外へ』

第一A『--この場所以外の召還魔法陣は、第三の隊長達がぷちぷち潰して回ってたみたいだな』

第一A『あとは魔王様達の帰宅を待つばかりーって状況だな。ほぼ全部、終わったって所』

第一A『ってことで、皆様。そろそろ城に戻って--』

 

 ヴヴヴヴヴ

勇者「!!!」ビクッ
相棒「!!!」ビクッ

第一A『おやおや、通信魔法か?』
第一B「おい誰だー?通信繋げてやらないのはー」
第一「せんせー!2つ分の通信回線を繋げないヒト達がいまーす」


勇者「つ、繋げます!ちょっと魔王様から個人直通で来たから吃驚しただけで!」

相棒「そ、そうだよ!突然側近さんから個人で通信来たら吃驚するじゃんか!!」


第一B「邪魔者はとっとと消えるか」
第一「転移いきまーす」フォン

 ヒュン


勇者「早い!!行動早いよお兄さん達!!」
相棒「一瞬だった!一瞬で消えたよ!」


第一A『安心してくれ!ちょっと距離を取ってやっぱり見てる!!じゃあな!!』ブツッ

 
勇者「な、ななななな……!!」

相棒「い、いきなりすぎるよ、でも何か大変だって事なら早く繋げなきゃだし、」

勇者「」アワワワワ

相棒(……なんだろう、自分以上に慌ててるヒトいるとちょっと落ち着く)

相棒「勇者、私少し離れるからね」

勇者「え、」

相棒「何の話か知らないけど、魔王様からの直通で来てるんだ。勇者だけに話があるってことだよ」

相棒「……私にも、側近さんからきてるし。何だかんだで今日色々あったから何の用だろうってドキドキするし」

勇者「…………、わかった、」

勇者「……通信、繋げる。離れる。寂しくないぞ!」


勇者「ぐ、ぐっとらっく、相棒!」グッ


相棒「うん。ぐっとらっく、勇者ー」クスッ

>>593
同じの投下してしまった
くそっ、くそっ!

あとなんかごめん。魔王どうやらで勇者相棒の過去についての進展はない。力尽きなければ4話完結。これ2話。暗い話苦手だから大団円寄りエンドは約束する。

 


 勇者から少し離れた木陰。


 フォン
相棒「……あー、っと、映像付きか」

側近『……………、』

相棒「側近さん、繋げるの遅れてごめんね」

側近『……いや、こちらも突然通信を、しかも複数ではなく個人宛だからな……その……一瞬、拒否されたのかと、』

相棒「拒否じゃないよ!ちょっと色々あって……」

相棒「とにかく拒否じゃないから!」

側近『そ、そうか……』

相棒「…………元気そうで良かった。--返り血だよね、それ」

側近『ああ』

相棒「はは、血みどろだ。派手に暴れたね」

側近『…………少し、派手にやりすぎた感はある』

相棒「口の端、血がついてるよ」

 
側近『………食い千切ったからな』

相棒「竜族であることを最大限に利用したわけだね」ケラケラ

側近『……引かないとは思っていた。が、正直に言おう、』

側近『俺は戦いを楽しんでいる節がある。血を浴びるとそれが顕著に現れてな』

側近『その一瞬、自分が何を考えてその行動に出たのかわからなくなる』

側近『何が言いたいかと言うと、だな……俺は、清廉潔白ではない。綺麗じゃない』

相棒「……………、」

側近『それに、だな……俺の一族……黒の竜族は、滅びを招くと人間が言っていた』

側近『他にも、見せていないだけで俺は、』

相棒「側近さん、」

側近『な、なんだ?』

相棒「どうしたの?突然、そんな事言い出して、」

側近『----、今回の事で、お前達は戦ったから、』

側近『お前の好意を、利用しているようで、』

相棒「?私、側近の事はもちろん好きだけど、魔王様も好きだし、第一のお兄さん達も好きだし……」

 
相棒「城の皆や、町で知り合った子達も好きだから、勝手に動いただけ」

側近『……好きか、この国が』

相棒「ずっと来たかった、おじさんの国だ。好きなヒトも沢山出来た」

相棒「大好きに決まってる」ヘラリ

側近『……………、お前は、その……俺を、』

相棒「?」

側近『す、………き、と、言ったから、』

側近『あの時は、少々、心の整理というか、そのだな、慌てていたからというか、』

側近『真剣に、俺の事が……すきと、この国が好きと、言ってくれたから、俺も真剣に応えようと思う』

側近『ちゃんと、考えた。友達以上婚約者未満でどうだ!』

相棒「」ブフォ

側近『嫌か!?』

相棒「あ、ちょ……ままま、待って下さい、側近さん……」アワワワワ

側近『い、嫌なのか……?』シュン

 
相棒「あのっ……その……こ、婚約者って、お友達の次が婚約者って……いいん、ですか、それ……!」

側近『何故だ。男女交際=結婚だろうに!』

相棒「なんだろう、なんっ……私が間違ってる!?ああでも、ううう……」

相棒「私だって!側近さんに見せてない所とか、言ってない事があるのに!」

相棒「そ、そもそも、私黒の竜族が滅びを招くなんて聞いたことない。竜の里では、私の方が……白の方が、不吉だって言われてて……」

側近『…………、』

相棒「黙ってて、ごめんなさい。みんなに嫌われたくなくて、」

側近『悪いがそういう俗説は欠片も信じない質でな』

相棒「!」

側近『黒の滅びがどうのも、俺自身は全く気にしていないが、お前が気にすると思って……』

相棒「……あの、じゃあ……側近さんも、気にしない?私が白でも」

側近『綺麗だと思うぞ、その髪。竜の姿も』

相棒「……嬉しいよ、ありがとう」

側近『……先に、言っておく。俺は……お前に好感を抱いているのは確かだが、まだ、その……この感情についてよくわかっていない部分もある』

 
側近『俺は国が大事だ。なんとしても守りたいと思っている。だから、』

相棒「いいと思う。それで」

側近『…………、』

相棒「優先する物の話、でしょ?」

相棒「私だって、出来ることなら……おじさんや、魔王様や側近さんの、みんなの、この国を……守る手伝いが、したい」

側近『…………いいのか、』

相棒「利用されてるつもりはないよ」

側近『現段階、友達以上結婚未満の話も』

相棒「けっ………!?っ、……うん。友達から始めよう、って前に話したわけだし、」

相棒「急ぐつもりはなくて、ゆっくり、仲良くなれると嬉しいな、って……その、思って……」

側近『……わかっ、た。……あの、だな、魔王を連れてすぐに帰る、から』

側近『落ち着いたら、また、話せるか。俺と』

相棒「……もちろん。大歓迎!」

側近『……そうか。……話は終わりだ。通信を切る。じゃあな、城で、また』

相棒「うん。また、ね」ヘラリ

 








 相棒から少し離れた木陰。


魔王『つ、繋げてくれないから……拒否されたのかと思ったじゃない……!』ウルッ

勇者「ご、ごめん!ちょっとその……色々あって!拒否じゃないんだ!本当に、拒否じゃなく!」

魔王『……拒否じゃ、ないなら……少し話しがしたいんだけど……良いかしら、』

勇者「う、うん」

魔王『その前に……あなた、血痕凄いけど、大丈夫?』

勇者「ああ、うん。ちょっと首、怪我して。もう治ったから大丈夫だよ」ヘラリ

魔王『……そう、ならいいんだけど、』

魔王『……………、』

勇者「あの、魔王様。何か話があって通信、」

 
魔王『話はある!話はあるのっ!』キッ

魔王『っ、勇者!正直に答えなさい!』

勇者「はい!」

魔王『今の私を見てどう思う!?』


勇者「可愛いです!」


魔王『~~~!!!そ、そうじゃ、そうじゃなくて!』カァァ


勇者「魔王様って何時も凛としててカッコ良くて綺麗だけど、ちょっと焦ったりすると途端に可愛くなるよね」


魔王『ううう~!そんな、そんな事訊いたわけじゃ……!』

勇者「ごごごごめん……!正直にって言われたから、……どんな事、俺は言えば、」

魔王『……ほら、私……赤いじゃない、血みどろじゃない……!返り血凄いじゃない……!』

勇者「うん、赤いし返り血凄いね。でも殴り込みに行ったんだし、仕方ないよ」

勇者「怪我、無さそうだし。魔王様が無事元気そうでで良かった」ヘラリ

魔王『…………な、なによ……、もう……、こんな、可愛いとか、カッコ良いとか綺麗とか……、その後は私が無事で良かったとか……笑って、』

ここまで。このシーン後エピローグ。
もう少し続く、今週で終われそう、よし。
2話終了後また勇者なんだろうみたいに番外小話投下する予定。なんだまた何かやるのか程度に思ってくれ。

 
魔王『……………、』

魔王『私、綺麗じゃないの……』

勇者「?」

魔王『私、あなたに見せてない所、沢山あるの、』

魔王『言ってない事も、ある』

魔王『……あなた達が殺した旧政権の魔王は、私の叔父。私の母の……実の、弟だった』

魔王『私は、この世界で唯一残った、あの魔王の血縁。あの魔王と同じ血を持ってる。だから、』

勇者「……………」

魔王『隠してたわけじゃ……いや、隠してたのかもしれない。口にしないようにしてた、』

魔王『お母様は好きよ、大好き。でもあの魔王を叔父とは認めない。認めたくない!--私は…………』

勇者「身近に最低最悪の困ったさんがいたってわけか。大変だったんだね」

魔王『……驚かないの?私とあの魔王の関係を聞いて』

勇者「驚いたよ。でも、魔王様がアイツと同じなら、俺はこの国を好きになっていない、」

 

勇者「俺は、君を好きになっていない」

魔王『!!』

勇者「相棒だってそうだ。気にしないと思うなー」ヘラリ

魔王『…………うぅううう、』キッ

勇者「な、え、ど、どうかした?」

魔王『あなた達を巻き込みたくなかった……!お父様の恩人で、この国の恩人でもある、それなのに……!』

魔王『結局戦わせちゃうし、怪我までさせちゃうし…!私がこうだから、利用してるみたいで……嫌!やっぱり嫌よ!』

魔王『勇者!』

勇者「なに?」

魔王『この国、好き!?』

勇者「うん、好き。まだここに来て短いけど、毎日が凄く楽しいんだ。みんなもいる、魔王様もいる」

魔王『……わ、わた……私のこと、好き…なのよね……?』

勇者「うん、大好き。……だから、利用とかじゃなく、……許しがほしい」

勇者「俺に、君やみんな、この国を守る手伝いをさせてほしいんだ。……駄目かな?」

 
魔王『うううう……!』

勇者「……えっ、と……」

魔王『……市民権、』

勇者「へ?」

魔王『市民権、あげるから……!相棒にもよ!この国のヒトになって、それで……!』

魔王『おかえりって言いなさい!私達が戻ったら、おかえり、って……!』

魔王『この国のヒトで、私と友達、以上なら……それぐらい言ってもいいでしょ!?』

魔王『それが、答え!あなたが、この国と、私を!好きだって言ってくれた答え!』

勇者「--!」

魔王『まだ、付き合うのは、わからないけど、でも、私も……好きよ、ヒトとして、あなたのこと、』

魔王『だから、権利を、交換。私が私の国の者であるあなたを守るから、あなたは……協力、してほしい。この国を守る手伝いを』

魔王『これで、利用とかじゃなくなる、から……』

勇者「ありがとう、」ヘラリ

魔王『ううう……!聞きたいのはお礼じゃないの!ありがとうはこっちで……ああもうっ!はいか了解しか認めないから、いいわね!?』

勇者「は、はい……!」

 
魔王『すぐ戻るわ!本当に、すぐ戻るから!城で待ってなさい!』

魔王『そして、私達におかえりって言うことっ!わかった!?』

勇者「了解っ!」

魔王『通信終わり!


 --側近!帰るわよ!即帰宅よ直帰よ!!直帰直帰!!私達はすぐに帰って『ただいま!』って言わなきゃいけ』ブツッ


勇者「……通信、ちゃんと切れてないのに」クスッ


相棒「--魔王様との話、終わった?」

勇者「終わった」クルッ

勇者「……相棒、何か言われたな、顔にやけてるぞ」

相棒「ふへへ、勇者こそ」

勇者「……俺、今嬉しすぎて死にそうでさ」

相棒「これは深く話を訊くべきですね」ケラケラ

勇者「お互いな」ケラケラ

 
勇者「でも今は、城に戻ろう」

勇者「言わなきゃならないんだ。帰ってきた魔王様達に」

勇者「おかえりなさい、って!」















 数日後。

 魔族領。とある町。
 パン屋の前。早朝。

第二隊長(約束の限定食パン一斤……必ずゲットし第一のの機嫌を良くしてやるのだ!)

 
第二隊長(これがあればまた第一のとお茶が出来る!ふはは!いける、この作戦、いけるぞ!)

第二隊長(…………でも、開店時間まで暇だなぁ)

第二隊長(………………)

第二隊長(……しかし、変な事を言う男だった、)


 --数日前。
 --国境。


勇者男「ああ、名残惜しい。彼女は特に欲しかった。強さと美しさを兼ね備え……淑やかさの裏にある気の強さ、弱さ」

勇者男「彼女は、凄く良い」

第二隊長「第一のはやらん!やらんぞ!!」シオシオ

勇者男「羨ましいよ、彼女といられる事が」

第二隊長「ふんっ!この権利はやらん!」

第二隊長「それに、お前はまだ見てないからな!戦う第一のの美しさを!」

第二隊長「戦場の第一のはそれはそれは美しかった!炎を纏い敵を焼き尽くしていくその姿!赤く照らされた目が、髪が、きらきらと輝いて見えて、」

第二隊長「目を奪われた。ずっと見ていたいと思った。優先すべきは任務のみだったこの私がな」

 
第二隊長「まぁ……本当にずっと見ていたら、第一のが私に気付いて声をかけてくれた。構ってくれた。第一ののおかげで第三のにも出会えたし……ふへへ」

第二隊長「どうだ!羨ましいだろう!!」

勇者男「……想い人がいるらしいが、それは、」

第二隊長「第三ののことか!?第三のは良い男だぞ!貴様は強いがキモい!第三のは強くてカッコイい!」

勇者男「彼がヒトにしてくれたというわけか?」

第二隊長「む」

勇者男「もしや、彼女に出会ってヒトになれたのではないのか?」

第二隊長「むむ、私いつからマシになったんだっけ?」

勇者男「あの言い分だと、彼女に一目惚れしたように聞こえる」

第二隊長「一目惚れ?まさか、何を言うかそれは無いだろうに。現に私は女で、第一のも女だぞ」

第二隊長「確かに第一に構ってもらってマシにはなったが、別に異性に惚れることだけがマトモになれるわけでもなし、」

第二隊長「なにより私は第三のが好きだ。第三のは第一のと仲が良い。第一のは我が永遠のライバルとなるのだ!!」

勇者男「なんてことだ……百合は素晴らしいぞ!」

第二隊長「いきなり何だ、キモいぞお前!早く帰れ!!しっしっ!」シオシオバシャーン

 
勇者男「百合だ!その気持ち!まさしく愛!気付け!気付いてくれ!!」

第二隊長「はぁ?訳がわからんぞ。もう帰れ!!帰れっ!」シオシオシオシオシオシオシオシオバシャーン

勇者男「くっ、仕方ない。帰るとする……行く末を見れない自分が憎い!!くそっ!!くそっ!!!」


 --現在。
 --パン屋の前。

第二隊長(意味がわからん。なんだ、百合百合言って)

第二隊長(私が第一のを好きということか?確かに好きだぞ?しかしあの言い分、その好きは、愛の方だ)

第二隊長(馬鹿言え、私が愛しているのは第三のだぞ、私は女だし、第三のは男だ。……第一のは女だというのに、まったく)

第二隊長(だが、もし私が第一のまでも愛しているのなら、)

第二隊長「えっ、とー」

第二隊長(私→(愛)第三の。私→(愛)第一の。第三の(友)→第一の。だから、図解にすると)

第二隊長「さ、三角関係だと……!?」

パン屋の青年「!」ビクッ

パン屋の青年(三角関係ってなんだろう……)
パン屋の青年「あ、あのお客様……本日は定休日でして、」

 
第二隊長「」

パン屋の青年「こんな早朝から並んで頂いて申し訳ないのですが、店は……」

第二隊長「」

パン屋の青年「開かないのです……」

第二隊長「」チーン










 人間領。
 勇者協会。本部。


 フォン
受付の女性「……お父さん、私今仕事中」

商人『……連続して有給取ったって聞いたから、てっきりパパとママに会いに来てくれると思ったら、お前、お前は……!』

商人『危ない事、してたんだろ……!』

 
受付「危なくない。無事だから今事務処理の傍らお父さんの通信の相手してやってるんじゃない」

商人『…………もうあの戦闘奴隷に関わるのやめろよ……』

受付「戦闘奴隷じゃない。勇者よ。間違えないで」

商人『…………』

受付「いいじゃない。私は一切関わりがなかったんだから、好きにしても」

受付「それに、仲良くして損は無いわ。お父さんも知ってるでしょ、あの二人の実力。利用価値で考えたら、最高じゃない」

受付「強いし裏切らない。浅く付き合っていく分には悪くない性格」

商人『だが、爆弾抱えてるみたいたものだろ。アイツ等どんだけ敵がいるんだと』

受付「浅くって言った、深い付き合いをするつもりはないわ」

商人『……勇者協会勤務もさ、パパとママやっぱりまだ反対でさ。とっとと辞めて戻って』

受付「来ない。嫌」

商人『……結婚とか、良い話沢山来てるんだぞ……お前ママに似て可愛いから、イケメン金持ちから縁談の話がだな、』

商人『……あの勇者からも求婚されてるって、パパ知ってるんだぞ』

受付「あの勇者は論外。絶対嫌。続けていいと思えるのは友人関係だけ」

 
受付「それに、ずっと言ってるでしょ?私には好きなヒトがいるの」

商人『アイツだけはやめとけって何度も言ってるのに……年だって、』

受付「お父さんこそ、年下を嫁に取ったじゃない。言える立場?」

商人『だってママ可愛いから……』

受付「諦めるつもりはないわ。絶対私に振り向かせてみせる」

商人『……無理だって。アイツは過去に縛られてる。もう前は向けない。そりゃあ表は吹っ切れたみたいに生きてるけど、中身は、』

受付「お父さんは言った通り最後まで味方してくれてればいいの!私は私のやりたいようにするの!」

商人『でもな、お前……』

受付「忙しいから切るよ」

商人『あ、おい……!』ブツッ


受付「……………、」


受付「なによ、馬鹿じゃないのあの勇者……」

受付「さっさと自分もヒトだって認めて、吹っ切れて、…………」

受付「……畜生、どうして私には上手く助けられないのよ」

 

 魔王城。
 城門横、詰め所。


城門兵先輩「あー、やっと終わったってわけね」

密偵班長「ああ。回廊関連の一件は解決と見ていい」

先輩「んじゃ、お疲れ煎餅をどうぞ、お茶付き」コトン

班長「どうも」

先輩「お向かいに失礼して、と」ストン

先輩「今回は危なかったじゃない、眼鏡割れそうになったし」

班長(何故みんな俺の安否を眼鏡中心で考えるんだろう……)

先輩「昔馴染みだし、割れたらどうしようかと思った。気を付けてよね」

班長「同じ失敗はしない。……新人も怒るし、」

先輩「鈍感なふりして、悪い男よねー。新人の気持ちに気付いてるくせにー」ケラケラ

班長「……だってお前、新人と付き合うって……今後に支障出るだろ」

班長「今の俺じゃ仕事に私情挟みまくりそうだし……そもそもあいつ可愛いし、俺みたいな地味な男じゃなくてもっとイケメンな良い男とかさ……」ブツブツ

 
先輩「……なーんか、気持ち、わからなくもないけど。ずっとこのままは駄目よ」

班長「……わかってるよ……」パリパリモグモグ

先輩「……隣国、どうなるの?」パリッ

班長「一人だけ、王家の血を引いた女の子が生存してる。流石に魔王として立てるには幼すぎるから、」

班長「地方に飛ばされたおかげで無事だった、まともな将軍殿を指導者にするんだと」パリッ

班長「あの宰相と争って国の隅に飛ばされたらしいが、城にいたら死んでただろうし。結果的に良かったんだろうな」

先輩「まともなら、国境での隣国との争いも無くなるってことね」モグモグ

班長「将軍殿もそうだけど、兵士もまともな奴が残ってる。……結局、魔王様は制裁も報復もしないみたいだから」

班長「立ち直った隣国とは友好的な関係を築けそうだよ」モグモグ

先輩「そっか、良かった」

先輩「あと、もう一つ」

班長「…………」

先輩「扉の外、どうするの?」ニヤニヤ

班長「…………どうしようか、俺としては聞かなかった事にしてほしいんだけどな、」

 

 詰め所。扉の外。

密偵新人(ああああああおのれ班長この眼鏡野郎!!鈍感だと思ってたらしっかり気付いてるんじゃないっすかあああああ!)

新人(あああああどうしようどうしよう行くべき!?突撃するべき!?今すぐ中へ!班長の胸へ飛び込みたいよおおお!!!)

城門兵後輩「お前……扉に耳当てて何やってんだ」

新人(班長班長班長班長班長班長班長!)ハァハァハァハァ

後輩「なにこの子怖い」









 魔王城。
 とある一室。


第一「部下ちゃんのセ○ムがグレードアップした件について」

 
部下「……いや、その……有り難いんですけども、」

第一「その1!犬笛!!吹くとガチムチマッチョが駆けつけます!」

部下「犬笛だなんて…!彼は犬じゃないです!」

部下「……ただの護身用の魔法具ですもん。吹けば音が衝撃波になるっていう……」

第一A「第二の超感覚なら一瞬で察知後即ガチムチマッチョの全力ダッシュの流れ……来ます副隊長来ます」

第一「その2!勇者さん相棒さんプレゼンツ自動型攻撃魔法!」

相棒「私は主に魔力の提供ですが……前回の反省点を踏まえ勇者と作ってみました!」

勇者「棘で刺すだけじゃ足りない……周りを巻き込むわけにもいかない……かといって部下さんが危ないのは嫌だ!」

第一A「その効果は!?」

勇者「刺してからの溶かします」
相棒「刺してからの溶解です」

勇者「発動スイッチはそのままに、その対象をさくっといき、」
相棒「でろっと溶かします」

勇者「場所に寄りますが、ものの数秒で」
相棒「腕ぐらいは落ちます。最終的には」

勇者相棒「「でろでろぐっちゃ!!」」キリッ

 
第一C「」
第一B「普通に怖いな」

第一A「そしてその3!今回の件で部下の身の安全について考えた魔王様と側近様」

第一「作るそうです自動型攻撃魔法」

第一B「効果は」

第一A「空間破壊。予定では発動後部下の周囲半径5mが消し飛びますね」

部下「…………そ、それは初耳というか」

第一B「うん。これはアウト。完全にアウト」

第一C「…………何というか、さ」

第一C「俺が一緒にいたのに、妹を危うく死なせる所だった。部下が無事でいられるなら、有り難いだけなんだよなー」

第一C「護身用の魔法作るのは高度すぎて流石に無理だし、お兄ちゃんホント駄目だわ……ごめんな部下……」

部下「そんな……こと、言わないでよ!お兄ちゃんのばかっ!」

 バキッ
第一C「げふっ!?」

勇者「鳩尾に一発!?」アワワワワ
相棒「キレイに入った!?」アワワワワ

ごめん今週で終わるよしっとか言ったくせに終わらなかったごめん。
エピローグ入ってる。

あと受付の人本体は初出。登場あれだけ。わかりにくかった反省。
協会の受付で術者で勇者男の嫁候補でパパは商人で好きな人は父親の方が年齢が近い男であと勇者相棒の数少ない人間領側友人設定。

 
第一「止めないで下さい部下ちゃんは昔からCの自虐発言に対しクリティカルな一撃を入れてきたのです」

第一A「ぶっちゃけCより部下の拳の方が痛い」

第一B「魔法無しの単純な腕力なら兄貴より妹が上なのは秘密」


部下「私が怪我する度に自虐的になるのやめて!お兄ちゃんはちゃんと守ってくれたでしょ!」

第一C「……守り切れてない、可能性も……あった……だろ……」ヒンシ

部下「私がお兄ちゃんの足手まといになってたのは知ってる、私がいなければ上手くやれた!」

部下「だってお兄ちゃん……近接戦闘まるで駄目じゃない!」

第一C「」チーン

部下「近付かれたら終わり、だから中、遠距離で仕留めるのがお兄ちゃんの戦い方で……」

部下「お兄ちゃんは私が守る、なんて言えないけど……守って、は言わないから、」

部下「油断しない、自分の身は自分で守るようにする。自衛の魔法もかけてもらったし、だから、」

部下「……だから、お願い。自分の命を捨てる魔法は使わないで……!」


第一「部下ちゃん、なんか申し訳ないんだけどCの奴落ちてるから聞こえてないと思う」

 
第一C「」チーン
部下「え!?あ、お、お兄ちゃん!?」

第一A「もろに入ったからなぁー」ウンウン
第一B「少しの間耐えてたけどやっぱ気絶か」ウンウン

部下「ごめんなさい!私やりすぎて……!」


勇者「確かに、Cさんが近接まるで駄目なのは見ててわかる。典型的な魔法使いタイプっていうかさ」

相棒「うん。ヒトには向き不向きがあるってのがホントそれ。Cさんは完全に後衛って感じ」

第一「見てるんだな、ちゃんと」

勇者「考えた事あるから、お兄さん達四人を同時に相手にする場合の、落とす順番」

相棒「Cさんと……Aさんも。どう見ても近接戦闘が得意に見えない--きっと、民間人より少し動けるぐらいだと思う」

第一A「……否定は出来ないわー……」

勇者「でも、どちらも魔法が厄介。特に厄介なAさんを最初に落とす。前にも言ったかもしれない、Aさんの捕捉は俺達でも避けられないぐらいの性能。防ぐか相殺を狙うしか無い」

相棒「だからすぐ近接一撃で落とさないと、って思って。魔法だと防がれるし、……Cさんが剣士に使った魔法の類を使われる可能性もあるし」

 
勇者「あれは困るよな。同化魔法の一種。その同化の一瞬がただ傷付けるだけの怪我ならまだマシ。それが死の瞬間なら、」

勇者「俺が間に合わなくても、Cさんは部下さんを守りきったんだなーって」

部下「…………」

相棒「剣士がCさんを殺せは剣士も死ぬ。剣士が部下さんを先に殺そうとすれば自分で死ねばいい」

相棒「死の瞬間は連動して剣士に伝わる。部下さんが何かされる前に、剣士は死ぬだろうね」

勇者「まぁCさんも一緒に死んでるけど」


第一A「やべぇ目が死んだ二人の目が死んだ」
部下(何で穏やかに目が死ぬの……)

第一B「おいC起きろ。お前のせいで二人が目に光が無い病みモードになっただろうが」ペチペチ

第一C「……う、……今回のは効いた……」パチッ
第一C「ひぃ!二人の目が死んでる!」


第一「ちなみに二人にCの魔法について喋ったのは俺です!」テヘペロ


勇者「俺がもっと早く合流出来たらCさんや部下さんも怪我しなかったよなぁ、とか」

勇者「もし俺が剣士を殺してたら、Cさんも死んでたのかー、なんて考えるとさ、」

 
勇者「なんか、凄く、辛いよなーって」ドンヨリケラケラ

相棒「だよねー」ドンヨリケラケラ

第一C「…………、悪かった」



第一B「お前が二人にバラした理由がわかった」

第一「慣れきった俺達より、二人に病みモードでつつかれた方が効くだろ」ケラケラ

第一A「確かに、最終手段を使うには少し早かったな。やっぱシスコンだからか」

第一B「一番似てるお前が言うなよ」ケラケラ


部下「…………、私、」

第一「部下ちゃんはさ、良い経験になったーぐらいに思っておけばいいんだよ」

第一「護身の魔法、しっかり仕掛けられたわけだし。勇者さんと相棒さんに懐かれてるって自覚、あるだろ?」

第一「そう簡単に怪我すら出来なくなるぜー、なんせ、ヤンデレモードが怖い」ケラケラ

部下「……そう、だね。私のために作ってくれた魔法だもの。あの威力で怪我なんてしてられない」

部下「怪我出来ない理由--死ねない理由も、沢山あればある程……良いと思うし」

 
第一「おー、よく言いました。今後とも怪我しないようよろしく頼むぜー」

第一「シスコン兄貴レベルには全く届かないけど、幼なじみな兄貴分達も心配になるのよー」ケラケラ

部下「……うん、わかった」ヘラリ












 魔王城。霊園。
 墓前。


魔王「……お母様、」

側近「…………」

魔王「お母様が護ってくれていたのね、この国を」

ちょっと戻れそうで戻ったら今度はこの先のデータが行方不明。なんとかなるけど心折れそうになった。
結果別の事やらかすけどスルーしてくれて構わない。保守本当にありがとう。

 
魔王「国内に仕掛けられた全ての召還魔法陣……それらがまともな発動をする事は有り得なかった」

魔王「お母様の力で全てを封じてくれていたから」

魔王「そうね、恐ろしい事だけど……範囲は国内、あの魔王の魔力にだけ反応するような魔法を--自室にいながら発動するなんて」

魔王「封じても正確な場所はわからない。それに、破壊へと動けばあの魔王がまた仕掛けてくるかもしれない。だから表沙汰にしなかったの?」

魔王「それとも、そんな魔法を使ったからお母様は死んでしまったの?」

魔王「………………」

側近「………………」

魔王「…………魔王は死んだわ。魔法回廊はどうにかなった、国内のも……」

魔王「国内の魔法陣は全て……魔力の塊に近い物になってた。きっと、どちらの術者もいなくなったから」

魔王「その塊が周囲の魔物を引き寄せていたみたい。あれからちょっと、各地の魔物の襲撃率上がってたのよ?」

魔王「--あ!勘違いしないでね!お母様もせいじゃないし!それに、みんなで全部ぶち壊したから!」

魔王「だから……ね?もう大丈夫。この国は、あの魔王から完全に逃れた」

 
魔王「えっと、だから、だからその……お母様……。お父様と、安心して、眠っていてね」

側近「…………」

魔王「…………」

側近「魔王」

魔王「……わかってるわよ!絶対心配してる!安心して眠ってないと思う!お父様なんか絶対ハラハラした顔でウロウロしてるわ!」

側近(そっちじゃないんだが、まぁ、)
側近「……ハラハラ、ウロウロ、か。失礼だが……確かに」クスッ

魔王「私!失敗したばかりだし今はそりゃあ頼りない魔王よ!?でも必ず立派な魔王になるから!側近もいるしみんなもいる!!……気になるヒトも出来たわ!!」

魔王「私、ちゃんと成長してるんだから!……えっと……その……少しずつ安心してよね!!」ビシッ


勇者「…………」フルフル
相棒「勇者ー、ここ来て最初に聞こえた言葉が『気になるヒトが出来た!』だったからって今更墓石の後ろで恥ずかしがらないでよ」


魔王「え!えっ!?ゆ、ゆゆ勇者!?相棒!?いつの間に!」

側近「俺は声をかけたぞ。一応な」

魔王「もっとちゃんと言いなさいよ側近!」

側近「いや、良い表明だな、と思って」

魔王「~~~!」


相棒「ホント、勇者は不意打ちに弱いよねー」ケラケラ

勇者「あー、落ち着け俺、落ち着け俺」ブツブツ


魔王「~~~、勇者!」


勇者「は、はい!」


魔王「お墓参りに来てくれたんでしょ!早く来なさい!相棒もよ!!」

相棒「ほら勇者。お墓参りと、私達で言わなきゃならない事があるでしょ」

勇者「そうだ……よし、言うぞ相棒!」シャキン

勇者「魔王様!」
相棒「側近さん」

勇者相棒「「おかえりなさい!!」」


魔王「…………」キョトン
側近「…………」キョトン

魔王側近「!!」ピコーン

魔王「……ふふっ、良いわね、これ」ニコニコ

側近「まぁその……城に帰る度にやられるのもまた照れるというか、」

魔王「口元。にやついてるの隠せてないわよ」

側近「……わざわざ指摘するな」
魔王「むふふふー」ニコニコ

魔王「ただいま!勇者!」
側近「ただいま、……相棒、」

魔王「これ、いいわ。凄くいいわ!恒例にしましょう!」ニコニコ

勇者「俺は賛成。楽しいよ」ヘラリ
相棒「私も。楽しいよ、言うの」ヘラリ

側近「…………まぁ、悪くない、というか」ボソッ

魔王「性懲りもなく口元隠してんじゃないわよ」ニヤニヤ コソコソ
側近「うるさいっ!」コソッ

勇者「二人が帰ったって聞いて、探しにきたんだー」
相棒「ここにいるって知ったから、おじさんにも報告ー、って思って」

魔王「報告?」
側近「?」


勇者「俺達、この国を出るよ。人間領に戻る」

 
 魔王城
 庭園


第一弟「蕾、大きくなった。赤い花は燃えちゃったけど、」ナデナデ

第一弟「また綺麗な花、咲かせられそうで嬉しいよ」ポンポン

植物「ぐおっ!」スリスリ


第三5「よう植物!もう少しで開花か、楽しみだ」
第三5「そして弟は相変わらず懐かれてるなー。羨ま羨ま!」


第一弟「5さん」
植物「ぐお!」シュルル

第三5「あああ、ありがとう植物ちゃん!挨拶代わりの軽い締め付けがイイ!このギリギリ痛くない感じが素敵!」ハァハァ

第一弟「植物……それ絶対5さん以外にやるんじゃないぞ…………」

植物「ぐおおっ!」コクン シュルリン

第三5「ふぅ、満足」キラキラ

第三5「いやー、ちょっと植物ちゃんの様子見たくてさ。蕾、どうなってるかなって」

第三5「あと、弟とも話したいなー、って思ってたし」

 
第三5「弟がキレたー、って聞いた」

第一弟「…………はい」

第一弟「……ギリギリ理性が残ってたから良かった。下手したら俺、地中にいた植物を巻き添えにする所だった」

第一弟「--俺、第一部隊で一番年下で、姉さんの弟でもあるから……自分で言うのも何ですけど、可愛がられる方だったんです」

第三5「そうだな、お前顔可愛いもんなー」

第一弟「あの、そういう見た目の可愛いとかじゃなくて、そもそも可愛くないですし、その……話はですね、」

第一弟「俺は、必ず誰かに可愛がられる方で、必ず誰かを慕う方で……慕われるなんて事は、植物が初めてなんです」ナデナデ

植物「ぐっおっ!」スリスリ 

第一弟「だから……植物が殺された、って思った瞬間、かーっとなって、……気付いたら手を出していました」

第一弟「第三の皆さんが来てくれなかったら、俺……」

第三5「なぁ弟、うちの部隊に来ない?」

第一弟「と、突然、何ですか……!?」

第三5「保有魔力に魔力耐性は高水準。見た目も良いに加え城内屈指の常識人ポジション」

第一弟「じょ、常識人ポジション……?」

 
第三5「そんな君が欲しいと思ってた!おいでませ第三部隊!かもん俺の班!6もいるよ!痴女とへたれ含め癖有るお姉さん三人と俺は弟を待ってる!」

第一弟「あ、あの……俺、最近は庭師が本業みたいになってて、実戦の経験とか実績も少ないですし、」

第一弟「そんな……真っ正面から引き抜きみたいな事言われるの始めてで……や、やっぱり困ります!俺は第一がいいんです!」

第三5「そうか?俺、弟は第三向きだと思うんだけどな、基本姿勢というか、考え方がさ」

第一弟「第三向き、俺が……?」

第三5「ほら、魔法回廊で城が大騒ぎだったあの日。俺聞いちゃって、」

第三5「弟は相手の力量を見極めるのが上手い。上の奴が相手なら、生き延びる優先で動く」

第三5「あ、この子第三向き。そう思ったのです」

第一弟「わかって、ます……俺はきっと、決めなきゃいけない時に、間違ったことをする」

第三5「いやいや、俺ら的には合ってる合ってる」

第三5「つかBもホントは第三向きなんだよ。アイツ6と仲良いみたいだし、6餌に引っ張れねぇかなーとも考えてたり」ケラケラ

 
第一弟「餌って……」

第三5「AとCはもう典型的な第一部隊だし。アイツは……ちょっと第二入ってるよな。幼なじみ組いなかったら絶対第二コースだって」ケラケラ

第三5「ああ、そうそう。俺、第一部隊嫌いなんだよね」

第一弟「--え?」

第三5「だってあいつ等、自分の命と引き換えに何かをやり遂げようとしたがるから。回廊ん時もそう」

第三5「第二部隊はもっと嫌いだな。だってあいつ等、自分の命をなんとも思ってねぇんだもん」

第三5「それに、そうだな……弟が言う決めなきゃいけない時、とか」

第三5「第一は、仲間が倒れても、倒れているのに気付いた上で無視して目的を達成しようとする」

第三5「第二なんか、倒れてることすら気付かない。戦況を動かす駒が減ったな、ぐらいの認識で」

第三5「全部終わって気付いたら、隣の奴がいなくなってるんだ。--滅茶苦茶嫌だよな、それ」

第三5「ということで、味方が死ぬのは嫌だよねー?ねー!とか頷きあっちゃう奴らが集まるのが第三部隊」

第三5「死ぬ覚悟を決められない奴らが集まってます。君も私も死にたくなーい」ケラケラ

 
第一弟「そんな言い方、」

第三5「まぁ、みんなが同じ考えだったら、とっくに滅んでるよな、この国」

第一弟「…………」

第三5「犠牲に出来ない奴と、犠牲に出来るやつがいて」

第三5「犠牲に出来る奴を恨む俺は、甘えてるんだろうな」

第一弟「5さん…………ガラじゃないですよ」

第三5「やだー、真面目な話してるのにー、弟ひーどーいー」

第三5「ま、いいけど。ガラじゃないのはあってるし!」

第三5「弟、今までお前は弟で後輩だから完全に生かされる側だった。--これからは違うぞ」

第三5「植物ちゃんがいるからな。きっとお前は、植物ちゃんを優先するようになる。だから、第一の覚悟を見習ってほしくないなーってさ」

第三5「一緒にいて楽しい誰かが出来たなら、ちゃんと最後まで一緒にいるべきなんだよ。……以上、重い話でなんとか誤魔化し騙してうちの部隊に引き抜き出来ないかなと考えた話でした!」

第一弟「最後はいらないです。けど……ありがとうございます。……そうですね、俺も違う覚悟を決めないといけません」

 
第一弟「同じ第一部隊所属として、いざとなったら、先輩を殴り落として連れ帰る覚悟を」

第一弟「回廊の件で思ったんですけど、うちの先輩ってちょっと勝手なんですよ。なに格好良く死のうとして、」

第一弟「AさんとCさんなら近接で勝てますし、次、何かあったら……考えてみます」グッ

第三5「もー、弟ー、かぁっこいいー!やっぱ欲しい、第三に欲ーしーいー」

第一弟「いや、そもそもそう簡単に異動とか出来ませんし」


第三隊長「それが簡単に出来るもんなんだよな」ノシノシ


第一弟「!お疲れ様です」
第三5「隊長、お疲れ様でーっす。今戻ったんですか?」

第三隊長「おう、今戻った。よう植物!大変だったらしいな、元気か?」

植物「ぐおお~!」コクコク

第三隊長「相変わらず弟好きだなお前」ケラケラ

第三隊長「--で弟、どうする?言ってくれたらすぐ異動するが」

第一弟「……すみません、俺はまだ第一部隊所属でいたいです」

第三隊長「わかった。--5に絡まれたみたいだが、あまり悪く思わんでくれよな」

 
第三隊長「コイツは性癖に問題はあるが、それ以外は優秀だ。お前がうちに向いてるのは間違ってない」

第三5「きゃー、褒められちゃったー」クネクネ

第三隊長「ははは、くねくねすんなよ気色悪いっての」ケラケラ

第三5「我ながら見境ない!」ゾクゾク

第一弟(……5さんはやっぱり変態だ……)

第三5「実際俺も、第一から第三に異動して今に至る。気が変わったら何時でも言ってくれ」

第一弟「はい、わかりました。……あの……それで、隊長。隣の方は?」

老人「…………」

第一弟(変な感じだ、民間人に見えるのに、俺では勝てないような)

第三隊長「おお、悪い悪い。忘れてた。コイツは」

老人「--少年、君はもしやあの美女の弟か?ならば、将来君の義兄になもしれない、よろしく頼む!」キリッ

第一弟「!!?まさか……あの時の勇者の男……!?」

第三5「……何連れ込んでるんですか隊長。こいつ変人ですよ」

老人「やめろ。貴様に変人と言われると何故か物凄く腹がたつ」ザワザワ

第三5「なんなのこのヒト凄く失礼」

 
第一弟「何であの勇者がここに……!?」

第三隊長「へぇ、侵入してきた勇者ってコイツか。まぁ、今は操作の類で中身だけみたいだし、ご本人の面は映像記録で確認するか」

老人「いいだろう。貴様は俺のライバルだ。発売開始3秒で売り切れた5時間に渡る俺のPV集を特別にくれてやる」

老人「記録媒体はただの本……に見せかけた高性能の魔法具だ。限定物だからな、凄いぞ」

老人「日替わりで変わる俺の一枚画……ふっ、恥ずかしいが、もちろん俺の裸体も収録されている」

第三隊長「そうか、じゃあ参考がてら貰うわ」

老人「いいか、美女達には見せるんじゃないぞ!?恥ずかしいからな!……だがな、いや、どうしたものか……」ワクワク

第三隊長「わかってるって。見せりゃいいんだろ」

老人「ほう!見せるか!良いだろう!!待っていろ、すぐにそちらに届ける算段をつける!」キラキラ

第一弟(……俺、置いてけぼりな気がする)

第三5「隊長、変人の扱い馴れてますねー」

第三隊長「まぁ、どっかの隊長のせいだろうな」

老人「だから貴様に変人と言われたくはないと」ザワザワ

第三5「マジなんなのお前」ザワザワ

第一弟(…………なんなんだろう、この空間)

第三隊長「そういえば、あの勇者、さんよ。時間が無いんじゃなかったのか?」

老人「そうだな。時間はない、要件を済まそうか」

老人「本当はこの国の兵に託して終わりだったんだがな、事もあろうに出会ったのは美女を巡る闘いで最大のライバルになるだろう男」

老人「これは再度城まで連れて行ってもらうしかないと思い今に至る。下手に城に出向くと美女と羨ましい百合の彼女にど突かれるんでな」

第三隊長「俺から言わせてもらうと、発言は8割わからんが面白そうだったんで連れ来た」

第一弟「…………」
第三5「いや、流石の俺もコイツには引きますって。話聞くとコイツド変人ですよ」

老人「貴様も懲りん奴だな、美女がいる国の兵士じゃなかったら消しているぞ」

第一弟(……面倒なヒトだなー)

老人「まぁ良い。弟よ、手を出せ」

第一弟「…………」スッ

老人「婚約指輪だ……美女に渡してくれ」ソッ

第一弟「…………」ドシャア

第三5「あ、貰った指輪振りかぶって地面に叩きつけた」

老人「ふぅ、流石美女の弟。姉とよく似て苛烈な……妹でないことを悔やむよ」フゥ

第三隊長「……あー、コレに皆引くのか」ナットク

 
第一弟「ああ、すみません、つい。庭師なのに庭を汚しちゃいました。すぐ片付けます」

第一弟「ところで5さん、アレ質屋で換金出来ますかね」

第三5「金だけはかけてそうだし高く売れると思う」

第三隊長「似てほしくない所が似るよなー……」ハァ

老人「まぁそう言うな、お茶目な冗談だろう。これは売るより価値がある、」

老人「有効活用出来るのは魔王か、また人間領と面倒な事になったら使ってくれ。大概の相手は黙る」

老人「俺としても美女がいる国を相手にするのは本意で無かった。迷惑料だと思ってくれていい」

第一弟「……どうしましょう、婚約指輪って言えば側近様が塵にすると思います」

第三5「俺も塵にするに一票」

第三隊長「使えるんなら俺から適当に言っとくわ」

老人「さぁ、要件は果たした。名残惜しいが、俺は行く」

第三隊長「……待てって。うちの副隊長をつける。こちらとしても、お前の状態を視てもらいたいんでね」

老人「……気が進まんな」

第三隊長「うちの副隊長、美人だぞ」

老人「頼もう!」キリッ

第三隊長「決まりだな、すぐ呼ぶ」ケラケラ

 フォン
第三隊長「--ああ、副隊長?俺俺。……そう、その件。じゃあ後は頼むな」

第一弟(隊長は何を……?)

第三隊長「通信終わり。よし、弟。その指輪、俺が預かっとく」

第一弟「あ、はい!」

第三隊長「確かに預かった、って事で。これから俺は、副隊長にコイツ引き渡してくるな」

第三5「任せまーすお願いしまーす」

老人「まだ見ぬ美女か……ふふっ、楽しみだ」ワクワクドキドキ

老人「--!!」ハッ
老人「挨拶を忘れていた、さらばだ義弟君!お姉さんによろしく!」

第一弟「気安く呼ぶな死んで下さい」



第三隊長「…………似てほしくないんだけどな、特に暴言は……」

第三5「えー、弟の口から出るから良いんですよ」ドキドキ

第三隊長「……………」ハァ

 
 とある村。
 丘。


老人「--そうか、ここか。お前の故郷は」


第三副隊長(通常の視界では老人の背中が見え、)キュイン

第三副隊長(魔法を使うと……薄すぎて、捕捉も難しい)

第三副隊長(これはおそらく、報告にあった生体操作の魔法。術者は勇者の男、あの老人は……魔族)

第三副隊長(隊長に頼まれた通り、老人に成り代わった勇者の男をこの村へ連れて来た。けれど、)

第三副隊長(……確かに、私が視ておくべき対象。初めて見る、死んでいるのに、意志は生きている。なんて……危険な、魔法)


老人「……ふむ、驚く程のど田舎だな。……だが、良い場所だ。この村にもきっと、まだ見ぬ美女が……っ、ごほっ、げほっ」ポタポタ


第三者副隊長「!」


老人「……ああ、気にするな。好きでやっている。……うるさいな、奴隷が口出しするな」グイッ

老人「…………う……余計なお世話だ、昔からお前は、口うるさい」

 
 キュイン
第三副隊長(……老人から繋がる、か細い糸……死が繋がり伸びていくのが見える。限界が近いせい、と見ていいか)

第三副隊長「!!」ハッ
第三副隊長(……!…………、わかりました)


老人「--わかった、……わかったと言っている、………………、いつまでも子供扱いするな、奴隷が」

老人「……………………、そうだ、お前が知る領主の息子が嫁を貰い、娘をもうけた。その娘があの城で、魔王となった」

老人「ああ、美女だ。もう少し年齢を重ねた頃に、求婚しようと思う。……ちょっとお人好しにも思えるが、良い国だ」

老人「…………そうだな、わかっている」

老人「…………世話になった。お前が望んだ故郷で……安らかに眠れ」ポタポタ


老人「…………美女よ、」


第三副隊長「……………」

老人「見苦しい所を見せたな。悪かった。そして、ありがとう。この村までの転移は助かった」

老人「重ね重ね申し訳ないが、頼みがある」

老人「この身体の主は、俺の魔法で生き長らえている。展開し続ける魔法を閉じれば、この身体はすぐに朽ちるだろう」

 
老人「恥ずかしながら、限界でな。もう、魔法の一つ、使えやしない」

老人「…………この身体を、燃やしてやってくれないか」クルリ


第一副隊長「いいわよ」


老人「--!!」

第一副隊長「ちょうど、火の扱いには自信があるわ」

第三副隊長「……そうですね。私より彼女が適任かと」

老人「………………、ふっ、」


老人「良かったな奴隷よ。美女が見送ってくれる。二人の美女がだぞ。お前は幸せ者だ」

老人「--そうか、幸せだったか。…………、良かった」

老人「……ああ。……ありがとう、さようなら」


老人「--彼を、頼む」


第三副隊長(……糸が、途切れた。術者の反応は……無い)

 
第一副隊長「…………」フォン

老人「」 ポツリ

第三副隊長(老人の足元、灯った炎……身体を包んでいく)


老人「--坊ちゃんは、」


第一副隊長「…………」
第三副隊長「…………?」


老人「--坊ちゃんは……一人一人の奴隷を、自分の所有物として大切になさいました」

老人「醜いこの私でさえも……命を削ってまで生き長らえさせ、……せめて故郷で、と」

老人「気の乗らない、嫌な仕事だったでしょうに、引き受け、この魔族領で私の故郷を探し……ついには、死人である私をこの場所へ」

老人「坊ちゃんは、あなた方に、沢山のご迷惑をかけたことでしょう。申し訳ございません」

老人「ですが……、ははは、」

老人「特殊な人間です、面倒な人間です、おまけに、少々うざったい。……ですが、根は悪くない」

老人「友人とは言いません。うざったいですから。それでも、知り合い程度の関係でも、続けて下さると、嬉しい」

老人「……爺の、最期の戯言です。…………ご静聴、ありがとう、ございました」

 

老人「…………」

老人「--」

老人「」







第三副隊長「……灰は、風に乗って」

第一副隊長「そうね、この小さな村に溶けて、消える」

第三副隊長「…………、突然いらっしゃったので、驚きました」

第一副隊長「……性懲りもなく戻って来たって聞いたから、燃やしてやろうと思って、ね」

第三副隊長「……変なヒトだったみたいで……いえ、変なヒト、でした」クスクス

第一副隊長「……ふふっ、死んでほしい相手よ。心から、そう思ってる」

第一副隊長「……もう、会いたくはない。けれど、」

第一副隊長「一万歩譲って、知り合いぐらいなら、許してやってもいいかも」クスッ

 


 --数日前。
 --魔王城。
 --霊園。


勇者「俺達、この国を出るよ。人間領に戻る」

魔王側近「!!」

勇者「……今回の事は協会が絡んでた。俺達がこの国にいるって情報も、すでに知られていると思う」

勇者「だから、戻る。協会に行って……調べてみようと思うんだ。また何か企んでたら困るし、何か知っておくべき情報があるかもしれない」

勇者「これは、俺達にしか出来ない。だから、戻る」

魔王「……わかったわ」

魔王「で、何時帰って来るの?長くはないでしょうね?さくっと行ってさくっと帰って来なさい」

魔王「あなた達がいないと、私と側近は寂しいわよ!!」

魔王「もちろんみんなもね!」

勇者「!!!」
側近「!!?」

相棒「」プッ クスクス

 
相棒「--凄いなぁ、魔王様。切り返しが早くて、それだけで凄く嬉しいのに」

相棒「続けて勇者と側近さんを撃沈させて、あははっ」

魔王「!!?わ、私間違った事なんて言ってないわよ……?だって、側近……あなたも寂しいでしょ?寂しいって素直に言いなさいよ」

側近「…………お前は、何故こうも………いや…その……俺も……しい、と、おもう」ボソボソ

相棒「ふへへ、私も。寂しいよ。だから、早くも用事済ませて帰ろう、勇者」

相棒「あと、多分ね。戻るのもここでいいんだと思う。私達、ここに帰って来ていいんだから」ヘラリ

勇者「……………だな、」ヘラリ

側近「--話を、戻すぞ。人間領にいる期間の予定はどうなっている?」

勇者「長くはならないようにする」

勇者「……勇者の名も、捨てられるなら捨てて、ただの人間になって、帰りたいとも、思ってる」

魔王「私達、あなたが何であっても気にしないけど」

勇者「勇者を怖がるヒトがいるのは事実だ。俺は……もう、この国のヒトに出来るだけ恐怖の感情を与えたくない」

魔王「そう……でも、その事で気に病む事は絶対にやめて。みんな、あなたが思っている以上に順応早いわよ」

 
勇者「うん、わかった。ありがとう」

側近(…………言うべきか、あの事を)

相棒(あ、眉間に皺。側近さん何か悩んでるのかな)

側近(剣士に人質に取られていた少年の一件……あの時の光景は、Aを通じて常駐兵や町の住人に見られていた)

側近(…………俺は話しか聞いていない、が……相棒による、暴露大会があったそうじゃないか……!!)

側近(完全生中継……公衆の面前に晒された内容が内容だ)

側近(止める間も無く、話は広がった)

側近(勇者……お前はこれから、あの町の常駐兵や住人に生暖かい目で見られることになる。あの町だけじゃない、暴露話は国中に広がる。いずれは国中の……)

側近(すまん勇者……今のお前は、おそらく恐怖心など一切与える事はない……寧ろ同情か励ましの目で……)ホロリ

相棒「側近さん、何か考えてる?」

側近「相棒……」

相棒「勇者のこと?」

側近「…………くっ、俺の力が足りなかった。許せ、勇者」

勇者「え、な、何が?」

側近「実はあの時--」

 

 現在。
 魔王城。
 城門前。


勇者「…………」ズーン

相棒(あわわわわ!勇者が地面に手と膝をつけたまま動かなくなった!)

相棒(思い出したんだ!側近さんが言ったこと!勇者がこうなった、その原因、犯人は……)

相棒「私のせいだ……!ごめん勇者!ごめん……!!」

勇者「…………いいんだ、相棒。お前は悪くない。生中継実行中だったAさんも、悪くない……だって……全部……事実だもの」グスッ

勇者「気にしないでくれ……もう少しだけ、こうやって精神を落ち着けたいんだ…………」

相棒「そんな……ほとんど土下座みたいな格好なのに……!!」


魔王「勇者、いったいどうしたのかしら」

側近「触れないでやってくれ。頼むから、頼むから……!!」

魔王「そ、そう。わかったわ」

 
勇者「……ふぅ、落ち着いた」フラリ

相棒「だ、大丈夫?いける?」

勇者「……いける」

相棒「その……羞恥に耐えられなくなったら言ってね。勇者は目を閉じて耳を塞いで、私竜化して、勇者乗せて飛ぶよ!」

勇者「ありがとう、正直そこまでの羞恥味わいたくないよ……」


魔王(何の話かしら?)キョトン
側近(話を変えねば、魔王が興味を持つ前に、話を!)アワワワワ

側近「あー、あー、その……忘れ物は無いか?旅に必要な物は揃ってるか?」

勇者「大丈夫。旅は慣れてるからさ、結構なんとかなっちゃんだ。一番大事な物さえちゃんと持ってれば」

相棒「うん、大事な物、お土産リストと定期通信用の魔法石は確認済み。面白い物があったら必ず通信するよ」

勇者「お土産、楽しみにしてて。生物は無理だけど、美味しい食べ物は人間領にもあるんだー」

魔王「ええ。楽しみにしてる!」グッ

相棒「問題は第二のみんなのリクエストだよね。正式名称が不明。魔族領には存在しないみたいで、誰も知らない」

側近「?何だ、それは……」

 
相棒「ぴゅーって吹いてクルクル戻る、ぴゅーが一つだったり三つだったりな、人間領の祭などで手に入る玩具」

魔王「?」
側近「?」

勇者「あれ、人間領にしか無かったんだなぁ……そう思いました」

相棒「私達は知ってるから探せるんだけど……第二のみんなはどこで知ったんだろう」

勇者「沢山模擬戦付き合ってもらったしな、ぴゅー、くるくるが夢らしいし頑張って探そう」

相棒「うん。他のみんなのリクエストはどれも無難だもんね、第三の某お兄さんを除く」

側近「よしわかったシメておこう」ザワザワ

相棒(ごめん5さんでも名前は言ってないんだ許して……なむなむ)
勇者(三角木馬って言ったのバレて結構な人数にシメられてたのに……なむなむ)


魔王「……なんかごめんね、お土産お願いしてるのに、見送りが私達だけで」

勇者「いや、嬉しいよ。みんなから見送り行けなくてごめんって謝られたし」

相棒「そうそう。魔王様や側近さんも、忙しいのに、ごめんね」

側近「いや、こちらがやりたいからやっているだけだ。気にするな」


魔王「そうよ、気にしないで」

勇者「ふへへ、ありがとう」ヘラリ
相棒「うん、本当に、ありがとう」ヘラリ

勇者「…………」

勇者(……実は、見送り……『四人だけにしてやるよ!』とキラキラした笑顔で言われたり、)

勇者(『いってきますのちゅーぐらいしてやれよ!』とニヤニヤした顔で言われたり、した)

勇者「無理。うん、出来ない」ボソッ

魔王「何か言った?」

勇者「!?な、なんでもないです!」

魔王「……んー、そうよね。長く引き留めても帰りが遅くなるだけか」

魔王「勇者、相棒。道中、気を付けて」

側近「必ず無事で、帰って来るんだぞ」

勇者「うん、」
相棒「わかった」

魔王「あと……今度は私達が言う方ね」

側近「そうだな」

 

勇者「?」
相棒「?」


魔王「勇者」
側近「相棒」



魔王側近「いってらっしゃい」



勇者相棒「!!」

勇者相棒「~~~!!」



勇者相棒「いってきます!!!」







 おわり。

 
復活詐欺した。何も言わず長期離脱した。
おかげで終わらせるの遅れた、そもそも話長い。
その長さすら正確に把握出来てなかった、ごめん。勇者なんだろうと同じぐらいかなーとかのんびり考えてた。
原因は何十レスある場面を一行で終わらせてる箇所が多々あったこと。シスコンがピンチでヤバい。とか。

気を付ける散々言ったのに誤字含めたミスも多い。すまん。恥ずかしい。

やりたい物を自分の好みのままに作った話。これが暇潰しになってついでに少しでも楽しんでくれたなら嬉しい。
ここまで付き合ってくれてありがとう。

番外小話。ぽつぽつ投下してく。
完全に季節外れネタもあるけど気にしないでくれ。

 

『大切なヒトにお菓子を贈るあの憎い日、の話』



 とある町。
 広場の隅。ベンチ。


第一B(何で俺は、こんな日におとなしく部屋に引きこもらず、町なんぞに出てしまったのだろう……)ゲンナリ


男「……………」ソワソワソワ

 タタタタッ
女「せんぱぁーい!来てくれたんですねー!」キャピキャピ


第一B(ちょっと甘いのが食べたいよなー、でうっかり町に繰り出す俺は馬鹿か数分前の俺くたばれ)


男「そ、そりゃあ、呼び出されたら来るし。別に今日があの日だからって期待してるわけじゃないし」ソワソワソワ

女「えっとぉー、これっ!せんぱいにあげますっ!」キャピキャピ

俺「な、何だよこれ」キター

女「もうっ、忘れたんですかぁ?今日は………バ、レ、ン、タ、イ、ン、です、よっ!」キャッ

 

第一B(くたばれえええええええええ!!!!)ザワザワザワザワ


第三6「……気持ちは滅茶苦茶わかる、けど荒ぶる魔力どうにかしろよ。わざわざお前が座るベンチの真正面でいちゃつくバカップルが驚--」


男「そ、そうかよ、じゃあ貰っておいてやる」フォオオ

女「お返しはせんぱいがイイナ」キャッ

男「!!!!」ヒャッホォオオオ


第三6(くたばれえええええええええ!!!!)ザワザワザワザワ



男と女「」キャッキャルンルン



第一B「…………行ったか」

第一B「……何してんだ、こんな所で。バレンタインの買い出しかよ、6」ダラーン

第三6「あー?なわけあるかよ。多分お前と似た理由だわ、町にうっかり出た理由もここにいる経緯も」ダラーン

第一B「…………うっかり今日という日を忘れて町に出てみたら町中が桃色ピンク全開でどん引きし、今日を思い出して絶望し、」

 
第三6「だからといって用件を果たさず戻るのは負けた気がして腹が立つし、強行するには精神ダメージが深すぎた。結果、とりあえず精神の回復を計ろうと、」

第一B「人気の無い場所を探して、俺を見つけて今に至る……行動ほぼ同じじゃねーか。……はは、はははは、」

第一B「こんな広場の陰気な隅で待ち合わせなんかしやがってあのバカップル畜生…………」

第一B「あー、…………このイベントを作った業者を呪いてー」ザワザワ

第三6「第一部隊所属が言うとマジになるからやめろ……」

第一B「魔王様や勇者達がワクワクドキドキ楽しみにしてなかったら、」

第一B「全力で雨乞いしてこの馬鹿みたいな晴天を暴風雨にしてやってたわ……」

第三6「警報出して自宅待機原則にすりゃあ最高の一日になるな……」

第一B「…………」
第三6「…………」

第一B「何でだろうな、今日という日が近付くに従ってテンションだだ下がりだったのに、当日に忘れるか普通……馬鹿だろ俺……」

第三6「……はははは、は……昨日3に『6くんっ!明日!楽しみにしててね!キュルルン』とか言われた、ってのに……」

第一B(きゅるるん……)

第三6「もうアレじゃねーの?テンション下がり過ぎて……極限まで下がったそのストレスで当日忘却……」

第一B「……有り得るわー……俺の中の防衛本能がせっかく忘れさせてくれたのに……俺ってやつは……」

第三6「…………何でかな、泣けてきたわ……」

第一B「…………」
第三6「…………」

第一B「もう少しで振り切れる気がする……気持ちが……」
第三6「そっか………」

第一B(……くたばれバレンタイン)
第三6(……くたばれバレンタイン)





 魔王城。
 魔力溢れる調理室。

 バン!!
側近「魔王!何だこの魔力は!!いったい何をしている!!!」

魔王「集中してんだから話しかけるんじゃないわよ側近!!」


魔王「今空間破壊魔法でチョコを程よく粉々にしなきゃいけないんだから!!」


側近「チョコ相手に高度な攻撃魔法を使うな馬鹿がー!!!」

やっべ投下真っ最中だった埋まりたい

>>705
効果音入れるの忘れた。
時系列は投下分で一番の未来軸に位置。

>>707
なんかごめん。でも、どんな時でもレスは嬉しいのが本音。

 
魔王「馬鹿ですって!?言っとくけど本にそう書いて--」バシュン


チョゴゴゴゴゴゴ ベショ


元チョコなヘドロ「」チーン


魔王「あああああああ!!!私のチョコおおおお……!!」グスッ

魔王「側近が……!側近が邪魔するから!側近が邪魔するからあああ!!!」ウワーン

側近「お黙りなさい!何が本だ!疎い俺でさえ一瞬でその工程は間違っていると気付くぞ!!」

魔王「初心者のくせに工程通りにやらないタイプは将来作るご飯がどこまでも不味い残念な成長をするって聞いたことあるもの!だから工程通りに!!」

魔王「二十……二回目でようやくコツが掴めたのに……!側近の馬鹿!馬鹿ああ!!」ザワザワ ウワーン

側近(こいつに不可解な知識を与えたクソ本はどこだ!?----これか?)


本:愛しの相手は臓から落とせ!
本:初心者にも出来る!簡単お料理魔法~お菓子編~


側近「…………」パラリ

 
本:魔力濃度は濃い程良し!
本:あなたの使える最大威力の魔法を愛情一杯チョコに込めて!

本:対象の臓腑を溶かしてやるイメージで!


側近「……魔王」パタン

側近「これは、初心者向けではない」

魔王「--え?……でも、初心者って……」

側近「……考えてみれば……そうだな、俺達は……食べる事は好きなくせして、料理という技能に大きな関心を寄せてはいなかった」

側近「美味い物を作ってくれるヒトが近くに沢山いたのが問題だったな、有り難い事だが。……だが、さすがに、最低限の知識、技能は得ておきたい」

側近「魔王、この本には初心者とあるが、この初心者は、料理の基礎が出来た上で、初めて菓子を作る者を対象にしているのだと思う」

魔王「!!!」ハッ

側近「今のお前は、魔力を扱う術を持たないくせに、魔法を使おうとしている。そういう事じゃないのか?」

側近「だから……に、二十二回も失敗したんだろう」

魔王「そんな……私……くっ、」

魔王「側近、ごめんなさい……確かに、馬鹿は私の方だったわ……」

側近「いいんだ。気にするな」

 
側近「ところで、この本はどこから入手した?」

魔王「第三部隊の痴女が貸してくれたの。バレンタインならこれよ!って」

側近「そうか……わかった」

側近「……これから俺は、この本を痴女に返してくる。--ついでに料理技能のある者を探して連れて来よう」

側近「すぐ戻るから、ここで待ってろ」

魔王「う、うん。わかった」


 ギィィ パタン


側近「-----」ザワザワザワザワ






 第三部隊執務室、付近の一室


第三5「!!!くる……!!」ワクワク

第三痴女「あー、もうバレちゃったのかにゃーん」

 
 ヒュン
側近「痴女おおおお!!!」ザワザワザワザワ

第三痴女「やだー、転移魔法ー?」

 バッ
第三5「うちの痴女がすみません代わりに俺をどう 

側近「くたばれえええええええええ!!!」バキッ

  ぐしゃああ!!」バタン

第三5「……ありが、たき、幸せ……」ゾクゾク

側近「…………」ハァ ハァ

第三痴女「ちょっとからかっただけじゃない。そんな怒らないでよ」ケラケラ

側近「お前という奴は……!!冗談は服装だけにしろ!!」

第三痴女「あたし暑がりだもの。それに、乳首と股関は隠してやってんだから文句言わないでよ」

第三痴女「そ、れ、と、も……側近くんは全裸の方が--」

側近「おい5、6がいない今まだ一応ギリギリ瀬戸際でお前がまだマシだ。ちゃんと痴女の手綱を握ってろ」グリグリ

第三5「ああ、あっ、容赦ない、踏みつけ……!!ご褒美貰っちゃいましたし、了解です……!!」ゾクゾク

第三痴女「あー、無視ー。ちぇ、昔は真っ赤になって逃げてくれたのにぃー」ムー

 
側近「痴女、お前……本当に、今後は気を付けろ。お前はからかっただけかもしれんが……あれを食うのは勇者なんだぞ……!」

側近「いくらあいつでも……間違いなく……死ぬ……!!」

第三痴女「あはっ、ごめんごめんって。お詫びにお菓子作り上手い子紹介するから。昨日で作り終えてるだろうし、まおーさまに教える時間は充分にあるでしょ」

側近「……変人変態はお断りだ」

第三痴女「趣味は特殊だけどあたし等よりはマシよ」

第三痴女「ま、調理室で待ってなさいな。すぐに第三の男の娘3くんを向かわせるからさー」






 とある町。
 調理室。


勇者「…………」モクモク

第一C「」
相棒「ここでも発揮される、勇者の造形スキル……」キラキラ

勇者「…………」モクモク

第一C「あれ、チョコレートで出来た竜だよな……クオリティ高すぎだろ……!!」

 
 魔王城。
 調理室。


第三3「……あのね~、魔王様~。料理に魔法は使わないんだよぉ~」

魔王「え?」キィィイン

チョコ:グツグツグツ

第三3「側近様が僕に魔力耐性上げる魔法かけてくれなかったら、僕倒れちゃってるだろうなぁ……」

魔王「ま、魔法無し?じゃあどうやってチョコを溶かすっていうの?!」

魔王「まずチョコを浮かせ、チョコを中心に空間隔離、あとは熱を加えて……ほら、グツグツ言ってる!溶けてるわよちゃんと!!」

第三3「うん、溶けてるよ。溶けてるんだけど……」

側近「………………」アタマイタイ

第三3(側近様は最低限の知識は持ってるのか……)

第三3「……魔王様、基本は大事だよ。一緒に湯煎からやろうねぇ~」

魔王「……湯、煎……」キョトン

チョゴ:グツグツグググググ

第三3「ほら、側近様も一緒にね~」

 
側近「…………ああ」

第三3「チョコを溶かして固めるだけじゃ意味無いし、」

第三3「何を作ろうか、ケーキかな、ブラウニーもいいしマフィンも……まぁ、それもぼちぼち決めてかないと……」

ヂョゴ:ググゴゴゴゴゴウゴ

第三3「まずはチョコじゃなくなってるアレをなんとかしてね……」

ヂョゴ:ウゴウゴウゴウゴウゴウゴ

第三3(ああ、蠢いてる)

第三3(………………)

第三3(見なかったことにしよう……)






 とある町。
 調理室。


第一C「料理、出来ないわけじゃないんだよな」

 
相棒「うん、二人旅だったから。一般的の知識と技能はあると思う」

勇者「…………」モクモク

ホワイトチョコ竜:ガオー
ミルクチョコ竜:ガオー

勇者「…………」モクモク
??:セイサクチュウ

相棒「でも勇者の造形スキルに気付いたのは最近なんだ」

第一C「!あの時の雪像か、」

相棒「うん。堕天使さん連れて帰る時かな。初めて作ってくれて、ふおおお!ってなった」

相棒「そういえば、雪遊びなんてしたのあの時が初めてだった。勇者、雪が嫌いなのかなーって思ってたし」

第一C「いきなり開花した才能?」

相棒「なのかな。わからない」

相棒「--あ、そろそろ時間かな。ちょっと様子見てくる」パタパタ

第一C「勇者は創作チョコ、相棒はガトーショコラ。勇者のクオリティは置いといて、平和だよなぁ」

勇者「……………」モクモク ヒュルルン クルクル

第一C(!!!?飴細工まで!?)

 
 とある町。

 ドカーン キャー ギャー

第一B「!!」
第三6「なんだ?今の、大通りから、」

第一B「行くぞ6」

第三6「ああ」





 とある町。
 大通り。

 ワーワーキャー ギャー

若者「くたばれバレンタイン!!どいつもこいつもキャッキャウフフしやがってぇええ!!」フォン

 ドカーン キャー

若者「今日の存在忘れてうっかり町出て見りゃ桃色ピンク全開かよ!客どころか店すらキャッキャしやがってくそっ!くそっ!!」


第一B「」
第三6「」

 
若者「みんなみんなくたばっちまええええ!!!」ヤケクソモード!

 ドカーン

第一「はーい皆さんお近くの店に避難しましょー」

第一「ちょうどキャッキャウフフしてたお兄さんが障壁張りまーす」

第一「寂しいヒトは寂しいまま悲しい暴走を続けさせてあげましょうねー」


第一B「…………」
第三3「…………」


若者「ちくしょおおお!!!魔王の犬がああ!!--ひぃ!!」ビクッ

休暇中の常駐兵「ほう、週一開催魔王様ファンクラブ会合のため集まった我々の前で魔王様を呼び捨てとは良い度胸だな若造」ザワザワ

第一「あ、会員No.0036魔王様ロリ時代からのガチのヒトだ」

常駐兵「取り押さえるぞ同志達よ!!」カッ

ファンクラブ会員の皆さん「うおおおおおおお!!!」ダダダダダ

若者「ひいいいいいい!!!ちょっとカッコイい感じがして言ってみただけじゃんかああああ!!!」ガクブル


第一「いけー!そこだー!やっちまえ0036さん!」ケラケラ

 
第一B「…………」

第三6「買うもん買って帰ろう」

第一B「おう……」






 魔王城。
 調理室。


魔王「~~~!出来た!!」

第三3「うんうん、良い出来だと思うよ。ちょっと型くずれしてるのはご愛嬌って奴だし」

側近「…………、合格点か?」

第三3「大丈夫、合格。側近様は無難に何でもこなすよねぇ~」

第三3「試作品の味は問題無かったし、後は渡すだけだね」

側近「試作品か……少々作り過ぎたな」

チョコ系お菓子の山:アマイヨ! ゲキアマダヨ!

 
側近様「……いけなくはないな」キリッ
魔王「そうね」キリッ

第三3「いや、配れよ。……あー、げふんべふん、みんなに配ったらどうかなぁ~」

第三3「いくらなんでもこの量を二人で消費してたらちょーっとだけ引いちゃうかも」キュルルン

魔王「配る分は市販で注文済みだし、……初心者の手作りだし、各自沢山貰ってるだろうから……」

魔王「その……迷惑じゃないかな、って……思う、けど……大丈夫かな?」

第三3「大丈夫だよぅ、それぞれの部隊の隊長格と……あとは早い者勝ちって事で。すぐに無くなっちゃうと思うなぁ」

第三3「しかしこれ魔王城と側近様の手作りって事で売りに出したら原材料費の100倍以上で戻ってくるな……」ブツブツ

魔王「……じゃあ、あとは、渡すだけ……か」

側近「そうだな」

魔王「…………」
側近「…………」

魔王「よし、帰って来た時があなたの最後よ!勇者!」グッ

側近「お前は勇者に何をするつもりだ」

>>722
側近に様がついた泣いた

 
 とある町。
 調理室。


勇者「……出来た」フゥ

勇者「あとは……氷の箱に入れて」フォン

 パキパキパキ

勇者「渡すだけ」

相棒「」
第一C「」

勇者「相棒」

相棒「は、はい!」

勇者「?どうした?」

相棒「あの、勇者、勇者勇者勇者」

勇者「何?」

相棒「私、その、見てたけど、工程見てたけど、」

相棒「そ、それ……その……」

 
勇者「先に相棒にあげる。受け取ってくれ、」


勇者「『側近さん完全竜化7分の1スケール。飴細工で土台の魔法陣、取り巻く炎系魔法を再現。透明度にこだわった氷製ケース付き』」


相棒「え、あ、そ、側近さんの方!?」
第一C(土台含めて軽く30cm以上ある……)

勇者「あー、悪い。気に入らなかった?一応、うまく出来たと思ったんだけど」

相棒「」ブンブンブンブン

相棒「あ、ああありがとう!!なんかこのクオリティに動揺してその私ガトーショコラ作ったよ食べて!」

勇者「良い匂いがすると思ってたんだー、ふへへ、ありがとう」ヘラリ

相棒「ど、どどどどうやって食べればいや食べられないよこれ」

勇者「ケースはすぐ壊れるぞ?それに、味は保証する」

相棒「たべ、たべ……たべ……」

第一C「おま、おま……何の職人だよ……側近様のはそっちとして、魔王様のは……」

勇者「魔王様のはこれ」ゴトン

??:サイシュウケッセン!

 
相棒「」
第一C「」

第一C「た、多分これ魔王様発狂するぞ……」

勇者「皆にあげるのをクッキーですませたのは申し訳ないけど」

第一C「いやいや、充分だって。ありがとう」

第一C「で?行くんだろ、城に」

勇者「うん。……相棒?七分の一側近さん持っていくのか?」

相棒「持ってく。魔王様や側近さんに見せなきゃ、見せなきゃ!」シメイカン







 とある町


若者「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ガクブル

常駐兵とファンクラブの皆さん「」ゴゴゴゴゴゴ

 
第一「」ケラケラケラケラケラケラ



第一B(……あの空間に混ざりたくねぇ……)

第三6「……疲れる一日だったわ……」テクテク

第一B「さっさと戻って寝る。これに尽きるわ……」テクテク

第三6「……あー、そうだ、」ゴソゴソ

第三6「B、これやる」ポーイ

第一B「……お、チョコか」キャッチ

第一B「んじゃ、お返し」ポーイ

第三6「はは、なんだよ。お前も買ってるじゃんか」キャッチ

第一B「雰囲気に買わされた」ケラケラ

第三6「同じく」ケラケラ

第一B「これでお互い戦利品ゲットしたわけか」

第三6「そーですねー」ケラケラ

 
第一「びぃいいー!ろぉおおく!!俺も欲しーい!!」チョコチョーコ


第一B「くたばれ!!テメェ沢山貰ってるだろうが!!」
第三6「テメェこのキャッキャウフフ族が!!くたばれ!!」







 魔王城。
 調理室。

 ガチャ
勇者「魔王様ー側近さーん」ガタゴト
相棒「お届けものでーす」

第三3(お邪魔になっちゃいけないし、隠れとこっと)ルンルン

魔王「!!」
側近「!!」

魔王「え、勇者、やけに大きな荷物ね」

相棒「勇者!ごう!勇者!ごう!」
勇者「まずは側近さんに!お世話になってます!」

 
側近「あ、ああ。ありがとう。大きな箱だな……この布は」ペラッ

勇者「『相棒完全竜化7分の1スケール。飴細工で土台の魔法陣、取り巻く氷系魔法を再現。透明度にこだわった氷製ケース付き』」

側近「」
魔王「きゃあああああああああ!!!」キラキラキラキラ

相棒「見せたくて持って来ました私が貰った側近さんver!」キラキラ

ミルクチョコ側近:ガオー
ホワイトチョコ相棒:ガオー

側近「」
魔王「きゃあああああああああ!!!」キラキラキラキラ

勇者「美味しく食べて下さい!」

側近「た、たべ、たべ……たた」

魔王「相棒……あなた……美味しそう」キラキラ

相棒「!!--ああ、そうだ、うん。チョコか」

相棒「美味しそうだよね。こっちの側近さんも……美味しそう、だよ?」

側近「」ビクッ

相棒「でも、側近さん(チョコ)を食べちゃうのは勿体無いというか(クオリティ高すぎて)」

 
勇者「俺は相棒に側近さん(チョコ)を食べてほしい!」

魔王「相棒は側近(チョコ)のどこからペロペロするの?(チョコはペロペロして舐めて噛み砕く派)」

側近「~~~~~」

第三3(やめたげて、側近様が死んじゃう……)ニヤニヤニヤニヤ

相棒「あれ……なんだろう、ちょっと恥ずかしくなってきた」

勇者「!!」
勇者(気付いてしまった、俺は側近さんを追い詰めてしまっている……せめて側近さんチョコとちゃんと言うべきだった……!)アワワワワ

魔王「恥ずかしい?」キョトン

側近「もう、やめて、くれ……」

魔王「?」キョトン

魔王「側近?もしかして、相棒をどこから食べるか決められないの?」

側近「」

相棒「勇者どうしよう今気付いた。チョコ付けないと恥ずかしい」

魔王「相棒の尻尾とか、翼の付け根とか」

魔王「側近、首筋からというのもアリじゃない?ペロペロ舐めてみ」
側近「魔王!!」

 
魔王「?」キョト-ン

側近「頼むから、もう、話すな……」フルフル

相棒「勇者どうしよう私今凄い恥ずかしいいや勇者がくれたチョコは凄く嬉しいよでも恥ずかしい死にそう」フルフル

勇者「ごめんもうほんとごめん……!!」

第三3「」ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ

勇者「話を、話を変え……そうだ!!」

勇者「魔王様にはこれ!!受け取って下さい!!」


勇者「『パシ○ィック・○ムよりジプシー・デン○ャー&ストライカー・エ○レカVSスラ○ーン海中決戦イメージ、ミニチュアver』」


魔王「----」
側近「」

勇者「舞台見たの一度で、その……大きさとか、あと細部も違うと思うけど……当時の興奮と愛を込めました!」

魔王「カテゴリー5……KAIJU……」フルフル
側近「お前凄すぎだぞ……」

魔王「きゃああああああああああああ!!イェーガー!イェーガー!!イェーガー!!!」フオオオオ

勇者「よ、よし!魔王様喜んでる!!作ったかいがあった!!」

 
勇者「なにより話をそらせた!」グッ

側近「……その……勇者、ありがとう。ここまでの物を用意されると、お返しを迷うな」

魔王「きゃあああああああああ!」キラキラ

勇者「気にしないで。楽しんで作った結果なんだ。喜んでくれたなら、それだけで凄く嬉しい」ヘラリ

勇者「それに……チョコが原因で恥ずかしい事にもなった……ごめん」

側近「いや、それは…いいんだ。でだな、お前と、相棒にな、それぞれ作った物がある」

相棒「私もあるよ、みんなで交換だねー」ニコニコ

魔王「勇者!相棒!私も作ったわよ!!」バッ

魔王「口開けなさい勇者!」カッ

勇者「え!?」

側近「ちょ、落ち着け魔王!!テンション振り切れてるのか知らんが目がまともじゃないぞ!」

魔王「このテンションなら出来そうなの!勇者!!あーんしなさい!!」カッ

勇者「」アワワワワ

相棒「いけ勇者!!憧れのシチュエーションだろ!!」

勇者「え、あ、う……っ、よし!」ドキドキドキドキドキドキ

 
 モゾモゾ

第三3(あれ?今の……)

魔王作蠢くヂョゴ:ウゴウゴ

第三3(処理しとけって言ったのに!)

ヂョゴ:ウゴウゴウゴウゴウゴウゴ

第三3(まずいぞ……魔王様はまずは勇者に食べさせるためチョコを作っていた!)


勇者「あ、あーん」ドキドキ


第三3(あの魔力で作られた物体だ、もし魔王様の強い意志が反映されていたとし)

ヂョゴ:ウゴウゴウゴウゴ ピョーイ

 スポッ
勇者「んん!!?」ヂョゴin!

魔王側近「!!!!?」

第三3(わー、自ら動いてお口にどーん)

相棒「な、なに今の!!何か黒い塊が飛んできて勇者の口の中に!!」

 
側近「ま、まさか今のは……」

魔王「え!?だってちゃんと処理……してなかった……」

側近「お前……!!」


勇者「ん、む……う゛」ウゴウゴ

 ゴクン
勇者「----」


魔王「ゆ、勇者……?」


勇者「」ブクブクバタン


魔王「きゃあああああああああ!!!」
側近「うわあああああああああ!!!」
相棒「わああああ!!勇者が泡吹いて倒れたあああ!!!」


勇者「」チーン


相棒「勇者あ!勇者ああああ!!!」ウワーン
側近「吐き出させろ!!じゃないと死ぬ!!すぐ吐かせないと勇者が死ぬ!」


魔王「いやあああああ!!勇者ああああ!!」ヒュン

 ドコン!!!

勇者「」ゲホッ ゴポッ ボタボタボタ

 ボトッ ヂョゴ-

勇者「」チーン

側近「吐血させる程力強く殴るな馬鹿ああああ!!!」
魔王「いやああああ!!勇者ごめんなさい!!ごめんなさああああい!!!」ウワーン

ヂョゴ:ウゴ ウゴウゴウゴウゴ

相棒「ひいい!!動いてる!!これ動いてるよおお!!」ウワーン

勇者「」チーン

側近「生きろ勇者!!死ぬなあああああ!!」

魔王「起きて勇者!勇者ああああああ!!」ウワーン

相棒「なんか動いてる勇者目掛けて変なのが進んでるううう!!」ウワーン




第三3(--数時間後、)

 
第三3(顔色最悪な側近様、半泣きの魔王様と相棒さんが見守る中、勇者は目覚めた)

第三3(しかし、調理室に入ってからの記憶は消えていた)

第三3(曰わく、ただただ苦しく死にそうな程辛かった事はわかる)

第三3(チョコの魔物を生み出した事で半泣きから号泣に移る魔王様)

第三3(※あの後、件の物体は魔王様の手によってちゃんと焼き尽くされ処理済み。安心だね!)

第三3(魔王様は正直に事情を話し--事の顛末を聞いても尚、勇者は事故だよと笑顔で返した)

第三3(そして、魔王様の作ったチョコレートケーキを何の躊躇いもなく嬉しそうに美味しそうに頬張る勇者は)

第三3「ほんっとぉ~に、勇者だと思いました」カリカリ

第三3「めでたしめでたし、っと!」キュルルン







 大切なヒトにお菓子を贈るあの憎い日、の話。/第三部隊交換日誌より一部抜粋


 おわり

どの時期に何を見たかわかる小話。何故劇場で見なかった。

この世界観でのサブカルチャーネタは基本魔法演出使用の実写舞台公演が各地である。3話で説明出る。

時間ある内に3話/堕天使「脱引きこもりしたら友人と婚約者が出来た」の序盤投下しておきたいけど小話消化したいしロリ消化したいし頑張る。
引きこもり堕天使SS見かけたらまたやらかしたなと思ってくれ

ショタの方に投下予定だった小話。
もしもの話。個人名表記あり。

 
 田舎町。
 片隅の一軒家。


元勇者の男(……良い匂いがする、シキのやつ、夕飯でも作ってるのか?)

男「ただいまー」

 トントントン コトコト

男(……台所、覗いてみるか)


男「おーい、シキー、何作ってんだー?」


女「あ、」


男「女さん!?だ、駄目ですよ!寝てなくちゃ!」

女「お帰りなさい、男さん」

男「あ、ただいまです。じゃなくて!寝てて下さい!俺がやりますから」

女「ふふっ、大丈夫です、今日は気分が良いので。夕ご飯の支度ぐらいさせて下さい」

女「味覚を失った私でも、こうなる前に覚えた料理ならちゃんと味を再現出来ますから」

 
女「……この味が、あなたのお口に合えば良いんですけど」

男「え、あ、はい、とても良い匂いです。美味しそうです。いや、絶対美味しいです!」

女「まだ味見もしてないのに、」

女「じゃあ……スープの味見、お願いできますか?匂いだけで美味しいと言われるのも嬉しいけれど、」

女「あなたのお口に合う物を知りたいし、作りたいんです」

男「えっ……」

女「どうぞ。熱いですから、お気をつけて」スッ

男「は、はい!」


シキ「…………」ジー


男「……美味しいです、凄く」

女「……良かった」ニコッ

男(今、絶対笑った。……くそ、ここで笑うのかよ……表情が戻り始めてるのは良い傾向だけど、)


シキ「…………」ジー

 
女「あ、シキ」

男「!!」

女「お帰りなさい」

シキ「ただいま。母さん」

男「おおおかえり!シキ!どこ行ってたんだ?」

シキ「どこ行って、とか。市場に食料品買いに行ってたの。お使い頼んだのはおじさんでしょ?」ハァ

男「そそそうだったな」

男「あー、じゃ、女さん夕ご飯楽しみにしてます!!俺はちょっと部屋へ」ソソクサ

女「はい、頑張りますね」

シキ「………ふーん、」







男(あー、あー……女さん、やっぱり美人だからな……美女の笑顔はまずいわ、)

男(平常心、平常心……)

 
シキ「お、じ、さ、ん」
男「!!し、シキ!?」ビクッ

シキ「わかってるよ。母さん美人だもん。だって僕らの母さんだよ?綺麗で可愛いに決まってるじゃん」クスクス

男「……いや、そうだけどさ……綺麗すぎるのも問題だろ………」

シキ「そうだなぁ、僕らは構わないけどね。母さんも笑顔を向けるぐらいはおじさんのこと好きだし」

男「お前なぁ……」

シキ「ぱーぱ、なんて、呼んだあげよっか?」ニコッ

男「あざとい、あざといぞお前。お前のパパは別のパパにしか聞こえん」

シキ「だよねー」クスッ

男「お父さんにしろお父さんに」

シキ「あはっ、息子にからかわれないようになったら、おとーさんって呼んであげるよ」クスクスッ

男「へいへい、からかわれないようしっかりしますよ」

シキ「ま、シキはすぐにでも呼んでくれると思うけどね」

男「シキはあんなに素直なのに、お前ときたら………」ハァ

シキ「当たり前だよ。シキは可愛く素直に真っ直ぐ育てたんだから」

 
男「お前はもうシキの兄ってより親だよな。昔っからシキの育成計画だけはしっかり固めて」

シキ「そりゃあ、大事な片割れですから」

男「あーあ、シキの将来の嫁は大変だな。もれなくやたら厳しい姑がついてくる」

シキ「ふんっ、シキを婿に貰いたいのなら、まず僕に認められることだね。そこらの女の子にシキは渡さないよ」キリッ

男「冗談だったのに、姑は怖いなぁ」ケラケラ


 シキ「ただいまー!!」


男「お、噂をすればなんとやら」

シキ「帰ってきたみたいだね、」


 トタタタッ ゴッ バサッ
 シキ「シキ!母さん!おじさん!!」


シキ(何?今の音……)
男(何の音だ……?何かぶつかったような、)


シキ「シキ、おかえ、」

 
 シキ「見てこれ!!もらった!!」キラキラキラ

巨大鳥「」チーン

シキ「」
男「おかえぶっふぉ!!?え、あ、は!?シキお前その担いでるソレどうした!?」

 シキ「もらった!鳥!美味しそう!!」キラキラキラ

シキ「…………何から言った方がいいのか迷う所だけど、とりあえず、」

シキ「羽根が派手に散らばるようなもの、家の中に持ってきちゃ駄目だよ」

 シキ「あっ……ごめん、」シュン

男「……まぁ、今回はいいとして、それ。その馬鹿でかい鳥はどっから持ってきたんだ?ここら辺にそんなのいたか?」

 シキ「えっと……近くの森探検してたら、猟師さん達が魔物に襲われてたんだ」

男「危ないな、人里近くに魔物か」

 シキ「猟師さん達が怪我しちゃいそうで危なかったから、すぐに割り込んで魔物を倒して、助けた」

 シキ「猟師さん達、俺の事知ってたみたいでね、都会から引っ越してきた家の子だろう、ありがとなぁ、って言ってくれた」ニコニコ

男「あー、俺元傭兵って言っといて良かったわ。これならうちの子鍛えてますので、で通じる」

 シキ「うん!都会の子は鍛え方が違うのお、って笑ってた!」

 
 シキ「あ、……と、それで、おじさん」

男「お?どうしたー、シキー」

 シキ「耳、貸してほしい」

男「おう。いいぞ」

 シキ「……猟師さん達が、おじさんのこと、お父さんか、って訊いたから」コソッ

 シキ「俺、うん、って頷いちゃったんだ……駄目だった、かな」

男「~~~」フルフル

シキ「…………」ニヤニヤ

男「駄目じゃない。駄目じゃないぞ!」

 シキ「そ、そう?良かったぁ……」ヘラリ

男(俺、立派な父親になる!)グッ

シキ「…………」ニヤニヤ

 男シキ「!!」ハッ

シキ「ほんと、すぐだったね」ニヤニヤ

男「つ、次はお前なんだからな!」コソッ

 
シキ「望むところだよ」クスッ

 シキ「その……それで!お礼だー命の恩人だーって事で!一番大きい鳥を貰うことになったんだ!」

 シキ「その鳥が、これ!」

巨大鳥「」チーン

シキ「……まぁ、僕らも本当は都会っ子ってわけじゃないけど、なんというかね」

シキ「田舎って大丈夫?気候が穏やかだと住民も穏やかになっちゃうの?ちょっとおおらかすぎない?」

男「いいじゃねーか。のびのびやれて」

シキ「魔物退治がのびのびね、」

シキ「でも、人助けだ。シキ、偉い」
男「そうだな、よくやったな。シキ」

 シキ「ふへへ~、褒められた。嬉しいなぁ」ニコニコ

女「あら、シキ。おかえりなさい」

 シキ「母さん!俺、人助けした!お礼貰った!」

巨大鳥「」チーン

女「シキ、凄いわ…!偉い偉い」ニコッ

 
 シキ「ふへへ~」ニコニコ

女「それに、これをスープにぶち込んだらもっと美味しくなるかも」ジー

 シキ「美味しくなるの?」キラキラ

男「あの、女さん、何で包丁構えて、」

女「任せて下さい、捌きます。」キッ

シキ「母さん、大丈夫なの?」

女「大丈夫よ、今日は気分がいいの」

女「それ!」ドゴッ

巨大鳥「」スパーン ドチャア

 シキ「わぁ!真っ二つだぁ~」ニコニコ

男「……………」
シキ「…………母さん、」

女「なぁに?シキ」

シキ「ここ、室内。下床。床が血みどろ」

女「あっ!」

 
女「……やってしまった……」シュン

 シキ「あ、え、っと……俺、片付け手伝うから!」アワワワ



シキ「おじさん」

男「何だ?」

シキ「うちの母さん、あんな感じ。ちょっと抜けてる所なんて、シキにそっくり」

シキ「大変だよ?それでもいいの?」

男「はは、」

男「望むところだ」








 とある町。とある商家の一室。
 朝。

男「…………」

 
 コンコン

少女「失礼します」ガチャ

少女「おはようございます、男さん。傷の具合は--」

男「…………」

少女「男さん……、泣いているんですか?」

男「……あ、ああ、そうか、」

男「……はは、ははは……」

少女「……男さん、」

男「夢を、見てしまったんだ、」


男「幸せすぎたから、涙が出てしまう、」








 幸せな夢の話/おわり。

夢の話の少女、ちゃんと商人の娘って表記すればよかった反省。
以下竜ロリ完結後投下予定だった小話。竜ロリ仕様のため個人名あり。

 

 某所。


金髪弟「竜族!竜族だ!!」キラキラ
魔族娘「竜族!竜族っ!!」キラキラ

金髪兄「…………」
金髪兄(竜族……初めて見た)キラキラ

シロ「ふへへー、翼出せば飛べるよ」バサッ

金髪弟「ふぉおおおお!!」キラキラキラ
魔族娘「きゃああああ!!」キラキラキラ

クロ(なんだこのテンション………)

金髪兄「…………」
金髪兄(竜族凄い竜族凄い竜族凄い)キラキラキラ

クロ(確か……人間の双子で、落ち着いている方が兄の方だったか)

クロ(弟と魔族の娘は振り切れたテンションだし、兄の方なら会話になるかも)

クロ「……あー、っと、兄、」

金髪兄「……ああ、ごめん。ちょっと騒ぎすぎだよね」

クロ「いや、そういうわけでは、」

 
金髪兄「弟、騒ぎすぎ。ちょっと落ち着いてよ。シロさんとクロさんが困るだろ」

金髪弟「!!……ごめんな、シロー、俺騒ぎすぎたよ」

シロ「いいよー、ちょっと照れるけど、弟も娘も楽しそうだしー」

金髪弟「楽しいよ、だって憧れの竜族だし、シロはカッコイいよー」

シロ「ふへへ、褒めないでよ照れちゃうよー」

金髪弟「それに、シロは真っ白で凄く綺麗だー」

シロ「弟だってお日様みたいな髪ー、ふわふわで綺麗ー」

金髪弟「ふへへ、ありがとー」ニコニコ
シロ「私も、褒めてくれてありがとー」ニコニコ


金髪兄「どうしよう弟が二人いるようだ」

金髪兄「なにこの子、弟が一瞬で懐いたと思ったら雰囲気が似すぎてどうしよう」



魔族娘「クロ!あなたも竜族ならちょっと竜化ってのをしてみなさいよ!」キラキラキラ

クロ「……………」

魔族娘「してみなさいよ!!」キラキラキラ

 
クロ「……仕方ないな」ハァ バサッ

魔族娘「きゃあああああ!!やるじゃないクロー!」キラキラキラ

魔族娘「カッコイい!カッコイい!!私も竜化したい!!竜化したーい!」

魔族娘「はっ!?」ピコーン

魔族娘「出来るかも、私……自分の眠っている力?に気付いてないだけで」

魔族娘「……はぁあああ、竜化っ!」ピカーン

クロ「いや、無理がある。お前は魔族なんだから」


金髪兄「こっちはこっちでアホの子だし」


魔族娘「なんでよ!見なさいこの私の姿を!!同じでしょ!?」

クロ「何とだ」

魔族娘「髪の色と瞳の色!!黒と金!同じじゃない!!だから私も……夢の変身が!」


金髪弟「どうしよう兄、その理屈だったら俺達も……!!」

金髪兄「?」

 
シロ「!!?私の目!弟や兄と同じ……赤!!」

弟シロ「「となれば……まさか変身が!?」」


金髪兄「馬鹿も交代で休み休み言いなよ。三人でそろって馬鹿言われると疲れるんだけど」

クロ「……お前……なかなかきついこと言うな」

金髪兄「これぐらいで懲りるわけないでしょ?だからいいの」

魔族娘「悔しい……私だって変身……したかった……!!」

金髪弟「シロー、俺変身出来ないんだってー」

シロ「残念だねー」


クロ「……シロが二人いるようだ」

金髪兄「さっき僕も意味合いは同じこと呟いたよ」


魔族娘「変身……変形でもいいのに……巨大化してビームとか……くぅ……やりたい」


金髪兄「君って本当に悲しくなるぐらい、頭が残念な美少女だね」

 
 後日。
 竜族の里。


少女「おかえりシロちゃん!どうだった?友達になれた?」

シロ「うん。三人とも良い子だった、楽しかった」

少女「どんな子達だったの?」

シロ「えっと、弟は人間で--」


クロ友「シロちゃん楽しそうに話すのなー、良い子みたいで良かったじゃん」

クロ「なかなか面白い奴らだった」

クロ友「何か映像とか無いのかー?女の子はいたか?可愛かったりしたか?」

クロ「あるぞ。静止画だがな」フォン

クロ友「……うっわ、美少女!この黒髪の子凄く可愛い……魔族の子だよな」

クロ「ああ」

クロ友「金髪の子は……双子か、お姉さん可愛いじゃねぇか……こんな美少女達と知り合うとか羨ましいぞクロ!」

クロ「……お姉さん?」

 
クロ友「あ、妹だった?いや、男の方より落ち着いてるように見えたから」

クロ「どっちも男だ」

クロ友「は?」

クロ「人間の男の双子だ。どっちも男だ」

クロ友「くっ……そ!くっそ!何でだよ!男かよ!!」

クロ「本人が聞いたら怒るぞ」

クロ友「会う機会があったら気を付けるさ……はは、可愛い子と知り合える可能性が」

クロ「機会はすぐにくる」


少女「そうなの!?里に来てくれるの!?」

シロ「そうだよー。今度は里に、弟や兄、娘が遊びに来てくれることになったんだー」


クロ友「……マジで?」

クロ「マジだ」



 もしもロリショタ組全生存で出会う事になったらな話/おわり

全生存平和な世界でのロリショタ子供組+魔族領、領主の娘のほのぼの交流話で突き進むのもありだったかもしれない。

趣味に走れる間に足場作っておくことにした。すまん。引きこもり堕天使三話開始。
ラブコメしつつ天使組合流、旅の劇団がやって来たり誘拐事件発生したり勇者協会がきな臭かったり、竜ロリ最後とかぶりつつ竜族組の関係が判明したりで終わるそんな話。

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