桐乃「行ってきます」 (1000)

1スレ目
京介「なあ、桐乃」 桐乃「なによ」
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京介「ただいま」 桐乃「おかえり」
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京介「おかえり」 桐乃「ただいま」
京介「おかえり」 桐乃「ただいま」 - SSまとめ速報
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本編完結済み(1スレ~2スレの途中まで)
原作12巻後、アニメ2期16話後のお話となっております。

本編の合間(最終話前の三年間)の短編スレです。
こんな話が読みたい。 などありましたら、レスして頂ければ可能な限り書きます。 あまりにもイメージと違っている場合は書けません。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376832426

乙、感想ありがとうございます。

一本投下致します。

1月。

迎春とはよく言ったもので、コタツは未だに仕舞えないでいる。

いっそとっとと暖かくなれば良いのに、なんてことを考えつつも、俺はコタツに足を突っ込み、みかんを口に入れながら目の前に居る奴へと顔を向けた。

京介「で、今回はなんだ? 改まって「人生相談がある」とか言うから結構身構えてるんだけどよ」

桐乃「うん……。 それなんだケド」

それだけ言うと、桐乃は言い辛そうに押し黙る。 なんだ、そんなに言いにくいことなのか?

その相談を受ける俺としては、あまり好ましくは無い展開だよな? これって。

でもまあ、すごくさらっととんでもないことを言われるよりかはマシっちゃマシだが。

もう少しあれだ。 軽い雰囲気で受けたい物だ。

京介「黙ってちゃ答えようがねえぞ。 今更……って言ったらあれだけどよ。 そんな言い辛いことなのか? 俺に」

桐乃「……うん。 よし。 分かった」

俺が急かすとすぐに桐乃はそう答えた。 そして、ゆっくりとその人生相談を始める。

桐乃「実は、友達が旅行に行くって言ってるのね」

京介「あやせとか加奈子とかか? てか、こんな時期に? へえ」

正月……と言うにはもうとっくに過ぎてるしな。

しかし、それがどう人生相談に絡んでくるのだろうか。 俺の乏しい想像力では予想が付かないぜ。

桐乃「ううん。 違う友達。 てゆうか、あんたあたしの友達があやせと加奈子しかいないと思ってない?」

京介「いや……そういう訳じゃねえけどさ」

桐乃「ならいいケド」

京介「……おう」

桐乃「暮れとかお正月に行くなら分かるケドさ~。 もう学校も始まってるってのに、何でだろうね?」

京介「さあ? そりゃあ、その友達の家にも事情があるんじゃねえの?」

桐乃「かな?」

京介「うむ」

桐乃「……」

京介「……」

いやいや、続きを話せよ! もしかして今ので全てだったとか!? だとするとなんだ。 一体これはどんな人生相談なんだ。

あり得ない可能性だが、これって全く関係ない話だったりするのか……?

京介「おーい?」

桐乃「あ、えと……」

ふむ。 こいつにしては、やけにおどおどしてんな。

桐乃「さ、最近さ。 学校また始まったじゃん?」

京介「ああ、始まったな」

桐乃「そ、それで……あ、さっきの友達の話は関係無いからね」

関係ねえのかよ! てっきりそれが絡んでくると思ったのに関係ねえのかよ! 今までの会話は一体何だったんだ!?

京介「……それで?」

俺が聞くと、桐乃は少し困ったような顔になり、次いで怒ったような顔になり、口を開く。

桐乃「なんであんた怒ってんの?」

……俺が!? 俺がいつ怒ったんだ!? はは。 なんか笑えてきたぞ。

京介「いや別に怒ってはいないけど……」

桐乃「だって、なんか聞き方怖くない? 少しは黙って聞くことができないワケ?」

待て、待て京介。 落ち着け。 ここはあれだ、耐える場面だ。 そうに違いない。

京介「す、すいませんでしたね桐乃さん……続きをどうぞ」

桐乃「どうぞ。 じゃないでしょ? 頼み方としたらぁ……続きをお願いしますってのがフツーじゃん?」

京介「……う、ぐぐ」

こ、このヤロー……。 好き放題言いやがって!

俺はお前が相談があるっつうからここでこうして向かい合っているんだぞ!?

まぁ、相談が無かったとしてもお前のことは見てたと思うがそれは今どうでも良い!

桐乃「ほら、早く言わないと話すのやめちゃおっかなぁ」

なんで俺が下の立場になっているのか物凄く気になる。 だけど、なんか変だな。

……こいつ、なんか話を逸らそうとしてないか?

桐乃「どしたの? 変な顔して。 あ、元々かぁ! ひひ」

正直言ってすげえうざいぞ。 いくら可愛くてもうざい物はうざい!

だけど、それすら補って余りあるほど可愛い。

いやそうじゃねえ! 今は桐乃が可愛いとかそういう話じゃねえんだった! なんて奴だ。 魔女みたいな女だぜ……。

京介「んーっと、桐乃」

咳払いをしたあと、続ける。

京介「桐乃。 お前……なんか話逸らしてるか?」

俺がそう聞くと、桐乃は今の今までべらべらと喋っていたというのに、急に黙る。 そっぽを向いて、聞こえなかった振りをしている様だ。

うむ、なんていうかあれだ。

分かりやすっ!

それよりこいつ……すっげえ演技が下手だな。 俺も人のことは言えないかもしれんが、それでもこいつは酷い。

京介「おい?」

桐乃「な、なに? なんか用?」

京介「用があったのはそっちだろ! 人生相談、するんじゃなかったのかよ?」

桐乃「う……」

桐乃「……分かった。 話す」

やーっと話す気になったか。 つか、ここまで話すのを躊躇っているとなると、内容はぶっちゃけ聞きたく無いんだが。

もしこれで「京介、実は子供が出来たの」とか言ったらどうしよう。 いや、そもそもそういうことはしていない訳だから出来る筈も無いけどさ。

ま、例えってことで。

桐乃「えとね、実は」

桐乃は一呼吸し、口を開く。

桐乃「子供が」

京介「すとおおおおおっっっぷ!!! 待て!! ちょっと一旦待て!!!」

桐乃「な、なに? あんたが話せって言ったんじゃん!!」

京介「それはそうだけど、ちょっと待ってくれ! 俺にも考える時間が欲しいんだよ!」

必死に訴えると、桐乃はしかめっ面になりながらも口を閉じる。

ふう。

よし、よし……一旦落ち着け、俺。

まず、何かの聞き間違いの可能性は……無いな。 はっきり聞こえてしまったし。

でも、俺は断じてその……あれだ。 こ、子供が出来るような行為はやっていないはずだ。 あるとしたら……。

あれか? 酒を飲んで二人して酔っ払ってたときか!?

いやでも桐乃は「それはないと思う」って言ってたし……。

だからと言って、絶対に100%無かったとは言えんよな。 けどまさかなぁ!

……一応、その先のことを考えてみるか。

もし、もしもだぞ? 桐乃にその……子供が出来てたとして。

そ、それはもう大変なことになってしまうぞ。 てか、何の知識も無い俺たちがしっかり育てられるのかどうか……だよな。

それもそうだが、なんつうか。

俺は自分の意思の弱さが嫌になってしまいそうだ。 絶対にしっかりとするまで手は出さないと決めていたというのに、な。

だが、そうなってしまったら後戻りは出来やしない。 俺が今するべきことは、桐乃の話を聞くことだ。 それで、考えよう。 桐乃と一緒に。

京介「……よし。 良いぞ」

桐乃「なが。 折角話そうかと思ったってのに」

京介「わ、悪い。 ちょっと驚いちゃってな」

桐乃「まだ何も話してないのにどこに驚く要素があるっての……ま、良いケド」

いやいや、さっきの単語だけで十分じゃねえか。 ほんと、息が止まるってのを経験しちまったからな。

桐乃「でね。 最近学校帰りに寄り道してるのね」

京介「……病院にか?」

桐乃「……病院? あー。 それはまだ。 元気良さそうだし」

京介「え? それってもう分かる物なのか? いや、つうか病院はさすがに行った方が良いだろ」

桐乃「分かる物って。 あんた何言ってんの? そんなの見れば分かるっしょ」

言われ、桐乃のことを凝視。

京介「確かにお前は元気だけどよ」

桐乃「なんであたしになるッ!? あたしじゃなくて、猫だっての!」

……猫? 猫ってあれだよな。 動物の猫、だよな?

ん……? あれ、ちょっと待てよ。 なんか会話が噛み合っていない気がしてきた。

京介「……えっと、じゃあさっきの子供ってのは?」

桐乃「はぁ? そんなの子供の猫に決まってるでしょ。 子猫」

京介「か、かあああぁああああぁ……」

そ、そういうことかよ!! 人をびびらせるんじゃねえよこの野郎!!

京介「つまりはあれだよな? 桐乃に子供が出来たとか、そういう話では無いんだよな?」

桐乃「あたしに子供……?」

桐乃「は、はぁ!? そんなワケ無いでしょ!! だ、だってしてないんだし!!」

京介「そうだけどお前が紛らわしい言い方するからじゃねえかよ!! 最初から子猫って言っとけや!!」

桐乃「あんたが勝手に勘違いしたんじゃない! あたしはヘンなことなんて一つも言ってないっての!」

京介「普通は勘違いするっての! お前の言い方は毎回毎回紛らわしいんだよ!」

桐乃「そっちが変態だからそうゆう勘違いするんじゃないの!? あたしの所為にしないで、変態」

京介「ほ、ほう……」

桐乃「……なによ?」

京介「……覚えてるか。 一昨日のこと」

桐乃「一昨日? なんかあったっけ?」

京介「俺が風呂入ってるときのことだよ。 一緒に入ったろ?」

桐乃「だから、それがなに?」

京介「最初に入ってたのは俺だったよな? で、お前が後から入ってきたんだよな」

京介「あ、京介入ってたの? でも今から服また着るのは面倒だし~。 あたしも入る」

京介「と、お前は言ったな?」

桐乃「……言ったケド」

京介「今だから言うけど、あれは俺と入りたかったから敢えてそのタイミングで来たってことに俺は気づいてるからな」

俺が告げると、桐乃は飲んでいた麦茶を吹きそうになる。 その後それを慌てて飲み込み、咽る。

桐乃「ちょ、そんなワケないじゃん! あれは偶然だっての!」

京介「ど、こ、が、だ、よ! お前の方がよっぽど変態じゃねえか! この変態!」

桐乃「あたしはそんなんじゃなーい!! ぶ、ぶっ飛ばす!」

桐乃は言い、コタツから身を乗り出し俺に掴みかかってきた。 いつも言われっぱなしの分、言ったら案外すっきりしたな。 はは。

京介「はっはっは! どうだ! 俺よりお前の方がやべえんだよ!!」

桐乃「うっさい! 黙れ!」

桐乃は俺の服を掴んだまま、力任せに体をぶんぶんと振り回す。 こんなのは今となっちゃ可愛い物だぜ。

桐乃「こ、この……!」

俺がへらへらと笑っているのが気に食わなかったのか、桐乃は他の攻撃手段に移るべく、辺りを見回し……止まった。

桐乃「ひひ。 京介、あんたはそうゆうケドぉ」

桐乃「この前、あたしが料理してる時にあんた何してたっけ? ふひ」

京介「お、お前……それは」

桐乃「わざとらしく飲み物取りに台所に来てさ~。 あたしが制服なのを良いことに、覗こうとしてたっしょ?」

い、言うんじゃねえ! あれは俺の中ではもう既に無かったことになってんだからよぉ!

京介「は、はは……なんのことだか」

桐乃「はぁ!? しらばっくれる気!? マジ、妹が真剣に料理してるところでパンツ見ようとするとか、あり得ないんですケドぉ」

京介「あれはノーカンだ! 魔が差したっつうか……ついついというか……だから無し!!」

桐乃「無しになるワケあるかッ!」

それからしばらく言い合い。 こんな感じのお互いの恥ずかしい話がその後、数十分は続いた。

京介「……えーっと」

桐乃「……な、なに?」

俺も桐乃も顔を赤くしていて、お互いに視線を合わせようとはしない。 無理もないが。

京介「な、なんの話だったっけ。 最初」

桐乃「あんたが話を逸らすからでしょ! あたしは最初からちゃんと言おうとしてたってのに」

どこがだよ! お前がいっちばん最初に話を逸らしたんじゃねえか!

京介「……悪かったって。 で、子猫がどうとか言ってたけど」

桐乃「あ。 そだったそだった」

桐乃は怒りをあらわにした表情から一変。 いつも通りの表情に戻ると、話を続ける。

桐乃「あたしが学校の帰りに寄り道してるところまでは話したよね? で、その場所なんだケド」

桐乃「その、子猫のところなの。 捨て猫っぽくてさ……」

……あー。 つまりはこいつ、猫の世話かなんかを毎日してるということか。 学校帰りに。

京介「……で、それが今回の人生相談か?」

桐乃「まぁ……そうゆうこと。 あの猫さ」

桐乃「あたしたちで、飼えないかな?」

なるほど。 そう来たか。

俺もそれは出来ることならそうしたいが……。

京介「……猫の世話とか、育て方とか、分からないだろ?」

桐乃「調べるから! しっかりちゃんとやるから!」

京介「確かにこのアパートはペット大丈夫だけどよ、それでも金が掛かるだろ? 病院とかにも連れて行かないといけないと思うし」

桐乃「そりゃそうだケド……」

京介「今、結構自分たちのことで精一杯って部分もあるだろ? そんな状況でそれは、俺としては反対だ」

桐乃「……」

俺の言葉を聞き、桐乃は俯き、唇を固く結ぶ。

京介「何より、俺は……」

それを言おうとし、止めた。

エロゲーやらフィギュアやらじゃないんだ。 それには、命がある。

そして、それは俺や桐乃よりも……寿命は短い。

俺はそのことを口に出そうとしたのだが。

……今言うことでもねえな、これは。

桐乃「……分かった」

桐乃も大体の意味を悟ったのか、ようやくそれだけ口に出す。

そして、そんな妹に向けて、俺は話を続ける。

京介「飼うのは反対だ。 だけど、飼い主が見つかるまでってなら、反対はしない」

俺が仮に桐乃の立場だったとして、多分……同じことを言っていただろう。 今の桐乃の様に。

そして多分、桐乃が俺の立場だったら今の俺のように返すのだろう。 それが俺たちにとっても、その子猫にとっても、良いことなのだろうから。

桐乃「ほ、ほんと……?」

京介「こんなことで嘘は吐かない。 本当だ」

桐乃「やった! えへへ」

京介「だけど、しっかり飼い主を探すこと。 それが最低条件だぜ」

桐乃「うん。 おっけ!」

やれやれ。 俺って奴は、妹にとことん甘い兄貴だよ。

桐乃「ふひひ。 ひひ」

そう決まってからすぐに桐乃はその場所へと猫を取りに行き、今はその猫を連れて帰ってきている。

そろそろ寝る時間なのだが、桐乃はその猫と構い続けていて、その気配は感じられない。

ふむ。

白い猫で、目鼻立ちがやけにはっきりとしていて、性別は雌。

……猫業界でもあるとしたら、桐乃みたいな立ち位置になりそうな猫だな。

「にゃー」

桐乃「チョー可愛くない!? マジヤバイ!」

お前の顔の方がやべえぞ。 割と真剣に。

猫も大分桐乃に懐いているようで、先ほどからずっと桐乃とべたべたとしている。 俺の方にも寄ってくれない物か。

京介「確かにな。 どれ」

俺は言い、その猫へと手を差し伸ばす。

「シャー!」

……やめて! 歯剥き出しでそんな怖い声を出さないでくれ。 思いっきり威嚇されてるよね、これ。

桐乃「ぷ。 あんた嫌われてるじゃん。 ウケる~」

京介「……うっせ」

桐乃「まだ小さいけど、女の子だもんね~。 あんな冴えない奴なんてイヤだよね?」

俺、お前の彼氏のはずなんだけどなぁ! 好き放題言いやがって。

桐乃が話し掛けている奴……猫だが、桐乃と触れ合っているときはやけに機嫌が良さそうな顔をしている。 なんか悔しいぞ。

京介「チッ……俺はもう寝るぞ」

桐乃「あ。 もうそんな時間? あたしも明日学校あるし、寝ないと」

桐乃は言うと、猫をタオルケットの上に乗せ、俺の後に付いて来る。

京介「……ふう。 お前、相当あいつに好かれてるんだな」

桐乃「そりゃそうでしょ。 あたしってチョー優しいからね」

京介「……へいへい」

言いながら、布団の中へ。 桐乃もすぐ横へと潜り込む。

京介「電気消してくれよ」

桐乃「やだ。 あたしもう寝る体勢入ってるし。 京介が消して」

京介「……はいよ」

渋々立ち上がり、扉の近くに設置してあるボタンを押す。

本当、人使いが荒い奴。

俺は二度目の就寝をする為に、再び布団の中へ。

入ろうとしたのだが。

「にゃあ」

……そこ俺の場所だぜ。 子猫ちゃん。

桐乃「ふひひ~。 可愛いなぁ」

京介「……俺、どうすんの?」

桐乃「ここ、今日猫ちゃんが寝るから、あんた反対来れば?」

京介「……りょーかいしました」

なんで俺は敷布団も無いところで寝て、猫様は布団の上なんだよ……。

桐乃「ベツに良いっしょ。 少しならあたしとくっついても……良いから」

飴に鞭と言った感じ。 事実、俺はその言葉でちょびっとテンション上がったし。 本当にちょびっとだけな。

京介「んじゃ、おやすみ」

俺は桐乃の右隣へ。 猫は俺の定位置でもある左隣で。

桐乃「……じゅる」

……猫が少し心配になる俺であった。


ペット 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

>>33
三行目誤字。

× そろそろ寝る時間なのだが、桐乃はその猫と構い続けていて、その気配は感じられない。

○ そろそろ寝る時間なのだが、桐乃はその猫に構い続けていて、その気配は感じられない。

前スレ>>992
ありがとうございます。
今度読んでみます。

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下致します。

京介「ただいまー」

夕方、講義を終えて真っ直ぐ帰宅。

さて、今日は何をして遊ぼうかなどと考えながらの帰り道だった。

そして部屋に入るとすぐ、見慣れた後頭部が視界に入る。

京介「ただいま」

先ほど返事が無かった為、再度桐乃に向けて言う。

が。

桐乃「ふひひ。 猫ちゃん可愛いよぉ……」

こいつ……挨拶くらいしろっての。

最近、ずっとこんな調子なんだよなぁ。 寝ても覚めても猫のことばかり考えているのだろう。 寝言もうるさいし。

……俺が言った言葉、しっかりと分かってるのかね。

俺はそんなこいつを見て少々苛立ちを覚え、言う。

京介「お前、俺が言ったことは覚えているよな? しっかり飼い主探せって言ったの」

桐乃「分かってるって。 しっかり探すよ」

桐乃「……ふひっ」

やれやれ。 本当に大丈夫かよ。

京介「なら良いけどよ」

桐乃「てか、なんであんたは不機嫌なのよ。 ちょっと怖いんですケドぉ」

俺がそう見えるのだとしたら、それはお前が原因だ! 猫と遊んでばかりいやがって……。

しっかり飼ってくれる人を探さないと駄目だと言っているのに。

それが俺たちにとっても、猫にとっても良いことなのだろうから。

京介「別に~」

俺は言いながら、コタツの中へと入る。 ちなみに、桐乃はそこから少し離れた場所で猫とじゃれ合っていた。

桐乃「ふうん。 ま、どーでも良いケド。 それより今日の材料当番そっちじゃなかったっけ?」

当番……当番………。

……ああ、そういやそうだった。

京介「すっかり忘れてた。 帰る途中で買ってくる予定だったんだけどな……」

桐乃「ぷ。 間抜けすぎじゃん?」

京介「うっせ。 んじゃあ俺は買ってくるけど、桐乃も来るか?」

桐乃「んー」

桐乃は少し考え、口を開く。

桐乃「あたしはいいや。 猫ちゃん一人で残すのも不安だし~。 もうちょっと遊んでたいし」

京介「……へいへい」

俺もお前も学校があるから、その時はどうしてもその猫だけになるんだけどな。 ていうか、こいつは多分……ただ遊んでいたいだけだろう。

まぁ、今くらいは良いか。 ずっと飼うわけでもあるまいし。

桐乃「ちょ! 顔舐めないでよ~! ひひ」

京介「……近所迷惑にならないようになー」

俺の言葉は桐乃に聞こえていたのか分からない。 桐乃は俺の方には目も暮れず、猫と遊んでいた。

京介「……ただいま」

二度目の帰宅。 今度は部屋の奥からしっかりと返事がある。

桐乃「お! おかえり。 買ってきた?」

京介「まあな。 ほら、これで良いか?」

俺は言いながら、ビニール袋から一つの物を取り出し、桐乃に手渡した。

桐乃「そうそう! サンキュー」

桐乃「ほら、猫ちゃん猫じゃらしだよ~」

桐乃は俺が渡した物を早速、猫のところへと持っていく。 どんだけ楽しみだったんだ、こいつ。

京介「料理の材料、こっち置いとくぞー」

桐乃「ふひっ」

聞いちゃいねえ。 程々にして欲しい物だぜ。 全く。

俺は材料を台所へと置くと、そそくさと居間へと戻った。

そうしてコタツに入り、猫と遊ぶ桐乃を眺めていたとき。

「にゃぁ」

猫は小さくそう鳴くと、俺の方へとトコトコ歩き、床に付いていた俺の手をチロチロと小さい舌で舐め始める。

お、おいマジか。 お前この前まで怖い顔して俺のこと威嚇してたじゃねえか。

急にどうしたんだよ。

てか……や、やべえ。 こいつ超可愛いんじゃね?

京介「お、おう……なんだよ急に」

「にゃー」

返事をするようにそう鳴くと、今度は俺の体へ自身の体を擦り付ける。

京介「……お礼でも言ってんのか? はは」

桐乃「ちょっとちょっとちょっと!!! 何あたしの猫ちゃん取ってんの!? しかも猫相手にデレデレして……マジきもい」

京介「俺が取った訳じゃねえし、お前の猫じゃねえだろ! それと別にデレデレなんてしてねーよ!」

桐乃「良いから早く返して。 猫ちゃんこっちだよ~」

桐乃は言い、猫じゃらしを振る。すると 猫は桐乃の方に顔を向け、すぐさまそちらへと駆け寄って行く。

……むう。 なんか納得いかねえ。

桐乃「やっぱあたしの近くに居る時の方が嬉しそうだよねー。 当たり前だケド」

言ってろ言ってろ。 俺には別にどうでも良いことだしよ。

京介「……それより桐乃、そろそろ飯の時間じゃね?」

桐乃「え、もうそんな時間? うう……」

桐乃は猫の方を名残惜しそうな目で見つめ、やがて決心したかの様に桐乃は言った。

桐乃「よし! 待ってろ! あたしはすぐに戻って来る!」

何もそこまで気合たっぷりで言わなくてもな。 どれだけ猫と遊びたいんだお前。

桐乃「言っとくケド、あんた猫ちゃんに手出したらただじゃ済まないからね」

京介「……へーい」

全く、俺をどんな奴だと思っているのかね、こいつは。

百歩譲ってあやせや加奈子や黒猫やらなら分かる。 だけど相手が猫だぞ!?

俺は適当に返事をし、その場に横になる。 そのままなんとなく部屋の中を見回したところ、ある物が視界に入ってきた。

部屋の隅……に、なんだ? あれ。

それが気になり、体を起こすと近くまで行き、しゃがみ込んだ。

床に小さな、穴? こんなのって最初からあったっけ?

まあ、大分年数は経っていそうだし、そういうのが出てくるのは仕方の無いことかもしれねえな。

京介「なあ、桐乃ー。 ここに穴空いてるんだけど、お前知ってた?」

桐乃「んー?」

桐乃は一旦俺の方へと来て、すぐ隣でしゃがみ込む。

……なんか、こいつがここまで近くに居るのってちょっと久し振りな気がするぜ。 最近ずっと猫と遊んでばっかだし。

俺より少し前へ出て、桐乃はその床に出来た小さな穴を覗き込む。

桐乃「ほんとだ。 何これ?」

桐乃「んー。 なんも見えない。 てか、あんたが空けたんじゃないの?」

京介「どんな目的でだよ……」

桐乃「うーん。 でも、一応これって言った方が良いよねぇ」

桐乃「って! なんであんたは髪触ってくんの!?」

驚くから急に大声出すなって。 別に良いだろ、それくらい。

京介「いや……近くで見てたら、桐乃の髪って綺麗だなーって思って。 触った」

桐乃「そ、そう?」

京介「……おう」

桐乃「で、でも今はダメ! 料理作らないといけないし……」

京介「なら、後でならいいの?」

桐乃「……ちょっとだけだかんね」

やったやった。 なんだかムカムカする日でも、良いことってのはあるもんだな。 へへ。

……あれ、どうして俺はそう思っているのだろうか。

まあ、良いか。

桐乃「ごちそーさま」

京介「これからなんかするか? エロゲーとか」

桐乃「それも良いケド……今日は猫ちゃんと遊ぶ」

京介「そかー。 んじゃ、俺はレポートでもやるかな」

俺はそのまま机に向かい合い、桐乃はコタツの中に入りながら、猫と遊ぶ。

つうか、こいつも良くずっと遊んでいられるな。 それに付き合っている猫も猫だが。

いくら可愛かったとしても、ずっと一緒で飽きない物なのかねぇ。

そんなことを思い、桐乃の方に顔を向け。

……むしろもっと一緒に居たいくらいだな。 なんて感じるのだった。

京介「……ふぁああ」

大きな欠伸をし、その体内時計のおかげでそろそろ寝る時間かと思い、時計に顔を向ける。

時刻は23時。 結構良い時間だな。

京介「桐乃ー。 俺そろそろ寝るけど」

言いながら、今度は桐乃の方に顔を向ける。

桐乃「……すぅ」

寝てるしな。 こんなところで寝てたら、また風邪引くじゃねえかよ。

京介「ったく」

仕方無い。 布団まで運んでやるとしよう。

開いていたノートやらを片付け、桐乃の元へ。

京介「気持ち良さそうに寝やがって……しょうがねえな」

京介「……にしても、無防備すぎるだろ」

上の服が若干捲れてるし。 下も何故か微妙にずれている気がするし。

何よりこいつ、こんな天使みたいな寝顔だぜ。 はあ。

京介「……くそ、可愛い顔しやがって」

俺はそっと、桐乃の顔を撫でる。 桐乃はぴくっと体をさせていたが、起きる気配は感じられない。

京介「あ、そういや髪触らせてもらってねぇ……超損した気分だな」

今思いっきり触ってもいいが……なんかこう、もっと話しながらが良い。

京介「明日だな、明日。 桐乃を膝枕でもしながら触ってみたいぜ……」

俺はそのまま桐乃を抱きかかえ、布団の上まで運ぶ。

「シャー!」

京介「……んだよ。 なんか文句あんのか、猫」

「……」

俺のことを睨み続ける猫。 どれだけ俺のことが嫌いなんだ、こいつ。

京介「はいはい。 お前が大好きな桐乃さんは寝てるんだよ。 明日また構って貰え」

俺は猫にそう言うと、桐乃を布団の上に寝かせ、掛け布団を掛ける。

それにしても、こいつって本当に寝顔はどこかのお姫様って感じだよ。 起きたら鬼だけどな。

京介「おやすみ、桐乃」

桐乃にそう言い、俺は居間へ一度戻る。

さて、俺はお茶でも飲んで寝るかな。

そう思い、台所でコップに麦茶を注ぎ、コタツへ。

ぼーっとしながらそれを飲んでいたところ、足の辺りに何か暖かい物が乗る感触がした。

「……」

京介「……お前、俺に構ってると桐乃に怒られるぞ」

俺の言葉に猫は無言。 どこか機嫌が良さそうな顔で目を瞑っている。

二人っきりのときにこれだけ懐いてくれると、なんか俺はある人物を思い出すぞ。

京介「へへ」

少しにやけながら、猫の頭を撫でる。 思ったよりもふかふかしてるんだなぁ。

「シャー!」

すると猫はいつもの怖い顔で俺のことを睨み、布団の中で眠る桐乃の元へと駆け寄っていった。

京介「はぁ……」

ほんと、そっくりだよ。 お前ら。

なんとなく懐かしい気分になりながら、その日は眠るのだった。

そして、事態が進展したのは次の日の午後のこと。

桐乃「京介! 大変!」

京介「なんだ? 帰ってきて早々に」

桐乃「学校の友達なんだけど……猫の話をしたら、引き取ってくれるって」

京介「おお! 本当か? 良かったじゃねえか!」

桐乃「……うん。 そうなんだケド」

桐乃は分かりやすくしゅんとなる。 ああくそ! こうなるのが嫌だったんだよ、俺は。

京介「悲しそうな顔してんじゃねーよ。 喜んであげるべきだろ? つっても」

京介「……無理もないか」

こいつがどれほどあの猫を好きだったのかは分かるし、その猫が他の人のところへ行くとなって、どんな気持ちになるのかも……また、分かる。

だとしたら俺が取ってやるべき行動は。

京介「桐乃」

桐乃の頭の上に手を置き、俺は言う。

京介「笑って、見送ってやろうぜ。 俺の前でならいくら泣いても良いからさ、あの猫の前ではせめて笑って……な」

京介「そっちの方があの猫も、安心して行けるだろ?」

それが多分、幸せだ。

桐乃「……うん」

こうして、俺と桐乃の前からあの猫は去っていった。

短い間ではあったけれど、今回のことで分かったことが一つある。

それは。

俺も桐乃も、ペットを飼うのには向いていないということ。

桐乃は夢中になりすぎて、別れのときに酷く傷ついてしまうから。 あいつは優しすぎるんだ。

友達に対しても、俺に対しても、あの猫に対しても。 誰にだってあいつは優しい。

自分以外には……な。

だからこそ、自分にもう少し優しくなっても良いのでは、と俺は思う。 しかしそんなことを本人に伝えれば、こんな感じで返事が返って来るのは目に見えている。

「ヤダ。 京介が言っているそれが、あたしなんだから。 あたしがそんなんだから、京介が居るんでしょ?」

と、多分こんな感じだろう。

それが桐乃らしいし、俺の妹らしいってこと。

だから、今回は良い勉強になったのかもしれない。

それにあいつは強いしな。 あいつは俺が強いと言うけれど、俺はあいつが強いと思うんだ。

かつて、桐乃は俺にこう言ったことがある。

「あたしは逃げてばかりで、京介に助けられてばかりなんだよ」

と。

果たして、それは本当にそうなのだろうか。

その時、俺は思ったままにこう返した。

「逃げるのにも、勇気は必要だろ。 俺なんか今まで逃げようとすらしてなかった。 お前のことも、真正面から向き合っていなかった」

桐乃はそれに対し顔を背けるという逃げの行動をしたのだが、俺はそんな桐乃を見て、やはり強いと思うのだった。

そして、俺のこと。

俺にもやはり、ペットという物は向いていないのだろう。

それは桐乃がそうだから、という理由ではない。 桐乃のよりも恐らくは明確で、はっきりした理由が今回のことで分かった。

まぁ、でも。

敢えて話す様なことでもないし、別に言わなくても良いか。

恥ずかしいからな、一応これでも。

桐乃「京介! なにぼーっとしてんの? とっとと帰るよ」

京介「お、おう」

ついさっきまで泣き笑いみたいになりながら見送っていたというのに、元気が良い奴だよ。

京介「なんか、少しだけ寂しくなるな」

桐乃「へぇ? あんたは喜ぶと思ってたんだケド」

京介「喜ぶ? 猫がいなくなってか?」

桐乃「そ」

京介「……俺ってそんな性格悪そうな奴に見えるか?」

桐乃「いや……そうゆーことじゃないんだケド」

京介「なら、なんだよ?」

桐乃「ひひ。 京介、あの猫に嫉妬してるんじゃないかな~。 って思ったの」

京介「……猫に嫉妬するわけねえだろ。 馬鹿か」

桐乃「どうだろね? ふひひ~」

全く持って嫌になってしまう。

俺が猫に嫉妬していた? 兄である俺が、妹と仲良くしている猫に?

もしそんな奴が居たとしたら、どれだけシスコンなのかと聞いてやりたいぜ。

確かに桐乃はここ数日、猫に構ってばっかではあったけれど。

出掛けるときも、俺一人のことが多かったけれど。

一緒にゲームやることも、殆ど無かったけれど。

……。

……悪いかよ嫉妬して! そうだよ俺は猫に嫉妬してたんだっての!

京介「桐乃、帰ったら遊ぼうぜ」

桐乃「……え~。 どうしよっかなぁ?」

桐乃「あたし今日忙しいんだよねぇ。 ひひ」

桐乃「まぁでもぉ。 京介が素直になればあたしも構ってあげても良いかな~」

京介「……俺はいつでも素直だっつーの」

桐乃「あっそ。 じゃああたし一人でエロゲーやるし」

こ、この野郎め。 絶対分かって言ってやがる。 お前だって俺と遊びたい癖によお!

……でも桐乃の方が我慢強いしな。 こいつは俺がこのままなら、絶対に一人でエロゲーやる気だ。

京介「……寂しかった」

桐乃「え? なんて? 聞こえな~い」

京介「寂しかったっつってんだ! 桐乃と遊べなくて!」

桐乃「シスコンきも~い!」

京介「文句あっか!」

俺は機嫌良さそうに笑う桐乃を勢いよく抱き締める。 これもなんか、久し振りな気がするぜ。

桐乃「ちょ、やめてよ……人通ったらどうすんの」

京介「知るか。 今こうしたかったんだよ」

桐乃「……ふん」

京介「桐乃、俺」

京介「お前がいないと寂しすぎて生きていけねえよ。 一生こうして抱き締めていたいくらいだ」

桐乃「それじゃあたしが死んじゃうっての……色んな意味で」

京介「そうかよ。 へへ。 すっげーどきどきしてんな、お前」

桐乃「……京介が急に抱き着くからでしょ」

桐乃「てかッ! いつまで抱き着いてんのよっ!」

桐乃はそう叫ぶと俺を突き飛ばす。 顔真っ赤じゃねえか。 へへ。

桐乃「か、帰ったらその……膝枕してよ。 やりたかったんでしょ?」

京介「お、おう! マジか!」

さすがは桐乃様。 マジ天使。

桐乃「ほーらー。 そうと決めたらちゃっちゃと帰る。 早く!」

桐乃は言うと、俺の手を引き、ずんずんと歩き始める。

……あれ?

京介「桐乃、一つ良いか?」

桐乃「ん? なに?」

京介「なんでお前、俺が膝枕したいって思ってるの知ってんの?」

桐乃「……」

桐乃は歩くのを止め、俺の方を向かずにゆっくりと口を開いた。

桐乃「……な、なんでだろうね?」

……さてはこいつ。

京介「お前あの時起きてたな!? 狸寝入りだったのかよ!」

桐乃「な、なんのこと? 意味分かんないし~?」

京介「よくよく考えればそうだよな。 前に「俺が隣に居ないと寝付きが悪い」みたいなこと言ってたもんな? 勢いで」

桐乃「……だったらなんなのよ!? 文句あるッ!?」

き、キレやがった。 見事な逆ギレだぜ。

京介「文句は無いけどよ……あんな無防備で寝るんじゃねえって」

桐乃「あんたがどーするか試しただけだし」

まあ良いか……。

試したというからには、その結果の方が気になっちまうしな。

京介「……で、結果は?」

桐乃「八十点ってとこかなぁ」

京介「どっかで減点ポイントでもあったのか?」

桐乃「抱っこして布団まで運んでくれたのは良かったケドね。 最後がダメ」

京介「具体的に何がどう駄目だったのか教えてくれよ。 次の参考にするから」

桐乃「最後。 あそこまであたしが待ってたってのに、何もしないとかありえないから。 フツー、キスくらいするって」

京介「何を基準に普通だよ……」

桐乃「決まってんでしょ。 エロゲー」

京介「お前、現実とゲームをごっちゃにするなって言ってたじゃねえかよ!」

桐乃「別にごっちゃにはしてないっしょ。 ただ参考として言ってるの。 文句ある?」

京介「へいへい……じゃあ、キスすればいいのか? 今」

桐乃「今なんてひと言も言ってないでしょ! 空気考えろっ!!」

京介「分かった分かった。 寝る前にすれば良いんだろ?」

桐乃「あたしに聞くなっつーの!」

そして桐乃の激しいツッコミが俺の背中辺りにぶち当たる。

……今回は俺も桐乃も、学んだことは確実にあるだろうな。

俺に言えることはひとつだけ。

俺はお前一人居てくれれば、充分だということだ。

なんて思いながら、俺より数歩先を歩く桐乃の背中を見ながら笑って付いていく。

それはそうと。

あれが狸寝入りだったとしたら、結構前のあれも……もしかしたら。

可能性は充分にある。 だから、朝起きた時あいつはにやけていたのか。 それをされたと分かっていたから。

……へへ、なんだか聞いたら面白いことになりそうだ。

帰ったら早速、聞いてみることにしよう。


出会いと別れ 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

乙!

前に狸寝入りの可能性があるのってどんなんだっけ?三週したのに思い出せない自分が悔しい…

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

>>114
前に投下した短編で、京介の顔にきりりん専用と書かれたときのことです。

それでは、投下致します。

京介「……お前、何やってんの?」

俺の目がおかしくなってしまったのか。

それとも桐乃の頭がおかしくなってしまったのか。

いや、それともこれは至って普通の光景……では無いよな。 だとするとなんだ。

桐乃「え、えーっと」

照れながら言う桐乃を見て、これはもしかしたらマズイことになったかもしれないと思いつつ、俺は一歩、二歩、後ずさる。

もうすぐ2月に移ろうかという今日この日。 俺は桐乃の姿を見て、ぶっちゃけ引いた。

京介「……で、何してんの?」

桐乃「ち、ちがっ! これにはちゃんと理由があんの!」

京介「ほ、ほう。 じゃあなんでお前が自分に手錠をしているのか、理由を聞かせてくれ」

桐乃「えっと……これ、あやせが「お兄さんがセクハラをしてきた時は、これを使ってね」って言って渡してきたんだケド」

桐乃「と、当然? あたしとしては……そんなの断ろうとしたんだよ? だけどあやせが無理矢理渡してきて」

桐乃「で、家に持って帰って来たの。 最初は本当にどうでも良かったんだよ? そんで……暇だったし、やっぱり興味はあるじゃん? だから、どんな物かなーって思って付けてみたの」

京介「結果は?」

桐乃「自分で外せなくなった」

だろうな! そりゃ一人じゃ外せねえよ!

京介「まあ理由は分かったよ。 てっきり俺はお前にそういう趣味があるのかと勘違いするところだったぜ」

桐乃「ならいいんだケド……とりあえず、これ外してくれない?」

言いながら、その手錠の鍵を俺に手渡す。

京介「……」

桐乃「なによ? 早くして」

京介「頼み方が違うんじゃないのか? 桐乃さんよぉ」

桐乃「あ、あんた何言ってんの?」

京介「だから、人に物を頼む時はどうすればいいのかってことだよ。 まあ、別に桐乃が嫌だって言うなら良いけどよ~」

桐乃「……は、外して頂戴」

なんで黒猫口調!? 上から目線なのは変わらないぞ!?

京介「え~? どうしよっかなぁ~?」

俺はいつもの桐乃の口調を真似し、言う。

桐乃は一度俺のことを睨むが、自分の状況を考えたのか、顔を伏せながらゆっくりと返す。

桐乃「は、外して……ください」

……おお?

お、おおお!? ヤバイ。 言わせて見た物の、予想以上にぐっとくる。 てか可愛い。 それと同時になんか罪悪感が沸いてくるぜ。

多分、この手錠の所為だが。

京介「し、仕方ねえな~。 は、ははは」

顔がすっげえニヤニヤしてるのが自分でも分かるぞ。 てか、今の録音しときゃよかったよ!

桐乃「……ん」

桐乃は黙って、腕を突き出す。

桐乃の細い腕に、がっしりとした手錠が付いているのは何と言うか……何と言うか。

京介「……ほらよ」

俺はコタツの上に置いてあった鍵を取り、手錠を外すと桐乃に鍵を手渡した。

京介「な、なんだよ!? 急に抱き着いてくるなって!」

桐乃「うっさい! ちょっと黙れ!」

俺が必死に桐乃を押し返そうとしても、中々うまく行かない。

んで、なんかもみくちゃになっている間に。

桐乃「ひひひ。 ざまー!」

俺の右手首に手錠。 桐乃の左手首に手錠となる。

京介「お、分かったぞ。 今お前はこう思っている」

京介「京介と繋がって嬉しいな。 えへへ」

京介「な?」

桐乃「な? じゃない!! あんたが変に動くからこうなってるんでしょ! さっさと外しなさいよ」

俺の妹はいつだって変わらないなぁ。 いやいや、まあこの状況も面白いっちゃ面白いけどよ。

京介「……わーったよ。 鍵は? お前にさっき渡したけど」

桐乃「えーっと。 あれ?」

桐乃「あ! あそこ!」

桐乃が指差す先には鍵……と、穴。

もみ合いになっている間に吹っ飛んだらしい。

そ、そうか……この前見つけたこの穴は、この伏線だったのか!!

と、馬鹿なことを考える俺。

京介「……よし、まだあの位置なら大丈夫だ。 ゆっくり取れば大丈夫」

桐乃「早くしてって! あんたと手錠で繋がれるとかチョーやだ!」

酷い彼女で酷い妹だ。 俺はお前と繋がれてても嫌じゃないってのに!

京介「お、おし」

俺はゆっくり、一歩一歩そこに近づいていく。

桐乃「ちょ、引っ張らないでよ!」

……あ、やべえ。

桐乃はそのまま床に倒れそうになり、俺は振り向き、慌ててそれを受け止める。

桐乃が無事なのは良かった。

それは良かったのだが……。

鍵は、穴へと吸い込まれていってしまった。

桐乃「どーすんの、これ」

京介「……俺だって泣きたいぞ。 言っておくけど、こんなエロゲーみたいな展開は最悪だ」

さっきは嫌じゃないとか考えた物の、動き辛いったらありゃしない。 俺が右手を動かせば、桐乃の左手も一緒に動き、桐乃が左手を動かせば、俺の右手も一緒に動く……と。

全然面白くねえ! さっきまでの俺の馬鹿!!

桐乃「チッ……」

俺のすぐ右に桐乃。 対面して話すことも出来なくは無いが、お互いが手をコタツの上へと置かないとならないので、少し疲れるのでこの位置だ。

桐乃「もーマジ最悪」

桐乃の顔が若干嬉しそうに見えるのは気のせいということにしておこう。 気のせい気のせい。

京介「……あ、スペアの鍵とか、あやせ持ってるんじゃねえのか?」

桐乃「……たまには良いことゆうじゃん!」

桐乃はパッと顔を明るくすると勢いよく立ち上がった。

京介「いててっ! いってーよ!」

当然のように俺の右腕は引っ張られ、手首に少々の痛み。

桐乃「あ、ご、ごめん。 つい」

そう素直に謝られてしまうと、なんだか俺が悪いことをした気分になるっての。

京介「別に良いって。 で、あやせに連絡するんだろ?」

桐乃「うん……って」

携帯を操作していた手を唐突に桐乃は止める。

京介「おい?」

桐乃「……あやせ、今日から出掛けるって。 今日の昼間に聞いてたんだった」

……マジすか。

京介「いつ帰ってくんの?」

桐乃「……明日の午後」

今日は金曜日だから……少なくとも一日はこれで過ごさないといけないのか。

京介「……やるっきゃねえな。 くそ」

桐乃「あ、あんたと一日こうして過ごせってこと!?」

京介「そうするしかねえだろ! だって鍵は取れないし……あやせが戻ってくるのを待つしか無いじゃん」

桐乃「……もし、あやせがスペアの鍵持ってなかったら?」

京介「そりゃあ……」

桐乃「あ、あたしは!」

桐乃は顔を赤らめながら続ける。

桐乃「……一生このままでも、大丈夫だから」

京介「な、なに言ってんのお前!? それは色々マズイことになるだろ! お前だってこの状態じゃ学校行けないし、モデルの仕事もできねえぞ!?」

桐乃「ぷ。 冗談に決まってるでしょ。 なに慌ててんの? ふひ」

ずっと桐乃が近くに居る所為か、なんだか変に緊張しちまうな。

……いやまぁ、それはこの状況に限らないかもしれんが。

京介「……は、はは。 あれ、今日って金曜日だっけ?」

桐乃「今更なに? ボケが始まりでもしたの?」

京介「いや……俺の記憶が正しければ、今日って」

嫌なことを一つ、思い出してしまったぞ。

京介「黒猫と沙織が遊びに来るって言ってた日じゃないか?」

桐乃「うん。 そだケド」

不幸ってのは、とことん重なる物だなぁ。 なんてしみじみ思う。

京介「お前なんか軽いな! この状態見られたら、いくらあいつらでもマズイだろ!?」

桐乃「見られても大丈夫だって。 何でか知りたい?」

言いながら首を傾げる桐乃。 く、くう。 可愛すぎる。

京介「お、おう……教えてくれ」

桐乃「それは~。 あたしが京介に襲われかけたってことにするから、大丈夫」

京介「お前は大丈夫だけど俺は全然大丈夫じゃねえじゃんか!」

桐乃「だってあんたが動くからこうなったんっしょ? その所為でずっと」

桐乃「……ずっと繋がったままだし」

そこで恥ずかしそうに言うのはやめてくれ! 俺まで恥ずかしくなるからさ!

桐乃「とにかく! 別に見られない様にすれば良いだけでしょ。 袖が長い服とか着てさぁ」

京介「すげえ良い案だな。 で、どうやって服着るの?」

桐乃「……気合い?」

気合いでどうにかなるならしてくれ。 頼むから。

桐乃「あーもう良くない? なんか考えるの面倒だし」

桐乃はそう言うと、そのまま後ろへ寝転がる。

俺はそのまま座っていても良かったのだが、変に距離を開けて桐乃が手首を傷めたら嫌だし、一緒になって寝転がった。

桐乃「なに見てんの?」

京介「お前だって俺のこと見てるじゃねえか」

桐乃「あたしは良いの。 あんたはダメ」

京介「んだよそりゃ……」

桐乃「ふん」

桐乃は言い、俺に背中を向ける。

おいおい、だからそんな急に姿勢を変えるなって。 こいつ、手錠のこと忘れてねーか?

そんなことを思いながら、桐乃の動きに付いて行く様に動いたのだが。

だが。

桐乃「……」

京介「……」

桐乃に覆い被さる形になってしまった。 じょ、状況が状況だけにやべえ。

桐乃「きゃ~。 襲われるぅ~」

……似合わねー! お前はこう、あれだ。

「シスコンどけッ!」

とか言って殴るのが似合ってるって。

てか、これは若干言い辛いことなのだが。

京介「……お前、その、下……見えてるぞ」

主に、下着が。

桐乃は当然、慌てて俺を突き飛ばそうとでもするのかと思った。 だけど、俺の予想は見事に裏切られる。

桐乃「知ってる。 だって、わざとだもん」

頬を紅潮させ、横を向きながら桐乃はそう言った。

京介「わ、わざとって……何が?」

桐乃「……京介、嬉しいかなって思って」

お、お前何言ってんの!? もしかして今ので実は頭強く打ってたのか!?

京介「そ、そりゃあまあ嬉しいけどよ! お、お前なぁ!」

俺も俺で変なことを口走っているしさ。

桐乃「……」

桐乃は黙って俺を見つめる。 恥ずかしそうな顔で、俺から目を逸らすことはせずにじっと見つめる。

それが分かるということは、俺もまた桐乃から視線を外せずにいるということだ。

「ただいま」

と、俺と桐乃が見つめあっているときに、背後からそう聞こえる。

この時、俺が思ったこと。

まずひとつ目。 やべえ、終わった。

次にふたつ目。 何か言い訳を考えなければ。

最後に。 物凄く驚いている桐乃の顔もやはり可愛い。

京介「ちょ、ちょっと待ったああああぁああああぁあああ!!」

俺は急いで振り向き、開きかけた扉に向かって叫ぶ。 もうありったけの大声だった気がするぜ。

後で苦情が来たら謝らないとな。

しかしそんな叫びも虚しく、扉は完全に開かれる。

そこにいるのはやはり黒猫、そしてその背後に沙織。 今日はメガネを掛けているようだ。

じゃねえ! 別に沙織がメガネを掛けたバージョンでも掛けていないバージョンでも、そんなのはどうだっていいんだ! 今はこの状況を……。

黒猫「あ、あなたたち……!」

黒猫は当然驚き、扉を開けたままの格好で硬直していた。 沙織もあまりの出来事に言葉を失っている様子。

そして数秒そうして固まった後、黒猫はようやく口を開く。

黒猫「……ごめんなさい。 お取り込み中だったようね」

そして、ゆっくりと扉を閉めようとする黒猫。

京介「違う!! お前は壮大な勘違いをしているぞ黒猫ぉ!!」

慌ててそれを止めようとしに行くが、桐乃の存在を思い出し、静止。

桐乃「あ、あああああ……」

駄目だこりゃ。

黒猫「それで、あなたたちは一体何をしていたの? こんな日が昇っている時間から」

その言い方はやめて欲しいぜ。 日が沈んでいたら良いみたいじゃねえか。

あの後、結局正気を取り戻した桐乃が黒猫に連絡を取り、なんとか一旦は呼び戻すことができた。

二回目ともなると、入る前に「……大丈夫かしら?」との確認があったのだが、俺としてはなんだか納得がいかない展開である。

京介「ま、待て黒猫。 それよりもお前が「ただいま」って言いながら入ってきたことについて俺は問い質したい」

黒猫「ふん。 そんなのは決まっているわ。 だってここ、わたしたち全員の場所じゃない」

京介「いつからだよ!?」

沙織「それはもう、遥か昔のことですな……」

遠い目をしても、誤魔化せないからな。

黒猫「今度から気をつけるわ。 あなたたちの邪魔をしても悪いしね」

京介「だから、別にお前が思っているようなことじゃねえって。 本当に、マジで」

桐乃「……そこまで否定しなくても」

桐乃が隣で何かを呟いている。

……いや俺にははっきり聞こえたけど、聞こえなかったということにしておこう。 恥ずかしいから。

沙織「では、京介氏ときりりん氏は一体何をしていたのですか? きりりん氏に覆い被さるように……」

沙織「京介氏もきりりん氏も顔は真っ赤でしたし。 きりりん氏は女性の表情をしていましたし」

京介「お前ちょっと黙れ! な!?」

こいつ、人をからかうの好きすぎだろう。 なんでそこまで改めて説明してやがるんだよ!

黒猫「それより、わたしが気になるのはそっちの方ね。 そのあなたたちを結んでいる銀の鎖……シルバーチェーン」

なんで横文字なんだ。 つうかただの手錠だろうが。

京介「ああ、これはだな……」

黒猫「そういうプレイかしら?」

京介「ちげーーーーよ!! なんでそうなるッ!?」

いやまあ、そういう風に解釈されても仕方ないっちゃ仕方ない状況ではあるけどな。 でも違う、違うんだ黒猫。

京介「ええっとだな……簡単に説明すると事故なんだよ。 俺たちにとっても望んだことじゃないから。 こんな状況であれだが一応言っておくけどよ。 な、桐乃」

桐乃「そ、そうそう! 嬉しくないって言えばウソになるケド……でも、そうしようとしてしたワケじゃないから」

……駄目だこいつ。 まだテンパってるだろ。 でもお前が嬉しいと思ってくれているのに俺は喜べばいいのだろうか。 素直に喜べる状況じゃないけど。

黒猫「あ、あらそう。 良かった。 あなたたちのことがちょっとだけ心配になってたのよ」

敢えて桐乃の台詞に突っ込まない辺り、黒猫から優しさを感じるぜ。 こいつ、本当に良い奴だなぁ。

沙織「ですが、そういうのには大体鍵が付いているのでは?」

京介「それなんだけど、一個あった鍵を……失くしちまってな。 元々はあやせの物だから、あいつがスペアの鍵を持ってくれてたら助かるんだけどさ」

沙織「ほほう……なるほどですな。 それで、もし持っていなかった場合は?」

沙織「もしや、お二人は一生愛の絆で結ばれたまま……」

京介「いやそうなったら他の方法探すけどな」

でも愛の絆で結ばれてるのは否定しない!

思いながら桐乃の顔を見て、これはとてもじゃないが恥ずかしすぎるので口には出せないと感じる俺。

桐乃「ね、ねえ。 京介」

そんな俺の考えなんて知らずに、桐乃は言いながら俺の服の袖を空いている方の手で引っ張る。

京介「どした?」

俺がそう聞くと、桐乃は数秒置いて、ゆっくりと口を開く。

桐乃「……その」

なんだよ。 俯いてゴニョゴニョと言っているが、さっきとは違い全然聞こえないぞ。

京介「桐乃?」

桐乃「だ、だから……」

何かを訴えるように桐乃は俺のことを上目遣いで見る。 この妙な緊張感は一体何だ……。 桐乃が何を言いたいのか、分からないぞ。

沙織「あ、分かったでござる。 きりりん氏、お手洗いですな?」

えーっと。

京介「……マジ?」

桐乃「……」

桐乃は返事はせずに、黙ったまま一度、首を縦に振った。 つまりは肯定。

同じ性別だからこそってか。 そういうことね。

京介「……行くか」

桐乃「い、行くってまさかトイレに!? なんであんたと一緒に行かなきゃならないのよ!!」

京介「俺だって一緒に行きたかねーよ!! でもこんな状態なんだから仕方ないだろ!? それともあやせが戻ってくるまで我慢できるってか!?」

桐乃「そ、それはムリだけど……」

京介「だったらしょうがないじゃねえか。 ほら、行くぞ」

桐乃は渋々頷き、俺と一緒に立ち上がる。

ていうか、最初からそういうなら訴えるんじゃねえっての。 察せ無かった俺も悪いけどさ。

黒猫「ふふ。 行ってらっしゃい」

京介「やかましいわ!」

嫌味ったらしく笑う黒猫にそう言い、俺と桐乃はトイレへと向かう。

そうだ。 変に意識するからこんな妙な空気になっちまうんだ。 平常心、平常心。

桐乃「じゃ、じゃあ入るから……その、そこで待っててね」

京介「お、おう……」

言い、桐乃はトイレの中へ。

手錠の鎖を扉に挟むようにして、俺はそこの床へと座り込む。

桐乃「……ねえ、京介」

すると桐乃はすぐに出てきて、俺に何かを言おうとする。

京介「……どした?」

桐乃「……届かない」

ううむ。 この状況でその言葉を使う意味は。

届かないってのはつまりあれか。 手を伸ばした状態じゃあ座れないってことか。

……どうすんの!? まさか俺も中に入れってか!?

桐乃「だから、あのね。 京介も入ってくれないと」

……そうらしい。 マジかよ。

京介「分かった! もうここまで来たらヤケだな! 任せろ桐乃!!」

「たかがトイレ一つで騒々しいわよ。 もう少し静かにいちゃついて頂戴」

と、俺が叫ぶとすぐに今の方から黒猫の声が聞こえて来る。

その言葉に俺も桐乃も気まずそうに顔を逸らし、黙ってしまった。

……。

黙ってても進まないよね! 俺はそう、仙人の気分で一緒に居ればいいのだ。 動じず、動じず。 静かな心で。

そんなことを思い、トイレの中へ入った。

トイレの中へ入った。

いやきっつ!! これかなりキツイぞ!? そりゃあ、昔……桐乃がまだ小さい時。

夜中に俺を起こして「お兄ちゃん、おトイレ行きたい」とか行って一緒に行く事がありはしたけどよぉ!

その時は扉の前で待ってたし、中まで一緒になんて初だぞ初!?

むしろこんな経験をする奴の方が絶対少ないだろ! つうか兄妹で付き合っててこんなことをする奴なんてのは俺だけかもしれん!

京介「……えーっと」

桐乃「……こっち見ないでね」

京介「み、見ねえよ。 アホ」

俺は桐乃に背中を向け、その場にしゃがみ込む。

あーやっべえ。 すげえ緊張してきた。 マジでどうしてこうなった。

桐乃「じゃ、じゃあ、脱ぐから」

一々言わなくて良いだろ!? それを言ったところで誰も得はしねえぞ!?

ま、まさかこいつ……その、する時も「今からするから」とか言うんじゃなかろうな!? だとしたら俺は逃げるぞ! 全力で逃げる!

そんな俺の心配を他所に、布が擦れる音がする。 制服のスカートが桐乃の肌と擦れている音だろう。

マズイ。 マズイマズイマズイ! お、俺はどんな顔してりゃ良いんだよ!?

繋がれている方の腕は桐乃任せにしてあるから、その動きでどんなことになっているか大体想像できちまうんだよ!

狭い場所の所為か、桐乃の香水の匂いがしっかりするし。 何よりこいつが黙ったままってのがなんていうか気まずい。

京介「だ、大丈夫そうか?」

桐乃「……うん」

耐え切れず話しかけたのは良いが、会話が続かない。 俺ってこんな桐乃相手に緊張する奴だったのかよ!

程なくして、水を流す音が聞こえてきた。

よ、ようやく終わったか。 そう思い、桐乃の方に顔を向ける。

が、桐乃は未だに座っていて。 下は……脱げたまま。

桐乃「ば、ばかっ!! 見るなって言ったじゃん!!」

桐乃は叫び声にも似た感じで言うと、俺の頭を思いっきり叩く。

京介「い、いってえ! だ、だってよ……流す音聞こえたから」

慌てて顔を逸らしたは良い物の……す、少し見てしまった。

一緒に風呂に入ってて今更って話だが、出来る限り見ないように努力はしてるからな! 桐乃もその時は隠しているし! だから俺はこんなおどおどしてんだよ!

桐乃「お、音消す為に決まってるでしょ!! ばか!!」

桐乃はさっき殴られた威力には遠く及ばない力で、俺の頭をぽかぽかと叩く。

京介「悪かったって! 本当にすまん! だから、頼むから早くしてくれ!」

桐乃「変態変態変態ッ!! 後で説教だかんね!!」

も、もうこの際どうなっても良いから! とっととこの状況から脱したい!!

京介「……はぁああ」

黒猫「ふふ。 どうしたの? そんな死にそうな顔をして」

京介「察しろ。 俺はもう一日の体力を使い切ったぞ……」

桐乃「……マジさいてー」

沙織「仲が良さそうで何よりですな。 はっはっは」

京介「今はお前の笑い方がすっげえ腹立つぜ……沙織」

桐乃「あんた絶っ対! 許さないから」

普段だったらこんな事が起きた後は、必ず俺から距離を取る桐乃だが、生憎今日はそうは行かない。 離れようと思っても離れられないからな。

まあその所為で、俺は先ほどから桐乃に足をゲシゲシと蹴られているわけだが。

京介「とりあえず、何か良い案はねえのかよ? お前ら」

俺は言い、黒猫と沙織を助けを請う様に見る。 すると、沙織が口を開いた。

沙織「……いやはや。 これは言おうか言わないか迷っていたのですが----------」

黒猫「待ちなさい。 沙織」

黒猫がそれを途中で止め、なにやら沙織に耳打ち。

沙織「い、いやあ……しかしですな、黒猫氏」

黒猫「良いから。 あなたも面白がっているじゃない。 この状況を」

沙織「それはまあ……そうじゃないと言えば嘘になりますが」

黒猫「とにかく、これは二人の為でもあるのよ」

沙織「そう仰いますと?」

黒猫「桐乃はいつも、京介に向かって酷いことばかりしているじゃない。 二人っきりの時はどうか知らないけれどね」

黒猫「でも、こうして物理的に近い距離にずっといれば、少しは変わるかもしれないわよ?」

沙織「は、はあ……拙者としては黒猫氏が楽しんでいるように思えますが……」

黒猫「黙りなさい。 これはわたしが決めたこと。 これ以上無駄な口を叩くようならば、闇の眷属失格として、葬り去るわよ」

いつから沙織は闇の眷属になっていたのだろうか。

つか、殆ど丸聞こえだからな?

黒猫「と、言うわけで京介、桐乃。 わたしたちに出来るアドバイスは皆無よ。 皆無」

京介「そーですか……」

てか、こうなってくると本当に明日まで桐乃とずっと同じ行動を取らなきゃいけないってことに、現実味が出てきたぜ。 今更だけどさ。

お互いに同じ方向の腕を繋いでいないことだけが、救いだな……。


あやせの贈り物 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

ん、続き物?

>>173
今回のは後二話続きます

乙!
ごちそうさまです!

黒猫さん、入ってくるのもう少し待ってて下されば、もっと楽しい姿が観れたかもしれないのに~(泣笑)

121と122の間って何か抜けてます?

>>176
ありがとうございます。

多分、このスレにはレス抜き魔という悪霊が憑いているんだと思います。


>>121-122
間に↓が入ります。


桐乃「……ありがと」

京介「お、おう。 良いさ、構わねえよ」

結構素直なところ、あるじゃん。 へへ。

なんて思いながら、隣に座る。

桐乃「……隙ありッ!」

桐乃は俺がその場に座り込んだ瞬間、そう叫ぶと飛び掛ってきやがった。

ちょっと聞きたいことがあるのですが……。

R18とまでは言いませんが、そんな感じの展開が入る場合って投下前にひと言あった方がいいでしょうか?
具体的に言いますと、前スレのクリスマスデートの時の短編、夜に京介と桐乃が部屋で話していたのよりそっち系の描写で。

直接的に書くことはしないと思います。 あくまでも間接的に描写ということで。

レスありがとうございます。

書き方がちょっと悪かったかもです。
SS速報のルールというか、マイナールールとしてそういうのがあるのかな? と思ってした質問でした。

あまりにも生々しい感じにはならないと思うので、R18は省かせて貰います。

まとめについては当然まとめられていれば嬉しいですけど、そこまで気にしているわけでも無いので大丈夫です。


明日の13時頃、投下致します。

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下致します。

京介「じゃ、またな」

黒猫「ええ、また」

沙織「お幸せに。 にん」

桐乃「あんたたち、マジで今度あったら覚えとけ!」

桐乃が怒るのも無理はない。

ここぞとばかりに、こいつらは俺たちのことをからかいまくってきたからな。

具体的に言うと、わざとらしく「どうして桐乃は京介が動くと一緒の方へ動くの? それほど京介と一緒にいたいのかしら?」

だとか。 後は「黒猫氏。 別にいつものお二人ではありませんか……おや、今更気付きましたが、その手錠はどうされたので!?」

だとかな。

沙織も最初は一線引いていた感じであったが、黒猫に触発されてこのザマだぜ。

いつもは俺たちのまとめ役でもある沙織だが、同時に年頃の女子でもある。 その行動にも無理はねーけど。

ねーけど! 俺たちの気持ち考えろや! なんか思い出したら俺もムカついて来たぞ!

桐乃「……じゃ、じゃあ中もどろっか」

ほらぁ! 二人っきりになると気まずくなるじゃねえかよ! あいつら今度覚えとけよ!

今回の恨みは桐乃とじっくり話し合って、いつか晴らすとして……。

それよりもまず、明日までどうやって生き延びるかだ。 そう言うと重大なことに感じられるが、実際はただの馬鹿二人って感じだけど。

それでも俺と桐乃にとっては超重要なことなんだよ!

だ、だって一応……一応って言ったら怒られるか。 俺は桐乃のことが好きなわけだし?

そんな相手と四六時中一緒ってのは……なんつうか、疲れると思う。

今だからこんな気持ちになるわけだけどな。 今だけ、昔の俺に戻りたいぜ……。

勿論、桐乃に対するこの気持ちは持ち越して、な。

あれ? でもそうすると結局は今の俺と同じな訳で……。 ああくそ! 訳分からん!

桐乃「京介、なにぼーっとしてんの? さっきの説教あるんだケド」

京介「お、おう……わり。 さっきのってあれか。 あのトイレでの----------」

桐乃「わざわざ言わなくていいから! あんた、あたしに何してくれたかちゃんと分かってんの?」

京介「あ、謝ったじゃねえかよ……俺だってわざとじゃないんだし」

桐乃「そんなのカンケー無いっての。 大事なのはあんたが見たってことなんだから」

京介「そ、そんなじーっと見てたわけじゃないだろ!? すぐに顔逸らしたしよぉ……」

桐乃「でも見たことには変わり無いし~。 ってことで、罰ね」

こええ。 桐乃さんの口から「罰」って言葉が出ると、大体ろくでもないことになるんだよ。 恐ろしい。

京介「え、ええっと……今回は何すれば良いの?」

桐乃「ふふん。 これ! 一緒にチャレンジね」

桐乃は言うと、一枚のチラシをカバンから取り出す。

……えっと、なんだ?

『魔法少女メルル! まじかるポスターを先着50組の方にプレゼント! 当日、とあるお題をクリアした方のみの限定品!』

京介「……この状態で?」

桐乃「ち! が! う! ちゃんと日付見てよ! 来月でしょ? これ、二人一組だからあんたと一緒に出るから」

京介「それくらいならお安い御用だけど……」

そのお題ってやらから、何故かすげー嫌な予感がするけど……。 まあ、それで許してもらえるなら良いか。 デートにもなるしな!

桐乃「取れなかったら死刑だから」

つまりバッドエンドってことですか。 俺の命くっそ安いなおい!

京介「任せとけって。 つっても、お題ってどういうのが出るんだ?」

桐乃「さぁ? 行って見ないと分からないっしょ。 毎年景品色々変えてやってるみたいなんだケド、毎回内容違うみたいだし」

京介「ふうん」

ま、たかがイベントでそんな大袈裟なことはやらされないだろう。 ファン層は成人男性が殆どだし、腕立て伏せ何回、だとかその程度だろうな。

桐乃「よし! じゃあ、そうと決まれば夜ご飯作ろうかなぁ」

京介「お。 宜しく頼むぜ」

桐乃「なに言ってんの。 あんたも一緒に作るんだって」

京介「さっきので罰だったんじゃねえの!?」

それはお前もだろうが!

京介「何がだよ」

俺が言うと、桐乃は左腕を上にあげる。

当然、繋がれている俺の右腕も。

桐乃「あたしたち、今離れられないんだから当たり前じゃん」

……そうでした。

京介「桐乃。 お前随分見ない内にすっげえ手際良くなったよなぁ」

桐乃「そ、そうでもないっしょ。 ベツに」

京介「いやいや、だって最初の頃とか、野菜まるごとカレーにぶち込んでたじゃんか」

桐乃「……忘れろ」

包丁を持ったまま俺の方を向かないでくれ。 色々包丁にはトラウマがあるんだから!

京介「……は、はい」

桐乃「それじゃ、京介。 位置的にあたしが火使わないとダメだし、これで材料切ってね」

京介「はいよ。 えーっと、何作るんだっけ? 今日」

桐乃「和風にしようかなーって思ってんの。 で、前に黒いのから茶碗蒸しの作り方教えてもらったし、それと焼き魚って感じかな」

へええ。 なんか桐乃が遠い存在になってしまったように思えてくるぜ。 ついこないだまで包丁の持ち方さえ危なかったっつうのにさ。

ついこないだって言っても、もう二年くらい前になるのか? そこまで前では無いか。 けど、本当に努力してるんだな、こいつ。

桐乃「あ、ちょっと付いてきて。 冷蔵庫にだし汁入ってるから、今日はそれ使う」

京介「だし汁? って、何の?」

桐乃「茶碗蒸しの。 あんた、本当になんも知らないんだね」

京介「桐乃と暮らすようになってから、殆ど料理なんてお前任せだしなぁ。 おかげで毎日美味い飯だぜ?」

桐乃「ふん……」

照れやがって。 可愛い奴だ。

桐乃「これさ、黒いのから貰ったんだけど、すっごく美味しいんだよねぇ。 今度、これの作り方も教えてもらうんだ。 えへへ」

この嬉しそうな桐乃を見たら、黒猫はどんな顔をするんだろうな? 桐乃から直接これだけの好意を受けたことなんて、あいつは殆ど無いだろうし。

京介「良かったな。 はは」

桐乃「でしょ? 他にもあいつ、なんか色々知ってそうだし……沢山教えてもらおっと」

桐乃「で! 京介はぼーっとしてないで早く材料切ってよ。 椎茸と人参と鶏肉置いておくから」

京介「お、おう。 えっと……どんな風に切ればいいの?」

桐乃「あーもう! ちょっと見てて。 こうして、こうするの」

桐乃は言いながら、食材を手際良く切る。

桐乃「分かった?」

な、なんとなくは分かった。 てか、足引っ張ってる気しかしねえよな……これ。

京介「た、多分大丈夫だ。 よし」

それから四苦八苦の末になんとか材料を切り終え、一安心。

俺はもう、お前の小さな手を一緒に切っちまうことにならないか心配で心配で仕方なかった。

そんな心配を知らず、桐乃は手際良く容器やらを出し、材料と卵を中に入れる。

桐乃「よし! 後は蒸し器で~」

おおう。 いつの間にそんなのを買ったんだ。 全然知らなかった。

京介「それ、いつ買ったの?」

桐乃「んー? 最近だよ。 あやせと仕事だったとき、その帰りに買ったの」

また抜き取られたか……?

京介「へえ……」

まさか、茶碗蒸しの為だけに買ったとかか? 確かにこいつだったら買いそうだ……。

桐乃「レンジでも作れるみたいなんだけどね。 どうせなら、本格的に作りたいじゃん?」

京介「俺の為にそこまでしてくれるなんて、泣けてくるぜ」

桐乃「べ、ベツにあんたの為じゃないっての!! ばか!!」

>>202
その様です、そろそろ止めて欲しいです。

>>195
一文抜けてました。
↓になります。


桐乃「……はぁ。 京介ってほんとどっか抜けてるよねぇ」

それはお前もだろうが!

京介「何がだよ」

俺が言うと、桐乃は左腕を上にあげる。

当然、繋がれている俺の右腕も。

桐乃「あたしたち、今離れられないんだから当たり前じゃん」

……そうでした。

桐乃は言い、手をぶんぶんと振り回す。

手首超痛いからやめてくれ!!

桐乃「……で! このまま後は少し待ってからみつば入れて、後は待つだけ。 その間に魚も焼いちゃお」

京介「お、おう」

そんなこんなで、料理を作る俺たち。

俺はもう疲れ果ててしまっていたのだが、桐乃はやたら元気そうだ。 楽しいんだろうな、料理作るのが。

京介「……おおお。 滅茶苦茶美味そうじゃねえか」

桐乃「でしょ? あたしが作ったんだから、当たり前じゃん?」

さて。

ここまでは特に問題無し。 至って普通に料理を作れたのだが。

問題はここからだ。 俺はある一つのことを危惧している。 先ほどからずっと。

京介「座る場所は……隣同士じゃないと駄目だよな。 やっぱ」

桐乃「ま、仕方ないでしょ。 今日はトクベツに隣座ってあげるから」

京介「へいへい。 なんか距離近く無いか?」

桐乃「そ、そんなことないっての。 もしそう思うなら、それはこれの所為だから」

言い、桐乃は手を持ち上げ、俺に手錠を見せる。

……体がすげー密着しているのも、多分その所為ということにしておこう。

京介「それでな……桐乃。 一つ問題があるんだ」

桐乃「なに?」

京介「俺が右手を食べる為に使うと、お前の左手も一緒に持ち上がるだろ? それって、お前がすげー疲れるんじゃないかと思うわけよ」

桐乃「……確かに、食べ辛いし疲れるカモ」

京介「だから、とりあえずお前先に食べちゃえよ。 俺待ってるからさ」

桐乃「はぁ? あたしが折角作った料理を冷めてから食べるってゆうの? 信じられないんですケドぉ」

京介「だったらどうすんだよ? お前は両腕動かしながら食わないといけねーんだぞ?」

桐乃「……良い方法、一つあるケド」

京介「な、なんだ?」

桐乃「あたしが京介に食べさせて、京介があたしに食べさせるの。 それなら大丈夫……だと思う」

京介「……それは違う意味で大丈夫じゃないんだが」

桐乃「だ、だって仕方ないでしょ! うん、仕方ない……仕方ない」

そう自分に言い聞かせるように、桐乃は何度も呟く。 そこまで仕方ないを連呼されると、ちょっと悲しい。

京介「わ、分かったよ。 そうしよう」

俺はそう返すと、左手でスプーンを持つ。

これは茶碗蒸し用だったのだが、慣れない左手となるとこっちの方が他のを取るのにも良さそうだな。

てか、今更だけどそれなら俺は左手で飯を食えば良かったのでは……と思う。 いやまあ、今更だけどね。

桐乃「……は、早くしてよ」

桐乃は俺とは反対側を向き、小さく言う。 つか、そっち向いてたら食べさせられねーぞ?

京介「ほら、桐乃。 こっち向けって」

桐乃「……チッ」

可愛らしく舌打ちをすると、桐乃はようやく俺の方に顔を向ける。

京介「……」

桐乃「無言でする!? フツーは「あーん」ってするでしょ!?」

そこでキレるのかよ!? 俺だってすっげえ恥ずかしいんだよ!

京介「わ、わりいな。 んじゃ……あーん」

桐乃「……」

桐乃は無言で口を開け、俺はスプーンですくった茶碗蒸しを桐乃の口の中へ。

……予想以上に恥ずかしい。 風邪を引いてぶっ倒れている時は仕方なく……ってのもあったから何とか正気を保つことができたが、通常の状態でこれはかなり来る物があるな。

桐乃もそれは同じ様で、物凄く恥ずかしそうにもぐもぐと口を動かす。

京介「……次、お前の番だけど」

桐乃「わ、分かってるっての」

桐乃は右手で俺と同じ様に茶碗蒸しをすくい、俺の方へ押し付ける。

桐乃「……」

京介「さっき桐乃「無言でやるな」って言ったじゃねえかよ!? なんでその本人が無言なんだ!!」

桐乃「あ、あたしは良いの!! 文句ある!?」

京介「あるっての! 俺だってお前に「あーん」ってして欲しいからなぁ!」

勢いに任せて本音を言う。 こういう時の対処法。 どうにでもなれ。

桐乃「な、なら仕方ない……」

桐乃「……はい。 あーん」

……か、可愛い! 手、ぷるぷる震えてるし、何より表情がやべえ! ていうか近いし!

京介「お、お前可愛いな」

桐乃「ぶっ! な、なにいきなり!? やめてよ!!」

そう言うと、桐乃は慌てて俺と距離を取ろうと動く。 で、当然俺の腕ごと引っ張られ、桐乃と一緒にその場に倒れ込むこととなった。

京介「……急に引っ張るなって」

桐乃「京介がヘンなことゆうからじゃん……いきなり」

自然と俺の右手と桐乃の左手が、重なっていた。

京介「き、桐乃……」

桐乃の手はとても暖かく、柔らかく、なんだか安心する感じ。

桐乃「……いつまでも押し倒してるの」

口ではそう言うが、抵抗する桐乃の力は弱い。 ううむ、なんだこの状況!

京介「め、飯食おうぜ。 冷めちゃうから」

危ねえって、本当に。 理性がな。

桐乃「……ふん」

桐乃は不満そうに言い、俺と一緒に起き上がる。

桐乃「あんたってほんと意気地なし。 ばか」

……多分、キスくらいしろとのことだろう。 だけどこの状況でキスなんてしたらどうなるか分からないんだっての。

桐乃には本当に申し訳ないけどさ。

京介「……ごめん」

桐乃「そこまで本気で謝らなくても良いって。 ほら、あーん」

桐乃はいつもの様に笑い、スプーンに乗せた食べ物を俺の口へと運んでくる。

優しい奴だよ。 俺の妹は。

桐乃「ひひ。 あたしの手料理をあたしに食べさせて貰うとか、あんた超幸せ者だからね? 分かってんの?」

京介「当たり前だろ? そういうお前はどうなんだよ?」

桐乃「教えてあげなーい。 えへへ」

まあ、言わずともその顔を見ればそんなのは分かるけどな。

京介「ご馳走様でした」

桐乃「お粗末様。 で、これからどうするの? エロゲーやる?」

食後にすぐその発想かよ。 お前は。

京介「いや……俺的には風呂に入りたいんだけど……」

桐乃「く……やっぱそう来る?」

京介「……まあな」

桐乃も恐らくは風呂には入りたいのだろう。 だけど、状況が状況だ。

京介「でもさ、結構一緒に入ってるんだし、別に良くね?」

桐乃「いつもはお互いあんま見ないようにしてるでしょ! でも今日、この状態で入ったら絶対見ちゃうっての!!」

京介「そうだけどさ……」

京介「だったらどうすんの? お互い順番に扉越しで入るか?」

桐乃「それしか無いでしょ。 てか、今考えたら一緒に入ったら服絶対濡れるじゃん」

……そりゃそうだ。 今着ている服……下は脱げなくも無いが上は脱げない。 ってことはそうなっちまうよな。

京介「あー。 じゃ、そうすっか。 最初はお前入っちゃえよ。 俺は外で座って待ってるから」

桐乃「おっけ。 じゃあいこ」

京介「おう」

で、風呂場に到着。

桐乃「ふ、服脱ぐから、目瞑って」

京介「……おう」

今回見たら、さすがに桐乃は今度こそ許してくれないかもしれん。 だから俺は必死に目を瞑り、顔を伏せる。

桐乃「……よいしょ」

桐乃の呟く声と同時に、服を脱ぐ音が聞こえる。

……なんか妙にエロいぞおい。

桐乃「ね、ねえ。 ちょっと良い?」

京介「ん? 何だよ?」

桐乃「……その、ブラ外せない」

京介「ぶっ! お、俺に言われても困るっての!!」

桐乃「だ、だって片手だと外しにくいの! あたし普段両手使ってるし!」

京介「そんな事情は聞きたくねえよ! 俺にどうしろっつうんだ!?」

桐乃「だから外してって! あんたしかいないでしょ!?」

京介「……目、開けていいのかよ?」

桐乃「そうしないでどうやって外すのよ」

京介「わ、分かった」

ゆっくりと、目を開ける。

桐乃は俺に背中を向けていて、既に下着姿。 上も下も。

京介「お、お前なんで下も脱いでるんだよ!?」

桐乃「先に脱いだんだから仕方ないでしょ!! あんま見んなッ!!」

見ない方が無理だっつーの!

だ、だがことは急いだ方が良い。 あまりじろじろ見るのも精神衛生上良くない。 確実に。

京介「……よし」

俺は桐乃の背中を見つめ、手を伸ばす。 空いている方の手。

……改めて思うけど、肌綺麗だよなぁ。 間近で見てこれだから、触り心地が良いのも分かるってもんだ。

桐乃「……あんた絶対見てるっしょ。 早くして」

京介「……おう。 わりいわりい」

見てるというか、見蕩れていたという感じだけどな。

俺は桐乃に急かされ、ホックに指を掛け、外す。

京介「こ、これでいいか?」

桐乃「……ありがと」

その言葉を聞き、俺は再び目を瞑る。

桐乃「てか、なんでそんな外し慣れてるの?」

京介「べ、別にそんなことはねーよ?」

桐乃「ウソ。 あたしだって片手で外せないのに、ヘンだし」

京介「そりゃあ、自分でやるのと人にやってもらうのじゃ全然違うからじゃね?」

桐乃「……なんか怪しい。後で問い質すから。 浮気してたらぶっ飛ばす」

京介「してねえよ! 俺はお前一筋だって!」

桐乃「……なら良いケド。 でも後で理由は聞くからね」

凄く言いたく無い。 ほぼ確実に笑われるから。

桐乃「よし。 もう見てないよね?」

京介「見てねーよ。 さっさと入れ、さっさと」

桐乃「ふん。 上に着てた制服は、あんたの腕に掛けとくから。 ヘンなことしたら殺す」

京介「しねえよ! さっさと入れって!」

全く、どんだけ恥ずかしがってやがるんだっての。

そして、ようやく風呂場の扉が開く音が聞こえてきた。

京介「……目、開けても大丈夫か?」

「うん。 平気」

反響した声で聞こえ、俺は桐乃が風呂場に入った事を理解し、目を開ける。

俺の腕には桐乃のワイシャツ。 高校に行くときに着ている物だ。 この状況になったとき既にワイシャツ姿だったので、過ごしやすいと言えばそうかもしれない。

で、桐乃は扉ぎりぎりのところでシャワーを使っているようで、やたら近くで音が聞こえる。

まあ、こう繋がれている時点でそうするしかねえんだけど。

にしても。

それにしてもだ。

……桐乃の服から、温もりを感じるのだが。

さっきまで着ていたのもあり、暖かい。

しかし動かすわけにもいかず、それに耐えなければならない。

加えて桐乃がシャワーを浴びている音だ。 ふむ。

……待て待て待て。 俺って今かなりの状況じゃねえのか!?

普段一緒に入っているはずなのに、なんで俺はこんなどっきどきしてんだよ!?

ああ、マジでやばいっつの。

「なんかヘンなこと考えてない?」

京介「別に考えてねーって!」

お前は俺の考えが読めるのかよ? 怖いって。

もうね。 この状況でそういうことを考えない方がどうかしてるって。 は、早く終わって欲しい。

「匂いとか嗅がないでよ?」

京介「か、嗅ぐわけ無いだろ?」

……ちょっとくらいな?

嗅ごうと思って嗅いだわけでは無いから、セーフ!

「……汗とか気になるから、ね」

京介「いや、全然大丈夫だって。 そんなのしなかったから」

「あ、あんたやっぱ嗅いでるじゃん! 後で覚えとけ」

京介「はめやがったな!? お前!」

「京介が勝手に引っ掛かったんでしょ! あたしが悪いみたいな言い方しても、あんたが悪いんだかんね」

京介「……後でいっぱい抱き締めてやるから、勘弁してくれよ」

「ま、マジで!?」

「……」

「今の無し!! 今のは無しッ!!」

京介「へっへ。 しっかり聞いちゃったもんね~。 そんな嬉しいのか? おい」

「うっさい! 黙れ!」

京介「やだよ~。 録音しちゃったからな」

「は、はぁ!?」

桐乃は言うと、勢いよく扉を開ける。

京介「お、おまっ! か、隠せよ!!」

慌てて顔を逸らす俺。

桐乃「あ、あんたが録音したとか言うからでしょ!? 何してくれてんの!?」

京介「冗談だっつの! てか、良いから早く風呂戻れって!」

桐乃「じょ、冗談……?」

桐乃は数秒黙り、次に口を開いた時は、俺の腹辺りに桐乃の足がめり込んだのと同時だった。

俺はその時必死に目を瞑っていたので、もしかしたら拳だったかもしれない。 けど多分、威力的に蹴りだろう。

桐乃「死ねぇええええええぇえええ!!」

恥ずかしがり屋の妹を持つと大変だぜ。 やれやれ。

そして二人とも何事もなく入浴を終え、再びコタツ。

桐乃「……チッ」

先ほどから桐乃が何度も舌打ちしているが、何事もなかった。 うむ。

ま、本当のところを言うと俺が入ったときも似たようなやり取りがあったということだ。

ただの喧嘩って奴だな。

京介「んな怒るなって。 な?」

桐乃「自分が何してくれたか分かってんの?」

京介「だから謝ったじゃんかー。 お互い様だろ?」

桐乃「あたしは妹、あんたは兄貴。 だからあたしの方が偉いの。 分かる?」

京介「いや全然分からないが……」

桐乃「はぁ。 これだからあんたはダメなの。 あたしみたいなちょー可愛い妹なんて、あたしくらいだからね?」

京介「お。 それは分かるぜ! お前は超可愛い!」

桐乃「……」

桐乃は湯上りの顔を更に赤くし、目を見開く。

簡単に言えば、驚いて固まった感じ。

俺はそんな桐乃を優しく抱き締めた。

京介「さっきはごめんな、桐乃」

桐乃「……今回だけだかんね。 許してあげる」

京介「おう。 サンキュー」

桐乃「……次やったら、これだけじゃ許さないし」

京介「へへ。 分かったって」

桐乃「……分かればよし」

俺はその言葉を聞くと、桐乃から離れる。 離れるつっても、この手錠の所為で依然、距離は近いけど。

そして桐乃はというと、俺が離れるのが予想外だったのか、どこか寂しそうな顔をしていた。

桐乃「ちょ……」

京介「ん? どした?」

桐乃「……なんでもないっつの」

京介「はは。 冗談だって」

俺は言って、再度桐乃の体を寄せる。

京介「もうちょっとこうしてるか」

桐乃「か、勝手にすれば……」

それからしばらく、俺と桐乃は無言で身を寄せ合うのだった。


繋がって 終

以上で本日の投下終わりです。

乙、感想ありがとうございます。

おつ
>京介「さっき桐乃「無言でやるな」って言ったじゃねえかよ!? なんでその本人が無言なんだ!!」
京介氏いつの間にSS式話法を会得したんだ

>>241
あ、そこは名前を呼んでいるだけです。 読点つけるべきでした。

>>242
ああなるほど、てっきり「が」が抜けたのかと思ったが



手錠の長さってどんくらいなんだろな。



次回R18的な描写くるん?

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

>>250
ご想像で!

>>251
それっぽいのは今回の次に投下する奴です。
とは言ってもR18とも言える程の物では無いかもですが。


それでは、投下致します。

京介「おし。 じゃあ寝るか」

桐乃「うん。 明日、あやせが戻ってきたら電話するね」

桐乃とあれからエロゲーやらで遊んで、既に大分遅い時間。 そろそろ寝ようと提案し、桐乃も二つ返事で頷く。

そして布団を敷き、電気を消した。

桐乃「あ、そだ」

布団に寝転がるとすぐに桐乃は口を開く。

京介「ん?」

桐乃「さっきの件、まだなんも聞いてないんですケド」

京介「……さっきの件って?」

桐乃「京介がブラを外し慣れてたこと」

うわ。 てっきりその話は流れた物だとばかり思っていたのに。 嫌なタイミングで思い出す奴だ、全く。

京介「あ、あれは……すげえ苦労したんだぞ? さっき外すのに」

桐乃「はいウソ乙。 苦労したのにあんな早く外せるワケないでしょ」

京介「……うう」

桐乃「早く言え」

暗くて桐乃の顔は見えないが、俺の事を睨んでいるのは声色からして分かる。

……言うしかねえのか。

京介「……分かった、話せば良いんだろ」

桐乃「うん。 内容によるケド、許してあげるかもよ?」

京介「えーっとだな。 あれは」

京介「……し、調べてたんだよ。 パソコンで」

桐乃「なにを?」

京介「その、外し方」

桐乃「……どうして?」

京介「い、いざというときの為」

桐乃「ふうん。 それっていつの話?」

京介「……先月」

桐乃「……そ、それって。 あたしとそーゆうことになった時の為って意味?」

京介「……それしかねーだろ! だから言いたくねえんだよ」

俺がそう伝えると、少々の無言。

なんとも気まずく、俺はどうした物かと思考していたところ、桐乃が口を開く。

桐乃「へええ。 そんなの調べてたんだぁ~?」

京介「う、うっせ! 男なんてそんなもんだっての!」

桐乃「ふうん。 ふうううん?」

京介「……んだよ。 許してくれんのか?」

桐乃「ひひ。 どうしよっかな?」

そう笑いながら言うと、桐乃は隣に居る俺に覆い被さるように体勢を変える。

例えて言うならば、俺をビンタで叩き起こすときの様な感じ。 今はそれよりも顔が近いけど。

京介「おま、急になんだよ?」

桐乃「ねね、もう一回試してみる?」

京介「な、何を?」

桐乃「決まってんじゃん。 京介がパソコンで調べてたこと」

……そ、そりゃマズイだろ! 色々と!

桐乃「今日だけトクベツに試してもいいケド~」

俺はゆっくりと唾を飲み込み、否定の言葉を口に出す。

京介「……後悔してもしらねえぞ?」

いやいや違うだろ! 何言っているんだ俺は!?

桐乃「上等じゃん。 ふひひ」

桐乃「はい。 じゃあこっちから手入れてよ」

桐乃はそう言い、服の下……今は上を着替えることができないからワイシャツに下はいつものパジャマなのだが。

そのワイシャツの背中側を桐乃は少しだけ捲くる。

俺は小さく返事代わりに頷き、ゆっくり、ゆっくりとそこに手を入れた。

桐乃「……」

桐乃は黙ったまま俺のことを見つめる。 月灯りでほんのり照らされた顔は妙に色っぽく、俺も視線は外せずにいる。

こいつの肌はやはりすべすべとしていて、柔らかい。 だけど陸上をやっているのもあり、しっかりとしていた。

そして、ついに俺の手は桐乃の背中の上辺りまで回り……。

京介「あ、あれ。 お前」

桐乃「ん~?」

京介「……着けてねえだろ?」

桐乃「うん。 寝る前だしね」

桐乃「てか、なに妹の服の中に手突っ込んでんの? シスコンきも~い! ひひ」

京介「お、お前がそうしろって言ったんじゃねえかよ!!」

桐乃「覚えてないし。 ふひひ」

……やられたぜ。 見事に騙された。

京介「この!」

俺の上に乗りケタケタと笑う桐乃を俺はそのままがっしりと抱き寄せる。 片腕で思いっきり。

桐乃「ちょ、なにすんの!?」

京介「決めたぜ。 今日はこうやって寝る」

桐乃「は、はぁ!? あたしは抱き枕じゃないっての!」

京介「やだよ~だ。 お前が俺をからかった所為だからな?」

桐乃「……変態」

京介「お前を抱き締められるなら、変態でもいいっての」

桐乃「ふん。 なら、もうちょっと優しく抱き締めてよ。 痛いから」

京介「お、おう。 悪い」

俺は力を抜き、優しく抱き締める。

が、そうした瞬間、桐乃は俺の腕を解き、逆に思いっきり抱き着いてきた。

桐乃「ひひ。 あんたがあたしの抱き枕になるの。 絶対離さないから。 今日はこれで寝る~」

京介「……りょーかい」

正直言って気が気じゃないけど……桐乃に抱き締められていると、とても穏やかな気分になれた。

自然と俺も桐乃を抱き締めて、そんな感じで俺と桐乃は眠りに就く。

桐乃「ちょっと、いつまで寝てんの?」

頬に衝撃。 ああ、桐乃だ。

京介「んー……。 おはよう」

桐乃「とっとと起きてよ。 あんたが起きないとあたしも起きれないんだから」

そう言い、カチャリという音と共に手錠を俺に見せ付ける。

……起きたら実は夢でしたなんてオチを期待していたが、どうやらそれは無いらしいな。

つか、上だけワイシャツって今更ながら超アレだな。 アレって言えば分かるだろ。 アレだよ。

そんで、そんな桐乃と一緒の布団で寝ていたとか、変な罪悪感が沸いてくるぜ。

京介「……ああ、今日あやせが帰ってくるんだっけか?」

桐乃「そ。 午後になるみたいだから、それまでこうだけどね」

京介「……ならもう一回寝ようぜー。 俺眠い」

桐乃「ダーメ! あたしはもうばっちり起きてるんだから!」

言うと、桐乃は俺の頬をぺちぺちと叩く。 力は入っておらず、なんだかくすぐったい。

京介「……うー」

眠い物は眠い。 俺って休みの日は基本、昼近くまで寝ているし。

桐乃「おーきーろー」

桐乃は頬を叩くのをやめると、次は俺の頬を引っ張る。 両手で違う方に引っ張っているので、俺の右手もそれにつられ動くこととなる。

……俺の頬はお前の遊び道具じゃねーぞ、くそ。

京介「もうひょっとらけなー」

桐乃に引っ張られている所為でうまく喋れないが、俺はそんなのを気にせずに言う。

多分、睡魔はこの世でかなり上位に食い込める強さだろう。

桐乃「……よっと」

桐乃は言い、俺の上で体勢を変え……そして。

桐乃「……ん」

キスをしてきた。

キスをしてきた。

キスをしてきた。

俺の唇に自分の唇を重ねてきた。

つまり、キスをしてきた。

京介「ばっ! お、お前なんだよ!? な、なんだ!?」

桐乃「ひひ。 起きた? 今度から起こすときこーしよっかな」

京介「た、頼むからやめてくれ! 心臓に悪すぎる!!」

桐乃「だったらちゃんと起きてよ。 起きない京介がわるーい」

京介「わ、わ、わかった。 起きる。 ちゃんと起きます」

桐乃「なら良し。 ほら、いつまでも寝転がってないで。 朝ご飯作るから」

……ううむ。 マジで今度はやらないよな? 本当に朝から死ぬ思いをするから、これだけはやめて欲しいぞ。

そりゃあ超、超超超嬉しいけどさ。 本気で死ぬかと思うんだって。 俺からキスするならまだしも、こいつからとか結構レアだし。

京介「……はいよ」

桐乃「朝は楽だし、京介は立ってるだけでいいよ。 邪魔しないでね」

京介「俺的には昨日の夕飯作るときに、邪魔してた感じがすっげーするけどな」

桐乃「まあね~。 それがイヤなら一緒に練習すること。 いい?」

ここで「そんなことはない」とか言わない辺り、桐乃だよな。

京介「……ぼちぼちな」

俺の言葉に桐乃はでこぴんで返事をし、台所へと向かう。

……こいつのしっかりした性格を半分ほどで良いから俺に分けて欲しい物だぜ。

桐乃「はい、あーん」

桐乃は作ったご飯を俺の口へと運ぶ。

京介「あーん……って、お前なんかノリノリだな」

桐乃「は、はぁ!? なワケないでしょ! チョー嫌々だっての!」

にしては顔だらしなくなってんぞ。 多分、俺もだけど。

京介「へいへい。 で、今日はどうすんだ? 午後まで」

……あれだな! これってあれだ! 新婚夫婦みたいじゃね!?

桐乃に言ったらもうやって貰えなくなりそうだから言わないけどさ! そう考えると俺って超幸せじゃね!?

こんな可愛い奴と新婚夫婦みたいになるって、悪くねえぞ!

桐乃「外に出るワケにはいかないし……久しぶりに、なんか雑談でもする?」

京介「雑談なら毎日してねえか?」

桐乃「じゃなくて。 こんな状態だしさー。 京介が本当に想っていることとか、聞きたい……かも」

京介「……別に構わないけど、それならお前も話してくれるのか?」

桐乃「まあね。 なんか今日機嫌良いし、いいよ」

ああ、だからあんな朝からテンション高かったのね。 得心いった。

で、壁を背に俺と桐乃は並んで座る。

京介「……んー、何から話すか悩むな」

桐乃「とりあえず、この状況になってどう感じてるかで良いんじゃない?」

この状況になって、か。

京介「おう。 分かった」

桐乃「……」

桐乃は黙り、頭を壁に預ける。

京介「正直に言うと、あんま変わらないなってのが本当のところかな」

京介「結局はお前とはいっつも一緒だし、そりゃ多少は不便もあるけどさ。 でも、別に負担とかにはならねーかなって思う」

桐乃「……そか」

どこか安心した様に、桐乃は漏らす。

京介「心配だったか? 俺が迷惑してるんじゃねーかって」

桐乃「ま、一応はね。 結局はあたしの所為なんだし。 いっつも迷惑ばっか掛けてるなって思ってた」

京介「お前はほんと心配性だよなぁ。 俺はお前に掛けられた迷惑なんて、今となっちゃ楽しいくらいに思ってるんだからよ」

桐乃「だよね。 ひひ」

京介「だからって何でもしていいってことじゃねえぞ? 念の為言っておくけどな!」

桐乃「うーん。 じゃあ、あたしの奴隷になれとかあり?」

京介「……今の時点で半分そんな感じじゃねえか」

京介「さっきの発言無しにしていいか?」

桐乃「ダメー。 一度言ったんだから、責任持ってよね」

京介「……へいへい」

桐乃「あはは」

俺も桐乃と同じ様に、壁に頭を預ける。

なんだか、とても心地良い時間に思えるぜ。

桐乃「あたしはさ」

桐乃「……これだけ分かっていて欲しいんだケド、毎回毎回……どんなことでも、ね。 しっかり感謝してるから」

京介「知ってるよ。 そんなこと」

桐乃「ひひ。 そか」

桐乃「いつか、しっかり返すから」

京介「何言ってんだよ。 俺は好きでお前の傍に居るんだっての。 返す物なんてねーよ」

桐乃「その辺はケジメなんだって。 京介がいくらいらないって言っても、絶対返す」

京介「……そうかい。 んじゃ、ありがたく貰っておいてやるかな」

桐乃「うん。 それで良し」

桐乃は微笑んでいて、俺はそんな横顔を見て、同じように笑っていたと思う。

そして唐突に、桐乃は言った。

桐乃「もし、もしもさ」

桐乃「これ、変なフラグとかじゃないから、一応言っておくケド」

桐乃「あたしが明日死ぬってなったら、どうする?」

京介「思いっきりフラグじゃねえかよ……まあ、そうだなぁ」

京介「俺も明日まで生きられれば良い。 つったら、お前は怒るだろうな」

桐乃「……まーね。 本音は嬉しいと思うかもしれないケド、怒ると思うよ」

京介「だったら俺は頑張るしかねえよ。 死にたいって思うかもしれないけど、頑張るしかねえだろ」

桐乃「そかそか」

京介「……お前、マジで変な病気とか掛かってないよな?」

桐乃「どんなクソゲーだっつーの。 あるワケ無いでしょ。 あたしが義妹だーって言うくらい、それクソゲーだから」

京介「だよな。 へへ」

今のこの状態だからこそ、こんな会話が出来るんだろうさ。

俺も桐乃も、距離は置けないから。

……少しだけ、あやせに感謝だな。

京介「逆にさ、俺が明日死ぬって言ったら、どうする?」

俺は桐乃にそう切り出し、返事を待つ。

桐乃「んー。 お葬式には出てあげるかな」

京介「……今日は本音トークだぞ、おい」

桐乃「ひひ。 まぁ」

桐乃は続けた。 顔を少し上に向けて。

桐乃「泣く、かな」

京介「……そっか」

桐乃「うん。 泣く」

京介「なら絶対死ねないか。 俺は決めたし」

桐乃「……あたしを悲しませないって? 前に言ってたケド」

京介「そーいうこと。 失敗することもあるかもしれないけどな」

桐乃「大丈夫っしょ。 この一年……あたし、ずっと幸せだったよ」

京介「そりゃ、最高の言葉だぜ」

桐乃「……よし。 じゃあコレ外れたら、エロゲー買ってきて」

京介「なぜそうなる!?」

桐乃「あたしぃ、京介がエロゲー買って来てくれないと死ぬほど悲しいのぉ」

京介「て、てめえ。 人を良い様に使うんじゃねえ!!」

桐乃「あははは。 冗談だって。 一緒に行こう、一緒に」

京介「……おう、そうだな」

急に俺の方を見て笑うんじゃねえっての。 その不意打ちは反則だからな。

桐乃「なんかさ」

桐乃「……こんな風に本当のこと話せるなんて、思ってもいなかった。 人生相談始めたばっかのときはさ」

京介「そっか」

桐乃「色々ありがとね。 京介」

京介「俺も、色々ありがとな」

桐乃「京介はまず、あたしが妹だってことに感謝するところからかなぁ」

京介「なら、お前は俺が兄貴だってことに感謝するところからだな」

桐乃「はぁ? なに調子乗ってんの、キモ」

そう言う桐乃は、笑顔。

京介「そうかよ。 で、本音は?」

桐乃「感謝してるよ。 ずっと、昔から」

最後に桐乃はそう言った。 俺の右手をしっかりと握りながら。

京介「……へへ」

そんな会話をそれからしばらく続け、時刻はやがて昼過ぎになる。

桐乃「あ! あやせからメールきてた」

京介「お。 戻ってきたってメールじゃないか?」

俺の言葉を聞き、桐乃は片手で携帯を操作する。

京介「て、てかさ。 今更だけど……あやせはこの状況を知っているってことだよな? 俺、殺されるんじゃね……?」

桐乃「んー? 大丈夫でしょ。 あやせそこまで怒ってないカンジだったし」

京介「……本当か?」

桐乃「もしそうなったら、あたしが守ってあげるから」

京介「頼りになる妹だよ……お前は」

桐乃「ふひひ。 あたしに任せなさい!」

桐乃が受け取っていたメールはやはりあやせからで、地元に戻ったから急いでこちらへ来るとのことだった。

桐乃は電話を掛け、あやせと会話をして、数十分もしない内に到着するとのこと。

その電話から本当にすぐにあやせはやってくる。 さすがはあやせさんだぜ!

あやせ「……本当に何しているんですか、お兄さん」

京介「こ、これは事故なんだって! なあ? 桐乃」

桐乃「京介が無理矢理あたしに付けてきたんじゃん? なに言ってんの」

お前が何言ってんの!? さっきすっげー頼りになる顔付きで「あたしに任せなさい」って言ってたじゃねーかよ!!

さっきまでのなんかとっても良い雰囲気はどこ行ったんだよ!?

あやせ「全くもう。 桐乃も嘘は駄目だって。 私には分かるんだよ?」

桐乃「……まぁ、あたしの所為なんだケド」

あやせ「素直素直。 あはは」

言い、あやせは桐乃の頭をぽんぽんと叩く。 あやせって強いなぁ、本当に。

あやせ「あ、それでですね。 スペアの鍵なんですけど……持って無いですよ、私」

京介「……へ?」

桐乃もそれには驚いたようで、ぽかんとした表情をしていた。

あやせ「だから二人とも、これからずっとこのままということなんですよね……」

京介「ま、マジかよ!? それお前マジで言ってるのか!?」

桐乃「ちょ、あやせメールでも電話でも大丈夫って言ってたじゃん!? ウソだったの!?」

あやせ「え~? 方法、あるにはあるんですけどねぇ……」

京介「頼む! あやせ様! お願いします!」

あやせ「こんな変なことをする二人が悪いんですよ? 反省してます? 今回は大丈夫だったみたいですけど、危ないじゃないですか」

京介「反省してるって! 心の底から!」

あやせ「桐乃は、どう?」

桐乃「あたしも反省してるから! お願い、あやせ」

桐乃は言うと、上目遣いであやせを見る。 うるうるとした目で。

あやせ「か、可愛い……」

京介「……おい?」

俺が言うと、あやせはこほんと小さく咳払いをし、口を開く。

あやせ「わ、分かりました。 今回だけですからね」

あやせ「というか、本当は二人だけでも外せたはずなんですよ」

あやせ「少し調べれば分かったと思うんですけど……」

京介「……って言うと?」

あやせ「ここに丸いところがあるじゃないですか。 これを押し込みながら回すだけで外れるんですよ?」

言い、あやせは実践する。

すると手錠は嘘のように簡単に外れた。

桐乃「……マジで?」

京介「俺たちは一体何をしていたんだ……」

あやせ「あはは、誰も教えてくれなかったんですか?」

そんなおもちゃの手錠の構造に詳しそうな奴なんて……。

居るな。 知っていそうな奴が。

京介「……そういや、昨日沙織が言おうとしてたのってもしかして」

あ、あの野郎!! 黒猫の奴もあの様子だと知ってやがったな!?

桐乃「ちょっと待って、でもそれなら……あやせもメールで教えてくれれば良かったよね?」

あやせ「……あ」

京介「お前もかよ!? なんで揃いも揃って俺の周りは面白がる奴ばっかなんだ!!」

あやせ「あ、あはは。 で、ではわたしはこれにて失礼しますね。 さようなら」

桐乃「あ、あやせのバカっ! もう一緒にお昼食べてあげないかんねっ!」

あやせ「ご、ごめん! 今度絶対埋め合わせするから、許して桐乃!」

桐乃「ふ~ん。 考えといてあげよっかな~?」

やはり、あやせと桐乃では桐乃の方に分があるのか。 力関係は複雑だなぁ。

あやせ「……お願い、桐乃」

桐乃「わ、分かったって。 今度、仕事帰りに喫茶店でもいこ。 それでチャラ!」

あやせ「うん。 そのくらいなら喜んで。 それじゃあ、私は帰るね」

桐乃「ばいばい、あやせ」

あやせはそのまま扉に手を掛け、静止。

あやせ「……あ、そうだ」

京介「ん? まだなんかあったか?」

あやせ「桐乃。 今度手錠を貸してって頼む時は、外し方もしっかり聞いてから持って行ってね?」

桐乃「……あ、ああああやせストップ!」

……ほほう。

あやせ「え……?」

あやせは言っては駄目なことを言ったのに気付いたのか、若干冷や汗を掻く。

そして。

あやせ「……よ、用事あるからこれでー」

逃げやがった。

そして、残されるのは俺と桐乃。

京介「……さて、桐乃」

桐乃「な、なに? あたしもちょっと用事あるんだケドなぁ……」

京介「あやせじゃなくても、嘘だってのは分かるぜ。 理由……教えてくれるよなぁ?」

桐乃「と、とっても深い理由があるの。 マジマジ。 でも、今度ね? えへへ」

京介「超可愛らしく笑っても今日の俺は騙されねえぞ! 観念しやがれ!」

と、こんな感じで今回のひと騒動は幕を閉じるのであった。


思いと想い 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

今回はレス抜き妖怪が出なかったはず。

乙です!

う~ん・・・俺読解力ないのかな・・・
>>279>>280の間にまたヤツが出現してる気がする・・・違ったら誰か説明ヨロ・・・

>>312
多分、自分が投下して確認した後に抜かれてます。
性質が悪くて困りますね。


>>280
一文抜けていました。
正しくは↓になります。



桐乃「あ、自覚あったんだ」

京介「さっきの発言無しにしていいか?」

桐乃「ダメー。 一度言ったんだから、責任持ってよね」

京介「……へいへい」

桐乃「あはは」

俺も桐乃と同じ様に、壁に頭を預ける。

なんだか、とても心地良い時間に思えるぜ。

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下致します。

2月14日。

当然のことながら、俺は桐乃からのプレゼントを心待ちにしていた。

というのも、先月あれだけ本音トークをしたのだから、俺たちの距離はぐっと縮まったと思うわけよ。 それ以前も大分距離は縮まっていたとは思うがな。

でもなぁ、俺はもっともっと桐乃と仲良くなりたい。 多分、それには終わりが見えないのだろう。 なんてことを感じている。

だからこその、この一年に一回のイベントに期待しているのだが……。

桐乃「あんた、もしかしてあたしからのチョコに期待とかしてんの?」

と、バレンタイン開始から12時間も経たずに、正確に言うと2月14日の朝9時21分頃にこいつはそう言ってきた。 夢も希望もありゃしない。

お前はもうちょっと、男心を理解してくれ!

京介「そ、そりゃあそうだろ? つか、言わせるなっての……」

桐乃「ふ~~~ん。 そうなんだぁ?」

京介「男だったら当たり前だって。 彼女とか妹とか女の友達とかからそういうのを貰うかもって期待すんのはな」

俺が桐乃にそう告げると、こいつは表情を一変させる。

桐乃「は? 女友達?」

地雷を踏んだ臭いぞ、これ。 一気に不機嫌顔になった。

京介「黒猫とか沙織とかあやせとか加奈子とか瀬菜のことだって! 他にいねーよ!」

桐乃「てか、それ全部元はあたしの友達なんですケドぉ」

瀬菜は違うだろ。 あいつは元から俺の友達だし。 言ったら「揚げ足とるな!」とか言うから言わんが。

ていうか、元はっていうと今は友達じゃないみたいに聞こえるぜ。

京介「だって仕方ねーじゃん。 お前と遊んでる内に、あいつらとも仲良くなったんだからさ」

桐乃「……ま、そこは百歩譲って許す。 でも、チョコを期待しているってどうゆう了見なワケ?」

京介「お、男なんてそうだって! マジで!」

桐乃「へえ。 じゃあ男の人に聞いてみよっと」

そう言うと、桐乃は携帯をカチカチ操作。

京介「お、お前男の友達とかいたの……?」

桐乃「はぁ? 京介も知ってる人だって。 御鏡さん」

ああ、びびった。 御鏡かよ。

桐乃「あ、もしもし~? 久し振り」

と、桐乃は電話を始める。

桐乃「あのさぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだケドぉ」

桐乃「男の人って、皆バレンタインにチョコって期待してるもんなの? 彼女からとか、友達からとか」

桐乃「妹からとか」

桐乃がそう言った直後、正面に座る俺にも聞こえる音量で、御鏡の声が聞こえてきた。

「当たり前じゃないか! 妹からのチョコ……期待しない男なんて居たら、僕が許さない!!」

桐乃「あ、あはは。 切るね」

そして、通話終了。

京介「……結果は聞かない方が良いか」

桐乃「なんか、傷付いた」

京介「どして?」

桐乃「だって、あたしだって一応女の子の友達なワケじゃん? なのにまるで気にされてなかったのが傷付いた」

御鏡の野郎、俺の妹を傷付けやがって。 今度会ったら手始めに殴っておこう。 うむ。

京介「あいつのことなんか気にするな! お前には俺が付いているからな!」

桐乃「……そう励まされると、余計落ち込むんですケドぉ」

京介「わ、わりい……」

……マズイ。 気まずいぞ。 ここは空気を変えないと。

京介「そ、それで。 お前は俺にチョコくれるの?」

桐乃「フツーそれ聞く? 察しても黙って待ってるのが紳士でしょ」

京介「最初に「あたしからのチョコ期待してんの?」って言ったのお前だからな!? 忘れたとは言わせねえぞ」

桐乃「はぁ。 これだからあんたは……」

京介「なんだよ……?」

桐乃「期待してて良いよ。 ね?」

笑って、桐乃はそう言った。

京介「お、おう。 超期待してる」

桐乃「と、ゆーワケで。 一回家から出てって」

京介「なんでそうなるッ!?」

桐乃「色々準備したいから。 去年は沙織や黒猫に手伝ってもらったケド、今年はあたし一人で作るの。 だから、ね?」

京介「……まだ作って無かったの?」

俺は必死に冷蔵庫の中とか見ないようにしてたっていうのに!

桐乃「だって、京介いっつもあたしの近くに居るじゃん。 作れなかったの」

京介「いや待て、それは違うぞ桐乃。 俺が近くに居たんじゃなくて、お前が俺の近くに居たんだ」

桐乃「なワケ無いでしょ! 昨日だって「桐乃ぉ、桐乃ぉ」って言ってあたしにべったべったしてたじゃん」

京介「それはお前が「京介、えへへ。 甘えていいよ?」とか急に言い出すからだろ!?」

桐乃「それもう記憶に無いから。 残念でした~」

京介「俺の記憶には残ってるんだっつーの! 今度からお前との会話録音してやろうか?」

桐乃「それやったら、あやせにぼこぼこにしてもらうし」

京介「……お前、あやせの上司か何かか?」

桐乃「ひひ。 この前の手錠のときの話出すとねぇ。 ふひひ」

……こいつの前で弱味を見せるだとか失敗とかしでかしたら、恐ろしいことになるのはあやせも一緒だったか。

京介「いやつーかそれで思い出した。 あの時、お前結局適当な言い訳して逃げたよな? 桐乃さんよー」

桐乃「時効だから。 きりりん大勝利~!」

京介「……ま、別にいいけどな。 俺の中では桐乃がそういう趣味があるって理解しておくことにするから、さ」

桐乃「勝手に理解すんな! あたしにはそんな趣味無いから!!」

京介「じゃあどうして?」

桐乃「い、言わないし」

京介「ふ~ん。 ならいいや~」

桐乃「……何その顔。 チョームカつく」

京介「いやいや、だから気にするなって。 俺の中のことだしよ?」

桐乃「あ、あんたねぇ……。 絶対に「そうか、桐乃にはそんな趣味があったのか」とか思ってるでしょ!? 変態!!」

京介「はははは。 そんなことは無いってのー。 何を言っているんだよ桐乃ー」

桐乃「棒読みムカつく! そんな知りたいの? ねえ」

京介「……知りたく無いって言えば嘘になるけど」

桐乃「……」

桐乃「や、やっぱ無し。 言わない」

へいへい。 そーですかっと。

ま、無理に聞こうとも思わないから構わんがな。

京介「分かったよ。 じゃ、俺は外行ってれば良いのか? お前から連絡来るまで」

桐乃「うん。 そんな時間掛かると思わないし、そこら辺ぶらぶらしといて」

京介「はいよ。 了解しました桐乃様」

そういう訳で、家を追い出される俺。

ぶらぶらしとけと言われても、行く場所がなぁ。

……とりあえずは散歩でもするか。

そう思い、適当に行く当ても無く歩き始める。

こんな時というのは決まって誰も彼もが暇をしておらず、会って話せる暇潰し相手も見つからないんだよね。

黒猫は妹達の面倒を見ないといけないらしいし、沙織は姉貴とデートすると言っていたし。

それにあやせと加奈子は仕事らしいし。

ま、桐乃抜きで積極的に会おうとは思わないけども。

はぁ……良い暇潰し相手、居ない物かね。

「よぉ! 高坂!」

ああ、居たわ。 いっつも暇そうな奴が一人。

京介「ええっと、誰ですか。 人違いじゃ」

赤城「お前、親友に会ってひと言目がそれかよ? 俺とお前は一緒にホモゲー買いに行った仲じゃねえか!」

京介「大声で妙な誤解を招く発言してるんじゃねえよ!! 確かに一緒に行ったのは事実だが、お前の言い方は気持ち悪すぎるっての!!」

赤城「おお、やっぱ俺の親友の高坂じゃねえか。 何知らない振りしてんだよ」

京介「いや……お前と一緒に遊ぶと、大体ろくでも無いことになるからな」

赤城「んなことねーって。 大袈裟だなぁ、高坂は! たまにはゆっくり話そうぜ? な?」

……ま、俺も俺で暇だし良いか。

京介「分かった分かった。 んじゃあ、公園のベンチにでも座って話そうぜ。 なんか話すことあるんだろ?」

赤城「そうなんだよー! さすが高坂、俺の気持ちを理解してくれる良き親友だぜ!」

……こいつ、順調に瀬菜の影響受けつつあるんじゃないか? 少し心配になってきたぞ。

京介「んで、お前はどうして休日の朝っぱらからこんなところで散歩してんだ?」

赤城「それがさぁ! 瀬菜ちゃんに追い出されたんだよ……「お兄ちゃん、家から出てって」って言われて」

赤城「これってあれだよな? 今日の日付と行動を考えるに……瀬菜ちゃんからのバレンタインチョコだよな!?」

……俺と同じかよ、こいつも。

いやでも待てよ。 そういえば確か……この前、桐乃が「せなちーから、バレンタインのチョコって男の人はどんなのが良いのか教えて欲しいって言われてるんだけど」とか言ってたな。

で、俺は「なんでお前にそれを聞いたのかは謎だが……貰う側としちゃ、どんなのでも嬉しい物だろ」と返した。

これだけならあれだ。 瀬菜が赤城にプレゼントするんだろうなって思えた。

俺には桐乃が言った最後の言葉がどうしても気になるんだ。 えっと、確か。

「せなちー、彼氏さんを呼んで家でデートするんだって。 なんか良いよね、そういうの」

と。

京介「そ、そうだな! 俺もそう思うぜ、赤城!」

赤城「だろ!? いやぁ、早く瀬菜ちゃんからの呼び出し来ないかなぁ……うへへ」

こいつ、明日自殺でもしてるんじゃないだろうか。 心配になってきた。

もし赤城が明日生きていたら、間違いなく真壁の死体が発見されるだろう。 俺の身近にこんな犯罪者が居たなんて……怖い怖い。

赤城「つか、そういうお前は何してるんだよ? こんな朝っぱらから」

京介「ん? 俺か? お前と一緒だよ。 家から追い出された」

赤城「へえ。 あれ? でも高坂って、今一人暮らししてるんじゃなかったっけ?」

……まずったか、これは。

京介「あ、あー。 えーっと」

京介「い、妹が家に来てるんだよ。 今な」

赤城「ほう……つまりは俺と同じ境遇と言う訳か」

京介「補足な。 俺の家は桐乃の友達の集合場所になっているんだ」

赤城「……ドンマイ、高坂」

俺は別々の事実を言っただけで、嘘は付いていない。 そして俺の肩に手を置く赤城の姿が、俺には哀れに見えて仕方なかった。

京介「は、はは。 お前は羨ましいよ、妹に好かれていて」

赤城「だろ? いやぁ、確かに高坂の妹はすげー美人だけどな」

京介「お前もそう思うか!? へへへ」

赤城「まあな。 モデルもやってるくらいだし、出来ることなら紹介して欲しいくらいだぜ」

京介「あ? 今何て言ったお前。 明日と言わず、今日死にたいのか?」

赤城「……冗談冗談。 お前、目が殺意に溢れてるぞ」

京介「なら良し。 特別に許してやる。 感謝しろよ?」

赤城「お、おう」

赤城「てか、明日と言わずってどういう意味だ?」

京介「ん? そんなこと言ったっけ、俺」

赤城「言ってたと思うが……」

京介「気のせいだろ。 疲れているんだよ、赤城」

赤城「……確かに最近、瀬菜ちゃんからゲーム買ってきてって頼まれることが増えたからなぁ」

それは恐らく、家に真壁を呼んでいるからだろう。

真実を知ったらどうなることやら。

と、その時に着信音。 俺の携帯のようだ。

京介「おっと、悪い。 電話……じゃねえな、メールか」

From 桐乃
帰ってきてヨシ! 10分以内ね。 遅れたら罰与えるから。


表現できないが、所々に絵文字が盛り沢山。 可愛らしいメールだぜ。

赤城「んー? 誰から?」

京介「の、覗くんじゃねーよ! 妹からだよ……もう帰って来て良い、だとさ」

赤城「ははは。 まるで奴隷みたいだなぁ! ま、精々頑張れよ? 高坂くん」

上から目線なのがうぜえなこの野郎。 お前、真実を伝えてやろうか!?

……やめておいてやるか。 親友として、最後の情けだ。 感謝しろよ。

京介「へいへい。 んじゃ、また……いや、じゃあな」

赤城「何故言い直した? 高坂」

京介「気にするなって。 こっちの話だからさ」

赤城「……そうか。 じゃあな、親友!」

良い奴だったよ、赤城。 俺と親友で居てくれてありがとう。

俺は親友である赤城に別れを告げ、帰路に就いた。

京介「ただいまー」

桐乃「おかえり! 京介!」

やたら機嫌が良いな、とか思いつつ、桐乃の姿を見る。

メイド服。 ネコ耳。 ネコ尻尾。

京介「ど、どうしたの!? その格好!!」

桐乃「この前、これでデートするって言ったじゃん。 だから、ね?」

京介「確かに言ったが……いきなりくると、びびる」

桐乃「目的それだし。 家デートしよ、家デート」

京介「お、おう……しようか」

はー。 ただチョコを作るだけだと思っていたらこれだぜ。 こいつ、俺を驚かせることに関してはプロすぎる。

そんな桐乃は俺の腕を引っ張り、部屋の中へと連れて行く。

桐乃「じゃーん! どう? 結構色々作ったんだよね」

未だに仕舞えずにいるコタツの上に、様々なチョコ。 良くもまあ、あれだけの時間で作った物だと感心してしまう。

小さいながらも、ケーキまであるし。 これは多分、冷蔵庫に元々仕舞ってあったのだろう。

京介「すげえな……」

思わず漏れたといった感じで俺が言うと、桐乃は満足そうに笑う。

桐乃「ふひひ。 でしょでしょ?」

京介「食べても、良いか?」

桐乃「うん。 いいよ。 だから早く手洗いとうがいね!」

京介「おう。 即、行って来るぜ」

桐乃「早くねー」

そしてそれらを済ませ、コタツの中に足を入れる。 桐乃はそんな俺にぴったり寄り添うように、隣に腰を掛けた。

桐乃「ふひひ~。 最初どれにする?」

京介「えっと、んじゃあ、それで」

俺が指差すのはひと口サイズのチョコ。 形もしっかりと整っていて、実に美味しそう。

桐乃「おっけ。 じゃあ……」

言うと、桐乃はそのチョコを指でつまむ。 そして。

桐乃「はい、あーん」

と、俺の顔の前にチョコを持ってきて、そう言った。

……す、すげえ恥ずかしい。 桐乃の格好もそうだし、何より手から直接ってのがまた。

つか、こいつ……この前の手錠の一件から、この行為にめちゃくちゃはまってるんだよな。 一日一食のどれかで必ずやってくるし。

まあ、俺も桐乃にやってあげているんだけど。

京介「……う、あ、ああ」

俺がどもっていると、桐乃はちょっぴりムッとした顔付きとなる。

桐乃「早く食べてよ。 溶けて来てるじゃん」

桐乃「ほら、あーんってして」

京介「あ、あーん……」

俺が口を開けると、桐乃は指ごと俺の口の中へと運ぶ。

京介「……」

何事かと思い、そのままのポーズで桐乃の方に目だけ向ける。

桐乃「……チョコ溶けて、指べとべと」

桐乃、顔真っ赤。

……ええっと、だな。

良いのか、本当に良いのか。

そう思いつつ、桐乃を凝視。 これでもかってくらい、凝視する俺。

桐乃「は、早く食べてって」

もうどうなっても知らん!

俺はそのまま、チョコを口の中へ。 勿論、それをつまんでいた桐乃の指も。

で、まあ。 言い辛いから少し省略。

桐乃「……ど、どうだった?」

京介「う、美味かったぞ。 おう」

桐乃「そ、そか……」

京介「……ちょっと甘さがきつかったかも。 でも悪いってわけじゃねえからな?」

桐乃「良いって良いって。 次の参考にもなるし。 えへへ」

京介「……それと、なんつうか。 桐乃の指も超甘かったというか……そんな感じだった」

桐乃「ば、ばかじゃん」

なんだこの空気! 俺でもくっそ甘い空気ってのがさすがに分かるぞ!? もう俺、死んでも良いかもしれん。

そしてそれから何個かチョコを食べる。 今みたいなことを繰り返していたと思って貰えれば良い。

で、俺はこう切り出した。

京介「……俺も、お前にチョコ食べさせていいか?」

桐乃「……ほんとに? なら、お願いしよっかな」

桐乃「あ! でも、甘さ抑えてる奴あるから、それが良い。 それとあんま食べると太っちゃうし、ちょっとだけね?」

桐乃は言いながら、チョコをひとつ指差す。

京介「了解。 じゃ、じゃあ……」

俺は先ほどの桐乃のように、チョコをひとつつまみ、桐乃の顔の前へ。

京介「……桐乃、あーん」

桐乃「……あーん」

俺は桐乃の小さな口の中へ、チョコを持っていく。

桐乃のように指を入れるだなんて真似は正直言って、気が気じゃないので出来ない。 だから若干投げ入れるような形になってしまった。

桐乃「……ん」

桐乃は俺の手首をがしっと掴み、そのまま自分の口へ。 俺の指を口の中へ。

京介「ちょ、ちょっと待てって!」

桐乃「ヤダ。 負けたみたいだしぃ」

言うと、そのまま桐乃はぱっくり咥える。 で、舐める。

暖かいような、柔らかいような、チロチロとした感触が指の先に伝わってくる。

……や、やべえってこれ。 超気持ち良いぞ!?

京介「お、おま……一旦ストップ! ストップだ桐乃!!」

桐乃「……なに?」

京介「け、結構ヤバイ。 それ」

桐乃「妹に指舐められて興奮してんのぉ? ふひひ」

京介「しない方がどうかしてるっての! と、とにかく一旦やめよう」

桐乃「ふん。 仕方ないなぁ。 根性無し」

京介「もうそれで良いって……てか、お前はよく平気だな」

桐乃「へ? あ、あたし? あたしはその、べ、別にこのくらいどうってことないってゆうか」

京介「……そうなの?」

軽くショックだ。 だってこいつ、今は嘘付いているようにみえねーし。

桐乃「で、でも! しっかり理由はあるとゆうか……」

京介「……聞いても良いか?」

桐乃「その、言わなきゃダメ?」

京介「桐乃がどうしても嫌だって言うなら、言わなくてもいいぞ」

桐乃「……ありがと。 でも、うん。 話す」

桐乃は言い、胸に手を当て、続ける。

桐乃「じ、実は。 京介が寝てるときにね。 ちょっとだけだよ? 京介の指、咥えてたりしたことあるから」

聞きたく無かった!! とんでもない衝撃事実じゃないかよそれ!! 十秒前まで時間戻れ!!

京介「……お、おう」

桐乃「……ごめん」

しおらしく謝る桐乃。 このまま放っておけるわけがない、っと。

京介「気にするなって。 別に嫌じゃねえし、気にしないって。 俺だってお前が寝てる時に体とかめっちゃ触ってるし」

桐乃「は、はぁ!? ど、どこ触ってるって!?」

京介「……あれ?」

今の流れって、俺も言ったら「いいよ。 京介になら」とかそういう感じになる場面じゃなかったの!? 俺すごい失敗してないかこれ!?

桐乃「早く言え」

桐乃は言い、俺の手首を掴む。 で、再び指を舐め始める。

京介「やめろやめろやめろ!! それヤバイんだって!!」

必死の訴えに桐乃は咥えるのをやめ、言う。

桐乃「だったらどこ触ったか言って」

京介「わ、分かった。 言うから」

京介「……か、顔とか」

桐乃「ふうん。 他には?」

京介「……髪の毛?」

桐乃「で、次は?」

京介「……あ、あれだ。 腹より上で、肩よりも下の部分とか」

桐乃「あ、あんた胸触ったの!?」

京介「俺だって触ろうと思って触ったわけじゃないぞ? 気付いたら桐乃の胸に手があってだな……」

桐乃「言い訳乙! マジきもい!」

京介「お前のだって似たようなもんだろ!? 勝手に人の指舐めやがって!」

桐乃「さっき京介は「嫌じゃないし、気にしない」って言ったよね? 言ったよね? ひひ」

京介「そ、そりゃあ……」

桐乃「ふひひ~。 許して欲しい? ねえねえ許して欲しい?」

こいつなぁ、その如何にも萌えメイドって感じの格好で言うのがアレだぞ! ネコ耳ぴょこぴょこ動いてるし。

京介「ゆ……許してください桐乃さん」

桐乃「あーあ、なんかチョコ食べたい気分だなぁ~。 さっきと同じ奴がいいなぁ~」

俺の方をちらちらと見ながら言う。 食わせろということらしい。

京介「……へいへい」

桐乃「え? なんて? 聞こえなかったんですケドぉ。 まさか「へいへい」とか適当な返事してないよね?」

京介「……はい」

桐乃「ほら、早くして」

言い、桐乃は俺の膝の上へと座る。 メイド服はふかふかしているし、何より後ろから見ると尻尾と耳が超可愛いな。

京介「ほら」

俺はさっきと同じチョコを手に取り、桐乃の口元へ。

桐乃「ほらってなに? 意味分かんな~い。 ふひひ」

昔だったら俺、もう絶対キレてるよ。 今はなんて思うかって? 可愛い妹だ、くらいにしか思わないっての。

桐乃「あーん」

で、俺の指を舐める桐乃。 こいつこれがやりたいだけじゃねえのか!?

京介「ちょ、待てって……おい」

桐乃「んー?」

文句ある? という感じで俺の事を見る桐乃。 耐えろってか!? いやいや無理無理!!

京介「ま、マジできついから……桐乃」

桐乃「んふふふ~」

俺が何度言っても、こいつは意地悪そうに笑う。 どうやら指を離す気は無いらしい。

ぶっちゃけると、下の方はかなりヤバイこととなっている。 桐乃の体はあったけえし、こいつは俺の指を舐め続けるし。

そしてそれは桐乃も気付いているはずだ。 なんと言っても、俺の膝の上に座っているんだしな、こいつは。

そんで、それが分かっていて尚やめない。 じょ、上等だぜこの野郎。

京介「き、桐乃。 やめてくれ、頼む」

桐乃「んー。 んひひ」

よし分かった! お前がそうならどうなっても知らん!

俺は桐乃を抱き締め、後ろへと倒れる。 桐乃は何が起こったのか一瞬分からなかったようで、チロチロと舐めていた俺の指を離した。

桐乃「ちょ! え!?」

そのまま体勢を変えて、桐乃に覆い被さるように。

……手、べとべとじゃねえかこのヤロー!

と、よく分からない怒りに身を任せてそのまま桐乃にキス。

桐乃の頭を片手で支えて、奪うようにキスをした。

それだけではこんなのは我慢できるわけがなく、口の中へと舌を入れる。 まだチョコが残っていたのか、口の中は甘い。

桐乃の唾液も、俺の唾液も、桐乃が食べていたチョコも混じり、甘く、暖かい。

何分も何分もずっと続ける。 桐乃は少し抵抗しているが、それは全て押さえつけた。

桐乃の口の中で俺は舌を動かし、舐める。 先ほどまでの仕返しと言わんばかりに。

桐乃「ん……!」

苦しそうにする桐乃を見て、一気に戻された。 頭が冷えたというよりかは、落ち着けたという感じで。

京介「わ、わりい。 桐乃」

桐乃「……はぁ……はぁ」

桐乃は息遣いが荒く、肩で息をする。 その口元は俺のか桐乃のかは分からないが、透明な液体が垂れていた。

京介「……ごめん、桐乃」

何度か息を整え、桐乃はようやく口を開く。

桐乃「べ、ベツに良いっての……でも、ちょっとびっくりした」

京介「……すまん」

桐乃「だから、謝らないでって。 びっくりしたけど、京介だったから怖くなかったし……ね?」

京介「おう……ありがとな」

桐乃はそのまま俺の首へと腕を回し、言う。

桐乃「……でも、京介が我慢できないのと一緒であたしも我慢できないの。 責任取って」

京介「……って言うと?」

桐乃「察しろっつーの……。 その……」

京介「あ、ああ。 分かったよ。 でも、あれだぞ? 前にも言ったと思うけど」

桐乃「知ってる。 だから、そうじゃない奴。 それなら良いっしょ。 ベツに」

京介「分かった。 まあ、前にも今度なって言っちゃったしな……それに、付き合ってるんだしな、俺たち」

桐乃「……うん。 じゃ、ほら」

桐乃の言葉を受け、俺は桐乃を抱き抱える。

そして俺はそのまま、桐乃を布団の上まで運んでやった。

そんな感じの、俺と桐乃の一日の出来事である。


バレンタインの日に 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

次回投下、月曜日になります。

> 桐乃「だって、あたしだって一応女の子の友達なワケじゃん? なのにまるで気にされてなかったのが傷付いた」
ここがちょっとわからん

>>374
御鏡が桐乃に対し、チョコをくれる相手という認識が無かった、つまり眼中に無かった、という点が女的プライドを傷付けたってとこじゃね?



甘い甘すぎるそれだけに赤城が不憫でならない
それと363の最初に、京介「……あーん」があったと予想

>>377
エスパー

申し訳ないです。
>>363
一文抜けていました。 ↓になります。



京介「……あーん」

桐乃「あーん」

で、俺の指を舐める桐乃。 こいつこれがやりたいだけじゃねえのか!?

京介「ちょ、待てって……おい」

桐乃「んー?」

文句ある? という感じで俺の事を見る桐乃。 耐えろってか!? いやいや無理無理!!

京介「ま、マジできついから……桐乃」

桐乃「んふふふ~」

俺が何度言っても、こいつは意地悪そうに笑う。 どうやら指を離す気は無いらしい。

>>374
その部分は>>375さんの解釈でokです。

布団で何したの?ねぇ何したの?

>>387
京介「ネットで公開できないような事に決まってんだろ。察してくれよ」
桐乃「ちょっ…。誤解されるような事言うな。あ、あんなの恋人同士なら普通だし…」

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下致します。

2月の下旬。

バレンタインデーの出来事から一週間ほど経ったある日の出来事。

京介「……今、なんて言った?」

桐乃「だからぁ、水着でグラビアの仕事来てるの。 それやろうかと思ってるんだよね」

こんな感じで桐乃が切り出した所為で、会議開始。

桐乃が言っていることを纏めると。

1、グラビアを撮る。

2、勿論その時は水着。

3、それの練習として写真を撮って欲しい。

一つ目と二つ目はまあ、分かる。

三つ目なんでそうなった!? 練習ってなんだよ!?

京介「つか、この部屋はまだ暖房器具とかあるからいいけどさ……このくっそ寒い中、グラビアなんて撮るのか?」

桐乃「撮るのは室内だって。 てか、どうなの? 撮ってくれるワケ?」

京介「……お前が良いなら、別に俺は構わないけどさ」

いやぁ、ていうかそれよりも俺は桐乃がグラビアってのに反対なんだけど。

そういや……昔、黒猫が言ったことあったっけ。 俺が反対すれば、桐乃はやめると。

京介「なあ、桐乃」

桐乃「なに? 撮ってくれるんでしょ?」

京介「俺さ、お前がそういう水着姿とかを雑誌に出すのは嫌なんだよ。 だから、今回の断ってくれないか……?」

桐乃「や……ヤダ」

駄目じゃねえかよ! 黒猫の奴、適当なことを言いやがって……。

京介「……そうか」

桐乃「とりあえず練習するんだから撮ってよ! ぼーっとしてないで」

ううむ。 桐乃がそう頼むなら仕方ないのか……? 俺としては、何としてでもやめてもらいたいんだけど。

何か良い案は無い物か。

京介「……じゃ、じゃあ桐乃。 もし水着姿を雑誌に出すの止めてくれれば、一日五回キスしてやる! どうだ!?」

桐乃「ご、五回も……?」

京介「十回でも良いぞ!」

桐乃「十回!?」

桐乃「…………」

桐乃は顔を強張らせ、ぷるぷると肩を震わせる。

数十秒そうして黙り込んだ内、ようやく口を開いた。

桐乃「そ、それでもダメッ! でも言ったからにはキスしてね?」

京介「お前それは破綻してるじゃねえか! 俺はあくまでも条件として出してるんだからさ!」

桐乃「知らない知らない! あたしが決めたの! あんたは従うの! てゆうか、従え!」

理不尽通り越してるぞ、こいつ。

にしてもそんなにキスが嬉しいのか……へへ。

やべえ、俺今、多分顔が相当気持ち悪いことになっていそうだ。

桐乃「と、とにかく! 早く写真撮れっての!」

京介「わ、分かったよ……ちくしょう」

ここまで桐乃が引かないとなると、もうこれ以上は何を言っても無駄だろう。

本当に、本気で全力で嫌だが……桐乃の意思も大事だしな。

桐乃「……どかな?」

渋々俺は承諾し、桐乃を待つこと数分。

部屋に戻ってきた桐乃は言いながら、恥ずかしそうに水着を着て俺の前に立っている。

今着ているのはビキニなのだが、ううむ。 さすがはモデル……というか、桐乃。

つか、部屋の中で水着って結構来る物があるな。 で、これからそれを写真に収めると。

桐乃「ちょ、ちょっと。 黙らないでよ」

京介「お、おう……わり。 すげー可愛いよ」

桐乃「……ふん」

部屋の中は出来る限り暖かくしていて、桐乃が風邪をひかないようにしているわけだが。

その所為で俺は汗を掻いているのだろうか。 でも、なんか違う意味で汗を掻いている気がしなくもない。

京介「えっと、それで最初はどういう風に撮れば良いんだ? ポーズとか、するんだろ?」

桐乃「うん、まあね。 んじゃ最初はー」

桐乃「恋人に呼ばれて振り返った! ってカンジでとろっか」

京介「了解。 ってことは俺が声掛けた方が良いよな?」

桐乃「うん。 あたしは背中向けてるから、京介のタイミングで声掛けて。 そうすれば振り向くから」

京介「おう。 分かった」

そして、俺に背中を向ける桐乃。

仕草とか撮り方とか、当然だけど慣れている感じだな。 モデルってのは皆そうなのかね? 万が一にも俺がなったとしても、慣れる気は全くしねえな。

てか……後ろ姿だけでも可愛いなあ、おい! 内緒で一枚撮っとこうかな。

いやでも撮ってるのは桐乃のデジカメだし、後で見られたら言い訳が出来ない。

で、俺の携帯のカメラは音でばれるか……。 くそ。

桐乃「ちょっとまだ?」

ああ、いかんいかん。 ついつい桐乃の後ろ姿を見るのに必死だった。

待たせても悪いし、撮るか。

京介「わりわり、んじゃ」

京介「……桐乃ー」

俺が呼ぶと、桐乃は勢いよく振り返る。 で、顔はなんだか怒っている様子。

そんなんで良いのか? とか思いつつも、シャッターを切る俺。

桐乃「なに撮ってんのよ! 今のは違うっての!!」

京介「な、なんだよ? 振り向いたじゃねえかお前!」

桐乃「ち、が、う!! あんたちょっと考えてみ? 「桐乃ー」とかやる気無さそうに呼ばれたあたしの気持ち」

京介「……恥ずかしいんだよ! いざ名前呼べって言われても!」

桐乃「ただ名前呼ぶだけじゃん。 恥ずかしがることなんて無いでしょ」

京介「普通に呼ぶだけならいいんだって。 でも予め「名前を呼んで」って言われてから呼ぶのとじゃ全然違うんだっての。 そこまで言うなら、お前ちょっとやってみてくれよ」

桐乃「あたし? ベツに良いケド」

京介「おし。 じゃあほら、俺の名前呼んでみ」

桐乃「……う」

桐乃「……京介」

一緒じゃん! さっきの俺と殆ど一緒じゃん!

京介「ほらほらぁ! お前だって同じじゃねーか!」

桐乃「あんたがエロい目であたしのことじっと見てるからでしょ!? 身の危険感じるってーの」

京介「……お前そういうけど、バレンタインの日にあったこと----------」

俺がその日にあったことを言いかける。 すると桐乃は俺の胸倉を掴み、言った。

桐乃「忘れろ。 今すぐ。 じゃないと殴る」

京介「お、おう……」

怖いって。 言いながらガンを飛ばすのだけはやめてくれ。

桐乃「とにかく! 次はしっかり呼んでよ。 ちゃんと感情込めて。 おっけー?」

京介「分かった分かった。 任せとけ」

桐乃「よし」

そして、再度俺に背中を向ける桐乃。

おし……。 良いぜ、任せとけ。

んで、俺は言う。

京介「超、超超超大好きだぜ桐乃ぉおおおおおおおお!!」

と俺は叫ぶ。 感情込めまくってやったぜ。 感謝しろよ。

すると桐乃は先ほどとは違い、顔を真っ赤に染めて振り返る。 よし撮ろう。

ははは。 今日一番の表情だな、こりゃ。

桐乃「だからとーるーなあああああ!! ばかじゃんばかじゃん!?」

京介「何がだよ? お前に言われたように呼んだだけだぞ?」

桐乃「全然意味が違うっての! な、ななななんで大好きとか言ってんの!?」

京介「感情込めた結果だって」

桐乃「そうじゃないって言ってるじゃん! 京介は普通に名前呼ぶだけで良いの! 分かった!?」

京介「わ、分かったって。 次からは気をつける。 だからぽかぽか叩くのやめてくれ」

桐乃「ふん! 次名前呼ぶときヘンなことしたら怒るから」

今でも十分怒ってるじゃねーか!

京介「了解了解。 ほら、撮るからもう一回後ろ向けよ」

俺が言うと、桐乃は素直にそれに従い、俺に背中を向ける。

……さて。

さてさて。

俺がそれで退くと思ったかぁ!? へっへっへ。 甘いぜ桐乃よ。

京介「……よし」

京介「いやぁ、今日の桐乃も可愛いなぁ。 後ろ姿とか超キュートだぜ。 足もすらっとしてるしよー」

桐乃は体をぴくっと反応させるが、まだ大丈夫。 大丈夫。

京介「お尻も小さくて良いし、くびれもすげー綺麗だなぁ。 絵になる絵になる」

今度は肩をぷるぷると震わせる。 ……まだ大丈夫か?

京介「肌もここからでも分かるくらい綺麗だしな。 振り向いたら超美人なんだろうなぁ。 もしかしたら世界一可愛かったりしてな。 ははは」

桐乃「……い、いい加減にしろぉおおおおお!!」

桐乃の見事なダッシュからの掌打が俺の腹に入り、前のめりになりながら撮影。

デジカメにはむすっとした表情の桐乃が写っていた。

桐乃「次そっちね。 しっかりやってよ」

京介「……はいはい」

その後、怒った桐乃から下された命令。 マッサージをしろとのこと。

水着姿の桐乃は布団の上にうつ伏せで寝転がっていて、俺はその上に乗り、肩をマッサージ。

桐乃「んー。 結構上手いじゃん。 ひひ」

京介「そりゃどーも。 他は?」

桐乃「もうちょっと下、腰の辺りよろしく~」

京介「はいよ。 ここら辺か?」

俺は言いながら、腰の辺りを指で押す。

桐乃「そうそう……良い感じじゃん」

桐乃「足もヨロシク。 あたしにマッサージできるとか幸せっしょ?」

……若干疲れてきたとは言えねえ! 言ったら間違いなく怒るだろ、こいつは。

京介「そうだな。 お前の体にべたべた触れて超幸せだ」

桐乃「き、キモイことゆうな! 変態!」

京介「んだよ。 「マッサージしなさいよ」つったのはお前だぞ?」

桐乃「それはそうだケド……」

ぶつぶつと言う桐乃の言葉を聞きながら、俺は桐乃の足に触れる。

桐乃「んっ」

京介「な、なにエロい声出してんだよ!?」

桐乃「あんたがいきなり触るからでしょ!! しかも手付きがエロすぎだっての!!」

……エロい声ってのは否定しないんだな。

京介「そりゃあれだ。 下心ありまくりでマッサージしてるし」

桐乃「よ、よく平気でそんなこと言えるよね……」

京介「だって俺変態だし。 仕方ないだろ?」

桐乃「き、キモ! キモイっての!」

京介「はぁ? おいおい桐乃さん。 お前がいっつも俺に変態変態言ってるのは嘘だったのかよ? まさか桐乃が自分の言葉を否定するとかしねえよなぁ?」

桐乃「こ、この……!」

京介「ってわけで、俺はお前を触りまくる。 下心ありまくりで」

桐乃「……サイテー」

と言いつつも、逃げようとはしないのか。 枕に顔を埋めているだけだし。

で、それから少しの間、無言でマッサージ。

桐乃「……ちょっと、京介」

京介「ん? なんだ?」

桐乃は体勢を変えようと動き、俺は一度桐乃の上からどく。

そして仰向きになると、こいつはこう言った。

桐乃「……あんたの所為でヘンな気分になったから、ぎゅってして」

京介「……おう」

で、抱き締める。

桐乃「……」

無言でばたばたと足を動かす桐乃。 いやいや、どんだけ嬉しいんだ。

京介「嬉しいのか?」

桐乃「そ、それ聞く?」

京介「……悪い悪い。 んじゃ聞き方変える」

京介「顔すっげー赤いな、桐乃」

桐乃「……京介が急に抱き締めてきて暑いの。 ふん」

抱き締めろって言ったのはお前のはずなんだけどね。

で、次にこいつはこう言う。

桐乃「……布団掛けて。 あたし水着のままだから、寒いし。 少しお昼寝したいし」

支離滅裂すぎるってーの。 気にしないけどよ。

京介「はいよ」

桐乃「京介も一緒に寝るんだからね。 ぎゅってしたまま」

京介「おうおう。 分かってるって」

そう言い、俺は自分と桐乃に布団を掛けて、桐乃を再度抱き締める。

桐乃「……ふひひ」

京介「……なあ、桐乃」

桐乃「ど、どしたの? そんな深刻な顔して」

京介「俺、やっぱお前が雑誌に水着で出るの嫌なんだ。 しつこいけどさ……」

桐乃「……あ、う、うん。 分かった。 良いよ」

京介「え? 断ってくれるのか?」

桐乃「トクベツだかんね。 ちゃんとあたしにお礼言いなさいよ?」

なんだ? 案外あっさり承諾してくれるんだな。

京介「好きだぜ、桐乃」

桐乃「……それ、お礼の言葉じゃないし」

なんて言いつつ、満足そうな顔をしている桐乃だった。

そんな一日が終わり、数日経ったある日。

これは言うならば後日談的な物。

大学からの帰り道……中学や高校の下校時間と被ったのか、歩いている学生の姿をちらほらと見かける。

友達と楽しげに話しながら帰路に就いている学生。 一人で帰る学生。 カップルなのだろうか、二人で並んで帰る学生。

そしてそんな学生たちの姿の中に、少し寂しげな後ろ姿。

それは俺が知っている奴の物で、咄嗟にその後ろ姿に声を掛けた。

京介「ん? あやせか?」

俺が言うと、その人物は振り返り、口を開く。 いつもの様に。

あやせ「お兄さん、もしかして私のストーカーとかしてます? 気持ち悪いですよ」

京介「偶然会ってそこまで言われるとは思って無かったぞ……。 桐乃は一緒じゃねーの?」

あやせ「桐乃は……ええっと、ちょっと学校でやることがあるみたいです」

ふうん? そんなことは聞いてなかったけどな。 まあ、全部を言えってのもおかしな話か。

京介「そっか。 じゃあ今日はあやせ一人なんだな」

あやせ「……まさか、私にセクハラする気ですか。 通報しますよ」

京介「しねーよ! ったく」

あやせ「あはは。 そうでしたそうでした。 お兄さんがセクハラするのは今はもう、桐乃に対してだけですよね」

京介「そうそう……俺がするのはあいつだけ----------」

あやべえ、これ誘導尋問だったか!?

あやせ「へえ……」

京介「待て待て待て! 俺は桐乃にセクハラなんてしてないぞ!? 本当に!!」

あやせ「どう考えても嘘じゃないですか……だって、桐乃って毎日自慢してくるんですよ。 お兄さんとのこと」

京介「ま、マジで? あいつどんなこと言ってるの?」

あやせ「お兄さんに急に抱き締められて、布団まで連れて行かれて、一緒にお昼寝したとか」

俺が無理矢理してるみたいじゃねえか!! あいつ、なんてことをあやせに言っているんだ……!

あやせ「で、どうなんですか? まさか、桐乃に手を出したりしていませんよね?」

京介「え、ええーっと……手を出すって、具体的にどこら辺から?」

あやせ「そんなの決まってるじゃないですか……って、何を言わせようとしているんですか!? この変態ッ!!」

京介「そんなつもりじゃなかったって! でも……」

京介「大丈夫だ。 今の俺に責任が取れないことはしてないからさ」

……正直に言うと、それに近いことにはなってしまったのだが。

物は言い様だな! 嘘は吐いて無いし!

あやせ「それなら良いです。 お兄さん、桐乃を支えてあげてくださいね」

何を今更言っているのだろう。 それとも、あやせが言っているのは今、この時のことか?

いや、良いか。

京介「返事はしっかり言葉にした方が良いか? あやせ」

あやせ「いえ、大丈夫ですよ。 ふふ」

京介「だよな。 はは」

そして俺は、ひとつ思い出す。

この桐乃と一緒にモデルをやっているあやせを見て、だ。

京介「あー、そういえばさ。 桐乃にグラビアの仕事とかって結構来てんの?」

あやせ「どうしたんですか、急に。 それはまぁ……桐乃って可愛いですし、スタイル良いですし。 結構来てると思いますよ? 私もそういった話は耳にしますし」

あやせ「お兄さんだって、桐乃が水着を着ている雑誌とか持ってたじゃないですか」

京介「いやまあそうだけど……はぁ。 やっぱそうなのか。 ってことはこれからも同じ思いをするってことだよなぁ」

あやせ「何をそんなに気に病んでいるんですか? 桐乃からそういう話、ある訳無いと思いますよ」

……いやいや、つい先日あったって。

京介「俺もそうだとすっげー嬉しいんだよ。 でもこの前、水着姿で雑誌に出るとか言ってきてさ。 なんとか今回は断ってくれるってことになったんだけど」

あやせ「……変ですね、それ」

京介「変? 変って、何が?」

あやせ「だって、私が知っている限り……。 桐乃って、そういう仕事は全部断っているんですよ。 それも話があった段階で、です。 多分、お兄さんが嫌がるからだと思いますけど」

京介「……そうなのか? ってことは、最初からそんな話は無かったってこと?」

あやせ「だと思います。 桐乃って素直じゃないですし、お兄さんに心配して欲しかったんじゃないですか? 可愛いなぁ」

そ、そうだったのか……。 俺はほんと、すっげえ心配で心配で堪らなかったと言うのによお!

そして多分、桐乃が「写真を撮って欲しい。 練習で」と言ったのはそういうことなのだろう。

……こっちの件については、あやせには言わない方が良さそうだな。

京介「なら良かった……本当に良かった」

あやせ「あはは、すごく心配してたんですね。 でも良かったじゃないですか」

あやせ「今度から桐乃が「水着で雑誌に出る」って言った時は、心配してくれって合図ですよ。 覚えておいてくださいね」

京介「……それ良いな! 内心でにやにやできるって訳か……。 ありがとうあやせ!!」

あやせ「いえいえ。 その、出来ればなんですけど……その時の桐乃の表情の写真とか、欲しいなぁ」

京介「……あやせ」

京介「俺に任せろ!」

そんな風に、こんな感じで。

俺とあやせは少しだけ仲が良くなった。


撮影会 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

今回こそは大丈夫だったはず!


イチャイチャ成分高すぎるせいでいつか来そうなシリアス展開が怖い

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

>>439
やだなぁ! そんな展開あるわけ無いじゃないですかぁ!

桐乃「あーきはーばらー!」

桐乃「もうヤバイ! 我慢できない! 早くポスター欲しい!」

京介「しっかし、もう終わったアニメなのに良くもまあグッズが出るもんだな」

桐乃「当たり前でしょ。 メルルは人気あるんだから。 どっかの厨二病アニメとは違って」

桐乃「そ、れ、と。 メルルをもう終わったとかゆうの止めてくんない? まだまだグッズは出るんだし、なんにも終わってませんから」

京介「へいへい……。 ま、お前がそれだけ楽しみにしてるんだったら文句はねーよ」

桐乃「ひひ……。 あー! 早くメルちゃんに会いたい!!」

京介「……お前、昨日全然眠れてなかったもんな」

桐乃「そりゃそうでしょ! だって限定品だよ!? しかもメルルの! ふひひ……じゅる」

京介「別にお前が寝れないのは良いとしてさ、何で俺まで付き合わされて起きないといけなかったんだ……」

おかげ様ですげー眠い。 道路にダンボールでも敷いて寝たい気分。

桐乃はどこからエネルギーが出てるのか知らないが、超元気だしさぁ。

2月。 この前の雑誌の一件から数日も経っていない内に、俺は桐乃に連れられて秋葉原へとやってきていた。

目的は勿論、例のメルルポスター。 約束ではあったから、まあしょうがねえか。

桐乃「はぁ? そう言ったって、京介だって「お前が隣にいないと俺寝れないんだよ……」って言ってあたしと一緒にコタツ入ってたじゃん。 あたしが無理矢理起こしてたワケじゃないし~」

京介「いやいや! お前が「ね、京介。 隣座って手握って」とか言ってくるからだろ!? 捏造すんじゃねえ!」

桐乃「あんたのが捏造だっての!」

京介「お前のが捏造だ!」

と、言い合い。

正直に話すと、まず桐乃が布団の中でもぞもぞ動くので俺は眠れずにいたわけだ。 で、桐乃が一度布団から出て行ったから俺も付いて行った。

そんで、上の様な流れになったってことだ。 どっちもどっちってことにしよう。

桐乃「チッ……とにかくほら、やってるのここだから」

桐乃は地図を広げ、指差す。

京介「へいへい。 んじゃ行くか」

桐乃「あんた何も分かってない。 ほら」

桐乃は手を差し出し、言う。

桐乃「いちお、デートでしょ。 手くらい繋いで」

京介「……だな」

桐乃はなんというか、手を繋いだりするのが好きなのかもしれない。 一緒に居られると実感できるからだろうか。

俺はそんな桐乃を見て、少し元気が出てきた。

……いや眠いけど。

京介「着いたな!! ここかぁ!!」

桐乃「……なにそのテンション?」

京介「寝てない所為だと思う! 気にすんな!」

一周した感じだぜ。 今ならなんだって出来そうだ。 ははは。

そんな俺の前には建物。 ライブハウス的な感じ。

桐乃「でも、なんか今年って人少ないかな? ネットで見る限り、毎年もっと居そうだったんだケド」

京介「好都合じゃねえか。 先着五十組なんだからさ」

桐乃「なら、こんな朝早く来る必要無かったかも……損した気分」

京介「どうせ起きててもすることねーんだし、良いじゃん。 とりあえず入ろうぜ」

桐乃「まぁね。 いこいこ」

そうして、俺と桐乃は店の中へ。

中は薄暗く、同人誌などが並べられている。 見る限りだが、マスケラやらメルルやらもある様だ。

「いらっしゃいませー」

そういう女性の店員。 見た感じ結構若い人。 大学生とかだろうか。

桐乃「……」

痛いっての! 無言で足を踏むんじゃねえよ!

桐乃「すいません、メルルのポスターなんですけど」

「お題にチャレンジですね。 えーっと」

「夫婦の方ですか?」

京介「ぶっ!」

桐乃「はいそうですぅ~。 この人があたしの旦那なんです~」

一気に機嫌が良くなった!? つうか、適当なこと言うんじゃねえって!

京介「おい桐乃……」

俺がそう声を掛けると、桐乃は俺の首に腕を回し、耳元で言う。

桐乃「名前とか書かないといけないからそっちの方が都合が良いの。 それに強ちウソでもないっしょ? ひひ」

京介「……将来的に?」

桐乃「……そ、そう」

一応、桐乃も考えて喋ってはいたんだな……多分。

「あのー」

桐乃「あ、ごめんなさい。 それで、あたしたち夫婦でチャレンジしたいんですけど」

夫婦夫婦連呼するなよ! 恥ずかしいじゃねえか!

「分かりました。 こちらの紙に説明が書いてありますので、よく読んだ後に申込書をお願いします」

てっきり適当な物だと思ったけど、結構しっかりしているんだな。 さすがは毎年やっているだけある。

なんでも、ファンの間では結構なイベントらしいし。 桐乃からの言葉をそのまま飲み込む限り。

桐乃「はい」

桐乃はちゃちゃっとそれを書き、俺も習って記入する。

「ありがとうございます。 ではあちらへどうぞ」

と、道を指された。

そっちの方へ桐乃と一緒に歩いて向かっている間に、先程渡された案内書を読む。 順番が逆な気しかしねえけど……。

まあ、ここまで来て桐乃が「やっぱやめる」とか言うわけがないから良いけどな。

当たり障りの無いことが書いてあるそれを読み飛ばす。 読み飛ばそうとした。

……最後に一文。

『当日撮らせて頂いた写真は、店舗にて展示させて頂きます』

京介「……写真ってなんだ?」

桐乃「さぁ? メルルのポスター取れた人が写真撮影するってことじゃない?」

あー、そういうことか。 よくあるよね、そういうの。

京介「ふうん」

そんな会話をしている内に、到着。

既に何人か居る中……あれ。 居る奴全員カップルじゃん。

京介「……毎年こうなのか?」

桐乃「そんなはず無いケド……何でだろ」

まあ、そんな年もあるのかな。

で、受付らしきところへ。

京介「すいません。 メルルのポスターなんですけど」

「ああ、お題にチャレンジの方ですね。 どうぞ」

そう言われ、店員は箱を取り出す。

桐乃「引いて良いよ。 京介」

京介「ん、そか。 んじゃあ」

桐乃に言われ、箱の中に手を入れる。

何枚か紙が入っているようで、俺はその中から一枚取り出し、開いた。

……。

京介「桐乃、帰ろう」

桐乃「は、はぁ? 今更何言ってんの?」

京介「いや……だってこれ」

「引きましたら、紙をお渡しくださいー」

俺は渋々、その紙を店員へと渡す。

そして店員は言った。

「ポッキーゲームですね。 ではこれをどうぞ」

……帰りたい。

桐乃「……やろう!」

なんでお前は元気なんだよ!? 恥ずかしくねえのかこいつ!?

京介「あのすんません……毎年こんなんやってるんですか?」

俺が店員に聞くと、店員は苦笑いをしながら答える。

「いやぁ、今年はちょっとハードなんですよ。 カップル限定になってますし、それでチャレンジする方が少ないんですよね」

京介「は、はは……なるほど」

京介「て、てか。 それってここでやるんですか?」

「この部屋の中でしたらどこでも良いですよ。 椅子とテーブルはありますので」

言われ、辺りを見回す。

確かにそこら中に散らばっているな。 中には彼女を背中に乗せて腕立て伏せやってる奴とか居るし。 嫌なお題だな!

で、それより大事なこと。

京介「……カップルの近くでカメラ構えてるのは?」

「写真撮影ですよ。 案内書に書いてありましたよね?」

……帰りたい。 切実に帰りたい。

桐乃「ほら、いつまでぼけっとしてんの。 早くやろ」

元気良いなぁ、桐乃さん。

京介「……分かったよ。 とりあえず適当なところ座ろうぜ」

桐乃「おっけおっけ。 ふひひ」

俺と桐乃は適当な場所に座る。 テーブルを挟んで向かい合う形。

京介「……」

桐乃「……」

いざやるとなるとすっげえ緊張するんだけど!? ああ、マジでどうしよう。

桐乃「……ほ、ほら。 早くやろうって」

桐乃もようやく緊張が追いついてきたのか、視線をあちらこちらに動かしながら言う。

京介「う……んむ」

マジか。 マジでやるのか桐乃さん。 写真に撮られるんだぞこれ!?

桐乃「……チャレンジ一回だけみたいだから、失敗しないでね」

京介「わ、分かった……よし。 じゃあ、やるか」

もうこうなったらやるしかない。 徹夜明けのテンションに任せよう。

俺はポッキーを一本取り、桐乃の前に突き出す。

桐乃「あ、あたし?」

京介「……だと嬉しい」

桐乃「……分かった」

桐乃は受け取ると、ゆっくりと口に咥える。

……なんかすげー可愛いなこいつ。 いつものことだが。

それと上目遣いはやめて欲しい。 恥ずかしすぎて死ぬ。

桐乃「ん!」

訴えるように言う桐乃。 早くしろってことか。

つってもなぁ! つってもなぁ!?

と、悩んでいるときにカメラを構えた人が横へ。

……よく見ると、さっき受付に居た人だ。 入る時の受付に居た人。

桐乃「んー、んー!」

京介「わ、分かったって!」

俺は桐乃に急かされ、桐乃が咥えている方とは反対を口の中へ。

……す、既に近いって! 時々こんな距離にはなるけどさ、なんかこの状況は死にそうになるぞ……。

桐乃「……」

桐乃もどうやら同じ気持ちになっているのだろう。 頬の辺りがひくひくと動いている。

しかしいつまでもこの硬直状態のままはさすがにマズイ。 もう心臓ばっくばっくいっているから、いつか死ぬ気がするし。

よ、よし……。 やってやるよちくしょう!

俺は少しずつ食べながら、距離を詰め。

桐乃はちびちびと食べる。 で、段々距離は詰る。

もう、お互いの顔がすぐ目の前。

桐乃は何故かじっと俺を見ているし、どうせなら視線を外して欲しいっての!

こ、ここで止まったら一生進めなくなってしまいそうだ。

もう、キスをする寸前の距離。

俺は決意を固めて、桐乃にキスを。

しようとしたところで、ついに限界が来たのか、桐乃の体がぴくっと震える。

次に取った行動は退避。 桐乃は後少しのところで俺から離れようと動く。

……ここまで俺に恥ずかしい思いをさせたってのに、逃げるのは許さん!

そう思い、俺は桐乃の頭の後ろ辺りに手を回す。 逃げられないように。

で、そのままキス。

同時にシャッター音。 桐乃は驚いて目を開いて、手はパーの形のまま固まっていた。

桐乃「う……ううううう!」

店を出た後から、ずっとこいつはこんな調子。 顔は未だに真っ赤にしていて、時折足を止めては息を整えている。

京介「……大丈夫か?」

桐乃「だ、大丈夫なワケあるかッ!! こんな写真が店舗に貼られるとか!!」

桐乃は言うと、先程撮った写真を俺に見せ付ける。

……目を瞑ってキスしている俺と、顔を真っ赤にして目を見開いている桐乃。

京介「でも、メルルのポスター貰えたんだから良いじゃんか」

てか、その写真って買わなくても良かった奴だよね。 五百円って言われてすぐにお前財布出してたよね。

桐乃「そ、それはそうだケド……ふひひ。 メルちゃん……」

桐乃「で、でも恥ずかしい物は恥ずかしいっしょ! しかも京介余裕っぽくてなんかムカつく」

京介「俺だってすっげえ緊張してたっての! だけど、お前が引こうとするからするしかなかったんだって」

桐乃「あたしに無理矢理キスして良いと思ってんの?」

京介「結構してると思うが……」

桐乃「うっさい! とにかく帰ったら罰与えるから」

なんだこの罰の連鎖。 ぷよぷよじゃねえんだぞ。

ひとつ終わったと思ったら次があるとかな。

京介「……一体どんな罰なんだ?」

桐乃「今考えてるとこ。 んー」

桐乃「……てか、さっき言ってたことってほんと? 京介も緊張してたっての」

京介「当たり前だろ。 お前の顔、近かったし……心臓止まる思いだったっての」

桐乃「ひひ。 そかそか」

桐乃は満足そうに笑い、続ける。

桐乃「よし、よーし! 決めた!」

京介「……今の流れで?」

桐乃「ふひひ。 ちょっと待ってて、京介」

そう言うと、桐乃は近くにあった店の中へ。

数分後に戻ってきて、それから「家にかえろっか」とにこにこ笑いながら言う桐乃が、俺には恐ろしすぎた。

桐乃「よし! 京介、そこ座って」

指差す先はコタツの反対側。 桐乃が座る位置とは、という意味で。

京介「ま、待て待て。 先に何するか教えてくれよ」

桐乃「決まってるでしょ。 あたしが負けたみたいでムカつくから、二試合目。 ふひひ」

言うと、桐乃はカバンからポッキーを取り出す。

……こいつ、予め想定してあると、すっげー勢い良いんだよな。 さっきはあれだけ恥ずかしがってたっつうのにさ。

そしてこれを断ればどうなるか分かった物じゃない。 俺には桐乃に従う以外の選択肢は無かった。

桐乃「よし。 偉い偉い。 じゃあほら、次は京介咥えてね」

と言い、ポッキーを俺に突き出す桐乃。

京介「ま、マジでやんの……?」

桐乃「その為に買ったんだっての」

京介「お前恥ずかしくねえの!?」

桐乃「一回やってることだしぃ。 それにあの時は人に見られてたじゃん。 今は二人っきりでしょ?」

そ、そういう問題かよ!? すげえなこいつ色々と!

桐乃「ほら、早くして」

桐乃はポッキーを俺に突き出したまま、促す。

そして俺にはやはり、従う以外の選択肢は無い。

京介「……やってやるよ、くそ!」

俺は桐乃からポッキーを一本受け取り、口に咥える。

京介「……ん」

桐乃「そっそ。 最初から従えっつうのに」

と言いながら、桐乃は反対側を口へ。

や、やべえ。 やっぱりこれ心臓に悪い。

桐乃はさっきと違い、余裕っぽいしなんか腹立つな!

桐乃「んひひ」

桐乃は笑顔のまま、顔を近づけて。

……無理!

俺はそう判断をして、桐乃の肩を抑える。

京介「ま、マジで無理だって! お前余裕すぎんだろ!?」

桐乃「はぁ。 あたしだっていちおー、恥ずかしいんだよ? 慣れたってだけで」

京介「で、でもなぁ……」

桐乃「失敗したしもう一回ね。 今度あたしが咥えるから」

と言うとすぐに桐乃はポッキーを一本口に咥える。

桐乃「ん~」

にこにこと笑いながら、俺に反対側を突き出す。

……成功するまで終わらないな、これ。

京介「……死にそうだ」

俺は呟き、反対側を口へ。

桐乃「んー」

桐乃は進めと言っている。 俺には分かる。

恐る恐る、俺はちびちびと食べ始める。 桐乃は両手に顎を乗せ、そんな俺を笑顔で眺めている。

……な、なんだこの状況。

そして、後もう少しといった感じの距離。

そこで俺は止まる。 か、顔が近すぎだっての!

桐乃はそれを見ると、手を元に戻し、俺のことをじーっと見つめる。 真顔で。

ついには耐え切れなくなり、俺は桐乃から目を逸らした。

で、次に起きたこと。

桐乃は俺の頭に手を回し、顔を近付け、そのまま。

驚いて桐乃の方に視線を戻すと、すぐ目の前に桐乃。

一瞬、何をされたのか理解できなかった。

だが、次に桐乃は俺の唇をぺろりと舐める。 で、離れる。

桐乃「ひひ。 あたしの勝ちー」

京介「お、お前なぁ!」

桐乃「なぁに? ふひひ」

意地悪そうに桐乃は笑う。

死ぬ死ぬ。 俺ぜってー顔真っ赤になってるってこれ。

桐乃「さっきの仕返し。 どうだった?」

京介「べ、別になんともねーよ! ふん」

俺は必死に言い、立ち上がる。 その場を離れる為に。

とりあえず顔でも洗おう。 このままだと頭おかしくなっちまいそうだ。

しかし、そんな俺の腕を桐乃は掴むと、言った。

桐乃「どこ行くの? まだポッキーあるんだケド」

京介「……マジ?」

桐乃「マジマジ。 全部終わるまでが罰だからね。 分かった?」

俺、明日まで生きられる自信がねえぞ。

桐乃「……あー、疲れたぁ」

京介「……ほんと、もう許してください」

桐乃「それってあれ? またやりたいってこと?」

京介「断じて違う!! 俺は普通のキスで充分だっての!!」

桐乃「またそーゆうこと言っちゃって。 本当はしたいんでしょ?」

京介「お、お前なんで平気なの……?」

桐乃「だから用意できてたし。 いっつも不意打ちでキスしてくる京介に仕返しの意味もこもってるの。 嬉しい?」

京介「……ほう。 なるほどな」

よし、良いぜ。 分かった。

愉快そうに笑う桐乃を見て、俺は一気に距離を縮めてキスをする。

京介「こういうのが駄目ってことか? へへ」

桐乃「……っ!」

おお、驚いてる驚いてる。 可愛いじゃん。

桐乃「じょ、上等じゃん。 京介、どうなるか分かってやったんだよね?」

京介「何がだよ? 顔赤いぞ桐乃ぉ? はっはっは」

桐乃「……よく分かった。 覚悟しろ」

桐乃は言うと、カバンをごそごそと漁る。

桐乃「明日に取っておこうかと思ったんだケド、京介がそうゆうことするならいいし。 はい、そこ座ってね」

ちょ、ちょっと待て。 何箱あるのそれ? 桐乃さん?

京介「い、いや。 俺これから用事あるんだ」

桐乃「ウソ乙。 昨日「明日は一日暇だから、ポスター取ったらゆっくりしようぜ」って言ってたじゃん」

京介「それはあれだ……昨日の時点では暇だったんだよ。 マジマジ」

桐乃「へえ。 じゃあ携帯見せて。 昨日と今日のメールと電話チェックするから。 予定入るような奴あったかどうか」

京介「け、携帯には無いぞ? 直接会って決めたし!」

桐乃「ふう~~~ん。 本気?」

京介「……お、おう。 も、も、勿論」

桐乃「ふひひ~。 そっかそっかぁ。 昨日休みだったよね、あたしと京介」

桐乃「んでぇ、あたしの記憶が正しければ昨日からずっと一緒に居た気がするんだケドぉ」

桐乃「不思議だなぁ~? なのに京介、誰かに会ってたんだぁ? きりりん分っからないなぁ?」

……素直に謝った方がいいな、今の内に。

京介「嘘吐いてましたごめんなさい!」

桐乃「……あたしのこと嫌い? 京介」

京介「な、な訳ねえだろ!? 好きだよ!」

桐乃「大好きな人に嘘吐いたんだ?」

自然に「大」って付けたな、桐乃の奴。 つうか、すっげえ楽しそうだな。

京介「ゆ、許してくれ……」

桐乃「ふひひ。 じゃあ分かってるよね? なにすればいいのか」

桐乃「まだ二箱あるし、続き続き」

桐乃は言うと、俺の隣へ来る。

桐乃「京介の膝の上座ってやるから。 向かい合ってね。 今日はあたしが恥ずかしい目にあった分、全部倍返しだから」

京介「ほ、本気でやんの?」

桐乃は返事代わりに俺の膝の上へと座る。 勿論、俺の方を見て。

桐乃「絶対逃がさないから。 最後まで付き合ってもらうかんね」

京介「お、俺が死ぬぞ! 割と本気で!」

桐乃「きりりんとイチャイチャして死ねるとか最高でしょ?」

京介「ま、まあ……否定はしない」

桐乃「はい。 ってワケでスタートぉー」

ノリノリだな……。 桐乃も桐乃で徹夜明けだから、テンションがおかしいのかもしれんぞ。

いや、そんなことより俺はこの状況をどう打破するかなんだが。

京介「……ん」

俺は渋々、桐乃に従う。

つうか目合わせられ無い。 無理。

桐乃「なにそっぽ向いてんの」

すると桐乃は言って、キスをしてくる。 しかも普通のじゃない方。

も、もうマジで骨抜きにされた気分。 頭が超ぼーっとするんだよくそ。

桐乃「まだまだあるからね。 ふひひ」

今日、俺が学んだこと。

桐乃を怒らせると、俺の寿命が縮む。


ポッキーゲーム 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

今回ので短編45本目!
50本目のは少し変わりまして、違うキャラからの視点になります。

それと、9月から3日に1回くらいの投下ペースになると思います。

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

少しいつもより早めですが、投下致します。

京介「……桐乃、何で言わなかった?」

桐乃「ベツに。 ゆう必要なかったし」

3月。 京介があたしを呼び出し、今はテーブルを挟んで話し合い。

京介「大事なことじゃねえかよ。 ぶっちゃけると、お前に言って貰えなくて、俺結構ショック受けてるんだぜ」

桐乃「……だって、言ったら絶対反対するじゃん。 今だってそうだし」

話し合っているのは進路のこと。 あたしは……高校を卒業したら、誘われてもいるモデルの仕事をするつもり。 今度は合間とかではなくて、本気で。

京介「それで最近帰り遅かったのか。 学校に残ってたってのも、進路のことで……ってことか」

桐乃「うん。 そうゆうこと。 でも、もう決めてるから」

桐乃「今回は海外とかじゃないし、ベツに良いでしょ? あたしの人生だから」

京介が嫌だと言うのも分かる。 京介からしたら、あたしがまた海外とかに行くことになるんじゃないかと思ってしまうのも。

正直言って、それは分からない。 仕事の都合でそうなることもあるかもしれない。 だけど、あたしはそれでもしたかった。

……理由は色々あるけど。 一番大きな理由は。

京介「……桐乃、俺はそれでも反対だよ。 でも、最終的にはお前が決めることだしな。 悪かったよ、説教みたいになって」

京介はそう言うと立ち上がり「風呂に行って来る」と言って部屋を後にした。

……なんだっての。 もう少し引き止めてくれてもよくない? なんて、思う。

ワガママなのかな、やっぱり。

でも、あたしは。

あたしは京介といつまでも暮らしたい。

一応……あたしが高校を卒業するまでの学費とかは、払ってもらっている。 お父さんとお母さんに。

でも、それがあたしの場合は高校まで。 それなりに貯金もあるけど、大学へ進学ってなると……あたしの貯金だけじゃ、ちょっと厳しい。

これからの生活費とか、そういった物も含めて。

だから、頑張らないと。

京介の為にお金を稼いで、京介の為に仕事して。

京介の為になら頑張れる。

なのに、どうして今は喧嘩みたいになってしまっているのだろう。

これだと本末転倒じゃん。 もう少し上手く出来たんじゃないかな、あたし。

桐乃「……布団いこ」

エロゲーもやる気分じゃない。 今日は、とにかく寝よう。

時間の経過が解決してくれる問題では、無いけどね。

次の日も、その次の日も、京介とする会話が減っているのは明らかだった。

違う、避けているのは多分あたし。 京介はいつも通りに接してくれているのに、あたしが素っ気無い返事ばかりをしているから。

こんなあたしでも、あたしはあたしだ。

そして嫌気が差しているときでも、京介は言ってくれる。

「お前、落ち込んでるけどさ。 俺は全部の桐乃が好きだから。 俺はそんなんじゃお前のことは嫌いにならねえよ」

って。

一番心配していることをフォローしてくれる。 なんとも無い様な顔をしながら。

どれだけあたしのことを分かってくれているのだろう。

そしてどれだけあたしに優しいのだろう。

本当に、全部全部あたしのワガママだってのに。

なんだかもう、どうすれば良いのか分からなくなってしまいそうだ。

京介が言う様に、大学に行けば良いのか。

でも、それだと金銭面で厳しい。 大学で時間が出来る分を仕事に回せば良いんだろうけど、それだと本職として働いた方が、遥かに時間は作れる。

一番大事なのは、何だろう。

決まってるよね。 一番大事なのは、京介。

そんなのはもう、とっくに分かっているはずなのに。 こうして未だに悩んでいる。

今は家に一人。

京介は大学が夜まであるらしい。 結構あるんだよね、そういうことが。

そんなとき、電話が鳴った。

発信者は、黒猫。

こんな気分のときに話したい相手では無いけど……。

でも、誰か人の声が聞きたかった。

桐乃「もしもし? なんか用?」

「思った以上に元気そうじゃない。 良かったわ」

こいつがいきなりそう言うってことは、知っているってことだろう。

桐乃「……京介からなんか聞いてるってことね」

「そうよ。 あなた、すぐ海外へ逃げようとするじゃない。 だから止める為に電話をしたのだけれど」

桐乃「逃げないっての。 今回は」

「なら良いわ。 それで、あなたはどうするつもりなのよ」

桐乃「……モデルの仕事するつもり。 京介には反対されてるケド」

「何故?」

桐乃「京介の為に……かな」

「それで、その結果……今は若干喧嘩気味になっているのね」

桐乃「……そーゆうこと」

「ここまで見事な本末転倒は中々無いわよ? で、そうなっても止めない理由は?」

桐乃「お金だってーの。 こんなことならブルーレイ全巻店舗ごとに買うんじゃなかった……って後悔中」

「あらあら。 滑稽だわ」

桐乃「うっさい! だって店舗ごとに予約特典とか付けられたら、全部回るしかないっしょ!」

「……その情熱は素晴らしいわ。 情熱だけね」

「で、冗談話はそこそこにして本題に入りましょうか」

「あなたはどうしたいの? 桐乃」

あたしがどうしたいか。 それは。

桐乃「……仲直りしたい。 京介と。 そんで、一緒に居たい」

「なら、どうすればいいと思う?」

桐乃「それが分かれば苦労しないって。 てか、あんたも反対なワケ? あたしが働くっての」

「わたしはどちらでも良いわ。 あなたと遊ぶ時間は確実に減るだろうけどね」

桐乃「あたしが大学行った方が減るんだって。 お金の問題はやっぱりあるし」

「……ちょっと待ちなさい」

「それ、あなた本気で言っているの?」

桐乃「はぁ? 本気で言ってるに決まってるでしょ。 お母さんともお父さんとも、喧嘩みたいになっちゃったんだし」

「いえ、そういうことでは無くて」

桐乃「ならどうゆうこと?」

「……ああ、なんとなく分かったわ。 そうね、これ以上わたしは何も言わない方が良いかもしれない」

桐乃「……全く意味分からないんですケド」

「あなたが今すべきこと、教えてあげる」

「京介と話し合いなさい。 それだけよ」

桐乃「それはしたんだって。 京介も最終的には納得してくれそうだったケド……」

「心の底から?」

桐乃「そう言われると……違うと思う」

「なら話し合いなさい。 お互い、心の底から納得できるようになるまで」

桐乃「……」

「では、わたしは妹たちの面倒を見ないといけないから、さようなら」

そう言い、黒猫は電話を切る。

……話し合いをしろ。 ね。

それもお互いが納得できる形で。

それってつまり、あたしか京介のどっちかが引かないといけないってことだよね。

お互いに譲れないところはあるだろうし、上手く行くとは思えないんだけど。

ぱちん、という音が聞こえた。

目を開けると、目の前に京介。

桐乃「……ちょ、なに?」

あたし、いつの間にか寝ちゃってたのか。

京介「桐乃、もう一回話そうぜ。 お前もそう思ってるんじゃねえかなって、思ったんだけどさ」

……あんたはエスパーかっつーの。 怖い怖い。

桐乃「良いよ。 あたしは」

時計に視線を向けると、既に夜。

ご飯も作って無いし、お風呂の準備もしていない。

何やってるんだか、全く。

京介「意見……つうか、意思は変わってないよな。 仕事したいっての」

桐乃「うん……変わってない。 卒業したら、働きたい」

京介「俺もお前の話、まともに聞いてなかったから悪かったよ。 黒猫から電話とか、来たか?」

桐乃「来たよ。 京介が相談したんだろうなって思ったけど、やっぱそうだったんだ」

京介「まあな。 で、そしたらついさっき電話で言われちまったよ。 「あなたたちは本当にそっくりね」って」

桐乃「……そりゃ、兄妹だし」

京介「だな。 はは」

京介と話していると、理由は分からないけど安心できた。 全てが上手く行くような、そんな感じがした。

京介「で、一番肝心なこと聞いてなかったんだよ。 俺は」

桐乃「……あたしも、それは話してなかった気がする。 一番大事だったのに」

京介は優しく笑うと頷き、口を開く。

京介「桐乃、仕事をしたい理由ってなんだ?」

桐乃「……あたしは」

桐乃「あたしは、京介ともっと一緒に居たい」

桐乃「だから、働きたいの。 あたしの貯金だけだと厳しいと思うから」

はっきりと言う。 京介の顔をしっかりと見ながら。

すると、京介は立ち上がり、あたしのすぐ横に腰を掛けた。

京介「……やっべ、なんか笑えてきた」

桐乃「それはちょっと意味分かんないだケド」

京介「はは、桐乃」

言い、あたしを抱き寄せる。 反抗する気もせず、あたしは京介に身を委ねた。

桐乃「……なに?」

京介「ちょっと待ってろ」

……もうちょっと抱き締める時間あっても良くない?

あ、違う違う。 ついそう思ったけど、今はそんな場合じゃないっての。

桐乃「……」

あたしは黙って、京介を見る。 京介はいつも勉強をしている机のところへ行き、引き出しを開けた。

そこからひとつの手帳を取り出し、あたしの元へと戻ってくる。

京介「俺だって、ただ大学行ってお前と遊んでって繰り返してるわけじゃねえんだよ。 沙織の紹介でバイトしたりしてるしさ」

京介「で、お前はさっき言ったよな。 「あたしの貯金だけじゃ厳しい」って」

桐乃「……うん」

京介「馬鹿かよ。 俺のも使えば超余裕だっての。 今まで趣味なんて殆ど無かったから、結構あるんだからさ」

京介が渡してきたのは通帳。 そして、京介はあたしの頭の上へと手を置く。

暖かくて、しっかりとした手。

京介「つか、お前は最初にそれを言えって……何かすっげー理由があんのかと思ってたじゃねえか。 今度は本気でそれに打ち込みたい、だとかさ」

京介「……ああいや、俺は別にお前が本気でやっていないって言ってる訳ではねえぞ? いつだって本気でやってることくらい、知っているし」

桐乃「分かってるよ、京介。 ……分かってる」

桐乃「ほんとに……いいの?」

聞くと、京介は即答。

京介「おう」

桐乃「……ひひ」

馬鹿みたいじゃん、本当に。

黒いのが言っていたことの意味が、分かった気がする。

桐乃「でも、もう少し引き止めてくれても良かったでしょ! あんなあっさり引き気味になっちゃってさ」

京介「おおう。 びっくりした。 急にいつも通りに戻るんじゃねえっての……」

京介「まあ、なんていうか」

京介「……恥ずかしくて」

頬を掻きながら、京介はそう言う。

あたしは今のままじゃ厳しいと思って、働こうとして。

京介からしたら、それは問題ではなかった。

……でも、それだと京介が働くのを反対した理由ってなんだろう?

それが気になり、聞いてみた。

桐乃「京介が大学に行けって言ったのって、どーせあたしが海外に行くのを嫌がってとかでしょ?」

京介「……あー。 そうじゃないんだ」

京介「俺はな、あれだ」

そして、こう続けた。

京介「……単純に桐乃ともっと遊びたかったからなんだよ。 そんな自分勝手な理由で、お前の意思を曲げることなんてできねーって思って」

……たったそれだけ!?

桐乃「だ、だからあんな簡単に引いたっての!? なにそれ!!」

京介「し、仕方ねえじゃん! お前が超真剣な顔して言うからだからな!!」

桐乃「……はぁあああ」

……どっと疲れが押し寄せた感じ。

何やっているんだろ、あたしたちは。

京介「黒猫が呆れるのも無理はねえな……。 下手な漫才見せられた気分だろ、あいつ」

桐乃「……ひひ。 かもね」

京介「で、どうすんだ」

京介は確認を取るように言ってくる。

あたしはそれに答えた。 小さなすれ違いから生まれた今回の問題を修正する答え。

桐乃「大学行くよ。 大学に行って、京介といっぱい遊ぶ」

京介「そうか。 へへ」

そうだ。 どうせ行くなら同じ大学に行くとしよう。 で、毎日一緒に大学行ったりしちゃおう。

京介と一緒なのは一年だけだけど、それでも少しでも一緒に居られる時間は多い方が良いし。

桐乃「……それにしても、さっきの理由は酷くない?」

京介「そ、そうか? お前と一緒にめっちゃ遊びたいっていう俺の気持ちだぜ!」

桐乃「……」

京介「そんな冷めた目で見るなよ……泣くぞ」

桐乃「だって、そこはいつかみたいに「桐乃が居ないと幸せになれねえ!」ってカンジで格好良く言ってよ」

京介「……お前と毎日遊びたい!」

桐乃「そうじゃないっての」

言い、軽く京介の頭を小突く。

京介「まずはそうだな、今日は月が綺麗に見えるくらい晴れてるから駄目だ。 雨降ってねえと」

桐乃「天気の問題だったの!?」

京介「はは、冗談だっての」

……最後くらい格好良い台詞言ってくれても良いのに。 ったく。

でもそれが京介なのかもね。

桐乃「よし、なんかすっきりしたかも。 お風呂入ってくるね」

京介「それって、一緒に入ろうって意味か?」

桐乃「違う! 今のはマジで違うから!」

京介「ってことは、別の日はそうだってこと?」

桐乃「……っ!」

ああ言えばこう言うし! なんかムカつく!

京介が言ったそれは否定しないでおくけどね。 否定しないでおくけどチョームカつくっての。

桐乃「お風呂!」

あたしは言い、逃げるようにその場を後にする。

京介は笑っていて、それが何だか恥ずかしくなってきてしまう。

京介「あー、そうだ。 桐乃」

桐乃「……今度はなに?」

若干不機嫌顔で振り向く。

京介「お前、すっかり忘れてるみたいだな。 丁度良かったぜ」

言うと、京介は綺麗に包装された箱をあたしに渡す。

桐乃「……へ?」

京介「バレンタインデーのお返し。 それとも「あーん」ってした方が良かったか?」

京介は言うと、あたしの頭を撫でる。

顔が赤くなるのを感じて、あたしは俯きながら、思い出した。

今日は3月14日。 ホワイトデーだ。


返す物 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

>>537-539
538の前なにか抜けてる?

>>546
そこは少し分かりにくいかもしれませんが

京介がふざける

桐乃が京介の頭を小突く

京介が重ねて冗談を言う

といった流れになってます。
ちなみに京介の台詞の月が綺麗に~~は、本編の京介と桐乃の話し合い(京介が桐乃を引き止めた時)時の天気を持ってきてのことです。

私立の医学部でも行くつもりなのか

>>547
解説サンクスです、
「桐乃が居ないと幸せになれねえ!」って言った時の天気って事ですね。
あの時みたいに雨が降っていないと…ってはぐらかしたと。

それと「乙」…さっき書き忘れた;;;

むしろ大学に進学すると3年は別行動になるから、
1年間主婦に専念orバイトして京介と同時期に同じ場所に就職って展開はありですか?

京介の貯金はいったいどれくらいなんだろう

>>548
これからの生活費なども含まれてるので、そこら辺は適当な解釈でお願いします。

>>550
本編のSSの方できりりん氏は大学へ行っているので……。 その展開は無いです。 ごめんなさい。

>>551
高校生の頃、黒猫さんと付き合っていた時にぽんっと数万出そうとした京介さん。
結構貯金がありそうですよね。


それと、勢いで短編書いてたら京介氏がきりりん氏の足を舐めるっていう変態的SSが出来上がったんですが、これって投下しちゃって良いんですかね。
まだ少し先の話ですが。

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

ここには変態しかいないのか!

投下致します。

今日は4月1日。 エイプリルフール。

去年に引き続き、あたしは京介を騙そうと少し前から計画していた。

今は朝、京介はまだ寝ている。

黒猫にも沙織にも、話は事前にしてあるし、完璧完璧!

で、あたしは京介の上に跨り、いつもの様に起こす。

ぱちん、という軽快な音が鳴り響き、京介は驚いて目を開ける。

桐乃「京介、人生相談」

京介「……この流れは久し振りだな」

あたしは京介の隣に座り、京介は眠そうにしながらも起き上がる。

よし、ここからが本番。

桐乃「……あのさ」

桐乃「あたし、喜べばいいのか分からないんだケドね」

京介「ちょ、ちょっと待て桐乃。 なんでそんな神妙な空気を出してるんだよ? 今回の人生相談って、そんなヤバイ物なのか……?」

桐乃「……うん。 大事なこと」

京介は唾を飲み込み、あたしの言葉を待つ。

……良い感じじゃん。 京介すっかり空気に飲まれてるっぽいし。

桐乃「……子供が出来たの」

京介「は、はぁ!? 子供って……お前、子猫……のこと?」

桐乃「ち、違うって!」

京介「じゃあ……子犬、とか?」

桐乃「そうじゃないっての! ほんとのほんとに子供。 その……京介とあたしの」

京介「だってそういうことはしてねえじゃんか!? そりゃ……それに近いのはあったかもしれないけどさ」

桐乃「ゆうなッ!! で……どうすればいいのか分からなくて」

京介「……マジかよ」

京介は頭を抱え、困惑した表情。

桐乃「嬉しくないの?」

京介「嬉しいけどな! 嬉しいけど……」

京介「正直言って、俺もどうすりゃ良いのか……って感じだよ」

桐乃「……そか」

桐乃「……く、ふひっ」

京介「ど、どした? 急に笑い出して」

ダメダメ。 さすがに可哀想に思えてしまう。 そろそろネタバラシしておこう。

桐乃「二年連続ー! エイプリルフールでしたぁ!」

桐乃「ふひひ。 きりりん大勝利ー!!」

京介「お、お前ッ!! 嘘だったのか!?」

桐乃「だってしてないのに出来るワケ無いじゃん。 マジ顔で心配してくれてありがとね~。 ひひ」

京介「て……てめえ……」

あれ。 京介の目が怖い。

京介「覚悟しろ桐乃ぉ!!」

京介は言うと、あたしに飛び掛る。

当然あたしは後ろに倒れて、京介はその上に馬乗り。 で、両手は頭の上で京介の左手に抑えられてる。

桐乃「あ、あんたなにしてんの!? ま、まさか本当に子供を……」

京介「作らねーよ!!」

桐乃「……作らないの?」

京介「いや、そうじゃなくて……今はまだ」

京介は言うと、若干恥ずかしそうにあたしから顔を逸らす。

いやいや、あたしもかなり恥ずかしいんですケド。

京介「じゃねえ! 今はそういう話じゃねえっての!」

桐乃「じゃ、じゃあなによ? 妹の上に馬乗りで乗って、両手拘束して、何する気?」

京介「へへへ。 お前、脇腹弱点だったよな」

……それはマズイから! てか、京介に触られると本当にヤバイんだって!

だけど言えない! あんたに触られると、とか恥ずかしすぎだっての!

京介「……お前なんか嬉しそうだな」

桐乃「は、はぁ!? あたしのどこが嬉しそうに見えるワケ!? チョーキモイんですケドぉ!」

京介「顔にやにやしてんぞ。 自分で分かってないの?」

ま、マジ? そりゃ当然京介にべたべたされるのは嬉しい……もう本当にめちゃくちゃ嬉しいけどね。 だけどそんな顔をあたしがしてるって?

無い無い無い無い! 絶対無い!

桐乃「ほ、本当に?」

京介「いやエイプリルフールだけどな」

桐乃「~~ッ! このバカ! サイアク!」

京介「言っとくけど、最初に仕掛けてきたのはお前だからな。 って訳で覚悟しやがれ」

そう言うと、京介はあたしのお腹を片手で弄る。

……てか、直接服の中に手入れてきてない!? 死ぬって! それは死ぬって京介!

桐乃「……ひい……ひい」

京介「楽しそうだな、桐乃さんよー」

桐乃「ぜ……全然楽しくない……」

京介「そうか」

京介は言い、あたしのお腹に指で触れる。

桐乃「ふ、ふひひ……」

京介「……楽しそうだな?」

桐乃「……ちょ、ちょっとだけね」

京介「はは、そうかよ」

言いながらあたしの顔を撫でる。 そんなことをしながら、あたしの顔を京介はじーっと見つめてくる。

……超恥ずかしいんですケド。

桐乃「な、なんだっての」

京介「……一応、騙された俺の負けだしさ。 お前にプレゼントあげようかなって思ってたんだ」

桐乃「マジで!? なにくれるの!?」

京介「そ、そこまで期待の眼差しを向けられる様な物でも無いぞ……? 先に言っておくが」

桐乃「大丈夫だって! 京介がくれる物ならなんでも嬉しいから!」

京介「……そっか。 ありがとよ」

い、勢いに任せてヘンなことを言ってしまった気がする。

……落ち着け! 落ち着けあたし! そ、そうだ。 いいこと思いついた。

今日ってエイプリルフールじゃん? だから、あたしがこうやって考えていることも全部嘘。 そういうことにしちゃおう。

ついでに、さっき言った「京介がくれる物ならなんでも嬉しい」ってのも嘘ってことにしよう。 うん。

桐乃「で、なにくれんの!?」

京介「……実はさ、今日アキバでメルルのイベントがあるんだよ。 知らなかったろ?」

桐乃「メルルのイベント? うーん……確かに知らなかったかも」

京介「ふっふっふ。 俺の極秘ルートで入手した情報だからな。 お前が知らないのも無理はねえか。 ははは」

桐乃「沙織から?」

京介「……まあ、そんなとこ」

かっこわる! うーん、でもあたしの為に調べてくれたのは格好良い!

うんうん。 京介チョー格好良い! チョー惚れるって!

勿論、全部嘘ね。 嘘嘘。

桐乃「で、連れて行ってくれるの?」

京介「当たり前だろ。 俺はお前の何だよ?」

桐乃「う~ん。 奴隷?」

京介「……へいへい」

よし! 京介とデートきたぁああああああ!!

メルルもそりゃ嬉しいよ。 だけど京介と二人っきりで出掛けられるだけでもう充分すぎなんですケド!

ふひひ。 そうと決まれば準備しないと。 メルルのイベント終わっても色々回りたいしね!

そして、京介とそれから布団の上でお喋りをして、あたしたちは秋葉原へ。 まずはお昼~。

京介「お前、なんか食いたい物とかあるか?」

……優しいなぁ。 些細なことでもあたしのことを優先してくれるとか、チョー嬉しい。

桐乃「特に無いかな。 どこでもいいよ、どこでも」

言いながら、あたしは京介の腕に絡みつく。

……ふひひ。

京介「な、なんだよ急に」

桐乃「なに? デートでしょ? 文句あんの?」

京介「ねえって……ちょっと驚いただけだ」

出来ることなら抱き締めて欲しいけど、場所が場所だしね。

家に帰ってからやってもらおっと。

そうして、そのまま少し歩いて近くの喫茶店へ。

メイド喫茶とかじゃなくて、普通の喫茶店。

京介「あーそだ……桐乃、後でちょっと大事な話あるから、聞いてくれ」

桐乃「今じゃダメなの?」

京介「で、出来れば飯を食い終わった後が良い」

桐乃「ふうん? ベツに良いケド」

京介「おう、サンキュー」

そんな会話をしている内にご飯が運ばれてくる。

桐乃「……」

京介「いただきます……って、どうした? 桐乃」

桐乃「へ? な、なんでも無い! いただきます!」

あたしが京介に「あーん」ってしようと思ってたなんて言えないっつーの! バカップルみたいじゃん!

京介「そうか」

と、京介は言うとフォークでスパゲッティをくるくると巻く。 それは少し控えめな量で、京介ってそんなちまちまと食べるんだっけ? なんてあたしは思っていた。

京介「ほら、あーん」

桐乃「な、なななななな!? は、はぁ!? なに!?」

京介「なにって……そうしたそうな顔をしてたからだけど。 口開けろって」

桐乃「そんな顔はしてない!! ヘンな勘違いすんなッ!」

桐乃「……あーん」

京介「……お前なんか面白いな」

ニヤニヤしながら見ないでよ! むっかつくむっかつく!!

そりゃあ、だって京介が折角やってくれたんだし……断るのはあれじゃん。 だからこれはあたしの優しさだっての。 ふん。

……あ、今日はエイプリルフールなんだ。

京介優しいって! あたしが思ってることちゃんと汲み取ってくれるし……もう毎日惚れ直しちゃうんだケド! マジで!

桐乃「……うっさい。 言っとくケド、あたしもあんたに今のやるから」

京介「へいへい」

京介は言い、あたしの顔をじっと見つめる。

……なんか、今日は先手を取られてばかりな気がするよね。

桐乃「……あーん」

京介「あ、あーん」

桐乃「おいし?」

京介「……まあ」

桐乃「あたしが食べさせてあげたのに「まあ」ってなに?」

京介「……超美味い。 死んでも良いかもしれない」

桐乃「……ふひひ~」

あー恥ずかしい。 でも、外だしこの辺にしておかないとマズイよね。

……家に帰ったら甘えちゃおうかな。

そんなムズムズとした感情を抱きながら、昼食を終える。

桐乃「あ、そーだ。 さっき言ってた話ってなに?」

ご飯を食べ終わり、一息。

紅茶を飲みながら、京介に先ほどのことを聞く。 やっぱり気になっちゃうし。

京介「ん、あー。 あれか」

京介「……実はだな、桐乃」

京介はゆっくり、続けた。

京介「今日のイベント、女性はコスプレしないといけないんだよ。 会場に入るには……な」

……。

桐乃「あたし、男で通るかな?」

京介「いや絶対無理だと思う」

桐乃「く……」

桐乃「で、でもそんな衣装持ってきて無いし! 無理だって!」

京介「それは心配いらないぜ。 そんなこともあろうかと、俺はお前のネコ耳ネコ尻尾メイド服を持ってきているからなぁ!」

そう言うと、京介はカバンからそれを取り出す。

桐乃「あ、あたしの引き出し漁ったっての!? 何してんの!?」

京介「……お前って、結構エロい下着履いてるんだな」

桐乃「へ、変態!! さすがに変態すぎ!!」

京介「ば、馬鹿。 声がでけーよ。 冗談に決まってんだろ……出来る限り見ないようにはしておいたから」

……ヤバイ。 恥ずかしい。 顔が熱い。

京介「で、どうすんの?」

桐乃「……ここまで来て、引くワケにはいかないっしょ」

もう、決意を無理やり固めるしかなかった。

京介「……やっぱ、お前超可愛い」

桐乃「う、うっさい! てか、ちゃんとあたしの服持っててよ。 無くしたらこのままの格好で地元とか……死ねる」

京介「任せとけって。 つうか、さっきからお前が超寄り添ってくる所為で歩き辛いんだけど」

桐乃「仕方ないでしょ! こんな格好で……いくらアキバって言っても、恥ずかしいんだっての」

いちお、メイド服を着た人は結構居るには居るけど。

こんなネコ耳とか尻尾とか、マジで死にたくなってきた。

京介「……もうちょっとだから、な?」

京介は言いながら、あたしを隠すように腕を回す。

……はぁ、全身の力抜けちゃいそうなんだけど。 もし本当にそうなったらどうしてくれるっての。

もう、なんでこんなずっと心臓ばっくばくなってるワケ? 明らかに寿命縮んでるでしょ、これ。

桐乃「……うん」

あたしは京介の服を掴み、顔を隠すように埋めて、一緒に目的地まで歩いて行った。

京介「よし、着いたぜ」

桐乃「着いたって……レンタルルーム?」

京介「おう。 ここの一室で、やってるらしい」

桐乃「……ヘンなイベントじゃないよね? その、エッチな」

京介「ちげえよ! もしそうだったら俺が守ってやるっての」

桐乃「……ありがと」

今日、もう何回ドキってしたか数え切れないほどなんだけど。

京介「ほら、行くぞ桐乃。 楽しもうぜ」

桐乃「ひひ……うん!」

そして、ひとつの部屋の中へと入る。

中は真っ暗で、部屋の壁に掛けてあるスクリーンからの光りだけが照らしていた。

京介「ここ、椅子あるから座ろうぜ」

桐乃「う、うん」

京介「……怖いか?」

桐乃「……ちょっと」

京介「んじゃ、ほら」

京介はそう言い、あたしの両手を両手で掴む。 しっかりと、離さない様に。

ヤベー! このシチュやばくない!?

ここでキスされたら、あたし多分、気を失う自信がある。

暗くて良かった。 今の顔、相当だらしないことになってそうだし……ね。

京介「……桐乃」

京介が突然、優しい声であたしに囁く。 耳元で、息が当たるくらいの近くで。

桐乃「ど、どしたの?」

京介「……好きだ」

桐乃「……うはぁ」

思わずヘンな声が出ちゃった。 いやもうそんなのすらどうでも良い。 もう無理無理! 我慢できない! 京介大好き! 超好き!!

は、早くキスしてよ!! これ以上焦らされたら、泣きそうなんだけど!!

そう思ったとき、部屋が明るくなる。

桐乃「へ、へ?」

部屋の中には人影が1……2……。

あたしと京介を合わせて、4人。

メルルのコスプレをした黒猫と、あるちゃんの格好をした沙織。

桐乃「な、え? ……ん?」

あたしが何が起きているのか分からずにヘンな声を出している間にも、事は進む。

まず、スクリーンにビデオカメラで撮ったような映像が流れ始める。 多分、メルルのPVをパロった物。

メルルの格好をした黒猫と、あるちゃんの格好をした沙織と、何故か漆黒の格好をした京介。

あるちゃん巨人すぎでしょ。 いやいや、そうじゃなくて、あれ?

あたしが状況を飲み込めずにいても、映像はどんどんと進む。

やがて本人たち的には激しい戦いを繰り広げた後、メルルが泣きながら漆黒を杖で突き刺した。 いやいやなにコレ。

ていうか、黒猫マジ泣きじゃん! そんな漆黒を倒すの嫌だったらなんであんたその役やってんの!?

京介「つうわけで桐乃、今日はエイプリルフールだ」

桐乃「……は、ははははははは」

黒猫「……壊れた?」

沙織「壊れましたな……」

京介「これに懲りたら、俺を騙すのはやめるんだな! はっはっは!」

だ、騙されたぁああ!? て、ってことはだよ、今あたしがしてるこの恥ずかしい格好も。

桐乃「こ、この服って」

京介「そりゃ、そっちの方がお前の可愛い顔が見れるしな」

桐乃「……メルルのイベントって」

京介「このことだよ。 一応、イベントだろ?」

桐乃「あ、あんたら……!!」

あ、ありえない!! あたしが超嬉しそうにしてたのも、京介は内心ニヤニヤしながら見てたっての!?

……このなんとも言えない感情。 今すぐ時間を巻き戻したい。 てゆうか、今日のあたし恥ずかしすぎる。

黒猫「それより桐乃。 とりあえずその垂れているよだれを拭いた方がいいわよ」

桐乃「な、な……」

なんでそうなってるの? と言おうとしたけど、うまく言葉に出ない。

沙織「それはきりりん氏が大好きな方に、耳元で愛を囁かれてしまっては……仕方ありませぬ」

……くおおおお!! 顔から火が出そうってこんなことを言うの!?

桐乃「あ、ああああああ……」

顔を隠すあたし、そんなあたしを京介はゆっくり抱き寄せた。

京介「……わり、そこまでするつもりじゃなかったんだけど……お前のこと見てたら、つい言いたくなってさ」

そんなことを言い、あたしの頭を撫でる。

……うへへ。

これはこれでありかもしれない……。

京介「沙織、黒猫。 ちょっと席外すな、悪い」

黒猫「構わないわ。 その間に、わたしたちは着替えておくから」

沙織「ええ。 問題無いでござる」

京介「ほら、桐乃。 行くぞ」

言うと、京介はあたしを引っ張り部屋の外へと連れ出す。

桐乃「い、行くって?」

京介「お前、ちょっと落ち着いた方が良いだろ。 それに……ちゃんと謝りたいし、こんなことしておいてあれだけど」

桐乃「……分かった」

桐乃「そ、それで。 どうしてくれんの!?」

部屋の外へ行き、少し人気が無い場所へ移動。 それから会話。

京介「言っとくが、お前の嘘だってひっでえからな!? 妊娠したとか俺ぶっ倒れててもおかしくねえぞ!?」

桐乃「ふ、ふん……」

京介「でもまあ、俺もちょっとやり過ぎたかもな……だけど、恥ずかしがるお前すっげえ可愛かったぞ」

桐乃「そ、そんなことは聞いて無いッ!!」

ありがと! ありがと京介大好き! 出来ればもっと言って欲しい!!

京介「ごめんごめん。 ああ、そうだ」

京介「桐乃」

京介は言い、一歩二歩、あたしに近づく。

桐乃「な、なに?」

京介「ここなら人目ねえし、黒猫にも沙織にもばれないから」

言うと、京介はあたしを抱き寄せ、あたしの唇を奪った。

……悔い無し。

桐乃「ふ、ふひひひひひ。 きょ、京介ぇ」

京介「お、おい? お前どうしたの……?」

積み重なりすぎて、我慢できない! もうさすがに無理だって!

桐乃「もっかい、もっかいチューして。 えへへ」

京介「わ、分かったよ……」

桐乃「ふひひ」

京介は再度あたしに近づいて、キス。

あたしはそんな京介の首へと腕を回し、絶対に離さないようにしっかりとホールド。

ああ、頭おかしくなっちゃいそう。

京介「……んー!?」

あたしがいつまでも離さないので、京介は少し慌てた様子。 いやもうこのまま一生過ごそう。 ね、京介。

ずっと、ずーっと京介とキスをしたまま、あたしは京介を抱き締める。

こうして一緒に居るだけで、頭はどんどんふわふわとして、ぼーっとしてきてしまう。

5分ほどそうした後、ようやくあたしは唇を離す。

京介「ぷはっ! お、お前さすがなげえよ!!」

桐乃「あたしまだ満足して無い。 じゅーでんして」

京介「ま、またか……?」

桐乃「うん。 早く。 んー」

京介の顔が段々と赤くなっているのに気付いた。 ひひ。 それでもしっかりあたしのこと、抱き寄せてるじゃん。

こうして、今年のエイプリルフールは終わる。

去年よりも多分、幸せな一日だっただろう。

いや、でも京介と一緒ってだけで幸せ度数的には最高値だから、比べられないかもしれないけどね。

ちなみに、この後キスを何回も何回もして、あたしと京介が正気に戻ったのは三十分後。 探しに来た黒猫と沙織に見つかるまでだった。


全部嘘だかんね 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

明日の短編、今日のお話の京介視点からの物となります。

おつ~

ところで、ここの世界観において京介がじゅーでんの意味を理解する機会ってあったっけ?
まあ、ここで出てないとこであったといわれればそれまでなんだケド

>>615
確か、じゅーでんという単語が出てくるのはこのSSですと初だと思います。
桐乃との雰囲気、状況から京介が察したと思って頂ければ。

もしかして本スレ見てない?
絵師さんが挿絵描いてたよ
前にあった雨の日の奴


じゅーでんってあのSSですか?

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

13時頃から投下致します。


>>621
俺妹系で書いたのは今回のが初なので、多分仰っているSSとは違うと思います。

>>620
今見たんですが、これマジですか。
1万回保存しました。
すごい嬉しいwwwwwwwww泣きそうwwwwwww

リクして頂いた方ありがとうございます!

絵師さんありがとうございますうううううう!

嬉しいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

このスレでのお礼になって申し訳ないですが、ありがとうございます本当に。

それでは、投下致します。

桐乃にぺちんと頬を叩かれて起床。

……そうか、きやがったなこいつ。 黒猫の読み通りってわけだ。 分かり易い奴。

桐乃「京介、人生相談」

さてさて、どんな嘘を吐くのかね、こいつ。

俺的にはどんな物でもうまく返せると思うぞ。 つうか、そうしないと本末転倒だからな。

あいつは去年、黒猫を仲間に引き入れて俺を騙してきた。

なら俺は今年どうするか。 そんなのは決まってる!

俺は沙織と黒猫を引き込んだのだ! 数には数だぜ、桐乃さん。

そして、何も知らない桐乃は言う。

桐乃「……子供が出来たの」

な、何言ってんだこいつ!? よりにもよってそのチョイスかよ!?

……ここで俺が「ならもう問題ねえよな?」とか言って桐乃に覆い被さったら、こいつはどんな反応をするのだろうか。

うう、気になるぜ……。 気になるけども、それで桐乃が「……うん。 良いよ、京介」とか言ったらぶっちゃけ我慢できる自信が無いしやめておこう。

とにかく、これは桐乃の嘘だ! そうと分かれば、なんかこの演技は面白く見えてくるな。

健気に俺を騙そうと頑張る桐乃を見ていたら、抱き締めたい衝動に駆られるぜ。

よし、ここは兄貴として……桐乃の彼氏として、器を広く持とう。

つまり、桐乃の嘘に騙されてやろう。 桐乃の為だしな! へへ。

そこから何度か会話を重ね、やがて桐乃は今回のことは嘘だと白状する。

俺は桐乃に飛び掛り、くすぐり開始。

桐乃「ちょ、やめて! ふひっ! ひひひひ!」

京介「やめてって、エロゲーだと「もっとして」って意味だよな。 つまりそういうことか」

桐乃「ち、ちがッ! 今のは……あはははは!」

……涙ぐみながら体を捩じらせる桐乃。

なんつうか、あれだ。

正直に言うと興奮してきた。 可愛すぎだろこいつ。

京介「違うってのもエロゲーだと「そう」って意味だよな? なんだよもっとして欲しいのか?」

桐乃「一緒に……すんあ! うひひひひ!」

必死に言葉を紡ぐ桐乃。 お前、暴れすぎてパンツ若干見えてるぞ。

京介「仕方ねえな……今日はこの辺で許してやるよ。 感謝しろよ?」

桐乃「か……感謝なんて……ぜったい、しないっての……はあ……はあ」

京介「ああそうだ。 今日エイプリルフールじゃん。 今の嘘な。 まだ許さない」

言うと、俺は再度桐乃の体を掴む。

桐乃「う、うそ! あたしのがウソだから! 感謝してる!!」

京介「え~? 聞こえないんですケドぉ~?」

桐乃「真似すんな! このバカ!」

京介「今のは聞こえたぜ」

言うと、俺は桐乃を再度くすぐる。

桐乃「や、やめっ! あ、あははははははは!!」

……桐乃をいじめるのちょっと楽しいかもしれん!

それから昼頃までは桐乃と布団の上で遊び、そんなこんなで秋葉原へと到着。

黒猫からは先ほどメールがあった。 なんでももう少し準備に時間が掛かるから、引き伸ばして来いとのことだ。

……折角だし、どっかで軽くお茶でもするか。 丁度昼飯時だしな。

京介「お前、なんか食いたい物とかあるか?」

桐乃「特に無いかな。 どこでもいいよ、どこでも」

桐乃は言うと、ニコニコ笑いながら俺の腕に絡みつく

……ううむ。 可愛い!

抱き締めてえ! 超抱き締めてえ! ああもう黒猫と沙織置いて家に帰ろうかな……。

いやさすがにそれは無い! 俺最悪すぎるだろそれは!

桐乃の奴め……可愛いのも程々にして欲しいぜ。

で、近くにあった喫茶店へと俺と桐乃は入る。

桐乃は軽食を頼み、俺はスパゲッティを頼む。

これからの予定を軽く話していたところ、料理が運ばれてきて。

京介「いただきます」

俺はそう言い、フォークを手に取る。

桐乃「……」

京介「って、どうした? 桐乃」

何やら無言で俺と料理を見比べているぞ。 何だ?

桐乃「へ? な、なんでも無い! いただきます!」

すげえ動揺してるな。

……ううむ。 なるほど。

こいつ、あれがやりたいのか。

京介「ほら、あーん」

俺はスパゲッティを桐乃が食べやすい様に少なめの量で巻き取り、桐乃の前へ。

桐乃「な、なななななな!? は、はぁ!? なに!?」

……焦りすぎだろ。 しかも、俺が何をやろうとしているのか分かってるはずなのに、白々しく「なにやってるの?」って目で俺のこと見てるし。

京介「なにって……そうしたそうな顔をしてたからだけど。 口開けろって」

桐乃「そんな顔はしてない!! ヘンな勘違いすんなッ!」

桐乃「……あーん」

開けるのかよ! 視線はどっかその辺行っちゃってるし、顔真っ赤だし、でもすげえ嬉しそうな顔だ。 なんていうか、あれだな。

京介「……お前なんか面白いな」

俺が言うと、桐乃はキッと俺のことを睨む。 で、その後すぐにデレっとした顔をする。 何を考えているのだろうか、すげえ気になるぞ!?

その後はそれを何度か繰り返し、昼飯を終える。

俺は用意していたメイド服を桐乃に手渡し、着てもらうよう頼んだ。

桐乃は当然のことながら超恥ずかしそうにしていたが……まあ、メルルのイベントということもあり、承諾。

……後でどうなることやら。 今更ながらに恐ろしくなってきたぜ。

で、そんなメイド服を着た桐乃は俺の方へ体を寄せて、顔を隠しながら歩いている。

尻尾がぷるぷるしてるぜ。 さ、さわりてえ……。

未だに恥ずかしそうにしている桐乃を見て、なんだか俺はそれを守ってやりたくなり、桐乃の体を隠すように腕を回す。

桐乃の方から何やらじゅるりという音が聞こえてきた気がするが、気にしないでおこう。

そして、それから桐乃をレンタルルームへと連れて行き、ネタばらし。

てか、電気を付けた瞬間、こいつマジですっげえ顔してたけど……。

だらけていたというか、どこか遠い場所を見ているような顔。

そんな桐乃をなんとか宥め、俺は桐乃を部屋の外へと連れ出した。

その時のことは……まあ、良いか。 大したことなんてなかったしな。 うむ。

それからは元の服装に着替えた桐乃と沙織と黒猫と、アキバの町をぶらぶらと回る。

色々吹っ切れたのか、桐乃も随分楽しんでいる様子で、それを見て少し安心したぜ。

だってさ、こいつの仕返しマジでこえーんだもん。 このまま忘れてくれると助かるからな。

そんな一日を終えて、俺と桐乃は家へと到着。 やはりここは、疲れが取れる。

玄関扉の前に着き、鍵を開けて、中へ。

桐乃は俺のすぐ後ろに居るのだが、何故か玄関で靴を脱ぐと、立ち止まった。

京介「おい、どうした?」

桐乃「……」

俯いて、必死に何かに耐えようとしているように見えるが。

京介「……桐乃?」

そう言い、俺は桐乃の顔をしゃがんで覗き込む。

桐乃と目があった瞬間……こいつは、一気にくだけた表情をした。

桐乃「へへ……えへへ」

……すげえ嫌な予感がする。

京介「……桐乃さん?」

桐乃「京介! 言っておくケド、あんたの所為だからね! あんたがあたしにチョー優しくしたり、抱き締めたり、ヘンなことばっかするからなんだから!」

桐乃は言うと、顔をがばっとあげる。 で、俺に抱き着いてきた。

京介「っと、危ねえって!」

桐乃「うっさい! あんたの所為なんだから、責任取れっての!」

京介「な、何がだよ? 俺、そこまでなんかしたか?」

聞くと、桐乃はこう答えた。

桐乃「した。 あたしを我慢できなくさせた。 言っとくケド、さっきのキスだけじゃ全然だかんね」

桐乃「ずっとずっと二人っきりになりたかったの! ずっと我慢してたんだから!」

マジか。 これあれだ。 絶対やり過ぎた。 こうなると……収まるまですげー大変なんだよな。

仕返しって問題じゃなかった。 違う方向で大変なことになっていたらしい。

前のあれだってそうだし。 なんだっけ、ポッキーゲームだよ言わせるな。

あの日、徹夜明けだってのに俺は全く寝れなくなってしまったからな。 桐乃は隣で気持ち良さそうな顔をして寝ていてるのに。

俺は結局二日連続徹夜で大学へ行く羽目になって、その日の内に桐乃に「ああいうのは休み前だけにしてくれ、お願いします」と土下座をして頼んだ。

渋々だが桐乃は納得してくれて、俺も超ハッピー。

だったんだが。

だったんだがな。

こいつの今の目。

……あの時と一緒だ。

桐乃「ふひひ、京介♪」

声色がちょっとキモイ! いつもの桐乃の声じゃねえ!

桐乃は俺にしがみつく。 足まで俺の腰に絡ませ、予想していなかった俺は慌てて桐乃を支える。

京介「お前なぁ……」

桐乃「なに。 軽いっしょ?」

いやそういう問題じゃない。 お前の体がべったりくっついて恥ずかしいんだよ!

京介「あ、あー。 俺あれだ、風呂入ろうと思ってたんだ」

桐乃「おっけ。 いこいこ」

京介「……へいへい」

言うと思ったが、俺としてはそのまま諦めて欲しかったぞ! 気が気じゃねえっての今の状況は!

で、風呂。

何も無かった。 何も無かった。 俺と桐乃の間には何も起きなかった。

なので、一緒に入った風呂については省略させてもらおう。

京介「……はぁ」

桐乃「どしたの? なんか疲れてるっぽいケド」

京介「何でもねえよ……」

俺が疲れているのは絶対にお前の所為だ! お前が風呂でもべったべったくっついてくるからだ!

京介「つうか、風呂上りで暑いんだけど……」

現在の状況。

俺は壁を背に座っていて、桐乃は俺の膝の上。

無論、こっちを向いて。

桐乃「あ、そだよね。 ごめん」

俺の言葉に桐乃は素直にそう言い、離れる。

なんだ。 てっきり「汗掻いたらまたお風呂はいろ」みたいなことを言うと思ったんだけど。

……ふうむ。

なんて思っている間にも、桐乃は俺の膝の上から立ち上がり、台所へ行く。

桐乃「京介、何か飲む?」

おお! 桐乃が超優しい!

京介「じゃあ、冷たい麦茶貰えるか?」

桐乃「うん。 おっけー。 ちょっと待っててね」

いいなこれ。 桐乃がこんな風にしてくれるのなら、真夏でも四六時中べたべたしてて良いくらいだぜ。

そう思ってた俺は多分、大馬鹿者だろう。

何故かって? 桐乃の奴、コップをひとつだけ持ってきたんだよ。

京介「お前、自分のは良いのか?」

桐乃「え? あたしも飲むよ? 一緒に飲も」

……そういうオチか!

桐乃「はい、どーぞ」

ちなみに桐乃、現在の場所は俺の膝の上。

京介「さ、さんきゅ」

俺はそう言い、氷が数個入ったコップを受け取る。 中には麦茶。 よく冷えていそうだし……まあ別に良いか。

そのままコップに口を付け、ひと含み。

桐乃「ふひひ」

瞬間、桐乃がデレっと笑う。

……なんだこの嫌な予感は。

桐乃「……」

俺のその予感は見事的中。 桐乃はそのまま俺にキスをしてきた。

で、俺の口を無理やり舌でこじ開けて。

当然、口の中には麦茶がまだ残っていて。

桐乃は俺の顔をしっかりと押さえ、その麦茶を自分の口の中へ。

俺は突然のことに驚き、されるがままだった。

桐乃「……ん。 ひひ、どう?」

……どうって何が!? 俺は今、どっちのことについての「どう?」という質問を受けているんだ!?

京介「う、美味かったぞ」

桐乃「ふひひ~。 妹とキスしてその感想はチョーキモイんですケドぉ」

ああ、どうやら先ほどの「どう?」は桐乃とのキスの感想だったらしい。 分かるかよ!

京介「そ、そういうお前はどうなんだ……?」

桐乃「あたし? あたしはね……美味しかったかな」

京介「……お前も一緒じゃねえか」

桐乃「あたしは麦茶が美味しかったって言ってんの。 だからキモイのは京介だけだから」

京介「へいへい……」

せこい奴だ。 全く。

桐乃「ねね、まだ暑い?」

京介「お前が俺の上に座ってるからな」

桐乃「そかそか。 なら仕方ない」

京介「ここをどくっていう選択肢はねえの?」

桐乃「あると思ってんの?」

京介「……無いですよね」

桐乃の場合、俺が選べる選択肢は無いのだ。 一直線の桐乃END直行と行ったところだろう。

……悪くないゲームかもしれない。

桐乃「そんじゃ、次」

京介「次……って、またやんのかよ!?」

桐乃「うん。 当たり前じゃん。 でもちょっとやり方変えるから」

このシーンを映像に取って、数年前の桐乃に見せてやりたいぜ。

多分、顔真っ赤にして「変態死ね!! このシスコン!!」とか言ってくるんだろうなぁ……。

しみじみそう思いながら、結論。

今とあんま変わらないな。

京介「……何してるんだ?」

桐乃はというと、先ほどのコップから麦茶を口に入れて……るのか?

ってことは、さっきは俺の口から桐乃に行ったわけだから、今度はその逆ということだろうか。

なんか、こんな冷静に状況を判断している俺ってすごくないか。

しかし、そんな俺の判断能力は鈍っていたようで、てんで的外れ。

桐乃「んー」

と言いながら、俺の方に少し顔を寄せる桐乃。

どうやら、今度はあんたからしなさいよということらしい。

俺はほんの少しの間だけ悩み、すぐに桐乃と唇を重ねる。 選択肢は無いんだ。

桐乃はちょっとだけ口を開け、俺の口の中へとそれを移す。

冷たくて、ツルツルとした感じ。

これって……氷かよ!

桐乃「……んー。 涼しい?」

桐乃は俺から唇を離し、そう聞いてくる。

京介「……」

なんか良い様にされていて腹が立ってきたぞ! いつものことかもしれんが……。

満足気にへらへらと笑っている桐乃に、再度俺はキスをした。

で、そのまま桐乃の唇をこじ開け、今の今まで俺の口の中にあった氷を桐乃の口の中へ。

へへ、俺だってやられてばかりじゃねえんだよ!

これに勝ち負けがあるのかは分からないけども。

そんな風に仕返しをした後、俺は桐乃から口を離す。

で、こう聞いてやった。

京介「どうだ? 涼しくなったか?」

桐乃「……」

桐乃は硬直。 数秒そうした後、表情が緩む。

桐乃「ぎ、ぎぶ」

そう言いながら、桐乃は俺にもたれ掛かった。

京介「お、お前……自分から散々やっときながらそれかよ」

桐乃「……あたしからなら平気なんだっての。 でも京介からとかマジ無理」

台詞だけ聞くと、すっげえ嫌われてるみたいに聞こえるな。

京介「そうかよ。 ま、今回は俺の勝ちでいいよな? 桐乃」

桐乃「……リベンジあるから、覚悟しといてね」

こいつ、基本的に倍返しだからな……。

うう、恐ろしい。

とは思いつつも、心のどこかで楽しみにする俺なのだった。


ごく一般的なエイプリルフールの過ごし方 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下致します。

桐乃「どう? もう付き合った?」

桐乃はそう言いながら、布団にうつ伏せで寝そべり携帯ゲームをやる俺の後ろから覗き込む。

京介「さっき丁度告白されて、付き合い始めたとこだな」

桐乃「あんたも中々慣れてきたじゃん? デートイベント、ちゃんとこなしなさいよね」

京介「へいへい」

桐乃「あたし的には、遊園地とか……後は映画館とかがオススメ。 でもやっぱり一番のお気に入りは自宅デートなんだよねぇ~」

楽しそうにそう語る桐乃。

俺は数日前、こいつからひとつのゲームを押し付けられ、それをこなしているところである。

タイトルは『彼(あなた)と彼女。 二人のLoveStory』。

要はギャルゲー。 昔、桐乃に借りていた『ラブタッチ』のような物である。

最初は乗り気じゃなかった俺なのだが、あの時と同様にやはりはまってしまったということだ。

とは言っても、俺は同じ轍を踏まない。 あれに比べたら全然はまっていないんだけどな。 むしろ先ほどの台詞は取り消そう。 俺はこんなゲームなんかには断じてはまっていない。

俺が同じ轍を踏むわけがない。 ということだ。

桐乃「で、で、で! ヒロインは誰にしたワケ!? さっき付き合い始めたって言ってたけどさ!」

……とりあえず、俺の上に乗るのを止めて貰いたい。 重いから。

間違えても「ちょっと桐乃、重いからどいてくれないか」とは言えんがな。 言ったら間違いなく殺される。

それは多分、桐乃では無くても……だろう。

京介「あー。 ヒロインね。 このキャラにした」

Kirino『やっほー。 お待たせ! 今日はどこに行くの? あんたがエスコートしてくれるんでしょ?』

桐乃「なんであたしそっくりなのにしてんのよ!! 調子乗んなッ!」

桐乃は言いながら、俺の上で跳ねる。 肺の空気が押し出され若干死にそう。

京介「だ、だって俺が他のを選ぼうとしたら「は?」みたいな顔をお前がするからじゃねえかよ! 説明書で見てただけなのに!!」

桐乃「だからってゲームでまであたしとデートしたいワケ!? キモっ!」

お前はこのキャラじゃねえだろうが! やっぱりお前二次元と一緒にしてるだろ!

あくまでも限り無く似ているだけだ。 口調とか名前とかがな。

京介「とにかくもう付き合っちゃったんだから、仕方ねえだろ!?」

桐乃「付き合うところまで行ったのに仕方ない、って言ったの? あんたこのKirinoちゃんに申し訳ないと思わないの? そーゆうこと言って」

名前まで一緒だとややこしいな……。

京介「わ、悪かった。 俺が間違ってた」

桐乃「ふん。 分かれば良し。 それじゃほら、早くデートしなさいよ」

京介「……りょーかい」

桐乃は納得したのか、居間に戻り雑誌を読み始める。

結局許してくれるのかよ。 何だったんだ今のやり取り。

Kirino『へえ、お兄ちゃんそんなコース考えてたんだ? たまにはやるじゃん。 ひひ』

ちなみにこれ、妹系ゲーム。 妹が五人居て、その中から相手を選ぶ感じ。

実際この主人公はすげえよ。 妹が五人とか……考えるだけで眩暈がするぜ。

京介「……うへへ、そんなこと言っても何もでねえぞこの野郎」

……そして俺は断じてはまっていない。

桐乃「京介ー。 ご飯できたよー」

居間の方からそう聞こえてくる。 もうそんな時間だったのか。

京介「はいよ。 もうすぐデート終わるから、したら行くわ」

Kirino『今日はありがと。 あんたにしてはまぁまぁ良かったよ』

京介「へいへい。 そりゃどうも」

Kirino『あの……それでさ。 お礼、あるんだけど』

ふむ。 さっき桐乃が言っていたデートコースにしたのは正解だったか。 イベントがあるってことね。

京介「つか、お礼ってなんだ?」

Kirino『……ちゅ。 いつもありがと、お兄ちゃん。 大好き』

京介「うぉおおおおおおおおおおおお!!」

桐乃「ちょっとうっさいんだケド!!」

お、おう。 思わず叫んでしまったじゃないか。

でも仕方ないじゃん。 桐乃そっくりのキャラが「お兄ちゃん」って言ってくるだけでも充分やべえのに「大好き」なんて言われたら叫ばずにはいられないっての!

Kirino『ふひひ。 また遊ぼうね、ばいばい』

その言葉を聞き、ゲーム終了。

俺は桐乃に借りているゲーム機を置くと、居間へと向かって行った。

桐乃「……なんか良いイベントあったの?」

京介「へ? ま、まあ……無かったと言えば嘘になる」

桐乃は少しむすっとした顔付き。

だけど、ちゃんと飯は食わないで待っててくれるんだな。

桐乃「へえ、どんな?」

京介「え、ええっと……キス的なアレ」

桐乃「もうそこまで行ったの? やるじゃん」

京介「結構やってたしな。 つうか軽くやり過ぎたかもしれん」

桐乃「良いじゃん良いじゃん。 で、感想は?」

京介「……なんていうか、あいつ最初の頃は「あたしの半径十メートルに入らないで」とか言ってたのに、今じゃ「ちょっと、なんで若干距離開けて歩いてんの?」って態度になって、可愛いというかなんと言うか」

京介「少し、デジャヴだった」

桐乃「……ふうん」

京介「ま、どっかの誰かとは違って「お兄ちゃん」とか言ってくれるけどな~?」

桐乃「あたしに言ってるでしょそれ! あたしがそんなことゆうと思ってんの?」

……言わないだろうな。 絶対。

京介「逆に言ったらびびるっての。 てか、お前なんか機嫌悪いか?」

桐乃「……はぁ? なんで?」

京介「なんとなくそう見えたって話だよ。 俺がゲームやりすぎたからか?」

桐乃「そうじゃないってーの。 てか、ベツに機嫌悪く無いし」

桐乃「……ま、良いや。 ご飯食べよ、ご飯」

京介「おう。 そうだな」

ここ数日、そんな感じで過ごしている俺たちだったのだが。

次の日の午後。 俺が部屋の扉を開けると異常事態が起きていた。

京介「ただいまー」

いつもの様に、言いながら扉を開く。

目の前に映し出された光景。

まず、桐乃。 にこにこと笑いながら玄関で待っていた。

格好は……これは後で説明しよう。 それよりもまず、こいつが最初に言った台詞だ。

桐乃「お、おかえり。 お兄ちゃん」

京介「……へ?」

桐乃「な、なあにぃ? そんな顔しちゃって。 あ、あはは」

……何だ? 何が起きた? こいつもしかして、頭でも打ったのか?

京介「びょ、病院行った方が良いか……?」

桐乃「は、はぁ!? ……ど、どしたのお兄ちゃん。 いきなりヘンなこと言っちゃって~」

一瞬すっげえ怖い顔してたぞ。 ていうか、今だって笑顔が引き攣っているし。

京介「……頭大丈夫か? 桐乃」

桐乃「もぉ~。 お兄ちゃん酷いってー。 あたしはいつも通りだよぉ?」

そういうノリなのか!? 俺もそういうノリにならないといけねえのか!?

京介「わ、分かった。 今この状況については何一つ分からないが……とりあえず分かったって自分に言い聞かせる」

京介「それで……桐乃」

桐乃「んふふ。 なぁに?」

き、気持ち悪っ!! そりゃあこんな妹が居たらそいつはすげえ幸せ者なんだろうけど、桐乃の場合はマジで気持ち悪い!!

京介「いやな。 今の今までツッコミ入れるのをすっげえ我慢してたんだけどさ」

京介「……その格好、どうしたの?」

桐乃「え? あ、あー。 これね」

言うと、桐乃はエプロンの裾を両手で軽く持ち上げる。

カーテシーとか言うんだっけ? この挨拶。 いやそんなのはどうでも良い。

京介「え、エプロンは分かるけどな……? お前、なんで裸なんだよ!?」

桐乃「は、裸ッ!? 裸なワケ無いでしょ!! 下は水着だし!!」

桐乃「……あ。 も、もぉ。 お兄ちゃんのエッチぃ。 あたしがそんなことするワケ無いじゃん」

……所々で素に戻っている辺り、今のこの状況は治る見込みがあるということだ。 良かった。

京介「だ、だって俺から見るとそう見えるんだから……仕方無いだろ」

京介「ま、まあ良いか……とりあえず、中入る」

桐乃「うんっ。 ほら、カバンあたしが持つよ?」

……うう。 気持ち悪い。

そして居間へ。 俺はそのままゲーム。

桐乃「お兄ちゃん、何か飲む? 喉乾いてるでしょ?」

とりあえず、その呼び方から治して欲しいぜ。 言われる度に鳥肌が立っているんだが。

京介「あー。 は、はは。 じゃあ、お茶でも貰おうかな」

桐乃「分かった! すぐ持ってくるね」

……あれ? なんだこれ、ちょっと良いかもしれない。

桐乃は小走り気味に台所へ行き、お茶を取って来る。

今回はしっかりコップが二つ。 片方はお茶でもう片方の手には水。

前みたいに口移しで……みたいな展開にはならないようで安心。 てか、片方は水?

京介「ん? 桐乃は水飲むのか?」

少し疑問に思い、俺は戻ってきた桐乃にそう聞いた。

桐乃「うん。 あたしは水で、お兄ちゃんはお茶ね。 はい」

にっこにっこ笑ってやがる。 薄気味悪いぞ。

少し変か……?

京介「おう、さんきゅー」

そうは思いつつも、俺は言い、桐乃からお茶を受け取る。

桐乃「どういたしまして。 あっ!」

桐乃は小さく悲鳴をあげ、バランスを崩し、持っていた水はそのまま俺に……。

ってちょっと待て。 お前今、明らかにバランス崩してなかったし思いっきりコップの水を俺目掛けて掛けただろ。

桐乃「あああー。 ごめんね、お兄ちゃん」

京介「……は、はは」

もう笑うことしか出来ない。 お兄ちゃん怖いよ。

桐乃「冷たかったよね。 風邪引いちゃうからほら脱いで」

京介「ちょ、ちょっと待て! 確かに着替えないといけないが、なんでお前は脱がそうとしてくるんだよ!?」

桐乃「だ、だってぇ。 あたしの所為でお兄ちゃんが風邪引いちゃったらイヤだし……そうなったのはあたしの所為だし。 責任取る」

京介「良い! 自分でやるから良い! マジで大丈夫!」

それから数分の間、ズボンを脱がされまいとする俺と、脱がそうとしてくる桐乃。 そんな攻防が繰り広げられるのだった。

……なんだこの図。

結果、俺はなんとか守り切り、風呂場へと向かう。

桐乃「あ、あたしも入ろうかなぁ~?」

京介「良い! 今日は良い!」

桐乃「……どうしてもぉ?」

京介「ど、どうしてもだ!」

こんな小動物みたいな奴と一緒に風呂なんか入ったら、正直言ってヤバイ。 今日の桐乃はいつもよりスキンシップを取って来るし、どうなるか俺でも分からないっての。

で、着替えを取る為引き出しを開ける。

京介「な、なんでお前の下着が俺のところに入ってんだよ!?」

び、びびった! 一瞬間違えたかと思ったが、明らかに俺がいつも仕舞っている場所で合っている。 桐乃の奴、間違えたのか!?

桐乃「あー。 えへへ。 お兄ちゃんと一緒のところが良かったの。 ダメ?」

京介「だ、駄目では無いけど……」

桐乃「ほんとに!? やったぁ!」

嬉しそうにぴょこぴょこ跳ねる桐乃。 こいつ、本当に大丈夫か。

京介「……まぁ、風呂入ってくる」

所々に仕掛けてあるトラップにびくびくしつつ、俺は風呂場へ。

桐乃「うん!」

そんな背中に掛けられる桐乃の元気良い声を聞き、俺は苦笑いをするしかなかった。

少し早めの風呂となってしまったが、まあ良いか。

湯船に浸かりながら、俺は考える。

……いやそうは言っても、考える必要もねえかもしれない。

あいつ、ゲームのキャラの真似をしてやがるな。

何故……かは、なんとなくだが分かる。 俺がゲームにはま……はまってないけど、ちょっとだけやり過ぎてしまった所為かもしれない。

ふうむ。

……いつも酷い扱いされてるし、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ仕返ししても良いんじゃね?

つっても、酷いことをするつもりは無いけどな。

少し、桐乃をからかってみるとしよう。

京介「……うへへ」

京介「……おお。 お前、そこで待ってたのかよ?」

風呂場から出て、着替え、洗面所を出る。 するとすぐそこで桐乃は待っていた。

桐乃「うん。 お兄ちゃんに早く会いたかったの」

京介「そうかそうか。 お前はほんっとに可愛いなぁ」

言いながら、ちょこんと座っている桐乃の頭を撫でる。

桐乃「な……!」

桐乃「……も、もう……い、いいいきなり撫でないでよぉ」

やべえ、普通に可愛いぞこいつ。

時々出てくる素の桐乃が、またなんとも。

京介「はは、悪い悪い。 行こうぜ、あっちで話そう」

桐乃「げ、ゲームは良いの?」

京介「なに言ってるんだよ。 こーんな可愛い妹が居たら、ゲームなんてしてる暇無いって」

俺は桐乃に笑顔を向けながら言う。 桐乃は顔を真っ赤にし、俯いてしまった。

京介「どした? 話さないのか?」

桐乃「……す、するケド」

京介「なら行こうぜ。 あ、なんなら抱っこしてやろうか?」

桐乃「だ……っこ!? ごほっ!」

京介「ほら」

言い、俺は桐乃に両手を差し出す。

桐乃は少し考え、やがて俺の体にしがみ付く。 見ると耳まで真っ赤になり、両手で俺の服をぎゅっと掴んでいる。

……超可愛いかもしれん。

俺はそんな桐乃の腰と背中に手を回し、持ち上げ、移動。

直接肌に手が触れている所為か、桐乃の体は少しだけ熱い。

俺も桐乃も移動の間は無言で、座らせたところでようやく桐乃は口を開く。

桐乃「お、お兄ちゃん……ありがと」

京介「気にするなって」

……こいつ、まだこれを続ける気だな。

良いぜ、俺にも考えがあるってんだ。

京介「ふう。 あー、なんか肩が疲れたな……誰かマッサージしてくれねえかな~?」

言い、桐乃の方をちらちらと見る。

桐乃「それってあたしを抱っこした所為だよね!? なら……あ、あたしマッサージするよ!」

……嬉しそうだな。 逆効果だったのだろうか。

京介「お、おう……じゃあ、頼む」

桐乃は俺の言葉を聞くと、すぐに俺の背中に回る。

で、俺の肩を掴み、マッサージ。

京介「な、なんか近くね……?」

桐乃「そんなことないってぇ。 いつもと一緒だよ?」

密着してるじゃねえかよ! ていうか、ていうかだな。

……胸が、俺の背中に当たっている。

それに、こいつやたら俺の耳元で喋る所為で、くすぐったい。

京介「お、お前……」

桐乃「どうしたの? お兄ぃちゃん♪」

声が甘ったるい! 囁くように言うんじゃねえよこいつ!

京介「……マッサージはもういい! 大丈夫!」

桐乃「そう? えへへ」

桐乃「じゃあ、次は何して欲しい?」

桐乃は言い、俺の正面へと回る。

桐乃「お兄ちゃんは、あたしに何をして欲しいの?」

桐乃は顔を近づけてきて、上目遣いで俺を見る。

こいつは止まる気が無いのか、もうすぐ目の前に桐乃の顔。

……この空気はマズイ! つうか、こいつ良くこんな台詞を言えるな!?

京介「あ、あー! 喉渇いた!」

桐乃「チッ……」

……すっげえ笑顔のまま舌打ちされた気がする。

桐乃「うん。 分かった! 持ってくるね」

まさか、また水を俺に掛けるなんてことはしないと思うが、一旦距離を置かないとヤバイ。

さて、どうしたらあいつは元に戻ってくれるのだろうか。

あいつが絶対にやらないようなことを頼めば、キレて戻ってくれそうではあるけど……。

桐乃が聞かないことって、何だろう?

ううむ。

桐乃「お兄ちゃん、お待たせ!」

声が聞こえ、そちらに視線を向けると桐乃。

相変わらずあの格好のままだが、このキャラのおかげで俺はなんとか正気を保てているのかもしれんな。

普段のツンツンした桐乃でこの格好をやられたら、俺なんて一発でやられているだろう。

でもまあ、恥ずかしい物は恥ずかしいが。

京介「ん、サンキュー」

桐乃「……ふひひ」

笑いながら、俺の顔をじーっと見てくる桐乃。

……調子乗りやがって!

京介「桐乃、頼みがあるんだけど」

桐乃「頼み? 良いよ、お兄ちゃん」

京介「……語尾に「にゃ」って付けて喋ってみてくれ」

桐乃「はぁ!?」

京介「ああ、嫌なら良いぞ? 桐乃がそうだってんなら、俺は諦めるさ」

俺の言葉を聞くと、桐乃は数秒考える。

考えた後、ゆっくりと頷いた。

……マジかよ!? 今のでさすがにキレるかと思ったのに!

く、くそ。 こうなったらヤケだ。 俺もとことんやってやる。

京介「おいおい。 ちゃんと言葉で言ってくれなきゃ分からないぜ?」

桐乃「わ、分かった……にゃ」

京介「……」

し、死んだかもしれない。 今一瞬、俺死んだかも。

桐乃「……ど、どうしたにゃ?」

ヤッベー! もう桐乃さん可愛すぎるだろ!? 一生こんな感じになってくれねえかな!?

いや、でもたまにこういうのが来るから堪らないんだよな。 うむ。

って納得してる場合じゃねえ! 桐乃、マジでどうやったら戻るんだ!?

京介「へへ……ちょっと頭撫でていいか?」

桐乃「……」

俺が言うと、桐乃は黙って頷く。 で、胡坐を掻いて座っている俺の上で丸くなる。

京介「……よしよし」

桐乃「……にゃあ」

襲ってもいいか、襲ってもいいのかこれ。 こいつノリノリじゃねえか。

桐乃「どうかした……にゃ?」

俺がとてつもない物と心の中で戦っているのを不審がり、桐乃はそう尋ねてきた。

俺、慌てて即答。

京介「な、なんでもねえ! てか、お前顔真っ赤だぞ? 本当に大丈夫かよ?」

桐乃「あ、あたしは大丈夫! ……にゃ」

そして、桐乃は続ける。

桐乃「でも……ちょっと頭痛いかもしれないにゃ」

京介「……そうだったのか? 悪い、全然気付かなかった」

桐乃「ち、ちがっ! ……そうじゃなくて」

京介「んだよ? まぁ……あーくそ。 とりあえず寝とけ、そのまま体調崩されたら、つまんないしさ」

桐乃「……ごめん」

京介「何謝ってるんだっての。 良いからほら」

桐乃「……」

黙ったまま、俯く桐乃。

……なるほど。 全部分かった。 そういうことか。

俺はそんな桐乃を殆ど無理矢理抱き抱え、布団まで運んで行く。

京介「何か食べるか? つってももうすぐ夜飯だけど……」

桐乃「だいじょぶ」

京介「そか。 今日は俺が飯作るからさ、お前は休んどけよ」

桐乃「そ、そのくらい平気だって!」

京介「良いから。 素直に言うこと聞けっての」

桐乃「……」

桐乃は返事をせずに、頷きもしない。

そんな桐乃の頭を撫で、俺は言う。

京介「一緒に寝てやろうか? へへ」

桐乃「……うん」

……ったく。 そこだけ素直になるんじゃねえっての。

京介「つうか、さっきまで「お兄ちゃんお兄ちゃん」言ってたのにどうしたんだ? 桐乃」

桐乃「あ、あれは……何でも無い」

京介「そうかい。 まぁ、別に良いけどさ」

そういう流れで、俺と桐乃は一緒に寝る。

俺は眠くは無かったので、桐乃が寝るまでの間だけだが。

しかし、こいつは一向に寝る気配が無い。

桐乃「……ごめん」

京介「何が?」

桐乃「色々、だよ。 ねえ、京介」

京介「んー?」

桐乃「……あたし、ヘンだった? 今日」

京介「そりゃ、まあな。 最初なんて本気で病院連れて行こうか悩んだっての」

桐乃「それはちょっと酷すぎ。 でも……酷いのは、あたしかも」

京介「なんで?」

桐乃「あのね、あたし……ウソ吐いた」

京介「……そうか。 どんな嘘を吐いたって?」

桐乃「具合が悪いって。 ウソなの」

桐乃「……全然平気だし、なんとも無いの」

そうかいそうかい。

知ってたさ、そんなことは。

京介「で?」

桐乃「……ごめん」

京介「馬鹿かよ?」

桐乃「怒ってるよね。 やっぱり」

京介「……」

俺は黙って桐乃の頭を撫でる。

桐乃「……何で。 あたしが悪いのに」

京介「確かに、お前が悪いのかもな」

桐乃「だったら!」

京介「でも、前に言っただろ。 お前がどれだけ悪かったとしても、俺はお前の味方だ」

京介「だから、俺は別に怒らない。 今回なんか、俺も悪いところあったかもしれねえし」

桐乃と遊んでいる時間は、確実に減っていたわけだしな。

……俺も大概、人のことを言えないよなぁ。 ゲームをやりすぎて、桐乃にこんなことをさせてしまうなんて。

桐乃「……」

京介「それに、妹の為に何か出来るなんて、兄貴にとっちゃ名誉みてーな物だっての。 それが嘘でも本当でも」

桐乃「……ごめん」

京介「だから謝るなって。 な?」

桐乃「ひひ。 うん……ありがと」

京介「おっし。 じゃあ桐乃、一緒に飯作ろうぜ」

桐乃「おっけ。 良いよ」

京介「ちなみに、語尾に「にゃ」って付けるの忘れてねえか? 約束したけど」

桐乃「あれは忘れろッ!! あぁああああっ! 思い出しただけで気分悪くなってきたっての!!」

京介「やだよ~。 録音しちゃったもんね」

桐乃「じょ、冗談でしょ?」

京介「へっへっへ。 だと思うだろ? 今回はマジだ」

桐乃「け、消して! 今すぐに!!」

京介「断る! 寝る前に毎回聞くからなぁ!」

桐乃「消せっての!!」

京介「いーやーだーね。 だって、超可愛かったし」

桐乃「……ほ、ほんと?」

京介「……おう」

桐乃「……」

桐乃はそれを聞くと、一度顔を伏せ、数秒後、顔をあげて言った。

桐乃「お兄ちゃん、消して欲しいにゃ♪」

今度は手の仕草付き。 グーにしてポーズを取っている。

こいつ、もしかして気に入ったのか。

しかしあれだ。 俺としては。

京介「やべえお前それ超ヤバイ!」

言って、桐乃を抱き締める。

桐乃「こ、この変態っ! 妹の声に欲情するとかマジキモイ!!」

声『に』じゃねえよ。 声『にも』だ。 正しく言うと。

それにしても、やっぱ桐乃はこうでなきゃな。

京介「お前なぁ、俺に変態変態言ってるけどさ、自分の格好見てから同じ台詞言えるのか?」

桐乃は言われ、俺の腕の中で自分の格好を確認。

着替えていないので、勿論エプロンに水着姿。

桐乃「……死ねぇええええええぇえええええええええええ!!!!」

直後突き飛ばされ、俺が桐乃の肘打ちを顔面に食らったのは言うまでも無いことだろう。

そしてその後、やり過ぎたと必死に謝ってきた桐乃のことも、言うまでも無いことだろう。

……もうひとつ。

そんな桐乃を見て、俺が思ったことなんてのもまた、言うまでも無いことだ。


お兄ちゃん 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

今日で49本目!

一応、明日に投下しまして、その次は水曜日辺りになるかもしれません。

まだなんとも言えませんが、2~3日程の間隔は空くと思います。

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下致します。

月曜日。 一週間の始まり。 私にとっては多分、幸せな日。

学校に行けば桐乃が居て、加奈子もまぁ居て。

三人で楽しくお喋りしたり、お弁当を食べたり、勉強したり、仕事の話とかもしたりして。

そんな、楽しい毎日が始まる日だからこそ、私は月曜日が楽しみなのだろう。

そうは言っても、つまらない日だって当然ある。 それは桐乃が学校に来ない日だったり。

……帰り道で、お兄さんに会った日だったり。

先週の金曜日は最悪だった。 少し、そんな最悪な日を思い出してみよう。

京介「おうあやせ、偶然だな」

あやせ「そんなこと言って、また私に付き纏っているんじゃ無いんですか?」

京介「ちげーって……あれか、もしかしたら俺とお前ってそういう風に偶然出会いまくる運命なんじゃ」

あやせ「今の録音しましたから。 今度の月曜日、桐乃に聞かせます」

京介「すいませんでしたぁ!!」

勢い良くそう言いながら土下座するお兄さん。 道端で何をやっているんだろう、この人は。

あやせ「分かりましたよ……仕方ないですね」

京介「お、おお! さすがはあやせ!」

……あくまでも、私が分かったと言ったのはお兄さんの謝罪について。 桐乃に聞かせることには変わり無いってところは言わない方が良さそう。

だって、桐乃が嫉妬して「くうう」って顔をするのはすごく可愛いし!

あやせ「もう、褒めても何も出ませんよ? それよりこんなところで私と話していて良いんですか?」

京介「……ん、ああ。 そうだった。 桐乃の奴からお使い頼まれてるんだった」

あやせ「でしたら道草を食っている場合じゃないじゃないですか。 ぶち殺しますよ」

京介「それで殺されてたら命がいくつあっても足らないっての……まあ、またな。 あやせ」

あやせ「さようなら」

京介「……またね?」

あやせ「さ、よ、う、な、ら」

京介「……さようなら」

良かった。 うまくやっているみたいで。

正直に言うと、最初の頃は心配で心配で堪らなかった。 桐乃のことも、お兄さんのことも。

これからどうするつもりなんだろうとか、私には全く関係無いのに悩んでしまって。

それからお兄さんと話す機会があって、すっきりして。

この人なら大丈夫だと、思えた。

あやせ「って違う! それじゃあやっぱり良い日だったみたいに思えちゃう!」

桐乃「きゅ、急にどしたの? あやせ」

あやせ「へ、へ? あ、あはは。 何でも無いよー? あはは」

桐乃「そ、そう? なら良いケド」

でもやっぱり、先週の金曜日に比べたら今日はとっても良い日。

だって、登校中に桐乃に会えたから。

加奈子「おーっす。 お前ら何仲良く登校してんの? もしかしてデキた?」

……ランクダウン。

加奈子「……さすがの加奈子でもそこまで露骨に嫌そうな顔されると傷付くんだけど、あやせ」

あやせ「え、えー? そんなことないってばぁー。 どうしてくれようかなんて、思って無いよ?」

加奈子「……桐乃、あたし消えた方が良い様な気がしてきたんだけど。 命の危険を感じる」

桐乃「えぇー? 加奈子も一緒に行った方があたしは楽しいのに」

あやせ「だ、だよね? 私も丁度そう思ったところだったんだぁ~」

加奈子「……うそくせー」

あやせ「何か言った?」

加奈子「……あ、何でも無いッス」

やっぱ桐乃は優しいなぁ。 こんな加奈子相手でも、楽しいって言えるんだから。

加奈子はもっと桐乃に感謝するべきだよね。 全くもう。

でも、なんかこうしてやり取りをしているのにも、幸せを感じる私だった。

そして、お昼の時間。

あやせ「きーりの! 一緒にご飯食べよ」

桐乃「うん。 良いよ。 あはは」

机を合わせ、桐乃と向かい合う。

加奈子「なんかさ、あたしの存在忘れてね?」

あやせ「や、やだなぁ。 忘れてるわけ無いでしょ? 加奈子ったらー」

加奈子「……」

いつもの感じ。 この空気が、私はとても好き。

皆で机をくっ付けて。 お弁当を広げて。

広げて。

桐乃「そーいえばさ、ちょっと聞いてよ二人とも」

……始まった、と思った。

それは多分、加奈子も一緒。

だって、桐乃がこう言った瞬間に私も加奈子も顔を見合わせたから。 お互いに思っていることは一緒のはず。

この時間、私と加奈子は毎日桐乃の話を聞かされる。 その時の桐乃の顔はモデルをやっている時のしっかりした顔付きとは違って、普段の優しそうな顔付きとも違う。

私や加奈子にもあまり見せない、砕けた表情。 へらへら笑っているという感じ。

でも、幸せそうだなとは思う。

桐乃「昨日さぁ。 肉じゃが作ってあげたんだ、あいつに」

桐乃「あ、いちお毎日あたしがご飯作ってるのね。 土下座して頼まれちゃって仕方なくなんだケドぉ」

桐乃「それで! あいつなんて言ったと思う? あたしの手料理食べて」

あいつが誰かなんて、聞く必要は無い。 もうこの様な話は週に五回はされているから。

つまり、学校がある日は毎日ということ。

で、何々。 お兄さんが桐乃の手料理を食べて何て言ったか……かぁ。

ううーん。 お兄さんだったら、そうだなぁ。

あやせ「桐乃、お前の手料理を食べられるなんて俺はなんて幸せ者なんだ。 とか?」

加奈子「ちっげーよ。 京介だったらこう言う。 桐乃、そんなことより早く布団行こうぜ。 だろぉ?」

桐乃「ち、が、う!! あやせも加奈子もあいつのこと分かってないッ!」

机をバンッと音がする勢いで叩く桐乃。 あ、加奈子のお弁当落ちそうになっちゃってる。

それにしても怖いよ、桐乃。 当てられないとこうやってちょっと怒って、当てたら当てたで「……ふうん」って不機嫌になるんだよね、いっつも。

面倒臭いよ!  正直に言って面倒臭いよ桐乃! でもそこがまた、可愛いんだけどね。

桐乃「あいつ、こう言ったの」

桐乃「また肉じゃがか? って」

桐乃「ありえなくない!? あたしが折角作ってあげたのに「また」とかチョー意味が分からないんですケドぉ!」

あやせ「き、桐乃落ち着いて。 声が大きいよ」

桐乃「あ、あ……ごめん」

桐乃「で、でも酷くない? 普通、そうゆうこと言う?」

加奈子「まあ頻度に寄るんじゃね? それで連続何日目なんだよ?」

桐乃「二日目」

あやせ「桐乃、加奈子。 お兄さんを殺しに行こう」

加奈子「よっしゃ行くか!」

たった二日で!? たった二日で「また」だなんて、どの口が言っているのだろう!?

お兄さんには一度、躾が必要かも。

桐乃「あ、あはは。 そこまであたしも怒って無いって」

あやせ「で、でも酷いって! 桐乃が折角作ってあげたのに……」

桐乃「でしょ~? 飽きない様に、味付け変えてるのに……」

桐乃「だから、あたしは言ったの。 京介に「なに、文句あるワケ?」って」

あやせ「もっと言って良いよ。 私が許すから」

加奈子「加奈子もさんせー。 で、京介はなんて言ったの?」

桐乃「ふ、ふひひ……それがね、あいつ「ある訳無いだろ? お前の作ったのなら同じ物でも毎日超美味しく食えるぜ」って言ったの!」

……そういうことですか。 桐乃。

桐乃「チョーキモくない!? 同じ物でも毎日食べられるって~。 ふひひ。 どんだけあたしのこと大好きなのぉ!?」

桐乃「しかもあたしの頭撫でながらゆうんだよ!? ぺたぺた触ってさぁ! ふひひひ」

あやせ「……良かったね、桐乃」

桐乃「何にも良く無いってぇ! あたしチョー大変なんだってばぁ! 家に帰ったら毎日あいつ居るしぃ!」

この表情を見たら、百人中百人は「幸せそう」と表現するんだろうなぁ……。

なんて、飛びっきりの笑顔であたしと加奈子に話す桐乃を見てそう思う。

加奈子「……」

ふと、加奈子の方に視線を向けると、既に加奈子は食事モード。

こう話し出すと、桐乃はしばらく止まらない。 私も加奈子に習い、食事モードへと入ることにした。

桐乃「でさ、でさ。 その後は「桐乃、あーん」とか言ってやってくんの! マジ、どんだけシスコンなワケ!?」

桐乃「そんでぇ、あたしがお返しに「あーん」ってやってあげたら、あいつ超嬉しそうに笑うんだよ? き、キモすぎ! ふひひ~」

嬉しそうだね、桐乃。

火曜日。

今日は桐乃とも加奈子とも会えず、一人で登校。

何でも今日は寄って行く場所があるらしく、いつもの時間より少しだけ遅れるとのこと。

別に待ち合わせをしている訳でも、一緒に行こうと約束している訳でも無いのに、桐乃はそういう時にしっかりと連絡してくれる。

私はそれが、少しだけ嬉しかったり。

加奈子は……寝坊でもしているのかな。 多分。

あやせ「……今日は一人かぁ」

学校に行けば会えるけど、それでも寂しい。

そういえば、この前もそうだったかな。 桐乃が進路のことで呼び出されて、学校に残って、私が一人で帰って居た時。

……あの時はお兄さんと会った。 あれからたまに桐乃の写真が送られてくる。

桐乃も笑ってピースとかしているから、送ることに承諾しているのだろう。

そんなことを思っている中、私は見慣れた人影を見つけた。 それも二人。

あやせ「お兄さんに……桐乃?」

仲が良さそうに手を繋いで歩いている。 桐乃、凄く楽しそうだなぁ。

でも、お兄さんって結構大人っぽいし、見ようによっては女子高生に手を出している変態に見えなくも無い……かな?

ううん。 お兄さんは紛れも無い変態だけど。

……普段はしない。 普段の私だったら。

でも今日は、なんだか違った気分。 少し、いたずら心を突付かれた様な気分。

あやせ「……つ、付いて行って見ようかな」

お兄さんが変な所に桐乃を連れ込もうとしたら助けないと行けないし!

そう。 だからこれはストーカーとか、そういうのじゃない。

桐乃「でさ~」

京介「はは、マジかよ」

途切れ途切れに聞こえて来る会話からは、仲の良さが窺える。

桐乃から話されることって言うのは、大体が惚気話で、こういう日常的な話ってあまり聞かないんだよね。

……いや、でもその惚気話が日常的な話だとしたら?

お兄さん、今度お話しましょうね。

私がそう思いながら二人の姿を見ていると、お兄さんが突然振り向く。

慌てて物陰に隠れ、見つからない様に。

桐乃「……どしたの?」

京介「いや……なんか殺気を感じた」

殺気!? わ、私が殺気を出していたって言うんですか!? ぶち殺しますよ!?

……全くもう。 お兄さんは失礼です。 私が送っていたのは暖かい眼差しだというのに。

京介「ううむ。 ま、良いか。 行こうぜ」

桐乃「うんっ」

そして、また手を繋いで歩き出す二人。

なんか、近寄りがたいオーラを出している様な気がする。

だって、手なんて恋人繋ぎだし……桐乃ったら、お兄さんの体にぴったりくっ付いているし。

これで桐乃は良く「あいつマジキモイ」とか言えるよね……。

二人っきりの時は、これだけ桐乃も素直なのに。

あやせ「……私、何しているんだろ」

このままだと二人の邪魔をしてしまいそうで、私は来た道を引き返す。

学校、行かないと。

水曜日。

今日は学校帰りに仕事。 桐乃も一緒。

私と一緒に仕事の時は、二人で一緒に行って、二人で一緒に帰っている。

桐乃だけが仕事の時は、お兄さんが送り迎えをしているみたい。 最近車の免許を取ったようで、たまに学校の近くに止まったりしている。

……前に警察の人に職務質問をされていたのを見かけた時は、さすがに可哀想になって声を掛けたけど。

まぁ、高校の目の前に車を止めていたら怪しいよね。 最近、そういうので事件になるパターンもあるみたいだし。

私は当然「止めるならもう少し離れた場所にしましょうよ」と言った。 お兄さんはその時、こう返してきたけど。

京介「だって、そうしたら出てくる桐乃が見れないじゃん……。 あいつ、俺を見つけたときにすっげー笑顔になるから、それが楽しみなんだよ……」

あやせ「とんだ変態ですね……今日も放っておけば良かったです」

京介「じゃあ、逆の立場になってみろよ。 あやせが桐乃を送り迎えするとして、お前はどうする?」

わ、私が桐乃を送り迎え……?

そ、そんなのはもう。

あやせ「……教室まで迎えに行きますね」

京介「だろ!? だったら俺がここで待ってるのは、自制してのことなんだよ。 納得してくれたか?」

あやせ「でも、今日みたいに警察の方に見られたらどうするんですか……。 桐乃に悪い評判でも付いたら、ぶち殺しますよ?」

京介「笑顔のままそういう台詞を言わないでくれ! 警察も俺みたいな奴より、お前を取り締まるべきだっての……」

あやせ「……それはどういう意味ですか。 お、に、い、さ、ん」

京介「や、やめてぇえええええええええ!!」

そのお兄さんの叫び声で、また警察の方が来るのでした。

お兄さん、制服を着ている私、車。

勘違いさせるのには十分だった様で、私もお兄さんも顔を真っ赤にして否定。

これはお兄さんと私のお話。 桐乃には内緒の。

木曜日。

今日は雨。 朝からしとしとと降り続ける雨は、止む気配が無い。

桐乃「雨、止まないね」

教室の窓から外を見ながら、桐乃は言う。

あやせ「予報だと、帰る頃には止むはずだったのにね」

授業が終わって帰る頃になっても、依然雨は降り続けている。

桐乃「うーん。 折り畳み傘も持ってないし。 サイアク」

あやせ「濡れるのは嫌だよね、やっぱり」

あやせ「でも、桐乃は大丈夫だって。 お兄さんに持ってきて貰えば」

桐乃「あいつ、今ちょっと風邪気味っぽいんだって。 だから無理言って持ってきて貰うのも悪いし」

あやせ「心配なんだね。 お兄さんのことが」

桐乃「そ、そんなんじゃないっての! あたしの所為で悪くなったら、あたしの気分が悪くなるだけで……だから……」

あやせ「はいはい。 あはは」

桐乃「も、もう。 あやせのばか」

あやせ「へえ~? あ~あ。 折角私の傘に入れてあげようと思ったのに、そんなこと桐乃は言うんだぁ?」

からかうように、私は言う。

桐乃「か、傘持ってるの!? あやせぇ~。 一緒に帰ろうよぉ~。 お願ぁい?」

か、可愛い。 この「お願ぁい」で、お兄さんは一体何回落とされたのだろう。

私だったら多分、言われる度に落とされていると思う。

あやせ「わ、分かったよ。 桐乃、一緒にかえろ?」

桐乃「マジ!? ありがと、あやせ! 大好き!」

言いながら、私に飛びついてくる桐乃。

……お兄さんが桐乃にデッレデレな理由が、少し分かった気がする。

桐乃「あやせ、本当にありがとね」

あやせ「良いって良いって。 気にしないで」

桐乃「だけど、途中までで良いよ? 雨もちょっと弱くなってきたし」

あやせ「もう。 そんなの考えなくて良いんだって。 私が桐乃を家まで送って行きたいから、じゃあ駄目?」

桐乃「……えへへ。 ありがと」

あやせ「あはは。 それじゃあ今度、一緒に喫茶店いこ?」

この前は確か、私が出したんだっけかな? 手錠の一件での埋め合わせで。

桐乃もその意味が分かったのか、笑いながら言う。

桐乃「おっけ! じゃあさ、週末に一緒に行く? 遊んでから」

あやせ「良いの? 桐乃が良いなら、私はそれで良いよ」

桐乃「たまにはね。 ひひ」

そんな風に楽しそうに話している時、後ろから声が掛かった。

「お前、学校に居るんじゃなかったのかよ。 つか、それなら俺が持ってくる必要無かったな」

その声を聞いて、私は安心した。

あやせ「駄目じゃないですか。 お兄さん、風邪気味って聞きましたよ」

京介「あー。 もう治った……ってことで良いか?」

あやせ「それは、私ではなくて桐乃に聞いてください」

桐乃「……ばーか」

桐乃はお兄さんの方を見ながら、そう言った。

その言葉は多分、飛びっきりの嬉しさを表しているのだろう。

あやせ「それじゃ、私は帰りますね。 桐乃の彼氏さんも来た様ですし」

桐乃「……なんか悪いし、家寄ってく? お茶くらいなら出すよ?」

あやせ「良いって良いって。 今度遊ぶ時の為に取って置くよ。 あはは」

桐乃「でも……」

申し訳無さそうな顔をする桐乃を見て、私はひとつ思い出す。

あやせ「……あ、そうだ」

あやせ「私が急に家に帰りたくなったから、じゃあ駄目かな? 桐乃」

私が言うと、桐乃は笑って言った。

桐乃「ううん。 大丈夫。 あやせ」

桐乃「ありがとね」

私は笑顔で返事をして、お兄さんに頭を一度下げ、帰る。

こんな些細なことでも、毎日が楽しかった。

金曜日。

桐乃「あ、あやせ! ちょっとこれ見てくんない!?」

桐乃がお昼になった瞬間、わたしの席まで飛んできて、開口一番そう言った。

あやせ「な、なに? どうしたの? そんなに慌てて」

桐乃「さっき見たんだけど、これ!」

桐乃は言いながら、私に携帯を見せる。

そこに写っているのは、加奈子?

桐乃「アイドルの卵大特集! だって!」

桐乃「特集サイトが出来ててさ、そこに加奈子が出てるの! 凄くない!?」

あやせ「ほんとだ。 加奈子、頑張ってるんだね」

桐乃「このまま加奈子が頑張れば……あたしもその友達としてメルルのイベントに招待とか……」

桐乃、本音が出てるよ!

加奈子「ったくよー。 そんくらいで騒ぐなっての。 ちっさいサイトの記事だろぉ?」

あやせ「かーなーこー。 折角取り上げてくれているんだから、素直に感謝しないと駄目だよ?」

加奈子「へーへー」

桐乃「でも……すごいよね。 加奈子」

加奈子「な、なんだっての。 桐乃なんか変じゃね?」

桐乃「そんなことないって! 加奈子のこと、応援してるから」

加奈子「お、おう……サンキュー」

桐乃は最後に、こう付け加えた。

桐乃「だから、加奈子が出てるイベントも応援に行くからね。 チケットお願い」

……桐乃、目がちょっと怖いよー。

だけど加奈子もしっかり、自分の道を歩いているんだね。

私は、私は……どうだろう。

こんな感じで、私の一週間は終わる。

明日は休み、明後日も。

だけど、また月曜日になれば皆に会える。 桐乃が居て、加奈子が居て。

お昼には桐乃の惚気話を聞かされて。

朝はたまに一人の時もあるけれど。

学校から出たら、警察に話を聞かれている不審者さんが居たりして。

雨が降ったら、仲良く一緒に帰って。

そして、将来の話なんかもしたりして。

楽しそうに話す私の友人たち。

……うん。 大丈夫だ。 私もしっかり、歩けている。

あやせ「ね、二人とも」

桐乃「んー? どしたの、あやせ」

加奈子「今、加奈子の話してたところじゃねーかよぉ。 なに?」

あやせ「帰りにどこか寄って行かない? たまには、ちょっと寄り道したいな」

私の言葉に、桐乃と加奈子は顔を見合わせ、私の方を向いて、頷いた。

これが私の、私だけの、一週間。


歩く道 終

こんばんは。
乙、感想ありがとうございます。

深夜投下。

4月のある日。

桐乃は学校、俺は家。

昼過ぎではあるのだが、桐乃が帰って来るのにはまだ時間がある。

……とは言っても、することなんて無いけど。

京介「パソコンでもやっかなぁー」

エロゲーは禁止されているので出来ない。

で、俺が調べた履歴は定期的に桐乃がチェックしている。 故に履歴は絶対に消すなと言われている。

不自然に消した場合、桐乃はどうやら何かしらの細工をしており、俺のパソコンで検索した物が全て分かる様で、下手な真似は絶対に出来ないが。

まあ、別にそんな変な物を見ようという訳でも無いし、この退屈すぎる時間を潰す物として活用させてもらおう。

そう思い、パソコンを起動。

京介「さーて、何するかな」

一人呟きながら、ブラウザを立ち上げようとした時だった。

右下にポップアップが表示され、俺はアイコンをクリックしようとしていた手の動作を止める。

京介「チャットの招待か……黒猫から?」

何用かと思いつつ、承諾。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:ようこそ。 我が世界へ。

京介@妹大好き さんの発言:お前は相変わらずだな。 つか、学校は?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:今日は休みよ。 私は先輩とは違って、単位は余裕なのよ。

京介@妹大好き さんの発言:俺は別に単位ギリギリじゃねえよ。 そういやお前ももう大学生か……。 で、用事か?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そうしようと思っていたのだけれど……。 その前にあなた、その不愉快なハンドルネームは何?

京介@妹大好き さんの発言:ああ、これか。 桐乃に設定してもらったんだけど、なんかこれになってた。

京介@妹大好き さんの発言:直すのも面倒だったから、このまま使ってるってわけだよ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:ご愁傷様。 あの女がやりそうなことね。

京介@妹大好き さんの発言:だな。 で、用事は?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:ああ、そうだったわ。 あなた……本当に知りたいかしら?

京介@妹大好き さんの発言:知りたい……ってのは? お前の秘密だったりすんの?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:わたしの秘密をあなたに話す訳が無いでしょう。 考えなさいな。

京介@妹大好き さんの発言:へいへい。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:私が言っているのは、あなたの妹の秘密よ……ふふふ。

京介「桐乃の秘密……? あいつがオタクだってこと以外に、そんなのあんのか?」

京介@妹大好き さんの発言:そんな大層な秘密なんてねえだろ? あの趣味があいつ最大の秘密だったんだろうし。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:どうかしら? ふふふふ。

……そんな言い方をされてしまっては、気になって仕方ないじゃねえかよ。

京介@妹大好き さんの発言:分かった。 知りたい。 桐乃の秘密とやらを。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そう……。 聞いてしまうのね。 まぁ良いわ。 まず、これをご覧なさい。

その言葉と共に貼られたのはURL。

京介「これを見ろってことね。 えーっと」

未だに慣れない動作でURLをクリック。 ブラウザが立ち上がり、そのページへと移動する。

数秒後、映し出されるページ。

京介「……なんだこれ?」

トップ画面。 でかでかとこう書いてある。

『きりりんブログ♪ 妹道(マイウェイ)』

京介「きりりんって……あれだよな。 桐乃が使ってるハンドルネーム」

俺はそのページを一旦最小化し、再度チャットを打つ。

京介@妹大好き:おい、これって。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そうよ。 あなたの思っている通りの物で間違い無いわ。

京介@妹大好き さんの発言:……勝手に見たらマズイだろ?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:何を言っているの。 ネット上で書いているのよ? それも、わたしがネットサーフィンをしている時にたまたま見つけた物だしね。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そんなのは隠していないも同然よ。

ふうむ。 まあ、確かに言われてみればそうなのかもしれない。

机の中にあっただとか、隠してあった、とかでは無く……ネットで書いている物、ということだ。 いわば、オープンで書いている物。

京介@妹大好き さんの発言:一理あるな……。 で、どんなことが書いてあったんだよ?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そんなの、自分の目で確かめれば良いじゃない。 あなた程度の人間でも問題無く見れるはずだわ。

京介@妹大好き さんの発言:りょーかい

……さて。

行くか。

俺は決意し、先程最小化したページを最大化。

トップにはでかでかと変わらない文字がある。

京介「これは……プロフィール欄か」

まずはそれを確認。

ええっと、何々。

現役高校生♪ 今は兄貴と二人暮し中! 趣味はエロゲー。 好きなアニメはメルル!

俺と二人暮しとか書いてるんじゃねえっての! まあ、さすがに特定されるようなことなんて無いだろうけどさ。

俺や黒猫、沙織以外には、だけど。

京介「……記事、見てみるか」

ぶっちゃけここからが本番だ。 プロフィールに書いてあったことからして、別の人物だということはほぼありえないだろう。

……あいつ、一体どんな日記を書いているんだ?

京介「書き始めたのは結構最近か……。 二月のが、最初の記事だな」

量はそこまででは無いだろうから、最初から見てみるか。

そう思い、日付をクリック。

『この記事はロックされています。 閲覧するにはパスワードを入力してください』

京介「……ふむ」

思いっきり隠してるじゃねえか! 何が「隠していないも同然」だ黒猫の野郎!!

……ここまで来たら気になって仕方ないじゃねえかよ!

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:ふふふふ。 どうしたの? 面白い内容でしょう?

京介@妹大好き さんの発言:パスワード掛かってるじゃねえか。 見れねーよ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あらあら。 そういえばそうだったわ。 まぁ、わたしは知っているけれどね。

京介@妹大好き さんの発言:なんだ。 桐乃から聞いたのか?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:いえ、違うわ。 あの女が設定しそうなワードをいれたら見れてしまったのよ。

駄目じゃん! それ駄目じゃん!

……さ、さすがにそれはマズイだろ?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あなたがどうしても教えて欲しいと言うならば、教えるのも厭じゃないわ。

京介@妹大好き さんの発言:……最初からこれが狙いだろ、お前。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:ふふ。 なんのことかしら。 それで、どうするの? 教えて欲しいの?

京介@妹大好き さんの発言:知りたくないと言えば、嘘になる。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:まぁ良いわ。 特別に教えてあげる。 パスワードは----------

……おいおいマジかよ。

これで開いて黒猫の罠とかだったら、本当に怒るぞ。

いや、この場合だとそっちの方が良いのか? それで何事も無く終わるのが一番な気がしてならないぜ。

でも、先程から気になっているこの記事。 日付的に桐乃っぽいんだよなぁ。 ていうか、ページ全体の雰囲気から桐乃っぽいし。

京介「……えーっと」

京介「……kyousuke。 こうか」

まさか俺の名前をパスワードにしてるなんてね。 あいつもほんっとブラコン妹だぜ。 へへへ。

自然とにやけているのに気付き、急いで顔を元に戻す。

そして認証ボタンを押す俺。

呆気なく、ブロックされることもなく、その記事は画面に広がっていった。

2/14 初記事!

今日からブログ書いてみよっかな。 誰にも教えないケド。

後で見返したら後悔するんだろうな~。 これ、絶対黒歴史確定。

ま、今はそんなのどーでもいいんだけどね。 だって、今日はチョー良いことあったし♪

思い出すだけでヤバイ! あの兄貴があたしのことあそこまで好きだったなんて、泣きそうかも。

あー、なんか思い出したら恥ずかしくなってきた。 てか、これほんとに誰も見れないんだよね?

パスワードを掛け忘れだけ、注意しとかなきゃ。

でも、もうちょっと兄貴はあたしに対してベタベタして欲しいよねぇ。 全然物足りないっての。

こういう風に、言えたらいいんだけどなぁ。

2/20 ちょっとテスト

色々見てたら、画像も貼れるみたい。 ってワケで、お気に入りの貼っていこうかなwww

いっぱいあるんだケド、どれから貼ろうかなぁ。

そだそだ。 あれにしよっと。

↓あいつがあーんってされてるところwww幸せそうな顔しててキモいwwww

京介「……これ、絶対見ちゃいけない選択肢だっただろ」

俺、激しく後悔。

こんな赤裸々に書かれているブログを見た後、俺は一体どんな顔をしてあいつに会えば良いんだよ!?

……知ってしまった分、すっげー恥ずかしい。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:どう? 中々の内容でしょう?

京介@妹大好き:こりゃ、さすがにマズイだろ……?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そうね。 でも、使い方を考えれば良い方に転ぶわ。

使い方? この桐乃の黒歴史ブログを一体どんな風に使えというんだ?

京介@妹大好き:うーんっと。 これで桐乃を脅すとか?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あなた、割と性格が悪いのね。

京介@妹大好き さんの発言:さすがに冗談だっての! チャットだとうまく伝わらないな。 くそ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そうね。 でも、使い方を考えれば良い方に転ぶわ。

使い方? この桐乃の黒歴史ブログを一体どんな風に使えというんだ?

京介@妹大好き さんの発言:うーんっと。 これで桐乃を脅すとか?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あなた、割と性格が悪いのね。

京介@妹大好き さんの発言:さすがに冗談だっての! チャットだとうまく伝わらないな。 くそ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:それなら良かったわ。 で、使い方は……そうね。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:このブログは、あの女の「こうしてくれると良いな」だとか「こんな展開にならないかな」みたいなことが書いてあるのよ。 毎回ね。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:だからあなたがそれを見て、実際にやってあげればとても喜ぶのでは無いかしら?

……なるほど。

それなら確かにあいつは嬉しいと感じるだろう。 正直言って、不正をしている様な感覚にはなるが……。

俺は別に、桐乃の中での俺の評価を上げたいわけじゃないからな。

そりゃ、あいつがそう思ってくれるのならそれに越したことは無いけど。

俺は、桐乃が笑ってくれるのならなんだってするさ。

京介@妹大好き さんの発言:それなら良いかもな。 参考にしておくよ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そう。 お役に立てて嬉しいわ。 だけど、ひとつ注意をしておくわね。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あなたがそのページを見ていることは絶対にばれてはいけない。 もしばれたら、どんな罰をあの女が与えてくるか考えるだけで恐ろしいわ。

……黒猫にここまで言わせるとは。

一歩間違えたら、本当に恐ろしいことになりそうだぜ。 気を付けないと。

京介@妹大好き さんの発言:あ、でもさ。 俺のパソコンって桐乃のパソコンで履歴とか見れるようになってるんだよな。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:……それはどういう意味? あなたのパソコンを毎回チェックしているということ? とんだブラコンね。

京介@妹大好き さんの発言:いや、それも一応されているんだけど……えーっと。

京介@妹大好き さんの発言:確か、キーロガー? とか、前に言ってたっけな。 それがそうしているらしい。 よくわからんが。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:……驚いたわ。 兄のパソコンにキーロガーを入れて監視する妹なんて、初めて聞いたわよ。

京介@妹大好き さんの発言:そんなすごい物なのか?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:凄い物と言うよりかは……簡単に言えば、ウィルスとしても活躍している物ね。

あいつそんな物を俺のパソコンにぶち込んでいたのか!? なんて奴だ!!

京介@妹大好き さんの発言:マジかよ。 もうあのページ見ちまったぞ。 ばれるんじゃないのか? どうすればいい? 黒猫、助けてくれ。 早くしないとあいつ、帰って来る。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:今回はあなたの必死っぷりが伝わってきたわね。 やれやれ、仕方ないわ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あの女がそれをチェックする暇を与えなければ良いのよ。 ブログの更新は大体が携帯から、恐らくはあなたが家に居るからでしょうね。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:キーロガーのログはパソコンからチェックする物だから、あなたが傍に居て監視をすれば問題無いわ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:監視ソフトを使った妹と、その妹を監視する兄。 禁断の愛が始まるのね。

京介@妹大好き さんの発言:最後のは余計だ。 でも、ありがとう。 それでなんとか対処してみるよ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:ふふ、そうね。 精々頑張りなさい。

よし、やってやろうじゃねえか。

ばれた時のことは考えない。 考えない。 怖い。

……もうこの時点でフラグの気しかしねえが、このまま放って置いてもログをチェックされたら一発アウトだ。

せめてそれまでの間、あいつを喜ばせてやろうじゃねえか!

まず最初、ええっと……もっとベタベタしたい、か。

オーケー。 分かったぜ桐乃。 俺に任せておけ!

こうして、俺の作戦は始まる。 まず、作戦その1。

帰って来た桐乃にいきなり抱き着いて、ベタベタする。 これだ。

桐乃「ただいまぁ」

あー、ちょっと汗掻いちゃったかもしれない。 走ってきたし。

京介に早く会いたくて! なんだけど……とりあえずお風呂入らないと。

京介「おかえり、桐乃」

……ふひひ。

京介は優しく言うと、あたしに近づく。

近づく、近づく、近づく。

近くない!? なに!?

京介「会いたかったぜ」

言って、京介はあたしの背中に腕を回して、寄せて。

桐乃「っ! な、なにッ!? いきなりなにッ!?」

京介「何って言われてもな……お前とベタベタしたかったんだけど」

あ、あ、ヤバイ。 京介にこんなこと言われちゃったら、マジでヤバイ。

胸が苦しいくらいになってきた。 なんで帰って早々、こんな気持ちにさせられるワケ!?

桐乃「きょ、京介……」

あたしは言って、京介の胸に頭を預ける。

暖かくて、いい匂い。

……京介も、心臓ばくばく言ってるじゃん。 平気な顔しちゃってさ、内心恥ずかしいのかな。

京介「……なんかお前、体濡れてるんだけど汗掻いてんのか?」

……ん?

桐乃「……は、はぁ!? 今の雰囲気でそれゆうワケ!? 最っ低!!」

ありえない! その台詞はマジで無い!

普通、気付いても言うなっての!! デリカシーゼロなのこいつ!?

京介「わ、悪かったって」

あたしは京介を突き飛ばし、居間へ向かう。

そんなあたしの後ろを頭を下げながら京介は付いてきた。

桐乃「……女の子に今の台詞はマジで無いから」

京介「……ごめんな」

な、なにもそこまでマジで謝らなくて良いのに。

京介「桐乃、ごめん」

そして、あいつはあたしを後ろから抱き締める。

桐乃「だ、だから!」

さっきまでは良かったけど、京介に言われた所為で気になってしまう。

京介「別に良いって。 俺は気にしねーよ」

桐乃「……ほんと?」

京介「おう。 お前の汗だって舐められるっての」

桐乃「……いや、それはキモイ」

京介「……確かに今のはキモかった」

でも、そんな京介でも。

あたしは、好きなんだ。


ブログ 終

以上で本日の投下、終わりです。
今回のお話、三本編成です。


次回は土曜日か日曜日になります。

乙、感想ありがとうございました。

安定の面白さだなぁ
それよりネタの引き出しの多さは一体・・・

(アニメで)あやせが告白&ほっぺにキスしたのってバレてないんだよね?
これがバレる話が読んでみたい…

今日、投下来るんだよな?

最初から読み直そうと思って読んでたんだけど一日じゃ読みきれなかった
ラノベ一冊が300kbくらいらしいけどこのssって本編+短編でどのくらいあるんだろうか・・・

こんばんは。
乙、感想ありがとうございます。

>>832
妄想力の賜物

>>835
ギリギリセーフということでどうかひとつ

>>836
一応、今の時点ですと1.2MBくらいになってます。 台詞前の名前やらスペースを多用してるので、実際の量は少し減ると思いますが。


それでは、投下致します。

3/25 ヤバイ。

今日、朝起きたらいきなり兄貴が抱き着いてきた! 寝ぼけてるみたいだケドね。

でも「桐乃……」って呟いてんの! どんだけあたしのこと好きなワケ!? ってカンジwww

そんでそんで、あんまりにも面白かったから、写メ撮っちゃった。

↓妹に抱き着くシスコン兄貴www

どう? ヤバくない? 朝から妹に抱き着くとか、あたし愛されすぎ?w

そんで、ぎゅーって抱き締めてくるから動けないあたし。 朝ご飯作らないといけないのに!

でもなんだか気持ち良くて、一緒に寝ちゃった。 それから起きても、こいつまだあたしのこと抱き締めてたwww

さすがにキモくて、驚かせてやろうと思ってちゅーしてやった。

↓その時の写メwwww幸せそうな顔しててキモいwwww

京介「あの野郎なんて記事書いてやがるんだ!!」

桐乃が不在の時を狙って、俺は桐乃のブログを閲覧。

していたのだが、なんだかこんな感じの記事ばかり。 見ていて恥ずかしくなってくるっての。

京介「くっそ……次だ次」

このブログの記事にも、毎回桐乃がしてほしいことを書いてある訳では無い。 たまに、ちょろっと書いてある様だ。

それにしてもこいつ、俺とのことしか見事に書いてねえな……。

3/30 もう少し!

で、エイプリルフール!

去年はあいつ、見事に騙されたからね。 今年はどんなカンジで騙そっかな?

……子供ができたとか言っちゃう? 言ってみちゃう?

あいつ、どんな顔するんだろ? チョー楽しみ。

……もし、その流れでそうゆうカンジになっちゃったらどうしよ。

さすがにまだ恥ずかしいって! てゆうか普通にムリ! あいつなんてこと考えてんの!? キモすぎ!!

でも、でもだよ? あいつが無理矢理押し倒したりしてきて……んで、あたしに手錠とか掛けちゃったりして?

そんで「桐乃……」とかチョー真顔で言われたりしちゃったら、キスくらいならありかな?

いやそれでもキモイけどね! キモイけど、そこまでするなら……許してあげてもいいかな?

だってあいつってあたしのこと好きだし、愛してるとかしょっちゅう言ってくるし、あたしにべた惚れだし、いっつも助けてくれるし、気遣いとかめっちゃしてくれるし、あたしには優しいし、友達の前で「お前が一番だ」とか言っちゃうし、あたしがして欲しいこといっつもしてくれるし、二人暮しとかしちゃってるし、猫にさえ嫉妬しちゃうくらいシスコンだし、毎日必ず一回は「好きだ」って言ってくるし、時々いきなりキスしてくるし!

だからそれくらいなら許してあげる!

↓今日の兄貴wwwww

京介「怖いぞ……俺はお前が怖いぞ、桐乃」

なんだこの本音丸出しブログ!? いやまあ、非公開でやってるからこそなんだろうが。

つうか、これって黒猫も見てるんだよな……? 桐乃、大丈夫かな。

それより俺が毎日お前に好きだって言ってるのは、お前が言えって言ったからだからな!? 俺も言うからには本気で言っているけど、それでもお前が言えって言ったからだからな?

……いや、そんなことより。

この、この文だ。

これがあれか、黒猫が言うところの「桐乃の願い」なのだろうか。

そうとしか思えないよな……やっぱり。

俺がその重すぎる桐乃の想いを見て頭を抱えているとき、黒猫からのチャットが来る。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:どうかしら? 順調?

京介「……行き詰ったけどな」

京介@妹大好き さんの発言:順調……に行ってると思うか? つか、お前はこのヤバすぎるブログを見てなんかないのかよ?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あら? 別にそこまでありえない内容では無いでしょう。 こんなの、もう何年も前から桐乃が望んでいることだろうし。

京介@妹大好き さんの発言:ってことは、桐乃は普段からこんな感じで俺のことを見てたのか?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:でしょうね。 だからわたしは、桐乃こそ最大のライバルだと思っていたのよ。 負けたけどね。

京介@妹大好き さんの発言:……そうか。 なら、頑張らないとな。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:ええ。 しつこいようだけど、絶対にばれない様にね。 ばれたらあなた、人格が変わるほどの調教を受けるのは目に見えているわ。

京介@妹大好き さんの発言:分かってるっての。 心配してくれてるのか?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:いいえ、警告よ。 わたしも友達は失いたくないから……健闘を祈るわ。

……俺をびびらせたいだけじゃないのか、こいつ。

いくら桐乃でも、そんな調教と言われることまでしないだろうさ。

京介「うっし、じゃあとりあえずこの記事の内容だな」

ええっと、なんだ。

……要約すると、これはあれか。

桐乃を無理矢理押し倒して、あいつの手に手錠を掛けて、キスすればいいってことか。

俺変態すぎるじゃねえかよ!! つうか、こんなこと望んでるあいつもあいつで変態じゃねえか!!

そうだ、今思えばあやせの手錠の一件。 そう考えるとあいつって……。

そういうことか。 桐乃さんやべえな。

京介「……手錠とかどうやって用意すればいいんだよ。 さすがにあやせに「なあ、あやせ。 少し手錠を貸してくれないか?」なんて言えんよな」

言ったら多分、ガチで通報される。 そんで俺は間違い無く捕まる。

ううむ。

……俺の知り合いでそんなの持ってそうなのって、他に誰か居るか?

そういう危ない方向でヤバイ奴。

危ない奴。

あ、居た。 一人居た。

京介「電話してみっか。 瀬菜に」

京介「もしもし、瀬菜か?」

「ええ、そうですけど。 珍しいですね、高坂先輩から電話だなんて。 桐乃ちゃんに怒られちゃいますよ」

京介「あー、あいつには内緒なんだよ。 少しお前に頼みがあってさ」

「桐乃ちゃんに内緒……というと。 うーん」

「デートのお誘いなら間に合ってますよ」

京介「違げえよ! 頼みってのはお前に貸して欲しい物があるんだ!」

「……まさか、真壁先輩を貸せとか言うんじゃないでしょうね?」

こいつは全く、何で毎回毎回そんな方向に思考が働くんだよ。 つうか、真壁はお前の彼氏だろうが。

京介「断じてそれは無いから安心しろ。 俺の頼みってのはだな……」

京介「……お前、手錠とか持ってたりする?」

改めて考えてみると、こんなことを後輩の女子に聞いている辺り、俺はやはり変態かもしれん。 違うと思っていたんだけど。

「手錠ですか? ありますけど……」

そしてお前も立派な変態だ、瀬菜。

「ですが、何に使うんですか?」

「……は! もしかして、お兄ちゃんとそういうプレイを!?」

「それならそうと言ってくださいよぉ! だから桐乃ちゃんには内緒の話なんですね。 安心してください。 私、絶対に言いませんから! でも代わりに報告とかしてもらえると嬉しいです!」

京介「違う!! お前通報すんぞ!?」

「やだなぁもう! そういうことなら喜んで貸しますって! お兄ちゃんのこと、宜しくお願いしますね、高坂先輩! うへへ」

……盛大な勘違いをされてしまったが、まあ貸してくれるなら良しとしよう。

そして、次の日の午後。

京介「……やっべえ、すげえ緊張してきた」

本当に大丈夫なのか。 桐乃、怒らないかな?

でもまあブログを見る限りは大丈夫だとは思うが……この緊張感、正直言ってやばいぞ。

出来ることなら、後数時間は気持ちを落ち着かせたいのだが、現実はそこまで甘くない。

俺の緊張がピークに差し掛かる頃、桐乃が学校から帰って来た。

桐乃「たっだいま~」

と、上機嫌で言う桐乃。

とりあえず、手錠を服の下へ。 先に見つかったらそれはもう面倒なことになりそうだから。

それにしても……機嫌が良いのは助かったぜ。 ここで超不機嫌だったら、間違い無く俺の作戦は決行出来なかっただろうし。

いやでも、そうなればこの緊張感ともおさらばな訳で、そういう意味では桐乃の機嫌が良いのは俺にとって悪いことなのか?

だけど、やっぱり桐乃には良い気分で居て欲しいから、桐乃の機嫌が良いことは俺にとっても良いことか。 色々な意味で。

桐乃「ちょっと、シカト? 良い度胸してんじゃん」

桐乃は言いながら、俺の背中をゲシゲシと蹴飛ばす。

というか、絡み方が恋人や兄貴に対する物じゃない。 明らかにいじめ現場だ。

改めて考えてみても、酷い態度である。 俺の挨拶をシカトする時もある癖に!

京介「お、おー。 おかえり」

桐乃「……なんか隠してるでしょ」

……鋭すぎるだろ!? すっげえじっとりとした目で俺を見てやがる。 疑いに疑ってる目。

京介「……何言ってるんだよ? なーんも隠して無いぜ? ほんと。 はは」

桐乃「じゅー、きゅー、はーち、ななー、ろーく、ごー、よーん」

京介「待て待て待て! カウントすんな! ストップ!」

桐乃「……今言えば許したげるケドぉ?」

……くそ、こうなったらもう決行するしかねえ! だらだらと言い逃れをしてばれるより、攻めの姿勢でいかねえと!

京介「分かった。 言う」

桐乃「ふん。 最初からそうしろっての」

京介「俺はな、桐乃」

京介「……お前の態度がなっていないと思うんだ。 兄である俺に対する態度が、だ」

桐乃「……なんの冗談? チョーつまらないんですケドぉ」

京介「マジだぜ? だから俺はひとつ、お前に分からせてやろうと思ったんだ」

桐乃「ふう~ん。 ま、聞くだけ聞いたげる。 ほら、言ってみ」

……つくづく態度が悪い奴だな! いやまあ別に俺はそんなの気にしてないんだが。

ちなみにこの台詞、殆ど黒猫仕込みである。 あいつが「こう言えば桐乃は喜ぶ」とか言って。

正直信じられなかったが、ブログのこともあるしな……少し、信じてみることにしたのだった。

京介「つまりな、こういうことだ!」

言い、俺の横で腕組みをしながら見下してきている桐乃の足を引っ張る。

当然バランスを崩し、その場に倒れ掛かる桐乃。 勿論その体を支えて怪我をしないように。

で、桐乃は仰向けでその場に倒れ、俺はその上へ覆い被さる。

桐乃「な、なに!? いきなりなにすんの!?」

顔を若干赤くし、桐乃は言う。

京介「だから、お前に分からせてやろうってんだよ」

桐乃の両腕を押さえ、俺はゆっくりと先ほど隠した手錠を出し、桐乃の腕へ。

……やべえ、すげえ罪悪感が沸いてきた。 本当に、マジで大丈夫かこれ。

桐乃「ちょ、ちょ!? 意味分かんない!! なに!?」

京介「何って。 言う事聞かないお前に手錠を掛けたんだよ」

桐乃「あんた後で覚えとけ! マジで許さないから!!」

いきなりのことに、桐乃はかなり慌てている様子。

さっきから足で必死に俺を攻撃しようとしてくる。 俺が上に乗っかっている所為で、うまくは行かない様だが。

京介「……そんな格好で言われてもな?」

桐乃「こ、このッ……!」

俺はそのまま拘束された桐乃の腕を頭の上にやり、桐乃の顔をじっと見つめる。

桐乃「……な、なにしようってワケ?」

……やべえ! 超可愛いこいつ! 今すぐにでも「ごめんな」って言ってやりてえ!

でも、でも我慢だ京介。 ここは抑えなければならない。 桐乃の願いを果たす為にも!

京介「お前は何されると思うの?」

桐乃「そ、それは! それは……」

顔を先ほどより断然赤くし、桐乃は言う。 その顔は少しだけ、嬉しそうにも見えた。

桐乃「へ、変態シスコン兄貴のことだから……ヘンなこと」

顔を逸らしながら、ぼそぼそ呟く。

京介「分かってるじゃねえかよ。 ほら、顔こっち向けろ」

俺は言うと、桐乃の顔を片手でこちらに向けさせる。

……うむ、超可愛い。

つうか、なんか俺も段々乗ってきてしまっている。 俺と桐乃は一体昼間から何をやっているんだ……。

桐乃「や、ヤダ……」

言いつつも、素直に顔を俺の方へ桐乃は向ける。 俺が手伝ったのは軽く顔に触れるくらいで、殆ど自主的に桐乃は俺の方を向いた様だ。

京介「……」

黙って、ゆっくり顔を近づけ、寸でのところで一度止まる。

桐乃はキスをされると思ったのだろう、目をきつく瞑っていた。

しかし、一向に何も無いことから不審に思ったのか、ゆっくりと目を開ける。

桐乃「……っ!」

俺の顔がすぐ近くにあったのに驚き、桐乃は顔を逸らそうとする。

が、俺が顔を抑えていたのもあり、思うように逃げられない。

京介「……桐乃」

桐乃「な、なに。 何すんの、そんな顔近づけて。 キモ」

超嬉しそうな顔をしながらそう言われてもな……。

京介「ああ、悪い悪い。 悪かったよ」

……よし。 ちょっと意地悪してやろう。 押して引いてだ。 後のことはもう知らん!

桐乃「ちょ……!」

京介「ん? なんだ? どうした?」

桐乃「……ふ、フツー今のって」

京介「今のって、なんだよ?」

桐乃「~~!」

呻き声にも似た声を出しながら、桐乃は唇を噛み締め、俺を睨む。

京介「なあ、桐乃」

京介「……昔、お前が俺に言った様に聞くぜ。 お前、どうして欲しい?」

桐乃「……ま、マジ許さない」

京介「言ってみろって」

桐乃は恥ずかしさを堪える表情をし、言う。

桐乃「……キスして欲しい」

あーやべえ! マジ可愛いって! お前その可愛さは反則だっての! 写真撮りてえ! アルバムに飾りてえ! 抱き締めたい!

……落ち着け、落ち着け俺。 今それをやったら全てばれる可能性がある。 ここは慎重に、平静を装って。

ちなみに俺が言っている台詞。 黒猫に手伝って貰ったのは導入部分だけで、後は殆どアドリブである。

京介「んー? 良く聞こえなかった」

桐乃「こ、この……!」

京介「桐乃、言ってみろよ」

俺の言葉を聞くと、桐乃は少し泣きそうになりながらも、言った。

桐乃「キスして欲しいって言ってんの!」

京介「はは、最初から言えっての」

俺はそう返し、桐乃の顎を持ち、キス。

最初は軽くキスするだけで終わらせようかと思ったのだが、必死に我慢したりでいつの間にかそういうキスへ。

俺の手は自然と桐乃の後頭部を支えていて、俺も桐乃も夢中になってキスを繰り返していた。

桐乃「……だ、ダメっ! ちょっと……!」

途切れ途切れで、桐乃は言う。

京介「の割には嬉しそうな顔してんぞ」

桐乃「そ、そんなこと無い! 無い……」

京介「本当に?」

桐乃「……うう。 違う。 嬉しい」

京介「へへ、そうかよ」

そして俺は全然予想していなかった。 というか、桐乃の可愛さに俺がやり過ぎた所為かもしれない。

桐乃「……今日、今日だけ」

京介「ん?」

桐乃「……今日だけ、何でも命令聞く」

……終わった!? 桐乃がぶっ壊れた!?

京介「お、お前何言ってるんだ……?」

桐乃「京介が、そうゆう風にするからでしょ……。 だから、お願い」

桐乃「……お願いします」

内容割愛。 色々あったけど割愛。

俺記憶に無いもんね。 仕方ない仕方ない。

そして今は夜。 桐乃と俺は先ほどからずっと顔を逸らしたまま。

京介「き、桐乃……その、悪かったよ」

桐乃「……あれだけ色々させといて今更それとか」

京介「……マジごめん」

桐乃「……ベツに良いっての。 その代わり今度一日奴隷ね、あんた」

いつもそんな感じじゃねえか、と思いつつも。

京介「分かった。 何でも命令聞くから」

桐乃「ふひひ。 ならオッケー。 でも次、無理矢理やったら今日のこと全部ちくるから」

誰に、と聞くほど俺も馬鹿では無い。 こいつがちくると言ったら一人だけだ。

京介「それ死ぬな……間違い無く死ぬぜ」

桐乃「とりあえず、お風呂沸かしてきて? あたしお風呂入りたい」

京介「……今度って今日のこと?」

桐乃「はぁ? これはただのお願いなんですケドぉ」

お願いでその態度かよ! つうか、それだと殆どいつもと変わらないじゃん。

京介「へいへい……分かったよ」

そんなやり取りをしてから数十分。

今は俺も桐乃も風呂に入り終え、桐乃は携帯をかちかち操作した後、雑誌を読んでいる。

……携帯、か。

あいつ、もしかして。

そんなことを思い、俺は携帯を開き、桐乃のブログを確認。

4/15 うはああああああああああ!!

ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ。

チョー嬉しいことあったんだケド! 詳しくは書きたくないけどチョー嬉しいこと!!

今も頭おかしくなりそう! お風呂入ったのに全然さっぱりした気持ちにならないって!!

あああああ、思い出しただけでもやばい。 どうしようどうしよう。 どうしよう!

もうマジ幸せ、一年分くらい幸せ使っちゃったかもしれない。

それにしてもあいつ無理矢理しすぎ! あたしもう死にそうだったって!

いきなりだからほんとびっくりしたし、でも押し倒されたときはほんと、顔まともにみれなかった。

なんか、なんだろ、チョー抱き締めて欲しい。 今も。

なのにあいつ、さっきからごろごろしてるだけだし!! 酷くない!?

でもやっぱ今日は良い日! いやもうずーっと良い日ばっかだけどね。 飛びぬけて良かったって意味で。

ああもうどうしよう。 顔まともにみれないって。 明日からどうすんの本当に。

あたしをこんな気持ちにさせて、それで放置とかありえないよね!?

もぉおおおおおお!

……でも好きだけど。

↓今日の兄貴wwww寝てるww可愛いwww

……俺はゆっくりと立ち上がる。

ちらちらと時折こちらを見ている妹。

ったくお前はどれだけ恥ずかしがり屋なんだっての!

いやまあ、俺も俺でそうかもしれないけど。

そして俺は、そんな妹に近づき、そっと抱き締めてやるのだった。


その願いは 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

次回はまた、水曜日辺りに~

すいませんレス忘れ。
>>833
少し先になりますが、書けそうなので書いてみます。
どんな感じになるかは分かりませんが……

こんばんは。
乙、感想ありがとうございます。

水曜日に投下が出来るか分からないので、今の内にもう一話ちょろっと投下致します。

京介「ったく、赤城の奴急に呼び出しやがって……」

そんな愚痴を吐きながらの帰り道。

俺は例の如く、家で桐乃のブログを見ていたのだが、そんな時に赤城から「高坂ぁ! ちょっと話聞いてくれよぉ!」とか電話が来た。

電話で済ませようとしたところ、実はもう家の前に居るだとか言いやがって。

渋々、俺は出て行ったのだが、案の定ついでで暇潰しに付き合わされ、すっかり昼過ぎとなってしまった。 折角の休みだってのに。

……話の内容は正直かなりどうでも良いことだったけどな。 瀬菜のことで相談、だったらしい。 俺からしてみれば、それは相談では無くただの自慢話だと言いたいところだが。

京介「あ、やべ。 パソコン」

思い出した。 あれ、桐乃のブログ開いたままじゃねえか。

ばれると思うだろ? このまま桐乃が帰ったらすっげー怒った顔してたりすると思うだろ?

へへへ、心配御無用。 今日はあいつ、黒猫と沙織と遊ぶと言っていたからな。

俺も行って良いか聞いたところ、今日は女子だけで集まるとのことらしい。 少し悲しかったけど、そう言われてしまっては仕方あるまい。

京介「あいつ、最近ずっと機嫌良いからなぁ」

毎日にっこにっこしてるし、俺にベタベタしてくるし、可愛いったらありゃしない。

俺にぴったりくっついたりした時に頭撫でてやると、猫みたいに気持ち良さそうな顔するしな。

京介「……うへへ」

あいつが帰ってきたら、どうやって遊ぼうか等と考えながら俺は帰る。

その途中、ポケットに入れていた携帯が鳴った。

京介「……もしもし?」

「あなた、今ブログを見ているかしら」

京介「ブログ……っつうと、桐乃のだよな? さっきまでは見てたけど」

「そう。 ばれたりはしていないわよね?」

京介「大丈夫だって。 急にどうしたんだよ?」

「いえ、少しばかりおかしな記事が更新されていたからもしやと思ったのだけれど、大丈夫なら良いわ」

京介「……へえ? 後で見てみるかな。 それよりお前、良いのか? 電話なんかしてて」

「と、言うと?」

京介「いや、だって今日は女子だけで集まって遊ぶだとかって話だったろ?」

「ああ、言って無かったかしら。 実は妹が急に熱を出してしまって、今日は中止になったのよ」

京介「桐乃、朝出掛けて行ったけど……」

「世話をしていて連絡するのが遅れてしまったの。 お昼頃には帰って行ったわ」

……へー。

京介「いくつか質問していいか。 桐乃が家に着いた時間って、どのくらいになると思う?」

「そうね。 わたしの家からの距離を考えると……十三時頃には着いていたと思うわよ」

京介「なるほどなぁ。 で、ちなみにその記事が更新されたのって何時くらい?」

「ええっと、確か十四時くらいね。 手が空いた頃に見たから、そのくらいだったはず」

京介「……今って何時?」

「ボケたのかしら。 今は十五時よ。 先輩」

京介「……俺が生きてたらまた会おうな、黒猫」

俺は言い、電話を切った。

部屋のパソコンは付けっぱなし。 桐乃はその部屋へと既に帰宅している。 そしてブログは更新されていた。

……帰りたくねぇええええええええええ!!

くっそ赤城の野郎!!! 全部あいつが悪い!! 今度会ったらマジで許さん!!

といくら赤城に怒りをぶつけても、事態は解決しない。

そして、そんな電話をしながら歩いていた俺の前には、既にアパート。

京介「……どうか、どうかばれていません様に。 神様」

ぶつぶつと呟きながら、俺はゆっくりと玄関扉を開ける。

京介「ただいまー」

出来る限りいつも通りで。 もしばれていなかった場合、変な態度を取っていたらそれでばれる可能性がある。

桐乃「おかえり」

桐乃は……いつも通り。

……マジか。 これ、俺の願いが通じたのか?

桐乃にばれない様、パソコンを確認。

うおおおお! スクリーンセイバーナイス! 良くやった!!

桐乃の様子からして、これはばれてない可能性が高い。 やった、やったぜ!

京介「ああ、パソコン付けっぱなしだったか」

わざとらしく俺は言い、パソコンの前へ。

よし、ここまで来れば勝ったも同然。 最悪、ばれそうになったらそのまま消せば良いしな。

桐乃「も~。 出掛けるときはちゃんと切っといてよね」

京介「はは、悪い悪い」

……危なかった。 本当に助かったぜ。 ここまで安心したのって、いつ振りだろうか。

俺は桐乃から画面が見えないように体でブロックし、マウスを動かす。

画面にはすぐに桐乃のブログが表示される。

見た所、出掛ける前と変わった様子は……。

京介「……あれ」

良く見てみると、ブログには新着記事。

いやでもおかしいぞ。 自動更新なんてのは無いはずだから、出掛けた時そのままの状態なら新着記事が表示されているのは変だ。

……まさか、まさかな。

恐る恐る、振り向く。

桐乃「どしたの? きょーすけ」

そこには笑顔の桐乃が居た。

……なんだこの変な汗。

京介「い、いや。 何でも無い。 はは」

桐乃「ふうん。 ヘンなの。 あははは」

京介「ははは」

乾いた笑いが響く。

この空気、知っているぞ。

何回か感じている空気。 そうだ、これはあれだ。

桐乃がすっげえ怒ってるときに出す空気だ。 間違いねえ。

ってことは。

……ブログの記事、見てみるか。

ばれない様に、あくまでも最後まで望みは消さない様に。

4/20 無題

なんか、最近不思議だったんだよねぇ~。 あたしがこのブログに書いたことが、全部叶っちゃうんだもん。 すっごい不思議じゃない? そう思うでしょ?

んでぇ、折角だから、このブログにもうちょっと『お願い事』書いてみようかと思うんだよね。 もしかしてそれも叶っちゃったりするのかな? どう思う?

よし、じゃあ早速ひとつめ~。

土下座してほしいなぁ。 なんとなくだケドぉ。 兄貴にいきなり土下座してほしい、みたいな。 そんな気分。

あ、まだ続き沢山あるから、携帯でチェックしながら土下座して欲しいカモ。 チェックってなに言ってるんだろうね、あたしwwwwwwww

一旦、読むのを止めた。

もう一度、俺は桐乃の方を向く。

桐乃「なぁに? どうしたの? きょーすけ」

やべえ、これ確実にばれてる。 てか、ブログの記事が恐ろしいことになっている。

桐乃「どしたのぉ? あ、携帯見た方が良いんじゃない? なんとなくだケドぉ」

京介「そ、そうだな。 はは」

桐乃「うん。 ほら早く。 あはは」

顔が笑って無いぞ、桐乃さん。

京介「お、おう」

俺は返事をし、携帯から桐乃のブログにアクセス。

もう、従うしか選択肢は無かった。

ええっと、なんだっけ……。

とりあえずは土下座、だよな。

……これはまあ、慣れてるっちゃ慣れてるから良いか。 慣れてるってのが既に泣きたいくらい悲しい現実だけど。

京介「……」

俺、黙って土下座。 延々と土下座。

桐乃「なぁにぃ~? いきなりどうしちゃったワケ? きりりん意味分からないんですケドぉ~?」

桐乃「ねぇ、どうしたの? ねぇねぇ」

桐乃はそのまま俺の頭を踏みつけてきた。 容赦ねえな、この野郎。

桐乃「え~? いきなりそれとかマジキモイんですケドぉ。 ふひひ」

桐乃「携帯、チェックした方が良いんじゃない?」

京介「そ、そっすね。 はは」

俺は再度、ブログを確認。

んでぇ、兄貴が土下座してきたらどうしよっかな? とりあえずなんとなく頭踏みつけるっしょ? なんとなく。

で、それで。 兄貴がいきなり「踏んで頂きありがとうございます」とか言っちゃうじゃん? どうせあいつ変態だし絶対ゆうよね~www

あ、その時は動画撮ろっかな。 兄貴もその方が幸せっしょ? ん?

まあ他にも命令は沢山あるケドぉ。 あんま書きたく無いし、後は全部口で言ってあげようかな。 あ~。 早く帰ってこないかな、あのクソ兄貴。

やべえ、これは本格的やべえ。

ブログの文面から桐乃の怒りが滲み出てるじゃねえか。

桐乃「なに? なんかチョー言いたそうな顔じゃん? あ、待ってね。 折角だし動画撮ってあげるから」

言うと、桐乃は携帯を俺に向けて構える。

……こいつマジで撮る気かよ!? 悪魔みたいな奴だ!

桐乃「はい、どーぞ。 言ってみ」

く、くそ。 でも悪いのは明らかに俺の方だ……。 くそう!!!

京介「ふ、ふ……踏んで頂きありがとうございます」

桐乃「はぁ? なに? よく聞こえないんですケドぉ」

京介「……踏んで頂きありがとうございます」

桐乃「えぇ~? 頭踏まれてるのにお礼言っちゃうの? キモっ!」

こんのクソアマ……! 好き放題やりやがって!

桐乃「でもまぁ仕方ないか! あんたマゾだもんね?」

京介「……ち、違うが」

桐乃「は?」

京介「……違いますけど」

桐乃「最後のチャンス。 今なんて言ったの?」

京介「……そうです」

桐乃「うはー! キッモ! マジ、さすがにキモイって!」

言いながらゲシゲシと俺の頭を踏む桐乃。 こいつ、いつか絶対仕返ししてやるからな、覚えとけくそ!

桐乃「兄貴~。 あたしチョー優しいからさ、そんな兄貴の為に頑張ってあげようかなぁ。 嬉しい?」

京介「……はあ」

桐乃「嬉しいかって聞いてるんですケド?」

京介「う、嬉しいっス」

桐乃「あ~あ。 マジ、こんな変態シスコン兄貴が居るあたしってチョー可哀想。 でも健気に兄貴の為に頑張るあたし、優しいよねぇ」

京介「……はい」

うっぜえー! 桐乃の奴め……この前は「お願いします」とか言ってやがったのに! どっちが変態だこの野郎!

桐乃「じゃあほら、足マッサージしてよ」

京介「……はいよ」

と言ったところで、顔をぺちんと叩かれる。 足で。 足で。 足で!!!

桐乃「なに適当な返事してるワケ? そこは「分かりました、ありがとうございます」でしょ? ほら」

京介「わかりましたありがとうございます」

精々棒読みで言ってやると、桐乃はなんとか納得したのか、無言で顎を使い命令してくる。

俺は泣く泣く桐乃の足を持ち、マッサージ。

いやでも、これくらいなら普通にたまにはあるし、良いか。 マッサージくらいなら。

桐乃からの罵倒が無ければ、だけども。

で、それからしばらく無言で足を揉む。 桐乃もそれ以上は何もするつもりが無いのか、しばらく俺を眺めていた。

桐乃「ねえ、他にもなんかしたいっしょ?」

……俺の妹の罰がそれだけで済むわけがない。

京介「え、ええっと……って、言いますと?」

桐乃「足舐めろ」

……こわ! お兄ちゃんはお前が怖いよ!?

すっげー鋭い視線で俺のことを睨んでやがる。 内心、相当怒っているご様子。

て、てかそんなことしていいのかよ。

京介「……マジで?」

桐乃「あんたに「ありがとうございます」以外喋る権利今無いから。 早くしろ」

なんだこれ、どんなプレイだよ。

つうか、こいつは今この時も動画で撮っているというのが恐ろしい。 後で何に使うんだよそれ。

……やるしか、ねえか。

京介「……ありがとうございます」

俺はゆっくり、ゆっくりと桐乃の足へ口を近づける。

まさか妹様の足を舐める日がやってこようとは。 俺、最高に変態じゃねえか。

桐乃の顔色を窺うと、未だに超不機嫌顔。

俺としては「ぷ。 あんたなにマジで舐めようとしてるワケ? チョーありえないって、キモすぎッ!」とか言うのを期待しているんだが……。

桐乃「は、や、く」

これはもう、確実にやるまで終わりはしない。

俺は舌を出し、桐乃の足を一度。

……すごく惨めな気持ちになった、今。

桐乃「うわ! マジで足舐めてる~♪ キモすぎ! ふひひ~」

桐乃「ねえねえ、足舐めさせて貰って、言いたいことある? ねえ」

この聞き方をするってことは、そう返せという意味だ。

……桐乃の考えが分かってしまう俺が嫌になるぜ!

京介「……ありがとうございます」

桐乃「あんた恥ずかしくないのぉ? あたしの足舐めて、お礼言っちゃうとか! あーあ、マジ引くってー。 ひひ」

桐乃「じゃあ次は何してもらおっかな~。 う~ん」

京介「……ま、まだやるんすか?」

桐乃「は? 当たり前っしょ。 あんた何したか分かってんの? マジで」

京介「……どうぞ何でも命令してください」

桐乃「良い返事じゃん。 ふひひ」

今の時刻は16時。 恐らくこれは、飯の時間まで続くだろう。

桐乃「じゃあ次、わんわんって言ってみて」

……てっきり「その後はまあ色々やらされた」みたいな感じで終わらせられるのかと思ったが、俺の妹様はどうやらそれすら許してくれない。

なんてことだ。 このままだと俺のイメージがただの変態になっちまうじゃねえか。

京介「わんわん」

素直に言う俺。

ふむ。

あれ、若干楽しくなってきた。

桐乃「……ヤバ。 ちょっと可愛いかも」

桐乃「も、もっかい言ってみ?」

京介「……わんわん」

桐乃「ふひひ。 よしよし。 いい子いい子」

そう言うと、桐乃は俺の頭を撫でて来る。

……やべえ、超嬉しいぞ、なんだこれ。

京介「わんわん」

桐乃「あんま調子に乗らないでね。 次、犬ならあたし乗せて歩いてよ」

ほんのちょっと調子に乗ったらこれだぜ。 やってられるかっての!!

桐乃「よいしょっと。 はい、しゅっぱーつ」

まあ、やるんだけど。

桐乃は俺の背中に乗り、俺は部屋の中を歩く。 惨めな四足歩行で。

……すげえ状況だな。

大学生と高校生。

彼氏と彼女。

そして兄と妹。

そんな奴が休日の夕方に部屋の中でこんなことをやっていると、誰が思うのだろうか。

多分、そいつらは相当の馬鹿だろう。

桐乃「早く歩けっつーの。 やる気あんの?」

京介「いや……だってお前、意外と重い」

桐乃「……は? ちょっと待って、ストップ」

これ、今完全に口が滑って余計なことを言ったぜ。 桐乃の顔が怖くて見れない。

桐乃「今何て言ったの? あたしが重いって言った? まさか」

京介「ち、違う! そういう意味じゃなくて……お前だけがって訳じゃないんだって」

桐乃「でも重いって言ったよね? ん?」

京介「まあ……はい」

桐乃「あんた犬でしょ。 なに飼い主の悪口言ってるワケ?」

俺は人間だこの野郎! そんでお前は俺の妹だ!

京介「……すいません」

思ってることと言っていることが完全に違う俺。 悲しいを通り越して笑えてきたな。

桐乃「違うっしょ。 謝り方がなって無さすぎ。 あんたは犬で、あたしはご主人様なワケ。 本当に分かってんの?」

京介「……って言うと?」

桐乃「自分で考えてみ? あたしが納得する謝り方」

……今すぐ押し倒してキスしまくってやろうかこの野郎!?

うう、そうしてやりたい……そうしてやりたいが、あくまでも根本的な部分では俺が悪いからな……。

くっそ!

京介「申し訳ありません、ご主人様」

桐乃「……ま、良いや。 今回だけトクベツに許してあげる」

京介「ま、マジか!」

桐乃「なにタメ口使ってんの? あたしが許すって言ったのは、あんたがさっきあたしの悪口言ったことについてだから。 犬が調子乗るなっての」

……ぬか喜びさせやがって。

京介「……申し訳ありません」

桐乃「はあ。 使えない犬飼うと苦労するよねぇ~。 あんたもそう思うっしょ?」

京介「ええ、まあ……」

桐乃「まあじゃないっしょ。 ほら」

桐乃「罰……じゃないか、あんたマゾだもんね? 普通の人だったら罰なんだケドぉ。 あんただとご褒美か。 じゃあ仕方ないなぁ、ご褒美あげる、ご褒美」

桐乃はにたにた笑いながら、そう言った。 これに対する返答、正解は。

京介「あ、ありがとうございます」

桐乃「ひひ。 よしよし」

桐乃は言うと、俺の頭を撫でてきた。 うむ、これは素直に嬉しい。 こいつこの時すっげえ可愛く笑うし。

桐乃「はい、じゃあほら、舐めろ」

……今のよしよしってのがご褒美じゃなかったの!?

桐乃は俺に手を差し出す。 今度は指を舐めろとのことらしい。

まあ、一度前に似たようなことはやっているし、抵抗は無いけど……。

それでもじっと見つめられたままするってのは、恥ずかしいぞ。

桐乃「はーやーくー」

京介「……はい」

今日は俺に拒否権という物は存在しないので、結局従うことになるのだが。

俺は桐乃の手を取り、細い指を口に入れ、舐める。

桐乃「……どう? 美味しい? ふひひ」

ここでマズイとか言ったら、それこそマズイことになるので、首を縦に振る。 実際そうだし。

桐乃「きも~い! 妹の指舐めて、幸せそうにするとかマジやばくない!? あんたほんとヤバイって~!」

いやお前のめっちゃ嬉しそうな顔も相当やばいっての! どっちがだよ本当に。

桐乃「ねーねー。 あんたさ、そんな変態ならもしかしてまた足舐めたかったりすんの? ねえねえ」

反射的に首を横に振ろうとする。

したのだが。

桐乃「は?」

という声と共に、足で脇腹を叩かれた。 ちなみに桐乃、未だに俺の背中に乗ったまま。

京介「……はい」

桐乃「はいって何が? 何をどうしたいの? きりりん分からないんですケドぉ」

京介「き、桐乃の足を舐めたいです」

桐乃「呼び捨て? 今あたしのこと呼び捨てにした? 聞き間違いかなぁ~?」

京介「……桐乃さん?」

桐乃「は?」

京介「……桐乃様?」

桐乃「なぁに? ふひひ」

どうやら、様付けで呼ばなければならないらしい。 本当に妹かよこいつ。

京介「えーっと……桐乃様の足を舐めたいです?」

疑問系になってしまったが、なんとか言ったぞこの野郎。 もう、流れに身を任せよう。 そうしよう。

桐乃「も~。 仕っ方ないなぁ! 変態の兄貴を持つと、チョー苦労するよねぇ!」

すっごい嬉しそうな顔しやがって。

桐乃は俺の背中から降りると、目の前に足を突き出す。

桐乃「ふひひ~。 まだダメだよ? 待て」

……。

桐乃「よし! 良いよ、舐めて」

へっへっへ。

桐乃、お前は俺を甘く見すぎだ。

どーせ、こいつの中では俺が控えめに舐めるだとか、そう思っているんだろうよ。

確かにな、俺はそうかもしれない。 普段なら。

だけどこちとら、お前に色々やられて吹っ切れてるんだよ! やられたらやり返す、お前がよく俺にやってることだ。

京介「ありがとうございます!」

俺は元気良く言ってやる。 満足そうな顔をしている桐乃に向けて。

桐乃「お。 分かってきたじゃん。 そんな嬉しいのか~。 好きなだけ舐めていいよ? ふひ」

おうおう。 その言葉忘れるんじゃねえぞ、お前。

俺は桐乃の足を両手で持ち、口に近づける。

で、足の裏を舐めてやる。 思いっきり。

桐乃「ちょ! ひひひ! ストップ! すとおおおっぷ!!」

あーあー。 聞こえません。 すいません桐乃様ぁ。 全然聞こえないです。

桐乃がくすぐりに弱いのは知っている。 俺はもう一心不乱に舐めた。 桐乃の足を。 妹の足を。

……いやちょっと待て、なんだこれ。 何で俺はこんな必死に足を舐めているんだ?

まあどうでもいいか! それより今は桐乃の足を舐めなければ。 へへへ。

こうして、俺は桐乃がその場に倒れて笑い疲れるまで、延々とそれを続けるのだった。

桐乃「ひひ……ちょ、ちょっと……ふひひ」

京介「大丈夫ですか~? 桐乃様~?」

桐乃「あ、あんたねえ……マジ、どんだけ舐めるの……」

京介「いやあ、折角桐乃様がくれたご褒美ですし~? 超嬉しかったんでぇ~?」

桐乃「ふ、ふひひ……。 あーヤバイ。 死ぬかと思った」

京介「……で、満足したかよ?」

桐乃「全っ然! てか、あたしはまだ許すなんてひと言も言ってませんケドぉ」

……マジかよこいつ。 もうかなり酷い目に遭わされてるぞ、俺。

京介「つ、次はなんでしょう?」

桐乃「んー。 今考え中。 とりあえず、もう一回「わんわん」って言っておいて」

そんな投げやりに命令されてもな。

京介「……わんわん」

まあ言うけど。

桐乃「ふひ。 ちょっとそれマジ可愛い。 よしよし」

俺、桐乃に撫でられて大分幸せ。

桐乃「あんた撫でられるの嬉しいの? そんな顔してるケド」

京介「……兄妹だしな」

桐乃「あはは、それもそっか。 よっし、じゃあ京介、お風呂に行こう!」

京介「……えーっと、風呂?」

桐乃「一緒に入ろう!」

京介「……」

桐乃「入れ」

京介「……俺と桐乃、一緒に?」

桐乃「当たり前でしょ。 あたしの体洗って貰うから」

京介「……マジ?」

桐乃「マジマジ。 でも、それでヘンなこと考えたら罰ゲームね」

京介「おいおい、俺は桐乃の体を見て変なことを考えたことなんて、過去に一回も無いぞ」

桐乃「……どの口でゆうか! あたしを膝の上に乗せてるときとか、チョー考えてるっしょ、あんた」

ちらちらと俺の下腹部を見て言う桐乃。

……男って不利じゃね?

いや待て、それで行くと判断基準ってのはつまり。

京介「……俺が考えてるか考えてないかの判断基準って?」

桐乃「そんなの決まってるっしょ。 ね?」

京介「いや絶対無理だから! お前と一緒に入ってそうならなかったら病気だっての!!」

桐乃「うわ。 きもーい。 いっつもそんなこと考えてるとかぁ~?」

京介「くそ……で、罰ゲームってのは?」

桐乃「うーん。 あたしの犬状態継続プラス一日」

最悪の罰ゲームだ、それ。

京介「お、お前は女だから良いよなぁ? 頭の中では手錠されて押し倒してもらって無理矢理キスとか望んでるのによ!」

見たか! 言ってやったぜ。 ずっと言いたかった台詞。

桐乃「ふうん」

対する桐乃は小さく言い、横に座る俺の上へと乗る。

今度は背中では無く、膝の上へ。

桐乃「ねえ、京介。 あたしの本音はそうなの……だから、その……」

きゅ、急にそれは反則だぞ。 可愛いじゃねえか畜生。

桐乃「ひっ! きもっ! あんたもうヘンなこと考えてるじゃん!!」

京介「お前が変なことするからだろうが!! もう俺は泣きたくて仕方ねえよ……」

桐乃「男って惨め~。 ちょっとあたしが可愛くしただけでそれとか。 まぁ、ベツにいいケドね。 ってワケで明日もあたしのワンちゃんね」

いや、お前はいつでも可愛いぞ。

心の中でツッコミ。 言ったら余計に面倒なことになりそうな気がしたので。

つか……今更だが、これってもしかして無限ループに入ってるのではないだろうか。

桐乃「ほら、早く出発。 お風呂場にゴーゴー」

桐乃に頭をぺちぺちと叩かれ、俺は指示通りに歩くのだった。

そしてそれから散々コキ使われ、桐乃の飼い犬状態が解けたのはそれから一週間後のことだ。

京介「……人の秘密は探るべきじゃねえってのが良く分かったぜ」

桐乃「んー? なんか言った?」

京介「いえ、何でも無いです」

つい先日、桐乃から「今回はもう許してあげる。 良かったねワンちゃん」と言われ、飼い犬兼奴隷状態は終わったのだが、未だに桐乃が近づいてくると体がびくっと反応する。

……本当に色々やらされたからな。 一生分の恥ずかしさは味わった気がするぜ。 エロゲーやり込んでいるだけはある。

その桐乃はというと、現在俺のパソコンを使用中。 俺が変なサイトなどを見ていないかチェックする為に。

あったら即、同じ目に遭わせると言われてるから俺もそんな馬鹿な真似はしないけどな。

桐乃「あ、京介。 あたしのブログさ、これからは普通に見ても良いよ」

京介「え? 良いのか?」

桐乃「うん。 もう一回見られちゃってるしね。 今丁度記事更新したとこだし、どーぞ」

そう言い、桐乃は少し横にずれる。

俺は桐乃に促されるままに横に座ると、その更新したと言う記事を見た。

4/27 今日も良い天気♪

昨日でワンちゃん最後。 ちょっと寂しい~www

折角良い奴隷だったのに、残念。 ワンちゃんの方も今日はちょっと残念そうな顔してた。 あたしのワンちゃんじゃなくなるのが寂しいのかもwwwキモいwww

でも、あれは兄貴が悪いよね。 ほんとに、人のブログ隠れてみるとかサイアク!

……まぁ、あたしの為にやってくれたのは嬉しかったよ。 ありがとね。

ひとつだけ言っておくと、そんなことはしなくても、兄貴がしてくれることならなんだって嬉しいってこと。 これが本当。

だから、あんま無理しないでね。 今は多分、一緒に見てると思うケド。

いつもありがと、兄貴。

面と向かっては言えないから、こういう形でごめんね。

京介「……桐乃」

横を見ると、恥ずかしそうに顔を逸らす桐乃。

ああくそ、やはりこいつは可愛いぜ。

桐乃「まだ、続きあるから」

そう言いながら、そっぽを向いたまま画面を指差す。

俺は小さく笑うと、記事をスクロール。

だから、またここに願い事とか書いちゃおうかな。

兄貴なら多分、叶えてくれると思うから。

あたしのお願い、聞いてくれると嬉しい。

あのね、あたし。

やっぱりまだワンちゃん欲しいから、明日からも宜しく♪

ねえねえ、もしかして可愛らしいお願いとか書いてあると思った?www

無いからwwwwwあたしがして欲しいのはwwwww兄貴に「わんわん」って言ってもらうことだからwwww

よろしくwww兄貴wwwww

京介「て、てめえ……」

桐乃「ぷ。 なにその顔。 チョーウケるんですケド」

京介「誰が聞くか! 俺はもう絶対あんな真似はしないからなぁ!」

桐乃「ベツに良いよ。 それじゃあ仕方ないかぁ……」

なんだ、やけにあっさり引くんだな……。

桐乃「んー。 最初は黒いのでいっか」

京介「……何が?」

桐乃「え? あんたがあたしの足舐めてる動画送るの」

京介「やめろ! やめて! やめてください!!」

桐乃「えぇ~? でもぉ、兄貴あたしのお願い聞いてくれないし~?」

こんのクソ妹め……。 その携帯ぶち壊してやろうか!?

と、そんな風に俺がどうした物かと悩んでいるとき、パソコンから聞きなれた音が。

京介「……黒猫から、チャット招待?」

桐乃「参加すれば? あたしも見るから」

そう言われ、承諾。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:あら、ワンちゃん。

京介@妹大好き さんの発言:やめてくれ。 頼むからやめてくれ。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:……ええっと、それならば何と呼べば良いかしら。

京介@妹大好き さんの発言:ん? 何が? いきなりどうしたよ。 普通に呼んでくれれば俺は何も文句は無いが。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:いえ。 あなたのことをこれから何と呼べば良いのか悩んでいたの。

京介@妹大好き さんの発言:んなもん、別に何だって良いぞ。 って言ってもさっきのはごめんだけどな。 つうか、それを聞く為にチャットしたのか?

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:分かったわ。 仕方ないわね……ではこれから、あなたのことは妹の足が大好きな変態男と呼ばせてもらうわ。

京介「おい桐乃てめえ!!!」

桐乃「あははははは! ざまあ! 妹の足大好きとかキッモ!!」

こ、こいつマジひでえ……本当に送りやがった。

京介@妹大好き さんの発言:頼む。 頼むからそれは記憶から消してくれ。 それは黒猫の言う別世界であった出来事なんだ、だから俺は関係ない。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:そう……。 分かったわ。 わたしの記憶からは消しておいてあげる。 でも、あまり変なことはしないようにね。

優しいなあ! 黒猫さんマジ優しい! どっかの兄を奴隷扱いする妹様とは天と地の差だぜ!

京介「だってよ、桐乃。 へへへ、悪いな。 俺はどうやらお前のワンちゃんにはなれねーわ。 はははは! あーあ、お前の飼い犬超楽しかったのになぁ! 残念残念!」

桐乃「……なってくれないの?」

京介「ならねーよ! もう弱味なんて無い様な物だしな。 お前が俺のワンちゃんになってくれるって言うなら、考えてやってもいいけどな~。 ふひ」

桐乃「あ、チャット来てるよ。 黒いのから」

なんだ、話の腰を折るんじゃねえっての。

ええっと、何々。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:もし、万が一にでも……いえ、ありえない話ね。 ごめんなさい。

京介@妹大好き さんの発言:なんだよ? 途中で止められると気になっちまうんだけど。

†千葉の堕天聖黒猫† さんの発言:いえ、ただのマッサージに飽き足らず、足でも舐めたら付き合い方を改めないといけないから。 ありえないわよね、忘れて頂戴。

京介「……えっと、桐乃」

桐乃「んー?」

京介「お前が送ったのって、あれか」

桐乃「あれって、京介があたしの足マッサージしてる奴だケド?」

京介「……舐めてる奴は?」

桐乃「あ、忘れない内に送っとかないと。 ふひひ、ありがとね~」

京介「待った! 待って! ストップ!」

桐乃「なに? もしかしてぇ、あたしのワンちゃんになりたいとか? ふひひ」

京介「……お願いします」

こんな感じで、俺の飼い犬兼奴隷生活はもう少しだけ続くこととなった。

いやむしろ、終わりが見えない時点で恐ろしいことこの上無い。

……いつか絶対復讐してやると心の奥底で強く誓い、俺は今日も桐乃に媚を売る。

桐乃「はい、じゃあ言ってみ?」

京介「わんわん」

桐乃「ふひひ~。 可愛い! よしよし」

こんなことをされながら、なんだかエロゲーのバッドエンドみたいだなと思う俺なのであった。


妹の仕返し 終

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

ちなみにきりりんさんの仕返し1.7倍返しとなっております(テキスト量)

うーん、桐乃の仕返しがやり過ぎ+思いっきり調子乗っててウザイな、桐乃にも非があるのにな
ブログなんて黒猫のように見られてしまう恐れがあるんだから、知られたくないなら鍵付きの日記帳にでも買いてろや

なんて思ったり

乙です!

このSっ気成分もいいけど恥ずかしがっても欲しかったこのジレンマ
楽しそうだからいいけど、桐乃さんやりすぎって気持ちもわかる
多分、桐乃の方はキーロガーとか入れちゃってるくせに!見たいな感じなのかな

確かに20スレ弱だと主のSSの投下は厳しいかもね。
今回72スレ使っているしw

次スレ立てても良いと思います。 > スレ主

それにしても、桐乃さん怖すぎw
>>965にほぼ同意
黒猫に簡単に解読されるようなパスワードを使っている時点で、京介を非難する資格は…ねぇ
むしろ秘密の日記を見られた事で、最初怒るけれども希望を叶えてくれた事に感謝をして、
徐々にデレてしまって更に甘々な展開に…ってみたかった。

こんばんは。
乙、感想ありがとうございます。

もう埋まりそうなことに今気付いた……
新スレ立てますね。

>>965
きりりん氏も京介氏が本気で嫌がっていないと察して、ということです。

>>977
今回のお話はあくまでも京介氏の視点からです! つまりはそういうことです。

>>979
きりりん氏の感謝の気持ちは最後に書いた日記の記事で現しているといった感じになってます。
あれが本音ということで。

京介「行ってきます」
京介「行ってきます」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378727397/)

スレタイ間違えてるような気がするのは気のせいです。

うめ

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