【安価・コンマ】スリーパーの♀ポケハーレム道【ポケモン】 (81)

◆rIel.EK3Cs
代理
以下、コピペ


スリーパー「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」

私はスリーパー。
カントー地方のとある森に住んでいる、少し頭の良いだけのごく一般的なスリーパーだ。
そんな私は絶賛、絶体絶命と絶望のさなかだった。

ゴオオオオォオオオォオオォォォオオォォォッ!

スリーパー「クソッ……!」

ごく普通に、静かに1ポケモンとして暮らしていた私。
しかし、目が覚めると森は炎に包まれていた。

バキバキバキッ!

スリーパー「あぶっ……!」

ドドォンッ!

「びぎょっ」

スリーパー「ぐあああぁあぁあっ!?」

目の前を走っていた小さなポケモンが、倒れて来た木の下敷きになって潰れた。
それと同時に私の顔の左側が冷たく、いや、熱く焼けた。
燃える木の枝の一本が、直撃したらしい。

スリーパー「……ぐううぅっ……!」

痛みに悶えながらも、私は足を止める訳には行かなかった。
逃げなければ、死んでしまう。
私は顔の左側を抑えながら、どこにあるかも分からない炎の出口に向かって走り続けた。

こちら、代理立てしてもらったスレです。
ありがとうございます。
続けます。

スリーパーが燃える森の中で見つけたポケモン

ポケモンの名前(種族名・たねポケモン):ラルトス
性別:♀
性格(原作に無い物でも可):ひかえめ
出会い(倒れていたとか、死にかけの親から託されたとか):ボロボロの状態で倒れていた
生い立ち:森の奥で静かに暮らしていたが人間の密漁者に狙われ命からがら逃げてきた
特徴:色違いのため希少性が高い

スリーパー「……ゼェ、ゼェ、ゼェ……!」

たくさんの煙を吸ってしまって、喉が焼けるように痛い……!
とにかく、今は生き残る事だけを考え……

……たすけて……

スリーパー「……!」

その時、私は誰かの「声」を聴いた。
エスパータイプのポケモンが死の間際に放った、おそらく同じくエスパータイプのポケモンだけが受け取る事の出来るとてもか弱い「念」。

スリーパー「……クソ……!」

受け取った。
受け取ってしまった。
だから、私は助けざるを得なかった。
私は念の聞こえて来た方に向かって駆けていった。

私が駆け寄ると、そこには小さなボロボロのポケモンが倒れていた。

スリーパー「おい、大丈夫か……! ……げほっ、げほっ……!」

ラルトス「ひゅー……ひゅー……」

抱き上げてみると、それは虫の息のラルトスだった。
最初、全身の怪我は火災で負った物かと思っていたのだが、そういう傷ではなさそうだ。
電気タイプの技を受けた時の特有の傷が見える。
この辺りにこんな傷痕を付けられるポケモンはいないはずだが……
っと、そんな事を考えるのは後だ!
私は意識のないラルトスをおぶって、再び走り出した。

スリーパー「せっかく助けたんだ……死なないでくれよ……!」

ラルトス「ひゅー……ひゅー……」

走り続けていると、ようやく火災の終わりが見えて来た。
火が広がるよりも早く、なんとか脱出が間に合ったらしい。
良かった……生き残っ……!

???「そこだ! エレキネット!」

バヂィッ!

スリーパー「がぁっ!?」

私が炎の外に踏み出したその瞬間、柔らかい感覚と鋭い痛みを同時に足裏に感じた。
全身が痺れて、ガクンとその場に転んでしまった。

男「よくやったマッギョ」

マッギョ「マッギョ~」

風景に溶け込む模様の恰好をした男が森の中から出て来て、私の足元にいたマッギョをボールに収める。

スリーパー「なん……だ……?」

私は人語は理解できるが、話す事は出来ない。
男は足を振り上げ、思い切り私の腹を蹴り上げた。

男「邪魔だ」

ドガッ!

スリーパー「がぁあっ……!」

私が呻いていると、嬉しそうに男は続ける。

男「ちょっと燃えすぎたな。まあ無事に色違いのラルトスがゲットできたからいいか」

男はそう言いながら、赤と白のボールをラルトスに近づける。
あのボールに触れたら、あの子は捕まる……!
先ほどは火災の中で分からなかったが、どうやらそのラルトスは普通とは違う……色違いのようだった。
燃えすぎたというこの男の言葉からすると、この男がラルトスを捕まえるために森に火を放ったのか。
ラルトスの傷痕も、あのマッギョの物なのか。
……それだけのために?
たったそれだけのために私の家は奪われたのか?
逃げ遅れたポケモンたちの命は、奪われたのか?
このラルトスは……こんな酷い事をされたのか?

……人間とは……人間とは、こんなにも、狂えるものなのか……?
私の拳は、怒りに震えた。

スリーパー「……ぅおおおおおぉおああああっ!」

私は残った力を右手に溜め、男に向かって解き放った。

ブォアッ!

男「ぐあっ!?」

キルリアを背に守りながら、私は男と向き合う。

スリーパー「お前だけは……お前だけは絶対に許さん! 殺してやる……殺してやる!」

男「いてぇな……! クイタラン!」

クイタラン「クイタラァアアァアァア!」

男がボールを投げると、火を噴く大きなポケモンが現れた。
対峙しただけで勝てないと分かる。
クソ……クソ、クソ、クソ!
殺される!
どうにかしのぐ方法は……

そう思っていた次の瞬間、バキバキと大きな音を立てながらひと際大きな燃え盛る木がこちらに向かって倒れて来た。
避ける力も、時間も、無い。

男「あっ、色違いラルトスが!」

スリーパー「ク……クソがあぁあぁあぁぁぁぁあぁあぁあぁぁっ!」

そうして、私とラルトスは大木に圧殺された。

……じさ……お……さん……おじさん……!

ラルトス「おじさん……!」

私「ハッ……!」

その声に私が目を覚ますと、先ほどの色違いのラルトスが覗き込んで来ていた。

ラルトス「よかった……起きた……」

私「ここ、は……?」

あの状況から命が助かったのか? と辺りを見回すと、そこは確かに森だったが焼けた跡など一切ない。

ラルトス「……わからないんです。目が覚めたら、私もおじさんの横で……」

その時、左目に何かが入って思わず目をつぶる。
顔の左側を触ってみると、そこには潰された水色の果実が塗られていた。

私「……もしかして、これは君が……?」

ラルトス「あ、は、はい。……おじさん、やけどしていたから……チーゴの実を探して……」

私「……ありがとう。助かるよ……」

顔についたチーゴの実をこそげて、食べる。
うん、ちょっとにがい。

ラルトス「……! あ、ごめんなさい……! 私が……実を持ってくるのが遅かったから……!」

ラルトスがポロポロと泣き出す。

私「どうしたんだい」

ラルトス「大きなやけどの跡が……残って……」

指で触ってみると、確かに目の周りにひきつれのような痕が残ってしまっている。
しかし、傷口が腐ったりせずにこの程度で済んだのはチーゴの実のおかげだろう。

私「いいんだよ。傷が深すぎたんだ。チーゴの実が無ければ、もっと酷い痕になっていたよ……」

ラルトス「私が……私なんかが、あの森にいたせいで……! みんな、みんな、燃えちゃって……! ごめんなさい……ごめんなさい……!」

いつの間にか、ラルトスの身体はガタガタと震えてブツブツとつぶやいていた。
私のやけどを見てあの森の惨状を思い出し、全部自分のせいだととてつもない罪悪感に押しつぶされそうになっているのだろう。
私はやさしくラルトスを抱きしめてあげた。

私「大丈夫。君のせいじゃない。あの男が、全部悪いんだ。君のせいじゃない……君のせいじゃない……」

ラルトス「うっ、うわあぁあぁあぁぁんっ……!」

とめどなく泣くラルトスを、私は抱きしめ続けた。

ラルトス「おじさんが……助けてくれたんですね」

スリーパー「うん? そうだけど……」

落ち着いたラルトスが、目を真っ赤にして鼻をすすりながらそう言う。

ラルトス「私、人間のポケモンに攻撃されて、逃げたくても、動けなくて……たすけてって叫んでいたんです……」

マッギョか……
もし私が受けた威力の攻撃をその小さな体に受けていたとしたらとても痛かっだろうし、当然動く事もままならなかったのだろう……

ラルトス「でも、置いて行かれてしまったんです……みんな生きるのに必死で、仕方ないですよね……」

スリーパー「うん……」

あの場では、誰もが生きるのに必死だった。
小さな命を助ける暇なんてなかった。
私は、他のポケモンよりも少し賢かった。
だから、見捨てられなかったんだ。

ラルトス「息が出来なくなって、目の前が真っ暗になって……でも、ずっとたすけてって思っていたら……誰かが、助けてくれた」

きゅっと、ラルトスが私の手を握る。

ラルトス「優しい、温かい心がぽわぽわって伝わってきて……本当に、安心しました。……そして気づいたら目の前におじさんがいて、ああ、助けてくれたのはこの人だったんだって……」

ポロポロと涙を流しながら、ラルトスが私の目を真っすぐに見つめて来た。

ラルトス「本当に……ありがとうございます……」

はにかんだその表情に、私は年甲斐もなくどきりとしてしまった。
催眠をかけて連れ去りたいという本能が一瞬顔を出したが、どこに連れ去るんだと考えると冷静になる事ができた。

スリーパー「よし」

ラルトス「それは……なんですか?」

スリーパー「ん、これ?」

私はそこらへんに落ちていた丸い石に穴を開け、枯草で編んだ紐でぶら下げた。

スリーパー「これは私のパワーを増幅させるための道具だよ。本当は鉄の方が伝わりやすくて良いんだけど……」

私、スリーパーは鉄の輪に紐を通したものを使うと念動力が強くなる。
今までは拾った50円玉に紐を通したものを使っていたのだが、火事の中で紛失してしまったのだ。

スリーパー「これでどうだろう。ちょっとかけてもいいかな」

ラルトス「いいですよ」

スリーパー「じゃあ絶対に手を上げないでね。私が上げてって言っても、上げないように抑えているんだよ」

ラルトス「は、はい……!」

私は小さく揺らしながら、弱めのさいみんじゅつをラルトスにかけた。
丸い石は紫色の光を纏い、ゆら、ゆら、とラルトスの瞳の前で揺れる。
ラルトスの目が少しとろんとして来た。

スリーパー「じゃあ、左手を上げて」

ラルトス「……あっ!?」

ラルトスの意思とは反して、自然とラルトスの左手が上がる。

ラルトス「凄い、これがさいみんじゅつ……」

スリーパー「うん。ちょっとかかり方は弱いけれど、使えるね」

私がさいみんじゅつを解くと、ラルトスの手はへにゃりと降ろされた。

スリーパー「これで、君を守る事が出来る……」

ラルトス「えっ」

私の言葉に、ラルトスが驚いた顔をする。

ラルトス「守るって……あの……私と、一緒にいるんですか……?」

スリーパー「……? どういうこと?」

ラルトス「だ、だって私……狙われているんですよ……あの……私と一緒にいると、おじさんにも、危険が……」

そこで、私は私とラルトスの認識の間に齟齬がある事に気づいた。
私は勝手にこれからもラルトスを守るつもりでいた。
しかし、ラルトスはそうではなかった。
色違い、つまり自分のような狙われている存在を連れて行くとは思いもしていなかったのだ。

スリーパー「私たちは、得体も知れない場所で目覚めた。火事も起きた様子がない。もしかしたら、テレポートか何かで、知らない場所に飛ばされたのかもしれない」

聞き覚えのない鳥ポケモンの鳴き声が聞こえて来て、ラルトスがビクッと身体を震わせる。

スリーパー「そんな場所で、君を放り出すわけがない。一度助けた命。ゆめゆめ死なせるような事なんてしないよ」

ラルトス「そう……ですか……? ……そう、なんですね……あの、おじさん……ありがとう、ございます。……本当に……ありがとうございます……」

ラルトスはそう言ってもじもじとしながら、私の手をにぎにぎして来た。
ああ、連れ去ってしまいたくなるなぁ……

それから、私たちは現状把握のために森を歩く事にした。

スリーパー「まず私たちが探すべきなのは、ポケモンセンターだ」

ラルトス「せんたー……?」

スリーパー「ポケモンの病院だよ。人間のポケモンだけじゃなくて野生のポケモンも治してくれるから、まずはそこで傷を癒さないと……」

手をつなぎながら、私はラルトスの身体を観察する。
全身に多くの傷を負っており、ボロボロ。
私もやけどは治ったが、全身が痛い。
ポケモンセンターには、私も何度かお世話になっている。
裏口から入れば、色違いのラルトスが人に見つかることはないだろう。

ラルトス「それって……人間が、いるんですか……? また、痛い事をするんですか……?」

その言葉に、私は静かにラルトスの頭をなでる。

スリーパー「大丈夫だよ。ポケモンセンターの人間は優しい。あの男とは、全然違うんだよ」

ラルトス「そうですか……」

ラルトスは人間にトラウマを抱えてしまっているのだろう。
手が震えている。
私はラルトスの手をしっかりと握り返すと、森を歩いて行った。

スリーパー「ハァ、ハァ……なんとか、たどり着いたね……」

森の中に、ぽつんと一階建ての小さなポケモンセンターがあった。
見つけた道に沿って進んだところ、偶然見つける事が出来たのだ。
私が住んでいる森にポケモンセンターは1つしかないのに、あのポケモンセンターは見た目から位置から、全てが違う。
やはり、何かしらの原因で別の森に飛ばされてしまったと考えるべきだろう。

スリーパー「ハァ……ハァ……ハァ……」

ラルトス「おじさん……!」

スリーパー「大丈夫だよ……これぐらい……」

道中、何匹か敵対的なポケモンと出会って戦闘になったが、ラルトスもサポートしてくれた事で楽に勝つことが出来た。
しかし私の傷口が開き、血が沢山流れてしまった。
今は手と念動力で押さえつけているのだが、このままでは失血で意識を保てなくなってしまう。
早く、治療を……

ピンポーン

私はポケモンセンターの裏口のボタンを押した。

ジョーイ『はいもしもし?』

スリーパー「すみません……助けてください……」

私の鳴き声を聞くと、向こう側の声は私たちがポケモンだという事に気づいたようだ。

ジョーイ『この声は……ポケモンね? 分かった、今行くわ』

中が少しあわただしくなった後、見慣れたピンク髪の看護婦が出て来た。

ジョーイ「はーいお待たせ。さて、今日のお客さんは……」

看護婦は私を一目見ると、サァ、と顔を青くした。

スリーパー「……?」

ジョーイ「……と、とりあえず、中に入って。……治して、あげる」

私がそのまま中に入ろうとすると、くい、とラルトスが私の手を引いた。

スリーパー「どうしたの」

ラルトス「……ちょっと……いやな感情がする……あの人間から、感じる……」

そう言えば、ラルトスは他人の感情を読み取ることが出来るんだったな。
なにかあの看護婦から読み取ったのだろう。
私はラルトスの頭をなでる。

スリーパー「うん。……警戒しておこうか」

そうだ。
このポケモンセンターは私が知るポケモンセンターと違う。
それに、人間は何をするか分からない。
あの男のように……
警戒しておいて損はないだろう。

ジョーイ「う、動かないでねー。ちょっと染みるわよー」

プシュー、シューッ

スリーパー「……っ」

看護婦が私の左肩にスプレーを吹きかけると、じんわりと熱さが広がっていく。
なおラルトスは既に治療を終えられて、私の右手をきゅっと握っている。

ジョーイ「目を閉じていてね」

チーゴの実の香りのする薬も顔の左側に塗り込まれる。
良かった。
この世界でも、ポケモンセンターは優しい場所だった。
治療を終えた看護婦は、ちょっと待ってねと私たちに言って奥の部屋に入っていった。

ラルトス「おじさん……」

その時、クイクイとラルトスが私の腕を引いた。

スリーパー「なんだい?」

ラルトス「……怖がってる……」

スリーパー「大丈夫だよ」

もしかして怖いのかな、と思ってそう聞くと、ラルトスはフルフルと首を横に振った。

ラルトス「違うの」

スリーパー「……違う……?」

ラルトス「あの人……おじさんの事、怖がってる」

静まり返った部屋に、別の部屋で話すあの看護婦の声が聞こえて来た。

ジョーイ「はい……はい……ありがとうございます……では、刺激をしないように……はい……食い止めておきますので……」

なにか猛烈に嫌な予感がして、私は立ち上がった。
完全に、野性の勘というやつだった。

スリーパー「逃げるぞ……!」

ラルトス「は、はい……!」

ドアノブを捻ったのだが、カギでもかけられてたのか開かない。

スリーパー「ちょっと離れてて……はっ……!」

バキィン!

輪を振り作り出したサイコカッターでドアノブを破壊すると案の定小さくない鋭い音が響き、それに気づいた看護婦がバタバタと慌てる音がする。
私はラルトスの手を握り、そのまま外に飛び出た。

ジョーイ「あっ、待ちなさい!」

少し遅れてジョーイも出てくる。
手に長い銃のような物を持ち、明らかにこちらに照準を合わせている。

パァン!

スリーパー「ふん!」

「きゃぴっ!?」

銃口から真っすぐ飛んできた物を念動力で逸らすと、それは通りがかりのポケモンに当たってしまった。
ポケモンは何歩かフラフラと歩いた後、パタリと倒れこんでぐーぐーと寝息を立て始めた。
飛んできた物をよく見ると注射器のような形で、中の液体が自動的にポケモンに注入されていた。
麻酔銃だ……!

スリーパー「こっちだ!」

看護婦が次の弾を装填している内に、私とラルトスは身を隠せる森の中に走っていった。

ジョーイ「……逃げられた……!」

銃口を降ろし、ジョーイは汗を拭きとる。
麻酔弾を当ててしまったポケモンにカゴの実を与えてリリースしてから、ジョーイは再びセンターの受話器を手に取った。

ジョーイ「すみません、逃げられました。はい。感づかれたようで。触れずに麻酔弾の軌道を逸らしていました。タイプはエスパーのようです。……はい。変わらず色違いのラルトスを連れています。はい。ありがとうございます。では、詳しい情報は後ほどこちらに到着した際に……」

スリーパー「クソ、なんでだ……! ポケモンセンターは色違いも分け隔てなく受け入れるはずだろ……!? まさか、あの看護婦もラルトスを狙っていたのか……!?」

私は走りながらそう悪態をつく。

ラルトス「はぁ、はぁ……違う、おじさん……」

スリーパー「……私?」

ラルトスがなにか言いたそうだったので、一旦足を止める。

スリーパー「私が、どうかしたのか?」

ラルトス「……確かに、あの人、私を珍しそうにみていた……でも、それだけ……」

色違いは珍しく、よく人間に狙われる。
それは知っている。
ただ、ポケモンセンターには多くのポケモンが集まり、その中にはたまに色違いも混じっている。
私も治療を受けている時に1匹だけ見た事があるので、あれほど目を血走らせて捕まえようとするほどの物ではないはずだ。
では、あの看護婦は誰を狙っていたのか。
あの銃口は、どちらに向けられていたのか。

ラルトス「おじさんを……怖がってた……おじさんを、凄く警戒していた……とても、動揺してた……」

そんな、まさか。
もし私たちが何かの拍子に別の森に飛ばされて、ここがスリーパーのいない地方だったとしても、あんなに麻酔銃を持ち出すほどに私を捕まえようとするはずがない。
だってスリープもスリーパーも、十分に周知されているはずのポケモンなのだから。
では逆に、どうすればあんな態度になるのだろうか。

スリーパー「あの看護婦は私を……スリーパーを、知らなかった……?」

……バタバタバタバタバタバタバタバタ!

突然の爆音にラルトスの身体がビクッと震える。
上を見ると、木の葉の間から何台ものヘリコプターがポケモンセンターの方角に飛んで行くのが見えた。

スリーパー「ウソだろ……!?」

どうやら、人間は本気で私たちを探すつもりらしい。

ちなみにポケモン同士は話が通じていますが(種類が違くても通じる)人間とポケモンはアニポケのようにニュアンスで話しています。

今後登場するであろうポケモンの採用にも関わるので質問
>>1的にヒロイン枠の♀ポケはどこまでOKでどの辺りNGなのか知りたい

ポケモンは種族の幅広すぎるからこういう時のラインが人によって違うんよ
昔コイルの薄い本(R-18)とかもあったぐらいだし

ポケモンレンジャー男「匂いはどうだ、ポー」

ポチエナ「うーん、流石に知らない匂いを追跡するのは難しいぜ、ご主人」

ポケモンレンジャー男「そうか……」

そんな会話が聞こえる。
サングラスをかけたその男は私たちを探す人間の1人らしく、ポチエナがクンクンと地面に鼻を這わせている。
詳しい理由は分からないが、やはり、人間は私たちを探しているようだ。

スリーパー「(じゃあ、行くよ)」

ラルトス「(き、気を付けてくださいね……)」

スリーパー「(大丈夫)」

地上にいるラルトスとテレパシーで会話をしながら、私は木の上から人間とポケモンを見下ろす。
木の上なら感覚が敏感なポケモンにも見つかりづらく、『奇襲』も簡単だ。
私は木に足を引っかけると、曲芸のように1人と1匹の目の前にぶら下がった。

ガサッ!

ポケモンレンジャー男「なっ!?」

ポチエナ「なんだっ!?」

フォン

石の振り子を焦らずゆっくりと、一定のタイミングで振る。

フォン、フォン、フォン

ポケモンレンジャー男「……」

ポチエナ「……」

すると次第に1人と1匹の目が振り子にくぎ付けになる。
振り子の周期はそのまま、私は念を込めた言葉をつぶやいた。

スリーパー「眠れ」

ドサドサッ

>>20
ご質問ありがとうございます!
ポケモンは大体全部OKです。
一応基準は性器がありそうかどうか、イチャイチャしやすいかどうかで判断ください。
サイズとか容姿、タイプはあんまり関係なく、ポケモンのデザインは素晴らしいので、大体全部エロい目で見れます。
例えばイシツブテとかはなんか、入れたらボロボロになりそうなので無しという方向性で……

ポケモンレンジャー男「ぐー、かー……」

ポチエナ「すぴー、すぴー……」

スリーパー「……よし」

ラルトス「おじさん、すごい……!」

スリーパー「スリーパーだからね」

私はゆっくりと地面に降りる。
夢の味見もしてみたいのだが、今はそんな事をしている時間はない。
まず、男のボールにポチエナを収納。
それから、男を人目の付かない茂みに引きずり込んだ。

ラルトス「この人を、どうするんですか……?」

スリーパー「ちょっと身ぐるみを剥がさせてもらうんだよ。この森には、もう何人もこの男のように私たちを探す人間がはびこっている。だから、変装して人間の町に逃げる事にした」

下着を残して男の服を脱がし、着る。
少しブカつくが、それが逆に隠れ蓑になりそうだ。

スリーパー「どうだ。人間に見えるか」

サングラスをかけながらラルトスにそう聞くと、ラルトスはパチパチと小さな拍手をくれた。

ラルトス「凄く見えます! ちょっと肌が黄色いですけど……」

スリーパー「まあ帽子を深く被れば大丈夫だろう。そして、最後に……」

私はボールの1つをカバンの中から取り出して、ボタンを押した。

スリーパー「ラルトス。このボールの中に入ってくれるかな」

ラルトス「中に、ですか……」

恐らく、私と色違いのラルトスが一緒にいるという事も人間側には漏れているだろう。
だからこのまま手をつないで連れて行くという訳にはいかない。

スリーパー「人間が作ったボールの中に入るのは抵抗感があるかもしれないから、もちろん無理にとは言わない。別のプランも考えているけれど、これが一番……」

ラルトス「……大丈夫です」

そっと、ラルトスがボールに手を添えた。

ラルトス「おじさんの言う事だから……間違いないです」

ラルトスは微笑みながら赤い光になり、ボールの中に吸い込まれていった。
……どうやら、ラルトスから私への信頼感は、人間に対する警戒心のそれよりも高いようだ。
少し、嬉しいな。

スリーパー「さて、整頓をするか」

私は男のカバンの中からポケモンの入ったボール、そして私が扱えない精密機器を取り出し、まだ寝ている男の隣に置く。

スリーパー「お、良い物があるな」

その時、カバンの底に光を反射する円盤状の物を発見した。
カバーをこじ開けて取り出すと、少し大きいが振り子の素材にピッタリの形だった。
同じくカバンに入っていた赤い色の糸を括り付けて、私はようやくしっくりくる振り子を手に入れる事が出来た。

スリーパー「じゃあ行こう」

ボールに向かってそう言うと、赤い半球越しにラルトスが微笑みを返してきた。

スリーパーさんの変装の手際が某暗殺ハゲ並みに良い

>>24 HITMAN!

私は額の汗を拭いた。

スリーパー「……ふぅ……」

ラルトス「(すごい、本当に逃げきれちゃいました……)」

私たちなんとか人間の包囲網をかいくぐり、町と町を結ぶ道路を歩いていた。
どうやら私の変装はポケモンであることを隠すのにとても有効のようだった。
何人かの人間ともすれ違ったのだが、特に不審がられる様子も無かった。
このまま歩いていけば、次の町にたどり着くだろう。

スリーパー「……まず、情報だな」

男が持っていた精密機械なら無限に情報を得ることが出来ただろうが、さすがにあれを扱える自信はない。
その時、道になにかチラシのような物が落ちている事に気づいた。
ふとそれを拾って見てみると、とても見覚えのあるポケモンの写真が印刷されていた。

スリーパー「……私たち……だな……!?」

そこには、あのポケモンセンターの診察台の上に座る私とラルトスがいた。
画角からして、天井のカメラに撮られていたのだろう。
何が書いてあるかは分からないが、人間は本気で私たちを探している。

スリーパー「……この服も早いうちに替える必要があるな」

ラルトス「(どうしてですか? さっき着替えたばかりなのに……)」

ボールの中のラルトスが、テレパシーで話しかけてくる。

スリーパー「(あの男にはなるべく長く寝るような催眠術をかけたが、それでも限界がある。他の人間が見つけるかもしれないし、そうでなくともいつか自然に目を覚ます。そうなった時、自分の服を探そうとするはずだ)」

ラルトス「(あ……だから、新しい服が必要なんですね……)」

金はあの男がもっていた物がある。
しかしこうしてカメラに撮られてしまっている以上、カメラに写る前に次の服を調達しなくては。

スリーパー「(……そろそろ日が沈んできたな。一度寝る場所を探して、野宿の準備をしよう)」

ラルトス「(はい……!)」

そうして、私たちは火事が起きてから初めての夜を迎えた。

カチャカチャカチャ
……プシューッ

ラルトス「うっ……変なにおいです……」

スリーパー「ポケモンを退けるための物だからね。……私にもキツイな」

私は人間の荷物からスプレー缶を出し、寝床にする木の周りに撒いた。
ポケモンを退ける匂いを発するものらしく、独特なにおいが鼻をつく。

スリーパー「我慢するしかないよ……さ、寝ようか」

私が先に木に登り、ラルトスに手を伸ばして引き上げる。
太い枝に寝転ぶと、ラルトスが私の首回りの毛を枕に、私の上にうつ伏せになる。

ラルトス「……おじさんの毛、もふもふ……」

スリーパー「……それならよかった」

ラルトスは私の毛を揉んだり、押したりして、しばらくの間触感を確かめた。

ラルトス「……あたたかい、です……すぴー……」

突然電池が切れてしまったかのように、ラルトスが落ちた。
高い寝息を立てながら、小さな胸を上下させる色違いのラルトス。

スリーパー「……私が、守らなくては……」

背中に手を乗せてみると、薄い皮ごしに背骨と肩甲骨が感じられる。
弱い、儚い、命だ……
守れるのは私しかいないんだ……
私しか……

ラルトス「……ん……んんぅ……」

木漏れ日の朝日が眩しくて、ラルトスは葉のベッドで目を覚ました。
背伸びをすると、カサカサと葉が鳴った。

ラルトス「あれ……おじさん……?」

よくよく辺りを見てみると、スリーパーがいない。
その事実に気づいて、とても怖くなる。

ラルトス「おじさん。……おじさん? ……おじさん……!」

もしかして、スリーパーは自分を置いてどこかに行ってしまったのではないのだろうか。
ラルトスは力も弱いし、色違いで目立つ。
だから、足手まといになる自分は置いて行かれてしまったのではないか、とラルトスは考えた。

ラルトス「おじさん……おじさぁん……!」

ラルトスはそれがただただ悲しくて、涙が溢れて止まらなかった。

ラルトス「あぁあ……ああああぁぁぁ~……!」

スリーパー「ただいま……ってラルトス!? 大丈夫か、なにかあったのか!?」

口を開けて大泣きをしていると、朝の体操を終えて来たスリーパーが心配の言葉をかける。

ラルトス「おじさぁん……ああぁあぁあぁ~……!」

スリーパー「おう……」

そして、スリーパーに抱き着いて、安心から更に泣きはらす。

スリーパー「……大丈夫だ。私はいなくならないから。大丈夫だから……」

ラルトス「あぁあぁぁぁ~……!」

しゃく、しゃく

ラルトス「……おいしい、です……」

スリーパー「それはよかった」

スリーパーの採ってきた甘いモモンのみを食べながら、ラルトスは赤くなった目をこする。

ラルトス「おじさん、さっきは何をしていたんですか……?」

スリーパー「うん? 食べれるものを探しにと、朝の運動だよ。おじさんも、もう若くはないからね。朝動くとその日動きやすくなるんだ」

もうあまり上がらない腕を回しながら、スリーパーはそう答える。

ラルトス「そうなんですか……ごくん。……ごちそうさまでした。ありがとうございます」

スリーパーの採ってきた甘いモモンのみを飲み込んで、ラルトスがお礼を言う。

スリーパー「いいよいいよ」

食べ終わってほわほやと笑顔になっていたラルトスだったが、はっと何かに気づいてスリーパーの方を見る。

ラルトス「おじさんは、食べないんですか……?」

スリーパー「……おじさんはもう食べたから」

じっ、とラルトスがスリーパーの顔を覗き込む。
思わずスリーパーは目を逸らした。

ラルトス「嘘……分かるんですよ……?」

そう言えば、感情を読み取られるんだったな……

スリーパー「……ごめん……きのみはその1つしか見つからなくて……」

私が正直にそう言うと、ラルトスが不機嫌そうに頬を膨らませた。

ラルトス「……次同じことしたら、おこりますよ……」

スリーパー「でも、私よりも君が食べた方が……」

ラルトス「……半分こ、です」

私はその膨らんだ頬の圧に負けてしまい、苦笑いをしながら頷くしかなかった。

スリーパー「……じゃあ、入れるね」

ラルトス「はい……!」

カチッ、シュプゥン(ポケモンをボールにしまった音)

ボールのボタンを押すと、ラルトスが赤い光になってボールに収まった。
もうボールには慣れたらしく、ボールの中でも余裕そうだ。
ちなみにラルトスから聞いたのだが、ボールの中はとても快適のようだ。
振動はほとんど無いし、寝る場所もなにから全て揃っているらしい。
そう聞けて安心だった。
私は、人間の服に袖を通して、襟を正した。

スリーパー「さて、目指すは次の町。手に入れるべきは新しい服」

ラルトス「(行きましょう……!)」

私は襟を正して、次の町に向けて道路を歩き出した。

短パン小僧「そこのおじさん!」

スリーパー「……!」

虫網を持った少年が、突然話しかけて来た。

短パン小僧「いま目があったな! 目と目が合ったらポケモン勝負だ!」

スリーパー「……」

私は手を左右に振ってそれを断る。

短パン小僧「あちょ、そりゃねぇよぉ。なあおじさんもモンスターボール持ってるじゃないか。戦ってくれよぉ」

ブンブン

短パン小僧「ちぇー、つまんねぇ奴だなー……」

……もうこうして凌ぐのも、何人目だろうか。
私はただ道路を歩いているだけなのに、人間はどうしてこうポケモン同士を戦わせようとするんだろうか。
もうしばらく歩いていると、今度はバイクに乗ったガラの悪い男とスキンヘッドの2人組が道を塞いでいた。

ようちえんじ「うぇ~ん! ドンちゃぁん! わたしの500円がぁ~!」

ドンメル「メルゥ……」

バイクやろう「へへへへ! 弱い奴から金を巻き上げるのは楽しいのぉ、弟者」

スキンヘッド「そうじゃのぉ、兄者」

……どうやら、あの2人組はようちえんじとポケモンバトルをして500円を巻き上げた所らしい。
ようちえんじはドンメルを抱えて泣きながら私の横を通り過ぎていった。
弱い物虐めだなんて、趣味が悪い奴らだ……

バイクやろう「待つんじゃあ、あんさん」

スキンヘッド「お主、いかにもワシらと関わりたくなさそうじゃのぉ」

スリーパー「……」

目を合わせないように横をすり抜けようとしたら、引き止められてしまった。
急いでるんで、という手振りをしたのだが、どうやら2人は私を逃がす気はないようだ。

バイクやろう「そうはいかんけんのぉ」

スキンヘッド「ポケモンを持っていないのなら通したが、モンスターボールを持っておるからのぉ。ワシらは金を置いて行ってもらわないと、気が済まんからのぉ」

ため息をつきながら財布を開けようとすると、2人組が首を振る。

バイクやろう「ああ違う違う。ワシらは金が欲しいのではない」

スキンヘッド「戦って勝ち、その上で金を巻き上げたいのじゃからの」

ああ、本当に面倒な人間に当たってしまった。
走って逃げる事も考えたが、この道路ではすぐにバイクに追いつかれてしまうだろう。
どうしようか悩んでいたその時、ラルトスがボールの中から話しかけてきた。

ラルトス「(おじさん……私を、出してください)」

スリーパー「(ラルトス……?)」

どう見ても無理に作った笑顔を向けながら、ラルトスは言う。

ラルトス「(痛いのくらい我慢しますから……)」

そう。
確かに、それは理論的には最適解だ。
ラルトスを戦いの場に出して、負けて、おとなしくお金を払う。
そうすればここは通れるだろうし、これ以上のこの2人とのもめごとは避けられるだろう。
だが……

ラルトス「(おじさん、私は、大丈夫、ですから……)」

ラルトスを戦いに
出す or 出さない
↓1

……ダメだ

スリーパー「(ラルトス)」

ラルトス「(……はい)」

スリーパー「(安心してね。なにも心配はいらないから)」

私はポケットから振り子を取り出す。

ラルトス「(……? おじさん、何を……)」

私は辺りを見回し、他に人間がいないか確認した。

バイクやろう「ふん。そんなにポケモンが大事なら通らなきゃ良いんじゃ」

スキンヘッド「帰れ帰れ」

スリーパー「そうはいかないんだ。ここを通らないと、命が危ないからね」

バイクやろう「……え? 今なんて?」

スキンヘッド「ポケモンの、鳴き声……?」

私はその2人の目の前に振り子を差し出した。

フォン

バイクやろう「……」

スキンヘッド「……」

フォン、フォン、フォン、フォン

2人の目の焦点が合わなくなってきたので、念を込めた言葉をつぶやく。

スリーパー「そのままゆっくりと、茂みの中に歩いて行け」

私の言葉の通りに2人は歩いて行く。

スリーパー「どの服にするか……そのシャツと、ズボンを寄越してくれ」

男たちからなるべく地味な、印象に残らない服を受け取り、代わりに私が今着ている服を着せる。

スリーパー「君たちは日常に戻る。服は捨てられていたので、拾って着た。そして私には会っていない、知らない」

時間もあるので、少し複雑で深い催眠を刷り込むためにゆっくり、じっくり振り子を振る。
本当は森で出会ったあの男にもしっかり催眠をかけたかったのだが、いかんせんあの状況ではかけている間に見つかってしまう可能性が高かった。

スリーパー「……よし。行っていい」

催眠をかけ終えた私が2人の背中を押すと、フラフラと道の真ん中に歩いて行ってハッと意識を取り戻した。

バイクやろう「……? なんか……あったかのう……?」

スキンヘッド「さぁ……?」

ちゃんと催眠がかかった事を確認し、私は満足して頷いた。

ラルトス「(……あの、おじさん……)」

スリーパー「なんだい?」

ラルトス「(……なんで、私を出さなかったんですか……? 私が戦えば、すぐに終わったのに……)」

たしかに、ラルトスを戦わせればリスクを負う必要も無かっただろう。
催眠は完全ではない。
特に複雑な催眠は普通の催眠に比べて解けやすくなり、最悪の場合様々な情報が人間側に漏れ出る可能性がある。
だから、なるべく複雑な催眠はしたくなかった。
私はラルトスをボールから出した。

ラルトス「……もしかして、私が、足手まといだから……」

俯きながらそう言うラルトスを、そっと抱き寄せる。

ラルトス「……っ!」

スリーパー「……あのね、ラルトス。今の私は、君の事がなによりも大切なんだ」

つい昨日出会ったのに、いつの間にか私はラルトスを家族のように大切に思うようになっていた。
スリーパーとしての本能かもしれないけれど、それでもいい。
腕の中のラルトスはとても細くて、小さくて、儚く思えた。

スリーパー「そんな君を、君の為でも傷つけたくない」

ラルトス「……おじさん……」

ラルトスも私の背に手を回してきた。
背中をさすって、トントンして、安心させてあげる。

スリーパー「……もう誰にも傷つけさせない。安心してほしい」

ラルトス「……はい……」

それからもなるべく他のトレーナーを避けて蛇行しながら歩いた結果、町にたどり着く前に日は沈んでしまった。

スリーパー「今日はこの洞窟で寝ようか」

ラルトス「はい……!」

洞窟の入口に虫よけスプレーを撒いて、硬い地面に寝袋を敷く。
その中に入ってみたらやはり背中が痛い。

ラルトス「あの……失礼、します……」

スリーパー「うん」

ラルトスが控えめに寝袋の中に入ってきて、昨夜と同じように私の首回りの毛を枕にする。

ラルトス「……おじさん、温かいです……」

スリーパー「うん。ゆっくり、眠りなさい……」

ほんの少し念を込めてそう呟くと、ラルトスはまぶたを重くしてそのまま寝てしまった。

スリーパー「……ふぅ……」

子供が出来るとこんな感じなのだろうか。
何と言うか、心が凄く温かくなる。
もちろん下心ではなく、庇護欲や母性が刺激されるのだ。

ラルトス「すぴー……くかー……」

スリーパー「……」

その時、私はふと思いついた。
ラルトスの夢はどんな物だろうと。
もし悪い夢を見ていたのなら食べてしまおうと思いながら、私はラルトスの夢を覗いてみた。

夢クイタラン『ぎゃおー!』

夢ラルトス『きゃあー!』

ラルトスの夢の中では、真っ赤な巨大なクイタランが炎を吐いて辺り一帯を燃やしていた。
これは……悪夢だな。
恐らく、あの時の記憶がトラウマとして夢に現れているのだろう。
ラルトスがこれ以上苦しまないように食べてしまおうと思った時、突然大きな銀色の円盤のような物が炎とクイタランを切り裂いた。

スリーパー「なんだ……?」

突然辺りの景色が花畑のような物になり、パカラッ、パカラッと蹄の音が夢の中に響きわたる。

夢ラルトス『ああ、来てくれたんですね!』

夢スリーパー『大丈夫かいお姫様』

いやいや

夢ラルトス『私の王子様!』

いやいやいやいやいやいや

そこには、ギャロップに乗ったやけにスラッとした私の姿があった。
やけにジャラジャラとした装飾を着けていて、右手には大きな振り子をぶら下げている。
いつの間にか、ラルトスもお姫様のようなドレスに身を包んでいる。

夢スリーパー『さあ、手を取って。私の後ろに』

夢ラルトス『はい……!』

夢スリーパー『あの朝日に向かって走りだそう!』

夢ラルトス『はい!』

パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……

……え?
…………え?
………………んん?

……いや、ラルトスがお姫様なのはまだ分かる。
自身を何かに投影するのは夢でよくある事だ。
……私が王子様?
そんな歳じゃない……
問題は、ラルトスが私の事を王子様だと思っていることだ。
お姫様と王子様の関係性と言えば、つまりは結婚する相手という訳で……

いや、そんなんじゃないはずだ。
私がラルトスの恋愛対象のはずがない。
何か、別の解釈があるはず……

リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン

夢スリーパー『ラルトス、君は私の一番大切な物だ。これからも守らせてほしい』

夢ラルトス『……! ……よろこんで……♡』

あっ。
結婚した。

……いや。
……うん。
……あの。

……これから、ラルトスとどう接すれば良いんだ……。

※トリ忘れてしまいました。NEWトリです


夜の森の中を、5人ほどの小隊が進む。

ジョーイ「……足跡発見。図鑑に読み込ませてみます」

ジョーイは土の足跡に懐中電灯の光を当てながら、図鑑をかざす。
画面に沢山のポケモンの足跡が入れ代わり立ち代わりに表示された後、『データがありません』というテキストが大きく表示された。

エリートトレーナー男「……どうだ」

ジョーイ「……どの足跡にも不合致。例のポケモンはこちらに向かった模様」

エリートトレーナー男「やはりそうか。おい、気を引き締めて行くぞ」

隊員たち「「「はい!」」」

小隊は麻酔銃を構え直し、足跡の向いた方向に歩みを進めた。

ジョーイ「……何年振りかしら、こうしてこの服に身を包むのは」

自身のミリタリースーツを撫でながら、ジョーイはそう呟く。

エリートトレーナー男「……20年ぶりぐらいじゃないか? ……いって!」

そう言ったエリートトレーナーの脚を、ジョーイは思い切り踏みつけた。

ジョーイ「レディの独り言に横槍は厳禁よ」

エリートトレーナー男「クソッ……! おい……本気で踏みやがったな……!」

男は悪態を突きながら、ジョーイの後ろについて行った。

ポッポー、ポッポー

ラルトス「ふぁあぁぁ……あ、おはようございます、おじさん……」

翌朝私が食料探しから戻ってくると、何も知らないラルトスが可愛い欠伸と共に起き上がってきた。

スリーパー「……う、うん。おはよう。……良い夢を見れたかな?」

ラルトス「夢……あっ……あの、はい。良い夢を見れました……」

ラルトスは頬を紅く染めて、もじもじとしながら消え去りそうな声でそう答えた。
……どうやら、覚えているみたいだ。
夢を覗いた事は、言わない方が良いだろうな……

スリーパー「じゃあ行こうか」

ラルトス「はい……///」

その日、ラルトスとは少しだけギクシャクした。


ようやく道路を抜けて、私たちは噴水が綺麗な小さな町についた。

スリーパー「どうやらここは、サンスイシティと言うらしい」

ゴミ箱に捨てられていた新聞を広げ、人間達の会話に聞き耳を立てていたスリーパーがそう呟く。
スリーパーの膝の上に座って、文字が読めないなりに新聞の絵を楽しんでいたラルトスは首を傾げた。

ラルトス「サンスイ……?」

スリーパー「『水』を『散らす』と書いてサンスイだそうだ。たしかに、嫌というほど噴水が並んでいる。……カビとか大丈夫なのだろうか」

ココガラA「ガラッ」

ココガラB「ココカァー」

地面から噴き出る水で、ココガラの群れが行水をしていた。
それを見て、ラルトスはどこかウズウズとしているように見えた。

スリーパー「……遊んでみるかい?」

ラルトス「えっ! ……えーっとぉ……は、はい……」

スリーパー「行ってきなさい。私は、ここで見ているから」

私がそう言うと、ラルトスは私の膝から降りて、私の手をきゅっと握った。

ラルトス「……おじさんも、いっしょに……」

もう水で遊ぶなんて歳じゃないんだけどなぁ……
私はパキパキ言う腰を持ち上げて、しばしラルトスと一緒に涼しい時間を過ごした。
吹き上がる水の中で踊るようにはしゃぐラルトスは、本当に……本当に可愛かった。
うーん、誘拐してしまいたい。

人間の金を使い、宿に泊まる。
この町のアピールポイントなのか、部屋の中にもチョロチョロと水路が通っていて少し鬱陶しい。
まあ、ラルトスが喜んでいたので文句は無いが。

スリーパー「……はぁ」

人間のベッドに寝転がり、私はため息をつく。

ラルトス「どうしました……?」

スリーパー「いや、これからどうしようかなって……結局まだここがどこかも分からないし、なぜか追われているし……。ここも良い町ではあるけれど、明日には動く必要がある」

先ほど読んだ新聞には、例のポケモンセンターで撮られたスリーパーとラルトスの写真が載っていた。
こんなところにまで、もう追手の手が迫って来ているようだ。

スリーパー「……これから一生逃げ続けるのは、おじさんの身体にはちょっと堪えるなあって……」

ラルトス「……もし逃げる必要が無くなったら、おじさんはどうしたいですか?」

スリーパー「そうだねぇ……前みたいに静かな森で、静かに暮らしたいね。もちろん、ラルトスと」

私がそう答えると、ラルトスは頬に手を当てていやんいやんと首を振る。
ラルトスのリアクション結構大きいから、おじさん心を読めるタイプのエスパータイプじゃないのにラルトスの感情が透けて見えるよ。

ラルトス「……私は、おじさんと一緒なら、どこでも」

スリーパー「げはっ!?」

その言葉に、思わず飲んでいたおいしい水を吹き出す。
すごいカウンターを喰らってしまった。
あれ、君ってそんなにさらけ出すような子だったの。

ラルトス「だって、今の私にはおじさんしかいないので。……いい、ですよね……?」

目の前の可愛い少女を誘引しようと伸びる左手を、右手で押さえつける。

スリーパー「……いいよ。どこへでも連れて行ってあげよう。まずは、追われる事のない場所まで」

ポケモンに襲われる危険のない、室内の寝床。
安心感が違うのか、ラルトスは私の上に乗るといつも以上にすぐに寝てしまった。

スリーパー「……」

また夢を覗くのは失礼だろうか。
いや、覗いても気づかれなければ心配はないはずだ。
ラルトスに感情を悟られないように平常心を保つ必要こそあるが……それよりも昨日の夢の事もあり、気になって気になって仕方がなかった。
もし今日もラルトスの夢の中に私が出ているのなら、今日の私はどんな見た目で出ているのだろうか。
私は少しワクワクしながら、ラルトスの夢を覗いた。

イメージのはっきりとしていない柔らかく温かい空間。
そこにラルトスと私が寄り添うように立っていた。
ラルトスの腕の中には、おくるみに包まれた小さな私……スリーパーがラルトスを見上げていた。

夢ラルトス『パパに似て、かわいいねぇ……♡』

夢の子スリーパーA『すりぃぱぁ~』

夢スリーパー『ママのおめめにそっくりだ』

夢の子スリーパーB『すりぱぁ~』

いつの間にかに、ラルトスは4人の小さなスリーパーを抱えていた。
……いや、多分私の子はスリーパーじゃなくてスリープになるとおもう……ってそういう問題じゃなくて。

私はラルトスの夢を覗くのを止め、覗くんじゃなかった、と頭を抱えた。
さあ、どうしようか。
幼いからか、まだ明瞭な描写はされていない。
だが、ラルトスはどうやら私との子を望んでいるようで……

……もう犯してしまってもいいんじゃないか?……
……ラルトスも望んでいる、私もまた望んでいる……
……なにも問題はないじゃないか……?

そう黒い本能が甘く囁く。
……いや、まだ、手を出すわけにはいかない、とそれを押さえつける。
いや、『まだ』もダメだ。
年が離れすぎているし、ラルトスのつがいにはもっと若くて強い、ドラゴンタイプのようなオスがなるべきだ。
強いオスに、ラルトスを守って貰わなければいけないんだ。
そのために私は力不足だし、時が経てば年上の私の方が先に逝ってしまう。
私は、ラルトスのつがいにはふさわしくない。

ラルトス「すぅ……すぅ……」

スリーパー「……」

私はラルトスの頭をなでる。

スリーパー「……君だけでも、どうか幸せになってくれよ……」

スリーパー「……ん……?」

まだ空も暗い明け方。
私は目が覚めた。
歳を取り朝早く起きる事も増えてきたが、なにかがおかしい。
嫌な違和感を感じる。
胸の上に乗るラルトスを起こさないようにゆっくりと起き上がってから、五感と念力を研ぎ澄ませる。
ホーホーすら鳴いていない、静かすぎる明け方。
本能がマズいと警告を鳴らしている。

ラルトス「んぅ……? ……ふぁぁ……おじさん……? どうか、しましたか……」

スリーパー(……ラルトス。口を閉じて、舌を噛まないようにしなさい)

ラルトス(……! は、はい……)

私のテレパシーに、ラルトスが「はむっ」と口を閉じた。
そして、しばらく静かにしていたその時だった。

ゴースト「……」

ラルトス(ひっ……!?)

ゴーストが音もなく壁から顔を出してきて、私と目が合った。

ゴースト「あっ、やべっ」

そして、そのまま引っ込んでいった。
次の瞬間、私はラルトスを抱きしめて跳び起きた。

スリーパー(逃げるぞ!)

ラルトス(は、はいっ!?)

ガシャァァァンッ!

ラルトス「きゃあああっ!?」

私は念動力でガラス窓を弾き飛ばしながら、宿を飛び出た。

バァン!

背後で扉が蹴り開けられる。

ジュンサー「気づかれた! 逃がさないで!」

パァン! パンパンッ!

麻酔銃が撃たれ、注射針が私たちをかすめながら飛んで行く。

ラルトス「あっ、あの人……!」

スリーパー「やっぱり追って来たか!」

おそらく窓の外にも追手がいるだろうと、ラルトスを抱えながら寝ている時も手放さなかった振り子を構えた。
しかし。

ドンカラス「逃がさないゾォ!」

デルビル「まてーい!」

ブラッキー「足止めさせてもらうわ」

スリーパー「クソッ、対策済みかよ!」

最悪な事に、既に窓の外はあくタイプのポケモンで囲まれていた。
こちらからの攻撃は効かないくせに、あちらからの攻撃は効果抜群になる、最悪のタイプ相性だ!
横にはトレーナーらしき人間も立っていて、彼らもまた追手である事は一瞬で分かった。
どうやって逃げろって……!

パァン!

ラルトス「えっ、えいっ!」

その時、背後から飛んできた注射器をラルトスが念力で逸らしてくれた。

ドスッ!

ドンカラス「まだ活躍してないのにZZz……」

トレーナー「ドンべぇーッ!?」

しかもそれはドンカラスに直撃して、ドンカラスは白目をむいて倒れてしまった。

ラルトス「や、やった! ねらいどおりです!」

スリーパー「よくやったラルトス!」

思わぬところで包囲網が崩れたので、私はそこを走り抜けた。

エリートトレーナー「逃がすかよぉ! クロエ、メロメロ!」

ブラッキー「うっふん♡」

スリーパー「うぅ!?」

ブラッキーの放ったその技を喰らった次の瞬間、突然脚が動かなくなった。
彼女の事がとても魅力的に見えて、彼女から逃げるのが悪く思えてしまった。

ブラッキー「ほらおいで……私と、イイコト、しよ……♡」

スリーパー「あ……う……」

エリートトレーナー「よし、クロエ! そのままそいつに攻撃しろ!」

フラフラと足がブラッキーの方に向きそうになった。

ラルトス「……おじさん……?」

スリーパー「……はっ……!」

しかしラルトスがそう話しかけてくれた瞬間、目の前のもやが晴れた。
そうだ、私はこんな事している場合じゃない。
ラルトスを、守らなくては……!

ブラッキー「ほぉら、こっちに……」

スリーパー「すまない!」

ブラッキー「あれぇ!?」

エリートトレーナー「何!?」

私は踵を返し、再び逃走を始めた。

ジュンサー「うそ、逃げられたの!?」

トレーナー「そっちの麻酔弾が俺のドンべぇに当たったんだよ! 撃つならちゃんと撃てよ!」

トレーナーはドンカラスをボールに戻しながらそう喚く。

エリートトレーナー「ゴチャゴチャ言ってないで追うぞ。行け、メテオ!」

ギャロップ「行きまっせご主人!」

パカラッ、パカラッ!

ギャロップをボールから出したエリートトレーナーは、それに跨り追ってきた。

ギャロップ「待て待てー!」

エリートトレーナー「熱ちゃ熱ちゃ熱ちゃ!」

軽快な足音を響かせながら、自分のトレーナーを燃やしながら、ギャロップは急激に肉薄して来た。

ラルトス「上の人、燃えてる……」

スリーパー「な、なにぃ!?」

その様子は、さながら地獄の騎士だった。
全身を燃やしながら、トレーナーは自身のギャロップに指示を出す。

エリートトレーナー「メテオ! かえんぐるま!」

ギャロップ「了解でっせ! おらぁ!」

ギャロップの脚から出た炎が回し車のようにギャロップを包み込み、そのまま突っ込んで来た。

エリートトレーナー「熱ちゃちゃちゃちゃちゃ!!!」

ラルトス「その攻撃方法止めればいいのに……って、おじさん、来ますっ!」

スリーパー「危ねえ!」

どうやら曲がるのは苦手らしく、横に飛んだらギリギリ避けれた。
く、首回りの毛が少し燃えたぞ……!
しかし、ギャロップはドリフトするように急旋回して再び突っ込んで来た。

ギャロップ「避けても無駄ァ! 無駄でっせ! この技は敵かご主人が燃え尽きるまで止まりゃせんよぉ!」

エリートトレーナー「早く仕留めてくれメテオぉ!」

ラルトス「ほんとにその攻撃方法やめればいいのに!?」

どうやら乗馬する事でシンクロ率を上げているようだが、見ての通りの諸刃の剣らしい。
しかし、先ほど避けたのもギリギリ。
あちらのトレーナーが燃え尽きる前に、私たちに直撃する可能性の方が高い。
ならば……その前に潰すまで!
私は、振り子を自身の目の前で揺らした。

私は、強い。
私は、炎なんてへっちゃらだ。
私は、みずタイプ!

スリーパー「おおおおおっ!」

そのまま、私は正面から突っ込んで来たギャロップのかえんぐるまを肩で受け止めた。

ドシィンッ!

ギャロップ「なっ!?」

スリーパー「ぐぐぐぐ……!」

じゅううぅう、と肩が焦げる音がする。

ラルトス「お、おじさん……大丈夫、ですか……?」

スリーパー「大丈夫だ。今の私は……水タイプだからな!」

言葉は通じなかったようだが、そのトレーナーは私が何をしたか感づいたようだ。

エリートトレーナー「ま、まさか『じこあんじ』か!? そんな使い方が!?」

そう。
振り子を揺らす事で、他人の思考を支配できる「さいみんじゅつ」。
それを自身にかける事で、自分自身を強化することが出来る「じこあんじ」へと変化する。
本来は相手に掛かっているバフを自身にも適応させるという技なのだが、こういった使い方も出来る。
もちろん、ただの「自己暗示」であり実際に水タイプになっているわけでは無い為、肩が焼けているのだ。
しかし、私もこのまま焼ける訳には行かない!

私は、強い。
私は、怪力。
私は、かくとうタイプ!

ビキッ!

肩の筋肉が隆起し、力が溢れてくる。

スリーパー「オラァ!」

ギャロップ「うわあぁあ!?」

そして、そのままギャロップを押し込み投げ飛ばすと、エリートトレーナーはギャロップの下敷きになってしまった。

エリートトレーナー「ぐああああっ!?」

ギャロップ「う、うわああごしゅじぃん!」

スリーパー「ぜぇえぇ、ぜぇぇ……! ……い、今のうちだ……! 逃げるぞ、ラルトス……!」

ラルトス「は、はい……!」

悲鳴を上げる全身の筋繊維に鞭打って、私はラルトスの手を握って走り出した。

それから、私たちは走りに走った。
空が少し明るくなってきて、森の鳥ポケモンたちがさえずり始めた頃、私は追手を撒けたと確信した。

スリーパー「……は、はは……逃げ切ってやったぞ……ざまぁ……みろ……」

ドサッ

ラルトス「おじさん!」

そしてそう考えたその瞬間、私はぶっ倒れてしまった。

スリーパー「ああ……じこあんじの、反動だ……無理に体を動かしたから、な……」

これだから、じこあんじはあまり使いたくない。
自分の身体を一時的に騙すだけだから、解けた後は受けた以上のダメージと疲労が襲い掛かる。
みずタイプの時の火傷も、かくとうタイプの時に限界を超えて出した力も、全部だ。
私はゆっくりと起き上がり、なんとか木の根元に座りかかった。

スリーパー「……はぁ、はぁ、ゼェ、ゼェ……」

ラルトス「おじさん……! 凄く、息が苦しそう……!」

スリーパー「だ、大丈夫だ……ちょっと、疲れた、だけ……」

実は、苦しいのはじこあんじによる反動のためだけではない。
まだ、ブラッキーから受けたメロメロが残っているのだ。
ブラッキーへの愛しさからはなんとか目覚められたのだが、異性であるラルトスが近くにいるためにまだ治りきっていないのだ。
ラルトスの小さな胸とか、隠れている眼とか、唇とかにいちいち恋愛感情をいだいてしまい、大変だ。

スリーパー「あまり、ラルトスにこういうことを頼みたくは無いんだが……なにか、体力を回復できるきの実とかを取ってきてもらえると助かる……」

メロメロを完全に治すには、異性と距離を置く必要がある。
そのため、不本意ながら私は少しラルトスを離そうとした。

ラルトス「……」

スリーパー「……ラルトス?」

しかし、ラルトスは返事するでも動くでもなく、ただじっと私の方を向いていた。

スリーパー「ラルト……」

ラルトス「……おじ、しゃん……♡」

す、と一歩ラルトスが近づいてきた。

スリーパー「ラル、トス……!?」

ラルトス「おじさん、おじさん、おじさん、おじ、さん……♡」

さらに、ぐっと距離を詰めて来る。
そのただならぬ様子に後ずさろうとした私だったが、疲れていたのと、木を背にしていたためにできなかった。
そして、お互いの目がしっかりと見えるぐらいの距離までになった時、私はその原因に気づいた。

ラルトス「お、じ、さ、ん……♡」

ラルトスの目にはハートが浮かんでいた。
紛れもなく、メロメロを受けたポケモンの症状だ。
今の私も、このような目になっているはずだ。
しかし、なぜラルトスの目に、ハートが……

スリーパー「……ま、さか……?」

そう言えば、聞いた事がある。
ポケモンの中には、自身が状態異常になった時、相手も同じ状態異常にする、「シンクロ」の特性を持つポケモンがいると。
つまりそれは、逆の現象が起きる可能性もある、という事だ。

ラルトス「ん……♡」

スリーパー「!!!」

ラルトスが私の顔を両手で挟んで、口づけをしてきた。
その口づけはとても幼く、唇同士をくっつけるだけの物だった。
ああ、メロメロ状態になっても、まだ幼いからよく分かっていないんだな……
悪化しない内に、ラルトスを離そう。
そう思っていたら、バチン、と私とラルトスの脳が繋がる感覚がした。

おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ おじさん♡ すき♡ 

スリーパー「っ!」

ラルトスの好意が洪水のように流れ込んできて、更に脳をくすぐられるような、思考を読み取られる感覚がした。

ラルトス「……なるほど……そうするんです、ね……♡」

そうラルトスが呟いた次の瞬間、突然ラルトスの小さな舌が唇の隙間から滑りこんで来た。

スリーパー「ん゛~っ!? ん゛~~~~っ!?」

ラルトス「んっ、んんん、んん~……♡」

ラルトスの舌は、激しくれろれろと私の舌に絡んでくる。
どうやら、私の記憶にある「口づけ」を読み取られてしまったようだ。
無理に引きはがす事も出来ないまま、私はされるがままにされてしまう。

ラルトス「ぷは……はぁ、はぁ、はぁ……♡ ……これが……大人の、きす、なんですね……♡ ……おいし、かったです……♡」

スリーパー「ラ、ラルトス……」

ラルトスの目に映って、私の顔が見える。
だらしなくとろけて、目には大きなハートが浮かんでいる。
せっかく治りかけていたメロメロが、悪化しているようだ。
そんな時。
私の中から、声がした。

「もう抱いてしまおう」

いや、ダメだ……私は、ラルトスに、手を出すわけには……

「手を出さない理由もないだろう」

私は、ラルトスを、守る、義務が……

「抱いても、守る事はできるだろう」

でも、まだラルトスは幼くて……

「幼いからって、ラルトスの気持ちを軽視するのか」

それは、今ラルトスは、メロメロ状態に……

「ラルトスの本当の気持ちは、もう何度も夢を覗いて知っているだろう」

しかし……

「じゃあ、お前はラルトスの事をどう思っている?」

そ、それは、大事な、娘のように……

「嘘だ。女(メス)として見ている」

そんな事はない、はず……

「さっき胸に欲情していたじゃないか」

あれは、メロメロのせいで

「していたんだな」

……ぐ

「今回だけじゃない。前からだ。お前は、胸の上にラルトスを乗せて寝ていたな。そして、わずかに感じるそのふくらみを、柔らかさを、役得に思っていただろう。肋骨の凹凸を、心地よく思っていただろう。髪のきめ細かさに、『食欲』を感じていただろう。何度も何度も、攫ってしまいたくなっただろう。攫ってしまいたくなったのも、物陰で犯すためだ」

違う。それは、本能が、お前が、

「ああ、そうだ。私は、下心からラルトスを助けたんだ。あわよくば食べるために。あわよくば、抱くために。全部、建前だ。一回助けたとか、幼いとか、娘だと思っているとか、全部。ドラマチックな逃避行を続けて、行き着いた先でくんずほぐれつするための建前。産まれてこの方、何十年も味わった事のない女(メス)を味わうために。『チャンス』だと思って一緒にいたんだ」

うるさい、黙れ。お前は私じゃない。お前は、

「いや、私はお前だ。メロメロで露わになった、お前が押さえつけていた部分、全部。お前の深層意識、その全て。本能じゃない。私が本能と言い訳していたあれこそ、私の本心だったんだ」

ちがう、私は、

「抱いてしまえ。犯してしまえ。誰も見ていない、誰も私の罪を責めない。ラルトスも、私も望んでいる事だ。誰も損しない。ハッピーエンドへの近道」

……私は
私は、ラルトスを

「抱く」 or 「それでも今は、その時じゃない」
↓1

スリーパー「ダメだッ……!」

私は囁きの誘惑をかき消し、ラルトスの目の前に振り子を差し出した。

ラルトス「おじさ……?」

フォン、フォン、フォン

ラルトス「……あ……」

フラリと倒れかけたラルトスの身体を、両手で受け止めた。

ラルトス「すぅ……すぅ……」

ラルトスは目を閉じ、緩やかな寝息を立てている。
手のひらからラルトスの高い体温が伝わってきて、どれだけラルトスがメロメロによって興奮していたかが分かる。
薄い皮と肉と、その下にある細い骨。
か弱い、可愛い、愛おしいラルトス。

スリーパー「……はぁ……」

私の負けだ、認めよう。
私はこの子を抱いてしまいたい。
めちゃくちゃにしてしまいたい。
しかし、まだ早い。
いや、実ってないとかそう言う意味じゃなくて。
ただ、まだ早すぎると思ったんだ。
メロメロにかかった勢いで抱いてしまっては、お互いに後悔する事になるかもしれないから。
もっと、ちゃんとしたタイミングで抱く。
私は自身の下心を受け入れて、そう覚悟を決めた。

スリーパー「……はは。いつか抱く。そう思っている私を、この子は軽蔑するかな……」

そう独り言をいいながら、ラルトスを抱えて木を登る。
枝を寄せ集めてハンモックのようなベッドを作り、そこにラルトスをそっと置く。
うん、いい寝床になった。
今のうちに……処理、してしまおうか。
ラルトスがしっかり寝ている事を確認してから、私は気合で抑え付けていたそれを解放した。

スリーパー「ん、ふぅ……!」

ビキキッ、ビキッ……!

もう暴発しそうだったそれは、外気に触れて深呼吸でもするかのようにビクンビクンと脈打った。
それは全身が血のように赤く、脈打つ血管が浮き上がり、キノガッサの尾のように反っていた。

スリーパー「こんなグロテスクなもの……この子に見せられないな……」

それは私のペニスだった。
自慢ではない、というか自慢した事もその実力が発揮された事もないのだが、とても大きい。
ゼブライカ並、と言えば分かるだろうか。
形は先細りするのではなく円柱型で、先はメスを逃がさないように大きな返しがついていた。

スリーパー「……というかこれ、もしあのまま抱いたとしてもラルトスに入ったのだろうか……」

確認したわけでは無いが、おそらくラルトスは処女。
こんなブツが、あの小さな体に収まるとは思えない。
もし抱くとしても、せめて進化するまで待つべきだろうか……

スリーパー「……まあ、今はいい……」

私は、自身のペニスを握る。
もう何十年も振るわれた事も無いそれは、メロメロを喰らった事もあり元気いっぱいだ。
持ち主である私が治めてあげなければいけなかった。

ゴシュ、ゴシュ、ゴシュ、ゴシュッ

スリーパー「ふぅ、ふ、ふぅ、はぁ……」

ペニスを治めるのに必要な物は2つ。
手の刺激、そしてオカズだ。
今日のオカズはどうしようか。

『おじさん……♡』

そう考えたとたん、脳内がラルトスでいっぱいになった。
ち、違う。
ラルトスで抜くのは、あまりにも罪悪感が……

『……おじ、しゃん……♡』

私のメロメロにシンクロして、目をハートにさせたラルトスの顔が思い浮んだ。
思わず手の動きが速まる。

ぬちゃ、ぬちゃっ、ぬちゃ、ぬちゃっ

スリーパー「あぁ、あぁぁあぁぁ……♡」

先走り汁が手に絡みついて来て、粘っこい水音があたりに響き始める。
そこまで目を閉じてしごいていたのだが、薄く目を開けると視界の端にラルトスがいる事に気づいた。

ラルトス「……んぅ……♡」

スリーパー「……あ、はぁあ、はぁぁぁぁっ……!」

ぬぢゃっ、ぬぢゃっ、ぬぢゃ、ぬぢゃっ♡

その姿は頭の中で妄想するよりも何倍も刺激的で、官能的だった。
小さく膨らんだ胸も、裾のような表皮に隠れて見えない脚も、その脚の間も。
それを見てしごいている内に、ヘソの下から何かが押し上げられて来る感覚がした。
射精(で)そうだ。

ぬぢゃあっ♡

スリーパー「あぐ、んふぅうぅぅうぅぅああ……っ♡!」

私はペニスの先を手のひらで覆ってから、射精した。

びゅびゅうううううううるるるるるるるるるるるるるるるるぅっ♡

スリーパー「あぐ……ぅう……♡ ……んふぅ……♡」

腰が脱力して、前かがみになる。
射精の瞬間思い浮かべたのは、ラルトスの顔。
子宮に精液を注ぎ込まれた、まだ見ぬラルトスの表情。
指の間から、熱い感覚がこぼれ出る。

スリーパー「フー、フーッ…………くぅ……!」

射精を終えてから、私は手のひらを見る。
どろっとした大量の精液が湯気を上げている。

スリーパー「……最低だ……」

そう、私は最低。
しかし、もうそんな事どうでも良い。
最低な私は、最低なりにラルトスを守るんだ。
守って、関係を深めて、あわよくば抱く。
不純な動機でも良いじゃないか。
ラルトスも、私も幸せになるために。
今は、ラルトスを抱かないと決めたんだ。

ヂュンヂュン、ヂュヂュン

ラルトス「……ふぁ……んぁ……」

数時間後、ラルトスは目を覚ました。
周りを見渡すと、木の上だった。
もう朝から結構時間も経っているのか、日が眩しい。

ラルトス「おじさん……?」

スリーパー「ああ。おはよう、ラルトス。……メロメロは抜けたかな」

声がした方を向くと、スリーパーが気まずそうに座っていた。
横にはきのみの山が積まれていた。

私がそう言うと、まだ寝ぼけているらしいラルトスがしばらくぼーっと私の方を見た。

ラルトス「めろめろ……あっ」

そして、昨夜の出来事を思い出したらしいラルトス。
自分の唇を触って、顔をクラボの実のように真っ赤にさせる。

ラルトス「……わ、わたし……おじさんに……ちゅ、ちゅーを……?」

スリーパー「……夢、って言ってもバレちゃうだろうから本当の事を言うけど……うん、された」

心を読むラルトスに嘘は通じないと、私は事実を伝えた。
次の瞬間ラルトスは顔を床に突っ込み、叫んだ。

ラルトス「あ゛ーーっ!」

スリーパー「ちょ、おちついてっ!?」

悶えながら、バッサバッサと葉の床を叩くラルトス。

ラルトス「ち、違うんです! おじさんを見ていたら、なんか、へ、変な気持ちになって……抑えきれなくなってぇっ!」

スリーパー「まあ、しょうがない事ではあるよ……私のメロメロが、感染(うつ)ったみたいなんだ」

ラルトス「そもそも……めろめろってなんですかぁ……」

スリーパー「ああ、そこからか……」

私は、メロメロという技と、メロメロという状態異常、そしてラルトスの特性、シンクロについて教えてあげた。

ラルトス「……性別が違う相手に、メロメロになっちゃう、技……な、なるほどぉ……」

ラルトスは、顔を真っ赤にして湯気を上げた。

スリーパー「ああ。だからあれは、メロメロのせいで、ラルトスはなにも気に病む必要は……」

そう言いかけた時、ラルトスが呟いた。

ラルトス「……あのままで……良かったのに……」

スリーパー「……え」

目を潤ませて、ラルトスは私の方を見てくる。

ラルトス「……ぜんぶ……メロメロのせいじゃ……ないんですからね……わ、私は、本当におじさんと……」

スリーパー「……そ、そんなめっそうな事を言うんじゃないよ……」

そんな事言ったら、私だって……
その瞬間、私はしまったと思い思考を遮断した。
しかしもう遅かったらしく、ラルトスはどこか優越感を感じる表情でこちらを見ていた。
ま、マズい、考えを、読まれた。

ラルトス「……おじさんがそう言うなら、私も、今は止めておきます。でもいつか……おじさんのしたい、私の知らない大人なコト、しましょうね……♡」

ちゅ

スリーパー「……うぅっ」

耳元で囁くようにしてから、ラルトスは私の頬にキスをした。
今朝、私はラルトスへの下心を自覚した。
しかし、ラルトスもまた私の頭を覗き、今まで知らなかった事を知ってしまったのだ。
まさか、私の方が押される事になるだなんて、思いもしなかった。
思わぬ冷や汗が頬を伝った。

スリーパー「い、い……いつか、ね……」

ラルトス「はい……♡」

とても可愛い、期待に満ちた顔をしたラルトス。
私はラルトスに読み取られてしまわないように、溢れ出そうとする妄想を抑え込むのでやっとだった。

ラルトス(いつか、おじさんと……♡)

スリーパー(……いつか、ラルトスと……)

そんな思いを交錯させながら、2人は出立の準備をした。

スリーパー「じゃあ、いこうか……あの、ラルトス?」

私は出立しようとして、隣にいるラルトスにそう話しかけた。

ラルトス「んー? なんですかー?」

スリーパー「……この手は……?」

ラルトスの手は、がっしりと私の手に繋がれていた。

ラルトス「前から、手は繋いでいたじゃないですか」

スリーパー「でも、昨日の事があった後でこれはちょっと……」

すりっ、とラルトスが柔らかくてちょっと冷たい頬を擦りつけて来た。

スリーパー「っ……!」

ラルトス「……メロメロのせいですよ……♡」

スリーパー「……メ、メロメロは抜けたんじゃ……」

ラルトス「ええ。昨日のメロメロは抜けました。このメロメロは、おじさんのメロメロ、ですっ……♡」

スリーパー「……や、やめて、くれ……」

妄想、滅ッ……!
欲望、滅ッ……!

ラルトス「おじさんが、喜んでるのが分かります……♡ メロメロが抜けるまで……もうちょっと、こうしていますね♡」

本当にこの子は、いつの間にこんなに積極的になったんだろうか。
私たちはこれが逃避行だという事もすっかり忘れて、くっつきあって森の中を進んだ。

道中、捨てられていた地図を拾った私たちは、それを広げて次の目的地を探していた。

スリーパー「サンスイシティが多分ここだから……現在地はここだな」

地図は写真付きで、文字の読めない私たちでも理解しやすかった。
森で目覚めた私たちは1つ目の道路を通り、サンスイシティに泊まり、今2つ目の道路を歩いている所だ。
地図上の道路は途中で2又に分かれており、目の前の道路も同じように分かれていた。

ラルトス「どこに繋がってるんですか?」

スリーパー「えーっと写真によると……こっちが大きな都市で、こっちが洞窟だね」

荷物も持たずに宿を飛び出したため、ラルトスを隠すためのボールも私が人間に変装するための服も全て置いて行ってしまった。
もし大きな都市に行けばそれらを補充できるかもしれないが、人間に見つかる可能性も高い。
洞窟に行けば人間に見つかる可能性は低いが、ポケモンが多くいるだろう。
しかし、思わぬ出会いや発見があるかもしれない。

スリーパー「うーん……ポケモン……」

ラルトス「……どうかしました?」

スリーパー「いや、もしかしたら、仲間になってくれるポケモンもいるかなと思ってね。流石に、私だけでは出来る事にも限界がある。洞窟で仲間でも増えれば、楽になるんじゃないかと思って……」

そう言うと、ラルトスがぷぅと頬を膨らませた。

ラルトス「……私だって、力になりますもん」

スリーパー「あっ、ごめん。別にラルトスが弱いってわけじゃ……出来るだけ守ってあげたくて……」

そうだ、ラルトスは幼いけれど、もう「こども」じゃない、自分で考えて動く立派な1ポケモンだ。
私自身も何度か助けられたし、ラルトスの言う通り戦力として見る事にしよう。

スリーパー「……ごめん。ラルトスも、十分強いよ」

私がそう言うと、ラルトスは表情を緩ませて微笑んだ。

ラルトス「……でも、私たちだけだとちょっと心細いのも本当ですね……」

スリーパー「うん。昨日襲ってきたあくタイプ以外にも、私たちエスパータイプはゴースト、むしタイプにも弱い。もし追手がそのポケモンで固めてきたら、ひとたまりもないだろうね」

もう2回も逃げているんだ。
対策されない訳がない。
それも、次こそは逃がさないためのとても強力な対策を。

スリーパー「ラルトス。新しいポケモンを仲間にするのに関して、どう思う?」

ラルトス「良いと思います。……でも、目移りしちゃ嫌ですからね」

スリーパー「め、めうつり? しないよ……」

ラルトス「えへへ、冗談ですよ♡」

急に何を言い出すんだこの子は。
びっくりした……

さて、道具を手に入れるために都市に行くか、仲間を増やすために洞窟に行くか……

下1

スリーパー「まだ2人だけで人間の多い都市に行くのはリスクが高い気もするな……行くとしても、仲間を増やしてからにしよう」

ラルトス「はい、そうしましょう♡」

そう決めた私たちは、左の道に沿って森の中を進む事にした。
道中、ラルトスは欠かさずしっかりと私の手を握っていた。

洞窟で出会ったポケモン、↓1~3
↓1~3のコンマの下一桁の合計値が
123なら↓1
456なら↓2
789なら↓3
(ヒロインになります)

以下テンプレです。

ポケモンの名前(進化していないポケモン限定、進化しないポケモンでも可、準伝・伝説不可):
性別:♀
性格(原作に無い物でも可):
どんな出会い:
生い立ち:
特徴(外見的な物でも内面的な物でも、複数可):

コンマ1桁の合計が4なので、2匹目はオレっ娘ザングースに決定です。


>>>

ゴトゴトと心地よい振動が響く。
それが、初めての感覚だった。

しばらくして身体が動かせるようになって来て、私は身体をよじった。

モゾモゾ

「オ、ウマレルカ」

何か音が聞こえる。
意味は分からないけれど、少し、嫌な感じの音だった。
次の瞬間、私の視界は突然に広げられた。

バキ、メリメリ

まぶしいっ

まだ、もうちょっと眠ってたいのに……

ガシッ

いたいっ

誰かに鷲づかみにされて、私は持ち上げられた。
眩しさを我慢してなんとか目を開けると、目の前には2本足で立つ生き物がいた。
ゴツゴツしていて、少し不潔な生き物。
私は、とても嫌な感じがした。

「エート、コタイチハ」

なにか、板みたいな物を見つめるその生物。
その後ろには、オレンジ色の羽を持った青い目の大きな生物がいた。
なんだかその生物からは、ポカポカと心地の良い温かさを感じた。

「チッ。コタイチガヒクイナ」

こたいちがひくい。
意味は分からなかったけど、なんだかとても嫌な響きだった。

「リリースダ、リリース」

次の瞬間、私の身体はふわりと浮いた。

ドサッ

身体が地面に叩きつけられる衝撃。
腹と胸を打ち付けた私は、生まれて初めての声を上げた。

「……ザ……グゥゥ……」

まだ私を包んでいるたばねばが身体に纏わりついている。
手を伸ばして、私を投げた生物に向かって手を伸ばした。
まだ視力も低くてぼんやりとしていたけど、自分が生きのこるにはそれしかないと思っていた。

「ア、ジュンサーニミツカラネーヨウニモットオクニステナイトナ。オラッ」

ガンッ

いたいっ!

さっきよりも強い、痛い衝撃。
私の身体は大きく弧を描いて、大きくない石に向かって真っ逆さまに落ちた。

ザグッ

いたい、いたい、いたいぃいっ!

全身と、特に右目に鋭い衝撃。
視界の半分が赤くなった。

「ザグゥ……ザ、グゥゥゥ……」

背の高い藪に囲まれて、もう何も見えない。
私は必死に叫んだ。

「ジャアナ」

吐き捨てるように発せられたそれを最後に、音は無くなった。
ザワザワとした森の音と、何かの鳴き声だけが聞こえる。
このままここにいたら、他の生物に食べられて死んでしまう。
私はまだ動かした事も無い脚をなんとか動かして、身を隠すために這っていく。

「ザ、グ……ザグゥ……」

こんなところで。
死んでたまるか。

私は。

オレは。

「ザグゥゥウゥゥ……ザグゥウゥゥゥゥウゥゥ……!」

生きのこってやる。

>>>

>>>

スリーパー「……あれが洞窟か」

ラルトス「人間さんがいますね……見つからないように入らないと……」

道路を進んでいくと突如目の前に数メートルの崖が立ちはだかり、そのふもとに人間が容易く歩いて入れる程度の洞窟がぽっかりと口を開けていた。
管理人なのか、作業服のような物を着た中年男性が入口に座っている。

スリーパー「仕事中だろうけど……少しの間、立ち退いてもらおうか」

私は少し洞窟から離れて、崖の一部に向かって精一杯のサイコカッターを放った。

スリーパー「ふんっ!」

ドカァンッ! ガラガラガラッ

管理人「な、なんだ!? ……出て来い、ヤドちゃん」

イワパレス「ふぁー……そろそろ、この背中の地層飽きたな……引っ越し時かなぁ」

管理人「異常が起きた。いくぞ」

イワパレス「ふぁい」

管理人が離れたのを確認してから、私たちは素早く洞窟の中に侵入する事に成功した。

スリーパー「よし! 侵入成功だ……」

ラルトス「あざやか!」

ラルトスはパチパチと小さな手で拍手をする。
催眠術で服を奪ったり、注目を逸らして侵入したり……
なんか最近スパイっぽいな、私。
洞窟内を見回すと、壁はひたひたと湿っていて、ところどころに光を放つ水色の水晶が埋まっている。
おかげで人工的な光源があまりないにもかかわらず、洞窟内は視界がしっかりと確保されていた。
こういう鉱石を食べるポケモンが掘った穴を、こうしてそのまま人間が利用している事が多い。

ラルトス「綺麗ですね。……あの、ひとつ持って行きたいんですけど……」

スリーパー「いいよ。持っておこうか?」

ラルトス「いえ、大丈夫です」

私がそう言うと、ラルトスは床に落ちていた綺麗な形の水晶を1つ拾って、大事そうに握り締めた。

ラルトス「えへへ♡」

スリーパー「……うん」

可愛い。
誘拐したい。

スリーパー「さて」

気持ちを切り替えて、私は洞窟に来た目的を思い出す。

スリーパー「洞窟には仲間を探しに来た、と言うのもあるけれど、私たちの特訓という目的もあるんだ」

ラルトス「とっくん……?」

スリーパー「ああ。……ラルトス。君はさっき、自分も力になりたい、って言ったね」

私がそう聞くと、ラルトスは少し迷った後、こくり、と頷いた。

ラルトス「……守られてばっかじゃ、いやですもん……!」

スリーパー「……本当はなるべく、私が守ってあげたかったんだけどね」

ラルトス「えへへ……♡」

ラルトスは恥ずかしそうにはにかんだ。

スリーパー「そこで、ここで戦いの練習をするって言うのはどうだろう」

私がそう言うと、ラルトスは少し不安そうな顔をした。

ラルトス「戦いの練習、ですか……」

スリーパー「もちろん、悪くないポケモンをいじめるって訳じゃないよ。見つかる可能性が高い外より、ここで岩とか壁を相手に技の確認とかしたいと思ってね」

ラルトスは少しほっとした表情をした。

ラルトス「そ、それなら頑張りますよ。私、おじさんの力になりたいですから……!」

スリーパー「うん、良い返事だ」

私はラルトスと手を繋いで、特訓に良さそうな場所を探した。

>>>

>>>

ラルトス「やっぱり、おじさんって強いですね……♡」

スリーパー「ま、まあ……」

道中、テリトリーを侵されたと感じたポケモンが何匹か襲い掛かってきた。
特に相性も悪くないタイプだったため難なくサイコカッターで撃退できたのだが、それからなんかラルトスの目線がより熱くなった。
嬉しいのだが、すこし恥ずかしい。
別に、大したことでも何でもないんだが……
そう言えばラルトスと出会う前と比べて、若かったあの頃の力が戻って来ているのを感じる。
バトルを重ねた事で技のキレも取り戻し、身体を巡るサイコパワーの流れも格段に爽やかになった。
やはり、力は使わなければなまる物なのだなと実感した。

スリーパー「ここら辺良さそうだね」

そんな事をしている内に、私たちは少し開けた場所にたどり着いた。
ポケモンもあまりいなさそうだし、特訓にはちょうど良さそうだ。

ラルトス「えっと……何をしますか?」

ラルトスが手を離して、キョロキョロと辺りを見回す。

スリーパー「まずは技の確認をしよう。この小石を、注射器にやったように浮かせてみて」

そう言いながら、私は飛んできた注射器を逸らしたあの技を確認するために、ラルトスの手前に向けて小さな石を投げた。

ラルトス「わ! よいしょっ!」

ラルトスがぎゅっと目をつぶって両手を前に出すと、小石はふわりと宙に停止した。

ラルトス「で、できました!」

スリーパー「うん、いいよいいよ。これが『ねんりき』だ」

ラルトスは嬉しそうにしながら、ふわふわと小石を動かす。

ラルトス「この技は……相手に物を投げてぶつけるんですか?」

スリーパー「そういう使い方も無い事は無い。実際、注射器を避けられたんだしね。でも、相手に直接かけた方が良いよ。その方がダメージが入るし、混乱状態になる事もあるんだ」

脳がサイコパワーに当てられて、三半規管が狂う。
それが、ねんりきで混乱になる事がある仕組みだ。

ラルトス「なるほど」

スリーパー「でも、まだまだだね。もう少し力の使い方に慣れた方が良い。ちょっとずつ、持ち上げる石を大きくしていこうか」

ラルトス「はい!」

こういう技を繰り返すのは、エスパーポケモンのサイコパワーの基礎を築くのにもってこいだ。
幼いエスパーポケモンは親から習って徐々に力を付けていくのだが、おそらくラルトスはその前に親から引き離されてしまったのだろう。
それから人間の時間にして1時間ほどかけて、ラルトスは1キロぐらいの石なら持ち上げられるようになっていた。

ラルトス「ふぅん……! はぁ、はぁ、はぁ……やりましたぁ……♡」

スリーパー「頑張ったねラルトス。この『ねんりき』なら、相手に十分のダメージを与えられるはずだよ」

順調だが、ラルトスの息が上がっている。
初めてサイコパワーを沢山使ったから、疲れたのだろう。
私は大きめの葉っぱの風呂敷を開けた。

スリーパー「きのみを食べて休憩にしようか」

ラルトス「はい!」

私たちは洞窟の壁にもたれかかって、きのみをシャクシャクと食べて体力を回復させる。
10分ぐらいのんびりしてから、私は再び特訓を始める事にした。

私たちは洞窟の壁にもたれかかって、きのみをシャクシャクと食べて体力を回復させる。
10分ぐらいのんびりしてから、私は再び特訓を始める事にした。

ラルトス「ところで、私って技は『ねんりき』以外には使えないんですか?」

スリーパー「ラルトスが使えないと思っているのなら、まだ使えないと思うよ」

ポケモンの技は、いわば身体の中の力を直感的に使うための『入れ物』だ。
1匹のポケモンにつき4つまで持つ事が出来、新しい技を持つためにはどれが1つを捨てなくてはいけない。
なぜ別のポケモン同士で共通の技を覚える事があるのか、なぜ4つまでしか持てないのか、そもそも技とはなんなのか。
ポケモンである私が言うのもなんだが、不思議な力だ。

ラルトス「つまり……使えるようになったら、その時分かるっていう事ですね?」

技は例え生まれたてのポケモンでも使うことが出来、基本的に自分の持つ技を知らないという事は無い。
ラルトスがこの技しか使えないと言うのなら、その技しか覚えていないのだ。

スリーパー「そう。因みに私は、相手を眠らせる『さいみんじゅつ』、相手の強化をコピーする事の出来る『じこあんじ』、サイコパワーを斬撃にして飛ばす『サイコカッター』、サイコパワーで相手に物理的なダメージを与える『サイコショック』を覚えているよ」

ラルトス「4つ……ってことは、もし次に何か覚えたい技があったら、どれかを忘れなきゃいけないんですね」

スリーパー「うん、そう言う事だ。まあ、もう十年以上変えてないし、使い慣れているからこれからもこのままだと思うよ」

そこまで話して、ラルトスが首を傾げる。

ラルトス「……あれ、でもおじさん、なんか別の事やってませんでした?」

スリーパー「別の事?」

ラルトス「ほら、人間さんやポケモンを操ったり、おじさんが筋肉モリモリになったり……」

ああ、それの事か。

スリーパー「あれは長い事使って経験を重ねたからだよ。技は、あくまで力を直感的に使うための物。自分の力を理解すれば、色々な工夫も出来るんだ」

元よりスリーパーという種の特性という事もあるのだろうが、私は特に『さいみんじゅつ』周りを使いこなせるようになった。
相手を意のままに操ったり、自身のタイプが変わったと思い込むほどの強い暗示をかけたりと、言ってみれば技を「拡張」する事に成功したのだ。

ラルトス「わたしも、いつかそんなことが出来るようになりますかね……」

スリーパー「きっとね」

ぽんぽん、とラルトスの頭をなでると、ラルトスは微笑みながらぐっと手を握った。

ラルトス「……はい、頑張ります……! では、早速もっと訓練しましょう!」

スリーパー「ははは……うん、その意気だよ」

そうして次の訓練に移ろうとした次の瞬間、ラルトスが叫んだ。

ラルトス「おじさん、危ない!」

スリーパー「……!?」

突然の叫び声に驚いた私だったが、本能的に反射的に、振り子にサイコパワーを纏わせて後ろに突き出した。

ギィンッ!

スリーパー「っ!?」

次の瞬間、鋭い音と衝撃が響いた。
紫色に光る私の振り子の糸と、黒い太刀筋がギリギリとせり合う。

???「……チッ!」

それは私が攻撃を受け止めた事を確認すると、舌打ちをしながら数メートル飛びのいた。

???「オラよぉ!」

ドンドンドンッ!

スリーパー「速いっ!?」

まだ姿もしっかり認識できない内に、それはまるで跳ねまわるかのように洞窟内を高速で動き回る。
これでは、いつ攻撃が飛んでくるか分からない……!
そう思っていた時だった。

ラルトス「おじさん、右!」

そのラルトスの言葉に、私は右方向に振り子を突き出した。

スリーパー「はぁッ!」

『サイコショック』だ。
振り子の輪から紫色の歪みが円状に広がり、それに衝撃を与えた。

ドォンッ!

???「がっ!? ……クソがぁ!」

吹っ飛んだそれは一回転した後、足をバネにして着地し、一旦息を整えながら血をプッと吐き出した。

???「変なカッコした人間のクセにやるじゃねぇか……」

スリーパー「……人間……?」

ようやく姿をとらえることが出来たそのポケモンは、赤と白の2トーンの模様。
少しずんぐりとしていながら筋肉質な身体を2本足で支え、両手には大きな黒い爪がついている。
あのポケモンは見た事がある。
ノーマルタイプのポケモン、ザングースだ。
少し私が知るザングースのよりも小柄で、顔の模様が違う気もする。
普通ザングースは左目にだけ赤い模様がかかっているのだが、このザングースはそれが両目にかかっていた。
しかし、なぜ洞窟にザングースが……?

ザングース「行くぜェ……その変な糸もたたっ切ってやる……!」

ギィン、ギィン!

そんな事を考えていると、ザングースは爪を撃ち鳴らしながら踊るようにステップを踏んだ。
あれは、動きからしておそらく『つるぎのまい』。
攻撃力を上げて、一気にカタをつけるつもりらしい!

ザングース「オラァ!」

そのまま飛んできたザングース。
『つるぎのまい』で攻撃力の上がったあの斬撃を防御すれば、振り子の糸の方が切れてしまうだろう。
ならば、と私もとっておきのサイコパワーを込めたサイコカッターで迎え撃とうとしたその時だった。

ザングース「ぐはぁっ!?」

スリーパー「……は!?」

ラルトス「えっ?」

突然、ザングースがなんらかの衝撃を受けて吹っ飛んだ。
その場にいた誰もが予想だにしていなかったその展開に、ザングースはそのまま壁に頭を打ち付けて伸びてしまった。

ザングース「きゅう……」

スリーパー「……な、なにが起きたんだ……?」

私が困惑していると、ラルトスがおそるおそる手を上げた。

ラルトス「あの、おじさん……あれ、多分私、です……」

スリーパー「……ええ?」

>>>

とても今更ですが、修正です。

>>52-53で、「ジュンサー」と表記がありますが、正しくは「ジョーイ」です。

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