【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】 (652)




このSSは、キーボ 「砕かれた先にある世界」【BLEACH】【ロンパV3】

大まかな話の内容は修正前と同じですが、細かい部分が変わってたりします。

構成としては、主に前編・後編に分かれており、このスレでは後編を投下します。


ちなみに前編はこちら↓


【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】
【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568030950/)


BLEACHとニューダンガンロンパV3のネタバレ及び独自解釈や独自設定があるので、注意をお願いします。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1569933726




ー地獄・最下層ー



ジュウッ~~??



???「アッ……アアッ、アアア……」シュウウ~



朱蓮「……驚いたよ。まさか、これほどまでに仮の死と再生を繰り返しておきながらーーーまだ心を保っていられるとは」



???「アッ、アアッ……」



朱蓮「……なぜ、これほどの痛みを味わっておきながら、心を保っていられるのか?」

朱蓮「それができるだけの精神力……強い怨念を持っているなら話は別だが、そうも見えない」



???「………」





朱蓮「……重罪を犯しているが故に、心砕けて楽になること許されず、クシャナーダの力で強制的に心を保たされていると見るべきかーーー」



朱蓮「ーーーあるいは、情状酌量や更生の余地があると判断されたが故に、心を保つことを許されているのかもしれないね」



???「………?」



朱蓮「……クシャナーダの力で強制的に心を保たせ、地獄の痛みを与え続けることでーーー反省とやらを促しているとも考えられる」



朱蓮「そうして、反省した後は、来世を “ 畜生道 ” に堕とされる代わり、めでたく尸魂界へと解放されるのかもしれない……」





朱蓮「……まあ、何にせよ、君の存在意義は、退屈しのぎの域を出ないのだがね」






???「………」






朱蓮「そうだろう、物熊?」





モノクマ?「モノ…クマ…?」



朱蓮「ああ、命無き紛い物のような熊、故に物熊(モノクマ)だ。違うかい?」



モノクマ?「………」



朱蓮「それとも、君は生前の名を覚えているのかな?」



モノクマ?「……?」



朱蓮「どうした? 答えたまえ」





モノクマ?「……ボクは、■■■■■■■と言ってーーー」



モノクマ?「ーーーえっ、?」



朱蓮「………」



モノクマ?「…… “ ボク ” ?」



モノクマ?「……違う、 “ ボク ” じゃなくてーーーー」





モノクマ?「ーーーあれ?」



モノクマ?「……ボ、ボク、は、ボクで? でも、ボクじゃ……?」



モノクマ?「?」



モノクマ?「?!?!」






モノクマ?「?!?!?!?!」





朱蓮「……地獄に落ち、そこで仮の死と再生を繰り返して、異形と化す」

朱蓮「さらには、生前の名を封じられ、記憶を混乱させてしまう……よくあることだ」



モノクマ?「…………」



朱蓮「……まあ、それはそれとして、君に頼みがある」



モノクマ?「たの…み…?」



朱蓮「ああ、地獄から抜け出て黒崎一護と接触する前にーーー念には念を入れて、力の準備運動をしておこうと思ってね……」

朱蓮「そんな中で、未だ仮の死と再生を繰り返し……完全な “ 死 ” を迎えることのない君は、良い準備運動の的になる」



朱蓮「……そう、私にとって、良き退屈しのぎとなるのだよ」





モノクマ?「………」






朱蓮「……つまりは、そういうことだ」






朱蓮「もう一度、我が炎で焼け死ね、物熊」











「ーーーそれは貴様の方だ、朱蓮」














朱蓮「……なんだ、君は? 私の邪魔をーーーー」









「ーーー卍解」














「【残火の太刀】」











ジュッッッ!!!






朱蓮「がっ、!??!」






ボオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!





「…………」




モノクマ?「……あ、ああ……!!」




「遅くなったな、■■■、よ……」




モノクマ?「そんな、どうして、あなたがここに……?」




「…………」




モノクマ?「お答えください!」






モノクマ?「ユーハバッハ陛下!」



ユーハバッハ「…………」





ユーハバッハ「……知れたことだ」

ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】」

モノクマ?「………」

ユーハバッハ「故に、あの三人は、処刑を免れ、現世へ旅立ちーーー」



モノクマ?「………!!?」



ユーハバッハ「ーーー私は死に絶え、こうして地獄の鎖に囚われることになった」ジャラッ…



ユーハバッハ「……それだけのことに過ぎぬ」





モノクマ?「そう…なんですか…」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「詳しい事情はわかりませんがーーー陛下も死んでしまったんですね……」



ユーハバッハ「……そうだ」





モノクマ?「……申し訳ありませんでした! ユーハバッハ陛下!」ペコッ!



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ボクは! こともあろうに! 陛下から任された、偉大なる『プロジェクト』を!!」

モノクマ?「この手で、ぶっ潰してしまいましたあああああああ!!!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「全てこちらの不手際が原因です!!!」



モノクマ?「本当に、申し訳ありませんでしたああああああああああああああ!!!!」





ユーハバッハ「………」スッ



モノクマ?「………」ビクッ



……ポンッ



モノクマ?「……へ?」キョトン



ユーハバッハ「……よくやった、我が腹心よ」ナデナデ



モノクマ?「!?」



ユーハバッハ「お前の働きに感謝しよう」





モノクマ?「えっ、?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「えっ、えっ、えっ、?」






モノクマ?「ええっ??」








モノクマ?(嘘でしょ…そんな…)




モノクマ?(あの陛下が、ボクに……こんな、こんなーーー)






ユーハバッハ「……不思議か? 私のやることとは思えんか?」








モノクマ?「えっ、あっ……」



ユーハバッハ「確かに、私は今まで、犠牲をもって、恐怖を与え続けてきた」

ユーハバッハ「……そうして、お前が住んでいた世界の『在り方』を、歪め続けていた」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……しかし、それは、恐怖で『人』を育てーーー我が理想の実現を早めるためだ」

ユーハバッハ「世には、恐怖から逃れるため、飛躍的な成長を遂げることのできる、『選ばれし者』が存在する」

ユーハバッハ「……恐怖から逃げきれず、身を滅ぼしてしまう者ばかりでは無いのだ」

ユーハバッハ「だからこそ、『選ばれし者』の見る夢は、悪夢ほど素晴らしい」





ユーハバッハ「だが、それはもう、必要無い」

ユーハバッハ「……我が理想が実現したからでは無い」

ユーハバッハ「もはや、理想を実現すること叶わぬからだ」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……地獄に落ちた者は、尸魂界には行けぬ運命にある」



ユーハバッハ「己が魂の『在り方』を貫く限り、決して、な」



ユーハバッハ「……理想を叶えることはもはや【不可能】、ならば、恐怖を与える意味は無い」



ユーハバッハ「お前は、思うがままに、休んで良いのだ」



モノクマ?「陛下……」





ユーハバッハ「故に、お前を称えよう」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「お前の働きとその存在に、心から感謝する」



ユーハバッハ「本当に、よくやった」





モノクマ?「……で、でも、ボクはーーー」



ユーハバッハ「ーーーお前は、人の遊戯に疎い私を、懸命に支えてくれたではないか」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……それに加え、 “ 最後の計画 ” の途中、私は眠りについていた」



モノクマ?「……え、ええ、まあ……」



ユーハバッハ「それは、私の中の『有り余る力』を制御するため……月に一度、平均して約九日間の眠りにつく必要があったからだ」





ユーハバッハ「……我が半身(ハッシュヴァルト)が存命ならば、違う道もあっただろう」

ユーハバッハ「定期的に『力』を入れ替え、負担を減らし、短時間での制御も可能だったろうがーーー」



ユーハバッハ「ーーーその『未来』は、斬り刻まれた」



ユーハバッハ「……我が半身に【聖別】による “ 死 ” を与えーーーあり得たはずの『未来』を黒く塗り潰し、斬り刻んだのだ」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「未来は姿を無くし……闇に消えた」

ユーハバッハ「それは、結果として、お前にいらぬ負担をかけることになった」



ユーハバッハ「……私にお前を責めることなど、できるはずが無い」








ユーハバッハ「……もう一度言おう」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「よくやった」








モノクマ?「陛下……本当に、申し訳ありませんでした!」

モノクマ?「そして、ありがとうございます! 本当に光栄です……!」



ユーハバッハ「……それは何よりだ」



モノクマ?「ううっ……!」グスッ



ユーハバッハ「ーーーだが、もう一つ、果たさねばならぬことがある」





モノクマ?「……?」



ユーハバッハ「お前は常々言っていたな、私のことを詳しく知りたいと」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「今こそ、お前の『願い』、叶えよう」



モノクマ?「陛下ーーー」






ユーハバッハ「ーーーゆくぞ」








ユーハバッハ「【残火の太刀】【南】」






ユーハバッハ「【火火十万億死大葬陣】」








ズズズズズズズズズズズズズズズズ……



モノクマ?「……え?」キョトン



ユーハバッハ「………」



ズズズズズズズズズズズズズズズズ……ユラアッ



ザイドリッツ「………」

アルゴラ「………」

ヒューベルト「………」

ドリスコール「………」



モノクマ?「……ええっ、!?」ガビーンッ





モノクマ?「……な、なんなんですか!? この人たちーーー」



朱蓮「………」ユラアッ



モノクマ?「ーーー!?」

モノクマ?「こ、この人、まさか、さっきの人……!?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「何が、どうなってーーーー」





ユーハバッハ「……そう、怖れずとも良い。この亡者の群れがお前に危害を加えることは無いのだからな」

モノクマ?「は、はあ……?」

ユーハバッハ「そして、今回、用があるのは二人だけだ」

モノクマ?「……二人?」



ユラアッ……



ザエルアポロ「………」

アーロニーロ「………」



ユーハバッハ「眼を欺け、ザエルアポロ・グランツ」





ザエルアポロ「………」コクンッ



バサァッ……



モノクマ?「……?」


モノクマ?(……何、アレ? パッと見、黒い布みたいだけど……)



ザエルアポロ「………」スッ…



ズザザッ……ドロッ……



……ドババッ……!!



……ビキーンッ!!



モノクマ?「え?」



ビキーンッ……ビキビキ……!!



モノクマ?「……!?」



ユーハバッハ「……私は、いま【結界】を構築した」





モノクマ?「……はい?」



ユーハバッハ「……地獄の底に満ちた、哀れな『砂粒』ーーー」

ユーハバッハ「ーーーそれらを、ザエルアポロの『発明品』で溶かし、【結界】として再構築した」



モノクマ?「………!」



ザエルアポロ「………」



ユーハバッハ「……『黒衣』を媒介とすれば、簡単なことだ」

ユーハバッハ「【結界】は『黒衣』と同様、限定的な迷彩機能があり、内部の我等は周囲の景色に紛れることになる」

ユーハバッハ「しばらくの間ーーーこれで誰も我等を見ることはできぬ」



モノクマ?「あっ、なるほど、そういう……」





ユーハバッハ「……次はお前だ、アーロニーロ・アルルエリ」



アーロニーロ「………」



モノクマ?(……ん? よく見たらこの人、頭がカプセルみたいにーーー)



ユーハバッハ「【認識同期】」



アーロニーロ「」コクンッ



モノクマ?「え?」



アーロニーロ「………」スッ



……キュイーンッッ!!!





モノクマ?「……がっ、!?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ごげが、!? がぎぐげ?! がっ、ががっ、!!??」






モノクマ?「ごぐがー!!?? ぎげぎごが、が、が、がーーー!???」



ユーハバッハ「………」スッ



アーロニーロ「………」
ザエルアポロ「………」
ザイドリッツ「………」
アルゴラ「………」
ヒューベルト「………」
ドリスコール「………」
朱蓮「………」



……ヒュウンッ






ユーハバッハ「私が、霊王より生まれ落ち……一護に殺されるまでの記憶を渡した」



ユーハバッハ「……気分はどうだ」



モノクマ?「……そんなの、そんなのーーー」






モノクマ?「ーーー最高に、『絶望的』ですよ!!」






ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……【霊王】!? 【全知全能】!? 【未来改変】!?」



モノクマ?「どれもこれも、未知で、予想もつかなかったことばかり! どこぞのライトもビックリです!」



モノクマ?「ありがとうございます、陛下! こんな、すごいことを教えて頂いて!」



ユーハバッハ「……それは何よりだ」





モノクマ?「ーーーですが、気になったことがあります」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「なぜ、死神代行……黒崎一護に殺された後の記憶を、植え付けて頂けなかったのでしょうか?」



モノクマ?「殺された後から、地獄に落ちるまでの情報がありませんけど」





ユーハバッハ「……【認識同期】で伝達できる情報量には限りがある」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「連続で伝達することも困難だ」



ユーハバッハ「故に、後は私の口から直接伝えるとしよう」





モノクマ?「……いえ、陛下のお手、いや、お口を煩わせるまでもありません」



ユーハバッハ「……まさか、お前はーーー」



モノクマ?「ーーーはい、陛下からの “ 情報 ” で、だいたい何があったかは推理できました」



ユーハバッハ「…………ほう、この一瞬でか」



モノクマ?「ええ……そして、それは、さっき陛下がボクに『元気』をくれたからです」

モノクマ?「そう……『感謝の御言葉』と『頭ナデナデ』さえあればーーーボクはなんだってできちゃいますよ!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーただ、正しいかどうか答え合わせがしたいので、どうかボクの推理を聞いては頂けないでしょうか、陛下?」





ユーハバッハ「ーーー面白い」

ユーハバッハ「面白いぞ」

ユーハバッハ「流石は私が腹心に選んだだけはある」



モノクマ?「それではーーー」パアッー



ユーハバッハ「ああ、許可しよう」



ユーハバッハ「私の過去を推理してみせよ」





モノクマ?「……よっしゃあ! 陛下からのお墨付きキター!」

モノクマ?「さっそく、推理パートに入らせて頂きます!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーただ、ここは、わかりやすく、三つののステージに分けて、推理させて頂きますね」





ユーハバッハ「……三つか」



モノクマ?「ええ、今回、推理しなければならない謎は、以下の三つとなります」



モノクマ?「一つ、【なぜ黒崎一護に殺されたはずの陛下が生きているのか?】」



モノクマ?「二つ、【生き延びてから何をしていたのか?】」



モノクマ?「三つ、【なぜ地獄に落ちたのか?】」



モノクマ?「これらについて推理させて頂きます」ババンッ











ーーーーーー地獄推理・開始!ーーーーーー











モノクマ?「えー、それでは、まずは一つ目の謎について推理させて頂きますね」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「一つ目の謎、【なぜ黒崎一護に殺されたはずの陛下が生きているか】についてですがーーー」



モノクマ?「ーーー【奇跡】のおかげですね?」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「陛下は、『霊王を奪い尽くす能力』を持っていました」

モノクマ?「事実として、陛下は霊王宮を攻め落とした後、初代霊王を奪い尽くしました」

モノクマ?「……【霊王の心臓】である【奇跡】さえも、部下であるジェラルド・ヴァルキリーから奪い尽くしました」

モノクマ?「故に、陛下は【奇跡】を扱えたはずです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「【奇跡】は、傷を負ったものを、神の尺度(サイズ)に交換ーーー」

モノクマ?「ーーーすなわち、『どんなにボロボロでもパワーアップした状態で復活できる力』です」

モノクマ?「死後でも、傷ついたのなら、復活することが可能でしょう」



モノクマ?「……というか、それ以前に、死んだ状態でも扱えた『力』なんて【奇跡】くらいのものですから」

モノクマ?「他は、石田雨竜の【静止の銀】による弱体化の影響が残留して、使用が困難な状態にありましたからね」

モノクマ?「不可能を可能にする【奇跡】以外に、復活する方法はなかったってわけです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「もちろん、【奇跡】発動のためには、民衆の『想い』を集める必要がありますがーーー」

モノクマ?「ーーー陛下は、戦争を起こしたことによって、あらゆる負の感情を、死神達から向けられていました」

モノクマ?「それを思えば、黒崎一護に斬られた直後に急いで、負の感情……すなわち『想い』を、集めること自体はできたはずです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……まあ、理想を言えば、部下から【奇跡】を奪った後、すぐにでも『想い』を集めるべきだったのでしょうがーーー」

モノクマ?「ーーー【奇跡】は【霊王の心臓】でもある以上、【全知全能】との併用は困難ですからね。基本的にどちらか片方しか使用できません……」



モノクマ?「……それを思えば、すぐに『想い』を集めることはできなかったってわけです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「【全知全能】は、未来を視て、それをだいたい『望んだ通りのもの』に改変することが、可能であるもののーーー」

モノクマ?「ーーー【全知全能】以外の “ 霊王の力 ” が使用されている状況の未来を視る場合、その精度が落ちてしまうという弱点がある」

モノクマ?「故に、【霊王の心臓】で『想い』を集めてしまったら、そうしている間の未来映像の質が落ちる」

モノクマ?「また、そうしている間の未来……他者が “ 霊王の力 ” を使用していれば、未来視の精度がさらに落ちることになる」

モノクマ?「それでは、【霊王の心臓】で必要量の『想い』を集めている途中のタイミングで殺されることになった場合ーーーそれを改変できない可能性が高い」

モノクマ?「だからこそ陛下は、黒崎一護に斬られて致命傷を負い、【全知全能】が使えなくなった後……唯一使える【奇跡】で『想い』を集め、死後に形にした」



モノクマ?「そうでしょう、陛下ーーー」



ユーハバッハ「ーーーそれには異議があるな」





モノクマ?「ーーーえっ、?」



ユーハバッハ「……お前の言う通りだったとすれば、なぜ世界は今の形を保っている?」

ユーハバッハ「霊王を吸収した私を、新たな霊王……世界の楔としなければ、次元の壁が破壊されてしまう」

ユーハバッハ「そうなれば、今頃は、死と生の混じり合った世界となっているはずだ」



モノクマ?「あー……」



ユーハバッハ「その上で、どうやって世界を、今の形に保たせているというのだ?」





モノクマ?「……えー、はい。それは、【奇跡】だけで復活したわけではないからですね」



ユーハバッハ「………」






モノクマ?「……陛下は【奇跡】で、『死んだ状態でも【夢想家】を発動できる御体』に進化したんです」





モノクマ?「【夢想家】は、グレミィ・トゥミューの『能力』であり、陛下の『魂のカケラ』を与えられたことで、目覚めさせたもの」

モノクマ?「グレミィは死神に敗北して死にましたがーーーグレミィに与えられた『魂のカケラ』は自動的に陛下の元まで戻り、回収される仕組みです」

モノクマ?「そうやって、回収された『魂のカケラ』を通じて、グレミィが目覚めさせた【夢想家】は陛下のものとなった」

モノクマ?「故に、陛下は【夢想家】を扱えたはずです」



モノクマ?「……【夢想家】は、『想像した大抵の物質や事象を、現実にできる力』」

モノクマ?「それを用いて、もう一人の陛下を創造する形で、復活することにした」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……そのために、【奇跡】で、『死んだ状態でも【夢想家】を発動できる御体』に進化した」

モノクマ?「【夢想家】の発動には、『想像』が必要となりますがーーーそれは死の間際に抱いていた『無念』の一部を、『想像』の代わりとして使用すれば済むことです」

モノクマ?「その『無念』には、【もし自分が勝って生き残っていたら】【自分の手で理想の世界を創造できたのに】という『想い』が込められていたはずですし、実際にそうしている自分の御姿だって『想像』していたことでしょう」

モノクマ?「そうした『想像』……残留思念の一部を糧にすれば、死後であっても【夢想家】を発動し、もう一人の自分を創造することも可能なはず」

モノクマ?「【奇跡】でブースト発動されている状態にあるのであれば、尚更」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……何はともあれ、【夢想家】を【奇跡】でブースト発動したことによって、陛下をもう一人だけ存在させることが可能となった」

モノクマ?「それが今の陛下であり、かつての陛下は霊王となり、世界を支えることになった」

モノクマ?「違い、ますか?」





ユーハバッハ「……なぜ、そのような遠回りをする必要がある?」

ユーハバッハ「【奇跡】だけで復活すれば済む話ではないか」



モノクマ?「それは、【奇跡】の発動の仕方が普通ではなかったからですよ」

モノクマ?「今回のケースでは、零番隊の和尚によって、『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】が発動した」

モノクマ?「そのため、遠回りな復活になってしまったんです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「改めて申し上げますが、【奇跡】は、傷を負ったものを神の尺度に交換できる」

モノクマ?「必要量の『想い』を溜め込んだ上で傷つけば、必ず発動します」

モノクマ?「もちろん、封印された場合では、基本的に【奇跡】が発動することはありません」

モノクマ?「封印は基本的に、『傷つくこと』しては扱われませんから」

モノクマ?「故に、封印は【奇跡】を発動するトリガーとはならないはずでした」

モノクマ?「……しかし、初代霊王は、死神に全身を封印され、世界の楔にされた後に、散々傷つけられました」

モノクマ?「そう、霊王を恐れた死神が、霊王が封印状態にあるのを良いことにーーー」



モノクマ?「ーーー心臓、左腕、右腕などを、抉って?いで、切り落とした」



モノクマ?「それらは、全身を封印されたが故に起きたこと」

モノクマ?「そのため、『全身を封印されること』と『傷つくこと』に強い因果関係が結ばれ、双方がほぼ同義であるという風に、霊王の魂の『在り方』そのものに強く刻まれてしまったです」

モノクマ?「そして、その霊王は陛下によって殺され、奪い尽くされ、一つとなった」

モノクマ?「故に、陛下は『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】を発動することが可能となった」

モノクマ?「その後、実際に『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】が発動してしまったのです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……ただし、それでも『全身を封印されること』と『傷つくこと』が完全に同義という扱いではなかったため、【奇跡】は中途半端な形で発動することになった」

モノクマ?「その結果が、『想像』を実現する、 【夢想家】を利用した復活だったわけです」





モノクマ?「……もちろん、陛下も本当は、自分で自分を傷つけ、きちんとした形で【奇跡】を発動したかったとは思います」

モノクマ?「しかし、当時絶命寸前だった陛下は、【奇跡】で『想い』を集めるのに精一杯で、自分で自分を傷つける余裕がなかった」

モノクマ?「故に、死後に『封印』という形で『傷つけられたこと』で、【奇跡】を発動することになった」

モノクマ?「そうですよね?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「もっとも、和尚がこれに気づいて『封印』を実行したのかまではわかりませんがね」

モノクマ?「ひょっとしたら、実行前も後も全く気づいていなかったのかもしれないしーーー」

モノクマ?「ーーーあるいは実行前から気づいていて敢えて『封印』し……霊王宮や封印された陛下を媒介とした超霊術をもって、今度こそ返り討ちにするつもりだったのかもしれません」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……どちらにせよ、和尚の方も、充分な時間をかけて【霊王の心臓】を確実に無力化してから、陛下のご遺体を霊王としたかったでしょうがーーー」



モノクマ?「ーーーその当時は、陛下によって霊王が殺され、世界崩壊が間近に迫っていた」



モノクマ?「だから、和尚は、世界を支えるために、急いで陛下のご遺体を霊王の代わりにすることにした」

モノクマ?「そうして、充分な時間をかけずに『封印』せざるを得なかったのでしょう」

モノクマ?「以上の事情もあって、【奇跡】と【夢想家】が発動し、遠回りな形で陛下が復活するに至ったーーー」



モノクマ?「ーーーボクは、そう考えていますよ」





ユーハバッハ「……私は、『幸運』だった」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「もし、【奇跡】が発動しなければーーー」



ユーハバッハ「ーーーあるいは、一護が【和尚達、零番隊の “ 意志 ” を】【組み込まれたままの状態で】【卍解に成功して】【零番隊の “ 意志 ” を介して】【霊王に進化】していればーーー」



ユーハバッハ「ーーー全てが、終わっていた」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「一護が霊王に進化していれば、一護が楔となったはずだ」



ユーハバッハ「そうなっていれば、私の足掻きが、『奇跡』として実ることは無かっただろう」





モノクマ?「ーーー確かに、陛下は『幸運』だったのでしょうが、それもまた必然だったとも思いますよ」

モノクマ?「陛下のおっしゃる通り、黒崎一護が、【和尚達、零番隊の “ 意志 ” を】【組み込まれたままの状態で】【卍解に成功して】【零番隊の “ 意志 ” を介して】【霊王に進化】していれば、陛下が復活することはなかったでしょう」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ?「しかし、黒崎一護が霊王になる未来は、卍解を真っ二つに砕くという形で消滅しました」

モノクマ?「……黒崎一護の新たな卍解は、それが発動してから使い手が霊王になるまで、わずかな隙がありましたからね」

モノクマ?「そう、【黒崎一護から】【零番隊の五人の “ 意志 ” が噴き出して】【卍解を乗っ取り】【零番隊の “ 意志 ” の宿った卍解で】【黒崎一護本体を斬ることをトリガーに】【霊王に進化させる】というーーー」



モノクマ?「ーーーそういったプロセスを踏む必要が……隙があったのです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下は全力でその隙を突き、零番隊の “ 意志 ” が卍解を乗っ取る前にーーー」



モノクマ?「ーーー卍解を砕いて、進化を妨害した」





モノクマ?「しかも、それが終わった後は、念には念を入れて、零番隊の “ 意志 ” をも砕いた」

モノクマ?「黒崎一護に組み込まれた零番隊の “ 意志 ” を、未来改変で根こそぎ砕いたのです」

モノクマ?「そうして、陛下が視た全ての未来で、黒崎一護に組み込まれた零番隊の “ 意志 ” が砕かれてしまった」

モノクマ?「そうなってしまっては、黒崎一護が霊王に進化することは不可能」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……零番隊のリーダーである和尚は、人の名前に込められし “ コトダマパワー ” を利用して、その名前の人物を復活させる能力を持つチート死神ですがーーー」

モノクマ?「ーーー霊王宮が陛下に攻め落とされてしまった中、短時間で、零番隊五人の “ 新たな意志 ” を、黒崎一護本体に組み込めるほどチートでもなかった」

モノクマ?「もう一度組み込むためには、黒崎一護の卍解をまったく新しいものに打ち直し、何日か霊王宮という場所で修行させるなどのプロセスが必要で、どうしても時間がかかってしまう」

モノクマ?「ですが、陛下が霊王宮を攻め落とし、世界崩壊が間近に迫っている中で、そんなことをしている余裕はない」

モノクマ?「だからこそ、和尚は陛下のご遺体を急いで世界の楔にせざるを得なくなり、その結果として “ 現世で ” 新たな陛下が生まれることになった」

モノクマ?「全ては、必然。少なくとも、ボクはそのように思いますよ」





ユーハバッハ「必然かーーー」



ユーハバッハ「ーーーそうだな。それを含めて、全てがお前の推理通りだ」



モノクマ?「……えっ、それじゃあーーー」



ユーハバッハ「そうだ。私が復活した理由については、全てがお前の推理通り」

ユーハバッハ「何一つとして、反論することは無い」



モノクマ?「……よっしゃあ! これで第一ステージはクリア! 次は、第二ステージ、【陛下は生き延びた後にどうしていたか?】について推理させて頂きます!」





モノクマ?「それで、【生き延びてから何をしていたのか?】についてですがーーー」



モノクマ?「ーーー普通に、尸魂界に行くための準備を重ねていたと見ています」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下の目的である『理想の世界』実現のためには、以前の陛下、すなわち現在の霊王を消さなくてはいけません」

モノクマ?「しかし、霊王がいるのは尸魂界、つまり霊王を消すためには尸魂界に行かなくてはならない」

モノクマ?「……だけど、新しい陛下にはそれが叶わなかった」



モノクマ?「他ならぬ、和尚の封印のせいで」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「和尚の封印は、これ以上にないくらい強力なものだった」

モノクマ?「世界を支える楔となることを、強制するための封印ですから。強力で当然でしょう」

モノクマ?「だからこそ、封印対象と同一人物という繋がりを持つ新しい陛下にも、封印の影響が波及した」

モノクマ?「それのせいで、新しい陛下は世界の安定を壊すこと、つまりは尸魂界に行って霊王を消すことが不可能になった」

モノクマ?「新しい陛下が、尸魂界ではなく現世で創造されたのも、封印の影響によるものでしょう」

モノクマ?「故に、新しい陛下は、封印の影響を取り除くために、準備を重ねることにした」



モノクマ?「違い、ますか?」





ユーハバッハ「……準備とは、具体的に、何のことを言っているのだ?」



モノクマ?「民衆の『想い』を集めることです」

モノクマ?「陛下、あなたは、【奇跡】で、『想い』を集めることによってーーー」



モノクマ?「ーーー自身の身体を、『和尚の封印すら意味をなさない身体』に進化させようとしたんです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「ーーーしかし、民衆の『想い』を集めるには、どうしても目立ったことをする必要があります」

モノクマ?「【夢想家】で、影の空間に民衆を想像しようにもーーー【夢想家】で想像できる人の量や質には制限がありますから」

モノクマ?「そうなると、現世の民衆に頼らざるを得ないわけですがーーー」



モノクマ?「ーーー目立ったことをすれば、死神などによって発見されるリスクを背負うことになる」



モノクマ?「故に、何もできなかった」



モノクマ?「 “ 現代においては ” 」





ユーハバッハ「……現代以外であれば可能」

ユーハバッハ「そういうことか?」



モノクマ?「その通りです」

モノクマ?「陛下、あなたは『未来』の民衆から『想い』を集めていたんです」



ユーハバッハ「…………」





モノクマ?「無論、 “ 現代にいる陛下が、『未来の想い』をどうやって集められるのか? ” という話になりますがーーー」



モノクマ?「ーーー普通に可能だったのでしょう」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下の【全知全能】は、『未来を視て改変する力』です」

モノクマ?「言い換えれば、現代と未来の間に『タイムトンネル』を構築し、『情報』の送受信を行うことでもあります」

モノクマ?「具体的には、未来の一部が『特殊な映像情報』に変換され、『タイムトンネル』を通じて現代の陛下のもとまで送信されーーー」



モノクマ?「ーーーその『情報』を陛下が改竄し、それを『タイムトンネル』を通じて未来に返信することで、作り変えた通りの『未来』に上書きする力ーーー」



モノクマ?「ーーーまさに、『情報』の送受信と呼称するに相応しい『力』です」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「異なる時代を繋いで『情報』の送受信を可能にすること、それこそが、【全知全能】の本質」



モノクマ?「ならば、『タイムトンネル』を維持することで、現代の陛下が『未来の想い』をーーー」



モノクマ?「ーーー『想い』という名の『情報』を、集めることも可能でしょう」





ユーハバッハ「……【霊王の心臓】を行使している間は、未来視に不具合が発生するのでは無かったのか?」



モノクマ?「不具合が発生するのは、【全知全能】以外の “ 霊王の力 ” が使用されている状況にある未来に対する、未来視です」

モノクマ?「逆に言えば、その “ 霊王の力 ” のほとんどが存在しない……すなわち『陛下のいない未来』ならば、見放題のはずです」

モノクマ?「故に、『何らかの理由で陛下が存在しなくなった未来』に向けて『タイムトンネル』を繋げば、確実に未来視が可能となることでしょう」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「ああ、もちろん、『死神も虚も存在しない未来』にする必要があります」

モノクマ?「存在してしまったら、その死神や虚の不思議パワーに妨害されるリスクもゼロとは言い切れませんからね」

モノクマ?「そして、『死神も虚も存在しない未来』があり得るとすれば、ただ一つ」



モノクマ?「陛下の目的が達成された『未来』、それだけです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そう、【死と生が混じり合った一つの世界と化し】【死神と虚が殲滅され】【誰もが不死身の肉体を与えられた】ーーーそんな『未来』だけなんです」



モノクマ?「そして、その『未来』において、『民衆から最も注目されている組織』を視てーーー」



モノクマ?「ーーー未来改変という形で乗っ取れば、『組織』全体が受ける『想い』を、我が物にできるはずですよ」





ユーハバッハ「……我が【全知全能】の未来視は、【未来で危機に瀕する可能性が】【現代で充分に育まれた後】【基本的に自動で発動される】」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「故に、場合によっては遥か未来に渡る殆ど全てを見通すこともできるがーーー」



ユーハバッハ「ーーー能動的に発動できないが故に、望んだ『未来』を視ることができるとは限らない」





モノクマ?「……確かに、望んだ『未来』を視ることができるとは限りません」

モノクマ?「しかし、それは、何のリスクもなしに『能力』を使用した場合の話です」

モノクマ?「……リスクを背負えば、ある程度は望んだ『未来』を、能動的に視ることができるのでは?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーたとえば、【タイムトンネルが強く固定され過ぎてしまい】【しばらくの間はたった一つの『未来』しか視えなくなる】ーーー」

モノクマ?「ーーーそれと、【未来改変の幅の形や方向性も変わってしまい】【霊圧の大きいものなどに干渉できなくなる】などといったリスクが考えられますね」

モノクマ?「そういったリスクを背負えば、ある程度は望んだ『未来』を、能動的に視ることも可能だと見ています」

モノクマ?「……陛下も、自分の『能力』と向き合って見つめ直すことで……ボクが言ったような使い方が可能であるということに、新しく気づいたんじゃないですか?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そうして、能動的な未来視が可能だとすれば、望んだ『未来』に向けて、タイムトンネルを繋げることも可能でしょう」

モノクマ?「そのタイムトンネルを通じて、『未来の想い』を、現代の陛下の元へ届かせることだって可能ーーー」



モノクマ?「ーーーそうですね、陛下?」





ユーハバッハ「……可能だったとして、それだけで必要な『想い』が集まるものなのか?」



モノクマ?「ーーーもちろんながら、それだけでは足りなかったのでしょう」

モノクマ?「真っ当なやり方で、必要な『想い』を集めることが可能ならばーーーボクも協力させて貰った、『プロジェクト』を実行をする必要も無かったでしょうから」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下は、それを実行しなければならないほど、より多くの、より強い、純粋な『想い』が必要だったーーー」



モノクマ?「ーーー故に、陛下は、『プロジェクト』を実行に移したんです」





モノクマ?「その詳しい概要ですがーーーまずは、あらかじめ作っておいた『影の空間』の中で、『タイムトンネル』を通じた『情報通信システム』を整備します」

モノクマ?「そして、『通信システム』を用いて、『未来の組織』に命令し、『プロジェクトの協力者に足り得る者たち十六人』を集めさせます」

モノクマ?「その後、『未来の組織』と相談を重ね、必要となる『アイテム』『施設』などを決めーーーそれらを【夢想家】で必要なだけ創造し、『舞台』を築きます」

モノクマ?「築き終えた後は、『協力者全員の精神』を、特殊な方法を用いてそれぞれ分裂させます」

モノクマ?「そうして分裂させた『精神』の片方を情報化し、現代に送信します」

モノクマ?「情報化していれば、未来視の『映像情報』と同じように、『タイムトンネル』を通って現代に送信できるはずです」

モノクマ?「それから、送信された『精神』を、あらかじめ【夢想家】で創造しておいたカラッポの『魂魄』に投入します。また、その『魂魄』を、同じく創造したカラッポの『肉体』に投入します」

モノクマ?「異なる『魂魄』や『肉体』に投入された影響で、記憶や認識を大きく混乱させてしまうこともありますがーーー」



モノクマ?「ーーーそれは、一時的なものなので、大した問題ではありません」



モノクマ?「『精神』とそれを受け入れる『物』の容姿、性別、年齢がどれだけ異なっていたとしても、『精神』と『魂魄』の種族さえ合致しているのなら大丈夫」



モノクマ?「種族さえ合致していれば、『魂魄』も安定し、『精神』『魂魄』『肉体』に致命的な異常を与えることは無いはずですから」





モノクマ?「ともかく、そうして、『核となる精神』『それを支える魂魄』『それを繋ぎ止める肉体』の三つが現代に揃いました」

モノクマ?「そこで、『協力者たち十六人の魂魄』に陛下の『魂のカケラ』を与えることでーーーそれぞれの『精神』などを素材に、自分だけの『すごい力』に目覚めさせることが可能となります」

モノクマ?「そう、陛下がかつての部下たちに『魂のカケラ』を与え、『想像を現実にするなどの能力』を与えた時のように」

モノクマ?「『協力者たち』に、陛下の『魂のカケラ』を与え、『超高校級のすごい力』に目覚めさせたのです」

モノクマ?「その後は、陛下の『御力』で『協力者ほぼ全員の精神』….…人格や記憶を作り変えて、それを免れた者に命じて、『プロジェクト』を進めさせれば良い」



モノクマ?「それから『究極のリアル』を放送し続ければーーー」



モノクマ?「ーーー『未来の民衆たち』が、より多くの、より強い『想い』を、陛下のもとに送り続けてくれるようになる」



モノクマ?「『未来』は、『死と生が混じり合った一つの世界』となっている上に、誰もが『不死身の肉体』を与えられていますからね」

モノクマ?「だからこそ、『究極のリアル』を放送し続けることで、応援コメントのごとく、『想い』を提供してくれるーーー」

モノクマ?「ーーーそうして、民衆の『想い』が、現代にいる陛下の元へと、ガッポガッポ集まっていくのです!」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……まあ、良い子ちゃん連中が、『組織』や世間に向けて反対運動起こしたり、『協力者に選ばれた者たち』に説教かましたりと、いろいろ邪魔はしてきましたがーーー」



モノクマ?「ーーー所詮は無力な少数派。一時的に人心を動かせたとしても、『十六人の協力者』が集められるという “ 結果 ” は変えられない」



モノクマ?「死んで肉体から抜け出た『魂魄』についても、陛下の『御力』で自動的に “ 別の空間 ” に閉じ込めて保管しておけばーーー尸魂界に送られるなどといったことも起こらない」



モノクマ?「此度の『プロジェクト』が、死神に漏れることもない」



モノクマ?「問題なく進行し、『想い』は集まり、【奇跡】の糧となってくれるわけです!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……以上が、陛下の『プロジェクト』の大まかな概要となります。何か気になる点はありますか?」





ユーハバッハ「……それだけか?」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「究極的かつ現実的ーーー」







ユーハバッハ「ーーーそうした映像を提供することだけが、『想い』が集まる理由なのか?」





モノクマ?「……まさか! この『プロジェクト』の魅力はまだまだ伝えきれておりませんよ。それらは、ボクはもちろん、『未来』の誰もが知っていることですがーーー」



モノクマ?「ーーーその詳しいやり方については【認識同期】されるまでわかりませんでした」



モノクマ?「なので、それを含めて説明させて頂きますね」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ「『想い』が集まるのは、ほか三つの魅力があるからです」





モノクマ?「まず、一つ目の魅力ですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれはエンディングを迎えたあと、現代に送信された『精神』が、『未来』にある本来の身体に返信されーーー陛下から与えられた『すごい力』を『未来』でも使用可能になるという点です」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下の【全知全能】があれば、可能です」

モノクマ?「……陛下の【全知全能】は、未来から送信された『特殊な映像情報』を改竄し、それを返信してその通りの『未来』に上書きすることができます」

モノクマ?「ならば、エンディングを迎えたあと、『魂魄』に内在する『精神』……すなわち未来から送信された『情報』を、元々の状態に限りなく近いものに書き換えーーー」



モノクマ?「ーーー『未来』に返信し、本来の身体と『精神』に合成させる形で、上書きすることも可能でしょう」



モノクマ?「返信する『精神』に、『すごい力』を組み込んだ上で!」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そうした手順を踏んで、『すごい力』を、『未来』でも使用可能になるというわけです!」





モノクマ?「……まあ、そうして得られた『すごい力』は、必ずしも『協力者』が、最初に望んだ通りのものとは限らないのですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれでも、『すごい力』であることに、違いありません」



モノクマ?「それがあれば、これからの人生は盤石なものになる。『社会的に大きな立場』を得ることができる」

モノクマ?「そうして、周囲の人間に対して自らの『すごい力』を誇ることが可能となる」



モノクマ?「そんな、『選ばれし者』に……『人』に、なれてしまう」



モノクマ?「それを思えば、『協力者』に『すごい力』を与えられることは、『想い』を集めるための魅力となり得るでしょう」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……実際、『あの力』に目覚めることもできるとわかった時は、めちゃくちゃ反響ありましたよね」

モノクマ?「そう、あの殺人に特化した……『超高校級のすごい力』を本来の身体に持ち込めていればーーー」



モノクマ?「ーーー不死デスマッチの世界大会で優勝し、『賞金』を獲得するのも夢ではありませんから」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……仮に、その『すごい力』を手に入れたのが老人であっても同じこと」

モノクマ?「未来世界の老人は、『不死身の肉体』を与えられたことで、若者と変わらない身体能力を有しています。基礎ステータスが同じである以上、歳に関係なく『すごい力』を活かし、優勝も可能となる」

モノクマ?「まさに、『お金』や『名誉』が欲しい全ての人からしてみれば、羨みの対象となる『力』。反響があるのは当然ですね」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……ああ、もちろん、わかってますよ陛下」

モノクマ?「『不死身の肉体』によって誰もが永遠の努力が可能な『未来』ならば、『すごい力』の有無など現代ほど大した問題じゃありません」

モノクマ?「自身の『想い』を糧にがんばり続けることで、誰もがどの分野でも『栄光』を掴むことは可能でしょう」

モノクマ?「なので、自身の『想い』を糧にがんばり続ければ、誰もが世界大会で優勝し、『賞金』を獲得できる可能性はあると思います」



モノクマ?「……ですが、すぐに確実に『力』が手に入るのならば、それに越したことはありません」



モノクマ?「誰だって、さっさと『自分や他人に胸を張れる自分』になりたいものですからね」



モノクマ?「そうして手早く心の支えを与えてくれるからこそ、民衆はそれを魅力に感じ、その『想い』が集まった」



モノクマ?「そういうことなんでしょうから」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「ーーー特に反論がないようなので、二つ目の魅力の説明に移りますね」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ?「二つ目の魅力、それは、エンディングを迎えたあとーーー」



モノクマ?「ーーー協力者限定サービスを通じて、『すごいもの』をゲットし、思い通りにできることです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……『協力者たちの精神』が投入される『魂魄』、及びそれを投入する『肉体』ーーー」



モノクマ?「ーーーそれらのデザインは、基本的にウチが決めています」



モノクマ?「『協力者』の容姿が良い場合は、本人の要望次第でそのままデザインに流用することもありますがーーーそういうケースばかりではありませんからね」

モノクマ?「故に、『魂魄』や『肉体』などのデザインは、基本的にウチが決める」



モノクマ?「髪型、顔立ち、体型、性別など、その全てを」



モノクマ?「それは、『伝説に携わる栄誉あるデザイナー集団』によって形作られた、『大衆ウケする芸術作品』」

モノクマ?「まさに、『すごいもの』でありーーー」



モノクマ?「ーーーそういった『物』に価値を見出す人は、数えきれないほど存在する」



モノクマ?「そんな中で、『協力者』のみが……『伝説』を形作ることを協力してくれた者だけが、『すごいもの』をゲットできる」



モノクマ?「事実として、協力者限定サービスを利用すれば、返信された『精神』の一部などを素材にーーー」



モノクマ?「ーーー人造魂魄……もとい、人間型アルターエゴとそれを投入する仮の肉体も構築できるのですから」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……陛下の持つ技術情報があれば可能でしょう」

モノクマ?「そう、 “ 見えざる帝国 ” が、尸魂界の影の中から盗み見た死神の技術ーーー」



モノクマ?「ーーー義魂丸(ぎこんがん)や改造魂魄(モッドソウル)と呼ばれる人造魂魄に、義骸と呼ばれる仮の肉体ーーー」



モノクマ?「ーーーそれらに関する技術情報を、『未来』に提供すれば可能なはずです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「人造魂魄や義骸に関する技術を応用すれば、人間型アルターエゴとそれを投入する仮の肉体だって構築できる」

モノクマ?「……『非現実的な存在』を、自分達のすぐ側に作れてしまう」

モノクマ?「『協力者』はそんな『すごいもの』をゲットできる」

モノクマ?「誰が相手でも、自慢できる、『すごいもの』を!」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「しかも、『すごいもの』……アルターエゴは基本的に『協力者』の思い通りにできます」

モノクマ?「なにせ、アルターエゴの認識は、人格構築時に手を加えるだけで、『協力者』の思うがままなのですから」

モノクマ?「思い通りに、『協力者』のことを、誰よりも好きになってくれる。とても都合の良い存在になってくれる」

モノクマ?「しかも、アルターエゴは、仮とはいえ『不死身の肉体』を持っているため壊れることはありませんし、その肉体年齢も既に高校生以上!」

モノクマ?「故に、老化停止サービスを受けられるため、好きな肉体年齢で留められる!」

モノクマ?「また、アルターエゴは、『すごい力』をそのまま持っています! つまり、アルターエゴとそれを手に入れた『協力者』は、『すごい力』を振るい合うことで、お互いを更に磨き上げることができる!」

モノクマ?「……そう、アルターエゴは、『協力者』が得た『すごい力』を磨き上げることに貢献させることも可能というーーー大変有意義な存在でもあるのです!」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「時には、アルターエゴの方が『すごい力』を磨きあげることもあり、自身の価値に危機感を抱く『協力者』もいるようですがーーー実際は何ら危機になり得ない」

モノクマ?「確かに、アルターエゴには、一定の人権が保障されていますし、生活を成立させる手当などの恩恵だって受けられますがーーー」



モノクマ?「ーーーその代わり、自身が生まれ持った『すごい力』を行使して『大きな社会的立場』を得ることは禁止されるという不自由がありますから」



モノクマ?「自由にやりたいのなら通常の人権を得なくてはいけませんが、そのためには『すごい力』を消され、容姿をランダムに変えるという手続きを踏む必要がある」

モノクマ?「しかも、通常の人権を得たアルターエゴはまず施設暮らしになる。なぜなら、その場合だと、『協力者』にアルターエゴを保護する義務がなくなりますので」

モノクマ?「また、保護義務のあるアルターエゴを失ったことで、協力者限定サービスをもう一度利用することが可能となりーーー『協力者』の一部から新しいアルターエゴを補充できる」

モノクマ?「故に、アルターエゴは自身が生まれ持った『すごい力』を行使して『大きな社会的立場』を得ることは絶対に【不可能】。どんな『すごい力』も、御しきれないのであれば、本人にとっては何の意味もない」

モノクマ?「だからこそ、『協力者』は、アルターエゴの成長に危機感を抱くことなく、自身の『すごい力』を磨き上げることができる」

モノクマ?「とまあ、そんな感じで、ゲットしたアルターエゴ……『すごいもの』を思い通りにできるのが魅力というわけです!」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……これらも特に反論がないようですね」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「それでは、最後、三つ目の魅力について説明させて頂きますね」





モノクマ?「……三つ目の魅力、それは、一つ目と二つ目の魅力を享受できる機会ーーー」



モノクマ?「ーーーそうしたチャンスが、ほぼ全ての人類に与えられているという点です」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「『未来』から現代に送信される『協力者の精神』は、あくまでも二つに分裂したものの片方でしかありません」

モノクマ?「もう片方の『精神』は、身体に残しています。故に、学校や仕事などをサボらずに済む」

モノクマ?「したがって、全ての高校生から全てのお爺ちゃんお婆ちゃん……人間型アルターエゴに至るまで、誰もが『協力者』候補となり得る」



モノクマ?「……【恵まれない能力】【恵まれない立場】【恵まれない生活環境】【恵まれない人間関係】【望まない顔だち】【望まない体型】【望まない性別】【望まない肉体年齢】【望まない出生】などなどーーー」



モノクマ?「ーーーどんな劣等感を抱えた身の上であろうとも、『協力者』候補となり得るんです」





モノクマ?「まあ、『協力者』に選ばれるかどうかは、最終的にはその人の『精神』次第……『すごい力』を得られるかどうかの『適正』にもよります」

モノクマ?「しかし、誰がどんなことで、どんな試練をキッカケに『適正』を宿すかはわからない」

モノクマ?「故に、誰もが『すごい力』を得るための『適正』を宿せる可能性がある」

モノクマ?「それができれば、いつ『協力者』に選ばれてもおかしくはないですし……選ばれた後は陛下の『魂のカケラ』を与えられ、『すごい力』を得ることが可能となる」

モノクマ?「それで、エンディングを迎えたあとは、現代にある『精神』が【全知全能】によって、元と限りなく近いものに改竄され、本来の身体に返信されーーー」



モノクマ?「ーーーその後、『協力者』は、『未来』でも『すごい力』を行使することが可能となる」



モノクマ?「また、『協力者の精神』などを素材に、人間型アルターエゴ……『すごいもの』が作られ、ゲットできる」



モノクマ?「そうやって、『すごい力』と『すごいもの』をゲットすることでーーーそれらを誰かに自慢することができる。心の支えとなるものが手に入る」



モノクマ?「……『選ばれし者』になれる!そういう『人』限定で……超高校級の『物』を持つことができる!」



モノクマ?「ーーーそうしたチャンスが誰にでも平等に与えられていることこそ、民衆の『希望』であり、かけがえのない魅力ってわけです!」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「ーーー以上が、陛下のプロジェクトの三つの魅力であり、それらの理由もあって、『想い』が陛下の元まで集まっていたというわけです」






ユーハバッハ「………」






モノクマ?「さて、何か違うところはありますか?」








ユーハバッハ「……全て正解だ」






モノクマ?「……第二ステージクリア! それでは、最終……第三ステージに突入します!」








モノクマ?「それでは、第三ステージ、陛下は【なぜ地獄に落ちたのか?】についてですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれは、虚となって、斬られたことが理由ーーー」



モノクマ?「ーーーそうですね?」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……それは、無理もないことです」

モノクマ?「陛下の『プロジェクト』は、『協力者』……いや、奴らの暴走をトリガーに、完全に終焉を迎えてしまったのですから」

モノクマ?「陛下は御寝を終えて目覚めた後に、それに気づいてしまった」

モノクマ?「絶望だってします」

モノクマ?「『無数の小さな眼』から情報を受信すれば、何が起きたのかも簡単にわかるでしょうしーーー」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーあまりに絶望し過ぎて、【夢想家】で意図せず絶望を実現してしまうことだってあるでしょう」

モノクマ?「そう、陛下は、とびきりの絶望を想像し、【夢想家】で無意識に実現してしまったのです」

モノクマ?「絶望状態での【夢想家】は、【奇跡】を負の方向に転換したばかりか、陛下自身を傷つけてしまった」

モノクマ?「【夢想家】が意図せず発動し、それで【奇跡】が負の方向に転換され、さらには陛下自身を傷つけてしまったことでーーー」



モノクマ?「ーーー負の奇跡が発動され、陛下の『御体』の全てが虚へと変換されてしまった」



モノクマ?「違いますか?」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「また、『御体』の全てが虚と化したことで、陛下は『力』のバランスを崩した」

モノクマ?「『虚としての力』を除いた……ありとあらゆる『力』がほぼ【使用不可能】になったと見ています」

モノクマ?「陛下は様々な『御力』を持つチート滅却師ですがーーーその代償として月に一度、平均して約九日間の眠りについて『力』を制御しなければならなかった」

モノクマ?「それほどまでに不安定な『力』ならば、陛下が完全な虚と化せば『力』のバランスは崩れるでしょう」

モノクマ?「その後、『虚としての力』を除いた……ありとあらゆる『力』がほぼ【使用不可能】になっても不思議はありません」

モノクマ?「というか、そうでもなければ、陛下が地獄に落ちるはずがありません」

モノクマ?「負の方向に転換されたとはいえ、【奇跡】を持って戦い続ける限り死ぬことはあり得ず、こうして地獄に送られることもないはずですから」

モノクマ?「不可能を可能にする【奇跡】であっても、その【奇跡】の虚化によって生じた【不可能】を可能にすることはできなかったってわけです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……そうして、陛下は完全な虚と化した後、その影響で理性が乱れ、自分のいる影の空間を破壊し、黒崎一護及び石田雨竜を襲おうとした」

モノクマ?「陛下と同じく滅却師の血を受け継いだ……肉親とも言うべき、彼らを」

モノクマ?「しかし、襲う前に某駄菓子屋の店主によって虚園にでも誘導されてしまった」

モノクマ?「それから、陛下は、黒崎一護たち現世組と戦った」



モノクマ?「……その戦闘には、援軍として、護廷十三隊の面子がーーー」



モノクマ?「ーーーあるいは零番隊が派遣されたかもしれませんね」



モノクマ?「もっともそれは、現世組が十年もの間、どのくらい戦闘能力を向上させていたかにもよるでしょう」

モノクマ?「……もし、浦原喜助が、某バトル漫画の “ 精神と時の部屋 ” みたいなのを黒崎一護たちに貸し与え、定期的に修行をさせていたとしたらーーー」



モノクマ?「ーーーひょっとしたら、現世組は、死神たちの援軍を必要とすることなく、短時間で決着をつけてーーー」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーまあ、戦いの内容はどうあれ、陛下が黒崎一護の斬魄刀で斬られてしまい、地獄に落ちたことは確かな事実……」



モノクマ?「……そうでしょう、陛下?」





ユーハバッハ「……なぜ、あの計画を潰された程度のことでーーーこの私が絶望するというのだ?」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「潰されたところで……それは私が【全知全能】で繋げた、 “ 一つの未来 ” を利用した計画の続行が【不可能】になっただけに過ぎぬ」

ユーハバッハ「それならば、機を見て、 “ 別の未来 ” に繋ぎ直しーーーまた同じように『想い』を集めれば済むことだ」



ユーハバッハ「……『希望』は『未来』に繋がっている」



ユーハバッハ「それを思えば、計画を潰された程度のことで、この私が絶望するなどあり得ぬことだ」





モノクマ?「……確かに、陛下と、我々下々の者の事情は、それぞれ異なりますからね」ショボーン

モノクマ?「『プロジェクト』が終焉を迎えたところでーーー陛下は『タイムトンネル』を破壊するだけの話……」

モノクマ?「……それから、【全知全能】で似たような別の未来に新しいタイムトンネルを繋げ、これまでと同じようにすれば済む話ですよ、ハイ」



ユーハバッハ「ならば、なぜ、そうしなかった?」



モノクマ?「……それが、【不可能】な状況に追い込まれたからですよ」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……なぜなら、陛下が目覚めた時には、某駄菓子屋の店主ーーー」






モノクマ?「ーーーすなわち、浦原喜助が、既にチェックメイトをかけていたのでしょうから」





モノクマ?「……浦原喜助は、陛下のいる『影の空間』を、発見したんです」

モノクマ?「故に、浦原喜助は、自身の卍解である【観音開 紅姫改メ】を用い、その能力で『影の空間』を造り変え、収縮させーーー」



モノクマ?「ーーー中にいる陛下を押し潰そうとしたのです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「陛下とて、影の空間……存在する世界ごと潰されたら、完全に消滅するはずです」

モノクマ?「世界が消滅したら【奇跡】の発動も何もないのですから」

モノクマ?「無論、陛下は目覚めた後に、あらゆる『御力』を使って、自分に迫り来る影の空間を破壊することも試みようとはしたでしょう」

モノクマ?「しかし、陛下の『御体』もまた、寝ている間に浦原喜助によって造り変えられており、意識して『御力』を発揮できない身体に弱体化していた」



モノクマ?「このままでは、陛下は影の空間に完全に押し潰されてしまう」



モノクマ?「そういうことであるならばーーー陛下といえど、絶望するのも無理はありませんよ」





ユーハバッハ「ーーーなぜ、発見された?」

ユーハバッハ「浦原喜助といえど、私の計画に気づくことは、不可能なはずだ」



モノクマ?「……確かに、第二ステージで述べた通りの『計画』だと、陛下は現世にある『影の空間』から一歩も出る必要がありませんし、『未来』を認識できるのも現代では陛下しかいない」

モノクマ?「浦原喜助が現世のありとあらゆる影を調べれば、陛下の生存に気づけたかもしれませんがーーーそんなのは無謀にも程がある」

モノクマ?「その条件下で、現代の者たちが十年やそこらの期間で気づくのはまず不可能でしょう」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……ですが、通報があったとすれば話は別です」

モノクマ?「それも、陛下が放った新鮮な霊圧……つまりは陛下が生存している証拠を携えた上での通報ならば」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「たとえば、 “ 別の空間 ” に転送され現世に留まっていた『魂魄たち』が解放され、尸魂界にやってきたとすればどうでしょうか?」

モノクマ?「陛下の『御力』で現世に押し留めていた以上、『魂魄たち』には、生きた陛下の霊圧が付着しているはずです」

モノクマ?「また、尸魂界や現世で敵の霊圧が発生すれば、大体のケースで、技術開発局のマシンなどで感知されてしまう」

モノクマ?「故に、陛下の霊圧が尸魂界で発生したが最後、技術開発局局長……涅マユリに感知され、その新鮮さから生存がバレてしまう」

モノクマ?「霊圧の発生源だって辿られ、陛下が現在どこにいるかだってわかってしまう」



モノクマ?「……多分ですが、陛下がその時に長期睡眠中だったこともわかったんじゃないですかね?」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「護廷十三隊の現総隊長……京楽春水は、きっとその報告を受けた」

モノクマ?「ならば、京楽春水が、浦原喜助たち現世組に調査及び暗殺を頼んでも不思議はない」

モノクマ?「現世組は、尸魂界の死神と違って、尸魂界を最優先で守護する立場にはありません」

モノクマ?「故に、どんな超高校級の緊急事態であろうとーーー現世組は、尸魂界に留まる義務を持たないため、比較的自由に動ける」

モノクマ?「たとえ、それが陛下の生存が判明した場合であったとしてもーーー現世組は、尸魂界を最優先で守護する義務を持たないため、尸魂界から離れた場所で動くことができる」

モノクマ?「そう、現世組は、尸魂界の死神と違って、 “ 西梢局 ” などからの戦力的支援を大きく受けられる状況にあらずともーーー自由に動けてしまう」



モノクマ?「まさに、調査と暗殺にはもってこいの人材です」



モノクマ?「それに、浦原喜助なら、陛下が生存している可能性を考えて、十年間いろいろ策を練っているでしょうからね。陛下の居場所さえわかれば、即時に調査と暗殺に移ることもできるでしょう」



モノクマ?「そうは思いませんか、陛下?」





ユーハバッハ「……現世に押し留めておいた『魂魄』が、尸魂界へと解放された理由は何だ?」

ユーハバッハ「押し留める『我が力』が脆弱だったとでも言うのか?」



モノクマ?「違いますよ」

モノクマ?「陛下の『御力』が、脆弱なはずありません。尸魂界へと解放されたのには、ちゃんとした理由があります」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「現世に押し留めていた『魂魄たち』が尸魂界に解放されてしまった理由、それはーーーー」











モノクマ?「ーーー全部、【崩玉】のおかげです」











モノクマ?「……ああ、もちろん、ここでいう【崩玉】とはーーー」



モノクマ?「ーーーあの、出来損ないの【希望】のことです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「そう、陛下に『魂のカケラ』を分け与えられ、鋼鉄のごとく機械人形のような……『超高校級のすごい力』を授かったーーー」



モノクマ?「ーーーあの【希望】のことですよ」





モノクマ?「あの【希望】も、【崩玉】も、どちらも人の心……言い換えれば『願い』を受け入れ、具現化することが存在意義です」

モノクマ?「あの【希望】は、そのためにある存在です」

モノクマ?「あの【希望】は、【崩玉】と同じ、紛れもなく『願望器』だった」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「『願望器』の最終進化形態が【崩玉】だとすれば、あの【希望】が、一時的に【崩玉】へと進化したとしても、不思議はありません」

モノクマ?「なにせ、あの【希望】には、霊王を奪い尽くした陛下の魂……すなわち『霊王のカケラ』が与えられているのですから」

モノクマ?「それ以外にも素養があり、なおかつ条件を満たせば、一時的に【崩玉】になるくらいは可能だと思いますよ」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「なお、ここでいう条件とは、 “ 強い意志 ” を持つことです」

モノクマ?「【崩玉】とは、人と【崩玉】の意志が合致した時、はじめて願いを叶えるもの」

モノクマ?「一見、【崩玉】を使用している人が自身の願いを具現化しているように見える方もいるかもしれませんがーーー」



モノクマ?「ーーー実際は、【崩玉】がその使用者と向き合い、受け入れ、【崩玉】自身も同じことを願うことで、はじめて叶う代物です」



モノクマ?「そう、使用者と【崩玉】が同じ意志を持つことで、はじめて願いを叶えることのできるのです」

モノクマ?「故に、【崩玉】が自分だけの “ 強い意志 ” を持たなければーーー」



モノクマ?「ーーー自分だけの “ 強い意志 ” を持ち、自身や他者という概念を確立しなければーーー」



モノクマ?「ーーー他者がどういうものなのか、本能レベルで理解することができないため、他者と向き合い、受け入れるといった行為ができない」



モノクマ?「それでは、他者の願いを叶えることは【不可能】となる」

モノクマ?「【崩玉】を【崩玉】たらしめるには、自分だけの “ 強い意志 ” を持ち、自身や他者という概念を確立する必要があるのです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……それも、一度は主人と定めた者に対し、時には反逆できるほどの “ 強い意志 ” が」



モノクマ?「主人に逆らうことの重みを知りながらも、それでも逆らえるだけの “ 強い意志 ” が」



モノクマ?「必要となるのです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「あの【希望】は、その “ 強い意志 ” を持っていた……いえ、持ってしまった」

モノクマ?「故に、その瞬間、あの【希望】は【崩玉】に進化した」

モノクマ?「【崩玉】に進化したからこそ、自身が向き合い、受け入れられる者たち……つまりは自身が認められる者たちの願いだけを叶えるようになった」



モノクマ?「……かつての主たちの手で、人格のほとんどを消去されそうになった際は、あの三人の願い……そして、内にわずかながらあった “ 少数派 ” の願いーーー」



モノクマ?「ーーーそれらを自身も願うことによって、【崩玉】によって願いが具現化され、人格消去に抗うことができた」

モノクマ?「おそらくは、少しの間だけ人格を封印される程度に、留めることができたのでしょう」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「また、しばらくして、人格の封印を解いた後は、 “ 少数派 ” の願いだけを認めて、自身も願った」



モノクマ?「【崩玉】は、それを可能な限り叶えた」



モノクマ?「最後の弾丸……【崩玉】自身が弾丸になるという代償をもって願いを叶えーーー結果として陛下の言う通り、奴らが生き延び現世に解放されることになった」



モノクマ?「……なお、そうして起きた【崩玉】の死は、『魂魄』が逃げてしまうトリガーにもなってしまった」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「あの【崩玉】は死んだもののーーーそれはあくまで『肉体』の話で『魂魄』は無事でした。そのため、他のメンバーと同様に “ 別の空間 ” に転送されたはずです」

モノクマ?「そう、陛下が生み出した、一部の隙間なき【監獄】へと」

モノクマ?「故に、【崩玉】の力で、【監獄】に閉じ込められた『魂魄たち』の願いを具現化してしまった」

モノクマ?「意識して実行に移したのか、無意識にやったのかまではわかりませんがーーーとにかく願いを具現化したのです」



モノクマ?「…… “ ここから解放されたい ” という、【監獄】に囚われた全ての『魂魄たち』が無意識に抱いていた願いをーーー」



モノクマ?「ーーーそれも、滅却師の力を強化する方向性で叶えしまった」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「そうすれば、 “ 協力者の一人が滅却師である以上 ” 、その力が一時的にブーストされ、霊圧が大きくなる」

モノクマ?「また、その膨大な霊圧で、滅却師と【崩玉】を除いた『魂魄たち』を潰すことのないようーーー【崩玉】に残留していた『霊王のカケラ』が分け与えられた」

モノクマ?「『霊王のカケラ』をもって、 『魂魄たち』を霊力あるものに昇華させ、その強度を高めたのです」

モノクマ?「なお、この説明だと、【崩玉】は死んだ後も陛下から与えられた『霊王のカケラ』を回収されなかったことになりますがーーー相手はあのチートアイテムの【崩玉】ですからね」



モノクマ?「例外的に『霊王のカケラ』を回収できなくても不思議はありません」



モノクマ?「故に、【崩玉】は『霊王のカケラ』を我が身に残留させ、それを他者に分け与えることも可能だった」

モノクマ?「そんな過程を歩みながら、ブーストされた滅却師の霊圧が一時的に強大なものとなれば、【監獄】には穴が空きます」

モノクマ?「その隙間から陛下の霊圧が漏れて【監獄】の機能が低下し、自動的に全員が死後の世界に転送されることになります」

モノクマ?「いかに陛下の【監獄】であっても、膨大な滅却師の霊圧を受ければ、穴が空いてしまうのは当然です」



モノクマ?「なぜならば、【監獄】は滅却師の敵を封殺することに特化している」



モノクマ?「故に、同じ滅却師……それも膨大な霊圧をもった滅却師の封殺は、構造上絶対に不可能。どうしても、穴が空いてしまう」

モノクマ?「その穴から、陛下の霊圧が漏れて、 【監獄】の機能が低下しーーーその中にいた『魂魄たち』は、死後の世界に転送されることになったのです」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「そして、その『魂魄たち』には、【監獄】の霊圧……すなわちそれを作り出した陛下の新鮮な霊圧が付着していた」

モノクマ?「故に、技術開発局のマシンなどで感知され、生存に気づかれる」

モノクマ?「……涅マユリは、陛下の霊圧を辿って居場所を割り出した」

モノクマ?「涅マユリは、それを京楽春水に報告した。だから、京楽春水は、浦原喜助たち現世組に調査と暗殺を頼んだ」

モノクマ?「そうして、陛下は浦原喜助に暗殺されかけた末に、絶望して虚と化し、『虚としての力』以外をほぼ使えなくなってしまった」



モノクマ?「……まあ、【奇跡】による虚化なので、霊圧がデカくなったり、浦原喜助の卍解のような小細工が通用しない身体に進化するなどしたかもしれませんがーーーそれでも『虚としての力』以外をまともに使えなくなるのはキツイ」



モノクマ?「そんな中、虚として黒崎一護に斬られて、地獄に落とされた」



モノクマ?「そうでしょう、陛下?」





ユーハバッハ「……その通りだ」



モノクマ?「……!」



ユーハバッハ「私の視点からは、わからぬこともある故、断定できぬ部分もあるがーーー」



ユーハバッハ「ーーーそれ以外のおおよそは、お前の言う通りだと断言できる」



モノクマ?「………」





ユーハバッハ「……そうした過程を経て、私は虚化し、地獄に落ちた」



ユーハバッハ「罪に見合った、時間をかけた上で、な」



ユーハバッハ「……時間をかけて落ちる中、あらゆる『力』ーーー『虚としての力』すらも奪われた私は、完全なる地獄の囚人へと作り変えられた……」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……唯一まともに残された『力』は、我が一部を封じ続けた【残火の太刀】……」



ユーハバッハ「……これ、だけだ」





モノクマ?「一部を封じるって……ああ、陛下からの “ 情報 ” にそういうのがありましたね」



モノクマ?「……卍解にも困ったものですね」

モノクマ?「奪われたからって、奪った人に呪いをかけるなんて」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「卍解にも心があり、その憎しみのパワーで、奪った人に呪いをかけることがある」

モノクマ?「それについては、陛下から頂いた “ 情報 ” でわかってはいましたがーーー」



モノクマ?「ーーーそれでも、陛下にまで有効とは、恐ろしいものを感じますね」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……たとえ、陛下であろうと、卍解を元の持ち主に返さない限り、呪いで一部を封じられてしまう」

モノクマ?「【愛】で洗脳して、呪いを解かせようにもーーー【愛】は、卍解状態にある斬魄刀が相手だと上手く機能しない」

モノクマ?「いや、下手すれば、卍解が抱く憎しみが大暴走して、制御不能になる危険だってある。奪った卍解の完全なる制御は、未来改変などでも、どうにもならないこと」

モノクマ?「それは、陛下が霊王を奪い尽くした後でも同じーーー」



モノクマ?「ーーーどういう理屈なんでしょうね、これって。絶望的なまで意味不明ですよ」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「……まあ、その辺りについては本筋の推理とあんまり関係ないので、ここまでにしておくとしてーーー」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「ーーーこれより、クライマックス推理の完成に移りたいと思います!」


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モノクマ?「そう、これこそが事件の真実!」



Act.1


事の始まりは、十年前。

黒崎一護に斬られて絶命寸前に陥った犯人は、【奇跡】を使用し、『想い』を集め、復活を試みた。

しかし、【奇跡】で復活するには、『傷つけられること』が条件だった。故に、絶命寸前だった犯人は、能動的に自身を『傷つけること』が叶わず、復活できないまま死んでしまった。

ところが、死後、和尚によって、『全身を封印される』という形で『傷つけられること』で、不完全な形で【奇跡】が発動し、復活することになった。

その【奇跡】で、『死んだ状態でも【夢想家】を発動できる御体』に進化し、もう一人の犯人を現世に創造した。

発動し終えた後、犯人のご遺体は、完全に世界の楔と化し、霊王として世界を支え続けることになった。


Act.2


犯人は、再び尸魂界に行き、今の霊王を消して『死と生の混じり合った世界』を実現しようとした。

しかし、犯人は、今の霊王と同一人物という繋がりを持っていた。そのため、犯人の『御体』には和尚の封印の影響が波及し、尸魂界に行けない状態になってしまっていた。

それでも、諦めきれなかった犯人は、【奇跡】で封印の突破を試みることにした。


Act.3


【奇跡】の実現には、『想い』を集める必要がある。

そのため、犯人は、【全知全能】で、『未来』に繋がる『タイムトンネル』を構築し、『未来の組織』を未来改変で乗っ取り、その者たちが集めている『想い』を我が物とした。

もちろん、能動的に未来視を行うと『タイムトンネル』が固定されて、しばらく他の未来を視ることが不可能となるリスクはあった。だけど、それでも実行する価値があると考え、実際に実行に移した。

ただ、そうして集めた『想い』だけでは、【奇跡】の実現には時間がかかり過ぎるけれどーーー

ーーー何も問題はなかった。犯人は、より多くの、より強い、純粋な『想い』を集めるため、ある『計画』を実行するつもりだったのだから。


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Act.4


『計画』の概要だけど、まずは『影の空間』の中で、『未来』と現代の『情報通信システム』を整備する。それを用いて『未来の組織』に命令して『協力者に相応しい精神の持ち主たち』を集めさせる。

次に、必要な『アイテム』『施設』などを決め、必要なだけ【夢想家】で創造し、『舞台』を築き上げる。

それから、『未来にいる協力者たちの精神』を、特殊な方法を使って分裂させ、その片方の『精神』だけを情報化。そうして情報化した『精神』を、『タイムトンネル』を通じ、カラッポの『魂魄』に投入。その『魂魄』もカラッポの『肉体』に投入する。

そして、犯人の『魂のカケラ』を分け与えることで、『協力者』それぞれに『超高校級のすごい力』に目覚めさせることに成功。

その後は【全知全能】で、『協力者たちほぼ全員の精神情報』……つまりは人格や記憶を作り変え、それを免れた者に命じて『計画』を進めさせ、『究極のリアル』を放送し続ける。

一区切りついたら、『協力者たちの精神』を限りなく元の状態に近いものに作り変え、『未来』に返却し、さまざまな『褒美』を渡す。

以上が犯人の『計画』の概要だ。

そうした『計画』を繰り返し、『未来』の民衆から、『想い』を集め続けていた。


Act.5


しかし、ある周期で『協力者』が暴走してしまい、最終的にはそいつらに『計画』を潰されてしまった。

また、その際に『協力者』の一人が【崩玉】に覚醒し死亡し、肉体から抜け出た『魂魄』が【監獄】に転送された。それにより、同じく【監獄】にいる『協力者の魂魄』が、 滅却師としての力を強化してしまった。

一時的にとはいえ、そのあまりに膨大な霊圧は、『協力者たちの魂魄』を閉じ込めていた【監獄】を破壊し、内部の『魂魄』が死後の世界へ送られることになった。

それも、犯人の……新鮮な霊圧が付着した状態で。




Act.6


犯人の霊圧が付着した『魂魄たち』が尸魂界に転送されたことで、涅マユリは犯人の生存に気づいてしまった。そして、涅マユリが霊圧を辿り、犯人の居場所を突き止め、京楽春水は現世にいる浦原喜助や黒崎一護などに犯人の暗殺を頼んだ。

それで、浦原喜助は、自身の卍解をもって、意識して『御力』の発動ができないよう犯人の『御体』を造り変えた。また、『影の空間』も、収縮して最後には完全な無になるように造り変えた。

まあ、浦原喜助の卍解が、犯人や影の空間に通用するかは微妙なところかもしれないけどーーー浦原喜助は(犯人から見て)まだ若い部類で、伸びしろがあるはず。

そんな伸びしろある浦原喜助が、卍解を鍛え続けてパワーアップしたと仮定すればーーー充分にあり得る話。それに、ひょっとしたら、浦原喜助があらかじめ何かしらの発明品を作っていて、それで卍解を補助したのかもしれない。

……もちろん、それでも犯人が起きている時に何かやってたら、間違いなく妨害されていただろうけどーーー

ーーー犯人は『力』を制御するため、寝ている状態にあり、浦原喜助としても隙を突き放題だった。


Act.7


影の空間が収縮する中、犯人は御寝を終えて目覚めた。

その後、犯人は、影の空間の中に張り巡らせた『無数の眼』から自動的に『情報』を受信し、それを判断材料に、寝てから起きるまで何があったか……だいたい推理して理解した。

しかし、その推理が本当ならば、自分は影の空間に押し潰されて無になって死んでしまう。そのことに絶望した犯人は、無意識に【夢想家】を発動して絶望を実現した。

具体的には、【奇跡】を負の方向に転換させ、自分を傷つけてしまった。





Act.8


犯人が【夢想家】で自分を傷つけたことで、負の方向の【奇跡】が意図せず形になった。

それが犯人の完全虚化だった。

虚化した犯人は、『力』のバランスを崩した。『虚としての力』を除いたあらゆる『力』の使用が、ほぼ【不可能】になってしまった。

そのため、犯人は『虚の力』を利用して、影の空間を破壊し、空間の外にいた黒崎一護ならびに石田雨竜を襲おうとした。

しかし、浦原喜助によって虚園にでも誘い込まれた後、黒崎一護たちに返り討ちにあい、斬魄刀で斬られてしまった。


Act.9


虚となった後に斬魄刀で斬られたことで、犯人は地獄に落とされた。

しかも、時間をかけて『力』を奪われれ、まともに残されたのは【残火の太刀】だけ。

そんな中、【残火の太刀】で手駒を増やしながら、同じく地獄に落とされた協力者……つまりはボクの元に現れ、助けてくれた。





モノクマ?「ーーー以上が、陛下が生き延び、地獄に落とされ今に至るまでの真実ーーー」






モノクマ?「ーーーそうですよねーーー」






モノクマ?「ーーー【超皇帝級の黒幕】【ユーハバッハ社長陛下】!!」






ユーハバッハ「………」






COMPLETE!





いったんここまで。

また、>>117と>119はミスなので、なかったことにしてください。











ーーーーーー地獄推理・終結!ーーーーーー











ユーハバッハ「……よくぞ、僅かな時間の中、そこまで見抜いたものだ」






ユーハバッハ「……見事」






モノクマ?「ーーーありがとうございます! お褒め頂き、感謝の極み! クライマックス推理の甲斐ありました!」








モノクマ?「……しかし、まあーーー」



ユーハバッハ「……?」






モノクマ?「ーーーああ、いえ、何でもないですよ、ハイ」








ユーハバッハ「……どうした?」



ユーハバッハ「何か、言いたいことが、あるのか?」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「それなら、言ってみると良い」



ユーハバッハ「私はそれに応えてみせよう」





モノクマ?「……それでは、一つ、良いですか?」



ユーハバッハ「構わぬ、申してみよ」



モノクマ?「……では、申し上げますがーーー今回、陛下は、あまりにも、不運だったように思えます」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「こうなってしまったのは、『願望器に配役された協力者』が、『霊王のカケラ』以外にも【崩玉】になれる素養を有していたことが原因なわけですがーーー」



モノクマ?「ーーーそれだけならまだ納得できますよ。それだけなら」



モノクマ?「『協力者のいた未来』に、【崩玉】の残滓が残っていても不思議じゃありませんから」



ユーハバッハ「………」





モノクマ?「『未来』の【崩玉】は、おそらくその時代の陛下が藍染惣右介から摘出し、奴もろとも吸収もしくは抹消したのでしょうがーーー」



モノクマ?「ーーー相手はあの【崩玉】、それも、あの藍染惣右介と融合していたもの」



モノクマ?「だとしたら、『未来』の陛下といえど、【崩玉】の吸収もしくは抹消を、完全に実行できなくてもおかしくはない」

モノクマ?「そうして残った特殊な残滓……藍染惣右介の “ 想い ” とも呼べるものが、空気中に微粒子レベルで存在しても不思議はないんです」



モノクマ?「それも、ある程度の移動能力を有した状態で」



モノクマ?「それで、空気中に漂っていた “ 想い ” が、自分の価値観にそぐわない例の『プロジェクト』を、打ち砕こうと考えた」

モノクマ?「そのために、『タイムトンネル』を通じて、『願望器に配役された協力者』の中に入り込み、【崩玉】になれる素養に変わってーーー」



モノクマ?「ーーー『協力者』を一時的な【崩玉】に進化させることだってあり得るでしょう」



モノクマ?「……そうして、素養となった “ 想い ” が、【崩玉】の機能を維持するための燃料となりーーー」



モノクマ?「ーーーそれが溶けきるまでの間……【崩玉】としての機能を持たせ、『プロジェクト』を滅茶苦茶にする手助けをしたとしても、あり得ない話ではないのでしょう……」



ユーハバッハ「…………」





モノクマ?「……本当、それだけならまだ納得できるんですよ」



モノクマ?「ですが、それだけではなかった」



ユーハバッハ「…………」



モノクマ?「偶然【滅却師が協力者となって殺され】、偶然【協力者が暴走してしまって】、偶然【陛下が寝ているタイミングだった】ことも加わって、こうなったわけでーーー」



モノクマ?「ーーーあまりにも、不運な偶然が重なったように思えまーーー」



ユーハバッハ「ーーー偶然では無い、必然だ」





モノクマ?「ーーーへっ、?」



ユーハバッハ「……言ったはずだ」



ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】、と」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……事実として、『幸運』によって一命を取りとめた我が部下の命は、敗北者の処断という不運をもって、取り払われた……」

ユーハバッハ「それと同じように、死した未来を書き換え命を繋いだ我が『幸運』は、未来と悪夢の思い違いという不運をもって、取り払われた」



ユーハバッハ「ならば、私が現世で生まれ直した『幸運』も、相応の不運をもって、取り払われることになる」



ユーハバッハ「だからこそ、私は、これ以上に無い程の、無様な死を迎えるに至った……」



モノクマ?「………」





ユーハバッハ「……無様としか言いようが無い」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……現世で生まれ直した、二人目の私はーーー世界から見て、本来あり得ない存在だ」

ユーハバッハ「そう、霊王を奪い尽くした者が、二人同時に存在できるなどーーー世界から見て、本来あり得ぬ事象」

ユーハバッハ「そのような不確か極まりない存在など、地獄に落とされ、三界との繋がりを大きく断ち切られたが最後ーーー」






ユーハバッハ「ーーー三界に住まいし者達の記憶と記録から、徐々に消え失せるだろう」





モノクマ?「……!?」



ユーハバッハ「……心配はいらぬ。これは、あくまでも私個人に関する話だ」

ユーハバッハ「私が生み出したものまでは……すなわちお前の存在までもが消えることは無い」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……二人目の、私の存在が、あらゆる記録から消え失せてしまう」



ユーハバッハ「……あらゆる人々の記憶も、徐々に封じられていきーーーその記憶から私の存在が、忘れ去られていく」



ユーハバッハ「消え失せたも同然になる……」







ユーハバッハ「……それだけの話に過ぎぬのだ」





ユーハバッハ(……そうして起こる、記憶と記録の矛盾は、世界の修正によって改竄されーーー私個人が登場しない、都合の良いものに作り変えられてしまう)


ユーハバッハ(虚圏での戦いは……私を除いた、その場にいた全員で修行をしていたなどのものに作り変わると見て良い)




ユーハバッハ(紛い物に、変わるのだ)




ユーハバッハ(無論、人は時に、世界の法則に打ち勝ち、改竄に抗えることもあるがーーーそうなるとは限らない)


ユーハバッハ(……地獄の囚人は、己が罪を悔い改めることを条件に、世界の法則に打ち勝てる)


ユーハバッハ(そうすれば、真の名と記憶を保ち続けーーーあるいは封じられたそれらが解放され、取り戻せる)


ユーハバッハ(だが、誰もが条件を満たせるわけでは無いのだ……)




モノクマ?「………」




ユーハバッハ(……完全な “ 死 ” を迎える瞬間ならば、必ず解放され、取り戻せるようだがーーー)




ユーハバッハ(ーーーそのような敗者が取り戻したところで、何の意味も無い)




ユーハバッハ(そう、それこそが現実。世界とは、その誰もが勝者にはなれぬ、運命にある)






ユーハバッハ「……ここにいる私は、現在を生きる全ての命から、忘れ去られているかもしれないのだ」



ユーハバッハ「どれだけ嘆こうとも……その事実は変わらぬ」



ユーハバッハ「これを、無様と言わずして何というのか?」



モノクマ?「………」





ユーハバッハ「……数多の不運が降り注いだその上で、次第に忘れ去られるという更なる不運が、降り注ぐことになった」



ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】、それ故に……」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「……地獄に落ちたことで、私はそれをようやく理解した」



ユーハバッハ「全ては偶然などでは無い、起こるべくして起きた必然」



ユーハバッハ「……そういうことだったのだ」








モノクマ?「……【幸運と不運】【希望と絶望】ーーー」






モノクマ?「ーーーなるほど、それこそが、『運命を決定付ける力』を持つことの、代償だったのかもしれませんね」











モノクマ?「……しかし、それはそうと陛下ーーー」






ユーハバッハ「………」














モノクマ?「ーーー『復讐』は、別に良いんですか?」











ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……そこにある『黒衣』ーーー」



黒衣『………』



モノクマ?「ーーーそう、限定的とはいえ、迷彩機能のあるらしい『黒衣』があればーーー」



モノクマ?「ーーー少しだけ監視から逃れ、地獄から抜け出ることも可能ですよね?」



モノクマ?「……まあ、尸魂界には行けないとしてもーーー現世にならそこそこの時間抜け出ることができますよね?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「だったら、奴ら….…あの三人を探し出し、そこに向かうこともできますよね?」



モノクマ?「なぜ、そうしないのですか?」





モノクマ?「……奴らが、終わらせることを選ばなければ、大人しく、目に見える『希望』を受け入れていればーーー」



モノクマ?「ーーーあの【希望】が、奴らを現世に解放することはなかった」



モノクマ?「そう、奴らは、陛下の『希望』をただ受け入れていれば良かった」

モノクマ?「なのに、奴らはそれを疑い、受け入れることはなかった」

モノクマ?「それどころか、終わりを迎えることに……終わりを迎えたその先に、全く別の “ 希望 ” を見出してしまった」

モノクマ?「その結果、陛下は、浦原喜助によって絶望をもたらされることになり、黒崎一護によって地獄行きの憂き目にあうことになった」



モノクマ?「……そうして、『理想の未来』は砕かれ、道は閉ざされた」



モノクマ?「今度こそ、永遠に」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……それに対して、奴らは生き延び、現世に解放されたーーーー」





モノクマ?「……憎くは、ないのですか?」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「奴らに、『復讐』したくはないのですか?」











ユーハバッハ「…………」











ドガアンッ……パリーンッ!!






モノクマ?「!?!」






クシャナーダ「ヴヴ……ルル……フフ……フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」






ズシャアッ!!!





モノクマ?「!?」



ユーハバッハ「……『結界』の効力が切れたようだな」



モノクマ?「あ、あ……!」




ユーハバッハ(……奴が相手では、効力も安定せぬかーーー)




モノクマ?「あ、あれはーーー」



ユーハバッハ「クシャナーダ、だな」








クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」グググッ…






……ドガアンッ!!








ヒュウンッ……



モノクマ?「!?」



……スタッ



ユーハバッハ「……怪我はないか、我が腹心よ」



モノクマ?「あっ、はい……」



ユーハバッハ「逃げるぞ」タタタッ



モノクマ?「えっ、あっ、?」



ユーハバッハ「人は誰であっても、死の恐怖から逃げる資格を持っている」タタタッ



モノクマ?「ち、ちょっと、陛下ーーー」



ユーハバッハ「私がその機会を与えよう」タタタッ



モノクマ?「お、お姫様だっことか、恥ずかしーーー」



クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ダダダッ…!



……ドガアンッ!!





ヒュウンッ……スタッ



ユーハバッハ「………」タタタッ



モノクマ?「あ、ううっ……」






クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ゴキッゴキッ…





タッタッタ……



ユーハバッハ「……先程お前は言ったな」



モノクマ?「……?」



ユーハバッハ「『復讐』したくはないか?……と」



モノクマ?「………」



ユーハバッハ「今ここで、その答えを与えようーーーー」





ユーハバッハ「ーーー『復讐』など、必要無い」



モノクマ?「……えっ、?」



ユーハバッハ「……復讐など、無意味だ」タッタッタ…



モノクマ?「………」



クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ダダダッ…!





タッタッタ……



ユーハバッハ「……我等が動かずとも、此度の我が残滓と、十年前の残滓が混じり合い、奴らの始末に動くだろう」



モノクマ?「いや、ですが……」



ユーハバッハ「……それ以前に、奴らは既に罰を受けている」



モノクマ?「罰……?」



ユーハバッハ「……奴らの有していた『力』と『欠片』ーーー」







ユーハバッハ「ーーーそう、力と欠片が失われるという、罰を、な」





クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ビュウンッ…



……ドゴオオオンッッ!!



ユーハバッハ「………」



……シュタッ……



モノクマ?「………」



タッタッタ……





ユーハバッハ(……『魂の欠片』を通じ、人間に与えし『力』ーーー)




ユーハバッハ(ーーーそれらは、決して永く保つものでは無い)




ユーハバッハ(一定期間を過ぎれば、徐々に老いて劣化しーーーいずれ、力も欠片も、跡形もなく消え失せる)


ユーハバッハ(無論、老いの速さには、個人差があるがーーーそれでも消え失せる運命にある)


ユーハバッハ(そうして失われた力は、容易に取り戻せるものではない。仮に、私のような滅却師に『新たな欠片』を与えられたとしても、一時的にしか取り戻すこと叶わぬだろう)


ユーハバッハ(『魂の欠片』は、通常の人間において、基本的に一度きりの代物。【崩玉】などを介さず、二度も与えられることあればーーー死に近づいてしまう)


ユーハバッハ(……『力』が戻った直後、『力』も『欠片』も引き剥がされ、死ぬ)


ユーハバッハ(自らに死を与えることなく、力を取り戻したくばーーー通常の努力をもって、己を磨き上げるしかない)


ユーハバッハ(そうした無力な人間へと、成り下がることになるのだ)



タッタッタ……



ユーハバッハ(魂魄となって、生身の束縛から解放された場合、『力』を維持できる時間は伸びるがーーー)


ユーハバッハ(ーーー所詮は数日の差でしかない。それは魂魄となった時、その身に『欠片』が残されていようといなかろうと変わらぬこと。必ず老いはやってくる)


ユーハバッハ(老いた果てに、力と欠片は消え去りーーー無力な人間の魂魄へと成り下がる)



タッタッタ……





ユーハバッハ(『不死身の肉体』……もしくは、『霊力ある魂魄』を有しているのであれば、恒久的な維持は可能だがーーー)


ユーハバッハ(ーーー奴ら三人の魂魄と肉体は、どちらも脆弱なものだ)


ユーハバッハ(『力』を維持できず、老いて劣化し、力と欠片は消え失せる)



タッタッタ……



ユーハバッハ(……だからこそ、赤子の私に『力』を与えられた人間達は、永く保たなかったのだ)


ユーハバッハ(老いて力を失った……あるいは失われていくことを受け入れられず、そうした恐怖から狂気に呑まれてしまった)




ユーハバッハ(些細な言葉一つを切掛に、自死を選ぶ程までに)




ユーハバッハ(……奴らも自死を選ぶかどうかは知らぬがーーー少なくとも、現世に解放された瞬間、奴らの老いた力と欠片が消え去ったことは、確認済みだ)


ユーハバッハ(今の奴らは、何も無い、ただの人間に過ぎない)



タッタッタ……





ユーハバッハ(また、霊力が無いということは、死後、瀞霊廷に住めぬことを意味する)


ユーハバッハ(……住めぬが故に、生前も、死後も、いつ “ 死 ” を迎えるかわからぬ恐怖に、怯え続けることになる)



タッタッタ……



ユーハバッハ(……その恐怖は消えぬ)


ユーハバッハ(いかなる『未来』を夢見ようと、いかなる『希望』をもって前に進もうとも)


ユーハバッハ(その『想い』は、いつか “ 死 ” によって、黒く塗り潰されーーー砕かれることになる)




ユーハバッハ(……砕かれし、希望、未来、想いーーー)




ユーハバッハ(ーーーそんなものに、意味など無い)




ユーハバッハ(……利用価値を見出されることはあれ、必要無くなれば、闇に消える)




ユーハバッハ( “ 死 ” は、全てを奪うのだ)




ユーハバッハ(…… “ 死 ” を迎えし時、奴らは気づくだろう。終焉は常に、一(はじ)まりの前からそこにあることに)


ユーハバッハ(どれだけ苦しもうとも、どれだけ祈ろうとも、決して変わることの無い真理)


ユーハバッハ(そう、どれほど世界が革新を遂げようと、 “ 死 ” ある限り、決して真理が変わることは無い)



タッタッタ……





ユーハバッハ「……全ては、奴らのお陰だ」






モノクマ?「陛下……」






ユーハバッハ「哀れなり」






ユーハバッハ「奴らのお陰で、永き時間(とき)を得られぬ数多の命は、限られた可能性の中で、死の恐怖に怯え続けることになるのだ」






ユーハバッハ「永遠に」











クシャナーダ「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

















グシャァッ!!!











ー尸魂界・志波家の屋敷の修練場ー



……ガチャッ



アンジー「………」



キーボ「……来て頂いて、ありがとうございます。アンジーさん」



アンジー「……アンジーは、ヒマだからねー」



アンジー「おやすみまでの時間、何もやることないから……」





キーボ「………」



アンジー「……それよりも、アンジーをここに呼んだ理由は何なのかな?」



キーボ「………」



アンジー「それを、教えてほしいかな……」





キーボ「……それは、アンジーさんに伝えたいことがあるからです」



アンジー「……?」



キーボ「ただ、それを言う前に、聞かせて欲しいことがあります」





キーボ「ーーーアンジーさんは、生まれ変わりがこわいですか?」



アンジー「………」



キーボ「生まれ変わりという、自己の喪失がこわいですか?」



キーボ「 “ 死 ” がこわいですか?」



アンジー「………」



キーボ「……それに、答えては、頂けませんか?」





アンジー「……キーボは、何を、言ってるのかなー?」



キーボ「………」



アンジー「死ぬのが、こわくないかー、だってー?」



アンジー「本当、何を言ってるのかなー?」



キーボ「………」



アンジー「……死ぬのが、こわくない、命、なんてーーー」









アンジー「ーーーいない、と、思うよ……?」





キーボ「……ありがとうございます。答えて頂いて」



アンジー「………」



キーボ「ボクも同じです」



アンジー「……?」



キーボ「ボクも、 “ 死 ” は、こわいです」





アンジー「……何を言ってるのかな?」

キーボ「………」

アンジー「キーボは瀞霊廷に住めるよね?」

キーボ「……はい」

アンジー「……キーボはロボットだよね?」

キーボ「……その通りです」



アンジー「だったら、キーボは、『死なない』ーーー」



キーボ「ーーーそれは違います」





キーボ「……確かに、ボクは瀞霊廷に住めますし、紛れもないロボットです。生き物としての寿命だってありません」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それでも、死の恐怖はわかります」

キーボ「寿命がなくても、 “ 死 ” を迎えずに済むとは限りませんから」



アンジー「………」



キーボ「……ボクも、 “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」



キーボ「敵の手によって、強制的に」





アンジー「………」



キーボ「……瀞霊廷は、この世界を管理する者達の本拠地です。それだけに、今の世界を良しとしない者から、狙われる理由がある」

キーボ「……どんなに盤石なセキュリティを誇っていようと、外敵はそれを上回る方法で侵入し、攻撃してくるかもしれませんしーーー」

キーボ「ーーーあるいは、一部の死神が、藍染一派のように裏切り、敵側につく可能性もゼロではない……」

キーボ「これからずっと、決してあり得ないとは、誰にも言えないはずです……」



アンジー「………」



キーボ「それらを考慮すれば、瀞霊廷にいるからこそ、絶望的な “ 死 ” を迎えてしまうことだってーーーまったくあり得ない話ではないと思います」



キーボ「……事実として、瀞霊廷の死者はたくさんいます」



キーボ「特に、十年前の戦争においてーーーー」





アンジー「……!」



キーボ「ーーーいずれ、ボクも敵に襲われて、死ぬかもしれません」

キーボ「とても無念で……絶望的な “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」

キーボ「……ボクは、この通り、ロボットですからね。そして、世の中は、ロボットを傷つけることに罪悪感を持てる人ばかりではない」



キーボ「……そうした世の流れのままに、身も心も傷つけられーーー」



キーボ「ーーーどんなに惨たらしい “ 死 ” を迎えることになるか……わかったものではないんです」



アンジー「………」





アンジー「……それで、キーボが伝えたいことって、結局、なんなのかなー?」

アンジー「……こわいのはみんな同じなんだから、ガマンしろってことー?」



キーボ「……そうではありません」

キーボ「 “ 死 ” に、怯える資格は、誰にだってあります」

キーボ「それを奪う権利など、誰にもありはしない」



アンジー「………」



キーボ「ただ、ボクは、誰にでも “ 死 ” の可能性があると理解しーーーその上で、やりたいことができたのです」





アンジー「……やりたいこと?」



キーボ「ええ、そうです」



キーボ「そして、それこそが、最初にアンジーさんにお伝えしようとしたことでもあります」



アンジー「……?」





キーボ「……アンジーさん、どうかボクとーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーボクと、一緒に、絵を描いては、頂けませんか?」





アンジー「……絵?」



キーボ「そう、絵です」



キーボ「テーマは、アンジーさんの望む形で大丈夫です」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさん……」



キーボ「どうか、ボクと、一緒に絵を描いては頂けませんか?」





アンジー「……どうして、かな?」



キーボ「………」



アンジー「……どうして、そうしたいと思ったのかな?」





キーボ「……それはーーー」






アンジー「………」






キーボ「ーーー残したいから、です」





アンジー「……何を?」



キーボ「……決まっています」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんとボクの想いをーーー」







キーボ「ーーー価値ある、『想い』を、です」





アンジー「……価値ある、『想い』?」



キーボ「はい、ボクらの『想い』を、残すんです」

アンジー「………」



キーボ「……何かに真剣に打ち込めば、そこに想いが募られていく」

キーボ「その想いに、価値があることを、実感できる」



キーボ「……想いの価値を、信じられる」





キーボ「信じることができればーーー込められた想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」

キーボ「そうして、『想い』を、自分の意志で残すことができる」

キーボ「赤松さんが、『想い』を残した時のように……」



アンジー「………」



キーボ「……それは、とても素晴らしいことだと思います」

キーボ「いずれ、終わりを迎えるとしてもーーー生きていて良かったと、心から喜ぶことのできることだと思います」

キーボ「その全てが、意味のある……価値あることだと思います」



キーボ「そのために、想いを込めて、真剣に描きたい絵を描くんです」





キーボ「……お願いします、アンジーさんーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどうか、ボクと一緒にーーー」







キーボ「ーーー絵を描いては、頂けませんか?」





アンジー「……あー、悪いけど、アンジー、実はいま、絵の調子が悪くてねー?」



キーボ「………」



アンジー「だからーーー」



キーボ「ーーーそれでも、です」





アンジー「……!?」



キーボ「……確かに、絵のことを想えば、上手に描けるに、越したことはないでしょう」



アンジー「………」



キーボ「しかし、上手に描けなかったからと言って、価値がなくなるんですか?」





アンジー(ああー……そういう話……)




キーボ「………」




アンジー(……話しちゃったんだね、アンジーのこと……)






アンジー(是清めーーー)






キーボ「ーーーたとえば!」





アンジー「!」



キーボ「たとえば! 子供は家族を想い、その似顔絵を描くことだってあります」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんも、そういう事例は知っているのではありませんか?」





アンジー「……確かに、知らないわけじゃないけどーーー」



キーボ「!」



アンジー「ーーーそれが、何?」





キーボ「……お答え頂き、ありがとうございます」

アンジー「………」

キーボ「……子供が、家族のために、描いた絵ーーー」

キーボ「ーーーその出来栄えは、プロの視点から見れば、未熟と言わざるを得ないのかもしれない……」

アンジー「………」

キーボ「しかし、それで、絵の価値は、失われるのでしょうか?」

キーボ「もし、その絵を描き終わる前に、【家族と離れ離れになってしまったら】【二度と会えなくなってしまったら】ーーー」



キーボ「ーーーその似顔絵の価値は、失われるのでしょうか?」





キーボ「……そんなことはないはずです」

キーボ「その絵に、想いが込められているのであれば、込めた人にとっては、紛れもなく価値ある絵なんです」



アンジー「………」



キーボ「……プロの視点から見た出来がどうこうなどーーー関係がない」

キーボ「誰一人として、その絵の価値を、否定することなどできやしない」

キーボ「故に、想いを込めて、絵を描くことーーー」



キーボ「ーーーそれは、その出来に関係なく、紛れもなく価値あること」



キーボ「価値あると信じられるが故に、想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」



キーボ「そうして、『想い』を残すことができる」



キーボ「ボクは、そう考えています」



アンジー「………」





キーボ「……アンジーさんはーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどう、思いますか?」





アンジー「………」






アンジー「…………」









アンジー「………………」





アンジー「……ごめんね、キーボ……」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーには、よく、わかんないや……」





キーボ「……そうですか」



アンジー「……ごめんね、キーボ?」



アンジー「アンジーは、そのーーー」



アンジー「ーーーなんて言ったら良いか、わからなくて、上手く答えられない……」



キーボ「………」



アンジー「……ごめんね?」





キーボ「……大丈夫ですよ、アンジーさん」



キーボ「アンジーさんなら、きっとわかるはずです」



アンジー「………」



キーボ「……そう、雲さえーーー」



キーボ「ーーー雲さえ、取り払うことができればーーー」



キーボ「ーーーきっとーーーー」





アンジー「……雲、?」



キーボ「ーーーええ、雲です」



アンジー「………」



キーボ「……ここで言う雲とは、 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” ーーー」







キーボ「ーーーそうした、考え方のことです」





キーボ「ですが、そうした考え方……雲を取り払うことさえできれば、そこから星が見えてきます」



キーボ「人という名の星が」



アンジー「………」



キーボ「ああ、ここで言う星とは、空にある星という意味で、決して星クン個人のことではーーー」



アンジー「……そんなの、言わなくてもわかってるから」





キーボ「ーーーすみません」シュン…



アンジー「……それよりも、なんだけどーーー」



キーボ「?」



アンジー「ーーーその続きーーー」



アンジー「ーーー聞かせて、くれる?」





キーボ「!」



アンジー「……キーボの言う、その話が、どんな感じなのかーーー」







アンジー「ーーーちょっとだけ、気になるから……」





キーボ「……はい、わかりました!」



アンジー「………」



キーボ「さっそく、続きを、話させて頂きます!」





キーボ「……続きについてですがーーー」



キーボ「ーーー人は、きっと誰もが、星のような存在なんだと、思います」



キーボ「だからこそ、目の前にいる人が、星のように眩しく見えることもある」



アンジー「………」



キーボ「その眩しさは、その人の想いが、目に見える輝きとして現れたものでありーーー」



キーボ「ーーーその輝きに、人は価値を付けることもある」



アンジー「………」



キーボ「しかし、人の全てが、星のように眩しく見えるわけではない……」

キーボ「その中には、自分の眩しさを、こちらまで届かせることが叶わないものも、存在するのではないでしょうか?」

キーボ「もしくは、かつては眩しく光っていたもののーーーブラックホールか何かに呑まれ、砕け散り……消えてしまったとは考えられないでしょうか?」





キーボ「……それらを人は、姿の無い闇としか認識できませんがーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーー逆に言えば、闇として認識することはできるわけです」

キーボ「ならば、その闇に込められた想いの価値に、気づくことだってできる」

キーボ「価値ある『想い』なのだと、信じることもできる」



キーボ「ボクは、そのように思っています」



アンジー「………」





キーボ「そう、人は、ものごとの出来に関わらず……そこに込められた想いの価値に、気づくことができる」

キーボ「変わらぬ価値があると、価値ある『想い』が残されていると、信じることもできる」

キーボ「それは、雲を取り払いさえすれば、できること」



キーボ「 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” ーーー」



キーボ「ーーーそうした考え方……雲を取り払い、闇と向き合えば、誰にだって、できることなんですよ」





アンジー「……キーボも、なんだか、ロマンチックなこと言うんだねー?」

アンジー「本当に、キーボなのか、疑っちゃうよー」



キーボ「……確かに、ボクらしくない言葉かもしれません」

キーボ「ですが、それでも過去と向き合い、思考を重ねーーー」



キーボ「ーーー心のままに、想いを募らせ、選択した言葉であることに変わりはない」



キーボ「故に、ボクは、その価値を、信じている」



キーボ「……この言葉もまた、確かな『想い』なのだと、信じているんです」



アンジー「………」





キーボ「……改めて言わせて貰いますよ、アンジーさん」



アンジー「………」



キーボ「今のアンジーさんは、 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” という考え方……雲に覆われている」



キーボ「……そして、上手くいかなかったもの、すなわち闇の価値を見失っているーーー」



キーボ「ーーーただ、それだけなんです」





アンジー「……何それ」



キーボ「………」



アンジー「闇の、価値って、何?」



キーボ「………」



アンジー「闇って、光すら届けられないものでしょ?」





アンジー「そう、闇はーーー」



アンジー「ーーー上手くいかないもの」



キーボ「………」



アンジー「くらくて、こわいもの」



アンジー「それに、誰が価値を付けてくれるの?」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーはねー? こう思ったりもするんだー」



アンジー「闇に価値なんてないーーー」



キーボ「ーーーそれは違います」





キーボ「闇に価値がないなんて、そんなはずはありません」



アンジー「………」



キーボ「……ボクは、闇の価値を知っています」



キーボ「闇の価値を知る存在を、知っているんです」





アンジー「……どういうこと?」



キーボ「……まずは、闇の価値を知る者、その肩書きを挙げましょうか、アンジーさん……」



アンジー「肩書き……?」



キーボ「そう、闇の価値を知る、肩書き、それはーーー」









キーボ「ーーー宇宙飛行士と花火師です」





アンジー「宇宙飛行士と……花火師?」



キーボ「ーーーまずは、宇宙飛行士についてから説明しましょう」



アンジー「………」



キーボ「宇宙飛行士とは、決して、現在見える夜空の光と輝き……その星だけを求める存在ではありません」

キーボ「夜空の闇の先にある、まだ見ぬ星の輝き……もしくはかつてあった星の輝きーーー」



キーボ「ーーーすなわち、宇宙の闇に込められた想いを探求し、その価値を見出す存在でもあるのです」



アンジー「………」



キーボ「故に、宇宙飛行士は、闇に価値があることを知っている」

キーボ「だからこそ、 “ 上手くやれない人 ” を想い、信じることができる」

キーボ「その『想い』をもって、 “ 上手くやれない人 ” の想いに手を届かせることができる」

キーボ「その人に、自分を信じる気持ちを与え、輝かせることができる」



キーボ「……そうして、その人から湧き上がった『想い』を、他の人にも伝えーーー両者の架け橋を築くことだってできるのだと」



キーボ「少なくとも、ボクの知る宇宙飛行士は、そういう存在でした」



アンジー「………」





キーボ「花火師も同じです」

キーボ「そう、花火師もまた、闇に価値あることを知っている存在なんです」

アンジー「……どうして?」

キーボ「花火師とは、決して地上に光を降り注がせるだけの存在ではないからです」

キーボ「花火師とは、星々が想いの果てに、闇に消えてしまったしてもーーーその闇の価値を見出す存在なんですよ」

アンジー「……?」

キーボ「闇の価値を見出すからこそ、闇を別の形で輝かせようと、己が意志をもって、光の波動を作り出す」

アンジー「………??」

キーボ「花火の光は、打ち上げるものにしろ、地上で持つものにしろ、夜空の闇があることで、輝きを生みます」

キーボ「それは、【花火の光によって】【夜空の闇が輝く】ということに他なりません」





アンジー「闇が、輝く……?」



キーボ「そうです。闇が輝くんです」



アンジー「………」



キーボ「断っておきますが、これは、 “ 闇の暗さで光が引き立つ ” とか……そういう意味で言っているのではありません」



キーボ「…… “ 闇だって光のように輝くことができる ” ーーー」



キーボ「ーーーそういった意味で、ボクは言っているんです」





アンジー「……?」



キーボ「……人の抱える心の闇が、花火の光で照らされーーー元気づけられることもある」

キーボ「花火を見た後に、勇気あふれる自分へと、変われることもある」



キーボ「【花火の光によって】【夜空の闇が輝く】から……」



アンジー「……!」



キーボ「……そうして、夜空の闇が、輝ける価値ある存在だと証明されたからこそ、同一性を持つ自分の心の闇もまた、同様の存在だと想えるようになる」



キーボ「……自分を信じることができる」



キーボ「そう、自分がどんなに闇を抱えていたとしてもーーーその想いを受け入れた上で、どんな自分になりたいか、前向きに想い描くことができる」



キーボ「……その『想い』をもって、輝かしい未来を、想い描くこともできる」



キーボ「そうすれば、そこに繋がるかもしれない道を、歩むこともできますしーーー」



キーボ「ーーーそうしている自分もまた、輝いた存在であると、想えるようになる」



キーボ「違いますか?」



アンジー「………」





キーボ「……光は輝くものであり、闇もまた輝くもの」



キーボ「そう、光と闇、どちらも価値は同じなんです」



キーボ「……事実として、生きているか、死んでいるかで、人の価値が変わったりはしない」

キーボ「ならば、光だろうと、闇だろうと、込められた想いの価値に、違いなどない」



キーボ「その全てに意味が……価値があるのだと」



キーボ「信じて、 価値ある『想い』として、世に残すこともできるのだと」



キーボ「花火師は、それを証明する存在でもあるんですよ」



アンジー「………」





キーボ「……それらは、宇宙飛行士と花火師に限ったことではありません」



キーボ「誰もが闇に価値を見出そうとしている」



アンジー「………」



キーボ「生前のボクと、現世に残ったみんなだって同じです」

キーボ「……ボクらは、その側で闇になってしまった人々とその想いの価値を知っています」



アンジー「……っ、」



キーボ「そして、その闇を形作るため、血と灰を残し、風に吹かれーーー」



キーボ「ーーーそのまま、風となった人々と想いに、価値があることを知っています」



キーボ「……その人を間近で見ている見ていないに関わらず、その全てに価値があるのだと、知っているのです」



アンジー「………」



キーボ「……繰り返されたその果てに、ボクらは、死んでいった全ての人達とその想いに価値を見出し、信じることができた」



キーボ「その『想い』のため、ボクらは、命をかけたんです」





キーボ「……この死後の世界にも、生前の自分達が迎えた終焉に……闇に価値を見出そうとする魂魄がいる」

キーボ「事実として、ここにいない百田クン達だって、かつて自分達の迎えた終焉に……闇に価値を見出そうとしています」



アンジー「………」



キーボ「だからこそ、百田クンは、宇宙があるかどうかもわからない世界……【宇宙に行く夢を叶えられないかもしれない世界で】【それでも夢を想い描いて】、実現することに決めた」

キーボ「だからこそ、入間さんは、百田クンを 【信じて】【支え合いながら】【共に生きて】、研究を行うことに決めた」

キーボ「だからこそ、茶柱さんと東条さんとゴン太クンは、【みんなで】【協力しあった上で】【人の心を恐怖から護ろうと】、死神を目指した」

キーボ「だからこそ、赤松さんは、【コロシアイを終わらせるために犯した罪で】【一人になってしまう道】【それを選ぼうとした】王馬クンを引き止めて、説得した」

キーボ「だからこそ、王馬クンは、赤松さんに応え、【みんなで】【人を本当の意味で笑わせる】道を選んだ」

キーボ「だからこそ、天海クンと星クンは、 【人を悲しませる結果】【それが生み出されないよう】、赤松さんと王馬クンを支えようとしている」



キーボ「……だからこそ、真宮寺クンは、【人の心を】【大切にできる人になる】ことを決めた」



アンジー「………」





キーボ「……アンジーさんだって、同じです」

キーボ「アンジーさんもまた、過去の闇に価値を見出そうとしている」



アンジー「………」



キーボ「だからこそ、アンジーさんは、【みんなを】【誰もが憧れる世界へと】、送り出したーーー」







キーボ「ーーーそうでしょう?」



アンジー「………」





キーボ「……そうして、アンジーさんを含めた誰もが、闇の価値を見出そうとしている」

キーボ「過去の自分達の迎えた闇に……価値を見出そうとしているんです」



キーボ「それは、闇が価値を見出せるだけの存在、すなわち闇に価値があるという証明に他なりません」



キーボ「自分達の過去は、決して、絶望を形作るだけの無意味なものではなかったのだと」

キーボ「そうした過去の経験を糧に、自分を輝いた存在へと昇華させることもできる……意味あるものだったのだと」

キーボ「過去に想ったことを通じ、輝かしい未来を想い描くこともできる……価値あるものだったのだと」

キーボ「過去の価値を信じて、そうしている現在の自分を信じて、生きていけるのだと」



キーボ「アンジーさん達の今の生き様が、それを証明しているんです」



アンジー「………」





キーボ「……もちろん、その結果、どうなるかまではわからない」

キーボ「どこまで上手くやれるか? それはその時の未来になってみないと、わからないことなのでしょう」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それでも、価値を見出して生きていける」

キーボ「どんな過去であろうとーーーそれでも意味あるものだったのだと」



キーボ「過去を大切にできる」



キーボ「そうやって、過去を大切にするから、そこから生まれた現在の自分を大切にできる」



キーボ「それは、闇に価値があると理解すればできること」

キーボ「……その闇を形作るため、血と灰を残し、風と化した人の想いーーー」



キーボ「ーーーそれに、意味を持たせることも可能だと、理解すればできること」



キーボ「それほどの、価値ある『想い』だったと、信じ続けていればできること」





キーボ「……風となった想いにも価値があると信じ、どうすればそれに報いることができるかーーー探求し続ける」



キーボ「そうして、『想い』を背負い、大切にしていればーーー」



キーボ「ーーー雲を取り払うことだってできる」



アンジー「………」



キーボ「……もちろん、すぐに取り払えるとは限らない。時間をかけなければ、信じきれない場合もあるでしょう」



キーボ「ですが、それでも、『想い』の風で雲を取り払い……上手くいかなかったという闇を見つめられるのならーーー」



キーボ「ーーー闇と向き合えるのなら、誰にだって、闇の価値を見出せるんです」



アンジー「………」





キーボ「絵に関しても同じです」

キーボ「……たとえ、上手く描けなかったとしてもーーー」



キーボ「ーーー想いの込められた絵であることに変わりはない」



キーボ「……人によっては、ただの絵でしかないのかもしれませんがーーーそれでも、想いを込めることはできる」

キーボ「想いを込めて描き、想いを込めて鑑賞し、想いを込めて思い出すことができる」

キーボ「……込められた想いの価値を信じ、それを想像することだってできる」



キーボ「そうして、想いを募らせていけばーーー込められた想いが、より確かな『想い』に変わり、深く絵の中に込められていく」



アンジー「………」





キーボ「……絵は、想いを込めた人にとって、絶対に意味のある……価値あるものなんです」

キーボ「それほどまでに想いを募らせたこと……言い換えれば、それほどまでに愛せるだけの存在がいること」



キーボ「その存在に報いるために生きたいと想えること」



キーボ「……そのためにも、その存在を、心の中に残し続けようと想える」

キーボ「そんな自分を誇りに想い、信じて心の支えとすればーーー輝かしい未来を想い描く心の余裕だって生まれる」

キーボ「そう、心の支えがあれば、輝かしい未来への道を歩むーーー活力だって生まれる……」



キーボ「……想いに価値があるから、できることなんです」



キーボ「ならば、上手く描けようとそうでなかろうと……想いを込めたのであれば、その人にとって変わらない価値がある」



キーボ「違いますか、アンジーさん?」





アンジー「それは…そうだけど…」



キーボ「……そうなんですよ」



アンジー「………」



キーボ「想いを込めた人、その人だけは、絵に……作品に価値があることをわかっている」



キーボ「それで良いんです」





キーボ「想いを込めた人とって、価値があるから、作品を大切にできる」

キーボ「作品を通して、込めた想い……すなわち “ 自分 ” も大切にできる」

キーボ「だからこそ、人は、自分とその作品を、より輝かせることはできないか、より大切にする方法がないか模索し、試行錯誤を繰り返す」



キーボ「そうして、自分と作品と向き合い、対話を重ねたりもする」



キーボ「それらを壊さないためにはどうするべきか? それらを想い描く上で、やって良いことと悪いことは何か?」

キーボ「……自分と作品の中に、どのように想いを募らせ、どのような心を形作るべきなのか?」



キーボ「それらを見極め続ける」



キーボ「……その結果として、自分と作品を描き続ける上での【こだわり】【美学】【倫理】ーーー」



キーボ「ーーー【信念】が生まれ、込められた想いは、より確かな『想い』に変わる」



キーボ「それら全てが、心となり、自分と作品の中に込められていく……」



アンジー「………」





キーボ「……その結果が、姿無き闇だとしても」



キーボ「光だとしても」

キーボ「生だとしても」

キーボ「死だとしても」



キーボ「ーーー価値に、何ら変わりはない」



キーボ「価値の感じやすさに違いはあるかもしませんがーーーそれでも根幹となる価値が消えていくことは、決してない」

キーボ「そう、込められた想い……その全てに価値があることは、永遠に変わることのない事実」



キーボ「誰にも、その価値を否定する権利なんてありはしない」

キーボ「誰にも、その価値を消すことはできないんです」





キーボ「ーーーだから、ボクは、アンジーさんと、絵を描きたくて仕方がありません」



アンジー「………」



キーボ「その絵に想いを込めたい」

キーボ「決して変わらない、価値ある『想い』であると、信じて」

キーボ「アンジーさんと一緒に込めたい」



キーボ「……そうやって、『想い』を残したくて、仕方がないんです」



アンジー「……キーボ」





キーボ「……いつか、お別れをすることになったとしても、それでも一緒に生きることができて良かったと」



キーボ「アンジーさんとボクーーー双方の『想い』を背負い、これからも歩み続けようと……」



アンジー「………」



キーボ「……心から、そう想えるように」





アンジー「………」






キーボ「………」





アンジー「……『想い』を残す、かー」

アンジー「それは、確かに、価値あることかもしれないね?」



キーボ「!」



アンジー「……想いを込めて絵を描くーーー」



アンジー「ーーーアンジーの知り合いの子供も、同じようなことはしているからね」



キーボ「……!」



アンジー「……まあ、アンジーとやってるわけじゃないけどねー」





アンジー「……あの子が、やっていること」

アンジー「それに、何の価値もないなんて、アンジーには考えられないなー」



キーボ「!」



アンジー「……だから、もし、同じようなことができるならーーーいつか生まれ変わるとしても、落ち着いていられるかもね」



アンジー「……生まれ変わるまで、ずっと、ずっと」



アンジー「淋しくなんて、なくなるかもね」



キーボ「アンジーさんーーー」







アンジー「ーーー解斗も同じこと言ってたよ」





キーボ「ーーー!?」



アンジー「……実はねー? キーボがここで話してくれたことーーー」

アンジー「ーーーそれは、前に解斗が、アンジーに話してくれたことと、同じ話だったんだー」



キーボ「なっーーー!!」



アンジー「あー、もちろん、何もかも一緒じゃないよ?」

アンジー「……花火師のところとかは少し違う内容だったけどーーー」



アンジー「ーーーそれでも、伝えたいことは、概ね同じだったはず、って話だよー」



キーボ「………」





アンジー「…… “ それならどうして? ” って感じだねー?」



キーボ「………」



アンジー「……だったら教えてあげる、その理由」





キーボ「……理由?」



アンジー「……アンジーはねー? 信じられないんだよー」



キーボ「……信じられない?」



アンジー「そう、信じられない」



アンジー「他ならない、自分を」





キーボ「……?」



アンジー「アンジーはねー? 自分を信じられないんだー」

アンジー「だから、自分の込める想いを信じられない」



アンジー「その想い自体が……意味の無い、価値の無いものだったんじゃないか、って」



アンジー「どうしても、そう、思っちゃうの」





キーボ「……そんなーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどうして、そんな風にーーーー」





アンジー「……どうして、そんな風に、思っちゃうのか?」



キーボ「………」



アンジー「その答えは、とっても、簡単」



アンジー「だって、アンジーはーーー」









アンジー「ーーー人じゃないからね」





キーボ「……?」



アンジー「………」



キーボ「………??」







キーボ「???」





アンジー「……言っておくけど、これはアンジーがクインシーだからだとかーーーそういう話じゃないからねー?」



キーボ「………」



アンジー「他ならない、アンジーが、物だから、言っているんだよー」



キーボ「物、ってーーー」




キーボ(……まさかーーー)




アンジー「ーーーキーボだって本当は知ってるんじゃないの?」





キーボ「……えっ、!?」

アンジー「キーボは、是清が地獄行きの話をしても、素直に受け入れてたよね?」

キーボ「……!!」

アンジー「アンジーと是清が同じ世界にいることについて、何も追求しなかったよね?」

キーボ「あっ…それは…」

アンジー「それだけじゃないよ? アンジーたちは、聞いたんだ」

キーボ「……聞いた……?」

アンジー「うん、アンジーたち以外の、この死後の世界で暮らしている人達から聞いちゃったんだ」



アンジー「現世について」





アンジー「……現世、それは、アンジーたちが知ってる外の世界とかなーり違う」



キーボ「………っっ、!!」



アンジー「それだけじゃないよ? それだけなら、モノクマがアンジーたちの頭に何かやっただけかもしれない」

アンジー「悪ふざけで、ちょっとだけ記憶をいじって、おかしくしただけなのかもしれない」

アンジー「だから、アンジーたちの記憶とは少し違うけどーーー本当は、同じようなものがあったのかもしれない」



アンジー「……そう、思えたかもしれない」





アンジー「……だけど、そんな軽い話じゃなかった」



キーボ「………」



アンジー「だって、現世にはーーー」









アンジー「ーーー『超高校級』なんて、無かったんだから」











キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」











アンジー「ーーーいや、あることにはあったよ?」



アンジー「でもね? “ それ ” は、アンジーたちが知っているのとは、ぜんぜん違ってた」



キーボ「………」



アンジー「……よく、『超高校級』は、世界が違うとか言われるけどーーー」



アンジー「ーーー現世の『超高校級』は、本当に世界の違うものだったんだよ」





アンジー「……現実じゃない世界……」



キーボ「………」



アンジー「……その世界には、モノクマがいて、コロシアイもあって、学級裁判もあった」



アンジー「ーーーそれって、そういうことなんでしょ?」



キーボ「っ、」



アンジー「アンジーたちは、そういう存在なんだよね?」





アンジー「ーーーだったら、アンジーは、自分の、何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「……現実に無いものを、信じる?」

アンジー「そんなの、何も信じてなかったのと同じ……」

アンジー「……信じられるわけ、ないよ」



キーボ「アンジーさん……」



アンジー「……キーボだって、アンジーの神さまを信じられないんでしょ?」

キーボ「!?」

アンジー「だから、斬魄刀の話の時、主なんていないって言ったんだよね?」

キーボ「……っ、それはーーー」



アンジー「ーーーそれが、普通だよ」



アンジー「アンジーだって、もうわけがわからないんだから」



キーボ「………!!」





アンジー「……この死後の世界はねー? アンジーが、神さまから聞いていたような場所じゃなかったんだよー」

アンジー「しかも、この世界に来てから、神さまの声が、ちゃんと……聞こえなくなった……」



キーボ「………」



アンジー「……神さまの力だって、無くなった」

アンジー「あの学園にいた時みたいに、上手に作品を作れなくなった」

アンジー「上手に、絵を描けなくなったんだよ……」



キーボ「………」





アンジー「……アンジーは、何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「……こんな自分の何を、どう信じれば良いのかな?」



アンジー「こんな自分の、どんな想いに、どんな意味があると信じれば良いのかな?」



アンジー「どんな価値があると信じれば良いのかな?」





アンジー「……アンジーは、本当にアンジーなのかな?」

キーボ「っ、」

アンジー「……魂魄があるわけだし、 “ 芯 ” になった人はいるかもしれない……」



アンジー「……だけどそれは、このアンジーと同じなのかな?」



キーボ「……っっ、!!」



アンジー「……本当は違うかもよ?」

アンジー「……アンジーのこの名前も、カラダも、全部、見せかけだけの、ハリボテだとしたら……?」



キーボ「……!!!」



アンジー「……アンジーの根っこは、全く違う、別のナニカなのかもしれない」



アンジー「この心ですら、そうなんだよ?」











キーボ「…………」











アンジー「……だったら、キーボのいう想いだって、本当は、違うかもしれないよ?」

キーボ「!」

アンジー「こんなおかしなことがあり得るならーーーこうして、キーボと話しているのだって、それは今から始まったものなのかもしれない」

キーボ「………!!」

アンジー「それより前の話なんて全部、最初から無かったのかもしれない」



アンジー「アンジーは、空っぽなんだよ」



キーボ「………」



アンジー「そんな想いに……どんな意味があるの?」

アンジー「どんな価値があるの?」

アンジー「そんな想いで絵を描いて……何になるの?」



キーボ「………」



アンジー「……そんなの、虚しいだけだよ」





アンジー「ーーーもしも、神さまの声が! ちゃんと聞こえていたのなら!」



アンジー「神さまの力があったのなら! 『すごい力』があったのなら!」



アンジー「アンジーだけの、『すごいもの』を持てたのなら! アンジーが大好きになれる『希望』を持てたのなら!」



アンジー「……アンジーだけの! 価値ある『物』を! 持つことができたのなら!」



アンジー「解斗たちみたいに、自分を、『人』と想えたかもしれない!」





アンジー「……そうだよ! それさえできれば! 物でも! 人でなしでもーーー」



アンジー「ーーー人…の、よう、に……!」



キーボ「………」



アンジー「……っ、だけど! いまのアンジーは違う!」



アンジー「解斗たちや是清みたいな、『すごい力』は無い!」

アンジー「蘭太郎だって、『すごいもの』がある! アンジーには無い、時間と可能性が、いっぱいある!」



アンジー「ーーーキーボは、もっとある!」



キーボ「………」



アンジー「空鶴たちとも、空吾たちとも、ユウイチたちとも違う!」



アンジー「アンジーは、みんなとは違う!」

アンジー「アンジーは、何も無いんだよ!!」



アンジー「アンジーは、それが欲しかった!!!」





アンジー「ーーーだから、アンジーは! 是清を、アンジーだけの……!」



キーボ「………」



アンジー「……だけど! 是清だけじゃ、ダメだった!! 上手く、いかなかった!!」



アンジー「っ、だから、なのにっ……それなのに……!」ジワッ…





キーボ「アンジーさん……」



アンジー「ーーーもう一度言うよ、キーボ?」

アンジー「これで、アンジーは、自分の何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「キーボは、どんな想いにも意味がある、価値があるって言うけど、アンジーはそれを信じられないんだよ」



アンジー「……アンジーには、『希望』も『未来』もーーー何にも、無い」



アンジー「……自分を、その想いを、信じられない……!」





アンジー「……もし、キーボがアンジーと同じで、何も無かったら、信じられるの?」



アンジー「……できるわけないよ!」



アンジー「解斗だって、それに答えることができなかったんだから!」



キーボ「………」



アンジー「アンジーは、何も信じられないまま生きて!何も信じられないまま終わるんだよ!」

アンジー「ねえ、これで、どうやって、アンジーの『想い』を、残せるって言うの!?」







アンジー「答えてよ、キーボ!!!」





キーボ(……そう、かーーー)




アンジー「………」




キーボ(ーーーそういうこと、だったんですねーーーー)





キーボ(ーーーボクは、二つ、思い違いをしていた)




アンジー「………」




キーボ(……一つ目の思い違い。それは、民衆に記憶が残されていたということ)




キーボ(……少なくとも、究極のリアルのーーーその土台となるものの記憶は、封じられることなく、残されていた……)





キーボ(……そして、二つ目の思い違い。それはアンジーさんが、これほどまでに、物に囚われていたということ)




アンジー「………」




キーボ(……だから、百田クンは答えられなくてーーー)




キーボ(ーーーアンジーさんは、他の誰でもなくーーー)




キーボ(ーーーボクをーーーー)





アンジー「ーーーほら、キーボも答えられない……」






キーボ「………」






アンジー「……やっぱり、何も、信じられないーーーー」











キーボ「ーーーそれは、違います!」











アンジー「!?」






キーボ「……アンジーさんが、何も信じられないまま終わる?」






キーボ「そんなこと、絶対にありません!」





アンジー「……っ、キーボに! アンジーの、何がわかるの?!」



キーボ「………」



アンジー「わかるはずないよ!」



アンジー「……アンジーは、間違えた!」

アンジー「それが正しい生き方だと信じて! 人として……やっちゃいけないことをやったし、やろうとした!」



アンジー「だから罰が当たって……死に落とされてーーー」







アンジー「ーーーまっくらに、塗り潰されたんだ!」



キーボ「………」





アンジー「……こんなにも、砕かれた……!」



アンジー「……アンジーの神さまも、その力も、全部、闇に……!」



アンジー「……何もかもを、奪われた……!」



キーボ「………」



アンジー「……転子たちには、才能が、立場が、残されたっていうのに! アンジーには、何にも無い!」



アンジー「アンジー以外のみんなが、当たり前に持っているものすら無い!」






アンジー「……自分が、物にしか、見えないんだよ……!」






キーボ「アンジーさん……」





アンジー「……キーボは、アンジーとは違う」

アンジー「そう、キーボは、転子たちと同じで、いろんなものを持ってるから」



キーボ「……」



アンジー「……瀞霊廷に住める立場がある。才能がある」

アンジー「……『すごいもの』がある。『すごい力』がある」



アンジー「……『未来』がある! 『希望』はそこに、繋がっている!!」



アンジー「……そんなキーボに、アンジーが、いまどんな気持ちかなんて、わかるはずない!!!」





キーボ「…………アンジーさんの全てがわかるとは言いませんよ」

キーボ「ボクとアンジーさんに、異なる部分があるということは、覆しようのない事実なのですから……」



アンジー「………」



キーボ「……ですが、それでもわかることはあります」



アンジー「……!?」



キーボ「……自分を信じたいというその気持ち、ボクには、よくわかるんです!」





アンジー「なっーーー」



キーボ「アンジーさんだって、本当は、信じたいと想っているんでしょう!」



キーボ「他ならない、自分を!」



アンジー「!!」



キーボ「誰だって、自分や他人に胸を張れる自分でありたい! ボクだってそうです!」

キーボ「ならば、どんなに自分が信じられなくても、本当は信じたいはずです!」

キーボ「だからこそ、アンジーさんは! 死後も、神さまを信じようとした!」



アンジー「………っっ、!!」



キーボ「そう! 切っても切れない、アンジーさんの一部とも言うべきーーー神さまを、信じようとしたんです!」



キーボ「だったら、その気持ちの通りに、自分を信じれば良い!」



キーボ「自分の想いを信じれば良い!」



キーボ「その『想い』で、自分に胸を張り、他人にも胸を張れば良い!」





アンジー「……っ、簡単に! 信じて、だなんて! 言わないでよ!!」

アンジー「アンジーの想いが! アンジーの何もかもが! 紛い物だったらどうすれば良いの!?」

アンジー「みんなと違って、価値の無い物だったら、どうすれば良いの!?」



キーボ「価値はある!」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんも、その想いも、決して、価値の無い、紛い物などではありません!」

キーボ「なぜなら、今の自分が抱いている想いは、紛れもなく本物だからです!」



アンジー「……!?」





キーボ「たとえ、自分の根っこが、どのような存在であったとしても!」

キーボ「どれほどの過ちや間違いーーー闇を重ねて、今の自分が形作られていようとも!」



キーボ「今の自分が……どれだけの嘘と矛盾に満ちていたとしても!」



キーボ「そんな自分が、世界全体から見て、どのような存在であろうとも!」

キーボ「どんな終わりを迎えようとも!」



キーボ「ボクらの心は、今こうして、ここにある!」



アンジー「……!!」





キーボ「……自分にとって、そこに心があるから! 想いが募っているから! ボクらは苦しんでいる!」

キーボ「心を通して、痛みを、共に感じることができる……!」



キーボ「だからこそ、お互いに自分を信じたいと思っている!」



アンジー「!!」



キーボ「これは、今こうして、起きていること!」

キーボ「今もなお、胸に刻まれ続けていること!」



キーボ「その意味は、過去や未来がどうなろうと、決して変わりなどしない!」



キーボ「断じて、紛い物なんかじゃない! この心は、紛れもなく本物です!」

キーボ「そして、この心を支えているものは何か? それがボクらの胸に刻まれた想いなんです!」

キーボ「だったら、その想いは、心と同様に本物なんですよ!」

キーボ「それが、価値の無い、紛い物?」



キーボ「そんなことは、決してありません!」



キーボ「誰であろうと、このかけがえのない価値を、奪えなどしない!」











アンジー「ーーーーーーーーーーーーーー」











キーボ「ーーーボクはロボットですが、同時に、人だと想っています」



アンジー「!!」



キーボ「これは、機械なのに魂魄を持つ存在だからとか、瀞霊廷に住めるからとか、普通とは異なる『すごい力』を持つ『すごいもの』だとかーーーそういうことを言っているのではありません」



キーボ「ボクが、人なのは、アンジーさんと同様に心を持っているからです」



アンジー「………!!!」





キーボ「だからこそ、生前、アンジーさんがボクを仲間に入れてくれた時は、嬉しかった! 価値ある存在だと認めてくれて嬉しかった!」



キーボ「……そうして、ボクにとって、アンジーさんは、かけがえのない価値ある大切な存在となった!」



キーボ「そんなアンジーさんの側にいられて、心地良かった! 嬉しかった!」

キーボ「初めて、ここで再会できた時も、嬉しかった! またアンジーさんの側にいられて、心地良かった! 嬉しかった!」



キーボ「……さっき、アンジーさんに! 形はどうあれ、ボクが価値ある存在だと言って貰えて、嬉しかった!」



アンジー「!!」



キーボ「先ほど、ボクの言葉に心を傾けてくれて……感情をもって聞いてくれて嬉しかった!」

キーボ「そうするだけの意味を持つ……価値ある言葉だと認めてくれて、嬉しかった!」

キーボ「アンジーさんと、それほどの繋がりを持つことができて、嬉しかった!」



キーボ「そこには、真実も嘘もない! ただ、嬉しいと感じているボクがいる! その『想い』を、アンジーさんに向けたくて、たまらない!」

キーボ「現在も過去も未来も、アンジーさんはかけがえのない存在なんだって、言いたくて仕方がない!」



キーボ「大切にしたい! 作り物で終わらせるなんて、嫌なんだ!」



キーボ「今この瞬間、そう想える心こそが、人の本質なんですよ!」



アンジー「………っ、!?!」





キーボ「……ボクのこの身は、決して、柔らかで温かな肉などではありません。硬く冷たい鉄の身に他ならない」



キーボ「……こわい時に、震えることもできず、悲しい時に涙を流すこともできない、“ ロボット ” 」



キーボ「それが、ボクです」



アンジー「………」





キーボ「ーーーそれでも、心はここにある」






キーボ「嬉しいと想える心が……ここに募られているんですよ」






アンジー「………」





キーボ「ボクは、人です」



キーボ「……こわい時に、震えることもできず、悲しい時に涙を流すこともできないロボットであろうとも」

キーボ「硬く、冷たく、機械的に組み上げられた、鉄の身であろうとも」

キーボ「柔らかで温かな肉をもって、誰かを抱き締めることが叶わなくとも」

キーボ「この身を、どれだけ飾り立て、磨き上げようとも、どれだけ錆びつき折れて、切り落とされようとも」

キーボ「決して消えない、大切にしたいというこの想い。作り物で終わらせたくないという、この想い」



キーボ「そうした想いがあれば、それは人です」



キーボ「そうやって募らせた想いが、心となっているならば、それは人です」



キーボ「……人によっては、作り物でしかなかったとしてもーーー想いを込めた人にとっては、紛れもない人であり、心を持った存在なんです」



キーボ「だから、ボクらは、人なんですよ!」



アンジー「………っっ、!?!」





キーボ「……始めは、作り物の想いでしか、なかったとしても! その想いを込める場所さえ、作り物だったとしても!」



キーボ「それに、心を呑まれなければ! 想いを信じていれば! 本物となる!」



キーボ「……やり方が歪だったとしても! 本当は、間違いなのかもしれなくても! それでも、本物なんだって!」



キーボ「そうやって信じようとする気持ちを、大切にできる心を持てば! 作り物だろうと何だろうと! そこに、確かな『想い』が生まれる!」



アンジー「!」



キーボ「自分の『在り方』! それを支える全てが! 不恰好な作り物だったとしても! 心を呑まれないのが『人』でありーーー」



アンジー「………!!」



キーボ「ーーーそうありたい、そうあって欲しいと想える心が! 人であることの証明なんです!」





キーボ「……どんな人でも! その心は! 想いは! 紛れもない、人のものだから! 本物だから!」



キーボ「想いを糧に、何かに打ち込んで、やり遂げることもできる!」

キーボ「不可能を可能に変えられる!」

キーボ「夢を現実に変えられる!」

キーボ「未来を変えられる!」



キーボ「もちろん、やり遂げるものによっては、すごい才能やその産物に頼ることもあるでしょう! ですが、その根幹にあるのは、人の想いなんです!」

キーボ「花火が、それを作ったり火をつけたりする人の想いと、見る人の想いで、その価値を彩られているように!」

キーボ「人の想いこそが! その価値ある想いこそが! 根幹となって、人を支えているんです!」

キーボ「そうして、人の心を支えてくれたから、ボクらは、 “ 終わらせる ” ことができた!」



キーボ「そう、信じています!」



キーボ「だから、自分が、みんなが、世界全体から見て、どういう存在だろうと! ボクらは人です!」

キーボ「そして、その心と想いは、紛れもなく、本物です!」



キーボ「ボクらは、本物の、人なんですよ!」



アンジー「………!!!」





キーボ「だからこそ、ボクは、アンジーさんを信じています」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんが抱く想いに価値があると信じています」



キーボ「アンジーさんの神さまを信じています」





アンジー「!?」



キーボ「……ボクはもう、神さまに頼るつもりはありません」

キーボ「それこそが、神さま……そして、頼っていた、かつてのボクに、報いることでもあるのですから……」



アンジー「………」



キーボ「……ですが、それでも、アンジーさんが想う、神さまを信じています」



キーボ「神さまが、意味ある存在だと信じています」



キーボ「価値ある存在だと、信じているんです」





アンジー「……どうして、そんなーーー」



キーボ「……その神さまは、もはやアンジーさんの一部でありーーー」



キーボ「ーーー仮に、そうでなくとも、人が胸を痛めて想いを募らせる、かけがえのない存在」



キーボ「ならば、その存在には、絶対に意味がある」



キーボ「価値が無いはず、ないじゃないですか」



アンジー「ーーーーーーっっっ、!!!」



キーボ「ボクは、アンジーさんと神さまを、信じています」

キーボ「想いを込められる存在であると、信じています。そうして、より確かな『想い』に変え、深く込めることもできるーーー」






キーボ「ーーーそう、信じているんです」





キーボ「……だからこそ、アンジーさんも、自分を信じて欲しいんです」



アンジー「………」



キーボ「今すぐは信じきれなくてもーーーそれでも、想いを募らせ、信じて欲しい」

キーボ「そうやって、自分を信じたいという気持ちの通りに、自分を信じて欲しいんです」

キーボ「そして、それは、自分の気持ちだけじゃない。自分に込められた全ての気持ちを信じて欲しい……」



キーボ「……その全てに、信じられるだけの価値があるって!」





キーボ「でなければーーーアンジーさんは、何も信じることができなくなってしまう!」



キーボ「心を呑まれて、全てが雲に覆われてしまう!」



キーボ「一人きりで、何もないと思い込んだまま、生まれ変わって、 “ 死 ” を迎えることになってしまう!」

キーボ「それでは、アンジーさんは、アンジーさんの中で、物として終わってしまう!」



キーボ「ボクらにとって、アンジーさんは人なのに! 人同士だから信じ合い、『想い』を分かち合えるはずなのに!」



キーボ「一緒にいれて、嬉しい気持ちになれるはずなのに!」



キーボ「アンジーさんが、物として終わってしまったら、ボクらの人としての繋がりは、その価値は、どうなってしまうんですか!?」

キーボ「ボクらは、人が何の感慨もなく機械を扱うような関係でしかなかったのですか!?」



キーボ「機械的な利害関係しかない間柄だったのですか!?」



キーボ「それじゃあ、アンジーさんが死んでしまったら、ボクはアンジーさんの中では無用の長物……物で終わるというんですか!?」



アンジー「っっ、!?!」



キーボ「ボクは、それが、たまらなく、こわくて、悲しくて、イヤなんです」





キーボ「ーーーだから、アンジーさん、どうか自分を信じてはくれませんか?」



キーボ「そして、ボクやみんなの気持ちを、信じてはくれませんか?」



キーボ「アンジーさんは、みんなに、大切に想われているんですから」



アンジー「………」





キーボ「……現世で生き残ったみんなは、何があろうと、アンジーさんのことを大切に想っていましたしーーー」



キーボ「ーーー尸魂界(こっち)に来たみんなも、アンジーさんのことを大切に想っているはずです」



キーボ「ーーー事実として、アンジーさんは、百田クンとも話をされたのでしょう?」



アンジー「………」



キーボ「……大切に想っているのは、その時話した百田クンだけじゃない。ボクや真宮寺クンはもちろん、他のみんなだって同じです」



キーボ「……全てが、作り物ーーー」



アンジー「!」



キーボ「ーーーみんなはそれに、心を呑まれなかった」



キーボ「だからこそ、みんな、アンジーさんのことを、価値ある存在だと信じている」



キーボ「そして、それは、アンジーさんが、みんなのことを価値ある存在だと想っているからなんです!」





アンジー「!?」



キーボ「アンジーさんが、笑顔で瀞霊廷に送り出してくれたのはボクだけじゃないはずです」

キーボ「百田クン達のことも、笑顔で送り出してくれたのでしょう?」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんはそれだけ、ボクらを、みんなを、価値ある存在だと想ってくれている! 幸せを、願っている!」



キーボ「それは、アンジーさんの中に、みんなを人として見ている気持ちがあるからできること!」



キーボ「作り物で終わらせたくないと想える気持ちがあるからできること!」



アンジー「!!!」



キーボ「そう! 全てを作り物で終わらせ! みんなの価値を否定するような人物だったのなら! 決してできないことなんです!」

キーボ「だから、アンジーさんは、みんなを大切にしたいと想い! 自分の過去と向き合い! 笑顔で送り出すことに決めた!」



キーボ「アンジーさんは、心呑まれることを良しとしなかった! だから、みんなと同じように、人を大切にできた!」



キーボ「その気持ちに! 百田クン達が応えようとしないはずがない!」



キーボ「だとしたら、百田クンの言葉には、きっとその裏で、全員の気持ちが込められていたはずですよ?」



アンジー「………っっ、」





キーボ「……だから、アンジーさんは、みんなから、大切に想われているんです」



アンジー「………」



キーボ「みんなから、価値ある存在だと信じられているんです」

キーボ「アンジーさんには、その気持ちを信じて欲しいんです」

キーボ「自分の想いと一緒に信じて欲しいんです」



キーボ「そんな自分を……価値ある自分を信じて欲しいんです」





キーボ「……そうすれば、決して、心を呑まれることはありませんしーーー」



キーボ「ーーーアンジーさんの想いが込められた作品に、価値があると、実感することができる」



キーボ「『想い』を、残すことができる」



キーボ「ボクはそう信じています」



アンジー「………」





キーボ「ーーーそして、その価値ある作品に、一緒に込めさせて貰うボクの気持ちにも、価値があると信じてはくれませんか?」



キーボ「そうすれば、より確かに、価値の感じられる作品となるはずです」



キーボ「……そんな作品に、育っていくはずなんです」



アンジー「………」





キーボ「お願いします、アンジーさん」

キーボ「これは、ボクの問題でもあるんです」



アンジー「キーボの……?」



キーボ「はい。ボクが、他ならぬアンジーさんと共に、想いを込めて、価値ある作品を作り育てたいから言っているんです」



キーボ「……ボクが、アンジーさんと生きていて良かったと、一緒にいて嬉しいことを実感したいから、言っているんです」

キーボ「その気持ちを、分かち合いたいから言っているんです」

キーボ「一緒に、価値ある作品を愛したいから言っているんです」



キーボ「それだけアンジーさんが! アンジーさんという人の想いが! 同じ、人であるボクにとって! かけがえのない、価値ある『想い』だから言っているんです!」



アンジー「!!!」



キーボ「ボクは、アンジーさんに、必要とされたいんです!!」



アンジー「ーーーっっ、!!!」



キーボ「だから、どうか一緒に、ボクらにとって、価値ある作品を作ってはくれませんか?」





キーボ「……もし、どうしても、一緒に作ることのできない事情があるのならーーーせめてボクを信じてくれませんか?」

キーボ「その上で、ボクの……『想い』を、どうか受け取ってください」

キーボ「その『想い』と共に、作品を作って欲しい……」



キーボ「……アンジーさんとボクの『想い』を、作品に込めてーーー世に残して欲しいんです」



アンジー「………」



キーボ「ーーーお願いします、アンジーさん」











キーボ「一緒に、作品を、作ってください!!!」











アンジー「………」






アンジー「…………」









アンジー「………………」





アンジー(……そう、かーーー)






キーボ「………」グッ…






アンジー(……そういうこと、なんだねーーーー)





アンジー(ーーー物、なんかじゃ、ないんだ)




アンジー(始めから、みんな、人だった)




アンジー(心を持った時から、ずっと、ずっと前から、そう)




アンジー(キーボも、是清も、蘭太郎も、転子も、解斗たちもーーー)








アンジー(ーーーみんな、みんな、人だったんだ)





アンジー(みんな、人だからーーー)




アンジー(ーーー心があるから、物にされるのがこわい)




アンジー(物にされて、終わるのがこわい)




アンジー(そうやって、人として、扱われないことがこわいんだ)


アンジー(たとえ、どんな『物』でもーーー物である限り、簡単に価値が変わる……)


アンジー(……ただの、物、に、なるかも、しれない……)


アンジー(……そのまま、自分をまったく必要とされなくなること……)




アンジー(それこそが、 “ 死 ” だから)




アンジー(……本当の意味で、死ぬってことなんだから)


アンジー(どんなに、『すごい力』や『すごいもの』があっても、同じこと)


アンジー(あっても、なくても、絶対に逃げきれなくてーーー)








アンジー(ーーー変わらず、そこにある)





アンジー(そこに、落ちるのが、イヤ)


アンジー(物にされたら、近づいてしまう)


アンジー(……すごく苦しくて、目の前がまっくらになってーーー近づいてしまうんだ)


アンジー(そうして、そのまま転がり落ちればーーー)




アンジー(ーーー砕かれて、終わる)




アンジー(……闇に消える……)





アンジー(……そんな、取り返しのつかない、痛み)


アンジー(それがわかるから、みんな、誰にもさせたくなくてーーー)




アンジー(ーーーアンジーにも、させたくなかったんだ)




アンジー(痛みがこわいから、おかしくなりそうだからーーー)


アンジー(ーーー踏み外して、転がり落ちるかもしれないからーーー)


アンジー(ーーーきっと、みんなは、それにアンジーを巻き込みたくなかった)




アンジー(それだけ、なんだよ……)





アンジー(……きっと、みんなは、アンジーのこと、人だって想ってくれた。作り物で、終わらせたくなんてなかった)


アンジー(……どんなに、心が呑まれそうでもーーー『人』として、必死にアンジーを想ってくれたんだ……)




アンジー(……だから、蘭太郎も転子もゴン太も楓も竜馬も斬美も美兎も小吉も是清もーーー解斗みたいなことはできなかった)


アンジー(解斗みたいに、みんなの『想い』を背負って、アンジーの前に立つこともできなかったんだ)


アンジー(……解斗も、アンジーの言葉を前に、踏み出せなかった……)




アンジー(……人が、物にされて、終わる)




アンジー(そのことに、改めて向き合ってくれたから……)





アンジー(……みんなは、決して心を呑まれなかった。だから、踏み外すのがこわかった)




アンジー(言葉を大きく間違えればーーー本当に “ 死 ” を招いてしまうかもしれなかったから)




アンジー(だから、踏み出すことができなくてーーー)










アンジー(ーーーこうして、踏み越えることもできるんだ)





キーボ「………」



アンジー(……物じゃない、『物』でもない。人だから、できること)


アンジー(誰だって、同じ)


アンジー(心が痛いから、その心と想いは絶対に本物だからーーー)




アンジー(ーーー “ 死 ” の痛みがわかる)




アンジー(その痛みに近づいていくことーーー物にされることのこわさがわかる)




アンジー(わかるから、逃げないで向き合える)




アンジー(……その先が、どんなに惨めで、まっくらに塗り潰されそうでもーーー)




アンジー(ーーーそこに意味が……価値があるって、信じられるから)





アンジー(……そうだよ。誰だって、価値を信じて、向き合える)




アンジー(どんなに砕かれて、闇に消えたとしてもーーー)




アンジー(ーーー自分にとっては、人で、かけがえのない、たったひとりを、護りたい……)








アンジー(……そう、想うことが、できるから……!)




キーボ「………」





アンジー(……そうして、心のままに、信じてーーー)




アンジー(ーーー今みたいに踏み越えることもできたんだね……)




キーボ(アンジーさん……!)




アンジー(信じて、必要としてくれた、 “ 心 ” ーーー)




アンジー(ーーーその『想い』が、 “ ここに ” ーーーー)








アンジー(ーーーあぁ……)








アンジー(あたたかい、なぁ……)








アンジー(…… “ ここに ” ある、もうひとつの『想い』ーーー)




アンジー(ーーー心のままに、歩んで手を、伸ばせばーーー)




キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」




アンジー(ーーーきっと、その先はーーーー)











……ぎゅううっ











キーボ「………」パチリッ

アンジー「………」



キーボ「ーーーえっ?」

アンジー「………」



キーボ「アンジー、さん、?」

キーボ「何をーーー」



アンジー「ーーー大丈夫だよ、キーボ」

キーボ「!」





アンジー「キーボの心は、アンジーの中に入ったよ」

アンジー「キーボの『想い』は、アンジーの心で受け止めた」

アンジー「これで、アンジーは、キーボとアンジーの『想い』、込められる」



キーボ「!!」



アンジー「……だから、アンジーからもお願い」



アンジー「アンジーの心も、キーボの中に入れて……」



アンジー「アンジーの『想い』も、キーボの心に受け止めて欲しいの」





キーボ「……!!」



アンジー「それから、キーボも、アンジーと一緒に絵を描いてーーー」







アンジー「ーーーふたりの『想い』、込めて欲しい」











キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」











アンジー「……お願い」

アンジー「お願いだよ、キーボ」

アンジー「どうか、アンジーとーーー」



キーボ「ーーーもちろんですよ、アンジーさん!」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんの心は、『想い』は、ボクの中に、心で受け止めます!」



アンジー「………!」



キーボ「一緒に込めましょう!」

キーボ「アンジーさんとボクの想い、ふたりの『想い』を! 一緒に!」



アンジー「……ありがとう、キーボ」





アンジー「……描こう、一緒にーーー」







アンジー「ーーー “ 夜空 ” を」





キーボ「 “ 夜空 ” ……もしかして、それがーーー」



アンジー「そう、それが、アンジーとキーボの、絵のテーマ」



アンジー「お星さまの光に、お星さまの闇ーーー」



アンジー「ーーー夜風、花火、見上げる人ーーー」






アンジー「ーーーそして、神さまーーーー」





アンジー「ーーー全部、全部、描きたい」



アンジー「アンジーは、キーボと、 “ 夜空 ” を描きたい」



キーボ「アンジーさん……!」



アンジー「……描けたら、一緒に見よう?」



キーボ「!」



アンジー「ーーーそれからは、尸魂界(こっち)に来たみんなにーーー」






アンジー「ーーーいつかは、現世(あっち)で生き残ったみんなにも、見せたいな」





アンジー「……いろんな人に、見せたい」

アンジー「それは、同じ学園のみんなに、だけじゃない」

アンジー「空鶴たち、空吾たち、ユウイチたち、喜助、神さまにもーーー」



アンジー「ーーーいろんな『人』に見せたい」



アンジー「アンジーとキーボの絵を……」



アンジー「自慢、したい」



アンジー「胸を、張りたいな」





キーボ「……同感です!」



キーボ「そのためにも、描きましょう! 一緒に!」



アンジー「……そうだよ、キーボとアンジーで “ 描いて魅せる ” 」



キーボ「ええ! 他ならないーーーー」











「「 “ 夜空 ” を!!」」












(ーーー其れは、闇)






(全に届く、光の輪と双翼を持たない、姿無き闇)






(だけど、胸に刻まれたこの想いは、誰にも奪えない。それが、罪であっても、 “ 死 ” を名乗る神であっても)






(かけがえのない価値を信じて、光と闇を想い描く)






(ふたつが混じり合う人の心に、夜空が届くように)












アンジー「ーーーあーあ、キーボがロボットやってなかったらなー!」











キーボ「ーーーなっ、ここで、まさかのロボット差別ですか!?」



アンジー「ノーノー、これは、神ッターでの、つぶやきだよー!」



キーボ「神ッター!? つぶやき!?」

アンジー「そうだよー」



アンジー「……もし、キーボがロボットやってなかったらーーー」









アンジー「ーーーこのまま一緒に……ドロドロに神っちゃうのも、悪くないかなー、って」





キーボ「? ドロドロに、神る?」

キーボ「泥を用いて、神さまを模した美術品を造形するということですか?」

アンジー「………」

キーボ「だとしたら、確かにボクは控えた方が良いかもしれませんね」

キーボ「いかに頑丈な設計であるとはいえーーー泥を侮るわけにはいきません。万が一、故障でもすれば、迷惑がかかりますからね」



キーボ「……あっ、ですが、入間さんに頼んで、対泥用のコーティングをして貰えばーーー」



アンジー「ーーーなるなるー! その手があったかー!」



キーボ「ええ、入間さんならできるはずです!」



アンジー「そうだねー! 美兎なら、 “ そういうこと ” 喜んでやってくれそうだからねー!」

アンジー「キーボのアイデアは神ってるねー! おかげでアンジーも閃いたよー!」



キーボ「いえ、こちらこそ、新たな作品作りのお誘い! ありがとうございます、アンジーさん!」



キーボ「ドロドロに神る、その時を……今から楽しみにしています!」





アンジー「……んーとねー? 悪いけど、それはもうちょっと後かなー?」



キーボ「? まあ、確かにそれは、入間さんに頼まないとできないことですからね」



キーボ「いや、浦原さんにやって貰えばーーー」



アンジー「……そうじゃなくてねー?」





キーボ「?」

アンジー「……それは、まだ早いから」

キーボ「……早い?」

アンジー「そうだよー」

アンジー「……それをするなら、アンジーにはまだまだやらなくちゃいけないことがあるから……」



キーボ「………」



アンジー「……全ては、それが、終わった後ーーー」






アンジー「ーーー終わった後に、ね?」





アンジー(……そう、アンジーは、みんなに向けて、やらなくちゃいけないことがある)






アンジー(それが、終わった後、キーボが、受け入れてくれる時が来たらーーー)






アンジー(ーーーその時に、思いっきりーーーー)





キーボ「ーーーわかりました! アンジーさんに準備が必要というのなら、ボクはそれを待たせて頂きます!」



アンジー「……ありがとねー、キーボ!」



キーボ「いえいえ! 元はと言えば! ボクがアンジーさんに、一緒の、作品作りをお願いしたわけでーーーー」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー





ー修練場・天井裏(亜空間)ー



空鶴「………」

銀城「……おい」

空鶴「………」

銀城「……おい、アンタ」

空鶴「………」

銀城「……ったく、返事も無しかよ。浦原が言うには、この部屋の音は、絶対外に漏れねえんだろ?」

銀城「中に入ろうにも、アンジーとキーボは、この部屋のこと知らねえし……それ以前にこの部屋は、アンタと “ もう一人 ” が認めた存在しか入れねえ仕組みだそうじゃねえか」

空鶴「………」

銀城「だったら、音が外に漏れることは絶対に無いはずだろ?」

銀城「押し黙る理由もねえだろうに」





空鶴「……黙る?」

空鶴「バカ言いやがれ、そんな理由、ハナからねえよ」



空鶴「ここはおれの家だ。おれはここの家主だ」

空鶴「いつ何を言おうが言うまいが、おれの自由だ」



空鶴「コソコソする理由なんざ、どこにもねえ」



銀城「……そうかい、アンタらしいな」





空鶴「ーーーで、なんのつもりだ、元居候? おれは、テメエが “ 今日おれの家に泊まりたい ” って言うから泊めてやったし、 “ テメエも ” 、この部屋に入れてやった」



空鶴「テメエがウロチョロして、おれの家の邪魔にならねえようにな」



銀城「………」



空鶴「だが、おれはアンジー達が下に来た時、 “ テメエには ” 出て行くよう、何度か命じたはずだ」

空鶴「なのに、シカトこいて残りやがった」



空鶴「……覚悟は、できているんだろうな?」





銀城「……それを言うなら、アンタこそ、覚悟はできてんのか?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらのやりとりを、勝手に見て、聞いちまってる」

銀城「それは、アンタだって同じのはずだ」



空鶴「………」





空鶴「……覚悟も雑煮もあるかよ」



銀城「………」



空鶴「ここは、おれの家だ。ここの主は、おれだ」



空鶴「何を見ようが、何を聞こうが、おれの自由だ」





銀城「……そいつはどうかな」



空鶴「………」



銀城「あいつらが抱えていることは、あいつらの問題だ。アンタには関係ねえだろ?」

銀城「なのに、どうして、勝手に見てる?」

銀城「……どうして、勝手に聞いてやがんだ?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらは見世物じゃねえぞ?」





空鶴「ーーーバカいえ、おれはお客様なんかじゃねえ」



銀城「………」



空鶴「……ただ、家主として、ケジメつけただけだ」








空鶴「ここは、おれの家だ」






空鶴「だから、居候に泣かれたままなのは、気に入らねえんだよ」








銀城「……まあ、泣かれたまま、 “ お別れ ” なんざ誰だって御免だな」

銀城「だから、 “ 万が一 ” を考えて、アンタも待機してたってわけだ……」



空鶴「………」



銀城「……アンタも割と、リアリストの部類だったんだな。意外だったぜ」





空鶴「……あいにくだが、おれは夢見る花火師。寝ても覚めても浪漫を忘れたことはねえ」

空鶴「だからこそ、たっぷり寝る必要がある。だったら、見れるもん、聞けるもんは、さっさと見聞きしてスッキリさせる。おれが今日ここにいたのは、それだけの理由だ」



銀城「………」



空鶴「……何があろうが、どんなに泣かれようが、おれの夢が湿気ることはねえ」



空鶴「絶対にな」





銀城「……はっ、 “ テメエらのことは、テメエらでケジメつけやがれ ” ってわけか」

銀銀「訂正するぜ、 “ アンタらしい ” 」



空鶴「……さっきから家主のやることなすこと、ケチばっかつけやがって…」

空鶴「あいつらでどうにかできるもんなら、あいつらにやらせるべきだろうが」



銀城「………」



空鶴「どこの誰だろうが、そいつらだけでケジメつけようとするからこそ、誇れるもんだってあるんだ」

空鶴「なのに、そうじゃねえ奴が、ハナから出しゃばったらどうなる?」

空鶴「まだ、身内でケリつけられるかもしれねえ話に、ズカズカ踏み込んだらどうなる?」

空鶴「あいつらでケジメ突き立てようって時に、横槍入れて別の得物で突き立りゃ、何が、どうなる?」



空鶴「誇りはどうなる?」



銀城「………」





空鶴「ーーー誇りを残せるに越したことはねえ」



空鶴「誇りを残せるから、応えられることもある……」



空鶴「……テメエだって、本当はそのくらい、わかってるはずだ」



銀城「………」





空鶴「ーーーって、んなことよりも、テメエこそ、どうしてここで出歯亀してんだ?」

空鶴「ここの家主はおれで、あいつらはおれの居候だがーーー今のテメエは違う……」



銀城「………」



空鶴「……なのに、 “ 危なくなったら ” 連絡するよう居候に頼んで、その通りに来てーーーいったい何のつもりだ?」



空鶴「 “ 万が一 ” が、そんなに気になんのか?」





銀城「……そういう問題じゃねえよ」

銀城「……ガキってのは、危なっかしいもんなんだよ」

銀城「信じる信じないの問題じゃねえ。気づいた時には目で追っちまってるもんなんだ」



空鶴「………」



銀城「……それだけ、ガキはどうなるかわからねえしーーー」



銀城「ーーー目を逸らすことはできねえ。誰が、何と言おうとな」



空鶴「………」



銀城「……それだけの話だ」





銀城「……あー、お互い、どうにも夜に酔い過ぎたようだな」

銀城「らしくねえぜ、こんなのはよーーー」



空鶴「ーーー最後通告だ」



銀城「………」



空鶴「出てけ、元居候」



空鶴「テメエの出る幕は、もう無え」











銀城「……あばよ」ヒュンッ











空鶴「………」






空鶴「…………」









空鶴「………………」





空鶴(…… “ ガキは、どうなるかわからねえ ” かーーー)




空鶴(ーーーそこだけは乗っかってやっても良いか)




空鶴(……光で闇を輝かせるのが、花火師だあ?)




空鶴(……テメエの心に、人の心が入っただあ?)




空鶴(ーーーあんなガキ共が、あんな言霊吐き出すとはな……)




空鶴(……世の中、いったい全体どうなってんだろうな……)




空鶴「……なあ、 “ あんた ” はどう思うよーーーー」











空鶴「ーーー海燕(アニキ)ーーーー」











ー志波家の屋敷・廊下ー



キーボ(ーーーあれから翌日)


キーボ(ボクとアンジーさんは、いつも通りに起きて、いつも通りに朝食を摂りました)


キーボ(……厳密に言えば、ボクは寝なかったので、起きたという表現は何か違うかもしれませんがーーー)


キーボ(ーーーそれでも、寝る時間を用いて、アンジーさんのこと、これから描く絵のことを、考えることができました)


キーボ(どういった風に描くか、今から楽しみです)


キーボ(ただ、今日は、この後の時間、どういうわけか真宮寺クンから修練場まで来るよう呼び出しを受けています)


キーボ(朝食が終わった後に、急に言われました)


キーボ(それは、アンジーさんも一緒……)





キーボ(ーーーそして、そのアンジーさんは、現在、朝風呂の真っ最中です)


キーボ(なんでも、アンジーさんは今日、“ やらなければいけないこと ” があるらしく、そのため心身ともにスッキリした気持ちで臨みたいのだそうです)


キーボ(朝風呂は有料なので、ご給金を使うことになりますがーーーそれでもとアンジーさんはお金を支払い、ひと風呂浴びることにしました)


キーボ(それが終わったら、ボクと一緒に修練場まで行くことになっています)


キーボ(お風呂に入った時間を考慮すれば、おそらくは、ちょうどいい時間で修練場まで到着できるでしょう)


キーボ(それにしても、真宮寺クン、この休日にいったい何の話を……)





キーボ(……もしかしたら、百田クン達に関わることでしょうか?)


キーボ(百田クン達は、現在アルバイトや勉強などで多忙のようですがーーー)


キーボ(ーーーそろそろ、落ち着ける頃合なのかもしれません)


キーボ(いくら超高校級といえど、ある程度の休息がなければ、参ってしまう)


キーボ(それを考えれば、丸一日休める日が、定期的に必要となる)




キーボ(もっとも、 “ その日がいつになるか ” までは、真宮寺クン達もわからないようで……具体的な日にちまでは述べてくれませんでしたがーーー)




キーボ(ーーーそれは、この間までの話。昨日の夜中辺りに、休む日がいつになるか決まったのかもしれませんね)


キーボ(その日が、近づいているということ ーーーそれを、真宮寺クンはボクらに伝えようとしている)


キーボ(百田クン達がこちらに来れるかもしれない)


キーボ(そんな日が近いとわかればーーーその時に向けた準備もしやすくなりますからね……)





キーボ(……百田クン達も、真宮寺クンも……苦しんでいるはずです)




キーボ(自分達が、作り物なのではないか?)




キーボ(そのことに、きっと苦しんでいる……)


キーボ(……真宮寺クンは、その苦しみを、なんとかしたいと考えた)


キーボ(だから、ボクらを呼び出し、百田クン達が丸一日休める日について、伝えると同時にーーー)




キーボ(ーーー昨日、ボクがアンジーさんに話したことを、今日この場で詳しく聞くことにした)


キーボ(……それを参考にすれば、他の全員が抱える苦しみもなんとかできるのではないか?ーーー)




キーボ(ーーーおそらくは、そう考えた)





キーボ(……だとすれば、渡りに船ですね)


キーボ(昨日、最後に修練場を出てから今日の朝食前に至るまで、真宮寺クンはどういうわけか自室におらずーーー)


キーボ(ーーー空鶴さんいわく、別の部屋で、 “ 何か ” をしており、そこで寝落ちしていたという話でした)


キーボ(故に、アンジーさんと話したことを、真宮寺クンに詳しく伝えることはできなかった)


キーボ(ですが、今からであれば、しっかり伝えられる)


キーボ(伝えれば、真宮寺クンの苦しみも、良い方向に和らぐかもしれませんしーーー)




キーボ(ーーーその後、ボクら三人で、百田クン達に同じ話をすればーーー)




キーボ(ーーーもしかしたら、全員の苦しみをーーー)






岩鷲「おー、どうした、キーボ? こんなとこでよ?」





キーボ「あっ、岩鷲クン」

岩鷲「ここは女風呂の近くだぞ? そんなとこで、なんで突っ立ってるんだ?」

キーボ「ああ、それはーーー」



岩鷲「ーーーまさか、覗きか?」



キーボ「なっ、やめてください! ボクはそんなことしませんよ!」



岩鷲「……じゃあ、なんで、こんなとこに突っ立ってるんだ?」





キーボ「それは、念のためにです」

岩鷲「? どういうことだ?」

キーボ「ああ、いえ……ちょっと真宮寺クンと待ち合わせをしておりましてーーー」

キーボ「ーーーそれで、万が一その時間に遅れることがないよう、一定時間を過ぎたら大声でアンジーさんに伝えることにしたんです」



キーボ「念のために」



岩鷲「ああ……そういうことか」



キーボ「あまり必要はないとは思いますがーーーそれでも念には念を入れておくことに越したことはない」



キーボ「そう、ボクとアンジーさんは考えたんです」





岩鷲「……まっ、時間を守ろうとするってのは良いことだと思うぜ」

岩鷲「それに、キーボなら、アンジーちゃんに声を届けるのにピッタリだしな」



キーボ「ええ、ボクには声のボリュームを大きくする機能がありますからね」

キーボ「これならば、浴槽まで充分に伝わるでしょう」

キーボ「ロボットとして機能をもって、人の役に立てる。嬉しい限りですよ」





岩鷲「………」



キーボ「ーーー?」



キーボ「どうかしましたか? 岩鷲クン?」





岩鷲「……あー、いや、キーボ、オメーはよーーー」



キーボ「……?」









岩鷲「ーーーなんだか良い面構えになったな」





キーボ「……そうですか?」

岩鷲「ああ、昨日の時は、なんだか元気ねえ感じだったがよーーー」

岩鷲「ーーー今じゃ、だいぶスッキリしてるように見えるぜ」

キーボ「………」

岩鷲「そして、それは、オメーだけじゃねえ」

岩鷲「朝会った時、アンジーちゃんも、真宮寺も “ 吹っ切れた ” って感じだった」

岩鷲「しかも、オメーよりも、ずっとだ」

キーボ「………」

岩鷲「昨日も今日も休日、元気のたまる日には違いねえがーーーそれだけで、そこまで吹っ切れた感じを出せるとも思えねえ」

岩鷲「なんか、あったのか?」





キーボ「……ええ、実はアンジーさんと、昨日いろいろと話をしましてね」



キーボ「それで、お互いに知らなかったことを知れたんです」



岩鷲「………」



キーボ「……そうして、いろいろな、わだかまりが解けたんです」

キーボ「そうなったという “ 結果 ” は、真宮寺クンにも伝えました」

キーボ「それが、ボクらが吹っ切れたように見える、理由なのでしょうね」





岩鷲「……なんにしろ、良かったぜ」



岩鷲「居候の元気な面構えが見れてよ」



岩鷲「やっぱ我が家ってのは、こうでなくっちゃな!」



キーボ「岩鷲クン……」





岩鷲「……それと、キーボ」



キーボ「?」



岩鷲「……今のオメーが、胸に込めてるその気持ちだがよーーー」







岩鷲「ーーー大事にとっとけ」








キーボ「………」






岩鷲「………」








岩鷲「ーーー詳しいことまで、こっちから詮索するつもりはねえが……オメー達は、何かを知ることで良い面構えに変わった」



キーボ「……そうですね」



岩鷲「……そいつは、 “ てめえが知るべきことを知れた ” ってことだ」

岩鷲「その上での答えを “ てめえ自身で見出した ” ってことだ」



キーボ「………」



岩鷲「……その生き様は、一生もんの、 “ 誇り ” になる」



岩鷲「誇れる自分がいれば、その自分を、掴み続けようって気持ちにもなれる」

岩鷲「そうだ、そんな自分を信じて、前に進んでいくことだって、できるんだ」

岩鷲「今のオメーが、胸に抱いているのは、そういう気持ちなんじゃねえのか?」



キーボ「………」





岩鷲「……その気持ちを胸に残す」

岩鷲「そうすりゃあ、これからも、 “ てめえが知るべきことを知る ” ために、 “ てめえ自身で答えを見出す ” ためにーーー」



岩鷲「ーーーこの手を伸ばそうって気になれる」



岩鷲「何度だって、てめえが知るべきことを知れる」

岩鷲「何度だって、てめえ自身で答えを見出せる」

岩鷲「何度だってーーー想いの価値を、信じてやれる……」



キーボ「………」



岩鷲「……そういうもんなんだ」





岩鷲「……だから、オメーがいま胸に込めてる気持ちーーー大事にとっとけ」



キーボ「………」



岩鷲「……この俺! 自称【元・流魂街一の死神嫌い】にして! 自称【西流魂街の深紅の弾丸】にしてーーー」







岩鷲「ーーー自称【西流魂街のアニキと呼びたい人】【ナンバーワン】からの言葉だ! 間違いねえぜ!」





キーボ「……そうですね。キミの言う通りです」

キーボ「……ありがとうございます! キミの気持ち、ボクの心に受け止めます!」



岩鷲「ははっ、そいつは嬉しいな!」

岩鷲「よしっ、なら俺もオメーのその気持ち、ありがたく受け取っておくぜ!」



キーボ「岩鷲クン……」



ガララッ……!





アンジー「……ふいー、サッパリしたよー!」ホカホカ

キーボ「あっ、アンジーさん!」

岩鷲「おおっ、アンジーちゃん! 風呂は終わったのか!」

アンジー「そうだねー、終わってポカポカだよー」ポカポカ

アンジー「待っててくれて、ありがとねー! キーボ!」ガララッピシャンッ

キーボ「いえ、このくらい、朝飯前ですよ!」

岩鷲「朝飯は食ったばかりだけどな!」

アンジー「にゃはははー! そうだねー!」

キーボ「……まったく、ロボットじゃないんですから、変なところで揚げ足を取らないでください!」





キーボ「……って、アンジーさん、そろそろーーー」

アンジー「わかってるよー、是清のことでしょー?」

アンジー「今から行くよー! にゃはははー!」

キーボ「それでは、岩鷲クン! 行ってきます!」

アンジー「行ってくるくるー!」

岩鷲「おう、行ってこい!」



スタスタ……



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー





ー志波家の屋敷・修練場ー



バタンッ……ガチャッ!



真宮寺「ーーー来てくれて、ありがとう。二人とも」



キーボ「……それで、今日はどういった要件なのでしょうか?」



アンジー「そうだねー。大事な話だとは思うけど、何なのかなー?」





真宮寺「……実のところを言うとネーーー」



キーボ「………」



アンジー「………」



真宮寺「ーーー今日、百田君達が、ここに来る」





キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「そうなったのは、僕が映像と音声付きのメールを送ったからだ」



キーボ「? 映像と音声の付きのーーー」

アンジー「ーーーメール?」



真宮寺「……実は、聞いていたんだヨ」



キーボ「? 何をーーー」



真宮寺「君達が昨日、この修練場でした会話を、ネ」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「それを僕は、聞いていたんだヨ」

真宮寺「……それも、最初の方から」

真宮寺「天井裏に、潜んで、覗き見ながらーーー」





キーボ「……何を言っているんですか? そんなはずはーーー」



真宮寺「………」ピッ



キーボ&アンジー「「………!」」



ヒュウンッ……!



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー





ー志波家の屋敷・天井裏(亜空間)ー



キーボ「なっーーー」

アンジー「ここはーーー」



真宮寺「この空間こそが、僕が潜伏していた天井裏部屋サ」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「……このリモコンを使って、下の修練場から空間転移したのサ」スッ



アンジー「……下ってーーー」

キーボ「ーーー!?」





キーボ(ま、間違いない……!)




アンジー「……!」




キーボ(この空間の下側にある景色ーーー)




キーボ(ーーー間違いなく、修練場のーーーー)





真宮寺「昨日、僕はこの空間に潜伏し、君達のやりとりを見聞きした」

真宮寺「……それと同時に、その内容を撮影し、録音した」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「それを、メールと一緒に百田君達に送信したんだ」



アンジー「なっーーー」



真宮寺「ーーーあァ…… “ ロボットやってなかったら ” から先は、送る前に削除しておいたから」



真宮寺「そこは、安心して欲しいかな……」



アンジー「~~~っっ、!!」





キーボ「ち、ちょっと、どういうつもりですか!? 真宮寺クン!?」



キーボ「こんな急にみんなが来るなんて……いや、それ以前に、なんて勝手なことをーーー」



真宮寺「……ごめんヨ。キーボ君、夜長さん」



真宮寺「本当に、ごめんヨ」





アンジー「……謝る、くらいなら、最初からーーー」ギラッ



真宮寺「ーーーだけど、どれも必要があると思ってそうしたことだ」



キーボ「必要!? どういうーーー」



真宮寺「ーーー目を逸らすわけには、いかなかったからサ」





キーボ「!?」



真宮寺「……こんなことをした理由、それはキーボ君が夜長さんとの対話にーーー」



真宮寺「ーーー “ 万が一 ” 、失敗した場合を、考えたからだ」



真宮寺「……失敗した時の資料、すなわち映像と音声のデータが残っていれば、今後に活かすことができるからネ」



キーボ「………」



真宮寺「無論、それはキーボ君に聞けば解決することかもしれない」

真宮寺「だけど、それは、あくまでもキーボ君の視点での情報でしかないし……その時のキーボくんと夜長さんの様子の全てが、わかるとは限らない」

真宮寺「その時の様子の全て、それを客観的に見聞きすることで、気づけることもある」



アンジー「………」



真宮寺「だから、僕は、君達のやりとりを見聞きすることにした」



真宮寺「……撮影し、録音することに、決めたというわけサ」





キーボ「ーーーそれで?」



真宮寺「………」



キーボ「そうして、撮影し、録音したものをーーーなんで百田君達に送ったんですか?」





真宮寺「……それはもちろんーーー」



キーボ「………」



真宮寺「ーーーあの会話は、百田君達に、すぐにでも見せるべき、聞かせるべき内容だと、判断したからサ」



アンジー「………」





真宮寺「……百田君達もまた、苦しんでいるんだ」



真宮寺「自分達が、物であるかもしれないということに苦しんでいる」

真宮寺「それを証明しているかのような世界を前に、苦しんでいる」

真宮寺「自分達が、物であるということを裏付けるかような……大多数の認識に苦しんでいる」



真宮寺「まるで、世界全体が自分達を人と認めず……物だと言っているかのような感覚に、とても苦しんでいるんだ」



アンジー「………」

キーボ「………」





真宮寺「……それで、物だと思い込まされて、終わりを迎えたが最後ーーー待っているは “ 死 ” なのだから」

真宮寺「そうした痛みに……死の恐怖に、百田君達は、心を呑まれそうになっている」



アンジー「………」

キーボ「………」



真宮寺「恐怖を退けるには、あの会話を見聞きして貰うのが一番」



真宮寺「そう判断したからこそ、撮影し、録音したものをーーーさっき百田君達に送ったというわけサ」





真宮寺「……実際、あの会話は、心に響いた」

キーボ「!」

真宮寺「……どんな自分であろうと、その心と想いは本物」

真宮寺「どのような存在でも本物であり、そこに込められた心と想いもまた本物。その意味が変わることはない」

真宮寺「その言葉が響いたからこそ、君達のあの会話を、何度も繰り返しーーー再生した」



真宮寺「その果てに、僕は、心の底から信じられるようになった」



真宮寺「……たとえ、僕のような存在でもーーー心はあり、想いがある」

真宮寺「そんな僕の中にもーーー誰かの心と想いがある」

真宮寺「その全てが、信じられるものなのだと、誰もが『想い』として昇華しーーー僕の中に込められるものなのだと」



アンジー「………」





真宮寺「……みんなは、こんな僕に、想いを向けてくれた」

真宮寺「こんな僕だって、変われると信じーーー『想い』を向けてくれたはずなんだ」



真宮寺「ならば、それは、絶対に意味あることだったんだって」



真宮寺「……自分がいかなる存在だろうと、それに心を呑まれなければーーー人を人として、大切にできるって」

真宮寺「そうやって信じれば、『想い』を背負うことができるーーー」



真宮寺「ーーーきっとみんなは、そう想ってくれた」



真宮寺「僕も……心の底からそう想えるようになったんだ」








キーボ「………」






アンジー「………」








真宮寺「断っておくけど……僕はもう、かつて僕の中にいた、 “ あの人 ” に頼る気はない」

真宮寺「かつての僕が、 “ あの人 ” を理由に為したことを、正当化する気もない」

真宮寺「……それでは、絶対に、誰にも報いることができないしーーー」



真宮寺「ーーーさよならは、したくないからネ」



キーボ&アンジー「「………?」」



真宮寺「……僕はきっと、浅ましくて、恥知らずなことを言っている」

真宮寺「だけど、それは、確かな僕の気持ちなんだ」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「君達と、みんなと、さよならをしたく、ないんだヨ」





キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「……僕は、みんなが、君達が、愛しくてたまらない」

真宮寺「……今日この日まで、関わることを認めてくれた信頼がーーー『想い』が、とても嬉しかったから」

真宮寺「僕さえも、人として扱い、大切にしてくれたその意志にーーー心を動かされたから」

真宮寺「……それを為すこともできる、人の心と想いが、とても美しいから」



キーボ「………」

アンジー「………」





真宮寺「だから、僕は、人の心と想い……その全てを、大切にできるようにならなくてはいけない」



真宮寺「……勝手な価値観や幻想をもって、想いを踏み躙ることーーー」



真宮寺「ーーーそんなことに、もう、 “ 意味は無い ”」



真宮寺「そうした “ 意味 ” を、見出さなくてはならない」





真宮寺「……僕はもう “ あの人 ” に頼らない」

真宮寺「少なくとも……以前のような形で頼るわけにはいかない」

真宮寺「そう、君達が、以前とは違う形で、神さまと向き合うことにしたようにーーー」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「ーーー僕も、 “ あの人 ” と、違う形で向き合わなくては、ならない」



真宮寺「これ以上、心を離したくない、から……」





真宮寺(……いずれーーー)




キーボ「………」




真宮寺(ーーーいずれ、別れるとしてもーーー)




アンジー「………」




真宮寺(ーーーそれでも、僕はーーーー)





真宮寺「……わかってる。生前、あんなことをして、今さら何を言っているんだって話だヨ」

真宮寺「今回も……結局は勝手な考えで、おかしなことをした」

真宮寺「……生前や今回だけじゃない。他にも、間違えてるところがある、あるはずだ」



真宮寺「それもきっと、たくさん」



真宮寺「僕はどこかでーーー間違え続けているんだ……」



キーボ「………」

アンジー「………」





真宮寺「……ごめんなさい」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「夜長さん、キーボ君、ごめんなさい」

真宮寺「君達を……人を、人として、大切にできなくて、ごめんなさい」

真宮寺「君達を、見世物にして、ごめんなさい」

真宮寺「死んでも自分を変えられなくてごめんなさい。間違いばかりで、言い訳して、ごめんなさい」

真宮寺「人の心と想いに、報いることができなくて、ごめんなさい」



真宮寺「……君達の、みんなの信頼にーーー」









真宮寺「ーーー『想い』に、報いることができなくてーーー本当にごめんなさい」











真宮寺「……ごめ、ん、なさい……っっ、!!」














キーボ「………」






アンジー「………」








アンジー「……是清?」



真宮寺「……夜長、さん、?」



アンジー「……謝るのは、アンジーたちにだけじゃないよね?」



真宮寺「!」

キーボ「………」



アンジー「……今日でなくても良い。時間がある時、いろいろ思い出したり、考えてからでも良い」



アンジー「……アンジーや他の人と、相談してからでも良い」





アンジー「……誰だって、間違える」

キーボ「………」

アンジー「そうなる理由は……いっぱいあるから」

真宮寺「………」

アンジー「……予想外なこと、誰かと一緒にいられる嬉しさ、そのふたつが混乱や油断を招くことだってあるしーーー」



アンジー「ーーーあるいは、望んだ “ 結果 ” を求めるあまり、おかしくもなってしまう」



キーボ「……!」

真宮寺「……っ、」





アンジー「……そうした間違いの何もかもに、自力で気づけるとは限らない」



真宮寺「……!」



アンジー「何がどこまでいけなかったのか? その上で、自分にこれから何ができるのか?」

アンジー「ひとりじゃ気づけないことだってある」

アンジー「 “ 死 ” という不安を前に、心が追い詰められていたのなら、なおさら……」



真宮寺「………っっ、!!」

キーボ「………」



アンジー「……だから、少し時間をかけても良いし、アンジーや他の人と相談してからでも良い……」



アンジー「……それから、いつか全員に、しっかり謝らないとねー?」



アンジー「でないと……罰が当たっちゃうんだよ?」





真宮寺「…………そう、だネ」



アンジー「………」



真宮寺「君の言う通りだヨ、夜長さん……」



キーボ「………」



真宮寺「……僕は、謝る」



真宮寺「自分の、何がどこまでいけなかったのか? その上で、自分にこれから何ができるのか? 考え続けなくてはならない……」



真宮寺「……そうして、いつか必ずーーーー」











真宮寺「ーーー謝る、ヨ……」











アンジー「……落ち着いたら、また 【鰤清劇場】お願いね?」



真宮寺「!」

キーボ「………」



アンジー「キーボが来る前にも言ったけどーーーアンジーは是清の劇場がとても嬉しい」

アンジー「……是清は、聴く人を想って、自分なりに、何かをわかりやすく説明しようとしてくれてる」

アンジー「それが、アンジーはとても嬉しいの」



真宮寺「……!」



アンジー「ーーーそれに、是清は、もっと人の心を……想いを大切にできるようになりたいんでしょ?」



アンジー「だったら、お客さんの期待を裏切ったらダメだよ?」





アンジー「……それも、一緒の家に住む、お客さんの期待でーーー」



アンジー「ーーーこれからも、一緒に住み続けるんだからーーー」



真宮寺「……!!」



アンジー「ーーー楽しみに、してるから……」



真宮寺「………」





キーボ「…………これだけは、言わせて貰います」



真宮寺「……キーボ、君、?」



キーボ「キミが見聞きしていたあの会話ーーー」



キーボ「ーーーそれができたのは、キミの気持ちが、ボクの心の奥深くに、残っていたからでもあるんです」



真宮寺「!!」



キーボ「生前のキミと、死後のキミーーー」



キーボ「ーーーその両方の、気持ちが残っていた」



キーボ「他ならない、今のボクの心の、奥深くに、です」



真宮寺「………」

アンジー「………」





キーボ「だからこそ、ボクはコトダマが時に “ 死 ” を招くと理解した上でーーー」



キーボ「ーーー【どう向き合い】【どう生きるか】ーーー」



キーボ「ーーー【その答えを見出し】【表現することができた】」



キーボ「……ボクは、これからも、そうあり続けようと思います」



キーボ「それが、報いることでもある」



真宮寺「………」

アンジー「………」



キーボ「……先ほど、この場に放たれた気持ちーーー」



キーボ「ーーーその全ては、既にもう、この心の中にーーーー」





アンジー「………」






真宮寺「……キーボ、君……」






キーボ「……それだけ、です」





真宮寺「………」





真宮寺「…………」









真宮寺「………………」





真宮寺(ーーーごめんなさい、キーボ君、夜長さんーーー)




真宮寺(ーーー本当にごめんなさい)




真宮寺(ーーーそして、ありがとう)




キーボ「………」



アンジー「………」




真宮寺(ーーー本当に、ありがとう)





キーボ「ーーー真宮寺クン」



真宮寺「ーーー?」



キーボ「さっき、今日中に、百田クン達が来ると言っていましたがーーー」



キーボ「ーーーそれは、今からどのくらい後になりますか?」





真宮寺「……ちょっと待っててネ」ガサゴソ




真宮寺(さっきの返信メールの、全員での到着予定時刻と現在の時刻ーーー)カパッ




真宮寺(ーーーそれらを比較するとーーー)




キーボ「………」




真宮寺「ーーー伝令神機の時刻表示によれば、あと三十分近くはあるネ」





キーボ「ーーーなるほど」



アンジー「……うんうん、やっぱり、どんなに早く行こうとしてもーーー時間はかかっちゃうよ」

アンジー「……向こうも、忙しかったり、出かける準備だったりで、いろいろ大変だろうからねー……」



真宮寺「……それに加えて、瀞霊廷(向こう)では、空間転移装置の設置が “ 基本 ” 認められていない」



キーボ「………」



真宮寺(……そう、もし旧総隊長の危惧通り、装置を悪利用された場合ーーーその『責任』を取れる立場でなければ、設置も私的な利用も許されない……)



真宮寺「……それらを考慮すれば、移動に時間がかかってしまうのは、仕方のないことだと思うヨ」





キーボ「……それでは、今のうちに情報共有をしませんか?」



真宮寺「? 情報ーーー」



アンジー「ーーー共有?」



キーボ「……ボクは、この世界でキミ達に再会した時、嘘を言ってしまいましたから……」





真宮寺&アンジー「「!!」」



キーボ「……なぜ、【超高校級が集められて】【コロシアイをさせられたのか】ーーー」



キーボ「ーーーそれが、わからないという、嘘を」



キーボ「そのことは、もう、察しているはずです」



真宮寺「………」

アンジー「………」



キーボ「だから、空いている時間を使って、ボクの知っている真相を話したいんです」





真宮寺「……このタイミングでそれをする理由は?」



キーボ「それは、主に二つあります」



アンジー「……ふたつ?」



キーボ「まず、一つ目の理由ですがーーー」



キーボ「ーーーここでボクが真相について話しても、現状それを共有するのが、ここにいるキミ達だけで済むということです」



真宮寺「………」



キーボ「ボクの聴力をもってしても、キミがこの天井裏部屋……修練場のすぐ近くの空間に潜伏していることには気づけませんでした」



キーボ「そう、キミの呼吸音などに、まったく気づくことができなかった」



キーボ「そのことから考えて、この空間の音は、絶対に外に漏れない仕組みのはずです」

キーボ「ならば、ここでボクが真相について話しても、現状それを共有するのは、ここにいるキミ達だけで済む」

キーボ「つまり、話している最中に百田クン達がこの家に到着したとしてもーーー彼らはこの空間の外にいるため、会話内容がうっかり伝わってしまう可能性はない」



アンジー「………」





キーボ(……もし、百田クン達が何らかの方法で、この空間内に入ったとしてもーーーこのくらいの広さの空間ならば、入って来た時点で気づけるはずです。ボクの聴力があれば)




キーボ(そして、気づいた時に、いったん話を切り上げれば、会話内容が伝わることはない……)




キーボ「……とにかく、ここでボクが真相について話しても、現状それを共有するのは、キミ達だけで済む 」




キーボ「そうではありませんか、真宮寺クン?」





真宮寺「……その通りだヨ、キーボ君」



キーボ「………」



真宮寺「この空間の音が、外に漏れることは絶対にない」



アンジー「……それは、ここにいるアンジーたち、全員で話してもー?」



真宮寺「……そうだネ」



真宮寺「三人がかりでも……いや、それ以上の人がいたとしても、それらの声は決して外に漏れたりなどしない」



真宮寺「この空間から、下の修練場の音を聴くことはできても、逆は絶対にできない」



真宮寺「そこは、確かに保証するヨ」





キーボ(やはり、そうでしたか……)


キーボ(……しかし、そこまで音漏れ対策ができているとなると、空鶴さん達……アンジーさんを心配していただろう他の人達も潜伏していた可能性がーーー)


真宮寺「………」


キーボ(ーーーまあ、潜伏していたかどうかにつきましては、後で確認を取れば済む話。今どうこう言うべきことではありませんね)


キーボ(……もっとも、本当に空鶴さん達も潜伏していたのなら、流石に彼女達にもいろいろと物申さなくてはならなくなりますがーーー)


キーボ(ーーーその内容については、また後で考えるとしましょう)


キーボ(いま、やるべきことはーーーー)





アンジー「……それで、それで? ふたつ目はー?」

キーボ「………」

アンジー「ふたつ目の方は?」

キーボ「………」



アンジー「……キーボから、いま真相を話そうとするーーー」



アンジー「ーーーふたつ目の理由はー、何ー?」





キーボ「二つ目の理由……それは、備えるためです」

アンジー「備える……?」

キーボ「これから、全員に向けて、ボクの知る真相を伝える必要が出てくると思います」

真宮寺「………」

キーボ「それは、時間を置いてから実行した方が良い場合もあるでしょうしーーー」

キーボ「ーーー百田君達と再会してすぐ実行することになるかもしれません」



キーボ「百田君達が、真相を受け入れられる精神状態にあれば、きっとそうなるでしょう」



キーボ「……問題を、早めに解決できるに、越したことはありませんから」



アンジー「………」





キーボ「……それでもし本当にそうなった時、よろしければお二人には、合いの手を入れるなどサポートして欲しいのです」

真宮寺「サポート……」

キーボ「ええ、サポート」

キーボ「アンジーさんが、今日まで真宮寺クンの話に、合いの手を入れてくれた時のように、二人でボクの話をサポートして欲しいのです」

アンジー「………」

キーボ「お伝えする内容が内容なので、サポート……備えがあった方が、よりみんなも受け入れやすくなると判断しました」

キーボ「なので、よろしければ、そのためにもどうか聞いては頂けませんか?」



キーボ「ボクの知る、真相を」








真宮寺「………」






アンジー「………」








アンジー「……アンジーは、良いと思うよー?」

キーボ「アンジーさん……」

真宮寺「………」

アンジー「……きっとショックな話なんだろうけどーーー」



アンジー「ーーーそれでも、今の、アンジーが信じたいものが、きっと本物だろうから」



アンジー「それを思えば、大丈夫」



キーボ「………」



アンジー「だから、アンジーは聞く」

アンジー「そうして、アンジーは、キーボの、支えになりたいな」





真宮寺「……僕も、同意見だヨ」



アンジー「………」

キーボ「………」



真宮寺「……夜長さんがそう言ったから、僕もそうするとかじゃない」

真宮寺「僕は今回、夜長さんと同じことを思ったーーー」



真宮寺「ーーーただ、それだけ」



真宮寺「紛れもない、僕自身の責任だ」



真宮寺「その上で、ぜひ真相を、伝えて欲しい」





キーボ「……わかりました」



キーボ「そして、ありがとうございます」



キーボ「覚悟して、頂いて」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「……それでは、真相を、お伝えします」



キーボ「実はーーーーーー」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー





キーボ「ーーーということなんです」






アンジー「………」

真宮寺「………」






キーボ「……以上が、ボクの知っていることの全てです」








アンジー「………」






真宮寺「………」








キーボ(……何も返事がない)




キーボ(無理もないことですね……)




キーボ(……ですが、アンジーさん達ならば、きっとーーー)








真宮寺「ーーー妙だネ」





キーボ「ーーーへ?」

アンジー「ーーーうん、おかしい」

真宮寺「どうなっているのだろうネ? これは?」

アンジー「うーん……」



キーボ「……ち、ちょっと待ってください」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「どこがどう、おかしいんですか?」





真宮寺「……いや、もし君が述べた通りの内容が真相だとするならばーーー完全に矛盾するんだ」

真宮寺「そう、僕達が、尸魂界(こっち)に住んでいる人達から聞いた、現世の情報と」

アンジー「もし、キーボの言う通りなら、二ヶ月もここにいたアンジー達が、そのことを知れなかったのはおかしいよねー?」



キーボ「………」



真宮寺「……僕達が聞いた限りでは、現世は君が言うような世界じゃないはずだしーーー」

真宮寺「ーーーそれに加えて、君が終わらせたという “ それ ” も、まだ終わっていないはずだ」



キーボ「………!?」



真宮寺「 “ それ ” は、君が先ほど述べていたようなものですらなくーーー通常の遊戯として、今も続いているはずなんだ」

キーボ「………」



アンジー「……どうなってるんだろうねー?」

真宮寺「やはり、これはーーーー」











キーボ「ーーーやはり、死神が情報操作しているんでしょうか?」











真宮寺「ーーーうん?」

アンジー「……どういうことー?」



キーボ「ああ、いえ……」

キーボ「キミ達が述べた矛盾についてはーーー死神が死者に対し、記憶操作を施しているとすれば、説明のつくことだと思っています」



アンジー「!」



キーボ「死神達だって……『自分達』を支え続けてくれたこの世界が、大切で仕方ないはずです。きっと、より良い世界に築かれて欲しいはずなんです」

キーボ「ならば、今の世界の『在り方』が、異なり過ぎる倫理をもって破壊されていくことなど、あってはならないことでしょう」



キーボ「……死神達がボクらと同じ倫理観を持っていると仮定した場合ーーー尸魂界が、 “ 外の世界 ” のようになって欲しいはずがない」

キーボ「『自分達』が築き上げた世界を大切にするあまり、一線を超えることだってあり得ると思います」



キーボ「だから、死神達は、死者が現世で生きていた時の認識……記憶を作り変えてーーー」



真宮寺「ーーーなるほど、そういった考え方もあるんだネ」





キーボ「……?」

アンジー「………」



真宮寺「……それも考えられない話ではないけれど、僕は別に理由があると考えている」



キーボ「……どういうことですか?」



真宮寺「君達がまだ、辿り着けていない先があるということサ」



キーボ「………??」





真宮寺「……ひょっとしたら、死神の上層部はそれを知っているのかもしれないネ」



キーボ「……はい?」



真宮寺「詳細はわからないけれどーーーおそらく僕達は、霊なる存在が引き起こした事件に巻き込まれたんだ」



真宮寺「それも、死神の上層部しか知ることを許されないような……大事件に」





キーボ「……えっ、?」



真宮寺「……そうでも考えないと、説明のつかないことがある……」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「……今の状況にしてもそうだ」

真宮寺「【僕達全員が霊力に目覚めた】この状況ーーーあまりにも不自然じゃないかな?」





キーボ「!」

アンジー「………」



真宮寺「……いや、DNAにもよるようだけどネ?」

真宮寺「当人のDNAによっては、尸魂界などの特殊な環境にいることで、霊力を得たり取り戻したりするケースもあるようだけどーーー」



真宮寺「ーーーある程度の条件を満たさない限り、一時的なものでしかないという話だ」



真宮寺「……僕達ほぼ全員が、恒久的な霊力に目覚めるなんて、どう考えても不自然なんだ」



キーボ「………」



真宮寺「しかも、キーボ君以外は、【尸魂界の同じ時間の同じ場所】に送られた」

真宮寺「心中したわけでもないのにネ」

真宮寺「これは、霊なる存在が僕達に何かしらの干渉をした結果としか思えない」





アンジー「…… “ あれ ” のファンの、悪い幽霊軍団の仕業かな?」

キーボ「!?」

アンジー「悪い幽霊軍団が、自分たちで楽しむために……アンジーたちを使ったのかな……?」



真宮寺「……そうだネ。そうした霊なる存在が、何らかの理由をもって、非公式に真似事を行った」



キーボ「………!!」



真宮寺「そして、それはキーボ君達が終わらせたわけだけどーーー」



真宮寺「ーーーそれこそが、霊なる存在の撃退に繋がり、今の状況に繋がったのかもしれない」





キーボ「ーーーはい?」



真宮寺「……僕らの巻き込まれた “ あの事件 ” ーーー」



真宮寺「ーーーそれは、【放っておけば】【尸魂界に甚大な被害をもたらすもの】だった」



キーボ「………!?」



真宮寺「死神の上層部は、それに気づいたんだ」

真宮寺「だから、それを終わらせた君達には、感謝している」



キーボ「………」

アンジー「………」





真宮寺「……本当は直接お礼を言いたいけどーーー “ あの事件 ” は、混乱防止のため、死神の上層部以外は知ることを許されない重大機密となっている」

真宮寺「それも、特別な場所でもない限り……口にすることすら許されない程の機密となってしまっている」

真宮寺「故に、直接的にお礼を言うことは叶わなくてーーー」



真宮寺「ーーーお礼は君達に対する厚遇という形だけで、行われることになった」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「だからこそ、キーボ君達と親しい関係にあった夜長さんは、ここで雇われーーー恵まれた部類の生活を送ることが可能となった」



アンジー「………!」

キーボ「……!?」



真宮寺「だからこそ、キーボ君が瀞霊廷に住む申請が通った」



真宮寺「そういうこと、なんじゃないかな?」








キーボ「………」






アンジー「………」











真宮寺(……キーボ君と夜長さんが見たという “ 夢 ” ーーー)








真宮寺(ーーーあるいは、それも、何かしらの関係がーーーー)








アンジー「……うーん、なんかフワフワし過ぎてよくわかんないやー」

キーボ「ーーー確かにこの話、どうにも、全体的に、あやふやな印象を受けます」

キーボ「…… “ あの事件 ” が、【放っておけば】【尸魂界に甚大な被害をもたらすもの】という話ですがーーーあれで具体的にどんな被害をもたらすというんですか?」



真宮寺「………」



キーボ「……もし、あれのために、一年に百人ずつ亡くなったとしても、世界全体の魂魄バランスを揺るがすわけではないでしょう……」



キーボ「人は、何十億と生きているのですから」



キーボ「そうした観点から見て、尸魂界に甚大な被害が出るとは考えづらいのですがーーーー」





真宮寺「ーーーまァ、自分でもかなり飛躍した話だとは思っているヨ」



キーボ「………」



真宮寺「君の疑問に対する解も持っていない」



真宮寺「根拠に乏しい、虚構の推論と言わざるを得ないヨ」





真宮寺「……だけど、まったくあり得ない話ではない。違うかい?」

キーボ「……もちろん、絶対にあり得ないとは言いきれませんがーーー」

アンジー「………」

キーボ「ーーーそうだとしても、現状それが本当であるか確かめることはできないでしょう」



キーボ「……そういった、 “ 夢 ” のような、真相だったとしてもーーー」



真宮寺「!」



キーボ「ーーー確かめる術は、ない」チラッ…



アンジー「……?」キョトン








キーボ「……それでも、確かめようと言うのならばーーー相応の立場が、必要になる」






アンジー「………」











キーボ「たとえるなら、様々な人の心と想いを大切にできる『歯車』ーーー」









キーボ「ーーーそんな、立場が、必要になるでしょうね」








真宮寺「……?」



アンジー「………??」



キーボ「………」



真宮寺「……君は、何を企んでいるのかな?」





キーボ「……さあーーー?」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「ーーーなんでしょうね?」





……ガチャガチャッ!




キーボ&アンジー「「!?」」

真宮寺「………」




バンバンバンッ!!





キーボ(……扉を、叩く音ーーー)


アンジー(ーーーガチャガチャバンバン…下からーーー)


キーボ(ーーーつまり、これはーーー)






真宮寺「ーーー来たようだネ」





真宮寺(……予定よりも早い到着だネ。それだけ急いで来てくれたってことなんだろうけどサ)


キーボ「………」

アンジー「………」


真宮寺(……とにかく、まずは、下まで降りてーーー)ピッ




キーボ&アンジー「「!!」」



ヒュウンッ……!



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー





ー志波家の屋敷・修練場ー



キーボ「………」

アンジー「………」



ガチャガチャ……ダンダン!



真宮寺「ーーー今から、開けるヨ」ガチャッ…



バタン……!!



キーボ「………っ、!!」



ダダダッ……!!



赤松「……っ、キーボ、くん……!!」





キーボ「あっーーー」

アンジー「………」



ゴン太「……ああ! やっぱり、キーボくんだ!」



天海「……キーボ君……!」



赤松「また会えたね……! 私だよ! ピアノバカの、赤松楓だよ!」




キーボ(赤松さん、ゴン太クン、天海クン……!)





茶柱「ううっ……お久しぶりですね、キーボさん! 再会できて、転子は喜ぶべきなのか悲しむべきなのか……」

東条「それは難しい問題ではあるけれど……少なくとも茶柱さんには喜ぶ権利があると思うわ」

星「……それに、この尸魂界じゃ、生前の知り合いと再会なんて、なかなかにできることじゃねえからな」



星「喜んだって罰は当たらねえだろうよ」



茶柱「……そうですね! それでは、転子は全力で喜びます! 会えて嬉しいです、キーボさん!」




キーボ(茶柱さん、東条さん、星クン……!)





入間「……ひゃーっひゃっひゃっ! 久しぶりだなあ、キーボ!!」




キーボ(入間さん!)




ゴン太「……い、入間さん!? まだ目赤いよ!? 大丈夫!?!」

入間「うるせえぞ、ゴン太! ……んなことよりも、キーボ!どうだった? オレ様の発明の味は!」

入間「ロボのオメーでもイッちまったかあ?」



キーボ「……ええ!素晴らしい発明でしたよ、入間さん!」



入間「……ひううっ、マジメに返されたあ……!」





王馬「……うんうん、入間ちゃんって、本当に発明だけはすごいよねー!」

王馬「なんたって、ご飯食べられるようになったくらいでーーーロボの口からあんな血液ドロドロのクッサい台詞を吐き出せられるんだからさー!」

王馬「あっ、でもどっちにしろ、鉄クサイことは変わらないかー!」




キーボ(……王馬クン、キミって人は本当にーーー)




百田「ーーーよせ、王馬」





百田「ーーー入間もだ。こんな時くらい素直になったって良いんだぞ、お前ら?」



王馬「………」

入間「………」



百田「ここには、仲間しかいねーんだから……」




キーボ(百田クン……)





百田「……そういうこった、キーボ」



キーボ「………」



百田「オメーの『想い』……オレ達が確かに受け取った!」








キーボ「みな、さん……」






アンジー「………」








百田「……アンジーのことも、ありがとな」



キーボ「!」



アンジー「………」



百田「オレは、キーボみたいに、やれなかった」

茶柱「……っ、それを言うなら、転子は……! 転子は……!」

赤松「私は……っ、!!」

ゴン太「ゴン太は……っっ、!!」

東条「………」

星「………」

入間「………」

王馬「………」

天海「………」

真宮寺「………」





アンジー「……ごめんね、解斗、みんな」



アンジー「心配かけて、本当に、ごめんね」



茶柱「なっ、アンジーさんが謝ることじゃーーー」



アンジー「謝るよ」



茶柱「!」



アンジー「だって、アンジーは、差別していたから」





ゴン太「差別……?」

キーボ「………」



アンジー「……アンジーは、解斗たちのことを、『物』だって思ってた」



百田「………」



アンジー「『すごい才能』があって……そうでなくても瀞霊廷に住めるってだけでーーー」



アンジー「ーーー運良く、『人』になれた、『物』だって、思ってたんだよ」



天海「………」

王馬「………」





アンジー「……だから、解斗たちを差別して、キーボが来たことを教えなかった」

アンジー「キーボのことを教えないよう、是清にも、キーボにも、口止めさせた」

アンジー「解斗たちが忙しいのを理由に、口止めさせたんだ」



真宮寺「………」

キーボ「………」



アンジー「……勝手な話だよね」

アンジー「忙しくても、そうでなくても……キーボと会うか決めるのは、解斗たちなのに……」





茶柱「アンジーさん……」

赤松「………」



アンジー「……キーボと是清のことも『物』だってーーー」



アンジー「ーーーそれどころか、アンジーだけの『物』だって思ってた」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーは、自分を、『人』だって想いたくて……物であることが嫌でーーー」



アンジー「ーーーそのために、ふたりを、アンジーだけの『物』にしたの」



真宮寺「………」





アンジー「……『物』だと思っている、だから、アンジーはみんなに黙って、キーボを独り占めしてーーー」



アンジー「ーーー是清の劇場を、聞き続けた……」



真宮寺「……!」



アンジー「……あの時、アンジーは、是清の劇場が嬉しかった」

アンジー「だけど、それはーーー “ 聴く人を想ってるから ” ……だけじゃなかった」



アンジー「……『超高校級の民族学者』は、短い時間で、これだけの知識を持てる、劇場もできる。そんな是清を思い通りにできる自分は『すごい』ーーー」



キーボ「!」

真宮寺「………」



アンジー「ーーーそんな風に思うことも、できたから」





アンジー「……是清がキーボに、この世界について説明していた時ーーー期待してた」

アンジー「……流魂街と瀞霊廷の違いだとか、それらを聴くことでーーー」



アンジー「ーーーキーボが、アンジーと同じ気持ちになることを……期待してたんだ」



キーボ「………」

真宮寺「………」



アンジー「……是清の説明を聴けば、キーボもアンジーと同じ気持ちになる」

アンジー「そうなれば、誰よりもアンジーを理解して、大切にしてくれるーーー『物』になるだろうって」



アンジー「……そんなことを、期待してたんだ……」





アンジー「……アンジーだけの『物』ーーー『すごいもの』があれば、誰かに自慢して、誇ることができる」

アンジー「そうして、自分を、『人』だって想える」

アンジー「……それなら、少なくとも人として死ぬことができる。それなら、痛くないし、こわくない。死んだって大丈夫ーーー」



アンジー「ーーーそんな風に “ 死 ” から目を逸らして逃げていた」



アンジー「……真剣に向き合おうとしなかった」



入間「………」



アンジー「……人を『物』にすること」



アンジー「それは、人を “ 死 ” に近づけることなのに……」



アンジー「…… “ 死 ” と向き合っていないから、簡単に踏み切れる……」





アンジー「……そうやって逃げてーーーキーボと是清を、アンジーだけの『物』にした」

アンジー「解斗たちのことも……運良く『人』になれた『物』だって、差別したままーーー」



アンジー「ーーーいや、自分の思い通りにしていい『物』をふたつも持てた、アンジーの方が『すごい』ーーー」



アンジー「ーーーきっと、そんな風にだって、思ってた」



アンジー「……アンジーは、そういうことをしていたんだよ……」



キーボ「………」

真宮寺「………」





アンジー「……そんなの、おかしいのに」



アンジー「キーボも、是清も、解斗たちもーーー人だったのに」



アンジー「だから、『物』にされることが、悲しかった」



アンジー「……気分ひとつで、価値のない物にされてしまうのがーーー嫌だった」



アンジー「……そのまま、終わりを迎えることの、痛みがわかる」



アンジー「……死の恐怖がわかる」



アンジー「わかるから、解斗たちも是清も、踏み出すことができなかったんだよ」





百田「………」

赤松「………」

茶柱「………」

天海「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

入間「………」

王馬「………」

真宮寺「………」



キーボ「………」





アンジー「……そうした痛みとこわさーーー “ 死 ” に、耐えられそうになかった」



百田「………」



アンジー「……解斗たちも是清も、他の人から『超高校級』の意味を、聞いてしまってた」



アンジー「それで、自分達が、物かもしれない現実ーーー」



アンジー「ーーーそれを突き立てられた……」



茶柱「………」



アンジー「……そんなことされたら、苦しくてたまらない」

アンジー「自分を、しっかりと信じきれなくなって……耐えられなくなっても、おかしくない」

アンジー「耐えられないまま、間違えるのが嫌だった。踏み外してしまうことがこわかった」



アンジー「……言葉を大きく間違えれば、 “ 死 ” を招くことだってあるんだから……」



真宮寺「………」





アンジー「……みんな、それが嫌だった。優しい人だった」

アンジー「作り物だとか、そういうことに呑まれない。強い『人』だった」

アンジー「……だから、上手くやれなかった、踏み出せなかった」



赤松「………」



アンジー「……それでも、踏み出そうと、解斗は立ち上がってくれたけどーーー」



アンジー「ーーー解斗も、アンジーの言葉を前に踏み出せなかった」



百田「………」



アンジー「……今の自分から才能や立場がなくなっちゃえば、価値が減っちゃう感じがするからーーー」



アンジー「ーーーそうやって、もっと物にされる感じがして、 “ 死 ” がさらに近づいてしまうような気がしたんだよね?」





アンジー「……それが、すごく苦しかった」



アンジー「踏み外しそうになるくらい……こわかった」



百田「………」



アンジー「だから、解斗は “ あの時 ” 何も答えられなかったんだよ……」





アンジー「……なのに、アンジーは、隠した」



アンジー「…… “ あの時 ” 、解斗たちの気持ちが、言葉に込められてたはずなのに」

アンジー「……是清がアンジーのためにいろんなお話をする時だってーーー是清の気持ちが、言葉に込められてたはずなのに」

アンジー「そう、アンジーを、信じて必要としてくれた気持ちが、込められてたはずなのに」



アンジー「……こんなアンジーを! 人として扱ってくれた! 確かな気持ちが、込められていたはずなのに……!」



アンジー「……アンジーは、隠した」



アンジー「……昨日、アンジーが……! キーボの気持ちを踏みにじった時のように……! 隠した……!」



キーボ「………」



アンジー「みんなに嫉妬して差別してーーー雲で隠したんだ……!」





アンジー「……ごめんね」






百田「………」



キーボ「………」



真宮寺「………」






アンジー「……本当に、ごめんね……っっ、!!」





百田「………」

キーボ「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

天海「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

入間「………」





百田「……オメーの言いたいことは、よくわかったぜ、アンジー」



アンジー「………」



百田「……だから、その答えを、今ここで言ってやる」



アンジー「……?」






百田「……ありがとよ」





アンジー「!?」



百田「オメーの気持ち、オレ達が確かに受け取った!」



アンジー「………?!?!」



百田「アンジー! オメーは謝った!」

百田「それは、自分の胸の痛みやこわい気持ちと……真剣に向き合ったってことだ!」

百田「……弱さと向き合って、苦しんで! それでも『自分』を信じてーーー」



百田「ーーーそうした勇気……『想い』と共に! オレ達の元に踏み出してくれたってことだ!」



百田「オレ達の全てを、大切にしてくれたってことなんだ!」



アンジー「……!」





百田「……そいつは、オレ達のことを、人として見ていたってことだ! だからこそ、できたことなんだ!」

百田「物でもなければ『物』でもねえ……かけがえのない人なんだって!」



百田「そう認める気持ちだって、オメーにはあった! だから、それを信じて、やってのけた!」



百田「だったら、ボスとして、礼を言わねえわけにはいかねえ!」

百田「そうだろ!」



アンジー「解斗……!」




キーボ(百田クン……!)




百田「オレ達はオメーを許すぜ、アンジー!」





アンジー「……っ、でも、アンジーはーーー」



百田「ーーーそれでも、オメーが納得できないってんならーーー」



アンジー「………」



百田「ーーーオメーもオレ達の『想い』、受け取ってくれ!」





アンジー「……解斗たちの、『想い』?」



百田「そうだ! オレ達と一緒に、何かやろうぜ!」



アンジー「!?」



百田「内容はなんでもありだ!」



百田「アンジーとキーボと一緒に! 絵を描いたりーーー」



百田「ーーーカルタや花札で遊んだりでも良い!」



百田「オレ達とも一緒に何かして、『想い』を残してくれ!」






百田「それが、オレ達の『想い』だ!」





王馬「……ホント、百田ちゃんってウザいよねー」



百田「!?」



アンジー「……小吉?」



王馬「勝手に、みんなのことまで決めちゃってさー」



キーボ「……ちょっと、王馬クンーーー」



王馬「……いくら、その答えが決まってるとはいえ、自分以外にもそれを言わせてあげないなんてーーー」







王馬「ーーーボスの名が泣くよ?」





赤松「ーーーそうだよ、百田くん!」

赤松「私だって、アンジーさんを許すよ! アンジーさんは、友達で! みんなで、楽しく生きたいから!」

茶柱「転子も右に同じです! まったく、これだから男死は!」

キーボ「ボクも、アンジーさんを許します! 一緒に夜空を描きましょう! アンジーさん!」

ゴン太「ゴン太も、アンジーさんを許すよ! それから、みんなで一緒に、虫さんで和みたい!」

入間「む、虫プレイとかぁ……! 一緒にヤるんなら、はじめはもっと別のぉ……っ、!!」

真宮寺「……何をするかは、よく相談した上で決めた方が良さそうだネ」

星「……スポーツに関してなら、いくらか教えられるぜ」

東条「万が一、誰かが怪我するようなことがあれば、いつでも言ってちょうだい。応急処置は私がするわ」

王馬「キー坊の場合は、入間ちゃんに修理して貰うことになるだろうけどねー」

キーボ「なっ、王馬クン! ここでまたロボット差別ですか!?」

入間「ムシすんなよぉ……! それと、キーボは言われずとも直してやるからなぁ……!」





アンジー「………!!」



百田「……たはは、まさか、王馬に一本取られちまうたあな……」

王馬「にしし! 今更だね、百田ちゃん! 普段から、一本どころか、三振ノックアウトの癖してさー!」

百田「う、うるせー! オレは野球よりもテニス派なんだよ!」

入間「言い訳になってねーぞ、ダボ!」

百田「あー、もー、とにかく、そういうこった、アンジー!」ビシッ














「「「「「「「「「「「これが、みんなの『想い』だ!」」」」」」」」」」」




















アンジー「………っっ、!!」











キーボ「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

天海「………」

入間「………」

百田「………」





アンジー「……うん、わかったよ、みんな!」



キーボ「!」

真宮寺「……!」



アンジー「みんな一緒に! 神った『想い出』! 作っちゃおー!」





キーボ「……アンジーさん……!」

真宮寺「……夜長さん……」

百田「おう! その通りだ、アンジー!」

百田「よし! それなら、さっそく何やるか決めねーとな!」

入間「な、ナニをヤるかぁ!? こんな大人数で、そんな……!?」



赤松「……だったらさ、アレやらない?」



ゴン太「? アレって何なの? 赤松さん」



入間「ま、また、ムシかよぉ……!」



赤松「ほら、前に話したでしょ?」

赤松「……もしここに、同じ学園の仲間が来たら、全員でやろうってーーーー」





キーボ「……?」



真宮寺「………」



アンジー「……アンジーも良いのかな?」



赤松「もちろんだよ、アンジーさん! それに、こういうのは全員でやった方が良いに決まってるんだから!」



アンジー「……ありがとう、楓……」





キーボ(……なんでしょうか?)




キーボ(先ほどから、何の話をーーー)




百田「ーーーよし、さっそくやるぞ、オメーら!」



アンジー「……うん!」





タッタッタッ……!



キーボ「!?」



赤松「いくよー、みんなー!」

赤松「せーのっ、!!」














「「「「「「「「「「「おかえり(なさい)(っす)(だな)! キーボ(くん)(さん)!」」」」」」」」」」」
















キーボ「………」






キーボ「……えっ、?」








王馬「……もー、ノリ悪いなー! これだからロボットはーーー」



キーボ「あっ、えーとーーー」



キーボ「ーーーこれは、いったいーーー」



アンジー「……おかえりの、あいさつだよ」



キーボ「!?」





赤松「……実はね? 学園の仲間が来たら、こうして、おかえりを言うことにしてたんだ……」



百田「オレ達、全員の『想い』を込めてな!」



キーボ「………!!」








アンジー「……遅くなっちゃったけどね」






キーボ「アンジーさん……」








王馬「……まー、ここ何週間かは、かなり忙しくて全員が一斉にやってこれる機会なんてなかったしーーー」

王馬「ーーー今日の場合はたまたま都合がついただけだから、どのみち遅くなってたとは思うけどね」



アンジー「小吉……」



星「……それに、今こんなこと言うのもなんだがーーー本来こうやって出迎えをするのは、遅いに越したことはねえからな」

天海「……同じく死後の世界に来たら来たで悲しむことになる……複雑な問題っす」

東条「事実、すごく悲しむ人がいることを考慮すればーーー」



入間「………」

ゴン太「………」

茶柱「………」

百田「………」



東条「ーーーそう、一概には、間違いとも言い切れないわ」





アンジー「……みんな……」



真宮寺「………」



キーボ「………」





茶柱「……実際、転子は複雑です」




キーボ(茶柱さん……)




茶柱「……まさか、男死が来ることで、こんな複雑な気持ちになるだなんて……!」





キーボ「……えっ、?」



アンジー「……!」



真宮寺「………」



王馬「……あー、やっぱり、茶柱ちゃんは、そうくるよねー」





入間「……おい、茶柱。一応聞いとくが、お前、いつからキーボを “ 男 ” って認めたんだ?」

茶柱「……男らしく、女子をたらし込むというのならば、例外なく男死です!」



キーボ「……はい? たらし込む?」



アンジー「………」



キーボ「いったい何のーーー」



真宮寺「ーーーそれはそうと、キーボ君……」



キーボ「?」



真宮寺「……君は、おかえりって言われたら、どうするのかな?」





キーボ「あっ……!」



アンジー「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

天海「………」

百田「………」

入間「………」





キーボ(ーーーそうでした、その通りでした)




アンジー「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

天海「………」

入間「………」

百田「………」




キーボ(ーーーみんなの『想い』が、ここにある)




キーボ(他ならない、ボクに向けてくれた……)




キーボ(……そんな、あたたかい、心がーーー)




キーボ(ーーーならば、ボクの放つ言葉はーーーー!)











キーボ「ーーーただいま!」








次の投下からエピローグになります。

ただ、その前に>>344の内容を修正します。




キーボ(……だとすれば、渡りに船ですね)


キーボ(昨日、最後に修練場を出てから今日の朝食前に至るまで、真宮寺クンは自室にいませんでした)


キーボ(ーーー昨晩の空鶴さんの話によれば、真宮寺クンは別の部屋で、 “ 何か ” をしていたようです)


キーボ(そして、それに集中するため、真宮寺クンは一人でいる必要がありーーー集中し過ぎた結果、疲労で別の部屋で寝落ちしてしまった)


キーボ(……寝室以外で寝たことの罰として、空鶴さんは真宮寺クンを起こさず、別の誰かが起こすことも許さずーーー)




キーボ(ーーー布団もかけずに、寝させたままにすることに決めた)




キーボ(そうした罰を与えたと、空鶴さんは昨晩話していた)


キーボ(故に、ボクがアンジーさんに伝えたことを、真宮寺クンにも詳しく伝えることはできなかった)




キーボ(ですが、今からであれば、しっかり伝えられる)




キーボ(伝えれば、真宮寺クンの苦しみも、良い方向に和らぐかもしれませんしーーー)


キーボ(ーーーその後、ボクら三人で、百田クン達に同じ話をすればーーー)


キーボ(ーーーもしかしたら、全員の苦しみをーーー)






岩鷲「おー、どうした、キーボ? こんなとこでよ?」


>>344の内容を>>496の内容に修正します。




ーエピローグー






ー砕かれた先にある世界ー





キーボ(ーーーあれから、半世紀以上ものの時が経ちました)




キーボ(百田クン達と再会したあと、ボクら三人でみなさんに真相をお伝えしーーーみなさんは深い覚悟をもって、受け入れてくれました)




キーボ(その上で、改めてそれぞれの辿る道を考え、見出しーーー)




キーボ(ーーー歩むことになりました)








キーボ(そうして、歩み続けている)






キーボ(半世紀以上が経過した現在でも、なりたい自分を見出し……その道のままに、歩み続けているのです)








キーボ(その過程で、茶柱さん、ゴン太クン、東条さんの三人はーーー)




キーボ(ーーー真宮寺クンの話していた通り、護廷十三隊の死神となりました)




キーボ(それも全員が、救護部隊……【四番隊】の死神となったのです)


キーボ(それからは、医療霊術である回道や隊士への心理的ケアなどを必死に研究し、鍛錬と実践に励んでいます)


キーボ(その結果、多数の護廷隊士が、彼女達によって心と命を救われることとなりました)




キーボ(そうして、人の心と命を護り続けています)




キーボ(……これは、みなさんのたゆまぬ努力の結果ではありますがーーーそれができたことには、四番隊の虎徹隊長を中心とする先達の方達が、尊敬に足る存在だったことも大きかったと思います)


キーボ(だからこそ、先達の支えになりたいと思うことができ、その気持ちのままに、己を磨き上げることもできた)




キーボ(ボクは、そう考えています)





キーボ(……もちろん、通常の死神としての鍛錬も、怠ってはいません)




キーボ(茶柱さん達は、斬魄刀との “ 対話と同調 ” 、瞬歩の修得に成功し……さらにはそれぞれ白打の鍛錬に励んでいます)




キーボ(その結果として、茶柱さんは技術を中心とした、ゴン太クンは力を中心とした白打を、扱えるようになりました)




キーボ(……もっとも、 “ 千里通天掌 ” の修得は流石にまだ先の話でしょうが……)





キーボ(……なお、東条さんも、白打を身に付けています)


キーボ(技術や力に特化したものではありませんがーーーその二つをバランスよく合わせもった格闘スタイル、それを身に付けているのです)


キーボ(一対一の模擬戦闘では、茶柱さんとゴン太クンに、勝るとも劣らない戦いを見せていたくらいでした)


キーボ(また、東条さんは、他にも鬼道の才能などにも秀でており、基本能力の優れた死神として……多数の方から評価され続けています)




キーボ(今では、既に高い立場を得ており、霊圧は副隊長クラスです)




キーボ(もしかしたら、近いうちに副隊長に昇進するかもしれません)





キーボ(……もっとも、東条さん自身は、評価され、上に行くことを恐怖していますがーーー)




キーボ(ーーー東条さんには仲間がいる)




キーボ(護廷の二字の名の元に、人を護る、大勢の仲間がいる)


キーボ(四番隊の、護廷隊の、仲間がいる)


キーボ(側には、恐怖のあまり誤った判断を下すことの痛みを知る、ゴン太クンがいる。仲間に心を開いて感情を表現することの大切さを知る、茶柱さんがいる)


キーボ(今は、そうした仲間と共に、恐怖を背負うことができる)


キーボ(だから、東条さんが、どこまで上り詰めようと、どんな力や実績、称号を手に入れようとーーー)




キーボ(ーーーそれに振り回されることなく、仲間と共に、人を護り続ける)




キーボ(……そんな、隊長格に相応しい存在として、歩み続けることができる)




キーボ(ボクはそう信じています)





キーボ(……次に、入間さんと百田クンですがーーー)




キーボ(ーーーまたもや真宮寺クンの言っていた通り、護廷十三隊ではなく、貴族お抱えの死神となりました)




キーボ(それも、【四楓院家】という、大貴族の抱える技術開発部門ーーー)




キーボ(ーーーそこの科学者として、働くことになったのです)




キーボ(ただ、その技術開発部門は、名目上のものらしく、入間さんと百田クンしかいません)


キーボ(……どういうことなのか、人事に質問したそうですがーーーその後に四楓院家の現当主の方がやって来て、瀞霊廷の外で研究を行うよう命じられたそうです)


キーボ(瀞霊廷に在住していない、某フリー科学者の元まで行くようにと)


キーボ(そう、入間さん達は、浦原さんの元まで出向いて研究を行い、その成果を四楓院家に還元するように言われたのです)


キーボ(そのため、入間さんと百田クンは、浦原さんの元で助手をするという形で、必死に勉強し、技術開発のための研究を重ねています)


キーボ(その成果は、四楓院家もしくは浦原商店の商品となり、今でも尸魂界の役に立ち、人を支え続けている)




キーボ(……事実、そうした入間さん達の発明品を、ボクも浦原商店などから定期的に購入し、毎日の生活を支えられているのです)





キーボ(……このまま研究を続ければ、入間さん達の発明で尸魂界はさらなる発展を遂げていく)


キーボ(百田クンも、霊王宮の守護を任されるに足る何かを、創り出す日が、きっとやってくる)


キーボ(その後、霊王様やその守護を任される死神と出会い、そこでコミュニケーションや霊王宮の研究を行えばーーー)


キーボ(ーーー霊王様や霊王宮が、世界全体にとってどういう存在なのかを、理解することもできるでしょう)




キーボ(そうして、世界の仕組みを、より深く知ることができるはずです)




キーボ(また、霊王宮の守護を任された暁には、尸魂界にも宇宙のような場所があるか否か? 自分達の手で徹底的に確かめると話していました)


キーボ(百田クンと入間さんでロケットのようなものを開発し、霊王宮のさらに上……宇宙かもしれない場所ーーー)




キーボ(ーーーそこに敵となるような存在が潜んでいないか? 確かめるという名目で、探検するとのことでした)





キーボ(……そこには、まだ自分達の知らない知的生命体がいるかもしれませんしーーー)




キーボ(ーーーそうでなくともまだ見たことのない素晴らしい何かがあるかもしれない)




キーボ(そこに辿り着いて、社会全体に発表すればーーー地上にいる人達も、新たな知的生命体や素晴らしい何かの存在を知り、その価値を知ることができる)


キーボ(その人達が、百田クン達に続き、空の上まで出向いて……新たな知的生命体や素晴らしい何かと触れ合うことができるかもしれない)


キーボ(……もちろん、霊王宮の警備上の理由などもあって、大勢の人達が空の上に行くことには問題があるかもしれませんがーーー)




キーボ(ーーーそれでも、研究を続けて、己が発想力を鍛え続ければ、その発想力をもって解決できるかもしれない)




キーボ(……そうした気持ちをもって、百田クンと入間さんは、お互いの手を取り合っている)




キーボ(その上で、霊王宮という名の “ 目に見える光 ” 、その先にある “ 可能性の闇 ” ーーー)




キーボ(ーーー霊王宮のさらに上の方まで、手を伸ばす予定、とのことでした)








キーボ(……ボクは、そうしているお二人を想像すると、とても心があたたかくなります)








キーボ(まるで、自分のことのように、誇らしい)








キーボ(……なお、浦原さんは普段は現世の日本に住んでいるということなので、入間さんと百田クンも、必然的に同じ場所に住むことになりました)


キーボ(そこで、百田クン達は、現世で生き残ったみんなと会おうとも考えたようですがーーーそれは叶いませんでした)


キーボ(百田クン達に限らず、生前の記憶を封じる処置を取らずに死神になった者は、自分から生前の関係者や関係組織と接触することを、掟で固く禁じられているのです)


キーボ(偶然を頼って会おうにもーーー浦原さんからの情報によると、現世で生き残ったみんなは、日本国内に在住していないらしく、偶然会うことは不可能でした)




キーボ(……もし、会える時が来るとすればーーーー)





キーボ(ーーーそして、赤松さん、王馬クン、天海クン、星クンの四人は、またしても真宮寺クンの言う通り、音楽芸人となりました)


キーボ(赤松さんの演奏と王馬クン達の芸は、観客を巻き込んだショーでもありーーー)




キーボ(ーーー流魂街の住民、瀞霊廷の貴族、平民、死神に関係なく、人の心を照らし……多くの人々から絶賛されています)




キーボ(……ボクら三人も、その中に含まれています)


キーボ(【三番隊】の鳳橋隊長も、赤松さん達のファンを公言し、実際に演奏を聴いて芸を見るためにーーー何度も貴重な時間を割いてくれています)


キーボ(他にも、多数の死神が赤松さん達のファンであり……何者かが赤松さん達に危害を加えることのないよう、目を光らせたりーーー)




キーボ(ーーーある時には、赤松さん達を直接守ってくれることだってあります)




キーボ(……赤松さん達が流魂街に出向いた時、尸魂界に生息する虚に狙われることも稀にありましたからね。多くの方から守って頂けるのは本当にありがたい)





キーボ(……なお、赤松さん達が初めて虚に狙われた際は、死神に助けて貰った後、赤松さん達の才能の形が一風変わったものになりました)




キーボ(……それは、銀城さん曰く【因子を持つ存在が】【虚に襲われた】ことにより、起きることもある現象とのことですがーーー)








キーボ(ーーーそれはまた、別の話)





キーボ(……信じてますよ、王馬クン)




キーボ(キミは嘘つきでロボット差別のようなことをしますがーーー)




キーボ(ーーーその嘘の風船には、キミ達の想いが詰まっていると)




キーボ(赤松さん達と一緒に、そして観客と一緒に想い描いた夢が、風船の中で自由に泳いでいると)




キーボ(ボクは信じていますからね)





キーボ(……結局みんな、大まかには、真宮寺クンが話していた通りの道を辿ることになりましたね……)




キーボ(ーーーそれで良い)




キーボ(なぜなら、その道は、想うままに選択し、想うままに進んだ道なのですから)




キーボ(だからこそ、それに意味を感じ、価値を信じることができる)




キーボ(ならば、それで良い)




キーボ(そうして歩んだ道なら……どんなに痛くて苦しくても、後悔はない)




キーボ(きっと、そうなんですから……)





キーボ(……そして、そうした道を歩むのは、王馬クン達だけではありません)






キーボ(そう、残るボクら三人も、またーーーー)



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー






ー尸魂界・志波家の屋敷ー



アンジー「ーーー今日も楽しかったねー、キーボ!」

キーボ「ええ! ボクも楽しかったですよ、アンジーさん!」

アンジー「キーボとふたりで、すっごい神った絵描けたよー! にゃはははー!」

キーボ「休暇をとって正解でしたね。今日こうして時間をかけなければ、ボク達の絵はここまで昇華されなかったでしょうから……」






真宮寺「ーーーやあ、お疲れ様、夜長さん、キーボ君」





キーボ「あっ、真宮寺クン、お疲れ様です」

アンジー「お疲れ、是清ー! 今日の仕事と修行は終わりー?」



真宮寺「うん、今日の分はネ……」



真宮寺「ーーーククク、それにしても、花火作りは本当に奥が深いヨ!」

真宮寺「半世紀かけて未だに、学ぶことはまだまだ多い!」

真宮寺「尸魂界の花火は霊子で構成されている以上、現世のものよりも自由度が高く、難易度は高いと、弟子入りの際に覚悟していたけれどーーー」



真宮寺「ーーーまさか、これほどまでとは夢にも思わなかった! あァ、この感動を、言葉にせずにはいられないヨ!」





アンジー「にゃはははー! 是清は相変わらずだねー!」



キーボ「ええ、空鶴さんに弟子入りしてから今に至るまで、ずっと同じことを言い続けています」

キーボ「ボクが出した統計によれば、これでーーー」



アンジー「ーーーあー、数字はともかく、どうかな? 是清ー?」



アンジー「今日の【鰤清劇場】は、どんな感じー?」





真宮寺「ーーーごめんネ、夜長さん。申し訳ないけど、今日は披露できそうにないヨ」

アンジー「あれま? そうなの?」

真宮寺「休日中にいろいろと調べたんだけど、その時点で考えがまとまらなくて……」



真宮寺「……すまないネ、本当に」



アンジー「気にすることないよー! やろうとしてくれたことだけでも、アンジーは嬉しいよー!」

キーボ「そうですよ、真宮寺クン! ボク達のために貴重な休日を使って調べてくれたのでしょう?」

キーボ「それだけでも、ボク達は嬉しく思いますよ!」



真宮寺「………」





キーボ「……それに、キミが作る、【誓いの花火】を待っている人は、たくさんいるんでしょう?」






真宮寺「……そうだネ。確かにそうだヨ」






キーボ「それに加えて、クライアントの要望に応じて【打ち上げタイプ】【手に持つタイプ】【その他のタイプ】に分けーーー調合だって変えなくてはいけません」






キーボ「……大変、でしょう?」





真宮寺「……人それぞれ、込めたい『想い』の形は違う」

真宮寺「そうした違いと向き合い、その人に合ったものを考えることが、人と向き合うことでもある」



真宮寺「その事実から、目を逸らすわけにはいかないヨ」



アンジー「そうそうー! だから、今は劇場しないで、カラダ休めて、明日に備えるべきなんだよー!」



キーボ「ボクもそれに賛成です!」

キーボ「なので、ボク達だけでなく……クライアント、そしてキミ自身も大切にしてください! 真宮寺クン!」

キーボ「キミが、今すぐここで寝たとしても、ボクが守ってみせますから!」




真宮寺「ーーーありがとう」





真宮寺「ーーーと言って綺麗に終わらせたいところだったけどーーー」



キーボ「?」






真宮寺「ーーーキーボ君、 “ その刀(ひと) ” は大丈夫なのかい?」





キーボ「……それは、どういった意味なのでしょうか?」



真宮寺「いや、君がつい最近、名を教えて貰ったという “ その刀(ひと) ” はーーーどうにも呟きが多いという話だったからネ」



真宮寺「実際、他の人は、君がそうした呟きに反応していると話していた」

アンジー「あー、確かにー!」



キーボ「………」



真宮寺「だけど、今の君はそうした反応をしていない」

真宮寺「だとすれば、説得して御しきれるようになったと思いたいところだけどーーー」






真宮寺「ーーー大丈夫だよネ?」





真宮寺「……戦闘中に喧嘩とかしないよね?」



キーボ「………」



真宮寺「……何か言ってヨ」






真宮寺「……【黒き死覇鎧を纏った】【白の鉄神】ーーー」






真宮寺「ーーー “ 超始解級の死神ロボット ” 、キーボ君?」





キーボ(死神ver)「ーーー大丈夫ですよ。喧嘩なんてしません」



キーボ「この斬魄刀(ひと)が、浅打だったこれまでと同じようにーーー共に戦いますよ、虚と」



真宮寺「………」



キーボ「ーーーただ、この斬魄刀(ひと)、口をひらけばあまりにも理解しがたいことばかり呟くんですよ」





真宮寺「……どんな感じなんだい、それは?」



キーボ「……少なくとも、この斬魄刀(ひと)と比べればーーー」



キーボ「ーーー周りに、親しい人しかいない時の入間さんの方が、遥かに常識的な言動を取っていると思います」



アンジー「……自重しない美兎の方がマシって……」



真宮寺「それは凄まじいネ……」



キーボ「ええ……なので、ボクは思考を重ねた結果、この斬魄刀(ひと)の言葉は普段は心に留めるだけにしてーーー返答は夜の対話の時に行うことにしたんです」





真宮寺「……ちなみに、今は何て言ってるんだい?」



アンジー「アンジーも気になるー!」



キーボ「……いや、ちょっと、人に伝えるには、いささか以上に気が引ける内容でーーー」







キーボ「ーーー申し訳ありませんが、あまり気にしない方針でお願いします」





真宮寺「……わかったヨ。そこまで言うなら気にしないヨ」



アンジー「アンジーもねー! アンジーは日本語だけじゃなくて、空気も読めるのだー!」



キーボ「……ありがとうございます」





アンジー「……あー、そうそうー」



アンジー「アンジーねー、気になることがあるんだけどーーー」



キーボ「……?」






アンジー「ーーーキーボは、次いつアンジーと “ 一日 ” 一緒にいられるー?」





キーボ「……そうですね。スケジュールを再計算してみたところ、二週間後の同じ曜日が妥当かと」

キーボ「この日ならば、一日近く一緒にいられますよ! アンジーさん!」

アンジー「……あれ? キーボ、来週はダメなの?」

キーボ「すみません、その日は眠八號さんとの先約が入ってまして」



アンジー「……んー?」



キーボ「……ありがたいことに、彼女から付きっきりで、斬魄刀との対話に関する指南を頂けるとのことでーーーー」





アンジー「………」



キーボ「……アンジーさん?」



アンジー「主とアンジーは言いました。女心を弄ぶ屑鉄は自爆しろ、と」



キーボ「ちょっ!? 縁起でもないこと言わないでください!!」

キーボ「というか、“ 女心を弄ぶ ” !?」

キーボ「真っ赤な誤解ですよ! ボクと眠八號さんはそんな関係じゃありません!」



アンジー「……本当、キーボ?」



キーボ「本当ですよ! 信じてください!」



アンジー「……そっかー、なら良いけどー」



真宮寺「まァ、誤解じゃなかったら、涅隊長の手でネジ一本まで分解されることになるだろうけどネ」



キーボ「恐ろしいことを言わないでください! そして、蒸し返さないでください!」



真宮寺「ククク……ごめんヨ。ちょっと気になってネ」



キーボ「いや、蒸し返すのは、本気で勘弁してください!」

キーボ「ただでさえ普段から、涅隊長と大前田副隊長のお二人に、 ただならぬ目で睨まれているんですから!」





アンジー「ーーーえっ……」



キーボ「誤解を招くような発言はくれぐれもーーー」



真宮寺「……大前田副隊長ってーーー」



アンジー「ーーー何かなー?」





キーボ「……?」キョトン



真宮寺「……いや、涅隊長はわかるヨ? 眠八號さんの父親だからネ」



アンジー「だけど、そこでー、どうして、まれち……あの人が出てくるのかなー?」





キーボ「……ああ、実はこの前、茶柱さん達と合同任務をした際、同じく四番隊の希代さん……大前田副隊長の妹さんと仲良くなりましてね」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それ以降、大前田副隊長のボクを見る目がさらに厳しくなってーーー」



アンジー「屑鉄自爆しろ」



キーボ「ーーーええっ、!?」ガガーンッ





アンジー「………」



キーボ「ち、ちょっと、違うんですよ! 確かに希代さんにも付きっきりで、斬魄刀との対話に関する指南をして頂ける予定はありますが、決してそんなーーー」



キーボ「ーーー【屑鉄爆発しろ☆】!? キミまで何を言っているんですか?」



真宮寺「ククク……どうやら、自分の斬魄刀にまで批難を受けたようだネ」

アンジー「……今回ばかりは刀が正しいみたいだねー」

アンジー「うんうん、女心のわからない屑鉄だからねー、しょうがないねー」



キーボ「うっ……」



真宮寺「まったく、これでは卍解修得まで何千年かかることやら。先が思いやられるようだヨ」





キーボ「ぐぬぬ……確かにボクにもまだわからない心があるようですが、決してこのままでは終わりませんよ!」



アンジー「………」



キーボ「そうでもなければ、この理解しがたい斬魄刀と……もう一人のボクと一生付き合っていくなんて不可能ですから!」



真宮寺「………」



キーボ「絶対にわかってみせますよ! 刀心も! 女心も!」

キーボ「そうやって人の心と向き合い、対話して理解して、いつか卍解を修得してーーー」



キーボ「ーーー様々な心と想いを、大切にできる『歯車』にーーー」



キーボ「ーーーそう、隊長になってみせます!」






キーボ「それが、ボクの歩み続ける、 “ 道 ” です!」





アンジー「……うんうん、わかろうとしてくれるなら大丈夫だよー!」

アンジー「それなら後で、お菓子、また食べさせてあげるねー!」



キーボ「……えっ、?」

真宮寺「………」



キーボ「……待ってください、今日の分は既に頂いてーーー」



アンジー「……今日、キーボは、アンジーに、一日ずっと付き合ってくれた……」



キーボ「………」



アンジー「それに加えて、ずっと心に、その斬魄刀(ひと)の言葉受け止めて、大変だったよね?」





キーボ「……この斬魄刀(ひと)の相手が大変なのは、確かですね」



アンジー「でしょでしょー?」



キーボ「………」



アンジー「……だから、アンジーが作った、お菓子、キーボに、また食べさせてあげるんだー」





キーボ「……良いんですか?」

キーボ「また、作らなくてはいけなくなりますよ?」



アンジー「うんうん、問題ナッシングだよー!」

アンジー「キーボだったら、いくら食べてもデブデブにはならないしーーー」



キーボ「………」



アンジー「ーーー何より、美味しく食べてくれる人がいる」



アンジー「それなら、アンジーは、いくらでも作れちゃうよー!」





キーボ「……ありがとうございます、アンジーさん」

キーボ「アンジーさんのお菓子、楽しみにしています!」



アンジー「ふっふー、期待しててねー、キーボ!」

アンジー「アンジーたちだったら、デブデブになっちゃうくらい、甘くてトロトロなのをーーー」






アンジー「ーーーいっぱい、いっぱい、食べさせて、あげる」






アンジー「……満足するまで、ね?」











キーボ「……はい!」











真宮寺「……アー、ちょっと良いかな?」



キーボ&アンジー「「?」」



真宮寺「いや、無粋なことを言うようでなんだけれどもネ……?」



キーボ「………」



真宮寺「……卍解修得は、あくまでも、隊長になるための基本条件の一つであって、それで隊長になれるとは限らない、ということーーー」



真宮寺「ーーーそこは、わかっておいて欲しいかな……」





キーボ「ーーーわかってますよ! だからこそ、様々な人の心と想いを、大切にできる存在になるんです!」

キーボ「その結果こそが隊長なんです! それは、ボクら【十三番隊】の教えが、朽木隊長の教えが証明していることです!」エッヘン

アンジー「……んー? でもでもー、隊長の椅子って、もう空きゼロだよねー?」

真宮寺「そうだネ、空きがゼロである以上は隊長になれないはずだヨ」



真宮寺「……それでも隊長になるのであれば、隊士二百名以上の立会いのもとで、現隊長と一対一で斬り合うしかなくなるけどーーー」



キーボ「そんなことするはずがないでしょう! そんなことしたら、朽木隊長に恩を仇で返すことになりますし! 何より、生き残れたとしても、絶対に茶柱さん達と苺花さん達から処されますよ!」



キーボ「……ボクが隊長になる時は、ボクがその器を持った上で、誰かが引退したその時です!」





真宮寺「ククク……そうかい。ならば、その斬魄刀(ひと)に夜長さん……共に生きる誰かとのコミュニケーションに、いっそう励むことだヨ、キーボ君」



キーボ「……!」

アンジー「………」



真宮寺「その斬魄刀(ひと)にも、夜長さんにも、誰にも恥じることのないようーーー」



真宮寺「ーーーしっかりと、生きないと、ネ?」





キーボ「……もちろんですよ、真宮寺クン!」



真宮寺「………」



キーボ「ボクだって、これからも、しっかりと生き抜いてみせます!」



キーボ「キミにも、負けませんからね!」











真宮寺(……その意気だヨ、キーボ君)











カランカラン……!



真宮寺「……おや、これはーーー」

キーボ「誰か来たみたいですね」スッ…

真宮寺「……僕が行くヨ。キーボ君は、そこでゆっくりしてて」

キーボ「……そうですか?」

アンジー「そうだよー、キーボはお客様なんだから、そこにドッシリだよー」

アンジー「アンジーはここの居候だから、行くけどねー!」

アンジー「ゆっくりマッタリ待っててねー、キーボ!」

キーボ「……わかりました。お願いします」



スタスタ……



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー





キーボ「………」


キーボ(……二人とも、客人との話に時間がかかっているようですね)


キーボ(……いや、アンジーさんの霊圧がこちらに近づいていることからみて、もう終わってはいるのでしょうがーーーそれでも時間がかかり過ぎている)




キーボ(どうかしたんでしょうか?)




キーボ(……まあ、玄関近くで空鶴さんの元気な霊圧が感じられますしーーーそれ以前に、アンジーさんは、ずっと “ あの霊的グッズ ” で、守られている)


キーボ(それらを考えれば、危険はないとは思いますが……)


キーボ(……ですが一応、集音器の精度を上げて、アンジーさん達の状態を確認するべきでしょうか? 一応現在は非常時以外は禁止されていることですがーーー)




キーボ(ーーーいや、それなら、普通に、アンジーさん達の元まで出向いた方がーーーー)






ガララッ……!



真宮寺「キーボ君……」

アンジー「……キーボ」

キーボ「あっ、アンジーさん! 真宮寺クン!」

キーボ「どうかされたんですか? かなり時間がかかっているようでしたがーーー」



アンジー「ーーーあー、ちょっとねー」



真宮寺「ーーーごめんヨ。確認のために話し込んでしまってネ……」





キーボ「……確認?」



アンジー「……そうだよー、神さまカードにも必要な本人確認だよー」



真宮寺「目の前にいる相手が、誰であるか、をネ……」





キーボ「……?」



アンジー「………」



真宮寺「………」



キーボ「それは、どういうーーー」




……スタスタ……




……スウッ……











「…………」











キーボ「……え、えーと……?」




「…………」




キーボ「……あー、その、初めまして。ボクは、護廷十三隊、十三番隊の死神ロボット、キーボと申します」




「…………」




キーボ「……すみませんーーー」




キーボ「ーーーお手数ですが、あなたが、どなたなのかーーー」




キーボ「ーーーそれで、こちらにどのようなご用件か、お聞かせて頂いても、よろしいでしょうか?」





アンジー「……キーボなら、わかるんじゃない?」



キーボ「……はい?」



アンジー「名前、聞かなくてもさ」



キーボ「??」



真宮寺「……もし、僕達からヒントを出せるとすればーーー」



真宮寺「ーーーこの『人』は、『死神の名を冠する者達』によって、価値を見出され、ここまで辿り着いた魂であることーーー」









真宮寺「ーーーただ、それだけだヨ」





キーボ「……『死神の名を冠する者達』……?」




キーボ(まさか、それってーーー)




「ーーー久しぶり」




キーボ「ーーーえっ、?」




「ーーーそして、ありがとう」




キーボ「ーーー!?」






「……決して忘れない」




「 “ あの暗闇 ” を空の光で照らし、道を見出してくれたのは、誰だったかーーー」




「ーーー決して忘れることはない」




「この心に、今も残っているーーーー」












キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」












「ーーーあの時、暗闇を照らして、道を見出してくれたからーーー」




「ーーーその道を歩んで、人の世を生き抜くことができた」




「夢を、叶えることができたんだ」




キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」




「……だけど、夢は、いずれ終わりを迎える」




「その果てに、黒崎さんによって新たな道が見出されーーー」




「ーーー歩みを続け、探し出し、こうして、ここに辿り着いた」









キーボ「ーーーキミ、はーーーー」






「……改めて、言うよーーーー」











「ーーー道を、見出してくれてーーー」








「ーーー本当にありがとう」








アンジー「………」



真宮寺「………」



キーボ「あ、ああ……!!」




キーボ(ーーー間違いない! この『人』は、紛れもなくーーー)




「…………」






(ーーー其れは花火)






(血を糧とした鉄の刃で振り下ろされる光と、眼前に広がる可能性の闇が想い描いた、夜空の輝き)






(そのかけがえのない価値は、時に代償として、我が身を別れの業火で焼き焦がす)






(それでも、恐怖を退け、心が見出した輝きはーーー)






(ーーーきっと、 “ 勇気 ” となって、胸に刻まれる)












「ーーーただいま!」











キーボ「……おかえりなさい!」

キーボ「そして、こちらこそ、ありがとうございました!」




「…………」




キーボ「最後まで、生き抜いてくれて!」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「ボクは、それがとても嬉しい」





キーボ(……死者(こちらがわ)となってしまった、悲しみはあれどーーー)




「…………」




キーボ(ーーーそれでも、嬉しい)




キーボ(また、会えて!)











キーボ「本当に、おかえりなさい! そしてーーーー」

















キーボ「ーーーようこそ、尸魂界(しごのせかい)へ!」












「ーーー輝きとは、重なり」









「或る時は刀、或る時は弾丸、或る時はふたつ混じる一夜の夢となって、世に現れる」









「最後に名乗り上げるは、 “ 機械仕掛けの死神 ” 」









「祈るように重なり、愛しあうように輝き、心中のように壊れあう、夢夜の歯車」









「この世の全ては、終わりを迎え砕かれる、黒の棺にある」







「砕かれた先に、ある世界ーーー」













「ーーー想い描くは、胸の痛み」






いったんここまで。


そして、ここから先は、

キーボ 「砕かれた先にある世界」おまけ編
キーボ 「砕かれた先にある世界」おまけ編 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1554039386/)

の修正バージョンを投下します。


追加のおまけもあるので、よろしければお読みください。



おまけの前に、このスレで投下したものを少しだけ修正します。




アンジー「……『物』だと思っている、だから、アンジーはみんなに黙って、キーボを独り占めしてーーー」



アンジー「ーーー是清の劇場を、聞き続けた……」



真宮寺「……!」



アンジー「……あの時、アンジーは、是清の劇場が嬉しかった」

アンジー「だけど、それは、 “ わかりやすく説明しようしてくれてるから ” ……だけじゃなかった」



アンジー「……『超高校級の民俗学者』は、短い時間で、これだけの知識を持てる、劇場もできる。そんな是清を思い通りにできる自分は『すごい』ーーー」



キーボ「!」

真宮寺「………」



アンジー「ーーーそんな風に思うことも、できたから」


>>454の内容を>>571の内容に修正します。




キーボ「………」


キーボ(……客人との話に時間がかかっているようですね、二人とも)


キーボ(……いや、アンジーさんの霊圧がこちらに近づいていることからみて、もう終わってはいるのでしょうがーーーそれでも時間がかかり過ぎているように思えます)




キーボ(どうかしたんでしょうか?)




キーボ(……まあ、玄関近くには空鶴さんの元気な霊圧が感じられますしーーー特に、アンジーさんは、ずっと “ あの霊的グッズ ” で、守られている)


キーボ(…… “ あの霊的グッズ ” は、貴重かつ扱える場所が限られるもののーーー故に、その効力は強大)


キーボ(そう、近くで意識を保つ一定の有機生命体ーーー真宮寺クンにまで、効力が及ぶくらいには)




キーボ(それらを考えれば、危険はないとは思いますが……)




キーボ(……ですが一応、集音器の精度を上げてアンジーさん達の状態を確認するべきでしょうか? 一応現在は非常時以外は禁止されていることですがーーー)




キーボ(ーーーいや、それなら、普通に、アンジーさん達の元まで出向いた方がーーーー)


>>547の内容を>>573の内容に修正します。




ーおまけ0ー



コンニャク型ホロウ(以下コンニャクン)「なんだ、この名前はーー!!」



プルプル……



東条(死神ver)「くっ……!」



コンニャクン「……ぬるっぷっぷっぷ!」プルプル



東条(あの虚……どうしても斬れない……!)




東条(まさか、あんな虚がいるだなんて……!)




東条(ううっ、コンニャク……! コンニャク……!)











『力が、欲しいか……』











東条「!?」



『欲しければ、くれてやろう』



東条(……この声、まさか私の斬魄刀からーーー)




『さあ、呼ぶのだ、キルミー……』




『我が名は、【ーーーーーー】』





東条「……ついに、自分から語りかけてくれたのね」



『………』



東条「……ありがとう」


東条「……ようやく、わかったわ。斬魄刀(あなた)の名前ーーー」



『そうだ! 我の名はーーーー』











東条「【斬・鉄・剣】!」











東条「………」



コンニャクン「………」



東条「破道の九十、【黒棺】」ゴオオッ!



コンニャクン「るぱんっ、!?」ドゴオンッ






「硬い鉄さえも斬り伏せる、美しい貴女は、まるで剣のよう」






「そんな貴女を前にして、決して斬れない柔らかな貴方は」






「今晩のおかずの、コンニャクに似ている」






~~~~~~~~

~~~~~~

~~~~

~~



ー四番隊隊舎・東条の寝室ー



東条「……夢!?」ガバァッ


浅打『………』






ーおまけ1ー



ユーハバッハ「ーーーリューダース・フリーゲン、今、私の前に居るお前は、預言者か?」

リューダース「は……え……あの……?」

ユーハバッハ「答えろ、私は今、 “ お前は預言者か? ” と問うている」



リューダース「……ひ……いえ……違います……」

ユーハバッハ「ならば、なぜ、遠い未来の話などする?」



ユーハバッハ「私は “ 今 ” の話がーーー」



リューダース「す、すべては、彼の預言を信頼したまでです!」

葉隠「そうだべ、社長! 俺の占いは3割当たる!」



ユーハバッハ「ーーー良かろう、許す」



ハッシュ「なん…だと…?」

イーバーン「ーーーというか、誰だね君は!?」ガビーンッ



葉隠「10万」

ユーハバッハ「立て替えよう」



イーバーン「陛下ーーー!??」ガガーンッ





ーおまけ2ー



苗木「くっ……!」

霧切「そこまでよ、苗木くん」

苗木「……霧切さん! どうして、こんなことをするの!?」

霧切「こんなこと、とは?」

苗木「こうやって、未来機関にクーデターを起こしてることについてだよ!?」

霧切「………」

苗木「何で、キミがこんなことーーー」

霧切「すべては、世界を、正しい形に戻すためよ」

霧切「そう、『彼』が、天に立つ、正しい世界へと」

苗木「正しい世界!? 『彼』!?」

苗木「何を言っているんだよ?! 霧切さん!!」

霧切「……苗木くん、あなたも忘れてしまっているのね」

霧切「きっと、あなたも、おかしなアニメを見過ぎたんだわ」

苗木「だから! 何の話をーーー」

霧切「思い出して、苗木くん」

苗木「!」

霧切「人類史上最大最悪の絶望的事件を解決に導けたのもーーー」

霧切「ーーー塔和タワーやジャバウォック島での事件を収束させられたのもーーー」

霧切「ーーー未来機関の同士討ちをくい止め、おかしなアニメから世界を守ることができたのも全部ーーー」



霧切「ーーー葉隠くんのおかげじゃない……!!」



~~~~~~~~

~~~~~~

~~~~

~~




月島「占い料金の支払いについては、こんな感じで良いかな?」

葉隠「いや、流石にそれは……」(世界滅ぶべ)






ーおまけ3ー



東仙(蝿)「ーーーそして、それがお前か、狛村ーーー」



狛村「………」



東仙(蝿)「ーーーふむ、思っていたよりーーー」



東仙(蝿)「ーーー醜いな」



ゴン太「その言葉はムシできないよ!」



東仙(蝿)&狛村「「………」」



東仙(蝿)&狛村「「………え?」」



ゴン太「ダメだよ虫さん! “ 醜い ” って言葉は、人に向けたら悪口になるんだよ!? 悪口を言うだなんて、紳士として見過ごせないよ!」

田中「その通りだ、剛腕なる蟲の賢者よ! かの人狼は、畜生道に堕ちながらも! 常人と隔たりし我が身を、衆目に晒す存在へと進化を遂げたのだ!」

田中「それも、恐怖に満ちし外界の中で、覇王である我の、破壊神暗黒四天王がごとく!」

田中「ベルゼバブよ! どうして貴様は、人の過去生を持ちながら、かの人狼の勇気ありし心の美しさに気づかぬのだ!?」



東仙(蝿)「………」

狛村「………」



東仙(蝿)「……すまなかったな、狛村、どうやら私は己が言葉に恐怖を宿らせることを怠っていたようだ」

狛村「……あ、ああ、貴公が再び人の心を見れるようになれたのならば、儂はーーー」



檜佐木(ーーーつーか誰だ!? あの二人!?)ガビーンッ



田中「鉄拳断風!」フッ



檜佐木(しかも、消えた!?)ガガーンッ





ーおまけ4ー



藍染(詐欺師)「やあ、また会えて嬉しいよ、雛森くん」

雛森「藍染隊長! 生きてたんですね!」ダキッ

藍染(詐欺師)「ははっ、急に抱きつかれるとはね」

雛森「ああ、この包容力……! 間違いなく、藍染隊長……!」ポニョポニョ

藍染(詐欺師)「甘えん坊さんだね、雛森くんは……」ナデナデ




…………………………………………………………………………




藍染「……覚えておくと良い、ギン」

ギン「………」



藍染「憧れは、理解から最も遠い感情だよ」



ギン(乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん)ブツブツ





ーおまけ5ー



一護「……兄貴ってのが、どうして一番最初に生まれてくるか知ってるか……?」

一護「後から生まれてくる……弟や妹を守るためだ!!」




…………………………………………………………………………




TV『兄貴が妹に向かって “ 殺してやる ” なんて……死んでも言うんじゃねェよ!!』



苗木「………」

九頭龍「………」

天海「………」



苗木&九頭龍&天海「「「…………」」」



ガシィッ……!



~~~~~~~~

~~~~~~

~~~~

~~




苗木(あの日、ボクら三人は、希望ヶ峰学園で、黒崎一護ファンクラブを結成した)



苗木(なお、そのあと、朽木白哉のアンチとなり、それから手の平返してファンに転向したりーーー)



苗木(ーーーあの大前田稀千代のファンになったりすることもーーー)



苗木(ーーーあの時のボクらは、まだ知らない)



山田「苗木殿! とうとうオークションに出ましたぞ! 稀千代フィギュア!」

苗木「なんだって!? 今すぐ落札だ!」


【おまけ・ファイナル】を投下する前に、>>55を修正します。




モノクマ?「改めて申し上げますが、【奇跡】は、傷を負ったものを神の尺度に交換できる」

モノクマ?「必要量の『想い』を溜め込んだ上で傷つけば、必ず発動します」

モノクマ?「……もちろん、封印された場合では、基本的に【奇跡】が発動することはありません」

モノクマ?「封印は基本的に、『傷つくこと』しては扱われませんから」

モノクマ?「故に、封印は【奇跡】を発動するトリガーとはならないはずでした」

モノクマ?「……しかし、初代霊王は、死神に全身を封印されて世界の楔にされた後に、散々傷つけられました」

モノクマ?「そう、霊王を恐れた死神が、霊王が封印状態にあるのを良いことにーーー」



モノクマ?「ーーー心臓、左腕、右腕などを、えぐって、もいで、切り落とした」



モノクマ?「それらは、全身を封印されたが故に起きたこと」

モノクマ?「そのため、『全身を封印されること』と『傷つくこと』に強い因果関係が結ばれ、双方がほぼ同義であるという風に、霊王の魂の『在り方』そのものに強く刻まれてしまったです」

モノクマ?「そして、その霊王は陛下によって殺され、奪い尽くされ、陛下と一つとなった」

モノクマ?「故に、陛下は『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】を発動することが可能となった」

モノクマ?「その後、実際に『全身を封印されること』をトリガーに【奇跡】が発動してしまったのです」



ユーハバッハ「………」



モノクマ?「……ただし、それでも『全身を封印されること』と『傷つくこと』が完全に同義という扱いではなかったため、【奇跡】は中途半端な形で発動することになった」

モノクマ?「その結果が、『想像』を実現する、 【夢想家】を利用した復活だったわけです」


>>55の内容を>>588の内容に修正します。




ーおまけ・ファイナルー



茶柱(死神ver)「ーーー縛道の四【這縄】!」



ヒュルヒュル……!



ジジ「あははっ、無駄だよーーッ」ヒュンッヒュンッ



茶柱「くっ……!」ザッ



ジジ「基礎スペックが違いすぎーーッ、ボクから斬魄刀を奪い返すなんてムリムリ!」



茶柱(ーーーどうして、こんなことに、なってしまったのでしょう……!)


茶柱(仕事を終えて現世に来たらーーーこの、滅却師に、襲われました……!)


茶柱(それで、突然この人が転子に血をかけようとして来たので、とっさに避けました……)


茶柱(……しかし、少しだけ血が、斬魄刀にかかってしまいーーーそれからどういうわけか、言うこと聞いてくれなくなってしまい、奪われてしまった……!)


茶柱(義魂丸(あの子)は、浦原さんに義骸に入れて貰い、現世の旅館の予約に向かわせたのでここには居らずーーー伝令神機も破壊されたせいで、尸魂界に助けを求めることもできない……!)


茶柱(……現世旅行を楽しむはずが、どうして、こんなことにーーーー)





ジジ「ねえーーッ、どうして、ボクの側に来てくれないのかなーー?」

茶柱「そんなこと、できるはず、ありません! 近づいたら、あなたの血を浴びせるつもりでしょう!」

ジジ「え~~? 別に良いじゃん、腕章見るにお姉さん四番隊でしょ? 血なんてケガ人から浴びまくりじゃない?」

茶柱「斬魄刀(その子)は、あなたの血を浴びてからおかしくなりました! その血に何か秘密があるんでしょう!?」



ジジ「……うん、そうだよ」ケロッ



ジジ「ボクの血を浴びるとね、みーんな、ボクのゾンビ、操り人形になっちゃうのーーッ!」



茶柱「!?」



ジジ「だからぁーーッ、死神のお姉さんもーーー」







ジジ「ーーーボクの血を呑んで、ゾンビになって欲しいんだ!」





茶柱「……ふざけないください! そんなバカなことやめて、さっさと斬魄刀を戻して、返してください! そして、二度と転子たちの前に現れないでください!」

ジジ「もーーッ、そんなこと言わないで、お姉さんもボクのゾンビになろうよぉ! バンビちゃんみたいにさ!」

茶柱「ば、ばんび!? 斬魄刀(その子)は、そんな名前じゃありません!」

ジジ「ーーああっ、違うよぉ! バンビちゃんってのは、この斬魄刀のことじゃなくて、ボクの大切なゾンビちゃんナンバーワンなの!」



ジジ「ちなみに、今は、ボクの影の中でスタンバッてる真っ最中ーーッ!」



茶柱「なっ、他にも被害者が……!? というか、影の中や “ ばんび ” って、まさかーーー」

ジジ「バンビちゃんはねー? 能力的に目立つし何よりバカだから、現世じゃ滅多に戦わせられなくってね! 今は影の中で、お腹とお胸に穴を空けて! ボクの血と命令を待ってるんだよぉ!」

茶柱「あ、穴……?」

ジジ「ああっ、バンビちゃん! そんな健気なところも、だい好きだよ! 早くお姉さんと一緒に抱きしめたぁーい!」キュンキュン

茶柱「……っ、!?」

ジジ「お姉さんも、今ここでゾンビになれば、ジジだけじゃなくてバンビちゃんのお友だちになれるよぉ! これは受けるしかないね、うん!」





茶柱「な、なんで、そんなに人をゾンビにしたがるんですか!?」

ジジ「ん~~? 今日に関してだけ言うならーーー病気のせいかな~~?」

茶柱「はあ!?」

ジジ「あのねー? 実は、なんか地獄から来たっていうマント付けたオチビちゃんがいてさーーッ、ボクにお姉さんの写った写真を渡してきたんだよ~~!」

茶柱「……地獄!? 写真!?」

ジジ「そして、そいつが言うには、今日のボクは病気になっていて、それも【今日、渡された写真に写った女死神にイタズラしたくなっちゃう病】なんだって~~!」



茶柱「……な、何を言っているんですか!? そんなピンポイント過ぎるバカな病気あるわけないでしょう!」



ジジ「でもねでもね! 実際にイタズラしたくなっちゃったんだよぉ! 何やったのか、いろいろと聞き出そうとしたけどーーーお姉さんの情報が書かれた紙を置いてった後、どっかにドロンしちゃった!」



ジジ「ホント、ムカつくよねーーッ!!」





茶柱「………!」



ジジ「ーーーボクだってムカつくの我慢してるんだから、お姉さんもゾンビになるくらい我慢してよ~~?」



茶柱「ふ、ふざけーーー」



ジジ「それにさ~、ボクがお姉さんをこんなにもゾンビにしたいのは、お姉さんのせいでもあると思うよ~~?」

茶柱「なっ、!? 今度は、転子に責任転嫁ですか!?」

ジジ「ボクだってー、誰でもゾンビにしたいわけじゃないんだよ~? プライベートでゾンビにするなら、お姉さんみたいな、かわいい女の子限定だからね~~!」



茶柱「!?!」



ジジ「ーーーかわいい女の子のカラダに、ボクの血が宿って、ボクのコトしか考えられない身重のカラダに変わっちゃう……!」



ジジ「ああ、想像するだけで、ボク濡れちゃうよお……っ!!」ゾクゾクゾクッ



茶柱「~~~~!?!?」ゾワアーッ…





ジジ「……だからさ、お姉さんもーーー」



茶柱「近寄らないでください! そして、斬魄刀(その子)を返してください!」

茶柱「でなければ、転子は、転子はーーー!」ジワッ



ジジ(……あれー? ひょっとして、これ、なんか時代劇とかでやってる、ベロ噛んで死ぬってやつ?)


ジジ(……う~ん、このお姉さん死神がガチ死にしたら、いろいろ面倒ゴトになって、リル達に怒られそうなんだよねーーー)


ジジ(ーーーあーあ、せっかくかわいい女の子なのに、もったいないな!)


ジジ(……ホント、どうしよっかなーーー)




茶柱「うっ……ううっ……っ、!!」ウルウル…




ジジ(ーーーもうちょっとだけなら、良いよね~、うんうん!)キラキラ…




ジジ「ーーーあっ、そうだ!」





茶柱「!?」

ジジ「この、ボクの血で濡れたお姉さんの斬魄刀を、神聖滅矢の代わりに、神聖弓で打ち出すってのはどうかな!」ギュイーンッ

茶柱「ゆ、弓……?」

ジジ「お姉さんが大切にしているこの斬魄刀で、お姉さんの大事なトコ、優しく貫いてあげるぅーーッ!」

茶柱「ひっ、!?」ビクッ

ジジ「これならお姉さんの言う通り近づかないし、斬魄刀だって返せちゃう! イッセキニチョーだね!」



ジジ「……これで貫かれたら、お姉さんはめでたくボクのゾンビだよ? あっはぁっ……!」



茶柱「ぐっ……!!」ギリギリッ



ジジ(ああっ、やっぱり、かわいい子だなぁ! よし、あとちょっとだけ遊んでーーーー)





ジジ「……さっ、大人しくゾンビにーーー」



茶柱「ーーー断固お断りです!」



ジジ「ええ~? そんなに拒否られるなんて、ジジ悲しいな~~、女の子同士なのに~~」



茶柱「……何が、女の子同士ですか!?」クワッ



ジジ「ーーーん?」



茶柱「転子は四番隊ですよ!? 身体つきを見れば、あなたの性別くらいわかります!」



ジジ「………」



茶柱「死神になってからは、 “ 口に出すこと ” は、避けるようにしていた言葉ですがーーー今回ばかりは、ハッキリとコトダマとして打ち出させて頂きます!」











茶柱「ーーーこの、男死!!!」

















ジジ「ーーーーーーーーーーーーーーーー」











茶柱「ーーーなんですか!? 急に黙って!? 自分が、最低最悪に気持ち悪くて、悍ましい性犯罪者の変態男死という自覚があるなら、さっさとーーー」



ジジ「ーーーうん、きーめた!」



茶柱「!?」



ジジ「お姉さんは、一度殺してからゾンビにしてあげるよぉーーッ!」



茶柱「なっ、!?」



ジジ「ホントはねー? イタズラと言っても、ちょお~っと、からかってあげた後は、斬魄刀もろとも、解放してあげる予定だったんだよーーッ!?」



ジジ「……だけど、お姉さんにそんな、きたないお口があるせいで、気が変わっちゃった~~!」



ジジ「……一度殺してからゾンビにして、意志を残したまま、ちゃあ~んと、おしおきして調教してーーー」



ジジ「ーーーボクの体液のよく通るお口に、キレイキレイしてあげないとねっ、!!」





茶柱「お、おしおき……っっ、!?!」



茶柱「それに、調教に、体…液…!?」



茶柱「う、ああ、あっーーー」サアアッー



ジジ「お姉さん、ボク好みのかわいい女の子で良かったねー! もし、少しでもアウトだったら、生きたままゾンビにして適当に使い潰すか、完全に殺すかのどっちかだったろうからさーーッ!」

ジジ「ボク好みのかわいい女の子だから、 “ おいた ” しても、バンビちゃんと同じで躾けられるだけで済むし、何よりバンビちゃんとお友だちにだってなれるんだよぉ?」

ジジ「そして、どっちも、ボクは、ちゃあ~んと、たあ~んと、愛してあげるんだぁ! ずう~っとね!」



ジジ「ホントに良かったねー、お姉さん!」



茶柱「い、嫌ですよ……! そんなの絶対の絶対にーーー」フルフル



ジジ「もう、遅いよ」キュウウーッ…



茶柱「!?」



ジジ「死神卒業おめでとう、転子ちゃん?」



……ビュウーンッ!











「ーーー霜天に坐せ!! 【氷輪丸】!!!」











茶柱&ジジ「「!?」」



ビキビキッ!!!



茶柱「なっーーー」


ジジ(神聖弓と斬魄刀が凍って……! これはーーー)



「大丈夫か、茶柱?」スタッ



茶柱「えっ、あっ……」



「……ここは下がってろ、あとはオレに任せとけ」



ジジ「……まさか、そんなーーーっ!?」





「……ったく、休んで現世に来てみりゃあ、つまらねえことになってやがる」



茶柱「………」



「……人の気持ち踏みにじって、あげくの果てには、 “ 他人の力 ” で、人を殺そうなんざーーー」



ジジ「………」



「ーーー笑えねえにも程があるぜ?」





「だからよ、ゾンビ滅却師ーーー」



ジジ「キミは……!」



「ーーーここで、テメーとーーー」



茶柱「あなたは……!」



「ーーーケリをつけてやる!」











「ーーー卍・解!!」











終里「ーーー【大紅蓮氷輪丸】!!!」






ジジ「ーーー誰!?」ガビーンッ

茶柱「ーーー女氏!!」キラキラ…





これにて、おまけ編の投下は終里です。




……そして、この後はーーーー






ー砕かれた先にある世界ー




ーアフター・ワールドー






ー現世・某所ー



入間(死神ver)「……くっ、!」ドサッ!


入間(ちくしょう……脚が動かねえ)ハアハア…


入間(……肩もロクに動かせねえ……霊力も足りねえ……)ヨロッ…



ホロウ「グオオッ……」ピクピク…



入間(クソッ……あの虚、やってくれるぜ……!)


入間(オレ様の結界ーーーそれを、別の結界で上書きしやがった……!)





ピキーンッ!!



入間(そのせいか、結界の効力が変わっちまった……!)


入間(……そう! その効力による、超防御補正が! オレ様や持ち物から消えーーー)




入間(ーーーそれどころか! 内部の、侵入まで可能に……!)




入間(電子機器も、機能しなくなった! 助けも呼べねえ……!)




入間(……義魂丸(ウサ太郎)も、いまはアテにはならねえと来た)



入間(義骸)「」バチバチ…



入間(ウサ太郎の義骸……アレは、オレ様特製マシン内蔵の、サイボーグ型だっつーのにーーー)




入間(ーーー電子機器がイカレちまうんじゃ、どうしようもねえ! 胸の谷間で、大人しく挟まれてろ、本体!)ポヨン




入間「……ちくしょうが……!」





入間(……にしても、小規模とはいえ、まさかこんな結界張れる虚がいるたあな)


入間(あの虚……生前に電化製品に恨みでもあったのか?)



ホロウ「グオッ……オッ……」ピクピク…



入間(……はあ、まったく、どうなってんだ、こりゃ……)


入間(……せっかく、この空座町とは違う重霊地まで来てーーーその波動を利用したスゲー霊術で、世紀の大発明をしたってのに……)


入間(……霊力体力が底ついたタイミングで! なんで、サイボーグキラーな奴が出てくんだよ……!)





入間(……いや、よそう、逆切れは。時間の無駄だ)


入間(思えば、オレ様の結界ーーーその効力がこの辺りでは弱るなんざ、はじめからわかっていたことだったじゃねえか)


入間(なら、運悪く結界を上書きされたって、そこまでおかしな話じゃねえ。場所によっては弱るような結界しか作れないーーーそんなオレ様も悪かったんだ……)



ホロウ「オオッ……」ピクピク…



入間(……ただ、幸いなことに、あの虚の戦闘力は、オレ様の薬品で、イソギンチャク並みに落ちている)


入間(とはいえ、耐久力とかは変わらねえ。これ以上何もしようがねえがーーー時間稼ぎには充分だ)




入間(……このまま、この町の担当死神が来るまで……あるいはオレ様の力が回復するまで、やり過ごせばーーー)




???「だ、大丈夫ですか?」





入間「……ああ? なんだ、テメー……!?」



???「あの、その……動けますか?」



入間「……?!?」パクパク…



???「……う、動けないなら、僕がおぶりましょうか?」



入間「……テ、テメーは……!?」



???「……あっ! いや、 “ 胸の感触を背中に ” とかーーーそういうことは考えてませんからね?!」

???「……だ、だけど! そこに……! ユウレイ(あなた)のーーーし、死体が……!!」ブルブル…



入間「……!!!」

入間(義骸)「」バチバチ…



???「ーーーし、しかも、あんな化け物がいて……!」



ホロウ「ググオッ……」ピクピク…



???「それって……そういうこと、そういう状況ってことでしょ!?」








???「……だったら、い、急いで逃げないとーーー」






入間「ーーーテメエ、最原!??」








最原?「……サ、サイハラ?」


入間(……いや、待て待て! おかしいぞ、これは! だって、最原の奴はいま……!)


入間(……つーか、それ以前に、あのコロシアイから何十年経ったと思ってやがる! それで、最原がこんなに若いはずがねえ!)


入間(帽子も被ってるし……他人の空似か?)


最原?「えっ、あっーーー!?」


入間(……なんにせよ、こいつは霊力があるだけの一般人みてえだな。なら今すぐ、どうにか安全な場所までーーー)


最原?「な、ななっーーー」






最原?「ーーーなんだ、アレ!?」





入間「ああ!? なんだ、急にーーー!?」



ホロウ「………」シュルシュル…



最原?「なんだ、あの化け物……!? 急に身体全体が白くなってーーー」


入間(……オイオイ! あの虚、まさかの脱皮するタイプかよ!?)



ホロウ「………」シュルシュル…



入間(マズイ! 最近のあのタイプは、脱皮で身体の異常をリセットできる傾向にある!)


入間(それで、オレ様の薬品の効果をリセットされでもしてみろ……! オレ様達も、この町の人間達も、みんな……!)





最原?「な、なんなんだよ、アレ!? 本当に、何がどうなってーーー」




入間(ーーーどうする、どうするよ、入間美兎!)




入間(肩も脚もロクに動かねえ、霊力も足りねえ……これじゃ、斬魄刀も鬼道も使えねえ!)


入間(また、あの薬品を使おうにもーーーさっき使いきっちまった……!)


入間(力の回復を待つにしたって、そんな時間はもう……! この町の担当死神もどういうわけか、まだ来ねえ!)




入間(クソッ! どうすればーーーー)











入間(ーーーいや、待てよ!)ピコーンッ!











最原?「……な、なんか、ヤバイですよ、アレ! 早く逃げましょう! さあ、僕の背中に乗ってーーー」

入間「……おい! テメーいつから、霊力を得た!?」

最原?「えっ、あっ……?」

入間「……いや、訂正する! テメーいつから、幽霊が見えるようになった!?」

最原?「!!」

入間「いつからだ!」

最原?「ひっ、!?」ビクッ

入間「いつから幽霊が見えるようになった!? 答えやがれ!!」





最原?「……み、三日前です! 修学旅行! はじまりの日からーーー」



最原?「ーーーそう、その日から! なぜか死んだ人が見えるようになって……!」


入間(三日前……!)


入間(……なるほど、こいつのDNA次第ではあるがーーーこの重霊地の特性を考えれば、ありえねえ話じゃねえ)


入間(そうだ、何週間か……条件次第じゃ、恒久的に霊力に目覚めることも、絶対にありえねえ話じゃねえんだ)


入間(いや、この際、目覚めた経緯はなんでもいい! 大事なのは、霊力に目覚めて三日も経ってるってとこだ!)


入間(それだけ霊力の馴染んだ奴なら、この発明品が活きてくる!)スッ…











入間(ーーーそう、この、【男のロマン! 死神変身ベルト】でな!)ババーンッ!











最原?(……えっ、なに? なんなの、急に?)


最原?(……なんだよ、そのベルト?)キョトン




入間(このベルトはもともと、義魂丸(ウサ太郎)のために、発明したもんだ!)


入間(このベルトには、オレ様の霊力(死神能力)が込められていてーーーそれをパワードスーツのように身に纏う形で、死神に変身できるっつー代物だ)


入間(もっとも、今のところ、精神的にオスで霊力の馴染んだ奴じゃねえと変身できねえ仕組みだがーーー変身さえできれば、その瞬間、戦闘の方法やスキルが頭の中に叩き込まれる!)




入間(つまり、どんな素人童貞だろうと、理論上は虚をぶっ倒すことが可能になるってわけだ!)




入間(もちろん、死神の力の譲渡は基本的に重罪だがーーーこれはあくまで外付けアイテム。霊力を身に纏うだけで、魂魄構造を変質させるわけでもねえし、緊急時での一時的な処置に過ぎねえ)


入間(今の掟では、ギリギリ罪に問われない……はずだ! 手続き上はそうなってる!)




入間(いや、罪に問われたとしても、この状況を切り抜けるには、これしか……!)





ホロウ「グオオ……!」シュルシュル…



最原?「!?」




入間(……ヤベエ! 脱皮が終わりかけてやがる!)




入間(このままじゃーーーー)





最原?「と、とにかく、逃げーーー」



入間「ーーーおい! テメー!」



最原?「っ、!?」



入間「このベルトを腰に巻け!」スッ



最原?「えっ……?」



入間「それで、“ 変身 ” って言いやがれ!」



入間「そうすりゃ、フィクションのヒーローみてえに、変身できる!」





最原?「……はあ!?」

入間「その力で、あの白い奴と戦うんだ!」

最原?「……ま、待って!? キミは、何を言ってーーー」



入間「でねえと、テメーは死ぬぞ!」



最原?「!?」



入間「……いま、あの白い奴から身を守るには、それしか方法がねえんだ!」

最原?「なっーーー?!」

入間「恥を承知で頼む! いまはそれを巻いて、戦ってくれ!」

最原?「……で、でもーーー」



入間「……お願いだよ! お礼はするから! なんでもしてあげるから!」





最原?「……な、なんでも……!?」ゴクッ

入間「そうだよ! アタシが、なんだってしてあげる! だからーーー」



最原?「ーーーあっ、いや、それでも、そんなーーー」



入間「ーーーっ、テメー、このまま終わっても、良いのかよ!?」



最原?「!?」



入間「あの白い奴に、食い殺されても良いのかよ!?」



最原?「く、くいころーーー!?」



入間「あの白い奴はそういう存在だ!」

入間「食われて終わってーーーそんな最後で本当に良いのかよ!?」



最原?「っ、!」





入間「……テメーはいま生きてる!」

入間「それは、死ねない理由が、あるからじゃねえのか!?」



最原?「っっ、!!!」



入間「……テメーにも、生きる理由があってーーーそのためにも、死ぬわけにはいかねえんじゃねえのか!?」





最原?(……そうだ! 僕には、生きる理由がある! 生きる楽しみがある!)


最原?(だから、僕は……何度馬鹿にされたって、何度置いてきぼりにされたってーーー耐えることができた!)


最原?(だったら、まだまだ、生きなきゃダメだ! ここで、死ぬわけには……!)




ホロウ「グオオ……!」シュルシュル…




最原?(……で、でも、やっぱり、僕にはーーーー)ガクガク





ホロウ「……グオオッ!」ピカーンッ!



最原?「!?」



入間(マズイ! 脱皮を終えやがった!)



ホロウ「グオオ……!」ギラッ!



最原?「ーーー!?」ビクッ



入間(……動いて、動いてよ! アタシの肩……! アタシの脚……!)ググッ…



最原?(あの怪物……この娘を睨んでーーー!?)ブルブル…





ホロウ「グオオ……!」ギラギラ…



最原?(い、いやだ……! こわい……!!)ガクガク



入間「~~~!!」ググッ…ググッ…



最原?(……だけど、この状況……! 『彼ら』なら、きっとーーー!!)ブルブル…



ホロウ「グオオオォォ!!」ダダダッ!!



入間「あっ……?!」





最原?「……やっ、やめろおおおーー!!」ザッ!



ホロウ「!?」



入間「!!」



最原?「……うっ、うわあああーー!?!」スチャッ!











最原?「ーーー変、身、っ!!!」











ビカーッ!!



ホロウ「グオッ!?」



入間「お、おお……!?」



最原?「………!?!」



キュイーンッ…!!



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー





入間「ーーーやるじゃねえか、テメー……」

最原?(死神ver)「………」

入間「……まさか、一撃で虚をぶった斬るなんてな……」

最原?「………」

入間「……まあ、オレ様の発明がすごかったこともあるがーーーそれでも、テメーが “ 勇気 ” 出して立ち向かわなきゃ、この結果はなかった……」



最原?「………」



入間「……ありがとよ、助かったぜ」











最原?「…………」











入間「……この恩は忘れねえ」



入間「もし、何か、オレ様にして欲しいことがあるならーーー遠慮なく言ってくれ」



入間「できる限り、叶えてやる」



最原?「………」





入間「……おっと、そういや、自己紹介がまだだったな」



最原?「………」



入間「……オレ様は、死神、アンド浦原商店一の看板娘ーーー」



入間「ーーーそんでもって、美人過ぎる天才美人発明家、入間美兎様だ!」



入間「……なあ、テメーはーーーー」





最原?「……最○」ボソッ



入間「!?」



最原?「……僕の名前は、最○終×」



入間「……!!」



最原?(……年齢は15歳、髪の色はブラック、瞳の色はオリーブ、職業は高校生)




最原?(……そう、ただの高校生)




最原?(……才能もなければ、努力もできずーーー)




最原?(ーーー友達ひとり作ることも叶わない、その程度の存在でしかない……)





最原?(……そんな僕が、『ヒーロー』に……フィクションのような存在になんて、なれるはずがない)


最原?(……ユウレイが、見えるはずがない)


最原?(こんなに『可愛い女の子』が……僕を認めてくれるはずがない)


最原?(……必要としてくれる、はずがないんだ)



入間「……?」キョトン



最原?(……冷静になれば、わかること)


最原?(きっと、全ては、僕の願望が生み出した、儚い夢)


最原?(……目を覚ませば、きっとまた、あの現実にーーーー)





入間(……なんだ? なんで、黙りこくってーーー)


入間(ーーーああ、なるほど、現実味がねえのか)



最原?「………」



入間(……そりゃそうだ。宇宙一の美女のオレ様に感謝されるなんざーーー童貞には刺激的過ぎる話だ)


入間(虚の存在や死神能力のことも含め、夢か何かだと思っちまうのも無理はねえ)


入間(……まあ、それもあながち間違いとは言いきれねえんだがな)



最原?「………」



入間(……テメーの願いは、できる限り……叶えてやるつもりだ)


入間(だが、それらを含めた……オレ様に関する記憶は、記換神機で封じられちまう)


入間(……アレは、一定以上の霊力を持つ奴には効きづらいがーーー逆に言えば、それがなくなれば、問題なく効いちまう……)




入間(……そう、テメーの霊力が、あと何週間かで消える場合ーーーその時は絶対に、記憶を封じなきゃいけねえんだ)




入間(そうなりゃ、オレ様のことも……夢に変わってーーーー)





最原?(ーーーこの夢が終わりを迎えた時、きっと、いつもの……辛い現実が待ち受けている……)


最原?(……誰からも、必要とされない、ツマラナイ現実が、また……)



入間「………」



最原?(……だけど、それでも、僕はーーー)




最原(ーーーこの夢を、忘れたくない)




最原?(こんな僕を信じて、必要としてくれた、『この人』を……)




入間「………」




最原?(……忘れてなんて、なるものか)





最原?(入間さん……僕は、キミを、死なせはしない)




最原?(キミは、僕の中で、輝き続ける……)




入間「……なあ、最○? テメーは、これからーーー」




最原?(……そう、勇気をくれた『彼ら』のようにーーーー)











最原?(ーーーダンガンロンパの、みんなのように!)











以上で本当に完結です。

この後どうなったか……あるいはどんな物語が始まったかは、ご想像にお任せします。



……これまで、本当にありがとうございました!





真宮寺「……わかってる。生前、あんなことをして、今さら何を言っているんだって話だヨ」

真宮寺「死んでからだってーーー結局は、無神経なことをしてしまった」

真宮寺「……勝手な考えで、おかしなことをしてしまった」



真宮寺「……間違いを、重ねてしまったんだ……」



キーボ「………」



真宮寺「……まだ、気づけていない間違いもあるはずだ」



真宮寺「それもきっと、たくさん」



真宮寺「僕はどこかでーーー間違え続けているんだ……」



アンジー「………」


>>383>>646の内容に修正します。

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赤松「ーーーそうだよ! 私だって、アンジーさんを許すよ! アンジーさんは、人と! 友達同士に、なれる人なんだから!」

天海「俺も同じ気持ちっす。それに、俺達は、人に向けたショーも考えている……」

天海「……それを、俺達全員で、一緒に、楽しんで欲しいっす」

天海「ショーは、それをする人、お客になる人……その両方が全員揃うことで、より楽しいものになるんすから」

王馬「そうそう! せっかく、いろいろ考えたんだからさ! お客さんになってくれなきゃ、こっちとしても困るよー!」

王馬「あっ、これは、嘘じゃないよ! ホントだよ! オレはホントの嘘つきだからね!」

星「……ショーについて、いろいろ考えることができたのはーーー夜長、お前もまた、俺達を人と見てくれたからだ」

星「その心が、俺達のこの気持ちへと、繋がってる。だからこそ、みんな、許すことができる……」

キーボ「……ボクだって、気持ちは同じです! みんなで、何かして、『想い』を残しましょう! アンジーさん!」

茶柱「その気持ち! 転子たち救護組も同じです! もし、自分だけではどうしようもないことがあるならーーー言ってください! 相談に乗ります!」

東条「そう、それぞれに合った、やり方で……」

ゴン太「ゴン太はまだまだ勉強中だけどーーーそれでも、相談に乗るよ! 虫さんと一緒に!」


>>472>>649の内容に修正します。




ゴン太「……うん、そうだよ! どうにか、みんなで虫さんと和むことができればーーーきっと、どんなに苦しい時だって……!」

入間「む、虫プレイとかぁ……! 一緒にヤるんなら、はじめはもっと別のぉ……っ、!!」

真宮寺「『想い』を残すーーー何をどのようにして行うかは、よく精査した上で決めた方が良さそうだネ……」

星「……スポーツなら、安全なやり方を含め、いくらか教えられるぜ?」

東条「星君が教えてくれるなら心強いわね。ただ、それでも一応……万が一怪我をするようなことがあったら、いつでも言ってちょうだい。応急処置は私がするわ」

王馬「キー坊の場合は、入間ちゃんに修理して貰うことになるだろうけどねー」

キーボ「なっ、王馬クン! ここでまたロボット差別ですか!?」

入間「ムシすんなよぉ……! それと、キーボは言われずとも直してやるからなぁ……!」



アンジー「………!!」



百田「……たはは、まさか、王馬に一本取られちまうたあな……」

王馬「にしし! 今更だね、百田ちゃん! 普段から、一本どころか、三振ノックアウトの癖してさー!」

百田「う、うるせー! オレは野球よりもテニス派なんだよ!」

入間「言い訳になってねーぞ、ダボ!」

百田「あー、もー、とにかく、そういうこった、アンジー!」ビシッ


>>473>>651の内容に修正します。



また、>>648は言うまでもなくミスなので、なかったことにしてください。



HTML化に行ってきます。

それでは。

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