【鯖鱒wiki】どうやら坂松市で聖杯戦争が行われる様です【AA不使用】2 (743)



【坂松市の聖杯戦争、三つ+一つのあらすじ】




【坂松高校に通う貴方は、偶然サーヴァントを召喚してしまい聖杯戦争に参加する事に】

【その過程でサーヴァント・バーサーカーとの仲違いを起こし、バラバラになってしまう】

【孤立した貴方は、ライダーとそのマスター、新重から殺害されかけるものの間一髪の所でバーサーカーに救われ、和解】




【……が、ライダーは突如マスターである新重を裏切り、その身に牙を向けたのだった】


【より詳しく知りたい方は下記のスレで】
 【鯖鱒wiki】どうやら坂松市で聖杯戦争が行われるようです【AA不使用】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssr/1582520327/)

【こちらは鯖鱒wiki】
 https://w.atwiki.jp/ssfate/sp/






「新重っ!!」
「……あ…………痛、い。痛い……」
「もう喋るな!血が……!」

倒れ伏す新重に、全速力で駆け寄る貴方
どくどくと流れる血を少しでも止めようと、着ていた上着を腹部に当てる
みるみる彼女の血で染まる両手。気休め程度の効果しかなくとも、それでも動かずにはいられなかった

「“治癒(シゲル)”!これで多少は……。っ!」
「ほう?俺を傍目に気を向けるか。随分と舐めきられたものだ」

しかし、それをライダーがおめおめと見過ごす訳がなく。倒れ伏す新重へと攻撃を
今度こそは命を獲らんとする一振りを迎撃するバーサーカー。その顔には明確な怒りが浮かぶ


「……何故、自分のマスターを!」
「単純な話だ。俺はどの様な人間であれ、三つまでは非礼を許す事にしている」
「しかし、この女は俺に四つの非礼を犯した。罪人には重罰を。当然の理だ」
「馬鹿な事を……!貴様はアーチャーではない、単独行動が無い以上、自滅するしかない!」
「それこそ、愚かと言うものだ」

打ち合いを止め、黒衣をはためかせながら背後に下がる。これ以上の戦闘はしないと言いたげな笑みを浮かべながら


「その女に頼らずとも、魔力を補給する手段は幾らでもある」
「この土地に水がある限り、俺は戦闘どころか現界する事すら苦にならんな」



『ライダーのスキルを開示します』
 ◆竜の渇喉:B
   水分と魔力の相互変換を可能とする魔力炉心。飲料水などを魔力源として利用できる。
   また、魔力を雷雨に変換して圧縮し、ブレスとして放出する。
   ハンガリーの多頭竜(サーカニィ)は雷雨神の特質を持つ。






「な…………」


水がある限り。それは、ライダーには魔力切れの心配等は無用という事実に他ならない
勝ち誇った様に手を振ると、ゆっくりと新重に向けて歩を進めていく

「しかし、その女との縁は不愉快だ。今ここで逃げ出すならば、ここは許す」
「何。貴様等はまだ一度目。この約束を反故にしない事を、この空に誓おう」


ライダーは問い掛ける。ここで逃げるのならば見逃すと
それはつまり……新重は捨てろと勧告したのだ


「……断る!新重は俺のクラスメイトだ!」
「だろうな。だが、バーサーカー、貴様はどうだ?ここで戦う事が賢い事と思うか?」

「実力の差は明白。その女を庇う理由も無い。死に急ぐ危篤な趣味があるなら別だが……」
「……引け。ここで貴様等を仕留める事より現世の縁を早く断ち切りたいのでな」

さっさとしろと決断を急かす。それほど、自分のマスターである新重を憎んでいたのだろう
問われるバーサーカー。彼女は剣を下げ、彼女を一瞥し、答える



「……ええ。そうでしょう。私にはこの女を庇う理由等存在しない」
「しかし、貴様の下らない流儀に付き合う程、私は生温く、寛容では無い」

「……下らない?」
「貴様も、自ら決めた法に従う者の筈だろう」
「その貴様と俺。何が違うと決めつける!」



「違うでしょう。私は自分のみの意志で全てを決めて、行動する」
「貴様は全てが他人任せ。都合が良ければ放置し、不都合になれば切り捨てる身勝手の極み」
「そんな貴様と私。比べる事すら烏滸がましいと知れ!ライダー!」









「──そうか。貴様は死を望むか」

身勝手。バーサーカーの言葉に顔が歪む

「人より見放され、人より切り捨てられた俺の苦悩を、ただの一言で済ますとは」
「その骸、晒すに能わず。塵と消え失せ、微塵も遺らぬと思うがいい……!」


ひりつく程の殺気。震える程の怒気。凍てつく程の冷気
一介の人である貴方の身には、それだけで動きが出来なくなる程の重圧。耐えきれず、両膝をつきそうになる
倒れそうになる身体を、バーサーカーが支えて立たせてくれた


「言ったはずだ。私は貴方の剣になると」
「だから……自信を持って。このサーヴァントはここで倒す」


「大きく出たな。よもや、貴様程度の英霊が俺を倒すとは」
「確かに、生前トカゲ狩りはした覚えが無い。だが、やってやれない事も無いだろう?」
「……フ」

不敵に笑う両者。その意味を把握し、訪ねる

「まさか、ライダーの真名が……」
「今の今まで確信は出来なかった。しかし、水を魔力に変換するという性質は、ある国の伝承でしか見覚えが無い」
「ハンガリーの竜、サーカニィ。恐らく、奴の真名は……」


言葉を紡ぐ瞬間、豪風が吹き荒れる。ライダーを中心にして、荒れ狂う流れを産み出していく


「ここは俺の全力を出すには狭すぎる。俺の国へと招待してやろう」
「遠慮は要らん。貴様等は我が国初の処刑人として名を刻ませてやる故に」
「──飛べ!飛べ!遠く遠く、遥かな空の彼方まで!」


「来るがいい、貴様が勇者足り得るか、見定めてやろう!」
「“果て無き空路の幕明風(オーバーエンド・トルネード)”!」








暴風が周囲を包み込む。しかし、不思議とその身に傷はなく
体がふわりと宙に浮く感覚。そのまま地面から足が離れていく


「うわっ……と!新重っ!」
「あ……庶務、く……」
「寝ていろ。……これは、移送する気か!」


『ライダーの宝具を開示します』
 ◆『果て無き空路の幕明風(オーバーエンド・トルネード)』
  ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:10~30 最大補足:1人
   英雄譚の始まりを告げる、王女を攫う強烈な上昇気流。
   風に捕らえられたものは、天まで届く木の頂上にあるような異界に連れ去られてしまう。
   その異界は国一つの大きさがある一枚の木の葉。地上のような街並みに畑、竜の館が存在する。
   天まで飛ばされてしまえば脱出はほぼ不可能だが、
   ライダーはこの宝具で飛んでもノーダメージなので撤退にも利用できる。
   異界の開閉はライダーの一存。ライダー一人なら異界に行っても問題なく戻ってこられる。







“──空の国にて、貴様等を待つ”

“精々、命乞いの言葉でも考えておく事だ──”



声は遠く。どこから聴こえてくるかももう判別が出来ない
そのまま意識が剥離していく。彼方の果ての果てまで……






「……ん」

……どれくらい寝ていたのだろう
頬に伝わる冷えた感触がやけに鮮烈に感じる
先刻までの記憶を辿る。そうだ、ここは……

「……バーサーカー!新重っ!」
「叫ばなくてもいい。ここにいる」

隣から声が聴こえる。もう見知った女性の声
女性……バーサーカーは、負傷した新重を護る様に佇んでいた

「彼女の事は心配しなくてもいい。怪我が広がらない様に注意を払った」
「サンキュ。……にしても、ここは」


周囲を見渡すと、石造りの柱や家。そして石の床が足元に広がる
頭上には雲一つ浮かばない青い空だけが。その風景はどこか牧歌的に映る
異国の中世へとタイムスリップしたかの様な異色の風景に面食らう。すると、またどこからか響く様に声が鳴る


“如何かな?俺の国、俺の世界は”

“下界の低俗な気体とは比べ物にすらならん程に澄んだ空気。乱雑に伸びた鉄棒とは見違える程に洗練された街”

“これこそが俺の理想、俺の住み処。本来ならば汚れたドブネズミすら足を踏み入れる事すら不可能な素晴らしき街”

“貴様如き矮小な存在が、足を踏み入れる事すら出来ない場所だ”

「どこだ!?出てこい、ライダー!」



『……“ああ、いいとも”』
『“見せてやろう、これこそが俺の真の姿!”』




突然、空が暗く翳る。太陽に何かが重なり、空の都に影を作る
遮ったものは……巨大な“竜”。竜は翼を広げて空を舞い、貴方の前に降り立った


 





「……な!?」
『“GaaAAAAAAAAAA!!!”』


目の前に姿を現した黒竜……ライダー
高らかに咆哮を上げて威圧する。その声だけで貴方は吹き飛ばされそうに
しかし、今度は耐える。二度も膝をつく事はしないとばかりに歯を食い縛りながら


「……竜騎兵は聞いた事があるが、まさか騎兵の竜とはな」
『“意外でもあるまい。俺は風に乗り、勇者に討伐される存在”』
『“こう見えても、俺は馬に乗るのが得意だったんだ。魅せられんのが悔しい程にはな”』

咆哮とは変わって、理知的な語り口に戻る
その姿に感じたのは強い矛盾。怪物の姿を為していながら、その心は間違いなく人間のもの


「ライダー……お前の目的は……」
『“言っただろう。その女との繋がりは不快。故に邪魔をした貴様等は処刑対象だ”』
『“……それとも、聖杯への願いか?それこそ、貴様に話す事でもない”』

「……マスター、私はこの竜の名を知っている」
「私の想像通りなら恐らくは……貴様の願いは、復讐ではないのか?」
「自らを殺した人間の勇者への!」


叫ぶバーサーカー。彼女はライダーの真名に気がついた様だ
自分も暫し考える。ライダーの本当の名を。真の目的を……



22:20から
↓1~3まで。ライダーの真名


【やっぱり点呼は重要(確信)】

【とりあえず後十分待ってこなければ流します】




ライダー:フェルニゲシュ  【正解】




「……竜。それに風、街?なんだ……?」
「わからなくとも無理はない。何せ、貴方からすれば遠い異国の昔話」
「寧ろ、知っている私の方が酔狂者だろう」

『“……ほう?では、俺の名を存じるか”』
「その昔、勉学に励んでいた頃の手慰みにな。ほんの子供の頃の話だ」



「……雷雨を糧にする竜はハンガリーの竜。そして雲の上の街に住まう黒き竜の王!」
「そうであろう!?悪しき竜の王者、フェルニゲシュよ!」


フェルニゲシュ。それは今まで一度も聞く事の無かった竜の名前
貴方には聞き馴染みの無い名前。しかし、どうしてかあのライダーには何故かぴったりと合う気がした


『“……ハ、ハハ!ハハハハハ!”』
『“そうとも!そうとも!嗚呼、その名こそ、俺に相応しき名前、怪物の名だ!”』





『“──我が名は竜王、フェルニゲシュ!”』

『“勇者を気取る弱者共よ、二人仲良く我が国にて果てるがいい!”』







「……勝てるか、バーサーカー」



貴方は問う。目の前の竜を打倒出来るかと

かつては逃げられた雪辱。宝具を使えば勝てると豪語した相手

しかし、それは相手が本気を出してこなかったが故の判断。今もそうかはわからない



「……愚問だとも。マスター」

「貴方はただ一言、私に命じればいい。……必ず勝ってこい。と」


「……わかった。絶対に勝ってきてくれ」
「それと……信じてる。俺のバーサーカーは負けないってさ」



勿論。バーサーカーは微笑み、ライダー……竜王に歩みを進める
その目に宿るは絶対の意志。それを貫き通さんとする強き意志



「さあ……決着だ!ここで貴様を倒す!」













「───此は、私が歩んだ歴史の一端」

バーサーカーが唱える。自らの宝具を紐解く為に、世界へと語りかけていく



「心の叫びを聞け!命を燃やしたその果てを、私がこの世に投射しよう!」


「我が血に流れる魔力を捨てて!竜王退治の力を得る!この長き戦いを終わらせる為に!」


「私の生き様、見せてやる!“我思う、故に私は(バロッケンズ)──”」





「“ありのままに(ドロットニング)──”!!!」





『バーサーカーの宝具を開示します』
 ◆『我思う、故に私はありのままに(バロッケンズ・ドロットニング)』
  ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

  後世にて「■■■■の女王」と評される■■■■■■■の生き様。
  彼女は何物にも縛られない。常に自由である。
  たとえ令呪を何画重ねようとも、彼女の意志を曲げる事は出来ない。

  また、捨てる物を宣言し、真名開放を行う事で、我を通す奇跡を起こす事が可能。
  その対価とは自分のスキル、あるいは彼女の霊基本体。
  無論、対価として払ったものはいかなる手段でも元に戻らない。





『………………!』
「………凄い…………!」


バーサーカーの宝具。かつて、少しだけ教えてくれた彼女の生き様
漲り滾る魔力は、令呪にすら匹敵する。その力を以てすれば、ライダーを倒すのも不可能ではないと思わせる程に


「私は……負けない!ここで折れる程、生半可な意志で生きてはいなかったからな!」
「貴様はどうだ!ライダー!貴様の生き様は、本当に誇れるものなのか確かめてみろ!」


『“随分と大見得を切ったな。その減らず口は俺が直々に叩き潰してやろう”』
『“王に対する非礼は許そう。ここからは殺戮、徹底的な虐殺である──!”』



爪が、尾が、顎が迫る。それを迎え撃ち、火花を散らす
ライダーとバーサーカー。一人と一体のしのぎ合いは、まだ始まったばかりだった






【本日ここまで。新しいスレでもよろしくお願いします】

【次回ライダー戦。このシーンはずっと書きたかった場面でもあります】



【本日もお休み】

【バトルシーンに入ると長考になるのどうにかすべきですかね】


【本日もお休み】

【最近ちょっとスランプ気味。気分転換に雑談所で何かするかもしれない】


【本日もお休み】

【ですが土日には必ず投稿します。それまでお待ちを……】


【それでは更新】

【なんとかして時間の削減を計りたい所】





「はっ、はっ、はっ……!」
「おーいマスターさんよう。何をそんなに急いでんだよい」
「だ、だって、先輩が、先輩が……っ!」
「あーん?そんなの放置で良くね?てかなんでそんな必死なの?暇なの?」


既に閑静な夜の街。暗闇の中を必死に走る少女が一人
少女……アキラはマスク越しに息を切らせながら人気の無い道路を進んでいた


「てかさー俺に頼めば一瞬だったぜ?あれか、ダイエットか」
「で、でも、お父様が、許してくれ、なくて」
「だからコッソリ裏口からっと。バレてもオレは助けねーぞ」
「うぅ。イジワル、デス……」

しゅんと落ち込むアキラ。もし、この事を父に咎められたらどうしようかと不安が募る
ベンチにちょこんと腰掛けると、手にしてあるボトルを口につけ、水を飲みつつ休憩中


「んで、どうするよ。その先輩とやらを見つけて灰にすんのか?」
「ダメ……!絶対に!ダメ!デス!」
「冗談だってーの……で、本命とはちと違うが、見つかったぜ。サーヴァント」


アーチャーの声が頭上から響く。サーヴァント発見の報告に背筋が凍りながらも、立ち上がり姿を確認する
駆けながらやってきたその姿は、自分とそう年の変わらないであろう少女だった



「……っ、禍門、アキラ……!?」









「え……エーデルワイス、の」
「アキラ、どうしてここに……!?」


現れたのは、御三家の一つにしてクラスメイトのアーディー・エーデルワイス
困惑する両者。共に本来は想定していなかったであろう相手に面食らい合っていた

「なんか違うのが出てきたが、丁度いいぜ!海の向こうまでブッ飛ばしてやんよ!」
「ほう。僕を相手に海ときたか。我が軍がどれ程通じるか、試してみるのも悪くはない!」

「あ、アーチャー。今は、その……」
「マジ!?やらねえの!?……オイ!そっちはどうよ。やんのか?やらねえのか!?」

急かす様に捲し立てられ、逡巡するセイバー達
暫しの空白。どうか帰ってほしいと願うアキラに、アーディーは


「私は……アキラを、アンタを殺す!」
「禍門の一族よ!ここで引くと言うのなら、私はアンタ達を末代まで滅ぼしてやる!」


凛と。まさに今、命をとらんと

「……そうか、それが、君の」
「ならば、僕はそれに従うだけ。君が答えを手にするその時まで」


宣言した。それを引き金に、セイバーはアキラへと斬りかかりに殺到する
怯えは一瞬だけ。直ぐ様アーディーを敵と認識し直し、つけていたマスクを取り外した



「なら……こっちも、手加減しない」
「響け、私の言葉よ。蝕め、私の呪いよ……!」
「ヒューッ!辛気臭えのは嫌いだから、サクッと殴り倒してやんよォ!」


 




……下界でセイバーとアーチャーが火花を散らすほんの少し後
石造りの雲の上。此方でもまた二騎のサーヴァントの争いが熾烈を極めていた


「受けるがいい、竜王よ!その牙を虚仮威しと謗られたくなければな!」
『抜かせ小娘!貴様程度の矮躯でこの俺に立ち向かう愚、あの世で呪え!』

ライダーはバーサーカーに向けて、爪を、尾を振りかざし、叩きつける
着弾した箇所は見るも無惨。へし折れ、ひびが入り倒壊していく美しき町並み

……だが、直撃した筈のバーサーカーは傷一つも負わず
寧ろ崩壊した建物を縫い、その巨躯に剣を突き立てる


『ガァアァアアッッッ!!!』
「ふ……っ!」


「凄い、圧している……!」


貴方は、その光景に食い入る様に見惚れていた

黒の竜に白の姫。まるで御伽噺の世界の様で、その非現実的な空間に酔いしれる
……足下で呻く少女の声で、すぐに現実に引き戻されるが


「うぅ、痛い……痛いよ……」
「新重……傷は塞がってるからあまり動くなよ」






「……ごめん、ごめんね。庶務君」

「私、ずっと寂しかった。誰も構ってくれないんだもん」

「だから、庶務君なら……って。けど……」

「遊んでくれなくて。だから殺しちゃえって。けど、ダメだよね。やっぱさ」

「どうしてだろ……どうして、こうなっちゃったんだろうね……」





ポタポタと、涙を落としながら赦しを請う新重

裏切られ、後ろ楯が失くなったからか。あるいは今の状況を引き起こした自分の愚かさに気がついたのか

責めるべきか、赦すべきか。貴方は目の前で剣と爪をぶつけ合う両者を俯瞰して言葉を紡ぐ


「……俺は許すよ。新重が俺にした事を」
「けど、全部は許せない。俺に関係の無い所でもあの獣を使ってたんだろ」
「……うん」


「だから……俺も謝る。新重が反省してるなら、俺も一緒に頭を下げるよ」
「許せないけど、許されてほしい。だって、新重は友達だから」


「………ありがと。やっぱり優しいね、庶務君」


微笑んで、目を閉じる。貴方は彼女を抱えて、戦闘に巻き込まれない様に距離をとる

荒れ狂う竜を切り刻んでいく白銀の姫騎士。既に戦いは佳境へと進んでいた







『グゥオォオオオ───ッ!!!』



“竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)”



咆哮と共に、空には雷雨が渦巻く。ライダーはそれを吸い込み、竜巻の様に放射する
竜の喉により過度に圧縮された衝撃波。天すら裂かんとする烈風が街並みを粉砕していく
流石のバーサーカーもこれには部が悪いと判断したのか、俊敏な動きでそれを回避した


……明らかな程に、ライダーとバーサーカーには力の差があった
けれど、今はどうか?宝具を切ったとはいえ、それだけで肉薄される程、自分は弱かったか?
理解が出来ない。どうしてここまで自分は追い込まれている……!?


『何故だ?何故、貴様程度の英霊が、この俺に並び立てる……!』
「下らない。格だの、権力だの、そんなモノは既に、ゴミクズの様に意味を為さない!」
「推し量るべきは互いの生き様!貴様の生きた衝動を、証を示してみろ、黒き竜よ!」
『黙れ……!黙れ、黙れ、黙れ───ッ!!』


ライダーの激昂が更に高まる。唸り、叫び、目の前の少女に憎しみを叩きつける
最早、その心は竜に非ず。かつて持ち得たはずの人間のもの。彼の歩んだその末期が頭の中に飛来する

『裏切られ、使い捨てられ、切り捨てられた!汚辱に塗れた我が生に意味等あるものか!』
『あって、たまるか───!!!』


「それこそあり得るものか!貴様も薄々感じていた筈だ」
「楽しむ事、思考する事、その根底は同じ事」
「今から、それを貴様に教えてやる──!」

駆ける。ライダーに向けて剣を構え、一直線に
この一撃を以てこの戦闘を終わらせる。熾烈な覚悟を秘めて、跳んだ







走る。走る。走る
崩れた町を踏みしめて、折れた家を蹴飛ばして
そうして、彼女は全てを乗り越えてきた。立ちはだかる障害も、襲いかかるしがらみも

ライダーもそれをおめおめと見逃す筈もなく

爪、牙、尾、翼。ありとあらゆる手段を持ってバーサーカーを排除せんと迎撃する
だが、届かない。どの攻撃も、どの方向からでも“奇跡的に”避けていく


『何故だ……!何故!何故!何故!!』
「知れた事。私は今までも何かを捨てて、何かを得てきた女だぞ?」
「ならば今回も同じ事!貴様の首を捕る。それまで私の足は止まる訳が無いだろう!」

「……無理を通して道理引っ込む。だっけか」

貴方はぽつりとそう呟く。諺によく似た彼女の生き様を見ながら
彼女の傲慢さ、強情さ、強引さは理屈や理由を蹴飛ばしてでも望みを叶える意志の強さ

自分には無いその輝きを、焦がれる様に追っていく。今、ライダーの喉元に剣を突き刺そうとする瞬間……



「バーサーカー!上だ!」
「っ!」

頭上から、石の柱が降り注いできた







「だ……大丈夫か!?」
「ええ。ギリギリだったが……」


巨大な質量がぶつかる衝撃と、破砕音が鼓膜を震わせる
先程まで、こんな物は無かったはずだ。おまけに頭上は青い空が広がっているだけ
突如、バーサーカーの上空から落ちてきた石柱はボロボロと崩れ去り、塵となった


『“竜界は寂静の如く(タートルシュ・ヴァール)”。切り札だったのだがな』


 ◆『竜界は寂静の如く(タールトシュ・ヴァール)』
  サーカニィ由来の魔術の一つ。空間を石化して石造建築を行う。
  時間を掛ければ町一つを建造することも理論上は可能。
  天まで届く木の上には、竜によって建造された、人の居ない石の街が存在するという。


『避けられるとはな……それも、貴様の生き様とやらの為せる技、か?』
「……いいえ。今のは私のマスターのお陰。早々に切り捨てた貴方には理解出来ないか?」
『違いない。……尤も、あの女と組み続ける方が理解したくはないがな!』
「同感……だッ!」


宝具の、更に奥の手を切ったライダー
しかし、防がれたとわかるや否や、その翼を広げて空へと飛び立とうと
さしものバーサーカーでも、天に逃げられては打つ手は無い。貴方は悔しげに空を仰いだ


「クソ、ここまで来て……!」
「いいや。ライダーは全ての手の内を晒した。ここで我々を逃がす事こそ愚策……!」
「──来るぞ!伏せて。飛ばされない様に!」


彼女の言葉通り。ライダーに逃げるつもりなんて最初から無い
天から落ちてくるのは黒色彗星。今、その身を賭してでも此方を消さんとするライダーの最後の一撃……


「……マスター、これが最後です。次の交錯で、どちらかの霊基は消し飛ばされるでしょう」
「……そっか。……頑張れ、バーサーカー」

「勿論。勇気は決して欺かない。それは例え、どの様な弱い人間でも」
「その言葉。有り難く受け取ります、マスター……とぉりゃあぁあああぁああっ!!」



今、銀の弾丸が地上から放たれる
二つの影は撃ち合う様に中心を目掛けて進み、遂に、星に近しい上空で衝突した





「ぐっ……!」
『オォオオオ……ッ!』

剣と爪が重なり、押し合う。これは互いの意地を賭けた大勝負
力の優劣は無い。どちらが折れるかの我慢比べ


「……聞かせてもらおう、バーサーカーよ」
「貴様の生き様には毛頭興味は無い。しかし、後悔はあるだろう。憎悪はあるだろう」

「知りたくは無いのか?もっと良い道があったかと、正しい答えはあったのかと」


黒き竜王……いや、黒衣の青年は問い掛ける
ほんの、ほんの一瞬だけ、その声色は元の青年のそれへと変わっていて
その理由は、きっと彼の、本当の願いの根底だからなのかもしれない


「……あるとも。一つだけ、どうしても取り零してしまった事が」

それに、呟く様に答えるバーサーカー
少しだけ意外そうに喉を鳴らす。この女は、何もかもを腕ずくで手にいれてきたと思っていたのに

「ならば、貴様は」
「そうだ。それが私の願い。……だが、勘違いするなよ?ライダー」

「私は答えを知ろうとは思わない。体験して、初めて得られるものだから!」
「……成る程、な」





「やはり、わからんな。人間というモノは」





ズレて、すれ違い、切り裂く

宙へと延びていく赤の軌跡。バーサーカーの剣より滴り落ちる、竜の血液

黒の星は落ちていく。自らの組み上げた町の中へと招き入れられるかの様に
その落ちていった先にいたのは……貴方と新重。慌てて担ぎ上げると、直ぐに安全地帯へと避難を始める


「……うわあぁっ!?危なかった……!」
「……そこの、バーサーカーのマスターよ」
「な、何だ?」


最早、勝負は決まった。首からドクドクと溢れる血の池の中で、貴方へと語りかける


「精々悩め。自分とは何なのかを、それが人間の義務だろう?」

「尤も……俺ですら、答えは未だ届かないがな」


それは、激励の言葉か。それとも諦観の証か
確かな事は……ライダー、フェルニゲシュは、光の粒子となって、空へと召されていったのだった







「……マスター!」
「バーサーカー!良かった、無事で……」
「無事なものですか。……けど、やりました」

誇らしげに微笑む彼女に、手を差し出す貴方
不思議そうな表情を浮かべるバーサーカーに、照れ臭げに顔を染めて


「その、ごめん。……俺、覚悟決めたから」
「この聖杯戦争で、誰かが傷つくのを黙って見てみぬフリはしたくない」
「だから……戦うよ。これが、俺の聖杯にかける願いなんだ」

「……此方こそ。私も随分と意地を張らせて貰いました」
「ですから、その手を改めて取りましょう。貴方を、真に私のマスターと認める為に」


手を繋ぐ。柔らかく握り返すその温度と感触がくすぐったい
顔を見つめて確かめ合う。共に信頼を授けるに相応しい相手かを再度認め合いながら

……どれほどの時間が経ったか。貴方か、彼女が手を離そうとした瞬間、地面が割れた



「……え?うわ!?何だ!?」
「そうか。ここはライダーの魔術によって造られた街」
「術者が消えた以上、綻びが生まれて崩壊するのも当然か……!」
「冷静に解説しないで!落ち──!」



焦る貴方は真っ逆さま。ぽつぽつとしか明かりの無い坂松の街へと急降下
絶叫だけが、虚しく空へ響いていった……



【本日ここまで。最後に安価を一つだけ】

【最終的に新重の状態は】
123:重傷(本編中入院)
456:軽傷(少し休学)
789:案外ピンピンしてる
↓1


0:割とピンピンしてる

【0はクリティカル。なので本日は本当にここまで】

【後は簡単なレビューを避難所でやりたいと思います。何で避難所かって?AAが貼れないからです】


【本日はお休み……】


【本日もお休み】

【連休に入ったらもっと頻度を上げたい所存】


【それでは再開】

【安価もちろっとありますが大丈夫ですか?】






……天界での決着の数刻前
熾烈に行われていた、セイバーとアーチャーの戦闘に終止符が打たれようとしていた


「はぁ……はぁ……!」
「オイオイ、セイバーさんよぉ……さっきまでの威勢はどこに行っちまったんすかねぇ?」

「う、ぐ……動か、な……!」
「……………………」


倒れ伏すセイバーとアーディー。勝負はアキラとアーチャーの勝ちで幕を下ろした
負けた二人に落ち度は無かった。マスターの腕も、サーヴァントの実力も拮抗していた
唯一勝負を決める要因があったとするならば、それは相性の良し悪しだけだろう


「わかったか!剣士が弓兵に勝てねえ様に、俺に船が敵う道理がねーんだよ!!」
「くっ……よもや、僕の艦隊に……いや、奴は船落としに慣れている英霊だったか……!」
「……アーチャー、トドメ。終わらせて……!」

アキラが命じ、アーチャーの手にはエネルギーが満ちていく
セイバーの大艦隊を撃ち落とした熱線。そんなものをまともに直撃すればどうなるかは簡単に予想がつく
アーディーの額に冷や汗が流れる。令呪を使おうにも、思考が鈍り安定しない……!


「セイ、バー!れい、れい……!」
「マスター!……せめて、せめて君だけでも生きて欲しかったが……」
「……やってみるしかない!」


セイバーが手に光を集め、何かを呼び出そうと手元に力を込める
しかし、それよりもアーチャーの方が早い。熱が一際大きくうねり、セイバーへと放たれようとして……


「ん?なんだありゃ。空から何か降ってきやがるぞ」
「……!?先、輩!?」






夜空に光る三つの点。視力の強化を施した眼で見たのは、自分の知る先輩の姿
何故天空に放り投げられたかはわからないが、アキラの取る行動は一つだけ

「アーチャー!先輩を、助けて!」
「ハァ!?ならこいつらどーすんだよ!」
「それ、はっ……!」
「あんなのどうでもいーだろがッ!そんな事よりさっさとセイバーを潰そうぜ!」

今すぐ先輩を助けに向かえと命じるアキラとは反対に、今すぐ倒すべきと
瀕死の敵を横目に言い争いを始める二人。当事者のセイバー達も困惑する他はなく
二人は意見は食い違いを続ける。圧倒的な勝利を手放す程に


「……マスター、捕まれ!全速、撤退!」
「あ……!」「ノォオオオーーーッ!マスター、テメェのせいだぞ!?」


一隻の船が、光の速さで戦線を離脱。そのまま遥か彼方へ消えていく
既に、アーチャーの手の届く範囲には……厳密には熱線を撃てば当たるだろうが、そうした場合は周辺被害が甚大になる
それを計算に入れての逃避だとしたら……中々にズル賢い連中だ



「……アーチャー、早くっ!」
「あーハイハイわかりましたよクソッタレ!ったく……」


ボヤきながらも命令には忠実に
アーチャーは全身にエネルギーを漲らせ……空を飛んだ






「あぁああああーーーっ!!!」
「マスター!手!両手を伸ばして!」
「新重なら私が問題なく抱えている!早く!」


貴方の必死の絶叫は、夜空にかき消え霧散する
上も、下も理解が出来ない。グルグルグルグル宙を回り続けて、平衡感覚はとうに無くなった
ギリギリ視界の端に捉えたのは、新重を小脇に抱えたバーサーカー。その顔には、普段浮かべている余裕が無い

「死ぬ!落ちる!バーサーカーーー!!」
「待て、令呪は使うな!いや最終手段としては仕方ないが!」
「いざとなればこの女を放り捨ててでも貴方を優先する。覚悟を決めろ!」
「そう言われても──!」


空中に放り投げられてもバーサーカーの思考は冷静。貴方に対してもそれは変わらず
とはいえ、一介の高校生に過ぎない貴方には荷が重い。ただただ混乱するしかないのであった


「うわああああ落ちるうううあああ!!!」
「マスターーーーっ!?!?」




「あーうっせえうっせえ!主従ともども喧しーんだよテメェら!」








「……え?あれ、え?」
「これは……!」

ビタンと激しい音が響いて、激突の衝撃に身体を震わせる
もんどりうって倒れ込む。見上げた先には巨大な顔が鎮座していた


『アーチャーのスキルを開示します』
 ◆魔力放出(炎):A+
  武器に魔力を込める力。
  アーチャーの場合、燃え盛る炎が魔力となって使用武器に纏わせる。
  やろうと思えば炎の推進力を生かしての飛行や、熱線も出すことが可能。
  俊敏の遅さもこれでカバーすることができる。

 ◆巨大化:A
  自信の身体を巨大化させる能力。
  接近戦や数の多い敵と戦う時に効果的。


「お前は、あの時の!?」
「どの時のだよ!」
「アーチャー……!?何故私達を!」
「そんなの知るか!俺のマスターに聞けYO!」


面倒くさげに顔を歪めて話を投げる。肩の辺りからひょこっと出てきた顔は、よく知っている人物のもので


「……アキラ!?」
「あ、せ、先輩。こんばんわー……デス」
「……あれ。アキラちゃんも?」
「俺の台詞だそれは……!」


驚愕で声が若干震える。御三家と知ってはいたがアキラが荒事に向いているとは思えない
しかも、こんな巨大兵器を従えているなんて……

「と、とにかく、私の家に運びます。先輩達もいいですよね……?」
「お、おう」








……場所は変わり、教会前


「はぁ、はぁ……ぐぅ……っ!」
「マスター、横になって。……すまない、僕の力が足りないばかりに」




「いやいや、そんな事は無いよ!ただ相手が悪過ぎただけさ」
「そ、し、て!君のマスターも悪かった。ああ本当に残念だよ。あれだけサーヴァント同士は止めろと言ったのに!」
「……貴方は」

嘲笑と共に現れるシュヴァルツ。笑ってはいるが、その目に宿る光は暗い

「アーディー。禍門のマスターを特定した事は見ていた。しかし戦えなんて誰が言った?」
「此方と彼方のサーヴァントの戦力差、彼方の弱点は明白だった。それすら理解出来ずに突っかかる阿呆」
「天上に座すあの御方に見せられるのか?貴様の犯したエーデルワイスの失態をォ!」


上っ面は愉快そうだったが、やはり内心は激昂していたのだろう
普段の様子はかなぐり捨て、口汚く罵り、横で伏せる少女の目の前で地を踏み抜く
当主の狂乱に怯えるアーディー。そのまま足が腹を蹴り抜こうと振り上げられ……



「そこまでだ。先も言ったが、マスターの失態は私の失態」
「これ以上の発言は看過出来ない。先の侮蔑は的外れとしれ」


「……ハ、英霊様に言われたなら仕方ないな!」







「でも、ま。オレとしてもただ見てるだけってのは座りが悪い」
「そーいう訳で!オレ達と組む陣営を探してきたよ。アーディー」


ケタケタと悪趣味にせせら笑う。出来の悪く、稚拙な解答を見た風に

「……それ、は?センパイ、達は」
「バーカ!あんな足手まといの雑魚二人、引き連れた所で勝てるわけないだろ?」
「ガイスロギヴァテスはセイバー単騎でも充分に勝率があった。わざわざハンデつける理由があるのかな~?」


「では、誰なのだ?キャスターとアーチャーは既に組んでいる。それ以外は……」
「まあそこら辺はちょちょいとね。それは……」



123:アサシン
456:老バーサーカー
789:ランサー
↓1

【ついでに判定。アーディーが呼んだ助っ人】
1234:まだ来てないよ
5678:流石に来てるよ
9:何故か貴方の家で出待ちしてるよ
↓2




4:老バーサーカー

1:まだ来てないよ




「フラン、寂しい。フラン、どこ?」
「……フラン、犬?」
「きゅいい……」


「……お前は」
「バーサーカー。本来の、ね」

「その動物は……?……まさか!」
「そのまさかさ。こんな事もあるんだねえ!」


ふらりと表れたのは痩躯の老人。空に手を伸ばし、何かを探る仕草をする
そして、その足元には犬とも猫とも取れる謎の動物が入ったケージが。それを荒く蹴飛ばすとアーディーの元へ転がってくる


「きゅっ!」
「……大丈夫、なんて言えないか。よしよし」
「マスターもだ……この動物は」
「好きにするといい。殺してマスター権を奪うのもいいし、解剖して実験してもね」
「きゅうぅぅ……」


「上手く使えよ?道具は使い用だからね」
「……わかり、ました」


去っていくシュヴァルツを不安そうな目で見つめる獣
アーディーはケージから出すと、その頭を優しく撫でてやる
そして、気づくのだ。“この獣には令呪がある”。と




【長くなりそうなので本日はここまで】

【少しだけですが、ご参加ありがとうございました】


【本日はお休み】

【アキラを誑かそうとすると、もれなく憂午に制裁されるのでそのつもりで……】


【本日も……ですが明日は必ずや……!】



【よし、再開します】







「……成る程。ライダーを、君達が」
「あっはい」
「ごめんなさあい……」


夜も更けた頃禍門邸にて。貴方はアキラと千呼の父親……憂午に事情を聞かれていた
一通り話を聞き終わった憂午は、まず、新重を厳しく叱った。ものすごい剣幕だったので頭に入らなかったが……
そして今。貴方とそのバーサーカーが、初めて英霊を下した事へ感心している。泣きじゃくる新重は放置して


「それにしても、だ。彼女にも再三言ったが、魔道とはおいそれと近づいてはならぬもの」
「聖杯戦争もここまで来てしまった以上、記憶を消去するだけではどうにも……」

「許してやれ、禍門の坊や。彼等は巻き込まれてしまった被害者。叱責するのは酷だろう」
「ごめんなさい……面白半分でやりました……」
「よし、尻を出せ。昔から悪ガキにはこれと相場が決まっている」
「出来れば後でお願いします!」


貴方の首根っこに抱きつく新重。降参した貴方は大声で叫ぶ
わんわんと泣き喚く姿に、憂午は元よりマリアも呆れた顔で頭を抱える
まさか聖杯戦争に遊び半分で来る輩がいるとは欠片も考えてはいなかったのだから








「それは、私も疑問に思っていましたわ」
「何故、本来参加者足り得ぬ人員が、聖杯戦争への参加権を持っていたのか」


どこか弛緩した空気に、バーサーカーの言葉が静かに刺さる
貴方もそれは例外ではない。ランサーに襲われたあの時、新重の残した召喚陣が辛うじて縁になった程度の事
いや、そもそも新重がマスターに選ばれた事が本来有り得るのか……


「……ま、言い出しておいて変ですが、私は彼に感謝していますの」
「現世に止まるだけの楔ではなく、一人の人間として。彼の道を応援したい」
「勿論、私の願いを叶える手伝いもしていただきますわよ?マスター」
「わかってるよ。バーサーカー」

「……本当にバーサーカー?なんか凄くペラペラ喋ってるけど」
「む、失礼な事を。口を開けば猥談しか出てこない貴女よりかはマシですわ。キャスター」
「そっちの方が失礼じゃない!?ボクそんなに色ボケのイメージあるの!?」
「「うん」」 「そんなあー!」


「うるさいぞお前達!書斎にでも言って本でも読んでこい!」

姦しいマリア、キャスター、バーサーカーに、とうとう憂午の沸点が吹き飛ぶ
怒鳴り声でビクッと震える新重を抱き寄せる。そそくさと部屋から出ていく三人と入れ替わりに、新たな三人がやって来た


「パパー!庶務君と茜ちゃんが、マスターって本当!?」
「お、お姉ちゃん。お父さんに、怒ってる……」
「平気よ。どうせ締め切り近くてイラついてるだけだもの。そうでしょ?憂午」


「姉さん!?今晩は徹夜のはずでは……!?」
「残念だったわね。トリックよ」









「千呼に、アキラ……」
「ってそりゃそうか。ここ、二人の家だしな」
「うえええ千呼ちゃああああん!!!」
「よしよーし。泣かない泣かなーい」


親友である千呼に泣きつく新重。その頭を優しく撫でる
ナデナデされて落ち着いたのか、少しだけ涙が引っ込んだ


「えーっと、君は?末っ子かな?」
「叔母よ」「は?」「姉さん……」

「さっきから話は“視て”いたわ。その子達の話は嘘も偽りも無い。私達としても彼等を責める理由は無いわよね?」
「ぐ、それはそうだが……!」


 ◆色別の魔眼  
  言葉の色を見ることができる魔眼。  
  言葉の色とはつまるところ、人が「意味」と呼ぶものである。  
  言葉に込められた意味を色として知覚できるため、少しの言葉から相手の本音や求めるものを見て取ることができる。  
  それは本やメールなどの文字であっても例外ではなく、意味が込められた言葉であればその意味が色となり、脳裏に浮かび上がる。  
  色を見ればわかるため、話を理解しているが聞いていない、という事が度々ある。



「……これは俺の、魔術師として、そして土地の管理者としての話だ!姉さんは黙って……」
「そうそう。憂午の寄稿してる雑誌、今度うちの会社に取材に来るのよね?」
「そ、そうだが」

「記者の非礼を理由に断ってもいいのよ?私」
「汚いぞ姉さん!昔からそうだ。俺の突かれたら嫌な部分をネチネチと……」




「……まあそんな事よりも。ふーむ」
「な、なんすか?」


憂午が頭を抱え、どうしたものかと悩み出す
それを放置して、貴方の眼を覗き込み……




【???判定】
1程普通、9程好感触
↓1



5:悪かないかなって位



「んー……まぁまぁね。鍛えればあるいは……」
「ただ……どうしても人の上に立つって気質には見えないわね。千呼、アキラ、どう?」

「わかるー!庶務君は社長さんには向いてなさそうだもん。優しいし」
「ど、同感デス……」
「あのー、何の話っすか?」

「こっちの話よ。気にしないで」
「いやしますって!」

預かり知らぬ所で、勝手に品定めされる貴方
それをみとりは鷹揚な態度で受け流す。そんな事を言われても、気になるものは気になるのだ


「私今ね、後継者を探しているの。最悪二人のどっちかにノウハウを仕込むつもりだけれど」
「姉さんのは教育じゃない。あれは刷り込みというか洗脳の類いだ。絶対に二人には継がせないからな……!」
「ま、こんな感じで中々決まらないの。貴方に才能があったら、今すぐ拉致して脳髄に叩き込んでいたのだけれど」
「遠慮します!」


全力で叫ぶ。それに姉妹は苦笑いを浮かべるしかないのだった





「……じゃ、俺はそろそろお暇しますね」
「え?泊まってかないの?私の部屋貸すけど」
「いや結構遅いし、迷惑だろ?」

「け、けど。先輩達、戦闘でかなり消耗してるし……私は、一緒の部屋でも、いい……デス」
「駄目だ駄目だ!二人の部屋に男を泊める等、言語道断!どうしても泊まると言うのなら俺の部屋を使って貰おう!」
「いや、まだ泊まるとは……」


「やっほー!いい事聞いた!ならボクの部屋に泊まるといいよ!」
「げ、キャスター……バーサーカーからも言ってくれよ。俺達はもう帰る……」
「いや!今晩はここに泊まる事にしよう。この家の書斎は本当に興味深い!」
「は?」

思わずすっとんきょうな声が出る。やけに高いテンションの彼女に驚きながら

「それと、キャスターについても私は酷い思い違いをしていた……何と謝ればいいか」
「気にしなくていいよ。ボクとしても、まさか英霊にボクと討論できる相手がいるなんて思わなかったし!」
「キャスター……!」

……何故か、女同士の友情が出来上がっていた。これには貴方も目を丸くするしかない
マリアは赤い液体の入ったグラスを手に持ち、そんな二人を引き気味に眺めていた






「まあ、そういう事だ。今夜は好意に甘えて、ゆっくり泊まっていけ」
「ちなみに私の部屋は無理だぞ。ただでさえ女社長と相部屋な上にもう一人来そうだからな」
「え?この家って結構部屋ありそうですけど」

「あるにはあるけど、ほとんどが資料保管所か紙束置き場よ」
「本当に邪魔ね……今度の燃えるゴミで一斉に処分しようかしら」
「紙束じゃない!あれは立派な仕事道具だ!」


「そ、それと、アーチャーは家の警護についているんデス。だから、話は出来ないと……」
「生真面目な性分のロボットだな。奴の身体は調べ甲斐がありそうなのに……」
「止めた方がいいよー。アーチャーって触られるの凄く嫌がるし!」


「……で!誰の部屋に来るの?庶務君!」
「いや、それはその」
「あのー私はどうすればいいのでしょーか……」 

おずおずと手を挙げる新重
このままだと自分は外で野宿させられると思ったのだろう。声が震えている

「取り敢えず余りに入れて貰いなさい。当然、憂午の部屋以外よ」
「それはそうだろう!?というか、本来ならば君は俺の部屋に来るべきだ!」
「えっ憂午まさかそういう……」「違う!」


やいのやいのと騒がしくなる一家。これは貴方が決めるまで続くと変な確信を持ちながら
……女性陣の部屋に行っても大丈夫そうではあるが、お父さんと話すのもいいかもしれない


1:千呼
2:アキラ
3:憂午
↓1~3まで、コンマが一番高いもの(新重は千呼かアキラのどっちか)




3:憂午お父さん



「んー……それじゃ、お父さんの部屋に泊まらせていただきます」
「君にお父さんと呼ばれる筋合いは無い!」
「じゃあなんて呼べばいいんすか!?」

「……意外だな。姉妹のどちらかを選ぶと思っていたが」
「何でだよ。言っておくけど、下心なんか全然無いからな」
「ほら、俺って一応生徒会だし。それに相応しい振る舞いをしないと会長に怒鳴られるし」
「だそうだが。ライダーの元マスター」
「ごめんなさあい……」


意図していなかった流れ弾に咽び泣く。貴方はごめんと謝ると、憂午に頭を下げた


「それじゃ……一晩、宜しくお願いします」
「うむ、君の着替えは適当に見繕うとしよう。それでは俺の部屋に来るといい」

「それじゃあ茜ちゃんは私の部屋!お泊まり会しようよ!ね!」
「うん……でもまだ傷が痛むから優しくね……」



「……………………」
「ん。アキラ、良かったのか?折角のチャンスだったろうに」
「……チャンスって、何の事、デス。私は、別にどこでも」
「誤魔化せていないぞ。まあ人の何とかを邪魔すると馬に蹴り飛ばされると人は言う」
「ま、頑張るといい。いざとなれば私謹製の」
「大丈夫、デス。……お休み、なさい」



「そうは言うが、大丈夫そうには見えなんだ。とはいえあの男に伝えるのも野暮天の極み」
「あの変態色ボケ露出狂とは違うからなあ。はてさてどうして手伝ってやろうものか……」





【本日はここまで。ついでに安価を】

【???判定。ついでにもう一つ】
1~5:まだまだ
6~0:もういいかな
↓1、2(二つ目は描写に使うだけのフレーバー)


4:まだ貴方の前には出てこないよ
4:それなりに期待しているよ

【という訳でここまで。ありがとうございました】


【本日はお休み……】


【今日は早めに更新します】

【ダークな展開は……うん、今からやると露骨すぎますし】

【次回から考えます(目そらし)】

【初っぱな自由安価ですが、人はいますか?】





「……さて、落ち着かないかな?」
「娘と共の部屋にする事は許さないが……やはり緊張するものなのか?」
「はは。まあ……」

貴方の目の前には、長身でガタイの良い屈強な男……憂午が座っている
憂午の部屋はところ狭しと本が積まれており、ただでさえ強い圧迫感が更に増す

「さて、夜更かしはよくない……と言いたいが、時間も時間。好きにするといい」
「本を読みたければ自由に取ってくれ。これだけあるならば琴線に触れるものもあるだろう」
「それでは、俺も少ししたら寝る。……ああ、その前に、少し」
「なんですか?」


「……千呼とアキラは、学校に馴染めてるか?」
「いや、千呼は余計か。あの子は誰に似たのか本当に活発に育った……」
「ははは……」

「しかしアキラは違う。あの子は親の俺が言うのも変だが、引っ込み思案で臆病な子だ」
「集団での行動等、アキラの最も苦手とする事でもある。あの子は友達を家に呼ばない……」
(それは家がデカ過ぎて恥ずかしいからじゃないかな……)


「……そんなアキラが、生徒会に入りたいと言い出した時には本当に驚いたんだ」
「それ故に不安でもある。が、俺は本当に嬉しかった。あの大人しいアキラが、少しでも人前に立とうとするなんて」
「……だから、仲良くしてくれ。アキラは、君や新重君の事を頼りにしているだろう」


はい。と優しげに、それでも力強く頷く
その答えに満足したのか、憂午は手元に置かれた紐を組みほどく……あやとりを始めた

「あの、それって」
「ん、あやとりを知らないのか。……まあ最近の子にはわからないか」
「まあ、マリアさんだけは嬉々としてやってくれるんだがな……」
(マリアさんって幾つなんだ……?)


疑問を感じつつ、貸し出されたベッドに遠慮しがちに横になる
……とはいえ、簡単には眠れないもの。何か、憂午に質問してみてもいいかもしれない


19:50から
↓1~2(無ければ無しでOK)





「……あの、ありがとうございました」
「俺、魔術師って危険な存在だと思ってたんですけど……本当に助かりました」

貴方は横になりながら、憂午にそう話す
今まで出会った魔術師は、どれもこれも超常の存在で。それでも自分達を助けてくれた彼等に感謝の念を

「それはどうも。……しかし、その認識は間違いだ」
「私達、禍門の家は代々よりこの土地の管理を任されている。仮に君が外部の者なら……」
「あの場でアーチャーに倒させていただろう」

「魔術師とは、本来そういうものだ。ガイスロギヴァテスもエーデルワイスも、それは変わらないだろう」
「……そうっすね」

憂午の言葉に、思い返すのはアーディーの顔
天真爛漫な後輩としての彼女、魔術師としての彼女。貴方には別の人間に見えたのだから

「聖杯戦争に参加するとは、そういう事だ。彼等は君に、何の情けもかけないだろう」
「バーサーカーがいる時にはいいが……それ以外で出会う事は絶対に避けた方がいい」
「けど!アーディーは俺の」「……? 君の、いや、聞くべきではなかったかな」


「例え、その子と仲が良かったとしても関係は無い。新重君もそうだっただろう」
「忘れるんだ。どの様な人間であれ、聖杯戦争に参加するとは、そういう事なのだからな」


冷酷な声色で、貴方に突きつける憂午
それだけを伝えると、また手元で編まれた紐に意識を集中し始めた






「………………」
「……………………」
「…………………………」

「……何かな。やり辛いのだが」
「あ、いや……すみません。趣味なのかなって」

憂午の手の中で、様々な形に組み替えられていく紐に、じっと見惚れる貴方
名前はわからないが、どれもこれも複雑な形。やれと言われても絶対に出来ない自信がある

「それとも、それが魔術の修行とか」
「いや?ただの趣味さ」
「珍しいか?俺が君くらいの年齢の頃にはもうやっていたんだが」
「そんな前から……!?」

「……まあ、君からしたら俺はオジさんか」
「あ、いや……すみません。けど、切っ掛けって何だったんですか?」
「ん、どうだったかな……。……すまない、思い出せないな」

「昔は千呼もアキラもやっていたんだ。二人で仲良くやりあって、出来上がったものを俺に見せてきて……」
「……あの頃は二人とも仲が良かったんだがな。今は少し、よそよそしくなってしまって」
「俺は、今でも仲がいいと思いますよ」


「……君に言う事ではないかもしれないが、二人と仲良くしてくれ」
「勿論です」


それだけ言うと、貴方は目を閉じる
微かに聞こえる紐の音だけが、ゆっくりと耳から離れていった









「……少年。無駄だと言っただろう」
「君の望むモノはここにはない。夜も更けた、家に戻りなさい」

深い夜の闇、ロベルトは教会の中で誰かを諭す

「ふざけるな……お前達が、ヴィオレを拐ったんだろ……!」
「それは違う。私は彼等との因縁は断っているのでね。存じていない」

しかし、納得はしていない様で。胸ぐらを掴み睨み付ける

「嗚呼、だが……安易に神に頼らない姿勢は評価する。そうとも。神等……」
「……あんな者ッ!どれ程祈ろうが助け船も出さない怠慢なだけだ!天使もそうだ。何故、このおぞましい世に現れないッ!」
「天使等、所詮は妄想……人間の快楽の為の自慰行為に過ぎない!」


ロベルトは吐き捨てる。思わず身じろぎする程の圧をぶつけながら
一頻り話し終わると、咳払いをして向き直る。その顔は、厳格な聖職者のものだった




「……失礼。しかし、君の知る答えを教えよう」
「この聖杯戦争に集う、マスターの話を……」







「……ふう。やっと我が家か」
「長かった様な、短かった様な……ともかく、ようやく一息つける」
「いや俺の家だからな?そもそも千呼やアキラの家でも羽伸ばしてただろ」


禍門家から帰って早々、ソファに腰掛けるバーサーカー
その勝手知ったるという態度に苦笑いを浮かべながら、貴方は借りてきた本を整理する
そのラインナップは、ほとんどバーサーカーの趣味によるものが大きかった


「さて、早速この本を読むのもいいが……その前に、マスター」
「貴方にも、色々と話しておきたい事がある。時間を取らせて貰おうか」
「……ん、わかった」

普段とは違って畏まるバーサーカーに、自然と貴方の背筋も伸びる


「まずは……私の真名。宝具を見せた以上、貴方に隠す理由は既に無い」
「けれど……やはり、貴方に答えて欲しい。私の真名を。本当の名前を」

告げられた言葉に、喉が詰まる
英霊には本当の名前がある、正体が発覚するのを避ける為に、通常はクラスで呼びあっているのだから
つまり、バーサーカーにも当然……真名がある。それを教えると言う事は……


「……信じてくれるのか、俺を」

頷く。ただそれだけで、彼女の意志は強く伝わる
それに応えられなくて、何がマスターだ。貴方は告げる。彼女の本当の名を──



21:35から、バーサーカーの真名
↓1~3の中で正解がひとつでもあれば






「…………ふう」


手がかりは幾つもあった……と思う。貴方の一番近くににいた英霊が彼女だ

その力強い、ともすれば傲慢とも呼べる生き方には、振り回される事もあった

けれども、彼女は自分を真に見捨てる事はしなかった。だからこそ、彼女に答えたい



ルーンの魔術という事は、北欧の産まれ……だと思う。正直、自信は無い

彼女は、どこかの王女だった。それも、長くに続いた戦争を終わらせた……

そうだ、婚約者がいた。その名前は“カール”……


……一人だけ、思いつく。氷と岩と熊の国。最も自由に生きた女王がいた事に


「……バーサーカー、いや……」

「君の、本当の名前は──!」








「───クリスティーナ」






立ち上がり、彼女の目を見据え、告げた


バロッケンズ・ドロットニング……即ち、“バロックの女王”と呼ばれた女に、その名前を


「……ええ。それが、私の真名」

「バロックの女王にして玉座の哲学者、グスタフ・二世・アドルフの娘……」

「クリスティーナ・アウグスタ。以後、私の事を真名で呼ぶ事を赦します。マスター」


満足した様に、バーサーカー……否、クリスティーナは手を差し出す

その手を取り、微笑み返す。信頼を交わし合うかの様に


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『貴方のバーサーカーの情報を全て開示します』

┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
  ≪クラス≫:バーサーカー
┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┓
  【真名】:クリスティーナ         【属性】:混沌・善
┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┓
  【筋力】:D     【耐久】:D     【敏捷】:D      【魔力】:C     【幸運】:B      【宝具】:B
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫
                    

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┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

 【クラススキル】
 ◆狂化:-
  理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
  しかし、彼女の意志が狂乱の鎖を打ち破ったため、このスキルは失われている。

┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫


 【保有スキル】
 ◆ルーン魔術:C
  ゴート人に伝わるルーンの魔術。
  ルーンの使い分けにより、多彩な効果を使いこなす。
  バーサーカーの王家はヨーロッパ、アジア、アフリカを支配したゴート人の末裔である。
  しかし、彼女はその立場を放棄し、キリスト教国民の平和を選んだ。

 ◆結婚願望:C
  特定人物への恋愛感情。
  対象が直接関わる場合のみ、愛の力は現実を歪める。
  彼女は結婚を夢見るくらいに愛し合っていた相手がいたが、愛を切り捨て自由を選び、生涯独身を貫いた。

 ◆獅子王の娘:B
  北方の獅子王の娘である彼女が持つ固有スキル。
  彼女が本来持つカリスマが更に強化されたもの。
  自軍の能力を向上させる上に、自身を除く味方全体に戦闘続行のスキルを付与する。
  死してなおグスタフ・二世・アドルフが遺した影響を現すスキル。


┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫

                 o
           --ミ  }{ }〉 _  -‐‐-  ___
      /  O、\ノ乂/       ⌒\
     . :    V乂/⌒       /   、   三ニ=‐ノ)
    . :    / 〉i/    /   ′  \    /,(´
   /    八〈_人   ``~、{    | )\   /,
__/    . :/⌒Y乂__  {/ぅ==ミ . :人-‐)ハ   }: }
     . : : : /   〔_人(__ .{ 乂ソ )/ .うミ / 人ノ
 . : : : : : .    人(⌒\.人      ' ゞ勹{ィ(⌒
: : : : : /     ⌒\乂{二ニ=‐      }´. :ハ
: : : /        //\ 、: \   ⌒`  人(⌒
. ィ(          〈/<¨¨)⌒ー┐_   ィ(∧)
            く \   く¨¨}i:i:i:/⌒>´
             '"~ ̄ ̄"'「¨¨¨〉/¨〉

-----ミ       { {      \ L\/〉---ミ
  . : : : )         {        ̄ ̄∨〉、〇  }
 . : : : :        {  、   、     ニ=- _\. └┐
). : : /        八.  \_\      ニ=-  _ ~、、
/⌒          〉    ⌒\         ニ=- _
                /\         \             ニ=-    _________
             __ノ.  \      )``~、、                  /)--ミ
        <‐‐人_________人___/     ‐ニ                 「く 〈  _))
           廴i:i:i:i:i:i/i:i:i\     ---ミ  ‐=ニ           { }┐〉-‐‐‐‐‐‐┐

┐〉-‐‐‐‐‐‐┐

           ⌒¨¨¨´ /⌒ヽL/:::::::::::::::只))、      ‐=ニ      し)ノ∧〉  、\/っ
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 【宝具】
 ◆『我思う、故に私はありのままに(バロッケンズ・ドロットニング)』
  ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

  後世にて「バロックの女王」と評されるクリスティーナの生き様。
  彼女は何物にも縛られない。常に自由である。
  たとえ令呪を何画重ねようとも、彼女の意志を曲げる事は出来ない。

  また、捨てる物を宣言し、真名開放を行う事で、我を通す奇跡を起こす事が可能。
  その対価とは自分のスキル、あるいは彼女の霊基本体。
  無論、対価として払ったものはいかなる手段でも元に戻らない。

  条約締結の際の譲歩、一生結婚しない宣言、王冠を脱いで、カトリックへの改宗。
  自身が手にしていたものを捨てて、彼女は自分の意志を貫いてきた。
  しかし、慢性的な金欠に陥り、金目的で各国を訪問する羽目になった自業自得の逸話も持つ。
  自由にも対価が求められるのである。だが、対価を払う価値のあるものを彼女は手に入れた。



【本日はここまで】

【貴方のバーサーカーの真名は、バロックの女王クリスティーナでした】

【皆様、お付き合いありがとうございました……】



【AAに関してはもう諦めるしかないですな】

【せっかくだしAA出してあげたかったんですが、自分もスマホなので潰れて見える見える】

【また避難所に改めてAAを貼ります。すみませんでした……】 



【見返したら、真名を間違えるという致命的なミスが発覚】

【言い訳ですが、他のデータを弄っていた痕跡が混入してしまいました。作成者さんには本当に申し訳ございませんでした】


誤:クリスティーナ・アウグスタ
正:クリスティーナ・アレクサンドラ




【前回は申し訳ありませんでした。それでは再開します】

【自由安価がありますが、人はいますか?】








「………………」
「……ええと、バーサー……」
「クリスティーナ」

「それしか枠が無かったとはいえ、私を狂戦士と呼ばれるのは業腹というもの」
「人前ならばともかく……二人きりなら、私の事は真名で呼んで欲しい。マスター」

毅然と話すバーサーカー……否、クリスティーナ
やはりその語り口と声色は狂気とは無縁の知性を感じさせる


「さて、我が真名も明かした事だ」
「貴方が私に対して、何か疑問や質問があるならば答えよう」
「私の事。聖杯戦争の事。貴方に問われた事にはどんなものでも誠実に、嘘偽りなく」


クリスティーナは笑いかける。貴方に対して、包み隠す事など無いという風に
……何を聞くべきか。今ならば彼女の個人的な事を聞けるチャンスなのかもしれない
それとも聖杯戦争での、今後の方針……何を聞いても、彼女は大丈夫だろう。……恐らくは



20:50から、クリスティーナへお好きな質問を
↓1~3


【ステータス、スキル、宝具は全部見せてます】



【安価確認しました。書いてきます】

【……当初におっぱい揉ませろと言った時から貴方も成長したなあと。ええ!】



正直ネタで入れようかと一瞬頭をよぎったw




「……じゃあ、さ。ライダーとの戦いの事」
「正直、俺は勝てるかわからなかった。けど」
「私を信じてくれた。ふ、とはいえ私としても賭けではあったんだが」

シレッととんでもない事を、さっくりと答える
その姿に、貴方は呆れた様な慣れた様な……微妙な顔で頷いていた

「初めて合間見えた時は、宝具を切れば勝てる相手と見込んでいた」
「しかし、まさかあれ程の巨体を誇る竜王とは流石に思わなかった……」
「怪物はランサーだけで充分だ。一度奴と剣を交えた経験が、戦闘で活きたといえるだろう」


「そうか……じゃあもしもあの時ライダーに本気を出されていたら」
「勝ってた……とは断言出来なかったな」

「私としては、貴方が戦う選択を取った事の方が意外だったが」
「ライダーのマスターは貴方と親しい仲だったからな。躊躇うと踏んでいたが」

逆に問いかけてくるクリスティーナ。その眼は深層を覗く酔うに光る
対して、貴方は毅然と答える。もう迷わないと自らのサーヴァントに証明する様に



「確かに。けど、逆に吹っ切れるきっかけにもなったと思う」
「ずっと記憶の中に縛られていた。あの場で、俺から断ち切らないと駄目だと思ったから」


「……そうか。その選択を、私は支持しよう」





>>133【どうせもうこんな質問する機会も無いと思うので】



「………………」
「……どうかしたのか?マスター」


「いや、せっかく戻ってきてくれたんだしさ」
「何でもいいっていったし、多分もうこんな機会無いと思うし」



「おっぱい揉んでいいですか?」


1~8:はいタイガー道場
90:まさかのOK
↓1




「煩悩まみれの青年諸君!私が来た!」
「今回は本編の真っ最中なので、極短縮版でお送りしまーす!」


「えーとね、今回は説明不要。信頼度を積み上げたとしてもおっぱいは揉ませてくれないの」
「ケチ。時間いっぱいかけたんだからちょっとくらい揉ませてくれてもいいじゃない」
「弟子よ。それはキャバ嬢に貢ぐオッサンの思考回路と人は呼ぶ……」




「……で、何か言う事は」
「ごめんなさい」

正座させられた貴方。何でも話すとは言ったが何でもするとは言っていなかった
しかし、それでも若干の軽蔑で済ませる辺り、最初の頃よりも信頼された……と信じたい

「それじゃあ改めて……クリスティーナの願いって何なんだ」
「ああ。それならば教えよう……というか、何故低俗な質問を先に言った」
「こんな機会絶対に無いし……」

ため息をつかれる。そして、咳払いをして彼女は語り始める



「……私の生前は、何もかもを思いのままに手に入れてきた」
「しかし、その為には常に何かを捨ててきた。それが私の生きてきた道」


……クリスティーナの宝具、『我思う、故に私はありのままに』

何かを捨てて何かを得る。言うだけならば至極単純な理屈だが、それを実践出来る人間は少ない
何故なら、人間は“利益を求める性質”だから。損をするという時点で、その選択を実行に移すどころか、選ぶ事すら躊躇われる







「当然、私はその人生に後悔等した事はない。全ては何者にも縛られない、私だけの結論」
「しかし、それでも一つだけ思うことがある。聖杯にでも願わなければ、叶えられない事が」

「……それって、もしかしてカールさんの」

その名前にハッとした様な顔を浮かべる彼女。少しだけ躊躇いつつも、口を開く


「今から話す事を、浅ましいと思ってもいい。情けないと笑えばいい」
「ずっと心の中で思い返していた。あり得たかもしれない、ifの可能性。絶対に叶わない、私が捨てたもしもの未来」



「カール・グスタフ。私が王位を授けた男性」
「彼とは婚姻を結んでいた。けれど、私はそれを破棄して自由を求めた」
「一生涯結婚をしないと言ってでも、自由を手に入れる為に捨てた事を」
「私は、彼のあの時の顔を忘れられない──」



「もしも許してくれるなら、彼に私の差し出した手を取って貰いたい」
「彼と結ばれたい。これこそが嘘偽りの無い、私の願いだ。マスター」


真剣な顔で、気丈な声で、自らの望みを口に出したクリスティーナ
どんな声をかければいいのか。少し悩む。軽率に肯定しても、彼女はそれを喜ばないだろう
それを察したのか、優しく声をかけてくる



「どう受け取るかは貴方次第だ。気にする程に受け止めなくてもいいさ」
「……サンキュ」

こんな時、なんて言えばいいのか思い付かない
その点では、まだまだクリスティーナには敵わないと感じる貴方なのだった




【本日ここまで。次回は続きから】


遅レスだけど、クリスティーナはアウグスタでもアレクサンドラでも合ってる
アレクサンドラは改宗したとき与えられた洗礼名で、そっちの方を好んで使ったっぽいけど

スキルを1つずつ消して宝具の真の効果を発動するとは中々新しい感じだ
シンプルながら元ステータスの低さとリスクに見合ってる
まあ狂化完全に無いバーサーカーってのも新しいわけだが
スレ主さんは前に雑談で上がってた自作鯖とかも見るに、変わった感じのデータが好きと見た

そういえば投票のときに説明で挙がってた、システム系統のスレでは動かせないってのはどのあたりの部分のことだろ?


>>144
【自分が、彼女が真名を名乗るなら洗礼前の名前より後の方を言うかなと思ったので……】
【それと軽く調べ直したらアウグスタは早逝した姉の方なのでそちらと混同してしまったのもあって間違えたと言いました】

>>145
【主にスキルや宝具の処理についての事でした】 
【例えば、前回のライダー戦。あれをシステム的に行うと、ステータスやスキルの増強、追加になるのでしょうが】
【再度使う時に同じ効果で処理すると、宝具そのもののコンセプトから外れてしまう恐れがありました】
【また、その性質からかなり幅の広い解釈も可能なのでマンチプレイが横行するんじゃないか。という予想もありました】


【質問、ありがとうございました。改めて資料やデータを読むいい機会になりました】

【それでは再開します。人はいますか?】






「でも、そっか……結婚か」
「正直言うと、少し驚いたよ。クリスティーナも結婚に憧れるものなんだな」

「ん……。まあ、そうだろうな。私は“男として育てられた”。父の言葉通りに」

「この口調もその一つ。私に女という要素は不必要と切り捨てられ、王としての立ち振る舞いを叩き込まれた」

「……貴方と初対面だった頃は、信用に足る人物か見定めたかった。処世術という奴だ」


……思い返すと、クリスティーナは口調を使い分けていた節がある
育ちの良さそうな女性的な口調と、淡々とした男性の様な口調。本来のものは後者なのだろう


「男装そのものは苦では無い。元々私は、女らしい事が嫌いだった」

「裁縫等は最たるもの。どうせ持つのなら、針よりも銃がいいと思う程に」

「だからこそ、私は彼……カールに惹かれた時は本当に驚いたよ。“こんな私も、真っ当に男性を愛せるのか”。とね」

「生涯未婚の宣言を果たしても、その事だけは引っ掛かっていた。だから……」

「……いや、これ以上は蛇足だろう」


頬を少しだけ朱に染めながら、弾む様に楽しげに話すクリスティーナ

その話を聴く貴方に、ふと過るのは少女の顔。女がどう思っているのか気になった








「クリスティーナ。ちょっといいかな」
「アーディー……というか、エーデルワイス家の事なんだけれど」
「……ああ、あのふざけた家か」

一転、嫌そうな顔つきになる。しまったと焦る貴方を、大丈夫と宥めるのだった

「そもそも、ありもしない存在と結ばれる事等出来る訳がない。私は諦めたというのに!」
「あ、やっぱ私怨があったんだな……」

「否定はしない。それにアーディーもだ」
「天使と結ばれる等という世迷い言を叶えようとするとは、呆れるしかない」
「特にあの当主……。あれは忌まわしき元老院と同じだ。他人を利用しようして利益を得ようとする、最も嫌う人種だ!」
「そこまでか……」


激怒するクリスティーナを宥める貴方
奇しくもその姿はさっきの真逆で。それに気づいたのか彼女はすぐに落ち着いた

「……では、マスターは彼女の事をどう思う」
「セイバーはアーディーの剣として彼女が命じれば戦うだろう。例え、別の思惑があれど」
「対話で解決出来ると思うか。それとも戦うしかないか。私はマスターの意見も聞きたい」


……アーディーの表情、言葉。それらを振り返る
貴方の言葉で、彼女をどうこう出来るのか?
仮にどうにかできたとしても……それは家に反目させる事ではないのか?

詰問を返され、少し考える。どう答えるべきなのか……


21:10から
1:出来るだけ対話で解決する
2:話し合いは出来ない。戦って無力化させる
3:その他、お好きな発言(内容によっては無効)
↓1、2






「……多分、アーディーと対話するのは簡単じゃないと思う」
「けど、もし本当に狂っていたら、俺達をすぐに排除するか、利用しているとも思う」
「だから、エーデルワイスとのしがらみさえ何とかすれば説得に応じてくれる……はずだ」

「成る程、彼女自身は説得に応じる。と」
「それは言葉にするよりも、遥かに難しい事。家のしがらみとは、代々連綿と受け継がれてきた呪いのようなものだ」
「簡単に断ち切れるとは思えない、甘い考えと言わざるを得まいよ」
「うぐっ……」


ズバズバと切り返されて頭を抱える。甘いという言葉に反論できない
確かに簡単な事じゃないだろうが……だから倒すと断定してもいいのだろうか
そもそも、貴方の戦う理由は“これ以上聖杯戦争で傷つく人間を増やしたくない”から
あの時のアーディーの顔は、使命を受け入れた様には見えなかったから……


「まあ、方法が無い訳でも無いが」
「本当か!?」
「ああ。後腐れなくアーディーをエーデルワイスから解放する裏技の様なものだが」
「教えてくれ、クリスティーナ!」


「貴方がアーディーを娶ればいい。そうすれば合法的にエーデルワイスと絶縁出来る」
「却下」


「何故だ!これ以上の方法は無いだろう!」
「気持ちも考えろよ!そもそも、アーディーに好きな人がいるかもしれないだろ!」
「それを応援するならいいけど……勝手に相手を決めるのはエーデルワイスと変わらないだろ」


クリスティーナの案は即却下。幾ら親しくしている後輩とはいえ……
そんな事を考えている貴方に向ける視線が冷たい事を、貴方は知るよしもないのであった







「ふぅ……何だか、話し疲れたよ」
「全くだ。思えばこうして、貴方と話したのは初めての事だったかな」

話も終わって一息つく。手にはクリスティーナの淹れた紅茶を持って

「せっかくの機会だし、今日はゆっくり過ごさないか?」
「クリスティーナも戦争の事ばかりで疲れると思うし」
「いや?生前に比べたら楽しいものだ。生前も楽しかったが」
「特に、枢機卿の寝床に砲弾をブチ込んだ時は胸がすく思いだった……またしてみたい」
「えっ、何それは」


思いの外、過激なエピソードで目を丸くする。またしてみたいという不穏な言葉もつけて
どう反応すればいいのか。さっきとは違う方向で頭を悩ませていると、扉のチャイムが鳴った




123:新聞部トリオ
456:生徒会長
789:???
0:何故かこっちに来るエーデルワイスの援軍
↓1





「はい、どちら様で……」

「うおー!生きてた!生きてたぞー!」
「良かった~!もしも何かあったらどうしようかと思ったよ~!」
「庶務。よくぞあの魔窟から生還したな。これは土産だが、受け取ってくれるかね?」


扉を開けると、そこにいたのは新聞部
あの夜に自分が逃がした三人が、目の前で心配してくれている
色々と込み上げる想いはあるが……一番強く感じたのは


「……良かった。無事だったんだな」
「たりめーだろ!この坂松のエースが逃げ遅れるかっての!」
「マキの字の舐めた妄言は無視してくれ。……ありがとう、庶務」
「ありがとうね~!今度、皆で作ったクッキーを差し入れるヨ!」
「なんだ?カントリーマ◯ムでも持ってきゃいいのか?」「手作りって言ったよね!?」


いつも通りの会話。いつも通りの悪ふざけ
貴方が聞き飽きる程に繰り返された、いつもの日常に顔がほころぶ
貴方が少しでも守れたのなら……きっと、間違いなんかじゃなかったのかもしれないから





【夜行動。とはいえ動ける陣営が少ないため個人個人で判定】


123:アサシン陣営
45:ランサー陣営
67:アキラ
89:アーディー
0:???
↓1


【アサシン陣営で本日はここまで】

【お付き合いありがとうございました】


【本日はお休み】

【避難所で禍門家とマリアのイメージAAを載せてるので、良ければ……】


【本日もお休み……明日にはやります……!】


【ごめんなさい遅くなりました】

【滅茶苦茶短い上、描写だけですが……】





「………………」
「マスター、マスター。嗚呼、寝ているの?」
「…………アサ、シン」
「ごめんなさいね、起こしちゃったかしら。悪気は無かったのだけれど」


暗闇に蠢く心臓喰らい。その隣でクルクルと、暇を持て余したアサシンが踊る
不規則な動きに眩暈を覚えたのか、死徒は顔を抑え、アサシンから目を背ける
それを逃させない様に、心臓喰らいの顔を掴み自分の方へと向けさせた


「マスター?わかるでしょう?痛いの、苦しいの、治したいのでしょう?」
「死にたくないのなら仕方がないわ。けれど、ずっと呻くのも辛いでしょう」
「聖杯よ。聖杯を手に入れるの。聖杯さえあればどうとでもなるわ」
「………………」

「ね?私達は勝たないといけないの。だから」
「駄目だァあああっ……!!っぐ……!」

アサシンの言葉を遮る絶叫。ズタズタの身体はそれだけでも苦痛が伴うというのに……

「俺は……違う……!俺は、無差別な殺人なんてしない、してたまるか……!」
「そんな悠長な事を言っていていいの?貴方はもう壊れかけ。人の事を気にしちゃダメよ」
「そうじゃない……俺は……俺は……」



「……仕方無いわね。私は貴方。貴方は私」
「意地悪はダメとお姉様も言っていたもの。私は傍にいるわ。聖杯をとるその時まで……」



その笑みは穏やかに、あるいは見下す様に
アサシンの向ける顔に底知れない悪寒を感じながら、心臓喰らいは仮面を深く被り直した









『……これは』


貴方の知覚する景色。それは見知った事の無い未知の場所
しかし、同時にどこか懐かしい。不思議な矛盾を錯覚させる
それはきっと、自分ではない“誰か”の目線から見た世界だから


「──女王!なんという事を!」
「何故、彼の処刑を命じたのです!?」
「こんな事をすれば女王の名誉に……」
「黙れ!!!」


「私こそが裁決者。私こそが女王である!」
「誰が何を言おうが、例えルイ十四世が赦そうが私の下す命令は絶対だ!覚えておけ!」
『うわあ……』

苛烈な一喝に思わず震える
貴方のよく知る姿より、更に凄烈に、豊かに成長した少女の覇気に気圧されながら
王……クリスティーナ


「こんな事……王に何と言われるか!」
「貴女はあくまでもフランスの賓客なのです!王の意思を確認してからでも……」
「……いえ、起きてしまった事は変えられまい。王と民には諍いの末と……ぐはっ!?」

「ふざけた事を言うな!世界の誰であろうと、私に嘘を吐かせる権限は無い!」
「この出来事はありのままに、嘘偽り無く公表しろ。いいな!」



クリスティーナに突きつけられた男性は、真っ青になりながらも人を引き連れて去っていく
その光景が離れていく。また別の記憶へと移り変わる様に……







「……カールが、死んだ?」

「何故、どうして……いや、それならば国はどうなる!?」


「……今すぐスウェーデンに戻る。仕度をしろ」

「……国も、アドルフの娘である私を待っているはずだ」

「私が、私さえ国に舞い戻れば父の栄光で幾らでも出来る!私は獅子王の娘なのだから!」




高らかに、誰かに向けて宣言する
かつての恋人の死を前にしても、何も揺れる事はなく。ただやるべきをこなしていく
その振る舞いは氷の様、その在り方は岩の様

冷たく、強情で、何者にも触れさせない
自分に素直で、自分に嘘をつかない。苛烈で、気ままで、制御不能。彼女を従える事なんて誰にだって出来ないのだろう


そんな彼女が、今、自分の傍にいる

その事実に頼もしくなるような、頭が痛くなるような……不思議な感覚に身体が消えていく

身体の感覚がシャットダウンしていく、夢の世界から現実へ、過去から今へと浮上していった





【本日これだけ。すみませんでした……】



【今回も描写だけ……】





「……スター?マスター!」
「今すぐ起きなさい!私を待たせずに!」
「うおっ!?」

クリスティーナの怒鳴り声は、眠っていた頭によく響く
思わずベッドから飛び起きて、声の主の顔色を窺う。頬が少しだけ赤かった

「……見ましたの?」
「何をさ」
「わ、私の……その……過去を……」
「ああ、うん。見た見た」
「何処を!?どの様に!?」

「えーと……クリスティーナが誰かを問答無用で処刑する所とか」
「そこですか……あまり他人に詮索されたく無い部分なのですが……」
「……何があったんだ?その人と」

訝しげに問いかける貴方。なるべく慎重に、傷に触れない様に
その表情に悟ったのか、クリスティーナは話し始める



「あの男の名は……モナルデスキ。モナルジテと言った方がいいかもしれない」

「モナルジテ暗殺事件というのをご存知か。マスター」








「まず、私が何故フランスに滞在していたかを話そうか」

「発端は宗教の改宗……その反発のせいで、国から離れざるを得なかったのだ」

「当時のスウェーデンはプロテスタント。それを改宗、ましてや女王が等前例が無い」

「じゃあ、クリスティーナも苦渋の決断で……」



「いや?寧ろ即決だったが」
「あんな、説教ばかりで何の役にも立たないカビの生えた宗教から早く離れたかったしな」

「スウェーデンという国に対しても愛想が尽きていたというのもあるな。あの国は私がミサを挙げる事すら許さない血も涙もない国だ……」
「まあ、さっさとローマに行きたかったしな。あそこはいい!私の第二の故郷だ!」
「えぇ……」



余りにもあんまりな彼女の発言に、ガックリと肩の力が抜けていく
クリスティーナは貴方の様子を知ってか知らずか話を進める。自分が起こしたとも呼べる事件の全容を……



「モナルデスキは、私の腹心足る部下だ。私のローマ滞在にも」
「本当はローマにずっと滞在するつもりだったのだが、ペストの流行が酷くてな」
「そこで、一時期フォンテーヌブローへと避難していたのだが……そこで、奴の背信行為が暴かれたのだ」

そこまで言って、酷く顔が歪む。本当に、心の底から憎んでいると言いたげに



「奴は、私の機密情報をスペインに売り渡していた。すぐに奴を取り押さえ、直ぐ様斬首する様に命じたのだ」










美しい顔を憎悪に滾らせ、女王は吐き捨てる
しかし、すぐにその色はかき消え……いや、表情そのものが喪失する
無機質で冷たい感触のソレは、もう興味を喪失したといいたげに話す


「奴が情報を流せたのも、全ては私が最も重要な任に就かせていたからだ」

「私の信頼を裏切った罪は何よりも重い。奴の良心こそを死刑執行人とする」

「誰も彼もが奴の助命嘆願をほざいたが、私はそんなものを聞き入れなかった」

「挙げ句の果てに……フランスの賓客なのだからフランス王の判断に従え、だと?愚かな」





「私は女王。私は採決者。私は私の宮廷の人間をいつ、どこでも裁ける存在である」
「私に裁きを下せるのは、神にのみ限る。誰であれ私を理不尽に縛ることは許さない」


表情を一切変えずに断言する。自らは何者でも裁ける者であり、何人たりとも裁かせぬと


「奴は処刑の寸前に狂い、スペイン語、英語、フランス語、ドイツ語、ありとあらゆる言語で私に謝罪と懺悔を説いた」

「それを全て聞き届け、私はこう告げた。“首を落とせ”と」

「………………」






……寒気がする。それは何故だろう
目の前の彼女に畏れたから?過去の所業を理解し難いから?

いや、違う……彼女の、クリスティーナの眼だ
絶対零度のその眼からは何の感情も興味も浮かんでいない。憎悪すら越えた無関心が恐ろしい

燃え盛る炎の様な情熱と、凍てつく氷の如き冷酷さ。これが彼女の本来の性格

それに、一端とはいえ触れてしまった。貴方は開いてはいけない門を開いてしまったのでは……



「マスター」「な、何?」
「前にも再三言いましたが、私を理不尽に縛る事は絶対にするな」
「そして、私の信頼を裏切る様な真似をするとどうなるか……わかるだろう?」

「私は貴方を信頼している、故に言おう。私を裏切った場合、相応の罰を与え、裁く」
「貴方の誠実に期待している。マスター」


女王からの問いかけに、貴方は躊躇なく頷く
それは、恐れからではなく……彼女を裏切る事はしないという誓いから

彼女と戦うと決めた時から、貴方に逃避するという選択肢は消えた

クリスティーナは話は終えたとばかりに退室する。貴方もそれを追いかけるように、部屋から足早に出ていった




【本日ここまで。次回は自由行動から】

【モナルジテ暗殺事件に関しては、色々と自己解釈が含まれている事は悪しからず……】

【最後に関しても二通りありましたが、今回は片方だけの採用で】


【余談ですが、ルイ十四世はクリスティーナを終生ナポリの女王とするよう努力すると言ったそうなので】

【(少なくとも最初は)いい関係だったんじゃないでしょうか】





暗殺であってるのかそれ


【遅くなってしまったので、ちょっと本日はお休み……】

>>179
【実は、モナルジテの最期にはもう一つの説があって】

【クリスティーナの放った刺客が、完全に息絶えるまで刃物で全身を滅多刺しにし続けた。というのがあります】

【暗殺の定義?知りませんね……】





【ごめんなさい。今日もお休み……】



【今日は更新します】

【初っぱなから安価ですが大丈夫でしょうか?】






身支度を整えて外に出る。空は冴え渡る程の快晴で、日差しで少し目が眩む
……数日も経っていないライダーとの激闘が、今は懐かしく思えてくる。晴れ渡る空を飛び回る龍が見えた気がした



「……ふぁああ。今日はいい天気だな」
「クリスティーナ、どうする?せっかくだし、また町に行ってみるか?」
「新重も反省しただろうし、久し振りに外を歩いてみてもいいんじゃないか?」
「む、それはいい。丁度、気になっていた酒が欲しくてな」「ダメに決まってんだろ!」

「スウェーデンは冷たい国だ。大して美味くもない酒でも、冗談みたいに税が高い……」
「ここは日本だろバカ!」
「今日の夕食はザリガニだな……」「わかった。金だけは渡すから!」


クリスティーナは知らない。日本でアルコール飲料を購入するには身分証明が必要だと
とはいえ、彼女の買い食いで結局貴方の貯金は底が見えているのだが……

さて、貴方はどこに行こう?時間もある。街をぶらついてもいいかもしれない



1:本屋にでも寄ってみるか
2:誰かに会いに行ってみよう(名前も明記)
3:自由安価(場合によっては無効)
↓1





「んじゃ、本屋にでも行くか……」


貴方は、久々に行きつけの本屋に行く事にした
普段の購入歴は、漫画雑誌や参考書等の至って普通の学生らしいもの

とはいえ今は聖杯戦争中。何か情報になり得そうなものを購入してもいいかもしれない
もしくは、クリスティーナの事を調べ直すのもアリだろうか?此方の理解を深めれば多少軟化するのかも……


「……つっても、そんなに金持ってないしなあ」
「クリスティーナがやたらと使うからなあ……」


苦い顔をしながら薄くなった財布をしまう
彼女の無計画な散財で貴方の家計が火の車な事を、クリスティーナは知らない
それでも不自由無く暮らせている辺り、貴方の家がかなり裕福なのは別の話である

「そろそろ買うか。何にしようかな……」


購入した本
1:クリスティーナ女王の事が書かれた本
2:他のサーヴァントの事が書かれた本(クラスも明記)
3:その他(どんなものかも明記)
↓1

誰かと会うか
123:生徒会長
456:副会長
789:???(女性)
↓2






「……これにするか」

手に取ったのはギリシャ神話。その中でも英雄ベレロフォンのもの
かつて、リキュアの地にいたキマイラは鉛の槍で殺されたらしいが……
ランサーの姿はまさしく泥。同じ手が通用するかどうかも定かではない

何か、手がかりになる事が書かれていれば良いのだが。そんな期待を胸に本を取る
同時に、貴方の手に誰かの手が触れる。柔らかな感触は女性のもので、すぐに手を離した

「あっ……!ご、ごめんなさい」
「いえ、こっちこそ同じく……って」
「……貴様、何故ここにいる?」

可愛らしい声で謝罪したかと思ったら、ドスの効いた声で凄まれる
女性……潮会長は、ぱっぱとハンカチで手を拭くと、貴方を睨み付け、胸ぐらを掴む


「貴様……庶務の分際で私の手を掴むとは随分と偉くなったな?立場を弁えるという人として当然の義務すら忘れたか?ええ?」
「いや、今は人前……というか、会長こそなんでギリシャ神殿の本を買いに来たんすか。好きでしたっけ?神話」
「それとこれとになんの関係がある!?今は私が話しているだろうがこの……」



「質問に答えてください!会長こそ、急にどうしたんすか!?」「ひっ!?」

「どうしてギリシャ神話の本を買おうとしただけでそんなに怒るんですか!」

毅然と返答する貴方。その姿に、普段とは想像つかない程に情けない声を出す会長
……この聖杯戦争中で、貴方も成長したのか。もしくはクリスティーナの気質が移ったのか

今、貴方は生徒会長の想像以上にメンタルが強くなっていた
その勢いで、初めて会長に反旗を翻す。会長はその加勢に……


【急に迫られた】-3
123456:負けた
789:絶対に負けない!
↓1

そういや会長は何で貴方に当たりが強いの?
123:人畜無害そうだしサンドバッグとして……
456:お前は私が認めた云々
789:貴方の事が好きだったんだよ!
↓2


1:圧倒的敗北
2:逆襲のサンドバッグ




「そ、その……知りたい事があって……」
「何っすか」
「フン!貴様にそんな事を「教えて下さい」

「ひぃいい……何なんだオマエ、今日はやけに私に厳しいよぉ……」
「重要な事ですから。で、会長はどうして神話を調べているんすか?」


普段、会長は貴方の人の良さを利用して暴虐の限りを尽くしてきた
所詮は私の言いなりの犬……そう思っていた相手が、今、自分の手に噛みついてくる
振り払おうにも予想以上に力が強くて振りほどけない。その事実が、更に恐怖を煽っていた


「し……知らないだろうが、ギリシャ神話には“キマイラ”という怪物がいてだな」
「は?」
「し、知らないかもしれないと言っただろう!私はそいつの事を調べ……」
「いや、実は俺もそうなんです。キマイラの事を調べようとしていて」

「なな、何故だ!?普通に生きていれば、まず間違いなく関わりの無い単語だろうが!」
「その言葉、そっくりそのまま返しますよ。潮会長こそどうして急に」
「うるさい!貴様にそんな事を言われる筋合いは……」



「……は?庶務、お前これ、何だ?」
「あ……いやこれはタトゥーとかじゃなくて」
「まさか……聖杯戦争のマスターなのか!?何故貴様の様な奴が!」
「は?」

貴方の手の甲に現れたそれを見て、会長は彼をマスターだと発言した
その事を知っているという事は、つまり……



「……会長、少し話が」
「わわ、私はもう帰る!ではな!」
「どこに行くというのです。お茶でも飲んでお話しでもしましょう。当然貴女の家でですが」

「バーサーカー。もういいのか?」
「ああ。充分に暇は潰せた、それよりももっと楽しそうな事もありそうだしな……」



クリスティーナに肩を掴まれ、諦めたのか走る事を止めた会長。その額には汗がビッシリと
貴方はそんな二人を見やりながら、そっと手に持った本を会長の懐に忍ばせるのであった


(なんかスッとしたな……普段いびられてたからかな?)



【長くなりそうなので本日はここまで】

【少しだけでしたが、ご参加ありがとうございました】


【すみません。本日はお休み……】


【書き溜めしていたりしていたらこんな時間に】

【安価までいくとキツいので、本日は軽く描写だけ……】






「……さて、お話しお聞かせ願おうか」

勢い任せに会長の部屋に上がり込んだ二人。その端でガタガタと震える潮会長
綺麗にキチンと整頓された部屋の真ん中で、我が物顔に紅茶を飲むクリスティーナ
……茶葉も、ポットも、カップも、全て会長から強奪したものだが


「わ、私を口封じに殺す気か!?これだから野蛮な英霊共は!」
「神秘の秘匿とか全員消せば問題ないとか平気でほざく様な奴等だからな!どうせ貴様も」

会長の話は最後まで続かない。クリスティーナの拳が頬を掠めたからだ
更に血の気が無くなる会長。ニッコリと笑い、頭を鷲掴みにして正面を向かせる

「私の言った言葉にだけ答えろ」「止めろバーサーカー!戻れ!」
「……会長、落ち着いてください。まずは、俺の持っている事を全部話します」
「それから、ゆっくり考えていきましょう」


貴方の声に冷静さを取り戻したのか、涙を浮かべつつも確かに頷く

それを確認すると、貴方は語り出す。今までに戦ってきた出来事の全てを






「……で、そこで新重がライダーに刺されて」
「待て待て待て!アキラはともかく、新重までマスターだったのか!?」
「ええ、まあ。でももう大丈夫っすよ」

「そういう問題かこの唐変木!何故我が生徒会から三人も聖杯戦争に参加する阿呆がいる!」
「んな事を言われても……」


生徒会長からの怒りには、頷く事しか出来ない
何故参加している?と言われれば、これ以上の惨事は見過ごせないから。と答えられる

しかし、何故参加“出来ている?”と聞かれたなら話は別だ。そんなのは貴方ですらわからない

「召喚陣に触れたから英霊が呼べた?胡散臭い事を言うな!その理屈ならもっとポンポン英霊が出てくるだろうが!」

「逆に、会長はわからないんですか。どうして俺なんかが英霊を呼べたのか」
「む……うむ、そうだな……」




「可能性としては、“連鎖召喚”があり得るかもしれんな」










「……連鎖召喚?」

聞き慣れない単語に目を丸くする貴方
そんな事を気にせずに、会長は語り始める……


「通常、英霊とは召喚者と触媒、詠唱、あるいは相性で呼び出される者が決まる」

「しかし、稀に“英霊そのもの”が触媒となって他の英霊の呼び水となる場合があるそうだ」

「例えば戦国武将……織田信長を英霊として日本に召喚したとする」
「その後、他の者が英霊を召喚すると……」

「信長の縁者……例えば、森長可が呼ばれる事もある。という訳か」
「またえらくニッチな所の武将だな……」


クリスティーナは、合点がいった様に強く頷く

どうしてスウェーデン出身の女王が戦国武将を知っているかは置いておいて……貴方は彼女に耳打ちした


「けど、そんな英霊いたっけか?」
「いない。つまり全て的外れだな」
「ひっ!?なな、なんだその言い方ぁ!?」






……確かに、思い返してみてもそれらしい英霊は一人もいない

真名を知っているのは、セイバー、ランサー、そしてライダー

エリザベス女王……男だったが……は女王というだけ。未婚を貫いたという共通点はあるか

合成獣キマイラと竜王フェルニゲシュに至っては、最早ヒトですら無い


他の英霊……アーチャー、キャスター、アサシンも
クリスティーナが反応しなかった事を見るに全員初対面の可能性が高いだろう



「まあ私の事は置いておいて……会長?」
「ななななんだ!?!?」
「貴女、やけに詳しいじゃないか。是非とも私にもご教授願いたいが……?」


「うわあ……会長、震えてるよ」


会長の肩に手をポンと置く。友好的な態度とは裏腹に、その眼は全く笑っていない
普段貴方に向ける目線を更に冷たくしたものを向けられた潮は、震える唇で語りだした……





【本日ここまで。次回、鬼生徒会長の秘密が明らかに(なる予定)】

【ここに来て会長ヒロインルートあり得るんですかね……?】

【ちなみに序盤のコミュ次第では新聞部に変わる情報源になってたり】




【変な時間ですが更新します】

【早速安価あり。遅いので点呼はとりません】







「……聖杯戦争なぞ、バカのやる事だ」
「七分の一、下手すればそれ以上だぞ!?パチンコの方がまだ確率的にはマシなくらいだ!」

開き直ったかの様に、普段の様に強気になる
しかし目の前にいるクリスティーナに睨まれると、竦み上がって震え出す

「魔術等、学ぶ事全てが無駄な時代遅れのバカらしいモノ……」
「こんなものにすがって、人生を棒に振りたくはなかった……なかったのに……!」
「なのにどうして……!こんな事になる位なら、断っておけばよかった……!」

クリスティーナの圧が堪えたのか、頭を抱えながら唸る会長
それを聞いて首を捻る貴方。今の会長の口ぶりはまるで……

「は?断るって何をですか」
「フン。魔術協会さ、やけに手当ての充実したアルバイトだとは思ってたよ!」
「……アルバイト?」





「ああそうだよ!私はこの聖杯戦争での神秘の秘匿やその他諸々を請け負っただけだ!」
「「えぇ……」」






堂々と胸を張って答える。私はバイトだと
いや、言い方が悪いだけで実際は雇われ魔術師という事もある……のかもしれない

「マスター、少し買いたいものが」
「何を?」
「前に話しただろう。私は気にくわない枢機卿の館に大砲をブチ込んだ事があると」
「この家を壊す気か!?」

ニッコリと笑いかける。その顔は不安しかない
もう用はすんだとばかりにスタスタと帰り支度を始める。それを必死に引き留める会長

「や、止めてくれ!叔父さんと叔母さんは関係無いだろうが!」
「はて?魔術師なんぞを匿う様な家。ここも、どうせ工房なのだろう」
「二人は既に魔術とは袂も別つている!だからこそ私は家族に勘当されてまでここにいる!」

「だから……!私が何でもする。だから叔父さんと叔母さんには手を出さないでくれ……!」


すがる様にクリスティーナにしがみつく。その顔は悲壮感に満ちていて
普段から酷い目に合っている貴方でも、許してあげたくなる様な……




「頼む……!頼む……!」
「バーサーカー……もう……」
「今、何でもすると言ったな?」
「「え?」」








意地悪く笑うクリスティーナ
背筋が凍る。貴方は悪魔を見た気がした


「では、まずは貴様の持つ情報を全て吐いて貰おうか」
「な……!?貴様!人の情は無いのか!?」
「何でもする。といった癖に反故にする貴様に言われたくはないがな」

この状況で、なんの情状酌量を持たない彼女に貴方も少しだけ引く
とはいえ、会長が様々な裏の情報を知っている可能性は高いだろう。悪くない選択だとは思う


「えーっと会長、お願いしたいんですけど」
「くっ……何だ。何が知りたい!?何でも教えてやるぞクソっ!」

ヤケクソ気味に返答する会長。この様子だと嘘はつかなそうだ
さて、何を聞こう?個人的な事や戦争の事、何を聞いても教えてくれそうだが……


22:05から、会長に質問
↓1~3(重要な事でも、どうでもいい事でも。ただし例によって弾く可能性もあり)


【安価確認。……後一つ、何でも適当に聞いてもいいんですよ?】

【40分までこなければそのまま流します】






「んー……じゃあ、今回の戦争に参加している人達全員の情報でどうですか?」
「ふざけてるのか貴様!」「何で!?」

「私はバイトだぞ!バイトにそんな重要な事を教えると思っているのか!?」
「あー……」


言われてみれば尤もだ。会長の立場からして、下手に情報は持たされなかったんだろう
自分でも虚しくなったのか、こほんと咳払いをして軽く訂正する

「ま、まあ私だってあるにはあるぞ?御三家の一つである、ガイスロギヴァテスのな」
「……ランサーのマスターの家か。しかし何故」

「奴等も立場としては私と似たようなものだ。連中も外様。何をしでかすかわからんからな」
「特に厳重に監視しろ。と命じられている」

ふん、と鼻を鳴らす。自信はありそうだが……


「じゃあ、それ以外は?他の人の情報とかありますか?」



【情報どれくらいあるの?】
123:ガイスロギヴァテスだけ
456:↑にエーデルワイスもつける
789:↑に正規のバーサーカーも
↓1


2:バイトに高望みはいけない

【という訳で本日ここまで。ありがとうございました】


【本日オヤスミー……】


【今日はちょっと早く再開】

【安価がありますが、人はいますか?】






「……ガイスロギヴァテス、だけだ」
「はぁ……」
「わ、悪かったな……!」

「情報があるだけマシだろ、バーサーカー」
「とはいえ、まさかたった一陣営だけとは拍子抜けもするだろう」
「仕方ないだろうが!奴等は傭兵集団だぞ。私個人では手一杯なんだよ!」

会長の叫びに、貴方の脳裏に浮かぶのはランサーのマスター
ドミトリイ・ガイスロギヴァテス。奴の冷血さは身に染みて痛感している

「……まあ、それだけでもいいんで。教えてくれませんか」
「ハッ、さっさとするぞ。ガイスロギヴァテス家の説明はいいか?」
「んー、おさらいで聞かせてください」


眉間に皺を寄せる。そこからか、と言いたいんだろう
とはいえ、貴方は素人。しかも情報は全て他の陣営からだった
なら、比較的中立の会長からの情報も無価値ではない……はずだ


「……まあいい。ガイスロギヴァテス家は欧州の魔術使いの傭兵が集まった組織の様な家だな」
「特色としては炎系統の魔術の使い手が多いと聞く。破壊力に全部振り切った連中らしい」
「あれ、でも炎を使ってたのは一人だけでしたけど」
「大方外部の魔術師だろう。奴等は様々な理由で他の家も接収しているそうだからな!」








「では話を進めるぞ。よく聞けグズ……」
「はい?」「ヒッ!?何でもありません!」

「私の手元に届いている情報によると、奴等は“三人”の魔術師を派遣しているらしい」
「え、三人?俺も何回か会ってるけど二人しかいなかった様な……」
「そこまで知るか!後方支援なり何なりで表に出て来ていないだけだろうよ!フン!」


キレ出す会長をまあまあと落ち着かせる
しかし、三人もいるとは予想していなかった。とはいえ表に来ないなら問題は無いか……


「……で、会ったのはどいつだ?」
「んーと確か……ドミトリイって呼ばれてた人と斧を振り回してた女の人です」
「ドミトリイとルシフェルか。成る程、いかにも前線に出てきそうな二人だな」
「その二人、有名なんすか?」
「有名も何も。ドミトリイは次期当主だぞ?」
「なっ……!?」


次期当主。その言葉に背筋が引き締まる
あの冷酷な男は、御三家の当主として選ばれる程の実力を持つという事実に震えそうに

「それと、奴の経歴は少し妙でな」「妙?」
「大学を卒業した後、時計塔に席を置いているんだよ。何故こんな意味不明な事を……」


「ん?それって何時の時期っすか?」
「今が冬だからほんの数ヵ月前だな」
「俺達とそんなに変わらないの!?」


衝撃の事実に、つい声を荒げてしまう貴方
まさか、あの年期の入ったマフィアの様な姿で自分達と大して変わらない年齢だったとは……






「次はルシフェルか……」
「といっても、私もこいつの事はよく知らん」
「知らない事ばかりだな」
「うるさい!!!私はバイトなんだ!!!」

とうとうキレて叫び出す会長。もうこめかみには青筋が浮かんでいる
叔母さんに心配されないか、こっちも冷や冷やしてくるからやめて欲しい

「とにかく!こいつはやけにエーデルワイスを憎んでいるという事しか知らん!」
「それ以外の奴もわからん!以上!」

……雑に纏めたな。そんな感想が頭に浮かぶ
クリスティーナも同じ様に思ったのか、明らかに軽蔑の視線を向けていた



「と、とにかくこんなものだ……他はもう無いな?無いよな?」
「ああ、なら会長って普段どういった事をしてるんすか?バイトって言ってもよく……」
「言っただろうが。戦争で起きた神秘の秘匿や問題行動の監視等が主な担当だ」

「学園でも、アーチャーやランサーがバカスカ争ったせいで私は夜遅くに出る羽目に……!」
「あ、あれ会長が直してたんですか!」

そうだ。と今日一番のどや顔で返答する
戦闘の翌日には直っていたので、やけに行動が速いと思ってはいたが……


「……あれ、じゃあ手の怪我って」
「その時に道具を腕に落としたんだよ!貴様が来てくれたらこんな事にはー!」

……何だか、あれこれと心配した割には大した事が無くてほっとする様な、がっかりする様な

「ま、まあ何事もなくてなにより……」
「何事もあるだろうが!」
「……拍子抜けもいいところだな」「黙れ!」







「ははは……まあいいじゃないですか」
「フン!」
「でも、何かあったら連絡下さい。危険だとは承知してると思いますけど」
「ハァ?私が貴様等に頼るだと?馬鹿も休み休みに言え!」

「貴様の様な底辺のマスターに頼る等、私はおろか参加者ですら躊躇うだろうが!」
「自分の召喚した英霊を見てものを言え!強力な英雄でもない、貴様に従順でもない!」
「誰がそんなサーヴァントを頼ろうと思う!?自殺行為だ!」


……気づけば、貴方はクリスティーナを制止していた
会長の矢継ぎ早に放つ罵倒にプライドを刺激された彼女なら、この場で会長を害するのは目に見えているからだ
貴方の目の前で震える会長。


「マスター」
「……会長。強力な英霊かどうか、それを決めるのは俺です」
「そして、俺はバーサーカーの強さは宝具とかスキルとかとは別のものにあると思います」
「だからその……あんましそんな風に言うのは止めてくれないっすか。会長」

敢然と会長に説く。自ら英霊への信頼を
その言葉に欺瞞はない。双方ともこれ以上の争いはしたくなさそうだ

「わ……わかった。だからその剣を引っ込めさせてくれぇ……!」
「フ、マスターに免じて赦してやろう」



「……それじゃ、俺達はこれで。本当に何かあったら頼ってくださいよ」
「あ、あればな……。……いいか、絶対に死ぬなよ!貴様は私の部下だ。気分が悪いからな!」







……時は経ち朝、学園にて



「おはよー」
「うっす」


「おはよー……庶務君……」
「うお、新重!?何かやつれてるけど……」

「えっへん!茜ちゃんが悪さしないように、私が見張っているのだー!」
「やだ……もうスフ○ラトゥーンはやだ……」
「何があったんだ……」


変わらない。いや若干変わった日常を謳歌する貴方。新重の目には酷いクマが
それに、何かクラス中が騒がしい様な……?


「知らねーのか?今日転校生が来るってよ!」
「え、私そんなの聞いてない……庶務君は?」
「俺も知らないな……というか、生徒会でも無いのになんでマキは知ってるんだよ」

「あたしを誰だと思ってんだ!?坂松高校新聞部不動のエースだぜ!?」
「いやだからなんでなんだよ!?」

納得出来る……出来ない理屈を堂々と胸を張って話すマキに、首を捻る他の全員
本当はこいつらも魔術師なんじゃ……と疑われているのは秘密だ


「でも転校生かぁ……変なタイミングだね」
「この季節に転校生とは珍しいが、あまり粗相の無いようにしろよ。特にマキの字」
「ハァー!?あたしのどこが貧相だって!?」
「誰も言っていないだろうが!」




「あ。皆ー!そろそろ来るヨー!」







カラカラと教室の扉が軽く開く
担任の教師の呼び掛けに応じたのは、金の髪を二つに結った女の子


外国の人かな。と貴方は思う。とはいえ、この坂松では珍しいものでもない
他でもない、後輩のアーディーもそうなのだ。今更外国人というだけでは、誰も驚かない


「えっと……欧州の方から来ました。日本の言葉は不慣れなんで、変ならごめんなさい」


すらりとした、大人びた容姿とは裏腹な年相応の可愛らしい声。少し面食らうが、それだけではどうもしない


「私はメリッサ。フルネームはメリッサ・ガイスロギヴァテスです」


「ぐぇほっ!?ガッ!?」
「わ、どうしたの庶務君?」
「何でもありません!」


「ガイスロギヴァテス?」
「……家の都合でこの学園に転入しました。よろしくお願いします」







「なーなー!メリッサって普段何してんだ?」
「欧州のどこ出身なんだ?デトロイト?」
「好物は?苦手なものは?やっぱ主食はサルミアッキだったりするのか!?」
「黙れ馬鹿!」「ドロップアウト!?」

時が流れて放課後。案の定マキからの質問責めに困惑しているメリッサ
助け船ならぬ助けパンチを出したのは、新聞部の良心にして影のボスと名高いユキ
殴られたマキは端までぶっ飛んで倒れた

「ねえねえ庶務君に茜ちゃん。メリッサさんに学校の案内を頼まれてなかったっけ?」
「そうだよねー。……どしたの?震えてるけど」
「何でもないです」

「えと、庶務さん?だっけ?案内してくれるんですよね」
「あっはい」
「じゃーそれ終わったらゲーセンな!誰がこの学園のボスか体に教えてやる!」
「そういうの止めようよー……嫌われるよ?」


「……あれ?副会長から連絡がある」
「副会長から?珍しいね。どうしたんだろ」

普段、会長から雑務の連絡はあれど副会長からの連絡は滅多に無い
ほとんど自分で片してしまい、貴方のやる事が無くなってしまうからだ
そんな林道副会長から連絡なんて……何かあったのだろうか?


「何て書いてあるの?」
「“三年の教室に来てくれ”だって」
「うわーシンプル。副会長らしいねー」







「んー……」

「庶務さん、どうかした?案内してよ」
「お、庶務が気になってんのか?止めとけ止めとけ!そいつは付き合いが悪いんだ」
「散々手伝ったのにお前ーっ!?」

「大丈夫?何なら私が代わりに案内しようか」
「いいのか?」
「うん。……ここら辺でポイント稼いでおかないとまた怒られそうで……」


……禍門での一件は、新重に多大なトラウマを与えたらしい。合唱
しかし、相手は御三家。そんな人物がこの学園に来た理由もわからない
そんな相手に、新重を付かせてもいいのか……?


「お、どうしたよ。何かあったのか?」
「いや副会長からメールが……」
「無視しとけよ!どうせ大した事じゃねーよ」
「それを貴様が言うのか……」
「まあ何、汝の好きにしろ。我々でも何とかなるだろうしな」


……このままメリッサについていくか、副会長の方にいくか
最悪、どちらかは明日にしてもいいだろうが……




1:メリッサを案内する
2:副会長の元に向かう
↓1





「どうする?聞いてみたら?」
「……それじゃ、副会長にメールしてみるか」

副会長にメールを送る。“転校生の案内があるので、明日にしてもいいですか?”と

「どうだった?」
「わかった、転校生とも仲良くな!ってさ」
「らしいねー……」


快活な返事に微笑む二人。そのあっけらかんとした返答に、なんだか申し訳なく思う
とはいえ相手はガイスロギヴァテス。仮に新聞部三人が人質に取られればどうしようもない


「それじゃ行こっか。メリッサ、さん?」
「メリッサでいい。よろしく」
「ん、よろしく」


軽く相槌を打って教室から出ようとすると、手を差し出される
それを握ると、メリッサは薄く笑いながら握り返してきた


「わァ!庶務君は女子と仲いいもんね!」
「違う止めろ誤解を生む!」





「負けた……完膚なきまでに負けた……」
「もういい加減立ち直れよ……」

学校の案内を済ませ、いざゲーセンと意気揚々と駆け込んだ一行
マキの力の差を見せつけどちらが上か叩き込むという邪悪な企みの為に……
とはいえ全員学生なので、こういった催しは大好きだったりするのだが

そこで、マイティなアクションのゲームやバンバン撃つシューティング
果てにはデンジャラスなゾンビゲームで勝敗を競っていたのだが……


「おかしいだろテメー!?何かイカサマしただろ絶対に!」
「吠えるな恥ずかしい……。悔しいが我々の完敗だ……汝、中々のやり手だな?」
「別に」

そっけなく答えるメリッサ。その全てにハイスコアを叩き出した後とはとても思えない
息一つ切らさずにクリアした姿からは、かなりのやり手だと思わせる

「あ、私達こっちだから。じゃあねー」
「うう……メリッサパイセン!あざっしたー!」
「汝にプライドは無いのか……?……ではな」


新聞部三人と別れ、帰宅するその姿を目で追う貴方
その姿が完全に見えなくなった事を確認する。同じく隣にいたメリッサも同じように


「それじゃ、俺もここら辺で。お休み」


くるりと踵を返し、背を向ける
その背後で、メリッサが懐から何かを取り出し……







「そこまでだ」
「……やはり、サーヴァントがいたか」
「ゴメン、試した。君が俺に敵意を持ってるかどうか」

クリスティーナの剣閃が、メリッサの持つ拳銃を弾く
双方にさしたる驚きがないのは……こうなる事を知っていたからだろう

「……私を殺すつもりか?」
「いや、話を聞くだけだよ。どうしてこんな事をしたのか」
「話すとでも?」「それは君次第かな……」


睨むメリッサを、取り敢えず自宅に連れ込む事にした
路上での立ち話は他の陣営に聞かれる可能性もある上に……仮に、同じようにランサーがいたら戦闘はまった無しだった


「……これ、お茶だけど」
「……………………」
「それで、わざわざ俺のクラスに来た理由は何かな?」
「一応、メリッサの安全だけは保証するけど」

「……家、教えるんだ」「そりゃ俺のクラスバレてるし……」


はぁ。と溜め息をつくメリッサ。やはりその顔は年相応だ
少しの沈黙。口を開くと、彼女は……



123:「来ていいよ、ランサー」
456:好き勝手しない様に牽制
789:同盟の打診に
↓1


2:アドベント、ランサー


【という訳で、次回四者面談確定でここまで】

【その前に二人の好感度から。低ければ低い程貴方がホームレスになる可能性が高まります】

↓1メリッサ
↓2ランサー 【一度戦ってる】-2


4、4:そんな好きじゃない

【という訳で返答に間違えなければ帰ってくれるという事で本日ここまで】

【皆さん、お疲れさまでした……】


【未開示のサーヴァントの真名を考察して頂けるのは】

【書いている側からしても嬉しかったり】

【真バーサーカーはわかる人はわかる……はず】

【ちょっとだけ更新。早速安価ですが点呼を取る程でもないのでやらない方向で】










「……ランサー!」
「ハイハイ。そう焦らないっての」

ゆらりと、陽炎の様に表れるランサー
緋色の髪に燃える様に輝く瞳。その姿は初対面の時そのままで

「何かと思えば……獣ではないか」
「どうにもガイスロギヴァテスはペットの躾も出来ないらしい。首輪くらいつけておけ」
「言ってくれんじゃない下等生物。火山にでも放り込んでやろうかしら」
「鹿児島まで行くつもりか……?」


一触即発。やはりこの二人、相性が悪い
沸騰寸前の二人をすんでの所で停止させる。顔には汗がビッシリと
ここで戦わせる訳にはいかない。まだローンが残っているはずなのに……!


「……それで、メリッサはどうして俺の学園に」
「ランサーを出さなかったって事は、話し合いの余地があるって事でいい……のかな?」

「……アンタの経歴は洗ってる。何の変哲も無い一般人、魔術とは縁も無い平凡な奴」
「うっ……まあ、そうなんだけど」

ズバズバ切っていくメリッサ。貴方の心はもうボロボロだ


「学園に転入したのは、ドミトリイ様の意思」
「ガイスロギヴァテスの目的の為に、私が潜入して調査していたの」

「……潜入?」



123:話は終わりだ(帰宅)
456:他の御三家の情報を集めに
789:実は……
↓1


【ごめんなさい。追加の安価】

【ガイスロギヴァテスは、エーデルワイスに真バーサーカーが同盟している事を……】


12345:知らない
67890:


【途中送信してしまった……再度】

12345:知らない
67890:知っている
↓1






「他の御三家。エーデルワイスと禍門の情報を握る為」
「下級生にマスターが二人いる事は既に知っている。私はその二人を始末する為に来た」

「アキラとアーディー……!」


セイバーとアーチャーのマスター。貴方とも面識のある二人の顔が脳裏によぎる
二人を始末する。と語るメリッサ。その表情は硬く、嘘偽りは無いと如実に伝えてきた

「……それを俺に言っていいのか?」
「別に。アンタ達は驚異では無いとドミトリイ様は言っていたから」
「ほう……」「事実だからって顔真っ赤にしてんじゃないわよ」

ぐぬぬと睨むクリスティーナ。それを嘲笑するランサーは余裕の顔
対して、貴方の顔は強張っていく。もし、二人に何かあったらどうしようかと震えている


「……そこで、アンタに取引を申し出る」
「エーデルワイス、禍門。そしてそれに与する人間の情報を全て渡せ」
「……断ったら?」「アタシの出番ね」

室温が急激に高くなる。ランサーの持つ槍。鉛の槍は、ぐらぐらと煮立って燃え盛る
下手な事を言えば、直ぐ様槍が飛ぶだろう。家はおろか自分達も逃げ切れるかは怪しい
かといって、御三家の人の情報を売り渡してもいいのだろうか……?
後々になって、それが新たな火種にならないとは言えないだろう



22:15から返答。よさげなのを混ぜて使用
返答によって家の無事が決まります
↓1~3


【安価確認して、本日ここまで】

【の、前にちょっとした安価を。別にバッド選択肢では無いのでご安心を】



123:何も無し
456:街で騒動が
789:その時不思議なry
↓1


0:満を持して助け船が(誰が来るかはこっちチョイス。どうなるかは未定)

【という訳で本当にここまで。貴方の家は守られるか】







【本日は用事が出来てしまったのでお休み……】

【貴方がホームレスになっても、きっと助けてくれる人もいる……はず】


【本日は用事が終わったので早く再開】

【安価ありますが、人はいますか?】






……ここで逃げれば、最低でも自分は助かる
最初から強襲する等の手段を取れば、それだけで自分は手も足も出なかっただろう

けれど、それは相手なりの誠意かもしれない。単に舐められただけかもしれないが……
それを虚飾で返せる程、貴方は器用な人間では無いのだ


「ごめん。それは渡せない」
「俺はその人達に、本当に多く助けて貰った。だからさ、裏切りたくないんだ」

「……?何故、それが裏切りになるの?」
「俺のせいで困れば、そうなると思うけど」
「それで何か、不利益でも?」
「誰かが傷つくってだけで、俺は許せない」



「だから……ごめん、メリッサ。君が人質とか、脅迫とかするなら」
「俺は君達と戦う。そんな事を許す訳にはいかないんだ!」

「……アンタ、馬鹿じゃないの?」
「この状況わかってる?圧倒的に不利なの。家に招き入れるなんて警戒心の無さすぎるアンタのせいでね!」
「それなのにそんな事言っていいのかしら?家の一軒や二軒、壊せないとタカをくくっているのかしら?」


ランサーの発言はご尤も。そもそも貴方が彼女に無警戒過ぎたと言っても過言ではない
貴方はその謗りを甘んじて受ける。その上で、その行動は間違ってなんかいないと思うのだ

「そりゃそうだ。でも……」
「こうして、お互いに前を向き合ってじゃないと話せない事もあると思ってさ」
「……ハァ?」






「ふ、マスターの理想論はいつもの事だ」
「愚かで、短慮で、間抜けだが……私は嫌いでは無い。考え無しだとは思うが」
「それ、フォローしてくれてるんだよな……?」

趨勢を見物していたクリスティーナも、議論の場に参戦する
既に剣は抜いている、いつでも戦えるぞと貴方に伝える様に……出来れば、戦ってほしくは無い

「我々の事を驚異で無いと語る割には必死ではないか。武力にかこつけた脅し等」
「プライドは無いのか?自信を喪失したか?私は受けて立つ。貴様等如き雑兵は、何の枷にもなりはしない!」

啖呵を切る。そこに、圧倒的な戦力差があるとはとても見えぬ程、堂々と
だが、彼女の宝具は強い。因果も理屈も道理も蹴飛ばし、自らの望む未来へと突き進ませる


(……あれ?でも確か何かを犠牲にしなきゃ使えないんじゃ)
(そうとも。あの時私は“ルーン魔術”を捨てる事でライダーを討ったのだ)

(つまり、次はまた別のスキルを捨てねばならない。何にするか……)
(ダメじゃないか───!)


ここでクリスティーナが弱体化すると、今度は聖杯戦争に勝ち続ける事が難しくなる
メリッサはマスターではない。ここでランサーを仕留められれば数の帳尻は合う。合うが……

まだ戦争は続く。全てを擲つのは危険だ……!



「……メリッサ!」
「交渉は決裂、生け捕りにせよとの命令は受けてない……好きにするといい」
「来るか……マスター!」「ダメです!せめて外でやって!」


「そんなの聞くワケ無いでしょ!?木っ端微塵にしてやるわ。“女の”バーサーカー!」

槍が吼える、空気が燃える。貴方の家の温度は爆発的に上昇中
ここで宝具を使うつもりだ……。凝縮する魔力の渦は、貴方でも危険を感じるほどで



「唸れ、大地の火槍!其は星の一撃也!」








「叫べ!盛れ!人知の果てに嘆くがいい!」

「“轟く───!!!”」
「あー止め止め。それ以上は熱過ぎる」

「っとと!?」「何者!?」「……貴様は?」

ひょいっと。宝具が今まさに放たれんとする槍の前に、一人の少女が躍り出た
ケタケタと笑いながら貴方とメリッサの目の前で座る。その遠慮の無さに面食らう全員

突如表れた珍客に、宝具の開帳を中断されたランサーは元より、メリッサやクリスティーナも困惑を露にする
……ただ一人、貴方を除いて


「君……あの時の子供じゃないか!?」
「応ともさ。いやぁ覚えてくれて嬉しいねぇ」
「……知り合いなのか?」「いや、まあ……?」

「ひひ、そんな複雑な仲じゃあない。少しばかし道案内してやっただけさ」
「なぁに、そんな怯えた顔をしなさんな。ガイスロギヴァテスのお嬢ちゃん?」
「怯えてなど……!」


……何者かもわからない少女が、メリッサを相手に渡り合っている
殴り合えば間違いなく消し飛ばされる程に実力差は明白。なのに……

「く、ランサー。この子供を……」
「殺すのかい?ひゃっひゃ!止めておきな。それはドミトリイの坊主の命令にあるか?」
「悪い事は言わないぜぇ?帰りな。お前さんには夜の空気が会いはしないさ」


語りかけ、笑う。無邪気に、邪悪に
心に染み入る様な言の葉。ともすれば無遠慮に踏み荒らす傍若無人な風に



12345678:襲い掛かる
9:帰ってくれる
↓1





少女の言葉は、心に重くのしかかる
しかし、メリッサには逆効果。恐怖よりも、敵対の意志が勝った


「……ランサー!」
「了解。……正直、何か嫌な予感がするのよね」
「ちょ、待っ……!」
「ありゃりゃ、どうも躾は苦手なんだよなぁ。まぁいい。逃げるとするかね」

「逃がすか!ハァッ!」
「とと。早くこっちに来な。ここで殺されたかねぇだろぉ?」

「任務、失敗……」「なんなのよ、もう……!」

子供に手を引かれ家を後にする貴方
ランサー達は何故か、この子の言葉に縛られる様に動きが鈍くなっていた



「貴様、何者だ。いったい……」
「それは後でじいっくり教えてやるよ。今はそら、走れ走れぇ!」
「大丈夫かな。俺の家……」



【結局、貴方の家の行方は?】
1234:大破
567:無事だが警戒の手が
89:律儀に守って無事
↓1

【自由安価。この子供に何か質問とか要求とか】
19:50から。無ければ無しで。確定している内容は子供の素性のみ
↓1~3



2:無事ホームレスに



「もしもし、父さん。実は……」
「いひひひっ!派手にやるじゃあないの。ガイスロギヴァテスの小娘!」

貴方の家から離れた坂の上。そこで立ち上る火の手を呆然と見つめる

その方角は先程、貴方達がいた……貴方の自宅のあった場所から燃え盛っていて
真っ青になりながら連絡を取る貴方と、冷静に観察する少女とクリスティーナ
その顔つきは険しく。憎き相手を思い浮かべていた


「連中め……まさか、家屋を破壊するとは」
「何と言う外道。私ですら大砲を少ししか叩き込んでなかったというのに!」
「ひっひ。あぁ可笑しい。さて、どうするね。少年?」


「……保険があるから大丈夫だってさ」
「随分と軽いな。家も決して安い買い物ではないだろうに」
「親父、それなりに儲けてるから」

……とはいえ、これから貴方は家無し。おまけに金も持ち合わせていない
当面どうするかすら、今の貴方には不透明だ

「まぁいいじゃあねえか。暗い事を考えてると老けこんじまうぜ?」
「元気出せよ。慰めてやろうかぁ?お前さんのお望みのように。な!ひひひひひひ!」

……それもある。けど、一番何とかすべき問題は


「……ねえ、君、何者?」










「んあ?ああ、こっちの事か?」
「むー……。俺?私?僕?儂?妾?吾?自分の事をどう呼ぶか、いつも悩むねえ」
「ま、ここはオーソドックスに俺でいいだろ。何者かだって?そりゃ後でわからせてやるよ」

飄々と舞いながら、ガードレールの上に座る
その態度からは、子供らしさは感じられない。寧ろ年季すら……


「何で助けたか?簡単だ。お前さんに死なれると悲しむのがいるからな」
「それともあれか。俺が、お前さんに一目惚れしたーとかそういう理由が良かったか?ん?」

顔を覗き込まれ、不覚にもドキッとする
にひひと笑う悪戯っぽい表情は、危機的状況の中でも心を揺らすには充分過ぎた

「いや、別に……ありがと、ええと」
「寧ろ俺の方が、どうお礼をしていいか……」
「そうとも。我々を救ってくれた恩。女王として返さねばなるまい」


「礼か?そうだなあ……お前さんが、うちの婿に入るってのはどうだ?」
「「はぁ!?」」
「くっくく……ひひひ!冗談だ!本気にしたか?んん~?」


おかしくって腹を捩らせる少女に、顔を真っ赤にする貴方
その反応に気を良くしたのか、少女は立ち上がると服を引いてきた


「……それで、俺が何者か。だっけか?」
「付いてきな。ついでに一晩くらいなら身体を横に出来るかもだぜ?」












「ここだぜ。ひひ、どうだぁ?立派だろぉ」
「え、いやあの、ここってその」

「なぁに。怖がる必要はねぇよ。俺の後ろからついてくりゃあな!」
「………………ここは」


「おうおう!テメェらまた来やがったのか?あれか、宣戦布告か?お?」
「ようデカブツ。俺の客だ、そこ退きな」
「あんだとこのガキ。ここでオレが……え?通せ?なんでだよマスター!?」

「よーし話はついた。ようこそ“禍門”の家へ、お前さんを歓迎するぜ」
「いやその、あれ?」


……アーチャーをすり抜け、辿り着いたのは禍門の家。この前泊まった、あそこだ
こんな子供いたっけ?と首を捻る二人。見覚えの無い




「応、帰ったぜえ憂午。早速だが、風呂と飯の用意をしてくれよな」










「……君達は」
「あ、その……こんばんは?」
「やっほ~バーサーカー!待ってたよー!」


禍門の家へと招き入れられた二人。迎えてくれたのは憂午とキャスター
きゃっきゃとはしゃぐキャスターとは対称的にその顔は厳めしく、複雑そうな顔を

「お家燃えちゃったんだって!?大丈夫?」
「軽く言うなよ……」
「せ、先輩……その、ドンマイ。デス」
「サンキュ。アキラ」


「……それで、あの子供は何者だ?禍門の家には一度来ていたが、全く存じない」
「ああ、それはな……」



「んじゃあ、自己紹介とするか」

「俺は禍門家当主。禍福総ては無門也。我が身は最早理に囚われず」

「名は禍門招福。ここのご隠居だな。ひひひひひっ!」


招福と名乗った少女は、一際意地悪い笑みを浮かべる

その理由は、目の前の二人の驚いた表情。してやったりといった顔で、けらけらと大笑いで転げ落ちていた






【本日ここまで。ありがとうございました】

【筆が遅いから早く始めてもあんまり変わらなかった……orz】


【本日おやすみ……】


【ごめんなさい。今日もお休み……】

【明日には必ず、必ずや……!】


【ぽちぽちと再開】

【誰か、人はいますか?】






「……火、か」
「嫌なものだな、こうして見るのは。もしかしたら、奴等も同じ気持ちだったのだろうか」
「なんて……僕が言うのもおかしいか」

エーデルワイス邸、セイバーは火の手の上がる方角を見て自嘲する
火船……かつては破天荒な戦術でスペインを打倒した国の女王らしくない。と
……もっとも、そんな戦術なと取らせるかと言ったのも自分なのだが

「本当に、あの人は……バーサーカー?」

そんな感慨に耽っていると、外に出ようとするバーサーカーが
小動物が口で袖を引くのもお構いなしに、外套を羽織り出ていこうと


「フ……フラン……寒い、嫌い」
「あったかい、好き。フラン、喜ぶ」
「だからって、行かせる訳にはいかない。エアコンをつけよう。いいかな、マスター」
「……いい、けど」

か細い声で了承する。ソファに力無く横たわるアーディーは、見るからに具合が悪そうで

「やはり、まだ調子は出ないかい?」
「うん。……くう、まさかアキラがあんなに強いなんて」
「きゅ、きゅい!」「……ありがと、優しいね、ヴィオレは」

ヴィオレ。そう呼ばれた獣は嬉しそうに頭を擦り付ける
その様に何かを感じたのか、真バーサーカーは動きを止めて



「ウゥウウ!フラン!フラン!フラン!」
「きゅう!きゅいっ!」「……フラン、我慢?」

「……マスター、その子の令呪は」
「二画無くなってる。多分だけど、一つはバーサーカーの制御に使ったんだと思う」


狂戦士のクラスは、理性を失う分マスターにすら牙を剥く存在もいると聞く
恐らくは、このバーサーカーもその手合いなのだろう。しかし……


「フランって、何の事なんだろ……?」
「さてね……」









「……ところで、火事ってどこで?」
「センパイ、大丈夫かな……セイバー?」

「いや、何でもない。マスターの気にする程の事でも無いよ」
「…………?そう?」


アーディーは知らない。その貴方の家が火事になっている事を
知らせないのは、セイバーなりの思いやりなのだろう。不調な今、余計な不安を重ねたくない

「……マスター。彼に未練があるのか?」
「え!?そ、そんな事無いし!エーデルワイスの使命の……為なら……」

「為なら……」

そう言ったアーディーの顔は哀しげに俯く
セイバーはその姿に何かを重ねたのか、優しげに横たわる彼女に纏っていたケープをかける


「……ありがと、セイバー」


彼女からかけられた礼に、優しく微笑む
すると、扉を叩く音が。来客だろうか。ここに来る人物なら、もしかして……


「マスター、僕が」
「ううん。私がいく……」


ふらつく体を押して、玄関に出る
そこにいたのは……少なくとも、彼女の望む人間ではなかった



123:シュヴァルツ
456:生徒会長
789:遅れてきた援軍
↓1



6:会長




「……こほん!はい、どなたで」
「失礼!夜分遅くに申し訳無い。君はエーデルワイスのマスターか?」
「え、あ、あの、どちら様で?」
「きゅ?」

突然現れた見慣れない女性。見た所、そこまで年上という訳でもなさそうだ
……いや、見た事はある。貴方を連れ回し、普段からこき使っている様な人物……

「私は坂松高等学校の生徒会長、潮だ。今回は理由あって聖杯戦争の監視役を担っている」
「早速だが、先の夜に火事があった事は知っているな?」
「……知ってますけど」


「その火の出火元は、奴の……いいや、庶務の家なのだ」
「え……!?あっ……」「きゅい!?」
「……申し訳ありません。座らせても」
「構わない」

ふらつくアーディーを抱き抱えるセイバー
その容態を見かねたのか、彼女を床に座らせる


「急にあれ程の火が起きるとは考えにくい。私はサーヴァントの手によるものと推測する」
「君の英霊では無さそうだから聴取しに来たが何か……エーデルワイス?」
「……あの、センパイは」
「生死不明だ。もっとも、宝具によるものなら死体は消し炭になってもおかしくないが」


……心の中がゾワゾワする。もし、貴方が死んでいたら
そう考えるだけで身体が凍りつく。思考が闇に塗り潰されていく嫌な感覚が、支配してきた



【怒り】+1 【万全ではない】-1
総計±0
123:ランサーにカチコミ
456:沈黙
789:禍門に連絡を
↓1






3:ガチギレ



「……ランサー」
「あいつの真名は、キマイラ……溶岩の槍を使用していた……!」
「何!?やはりガイスロギヴァテスか!転校生として来た時は嫌な予感がしたが……」

「……!その人、名前は」
「確かメリッサだったか……?そいつが庶務の奴と行動を共にしていたという情報もある」
「よもやそいつが……庶務を殺したのか!?」

焦燥しつつそう結論付ける会長。貴方を死んだ事にする程混乱しているのは明らかだ
……それを気づかない位に、アーディーの胸にも憎しみの炎が灯り、焼き尽くしていて



「……さない」
「待ってくれ。まだ彼が死んだとは決まってないだろう……マスター?」
「赦さない。治安の維持を放棄し、あまつさえセンパイの家を襲うなんて……!」
「きゅ、きゅう!」



「……セイバー、今からガイスロギヴァテスの家に向かう。準備を」
「無茶だ!まだ万全ではないだろう!?そんな状態で事を構えるのは危険すぎる!」
「だとしても!センパイを傷つけた事、坂松の地を荒らした事は絶対に赦さない!」

「奴等はこの街の異物なんだ!今、私の手で誅伐を下す事に何の問題があるのか!」
「お、おお!そうだ、奴等は街を荒らすわ好き勝手に暴れるわで迷惑をしているんだ!」
「貴女は黙っていてくれ!」「ひっ!ごめんなさい!」


「きゅ、きゅっ!」
「……ヴィオレ、君は止めてるんだね」
「だけどごめん。私はあいつらを赦せない……」
「だから、ちょっと待っててね。ちゃんと戻ってくるから」




12345:バーサーカーを託す
67890:黙って見送る
↓1


8:黙って見送り



「フラン、外出る?フラン、倒しにいく?」
「きゅ!?きゅきゅ!きゅい!」
「ううん。大丈夫。これは私達、御三家の問題だから」
「君達を巻き込んだら、ガイスロギヴァテスと同じになっちゃう」


ヴィオレはこう話していた。“バーサーカーも連れていって”。と
それを遠慮がちに断る。もしそうしたら、自分も貴方を巻き込んだガイスロギヴァテスと何が違うんだ。と


「……先に言っておく。勝てるかはわからない」
「わかってる。……ごめん、セイバー」
「謝らなくてもいい。……僕は、君の剣だから」



「……では、セイバーはガイスロギヴァテスの元へ行くんだな?」
「私も同行しよう。事の顛末を問い質す必要もあるからな!」

意気込む二人を、不安げに見つめるヴィオレ
その不安を察したのか、セイバーは優しく頭を撫でてやり

「きゅ!」
「大丈夫。こう見えて、僕は一つの国を統べた事もあるんだ」
「幾ら怪物と言えど、国には到底及ばないよ」


家を頼む。と背中を向けるセイバー
その姿を、ヴィオレは後ろから見守る事しか出来なかった








「……ひとまず、今夜は禍門の家で預かろう」
「ありがとうございます。憂午さん」
「しかしだな。君も私の娘も年頃だ、本来なら姉さんの所有する物件を貸したいのだが」

「安月給の憂午に家賃が払えるとでも?」
「姉さん!今回は非常事態だ。彼も学生だ。家の復旧が終わるまでは……」


「え~~!?庶務くんも一緒がいい~~!」
「わ、私も、先輩に色々とお話が聞きたい……デス。お父さん」

「ボクも一緒がいいなぁ……。うへへ、少しくらい味見しても……あ痛たたた!?耳!耳!」
「ふん。この間抜けは置いておいても、我々と共にいた方が安全だとは思うが」
「そうだぜえ憂午ぉ?寝首を心配してんのか、肝っ玉の小せえ男に育てた覚えは無えなぁ」


「ふむ、マスターは随分とモテるじゃないか」
「モテてるのかこれ……」

「恥ずかしがる事はない。私も昔は美男美女を侍らせていたものだ」
「特にベルはいい。私と何度も睦まじく伽を共にした仲だぞ」
「カールさんに申し訳無いと思わないのか……」

「ベルは女性だが」「えっ」


「駄目だ駄目だ!断じて認めん、認めんぞ!」


……話し合いは難航している。主に貴方の処遇について
どうやら、女性陣は彼をこの家に置くべきだと主張するが、憂午が断固として認めない姿勢を



【憂午の力】+2 【女性陣達】+5
総計+3

『貴方は結局……』
12345:仮家へ
67890:禍門邸で
↓1



【では順当に禍門邸で本日はここまで】

【……禍門の男性って憂午だけでしたねそういえば】



バーサーカーとヴィオレのやり取りが微笑ましくしか見えない
実際相性はどんな感じなんだろう…?


全体的に男性が少なめ感


【本日はお休み……】

>>310【理性の無いバーサーカーなので、相性だけなら割とトントン。とはいえ悪くはないと思います】

>>311【貴方が女の子ばかり絡んでるから……と思ったら、御三家でも男子が多いのはエーデルワイス。要するに同じ数でした……】




【始める前に少しだけ】

【動かす目安として、禍門の人達の貴方に対しての好感度を計っておきます】

【基本的に高ければ高い程好感度が高いですが、人によっては制限あり】


(全員の最低保証は4、多いので連投可)
千呼↓1
憂午↓2
みとり↓3
招副↓4
マリア↓5


千呼:仲のいいクラスメイト
憂午:娘の友人(警戒あり)
みとり:特殊
招福:特殊
マリア:結構気に入ってる


【うーんどうしよう。全体的に貴方に友好的な陣営なのとキャラ的に嫌わせるのは変なんですよね】

【アキラは好意という感情でしたが、二人はどうしようかな……まあやってる内に考えときます】

【という訳で再開します】




【再判定!その手があったか】

【再開する前に、二人の降り直しから。最低保証は据え置きで】


みとり↓1
招福↓2


みとり:娘の友人(警戒なし)
招福:構ってると愉しそうなヤツ


【という訳でこんな感じに。まあ順当な結果かなと】

【それでは再開しますね】





「……という訳で、君の身柄は私達で預かるわ」
「いや、いいんですか?俺が言うのもアレなんですけど」
「大丈夫よ。ねぇ?憂午」

みとりの一言に、苦虫を噛み潰したように顔を酷く歪める憂午
明らかに不本意だが、女性陣には逆らえなかった……と言いたげに貴方を睨む

「わーい!庶務君と一緒だー!」
「せ、先輩。よろしく、お願いします……」
「……君、ちょっとこっちに」「あっ、はい」



「……いいか、いかに仲が良かろうと娘に手を出したら承知しない」
「もしもの時には君を殺す」
「しませんよ……」

簡潔かつ端的に殺意を告げられ、苦笑いを浮かべる事しか出来ない
とにもかくにも、貴方は当面の間の住居を確保する事が出来たのだ。感謝する事はあっても、それを仇で返す等……


「……それでは、皆さん暫くの間、よろしくお願いします!」
「ええ、私からも感謝の言葉を。ローマよりかは不便ですが、我慢しましょう」
「申し訳ありませんこんなバーサーカーで!」







「……ふぅ、人心地ついた」


簡素な食事と風呂を与えられ、ようやく心休まる一時を堪能する
禍門の人達には、感謝してもしきれない。最悪の展開を頭に浮かべていたが、それも回避できた


「せっかくだし……お礼しに行くか」


↓1~2まで、話す相手を選択(禍門邸にいる人のみ)





「……アキラ!」
「先輩、こんばんは……デス。私に、何か」
「それは……」

「それ以上近づくんじゃあねーぞッ、この侵入者が!」
「アーチャー……先輩は、大事な人。デス。非礼は、許さない」
「大袈裟だな……」

廊下の先で、自らの後輩の姿を発見した
近付こうとすると、窓からはアーチャーの顔が飛び出る。その姿はちょっとしたホラーだ


「オラオラとっとと失せろやバーカ!出ていけカス!」
「アーチャー……?」「ごめんなさい」

「……苦労してるんだな」
「ごめん、なさい。アーチャーは、自分のテリトリーに入り込まれるの、嫌みたいで」

ペコリと謝罪するアキラ。それを恐る恐る見るのはアーチャーだ

「一番怖えーのはお前だよ……」
「何か?」「なんでもありません」

「ははは……その、ありがとう。アキラ、アーチャー」
「ライダーの時もそうだ。俺達を何度も助けてくれて、本当に感謝してる」
「これだけは、どうしても伝えておきたかったんだ……それじゃ、お休み!」
「あ……!」




「……マスターもそうだけどさあ。何でアイツにそっくりなのかねえ?」







「……こんばんは、マリアさん」
「やっほー!待ってたよ、ベッドの用意は完ぺあだだだ!?!?」

部屋に入るや否や、いきなり手を捕まれベッドの上へ放り投げられる
貴方に股がり、手を蠢かせるキャスター。その手が服に伸びる前に、マリアの鉄槌が炸裂した

「悪い事をしたな。バーサーカーのマスター」
「いえ、大丈夫です」
「怪我は無いか?喉でも渇いたか。生憎トマトジュースしかないが」
「あ、お構い無く」


遠慮がちに、グラスに赤い液体を注ぐマリアを制止する
残念だ。と呟くと、ぐいっと一気に飲み干した


「……ふう。それで、何か」
「ああいえ、ただ、お礼を言いに来ました」
「ランサーの時も俺達に注意をしてくれて、他にも色々と」

「別に、私は君に礼を言われる事はしていないつもりだが」
「それでも、まあ……感謝の気持ちを受け取るのは暫くぶりだ。大切に覚えておこう」
「……?それって」
「マスターは喪女って奴だからねー。あ、君がお嫁さんに貰ってあげたら?」
「“令呪を以て──”」「マスターそれ脅し文句にしてない!?」


マリアとキャスターの揉み合いは苦笑しつつも微笑ましく映る
なんだかんだで、相性は悪くないのかも。そう感じる貴方だった

「……それでは、おやすみなさい。二人とも」


「ねえ、アレの退治の事、言わなくていいの?」
「若いのに余計な責務を背負わせたくない。やるのは私達だけで。だ」




【ごめんなさい。途中退席してました】

【本日はここまで。次回はセイバー対ランサー】


【本日もおやすみ……】



【遅筆過ぎて全部書き上げるまで待つと、遅くなるので】

【今日は描写を少しだけ】






……貴方が禍門の家で寛いでいるその時
郊外に立つ簡素な家。オフィスと言っても差し支えない程飾り気のない住居に、三人の人影が動いていた


「……そうか、理解した」
「ドミトリイ様、いかがなさいましょう。彼は取り逃がしてしまいましたが」

「構わなくてもいいだろう。彼は本来、番外の人間。これ以上関わらせる必要もない」
「ルシフェルの言う通り。奴が生きていようがいまいが我々の趨勢に変わりは起こらない」
「ご苦労だった、メリッサ。すぐに戻り、休むように」


簡潔な指示に、はいと頷いたメリッサは屋内に戻ろうとする
……が、その足取りは止まる。背中に伝わる魔力を察知し振り向くと


「ここだ!ここが奴等のねぐらのはずだ」
「……?何者だ、我々を誰と知ってここに来た」



「当然……!ガイスロギヴァテス、坂松の御三家にして土地を侵略する異端者!」
「無辜の人間を襲撃するなんて言語道断。私がお前達を倒して、センパイの無念を晴らす!」








「貴様は、エーデルワイスの……」
「エーデルワイスゥウウウウ!!!!!」

メリッサが確認するよりも速く、駆け出して斧を振るうルシフェル
しかし、その凶刃が届くことはない。間に割って入った影が、手に持つ剣で食い止めた

「いきなり斬りかかるとは……!大丈夫か!?」
「うん。平気、セイバー」

「エーデルワイスの小娘か、何の用だ?」
「知れた事!街を壊そうとしたその凶行は、御三家としても見過ごせない!」
「ここでランサー陣営を成敗する!戦う意志があるなら前に出ろ!」


セイバーがルシフェルの斧を弾き、後方に引く
彼の守った主……アーディーは宣言する。怒りと敵意を込めた決闘の合図を

「面白いじゃない……飛んで火に入る何とやらってね!」

「……行けるか、二人とも」
「はい」「無論!」

「マスター!魔力を!」
「わかってる……!」


ドミトリイ、メリッサ、ルシフェルが構える
アーディーは胸を抑えつつも、それを感じさせない程の闘志を燃やし

「……では、私はこれで。ここなら被害や損害は気にしなくていいな!」

そして、会長はそそくさと帰宅するのであった










「ふっ──!」


先んじて動いたのはメリッサ。拳を固め、愚直とすら呼べる程の直線で走る
当然それを見逃す様なセイバーではない。剣を構え直し、迎撃せんと振りかぶる……


「甘い!」「はぁあっ!!」
「くっ……!?マスター!下がれ!」
「わ、わかった!……やっぱり数が多い!」


が、その刃は彼女を捕らえる事はなく
双方向から放たれた火の蛇、大振りな斧の一撃を薙ぐ事に再度注力する
メリッサの鉄拳が目の前を掠める。間一髪、直撃だけは免れた


「く、カルバリン!砲門を全て開け、まともに相手取れない以上、火力を以て蹴散らす!」
「アハハハハ!そんなヤワな炎、効かない効かない効かないんだから!」

響く砲音。ガイスロギヴァテスの面々は、蜘蛛の子を散らすように四散する
だが、彼等の率いるサーヴァント。ランサーはそれを意に返さずに突撃してきた
元よりその身は溶岩の化身。炎による攻撃には耐性があって然るべきだが……


「それでも、身体の半数を失っても戦えるのは無茶苦茶だろう……!」

前回はバーサーカー……クリスティーナのスキルによって強化されていたが、今回はそれが無い
ランサーはぎらぎらと眼を輝かせて突貫する。その滾る槍で、セイバーを無惨に貫かんと



「アハハッ、前の雪辱、晴らさせて貰おうじゃない……!」






【本日これだけ】

【なんかルシフェルがアマゾネスCEOさんみたいになってるのは書きながらイベント進めてたせいです】


【本日はおやすみ。狙い通りのマスに進めない……】



【本日もお休み。明日には必ずや】


【遅くなってしまった……】

【描写だけですが、再開します】





「くっ……!はあっ!」
「ハッ!ハッ!ハァッ!!」

怒涛の槍が襲いかかる。技量も何もない、単純にして明快な暴力が降りかかる
セイバーはそれに流されない様に、手に持つ剣で切り開かんと果敢に立ち向かう

……しかし、些か部が悪い。いかに洗練された技であれ、度を越えた力はそれを超える。


「はっ──!」「ぜぇやぁあああ!!」
「わ、ととっ!危ない……っ!」
「……余りにも隙だらけだ。実践経験の無い小娘には荷が重すぎる」


火蛇、重斧、そして鉄拳。四方八方から雪崩れ込む猛撃に対して、身を守る事で精一杯
アーディーの背筋に汗が流れる。一時凌ぎにも限度がある。このままではいずれ、どちらかの均衡が崩れるのは明白だ


「……」「……!そこ!動かない!」


突如、動きを止めるメリッサ。好機と見るや、攻勢に出る
ありったけの魔力を編み、集中して……


「……そぉりゃあああっ!!」







「……やった!?」


光弾がメリッサを撃ち抜ち、爆発する
今のは渾身の一発だった。持ちうる魔力は全て使った全力全開の一撃
それが直撃したんだ。これで、一人は……


「どうだメリッサ。“わざと食らった”感想は」
「大した事はありません。この程度ならば幾らでも」


……煙が晴れる。その先で立っていたメリッサは何とも無さそうに埃を払う
今のは、本当に全力の攻撃だった。なのに、かすり傷すら負わせられないなんて!


「……嘘…………」


「嘘なものか。メリッサ、ルシフェル。二人は幾度の地獄を越えてきた“本物”の戦士」

「“偽物”のお前では相手にすらならない……理解出来たか?小娘」

「紛い物の偶像に、命を懸ける愚か者が……!」

ドミトリイは冷酷に告げる。ルシフェルは憎々しげに吐き捨てる
本物の前では紛い物は無力。その事実を、彼女に突きつけた


『メリッサのスキルを開示します』

 ◆防魔防弾防刃服「リトル・オーガ」  
 彼女が装備している服とコート状の上着からなる防護装備。  
 魔力指向制御平面の表面加工を施した防弾繊維性の布2枚の間にさらに強化済防弾素材を挟んだ防護服。  
 魔術の大半を魔力指向制御平面で、物理的な魔術や弾丸などを物理防御と怪力で跳ね返す強力な装甲。  
 非常に強い装備だが、数々の欠点も備えており、装備した人間は外側とはいえ魔力指向制御平面  
 2枚に囲まれているため、体外で操作する魔術が使えなくなる。  
 そして何より半端じゃなく重い。鍛えている男性ですら立てなくなる。




「これで終わりだ……忌々しき一族の娘よ。地獄にてその罪を贖うがいい!」

鬼気迫るルシフェルの一撃。それをアーディーは避けようともしない
絶望に染まった顔に、武骨な斧が迫り……







「マスターっ!」
「ぐあっ!?」「ルシフェル!」


……寸前、帆船がルシフェルに直撃して派手に吹き飛ばされる
セイバーの所有する宝具がアーディーを庇い、拾い上げて、ランサーを振り切ったセイバーが駆け寄った

「無力なものか。変わりたいと願う心。それを持つマスターが追い付けぬはずがない!」
「今が無理なら、いつか……それが待てないなら、僕が少しだけでも力を貸すから」

「そんな顔はしないでくれ……君の苦しみは、昔の僕と同じものだから……!」
「……セイバー」


微笑みかけるその顔は、少し申し訳無さを感じつつも頼もしく映る
そうだ。自分はマスターなのだから、何一つ恥じる事は無い……!


「……紛い物なんかじゃない!私の想いは、本物なんだ!」
「ならば贋作らしく粉微塵に砕け散れ!ドミトリイ様、メリッサ!」「は──」





「いや……ランサー、宝具を展開しろ」
「今度こそは“本気”だ。思う存分、その炎の槍を振るうがいい」

逸る二人を制止し、ランサーに視線を向ける
獰猛な、獣の様な笑みを更に歪め、その鉛の槍を振り上げた











「アハハッ!いいじゃないドミトリイ」
「──“此なる一撃は星の怒り、地の叫び。天を貫き焦がす柱”!」



「……マスター、後ろに」
「うん。……セイバー、もし……」「それは君の判断で決めてくれ」


ランサーの槍がぐらぐらと煮え立つ。鉛の穂先は赤熱し、その周辺には陽炎が


「ドミトリイ様、これは……」
「ランサーの真名は教えたはずだ。奴の特性は火山の暴威」
「つまり、今から放つ一撃は……」

「……そうとも。正真正銘、神代の焔だ」


ごぼり。一際大きく槍が泡立つ。穂先は既に熔け落ちて、零れた雫は大地を焼く


「“唸れ、大地の火槍!叫べ、盛れ!人知の果てに嘆くがいい──!!”」
「セイバーッ!」「……来る!」






「───“轟く劫炎(カーリア)ァアアアアアアアアッッッ!!!”」









……鳴り響く轟音。そして爆発、炎上

ランサーから放たれた槍は、セイバーの宝具の軍艦の砲撃すら超越した熱量となって貫いた
進路上の地面は抉れて残らず燃え尽き灰塵となる。そこに存在した一切は、全てが無慈悲に死に絶えた
そして、直撃したセイバーも……当然、無事では済まないだろう


『ランサーの宝具を開示します』
 ◆『轟く劫炎(カーリア)』
 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:300人
  火山の投槍。活火山リキュアの噴火を宿した灼熱の魔槍。
  真名解放により、目標へ飛翔。同時に灼熱のマグマを撒き散らし進路上の全てを焼き払う。
  元は、ベレロフォンの投槍だがキマイラの炎に焼かれたことから、
  その息吹の象徴とされるリキュアのマグマを纏ったランサーの宝具と化している。



「ドミトリイ様!」「……決まりましたね」
「フーッ、フーッ……。当然よ。アタシの全力の解放。マトモに食らって平気なのは、あのデカブツくらい」
「これで、セイバーはお仕舞い……アハハッ!」

荒く息を吐くランサー、歓喜の声を挙げるルシフェル、冷静なメリッサ
三者三様の反応を見せるが、セイバー陣営が敗北したというのは共通の認識だ
逃げ出した素振りは無い。あれ程の威力が直撃すれば、令呪の補佐があろうと押し切れる……


そう。誰もが確信していた



「……総員、構えろ」
「奴等はまだ……生きている!」


ただ一人、ドミトリイを除いては









「……セイバー!」
「ふ、ふふ……正直、賭けだったが……」
「勝ったのは……僕の、方だ……!」


立っていた。身体はズタズタに裂かれ、爛れた肌からは至る所から煙が上がっていても
セイバーは、五体満足で……アーディーを庇いながらも、生存していたのだ


「な……!アンタ、なんで……!……まさか!」
「そう。……僕も“宝具”を使わせてもらった」

「確かに宝具ならば、防ぐ事も可能……が、それでも直撃して無事なんてありえない!」
「そうだ。……けれど、“私”は不本意ながら純潔の皇帝でね」



「宝具の真名は“永久に毀れず処女皇帝(ヴァージン・クイーン・エリザベス)”。」
「誰のモノにもならず、そして誰に穢される事もなかった生命の守護」
「それ故に、私を傷付ける事は……特に……言いたくは無いが、“貫通”させる事は不可能だ」

「……耐えられる自信は無かったけれどね」



ボロボロの顔で、へらっと笑う。その顔は煤に覆われていても尚美しさを損なわずに

「欠点としては……うん、女王として、女の性質に寄ってしまうから、あまり……」
「ふざけるなァアアアッッッ!」

「そんな理由で!アタシの!宝具に!耐えてるんじゃないわよおぉオおオオオッ!!」


ランサーは激昂した。ふざけた理由で……いや、理由等はどうでもいい
自らの本気の一撃を防がれた。その事実は到底許せるものではなく



「もう一撃……!魔力を、魔力を!」
「仕方がない。好きに持っていけ……!」


「冗談じゃない……!“汝がマスター、アーディー・エーデルワイスが令呪に以て命ず!”」
「“この場所から全力で撤退!”……ゴメン、センパイ。絶対に敵はとるから……!」


令呪の力で、この場から離脱する。これ以上の戦闘は不可能と判断したから

両者、共に歯噛みする。このリベンジは必ずや果たしてみせると……




【本日ここまでー】

【……なんか結果だけみると全員アホの子っぽくなっちゃった様な気が】


【本日おやすみ……】


【本日もおやすみ……少し体調が優れぬ】


【今日は更新します】

【安価がありますが、人はいますか?】







「……アキラが会長に呼び出された?」


朝も早く、まだ千呼も起き出していない頃に、貴方は憂午からそう話される
当然、生徒会のメンバーの一人である貴方にも連絡は来ていて然るべきなのだが……

「いや、俺は何も聞いてないっすよ」
「何だと……?しかし、俺には……」

「まさか、秘密にしておきたい相手か?相手はどこの何者だ……!」
「アキラに限ってそんな事はしないと思いますけど……あいつ、真面目だし」
「少なくともアンタよりはしっかり報告出来るよ。締切も守れないアンタよりは」
「姉さんは関係無いだろう!?」



「んー……俺が確認してきましょうか?学校なんですよね。もう」
「ふぁあ……あれ、庶務くんおはよぉ……」
「千呼!お前、夜更かしはしては駄目だとあれ程言っただろう!」
「えへへ~」


父に怒られても何のその。舌をぺろっと出してへらへらと笑っている
貴方も手早く支度を済ませ、学校へと向かっていった







「ねえねえ。庶務くんって、アキラちゃんの事どう思ってる?」
「ん?どうって……どういう?」

通学中、千呼から唐突にそう質問される。貴方は訝しそうにその意味を問い返す。

「もー!どうってどうだよ!仲良くしてる?」
「ああ、それは勿論。生徒会でも話してるし、頼りにしてる」
「俺はともかく……アキラの方がどう思っているかは知らないけど。……嫌われてたりする?」

「ううん!ぜーんぜん!寧ろ庶務くんの事、大好きだってさ!」
「そりゃどうも。俺も、アキラの先輩として相応しい様に頑張るよ」


貴方にとっても、アキラは可愛い後輩の一人。好かれていると言われて悪い気はしない
もっとも、その真意を知るよしも無いのだが……





「……ん?なんか騒がしいな」
「この声……アキラちゃんと会長さん?」







「───諸君!昨夜未明、我が生徒会の一員が不幸な事故でこの世を去ってしまった!」
「二度とこの様な悲劇を起こさぬ様に、我々はより一層の注意を払いたい!ついては……」

「だ、だから……あの、あの」
「大丈夫?辛いなら大丈夫だよ?」
「くっ……!俺がもっと気を付けていれば!」


「何これ?」「聞かないでくれ……」


会長が正門の前で、生徒会を引き連れて何やら演説を繰り広げていた
副会長も新重も、会長の言葉を聴いて悲しげな顔を浮かべている
ただ一人、アキラだけが食い下がって止めている。それを意に返さずに、会長は続く

「ええいアキラ!今、私は大事な話をしているのだ、邪魔をするな!」
「奴の死を無駄にする訳にはいかない!この機会に私の政治基盤を磐石に「あのー」

「あ、庶務君!」「おお!生きていたか!本当に嬉しいぞ!」
「何をバカな事を……死人が生き返る訳無いだろう!そんな事は聖は……いやなんでもない」
「とにかく!奴が化けて出ようが私には……」



「あのー。俺、生きてるんすけど」
「出たああああああああああああああああああああああああ!!!!」

振り向いた先にいる貴方。会長はそれを見るや否や卒倒する
倒れ込む彼女を支えて、生徒会のメンバーに手を降る。貴方に駆け寄ると、抱きついてくる



「おおお!本当に生きている!生きているぞ、新重!アキラ!」
「やった~~~!お帰り、庶務君!」
「あはは……サンキュ、アキラ」「……どーも」









「お!?庶務の奴が化けて出たぞ!」
「いやいや、汝が勝手に早とちりしただけだろうに」
「わァ!無事だった?良かったヨ!」

「……おはよ」「……おっす」

「何だよ~メリッサ、もしかして惚れたか?」
「別に」「チェ、つれないじゃんかよ~」

「止めときなよマキちゃん。また腕の関節を逆に曲げられちゃうよ?」
「鮮やかな極め技だったな……思わずSNSに上げてしまったぞ」「止めてやれよ……」



新聞部に絡まれる。その後ろでメリッサ……事件の元凶が無表情で此方を見ていた
今更ここで彼女を弾劾しても意味が無い。貴方は黙々と今日の準備を始めるのだった



話す相手を一名
↓1、2







「あのー大丈夫っすか?」
「大丈夫に見えるか、この馬鹿が……」


授業の合間の休み時間、保健室のベッドで横たわる会長の元へ行った貴方
どうやら暫く寝込んでいたらしく、髪がやや乱れているものの、顔色は良くなってきている


「ていうか、勝手に殺さないでくださいよ。俺に連絡してくれればよかったのに」
「うるさい!死んだと思うだろう、アレは!」
「そもそも何でガイスロギヴァテスの尖兵と仲良くしてるんだ!頭にウジでも沸いたのか?」
「いや、まあ……話せばわかるかなって」「このウスラトンカチが!」

声を荒げて枕を放り投げる。どうやら次の授業には間に合いそうだ


「ところで、あの後何かありましたか?」
「え?」
「いや、結構な騒ぎになってそうだなって思ったんで……で、どうですか?」




123:黙ってる
456:少しだけポロッと
789:庶務が悪いんだよ
↓1



6:少しだけ



「あ、その……エーデルワイスが」
「エーデルワイス?アーディーが何か?」
「何でもない!貴様には関係無いだろうが!」
「いやありますって!」


会長がこぼした言葉に、敏感に反応する
アーディーとは貴方と別れてからは顔を見ていない。無事だといいのだが……


「アーディーに会ったんすか?どうでした、元気にしてましたか?」
「まあ、まあな……うん。無事だったぞ。私が見た時はな……」
「良かった……」

会長からの報告に胸を撫で下ろす。何はともあれ無事ならなによりだ


「それじゃあ、俺はそろそろ戻ります」
「また何かあれば、いつでも連絡ください!」
「フン!言われずとも!」




【本当はもう少しやりたかったのですが、長くなりそうなので本日はここまで】

【お付き合いありがとうございました……】



【本日お休み。明日にはやりたい所】



【切るタイミングが見つけられなかったので本日もお休み……すみません】


【七時くらいに更新……したいです……】

【無理なら再度連絡します。では……】



【なんとかやれそうなので……再開します】






「庶務君。そろそろ帰ろ~」
「ん、ああ……ちょっと寄る所あるから、千呼は先に戻ってくれるか?」
「どこ行くの?」「副会長の所」

先日、貴方は副会長に呼び出されていたのだ。メリッサを優先したので行かなかったが……

「今日はちょっと顔を出しておきたいからさ。宜しく言っといてくれ」
「了~解っ!」

敬礼をして去っていく。途中で新重を見つけたのか、くるりと方向を曲げていた


「さて、んじゃ行くか」
『本当に大丈夫だろうか?其奴も某かの手先である可能性もある』
「平気だよ、副会長はいい人だ。クリスティーナも見ただろ?」
『見たが……ううむ、奴は何というか、厄介事を率先して引き連れてくるというか……』
『アゾリノの様な雰囲気があってだな……』
「あれはクリスティーナのせいだろ!?」


アゾリノ卿。彼女の無二の親友にして無茶振りに付き合わされ続けていた苦労の人
その振り回されっぷりは、聞いているこっちも不憫に思う話だが……それはまた、別の機会に


「よし、場所は……三階の第二空き教室か」
『いざという時は私も出る。とはいえ注意を怠るな』
「わかってるって」

貴方は鞄を持ち、教室を出る。目的池は三階だ






「すんませーん。副会長いますか?」
「庶務か!待っていたぞ。お前の事は頼りにしているからな!」
「だが、しかし……家の事もあるしな。今日は止めにしておいた方が良かったか?」
「いいんすよ。俺は別に無理してません」


空き教室は思ったよりも片付いていた。恐らくは副会長が来る前に掃除したのだろう
そんな細かい部分が貴方は好きなのだが……時に細か過ぎて、行きすぎる部分があるのも困る事


「ところで、肝心の用事って……」
「そうだ!実は、庶務にはペットの捜索を依頼したいと思っていてな」
「ペットの……?」「得意だろう?」

『そうなのか?マスター』「まあ、な……」
『……ああ、そうだったな。貴方は』

貴方のかつていなくなった飼い犬。それを探す為に、様々な知識を蓄えてきた
もっとも、その結果は知っての通り……しかし、それは決して無意味ではなかった
他の人に同じ思いをさせたくない。その一心で助けていたのだから



「それで、どんな子なんです?」
「む、それはだな……ん?鹿黒がいないぞ?」
「あれ。他に誰かいたんすか」

困惑したように頭を抑える副会長。どうやら、本来はまだ誰かいたはずなのだが……








「……ここにいるけど」
「うわっ!?」

突然、端の方からゆらりと青年が近寄ってきた
ボサボサの髪から覗くのは暗い目。おおよそ人付き合いのいいイメージは浮かばない
そんな貴方と青年を他所に、副会長は彼の肩に腕を回し

「すまんすまん!紹介しよう。彼は鹿黒神夜。俺の親ゆ……」「ただのクラスメイト」
「ははは照れているのか!気にするな庶務!鹿黒はこう見えていい奴だからな!」
「こう見えて。ってそれ馬鹿にしてるよね。口では褒めてるつもりでも」

ジロッと血色の悪い顔で睨みつける。明らかに不機嫌そうな雰囲気だ
その矛先は副会長だけでなく、貴方にまで向けられる。心底嫌そうな声が響く


「それで、誰だよこいつ。お前の知り合い?」
「誰とは失礼だな。我が生徒会が誇る庶務だ!悪く言う事は止してもらおう」
「あはは……どうも。庶務してるっす」


あっそ。と素っ気なく返される。青年……鹿黒は視線を逸らして何かを考える様に額に手を



『サーヴァントの魔力は感じない。マスターの可能性は低いだろう』
「そっか。そりゃ安心だ」



「…………………………」







「それで、その子の名前は?それと特徴とか」
「何で言わなきゃいけないんだよ」
「いや、俺はわかりませんし……聞かなきゃ探しようがないじゃないですか」

「それが何でって言ってるんだよ……俺は頼んでない。放っといてくれ」

「何故だ鹿黒!お前の可愛らしいペットがいなくなったとあっては一大事だ。俺も悲しい」
「庶務とて気持ちは同じだ!故にそう……」
「それが鬱陶しいって言ってるんだよ!!!俺の事は放っておいてくれ!!!」


ドン。と机を叩き、立ち上がって走り去る
呆然とする貴方と副会長。唐突な豹変に、二人はついていけていない


「どうしよう。追った方が……」
『別にいいだろう。放っておけば』
「そうは言ってもな……」

「すまない、俺のせいだ。……良かれと思って、庶務に頼んだのだが」
「いいんすよ……というか、無断だったんすか」
「一応言っていたがあの調子ではな……すまん。どうにも虫の居所が悪い様だ」


ばつが悪そうな顔をする副会長
その表情からは、何の悪意を感じられない。本当に鹿黒の事を案じていたのだろう






「……そうだ。俺の方で探してみましょうか?」
「いいのか?しかし、鹿黒の迷惑に……」
「今はそれどころじゃないっていうか……」

今は聖杯戦争の真っ只中。一匹の動物に関心を止める程甘くはない
故意に狙う人物がいなくとも、戦闘の余波で傷つく事だって充分に考えられる
……それに、貴方個人の願いとして、誰かに自分と同じ苦痛を味合わせたくは無い


「と、とにかく俺がやりたいんで!副会長は気にしなくてもいいっすよ」
「……いや!そうもいくまい!俺も手伝おう!」
「無論、庶務の邪魔はしない。今回はサポートに徹するつもりだ」
「いいんすか?」「応とも!元より、俺が請け負うべきだったからな!」


うむ!と力強く胸を叩く。どうも引いてくれるつもりも無さそうだ

「……わかりました。けど、俺の指示には従ってくださいね」
「勿論だとも!よろしくな、庶務よ!」
『……妙な事になってきたな』「仕方ないさ」

霊体化していながらも頭を抱えているであろうクリスティーナに言葉を送る
かくして、貴方によるペット探しが幕を開けたのだった……






『マスター、私から一つ提案が』
『これに手を掛けすぎては本末転倒。もう少し人員を増やすべきだ』
「ん~……正直、俺と副会長だけじゃ不安かな」


クリスティーナからの提案に頷く
二人だけで済めばいいが、場合によっては一週間以上もかかるのはザラだ
その間も戦争は続いている。モタモタしているとペットが危険に晒される確率も上がる……


「まあ、生徒会からの依頼って形なら手伝って貰えるかな」
『あの女の統べる組織にはそれ程の力があると言うのか?』
「内申とかあるし……まあ、自主的な感じだから無理強いはしないさ」

貴方は教室に戻りつつ、スマホを操作する。誰か適切な人物がいるか……ぼんやりと考えながら



【一緒に探してくれる人安価(選択不可以外は誰でも可能)】
選択不可:アーディー(欠席中)、学生以外の人物
19:15から↓1、2


【一旦あげ】

【八時まで来なければ新重のみで進めます】


【安価確認しました。書いてきます】

【ついでに新重からの好感度。最低保証は6】
↓1


6:仲のいい友人



廊下をぼんやりと歩いていく。誰に頼むかを思案しながら
すると、目の前には見覚えのある少女の姿が。丁度いいと話し掛けた

「あ、庶務君どうしたの?」
「少し用があって……今、話してもいいか?」
「うん、いいよー。……千呼ちゃん以外とも話したかったし……」
「意外と監視の目が厳しいもんな……千呼」

目を逸らしながら半笑いを浮かべる新重。彼女のやらかした事は、簡単には償えまい
かといって、英霊の力で起こした事で彼女を裁く事もまた不可能。故に、御三家の一人で新重の親友である千呼が監視していたのだが……

「嫌だ……もう毎日深夜から朝までぶっ通しで電話するの嫌だ……」
「何があったんだよ……」
「夜まで家にいれば安全でしょって……それで、何か私に用事があるの?」
「そうそう。実は……」

軽く概要を説明する。ペットを探すので、人手がほしいと


「やる!やるから、千呼ちゃんに監視をもっと軽くする様に言ってくれる!?」
「あ、ああ」
「やったぁ!ありがとう庶務君!」「ぐっ!」


了承するや否や、余程嬉しかったのか貴方に精一杯抱きつく新重
その力もさる事ながら、彼女の最も大きな部分が貴方の胸を圧迫する


『随分と嬉しそうだな?マスター』
「く、苦しい……わかった、また連絡する……」

ともかく、これで一人は話をつけた。後一人は欲しいところだが……







「げほっ、ごほっ……」
「あれ息が苦しいんだよな……いや嬉しいけど」

新重と別れて、教室で一息つく
まだ放課後になってから時間は経っていない。何人かはまだ残っていそうだが……

「最悪、アキラに頼むか……バーサーカー?」
『マスター、構えろ。……お出ましだ』

「あんな事があったのに学校に来るなんて……」
「暇なの?それとも、他に理由がある?」
「メリッサ……!」
「下がれ!それ以上近づくならば、覚悟を決めて進むがいい!」


カツカツと足音を立てながら、教室へと入ってくるメリッサ。その顔はどこか探る様に
誰もいないと見たクリスティーナも実体化し、剣を抜く、対峙したメリッサも拳を固め

「待った!二人とも落ち着いてくれ。メリッサは俺に何か用があるのか?」
「……別に。単に興味があっただけ」

ふいっと背を向け歩きだす。どうやら、本当にそれだけの様で
クリスティーナも脅威は無いと判断したのか、再度霊体化して後ろに下がる
それだけならば、これで終わりだった……貴方が話し掛けなければ


「なあ、メリッサ。少し話があるんだけど」
「実はさ、頼みたい事があるんだ。駄目か?」
『マスター……!?正気か!?』「正気。寧ろ、いい機会だろ?流石に人前では暴れないさ」
『そうやって信用して、家を燃やされた事をもう忘れたのか!?』
「ランサーがいなければ大丈夫だろ。……いないよな?」


『……いないな』「良かった……」






「それで、何?」
「ああ。実はな……」

貴方はメリッサに伝えた。ペットの事。生徒会からの正式な依頼だと

「どうかな?一応、内申に影響するけど」
「勿論、断ったからってどうもしない。好きにしてくれていいよ」
「……わかった。引き受ける」

あっさりとした返答に面食らう。思った以上に簡単に受けた為、何か裏があるのかと……

「ただし、条件がある」
「あ、やっぱり?」
「簡単に仕事を請け負う等プロの名折れ。然るべき報酬は用意して貰う」
「……で、その報酬って?」

生唾を飲み込む。彼女の提示する報酬。それは何か……



【苦労する程でもない】+2
123:渦門の情報の譲渡
456:対セイバー同盟の打診
789:休戦期間の提示
↓1




6:対セイバー同盟へのお誘い



「……エーデルワイスのセイバー。奴を倒すのに協力して欲しい」
「な、セイバーを!?」

メリッサの提示した報酬はセイバーを打倒する為の同盟……つまり、武力
二つ返事で受けられる様な条件ではない。そう確信した二人は彼女に確認する

「どうして俺達を?」「消去法。可能性は低いと見ているけど」
「それは早急に結論を出さねばならないか?」
「いつでもいい。さっきも言ったけど、貴方達には期待してはいないから」

素っ気ない解答。メリッサも最初から可能性が低いと考えてはいるそうだが……

「……断ったら?そっちも断る?」
「いや、大した仕事でもないから引き受ける。ただ、私達に貸しを作るということを考えて」


「……相手は御三家。しかも武闘派揃いのガイスロギヴァテス」
「受けるも退けるも相応の代償があるだろう。どうする。マスター」

問い掛ける。クリスティーナの言う事にも一理ある。と貴方も感じた
ここでどう返答するか。悩んだ末に貴方は……


返答安価。受ける?断る?質問があればどうぞ
21:20から↓1~3の安価を混ぜて使用


【因みに、受けた場合もアーディーは憎みませんし、断ってもメリッサに殺される心配もありません】

これってガイスロギヴァデスの他の面子も共闘するのか?


>>401
【ペット探しはメリッサのみ。対セイバーの時には総出】


【ちなみに、一旦保留も選択肢としてはアリです】



【安価確認。書いてきます】

【暫しお待ちを……】





「……悪いけど、アーディーとは戦えない」
「もし、そっちと一緒に戦ったら……殺すだろ。絶対に」
「殺すね、きっと。……ルシフェル様の憎悪は、それ程根深く燃えるもの」
「私もそれを引き合いに出されたら、反論する事は出来なかった」


思いの外、素直にそう語るメリッサ。
貴方の最大の懸念であり、優先事項であるアーディーの無事。それをガイスロギヴァテスが守るとは思えない……思わなかった


「例え組むとしても……俺は今、禍門の人達にお世話になってる。それまで戦闘を行わないで欲しい」
「悪いけど……まだ保留させてくれ。この事を禍門の人達に相談してもいいよな?」
「構わない。それでは、いつからやるの?」
「今日の夜から。時間あるか?」


交渉は二言三言で終わり、直ぐ様予定を擦り合わせる
とにもかくにも、メリッサは協力してくれた。これで人手は揃った。後はその時を待つだけ……!








「……という訳で、俺のクラスメイトも手伝ってくれるそうです」
「そうか、君達が!転校生君、俺は生徒会の副会長の林道和成だ。宜しくな!」
「宜しくお願いします。副会長さん」

ぺこりと礼儀正しくお辞儀をする。その姿勢が気に入ったのか、副会長は普段より笑顔に
新重も生徒会役員として同行した。と説明しておいたお陰で、すんなりと受け入れてくれた

「それでは、早速……ところで、副会長は鹿黒さんのペットの事知ってますか?」
「当然だとも!でなければ探す目処も立たないだろう?」
「えー、どんな子なんだろ。見せて下さーい」
「これが鹿黒のペットだ。可愛いだろう!」

スマホに画像が映される。そこにいたのは膝の上で寝ている犬とも猫ともとれる哺乳類が
すやすやと安らかに眠る姿は確かに可愛い。問題は、貴方にも種類はおろか種別すら解らない事だが……

「うん……うん?可愛いんですけど……」
「可愛いー!新種かな?庶務君はどう思う?」
「猫……いや犬?哺乳類だとは思うけど……」
「ヴィオレ。という名らしい。公園で散歩していた所を偶々見つけてな!」
「へぇー……」




「………………」「ん?どうかしたか、メリッサ」
「いや、……別に」






「さて、それでは早速始めようと思う!」
「丁度偶数で割り切れる。ここは二手に別れるべきだと思うが、どうだろうか」
「そうっすね。四人で固まって捜しても効率が悪いですし」

副会長からの提案に、貴方は頷く
二人も同様に、反対する意思は無さそうだ

「では、どう別れる?庶務に任せよう」
「え、俺が決めていいんすか」
「今回はサポートに徹すると言ったからな!」

選択権を渡され、少し逡巡する。誰と捜すべきなのか……



1:副会長
2:メリッサ
3:新重
↓1


【副会長で本日ここまで】

【お付き合い、ありがとうございました……】


【ごめんなさい。本日はお休み……】


【今日はやりたいところ】

【人はいますか?】






『ハロ~☆坂松市の皆☆今夜も生放送やっちゃうよ~!』

『えっとね~でもその前に、ちょ~っと皆さんにお伝えしたい事があるんだ~』

『実は、今私のお友達のペットがいなくなっていて大変なの~><!』

『もし心当たりのある人がいたら、コメントで教えてくれると嬉しいなっ!』

『それでは、今夜も始めちゃうよーっ!』




「まさか自分のチャンネルで宣伝するとは……」
「む?彼女はアキラの姉ではないか!しかし、よく似ているな」
「知ってたんすね。副会長」

夜の街、貴方はスマホに映る千呼の顔を副会長と視聴していた
動画サイトに専用のチャンネルを持つ彼女は、この坂松で誰よりも影響力のある学生でもある

「だからって、思いきった事したな……」
「……本当にすまないな。俺の頼みに、庶務の周りに迷惑をかけて」
「いいんすよ。これは、俺のやりたい事でもありますし」
「……そうか!ありがとう。いつか俺のペットに会わせてやりたいくらいだ!」
「あ、副会長もいるんすね」「犬だな!もう年老いてしまったが……」


思わぬペット談義に花を咲かせながら、夜の街を捜索する
ある程度の目星はつけた。まずはそこを当たる所から始めてみよう


12:エンカウント
34567:特に無し
89:目撃情報が
↓1


3:特に無し



「う~ん、ハズレっすね……」
「仕方無い!次は上手くいくと信じよう!」

肩を落とす貴方とは対称的に、あっけらかんと答える副会長
その姿に、少しだけ勇気を貰う。明日こそは必ずや見つけてみせると……


 ◆


「え~と……何か私に……」
「惚けるな。奴の弱みを聞いている」
「痛いから放してほしいけどなー……」

薄暗い路地の裏。メリッサは新重に詰め寄って詰問する
二人で別れた今こそが好機と、新重の顔を掴み握りしめる……アイアンクローの姿勢だ

「早く吐け。命までは取らない」
「そう言われてもなー……あ、でも庶務くんはいい人だよ?」

のほほんと返す新重に苛立ち始めたのか、手には力がこもる
……ペット探しを放ったらかしにして、メリッサは別の思惑を進めていた



12:エンカウント
34567:特になし
89:情報が入ってきた
↓1



8:情報が来た



頭を掴まれ数分間。緊張感のあるような無いような。不思議な感覚が流れていく
すると、新重のスマホから流行りの音楽が鳴り響く。誰かから着信が来たのだろう

「あ、ちょっと電話出てもいい?」
「好きにしたら?」
「わかったー……もしもし?あ、千呼ちゃん?」


「え?フォロワーの人から有力な情報が来た?本当に?」
「うんうん。今ねー、庶務くんは別行動なんだよね。だからちょっと……」
「………禍門の」


新重が和気藹々と話す中、メリッサはその言葉に密かに聞き耳を立てていた
御三家の内の一人と仲良くしている女だ。何か有力な情報を落とすかもしれない……

「うーんとね。何か珍しい生き物を住宅街で見たんだって」
「だから、そこら辺を探してみたらいいんじゃないかって……あれ?」
「連絡を入れておいた。二人と外で落ち合うから、早くして」
「あっうん」





「そうか、住宅街に!」
「多分、誰かが保護してくれているんじゃないかな?なら安全かもな……」
「いや……早急に調べるべき」

珍しくメリッサがハッキリと意思表示をする。その目は断言する様に強く光る

「えーどうして?別に明日でも良くない?」
「なら他の人は奴は帰れ。必ず私があの獣を捕獲する」
「捕獲って……あの子は鹿黒先輩のペットだろ」
「そんなに熱心になってくれるとは……いい友人を持ったな!庶務よ!」
「そうかな……?まあそうかも……」

メリッサに別の思惑を感じながらも、副会長の言葉に曖昧に頷く
夜もそろそろ更けてくる。帰宅する前に、少し誰かと話してもいいかもしれない



【誰かと会話しますか?】
1:副会長
2:メリッサ
3:新重
22:00から。誰とも何も無ければ無しで
↓1、2


【ついでに、最後の判定】
12:エンカウント
3456789:無事に終了
↓1



1:エンカウント(終わり次第再判定)




「ねえねえ庶務くん。あの子危ないよ!」
「危ない?何かしたのか?」
「いきなり路地裏に連れ込まれて、おまけに頭を掴みかかってきたんだよ?怖いよー!」
「本当に何したんだよメリッサ!?」

「む?どうかしたか庶務?」
「なんでもありません」


疑問符を浮かべる副会長を余所目に、貴方はメリッサに詰め寄る
それを意に返さずにメリッサは返答する。まるで当然の事をしたかの様に


「情報を集めるのに必要だっただけ。それ以外に意味がある?」
「だからって、新重はもう関係無いだろ!」
「私も正直もう関わりたくないかなー……」

目を逸らす新重を無視して貴方を睨む。貴方はその眼光に少し怯みながらも、見つめ返した

「なあ、ヴィオレちゃんの事、何か知ってるのか?メリッサ」
「さあね、教える必要は無い。同盟を組んでくれるというなら別だけど」
「それは弱ったな……」


メリッサの物言いに反論出来ない貴方。影で見守っているクリスティーナも頭を抱えている
もうそろそろ解散しよう。そう思った貴方は、全員に声をかけ……



12:副会長
34:新重
56:メリッサ
789:貴方
↓1



5:メリッサ



「すみませーん、そろそろ……」
「ん?副会長は?あれ、どこ行った?」
「本当だ、いないね……」

「……単に、先に帰ったんじゃない?」
「いや、あの副会長に限って俺達を無視して先に帰るなんてあり得ない……」
「少し探してくる。二人とも、そこを動かないでくれよ」「はーい」

突然消えた副会長に焦る貴方。駆け足でその場を離れ、周囲を伺う
それと反対方向から、入れ替わる様に戻って来たのは副会長。手にはスマホを握っている

「あ、副会長。どこ行ってたんですか?」
「今から帰宅すると連絡をな。話し込んでいた様だし、邪魔になるかと思って離れたが」
「あいつが副会長を探すってどっか行ったんですけど」
「それは申し訳ない事をしたな……よし、今度詫びにコーヒーでも奢ろう!」


先程までの緊迫感は何処へやら。和気藹々とした雰囲気に包まれる
そこに、こつこつと軽い足音が聞こえる。貴方が戻ってきたかと振り向くと、立っていたのはまるで違う人物だった





「──ねえ、貴方達はどこから来たの?」








「うーん、やっぱいないな……」
『だから言っただろうに。早とちりだと』
「いや言ってないし……」

時は少しだけ巻き戻り、貴方は街を軽く探して回っていた
息を切らせながら来た道を戻る。まるで無駄足を踏んだクリスティーナも呆れた様な声色で

『だからお前はもっと落ち着いて考えろとあれ程までに口を酸っぱくして……』
「あーわかったわかった。クリスティーナは説教が好きなんだから……」

「あれ?何だ、誰と話してるんだ?」
『一番背の高い副会長が屈んでいるという事は相応に背の低い人物だろうが……』
「そんな奴知り合いにはいないな……アキラでも普通に話してるし」



「成る程!君は遠い国から来たのか!」
「ええ。遠く遠く、街を幾つも越えた先、海を何度も渡った所」
「貴方達は優しいのね。お姉様も優しいの」
「へー会ってみたいなー」


近付くにつれて、三人が話している相手の特徴がわかってくる
相手は年端もいかない少女だ。くすんだ金色の髪。血の様に光る赤い瞳
貴方はその姿を知っていた。あの時、暗い路地で出会ったその名は……


「ん……?おい!あれって!」
「マスター!走るぞ!あのままでは!」








「皆!そいつから離れろ!」
「うん?庶務よ、どうし……うぐっ!?」
「副会長!?大丈夫?」

「当て身だ。……貴様、何しに来た」
「あら、貴女は野蛮なお姉さん。私はただお話ししていただけなのよ?」
「嘘を吐くな。餌の物色でもしに来たか?その容姿で油断を誘い、一息に食い散らかすつもりだったのだろうよ」


間一髪、クリスティーナが間に割り込む。その途中で副会長には眠っていて貰ったが
少女は彼女の顔を見て微笑む。それに対してクリスティーナは吐き捨てる様に彼女に剣を向け


「あんた……こいつは、いったい!」
「メリッサ、貴様もサーヴァントの事は知っているだろう!英霊でありながらも、その気配を極限まで削れる存在が!」



「───そうだろう、アサシン!」
「ふ、ふふ、ふふふふふ!そうね、私はアサシン。暗殺者で、人殺しで、人喰いの怪物!」

少女は高らかに嗤う。アサシンの笑みは可憐ながらも、どこか不安を煽るものがあって



「だから──そうね。一人くらいはそうしておくべきかしら」

無造作に腕を振るう。その先にはメリッサが
あまりにも速く振るわれた動作にはさしもの彼女も対応できず

「が、はっ……!」「メリッサ!」

身体から鮮血を撒き散らし、その場に倒れ込む
アサシンは満足したのか、可憐な姿を闇に溶かすのだった




【本日はここまで。お付き合いありがとうございました】


【本日はおやすみ……】


【ごめんなさい。本日もお休みです……】


【ごめんなさい。本日もお休み……】

【ですが明日には必ず……必ずや……!】


【ちょっとだけ再開……】





「ハッキリ言おう。状況は最悪だ」

淡々と答えるマリア。言葉とは裏腹に、その顔は怒りに燃えている
倒れたメリッサを介抱する為、一時的に禍門の家へと連れ込んだ。その息は荒く、苦しげに
副会長と新重は、聖杯戦争に関わる事情であると同時に遅い時刻なので帰って貰った

「マスター、やっぱムリ!ボクの魔術とあいつの呪いは相性が悪いもん」
「精々、侵攻を遅らせるのが関の山か……本当に使えんサーヴァントだ」
「無茶言わないでくれないかな!?」

メリッサの看護をしつつ、自身の作成した礼装を取り付けるキャスター
ただ傷を負っただけでなく、何らかの呪いがかけられた様に息苦しそうに悶えている

「……ハッ、はぁ……っ」
「大丈夫かな?メリッサちゃん」
「苦しそう、デス。助けてあげないと」




「お前達!早く彼女から離れるんだ!」
「……お父、さん」
「相手のアサシンがどんな能力を持っているかわからない。二人も気を付けろ!」







「……メリッサ。ごめん」
「謝る事は無い。御三家である事に驕り、無様に倒された。それだけだ」
「けど……俺は守れた。それが悔しくてさ」

「いっひっひ。そうそう、気にする事なんか何も無いのさ。奴さんも承知だろうよ」
「貴女は、禍門の……」
「けれどもまあ、それで何かを手に出来る事もあるだろうよ。なぁ?」
「……ありがとうございます」


ふらりと現れた招福が、貴方の肩に飛び乗る
不思議と重さは感じない。これも魔術のおかげだろうか?
そんな事を考えていると、ぴょんと降りて憂午の前へ。怪訝そうな顔をする彼に、にやりと意地悪そうな笑みを浮かべて 


「そうそう。ガイスロギヴァテスの連中には俺から話を通してあるぜぇ」
「助かります。して、その反応は……」




【得たいが知れない相手】-2
【メリッサを傷つけた】+3
123:我関せず
456:情報を要求
789:臨時の同盟のお誘い
↓1





4:情報求む



「連中はかーなーりお怒りみたいだぜぇ?もうカンカンさ」
「何せ、可愛い妹みたいな子だ。奴等の面子は丸潰れさ!ひっひひひ!」

ケタケタと無神経に笑う招福。その甲高い声に貴方は顔をしかめる
今も苦しんでいるメリッサを前に、ヘラヘラと笑うのが許せないのだろう

「おぅおぅそんな顔するなよぉ。怖い怖い」
「にしても……このガキンチョはお前さんにとってそんな大事なのか?一目惚れかぁ?」
「トーレイエッテめ……マスターに妙な事を吹き込むな」


「ほいほいっと。んで、ガイスロギヴァテスはどうもあちらだけで対処するつもりらしい」
「無茶な事を言うな。どうせ返り討ちにされて餌になるのが関の山だ」
「まあそれは奴さんが決めるこった。だから、そっちの持つ情報を寄越せだとさ」


「マリアさん。どうだろうか、ここは連中とアサシンをぶつけ、消耗した方を……」
「憂午、みとりに言い付けるぞ」「今姉さんは関係無いだろう!?」
「私は反対だ。アサシン陣営は危険過ぎる。私一人で倒す算段がつかない程には」
「よりによって相性悪いボクを呼んじゃったからかねー……あいたたた頭ぐりぐり止めて!?」


「……マスター、貴方はどちらを選択する?」
「メリッサを治すにはアサシンの討伐が不可欠だ。他にも被害者がいる可能性もある」
「しかし、マリアの言う通り、返り討ちにされる可能性も高い。アサシンは元より、奴のマスターは死徒」
「どう足掻いても敵う相手ではない……それで、どうする?マスター」




1:憂午に賛成し、ガイスロギヴァテスに相手を任せる
2:マリアに賛成し、クリスティーナとキャスターで相手をする(アーチャーは判定次第)
3:その他(案が出る度に選択肢に加え、時間を増やします)
22:15から
↓1~3


【安価確認しました。そして本日はここまで】

【ちなみにですが、貴方のアサシン陣営との相性は最悪。単騎で挑むと確実に死ねるレベルです】



【それでは再開……】







「……俺は、マリアさんに賛成する」
「アサシンは、俺達が倒します!」
「……先、輩?」

力強く、そう訴える貴方。その発言は周囲の空気を凍りつかせる

「な、君は何を言っている!?相手が誰か、君もわかっているだろう!」

貴方の言葉に、憂午は激しく詰問する。普段の厳格さをかなぐり捨てて掴みかかる
それ程までにその発言は看過できなかったのだろう。それでも前を見据えてハッキリと告げる

「アサシン達は平気で人を襲う……誰かに任せる訳にはいかないんだ!」
「確かになぁ。ガイスロギヴァテスは街なんか知った事じゃあない。下手すりゃ市街戦になるだろう」
「しかし……しかし!彼はまだ若者だ。彼を犠牲にするなんて認められない!」

しかし、憂午は許さない。父親として、魔術師として、管理者として



「坂松の管理者としても!一人の父親としても許可は出来ない!」
「この件は専門家でもあるマリアさんに任せるんだ。君は自分の命を守る事だけを考えろ!」
「そんな……」








「……だからこそ、我々がいる」
「互いの願いを叶える為、共に立つ英霊が」
「バーサーカー!君は今、何を言っているのかわかっているのか!?」

「わかっていないのは其方だろう!英霊とは、戦争の代理であり代行するもの」
「ここで英霊に頼らず、誰に頼ると言う!?」


言葉に詰まる貴方。代わりに答えたのは、彼の英霊であるクリスティーナ
その言葉はいつになく激しく、強い口調で責め立てる。これには憂午もたじろぎ、狼狽えて


「そ、それは……しかし、やはり……」
「相手が危険な事はわかってます。けど、俺がやらなきゃ被害がもっと出る!」
「……私としては、反対したい」「見ろ!マリアさんだって……」


「だが、まあ……若い子の自主性は尊重してやりたい。私が面倒を見よう」
「わーい!女の子ばっかでつまんなかったんだ。これから宜しくね!」
「あ、ありがとうございます……?」
「せ、先輩。わ、私、も……」



「話はまとまったみたいだなぁ?それじゃあ、連中にはそう伝えよう」
「もう遅い。今日はとっとと休んだ方がいいと俺は思うけどなぁ。どうよ?」
「……では、そうしましょう。詳しい話は明日、ガイスロギヴァテスを交えて行う!」

「期待しているぞ。ふふ、先輩の胸をどーんと貸してやる」
「全然無いじゃん……それならボクの方が大きくて柔らかあ痛い痛い痛いつねんないで!」


「………………………………」
「? どうかしたの?ムスッとしてるけど」
「別に。……何でも、ないデス」








月は翳り、闇の満ちた空間で一人唄う少女
くるくる。くるりと愛らしく回り、鳥の囀りの様な可憐な声を響かせていた



「──Der Schlus ist schon gemacht」

「──Welt, gute Nacht!」

「──Und kann ich nur den Trost erwerben」

「──in Jesu Armen bald zu sterben」

「er ist mein sanfter Schlaf……」

「……アサシン、その歌は」
「あら、聴いていたの?ふふふ、お代は結構。けれどもリクエストも受け付けないわ」

否。もう一人、暗がりに蠢く血にまみれた男が声をあげる
既に擦り切れ掠れた声。最早雑音と相違の無い音でアサシンに話しかける

「いや……いい。それよりも、喉が渇いた」
「欲しい、欲しい。もっと、もっと心臓を……」
「あら?それなら私に一言命じてくれればいいのに」

くすくすと整った顔を歪ませて笑う。その表情はどこか悪戯っぽく


「宝具を使うの。そうすれば、もーっといっぱい食べられるわ」
「しかしそれで、は」
「今更よ、今更なの。いつ死ぬか、今死ぬかの違いでしかないの」


「ね?命じて?私に、宝具を使え。って、ね」



【膠着状態】+2
【良心の呵責】-1
123:まだダメ
456:部分的に許可
789:全面的に許可
↓1





7:大規模に宝具を使用



「……許可、する」
「俺には……時間が、無い。一刻も早く、聖杯を手にしなくては……!」

悩んだ、本当に深く悩んだ
自分の狙う人間は、魔力を持つ者だけ。それを歪めてまで欲しても良いのかと

しかし……このままでは、自分の方が先に果てるだろう
強引に肉体を構成しているが、それがいつまで持つかもわからない
それに、何より……今の自分は血に飢えていた

「ええ。確かに聞き入れたわ。安息の夜を始めましょう」



「“──Jesu, komm und nimm mich fort!”」

「“Dieses sei mein letztes Wort…………”」

「“私の名は───【黒死斑の、吸血鬼】”」

ぞわり。禍々しい、視覚化出来る程の暗黒の魔力が沸き上がる

魔力は風に乗り、風に舞い、風に散り……坂松の至る所へと蔓延っていった




【まだ書いてないので少し判定】

【学校や街の様子は?】
123:ゾンビランド坂松
456:流行り病の噂に
789:まだ猶予はある
↓1

【マスター含めた魔術師の方は?】
123:キツイ
456:かなりの弱体化
789:ガード
↓2


7:猶予あり
0→9:この場面で振り直すのも面倒なので最大値として判定



その知らせは、本当に唐突だった
多少の違和感はあれど、いつもと変わらない日だろうと予想はしていた
なのに、まさか……!


「どういう事ですか、アサシンが宝具を使ったなんて!」
「本当なの?何かの間違いだったりしない?」
「間違いないわ。街に張り巡ってる魔力計が、深夜から異常に振り切れてる」
「何かしらの干渉をしたと見るのが一番ね」

みとりからの淡々とした報告を聞きながら貴方は机を睨み付ける
そこにいない敵を睨む様に。街そのものを驚異に晒すという不文律を犯した相手へ

「そ、それで……その、アサシンの宝具って」
「現状では不明。とはいえ、未だ被害は大きくなっていない」
「街で体調を崩した人間がちらほらと出ている程度ね。学校には圧力をかけて臨時休校にしておいたわ」
「あ、ありがとうございます……?」


その言葉に若干の疑問を感じつつ、みとりへと感謝の言葉を述べる
……同時に、早くアサシンを仕留めねば。そんな焦燥にも似た感覚が全身を走った







「しかし、どうしたものか……奴等の潜伏先は掴めるか?」
「難しいわね。こうも広範囲だと、絞り込むのも一苦労するわ」
「まして、相手はアサシン……気配遮断は極めて凶悪なスキルだ」


「むむむ……ボクは陣地の中で戦いたいなぁ。魔術師だし」
「今回はサポートに回ろうかな。別にボクがいなくても大丈夫でしょ?」
「馬鹿な事を言うな。今は貴様の手でも借りたい状況なんだよ」

「バーサーカー。俺達は……」
「流石の私も、街一つに干渉する宝具へは対処出来ないな」
「私の宝具は“私の生き様”。それ故に多人数への干渉を防ぐのは無理だ」


各々の陣営が自らの力を発言する。しかし、どれも有効打にはなり辛いものばかりで話が進まない
一人だけ、下を向いて発言しない人物を除けば



「……そうだ、アキラのアーチャー。あいつはどうなんだ?」
「え、あ、私の、サーヴァント、デス?」
「私からも頼もう。アサシンの打倒には彼の力も必要と判断したが」

マリアからの後押しに、むぐむぐとマスク越しに口を動かす
そして、遂に意を決した様に口を開いた


「……アーチャー、来てください。これは、命令デス」
「貴方の力を、先輩に、貸してあげて……!」




【状況が状況】+1
123:ヤだよ
456:渋々ながら出てくる(言うことを聞くとは言っていない)
789:しょーがねーなぁ
↓1



9:すんなり納得



「………………」
「アーチャー。話は聞いていたはずデス。先輩と一緒に、街を……」
「あーはいはいわかりましたよ!」


霊体化を解き、姿を表すアーチャー
その威容はこの場の全員が息を飲み、圧倒される程の壮大な躯
青銅の巨人は不機嫌そうに吠えながら、頭をガリガリと掻き出した


「本当か!ありがとう、アーチャー!」
「どうせ嫌だっつってもやらせんだろ。令呪なんか使わせねーからな」
「ヒュウ!流石は神話有数の巨人だ。太っ腹だねえ!抱く?抱いてみちゃう?」
「うっせーよクソアマ!俺はそういうの嫌いなんだよ!」

喧々諤々。一気に騒がしくなる禍門の家
一刻を争う一大事だというのに、今はそんな事を感じさせない程に明るく笑う



「あ、あの。先輩、その」
「アキラ、ありがとう。絶対に俺達は負けないからさ」
「……どうも」


「ふんふん。成る程なあ、やってくれやがる」
「さて、ガイスロギヴァテスの連中はいつになったら来るのかねえ?」



123:明日の夜
456:今日の夜
789:今日の昼
↓1


【さっきと同じ裁定でしたが直下でも結果は変わらないので】

7:すぐに来てくれる

【という訳で、最後にアーチャーのステータスを開示して本日はここまで】

【お付き合いありがとうございました……】


┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
  ≪クラス≫:アーチャー
┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┓
  【真名】:???                【コスト】:       【属性】:混沌・善
┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┓
  【筋】:A(50)     【耐】:A(50)     【敏】:C(30)    【魔】:C(30)     【運】:E(10)   【宝】:EX(規格外)
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫



【ゆるりと再開】

【安価ありますが人はいますか?】




「……今日の昼。か」
「緊張しているのか?マスター」
「そりゃあまあ。交渉自体は憂午さんがやってくれるって言うけど」


ドクドクと胸が鼓動している。焦る気持ちを強引に押さえ付ける
思いの外、ガイスロギヴァテスの動きが早い。貴方も飲み込むのに一苦労だ


「……ちょっと、誰かと話してくる」
「気分の転換にはなるだろうしさ。少し、外に出ているよ」

(アサシンを早く倒さないと。けど……)
(そういえば、あいつは……どんな英霊なんだろうな……?)


会話したい人、無ければなしで
↓1、2






「……マリアさん。少しいいですか」
「いいとも。私も君とは一度話しておきたかったからな」

軽くノックをして、部屋に入る。マリアさんは快く迎え入れてくれた
一度目は夜だったから気がつかなかったが、彼女の部屋は他の部屋より少し暗い
とはいえ、ほんの薄暗い程度で歩く事に不自由はしていないのだが

「連中との交渉は私と憂午氏、それと、禍門のご老体で行う」
「私としてはサーヴァントが多いに越した事は無いのだが、彼等はガイスロギヴァテスを憎んでいるからな」
「それって、理由は……?」

手を広げ、ふるふると首を振る
どうやらマリアさんも詳しい事は知らない様だ

「正直な所、私は君達に重石を背負わせたくは無い。無いが……」
「今は緊急だ、存分に頼らせて貰う。しかし、危険を感じたらすぐに逃げろ」
「まだ若い君の未来を潰したくは無いからな」



1:「マリアさんだって若いじゃないですか」
2:「どうして、死徒を追っているんですか」
3:その他、自由な台詞安価
↓1





「……どうして、マリアさんは死徒を追っているんですか」
「危険な相手だって、散々言ってたじゃないですか。それならどうして」

しん、と場が静まる。貴方の問いは当然のものだったのかもしれない
しかしマリアにとっては、あまり踏み込まれたくはない質問で。少しだけ思案し

「……うむ。まあ、そうだろうな。君みたいに青い子はそういうの気になるか」
「青い子?」「……若い子供という意味だ」

咳を払いながら、頬を赤らめる
話し辛いなら。と言う貴方に、マリアは気にするなとだけ答えて

「それで、何故か。と問われると……まあ、アレだ。イメージ改善みたいな」

「……イメージ?」
「最近の若い者は~とか、これだから男子は~みたいな偏見がな、生き辛いというか」
「あの、それじゃまるでマリアさんも」





「ああ、私も似たような存在……『吸血鬼』だ。」
「………………っ!」







「……やはり、驚くか」
「だって、吸血鬼って……」
「そう。アサシンの同類だな。厳密には違うかもしれないが」

告白して、罪悪感があったのだろうか
表情は動いていないのに、心なしか哀しげに目を下に向けている
服の裾を掴み、自嘲する様に笑う。今まで危険だと言ってきた存在は、何を隠そう自分なのだ

「……すまないが、この事は秘密にしておいてくれ。今、余計な混乱を招きたくはない」
「それを、知ってるのって」
「禍門の当主、雇い主のみとり、それとキャスターだ。君の友人には話していない」


「……可笑しいか?私が平気で君達の仲間面をしている事が」
「嘘だと思うかもしれないが……私は、本当にこの街から奴を排除したいだけなんだ」




1:「そんなに危険な相手なんですか」
2:「でも、マリアさんは悪さしてないじゃないですか」
3:自由安価
↓1





「……そんなに、危険な相手なんですか」
「相手の、その……心臓喰いは」

言葉を選ぶ様に、おずおずとマリアに質問する
その発言を聞いたマリアは顔をしかめ、苦々しそうに舌打ちを

「非常に危険だ。私の相手した死徒の中でも、上に来る」
「初めて活動を開始したのは大陸でな。そこで魔術師を襲って心臓のみを捕食していた……」
「……何で心臓だけを?」
「グルメなんだろうよ。向こうの信仰で、心臓は力の源らしいからな」

「つまり……エネルギーを溜めている?」
「かもな。それで何をしでかすつもりなのかも全くわからん。おまけに……」
「理性を無くしたら、もうそいつは化け物だ。退治した方が慈悲になるというもの」

「だから……人を殺すと思ってはダメだ。あれは最早別種の生き物なのだからな」

微笑みながら、マリアはそう答えた
心臓喰いの動機はわからないが……アサシンに街一帯に干渉する宝具を使わせた以上、倒すべき相手に他ならない

「……ありがとうございました。それでは、また」



【本日はここまで。ありがとうございました】

【安価形式がコロコロ変わるのは、その時に応じてだったり】




【ゆっくりと再開】

【安価がありますが人はいますか?】





「よう。浮かない顔だなぁ、小僧」
「うわっ!?あ、アンタは!?」
「ひひひ。何だよつれねぇな。ちっとばかし俺に付き合えよ」

廊下を歩いていると、突然背中に重い感触が
声の主は禍門の長である招福。貴方にしがみつきながら、けたけたと愉しげに笑っている

「つ、付き合うって何を」
「何でも。お茶でもお話でも、なんならベッドの上でも構わないぜぇ。ひひひひひ!」
「……俺と遊んでていいのか。交渉があるだろ」
「お前、俺が相手だとタメ口なんだなあ。年上は敬えよ。衣食住の面倒見てんだぜぇ?俺は」

首にぶら下がりつつ、頬をつつく。……何が楽しいのだろうか
深く考えるのは諦めよう。そう思考を入れ替えると招福に向き合う


「……で、何か用事でも」
「んん?まあ、何だ。世間話でもってヤツだ」
「暇なんだよぉ。付き合え!ひっひっひ」



1:「アンタはいったい、何者なんだ?」
2:「俺よりも、千呼やアキラを気にしてくれよ」
3:自由安価
↓1





「……なあ、アンタは何者なんだ?」
「いきなり出てきたり、消えたり……普通の人間じゃ、無いよな?」

「ん?なんだぁ。そんな事が聞きたいのか」
「それともアレか、俺の事をもっと知りたい。とかそんなヤツか!中々に見る目があるねぇ」
「とぼけないでくれ。招福……さん」

「教えてください、貴女の事を」


「……いいじゃねえか。その真剣な顔。うっかり惚れちまいそうだぜ」
「あいわかった。それじゃあちと話してやるとするか!」

にやり。招福の悪戯っぽい顔が、にぃっと弓なりに歪んでいく
肉食獣の如き獰猛な笑み。貴方は少しだけ身動ぎするものの、すんでの所で踏みとどまる
その勇気を讃えてか、口を開いていった


「俺は、数世代前……エーデルワイスのシュヴァルツって知ってるか?」
「あ、ああ。……あの偉そうな子供の事だろ?」


「そいつの正体は、エーデルワイス初代当主。ただの降霊術の家系を“天使に恋した一族”に作り替えた張本人」
「莫大な魂をその身に取り込み、天使の一歩手前にまで近づいた正真正銘の怪物さ」




『シュヴァルツのスキルを開示します』

 ◆魂憑霊術式:偉大なる黒   
  ガイストシュヴァルツ。魂に干渉できる高位の降霊魔術で、魂を弄ることで結び付く肉体にまで干渉する。   
  魂が滅びぬ限りその肉体は即座に修復し、周囲に彷徨う霊体は彼の管理下に置かれる。    
  莫大な神秘を宿す魂は、長き年月を経て肉体が滅ぼうとも新たな肉体を得て現世に留まる。









…………絶句する。つまり、あの子供、いや


「あいつは……無数の魂を……?」

思い付いた最悪の発想。それを否定するとも肯定するとも呼べない様な不思議な顔で

「もう何べん転生したかは知らねえ。けれども力はどんどん増していってやがる」
「下手すりゃ並みの英霊でも太刀打ち出来ねえかもしれねえ。理屈じゃなくて、“理”でな」

「理……?」
「今回の聖杯は連中が用意したモンだ。何を仕組んでいるかわかったもんじゃねえ」
「主催者特権。ってヤツだ。決して連中に気を許すな。わかったか?」

招福の顔は、真剣そのもの
普段の飄々とした雰囲気は鳴りを潜めている
……けど、そうだとしても、どうしても

シュヴァルツと、貴方の後輩であるアーディーが結び付かないのだ……



「……それに、招福さん。まだ疑問が残ってる」

「どうして、アンタはそんなに外部の家の事情に詳しいんだ……?」






「ひっひっひ。そりゃあ簡単な事だ。連中から聞いたんだよ」
「聞いた……?さっきの話を……?」
「奴はこの坂松市を使って聖杯戦争を行おうとした。天使へと至る為の、莫大なエネルギーを溜める為にな」

「その時、この土地に根付く魔術の家。ここ、禍門の当主である俺に話したのさ」
「それって、いつの話ですか?」
「もう何十年と経ってる気がするなぁ。憂午が幾つの時だったか?忘れちった!」
「じゃあ、まさか貴女も大量の魂を……!?」



「んな訳ねえだろ。俺はとっくの昔に肉体が死んでんだからよ」
「……は?」

既に死んでいる?理解が追い付かない
幽霊……いや、英霊の様なものなのだろうか?

「いやあ、研究でドジ踏んでな。肉体が消し飛んじまった!」
「聖杯戦争が起きて、現世との繋がりが出来たのが大きいんだろうよ」
「こうして、小僧の前に現れる事が出来たんだからなぁ!」
「まぁ、そういう意味ではお前さんが召喚したみたいなモンと思ってくれていいんだぜぇ?ひひひひひはははははっ!」


『招福のスキルを開示します』
 ◆禍福無門
  自身へと向けた呪詛によって禍と福の理から外れた存在となっている。
  もはや言葉が形をとっただけの存在と成り果てており、ありとあらゆる物理的干渉を受け付けない。
  それは逆に自身から他者に対して物理的な干渉が不可能であることも意味している。
  聖杯戦争となった現在は現世との繋がりが出来ており、ある程度干渉できるようになっている。



「……なんじゃそりゃ…………」
「そら。そろそろお待ちかねだ。さっさと行こうぜ、小僧」




【ちょっとだけでしたが本日はここまで】

【ありがとうございました……】


【本日はお休み】



【本日もお休み……】

招福は見た目が子供な理由がなくね?超天才児だったのかね?
シュヴァルツは新たに肉体に魂を移したてなんだろうかと思うが

時系列的には当主となれるだけ生きてるみたいだし、憂午の生まれるより前には肉体のない存在だったっぽいけど


>>493
招福「せっかく娑婆に戻ってきたんだ。なら若い身体の方がいいよなぁ?」

【本日もお休み……明日にはやりたい……!】



【それでは再開】

【参加する人はいますか……?】






「……邪魔をする」
「来たぞ、禍門の当主よ!早くメリッサを渡して貰おうか!」
「ガイスロギヴァテス……」

門が開く。そこに立っているのは、ドミトリイとルシフェル
貴方とも幾度と無く戦った相手。距離があるとはいえ、それでも背筋が凍る様

「応よ。つっても、今のアイツは面会謝絶だ」
「アサシンの宝具の影響を強く受けている。今無理に動かすと命に関わる可能性が高くてな」

マリアからの説明に納得がいかなさそうな
しかし、認めなければならないという感情を含めた複雑な顔つきで

「……必ず、助けるとここに誓え」
「もし、メリッサを殺した場合……エーデルワイスと共に貴様らも処刑する……!」

「我等禍門の名において誓おう。彼女を無事に貴様らに返すと」
「土地を踏み荒らすハイエナ共とはいえ……約束を違う程、禍門は非道ではない」


バチバチと火花が散る。片や露骨に嫌そうに、片やサングラスの奥で眼を細め
ドミトリイと憂午の間に見えない壁でもあるのかと問いたい程、二人は断絶した空気をぶつけていた



「……なんであの二人あんなに仲が悪いんだ?」
「お家の都合、デス。私も、関り合いになったらダメって、言われて、ます」
「大変だな……」

お家事情には詳しくないものの、その苦労はなんとなく解る
アキラも少し悲しそうだ。彼女も喧嘩する父親の姿は見たくないんだろう


「……戻ろうか。終わり次第連絡するって言ってたし」
「わ、わかり、ました」




【結局交渉はどうなったの?】
『仲が悪い』-2 『ちょっと今それどころじゃない』+3
123:決裂
456:条件の押し付けあい
789:受諾
↓1



8:共闘戦線



別室に移された貴方とアキラ。そしてその英霊
本を読んだり、スマホを弄ったり。二人の間に会話は無い
微妙な緊張感が流れていく。不意に、ノックの音が響いて憂午が入室した


「……君、来てくれないか。アキラもだ」
「はい。わかりました」
「どうやら決まった様だな?交渉の結果が」
「しかし残念だ。私にやらせてくれたならば最良の結果を出したものを!」

「居候が調子乗ってんじゃねーぞ。テメーらなんざオレがブチのめしても良かったんだぜ」
「それをマスターの温情で迎えてやったんだ。立場ってモンを理解した方がいいんじゃ……」

「アーチャー」「ヒッ!?」
「余計な事、言わないで。……先輩、気にしないで欲しいデス」
「あ、うん……いいよな。バーサーカー」
「飼い犬の世話は出来ている様だな。マスターに免じこの場は流そう」


「……マスターが怒るとおっかねえんだよなあ。姫さんを思い出すぜ」
「何か」「何でもございませんよっての!」






「ハン、久々ね。デカブツに小娘」
「ランサーか。またボコボコに追い回してやろうか?」
「オメーオレに負けっぱなしだろ?何でそんなに偉そうに出来んの?」

「うっさいわねコイツら!本気出すわよ!?」
「駄目だ」「チッ!」

広い客間には、ガイスロギヴァテスの面々。その英霊、ランサー
禍門のメンバーとアーチャー。外部からのマスターであるマリアとキャスター
そして、貴方とバーサーカー……ここに、実に聖杯戦争の大半の英霊が集った事になる

「さて……結論から話そう」
「我々。ガイスロギヴァテス、禍門の両名は、今回の緊急事態に対応し、同盟を締結する事にした」
「条件は“アサシン陣営の討伐。及び、それに付随する妨害の共同打破”」
「この条件は、既に禍門の陣営に下ったキャスター、及びバーサーカーにも納得して貰う」

「勿論だ。元より私は雇われだからな」
「俺もです。けど……」

「エーデルワイスの小娘を殺すな。だろう?」
「うっ」

ルシフェルからの発言に言葉を詰まらせる
彼女のエーデルワイスへの憎悪は凄まじい。ここで同盟が破綻すれば、それは間違いなく貴方の責任になる……



「勿論だ。彼女の処遇は君に一任しよう」
「え?」






「……なんだその声は。私を見境無く人を襲う悪鬼だとでも思っていたのか」

憮然とするルシフェルに、眼を丸くする
その言葉は本当に嬉しい。けど……

「メリッサを助けたのは貴様だと、俺は禍門の連中から聞いている」
「……その礼という訳では無いが、借りた恩義は返すのが我々ガイスロギヴァテスのやり方だ」
「またまたー。ツンデレなの?ボクはそういうの嫌いじゃないけど!」

「……ともかく、エーデルワイスは全面的に彼に任せるという事で異論は無いな?」


憂午の一言に全員が応じる。どうやら、他の事は既に終わらせていた様だ
そろそろ宴もたけなわ。誰ともなく部屋から出ていこうとして……


「……そうだ。君に話がある」
「え、俺っすか?ルシフェル……さん」
「ああ。実は……」



【まさかの本日ここまで】

【これだけを書くのにここまで時間を使うとは…orz】


【本日はお休み。明日にはやりたい所】

【避難所で少しサーヴァント作成をやるので、良ければ】


【ちょっとだけやります】

【人はいますか?】





「……バーサーカーが、二人?」
「私がイレギュラーな存在である事は既に承知していたが……まさか、クラスも同じとは」

ルシフェルからの発言は耳を疑うものだった
自身の召喚した英霊、クリスティーナが非正規で喚ばれた英霊である事は何度か聞いていた

とはいえ、まさか狂戦士のクラスが重複するとは。恐らくは相手の方が正規なのだろうが……

「別に、大した奴じゃないわ。狂化の影響を差し引いても弱小の部類よ」
「少なくとも、アタシかアーチャーなら片手で捻り潰せる位ね。敵にもならないわ」
「そうか。……では、その英霊の特徴は」
「確か……」


クリスティーナからの問い掛けに応じたのはルシフェル
記憶の糸を辿るように、つらつらと答えていく


「……こんな具合か」
「うーん。特徴らしき特徴は無いかな」
「錯乱していた、か。それも何かを探す様に」
「え、これでわかるの!?もしかしてバーサーカーって名探偵!?」
「……まさか。わかる訳が無いとも」



「とにかく、アサシンへ攻め入るのは本日の夜だ。各自充分に休息を取る様に!」
「それまでは禍門の家の広間を解放する。ガイスロギヴァテスの面々はそこにいるといい」

「では、これで……む、招福様がいない?」
「私達は見ていないが。問題は無いだろう?」
「まあ、確かにそうだが……何をするつもりなんだ?不安だ……」


不安そうに頭を抱える。けれども直ぐ様気を取り直し、的確に指示を出し始めた
決行は今夜。胸に手を当て、呼吸を整える貴方

「よし……やるか!」










豪奢な部屋の中。一人椅子に座り、本を読む男がいた
名をシュヴァルツ。エーデルワイスの首魁にして聖杯戦争の立役者

「出てこいよ幽霊。オレに用なんだろ?」
「けっ、つれねえなあ。それが数十年来の付き合いである俺に対する態度かぁ?」

ふわり。暗闇から抜け出す様に、小柄な少女が表れる
少女……招福はけらけらと笑いながら、シュヴァルツの読んでいる本を取り上げて

「そぅら、ようく見るんだなあ。お前の大親友のご尊顔だぜ?ひゃっひゃっひゃ」
「何が親友だよ、馬鹿馬鹿しい。くたばったって聞いたのにのうのうと戻ってきやがって」
「こっちの台詞だなあそりゃ。……今まで、何人犠牲にしてきた」
「……フ」

招福からの、直球な質問
おどけた表情は消え、何の感情も映さない機械然とした無機質な問い掛け
……沈黙が流れる。シュヴァルツは口元を歪め、馬鹿にしきった様な顔で笑っていた


「犠牲?オレが彼女と添い遂げる為に必要な行為をそんな酷い言葉で表すのか?」

「……そうかい。なら俺からは何も言えねえな」

再びの沈黙。これ以上の言葉は要らないと態度で語るシュヴァルツに何か思う所があったのか
招福は暗闇に消えていく。


“忘れるなよ。お前らの野望に付き合わされた連中の事をな”
「ハッ、とっとと失せろよ。亡霊が」


落ちた本をゴミ箱に放り投げ、新たな本を棚から引き抜く
そのタイトルは……“星の王子様”








「ハッ、ハッ、ハッ……」
「ヴィオレ……クソ!ヴィオレ……!」

静けさに包まれた町の中。ひた走る青年がいた
愛する者の名を呼び、アテも無くさ迷う。顔には焦りの色がありありと
そこに表れたのは、神父服をまとった一人の男性。諭すような声色で彼に話しかける

「いけないな、少年。街は今厳戒態勢だろう」
「大人しく家に戻りなさい。影に命を盗られてしまう前に」
「ふざけるな……!お前が、お前が……!」

「はて、何の事やら。私は教会に来た迷える子羊に手を差しのべただけ」
「私の行動に一切の曇りがあってはならない。その時が来るまで……」
「何訳のわからない事を……!」



「では、君に進むべき道を示してあげよう」
「愛する者を想う感情は素晴らしい。君ならば試練に立ち向かうに相応しい」
「……は?」

男、ロベルトは青年に一枚の紙を握らせる
怪訝な表情を浮かべる青年に、ロベルトは優しげに目を細め



「そこに君の欲するものがある。どうするかは好きにしたまえ」
「………………」
「では、私はこれで。……此方も、急いでやる事があるものでね」

立ち去るロベルトを呆然と見送る青年……鹿黒
その手を見つめ、そして……







「……ん?電話だ、誰だ?」

時は少し経ち、突然かかってきた電話に面食らう貴方
隣にいたアキラとクリスティーナは明らかに怪しげにジトッとした目で

「先輩。出ないほうがいいと、思いますけど」
「私も同意見だな。明らかに不審だ」
「大丈夫だって。……もしもし?」


『………………』「あのー、もしもし?」




『──お前は、エーデルワイスの人間か』
「は?いや、俺は……」
『一人で外れの倉庫に来い。さもないとお前のマスターの命は無いぞ』
「……!?ちょ、待っ……」

聞く前に、乱暴に通話を切られる
色々な誤解があるが、まず……

「行くのか、マスター」
「ああ。そうじゃないとアーディーが危ない」
「……どうして。私達には、関係無いデス」
「関係無くないだろ。アキラだってクラスメイトじゃないか」

「……でも、先輩だって危ないデス。行く必要性は感じません」

……アキラの言う事は尤もだ
これは、自分のエゴでしかない。行かなくても損失にはならない
けど……それでも、アーディーに迷惑がかかるなら、行かなくてはならないだろう



1:一人で行く
2:クリスティーナと共に行く
3:アキラと共に行く
4:その他
21:30から
↓1





「……おい、来たぞ!」
「アンタは誰なんだ、姿を見せろ!」


指定された場所に到着した貴方
薄暗く澱んだ空気。隠れるにはうってつけの場所だろう
それに怯まず、貴方は声を張り上げる。自らを呼び寄せた者へと

「誰なんだ、俺に何か用があるんだろ!」
「隠れているだけじゃわかんないぞ。出てきてくれ!」
「おーい!本当に訳が……」



貴方の意識の端の端。気にも止めない程の微かな違和感
闇の中から影が伸びる。ゆらりと音を一切立てず、貴方の背後へと
その手には鉄のパイプが握られている。貴方の頭に狙いを定める様に、ゆっくりと振り上げ……


「本当に何なんだ?いったい……」


今、貴方の頭へと───








「させるか!」
「え?……うわっ!?いつの間に!?」
「───っ。な、何でサーヴァントが」

寸前、霊体化を解いたクリスティーナの剣がその腕を捉える
予期していなかった奇襲に加え、相手も英霊が味方にいたとは考えていなかったのだろう
その顔は明らかに狼狽え、怯えている

「ふぅ……サンキュ、バーサーカー」
「だから言っただろうに。私がいなければどうなっていたか」
「バーサーカー……!?お前も!?」
「お前も……という事は、貴様もバーサーカーを召喚したマスターか」

剣を翳すクリスティーナ。相手はへたり込み、尻込みしている
その顔には見覚えがあった。確か、林道副会長の友人の……




「鹿黒先輩じゃないですか!どうして!」 「お前……お前のせいで、ヴィオレが!」
「俺のせいで……?」

「クソ!離せよ!俺は早くエーデルワイスからヴィオレを助けないといけないのに!」
「エーデルワイス……!?」
「……マスター、一度話を聴こう。立て!」

クリスティーナに連行される鹿黒。その眼には憎しみがありありと浮かぶ
……エーデルワイスとヴィオレ。何の関係があるのか。それを聞き出さねばならなくなったのだ

「アーディー……本当に、信じていいんだよな……」





【本日はこれだけ。ありがとうございました】

【暫く書き留めパートが続くので遅れるかも……反応は毎日するつもりですので】


【本日お休み……】


【本日もオヤスミ……】


【本日もお休み……】


【本日もお休み】

【ちょっとこれは幾らなんでもマズいので日曜日に少し進めますね】


【ごめんなさい。明日に回します】

【纏めるのに時間が……ぐぬぬ】


【今日は早めに再開】

【本当に久々ですが、人はいますか……?】





「……どういうつもりだ?ロベルト」
「わざわざあんなガキに入れ知恵なんざして。いったい何を企んでいやがる?」

坂松市に佇む教会の奥。蝋燭のみが灯る薄暗い部屋でシュヴァルツは詰問する

「入れ知恵?とんでもない。私は一人の監督役として、マスターに助言を与えただけの事」
「私の行動がエーデルワイスに不都合となろうとも関係の無い話では?シュヴァルツ様」

「そうかよ。けど忘れるなよ、この町はオレの支配下にあるって事をな」
「貴方の、ですか……」



「では一つ聞きますが……この“天使の聖杯”は、何者が持ち込んだんでしょう?」
「…………ハ」

ロベルトが静かにシュヴァルツに問い掛ける
坂松の聖杯はエーデルワイスの家が持ち込み、この土地を借り聖杯戦争を開始した
しかし、その大元である聖杯はどこから来たのか?それを知る者は誰もいない

当初こそ、禍門もガイスロギヴァテスも疑っていたのだが……


「いったい何があったのですか?本当に、あの聖杯は天使からの……」
「それを知って何になる?お前はお前の職務だけを忠実にこなしていればいい」
「……そうですか」

不機嫌そうに睨み、教会から去っていく
その姿から目を離さずに、ロベルトは深くため息を吐いて




「やはり、あの聖杯は奪い取ってきた……紛い物の聖遺物か……」

「そんな物を……“我が愛する天使”を召集する為の器にするとは……ッ!!!」







「……ヴィオレは、エーデルワイスに囚われているんだ」

ぽつり、鹿黒がそう呟く
かなり激しく動揺していたが、落ち着いたのかゆっくりと口を開いていった

「詳しくは言わないけど……俺とヴィオレは各地を転々としてて」
「ちょっと待ってください。転校する時の手続きとかは……」

貴方の質問には答えない。途端に口をつぐみ、目線を下に

「大方、そのヴィオレとやらが魔獣の類いなのだろう」
「……厳密には違うけど」
「もしかして、バーサーカーのマスターって」


「そうだよ!ヴィオレだったんだ。でも、俺のせいで!」
「人質に捕られ、敢えなく敵の軍門に……か」
「何も出来なかった……あのガキ、化け物みたいに強くて、殺されかけて……」

涙を堪える様に、ぐっと目をつぶる
すすり泣く声だけが響く。その悲痛さに貴方は鹿黒の肩にそっと手を

「……わかりました、大丈夫です」
「ヴィオレちゃんは……俺達が助けます!」
「マスター、またそんな安請け合いを……」
「どの道アーディーとはまた話したいと思ってたしさ。丁度いいだろ?」

ニッとはにかむ貴方に、クリスティーナはまたいつものか。と顔をしかめる

「……それに、もう二度と離れ離れになんかさせない。絶対に」
「大切な存在と会えなくなる辛さは……俺だってわかるはずだから」

しかし、すぐに表情は曇る。過去の別離に胸を痛めた貴方の目には涙も浮かんでいた



「大袈裟な……」








「……お前、本当にお人好しなんだな」
「あいつも言ってたよ。“俺達が卒業しても、庶務になら任せられる”ってさ」
「副会長が?」

「名前は忘れたけど、あんたのクラスメイトの女子や下級生の子もだよ。いつも褒めてる」
「林道の人を見る目は死んでるけどさ。あんたは悪くない奴だと思うよ、俺は」

ぶっきらぼうに呟く鹿黒。その顔は少しだけ晴れやかに

「……助けないと、許さないからな」
「はい!」



「それはいいのだが。その前に其方のバーサーカーの情報を渡して貰いたい」
「エーデルワイスの手に堕ちたのならば、敵対する可能性も高い。無論、負ける気は無いが」
「別に、倒してしまっても構わないだろう?」

自信満々に宣言する。クリスティーナはさも当然と言いたそうに視線を此方に

「……わかったよ」

観念したのか、鹿黒はため息を吐いて考え込む
自分は既に聖杯戦争では勝ち残れない。だが、ヴィオレを失う方が何倍も苦痛なのだから



【隠してる場合じゃない】+2
123:特に思い付かず
456:それなり
789:「そう言えば……」
↓1




9:「そう言えば……」



「……真名は知らない。狂化で理性とか無かったし」
「ステータスはそれなりに高いけど、元々戦闘に向いた奴じゃないんだろ」

「ああ、バーサーカーは理性を失うクラスって聞いてたけど」
「その『本当だったんだ』という顔はどういう意味だマスター」

狂戦士の定義について納得する。それをお構い無しに、鹿黒は話を進めていく

「まあいい……そのバーサーカーの戦闘手段は」
「剣だよ。ただぶん回すだけで、大して精密さとかは無い」
「そう言えば、狂化は理性だけじゃなくて技術も奪うって……」
「だからその『嘘じゃなかったんだ』という顔は何なんだ?」

クリスティーナの怪訝そうな顔を受け流し、貴方は感心する
どうやら、鹿黒……もといヴィオレのバーサーカーは正統派に近い英霊の様だ


「けど、決定打にはならないか……」
「せめて後もう一押し。何かあれば……」



「……ああ、そうだ。これなんだけど」






「うわっ!?……何ですかこれ」
「知らない。あのバーサーカーが後生大事に抱えてた人形だよ」


手渡されたのは精巧な人形。豪華なドレスで着飾った、女の子の人形だ

足、手、頬、髪。どれを取っても本物の人間の少女の様な質感を持っていて、どこか不気味だ

しかし、完全無欠な様に見えても所詮は人形

その目だけは、どう見ても作り物にしか見えなかった


「……これは」
「それ、『フラン、フラン』って言っててうるさいから取り上げたんだよ」
「ヴィオレも守らないし……壊そうかと思ってたけど、なんか大切そうだから気が引けて」

「フラン……」
「んー……心当たりは無いな」

フラン。と名の付いた人形を大事そうに抱えるバーサーカー
貴方はその真名に気づかない。フランという人形は、そのバーサーカーにとっては大事なのだろうか?


「バーサーカー?どうかした?」
「……いや、まさか。……な」



『老バーサーカーのステータスを開示します』

┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
  ≪クラス≫:バーサーカー
┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┓
  【真名】:?                 【属性】:秩序・狂
┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┓
  【筋】:D(20)     【耐】:D(20)    【敏】:A(50)      【魔】:E(10)     【運】:D(20)   【宝具】:A
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫






……時は少し遡り、アーディーの家
何やら剣呑な雰囲気のセイバーに、怯えるアーディー。そして目の前には微笑むシュヴァルツ


「と、言う訳で。セイバーにはアサシンの加勢をして貰いたいんだ」
「正気か……!?奴等は死徒と呼ばれる怪物なんだぞ!」

シュヴァルツの常軌を逸した発言に、さしものセイバーも声を荒く反駁する

「アサシンも危険な存在だ。今は微弱だが、いつ人々を襲うかもわからない」
「今は彼等に助力し、アサシンを打倒すべきであると僕は……」

「あのさあ。何であいつらに討伐令が出ていないかわからないのか?」
「……それは」

……討伐令。聖杯戦争の規律を大きく乱しかねない存在に対して、監督役が施行する一種の指令
アサシンの行動は紛れもなくそれに抵触する。それなのに、何故その気配を見せないのか……


「別に出す程の事じゃないからなんだよ。監督役……エーデルワイスにとっては」

「でも!ロベルトさんは既にエーデルワイスとの関係を断っているはずじゃ!」

「そうだよ。けどそれとこれとは話が違う。奴の思惑が何かは知らないが……」
「あいつが本当に信頼出来る監督役かどうか、今一度良く考えてみる事だな」







「……………………」

シュヴァルツの話に二人とも言葉を失う
監督役であるロベルトは聖杯戦争の裏で何かを企んでいるのか
その疑念が強く渦巻く。坂松の街で、何かが蠢いているのだろうか


「だからこそ、これはチャンスなんだ」

「ランサー、アーチャー、キャスター、そして番外のバーサーカー」

「そしてアサシン……一気にサーヴァントを仕留める絶好の機会だろ?」

「……バーサーカーを使え。上手く動かせば、奴等を全滅させる事も出来る英霊だ」
「あのバーサーカーが……?」


「きゅぅう……」
「フラン、つまらない。フラン、遊びたい?」
「きゅう!きゅ!」

視線を向ける。バーサーカーはヴィオレを抱き上げ高い高いを

「さあ、アーディー。どうするんだ?聖杯を手にするまたとない機会だ」
「天上の天使を失望させたいのか、それとも使命に殉ずるか。選ぶのはお前自身に委ねよう」

「天、使……」


口の中で呟く単語。その言葉に何を思ったのか
セイバーの焦燥は他所に、アーディーはその口を開く。答えは……



【断れない】+3
1234:拒否
56789:承諾



【実は安価逆だったんですが後出しになっちゃうので今回はそのまま】

4:拒否



シュヴァルツからの問いに、アーディーの目は光を失う
当主からの命令は絶対だ。断るなんて出来る訳がない。……断れない

はい。と頷きかける。目の前の絶望に挫けかける。ふと過るのは、誰かの声

“それは当主に言われたからであって、自分の意思とは違うだろ!?”

「……そう、だよね。センパイ」
「マスター?まさか、本当に……」

それは誰の声だったのか。その真意は何だったのか。……今ならわかる

だったら、ここで挫けたら、その人に会う顔が無くなってしまう。だから……!

「……ま、せん」
「は?今なんつった?」
「出来ません!私の夢は好きな人と結ばれる事ですから!」

シュヴァルツの目は淀んでいく。目の前の少女の言葉を否定するかの様に

「……違うだろ?お前の使命はエーデルワイスと天使を結ばせる事だよ」

対するアーディーの目は光って輝く。一族の歴史を照らすかの様に

「違う!それは誰のものでもない。貴方だけの夢、願いだ!貴方が、一族全ての願いをねじ曲げたんだ!」
「もう止めて下さい!聖杯なんてモノがあるから皆がおかしくなるんだ。一人の願いよりも、街や誰かを傷付けるなんて間違ってる!」


「だから、私はアサシンを倒します。この街に住む人達を傷付けたくない!」
「……!この、失敗作が……!」



【サーヴァントがいる】+2
123:殺害を試みる
456:ヴィオレを拐って四陣営の妨害に
789:↑当主自ら手を下す
↓1


9:当主自ら戦線に



「だったら……貴様はもう用済みだ」
「一族の恥。一族の異端よ……ここでお別れだ」

冷酷に、そう宣言する。シュヴァルツの身体からは莫大な魔力が

「っ、セイバー!」
「わかっている……!幾ら怪物とはいえ、我等は英霊!現世の存在に遅れは取らない!」

アーディーの指示で、剣を構える
シュヴァルツの力がどれ程であれど、最優とも称されるセイバーが圧倒される事はない

「フ、私の狙いは貴様ではない!」
「……まさかっ!?セイバー、ヴィオレを!」
「きゅいっ!?」

魔力が開く。閃光が目を焼き、アーディーの視界を一瞬だけ奪い取る

シュヴァルツはその隙を見逃さない。動きが停止したそのタイミング。ヴィオレを掴み、外へと飛び出した

残された老バーサーカーは首をかしげ……そのまま霊体化する。魔力の供給を切られたのだろう


「……大丈夫か。マスター!」
「私は平気。でも……ヴィオレが……」

シュヴァルツは言っていた。アサシンへ向かう陣営を纏めて倒すと
バーサーカーの詳細は未だ不明だが、利用する可能性は極めて高い……


「……セイバー!行こう!」
「マスター。体は大丈夫なのか?禍門からの呪いはまだ解けていないだろう」

「平気。じゃないけど……でも、力の無い人だって戦ってるんだ」
「こんな所でへこたれてられない!行こう!」
「わかった。……追うぞ!」

船を出す。小型の帆船は、機動力に優れたもの
これならばシュヴァルツに追い付ける……アーディーとセイバーは船に乗り、空へとかけ上がっていった



【本日はここまで。ありがとうございました……】



【本日はお休み……体調を崩してました。報告が遅れてすみません】

【現在どう進行すべきか考え中。着地点は決めてますが、どう到達させるか悩みどころ】

【最低でも土曜日には再開させるので、ご安心を……】


【重要なシーンに遅筆が合わさりとんでもない遅さに……】

【描写だけですが、再開します】





「……さて、四陣営とも準備はいいなぁ?」
「そんじゃまあ、今宵は楽しい楽しい死徒退治と行こうぜえ。お前さん達」

夜が更ける。時計の短針は既に十二を過ぎ、一に差し掛かる頃
禍門の当主、招福はけらけら笑う。無邪気に、今からハイキングにでも行くかの様に

「待て、何故貴様が仕切っている?」
「いいじゃあねえかドミトリイ。年上は敬うもんだろぉ?」
「坊やはオトナの言う事をしっかりと聞くべきだぜ。ひっひひひひひ!」

「…………………………」
「抑えてください。気持ちはわかりますが……」

「……本当にすまないね。何から何まで」
「別にいいのよ。その分働いて貰っているし」
「“吸血鬼なら労災適用されないわね”とか何とか言って無茶苦茶仕事させてたもんねー……」

「先……輩」
「ん?アキラ、大丈夫か?」
「はい。……けど、私より、も」

「俺は平気。アサシンのせいで哀しむ人が大勢いるなら、何とかしないと」
「アサシンにやられたメリッサの分まで、俺が思いっきりぶん殴ってやるさ」
「メリッサさん。そんな人、なんデス?」


「……まあ、やりそうではあるな」
「えぇ……」


束の間の談笑に、それぞれ花を咲かせる
この場にいる今だけの味方だが、思惑は皆同じ
アサシン陣営を倒す。一時凌ぎの同盟だからこそせめての団欒を……



「……オイ!マスター、敵襲だぜ!」
「アーチャー。それは」

「よくわかんねえ!光の塊みてーなのだ!」







「……っ、眩しっ!」
「これは……エーデルワイスの……!」

ルシフェルが言葉をこぼす。連られた全員も空を見上げる

まるで昼と夜とが逆転したかの様な目映さに、全員の思考が停止する
降り立つ姿は神々しく。溢れ、流れ出る魔力は清廉さすら感じさせる

宵の闇の中ですら輝くその者の名は……


「おう。どうしたシュヴァルツ。今晩は夜遅くに俺の顔でも見に来たか?」
「シュヴァルツ……ってあの子供が!?」

「まさか、ここまでとは……!アキラ!下がっていろ!」
「け、けど。お父さんはサーヴァントが」
「だとしてもだ!管理者として、魔術師として奴を野放図にしておけるものか!」


光の主、シュヴァルツ。煌々と輝き下に集う者達を睥睨する
そこにいるだけで胸が苦しくなる圧迫感。空を見上げるだけで頭が揺さぶられる

瞬間、膨大な魔力が地上を覆う。響き渡る爆音と衝撃
禍門及びガイスロギヴァテス、そして二陣営のマスターが吹き飛んだ





「ぐぁ……っ!」
「何という……無事か!マスター!」
「な、なんとか……」

「これは単なる魔術ではない……!奴め、魔法の域に片足を突っ込んでいると言うのか!」


「……いいえ。違います、ドミトリイ様」
「あれは“天使”。降霊術の大家、“シュヴァルツ家”の秘技にして禁忌」
「同門の魔術師を殺し尽くし得た、非道極まりない外道に堕ちた怪物……!」

呟き、天に聳える光を睨むルシフェル
その言葉からは憎悪の色が漏れ、聞いているドミトリイ当人すら震える程に冷たい

あれこそが、エーデルワイスの……ひいては、今回の聖杯戦争での最も危険な存在である……


「……天使」



 ◆天使化術式:高貴なる白   
  エーデルヴァイス。魂と魔力だけで構成されたエネルギー生命体へと化身する大魔術。    簡単に言うと天使化。世界の裏側や異界での活動を可能とし、人間世界とは異なる法則の中に生きている。   
  莫大な魔力は白く輝き、保有する神秘が下等な生物からの干渉を阻害する。








「……成る程。あれが、相当なバケモノである事はわかった」
「しかし、逆に君は何者なのだ?何故、エーデルワイスの魔術を、君が」

「それは……」
「うぅうあぁああああああ!!!」
「げ、バーサーカー!……ジジイの方!」

マリアの質問に答えたのは、ルシフェルではなく闖入者……バーサーカー
その眼は爛々とした光を湛えている様にも、澱んだ闇を抱えている風にも映る歪なモノ

恐らくは狂化による影響だろうが、それにしては様子がおかしい
まるで強引に動かされている様に、その動きは激しいがどこか硬い。さながら壊れかけの機械を無理やり動かしている様な……


「恐らくは、魔力の暴走だろう。強制的に流し込まれた影響で狂化のランクが上昇したんだ」
「待ってくれ。あのバーサーカーのマスターはシュヴァルツじゃないんだ。ヴィオレっていう動物で……」
「そうなの?ボクにはバーサーカーがあのピカピカに従っている様に見えるけど」


キャスターの言う通り、バーサーカーは暴れてはいるものの無差別に攻撃はしていない
命令を待っているのか空を見上げる素振りを見せたり、時折停止したり……

「じゃあ、まさかヴィオレはあいつに……」
「いや。流石にエーデルワイス当主とは言え、英霊相手では分が悪いはず」
「少なくとも殺してはいないだろう。とはいえ主導権は奴が握っている様だが……」




「で、どうすんだよ!コイツぶっ倒してアサシンをシメに行けばいいのか!?」






「……それは」

アーチャーの発言に、場は固まる
どうも、シュヴァルツは此方側を通すつもりは無いらしい。バーサーカーを使って足止めする算段なのだろう
何故そんな事をするのかは不明だが……

「い、嫌がらせ。とか……アサシンと、組んでいるとか」
「何にせよ、連中が何かを企んでいる事には間違い無さそうだ」

「ここで全員総出でフルボッコにして、明日の夜にアサシンを倒しにいけばいいじゃない」
「難しいな。拠点の位置はみとりが魔力反応から割り出せるとしても、宝具の影響が町にまで広がると手遅れだ」

「是が非でもこいつを押し倒さないといけない訳だね……あ、別に変な意味は無いよ?」
「戦力を割くとアサシン討伐の成功に関わってくる。どうする……?」


今、シュヴァルツとの戦闘は避けたい。しかし倒さねば、通る事すらままならない
場面は完全に掌握されている。時間の経過だけでも此方は不利になっていく……



「……私に、任せてほしい」
「えっ?バーサーカー、どうするつもりだ?」


「私があのバーサーカーと戦う。その間にここを離れ、アサシンを倒して欲しい」








「……はぁ?頭どうかしてんじゃないの?」
「確かに、バーサーカーのステータスならキミでもなんとかなりそうだけと……」
「あの天使はどうすんだよ!まさか、二人ともテメーが倒すとか言わねえよなぁ!?」

三騎の英霊は、口々に疑問を呈する。確かに、バーサーカー単独ならばクリスティーナ一人で相手取れる
しかし、シュヴァルツ……天使もとなると話は別だ。彼女一人で二人を相手にする事も、ましてマスターを守る事も不可能だろう

「だが、それ以外に方法があると言うのか!」
「ここで二の足を踏み続ける事こそが、最も愚かな行為であろうが!」

「でもマスター君の方は?彼、何の備えも無い一般人だよね」
「……令呪を使うよ。それなら俺も少しだけ支援が出来るから」

「け、けど、先輩、もう二画しか無い……デス」
「その二画をここで使い切るのか?我々の為と言えば聞こえはいいが……」
「聖杯戦争で、君の持つアドバンテージをここで捨てられるのか?どうなんだ?」
「それは……」


確かに、令呪は何も出来ない貴方にとっては唯一と言える武器である
それを捨てるという事は、即ちクリスティーナを御す事はおろか聖杯戦争を諦めると宣言するに等しい行為




「……なら、誰か一人残ればいいんじゃない?」
「こっちで二人、あっちに二人。丁度割り切れて気持ちいいじゃない」
「あぁ?だったらランサー、テメエが残れや」

呆れるように、アーチャーはランサーの意見を笑って切り捨てる
だが、当のランサーは怒る様子もなく。寧ろ楽しそうに笑いながら胸を張って

「モッチロン!そのつもりよ!」
「ランサー、俺を無視して勝手な事を……」
「何よ。駄目なの?」

「そうだ。……とは言っていない。……構わないな?ルシフェル」
「はッ!」






「……ガイスロギヴァテス」
「何だ、禍門。時間が惜しいんだろう?」
「俺は貴様らを信用していない。しかし……」

「今だけは、封印しよう。……その子を頼む」
「先、輩。その……私、少しだけ遠くに行っちゃうけど、でも……」
「……ゆびきり、デス。絶対に、生きてくれるって、約束、してください」
「わかった。……そっちこそ。絶対に戻ってきてくれよ」

憂午はドミトリイに頭を下げ、アキラは貴方と小指を絡ませる
禍門の呪術は言葉による。言葉で縛り、蝕む毒こそが禍門の魔術

敢えて言葉以外での行動を取ったその意味は、彼等にとっての誠実の現れ
言葉を手短に。キャスター達と共にアーチャーの背に乗り飛んでいった


「さて、ブチのめすわよ。準備いい?」
「……何故だ。何故私の」
「加勢じゃないわよ。……取り逃がしってのは、気分が悪いからねッ!」

「あんた達……信じるからな」
「勝手にしろ、俺はお前の様な子供は嫌いだ」
「このルシフェル……ガイスロギヴァテスの名において!エーデルワイスを殲滅する!」

見据えるはシュヴァルツ、老バーサーカー
対峙するはガイスロギヴァテスと、ランサー。そして……クリスティーナと貴方

此処に、臨時のタッグ……双方の思惑が交錯する因縁の勝負の幕が上がった



【本日ここまで】

【次回アサシン側の描写と戦闘前を少し】


【本日お休み】

【戦闘パート前後はいつも遅くなってすまない……】


【取り急ぎ、書けた分だけ……】

【本日も安価は無いです】






「……俺は、人を幾つも殺してきた」
「そうね。知っているわ」

坂松市の廃工場の奥。心臓喰らいはアサシンにゆっくりと語りかけている

「生きる為じゃない。復讐の為に、何人も……」
「仕方が無い事なんでしょう?何故、そんなに悲しそうな顔をするのかしら」

アサシンは適度に相づちを打ちながら、彼へと質問を投げ掛ける
途端に、意外そうに顔を歪ませる。彼女の言葉はどうやら無意識だった様だ


「……奴等の魔術回路、あれさえあれば、復讐が叶うかもしれない」
「それを奪う方法を俺は知らない。だから……」

「なら、罪悪感が沸くのはどうして?マスターは怪物じゃない」
「違う!俺は怪物なんかじゃ……!」


言いかけて、その口を閉ざす。遥か上空から、何かが落ちてくる
認識した瞬間地が爆ぜる。土煙の舞う中、そこにいたのは青銅の巨人



「そら、着いたぜ……怪物退治のデリバリー。とでも言っといてやろうか?」








「おま、え達……!」
「ついこの間ぶりだな、心臓喰らい」

「今日が晴れて貴様の命日だ。全霊を以て抹殺してやるからそのつもりでいろ」
「全霊って……ボク、ここで死ぬの確定?」
「まあそうだな。これ以上必要ないし」「そんなご無体なぁあああ!!」

「お父さん。私……」
「よく見ていろ、そして覚悟しろ。ここが我等の正念場の一つだと!」
「どんな事情かは知らねえけどよお!人様のシマ荒らしたツケはガッチリ支払えやオラァ!」


アーチャーとキャスター。二つの英霊が、自らを殺さんと眼前に聳え立っていた


「何故だ……!何故、俺の邪魔をする……!」
「俺は……ただ、力が欲しいだけだ。奴等を殺すに足る程の力が……!」
「確かに殺しはした。だが俺は決して罪の無い人間を殺してはいない……!」

「……魔術師に人権は存在しないのか?」
「ボクに聴かれても……けど、そいつの言ってる事が嘘だって言うのはわかるよ」
「そうじゃなかったとしても……いずれ、見境が無くなる。そいつはそういう目をしてる」


毅然とそう告げられた。納得等出来る訳が無い
大体、何故そんな事をハッキリと断言出来る。今しがた会ったばかりの、英霊ごときに……




「だって、そいつ……笑ってるもん」
「ボク達をどう残忍に殺してやろうか。そんな眼をしたヤツは幾つも見てきてるんだ!」






「……笑っている?俺が?」

──“マスターは、怪物じゃない”

「違う!違う、違、違が違違違血が血が血が血がぁあああァア!!」
「“アサシィイイン!殺せ!殺せ!奴等の心臓を俺に寄越せぇえああああ!!!”」

「……もっと早くに受け入れれば良かったのに。仕方のない子ね」
「けど、私は貴方の先輩だから。許してあげるわ。あまりに可哀想だもの」


「令呪を使ったか……!連中も、ここで引く気は無いらしいな!」
「それは有り難い。……キャスター、此方も令呪を切る。いいな?」
「拒否権無いんでしょ?好きにしちゃって!」

「よし。“汝がマスター、マリアが命ず──”」
「“あのアサシンをぶっ飛ばせ!”」


双方に魔力が迸る。赤色の閃光、互いに令呪を行使した証
迫り来るは死の化身。黒色の鎌を振り上げ、命を刈り取らんと疾風となって襲い来る

対するはキャスター。夜の星々に照らされて、ここに第二の戦闘が勃発するのだった







「……おい!聞こえているんだろ!」
「ヴィオレは何処だ!お前が拐ったんだろ!」

空へと叫び問い掛ける。本来のマスターは何処にいるのかと
しかし、問いへの答えは無く。代わりのつもりなのだろうか。光の塊が降り注ぐ

その中の一つが、貴方に直撃する……寸前。腕に巻き付いたワイヤーが後ろへと引っ張った

「うおっ……!……っとと!」
「どうやら口すら聞きたくないと見える。……俺達も舐められたものだ」
「此方のマスターは我々が保護する!其方は気にせず戦ってくれ!」



「……どうして、ですか」
「どうして貴方が!よりにもよって、狂戦士のクラスで喚ばれているのですか!」
「私は、貴方程に狂気から遠い人間を知り得ない!私に知恵を説いてくれたのは貴方でしょう!」

対峙する二人のバーサーカー。クリスティーナと錯乱する老人
クリスティーナにしては信じられないくらい、その声は震えて強ばっている


「う、うぅ?フラン?フラン、違う?」
「……何よ。もしかして、この爺知り合い?」

「想定していなかった訳ではない。私というイレギュラーが召喚されるには……」
「何かしらの、強い縁がこの世界に必要だろうとは考えていた」

「だが!───っ!」




「フラン、近い?フラン、近い!フラン!フランフランフラン!!!」

「フラーーーーーーーーン!!!!!」








絶叫が響く。それは、遠くにいたマスター達の耳にすら届くほどに


「……なんだ?今の声は」
「戦っている様には見えません。ですが、何か嫌な予感が……」
「うおっ!?な、何だ!?」

突然、貴方の身体がバーサーカー達の元へと引きずられる
鉄に反応した磁石の様に強力な引力。当然、為す術の無い貴方に抵抗は敵わず……

「貴様!何をふざけている!?」
「いや身体が……じゃない、これは、あの人形が引っ張ってるのか!」
「訳のわからない事を……!く、これは俺も巻き込まれる……!」

腕に巻かれたワイヤーが軋む。尋常でない力が二人へと襲う
ドミトリイまで貴方と共に引っ張られる。このままでは二人とも……

「……ルシフェル!この場は任せる!」
「はッ!」

「ちょっ、大丈夫なのか!?」
「ルシフェルまで巻き込めるか!恐らく、奴の宝具は……!」


ドミトリイの言葉が途切れる。話せなくなったのでは無く、世界から切り離されて





「フラーーーーーーーーン!!!!」









……ガチガチと、歯車が噛み合う音がする
どうやら引き寄せる力は止んだらしい。冷たいリノリウムの床で目を覚ました

「う、ここは……?」

見回す先には歯車の列。それだけではなく数式やグラフ……科学的なものばかりが

「何だ。また別の世界か……?」
「──“固有結界”。魔術の極致の一つだ」
「魔術師でも辿り着く者は極少数だが……英霊の中には、宝具として持つのもいるという」
「宝具として……?」


言葉に反応するかの様に、世界が切り替わる
そこに立っているのは、三騎の英霊。ランサーと二人のバーサーカー

恐らくはあの老人の宝具なのだろう。この空間の真ん中で、高らかに天を見上げている


「……あれ、あの人形がない」
「人形だと?それが何だと言うんだ」
「いや、あのバーサーカーの持ち物でさ。“フラン”って名前の人形なんだけど」

「フラン?フラン、フラン……フランシ……フランシーヌ……」
「……不味い。急ぐぞ!」「え、何でだよ!」




「この世界は極めて危険だ!ランサーと貴様のバーサーカー、二人纏めて消滅させられる可能性が高い!」
「あの人形が“フランシーヌ人形”だとすれば、奴の真名は恐らく……!」







「が、アァッ、アァアアアアアア!!!」
「何よ、これ……っ!身体が、盗られる……アタシがアタシで無くなってく……!」

ブチブチと不快な音を立て、ランサーの身体は千切れていく
ランサーの身体は鉛の粘土。それが削り取られていけば、人形を保つ事すらままならない

まるで、ハサミで切り取っていくかの様に奪われた肉体は一ヶ所に集中する
別の生命を構築するかの様に蠢き、形を作っていく。その中核にあるのは、貴方が預かっていた人形だ



「……フラン。フランシーヌ。貴方の愛娘の名前だと、聞いた事がありますわ」
「早逝した子供と重ねる様に、精巧な人形を常に持っていたと。貴方が亡き後に知りました」
「……その人形は、私が呼び寄せた際の船で棄てられたんですってね」

「フラン!産まれる!フラン!帰ってくる!」
「フラン殺された!フラン棄てられた!フラン女王のせいでいなくなった!」
「フラン!フラン!フラン!フラン!」

届いていない。クリスティーナの声すら、今の老人には響いてはいない
呻くランサーの横で、女王は剣を執る。それに反応するかの様に鉛の人形……フランシーヌは女の形へ


「……お父、様。フラン、ここに」
「  フ ラ ン ! ! !  」

「フラン、敵を殺します。お父様、ずっと一緒にいる為に」
「……いいだろう。ここで、現世の師匠の醜態を終わらせてやろう」
「来るがいい、フランシーヌ!そして、敬愛する我が師匠……」





「─────ルネ・デカルト!」




【本日はここまで。次回は戦闘を少し】


【本日はお休み……】


【遅くなってしまった。本日もお休み……】


【本日も……お休み……】

【他のスレを見ると自分のペースでスレを三周くらい出来そうだなーと。次回はもうちょい軽めにやってみます】


【そうは言っても、休んでいたり別の事してる方が多いので】

【実は胸を張れる事では無かったり。元々が遅筆なのが悪いのじゃ……】

【取り急ぎ書けた所だけ更新します】






 ◆『渦動する廻転調和(マーシャル・ギア・マイソロジー)』
  ランク:A- 種別:固有結界 レンジ:1?99 最大捕捉:1000人

 心象風景の具現化。バーサーカーの理論の礎たる機械論的世界観を展開する固有結界。
  
 本来はバーサーカーの思考観察能力を大幅に上昇させ、神秘の解体・再定義を行う空間なのだが
 狂化によって心象風景が影響を受け、その性質を異にしている。

 この世界において、神秘とは理由抜きにただ貶められて否定されるだけのものであり
 全ての理論は、自動人形の肯定材料としてのみ存在を許される。

 世界は一定の物理法則によって動き、人もまた物理現象の連続によって形作られる。

 ならば彼女は、本物足り得る。




「ぐ、クソぉ……身体、動かな……!」
「ランサー!」

戦線から離れ、倒れ伏すランサーの元に駆け寄る二人
ランサーはまるで強引に身体を引きちぎられた様に欠損し、まともに戦える状況ではないのは明白だ

「……大丈夫なのか、ランサー」
「自分よりも、アタシの心配するの……」
「そりゃ、その身体を見ればそうするだろ。誰だって」

「これでは、令呪を使ったとしても戦線復帰は不可能だ。俺もこの場では役に立たん」
「どうやらこの空間の本質は神秘の否定……俺達の力は削り取られ、奴に吸収されるらしい」
「だとすると、最も適しているのはお前だ。何の力もないお前ならば影響も何も無いだろう」



「……行け。ここはお前のバーサーカーに勝って貰わないと困るからな」
「わかった。そっちも気をつけて!」
「当然だ」


「サイアク。本当はここらで、アタシの強さを見せつけたかったんだけどなぁ」
「ていうか、アンタも結構ヤバイんでしょ。魔術師なんて神秘を身体に埋め込んでる様なモンじゃない」
「……黙っていろ」








……我思う。故に、我あり。


思索の迷宮に囚われ、惑った時、異国より来訪した哲学者はそう語った
その言葉はある種の革命であった。漫然とした光の様で、しかして核心を突く様に照らし出す

思考の限界を超えたブレイクスルー。敬愛する師との日々があったからこそ今の私は存在する


「なのに……!その貴方が狂気に堕ちてどうすると言うのですか!」
「……?フラン、誰?フラン、違う。フラン、興味ない。フラン、殺す!」

クリスティーナの決死の言葉すら、狂戦士には届かない
それでも手に持つ剣は決して緩めず。目の前で殺しにかかる師の愛娘と切り結ぶ


「お父様……お父様、私はお父様を肯定します。何も間違ってはいないのです」
「ええ。そう!お父様はただ私に会いたかっただけ!それを貴女が否定出来るのかしら!?」

先程の拙い口調から、流暢に語り始める
その語り口はランサーのものに近付いている。取り込んだ肉体に影響されているのだろう

「クリスティーナ。お父様は貴女の頼みで故郷からスウェーデンまで渡航した」
「そしてその後間もなく亡くなった……その理由を知っているかしら?」


フランシーヌからの問いに、クリスティーナは顔をしかめる
デカルトと彼女の仲だ。当然知っていてもおかしくはない。が……


「……それは」
「“病弱なお父様を無理矢理講義に立たせ、その過労の末に身体を壊したから”」
「貴女が殺したも同然じゃない!アハハハハハハハハ!」







「…………ッ」

「過去の貴女があるのはお父様のお陰。なら、お父様の為に貴女が死ぬのは当然でしょう?」

フランシーヌの言葉は、容赦の欠片なくクリスティーナを切り刻む
例え、敵対者が誰であれ彼女の心がブレる事は無いはずだ。けれども……


「安心しなさい……貴女の代わりに聖杯を取ってあげる。お父様こそが聖杯に相応しい」
「その為に……ここで死ね!バロックの女王!」
「くっ……!」


ほんの一瞬、隙が産まれる。それは言葉によるものか、この空間によるものかはわからない
だがクリスティーナの剣が鈍ったのは事実で。その瞬間を嘲笑うかの様に、フランシーヌの剣が首へと伸びる──



「“令呪を以て命ず!避けろバーサーカー!”」

その刹那、赤い魔力の閃光が乱入する
クリスティーナの姿は光の中に消え、剣は目標を失い宙を切る

一方、剣を逃れたクリスティーナは貴方の元へと馳せ参じる
多少の傷を負ってはいるものの、大きな問題は無い様だ


「ごめん、独断で令呪を……」
「気にするな。それが最善手であるなら、私は拒否しない」






返事もそこそこに、二人はフランシーヌの方を確認する
向こうも気づいたのだろう。その歩みは遅いながらも確実にこっちへと近付いている

「なあ、少し戦闘を見てて思ったんだけど」
「相手の剣筋とクリスティーナの剣筋って、かなり似てる気がする……」

「当然と言えば当然だな。私の剣は師のものを学んで組み上げたもの」
「原点が同じなのだから、その娘の模倣ならば似てておかしくは無い」


懐かしそうに、背後の師の姿……デカルトを確認する
その目に映るのは彼の過去の姿か。彼女の願いに答え、教育を施した偉大なる哲学者

それが今や狂人に堕ちた。その責任が自らにあると言うのなら──



「宝具を開帳する。そして見せつけてやろう、貴方のお陰で歩き出せた、私の生きざまを!」
「ああ!やってやれ、クリスティーナ!」

貴方の声援を受けて立つ。誇らしげに微笑み、自らの歩みを肯定するかの様に



「……師よ。貴方の教えに照らされ、歩んだ我が生きざまをご覧あれ」

「心の歩みを知れ!師に開かれた道の果てを、私が此処に示してみせる!」

「その為に──っ、我が父からの威光を捨て!師の妄執を解き放つ!私が私である為に!」
「これが私の生きた道!私の生きざま、見せてやろう!」

「“我思う、故に……私は、ありのままに
 (バロッケンズ・ドロットニング)”──!」



「……フ、ラン……?いや、私は……」
「私は、何故……何故、な、な、な……」
「………………………………フラァアアアン!!!」


両者の剣が激突する。空に浮かぶ歯車はまだ、回り始めたばかりなのだから



【本日ここまで】

【次回はこっちを決着させるか、アサシン側やルシフェル側を描写するか】


【本日はお休み】

【お知らせだけでレス消費するのは流石にアウトなので】

【返信はまばらになるかもしれません】


【本日もお休み】

【ですが、避難所にも書きましたが金曜日には何かしら更新したいと思います】


【本日もお休み……】

【遅くなっても、明日には絶体に書き上げた分はやります】


【ちょっとだけ。再開……】



【ちょっとだけ。再開……】






二つの戦闘が行われている中、ここでも一つの戦闘が起こる
いや……これはもう戦いですら無い。ルシフェルは一方的に蹂躙されるだけ

「不純物を取り除き、純粋な魔力を抽出する。そうして得た無色の魔力を放っている……」
「……これが、エーデルワイスの魔術!」

手に振るう斧で魔力を弾き返す。が、それは天に座すシュヴァルツには届かない
桁も次元もまるで違う相手。それは風車に木の棒で挑むが如き徒労は精神も削り取っていく


「何も話さない。か……貴様にとって、我々は塵芥にすら劣る存在なのだろう」
「だから……だからこそ、私は、貴様らエーデルワイスを許さない!許してなるものか……ッ!」

ズタズタの姿になりながらも、斧を握りしめる手は強く、瞳は燃える
それでもシュヴァルツの光は尚も強く。天使の如く輝く羽が、ルシフェルに殺到する

「……言葉すら無いか。貴様にとっては、我々も犠牲の一つでしかないんだろう」
「その果てに手に入れる愛に、どれだけの価値があると言うんだ──!!」



その問いに答えは無い。あまりにも圧倒的な力の差にひれ伏す間も無く突き刺した






「………………無様、だなぁ」
「あれだけ、啖呵を切ったのに……ドミトリイ様に、申し訳無い……」
「メリッサも……ごめ、ん……」

意識も朦朧としながらも、辛うじて命だけは手放さずにすんだのは幸運か
しかし、今も戦っているであろう二人の仲間に対する、自分の不甲斐なさ

異物である自らの血を、受け入れてくれたガイスロギヴァテスへの無念が燻る
何も出来ずに蹂躙される。その弱さが憎らしい

「く、う、ぅ……!」

歯噛みするルシフェルを余所に、シュヴァルツは光を束に、編んでいく
槍の様に纏められた光は、ルシフェルに狙いを定め矛先を向ける。その引導を渡さんと切先は煌めき



「させるかーーーっ!!!」
「なっ……!?」



突如、帆船の強烈なラムアタックが激突する

さしもの翔んでいたシュヴァルツもこの勢いには耐えきれず、たまらずその身を地に落とす

ルシフェルには見覚えがあった。その帆船の持ち主である英霊は、かつて自分が殺そうとしたエーデルワイスの……



「良かった。まだ死んでない……!セイバー、後はお願い!」

「わかった。ここは僕に任せてくれ!」








「……何故、だ」
「私は、貴様らを許さない……例え、命を救われたとしてもだ!」

「なのに、何故私を助けた……エーデルワイスの小娘!」

怒気を含んだ声で、目の前の少女に問いかける
自分が殺したい程憎んだ相手に命を救われる。身を焼く屈辱に苛まれる

けれども、少女……アーディーの顔はどこか晴れやかで。まるで何かが吹っ切れた様な顔つきで宣言した


「……正直、どうしてそっちが私を殺そうとするのかはわからないよ」

「けど、これだけは断言出来る!誰かを傷つけてまで好きな人と結ばれても駄目だって!」

「天使だって、そんな風に好かれても嫌だって言うはずだよ……当主様!」


啖呵を切ったその後ろ姿は、小柄なのにやけに広く見えた
天使、ひいては当主への反逆。エーデルワイスの性質を考えれば、決してあり得ない出来事

「……自分が何を言ってるのか、わかっているんだな?」
「勿論!何回だって言ってみせるよ」

「犠牲の出してまで天使を呼んだって、きっと来るはずないんだ!」

シュヴァルツは絶体に許さない。英霊が味方にいるとはいえ、半端な覚悟では発言すら出来やしない
それでも、彼女は言ったのだ。“天使はそんな事を望んではいない”と








「……ふ、ざ、けるな…………」
「お前ごときが、我が天使探索の歴史を踏みにじるつもりか……!」

地の底を這いずる様な怨嗟の声が響く。地獄の淵から鳴らすかのように
天にて俯瞰していたシュヴァルツは、今や地に伏せていた

「当主様、聞いてください!私は」
「黙れ!その背信は万死に値する、命を以て礎となるがいい。失敗作が!」
「……そうか。貴様の性根は、あの時から……」


「マスター!幾ら多数を犠牲にしたとはいえ、あれだけの魔力を持てるかは疑問だった」
「恐らくは奴の魔術によるものだろう。ヴィオレの魔力と融合し、一体化している!」

セイバーの言葉に頷くアーディー。そこに怯えは無く。ただ使命だけが

「……助けられる?」
「一つだけ方法がある。……しかし、僕だけでは少し難しい」
「わかった!手伝うよ、セイバー!」


「……私も、協力しよう」
「えっ……!?」
「驚く程でも無いだろう?奴は私の、仇でもある……!」

驚嘆の声を挙げる二人。それもそのはずだ。ルシフェルは幾度と無く、命を狙ってきた……


「行くぞ……先程の言葉に、偽りは無いな?」
「……何度でも言うって言ったでしょ!」

並び立つアーディーとルシフェル。殺し、殺されるだけの関係が、少しだけ変化する
ここでも一つ、奇妙な共同戦線が組まれたのだった




【本日これだけ。すまない……本当にすまない……】


【ひっそり更新】

【本当はもうちょい書き貯める予定でしたが、キリよさげなので先に】





天を我が物顔で支配していた瞬間とは違い、地に落ちたシュヴァルツはやけに饒舌だ

恐らくはアーディー……支配していた筈の人間に反旗を翻された事。怒りが誇りを凌駕したのだろう
その顔は遠巻きに見ても怒りに満ちていて。此方を殺す事に全力を注いでいた


「……それで、どうやって助けるの!?」
「話は後だ!来るぞ、二人とも!」

絨毯爆撃もかくやの魔力の波が三人を襲う。人間の二人はともかく英霊相手には分が悪い
特に、セイバーの所有する対魔力は魔術師殺しとすら呼べるスキル。驚異であると判断したのだろう


「だからってこれは……!くっ!」
「貴様、もしやその身に禍門の呪いを……!」
「ああもう!同級生の癖に手加減とかしてくれないんだからーーーっ!」

セイバーとルシフェルが切り払い、遮二無二に突き進む
時折アーディーは倒れそうになるものの、その手をルシフェルが引き、戻す

「っとと!ありがと……!」
「けど、どうして……?アンタにとって、私は」
「……それは」


彼女にしては珍しく口ごもり、目を反らす。傍目に見てもその顔は複雑そうで
聞いたアーディーは申し訳なさそうに、謝るしか無かったのだった

「……ゴメン」
「いや、いい……。……行くぞ!」






「……くっ!」
「フラァアアアあアア!ンンンンン!!」

フランシーヌが相手の時は“やや優勢”だった。しかし相手が変わると途端に“互角”になる
クリスティーナとデカルト。二人の実力はほぼ拮抗していると言ってもいい
宝具を開帳してもなお、師であるデカルトには及ばない。寧ろ、その差を埋めているだけでも上等だろう

「流石だ……剣の達人とは聞いていたが……」
「狂化を受け入れても剣筋が鈍らないとは、正気であればどれ程……っ!」
「お父様に近付くなぁあああ!!」

だが、クリスティーナの敵は一人ではない。横入りしてきた剣をいなし、距離を離す

「お前のせいでお父様は……お父様は」
「フラン、そいつのせい!フラン、離れ離れになった!全部、全部、全部!」
「……それは」

師匠から突きつけられる言葉は、それだけで彼女の心を抉りとる
何も間違った事はない。死の原因が誰にあると言われれば、間違いなく自分であろうから


「……だが、私は逃げるつもりはない」
「貴方との出会いを否定したくない。それが、私のエゴだとしても!」

それでも、彼女は折れない。どこまでも自分の為に剣を執る
自分の生き様に、間違いなんて無い。そう断言して、二人と切り結ぶ

彼女の生き方……誰よりも自由に、誰よりも破天荒に突き進んだその道を示すかの様に






「……凄え」

セイバー達とシュヴァルツの攻防を、影に隠れて観察する者が一人
青年、鹿黒はひっそりと。ヴィオレの感覚だけを頼りにここまで辿り着いたのだった

「こんな、バケモノ達と争うかもしれなかったのか……」

光の暴威を裂き行く剣。絶対的な波にすら立ち向かうその姿に、否が応でも目が奪われる

「それなのに、俺は……ヴィオレ、俺は……」

自分は何も出来ない。英霊との契約も、ああして身一つで戦う力すら持っていない
何も出来ない自分が悔しい。少しも力になれないもどかしさが苦しい程にのしかかる

「どうすれば、いいかな、ヴィオレ……」

問いかけた先にいるのは愛するものではなく。それを取り込んだ悪魔の姿が
神々しく嫌悪感すら覚えるその清廉な姿。自然と震えがカタカタと隆起する

怯えている……その事実が、如実に自分に突きつけられていた



「くそ……クソっ、ちくしょう……!」
「何か、何か出来る事は無いのか……!」








「……私は、天使に全てを奪われた」
「私が物心ついた時には、既に我が家は全てが失くなっていた」
「……え?」
「昔話だ。……少し、付き合ってくれ」

魔術の海を掻い潜りながら、ルシフェルは話す
突然の言葉に驚きを隠せない。……が、不思議と聞き流そうとは思えなかった

「人生の全てを復讐に捧げた。如何なる犠牲を払ってでも、奴を滅ぼすと誓ったのだ」
「その過程で、名を失い、兄妹を失い、私の夢も失った……」

「……本当は、戦いなんてしたくはなかった。斧よりもペンを持ち、研究していたかった!」
「我が真名は……“エーデルワイス”。かつて同門だった一族の末裔なんだ……よっ!」
「………………っ!」


叫びと共に、一際大きく斧を振るって魔力の渦を断ち切る
怒りを向けても戻れない。やるせなさと憤怒に満ちた一撃は、一際大きな穴を穿つ
……


 ◆地獄の炎
 後天的に与えられた火の魔術属性の行使。
 エーデルワイス家から追放された一族の復讐の炎の具現であり、本来は持たない魔術属性の使用は彼女自身をも焼く。
 火と風の二重属性を扱うことで魔術の幅と破壊力が増し、彼女は『天使に恋した一族』を無に帰す劫火となる。



「……その言葉で、確信したよ」
「やっぱり……この家は間違ってる。この場で元に戻さなきゃダメなんだ!」

走る。当主にむけて、全力疾走で駆け抜ける
その隣にはセイバーが。既に活路を見出だしたのか、その顔には余裕すら浮かんでいた








「……セイバー!お願い!」
「承知した。……彼女に、伝えておいてくれ」

正面に、自らの担う聖剣を構える
絶世の名剣、デュランダル。王勇を示す輝剣、ジョワユースと同等の製法で鍛え上げられた王家の宝剣

かの円卓の騎士も所有していたとされるその剣は、眩いばかりの光を放って

「自分らしく生きる事。もう君は、天使に呪われる事は無いだろう」
「……僕にも、生きたい道があった。それはもう叶わないけれど」
「せめて、応援だけはさせてほしい……君の航路に光あれと!」


その刀身に鋒は無い。その理由は、奇しくも……


「“無益な殺戮を防ぐ為、天使にて折られたこの剣。今こそがその妄念を断つ時である!”」
「“汝がマスター、アーディー・エーデルワイスが令呪を以て命ずる!”」


「“この家を、エーデルワイスを!その聖剣で正して!セイバーっ!”」
「“輝け、無峰の宝剣よ。此処にその名を示し、正道へと導いてくれ───っ!”」




「「“剣先無き慈悲の剣(カーテナ)ーーー!!!”」」

振り下ろされた剣に峰は無い。はずなのに、シュヴァルツはその軌跡に呑まれる様に
慈悲の剣が、偽りの天使を両断する。その責務を果たすかの様に……



【本日ここまで】

【次回はクリスティーナVSデカルトの決着をメインにする予定】

前回大反響を呼んだ
戦争略奪ゲーム「RUST」実況再び。

加藤純一(うんこちゃん) Youtubelive

Steam/オープンワールドMMOFPS
『RUST』シーズン4 Part3

『RUSTにて敵の拠点を潰す。』
(20:42~放送開始)

://youtube.com/watch?v=QP57i_z-GKA


【それでは再開……】






「…………ガ」



慈悲の斬撃が身体を裂く。凄烈な様で柔らかな一撃は、真っ二つにその身を別つ

痛みはなく、流血もない。セイバーの持つ無峰の聖剣は、寸分も違わずヴィオレとシュヴァルツを分離してみせた

飛び散る血飛沫は透明で。キラキラと空に、花弁のように反射する

それは、あの時の。そうだ、あれは確かに──



「いた、んだ……」
「いたんだ。確かにそこにいたんだ!話したんだ。一言でも、いや、もっと少ないかもしれないけれど……」

「それでも、オレは確かに会ったんだ。貴女に、天使に───!」




「気持ちがわからねえとは言わねえ。けれどよお、手前の恋なら手前で叶えるべきだろう」
「子孫共々巻き込むのはダメだろ?そんな情けねえ男に、天使なんか振り向かねえよ!ひゃっひゃひゃひゃ!」

「……クソッタレ。テメェかよ」
「よう。泣きっ面見に来たぜ。……あばよ」

招福の声は届いたのか、倒れ伏す男は苦々しげに顔を歪め
しかし、それもほんの数秒。瞬きの間に、その姿は虚空へと消え去っていた



「……終わった、のか」

「ああ。ま、片思いの末路なんか面白くも何ともねえよ。……お疲れだったな。ルシフェル」





「ヴィオレーーーっ!!」
「!?君は……」
「きゅ!きゅい!」

シュヴァルツとヴィオレが分離した瞬間、木陰から青年が走り寄る
当然出てきた青年に面食らいながらも、青年はヴィオレを抱き撫でる

「生きてた……!ごめん、ごめん……!」
「きゅう……きゅ!」
「もしかして、貴方がこの子の飼い主さん?」

駆け寄ってきた青年にアーディーは訪ねる
青年、鹿黒は若干不機嫌そうになりながらも、素直に答えた

「そう、だけど」
「お願い……!バーサーカーを止めて!センパイが、今戦ってるの……!」
「な、そんな事出来る訳ないだろ!」


「お願い!センパイのバーサーカー達が精一杯戦ってくれたから助けられたんだよ!」
「けど私じゃどうする事も出来ないんだ、もう貴方にしか頼めないんだ!」

「……あいつが…………?」
「え、知ってるの?」

林道が紹介した青年の顔が脳裏によぎる
彼の言葉や表情を思い出す。そこに嘘や偽りがあっただろうか


「……ヴィオレを、助けようとしたんだな」
「どうしようか?……どうしたほうがいい?」









「きゅ!きゅきゅい!」
「……でも、それだと俺達は」
「きゅい!きゅーいっ!」

悩む鹿黒を後押しする様に鳴くヴィオレ
それを聞き覚悟を決めたのか、鹿黒の目からは強い意思が


「……わかったよ。それが本当に正しいかはわからないけど」
「アイツが助けるって言ったんだ。俺も少しはやれる……はずだから」
「きゅーっ!」


鹿黒の言葉に合わせて、ひときわ高く鳴くヴィオレ。そのちいさな身体から、赤い魔力の奔流が迸る。
光は天に伸び、そのまま遥か遠くに……



「センパイ、本当に色々な人を動かしてるんだな……意識してるかわからないけどさ」
「でも、だからこそ。私は、センパイが……」



「…………大好き。なんだ、えへへ」

その呟きは風に消える。隔離された世界に届けと願うように






「くっ……!」
「フラン、殺した!フラン、奪った!」
「お父様……よくも、お父様を……っ!」


「クリスティーナ……」

一陣の風が世界に吹く。師弟と娘は剣を重ね、周囲に火花を散らしていく
貴方の目の前で奮戦するも、その力は徐々に圧されているようにみえた
宝具を開帳しても尚、その実力は拮抗する。理由の大きな要因は、デカルトの固有結界だろう

「……私まで否定するのですか。貴方は!」
「ファァアァアア!!ラァアアン!」

「貴方との語らい全てが私の道となった!私は無駄にしたくない!」
「フランフランフランフラン!!」

「目を覚まさせてやる……!デカルト!」
「フラーーーン!!!」



叫び、ぶつかる。意志はクリスティーナに部があるが、力は狂化故かデカルトが勝る
そして敵は一人ではない。拮抗した所にフランシーヌが割り込み、趨勢を相手に傾ける

「お父様を悲しませる奴は許さない……例え、愛弟子だろうと!」
「フゥゥウウウ……ラァアアアア!!」


フランシーヌに圧され、体勢を僅かに崩す
その隙にを突きデカルトは剣をクリスティーナの身体に斬りかかる

















「───“令呪を全て以て命ずる”」
「“ランサーよ。限界を超えた出力で宝具を開帳する事を命じ……”」

「“ルネ・デカルト。及びフランシーヌ人形のみを狙い、穿て!”」


そこを、赤熱の横槍が通過する。デカルトとフランシーヌの身体を突き破りながら






「……これで良かったのか?ランサー」
「上等よ。あのムカつく女王様に一泡吹かせられ、あの爺を吹っ飛ばせる。最高じゃない」

「だが、フランシーヌ人形を構成している肉体の大半は貴様の身体だ」
「人形を吹き飛ばすとは、即ち……」
「それ以上言うんじゃないわよ。ドミトリイ」


言葉通り、ランサーの身体は光の粒子となってほどけていく
元々身体を大半を奪い取られていた上に、限界以上に魔力を引き出し、その肉体を自ら粉々に砕いたのだから

「これはアタシがやりたかった事。それ聞いてアンタ否定しなかったじゃない」
「聖杯戦争から敗退しろって言うようなモノなのによ?普通なら断るでしょう」
「…………それは」

サングラスの中の瞳が揺れる。戸惑う様に目を反らし……ランサーに向き直る


「少しくらい、外れてみてもいいと思ってな」
「ハッ、あのガキが気に入らないのもそれが理由なんでしょ?」
「……まあ、な」

「ま、案外楽しかったわよ。結果はともかく、好きに暴れられたしね……」



それだけで。言い残しは終わりとばかりに音もなく光は霧散する
残されたドミトリイはどう言い訳しようか。と苦笑し、サングラスをポケットにしまった








「あ、ああ。あああ……!」
「師匠……師匠!目を開けてください!」

倒れ伏すデカルトをお越し揺さぶる
クリスティーナの目の前には、腹から空いた穴に焦げた異臭を放つ老人の姿が

フランシーヌは既に、その身を四散させ木っ端微塵に散らばっていた


「嘘だ。私は貴方と決着をつけたかった。なのに……ランサー!」
「もう止めよう、クリスティーナ……多分、それよりも師匠さんの方を……」
「ふざけるな!これではもう……いや、私が倒すつもりではあったが!」

「これでは、悔やむに悔やみきれない……!」

ポタポタと、握った掌に涙が落ちる。その理由は師を狂気から救えなかった事だろうか?
いや、そんな殊勝な理由では無いだろう。自らの道を歩けなかった。それが堪らなく悔しいのだろう





「……ああ、それでこそ君だ。誰よりも自由に、誰よりも学を探求した女よ」
「な……その、声は」



「……目が覚めたよ。クリスティーナ。私の教えた最高の弟子よ」
「我が師、デカルト……!」







心優しい、暖かな光のような声
デカルトの表情は、苦痛に歪みつつも晴れやかに。まるで憑き物が堕ちた様に澄んでいた


「な、大丈夫……なんですか。もうその傷じゃ」
「フランシーヌさ。フランシーヌが私に、少しだけ話す時間をくれた……この場は私の心に近い場所だからね」

言われて気付く。世界に張り巡らされた歯車は落ち、数式は透き通り消えていく
残されたものは仄かな光……漠然と、それでいて確固たる意志だけが空に灯されていた


「さて……君に講義はもう要らないだろう。まずは礼を。ありがとう」
「そそそ、そんな!私は一介の弟子として当然の事をしたまでで!」
「倒す気だったって言ってたじゃないか……」


「ああ、それと。私が君を恨んでいたというのは嘘ではない」
「…………っ」

そう呟く言葉に身体を固めるクリスティーナ
しかし、それを見たデカルトはふっと微笑みながら訂正を


「しかし、それは本当に……狂気に犯されねば発露し得ない程の、微かな感情だ」

「私は君に、ある種の敬意を抱いている。国に反発されようと、君に心配されようと、渡航の時期を早めたのも……」

「全ては君の為。私の全てを、君に教えたくなったからさ」

「そう、だったのですか……」










「……行きなさい。クリスティーナ」

「君に必要なのは言葉ではないだろう?何をすべきかは、既に理解しているはずだ」

「進め!自らを征し世界を股に駆けたバロックの女王よ。その道に満足がある事を!」

「ささやかながら応援しよう。……さらば!」




デカルトからの激励が世界を、心を震わす
哲学を極めた賢人からのエールは、世界そのものからの祝福に等しい
クリスティーナ、そして貴方もその言葉を噛み締める。


「あの……ありがとう、ございました」
「……はい、それでは行きます。……師よ」


「……さようなら。やっと、言えましたね……」


世界が解れて、光の先に消えていく
二人は共に、世界が崩れるまでのその様を目に焼き付けていた




【本日はここまで】

【次回は禍門VSアサシンを描写する予定です】




【しばらく、こちらで反応しなくて申し訳ございません】

【お盆休み中には更新するつもりです。それまでもう少しだけ……必ず……!】


【なんとかお盆中には間に合った。明日夜7時に更新します】



【それでは更新】

【安価がないのでゆっくり進めていきます…】





「フッ!ハッ!でぇやぁあ!!」
「どうした!?狙いが逸れているぞ!」
「ムチャ言うんじゃねー!相手が小さ過ぎるんだよ!」

「キャスター。何とか出来ないのか?」
「ちょっとどうにも出来ない!ボクの魔術ってそういうの専門外だから!」


ひらりひらりと暖簾に腕押し。アーチャーの重厚な拳や蹴りは、風船の様にすり抜ける
嘲笑う様に周りを飛び回るアサシンは、小刻みにアーチャーを切りつけるが無傷のようで

「やりにくいわ。カツンカツンって、まるで鉄を突っついているみたい」
「そりゃそうだろ!オメーみたいなチャチな鎌で殺られる程、オレは雑魚じゃねーっての!」

「……言うまでもないけど、あいつボクじゃどうやっても勝てないんだよね」
「そうだろうな。あれは神代の守護兵器。お前が壊せたらどうしようかと思ってたぞ」

マリアの言葉に複雑そうな顔を浮かべる。その顔を見てか見ずか、前に躍り出る

「……では、キャスター。私はマスターを狩りにいくとしようか」
「はいはーい。……って、ならボクはどうすればいいの!?」
「私の補佐に回ってくれ。何、禍門の集も理解してくれるさ」
「本当かなぁ……」

困惑しつつも、死徒へと走りよるマリア
ため息をつくキャスターの前で、此方での死闘も佳境へと差し掛かろうとしていた






「……お父さん」
「何だ、アキラ!俺も今は手が……」

「アーチャーの、宝具の使用許可を。あれならば、アサシンを一撃で」
「駄目だ、規模が大き過ぎる!ここで宝具を開帳してしまえば街にも被害が起きる!」
「け、けど。アサシンの宝具の方が、被害が大きくなる……と、思う、デス」

憂午とアキラの譲らぬ意見は平行線を辿るだけ
未だ明確な着地点の見えない議論は、戦闘にも現れていた

「クソーっ!チクショーっ!せめて槍か犬がいてくれりゃあなあああ!!」
「犬?槍?物騒なお仲間がいるのね。機械人形さんには」
「オレは機械なんかじゃねーヨ!こう見えてもなぁぁーっ!」


アサシンからの煽りを受けて、アーチャーの拳が激しく唸る
だが、その結果は先程と同じ。ふわりと軽く舞い上がり、難なくその手を回避する


「だぁあああ!!何なんだよテメェ!」
「さっきからひょいひょい逃げ回ってよぉ!勝つ気あんのかテメェらはよぉ!ええ!?」

「もちろんよ。私達は動かなくてもいいの」
「だって、勝手に進んでくれるもの。焦る必要なんてないんだから」







「……ガ、ぐ、おぉおお……!」
「苦しいならもう止めておけ。今なら痛みだけは与えないと約束するぞ」
「何故……何故、何故!俺は、ただ……」


「生きたいだけ。なんて言える訳ないだろう」
「それだけで無数の人間に害を為す、お前は害獣と同じだ」

「違、違……俺は」
「同じだ……よ!」

心臓喰らいとマリアが交錯する
醜悪な肉の鞭と化した肉体にも怯まず。マリアの腕は無慈悲に貫く
幾ら吸血鬼と言えども、本来ならば貫いた腕もただでは済まない……


「そこでボクの出番ってワケ!エンチャントは得意中の得意だもんねー!」

マリアの両腕には風が渦巻き、手甲の様に形を為す
下級の宝具にも等しい威力。キャスターの施したエンチャントは、死徒の肉塊すらも穿つ


 ◆エンチャント:EX
  概念付与。本来は作家や脚本家たちの所有するスキル、
  ……であるが、最古の語り部にして神官たるキャスターが
  紡ぐ言葉はそれ自体が比べ物にならないほどの魔力を帯びている。
  キャスターの場合、自然事象を宝具に変化させ強力な機能を追加する。








「……ゲホッ!ガッ!」
「わー。メリッサちゃん、大丈夫ー?」
「そんな、訳……ぐうぅ……!」

所変わって禍門邸。そこには横たわる少女と、それを遠巻きに眺める少女が
アサシンの影響下にあるメリッサを残った千呼が看病していた
と言っても、相手は英霊。何が起きるかわからない為、結界越しに話しかける程度だが


「ねえねえ、メリッサちゃんってさ、兄弟とかいるの?」
「今、そんな事を話してる余裕が……!」
「わくわく、わくわく」

此方の具合は完全に無視。千呼はキラキラと目を輝かせて答えを待つ
……感情を出したからか、少しだけ熱が引いた気がする。拒絶した所でまた来るのだろう
そう考えたら今話した方がいい。諦めた様に口を開く


「……兄と姉が一人。弟が一人、妹が二人」
「わ!びっくりする程いっぱいだ!でも魔術師の家で兄弟が多くていいの?」
「魔術師になるのは一人だけだ。他の兄弟は傭兵としての道を歩くはず」
「ほへー凄ーい」 「……聞いてたのか?」

あんまりにも呑気な返答。緊張感の欠片もない
思わず身構えたメリッサも毒気を抜かれて呆気にとられる


「でもいいなー。仲いいんでしょ?」
「……仲が悪いのか?そうは見えないが」

「うーん。悪いって言うか、何て言えばいいんだろう」
「アキラちゃん、私に心を開いてくれないって言うのかな。なんか壁があるみたい」


ぽつりと呟く千呼の顔は、普段の底抜けの明るさではなく姉としての表情を映す
妹は好きだ。だけど、その妹は自分の事をどう感じているのかがわからない……









「……殴り合う、しかない」
「え?殴るの?アキラちゃんを?」

メリッサからの突飛な提案に、目を白黒させる
対して提案した本人は、千呼のその態度に怪訝な顔を浮かべて


「おかしい?互いの本音をぶつけ合うには最も有効な手段だと思うけど」
「私も弟相手によくやる。特にニンジンを誰が食べるか決める時には」
「ニンジン……嫌いなの?」


拳を固めて天を睨む。その仕草は勇ましいが、言ってる事は何とも可愛らしい
そのギャップに千呼も脱力したのか、あははと笑いながら手を叩いた

「うん……ありがと!今度、アキラちゃんとしっかり話し合おっかな」
「メリッサちゃんも、早く良くなってね!」
「……どうすれば?」


話して満足したのか、アキラとどう向き合うか決めたのか
パタパタと嬉しげに去っていく千呼をメリッサはただ見ている事しか出来ず


「……ふぅ。面倒な奴だった」
「けど、身体が軽くなった?……まさか」

目を閉じ、身体の力を抜いていく。
すぐに闇が包み込み、意識は遠くに消えていくのだった







マスター同士の激戦の横で、徐々に状況は動いていく
心臓喰らいが追い込まれる裏、令呪の力も切れてきたのか回避しきれず掠めてくる
補助に回ろうにも、二騎の英霊がそれを許す筈もなく。アサシンは今、窮地に立たされていた


「……ねえ。貴方達はどうして死んだの?」
「ああ?そんなの聞いてどうすんだ。弱点でも突こうってか!?」
「答える必要は無い……よねっ!」

ふいに、アサシンから唐突に問い掛けられる
勿論二騎は聞く耳を持たず、熾烈な攻撃の手を緩めない

「どうして戦うの?死ねば楽になるのに、死ねば何も考えなくてもいいのに」
「また後悔するだけなのに、辛い思いをするだけなのに、戦う必要があるのかしら?」


それでも、話は勝手に進めていく。ひらり、ひらりといなす様に
まるで答えを掴ませないかのように、アサシンの言葉はふわふわと


「だーーーウッゼェ!何で戦うのかだとぉ?」
「んなもん、オレがくたばってから後悔する事が出来たからに決まってんだろうがぁーー!」

だが、アーチャーが言葉をを打ち貫く。豪放な声が響き、伸ばした腕は遂に少女を掌握する
掌の中に囚われたアサシンは、尚も動じた様子は無く。平然と兵器の瞳を直視していた










───“勝手に産みやがったのに、その癖勝手に殺すだと?”

───“舐めてんじゃねえぞ。人類を!”



「……何も、残せなかった」

脳裏に過るのは、怒りに燃えた人間だった頃



──“皮は青銅に、血潮は灼熱に。許容量を超えるならば、その都度肉体の拡張を”

──“魂は不要である。人格は不要である。ただ兵器として最善であればよい”



「……何も、残せなかった」

脳裏に過るのは、神に肉体を奪われた頃



──“くぅ、くぅ……あら?貴方は?私のお友達になってくれるの?”

──“貴方は頑張りやさんですね。よしよし。アメは……食べられない?”

──“では……よしよし。ふふふ。また肩に伸せて、日向ぼっこをしましょう”



「……何も、残せなかった……!」

脳裏に過るのは、ある女性と暮らしてきた頃

憤怒に、絶望に満ちていた記憶でなく。穏やかな日向の様に安らぎに満ちた平穏な頃
だが……それも、残せなかった。残したかった姫すらも、最古の略奪船によって奪われた








──“クソっ、何だあのデカブツは!?”

──“あんな奴ヘラクレスさえいれば……おい船を壊すつもりか!?距離を取れ!”

──“ハッ、ケツ捲って逃げるつもりか?情けねえ。ヘラクレスがいなきゃ何も倒せねえか!”



──“黙ってろ!ええいアスクレピオス、奴に弱点はないのか弱点は!”

──“何だ、患者か?……おい、僕を医療行為以外で呼ぶなとあれ”

──“ならさっさと答えろ!一番人間の身体に詳しいのはお前だ。なんでもいいから何か弱点を思いつけ!”

──“……なんだ、青銅人か。機械の身体に興味はないな。しかも神の血が流れている”




──“なら、それを抜けば機能を停止するかもしれませんね。それなら私でも出来そうです”

──“ほう?可愛い可愛いメディア。君があの超巨大怪人を、私の為に潰してくれるんだね?”

──“は、はい!……そーれ。眠くなーれ、眠くなーれ……”









「……今思い出してもムカつくぜ。あのクソ野郎共にも復讐してえけど」
「けれどよお!それよりもムカつくのはよお!守れなかったオレ自身なんだよ!!」

業火の如く。叫ぶ声は地の底から吹き出す溶岩すら凌駕する熱量を持って

「眠らされたのも許す。弱点をブチ抜いたのも構わねえ。けど、けれど……」


「あの姫様を奪った事だけは!絶対に許さねえええええええ!!!!!」


アーチャーの燻る怒りは、遂に臨界点を迎る
身体は真紅に燃え盛り、熱は離れている憂午やアキラの肌すらも焼いていて


「だから……オレは聖杯を獲る!誰を蹴落とそうが、誰をブチ殺そうが!」
「あの姫様を救う為に……オレは戦う!死んでも死にきれねえんだからなあぁあああ!!!」

掌から炎が……否、神の血潮が吹き上がる
超高温の紅蓮がアサシンを包み込む。その矮躯は容易く灰となって消えていく……



「……“神の血潮を焚きつけろ(イーコール・タロス)”」
「マジムカつくゼ。神の力を使っちまうとはな」





【本日はここまで】

【VSアサシンは、もうちょっとだけ続くんじゃ】


【すみません。今日はお休み…】

【三日以内、三日以内には絶対にまとめます……!】



【それでは、再開していきます……】





パチパチ、パチパチと空気が焼ける音が響く
アーチャーの周囲は瞬時に焦げ付き、踏み締める大地は赤熱して溶けかける
マスターであるアキラですらも、咄嗟に魔術による耐熱を施さねば危険だっただろう

「これで終わりだ。諦めろ、心臓喰らい」
「あ、あぁ……あさ、シン」

そして、アサシンが消滅した事により完全に無防備となった心臓喰らい
最早、誰もその足を阻む者はいない。一歩一歩を慎重に踏み込んでいく……


「……悪く思ってくれ。人を害する死徒を滅ぼすのが私の仕事だからな」


『ええ、思う存分悪く思うわ。貴女のせいで、マスターが死んじゃうもの』


「……何?」
「この声は……!っ、『下がれ』!」

間一髪。いち早く反応した憂午の声が、マリアを強引に後退させた
先程までマリアがいた場所に突き刺さるのは、歪んだ形状の鎌の尖端……



「うぇ!?どういう事!?ちゃんと燃え尽きたはずじゃ……!?」
「んなバカな……!オレの手の中で、確かに潰したはずだろうが!」

誰もがその場を注視する。そこに立っていた者は、気配を遮断する事もなく存在していた





「……こんばんは。ついさっきぶりね」







ぺこり。と首を傾げる少女。その姿はとても愛らしくて
だが、どこか歪な印象を受ける。マリアはその少女の名を口にした

「アサシン……!」
「ふふ、どうしたのかしら?さっきまでここにいたじゃない」


アサシン。その身は握り潰され、超高温により灰となった少女がそこにいた
今、目の前でくすくすと愛らしく笑う姿と先程までの無惨な姿が重ならない
まるで何も無かったかの様に平然としている……

「成る程……“早すぎた埋葬”か」
「死亡誤認、仮死蘇生。それに関連した逸話を持つ英霊なら消滅しても復活出来るか……」

淡々と仮説を述べるマリア。それが正しいかを示すように、くすくすと笑う声が響く


 ◆早過ぎた埋葬:A
  死亡したと誤認され、生きながら墓に埋められたことから。
  死亡しても一度だけ、任意のタイミングでリレイズできる。
  死亡した時点で一旦マスターとのパスは断たれ、アサシンは消滅したと偽装される。
  但し火葬された場合、このスキルは発動できない。


「アーチャー!ちゃんと燃やしてよお!」
「だああ!あれ厳密には炎じゃねーんだよ!」
「ええいうるさい!来るぞ!」


ぎゃいぎゃいと騒ぐ視界の隅。舞い戻った少女は的確に首を狙い釜を振るう
その見た目とは裏腹に、俊敏な動きで的確にそれを回避する二騎

しかし、何故か先程の戦闘よりも力が発揮出来ていない
まるで土の中にいるかの様に、その動きは鈍重に、緩慢になっている










「ぐっ……!なんじゃこりゃあ!?」
「身体が重い~~~!!」

「これ、は。お父さ、ん……?」
「重圧……?……!そうか、まさか、奴は!」

明らかに動きが鈍い二騎に疑問を抱く
アキラからの問いに何かを悟ったのか。憂午は悔しげに口を噛んだ
そしてアサシンは得意気に、嗜虐的に唇をつり上げて微笑んで……


「そうよ。私は“蘇った死者”。そして“生者を食らう吸血鬼”」
「なら、貴方達は?……決まってるじゃない。私に殺される、“哀れな被害者”でしょう?」


『霧夜の殺人』、というスキルが存在する

殺人鬼……命を奪う者という大前提。被害者の先に傷をつけられる加害者に与えられた特権

蘇った死者は、夜毎に人間を襲い、喰らう……。その法則は英霊といえど、否

英霊だからこそ、より鮮明に影響を受ける……


「……アサシンも、動きが、鋭く」
「それだけではない。アーチャーもキャスターも徐々に押され始めている……!」






……食人鬼に喰われるのは、必然的に弱い者

その絶対のルールは、例え神話の兵器であれ、巫女であれ従わねばならないもの
兵器で怪異は吹き飛ばせず、巫女の祈りは届かない。悪夢が此処に顕現していた


「クソッ!こんな奴にオレが負ける訳が……!」
「負けるわよ?貴方達は被害者。それは絶対に覆す事の出来ない真実」
「蘇った私に蹂躙される、可哀想にね。哀れに食い散らかされるの。当然ね」

アーチャーはアサシンの機敏な動きに翻弄され続ける。その度に身に付く傷は増えていって
幸い、キャスターは狙われていない。ちまちまと回復の魔術をかけて補佐しているが……

アサシンの猛攻は激しい。一時の気休めにしかなっていないのが現状だ


「うげぇ。冥界に帰ってくれないかナー」
「言ってる場合か馬鹿!何とかしろ!」
「何とかってどうするのさ!ボクのエンチャントは市街地では不向きなんだよう!」


マリアも心臓喰らいに近付き、先んじて始末を狙うものの、それすらアサシンに阻まれる
まるで身体を分かつかの様に。ひらひらと舞っては斬りかかり足を止めさせて

「う~ん、う~ん、う~~~ん……」
「……あ!もしかしたら何とかなるかも!」






場違いな程に軽い、明るい声
怪訝そうな顔をする禍門の親子。マリアは頭を掴みながら、再度確認する

「……本当か?」
「うん。多分。きっと……」
「そのきっとはなんだ。ふざけるのは止めろ」

「いやイケるんだって!ただ、ちょっと……」
「ちょっと?」


「うーん……アーチャー。一度死んでくれる?」
「は?」


もごもごと口ごもるキャスターから、突然投げられたのは意味不明な内容だった
意味も理由もわからない問いかけ。必然、その視線は冷ややかなもので

「そんな目で見るのは止めてよ!ボクは真面目な話をしてるんだから!」
「いや意味わかんねーし。なんて?」
「だーかーらーいっぺん死んでみる?って……あ痛い痛い痛い!?」

「……いい加減その内容を話せ。さもなくば令呪で自害させるぞ」
「そこまで!?……わかったよ、もう!」


持てるありったけの魔力をかき集めて、周囲に撒き散らす
狙いも何もない雑な攻撃。アサシンもこれには一時的に引く他は無く

その隙に禍門の陣営は集合する。キャスターの考案した一発逆転の策を確認するべく……










「……ね?これなら何とかなりそうでしょ?」
「確かに、キャスターの推測が、正しければ」
「アサシンを何とかする事が出来る……か」

「だけどよぉ、リスクがデカ過ぎんだろ!下手すりゃここで全滅すんぞ!」
「エーデルワイスやバーサーカー。我々に味方する陣営はいるにはいるが……」

「彼等はまだ子供だ!彼等に責務を押し付ける事は出来ない!」
「……だよねえ」


語気を荒げる憂午に、知っていたと言いたげに肩を竦める
どうやら、禍門はキャスターの出した案を否定的に見ている
言葉には出さないが、却下だと言いたげに顔をしかめる憂午……だったのだが

「なら。私が、令呪を使います」
「最悪でも、復帰は出来る。アサシンを倒す事は可能……デス」

アーチャーのマスター、アキラが強く発言した
切り札である令呪を使用すると。かつての大人しい姿からは想像出来ない程ハッキリと

「アキラ。お前……」
「アーチャーも、それでいいデス」
「それでいいなんて一言も言ってねーだ……」
「アーチャー」「ハイ」


「……えーと、やっちゃっていいんだね?」
「ああ。禍門からの了承も得た、私の魔力もくれてやる」

「……“汝がマスター、マリアが令呪を以て命ずる”」
「“宝具を必ず成功させろ……いいな!”」「オッケー!任っかせといて!」






「……さて、それでは皆様お立ち会い!」

喧騒が引く頃合い。キャスターが跳ねる様に前に躍り出る
その手には円盤の様な……何らかの文字の刻まれた、白く滑らかな石の盤


「“此より語るは女神の賛歌。天に座したる優雅な女王よ、ボクの祈りを聞き届けたまえ!”」

「“戦の理すらもねじ曲げ、過去も未来も思うがまま!貴女の力を今ここに!”」

「“行くぞっ!『雪花石の奉納円環(ニン・メ・シャルラ)』!廻れ廻れ廻れ廻れーっ!”」


勢いよく、威勢よく。キャスターは円環を回し始める
グルグルグルグル、目にも止まらぬ速さで流転する石盤を、必死に制御していた
その度に火花が散り、石からは今にも壊れそうな、悲痛な悲鳴が聴こえていて……



「……ここだっ!とぉおぅっ!!」

しかし、それにも終わりが訪れる
キャスターが強引に円転を止め、石盤からは魔力が拡散していった









「ぐわぁああーーーっ!!」
「アーチャー!?」

「……あら?」


結果が訪れたのは突然だった。先程まで何ともなかったアーチャーが倒れ伏す
急に起こったその現象に最も驚いていたのは、禍門のマスターであるアキラ……ではなく

「……やってくれたわね」
「アサシ、ン。何が、何が……」
「“蘇生されたという事実が無くなった”わ

「……やった!成功した!」
「全く、冷や冷やさせてくれる。……だが、これで貴様はただのアサシンだ」
「人間を襲う殺人鬼でも、蘇生した吸血鬼でも無い。これでお前を畏れる理由は無くなった」


……キャスターの宝具の真価は『結果の改編』
因果率すらも操りかねない程の強力な力を秘めるが、その使用条件も並みではない

キャスター自身の過去には干渉出来ない。結果を変えたとしても無意味になる場合もある
そして、変えられるかはやってみないとわからない……

「今回はドンピシャだったってワケ!……令呪が無かったら危なかったけどね」


『キャスターの宝具を開示します』
◆『雪花石の奉納円環(ニン・メ・シャルラ)』
  ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
  キャスターの生涯が刻まれたアラバスター製の円盤。
  世界で初めて一人称で書かれた物語でもある。自動で情報を記す日記宝具。
  その真価は既に起こって出来事をキャスター自らが書き直すことによって初めて発揮される
  『因果の改竄』――即ち、過去の確変に他ならない。戦争の結果でさえ容易く改竄する
  この宝具により、キャスターはアッカドの帝王ナラム・シンに九度の勝利を齎した。
  故に使用回数は九度が限界であり、またキャスター自身が関わった事象の改竄は不可能である。






「……さて、こいつは燃やせばいいんだな?」
「ああ。ゾンビは焼却と相場は決まっている」
「後始末は俺がする!やれ、アーチャー!」

「おっしゃあ!メッチャメラメラだ!食らえやオラァ!」


全身の神の血(イーコール)を燃焼させ、赤熱する肉体で周囲を破壊する
アーチャーの触れた、踏んだ、掴んだモノには炎に包まれ、たちまち周囲は火の海に

……本来、英霊にただの炎は恐れるに足らない。しかし、これは神の血から産まれた炎


「アサシン……!令、令呪を以て」
「駄目ね、逃げられないわ。例え、ここで逃げても勝てないもの」

何の表情も無く答えるアサシン。既に戦闘意思を失ったのか、鎌はとうに消え去っていて

「……ねえ、お願いがあるの」
「我々が聞くと思うか?」

けんもほろろに突っぱねられる。しかし、それすらも意に介さずに話し続け

「私達はここで終わり。認めるわ」
「だから、せめて。最期くらいはそっとしておいてくれないかしら」
「嘘つけ!逃げるつもりだろ!」

「そうね。そうかも。そうしようかしら?」
「うわー多分逃げる気だ……」










「……はあ。仕方ない」
「マリアさん!?見逃すのですか!?」

全員からの否定を遮り、マリアのみがアサシンの言葉へ頷いた
……頭を抱えながら、心底嫌そうに

「そうじゃない。……おい、心臓喰らい」
「お前が何を目的に人を殺してたかなんて知らない。だが……」
「信じてやるよ。せめていい最期になる事を」

「ぐ、ぬぬ……ここで死徒を見逃す等……」
「そうだそうだ!ここでブチ殺してや……」
「お父さん、アーチャー……帰ろう」「な!?」

「貴女は、許してくれるの?」
「許す、とか。許さない、とか。私はよくわからないデス。けど」
「きっと、先輩だったら。許す……から」


たどたどしく。それでも確かにアキラは許すと断言した
思い浮かべた人物は、きっと許すと確信していたから



「ありがとう。それでは、いい夜を」

ぺこりと一礼。上げた顔には満面の笑みを
心臓喰らいを抱き抱え、炎の中へと消えていく









「……あぁ。アサシン」

「俺は、俺は……死ぬ、のか」

心臓喰らいはアサシンの腕の中で問い掛ける
既に意識は朦朧としているのだろう。ボコボコと肉は痙攣し、人のカタチすら保てていない


「そうね、死ぬわ。良かったわね」

「良く、ない……!俺は、俺は……っ」

「……マスター、貴方は最初から死んでいたの。死徒になったその時から」

ゆっくりと、まるで子供をあやすかの様に心臓喰らいに語りかけるアサシン
その言葉に何か感じるモノがあったのか。その顔は血を、肉を喰らう怪物のものではなく……


「……アサシン。聞いていいか?」

「アサシンの宝具なら、町一つを簡単に蝕む事が出来ていただろう」

「それなのに、最期まで……最期すらもそうしなかった。それは何故だ?」


かつて、心臓喰らいと恐れられた男はそう呟く
アサシンは一瞬だけキョトンとして。クスクスと微笑みながらこう答えた


「だって……無差別に人を殺したら」
「貴方は、本当に怪物になっちゃうじゃない」

それだけ。たったそれだけの理由だと話して。二人は炎の中に消えていく。
アサシンの後ろ姿は煙の中に。崩れ落ちる瓦礫の下にと潰れていった


【本日はここまで……】


【それでは更新します……】

【目標としては、土日で一区切りつけて九月上旬には完結を目指す所存です】

【ちょっとだけコンマ判定や安価あるかも。お気楽にどうぞ】









「……確かに、アサシンは既に消失している」
「それと同時に、マスターである死徒の死亡も確認済みだとも」


二つの激戦から一夜明け、教会の元には四人のマスターと関係者が集っていた
アーディー。アキラ。マリア……そして、貴方とガイスロギヴァテスのドミトリイ、憂午

彼等に現状を伝えたのは監督役のロベルト。
彼の手にある霊気盤は、霊子の反応から消滅したのかがわかるらしい

「どうやら、アサシンは約束を守った様だな」
「そだねーボクは疑ってたんだけど」


「これで、四騎だよな。ライダー、アサシン、ランサーに……」
「私ではないバーサーカー。半分は脱落したという認識で構わないな?」

クリスティーナの毅然とした発言に遅れて頷く貴方
昨夜のデカルトとの死闘が尾を引いていないかと心配していたが……杞憂だった様だ



「さて、此より戦争に戻る訳だが……私から提案がある」








「……提案?ロベルトさんが?」
「エーデルワイスの関係者である者が、何故」
「そうとも。君達四人のマスターへ、私からも提議させて貰おう」

監督役からの発言に、明らかに怪訝そうな表情を浮かべるマスター達
冷ややかな視線も意に返さず。つらつらとロベルトは提言した

「既に、この町には数多くの暴虐が翻された」
「ライダーのマスター、アサシン。彼等の残した爪痕は深いものと思われる」
「うぐっ」


新重の起こした騒動が頭を過る。本人にはしっかりと反省する様に叩き込まれたそうだが……

「そこで私はこう考える。これ以上の戦闘は無意味であり、無駄であると」
「つまり、我々に令呪を以て自害を強要させろと?それこそ真に無駄な事」

否定を吐き捨て、軽蔑するクリスティーナ
他の英霊はともかく、彼女にとって令呪程度は何の足枷にもならないだろう

彼女からのにべもない返答にロベルトは、その言葉は予想していた。と言いたげに顔を歪めた

「……そうではない。私の真意は」

「『正当なる決闘によって、聖杯の所有権を決めるべき』だと言う事だよ」










「決闘?」
「それは……私達四陣営で、一騎討ちを行え。という事ですか?」

「いかにも。町に被害を一切出さず、我々の内で雌雄を決する。理想的な提案では?」

……確かに、市街地の戦闘はどれ程気を払っても被害は起きる
元より、貴方は町を脅かす危険と戦う為に聖杯戦争に身を投じたのだ



「ハイハイハイ!異議あり異議あり!それだとボク達が圧倒的に不利じゃんか!」
「正直、私はこいつを自害させね聖杯を譲ってもいいんだが」「何でボクが!?」

「それに、僕とバーサーカーは既に令呪を二画使っている。このままではアーチャーの勝ちが決まった様なものだ」

ぴょこぴょこと跳ねるキャスター、静かに手を上げたセイバーから抗議の声が上がる
二人の言い分は尤もだ。この提案は最善かもしれないが、明らかに公平性を欠いているもの

「あ?ならオレが優勝って事か!?これで聖杯はオレのモンだよな!な!」
「……実際、勝てるのか?バーサーカー」
「……三人でかかれば、あるいはと言った所か」


もう聖杯を取った気でいるのか、アーチャーは一人で盛り上がる
冷静に戦力を分析するクリスティーナだが、仮に三騎が結託すれば当然激しく抵抗するだろう

しかも、これは仮の構想。実際に戦うのは自分ただ一人……






「………………むぅ」
「マスター。言うならビシッと決めるんだ」
「わ、わかってるよぉ……!もう!」

ぐいっとセイバーに後押しされ、皆の前に出るアーディー
意を決したその表情は毅然と。三陣営に対して宣言した

「え、えっと……あの!エーデルワイスは!その決闘をお受けします!」
「ですが!天使を信奉する我が身としては一方的な蹂躙は許しがたい!」
「故に……えっと、センパイ……じゃない!バーサーカーのマスター!」「お、おう」



「私と……同盟を組んで……ください!」
「なっ!?」

差し出された手を凝視する。小さく震えながらも、確かに貴方に向けられた手を

「……いいのか?俺達で」
「言ってやるな。……マスターの気持ちを察してくれ」

「私は特に言う事は無い。セイバーは戦力として申し分の無い英霊だ。ふふふ……」
「笑わないでってば……もう」

……なら、その手を払う理由はない。不安を振り切る様に力強く。頷いて彼女の手を取った




「……ああ!宜しくな、アーディー!」
「あっ……は、はいぃ……」








「…………先、輩。その、私、も」
「あーーーっ!!ズルイズルイズルイ!ボクも同盟やるー!」
「まあ、私も彼に借りがある。どうだろうか、バーサーカーのマスター君」

キャスターからのタックルに吹き飛ばされ、頭を強かに打ち付ける
起き上がった時に見た光景は、ギリギリと首を締め付けられて、腕をブンブン振り回す彼女の姿だった


「え、まあ俺はいいっすけど……アーチャーはいいんすか?」
「はー???オレもいいんですが?寧ろ丁度いいハンデだオラァ!」

「ふむ……では、禍門のマスターよ。問題は無いかな?」
「アーチャーに対する、セイバー、キャスターにバーサーカー」
「彼等との決闘を執り行う事。ここに了承するかね?」




「あ、私、は」
「いいだろう!古来より坂松の土地を任された者として、外様の者には負けん!」
「こんな雑魚共、束になっても怖かねえ!倒せるモンなら倒してみやがれ!」
「……………………はい」

モゴモゴと口ごもるアキラ。何か言おうとしたのだろうか?
しかし、結局は二人の圧に押し負けたのか決闘を受諾したのだった


「後は、日程を決めねばなるまい。日付は……」



12345:今日の夜だよ
67890:明日の夜だよ
↓1




5:今日の夜



「……じゃあ、決闘は今夜か」
「よーし!ボク達で聖杯ゲットしちゃおう!」

六人で膝を合わせて会議を始める。議題は打倒アーチャーだ
ちなみに、場所はアーディーの家のリビング。それなりの広さに六人はやっぱり多かった

「まず、確認すべきは仮想敵であるアーチャーの情報だろう」
「奴の宝具、真名……わかるモノは多ければ多い程有益になる」

毎度の様にクリスティーナが切り出し始める。議論が好きなのか、その口調は心なしか弾んでいる

「そう言えば、センパイ達はアーチャーと戦った事は」
「無いな……だから、実際に戦った、共闘した二人の話が聞きたいんだ」


セイバーとキャスターは、実際にアーチャーの戦闘を見た事がある
時間の無い今、頼れるのは二人の情報だけだ

「……セイバー、どう?」
「詳しくはわからないかもしれない。何せ、奴は手を抜いていた印象があった」

「頭脳労働はお前の担当だ。頑張れ頑張れ」
「もっと頑張ってほしいかなー!!」



【どのくらい情報あるの?】

123:ちょっとよくわからないですね
456:多少は
789:核心に迫るレベル
↓1、2





8、9:勝ちの目が見えてきた




「……奴は、恐らく真の姿を隠している」
「どういう事だ? 変身とか、巨大化とかするのか」

貴方の頭にパッと思い浮かんだイメージを口に出す
子供の頃見た番組で、ヒーローは変身や巨大化するのはよく見た記憶が残っていた

「そうだ。……知っていたのか?」
「いや、適当に言っただけ……」
「僕の戦ったアーチャーは、もっと巨大な姿をしていた。本来の体積はあっちなのだろう」
「巨大化……つまり、巨人かそれに類する存在という事になるな」


「あ、巨人で思い出したんだけどさ。アイツの身体って鉄みたいでしょ?」
「そうだね……てっきり、鎧でも装着していたのかと思ってたんだけど」
「それがさー。アーチャーの身体は青銅で出来てるんだ」


……青銅の肉体を持つ巨人。それだけでもかなり真名に近づけそうだが

「……イーコール」
「イコール?マリアさん、どうかしました?」
「いー、こー、る。だ。アーチャーが炎を放つ時に叫んでいた言葉」

「掛け声……じゃないよな」
「知っているか、マスター。イーコールとは神の血潮を意味する単語」
「そして、今まで出てきた情報から、奴の真名は判明できる」

「私達の突破口もな……!」

クリスティーナの発言に周りがどよめく
アーチャーの真名、そしてその突破口とは何の事なのだろうか?

思考を巡らせる。まずはアーチャーの真名からだ


【アーチャーの真名は?】
↓1~3の中で正解があれば。無くてもそのまま進行します





アーチャー:タロス  正解



「……タロスか!」
「そっか、クレタ島の守護神……!」

ギリシャ神話にて登場する青銅の巨人。王妃を守護する為にその身を捧げた防衛兵器
千の槍、猟犬と共に王妃を狙う者を阻んでいたが、最期にはアルゴノーツ……に付いてきた魔女によって破壊された

「確か、踵の詮を抜かれた事で死んだんだ。もしかして……!」
「そうだ。アキレウスへのアキレス腱の様に、肉体に弱点があると見た!」

三騎の英霊を以てしても届かない強大な相手
暗中模索の真っ只中で、確かな一筋の光明が差し込んだ

「だが、それには奴に本気を……巨大化させねばならないぞ?」
「そこまで追い込むのは厳しいねー。あ、ボクは眠りの魔術は使えないから!」

だが、当のキャスター陣営からは否定的な声が挙がる
神話での死因である魔女、メディアの役割を彼女に任せるのは厳しそうだ

意気消沈するって貴方とアーディー。……対称的に、セイバーは妙案ありげに頷いていた


「……僕に、少しだけ考えがある」
「サーヴァントは引き続き僕と打ち合わせを行おう。マスター達は……」

「……休息を取ってほしい。恐らく、明日が正念場だろうからね」
「3P!3Pだね!?」「違うからっ!」

……とにかく。作戦はセイバーが主導して考えるらしい
マスターであるマリア、アーディー。貴方は体を休める為に各々休憩を取るのだった




【本日ここまで。次回はVSアーチャー】

【明日は早めの時間から、ぶっ通しでやる予定。安価は無いのでごゆっくりどうぞ……】


【(普段より)早い時間更新になってすまない……】

【8時からゆっくり更新していきます】





「……アキラちゃん」
「…………………………。」

「アーキーラちゃん!」
「……っ。お、お姉、ちゃん?」

約束の刻限まで後僅か。アーチャーのマスターである彼女は静かに時を過ごす
集中からか、姉の声は届かず。無線イヤホンを引っこ抜いてようやくその存在に気がついた

「あ、この曲私も好きー。アキラちゃんもこういうの聴くんだね!」
「……余計な、お世話、デス。返して」

流れていたのは巷で流行りのアイドルソング
彼女達と近しい年齢の少女達の、華やかな歌声が耳に心地いい
意外と好きなんだ。と妹の好みに驚きつつも、イヤホンは片耳から外さなかった


「瞑想ってやつ?集中して勝つぞーって気合い入れてた?」
「……邪魔。しないで、下さい。姉さんには、関係ない……!」

キッと睨まれながらも、その顔は飄々とした態度を崩さずケラケラと笑う千呼

「でも懐かしいね。昔は二人で歌とか歌ったのに」「…………っ」







「……どうして、姉さん、ばっかり」
「?」

千呼の言葉に反応したのか、アキラは辛そうに吐き捨てる

「私、だって……歌い、たかった」
「姉さんみたいに、キラキラしたかった……!」
「アキラちゃん?」

「なのに、私、は。後継者だから、って。魔術ばかり、呪術の事ばかり」
「どうして、私、が……私だけ、が……」


「歌っちゃ、ダメ、なんですか……」

吐き出す言葉は絞り出す様に。途切れ途切れになりながらも、確かに疑問をぶつけてくる
……どうして歌ってはいけないのか。と


「……そんな事、無いよ」
「………………あるん、デス。私は、禍門の魔術師だから」

「だから、庶務くんにも言えないの?」
「……っ!先輩は関係ないじゃないですか!」
「あはは。ごめんね!でも今はハッキリと言えたじゃん」「それは、姉さんが!」



「だから、きっと大丈夫だよ」
「勝っても、負けても!きっとアキラちゃんは大丈夫!」
「全部が終わったら、一緒に歌お!ね!」

「……行って、きます」
「見てて、姉さん。私は、勝ちたい」
「マリアさんにも、アーディーちゃんにも……先輩にだって」

刻限は来た。妹は戦場に向かい、姉は窓から来訪者を覗き込む
禍門邸の敷地内。三騎の英霊は既に臨戦態勢を整えていた







「……ふぅ。よし!」
「マスターは何もしないだろう。必要ないぞ」
「気分の問題だから!」

夜が始まり、気持ちも昂る
今回の聖杯戦争で最大規模の戦闘が、今まさに起動せんと肌に伝わる

「……アキラ!何をしていた!?」
「少し、集中を。……先輩」
「私は御三家として、そして、後輩として、貴方に勝ちたい……いや」



「絶対に、勝つ。……デス」
「俺もだ、アキラ。……必ず、倒すからな」



短い言葉を交わし合う。それだけで全て伝わると確信した二人は背を向け、元の位置に戻る
勝っても負けても恨みっこ無し。正々堂々と、貴方/アキラを倒すと宣言して

「……では、やるぞ。アキラ!アーチャー!」
「応よッ!くたばりやがれーーーっ!!」








青銅の巨人が吠え猛る。同時に三騎へと容赦の無い攻撃が落とされる
降り注ぐは熱と瓦礫。先日の戦闘で破壊された家屋の一部を禍門が預かっていたのだ

「ちょ、私達まで潰す気!?」
「こんなのアリなの~~~!?」
「とにかくここは一度下がろう!アーディー、マリアさん!」

あまりの情け容赦の無さに、後方にて指揮を執るはずだったマスターも危険に晒される
一時的に、戦線から遠ざかる。その間、英霊達はセイバーを筆頭として立ち向かっていた


「……こうなる事は予想していた。この戦闘は、僕達の力で勝つしかない!」
「だがどうする?奴の耐久は堅牢だ。私の剣はおろか、貴様の砲弾やキャスターの魔術ですら傷がつくかどうか」
「だから弱点をつこうって話だったでしょ?」

「勿論だとも。ここは……僕が攻める!」

身を乗り出したセイバーが、慈悲の剣を手に巨人へと肉薄する
それを撃墜せんと、一際大きなスクラップを放り投げる。……寸前、砲撃が鉄塊を破壊した








「ハッ!馬鹿の一つ覚えみてーに砲撃か!」
「んな事しても無駄なんだよ!イーコールの流れるオレに、炎なんざ……」

アーチャーの口上の途中で鳴り響く衝撃音。嫌な音を立てながらも、その正体を殴り壊した

「あぁ!?……船じゃねえか!てめえ、どういう了見だオイ!」
「当然、策の一つだとも……つかぬ事を聴くが、アーチャー」



「流石のアルゴノーツも、爆薬をありったけ仕込んで特攻なんてしないよな?」

再度。いや、それ以上の激しい爆音。殴り壊した船から閃光が迸り、先程以上の爆発が起きる
炎は恐くない、痛くもない。だが……肉体に走る衝撃は、青銅の肉体に罅を入れる事に成功した


「ぐぅおおおっ!?何だ、爆弾か!?」
「……“まさか!壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)”か!」
「その通り。……正直、船に火をつけるなんて頭がおかしくなったのかと思ったが」

「“太陽を落とした女”の考えた策だ!思う存分使わせてもらうぞ!」

……かつて、無敵の艦隊を打ち破った奇策
俗に『火船戦術』と呼ばれるそれは、常識破りで破天荒な船長の気性をよく表していた

当然、セイバーの持つ艦船は彼の指揮下にあるのでこの戦術を執るのは不可能だが……








「……“壊れた幻想”により、擬似的に再現したという訳か」
「確か、宝具に秘められた魔力を、暴発させる荒業、デス」

「そうだ。だが絶大な威力と引き換えに宝具を失う覚悟を伴う……!」


通常、宝具とはその英霊の象徴である代物
セイバーは『艦隊』という性質から、一つ二つを失っても替えが効かない訳ではないが……

「……どうだ、アーチャー!これが僕の覚悟!」
「貴様も意地を見せてみろ!それともこのまま船の藻屑に消えてみるか!」
「上等だオラァアアア!……おい、マスター」

挑発に乗るかの様に激怒する。寸前、アキラに声を掛けて

「ちっとデカくなる。……構わねえだろ?」
「……はい。勝って、くれれば」

その答えに満足したのか。アーチャーの肉体に魔力が満ちる
まるで映画か特撮の様。みるみる内に、その姿は摩天楼の様に聳え立った


『アーチャーのスキルを開示します』
 ◆巨大化:A
  自身の身体を巨大化させる能力。
  接近戦や数の多い敵と戦う時に効果的。






「……ここまでは、セイバーの策通りだ」
「後はボク達の出番ってワケだね!」

巨大な拳が大地を穿つ。一撃一撃の重さは、紛れもなく最高、最大の攻撃
セイバーは艦隊に飛び移り、時に砲撃を、時に船を突撃させて何とか均衡に持ち込んでいる

「今の内に、私が奴の足元に潜り込む!では、エンチャントをかけてくれ」
「ラジャー!」

キャスターが言葉を紡いでいく。神代の魔術がクリスティーナに力を与える
彼女が行ったのは禍門邸に吹き荒れる『突風』のエンチャント。戦場で起きた現象すらも利用して、光輝く剣を掲げる


「……行くぞ!ここに、終止符を打つ!」

疾風の様に駆けて、アーチャーに向かう
クリスティーナの敏捷は、特筆する程のものではない
だが、エンチャントにより大きく上昇している今の速度は目にも止まらない。直ぐに足元へと辿り着き、剣を振り上げた


「これで終わりだ……アーチャー!」








「『制止しろ』」「止まって……!」
「………………な……!」

クリスティーナの動きが止まる。いや、辛うじて動けてはいるが、明らかにおかしい
……事実として、何も間違った事はしていない。アーチャーの真名がタロスと判断した事も、足の詮を狙うという戦略も

「これ、は……!まさ、か……!」
「そうとも。“呪術”さ。英霊には効果が薄いかもしれないが……」
「二人、なら。あるいは。……通った」

しかし、それでも失策を挙げるとするならば
禍門の家の魔術師は言葉を操る呪術師であった事。マスター以外にも、補助する人物を失念していた事

……そして


「無論、懸念はあった。これがセイバーであれば対魔力で弾かれていただろう」
「当然キャスターにも意味はない。魔術師の英霊に魔術で挑む等、愚かの極みだろう」

顔色一つ変えずに憂午が語る。彼等の犯した、最も致命的なミスの内容を


「だが、『バーサーカーなら話は別だ』」
「対魔力を持たない。魔術の心得もない。それを覆しうる能力も持ち得ない」
「バーサーカー。『お前はこの場で最も攻撃してはならなかった』のだからな……」

「……アーチャー!標的を、セイバーから、バーサーカーに!」
「オオオオオオオオオ!!ブッ潰れろやああああああああ!!」




地に釘付けられたクリスティーナに、鉄の拳が墜ちてくる
大地すら叩き割らんとする一撃。並の英霊でなくとも消滅は免れない破格の質量

セイバーも砲撃を繰り出し、キャスターも魔術で押し留めんとしているが……

刻一刻と、死が近づいていた







「───! “令呪を以て命ず!”」

「“絶対に耐えてくれ!バーサーカーッ!”」



貴方の最後の令呪が光る。莫大な魔力がクリスティーナを包み込み、肉体へと染み渡る
瞬間、剣と拳が激突する。衝撃で大地は割れ、近くにいたセイバーの艦隊も一部吹き飛ぶ
だが……クリスティーナは無事だ。いや、“今は”

「な、この……!クソアマがァアアア!!」
「負けるものか……この一瞬!マスターに託された力に掛けて!」


「あわわわわ、どうしようどうしよう……!?」
「……セイバー!バーサーカーの代わりに、アーチャーを倒して!」
「了解した!全速、バーサーカーが折れる前にカタをつける!」

艦隊が高速で前進する。拮抗しているこの瞬間に全てがかかっているのだから
航路は開けた。邪魔をする巨人は既に手一杯の様で。デタラメに瓦礫を放り投げる事が精一杯の抵抗だった


「これで決める!砲撃、用意───!」

足の詮に向けて、ありったけの砲弾を叩き込む
一撃、二撃、三撃。壊れるまで何度も、何度も繰り返し

そして有に数十発は越えた頃、その時は訪れた







「ぐっ……がァアアアああアア!!!」

パキン。とガラスが割れる様な音が鳴り響く
足には無数の罅が入り、凹みの数がその衝撃を物語る
そして、砕けた破片は塵と消え、足からは煌々とした液体が漏れだしていた


「……アー、チャー」
「クソ……三対一とか卑怯じゃね?」
「それを了承したのは貴様だろうに……」

クリスティーナが呆れながら声を挙げる。その身はボロボロになりながらも何とか無事で
しかし、タロスは既にグズグズに崩れそうで。辛うじて現界を保てているのも、単に単独行動のお陰であった

「けど、チクショウ。マジでダメだコレ。何か変な呪い掛けやがったなあの魔女」
「……ごめん、なさい。私が、未熟だったから」
「そう言うなよ。お前ってさ、なんとなくあの姫様に似てんだよ」
「顔や仕草は全然似てねえのにな。……これ、やるよ」

そう言って差し出したのは小さな破片。タロスの体表と同じ色の、ブロンズの御守り


「ホントはよ、エウロペにやりたかったんだ。けどその前に死んじまったから」
「……持っててくれよ。何か役に立つかもな」

言い残し、アーチャーは霧散する。霊基の限界が訪れたその身は、数秒には消え去るだろう




───“タロス。貴方はよく頑張りました”

───“本当に、私の自慢の友人です。いい子、いい子……”

ふと、可憐な女性の声が聞こえた気がした
その言葉は、果たして一時の胡蝶の夢だったのか。それとも、もしかすると……







「……今しがた、禍門の脱落を確認した」
「残る陣営は三。だが……これ以上の戦闘は必要あるまい」



闇の中から突如現れる第三者。その言葉は淡々と事実を伝えるに留めている
しかし、その中に知り得なかった事実がある。その真意を問う為に、貴方は第三者に質問した

「これ以上の戦闘は必要ないって……どういう事ですか。ロベルトさん」
「簡単な事だ。既に少聖杯は降臨している以上は戦闘の意味がない」
「…………?」

理屈がよくわからない。少聖杯とは何の事なのだろうか?そして何故戦闘の意味が無いのか?

「あー、ここらの理由はセンパイにはわからないと思うよ。ロベルトさん」
「ならば着いてくるが良い。……そこで、全てを話すとしよう」

闇に溶けていく監督役。その姿を追うように、アーディー、マリアもついていった

「……よくわからないが、聖杯はあるのだな?」
「では行こう、マスター!栄光の未来はすぐそこにある!」
「いやどこかもわからないだろ……」

とにかく、付いていかねば話にならない
クリスティーナと貴方は、同じようにロベルトの背中を追っていった



【本日はここまで】






「……聖杯とは、独立した機構ではない」
「大きく分けて二つ。英霊の魂が座に戻る際に動力を溜め込む器、実際に力を行使する器」

夜も更けてきた町の中を、複数の人間が進んでいく
普段ならばまだ寝つかぬ頃合いだが、今夜はやけに静まり返っていた

「エーデルワイスの家は、遥か遠くの錬金術の家とコネクションがあったと言う」
「そのせいかは知らないが、当主シュヴァルツは天使の聖杯を起動する術式を模倣した」

「これこそが、君達が今まで戦争を繰り広げた意味であり意義。……質問はあるかな?」


「特に無い。とっととその聖杯とやらを拝ませて貰おうか」
「……あの、失礼かも、しれないんですが」
「構わないだろう。俺も御三家の一人、聖杯を確認する事に異存があるか?」

おずおずと問いかけるアキラに、サングラスを外しながら答えるドミトリイ
確かに、敗北したと言えど御三家である以上は聖杯に立ち合うのは義務なのかもしれない



「ここだ。この地下道を通った先、聖杯は安置されている」






「……これ、どこまで続くの?」
「さあ……」

薄暗い地下道を黙々と下っていく。広い事には広いが、それ故に距離感覚を惑わせる




「そろそろ着くはずだ。そこで知るだろう」
「この聖杯戦争の、本当の目的を……」
「……?それ、さっき話してませんでしたっけ」


貴方の疑問に答えぬまま、暗い道をゆっくりと歩んでいく
再度言おうか。と思ったものの、思考をかつての道程に馳せてみる事にした


それは、数々の奇跡と苦難を辿った証明

無数の人間が果たせなかった望みの残骸。一縷の希望を託した一歩

本来ならば参加する資格も、願いも無い貴方

歩む足は不思議と軽く。心は寧ろ鼓動を増す

自分一人では為しえなかった、まさしく奇跡

バーサーカー、クリスティーナ。バロックの女王。最も自由な女王

彼女への感謝は尽きる事はない。彼女は、自分の

「……ついた。ここが、こここそが、我が悲願の到着点……!」







「……地下に、空洞?」

「そもそも、ここってどこなの?」

「立地的には、高校の地下……デス」

「こんな所に地下空洞……?俺の資料には無かったはずだ」

「ふむ、秘匿されていた区画と言う訳か。聖杯を隠すにはお誂え向きだな」


マスターの反応はどれもまちまち。感心する者や困惑する者、人それぞれに様々な顔を見せる
……だが、彼等のサーヴァントは違っていた

「……マスター、下がれ。ここは」
「うげえ……何か嫌な感じがすると思ったら!」

「セイバー?どうかしたの?」
「何だ急に。異様に面妖な空気は感じないが」

剣呑な雰囲気のサーヴァントに、二人も怪訝な顔をする
それを意に返さず、ロベルトは空洞の中心部に進んでいき……何かを照らす

照らし出された地面には、『貴方も見た事の無い』模様が描かれていた


「……これは、“英霊の召喚陣”!?何で!?」

一際大きく困惑したのは、アーディーだった
英霊の召喚する際、特殊な陣を描く必要があるとは知っていたが……

それでも、ここまでの規模のものは異常であると。素人の貴方ですら理解できた







「ふ、フフフハハハハハ!!何故かだと?」

「当然!……『天使様と結ばれる為』に決まっているだろうがァ───ッ!!」






「……は」
「貴様……やはり、未だエーデルワイスと繋がっていたか!」
「違う……違う!本当に、ロベルトさんは私達と手を切ったはずなんだ!」

疑いを否定するかの様に、困惑しながらも発言する
それを嗤いながらロベルトは謳う。高らかに、愛おしげに

「そうとも。あの家はダメだ、天使がこの世に存在すると頑なに盲信している愚か者」
「矛盾しているぞ。天使と結ばれる為にこんなものを用意したんじゃ無かったのか?」
「知った口を聞くなッ!吸血鬼風情が!」


「私は“この世にはいない”と言ったんだッ!ならば天使様はどこにいらっしゃるのか?」
「───そう。“あの世”だ。ならば答えは既に得たり!」

「悪徳を為し!裁きの時を迎え!───天使様と結ばれる」
「何とロマンティック……古今東西のラブストーリーであろうとも霞んでしまうこの純愛!」
「完璧だ……完全無欠の我が恋よ、今こそ成就する時である!」



「何言ってんの?この人」
「黙ってて!……英霊なんて呼べる訳ない!無駄なんだ!」

「……若いな、アーディー。こんな言葉を聞いた事がないかな?」
「───愛は、必ず勝つ」








ロベルトの言葉は、まるで要領を得なかった
だが、それでも、ハッキリと言えるのは……

「……マスター、逃げろ!今からサーヴァントが召喚される!」
「何故だ……何故!聖杯戦争は終盤のはずだ!英霊を召喚する余地などありはしない!」

「あるとも。現にそこの……バーサーカーのマスターよ」
「君の存在こそが何よりの証拠だ。土壇場で新たな英霊を喚び、契約した者がいる!」
「………………!」

貴方は偶発的にクリスティーナを召喚し、契約を結んだ
その理由は、今までは新重の描いた召喚陣が原因だろうと考えていたのに……!



「まさか、聖杯から直接召喚したのか!?」
「……そうか。不思議ではあった。詠唱も無く、触媒も無いのに何故私が喚ばれたのかが!」

「聖杯の真上で、召喚を望んだ、から……?」
「素質の全く無いセンパイに、聖杯が勝手に英霊をあてがったって事……?」





「何でもいい。何でもいいさ!積年の恋を結ぶ英霊よ。抑止の輪より顕現せよ!」

最後の叫びに呼応して、一際強く召喚陣が光り輝く
そして、光の中から現れたのは……




「───嗚呼、よくぞ降臨なさいました」

「堕天使。世界の破壊者。奈落の魔王!」

「五体の英霊が死する時、福音と共に表れた貴方こそ……」

「我が恋を幸福なものにするに相応しい!」

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/〃戦滅ヽ/// Ⅴ: :/.:./亡戦 :: : ./: : :/
/i{.戦怨凶.\/ム : : :./怨争殺.!: : : i: : /
/∧殺恨争 .〉, ∧/恨邪凶亡. : : :/: :/
///〉,滅 ..イ//.〕Y:.^:,、殺怨 .:: 〉 /: :/. /:.∨
 ̄\//¨´//// .i : : : : ¨´: :/ ̄}!: イ  /: : :∨
\//》////////, : : : : : : : / ./: :/: : 〉 |: : : : ∨          > ´
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「───“アバドン”よ!」


【ゲリラ更新はここまで。明日になったからセーフ!】

【明日はラスボス戦をお送りしたいと思います。長かった本編もあと少し……それでは】

アバドンのガワは今日最終回を迎えたゼロワンか

バッタモチーフの仮面ライダーで今まで居そうで居なかった蝗害モチーフのゼロワンメタルクラスタだね






「……アバドン」

思わず、口に出したその名前
目の前に現れたサーヴァントの真名。ギチギチと不快な音を立てる銀のヒトガタ
その眼は……いや、眼“らしき”部位は此方を正面に見据えていて


「アバドン……黙示録に登場する奈落の王!」
「黒い太陽、カルデアの信仰と同一視される蝗の具現化か……」
「そして、私に遣わされた天使でもある……」

陶酔しきった声の主、ロベルトはうっとりと天を仰ぎ見る
まるで、すぐそこに愛しい天使がいるかの様に頬を朱に染めながら



「此より、アバドンの宝具によって坂松の町を喰らい尽くす」

「勿論、誰も殺さない……殺させない。その悲鳴は、怨嗟は、天上に響かせるものなのでな」

「そして、五ヶ月……五ヶ月だ!地には苦痛と呪詛が満ち足り、私の前に降臨する!」

「──アバドン!私の夢を叶えろッ!その権能の一端を!今!この世に!解き放つのだァーーーz______ッ!」




『命令を受諾しました。此より、宝具【災為す虫皇】を開帳します』






無機質な、機械的な、声というより音声を放つ
だがその声を二度と聞く事はない。何故なら、既に耳を覆うのは虫の羽音のみ

──アバドンの宝具が、地下空洞を、マスターやサーヴァント達を蹂躙していた



 ◆『災為す虫皇(アポリオン・クラスタ)』
  ランク:EX 種別:対人類宝具 レンジ:─ 最大捕捉:─
  無辜の怪物、際限無く沸き出る蝗の群。死さえも赦さない裁きを与える権能の一。
  人類が戦い続けた“蝗害”の具現。災厄を剣に乗せて世に解き放つ掃討進撃。


 ◆『空牙、顎、流飢(サカ・トフ・イナ)』
  増殖した蝗の大軍。人を喰らう異形の嵐。
  十の災いの八番。空を覆い、死すら慈悲になる五ヶ月もの責め苦を与える蟲達のあぎと。

  自らの飢えを満たすため、手当たり次第に貪り食う。所詮は虫なので一つの範囲は微量。……無数の群生さえ成していなければ。
  小さいが故に容易く隙間に入り込み、完全に防ぐ事は至難の技。堅牢な城塞だろうと齧り尽くされ、鎧をすり抜けて食い散らかす。
  この蟲こそがアーチャーの剣であり、弾丸であり、鎧であり、肉体そのもの。



「ガッ、ゲホッ!ぐ……!バーサーカー!」
「息が……!それに、反響で衝撃が酷い……!」
「あぁもうウザったい!そりゃあーっ!」

キャスターの魔力弾が、蝗の軍を掃射する
辛うじてスペースを確保した彼等は、皆一斉に駆け寄った

「ふぅ……助かったぁ……!」
「だが、これでは解決策にはならないか……」
「ボクもそろそろ限界なんだけど!結界が食べられてるし!?」

キャスターの張った簡易的な陣地の外は、羽虫の羽音とガリガリと削る音が響いている


「……あれ、けど」
「どうかしたか?アキラ」
「なんだか、数が……減っている、気が」






確かに、アキラの指摘通り数が減っている
視界を覆うばかりの虫は、今は数多くと言っても目が潰れる程はいない

助かったのか。甘い思考は即座に否定される

「……マズい事になった」
「ドミトリイ、どうしたの?」

「わからないのか!蝗は坂松の街に出ていったんだ!」
「このままではどうなるかわかるだろう!?」
「「はぁ!?」」

……ロベルトは確かに言っていた。“坂松の街を喰らい尽くす”と
この規模の蝗を何の対策も無い街に放てばどうなるかは、簡単に想像出来る
街にも、人間にも……壊滅的な被害が出る……!


「なら、早く倒さないと……!セイバー!」
「いや……ここで奴に拘って、街に被害が出る方が深刻な問題だ」
「じゃあ、どうするん……デス?」
「それは……」

誰も、何も答えない。一刻を争うこの状況で、下手な事は時間の浪費にしかならない
鳴り響く羽音も思考を刻む。集中する事もままならない極限の状況で、確かに彼等は追い詰められていた



「……何を迷う必要があるのか」
「街に出た蝗の処理は、対軍規模の攻撃が可能なセイバーとキャスターが適任だろう」
「私が奴と戦う。……構わないな。マスター!」






「……そう、だな」

クリスティーナの宣言を、頭の中で噛み砕く
他のサーヴァントは駆除に向かい、アバドンとの決着は彼女がつける……

確かに、それが一番合理的かもしれない。が……

「……勝てるん、だよな」
「誰に向かって言っている」
「だよな」

彼女の答えに、苦く笑う。……そうだった。彼女はいつでもこうだった
不敵に、不遜に。やりたい事をやり、為すべき事を為す。……誰よりも、自由に


「……ああ!ここは俺達に任せてくれ!」
「任せられるか。……俺も残る」
「わ、私……も!先輩の、近くに……います!」

ドミトリイ、アキラが貴方の側に立つ。ここに残り、力を貸すと宣言した
その言葉が限りなく嬉しい。そして、託された者も覚悟を決めて、頷く



「わかった!……絶対に生きて!」「勿論!」
「約束しちゃったね~オンナノコとの約束は命よりも重たいよ?」
「死なれると辛いのは残された方だ。……君ならわかるだろう」

「それでは……行くぞ!僕の船に乗れ!」

四人の姿は既に無く。セイバーの船に乗り、街へ向かって進み出す
同時に、結界が破られる。無数の蝗が貴方達を喰らわんと顎を広げ……






「……させるか!」

ドミトリイの炎の縄が鞭のようにしなり、蝗の群を薙ぎ払う
全滅に至らずとも、周囲の蝗はバラバラと脆く崩れ去る。……耐久性が皆無なのは幸いだ



「……アバドン!奈落の王よ!」
「貴様を地上に出す訳にはいかない……ここで、消えてもらう!」

クリスティーナの声に反応したのか、アバドンはゆっくりと此方を向く
ぐにゃり。人間とは思えない動きで剣を構え、蝗が波の様に周囲をうねる



『敵意確認、敵対存在認証。……脅威、低確率』
『実行不全確証、排除可能確率。一零零零』
『排除開始。排除開始。排除開始。排除開始』




「排除されるのは……果たしてどちらか!」
「これが最後の戦闘!最後の戦争!……勝つ!」

クリスティーナとアバドンの剣が重なり、火花を散らす

坂松市の聖杯戦争。天使の杯を廻る闘争。その終幕を飾る戦いが

今……ここに。幕を開けた




【取り敢えずここまで。夜まで書けたらやりたいなーと】

>>689 >>690
【正解。代理AAは仮面ライダーゼロワン メタルクラスタホッパー(仮面ライダーゼロワン)でした】

【今日がゼロワンの最終回。記念という訳でもありませんが、間に合って良かった……】



【それでは、最終決戦を投下します】







……その頃。坂松の街は、混迷を極めていた
突如沸いた蝗の群れ。街も、人も区別無く襲う大災害として覆い尽くす

戦場と化した街の中。それでも懸命に立ち向かう人間がいた


「クソッ!何だこの虫は!?これもガイスロギヴァテスのせいか!?」
「……?会長は異変の原因を知っているのか!」
「とにかく、今は街の人の避難を優先させた方がよくないですか?」

「そうだ!庶務と会計は無事か!?先程から、連絡がつかないのだか!」
「うーん……多分、無事じゃないですか?」

潮、林道、新重の生徒会役員。彼等は街を駆け抜け生徒達を避難所へと誘導していた
何の事はない。放置していたら、潮の信頼や命がどうなるかわからないから付き合わせているだけなのだ



「ああ厄介な!虫けらが私の輝かしい未来の邪魔になるなんて……!」
「だが、ほとんどの生徒は既に避難を完了している!我々も早く避難所に……むおお!?」

気がつけば、彼等が虫の大軍に囲まれていた
避難し、餌が減った今。彼等は無防備な犠牲者でしかない

「……よう。苦労してんなぁ、若いの」
「ちっと手を貸してやるよ。……にっひひひ」








「むっ……蝗の群れが!」
「わーありがとうございます。……子供?」
「き、貴様は……!?」

「ま、通りすがりだな。さっさと走りな」
「今は振り払ってやったが、すぐに戻ってくるからなぁ。ひひひっ!」

ケラケラと笑う子供、禍門招福が生徒会を先導する
走る度に周りの蝗は避ける様に引いていく為、魔術師でない林道も安全に走っていた

「きゅ!きゅきゅ!」「げっ……」
「む、貴様は……誰だ?」「えーと、先輩でしたよね」

「おお!鹿黒か!無事だったんだな!」
「お前がしつこく連絡を入れてたからだろ……」

途中で遭遇した鹿黒とヴィオレも共に走る
いつの間にか大所帯になった生徒会は、招福に導かれるまま進んでいった




「む?今、花火の様なものが」
「気にするなよ。間に合わなくなるからなぁ」



「……こっちは何とかしてやったんだ。後はあんた達の番だぜえ?ひゃっひゃひゃひゃ!」








「撃て!撃て撃て!あらん限りの砲撃を!」

坂松市の上空で号砲が唸る。その度に蝗は粉砕され、欠片も残さず塵となる
……これを、もう数十はこなしているが、未だに止む気配が感じられない


「昔、駆除に大砲が使われていたそうだが……」
「ちょっと数が多すぎない!?もっといっぱい船を出してよ!」
「無茶を言うな!先の戦闘で、半分近く失っているんだぞ!」


叫ぶセイバーだが、キャスターの言うように艦隊の数はかなり少ない
つい先程行われていたアーチャー戦で、数多くの船を特攻させてきたツケが回ってきたのか
その量はやや心許なく、そのせいで余計に手間取っている

「あぅ……!何とか街からこっちに注意を逸らす事は出来てるけど……」
「このままでは、私達が先に喰い殺されるな」

蝗の猛攻は凄絶の一言に尽きる。何せ火の海の中すら飛び込み、突っ込んでくるのだから
分身ですらこれ程ならば、本体と戦っているクリスティーナは無事なのだろうか?
アーディーに出来る事は、ただひたすらに祈る事だけだった



「センパイ……!」









「“灼牙の蛇(ヴァイパー)”!」

地下の空洞内に、煌々と照らされる円の陣
炎を纏ったワイヤーが幾重にも張り巡らされ、貴方の周囲をぐるりと囲む
いかに恐れを知らぬ蝗であろうと、暫くの間は安全地帯として使えるだろう

「俺に出来る事はこの程度だ。後はお前がなんとかしろ」
「……わかったよ。ドミトリイ」

それだけを言い残し、すぐさま陣の維持に集中する
貴方は遠くで鍔競り合うクリスティーナとアバドンに意識を戻す

……実力はそう離れていない様に見える。だが、周りの放つ不快音が身体を刻んでいた


 ◆不穏な羽音:A+++
  産み出された眷属達の羽ばたく羽音は、人の根幹を精神的に切り刻む。
  眷属の数を増す程その音は激しくなっていく。最大限に高まると、常人ならば精神を崩壊してもおかしくはない。
  精神耐性や幸運判定。そして、あくまでも音なので、耳を塞ぐ等の物理的な手段を取れば抵抗可能。


「くっ……はぁっ!」
『肉体損傷確認。修復機能全稼働』
『損傷軽微。排除再開』

おまけに、幾ら切り裂いてもダメージがある様にはとても見えない
何度攻撃を受けても、すぐに回復してしまう……









「……魔力を外から回収しているのか?」
「外、から?それって、いったい、どこから」
「恐らく、先んじて街に出た蝗がダメージを上回る程の魔力を回収しているのだろう」

「じゃあ、それ以上の攻撃を叩き込むか、外の蝗を壊滅させないと」
「奴は事実上の不死身という訳だ。……全く、厄介な奴を召喚したものだな!」


吐き捨てながら、周囲の蝗を焼くドミトリイ
しかしそれも総体で見れば微々たるもの。即座に数は戻り、増殖する



 ◆個体増殖:EX
  自己と同等の存在を産み出すスキル。眷属のセルフコピー&ペースト。
  自己改造の亜種であり、このランクが高い程真っ当な英霊とはかけ離れていく。
  このスキルにより産み出された個体は脆弱性に問題があり、大きさは掌程度、人の手でも駆除できる位には弱体化してしまう。
  しかし、そんな事すら問題にならない程に産み出す速度が尋常でない。増殖した眷属は、瞬く間に世界を覆い尽くす。



「ダメだ、バーサーカーに対軍宝具は無い」
「外のセイバー達に任せるしか……!」

貴方に出来る事は、ただ祈るだけ。奇しくも、アーディーと同じだった……







「はぁ、はぁ……!」
「駄目だ……マスター、令呪を……!」
「わかった……!“汝がマスター、アーディー・エーデルワイスが令呪を以て命ず!”」


「“宝具全開!吹っ飛ばして!”」
「行くぞ───!“太陽落とす嵐の夜”!!」


令呪の後押しを受けた一斉砲撃。天空を、大地を飛び回る蝗のほとんどを消し飛ばす
だが、それでも、全滅するには至らない。悠々と跋扈する姿は最早悪夢か幻かと願うほど
無尽の軍勢は、全員の心を折るには充分過ぎた


「嘘……なんで、なんでぇ……!」
「駄目だ。僕はもう魔力が……くっ!」

「……キャスター。手は無いのか?」
「え、ボク!?」
「お前以外に誰がいる!?この状況を打開する可能性があるのはお前だ!」
「マスターとして、そして魔術師として。お前を頼っているんだよ。私は」

いつになく真剣なマリアの顔。普段はおちゃらけているキャスターも、今は神官として頭脳を動かす



「うーん……。……要は、魔力と火力を両立させればいいんだよね?」

「一つ思いついたんだけど……試してみる?」








「……何だ。聞かせてくれ」
「まずはマスター。令呪をアーディーちゃんに渡してくれない?」
「令呪の移行はボクがやるよ!キャスター伊達にやってないからね」

「……構わん。そら、手を出す」
「あ、はい!……ありがとうございます!」

テキパキと二人の腕から令呪を移動させ、アーディーの令呪が二画増える
しかし、これだけでは先の結果と何も変わらないだろう。もっと広い範囲を撃破しなくては……


「そう、そこでボクの宝具の出番ってワケ!」
「セイバーの艦隊を、失う前に戻す。それならあの蝗の大軍だって蹴散らせるでしょ?」
「……だが、あの宝具は運任せだろう」

尤もなマリアの指摘にてへへと笑う
バレたか。と言いたげに、悪戯っぽく。しかしそこにふざけた態度は感じられなかった

「うん。でも成功させるよ……絶対」
「ボクを信じて。キャスターの英霊として、君達を必ず助けてみせるから」







「それじゃ……やってくる!皆!」
「ボク、楽しかったよ!信仰を取り戻す事は出来なかったかもだけど……」


「それでも、無駄じゃなかった。こうして世界を救えたんだから!」

ありったけの魔力を回す。宝具である石盤を起動させ、円環は廻る
最初から出し惜しみはしていない。限界はとうに超えている。腕が、目から血が流れる

「それでも……!やらないと……!」
「ボクは神官なんだから……!イナンナ!ボクに力を今だけ貸して……っ!」

「……うあああーーーっっ!!!」




円環が罅割れる。遠心力で煙が上がる。ガタガタと揺れ、崩れ……弾けた
自らの霊核を以て制御した運命の石盤は、その熱量に耐えきれず霧散する

だが、運命は変えられた。一人の神官の献身によって



「あはは……良かった。けど、せめて……」
「太陽……見てから、消えたかったなぁ……」

空が白む。夜の終わりをしろ示す光が果てから差し込んでくる
その柔らかな光を浴びながら……キャスターは、粒子となって消滅した










「……エーデルワイス!」

マリアが叫ぶ。為すべき事を為せ。と


「わかってる……!“セイバー!汝がマスター、アーディー・エーデルワイスが全ての令呪に以て命ずる!”」
「“全力、全開!全ての力を以てして、蝗の夜を終わらせて!”」


アーディーは願う。この夜の幕を引け。と



「……ありがとう。キャスター」
「太陽を落とした女……ドレイクよ。あの朝日を取り返す為、力を僕に貸してくれ!」

「だから、これは……!この一撃はこう呼ぼう」

「“黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)”と───!」


セイバーは放つ。極光の流星雨が、有象無象を消し飛ばしていく
増殖の速度も追い付かず、追い越していく。光があまねく夜に終末を与えていく

……そして、大軍のおよそ九割九分。ほとんどの蝗を掃討した三人を迎えたのは……



「綺麗な、朝日……」






『……emergency!emergency!』
『総体に甚大なる負荷を確認しました。総体に甚大なる負荷を確認しました』
『修復機能を停止します。総機能を再生に移行します……』

「な、なんだ?」

突如、アバドンの動きが停止する。そして、蝗の群れも同様に
まるで、その姿は壊れた機械。深刻なエラーでも起きたのだろうか、急速に群れが集っていく


「……今だ!奴を仕留めろ!」
「恐らく、外の軍勢が大きく損傷したんだ。故に大本であるアレもダメージを受けている!」

「何をしている、貴様も行け!バーサーカーの近くにいる程、魔力のパスは強くなる!」
「あ、はい!……待ってろ、バーサーカー!」

結界を飛び越え、クリスティーナの元へ走る。焼ける空気と異常な腐臭が肺を侵す
しかし、この気を逃せば本当に勝ち目が無い。無我夢中で駆け抜けるしか……!

「なっ……蝗が……!」

だが、アバドンの防衛機構か。無数の蝗が貴方の身体に纏わりつく
羽音が耳を、頭を、心を蝕んでいく。思わず足がすくみ立ち止まりそうになる……



「あ……先、輩。先輩!」
「ダメ、負けたら、ダメ、デス……!」






「……っ!“────!!”」
「………アキラ?」

羽音をかきけす様に、一つの歌が聞こえてくる
貴方だけに届く、可憐な声。貴方だけに伝わる必死の応援
それが後輩のものだと気づき、その言葉は自分を信頼しているものだと響く

“負けないで”

“折れないで”

“立ち止まらないで”

“──私は、貴方が大好きだから”


彼女の後押しで、貴方はまた走り出す。蝗の牙すら振り切って



『アキラのスキルを開示します』

 ◆反転呪式・言祝    
  他者を害する呪の力を賦活の効果に反転させるオリジナルの術式。  
  相手を慈しむ、勇気づけるなどの気持ちを込めて歌う事が発動のキーとなる。

  
  歌にのせるは真なる想い。彼女の名と同じ、陽の力。  

 【発動条件:相手への感情が信頼以上】
 【対象に大きなプラス補正を与える】


「……悪い、クリスティーナ!遅れた!」
「気にするな!……そこで見ていろ、私の、最期の生き様を!」








「───此は、私が歩んだ戦争の終着」

紡ぐ。宝具開帳の詠唱を



「心の叫びを聞け──命を燃やし尽くした一人の人間の生きざまを!貴様にくれてやる!」




「我が願いを捨てて……奈落の王を砕く!これが人間の意地だと、証明する為に!」




「私の生きざま、見せてやる!“我思う、故に私は(バロッケンズ)……”」

「“……………ありのままに(ドロットニング)”」

クリスティーナの剣がアバドンの胸を貫く
先程まで修復していた傷も、今は治る事も無く崩れ去っていく……


「アバドン。貴様は人間の悪徳を粛する為に蝗を世界へ蔓延らせるのだろう?」
「だが、私の剣は“人間の美徳”を象徴する剣。……なんの事は無い。まだ粛正される程、人間は腐ってはいないという事だ」


 ◆美徳の剣
  カトリックの教義である「七元徳」の概念武装。彼女のお気に入りの武器。
  聖堂教会の扱う概念武装がメチャ格好良くて美しかったので、コネで頼んで作らせた。
  七元徳内の一つの徳が主体として刀身を形成し、その他の徳は柄の内部に収まっている。
  なお、この概念の素体は、スウェーデン軍に強奪させたルドルフ二世のコレクションに含まれる、とある芸術家の作品である。







『中枢機構損傷、再生率零零零一』
『さ最終結論かか活動不可能uuu。機能停s機能てissssssssss……』

『……警告:人理を、存続、せ、よ』

『pf5p~2xg6ga3wui3.c2ptf4pjx…………』


アバドンが崩れていく。同時に、蝗も欠片すら残らず消えていく
……終わったのだ。これで、全ての戦いが!



「……よっしゃああああ!!」
「全く……気楽なものだな。本当に」
「む、いいだろ別に。これでもう聖杯戦争は終わりなんだ」

高揚感に飛び上がる。本当に、自分がここまで戦えたなんて想像すらしなかった
その様子を見ていたクリスティーナは、呆れた声を挙げながら微笑んでいた

「クリスティーナ、これでお前の願いも叶うんだ!嬉しくないのか?」
「ふ、まあそうだな……嬉しいか、嬉しくないかで言うのなら……」

「私には、もう関係ない。か」「は?」

あまりに彼女らしくない言葉に、一瞬耳を疑う貴方
そして、気づいた。……彼女の身体は、光の粒子となりつつある事を







「な、なんで。俺達は、勝っただろ!?」

言葉が出ない程、その事実に思考が乱れる
辛うじて放った言葉も、疑問をぶつけるだけに終わってしまう


「ああ。だが……限界だ。私は、アバドンを倒すのに全ての魔力を使いきった」
「私の宝具……“我思う、故に私はありのままに(バロッケンズ・ドロットニング)”」
「私は信念として、死ぬべき時に死ぬ。……そう心に決めていたから」

「恐らく……私は、アバドンを倒す為に聖杯から選択された英霊なのでしょう」
「だからこそ、願いを持たない貴方の力として聖杯戦争に参加させた」


だが、クリスティーナは冷静だ。淡々と事実を伝えていく
きっと、覚悟はしていたのだ。ここが、本当の意味で貴方と戦う最後になると


「何で……何でだよ!何で、俺に……!」
「言うだけ無意味でしょう。貴方は欲の無い、それでいて繋がりを求める人間だった」
「もし、これが最後だと言えば……貴方は、戦う意志が無くなっていたでしょう?」


無意味。その言葉が心にのしかかる
それでも不思議と、嫌な気持ちはしなかった。寧ろ……


「……そっか。ありがとな」
「ええ。貴方が私をを理解しようとしたと同時に……私も、理解しようとしたのです」








互いに笑い、拳を重ね合わせる

貴方と彼女は寄り添わず、さりとて見捨てず

そんな距離感が二人の主従としてのスタンス。自由な女王と、振り回される貴方

二人を繋ぎ合わせた意志の強さ。全く似通わぬ英霊とマスターだったが……



「……どうだ?私は素晴らしい英霊だろう?」

「ああ、本当に!お前と戦えて良かった!」

ハイタッチの音が響く。それは心地よく、貴方の心の中に永遠に鳴り続けるだろう
かけがえの無い宝物。クリスティーナと戦い抜いた日々こそ、貴方の願いだったんだ



「クリスティーナ!」
「…………ありがとう。バロックの女王」

「ふふ、今回はその言葉だけを報酬として受け取りましょう」
「これは私からの報酬……。……耳を」
「ん、ほら。…………え?」

耳元で囁くその言葉。貴方は少しだけ驚くと、その目からは涙が溢れていった


「その言葉は、私の人生を変えた言葉」

「どう捉えるかは、貴方の自由。縛るつもりは毛頭無い」

「……貴方の生きざま。見せてみなさい───」


……泣いていたのは、幸運だったのかもしれない
だって、本当は言いたかったから。行かないでくれ。と

だから、静かに見送れた。光の彼方へ消え行く彼女を……








「……終わったか」
「せ、先輩。その……」

最期まで見守っていてくれたのか、ドミトリイとアキラが声をかけて来た
随分とみっともない姿を晒してしまった。二人とも気まずそうに目を逸らす


「……悪い、もう大丈夫」
「そうか……ふん。泣き喚かないだけマシか」
「それじゃ……ロベルトさんを捕まえに行こう」
「あの人を捕まえて、話を……っ!?」

突然大地が揺れ動く。地震かと思ったが、どうやらそれは違うようで

「これは……!奴め!罠を仕掛けていたか!」
「モタモタするな、このままでは地盤の沈下に巻き込まれるぞ!」

「えっ、なら学校は」「知るか!」

「じゃあ聖杯は」「エーデルワイスに聞け!」


ドミトリイの焦る声。アキラと貴方の質問にすら取り合わず、逃げる事を優先する

二人も慌てて地下空洞から走り出す。……最後の最後まで、慌ただしいと苦笑いを浮かべながら





【本編はここまで。次回はエピローグから】

【あとほんの少しだけですが、お付き合い戴ければ幸いです】


【それでは、エピローグを投稿していきます】

【最後の方に今後の進め方を説明するので、よしなに】





……あれから、それなりに時間が経った
今でも、ふと思い出す。怒涛の、駆け抜ける様な日々の事を

「……い、おい!」「うおっ!?」
「貴様……私を無視したな?庶務の分際で、生徒会長である私の言葉をシカトしたのか!?」

しかし、それは過ぎた日々。こうして貴方は、またいつも通りの日常に帰っていた
誰も、何も変わらない。かつての大災害等最初から無かったかの様に、普段通りに過ごす毎日

「いや、別にそんなつもりじゃ」
「何だ貴様口答えする気か!?いつからそんなに偉くなった私に楯突ける様になった!?少しばかり経験を積んだからと随分と調子に乗っているじゃないかこのボンクラが!私を舐めているのか?ええ!?!?」

叫ぶ生徒会長の罵詈雑言にも、どこか懐かしさすら感じる様になってきた
何だかんだで、この罵倒も自分のルーチンワークの一つだったのだろう。そう思うと少しおかしく思えてくる

「おーい、庶務くーん。待ったー?」
「あ、あの。お待たせ、しました……」
「はっはっは!今年も後僅か、徹底的にやろうじゃないか!」


遅れてきたメンバーと挨拶を交わす。見慣れた顔の、いつも通りの挨拶を
そして今日は十二月の三十一日。大晦日の夕方の街はめでたい空気で包まれているが、ここはそうでも無いようだ

全員揃ったと確認すると、生徒会長はゴミ袋を片手に腕を挙げる
準備が整ったのを見るや否や、力強く宣言した


「……集まったか。これより学校の大掃除を開始する!」
「「「おーー!!」」」







「ふぁ……面倒くさーい」
「新重、それ会長の前で絶対に言うなよ……」
「けどやりすぎじゃない?幾ら地域新聞で表彰されたとはいえさ」

せっせと廊下を掃きながら、ブツブツと愚痴る新重を宥める
坂松市を襲った未曾有の災害に対して、会長の取った行動が称賛を浴びたせいか、最近の行いはやたらと潔癖だ
……その裏でサンドバッグにされる貴方の苦労は誰も知らない

ちなみに、学校はグラウンドが陥没した程度で被害は済んだらしい

「あ、あの。先輩」「どうかしたか?」
「その……メリッサさんの、事、ですけど」
「メリッサさん?普通にクラスメイトだよ?」
「あー……」

あの後、ガイスロギヴァテスのメンバーは彼女を残して帰国したらしい
最後にアーディーが花束を送っていたが……それをルシフェルが困惑しながらも受け取っていた
きっと、あの二人ならやり直せる……そう、強く信じたい


「アキラちゃんも凄いじゃん!見たよ~」
「俺も。アキラって歌が上手いんだな」「……あうぅ、恥ずかしい、デス」

禍門もあれから忙しかったそうで、貴方も憂午からのヘルプを受けて手伝った事もあった
その中で千呼とアキラは幾つか動画を撮影していて。アキラは単独で歌を歌うジャンルの動画をあげていた
評判も上々。みとりからも「宣伝に使える」と言われていた程


「アイドルみたいだったな。綺麗でさ」
「……それで、その。先輩」
「もし、私が。あの……本当の、アイドルに」

もじもじと。何かを察したのか新重はささっと後ろに隠れる
アキラは頬を染めながら。しかし、ハッキリと貴方に話しかけた

「なったら……私、と」「そちらの調子はどうだ?俺も手伝いに来たぞ!」


「………………」








「………………」
「うわぁ、最低……」

アキラの言葉は、横から割ってきた副会長の手で遮られた
女子二人からの冷ややかな視線も意に返さず。貴方と二人で談笑に花を咲かせる


「あ、副会長。こっちは大丈夫っすよ」
「そうかそうか!では少し休憩を取ろう。何か欲しいものはあるか?」
「ならコーヒーで」「私ココア!」「……水で、いいデス」
「よしわかった!少し待っててくれ。今すぐに買ってくるからな!」

慌ただしく走り出す副会長。それを見送っていると、アキラが深く溜め息をついた

「……はぁ」
「ん、どうかしたのか?」「いえ、別、に」
「元気出しなよアキラちゃん。よく効くおまじない、教えてあげよっか?」

「消しゴムに名前を書いて、全部使い終わると願いが叶うってやつ」
「やたら古典的なおまじないだな……」


やたらと懐かしい新重のおまじない。自分が小学生の時に爆発的に流行ったもの
アキラの世代では既に廃れていたのか、きょとんとした表情で新重を見ていた


「そう、ですか。……今度、試してみるデス」
「うんうん……そうだ、庶務くんの名前って何だっけ?」
「おいっ!」


「東生(とうじょう)だよ! 東生 広夢(とうじょう ひろむ)!」
「そもそも俺を庶務に推薦したのはお前が……」


『へー、じゃあ庶務くんなんだね!せっかくだし生徒会に立候補してみたら?』


「……って!」「あはは、そうだった!」
「わ、私は、知って、ました……デス」







「……ふう、お疲れ様っしたー」

あれからかれこれ一時間。学園内をみっちりと掃除した貴方達
生徒会役員達は全員ぐったりと正門で座り、何でもない話を楽しんでいる


「……そう!私はいい大学、いい企業に就職して安定した生活を手に入れる!」
「来年度は勝負の年になる……絶対に合格して、キャンパスライフを掴んでみせる……!」


「あれ、会長、確か、推薦入学だって」
「そんなんで満足出来るか!私は、より高みを目指し常に邁進しているのだぞ!」
「では元旦は会長の合格祈願も兼ねて初詣に行こう!俺も実家を継ぐ前に一度、出向くべきだと思っていたからな!」

「よし、貴様ら、明日は朝の八時より神社に集合せよ!肝に命じておけ!」
「「はーい」」


どうやら副会長の発言で元旦は生徒会での初詣が決まったらしい。
明日もまた忙しくなりそうだ。と軽く笑みを浮かべると、見知った顔が待っている事に気がついた



「お……アーディー達じゃないか!」
「センパーイ!」「忙しい所、すまないな」








「む、貴様は確か御三家の……」
「わー可愛い!アーディーちゃん、お姉さんがいたんだ!」
「僕は男です。……初めまして」

アーディーの隣にいた女顔の青年に近づく。この光景も何度目か、一つの風物詩と化していた
青年……セイバーも慣れたものと言いつつ、やはり気にしているのだろう。こめかみに青筋が浮かんでいる

どうも、今回の聖杯戦争の優勝者はセイバーになったらしく……そのお陰で願いが叶ったらしい
聖杯が今どこにあるのか、何故願いを叶えたのかはわからないらしいが……


「そ、そうだ!センパイ、少し時間ある?」
「ちょっと、付き合って貰いたいんだけど……」
「ああ、大丈……」「貴様、まさかとは思うが生徒会長である私特製の年越し蕎麦を食べないと言いたいんじゃ無いだろうな?」

「いや別にそういう訳じゃ」
「じゃあどういう訳なんだ答えてみろこの味覚障害が!せっかく私がお偉い方に好かれようと研究したそば打ちを披露してやるというのに女を優先するつもりだろう!?!?」
「そんな浮わついた腐りきった根性で私の足手纏いになるつもりか!?とんだロマンチストだなとっととくたばってしまえこの」



「あー!あー!私お腹すいちゃったー!」
「ねえねえ早く会長のお家に行こうよー!ね、副会長!」
「む?そうだな!ここは俺達で先に蕎麦を用意しておこうじゃないか!」
「せっかくだ、鹿黒も呼ぶか!全員で食べる蕎麦は、きっと美味いぞ、な!」
「そ、そうですね……」

副会長の勢いの強い話に苦笑いで頷くセイバー
どうにもこのタイプは不得手らしく、こくこくと相槌を打つ事に専念していた


「あ、じゃあアキラちゃんも一緒に付いてってあげたら?時間が来たら庶務くんに教えてよ」
「え、あ、あの」「……いいよ!一緒に来て!」

「……ごめん!なるべく早く戻る!」
「気にしないでー!……ぐっじょぶ!」
「おい貴様!私を無視するなぁあぁぁぁ……」







喧騒からも遠く離れ、四人は街を進んでいく
新たな時代を迎える準備。過去となる今日を、街は思い思いに過ごしていた

「……そう言えば、ロベルトさんは」
「全然見つかってない。……何処行ったんだろ」

あの最終戦の後、監督役のロベルトの姿は忽然と坂松市から消え去っていた
身内だからか、心配そうに呟くアーディー。聖杯も恐らくロベルトが持ち去ったのだろう

「お父さんも、捜索しているみたい……デス」
「けど、案外もう坂松市にはいないかもしれないぞ?あれだけの事をしでかしたんだし」
「そうかな……うん。ありがと、二人とも」


自分のせいで暗い話題になってしまった事を気にしてか、アーディーは足早に進んでいく
その後を追いかける貴方達。その足取りは少しだけ重くなるが、気にしてなんていられない



「……着いた!ここだよ、センパイ」
「ここって……教会?いったいどうしてこんな所に俺を?」
「ああ。これを見て欲しいんだが……」

セイバーが一冊のノートを取り出す。どうやら内容は迷いペットの保護記録の様だ


「ここ、ロベルトさんが来る前は教会に迷い込んできたペットの保護とかしてたみたい」
「だから、もしかしたら……君の飼っていた犬の記録もあるかもしれない」

「本当か……!?」「えへへ、どう?センパイ」
「ありがとう。これで、また、会えるかもしれない……!」

声が掠れる。胸の奥から込み上げてくる感情が涙となって溢れ出す
かつて、離してしまったその手をもう一度。例え拒絶されても、伸ばしたかった









「……先、輩。良かった、デス」
「ん……ごめん、けど、これで俺の目標が“もう一つ”増えたな」
「もう一つ?まだあったのか?」

「ああ。俺……旅に出ようかと思ってる」



突然の。予想だにしていない告白に三人は目を見開いて
その反応を予想していたのか、貴方……東生は、自らの夢を語っていった

「俺さ。聖杯戦争の中で色々考えてたんだ」

「皆は願いの為に必死に戦ってた。けど俺には何も無かった……」

「だから、俺の目で世界を見て回りたい。彼女がそうした様に、少しでも世界を広げたい」



「……それは、彼女の受け売りか?」
「いや、クリスティーナとは関係無い。俺の、俺だけの人生だ」

断言するその顔は、間違いなく聖杯戦争の前とは変わっていない
しかし、誰かの言いなりになっていたあの頃と比べたら……確実に、強くなっているだろう


「……あ、あの。先輩!」
「こ、これ……お守り、デス!アーチャーの、体の一部……!」
「あ、ズルい!私も……えーと、まだ用意出来てないから!行く時は絶対に言ってね!」







「ふ、あははっ!」


わちゃわちゃしたやり取りに、思わず吹き出す
もし、聖杯戦争に参加しなければ出会えなかったかけがえの無い仲間達
自分が守りたかった、穏やかな笑顔……

「……本当。かもな、クリスティーナ」




──“あなたの触れた、全てが変わる”

──“あなたが変えた全てが、あなたを変える”




クリスティーナの最後の言葉。彼に与えられた最高の賛辞
ずっと他人に引っ張られてきたと思ってた。けれどそれは違ったんだ

微かでも、僅かでも。こんな自分でも、確かに誰かに影響を与えていたんだと


「……うん。生きてみるよ、自分らしく」


それがどんなものか。何を意味するのかは今はわからない

だが、きっと見つかるだろう。最も自由な女王の隣にいた、彼ならば……




【fin】



【という訳で、『どうやら坂松市で聖杯戦争が行われるようです』】

【皆様のご声援もあって、無事完結する事が出来ました!心よりありがとうございます!】



【今後の予定としては、後一回聖杯戦争の動かしてみて】

【その後どうするかなーといった感じ】

【鯖鱒の募集は行う予定。詳しくは避難所にて話していく予定です】

【重ねてですが、本当におよそ半年間もの間、応援ありがとうございました!】




【避難所で次回の主人公作成を始めたので、よろしければどうぞ(クソ遅宣伝)】


【掲示板からのコピペ。これが今回の募集概要です】

【では、今回の募集要項についてお話しします】

【今回の募集は、サーヴァントは『二つまで』投稿する事が出来ます】

【理由としては、今回は募集したデータを多く使ってみたいので数が欲しいから】

【マスターに関しては、前回と同じく無制限。ですが、人数が減るかもしれないとだけ】

【今回の期限は、19日の夜まで。二週間以上あるので、ごゆっくりお考えください……】

【募集用アドレスは引き続きこちらでお願いします】
【アドレス:0sf3z226729429r☆ezweb.ne.jp】
【☆→@】


【完成した主人公はこちら】



【名前】ルゥナ・ガイスロギヴァテス

【所属】ガイスロギヴァテス

【属性】混沌・善

【AA】ルーナ(ファイアーエムブレムif)

【ステータス】
【体】7
【知】6
【心】3
【質】9
【運】5

【スキル】
 ◆煉獄(フェーゲ・フォイア)
  彼女の属性である「火」をより攻撃的に、残酷的に行使する必殺技。
  魔術礼装の剣に超高温の炎を纏わせ、対象を熱で焼き切ったり、周囲を焼き払う。
  剣の状態でも魔術に指向性を持たせたり、結構頑丈なので武器として扱っている。


【来歴】
 ……貴女は、御三家の一角ガイスロギヴァテスからの刺客だ。
 終結したはずの聖杯戦争。しかし、またもや聖杯は動き出そうとしているとの情報を得る。
 前回のメンバーは事情により不参加。故に、一族の中でも飛び抜けて優秀な彼女が選ばれるに至ったのだ。

 貴女は一族の中でも最も優秀な血統を持ち、満たされた環境の中で育てられた箱入り娘。
 そのせいかやたらと【物欲】が強く、一度目をつけたら何がなんでも手にいれないと気が済まない厄介な質。
 オマケに甘やかされた来たせいか【魔術師的優生思想】に染まりきっており、当主からも匙を放り投げられている。

 実力だけはある、手のつけられない問題児。
 本来は偵察、及び調査が命令だが、あわよくば聖杯を奪い取る気満々である。

【性格】
 優秀ではあるが、実年齢と比べると若干幼い印象を与える少女。
 自己への欲は凄まじいが、他者へと向ける欲は意外な程に穏やか。
 と言うのも、「私は優秀なんだから、下等な奴は助けてやろう」というどこか上からな態度で見ているから。
 助けては勘違いするなと言っているが、その言葉を信じる人はいない

 人によっては【ツンデレ慈善家】だのなんだのと評価されている。


【聖杯への願い】
 欲しいから取る!願いは後で考える!




【あまりにも集中しすぎてテンプレを出し忘れる凡ミス】

【サーヴァントは鯖鱒wikiのものを基準に】

【マスターは下記のものに記入してください】


『サーヴァントテンプレ(wiki内参照)』
 https://w.atwiki.jp/ssfate/sp/

『マスターテンプレ』



【名前】(必須項目。あまり直球で版権モノだと困ります)

【所属】

【属性】

【AA】(無くてもいいですが、描写等で役立つので出来れば)

【ステータス】(フレーバーですが一応。最高値は9で2つまで可。0は未知数で9と同様に扱います)
【体】
【知】
【心】
【質】
【運】

【スキル】(最低一つ。最大値は設けませんが腐る場合もあります)
 ◆

【来歴】


【性格】


【聖杯への願い】






【募集で来たAA一覧を貼っておきます。前回には貼れなかったものも含めてます】

【データの作成の参考にどうぞ……】

『AA一覧ver1』
 見崎鳴(Another)
 逆理のヒロト(異修羅)
 仮面ライダーオーガ(仮面ライダー555)
 ゲルググ(機動戦士ガンダム)
 高嶺清麿(金色のガッシュ!)
 横島忠夫(GS美神 極楽大作戦!!)
 黒崎一護(BEACH)
 ボンドルド(メイドインアビス)



【坂松市の御三家 新シーズンver】

【マスター作成のお供にどうぞ】


『禍門家』
 坂松市土着の魔術体系。その歴史は町の歴史とほぼ同じ
 言葉を媒介とした呪術を修めた家系で、聖杯戦争ではマキリと同じく、令呪などのシステム面を担当した
 簡単な日常会話から即座に呪う事も可能だが、みだりに相手を警戒させないために
 一族の人間は、親しい相手柄には単語をぶつ切りにして意思の疎通を図る

 前回の聖杯戦争を経て、ある程度の信頼を得たのか外からの助力を得られる事に成功した
 未だ坂松市に聖杯が存在している事等から、今回は管理者として振る舞っている


『エーデルワイス家』
 通称『天使に恋した一族』。坂松市に聖杯を持ち込んだのもこの一派
 元来はオーソドックスな降霊術を長い年月扱っていた大家であったが、その恋によってかつての研鑽は捻れ狂い
 根源に至るという一族の悲願は、恋を叶えるという一人の妄執に塗り潰された
 御三家としてはかつての降霊術師としての知識を頼られ、霊体(サーヴァント)の召喚を担当する

 前回の戦争で引き起こされた大災害の元凶。当主や監督役の暴走や聖杯の強奪等から、現在も監視の目が緩まない
 どうやら、坂松市内に残存勢力が存在しているらしいが……?


『ガイスロギヴァテス家』
 時計塔の新霊地開発事業により送りこまれた管理者。所詮雇われであり土地に愛着はない
 戦争屋と呼ばれた傭兵一族がルーツの魔術師であり、戦闘に特化した魔術や火の属性を持つ魔術。またトラップ作成技能も高い
 御三家としての役割は治安の維持。とはいえ前述の通り愛着は皆無である為、他二家からは全く信用されていない

 治安の維持という名目は守られたものの、災害の召喚を許した事により時計塔からの信頼にダメージを負っている
 現在は坂松市から手を引いているが、聖杯の存在を確認した事により刺客を数名送り込む事に決定した
 貴女はここの所属


【昨日来た分のAA一覧です。どうぞ……】


『AA一覧ver2』
 Es(XBLAZE)
 アクア(この素晴らしき世界に祝福を!)
 吉良吉影(ジョジョの奇妙な冒険)
 毒島華花の中身が見えないAA(武装錬金)


 


【本日も募集されてきたAA一覧を】

【募集の期限は二週間後の19日。それまでゆっくりお考えください……】


『AA一覧ver3』
 ローン(アズールレーン)
 ムルタ・アズラエル(機動戦士ガンダムSEED)
 ベル・クラネル(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)
 エクス・アルビオ(バーチャルYouTuber/にじさんじ)
 ネネカ(プリンセスコネクト!)
 ユニ(プリンセスコネクト!)
 アナスタシア・ルン・ヴァレリア(WILD ARMS)


【とりあえず、明日にはスレだけ建てる予定。そちらで次のお話を進めていきたいと思います】

【そして今回もAA一覧を。期限はあと一週間です】

【鯖総数】
 剣:5 槍:2 弓:2 騎:2 魔:7 暗:4 狂:3 特:2


『AA一覧ver5』
 Sans(Undertale)
 仮面ライダージオウ(仮面ライダージオウ)
 冨岡義勇(鬼滅の刃)
 ヨブ・トリューニヒト(銀河英雄伝説)
 ハル(ぎんぎつね)
 アクア(ファイアーエムブレムif)

                          


【次のスレ。今後はここで進めていきます】【鯖鱒wiki】ふたたび坂松市で聖杯戦争が行われるようです【AA不使用】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssr/1599975655/)

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