佐久間まゆ「私の、運命」 (33)

一目惚れ、というのでしょうか。

あの人を見た瞬間、身体中に電気が流れたかの様な感じがして、身体がちょっとあったかくなってドキドキしました。

あのとき私は、運命というものを感じました。そう、この人が私の運命の人。

そして私はその人に言われるがままに、アイドルとなりました。

アイドルというお仕事は、素敵なものでした。

その素敵な世界に導いてくれた彼は、本当に運命の人でした。

そしてその運命の人は

「まゆ!助けて!ホントにヤバい、やばいからホントに!マジ!マジで助けて!!!!まゆっ!!!!」

下半身丸出しで私に助けを求めています。

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「ゾ、ゾイド!!!!ケツのっ!ケツのゾイドが!ゾイドが抜けない!!!!」

どうやらプロデューサーさんは興味本位でゾイド(動物とか恐竜のロボットのやつ)をお尻の穴に入れてしまい、抜けなくなってしまって、そのままこの事務所まで来てしまったそうです。よく通報されませんでしたね。

事務所にいるのは私だけではありません、ちひろさんはもちろんのこと、他のアイドルもいます。殆どのアイドルが引いてました。もちろん私もドン引きです。

私の近くには私と同じくらいプロデューサーさんが好きな凛ちゃんがいますが、その凛ちゃんでさえ

「ほら、呼んでますよ佐久間さん…佐久間さんいつもプロデューサーは運命の人とか言ってるじゃないですか…」

普段では考えられないレベルの敬語で、私に厄介事を押し付けていました。その時の彼女の表情は、千年の恋がありとあらゆるもので粉砕されたかのようなものでした。

ちなみに、入れたものはセイスモサウルスという首長竜のロボットで、ヤフオクで購入したそうです。
 

「清良さん!清良さんは!?」

「き、清良さんはいません…ロケで」

「なんでこんなときにいないのよ!」

「いやこんなん予想できます!?」

「そっ、そうだけども!!!!」

瑞樹さんがちひろさんとなんか言い合ってます。聞く耳を立てると、清良さんは今いない模様です。

しかし、清良さんがいなくてももう一人います。

「りあむちゃんは?」

「ごめんなさい、りあむちゃんも仕事です…」

りあむちゃんもいないようです。そんなんだから炎上するんですよ。

医療に携わっていた人がいない(りあむちゃんは後でSNSを炎上させとくとして)となると、ここは大人組にまかせるしかありません。が

「ごめん、ちょっとそれはわかりかねるわ」

「私も…二日酔いっぽいので…酒の酔いのせいで裂けてしまうかもしれないので避けるべきかと…」

「わ、私ネコアレルギーだから…」

「私、寝取られる予定なので…」

瑞樹さん、楓さん、留美さん、美優さん、そして他の大人組もダメだそうです。それはそうです、誰だってやりたくありません。ていうか美優さん、寝取られる予定って何ですか。

「頼むよ~助けてよ~首のところだけなんだよ~抜いてよ~」

プロデューサーさんは、ゾイドの首の部分だけ取り外して根本から突っ込んだそうで、今はお尻の穴から頭が出ている状態で、プロデューサーさんは四つん這いで上半身だけ伏せ、お尻を突き出している状態です。

こんな情けないプロデューサー初めて見ました。いや、みたくありませんでした。

どうしよう、そう考えていたら、いました。

響子ちゃんです。

私はすかさず、響子の腕を掴みました。もちろん嫌がってました。

「響子ちゃん!お願い!プロデューサーさんを助けてあげて!」

「えっ!?私!?イヤ!!いやですよ!!」

木場さんなら……!!

「ほら!響子ちゃんいつもプロデューサーさんの家に行ってご飯作ってますよね!その、そのノリで!」

「違う!違うのまゆちゃん!アレはアレよ!そう!媚びてるの!媚びて仕事をもらおうとしてるだけ!!!!」

とんでもないことを言い放ちました。この娘、ものすごい薄情です。

「そんなこと言うんだったらまゆちゃん…あっ」

響子ちゃんが閃きました。

「時子さん!時子さんならドSだからやってくれるはず!」

事務所きってのドS、時子さんに白羽の矢が立ちました。

モルモルやマッドサンダーのマグネーザーに、ロングレンジバスターキャノンやランスタッグの槍かと思えば、セイスモの首かよ



丸まったヴァルガかグスタフ丸ごとを、舞ちゃんのアソコに入れる話ならまだよかったのになぁ

「そうだった!時子さんならドSだから大丈夫!」

皆、時子さんに期待を寄せます。というか、ドSってそんなものなんでしょうか。しかし

「ごめんなさい、私のあれ…キャラ…なんで、やめてください。」

「ええっ!!?」

あの時子さんが!?いつもいつもプロデューサーさんを豚扱いして踏んづけていた時子さんが…キャラ!?

他の人たちも驚いていました。中には

「嘘はやめてよ!」

「あれ絶対素でしょ!」

「怖気づいちゃだめよ!」

「ドSでしょ!逃げないで!」

と、皆時子さんにいろいろ言ってました。でも、いくらドSと言っても人間です、無理なものは無理なんです。というか、ドSってなんなのでしょうか。

そしてその後、時子さんは脱兎の如く逃げ出しました。そうですよね、イヤですよね。

みんな拒否してしまいました。どうしましょう、そう思っていたときでした。

「ふっ…くくっ…く」

未央ちゃんや李衣菜ちゃんを中心とした集団が、笑いを堪えています。気持ちはわかりますが、このままにしておくわけにはいかないのです。

「あの…別に笑ってものいいと思うんですけど、できれば別の部屋で」

「ご、ごめんまゆちゃん。実は私達最初にプロデューサーを助けようとしてたんだけどっ…全然無理で…そんでしばらく見てたんだけど…だんだんおぐふっ!」

そういえば今日来たとき、もう既にこんな状態だったんでしたっけ。

ほほう

面白い

「ハッハ…う~助けて~」

プロデューサーさんは小刻みに震えながら唸っています、確かにこれは笑えます、ていうか私まで笑いそうになってきました。しかしその時です。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

今まで未央ちゃんたちと笑いを堪えていた卯月ちゃんがいいました。良心が返ってきたのでしょうか。

「な…なんか…プロデューサーさんがちょっと震えてるからな、なんか…お尻のゾイドがこんにちは!こんにちは!ってクフ」

「ブフッ!」

違いました。ただでさえ苦しいのにさらに爆弾を追加して来ました。

しかもそんなこと言っちゃったものだから、そう見えるようになってしまい、私も笑いを堪える羽目になりました。よく見たら大人組も笑いそうになってきました。

いけない、このままではプロデューサーを助けられない…その時です

「こんにちは!ボクはセイスモサウルス!今日はお尻の穴からやってきたよ!おしりんごおしりんご!」

「ブハっははははは!!!!」

卯月ちゃんがさらにアテレコで爆弾をぶち込んできました。そのおかげで、周りは撃破されてしまいました。

「し、しまむー卑怯!卑怯だよははははは!」

未央ちゃんは机をバンバン叩いてます。

「う、卯月ちゃんロック…ロックだけどもあとでふふふ…あかりちゃんに謝っ…ひひひははは!」

李衣菜ちゃんはなんかいいながら笑ってます

私含めみんな笑っていました。卯月ちゃんひどい娘です。

そしで

「ブハッ!」

「ブハははは」

楓さんと美優さんがやられました。

つか、セイスモって、首に小型のビーム砲塔がついてる(Eシールドを張れるレオストライカーや、ゴジュラスギガ同様の古代チタニウムを装甲に使用するアロザウラーぐらいなら葬れる威力がある設定)けど、腸に刺さって痛くないかね?

訂正
×そしで→○そして

これがまゆの運命なのか……

「ま、待つにゃ、笑ってる場合じゃないにゃ、Pチャンをなんとか…ふぅーっ、ふぅーっ、ふふふふ」

みくちゃんがふーふー息をしながらようやくまともなことを言い始めました。そうです、本来の目的はそれです。

「じゃ、じゃあ私が!」

と、美穂ちゃんが名乗りをあげます。正直、嫌な予感がします。

「うう~助けてみぽり~ん」

プロデューサーさんはまだ唸っています。その名前、誤解を招くと思いますよ。

美穂ちゃんがプロデューサーさんに近づきます。

「早くしてぇ~首の砲塔は取ってあるから~」

そんなどうでもいいことを言っているプロデューサーさんに、美穂ちゃんはすごい真面目な顔で

「…」

バシッ!

「あぅン!!」

「ゲははははははは!!!!」

やりました。

美穂ちゃんはお尻のゾイドに思いっきりデコピンをかましました。

その瞬間、プロデューサーさんは身体をビクン!とさせ、情けない喘ぎ声をあげました。

そのせいで収まっていた笑いがまた湧き上がってきました。

凶悪です、ピンクチェックスクールは凶悪な奴等です。

「ちょ!何してんだよ!やめろよはははは!!」

「やめて!死んじゃう!死んじゃうからぁははははは!!」

奈緒ちゃん、加蓮ちゃんが大爆笑してます。

「ダ、ダメもうはははははは!」

「わ、わかっわははははは!!」

ついに留美さんも瑞樹さんも轟沈しました。

「はうっはうっはっ…あう~んぅぅ~」

プロデューサーさんはかなりのダメージをうけていました。お尻に。

しばらく経って、ようやく笑いが収まったころ、プロデューサーさんはお尻のダメージが蓄積されてきたのか

「283プロにやられた…いや、315プロかもしれん…でも765プロが裏で…それともスターライト学園の…アイカツ!?アイカツの一環か…あっ、音ノ木坂か?」

と、めちゃくちゃなことを言っていました。

貴方が悪いんです、貴方が。

そんなことより、どうしましょう。

木場さん、つかささん、ヘレンさん、亜季さん、早苗さん、きらりちゃん、幸子ちゃん。

みんな、頼れる人はいま仕事でいません。

最悪の状況です。

「ていうか、ヘレンがいたらヘーイ!って言いながら引っこ抜くのかしら…」

「み、瑞樹さんあかんて…また笑いそうやから…」

瑞樹さんとみくちゃんが会話をしてます。やめてください。

そのときでした。誰かが私の肩を叩きました。

「まゆちゃん!お願い!!!!」

「えっ!?」

悪魔、いやちひろさんでした。

「まゆちゃん!ここはもうまゆちゃんしかいないの!」

「な、何言ってるんですか!ここはちひろさんがやるべきですよね!?」

「お願い、私はもう無理なんです!まゆちゃんプロデューサーさんを助けてあげて!運命の人でしょ!」

ちひろさんは全力で私に懇願していました。更に周りをみると。

「ごめんなさい、まゆちゃん」

と、化け物の暴走を鎮める為の生贄になってくれと言わんばかりの雰囲気でした。美嘉ちゃんにいたっては涙を流しています。

「い、いや!私まだ死にたくありません!やめて!助けてください」

と、全身全霊で抵抗しているその時でした。

ピーポー!ピーポー!

助けのサイレンが鳴り響きました。

そのサイレンのおかげで、皆がハッとしました。そのあと、乃々ちゃんがひょっこりと現れました。

「みなさん、すいません」

乃々ちゃんはそう一言謝ったあと。

「こういうときは救急車を呼ぶべきかと思ったんですけど…この森久保、携帯を充電するのを忘れまして、そ、それで充電に時間がかかっちゃって…その…」

そうでした。みんな、こういうときのだった一つのシンプルな答えを忘れていました。

しかし、そのおかげで皆、助かりました。

皆、乃々ちゃんを褒め称えています。それはまるで、英雄を称えているかのようです。

まるで、今まで私を生贄にしていたことをなかったことにしたいかのように。


とんでもないssを開いてしまったようだ

そしてその後

「救急です!怪我人はどこですか!」

「これです。」

「うわ…」

「こりゃひでぇや…」

救命士さんに簡単に説明したあと、プロデューサーさんを連れて行きました。

「あ!あんま、あ!動かさなっ…ひゃ!!」

プロデューサーさんは情けない声をあげていました。

ようやく、ようやく終わりました。

しかしこれだけでは終わりませんでした。

プロデューサーさんは入院することになったのですが、実家が遠いため、着替えやらなんやらを持って行かなくてはいけませんでした。それくらいならちひろさんでも大丈夫だろうと思ったのですが…

「まゆちゃん!マジ!マジでお願い!運命ってやつで!」

運命っていえば許されると思っているんですかこの女。

「いやです!こんな運命いやです!」

「そんなこと言わないで!みんなに断られたの!お願いだから!」

どれだけ酷く断られたんでしょうか。そのときでした。

「まゆさん…もりくぼもいっしょに行きますから…」

乃々ちゃんがそういうならということで、しぶしぶ行くことにしました。

私の目は死んでました。

森久保が天使すぎて泣ける

3日後、最悪の事態が起きました。

プロデューサーさんの件が白日のもとに晒されてしまい、芸能界の珍事件として報道されてしまいました。

幸い"珍事件"だったので、悪く言われることはありませんでしたが、正直恥ずかしすぎます。

ピンクチェックスクールの3人にいたっては肩を震わせながら、「ノーコメントで… !」と言っていました。
思い出し笑いしそうになったんでしょう。

でも一番信じられないのはお昼のワイドショーの司会とコメンテーターの
「○○さん、でもお尻になんか入れたくあるときってありますよね?」
「そうですね、僕は昔ガンダムハンマー入れたことありますよ。」

と言うやりとりでした。彼を擁護する為の冗談と信じたいです。というか、お昼に言うことじゃありません。

私はプロデューサーのことで学んだことがあります。

まず自分の発言や行動には結果と責任が伴うこと。

次に、デスゲームとかで「人間の本性を知りたい」みたいなやつがありますが、人間の本性を知りたいときはお尻に訳の分からないものを入れた男性でもいいこと。

そして、運命とか運命の人とか軽々しく言うものではない。ということです。








おしり。じゃなかった、終わり





ウルトラザウルスだったらどうなっていたやら


シールドライガーを入れたら抜くのは地獄だろうな

乙、アニメ版のセイスモって旧ゾイドから続くバトストと繋がりがあるとかなんとか
森久保良い子で泣いたし、ピンクチェックスクール腹黒くて笑った

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