藤原肇「将棋で勝ったらデート、ですか……?」 (24)


これはモバマスssです

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P(格好良くデートに誘う方法は?)

P(アメリカではダンスのペアを格好良く誘うという地獄の様な授業が小学校のうちから存在するらしい)

P(だが残念な事に俺は幼少期をアメリカで過ごしたなどという過去はない)

P(ドラマや映画の様に歯の浮く様なセリフを言えるほど心臓が強くも無い)

P(手品を交えてスタイリッシュにチケットを渡せる技能もない)

P(で、あれば。だ)

P(……欲しいものは勝利で手に入れるべきでは無いだろうか?かつての海賊の様に)

P(と、言うわけで)

P「肇、俺と将棋しないか?」

肇「え……まあ構いませんが……」

P「で、勝ったらデートな」

肇「…………?」

P(……決まった)




肇「突然どうしたんですか?プロデューサー」

P「いやまぁ、肇を格好良くデートに誘いたかったんだけどさ。良さげな方法が思いつかないから将棋にしてみた次第だ」

肇「……………………はぁ……」

P「え、将棋苦手とか?」

肇「いえ、それなりに。お爺ちゃんと良く指してましたから」

P「じゃあ決まりだな。勝ったらデートだからな?約束だからな?!絶対だからな!!」

肇「……プロデューサー」

P「はい」

肇「星座して下さい」

P(俺は星になった。あ、はい正座します)




肇「第一に、そうですね…………見苦しいと思いませんか?」

P「……はい、思います」

肇「ストレートに誘えば良いとは考えなかったんですか?」

P「なんかこう、かっこ良く誘いたいなぁと」

肇「デートしたいのに、するかどうかを将棋に預けるなんて……」

P「……肇は、デートしたく」

肇「ないなんて言ってません。ですがそれはそれ、これはこれです」

P「良かった……」

肇「私とデートしたいなら、その……もう少しストレートだったり、ロマンチックに誘って欲しかったので……」

P「…………肇と将棋もしたかったので……」

肇「さあプロデューサー、ハンデは必要ですか?!」

P「はやいはやい今どっから将棋盤出したもうコマ並んでるし」




肇「ところで、プロデューサーは将棋の実力は如何程なんですか?」

P「遠い昔、小学生の頃に指した事がある気がする」

肇「……はぁ……」

P「いやでも大丈夫だ!ちゃんとルール覚えてるから!」

肇「これは?」

P「飛車。前後左右に好きなだけ動けるやつ。成ったら無敵」

肇「これは?」

P「桂馬。最初は歩兵進めてからじゃないと動けないやつ。成ったら金」

肇「私は?」

P「藤原肇。凄く綺麗で可愛い俺の担当してるアイドル。いずれトップアイドルに成る」

肇「はい……参りました。プロデューサーの勝利です」

P「待ってまだ対局始まってない」





肇「プロデューサーが玉で良いですよね?」

P「いいのか?先手貰っちゃって」

肇「構いません、全力でかかって来て下さい!」

P「お、おう……」

肇(手加減はあまりしたくはありませんが、今回ばかりはプロデューサーとデート……絶対に勝つわけにはいきません!)

P(なんか肇がめっちゃ真剣な目をしてる。なんだろう、勝てる気がしない……いやいや、始まる前から弱気になってどうする!)

肇「さあ、どうぞ!」

P「おう!俺のターン!」

パチンッ

肇「私のターンです!」

パチンッ

パチンッ

パチンッ

パチンッ

パチンッ



P「むっ……んー……こっち、か……?」

パチンッ

肇「…………」

パチンッ

P「げっ、いやまだ……うっわ……」

パチンッ

肇「…………」

パチンッ

P「ふぅ……よし。あっやべ……」

パチンッ

肇「…………」

パチンッ




P(あっ、そこ角の通り道か……うーん……)

肇(なんとなく、対局前からそんな気はしてましたけど……)

P(いや、バレてないだろ……大丈夫だ……)

肇(……囲いを固める事に集中してて気付かなかったフリを……)

P(ふぅ、肇に気付かれてなかったか……良かった……)

肇(あ、やっぱり……)

P(よし、案外まだまだ指せるもんだな)

肇(……はぁ……)

P(かなり良い勝負が出来てるんじゃないか?)

肇(プロデューサー……)

P(これなら……勝てる!)

肇(とても弱い!!)



P「よし、これで」

肇「プロデューサー、そこだと飛車が……」

P「むっ、そうだな。ありがとう肇」

肇「ふふ、次はありませんからっ」

P「だな、真剣勝負なのに敵に塩を送るなんて肇らしくもないぞ」

肇「ふ、ふふ……そうですよね」

肇(だって!プロデューサーが弱過ぎるから!!)

肇(現時点で角も飛車も質駒です!!)

肇(取ったら本格的に私が負けなくなってしまうので取りませんけど!!)



P「待った!」

肇「どうぞ、お好きなところまで戻って下さい」

P「いや一手だけな?そんなセーブ地点までリセットみたいな事しちゃダメだろ」

肇(なら勝って下さい!)

P「む、待った!」

肇「どうぞ、先程私が桂馬を取ったその一手前まで戻って下さい」

P「えっそこまで?!」

肇(戻らないと詰みだからです!!)

P「……待った!」

肇「どうぞ、対局前のハンデを決めるところまで戻って下さい」

P「ハンデは必要ないって、大丈夫大丈夫まだ歩兵結構あるし」

肇(なら!勝って!下さい!!プロデューサー貴方歩兵しか取れてないんですよ!!)




P「……よしっ!」

肇「待った!!」

P「えっ?」

肇「待った、待ったですプロデューサー。一手戻って下さい」

P「優勢な人が劣勢な相手の為に待ったかけるの初めて見た」

肇「私の飛車は働き過ぎたので、少し端で休憩してて貰います」

P「えっそれ必要?」

肇「適度に休ませてあげないと、疲れてしまいますから」

P「ホワイト企業だな」

肇(黒星をつける為の苦肉の策です)





肇(負けないと……まずは角を下げるフリをして……)

P「おっと肇、そこに角置くと桂馬で取れちゃうぞ」

肇(……なんで言うんですか……)

肇「……これも戦略の内ですから、問題ありません」

P「む、じゃあ迂闊に取りには行かない方が良さげだな」

肇(取って下さい!!数秒前までと同じ迂闊な動きで取りに行って下さい!!!!)

肇「……あっ、間違えました……ですが仕方ありませんね、その角はプロデューサーに譲ります」

P「はっはっは、俺は何度も待ったしたし肇も良いんだぞ?」

肇「ふ、ふふ……ふふふ……そうですか」

P「だが、俺ももう手加減しないからな?」

肇「……ふふふふふ……なら、私も……全力で行きます」

P「……声、低くない?」

肇「プロデューサーの番です」

P「あっ、はい」



肇「王手」

P「……待っ」

肇「待ちません、マナー違反です」

P「……待てますか?」

肇「待てません」

P「……一度だけでいいので……」

肇「十回目です」

P「助けて金銀……」

肇「全て剥がしました」

P「……何か打てる手は……」

肇「ありません。詰みです」

P「打てる駒は……」

肇「玉以外全て私の駒です」

P「……参りました」

肇「はい」





P「…………」

肇「何をいじけてるんですか……」

P「歳下に負ける悔しさと、将棋に歳なんて関係無いって分かってるのに悔しがってる自分に涙してる」

肇「強くなって下さい。いつでも、対局お待ちしてますから」

P「おう、もっと上手く指せる様になってデートにさそうから」

肇「……?デート…………っ!!」

P「い、いきなりどうしたんだ肇?!」

肇「待った!待ったですプロデューサー!待って下さい!!」

P「いやもう俺降参したけど」

肇「私は何度もプロデューサーの待ったに応じたんですから、プロデューサーも待つべきだと思います。不公平です」

P「お、おう……」



肇「……プロデューサー。確か聞き間違いでなければ、勝ったらデートと言ってましたよね?」

P「あぁ、うん」

肇「どちらが、とは指定されていませんでしたよね?」

P「ん?え、あぁ」

肇「であれば……私が勝っても、デートするべきだと思いませんか?!」

P「…………えっ?」

肇「私は勝ちました。ですから、デートするべきです!!」

P「…………ん?」

肇「何かおかしいところでもありましたか?」

P「いや、ない……ない?ほんとか?」

肇「本当です。私は貴方に嘘をつきません」

P「肇がそう言うなら……」





P「……いや、でもやっぱり勝って誘いたいなぁ……」

肇「……意地っ張りですね、プロデューサー」

P「肇に言われたく」

肇「ふふ」

P「ごめん」

肇「はい」

P「……んじゃ、空いてる日に俺と指してくれないか?」

肇「構いません。今週は日曜日が空いてます」

P「お、ならどっかの」

肇「プロデューサーの家で良いですよね?」

P「家に将棋盤が無いんだよな」

肇「私が持って行きますから」

P「お、助かる」




肇「それと、何局か指した後に釣り堀にでも行きませんか?」

P「いいぞ、俺に付き合って貰うんだし」

肇「気になってる映画があるんです」

P「それも観に行くか」

肇「神社巡りもしたいです」

P「おっけー」

肇「夕飯は外にしますか?プロデューサーさえ良ければ、私が振る舞いますけど」

P「良いのか?そこまでして貰っちゃって」

肇「ふふ、構いません。将棋の上達のためですから!」

P「おう!強くなって肇に勝って、そしたらきちんとデートに誘うよ!!」

肇「楽しみにお待ちしています!」





ちひろ(……………………)

ちひろ(………………)

ちひろ(…………)

ちひろ(……)

ちひろ(……お二人とも……)

ちひろ(それ、デートです)


以上です
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