ミカサ「お花見に行きたい」(77)

進撃SSです。
よろしければご笑覧下さい。

※思いっきり季節外れですが、どうかご了承ください。

あれは、いつのことだったか

春のうららかな光に包まれて

両親に手を引かれながら

私は山道を歩いていた

まだ幼かった私には少し険しい道ではあったけれど

長い冬の間、家の中ばかりにいた私には

外を歩けるだけで楽しくて

時折両親に話しかけては

木々の緑、道辺に咲く草花に心を躍らせていた

やがて、大きな木の下に辿り着いた

満開の花、花、花

枝の一本一本に至るまで、全てが花で埋め尽くされていた

この世にある美しいもの

それを全てこの木に集めたような

たとえようもない光景

寝る前に毎晩お母さんが聞かせてくれたおとぎ話

美しいドレスにきらきらと輝く宝石

この木はまるでお姫様のようだった

ミカサ「わぁ…」

母「満開ね」

父「ああ、この前に狩りに来た時は蕾だったんだが」

母「素晴らしいわ」

ミカサ「お母さん、お母さん」

母「なあに、ミカサ?」

ミカサ「この木はなんていうの?」

母「桜っていうのよ」

ミカサ「さくら?」

母「そう、桜」

母「ご先祖様がいたところには至るところに桜の木が生えていて」

母「春になるとこうして満開の花を咲かせていたのよ」

ミカサ「でも、わたしははじめて見たよ?」

母「ご先祖様が壁の中に移り住んだ時」

母「桜の苗を何本も持ち込んだらしいけれど」

母「気候と土が合わなくて、根付かせるのが難しくて」

母「桜はもう、ほとんど見られなくなってしまったの」

母「この辺りだと、この一本しか無いみたいね」

ミカサ「むずかしいよう…」

母「う~ん、難しいかもしれないわね。大人になったら分かるわよ」

ミカサ「わたしはもうおとな。こどもじゃないもん」

父「あっはっは。ミカサ、大人なら夜は一人で寝ないといけないぞ~?」

ミカサ「こわくないもん。ひとりでも寝られるもん」

父「お、言ったな、ミカサ。怖い夢見ても知らないぞ~」

ミカサ「こわい夢…」

父「お化けが出るぞ~」

ミカサ「いや!!」

ミカサ「お父さんきらい!!」

父「あう…」

母「あ~あ、嫌われちゃったわね、あなた」

父「ミ、ミカサに嫌われた…」

ミカサ「もういっしょに寝てあげない」

父「」

母「うふふ。ミカサ、お父さんにそんなこと言ったらだめよ」

ミカサ「うん、もう言わない」

父「ほっ」

ミカサ「もう、いじわる言わないでね?」

父「ごめんよ、ミカサ…」

母「さあ、お弁当を食べましょうか」

ミカサ「食べる!!もうお腹ぺこぺこ!!」

母「あらあら。それじゃ、桜の下で食べましょう」

父「よし、この敷物をしいて、と」

母「はい、これがミカサの分。これがあなたの分」

ミカサ「いただきまーす!!」

父「おお、こりゃうまそうだ」

・・・・・・・・・・

父「ふう、食った食った。うまかったよ」

ミカサ「(もぐもぐ)」

母「はい、お粗末様でした」

父「結婚するまで花見なんてしたことが無かったけど、いいもんだな」

母「去年まではミカサが小さかったから無理だったけど」

母「来年からは毎年出来るわね、お花見」

ミカサ「(もぐもぐ)」

父「いいなぁ、家族団らんだなあ」

母「…この娘も大きくなったら」

父「うん?」

母「誰かいい人と…ここに来るんでしょうね」

父「え…」

ミカサ「ごちそ~さま!!お母さん、いい人ってだれ?」

母「ミカサの大切な人よ」

ミカサ「たいせつな人?」

母「そう、大切な人よ」

母「ミカサにとって一番大切な人」

母「ミカサのことを一番大切に思ってくれる人」

母「ミカサはどんな人と結婚するのかしらね。楽しみだわ」

父「おい…」

ミカサ「けっこん?およめさんになるの?」

母「そうよ。大きくなったらお嫁さんになるのよ」

ミカサ「およめさん!!およめさん!!」

父「そんな…」

母「ミカサ嬉しそうね。お嫁さんになりたいの?」

ミカサ「うん!!わたしね、おおきくなったらお父さんのおよめさんになるの!!」

父「…!!」

母「あらあら。お父さんのお嫁さんになるの?」

ミカサ「うん!!お父さん大好きだもん!!」

母「あなた、どうします?…あら?」

父「ぐっ…うぐっ…」

ミカサ「お父さん、どうしたの?」

父「な、何でも、ぐっ、ないんだよ」

ミカサ「お父さん、泣いてるの…?」

母(う~ん、まずかったかしら)

父「ちょ、ちょっと、ぐすっ、その辺を、散歩してくる…ぐすっ」

ミカサ「お父さん、ひとりでだいじょうぶかな…?」

母「そのうち戻ってくるわよ、大丈夫」

母(先が思いやられるわね…)

・・・・・・・・・・

ミカサ「お母さん、いま、なんて言ったの?」

母「世の中に絶えて桜の無かりせば春の心はのどけからまし」

ミカサ「それはなに?」

母「古くから伝わる詩よ。フシはもう分からなくなったけどね」

ミカサ「うた?」

母「そう、詩」

母「ご先祖様の国ではね、自分の思っていることを詩であらわしたのよ」

母「自分が嬉しい時、悲しい時、大切な人を想う時に詩は生まれるの」

母「詩には詠んだ人の思いが込められているの」

ミカサ「よんだ人のおもい?」

母「ミカサ、上をご覧なさい」

ミカサ「きれい…」

母「さっきの詩はね、ご先祖様の一人が詠んだ詩なの」

母「この世の中に桜が無ければ、春を過ごす私の心はのどかなのに」

母「だいたいこんな意味かしらね」

ミカサ「…?」

母「桜の花はね、すぐに散っちゃうの」

ミカサ「そうなの?こんなにきれいなのに…」

母「そう。きれいな花なのに残念よね」

母「だから、ご先祖様の国では、桜が咲いたらすぐ見に行かなくちゃって」

母「皆、春が来ると落ち着かない気分になったの」

母「桜が無かったらこんな落ち着かない気分にもならないのにって」

ミカサ「それじゃあ、その人はさくらがきらいなの?」

母「ううん、そうじゃないわ」

母「桜が好きだから見に行きたいって思うわけでしょ?」

ミカサ「うん」

母「いくら心が落ち着かなくなるからって」

母「本当に桜が無くなったら悲しいわよね?」

ミカサ「うん」

母「だから、この詩を詠んだ人は桜が大好きなの」

ミカサ「だいすきなのにいらないっていうの?よくわかんない…」

母「うふふ。大人にはそう言いたくなる時があるのよ」

ミカサ「わたしはもうおとな!!」

母「うふふ。そうだったわね」

ミカサ「えっと…、よのなかに、たえてさくらの……」

母「後で紙に書いてあげる。もう字が読めるもんね、ミカサは」

ミカサ「おとなだもん」

父「お~い!!」

母「お父さん、戻ってきたわね。どこまで行ってたのかしら」

父「狩りに良さそうな場所があったから見ていたんだ。ごめんごめん」

母「そんなことだろうと思ったわ」

父「はっはっは、今度大きな獲物をとってくるからな」

母「期待してるわよ。さて、遅くなるといけないわ。そろそろ帰りましょうか」

ミカサ「うん、また来ようね!!」

父「おう、もちろんだ」

母「いい人と」ボソッ

父「う…」

母「冗談」ボソッ

父「うう…」

ミカサ「…?」

山道を行けば桜の木

春風は優しくて穏やかで

ふわりふわりと花びらの舞う

薄墨色の小さな花びら

幼い頃の大切な思い出

─────

───

*(訓練兵三年目の春、夕食)

ミカサ「お花見に行きたい」

ミカサ「先日の立体起動の訓練の時に」

ミカサ「山に一本だけ桜を見つけた」

ミカサ「その時はまだ咲いていなかったのだけれど」

ミカサ「そろそろ見頃になっているに違いない」

ミカサ「ので、早急に見に行かねばならない」

ミカサ「明日の休日が最後のチャンスかも」

ミカサ「違わない?」

エレン「いや、違わないも何も」

エレン「明日は自主練をするから駄目だ」

ミカサ「先日の立体起動の訓練の時に」

ミカサ「山に一本だけ桜を見つけた」

ミカサ「その時はまだ咲いていなかったのだけれど」

ミカサ「そろそろ見頃になっているに違いない」

ミカサ「ので、早急に見に行かねばならない」

ミカサ「明日の休日が最後のチャンスかも」

ミカサ「違わない?」

エレン「…」

エレン「あのな、ミカサ。俺は明日、自主練を」

行ってやれよおお

ミカサ「先日の立体起動の訓練の時に」

エレン「待て」

ミカサ「何?」

エレン「お前、俺の話を聞いてるのか?」

ミカサ「その前に私の話を聞いて欲しい」

エレン「よし、言ってみろ」

ミカサ「先日の立体起動の」

エレン「いや、それはもう分かってる」

ミカサ「安心した。エレンはいい子」

エレン「頭を撫でるな」

ミカサ「すごく楽しみ」

エレン「俺はまだ行くとは言ってないぞ」

ミカサ「先日の」

エレン「アルミン、何とかしてくれ!!」

アルミン「何で僕にふるのさ?」

ミカサ「アルミン、さっきからあなたは黙って聞いていた」

ミカサ「沈黙は承諾のしるし。違わない?」

アルミン(二人の噛み合わなさが面白かっただけなんだけどね)

アルミン「そ、そうだなぁ、自主練は大切だと思うけれど…」

エレン「だろ?」

ミカサ「先日の立体起動の訓練の時に」

エレン「お前な…」

ユミル「さっきから何やってんだ、お前ら」

ミカサ「先日の立体起動の訓練の時に」

クリスタ「あ、聞こえていたから大丈夫だよ」

ミカサ「クリスタもいい子」

クリスタ「えへへ」

アルミン(女神)

ユミル(巨人化しそう)

クリスタ「ねえ、お花見ってどういうもの?」

ミカサ「東洋に伝わる春の行事」

ミカサ「桜の咲く頃に皆でお弁当を持って見に行く」

ミカサ「春の息吹を楽しみ」

ミカサ「散りゆく花を惜しみつつ」

ミカサ「その美しさに酔いしれる」

ミカサ「恋人達はその木の下で愛を語らう」

ミカサ「時にはそれ以上のことも」

ミカサ「鼻血が出てきた」

クリスタ「大丈夫?」

ミカサ「問題無い」

ユミル(何が何だか)

クリスタ「ロマンチックだなぁ…。恋人と愛を語らうのかあ…」

ユミル「愛を語り合いたいなら今からでもいいぞ」

クリスタ「ユミルとは恋人じゃないでしょ」

ユミル「」

ミカサ「別に花見は恋人同士じゃなくてもいい」

ミカサ「親しい友人、同僚、夫婦、親子」

ミカサ「要するに楽しめれば誰とでもいい」

クリスタ「そうなんだ。ねえ、お花見、私も行っちゃだめ?」

アルミン(おお!!)

クリスタ「私、桜を見たことないの。それに、お花見って面白そう」

ユミル「クリスタが行くなら私もいくよ。いいだろ?」

ミカサ「私は構わない。ただ、エレンとアルミンが何と言うか…」

アルミン(既に頭数に入っていたんだね。好都合だ)

クリスタ「アルミン、駄目?」

アルミン「い、いや、僕なら大歓迎だよ!!」

アルミン(二人だけでも行きたいぐらいだ)

クリスタ「ありがとう。エレンは?私が行っちゃ駄目?」

エレン「好きにしろよ。俺は行かねえけどな」

クリスタ「え、どうして?」

エレン「聞こえてたろ?明日は自主練だ」

クリスタ「そんなあ。お花見、面白そうじゃない?」

エレン「俺にだって都合があるんだよ」

ミカサ「エレン」

エレン「大体、兵士が訓練に励んで何が悪いんだよ」

アルミン(まずいね)

アルミン(エレンが意地になってる)

アルミン(こうなると梃子でも動かないからなぁ)

アルミン(このままでは花見自体が流れる)

アルミン(降って湧いたクリスタとの花見。諦めるには惜しすぎる)

アルミン「…ねぇ、エレン」

エレン「何だよ、お前まで訓練を休めって言うのか!?」

アルミン「ちょっと僕の話を聞いてくれる?」

エレン「…何だよ」

アルミン「僕もクリスタと同じで、桜を見たことが無いんだよね」

アルミン「本でしか見たことないんだ。多分、エレンもそうじゃない?」

エレン「まぁ、見たことはねえな。でも、たかが花だろ?」

アルミン「うん、たかが花かも知れない」

アルミン「でも僕は、エレンに花を愛でて欲しいとは言っていないんだ」

エレン「じゃあ、何だよ」

アルミン「桜の花は、一年の内、いつから咲く準備をするか知っているかい?」

エレン「そりゃあ…、春になったらじゃねえのか」

アルミン「普通はそう思うよね。だけど、違うんだ」

アルミン「翌年に花になる花芽は夏から秋にかけて作られるんだけど、冬になると一旦生長が止まる」

アルミン「休眠状態になるんだ」

エレン「寒いからだろ」

アルミン「うん。だけど、さらに気温が下がって真冬になると、目を覚ます」

エレン「へえ」

アルミン「春になって気温が上がると一気に生長して、花が咲く」

アルミン「要するに、桜には春の暖かさだけじゃなくて、冬の厳しさが必要なんだ」

エレン「ふうん…」

アルミン「ところでエレン。僕が言うのはアレだけど」

アルミン「体を鍛える時、漫然と鍛えるのと、こうなりたいと思って鍛えるのとでは違いがあるのは知っているよね」

エレン「この前の座学で聞いたな。俺は目標を決めて鍛えてるぜ」

アルミン「うん、さすがエレンだね」

エレン「そうだろ、だから自主練も必要なんだよ」

アルミン「今、エレンは辛い訓練を耐えて、自分の理想像に近づこうとしている」

エレン「そうだな」

アルミン「言ってみれば、それはエレンにとって冬なんだ」

エレン「…そうなるかな」

アルミン「だけど、エレンが頑張り続ければ、いつか理想にたどり着ける筈だ」

エレン「…そうなるといいけどな」

アルミン「エレンが理想にたどり着いたとすれば、それは春だ」

アルミン「辛い訓練に耐えるのが冬、理想の兵士にたどり着くのが春」

アルミン「そして調査兵になって巨人をなぎ倒す。これは夏だね」

エレン「おお、そうなりたいもんだ」

アルミン「前々から考えていたんだけど」

アルミン「エレンと桜は、似ていると思うんだ」

エレン「俺と桜が?」

アルミン「エレンは辛い訓練に耐えてゆくゆくは理想の兵士になる」

アルミン「桜は厳しい冬に耐えて春には満開の花を咲かせる」

エレン「…おお」

アルミン「厳しい冬を乗り越えて美しい花を咲かせている桜を見ることは」

アルミン「辛い訓練に耐えて理想の兵士を目指すエレンにとって」

アルミン「決して無意味ではない」

アルミン「僕はこう考えている」

アルミン「エレン、君はどう思う?」

エレン「…」

クリスタ「ねえ、ユミル」ボソ

ユミル「言うな。要するに詭弁だ」ボソ

クリスタ「だよね」ボソ

和ロタ

エレン「…アルミン」

アルミン「…何だい?」

エレン「俺は間違っていたのか?」

エレン「俺は花見を単なる娯楽だと考えていた」

クリスタ「娯楽だよね?」ボソ

ユミル「娯楽だよ」ボソ

エレン「訓練とは理想の兵士に近づくためのものだ」

エレン「そして花見とは」

エレン「理想の兵士になろうとする志を再確認するためのものなんだな?」

アルミン「そうだよ、その通りだよ、エレン!!」

アルミン「いわば高度な訓練、それが花見なんだよ!!」

エレン「高度な、訓練…」

ユミル(馬鹿が一匹)

エレン「ミカサ、アルミン」

エレン「俺が…馬鹿だったみたいだ」

エレン「俺は花見に行く」

エレン「巨人を倒すために!!」

アルミン「すごいよエレン!!僕は君を尊敬する!!」

アルミン(勝った、僕は勝ったんだよ、おじいちゃん!!)

ミカサ「決意に充ち満ちたエレンの顔が素敵」

ユミル(もう一匹いた)

エレン「みんな!!」←椅子から立ち上がった

エレン「花見に行きたいヤツはいるか!?」

エレン「兵士なら花見だ!!」

クリスタ「ねえ、私、変なのかな。意味が分からない」ボソ

ユミル「大丈夫。それが正常だ」ボソ

ライナー「おい、エレン。花見って何だ?」

エレン「知らないのか。花見とは高度な訓練だ」

ライナー「ほう、高度な訓練…。名前からは想像出来んが…」

エレン「ああ、俺もさっきまでそう思っていた」

エレン「花見とは、桜を見に行くことだ」

ライナー「…?それが高度な訓練なのか?」

エレン「ライナー、お前には絶対曲がらないものがある。そうだったな」

ライナー「…」

ライナー「帰れなくなった故郷に帰る。俺の中にあるのはこれだけだ…」

ライナー「絶対に…何としてもだ」

エレン「入団したばかりに言っていた通りだな。つまり」

エレン「それが桜だ」

ライナー「何!?」

ベルトルト「!?」

アニ「!?」

エレン「お前の望むものは、桜を見れば全て明らかになる」

エレン「それが、花見だ」

ライナー「何、だと…!?」

ベルトルト(座標!?桜が…座標!?)

アニ(…そんな。まったく気付かなかった…!!)

エレン「お前も来るか?」

ライナー「ああ…兵士には、引けない状況がある」

ライナー「今がそうだ」

ライナー「俺も行こう」

エレン「そうか、俺にとっての桜は巨人を倒すためのものだ」

ライナー「!?」

ベルトルト「!?」

アニ「!?」

エレン「お前と俺、花見をすることでそれぞれの目的に近づくんだ」

ライナー「お、おう…そうだな…」

ベルトルト(分からない。桜って何なんだ…)

アニ(桜は座標で、しかも巨人を倒す…?)

アニ(私達は座標を見つけた時点で死ぬってこと?)

アニ(そんな…)

『この世の全てからお前が恨まれることになっても…』

『父さんだけはお前の味方だ』

『…だから約束してくれ』

『帰ってくるって…』

アニ(お父さん、私、帰れないかも…)

エレン「ベルトルト、アニ、お前らはどうだ?」

ベルトルト(落ち着け。まずはライナーが様子を探ればいい)

ベルトルト「…いや、僕は遠慮しておくよ。少し調べ物があってね」

アニ「私も…やめとくよ。少し疲れているんだ」

アニ(怖い…桜が怖い…)

エレン「そうか、…残念だな。まぁ、仕方ないな」

エレン「他に行きたいヤツはいるか?」

サシャ「ミカサ、その桜は山に生えているんでしたよね?」

ミカサ「そう。山奥。少し険しいけれど私達の足なら問題無い」

サシャ「あの…私も行っていいですかね?」

エレン「おう、いいぜ」

サシャ「山に行けば兎や鳥がいますからね…。肉、肉…」

エレン「おい、サシャ。花見は遊びじゃないぞ!!」

サシャ「ひい!?」

エレン「遊びに行くつもりなら駄目だ!!」

エレン「そんな風に考えているヤツがいるなら花見なんてやめだ!!」

アルミン「ねえエレン、それはおかしいんじゃないか?」

エレン「アルミン。…もしかして、俺はまた間違ったのか?」

アルミン「残念ながら、ね」

ユミル(今度はどう言いくるめるんだ?)

アルミン「エレンは狩猟を遊びと言った。確かにそういう一面は否定出来ない」

アルミン「だけど狩猟は古来より軍事調練としての性格も持っている」

アルミン「獲物の動きを読み、またこちらの気配は悟られず、冷静に仕留める」

アルミン「まさに訓練そのものじゃないか?」

アルミン「エレンは…、まさかそれを否定するのかい?」

エレン「…」

エレン「…アルミン、お前はやっぱり凄いよ」

エレン「俺はまた馬鹿なことを言っていたみたいだ」

ミカサ「アルミンは正解を導く力がある」

エレン「そうだな。すまん、サシャ。お前も花見に行く資格がある」

サシャ「あ、ありがとうございます!!後で教官から弓矢を借りてきます!!」

コニー「へえ、花見って要するに狩りのことなのか」

コニー「なあ、エレン。俺も狩りがしてえよ」

エレン「ああ、問題無い」

コニー「よし、俺も弓矢を借りてくる」

サシャ「ふふん、コニー。私と勝負する気ですか?」

コニー「あん?なめるなよ?俺が本気になれば花見のひとつやふたつ…」

クリスタ「ユミル、お花見って何なの?また分からなくなっちゃった…」ボソ

ユミル「…馬鹿が数匹と詐欺師が一人いるだけの話だ」ボソ

エレン「…今のところ、花見に行くのは俺とミカサ、アルミン、クリスタ、ユミル」

エレン「それにライナーとサシャ、コニー。八人か。随分増えちまったな」

エレン「アルミン、人数が多すぎると訓練にならないんじゃないか?」

アルミン「う~ん、それは全く問題無いと思うけど」

ユミル(訓練じゃないからな。何の問題も無いだろうさ)

アルミン「他には行きたい人もいないみたいだし、とりあえずはこの八人で行ったらいいんじゃないかな」

ジャン「……」

ジャン(さっきから聞いていたが)

ジャン(要するに桜の下で歓談するのが花見ってやつか)

ジャン(エレンは訳の分からねぇこと言ってやがるが)

ジャン(アルミンに丸め込まれたってところだろ)

ジャン(相変わらず阿呆だな。…だが)

ジャン(ミカサと花見ってのは悪くねぇな)

ジャン(認めたくねぇが、ミカサはエレンと花見をしたい。くそったれ)

ジャン(…で、それに気付かない馬鹿。そもそも花見を勘違いしてやがる)

ジャン(あいつのことだ。花見の時にもミカサをムゲに扱う可能性が高い)

ジャン(当然、ミカサは落ち込む)

ジャン(いつもならアルミンがそれをフォローする)

ジャン(しかし今回はそうならない)

ジャン(アルミンの詭弁は全てクリスタが話に入ってきてからのことだ)

ジャン(アルミン・下心・アルレルトだ)

ジャン(アルミンはクリスタとの会話に忙殺される。ミカサへのフォローは後回しになる)

ジャン(ユミルはわざわざミカサへのフォローなんぞしねぇ。クリスタにべったりだろう)

ジャン(ライナーはエレンに感化されて花見を何かと勘違いしてやがる)

ジャン(更に、下手にミカサをフォローすれば理不尽な暴力が待っている)

ジャン(まぁ、どうせライナーもクリスタべったりだ)

ジャン(つまるところ、ライナーもミカサをフォローしない)

ジャン(ユミルとライナーにまとわりつかれてクリスタも身動き出来ない)

ジャン(コニーとサシャは狩りの夢中の筈)

ジャン(必然的に、落ち込んだミカサは放置状態になる)

ジャン(そこで、俺だ)

ジャン(ミカサの横に腰を下ろす俺。最初はさりげなくだ)

ジャン(『どうしたんだ、ミカサ?』)

ジャン(『…何でもない』)

ジャン(『何でもないことないだろ。顔が暗いぜ?』)

ジャン(『問題無い』)

ジャン(『つれねぇな、お前は。…桜、好きなんだろ?』)

ジャン(『…』)

ジャン(『…顔、上げろよ』)

ジャン(『…うん』)

ジャン(『綺麗だろ、桜?』)

ジャン(『…綺麗』)

ジャン(『だけど…俺はもっと綺麗なものを知ってるぜ?』)

ジャン(『…?』)

ジャン(『笑ってみろよ、ミカサ』)

ジャン(『え…?』)

ジャン(『お前の笑顔は桜より綺麗だぜ』)

ジャン(『そ、そんなこと…ない』///)

ジャン(『へっ、分かってるさ。笑顔は…エレンだけのものなんだろ?』)

ジャン(『べ、別にそういう訳では…』)

ジャン(『そうなのか?それなら、見せてくれよ』)

ジャン(『ジャンに…?』)

ジャン(『ああ、俺に』)

ジャン(『何だか、恥ずかしい…』///)

ジャン(『恥ずかしいことなんてないさ。…こっち、向けよ』)

ジャン(『顔が熱い。変な顔になってるから…』///)

ジャン(『いいから、こっち向けって』グイッ)

ジャン(『…あ、あまりじろじろ見ないで』///)

ジャン(『ミカサ…』)

ジャン(『何…?』///)

ジャン(『綺麗だぜ』)

ジャン(『…嘘』)

ジャン(『嘘なもんか。俺はいつだって正直者さ。ミカサは綺麗だ』)

ジャン(『…そんな事言われたの、初めて…』///)

ジャン(『お前が望むなら、俺はいつだって言ってやるよ』)

ジャン(『え…』)

ジャン(『ミカサは誰よりも綺麗だ。…そんなミカサを、俺は愛してる』)

ジャン(『!?…ジャ、ジャン、今、何て…?』

ジャン(『聞こえなかったのか?じゃあもう一度言うよ。俺はミカ…』)

ジャン(『ま、待って、ジャン。本当は聞こえていた。ので、今度は私が言わせて』)

ジャン(『…ああ』)

ジャン(『…わた、私も、ジャン、が、好…』///)

ジャン(『聞こえねえぜ、ミカサ』)

ジャン(『…いじわる』)

ジャン(『好きな相手にはいじわるしたくなるのさ』)

ジャン(『ジャンは本当にいじわる。でも、そんなジャンが好き…』///)

ジャン(『ミカサ…』)

ジャン(『ジャン…』///)

ジャン(チュッ)

ジャン「えんだあああああああああああああああああああ!!!!!」

ジャン「いやああああああああああああああああああああ!!!!!」

ジャン「はぁ、はぁ。…おい、お前ら」

ジャン「俺も、花見に行…」

ジャン「…」

ジャン「……誰もいねぇ」

ジャン「…」

ジャン「鼻血、止めねぇとな…」ネッチョオオオ

・・・・・・・・・・

ベルトルト「…?何だろう、食堂の方から叫び声が」

ライナー「気のせいだろ。…それより」

アニ「桜…、座標…、死ぬ…」

ベルトルト「アニ、気を確かに!!」

ライナー「しっかりしろ、戦士としての自覚を持て!!」

アニ「いや、いや、いや…!!」

ベルトルト「アニ…」

ライナー「…ひとつ、腑に落ちんことがある」

ベルトルト「ああ。エレンが座標を知っているわけがない」

ライナー「もしかして、俺達の勘違いじゃないか?」

ベルトルト「…そうかも知れない」

ライナー「だが、確かめる必要はある」

ベルトルト「だけど、エレンの話を全面的に信じるならば…」

ライナー「最悪、俺は死ぬことになる」

ベルトルト「いいのかい?」

ライナー「中途半端は嫌いだ」

ベルトルト「凄いね、ライナーは。尊敬するよ」

ライナー「よせ。そんな上等なもんじゃない」

ベルトルト「もしも君に何かあったら…」

ライナー「お前に全て託す。いいな?」

ベルトルト「荷が重い…」

ライナー「自信を持て。お前ならやれる」

ベルトルト「…分かった」

ライナー「…ベルトルト、本当に分かっているのか?」

ベルトルト「え?」

ライナー「俺は、『全てを託す』と言った」

ベルトルト「あ、ああ」

ライナー「アニのことも託すって意味だぞ?」

ベルトルト「…!!」

アニ「…私のこと?私は死ぬの?」

ライナー「アニ、大丈夫だ。俺に何かあってもベルトルトが守ってくれる」

アニ「ベルトルト…」

ベルトルト「アニ、大丈夫だ。君のことは僕が守る」

アニ「…!!」ダキッ

ベルトルト「ア、アニ?」

ライナー「ふふ。心配する必要は無さそうだな」

ライナー「それじゃ、俺はもう戻る」

ベルトルト「待ってよ、ライナー」

ライナー「お邪魔虫は退散するさ」

ライナー「消灯時間に遅れるなよ?」

*(翌日、訓練所正門前)

ユミル「…揃ったな」

アルミン「そろそろ行こうか」

エレン「なあ、アルミン。昨日お前の言ったこと、色々考えてみたんだが…」

アルミン「そ、そうなんだ?そ、それで?」

エレン「…何か、違う気がするんだよなぁ」

ミカサ「エレン、迷いは兵士にとって禁物」

エレン「…そうか。そうだよな。ところで」

エレン「ミカサ、その荷物は何だ?」

ミカサ「お弁当。朝一番で買ってきた」

クリスタ「そっか、お弁当のこと忘れてた…」

ミカサ「心配いらない。人数分ある」

サシャ「お弁当、お弁当。肉、肉」

クリスタ「ミカサありがとう。お金は後で払うからね」

ミカサ「助かる」

エレン「よし、その弁当は俺が持つ」

ミカサ「え?」

エレン「ほら、こっち寄こせよ」

ミカサ「優しい」///

エレン(手ぶらで歩くより鍛錬になる)

アルミン(いつも通りのすれ違いだね。今日も平和だ)

コニー「さあ、行こうぜ!!」

*(山道)

ライナー「…」

ライナー(巨人が死ぬとはどういう意味なんだ…?)

ライナー(桜に辿り着いた時点で襲われる?)

ライナー(誰に?)

ライナー(この七人に…?いや、待ち伏せの可能性もある…)

ライナー(俺は巨大な罠にかかりつつあるのかも知れない)

コニー「ライナー、いやに静かだな?」

ライナー「お、おう。武者震いってやつだな」

コニー「気合入ってんなぁ…」

エレン「それでこそライナーだぜ。今日は花見で勝負だな」

ライナー「しょ、勝負…。ああ、その通りだな…」

ライナー(エレン。見事なまでに平静だ。だが、負けるつもりはない)

クリスタ「ライナー、本当に大丈夫?何か心配事でもあるんじゃない?」

ライナー(女神)

ライナー(いかん、平常心だ)

ライナー「いや、俺は元気だ。心配するな」

クリスタ「それならいいけど…。今日は楽しもうね!!」

ライナー(楽しみ?俺を殺すことが?)

ライナー(面白い)

ライナー「ああ、お手柔らかに頼む…」ニヤッ

クリスタ「(ビクッ)」

ユミル「卑猥な笑い方すんじゃねえ、ホモ野郎」

ミカサ「クリスタを怯えさせるのは感心しない」

ライナー「…すまん、気にしないでくれ」

・・・・・・・・・・

コニー「…!!皆、動くな!!」

七人「…!?」

コニー「動くなよ…!!」

ギリギリギリギリ

ライナー(弓を引き絞る音!?)

ライナー(まさかここで!?)

ライナー(油断!!コニーは俺の背後!!)

ライナー(動けない…。どうする…!?」

ギリギリギリギリ

コニー「…」

ライナー(駄目だ、間に合わん…)

ビシュッ 

コニー「よし、当たった!!」

七人「…へ?」

コニー「へっへっへ。討伐数1ってとこかな」

サシャ「兎ですか…。抜け駆けはずるいですよ、コニー!!」

コニー「へへん、いつもの立体機動の訓練のお返しだ」

サシャ「よ~し、負けませんからね」

クリスタ「兎がいたのね。びっくりした~」

アルミン「そうだね~(胸を撫でてるクリスタ女神)」

ミカサ「さすが」

エレン「なあコニー。獲物をどうやって見つけるんだ?コツがあるのか?」

コニー「コツだって?悪ぃけど俺…天才だから。感じろとしか言えん」ドヤァ

エレン「ちぇ~」

サシャ「こればっかりは経験が物を言いますからね」フーッ

クリスタ「流行ってるの、あの表情?」ボソ

ユミル「馬鹿同士でな」ボソ

ライナー(助かった…)

・・・・・・・・・・

サシャ「雉子!!」ビシュッ

ライナー(くっ!!)ビクッ


コニー「鳩!!」ビシュッ

ライナー(また!!)ビクッ


サシャ「兎!!」ビシュッ

コニー「同じく!!」ビシュッ

ライナー(いい加減にしろ!!)ビクッ


サシャ「ライナー!!」

コニー「覚悟!!」

ライナー「ええええええ!?」

コニー「あっはっは、びっくりしたか?」

サシャ「ライナー、驚きすぎです、ふふふ」

ライナー「ぜえ、ぜえ」

エレン「お~い、いい加減にしろよ、お前ら」

コニー「すまん、はしゃぎ過ぎた」

サシャ「ライナーが射る度に驚くのが面白くて…」

アルミン「ライナー、顔色が悪いけど大丈夫?」

ライナー「ああ、問題無い。…すまん」

エレン「全く、二人とも悪ノリしやがって」

エレン「それにしても凄いよな、お前ら」

サシャ「ふふ、まぁそれほどでも」

コニー「食べる以上に獲るのは駄目だから、もう獲らないけどな」

エレン「いやあ、憧れるぜ」

ミカサ「エレン、私だって出来る。こうやって」ヒュン ザクッ

ミカサ「蛇」

エレン「ナイフ投げ…?」

ミカサ「乙女の嗜み」

クリスタ「乙女の嗜み?私もやりたい!!」

ユミル「必要無いからな」

アルミン「クリスタに悪影響与えないでね、ミカサ」

ミカサ「善処する」

エレン「蛇をナイフで仕留める乙女がどこにいるんだよ…」

ライナー(もう嫌だ…)

*(桜の木)

ミカサ「…着いた」

エレン「満開だな…」

クリスタ「綺麗…」

アルミン「想像していた以上だ…」

ライナー「まさかこれほど美しいとは…!!」

・・・・・・・・・・

サシャ「…さて。私とコニーは近くの小川で獲物を捌いてきます」

コニー「お前らは火を起こしておいてくれ」

エレン「よし、任せろ」

ミカサ「私は木の下の草を軽く刈っておく」

ライナー「よし、俺もだ」

ライナー(今の内に桜を調べておこう)

アルミン「それじゃ僕達三人もエレンを手伝おう。まずは枯れ木集めだね」
・・・・・・・・・・

ライナー「……」ザクッザクッ  ※草を刈る音です

ミカサ「ライナー、どうしたの?桜が珍しい?」ザクッザクッ

ライナー「あ、ああ、初めて見るからな」ザクッザクッ

ライナー(やはり単なる木だったか)

ライナー(まぁ、座標がこんな手軽に見つかる訳がない)

ライナー「……」ザクッザクッ

ミカサ「期待外れだった?」ザクッザクッ

ライナー「いや、そんなことはない。美しい。来た甲斐があった」ザクッザクッ

ミカサ「そう、それならいい」ザクッザクッ

ミカサ「草刈りはこれで十分。お疲れ様」

ライナー「おう」



ミカサ「昨日、アルミンが言っていたことだけど」

ライナー「うん?」

ミカサ「あれは多分、でまかせ」

ライナー「ほう…」

ミカサ「エレンが花見を渋るから」

ライナー「ああ、なるほど。はは、俺も乗せられちまったがな」

ミカサ「でも、少しは本当だと思う」

ライナー「少しは?」

ミカサ「目標に向かって努力するのは大切なこと」

ライナー「…」

ミカサ「桜を見てその決意を新たに出来るなら、それはそれで意味がある」

ライナー「…そうだな」

ミカサ「その一方で」

ミカサ「人は目的の大きさに心が押しつぶされることがある」

ミカサ「体を必要以上に酷使してしまうこともある」

ミカサ「そんな時には花でも見て落ち着くことも大切」

ライナー「お前、もしかして…」

ミカサ「エレンは休むことを嫌がる」

ミカサ「それでは限界が来てしまう」

ライナー「…」

ミカサ「たまは力を抜くことも必要」

ライナー「…いい嫁さんになるよ、お前」

ミカサ「当然」

ライナー「世話女房、ってやつだな」

ミカサ「それは望むところ」

ミカサ「たとえば今日からでも」

ライナー「はっはっは、それは気が早い」

ミカサ「残念」

エレン「お~い、草刈り終わったか~!?」

クリスタ「枯れ木、集めてきたよ~!!」

ライナー「おお、こっちも終わったところだ!!」

・・・・・・・・・・

エレン「うまいな、弁当」

アルミン「お腹ぺこぺこだったからね」

ミカサ「本当は手作り弁当が良かったのだけれど」

エレン「急な話だったから仕方ねえよ」

クリスタ「またどこかピクニックに行こうよ。お弁当も作って」

アルミン「クリスタの」

ライナー「手作り」

ユミル「弁当」

三人「プライスレス」

コニー「…お前ら馬鹿だろ」

ユミル「馬鹿に馬鹿と言われたくないんだが」

コニー「うるせー。お、そろそろ肉も焼けたみたいだぞ。みんな好きなの取ってくれ」

サシャ「肉ぅっ!!」

ユミル「その手前のヤツ、焼けてんだろ?取ってくれ」

コニー「ほいよ、ブス」

ユミル「ありがとよ、馬鹿。…へえ、うまいじゃないか」

ミカサ「少し塩味がついてる…?」

コニー「サシャが塩を持ってきたんだ」

アルミン「ふうん、そうなんだ。…でも、サシャは買い物には行ってないよね」

エレン「お前、また食料庫から…」

サシャ「す、少しだけですから。不可抗力ですから」

ユミル「そうそう、これも不可抗力だな」ゴソゴソ

クリスタ「お、お酒?」

ユミル「サシャが食料庫から帰ってきた後で、ちょいとな」

エレン「お前ら…」

アルミン「い、いや、エレン。酒を嗜むってのも兵士として」

エレン「いいって。もう分かってるよ。訓練じゃないんだろ、花見は?」

アルミン「う…」

エレン「おおかた、ミカサが俺を休ませようとして花見を言い出したんだろ?」

ミカサ「…気付いていたの?」

エレン「さすがに気付くっての。で、アルミンもそれに協力した。そうだろ?」

アルミン「ま、そんなところかな。ハハハ…」

アルミン(クリスタが目的だったとはとても言えないね)

エレン「あれこれ理屈振り回さないで、ちゃんと言えっての」

アルミン「ごめんよ。でも、これだけ見事な桜を見られたわけだし…」

エレン「ああ、来てよかったと思ってるよ」

ミカサ「安心した」

ユミル「話は済んだか?ほら、酒だ。コップに半分ほどだけどな」

エレン「…ま、これぐらいなら許されるよな」

ミカサ「ん。おいしい」

クリスタ「酔ったらどうしよう」

ライナー「大丈夫だ。俺の背中は空いてる」

ライナー「胸と両手も空いてる」

ライナー「さあ!!」

ユミル「サシャ、弓矢を貸してくれ。有害な獣がいる」

・・・・・・・・・・

アルミン「ああ、少しだけ酔ったかな」

エレン「ちょっとした宴会だな」

コニー「誰か歌でも歌えよ~」

ミカサ「…うた?」

ミカサ「…思い出した」

クリスタ「ミカサ、どうしたの?歌うの?」

ミカサ「世の中に…」

アルミン「世の中に?」

ミカサ「世の中に絶えて桜の無かりせば春の心はのどけからまし」

クリスタ「それは何?詩?」

ミカサ「そう、母から教えてもらった古い詩」

アルミン「珍しい響きだね。えっと、意味は…」

ミカサ「この世の中に桜が無ければ、春を過ごす私の心はのどかなのに」

コニー「変わったヤツだな、こんな綺麗な花を咲かせるのに」

エレン「桜が嫌いなのか?その詩を詠んだヤツは?」

ミカサ(何だか懐かしい、このやりとり)

アルミン「…いや、多分反対だ」

ライナー「反対?」

ミカサ「そう、その通り」

ユミル「ああ、なるほど…な」

サシャ「どういうことですか?」

クリスタ「多分、こういうことよ」

クリスタ「桜はすぐに散るんだよね?」

クリスタ「だから咲いたらすぐに見に行かなくちゃって思う」

クリスタ「桜が好きだから散る前に見に行きたいって思う」

クリスタ「だから気分が落ち着かないの」

クリスタ「桜に対する愛情を逆説的に詠ったわけだよね」

クリスタ「ミカサ、この意味でいい?」

ミカサ「そう。いくら心が乱されるからといって」

ミカサ「桜が無くなればいいなんて思ってない」

ミカサ「たとえ心が乱されても桜があった方がいい」

ライナー「…なるほど」

サシャ「よく分かりました。ミカサにとってのエレン、ってところですかね?」ニヤニヤ

クリスタ「エレンにとってのミカサ、とも言えるんじゃない?」ニヤニヤ

ミカサ「…」///

エレン「…お、俺にはさっぱり分かんねえな」///

エレン「詩なんてさっぱりだ。さあ、そろそろ帰る支度だ」///

アルミン「ふふ、そういうことにしておこうか」ニヤニヤ

ライナー「ふはは。オチのついたところでお開きとしようか」

コニー「なあ、みんな。俺にもさっぱり分からねえんだが。何でだ?」

ユミル「大人になったら分かるよ」



完*

※※※以下、おまけ※※※

ライナー「…というわけで、収穫はゼロだ」

ベルトルト「はあ、やっぱり僕達の勘違いか…」

アニ「変なことをいうアイツが悪い。明日の格闘訓練で…」

ライナー「はっはっは。まあ、許してやれよ」

ヒョイッ

アニ「…これは?」

ベルトルト「もしかして…桜の枝?」

ライナー「満開の桜を切るのはよくないんだろうがな。少しぐらいならと思ってな」

アニ「これが桜…。綺麗だね。花びらがかわいらしいよ」

ベルトルト「この花が木の全体に咲いているわけかい?」

ライナー「ああ、圧巻だった」

アニ「…残念だね、私も行けばよかったよ」

ライナー「故郷の山でもどこかに生えている筈だ」

ライナー「無事に帰ることが出来たら探そう」

ライナー「見つけたら三人で花見と洒落こもうぜ」

ベルトルト「…頑張ろうね」

アニ「もちろんだよ」

ライナー「必ず帰る」

ライナー「無論、三人でな」

三人「…」

ライナー「…ああ、それから、昨日のエレンの話だが」

ライナー「案外、当たっていたのかもしれん」

ライナー「たまたまだろうがな」

ベルトルト「座標じゃなかったんだろ?」

ライナー「まぁ、待て。座標でないのは確かだが」

ライナー「ある詩をミカサに教えてもらったんだ」

ライナー「それがな…」


おまけ・完

面白かった。乙

…以上です。
お読み頂きありがとうございました。

SSは今回で3作目です。

1作目  ミカサ「私は誕生日が嫌い」
2作目  ミカサ「守る」

なお、本文中に取り上げた在原業平の歌ですが、解釈が違っているかも知れません。
どうぞご容赦くださいませ。

また何かを書きましたらアップさせて頂きます。


末筆ながら、コメントを下さった方々、ありがとうございました。

いやあよかった乙


よい雰囲気でした

エレンを大事にするミカサも良いな。エレンもミカサを大事にしてるしな


和やか

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