放課後の屋上


絵里「はぁ･･･」

希「えりち？　元気ないけどどうしたん？」

絵里「え？　そうかしら･･･」

希「疲れてるん？」

絵里「別に疲れてないわ」

希「今日の練習いつもより声が出てないし動きもおそいで？」

絵里「そうだったかしら？　ごめんなさい。気を付けるわ」

希「いや、攻めてるわけやないけど」

絵里「自分ではよくわからないんだけど、今の私って元気ないように見えるの？」

希「うん」

絵里「どうしてかしら」

海未「絵里！　希！　休憩は終わりです！　練習再開しますよ！」

希「はーい！　えりち、いこ」

絵里「えぇ･･･」


海未「ワン・ツー・スリーフォー！　凛、動きがずれていますよ！　もっと回りを見て！」

凛「は、はい！」

海未「じゃあ今日の練習はここまで！　みんなお疲れさま」

希「ふぅ･･･今日も厳しかったね」

海未「これくらい当然です」

希「目標はラブライブ優勝やもんね」

海未「そうです。ライバルは手強いので日頃の努力が大事なのです。ところで」

希「？」

海未「絵里は今日お疲れなのでしょうか。いつもより動きが悪い気がするのですが」

絵里「え？」

希「海未ちゃんもそう思う？　やっぱりえりち元気ないん？」

絵里「え、えぇ･･･ぜんぜんそんなことないんだけど」

希「でもいつもならもっと動きにキレがあるよ」

絵里「今日はキレなかったかしら？」

海未「動き自体は合ってるんでそれはいいんですけど、やはり元気がないように見えました」

絵里「そう言われても私は普段通りのつもりだったけど」

希「うーん･･･心ここにあらずって感じなんよね。なにか悩みごとでもあるん？」

絵里「特にないわ」

希「じゃあなんやろうね」

凛「どうしたの？　帰らないの？」

希「凛ちゃん、今日のえりち元気がないと思わへん？」

絵里「･･･」

凛「いつもこんな感じじゃない？」

希「でもいつもならもっと笑ったり声にも張りがあるやん」

凛「絵里ちゃんそんなに笑うかなぁ。いつもしかめっ面のイメージだよ」

絵里「しかめっ面のイメージだったのね。これからは気を付けるわ･･･」

海未「とにかく帰り仕度をしましょう。もう暗くなってきます」

希「そうやね。えりち、いこ」

絵里「えぇ･･･」

帰り道


希「日が落ちるのもすっかり早くなったなぁ」ﾄｺﾄｺ

絵里「そうね」ﾄｺﾄｺ

希「でも最近やっと涼しくなって練習もしやすくなったよね」

絵里「そうね。この前まで歩いてるだけで汗だくだくになって気持ち悪かったもの」

希「そうやね」

絵里「･･･」

希「また無口になってる」

絵里「え？」

希「今日のえりちはやたら無口になってたで」

絵里「そうだったかしら」

希「うん。ほんとに悩みないの？　もしあるならかまわずうちに相談してほしい」

絵里「それが特にないのよねぇ」

希「うーん」

絵里「そりゃ悩みのひとつやふたつはあるわよ？　進路のこともそうだし。でもそれは今に始まったことじゃないもの」

希「えりちなら頑張り屋さんやから受験も心配ないよ」

絵里「そんなこともないけど」

ﾋｭｳｯ

希「うぅ、寒いっ！　ブレザー着よ･･･」ｶﾞｻｺﾞｿ

絵里「練習終わりだからって半袖でいるからよ。もう10月なんだから」

希「もう10月なんやね」

絵里「そうよ」

希「カレンダーで見るからわかってるつもりでいたけど、実感なかったんよ。うちの中ではまだ8月やで」
希「カレンダーで見るからわかってるつもりでいたけど、実感なかったんよ。うちの中ではまだ8月やで」

絵里「なによそれ」ｸｽｯ

希「えりちの笑顔いただきました！」

絵里「えぇ？」

希「だって今日ぜんぜん笑ってくれんかったもん」

絵里「そうだったかしら？」

希「やっぱりえりちは今日元気ないんよ」

絵里「うーん･･･私はそんな自覚なかったんだけど」

希「なんとなく心配やね」

絵里「そんな、心配なんてしないで。本当にきっと大したことないのよ」

希「だって明らかに元気ないし、自分でも理由がわからないんでしょ？」

絵里「じぶんではわからない程度のものだし、そんなことで希に心配させるのは申し訳ないわ」

希「でも･･･」

絵里「そうよ！　原因がわかったわ！　きっとこれは秋のせいだわ！」

希「え？」

絵里「私に元気がないのは秋のせいよ。ほら、秋って寂しい季節じゃない？」

希「秋のせい･･･？」

絵里「そうよ。だから私のことは心配しなくていいのよ、希」ﾆｺｯ

希「･･･」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

絵里「希？」

希「ふふっ」

絵里「え？　笑ってる？」

希「ふふふ･･･」

絵里「な、なんで笑ってるの？　私なにかおかしいこと言ったかしら･･･？」

希「ふふっ、おかしいよ。だって秋のせいで寂しいなんて、あのえりちが言うんやで？」ｸｽｸｽ

絵里「わ、私が言ったらいけないの？」

希「えりちってお堅くて真面目ちゃんやん。なのに秋が寂しいなんて乙女発言はずるいやん」ｸｽｸｽ

絵里「お、乙女！？　そ、そんなつもりで言ったんじゃないわよ！　ただ秋ってホラ！　寒くなって日が落ちるのも早くなってなんかあれじゃない！？」

希「そんな必死に言い訳しなくてもいいんやで」ｸｽｸｽ

絵里「い、言い訳じゃないわよ。それといつまで笑ってるのよ！」

希「バカにしてるわけやないんだけど、えりちかわいすぎやん」ｸｽｸｽ

絵里「それがバカにしてるのよ！　か、かわいいなんて」

希「ふふ、ごめんごめん」

絵里「･･･でも、本当になんで今日の私は元気がなかったのかしら？」　

希「言い出したうちが言うのもなんやけど、気にしすぎはよくないよ？　たまには元気のない日もあるよ」

絵里「そう･･･よね」

希「でもうち嬉しい」

絵里「嬉しい？」

希「今日えりちが元気なくて心配やったけど、最後にいいものが見れた♪　乙女なえりちかわいかったな♪」