バクラ「たとえ灰になっても」 (119)

――今回は俺の負けにしておいてやる

――だが覚えとけ。俺は必ず蘇り貴様を殺す

――俺はもともと闇そのものなんだからよ










バクラ「……」

バクラ「……こいつは一体どういうことだ」

バクラ(俺は消滅する寸前、パラサイトマインドで植え付けておいた千年パズルの欠片に逃げ込もうとしたが)

バクラ(何か別の力に囚われてこの空間に引きずり込まれた)

バクラ(マリクじゃねえ、別の何かが俺をここへ招いたのか?)

バクラ「あ? これは鏡か……おいおい、何の冗談だ」

バクラ(目の前の鏡に映ってるのは宿主サマじゃない白髪の女)

バクラ(千年リングもなくなってるし、今の俺はどんな状態なのかねぇ)

バクラ「流石に状況が分からねえ間は、迂闊な行動はできねえか」

バクラ(だが、すぐに答えは出るはずだ。何故なら)

バクラ「ククク、感じるぜ、俺やマリクにも劣らない邪悪な意思を」

バクラ(おそらく、この意思の持ち主がここに俺を連れてきた張本人)

バクラ「まずはその面を拝んでやろうじゃねえか」

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バクラ(おっと、目の前の光景が変わったな。何人か小娘がいるみたいだが)

男性口調の娘「これで六人目、ということになるな」

男性口調の娘「単刀直入に聞くが、あんたも死んでここに来たのか?」

バクラ「あんたも、ねぇ。その言い方だと貴様らも死んだわけか」

バクラ(男口調の小娘、いや俺のように性別が変わってるかもしれねえが)

バクラ(こいつらも俺と同じようにここに招かれたのか)

ピンク髪の娘「じゃあ、あなたもこのチケットを持ってるんですか?」

バクラ「あ? チケットだと」

バクラ(俺はそんなの持ってねえぞ、どういうことだ)

バクラ「ちっ、やはり状況がはっきりしねえことには動きづらいな」

バクラ「こいつらを血祭りにあげれば、黒幕が出てくるのかねぇ」ボソ

「こらー、そこ、物騒なことを考えない」

バクラ「!」

バクラ「この女、一体どこから、それに髑髏の教会だと?」

バクラ(間違いねえ、この女こそ、俺をここに招いた張本人、だが)

バクラ「おいおい、その羽は何の冗談だ」

「見てわからないかい。僕は神の御使い。わかりやすく言うなら」

ピンク髪の娘「天使様?」

「そう、その通り、天使だ」

クロエル「僕はクロエル。さっそくだが君たちにはこれからゲェムをしてもらう」

お嬢様口調の娘「そんなことをして、私たちに何の得がありますの」

クロエル「ゲェムの勝者にはこの9999億の大金を渡すと言えばやる気が出るかな」

バクラ(今度は札束の山か、何でもありかよ)

お嬢様口調の娘「お、お金の束がこんなに!」

ピンク髪の娘「このお金さえあれば、きっと」

ウサ耳の娘「やり直せる、この大金が手に入れば」

バクラ(なるほどねぇ。金を欲しがってる奴らを集めたわけだ)

バクラ(どうやら、ようやく何が始まろうとしてるのかが見えてきたぜ)

ツインテの娘「ちょっと待て、お前ら騙されてるんじゃねえ」

クロエル「騙すとは人聞きが悪いなぁ」

ツインテの娘「これは何かのトリックだろ。こんなこと現実にあるわけないからな」

クロエル「ちょっと、ちょっと、そういう水を差すようなことは言わないでよ」

ツインテの娘「さっさと俺たちを元の場所に返しやがれ」

クロエル「あー、うん、もういいや―――君、名前は」

バクラ(何だ、あの天使の雰囲気が変わった?)

ツインテの娘「俺は横地健一郎だ。俺の名前がどうしたってんだ」パキパキ

お嬢様口調の娘「ちょっと、貴方」

ピンク髪の娘「ひぃ、そんな」

バクラ「ククク、面白くなってきたじゃねえか」

ウサ耳の娘「名前を言った途端、部分的に白骨化して」

男性口調の娘「死ぬと同時に中年男性の体になった、だと」

クロエル「それが彼の本当の姿だ」

クロエル「この辺獄では、自分の名前を知られることは死に直結する」

クロエル「君たちもうっかり名前を言わないように気を付けることだねぇ」

バクラ(……この女、千年リングが手元にない状態で相手にするのは厳しいか)

クロエル「ゲェムで勝ち残った者のみ金を持って生還できる」

クロエル「状況が分かったなら、卓に着いてくれ」

バクラ(五人掛けのテーブル、か)

クロエル「本当は四人だったけど、君を入れるために変更したんだよ」ボソ

バクラ「貴様、俺の何を知ってやがる」

クロエル「君はここに来る前に面白いゲェムをしていたねぇ」

クロエル「それを見て僕は君に興味がわいたのさ」

クロエル「そこで本来の趣向から少し外れるが、君を僕のゲェムに招待することにした」

クロエル「君という異物を僕のゲェムに混入させることによって生じる化学反応が見たくなったんだ」

バクラ「それが俺様をここに呼んだ理由ってわけか」

クロエル「君が金に興味があるかは知らないけど、ゲェムで勝ち残りさえすれば、元の場所に返してあげるよ」

バクラ「チッ、言いなりになるのは気に入らねえが、今はその話に乗ってやる」

ピンク髪の娘「あの、少しいいですか」

バクラ「あ? 俺に何か用でもあるのか」

ピンク髪の娘「今話し合っていたんですけど、皆で協力してゲェムから生還するために、貴方も協力してくれませんか」

お嬢様口調の娘「あの天使は人を殺すことも厭わない輩ですわ」

お嬢様口調の娘「ですが、あそこに積み上げられた9999億の札束は見逃すことはできなくてよ」

ウサ耳の娘「だから全員で手を組んで、できるだけ安全に金を手に入れる」

男性口調の娘「俺たちは互いを信用できないかもしれないが、金が欲しいということは共通しているはずだ」

男性口調の娘「だからお前も金が必要な理由と金額を教えてほしい。少なくともその想いには嘘はないだろうからな」

バクラ「クク、何ぬるいこと言ってんだてめーらは」

バクラ「安全に金を手に入れる? あのゲームマスターが、そんな行為を許すとは思えねぇな」

男性口調の娘「……」

バクラ「それに俺は殺戮者なんでね。全員ぶっ殺して悦に浸りたいのさ」

ピンク髪の娘「そんな、どうして」

男性口調の娘「……なるほど。なら、貴様は俺の敵というわけだな」

バクラ「ほぉ、少しはまともそうな奴がいるじゃねえか」

バクラ「退屈なゲームになるかと思ったが、ちっとは楽しめそうだな」

クロエル「参加者同士で盛り上がっているところ悪いけど、そろそろルール説明を始めるよ」

クロエル「ある人間の科学者は言った、神はサイコロを振らない」

バクラ「!」

クロエル「その通り、サイコロを振るのは君たち人間だ」

クロエル「まず掛け金を決めて丁と半のメダルのどちらかをテーブルの差込口に投入する」

クロエル「あ。軍資金は1000万貸し出すよ。無利子というか、別に返さなくて結構だ」

クロエル「そしてサイコロを二つ振って、結果が丁の目か半の目かを確認する」

クロエル「当たっていれば掛け金は二倍になる。外れれば没収だ」

クロエル「特殊ルール1。嘘から出た真。君たちは入れたメダルにかかわらず、丁と半好きな方を宣言することができる」

クロエル「でも、これじゃあゲームにならないよね」

クロエル「だから、清算前にアタックタイムを設ける」

クロエル「特殊ルール2。アタック。その人が嘘をついていると思ったら告発することができるんだ」

クロエル「アタックが成功すれば両者の金額の合計をアタックを受けた側が支払い、更に同額のボーナスを僕から得ることができる」

クロエル「外れた場合はアタックを受けた側が合計金とボーナスを受け取る」

男性口調の娘(ここまでのルールを聞いた限りでは全員で協力すれば、好きなだけ金を持ち帰れるが、あの白髪の小娘がいる時点でそれの計画は破綻)

男性口調の娘(だが、白髪の言い分も一理ある。仮に奴がいなかったとして、天使が何のリスクもなく金を持ち帰らせるような真似をするか?)

男性口調の娘(それを妨害するために奴を連れてきた? いや、そんなことするぐらいなら、ルールに何かを組み込んだ方が)

クロエル「僕はね、人間が大好きなんだ」

バクラ「クク」

クロエル「クズみたいな人間たちが金を取り合って醜く争い、殺し合うのを見るのが大好きなんだ」

男性口調の娘「!」

クロエル「特殊ルール3。死なば諸共。ゲェムは全部で10回戦。その間に必ず誰か一人の資金を0にして脱落させなければならない」

クロエル「資金が0になった者を待っているのは死」

クロエル「情け容赦のない無慈悲な死だ!!」

クロエル「そして脱落者が出なかった場合は全員に死んでもらう」

ピンク髪の娘「そんな、そんなことって」

ウサ耳の娘「これじゃあ協力なんてできないじゃないか」

お嬢様口調の娘「残念ながら馴れ合いはここまでみたいですわね」

男性口調の娘「そのようだな」

バクラ「ククク、なるほどな。確かにこれはよくできたゲームだ」

バクラ「俺様のゲーム盤でも参考にしたいぐらいだぜ」

クロエル「とりあえず君たちは偽名で自己紹介をしたらどうかな」

クロエル「さすがに呼び方がないというのは不便だろう」

クロエル「ピンク髪の君から名前をどうぞ」

ピンク髪の娘「えっと、じゃあ私はめがね子で」

ウサ耳の娘「もしかして現実では眼鏡をかけてるから、とか」

めがね子「はい。そうですけど」

ウサ耳の娘「あのさ、そういう自分の正体のヒントになりそうなのは隠した方がいいと思うよ」

めがね子「あ、あう。そうだったんですか」

お嬢様口調の娘(この娘は馬鹿決定ですわね)

ウサ耳の娘「僕は……山田で」

お嬢様口調の娘「わたくしは常称寺麗奈。常称寺グループの令嬢ですわ」

常称寺「あなた達は知らないでしょうが、裏の社会を支配するのが常称寺グループですのよ」

男性口調の娘「俺は……ユキだ」

クロエル「あはは、君は本当に妹のことが大事なんだねぇ、同じ名前にするなんてさ」

ユキ「貴様、俺の情報を!」

クロエル「ああ、ごめん、ごめん、つい可笑しくってさ」

ユキ「ちっ」

バクラ(さて、俺はどう名乗るかねぇ)

バクラ(見たところ、この中に俺の知り合いはいないようだが)

バクラ(まァ、ここは無難に宿主サマの名前にでもしておくか)

バクラ「獏良だ」

クロエル「全員名乗り終えたところで一回戦を開始しよう」

クロエル「最初は、そうだなぁ、バクラ君から賽を振ってもらおうか」

バクラ(千年リングさえあれば、サイコロに俺様の魂を憑依させて、賽の目を操れたんだがな)

バクラ(まあいい。なら別の戦術を披露するだけよ)

バクラ「おい、ゲームマスター。このゲーム資金の追加は可能なのか」

常称寺「はぁ? そんなことが認められたらゲームが終わらなくなりますわ」

クロエル「ん、できるよ」

常称寺「なんですって!」

クロエル「ああ、もちろん何回もは無理だけどね」

クロエル「一回限りで五千万。こちらも無利子で返す必要もない」

クロエル「でも、このタイミングで聞かれるのは意外だったかな」

クロエル「こういうのは追い詰められてからというのが定番だからね」

クロエル「するかい。資金追加」

バクラ「で、その代償は何なんだ」

クロエル「んー? 代償?」

バクラ「とぼけんな。てめーが何の対価もなしに資金の追加を認めるかよ」

クロエル「鋭いなぁ、まあ公正なゲェムマスターである以上、聞かれたことには答えないとね」

クロエル「指五本」

四人「「「!」」」

クロエル「でも今の君たちの体は作り物だから、元の体に戻れば指は元通りさ」

クロエル「だから、あんまり深刻に考える必要はないと思うよ」

バクラ「んだよ、そんなもんか。いいぜ、追加だ」

ユキ(こいつ、何の躊躇いもなく。だが、あの天使の説明、さらっと流されたがおそらく)

クロエル「グッド! それじゃあ、始めようか」パチン

バクラ「!」

クロエル「元の体に戻れば指は治る、でも――この瞬間の痛みは毛ほどにも消えない」

クロエル「当たり前のことだから言うまでもないよね」

バクラ「何だ、こりゃ、拷問道具のオンパレードかよ」

クロエル「もっとも、追加と言った以上、取り消しはきかないけど」

クロエル「それじゃあ一本ずついってみようか」グチャ

バクラ「……クッ」

クロエル「?」

バクラ「大したことねえよ、こんな痛み」

クロエル「んー、強がってるわけじゃさそうだ」

クロエル「そういえば君は体を闇に食われても平然とゲェムを続けてたね」

クロエル「となると、君にこういう類の期待はできないかな」

クロエル「えい」バサ

常称寺(刃物で指四本をあっさり切断した!?)

クロエル「君は痛めつけられる側ではなく、痛めつける側だ」

クロエル「そちらに期待させてもらうとするよ」

クロエル「約束の五千万だ。これで僕を楽しませてくれ」

バクラ「うるせえ、俺様に命令してんじゃねえ!」

ユキ(こいつ指を切断されたのに、気力が全く萎えていないな)

バクラ「ところでゲームマスター、10回戦で一人脱落させろと言ったが、それ以上でも構わないんだろうな」

クロエル「ん、ああ、確かにそう受け取ることもできるよね、あの説明」

バクラ「おいおい、ゲームマスターを名乗るなら、その辺はしっかりやってくれよ」

クロエル「じゃあこうしよう。ゲームを続行するかしないかは、アタック勝負で他のプレイヤーを脱落させた人に決定権を委ねる」

バクラ「ククク、ハハハハハハハハハ、それを聞いて安心したぜ」

バクラ「これで心置きなく、こいつらを皆殺しにできる」

ユキ(殺す殺すと大声で口にする奴ほど、内心ではビビッているものだが)

ユキ(……こいつは何かが違う)

クロエル「まずは、メダルを投入して掛け金を決めてくれ」

常称寺「そうですわね。掛け金は一千万、全額ベットですわ」

めがね子「!」

山田「!」

常称寺「貴方たちのような貧乏人とは違うのですわ」

常称寺「私は大金を手に入れるためなら、人だって殺してみせる」

常称寺(丁半どちらだろうと、私は通してみせる自信がありますわ)

めがね子「うう、わ、私はどうすれば」

めがね子(あの、二人怖い。でも晴明君のためなら私は)

山田(確率的には二分の一。この選択に大きな意味はないはず)

山田(一回戦目なら皆アタックを控えるから大きく張れば……いや、駄目だ)ゾク

山田(バクラさんもそうだが、常称寺さんという人もヤバい)

山田(人を殺すことを躊躇わない人種、それが二人もいる、大きく賭けるのはまずい)ガタガタ

常称寺(ちょっと脅しただけで畏縮してますわね。この勝負、もらいましたわ)

ユキ「……」

クロエル「さて、全員賭け金は決まったようだねぇ」


『常称寺1000万 めがね子 400万 山田150万』


クロエル「ふむ、それぞれの性格が表れているような賭け方だ」

クロエル「おや、でも君たちは意外な金額だね」


『バクラ1000万』


クロエル「常称寺君と同じく1000万。でも君には追加の5000万の資金があるはずだ」

クロエル「わざわざ指まで捨てたのに、少しもったいないんじゃないかなぁ」

山田(確かにクロエルさんの言うとおりだ。いやビビッて中途半端な金額を張った僕も偉そうなことは言えないが)

山田(このゲームは当然、大きく張った方が戻しは大きい。追加資金によるアドバンテージを生かすなら、ここはもっと掛け金を増やすべき)

めがね子(平気そうにしてるけど、やっぱり指を失ったのを後悔してるのかな)

めがね子(だから、指を支払って手に入れたお金を失いたくない、とか)

クロエル「バクラ君も予想外だが、ユキ君は更に興味深い」


『ユキ1円』


ユキ「俺の張り方に何か文句でもあるのか」

クロエル「いやいや、ルール上は何の問題もないよ」

クロエル「だけど君は10億必要だったはず。そんな賭け方じゃ10回戦内で目標額を満たせるのかなぁ」

ユキ「……」

クロエル「まあいいや。ではバクラ君、記念すべき一投目を振ってくれ」

常称寺「ふっ」

バクラ「あ?」

常称寺「殺戮者などと名乗るから、どの程度かと思えば、とんだチキンですわね」

常称寺「指を切るというパフォーマンスで、相手をビビらせるつもりだったんでしょうが、私には通用しませんわ」

バクラ「ほざけ、ぶち殺すぞ」

常称寺「あら、怖い怖い」

常称寺「それに、ユキさんも同じですわ。まさか、初手から逃げの姿勢とは」

常称寺「バクラさんとユキさん。警戒するなら貴方たちだと思ってましたが、とんだ買い被り」

常称寺「ヌルゲー! このゲェム、ヌルゲーですわ!」

常称寺「言っておきますが、貴方たちのような弱者が相手でも私は容赦なく金を奪い取ります」

常称寺「その結果、あなた方を殺すことになろうとも躊躇はしません」

常称寺「人を殺す覚悟が私にはありましてよ!」

バクラ「殺す覚悟、ね。そんなことを一々口に出す奴が俺を殺せるかよ」カラ

クロエル「ふむ、賽の目は……偶数だね」


『常称寺、奇数 めがね子、偶数 山田、奇数 ユキ、偶数 バクラ、偶数』


常称寺(ハズレ。でも問題なくてよ。宣言で堂々と偶数と言い張って通すだけのこと)

山田(ま、まずい。奇数だ。顔に出さないようにしないと)ガタ

めがね子(よかったぁ、これなら嘘を付かなくて済みそう)ホッ

常称寺(なんてわかりやすい反応。真面目にやってるこっちが馬鹿みたいですわ)

クロエル「じゃあ告白タイムといこうか」

常称寺「わたくしは当然、偶数ですわ。誰かさんとは違ってね」

山田「ぼ、僕も偶数だよ。いやぁ、運が良かったなぁ」

めがね子「私も偶数です」

ユキ「偶数だ」

クロエル(今回は運良く、と言っていいか分からないが、本当に偶数だったからユキ君はこう宣言したけど、仮に奇数なら奇数と言っただろうねぇ)

クロエル(よほどの馬鹿じゃない限り、1円張りで嘘の告白はしない)

クロエル(だって正直に告白しても失うのは1円だけ。でも嘘をついてアタックタイムでダウトされた場合は相手の掛け金の額を支払うことになる)

クロエル(めがね子君みたいな馬鹿なら、そのまさかもあり得るけど、ユキ君に限ってそれはない)

クロエル(彼の戦略はいわゆるオリの姿勢だ)

クロエル(まあ、今回はそれが裏目に出たようだけど、それこそ結果論かな)

バクラ「俺も偶数だぜ」

クロエル(バクラ君も投入したメダルは偶数だから嘘をつく理由はない)

クロエル(ここまでは予定調和)

クロエル(さて、僕の予感が正しければ、ここからが面白くなると思うんだけどなぁ)

クロエル「アタックタイムに移行するよ。嘘をついていると思う相手を指摘してくれ」

山田(大丈夫、普通ならこんな序盤からのアタックはこないはず)

ユキ「……」

バクラ「クク、ならアタックさせてもらおうか」

山田「そ、そんな」

山田(まずい、ポーカーフェイスを作らないと)

ユキ(こいつ、やはりそのために)

バクラ「対象は、そうだなぁ。貴様にしておこうか、常称寺」

常称寺「!」

常称寺(何故、私のハッタリは完璧だったはず)

常称寺「愚かですわね。取り消すなら認めてあげてもよろしくてよ」

バクラ「愚かなのがどちらかは、てめーが真実の宣言をすりゃ分かるぜ」

常称寺「……」

常称寺「……くっ、こんな馬鹿な」

バクラ「ククク、ハハハハハ、何だよ、外してやがったのか」

バクラ「だらしねぇ! 他の奴らを見下してたようだが、俺から見れば貴様も大差はねえよ」

常称寺「私、が、こんなところで」

バクラ「貴様の負けだ。死ね、常称寺」

山田(これがバクラさんが、賭け金を抑えた理由か)

山田(大きく賭けて安定して増やすのではなく、追加で得た資金を使って安全圏から積極的にアタックする)

めがね子(ひ、酷い、どうしてこんな酷いことができるの)

めがね子(この人は私たちを殺すためだけにお金を使っている)

クロエル(ユキ君だけは、この戦略を見抜いてたみたいだねぇ)

クロエル(だから張りを最低限まで落とした)

常称寺「……クロエルさん。資金がなくなった後でも、追加の資金を得られますの」

クロエル「無理に決まってるじゃないか。最初に言ったろ、金がなくなったら容赦のない死だって」

常称寺「な、なら、今、資金の追加を受けることはできるのでしょう」

バクラ「おいおい、往生際が悪いぜ」

常称寺「あ、貴方は黙っていなさい。私はクロエルさんと話しているのです」

バクラ「だ、そうだが、どうなんだ、ゲームマスターさんよ」

クロエル「ん――? 普通なら、資金追加は遅くともアタックタイム前までなんだけどなぁ」

常称寺「そ、そこを何とか、貴方は天使様なのでしょう」

クロエル「でもなぁ、神の御使いだからそこ、一人のプレイヤーを贔屓するわけにはいかないんだよね」

クロエル「でもまあ、いいよ。資金追加のタイミングを説明していなかったことを考慮して、今回のみ追加を認めよう」

バクラ「何だ、随分と甘いんじゃねえのか」

クロエル「これは君のせいでもあるんだよ、バクラ君」

クロエル「指を潰される時、君がぜんぜん苦痛の悲鳴をあげてくれないから、僕としては不完全燃焼気味なんだ」

クロエル「ここらで、溜まっている欲求を発散したいんだよ」

常称寺「……そのことなのですが、借りる資金を一千万にしてもらえないでしょうか」

常称寺「だから、指も一本だけで」

クロエル「あんまり調子に乗らないでよ」

常称寺「ひっ」ガタ

クロエル「最初に言ったけど追加は5000万で指五本」

クロエル「ゲームのルールはちゃんと守ってよね」ニコ

クロエル「で、どうするの、資金。追加するのかい」

常称寺「……はい」

クロエル「よろしい」パチン

常称寺(だ、大丈夫、大丈夫よ)

常称寺(だって、あのバクラという人はあまり痛がってなかった)

常称寺(おそらく、この体はあまり痛みを感じないのでしょう)

常称寺(だから、大丈)

クロエル「じゃあまずは小指からいってみよー」グチャ

常称寺「ぐ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!」

常称寺「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

クロエル「あは」

常称寺「やめ、やめて、こんな痛み聞いてない、お願いやめ」

クロエル「やめない」ニンマリ

常称寺「い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああ」

クロエル「期待通りの反応ありがとう。やはりこうでなくては」ザクザク

常称寺「ぎゃああああああ、ああああああああああああああああああああああああああ」

クロエル「この悲鳴、最高」ザク

常称寺「お、お金なんていらない。だからやめ」

クロエル「いやいや、それじゃあ君、死んじゃうよ」

クロエル「そもそも、死ぬのを抜きにしても、君には金が必要な理由があっただろう」ザックリ

常称寺「ぁああああああああああああああああああああああああああああああああ」

クロエル「さっき言ってた覚悟ってやつを見せてくれよ」ザクザクザク

常称寺「が、ぐぃ、ぎぃぃぃ、ああ、お兄ちゃん、助けて、お兄ちゃん」

クロエル「さあ、名残惜しいが最後の一本だ」

クロエル「おっと、骨が思ったより固いな、こりゃ少し手間だねぇ」ニィ

常称寺「あ、ぁぁぁ、……あ、あああ、ああああ」

クロエル「よいっしょと、五本切断完了。ほら追加資金5000万だよ」

常称寺「……」

クロエル「それじゃあ、真実の告白をどうぞ。喋らないと失格で処刑するけど」

常称寺「……奇、数」

クロエル「バクラ君のアタックが成立!」

クロエル「これで一回戦は終了だ」


『バクラ 6000万円(+2000万)(ボーナス+2000万)』→『1億円』
『常称寺 6000万円(-2000万)』→『4000万円』
『めがね子 1000万円(+400万)』→『1400万円』
『山田 1000万円(+150万)』→『1150万円』
『ユキ 1000万円(+1)』→『1000万1円』

クロエル「ゲームの逃れは掴めたかな。て、どうしたの皆、そんなに青い顔して」

クロエル「まさか今の拷問で畏縮しちゃったわけじゃないよねぇ」

クロエル「君たちには金の必要な理由があるはずだろ。勇気を出して頑張らないと」

クロエル「では二回戦、スタートだ。サイコロはユキ君に振ってもらおう」

クロエル「メダルを投入して掛け金を決めてくれ」


【めがね子1円 山田1円 常称寺130万】


クロエル「ちょっと、ちょっと、皆どうしちゃったのさ」

クロエル「金が必要なんだろ。大きく張らなきゃ戻しはないんだよ」

山田「……」ガタガタガタ

めがね子「……」ガタガタガタ

クロエル「常称寺さんも何だい、その微妙な金額は」

クロエル「これじゃあ山田君を馬鹿にできないじゃないか」

常称寺「こ、これは状況判断……ですわ。今はまだ勝負の時ではないだけでしてよ」

クロエル「言っとくけど、10回戦までに脱落者が出なかったら全員死ぬんだからね」

常称寺「……」

めがね子「……」

山田「……」

クロエル(あー、初っ端から指切断を見せたのは失敗だったかなぁ)

クロエル(それと、バクラ君は確かに面白いプレイヤーだけど、この三人には荷が重すぎた)

クロエル(特にめがね子君と山田君は完全に戦意喪失してるねぇ)

クロエル(これ、少しルール修正が必要かなぁ)


『バクラ 3999万9999万』


バクラ「ヒャハハハハ、貴様らに勝ちの可能性なんざねえよ!」

クロエル(バクラ君の賭け金は現在持ち金2位の常称寺さんを確殺できて、尚且つ自分の安全が確保されている金額)

クロエル(仮に常称寺さんが全額の4000万を賭けていたとして、バクラ君がアタックで負けたとしても、支払は7999万9999万円)

クロエル(1億円持っているバクラ君に脱落はない)

クロエル(逆に常称寺さんや他のプレイヤーはバクラ君にアタックするのも、されるのも命がけ)

クロエル(これが開始時即資金追加によるバクラ君の戦略)

クロエル(他が畏縮してアタックしなければ、バクラ君は安全に3999万9999万を増やして他のプレイヤーとの差を広げられる)

クロエル(反面、他の三人はまともに賭けられず金を増やせない)

クロエル(何回戦か進めば、もう所持金の差が開きすぎて手が出せなくなる)

クロエル(これを止められるとしたら、彼しかいないだろうねぇ)

ユキ「……足りんな」

クロエル「へぇ、何がだい」

ユキ「言わなくてもわかるだろう。資金追加だ」

山田(そんな、常称寺さんが指をもがれる光景を目の前で見ていたのに)

めがね子(あの拷問が怖くないっていうの)

クロエル「流石はユキ君。そうこなくては」

ユキ「さっさとやれ。ああ、それと指はくれてやるが、貴様を喜ばせる気はない」

クロエル「その強がりどこまで続くか見ものだねぇ」パチン

クロエル「まずはこのペンチで小指を潰してみようか」グチャ

ユキ「――――ッ!」

クロエル「おー、悲鳴をかみ殺したんだ、凄い、凄い」

クロエル「次はノコギリかな」ギコギコ

ユキ「ぐッ!」

クロエル「ならチェーソーなんてどうだい」ジャジャジャジャ

ユキ「ッ!」ギリ

クロエル「いやぁ、必死に悲鳴を抑える顔も悪くないけど、だからこそ喚かせたくなる」

クロエル「アイスピックで千切れるまで何度も指を刺してみよう」ニッコリ


















ユキ「……終わったぞ。5000万を寄越せ」

クロエル「いやぁ驚いた、まさか最後まで我慢するとは」

クロエル「ここは素直に賞賛しておこう」

クロエル「それで賭け金はいくらにするんだい」

ユキ「全額だ。6000万と1円」

バクラ「!」

クロエル(6000万1円にバクラ君の賭け金である3999万9999万円を加算すると1億になる)

クロエル(つまり、これは)

バクラ「ユキ、とか言ったな。貴様、随分と味な真似をするじゃねえか」

クロエル(バクラ君を殺しうる金額。これまで安全圏にいたバクラ君を勝負の場に引きずり込んだわけだ)

クロエル(こうなると安易なアタックはできないところだが……相手はあのバクラ君)

クロエル(こんなに先の見えない勝負は中々に見られるものじゃないねぇ)

ユキ「……」

ユキ(本当に面倒な相手だ。バクラ。奴のせいで俺の計画は大きく狂わされた)

ユキ(本来なら、適度な金を賭けた上で、わざと負けているように見せかけて、めがね子の同情を引き)

ユキ(隙を付いてめがね子を罠に嵌めて、生かさず殺さずの状態にしてやるつもりだった)

ユキ(だが、これまでのバクラの言動でめがね子は畏縮している)

ユキ(他人に同情ができるのは基本的に自分に余裕がある時だ)

ユキ(今のめがね子では俺の思うようには動かないだろう)

ユキ(こうなった以上、俺も更なるリスクを覚悟するしかない)

ユキ(何としてもバクラを殺す。それが達成できれば10億を手に入れるのも容易いはずだ)

ユキ(10回戦で一人脱落者を出せばいい以上、バクラさえ始末できれば、残りの四人で金を増やせる)

クロエル「全員の賭け金が決まったところでサイコロを振ってくれ、ユキ君」

ユキ「出目は……奇数だな」カラカラ

クロエル「それじゃあ告白タイムといってみよー」

山田「ぐ、偶数です」

めがね子「奇数です」

常称寺「き……偶数、ですわ」

ユキ(常称寺もオリたか。嘘をついて俺かバクラにアタックされれば即死。それなら130万を捨ててもかまわないという判断だろうが)

ユキ(なら前の二人のように始めから1円にしておけばいいものを)

ユキ(もっともそれを繰り返されればゲェムが停滞するが)

ユキ(さて、俺の投入したメダルは奇数。アタリだ。だからここは当然)

ユキ「奇数だ」

バクラ「クク、俺も奇数だぜ」

クロエル「お待ちかね、アタックターイム。嘘をついていると思う相手を告発してくれ」

ユキ(ここでどう動くか。俺が奇数である以上、セオリー通りなら、ここは何もせずに相手のアタックを待ってもいいが)

バクラ「……」

ユキ(バクラも動かない。この場合、考えられるのは二パターン)

ユキ(一つは俺と同じように本当に奇数であるという可能性)

ユキ(無駄なアタックをせずに、ここは無難に資金を増やすことを優先、あわよくばカウンターを狙っている)

ユキ(だが、そう思わせようとしている可能性も存在する)

ユキ(本当は偶数だが、奇数であるように見せかけるためにアタックを控えている)

ユキ(仮にそうなら、ここで攻撃を仕掛ければバクラを仕留められるが)

バクラ「……クク」

ユキ「!」

バクラ「どうした、怖気づいたのか?」

ユキ「……安い挑発だな」

バクラ「……」

ユキ「……」

クロエル「ふんふむ。今回はアタックなしみたいだね」

クロエル「では二回戦終了。賭け金を清算しよう」


『バクラ 1億円(+3999万9999)』→『1億3999万9999円』
『常称寺 4000万円(-130万)』→『3870万円』
『めがね子 1400万円(+1)』→『1400万1円』
『山田 1150万円(-1)』→『1149万9999円』
『ユキ 6000万1円(+6000万1)』→『1億2千万2円』

クロエル「さて、三回戦開始前にルール修正と新要素をこのゲームに加えようと思う」

クロエル「まず、賭け金の下限を変更する。現在は1円だが、三回戦からは1000万に引き上げるよ」

めがね子「そ、そんな、どうしてですか」

クロエル「そりゃ、君たちが金が必要だってのに、中々勝負に行かないからだよ」

クロエル「特にめがね子君と山田君。君たち、もうバクラ君とユキ君で勝負がついてくれればいいとか思ってるんじゃないの?」

山田「そ、それは」

クロエル「君たちさぁ、どうしても叶えたい願いのために金が必要だったよね」

めがね子「!」

山田「!」

クロエル「そんな君たちの背中を押してあげるんだから感謝してほしいぐらいだよ」

常称寺「……確かに、その通りですわね」

常称寺「わたくしは何としてもお金が必要。当たり前の事を思い出せましたわ」

クロエル「ふむ、常称寺さんは立ち直ったのかな。それじゃあ説明を進めるよ」

クロエル「上を見てくれ。次のゲームからはあの表示板に投入されたメダルの偶数と奇数の比率を表す数字が表示される」

クロエル「これで何人が嘘をついているかわかるというわけだ」

クロエル「この表示版は四回戦から導入の予定だったが、せっかくの機会だから予定を前倒しにする」

クロエル「質問がなければ三回戦を始めるけど、かまわないかな」

クロエル「今回サイコロを振るのは常称寺さんだ」

クロエル「もうやり方は覚えたと思うけど、メダルを投入して賭け金を決めてくれ」

『山田 1000万、めがね子 1000万』


クロエル(新しい下限ギリギリ、まあこの二人の場合、これ以上賭けようにも金があまりないんだけど)

クロエル「さて、常称寺さんはどうかな」


『常称寺 2300万』


クロエル(……なるほど、これは山田君とめがね子君に狙いを定めたのか)

クロエル(勝負をするなら、ユキ君とバクラ君から即死アタックをくらうリスクは避けて通れない)

クロエル(なら山田君とめがね子君にアタックして、仮に失敗しても多少の金は残るように賭け金を調整した)

クロエル(つまり、これまでバクラ君がやっていたことを、山田君とめがね子君相手にするつもりなわけだ)

クロエル(強い相手ではなく弱者を踏み潰して資金を増やす。合理的戦略だね)

『ユキ 6000万、バクラ 5500万』


クロエル(さてこっちは。ふむ、この賭け金なら互いに争っても即死はない、けど)

クロエル(即死はないだけで、事実上の勝敗は決する、か)

クロエル(こちらも目が離せない勝負だねぇ)

常称寺「サイコロを振りますわよ」カラ

常称寺(私が入れたメダルは奇数。ここは当てたいところですが)

常称寺「……」カラカラ

クロエル「……出目は奇数だね」

常称寺(よし。これでひとまず安全は確保できましたわ)

常称寺(あとは、あの雑魚二人のどちらかにアタックするかですけど)

山田「……」

めがね子「……」

常称寺(無理をする必要は、ありませんわね。ここは安全に資金を増やす)

常称寺(バクラさんと、場合によってユキさんも私にアタックしてくる可能性があるのだから、ここはカウンター狙いでいい)

クロエル「告白タイムスタートだ」

常称寺「奇数ですわ」

めがね子「奇数、です」

山田「僕も奇数だよ」

バクラ「ククク、奇数だぜ」

ユキ「俺も奇数だ」

クロエル(まあこうなるよね。全員が相当な金額を賭けた以上、オリはあり得ない)

クロエル「お待ちかねの新要素、表示板を見てみよう」


【偶数2 奇数3】


クロエル「どうやらこの中に嘘つきが二人いるみたいだね」

常称寺「あらあら、一体誰が嘘つきなんでしょうね、山田さん」

山田「さ、さあ、少なくとも僕は奇数だけどね」

山田「案外、ユキさんあたりが偶数だったりして」

ユキ「……さてな」

クロエル「じゃあ、アタックタイムに入るよ」

ユキ「……」

ユキ(この表示板をうまく使えばバクラを始末できる)

ユキ(だが、それをやるには、一度ゲェムが中断されなければならない)

ユキ(めがね子あたりを追い詰めて、指を切断させれば痛みで気絶するか?)

ユキ(いや、より確実にするためには)

ユキ「……」

ユキ「……おい、めがね子」

めがね子「は、はい、何ですか」

ユキ「お前、絶対音感って知ってるか」

めがね子「えっと、ピアニストの方が持っているという」

ユキ「俺たちが偶数か奇数かを決めるのに使ってるメダルがあるだろ」

ユキ「あのメダルな、偶の文字と奇の文字が刻まれているが、重さも微妙に変わってるんだ」

めがね子「?」

ユキ「でだ、俺が何を言いたいのかというと、絶対音感があれば、メダルを投入した音だけで、どちらに入れたか判別が可能なんだよ」

ユキ「お前が入れたのは……偶数」

めがね子「そ、そんな、っは!」

ユキ「馬鹿が、都合よく絶対音感なんて持ってるわけないだろ」

ユキ「アタック。嘘つきはお前だ、めがね子」

めがね子「い、嫌、やめてください」

めがね子「私はこんなところで死ぬわけには」

ユキ「知らないな、お前の事情なんて」

山田(悪魔だ、この人は、ユキさんは悪魔なんだ)

めがね子「やだ、やだよ、誰か助けて」

ユキ「……おい天使、さっさと真実を吐かせろ」

バクラ「ククク、ハハハハ! 認めてやるよ、ユキ。貴様、えげつなさなら俺を上回ってやがる」

ユキ「お前と一緒にするな。俺は妹を助けるために当然のことをしただけだ」

バクラ「妹を助けるねぇ、そういえば俺の周りにもそんなことを言ってた男がいたな」

ユキ「そいつと俺が似ているとでも言う気か?」

バクラ「いや、全然。むしろ、正反対なんじゃねえのか」

ユキ「なら、そいつは負け犬だな。俺のように非情になれなければ目的を達成することはできない」

ユキ「その男の妹が不憫だよ。甘ったれの兄を持ったのが運のつきだったな」

クロエル「めがね子君。真実の告白してくれ」

めがね子「て、天使様、お願いします。お金を貸してください」

クロエル「僕の言ってること聞こえなかった?」

めがね子「ぐ、偶数です。嘘をついたことは謝ります。だからお金を貸してください!」

クロエル「それは無理かな。資金追加はアタックタイムに入る前じゃないとダメって言っただろ」

めがね子「お願いします。指を切断したいんですよね。痛めつけていいですから、お願」

クロエル「くどい。指切りは三回、それも各々別々の反応が見られたから満足してるんだよ」

クロエル「そろそろ本命をやりたいと思ってたところさ」

めがね子「本、命?」

クロエル「じゃーん! ファラリスの雄牛。君はこれで生きたまま炙り殺されるのさ」

めがね子「い、いやああああああああああああああああ」

山田「」ガタガタガタガタ

常称寺「悪趣味、ですわね」

バクラ「ハハ、中々面白そうな見世物じゃねえか」

ユキ「興味がない。俺には関係のないことだ」

クロエル「それでは、処刑スタート」

めがね子「ああ、ああああああああ、あああああああああああ」

めがね子「熱い熱い熱い熱い熱い熱い、あ、ぁああああああああああああああああああ」

めがね子「あついいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

めがね子「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

めがね子「まだ死ねない、私は、私は、ぐぁ、ぁぁああああああああああああ」

めがね子「あぁぁああ、助けて、会いたいよ……晴明君」

山田「え……?」

クロエル「処刑完了。あー、この死体もう誰か判別できないほど焼けちゃってるねぇ」

クロエル「それでユキ君。一人脱落者が出たわけだが、君はゲェムを続行するかい」

ユキ「当然だ。妹を助けるために必要な金は10億。俺はまだまだ稼がなきゃならない」

ユキ「だが、ここで一度休憩にしないか」

クロエル「ん? 休憩」

ユキ「こっちは一人殺してるんだ。少しぐらい休ませろ」

ユキ「それに死体の処理だって多少は時間がかかるだろ」

クロエル「んー? じゃあ30分休憩にしようか」

ユキ「それから、休む場所を用意してくれ」

ユキ「死体の悪臭が鼻につく。こんなのと一緒じゃまともな休息はとれない」

クロエル「要望が多いなぁ。まあいいか、椅子やベッドのある個室に案内するよ」

【常称寺個室】


常称寺(ここなら人もいないけど、口調は……このままでいきましょう)

常称寺「それにしても、ユキさん。あの人はヤバいですわね」

常称寺「それから、バクラさんも。処刑の光景を笑いながら見ていましたし」

常称寺(めがね子さんみたいな偽善者、私は嫌いだから死んで悲しいというわけではないですが)

常称寺(それでも、あそこまで無反応だったり、笑っていたりするなんで出来ませんわ)

常称寺「所持金が多いだけじゃなくて、精神的な面でもあの二人は異常」

常称寺「できるだけ対決を避けるとなると、残りのカモは山田さんだけですが」


コンコン


常称寺(ノック? 誰か部屋に来ましたの)

常称寺(クロエルさん。いや、休憩は30分で、まだ15分も経ってないはず)

常称寺「……どちら様かしら」

ユキ「俺だ」

常称寺「ユキ、さん、一体何の用で」

ユキ「単刀直入に言う。このゲームには必勝法がある」

常称寺「……興味深い話ですわね。それが真実なら、ですけど」

ユキ「カギはあの表示板。常称寺、4引く3は何だ」

常称寺「はぁ? そんなの1に決まってるでしょう」

常称寺「それが一体何だっていいますの」

ユキ「めがね子が死んで俺たちの人数は四人」

ユキ「俺とお前と山田の三人でサインを決めて情報を共有すれば、バクラが偶数、奇数のどちらに入れたのかを判別できる」

常称寺「!」

ユキ「そうなれば必勝。確実に勝てるタイミングでアタックを仕掛ければいい」

常称寺「素晴らしいアイディアですが、山田さんは協力するでしょうか」

ユキ「あいつは臆病者だ。必勝法と聞けば必ず飛びついてくる」

ユキ「この後、バクラに見つからないように、山田の個室に行くつもりだ」

ユキ「それから、もう一つ……」

【山田個室】


山田「まずい、まずい、まずい。めがね子ちゃんがいなくなって、次に狙われるのは間違いなく僕だ」

山田「ユキさん、バクラさんはもちろん、常称寺さんも間違いなく僕より強い」

山田「このままじゃ、最悪次のゲームで殺される」

山田(めがね子ちゃん。不憫な子だった。僕たち5人の中では一番弱くて、でも彼女は死ぬべきじゃなかった)

山田(あの光景を笑いながら見ていたバクラさんや、原因であるユキさんの方がよっぱど死ぬべき人間だ)

山田「だが、僕じゃどうすることもできない。あの二人どころか常称寺さんにも勝てないんだから」

山田(最後にめがね子ちゃんが言っていた名前。あれは僕の聞き間違えだったんだろうか)

山田(めがね子ちゃんとはここで知り合っただけの関係のはずだ)

山田(僕の本当の名前を知っているはずがない)


コンコン


山田(ノック? クロエルさんかな)

山田(もう30分経ったのか。いや、まだ早いような気がするけど)

山田「……」

山田(何故だろう、めがね子ちゃんとは赤の他人のはずなのに)

山田(彼女が死んだ時、とても胸が痛かったんだ)

【会場】


クロエル「それでは待ちに待った第四回戦を開始するよ」


【現時点の各プレイヤー所持金】

『ユキ 2億6千万2円』
『バクラ 1億9499万9999円』
『常称寺 6170万円』
『山田 2149万9999円』


クロエル「現在の一位はユキ君。めがね子君へのキルアタックが大きかったねえ」

クロエル「あれで七千万と更にボーナスが加算されて1億四千万のプラス」

クロエル「バクラ君を追い抜けたわけだ」

バクラ「ハッ、大したことねえよ、この程度の差」

バクラ「俺様の戦術ですぐに逆転してやるぜ」

常称寺(状況が見えてないですわね。貴方は確かに凄腕だけど、ユキさんの方が一枚上手でしたわ)

クロエル「じゃあ例のごとく、メダル投入後に賭け金を決めてくれ」


『常称寺 2000万、山田 1000万』


常称寺(これはユキさんの考えた戦略。バクラさんを潰すまで私たちは低めの金額を賭ける)

常称寺(そうやってリスクを削減した上で、私たちの中で一番所持金の多いユキさんがアタックを仕掛けてバクラさんを倒す)


『ユキ 4000万、バクラ2000万』


ユキ(バクラの賭け金が思ったより低い、ああ、なるほど、狙いは山田か)

ユキ(弱者を狩る。悪くない戦術だが、俺の戦略はその上を行く)

クロエル「それじゃあ、山田君サイコロを振ってくれ」

山田「はい」カラカラ

クロエル「出目は偶数だねぇ。では宣言をどうぞ」

ユキ「偶数だ」

バクラ「偶数」

山田「偶数だよ」

常称寺「偶数ですわ」


表示板【偶数2 奇数2】


常称寺(ここで私が偶数に入れたということをユキさんに伝えますわ)

ユキ(常称寺からのサインが偶数、山田のサインは奇数、俺が偶数)

ユキ「くく、幸先がいいな」ニヤ

バクラ「貴様、何を笑ってやがる」

クロエル「それじゃあ、アタックタイム! さあ、嘘をついていると思う人を告発してくれ」

ユキ「バクラにアタックだ」

バクラ「何だと」

クロエル「おお、速い! 即断即決だね」

クロエル「それでは、バクラ君。真実の告白をどうぞ」

バクラ「ちっ、奇数だ」

クロエル「アタック成立!」


『ユキ 2億6千万2円(+6000万)(ボーナス+6000万)』→『3億8千万2円』
『バクラ 1億9499万9999円(-6000万)』→『1億3499万9999円』
『常称寺 6170万円(+2000万)』→『8170万円』
『山田 2149万9999円(+1000万)』→『3149万9999円』


五回戦

賭け金『ユキ 4000万 バクラ1500万 常称寺3000万 山田1000万』

掲示板【偶数1 奇数3】

賽の目 奇数


ユキ(バクラが賭け金を下げた? 奴の嗅覚で不穏な何かを感じ取ったのか)

ユキ(だが、ここまで差が開いてしまえば、もう関係ない)

ユキ(さて、俺は奇数だったが他はどうだ。山田も奇数……常称寺も奇数)

ユキ(流れがこちらに来たか。今回はバクラのアタックを恐れる必要もない)

クロエル「それではアタックタイム開始」

バクラ「さあどうする。今回もアタックするか?」

バクラ「ヒャハハハハ、いいぜ。攻撃してきな」

バクラ「貴様にその度胸があればの話だけどよ!」

ユキ「悪いが、バクラ。お前のハッタリはもう俺には通用しない」

ユキ「アタック。対象はバクラだ」

バクラ「何っ、馬鹿な! 貴様、二度までも」

クロエル「バクラ君、真実の告白を」

バクラ「……偶数だ」


『ユキ 3億8千万2円(+5500)(ボーナス+5500)』→『4億9千万2円』
『バクラ 1億3499万9999円(-5500万)』→『7999万9999円』
『常称寺 8170万円(+3000万)』→『1億1170万円』
『山田 3149万9999円(+1000万)』→『4149万9999円』

ユキ(大勢は決したな。バクラの所持金は常称寺を下回った)

ユキ(もう俺に勝てる奴は誰もいない。だが、念には念をだ。必要以上の大金は賭けない)

ユキ(不運な偶然と一か八かのアタックが重なって奴が復活する可能性があるからな)

ユキ(4000万刻みで確実に息の根を止める。それに今の金額なら目標額への到達も容易い)

ユキ「(それから常称寺、調子に乗って賭け金を上げるな。お前は2000万を維持しろ)」

常称寺「(ですが私もお金が必要で……いえ、わかりました)」

ユキ「(安心しろ。約束通り10億を超えた分の俺の勝ち金は全てお前にくれてやる)」

ユキ「(俺は無駄なトラブルを避けるために金に関する約束は守るようにしてるんだ)」

常称寺「……」

六回戦

賭け金『ユキ 4000万 バクラ6000万 常称寺2000万 山田1000万』

掲示板【偶数2 奇数2】

賽の目 奇数


ユキ(今度は大きく張ったな。まあ、このままじゃジリ貧だから仕方ないか)

ユキ(バクラが復活するには高額ベットで息を吹き返すしかない)

ユキ(もっとも、今更あの程度の金額じゃ俺には通用しないがな)

ユキ(さて、今回の俺の出目は偶数。常称寺も偶数、山田が奇数。つまりバクラは奇数)

ユキ(奴が俺にアタックをしてくる可能性は低い。失敗すれば即死だからな。だが、常称寺になら)

クロエル「アタックタァイム。さてさて、今回は誰がアタックするのかな」

バクラ「アタック、攻撃対象は常称寺! 貴様だ」

ユキ(くそ、やはりそう来たか。ここまで追い詰められているというのに戦意はまだ衰えていない)

ユキ(奴の序盤の快進撃は常称寺を潰してから始まった。おそらく、その流れを引き寄せたいんだろう)

クロエル「では、常称寺君。真実の告白を」

常称寺「くっ、偶数ですわ」


『ユキ 4億9千万2円(+4000)』→『5億3千万2円』
『バクラ 7999万9999円(+7000万)(ボーナス+7000万)』→『2億1999万9999』
『常称寺 1億1170万円(-8000万)』→『3170万円』
『山田 4149万9999円(+1000万)』→『5149万9999円』


ユキ(せっかく、削ったバクラの所持金が大幅に増えた。残り4回戦。4000万ベットではバクラを殺しきれないかもしれない)

ユキ(9回戦目までにバクラを殺せれば、10回戦目で全額ベットして目標金額を軽く達成できるが)

ユキ(10回戦目もバクラが生きていた場合、全額ベットは無理だ。サインがあるとはいえリスクが高すぎる)

ユキ(俺の目的は10億だ。8億円でも9億円でも意味はない)

ユキ(……賭け金を上げて、次でバクラの息の根を止めるか)

7回戦

【現時点の各プレイヤー所持金】

『ユキ 5億3千万2円』
『バクラ 2億1999万9999』
『山田 5149万9999円』
『常称寺 3170万円』


クロエル「ゲームも終盤戦に突入。盛り返したバクラ君だけど、ユキ君との差はまだ大きいね」

クロエル(では今回の賭け金はどんな感じかな)


『常称寺2000万 山田1000万』

『ユキ 2億999万9999』


クロエル(ユキ君の賭け金はバクラ君の持ち金2億1999万9999円から現在の下限である1000万を引いた2億999万9999という金額)

クロエル(これは今回でバクラ君を仕留めるというユキ君のメッセージ)

クロエル(さて、バクラ君は……)

クロエル「あは」


『バクラ 2億1999万9999』


クロエル「この場面で全額ベットか。勝負に出たね、バクラ君」

クロエル「わかってるとは思うけど、これで負けたら君は脱落だ」

バクラ「忠告ありがとう。だが、俺様が負けることはねえ」

ユキ(この期に及んで強気な態度。自らの勝利を疑ってすらいない)

ユキ(……馬鹿が、貴様はもう詰んでるんだよ。それに万が一の場合も俺にはあれがいる)

クロエル「ああそうだ。バクラ君と、それから他の皆にも伝えておこう」

クロエル「ファラリスの雄牛は僕のお気に入りだけど、最近、新しい処刑方法を見つけてね」

クロエル「あるゲェムを再現したものなんだけど、次の脱落者に執行してみようと思うんだ」

常称寺「一応聞いておきますけど、一体、どのような悪趣味な拷問なのかしら」

クロエル「ふふ、闇の餌食。敗北者は闇に体を食われて消滅するんだよ」

バクラ「!」

クロエル「バクラ君はよく知ってるよね」

クロエル「じゃあ常称寺君、サイコロを振ってくれ」

ユキ(俺が入れたメダルは偶数。常称寺が偶数を出せばアタックで負けるリスクもなくなる)

常称寺「行きますわ」カラカラ

賽の目 偶数


ユキ(でかした、常称寺。これで俺が今回金を失う可能性はゼロになった)

ユキ(問題はバクラの賽の目。奇数なら、ここで勝負を決めることができる)

クロエル「それじゃあ、告白ターイム」

常称寺「偶数ですわ」

ユキ「偶数だ」

バクラ「偶数だぜ」

山田「偶数」

ユキ(この告白は意味がない。この局面で偶数以外の宣言をする奴はいないからな)

ユキ(さて、掲示板は)


掲示板【偶数2 奇数2】


ユキ(俺以外の二人が奇数。つまり常称寺か山田どちらかが偶数ならバクラの奇数は確定する)

ユキ(常称寺のサインは奇数。山田からのサインは……偶数)

ユキ(勝った。バクラは奇数で確定。あの偶数宣言は嘘の告白だ)

クロエル「さて、さて、嘘つき二人が誰なのか。アタックタイムを開始するよ」

ユキ「アタック!」

クロエル「おお、またまた速いねぇ、ユキ君。それでアタック対象は誰だい」

ユキ「バクラだ。俺はバクラにアタックする」

クロエル「ふむ、このアタックが通ればバクラ君は脱落。それが分かっていながらこの躊躇のなさ」

クロエル「流石にめがね子君を平然と殺しただけのことはある」

ユキ「御託はいいから、さっさとバクラが丁半どちらに賭けたのか吐かせろ」

クロエル「もちろん、そのつもりさ。バクラ君、真実の告白をしてくれ」

バクラ「……」

バクラ「……クク」

ユキ「!」

バクラ「ククク、ハハハハハハハハハハハハハハ!」

バクラ「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

ユキ「お前、何を笑って」

バクラ「ユキィ。貴様は俺様の罠に嵌ったんだよ」

ユキ「罠、だと」

バクラ「俺が賭けた真実の目は偶数。宣言に偽りなしだ!」

ユキ「!?」


『ユキ 5億3千万2円(-4億2999万9998)』→『1億4円』
『バクラ 2億1999万9999(+4億2999万9998)(ボーナス+4億2999万9998)』→『10億7999万9995』


ユキ「俺の金が……こんなこと、あり得ない」

ユキ「おい、天使!」

クロエル「バクラ君は真実を告白してるよ。偶数であることは僕が保障する」

ユキ「……」

ユキ(天使の言う事が事実なら可能性は一つ……裏切りだ)

ユキ「山田ァ、貴様、どういうつもりだ」

ユキ(奇数に入れたという常称寺のサインに嘘はない)

ユキ(だが山田の偶数であるというサインは明確な欺瞞)

ユキ(俺が偶数である時点で、残りの三人の中で偶数は一人のはずだ)

ユキ(バクラが偶数であった以上、間違っても他の二人から自分は偶数ですなんてサインは出ない)

山田「……」

ユキ「答えろ山田! 何故裏切った」

山田「それは君がめがね子、いや明理ちゃんを殺したからだよ」

四回戦開始前、山田個室


コンコン


山田(ノック? クロエルさんかな)

山田(もう30分経ったのか。いや、まだ早いような気がするけど)

山田「……」

山田(何故だろう、めがね子ちゃんとは赤の他人のはずなのに)

山田(彼女が死んだ時、とても胸が痛かったんだ)

山田「……」

山田「クロエルさん。もう三十分経った、の?」

バクラ「よぉ、邪魔するぜ」

山田「バ、バクラさん。どうして貴方が」

バクラ「用があるのは、ゲームマスターの天使サンだとよ」

クロエル「やあ、山田君。顔色が悪かったけど、少しは元気になったかい」

バクラ「俺様はそこで会って、面白いモンを見せてくれるっていうから付いてきただけだ」

山田「それでクロエルさん、僕にッ、ひぃ」ガタ

クロエル「ん、どうしたの? ああ、僕が手に持ってる死体が気になるのか」

クロエル「こんがり焼けてるだろ。言うまでもないけど、めがね子君だよ」

山田「な、何でそんなものを」

山田「ユキさんみたいな言い方はしたくないけど、悪臭が強くてちょっと」

クロエル「酷いなぁ、死体とはいえ自分の妻を臭いなんて、ちょっと薄情なんじゃないの」

山田「は……? あの、クロエルさん、一体何を言って」

クロエル「わかりやすくしてあげようか。この黒焦げ死体の顔だけは綺麗に戻してあげよう」

クロエル「もっともめがね子君は死んでるから、彼女本来の顔になっているけどね」

山田「……え、あ、あぁ、こんな、何で、君が」

クロエル「……」ニィ

山田「明理ちゃん! 嘘だ、どうして君が、明理ちゃん!明理ちゃん!」

クロエル「君ってさぁ夫失格だよねぇ、こんなに近くにいたのに、姿が違うだけで、自分の妻にも気づかないんだから」

山田「めがね子ちゃんの正体が明理ちゃん、だった? そんな、そんなこと」

クロエル「ああ、それとめがね子君が金を欲しがってた理由はね、君の借金を何とかしてあげるためだったんだよ」

山田「!」

クロエル「まあ暴利のことを知らなかったせいで、今の君の借金とめがね子ちゃんの目標金額にはズレが生じたみたいだけど」

山田「あ、ああ」

山田「あ、あああ、ああ、ああああ、あああああああああああああああああああああああああああ」

クロエル「……」ニヤニヤ

クロエル「ね、バクラ君、面白いもの、見れただろう」ニコ

バクラ「ユキといい貴様といい、ここには性根が歪んだ奴しかいないのかよ」

クロエル「それ君の言えることじゃないよね」

バクラ「まあな。で、俺をここに連れてきた理由はそれだけか」

クロエル「それは山田君次第かな」

バクラ「そいつは、どういう意味だ」

クロエル「実はね、ユキ君が常称寺と山田君を味方に引き入れて、3対1で君を潰そうとしてるみたいなんだ」

バクラ「クク、あのえげつねえ野郎の考えそうなことだぜ」

クロエル「既に常称寺君はユキ君と組んだ。次にユキ君は山田君を引き込もうとするはずだ」

バクラ「ゲームマスターサンはそれが気に入らねえから止めようとしてるわけか」

クロエル「まさか。絶対中立である僕がそんなことするわけないだろう」

クロエル「ゲェムが一方的になり過ぎるのは面白くないかなぁとは思っているけど」

クロエル「ま、何にせよ、僕はプレイヤーに何をしろとか命令するつもりはないよ」

クロエル「ただ、善意で山田君に妻の死に顔を見せてあげただけさ」

クロエル「これを見た山田君がどのように行動するかは本人の自由だ」

山田「……」

山田「……僕は、彼女と、明理ちゃんとやり直すために、このゲェムに参加した」

クロエル「じゃあ、自殺でもするかい。自分の本当の名前をここで言えば死ねるよ」

山田「貴方の言う通り、彼女の正体に気づけなかった僕は夫失格なんだと思う」

クロエル「懺悔でもしたいのかな。いいよ、僕は天使だ。聞いてあげよう」

山田「……いずれ僕は明理ちゃんと同じところに行く、だけど、まだゲェムをおりる気はない」

クロエル「へぇ」ニヤ

山田「金はもういらない、だけど、アイツだけは、ユキさんだけは許すことができない」

クロエル「ふむ、そうかい。じゃあ、僕はもう行くよ。あとは君たちプレイヤーの問題だからね」

クロエル「ふふふ、これでゲェムがもっと面白くなりそうだ」

山田「バクラさん、僕と組んでくれないだろうか」

バクラ「てめーみたいな雑魚いらねえよ、と言いたいところだが、流石の俺様でも3対1は分が悪い」

バクラ「条件次第では取引に応じてやらないこともねえな」

山田「内容を聞かせてくれ」

バクラ「まず言っておくが、俺様に指図するのは許さねえ」

バクラ「ユキを嵌めるまでは俺の指示に従ってもらう」

山田「初めからそのつもりだよ。悔しいが僕一人じゃあいつは倒せない」

バクラ「そしてユキを嵌めた時点で協力関係は解消だ」

バクラ「貴様も俺の標的の一人であることに変わりはねえからな」

山田「わかった、その条件は飲もう。でもこちらからも一つだけ」

バクラ「おい、俺様に指図するなと言ったはずだぜ」

山田「いや、この条件だけは受けてもらう」

山田「ユキさんを殺すのは僕だ。それだけは譲れない」

バクラ「クク、めがね子のかたき討ちってわけか」

山田「……」

バクラ「いいぜ、なら奴を嵌める際に一撃で殺すのは止めてやる」

バクラ「だが、そこから先は知らねえな、奴を殺したけりゃ、俺がやるより先にやっちまうことだ」

バクラ「もたもたしてると、ユキも貴様も、あの常称寺とかいう女も、俺様が皆まとめて殺しちまうからよ」

バクラ「ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

現在 


山田「明理ちゃん、君たちがめがね子と呼んでいたのは僕の妻だった」

ユキ「……」

山田「それを殺したお前を僕は許すことができない」

ユキ「……」

ユキ「お前はそんな下らない理由で俺を裏切ったのか」ハァ

山田「!」

ユキ「なあ、山田。めがね子は死んだんだ。俺を裏切ったところで、死人が生き返るわけじゃない」

ユキ「それにな、結果的に俺がめがね子を殺したが、あれは長く生きられる奴じゃなかった」

ユキ「俺がやらなくても、バクラや常称寺、もしかしたらお前が殺していたかもしれない」

ユキ「なのにお前は一時的な感情に流されて馬鹿げた暴挙に及んでしまった」

ユキ「お前は過去ではなく未来に目を向けるべきだったんだよ」

山田「明理ちゃんのいない未来に意味なんか」

ユキ「バクラを始末できれば、俺たちは安全に好きなだけ金を持ちかえることができた」

ユキ「その金があれば、お前はめがね子よりも上等な女を妻にできただろう」

山田「き、貴様!」

ユキ「事実だ。金さえあれば、お前みたいな奴でも、いくらでもいい女を手に入れることはできる」

ユキ「山田、貴様はそのチャンスを棒に振ったんだ」

山田「……明理ちゃんを殺したことを謝る気はないということか」

ユキ「俺の利益になるなら謝罪でも土下座でもしてやるが、お前に謝ったところで一銭の徳にもならないからな」

ユキ「お前が今持ってる金を全部俺に差し出して自殺するっていうなら頭ぐらいは下げてやるが」

山田「なあ、ユキさん。あんたにも大切な人がいるはずだろ」

山田「妹を救うために10億が必要という話は嘘じゃないはずだ」

ユキ「当然だ。俺にとって妹は何よりも大事な存在。その言葉に嘘はない」

山田「ならわかるだろう。君にとっての妹が、僕にとっての明理ちゃんだったんだよ」

ユキ「……」

ユキ「……」

ユキ「……クズが」

山田「!」

ユキ「あまりふざけたことを抜かすなよ、裏切り者の分際で」

ユキ「俺の妹をめがね子ごときと一緒にするな。さすがに不愉快だ」

山田「……君には何を言っても無駄みたいだ。なら、僕はこのゲェムで君を殺す」

バクラ「話は終わったみたいだな。なら貴様との協力関係もここで終わりだぜ」

山田「わかってる。そういう約束だからね」

ユキ「……」

ユキ(馬鹿が。一時的な感情に流されて下らん真似をしやがって)

ユキ(山田、貴様は地獄行き決定だ。俺を裏切った報いを受けさせてやる)

ユキ(俺の所持金は一億にまで目減りした。残り三回戦、たとえ全額ベットを繰り返しても目標額には到達しない)

ユキ(アタックボーナスを絡めなければ10億円を手に入れることは不可能だ)

ユキ(手っ取り早い方法は一番金を持っているバクラを口車に乗せて、大金を賭けさせ嵌める方法だが、これは厳しい)

ユキ(山田みたいな馬鹿ならともかく、奴が安易に俺に誘いに乗るとは考えづらい)

ユキ(だが、こちらにはまだ、常称寺という協力者がいる)

ユキ(おそらく山田はこう思っているだろう)

ユキ(自分が裏切った以上、これまでのようにサインを使うことはできない、と)

ユキ(ああ、確かにお前みたいな馬鹿が裏切るとは予想していなかった)

ユキ(身の程知らずだが、その行動が俺の想定を上回ったことは認めてやる)

ユキ(だがな、残り三回戦、これまでのように俺はサインを使うことができるんだよ)

四回戦開始前 常称寺個室


ユキ「俺とお前と山田の三人でサインを決めて情報を共有すれば、バクラが偶数、奇数のどちらに入れたのかを判別できる」

常称寺「!」

ユキ「そうなれば必勝。確実に勝てるタイミングでアタックを仕掛ければいい」

常称寺「素晴らしいアイディアですが、山田さんは協力するでしょうか」

ユキ「あいつは臆病者だ。必勝法と聞けば必ず飛びついてくる」

ユキ「この後、バクラに見つからないように、山田の個室に行くつもりだ」

ユキ「それから、もう一つ……」

ユキ「山田に教えるサインとは別に、俺たちだけの極秘のサインを決めておく」

常称寺「山田さんが裏切るかもしれないと」

ユキ「いや、それはない」

ユキ「裏切ってバクラに味方するメリットは皆無だし、そもそも山田に裏切るような度胸はないからな」

ユキ「このサインを決めておくのは、万が一の場合俺たちの安全を確保するためだ」

常称寺「どういうことですの」

ユキ「必勝法とは言ったが、一切弱点がないかといえば、そういうわけでもない」

ユキ「この作戦、こちらからアタック仕掛ける場合の敗北はなくなるが、出目の予想が外れて、バクラからアタックを受けるリスクは健在だ」

常称寺「それは、まあその通りですが、さすがにそこはどうしようもないのでは」

ユキ「ああ、もちろん俺も一切危険を冒さずに勝てるとは思っていない」

ユキ「だが、リスクを減らすことはできる」

常称寺「それはどのような方法で」

ユキ「山田だ。こちらが出目予想を外して、バクラがアタックしそうな時、山田にアタックすることによって危機を切り抜ける」

ユキ「ただ、これは本当に危険な場合、こちらが脱落しそうな場合までは控えた方がいいだろう」

ユキ「山田は大して金を持っていないから、アタックが成立すればまず脱落する」

ユキ「奴が死ぬのはかまわないが、残念ながら山田は一人しかない」

ユキ「一回しか使えない以上、使いどころはよく見極める必要がある」

ユキ「そのタイミングを指示したり、山田に知られたくないやり取りをする際の極秘サインをここで決めておく」

常称寺「……山田さんは私たちにとっての切り札というわけですか」

ユキ「切り札? あれはそんな大層な奴じゃないさ」

ユキ「精々、非常口がいいところだろう。いざという時、避難に使うだけの存在だ」

常称寺「あなた……悪党ですわね」

ユキ「俺が悪者に見えるなら、それでいい」

ユキ「古今東西、生き残るのは悪のみだ」

現在


クロエル「このゲェムの残すところあと3回。それとも、その前に決着がついてしまうのか」

クロエル「八回戦を開始!」ビシ


【現時点での各プレイヤーの所持金】

『バクラ 10億7999万9995』
『ユキ 1億4円』
『山田 6149万9999円』
『常称寺 5170万円』


ユキ(保険はかけておくものだな)

ユキ(さて、極秘サインで常称寺にどんな指示を出すかだが)

ユキ(仮に山田やめがね子あたりなら、3、1の状態でも作るために、互いに偶数と奇数に賭けようでもするだろう)

ユキ(例えば表示板の数が偶数3、奇数1になった場合、出目が奇数なら確実にアタックを通せる)

ユキ「(常称寺、お前は偶数に入れろ。俺は奇数に入れる。3、1の状態を作って奴らを叩く)」

常称寺「(……わかりましたわ)」

ユキ「(それから賭け金は全額にしろ。俺も全額ベットする。山田が裏切った以上、こちらも覚悟を決めるしかない)」

ユキ「(お前にも金が必要な理由があるんだろう。大丈夫だ、3、1の状態を呼び込めれば勝てる)」

常称寺「(了解、ですわ)」

ユキ(……だから馬鹿なんだよ。あいつらも、そして貴様もな、常称寺)

ユキ(3、1状態? 俺はそんな不確実な策は使わん。目減りした金を100パーセント安全に増やさせてもらう)

ユキ(常称寺に俺は奇数に入れると言ったが、俺もあの女と同じ偶数に入れる)

ユキ(賽の目が偶数になったのであれば、それでよし)

ユキ(表示板に偶数2奇数2とでも出れば山田とバクラ、好きな方にアタックできる)

ユキ(そうなった場合、心情的には裏切り者の山田を潰したいが、所持金を考慮すればバクラにアタック)

ユキ(脱落させることはできないが、奴の資金を削ることができる)

ユキ(そして賽の目が奇数だった場合、協力者がいなくなるのは惜しいが、常称寺を切り捨てる)

ユキ(常称寺へのアタックで、バクラと山田のアタックを躱しつつ、俺は約3億の金を手に入れることが可能だ)

ユキ(所持金の合計金額が4億まで戻れば、残り二回で10億まで増やす目途は立つ)

ユキ(悪いな、勝利時に10億を超えた分をお前に渡すという言葉は嘘ではなかったさ)

ユキ(俺は妹を、幸花を救うために10億あればいい。だから残りが20億だろうが、30億だろうが、くれてるつもりだったよ)

ユキ(だが、こうなったら話は別だ。俺が敗北するということは、幸花が手術を受けられないということ)

ユキ(それだけは受け入れるわけにはいかないからな)

ユキ(所詮、お前は赤の他人、状況次第では見限らせてもらう)

クロエル「全員賭け金が決まったみたいだねぇ」


『ユキ 1億4円、山田 6149万9999円、常称寺 5170万円』


クロエル「おお、三人は全額ベット。ここを勝負所にすることにしたわけだ」

クロエル「それで、バクラ君は……」


『バクラ 9000万4円』


クロエル(ユキ君の所持金から現在の下限1000を引いた額、9000万4円)

クロエル(このターンでユキ君を殺すという死のメッセージ)

クロエル(彼は一貫してぶれないなぁ、ゲーム開始時から相手を殺すことだけを考えている)

クロエル(それにこの金額なら、アタックが通れば、ユキ君以外だろうと脱落させることができる)

クロエル「それでは山田君、サイコロを振ってくれ」

山田「……」カラカラ

クロエル「……賽の目は、奇数!」

ユキ(ふん。ここで奇数が出るか)

ユキ(山田の執念か、めがね子の怨念かは知らんが、そんな下らないもので俺を殺せると思うなよ)

ユキ(常称寺。お前とはここでお別れだ)

クロエル「告白タイムに移行、宣言をどうぞ」

ユキ「奇数」

常称寺「奇数ですわ」

山田「奇数」

バクラ「奇数だ」

表示板 偶数2 奇数2


ユキ(常称寺と俺が偶数だから、バクラと山田は奇数か)

ユキ(前回の負けで露骨に流れが悪くなった)

ユキ(だが、ツキがない時は戦術で切り抜けるまでのこと)

クロエル「それでは~、お待ちかねのアタックタイムに入るよ」

山田「……アタ」

ユキ「アタックだ!」

山田「!」

クロエル「ユキ君の方が早いね」

山田「くっ!」

ユキ(俺を殺すと言っておきながら、アタックのリスクを恐れて僅かに出遅れたな、山田ァ)

ユキ(どれだけ怒ろうが、お前は所詮、臆病者の三下に過ぎないんだよ)

クロエル「アタックの対象は誰にするんだい」

ユキ「常称寺だ」

常称寺「!」

ユキ「常称寺は嘘ついている」

常称寺「……」

山田「ユキさん……あんたって人は。常称寺さんは仲間なんじゃなかったのか」

ユキ「確かに俺とこいつは協力関係にあったが、状況次第でそれは変化する」

ユキ「カルネアデスの板だよ、山田。非常時ともなれば、人を海に突き落とすことも許される」

ユキ「常称寺もめがね子も、仕方のない犠牲となって溺死した。俺が勝利するための踏み台になった」

山田「お前っ、この野郎!」

バクラ「ヒャーハハハハハハハハハ! ユキィ。貴様は俺が見てきた中でも相当最低な野郎だな」

ユキ「批判する気か? 殺戮者を自称し、無意味な殺人をしようとするお前がこの俺を」

バクラ「いや、いいじゃねえか。大歓迎だぜ、そういう最低なやり方はよ」

バクラ「俺様も見習いたいぐらいだぜ! ヒャーハハハハハハハハハハハハハ!」

ユキ「……」

バクラ「だが、それで勝てなきゃ意味がないけどな」

ユキ「何が言いたい?」

バクラ「おい、ゲームマスター。ゲームを進行させたらどうだ」

クロエル「そうだね。それじゃあ、常称寺さん。真実の告白をどうぞ」

常称寺「……」

常称寺「……私の賭けた真実の目は」

常称寺「奇数、ですわ」

ユキ「……は?」

クロエル「残念、アタック失敗!」バシ

ユキ「おい、ちょっと待て」

クロエル「それではアタックの結果を含めた清算を行うよ」


『バクラ 10億7999万9995(+9000万4)』→『11億6999万9999円』
『ユキ 1億4円(-1億5170万4)』→『0円』
『山田 6149万9999円(+6149万9999)』→『1億2299万9998円』
『常称寺 5170万円(+1億5170万4)(ボーナス+1億5170万4)』→『3億5510万8円』


クロエル「うーん、期待していただけに残念な結果ではあるけれど……」

クロエル「君はここで脱落だ、ユキ君」

ユキ「……何故だ、常称寺。何故、奇数なんだ」

常称寺「貴方は山田さんを非常口扱いしましたわ」

常称寺「なら、その非常口が使えなくなった時、次に何を考えるのか」

常称寺「念のために貴方の指示とは逆の目に入れておきましたが、正解だったようですわね」

ユキ「俺の行動を読んだというのか、お前ごときが」

ユキ(……まだ、だ)

ユキ(俺はこんなところで死ぬわけにはいかない)

ユキ(こうなったら、あのクソ天使を殺して金を奪う)

ユキ(確かに奴は何もないところから拷問道具を出すような常識外の能力を持っているが)

ユキ(体自体は俺たちと変わらない人間。なら方法はある)

ユキ(油断させて近づいてから奴の両目をこの手でエグりぬいて)

ユキ「!?」

ユキ「手が、俺の手が、ない!?」

クロエル「言ったろ、脱落者は体を闇に食われると」

ユキ「止せ、やめろ、俺はこんなところじゃ死ねないんだよ」

クロエル「ふむ、人が闇に食われるというのは、間近で見ると風情があっていいね」

ユキ「ふざけるな、こんな、終わり認められるか」

ユキ「俺は妹を、ゆ―――」

ユキ(喉が闇に食われて声が出ない!?)

ユキ(ふざけるな、俺は妹を、幸花を救わなきゃならないんだ)

ユキ(こんな、ところで、死ぬ、わ、け、に、は)

ユキ(い、か、な)

常称寺「ユキさんの体が、全て闇に食われて……消えましたわ」

クロエル「ふーむ、絶望顔はそそるけど、割とあっさりだったかなぁ」

クロエル「実物はライフポイント、だっけ、あれが減るたびに体が消えてたから」

クロエル「今度再現する時はお金が減るたびに、体を闇に食われる仕様にするのもありかもね」

常称寺(実物? 何の話をしているのでしょう)

クロエル「おっと、失礼。それで常称寺さん。ゲームは残り二回だけど、続行するかい」

常称寺「……いいえ、ここで終了にさせてもらいますわ」

バクラ「何だよ、逃げる気か」

常称寺「最初に言った目標金額20億なんてフカシ、単なるハッタリですので」

常称寺「それに、これ以上やったら貴方に殺されそうですから」

バクラ「ケッ、よく分かってるじゃねえか」

山田「……」

バクラ「めがね子のかたき討ちができなくて残念だったなぁ、山田ァ。同情するぜぇ」

山田「……彼女はめがね子じゃなくて、五月田明理」

山田「そして僕は山田ではなく、五月田晴明だ」

常称寺「!」

常称寺「貴方、自分の本名を」

山田「ああ、痛い、体が裂けるように痛い、でも」パキパキ

山田「彼女が味わった苦しみはこんなものじゃなかった」バリバリ

山田「ごめんよ、明理ちゃん。僕もそちらに、い、く」バキ

山田「」バタ

クロエル「あれ、せっかく生き残ったのに山田君、自殺しちゃったの?」

クロエル「馬鹿だねぇ。今は亡きユキ君のアドバイスに従って、賞金でニューライフを始めればよかったのに」

クロエル「あ、でも無理か。山田君の獲得金ってさ、目標額の1億2500万円に微妙に足りてないんだよね」

クロエル「そこらへんが山田君っていうか、やっぱり彼って三流だなぁ」

クロエル「全額返済できないとなると、また暴利が付いて怖い人たちに捕まって、臓器をもっていかれちゃうだろうし」

クロエル「なら、ここで死んでよかったのかもねぇ。まあチャンスがないわけじゃなかったんだけど」

クロエル「山田君の賞金は没収。ああ、安心していいよ、バクラ君と常称寺君にはちゃんと払うから」パチン

常称寺(お金の山。バクラさんより少ないというのは気に入りませんが、あの人とこれ以上争うのは危険すぎますわ)

常称寺(この金額でよしとしておきましょう)

常称寺「ゲェムは終わりましたわ。約束通り私たちを元の体で元いた世界に返してください」

クロエル「え? 何の事だい。僕は一言もゲェムが一回で終わるとは言ってないよ」

常称寺「な、何ですって」

クロエル「これは予選さ。君たちにはこれから本選に進んでもらう」

常称寺「ふざけるんじゃありませんわ。そんな言い分が通るとでも」

クロエル「僕は君たちの命を握ってるんだよ。逆らったらどうなるかわかるよね」

常称寺「く、くぅ、この! バクラさん、あなたも何か言ったらどうですか」

バクラ「ハッ、そんなこったろうと思ってたぜ」

バクラ「さっさと、その本選の会場とやらに案内しな」

常称寺「バクラさん。貴方そんなにあっさり認めていいんですの」

クロエル「素直なのはいいことさ。会場は」

バクラ「とでも言うと思ったか」ゴォ

クロエル「!」

バクラ「俺にはやらなきゃいけねえことがあってな」ゴゴゴ

バクラ「これ以上、貴様のゲームに付き合ってる暇はないんだよ。ここで死にな」ゴウウウ

クロエル「え、何、嘘、これは、闇の力!? まさか、その器でここまで」

クロエル「があっ、あああああああああああ、ぐぇ!」ドン

クロエル「」バタ

常称寺「殺し、ましたの?」

バクラ「油断したなぁ、クロエル。ゲームマスターだって気を抜いてると、こうして逆転されちまうぜ」

バクラ「経験者は語るってやつだ。ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

クロエル「ふむ、確かに経験者の言葉は説得力があるね」

バクラ「何!?」バッ

クロエル(死体)「」

バクラ「……」

クロエル「ん? どうしたのかな。珍しく顔が笑ってないねぇ、バクラ君」

常称寺「クロエルさんが、二人?」

クロエル「とりあえず抵抗できないようにしてっと。よし、これで君も普通の人間と変わらなくなった」

クロエル「この器でそこまでの力が出せるとはね。正直甘く見てたよ」

バクラ「……一体どんなカラクリだ。それは」

クロエル(死体)「」

クロエル「僕はね同じ空間内、同じ時間軸において複数の状態を持つ僕を生み出すことができる」

クロエル「簡単に言えば死なないってことさ。今みたいに吹っ飛ばされようが、ナイフで首を裂かれようがね」

クロエル「さて、僕を殺そうとした時点で、予選の勝者であろうと本来なら処刑するところだけど……」

クロエル「一度だけ見逃してあげよう」

バクラ「……」

クロエル「期待通り僕を楽しませてくれたこともあるし、君を生かしておいた方が本選も盛り上がりそうだ」

クロエル「だけど……二度目はない」

クロエル「よく覚えておいた方がいいよ、バクラ君」ニコ

バクラ「……なるほどな。ここでは俺も真のゲームマスターに操られる駒の一つに過ぎないってわけか」

クロエル「はっきりと言っておくけど、君はどうあっても、僕のゲェムから逃れることはできない」

クロエル「これを僕が持っている限りね」ジャラ

バクラ「っ! それは、千年リング、何故、貴様が」

クロエル「何でだろうねぇ。君が本選で優勝できたなら、これ返してあげてもいいけど」ジャラジャラ

バクラ「……ククク」

クロエル「ん?」

バクラ「今回は俺様の負けってことにしておいてやる」

クロエル「カッコいい台詞だねぇ。でも何度も同じようなこと言うのは締まらないんじゃないの?」

バクラ「うるせえ! ほざいてろ」

バクラ「本選を勝ち抜いて元の力を取り戻したら、貴様を永遠の闇に葬ってやるよ」

バクラ「俺様の闇のゲームでなぁ!」

クロエル「確かに闇のゲェムとやらなら僕を消滅させられる可能性はあるかもね」

クロエル「いいだろう。君が優勝できたのならその挑戦を受けてあげよう」

クロエル「勝負の内容は君のやっていたカードゲェムで構わないよ」

バクラ「その言葉、忘れるんじゃねえぞ」

クロエル「本選会場はあの扉の先だ。健闘を祈るよ、バクラ君」

バクラ(面倒なことになっちまったが、まあいい。予選では、ちと殺し足りなかったからな)

バクラ(クロエル。いずれ貴様は俺様のオカルトデッキで抹殺してやる)

バクラ(そのために、まずはこの扉の先にいる本選出場者共を、全員ぶっ殺して屍の山を築いてやるよ)

バクラ(クク、果たして何人が俺様を楽しませることができるか)

バクラ「さぁ、闇のゲームの始まりだぜ」


予選、丁半博打編・完

以上です。「遊戯王」と「たとえ灰になっても」のクロスssでした。
「たとえ灰になっても」を知らない人に解説しておくと、あのユキさんという人が原作の主人公です。
もちろん原作では死んでないので、彼女(?)の活躍を見たければそちらをどうぞ。
ユキさんとクロエルは原作でも大体こんな感じのキャラだと思う。まあクロエルは屑だけど、ユキさんは本当の極悪人ではない……はず。
あとユキさんファンの人はごめんなさい。話の展開上、殺しましたが、別にユキさんの事が嫌いなわけではありません。
むしろ、書いていて一番筆が乗ったキャラがユキさんでした。

【予選Dグループ 会場】


ガーネット「よくも、よくも私の双子の妹を殺しやがったな!」

ガーネット「お前はもう終わりだ。アタック! アタック、アタックだ!」

ガーネット「死ね、狂人が、死ねッ! 地獄に落ちろ!!」

「……」

「……ククク、ハハハハハハハ!」

「気持ちいいよ、敵が罠にかかった瞬間はなぁ!」

ガーネット「!?」

「俺の真実の目は偶数。宣言に偽りなしだ」

ガーネット「な、何で、こんな、馬鹿な」

クロエル「これで、君の持ち金はゼロ」

クロエル「脱落だ。ガーネット君。いや、石原冴子君」

ガーネット「あ、ああ、体が、嫌だ、死にたく」パキパキ

「灰となって闇に舞い散れ」

ガーネット「」バタ

クロエル「10回戦は終了。これにて決着だ」

クロエル「生き残りは3人、フグドク君、亡々死君、そして」

「ちょっと待ちな、主催者サンよぉ」

クロエル「ん? 何だい」

「闇は飢えている。こいつらは全員、闇の生贄だ」

クロエル「何が言いたいのかな?」

「ゲーム続行と行こうじゃないか。11回戦でも12回戦でも、最後の一人になるまで」

亡々死「そ、そんな、ここまで生き残れたのだって奇跡なのに、この人は何を言ってるんだ」

亡々死「い、嫌だああああああ、これ以上やったら殺されるうううううう!」

フグドク「あはは、続行? 面白いこと言うわね。でも私もそれに賛成よ」

フグドク「目の前で獲物を二人も横取りされたのだから、あんたとこいつは殺しておきたいわ」

クロエル「ゲェムは10回戦。そのルールを曲げることはゲェムマスターとしてできないなぁ」

クロエル「でも安心するといい。何故ならこれは予選。ゲェムはまだ続くからね」

亡々死「は、話が違うじゃないか、聞いてないぞ、そんなこと!」

クロエル「言ってないからね。君たちに拒否権はないよ。本選に出場しないなら死んでもらう」

クロエル「だけど、あまり悲観することばかりじゃない。本選では更に金を増やす機会がある」

クロエル「それに参加者の人数は10人以上。これはそちらの二人にとっては都合がいいんじゃないかな」

フグドク「成程、殺し放題ってわけね。その上、お金まで手に入るなんて最高じゃない」

「クククク、そいかい。金に興味はないが、闇送りにする奴は多いに越したことはないなぁ」

クロエル「納得してくれたようだね。それじゃあ、改めて予選通過者を発表しよう」

クロエル「一人目はフグドク君、二人目は亡々死君」

クロエル「三人目が――マリク君だ」

マリク「まあ、ここまでよくやったと褒めてやるよ」

マリク「貴様らは今しばらく生かしておいてやる」

マリク「本選で思う存分、死の快楽を味わわせてから破壊してやるぜ」

亡々死「い、嫌だあ、まだこの人に、いやこの人たち狙われ続けるなんて。どうして私がこんな目に」

フグドク「ふふ、苦痛の末に死ぬのは果たして誰になるかしら。楽しみね、マリクちゃん」

マリク「フグドク。貴様も死と敗北の運命から逃れることはできないぞ」

クロエル(ふふ、このゲェムは現世で面識のある人間同士の殺し合い)

クロエル(それならバクラ君と因縁のある人間を連れて来れないかと思っていたけど)

クロエル(彼まで死んでくれるとは。おかげで簡単にこちらに連れて来れたよ)

クロエル(マリク君。いや正確にはマリク・イシュタールと言う人間が生み出した邪悪なる心)

クロエル(彼は医学的には二重人格だが、こうして分離して別の器に入れられた時点で、もはや異なる存在だ)

クロエル(だから主人格の本名で呼ばれたところで死ぬことはない)

クロエル(まぁ、僕なら殺す手段はいくらでもあるけどね)

クロエル「本選への扉は向こうだ。君たちの健闘を祈るよ」

マリク(ククク、どうやらこの世界において俺は自由だ)

マリク(小娘の肉体になっちまったが、あの忌々しい刻印の呪縛がないなら好都合)

マリク(クロエルはゲームで優勝すれば、この肉体のまま俺を復活させることを約束した)

マリク(もっとも新たな肉体さえ手に入れば奴に用はない)

マリク(俺の破壊対象には貴様とこの世界も含まれているぞ、クロエル)

マリク(遊戯に敗北した俺を気まぐれでこの世界に招いたことを後悔さてやる)

マリク(とはいえあの性格だ。奴はおそらく他の参加者からも恨みを買っているだろう)

マリク(だが俺にはわかる。クロエルの持つ強大な力。そしてこの俺にも劣らん邪悪な魂)

マリク(有象無象の参加者どもでは、奴に挑んだところで返り討ちに合うだけ)

マリク「ククク、あの天使を殺せるのは俺しかいない」ボソ

マリク「まずは本選だ。今は黙して死を待て、参加者共」

マリク「貴様らは全員、幻想ではない痛みを味わわせて、死の闇世界に葬ってやるよ」

これで本当に終わりです。
本選は原作でも途中なので、書くとしたら原作が一区切りついてからになると思います。
読んでくれた方、感想をくれた方、ありがとうございました。

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