モバP「美玲と年上アイドル」 (18)

歳の差百合が書きたくなったので、2つほど書きます。

1、早坂美玲と桐生つかさ

→『チーズカツカレーとメロンソーダ』というタイトルなどで過去にも書いているもののエクストラシナリオです。

2、早坂美玲と鷺沢文香

→ちょっと浮かんだので、挑戦してみます。

ってことで、百合注意です。

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モバP「さびしいおやつ」


 テーブルには12個のピンク色

 これはプロデューサーが午前に行ってきたロケ先にあった駄菓子屋でたくさん買ってきたものの一つだ。

 他のお菓子は小さいヤツらがみんなに配るって全部持って行った。

 ウチはアイツの分ももらおうと思ったけど、このピンク色のモチみたいな駄菓子を手に入れるのが精いっぱいだった。

 アイツがもらえる分はあるんだろうか、なんて少しだけ不安になる。

 スマホからチャットをアイツに送ってみる。

 返信はこない。


 そういえば、今日は忙しいって言ってた。

 そんなことを思い出す。

 じゃあ、アイツといっしょに食べられないのか……なんて考えてしまう。

 ピリッとビニールの袋を開けてみる。

 キレイなピンク色が正しく並んでいる。

 長方形の容器の真ん中のくっついている部分をはがしてみる

 ピョーンって勢いよく蓋が開いて、少しだけ驚いてしまう。

 良かった。こぼれたりはしてない。

 容器の中に入っているつまようじを持って、1個目にどれを食べようか迷い出す。


 全部同じなのに、なんでウチは迷っているんだろう 

 ちょっとだけおかしくなってきた。


 やっと気分が落ち着いてきたから、右下のヤツをつまようじに刺してみた。

 ちょっとプツッと刺さるような感触が手に伝わる。

 その1個を口に入れる。


 つまようじを汚したくないから、モチを歯で挟んで、つまようじを抜き取ってから舌に乗せる。


 甘い。 うん。 甘い。

 噛むとちょっと歯に残っちゃいそうな感じがして気になる。


 駄菓子ってあんまり食べないから、どう考えていいのか分からないけど、甘くておいしい。

 でも、なんだか物足りない。


 もう一個……もう一個……


 気付いたら最初からもう半分に減っている。

 そんなときに、小さい影が現れた。

「あれ? 飼い主不在?」

「何だよその飼い主って」

「おぉ、さびしがりのワンコはお怒りモードだねぇ」

「別に っていうか、ウチはワンコじゃない! カッコイイオオカミだッ!」

「はいはい……って、いいもん食べてるじゃん1個ちょうだ……」

「ぁ……」

「なに?……いきなり可愛い声になっちゃって……ま、いっか」

「……」

「しょうがないから、杏からも一言だけチャットを送っておいてあげよう」

「ウルサイ」

「はいはい……あ、これ、さっきもらったんだけど杏そんなに好んで飲まないからあげるよ」

 杏はそういうとペットボトルを置いた。

 それは、緑色で炭酸の泡がシュワシュワしている飲み物だ。

「あ、アリガト」

「その代り、次は杏がそこでダラダラするんだかね?」

「分かった」

 そう返事をすると杏はニヤニヤしながら出て行った。

 もらったペットボトルを開けてみる。

 プシュッて大好きな炭酸の音がする。

 一口飲んでみる。

 口の中にシュワシュワと炭酸の感触と甘さが広がる。

 美味しい。

 美味しい……けど、いつもとなんか違う。


 残っているお菓子を食べながら、メロンソーダも飲む。

 大好きな甘い組み合わせなんだけど、なんで……こんなに物足りないんだろう。

 もう一度、スマホを見る。返信は来ていない。

 なんか、ちょっとイライラして、今度は3個一緒に食べてみた。

 噛みにくいし、ただ甘いだけだ。

 残っているのは3個

 メロンソーダをまた一口飲んで、スマホを見たら、もう少ししたら来るっていう返信が見える。

 つまようじ……残り3個に刺せなくなって、プラスチックの容器の中をコロコロと転がり出す。


 ふと、テーブルを見たら1冊の本があった。

 暗号の本?

 きっと都か誰かの忘れ物だろう。

 少し気になって本を開いてみる。

 炙り出し……暗号……

 なんか小学生くらいの理科でやったり、国語でやったり、なぞなぞで見たことがあるようなものが多い。

 ちょっとだけ懐かしさを感じる。

 そんな中、一個、気になった暗号の作り方を見つける。

「美玲ちゃん、この辺で本を……あ、読んでいたんですね」

 ふと、声が掛けられる。

 見上げてみたら、そこには頼子が居た。

「これ、頼子のだったのか?」

「はい。実は……」

 少し見つかりたかったみたいな顔をしている。

 そういえば頼子は……


「都と読むのか?」

「いえ……ちょっと違います」

 何となく直感で都が関係しているのは分かるし、この本のことを隠そうとしているのも分かる。

「なぁ、頼子」

「……はい」

「ウチはこの本を読まなかったことにするから、ちょっと協力してくれないか?」

「協力……ですか?」

 ウチは、ちょっとやりたいことを頼子に相談してみる。

「ふふっ。それでしたら、こんなのはどうでしょう?」

 頼子は、嬉しそうに案を出してくれる。

「頼子……凄いな」

「そうですね……名探偵と戦う存在ですから」

「名探偵……アイツは迷う方じゃないのか?」

「ふふっ。今度は美玲ちゃんのぬいぐるみを標的にしてみましょうか?」

「おい、それはダメだぞッ!」

「分かっています」

 ウチのお気に入りを狙われそうになって、少し焦ってしまう。

「その条件で行うのなら……本は置いておかないといけませんね。……あ、私が少し先導しましょうか?」

「頼子の好きにしていいぞ。アイツには迷宮入りでもいいんだ」

「あら、厳しいのですね」

「だって……こんなさびしいおやつ……いやだし」

 ちょっとだけ本音が出てしまう。

「……そうですね。その気持ちは分かります」

「だから、ウチはコレと置手紙を残して帰るッ」

 そう言って、頼子に習った通りに紙に文字と仕掛けを作って、ペットボトルを持って帰った。


『つかさへ

ウチの気持ちはきっと、すみの中に隠されているぞ

分からないなら、それでいい

お菓子の残りは食べていいから

今日はもう寮に戻る

 美玲』


 アイツは読んでくれるだろうか、そして、一緒に置いた鉛筆でウチが隠した気持ちに気付いてくれるかな。

 つまようじの後ろで紙が凹むように書いた、『さびしい』と『だいすき』を

 今夜は、いつもよりスマホからの通知に敏感になりそうだなって思った。

 そんな長いおやつの時間だった。



モバP「深い森の賢者と門番の狼」


荒木比奈(以下、比奈)「お、今日は門番の居る日っスね」

プロデューサー(以下、P)「門番?」

比奈「プロデューサーさん知らないんスか?」

P「なにが?」

比奈「だから、賢者さんを守る門番の狼さんっスよ」

P「さっぱり意味がわからん」

比奈「今、ソファーの方を見ると分かると思うっスよ」

P「ソファー? ……文香と美玲が居るな」

比奈「そうっすね」

P「で?」

比奈「お、小悪魔も来たんで門番の仕事の時間っスね」

P「フレデリカと志希?」

比奈「ほら、文香ちゃんって読書中に何されても気付かないじゃないっスか」

P「まぁ、確かにすごい集中力を発揮するよな」

比奈「そこで何をすれば集中が切れるか実験したがるアルケミストと悪乗りの仲間が居るんスよ」

P「……志希と、フレデリカ、周子辺りか?」

比奈「そうっス」

P「アイツら……」

比奈「基本的に惨敗なんでスけど……それを見ていた美玲ちゃんが……」


美玲『またオマエらか! そういうのダメだぞッ!』

P「おぉ、注意してる」

比奈「そうなんスよ」

P「でも、それで引く志希じゃないだろ?」

比奈「いやぁ、結構怖いっスよ? かなり本気でキレてる美玲ちゃん……」

P「マジ?」

比奈「マジ」

P「美玲にそんな面が……」

比奈「美玲ちゃん曰く『自分が好きなことをしている時間をジャマするヤツはサイテーだッ!!』ってことみたいっス」

P「おぉ、今の似てる。じゃなくて、そういうことか……」

比奈「そういうことっス」

P「下手な風紀委員長より風紀委員じゃないか?」

比奈「それ、本人の前じゃ禁句っスよ?」

P「ウッス」

比奈「まぁ、こういう美玲ちゃんの文香ちゃんには伝わってないと思うんスけどね」

P「伝わって……あ、そういう意味だったのか」

比奈「どうしたんスか?」

P「そういえば、この前、文香が呟いていたんだよ。美玲と一緒にソファーに居る時は過ごしやすい気がするって」

比奈「おぉ、そんなセリフが……メモメモ」

P「何をメモしてるんだ?」

比奈「いやぁ、こういうのって百合的なネタに最高じゃないっスか」

P「百合?」

比奈「秘してこその恋の花」

P「……まぁ、分からんでもないが……」

比奈「実際に咲いてたら、それはそれでいいんスけど……Pさんの方針は度外視で」

P「俺はそこで文句を言うほど野暮じゃないよ」

比奈「お、今日も門番の大活躍っスね。さて、レッスンの時間だし文香さんを止めるっス」

P「比奈は読書を止められるのか?」

比奈「読書をする人なら分かる簡単なことでスよ。あ、プロデューサーさんも会議?」

P「そうだったわ……俺も門番の行動が気になって時間食ってしまった……じゃあ、文香をよろしく」

比奈「はーい」

※ ※ ※ ※ ※

(レッスン後の事務所)

美玲「うぅ……今日のレッスンキツかった……ふぁぁ~……」

文香「お疲れ……さまです」

美玲「文香は疲れないのか?」

文香「こちらは……ビジュアルレッスンがメインでしたので……さほど」

美玲「そっか、うぅ……これから小梅たちと映画鑑賞だけど……このまま寝そう」

文香「……その時間までは……まだかなりかかるのですか?」

美玲「ん~……集合が小梅の部屋に7時だから、結構あるなッ」

文香「……」

美玲「どうしたんだ?」

文香「もし……よければ、こちらで少し……お休みになりますか?」

美玲「こっち?」

文香「わ、私の……膝枕で良ろしければ……」

美玲「え?」

文香「その……普段、お気遣いをいただいていますので……そのお返しに……」

美玲「お気遣い?」

文香「あの……美玲さん……ですよね? 私が読書しやすく気を使ってくださっているの……?」

美玲「ウ、ウチは、ウチが正しいと思ったことをしているだけだッ」

文香「……そうですか」

美玲「だから、気にしなくていいんだぞ!」

文香「では……これが、今……私が正しいと思ったやりたいことなのですが……それでは……ダメでしょうか?」

美玲「ぅ……」

文香「……」

美玲「こ、今回だけ……だぞ?」

文香「はい……」

美玲「……よいしょ……お、重くないか?」

文香「いえ、全く重くありません……よ?」

美玲「そっか……それにしても……ぅぅ……なんか妙に緊張するな……」

文香「では……少しだけ……最近読んだ童話を……」

美玲「童話? そういうのも読むのか?」

文香「はい……気になるものは……一通り読むようにしていますので……」

美玲「すごいな」

文香「いえ、ただ好きなだけ……です」

美玲「そうだなッ 好きだと疲れないもんなッ!」

文香「はい……では……」

美玲「……」

…………

美玲「……スー……スー……」

文香「……」ナデナデ

P「ただいまー……お、美玲と文香?」

文香「プロデューサーさん……少しだけ、お静かに……お願いします」

P「ん? あ、美玲が寝てるのか」

文香「はい」

美玲「……zzz……」

P「そういえば、美玲って……」

文香「門番の狼さん……ですか?」

P「比奈がそんなこと言ってたな」

文香「私も似たような感覚でした……その理由をこの前、比奈さんに教えていただきました」

P「それまで気付かなかったのか」

文香「お恥ずかしながら……」

P「比奈……内緒にするようなことを言っていたんだけどなぁ」

文香「はい。直接的なアドバイスではありませんでしたので……」

P「直接的じゃない?」

文香「神様は見つからないように……加護をくださる……というような感じで……」

P「それで分かったのか?」

文香「……狼は大きな神でもありますから……隣に座る狼さんが……浮かびました」

P「そういう解釈か……」

文香「もう少しだけ、この時間を……いただいてもよろしいですか?」

P「分かった。邪魔者は離れて仕事するよ」

文香「申し訳……ありません……」

美玲「……ガリュリュゥ……フミ……マモル……ゾ……」

文香「……ありがとうございます。私の……狼さん」ナデナデ

美玲「……ぇへへ~……」




以上です。

つかさと美玲は、つかさに伝わったかどうかあえて書きませんでした。

俺自身もつかさ社長がどう反応するのか、ちょっと読めなかったので……

文香さんと美玲は……ソファーの賢者と門番の狼で仲良く物語とファッション誌を読んでいて欲しい感じがあります。


そんな感じで今回は締めます。

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