美希「あついあついなつのひ」 (32)


<ミーンミーンミーン

<カタカタカタ カタカタ

<ジジジジジ……

<ブィィィィィィン

美希「…………ねー、プロデューサーさん」

P「どした?」

美希「あつい」

P「そうだな」

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美希「何でこんなにあついのー……」グッタリ

P「何でってそりゃ……夏だからだろ」

美希「そうじゃないの!ここ事務所でしょ?お部屋の中でしょ?」

P「あー。エアコンついてないからだな」

美希「なんで?我慢大会なの?プロデューサーさんはダイエット中なの??」

P「暑さ我慢してダイエットしてたら元気なくなるだろ。あまり健康的でもないし」

美希「じゃ、どうして?」

P「はい」ピラ

美希「何これ。……『社長のひとりごと』??」

P「今日は室外機と中のメンテ。一週間前から張り紙してあっただろ」


美希「初めて見たかも」

P「社長が泣くぞ。毎日更新してるのに」

美希「そもそも今日オフだもん。知らなくても当然かなーって」

P「休みなのに事務所来てるのな」

美希「家にいても暇なんだもん」

P「とにかく今日はエアコンはなし!扇風機で我慢しててくれ」

美希「なまぬるいのー……」フィーン

P「独り占めするなって、俺にもくれ。せめて首回せ」カチ


<フィーン

美希「ねー、プロデューサーさん」

P「どうした?」カタカタ

美希「あつい」

P「暑いな」

美希「エアコンの点検、まだ終わらないの」

P「延びた」

美希「すぐ終わるって言ってたのに……」フィーン

P「そんなこと一言も言ってないぞ。それより首回せ」

美希「この扇風機弱すぎるんだよ。もっといいのにすればいいのに」

P「倉庫から引っ張り出して来た奴だからなあ」


美希「ねーねー、プロデューサーさん」

P「ダメ」

美希「まだ何も言ってないの!」

P「『ミキ、プロデューサーさんと一緒にお出かけしたいな』」

美希「え、なんでわかるの?」

P「大体わかるようになって来たよ、美希が考えてること」

美希「以心伝心って言うんだよね?」

P「理想の関係だよな」


美希「じゃ、話早いね。ミキと一緒にデート、しよ?」

P「ダメ」

美希「あっさり断られたの!」

P「デートとお出かけじゃ趣旨が変わるだろ。それに仕事あるんだって」

美希『いつもいつも、口を開けばそればっかり……。私と仕事、どっちが大切なの!?』

P「仕事」

美希「ちょっとくらい悩んでほしいって思うな……」

P「それより何だ今の」

美希「この前見てたドラマの真似。どお?」

P「芝居の仕事、考えてみるかなあ」



美希「そんなことよりお出かけ!涼しいところいきたいー!」

美希「うみー!プールー!スイカ割りー!流しそうめんー!花火―!おひるねー!」

P「最後のは夏に限らんだろ」

美希「クーラー効いたお部屋でお昼寝するのって気持ちイイでしょ?」

P「そりゃそうだけど……デートで昼寝ってどうなんだ?」

美希「細かいことは気にしちゃダメ。ミキと一緒に、夏を満喫しよ?」

P「じゃ、はいこれ」

美希「……麦茶?」

P「夏と言えば麦茶、麦茶と言えば夏だ。まさに夏だろ?」

美希「むー!!!……あ、おいし」


<カラン

美希「あついのー……」パタパタ

P「パソコンも悲鳴あげてるなあ」ゴー

美希「今日のプロデューサーさん工事現場の人みたいだね」

P「こうでもしないと汗でぐしゃぐしゃになるからな……」

美希「ふーん。ね、タオルもう一つある?」

P「どうぞ」

美希「ありがと♪ ―――んしょ」シュルシュル

美希「……………あつい」

P「美希が頭に巻いても余計暑くなるだろ」

美希「涼しくなるかなーって思ったのにぃ」


P「お、そうだ。ちょっと髪弄ってみてもいいか?」

美希「髪?ミキの?」

P「ちょっと試してみたい髪型があってさ」

美希「んー……。優しくしてくれるなら、いいよ」

P「無理やりはしないから安心してくれ。……じゃ、触るな」

美希「ひぁ」

P「へぇ、見た目よりずっとサラサラだな。柔らかくて手触りもいいし、俺とは大違いだ」

美希(うー……なんか変なカンジ……)


美希「…………………これ、なに?」

P「ちょんまげ」

美希「なんでちょんまげ?」

P「涼しくなったろ」

美希「プロデューサーさん、ふざけてるよね?」

P「いやでもほら、美希ってどんな髪型でも似合うからさ」

美希「へ……。―――って誤魔化そうとしたってダメなの!」

P「ダメでござる。語尾にはちゃんとござるをつけるでござる」

美希「~~~っっっ!!!」バシバシバシ

P「痛い痛い痛い!悪かったって!!」


P「はい、今度こそできた」

美希「わ、けっこういいかも」

P「ああ。緩く結んで大人っぽさも出してる」

美希「プロデューサーさんは、髪上げてるほうが好き?」

P「好きっていうか……似合うかと思ってさ」

美希「あはっ☆ ありがと!またお願いしてもいい?」

P「じゃあ次こそちょんまげで」

美希「……ちゃんとしてくれるなら、いいよ」

P「勉強しとく」


<ガチャ

美希「おかえりなさーい」

P「ただいま。扇風機くれ」ブィーン

美希「あついのに外行かなきゃいけないなんて大変だね」

P「中にいるだけが仕事じゃないからな……あぁ涼しい」

美希「そう言うのって他の人は行かないの?社長とか、さっきまでいたよね?」

P「入れ違いで出たよ。小鳥さんは現場のヘルプ、社長は営業」

美希「じゃ、事務所今ミキとプロデューサーさんだけなの?」

P「そういうことになるな」

美希「ねね。ちょっとだけ抜け出さない?」

P「ダメ」


P「代わりと言っちゃなんだが、この後晩飯一緒に食べないか?」

美希「ごはん?ホントに?プロデューサーさんとミキ、二人で?」

P「折角美希が来てくれたからね」

美希「あはっ☆ 今日来た甲斐があったってカンジ!」

P「そんな大層な物は用意できないけどな。先にご両親に連絡しとくよ」

美希「何処がいいかなぁ。カフェとか、レストランとか。あ、下にご飯屋さんもあったよね。後はこの前言ったお店屋さんとかー……」

P「外出れないって言ったろ」ピ、ポ、パ

美希「あ、そっか。じゃあおにぎり?」


美希「何これ」

P「何って、流しそうめん」

美希「思ってたのと違うの!!!」

P「ご家庭で本格的な流しそうめんが楽しめる。夏っぽいだろ?」

美希「そうかもしれないけど……っていうかこれ、どうしたの?」

P「社長がもらってきた。なんかの景品らしい」

美希「流石にこれは予想外だったの……」

P「ほれ、流すぞ」

美希「へ。わ、とと」シュルン

美希「―――ん、おいし。おかわり!」

P「よしよし、たっぷり喰え」


美希「むむむ」ヨロヨロ

P「もうちょっと右……あ、左」

美希「ど、どっち……」フラフラ

P「動き過ぎなんだって……お、いいぞ。そのまままっすぐ」

美希「こお?」トテトテ

P「よし、そこだっ!」

美希「むむっ……ていや―――っっっ!!」

<ポコッ

美希「やたっ!―――あれ?」

P「割れてないな」

美希「むー……ちゃんとあたったのに」

P「よしよし、手本を見せてやろう」


P「せいっ!」スカッ

P「ていっ!!」ゴツッ

P「はあっ!!!」ブンッ

美希「はい、またハズレー」

P「おかしい……こんなはずでは……」

美希「ねーねー、いつになったらお手本見せてくれるのー?」ニヤニヤ

P「ふん」バカッ

美希「あ、あー!!ずるいの!!」

P「俺はスイカに限っては過程よりも結果を重視する男だ」

美希「大人気なーい」

P「大人だからな」


<ジジ……パチパチ

<ポト

美希「あ」

P「おちたな」

美希「これからだったのに……」

P「線香花火苦手なのか」

美希「苦手って訳じゃないけど。もっとこう、どーんっていうのはないの?」

P「流石に近所迷惑になるしなあ。そういうのはまた今度な」

美希「でもココ、花火しても良かったんだね。もっと早く聞いとけばよかったかも」

P「一応確認はした」


美希「あ、そだ」ゴソゴソ

P「お、今度はそっちか」

美希「うん。はい!」

P「俺がやるの?」

美希「違うよ。火、点けて。ふたつとも!」

P「二刀流は危ないぞ」

美希「だいじょーぶ。危ないことはしないから」

P「いいけど人に向けないでくれよ」シュポ

美希「ミキそんなことしないもん。―――ん、ありがと!」

<パタパタ

美希「じゃ、プロデューサーさん、見ててね」

P「? おう」


美希「えっと……確か、右足からで」トン

美希「いち、に、さん。に、に、さん」キュ、キュ

P「お」

美希「―――♪ ~~~♪」

P「おー……」

美希「ここで振って―――それで、こう!」スタッ

P「おみごと」パチパチ

美希「どお? 事務所裏の公園で、ヒミツの特別ステージ!」

P「いや、凄く良かった。なんつーか……いつもの公園がホントにステージになったみたいだったよ」


P「美希のステップに合わせて、花火の光が踊ってさ、それだけでも綺麗なんだけど」

美希「うん、うん」

P「美希の髪が花火の色で照らされて、煌めいて……すごくキラキラしてた」

P「照明なんてほとんどないのにこの場所全体が輝いてるように感じたよ」

美希「へー……」

P「それに2人しかいないせいかな、ずっと美希もこっちを見ててくれたからからかもしれないけど」

P「光に照らさてキラキラしてたのは美希の方なのに、見ているこっちまでキラキラしてるような気分だった」

P「時折こっちの方に視線くれてたろ?丁度美希の顔がはっきり見えるから、目が離せなくてぐっと引き寄せられる感じがしたよ」

P 「この辺りは美希の強みだよな。あとはそうだな、さっきのステップなんかはレッスンのよりテンポ良くて、遠目からでも―――」


美希「ま、まって」

P「どした?」

美希「えっと……ちょっと褒めすぎってカンジ?」

P「そうかな」

美希「レッスンとかライブの後でも毎回ここまでは言ってないの」

P「失礼な。俺は良いモノは良いというタイプだぞ」

美希「でも、それだけプロデューサーさん、気に入ってくれたってことだよね」

P「まあな」


美希「ね、プロデューサーさん」

P「ん?」

美希「アイドルとして人気になったら、もっと夏っぽいことできるようになる?」

P「―――どうかな。もしかしたら、その逆かもしれない」

P「人気が出たら仕事の量も増えるし、前みたいに気軽に外にも出掛けにくくなるかもしれないし……」

美希「……ふーん」

P「けどそれ以上に、やれることやできることも増えると思う」

美希「そうなの?」

P「ああ。今はまだはっきりといえないけど……」

P「プール行ったりスイカ割りしたり、花火したりとはちょっと違った夏が過ごせるようになるんじゃないかな」


美希「それって、プロデューサーさん的にはミキが楽しいこと?」

P「ああ。具体的なことやはっきりしたことは、今はまだ言えないけど」

美希「じゃ、やってみようかな。プロデューサーさんがそう言うなら、きっと嘘じゃないし」

美希「それにミキ、最近アイドル悪くないなって思ってるから」

P「そっか」

美希「プロデューサーさんにもさっきみたいなステージ、見せてあげられると思うよ。楽しみにしててほしいな」

P「よし、なら次は辛口で厳しくいくわ。あと花火で踊るのは禁止!」

美希「ぶー」


―――――――――



―――――――――

美希「動いたの―――!!!」

P「文明の利器最高」フィィン

美希「あはっ☆ これで快適に寝られるね!」

P「事務所は寝るところじゃないんだぞ」

美希「ちっちっち……プロデューサーさん、そいつはしゅがーな考えなの」

P「なんだそのしゅがーって」

美希「事務所はお仕事するところってそれくらい知ってるよ。でも休憩する場所でもあるでしょ?」

美希「休憩するにはリラックスすることが大切なの。ミキにとってのリラックスは……おひるね!」

P「成る程、一理あるな」

美希「でしょ?だからミキは寝ていいの。おやすみなさーい」


P「でもダメ」ガシ

美希「えー。ミキの理論は完璧のハズなの!」

P「リラックスする場所でもあるけど仕事する場所でもあるんだろ?じゃ、まずはそっちをやってから!」

美希「仰る通りなの……」

P「残念ながら美希のほうがシュガーだったようだな……」

美希「やりたいことやるのも、ホント一苦労だね」

P「仕事行くの、嫌か?」

美希「……プロデューサーさんは、ミキがイヤイヤやってるようにみえる?」

P「いいや」

美希「そ。よかった」


P「それじゃ、美希。今日もあついけど頑張ろうな」

美希「はーい」



おしまい。

以上でお終いです。読んで下さいましてありがとうございました。
何だかここ数日ですっかり涼しくなってしまったけれど気にしてはいけない。

美希って最初の頃は「事務所に帰ってもなんにもやることない」って言ってたりするんですが、
しばらく経って事務所に入り浸るようになるのも良きものと思うのです。
家庭用流しそうめんはやるのにちょいとコツがいるのでどうかお気をつけて。

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