白菊ほたる「幸か不幸か」 (19)


これはまだ、あなたと彼女が出会う前のお話

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〈ほたるとカエル〉


ポツポツ…

ザァァァァァァァ


ほたる(外出した途端に、雨が…)


今日もまた、私は不幸体質です


私が出かける時はいつもこう

でも、こんな時のために折りたたみ傘を持ち歩いてはいます

せっかくのお出かけですが、どうやら足元を濡らすしかないようです


ぴょん

ほたる「!」

カエル「ケロケロッ!」

ほたる(カエルが茂みから飛び出して来ました…)

カエル「ケロケロ!」

ほたる「…あなたには、この雨は幸運だったようですね」

カエル「ケロケロッ!」

ほたる「…けろけろ」にこっ

【翌日】


ほたる「…」

『ほたる、どうしたんだい?』

ほたる「…いえ」

『ああ、カエルの死骸だね』

ほたる「…ええ」

『雨の後にはよくある事さ』

『雨に浮かれてすみかから飛び出てきたはいいが、晴れたら池に戻れず路上で干からびたんだよ』

ほたる「…そうみたいですね」

『カエルにはいつ雨が上がるかはわからない。わかるはずもない』

『あのカエルは運が無かったんだよ』

ほたる「ええ。それだけの話です」

ほたる「…もう、行きましょうxxxさん」

『そうだねシンデレラ。君が失くしたガラスの靴を探しに行こう。きっと誰かが持っている』

『それまで僕は君に付き従うよ」

ほたる「はい。私も今はあなたと共にありましょう。いずれかが二人を別つまで」

『実は次の仕事も決まっているんだ…

〈鳶にさらわれて〉


ほたる(仕事の合間の休憩時間)

どうせなら景色を眺めながら食事にしよう、とあの人が言い。河原に座ります

あの人が気を利かせてくれて、期間限定販売のハンバーガーを買ってきてくれました

これなら河川敷に座りながらでも手で食べられます

ほたる(ぼんやりと流れる水面を見つけているとなんだかいろいろな事を考え…


ボッッ!!!


ほたる「……えっ?」

一瞬、何が起きたのかわかりませんでした


ほたる「ハンバーガーが、無い?」


謎の音とともに、手元にあったハンバーガーが無くなる怪現象

私の頭は混乱していました


トンビ「ぴーーひょろろろろ」


ほたる「あっ…」

空を舞う鳥の足爪は、先ほどまで私の持っていたハンバーガーに食い込んでいました

ハンバーガーが無くなったのは、あのトンビにさらわれてしまったからのようです


ほたる(せめて一口食べておけばよかった)

ほたる(せっかくあの人が買ってきてくれたのに)


下ばかり向いているから、上から飛んでくるトンビには気が付きませんでした

『大丈夫かい、ほたる?』

ほたる「…平気です」

『トンビに食べ物をさらわれるなんて、ついてない』

『どこにも怪我は無いかい?トンビが飛んできた時、爪で大怪我をする人もいるんだ』

ほたる「どこにも引っかからなかったようです」

『そうかい。君は運が良いね』

ほたる「ええ。大事にはいたりませんでした」

その後、あの人が余分に買っておいたというチーズバーガーを頂きました

結局、期間限定のハンバーガーは食べられず仕舞いです


【数時間後】


ほたる「…」

『どうしたんだい、ほたる?』

ほたる「…すみません。先ほどのハンバーガーですが、中身は何だったのでしょう?」

『期間限定・アボカドバーガー』

『アボカドは人間には無毒だけど、それ以外のほとんどの動物には毒だからね』

ほたる「…そうでしたか」

『今日はいろいろな事が起こったね』

『君は食べ物をさらわれ、その後は無惨な鳥を見る羽目になる』

『その一方、鳥に襲撃されたにも関わらず無傷で済んで、その犯人も報いを受けた』

『ねぇほたる。今日の君は運が良かったかい?それとも運が悪かったかい?』

ほたる「私にはわかりません。でも…」

ほたる「このトンビは私と関わらないほうが良かったのでしょう」

『そうかい』

ほたる「…行きましょう、xxxさん」

『ああ。僕は君に付き従うよシンデレラ』

『君が失くしたガラスの靴を探しに行こう。きっと誰かが持っている』

ほたる「はい。それまで私もあなたと共にありましょう。いずれかが二人を別つまで」

『実は次の仕事はもう決まっているんだ…

〈大切な植木鉢〉


ガシャン!!

ほたる「…」

目の前に、急に上から植木鉢が降ってきました

今日もまた、私は不幸体質です

ほたる(誰にも当たらなかった分、幸運だったのかもしれません)


黒猫「にゃー」


ほたる(…あの子がベランダを通った時に、鉢にぶつかって落ちたみたいです)

植木鉢が落下してきた家屋から、一人のおばあさんが出てきました

「おやおやまぁ、大丈夫だったかい?」

ほたる「平気です。当たりませんでしたので」

「それは良かった。運が良かったねぇ」

ほたる「はい」

「ああ、でも、私の大切な植木鉢が…ぐしゃぐしゃに…」

ほたる「…大切にしていらした花だったのですね」

「ええ、それはもう大事に大事に育てて…」

「…でも、ネコちゃんがやったことじゃ仕方ないわねぇ」

「運が悪かったと思うほかないさ」

ほたる「…そうですか」

ほたる「それでは、失礼します」

「ああ。悪かったねぇ。もうベランダから植木鉢が落ちないようにしておくから」

ほたる「はい。それでは」


軽く会釈をして、その場を去る間際

家屋の物陰から女性の声が聞こえてきました


「ああ!やったわ!今日はなんて良い日なのかしら!ついているわ!」

「お義母さまのあのくっさい花の植木鉢!ベランダから落ちてぐしゃぐしゃよ!嬉しいわ!」

「あの花、虫が寄るし大嫌いだったのよ!今日は運が良い日なのね!!」


ほたる「…」

一人の女性が、黒猫を抱きしめながら上機嫌につぶやいていました

『やぁほたる。何かあったのかい?』

ほたる「植木鉢が落ちてきました」

『それはついてない。怪我は無いかい?』

ほたる「ええ。ご覧の通り」

『それは運が良い』

『ねぇほたる。君はその不幸体質を持ったこと自体を不幸に思ったことはあるかい?』

ほたる「…私の不幸体質で、私自身が不幸になるのは構わないと思っています」

ほたる「でも、私の不幸の影響で周囲の方々が幸福になったり不幸になったりするのは…少し辛いですね」

『そうかい』

ほたる「…それでも、私は夢を諦めるつもりは無いんです」

ほたる「不幸も後悔も懺悔もたくさんあります。でも、階段を上る脚を止めるつもりはありません」

ほたる「それこそ、雨が降ろうと植木鉢が降ろうとも」

『それで良いんだよ、シンデレラ』

『君が失くしたガラスの靴を探しに行こう。階段を上る君には必要なものさ』

『きっと誰かが持っている。僕はそれまで君に付き従うよ』

ほたる「はい。私も今はあなたと共にありましょう。いずれかが二人を別つまで」

『実は次の仕事はもう決まっているんだ。槍は降ってこなかったが、白羽の矢が立った…

「様々な事務所を転々としていた」という時代のほたるちゃんを書いてみようと思いました
また何個かお話が思い浮かんだら続くかもしれません

一度このスレは終了とします

私は勇気を振り絞り、声をかけてみる事にしました

ほたる「何を…していらっしゃるのでしょうか?」

ちょっとだけ声が震えてしまいました

「ああ、これはですね…」

「この子たちが怪我をした子猫を拾って、この公園でこっそり育てていたんですよ…」

(傷ついた)子猫「にゃー」

「ひろったー」
「ごはんあげたー」

ほたる「……ふぅ」

ほたる「なんだ。そうでしたか…」

少しだけ、安堵できた気がします

miss

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