白菊ほたる「幸せ禁止……ですか?」 (35)

ほたる「~♪」ニコニコ

モバP(以下P)「お、どうしたほたる、今日は随分上機嫌だな」

ほたる「あ、プロデューサーさん、実はですね、今日でもう一ヶ月は植木鉢が落ちてないことに気づいたんです」

P「お、おう……」

ほたる「考えてみれば、最近は機材が壊れることも少なくなったし、急に仕事が無くなるのも3件に1件まで減りましたし、この前はロケだったのに晴れていましたし……」

ほたる「ここ最近幸運続きで…これも、プロデューサーさんのおかげかなって……私、とっても幸せです」フフ

P「ほたる…………」

ほたる「レッスンができて、私にあった仕事がもらえて、ありがとうございます……プロデューサーさん」

P「………………………………………………………」

P「ほたる、これからは当たり前なことに幸せや幸運を感じるの、やめよう」

ほたる「え?」




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P「ほたる、ほたるが些細なことでも幸せを見つけているの、最初はいいことだと思ってた。不幸を悲しむだけだったほたるが、幸せを見つけられるようになったのはいいことだ、考え方が前向きになってきてる、と」

P「でも、さすがにずっと、ってなると話は変わってくる。些細なことでも幸せに感じるというのは、結局普段が不幸過ぎるから生じることなんだ。それをいつまでも新鮮に感じるというのはもうそれが不幸なことなんだ」

P「ほたる、俺はお前に幸せになって欲しい。幸せな人の価値観になってほしい、考え方になってほしいんだ。当たり前なことに幸せを感じるのは、意識的にやめてほしい」

P「ほたるの気持ちや考え方にまで口出すのはお節介かもしれない。俺のわがままかもしれない……けれど、俺はこうすることが、ほたるがちゃんと幸せを掴むことの近道だと思う」

ほたる「…………はい、わかりました」

ほたる(……………………あたりまえ)

ほたる(当たり前って、なんだろう…………?)

ほたる(幸せを掴むってどういうことなんだろう?)


翌日

ほたる「おはようございます」

P「おはよう、ほたる」

裕美千鶴泰葉「「「おはよう、ほたるちゃん」」」

ほたる(事務所が潰れてなくて幸せ! 挨拶するみんながいて幸せ!)パア

P「ほたる」

ほたる「あ、はい……すみません」

裕美千鶴泰葉「「「?」」」


事務所ソファ

泰葉「幸せ禁止、か……」

ほたる「うん……私なにか悪いこと言っちゃったのかな……」

千鶴「まあプロデューサーさんの気持ちもわかるかな」ボソッ

ほたる「え?」


千鶴「……ハッ、ごめん、また言っちゃってた?」

ほたる「ううん、いいの。千鶴ちゃん言って?」

千鶴「その、ほたるちゃん、喜んでくれるのは嬉しいけど、なんというか喜び過ぎというか……」

ほたる「喜び過ぎ?」

裕美「たとえばさ、この前みんなで、遊びに出かけたでしょ? あの時、ほたるちゃんさ」

ほたる『友達と出かけられるなんて、幸せだなあ』

裕美「って言ってたじゃない?」

ほたる「う、うん」

裕美「気持ちはわかるんだけどね。みんなで遊ぶの、これで何回目だっけ?」

ほたる「この前ので24回目、今日みたいに全員集まって話すのは、72回」

裕美「…………………………………24回、うん、結構な数行ってるよね」

裕美「それでその、毎回初めて来たみたいに言われちゃうとさ……なんというか、さみしい」

ほたる「寂しい?」


裕美「うん。たぶん、『さみしい』……」

裕美「私はもう、こうしてみんなで集まって楽しく話すのが当たり前のことのようになっていて……それはたしかに幸せなことなんだけど……でも、毎回噛みしめるように言われちゃうと……」

裕美「まだ私はほたるちゃんの当たり前になれてないのかなって……すこし、さみしいかな」

ほたる「ご、ごめん、ごめんなさい!」

裕美「あ、謝らないで! 私が勝手に思ってるだけで……」

千鶴「……プロデューサーも思ってるかも」

ほたる「う、うう」ウルッ

千鶴「ああごめんごめんごめん!」

ほたる「このままじゃ……ダメ……変わらなきゃ……」

泰葉「…………うーん、そんなに思いつめなくてもいいと思うけど」

裕美「そ、そうだよ! そんなに深刻に考えないで!」

ほたる「ううん、私、ちゃんと意識してやってみる」

ほたる「みんなにさみしい思い、させたくないもの」


P(しかしその後もほたるの意識はなかなか変わらなかった)

ほたる「もうしばらく靴紐が切れてない。幸せだなあ……あっ」

ほたる「あの、今日はどれが売り切れてますか? え!? なにも売り切れてない!? じ、じゃあ、これとこれをお願いします……えへへ……幸せ……はっ」

ほたる「渋滞で遅刻しちゃったのにスタッフさんすぐに許してくれました。幸せ……じゃなくて、えっと、いい人でよかったあ。そんな人と仕事できるのしあわ……っと」

P「………………………」


ほたる「プロデューサーさん……ごめんなさい……私うまくできなくて……」

ほたる「当たり前の幸せっていわれても、なにが当たり前で、なにがそうじゃないのか。私にはわからなくて……」

P「まあ急に言われて戸惑うのもわかる。それは仕方ないさ。それに対策も立ててある」


P「というわけで『白菊ほたるの幸せ判断三銃士』を連れてきたよ」

ほたる「白菊ほたるの幸せ判断三銃士!?」

P「鋭い眼光で幸せを感じた瞬間を逃さない、関裕美」

裕美「コンプレックスだからやめてほしいんだけど」

P「芸能界を渡り歩いて培った観察眼、岡崎泰葉」

泰葉「『白菊ほたるの幸せ判断三銃士』って長くないですか?」

P「書道で鍛えられた眼で本質を見抜く、松尾千鶴」

千鶴「3人とも目ってバランス悪くない?」

P「これからはこの3人にほたるが正しく幸せを感じてるか判断してもらう」

泰葉「正しい幸せってなんなんだろう?」

千鶴「まあとりあえずやってみようよ」

ほたる「3人とも、ありがとう」パア

裕美「あ、今」

泰葉「うん、さっそくだね」

裕美千鶴泰葉「「「今の幸せ、当たり前です!」」」

ほたる「ええ!?」

泰葉「友達が困っていたら、手伝うのは当たり前」

裕美「ほたるちゃんも私達を助けてくれるじゃない。だから、当たり前のことだよ」

ほたる「そ、そうだね!」

P「さて、ちょうどよく一回目の判断が終わったところで仕事行くぞ。ほたると泰葉でイベントだ。泰葉、よろしく頼む」

泰葉「はい! ほたるちゃんから一瞬も目を離しません」

ほたる「うぅ……お手柔らかに……」


イベント会場

ほたる(お仕事があるなんて幸せ)パア

泰葉「ぶぶー。今は幸せを感じる時ではありません」

ほたる「えー? でも泰葉ちゃん、いつも仕事があることに感謝しようって言ってたじゃない」

泰葉「うーん、プロとしてそれは正しいんだけどね、でもさ」




泰葉「『セクシーでかわいいどうぶつコスプレショー』ってほたるちゃんに何やらせようとしてるんですかこのエロデューサー!!!!」ギリギリ

P「いたいいたいいたいいたいいたいギブギブ」タップタップ


P「完璧に関節極まってたんだけど。あんなんどこで身につけたのよ」

泰葉「早苗さんが暴漢対策にって教えてくれました。正しく使えました」

P「待て待て判定がまだ早い。まだほたるのリアクションを待ってからだね」

泰葉「いえ、もう決まって――」

ほたる「わあ、かわいいウサギさんの衣装……私なんかが着ていいのかな」フリフリーン

泰葉「え!?」

P「ほら、どうだ。泰葉」

泰葉「かわいい……ほたるちゃん、ものすごく似合ってるよ!」

ほたる「そ、そうかなあ」

泰葉「……うん。私の早とちりでした。ごめんなさいプロデューサー、ほたるちゃん」

ほたる「そ、そんな、謝らないで。泰葉ちゃんは私を思って言ってくれたんだし」

P「ああ、そうだよ。謝らなくていい」


P「お前には今日がんばってもらうからな。セクシー担当」つビキニーン

泰葉「……え」

泰葉「あ、あれ? メルヘンアニマルズの時の衣装じゃ」

P「前と同じじゃ代わり映えしないだろ? 夏だし、毛刈りバージョンてことであの衣装を水着にしたようなイメージで作ってもらった」

泰葉「あの時は9月の始まりとかだったと思うんですけど……」

P「今もまだ暑いからな。恨むなら俺じゃなく地球を恨め」

泰葉「」ハイライトオフ

P「そんな目してももうこれで決まってるから」

泰葉「ううー」ハイライトオン

P「ほらそろそろ出番だぞ、行ってこい」

ほたる「はい、行ってきます」

泰葉「後で覚悟してくださいよ、もう!」


別の日

ほたる「おはようございます」

P「おはよう、ほたる」

裕美「おはよう、ほたるちゃん」

ほたる(事務所が潰れてないし裕美ちゃんも元気だし挨拶も返してくれてし「ストップ」

ほたる「えぇ……」

裕美「いや、今のは私でもわかるよ。事務所は普通突然潰れないし、挨拶したら普通返ってくるよ」

ほたる「い、今のはその……それもあるけど、裕美ちゃんが今日も元気だったのもうれしかったから……」

裕美「ほたるちゃん……!」ジーン

P「裕美が元気なのもいつも通りだからやっぱり今のだ怖い怖い怖い! そう睨まないで!」


ソファ

P「ほたる、なんか飲むか?」

ほたる「水、もらっていいですか?」

P「…………まだお茶っ葉もあるし、パックでいいなら紅茶も作れるよ」

ほたる「え!? でも」

P「ついでに言うならさっきお湯余分に沸かしてポットに入れといたから、いきなりガス水道が止まっても問題ない」

ほたる「そうなんですか! 嬉しい……どうしようかな……選べるなんて幸せ……」

裕美「…………」ジッ

ほたる(あっ、今のダメだったかな?)


裕美「…………」ジー

ほたる(あ、違う。これ悩んでる時の目だ)

裕美「……………………」ウーン

ほたる(えへへ……ちょっと変かもだけど、ここまで悩んでもらえるなんて幸せ)パア

裕美「今のはダメ! 友達を思って悩むのは当たり前!」

ほたる「そんなー!」

P「おーい、結局何飲むんだー?」


また別の日

千鶴「今日はほたるちゃんと番組の収録なんだけど……」

ほたる(折りたたみ傘を持ってきたら雨が降ってる! いつも晴れて無駄になるのに!幸せ!)パア

千鶴「これは一体何を幸せに思って……?」


スタッフ「おつかれさまでーす! お2人はこの後13時までお昼休憩、それから午後の撮影に入ります」

ほたる千鶴「「はーい」」

千鶴「さてと今日のお弁当は」

ほたる「……」パアア

千鶴「は、これは」

千鶴「ストーップ! ほたるちゃん、全員分の弁当があるのは当たり前!」

ほたる「え!? あ、いや、今のはその」

ほたる「今日のお弁当、私の好きなのだったから嬉しくって……これも、ダメ?」

千鶴「えっと……それは……」

千鶴(どちらかといえばわりとよくあることだよね。弁当なんてそんな種類ないし、今日のお弁当はよく食べるやつ」ブツブツ

千鶴「けれど、お昼ご飯が好きなものというのはたしかに幸せなこと……食欲は三大欲求の一つ、それが満足に満たされるというのは瞬間的にはとても幸せに感じる……」ブツブツ

千鶴「うーん……私はいったいどう判断したらー」ブツブツ

P「お昼ちゃんと食べろよ千鶴ー」パクパク

ほたる「おいしい……」パアア


ちひろ「その後も厳しい監視が続きました」

裕美「外を歩いてて動物に襲われないのは当たり前!」

千鶴「みんなで遊んだりレッスンするのは当たり前!」

泰葉「事故が起きた時に誰もほたるちゃんを責めないのは当たり前!」

裕美千鶴泰葉「「「やりたい仕事が出来るのは幸せなことだね!」」」

P「どういう意味?」


P「ただいま戻りましたー」

ほたる「ただいま戻りました……」

裕美千鶴泰葉「「「おかえり、ほたるちゃん」」」

ほたる「!」

ほたる「ありがとう、みんな」ニコッ

ほたる(だんだん、みんなの言う「当たり前の幸せ」がわかってきた気がする)

ほたる(けど、当たり前の幸せも、幸せじゃないの……?)

裕美「ほたるちゃん、大丈夫?」

ほたる「え!? う、うん」

千鶴「そうかな、顔色悪いけど……」

ほたる「も、元々こんな感じだし……」

P「…………」

P「やっぱり、無理させちゃったかな……」


GBNS ワイワイ

パチン

キャッ!! テイデン?

ほたる(うう、また私の不幸かな……みんな、ごめん)

ほたる(でも、ちょうどいいかも)


ほたる スゥ-ハァ-

ほたる(事務所が無事あって幸せ! みんなが元気で幸せ!)パア

ほたる(レッスンができて幸せ! オフも楽しく過ごせて幸せ! 最近周りで誰も怪我してなくて幸せ!)パアア

ほたる(色んな仕事をさせてもらえて幸せ! そもそもどんなことでも仕事があることが幸せ! )パアアア パチッ

ほたる(アイドルとして活動させてもらえて幸せ! みんなと一緒にいられて幸せ!)パアアアア

ほたる(こうして事務所にいられることがとっても幸せ!)パアアアアアアアア


ほたる「あっ!」

「「「……」」」ジー

ほたる(もう、停電終わってた……)

ほたる(うっ、見られちゃった……どうしよう)

「「「やっぱりねえ」」」

ほたる「え?」


裕美「ほたるちゃん、やっぱりそうしてる方がずっといい」

泰葉「うん。私たちが見落としちゃうことも、ちゃんと幸せって思うほたるちゃんの方がいいよ」

千鶴「ほたるちゃん、幸せそうにしてるときとってもかわいいもの」

裕美「今まで無理させて、ごめんね。ほたるちゃん」

ほたる「え、え?」

P「……すまなかったな、ほたる」

ほたる「ぷ、プロデューサーさん」


P「無理をさせちゃったな。ほたるに我慢させてまでやることじゃなかった。許してくれ」

ほたる「そんな、いいんです。みんな、私なんかのためにここまでやってくれて」

裕美「でも方向性がちょっと違ったよね」

千鶴「うん。プロデューサーが悪い」

P「ぐう」

ほたる「……ふふふふ」

ほたる(こうして笑えるのって……本当に幸せ)パア


数日後

ほたる「おはようございます」

P「おはよう」

裕美千鶴泰葉「「「おはよう、ほたるちゃん」」」

ほたる「おはよう、みんな」

ほたる(朝事務所に来て、みんなに挨拶できて幸せ)パア

ほたる(来る途中6個の信号で3個にしか引っかからなかった。幸せ)パアア

ほたる(今日はまだ2回しか転んでなくて幸せ。朝ごはん食べてるとき口を切らなくて幸せ。時計が落ちたけど壊れてなくて幸せ。)パアアア

ほたる(幸せ、幸せ、幸せ幸せ幸せ幸せ?)パアアアアアア


千鶴「うーん、なんだか悪化しているような」

泰葉「抑圧された反動?」

裕美「これはこれでまずいよね……」

裕美千鶴泰葉(((まあでもかわいいからいいような気も)))

裕美千鶴泰葉(((幸せなほたるちゃんが見れて、幸せ)))

おわり


おまけ

P「あの、ちひろさん」

ちひろ「はい?」

P「ほたるは最近、幸せそうにしてますか?」

ちひろ「え? いつもしてるじゃないですか」

P「やっぱり…………」

ちひろ「?」

P「……最近、なにをやってもほたるがあんまり喜んでくれなくて……もしかして幸せ禁止したのまだ怒って……いや、まさか律義に守ってるんじゃ……」

ちひろ「いや、それはつまり……」


ちひろ「……いえ、やっぱり怒っているのかも知れませんね」

P「……どうしましょう」

ちひろ「もう、アイドルのモチベーションを保つのもプロデューサーの仕事ですよ!」

P「ちょっと買い物に、いや、仕事とってきた方がいいか? とにかく行ってきます!」ダッ

ちひろ「あっ、行っちゃいました」

ちひろ「カンの鈍いPさんが悪いんですよー……ふふふ」

これにて本当に終わりです。
及川雫に皆様の清き一票を――いや、さきにほたるに声をつけて……? いや、でも今回は第七回だし菜々さんというのも……うわああああああ

なぜかID変わってますが>>1です
HTML化依頼したついでに過去作のっけておきます

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