盗賊「伝説の勇者の秘宝は俺がいただく」 (63)


盗賊「扉の前には……」

姫「勇者っぽい石像」

盗賊「で、扉は開かねぇと」

姫「で、どうするの?」

盗賊「そう言われてもな……」




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  ---王都 王宮地下3階---




姫「それを何とかするのがキミの仕事でしょう?」

盗賊「なんで俺が……」

姫「王宮忍び込んで捕まったキミを助けてあげたのは誰ですか??」ニコッ


盗賊「…………クソワガママで偉そうな姫さんだな」

姫「私ならキミの罪状を取り下げることが出来るわ、協力しなさい」

盗賊「ケッ」

姫「ちゃんと秘宝を見つけたら逃してあげるわ」

盗賊「約束だからなっ」

姫「まずはこの迷宮への扉を開かないとね」フフ

盗賊(王女のお遊びかよ)


 ガチャガチャ

盗賊「ふむ……開かねぇな」

姫「キミはどんな鍵でも開けられるって、スラムで有名な盗賊なんでしょ?」

盗賊「なんでもじゃねーよ、鍵抜きが得意なだけだ。そもそもこの扉には鍵穴すらねぇじゃねぇか」

姫「えー……?」


盗賊「仕掛けで開く扉だな……伝説の勇者の秘宝が眠る迷宮か」

姫「入り口の前には伝説の勇者と思わしき石像。さ、謎解いて少年」

盗賊「ガキ扱いすんなよ」

姫「はいはい、少年くん。実力みせてよ」

盗賊「ハッ……なめんなよ」ニヤ

姫「え? なにその顔……もう分かったの?」

盗賊「ったりめーだ。この像、大事な物が足りねぇよな?」

姫「え? なにが?」

盗賊「この勇者像、手ぶらだ。わかるか?」

姫「えーと?」

盗賊「腰に鞘はあるのに」

姫「剣?」

盗賊「勇者の剣と言えば聖剣……名前は?」

姫「え? 聖剣の名前? えーと……??」

盗賊「そんなことも知らねーのか? そんなんじゃ“先に進めねぇぞ”」




盗賊「聖剣の名前は>>??だ」

エクスカリパー

>>4
盗賊「聖剣の名前はエクスカリパーだ」

姫「……パー?」

姫「エクスカリ“バー”でしょ?」

盗賊「そうだよっ! エクスカリバーだっつーの!」

姫「知ってるよーさすがに」

盗賊「知ってんなら答えろやっ」


 ゴゴゴ……


姫「わっ! わわわ」

盗賊「なっ!……勇者の石像に石の剣が現れた」

 ギィィ……


姫「わぁ! 扉が開いた」

盗賊(王族の魔力イメージに反応したのか?)

姫「この勇者の石像……幼いわね、キミと同じくらいの歳かな」



盗賊「お若いのにご立派なこって」


姫「遥か昔、勇者は魔王を倒す為に旅立った……」

盗賊「ケッ」

姫「勇者が何故旅立ったか知ってる?」

盗賊「さぁ? 女神の啓示か、それとも生まれ持った正義感か? ハハッ」



姫「勇者の故郷……始まりの町は魔王軍によって滅ぼされたの。助かったのは彼だけ」


盗賊「つまりは……」





盗賊「復讐……だったのか」


姫「ええ、伝説では語られなかったけど王家の伝承にあったわ」


姫「彼は滅びた故郷の残骸を漁り300Gだけを手にして旅立ったそうよ」

盗賊「伝説の言い伝えとは正反対の旅立ちだったわけか」

姫「そうね……よし入りましょ」


 ---第1の部屋---



姫「なーんもない部屋」

盗賊「殺風景な部屋にまた次への扉」

姫「むー」

盗賊「このダンジョンについて知ってることは?」

姫「さぁ? なにも」

盗賊「ここは王都の王宮、つまりお前ん家。その地下にあるダンジョンなのに何も知らねぇのか?」

姫「知らないわよ、このお城は遥か昔にご先祖様が建てたんだもの」

盗賊「王族の先祖は伝説の勇者だっけか?」

姫「ええ」

盗賊「伝説の勇者は魔王を倒した後、王になり城の地下に秘宝を隠した……」


姫「私も勇者の血を引いてるのよね」


盗賊「さ、先へ進むには……」


姫「次への扉はまた開かないっと……さ、少年くん謎解いて」

盗賊「てめぇ全部人任せかよ」

姫「その為にキミを連れて来たのよ、つべこべ言わない」ニコッ

盗賊「ケッ」


姫「にしても……この部屋何もないわね」

盗賊「よく見ろや、床の模様」

姫「むー……この模様。円を描くように……」


姫「剣と盾」

盗賊「大剣」

姫「杖」

盗賊「メイス……」


姫「全部武器ね……何を表しているのかしら?」

盗賊「このダンジョンは伝説の勇者の迷宮だ。勇者に関係する何かだろうな」

姫「また勇者の武器は……片手剣と盾よね? また武器の名前?」

盗賊「いや、違うな」


盗賊「円の模様、いろんな武器……何を表してる?」

姫「むー?」


盗賊「この模様が表してるのは……勇者達の>>??」

なかま


>>12
盗賊「この模様が表してるのは……勇者達の仲間」


盗賊「勇者と仲間達の絆だ」

姫「ああ……! 勇者の剣と盾!戦士の大剣、魔法使いの杖、僧侶のメイス」


 ゴゴゴ……


姫「やた! 次の扉が開いた」

盗賊「勇者と仲間達の絆が最大の武器ってな、伝説に仕掛けを解くヒントがあるみてぇだな」


姫「伝説の勇者の仲間達は………なぜ勇者についていったか分かる?」

盗賊「世界を平和にしたかったんじゃねぇの?」


姫「ちがうわ。復讐を誓う勇者の仲間よ?」

盗賊「じゃなんだよ?」


姫「戦士は王都の地下街の殺人鬼、魔法使いは禁術を研究する迷いの森の魔女、僧侶は教会の教えを守らず堕落した悪僧」

盗賊「はぁ?!」


姫「みんな人と関わらず、街を離れざるおえなかった者たち……勇者の復讐に共感し、勇者の為に戦った。人や世界を救うなど考えていなかったそうよ」

盗賊「……」

姫「彼らに正義感はなかった。それでも絆が強かったのは事実」

盗賊「そうだったのか」

姫「……」

盗賊「なんか逆に納得だな。見返りの無い正義感で旅してますって方が理解できん」


姫「よく納得できるわね、私には分からない。勇者達がどんな気持ちで旅をしたのか」

盗賊「俺は盗賊稼業をやってるもんでね、自分が社会的に悪なのは分かっている」

姫「社会的に悪……」

盗賊「でもな、俺には俺の正義があんだよ……勇者達も同じで彼らだけの正義があったんだろう」



姫「分からないわ……人の物を盗むキミの正義って何?」

盗賊「貴族のアンタらはスラムの現状を知らねぇ。生きて行く為に奪い合うのは当然の考えだ」

姫「みんなで助け合えば……」

盗賊「スラムにいると綺麗事に虫酸が走る……王族の金でスラム全ての人を助けられるのかよ?」


姫「……すぐには無理かもしれないけど」
盗賊「ここで議論しても何も変わらねぇし、変えようとも思わねぇ」

姫「でも……」

盗賊「そんな世の中なんだ。ただそれだけ。さ、先へ行こうぜ」


姫「……」




 ---第2の部屋---



盗賊「また開かねぇ扉と勇者に纏わる仕掛けか」

姫「扉の周りには水霊、火精、風獣の石像」

盗賊「一つ足りねぇよな」

姫「何もない台座が一つ」

盗賊「水霊ウンディーネ、火精イフリート、風獣ハーピーとくると残るは……土族だな。わかるか?」

姫「えーと?」


盗賊「伝説の勇者が旅で出会った亜人種達のことだ」

姫「勇者の旅……」


盗賊「鍛治や石工を得意とする種族>>??だ」

ドワーフ


>>17
盗賊「鍛治や石工を得意とする種族ドワーフだ」



 ゴゴゴ……



姫「わっ! わわわ」

盗賊「台座にドワーフの石像が現れた」

 ガチャ……ギィィ……


姫「わぁ! 扉が開いた」


盗賊「フンッ……楽勝。順調だな」


姫「さすがね、噂通りただの少年盗賊じゃないのね」

盗賊「少年は余計だ」

姫「なによ、褒めてあげたのに。頭いいなって」ウフ

盗賊「スラムではまともな教育は受けれねぇが、俺にはアニキがいたからな」

姫「お兄さんに勉強教えてもらっていたの?」

盗賊「ああ……」

姫「お兄さんは今どこに?」

盗賊「ケッ……俺のこたぁいいんだよ。今は勇者だろが」

姫「そうね」


盗賊「勇者は清く正しく人助けでもしながら旅したんだろな。俺と違って」

姫「ええ……勇者は亜人種達の協力を得て旅を進めたのだけれど、人間嫌いの彼らが何故勇者に協力したと思う?」


盗賊「あれだろ、なんか亜人種達が困ってることを解決してやったんだろ?」

姫「そう。魔物に困ってたら倒してあげたり、病に苦しんでたら薬を用意してあげたり、盗まれた物を取り返してあげたりとか」

盗賊「はいはい、立派な正義の味方だね~」

姫「……そんなにどの種族も困ったことになってると思う?」

盗賊「は? どういう意味だ?」






姫「勇者達の策略よ。亜人種達が困るように」


盗賊「まさか……魔物や病、盗みを自分達でやって、そ知らぬ顔で助ける振りをしたってことか?!」

姫「そういうこと」


盗賊「ハハッ……なんだそりゃ詐欺師じゃねぇか」


盗賊「面白れぇ」



  ---第3の部屋---




姫「凄いこの部屋……木の根が壁に纏わり付いてるわ」

盗賊「姫さん、松明の火が燃え移らねぇようにな」

姫「う、うん……」

盗賊「お宝は無しと……また扉か」


 ガチャガチャ

姫「やっぱり開かないわね。わかっていたけど」

盗賊「扉に何か書いてないか?……文字?」

姫「えーと……『9つの世界を繋ぐ根、世界を体現する巨大な幹、生命を蘇らせる精霊の葉』」

盗賊「これは……アレのことだな」

姫「え? もう分かったの??」

姫「えー……ちょっと考える……むー??」




盗賊「>>??だな」

ユグドラシル


>>22
盗賊「ユグドラシルだな」

姫「世界樹のことね!」

 ギィィ……


姫「やった」

盗賊「伝説ではたしか……勇者は世界樹に大いなる力を授かり魔王軍と戦ったんだったかな?」

姫「ええ、でも伝承とは少しだけ違う」

盗賊「ははーん、読めたぞ。現在世界樹は存在しない。つまり授かったんじゃなくて奪い盗ったんだろ?」


姫「正解」


盗賊「非道なことかも知らんが、まぁ木一本の犠牲。魔王に勝つためには仕方ないと思うがな俺は。魔王に勝てなきゃ人間滅びてたんだろうし」

姫「ただの木では無いわ。当時、大地の神と言われていた世界樹。勇者は力を得る為に世界樹を焼き払ったの……どうなったと思う?」

盗賊「……」

姫「全ての大地から養分が消えて、植物が育つのが難しい世界に。多くの土地が砂漠化したそうよ」


盗賊「な……!」



盗賊「そんなこと……いや、で、でもよ! 魔王倒した後で何とかしたんだろ?! 現に今は植物あるしよっ」

姫「……まあ、そうね」


盗賊「……」


姫「次の間へ行きましょう」


  ---第4の部屋---




盗賊「勇者ってのはマジでとんでもねぇヤツだったんだな」

姫「理解出来ない?」

盗賊「フンッ伝説の綺麗事よりは理解できるな。結果的には平和な世界を作ったんだしよ」

姫「そうよ、今私たちが幸せに争いなく暮らせてるのは勇者達あってのこと」

盗賊「しかしよー、そのとんでもねぇ勇者が残した秘宝ってのは何なんだろうな?」


姫「さぁ? それが知りたいからお父様や執事に内緒でここまで来たのよ」

盗賊「……。ちゃんと秘宝見つけたら俺を自由にしろよな。今、城の兵士に見つかったら姫さん誘拐で打ち首にされちまう」

姫「安心して、私必ず約束だけは守るようにお父様に言われているの」アハ

盗賊「とんでもねぇ勇者の子孫だからな……信用していいのか」ハァ

姫「えーと、今度の部屋は~★」


盗賊「……」

姫「今度はお馬に乗った騎士さんの絵画ね」

盗賊「入口の勇者の石像と一緒で武器を持ってないな」

姫「この方は誰だろう……伝説の勇者のパーティには騎士はいなかったわよね?」

盗賊「だな。王都の騎士団の団長とか? 勇者に協力して魔王軍と戦ったんじゃなかったか?」

姫「違うわ。当時の騎士団長は女性だったもの、この絵画はどう見ても男性の騎士」

盗賊「眼帯している片目の騎士……の武器? そんな伝説あったかな」

姫「あれ? この騎士さんは武器もないけど、鞘もないわ」

盗賊「お、姫さんいいとこ気付くなぁ」

姫「むー?」

盗賊「つまりはこの騎士の武器は剣じゃなかったってことだ。あ、わかった!」

姫「えーーー!!???」




盗賊「彼は>>??で武器は>>??だ」

オーディンでグングニル


>>28
盗賊「彼は戦神オーディンで武器は戦槍グングニル」

姫「絵画に槍が浮かび上がってきたわ」



 ゴゴゴッ……

姫「開いたっ!」


盗賊「勇者は王都軍と魔王軍との大戦で、戦神オーディンを召喚。無数の魔物の群れを倒した………」

姫「その時の様子が描かれているのね」


盗賊「勇者はどんな奇策を使って大戦を勝利したんだ? さしずめ王都軍の兵士達を囮にでも使ったのか?」

姫「いいえ、王都軍の兵士は1人も犠牲になってないわ」

盗賊「……は?! 1人も? 王都軍と魔王軍の大戦だぞ? 犠牲が出ないわけが……」






姫「勇者が生贄にしたのは……神」

姫「召喚した戦神オーディンを王都軍兵士全員に投影。戦鬼と化した王都軍は圧倒的な兵力で1人の犠牲も出さなかった」

姫「でもその術で戦神オーディンは消滅」

盗賊「マジか……神をも勇者の手玉か」




  ---第5の部屋---




姫「部屋の真ん中に石像……」

盗賊「魔族……それも王の身なり。今度は魔王の石像って訳か」


 ガチャガチャ


姫「次の扉はやっぱり開かないわ……また仕掛けね」

盗賊「魔王の像に変なとこはねぇな……うーん」

姫「変っていうか……魔王にしては小さくて人形みたいな石像よね。貫禄がないわ」

盗賊「確かに。勇者の石像に比べて半分以下の大きさか」

姫「むー?……あ!周りの壁に何か描いてあるわ」

盗賊「お、本当だ。ちょっと松明の灯を」

姫「??壁画?」

盗賊「荒地……荒野かな? 嵐のような空に黒い靄か」

姫「天井にも空が描かれてる! 嵐の前触れって空ね」

盗賊「魔王に……荒野に、黒く渦巻く嵐の空。これはもしかして」

姫「え、なに? わかったの?」

盗賊「ふふん。なるほど、魔王の石像が小さいのは魔王が問題じゃないんだ。部屋全体が問題だったんだ」

姫「うーん?」




盗賊「>>??を表しているんだ」

魔界


>>32
盗賊「魔界を表しているんだ」


 ゴゴゴゴ……

姫「開いた~★」

盗賊「魔王との最終決戦はたしか魔界だったよな?」

姫「うん、魔王城地下のゲートから勇者と戦士、魔法使い、僧侶で魔界へ乗り込んだの」

盗賊「たった4人で……」


姫「勇者達の絆はとても強かったそうよ。それ以外は寄せ付けないほど。彼らは勝利し生き残ったわ」

盗賊「最後は真っ当な正義を貫いたってか? みんなで生き残るなんて、まさにHAPPY ENDだな」


姫「いえ」

姫「真っ当な戦いとは言えない。勇者達は魔王を倒す為に、人間界地底最深部にある聖石を持って行ったの」

盗賊「聖石?」

姫「コア、核とも言われる人間界の生命そのもの。魔界の最終決戦でその力を使い」








姫「人間界は滅びたの」


盗賊「は?」

盗賊「どういうことだ?……滅びたって」


姫「聖石が砕けると、人間界の大地は割れ、海は干上がり、光は失われ闇に包まれる。文字通り滅びたの。人間界の人や動物や大地や海など全ての生命は死滅したわ」


盗賊「ハッ……バカな。嘘つけよ、俺ら生きてるじゃん。街も海も山も海だってある。動物やモンスターだっているよ」

姫「嘘ではないわ、これは王家にしか伝えられない真実」

盗賊「そ、そうか。その後勇者が世界を再生したんだな……奇跡ってやつか?」


姫「ちょっと違うわ。再生じゃないわ、壊してしまった世界は戻らない」


盗賊「……」

姫「今現存するこの世界は、かつて」





姫「魔界と言われていた」


盗賊「------ッ!!」


姫「再生ではなく再構築」

姫「魔界で最終決戦に勝利した勇者達4人は、魔界の魔族を一掃した。そしてこの地に新たな王都を造ったの」


盗賊「---ッ」

姫「勇者パーティは勇者以外の、戦士、魔法使い、僧侶は女性だった」

姫「勇者は3人を妻とし子孫繁栄させた。つまりこの世の人間は全て勇者の子孫なのよ」




姫「貴方も」

盗賊「勇者は……魔王を倒す為、世界を滅した? なんで? そんな……」

姫「彼の目的は初めから一貫して“復讐”。それがこの世の真実よ」

盗賊「……」

姫「まだ勇者を理解できる?」

盗賊「……」

盗賊「本当の意味ではきっと理解できねぇよ。同じ境遇や環境にいねぇからな。誰にも出来ねぇさ」

姫「否定はしないのね」

盗賊「理解は難しいが納得したよ。現実は甘くねぇ、何も犠牲にせず、みんなを平等に助けるなんて無理な話。目的を見失わず、ただそれだけに集中した。だからこそ勇者は成し得たんだ」

姫「……キミもとんでもない盗賊ね」





  ---最後の部屋---




姫「これは……」

盗賊「大きな祭壇、ここが最後の部屋のようだな」

姫「ついに伝説の勇者の秘宝が」ゴクリ

盗賊「部屋全体が輝いてる……見てみろ、祭壇に宝箱だ」

姫「でも結界があって近づけないわ」

盗賊「最後も仕掛けだな、祭壇の上にある箱以外は特に何もねぇな」

姫「箱に何か書いてあるっ」


盗賊「えーと『全ての贈り物』か」

姫「贈り物……箱……」

盗賊「誰から誰への贈り物なのか……勇者から俺達?」

姫「……」

盗賊「勇者の伝説、伝承で『贈り物』に纏わる何かなかったか?」

姫「……」

盗賊「姫さん?」



姫「この箱は開けない方がいい」

盗賊「どういうことだ?」

姫「勇者は新しく造った世界、つまり今の人間界に初めて子供が生まれた時……その子に箱を贈ったの」

盗賊「勇者から子供へか」

姫「でも……その箱は決して開けてはいけない………災いが入っていると言われているわ」

盗賊「……なんだそりゃ、それがこの箱だってのか?」


姫「今だかつて開けた者はいない。けして開けてはならない……そう伝えられてきた。ここにあったのね」

盗賊「ここまで来て何言ってやがんだ」

姫「帰りましょう……もう充分だわ。キミは約束通り自由にする」



盗賊「いや、納得出来ねぇな。この箱の中身を見るまではな」

姫「結界が解けないから見れないじゃない」

盗賊「『全ての贈り物』『新世界に新人類』『けして開けてはいけない』『災い』……最初の子供は女だろ?」


姫「ええ……」

盗賊「ハッ……なるほどな、神話の通りか」

姫「わかるの……?」





盗賊「その子の名前は>>??、そして結界を解く鍵は俺にもお前にもある>>??だ」

最初はパンドラとしてあとは分からんな
安価下

好奇心だっけ


>>39
>>41
盗賊「その子の名前はパンドラ、そして結界を解く鍵は俺にもお前にもある好奇心だ」



 ギィィィインッ

姫「結界が……」

盗賊「消えた」ニヤリ

姫「ダメよ、開けてはいけない! 災いが入っていると分かっていながら開けるわけにいかないわ」

盗賊「勇者は城の地下に迷宮を作り、仕掛けを施しパンドラの箱を隠した。何故だ?」

姫「開けられないように……」

盗賊「なら地中深く埋めればいい。海深くに沈めてもいい。わざわざ開けられる手段を残したんだ」

姫「……」

盗賊「鍵は好奇心。俺のような者を待っていたんだ」





盗賊「伝説の勇者の秘宝は俺がいただく」


姫「---ッ!!」

盗賊「姫さんよ、俺がなぜ捕まったか分かるか?」

姫「え?」

盗賊「初めからこの秘宝を狙って王宮に忍び込んだんだよ」

姫「本当にパンドラの箱を開けるの? 災いが起こってもいいっていうの?」

盗賊「俺には俺の正義があるって言ったろ? わかってくれ」

姫「……わからないわ」

盗賊「俺は秘宝を手に入れ……クソみたいなスラムから抜け出すんだよっ!! どけっ!!!」






 ダダダダダッ


執事「姫様っ!!!」

盗賊「なっ!」

執事「捕らえよっ!」

兵士達「「「ハッ!!」」」


 ドガァッ

盗賊「ぐあっ……く、くそっ!!」

姫「執事……」

執事「姫様、お怪我は?」

姫「大丈夫よ」

盗賊「くそぉっ! はなしやがれっ姫さんよ、秘宝見つけたら解放する約束だろがっ」

姫「……」

執事「牢へ連れていけ」

兵士「ハッ」

盗賊「くそぉっ! てめぇら貴族は災いで滅んじまえばいいんだっ……」

姫「……」

執事「陛下が心配しております。戻りましょう」



  ---王宮 執務室---




執事「姫様……お一人で無茶はおやめください」

姫「ごめんなさい、でも相談したら反対したでしょう?」

執事「そうかも知れませんが、姫様に何かあったら私は陛下に殺されます」

姫「あはは、本当にごめんなさい」アセ


執事「姫様、何故あの様な者に?」

姫「可能性を感じたの」


執事「スラムの盗賊です。ちょっと名の知れた者かも知れませんが……ただのはぐれ者」

姫「現に秘宝の前まで行けたわ……それに」

執事「……」

姫「彼の言い分も少し分かるかも」

執事「盗賊のたわ言など」

姫「スラムで貧しく育った彼にとっては、我々貴族の常識は通用しないわ。当然よね、盗みを働かなければ生きて行けない」

姫「それを悪と言うと彼は……いえ、スラムのはぐれた者達全ては死ななければならない。それを正義と認めろなど納得出来るわけがないわ」

執事「納得させる必要はないのです。我々にとっては悪、それだけです」

姫「彼もそれは理解していた。誰しもその人にしかない正義がある」

姫「彼には彼の正義がある」

執事「では」

姫「あと必要なのは……意志」



 ダダダダダッ……バタンッ!


兵士「大変ですっ!!」

執事「何事だ?」

兵士「牢から盗賊が脱走しました! 行方がわかりません!」

姫「!!!……秘宝が!」




  ---勇者の迷宮・最後の部屋---




盗賊「鍵抜きの得意な俺は牢に閉じ込められない……マヌケな姫さんだぜ」


盗賊「物心ついた時には盗みをやっていた」

盗賊「スラムで生き残る為に自然と身に付いた技術だ。鍵抜き、スリ、暗器」

盗賊「これまで何度も死にかけた」

盗賊「毎日が地獄だった。飢えに病に暴力、死がすぐ近くにあった」

盗賊「初めて地下スラムを出て街を見た時は反吐が出た」

盗賊「どんな手を使っても這い上がる」

盗賊「それが俺の正義だ」




盗賊「パンドラの中身は何なのか?」

盗賊「災いだと? 上等だよ、世界がどうなろうと知ったことではねぇ」

盗賊「俺が貴族のやつらから全てを奪うッ」




盗賊「アニキ……見ててくれよな」

盗賊「さ、勇者さんよ、パンドラの箱を開けさせてもらう」


盗賊「……」

 ガチャ……



 ギィィ


盗賊「これが……伝説の勇者の秘宝……>>??」

300G


>>52
盗賊「これが……伝説の勇者の秘宝……300G?」




盗賊「な、何なんだよ?!」

盗賊「どういうことなんだよ!?」




  ---王宮 執務室---


執事「姫様、やはりパンドラの箱を開けられていました。逃げられたようです」

姫「……困難な状況でも揺るがない意志もある」

執事「彼は……?」












姫「合格よ」


姫「彼は“伝説の勇者の試験”を突破した」




姫「勇者の心情を理解し、戦うことのできる逸材」

執事「あの少年が次の“勇者”」

姫「伝説の勇者と同じ選択、同じ決断、同じ犠牲を払うことができる」

姫「次なる異世界からの敵と戦う希望」

姫「執事、彼の旅を始めましょう。魔物を使ってスラムを滅して」


執事「彼の故郷を……かしこまりました」

姫「辛く険しい戦いが始まる」

姫「彼にとっては“災い”の始まり」






姫「勇者よ……旅のご加護を」


[盗賊「伝説の勇者の秘宝は俺がいただく」]END
ありがとうございました!


特に最後の謎解きからの展開が秀逸
最後の謎解き自体も、読者のリアル知識に頼った問題ばかりからの
SSの内容に即した問題って流れが巧み過ぎる

盗賊と二人っきりでいる姫の危機意識がないんじゃないかと思ったけど
結末を考えれば、十分に理解できるし
北欧神話によった謎解きに違和感があったけど
読者に謎解きをさせることを考えれば、これしか手段がなかったと頷ける

いや、すごい
すごい面白い
これに続編はいらない
完全に完結している

>>62
ありがとうございます。あちらのスレにまで紹介していただいたみたいで…感謝です。
物語の汲み取って欲しい部分にしっかり分かって頂いて嬉しい限りです。しかし、このスレを最後にスランプ状態。この酉で他にも書いているので読んで評価頂きたいです。

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