【デレマスSS】モバP「PとJS」櫻井桃華「ですわ!」 (73)


仕事に真面目なプロデューサー
ピュアでまっすぐな小学生

出会うはずのなかったふたり

そんなふたりが一緒にいるための、たったひとつの方法
それは…

桃華「Pちゃま、結婚しますわよ!」

※ ※ ※ ※ ※

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http://i.imgur.com/bDPSERx.jpg


『櫻井桃華ですわ。櫻井桃華ですわ。櫻井桃華で』カチッ

P「ふぁー。ねむ……」

P「…………」

P「けど、四時間は寝たな……。マシな方か」

P「朝飯……作るか」

バンッ!

桃華「もう出来てましてよ、Pちゃま!」

P「…………」

P「……ウチは桃華の家と違って普通のアパートなんだよ。
脆いし、近所迷惑にもなるから扉はそっと開けような」

桃華「きょ、今日は上手く作れたので、嬉しくてつい……」

P「……いや、まぁ、それはそんなに気にしなくてもいいよ。お疲れ様」

桃華「はい!」


P「で、だ……」

桃華「はい?」

P「今日はどうやって入った?」

桃華「?」

P「きょとんと首を傾げるな。
出入り口の鍵は閉めた。昨日みたいにベランダから入って来られないよう、そっちも戸締まりした」

P「防犯……っていうか、防桃華対策は完璧だったはずだ! 一体どこから侵入したっ!?」

桃華「ふふっ。防災と防妻をかけていらっしゃるのね。Pちゃまったら……」

P「かけてないよ! 掛かってないよ!
ていうか質問に答えなさい!」

桃華「今日は玉子焼きがきれいに焼けましたの。お味噌汁の濃さも完璧ですわ」

P「おい、聞けっ!
あと、これ重要だから何度でもいうぞ!
妻じゃない! 俺とお前は、結婚してな」

※ ※ ※ ※ ※


ダイニング

P「……おっ。卵焼き美味しい……」

桃華「ふふっ。特訓しましたもの!」

P「執事さんから『急な腹痛で動けず今日は桃華様にお使え出来ません。P様、どうかよろしくお願いします』ってメールが届いてたんだけど」

桃華「特訓しましたもの!」

P「…………」

桃華「…………」ドヤ

P「…………」

桃華「…………」ドヤ

P「あとさ……」

桃華「はい!」


P「昨日も言ったけどさ……それ……寒くない?」

桃華「新妻の嗜みですわ!」

P「……そっすか」

P「…………」

桃華「…………」ソワソワ

P「…………」

桃華「…………」ソワソワ

P「…………」

桃華「…………」ソワ…

P「…………」

桃華「…………」

P「あー……。
……朝ご飯……美味しいよ。頑張ったな。
……ありがとう」

桃華「……!! はいっ!!」

※桃華の格好は紳士のご想像にお任せします。

※ ※ ※ ※ ※


朝食後

P「駐車場に俺の車がない」

桃華「安心して下さいまし。少し移動させただけですわ」

P「かわりにヘリがとまってるんだが」

桃華「通勤ヘリならラッシュアワーとも無縁ですわ」ドヤ

P「いや、確かに昨日リムジンでの送り迎えは目立つからやめてくれって言ったけどさ」

桃華「ちゃんと大家様には許可をいただいていますわ。妻としてのご挨拶も」

P「あ、大家の時はちゃんと『様』って言えるんだな」

桃華「そ、そんなことよりも、さぁ、乗り込みますわよ、Pちゃま」

P「動揺した」

桃華「…………」

ピポパ

桃華「もしもし……出社方法は屋上に着陸から、パラシュートで投下に変更ですわ」

P「冗談です! 揚げ足とってすんません!」

桃華「もう。ワガママばかり言ってはいけませんわ。
Pちゃま。めっ!」

P「…………」


桃華「……なぜ顔を背けますの?」

P「……超必が来そうな気がしたので」

桃華「ちょうひつ?」

P「……とにかく! 乗ればいいんだろ、乗れば。
いや、乗るから、ちゃんと乗るから!
護衛の黒服さん達はゴキゴキ指鳴らさないで!」

黒服「?」

P「あーはん? とか言ってるんですけど!
この彫りの深いガチムチさん、外国の方!?
これ言葉通じてなくねっ!?」

黒服「HAHAHA」

P「のります。 ヘリコプターのります!
だから掴まないで。担ごうとしないで!
あいきゃんらいどおんおすぷれい!」

桃華「ふふっ。いい子いい子、ですわ♪」

黒服「英語ひっどいなーじぶん」

P「おいっ!?」

※ ※ ※ ※ ※


桃華「学校に行ってきますわーっ……」

バルルルル……

P「おう。行ってこーい!」

P「……あのヘリ、運動場に着陸するのかな。
通学ヘリってなんか大昔の漫画にありそうなシチュエーションだなぁ……」

P「…………」

P「しかし本当に屋上に降ろされるとは。
パラシュートで投下じゃなくて良かったけど……」

P「…………」

P「それにしても目立ってたなー。まだ人少ない時間だろうに、窓際に人だかりができてたぞ……」

P「…………」

P「降りたくねーなー……部長あたりに怒られそう」

P「めっちゃ、出勤しにくい……」


※ ※ ※ ※ ※

お昼 教室にて。

女生徒A「桃華ちゃんのお弁当、自分で作ってるのー? すごーい!」

桃華「これも花嫁修業ですわ。それに、やってみると意外と楽しいものでしてよ」

女生徒B「桃華ちゃんは家事ができるお嬢様なんだね!」

桃華「何事もやってみなくては分かりませんもの。
段々自分が何をできるのか分かってきましたわ」

ピリリリッ

桃華「あら? 電話ですわ。Pちゃまから? 珍しい……」

女生徒C「もしかして噂の旦那様ー?」

桃華「ふふ……。もしもし? わたくしですわ。あなたの桃…」

P「おいっ、桃華っ! どういう事だっ!?」

桃華「? なにがですの?」


P「仕事!」

桃華「仕事?」

P「仕事がないんだけどっ!?」

桃華「……? どういう意味ですの?」

P「出勤したのに仕事が無いんだよ!
昨日置いて帰った雑務はなぜか部長がやってるし、アポ取ってた営業先には常務と専務が行ってるし!」

桃華「まぁ」

P「なんか偉い人がみんなで俺に媚びへつらって仕事を奪っていくんだけどっ!?
絶対何かしただろっ!」

桃華「いえ、してませんけど……」

P「何もしてないのに、いつも嫌味と無理難題しか持ってこない部長が俺の席にお茶を汲んでくるわけないだろっ!」

桃華「いえ、本当に何もしていないのですが……あっ!?」

P「あっ?」

桃華「もしかしたら昨日の……?」

P「昨日? 何があった?」

桃華「いえ、昨日祖父に……櫻井の総帥であるお爺様に質問をされたのですわ」


P「えっ!? そ、総帥……さん……に!?」

桃華「ええ、ひ孫はまだか?と」

P「はい!?」

桃華「なので、Pちゃまがなかなか手を出して下さらないことを告げると、怒って……なぜだっ!と……」

P「年齢! 立場! 法律!」

桃華「そこでわたくしは、お仕事が忙しくて帰宅はいつも深夜……疲れ切ってしまっているせいかもしれませんわ……と」

P「そういう問題じゃない!
というか、この周りの状況、間違いなくそのお爺様が圧力かけただろ!」

桃華「……そうかもしれませんわね」

P「絶対そうだよ!
お陰で俺は部長によく分からない客人の相手を頼まれて、応接間で仕事もせずに黙々と将棋打ってるんだぞ!?」

客人「総帥の櫻井じゃ」パチ

P「そう、総帥の櫻井さんとかいう爺さんの相手……を!?」

桃華「…………」

櫻井総帥「…………」

P「……えっ? マジ…本当に……ですか?」


櫻井総帥「うむ」

P「…………」

総帥「…………」

P「……あ。大手」

総帥「…………!!」

桃華「Pちゃま……」

P「…………」

P「……桃華どうしよう?
総帥さん相手に接待プレイせず、既に12連勝しちゃってるんだけど……」

総帥「…………」

P「総帥よく見たら顔真っ赤」

桃華「Pちゃま……!」

総帥「…………」

P「総帥、微妙に涙目で13戦目の準備してるんだけど」

桃華「Pちゃま……!!」

総帥「……なかなかやるのう」

P「指先がプルプルしてるし」

桃華「指摘してはいけませんわ!」


P「……次はどうしよう?」ポソ

桃華「……上手くバレないように負けて差し上げて?」

総帥「聞こえとるぞっ! 情けは無用じゃ!!」

P「……じゃあ、次は本気で」

総帥「次はっ!?」

桃華「蹂躙まったなしですわね」

総帥「桃華っ!?」

P「ここまで来たら総帥さんがやめるって言うまでとことんいこう!」

桃華「ヤケクソですわ!」

総帥「ちょ待」

P「待った無し」

総帥「婿殿!? ご無体な!」

P「問答無用っ! ……って? 婿じゃないですよっ!」

桃華「ダンナさまですわっ!」

P「呼び方の問題でもないっ!
……こほん。
……ともあれ、桃華の話でこの状態になった経緯はわかりましたが、明日以降は普通に仕事させて下さいね?」


総帥「む? むぅ……。しかし……」

P「明日は桃華のグラビア撮影があるんです。
俺が同行しないわけにはいかないでしょう」

総帥「!! ほう! ほうほうほう! それはそれは!
なんだかんだ言って婿殿も……」

P「違いますよ!? 保護者的な意味合いです。
小学生に無茶はさせられませんからね。現場が行き過ぎないよう、目を光らせないと。
あと、それ二歩(にふ)です」

総帥「ぬう!?」

桃華「……楽しそうですわね」

P「まぁ、今日のところは降って湧いた休暇だと思って羽を伸ばすよ。
最近疲れて余裕がなかったのは事実だし」

総帥・桃華「なら今夜はついに!」

P「しないしない。俺は犯罪者になるつもりはないから」

総帥・桃華「むぅ……」

P「ハモらないでもらえませんかね?」

総帥・桃華「…………」

※ ※ ※ ※ ※


チュンチュン……

『わたくしだけを見てください、わたくしだけを見てください、わたくしだけを見てく』カチッ
P「んむぅ……。よく寝た……。8時間くらい寝たか?」

P「…………」

P「…………」

P「……ベタ過ぎて憚られるんだか一応言っておくか」

P「……知らない天井だ」

バンッ!

桃華「おはようございますですわっ! Pちゃま!」

P「……うん。おはよう。
元気におはようはイイけど、まず聞くぞ?
……何だこれ?」

桃華「?」

P「きょとんと首を傾げるな。ここだここ!
なんで自室で寝たはずの俺が起きたら全然知らない天蓋付きのベッドに寝てるんだよっ!?
どこだよ、ここっ!?」

桃華「わたくしのおうちですわ!」

P「だろうな!」


桃華「ベッドはPちゃまの為にご用意した特注品ですわ!」

P「すっげー寝心地良かった! ありがとう!」

桃華「どういたしまして。けどお礼には及びませんわ、全てPちゃまとわたくしの愛の」

P「じゃなくて!
なぜ運んだ!? 寝てる俺を勝手にお持ち帰りするんじゃありませんっ!」

桃華「?」

P「だからきょとんと首を傾げるな(3回目)!
俺には俺のウチがあるんだから、桃華ずハウスにしまっちゃったらダメだろっ!?」

桃華「けど、Pちゃまが昨日、俺のウチはボロくて脆い普通のアパートだから嫌だなぁ…って」

P「微妙に改変されてない?」

桃華「だから桃華のお屋敷で一緒に住めたら幸せだなぁ…って」

P「それは言ってないよ!? 確実に言ってない!」

桃華「行間を読みましたわ」

P「捏造って言うんだぞそれは」

桃華「『この時の作者の気持ちを答えなさい』」

P「確かにそれ系の設問は捏造くさい!」


桃華「さぁ、そろそろ朝ごはんですわ!」

P「待て、切り替えるな」

桃華「お着替えを手伝いますわね? はい。ぬぎぬぎ」

P「できる! 自分でできるからっ!
この時間帯に膝の上に乗らないでっ!?
服を脱がさないで!?
耳にっ。耳に甘い吐息がっ!?」

桃華「はい。イイ子イイ子ですわ。
ふふっ……。次は左腕を……」

P「誰かたっけてーっ! 執事さん! メイドさん!
誰でもいいからーっ!」

…………

……



※ ※ ※ ※ ※


朝食の席にて

P「……汚された」

桃華「Pちゃま、口ではあんなこと言っておきながら身体ではわたくしのことを……」

P「生理現象だからっ! 朝の不可抗力だからっ!」

執事「おはようございますP様。朝食をお持ちしました」

P「……ありがとうごさいます」

桃華「今日も朝ごはんの一部はわたくしがご用意しましたわ。
どれがそうなのか、お分かりになりまして?」フンス

P「……このチーズの入った卵焼きだな」

桃華「……!!」

執事「流石ですP様。
チーズ入りスクランブルドエッグ、今朝桃華お嬢様がお作りになられた渾身の一品です」

P「まぁ、桃華は卵料理以外ほとんど作れな…」

桃華「愛の力ですわっ!」

執事「まごう事なき愛の力ですね」

P「いやだから」

桃華「式場の手配を!」

執事「かしこまりました」


P「ストォォーップ!! 落ち着け!
ていうか、執事さんも悪ノリしないで下さい。
あなた方どこまで本気か分からないから、ちょっと怖いんですよ!」

執事「すべて本気です」

P「がっつり怖くなりました」

執事「ちなみに総帥や社長も本気です」

P「桃華の父親までっ!?」

桃華「Pちゃまと二人きりの時のお料理の正装はお母様直伝ですわ」

P「まともな人間が一人もいない!?
そもそも、どうしてそこまで俺と引っ付けようとするんですかっ!?」

桃華「それは、運命を感じたからですわ!」

執事「はい」

P「はい?」

桃華「Pちゃまと出会い、この身を救われた、あの夜に!」

執事「その通りです」

P「どの通りよ? 記憶にないぞ」

桃華「以下ざっくり回想ですわ!」

執事「今北1レス」

桃華「さっきからいましたわ」

P「俗っぽい執事さんだな」

※ ※ ※ ※ ※


某日夜。お屋敷のパーティーにて。

父「本当にいいのか桃華?」

桃華「……ええ、この婚姻が櫻井の繁栄に繋がるのなら、わたくし、拒むつもりはありません。
櫻井の娘として、どんな相手とでも……」

父「そうか……」

ずしんっ!

某財閥の脂ぎった息子(35)「ふひっ。は、はじめまして。私がキミの許嫁で、近い将来、お、夫となる…」じゅるり

桃華「ひっ!?」

P「どけやコラァッ!!」バキィ

脂息子「ぷぎぃ!?」

P「お嬢さん。アイドルに興味はありませんかっ!?」スライディングで滑り込みつつ。

桃華「……っ!?」

父「む?」

P「お父さんですか? お嬢さんを私に下さい!
私に預けて下さりさえすれば、必ずやトップアイドルに……って、ええっ!?」ギョ


桃華「…………っっっ」

父「…………!?」

桃華「っ……ひ、ひぐ……っ」

父「……桃華? お前……泣いているのか?」

桃華「な、泣いて……など……いませ…っ。
安心してなど……。
結婚なんて怖くな……っっ!」

P「……えっ? えっ?」

父「……そうか。そう……だな。
悪かった。
私が……悪かった。私達が間違っていた……」

P「……えーっと?」

父「そこの彼には……教えられたな……」

P「……はい?」

※ ※ ※ ※ ※


桃華「こうしてPちゃまはわたくしの望まぬ政略結婚を破談に追い込み、王子様のように救い出して下さったのですわ!」

執事「無念の2レス」

P「そんなことになってたのか!?
えっ? あのスター◯ォー◯あたりに出てきそうなブクブクのオッサン、桃華の婚約者でお偉いさんだったのっ!?
てっきり変質者か、よくてライバル会社のスカウトかと…」

執事「かくして桃華様のお父上も、壇上でのスピーチを遮られた形になった総帥様も、心を入れかえ、桃華様のお気持ちを尊重するようになられたのです……」

P「俺、無礼過ぎだろっ!?」

桃華「無数の銃口を向けられながらも動じず、わたくしを慰め、口説こうとするPちゃまに……わたくしも、その場にいた一族の者達も、心を許し、心酔したのですわ」

P「無数の銃口っ!? 相手の護衛、めっちゃ切れてますやん!」

執事「相手は海外の武器シンジケートとの深い繋がりも噂される、新興大型財閥の御曹司。
まさかそれを迷わず足蹴にするとは……いやはや感服しました」

P「知らねーよっ!?
……あれ? 俺、もしかして死んじゃう感じ?」


桃華「いえ、確かにあの後、その財閥が率いる私設武装組織との戦いには苦労しましたが、お爺様の往年の統率力と、わたくしが偶然関西の路上でスカウトした伝説の傭兵の活躍で無事殲滅できましたわ」

P「知らないところで凄いことに!?
あと、爺さん将棋は弱かったぞっ!」

桃華「今もPちゃまの身を狙っているのは西園寺グループくらいですわ。ご安心下さいまし」

P「まだ狙われてるのっ!?」

執事「ちなみにその殲滅戦、私も参戦していまして」

P「謎の拳法とかフォークとか特殊金属のワイヤーを使いそう」

執事「なぜそれをっ!?」

P「図星かよっ!」

執事「あとはレイピア状の剣をかぎ爪風に持ったり、投擲したり」

P「物騒ですねっ!?」

桃華「わたくしは弓矢を扱えますわ!」

P「知ってるけど、危ないことはするんじゃありません!」

執事「ちゃんと俺が護るから(低音)」

桃華「まぁ……」////

P「続きを捏造するなっ! しかも似てないっ!
あと、今更だけど、主従仲良いなおい!」


執事「さて、P様も出会いを振り返り、桃華様への愛を再認識した模様」

P「振り返りっていうか結構初耳だったっつーか……。
いや、そもそも俺は愛とか結婚なんて…」

桃華「そんなことよりも! わたくしの自信作が冷めてしまいますわ。
食べてくださいまし! さぁ!」

P「食うよ。それはちゃんと食べるよ」

執事「これから毎日な(低音)」

桃華「Pちゃま……」////

P「……おっ。美味いな。シンプルだけど、ちゃんと味付けも……」

桃華・執事「無視されたっ!?」

P「桃華も早く食べろよ。今日は午前中から撮影があるからな。一緒に行くぞ」

執事「一緒にイクぞ!」

桃華「同伴出勤ですわ!」

P「せやな」

桃華・執事「流されたっ!?」

P「……ほんと仲良いな」

※ ※ ※ ※ ※


某所スタジオにて、グラビア撮影中。

カメラマン「はーい。桃華ちゃん、いいよー。こっち向いてー。
イイね、イイねー。よし。こっち向いてねー?」

P「…………」

カメラマン「うん。見せ過ぎかな。隠して隠して。あとこっち向いてー?」

P「…………」

カメラマン「ちょ、脱がない。脱がなくていい。
待って! おい、待て! 待てって!
誰かー! 止めて! この娘止めてー!
あと見学のプロデューサーさん、ちょっと外に出ておいてくれませんか?」

P「…………」

P「……さーせん」

※ ※ ※ ※ ※


廊下にて。

P「追い出された……」

P「…………」

P「……そりゃまぁ、撮影中、桃華が事あるごとに俺の方を向くし、その度に危ないポーズをとるんだもんな……」

P「…………」

P「……普段は慎み深くて、真面目な良い子なんですよ?」

P「…………」

P「……誰に言い訳してるんだろうね? 俺は」

??「おい」

P「えっ?」

??「辛気くさい顔をしているな。プロデューサーよ」

P「……!?」

P「あなたは……!!」

??「話がある」

※ ※ ※ ※ ※


桃華(Pちゃま……結局撮影終了まで戻っていらっしゃいませんでしたわ……)

桃華(せっかくわたくしが……)

桃華「…………」

桃華(……それにしても……どこへ?)

桃華「スタジオの廊下にも居ませんわ……あら?」

??「ふむ。なかなか有意義な時間だったぞ」

P「……そーっすか」

??「あの話のことも……良い返事を期待している」

P「……私は」

??「すぐに答えを出せとは言わないさ。だが、悪い話ではないだろう?」

P「…………」

??「ふん。では、またな……アデュー」

P「…………」

P「…………」


P「…………」

桃華「……Pちゃま?」

P「!? も、桃華っ! 聞いてたのかっ?」

桃華「…………」

桃華「……いえ、今撮影が終わって出てきたところですわ。
Pちゃまが男性と何かを話されていたのだけは見ましたが……あの方は……?」

P「……そうか。いや、ちょっとした世間話だよ。
あの人は……まぁ、通りすがりのただのおっさんだな」

桃華「……そうですか」

P「よし。じゃあ、スタッフさん達に挨拶してこよう。
桃華も一緒にくるか?」

桃華「ええ。もちろんですわ」

P「じゃあ、行くか」スタスタ

桃華「…………」

桃華「……あれは……あの人は……961プロダクションの社長さんですわ」ポソ

P「……ん? どうした桃華ー? 来ないのか?」

桃華「……今まいりますわ」

桃華「…………」

桃華(Pちゃま……)

桃華(何も……ありませんわよね?)

※ ※ ※ ※ ※


夜。P宅にて。

桃華「今晩のメニューはスッポン鍋とニンニクたっぷり水餃子。
あと、カキフライとウナギですわ!」

P「豪華! けどなんか作意的っていうか、意味深さを感じる!」

桃華「お母様が夫婦の困難は二人で乗り越えて行きなさいって言ってましたわ」

P「いい言葉だけど、俺、なんか変な心配されてない?」

桃華「今晩は頑張りましょう」

P「何を?」

桃華「わたくしを食べて下さいまし!」

P「食べないよっ!」

桃華「なぜですか? わたくし達が小学生とプロデューサーだからいけないのですか?」

P「そうだよ」

桃華「愛があれば関係ありませんわ!」

P「法律と世間の目があるんだよ!」

桃華「愛と権力があれば関係ありませんわ!」

P「生々しい!」

桃華「パーティーの時の御曹司への傷害案件もわたくしが、くしゃぽいしましたし」

P「それはありがとう」


桃華「だから多少の倫理的問題くらいなら、櫻井の力で」

P「多少かなぁ?」

桃華「むぅ……。Pちゃまはわたくしのこと、お嫌いですか?」

P「嫌いじゃない。大切なアイドルだし、そういう意味では大好きだよ」

桃華「はい。わたくしも……誓います」

P「今のは新郎の宣誓じゃないよ!? ポジティブな曲解やめよう?」

桃華「なら誓って下さいまし!」

P「逆ギレ!? こっちの話はちゃんと聞こう?」

桃華「わたくし……Pちゃまの考えてることが分かりませんわ」

P「えーっ……。
アイドルとして大切に思ってるし、大好きだ。
……これじゃ、ダメか?」

桃華「ぐぬぬ……」

P「一人の社会人として、大人として、プロデューサーとして、これ以上は言えないよ。言わない」

そう。

本当の気持ちは。

P「絶対に言えない」

桃華「…………」

ピポパ

桃華「もしもし、志希博士ですか?」

P「媚薬はやめて」

※ ※ ※ ※ ※


数日後 深夜 櫻井邸にて。

コンコン

桃華「入りなさい」

ガチャ

執事「失礼します」

桃華「…………」

執事「お待たせしました、桃華お嬢様。
……例の件のご報告に参りました」

桃華(あれから数日、Pちゃまの行動に変化が見られるようになりました)

桃華「……そう。ご苦労様……ですわ」

桃華(朝は変わらずこちらから押しかけているため、大差はないのですが……主に日中……わたくしとの距離の取り方が露骨になったのです)

執事「お嬢様の命とあればこのくらい……」

桃華(具体的にはお昼休みの時間帯、そして19時以降、しばしばわたくしに何も告げずに姿を消すようになりました)


執事「結論から言いましょう」

桃華「…………」

桃華(そこにわたくしは一つの疑念を抱き、腹心であるこの執事に調査を命じたのです)

執事「…………」

執事「黒です」

桃華「…………!!」

桃華(その執事から告げられた調査結果は、わたくしの疑念を裏付けるものであり)

執事「……プロデューサー様は」

桃華(わたくしを酷く傷付ける)

執事「他社の人間と」

桃華「…………」

執事「961の社長と……繋がっています」

桃華(裏切り行為でした)

※ ※ ※ ※ ※


翌日 早朝 P宅にて。

『わたくし、子どもじゃありませんのよ。わたくし、子どもじゃありませんのよ。わたく』カチッ

P「んん……。む?」

P「…………」

P「…………」

P「今日は来ないな?」

P「…………」

P「…………」

P「……そういう日もあるか?」

のそり。

P「……飯食って仕事行くか」

P「…………」

P「……なんか変な感じだ」

※ ※ ※ ※ ※


某所 ビル前 路上にて。

桃華「…………」

桃華「…………」

桃華「…………」

桃華「…………」

桃華「…………」

桃華「……泥棒ネコは許しませんわ」

※ ※ ※ ※ ※


お昼休み 社内 Pのデスク前にて。

P「王手」

総帥「うぐぅ!?」

P「……負けましょうか?」

総帥「いらん!」

P「……3桁勝利目前なんですけどね」

総帥「……桃華以外にワシをここまで苦しめるヤツがおるとはな」

P「どんだけ井の中の…」

総帥「黙らっしゃいっ!」

P「あ、そういえば桃華なんですけどね」

総帥「うむ?」

P「今朝はうちに来なかったんですよ。
なんか家の用事とかあったんですかね?」

総帥「んん?」

P「いやまぁ、本来、来る方がおかしいのは俺も分かってるんですが……ここ最近ほぼ毎日来てたのに、珍しいなーと」

総帥「それは……妙な話じゃな……。ワシもこれといって心当たりは……」

ガチャ


執事「真剣勝負中失礼します」

総帥「む? お主は桃華の……」

執事「P様にご報告があって参りました」

P「え? 俺?」

執事「はい。お嬢様には口止めされていたのですが……そろそろ四時間以上が経過しそうとしています」

P「?」

執事「本来なら私の一存で申し上げるようなことではないのかもしれません……ですが……ただただ心配で……」

P「……えーっと?
よく分かりませんが、桃華に口止めされてるって言うんなら、その命令は俺が無理やり破らせたことにしていいですから……何かあったんですか?」

執事「…………」

P「もしかして……桃華の身に危険が?」

総帥「なぬっ!?」

執事「…………」

執事「……桃華お嬢様が……今朝、単身、961本社へと乗り込まれました……」

P「へ!?」

総帥「ひょ!?」


執事「わたくし一人で話をつけてきますわ、と、護衛もつけずに、あの小さなお身体ひとつで……ううっ」

P「は……話って……」

執事「…………」

執事「それは勿論、P様のこと……ここ最近のP様の行動についてです。
お心当たりが……あるのでは……?」

P「……あー、なるほど」

総帥「……あれか」

執事「…………」

執事「……えっ?」

P・総帥「……えっ?」

執事「…………」

P「…………」

総帥「…………」

三人「……えっ?」

※ ※ ※ ※ ※


1時間後 961本社 受付にて。

P「……そんなワケで、朝からウチのお姫様がお邪魔してるんですよ。
確かにアポはありませんが、どうにかなりませんかね?」

受付嬢「はぁ……。しかし今日は手が離せない案件が出来たから、絶対に誰も通すなと……」

P「……俺でも駄目っすか?」

受付嬢「……お、恐らくは」

P「うぐ……。今、社長室に内線繋がる?」

受付嬢「朝から繋がらなくなっていまして……」

P「……あのおっさん、電話にも出やがらねぇ。
ラチがあかねぇな。どうしたもんか……」チラ

受付嬢「……?」

P「……強行突破はマズイよなぁ」

P(さっきから警備員の視線も痛いし……)

警備員ABCDE「…………」

P(なんで出入り口付近に5人もうろついてんだよ……ああ、俺がいるせいか……)

P「……アポなしで来たのは無謀だったか……?」

警備員ABCDE「…………」ゾロゾロ

P(う。囲まれた……)


警備員A「失礼、あなた……」

P「い、いや、スンマセン。私、別にあやしいものじゃ……」

P(名刺出して謝っておけば、さすがに大ごとにはならないだろう……)

P(とりあえずは一旦引き下がって……)

ガシャーン!

きゃー! ぎゃあーっ!?

P「へっ!?」

受付嬢「!?」

警備員ABCDE「…………!?」

P(急に響き渡ったガラスの破砕音と無数の悲鳴に思わず振り返ると、そこには……)

P「……戦車!?」

P(961本社出入り口の自動ドアをブチ抜き、軍用戦車としか思えない巨体が突っ込んで来ていた)

受付嬢「え……あ……?」

警備員ABCDE「…………!?」

P(俺を含めた全員が呆然と見守る中、戦車は出入り口を突き抜け、そのキャタピラでゆっくりと進み、やがてフロント受け付け前に制止する)

P(そして……)

ガチャ


西園寺琴歌「助けに来ましたわ。P様っ!」

P「なんでっ!?」

P(ハッチから顔をのぞかせたもう一人のお嬢様に俺はすかさず声を上げる)

琴歌「P様と桃華ちゃんがピンチと聞いて馳せ参じましたわ!」

P「誰から聞いたっ!?
あと、さっきの『なんでっ!?』は主に西園寺さんが乗ってるモノについてなんだけどっ!?」

琴歌「西園寺さんなんて他人行儀ですわ。
未来の伴侶なのです。琴歌とお呼びください!」

P「その予定はないよ!? 箱入りお嬢様はこんなんばっかかっ!
それと! 戦車!」

琴歌「戦車は響子ちゃんのお友達のお母様から借りてきました!」ドヤ

五十嵐響子「ちょ、わたしの名前は出さないて下さいって言ったじゃないですか!」

P「……五十嵐さん? もしかしてそれ、中で操縦してるの?」

P(鉄の塊から聞こえてきた聞き覚えのある声に問い掛ける)

響子「…………」

響子「……チガイマスヨー。あと五十嵐さんじゃなくて響子って呼んでくださいー」

P「五十嵐さんじゃん! なんで君みたいなマトモな子がこんな……」

http://i.imgur.com/Cw5hmPI.jpg
http://i.imgur.com/V2p13ii.jpg


響子「…………」

響子「……Pさんに恩を売って私達のプロデューサーになって貰うチャンスだって聞いたから……」

P「そんな理由でっ!? あと君達のプロダクションに移籍する予定もないからね!
なんで君ら俺の事狙ってるのっ!?」

琴歌「細かい事は後ですわ。P様は今の内に桃華ちゃんの所へ!」

P「この惨状を放置していけと!?」

琴歌「警備員さん達は任せて下さい。
響子ちゃん。主砲、三時の方向へ!」

響子「さ、三時の方向ってどっちですかー?」

琴歌「あの受け付けの壁にありますわ!」

響子「あ。三時の時刻を示してる時計を撃ち抜けっていう意味なんですね」

P「おい待て。そこら辺、多分このビルの支柱で……って実弾じゃないよな?
本物の砲弾が撃ち出されたりしないよな?」

琴歌「さぁ、P様! ビル崩壊までに無事戻ってきて下さいね!」

P「崩壊っ!?」

琴歌「響子ちゃん! すべてはP様のために、ですわ! 撃てーっ!」

響子「えーっと。えいっ!」

受付嬢・警備員ABCDE「ちょ」

P「ま」




※ ※ ※ ※ ※


ズズン。


※ ※ ※ ※ ※



黒井社長 社長室にて。

黒井「くっくっくっ。威勢がいいのは最初だけだったようだな。
……うん? 悔しいか?」

桃華「……こ、こんなことで……。
こんな屈辱くらいで……わたくしのPちゃまへの想いは揺るぎませんわ……うっ? ああっ」

黒井「ククク。イイ声で鳴くな……。
まだまだ子どもとは言え、悪くない……」

桃華「……この、へ、変態っ!!」

黒井「負け犬の遠吠えは心地イイなぁ!
さて、手も足も出なかろう?
これからどう嬲り落としていくか……」

桃華「……あ」

黒井「いいなぁ、その表情。
だが、まだだ。
まだまだ何時間も掛けて、これからじっくり……」

桃華「……い、いや。もう……いや。
……けて……助けて……下さいまし……!」

ズズン


黒井「……む?」

桃華「……助けて下さいまし、助けて下さいまし」

黒井「……地震……か?」

桃華「助けて下さいまし! Pちゃまぁっ!!」

P「うらあっっっっっっっっ!!!」ドガッ!

黒井・桃華「!?」

P「はー。はー。はー……」

黒井「き、貴様、どうやってここまで!?」

P「うるせぇ、説明する気にもならねぇ!」

桃華「Pちゃまですわ! 少し焦げた!」

P「死ぬかと思った!」

桃華「煤けていても素敵ですわ!」

P「ありがとう!」

黒井「なぜか服もボロボロだな。
よくその不審者然とした格好でここまで入ってこれたな」


P「うるせぇっ! お前が言うなっ、幼女誘拐監禁魔!」

黒井「ぬっ!? ふ、不名誉なっ!?」

桃華「まぁ、そんな方だったなんて……」

黒井「濡れ衣だっ!!」

P「……ていうか……あれ?」

桃華「?」

黒井「どうした?」

P「今更だけど……二人で何してんの?」

桃華「……何って」

黒井「……見ての通り」

桃華・黒井「チェス勝負」

桃華「ですわよ?」

P「…………」

P「…………」

P「……はい?」


※ ※ ※ ※ ※

P「……つまり?」

桃華「この方がPちゃまを誘惑して自分のモノにしようとしているのは明白でしたので……」

黒井「直接乗り込んで来てな、勝負を挑まれたわけだ」

P「…………」

P「それがチェス?」

桃華「はい。わたくしが勝てば大人しくPちゃまからは手を引いて下さると仰ったので、朝から何度も挑んでいたのですわ」

黒井「筋はいいが、まだまだだな!」

P「…………」

P「……あー」

桃華「Pちゃま?」

P「それで負けが込んでベソをかいてたわけだ」

桃華「べ、ベソなんてかいていませんわ! もう少しで勝てそうでしたし!」

P「…………」

P「……まー、それはどうでもいいや」

桃華「どうでも!?」


P「それよりも執事さんの話や桃華の態度からして、色々誤解されてるっぽいから、俺からも言い訳……っていうか、説明しておくとだな……」

桃華「……はい?」

P「俺、別に961に内通してたり、引き抜かれそうになってたりしたワケではないぞ?」

桃華「…………」

桃華「……えっ!?」

黒井「…………」

P「要約すると俺も桃華とほぼ同じだな。
そこのおっさん…もとい黒井社長の遊び相手……暇潰しの相手をさせられてたんだ」

桃華「……えっ? ひ、暇潰し……?」

P「総帥…桃華のお祖父さんがこの黒井社長と知り合いらしくてな、迷惑な事に、遊び相手として俺を紹介しやがったらしいんだ」

桃華「お、お爺様が……」

P「最初はあの桃華のグラビア撮影の日だな。
それ以降も事あるごとに呼び出されて、趣味のお相手をさせられてたんだ。
桃華のお祖父さんと一緒で下手の横好きだったけどな」

黒井「それは聞き捨てならんぞ! これでも…」

P「はいはい。そういうことは俺に一回でも勝ってから言って下さい。
勝てないからって俺を門前払いして、小学生を苛めるのは流石にどうかと思いますよ?」

黒井「ぐ。ぐぬぬ……」


桃華「…………」

桃華「…………」

P「……桃華?」

桃華「……勘違い……ですの?」

P「……うん?」

桃華「……わたくし、Pちゃまが自分を避けてると……他の人の所に行ってしまうと思って……。
それで……それで……!
それが……それは……みんな勘違い……?」

P「ああ、そうだよ。勘違いだ。
誤解させるような行動をとって悪かったな。
大体、俺と……あの総帥爺さんのせいだ。
ごめん」

桃華「…………」

桃華「…………」

桃華「……いなく……なりませんのね?」

P「おう」


桃華「……これからもずっと一緒に……」

P「ああ」

桃華「……夫婦として」

P「それは違う」

桃華「……むぅ」

P「プロデューサーとアイドルとして、だ」

桃華「……ぶぅ」

P「拗ねてもだめだ」

桃華「……愛し合っているのは明々白々ですのに?」

P「……親愛の情だな」

桃華「金髪と黒髪だとどちらがお好みですの?」

P「金髪だな」

桃華「ウェーブがかった髪とストレートな髪だと?」

P「少しフワッとしてる方が好き」

桃華「瞳の色は?」

P「翠とか青とか赤とか。宝石みたいで綺麗だよな」

桃華「歳上と歳下ですと?」

P「歳下」


桃華「両想いですわ!」

P「偶然だ!」

桃華「……親愛の情だけで、日替わりの目覚ましボイスを用意するでしょうか?」

P「……する。 俺はする!」

桃華「…………」

P「…………」

黒井「…………」

桃華「……仕方ありませんわね。今日のところはそれでよしとしましょう」

P「ああ。何も問題なしだ!」

黒井「…………」

黒井「……なぁ」

P「はい。どうかしましたか?」

桃華「冴えないお顔ですわ」

黒井「お前達の関係にあてられたのもあるんだが……いや、それよりも……」

P・桃華「?」


黒井「何か……爆発音みたいのが聞こえてこないか?」

P「…………」

P「……あっ!」

黒井・桃華「……あっ?」

P「…………」

P「……桃華。そろそろお暇しよう……急いで……ビルが崩壊する前に」

桃華「崩壊しますの?」

黒井「おいこらまて。何を不吉な……お前、一体何を隠して……」

P「表は戦車で塞がってるから、裏手から出るか。確か非常階段の場所は……」

桃華「戦車?」

黒井「ちょっと待て。ほんとに待て。お前は何の話を……」

ズズン……!!

グラグラ…!!

P「…………」

桃華「…………」

黒井「…………」

P「お邪魔しましたっ!」

桃華「ですわっ!」

黒井「おい、逃げるなっ!!」


黒井「何が起こってるのかくらい教えろっ! このプロデューサーァ!!」

P「計画倒産っ(物理)!!」

黒井「意味がわからんっ!!」

桃華「因果応報ですわっ!!」

黒井「8年も前のアニメの話を持ち出すなっ!!」

桃華「……まったく、西園寺、黒川、水本……どこが攻めて来たのかしら……」

P「なんか増えてないかっ!?」

桃華「……あるいは……水瀬?」

P「俺、全身ダイヤで出来てたりするの?」

桃華「大丈夫ですわ。あそこでPちゃまに興味を持っているのは、兄達だと妹様が仰っていましたわ。
……性的な意味で」ポソ

P「今小声で何言った!?」

桃華「何も言っていませんわ。
さぁ、逃げますわよ。Pちゃま!」

黒井「待てお前らァ!!」

ズズン……!

パラパラ……。

※ ※ ※ ※ ※


翌日 櫻井邸 客室にて。

執事「それでどうなったのですか?」

P「どうもこうもないな。
幸い怪我人は出なかったみたいだが、961本社の1階部分はほぼ壊滅。
元の状態に戻すのに数ヶ月はかかるそうだ」

執事「……それはそれは」

P「それでいてニュースでは殆ど報道されてないからな。
金持ちって怖いわぁ……」

執事「確かに上流階級には恐ろしい方々もいらっしゃいますが……桃華様はお優しく、無害な方ですよ?」

P「うーん。それを否定するつもりはないけどさ……」

執事「それともP様は、お嬢様のような高貴な方よりも、もう少し身近な……例えば執事などお好みですか?」

P「し、執事さん? 近いですよ? 顔が近い。
あと、今日は少しいつもと話し方が違いますね?」

執事「……ふふ。今はお嬢様もいませんから……。
お仕事モードはお休みです……♪
二人きりの時は……名前で呼んで下さい……」

P「い、いや、お気持ちは嬉しいですが、いつ桃華がパーティーから戻ってくるかもわかりせんし……う、裏切るようなマネは……。
あ、あの。胸が……胸が当たってます……!」


執事「……今日の社交界はまだ1時間以上続くはずです……。
主の居ぬ間に、使用人であるわたしと……。
ふふっ。大丈夫です。決して口外は……」

ばんっ!!

桃華「ただいま戻りましたわっ!!」

P・執事「!?」

桃華「不穏な香りがしたので早めに切り上げて帰ってきましたの!」

P「…………」

執事「…………」

桃華「大正解だったようですわね?」

P「……チガウヨ。やましいことはナニモナイヨ」

執事「……お帰りなさいませ、お嬢様。紅茶をお淹れしますね?」

桃華「シャラップですわ! 二人とも、そこに正座なさい!」

P「…………」

執事「…………」

桃華「お話、じっくり聞かせていただきますわよ、Pちゃま?」

P「……いや、俺は別に何も」

桃華「抱き着かれて鼻の下を伸ばしていらっしゃいましたわ」


P「うぐ!?」

桃華「……先日聞いたPちゃまのお好みの女性像、彼女にも当てはまりますわよね?」

P「……ぐ、偶然だよ」

執事「…………」ガッツポーズ

桃華「うふふ……ふふふ。色々と……色々と教育が必要ですわ……ふふふ」

P「ああ……桃華の瞳からハイライトが……」

執事「……P様、たとえ運命が二人を分とうとも、あの日交わした契りは永遠ですわ……」

P「交わしてない交わしてない。何にも交わしてない。
お嬢様も使用人も、上流階級はこんなんばっかかっ!」

執事「……ふふふ」

桃華「……ふふふ」

P「桃華もクラリスさんも落ち着いて下さいっ!!」

※ ※ ※ ※ ※

http://i.imgur.com/QykWXAw.jpg


P勤務先プロダクション 社内 応接間にて。

黒井「で、どうなったんだ?」

総帥「彼と桃華の関係は良好じゃよ。
場合によっては彼を無人島にさらって、そこの別荘で桃華と二人きりにしようかと考えておったのじゃが、それは取り敢えず見送りじゃな……」

部長「に、2枚交換です……」

黒井「あの手の男は世間体から解放されると何をやらかすかわからんぞ。
きっとあの桃華とかいう娘に母性なぞ見出して幼児退行したりするに決まっている。
……ふん。3枚交換だ」

専務「…………」

総帥「それを見込んでの計画なんじゃがな……。
なんなら無人島に大人用オムツを空輸してもよい……。
む。2枚交換で……」

黒井「…………」

総帥「…………」

部長「…………」

専務「…………」


総帥「そういえば彼を引き抜くのは諦めたのか?
遊び相手は口実で、本当はそのつもりだったのじゃろう?」

黒井「…………」

黒井「……なんのことかな」

総帥「…………」

黒井「…………」

部長「…………」

専務「…………」

部長「あ。フルハウス……です」

黒井「……ちっ」

総帥「……ちっ」

部長「ひぃっ!?」

専務「……馬鹿」

総帥「次は勝つ」

黒井「次こそ勝つ」

部長・専務(帰りたい……)

※ ※ ※ ※ ※


都内某所 イベント会場にて

P「久しぶりのLIVEバトルだ。緊張してないか?」

桃華「していません……いえ、もちろん緊張はしていますわ。
しかし、その緊張も自分の力に変える。
積み重ねてきたものは嘘をつかない」

P「…………」

桃華「そう教えて下さったのは、他でもない、Pちゃまですわ」

P「……そうか」

桃華「ですから、わたくしは負けません。
トップアイドルになり、Pちゃまを振り向かせるその日まで」

P「…………」

桃華「どのような相手であろうと、全力で打ち勝つまでですわ!」

P「……今回の相手は大手プロダクション所属の新人アイドルみたいだな。
桃華よりも少し歳上の、中学生らしい」

桃華「中学生……」


P「……新人ゆえに詳細な情報は無かったが、どうやら視線移動の天才らしい」

桃華「視線移動?」

P「会場のあらゆるカメラ、観客の視線を把握し、完璧に対応した演じ方ができるって話だ」

桃華「……魅せ方のプロフェッショナル……ということですのね。手強そうですわ」

P「でも負けない……だろ?」

桃華「……ええ、何人たりともわたくしの上には立たせませんわ!」

P「よし、その意気だ!」

桃華「櫻井桃華行ってまいります!」

P「手強いだろうが、お前なら勝てる!
全力で捻り潰してこい!」

桃華「手加減はいたしませんわ!」

P「やっちまえ!」

…………

……



※ ※ ※ ※ ※


控え室にて。

森久保乃々「えくちっ」

乃々「…………」

乃々「……?」

乃々「い、イヤな予感が……」

乃々「か……帰りたいんですけど」





俺たちの戦いはこれからだ!エンド。



http://i.imgur.com/JXGhKuy.jpg




※ ※ ※ ※ ※

蛇足。

都内郊外 某所

「……報告は以上です」

琴歌「ご苦労様です。
手強いですが、まだまだ付け入る隙はありそうですわね」

「……はい。でもなぜそこまで彼に執着されるのですか?
お顔を合わせたのは櫻井家のパーティー会場で一度か二度くらいですよね?」

琴歌「それは勿論」

「…………?」

琴歌「一目惚れですわ!」ドヤ

「……左様ですか」

琴歌「今日はあの方々、屋外の会場でLIVEバトルですわね?」

「……はい」

琴歌「隙を見てP様を奪還しますわ!」

「……はい」

琴歌「先日のように、突撃のタイミングの指示はお任せしますわよ」

「……はい」

琴歌「頼りにしてますわ。クラリス」

クラリス「……はい」


※ ※ ※ ※ ※

ガチャ

クラリス「ふぅ……。お嬢様の相手は気を遣いますわ……」

ピリリ

クラリス「あら? 電話?」

ピッ

クラリス「……はい」

「私よ」

クラリス「……ええ、承知しております。……お嬢様」

「準備は整ったわ。来週、上京する」

クラリス「…………」

「家の権力は使わず、実力で彼の事務所の採用試験に合格したわ」

クラリス「流石です……千秋お嬢様」

黒川千秋「あの日……驚いて一度は断ってしまった彼のスカウト。
けど、私は大都市東京で彼と偶然の……いえ、運命の再会を果たすの……」

クラリス「……素晴らしいと思います」

千秋「……櫻井に潜入している間、あの小さなお嬢様に情を移したりなどしてないでしょうね?」

クラリス「……当然です。私の主人は千秋お嬢様、ただ一人ですわ」

千秋「…………」

千秋「……私がそちらに着いてからの指示は追ってするわ」

クラリス「はい」

千秋「……彼を取り戻すわよ」

クラリス「仰せのままに」

ピッ

クラリス「…………」

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クラリス「…………」

クラリス「……桃華お嬢様には情を移していませんが……」

クラリス「しかし……」

クラリス「…………」

クラリス「……P様」

ピピッ

クラリス「……あら? メール。
さてさて、今度は青森からか秋田からか、はたまた広島や京都かドバイからか……」

ピッピッ

クラリス「ふふっ……」

クラリス「……教会再建も楽ではありませんね」




多重スパイエンド。




タイトルの元ネタの少女マンガとは内容がカスってもいませんが、既刊は全て読んでおります。

とても面白いのでおすすめです。

サーカスのクラリスさん、無邪気で可愛かった。

色々失礼しました。

http://i.imgur.com/fHfz5rW.jpg
http://i.imgur.com/92RvPOS.png

>>1ちゃま乙ですわ
http://i.imgur.com/9PQ3bBl.jpg

好き。

300泊しなきゃ・・・

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