【ガルパン】ペパロニ「戦いはノリと勢いじゃない、頭の使い方だ」 (44)

*一部独自解釈、設定有

*この作品はフィクションです
戦車の動作、性能等、実際のものと異なる場合があります


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~第64回戦車道全国大会:1回戦終了後~



沙織「…えー、それでは!全国大会1回戦突破を記念して…カンパーイ!」



優花里「おめでとうございます、西住殿っ」

みほ「うん、ありがとう」

麻子「まさか、1回戦から黒森峰とぶつかるとは思わなかったが…」

華「1回戦だと、まだ車両が10両までですからね。早いうちに当たったのは良かったのでしょうか」

沙織「うん、今回は相手の数も少なかったから、マウスとも戦わずに済んだしね」

みほ「澤さんも凄く頼りになるし…これなら、今年もいけるかも」

優花里「ええ、やるからには2連覇を目指しましょう」

みほ「うん、頑張ろうね、みんな」

華「ええ、そのつもりです」


麻子「…そういえば、2回戦の相手はどこなんだ?」

沙織「あ、そういえば1回戦は同時に2試合やるんだっけ」

優花里「今年は台風とかで、何試合か延期になりましたから。少し日程が詰まってますね」

沙織「調べてみようか。みぽりん、ちょっとパソコン借りていい?」

みほ「あ、うん」

沙織「えーと、せんしゃどう…あった、えーと…」

沙織「…えっ!?」

みほ「?」

麻子「どうかしたのか?」

沙織「聖グロリアーナが負けてる!?」

優花里「ええっ!?」

華「まぁ…」

麻子「聖グロは去年でダージリンさん筆頭に3年生が抜けてるから、戦力ダウンは仕方ないとは思うが…」

優花里「でも、戦車の質はかなり高いですから、そう簡単に負けるとは…」

みほ「沙織さん、それで、相手は…?」

沙織「それが…」



・・・・・・



・・・




~~~~~~



ペパロニ「全員、整列っ!」


ザッ


ペパロニ「…よーし、全員いるな」

ペパロニ「まずは先日の全国大会1回戦、ご苦労だった」

ペパロニ「去年までとは大きく戦略を変えた戦い方だったが、みんな良くついてきてくれた」

ペパロニ「強豪、聖グロリアーナに勝利できたのは、間違いなく諸君らの実力だ」

ペパロニ「…さて、早速だが、2回戦の相手が決まった」

ペパロニ「…2回戦の相手は、去年敗れた大洗女子学園だ」

ザワザワ…

ペパロニ「あー、諸君らの考えていることもわかる」

ペパロニ「だが、これまでの練習の成果を発揮できれば、次も必ず勝てるハズだ」

ペパロニ「去年、負けてしまった大洗女子にリベンジする機会でもある」

ペパロニ「…いいか、必ず勝つぞ」

ペパロニ「アンツィオのためにも、そして、去年敗れたアンチョビ姐さんのためにも」

ペパロニ「戦いは火力でも、ノリと勢いでもない。頭の使い方だ」



~~~~~~

~~~~~~



優花里「…へぇ、アンツィオが…」

沙織「張りぼての看板を利用して、敵チームを攪乱する戦術でフラッグ車を撃破…だって」

優花里「欺瞞作戦は依然と同じですが、今回は成功したんですね」

みほ「…ううん、それだけじゃなさそう」

沙織「え?」

みほ「グロリアーナ側の撃破された車両がフラッグ車だけになってるから、フラッグ車だけを狙った作戦を立てたみたい」

麻子「ずいぶんと戦い方が変わったんだな」

華「そうですね。去年はもっと積極的でした」

優花里「…」

沙織「ゆかりん?」

優花里「へぁ?」

沙織「…もしかして、また偵察に行きたいとか思ってる?」

優花里「うぇ!? い、いや、そのぉ…」


麻子「自分から行きたがるようなものでもないと思うがな」

華「というか、戦車が変わっていないのであれば、あまり行く必要もないのでは?」

優花里「ま、まぁ、そうかもしれないですけど…」

みほ「ん?」

優花里「あの、向こうの出店が美味しかったなぁ、なんて…」

沙織「あぁ、そっち…」

華「優花里さんのお気持ちもわかりますが…」

沙織「いや、華はわかるだろうね」

麻子「…で、どうする?西住さん」

みほ「まぁ、まるで意味がないってこともないと思うし、優花里さんが行きたいなら、お願いしたいな」

優花里「ハイッ!不肖、秋山優花里、命に代えてもアンツィオの勝利の秘訣を探ってまいります!」

麻子「いや、命はかけなくていい」





~~~~後日:アンツィオ高校~~~~




優花里「やってきました、アンツィオ高校!」

優花里「やはりそこかしこからおいしそうな匂いがしますね」

優花里「えーと、確かこの辺に…あれ?」

優花里「おかしいですね、ナポリタンのお店がこのあたりにあったはずなんですが…」

優花里「あのぉ、すみません」

アンツィオ生A「ん?どうかした?」

優花里「このあたりにナポリタンの屋台があったと思うんですが、どうしたんでしょうか?」

アンツィオ生B「あー、統帥のとこかぁ」

アンツィオ生A「今日も作戦室に缶詰になってんじゃない?」

アンツィオ生B「かなぁ。悪いけど、今日はたぶんやってないよ」

優花里「はぁ…」


優花里「…あれ?ドゥーチェ?」

アンツィオ生A「あんた新入生?」

優花里「あ、はい」

優花里「(2年連続で通じるものなんですかね、この言い訳…)」

アンツィオ生B「去年卒業したアンチョビ姉さんに代わって、今年からペパロニ姉さんが統帥だからね」

アンツィオ生A「まぁ、戦車道のことでいろいろ忙しいんでしょ」

優花里「あ、試合なら拝見しました。いやぁ、見事な作戦で…」

アンツィオ生A「あー、そうだね…うん」

優花里「?」

アンツィオ生B「でも統帥、ずいぶん戦い方変わったよねー」

アンツィオ生A「そうそう。普段から雰囲気変わったし」

優花里「そうだったんですか?」

アンツィオ生A「うん、そうなんだけど…なんでだろ?いつからだっけ?」

アンツィオ生B「えー…確か、統帥になってすぐの時はあんま変わってなかったよ」

アンツィオ生A「えーと…あー!そうだ、練習試合の後くらいだ」

アンツィオ生B「あーあー、マジノと練習試合あって、その後くらいかあ」

優花里「練習試合で、何かあったんですか?」

アンツィオ生A「いや、何にもなかったと思うよ」

アンツィオ生B「試合は負けちゃったけどねー」

アンツィオ生A「でも、ホントそれからかな」

アンツィオ生B「そうそう、何か難しい顔してることが増えたよねー」

優花里「へぇ…」


キーン コーン…


アンツィオ生A「あ、もう予鈴なってる。教室戻らないと」

アンツィオ生B「じゃ、またね」

優花里「あ、はい」

~~~~~~~~~




カリカリ…

カリ…

ペパロニ「…」


コンコンッ


ペパロニ「空いてるよー」

ガチャッ


カルパッチョ「お疲れ様です、統帥」

ペパロニ「おー、カルパッチョか」

カルパッチョ「コーヒーで良かったですか?」

ペパロニ「お、悪いな」


カルパッチョ「…」

ペパロニ「…んー…」カリカリ

カルパッチョ「…大洗の作戦、ですか?」

ペパロニ「あぁ」

カルパッチョ「ずいぶん念入りですね」

ペパロニ「まぁな」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「1回戦の聖グロリアーナ戦は大金星だった。みんなが作戦通り動いてくれたからな」

ペパロニ「でも、次の相手は奇策の得意な大洗だ。いくつかプランを用意しておきたい」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「…? どうかしたか?」

カルパッチョ「…まだ、去年のことを気にされているんですか?」

ペパロニ「…」


カルパッチョ「あれは、統帥の責任じゃありません」

カルパッチョ「それに、アンチョビ姐さんだって、卒業の時に言っていたじゃないですか」


アンチョビ『…気にするな、二人とも。あの敗戦は、誰の責任ってわけじゃない』

アンチョビ『楽しかった。いい試合だった。それでいいじゃないか』

アンチョビ『ペパロニ、次はお前の番だ』

アンチョビ『新しい統帥として、アンツィオの戦車道を引っ張っていってくれ』


ペパロニ「…」

カルパッチョ「…統帥、あなたは…」

ペパロニ「…っ!」


ダンッ!!


カルパッチョ「ひっ」

ペパロニ「…」

カルパッチョ「ドゥ、ドゥー…」

ペパロニ「あれは!あたしが!!」

ペパロニ「…ぐっ…!」

ペパロニ「あたしのせいで!あの人は!姐さんは負けたんだ!!」


カルパッチョ「あ…」

ペパロニ「スパイに気付かないで、ベラベラとP40のことをバラして」

ペパロニ「試合じゃ満足に作戦の一つも遂行できずに」

ペパロニ「…アンツィオを、姐さんの敗因を作ったのは、間違いなくあたしなんだ!」

カルパッチョ「ち、違っ…」

ペパロニ「…マジノ女学園に負けてわかったんだ」

ペパロニ「姐さんが勝ったマジノ女学園に、あたしらじゃ勝てなかった」

ペパロニ「姐さんは、本当は2回戦程度で負けていい人じゃなかった」

ペパロニ「その姐さんの戦車道を、あたしが閉ざしたんだ」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「…カルパッチョ。決めた。あたしはもう負けない」

ペパロニ「大洗に勝って、その次も次も勝って、アンツィオに飾られた優勝旗を見せてやる」

ペパロニ「それだけが、今のあたしらにできる、アンチョビ姐さんへの償いなんだ」

カルパッチョ「そんな、こと…」

ペパロニ「…勝つための戦いをする。それが、今のあたしの戦車道だ」


カルパッチョ「…統帥は、それでいいんですか…?」

ペパロニ「あたしが良いとか悪いとか、そんな話じゃないんだ」

カルパッチョ「貴方の気持ちだけを、教えてください」

ペパロニ「…そりゃ、あたしだって、本当は突っ走りたいさ」

ペパロニ「ノリと勢いに任せて、何も考えずに走りたい」

ペパロニ「…でも、それじゃダメだった。姐さんに悔しい思いをさせるだけで、何もできなかった」

ペパロニ「…あたしがガマンするだけで、あいつらに…チームのみんなにも恩返しができる」

ペパロニ「それに、姐さんの分まで…」

カルパッチョ「…」

カルパッチョ「…統帥…あなたは今、それで幸せなんですか…?」

ペパロニ「…」

カルパッチョ「…ごめんなさい。失礼、します…」

ペパロニ「…あぁ…」




~~~~~~~~~

ちょっと短いですが、本日はここまで。続きは完成次第。三分割くらいで投下する予定です

余談ですが、主人公以外のあんこうチームで唯一書いてない沙織さん編も考えてはいます
ボンヤリとやりたいシーンだけがポツポツ思いついているので、まとまったら書くかもしれません

中編、この後23時くらいから投下します

三分割投下、今回は中編までと約束したな
…あれは嘘だ

完結まで書けました。ラストまで投下します。よろしくお願いします

~~~~~~~~~




…ドォーン…


ペパロニ「…本日の訓練はここまで!」

「お疲れ様でしたー!」

ペパロニ「よーし!1年は片付け、2年はおやつの準備-っ!」

ワーッ!

ペパロニ「…ふぅー」

カルパッチョ「お疲れ様です、統帥」

ペパロニ「おぉ、お疲れ」

ペパロニ「あー…カルパッチョ。この後の仕切り、任せて大丈夫か?」

カルパッチョ「統帥、どちらへ?」

ペパロニ「例の作戦、もうちょっと詰めておきたいんだ」

カルパッチョ「…はい、お任せください」

ペパロニ「ありがとうな。じゃあ、頼んだ」スタスタ



カルパッチョ「……」

アンツィオ生A「…統帥、最近付き合い悪くねっすか?」

アンツィオ生B「まぁ、こうしておやつの時間はあるんスけどね」

カルパッチョ「…ええ、そうね」

カルパッチョ「(…こうしておやつの時間はありますし、チームの空気も悪くなっていることはないけど…)」

カルパッチョ「(でも…ペパロニ…)」

カルパッチョ「(……)」

スッ

カルパッチョ「(やっぱり、もう見ていられない)」

カルパッチョ「(でも、私だけじゃ、ペパロニを助けてあげるだけの言葉が見つからない)」

カルパッチョ「(………ごめんなさい…最後に、もう一度だけ…)」

カルパッチョ「…姐さん」


プルルルルル… プルルルルル…



~~~~~~~


カリカリ…

ペパロニ「…ふぅ、こんなもんか」

ペパロニ「…」

ペパロニ「(…これでいいんだ、これで…)」

ペパロニ「(本当はあたしだって、何も考えずに突っ走りたい)」

ペパロニ「(アンチョビ姐さんを倒した西住みほと、正面から闘いたい)」

ペパロニ「(…でも、こっちの作戦の方が勝算はあるし、不測の事態にも対応できる)」

ペパロニ「(そうだ、これでいいんだ。あたしのワガママに、チームを巻き込むわけにはいかない)」

ペパロニ「(チームだけじゃない。アンチョビ姐さんのためにも…)」

ペパロニ「…これで…いいんだよな…」



~~~~~~~~


…ピンポーン…


ドタドタッ

ガチャッ

カルパッチョ「あ…」

アンチョビ「…おー、来たか。カルパッチョ」

カルパッチョ「アンチョビ、姐さん…」

アンチョビ「まーまー、とりあえず上がって」

カルパッチョ「はい、お邪魔します」

アンチョビ「ん。その辺に寛いでてくれ」

カルパッチョ「はい」



コポポポ…


アンチョビ「お待たせ」コト

カルパッチョ「あ、ありがとうございます」

カルパッチョ「…あれ、緑茶ですか?」

アンチョビ「まぁ、私だって日本人だからな。恋しくなることもある」

カルパッチョ「…ふふ」

アンチョビ「な、なんだよぉ」

カルパッチョ「…ん、美味しいです…」

アンチョビ「そうか」

カルパッチョ「…」

アンチョビ「…遠慮しないで、いいんだぞ」

カルパッチョ「え?」

アンチョビ「顔が見たいって聞いたけどさ、それだけじゃないんだよな」

アンチョビ「…何か相談あるんだろ?」

カルパッチョ「…」

アンチョビ「話してくれ」

カルパッチョ「…姐さんには、隠し事はできませんね…」

アンチョビ「何かあったのか?」

カルパッチョ「その…」



~~~~~~


アンチョビ「…そうか、ペパロニが…」

カルパッチョ「…あの子、本当につらそうで」

カルパッチョ「ずっと、何かを我慢してるみたいで、それで…」

アンチョビ「うん、うん」

カルパッチョ「…私、もう、どうすればいいか…」

カルパッチョ「…いえ、私、ペパロニにどうしてほしいのかも、もうよくわからなくて…」

アンチョビ「…」

カルパッチョ「姐さん…一度だけ…ペパロニを、ペパロニを助けてあげてくれませんか…?」

アンチョビ「…」

カルパッチョ「…?姐さん…?」

アンチョビ「…カルパッチョ」

カルパッチョ「…はい…?」

アンチョビ「…悪いけど、それはできない」

カルパッチョ「え…!」


アンチョビ「薄情な先輩だと思うか?」

アンチョビ「…そうだよな。ごめん」

カルパッチョ「な、なんっ…」

アンチョビ「まぁ、聞け」

アンチョビ「…ペパロニの戦車道は、ペパロニ自身が自分で描いた道なんだ」

アンチョビ「私はあいつに、あいつ自身の戦車道を歩いてほしい」

アンチョビ「だから、私が今更、ペパロニの進む道に口を挟むことはしたくない」

カルパッチョ「そ、そんな…」

カルパッチョ「で、でもっ…それじゃ…」

アンチョビ「まぁまぁ、最後まで聞いてくれ」

アンチョビ「…それでももし、ペパロニが、自分の思い描いた戦車道すら外れるようなら…」

アンチョビ「…その時、お前が道を正してやるんだ。カルパッチョ」

カルパッチョ「私、が…」


アンチョビ「それは、ペパロニと同じ道を見て、ペパロニのそばを歩いていた、お前にしかできないことなんだ」

アンチョビ「今、ペパロニは、自分のイメージした戦車道すら忘れそうになってるんだろう」

カルパッチョ「でも、でも私、どうすれば…」

アンチョビ「…思い出させてやればいいんだ」

カルパッチョ「え…?」

アンチョビ「アイツが最初に思い描いた、自分だけの戦車道。自分の選んだ道」

アンチョビ「もっと真っすぐ、単純な道だったんじゃないのか?」

アンチョビ「…なぁ、カルパッチョ」

カルパッチョ「…姐さん…」

アンチョビ「あぁー…ごめん。こんなんで、答えになってるかな…」

カルパッチョ「…ねえ、さん…」

アンチョビ「ん」

カルパッチョ「ありがとう、ござい、ます…」

アンチョビ「…2回戦は、今週末だったかな」

カルパッチョ「はい…」

アンチョビ「私に見せてくれ。ペパロニの…いや、ペパロニだけじゃないな」

アンチョビ「ペパロニと、カルパッチョと、アンツィオの戦車道を」





~~~~~~~~~~~~




~大会当日~


ペパロニ「…それじゃあ、最後に作戦を確認しておく!」

ペパロニ「大洗は慎重だ。最初にまず偵察を出してくるから…」

カルパッチョ「…」

カルパッチョ「(ペパロニ…)」

カルパッチョ「(…この試合で、思い出させてあげる)」

カルパッチョ「(あなたが見失ってしまった、本当に大事なこと。自分の戦車道…)」

ペパロニ「…以上だ!副隊長、何か…?」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「カルパッチョ?」

カルパッチョ「いえ、何でもありません」

ペパロニ「よーしお前ら!今日勝ったら明日はおやつ3回だ!気合入れて行けよー!」


ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!


カルパッチョ「(…そういうところ、姐さんにそっくり)」

カルパッチョ「(本当は、変わっていないハズなのに。覚えているハズなのに…)」

カルパッチョ「(…)」




~試合中盤~



典子『…こちらから以上です!』

みほ「わかりました、ありがとうございます」

みほ「ふぅ…」

優花里「やはり、昨年とはまるで戦い方が違いますね」

沙織「どうするの?みぽりん?」

みほ「…今のアンツィオは、かなり慎重です。正面から来ることはないでしょう」

みほ「かといって、こちらから仕掛けるのは得策ではありません」

麻子「あのデコイもかなり精巧だからな。私も見切る自信はない」

華「ええ、無駄に発砲して、相手に位置を教えることもしたくありませんね」

みほ「…それなら…」

みほ「…カバさんチーム、聞こえますか?」


・・・

・・




~~~~~~~~~~



『…こちらCチーム、偵察戻りました!』

ペパロニ「よーし、ご苦労!状況は?」

『こちらにヘッツァーと、こっちにM3リー…』

ペパロニ「んん…」

『……で、ここにポルシェティーガーがいました!以上っす!』

ペパロニ「良し、わかった」

ペパロニ「…」

ペパロニ「(フラッグのⅣ号がここだと考えると…ん?)」

ペパロニ「…よーし、お前ら!」

ペパロニ「今の大洗の配置なら、左翼に少しだけスキがある!」

ペパロニ「左側から回り込め!CV先頭!後ろからセモヴェンテ!あたしはその後ろから援護する!」

『了解!』


ペパロニ「…よし!全車進ぐ…!」

ペパロニ「ちょ、ちょっと待った!ストップ!」

カルパッチョ「…?」

ペパロニ「…なぁ、さっきの偵察結果、もう一回教えてくれるか?」

『…え?えーと、ヘッツァーがここ、M3がここ…』

ペパロニ「…三突は?」

『あっ…!』

ペパロニ「(三突…P40に長距離から決定打を与えられる、大洗の主砲…)」

ペパロニ「(まずいぞ、一番警戒しなきゃいけない相手が、偵察で見つかってない)」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「(左翼にスキがあるように見えるけど…まさか、この配置そのものが罠なのか?)」

ペパロニ「(意図的に配置に穴があるように見せかけて、そこに伏兵を忍ばせるってのは定石だ)」

ペパロニ「(進軍した瞬間に撃ち抜かれるってことも…)」


『統帥?』

ペパロニ「(かといって、正面も危険だ。隊長車のⅣ号は、連携でもスタンドプレーでも最高練度だし…)」

『統帥!こんな時こそノリと勢いじゃないんスか!』

ペパロニ「…(こいつら、あたしの言ったこと覚えてないのか…?)」

ペパロニ「(わかってる…!あたしだって、本当は…!)」

ペパロニ「…」

ペパロニ「っ…!」

『統帥?どうしたんスか?』

ペパロニ「(今、何考えてたんだあたしは!もう勢いだけで突っ走ったりしないって決めただろ!)」

ペパロニ「(でも…できることなら、正面から…!あたしは…)」


ザザッ


ペパロニ「…ん…?」

ペパロニ「(通信…カルパッチョから?)」


カルパッチョ「…統帥?」

ペパロニ「カルパッチョか。どうした?」

カルパッチョ「ねぇ、ペパロニ」

ペパロニ「?」

カルパッチョ「…あなた、姐さんが統帥になったときの事、覚えてる?」

ペパロニ「は、はぁ?なんだ、この忙しいときに…」

カルパッチョ「いいから」

ペパロニ「…」

ペパロニ「…ああ、覚えてるよ」


アンチョビ『よーし、お前ら!よーく聞け!』

アンチョビ『今日からこの私、アンチョビがこのアンツィオの統帥となる!』

アンチョビ『来年こそは悲願の1回戦突破…じゃなかった、優勝を目指して、チーム一丸となって戦おうじゃないか!」

アンチョビ『我々のノリと勢いがあれば、優勝だって夢じゃないぞ!』


ペパロニ「…」

カルパッチョ「…それじゃあ、私たちが副隊長になったときの事、覚えてる?」

ペパロニ「…ああ」


ペパロニ『副隊長?あたし達っすか?』

アンチョビ『ああ、お前たちに頼みたいんだ』

カルパッチョ『統帥…』

ペパロニ『て、なんであたしなんですか!?あたしなんかより、カルパッチョの方が…』

アンチョビ『だから、お前たち二人に頼みたいんだ』

アンチョビ『誰よりもノリと勢いがあって、みんなの先頭に立てるペパロニ』

アンチョビ『いつも冷静で、ペパロニの補佐として…いや、私の補佐としても優秀だったカルパッチョと』

アンチョビ『二人で、私を支えてほしいんだ』

ペパロニ『姐さん…!』

アンチョビ『これからは、私の背中を見ていてほしい』

アンチョビ『ゆくゆくは、二人のどちらかを次の統帥に選抜することになると思うが…』

アンチョビ『その時までは、私の戦車道を、2人で支えてくれ』


ペパロニ「…」

カルパッチョ「…去年の大会で負けた後の事、覚えてる?」

ペパロニ「…」


アンチョビ『…そんな顔するな、カルパッチョ』

カルパッチョ『でも…姐さん…』

アンチョビ『ペパロニも、ほら』

ペパロニ『あたし…』

アンチョビ『…あのな、二人とも。私は今日の試合、後悔はしてないぞ』

カルパッチョ『え?』

アンチョビ『確かに、作戦は失敗だった。もしペパロニがあの作戦をしくじらなくても、西住みほは見破っていたかもしれない』

アンチョビ『…ただ、楽しかったんだ』

ペパロニ『姐さん…』

アンチョビ『マカロニがバレて、あわただしく走り回って。それで、Ⅳ号と直接対決して…』

アンチョビ『あの時間は、本当に楽しかった』

アンチョビ『…ああ、そういう意味だと、本当はちょっぴり、ほんのちょっとだけ後悔してるかもな』

アンチョビ『あんな難しい作戦は考えずに、もっと走り回れば、良かったかなぁ…』

カルパッチョ『…』

アンチョビ『…なぁ、二人とも。二人は、来年で三年生だ。最後の大会になる』

アンチョビ『その時、二人には後悔はしてほしくないんだ』



ペパロニ「……姐、さん…」

カルパッチョ「…大会が終わって、姐さんが引退して…」

カルパッチョ「それで、あなたが統帥になったときの事…覚えてる?」

ペパロニ「…」


ペパロニ『統帥…あたしが?』

アンチョビ『ああ。ごめんな、カルパッチョ』

カルパッチョ『いえ。ペパロニの方が、相応しいですから』

アンチョビ『お前ならそう言ってくれると思ってたよ』

カルパッチョ『ふふ』

ペパロニ『姐さん…』

アンチョビ『…頼んだぞ。ペパロニ』

アンチョビ『ここから先の戦車道は、自分自身で見つけて、自分自身で歩むんだ』

アンチョビ『私の後をついてくるんじゃない。自分が選んだ道を、真っすぐ進むんだ』

バサッ

ペパロニ『姐さん…このマント…』

アンチョビ『さ、ペパロニ。今この瞬間から、お前がアンツィオの統帥だ』


ペパロニ「…」

カルパッチョ「…ペパロニ」

カルパッチョ「あなたはその時…何て言ったかしら…?」

ペパロニ「…」


ペパロニ『……わかりました!姐さん!』

ペパロニ『アンツィオはあたしに任せてください!』

ペパロニ『あたしの戦車道は、あたしが見つけて、迷わず進んでいきます!』

ペパロニ『絶対に後悔しません!』

アンチョビ『…あぁ!頼んだぞ!ペパロニ!』

ペパロニ『…カルパッチョ!』

カルパッチョ『は、はいっ!』

ペパロニ『副隊長として、あたしを支えてくれ!』

ペパロニ『あたしの戦車道を、一緒に歩んでくれ!』

カルパッチョ『…ふふっ』

カルパッチョ『…ええ。ついていきますよ。統帥ペパロニ』


ペパロニ「…」

カルパッチョ「…統帥。ご決断を」

ペパロニ「(あたしは…)」

ペパロニ「…」

ペパロニ「…すぅーっ…」

ペパロニ「…いいか!おめーら!!よぉーく聞けぇ!!」

ペパロニ「側面からの進軍は中止!三突の位置が分からない以上、あの森林に近づくのは危険だ!」

ペパロニ「正面から突撃するっ!」


ザワッ…


ペパロニ「ビビってんじゃねぇぞ!おめーら!!」

ペパロニ「あたしが先行する!全員付いてこい!」

ペパロニ「…行くぞっ!!」

ペパロニ「このペパロニに続けぇーッ!!」


ワァァァァ…!



カルパッチョ「…」

カルパッチョ「(本当に…世話の焼ける統帥ですね…)」

カルパッチョ「私たちも行くわよ。P40の後方をカバーしましょう」



・・・

~~~~~~~~~



典子『…隊長!隊長!聞こえますか!?こちら偵察中のアヒルチーム!』

みほ「磯部さん!こちらあんこうチーム!状況は?」

典子『アンツィオ本隊、P40を先頭にして真っすぐそちらに向かってます!』

みほ「…!」

沙織「え!?真っすぐ来てるの!?」

華「カバさんの待ち伏せがバレてしまったんでしょうか?」

麻子「いいカンしてるな。右手の森に入ってくれれば、三突の狙撃で試合が終わっていたんだが」

典子『隊長!どうしましょう!』

みほ「…わかりました。アヒルさんはこちらに向かってください!カバさんとウサギさんは……」

沙織「でも、なんでバレちゃったんだろう?」

優花里「右翼に意図的に隙を作りましたが、露骨すぎたんでしょうか?」

麻子「すぎたことを言っても仕方ない。迎え撃つぞ」

華「ええ、いつでも撃てます」




~~~~~~~





・・・



・・




ガコッ

スタッ…


ペパロニ「…ふぅ」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「…」

カルパッチョ「…統帥」

ペパロニ「…ごめん。負けちゃったな」

カルパッチョ「ペパロニ…」


ペパロニ「なぁ、カルパッチョ」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「…やっぱり強ぇーな!大洗は!」

カルパッチョ「…はい?」

ペパロニ「いやぁ、最後にⅣ号と1対1になってさぁ、当たったと思ったんだよ!」

ペパロニ「でも、あんな動きされて、あたしらより早く装填されて…やっぱりすげぇよなぁ!」

カルパッチョ「…ふふっ」

ペパロニ「ん?どーした?」

カルパッチョ「ペパロニ。あなた、やっぱり変わってなかったわ」

ペパロニ「どういうことだ?」

カルパッチョ「ねぇ、ペパロニ」

ペパロニ「ん?」

カルパッチョ「思い出したみたいね、自分の戦車道」

ペパロニ「…あぁ。悪かったなぁ、面倒かけて」

カルパッチョ「ううん。いいの」


カルパッチョ「…そういえば、まだ答えを聞いていなかったわね」

カルパッチョ「ペパロニ。あなたは今、幸せ?」

ペパロニ「…へへっ」

カルパッチョ「…ふふ。聞くだけ野暮だったわね」

ペパロニ「…おっ、と!こうしちゃいられないよな!」

ペパロニ「…おーい!お前ら!大洗の人も!」

ペパロニ「忘れてないよな!諸君!試合だけが戦車道じゃないぞ!」

ペパロニ「勝負が終わったら、試合に関わった選手、スタッフを労う!」

ペパロニ「…これが、絶対に忘れちゃいけない、アンツィオの流儀だ!」




 - 完 - 


以上です、ありがとうございました
実際、アンチョビ姐さんが引退した後のペパロニはどうなるんでしょうね

さて、梓編がボンヤリ思いついたり、ケイさんとかエリカ主役モノもネタがちまちま浮かんでいる上、
一度は「通信手の見せ場ってなんだよ」と思ってあきらめた沙織さん編も書きたいシーン自体はイメージがあるので、しばらくネタに困ることはなさそうです
まだまだ構想中ですが、時間がある時に書いて、投下できればと思います


おまけ:細かすぎて伝わらないペパロニの好きなシーン

・秘密兵器のお披露目の時に、チャイムが鳴ってほかの生徒がみんな食堂に行ってるのに、
 カルパッチョと一緒に統帥のそばにいるペパロニかわいい

・「毎日コロッセオの周り走り回ってるよ!燃料もあんまりねーのに!」
 →副隊長として、チームの燃料事情をちゃんと把握してるペパロニかわいい

・隊員を交えた会話では「待っててください統帥!」とか統帥呼びなのに、土壇場で感極まって
 「ねえさーん!アンチョビねえさーん!」って姐さん呼びになっちゃうペパロニかわいい

・劇場版で大洗の援軍に駆けつけた時、左隅で狭そうに苦笑いして、
 姐さんを立てる形で自分は黙ってるペパロニかわいい

・「割り算もできないんスかぁ!?7.5倍っス!」
 惜しい。かわいい。

この辺のシーンを見て、ペパロニはただのアホの子じゃなくて、実際はいろいろ考えてるし、
何より姐さんやアンツィオが好きでしょうがないんだなぁ、と思うと妄想がはかどります

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