【艦これ】北方のとある鎮守府の話 (339)

提督は女性
ほっぽちゃんは関係なし
原田美世かわいい好き

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【???】

・・・

??「さて、君がここに呼ばれた理由が、分かるかね?」

・・・

??「・・・そうか。いや、それも致し方の無いことだろう。なにせ、急なことだからね。我々としても、この件に関してはあまり本意ではないのだよ。解ってくれたまえ」

・・・

??「ああ、まあ、そう言わないでくれ。今から説明させてもらう」

・・・

??「そう難しい話ではないさ。君にはね、“提督”になってもらいたいのだよ」

・・・

??「うん?提督とはなにか?ははは、いや、失礼した。そうだった。まずはそこから説明すべきだったか」

・・・

??「いやなに、悪い話ではないと思うのだがね。いいかい、君にやってもらいたいこと。それを今から説明する。よく聞いてくれたまえよ、“新米提督”君」

・・・

・・・

・・・

??「・・・と、いう訳だ。話は以上になるが、なにか質問はあるかね?」

・・・

??「・・・結構。では、早速行きたまえ。願わくば、君と鎮守府の未来に幸多からん事を」

・・・

??「・・・ああ。それから、君のために我々からささやかながら“プレゼント”も用意してある。好きに使うといい。どうせ、他では扱いに困っていた物だからね。君が上手く活かすなら、それで良し、そうでなければ・・・いっそ鉄屑にでも変えてしまうといい」

・・・

??「ではな。健闘を祈っているよ」

【海沿いの道路】

??「はぁ、はぁ、はあ・・・」

??「くっそぉ・・・あのヒゲオヤジめ・・・なにが港から徒歩2時間よ、彼此5時間以上歩いてるわ・・・」

??「うぅ・・・足パンパンだよぉ・・・」

??「んぅ・・・海風吹いててすっごい寒いし、滅茶苦茶遠いし、日も暮れてきたし・・・もう、こんなことなら引き受けるんじゃなかった・・・ま、そんな訳にもいかないんだけど・・・」

??「えーと、地図地図っと・・・んー、あそこに灯台が見えるから・・・今ここで、あっちの方向にしばらく歩いて、右に曲がった先・・・」

??「・・・そこからさらに3キロ歩いて、十字路を左折、2キロ歩いて、さらにさらに・・・」

??「・・・」ギリギリ

??「あーんもう!なんで私提督なのに迎えの一つもないの!?こんなのおかしいよー!!!」

??「あんのジジイどもめぇ・・・今度会ったらタダじゃおかないんだから・・・」

ビュー

??「うわっさむっ!」

??「・・・はぁ・・・」ガタガタ

??「・・・」トボトボ

2時間後

【鎮守府・玄関】

??「・・・」

??「・・・」チラ

??「ふぅ・・・」

??(到着予定時刻から、もう6時間が経ってる)

??(・・・やっぱり、また・・・)

??(・・・)

??「・・・はぁ・・・」

ドン!

??「!」ビクッ

ガチャガチャガチャ!ドンドンドン!

??「あ、あ、開けてー・・・だ、誰かいるなら、開けてー・・・お願いしますー・・・」

??「は、はい。ただいま・・・」ガタッ

タタタッ

??「は、はやく・・・」

??「すぐに開けます・・・」

ガチャ ガラッ

??「おぉ、ありがとお・・・うー、寒い・・・」

??「中へどうぞ。あまり暖かいとは言えないかもしれませんけれど」

??「いやいやお構いなく・・・ふへぇ・・・久々の屋内だあ・・・生き返るなあ・・・」ホクホク

??「それで・・・えっ、と・・・」

??「んー・・・?」

??「あなたは、一体・・・?」

??「・・・あっ。忘れてた」

??「はぁ・・・」

??「私は本日よりこの鎮守府に着任した提督です!よろしくお願いします!」

??「・・・」

提督「・・・あれ?」

??「あなたが・・・提督、ですか?」

提督「あれ、そんなに驚くことなの?」

??「あっ。すみません!ただ、若い女性の方でしたから、てっきり一般の方かと思ってしまいました。申し訳ございません!」

提督「あはは。いいよいいよー。なんでも女の提督って殆どいないらしいし、それに、こんなドレスみたいなの着てる人、提督にはいないもんね?みんなかっこいい、軍服?だっけ?それを着るものだもんね」

??「え、ええ・・・そうですね」

提督「それで、あなたは?」

??「あっ、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。私は、この鎮守府に先日配属されました、艦娘の戦艦、大和と申します」

提督「そうなんだ。よろしくね、大和さん」

大和「・・・?」

提督「・・・ん?どうかしたの?」

大和「あっ、いえっ。えっと、その、こちらこそ宜しくお願い致します!」

大和(・・・?)

【鎮守府・執務室】

提督「へー。ここで仕事するんだ」

大和「はい。基本的に提督にはこちらで事務作業や艦隊指揮を行っていただきます」

提督「なるほどね」

大和「・・・」

提督「ん?どうしたの、大和さん?そんな不思議そうにして」

大和「あっ、いえ。大したことではないんですけれど・・・」

提督「なにか気になることがあれば、遠慮なく言ってね。まあ、来たばっかりの私には、言いにくいかもしれないけど・・・」

大和「いえ、そんなことは・・・でも・・・そうですね。では、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

提督「どんとこい」

大和「提督は提督としての業務の経験はおありですか?」

提督「うーん・・・ないなあ」

大和「・・・では、鎮守府へ赴任されたことは・・・?」

提督「ないよ」

大和「・・・海軍に関するお仕事の経験は」

提督「全く」

大和「・・・納得しました」

提督「でも、大和さんが鎮守府案内してくれて、ついでに詳しく説明までしてくれたから、おかげで大体分かったよ。ありがとう!」

大和「ええと、はい。どういたしまして・・・」

大和(・・・少し大きな平家程度の大きさの鎮守府を見て違和感を感じなかった原因は分かったわ)

大和(・・・それに、私のことも・・・)

大和(でも、大本営はどうしてこの方を・・・まあ、この鎮守府は深海棲艦の脅威も少ないし・・・人材不足は思った以上に深刻なのかしら・・・)

提督「ねえねえ、大和さん」

大和「あっ、はい。なんでしょうか?」

提督「ここの鎮守府には、大和さん以外にどれくらいの艦娘がいるの?」

大和「・・・えっ?」

提督「・・・んん?」

大和「・・・提督。ご存知ないのですか?」

提督「なんのこと?」

大和「・・・この国の最北端に位置し、深海棲艦との戦いから最も離れた地にある、この鎮守府に所属している艦娘は・・・」

提督「うんうん」

大和「・・・私一人です」

提督「へぇ、大和さん一人」

大和「はい」

提督「なるほどねえ」

大和「はい」

提督「・・・」

大和「・・・」

提督「・・・え?」

提督「大和さん、だけ?」

大和「はい。ですので、現状、私たちにできることは殆どありません」

提督「そんな話聞いてないよ!?」

大和「私も驚きました。てっきりご存知のものとばかり思っていましたから」

提督「いやいやいや知っててもどうしようもないよ!?ていうか、どうするのこれ?大和さん一人って・・・大本営に今から連絡して艦娘の手配をするように言ってやらないと・・・!」

ドタドタ

大和(難しいと思うけれど・・・)

ガチャン!

提督「あんのジジイども~!」

大和「・・・やはり、厳しいですか?」

提督「我々も今人員不足で手一杯だ、幸い君の鎮守府は深海棲艦もそうそう現れないだろうし、強力な戦艦が一隻いれば十分だろう、だってさ!ほんとに大丈夫なの!?」

大和「・・・どうでしょう。私もここの鎮守府に来てまだ数日なので、敵の動向については詳しくは分かりません。資料によるとここから遠方の海沿いが敵の古い補給路になっているようです。ただ、この鎮守府が直接大きな被害を受けたという記録はないので・・・当面は問題ないと考えて良いと思われます」

提督「えぇ・・・ほんとに大丈夫なのぉ・・・」

大和「ご安心ください。提督の命は、この私が命に代えてもお守り致します」

提督「いや、そういう問題じゃ・・・まあ、文句言ってもしょうがないか。とりあえず、今日はもう遅いし、明日になってから色々考えよう」

大和「そうですね。それが良いと思います」

提督「そんじゃあ、さっさと風呂に入って寝ますか」

大和「お風呂はあちらから外に出たところにあります。提督からお先にどうぞ、お使いください」

提督「おー悪いねえ。そんじゃ、お先に失礼しますよっと・・・」


【鎮守府・風呂場】

ピュー

提督「・・・」ガタガタ

ドラム缶「」ドーン

提督「えぇ・・・」

大和「提督。薪をお持ちしました・・・提督?」

提督「・・・ううん。なんでもないよ。薪、ありがとね」

大和「あ、はい。マッチはこちらになります。着替えとタオルをお持ちしますので、先にお湯を沸かして入っていてください」

提督「何から何までごめんねー」

大和「いえ、当然のことですから。では」

タタタッ

提督「・・・」

提督「・・・入るか」

カシュ、カシュ

提督「・・・寒くて火つかない・・・」


【鎮守府・玄関】

提督「ふぅ。さっぱりした」

大和「提督。お湯加減は如何でしたか?」

提督「問題ないよ。・・・ただ、吹きさらしだから、鎮守府の中に戻るまでに身体が冷えるのはなんとかならないのかね・・・」

大和「もう少ししっかりとした設備があれば良いのですが・・・申し訳ございません」

提督「いや、大和さんが悪いわけじゃあないから・・・それじゃあ、私は先に休ませてもらおうかな」

大和「はい。寝室は執務室の横の部屋になります。この鎮守府には艦娘の寮はありませんので、私も同じ部屋で寝ることになります」

提督「寮がないって・・・言っちゃなんだけど、ほんとに酷いとこだなあ・・・」

提督「ま、仕方ない。それじゃ、おやすみ。大和さん」

大和「はい。おやすみなさい」

【鎮守府・寝室】

提督「なるほど。二段ベットが二つね」

提督「・・・手入れが行き届いてる。大和さんが綺麗にしておいてくれたのかな」

提督「ふわぁ・・・それにしても、今日は疲れたなあ」ドサッ

提督「明日からは・・・提督として頑張らないと・・・いけないなあ・・・」

提督「んむぅ・・・」

提督「zzz」

【鎮守府・風呂場】

大和「・・・」

大和「・・・きっと、あの人も」

大和「きっと・・・」

大和「・・・」

【鎮守府・執務室】

提督「おはよう。大和さん」

大和「おはようございます。・・・お早いんですね」

提督「いやー。昔から朝日が出ると、自然と目を覚ましちゃうんだよねえ」

提督「ところで大和さん、朝ごはんは食べた?」

大和「いえ。これからです」

提督「私もだよ。良かったら、これから一緒にどう?」

大和「えっ・・・」

提督「あれ?もしかして、嫌だった?」

大和「あっ、いえ。私は、その、構いませんけれど」

提督「んじゃー早速行こう。もうお腹ぺこぺこだよー」フラフラ

大和「・・・」

大和(そう・・・この人は、私を知らないから・・・だから、こんなに・・・)

提督「大和さ~ん?何してるの~?」

大和「あっ、はい。すぐに参ります」タタッ

大和「・・・」

【鎮守府・食堂】

提督「・・・ところで大和さん」

大和「はい?」

提督「・・・食べるものは?」

大和「一応、備え付けの冷蔵庫に保存食が幾らかありました。乾物が中心ですけれど、味は悪くないですよ」ガサガサ

提督「どれどれ・・・うーん、魚の干物が多いね・・・米やパンはないかあ」

大和「深海棲艦との戦いで疲弊していて、あまり余裕があるとは言えませんからね。近年、米やパンはどうしても高値ですし、それにこの辺りは人も少ないようなので、食料があるだけでもありがたいです」

提督「そっかあ・・・そういうことなら、しょうがないね」

食事の後

【鎮守府・執務室】

提督「うーん・・・お腹いっぱい、とは言えないけど、わがまま言ってられない・・・」ショボン

大和「すみません・・・」

提督「大和さんのせいじゃないよ。でも、近いうちに食料事情も改善しないとね」

大和「そうですね」

提督「・・・さて!そんじゃあ、気を取り直して職務に励むとしましょうか!」

大和「はい。よろしくお願いします」

提督「まずは何から始めようか」

大和「そうですね・・・この鎮守府には艦娘の数が足りていないので、出撃や遠征をするのは現状では厳しいですね」

提督「加えて大本営はこちらからの要請を受け付けないか・・・」

提督「・・・んじゃあ、まずやることは一つだね!」

提督「大和さん」

大和「はい。なんなりとお申し付けください」

提督「それじゃあ、とりあえず・・・」

大和「とりあえず?」

提督「外に行くよ。出かける準備、よろしく!」

【鎮守府近郊】

ピュー

提督「うぅ・・・寒いよぉ・・・」ブルブル

大和「もう4月といっても、場所が場所ですからね・・・この辺りは雪はあまり降りませんけれど、海沿いなので夜間は特に冷え込みます」

提督「お、おお」ガタガタ

大和「・・・ところで提督。今日はどちらへ?」

提督「そ、そうだね・・・とりあえず、人がいる場所に行こうと思う」

提督「この辺りのことについて詳しく聞きたいし、何より食べ物を売ってるお店とかがあればいいなーって」

大和「なるほど。わかりました」

提督「大和さんはこの辺りのこととか、どれくらい知ってるの?」

大和「そうですね・・・私は以前、こことは全く異なる場所にいましたので、あまり詳しくはわからないです。知っていることといえば、非常に寒い地域であることと、深海棲艦の被害が少ないこと、あとは人がほとんどいない、といったことくらいでしょうか」

提督「こっちに来てからは、何をしてたの?」

大和「特には、何も。鎮守府の掃除や資料の片付けをしながら、提督が来られるのを待っていました」

提督「こうして外を出歩かなかったの?」

大和「・・・私には必要ありませんから」

提督「・・・ふぅん?」

数時間後

提督「誰もいないねえ・・・」

大和「はい・・・それに、人がいた形跡も見当たりませんね」

提督「うーん・・・弱ったなあ」

大和「日も少しずつ傾いてきましたね・・・」

大和「・・・?」

提督「・・・ん?大和さん?どしたの?」

大和「あっ、いえ。ただ、あそこに誰かいたような気がしまして・・・」

提督「どこどこ?」

大和「あそこです。あの、石段の下辺りに・・・」

提督「ようし!行ってみよー!」

ダダダッ!

大和「あっ、提督!待ってください!」

提督「競争だよ!あそこに先についた方が晩ご飯多めね!」

大和「何言ってるんですか、もう!」

大和(・・・まさか・・・ね)

タタタッ

大和「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

提督「大和さん遅いよー」

大和「て、提督が速すぎるんです!そ、それよりも、誰かいましたか?」

提督「うんにゃ。誰も見当たらないねえ」

大和「あれ?でも、そんなはず・・・」

提督「見間違えだったんじゃないかな?」

大和「いえ、そんなはず・・・確かに、誰かが、その石段を下って行くのが見えたんです。曙色の着物を着た、多分、女性の方が・・・」

提督「でも、誰もいないよ?」

大和「おかしいですね・・・」

提督「んー?」

提督「・・・ねえ、大和さん」

大和「はい・・・?」

提督「あれって、なんだろう?」

大和「あれ?」

提督「ほら。そこ。陰になってる・・・」

大和「・・・あっ」

【???】

ガラガラ

??「あら。いらっしゃいませ」

提督「お邪魔しまーす」

大和「失礼します・・・っ!?」

??「・・・外は寒かったことでしょう。お席へどうぞ。今は他に誰もいませんので、お好きなところへお座りください」

大和「えっと・・・私たちはその、お客では・・・」

提督「まーまー大和さん。いいじゃんいいじゃん。折角来たんだしさ」

大和「で、ですが」

提督「それじゃ、お邪魔しまーす」ギシ

??「ふふふっ。はい、どうぞ」

提督「おーおしぼりあったかー」ホカホカ

大和「・・・はぁ」

大和「・・・では、私も。失礼します」ギシ

鳳翔「はい。いらっしゃいませ。ようこそ、居酒屋・鳳翔へ」

提督「」パクパクムシャムシャ

提督「んんんー!おいしいよおー!」

大和「ほんとう・・・とても美味しいです」

鳳翔「うふふ。ありがとうございます」

提督「この優しい味付けのお芋の煮物と程良い塩加減の焼き魚で、ほかほかの白米を食べる・・・もう、最高だよお・・・」

鳳翔「もう、お客様ったら。大袈裟ですよ」

鳳翔「でも、ありがとうございます。そんな風に言ってもらえたのは初めてです」

提督「そりゃあ他の客の見る目がないよ!こんなに美味しいごはん、毎日、いや、毎食でも作ってもらいたいくらいだよ!ねっ、大和さん!」

大和「え、ええ・・・本当に・・・」

鳳翔「ふふっ。遠慮なさらず、たくさん食べてくださいね」

大和「あ、ありがとうございます」

提督「よーし!それじゃあ、いっぱい頼んじゃうぞー!」

大和「・・・」

1時間後

提督「zzz」

大和「もう・・・あんなに沢山食べた上に、お酒も倒れるくらい飲んで・・・」

鳳翔「うふふ。いいじゃないですか。とっても可愛いくて」

大和「・・・鳳翔さんは昔から優しすぎるんです」

鳳翔「あら・・・そんなこと言ってくれるの、貴女くらいのものですよ」

大和「・・・」

鳳翔「・・・数年以来ですね、大和さん」

大和「・・・はい」

鳳翔「・・・少し驚きました。どうしてこんなところに、貴女がいるのかしらって」

大和「・・・」

鳳翔「・・・もしかして、そちらの方は?」

大和「・・・提督です。私が着任した、鎮守府の・・・」

鳳翔「・・・そうですか」

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

大和「・・・少し」

鳳翔「・・・?」

大和「・・・日本酒を、少し、頂きます」

鳳翔「・・・お注ぎしますね」

トクトク

大和「・・・ありがとうございます」

グイッ

大和「・・・ふぅ」

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

大和「・・・お聞きにならないんですか?」

鳳翔「・・・何をですか?」

大和「その・・・私が、ここに・・・どうしているか、とか・・・」

鳳翔「・・・」

大和「すっ、すいません・・・鳳翔さんだって、大変な思いをしてきたのに、こんな・・・」

大和「・・・身勝手で、情けないことを言って・・・」

鳳翔「・・・構いませんよ」

大和「で、でもっ」

鳳翔「大和さん」

大和「!」

大和「・・・はい」

鳳翔「私には貴女の事情を詳しく知る資格も、その権利もありません」

大和「そんなこと・・・」

鳳翔「ない・・・筈がありませんよね?」

大和「・・・」

鳳翔「・・・でも、そうね。もし、今、貴女の中に沢山、吐き出したい気持ちがあるのなら、せめて今は、温かい食事と少しのお酒で呑み込んでしまっても、私は悪くないと思います」

大和「・・・」

鳳翔「人は誰しも、いつも強くいられるわけではないですから・・・時には何かにすがっても、私はいいと思いますよ」

大和「・・・私は」

鳳翔「・・・」

大和「・・・私には」

大和「・・・」

スッ

鳳翔「・・・もう一献、いかがですか?」

大和「・・・頂きます」

トクトク

大和「・・・」

大和「・・・」

大和「・・・」グイッ

数十分後

大和「鳳翔さん、今日はありがとうございました」

鳳翔「うふふ。いえいえ。・・・もうすぐ日も暮れますから、お気をつけてお帰りくださいね」

大和「はい。ありがとうございます」

提督「zzz」

鳳翔「ふふっ。本当に良く眠っていらっしゃるわね」スッ

プニプニ

提督「んゅ・・・」

提督「zzz」

大和「す、すみません。後で私の方から厳しく言っておきますので・・・」

鳳翔「お気になさらないでください。私も久しぶりに、楽しませていただきましたから」

鳳翔「・・・」

鳳翔「大和さん」

大和「・・・はい」

鳳翔「何かあった時は、いつでもここを訪ねてくださっていいんですからね。私では、貴女の助けにはなれないかもしれないけれど・・・」

大和「いえ・・・お気遣い、ありがとうございます。そのお気持ちだけで十分です」

大和「では、失礼します。お休みなさい」スッ

鳳翔「・・・ええ。お休みなさい」

鳳翔「・・・またのお越しを、お待ちしています」

【鎮守府・近郊】

ザッザッザッ

大和「・・・」

提督「zzz」

大和「・・・起きているなら、自分で歩いてもらえますか?」

提督「・・・バレた?」

大和「バレバレですっ。もう・・・」

提督「む、むぅ・・・」

大和「・・・」

提督「・・・」

大和「・・・どこから聞いていたんですか?」

提督「・・・大体全部?」

大和「・・・はぁ」

提督「・・・知り合いなら、そうと言ってくれればよかったのに」

大和「・・・提督には、関係ないことですから」

提督「・・・ふぅん」

大和「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・ま、話したくないなら、別に話さなくてもいいし、私も無理には聞かないよ」

大和「・・・」

提督「・・・でもね」

提督「・・・辛い時は、頼ってほしいな」

大和「・・・」

提督「そりゃ、私みたいな新米提督なんて、全然信用できないかもだし、むしろ、私が大和に迷惑ばっかりかけるかもしれないけどさ」

提督「・・・大切な部下で、仲間だもん。嬉しいことも、悲しいことも、みんな分け合っていきたいな、って、思うよ」

大和「・・・仲間」

提督「うん」

大和「・・・」

大和(・・・この人を信じている訳じゃない)

大和(・・・信じられる筈ない)

大和(名前だけの・・・新米提督・・・)

大和(・・・)

大和(・・・でも)

大和「・・・あの・・・」

提督「・・・ん?」

大和「・・・」

大和(・・・彼女を信じたいと)

大和(彼女に縋りたいと、心のどこかで、願ってしまうのは・・・)

大和(・・・)

大和(・・・鳳翔さんが、あんなこと言うから・・・違う・・・)

大和(きっと・・・そう。お酒のせいだ・・・)

大和「・・・」

提督「・・・大和さん?」

大和「・・・き」

提督「き?」

大和「・・・聞いていただきたい話が、あります。・・・あなたに」

【鎮守府・執務室】

大和「私はここに来る以前、ずっと呉の鎮守府にいました」

提督「・・・クレ?」

大和「?・・・呉をご存知ないのですか?」

提督「よく分かんないけど・・・遠いところなんだね!きっと!」ドヤァ

大和「え、ええ。まあ、そうですね・・・」

大和(こ、この人は・・・もうっ・・・)

大和「・・・コホン。それでですね。私は長きに渡って・・・いわゆる国の隠し玉として扱われてきました」

提督「隠し玉?大和さんって、そんなに強いの?」

大和「え、ええと、まあ、はい。一応、そういうことになりますね」

提督「へー」

大和「・・・あの」

提督「どしたの?」

大和「いえ、あの・・・自分でこんな事を言うのもなんですけれど、私、この国の艦娘の中でも、一、二番を争うくらいに強いんですよ・・・?」

提督「うん。凄いね」

大和「・・・戦艦なんですよ?この鎮守府にあるごくわずかな資材では、とても間に合わないくらい、運用が大変なんですよ?」

提督「ありゃ。そうなの?」

大和「そうなんです!」

提督「・・・んー」

提督「ま、なんとかなるよ。きっと」

大和「なっ・・・こっ、根拠はあるんですか!?資材を確保しないと、出撃できないんですよ!?」

提督「ないよ。でも、少なくとも今は大和さんしかいないから、どっちにしろ出撃することは得策じゃないでしょ?それに、他の艦娘の子が派遣される見込みもないし」

大和「だったら・・・!」

提督「うん。それなら、これから一緒に探していけばいいんじゃないかな」

大和「・・・え?」

提督「ね?」

大和「・・・一緒、に?」

提督「そ。だって、大和さんも出撃できなくって、持て余してるんでしょ?だったら、私のお仕事手伝ってもらったり、資材の問題を一緒に解決すればいいかなって」

大和「・・・」

大和(私が、提督と、一緒に・・・?)

大和(・・・この人は・・・)

大和(・・・違う・・・でも、きっと・・・)

大和(だったら、私は・・・大和は・・・)

提督「・・・んー?・・・でも、それならどうして、そんな凄い大和さんが、こんな敵の少ない場所に来ることになったんだろ?」

大和「・・・近年、深海棲艦との戦いは激化し、この国も多大な被害を受けています」

大和「そんな中、鋼材や弾薬が著しく不足していることを受けて、大本営は全面的に私の出撃を制限しました」

提督「・・・なるほどね」

大和「様々な事情もありましたし、私もそのことには納得していました。でも・・・他の艦娘の方達が出撃していく姿を、ただ見ていることしかできなかった・・・」

大和「・・・時には、出撃したまま帰らない子もいて・・・それなのに、私はただ、母港から眺めることしかできなかった・・・」

提督「うん」

大和「・・・そして、整備の方々や上層部の方が口々に言うんです。大和は役立たずだ、木偶の坊だ、って。解体した方が、よっぽど
有意義だって・・・」

提督「・・・そっか」

大和「・・・最初は、我慢できたんです。皆さんにそんな思いをさせて、申し訳ないって。私がもっと・・・もっと強かったら、もっと使いやすければ、皆さんのお役に立てるのにって!」

大和「で、でもっ、そ、そんなこと考えている間にもっ、せ、戦況は、どんどん悪くなって・・・ッ・・・わ、私の、私のことを、い、いらないやつって言う人もっ、いっ、一杯でっ・・・さっ、最後は、て、ていっ・・・提督っまでっ・・・」

提督「・・・分かった」ギュウ

大和「そっ、それでぇ、わ、私っ、い、いらない子なんっ、なんだなって!・・・そ、それで、こ、この前、ひっ、ひ、必要、ない、艦娘を、い、1隻寄越せって、だ、大本営に、命令されて、そ、そ、それ、でぇ・・・!きっ、昨日っ、も、て、提督なんてぇこ、こなくて、やっぱりや、厄介払っいっ、だっ、たのかなあって・・・ひぐっ・・・」

提督「・・・辛かったね」ナデナデ

大和「うぅ・・・」

提督「・・・鳳翔さんには、そのことを?」

大和「いっ、言えないっ、言えない!・・・ほっ、ほう、鳳翔さんっ、わっ、私を、い、いつもっ、庇ってくれたっ、から」

大和「だかっ、ら、ぅ、くうぅ・・・」

提督「・・・ごめんね」

大和「て、提督っ、は、悪く、ない、ですから」

提督「・・・ね。大和さん」

大和「ヒッ・・・ウッ・・・ゥ・・・」

提督「・・・大和さん?」

大和「ていっ、とく」

提督「・・・ん?」

大和「・・・な、名前、よっ、呼び、捨て、で・・・」

提督「呼び捨て?・・・いいの?」

大和「いっ、いいのっ。て、提督なっら、よ、呼んで、ほ、しいっ、から」

提督「・・・そっか。・・・うん。わかった」

提督「・・・大和」

大和「うぅ、てっ、提督ぅぅぅぅぅ・・・」ギュ

提督「もう・・・我慢しなくていいからね」

大和「んぅ・・・う、うんっ・・・!」

大和(もう一度だけ・・・信じてみる・・・ううん、違う・・・私が、信じたい・・・私の・・・提督・・・あなたを)

大和(・・・ありがとう)

大和(ていとく・・・)

翌日・早朝

【鎮守府・執務室】

コンコン・・・

提督「はいはい。どうぞー」

ガチャ

大和「し、失礼します・・・」

提督「おはよう。大和」

大和「あ・・・」

大和「!」ハッ

大和「はっ、はい!おはようございます!提督!」

提督「朝から元気だね」

大和「あっいえっ、その・・・」

大和「・・・昨日は、その、大変ご迷惑をおかけしました・・・」ペコリ

提督「ん?いーよいーよ。私と大和の仲じゃない。気にしないで」

大和「で、ですが・・・」

提督「もうっ!いいって言ってるでしょ。そんなことより、早く朝ごはん食べようよー。もうお腹ぺこぺこなんだよー・・・」フニャフニャ

大和「あっ・・・」

大和「・・・」

大和「ふふふ・・・了解しました!この大和、すぐに提督の朝食を準備しますね!」

提督「急いでー・・・」グゥー

大和「はいっ!」

大和(本当に、ありがとうございます、提督)

大和(それから・・・)

大和(・・・ふふっ)

ヤマトォ~ハヤクゥ~

大和「あっ、はい!もう少々お待ちくださいね!」

タタタッ

大和(これから一緒に頑張りましょうねっ、提督!)


~その日の夜~

【居酒屋・鳳翔】

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・ふぅ」

鳳翔(やっぱり・・・私では・・・)

鳳翔(・・・)ホゥ

鳳翔「大和さん・・・」

ガラガラ
スイマセーン
オジャマシマス

鳳翔「!」

タタッ

鳳翔「・・・!」

鳳翔「・・・ぁ・・・」

鳳翔「・・・」フッ

鳳翔「・・・いらっしゃいませ」

鳳翔「居酒屋・鳳翔へ、ようこそ」

今度こそ終わり
依頼出してくるよ
原田美世かわいいほんと好き

つづきいくよ
オムニバス幾つか挟んで本編
原田美世に清き1票をよろしくね

《休日の過ごし方1》

4月某日・早朝

【鎮守府・執務室】

提督「今日は丸一日休みにします!」デーン!

大和「・・・」

提督「・・・」フンスフンス

大和「・・・」

大和「・・・ふぅ」

大和「・・・どうしたんですか、起きがけに」

大和「・・・まずその寝巻きを着替えてください。はい、これ」スッ

提督「あっ、私のドレス。洗濯してくれたんだ。ありがとー」

ゴソゴソ

大和(堂々とここで着替えるのね・・・)

ファサ

提督「・・・よし!おっけー!」

提督「うぅん・・・やっぱりかた苦しい軍服は性に合わないんだよねえ」

大和「提督ったら・・・」

大和「・・・せめて外に出る時だけでも、軍服を上に羽織ってくださいね?」

提督「わかってるよー」

大和「脱いだ物はこのカゴに入れてください。後で私が洗っておきますから」

提督「ありがと。ほいほいっと」ポイポーイ

提督「・・・で、さっきの話だよ!」

大和「休み・・・ですか」ウーン

提督「そうそう。ほら、私たち、ここに赴任してから1週間くらい経つけど、なんだかんだで働き詰めだったでしょ?」

大和「ほとんど鎮守府の掃除と昔の書類の整理しかしてませんでしたね」

提督「うんうん。いくら深海棲艦の脅威が差し迫っているにせよ、私たちも人間。休みなく動き続けることは、やっぱり不可能だよね」

大和「はい」

提督「そんな訳で、私たちの疲労はピークに達していると言っても過言ではない・・・」

大和「まあ、確かにそうですね」

提督「そう!」

提督「だからこそ!今こそ!私たちは!休むべき!」

提督「のんびりと束の間の休息に身を委ねて、疲れた身体と心を労わり、来たるべき時に向けて備えるべき・・・」

提督「・・・そうは思わない、大和?」チラ

大和「うーん・・・お気持ちはよくわかりますけど・・・」

提督「・・・何か問題?」

大和「・・・あのですね」

提督「うん」

大和「そもそも」

提督「そもそも?」

大和「・・・もう、やる事が無いんです」

提督「・・・?」

大和「・・・無いんですよ」

提督「・・・お仕事が?」

大和「・・・はい」

提督「何も・・・?」

大和「はい・・・」

提督「・・・」

提督「」

数十分後

提督「ちょっと!どういう事なんですか!?」

提督「たまっていた分の事務作業は済ませたんです!これから私たちは、何をすればいいんですかって・・・」

提督「・・・はぁ!?自分で考えろ、ですって!?ちょっと、ふざけるのも大概にしてください!全然足りてない艦娘は派遣しないわ、今後の方針についてもこっちに丸ごと放り投げるわ、あんたたち一体何考えてるの!?」

提督「あっ、こらっ!ちょっと・・・」

提督「・・・もー!あんのお年寄りたちー!」

ガチャン!

大和「大本営は、なんとおっしゃられました?」

提督「・・・現在、君らに任せるべき任務はない、何かあった時は追って連絡する、鎮守府に関しては君に一任する・・・だってさ」

提督「ありえないでしょ!ほんと・・・一体何考えてるんだか・・・」ハァ

大和「ですが、それは裏を返せば、提督が信頼されている・・・ということなのではないですか?提督は一般常識には欠けますが、その、素晴らしいお人柄ですし・・・」

提督「・・・もし仮に、百歩譲ってそうだったとしても、これはないでしょ・・・あと、事実とはいえ、その言い方は少し傷つくよ・・・」

大和「あっ、す、すいません」

提督「むぅ・・・」

提督(・・・あの感じ・・・)

提督(・・・この鎮守府に・・・守るだけの、価値がない・・・?)

提督(そうでないなら・・・いや、むしろ・・・)

提督(・・・)

提督(・・・ま、考えてもしょうがないか)

大和「ん・・・でも、どうしましょうか・・・」

提督「・・・んー・・・」

提督「・・・」ポクポク

提督「!」ピコン

提督「何もする事が無い・・・それつまり!」

ビシッ

提督「しばらくずっと休日!」

大和「ダメですっ!」

提督「んえぇー・・・即答・・・」

大和「当然ですっ。いくらこの近辺に深海棲艦の被害が少ないとはいえ、私たちがここを守らないでどうするんですか!」

提督「・・・でも、出撃も遠征もできないとなると、やれることはほとんど何も無いよぅ・・・」

大和「・・・では、定期的に鎮守府近郊の見回りを行いましょう。私もご一緒します。艦装を身につけて出撃するのは厳しいですけれど、陸地を歩くぶんには問題ありませんから」

大和「・・・いいですね、提督?」

提督「そうだね・・・当面はそうするしかなさそう・・・」

提督「・・・」

提督「・・・それで、今日は」

大和「今日は・・・」

大和「あっ・・・と」

提督「・・・」ジー

大和「・・・」

提督「・・・」キラキラ

大和「~!・・・もうっ!子供じゃないんですから、もっとしゃんとしてください!貴女はこの鎮守府の提督でしょう!」

提督「・・・!」

提督「うぅ・・・は、はい・・・」ショボン

大和「・・・」グヌヌ

大和「・・・はぁ」

大和「・・・ご安心を。“今日”は、提督の希望通り、鎮守府の業務をお休みにします」

提督「・・・!」ガバッ

提督「ほんとっ!?」

大和「・・・ほんとです」フイッ

大和(近い・・・)

提督「・・・!」プルプル

提督「やったあ!休日だあ!」ドタタッ

イヤッホー!

大和「もう・・・」フゥ

大和「・・・いいですか、提督。お喜びのところに水を差すわけではないですけど、お休みだからといってハメを外しすぎてはいけませんからね?何と言っても、提督はこの鎮守府で最も上の立場の人間なんです。いつ、誰が、どこで見ているとも限らないんですから、外では常に周りからどう見られるかということを意識して、自分の行動を客観的にですね・・・」クドクド

大和(・・・ん?)

大和「・・・提督?ちゃんと聞いているんです・・・」チラ

大和「・・・」

大和「・・・」キョロキョロ

大和「・・・」ブルブル

大和(いない・・・)

【居酒屋・鳳翔】

コトッ

鳳翔「それで結局、提督はどちらへ?」

大和「知りませんっ。ちょっと目を離した隙に、こっそり姿をくらまして・・・外に出た様子はなかったので、鎮守府内を隅から隅まで探したんですけど、どこにもいなくって・・・もうっ、人の話もろくに聞かないで・・・知らないんですからっ」プリプリ

グイッ

鳳翔「・・・ふふっ」クス

大和「・・・笑い事じゃないですよ、鳳翔さん」ムー

大和「・・・提督ったら、いっつも適当だし、常識もないし・・・いくら敵がいないからって・・・」ブツブツ

鳳翔「ごめんなさいね。でも、なんだか貴女と提督を見てると・・・まるで親子みたいだな、って思ってしまって」

大和「お、おやっ・・・!?・・・まあ、確かに、子供みたいに手のかかる方だとは思いますけれど・・・」

鳳翔「・・・そして、愛娘に逃げられてご立腹のお母さんは、その鬱憤を晴らすように、お昼間から居酒屋で一人お酒に溺れる、と」

大和「鳳翔さん!」ダンッ

鳳翔「うふふ、冗談ですよ」

大和「もうっ・・・」

グイッ

大和「・・・」

鳳翔「・・・お注ぎしますね」スッ

トクトク

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

大和「・・・あの人からは、危機感が感じられないんです。私たちが、この国が、深海棲艦の脅威に晒されていて、今も、どこかで、誰かが犠牲になっているかもしれないのに・・・」

大和「それなのに、休日だなんだって、はしゃいじゃって・・・もっと提督としての自覚というものを持っていただかないと・・・」グイッ

コトッ

大和「・・・はぁ」

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

大和「・・・鳳翔さんは」

鳳翔「はい?」

大和「・・・」チラ

大和「・・・鳳翔は、あの人のこと・・・どう思いますか・・・?」

鳳翔「私が、ですか?」

大和「・・・ん」コクリ

鳳翔「そうですね・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・まず、私はあの方のことを、貴女ほど詳しくは知りません」

鳳翔「それに・・・私はもう退役した身ですから・・・今更、貴女たちに意見するなんて、それこそおこがましいことです」

大和「・・・そんなこと、ないです・・・」

大和「私も・・・あの人とは、まだ1週間程度しか一緒にいませんし・・・それに、鳳翔さんの意見がおこがましいだなんて・・・あるわけないです・・・!」

鳳翔「ふふっ、ありがとうございます」

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・そうね、でも・・・」

鳳翔「でも、きっと・・・そう。そういったところも、あの人の魅力でもあり、弱さと同時に強さでもある、不思議な方・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・そんな気がしましたけれど」

大和「・・・」

鳳翔「・・・それに、貴女も・・・そんな彼女に、救われたのではないですか?」

大和「・・・」

鳳翔「私には、今の貴女は昔と比べて、とても生き生きとしているように見えますよ」

大和「っ・・・知りませんっ」グイッ

コトッ

大和「・・・日本酒」

大和「・・・もう一杯・・・お願い、します」

鳳翔「はいはい・・・あんまり飲み過ぎないでくださいね・・・」トクトク

数時間後

大和「ばかぁ・・・ていとうの・・・なまけものぉ・・・」グデー

鳳翔「もう・・・だから飲み過ぎちゃダメって言ってるのに・・・」カチャカチャ

大和「うぅ・・・あほぅ・・・ていとうの、わからずやぁ・・・」グズグズ

鳳翔「しょうがないわね・・・今日はここに泊まってもいいですから、とりあえず座敷の方に・・・」

チリッ

鳳翔「っ!?」バッ

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・」スッ

カランカラン

ガラガラ

夕方

【居酒屋・鳳翔前】

鳳翔「・・・」カランカラン

提督「・・・んお?鳳翔さん・・・こんばんわー」

鳳翔「こんばんは・・・いらしていたなら、一言お声かけくださったらいいですのに」

提督「んー?・・・いや、ま、今日はあくまで休日だしね・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・もしかして、初めからそのつもりで・・・?」

提督「そのつもり?・・・なんのことですか?」

鳳翔「あっ・・・いいえ。その、なんでも・・・」

提督「・・・」

提督「・・・にしても、艦娘の人って凄いんですね。影になってるところに隠れてたのに、すぐ見つかっちゃった」

鳳翔「・・・そんな。たまたまですよ」

鳳翔(・・・)

鳳翔(さっきのは、まるで・・・)

鳳翔(・・・まさか、ね)

提督「そうそう、ところで鳳翔さん。大和は?」

鳳翔「中で酔い潰れてしまっています。さっきからうわ言で、提督のことばかり話していますよ」クスッ

提督「・・・なんとなく内容が想像できるなあ」

提督「・・・ま、いいや。それじゃあ、大和は私が責任を持って連れて帰りますね」

鳳翔「あら・・・でも、ここから鎮守府まではかなり距離もありますし・・・大和さんは、その・・・大きいですから、運ぶのも大変でしょう?一日くらいお泊めしても、私は構いませんけれど・・・」

提督「いえいえ、鳳翔さんにこれ以上ご迷惑をおかけするわけにもいきませんから!」

提督「じゃ、失礼しますね。今日はありがとうございました!」タタッ

鳳翔「あっ、はい・・・」

ガラガラ

オーイヤマトー、カエルヨー
ウーン・・・テイトウー?
ソウダヨーテイトウダヨーカエルヨー
ウウーン
ホラ、シッカリツカマッテ・・・

鳳翔「・・・ふぅ」

鳳翔(・・・)チラ

鳳翔(さっきまで提督が座ってた石段・・・)カランカラン

鳳翔(・・・?)スッ

鳳翔(これ・・・?)ツッ

ポタッ

鳳翔(水・・・違う、これは・・・)

鳳翔(これは・・・)

鳳翔(・・・)

《休日の過ごし方1》
おしまい
読んでくれた人いたら、わざわざありがと
でも、このペースだと主要登場人物が全員そろうことは永遠になさそう・・・

おっけー

《張り子の虎》

4月某日・夜

【鎮守府・風呂場】

ビュウゥゥゥ

提督「・・・」

大和「提督。お湯加減、問題ありませんか?」

提督「・・・ちょっと、寒いかな・・・」

ヒュウゥゥゥ

大和「外はどうしても風が吹いて冷たいですからね・・・薪、足しておきます」ポイポイ

パチパチッ

提督「ありがとね・・・」

大和「いえ。当然のことです」ニコ

大和「着替えとタオルは、ここに置いておきますね。何かあれば、大きな声で呼んでください。すぐに駆けつけますから」ガチャ

提督「あいよー」

バタン

提督「・・・」

提督「うーん・・・」

ビュウッ

提督「んっ・・・」ブルルッ

提督「・・・」

提督「・・・」ツッー

提督「・・・」ズルッ

提督「・・・」

提督「・・・」ツッー

提督「・・・これはマズい」

翌日・朝

【居酒屋・鳳翔】

鳳翔「なるほど・・・事情は把握しました」

鳳翔「つまり、風を遮る壁も、雨を凌ぐ屋根もない、鎮守府のお風呂をなんとかしたいんですね」

提督「理解が早くて助かります・・・」ズルッ

鳳翔「・・・そのお顔を見れば、なんとなくは・・・」

鳳翔「けれど、お風呂ですか・・・」

鳳翔「お風呂・・・うぅん、そうですね・・・」

提督「・・・」ンー

提督「・・・そういえば、鳳翔さん」

鳳翔「はい。なんでしょうか?」

提督「こないだから気になってたんですけど、鳳翔さんのお店で出している物って、一体どこから仕入れてるんですか?」

鳳翔「食材ですか?あれは、昔の知人にお願いして、定期的にここまで運んできていただいているんですよ」

提督「・・・なるほど」ムムム

鳳翔「・・・」

提督「うぅん・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「あの・・・提督?」

提督「・・・ん?どうしたの?」

鳳翔「その、もし提督がよろしければですけれど・・・先ほどのお風呂の件、その子に、一度尋ねてみましょうか?」

提督「えっ・・・でも、いいの?」

鳳翔「はい。ちょうど明日に食材と生活用品を届けに来ていただく約束をしていますので。そのついでと言ってはなんですけれど・・・」

提督「いやいやいや!鳳翔さんさえ良ければ、是非お願いします!」ガバッ

鳳翔「ふふっ、わかりました。では、私の方から伝えておきますね」

提督「おぉ・・・ありがとぉー・・・うぅ、鳳翔さんが居てくれて、ほんと助かります・・・」

鳳翔「もう・・・大袈裟ですよ」クスクス

鳳翔「それに、相談してすぐに解決できる、という訳でもないでしょうから・・・ごめんなさいね、力になれなくて」

提督「そんな・・・十分過ぎるほど助かってますよ。感謝してもしきれないくらいで・・・」

提督「むしろ、私たちにできることがあれば、何でも言ってください!いつも美味しいごはん食べさせてもらっていますし、大和のことでもお世話になったんです。是非、恩返しさせてください!」

鳳翔「そんな・・・そのお気持ちだけで十分ですよ」

鳳翔「・・・それに、大和さんのことは、私が至らなかったばかりに、提督にも負担をおかけしてしまって・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「提督」スッ

提督「はい?」

鳳翔「・・・今一度、改めて御礼を申し上げさせてください」

鳳翔「先日は、大和さんを救っていただいて、本当にありがとうございました」ペコリ

提督「・・・私はほとんど何もしてないんだけどなあ」

鳳翔「いいえ。少なくとも、私と彼女は、提督に心から感謝しています」

提督「・・・」モニョモニョ

提督「・・・鳳翔さんはほんと律儀だなあ・・・」

鳳翔「・・・提督こそ」

提督「・・・」

鳳翔「・・・」

プッ

提督「・・・あはは」

鳳翔「・・・ふふっ」

提督「・・・じゃ、この話はここまでしましょうか」

鳳翔「・・・そうですね」

鳳翔「・・・」

鳳翔「あ、そういえば・・・」

鳳翔「・・・」

提督「ん?どうしたの?」

鳳翔「ん・・・いえ、その、大したことではないんですけれど・・・」チラ

提督「・・・?」

鳳翔「・・・」

鳳翔(・・・)

鳳翔「・・・その、急に不躾なお願いで申し訳ございませんが、一つ、提督にお願いしたいことがあります」

鳳翔「提督もお仕事でお忙しい中、恐縮ですが・・・」

提督「もう。さっきも言ったけど、いつもお世話になってるし、気にしないで」

提督「何でも言いつけてくださいね」ボムッ

鳳翔「・・・ありがとうございます」クスクス

鳳翔「では・・・」

読んでくれた人いたら、ありがと
続きは明日の夜に投稿
《張り子の虎》はそこで終わります。多分。

翌日・昼

【母港】

ヒュウゥゥゥ

ザアァァァ・・・

大和「・・・で」

大和「・・・どうしてこんなに寒い中、私たちは吹きさらしの母港に4時間もいるんですか」

提督「だからさっき言ったじゃない。鳳翔さんに荷物を運んでくる子がいるけど、その鳳翔さんが急用で来れないから、代わりに私たちでその運び屋さんをお迎えするって」

提督「私もその人に聞きたいことがあったから、ちょうど良かったんだよねぇ」

大和「それにしても、こんなに待つことになるなんて、聞いてないんですけど・・・」ジトー

提督「うぅーん・・・おかしいなあ・・・」チラ

提督「鳳翔さんは、いつも朝に待ち合わせしてるって言ってたのに・・・」

大和「提督が聞き間違えたんじゃないですか?それとも、待ち合わせ場所がここじゃないとか・・・」

提督「そんなはず・・・ん?」

提督「・・・」

大和「・・・?」

大和「ていと・・・んぅ!?」ムグッ

提督「しっ・・・」シー

大和「ん・・・」

提督「・・・」

大和「・・・?」

スッ

提督(何か聞こえない・・・?)

大和(えっ?・・・いえ、私には・・・)

提督(でも・・・)

・・・!

提督(!)

提督(ほら!今も何か聞こえた!)

大和(ちょっ、提督くすぐったいです!)

提督(我慢する!そんなことより、ほら!今も遠くで・・・)

・・・ぁぁぁ!

提督(ほらね!?)

大和(・・・あっ、本当・・・何か聞こえますね)

大和(これ・・・人の声・・・?)

提督(方向は・・・向こう!)

提督「よしっ!行くよ、大和!」ダッ

ピュウ!

大和「あっ、提督!・・・って速っ!」

ヤマトォー

大和「もうっ、待ってください!」

タッタッタッ・・・

【海岸】

大和「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

提督「大和おっそーい!」

大和「し、島風ちゃん・・・みたいなこと・・・言わないで・・・」ゼハーゼハー

大和(艦娘を遥かに上回る運動神経と聴覚・・・)ハーハー

大和(この人やっぱりどこかおかしい・・・)ハァ

提督「シマカゼ・・・?誰それ?」

提督「・・・って、そんなことより!あれ見てよ!あれ!」

大和「あっ、あれ・・・?」フゥー

提督「ほら!」

大和「・・・」クルッ

大和「!」

ドラム缶「」ドーン

大和「・・・」

大和「海岸にドラム缶がいくつも・・・」

提督「なんか、壮観だねえ・・・」ホワホワ

大和「昨日この辺りを見回りした時には何もなかったですよね・・・」ウーン

大和「漂流物でしょうか?」

提督「ちょっと気にならない?」ワクワク

大和「・・・まあ、確かに」チラ

大和「・・・」ジッ

大和「・・・でも、あまり迂闊に近づいてはいけませんよ、提督。中に何が入ってるともわからないんです。危険ですから、ここはまず私が様子を・・・」

提督「おーい大和ー!ちょっとこっち来てよー!」ガンガン

大和「!」ビクッ

大和「~!言ってるそばから、もうっ!」

大和(本当に人の話を聞かないんだからっ・・・!)

大和「こらっ!ドラム缶触るのやめてください提督!危ないですよ!」タッタッタッ

提督「そんなことより!これ!人!人が倒れてるよー!」

大和「・・・」

大和「・・・え?」

提督「早くー!」

大和「・・・」

大和「・・・ええっ!?」

数分後

??「ぴ、ぴゃあ・・・」パチ

提督「あっ、目が覚めたみたいだよ」

提督「おーい。大丈夫ー?」

??「・・・ここ・・・は・・・?」キョロキョロ

提督「貴女、海岸に打ち上げられてたんだよ」

大和「身体は大丈夫ですか?どこか痛い所はありませんか?」

??「うん・・・大丈夫・・・」ボー

??「・・・」

??「・・・ぁ!」ピクッ

提督「ん?」

??「ぴゃあ!思い出した!」バッ

提督「おわぁ!?」ドテッ

提督「うぅ・・・お尻いたいよぅ・・・」

提督「・・・」チラ

大和「ねえ。貴女、お名前教えてくれる?」

提督(・・・少しくらい気にしてくれてもいいのにぃ・・・)ショボン

??「ぴゃ!私、酒匂っていうの!」

大和「酒匂・・・」

大和「・・・!」

大和「・・・もしかして、阿賀野型軽巡洋艦の?」

酒匂「うん!」

酒匂「阿賀野型軽巡洋艦の四番艦、酒匂です!よろしくね!」

【鎮守府・執務室】

コト

大和「どうぞ」

酒匂「ぴゃっ!大和さん、ありがとぉ~!」ゴクッ

酒匂「・・・お湯だ!」

大和「・・・すみません」

提督「お茶とかコーヒーなかったからねぇ・・・」ゴクゴク

酒匂「大丈夫だよ!あたし、あったかいお湯だ~い好きだから!」

大和(罪悪感が・・・)キリキリ

提督(この辺りは寒いもんねえ)ポワポワ

大和「・・・それで、酒匂さん。さっきはどうしてあんなところにいたんですか?」

酒匂「ぴゃあ・・・」

酒匂「・・・あのね、鳳翔さんにお届け物があったの。でも、今日は潮の流れが強くって・・・」

酒匂「鳳翔さんを待たせたらダメだから、急いで頑張ったんだけど・・・」

大和「流されて座礁してしまった、と」

酒匂「うん・・・ごめんなさい」ショボン

大和「あっ、違うの。別に怒ってる訳じゃないのよ?」

酒匂「・・・ほんと?」チラ

提督「そうそう。たまにはそんなこともあるよ。気にしないで!」

提督「むしろ怪我がなくて良かったよ!ね、大和?」

大和「ええ。本当に」

酒匂「・・・うん。ありがとう」ニコ

提督「・・・」

提督「・・・ほーら!元気出して!」ガバッ

酒匂「ぴゃっ!くすぐったいよぉ~!」キャキャ

提督「ぴゃっ!っだって!かわいいねー!」サワサワ

酒匂「ひゃ~!も、もぉ~・・・お返し!」コチョコチョ

提督「ぴゃあ~!くすぐったい~!」バタバタ

酒匂「あ~!酒匂の真似しないでよ~!」

提督「やだよぉ~!」

キャッキャッキャッ

大和「何やってるんですか、もうっ・・・」ハァ

数分後

酒匂「む~!」プンスカ

提督「ごめんよぉ~機嫌直してよぉ~」

酒匂「やだ!司令のバカ!嫌い!」プイッ

提督「ぴ、ぴゃあ・・・」ショボン

酒匂「むぅ~・・・真似しないでって言ってるのにぃ・・・」プンプン

大和「・・・まあ、提督が悪いですね」

提督「や、大和まで・・・」

大和「そりゃそうですよ・・・」

提督「・・・くすん」

大和「・・・そんなことよりも、酒匂さん。貴女が運んでいたのは、海岸に打ち上げられていたドラム缶4個で間違いないですか?」

酒匂「・・・うん。そうだよ」

大和「中には何が入ってるか、教えていただいてもいいですか?」

酒匂「・・・ん。いいよ」

酒匂「・・・んと、お米とか、お野菜とか、お酒とか・・・」

酒匂「あと、着る物だったり、読み物だったり・・・」

酒匂「あっ!あと瑞鳳さんの玉子焼きも入ってるよ!それくらいかなあ?」

大和「荷物は全て鳳翔さん宛てですか?」

酒匂「うん!酒匂はね、時々こうやって鳳翔さんに色んなものをお届けしてるんだ!」

大和「なるほど・・・了解しました」

大和「一応、安全の為に、後で中身を確認させていただきますね」

酒匂「うん!いいよぉ~!」

大和「・・・ちなみに、いつ頃からこうして鳳翔さんにお届け物を運んでいるんですか?」

酒匂「うぅ~ん・・・大体一年くらい前?」

大和「頻度はどのくらいですか?」

酒匂「えーと、一ヶ月に一回くらい!」

大和「・・・わかりました。ありがとうございます」

大和「・・・」チラ

提督「・・・」イジイジ

大和(ちょっと、提督?)コソッ

提督(なにさ・・・)

大和(ほら、いじけてないで・・・何か酒匂さんに聞くことがあるって仰ってませんでしたか?)

提督(・・・あ)ポン

大和(もうっ、しっかりしてください!)

提督(世話をかけるねえ・・・)

提督「・・・」スッ

提督「・・・ね。酒匂ちゃん?少し聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

酒匂「むぅ~・・・なぁに?」ジトー

提督(うぅっ、視線が辛いよぅ・・・)

大和(自分のせいでしょ・・・)

提督「・・・あ、あのね。酒匂ちゃんの知っている人に、工事が得意な人って誰かいないかな?」

酒匂「工事・・・?うぅん・・・夕張さんは、よく難しそうな機械を触ってたかなあ」

提督(・・・夕張って誰?)

大和(・・・夕張型軽巡洋艦の艦娘ですよ・・・本当に大丈夫ですか・・・)ハァ

提督(艦娘ね・・・了解)

提督「なるほどね・・・他の人はどう?」

酒匂「う~ん・・・わかんない!」

提督「そっかあ・・・ん。わかった。ありがとね」

大和(・・・いいんですか?)

提督(・・・あんまりしつこく聞いても悪いからね)

酒匂「もういいかなあ?」ブラブラ

提督「うん。引き止めちゃって、ごめんね」

酒匂「イイよ~!じゃあ、酒匂は鳳翔のお店までお荷物を運んでくるね~!」

提督「あっ、それなら、私たちも一緒に運ぶよ」

酒匂「ぴゃっ?でも、酒匂、一人でも大丈夫だよ?」

提督「でも、あの量だとさすがに重いでしょ?それに、私たちも鳳翔にはお世話になってるから・・・ね、大和?」

大和「ええ。そうですね」

提督「酒匂ちゃんさえ良ければ、だけど、どうかな?」

酒匂「・・・」

酒匂「・・・えへへ。じゃあ、お願いしようかな!」

提督「おっけー!まかせて!」ボムッ

大和「では、早速行きましょうか」

酒匂「ぴゃ!」

提督「ぴゃ!」

酒匂「あー!」

酒匂「も~司令!真似しないでよぉ~!」ダッ

提督「ぴゃあぁぁぁ!逃げろ~!」ダダダッ

酒匂「バカー!」ダダダッ

ドタドタドタ・・・

大和「・・・」ポツン

大和「・・・」

大和(なんだかんだで仲が良い・・・かしら?)クス

【鎮守府・前】

提督「子供同士だから波長が合うですって!?」ウガー!

大和「自覚あったんですね・・・」

酒匂(司令は大和さんの考えてることがわかるのかなあ?)

読んでくれた人いたら、ありがと
残りは今日の夜に上げるよ
短編(短編とは言ってない)
ぴゃあは原田美世と同じくらい好き

あっ、提督が鳳翔さん呼び捨てにしてる部分があった・・・
ミスなので、そこは「さん」付けで脳内変換お願いします
申し訳ない

ぴゃあまで鳳翔呼びしてる・・・
すまねえ・・・脳内で「鳳翔さん」って変換してくれい

申し訳ないけど、仕事の都合で今日の投稿は厳しそう
見てくれてる人いたら、ごめんね
《張り子の虎》の次に、もうひとつ短編を入れてから、長編に入る予定
せっかくなので、尺の都合でカットすることになりそうな短編を紹介

《休日の過ごし方2》
提督が休日をどう過ごすかを描いた超短編。でも、ぶっちゃけ何もしてない。

《夢追人》
4月になると鳳翔さんの店に現れるという謎の男性客の噂を聞きつけた提督が、大和とともにその謎を解き明かしたり明かさなかったりする話。鎮守府の周辺事情が少しわかる。

《ファイアーフォーメーション》
人材難の鎮守府。提督はこの状況をなんとか打破するために、大和、さらには鳳翔も巻き込み、三人ががりで鎮守府の魅力を発信しようとする超短編。成果の有無は後の話ですぐわかる。

続きサクッとあげちゃうよ

【居酒屋・鳳翔】

ガタガタ

酒匂「鳳翔さ~ん!こんにちは~!」

提督「こんにちはー」

大和「お邪魔します」

カランカラン

鳳翔「・・・あら。皆さん、いらっしゃいませ」スッ

鳳翔「お好きな席へどうぞ」

提督「お邪魔しまー・・・」スタスタ

提督「・・・!?」ピクッ

大和「・・・提督?」

提督「・・・」スンスン

提督「・・・いい匂いがする」スンスンスン

鳳翔「あら。よくお気づきになられましたね」

提督「・・・何だろう、これ」フンフン

大和「あ、確かに・・・何でしょうか」スンスン

鳳翔「ふふっ。多分、これではないでしょうか」

コト

提督「・・・粉?」

大和「あっ。薫物ですね」

提督「薫物?」

大和「香木や香料を混ぜたものです。組み合わせるものによって、様々な香りになるんですよ」

提督「へぇ~」

鳳翔「はい。以前、行商の方にお勧めされまして。お店の中が爽やかになれば、と思ったんですけれど・・・いかがでしょう?」

提督「いいねぇ・・・」ポワポワ

大和「なんだか、気分が落ち着きます」フゥ

鳳翔「ふふっ。良かったです」ニコ

酒匂「ぴゃっ!鳳翔さ~ん!」

鳳翔「酒匂さん・・・お久しぶりです。元気でしたか?」ニコ

酒匂「ぴゃ~ん!酒匂、元気だよ!」

鳳翔「あら、本当ね」クスクス

酒匂「うんっ!」

鳳翔「・・・寂しくなかった?」

酒匂「大丈夫だよ!」

酒匂「だって、みんな一緒だもん!」ニコ

鳳翔「みんな・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「そう・・・」フッ

酒匂「うんっ!」

酒匂「・・・!」ピコン

酒匂「あっ・・・でも・・・」

酒匂「・・・」ショボン

鳳翔「・・・?」

鳳翔「何かありましたか?」

酒匂「・・・うん」

酒匂「・・・その、この前ね」

酒匂「・・・」

酒匂「阿賀野ちゃんが・・・」

酒匂「んぅ・・・」シュン

鳳翔「・・・」

鳳翔「そう・・・」

鳳翔「・・・」スッ

鳳翔「・・・辛かったわね」ギュ

酒匂「・・・ぴゃあぁ・・・」ギュウ

鳳翔「・・・」ヨシヨシ

酒匂「・・・」ピャア・・・

提督「・・・」

大和「・・・」スッ

提督(・・・ねえ、大和)コソコソ

大和(・・・何ですか?)コソコソ

提督(・・・もしかして私たち、お邪魔だった?)

大和(・・・かもしれませんね)

数分後

鳳翔「・・・ご心配をおかけしました」

大和「いえ、そんな・・・」

提督「全然大丈夫だよー」

酒匂「ぴゃあ・・・ありがとう。鳳翔さん」ペコリ

鳳翔「いいんですよ」フッ

鳳翔「・・・」

鳳翔「ねえ。酒匂ちゃん?」

酒匂「ぴゃ?」

鳳翔「私では、あまり頼りにならないかもしれないけれど・・・」

鳳翔「でも、あまり無理をしてはいけませんよ?辛いことがあったら、一人で抱え込まないでください。私で良ければ、いつでも相談に乗りますからね」

酒匂「鳳翔さん・・・」

酒匂「・・・」

鳳翔「約束。ですよ?」

酒匂「・・・ぴゃ!」

鳳翔「それに、私の方こそ、酒匂ちゃんのおかげで本当に助かっているわ。いつもありがとう」ニコ

酒匂「ぴゃ~ん!お役に立てて、酒匂も嬉しい!」

提督「あ、そうだ。鳳翔さん、頼まれていた物、外に置いておきました」

鳳翔「あら、ありがとうございます。わざわざここまで持って来てくださったんですか?重かったでしょう?」

提督「いえいえ!あれくらい余裕ですよ!」フンスフンス

鳳翔「ふふっ、提督は力持ちなんですね?」クスッ

鳳翔「・・・」

鳳翔「提督。それに、大和さんも、今日は私の勝手な都合でご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございませんでした」ペコリ

大和「そんなっ、これくらいのことならいつでも、遠慮なく言ってください!」

提督「そうそう、もーっと、色々頼ってくれていいんだよ?なんたって私、鎮守府の提督なんですから」フンスフンス

大和(またすぐに調子に乗って・・・)ハァ

鳳翔「あらあら。頼もしいですね」クスクス

鳳翔「では、また手が足りない時には、是非お願いします」ペコリ

大和「はい。任せてください」

提督「おっけーい!」

夕方

【母港】

酒匂「それじゃあ、酒匂はそろそろ大湊に帰るね!」

鳳翔「酒匂ちゃん。気をつけて帰ってくださいね」

酒匂「ぴゃあ!」

大和「お気をつけて」

提督「また座礁しちゃダメだよ~?」

酒匂「ぴゃっ!今度は大丈夫だもん!」グッ

提督「ほんとかな~?」ニヤニヤ

酒匂「むぅ~・・・もういいよ、司令のバカ!やっぱり嫌いー!」イー

提督「ぴゃあぁぁぁ」ガクガクガク

大和「・・・はぁ」

鳳翔「ふふ・・・」

酒匂「・・・」

酒匂「・・・」チラ

鳳翔「・・・?」

酒匂「・・・」ギュ

酒匂「・・・鳳翔さん!」

鳳翔「は、はい。どうしたんですか?」

酒匂「あのぅ・・・」

酒匂「・・・」キュ

酒匂「・・・!」

酒匂「こ、これ!」パッ

鳳翔「・・・これ」

提督「おお?これって・・・」

大和「・・・桜の枝?」

酒匂「・・・鳳翔さん、去年、私が初めて来た時に言ってたでしょ?春なのに桜が見れないのが残念だ、って」

大和「・・・この辺りの寒さは、桜には厳しいでしょうからね」

提督「・・・そうだったんだ」

鳳翔「・・・覚えてくれていたの?」

酒匂「・・・うん」

提督「あっ、でも、花が・・・」

酒匂「・・・私のいる大湊では、もう桜の花が散り始めてたの。でも、少しだけでもいいから、鳳翔さんに桜を見せてあげたいなって・・・」

大和「なるほど・・・」

鳳翔「・・・」

酒匂「・・・花が咲いてるうちにって、無くさないようにって、頑張って、急いだのになぁ・・・」シュン

酒匂「うぅ・・・ごめんなさい。鳳翔さん・・・」

鳳翔「・・・」

酒匂「・・・うっ・・・うぅ・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・」フッ

鳳翔「・・・酒匂ちゃん」スッ

ギュウ

酒匂「ぴ、ぴゃ・・・鳳翔さん・・・」

鳳翔「・・・ありがとう。その気持ちが、私にとって何よりも嬉しいわ」

酒匂「でもっ、でも・・・!」フルフル

鳳翔「・・・いいの」サラ

酒匂「・・・!」ハッ

鳳翔「・・・こうして貴女も来てくれたことですし、最近は提督と大和さんまでいてくれるんですもの。寂しくなんてないわ」

鳳翔「本当にありがとう」

酒匂「・・・」ツッ

酒匂「・・・んっ」ギュ

酒匂「んくっ・・・」

鳳翔「・・・優しい子」ナデナデ

鳳翔「・・・貴女にこれだけ想ってもらえて、私は本当に果報者です」

大和「・・・」

大和「・・・?」チラ

大和(提督・・・?)

提督「・・・」ゴソゴソ

提督「・・・んー・・・」

提督「・・・」ゴソゴソ

提督「・・・」

提督「お」

提督「・・・あった」

酒匂「ん・・・」

鳳翔「・・・」ナデナデ

トテトテトテ

提督「・・・ね。酒匂ちゃん」

酒匂「・・・」クスン

酒匂「・・・なあに?」

鳳翔「提督・・・?」

提督「これ」スッ

酒匂「・・・?」チラ

酒匂「!」

鳳翔「!」

大和「・・・それは」

酒匂「・・・そ・・・れ・・・」

酒匂「桜の・・・花・・・?」

鳳翔「そんな、どうして・・・?」

提督「・・・その桜の枝、大切なものだったから、無くさないようにドラム缶に入れないで、ずっと手元に持っていたんだね」

酒匂「・・・ん」コクン

酒匂「でも・・・どうして・・・?」

提督「海岸に打ち上げられてるのを見つけた時に、少しね」

大和「・・・あ」

大和「・・・もしかして、花は座礁した時に・・・?」

提督「うん。派手に打ち上げられてたみたいだったからね。きっとその時に、残ってた花が取れちゃったんだと思うよ」

大和「では、提督は、今の間に海岸まで花を探しに・・・?」

提督「・・・へっ?」

提督「あ、いやあ、それはまあ、たまたまだけどね。たまたま・・・」アハハ

大和「・・・どんなたまたまなんですか」ジトー

鳳翔「ふふっ・・・」クスッ

提督「・・・ま、そんなことはいいじゃない」

酒匂「・・・」ホケー

提督「はい。酒匂ちゃん」スッ

酒匂「ぁ・・・」

提督「今度は失くしたらダメだからね」

酒匂「・・・」ギュウ

酒匂「・・・」

酒匂「・・・あの、ありがとう、司令・・・」

提督「・・・ん」

提督「・・・ほら!そんなことより、それ!」

酒匂「えっ・・・?」

提督「それ。何のために、頑張ってここまで持ってきたんだった?」

酒匂「ぁ・・・」

鳳翔「・・・」

酒匂「・・・鳳翔、さん・・・」

鳳翔「・・・」

酒匂「・・・」

鳳翔「・・・酒匂ちゃん?」

酒匂「・・・はい」

鳳翔「・・・お花」

鳳翔「・・・見せてもらえるかしら?」ニコ

酒匂「・・・!」パァッ

酒匂「・・・うんっ!」ニッコリ

数分後

大和「良かったですね。酒匂さん」

酒匂「ぴゃ~あ!酒匂、幸せ!」ニコニコ

鳳翔「私も、久し振りに桜の花が見れて、とても綺麗で、懐かしくて・・・幸せな気持ちになりました・・・」

鳳翔「本当にありがとうございます。酒匂ちゃん」

酒匂「ぴゃあ!」

提督「・・・」

提督「・・・酒匂ちゃん!」ガバッ

酒匂「ぴゃっ!・・・司令・・・?」

提督「・・・」ギュギュー

鳳翔「提督・・・?」

提督「・・・私も、鳳翔さんも、それに、きっと大和だって」

大和「・・・」

提督「み~んな、元気一杯な貴女のことが、大好きなんだよ?」

酒匂「・・・!」

鳳翔「・・・」コクン

大和「・・・」フッ

酒匂「・・・」

提督「これからも辛いことや悲しいこと、たくさんあるかもしれないけど・・・」

提督「お願い。どんな時も、笑顔を忘れないで」

酒匂「笑顔・・・」

提督「そ。笑顔!」ニッ

提督「元気な酒匂ちゃんの笑顔、すっごく可愛いなって思うし、私も・・・ううん、わたしだけじゃない。きっとみんなが、貴女の笑顔から、すっごく元気をもらえるはず」

提督「だから・・・ね?」

酒匂「・・・っ」

酒匂「・・・」

酒匂「・・・うんっ!」ニコ

提督「・・・!」

提督「・・・よしっ!」ニコ

酒匂「あ・・・司令?」

提督「んー?どうしたの?」

酒匂「あのね・・・」モジッ

酒匂「・・・」

酒匂「・・・あのね。酒匂、司令のこと、やっぱり嫌い!」イー

提督「なー!?」ガーン

大和「だから嫌われるようなことばっかりするからでしょ・・・」

鳳翔「あ、あはは・・・」

提督「」ガクガクガク

酒匂「・・・」

酒匂「・・・でも」

酒匂「・・・でもね」

酒匂「・・・今日は、その・・・ありがとうっ!」

提督「・・・!」

酒匂「それと、その・・・」

酒匂「司令のこと、ほんとに少しだけだけど・・・」モジモジ

酒匂「・・・」チラ

酒匂「・・・好き」

提督(天使や・・・)ポワポワ

大和(昇天してる・・・)

後日・深夜

【居酒屋・鳳翔】

鳳翔「・・・」カサッ

鳳翔「・・・」

鳳翔「ふふっ・・・」カサッ

ガラガラ

提督「鳳翔さーん」

鳳翔「あ、提督。いらっしゃいませ」

提督「うー・・・もうすぐ5月なのに、相変わらず寒いねえ・・・」ガタッ

鳳翔「お風邪を召さないように気をつけてくださいね・・・はい。どうぞ」コト

鳳翔「白湯ですけれど、身体が温まりますよ」

提督「おぉーありがとー」ゴクゴク

鳳翔「・・・」カサッ

提督「・・・あれ?鳳翔さん、何読んでるですか?」

鳳翔「あ、これですか?」ガサッ

提督「・・・雑誌?」

鳳翔「鎮守府や海軍に関する情報誌みたいなものです。青葉通信というんですけど、重巡洋艦の青葉さんが書かれてるんですよ」

鳳翔「先日酒匂ちゃんが持ってきてくれた最新号なんです」

提督「へぇー。私も読んでもいい?」

鳳翔「ええ。はい、どうぞ」ガサッ

提督「ありがとー」

提督「ほえー・・・深海棲艦の動向から、どこぞの提督の趣味嗜好まで・・・なんというか、守備範囲が広いね・・・」ペラペラ

鳳翔「青葉さんの取材は徹底していらっしゃいますけど、ゴシップ誌のような内容もあったりして、それがまた好評だったりするんです」クスッ

提督「なるほどねぇ・・・」ガサガサ

提督「・・・」

提督「・・・ん?」

鳳翔「・・・?どうかなさいましたか?」

提督「いや、この記事なんだけど・・・」

《阿賀野、ダイエット失敗!再びリバウンドか!?》
恒例のニュースが飛び込んできた。阿賀野型軽巡洋艦のネームシップであり、現在はラバウルの基地に所属している阿賀野さんが、またもややってしまったようだ。
以前から食べ過ぎによる体重の増加を度々指摘されてきた阿賀野さん。本人もかなり気にはしていたようで、姉妹艦の能代さんによる厳しい指導の下、何度もダイエットに挑戦する姿が目撃されてきた。
今回のリバウンドは通算33、4回目ということで、それについて阿賀野さん本人は「スヤスヤスヤァ・・・」などと寝たフリをしてお茶を濁し、能代さんは「でたわね」と呆れ顔だった。
さらには末妹の酒匂さんも酷く心配しているとの情報もあり、今後も阿賀野さんたちの動向から目が離せないと思われる。
・・・
・・

提督「・・・」ワナワナ

鳳翔「阿賀野さんったら、本当に可愛い方ですね」クスクス

提督「・・・」ワナワナ

鳳翔「あら?提督?どうなさいましたか?」

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・帰ろ」

《張り子の虎》
おしまい
読んでくれた人いたら、ありがと
ぴゃあはたまにしか出ないけど重要ポジションだったりそうじゃなかったり
この短編、かなり無理矢理短くしたから所々違和感あるのはごめんなさい
原田美世の良さを3時間に渡って語りたい

《月夜》

4月某日・深夜

【鎮守府・寝室】

大和「・・・」スゥスゥ

大和「・・・ん」ゴソ

大和「・・・」

大和「・・・」パチ

大和「・・・水」

ゴソゴソ

大和「・・・」ムクッ

大和「・・・」チラ

大和「・・・?」

大和「・・・提督?」

【海岸】

サァァァ・・・

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・お腹減ったよぅ・・・」グゥ~

提督(夜食のために釣りを始めてから、はや3時間・・・)

提督(見よう見まねで作ってみた釣竿に、なけなしの干物をつけてみたけど・・・)

提督(当たりは全くなし・・・)

提督「・・・」

提督「・・・んんっー!」グー

提督「・・・」フゥ

提督「・・・」

提督「・・・こんなに月が綺麗なんだから、団子でもあれば最高なのになあ・・・」

提督「・・・」

提督「・・・これじゃあ、つみれも作れないしね・・・」クスッ

提督「・・・」

提督「・・・ふわぁ」

提督「・・・」ムニャムニャ

提督「・・・」チラ

時計(午前4時)

提督「・・・ん」

提督(潮時かなあ・・・)

サク、サク、サク

??「・・・釣れましたか?」

提督「・・・ううん。全然」

??「魚たちもこの時間はお休み中でしょうからね・・・仕方ありませんよ」クスッ

提督「んー・・・」

??「・・・」

提督「・・・」

??「・・・」スッ

提督「・・・」

サァァァ・・・

提督「・・・」

提督「大和はさぁ・・・」

大和「はい?」

提督「大和は・・・」

提督「・・・」

提督「・・・どうしてこんなところにいるんだろうね」

大和「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・ぁ」

提督「・・・ごめん」

大和「・・・」

大和「・・・どうして、謝るんですか?」

提督「・・・無神経なこと、言っちゃった」

大和「・・・」チラ

大和「・・・」フッ

提督「・・・」

大和「・・・」

サァァァ・・・

大和「・・・そういえば、前から少し思っていたんですけど・・・」

提督「・・・」

大和「・・・提督って、誰かに似ていますよね」

提督「・・・」

提督「・・・誰かって、誰?」

大和「さあ・・・」

大和「・・・」

大和「誰でしたか・・・」

提督「・・・」

提督「・・・なにそれ」

大和「私も・・・よく、わからないんですよ」

大和「・・・」

大和「・・・でも、なんとなく・・・」

大和「なんとなく・・・」

大和「・・・」

大和「・・・懐かしいような」

提督「・・・」

大和「・・・」

提督「・・・全く覚えがないなあ」

大和「・・・そうですね」クスッ

大和「・・・」

大和「・・・きっと、気のせいです」

提督「・・・ね」

大和「・・・」

提督「・・・」

大和「・・・」スッ

ファサ

提督「・・・」

大和「・・・外に出るときは、ちゃんと上着くらい着てください」

大和「風邪でもひかれたら・・・困りますから」

提督「・・・ん」

提督「・・・」ギュ

提督「・・・ごめんね」

大和「・・・」

大和「・・・構いませんよ」

大和「・・・」

大和「・・・提督の為、ですから」

提督「・・・」

提督「・・・ん」

サァァァ・・・

提督「・・・」

大和「・・・」

《月夜》
おしまい
読んでくれた人いたら、ありがと
次から長編
その後のことは未定
原田美世のSSRはまだか

【鎮守府・執務室】

提督(・・・残念な報告がある)ゲンドウポーズ

提督(私がこの鎮守府に派遣されて、今日ではや一ヶ月がたつ)

提督(本日は五月一日、月曜日)

提督(空は快晴。波は穏やか。)

提督(爽やかで、とても過ごしやすい一日だ・・・)ポワポワ

提督(大和は「こんなにいい天気の日も珍しいですから、たまっている洗濯物を全部洗ってしまいましょう」と言って、鎮守府裏の風呂場で洗濯に勤しんでいる)

提督(・・・)

提督(・・・)カリカリ

提督(先日、私と大和、さらには鳳翔さんにも協力を仰ぎ、三人による人材発掘作戦、通称ファイアーフォーメーションに踏み切った)

提督(緻密かつに練り上げられた作戦と三人による高度な連携によって、万全を期したこの作戦の成功は、始まる前から既に約束されていると言っても、過言ではない状況だった)

提督(・・・)クッ

提督(・・・そのはずだった)

提督(・・・)カリカリ

提督(・・・結論から言えば、ファイアーフォーメーションは失敗に終わった・・・)

提督(完璧な作戦に穴があったのか、はたまた我々にどこか慢心があったのか・・・)

提督(・・・)

提督(・・・今となっては、闇の中である)

大和(割と穴だらけだったような・・・)

提督(!)

提督(脳内に直接・・・!?)

大和(馬鹿なこと言ってないで、早く報告書をまとめてくださいね)

提督(・・・はい)ショボン

提督(・・・)カリカリ

提督(・・・現在、この鎮守府に所属しているのは、提督の私以外には大和型戦艦の一番艦、大和のみという、非常に厳しい状態が依然続いている)

提督(加えて、唯一の艦娘である大和は資源に乏しい今の我々では運用することがほぼ不可能であり、この状況下での深海棲艦との戦闘は、極めて困難かつ危険であると言えるであろう・・・)

ボムッ・・・

提督(ん・・・?)チラ

提督(・・・)

提督(気のせいか・・・)

提督(・・・)カリカリ

提督(・・・課題は山積みである)

提督(足りない資材や食料、そもそも存在すらしていない工廠に酒保、さらにはお風呂・・・)

提督(・・・結局、何一つとして解決には至っていない)ハァ

提督(大本営からの指示は、未だに一度も届いていない)

提督(艦娘を含む人員や資材に関する幾度の要請に対しても、決まって答えは『我々も余裕がない』と、そればかり)

提督(・・・恐らく、上は我々に対して手を貸す気が一切ないのだろう)

提督(その理由は定かではないが、つくづく気に入らない連中である・・・)ギリギリ

ボムッ!

提督(・・・ん?)

ポン

提督(なんだろ・・・)チラ

提督(・・・ま、いいや)

提督(報告書報告書っと・・・)

提督(・・・)カリカリ

キリが悪いけど、今日はここまで
読んでくれた人いたら、すごくありがと
最終的にファイアーフォーメーションは手を替え品を替え3回行われる…らしい
せっかくなのでまたまたカットになりそうな短編を紹介

《玉子焼きの行方》
鳳翔さんのお店に大切にしまってあった玉子焼きがなくなった。悲しむ鳳翔さんのために、提督と大和が犯人探しに乗り出す話。
提督「たべりゅううう!」

《釣れますか?》
最近釣りをすることが多いものの、全く成果のでない現状に嫌気がさした提督が、釣り具一式とともに修行の旅に出る話。
仕事しろ。

《髪は女の命》
髪が伸びてきた提督が、次の髪型をどうしようかと悩む話。
提督について色々わかるかもしれない。

提督(鎮守府周辺は至って平和である)

提督(日に三度、毎日周囲約3kmに渡って見回りを続けているが、深海棲艦の姿を確認したことは一度もない)

提督(また、とある筋からの情報によれば、この辺りは元々人が極端に少なく、現在に至ってはかなり内地の方にしか住人はいないらしい)

提督(まあ、深海棲艦の脅威を考えれば、海沿いに居を構えることは得策ではないのは明らかである)

提督(万が一の場合にも備えて、ということだろう)

提督(・・・)カリカリ

提督(我々が確認している限り、鎮守府近辺に住んでいるのは、今は既に退役されている鳳翔さんのみだ)

提督(彼女は現在、一人で居酒屋を経営しながらひっそりと生活されているが、さすがに艦娘ということもあり、一般人には体力で大きく勝るらしい。さらに、長年の経験と戦闘に関する知識も豊富であることから、彼女に関して必要以上の心配は不要と思われる)

提督(・・・)カリカリ

提督「大本営にはあらゆる面において、さらなる協力をお願いしたい所存である・・・っと」

提督「うーん・・・こんなものかなあ」シゲシゲ

提督「・・・ほんとはもっとガツーン、って強く言った方が良いのかもしれないけど、あんまり言うとロクなことにならないだろうし・・・」

提督「・・・」ムーン

提督「・・・ん。ま、問題ないかな」

提督「よーし!報告書終わり!」

提督「んん~!」ノビー

提督「ふぅ・・・」

提督「・・・」チラ

提督「・・・見回りのまではまだ時間あるし・・・せっかくだから、大和の洗濯でも手伝いにいこうかなあ」

提督「・・・ん?」ピクッ

ボムッ!

提督「・・・」

提督「・・・さっきから、な~んか変な音がちょくちょく聞こえるんだよねぇ・・・」

提督「んー・・・一体なんなん・・・」

ドカァァァン!

グラグラ・・・

提督「どわぁ!?」ドテッ

提督「い、痛い・・・またおしり打っちゃったよぅ・・・」

提督「うぅ・・・な、何が起こったんだろ・・・」スリスリ

ダダダッ

バタン!

大和「提督!」

提督「・・・お、大和。洗濯終わったの?」

大和「そんな場合じゃないです!ご無事ですか、提督!?」

提督「今ちょっと転んじゃって、おしりが痛いけど・・・」

大和「じゃあ大丈夫ですね・・・」チラ

提督(もっと心配してくれても・・・)ショボン

大和「そんなことより、急いで外に来てください!緊急事態です!」

提督「どうしたの?洗濯物が風で飛ばされたとか?」

大和「違いますっ!ほら、馬鹿言ってないで、早く!」グイー

提督「・・・くすん」ズルズル

大和「敵襲です!危険ですから、一旦ここから離れます!急いで!」

読んでくれた人いたら、ありがと
今日明日と少し忙しいから、短いけどここまで
短編は全部書くには時間的に厳しいから…ごめんなさい
どうしてもこれ書いてくれってのがもしあったら言ってね

>>123
[訂正]
見回りのまではまだ時間あるし

見回りまではまだ時間あるし

何度も何度もごめんね

《四月一日》

・・・

・・・

・・・

提督「・・・はっ!?」

提督「・・・」

提督「・・・」キョロキョロ

提督「・・・」

提督「・・・え?」

提督(あ・・・ありのまま今起こった事を話すよ!)

提督(私は鎮守府が襲われて鳳翔さんの所に向かおうと思っていたらいつの間にか執務室の机に座っていた)

提督(な・・・何を言っているのかわからないと思うけど、私も何が起こったのかわからなかった・・・)

提督(頭がどうにかなりそうだった・・・艦娘だとか妖精さんだとかエラー娘だとかそんなチャチなものじゃ断じてない)

提督(もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ・・・)

??「提督?何を一人でぶつぶつ言ってるんですか?」

提督「あ、いや。ごめん。ちょっと、変な夢を見ていたみたいで、混乱してて・・・」

??「体調が良くないなら、一度休憩を取ってくださいね」

提督「う、うん。ありがとう、やま・・・」クルッ

提督「・・・」

提督「・・・誰?」

大和?「えっ、何言ってるんですか。大和ですよ」

提督「いや~・・・そんなはずない。貴方は大和じゃないよ」

大和?「急にどうしたんですか?」

提督「急展開すぎて困ってるは確かだけど、間違いなく貴方は大和じゃないよ」

大和?「そんなこと言われても・・・」

提督「・・・はぁ」

提督「・・・だって、大和は艦娘なんだよ?」

提督「・・・貴方、男じゃない」

大和?「・・・?そりゃそうですよ」

提督「いやだからそうじゃなくて!」

提督「私の知ってる大和は、女の人で、もっとこう、綺麗なの!かわいくってスタイル抜群なの!」

提督「貴方みたいに筋肉隆々のたくましい身体つきじゃないんだってば!」

大和?「ええっ!?」

提督「なんでそっちが驚いてるの!?」

提督「しかも何、その格好!?全身縦縞に帽子って・・・絶対おかしいよ!」

大和?「試合終わってすぐ来たんですから、仕方ないじゃないですか。ユニフォーム着替える時間が無かったんですよ」

提督「だから試合って何!?」

大和?「そんな!昨日だって左打席で初めてヒット打ったのに、見てくれてなかったんですか!?」

提督「知らないよ!ほんと知らないよ!ヒットって何の話よ!?」

大和?「決まってるでしょ!開幕戦の話ですよ!」

提督「こっちは戦闘が開幕してたんだよ!でも、少なくとも貴方のことは全く知らないよ!」

大和?「広島に競り勝って、急いで戻って来たのに・・・酷いですよ、提督・・・」ショボン

提督「何で私が悪いみたいになってんのさ・・・てか広島って何よ・・・」ハァー

バーン!

大和「提督!」

提督「あっ大和!無事だったんだ!」

大和「え?何の話ですか?」

提督「いやあ、さっき目が覚めたらさ、そこに自分を大和って名乗る人がいたからビックリしちゃって・・・」

大和「・・・?」

提督「ん?どうしたの、大和?」

大和「・・・あの提督、さっきから気になっていたんですけど・・・」

提督「・・・うん?」

大和「私、大和じゃないですよ?」

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・んぇ?」


前田「私、前田ですよ」

・・・

ボムッ!ボムッ!

提督「・・・はっ!?」

提督「・・・」

提督「ここは・・・」

大和「・・・提督?どうしたんですか?」

提督「・・・」チラ

提督「前田・・・」

大和「・・・はい?」

大和「前田って・・・誰のことですか、もうっ・・・こんな状況なのに、寝ぼけてるんですか?」プンプン

ドカァァァン!

提督「・・・」ビクッ

提督「・・・」ジー

提督「大和・・・だよ、ね・・・?」

大和「当たり前ですっ!何言ってるんですか!」

提督「・・・うん。ごめん」

大和「そんなことより、ほら、もたもたしてないで、早く鳳翔さんの所へ行きましょう!」

提督「あ、うん」

提督「・・・」


提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・ぉ」ポン


提督「なんだ。四月一日か」

だめだ…俺はダチャーンPなんだ…ダチャーンオンリーなんだ…例え、どれだけ制服乙倉ちゃんが可愛くても…例え今日がエイプリルフールでもっ…ダチャーンSSRがくるその日まで…絶対に、ガチャは回さないと…決めてるんだ…!

本編の続きは多分今日の夜にあげます

鳳翔さんの所へ向かう下りは続きでわかるかと思います
どの辺まで投稿したか全然把握してなかった…
ごめんなさいなんでも島風

>>125から続きいくね
間のやつは、野球詳しくない人は気にしなくていいよ

【鎮守府前】

大和「提督!急いで!」

提督「ま、待ってよぅ~・・・」ヒョコヒョコ

提督「うー、おしり痛いのにぃ・・・」スリスリ

大和「提督のおしりなんて今はどうでもいいです!それよりあれを!」バッ

提督「今だけじゃなくて、いつも扱い雑な気が・・・」ムー

提督「・・・って、あれ?」クルッ

提督「・・・」ジー

提督「あれって・・・」


駆逐イ級「ォォォォォ!」

ドンッ!ドンッ!

ヒュウゥゥゥ・・・

ポン・・・

提督「・・・なにあれ」

大和「深海棲艦ですっ!見ればわかるでしょう!もうっ!」

提督「・・・へぇ。あれが」

提督「・・・」ジー

提督(鎮守府から遠くに小さく見える・・・)

提督(灰色で変な形・・・なんだか胡麻プリンみたいだなあ・・・)

ボムッ!

ヒュウゥゥゥ・・・

ポン・・・

提督「・・・なんか撃ってるね・・・」

大和「こちらを狙って砲撃しているようです。かなり距離があるので、正確に狙いをつけられてはいないようですが・・・とりあえず、ここは危険ですから、提督は安全な場所へ・・・」

提督「・・・」ジー

大和「あの・・・提督?」

提督「・・・あ、ううん。なんでもない」

提督「・・・」タッタッタッ

提督(前に聞いた話だと・・・)

提督(・・・)

提督(・・・他所で仕留め損ねたのか)

提督(或いは・・・)フンッ

ボムッ、ボムッ・・・

提督「・・・で、どうしようか」

大和「そうですね・・・まず、遠目にしか確認できていませんが、どうやら敵はあの一隻だけのようです」

提督「そうなの?」

大和「目視できる範囲では。ですが、海中には潜水艦が潜んでいる可能性もあるので、油断はできません」

提督「なるほどね」フムフム

提督「とは言っても・・・」

ドカァァァン!

ガラガラ・・・

提督「ヒ、ヒエ~・・・」ビクビク

提督「うぅ・・・このまま何もせずにいるわけにはいかないよね・・・」ジー

ドカァァァン!

大和「そうですね・・・」チラ

提督「・・・なんとかできない?」

大和「ん・・・」ジー

大和「・・・資材に余裕は全くありませんが・・・あの程度の相手であれば、一度の出撃で十分対処できるでしょう」

大和「幸い、私たち艦娘の艤装や主砲には緊急時に備えて、微量ですが予備の燃料や弾薬があります。それを使えば、なんとか・・・」

提督「おぉ・・・!流石は我が鎮守府の唯一にして最高戦力・・・頼もしい・・・!」キラキラ

大和「・・・別に。これくらい、私じゃなくても・・・」

大和「・・・」ポリポリ

提督「んー?」ジー

大和「な、なんですか?」

提督「照れんな照れんな~!可愛い奴め~!」ニヤー

大和「か、可愛いって・・・」カァッ

提督「うりうり~」グイグイ

大和「ちょっ、急に押さないでください提督!危ないですっ!あと照れてませんから!」グイー

提督「そっかそっかあ」ポワポワ

大和「本当なんですからっ!もうっ!」プンプン

提督「そっかそっかあ」ポワワ~ン


・・・

提督「じゃあ、大和!早速よろしく頼むね!」

提督「あんな奴、ぼっこぼこのぎったぎたしてやって!こうやって!こんな感じに!」ヒュッヒュッ

大和「・・・」

大和(・・・本当に、子供みたいな人ね)クスッ

大和(・・・)

コーヤッテ、ココデパンチ!コンナフーニキックモ!コンナカンジニ!エイエイ!

大和(・・・)

大和(実戦・・・)

大和「・・・」フルフル

大和(考えても仕方ないわね・・・)

大和(そんな、余計なこと・・・)

提督「・・・ん?大和?」クルッ

大和「あっ、いえ・・・」

大和「・・・」

大和「・・・わかりました!大和にお任せください!」サッ

提督「よーし!任せる!」

大和「はいっ!」

提督「・・・」ワクワク

大和「・・・」ジー

提督「・・・」

大和「・・・?」

提督「・・・ん?」

大和「・・・え?」

提督「・・・出撃しないの?」

大和「あ、はい。しようとは思っているんですけど・・・」

提督「うん。じゃあ、頑張ってね!」グッ

大和「・・・」

大和「・・・あの。提督?」

提督「ん?どうしたの?」

大和「私の装備はどこでしょうか?」

提督「・・・?」キョトン

大和「・・・?」

提督「・・・大和が持って来たんじゃないの?」

大和「・・・いいえ。以前所属していた鎮守府の装備は、全て置いていかなければいけませんでしたから」

大和「・・・提督が持って来てくださったんではないんですか?」

提督「いやいや。装備の話なんて全く聞いてないよ」ヒラヒラ

大和「・・・」

提督「・・・」

「「・・・えっ」」」

ドカァァァン!

提督「うわっ!」ビクッ

大和「・・・まずいですね。徐々に当たりが近くなってきています」チラ

提督「ちょっ、どうするの!?」

大和「そう、ですね・・・」

大和「・・・この辺りには私たち以外だと、鳳翔さんしかいないでしょうから、万が一のために住民の避難などを大きな声でよびかけながら、鳳翔さんの元へ向かいましょう。いくらあの人でも、装備もなしで一人でいるのは危険ですから」

提督「でも、鳳翔さんなら深海棲艦のこともよく知ってるだろうし、危険を感じてもう内地に避難しているかも知れないよ?」

大和「それなら問題ありません。ただ、何があるのかわかりませんから、念のために確認するべきでしょう」

提督「・・・あの深海棲艦はどうするの?」チラ

大和「・・・一隻ですし、砲撃の規模から艦種は駆逐艦と思われますから、わずかな時間であれば放置しても問題ないでしょう。それに、こちらを警戒しているのか、近づいてくる様子もありません」

大和「それよりも、まずは鳳翔さんの安全を確保するべきです」

提督「なるほどね・・・了解」

提督(まあ、鎮守府はほとんど空も同然だしね・・・)

大和「・・・すみませんでした。私がもっとしっかり確認していれば、こんなことにはならなかったのに・・・」シュン

提督「・・・いいよ、そんなこと。私も全然注意が足りてなかったし」ポンポン

提督「むしろこういうのこそ、提督の私の責任なんだから。大和は何も心配しなくていいよ」グッ

大和「提督・・・」

ボムッ!ボムッ!

提督「・・・っと。そんなことよりも、まずは鳳翔さんの所でしょ!ほら、急ご!」スッ

大和「あっ・・・はい」ギュ

提督「ほっ・・・」グイ

大和「・・・」

大和「・・・」フッ

大和「・・・ありがとうございます、提督」ニコ

提督「もー何言ってるの!」ビシッ

提督「困った時はお互い様。遠慮しないで、これからもどんどん提督頼っちゃっていいんだよ?」

提督「・・・それに、前の鎮守府では、あんまり出番なかったみたいだけど、ここじゃそんなこと言ってる余裕は全然ないんだからね!」

提督「私も何から何まで、遠慮なく大和に頼りまくっちゃうんだから」ニッ

大和「ぁ・・・」

大和(私が提督を信じて、提督が私を信じる・・・)

大和(お互いがお互いを、信頼し合い、支え合う・・・)

大和(これが・・・)

大和(・・・)グッ

大和「・・・はい。いつでもお待ちしていますね」ニコ


・・・

大和(いつ、どこで、誰と、こんな話をしていただろうか・・・)

大和(・・・きっと、もう、思い出すこともできないけれど・・・確かにこの胸の奥に残っている・・・)

大和(・・・)スッ

大和(・・・絆・・・記憶・・・運命・・・)

大和(・・・少し前の私は、全く気づかなかったもの・・・)

大和(ううん・・・違う。そうじゃない)

大和(本当は、ずっと前から知っていた。憶えていた。ただ、見ようとしていなかっただけ)

大和(暗い過去に囚われて、辛い現実から逃げ続けてきた)

大和(自分の未来を、諦めていた)

大和(・・・)ギュ

大和(・・・でも)

大和(・・・)

大和(でも、それでも)

大和(少なくとも今だけは、目の前のこの人を・・・私を信じると言ってくれた、この人のことを信じてみたい)

大和(それが、私の意思)

大和(それが、私の願い)

大和(それが、私の決意)

大和(・・・ねぇ、××)

大和(あなたの言う通りだったわ)

大和(もう、あなたの名前も、顔も、声音も、何も思い出せないけれど)

大和(あなたが私に教えてくれたものは、確かにここにある)グッ

大和(だからこそ、今度は・・・今度こそは・・・)ギュ

大和(私は、私の心に、従うわ)

大和(もう、後悔だけは、したくないから)

大和(だから・・・)

キッ

大和(・・・だから、見ていて)

大和(大和型戦艦一番艦、戦艦大和の生き様を)

大和(この私の、命の輝きを)

読んでくれた人いたら、ありがと
今日中に終われるか怪しい…
書きためてある分は取り敢えず夜にはあげれるかな…
まあ何にせよ、新年度も原田美世と艦これをよろしく

もうちょっとだけいくよ


【居酒屋・鳳翔】

提督「鳳翔さーんっ!」タタッ

鳳翔「・・・あら、提督?どうされたんですか」ヨイショ

提督(風呂敷と袱紗・・・)

提督「もう荷物をまとめて・・・じゃあ、鳳翔さんも敵に気づいてたんだ」

鳳翔「ええ。聞き覚えのある音が聞こえましたので、外に出て確認してみたら、深海棲艦の姿が見えまして・・・」

鳳翔「最低限必要なものだけですけど、これだけ持って、内地の方に一度避難しようと思っていたところです」

提督「そっか・・・とにかく、無事で良かった」ホッ

鳳翔「あの・・・ところで、提督はお一人ですか?大和さんは・・・?」

提督「あー・・・えっと・・・」ポリポリ

提督「・・・遅いから、先に来ちゃった」テヘッ

鳳翔「な、なるほど・・・」

鳳翔(噂には聞いていたけれど、本当に凄い身体能力なのね・・・)

提督「でも、鳳翔さん。逃げるなら急いだ方が良いよ。いつ敵がこっちに向かってくるともわからないんだから」

鳳翔「そうですね。ご心配、ありがとうございます」スッ

鳳翔「提督は、これからどうなさるおつもりですか?」

提督「うーん・・・それなんだよねえ」

鳳翔「・・・?」

・・・

鳳翔「なるほど・・・つまり、大和さんの装備がなくて、迎撃することさえままならない、と」

提督「どーせ大本営の嫌がらせだよ!あいつら、私たちにいっつも嫌がらせばっかりしてくるんだもん!」プンスカ

鳳翔「・・・」

提督「・・・でも、今回はほんとに困ってるんだよねぇ・・・私たちに出来ること、なんにもなくなっちゃったし・・・」シュン

鳳翔「ん・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔(・・・そういえば)

鳳翔「・・・」チラ

提督「・・・鳳翔さん?」

鳳翔「・・・」


鳳翔「・・・提督。少し、見ていただきたいものが・・・」

数分後

大和「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」ゼーゼー

大和「よ、ようやく・・・着いた・・・」

大和(提督ったら、『先行ってるねー』って言い残して、さっさと先に行っちゃうんだから・・・)

大和(・・・まあ、あの人に着いていけない私の責任かもしれないけど・・・それにしても、相変わらずとんでもない身体能力ね・・・)フー

ガラガラ

提督「あ!ようやく来た!待ってたんだよ、大和ー!」

大和「・・・提督?」チラ

鳳翔「・・・」スッ

大和「あ、鳳翔さん・・・」

大和(無事だったんだ・・・良かった・・・)ホッ

提督「ちょっとこっちに来て。早く早く!」ピョンピョン

大和「なんですか、もう・・・」ハァ

鳳翔「大和さん。私の方からも、お願いします」

大和「鳳翔さん?別に構いませんけど、一体何が・・・」

鳳翔「時間もありませんし、実際に見ていただいた方が良いでしょう。取り敢えず、今から裏の倉庫に行きます。私に着いて来てください」スッ

提督「はーい!」タッ

大和「あっ、ちょっと・・・」

大和「・・・?」

大和(なんだろう・・・)

スタスタ

取り敢えずここまで
読んでくれた人いたら、ありがと

こんな時間だけど、ちょっとだけ続きいくよ

【居酒屋・鳳翔・倉庫】

鳳翔「ここです」

提督「倉庫っていうから、どんなものかと思ったけど、思ったより小さいんだね」フム

提督「鎮守府の風呂場スペースくらいの大きさかなあ?」

大和「そうですね・・・少し意外です」

鳳翔「ほとんどの食品や日用品は屋内に保存していますし、外はどうしても冷えますので、この倉庫は基本的には使っていないんですよ」

提督「あれ、そうなの?」

大和「では、中に一体何が・・・」

鳳翔「扉を開けますね・・・」ジャラ

ガチャガチャ

ガラガラ

鳳翔「どうぞ」スッ

提督「おじゃましまーす」スッ

大和「失礼します」スッ

提督「狭いし、暗いなあ・・・」

大和「提督、足元に気をつけてくださいね・・・」

提督「わかってるって・・・」

ガン!

提督「ばぅ!?」

提督「いったぁ!」ピョン!

大和「提督!?大丈夫ですか!?」

提督「うー・・・なんか蹴っちゃった・・・痛いよぅ・・」ズキズキ

大和「全くもう・・・言ったそばから・・・」チラ

大和「何かは知りませんけど、壊して鳳翔さんに迷惑をかけてはいけ・・・ま・・・」

大和「・・・」

大和「・・・え?」

提督「お、おぉう・・・しぬぅ・・・」ピクピク

大和「・・・」スッ

サッ・・・

大和「・・・」

大和「これ・・・」

提督「や、大和・・・どうか、したぁ・・・?」ピクピク

鳳翔「・・・見覚え、ありますよね。大和さん?」

提督「鳳翔さん・・・?」

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

大和「・・・これは、35.6cm連装砲」スッ

大和「それに・・・こっちの艤装は、戦艦の、いえ、大和型戦艦のもの・・・」ガチャン

大和「そんな、どうして・・・」

読んでくれた人いたら、ありがと
今日はここまで
今週中にまとめて全部あげるよ
実は鈴谷は一番初めに建造した艦娘だから、改二めっちゃ楽しみです

乙です
ちなみに鈴谷出る予定あるのかな?

>>176
鈴谷は南方のとある鎮守府にいるよ
短編でなら少し出番あるかも

長い(直球)
ここまで長くなるとは思わなかった…一章はもっとあっさり終わると思ってたのに…
ここまで読んでくれた人にも、お手数おかけして申し訳ない

と言うわけで、続きいくよ
でもやっぱり今日でも終わらなさげ

鳳翔「・・・以前、大和さんが呉にいた頃、大和さんの存在は、軍の最高機密として秘匿されていたんです」

提督「秘匿・・・?なんでまた・・・」

鳳翔「大和型戦艦のお二人は、他の戦艦とは一線を画すほどに強大な戦闘力を誇ります。ですので、大本営はその情報が敵に漏れることを、酷く恐れていたようです」

提督「ふぅん・・・」チラ

大和「・・・」

鳳翔「・・・そして、そういった事情から、私は一時期、大和さんの身代わりを受け持っていた時期がありました」

提督「え、身代わり?鳳翔さんが?大和の?」

鳳翔「はい」

提督「あれ、でも、見た目も大きさも全然違うし・・・そもそも、そんなことする意味ってあるの?」

鳳翔「・・・意味があったかどうかと言われれば、私にはなんとも言えません」

鳳翔「それに、軽空母の私には、大和さんの艤装や主砲、副砲といったものを全て身につけることなんて、到底できませんでした」

鳳翔「艤装だけは大和型戦艦のものをお借りして、主砲は46cm三連装砲よりも一回り以上小さい、35.6cm連装砲を乗せることで、なんとか戦艦らしく見えるようにしていたんです」

鳳翔「・・・とは言っても、結局、副砲は乗せることさえできませんでしたし、私自身も動くこともままならない状態でしたから・・・実際の効果は薄かったように思われます」

提督「へぇー・・・そんなことがあったんだ」

鳳翔「・・・」ジッ

鳳翔(・・・)

大和「・・・でも、ここにあるものがその時のものだとして、どうして鳳翔さんは、こんなところにまで、装備もできないようなものを持って来たんですか?」

鳳翔「・・・あまり喜ばしい話ではないのですが・・・その当時から軍の資材消費を抑える動きは強く、装備も必要以上には開発しない、という取り決めが多くの鎮守府で為されていたんです」

鳳翔「そのため、大和さんの身代わりをする私に充てがわれたのは、改造に失敗して廃材同然となっていた艤装と、長年に渡って使い古された主砲で・・・」

鳳翔「とは言え、私が戦闘を行う訳ではなかったので、それ自体は何の問題もありませんでした」

提督「なら・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・はい。私の役目が終わった後に、私の使った艤装と主砲は廃棄される予定でした」

鳳翔「ですが、それを私が無理を言って引き取ったんです」

提督「・・・え?なんで?」

鳳翔「それは・・・」

鳳翔「・・・」チラ

鳳翔「・・・大和さん」

大和「えっ、は、はい・・・?」

提督「・・・」

鳳翔「もう、貴女は覚えていないかもしれないですけれど・・・」スッ

鳳翔「・・・この艤装はね、貴女が初めて、呉の鎮守府に来た時に使っていたものなんですよ」

大和「・・・!?」

大和「本当、に・・・?」

鳳翔「ええ」

提督「・・・よく知ってたね」

鳳翔「伊達に長く生きていませんよ」クスッ

サッ

鳳翔「・・・当時の鎮守府の提督はとても良い方でした。国の為に、多くの戦果をあげようといつも必死で・・・」

鳳翔「艦娘に対しても、ごく普通に接してくださって、不満を言う人は、ほとんどいなかったように思います」

提督「ん・・・」チラ

鳳翔「ですが・・・そう、だからなのかもしれませんね・・・あの方は、大本営からの指示に反発して、より強い艦娘や装備を渇望するようになっていきました」

鳳翔「内心で、好転しない現状に対する焦りもあったと思います。それに・・・こう言うのもなんですが、戦果を十分にあげているとは、言い難い状態でしたから」

鳳翔「・・・大和さんが来られたのは、それからしばらく後のことでした。当時、提督は大和型戦艦が着任したことを、とても喜んでいらっしゃいました」

鳳翔「そして、大和さんを艦隊の主力として運用する為に、より強力な装備を製作されました。艤装を新しくし、より制度と安定性を増した主砲や副砲を乗せ、観測機も最新の物を導入されました」

提督「ふぅん・・・」

鳳翔「・・・ですが、大和さんを十分に生かすためには、余りにも多くの資材が必要でした。それこそ、他の戦艦を遥かに凌ぐほどに」

鳳翔「加えて、その時期辺りから、敵勢力に強力な航空母艦が多く見られるようになってきました。それらに対抗するには、より多くの空母を前線に派遣しなくてはならず、結果として鎮守府は戦艦を利用する上で、コストの面を重視せざるを得なくなっていったんです」

提督「ああ・・・なるほど。それで・・・」

鳳翔「・・・はい」

大和「・・・鳳翔さん」

ドカァァァン!

ゴゴゴ・・・

鳳翔「・・・!」

大和「・・・!」

提督「・・・っと」

提督「・・・のんびり話をしてる時間もないね、こりゃ・・・」

スッ

鳳翔「提督。大和さん。そこにある艤装や主砲を使ってください」

大和「鳳翔さん・・・」

提督「・・・いいの?」

鳳翔「ダメなはずがありません。私には、とても扱いきれませんし・・・」

鳳翔「それに、みんなを守る為に、必要でしょう?」

提督「・・・ありがとね。鳳翔さん」

鳳翔「お礼なんていいですよ。当然のことですから」クスッ

カランカラン

鳳翔「一応、数ヶ月おきには軽く整備をしていますので、全く動かないということはないはずです」

鳳翔「さ、早く」

提督「ほんとにありがとう・・・!」

提督「・・・よし、行くよ!大和!」ダダダッ

大和「あっ・・・」スッ

鳳翔「大和さん」

大和「・・・はい」

鳳翔「ふふっ。もう、大丈夫、ですね?」ニコ

大和「・・・!」

大和「・・・」ギュ

大和「・・・はい!」コクン

サッ

大和「鳳翔さん。装備をお借りします」

鳳翔「ええ。どうぞ」

ガチャ、ガチャ・・・

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

ガチン、ガチン、カシャカシャ・・・

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・本当は、この装備はこの倉庫の中でずっと、それこそ私が死ぬまで、ずうっと、誰にも知られないまま仕舞っておくつもりでした」ポツリ

大和「・・・それは、私のことを思ってくださってのこと、ですよね?」カチャン、カチャン・・・

鳳翔「・・・貴女に、また辛いことを思い出して欲しくなかったんです」

鳳翔「貴女が、思い入れのあった最初の艤装を交換した時の悲しげな顔が、どうしても忘れられなくて・・・」

大和「・・・」バチン、バチン

鳳翔「でも、結局それも、私の我儘・・・こうして敵に追い詰められて、どうしようもなくなってしまって、遂には貴女を頼ってしまった・・・」

鳳翔「私自身の無力さから目を逸らして、貴女に全ての責任を押し付けようとしているんです。私は・・・」

鳳翔「ごめん、なさい・・・」スッ

大和「鳳翔さん」

鳳翔「・・・!」ハッ

鳳翔「・・・大和、さん?」

大和「・・・例え、どんな理由があったとしても、鳳翔さんは私のことをいつだって心配してくれて、気にかけてくれていました」

大和「こちらの鎮守府に着任してからも、美味しい食事をいただいていて、他にも、たくさんのことを教えていただきました」

大和「それに、今回の件に関しても同じです。鳳翔さんがいなければ、私たちは戦う手段すら何一つ持ち合わせてはいませんでした」

大和「貴女には、本当に感謝してもしきれません」

鳳翔「大和さん・・・」

大和「・・・でも、貴女も言った通り、もう私は大丈夫です」ニコ

大和「今の私には、私を信じてくれている人がいるから。私が信じる人がいてくれるから」

大和「だから、私は、私の心に従って、戦います。私を信じる人を、そして、大好きな貴女のいる、この場所を守るために」

大和「だから・・・もう、心配は無用です」

鳳翔「・・・っ」

鳳翔「・・・」グッ

鳳翔「・・・」ゴソゴソ

鳳翔「・・・」

大和「・・・鳳翔さん?」

鳳翔「・・・これを」スッ

大和「襷、ですか?」

鳳翔「はい。私が戦場に向かう時には、気つけの意味も込めていつも身につけていたものです」

鳳翔「大和さんをきっと助けてくれるはずです・・・良ければ、持って行ってあげてください」

大和「・・・」

大和「・・・ありがとうございます」スッ

シュルシュル・・・

ギュ!

鳳翔「・・・よくお似合いです」ニコ

大和「ありがとうございます」フッ

鳳翔「綺麗・・・ううん。かっこいいです」

大和「鳳翔さんほどではありません」クスッ

鳳翔「ふふっ・・・」

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・頑張って」

大和「・・・はい!」

スッ

大和「では・・・行ってきます!」


・・・

鳳翔「・・・」

鳳翔(昔はあんなに小さかったあの子が、いつの間にか、こんなにも大きくなっていたなんて)

鳳翔(嬉しいけれど・・・やっぱり、少し寂しいわね)クスッ

鳳翔(・・・)

鳳翔(大和さん、提督・・・)

鳳翔「・・・」ギュ

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・どうか、ご武運を」

・・・

読んでくれた人いたら、ありがと
次で終わる…はず…多分
長編終わったら、その後続けるかわからないけど、取り敢えず短編一つだけ書くよ

《ご利用は計画的に。》

居るんだなーこれが

>>195
ありがと。嬉しい。
原田美世Pになってくれるともっと嬉しいよ?(ステマ)

じゃあ残りの分全部いくよ

【居酒屋・鳳翔前】

大和「提督!お待たせしました!」

提督「大和遅いー!」ジタバタ

提督「何してたのさー!早く早く!鎮守府壊されちゃうよー!」アレアレ!

ボンッ・・・

ドカン!

大和「わ、わかりました!わかりましたから!」カチカチ

大和「ん・・・」パシュ

大和「・・・よしっ!」カチャカチャ

提督「むーん・・・それにしても・・・」

提督「・・・」ジー

大和「・・・提督?」

提督「・・・前に大和が強いだとか隠し玉だとは聞いてたけど、まさか存在自体を隠してたなんてねー、って」

提督「私にはそういうの、正直良く分からないけど・・・」

大和「・・・本当に、そんなに大層なものではないんですよ?」

提督「ふーん・・・?」

提督「・・・ま、何でもいいんだけどね」

大和「提督?」

提督「昔の大和には興味がないって言ったら嘘になるけど・・・大切なのは今だからね」

提督「私は、私が今見ている大和を信じるよ」

大和「・・・はい」フッ

大和「私も、同じです」

提督「・・・」ニッ

大和「・・・」ニコ

提督「よーし!じゃあ頼んだ!」

提督「ちゃちゃっと行って、あんな奴、さくっと倒してきちゃって!」

大和「はい!」サッ

大和「では・・・」

大和「戦艦大和、抜錨します!」

提督「頑張れー!」

ガガッガッ!ガッガガガ!

ブクブクブク・・・

シャアァァァァァ・・・

【海上】

シャアァァァァァ・・・

大和「・・・」チラ

ガガッ、ガガ・・・!

大和(かなり古い艤装だし、異音は気になるけど、今のところきちんと動いている・・・)

大和(きっと鳳翔さんのお陰ね・・・今度、改めてお礼を言わないと)

大和(燃料は・・・うーん、流石にほとんど残ってないわね・・・)カンカン

大和(保って十分・・・といったところかしら)

大和(出来る限り早く、敵を倒さないとね・・・)

大和(それで、弾薬は・・・と)カチャ

大和(・・・)

大和(・・・えっ!?)

大和(い、一発だけ!?)

大和(う、嘘、ほんとに・・・?他に予備の弾薬は・・・)カチャ、カチャ

大和(・・・ない)

大和(くっ・・・で、でも、今更もうどうすることもできない・・・取り敢えず、弾薬が残っているだけでもありがたいわ)

大和(この一発を、あの深海棲艦に命中させれば、それで終わるんだから!)

大和(とにかく、急がないと・・・!)

シャアァァァァァ・・・

【居酒屋・鳳翔前】

ザアァァァ・・・

提督「・・・」

カランカラン

鳳翔「・・・行ってしまいましたね」

提督「・・・うん」

鳳翔「・・・」

提督「・・・ぁ」

提督「そういえば、鳳翔さん鳳翔さん」

鳳翔「はい?」

提督「気になったんだけどさ。大和の艤装はともかく、なんで主砲まで持って来たの?」

提督「重いし、鳳翔さんには使えないのに・・・」

鳳翔「あぁ・・・えぇと、実は私も、元々はこちらに持って来るつもりはなかったんです」

提督「あれ、そうなの?」

鳳翔「はい」

鳳翔「当時の鎮守府は、私の使った艤装と主砲は両方とも資材に換える、という方針を取っていました」

提督「そこで、鳳翔さんが大和の艤装を譲るように言ったんだよね」

鳳翔「はい。初めは、『この資材不足の時に何を言ってるんだ』、と酷く叱られてしまいました」

鳳翔「ですが、そこにある方がいらっしゃったんです」

提督「ある方・・・?」

鳳翔「はい。その方は私の話を聞くと、艤装を持っていく条件として、その主砲も一緒に持っていくように、と言われました」

提督「・・・ん?」

提督「・・・それ、なんか変じゃない?」

提督「資材に換えるはずのものを、わざわざ余分にあげるなんて・・・」

鳳翔「ええ・・・私もそう思ったんですけれど、その条件を飲むなら、大和さんの艤装を持っていっても良い、ということでしたので・・・」

提督「う、うーん・・・?」

提督(なんか引っかかるなあ・・・)

提督(・・・)

提督(・・・ま、今は気にしてもしょうがないか)

提督「それじゃあ、私は鎮守府に戻るよ」クルッ

提督「大和も心配だし、鎮守府がどうなっているかも気になるからね」

鳳翔「あら。提督はお仕事熱心なんですね」クスクス

提督「も、もー!鳳翔さん、私をなんだと思ってるのさー!」プンプン

鳳翔「いえいえ。立派な提督さんだと思いますよ?」クスクス

提督「ほんとに~・・・?」ジトー

鳳翔「本当、ですよ?」クスクス

提督「むぅ・・・まあ、いいけどさ。どーせ、着任したてだし、全然経験も知識もないし、カリスマ性もないし・・・」イジイジ

鳳翔(あ、拗ねちゃった・・・)

提督「はぁ・・・」ショボン

鳳翔「げ、元気を出してください、提督。ほ、ほら、早く鎮守府に戻らないといけないんじゃないですか?」

提督「あ、うん・・・そうだね・・・」ショボショボ

提督「じゃあ・・・」トボトボ

鳳翔「あ、はい。お気をつけて・・・」

提督「・・・」フラフラ

鳳翔(少し、笑いすぎてしまったわね・・・)

鳳翔(提督、大丈夫かしら・・・)

ボンッ!ボンッ!

「・・・」

「・・・」

ドカァァァン!バアァァァン!

「・・・」

ガラガラ・・・

ボンッ!ボンッ!

「・・・」

「・・・」スウッ

「ウルサイナァ」チリッ

【鎮守府近海・海上】

シャアァァァァァ・・・

大和「・・・!」

大和「いた・・・!」

駆逐イ級「ォォォォォ!」

ドンッ!ドンッ!

大和(目視した通り、駆逐艦一隻)

大和(潜水艦は・・・気配はないけれど、今は気にしてもしょうがないわね)

大和(水上機はないから、弾着観測はできない・・・なら・・・)

大和(一気に接近して、逃げる間も無く一撃を叩き込む!)グッ

駆逐イ級「・・・!」チラ

大和「・・・!」

大和(もう気づかれた!?)

大和(まずい、まだ三百メートル以上離れているのに・・・!)

大和(この距離で撃っても、砲撃が当たる確率は低い!)

大和(もっと、確実に当たるところまで近づかないと・・・!)

駆逐イ級「・・・」クルッ

ザザザザザザ

大和「あっ!」

大和(反転して海域から離脱する気・・・!)チラ

大和(この艤装では三十ノットはまず出ない・・・それに、燃料がもう限界に近い・・・)

大和(ここで逃したら、もう私たちに対抗手段はない!)

大和「この・・・!」ギッギッ

シャアァァァァァ・・・

ガガッ!ガガガッ、ガッガ!

大和「くっ・・・!」

大和(駄目・・・出力がどうしても上がらない・・・!)

大和(やっぱり、この艤装じゃ・・・)チラ

駆逐イ級「・・・」

ザザザザザザ

大和(駆逐艦の速さだと、どんどん引き離される・・・このままじゃ・・・!)

大和(このまま、じゃ・・・)

大和(・・・)

大和(・・・)

大和(やっぱり・・・)


・・・

大和(大和が実戦に参加したことは、本当はほとんどない)

大和(大きな作戦の時も、私は後方に控えていることばかりだった)

大和(何度か演習では一定以上の成果をあげたものの、リスクを押して実戦投入するほどの価値は、私にはなかった)

大和(そう、提督も本当はわかっていたのだ。私は役に立たないと。だから、私を、この北の果てへと送り出した)

大和(大艦巨砲主義の時代は、もう終わってしまった。今の私は所詮、抑止力にすらならない、ただの、ガラクタも同然)

大和(駆逐艦一隻すらまともに倒すことができない、惨めな欠陥戦艦・・・)

大和(・・・)

大和(・・・う)

大和(ち・・・う・・・!)

大和(ちが・・・う!)

大和(違うっ!)

大和(私は、欠陥戦艦なんかじゃない!)

そうよ

大和(私は、大和型戦艦一番艦、大和!)

そうね

大和(多くの人々が、私に未来を託した!)

そうだったわね

大和(私は、この国の希望、戦艦大和!)

大和(例え何度打ちのめされても、何度叩き壊されようと!何度繰り返そうと!)

大和(私は、昔も、今も、そしてこれからも!)

大和(私を信じる人たちを守るために、絶対に負けない!)

大和(だって、私は、戦艦大和なんだから!)

大和「・・・」

「しばらく見ない間に、随分立派になったわね、大和?」

大和「・・・」

「・・・あら?もしかして、もう私のことなんて、忘れちゃったかしら?」

大和「・・・」

大和「・・・忘れるわけ、ないわ」

「そう?なら、良かった」

「てっきり貴女はとうとう信頼できる提督の下に就いたから、私のことなんてどうでも良くなって、綺麗さっぱり忘れてしまったのかと思ったわ」

大和「・・・急に出てきたと思ったら、好き勝手言ってくれるわね」クスッ

「急に?あはっ!そうかしら?」

大和「・・・どういう、こと?」キョトン

「さて?私からは、何も言えないわね」

大和「・・・」

大和「・・・まさか」

「・・・」ニコ

「ふふっ、安心しなさい。万が一にも貴女が死んだ後のことなんて、私が全て預かります。だから」

「今この瞬間を、全力で生きなさい。戦艦大和」

「それが、命ある者の使命よ」

・・・

大和「・・・」

大和(今の声・・・)

パキュン!

大和「・・・!?」ハッ

ドカァァァン!

駆逐イ級「ォォォォォ!」ジタバタ

ゴオオオオ!

大和「・・・えっ?」

大和(今・・・何かが飛んできて、敵に当たって・・・)

大和(魚雷が誘爆して、敵の足が止まった・・・?)

大和(でも、一体何が、どこから・・・)キョロキョロ

駆逐イ級「ォォォォォ!」ゴオオオオ!

大和「・・・!」ハッ!

大和(違う!今大事なのはそっちじゃない!)

大和(これは勝機・・・!)

大和(恐らく、最初で、最後の・・・!)

大和「いって・・・!」バッ!

シャアァァァァァ・・・

ガキン、ガキ!ガガガッ!

大和「・・・!?」

大和(艤装が、砕けてきてる・・・!)

大和(十分に整備されていないのに、急な負荷をかけ過ぎたから・・・!)

大和「だめっ、あとちょっとなの・・・!あと、ちょっとだけ・・・!」

バキンッ!

大和「きゃっ!」ヒュッ

ビッ!

ハラッ・・・

大和「あっ・・・!」

大和(鳳翔さんの襷が・・・!)

パシッ

大和「ふぅ、危なかった・・・」スッ

大和「・・・!」

大和「これ・・・!」

大和「・・・」チラ

駆逐イ級「ォォォォォ!」ザザザ・・・

大和(・・・中破しているけど、また離脱を始めた・・・)

大和(・・・こちらの燃料は、もう、ほぼ空)

大和「・・・」

大和(・・・)ギュ

大和(一か八か、やるしかない・・・!)

大和「・・・いって!」ギッギッ

シャアァァァァァ・・・

バキバキ!ピシッ、バカンッ!

大和(こっちの艤装も半壊してるし、速度はほとんど出ない)

大和(でも、それでも、向こうよりはまだ速い!)

大和(艤装の限界まで、距離を詰める!)

大和「頑張って・・・あと、少しだけ!」

ガガガッ、バキッ、バキンバキン!

大和(お願い!お願い!お願い!)

駆逐イ級「ォォォォォ・・・!」ザザザ・・・

大和(あと数メートル・・・!)

シャアァァァァァ・・・

駆逐イ級「ォォォォォ・・・」ザザザ・・・

シャアァァァァァ・・・

大和(あと、あと、ほんの少し・・・)

大和(お願い・・・)

大和(力を貸して・・・)

大和(・・・!)

シャアァァァァァ・・・

バキッ・・・バキバキ!ビキッ、バーン!

大和「・・・!」

大和(ここ!)

大和「いって!」

シュ

バッ!

大和(鳳翔さんの襷の中に仕込んであった、艦載機の護符)

大和(私では、艦載機を操ることはできないけれど・・・!)

大和「来て・・・!」

大和(お願い・・・!)

カッ!

大和「・・・!」

駆逐イ級「ォォォォォ・・・!」ガァン!

バキバキバキ!

大和「・・・!」

大和「あれは・・・木製の複翼機!?」

大和(な、なんでそんなものを、鳳翔さんが・・・?)

駆逐イ級「ォォォォォ・・・!」ガン!ガン!

大和「・・・!」

大和(・・・ううん。そんなことは、今はどうだっていい!)

大和「とにかく、これで足は止めたわ・・・!」

大和(あとは・・・!)ガッ

大和「・・・ふっ!」

バッ!

スタ!

駆逐イ級「ォォォォォ・・・!」ギロリ

大和「・・・あら。こんにちは」ニコ

大和「高いところからごめんなさいね」

大和「でも・・・」フゥ

大和「・・・」ガチャン!

大和「これで・・・」

大和「終わりですっ!」

駆逐イ級「ォォォォォ!」

ドンッ!



ゴウゥゥゥゥゥン!!!!!

数日後

【鎮守府・寝室】

大和「・・・」

大和「・・・」

大和「ん・・・」

大和「・・・」パチ

大和「・・・」

大和「こ・・・こ・・・」

??「あ・・・大和さん。目が覚められましたか?」

大和「・・・」チラ

大和「鳳翔・・・さん?」

鳳翔「はい。そうですよ・・・」

鳳翔「ああ、良かったです本当に・・・」カタカタ

鳳翔「もう、心配させて・・・!」ギュウ!

大和「あ・・・」

鳳翔「・・・」フルフル

大和「・・・」スッ

大和「ご心配を・・・おかけ、しました・・・」

鳳翔「ばかっ・・・自分の心配をしなさい、あなたは・・・!」

大和「・・・」

大和「・・・すみません」

鳳翔「謝らなくていいの・・・!」

大和「ぁ・・・」

大和「・・・」

大和「・・・」フッ

大和「ありがとう・・・ございます・・・」

数分後

鳳翔「・・・」フキフキ

大和「・・・それで、私はどのくらい意識を失っていたんですか?」

鳳翔「・・・丸三日です。本当に、もう、何度も駄目かと思ってしまって・・・」グスッ

大和「すみ・・・ぁ・・・」

鳳翔「ん・・・」フキフキ

大和「・・・」

大和「三日・・・」

大和「・・・」

大和「あの、私は・・・」

大和「・・・」

大和「・・・私は、一体どうなったんでしょうか?」

鳳翔「・・・覚えていないんですか?」

大和「・・・そうですね。少し、最後の方は、記憶が混濁してて・・・」

鳳翔「・・・」スッ

鳳翔「・・・私も、あの日は内地に避難していましたから、これはあくまで提督から聞いたお話ですが・・・」

・・・

鳳翔さんの話によれば、あの日、敵の駆逐艦にとどめを刺した私は、爆発四散する深海棲艦の爆風に巻き込まれて、全身に酷い火傷を負った挙句、沖の真っ只中に放り出されたらしい。

幸い、潮の流れに乗って流されていたところを、たまたま通りかかった船に引き上げられ、その後、無事に鎮守府の方へと送られたようだ。

全身に酷い怪我を負っており、治療できる医師も周囲にはいなかったため、なんと鳳翔さんが自ら応急手当を行なってくれたらしい。この鎮守府には救急箱の一つも無かったので、それを聞いて合点が行くと同時に、鳳翔さんには一生頭が上がりそうもないことを確信した。

鳳翔さんに借りた主砲と艤装は、跡形もなく消し飛んでしまった。元々、そう何度も使えるものではないとはわかっていたが、やはり申し訳無い気持ちが込み上げてくる。

そして鎮守府は、敵の砲撃を受けた影響が酷く、執務室は壊滅。寝室は無事だったが、多くの洗濯物と風呂用のドラム缶を失うこととなった。提督は大本営への報告書が丸焦げになっているのを見て、悲しみのあまり鎮守府近くの崖から海に飛び込んだとかなんとか。


・・・

大和「そうですか・・・ご説明、ありがとうございます、鳳翔さん」

鳳翔「構いませんよ。それより、まだようやく目が覚めたばかりでしょう?無理をしないで、ゆっくり休んでくださいね」スッ

鳳翔「私は、これから一度自宅の方へ戻って、何か食べるものを作ってきます。すぐに戻るので、待っていてくださいね」ガタッ

大和「・・・ぁ」

鳳翔「・・・?どうかしましたか?」ピタ

大和「あ、あの・・・」

大和「・・・」

大和「・・・私、鳳翔さんにお借りしていた襷を・・・」

大和「・・・本当に、ごめんなさい」

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・」ハァ

鳳翔「大和さん。私、さっきも言いましたよね?」ビシッ

大和「は、はいっ?」

鳳翔「貴女が謝る必要なんて、これっぽっちもないんです。それに、私はあの襷が、ううん、私が就役した頃に使っていた、あの木製複翼機が、貴女の助けになってくれて、本当に嬉しいんです」

大和「鳳翔さん・・・」

鳳翔「・・・今となっては大したものではないかもしれませんが、私にとってかけがえのない思い出の詰まった、あの複翼機を、最後にもう一度輝かせてくれた貴女に、心から感謝しているんです」

鳳翔「大和さん。本当に、ありがとうございました」スッ

大和「えっ、ちょ、鳳翔さん・・・よしてくださいよ」アワアワ

鳳翔「いいえ。この気持ちは、紛れもない私の本心です」

鳳翔「本当に、ありがとうございます・・・」スッ

大和「あ、あぅ・・・」カアッ

バターン!

提督「大和が目を覚ましたって!?」

「「!?」」ビクッ

大和「て、提督っ!?」

鳳翔「あ、あら?まだ誰にもお伝えしていなかったはずですけれど・・・」

提督「いやあ。鎮守府に帰って来たら、話し声が聞こえたからさ・・・」

鳳翔「あ、そういうことでしたか・・・」

提督「それで、大和。身体の方はどう?」

大和「あ、はい。鳳翔さんのお陰で、特に問題なさそうです」

提督「ほんと?良かったあー・・・」ホッ

鳳翔「ふふっ。提督も、大和さんのこと、ずっと心配されてましたものね」

提督「そりゃあそうだよ。大和がいなくなったら、誰がこの鎮守府を守ってくれるのよぅ・・・」

大和「提督・・・」

鳳翔「・・・」ニコ

提督「ま、とは言え、病み上がりの大和にあれこれやってもらうつもりもないから。取り敢えずは、体調が万全になるまで、ゆっくり休んでね」

大和「・・・はい。提督も、ありがとうございました」

提督「え?・・・私、大して何にもしてないよ?」

大和「・・・そんなことはありません。私はこちらの鎮守府に来てから、提督には何度も助けられているんですよ?」

提督「・・・そうだっけ?」チラ

鳳翔「ふふっ。さあ、どうでしょうね?」

提督「うーん・・・?」グルグル

大和「ふふふっ」

鳳翔「ふふっ」

提督「あぁ!二人してなにさー!」ムー

提督「ふーん。いいよーだ。私、これからやることがあるから、少し出かけてくるもん!」

大和「やること?何ですか?」

提督「掃除。あの深海棲艦、散々砲撃してくれたせいで、辺りが大きな瓦礫だらけで、すっごい困ってるんだよ」プンスカ

提督「だから、私がスコップで、少しずつ元に戻してるんだ」ジャキーン

大和「なるほど・・・わかりました。お疲れ様です」

大和「私も回復し次第、すぐにお手伝いしますね」

提督「まあ、その時はお願いね。あの量を一人でやるの、ほんと大変だからね・・・」ハァ

提督「じゃ、行ってきまーす」ガチャ

大和「行ってらっしゃい」

鳳翔「お気をつけて」

バタン

鳳翔「・・・では、私もそろそろ行きますね」

大和「鳳翔さん。本当に、ありがとうございました」

鳳翔「いいんですよ。私が好きでやっていることです」

鳳翔「それよりも、大和さんはちゃんと横になっていてくださいね?」

大和「あっ、はい・・・」ゴソゴソ

鳳翔「ふふっ。よろしい」

鳳翔「では、行って来ます」ガチャ

大和「行ってらっしゃい・・・」

バタン

シーン・・・

大和「・・・」ホゥ

大和(・・・)

大和(そう言えばあの時、敵の駆逐艦を誘爆させたのは、結局なんだったのかしら・・・)

大和(あのお陰でなんとか敵を倒すことができたけれど、もし、あれがなかったら・・・)

大和(・・・)

大和(・・・それに、どうして敵の駆逐艦が、わざわざ一隻で、あんなところに・・・)

大和(・・・)

大和(・・・駄目ね。やっぱり、少し疲れているのかしら・・・頭が、働かない・・・)

大和(もう少しだけ、寝てから・・・また・・・考えれば・・・)

大和(おや、すみ・・・)

大和(・・・)

スゥスゥ・・・

《エピローグ》

【???】

??「ふむ・・・なるほど・・・わかった。報告ご苦労」

??「これからも精々励みたまえ。なに、君にとっては造作もないだろう」

??「ただ、もしもの場合は・・・わかっているな」

??「・・・」

??「・・・よろしい。引き続き、よろしく頼む」

ガチャン

??「・・・」ギシ

??「ふぅ、なかなか存外に粘るではないか、あの娘・・・」

??「まあ・・・沈むのならそこまでということ。万が一、その悪運が続くというのならば、それはそれで我々にとっては都合がいい・・・」

??「貴様が果たしてどこまで保つのか・・・くくっ、みものだなあ・・・」

??「はっはっはっ・・・!」

五月某日・早朝

【鎮守府前】

ザッザッザッ

??「・・・」

ザアァァァ・・・

??「・・・ここね」

??「・・・」

??「・・・これが、鎮守府?・・・噂には聞いていたけれど、まさかここまでとはね・・・」ハァ

??「寒いし、遠いし、ボロボロだし・・・ほんと、酷い所ね」

??「・・・」スッ

??「・・・っ」

??「大丈夫・・・大丈夫・・・」ギュー

??「今度は・・・絶対・・・」

??「大丈夫・・・!」グッ!

??「・・・」フゥ

??「・・・よしっ!」パン!

カッ

??「・・・」スッ

コンコンコン

アッ、ライキャクノヨウデスヨ、テイトク?
ンー?ホウショウサンカナア?

ガタガタ・・・

ハーイ!イマイキマス!

パタパタパタ・・・


ガチャ!

第一章・完
長々と続けてしまってごめんね
ここまで読んでくれた人には、最大級の感謝と原田美世を
寝るよ

何故か必要以上にシリアスに寄ってしまったり、セリフ飛びまくったりしたけど、楽しかったよ
お付き合いしてくれた人もありがと!

この鎮守府には最終的に艦娘が六人くらい所属して、提督も含めてなんやかんやしていくことになるんだけど、その辺はここまで読んでくれた人のご想像にお任せしようかな

取り敢えず、原田美世のステマは成功したはず(確信)
満足したぜ…

一週間以内に短編いくつかあげて終わりにします

そんじゃ、あでぃおすぐらっしゃー

今更とんでもないことに気づいてしまった…
エピローグに重要な話を一つ入れ忘れてる…
まあ、いいか…(諦め)

じゃあ短編一ついきます

それと、総選挙の投票先は『キュート』の『原田美世』でお願いします



《釣れますか?》


四月某日・早朝

【鎮守府・寝室】

大和「・・・」スゥスゥ

提督「・・・」ムニャムニャ

提督「・・・」

提督「ん・・・」パチ

提督「・・・」ムクッ

提督「朝・・・」

提督「・・・」

ゴソゴソ

トットットッ

ガチャ

【鎮守府前】

サァァァ・・・

提督「んぅ~・・・!」ノビー

提督「・・・はぁー」

提督「良い天気・・・」

提督「今日も快晴快晴っと・・・」トテトテ

ゴソゴソ

ヨイショ

提督「・・・よし。今日も行こうかな」

【海岸】

ヒュッ

ポチャン!

提督「よーし、今日こそ魚を釣って釣って釣りまくって、大和を驚かせてやるんだから・・・」ヒッヒッヒ

提督「首を洗って待ってるといいよ、大和・・・」ウヘヘ・・・

ザアァァァ

提督「・・・それにしても、朝釣りを初めてもう一週間経つけど、一匹も釣れないなんてねえ・・・さすがに予想外だよ・・・」

提督「もしかして・・・」

提督「・・・」

提督「・・・」ヌヌヌ

提督「ち、違う。これは私が下手なせいじゃないの。そもそも、魚が食いついてこないんだから、私にはどうしようもないんだってば・・・」

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「誰に言い訳してるのよ・・・私・・・」ハァ

提督「でも・・・」

提督「・・・」モンモン

提督「~~~!」ブンブン

提督「やめやめ!余計なことは考えない!」

提督「今はただ、目の前のウキに集中集中・・・!」ジッ

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・くぁ」

一時間後

提督「・・・」ジー

二時間後

提督「・・・」パタパタ

三時間後

提督「zzz・・・」スヤスヤ

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「・・・はっ!?」バッ

提督「・・・」キョロキョロ

提督(すっかり寝ちゃってた・・・)

提督(あ、竿は・・・)

提督「・・・」チラリ

ヒュッ

提督「・・・」

提督(餌の干物は残ったまま・・・)

提督「はぁー・・・今日もダメかあ・・・」ガックリ

提督「ん・・・」チラ

提督(時間は・・・朝の八時ね)

提督「くそう・・・名残惜しいけど、今日は引き上げるしかなさそう・・・」ゴソゴソ

ヨイショ

提督「でも、見ていなさい・・・明日こそは・・・絶対・・・」

提督「大漁旗を盛大に掲げてやるんだから・・・!」キッ

提督「・・・」

提督「・・・」

提督「はぁ・・・」ガクッ

提督「・・・」トボトボ


・・・

【鎮守府・執務室】

ガチャ

大和「失礼します」

提督「あ。おはよう、大和」パッ

大和「おはようございます。提督」

大和「今朝もお早いんですね?」

提督「・・・まあ、日課みたいなものだからね」

大和「日課・・・?」

提督「あー・・・なんでもない。こっちの話」ヒラヒラ

大和「はあ・・・」

提督(見てろー・・・いつか目一杯釣り上げて、びっくりさせるんだから・・・!)フンスフンス

大和「・・・?」


・・・

大和「はい。今日の朝食です」コトッ

提督「お。ありがとー・・・」チラ

提督「・・・あー!」

チョーン・・・

提督「干物の量がまた減ってる・・・」

大和「我慢してください。これでも提督には多めに取り分けているんですよ」

提督「そんなぁ・・・」ショボン

大和「保存食の残りも、もう少なくなってきましたからね・・・夜ご飯を鳳翔さんのお店でいただけていることが、せめてもの救いですけれど・・・」

提督「くぅぅぅ・・・いい加減一日二食の生活は厳しいよ・・・」グゥ~

大和「そうですね・・・なんとかならないものでしょうか・・・」フゥ

提督「うっ・・・」

提督「・・・」チラ

提督(・・・大和もお腹空いてるんだ・・・)

提督(くっ、このままじゃまずい・・・)ギリ

提督(深海棲艦と戦うはずが、空腹で力が十分に発揮できないなんて、本末転倒もいいところだよ!)

提督(こういう時こそ、提督の私が、なんとかしないと・・・!)グッ

同日・昼

【鎮守府・執務室】

コンコンコン

ガチャ

大和「提督。失礼します・・・」

大和「・・・提督?」チラ

大和「これは・・・」カサッ

大和「・・・」

『旅に出ます。探さないでください。提督』

大和「・・・」

大和「・・・え?」



五日後・・・

【鎮守府・執務室】

大和「・・・」

大和「・・・」ジッ

大和「・・・」

大和(提督・・・)

大和「・・・」スッ

大和「・・・」

大和「・・・ばか」

【鎮守府・玄関】

大和「・・・」ゴシゴシ

大和「・・・」サッサッサッ

大和「・・・」パタパタ

大和「はぁ・・・」

大和(・・・)

バターン!

大和「!?」ビクッ

提督「あ、大和!ただいま!」

大和「・・・」

提督「・・・ん?」

提督「大和?どうしたの、固まっちゃって」

大和「・・・」

提督「・・・」

大和「・・・て」

提督「て」

大和「・・・て、提督」

提督「提督」

大和「お・・・お帰りなさい」

提督「うん。ただいま」

大和「・・・」

提督「・・・」

大和「・・・」ワナワナ

提督(寒いのかなあ・・・?)ポワポワ

大和「・・・提督」

提督「ん?どうしたの?」

大和「・・・」

大和「・・・」スッ

提督「・・・?」

大和「そこに・・・」

提督「・・・うん?」

大和「っ・・・」

大和「・・・そこに正座しなさい!今すぐ!」クワッ

数分後

大和「もうっ!提督ともあろう立場の方が、私に一言もなく、一体どこをほっつき歩いていたんですか!」プンプン

提督「い、いや・・・でも、一応、机に書き置きを・・・」ビクビク

大和「あんな書き置き一つで誰が納得するんですか!このばか!」

提督「ぴ、ぴゃあ・・・」ガタガタ

大和「ふざけない!」

提督「は、はいぃ・・・」

提督(こ、こんなに怒ってる大和初めて見たよぅ・・・)

大和「・・・」

提督「・・・」ビクビク

大和「・・・で?」チラ

提督「・・・え」

大和「え、じゃありません。どこに行っていた、とか、何をしていたか、とか、聞かないといけないことは沢山ありますけれど・・・その前にまず言うことがあるんじゃないですか?」

提督「え、えーと・・・」チラ

大和「・・・」ジー

提督「・・・」

提督「・・・ご」

提督「ごめんなさい~・・・」ベター

大和「・・・」

大和「はぁ・・・」

提督「ゆ、許してください・・・」ベター

大和「・・・それは提督次第ですね」

大和「・・・それで、この数日、鎮守府を放ったらかして、一体どこで何をしていらしたんですか?」ジトー

提督「え、えっとぉ・・・」

大和「・・・」

提督「それは・・・」


・・・

大和「・・・」

提督「と、というわけです」

大和「鎮守府の食料不足を解消するために、たくさん魚を釣ろうとしていた・・・」

大和「そして、そのための良い釣り場を探して、周辺地域をひたすら歩いていた・・・と」

提督「はぃ・・・」

大和「・・・」

大和「・・・で、肝心の成果は」

提督「・・・み、見ての通り・・・です・・・」

大和「・・・」チラ

バケツ「空やで」

大和「・・・」

提督「・・・」チラチラ

大和「・・・」

提督(う、うぅ~・・・やっぱり怒ってるよね・・・)

大和「はぁーーー・・・」

提督「!」ビクッ

提督「あ、あのぅ・・・」

提督「や、大和・・・その、ほんとに、ごめ・・・のあっ!?」

ギュウ!

大和「・・・」

提督「や、や、大和・・・さん・・・?」アワアワ

大和「・・・ばか」

提督「す、すいませ、ん・・・?」

大和「・・・」

大和「・・・無事で、良かった」

提督「あ、えっと、うん・・・なんとか・・・」

大和「危ない目にあっていたら、どうしようかって、私・・・」

提督「あっ、でも、その、ごめん。私じゃあ、魚、全然釣れなくって・・・」

大和「・・・いいんです。そんなこと」フルフル

提督「え?」

大和「・・・提督が無事なら、私は、それで・・・」

大和「それに・・・ちゃんと、帰ってきてくれた、から・・・」

提督「あ・・・」

提督(そっか、大和は・・・)

提督「・・・」

提督「・・・ありがと。大和」ポンポン

大和「・・・もう、勝手にいなくなったり、しないでくださいね?」

提督「・・・わかった。約束する」

大和「・・・なら、今回は許してあげます」

大和「でも・・・次はありませんからね?」

提督「肝に命じておくよ」

大和「・・・」クスッ

提督「・・・」クスッ

その後・・・

【鎮守府・執務室】

提督「ヒ、ヒエ~・・・!」カリカリ

大和「ほら!比叡さんみたいに情けない声出してないで、さっさと報告書を書いてください!」

提督「こんなの聞いてないよぅ~!」

大和「提督がサボっていたツケが回ってきたんです!大本営への報告義務なんて、常識じゃないですか!」

提督「ぴゃあ・・・」カリカリ

大和「まったく・・・それもこれも、全部提督のせいなんですから・・・」

大和「お陰で・・・」

大和「・・・」

大和「・・・私も、すっごく寂しかったんだもん・・・」ボソッ

提督「え!?なに!?何か言った!?」カリカリカリ

大和「・・・なんでもないですっ!」

大和「あっ、ほらそこ!また間違えていますよ!」

提督「えっ、嘘っ!?どこどこ!?」

大和「ここです!」ビッ

大和「もうっ!さっきから何度間違えてるんですか!提督なのに、一人じゃ書類一つもまともに書けないんですか!」

大和「次間違えたら、罰として今日の夕飯は自分で釣ってきてもらいますから!」

提督「そ、それだけはぁ・・・鳳翔さんのご飯が食べれないなんて、そんな・・・後生ですから・・・」カリカリカリ

大和「いいですね?提督?」ニッコリ

提督「う・・・」

大和「い・い・で・す・ね?」ニッコリ

提督「うぅ~・・・」

提督「うわぁ~ん!大和の鬼~!」カリカリカリカリ

《釣れますか?》
おしまい
読んでくれた人いたら、ありがと
書いてて思ったけど、この提督ってもしかしてバカ…?
あ、次は明日以降になりそうです

ゲームだと割とフランクだよね、大和
ここの大和は基本お堅い感じです

というわけで、次の短編

ダチャーンの声や曲について考えてて、ふと気がつけば丸一日経ってた



《髪は女の命》


四月某日・夜

【鎮守府・寝室】

ガチャ

大和「ふぅ・・・良いお湯だった・・・」ホカホカ

大和「・・・あら、提督?」チラ

提督「んー・・・どしたの?」ゴロゴロ

大和「初めてお会いした時と比べると、随分髪が伸びていますね」

提督「んん・・・そう?」サワサワ

大和「はい。以前は肩ほどまでの長さでしたけど、今はもう背中にまでかかっていますよ」

提督「あぁ、言われてみれば、そうかも・・・」イジイジ

大和「・・・」ジー

大和(・・・寝る子は育つ、って言うものね)クスッ

提督(なんだろう・・・また子供扱いされてる気がする・・・)ムゥ~

大和「・・・あ。それでですね、もし髪を整えたい時は、遠慮なく大和にお任せください」

提督「あれ・・・大和、髪のセットとかできるの?」

大和「さすがに専門の方々には遠く及びませんが・・・軽く整える程度でしたら問題ありませんよ」

提督「へぇー」

提督「あー・・・うーん、でもなあ・・・」

大和「・・・?」

大和「何か問題でも?」

提督「あ、いや、別に大したことじゃないんだけどさ。私、自分の髪のこととか、あんまり気にしたことなくって・・・」

大和「そうなんですか?」

提督「うん。だから、大体いつも同じくらいの短さに揃えるようにしてたんだよね」

大和「意外ですね・・・」

提督「そう?」

大和「まあ、提督の髪は艶のある綺麗な黒髪ですから、なにも手を加えなくても十分魅力的ですけど・・・」

提督「えぇ~・・・ほんとかなぁ~?」

大和「はい」ニコッ

大和「それに、その左右で色の違う澄んだ瞳も、肌の白さも、黒髪をより一層際立たせていて、とても綺麗です」

提督「ぅ・・・」

提督「・・・」モゴモゴ

提督「で、でも!肌なんて白すぎて不健康そうだってよく言われるし、眼なんて赤と青だよ?」

大和「は、はい・・・?」

大和(提督・・・?)

提督「あの、その・・・」

提督「・・・」

提督「・・・気持ち悪いとか、思わないの?」チラ

大和「・・・」ジッ

提督「・・・」

大和「・・・そうでしょうか?私は、そうは思いませんけれど」

提督「んぅ・・・」

大和「・・・?」

提督「なんか・・・」フイッ

提督「・・・あ、ありがと」ボソッ

大和(照れてる・・・)

大和(珍しいこともあるのね・・・)クスッ

大和「あ。でも・・・」ポン

提督「な、なに・・・?」

大和「せっかく髪も良い具合に伸びてこられたことですし、たまには髪型を変えてみてはいかがですか?」

提督「え、えぇ~・・・さっきわざわざ手を加えなくても良い、って言ってくれたのに?」ム~

大和「気分を変える意味も込めて、ですよ。それに、提督も立派・・・かどうかはさて置いて、女性なわけですし、こんなご時世とはいえ、オシャレに気を使ってもバチは当たらないと思いますよ?髪は女の命、という言葉もあるくらいですからね」

提督(そこは嘘でも立派なレディと言って欲しかった・・・)ショボン

提督「でも、髪型かあ・・・考えたこともなかったなあ」

大和「・・・」

提督「むむむ・・・」

大和「・・・」

大和「・・・では、試しに私と同じ髪型にしてみませんか?」

提督「大和と同じ?」

大和「はい」

提督「・・・」

大和「・・・」ニコニコ

提督(うぅ、すごい良い笑顔・・・)

提督(でも・・・)

提督(・・・)

提督(ま、いいか・・・)フッ

提督「じゃあ・・・」

大和「はい」

提督「・・・」

提督「・・・お願いします」

大和「・・・!」

大和「はいっ。大和にお任せください!」パッ

大和「それでは、まず軽くブラッシングをしていきましょうね」ゴソゴソ

提督「あ、うん・・・」

大和「~♪」ゴソゴソ

提督(楽しそうだなあ・・・)


・・・

シュッ、シュッ、シュッ・・・

大和「提督の髪は、本当に滑らかですね」

提督「そうなの?自分ではよくわからないけど・・・」

提督(髪といてもらってるだけなのに、なんだか気持ち良いなあ・・・)ポワポワ

大和「ええ。それに、癖も少ないので、長さがあれば少々凝った髪型にすることもできると思います」

大和「・・・私の髪型はいわゆるポニーテールですから、そう難しいものではありませんけれど・・・」シュッシュッ

提督「後ろでまとめ上げてるって言っても、大和は髪すっごい長いからね。私じゃあ、せいぜいちょんまげみたいにしかならないんじゃあないかなあ?」

大和「あら。それはそれで、面白くていいと思いますよ?」クスッ

提督「・・・ちゃんと女らしくなるようにしてよ?」ジー

大和「勿論です。ご安心ください」

大和「・・・」シュッシュッ

提督「・・・」ポワポワ

大和「・・・」

大和(・・・なんだか)

大和(・・・)

大和(・・・)フッ

大和(・・・子供の世話をする母親って、こんな感じなのかしらね)クスッ

提督(あぁ~・・・)ポワポワ


・・・

シュッ、シュッ、シュッ

シュルシュル・・・

大和「・・・はい。できましたよ」パッ

提督「んお?早かったね」

大和「鏡で確認してみてください」ハイ

提督「どれどれ・・・」ヨッ

提督「・・・」

提督「・・・」ウーム

提督「・・・」サワサワ

大和(・・・)スウッ

提督「うぅん・・・やっぱり長さが足りないなあ」

大和「・・・そうでしょうか。後ろでまとめていれば、執務の時も邪魔にならないと思いますよ」

提督「そうかもしれないけど・・・なんか、見た目が中途半端じゃない?」

大和「まあ、確かに・・・」ジッ

大和(また少し子供っぽさが増してる気がするわね・・・)フフッ

提督「うーん・・・」

提督(というより、これ・・・)

提督(・・・)

提督「・・・ま、いいや」

提督「取り敢えず、しばらくはこの髪型でいってみようかな」

大和「あら、いいんですか?納得していないご様子でしたけど・・・」

提督「ん・・・まあ、見た目は少し弱っちい気もするけど、せっかく大和がしてくれたからね」

提督「部下の好意に甘えるのも、上司の責任だよ」ニッ

大和「そんな・・・別に、私のことなんて、気にしてもらわなくても・・・」

提督「気にしないわけないでしょ。大和は大切な仲間なんだから」

大和「仲間・・・」

大和「・・・」

大和(仲間・・・)

大和(・・・)ギュ

提督「それに、どうせ他の髪型にしようにも、この半端な長さじゃあね・・・」

大和「・・・まあ、少し厳しいでしょうね」

提督「うん。だから、しばらくこれで」

大和「はぁ・・・」

大和(・・・)チラ

大和(・・・自分から提案しておいて、なんだけど)

大和(やっぱり・・・)

大和(・・・)

大和(・・・ちょっと、恥ずかしいな)

大和「私は・・・て、提督がそれでよろしいのでしたら、私は構いませんけど・・・」

提督「うんうん。いいのいいの」

大和「・・・」ムー

提督(・・・あら)

提督(素直じゃないんだから・・・)フゥ

提督(・・・)

提督「・・・よっ、と!」ゴロン!

提督「えへへぇ~」コロコロ

大和「・・・?」

提督「・・・」サラッ

大和「・・・」ピク

大和「・・・提督?」チラ

提督「おそろい~」

大和「っ・・・」カァッ

提督「お?」

大和「・・・」プイッ

提督「・・・」

提督「・・・」ニマー


テレンナテレンナ~
ベツニテレテマセンカラッ!


《髪は女の命》
おしまい
読んでくれた人いたら、ありがと
提督の見た目が少しでもイメージしてもらえれば嬉しい
原田美世に声がついたらもっと嬉しい

私はダチャーンのナビになりたい…

そんな感じで短編いくよ

あと2つ短編やる予定だったけど、互いに少しネタが被ってたから結局1つしたよ。ごめんなさいなんでも島風



《大地に咲く》


五月某日・夕方

【居酒屋・鳳翔】

ガラガラ

提督「お邪魔しまーす!」スッ

大和「失礼します」スッ

鳳翔「あら、お二人とも。いらっしゃいませ」

提督「こんばんは!鳳翔さんっ!」ニコ

鳳翔「はい。こんばんは」ニコ

鳳翔「ご機嫌ですね、提督。何か良いことでもありましたか?」

提督「うーんとねぇ・・・」ニヤニヤ

提督「・・・」チラチラ

提督「んー、どうしようかなぁ・・・」

鳳翔「・・・?」

鳳翔「あの・・・?」

提督「ん?気になる?気になります?」ズイッ

鳳翔「あ、まあ、はい・・・」

提督「んふふー・・・しょうがないなあ・・・」ニヤニヤ

提督「うへへ・・・実はねぇ・・・」ゴソゴソ
ズボッ

ズボッ

大和「これですよ」ガサッ

提督「・・・って、あっー!なんで先に出しちゃうのさ、大和ー!今、私が~・・・!」ガー

鳳翔「それは・・・線香花火、ですか?」

大和「はい」

大和「先ほど、移動販売の方がたまたま通りかかった時に、押し売りされてしまいまして・・・」

大和「要らないと私は何度も断ったんですが、提督が・・・」

鳳翔「あぁ、なるほど・・・」チラ

提督「いいじゃない!やりたかったんだもん、線香花火!」ムー

大和「はぁー・・・ダメとは言いませんけれど、鎮守府の問題が山積みのままになっているんですよ」

大和「余計な出費は控えてもらいたいところですね?」ジー

プラプラ

提督「うぐっ・・・それを言われると・・・」モゴモゴ

鳳翔「あ・・・そういえば、あの後、鎮守府はどうなったんですか?」

鳳翔「敵の砲撃でかなり被害があったようですけれど・・・」

大和「どうにもなっていません・・・今、修理を業者の方にお願いしていますけれど、竣工には二ヶ月はかかるようですし、その上、予算の都合で以前と同じ様には作り直せないと言われまして・・・」

提督「それで、大本営に修理費用を補填しろって言ったら、あいつらなんて言ったと思います!?」

??『君たちの鎮守府の問題は、全て君たちに責任がある。我々には関係のないことだ』

提督「・・・ですよ!信じられます!?」

提督「あんなのが上に立つ人間だなんて、ほんと信じられない・・・!」ギリギリ

大和「・・・そうですね」ジー

提督「・・・」

大和「・・・」ジー

提督「・・・」

提督「・・・んぇ?」


・・・

鳳翔「では、お二人は今、どうなさっているんですか?」

提督「最近は専ら外回りと掃除がほとんどだよ」

大和「まあ、元々執務室でやることも少なかったですからね。そういう意味では、以前とあまり変わっていないかもしれません」

提督「そうそう。でも、最近は毎日瓦礫の山と格闘してるせいで、身体中が痛いんだよね・・・」

大和「私も一緒に片付けているんですけど、まだしばらく時間もかかりそうですしね・・・」

鳳翔「そうですか・・・お二人共、お疲れ様です」

提督「・・・って、そんなことは今はどうでもいいの!」パッ

大和(どうでもいいって・・・)ハァ

提督「ね。鳳翔さん?」ズイッ

鳳翔「は、はい?」

提督「鳳翔さんも花火、やろ?」

鳳翔「あら・・・」

鳳翔「でも、私なんて・・・ご迷惑ではありませんか?」

提督「そんな訳ないでしょ!今回も鳳翔さんにはすっごく助けられたんだから、むしろこっちからお願いしたいくらいだよ!」

提督「それに、こういうのはやっぱり、人が多い方が楽しいからね!」

大和「もし、鳳翔さんがよろしければ、ですけれど・・・」

鳳翔「ん・・・」

鳳翔「・・・」チラ

鳳翔(・・・)

鳳翔「・・・ありがとうございます」

鳳翔「では、少しだけご一緒させてもらおうかしら」ニコ

提督「おっけー!じゃ、さっそく行くよー!」

ドタドタ

【居酒屋・鳳翔前】

ザアァァァ・・・

パチパチ・・・

提督「おぉ・・・綺麗だねぇ・・・」

鳳翔「そうですね・・・」

大和「夏には少し早いですけれど、たまには良いものですね」

提督「ほんとは空に派手に打ち上げるのが良かったんだけどなあ・・・」

提督「今度は絶対そうしよう・・・」フンスフンス

大和「そのお金は提督が、ご自分で払ってくださいね・・・」ジトー

提督「うぅ・・・」ショボン

鳳翔「ふふっ・・・」クスッ

鳳翔(花火・・・)

鳳翔(いつ以来かしらね、こんなに、遠く・・・)

鳳翔(・・・)

パチパチ・・・

提督「・・・」ポー

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

大和「・・・そういえば」

鳳翔「・・・?」

大和「鳳翔さんは、これから、どうなさるおつもりですか?」

鳳翔「これから・・・とは?」

大和「その・・・」

大和「・・・」

大和「・・・海沿いはやはり危険ですから、内地の方に行かれた方が良いのではないか、と・・・」

鳳翔「あぁ・・・」

大和「・・・差し出がましいことを言って、ごめんなさい」

鳳翔「え・・・あ、ううん。そんな、違うんですよ」パタパタ

鳳翔「むしろ、貴女には余計な心配をかけてしまって・・・私の方こそ、ごめんなさいね」

大和「・・・鳳翔さんは悪くないです」

大和「ただ・・・どうしても、不安で・・・」

鳳翔「大和さん・・・」

鳳翔「・・・」

パチパチッ・・・

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・私ね。海が好きなんです」

鳳翔「私たちを運んでくれるこの海が、ずうっと好きなんです」

大和「・・・」

鳳翔「・・・勿論、今は深海棲艦の影響で、自由に航海することは、難しくなってしまっていますけれど・・・」

鳳翔「それでも、やっぱり・・・好きなんです。この海が」

鳳翔「昔から変わらず、数え切れないほどの様々な想いを飲み込んで、また私たちを運んでくれる、この海が」

鳳翔「記憶の奥底に眠っている、数多の人々の心が溶け合った、この海が」

鳳翔「私は・・・大好きなんです」

鳳翔「これまでも、そして、これからも。ずうっと・・・」

大和「鳳翔さん・・・」

鳳翔「・・・ふふっ。航空母艦がこんなこと言ってたら、妖精さんに怒られてしまうかしら」クスッ

大和「っ・・・」ギュ

大和「・・・私も、です」

鳳翔「・・・大和さん?」

大和「私も、海が好きです」

大和「ずっと、海には辛い思い出ばかりだったけど・・・」

大和「ここに来て・・・提督や、鳳翔さんとももう一度会えて、私自身も、少し変われたと思うんです・・・」

鳳翔「・・・」フッ

大和「きっと・・・」

大和「・・・」

大和「・・・きっと、私を造ってくれた方々や、私と共に戦ってくれた方々も、皆、そうだったんだと思います」

大和「どれだけ辛いことがあっても、どれだけ苦しいことがあっても、どれだけ悲しいことがあっても・・・」

大和「この海にさらわれて、消えてしまうことなんて、ないんです」

大和「全部、全部、深く深くに押し流されても、まだそこには、確かに残っているモノがあるんだって・・・」

鳳翔「・・・」

大和「だからこそ・・・私たちは、信じて戦うことができるんです」

大和「私たちの想いも、決意も、後悔も、その何もかもが無駄ではないと、信じて前に進めるんです」

パチッ、パチッ、パチッ

鳳翔「大和さん・・・」

大和「・・・」グイッ

大和「みんな・・・」

大和「・・・」ツゥ

大和「・・・みんな、海が、大好きだったなあ・・・」

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・私は、これからもここに・・・海に一番近い、この場所にいます」

鳳翔「それが、私の・・・鳳翔の、生きる理由ですから」

大和「・・・」

大和「・・・鳳翔さんがそうお決めになったのでしたら、これ以上、私の方からは何も言えません」

大和「どうか、お気をつけて・・・」

鳳翔「ありがとう。大和・・・」

大和「ううん・・・」

大和「・・・」

大和「・・・それと」モジッ

鳳翔「・・・?」

大和「その・・・」

大和「・・・」

大和「・・・また、提督と一緒にお邪魔した時には、美味しい食事をお願いします・・・」

鳳翔「あら・・・」

大和「その・・・いつも鳳翔さんの作ってくれるごはんで、私も提督も、凄く元気づけられているので・・・」

大和「だから・・・」チラ

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・」フッ

鳳翔「・・・はい。腕によりをかけてお待ちしていますね」ニコ

ジッジッ・・・

鳳翔「・・・花火もそろそろ終わりみたいですね」

大和「あ、ほんとう・・・」

ジッ・・・ポト

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

ザアァァァ・・・

提督「・・・お話、終わった?」ニュ

鳳翔「きゃっ!て、提督!?」ビクッ

大和「きゅ、急に出て来ないでください!びっくりするじゃないですか!」

提督「いや~だって二人して神妙な顔で話してるから、私一人で寂しくってさあ」

大和「理由になってないですよっ!」

提督「そんなことより、こっちの花火も全部終わったから、そろそろ晩ご飯にしようよ。もうお腹ぺこぺこだよぅ・・・」グー

大和「相変わらず人の話を聞かないんだから・・・」ハァ

鳳翔「でも、そこが提督らしいとも言えますね」クスクス

大和「・・・まあ、そうかもしれませんけれど・・・」ムー

提督「・・・?」ンー?

提督「私、鳳翔さんの味噌汁が飲みたいなあ・・・」ポワポワ

鳳翔「ふふっ・・・分かりました。では、すぐに準備してきますから、少しだけお店の中でお待ちくださいね」

提督「ほんと!?やったあ!鳳翔さんありがとー!」パアッ

提督「そんじゃ、先にお店に戻ってるからね~!」

ドタドタ

大和「あっ、ちょっと提督!花火の後片付けしてから行ってください!こら!待ちなさい、提督ー!」

ドタドタ

ワーワー!キャーキャー!

鳳翔「あらあら・・・ふふ、本当に仲が良いのね」

鳳翔「・・・」サッ

鳳翔「・・・」チラ

ザアァァァ・・・

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・」フッ

ホーショーサーン、ハヤクー!

鳳翔「あ、はい!今行きますね!」タタッ

カランカラン

ガラガラ

《大地に咲く》
おしまい
読んでくれた人いたら、ありがと
一応これでおしまいかな?
ここまで読んでくれた人はきっと原田美世に投票したはず
感謝感謝

取り敢えずスレは何日か寝かしときますね
その内熟成して良いSSに…ならんか

せっかくだし採用しなかった短編タイトルも紹介しとくね
時系列はバラバラ
終章辺りのもあるからネタバレになるかもだけど、気にしない気にしない

地図にない島
空と海
天空に咲く
それでも私はやってない
成金計画
蠱毒
やっぱり駆逐艦は…
仮面舞踏会
虹色の約束
祈り
セクハラ禁止条例、採択しました
愛して。
お風呂戦争
叛逆の砲声
二人
珈琲とコーヒー
交差路で見つけて
探し物はなんですか?
休日の過ごし方
提督VS艦娘
アドベント・チルドレン
プリンとしたアレ
強化合宿!
桜の咲く頃
眠り
南方のとある鎮守府の話
西方のとある鎮守府の話
東方のとある鎮守府の話
健康診断
一騎打ち
奴は大変な物を盗んでいきました
ツッコミ不在の恐怖
メンツとプライド
酒保強襲
じゃあ私、お風呂入ってくるから
理想の朝ごはん
親愛度チェック!
トイレの神様
コードP
仁義なき戦い
ベッドの下の宝物
超・ファイアーフォーメーション
極・ファイアーフォーメーション
嫌よ嫌よも好きの内

おまけ
提督が大本営への定例会機に行った時の話
時系列的には3章の後くらい?
最後にこれだけ書きます
これ書いたら、もっかい依頼出せばいいのかな?初めてだからよくわからんけど、多分そうします



《北方のとある鎮守府の提督と遠方のとある艦娘の話》


六月某日・夜

【大本営・廊下】

バタン!

提督「ふぇ~・・・やぁーっと終わったよ・・・」グデー

提督「報告と会議で丸十日・・・疲れる・・・これ以上はもう無理よぅ・・・」

提督「うぅ・・・早く鎮守府に帰りたい・・・鳳翔さんの美味しいごはんが食べたい・・・」トボトボ

提督「・・・ん?」チラ

??「・・・」チョーン

提督「・・・?」

提督(パツキンの女の子が、一人ぼっちで長椅子に腰掛けてる・・・)ジー

提督(すっごく物憂げな顔してるけど・・・)

提督(誰だろ・・・艦娘の子、なのかなあ?)トコトコ

??「・・・はぁ」シューン

提督「・・・あのー」ニュ

??「ふぅ・・・」

提督「・・・」

提督(気づいてない・・・)

提督「あ、あのー・・・?」ヒラヒラ

??「・・・?」チラ

提督「・・・」

??「・・・」

??「・・・おあ!?」ビクッ

提督「おう!?」ビクッ

??「ご、ごめんなさい!私ったら、考えごとをしてて・・・」ワタワタ

提督「あ、ううん。別に、気にしてないから・・・」

??「で、でも、アトミラールに・・・」

提督「ア、アト・・・?なに?」

??「え、あっ!」

??「ええっとぉ、確かぁ・・・うーん・・・」ポクポク

提督「・・・?」

??「・・・あっ、そう!提督!提督さんです!」

??「貴女も、提督さん、ですよね!?」

提督「う、うん。一応、ね」

サッ

プリンツ「ご挨拶が遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした!私、重巡プリンツ・オイゲンと申します!」

提督「あ。やっぱり艦娘の子だったんだね」

プリンツ「はい!今は訳あって、こちらの大本営に身を寄せています!」

提督「あれ。そうなの?」

プリンツ「はいっ!」

提督「ふむ・・・」ジー

プリンツ「・・・?」

プリンツ「・・・あ、あの・・・?」

提督「あ、ううん。外国にも艦娘がいたんだなあって、少し驚いちゃって・・・」

プリンツ「あ、わ、私はアドミラル・ヒッパー級重巡洋艦の三番艦になりますっ!所属はドイツ海軍ですっ!」

提督「そうなんだあ」

提督(なんのことかさっぱりわかんない)

提督「・・・ところでさ」

プリンツ「は、はいっ!なんでしょうか!」

提督「・・・」

提督「・・・さっきからやたらと肩肘張ってるけど、もう少しリラックスしてくれていいんだよ?」

プリンツ「えっ・・・で、ですが、提督さんに、失礼があってはいけないと・・・」

提督「あー・・・他所ではどうか知らないけど、私はあんまり堅苦しいの苦手だし。それに、ほら」ツイッ

プリンツ「・・・?」キョトン

提督「顔。すっごく可愛いのに、強張ってたら、勿体無いよ」

プリンツ「か、可愛い・・・?」

提督「そうだよー。ほんっとに」

提督「だから。気楽に、笑顔で。ね?」ニコ

プリンツ「あ・・・」

プリンツ「で、でも・・・」

プリンツ「・・・」チラ

提督「ん?」ニコニコ

プリンツ「っ・・・」

プリンツ(こ、この人・・・)

プリンツ「・・・」

提督「・・・?」

プリンツ「わ、わかりました」

プリンツ「じゃ、じゃあ、普通に、話し、話すね・・・?」

提督「お、そうそう!遠慮しなくていいよ!」

提督「あ。それと、笑顔もね!」

プリンツ「ふぇっ!?え、笑顔・・・」

提督「ほらほら、笑って笑って!にこー!」

プリンツ「え、えーとぉ・・・」

提督「・・・」ジー

プリンツ「ぅ・・・」

プリンツ「・・・っ」バッ

プリンツ「こ、こんばんは!アトミラールさんっ!」ニコ

提督「いえーす!こんぐらちゅれーしょーん!」グッ

提督「可愛いよー!プリンツちゃん!」

プリンツ「え、えへへ・・・」テレテレ

プリンツ(こ、こんな風に笑ったの、どれくらい振りだろう・・・)

プリンツ(・・・)

プリンツ(でも、この人・・・)ジッ

提督「いやー・・・でも、ほんと可愛いなあ・・・」シゲシゲ

プリンツ「・・・」ポー

プリンツ(んふふっ・・・)

プリンツ(変な人だなぁ・・・)


・・・・・

提督「へぇー。じゃあ、プリンツちゃんは大本営預かりって立場なんだね」

プリンツ「うんっ。それで、最近は来客の案内や館内の掃除をしているんです」

提督「ほぇー・・・重巡洋艦って軽巡洋艦とか駆逐艦よりも強いのに、勿体無いなあ」

プリンツ「う、うん・・・で、でも、それは大本営が決めたことだから、しょうがないの」フイッ

プリンツ「私も、みんなと一緒に戦えたらいいなって、思ってはいるんだけど・・・」

提督「そっかぁ・・・」

提督「・・・」

提督(以前の深海棲艦の侵入といい、大和やプリンツちゃんの扱いといい、ついでに私への嫌がらせといい・・・)

提督(・・・)

提督(なるほど・・・そういうことね・・・)

プリンツ「・・・提督?」ヒョコ

提督「あ、ううん。なんでもないよ」パタパタ

提督「・・・」

提督「・・・あ。そうだ」ポン

プリンツ「え?」

提督「ねえ、プリンツちゃん?」ズイッ

プリンツ「は、はい・・・?」

提督「あのね。もし、プリンツちゃんさえ良かったらだけど・・・」チラ

プリンツ「・・・?」

提督「・・・」

プリンツ「・・・」

提督「・・・ぁ」

シレイカーン!ドコニイルノー?シレイカーン!

提督「・・・!」ピクッ

提督「・・・あー・・・すっかり忘れてた・・・」

プリンツ「・・・提督?」

提督「んー・・・」

提督「・・・ごめんね。プリンツちゃん。連れが探しに来たみたいだから、私、そろそろ行かないと」

プリンツ「あ。そ、そうなんだ・・・」

プリンツ(そっか・・・提督、帰っちゃうんだ・・・)

プリンツ(もうちょっと、お話したかったなあ・・・)シュン

提督「ごめんね・・・また今度会った時は、ゆっくりお話しようね」

提督「て言うかむしろ私の方からプリンツちゃんに会いに行くんだから。まだまだ話したいこと、沢山あるんだもん・・・ねっ?」パチッ

プリンツ「・・・!」パッ

プリンツ「う、うん!約束だよ!」

提督「おっけー。約束ね」

プリンツ「・・・約束破ったら、ハリセンボン、ですからね?」クスッ

提督「ふふっ、こわいこわい」

提督「でも・・・そこは頼りにしてくれて、いいよ」ニッ

プリンツ「ぁ・・・」

プリンツ「・・・」フッ

シレイカーン!

提督「あっ。はいはーい!すぐ行くよー!」

提督「そ、それじゃあ、またね!プリンツちゃん!」タタッ

プリンツ「・・・うん!またね!」

タッタッタッ

モウッ、ナニシテタノ?シレイカン?
ゴメンゴメン。ナンデモナイヨー。サッ、カエロカエロー。

プリンツ「・・・」

プリンツ「・・・」ギュ

プリンツ「・・・また、ね」

プリンツ「・・・」

プリンツ「・・・アトミ、ラール」

プリンツ「・・・」

ガタッ

トットットッ・・・



バタン!


《北方のとある鎮守府の提督と遠方のとある艦娘の話》
おしまい
最後まで読んでくれて、ありがと
プリンツは酒匂と並ぶ重要キャラだったり
あと、提督がセクハラしたい艦娘ランキングナンバーワンだったりもする

ダチャーンが上位に入ったら何でもするから、是非是非原田美世に投票よろしくね

じゃ、あでぃおすぐらっしゃー

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年03月30日 (木) 08:11:05   ID: 5FA625Lr

いなだぼーえーだいじーん

2 :  SS好きの774さん   2017年04月05日 (水) 17:08:51   ID: nDqloTNC

女提督とか臭い

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