穂乃果「私たちが決めた」絵里「もう一つのこと」 (19)

アキバでの全国のスクールアイドル合同ライブから、数日が経った。

私たちは、最後に、本当に最後にμ'sとして、
μ'sだけのライブをしようと、残された時間で練習をしていた。

そんなある春休みの午後。

他愛も無いお昼休憩の時に、絵里ちゃんが唐突に私たちに声をかけたんだ。


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絵里「みんな、ちょっと良い?」


絵里ちゃんの表情は、普段と変わらない優しい笑顔だったけど、
何だか、何かを真剣に考えているようで、
私もついつい身構えてしまう。

絵里ちゃんの近くに、にこちゃんと希ちゃんが集まる。

真姫「何?3年生から話でもあるの?」

希「うちら、もう卒業してるから3年生やないけどなー」

希ちゃんもいつもの表情で軽口をたたくけど、
横に立つにこちゃんの雰囲気はまじめでピリピリしているように感じる。

海未「何でしょう、込み入った話でしょうか」

絵里「ええ」

小さく一息ついて、絵里ちゃんは6人、
横に立つ2人をゆっくりと眺めながら話始めた。

絵里「穂乃果、花陽、そしてみんな」

絵里「もう少し落ち着いたらで良いから、
私たち、μ'sとして分かるものは学校から、音ノ木坂から引き上げましょう」


…え?

私は一瞬、絵里ちゃんが何を言ってるのか分からなかった。

穂乃果「なんで!?μ'sは…おしまいかもしれないけど…でも!」

希「それでμ'sが無くなるわけじゃないん。ずっとみんなの心に残ってるやろ?」

少し困った顔で希ちゃんが静かに口を開く。
希ちゃんのいうことは分かるけど、
だって、そんなに簡単なことじゃ…

花陽「け、けど!音ノ木坂にとってμ'sは廃校を救ったっていう大事な大事な功績が…!」

だから、普段大人しい花陽ちゃんが、
とても焦ったように話すのは良く分かった…
でも…

にこ「…その事実だけでいいでしょ」

それまで口を開かなかったにこちゃんが、
焦る花陽ちゃんを制するように口を開く。

ことり「事実?」

にこ「確かに廃校を救うためにμ'sはスクールアイドルとして活動してきたわ」
絵里「でも、廃校を救うため「だけ」だったかしら?」
希「エリチは反対してたけどなー」
絵里「希!」

にひひと笑う希ちゃん、それをちょっと怒ったように言う絵里ちゃんの表情、
呆れたようにため息をつくにこちゃん。

それはいつも通りの光景なのに…
でも、話している内容は、私にはとても悲しい。

ため息をついていたにこちゃんは、きっと口を結ぶと
まっすぐに私たちを見る。

にこ「音ノ木坂は、これからも続いていく。スクールアイドルもずっと続いていく。
…いつまでも、私たちがμ'sという存在が「ここ」を縛るわけにはいかないのよ」

凛「にこちゃん…」

希「もうすぐ入ってくる雪穂ちゃんにありさちゃん、それに多くのこれからも続く新入生たち」

絵里「ありさたちだって、μ'sに入らないっていう覚悟を示したのよ」

にこ「私たちはスクールアイドル。その想いと輝きはきっといつまでも残ってるし、繋がっていくわ」

絵里ちゃんがそっと目を閉じる。


絵里「無謀な夢から始まって、奇跡のようにすべてがつながって」

希「どうなるんだろう?ドキドキで毎日が冒険だったよ、いつも」

にこ「これからはもっとよろしくね、だって離れたり出来るはずないんだよ」

3人「思い出だけじゃないからね、新しい夢が生まれてくると」



穂乃果「…僕たちは知ってるよ」



気がつけば、私は絵里ちゃんたちが歌いだした
「MOMENT RING」の歌詞を呟いていた。

絵里「ええ。海未、素晴らしい歌詞をありがとう」

海未「はい…ありがとうございます」

希「真姫ちゃん、素敵な曲をありがとね」

真姫「どう…いたしまして」


穂乃果「新しい夢…」


穂乃果「…μ'sに憧れてくれるのは嬉しい…、けどμ'sを追いかけるのは…違う」


にこ「そうよ。私たちが憧れて、追いかけてきたラブライブ!はどんどんこれからも大きくなる。
誰かの、新しい夢にもきっとつながる。
だから、私たちが縛るわけにはいかないのよ…!」

…うん!


穂乃果「…わかったよ!絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃん!」


絵里「穂乃果…」
ことり「穂乃果ちゃん…いいの?」

穂乃果「うん!だってみんなの言う通りだよ!」

穂乃果「私が、私たちが大好きなラブライブ!はこれからも広がっていくんだよ!μ'sを超えてやる!って思ってもらわないと!」

私は大きく広げた手を、力強く握り、うなづいた。

真姫「…超えられたらね」

凛「真姫ちゃん、何か言ったにゃ?」

真姫「な、何も言ってないわよ!」

花陽「ちょ、ちょっと…今、大事な話してるところだよぉ…」

そんな、こちらもいつも通りの1年生のやりとりを見て、
今度は思わず笑顔になってしまう。

穂乃果「でもね、やっぱりちゃんと私たちで考えていいかな?」

絵里ちゃんたちの考えは賛成!
想いもすごく伝わったけど、もう少し、残された時間でみんなで考えたいな!

穂乃果「形のあるものは残さないかもしれないけど、伝えていかなきゃいけないことはあると思うんだ!」

海未「そうですね、さっきにこが言った、想いと輝きは残る、繋がっていくという言葉、素晴らしいです」

ことり「心は…繋がってる、ずっと繋がってるもんね!」


絵里「ええ。ぜひ考えましょう」


そう優しく告げた絵里ちゃんは笑顔のまま、泣いていた。

絵里「ありがとう、穂乃果、みんな、私は本当に仲間に恵まれたわ」


ありがとうを言うのはこっちだよ絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃん。
最後まで学校のことを、μ'sのことを、ラブライブ!のことを考えてくれて。

残さなきゃいけないこと、きっとある。いっぱいある。
伝えたいことも、いっぱいある。


それはきっと、ひとつなぎのリングのように繋がって、


音ノ木坂をこえて、ラブライブ!を照らし続ける輝きになるんだろうな。


「思い出だけじゃないからね、新しい夢が生まれてくると、僕たちは知ってるよ」


きっと、その輝きは、どこかで誰かを照らして、
私たちだけじゃない、誰かの新しい夢を生み出すんだろうな。

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・・・・・・・・




真姫「…で、現実問題、ここにあるものどこに持ってくのよ?」



海未「優勝旗は返還しますから大丈夫ですね」

ことり「衣装、結構な数があるからかさばっちゃうよね…」

花陽「でも…捨てるのは絶対いやだな…」

凛「まだにこちゃんの私物が残ってる気がするにゃ」

絵里「それはねえ」
真姫「?」

希「せやなあ」
真姫「??」

にこ「しょうがないわねえ…」
真姫「???」


真姫「…!」



真姫「なんでこっち見るのよー!!」



ちゃんちゃん♪

駆け足ですが以上です。
μ’sが何も残していかなかったこと、
きっとμ’sならちゃんと考えて出した答えなんだろなって思っています。

おつおつ、良かったよ。

おつ

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