シンジ「僕が?」 (841)

SS速報よりRに立て直し

はじめに

・新世紀エヴァンゲリヲンのTVアニメ版沿いに進行していきます。
尚、旧劇場版、新劇場版、鋼鉄のガールフレンド、2ndインプレッションの要素が含まれる場合があります。

・このスレはエロやグロ主体ではありません。
しかしながら、それらの要素が含まれる「かも」しれないのでこちらに立て直すことに致しました。

・展開に関するレスは配慮していただくと助かります。SS初心者なので反応はなんでも嬉しいです。

・アスカは旧です。ヤンデレ化。
特定の機関、人物に対してのアンチはないつもりですが、それでもいいと思う方のみ暇つぶしにお読みください。

- ネルフ 本部 -

リツコ「テストスタート」

マヤ「ハーモニスク正常値。A10神経接続への干渉、ありません」

リツコ「続けて」

マヤ「深度をさげます。――……0.1、0.2、0番1番、ともに汚染区域に隣接。限界です」

リツコ「……ふぅ」

マヤ「やっぱり、まだまだ、ですか?」

リツコ「エヴァとのシンクロやハーモニスクが安定しているからといって楽観視はできないわよ」

リツコ『……シンジくん、レイ、上がっていいわよ』

シンジ&レイ『はい』

- ネルフ本部 第三通路 自販機前 -

シンジ「(今日の晩御飯は何にしようかなぁ)」

◯◯「やぁ、君が碇シンジくん、かな?」

シンジ「え? えっと……そうですけど」

◯◯「――失礼。自己紹介がまだだったね。俺は加地。加地リョウジ。気軽に加地とでも呼んでくれ」

シンジ「は、はぁ」

加地「すこし、話がしたいんだが今は時間あるかな?」

シンジ「話、ですか?」

加地「そう、少し改まった話でね。もう少し静かな所に移動してくれるとありがたいんだが――」

シンジ「(なんだろう……)……それは、大丈夫ですけど」

加地「悪いな。それじゃ移動しようか。おっと、コーヒーでいいかい?」

シンジ「はい」

加地「付き合わせるついでに俺からおごらせてもらうよ」

- ネルフ 本部 郊外 スイカ畑 -

加地「ここなら、心配ない」

シンジ「あの、話っていったい?」

加地「シンジくんは生き物を飼ったことがあるかい?」

シンジ「……?」

加地「生き物はいいぞー。育てると色んなことが見えてくるしわかってくる」

シンジ「……そうですね」

加地「悪い。話を逸らすのは癖でね。ここにキミを呼んだのは父上について話たかったからだ」

シンジ「父さん?」

加地「……あぁ。シンジくんはお父さんについてどこまで知ってる?」

シンジ「……父さんのことはあまり知りません」

加地「親子なのに、なぜだい?」

シンジ「……あまり、会わなかったから」

加地「シンジくんは、養父に育てられたんだったね?」

シンジ「はい、そうですけど、あの、いったい……」

加地「キミのお父さんはある重大な隠し事をしている」

シンジ「隠し事、ですか?」

加地「あぁ。できれば、その隠し事を暴くために俺に協力してほしいんだ」

シンジ「協力?」

加地「そうだ。約束してくれるなら俺も君の味方になろう。約束するよ」

シンジ「……あの、ちょっと、意味が……」

加地「すまないな。詳しくは言えない。言ってしまえば君は協力を拒めなくなる。だから、嫌なら断ってくれてもいい」

シンジ「(拒めなくなるってどういうことなんだろう)」

加地「突然のことで驚きもあると思う。返事はすぐにとは言わないが、どうする?」

シンジ「………………」

加地「………………」

シンジ「……………どうして、父のことを知りたいんですか?」

加地「俺は昔からアトランティスの海底都市とかUMAとかには目がなくてね。どうしても興味がつきないんだ」

シンジ「父さんは、それと同じってことですか?」

加地「……少なくとも俺にとっては、ということにしておこうか。シンジくんもお父さんについて知らないことばかりなんだろう?」

シンジ「………………はい」

加地「興味だけで首をつっこむにはすこしこわいかな?」

シンジ「よく、わかりません」

加地「……そうか」

シンジ「あの、返事は、すこし待ってもらえませんか?」

加地「かまわないよ。近々、会うことにもなるだろうね」

シンジ「えーと、ネルフの職員、なんですよね?」

加地「いや、俺はフリーターみたいなもんさ」

シンジ「……?」

加地「セカンドチルドレンと一緒に会うことになる」

シンジ「……セカンド、チルドレン」

加地「かわいい女の子だぞ? それじゃ、今度は船上で会おう、それまでに答えを決めておいてくれ」

シンジ「あ、あの……っ!」

シンジ「行っちゃった……なんだったんだろう……加地、さんか……」

- ミサト宅 -

ミサト「ぷはぁ~~っ! くぅ~~っ! やっぱコレよねー!」

シンジ「……あの、ミサトさん」

ミサト「どしたの~? シンちゃん」

シンジ「ネルフってフリーターでも入れるんですか?」

ミサト「ふりーたぁー?」

シンジ「はい、あの、ちょっと気になることがあって」

ミサト「フリーターって僕アルバイトォのフリーターってことでいいのかしら」

シンジ「たぶん」

ミサト「シンジくんも知ってると思うけど、ネルフ本部に入るためには専用のゲートがあるわよね?」

シンジ「はい」

ミサト「通るにはIDカードが必要になる、ここまで言えばわかるかしらん?」

シンジ「……(じゃあ、あの人は?)」

ミサト「……シンちゃん、もしかして気になる女の子でもできた?」

シンジ「なっ⁉︎ ち、違いますよ!」

ミサト「むふふ~照れちゃってぇ~! 隠さなくてもお姉さんは大丈夫よ?」

シンジ「ほ、ほんとに違うんですって!」

ミサト「まぁまぁ、いいからいいから。そうねぇ、IDが必要になったらリツコにでも言いなさい。見学ならできるから」

シンジ「だから違うって言ってるでしょ! 僕は加地さんって人がいたから!」

ミサト「…………」

シンジ「あの、ミサトさん、えびチュ、こぼれ」

ミサト「シンジくん、あんた、今、なんて言ったの?」

シンジ「え? あの、だから、僕は女の子じゃなくて」

ミサト「……フルネーム、聞いた?」

シンジ「……あ、はい。えっと、加地リョウジって言ってました」

ミサト「か、かかかかかか、かぁじぃ~~っ⁉︎」バンッ

シンジ「ひっ⁉︎ ミサトさん! 首が締まる!」

ミサト「ホント⁉︎ 本当に加持リョウジだって言ってたのね⁉︎」グイッ

シンジ「いただだっ! はい! たしかに加地だって言ってました!」

ミサト「…………」

シンジ「………(やっと離してくれた)……あの、ミサトさん?」

ミサト「…………あ、悪夢だわ」

- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

リツコ「――加持くんが?」

ミサト「そうなのよ、昨日、シンジくんから聞いたんだけど」

リツコ「まさか。彼は今、ドイツでセカンドチルドレンに帯同しているはずよ。ありえないわ」

ミサト「…………同姓同名って可能性は?」

リツコ「MAGIのデータベースにそんな名前はないわよ」

ミサト「ちょっち、キナくさくなってきたわね」

リツコ「気にしすぎじゃない?」

ミサト「そうかしら? シンジくんは加持と面識はないはずだし……名前を知ってるのはどう考えてもおかしいわよ」

リツコ「……サードチルドレンの警護レベルをあげる?」

ミサト「いえ、しばらくは様子を見ましょう」

リツコ「そう。そういえばセカンドチルドレンと二号機の引き渡し期日、迫ってきてるわよ」

ミサト「いつ?」

リツコ「明後日。護衛には米艦隊がつくらしいわ」

ミサト「はぁ~。またやっかみがあるのね」

リツコ「仕事よ。セカンドチルドレンは喜んぶんじゃないかしら」

ミサト「あの子は当然と思っていそうだけど」

リツコ「シンジくんも連れていってあげたら?」

ミサト「ん?」

リツコ「たまには息抜き、させてあげてもいいでしょう?」

ミサト「いっがぁ~い! リツコからシンジくんを気にかけるなんて」

リツコ「ヤシマ作戦ではそれなりの戦果をあげたから。それだけよ」

ミサト「……そうね。それもいいかもしれないわね」

リツコ「…………」

- ネルフ本部 ??? -

冬月「君の息子に接触したようだが?」

ゲンドウ「心配ない。鈴はつけてある」

冬月「ふむ。しかし『加地』と名乗ったそうだが、いいのかね?」

ゲンドウ「……あぁ」

冬月「鳴らない鈴に意味はないのではないか?」

ゲンドウ「それならば鈴を変えればいいだけだ」

冬月「しかし、いずれ加地と加持が別人だと君の息子にわかるぞ」

ゲンドウ「……全てはシナリオ通りだ、冬月」

冬月「…………」

- ミサト宅 -

ミサト「――と、いうわけでぇ、明後日にちょっとした旅行に行くわよん」

シンジ「は、はぁ」

ミサト「セカンドチルドレンは、女の子よ? どう? 嬉しい?」

シンジ「…………(あの人の言ったことは本当だったんだ)」

ミサト「……シンちゃん?」

シンジ「あっ、いえ、あの、はい。わかりました」

ミサト「……そう? お友達も連れていってかまわないわよ」

シンジ「え? でも、いいんですか? 機密とか」

ミサト「そこは私の権限でなんとかしましょう。シンジくんは日頃から頑張ってくれてるんだもの。それぐらいしてもバチは当たらないわ」

シンジ「……あ…ありがとうございます。ミサトさん」

ミサト「いつかも言ったけど、あなたは、みんなに誇れる立派なことをやってるのよ? もっと胸をはりなさい」

シンジ「……本当に僕でいいのかなって思うんです」

ミサト「…………」

シンジ「誰かに言われて乗ってるだけだし、こわいんです」

ミサト「シンジくん――……」

シンジ「ご、ごめんなさい」

ミサト「……あなたの気持ちがどうであれ、あなたのおかげで結果私たちは生きていられる。今はそれだけを考えなさい。……ね?」

シンジ「……はい」

- アスカ 夢の中 -

看護婦「偉いのね、アスカちゃん、いいのよ、我慢しなくても」

アスカ「いいの、私は泣かない、私は自分で考えるの」

アスカ父「何がいいのかな?」

アスカ「――いいの。私はなんでもできる。もう子供じゃないの」

アスカ父「どうして新しいママからのプレゼントを捨てたりしたんだ?」

アスカ「私のことはほっといて!」

義理母「アスカちゃん……」

アスカ「いや! いやっ! 嫌! みんな大っ嫌い!」

キョウコ「アスカちゃん――」

アスカ「ママッ! いなくならないで! 私のママをやめないで!」

キョウコ「アスカ――」

アスカ「その手にあるのは違うわ! 私はママの人形じゃない! ねぇっ! お願いだからこっちを見て!」

キョウコ「一緒に死んでちょうだい」

アスカ「いやっ! ママッ! ママをやめないで!」

キョウコ「死になさい」

アスカ「いや! もういやぁっ!!!!!」

キョウコ「しね。しね」


アスカ「嫌ぁぁああっ!!!」

- オーバーザレインボー 艦内 -

アスカ「…………」

加持「どうした? 嫌な夢でも見たのか?」

アスカ「……なんでもない」

加持「そうか」

アスカ「……ねぇ、加持さん」

加持「ん?」

アスカ「……抱いて」

加持「こりゃまたなんとも魅力的な誘惑だな」

アスカ「――どうして⁉︎ 私はもう子供じゃない!」

加持「…………」

アスカ「胸だってもうこんなにあるのよ! ねぇ!」

加持「……アスカは、まだ子供さ」

アスカ「…………っ」

加持「……明後日、ミサトが受け取りにくるそうだ」

アスカ「…………」

加持「サードチルドレンも連れてくるそうだぞ」

アスカ「……興味ない」

加持「男だって話だが――」

アスカ「ガキになんて興味ない!」

加持「……しかし、彼は初めてのシンクロで40%を超えていたそうだぞ」

アスカ「――――うそぉっ⁉︎」

- オーバーザレインボー 当日 -

ケンスケ「まさにゴージャス! さすがは国連軍が誇る正規空母、"OVER THE RAINBOW"!

ミサト「よくこんな老朽艦が浮いてられるものねぇ」

ケンスケ「すげぇ~っ! これがミニッツ級航空母艦! しびれるゥ~~っ!! おおーっ、空母が5、戦艦4、大艦隊だ!」

シンジ「ケンスケ、あまり身を乗り出すと危ないよ」

ケンスケ「いかりっ! いや! 碇先生! 誘ってくれてありがとな! ほんっと持つべきものは友達だよ!」

シンジ「あはは」

トウジ「ワシにはさっぱり良さがわからんわ」

ケンスケ「この良さがわからないだってぇ⁉︎ ……あっ! あっちのはアイオワ級母艦! アーレイバークレー母艦も!!」

トウジ「…………はぁ」

ケンスケ「おぉーっ! 凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄すぎるーっ! トウジも男だったら涙を流すべき状況だね! これは!」

トウジ「さよか」

ミサト「ふふっ、連れてきた甲斐があったわ」



アスカ「――――ヘロォ~ゥ、ミサトっ!」

ミサト「――アスカ、久しぶりね」

アスカ「……で? サードチルドレンはどこ?」

ケンスケ「お、おい。誰だよあのかわいい子」

トウジ「ほんまや、シンジ、知らんのか?」

シンジ「…………(たぶん、あの子が……)」

ミサト「ここにいるわよ」

アスカ「ふぅ~~~~ん」


トウジ&ケンスケ&シンジ「……………」


アスカ「あんたね! サードチルドレンは!」

トウジ「わ、ワシ?」

ケンスケ「――ぷっ」

アスカ「なによ? 違うの?」

ミサト「……アスカ、シンちゃんは、こっちよ」

アスカ「え、えぇ~~っ⁉︎ こんなにさえないやつぅ⁉︎」

アスカ「………………?」

シンジ「………………」

アスカ「………………」

シンジ「………………」


トウジ「なんや? あの二人。見つめあってるで」

ケンスケ「二人の世界かぁ? いやぁ~んな感じ」

アスカ「………っ⁉︎ ち、ちがうわよ!」

シンジ「……(この子が、セカンドチルドレン)」

アスカ「……(さえないと思ったのになに? この感じ?)」


シンジ&アスカ「(……懐かしい?)」


加持「――二人とも気に入ったようでなによりじゃないか」

ミサト「………………そ、そそその声は……っ⁉︎」

加持「よっ、久しぶりだな。葛城」

乙。続きに入ったらなんか明確な合図お願いします

ミサト「な、なななんであんたがここにいるのよー⁉︎」

加持「アスカの随伴でね。1日ほど一緒の旅路になるな」

シンジ「…………」

加持「――よろしく、碇シンジくん」

シンジ「え? えっと……」

ミサト「シンジくん。前に言ってた加持リョウジってこの人?」

シンジ「………(この人『も』加地? カジリョウジ?)」

ミサト「――シンジくん?」

シンジ「すみません。えっと――」

加持「俺たちは初対面さ。そうだろう? シンジくん」

シンジ「……はい」

ミサト「――そう(初対面? だったらシンジくんに名乗った加持は誰? 警護レベル、真剣に考えた方がいいかもしれないわね)」

加持「……とりあえず、長旅お疲れさん。立ち話もなんだし、移動しないか?」

ミサト「え、えぇ…」

加持「アスカもシンジくんとじっくり話たいのはわかるが、彼は逃げないぞ?」

アスカ「……ち、ちがっ! もー! 加持さぁん!」ギュウ

トウジ「な、なんやあいつ。ワシらとあの加持っていう人への対応が全然ちゃうやないか」

シンジ「…………」

ケンスケ「あれは同性から嫌われるタイプと見た」

加持「さ、じゃあいこうか。狭い艦内だがコーヒーぐらいはだすよ」

>>16
わかりました
全年齢版の速報板にあるスレがまだ残っていたらあちらにレスします
残っていなければ目につきやすいようにこちらを一度だけsageしません

- 数十分後 オーバーザレインボー デッキ -

加持「よう、遅かったじゃないか」

シンジ「どういうことなんですか?」

加持「すまない。いろいろと疑問はつきないだろうが先に答えを聞かせてくれないか?」

シンジ「でも、あなたとあの時の人は――」

加持「似ても似つかない別人、と言いたいんだろう?」

シンジ「……はい」

加持「それに答えるにも色々とたてこんでいてね。協力するのなら、という条件つきで解消することはできるが――」

シンジ「意味が、言ってることの意味がわかりません」

加持「そうだろうね」

シンジ「こんなので協力しろって言われてもできるわけないじゃないですか」

加持「ふっ。以前に会った俺は影武者みたいなもんさ」

シンジ「影武者?」

加持「代役、でもいいかな。とにかく、君と俺とのパイプ役をかねてもらっている。カジリョウジと名乗ったのは俺と君が合わずとも違和感がないようにしてもらった」

シンジ「こっちの方が違和感がありますよ。そんなことのために?」

加持「それが必要だったからだよ。わざわざ口調を真似てもらったんだが、気がついたかな?」

シンジ「……どうでもいいよ、そんなの」

加持「気を悪くしてしまったのならすまない。ちなみに俺との会話は葛城……君にとってはミサトに言わないでくれると助かる」

シンジ「僕、まだ協力するとは言ってませんよ」

加持「協力する、しないにかかわらずだよ。できれば、ということだが」

シンジ「…………」

加持「そんなに葛城を慕っているのかい?」

シンジ「…………怪しい人よりは」

加持「ははっ、こりゃ一本とられたな。たしかに。違いない」

シンジ「協力は、できません」

加持「そうか」

シンジ「…………それだけですか?」

加持「意思は自由なものさ。誰のものでもない、キミだけのものだ」

シンジ「(なんなんだよ、この人)」

加持「さて、あまり時間がない。アスカのこと、よろしく頼むよ」

シンジ「……アスカを?」

加持「あれでいてなかなかに脆い子でね」

シンジ「約束は、できませんよ」

加持「それならそれでかまわないさ。ほら、コーヒー」

シンジ「…………」

加持「(そろそろか……)」

加持「シンジくん。君はこれから色々とやっかいなことに巻き込まれるだろう。だが、それは君のせいじゃない。……いいね?」

シンジ「……?」

加持「これだけは忘れないでくれ。トリガーはキミじゃない。初号機のコアだということを」

シンジ「なにを言って――」


『緊急入電。正体不明の物体接近。総員、戦闘配置。これは訓練ではない。繰り返す――』


シンジ「………っ⁉︎ ……なんだ⁉︎」



――――タタタタッ


アスカ「――はぁっ、はぁっ、こ、こんなところにいたの、サードチルドレン」

シンジ「あ、君は……」

アスカ「いいから来なさい!」グイッ

シンジ「うわぁ⁉︎ ちょっと! なんなんだよ! いたたた! 耳ひっぱ!」

アスカ「い・い・か・らぁっ! 黙ってついてくんのよ!」グイグイッ

シンジ「いだだ! わかったから離して――!」

アスカ「……ふんっ!」




加持「(シンジくん、君の未来に幸せがあることを祈っている)」

- エヴァ弐号機 エントリープラグ内 -

アスカ「……LCL Füllung。Anfang der Bewegung。Anfang des Nervenanschlusses。Auslösung von Linkskleidung. Synchro-start」

シンジ「え? なに?」

アスカ「チッ、不純物が多い……。あんた、なにやってんのよ。ドイツ語で言って、ほら」

シンジ「あ、あぁ~。えーっと、ぐ、グーデンボーゲン?」

アスカ「…………」

シンジ「…………ば、バームクーヘン?」

アスカ「あんたドイツ語もできないのぉ⁉︎ これだからガキは嫌いよ!」

シンジ「で、できるわけないじゃないかぁ! 僕は日本人だよ!」

アスカ「はぁ……。エントリープラグ起動。言語は日本語で」

シンジ「だいたいなんで僕がこんなところにいなきゃらないんだよ」

アスカ「この私様の初陣を特等席で見せてやるって言ってんのよ? 感謝しなさい」

シンジ「……別に僕は見たいなんて」モゴモゴ

アスカ「なに?」

シンジ「なんでもない」

アスカ「あんた、ちょおっと良い成績だからって調子にのってるんじゃないの?」

シンジ「そ、そんなわけないだろ⁉︎」

アスカ「フンッ! どーだか! 見てなさい……(行くわよ、私の弐号機)」

- 戦闘後 エヴァ弐号機 エントリープラグ内 -


ミサト『シンジくん、アスカ、今引き上げるからちょっち待ってねー』


シンジ「……ふぅ~」

アスカ「…………」

シンジ「(はやくプラグスーツ脱ぎたいなぁ)」

アスカ「……どうして、さっき邪魔したの?」

シンジ「ん?」

アスカ「開けって念じてる時、私の手を掴んだでしょ」

シンジ「あぁ、それはだって二人で乗ってるから――」

アスカ「なんで邪魔すんのよっ!!!」ガンッ

シンジ「いだぁ!」

アスカ「私ひとりでもどうにかできたのに!」

シンジ「しかたないじゃないか! あの時はああするしかなかったんだから!」

アスカ「だからそれが必要ないって言ってんの!」

シンジ「だったらどうにかしてみせてから言ってよ!」

アスカ「――ぬぁんですってぇっ⁉︎ 私の弐号機なのよ! あんたはただの見学なんだからぁっ!」

シンジ「僕はアスカを守ってあげたんだからいいだろ⁉︎」

アスカ「――守る⁉︎ あんたが⁉︎ この私を⁉︎ あんた何様よ!」バタバタ

シンジ「結果倒せたんだしもういいじゃないか! 暴れるなって!」

アスカ「勝手に名前で呼んだ罰よ! あぁ~~んもう! なんでこいつと一緒にいなくちゃなんないのよ!」

シンジ「アスカが僕を乗せたんだろ⁉︎ ジタバタしたってなにも解決しないよ!」

アスカ「えっらそーに! あぁ~ん! 無敵のシンジさまぁ~! はんっ! そんなの期待してんでしょ! このスケベっ!」

シンジ「このっ――! そんなの期待するわけないだろ! 僕にだって選ぶ権利ぐらいあるよ!」

アスカ「私のどこが気にいらないっていうのよ! バカバカバカ! バカシンジっ!!」

- エヴァ弐号機 引き上げ後 -

シンジ&アスカ「…………ふんっ!」

ミサト「ど、どしたの? あの子たち」

ケンスケ「さぁ? でもたいして気にするほどでもないんじゃないっすかぁ~?」

トウジ「……シンジがあんなに感情的になるのはめずらしいのー」

ケンスケ「たしかに。碇って一歩引いてる感じがするんだよなぁ~」

ミサト「……あなた達の前でもそうなの?」

トウジ「まぁ、たまーにですけど」

ケンスケ「うんうん」

ミサト「ふぅ~ん」

トウジ「それよりミサトさん、あの帰った人はいいんですか?」

ミサト「――加持………っ! あの野郎、今度会ったらただじゃ!」

トウジ「…………」

ケンスケ「こっちもこっちで――」


トウジ&ケンスケ「いやぁ~んな感じ」

- 3日後 ネルフ本部 ラボ -

リツコ「……ふぅ」

加持「ため息をついてるのかな」

リツコ「……加持くん、終わったの?」

加持「あぁ、振られてしまったけどね」

リツコ「……そ」

加持「リッちゃんにも迷惑かけたな」

リツコ「アルバイトもほどほどにね。じゃないと火傷じゃすまなくなる」

加持「肝に命じておくよ。碇司令の様子は?」

リツコ「変わらないわよ、シンジくんについてもいつも通り」

加持「難儀だな。だが、まだ気がつかれてはまずい」

リツコ「いつまで誤魔化せるかしらね」

加持「さぁな。まだ今は大丈夫、それだけさ」

リツコ「ミサトにも言わなくていいの?」

加持「葛城に言ったら先走りそうなんでね」

リツコ「そうね。人は皆、様々な体験をしながら生きている。……ミサトも複雑ですもの」

加持「……今夜の予定はどうかな?」

リツコ「うふふ。でもだめよ。……こわぁ~いお姉さんが見てるから」

ミサト「――で? なんであんたまだここにいんの?」

加持「出向命令さ。また三人でつるめるな。大学の時みたいに」

ミサト「…………はぁ」

リツコ「ミサトもまんざらでもないんでしょ? 素直になったらいいのに」

ミサト「そ、そんなわけないでしょ⁉︎」

加持「こいつのそんなとこもいいのさ」

ミサト「ちょ⁉︎」

リツコ「あら、さすがは加持くんね」

ミサト「あ、あんたたち――!」

加持「それはそうと葛城。アスカの住まいの手続きは進んでるのか?」

ミサト「……まだよ! マンションに住むと思うんだけど」

加持「おいおい、遅くないか?」

リツコ「シンジくんと一緒に引き取ったら?」

ミサト「……ってことはウチぃ?」

リツコ「家族ごっこはもう飽きたの?」

ミサト「そんなことは……ないけど」

加持「いいんじゃないか。エヴァのパイロット同士」

ミサト「でも、あの二人大丈夫なのかしら?」

リツコ「合わなければ分ければいいだけよ」

ミサト「う、う~ん」

- 2日後 ミサト宅 -

シンジ「な、なんだよ、これ……」

アスカ「あら? あんた帰ってきたの」

シンジ「あ、アスカ。これはいったい……」

アスカ「あんた、お払い箱よ」

シンジ「……お……おはらい……」

アスカ「あんたの部屋の荷物、そこのダンボールにまとめといたから」

シンジ「えぇ⁉︎」

アスカ「それにしても日本人ってなんでこんなに警戒心がないのかしら」

シンジ「……………」

アスカ「見てよ、このふすま。扉に鍵もかけられないのよ? 信じられないわ――」

ミサト「――日本人の信条は慎ましさと奥ゆかさだからよ」

アスカ「うわぁ⁉︎ み、ミサト……いつから………」

ミサト「――シンジくんとアスカにはこれから一緒に生活をしてもらいます」


シンジ&アスカ「えぇ~~~~⁉︎」


アスカ「なんで私がこんなやつと!」

シンジ「み、ミサトさん! 無理ですよそんなの!」

アスカ「男女七歳にして同衾せずって言うでしょ⁉︎」

ミサト「……変なところで日本人なのね」

アスカ「とにかく! 私は嫌よ! だったら出てくわ!」

ミサト「あなたの住まいはもうここに登録されてるの。どうしてもって言うのなら通路しかないけど」

アスカ「そ、そんなぁ!」

シンジ「あの、なんでなんですか」

ミサト「ん~? 特に理由なんかないわよん。エヴァのパイロット同士、仲良くしなきゃ……ね?」

シンジ「…………………………」

アスカ「…………………………」

シンジ&アスカ「はぁ」

ミサト「それと、突然で悪いんだけど、今夜はどうしても抜けられない仕事があるのよ」

アスカ「い、いきなりぃ?」

ミサト「だから、今夜はシンちゃんと二人で夕食食べちゃいなさい」

アスカ「ちょっと! 初日から二人きりって襲われたらどうするのよ!」

ミサト「…………襲うの? シンちゃん」

シンジ「…………いえ」

アスカ「なによ! 私に魅力がないってーの⁉︎」

シンジ「なんなんだよ!」

ミサト「あぁーはいはい。わかったから、それじゃ、戸締りはしっかりするのよ」

- ミサト宅 1時間後 -

シンジ「アスカぁ、夕飯できたよー」

アスカ「…………」

シンジ「麦茶でいい?」

アスカ「……いい」

シンジ「なにがよかったからわからなかったからシチューにしたけど、大丈夫?」

アスカ「…………」

シンジ「…………(はぁ)」

アスカ「…………」パクっモグモグ

シンジ「いただきます」

アスカ「………まぁまぁね」

シンジ「ん?」

アスカ「味のこと言ってんのよ! でもシチューぐらい誰でも作れるんだから調子に乗るんじゃないわよ!」

シンジ「あ、あぁ。なんだそんなことか」

アスカ「特別に! 名前で呼ぶことを許可してやるわ!」

シンジ「今までだって名前で――」

アスカ「あんたが勝手に呼んでただけでしょ⁉︎」

シンジ「……わかったよ。ありがとう、アスカ」

アスカ「…………ふんっ!」

移動乙です
あっちのスレにこのスレのURL貼っとくと誘導がスムーズかも

- ミサト宅 食後 -

シンジ「ミサトさん、今日は遅いのかな」

アスカ「あんたっていつも家事してんの?」

シンジ「ん? うん。そうだよ、だってミサトさんやらないから」

アスカ「信じらんない。草食系ってやつ?」

シンジ「どうなんだろう? 自分ではよくわからないや」

アスカ「世も末ね……」

シンジ「アスカは料理しないの?」

アスカ「エヴァのパイロットなんだからしなくていいでしょ」

シンジ「そうなのかな」

アスカ「あんたねぇ、私たちの仕事は使徒を倒すことなのよ? あんた、なんのためにエヴァに乗ってるの?」

シンジ「――正直、よくわからないんだ。人のため、とかじゃないし、言われたから乗ってるだけで」

アスカ「…………あ、あんた、そんな理由でエヴァに乗ってるの?」

シンジ「うん。アスカはなんのために乗ってるの?」

アスカ「決まってるわ! 私は人に褒めてほしいからよ! 自分で自分を褒めてあげたい!」

シンジ「へぇー。なんかすごいね」

アスカ「そうよ! だからプライドをもって私はエヴァに乗ってるの!」

シンジ「プライドかぁ。でも、疲れないの?」

アスカ「…………え?」

シンジ「だって、頑張ってるってことは無理してるってことだよね?」

アスカ「そ、そうよ?」

シンジ「アスカは褒められたいから――でも、そうか、褒められるならいいんだ」

アスカ「ま、まぁそういうこと――」

シンジ「――息がつまったりはしないのかなぁ」

アスカ「…………っ⁉︎」

シンジ「……ん? どしたの?」

アスカ「あんたに、あんたなんかに! なにがわかるってーの!」

>>32
どうもです
落ち着いたらそうしようと思います

シンジ「うわぁ⁉︎ いきなりなんだよ!」

アスカ「うるさい! うるさいうるさいうるさい!」バンッ

シンジ「…………なんなんだよ」

アスカ「……………」

シンジ「……………」

アスカ「…………もう寝る」

シンジ「え? あの、風呂は?」

アスカ「…………いい」

シンジ「そ、そう」




ペンペン「クェー」

- 深夜 シンジの部屋 -

シンジ「(アスカか、あの子も悪い人じゃないのかな)」

シンジ「(使徒。倒すべき敵。どこからきて、どこに行こうとしてるんだろ…………)」


――ガラガラ


シンジ「(……ん?)」


ドサッ


シンジ「ぇ…………っ⁉︎ ぁ、ぁ、あ」

アスカ「……………………」スヤァ

シンジ「え、ちょ」

アスカ「……………………」

シンジ「(め、目の前に)」

アスカ「……………………」

シンジ「……………………」

アスカ「……………………」

シンジ「……………………(く、唇……)」

アスカ「ん………」

シンジ「…………っ」

アスカ「………ま…………ママぁ……ママぁ……」

シンジ「――っ!」

アスカ「………………」

シンジ「(あ、あぶなかった!)」

アスカ「………………」

シンジ「泣いてる。寂しいのかな……」

アスカ「………………」

シンジ「なんだよ。自分の方が子供じゃないか」

アスカ「………………」

シンジ「……はぁ。しかたない、起こすか」

アスカ「………………」

シンジ「ねぇ、アスカ、起きてよ。風邪引くよ」

アスカ「………ん」

シンジ「アスカ、アスカってば」

アスカ「…………う、うぅん」

シンジ「起きてよ、アスカ」

アスカ「…………ん?」

シンジ「はぁ、やっと起きた。自分の部屋に帰りなよ」

アスカ「…………え? あ?」

シンジ「…………起きた?」

アスカ「…………⁉︎ あ、あああんた!なんで私の部屋に! フンッ!」ガンッ

シンジ「いだぁ! け、蹴ることないだろ!」

アスカ「草食系だと思ってたらよくもやってくれたわね! あんたなんかいられなくしてやる!」

シンジ「よく見ろよ! ここ僕の部屋だろ!」

アスカ「私に興奮して、あんたが私を連れこんだんでしょ⁉︎」

シンジ「そんなことしないよ!」

アスカ「信じられないわ!」

シンジ「ママって言ってたから起こしてあげたのになんだよ!」

アスカ「――っ!? あんた今なんて言ったの!!」

シンジ「自分の方が寂しいんじゃないか!」

アスカ「人の寝言を聞いてたの⁉︎ さいってーね!」

シンジ「聞きたくて聞いたわけじゃないよ!」

アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「…………だめね、やっぱりミサトに言って部屋変えてもらいましょ」

シンジ「…………」

アスカ「あんたとは一緒には――」

シンジ「――僕は、母さんの記憶があまりないんだ」

アスカ「…………え?」

シンジ「小さい頃に死んだらしくて、父さんもほとんど話てくれない」

アスカ「…………」

シンジ「生きていたとしても、どんな顔をすればいいかわからないから、きっと他人事みたいに考えてるんだと思う」

アスカ「あんたのお父さんって碇司令よね」

シンジ「うん。父さんは僕に興味なんかなくて、先生のところで育ったんだ」

アスカ「…………」

シンジ「いちおう、養父ってことになってるけど、久しぶりに会ったら、いきなりエヴァに乗れって言われて」

シンジ「そう考えると、僕は父さんに興味をもってもらいたくて、認められるためにエヴァに乗ってるのかもしれない」

アスカ「…………」

シンジ「でも、誰かの役にたってたら、とも思う」

アスカ「……あっそ」

シンジ「アスカは、家族はやっぱり――」

アスカ「ドイツにいるわよ。……けど、嫌いなわけじゃないのよ? ただ、ちょっと疲れるっていうか」

シンジ「本当のお母さんは?」

アスカ「――っ!」

シンジ「あ、ごめん」

アスカ「あんた、何が悪いかわかってて謝ってんでしょうね⁉︎」

シンジ「……うん。きっと僕のデリカシーがなかったたからだと思う」

アスカ「…………」

シンジ「僕も母さんがいない、記憶にはないけど、いないのは同じだから」

アスカ「…………」

シンジ「だから、ごめん」

アスカ「…………ふん」

- 翌日 朝 ミサト宅 -

ミサト「うぅ~、あだまいだぁ~」

アスカ「うっ……。酒くさっ」

シンジ「ミサトさん、水飲みます?」

ミサト「ありがとうシンちゃぁ~ん」

アスカ「昨日は仕事じゃなかったの」ジトー

ミサト「仕事もしてたわよぉ~」

シンジ「アスカ、ミルクでいい?」

アスカ「……(私、こいつに本当の母親がいないこと言った? それも寝言なの?)」

シンジ「目玉焼きはきちんと焼く?」

アスカ「……そうね」

シンジ「わかった」

ミサト「………(とりあえず、安心かしらね)」

- ネルフ 本部 ??? -

加持「いやはや、危険な賭けでしたよ」

ゲンドウ「………賭けは勝ってこそ意味がある」

加持「ご子息についてはよろしいので?」

ゲンドウ「問題ない」

加持「葛城一尉が少し勘繰っているようですが――」

冬月「君のもう1人の加地については、我々で処理しある」

加持「助かります」

冬月「しかし、本当に顔合わせが必要だったのかね? 私にはそうは思えんが」

加持「楔は打ってこそ意味があります。後々にね」

ゲンドウ「積荷はどうなった?」

加持「こちらです。特殊ベークラフトで保存されてますが――生きてます」

ゲンドウ「君には借りができたな」

加持「気にすることありませんよ。どうせ返すつもりもないんでしょ?」

冬月「………ご苦労だった。もうさがっていい」

- 第三東京市立第壱中学校 2-A -

先生「あ~、それでは、みなさんに転校生を紹介します。アスカくん、前へ」

アスカ「惣流・アスカ・ラングレーです! よろしくお願いします!」


男子生徒「「「うおぉお~~! かわいいぃ~~」」」


トウジ「だ、誰や、あ、あいつは」

ケンスケ「別人みたいに愛嬌ふりまいてるよ」

シンジ「猫かぶっちゃってるねぇ」

先生「席は、そうですね、洞木さんの隣でいいですかね」

ヒカリ「はい!」

- 昼休み 教室 -

アスカ「あなたがファーストチルドレン?」

レイ「…………」

アスカ「私、セカンドチルドレン。弐号機のパイロット、惣流・アスカ・ラングレーよ。よろしく、仲良くしましょ?」

レイ「………命令があれば、そうするわ」

アスカ「な、なによこいつ! ふんっ!」

トウジ「うはぁ~あれは完全に牛乳と油やなぁ」

ケンスケ「それを言うなら水と油だろ。にしても、あんなに対照的な2人もめずらしいねぇ~」

シンジ「………………」

ケンスケ「碇はどっちがタイプなんだい? やっぱり綾波?」

シンジ「えっ?」

トウジ「センセだとどっちでもイケるで」

シンジ「いや、僕はそんなんじゃ」

ケンスケ「まぁまぁ。タイプぐらいいいじゃないか」

トウジ「せやせや! ビシっと男らしく言うたらんかい!」

シンジ「…………う~ん」

ヒカリ「すずはらぁっ! また馬鹿なこと言ってるでしょ⁉︎」

トウジ「なんや委員長! 男同士の会話にはいってくな!」

シンジ「(アスカも悪い人じゃないし、綾波も仲良くなれるといいな………よしっ)」

トウジ「センセ、どこ行くねん?」

ケンスケ「おっ?」


スタスタッ


シンジ「――綾波、ちょっといいかな」

レイ「…………?」

シンジ「さっきの、アスカ、その、悪い人じゃないよ」

レイ「……………」

シンジ「仲良くしても、大丈夫だと、思う」

レイ「……………」

シンジ「……………」

レイ「………碇くんは、仲良くしたいの?」

シンジ「ん? えっと、どうだろう」



トウジ「なんや、シンジ仲を取り持つつもりかいな」コショコショ

ケンスケ「やめたほうがいいと思うけどな~」コショコショ

トウジ「おっ! アスカがじっと見て立ち上がった!」

ケンスケ「こりゃ、修羅場かぁ~?」

アスカ「――バカシンジっ! あんたなに余計なことしてんのよ!」

シンジ「あ。アスカ」

レイ「………………」

アスカ「私はファーストと別に仲良くなりたいなんて望んでないわ!」

シンジ「え? でもさっき――」

アスカ「気が変わったの! これ以上余計なことしないで!」

シンジ「わ、わかったよ」

レイ「……………碇くんは悪くないわ」

アスカ「っ! なによ、あんたまともに口を聞いたと思えばシンジ?」

レイ「……………」

アスカ「はん! また黙っちゃって! もしかしてあんた、シンジのことが好きなの?」

シンジ「あ、あの――」

アスカ「――あんたは黙ってて!」

シンジ「はい」

レイ「………………」

アスカ「あんた、碇司令のお気に入りなんですってね?」

レイ「………………」

アスカ「黙ってちゃなにもわからないでしょう⁉︎ なんとか言いなさいよ!」

レイ「………………かわいそうな人」

アスカ「――――――っ!!!!」


バチンッ!


トウジ&ケンスケ「………あちゃあ~~~」

トウジ「もろにいったであのビンタは」コショコショ

ケンスケ「綾波もムキになっちゃって」コショコショ



シンジ「あの、えっと、だ、大丈夫? 綾波」

レイ「…………………」

アスカ「………………もういいっ!」


ドンッ

ダダダダダッ


シンジ「あ、アスカ⁉︎」

レイ「………………」

シンジ「あ、えーと、その」

ヒカリ「碇くん! なにやってんの! 追いかけて!」

シンジ「え? ぼ、ぼくが?」

ヒカリ「女の子が傷ついてるのよ⁉︎ ほっとくつもり⁉︎」

シンジ「わ、わかったよ!」

レイ「………………」

- 屋上 -

シンジ「………はぁっ、はぁっ、アスカ、足、はやいんだね――」

アスカ「うるさい! 私のことはほっといてよ!」

シンジ「……………」

アスカ「あんたもファーストの方がいいんでしょ⁉︎ さっさといなくなって!」

シンジ「……………」

アスカ「一人になりたいのよ! きらい! 嫌い! みんな大っ嫌い!」

シンジ「あの……これ、ハンカチ」

アスカ「……………っ!」

シンジ「…………」

アスカ「…………」

シンジ「………すこし、落ち着いた?」

アスカ「…………」

シンジ「僕たちはエヴァのパイロットだから、仲良くできたらいい、そう思っただけだよ。余計なことしたみたいでごめん」

アスカ「…………」

シンジ「アスカも、その、話てみたら悪い人じゃなかったから」

アスカ「………なにそれ、だからファーストにあんなこと言ったの?」

シンジ「うん」

アスカ「…………」

シンジ「アスカは初対面だし、綾波も、話てみたら悪い人じゃないよ」

アスカ「…………」

シンジ「も、もちろんアスカも」

アスカ「…………」

シンジ「あんまり、みんな大嫌いとか悲しいこと言うなよ」

アスカ「私はこれまで一人で生きてきたわ」

シンジ「すごいね。アスカは」


アスカ「そうよ! 私はなんでもできる!」
アスカ『だから! ママをやめないで!』


シンジ「……僕には無理だ」


アスカ「あんたには無理でも私はやらなくちゃいけないの!」
アスカ『なんでもやるから! 私のことを殺さないで!』


シンジ「だけど疲れたら、僕も助けるよ」


アスカ「必要ない!」
アスカ『――やめて! 私の中に入ってこないで!」


シンジ「だけど、一人じゃ限界もあると思うから」


アスカ「もうやめて! どっか行きなさいよ!」
アスカ『私の心の中にはいってこないで!』


シンジ「こういうとき――どうしたらいいかわからないんだ」


アスカ「ひっ! ち、近寄らないで!」
アスカ『私の心にあゆみよらないで!』


シンジ「……泣いたっていいんだよ、アスカ」


アスカ「――――――――っ!!」

アスカ「……………ぅぐっ…………ぅ………うぐっ…………」ポロポロ

シンジ「僕たちは、ここにいていいんだ」


アスカ「――うああああぁっ!」



シンジ「大丈夫、大丈夫だよ。アスカ」



――――
―――
――

アスカ「…………」鼻ズビビー

シンジ「(ハンカチはそういう使い方じゃないんだけどなぁ)」

アスカ「……………ぁりがと」

シンジ「ん?」

アスカ「私、いままでなにしてたんだろ」

シンジ「………………」

アスカ「あんたと暮らしはじめて二日でこんなことになっちゃってるなんて」

シンジ「あー、うん、そうだね」

アスカ「私はこれまで大人の人が好きだったのに、あんたといるとよくわからないわ」

シンジ「そうなの?」

アスカ「このワタクシ様よ? 同年代なんてみんなサルみたいなもんだったし」

シンジ「……(黙ってればかわいいけどなぁ)」

アスカ「大人達には困った笑顔向けられるばかりだった」

シンジ「加持さんって人?」

アスカ「………まぁ、いろいろ」

シンジ「そっか」

アスカ「ねぇ、あんた、どこかで会ったことある?」

シンジ「いや? ないと思う……けど(でも、アスカも感じてたのか?)」

アスカ「そう、なら気のせいね」

シンジ「う、うん」

アスカ「……あんた、私のこと守ってくれるの?」

シンジ「守るってなにから?」

アスカ「……あんたバカァ? 女の子を守るっていったらわかるでしょ?」

シンジ「……えーと、使徒?」

アスカ「ほんとにバカね……。いろんなことからよ」

シンジ「う~~~~ん」

アスカ「…………………」ジーッ

シンジ「できる範囲なら、守るよ」

アスカ「40点」

シンジ「えぇ⁉︎」

アスカ「ハッキリ言い切りなさいよ。男らしくないわねぇ~」

シンジ「わ、わかったよ。守るよ」

アスカ「本当に?」

シンジ「うん」

アスカ「本当に本当に本当に?」

シンジ「う、うん」

アスカ「……そ。それなら私もあんたを守ってあげる」

シンジ「えっ?」

アスカ「約束破ったら承知しないからね!」

シンジ「わかったってば、しつこいなぁ、なんなんだよもう……」

アスカ「話は終わり! さ、もう昼休み終わっちゃうから戻りましょ!」

シンジ「あ! ちょ! ちょっと待ってよ! アスカぁ!」

- 夜 ミサト宅 -

シンジ「アスカ、そっちに皿並べてくれる?」

アスカ「わかったわ」

ミサト「………………」

シンジ「それと、箸も」

アスカ「もう持ってるわよ、ミサト、邪魔」

ミサト「………………」

アスカ「まだ焼けないの?」

シンジ「うん、もうちょっとかな」

アスカ「私、わりとハンバーグ好きなのよ」

シンジ「そうなの? なら、丁度よかったね」

ミサト「………………」

アスカ「あんた、いつもいつ買い出ししてるの?」

シンジ「特に決まってない。学校の帰りとか」

アスカ「そ。なら今度からは私もついていってあげる」

ミサト「ちょお~~~~っとストップ」

シンジ&アスカ「……………?」

ミサト「シンちゃん? アスカ? ちょっちそこに座りなさい」

シンジ「なんですか? ミサトさん今忙しいんですけど」

アスカ「そうよ、ミサトもちょっとは自分のことしなさい。シンジばっかりさせてないで」

ミサト「……………いいから、座りなさい」

ミサト「…………これはどういうこと?」

シンジ&ミサト「……………?」

ミサト「(本人達に自覚なしか……)」

シンジ「あの、ミサトさん――」

ミサト「シンちゃん、ちょっと部屋で音楽でも聴いてきてくれない?」

アスカ「ちょっとミサト、なんでシンジを邪険にするのよ」

シンジ「あ、えっと」

ミサト「邪険になんてしてないわよ。ね? お願い、シンちゃん」

シンジ「………わかりました」

アスカ「シンジはいかなくていいわよ。ミサトがどっかいけばいいのに」

ミサト「……………」

シンジ「いや、うん、ちょっと音楽聴いてきます」

ミサト「……ありがと」

アスカ「それで? なに?」

ミサト「……(聞きたいのはこっちの方よ)」

アスカ「はやくしてくれる? シンジが部屋で待ってるし」

ミサト「アスカ、シンちゃんとなにかあった?」

アスカ「……あぁ。なんだそんなこと」

ミサト「そんなことって」

アスカ「別に。ちょっと目をかけてやろうと思っただけ」

ミサト「そ、それにしたって距離が近づきすぎじゃないかしらん?」

アスカ「ミサトには関係ないでしょ? エヴァのパイロットの管轄義務はそこまで含まれてるの?」

ミサト「そこまではないけど…………昨日の今日よ?」

アスカ「私たちはなにもやましいことなんかしてないわ」

ミサト「や、やましいことって?」

アスカ「不潔。なにか今変なこと考えたでしょ?」

ミサト「……………」

アスカ「……………」

ミサト「と、とにかく! すこし離れなさい!」

アスカ「いやよ」

ミサト「いやって……」

アスカ「絶対にいや」

ミサト「(これはちょぉっちマズイわね……)」

アスカ「あぁ、それと私の部屋、引越しの荷物がまだ片付いてないのよね。だからシンジの部屋で寝るから」

ミサト「えぇ⁉︎」

アスカ「シンジにはまだ言ってないけど、後から言うわ」

ミサト「だ、だぁめよ! なにかあったらどうするつもり⁉︎」

アスカ「昨日は家をあけてたじゃない」

ミサト「そ、それは……」

アスカ「大丈夫よ。あいつヘタレだから」

ミサト「そ、そうは言ってもシンジくんもお年頃なのよ⁉︎」

アスカ「いざとなったら私の方が強いわよ」

ミサト「(こ、この子、本気なの?)」

アスカ「もういい? シンジのハンバーグはやく食べたいんだけど」

ミサト「だめよ! 認められません! 部屋が片付いてないんだったら私の部屋で寝なさい!」

アスカ「ミサトの部屋ぁ? あの状態で?」

ミサト「ぐ、ぐぬぅ……シンジくんを呼んできて」

シンジ「――えぇ⁉︎ アスカが僕の部屋で⁉︎」

ミサト「シンちゃんは、もちろん嫌よね?(……お願いシンジくん! 断って!)」

アスカ「………………」

シンジ「ほ、本気なの? アスカ」

アスカ「なによ、嫌なの?」

シンジ「い、嫌ってわけじゃあ……」

アスカ「ならいいんじゃない」

ミサト「ちょっちそれは強引すぎない?」

アスカ「…………うざい」

ミサト「ちょ、ちょっとアスカ」

アスカ「私達はエヴァのパイロットなのよ! 普通にしててなにが悪いのよ!!」

ミサト「…………落ち着きなさい」

アスカ「ミサトのは越権行為よ!」

シンジ「あ、あの」

アスカ「シンジだってパイロットなんだしなにも起きるはずない! それともそんなに信用できないわけ⁉︎」

ミサト「……………」

アスカ「……………」

ミサト「…………わかったわ、ただし、荷物は近日中に片付けること。いいわね?」

アスカ「…………ふん」

- 深夜 シンジ部屋 -

シンジ「(結局、ミサトさんは部屋に仕切りのカーテンをつけることで妥協した)」

シンジ「(けど、これってマズイんじゃないのかなぁ)」

アスカ「…………シンジ? もう寝た?」

シンジ「…………ん? ど、どしたの?」

アスカ「なんだか、眠れないの」

シンジ「へ、へぇ、そうなんだ」

アスカ「そっち、行っていい?」

シンジ「ぇ、ええ⁉︎」

アスカ「だめなの?」

シンジ「あー、えーっと」

アスカ「ん……………」ゴソゴソ

シンジ「(ち、近い、数十センチ近くにアスカの顔が……)」

アスカ「なによ、あんた、もしかして緊張してるの?」

シンジ「す、するわけないだろ!」

アスカ「……ふふ、うそつくのが下手ね」

シンジ「……………」

アスカ「今日は、ありがと」

シンジ「あ………」

アスカ「なんか、色々とふっきれた気分だわ」

シンジ「もしかして、それを言うために?」

アスカ「それもあったけど、部屋が片付いてないのはほんとよ」

シンジ「(やっぱり、悪い人じゃないんだ)」

アスカ「……シンジ、シャンプーなに使ってるの?」

シンジ「スーパーのやつだよ」

アスカ「もっと良いのつかったら?」

シンジ「うーん、あんまり興味ないから」

アスカ「でも、悪い匂いじゃないわね……」スンスン

シンジ「うわ、ちょ、ちょっ(嗅がれてる⁉︎)」

アスカ「……うん、良い匂い」

シンジ「あ、あの、アスカ――」

アスカ「………………」

シンジ「アスカ……?」

アスカ「………………」スヤァ

シンジ「ね、寝ちゃったのか……」

- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

シンジ「……………」

トウジ「なんや、センセ、えらいクマやのー」

シンジ「うん、ちょっとね」

ケンスケ「夜更かしでもしたのかぁ?」

シンジ「(ほとんど寝られなかった)」

トウジ「……しっかし、昨日はどうなることかと思ったでー」

ケンスケ「ほんとほんと。アスカが戻ってきたときにはケロってしてたけどさぁ」

シンジ「なんでもなくてよかったよ」

アスカ「――シンジっ!」

トウジ&ケンスケ「うわぁ!」

アスカ「なによ、レディに対していきなり驚くとは失礼ね」

トウジ「いきなり現れるな!」

シンジ「どしたの? アスカ」

アスカ「お昼一緒に食べましょ!」

シンジ「えーと、洞木さんはいいの?」

アスカ「ヒカリなら平気よ。ちゃんと言ってあるから」

シンジ「あー、うん。わかった」

アスカ「それじゃ移動しましょ! 屋上でもいい?」

トウジ「……………」

ケンスケ「……………」

シンジ「アスカにまかせるよ」

アスカ「殊勝な心がけね、あ、これシンジが作ってくれたお弁当なんだけど――」

トウジ「まてまてまてまてまてぇいっ!」

シンジ&アスカ「……?」

トウジ「お前らどうなっとんねん!」

ケンスケ「こ、これはひょっとして……」

トウジ「シンジ! お前は今ワシらと一緒に食べようとしてたんちゃうんか!」

シンジ「あ、それは、そうだね」

アスカ「…………」

トウジ「ワシらとそこの女とどっちとんねん!」

シンジ「えぇ? いや、あの」

アスカ「…………チッ、バッカみたい、行きましょ。シンジ」

ケンスケ「いかりぃ~。一人で抜けがけする気かぁ~」

アスカ「……あぁ~んもう、うっさい! だいたいねぇ、あんた達も食べたいんなら誰かを誘えばいいじゃない!」

トウジ「ぬぐっ」

アスカ「自分じゃなんにもできないくせにシンジの足ひっぱるんじゃないわよ」

トウジ「な、なんやとぉ⁉︎」

アスカ「なによ⁉︎」

ケンスケ「お、おい、トウジ」

トウジ「…………………」

アスカ「……………ふん」

シンジ「あの、アスカ」

アスカ「シンジ! 行くの⁉︎ 行かないの⁉︎」

シンジ「――トウジ、ごめん」

トウジ「……………」

- 屋上 -

アスカ「さ、食べましょ」

シンジ「――あの、アスカ」

アスカ「なに?」

シンジ「さっきのトウジのことなんだけど……」

アスカ「あぁ。それがなに?」

シンジ「あの、ちょっと言いすぎじゃないかなって」

アスカ「………………」

シンジ「悪気があるわけじゃないんだ。ただ、先に約束してたから」

アスカ「………わかったわ。後で謝っとく」

シンジ「えっ? いいの?」

アスカ「友情ってやつなんでしょ? 男のは気持ちよくないけど、悪かったわよ」

シンジ「アスカ……ありがとう」

アスカ「ん。食べましょ」モグモグ

シンジ「いただきます。………そういえば洞木さんと仲良くなったんだね」

アスカ「……昨日の借りもあったしね。面倒見がいいから悪い子じゃないみたい」

シンジ「(あぁ、クラスの女子からなにか聞いたのかな)」

アスカ「シンジ、聞きたいことがあるんだけどいい?」

シンジ「ん? なに?」

アスカ「あんた、ファーストとどういう関係なの?」

シンジ「綾波? えーと、エヴァのパイロット仲間、かな」

アスカ「ふぅ~ん」

シンジ「アスカも仲良くなれると思うよ」

アスカ「私は別にいいかな。なんか興味なくなったし」

シンジ「興味って…………」

アスカ「ねぇ、シンジ。私があんたを守ってあげるからファーストとあんまり話さないで」

シンジ「えぇ?」

アスカ「私思うのよね。人間関係ってあまり多様性必要ないって」

シンジ「…………」

アスカ「一人の親友には何人の友達が束になってもかなわないじゃない? それなのに何人も仲良くなろうとする?」

シンジ「…………」

アスカ「何人も何人も、友達100人なんて言っても薄くなるだけよ。そんなの不毛だわ」

シンジ「…………」

アスカ「だから心を許せる人は大切なのよ」

シンジ「………アスカは僕に心を許してるの?」

アスカ「まだあんまり。でも許そうとはしてるわよ?」

シンジ「そうなんだ」

アスカ「うん」

シンジ「…………アスカは僕が綾波と話するのが嫌なの?」

アスカ「う~ん、なんかザワザワすんのよね」

シンジ「そっか。…………うん。わかった」

アスカ「ほんとっ⁉︎」

シンジ「うわ⁉︎ ちょ! 顔近い!」

アスカ「……あ、だってそう言うとは思わなかったから」

シンジ「エヴァに関することは無理だけど――」

アスカ「うんっ! それでもいい! ありがとうシンジ!」

シンジ「(うーん、よかったのかな………)」

アスカ「あ、それとあんたが朝使ってたマグカップ、お揃いのがほしいんだけどどこで買ったの?」

シンジ「え? あれは、たしかミサトさんが選んでくれたやつで――」

アスカ「ミサトがぁ?」

シンジ「うん。こっちに来た時、荷物ほとんどなかったから」

アスカ「……………ふぅ~ん」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「別にかまわないんじゃなくて?」

ミサト「もし間違いがあったらどーすんのよ……」

リツコ「避妊さえしてくれればかまわないわよ」

ミサト「え? そうなの?」

リツコ「エヴァはA10神経で接続しているし、良い結果が得られるかもしれないわね」

ミサト「もし、(子供)できちゃった場合は――」

リツコ「……クビじゃ済まないわね。間違いなく」

ミサト「どぉすんのよぉ⁉︎」

リツコ「気が早すぎるんじゃない? まだあの子達が開通したわけじゃないでしょう?」

ミサト「う~」

リツコ「………………」

ミサト「しかし、最近は中学生でここまでマセてんのねぇ~」

リツコ「あら、アスカは元々背伸びをしているし、エヴァのパイロット同士という吊り橋効果を考えれば不思議ではないわよ?」

ミサト「……………家に帰るのが億劫だわ」

リツコ「……あまり態度に出さないほうがいいかもしれないわね」

ミサト「どういうこと?」

リツコ「ミサトにとっては所轄問題でしょうけど、子供達にとっては当人同士の問題でしかない、ということよ」

ミサト「…………」

リツコ「特にアスカは過敏よ? そんなんじゃ、簡単に勘づかれるわよ」

ミサト「…………はぁ」

- 夜 ミサト宅 -

ガラガラ
ガチャーンッ


アスカ「――――いったぁ~~~」

シンジ「ど、どしたの⁉︎ アスカ!」

アスカ「……指切っちゃった」

シンジ「大丈夫? 今絆創膏持ってくるから」

アスカ「……あっ。シンジのマグカップ――」

シンジ「これを落としたんだ?」

アスカ「割れちゃった」

シンジ「うん。でもいいよ、また買えばいいから。破片があるかもしれないから動かないでね」

アスカ「うん――」

- 1時間後 ミサト宅 -

ミサト「たっだいまぁ~!」

アスカ「ねぇ、シンジ。シンジってこういうのが好きなの?」

シンジ「うーん、あんまり」

アスカ「でも、クラスの男子はみんなかわいいって言ってるじゃない」

シンジ「僕はあんまり好きじゃないかな」

アスカ「この子は?」

ミサト「……ただいまぁ~」

シンジ「うーん」

アスカ「はっきりしないわねぇ~」

シンジ「あんまりテレビのアイドルとか見ないから」

ミサト「………………」

シンジ「ん? あ、おかえりなさい、ミサトさん」

アスカ「あら? いたの。ミサト」

ミサト「あんたたち! テレビ見てないでこっち座りなさい!」

シンジ「………………」

アスカ「………………」

ミサト「………………」

シンジ「……………え、えと」

ミサト「シンちゃん?」

シンジ「は、はい!」

ミサト「ソファーでテレビを見るのはいいけど。距離が近すぎないかしら?」

シンジ「す、すみません」

アスカ「………………」

ミサト「アスカは部屋の片付け進んでるの?」

シンジ「あ、あの。今日は僕が手伝いをお願いしてて――」

ミサト「どうなの? アスカ」

アスカ「やってるわよ!」

ミサト「…………はぁ。シンちゃんは今日は私の部屋で寝なさい」

アスカ「――――っ⁉︎」

シンジ「み、ミサトさんの部屋でですか?」

ミサト「アスカはシンジくんの部屋で寝ること。いいわね?」

シンジ「でも、ミサトさんは?」

ミサト「私はソファーで寝るわ」

アスカ「…………………はん」

ミサト「……………アスカ?」

アスカ「……なによ? 結局、ミサトも保身なのね?」

ミサト「私はあなた達を保護しています」

アスカ「保護ぉ? 勝手に住まい決めておいて。仲良くやってたら勝手に仕切るのが? なにかあって責任問題になるのがこわいんでしょ?」

ミサト「あなた達は適切な距離感を保てなくなってるわ」

アスカ「まだ三日じゃない! 様子見しないでなにを焦ってるのよ!」

ミサト「………仲良くやるのは否定しないわ。でも、あなた達は男と女なのよ?」

アスカ「不潔。なんにでもそんな風にしか考えられないのね」

シンジ「あ、アスカ――」

アスカ「あぁ~~あ。やだな。こんな大人になんかなりたくない」

ミサト「……………これは命令よ。現時刻をもって一緒に寝るのを禁じます」

アスカ「――っ!!」

ミサト「シンジくんも。いいわね?」

シンジ「……………」

アスカ「――ふざけるんじゃないわよ! やってらんないわ!」

シンジ「あ、あの。ミサトさん」

ミサト「……………」

アスカ「……わかったわよ。私は自分の部屋で寝る。だからシンジも自分の部屋で寝て」

ミサト「ほんとなのね……?」

アスカ「――職権乱用されちゃお手上げよ!!」

- 深夜 シンジ部屋 -

シンジ「……………」スヤァ

アスカ「シンジ、シンジ」

シンジ「……………ん? あすか?」

アスカ「シッ、声下げて話して」

シンジ「今何時……って夜中の3時じゃないか」

アスカ「ミサトもようやく寝たみたい」

シンジ「あぁ………寝るまで待ってたの?」

アスカ「あんたムカつかないの? 勝手な言い草で行動を制限されちゃってさ」

シンジ「うん、でも、一緒に寝るのはまずいよ」

アスカ「どうして? やましいことなにもしてないじゃない」

シンジ「(僕が我慢してるだけなんだけどなぁ)」

アスカ「ミサト、加持さんとうまくいってないのかしら?」

シンジ「加持さんってミサトさんとなにかあるの?」

アスカ「あんたバカァ? あの二人デキてんのよ」

シンジ「えっ? そうだったの?」

アスカ「うまくいってるならあっちで勝手にすればいいのに――」

シンジ「でも船のデッキでアスカも加持さんに抱きついてたじゃないか」

アスカ「――あっ。それは、その」

シンジ「アスカは、いいの?」

アスカ「いいの。シンジ、今、嫌な気分になってる?」

シンジ「ん? んー」

アスカ「……加持さんのことはもういいの。他の大人にも抱きついたりするのやめる」

シンジ「そうなんだ」

アスカ「ごめんね?」

シンジ「いや、僕は…………」

アスカ「明日、エントリープラグのテスト日よね」

シンジ「あぁ、そうだったね」

アスカ「私、エヴァに関しては誰にも負けたくない」

シンジ「うん」

アスカ「シンジならいいかなって思うけど、やっぱり、弐号機は私の全てだから」

シンジ「それならそれでいいよ」

アスカ「…………いいの?」

シンジ「うん。大切ならいいんじゃないかな」

アスカ「ありがと。なんかちょっとシンジって加持さんに似てる」

シンジ「そうかな?」

アスカ「うん、いると安心するし」

シンジ「そっか」

アスカ「ねぇ、シンジ。昨日、誰かの役に立ちたいって言ってたじゃない?」

シンジ「…………うん」

アスカ「それならもう役に立ってるのよ。私達はエヴァに乗ってるだけで役にたってる」

シンジ「…………そうだね」

アスカ「パレードしたっていいぐらいよ?」

シンジ「はじめて乗った時、僕はわけがわからなくて、トウジの妹を傷つけちゃったらしいんだ」

アスカ「……………」

シンジ「乗りたくて乗ってるわけじゃないのに、なんでトウジから殴られなきゃいけないんだろうって思った」

アスカ「………殴られたの?」

シンジ「うん、でもそれはいいんだ。トウジもエヴァの大変さを知って僕にワイを殴れって言ってきたし」

アスカ「……………」

シンジ「あれがなかったら、きっと今も、他人のことなんか考えずにエヴァに乗っていたと思う」

アスカ「……………」

シンジ「アスカは僕とは違う。プライドを持って乗ってるんだろ。エヴァの一番はアスカがふさわしいと思うよ」

アスカ「ありがと」

シンジ「…………うん」

アスカ「今日はもう部屋に帰る」

シンジ「わかったよ」

アスカ「おやすみ、シンジ」

シンジ「――おやすみ、アスカ」

- 翌日 第三新東京市立第壱中学生 昼休み -

ヒカリ「アスカ、今日は碇くんとご飯食べなくていいの?」

アスカ「うん、一緒に食べましょ。ヒカリ」

ヒカリ「――えへへ、なんだか嬉しいな」

アスカ「……………」モグモグ

ヒカリ「……………」

アスカ「……………」

ヒカリ「…………あの、アスカ」

アスカ「なぁに?」

ヒカリ「碇くんばっかり見てない?」

アスカ「違うわよ、まぁ多少は気にかけてやってるけど?」

ヒカリ「でも、碇くん達の方――」

アスカ「たまたまシンジが私の見てるところにいるだけ」

ヒカリ「そ、そうなんだ」

アスカ「………………」

ヒカリ「碇くんってわりと人気あるよね」

アスカ「…………どういうこと?」

ヒカリ「ひっ⁉︎ あ、アスカ。ちょっとこわい」

アスカ「……ごめんごめん。それで?」

ヒカリ「他のクラスでも碇くんって結構人気あったりするよ。エヴァのパイロットだし」

アスカ「……ふぅ~ん」

ヒカリ「碇くんは鈴原たちと喋ってるから気がついてないみたいだけど……あ、ほら」

アスカ「…………」

ヒカリ「あの子も話しかけるタイミングいつも伺ってるみたいだけど、鈴原達が邪魔で話しかけられないみたい」

アスカ「知らなかったわ……」

ヒカリ「アスカは碇くんしか見てないでしょ?」

アスカ「そ、そんなことっ!」

ヒカリ「ない?」

アスカ「ないわ!」

ヒカリ「(今も碇くんのこと見ながら話してるのに……)」

アスカ「だいたいあんなののどこがいいのよ。そりゃエヴァのパイロットっていうのはステータスだろうけど」

ヒカリ「うーん」

アスカ「ちょぉっとは、ほんのちょぉっとは頼りになるかな、なんて思う時もあるわよ? けど、それはエヴァに乗ってる時だけだし」

ヒカリ「…………」

アスカ「だから、あんなのに話しかける子が不幸にならないよう、私からあいつのダメなとこ言いまくってやるわ」

ヒカリ「…………そうだね、碇くんってダメダメだよね」モグモグ

アスカ「――ヒカリ。今なんつったの?」

ヒカリ「私もあの人のどこがいいのかわかんない。かっこわるいし――」

アスカ「――やめて」

ヒカリ「…………アスカ、やっぱり怒るんじゃない」

アスカ「えっ?」

ヒカリ「なんで止めようとするの?」

アスカ「え? え~それはその~」

ヒカリ「ずっと碇くんのこと見てるよね? ううん、目で追ってる」

アスカ「うっ」

ヒカリ「碇くんは今日はなにしてた?」

アスカ「…………今日?」

ヒカリ「うん」

アスカ「えっと、朝一緒に登校してから、ホームルーム前にトイレに行ってたわね。でもあんまり時間かからなかったから、たぶん小だったみたい。
それで、教室に帰ってきたら鈴原達と少し話して授業の準備。パソコン立ち上げてたんだけど調子悪かったのかな? ……なんだか顔しかめてたから。
そのあとは授業を受けて四回、窓の外を見てた。授業中によそ見しちゃだめよね。でもたまーに横顔もいいかな、なんて。
なにか気になることあるのかなって思って私も窓の外を見たんだけど、なにもなかったわ。
それからまたトイレに行って、今度は少し時間かかってたから大だったのかも。そのあと体育だったでしょ?
男子はグラウンドで走っててシンジは中間ぐらい。ほんとなんにでも中間ぐらいよね。

それから――――ヒカリ? どうしたの?」

ヒカリ「………………」

アスカ「ひ、ヒカリ? 箸が落ちてるわよ?」

ヒカリ「あ、アスカ。碇くんは見られてること気がついてる?」

アスカ「え? 気がついてないわよ。夢にも思ってないんじゃない?」

ヒカリ「そ、そう。それならよかった」

アスカ「…………ヒカリって私の友達よね?」

ヒカリ「えっ? う、うん」

アスカ「まだ日は浅いけど、私と仲良くしてくれる?」

ヒカリ「も、もちろんよ」

アスカ「ちょっと声をさげてほしいんだけど…………絶対に大声あげないでね?」

ヒカリ「う、うん。わかった」

アスカ「実は――ネルフの意向でシンジと私、一緒に住んでるの」コショコショ

ヒカリ「え、えぇえええぇ!?」

アスカ「――声が大きい! みんなこっち見てるじゃない!」

ヒカリ「ご、ごめんなさい。でも、大丈夫なの?」

アスカ「なにが?」

ヒカリ「だって碇くんだって男の子だよね……」

アスカ「はぁ……。ヒカリまでそんなこと言うのね。大丈夫よ。あいつヘタレだし」

ヒカリ「アスカがそう言うなら……」

アスカ「うん、私も誰かに話聞いてほしかったの」

ヒカリ「話?――ちょっと待ってお茶飲ませて」

アスカ「――どうやってシンジと一緒に寝られるかなって」

ヒカリ「――ぶふぅっっっ!!」

アスカ「きゃあ⁉︎ ちょっとヒカリ汚いっ!」

ヒカリ「ご、ごごめんなさ――アスカ! 碇くんと寝るの⁉︎」

アスカ「シンジと一緒に寝るとぐっすり眠れたのよ」

ヒカリ「…………え? ってことはもう寝たの⁉︎」

アスカ「一晩だけだけど……ヒカリ、大丈夫?」

ヒカリ「………………い、碇くんは、その、大丈夫だった?」

アスカ「最初は戸惑ってたけど、受け入れてくれたみたい」

ヒカリ「………その、なにもなくて寝るだけなんだよね?」

アスカ「そうよ?」

ヒカリ「そ、そっかぁ」

アスカ「ヒカリ、顔真っ赤だけど………」

ヒカリ「なんでアスカは真顔で話せるの⁉︎」

アスカ「そんなにおかしい?」

ヒカリ「おかしいわよ!」

アスカ「そうなのかな……そうかも」

ヒカリ「例えば、誰でもいいけど相田くんとかと一緒に寝たいと思う?」

アスカ「むしずがはしるわね」

ヒカリ「鈴原がそばで寝てたらどうする?」

アスカ「ぶちのめした挙句、屋上から突き落とすわ」

ヒカリ「碇くんは?」

アスカ「…………んー、まぁ、シンジだしいいかな」

ヒカリ「アスカって碇くんのことが好きなんだね」

アスカ「……なんでそうなるの?」

ヒカリ「………………」

アスカ「ひ、ヒカリ? こめかみがひくついてるわよ?」

ヒカリ「……落ち着くから一緒に寝たいんだったよね?」

アスカ「うん」

ヒカリ「碇くんが受け入れてくれるなら、大丈夫なんじゃない?」

アスカ「それがそうもいかなくて、ネルフの管理人がいるんだけどその女が邪魔なのよ」

ヒカリ「え?」

アスカ「そう、あんまりにもムカつくから刺し殺してやろうかと思ったけど。死体の処理方法に良いアイディアが浮かばなかったからやめたの」

ヒカリ「…………」

アスカ「なにかいい方法ないかしらぁ、昨日はシンジの服を持ってきて寝たんだけど、あれはたまらなかった……じゃなかった、イマイチだったのよね」

ヒカリ「ふ、ふく………」

アスカ「そう、シンジの服って結構いい匂いするのよ。私も昨日知ったんだけど。シンジがシャワー浴びてる時に脱衣所で歯磨きしてたら目に入って、部屋に持って帰っちゃった」

ヒカリ「…………」

アスカ「ずーーーーーっと匂い嗅いでたらなんだかふわふわしちゃったけど」

ヒカリ「あ、アスカって服かぐのが趣味なの?」

アスカ「ううん。シンジのがはじめて」

ヒカリ「…………ど、どうしよう」

アスカ「ヒカリ? どしたの?」

ヒカリ「………アスカの心配してたけど……碇くんのほうが危ないかも……」

アスカ「シンジがぁ? 大丈夫よ。私が守ってあげるって約束したし」

ヒカリ「……やっぱり、自覚ないんだよね」

アスカ「ヒカリ? なに言って――」

ヒカリ「大丈夫! 私は応援するよ!」

アスカ「あ、ありがとう?」

ヒカリ「碇くんにもなにも言わな………ううん、なにも言えないから安心して!」

アスカ「そ、そう?」

ヒカリ「あの、だから、他の子になにかしちゃだめだよ?」

アスカ「私が? 誰に?」

ヒカリ「――碇くんが告白されたらどうする?」


アスカ「――――…………」バキィッ


ヒカリ「ひぃ⁉︎ 箸が折れっ⁉︎」

アスカ「――誰が告白するの?」

ヒカリ「しないしないしないしないっ! 誰も告白しない!」

- ネルフ本部 -

マヤ「LCL電荷」

オペレーター「パルス送信。リスト、ヒトサンゴーマルまでオールクリア」

リツコ「レイ、シンジくん、アスカ。いつも通り、リラックスして」

ミサト「……………」

リツコ「テストスタート」

マヤ「ハーモニスク正常値。深度さげます。0.1、0.2、0.3………」

リツコ「……………」

マヤ「0番、シンクロ率50.3%。1番、シンクロ率53.4%。共に精神汚染ギリギリです。………2番にはかなりの余裕があります」

リツコ「あと0コンマ3さげてみて」

マヤ「了解。…………これはっ! す、すごいです! シンクロ率72.3%! 過去最高です!」

リツコ「……………」

ミサト「どういうこと?」

リツコ「見たままよ」

ミサト「アスカのドイツでのデータは?」

リツコ「平均して50%未満といったところかしらね」

ミサト「かなりの上昇率ね……理由として考えられることは? 赤木博士」

リツコ「第一に、アスカの精神状態がとても安定していることが考えられるわね」

ミサト「…………」

リツコ「エヴァとのシンクロは精神汚染とのせめぎ合いでもあるわ。より深く、高いシンクロ率をだすためには多幸感、すなわち心身共に健康であることが重要なのよ」

ミサト「…………シンジくんと一緒に住んでるから?」

リツコ「可能性としてはありえるわね。ただし、断定はできない。さらに検証するためには二人を引き離すことになるけど」

ミサト「うーん」

リツコ「科学者としては実験に賛同したいところだけど、あまりオススメはできないわ。とりかえしがつかなくなる可能性もある」

ミサト「…………ふぅ」

リツコ「どうするの? 作戦本部長さん」

- ネルフ 第三通路 自販機前 -

アスカ「ふんふふ~んっ♪」

シンジ「ご機嫌だね、アスカ」

アスカ「あったりまえよ! なんてったって、この私がシンクロ率70%を叩きだしたんだから!」

レイ「……………」

アスカ「まぁ、私がちょっと本気になればこの程度お茶の子さいさいなんだけど!」

シンジ「あはは」

アスカ「シンジはいいとして、あんたは残念ねぇ~」

レイ「……………」

シンジ「あ、アスカ」

アスカ「……なんとか言ったらどうなの?」

レイ「……………別に」

アスカ「はぁ。あんたってほんと変わった子よね」

レイ「…………………」

アスカ「シカトしてるの? 優等生みたいになんでもはいはい聞く子は私なんか相手にする気ないのかしら~?」

レイ「……………シンクロ率が高いと、そんなに嬉しい? なぜ?」

アスカ「嬉しいに決まってるじゃない! みんなが褒めてくれる! ミサトだってバツの悪そうな顔してたわ!」

レイ「…………あなたは人に褒められるために、エヴァに乗ってるの?」

アスカ「――っ! 悪いっ⁉︎」

レイ「…………………」

アスカ「…………………」

シンジ「……二人とも、やめなよ」

アスカ「………はんっ。あんた、人形みたい」

レイ「……………私は人形じゃない」

加持「――とりこみ中かな?」

アスカ「あっ! かじさぁ……ごほん……加持さん、どうしたの?」

加持「やれやれ、別れた男を目の前にしているみたいな反応じゃないか」

アスカ「シ、シンジの前で変なことっ――」

シンジ「……………」

加持「すこし、シンジくんと話がしたくてね」

アスカ「シンジとぉ?」

レイ「………………」

シンジ「……わかりました」

加持「すまないな。アスカ、シンジくんを借りてもいいかい?」

アスカ「え? えーと、その~」

シンジ「アスカは先に帰ってなよ」

アスカ「……いや!」

シンジ「すこし、遅くなるかもしれないよ」

アスカ「加持さん、遅くなるの?」

加持「いや、そんなに手間はとらせないさ」

アスカ「なら、待ってる」

シンジ「……わかったよ、それじゃ行きましょうか。加持さん」

加持「ああ――」

- ネルフ本部 男子ロッカールーム -

加持「アスカのシンクロ率を聞いた時は驚いたよ。うまく暮らしてるみたいじゃないか」

シンジ「そんな、僕とアスカは別に」

加持「これからもアスカのサポートを続けてやってくれ」

シンジ「…………はい。大事な友達ですから」

加持「友達……ね」

シンジ「……?」

加持「ドイツでの暮らしぶり、アスカからなにか聞いたかい?」

シンジ「いえ、まだ、家族がいることだけ」

加持「…………そうか」

シンジ「加持さんはアスカとずっと一緒に暮らしていたんですか?」

加持「いや、日本に来るまでの三年間だけだ」

シンジ「……………」

加持「シンジくんと違い、彼女は幼い頃からエヴァ弐号機のパイロットとして選ばれてから英才教育を受けてきた」

シンジ「……………」

加持「あの歳で大学を卒業してるってこと、知ってたかい?」

シンジ「え、えぇ⁉︎ アスカってそんなに頭いいんですか⁉︎」

加持「もともとの物覚えの良さもあったんだろうが、努力の賜物だろうね」

シンジ「し、知らなかった」

加持「シンジくん。――アスカは愛情に飢えている」

シンジ「…………」

加持「まだ中学生の君には荷が重いかもしれないが、支えてやってくれ」

シンジ「…………加持さんは支えてあげないんですか?」

加持「ふっ。俺じゃダメなのさ。俺は大人の中で唯一アスカを女扱いしただけだからな」

シンジ「……………」

加持「難儀なことに、トラウマもかかえていてね」

シンジ「……………」

加持「そのトラウマを取り除くには、アスカ自身ときちんと向き合う異性が必要なのさ」

シンジ「……………」

加持「シンジくんさえよければ、アスカと向き合ってやってくれ。そうすれば、おのずとアスカからシンジくんに全てをさらけだすだろう」

シンジ「………………ずるいや、そんなの」

加持「君にはいつも謝ってばかりだが、すまないな」

- 夜 ミサト宅 -

アスカ「…………」もぐもぐ

シンジ「…………」

アスカ「……だめ。我慢できない。どうかしたの?」

シンジ「…………ん?」

アスカ「帰ってからずっと変よ、あんた」

シンジ「あぁ……そうかな」

アスカ「加持さんとなにかあったの?」

シンジ「……………」

アスカ「加持さんは、悪い人じゃないと思うけど……なにか言われたの?」

シンジ「そうじゃないんだ」

アスカ「………?」

シンジ「アスカは、加持さんのことが好きだったの?」

アスカ「えっ⁉︎ なに、いきなり」

シンジ「…………」

アスカ「あ、あんた………もしかして、ヤキモチ妬いてるの?」

シンジ「なんでそうなるんだよ!」ズッコケ

アスカ「だっていきなりそんなこと聞くなんておかしいじゃない!」

シンジ「……………」

アスカ「し、シンジ? そんなに嫌だった?」

シンジ「僕は、別に」

アスカ「うそ! ずぅぇ~ったい変!」

シンジ「………はぁ」

アスカ「そ、その、加持さんのことはそりゃあ前はちょっと、ううん、かなりいいかなって思った時も…………あるけど」

シンジ「……………」

アスカ「でも! それはもう過去の話よ! 今は別になんともない!」

シンジ「……………」

アスカ「シンジ? ……なんとか言いなさいよ!」

シンジ「ごちそうさま」

アスカ「ぁ………」

シンジ「僕、ちょっとコンビニに行ってくるよ」

アスカ「………………」

ミサト「ただいまぁ~………あら? 電気ついてない? シンちゃぁ~ん? アスカぁ~? いないの~?」


電気パチッ


ミサト「――――………………いぃっっっっ⁉︎」

アスカ「……………」

ミサト「あ、アスカ……あんた、電気もつけないでなにやってるの………?」

アスカ「……………」

ミサト「ちょ、ちょっと?」

アスカ「……………」

ミサト「し、シンジくんは?」

アスカ「……………ない」

ミサト「はい?」

アスカ「いないって言ってんのっ!!!!!」バンッ

- 近くの公園 -

シンジ「はぁ、なにやってんだろ」

加持『アスカを、支えてやってくれ』

シンジ「ふぅ。僕は…………」



レイ「――………碇くん?」



シンジ「……綾波?」

レイ「………………」

シンジ「こんなところで、どうしたの?」

レイ「…………いま、帰りだから」

シンジ「あぁ、そっか。この公園、通り道なんだね」

レイ「…………碇くんは、どうして?」

シンジ「僕は、なんとなく、帰りたくなくて」

レイ「………………そう」

シンジ「うん」


レイ「…………うち、くる?」

- アスカ 部屋 -

アスカ「なによなによなによっ! なんなのよ!」ドカンッ

アスカ「(昔のことなんかどうだっていいじゃない!)」

アスカ「(私だって、シンジにそんなのいても……。うーん、嫌かも?)」

アスカ「(待って。落ち着くのよ、アスカ。私、シンジが嫌なことしたのかな?)」

アスカ「(シンジが他の女と腕を組む……嫌。シンジが他の女に抱きつく……嫌。でも、私にとって加持さんはシンジにとってのミサトみたいな……そう、保護者?)」

アスカ「(加持さんは私のことを女の子、お姫様扱いしてくれた。だから良かった。好きだと思ってた)」

アスカ「(シンジがミサトに抱きついてたら………? 不潔。嫌。信じらんない)」

アスカ「(私、シンジにそういうこと見せつけてた………?)」

- ミサト宅 リビング -

ミサト「ペンペン~。いつからこの家はこうなってしまったのかしらね~。毎日密度が濃すぎると思うのよ」

ペンペン「クエ~」


ドタドタドタドタッ!


アスカ「ミサトッッッ!!!!」

ミサト「は、はい⁉︎」

アスカ「シンジは⁉︎ どこ⁉︎」

ミサト「さ、さぁ~?」

アスカ「保安部でもなんでもいいからはやく連絡取りなさいよ!!! 私気づいてるんだからね!!警護についてるの!!!」

ミサト「――っ⁉︎」

アスカ「シンジになにかあったらどうするつもり⁉︎」

ミサト「ちょっと、落ち着きなさい」

アスカ「チッ、押し問答にかまってる暇なんてないのよ! 私、探しに行ってくる!」

ミサト「アスカ⁉︎ ちょ! 待ちなさい!」


ダダダダダッ ガチャン バタンッ!


ミサト「………はぁ」

- 近くの公園 -

シンジ「――綾波のうち?」

レイ「…………」コクリ

シンジ「あぁ、うん。でも、悪いよ」

レイ「……………いい」

シンジ「うーん」



アスカ「――――シンジッ!!」



シンジ「あ、アスカ?」

レイ「……………」

アスカ「はぁっはぁっ……(ファーストがなんでこんなところに! でも今は……)……シンジ、私が悪かったわ。謝る。ごめん」

シンジ「……………」

アスカ「ごめん。加持さんとはもう本当になんでもないの。そう、気がついたから」

シンジ「…………アスカが謝ることないよ」

アスカ「……………」

シンジ「僕は、すこし、反抗してたのかもしれない」

アスカ「えっ?」

シンジ「(そう、誰かに押しつけられるのが嫌だったんだ。そうされなくてもアスカは友達なのに)」

アスカ「……私から加持さんに文句いってくる!」

シンジ「えぇ⁉︎ いいよ! やめてよ!」

アスカ「だって、シンジ、なにか言われたんでしょ?」

シンジ「加持さんは、アスカのこと心配してた」

アスカ「――え? え、そうなの?」

シンジ「うん。だから、悪い人じゃないんだと思う」

アスカ「……そう。…………あの、一緒に帰ってくれる?」

シンジ「…………そうだね。……綾波も、ありがとう」

レイ「……………もういいの?」

シンジ「うん。僕になにができるかわからないけど」

レイ「……………そう」

アスカ「し、シンジ? ファーストとなにしてたの?」

シンジ「綾波は僕のこと心配してくれてたんだ」

レイ「………………」

アスカ「………………」

レイ「……………嫌になったら、言って」

アスカ「――なっなぁんですって~⁉︎」

シンジ「あ、ありがとう」

アスカ「ふ、ファースト! あんた………っ!!」

シンジ「あ、アスカ! 帰ろう! 綾波も、また学校で!」

レイ「………………」

- ミサト宅 -

アスカ「ねぇ、シンジ。ソファーもっとそっちつめてよ」

シンジ「これ以上、向こうにいけないんだけど」

アスカ「それじゃ私が寝転がれないじゃなぁ~い」

シンジ「……………」

アスカ「よいしょっと。う~いい感じ。膝枕ってわりといいのね」

シンジ「足、痺れそう……」

アスカ「そんぐらい我慢しなさいよ。……私の髪さわれるんだから役得でしょ?」

シンジ「え? 触っていいの?」

アスカ「…………触りたいの?」






ミサト「……………帰ってきてからずっとあの調子」

ペンペン「クエ~」

ミサト「歳をとるってこういうことなのかしらねぇ~~」

- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

アスカ「――それでさぁ、シンジってば加持さんにヤキモチ妬いたらしくて、帰ってから様子おかしかったのよね。ずっと変だとは思ってたけど。
でも、私も悪いことしたなって気がつくことができて、謝ったの。そしたらシンジも許してくれて――ヒカリ、聞いてる?」

ヒカリ「……うん」

アスカ「それで、今日の朝なんだけど、私の好きなおかずお弁当にいれてくれて。これ見て? すごくない?
同年代でこんなやつなかなかいないと思うのよね。だめだめ。そんなに見たってあげないからね。これは私のなんだから」

ヒカリ「……うん、あのアスカ」

アスカ「シンジったらさぁ………ん? なに?」

ヒカリ「も、もう、碇くんの話はいいかなー」

アスカ「そう? でもかわいいとこあんのよねあいつ。なんていうか小動物? 無害っぽいしだから気が休まるのかしら――」

ヒカリ「あ、アスカ!」

アスカ「えっ?」

ヒカリ「もう! 碇くんの話は! いいから!」

アスカ「う、うん。わかった」

ヒカリ「………………」もぐもぐ

アスカ「………………」もぐもぐ

ヒカリ「………………」もぐもぐ

アスカ「………………」もぐもぐ

ヒカリ「………………はぁ。アスカ、いいよ。碇くんの話して」

アスカ「えっ? だってさっき――」

ヒカリ「碇くんの話しないと何も喋らないじゃないっ!!」

アスカ「そ、そんなことないわよ」

ヒカリ「ふぅ。碇くんとは一緒に、その、寝れたの?」

アスカ「んーん。それはまだ」

ヒカリ「だから今日は眠そうなんだ」

アスカ「うん、一晩中起きてたから」

ヒカリ「……えっ。アスカってもしかして不眠症?」

アスカ「ううん。一晩中、シンジの顔ながめてたの」

ヒカリ「――――えっ?」

アスカ「…………」もぐもぐ

ヒカリ「アスカ。お願い、私の聞き間違いよね? ずっと起きて碇くんの顔見てたの?」

アスカ「そうよ?」

ヒカリ「その間、碇くんは?」

アスカ「寝てたわ」

ヒカリ「明かりもつけずに一晩中?」

アスカ「目が慣れてくるとけっこう見えるのよ?」

ヒカリ「あ、アスカっ! しっかりして!」

アスカ「ど、どうしたのよ? ヒカリ」

ヒカリ「碇くんはどこにもいかないよ!」

アスカ「なによ、突然。どっか行っても捕まえるわ」

ヒカリ「そういう意味じゃなくて……!」

アスカ「じゃあどういう意味?」

ヒカリ「もしかして、碇くんに、依存、しだしてるんじゃ……⁉︎」

アスカ「……?」

ヒカリ「どうしよう、碇くんに伝えた方がいいのかな………でも…………」

アスカ「ヒカリ、さっきからブツブツ言ってどうしたの?」

ヒカリ「いくらなんでも早すぎるわよ!」バンッ

アスカ「うわぁ⁉︎ な、なにが?」

ヒカリ「アスカ。お願い。真剣に聞いて」

アスカ「う、うん」

ヒカリ「私たちまだ日が浅い友達だけど……ううん、碇くんとなにがあったかわからないけど」

アスカ「そうね?」

ヒカリ「アスカの、その、まっすぐなところは凄く良いとこだと思うの」

アスカ「ありがと」もぐもぐ

ヒカリ「碇くんと、一度話合った方がいいんじゃないかなぁ?」

アスカ「………なにを?」

ヒカリ「……(しっかりするのよヒカリ! くじけちゃだめ! でもどうしたら伝わるの!)」

アスカ「――ぷっ!」

ヒカリ「あ、アスカ?」

アスカ「ヒカリって本当に良い子なのね。みんなから委員長って言われてるのがわかるわ」

ヒカリ「あ……」

アスカ「うん、私達、親友になれそうな気がする」

ヒカリ「えっ?」

アスカ「これからもよろしくね! ヒーッカリ!」

ヒカリ「う、うん!」

まだSS速報のほうに追いつかないか…

ヒカリ「そ、それでね、アスカ――」



女生徒「あの、碇くん」

シンジ「ん、えーと」

女生徒「あの、放課後、体育館裏まで来てくれませんか………待ってますから……!」

トウジ「な、なんやぁ?」

ケンスケ「ひゅ~。やるもんだなぁ~」

シンジ「あの……! 行っちゃった」

トウジ「センセ、今のはもしかして告白なんちゃいまっか?」

シンジ「えぇ⁉︎」



ヒカリ「さっきの子って、いつも話しかけるのを伺ってた――――」

アスカ「――――………」

>>102
200近くあるのと誤字を見直したり修正しながらなので大変ですね

ヒカリ「す、鈴原ぁっ! あんたちょっと黙りなさいよっ!」


トウジ「なんや委員長! 昼休みぐらい好きに騒いだってええやろがいっ!」

ケンスケ「まぁまぁ」


ヒカリ「――あ、アスカ? 」

アスカ「……どしたの? ヒカリ」

ヒカリ「あ、あれ? なんでもない?」

アスカ「さっきの子。大丈夫かな?」

ヒカリ「……え? うん。もう教室に帰ったみたいだけど」

アスカ「そうじゃなくて、シンジにフラれちゃうでしょ?」

ヒカリ「ん?」

アスカ「なぁに?」

ヒカリ「碇くんがフるかはまだわからないんじゃない?」

アスカ「だって、シンジには私がいるでしょ?」

ヒカリ「……あのね、アスカ。碇くんとアスカはお友達なんだよね?」

アスカ「あったりまえじゃない!」

ヒカリ「碇くんと付き合ってるわけじゃないんだよね?」

アスカ「なぁっ⁉︎ な、なななななんで私がバカシンジと⁉︎」

ヒカリ「(…………これって………ひょっとして………)」

- 放課後 体育館裏 -

ケンスケ「ほら! こっちだよこっち!」

トウジ「ほほ~、こんなええスポットがあったとはのー」

ケンスケ「(本当は隠し撮りのスポットなんだけどさぁ)」

ヒカリ「アスカ、こっちこっち」

アスカ「……はぁ。私は別に」

トウジ「しっかし、委員長から覗きを提案してくるとは………おぬしも悪やのう」

ヒカリ「ち、違うわよっ! これはアスカのためで――」

トウジ「はぁ? なんや、それ?」

ヒカリ「(アスカはきっと好きってことを認められてない――だから、認めさせればいいのよ)」

ケンスケ「シッ! 誰かきた!」

シンジ「………………」



ケンスケ「先にシンジかー」

トウジ「なんや、えらいソワソワしてないか? ――いだだだだだだっ!」

アスカ「………っ!」ギリギリッ

トウジ「ちょ! おまっ! 指が肩に! どんな握力――」

ヒカリ「鈴原! 静かに我慢して!」

トウジ「ぬ、ぐぐぐ…………」

ケンスケ「おっ、あっちから誰かくる」

女生徒「……ぇ……あ………」

シンジ「――……」



ヒカリ「~~っ! 全然声が聞こえないじゃない!」

ケンスケ「(しかたないだろ~隠し撮りスポットなんだから)」

アスカ「…………」ギリギリッ

トウジ「いっ⁉︎ ほ、骨がミシミシいうとる!」

ヒカリ「これじゃアスカが自覚できないじゃない!」

ケンスケ「……なぁるほど。そういうことかあ」

トウジ「ちょ、誰かこいつを止め……っ!」

ヒカリ「相田くん、わかったの?」

ケンスケ「まぁ、なんとなく」

ヒカリ「っ! あっ!碇くんの胸に飛び込んだっ――」



女生徒「……っ!」

シンジ「…………………」



アスカ「――――このっ!」

トウジ「あっ! いっ⁉︎ 」ゴキン

ヒカリ「あ、アスカ⁉︎ ちょ。ちょっとまって!」

ケンスケ「お、おい! トウジ! しっかりしろ!」

トウジ「……………」

ケンスケ「あ、泡ふいて………」

ヒカリ「だめ! 相田くん! アスカ止めて!」

ケンスケ「わあぁ⁉︎」



アスカ「――ちょっと! なにやってんのよっ!!!」

シンジ「あ、アスカ?」

女生徒「えっ……あの……その……」

アスカ「はやく離れなさいよっ!」

女生徒「………ご、ごめんなさいっ!」


タタタタッ


ケンスケ「いてて……」

ヒカリ「もう! 覗かせるだけのはずだったのに!」

ケンスケ「あの女生徒はどっか行っちゃったのかぁ」

ヒカリ「私たちも碇くんの前に行かないと――!」

ヒカリ「――い、碇くん!」

シンジ「洞木さん、ケンスケまで?」

ケンスケ「よ、よぅ……」

アスカ「………………」

ヒカリ「あのっ! ごめんなさい! こんなつもりじゃなかったの!」

シンジ「え、えーと」

ケンスケ「……………はぁ」

シンジ「とりあえず、落ち着いてよ」

ヒカリ「どうしよう! 私、碇くんに言うべきだったのに!」

アスカ「ヒカリ……」

ケンスケ「(こりゃパニックになっちゃってるなぁ)」

シンジ「アスカ」

アスカ「なによ?」

シンジ「とりあえず、洞木さんを落ち着かせよう」

アスカ「……そうね。ほら、ヒカリ、大丈夫よ」

――――
―――


ヒカリ「……ごめんなさい、取り乱しちゃって」

ケンスケ「(委員長はまじめだからなぁ)」

アスカ「……ん。もう平気?」

ヒカリ「……うん」

シンジ「ケンスケ、トウジは?」

ケンスケ「あっちで伸びてる」

シンジ「……やっぱり、いたんだ」

ケンスケ「なぁ、碇。………ごめんな?」

シンジ「……うん、まぁ、なんて言ったらいいか」

ケンスケ「さっきの子は、フったんだろ?」

シンジ「うん……」

ヒカリ「…………あ、あの。碇くん」

シンジ「…………?」

ヒカリ「今回のこと、私がアスカたちを誘ったの」

シンジ「洞木さんが?」

ヒカリ「ごめんなさい――」

シンジ「えっと」

アスカ「ヒカリ……私が出て行ったから……」

ヒカリ「ううん。やっぱり良くなかったのよ」

ケンスケ「碇! 頼む! この地獄を早く終わらせてくれ!」コショコショ

シンジ「………はぁ。洞木さん、アスカ、ケンスケ。わかった。もういいよ」

ヒカリ「ほ、ほんと――?」

シンジ「きっと何か理由があったんだろうから」

アスカ「…………シンジ」

ケンスケ「よしっ! これでもう終わりっ!」

ヒカリ「(碇くんに今言わなくちゃ――)」




ウーーーッ
『緊急警報、緊急警報、市民の皆さんは速やかに避難してください――』




シンジ「――アスカ!」

アスカ「使徒ぉ⁉︎」

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「警戒中の巡洋艦、「はるな」より入電、「ワレ、キイハントウオキニテ、キョダイナセンコウブッタイヲハッケン。データオクル」」

マコト「受信データを照合……波長パターン青、使徒と確認!」

冬月「総員、第一種戦闘配置」




ミサト「……先の戦闘によって第3新東京市の迎撃システムは、大きなダメージを受け、現在までの復旧率は26%。実戦における稼働率はゼロといっていいわ」

ミサト「したがって今回は、上陸直前の目標を水際で一気に叩く!」

ミサト「初号機ならびに弐号機は、交互に目標に対し波状攻撃、近接戦闘で行くわよ」

シンジ&アスカ「了解!」

- 初号機 弐号機 プラグ内通信 -

アスカ「シンジ。あんたは私が守ってあげるから後方で支援」

シンジ「えぇ⁉︎ 交互に近接なんじゃ?」

アスカ「怪我したらどうすんのよ! 私は日本でのデビュー戦なんだし……まぁ見てなさいって」

シンジ「命令違反はまずいよ! 僕独房に入ったことあるんだ!」

アスカ「……あんたがぁ?」

シンジ「その、二体目の使徒で………」

アスカ「……あんたも逆らうことあんのね」

シンジ「うん、まぁ」

アスカ「ファーストまではいかないけど、あんたも優等生だと思ってたわ」

第7使徒イスラフェル「……………」ググッ

シンジ「……くるよ!」

アスカ「チッ、通信中にしゃらくさいわねぇ!」

ザンザンッ ビュンッ

アスカ「どぉうりゃあぁ~~~~」ズパーン


第7使徒イスラフェル「」


シンジ「え? 終わった? ――お見事」

アスカ「ま、シンクロ率70%の私にかかれば当然よね。戦いは、常に無駄なく美しくよ」



シンジ「(なんだ? なにか違和感が………)」
アスカ「(これで、終わり、じゃないような……)」

第7使徒イスラフェル「…………」ギュルギュル

シンジ「――アスカぁッッ!!! まだ!」
アスカ「シンジぃッッ!!!」


ミサト「分裂⁉︎ ぬぁんてインチキッ!」

- ネルフ本部 モニター室 -

マヤ「本日午前10時58分15秒、2体に分離した目標甲の攻撃を受けた初号機は、駿河湾沖合い2キロの海上に水没」

マヤ「同20秒、弐号機は目標乙の攻撃により活動停止。この状況に対するE計画責任者、赤木リツコ博士からのコメント……」

リツコ『無様ね』

マヤ「……午前11時3分をもって、ネルフは作戦の遂行を断念、国連第2方面軍に指揮権を譲渡」

冬月「まったく恥をかかせおって!」

マヤ「同05分、N2爆雷により目標を攻撃」

冬月「また地図を書き直さなきゃならんな」

マヤ「構成物質の28%を焼却に成功」

アスカ「……………」

シンジ「……………」

冬月「再度侵攻は時間の問題だな」

加持「ま、建て直しの時間が稼げただけでも、儲けもんっすよ」

- ネルフ本部 ミサト デスク -

リツコ「関係各省からの抗議文と被害報告書。で、これがUNからの請求書、広報部からの苦情もあるわよ」

ミサト「ふ~……」

リツコ「ちゃんと目を通しておいてね」

ミサト「……読まなくても分かってるわよ、喧嘩をするならここでやれ、って言うんでしょう?」

リツコ「ご明察」

ミサト「はいはい。いわれなくったって、使徒が片付けばここでやるわよ」

リツコ「副司令官はカンカンよ。今度恥かかせたら左遷ね、間違いなく」

ミサト「碇司令が留守だったのは不幸中の幸いだったけどさぁ」

リツコ「いたら即刻クビよ。この書類の山を見ることもなく、ね」

ミサト「……で、私の首がつながるアイディア、持ってきてくれたんでしょ?」

リツコ「一つだけね」

ミサト「さっすが赤木リツコ博士、持つべきものは心優しき旧友ね~」

リツコ「残念ながら、旧友のピンチを救うのは私じゃないわ」

リツコ「このアイディアは加持くんよ」

ミサト「――加持の?」

- ネルフ本部 第三通路 自販機前 -

シンジ「(あの瞬間、なにかデジャヴみたいな――)」

アスカ「(ううん、なにか、もっとはっきりした――)」



シンジ&アスカ「(――なんだろう?)」



加持「二人とも、残念だったな」

シンジ「…………」

アスカ「…………」

加持「――どうした?」

シンジ「あ、いえ……なんでも」

アスカ「ミサトは?」

加持「大人は片付けがあるものさ」

アスカ「……そ」

加持「おそらく、2日は缶詰めだろうな」

アスカ「え? それって……」

加持「俺が二人の監督を頼まれてるんだが、あいにく、暇じゃなくてね。口裏を合わせてくれるかい?」

シンジ「え? でも――」

アスカ「――合わせる! 加持さんはうちにいたことにすればいいのね!」

- 夜 ミサト宅 -

シンジ「あ、あの…………アスカ」

アスカ「ん~?」

シンジ「あの、ソファーでテレビ見るのはいいんだけど……ちょっとひっつきすぎなんじゃ」

アスカ「そぅ? 前に膝枕してたじゃない?」

シンジ「今日は僕が座って、あ、アスカがピッタリくっついてるじゃないかぁ!」

アスカ「…………だめ?」

シンジ「まずいよ! 胸あたってるよ!」

アスカ「当ててるって言ったら……?」

シンジ「………………」ゴクリッ

アスカ「いやらしい顔してるわよ……?」

シンジ「テレビ、見ないの?」

アスカ「シンジの顔見てる」

シンジ「(だめだ、だめだ、流されちゃだめだ!)」

シンジ「そうだ! 風呂はいらなきゃ!」

アスカ「え~」

シンジ「あ、アスカもLCLの匂いついてるよね?」

アスカ「シャワーで洗い流すじゃない」

シンジ「あ……そうだった」

アスカ「でも、いいわよ。はいりたいんでしょ?」

シンジ「う、うん」

アスカ「……そ。なら入ってきなさい」

- シンジ 風呂の中 -

シンジ「(……なにか、すごい危機を感じる)」

シンジ「(はぁ……どう接したらいいのかな)」

シンジ「(アスカと向き合うには……)」

シンジ「(とりあえず、上がったら普通にしよう)」ザパァン

- ミサト宅 リビング -

シンジ「…………あれ? アスカ?」

シンジ「(いない、寝たのかな)」



ゴンッ!



シンジ「――痛っ!」

アスカ「……………」

シンジ「(頭、殴られ)………あ……(意識が)……アスカ」ドサァ

アスカ「……………」

アスカ「シンジ、やっと二人になれたね。今日はあんたが告白されるからびっくりしたわ。あんた、押しに弱そうだから抱きつかれた時は思わず止めに入っちゃった。
だいたいあの子――あの女もムカつくのよね。私たちみたいにエヴァパイロットじゃないのに勘違いしちゃってさぁ。
ありえなくない? 普通告白する? しないわよ。きっとあの女はシンジを騙そうとしてたんだわ。だから私が守ってあげたの」

シンジ「………」

アスカ「ヒカリも色々心配してくれて良い子なんだけどイラっとしちゃった。あぁ~あ。せっかく親友になれると思ったのに。……でも、シンジがいればいい。私にはシンジがいればいいの。
とりあえず、あの女の自宅を今度エヴァで出撃したときにさりげなくふんずけとくわ」

シンジ「…………」

アスカ「加持さんのこと、本当にごめんね。でも私はもうシンジだけだから。シンジしかいないから。だから、もっと私を見て」

アスカ『私だけを見て』

- 翌日 ミサト宅 アスカ部屋 -

シンジ「――……う……うぅん」

シンジ「(この天井は……部屋の……昨日はたしか……)」

ギシッ ギシッ

シンジ「(……なんだよこれ⁉︎ なんなんだよこれっ⁉︎)」

シンジ「(ベットに縛りつけられてる! 手足が動かせない……っ! それに口もガムテープで……喋れない!)」



アスカ「…………シンジ。起きた?」



シンジ「ふごふご……んんぅーっ⁉︎」

アスカ「昨日はごめんね? 痛かった?」

アスカ「今日は学校は行かなくていいみたいだから、ずっと一緒にいましょ。本当は、ずっとこうしていたいけど、ミサトにバレたら一緒に住めなくなるし」

シンジ「(アスカ……! これほどいてよ!)」

アスカ「暴れちゃいけないから、縛ったの。一応、口も。でも安心して。今日一日シンジのことはなんでも私がやってあげる。もちろんトイレも。なにも汚くなんかないよ」

シンジ「(どこ見てるんだよ……アスカ……あれは? 古い………人形? なんだ?)」

アスカ「ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとズット。こうなる日を待ち望んでたのかもしれないわ。――だって! 私はこれまでで一番幸せを感じてる!」

アスカ「エヴァと比べたら……まだわからないけど、でも、きっとこのままいけば………!」

シンジ「(アスカ………それは人形だよ!)」

アスカ「――私は、私は、よくわからなくなっちゃったの」

アスカ「どうしたらいいのか……ママは……私を見てくれない」

シンジ「(……! ママ?)」

アスカ「どうしたらママは私を見てくれたの? わからないのよ! シンジ! ねぇ! どうしたらママは私だけを見てくれたの⁉︎」

シンジ「(もしかして………アスカのトラウマって………! うっ!)」

ギュゥー ギリギリ

シンジ「(アスカッ……! 首を締めてきてる……!)」

アスカ「お願いだから私だけを見て! もうどこにも行かないで!」

シンジ「(い……息がッ……!)」

アスカ「――…………ッ⁉︎ ご、ごめん! シンジ!」

シンジ「げほっげほっ! ……ふーふー……」

アスカ「私……ママと同じこと……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

アスカ「息が苦しいの? ガムテープはがした方がいい?」

シンジ「ふーっふーっ」コクコク

アスカ「………でも、騒いだりしない?」

シンジ「…………」コクリ

アスカ「わかった……。首赤くなってる。ごめん。今はがすね」

シンジ「あ、アスカ……」

アスカ「…………」

シンジ「(ここは何て言うべきか、間違えちゃいけない気がする……でも、どうしたら……)」

アスカ「…………」

シンジ「その人形は?」

アスカ「――――ッ」ビクッ

シンジ「どうしても知りたいんだ。もしかしてお母さんに関係あることなの?」

アスカ「…………うん」

シンジ「(向き合わないと……! 逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ……!)」

シンジ「………アスカ。お腹すいてない?」

アスカ「――――えっ?」

シンジ「お腹すいてるなら、なにか作るよ」

アスカ「縛ってるのをほどいてほしいの?」

シンジ「そうじゃないんだ。アスカが心配なだけで」

アスカ「うそっ! いきなりこんな状態で私の心配なんかするはずないっ!」

シンジ「……心配なんだ。アスカのことが」

アスカ「あんたバカァ⁉︎ 大バカよ! 私のこと嫌わないとおかしいじゃない!」

シンジ「(やっぱり、アスカはきっと揺れてるんだ。おかしいことがわかるってことは……)」

アスカ「シンジ! あんたまさか私を騙そうとしてるの⁉︎」

シンジ「(だけど、振り幅が大きい。不安になると信じられなくなって、疑って、傷つけようとする)」

アスカ「………もう私………」

シンジ「アスカ。本当なんだ。本当に心配してる」

シンジ「(だから、アスカには、気持ちで話すんだっ!)」

アスカ「嘘よ! だってまだ一週間もたってないじゃない! それなのに、こんなの信じられない!」

シンジ「……僕も、そう思う。だけど、ほっとけないのは本当だから」

アスカ「シンジ……私、あんたにはじめて会った時、懐かしいって思ったの。ねぇ、あんた、なんなの?」

シンジ「――それは僕にもわからない。けど、今は、そんなことよりもアスカのことが心配なんだ」

アスカ「…………」

シンジ「信じてほしいんだ。アスカ」

アスカ「…………」

シンジ「僕はどこにもいかないよ。お母さんと何があったのかも、話せるときに話してくれたらいい。アスカが話やすい時に」

アスカ「………ぅっ……うっ……」

シンジ「焦らなくていいんだ。だって僕たちはまだ子供なんだから」

アスカ「シ、シンジィ………」ポロポロ



加持『そうしてれば、アスカから全てをさらけだすだろう』



シンジ「これからの時間も、これまでのアスカのことも、ゆっくり解決していけばいいんだよ。アスカ」

――――
―――


アスカ「シンジ、縛ってたところ、痛くない?」

シンジ「うん」

アスカ「本当? 頭も、病院行かなくて平気?」

シンジ「血はでてないし、大丈夫だよ」

アスカ「な、なんでもするから。なにかあったら言うのよ?」

シンジ「大丈夫だよ、アスカ」

アスカ「あの、シンジ……」

シンジ「ん?」

アスカ「私、少し頭冷やしてくる。ヒカリにも、告白した子にも、なんだか悪いことしちゃったから」

シンジ「え? けど、今日は学校行ってないからあんまり出歩かない方がいいんじゃ」

アスカ「少し、考えたいの」

シンジ「………そっか」

アスカ「体調大丈夫よね? い、いなくならないわよね?」

シンジ「うん……」

アスカ「わかった。それじゃぁ……」

シンジ「――いってらっしゃい」

- ネルフ本部 ラボ -

加持「よっ」

リツコ「あら、あの子達はもういいの?」

加持「俺の出る幕じゃないさ。多少余計な口出しはしてしまったみたいだがね」

リツコ「終わりよければすべてよし、とも言うわよ? それにシンジくんは理想的な成長をしているといえるんじゃないかしら?」

加持「…………」

リツコ「あの子、加持くん以上の女たらしになるかもしれないわね」

加持「ふっ。たしかに、シンジくんの働きぶりには感心させられるよ……アスカのトラウマは克服できそうじゃないか?」

リツコ「……四歳にして母親が首吊り自殺をしている現場を目撃するのは並大抵のことではない」

加持「深層心理にすりこまれているのは厄介だな」

リツコ「未来は不確定だけど、条件付きならば、はやい段階で――とは言えるんじゃないかしらね」

加持「フォースの選定に間に合えばいいんだが――」

リツコ「(おそらく、あの子たちの立場が逆転することになる)」

加持「マルドゥック機関には介入できないかい?」

リツコ「口出しすれば、碇司令が黙ってないわよ」

加持「……ふぅ~」

リツコ「加持くん、あまり根を詰めすぎると死ぬわよ。これは友人としての忠告」

加持「ご忠告痛みいるよ。しかし、俺はなんでも自分で確かめないと気が済まないタチでね」

リツコ「(やるつもりなのね、介入)」

加持「それじゃリッちゃん、また今度」

- 第三新東京都市 繁華街 -

アスカ「(はぁ。今さらになって凄い自己嫌悪だわ……)」

アスカ「(冷静になってみると、痛いやつよね。私って)」

アスカ「(碇シンジ……。もうすぐ一週間だけど……普通に考えたらここまで心の距離が近づくなんてありえない)」

アスカ「(違う。そうじゃない。私から心を開くなんてありえないのよ………だけど――――)」


アスカ「(――――惹きつけられる)」


アスカ「(これまでの人生で、加持さんだって、ううん、出会ってきた中でこんなことなかった)」

アスカ「(シンジ………懐かしいことと関係があるの?)」


カップル男「なぁなぁ、あの子かわいいな?」
カップル女「どこ見てるの! 信じられない!」


アスカ「(……はん。バッカみたい。昼間からイチャつくとか。しかも男も薄っぺらいし、あんなのならシンジのほうがよっぽど………)」

アスカ「(――いつから? 屋上で私を守るって言ってくれた時から、ずっとシンジのこと見てた)」

アスカ「(………もしかして、はじめて会った時から?)」

アスカ「………はぁ」

- ミサト宅 -

ミサト「シンジくーん? アスカー? いるー?」

シンジ「――あれ? ミサトさん? 明日まで泊まりこみで仕事じゃなかったんですか?」

ミサト「えへへ、日向くんにお願いして切り上げてきちゃった」

シンジ「(昨日じゃなくてよかった)……はぁ、いいんですか?」

ミサト「まぁまぁ。それよりアスカは? ちょっと二人に話があるのよ」

シンジ「アスカなら今出てますよ」

ミサト「ん~そっかぁ~。帰りは遅くなるのかしら? あんまり時間がないのよねぇ~」

シンジ「今日はすこし、時間を与えてあげてください。僕でできることならしますから」

ミサト「……なんかあったの?」

シンジ「いえ、仲直りしただけです」

ミサト「ふぅん。時間……必要なのね?」

シンジ「……はい」

ミサト「……わかったわ。今回の話は二人の協力が不可欠だし……どーんと! のんびりして待ちましょうか!」

- 第三新東京都市立第壱中学校 放課後 校舎前 -

ヒカリ「…………」テクテク

アスカ「ヒカリっ! ヒカリっ!」

ヒカリ「………? ――アスカ?」

アスカ「ずっと待ってたのよ。よかった」

ヒカリ「待ってたってここで?」

アスカ「うん、昨日のこと謝ろうと思って」

ヒカリ「ううん。もういいの」

アスカ「昨日の、あの子は……」

ヒカリ「あの子には、私から謝っておいたから大丈夫よ。私のせいなんだし」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

アスカ&ヒカリ「…………あの」

アスカ「……あ」

ヒカリ「……えへへ。ねぇ、よかったら、うちに遊びにこない?」

- 洞木宅 -

ヒカリ「もうすぐしたらご飯だけど、アスカも食べてく?」

アスカ「うぅん。そこまでしてもらっちゃ悪いし、いいわ。シンジも待ってるだろうし」

ヒカリ「――ふふ」

アスカ「なによ?」

ヒカリ「本当にアスカは碇くんのことが好きなんだなぁって」

アスカ「ヒカリ、前もそれ言ってたわよね」

ヒカリ「うん、だってそうなんだもん」

アスカ「……はぁ。シンジのことは、たしかに、うん、これまでにないぐらいの人だとは気がついたわよ」

ヒカリ「――ほんとっ⁉︎」

アスカ「……私がこれほどまでに気になるなんて、悔しいけど、認めざるをえないわ」

ヒカリ「アスカ、前に碇くんのこと「気にかけてやってる」って言ってたのってやっぱり認めたくなかったから?」

アスカ「……ん。そうなのかも。私からいくのは大人の余裕のある人ばかりだったから」

ヒカリ「…………」

アスカ「受け入れてくれるっていう安心感がないとだめなのよ。だから大人を求めてたのかもしれないわ」

ヒカリ「うんうん。年上ってそういうところあるよね」

アスカ「だけど、大人はみんな私のことエヴァのパイロットとしてしか見てくれなかった。私のことを見てくれたのは加持さんだけ」

ヒカリ「…………」

アスカ「………そう思ってた。加持さんは私のことを女の子として扱ってたけど、子供としても扱っていた。そのことに薄々と勘づいていたけど見ないように、気がつかないふりをしてた」

ヒカリ「…………」

アスカ「加持さんしかいなかったから。シンジは、シンジは違う。私と対等に、エヴァのパイロットとしても、子供同士としても向き合ってくれた。見ないふりをしなくてもいいの」

ヒカリ「………なんだか、ずるいな」

アスカ「えっ?」

ヒカリ「恋愛って、自分と向き合ったり、人と向き合わなきゃできないことだから、アスカが大人に見える」

アスカ「そうかしら……」

ヒカリ「うらやましいよ。昨日はまったくそんなとこ見せなかったのに。気がつくことができたじゃない」

アスカ「…………うん。でも、ヒカリもそういうことわかってるってことじゃないの?」

ヒカリ「私は、少女漫画の影響だから……えへへ」

アスカ「…………ふふ」

ヒカリ「アスカも見たいなら言ってね? 少女漫画うちにたくさんあるから」

ヒカリ「……でも、よかった」

アスカ「ん?」

ヒカリ「アスカ、このままだとなにしでかすかわからない感じだったから」

アスカ「――――あー、うん」

ヒカリ「……?」

アスカ「ヒカリ、引かないで聞いてくれる?」

ヒカリ「もう夜中見てたとか言われても引かないわよ」お茶グビグビ

アスカ「――シンジを監禁したの」

ヒカリ「ぶふぅっっっ!!」

アスカ「うわぁっ⁉︎」

ヒカリ「あ、アスカァ⁉︎」

アスカ「も、もう大丈夫。解放してあるから」

ヒカリ「解放って――碇くんは大丈夫なの⁉︎」

アスカ「う、うん。なんともないっていつも通りしてくれてる」

ヒカリ「…………」

アスカ「さ、さすがにやりすぎたとは思ってるわよ」

ヒカリ「………すごいね」

アスカ「………うん。でもあいつバカだから。凄いと思ってないんだろうけど」

ヒカリ「…………碇くんってね、転校してきた時、孤立してたのよ」

アスカ「そうなの?」

ヒカリ「うん。エヴァのパイロットっていうこともあったけど、昼休みは一人でいることが多かった。だから、そんな人とは思わなかったな」

アスカ「鈴原から殴られたことあるって聞いたことあるわ」

ヒカリ「……鈴原は妹さんが巻き込まれたから」

アスカ「でも、それは事故よ。シンジがそんなことしたくてするわけない」

ヒカリ「……うん。私たちにはできないこと、碇くんやアスカたちはしてる」

アスカ「………」

ヒカリ「みんな感謝してるのよ。口にださないだけで。だから、鈴原のことあんまり悪く言わないであげて」

アスカ「……わかった」

ヒカリ「あのね、アスカ」

アスカ「うん?」

ヒカリ「ちょっと耳かしてくれる?」

アスカ「はぁ? だってここには誰も……まぁいいわ、なに?」

ヒカリ「実は、私――」コショコショ

アスカ「――――――よりによって、すずはらぁっっっっ⁉︎」

- ミサト宅 夜 -

アスカ「すぅー……はぁーっ。よしっ!」

ガチャ

アスカ「シンジ! ただい――」

ミサト「お帰りなさ~い!」

アスカ「――ミ、ミサトっ? なんで玄関に」

ミサト「待ってたわよん」

アスカ「仕事は?」

ミサト「まぁまぁ。いいからいいから。それじゃ、はじめましょーか!」

アスカ「なにを?」

ミサト「今度の作戦準備。ほら、シンちゃんはリビングで待ってるからさっさと行って」



ミサト「――第7使徒の弱点は1つ! 分離中のコアに対する二点同時の荷重攻撃、これしかないわ」

シンジ「……荷重攻撃?」

ミサト「つまり、エヴァ2体のタイミングを完璧に合わせた攻撃よ。――そのためには2人の協調、完璧なユニゾンが必要なの」

アスカ「ユニゾンってそんな無茶な……」

ミサト「そ・こ・で、無茶を可能にする方法。二人の完璧なユニゾンをマスターするため、この曲に合わせた攻撃パターンを覚え込むのよ」

アスカ「…………」

シンジ「…………」

ミサト「使徒は現在自己修復中。既に2日ロスしたから第2波は4日後、時間がないわ。頼むわね」

- 翌日 ミサト宅 アスカ部屋 -

アスカ「な、なによこれぇ~~~⁉︎」

ミサト「あら? 気に入らなかった?」

アスカ「こんなダサいTシャツを私に着ろってゆーの⁉︎ しかも下はスパッツゥ⁉︎」

ミサト「シンちゃんとペアルックよん?」

アスカ「――ほ、ほんと?」

ミサト「もちろん、シンちゃんは今自分の部屋で着替えてるから」

アスカ「は、はん。ま、まぁ。しかたないわね!」

ミサト「アスカ、あんた素直になったりつんつんしたり忙しいのね」

アスカ「どういう意味よっ⁉︎」

ミサト「ご覧の通り見たままの意味よ、さ、ちゃっちゃと着替えちゃいなさい」

アスカ「む、ムカつく……っ!」

- ミサト宅 リビング -

ミサト「さて、それじゃ今日から本格的に特訓スタートよ! はりきって――どうしたの? 二人とも」

シンジ「(こ、この服は……予想以上に)」
アスカ「(恥ずかしい……っ!)」

ミサト「ちょっと、大丈夫?」

アスカ「な、なんでもないわ! 続けて」

ミサト「……まずは、リズムを覚えるところから。曲に合わせてゲーム感覚でやってもらいます」

シンジ「ゲーム……ですか?」

ミサト「シンちゃんはゲームセンターとかいかない? ネルフスタッフがダンスゲームみたいに作ってくれたのよ」

アスカ「ふぅ~ん」

ミサト「まずは、合わせてみましょうか」

シンジ「はい」

ミサト「それじゃ! ミュージックスタートォゥ!」

- 3日後 ミサト宅 玄関前

トウジ「しかし、シンジの奴どないしたんやろなぁ」テクテク

ケンスケ「学校を休んで、もう三日だもんなぁ~」テクテク

トウジ「この間の出撃となにか関係あるんやろか?」テクテク

ケンスケ「さぁ~?」テクテク

トウジ「あれ? あそこにおるんは、委員長やんか」テクテク

ヒカリ「す、鈴原、相田くん」テクテク

トウジ「なんで委員長がここにおるんや?」テクテク

ヒカリ「私はアスカのプリント渡しに。あなたたちこそどうしてここに?」テクテク

ケンスケ「碇のプリント渡しに」テクテク


ヒカリ「そうなんだ」ピタッ

トウジ「……なんでここで止まるんや?」ピタッ
ケンスケ「……なんでここで止まるんだ?」ピタッ


ヒカリ「え? えーと、その………(二人はアスカと碇くんが一緒に住んでるって知らないの……?)」

トウジ「……ケンスケ、ほれ、チャイム」

ケンスケ「あ、あぁ……」



ピンポーン



シンジ&アスカ「はぁ~~~い」



トウジ「…………おまっ⁉︎ まままままままぁっ⁉︎」

ケンスケ「……………いやぁ~んな感じ」

ヒカリ「……………はぁ」

- ミサト宅 リビング -

トウジ「――それならそうとはよう言うてくれればよかったのに」

アスカ「…………学校でいいふらしたら承知しないからね」

トウジ「するか! シンジもいい迷惑やろ!」

アスカ「なにが迷惑なのよ⁉︎ いいふらしなさいよ!」

トウジ「どっちやねん!」

ヒカリ「……それでユニゾンはうまくいってるんですか?」

ミサト「それが――」

ケンスケ「うまくいってないんすか?」

ミサト「うまくいっちゃったのよね……」

アスカ「またその話?」

ミサト「だぁってこんなに合うとは思わなかったんだもの! 時間があまりまくっちゃってさぁ」

アスカ「昼間からビール飲めていいじゃない……」

ヒカリ「(……アスカ、うまくできてるんだね)」

トウジ「なぁなぁ、シンジの部屋はどこや?」

シンジ「それなら、あっち――」

ケンスケ「碇! 今日は俺たちからプレゼントがぁ⁉︎」

アスカ「なに? これ」ヒョイ

トウジ「そ、そそそそそれはぁ⁉︎」

ケンスケ「と、トウジ! 緊急事態だ! 取り返せ!」

トウジ「よしきた――! ぐへぇ⁉︎」バキッ

アスカ「――フンッ。エリート育ち舐めんじゃないわよ」

ヒカリ「アスカ、それなんなの?」

アスカ「ちょっと待って……なんか……ケースみたいな………⁉︎」

ヒカリ「――ど、どうしたの? アスカ」

アスカ「ヒカリも見てみたら?」

ヒカリ「うん…………こ、これは⁉︎」

ケンスケ「…………碇、部屋に行かせてくれ」

シンジ「部屋なら、そこまっすぐいって左手だよ」

ヒカリ「ちょっと鈴原と相田くん!! アンタたちっ!! そこ座りなさいよっ!!!」

ミサト「(思春期と言ったら、どうせエロ絡みね……)」

――――
―――


ヒカリ「わかった⁉︎ 碇くんはあんた達とは違うんだからね!!」

トウジ&ケンスケ「…………はい」

アスカ「………サル」

トウジ「ぐっ⁉︎ ゴミを見るような目で……!」

アスカ「ゴミに失礼ね」

ケンスケ「………はぁ」

シンジ「あ、あの………そろそろ」

トウジ「シンジだって溜まるもの溜まってしょうがないに決まっとるやろがいっ!」

ヒカリ「す、鈴原ぁっ⁉︎」

トウジ「見てみいや! 家に帰ればミサトさん! ……とゴリラ女がおるんやで!」

アスカ「――誰がゴリラですってぇ⁉︎」

トウジ「シャラップッ! ミサトさんのこんなあられもない姿を見たシンジがワシはあわれであわれで……」

ミサト「あはは」

アスカ「遺言はそれだけ?」

トウジ「センセも男ならわかるよなぁ⁉︎」

シンジ「いや、えーと」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

ミサト「(さぁ、シンちゃん。どう切り抜けるのかしら)」

シンジ「うーん、まぁ、少しはあるよ」

トウジ「ほら見て――ぐっ」バキッ

アスカ「シンジッ! 私とミサトどっち⁉︎」

シンジ「あー。んー………」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ」

アスカ「……………」

ミサト「(身を乗り出しちゃってまぁ)」

シンジ「アスカ、かな」

アスカ「ほんとっ?」

シンジ「うん」ポリポリ

アスカ「じゃあ部屋行きましょ!」

シンジ&ヒカリ&ケンスケ&ミサト「えぇっ⁉︎」

アスカ「……なによ?」

ヒカリ「アスカっ! ぜんぜん変わってないじゃない!」

アスカ「私は何事も焦らないようにしただけよ。シンジはいなくならない。それはわかったわ。だけど、そういうことに興味もあるし――」

ミサト「それはちょぉっとストップ!」

ヒカリ「はじめては大切なんだからもっと雰囲気とかあるじゃない!」

アスカ「シンジと私の邪魔する気……?」

ケンスケ「…………いかりぃ。感想はきかせてくれよなぁ」

シンジ「そ、それははやすぎるよ!」

アスカ「シンジなら嫌じゃないし私のことでしょ!」

ヒカリ「アスカはまだ気持ちに気がついたばかりじゃない!」

シンジ「え? 気持ちって?」

アスカ「――ヒカリっ⁉︎」

ヒカリ「え? ――うそ⁉︎ 碇くんまだ知らないの⁉︎」

アスカ「その、シンジは――」

ケンスケ「(普通、ここまであからさまなら気がつくけどなぁ)」

シンジ「アスカ、ゆっくりでいいよ」

アスカ「…………う」

ヒカリ「(知らないんだわ。アスカがもう受け入れてること……碇くんはアスカを待ってるつもりなのね……でも、待って。碇くんの気持ちは?」

トウジ「いつつ~」

ヒカリ「(碇くんがアスカを友達だと思ってるだけだとしたら……? きゃーっ! なんか少女漫画っぽい!)」

アスカ「………ヒカリ?」

ヒカリ「――え? な、なに?」

アスカ「鈴原はいいの?」

ヒカリ「え⁉︎ あ、アスカぁっ⁉︎」

トウジ「…………なんや?」

アスカ「ふん……お返しよ」

ミサト「とにかく、これで戦闘準備は万端ってことで」

- 作戦決行日当日 発令所-

第7使徒イスラフェル「……………」ズシンズシン

シゲル「――目標は、強羅絶対防衛線を突破!」

ミサト「……おいでなすったわね、今度は抜かりないわよ」

ミサト「音楽スタートと同時に、A.T.フィールドを展開。後は作戦通りに。2人とも、いいわね?」


シンジ&アスカ「了解!」


シゲル「――目標は、山間部に侵入!」


アスカ「準備はいい? 最初からフル稼動、最大戦速で行くわよ」

シンジ「分かってるよ。62秒でケリをつける」

アスカ「(こういう時は、かっこいいのよね……)」


シゲル「――目標、ゼロ地点に到達します!」

ミサト「外電源、パージ」

マヤ「了解」

ミサト「期待してるわよぉ。発進っ!」

- 作戦決行から1日後 第壱中学校 屋上 -

シンジ「アスカはネルフだし、なんだか、久しぶりに一人の気がするや」

シンジ「(短い期間に色々とあったけど……)」

シンジ「(アスカは、トラウマを話てくれるようになってはじめてきちんと向き合うことになるのかな)」

シンジ「(今は、アスカはきっと勘違いしてるだけなんだ……)」



〇〇「どいて、どいてぇ~~~~!!」

シンジ「――えっ?」


ドカンッ


〇〇「……………いたたぁ~~。………ねぇ⁉︎ ちょっと大丈夫⁉︎」

シンジ「……………」

〇〇「あっちゃぁ~~。こりゃ完全にオチちゃってるじゃん!」


ピリリリリ
――ピッ

〇〇「――Hello? あぁ。なんだ加持くんか。こちらマリ。予測地点から5kmも離れてるよぉ~」

マリ「うん………うん………ゲンドウくんには気がつかれてないのね……了解」

マリ「――あぁ~~まった! それと、1人処理お願い。中学校の屋上でのびてるから」

ピッ

マリ「さぁてと――」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「――月経ね」

アスカ「……女だからってなんでこんな思いしなくちゃならないのよ。生理なんかなくなればいいのに」

リツコ「人という種を残すため。痛み止め、飲んどく?」

アスカ「……ちょうだい」

リツコ「3日もすれば痛みはだいぶなくなると思うわよ。その間はプラグテストもしなくて大丈夫」

アスカ「……………」

リツコ「シンジくんとの生活は慣れた?」

アスカ「……えぇ。問題ないわ」

リツコ「ミサトからかなり親密な関係だと聞いたけれど」

アスカ「ミサトってそんなことまで話すの……」

リツコ「一応、私はパイロットのカウンセリングも仕事なの。アスカにとってシンジくんはどんな存在?」

アスカ「…………」

リツコ「報告させたくはないんだけど?」

アスカ「…………っ! プライベートはないの⁉︎」

リツコ「あなたの精神面に問題がなければ聞きはしないわ」

アスカ「…………」

リツコ「ふぅ。キョウコ博士についてなんだけど――」

アスカ「――やめてっ!! わかった! 言うわよ!」

リツコ「それで?」

アスカ「…………シンジは、私にとって大切な人よ」

リツコ「具体的には?」

アスカ「そ、それは……」

リツコ「異性として見ている、ということ。かしらね」

アスカ「…………」

リツコ「沈黙は肯定とするわよ」

アスカ「…………」

リツコ「必要なことだから聞くけど――」

アスカ「…………」

リツコ「――シンジくんが死んだらどうするつもり?」

アスカ「――っ⁉︎ シンジは死なないわっ! 私が守るものっ!」

リツコ「なぜそう言いきれるの? 彼もエヴァパイロットなのよ? 常に危険は隣り合わせにある」

アスカ「そんなことないっ! 絶対に死なせない! シンジが死んでほしいの⁉︎」

リツコ「論点のすり替えね。誰も彼に死んでほしいなんて言ってないわよ?」

アスカ「………っ!」

リツコ「ただし、私達にはいつでも代替え案が必要だとは言っておくわ。人が生き残るためにはね」

アスカ「使い捨ての駒にするつもりっ⁉︎」

リツコ「――いいえ。そうできるほどあなた達パイロットに価値がないわけではない。エヴァパイロットを選ぶのはそう簡単ではないのよ」

アスカ「……………」

リツコ「あなた、加持くんはもういいの?」

アスカ「……………」

リツコ「恋愛はロジックではないわ。しかし、簡単に乗り換えるのはシンジくんに不誠実だと言えるのではないかしら?」

アスカ「――――っ⁉︎ 違うわ! 加持さんは私が勘違いしてただけよ! シンジみたいに本当に見てくれてたわけじゃなかった!」

リツコ「加持くんになにを求めようとしていたの?」

アスカ「…………」

リツコ「大人の余裕、かしらね?」

アスカ「くっ………」

リツコ「人は分析をしていても、その分析が間違っているか正解かどうかなんてわからないものよ。自分で判断している」

アスカ「な、なにが言いたいのよ⁉︎」

リツコ「あなたは周囲から認められなければいけないという強迫観念に囚われているんじゃない?」

アスカ「…………」

リツコ「そう考えれば、加持くんへ……大人達への強い憧れも一種の自立性と見えなくもないわね」

アスカ「…………」

リツコ「シンジくんに依存しすぎるのはやめなさい」

アスカ「――っ! な、なんでそんなこと言われなくちゃならないのよ!」

リツコ「正常な判断ができなくなる。危険だからよ」

アスカ「私はシンジに依存なんかしてないっ! 対等に向き合ってるだけよっ!」

リツコ「……………」

アスカ「こんなカウンセリング意味ない! 不快なだけだわ!」

リツコ「パイロットとして機能しなくなれば、シンジくんにしろあなたにしろ、どうなるかわからない?」

アスカ「今はうまくできてるじゃない! シンクロ率だって私は70%なのよ⁉︎」

リツコ「…………今はそれでいいかもしれないわね」

アスカ「そうよ! 嫌なことがあっても乗り越えて見せるわ!」

リツコ「失うものが大きすぎるほど失った時に辛いわよ。失った時に、それがわかるわ」

アスカ「わかってるわよ! ママみたいになるのはもうたくさんっ!」

リツコ「…………そう」

アスカ「――もう帰るわよ」

リツコ「またカウンセリングが必要になった時はいつでもいらっしゃい」

アスカ「よくも……っ! 二度とくるわけないでしょ⁉︎」

リツコ「(――いいえ。あなたは来るわ。必ずね)」

アスカ「……………ふんっ!!」

- 第三新東京都市 繁華街 -

加持「のびてるのがシンジくんだと聞いた時は驚いたぞ」

マリ「……あぁ。彼がネルフのワンコくん?」

加持「なんだあ? 知らなかったのか?」

マリ「にゃはは。資料では見たけどあんまり興味なかったから気がつかなかった」

加持「……はぁ」

マリ「それより、ゲンドウくんは本当に気がついてないの?」

加持「おそらく、ね。泳がされてるだけかもしれないが」

マリ「可能性は?」

加持「五分五分といったところかな。分の悪い賭けかもしれないが」

マリ「ふぅ~ん。あぁ~ぁ。大人たちを巻き込むのは気後れしちゃうな」

加持「……よく言うよ」

マリ「それで? シナリオは?」

加持「ゼーレと碇司令のシナリオはいずれ剥離するのは確定済みさ」

マリ「それじゃ、『こっち』のシナリオは?」

加持「…………なんとも言えないね」

マリ「頼りないなぁ~」

加持「ま、なんとかなるさ。命ある限りは」

マリ「ふふん。そっちの方が頼り甲斐あるかも」

加持「そいつはどーも。……マルドゥックにはこのまま?」

マリ「……それしかないっしょ~?」

加持「……愚問だな」

マリ「よいしょっと。さぁーて、それじゃはじめますか」

加持「わかってるだろうが、派手にやるなよ?」

マリ「だぁいじょーぶ! どんな物語にも種明かしは必要なのだよ!」

加持「……ふっ。違いない。その時が来ればだけどな」

マリ「それじゃ、また!」

加持「あぁ」





マリ「しっあわせわぁ~♪ 歩いてこない♪ だぁから歩いてゆくんだ!よっと!」

- 夜 ミサト宅 -

シンジ「アスカぁ。今夜は炒め物でいい?」

アスカ「うん」

シンジ「……どうかした?」

アスカ「え? な、なんで?」

シンジ「落ちこんでるように見えたから」

アスカ「な、なんでもない! 私は元気よ!」

シンジ「……そっか」

アスカ「…………」

シンジ「(えーと、あれ? コショウきれてたかな……?)」

アスカ「…………」

シンジ「(後でミサトさんに電話して買ってきてもらおうかな?)」

アスカ「…………ねぇ、シンジ」

シンジ「ん? どしたの?」

アスカ「――もしも、もしもなんだけど、私たちってエヴァパイロットじゃなくても仲良くなれたかな?」

シンジ「…………」

アスカ「…………」

シンジ「…………どうだろう」

アスカ「そ、そうよね。わからないわよね」

シンジ「うん……。だけど、僕はアスカと仲良くなれて嬉しいよ」

アスカ「…………うん」

シンジ「エヴァパイロットであることに嫌な気持ちしかなかったけど、アスカには助けてもらってるから」

アスカ「…………うん」

シンジ「今はパイロットだからわからないけど、そうじゃなくても他のことで仲良くなってたんじゃないかな」

アスカ「……そ、そう?」

シンジ「うん。わからないから仲良くならなかったかも、じゃなくて、仲良くなってた未来もあるはずだから」

アスカ「…………シンジ」

シンジ「………アスカ? どしたの?」

アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「エヴァパイロット……やめてもいいかもね」

シンジ「アスカ……?」

アスカ「……ううん。なんでもない!」

シンジ「……?」

アスカ「シンジ! 私料理覚えるわ!」

シンジ「えぇ⁉︎」

アスカ「……そこってそんなに驚くこと?」

シンジ「え、でも、アスカ。包丁握ったことある?」

アスカ「ない、けど」

シンジ「…………そうなんだ。じゃあまずは包丁の扱い方からだね」

アスカ「教えてくれる?」

シンジ「もちろん――」

アスカ「――シンジは、絶対に死なせない」ボソッ

シンジ「……え?」

アスカ「なんでもないの! さぁ! やるわよ!」

- ネルフ本部 ??? -

キール「我々にはないシナリオがあるようだが?」

ゲンドウ「……問題ありません。とるにたらない出来事です」

委員会01「しかし、弐号機の艦隊戦はなんとかならなかったのかね。あの遭遇戦で、米艦隊は戦力の1/3を失ったよ」

委員会04「失ったのは君の国の艦隊だろう。気にすることでもない」

委員会03「左様。この程度で済んだのは、むしろ幸いと言える」

委員会02「碇君。本当に問題はないんだろうな?」

ゲンドウ「……はい。ネズミはいずれ罠にかかり自滅します」

委員会01「この場所での虚偽の発言は死に値するよ?」

ゲンドウ「……わかっております。皆様方には結果をもって成果を」

キール「よろしい。碇……余計な考えはおこすなよ?」

ゲンドウ「はい。全ては……ゼーレのシナリオ通りに」



冬月「……通信終了か。老人達はあの男、加持と言ったか。やつを疑っているようだな」

ゲンドウ「…………ああ」

冬月「ゼーレに対するスケープゴートにするつもりか」

ゲンドウ「……時期がくれば処理する。それまでは好きにさせておけばいい」

冬月「我々のシナリオの障害になりえはしないだろうな」

ゲンドウ「マルドゥックに介入したのは把握してある。なにも問題はない」

冬月「今のうちにダミーを急がせるか?」

ゲンドウ「今はまだ、待つだけでいい。何も焦る必要はない」

- 翌日 第三新東京都市第壱中学校 昼休み -

ケンスケ「いよいよ来週は修学旅行だぁ~!」

トウジ「いやっほーう!」

ケンスケ「なぁ、どこからまわろうか?」

トウジ「そら決まっとるやろ! 沖縄ゆうたら首里城や!」

シンジ「うん、いいね」

ケンスケ「首里城か~! カメラで撮ろうかな~」






ヒカリ「――鈴原たち、すごくはしゃいでるね」

アスカ「……そうね」

ヒカリ「アスカ、悩み事?」

アスカ「……ううん。でも、なんだか頭から離れないことってない?」

ヒカリ「……? 水着のこととか?」

アスカ「…………」ガクッ

ヒカリ「ど、どうしたの?」

アスカ「なんでも。……そうね。いい加減切り替えなくちゃ。私らしくないわね」

ヒカリ「アスカ。悩み事があるなら、聞くよ?」

アスカ「……ありがと。――それはそうと、鈴原とは進んでるのぉ?」

ヒカリ「えぇ⁉︎」

アスカ「どうなの?」

ヒカリ「………その、まだ、なにも」

アスカ「はぁ? 少女漫画知識はどうしたのよ?」

ヒカリ「あ、あれはっ! 漫画だから……実際にできるわけじゃ……」

アスカ「……はぁ。私の時はすぐお節介するくせに」

ヒカリ「う、うぅ……」

アスカ「――いいわ。それじゃちょっと、私がお節介してあげる!」

ヒカリ「え⁉︎ アスカッ⁉︎」

アスカ「いくわよ、ヒカリ」グイッ



アスカ「…………」スタスタ
ヒカリ「(ちょっ、ちょっとアスカァッ!)」



トウジ「それと――なんや? ゴリラ女やないか」

アスカ「いい度胸ね。でも殴るのは話を聞いてからにしてあげる」

シンジ「……?」

アスカ「鈴原。あんたいっつも購買パンよね? なんで?」

トウジ「はぁ?」

アスカ「答えるか死ぬかどっちかにしなさい」

トウジ「簡単に[ピーーー]るか! ……ワシは妹の見舞いがあるからな。弁当を作る時間がないんや」

アスカ「ふぅ~ん。購買パンって飽きるわよね?」

トウジ「あぁ、まぁ。そやなー」

ケンスケ「トウジはいつも同じパンだもんなー」

アスカ「……ですってよ? ヒカリ」

ヒカリ「え、えぇ⁉︎ ここで私っ⁉︎」

トウジ「……はぁ? 委員長? 」

ヒカリ「――あ、あの!」

トウジ「……?」

ヒカリ「わ、私! 妹とお姉ちゃんのお弁当作ってるんだけど!」

トウジ「はぁ……それはえらいなぁ」

ヒカリ「い、いつも、作りすぎて、あまっちゃうんだ」

トウジ「………はぁ、そら大変やなぁ」

ケンスケ「…………」

シンジ「…………」

ヒカリ「だ、だから、食べてくれる人を、探してるんだけど」

トウジ「…………はぁ?」

アスカ「(――ぐっ! この鈍感!)」

ヒカリ「あ、あの……だから、その………」

ケンスケ「それなら、トウジがぴったりだなぁ~。碇もそう思うだろ?」

シンジ「……うん、そうだね」

トウジ「………ワシが?」

シンジ「うん、だってトウジ、パンに飽きてるんだろ?」

アスカ「(ナイスよ! シンジ! 相田!)」

トウジ「…………そうなるな」

ヒカリ「……………」

トウジ「…………それなら、委員長。ワシ、食べてもええんやろか?」

ヒカリ「――うんっ!」

ケンスケ「なぁ」コショコショ

シンジ「うん?」

ケンスケ「俺に春はいつくるのかなぁ~」

シンジ「……ケンスケって自分のこと僕って言ってなかった?」コショコショ

ケンスケ「雰囲気だろ! ていうか、ツッコむとこそこかよ!」コショコショ

アスカ「……よかったわね。ヒカリ」

ヒカリ「…………べ、べつに。鈴原に作るのはついでだから」

トウジ「そらえろうすんません」

ヒカリ「――ち、ちがうの! ちがわなくて! あ、アスカぁっ!」

アスカ「はいはい、わかったわよ」

ヒカリ「もう! ……でも私、料理できるなんて言ってた?」コショコショ

アスカ「いいえ」

ヒカリ「じゃ、じゃあどうして?」

アスカ「だって委員長ですもの。できて当たり前じゃない」

ヒカリ「…………」

- 第三新東京都市 繁華街 デパート -

アスカ「ねぇねぇ、シンジ! こんなのはどうかな~?」

シンジ「あ、え、えと。その。いいんじゃないかな」

アスカ「……もう。ちゃんと見てくれてる?」

シンジ「だ、だってここ、女性の水着売り場じゃないかぁ」

アスカ「……恥ずかしい?」

シンジ「う……。みんな僕たちのこと、その、カップルだって思ってるよ」

アスカ「それでもかまわないけど?」

シンジ「……………」

アスカ「シンジももうちょっとな部分があるのよね。でも私たち子供だからしかたないけど」

シンジ「…………うぅ」

アスカ「シンジ? まわりはまわりよ? なんとでも思わせておけばいいのよ。どうせ会うこともないんだし」

シンジ「た、たしかに、会うことはないんだろうけど……」

アスカ「でしょ? 他人は他人。みんなそうやって生きてるのよ――あ、ほらほらっ! これは⁉︎ どう⁉︎」

シンジ「ちょ、ちょっと面積が少なすぎるんじゃないかな」

アスカ「えぇ~~。かわいいのに。シンジ。私がこんなの着て他の男に見られるのヤダ?」

シンジ「…………えぇと、どうかな」

アスカ「はい! そこも! そういう時はちゃんと嫌だって答えてくれなくちゃ!」

シンジ「あ、そうなんだ」

アスカ「そうよ? 私から指摘させたんじゃ、言わせてるってことになるでしょう?」

シンジ「……うん。そうだね」

アスカ「シンジもゆっくりいきましょ」

シンジ「……ありがとう。アスカ」

アスカ「いいのよ。それじゃこれは――⁉︎」

- 夜 ミサト宅 -

ミサト「ぷはぁ~~~っ! くぅ~~! なんだかこの声あげるのも久しぶりな気がするわ~!」

アスカ「ミサトは家にいる時、基本的に飲んでたでしょ」

ミサト「気にしなくていいのよん」

アスカ「……?」

シンジ「ミサトさん、来週、修学旅行なんですけど。知ってますよね?」

ミサト「あぁ~。えっと沖縄だったかしら?」

アスカ「そうよ! まさか、行くな、なんて言うんじゃないでしょうね~?」

ミサト「う~ん。そのまさか」

アスカ「ふっ、ふざけるんじゃないわよ!!」

ミサト「仕方ないじゃなぁ~い。エヴァがいつでも発進できるようにパイロットは必要なんだもの」

シンジ「……でも、僕たちの修学旅行ですよ?」

ミサト「私としても行かせてあげたいのが心情なんだけど、これも仕事なのよ」

アスカ「なんでもかんでもエヴァエヴァエヴァエヴァって!!」

ミサト「…………」

シンジ「アスカ……」

アスカ「私たちに人権はないの⁉︎」

ミサト「……申し訳ないと、思ってるわ」

アスカ「口ではなんとでも言えるわよっ!」

ミサト「……そんなに楽しみにしてたのね。ごめんなさい」

アスカ「私が欲しいのは謝罪じゃないわ! 許可よ!」

ミサト「…………」

アスカ「あぁ、もう! せっかく気分転換できると思ったのに!! なんなのよ!!!」

ミサト「…………謝ることしかできない。ごめん」

アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「…………大人ってゴミね」

シンジ「アスカ……言いすぎだよ」

アスカ「シンジだってそう思うでしょう⁉︎ ずるいわよこんなの!」

ミサト「……厳しい言い方をするようだけど、あなた達の住まいやその他の待遇は、エヴァパイロットだからってこと忘れないで」

シンジ「――っ! み、ミサトさんっ!」

ミサト「シンジくんも。よく聞きなさい。あなた達は人類を守れる力がある。………そしてその義務も責務もある」

アスカ「…………」

ミサト「甘ったれたことばかり言ってちゃだめなのよ」

アスカ「…………ゴミに申し訳なかったわ。クズね」

ミサト「なんとでも言っていいわ。だけど、修学旅行は、ごめんなさい」

シンジ「……………」

アスカ「………ミサトとは一緒にいたくない」

ミサト「…………」

アスカ「…………シンジ、部屋いきましょ」

ミサト「…………二人で部屋に行くの?」

アスカ「そうよ! 悪い⁉︎ 文句あんなら言ってみなさいよ!!!」

ミサト「いえ……ないわ」

アスカ「……行きましょ、シンジ」

シンジ「…………」

- ミサト宅 アスカ部屋 -

アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「…………あぁ~ぁ。シンジが選んでくれた水着きたかったなぁ」

シンジ「……また、機会はあるよ」

アスカ「シンジはムカつかないの?」

シンジ「しかたないことなのかなって思うから」

アスカ「ふぅん。やっぱりシンジは優等生なんじゃない? 本当に命令違反で独房に入ったの?」

シンジ「それは、本当だよ。……ごめん。やっぱり腹は立ってるのかもしれない」

アスカ「……シンジって、少し内罰的よね」

シンジ「そうかな?」

アスカ「シンジっていうか、日本人? なんでも自分が悪いんだ、しかたないことなんだぁって思いこもうとしてるでしょ?」

シンジ「……そう……かもしれない」

アスカ「ムカつくことがあったら言い返していいのよ。だって私達はエヴァパイロットなんだもの。モチベーション管理ってもんがあるでしょーが」

シンジ「……うん」

アスカ「…………シンジ、もうちょっと男らしかったらいいのに」ボソッ

シンジ「……そうだね」

アスカ「――あっ……聞こえてた? ごめん。今のは私が悪かったわ」

シンジ「いや、いいんだ。男らしくないのは事実だから」

アスカ「だから、そういうとこがぁ……ごめん。イライラしてるみたい」

シンジ「……僕も男らしくなりたいと思ってるんだ。だけど、これまでこうやって生きてきたから、なかなかすぐにはできなくて」

アスカ「……うん」

シンジ「でも、いつかは、男らしくなってみせるよ」

アスカ「シンジなら、できるよ」

シンジ「ありがとう、アスカ」

アスカ「ううん。私こそ感謝してるの。してもしきれないぐらい」

シンジ「……約束したの覚えてる?」

アスカ「――私のこと?」

シンジ「そう。アスカのこと守るって言ったの」

アスカ「うん。あれがあったから私は変わるきっかけを手に入れた。もちろん、覚えてるわよ」

シンジ「――アスカのことは、守ってみせるよ」

アスカ「シンジ……」

シンジ「水着はのことは――……そうだ」

アスカ「……?」

シンジ「アスカ。なんとかなるかもしれないよ?」

アスカ「……え?」

- ミサト宅 リビング -

ミサト「…………」

シンジ「――――あの、ミサトさん」
アスカ「…………」

ミサト「……シンジくん?」

シンジ「修学旅行の件は――」

ミサト「――ごめんなさい。行かせられないわ」

シンジ「……最後まで聞いてください。ネルフにプールありませんか?」

ミサト「……プール?」

シンジ「はい。実は、僕たち、修学旅行の準備で水着を買ったんです。それで待機するにも、少し遊べたらいいなって」

ミサト「プール、ね」

シンジ「どうですか?」

アスカ「…………」

ミサト「なるほど。それなら、協力できるかも、いえ、協力させてもらうことができるかもしれないわ」

アスカ「……ふん、当たり前よ」

シンジ「……よかった」

ミサト「もちろん、貸し切りで準備させてもらうわ。期待してて」

- 修学旅行日 ネルフ本部 プール -

レイ「……………」

アスカ「……なんでファーストまでいるのよ」

シンジ「綾波だってパイロットなんだから、いてもいいんだよ」

アスカ「私はシンジと二人がよかったのに!」

レイ「…………」

シンジ「あ、その、アスカはお土産頼んだの?」

アスカ「もっちろんよ! ヒカリが買ってきてくれるって!」

シンジ「……そっか。綾波も、修学旅行に行けなくて残念だったね」

レイ「…………別に」

アスカ「~~~っ! ほんっとーに愛想がないわねぇ! シンジが提案しなかったらプールもないのよ⁉︎」

レイ「…………碇くんが、言ったの?」

シンジ「……まぁ、そういうことになるかな」

レイ「…………そう」

アスカ「はぁ……。シンジ、こんな人形ほっといてむこうで遊びましょ」

レイ「…………」

アスカ「私のスキューバー仕込みのバックスクロールエントリー見せてあげる!」

シンジ「わかったよ」

――――
―――

アスカ「――ぷはぁっ!」

シンジ「はぁっはぁっ」

アスカ「シンジ、大丈夫?」

シンジ「ちょ、ちょっと休ませて」

アスカ「もうちょっと体鍛えた方がいいわよ?」

シンジ「はぁっはぁっ……。そ、そうだね」

アスカ「………ねぇ、シンジ。なにか忘れてない?」

シンジ「ふぅ…………。……えーと……」

アスカ「ヒントはあげないわよ。前に教えてあげたから」

シンジ「……? ………あっ! ……アスカ。水着、似合ってるよ」

アスカ「正解! まぁ、本当は一目見たら言わなくちゃだめなんだけど、指摘させなかったから及第点をあげるわ」

シンジ「…………気がきかなかったね」

アスカ「次はもっとうまくできるように期待してるわ!」

レイ「……………」スィー

アスカ「……うわぁ⁉︎」

シンジ「あ、綾波?」

レイ「……………」

アスカ「な、なによ。邪魔しにでもきたの?」

レイ「……………ここ、レーンだから」

アスカ「…………あぁ、そう」

- ネルフ本部 男子ロッカールーム -

シンジ「(えぇ~と、タオルは…………)」

〇〇「――……そのまま、ロッカーを見たまま話して」

シンジ「――えっ?」

〇〇「――こっち向くなッ!!」

シンジ「えっ! あっ、はい!」

〇〇「……ふふん。よろしい。素直なワンコは好きだよ?」

シンジ「――だ、誰?」

〇〇「名前ってそんなに重要かにゃ?」

シンジ「……自己紹介をするのは、当たり前だと、思います、けど」

〇〇「にゃるほど。たしかにそれはそーかも。……じゃあ1つだけ約束。私のこと誰にも言わない?」

シンジ「……?」

〇〇「簡単なこと♪ それができるならはれてキミは私の名前ゲットー♪ ってね!」

シンジ「…………」

〇〇「さぁーて、どうする? もうあまり時間はないよー?」

シンジ「……わかり、ました。……誰にも言いません」

〇〇「ふぅん。どーしよっかなー。信用があるわけじゃないし」

シンジ「え? でも、いま」

〇〇「キミは選択をした。でも、私にも選択権があるのよ♪」

シンジ「…………それで?」

〇〇「ふふん。まぁ、ごーかく点をあげましょう! 私はマリ。真希波・マリ・イラストリアス。長いから省略してマリって呼んでね」

シンジ「マリ、さん。僕は――」

マリ「あぁ、いいのいいの。君のことは知ってるから。姫のボーイフレンドだよね?」

シンジ「(姫……?)」

マリ「お楽しみ中のところもうしわけないにゃー」

シンジ「あの……いったい?」

マリ「今日は顔合わせに来たのだ。ワンコくんにとっては声だけだけど」

シンジ「…………は、はぁ?」

マリ「うんうんっ。これから色々とキミは大変な思いをするからねぇ~。それを思うと泣いてしまいそうだよ」

シンジ「……………」

マリ「あ? 信じてない? 私の言うことは信じたほーがいいよ~?」

シンジ「…………(す、すごいマイペースな人だな)」

マリ「戸惑っちゃってるかにゃ? まぁどう思おうが、勝手だけど」

シンジ「…………」

マリ「さぁて、それじゃ私は行こうかな。名前、忘れないでね?」

シンジ「…………えーと」

マリ「あと、姫にもよろしく、じゃなかった。誰にも言わないでね? それじゃまた今度ー!」

シンジ「……………」

シンジ「…………あの、マリさん?」

シンジ「………振り向いてもいいんですか?」



アスカ「――……シンジ、なにやってるの?」



シンジ「うわぁ⁉︎」

アスカ「…………どうしたのよ?」

シンジ「アスカ! ここ男子ロッカーだよ!」

アスカ「私達の貸し切りだし、シンジがなかなか戻ってこないからきちゃった」

シンジ「…………そ、そうなんだ」

アスカ「…………シンジ、なんかひとり言いってたの?」

シンジ「……いや、なんでもない」

- ネルフ本部 発令所 -

オペレーター「警戒レベル移行します。浅間山の観測データは、可及的速やかにバルタザールからメルキオールへ、ペーストしてください」

冬月「――……これではよく分からんな」

シゲル「しかし、浅間山地震研究所の報告通り、この影は気になります」

冬月「もちろん、無視はできん」

リツコ「――マヤ。MAGIの判断は?」

マヤ「フィフティーフィフティーです」

冬月「ふぅむ。現地へは誰が行っている?」

シゲル「報告のあったヒトヒトマル時に出発して、すでに、葛城一尉が到着しています」

冬月「……忙しくなるかもしれんな。パイロットは?」

リツコ「待機させております」

冬月「よろしい。では、葛城一尉からの報告を待つこととする」

- 浅間山 山頂 地震研究所 -

所員「も、もう限界ですっ!」

ミサト「……いえ、後500、お願いします」

アナウンス『深度1200、耐圧隔壁に亀裂発生』

所員「葛城さん! か、勘弁してくだ――」

ミサト「――壊れたらうちで弁償します。日向くん、後200」

マコト「っ! モニターに反応!」

ミサト「……解析開始」


ピピピ


アナウンス『――観測機圧壊、爆発しました』

所員「…………あ………あぁ…………」

ミサト「どう? 解析は?」

マコト「ぎりぎりで間に合いましたね。パターン青です」

ミサト「………ビンゴ。使徒だわ」

- 2時間後 浅間山 山頂 地震研究所 -

ミサト「――A.17の発令ぃ⁉︎」

リツコ「碇司令の指示よ」

ミサト「それって……生け捕りにするってことじゃない……」

リツコ「現資産の凍結。すなわち、そういうことになるわね」

ミサト「わけのわからないモノを生け捕りって……大丈夫なの?」

リツコ「使徒は休眠状態にあるわ。で、あるならば生態系を解明するサンプルとして理由は充分よ」

ミサト「…………」

リツコ「ミサト、あなたの個人的な復讐の為に必要な試みを潰すことはできない」

ミサト「………わかってるわ」

リツコ「…………」

ミサト「…………了解。エヴァは?」

リツコ「戦略自衛隊が空輸中。――そろそろ着く頃じゃないかしらね」

- 空輸中 エヴァ初号機 弐号機 プラグ内通信 -

アスカ「結局、使徒がきたのね」

シンジ「そうだね……」

アスカ「……はぁ。なんで毎回待ちの姿勢ばっかりなのよ。こっちから攻めてしまえばいいのに」

シンジ「…………」

アスカ「シンジ? なに考えてるの?」

シンジ「今回の使徒、なんか……気をつけた方がいい気がする」

アスカ「……?」

シンジ「作戦はまだわからないけど、僕が先行してもいいかな?」

アスカ「――だめよっ! それはだめ!」

シンジ「アスカの活躍を邪魔しようってわけじゃ――」

アスカ「違うのっ! シンジを守れなくなる!」

シンジ「…………アスカ?」

アスカ「――っ! と、とにかく私が先行! いいっ⁉︎ わかったら返事は⁉︎」

シンジ「…………わかったよ」

- 30分後 浅間山 山頂 地震研究所 -

ミサト「今回の作戦内容は使徒の捕獲よ」

アスカ「捕獲ぅ?」

ミサト「できうる限り原型をとどめ、生きたまま回収すること。……赤木博士、お願い」

リツコ「作戦は浅間山、頭部より開始してマグマの中で行われます」

シンジ「マグマの中って、エヴァはフィードバッグがあるのに大丈夫なんですか?」

リツコ「安心して。暑さに耐えられるように対局地用装備を用意してあるわ」

レイ「…………」

リツコ「ただし、潜るのは1人のみ。他のエヴァは万が一に備えて待機してもらうことになるけどね」

アスカ「…………」

リツコ「……パイロットは、シンジくん。あなたにお願いできるかしら?」

シンジ「わかり――」
アスカ「私がでるわっ!」

リツコ「あなたは待機をお願いしたいのだけど?」

アスカ「シンジじゃ不安でしょ? 私の方がシンクロ率が高いし、作戦成功率は高いわよ」

リツコ「…………シンジくんのシンクロ率でもなにも問題はありません。アスカはサポートをお願い」

アスカ「…………私がサポートにまわる明確な理由がなければ、どっちでもかまわないでしょ? それとも理由があるの?」

リツコ「…………」

アスカ「…………」

リツコ「…………今回に限り、作戦の変更を許可します。次があるとは思わないことね」

アスカ「そっちこそ。次はちゃんと理由まで用意しておきなさい。詰めが甘いのよ」

シンジ「あ、アスカ……」

リツコ「この前の話、覚えてるわよね?」

アスカ「その台詞、そっくりそのままお返ししてやるわ」

- 浅間山 山頂 地震研究所 ロビー -

ミサト「……アスカとなにかあったの?」

リツコ「いいえ」

ミサト「そう? そんな風には見えなかったけど」

リツコ「……弐号機と初号機の会話ログ、回収させてもらうわよ」

ミサト「それはかまわないけど。でも空輸中はエヴァの電源もろくにないし、たいした会話してないと思うわよ」

リツコ「予備を使い切ってあるのはどうにも腑に落ちないからよ」

ミサト「…………ふぅん」

リツコ「なにか問題があれば提出するわ」

ミサト「……わかったわ」

リツコ「ミサト」

ミサト「……?」

リツコ「あの子たち、そろそろ一度考えた方がいいかもしれないわね」

ミサト「…………」

- 浅間山 山頂 弐号機前 -

アスカ「あ、あたしの弐号機がぁ! いやぁー! 何よ、これぇ!」

リツコ「あなたが言い出したことでしょ? 耐熱・耐圧・耐核防護服。局地戦用のD型装備よ」

アスカ「こんなのダルマじゃない! ネルフの技術力でなんとかしてよぉー!」

リツコ「……プラグスーツの右手首を押してみて」

アスカ「……?」カチッ


モコモコモコッ


アスカ「いっ⁉︎ いやぁあぁああっ!」

シンジ「……うわぁ、風船みたいだ」

アスカ「し、シンジぃ! たすけてぇ~~!」

リツコ「ご覧の通り、プラグスーツも耐熱仕様になってるわ」

アスカ「こんなのただの[ピザ]みたいじゃなぁい!」

リツコ「全てあなたが言い出したことよ」

アスカ「ぐ、ぐぬぬっ」

シンジ「アスカ、やっぱり代わろうか?」

アスカ「い、いや! 私がでる!」

レイ「…………私がでます」

アスカ「……ふ、ファースト?」

リツコ「レイの零号機は装備が規格外なのよ」

レイ「…………それなら、私が弐号機で」

アスカ「――っ⁉︎ あんた何言い出してんのよ!」

レイ「…………シンクロできれば問題ないわ」

アスカ「悪いけど! あんたには私の弐号機に触れてほしくないの!」

レイ「…………」

リツコ「あまり時間的な猶予はない。問題ないのならはやく弐号機に搭乗してちょうだい」

- マグマ内 弐号機 プラグ通信 -

アスカ「現在、深度170、沈降速度20。各部問題なし。視界は……ゼロ。何にも分かんないわ。CTモニターに切り替えます」

アスカ「(これでも透明度120か)」

マヤ『深度、400、450、500、550、600、650、900、950、1000、1020、安全深度、オーバー』

マヤ『深度1300、目標予測地点です』

ミサト『聞こえたわよねーアスカ、何か見える?』

アスカ「反応なし。……いないわよ?」

リツコ『思ったより対流が早いようね』

マコト『目標の移動速度に誤差が生じています』

ミサト『再計算、急いで。作戦続行。再度沈降、よろしく』

アスカ「…………了解」

マヤ『深度、1350、1400』

オペレーター『第2循環パイプに亀裂発生』

アスカ「……っ!」ミシミシ バコンッ

オペレーター『弐号機。プラグナイフ消失』

アスカ「あっ……!」

マヤ『深度、1480、限界深度、オーバー! 危険です!』

ミサト『……アスカ? 目標とまだ接触していないわ。続けて』

アスカ「…………」

ミサト『近くにいい温泉があるわ。終わったら行きましょ。もう少しがんばって』

マヤ『限界深度、プラス120。も、もうこれ以上は……!』

アスカ「――――…………いたっ!」

第8使徒サンダルフォン「…………」

アスカ「なに? あれ……繭?」

リツコ『まだ孵化してないのよ。つまり、まだ卵の状態』

アスカ「だから捕獲ってわけね。――……ちょ、ちょっとまって? 動いてない?」

ミサト『……え? なんで――』

オペレーター『マグマ内で異常な膨張を感知!』

ミサト『――まさかっ⁉︎』

リツコ『ありえないわっ! 計算よりも全然はやい!』

アスカ「ど、どうするのよ? こんなの聞いてないわよっ!」

第8使徒サンダルフォン「…………!」ググッ

マヤ『――使徒! 完全に覚醒しました!』

ミサト『まずいっ! 日向くん! アスカを引き上げて! 大至急!』

アスカ「プラグナイフもなにもないわよ――きゃあ⁉︎」ドカンッ

第8使徒サンダルフォン「………!」

ミサト『初号機っ! プラグナイフ投げて!』

マヤ『――待ってください! 初号機! 既にマグマ内部へ潜水!』

リツコ『なんですって⁉︎ 装備をなにもつけていないのよ⁉︎』

アスカ「――シンジィッ⁉︎」

ミサト『どうなってるの! 初号機と回線繋いで!』

シゲル「初号機! 回線遮断! こちらからの信号受け付けません!」

アスカ「ちょっと! ミサト! ――きゃああっ⁉︎」ドカンッ

第8使徒サンダルフォン「…………」シュルシュル

アスカ「――このっ! スルメがぁ!」

ガキンッ

第8使徒サンダルフォン「…………!」ヒョイ

アスカ「はやいっ!」

第8使徒サンダルフォン「…………」スイーッ

アスカ「チッ…………ミサト! どうなってるのよ! シンジはどうしちゃったのよ! 回線をこっちにもまわして!」

ミサト『つながらないのよっ! シンジくんがそっちに向かってるのはたしかよ!」

アスカ「なんですってぇ⁉︎ 装備は⁉︎ 今でサウナみたいなのに! 死ぬわよっ!!」

ミサト『アスカ! ちょっと黙って!』

アスカ「どういうことなのよ! あんた達の仕事しっかりやりなさいよっ!!!」

リツコ『マヤ! 初号機の位置は⁉︎』

マヤ『震度1000! 尚も降下中! パルス異常! プラグ内の温度がみるみる上昇しています!』

ミサト『シンジくん! 死ぬ気っ⁉︎』

マコト『――生体反応グラフがっ! プラグ内温度上昇! とても生身で耐えられる温度ではありませんっ!』

リツコ『だめっ! それ以上の深度は火傷じゃすまなくなるっ!』

アスカ「ちょっとあんたたち! 慌てまくってんじゃないわよ! LCL濃度を――ぐっ!!」ドゴン

第8使徒サンダルフォン「…………」

マヤ『弐号機! 3番ケーブル断線!』

ミサト『厄介ごと起こるならひとつにしてよっ!』

マヤ『初号機! 装甲板が第7まで融解! まもなく弐号機と邂逅します!」


ミサト『………潜行速度がはやすぎる! まさかっ!』

リツコ『――マグマの中を泳いでる⁉︎』


アスカ「…………シンジ」

マコト『初号機! 生体反応に異常! こ、これはっ――』

第8使徒サンダルフォン「…………!?」

マヤ『初号機! 使徒と会敵! そんなっ⁉︎ シンクロ率! 上昇しています!』

初号機「――――…………」

アスカ「…………もういいよぉ、シンジ。逃げて」

第8使徒サンダルフォン「…………!」

リツコ『まさかっ!本来なら動けるはずないのよ!』

シゲル『プログナイフ! 展開!』

初号機「…………ヴゥ」ガキンッ

アスカ「………うぐ………ぅぐ………な、なんでここまですんのよぉ」

ミサト『使徒は弐号機を追っているわ! 今のうちにはやく引き上げて!』

マコト『し、しかし初号機は……⁉︎』

ミサト『弐号機が上がればついてくるっ! 弐号機を救うことが先決なのよ!』

マコト『り、了解!』

シンジ「――……アスカ、熱膨張だ」

アスカ「……………え? し、シンジ? 回線? だ、大丈夫なの⁉︎」

シンジ「うぐぅぅうぅぅッッッッ! もう持ちそうにない! はやくッッ!」

第8使徒サンダルフォン「………!」

アスカ「まって! えーとえーとえーとえーとえーとえーと……! 熱膨張!! わかったわ!」

ミサト『アスカ⁉︎ シンジくんからなにか回線きたの⁉︎ ――極秘回線ね⁉︎』

アスカ「今はそんなことよりシンジが危ない! 冷却液の圧力を全て2番にまわしてッ! いそいでよ!」

ミサト『なにをするつもり⁉︎』

アスカ「熱膨張よ! ここまで言ってわからないなら中学校からやりなおして二度と顔見せないで!」

リツコ『…………っ! 急いで言われた通りにして!』

マヤ『了解!』

第8使徒サンダルフォン「…………!」グイッ

シンジ「アスカァ! プログナイフを――!」

アスカ「――キャッチ! シンジはもう上がって! さぁっ! 来なさいッ!」

マヤ『深度700! 引き上げ作業順調です!』

レイ『…………私も行きます』

ミサト『――はぁ⁉︎』

レイ『…………碇くん、守るって約束したから』

ミサト『レイ⁉︎ ちょっと待ちなさい!』

アスカ「優等生ぃ⁉︎」

マヤ『ぜ、零号機。マグマに突入』

ミサト『なんなのよこの子たち!』

第8使徒サンダルフォン「……………!」ドゴンッ

アスカ「――っ! このっ! くらいなさいよぉっ!」

第8使徒サンダルフォン「……………⁉︎」

アスカ「よくもっ! このっ! この! シンジになにかあったら焼きイカにして食ってやる!」プシュー


第8使徒サンダルフォン「…………!」ボコボコ

第8使徒サンダルフォン「」


シゲル『――使徒、活動停止!』

ミサト『やった⁉︎ アスカ! シンジくんに回線開くようにいって!』

アスカ「シンジ! はやく上がりましょ! 先にいっていいからはやく!」

マヤ『初号機! シンクロ率低下! 生体反応が――』

マコト『微弱です! このままでは、自力であがれませんっ!』

アスカ「――ちょっと⁉︎ シンジ⁉︎ 回線は⁉︎ 」

レイ『碇くんは私が助ける。あなたははやく上がって」

アスカ「…………っ!」

レイ『……………』

アスカ「貸し1よ! …………シンジのことお願い! なんでもいいから助けだして!」

- 1時間後 第三新東京都市 総合病院 -


ガラガラッ


看護師「――道を開けてくださいっ! 碇さん! 聞こえますか? 碇さん、返事できますか?」タタタッ

医師「URに連絡を。患者は二度、30%の全身火傷とみられる」タタタッ

看護師「碇さん? 反応できますか――」タタタッ



リツコ「…………」

ミサト「…………」

リツコ「――あの子は?」

ミサト「アスカは暴れるのを取り押さえて鎮静剤を投与してあるわ」

リツコ「そう。シンジくんの結果によっては自殺しないように拘束具つけといた方がいいわよ」

ミサト「……っ! 碇司令からなにか連絡は?」

リツコ「初号機の修繕を最優先させるそうよ」

ミサト「――まさか第7装甲板まで融解するなんてね」

リツコ「泳いだせいね。水流を搔き回したから」

ミサト「…………こんなことになるなんて」

リツコ「プラグ内の温度まではどうしようもないもの。後遺症…………残らないといいけどね」

リツコ「……さて」

ミサト「どこ行くの?」

リツコ「仕事よ。ここで待つつもり?」

ミサト「――……いえ。私も仕事に戻るわ」

- ネルフ本部 独房室 -

アスカ「んむぅーっ! (シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジィッ!)」ジタバタ

アスカ「ふぅーっふぅーっ(拘束具……っ! こんなのっ!)」ギチギチッ

アスカ「むぐぐぐぅっ!(このぉおぉっ)」ギチギチッ


カシュ


アスカ「…………っ!(まぶしっ! 誰かきた?)」

マリ「やっ!」

アスカ「………ふ、ふむっ?(だ、だれ?)」

マリ「にゃはは。みの虫みたいだね」

アスカ「ふむっふむっーふぅ!(外して!)」

マリ「え? なに? なに言ってるかわかんないにゃー」

アスカ「…………ふぅーっふぅーっ」

マリ「姫ぇ。こんなことでつまづいてちゃだめだよー? 計画がパァーじゃん!」

アスカ「……ふむぁ?(はぁ?)」

マリ「まぁ、ワンコくんは頑張ったみたいだからいいけどさぁ」

アスカ「むぐっむぐっ(犬なんかどうだっていいのよ!)」

マリ「…………とってほしい~い?」

アスカ「――……っ⁉︎」

- ネルフ本部 -


タタタッ


アスカ「…………はぁっはぁっ」

マリ「ほらほらぁっ! もっと急ぐ! 安全なところなんてないよー!」

アスカ「……ぜぇぜぇ、な、なんなのよ、あんた。あ、あたし、体力には、自信あんだけど」

マリ「王子様に会いたいんでしょー? だったら急ぎなよー!」

アスカ「……王子様って」

マリ「第7装甲板まで融解したんだってぇ?」

アスカ「な、なんで――」

マリ「――エヴァってさぁ、そんなにヤワな作りじゃないんだよねぇ」

アスカ「…………ど、どういうこと⁉︎」

マリ「NASA顔負けの特殊装甲なんだよぉ? ジワジワ溶けていくっていってもそんなに損害でるわけないじゃん!」

アスカ「……?」

マリ「……もし融解した理由を赤木博士から聞いてもそれは嘘ついてるかも。なぁーんちゃって」

アスカ「…………あ、あんた、いったい」

マリ「おっと、いけないいけない。ついついサービスしちゃった。あとはセルフサービスね」

アスカ「…………」

マリ「休憩おわり! いくよー! 姫が寝てた間に2日たってるんだからね!」

アスカ「――ふ、ふつかぁ⁉︎」

- ネルフ本部 車両駐車場 -

アスカ「……ぜぇぜぇっ」

マリ「――んーと、あ、いたいた」

加持「よっ」

マリ「加持く――」
アスカ「加持さん⁉︎」

加持「いろいろと事情が立てこんでてね。乗ってくかい?」

アスカ「……まって! シンジは無事なの?」

加持「一命はとりとめているよ。全身火傷だから油断はできないが」

アスカ「ど、どういうこと? 危ないの?」

加持「火傷でこわいのは時間経過でもあるのさ。皮膚の感染症とかね……詳しくは車で話そう。どうする?」

アスカ「――乗るに決まってるわ!」

- 第三新東京都市 車内 走行中 -

加持「――シンジくんは、後遺症が残るようだ」

アスカ「後遺症⁉︎ なに⁉︎ どういうこと⁉︎」グイッ

マリ「うわわっ、ちょっと落ち着きなよー」

加持「痺れがあるようでね。麻痺とまではいかないが日常生活にちょっとした支障をきたすかもしれない」

アスカ「そ、そんな……私のせい」

加持「…………」

アスカ「私が守るって言ったのに……見てることしかできなかった」

マリ「…………」

加持「くやしいかい?」

アスカ「決まってるじゃない……こんなに自分で自分が許せないのは久しぶりだわ」

加持「シンジくんを支えるつもりは?」

アスカ「聞かれるまでもないわね。私がシンジの手足になって全部やる」

マリ「あれぇ? そんなに落ちこんでない?」

アスカ「やることがわかってるなら、落ちこんでもいられないのよ」

マリ「ふぅ~ん。恋する乙女は強いねぇ」

加持「なんにせよ、シンジくんは心配なさそうでなによりだ」

アスカ「……加持さんはどうしてここに?」

加持「アスカ達が浅間山にいっている時からこの2日間に色々とあってね。密度の濃い時間だったよ」

アスカ「……?」

加持「すまない。詳しく話せないんだ。話せば、アスカを危険に晒すことになる。エヴァパイロットだろうとな」

アスカ「加持さん、なにやって……」

加持「アルバイトがバレてたらしい。心配しなくていいよ、俺はシンジくんとアスカの味方さ。あと、ついでにマリも」

マリ「はぁ~い」

加持「俺は姿を消す。これからはマリがサポートにはいるから仲良くやってくれ」

アスカ「……サポートってなに?」

加持「……アスカ。よく聞いてくれ」

加持「――五年前。俺はヨーロッパのある国で内偵調査を行なっていた。スパイってやつさ。その時にマリと知り合ってね」

アスカ「…………」

加持「そこで、マリからゼーレと碇司令にシナリオがあることを知った。セカンドインパクトの真実も」

アスカ「真実って、巨大隕石の衝突じゃないの?」

加持「――全ては仕組まれていたのさ。人類にとって必要な試練であるというバカげた理由でね」

アスカ「…………」

加持「俺はそんなことは許せない。そこでマリと協力して秘密裏に準備にはいった」

アスカ「…………」

加持「君たちチルドレンの運命も仕組まれている。全ては点と点だよ。いつかは線で繋がっていく」

マリ「そゆこと♪」

アスカ「…………大人の都合なんてどうでもいいわ」

マリ「あっ! ひめぇー! 気が合うね!」

加持「……全ての鍵は初号機に集約する。ゼーレのシナリオも碇司令のシナリオも初号機をトリガーとしているからね」

アスカ「…………」

加持「アダム。そしてリリス。人類はノアの方舟に乗るつもりなのさ」

アスカ「…………神話?」

加持「あくまでも呼称と考えてくれていい。これから、シンジくんには辛い出来事が待っている」

アスカ「――っ! 私が守ってみせる!」

加持「頼もしいな」

アスカ「なんだかよくわからないけど、シンジになにかあっても私はシンジの味方よ!」

加持「…………強くなったな、アスカ」

アスカ「子供でいることを認めただけよ。もう背伸びなんかしなくてもいい」

加持「リッちゃんには注意をしておいてくれ」

アスカ「赤木博士?」

加持「立ち位置が曖昧だったんだが、どうやら、碇司令につくことを決めたらしい」

マリ「加持くんがこうなったのもそのせいだしねー」

加持「女ってのは難儀なもんさ」

アスカ「……わかったわ。ちょうどやりあった後だったし。要するに陰謀があるってことよね」

加持「理解がはやくて助かる」

マリ「………おっ! そろそろ着くよー」

アスカ「あ! 私を逃したの……大丈夫なの?」

加持「心配ない。俺の置き土産ってことにしておくさ。――元気でな」

- 総合病院前 -

ブロロロロッ

アスカ「……加持さん。大丈夫なの?」

マリ「心配?」

アスカ「当たり前でしょ」

マリ「すぐ死ぬようなタマじゃないっしょ。それに仕込んでたモノもあるし」

アスカ「……あんた、何者なの?」

マリ「むっふふ~♪」

アスカ「加持さんは、あんたから聞いたって言ってたわよね。そんなに歳変わらないように見えるけど」

マリ「いっぺんに知っちゃうと混乱しちゃうだろうから、今はそれでいいじゃん?」

アスカ「…………」

マリ「ワンコくんのとこ行かなくていいのー?」

アスカ「ワンコくんってシンジのこと?」

マリ「そ。ネルフのワンコくん」

アスカ「……信用できない」

マリ「信用する、しないじゃなくて私しか頼れる人いなくなっちゃったんだよ~」

アスカ「…………」

マリ「全て明らかになるよ。最後にね♪」

アスカ「…………」

マリ「本当はまだまだだったんだけど、こうなっちゃったから」

アスカ「…………いいわ」

マリ「……それじゃ私ももう行くから、また今度ね♪ 王子様とお姫様でごゆっくり♪ 脇役の小人は退場することにするよ」

- 総合病院 病室 -

バタンッ

アスカ「――シンジッ!」

レイ「…………」

シンジ「あ、あれ? アスカ?」

アスカ「ファースト? あんたなんでここに――シンジッ! 大丈夫なの⁉︎」

シンジ「あぁ。うん、大丈夫だよ」

アスカ「――でも、包帯ばっかりじゃない!」

シンジ「火傷が少し、ひどかったらしくて化膿しないようにこうなってるだけだよ」

アスカ「ご、ごめんねっ! シンジ! 私のためにごめんなさい!」

シンジ「アスカのこと守るって約束したから。それに、なんだかあの時――」

レイ「…………碇くん」

シンジ「――ん?」

レイ「……もうすぐ、抗生剤の時間」

アスカ「……ファーストはどうしてここに?」

レイ「…………碇くんの世話。葛城一尉から頼まれたから」

アスカ「――ミサトが?」

シンジ「そういえば、アスカこそ体、大丈夫なの? ミサトさんからは調子が悪くて自宅療養してるって聞いたけど」

アスカ「(……どいつもこいつもっ!)」ギリッ

レイ「…………」

アスカ「ファースト、ちょっと席はずしてくれる?」

レイ「…………それはできない」

アスカ「――なんで⁉︎」

レイ「さっき、連絡があったから」

アスカ「……っ! ……お願い」

レイ「…………」

アスカ「癪だけど、あんたには貸しがあるからきつく言いたくない」

シンジ「…………綾波、僕からもお願いできないかな」

レイ「…………わかったわ」

アスカ「あんたにも、少し話があるから部屋の前で待っててもらえる?」

レイ「…………」


スタスタ
バタン

アスカ「――シンジッ」ダキツキ

シンジ「うわぁっ⁉︎ ど、どしたの?」

アスカ「お願い。お願いだからもうあんなことしないで」ギュウ

シンジ「え、でも――」

アスカ「次にああいうことになったら見捨ててほしいの」

シンジ「…………」

アスカ「私はエヴァのパイロットよ。死ぬ覚悟はできてる。だから――」

シンジ「それはできないよ。もし、次があっても僕はそうする」

アスカ「…………」

シンジ「守るって約束したから。違う、僕がそうしたいんだ」

アスカ「…………シンジィ」

シンジ「痛いのは嫌だけど。こわいけど、そうしなくちゃって、思うから」

アスカ「……うっ……ぅぐ……」ゴシゴシ

シンジ「それに、なんだろう。あの時、いや、作戦が始まる前からなんだか、こうなることがわかってたような気がするんだ。だから躊躇なく飛び込めたのかもしれない」

アスカ「……?」

シンジ「……アスカ、もしかして、僕たちって前に――」


バァンッ


ミサト「――アスカァ⁉︎」

シンジ「…………み、ミサトさん?」

アスカ「…………」

ミサト「あ、あら? なんだか邪魔しちゃ悪い雰囲気?」

ミサト「シンジくん。アスカをちょぉっと借りてもいいかしら?」

アスカ「…………」

シンジ「えーと、僕はかまいませんけど」

アスカ「大切な時間を邪魔されるほど暇じゃないんだけど。話ならここでできないの?」

ミサト「……懲罰対象になるわよ?」

アスカ「――っ⁉︎」

シンジ「……え? アスカはなにも」

アスカ「シンジ。ちょっとミサトと話してくるね」

シンジ「あ、うん」

ミサト「ごめんねぇ~シンちゃん。すぐ済むから」

シンジ「(なんだろう。なにかおかしいな)」

- 総合病院 通路 -

ミサト「…………それで、あんたを逃した加持は今どこ?」

アスカ「知らないわ」

ミサト「知らないわけないでしょ⁉︎」

レイ「…………」

アスカ「本当に知らないのよ。なんなら自白剤でも投与してみる?」

ミサト「そ、そんなこと……できるわけ……」

アスカ「2日も昏睡させておいて今さらなに言うのよ! おまけに起きたら拘束具! やってくれたわね!」

ミサト「必要な処置よ! 職員を3人も気絶させて、あのままだとあなた、なにするかわからなかったから」

アスカ「これ以上ない裏切り行為だわ!」

ミサト「――シンジくんの経過が落ち着いたら、会わせるつもりだったのよ!」

アスカ「必要なことならなんでもやるってことでしょう⁉︎ はっきり言いなさいよ! あんた達の勝手な言い分はもうたくさんっ!」

ミサト「…………っ!」

アスカ「人類のためぇ? はんっ!そんな大義名分を掲げて! 結局はやりたいようにやる! 押しつける! そうじゃないの⁉︎」

ミサト「……………」

アスカ「言っておくけど、私はもうエヴァだけの女じゃないわ。いいえ。エヴァが一番じゃない」

ミサト「……………」

アスカ「人類の未来も、あんた達の都合も! 全部どうだっていい! 私にも守りたいものがあるのよ」

ミサト「…………エヴァには乗るのね」

アスカ「そうしなければ、守れないものがあるならば、エヴァにだってなんだって、悪魔にだって魂を売ってやるわよ!」

ミサト「…………」

アスカ「…………」

ミサト「…………いいわ。ただし、あなたにはこれから24時間、監視の目がつくことになる。忘れないで」

アスカ「自白剤はしないの?」

ミサト「私たちは、これまで一緒に暮らしてきたわ。短い期間だけど。それはしたくない」

アスカ「パイロットとして機能しなくなったら困るからじゃなくて?」

ミサト「…………」

アスカ「…………」

ミサト「………先に家に帰ってる。――遅くならないうちに、帰ってくるのよ」

アスカ「…………待って」

ミサト「……なに?」

アスカ「シンジの処置は? 命令違反、独断専行。なにかあるでしょ?」

ミサト「シンジくんには、何もない。碇司令が処置なしと判断したわ」

アスカ「……?」

ミサト「私にもわからないのよ。親子の情ってことはないと思うんだけど、碇司令がそう発令した以上は彼のことは、心配いらない」

アスカ「…………そ」

ミサト「レイはどうする? 帰るなら送っていくけど」

レイ「…………まだ、ここにいます」

- 総合病院 ロビー -

アスカ「…………あんたとこうやって落ち着いて話するのもはじめてね」

レイ「…………」

アスカ「――お願い。力を貸して」

レイ「…………」

アスカ「シンジになにかあるのが嫌なのよ」

レイ「…………なぜ?」

アスカ「なぜって、その、大切な人だから」

レイ「命をかけて助けてもらったのが、嬉しいの?」

アスカ「う、嬉しくない女なんかいるの?」

レイ「……あなたは、人に褒められるために乗ってると言ってたわ」

アスカ「…………」

レイ「……人に褒められなくてもいいの?」

アスカ「……何事も優先順位よ。そりゃぁ褒められるにこしたことはないけど。それでシンジがいなくなるならいらない」

レイ「…………」

アスカ「私ができないとき、シンジを守ってほしいの。あのバカ、きっとまた無茶するかもしれないから」

レイ「…………」

アスカ「あんたが碇司令のお気に入りなのは知ってる。だけど、シンジのことも気にかけてやって」

レイ「…………」

アスカ「あんたは、なんのためにエヴァに乗ってるの?」

レイ「…………絆、だから」

アスカ「……誰との?」

レイ「…………人と人との」

アスカ「……ほんと、変わってるわ」

レイ「あなたに、言われたくない」

アスカ「……な、ななっ⁉︎」

レイ「…………碇くんに守られたのはあなただけじゃない。碇くんは、私が守る」

アスカ「守られたぁ? あんたが?」

レイ「……ヤシマ作戦の時、少し」

アスカ「ヤシマ作戦……っていうと私がネルフに配属になる少し前……」

レイ「家で裸を見られたわ」

アスカ「――な、なななぁっ⁉︎」

レイ「あなたも知らない碇くんがいるということ」

アスカ「………っ! ふ、ファーストっ! こいつ!」

レイ「碇くんに、幻滅した?」

アスカ「べ、別になにもなかったんでしょ⁉︎ ヘタレなあいつがそんな度胸あるわけないし」

レイ「…………そう」

アスカ「あ、あんた。意外といい根性してるわね」

レイ「…………別に」

やけどしてる奴に抱きついたらヤバイ気が…

>>215
痛がるのいれようか迷ったんですが
ググってみたところ重度の火傷は皮膚の感覚がなく痛覚があまりないらしいです
本当のところはわかりませんが、なのでいれませんでした
まぁ腕だけとか脳内で補完してもらえたら助かります

とりあえずここまでで用事あるので投下は停止

言うてもまだ原作的な時系列だと全然経過してないすからね
200つかって使徒二体とかもっとはやくしろよて感じですが詰めこんでます

ああ、そういうことじゃなくてアスカが来て早々シンジに依存したりとか色々ぶっ飛んでで
原作では放任気味のミサトが珍しくちゃんと保護者してたからアスカに嫌われてちょっと可哀想みたいな

- 総合病院 病室 -

バタン

シンジ「あれ? アスカは?」

レイ「…………帰ったわ」

シンジ「あぁ、そうなんだ(前に会った感じがするって言いそびれちゃったな)」

レイ「…………碇くん」

シンジ「ん?」

レイ「…………女って、なに?」

シンジ「んん?」

レイ「恋したほうがいいの?」

シンジ「ど、どうしたの?」

レイ「わからない。弐号機の人を見ているとそう感じたから」

シンジ「…………僕もよくわからないんだ」

レイ「…………」

シンジ「人それぞれペースがあるんだと思う」

レイ「…………」

シンジ「綾波もそう思える人ができたらいいね」

レイ「……相手を見つけるの?」

シンジ「うぅん。見つけるとか、巡り合わせとかよくわからないけど、そう思える人」

レイ「…………」

シンジ「見つけようと思って、見つかるものじゃないと思う。たぶん」

レイ「…………碇くんは、そう思える人がいるの?」

シンジ「僕は、どうかな」

レイ「…………そう」

シンジ「アスカは、きっと今は勘違いしてるだけだよ」

レイ「…………リンゴ、食べる?」

シンジ「……うん。ありがとう」

レイ「…………」サクサク

シンジ「――綾波ってお母さんみたいだね」

レイ「…………な、なにを言うのよ」

>>219
なるほど
たしかにそういう部分ありますね

- 夜 ミサト宅 -

アスカ「こ、これが夕食?」

ミサト「や、やっぱ、まずい?」

アスカ「ピザ、ポテト、ナゲット、これ全部デリバリーよね…………」

ミサト「だ、だぁって今までは家事全般シンちゃんが作ってたんだもの」

アスカ「シンジの入院期間は?」

ミサト「一応ニ週間ってことになってるけど。それ以降は通院ね」

アスカ「はやくない? それで大丈夫なの?」

ミサト「ネルフの医療スタッフが面倒を見るわ。リツコも協力的だし、本当なら一ヶ月はかかるんだけど」

アスカ「それもエヴァパイロットだから?」

ミサト「…………弁解はしないわ」

アスカ「…………ふん」

ミサト「それにしても、よく帰ってきたわね」

アスカ「なにが?」

ミサト「家出するんじゃないかと思ったから」

アスカ「はぁ? 根にもつタイプじゃないわよ。それにお互いに方針が決まってるなら日常生活ぐらいはできるでしょ」

ミサト「ドライなのね」

アスカ「いいえ。これはゆずらないものはゆずらないというはっきりとした意思表示よ。ミサトもそうでしょ」

ミサト「…………」

アスカ「だったら、これ以上、やり合うつもりはないわ。また変なこと言いだしたらやり合うけど」

ミサト「…………アスカ、変わったわね」

アスカ「別に。ミサトとだって今まで生活できてたから。それだけよ」

ミサト「――拘束具については」

アスカ「あぁ、もういいって。それよりこんなの食べてたら、太るか高血圧で死ぬわよ?」

ミサト「うぅん。でも、お給料日前だしぃ」

アスカ「……私が作ってあげるわ」

ミサト「いぃっ⁉︎ アスカがぁ⁉︎」

アスカ「包丁の握り方だけ覚えたから、なんとかなるわよ」

ミサト「だ、大丈夫かしらん?」

――――
―――

ミサト「アスカ、カレーって緑だった?」

アスカ「…………」

ミサト「おまけに匂いがリポビタン○みたいなんだけど」

アスカ「…………」

ミサト「新しい発見。ほら見て。スプーンからルーが落ちない。これっていれすぎなんじゃない?」ブンブン

アスカ「う、うるさいわねっ! 食べればおいしいのよ!」

ミサト「これを食べろとアスカは言うのね?」

アスカ「うっ……そ、それは」

ミサト「――ピザ、チンしましょっか」





ペンペン「クエー」

- 翌日 第三新東京都市第壱中学校 昼休み -

アスカ「ヒーカリっ!」

ヒカリ「うん?」

アスカ「料理、教えてくれない?」

ヒカリ「いいけど、あっ、碇くんに食べさせたいの?」

アスカ「そ、それもあるけど、シンジが今は入院してるから台所事情が」

ヒカリ「碇くん……怪我、大丈夫?」

アスカ「うん。後遺症は残るみたいだけど――」

トウジ「――後遺症ってそらほんまかいな?」

ケンスケ「なんでそこまで怪我したんだよ?」

ヒカリ「鈴原、相田くん」

アスカ「心配ない。あんた達もシンジのこと心配してるの?」


トウジ「そりゃあったりまえやないか」
ケンスケ「そりゃあたりまえじゃないか」


トウジ「シンジはワシらの友達やで?」

ケンスケ「そーそー。友達を心配するのは当たり前だろ?」

アスカ「…………そっか。そうよね」

ヒカリ「鈴原たちは、碇くんのお見舞いに行くの?」

トウジ「明後日ぐらいに行こうかなと思うてる」

アスカ「シンジも喜ぶと思うわ」

ケンスケ「おいおい、すっかり嫁さん気取りかぁ?」

アスカ「……ゆくゆくはそうなるかもね」

ケンスケ「……開き直ってて面白くないね」

アスカ「認めてしまえば強くなれるのよ!」ゲシッ

ケンスケ「――いっつ⁉︎」

ヒカリ「……鈴原、あの、お弁当どうだった?」

トウジ「あぁ、うまかった。ごっそさん」

ヒカリ「なにか、リクエストとかある? よかったらつめるけど」

トウジ「あぁ、そやなぁ…………な、なんや?」

アスカ「…………いえ?」

ケンスケ「…………なぁんにも?」

ヒカリ「あ、アスカァっ!」






ケンスケ「――それより聞いたか?」ガタガタ

トウジ「そうそう。にひひ。とっておきの特ダネがあんねん」

アスカ「ちょっとあんた達、私達まだご飯食べてるんだけど? なに机ひっつけてんのよ」

ケンスケ「まぁまぁ」

アスカ「それに、そんなに仲良くなった覚えも――」

トウジ「ま、ま、ええやないか」

アスカ「…………はぁ」

ヒカリ「なにかまた悪巧みしてないでしょうね?」

ケンスケ「してないっ! 神に誓って!」

アスカ「安い神様な気がするわ」

トウジ「おい! ケンスケ!」

ケンスケ「……そうだった。さっき職員室の前で聞いたんだけど転校生が来るらしいぞ」

アスカ「転校生ぃ?」

ヒカリ「この時期にめずらしいね」

ケンスケ「クラスはどこになるんだろうなぁ。かわいい女の子かなぁ」

トウジ「めっちゃかわいい子やったらワシどないしよ」

ヒカリ「す、鈴原ぁっ!」

アスカ「(転校生……ね)」

- ネルフ本部 ??? -



『霧島 マナ:14歳。O型。身長――』



冬月「やれやれ、今度は戦略自衛隊か」

ゲンドウ「…………」

冬月「人質をとってまで送りこんでくるとは、奴らも手がこんでるな」

ゲンドウ「…………」

冬月「加持はまだ消息がつかめんのだろう?」

ゲンドウ「……あぁ」

冬月「老人達へはどう報告する」

ゲンドウ「始末した。それだけだ」

冬月「しかし、生きているとしたら――」

ゲンドウ「出てきた瞬間を狙えばいい」

冬月「…………ふぅ。また忙しくなるかもしれんな」

- 夕方 洞木宅 -

ヒカリ「あ、アスカァ! それ塩じゃなく砂糖!」

アスカ「え? えっとこれね!」ドバァ

ヒカリ「握りこぶしで掴んでどうするのよ! 指先でつまむの!」

アスカ「あぁ、えっと? こう?」

ヒカリ「今さらいれたって遅いわよ! わ、私が味整えるからアスカは人参切って」

アスカ「ご、ごめん! 包丁の使い方なら覚えたから――」ザクッ

ヒカリ「アスカ? 野菜はまず洗うのよ? そして人参は皮をむくの」

アスカ「き、切るだけじゃだめなのね?」

ヒカリ「……アスカ。本当に料理したことないんだね」

アスカ「レトルトなら、まだあるんだけど」

ヒカリ「それ料理って言わないわよ…………」

ヒカリ「碇くんの苦労が改めてわかった気がする」

アスカ「そ、そう?」

ヒカリ「――アスカ! そんなんじゃお嫁に行けないわよ!」ビシッ

アスカ「べ、別に私は料理じゃなくても、働けばいいじゃない。男が料理したっていいし。時代錯誤――」

ヒカリ「食べさせたいんでしょ⁉︎ だったらつべこべ言わないっ!」

アスカ「は、はい……」

ヒカリ「ほら、包丁が扱えるのはわかったから、次は食材の取り扱い方ね」

アスカ「ヒカリって意外とスパルタ……?」

ヒカリ「(ひ、ひどすぎるからなんて言っちゃだめかな)」

アスカ「あ、あの……」

ヒカリ「……はぁ。ううん。ゆっくりやりましょ」

アスカ「ありがと……」

今後どうしようか少し迷ってます

というのも過激なエロやさらにぶっとんだ行動をさせてみたいと思いだしているからです

これって俺の好きに書いていいんすよね?
反応なければ俺しか見てないぐらいの勢いでやっちゃいますけど

迷いはふっきれました即レス感謝します
とりあえずそろそろ寝るのでまた明日以降になると思います
ありがとでした

暖かいレスどうもです
詰めこんでるのはなにか起こしてないと俺が書いてて面白くないっていうのがありますね
あの時点で刺すという発想はなかったw

では、続けます

- 夜 ミサト宅 リビング -

ミサト「今日はシンジくんのお見舞いに行かなかったの?」

アスカ「あぁ、うん。行かなかったわよ」

ミサト「へえぇ~。意外。アスカなら、毎日通いつめると思ったんだけど」

アスカ「ちょっと、熱中しちゃうことがあって気がついたら面会時間が終わってたの。明日からは行くわ」

ミサト「……そ。あなたはまだ若いんだもの。やりたいことはなんでもやっていいのよ」

アスカ「……ババくさ」

ミサト「今のは私に対する宣戦布告と捉えていいわね?」

アスカ「な、なによ。見たまんまじゃない」

ミサト「女に歳は厳禁よ! あんただっていつかは歳をとるんだからね!」

アスカ「はっはぁ~ん。羨ましいの? 私のお肌が」

ミサト「ぐっ! 私だって言い寄ってくる男は星の数ほどいるのよ⁉︎」

アスカ「……強がりね」

ミサト「…………爆破させてやる」

アスカ「はぁ?」

ミサト「ここにN2をぶち込んで無理心中してやるぅっ!!」

アスカ「ちょ! ――ちょっと⁉︎」

- 深夜 ミサト宅 -

アスカ「(ミサトも悪いやつじゃないのよね。冗談に乗るし……)」コソコソ

アスカ「(……エヴァさえなければ、言い争うこともないのかな……)」コソコソ


ガチャン


アスカ「(――っと、そんなことよりも………あ、あった。やっぱりまだ洗濯してなかったんだわ)」

アスカ「(あぁ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、さみしいよぉ。……いけないいけない。えーーーと)」ゴソゴソ

アスカ「(……シャツと、あっ、こ、これってパンツ。まだ洗ってないってことは……。だ、だめよ。アスカ。これはだめな気がするわ)」

アスカ「…………」ジィー

アスカ「(……まぁ、まぁまぁ、一応匂いは確認しておかないと、け、健康のチェックもあるし! そうよ! これは必要なこと!)」スンスン

アスカ「(……こ、これってシンジのあ、あぁ~~なんか癖になる)」スンスンスンスン

アスカ「(すぅー……はぁーっ……顔埋めてたい。シンジのアソコの匂いってこんな匂いなのかな?)」ハァハァ

アスカ「(――っ⁉︎ い、いけない。ミサトに見つからない内に……部屋に持って帰らないと………)」

アスカ「(シンジって、その、1人で処理してるかな。ちょ、ちょっとシンジの部屋行ってみようかな……?)」

- 深夜 シンジ部屋 -

アスカ「(シンジがいない部屋にくるのってはじめてかも)」

アスカ「(な、なんだか、いけないことをしてるんだけど、背徳感があるわね……)」

アスカ「(――そういえば、シンジ、鈴原達のエロDVDの時少しあるって言ってたし……)」


ソォーッ


アスカ「(目標はゴミ箱よね……)」

アスカ「(う、ううんっ……ゴホンっ! あ、そーだ! そういえば明日はゴミの日だったわ! ゴミ回収しなくちゃ!)」ガサゴソ

アスカ「(――……あ、あれ? ない? ちょ、ちょっと、ないの?)」

アスカ「(ここにないってことは、うーん、どこかしら。考えて。考えるのよ。アスカ。IQが高いんだから私ならこの部屋の配置も――)」

アスカ「(…………ありきたりたりなのは布団?)」ゴソゴソ

アスカ「(――あった。コンビニの袋。……結んである。ええい、まどろっこしいわねぇ!)」ガサゴソ

アスカ「(…………こ、これって。使用済みのティッシュ)」

アスカ「(ついに、ついに見つけてしまった)」


ガタガタッ


アスカ「――や、やばっ⁉︎ 本がっ!」


ミサト「……アスカ? まだ起きてるの?」

トタトタ

アスカ「(ミサトがこっちにくる⁉︎ ま、まずい! こんなとこ見つかったらなんて言われるか!)」

ミサト「………アスカ? 起きてるのね?」ピタッ

アスカ「(も、もう部屋の前に……っ! そんなに広くないから当たり前だけど!)」ドッキンコドッキンコ

アスカ「(こ、こうなったら……このティッシュ食べてしまえば……!)」

ミサト「……開けるわよ?」

アスカ「(……うっ! ま、間近にあると匂いがすごいっ! 男のってこんな匂いなのぉ⁉︎)」

アスカ「(でもでも、シンジのなら汚くない)」スンスン

ミサト「……(開けるのはやめとくか)……アスカ、この間はごめんなさい」

アスカ「(まずはちょっと、舐めるところから……)」ペロッ

アスカ「(しょっぱっ! ……ん? でもなんか……)」

ミサト「シンジくんもアスカも私は、私は、家族だと思ってるわ」

アスカ「(………うぅんもうちょっと)」あむあむ

ミサト「だから、できれば仲良くやっていきたい」

アスカ「(……シンジィ……シンジ……これ、汚くなんかないよ……)」トロン

ミサト「私達、ゆずれないものがあるけど、それだけは忘れないで」

アスカ「(…………はぁっはぁっ……シンジがだした精液……もっと、もっとほしい………)」

ミサト「――それじゃ、おやすみ。アスカ」

アスカ「(……………っ! あ、だめ! なんか、やばいかもっ!)」

トタトタトタ

アスカ「(……はぁ、はぁ。あ、あれ?ミサト、なんか言ってたけど、私の部屋、開けないでいっちゃったのね)」

アスカ「(……まぁ、いいか。このまま、もうちょっと――)」

- 翌朝 ミサト宅 -

アスカ「はぁ………」ゲッソリ

ミサト「……アスカ、平気?」

アスカ「――へぇっ⁉︎ な、なにがっ⁉︎」

ミサト「疲れてるように見えるけど」

アスカ「な、なんでもないわよ!」

ミサト「……そう?」

アスカ「(昨日、あ、あたし、あのまま――)」

ミサト「トースト焼いてあるから、それ食べたら支度しなさい。あと、シンジくんなんだけど――」

アスカ「――っ! シ、シンジにはなにもしてないわよ⁉︎」

ミサト「……まだなにも言ってないけど」

アスカ「あっ⁉︎ そ、そう! な、なに?」

ミサト「経過は良好みたいよん。今日はお見舞い、行くんでしょ?」

アスカ「も、もちろん!」

- レイ 自宅 -

レイ「…………」シュルシュル パサッ

レイ「(――朝。1日のはじまり。朝は憂鬱)」


シンジ『笑えばいいと思うよ』


レイ「碇くん……」


シンジ『綾波ってお母さんみたいだ』

アスカ『――お願い。力を貸して』


レイ「私、どうしたいの?」


レイ『碇くんは、私が守る』


レイ「…………」眼鏡ケースパカッ

レイ「…………守りたいのね」

レイ「――………っ!」バキッ

- ネルフ本部 発令所 -

リツコ「あら、副司令。おはようございます」

マヤ&シゲル「おはようございます」

冬月「ああ、おはよう」

リツコ「今日はお早いですね」

冬月「碇の代わりに上の町だよ」

リツコ「ああ、今日は評議会の定例でしたね」

冬月「下らん仕事だ。碇め、昔から雑務はみんな私に押し付けおって、MAGIがいなかったらお手上げだ」

リツコ「そう言えば、市議選が近いですよね。上は」

冬月「市議会は形骸に過ぎんよ。ここの市政は事実上MAGIがやっとるんだからな」

マヤ「MAGI……3台のスーパーコンピューターがですか⁉︎」

冬月「最も無駄の少ない、効率的な政治だよ」

マヤ「さすがは科学の町、まさに科学万能の時代ですね!」

シゲル「ふーるくさいセリフ」

冬月「そう言えば、零号機の実験だったかな、そっちは」

リツコ「ええ、ヒトマルサンマルより第2次稼動延長試験の予定です」

冬月「レイは問題ないだろうな?」

リツコ「なにも問題ありませんわ」

冬月「……ふぅ。最近はいろんなことが起こりすぎてな。歳には堪える。朗報を期待しとるよ」

- ネルフ本部 ??? -

ゲンドウ「…………」モソモソ

レイ「…………」モグモグ

ゲンドウ「…………うまいか」

レイ「…………はい」

ゲンドウ「……そうか」

レイ「……碇司令」

ゲンドウ「…………なんだ」

レイ「碇くんの、経過は気になりますか」

ゲンドウ「…………」モソモソ

レイ「…………」

ゲンドウ「……もうすぐ起動実験だったな」

レイ「…………はい」

ゲンドウ「体調に何かあれば赤木博士に言えばいい」

レイ「…………はい」

ゲンドウ「…………」モソモソ

レイ「…………」モグモグ

- ネルフ本部 零号機 テスト中 -

リツコ「実験中断、回路を切って」

マヤ「回路切り替え」

オペレーター「了解。電源、回復します。回路オールグリーン」

リツコ「……問題はやはりここね」

マヤ「はい、変換効率が理論値より0.008も低いのが気になります」

オペレーター「ぎりぎりの計測誤差の範囲内ですが、どうしますか」

リツコ「もう一度同じ設定で。相互変換を0.01だけ下げてやってみましょう」

マヤ「了解。再実験、スタンバイ」

リツコ「レイ、気分はどう?」

レイ『問題ありません』

リツコ「気分が悪くなったら言うのよ」

レイ『はい。……赤木博士』

リツコ「なに?」

レイ『人って、なんですか?』

リツコ「…………」

マヤ「…………」

レイ『…………』

マヤ「め、めずらしいですね。レイがそんなこと」

リツコ「どうして、そう思うのかしら?」

レイ『わかりません』

リツコ「(…………ありえないわ)」

オペレーター「再実験。回路接続完了。いつでもいけます」

リツコ「(考えられるのは、周囲の多干渉? レイが引っ張られてる?)」

マヤ「……………」

リツコ「(いえ。そんなことはありえない。器でしかないはず。人工的に人を生み出せない。私達は、神ではないのよ)」

マヤ「……先輩。あの?」

リツコ「――レイ。問題ないなら実験、はじめるわよ」

レイ『……はい』

リツコ「テストスタート」

マヤ「り、了解。再実験プログラム。開始します」

- 零号機 プラグ内 -

レイ「(私、私、私。ここにいるのは、私)」

マヤ『パルス接続、正常。テスト、ヒトヒトヨンマルまでクリア』

レイ「(ワタシは誰? 綾波、レイ。ワタシはなに? 人じゃない。私と繋がりがあるのは……なに?)」

オペレーター『問題のポイントまで想定時間はおよそ30秒です』

レイ「(ワタシはなに? 繋がりはなに?)」

アスカ「……あんた、人形みたい」

レイ「(……違う。私は人形じゃない)」

アスカ「人形よ! 人形だわ! アンタナンカヒトジャナイ!」

レイ「(私は人形じゃない。私は……っ!)」

アスカ「感情のない人形じゃない! 反応もない! シンジに近づかないで!」

レイ「…………ひっ⁉︎」




ビービーッ

マヤ「……っ! パルス逆流! 精神グラフ、乱れています!」

リツコ「な、なんですって⁉︎ 実験中止!」

オペレーター「実験中止! 回路強制遮断!」

- ネルフ本部 ??? -

ゲンドウ「……レイの様子はどうだ」

リツコ「問題ありません。一時的な錯乱状態が見られますが」

ゲンドウ「零号機の凍結は今はまずい」

リツコ「……はい」

ゲンドウ「ダミーの件はどうなっている?」

リツコ「そちらも、滞りなく。順調ですわ」

ゲンドウ「……君には期待している。赤木博士」

リツコ「(……レイの再調整。どうするべきかしらね)」

- 夕方 総合病院 -

シンジ「…………」

レイ「…………」サクサクッ

シンジ「…………」

レイ「…………はい」スッ

シンジ「ありがとう」

レイ「りんご、好きなの?」

シンジ「ううん。好きでも嫌いでもないかな」

レイ「どっちでもないの?」

シンジ「うん。あったら食べるぐらいだけど……あっ、せっかく切ってもらったのに、ごめん」

レイ「…………碇くん」

シンジ「……うん?」もぐもぐ

レイ「どういう時、笑ったらいいの?」

シンジ「えっ」

レイ「どうしたいのか、よくわからない」

シンジ「…………」

レイ「…………」

シンジ「……嬉しい時や、楽しい時、前に見せてくれた綾波の笑顔は綺麗だったよ」

レイ「……綺麗?」

シンジ「そう、優しい笑顔だった」

レイ「…………」

シンジ「どっちかなんてなくていいんだと思う。リンゴの話じゃないけど、笑いたい時笑えばいいんじゃないかな」

レイ「どっちかじゃなくていいの?」

シンジ「うん……綾波とこうして静かにしてる時間も、僕は心地いいから」

レイ「…………あ、ありがとう」

シンジ「ううん、いいんだ」

レイ「(……ありがとう。感謝の言葉。あの人にも言ったことなかったのに)」

シンジ「…………食べる?」スッ

レイ「……いいの?」

シンジ「綾波に切ってもらったんだから、いいんだよ」

レイ「…………」シャリ モグモグ

シンジ「……どうかな?」

レイ「……おいしい」ニコ

シンジ「うん。今みたいに笑ったらいいよ」

レイ「……笑った?」

シンジ「……あ。えーと、笑ってたけど?」

レイ「…………そう。笑えるのね。私」

レイ「……碇くん。はい」スッ

シンジ「ありがとう。……あの、置いててくれればいいから」

レイ「手、まだ不自由だから」

シンジ「えぇ⁉︎」

レイ「…………」ジーッ

シンジ「だ、大丈夫だよ! わりと動けるし! わ、悪いよ!」

レイ「…………いらないの?」

シンジ「で、でも、これって、あーんってやつじゃ?」

レイ「…………あーん?」

シンジ「や、やぶへびだ!」


ガチャ


アスカ「ハロ~ゥ………シン………ジィ……⁉︎」ボトッ

――――
―――

アスカ「それでぇ~? 今のはどういう状況だったのかしら~?」

レイ「……碇くんの手が不自由だから。食べさせようとしてただけ」

アスカ「ふ、ふぅ~ん。そう。ファースト、いつもこんなことやってんの?」

レイ「……あなたには、なにも関係ない」

アスカ「ぐっ! あんたねぇ! 貸しがあるからってなんでもかんでも私が許すと思ったら大間違いよ!」

レイ「……別に。あなたに許される必要ない」

アスカ「つっかかってくるじゃない!」

シンジ「あ、あの。ちょっと2人とも……」

アスカ「だいたいさぁ! あんたシンジにまとわりつきすぎなのよ!」

レイ「……あなたも同じ」

アスカ「私はいいのよ! お互いに了承の上なんだから! あんたはそうじゃないでしょ⁉︎」

レイ「…………なぜ、碇くんと話してはいけないの?」

アスカ「話しちゃいけないなんて言ってない!」

レイ「……碇くんはあなたのモノじゃない」

アスカ「――っ⁉︎ 言ったわね! じゃあシンジはあんたのモノだって言うの⁉︎」

レイ「……誰のものでもない(そう。私は私)」

アスカ「シンジになにかしたら許さないわよ」

レイ「……なにもしない。なにかするのは、あなた」

アスカ「なんですって⁉︎ このっ!」ブンッ

レイ「……そういうところ。私は碇くんを傷つけたりしない」

アスカ「――……っ!」ピタッ

レイ「碇くんはあなたの人形じゃない(私は、人形じゃない)」

シンジ「ふ、2人ともやめてよ!」

アスカ「ファースト。ちょっと席はずしましょうか」

レイ「…………」

アスカ「……ふぅ。シンジ。大丈夫。ちょっと話してくるわ」

シンジ「…………大丈夫?」

アスカ「うん。信じて」

シンジ「……わかったよ」

- 総合病院 屋上 -

アスカ「この時間は肌寒いわね」

レイ「…………」

アスカ「ファースト。あんたにも私の考えをはっきりさせとく」

レイ「…………」

アスカ「私は、シンジの為ならなんだってやるわ」

レイ「…………そう」

アスカ「あんたもパイロットだから、前に言ったように協力してほしいってのはかわらない――」

レイ「…………」

アスカ「シンジに手をだすなら話は別。このままここから突き落とすわよ」

レイ「…………」

アスカ「私は本気よ。誰であろうと、容赦なんかしない。泣いてすがっても許しなんかしないわ」

レイ「…………話はそれだけ?」

アスカ「………それは、つまり、そういう意味捉えていいのね?」

レイ「…………」

アスカ「………今後、あんたは私の敵とみなすわ。シンジの味方であっても」

レイ「…………」

アスカ「――っ! シンジは私の全てなのよ⁉︎ 全てになっちゃったのよ!! どうして邪魔するの⁉︎ 応援してくれないの⁉︎」

レイ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………別に」

アスカ「……仲良くできるかもと思ったのに」

レイ「それは、あなたの勝手な都合」

アスカ「――あんた! 感情あるんじゃない!」

レイ「…………」

アスカ「なんとか言いなさいよっ! こうまでやってくるんだからムカついてるんでしょ⁉︎ 私に!」

レイ「…………」

アスカ「シンジに、シンジに、次あんなことしてたら頭かちわってやるっ!」


スタスタ

キィー バタンッ!!!


レイ「………私、対抗してるのね」

- 総合病院 病室 -

アスカ「…………」

シンジ「アスカ、大丈夫?」

アスカ「シンジ。お願いがあるの」

シンジ「……なに?」

アスカ「これから、私が身の回りのこと全部やるから、もうファーストとは――……!」

シンジ「綾波?」

アスカ「(だめ! あいつを殺したら私がこの前みたいな時誰がシンジを守れるの⁉︎)」

シンジ「綾波とやっぱり、喧嘩したの?」

アスカ「(でも、シンジにさっきみたいなこと許せない! 殺してやる! 殺してやる! 殺して――)」

シンジ「………アスカ?」

アスカ「――あ。ううん、やっぱりいい。忘れて」

シンジ「……きっと2人は仲良くできるよ」

アスカ「(できるわけないじゃない! あんなことしておいて仲良くできるわけない! 私のシンジに――っ!)」

シンジ「綾波も、いい子だから――」

アスカ「…………そうね」

シンジ「よかった。なんともなくて」

アスカ「(シンジに気がつかれないように――)」

シンジ「…………その袋なに?」

アスカ「これ? 鈴原達からお見舞いのお菓子。私が預かってきたの」

シンジ「トウジたちが? 嬉しいな」

アスカ「みんな心配してんだから。はやく治しなさいよ?」

アスカ「(あの女――ッ!!)」

- 夜 ミサト宅 -

シャーコ シャーコ

アスカ「…………」

シャーコ シャーコ


ミサト「ただいま~ん………アスカ、あんたなにやってんの……?」

シャーコ シャーコ

アスカ「見てわからない? 包丁研いでるのよ」

シャーコ シャーコ

ミサト「と、砥石なんてうちにあったっけ?」

シャーコ シャーコ

アスカ「私が買っておいた」

ミサト「そ、そーなんだー。ちょっと? あんた目からハイライト消えてない?」

シャーコ シャーコ

アスカ「…………」

ミサト「……ご、ごほんっ……ペンペンは?」

アスカ「――……あぁん?」

ミサト「あ! あっちにいそうねー!」

シャーコ シャーコ

アスカ「………ミサト」ピタッ

ミサト「は、はい?」

アスカ「私、明日は遅くなるから」

ミサト「あぁ。また、えーと、ヒカリちゃん? のとこ」

アスカ「……うん」

- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 -

男子生徒「おい、聞いたか。あの話」

男子生徒「転校生だろ? 聞いた聞いた」

男子生徒「めっちゃくちゃかわいいって話?」

トウジ「おーおー男子どもがザワつきよる」

ケンスケ「みんな退屈してるからなぁ」

トウジ「……で? どうなんや? 実際のところ」

ケンスケ「なんでも親の転勤で引っ越してきたんだってさぁ」

トウジ「あほっ! こういう場合はかわいいかに決まっとるやろがっ!」

ケンスケ「それは――あぁ、えっと用事思い出した」

ヒカリ「――……」

トウジ「あ? もうすぐホームルームはじまるのにどこ行くねん! ――おいっ!ちょっと――」

ヒカリ「すぅ~~ずぅ~はぁ~らぁ~~」

トウジ「い、い、い、イインチョ。な、なんでここに――」

ヒカリ「~~っ! 問答無用っ!」ブンッ

- 第壱中学校 ホームルーム -

先生「あ~。それでは、みなさんに、転校生を紹介します。霧島さん、どうぞ」

マナ「マナですっ! 霧島マナっていいます! よろしくお願いしますっ!」ペコッ


男子生徒「「「おぉ~~。かわいい~~」」」


ケンスケ「おぉ~。かわいいな」

トウジ「…………さよか」

ケンスケ「トウジ。傷は男の勲章だぞ」

トウジ「お前もいっぺんやられてみぃ!」

ケンスケ「今度は元気っ子かぁ。アスカと綾波の二大巨頭。割れるかもしれないね」

トウジ「……ふぅむ」

ケンスケ「おい! トウジ! ちゃんと聞けよ! ブロマイドの売り上げに影響するんだぞ!」

トウジ「……はぁ、わかったわかった。して、相田参謀。実際のところどうなんや?」

ケンスケ「ツンツン娘のドイツ人ハーフ! 対してクールビューティのアルビノ娘! そしてぇっ――あだっ!」ドタン

アスカ「――……チッ、ヤレなかったか」

トウジ「………ワシらに自由はないんかのぉ」

- 第壱中学校 昼休み -

アスカ「ヒカリ、今日は屋上で食べない?」

ヒカリ「……?」

アスカ「ちょっと話したいことがあるのよ」

ヒカリ「……わかった。今用意するね」ガタガタ

マナ「――……あの、アスカ・ラングレーさん、ですよね」

アスカ「……え、えっと」

マナ「私、今日転校した霧島マナって言います。あの、転校してきたばかりで何もわからないので、よければ仲良くしてください」

アスカ「……あぁ。かまわないけど」

マナ「よかったっ! 本当は言いだすまで不安でっ!」

アスカ「…………」

ヒカリ「………あの、私たち今からお昼なんだけど……」

マナ「あっ……ごめんなさいっ。邪魔しちゃいましたね」

ヒカリ「う、ううん。そうじゃないの。こっちこそ、ごめん。私は洞木ヒカリ。できれば、私も仲良くしてほしいな」

マナ「もちろんっ! 私こそ仲良くしてっ!」

ヒカリ「……えへへ」

アスカ「わかった。でも、ごめんね。ちょっと今日はヒカリに相談があって、できれば2人で食べたいの。……いい?」

マナ「うんっ。それじゃ、私は向こうで食べるから」

アスカ「ありがと」

ヒカリ「それじゃまた後でね。霧島さん」





ケンスケ「むむっ! あれはなんだかヒト波乱あるような気がする!」

トウジ「はぁ、こりんやっちゃのーお前も」

ケンスケ「いいか! ネタがあるところに俺はいる!」

トウジ「尊敬したくないけど、凄いと思うわ」

- 第壱中学校 昼休み 屋上 -

ヒカリ「霧島さん、いい人そうだったね」もぐもぐ

アスカ「……あぁ。まぁ、そうね」

ヒカリ「転校してきたばかりだから、私達も仲良くしてあげましょ」

アスカ「…………うん」

ヒカリ「……? アスカ? 悩み事?」

アスカ「ヒカリ、鈴原とはどう?」

ヒカリ「……別に、なんともないよ。お弁当渡してるだけ」

アスカ「そうなんだ」

ヒカリ「うん。……なんにも気がついてくれないみたい」

アスカ「……鈍感ね。弁当なんか作ってくるわけないじゃない」

ヒカリ「う、うぅん。私がついだって言ったから……」

アスカ「そこも含めてでしょ? 女から言わせるなんてサイテー。男だったらわかりなさいよ」

ヒカリ「あ…………うん」

アスカ「――……昨日、シンジの病室に行ったんだけど」

ヒカリ「碇くんの? 大丈夫そうだった?」

アスカ「うん。怪我自体はそんなに不自由じゃないみたい」

ヒカリ「そっか。なら安心だね」

アスカ「――……だけど、そこでファーストに食べさせてもらってた」

ヒカリ「えっ?」

アスカ「私のシンジなのに。私の。なのにファーストが食べさせてたの。見た時目を疑ったわ。あいつ……あいつ……なにも感情のない人形のようなフリして感情がちゃんとあったのよ。
シンジのことはパイロット同士だから大目に見ようって思ってたのに。だけどあれはやりすぎよ。
ふざけるんじゃないわよ。なんであんなことまで――」

ヒカリ「あ、アスカァ!」

アスカ「――えっ?」

ヒカリ「えっと、碇くんに食べさせてただけなんでさょ?」

アスカ「――……だけですって?」

ヒカリ「ごめん。言い方が悪かった。食べさせてたの?」

アスカ「……そうよ」

ヒカリ「え、えっと。我慢できなかったの?」

アスカ「我慢できるわけない!」

ヒカリ「あ、アスカ。落ち着いて。そんなことで取り乱してたらこの先辛いよ?」

アスカ「そんなことなんかじゃない。私には、私には――」

ヒカリ「…………アスカ、前に加持さんって人しかいなかったって言ってたよね」

アスカ「…………」

ヒカリ「碇くんがそこに入ってるの?」

アスカ「違うの! シンジは違うのよ! 加持さんの代わりなんかじゃない!」

ヒカリ「…………ごめん。私、碇くんにやっぱり一度話す」

アスカ「なに話すの?」

ヒカリ「このままじゃいけないと思うから。ね? いい?」

アスカ「……わかった」

ヒカリ「……今日の放課後、鈴原達も誘ってお見舞いに行きましょ!」

アスカ「…………」コクリ

- 総合病院 病室 -

トウジ&ケンスケ「いよっ!」

シンジ「――トウジ? ケンスケ?」

ヒカリ「あの、碇くん、大丈夫?」

シンジ「あ……みんな、お見舞いに来てくれたんだね。ちょっと待って今、お茶――」

ヒカリ「あっ! いいの! 気にしないで!」

トウジ「センセはあいかわらずやのー。そんなミイラみたいな包帯しよっても」

ケンスケ「はぁ。ま、そこが憎めないんだけどさぁ。ゆっくりしておけよ」

シンジ「うん。ありがとう」

アスカ「シンジ、具合は?」

シンジ「特に変わらず、かな。熱もさがってきてるし化膿はしてないみたいだよ」

アスカ「よかった」

ケンスケ「碇にハッピーサプライズ! 今日転校生がきたぞ!」

シンジ「そうなんだ?」

ケンスケ「喜べ! なんと席は碇の隣だ!」

シンジ「…………へぇ」

トウジ「今度は元気っ子! ハーレムになるんちゃうか! ぬふふっ!」

シンジ「はぁ? ハーレム?」

トウジ「だってシンジ、そうやろ。綾波にゴリラに元気っ子とくれば……」

アスカ「フンッ!」ボキッ

ケンスケ「鈍感系主人公は流行らないと思うぞぉ?」

アスカ「こっちもね!」バキッ

ケンスケ&トウジ「……………な、ナイスキック」

ヒカリ「…………はぁ」

シンジ「……あいかわらずみたいだね」

ヒカリ「碇くんがすごく大人に見える」

シンジ「そんなことないよ。トウジ達はわざとふざけてくれてるんだ」

アスカ「こ、こいつらが……?」

シンジ「うん。場が明るくなるから」

アスカ「まぁ、そういうことにしておくわ」

シンジ「……? 本当だよ」

ヒカリ「――碇くん、なにか変わった?」

シンジ「えっ?」

ヒカリ「なんだか、落ち着きすぎじゃない?」

シンジ「そ、そうかな」

アスカ「シンジは元からこんなんじゃないっけ?」

ヒカリ「うーん、私はアスカほど知らないけど……」

トウジ「……ま、まぁ。センセやからな。ゴリ、そうりゅうサンと知り合った時は感情的になってたが」

ケンスケ「いつつ……」

アスカ「だいたい、鈴原は好きな人とかいないの?」

トウジ「わ、ワシ?」

アスカ「シンジばっかり言うけど。あんた、自分のことちゃんとしなさいよ」

ヒカリ「あ、アスカ……」

トウジ「ワシは今はそんなことにうつつを抜かしとる暇はない。妹のことがあるしな」

ヒカリ「あっ……」

アスカ「あんたの妹ってそんなに悪いの?」

トウジ「……入院費の支払いがバカにならへんのや」

シンジ「トウジ……ごめん」

トウジ「……あぁ。ちっ……シンジはなんも悪くない。悪いのは使徒や」

シンジ「僕でできることあるなら――」

トウジ「……シンジ。ワシ達は友達やろ。もう終わったことや」

アスカ「……悪かったわ」

トウジ「しみったれた話は好かんからのぉ! というわけでワシは今は色恋沙汰はない!」

ケンスケ「……僕もカメラかなぁ」

トウジ「シンジがうまくいくなら、ワシ達は応援しとるで」

ケンスケ「隠し撮りはさせてくれよなぁ~」

シンジ「2人とも……ありがとう」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

トウジ「なんや? 黙りこんでどないしたんや?」

アスカ「みんな、それぞれ生活があんのね」

ケンスケ「……はぁ?」

ヒカリ「アスカ、言いたいことわかるかも」

アスカ「私たちって、恋ばっかりなのかな」

ヒカリ「…………うん」

シンジ「……?」

ケンスケ「まぁ、いいんじゃないかぁ? 僕たち、青春なんだしさ!」

ガチャ

レイ「…………碇くん」

シンジ「あ。綾波」

トウジ「おいおい、綾波もここにお見舞いかぁ?」

シンジ「うん。ミサトさんに頼まれて……」

レイ「…………」

ケンスケ「こりゃマジでハーレム形成するつもりなんじゃないのかぁ?」コショコショ

トウジ「どないするんやろなぁ。ゴリラはさすがにワシでもわかるぞ」コショコショ

ケンスケ「碇が気がついてないってことないと思うんだけど……」コショコショ

トウジ「どっちかに決めなまずいんちゃうんか?」コショコショ

アスカ「……そこ、なに喋ってるの?」

トウジ「いや、なぁ~んにも」

ケンスケ「…………はぁ。どうするんだよ」

ヒカリ「…………あのね、碇くん、少し話できる?」

シンジ「……? かまわないけど」

ヒカリ「……少し席、はずせる?」

トウジ「い、委員長もか⁉︎」

ケンスケ「えぇ⁉︎ だって委員長は――」

ヒカリ「あんた達! なに勘違いしてるか知らないけど相談するだけよ!」

シンジ「わかった……少し散歩したかったから。ちょうどいいよ」

レイ「……碇くん、平気?」

シンジ「そんな。普通に歩けるから大丈夫」

ヒカリ「ご、ごめんね。碇くん」

アスカ「…………」

トウジ「お、おぉ。なんじゃあの女どもは」

ケンスケ「………こっちもこっちで気がついてないんだけどねぇ」

- 総合病院 ロビー -

ヒカリ「……あの、話っていうのは、アスカのことなんだけど」

シンジ「アスカの?」

ヒカリ「うん。アスカ、また思い詰めてるみたい」

シンジ「…………」

ヒカリ「アスカから、だいたいの話は聞いてるの。その、碇くんを監禁したことも」

シンジ「……そっか」

ヒカリ「お願い、アスカをラクにさせてあげて。見てられない時があるの」

シンジ「…………」

ヒカリ「アスカがどう思ってるのか、碇くんはもう気づいてるはずでしょ?」

シンジ「僕は……どうしたいのかよくわからないだ」

ヒカリ「えっ。アスカのこと好きじゃないの?」

シンジ「守りたいと思う。だけど……」

ヒカリ「そ、そんなっ! アスカがそれ知ったら、碇くん! アスカには絶対に言っちゃだめ!」

シンジ「嫌いなわけじゃないんだ。でも……」

ヒカリ「だけど! アスカはもう碇くんのことが!」

シンジ「今は、パイロットだから勘違いしてるだけだよ」

ヒカリ「そ、そんなわけないじゃないっ! アスカがどんな気持ちでいるかわかる⁉︎」

シンジ「…………」

ヒカリ「守るなら責任を持たなくちゃだめよ!」

シンジ「……っ! 僕に! 僕にどうしろって言うんだよ!」

ヒカリ「――っ!」

シンジ「守りたい! だから守ってみせる! 僕だって一生懸命やってるんだ!」

ヒカリ「い、碇くんっ。だけど、アスカは!」

ヒカリ「(こ、こんなの。少女漫画じゃない。昼ドラよ)」

シンジ「……洞木さんは、アスカのことが大事なんだね」

ヒカリ「…………」

シンジ「心配しなくても、アスカは守ってみせるよ」

ヒカリ「(……だけど、気持ちは⁉︎)」

シンジ「ごめん。今はそれしか言えない」

ヒカリ「…………。私こそごめん」

シンジ「トウジとうまくいくといいね」

ヒカリ「あっ。うん。でも、無理かもしれないけど」

シンジ「トウジなら、大丈夫だよ」

ヒカリ「(アスカに、なんて言おう)」


マナ「――あれ? 洞木、さん?」


ヒカリ「……えっ?」

マナ「あっ! やっぱり洞木さんだーっ!」

ヒカリ「霧島さん⁉︎ どうしてここに⁉︎」

マナ「お父さんがここで働いてるのっ! だからその迎え!」

シンジ「えっと……邪魔しちゃ悪いから……僕は」

マナ「あぁん! 待って待って! えぇと、もしかして碇シンジくんだよね⁉︎」

シンジ「……そうだけど」

マナ「私、霧島マナ。よろしくねっ。碇くんの席の隣に転校してきたの」

シンジ「あ……キミが」

マナ「マナって呼んで! ねぇねぇっ! パイロットなんだよね⁉︎ ……怪我痛そうだけど、大丈夫?」

シンジ「うん。見た目よりは痛くないんだ。包帯も感染症のためらしくて」

ヒカリ「…………」

マナ「あ、洞木さんは碇くんのお見舞い?」

ヒカリ「あの……うん」

マナ「もっと碇くんと話したいなっ。……だめ?」

シンジ「えぇと。かまわないけど」

ヒカリ「(ど、どうしよう! まだ増えるの⁉︎)」

シンジ「病室に友達がいるから。みんなに紹介……は、必要ないのかな」

マナ「あっ! 嬉しいっ! ――お邪魔じゃないかなぁ?」

シンジ「洞木さんも知り合いみたいだし、どう?」

ヒカリ「…………ふぅ。いいよ。行こう?」

- 総合病院 病室 -

トウジ「はぁ~~~」

ケンスケ「どうすんだよ、コレ」


アスカ「……………」むっすぅ

レイ「……………」

マナ「……あの、お邪魔でした?」


トウジ「センセはほんま、どえらい男やなぁ」

ケンスケ「転校生はさっき会ったばかりだろ~? なんでこんな空気になるわけ?」

ヒカリ「あ、あんた達、余計なこと言わないで」


シンジ「みんな、どうしたの?」


トウジ「ワシ、もしかして伝説の男と友達になっとるのかもしれん」

ケンスケ「はぁ。もういいよ。なるようになれってやつだ」

- 帰宅中 -

アスカ「シンジとなに話してたの?」

ヒカリ「そ、その。碇くんにアスカのことどう思ってるかって………」

アスカ「――っ! そ、それで⁉︎」

ヒカリ「あの、アスカのこと、守るって言ってたよ…………」

アスカ「ほんとっ⁉︎」

ヒカリ「うん…………(言えないよぉ)」

アスカ「まぁ、そーよね! あったりまえじゃない!」

ヒカリ「(少女漫画が現実に起こると昼ドラと大差ないだなんて……)」

アスカ「他には⁉︎ なにか言ってた⁉︎」

ヒカリ「えーと、そのぉ、うーんと、アスカのことちゃんと考えてるって」

アスカ「え⁉︎ ……それって……」

ヒカリ「(う、嘘は言ってないよね。今はって言ってたし)」

アスカ「こ、告白じゃない……」

ヒカリ「――え、えぇ⁉︎」

アスカ「そっか。シンジもちゃんと……あぁ、私ってバカね。なにを焦ってたんだろ。シンジも同じ気持ちなのに」

ヒカリ「――え、ちょ、ちょ、あす」

アスカ「ヒカリッ! ありがと! やっぱ私たち親友ね!」

ヒカリ「(ど、どどどうしよ~~⁉︎)」

- 夜 ミサト宅 -

アスカ「ふ~んふふ~んふ~ん」

ミサト「…………」

アスカ「ふんふ~ん」

ミサト「昨日はなんかおかしかったのに。わからないわ」

アスカ「あ、ミサト?」

ミサト「……なによ」

アスカ「シンジと2人で住むってできないの?」

ミサト「できるわけないでしょう」

アスカ「そっか。残念。でも、これからは、あぁそっか。ミサトも大変ね」

ミサト「……なにが?」

アスカ「だってさぁ、シンジが退院してきたら……ふんふ~ん」

ミサト「日本語で喋ってほしいわ……」

アスカ「シンジと私、相思相愛なのよ。両想いってやつ」

ミサト「……頭痛がする。シンちゃんがそう言ったの?」

アスカ「えぇ。そうよ。だからこれからのルール決めておいた方がよくない?」

ミサト「…………」

アスカ「ミサトも監督責任があるんでしょ。セックスしたらどうするの?」

ミサト「セッ……まぁ、あなた達もお年頃だしね。なくはないか」

アスカ「もちろんよ。そこで、ルールなんだけど」

ミサト「避妊はちゃんとしなさい。あと、勉強も。のめりこみすぎたらすぐ引き離すわよ」

アスカ「意外にあっさり許すのね」

ミサト「実は、前にリツコから避妊をするなら問題ないって言われてるのよ。中学生にはまだ早すぎると思うんだけど」

アスカ「それなら問題は倫理上のことだけね。私たちは同じ歳なんだから、法律上問題ないってこと」

ミサト「でも! ちゃんとしなさいよ⁉︎」

アスカ「わかってるって。私がそんなにガッつくように見える? シンジが寝かせてくれないかもしれないけど」

ミサト「女同士といえど、生々しいわね」

アスカ「ミサトもやることやってんでしょ」

ミサト「…………はぁ」

アスカ「私も声は聞かれたくないし、セックスしてる時はなにか音楽でも聞いてて」

ミサト「…………そうなるのね。やっぱり」

- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

リツコ「――問題ないわよ」

ミサト「や、やっぱり、そうこたえるかぁ」

リツコ「断ってほしかったの?」

ミサト「だ、だぁってぇ……」

リツコ「盛りのついた中学生同士なら、かなりの頻度でヤるかもしれないわよ?」

ミサト「アスカのそういう所、イメージできないのよね」

リツコ「あの子は女よ。初体験で相当嫌なイメージさえつかなければ、求められればこたえる。女とはそういう生き物ではなくて?」

ミサト「…………」

リツコ「……しかし、シンジくんがOKとは意外ね。事後の精神でいい実験データがとれるかも」

ミサト「リツコにとってはシンジくんが意外?」

リツコ「えぇ。あの子、受け身だもの」

ミサト「そうね。アスカからって可能性もあるけど」

リツコ「――なんにせよ、アスカのトラウマ、解消できるかもしれないわね」

ミサト「…………」

リツコ「ミサトも資料は読んだんでしょう? 初体験がきっかけでまた変わるかもしれないわよ」

ミサト「……そうね、そう思うことにするわ」

リツコ「いずらかったら、たまにうちに遊びにいらっしゃい。寝る所ぐらいは、貸すわよ」

ミサト「そうするぅ……」

リツコ「あぁ。それと、ミサト」

ミサト「……?」

リツコ「このことは、碇司令にも報告しておくわよ」

ミサト「いぃっ⁉︎ 大丈夫なの?」

リツコ「気にすることないわ。息子について干渉しないのはあなたもよく知ってるでしょ」

ミサト「だけど、ヤッてからとか……」

リツコ「形式上な報告だけよ。後から報告して、まずかった、なんてならないようにね」

ミサト「はぁ………」

リツコ「浅間山で言ったあの子達のことを考えるって話は忘れていいから」

ミサト「……わかったわ。でも一応、理由聞いていい?」

リツコ「エヴァとのシンクロとデータが第イチ。それ以外になにもありはしないわよ」

ミサト「わかりやすい。……りょーかい」

返レス不要です
一応注意書いておきます

明日もたぶん暇つぶしに書くと思うんですが、内容がエロSSになると思います

合わないと思うならば明日のやつは読まない方がいいかも

- ネルフ 本部 ??? -

リツコ「……報告は以上です」

ゲンドウ「…………」

冬月「ふぅむ……セカンドチルドレンとサードチルドレンの関係は事実なのかね?」

リツコ「はい。監督者である葛城一尉からの情報ですわ」

冬月「碇。どうする? シナリオを書き直さなばらんぞ」

リツコ「……えっ」

ゲンドウ「……シナリオの書き換えはしない。赤木博士」

リツコ「はい」

ゲンドウ「サードチルドレンを面会謝絶とし、セカンドチルドレンを近づけるな」

リツコ「し、しかし……」

ゲンドウ「葛城一尉には感染症の疑いが出たと言えばいい」

リツコ「病院関係者には?」

ゲンドウ「勤務者は我々の手の内にある」

冬月「(霧島マヤ、の父親以外はな)」

リツコ「り、了解しました。シナリオは……」

ゲンドウ「初号機の覚醒にセカンドチルドレンは不要だ」

リツコ「……はい」

冬月「(息子であろうと容赦なしか……。ユイくん、すまないな)」

ゲンドウ「……レイを呼べ」

――――
―――

レイ「…………」


ゲンドウ「……レイ。シンジと寝ろ」


リツコ「――っ! い、碇司令!」

冬月「いいのか? 拒絶のきっかけになるかもしれんぞ」

ゲンドウ「シンジには抗生剤と偽って興奮剤を投与すればいい」

レイ「…………」

冬月「しかし、強引すぎるのではないか?」

ゲンドウ「いずれそうなるのであれば早めに対処する」

リツコ「で、ですが……っ! それはあまりに危険では!」

ゲンドウ「異議は認めない。……レイ。赤木博士からレクチャーを受けろ」

リツコ「……………」

レイ「…………はい」

冬月「(碇め、レイと覚醒させることに執着しすぎてるな)」

- ネルフ本部 通路 -

冬月「必要なことがあればなんでも言いたまえ。根回しはできる限り万全であればいい」

リツコ「……はい」

レイ「…………」

冬月「今回の決定にいささか憮然としたものを感じるのは私も認めるよ。固執しすぎているからな」

リツコ「…………」

冬月「あれもあれで不器用な男だ。わかってやってくれとは言わないが、命令には従ってもらう」

リツコ「……了解、いたしました」

レイ「…………」

リツコ「レイ。行くわよ」

レイ「…………はい」

- ネルフ本部 地下 -

リツコ「はじめるわよ。学校の授業で生殖行為のおおまかな概要は学ぶからそこは説明省いていいわよね?」

レイ「……はい」

リツコ「机の上にバイブを用意したわ。手にとってみて」

レイ「…………」コトッ

リツコ「日本人の平均的な陰部大きさは12cmと言われている。シンジくんは成長期にあるからもう少し小さいかもしれない」

レイ「…………」ニギニギッ

リツコ「……あまり乱暴に扱わないで。男性にとって性器は内蔵なのよ。痛がられるわよ」

レイ「…………」

リツコ「優しく、ね。少しツバを含んでたらしてみなさい」

レイ「………んっ」ニチュ

リツコ「……そうすると滑りがよくなるわ。上下にこすってあげて」

レイ「………」シコシコ

リツコ「唾液はすぐにかわくから注意して。そのまま、舌先で先端部分を舐め回してあげるの」

レイ「……ふぁ、ふぁい……んっ……ちゅ……」

リツコ「いい感じよ。口の中にいれて上下に、歯は立てないように」

レイ「……んっ、んっ、んっ。はぁっ…んっんっ……」

リツコ「……そう。基本的に男性器は擦ることで刺激を得られる。様々な方法があるけど、擦るということには変わりがない」

レイ「………はあっ………はい」

リツコ「シンジくんには興奮剤、つまり媚薬を点滴で投与するからあなたから積極的にいくことはないはずよ」

レイ「…………」

リツコ「子供ができる心配はないし、存分にやらせてあげなさい」

レイ「………あの、赤木博士」

リツコ「なに?」

レイ「弐号機の人は?」

リツコ「……あなたが考えることではないわ」

レイ「…………はい」

リツコ「次は、体位について教えるわね――」

- 第三新東京都市立 第壱中学校 -

アスカ「ふんふふ~ん♪」

トウジ「朝からずっとあの調子で気持ち悪いわ~」

ヒカリ「……はぁ」

ケンスケ「こっちはため息ばっかりだしなぁ~」

ヒカリ「(……アスカには言えないし、誰に相談したらいいんだろう)」

アスカ「あ! そういえばあんた達!」

トウジ&ケンスケ「な、なんや(だ)?」

アスカ「私とシンジ、付き合うことになりそうだから!」

トウジ&ケンスケ「は、はぁ⁉︎」

ヒカリ「あ、アスカ! あのっ! それはっ!」

トウジ「付き合うってシンジがそう言うたんかいな?」

ケンスケ「昨日はそんな素振りなかったはずだけど?」

アスカ「だからあんた達は鈍感なのよ! 私とシンジにしかわからない世界があるの!」

トウジ&ケンスケ「は、はぁ?」

アスカ「あぁ、はやく退院してこないかなぁ~」

ケンスケ「まぁ、付き合うなら――」

トウジ「――ワシたちはええけどなぁ?」

ヒカリ「……す、鈴原。相田くん。ちょっと、いい?」

- 体育館裏 -

トウジ「――な、なんやとぉ⁉︎」
ケンスケ「――勘違いぃ⁉︎」

ヒカリ「そ、そうなの……」

トウジ「ど、どないなっとんねん⁉︎」

ヒカリ「私の言い方がまずかったせいで、アスカ、勘違いしちゃって」

ケンスケ「ありゃ有頂天って感じじゃないけど。天にも昇るっていうか」

ヒカリ「ど、どうしよう⁉︎ アスカに今さら言い出せないのよ!」

トウジ「けど、昨日の今日やろ? 軽い感じで言ってしまえばええんやないか?」

ヒカリ「そ、そんな話じゃないの!」

ケンスケ「けど、このままにしとくのも、なぁ?」

ヒカリ「……うん。それは、わかってるんだけど」

トウジ「ほんまのところ、シンジはなんて言うとったんや」

ヒカリ「まだ、わからないって。きっと碇くんも色々整理したいんだと思う」

ケンスケ「転校してきてまだそんなにたってないしな~」

トウジ「煮えきらんのー」

ヒカリ「し、仕方ない部分もあるわよ。アスカ、すぐ好きになっちゃったし」

- 第壱中学校 屋上 -

アスカ「……シンジに会いたいな」



シンジ『アスカ。実は前から僕、アスカのことが……』

アスカ「(な、なによ。シンジ。どうしたの?)」

シンジ『アスカ。もう僕、我慢できないんだ……』

アスカ「(だ、だめよ。バカ。ミサトが帰ってくる)」

シンジ『だけど、アスカを見てるだけで、僕もう、こんなに……』

アスカ「(……あっ……シンジ。シンジのコレ……)」



アスカ「こぉーんなことになったりするわよねぇ~っ!」バンバンッ


マリ「――ひめぇ? トリップしてるところ悪いんだけど、ちょっといい?」ポリポリ


アスカ「う、うわぁ⁉︎」ビクゥ

アスカ「……ゴホンッ……いつからそこに?」

マリ「発情期のメスの顔してるところからかにゃ?」

アスカ「……結局いつからなのよ」

マリ「そういう顔ってとこは否定ないんだね」

アスカ「用件を言いなさい。用件を」

マリ「……うん。なんかちょっと不穏な動きがあるからさぁ~」

アスカ「……っ! シンジになにかあるの?」

マリ「まだわかんないけど、とりあえず、あの霧島マヤって子、戦略自衛隊の子みたい」

アスカ「……どういうこと?」

マリ「有り体に言えば、スパイってやつかにゃ。ワンコくんに取り入ろうとするはずだよ」

アスカ「あいつがっ……!」

マリ「でも、ワンコくんに対して危害をくわえる理由はないから心配いらないと思うけど」

アスカ「近づくのは許せないわ」

マリ「りょ~かい。あぁ、そうそう。姫のブロマイド、一枚買っちゃったんだ」

アスカ「あぁ……なんか、出回ってるやつね」

マリ「そ。でかでかとハーフドイツ人って書いてあるけど、姫ってクォーターだよね?」

アスカ「なんであんたがそこまで知ってるのよ……シンジも知らないのに」

マリ「細かいことは気にしなぁ~いのぉ~♪」

アスカ「……帰国子女でドイツの血が混ざってるって言ってあるだけだから、ハーフだと勘違いしてるんでしょ。どうでもいい」

マリ「そっか。これ貰っとくね♪」

アスカ「女の写真なんか貰ってどうする気?」

マリ「目の保養は必要っしょ。私はワンコくんよりも姫の味方だし」

- 放課後 学校 校門前 -

アスカ「さてと、それじゃヒカリ――」

トウジ「これから見舞いか?」

アスカ「そうよ?」

ケンスケ「僕たちも一緒にいくよ。な? 委員長」

ヒカリ「うん……」

アスカ「あんた達も暇ね」

トウジ「まぁ、シンジに話したいことがあるからのー」

アスカ「……?」

ケンスケ「まぁまぁ、それじゃ! ご一緒しましょう!」



ブロロロロッ キキーッ



トウジ「うぅーげほっ! げほっ!どこのアホンダラやっ!」

アスカ「……けほっけほっ……砂が目にはいるぅ……」


バタンッ


ミサト「アスカ……。よかった。まだ学校にいたのね。みんなも」

アスカ&トウジ&ケンスケ&ヒカリ「ミサト(さん)⁉︎」

ミサト「シンジくんの体にちょっち異常が見つかったらしいの――」

アスカ「――ど、どういうことっ⁉︎」

- 車内 移動中 -

トウジ「感染症って大丈夫なんですか?」

ミサト「たいして心配はいらないけど、大事をとってお見舞いは控えてくれると助かるわ。といってもリツコの指示で面会謝絶だけど」

ケンスケ「火傷、やっぱりひどかったんだなぁ」

ミサト「皮膚の再生中が一番敏感らしいのよ」

アスカ「退院がのびたりするの?」

ミサト「どうかしら。少しのびるかもしれないけど、抗生剤を点滴するって話だから」

ヒカリ「……やっぱり、大変なんですね」

ミサト「そうね……。アスカもレイもそうだけど、パイロットは命をかけてるわ」

トウジ&ケンスケ&ヒカリ「…………」

アスカ「少しも会えない? 私、心配なのよ」

ミサト「シンジくんの為を思うなら、今は医師にまかせておくべきよ。心配な気持ちもわかるけど」

アスカ「…………」

ミサト「アスカ? シンジくんと両想いなんでしょ? だったら、焦ることないじゃない」

アスカ「そうね……。でも、シンジになにかあったらすぐに教えて」

トウジ「あ、あの。ミサトさん」

ヒカリ「アスカと碇くんが両想いって……」

ミサト「あぁ。アスカから聞いたわ。まぁ、いつかはこうなると思ってたし」

ケンスケ「あっちゃあ~~……」

ミサト「……?」

ミサト「後部座席、狭いでしょ? 元々そういう車だから」

トウジ「あぁ、まぁ、大丈夫です」

ケンスケ「それより、あの~……」

アスカ「……どうしたの? あんたたち」

ヒカリ「あ、あのねっ? アスカ、あの、実は」

アスカ「ヒカリも?」

ミサト「――あ! そーだ! シンジくんが帰ってきたら、快気祝い! パーっとやりましょっか?」

アスカ「いいわね。ヒカリ達ももちろん来るでしょ?」

トウジ&ケンスケ&ヒカリ「あぁ……はい」

- 夜 総合病院 病室 -

シンジ「はぁ……暇だな」


コンコン ガチャッ


看護師「碇さん。点滴のお時間です」

シンジ「はい、わかりました」

看護師「点滴は1時間ほどで終わりますから、終わったらナースコールを押してください」

シンジ「はい」


プスッ


ヒカリ『アスカがどんな気持ちでいるかわかる⁉︎』

シンジ「(……アスカ。今、なにしてるんだろう……)」

- 総合病院 病室 2時間後 -

シンジ「な、なんだか、暑いな……」

シンジ「(エアコン、はついてるし。なんだこれ。なんか、内からこみあげてくるような)」

シンジ「……はぁっはぁっ……」

シンジ「……あれ、なんで勃ってるんだろ……はぁっはぁっ……」

シンジ「(ナースコール押すべき、かな。でも、こんなとこ見られたら……)」


シンジ「…………っ……」モゾモゾ

シンジ「……はぁっはぁっ……ぅっ……」シコ シコ



ガチャ



シンジ「はぁっはぁっ……」シコ シコ


スタスタ


シンジ「……あっ⁉︎」

レイ「――……碇くん」

シンジ「あ、綾波っ⁉︎」

レイ「なに、してるの?」

シンジ「あっ、これはっ、あのっ」

レイ「……苦しい?」

シンジ「……いや、大丈夫だよ……だから……」

レイ「碇くん。私、手伝ってあげる」

シンジ「え、えぇ⁉︎ いいよ!」

レイ「…………」シュルシュル

シンジ「あ、綾波……?」

レイ「…………」パサッ

シンジ「……っ!」ゴクリ

レイ「男の人は、我慢できない時があるんでしょ?」パサッ

シンジ「だ、だめだよ! 僕たちは、そんなんじゃ!」

レイ「――碇くん。見て。私、もうなにも着けてない」

シンジ「…………っ」

レイ「…………」スッ ギシギシ

シンジ「綾波! ベットにのったら」

レイ「……なに?」ゴソゴソ

シンジ「感染症が……っ⁉︎」

レイ「大丈夫。こわがらなくていい」ニギッニギ

レイ「どうして、我慢するの?」ニギニギッ

シンジ「…………そこは……僕のっ……」

レイ「気持ちいい?」シコ シコ

シンジ「うあぁっ……はぁっはぁっ……」

レイ「そう。気持ちいいのね」シコ シコ

シンジ「や、やめて。綾波。やめてよ……」

レイ「こんなに勃起してるのに?」ゴソゴソ


ボロンッ


レイ「碇くん。好きにしていいのよ?」

シンジ「だ、だめだよ。……はぁはぁっ……」

レイ「………んっ………」ニチャァ

シンジ「綾波っ⁉︎ なにしてっ――⁉︎」

レイ「んっ……ちゅ……はぁっ……んっんっんっんっ………はぁっ……」

シンジ「(アスカぁ……)」ビクゥ

レイ「んっんっんっ……裏筋、舐められるの好き?………」

シンジ「(意識が朦朧としてきた……これ、夢なんじゃないかな)」

レイ「………はぁっ……うんっ……んっ……」

シンジ「(綾波がこんなことするはず。上目遣いで僕のをくわえてるなんて)」

レイ「んっ……ちゅ……ちゅ……」

シンジ「(綾波の唾液が暖かくて、舌がすごくて)」

レイ「はぁっ………」シコシコ

シンジ「あやなみっ! 僕、もう!」

レイ「ん、らひて。ちょうらい。舌にだひて」あーん

シンジ「…………くっ!………」ビクンビクン

レイ「…………ちゅ……んっ…んっ……」コク

シンジ「……はぁはぁっ……そんな、僕、まだ……」

レイ「碇くん………」クパァ

シンジ「………っ!」



バターーンッ!!


マリ「ちょぉ~~~っと待ったぁぁぁっ!!!」



シンジ「………え?」

レイ「………」

マリ「ええぃっ!」タタタタッ

シンジ「だ、誰? ――うわぁ⁉︎」

マリ「――よっと!」バシュ

シンジ「いつっ⁉︎ ……な……な……(なにか、打たれた)……(意識が)……」

レイ「…………」

シンジ「あ……ぁ……」パタッ

マリ「…………はぁ~~~。ワンコくんの貞操は間一髪セーフ!」

レイ「…………」

マリ「まぁ、一回だしてるみたいだけど、口だからノーカンってことで」

レイ「…………あなた、誰?」

マリ「……3人目の綾波レイね。私は自己紹介するほどでもないよ」

レイ「…………」

マリ「どうする? ワンコくん今日は起きないよ」

レイ「…………」ニギニギ

マリ「なにしてるの……?」

レイ「………確認」フニャァ

マリ「おおー、見かけによらずビックだねー」

レイ「……だめ」

マリ「うんうん。何事も諦めが肝心」

レイ「…………」

マリ「ゲンドウくんも無茶するなぁ。みんな道具なんだね」

レイ「…………」ギシギシ スタスタ

マリ「ちょっと! 服着なくていーのー?」

レイ「……いい。赤木博士が待ってる」ガチャ

マリ「そ。それより、これからどうしたもんかなぁ~」

- 翌日 ネルフ本部 ??? -

冬月「失敗に終わったか」

リツコ「はい……。私も眠らされておりました、申し訳ありません」

ゲンドウ「…………」

冬月「しかし……何者だ?」

リツコ「調べておりますが、あの後すぐに姿を消したようで、いまだ……」

ゲンドウ「赤木博士。ご苦労だった」

冬月「サードチルドレンはどうする?」

ゲンドウ「……機会はまたある」

冬月「しばらく時間をおくのか? それでは、セカンドチルドレンと」

ゲンドウ「そうはならない。あの2人は引き離す」

リツコ「賛同できません……。セカンドチルドレンは精神的にサードチルドレンに依存しています。パイロットとして支障をきたすおそれが」

ゲンドウ「…………」

冬月「やれやれ、厄介なことになってしまったな」

ゲンドウ「……しばらく、様子を見る。葛城一尉のマンションに監視カメラを設置しておけ」

- 登校中 -

アスカ「――まったく!なんでミサトはアラームかけないのよ!」タタタタッ

マリ「姫っ! ちょっとまった!」

アスカ「あっ!――っと!」キキッ

マリ「姫ってば!」

アスカ「……あん? どこ?」キョロキョロ

マリ「こっちこっちぃ~」チョイチョイ

アスカ「なんでそんな細道から……?」

マリ「そのまま喋って。尾行してたのはあっちでのびてるけど念のため」

アスカ「……なに?」

マリ「ワンコくん、わりとやばいかも」

アスカ「ど、どういうことよ⁉︎ そんなに悪いの⁉︎」

マリ「あぁ、違う違う! 体のことは嘘だったの!」

アスカ「……え?」

マリ「昨日、逆レイプされかかってたよ」

アスカ「――はぁ⁉︎」

マリ「まぁ、興奮剤投与されてるから。あのままいけばワンコくんから襲ってたんだろうけど」

アスカ「ど、どうなってるの⁉︎」

マリ「ゲンドウくんがでばってきてるのがちょっとシャレにならないのよ」

アスカ「ゲンドウくん? 碇司令? シンジのお父さん――⁉︎」

マリ「ゲンドウくんは味方じゃない。自分の息子だろうと、なんだって利用するよ」

アスカ「シンジは大丈夫なの⁉︎」

マリ「大丈夫。監視の目がきついからもう行かないと。代わりがすぐにくる――」

アスカ「……ど、どうしたらいいのよ⁉︎」

マリ「ワンコくんとはやくヤッちゃいなよ! ただし! マンションはだめ!」

アスカ「えぇ……?」

マリ「初体験なんかどーでもいいけど。姫の場合は精神安定剤っしょ!」

アスカ「そ、そーいう問題?」

マリ「それじゃ! こっちに注意引きつけとくから! また今度ね♪」

- 総合病院 病室 -

シンジ「…………昨日の、なんだったんだろう」

シンジ「夢、なのかな」

シンジ「でも、あんな生々しい夢、見るかなぁ」


ガチャ


レイ「――……碇くん」

シンジ「あ、綾波っ⁉︎」

レイ「…………体調はどう?」

シンジ「あの、少し体がダルいけど、なんともない」

レイ「そう。抗生剤。効いたって話だから」

シンジ「そうなんだ。……あの、綾波」

レイ「なに?」

シンジ「昨日の、ことなんだけど」

レイ「…………」

シンジ「僕のとこにきた?」

レイ「…………学校、もう行かなくちゃいけないから」

シンジ「あ……。そっか」

シンジ「(夢だったのかなぁ)」

- 第三新東京都市第壱中学校 昼休み -

アスカ「(あぁ~~~~イライラするぅ!)」

アスカ「(シンジが襲われたってどういうことよ⁉︎ 誰よ相手は!! 聞きそびれちゃったじゃない!)」

アスカ「(相手が分かればそいつ殺して海の藻屑にしてやるのに!!)」

ヒカリ「――あの、アスカ?」

アスカ「(使えないやつね。マリって言ったっけ? なんか色々含みがあるけど! 私にはシンジが全部なのよ!)」

ヒカリ「アスカ? アスカってば」

アスカ「なによっ!!」バン

ヒカリ「――ひっ⁉︎」
マナ「――わぁっ⁉︎」

アスカ「……あれ?」

ヒカリ「……あの、霧島さんも、一緒にご飯食べたいって」

アスカ「はぁ?」

マナ「あ、あのっ。だめ、ですか?」

アスカ「……ちゃあ~んす」

ヒカリ&マナ「へ……?」

アスカ「(こいつ、スパイだったわね。エヴァのパイロットじゃないし。こいつで憂さ晴らししよ。シンジに近づくメス豚はデストロイよ)」

ヒカリ「いいかな……?」

アスカ「どーぞ」

マナ「よ、よかったぁっ!」

マナ「――うわぁ。洞木さんのお弁当すごいね! 自分で作ってるの⁉︎」

ヒカリ「ヒカリでいいよ。うん。私、お姉ちゃんと妹のもあるから。えへへ」

マナ「えらいんだねっ! おかず、取り替えっこしない⁉︎」

アスカ「…………」ジトー

ヒカリ&マナ「…………」

アスカ「はぁ。演技って疲れない?」

ヒカリ「え?」

マナ「……っ!」

アスカ「私もちょぉっと前まで演技しまくってたからあんまり人のこと言えないけど」

マナ「…………」

アスカ「――あんた、気に入らないわ」

ヒカリ「アスカ? どうしたの?」

アスカ「友達になれそうにない」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ」

マナ「……いいんです。いきなり馴れ馴れしくした私が悪いですよね」

アスカ「……はん。よくもまぁぬけぬけと。何枚舌があるの?」

マナ「……そんな、私はただ……」

アスカ「なにもかも騙せると思わないことね」

マナ「…………」グスッ

アスカ「今度は泣きの演技?」

ヒカリ「アスカっ! 言い過ぎよ!」

アスカ「ヒカリ。ちょっと黙ってて」

マナ「私、転校してきたばかりだから、仲良くなれたらと思って……」

アスカ「そうなんだー? でも無理ね。私はあんたが無理」

マナ「…………」

アスカ「シンジに手を出したら、後悔させてやる」コショコショ

マナ「――……っ⁉︎」

アスカ「あんた、男子達に輪姦させてやるから」コショコショ

マナ「――っ!」

ヒカリ「……アスカ! よく聞こえない! なに言ってるの⁉︎」

マナ「い、いいんですっ! お邪魔しました!」ガタタッ

ヒカリ「え? でも……」

マナ「私が全部悪かったの! だから洞木さんも気にしないで!」

アスカ「(ふぅ。ちょっとスッキリした)」


タタタタッ


ヒカリ「アスカ……。今のはひどいわよ」

アスカ「ん~? そうね。ヒカリ、ごめんなさい」

ヒカリ「私じゃなくてあの子に謝らなくちゃ」

アスカ「ヒカリも嫌な気分にさせたでしょ? だから、謝ってるの」

ヒカリ「んもうっ!」

レイ「(碇くんを守るって言ったのに)」ぼーっ

レイ「(でも、碇くん、口では嫌って言ってたけど気持ちよさそうだった)」

レイ「(守らなければいけないのは、なに?)」

レイ「(繋がること、それはとても気持ちいいことなのね)」

レイ「…………」スンスン

レイ「碇くんの、匂いがする」

二次創作なので別人は別人ですね
原作沿いでやってますが色々といじってるので、原作沿いでもなくなってきてますけど
合わなかったら回れ右をおすすめします

とりあえず時間的な都合で今日はここまでです
一線は超えず、ということで

どうもです
やっていいのかな?悪いのかな?という読む人側から考えているつもりな時もありました
好きにやると決めてから反応があったなぐらいしか捉えてないのですが注意だけはひとつ

このまま進行するとみなさんが思う〇〇ってこうだろとか〇〇はこんなことしない
そんなイメージとはさらに離れていくかもしれません
元々離れてたっていうのがない場合ですけどw

個々の持つキャライメージの中で許せる範囲かどうか
この線引きを各自でして頂いて無理だったら見ない方がいいと思います

余計なことかもしれませんがこれでお願いします

俺まとめサイトでしかSS見てなかったんで
他の投下してる人たちがどうしてるのかいくつかスレ見てみたんですけど
投下してる方たちはあんまり辺レスしてないんですね
俺もそういう風にして以降は辺レスをしない方向でいきます

では、続けます

- 1週間後 総合病院前 -

シンジ「どうも、お世話になりました」

看護師「いえいえ、こちらこそ。お大事にしてくださいね」

シンジ「はい」



ブロロロ キキッ

バタンッ


ミサト「おっまたせぇ~~っ!」

シンジ「ミサトさん、どうも」

ミサト「1週間ぶりね! シンジくん! 私と会えなくてさみしかった?」

シンジ「からかうのはやめてください。部屋の掃除できてたんですか?」

ミサト「うっ……。ま、まぁ、とりあえず行きましょうか。アスカも首をなが~くして待ってるし」

- 車内 移動中 -

ミサト「身体の具合はどぉ?」

シンジ「だいぶいいです」

ミサト「みんなから聞かれるから答え飽きちゃってるか」

シンジ「いえ、そんな」
.
ミサト「ネルフの医療スタッフ達が万全の状態で待機してるから、サポートはまかせといて」

シンジ「すみません」

ミサト「あらぁ? なんだか元気ない?」

シンジ「そ、そんなことないですよ。いつも通りです」

ミサト「シンジくんとこうやって2人なのも久しぶりになるわね。アスカが来てからは」

シンジ「そう、ですね。あの、ミサトさん。学校はどうなりますか?」

ミサト「本来なら入院していなきゃいけないところを無理に退院させてるんですもの。シンジくんにおまかせするわ」

シンジ「はい」

ミサト「シンちゃんは学校行きたいの?」

シンジ「……そうですね。みんなお見舞いに来てくれたし。お礼も言いたいから」

ミサト「わかった。放課後はネルフに通ってもらうことになるけどいい?」

シンジ「はい、わかりました」

ミサト「まったく~、もうちょっと気楽にやんなさいよっ!」ウリウリ

シンジ「う、うわ、ちょ、ミサトさん」

ミサト「アスカを惚れさせるなんて! そんなスケコマシ野郎だとは思わなかったわよ!」ウリウリ

シンジ「や、やめてくださいよっ! ……っ! ミ、ミサトさん! 前っ!」

ミサト「ん……? ――っ⁉︎」キキーッ



プーップーッ



ミサト「なに……渋滞……事故?」

シンジ「……なんだか、おかしいですよ。信号のランプが消えてる」



パタパタパタッ


ミサト「上に飛んでるあれは? 戦自のヘリ? ――っ!」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくん! 飛ばすわよ! しっかり掴まっててっ!」

- 戦自 基地 -

戦自「索敵レーダーに正体不明の反応あり! 予想上陸地点は旧熱海方面!」

副司令官「おそらく、8番目の奴ですか」

司令官「ああ、使徒だろう。一応、警報シフトにしておけ。決まりだからな」

副司令官「どうせまた奴の目的地は、第3新東京市ですね」

司令官「そうだな。俺達がすることは何も無いさ」

副司令「なんでいつもネルフばかり……」

司令官「お上の決定だ。仕方ないさ」

- ネルフ本部 発令所 -

冬月「――どうなっている⁉︎」

マヤ「だめです! 正・副・予備の三系統、完全に落ちています!」

冬月「同時に落ちるとは考えられんな……」

ゲンドウ「と、すればやはり――」

冬月「――落とされた。と考えるべきだろうな」

ゲンドウ「…………」

冬月「ネルフの中枢はすべてMAGIに頼りっぱなしだ。電気が使えないとなると、外部から完全に孤立してしまうぞ」

ゲンドウ「……通信手段の確保は必要だ。モールス信号に切り替えろ」

シゲル「も、モールス信号ですか?」

冬月「どうした? はやくやりたまえ」

シゲル「り、了解!」

- 戦自 基地 -

司令官「――どうしたっ⁉︎ なぜネルフは沈黙している⁉︎」バンッ

戦自オペレーター「原因不明! ――使徒! 以前進行中! 第二防衛ライン突破されます!」

司令官「あらゆる通信手段を使って連絡を試みろ!」

副司令「俺たちの出番ですかね?」

司令官「それもありうる! 第壱師団から順次、戦闘警戒態勢! 準備を急がせろ!」

副司令「了解!」

司令官「それと、情報もかき集めろ! 潜入しているものも全て使え!」

戦自オペレータ「了解。緊急警報。緊急警報。警戒レベル最大。これは訓練ではない。繰り返す――」

- ネルフ本部 ゲート前 -

カシュ

アスカ「……?」

カシュ

アスカ「あ、あれ?」

カシュ カシュ カシュ

アスカ「もぉ~! なんで反応しないのよ! ぶっ壊れてんじゃないのぉこれぇ⁉︎」


『皆様の、皆様の、よい街づくりを提案し、住みやすい社会を――』


アスカ「うっさいなぁ! 市議選とか他所でやりなさいよ!」

アスカ「…………。どうしよう」


ブロロロッ キキーツ


ミサト「――とうちゃくっ! アスカ! ちょうどよかった!」

アスカ「ミサト? ――シンジッ⁉︎」

シンジ「……う、うっぷ」

ミサト「シンちゃん、ちょっと胃が弱ったんじゃない?」

アスカ「シンジっ! よかった! 退院できたのね!」

ミサト「アスカにサプライズしようと思って言わなかったのよ」

アスカ「ちゃんと言いなさいよ! でも、よかった……」

シンジ「……アスカ、面会謝絶になってたから、1週間ぶりだね」

アスカ「あ……。うん(あ、あれ? なんだか、まともに顔見れない)」

ミサト「感動の対面はあとあと! アスカ、ゲートはどうなってる?」

アスカ「あ、そうだった。IDカードが反応しないのよね」

ミサト「やっぱり! 異常事態だわ! レイは⁉︎」

アスカ「学校は終わってるからこっちに向かってると思うけど」

ミサト「よしよし! アスカとシンジくんは非常用通路から先におりて! レイが来たら私も急いで後を追うわ」

- 非常用 通路 -

シンジ「アスカ、暗いから気をつけて」

アスカ「う、うん」

シンジ「どうしたの? 暗いのだめだったっけ?」

アスカ「そ、そんなわけないじゃない! ちょっと、慎重に進んでるだけ」ドッキンコドッキンコ

シンジ「そっか。……いつっ」ガンッ

アスカ「……? ――シンジッ⁉︎ 大丈夫⁉︎」

シンジ「ごめん。少し右手に痺れが残ってて」

アスカ「そ、そうなの? ご、ごめんなさい。私、気がつかなくて」

シンジ「気にすることないよ。アスカと会えて嬉しいよ」

アスカ「…………」ドサッ

シンジ「あ、アスカ⁉︎」

アスカ「……不意をうたれて、ちょ、ちょっと力が、膝に力が入らなかっただけ」

シンジ「大丈夫⁉︎ どこか悪いの⁉︎」

アスカ「シンジ、いつからそんなこと自然に言えるようになったの?」

シンジ「えっ?」

アスカ「……な、なんでもないっ!」

アスカ「……あの、シンジ」

シンジ「うん?」

アスカ「ドイツ語でありがとうってなんて言うか知ってる?」

シンジ「うぅん、なんだろう」

アスカ「……ダンケ。Danke schÖn」

シンジ「……」

アスカ「浅間山のお礼。まだちゃんと言えてなかったから」

シンジ「あぁ、こちらこそお見舞いありがとう」



カランカラン



アスカ「……? 誰? 誰かいるの」

シンジ「……ミサトさん?」



シーン



アスカ「シンジ。隠れて」ヒソヒソ

シンジ「えっ、でも」

アスカ「いいから。言う通りにして」

シンジ「……アスカ、急がないと」

アスカ「しっ。黙って。誰かいる」

シンジ「えっ?」



スタスタスタ



シンジ「ほんとだ。誰かくるっ」

アスカ「…………」ジー

シンジ「アスカ。もうちょっとそっち詰めて」

アスカ「……えぇっ⁉︎ ちょ、ちょっとシンジ、や、やだ」

シンジ「このままじゃ向こうから見られるよ」グイグイ

アスカ「ぁ……っ」

シンジ「………なんだろう。あたりを警戒してるね」

アスカ「ぁ……ぅん……(シンジの胸に、シンジの胸に、顔うずめてる)」

シンジ「…………」ジー

アスカ「すぅー……はぁー……(消毒液の匂い。包帯の匂いもする)」トロン



スタスタスタ



アスカ「(ちょ、ちょっと舐めてもいいかな)」

シンジ「アスカ。くるよ」ギュウ

アスカ「あ、ぁん……だめっ……こんなとこで……はぁはぁ……」

シンジ「……アスカ?」

アスカ「ふぁ……シンジぃ……」


シンジ「……ど、どうしたの? アスカ?」

アスカ「シンジぃ……シンジ……シンジ……シンジ……」ギュゥ

シンジ「ちょ、ちょっと?」

アスカ「…………だめ……匂い嗅いでると……だめなの……」

シンジ「あの」

アスカ「内股の奥がジンジンするの……シンジ……」

シンジ「うわっ……んんっ……⁉︎」ブチュウ

アスカ「んっ………」

シンジ「……………っ」

アスカ「……っ……ちゅ……」

シンジ「……ぷはぁっ…あ、アスカ……んっ」

アスカ「……はぁっ……シンジっ……もっと……舌絡ませ……んっ………」

シンジ「ん……ちゅ……んっ………」



スタスタスタ



ネルフ作業員「あれー。ナットここらへんで落としてなかったかなー」

- ネルフ本部 ゲート前 -

レイ「…………」スタスタスタ

ミサト「レイっ! 待ってたわよ!」

レイ「……?」

ミサト「なんだか様子がおかしいの! シンジくんとアスカは非常用通路から降りてるから私たちも行きましょう!」

レイ「……はい」


ブロロロッ


マコト「ミサトさぁ~~~んっ!」スピーカー


ミサト「……? 日向くん⁉︎ 選挙カーに乗ってなにやってるの⁉︎」

マコト「戦自より通達あり! 現在! 使徒接近中!」

ミサト「――やっぱりね!」

- 非常用通路 -

アスカ「……んっ……ちゅ……」さすさす

シンジ「……んっ⁉︎……アスカっ……そこは……」

アスカ「だ…だまっ…んっ……て……ちゅ……」ジィー

シンジ「……ぷはっ……ズボンのチャックおろしたら……んっ……」

アスカ「……んっ……もっとぉ…あむっ……シンジの唾飲ませて……私の飲んで……ちゅ……」シコシコ

シンジ「……ちゅ……んっ……ぼ、ぼくたち……」

アスカ「……はぁっ……はぁっはぁっ……」

シンジ「あ、アスカ。はやすぎるよ……」

アスカ「停電してるんだよ。きっと」

シンジ「えっ?」

アスカ「……今なら、機能がマヒしてるはず」

シンジ「だ、だから急がないと……」

アスカ「違う。今しかないんだわ……。シンジ……」

シンジ「どうしたんだよ……」

アスカ「シンジ……」スッ

シンジ「――っ⁉︎(アスカの胸に手が……や、やわらかい)」

アスカ「シンジ、私もシンジのことが大好き。好き。好き。好き。ねぇ、心臓ドキドキいってるのわかるでしょ」

シンジ「……っ」

アスカ「――シンジだけにしかこんなことしない。ねぇ、シンジぃ……ここで抱いて……」

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「マヤちゃん、そっち、氷ない?」

マヤ「もう全部溶けてるわよ」

ゲンドウ「……………」

シゲル「しっかし、たまんないね、この暑さ」

マヤ「碇司令と副司令を見ならいなさい」

シゲル「ん~?」

マヤ「お二人とも暑いはずなのに、いつも通りなのよ。さすがね」




ゲンドウ「…………暑いな。水バケツの水をかえるか」

冬月「……そうだな」

- 非常用通路 -

シンジ「アスカ……でも、僕、アスカを傷つけたくないんだ、もっとゆっくり……」

アスカ「女の私が抱いてって言ったのよ……? 恥、かかせる気?」シコシコ

シンジ「……うっ……だ、だけど……アスカを軽く……」

アスカ「……シンジ……シンジならいいの……わかってる……軽くなんかないってわかってるから……」シコシコ

シンジ「(な、流されちゃ……)」

アスカ「……シンジの見せて……っ⁉︎」ボロン

シンジ「……っ!」

アスカ「……シンジ。あんた顔に似合わずおっきいのね……」

シンジ「アスカ! や、やめよう!」

アスカ「……はじめては私、シンジがいい。シンジ襲われかけたんでしょ」

シンジ「なっ何言って――」

アスカ「………たべちゃう」あ~む

シンジ「……っ」

アスカ「……あむっ……ちゅっ……んっ……おいひぃっ……シンジの……んちゅぅ……」

シンジ「あ、あすかぁ」

アスカ「もっと? ……もっと舐めてほしい? ……んっちゅ……んっ、んっ、んっ……」ジュポジュポ

シンジ「……だめだよ。こんなの絶対だめだっ!」ビクンビクン

アスカ「んっ、んっ、んっ」

シンジ「――あ、アスカ。でるっ!」

アスカ「――っ⁉︎」

シンジ「………はぁはぁ、僕って最低だ」

アスカ「んっ。んっ……」コク

シンジ「あ、アスカ? 飲んだの?」

アスカ「……ん。ティッシュと味違うのね」

シンジ「ティッシュ?」

アスカ「…………」シュルシュル パサッ

シンジ「……っ」

アスカ「ねぇ、シンジ。さわって」

シンジ「…………(き、綺麗な胸だ)」

アスカ「ここ……私の胸、どう?」スッ

シンジ「…………」ゴクリ

アスカ「つまんで……ぅんっ……あっ……だめぇっ」

シンジ「…………(アスカ、少しさわっただけで背筋が伸びてる)」

アスカ「シンジ。好き。好き。もっと……もっとしてぇ……」トロン

シンジ「あ、アスカぁ」ぱくっ

アスカ「ひゃん⁉︎ 舐めちゃ……ぁあんっ! ばかっ! そんなに……がっつかない……でぇっ……⁉︎」

シンジ「……ちゅ……んっ……」

アスカ「……そんなに舌で転がしたら……感じすぎるからぁっ……シンジぃ……あっ……あっ……」

アスカ「……だめぇっ……やばいぃっ……私……シンジに触られてると……やばいっ」

シンジ「アスカ、アスカ……」

アスカ「はぁっはぁっ……シンジ……私さっきから小さくイッてる…………」

シンジ「(あの夢よりも、我慢ができない)」

アスカ「――……クスッ。そんなにしたいの? いいわよ。シンジ。ひとつになろう」スルスル

シンジ「アスカぁ……」

アスカ「シンジはまだ病み上がりだから。私が上になる」

シンジ「…………」ドッキンコドッキンコ

アスカ「……私も濡れすぎちゃってる。パンツに染みできちゃった……」

シンジ「…………(はやく、はやく)」

アスカ「んっ……いくよ。んっ……ちょ、ちょっとこわい……先、あたってる?」

シンジ「う、うん」

アスカ「……ふぅふぅ……エヴァに比べれば……んっ……あっ――……」ミチミチ

シンジ「うわ、アスカ、なんだか、暖かくて」

アスカ「~~~っ! ごめん、シンジっ……いまかえせる余裕ないっ……!」

シンジ「はいってってるっ」

アスカ「……もう少しぃっ!」プチュン

シンジ「アスカ。……大丈夫?」

アスカ「ぜ、全部はいったわよ。どう? 気持ちいい? ぜーぜーっ」

シンジ「アスカの中あったかくて……でも大丈夫?」

アスカ「んっ、ちょ、ちょっとまって今動くから……いつっ」

シンジ「う、うん。でも、無理しなくても」

アスカ「せっかく繋がったんだから……。あ、あんたも気持ちよくなりたいでしょ」

シンジ「アスカ……」

アスカ「痛っ」

シンジ「…………」スッ

アスカ「シンジ⁉︎ ちょ……やっ……そこクリ……」

シンジ「アスカ。僕も手伝うよ」グリグリ

アスカ「ちょ、ちょっと……まってっ……だめ……」

シンジ「――動くよ。アスカ」

アスカ「……あっ、あっ、あっ……だめ、突き上げっ、シンジ、なんか変……」

- ネルフ本部 発令所 -

冬月「――それで、今使徒はどこだ?」

マコト「到達推定時刻は不明ですが、近いのは間違いありません」

ゲンドウ「エヴァ、発信準備。急がせろ」

ミサト「シンジくんたちはまだ来てない?」

マヤ「まだ見てません。非常用通路ならもうついてないとおかしいんですけど――」

ミサト「迷ってるのかしら……」

ゲンドウ「……葛城一尉、サードチルドレンとセカンドチルドレンの捜索チームをすぐに編成しろ」

ミサト「了解!」

冬月「何事もなければいいがな。あの年頃の男子はすぐに恋慕にハマりやすい」

ゲンドウ「…………そうなったら考えがある」

冬月「碇。……息子とセカンドチルドレンでもかまわんのではないか?」

ゲンドウ「冬月。何度も言わせるな。初号機の覚醒はレイと行ってもらう」

冬月「しかし、レイ以上の存在がサードチルドレンにできれば事実上、困難だろう」

ゲンドウ「……心配は無用だ」


冬月「レイに固執しすぎではないか? 私達の目的がなんなのか忘れちゃおるまいな」

ゲンドウ「……理由がある」

冬月「それで納得しろというのかね」

ゲンドウ「冬月。レイは器だ。器には器の役目がある。近く、アレの移植手術を行う」

冬月「ま、まだ早すぎるのではないか⁉︎」

ゲンドウ「遅かれ早かれだ。初号機の覚醒。そして魂の解放。レイは必要なピースなのだよ」

冬月「――君の息子もかね」

ゲンドウ「アレはおまけにすぎん。初号機のパイロットとしての役目だけだ」

冬月「わかったよ。この老いぼれでよければ付き合おう」

- 非常用通路 -

シンジ「――はぁはぁっ……アスカ、大丈夫?」

アスカ「………う、うん……シンジ……凄かった……」

シンジ「あ、ごめん。途中から夢中で動いちゃったから」

アスカ「気失いかけたわよ……でも、すごく、幸せだった……気持ちよかった……」

シンジ「僕も。気持ちよかったよ」ムクムクッ

アスカ「もぉ……まだしたいの?」

シンジ「う、ううん。……みたい」

アスカ「シンジが好きなだけさせてあげる。でも次はゴムするわよね」

シンジ「あ、うん」

アスカ「まだタレてきてる……」

シンジ「あっ、その」

アスカ「3回も中だししたこと、ミサトには内緒よ」

シンジ「アスカ。……先にこんな関係になってしまったけど、僕、ちゃんと責任とるよ」

アスカ「バカね。中学生に責任なんてとれるわけないじゃない」

シンジ「アスカのことは、守ってみせる」

アスカ「ん……。でも、服きましょ。そろそろ行かないと本当にやばいかも」

- 非常用通路 移動中 -

アスカ「シンジ? 大丈夫?」

シンジ「身体のことなら心配ない。アスカこそなんか歩き方変だけど平気?」

アスカ「うぅ~! まだ入ってる気がするぅ~」

シンジ「えーと」

アスカ「嫌じゃないんだけど。なんかゴワゴワするってゆーか」

シンジ「……な、なんて言ったらいいか」

アスカ「なにも言わなくていいの。またしたいんでしょ?」

シンジ「う、それはまぁ」

アスカ「――私も」

シンジ「うん?」

アスカ「私もしたいって言ったの! バカシンジ!」

- ネルフ本部 発令所 -

ミサト「――アスカたちまだぁっ⁉︎」

シゲル「発進準備、完了しています!」

マヤ「レイだけ、先に行かせますか?」

ミサト「う~ん。電気が回復していないから通信手段がないのよね~。3人揃って個々の判断にまかせようと思ったんだけど」

リツコ「……はぁ」

ミサト「リツコ⁉︎ 今までいないと思ってたらどこに行ってたのよ⁉︎」

リツコ「エレベーター」

ミサト「はい?」

リツコ「閉じこめられてたのよ」

ミサト「あぁ~。なるほど」



タタタタッ


アスカ「――ミサト! ごめん迷っちゃった!」

シンジ「…………あの、すいません」

ミサト「待ってたわよ! すぐにエヴァに乗って! 人力で準備してあるから!」

アスカ「やっぱ、使徒?」

ミサト「レイはすでにエヴァ内で待機してる。急いで!」

アスカ「了解!」


シンジ「あの、アスカ」コショコショ

アスカ「ん? どうしたの?」

シンジ「あの僕の精子とLCL大丈夫かな」

アスカ「あぁ」

シンジ「なんで、アスカはそんな堂々としてるの?」

アスカ「女は演技者なのよ。シンジこそビクビクしてちゃだめ。私を守ってくれるんでしょ」

シンジ「……っ!」

アスカ「いこっ!」

ミサト「エヴァとの起動バイパスは?」

マヤ「ノートパソコンから接続します」

オペレーター「マイクテスト、マイクテスト。聞こえますか?」

作業員「聞こえてるよ! うっせーな!」

オペレーター「了解。手動でハッチ開け。パイロットは速やかに搭乗してください」

作業員「いよーいしょ! いよーいしょ!」

オペレーター「――パイロットの搭乗を肉眼で確認」

リツコ「全機補助電源で起動開始」

オペレーター「了解。起動開始。シンクロスタート」

マヤ「………あれ?」

リツコ「どうしたの? マヤ」

マヤ「こ、これはっ⁉︎ し、信じられません! 弐号機&初号機ともにシンクロ率75%を超えています!」

リツコ「――機器の故障?」

シゲル「いえっ! こちらでも同等の数値を示しています!」

リツコ「…………(この変化は……)」

ゲンドウ「……赤木博士。今は発進を急がせろ」

- 第三新東京都市 市街地 -

マナ「――なんで⁉︎ 必要な情報は渡したじゃない! ムサシッ! ケイタァッ!」


ブロロロッ


マナ「………うっ……うぐっ……」ゴシゴシ

マナ「助けなきゃ! 泣いてる暇なんてないっ!」



タタタタッ





マリ「ふむふむ。にゃるほど~。そういうことね」

- 初号機 プラグ内 通信 -

シンジ「LCLって火傷にも大丈夫なんだな」

アスカ『なに呑気なこと――シンジっ! あんた! 顔っ!』

レイ『どうしたの? ………っ」

シンジ「どうしたの? 2人とも」

アスカ『顔半分! 皮膚の色が違うじゃない!』

シンジ「あぁ。エヴァに乗るために包帯をはずしたから。えっと色素がまだ回復してないらしいよ」

アスカ『回復するのっ⁉︎』

シンジ「後は残るから、完全には回復しないみたいだけど」

アスカ『――ご、ごめん。シンジ。私のために』

レイ『…………』

シンジ「いいよ。それでよかったって思えるから」

- ネルフ本部 発令所 -

オペレーター「第1ロックボルト、外せ」

作業員「いよーいしょ! いよーいしょ!」

オペレーター「2番から36番までの油圧ロック、解除」

マヤ「圧力ゼロ。状況フリー」

ミサト「使徒は?」

マコト「戦自よりモールス信号を受信! 現在、この真上にて停止の模様!」

ミサト「くっ! 間に合わないわよ!」

リツコ「――作業急いで!」

ゲンドウ「かまわん。各機、自力でハッチを開けろ」

リツコ「補助バッテリーは⁉︎」

オペレーター「――搭載完了」

リツコ「ミサト!」

ミサト「ようやくね! 発進!」

- 弐号機 プラグ内通信 -

アスカ「なぁ~にが発進よ。この四つん這い歩行が発進なんてダサすぎる」ズシンズシン

シンジ『アスカ、仕方ないよ』

レイ『……目標は真上にいるって話だったわ』

アスカ「てことは、こっちね。よっと」バコン

シンジ『気をつけて』

アスカ「ううん、心配いらない。なんだかいつもの弐号機と違う気がするの。優しく、包み込んでくれてるみたいな。今ならなんでもできる気がする」

レイ『…………』

シンジ『わかった。もうすぐ、縦穴にでるよ』

アスカ「(本当に、暖かい。ママを思い出す……)」

アスカ「(なんだろう、ママのこと思い出すのこわかったのに、不思議)」


シンジ『アスカ! 危ないっ!』


アスカ「――えっ?」

シンジ『くっ! 間に合えっ!』

第9使徒マトリエル「…………」デロデロデロ


ジュウッ

パキーーーーンッ!


アスカ「………あれ?」

シンジ『は、はじいた? す、すごい。アスカがやったの?』

アスカ「わ、私じゃない。シンジがやったの?」

レイ『目標は、強力な溶解液で本部を直接攻撃するつもりね』

アスカ「……なに。この感じ。………ママ? ママなの?」

シンジ『どうする? フォーメーションを組んだ方がいいかな』

レイ『背中の予備電源は3分を切ってる』

アスカ「2人とも。……私にやらせてくれない……」

シンジ『アスカ? 危ないよ』

アスカ「確かめたいことがあるの。お願い」

レイ『…………』

シンジ『…………わかった。僕はいいよ』

アスカ「ファースト。あんたとも色々あったけど、今はお願い」

レイ『自信、あるの?』

アスカ「あったりまえよ」

レイ『……了解。バックアップにまわる』




アスカ「……ありがと! さぁ! いくわよ! 私の弐号機!」

- ネルフ本部 発令所 -

マヤ「――っ! そんなバカなっ! 弐号機!シンクロ率が……ひゃ、100パーセント⁉︎」

リツコ「なんですって⁉︎」

ミサト「どうなってるの⁉︎」

シゲル「数値の変化が凄まじすぎますっ! この端末では追いつけません! 解析不能!」

冬月「データはたしかなのか⁉︎」

マヤ「ま、間違いありませんっ!」

冬月「まさか……⁉︎」

ゲンドウ「…………」

冬月「碇! 弐号機とパイロットが覚醒してるんじゃないのか⁉︎」

冬月「いかん! いかんぞこれは! 我々にもゼーレにもないシナリオだ!」

ゲンドウ「…………使徒の殲滅を最優先とする」

マヤ「シンクロ率、いまだ上昇を続けています!」

リツコ「モニタリングは⁉︎」

シゲル「電力がないのでできません!」

ミサト「……アスカっ!」




ガガーピピッ





加持「耳いてぇ~。この盗聴器、感度悪いなぁ。………しかし、これで俺たちのシナリオはようやく軌道にのったと言えるかな」

マリ「まだスタートラインって感じけどねー。ヤッちゃったらすぐって姫ったらゲンキンだねぇ」

加持「精神安定的なものが大きいんだろう。ヤるだけじゃ意味ないさ。充実してないとな」

マリ「……ワンコくんのお手柄ってやつかな」

加持「あぁ……たいしたもんだよ。シンジくんは」

マリ「でも、なんでワンコくんに興奮剤投与したんだろ、ゲンドウくん」

加持「ん?」

マリ「別に興奮剤投与しなくても、あの年頃だと流されちゃうもんじゃん?」

加持「シンジくんの性格を考慮したんだろう。興奮剤と幻覚。それに伴う恋愛感情を引き出そうとしたのかもな」

マリ「…………」

加持「あの歳には、恋愛なんてものは偶像なのさ。周囲の影響やちょっとしたきっかけで好きだと感じる。思いこむ。俺たち大人も人のことは言えないがね」

マリ「まぁ、なんにせよ、これでゼーレと碇司令が黙っちゃいませんな」

加持「……そうですか」

- 弐号機 プラグ内 通信 -

アスカ「――わかる! こうすればいいのね!」

第9使徒マトリエル「…………」デロデロデロ


ジュウジュウ

パキーーーーンッ!


アスカ「ATフィールドの使い方! こんなに近くにママを感じるなんて! ずっと! ずっと一緒にいたのね!」ダンダンダンッ

シンジ『か、壁を』

レイ『……駆け上がってる』

アスカ「ママ! 私はここよ! うんっ! そっちにやればいいのね!」


第9使徒マトリエル「…………」

アスカ「邪魔っすんなゴルァァッ!」グシャ

第9使徒マトリエル「」


シンジ『ナイフも、ライフルも使わずに、パンチだけで……』

レイ『…………』



アスカ「はぁはぁっ……」



弐号機「…………ヴゥウウ………」

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「し、使徒、活動を停止」

マヤ「エヴァの補助電源、切れました」

リツコ「――弐号機の最終的なシンクロ率は?」

マヤ「…………」

リツコ「マヤ、報告して」

マヤ「に、250%、です」

リツコ「はやめに使徒を殲滅できたのが幸いね。あのまま上昇を続ければ人に戻れなくなるところだった」

ゲンドウ「……赤木博士、後は頼む」

リツコ「セカンドチルドレンはどのようにいたしますか?」

ゲンドウ「追って知らせる。それまでは現状維持だ。冬月。行くぞ」

冬月「…………」

ミサト「リツコ! これってどういうことなのよ⁉︎」

リツコ「…………」

ミサト「エヴァのシンクロ率に上限はないの⁉︎ アスカはなんであそこまで⁉︎」

リツコ「わからないわ」

ミサト「あ、あんた。私になにか嘘ついてない?」

リツコ「なにもついてないわよ」

ミサト「ならなんでそんなに冷静でいられるのよ! 一歩間違えばアスカが!」

リツコ「私にだってわからないことはあるのよっ!」バンッ

- ネルフ本部 医務 -

医療スタッフ『メディカルチェック異常なし』

医療スタッフ『脳波、及び主要な器官に異常は確認できません』

リツコ「…………」カキカキ

アスカ「もーっ! なんともないってばぁ!」

リツコ「あなたのシンクロ率は異常よ。必要な検査は受けてもらいます。それとも、理由、説明できる?」

アスカ「……はぁ」

リツコ「次、エコーかけて」

医療スタッフ『了解』

- ネルフ本部 ラボ -

アスカ「それでぇ? 今度はなに?」

リツコ「ヒアリング。当時の状況を詳しく話てちょうだい」


加持『リッちゃんには少し気をつけておいてくれ』


アスカ「ん……なんかフワッとした感じがしたから。それに身を任せただけ」

リツコ「フワッと、ねぇ。空中に浮いてるような浮翌遊感。それとも眠気を感じたの?」

アスカ「よく、覚えてない。無我夢中だったから」

リツコ「ふん……記憶の混乱が見受けられるということね」カキカキ

アスカ「はぁ……ねぇ、もう帰っていい? 疲れてるのよ」

リツコ「まだよ。シンジくんとはなにか進展があった?」

アスカ「――なにも。シンジはまだ私の気持ちに気がついてない」

リツコ「どうして言わないの?」

アスカ「私からは、言いにくいわよ。それに、そんなのガラじゃない」

リツコ「そうかしら? アスカ、シンジくんに対して冷たくなってない?」

アスカ「そんなことない。シンジは私にとって大切な人だもの。話はそれだけ?」

リツコ「――ひとつ、話をしておくわ」

アスカ「なに……? めんどくさいのはパスよ」

リツコ「心理学の初歩的なことなんだけれど、なにかを隠したい時は冷たくするのよ」

アスカ「どういう意味……?」

リツコ「いいえ。なにも思い当たる節がないのならかまわないわ」

アスカ「そう。それなら問題ないわね」

リツコ「えぇ、そうね。今日はお疲れ様」

アスカ「リツコ」

リツコ「なに?」

アスカ「私こう見えて大卒なのよ。だから初歩的な心理学なら学んでる」

リツコ「……そうだったわね」

アスカ「お疲れ様とか普段言わないくせに。人が優しくする時は、なにを引き出したい時かしらね」

リツコ「ふぅ……。さがっていいわ」

- ネルフ本部 ??? -

冬月「まったくどうなっている! エヴァ全機のドライブレコーダーはどこにいったんだ!」

リツコ「技術班が回収しようとした時には既に持ち去られていました」

冬月「だからそれが誰の仕業かと聞いているんだ!」バンッ

リツコ「……おそらくではありますが、思い当たる人物が1人おります」

冬月「誰かね?」

リツコ「……加持リョウジ」

冬月「ちっ、まったく! こんなことならもっと早めに始末しておくべきだった!」

ゲンドウ「……セカンドチルドレンの様子はどうだ?」

リツコ「外傷など身体的損傷は見られません。精神もかなり安定しております」

冬月「弐号機のコアに気がついたんじゃないのか?」

リツコ「可能性としては高いかと。しかし、一時的な暴走状態にあったと考えられなくもありせん」

冬月「他のパイロット達はなんと言ってる」

リツコ「レイやシンジくんはアスカが興奮していたということだけ」

ゲンドウ「…………」

冬月「気がついたと考えるのが妥当だろうな。しかし、これは厄介だぞ。今はまだ弐号機は必要な戦力だ」

ゲンドウ「……あぁ。残りの使徒も多い」

冬月「コアの書き換えはどうかね?」

リツコ「候補は何名かおりますが、すぐにというわけには……」

冬月「あの男、電力が切れた時を狙ってきおって!」バンッ

リツコ「…………」

冬月「奴からはシナリオがあるとしか聞いていないのだろう?」

リツコ「はい、申し訳ありません。元々、言葉遊びをする間柄だったのでそれ以上のことは……」

冬月「ちっ……」

ゲンドウ「……とりあえず、様子を見る」

冬月「しかし、電力を落としたのもやつの根回しではないのか?」

ゲンドウ「冬月。手はまだある。万策尽きたわけではない」

冬月「はぁ……。委員会にはどう報告する」

ゲンドウ「ありのままだ。こちらにとっても想定外の出来事だった」

- 翌日 ミサト宅 -

ピピピッ

シンジ「ん……朝か。うぅー、まだ眠い」


ピピピッ カチ


シンジ「……あれ? 目覚まし、僕、止めてないのに――」


アスカ「グッモーニン! シンジ!」


シンジ「ふぁ?」

アスカ「なに寝ぼけてんのよ! もう朝よ」

シンジ「あれ? アスカ? 今何時……?」

アスカ「まだ5時30分」

シンジ「……あぁ、今日は早起きなんだね」

アスカ「ほら、しゃきっとしなさい」

シンジ「え? あの?」

アスカ「着替え! 制服そこに畳んでおいてあるから」

シンジ「はぁ……」

アスカ「着替えたら顔洗ってリビングにきなさい」

シンジ「あぁ……はい……」

アスカ「私、キッチンでやることあるから」

トタトタトタ

シンジ「はぁ……なんだぁ……?」


- ミサト宅 リビング -

シンジ「ふぁ~ぁ……」

トタトタトタ

シンジ「アスカ……なにやって……えぇ?」


コトコトコト タンタンタン


アスカ「シンジ。もう顔洗ったの?」


シンジ「……まだ、です……」

アスカ「はやく顔洗ってきなさい。朝、お味噌汁でいいわよね」

シンジ「はい……」ぼけー

アスカ「まだ寝ぼけてるの?」

シンジ「あ……いえ……顔、洗って、って、僕顔洗えないんで、手洗ってきます」

アスカ「あぁ、ごめん。そうよね。それじゃ手洗って。なにか手伝うことある?」

シンジ「いえっ! ぜんぜん!」

- ミサト宅 リビング -

ミサト「…………」

シンジ「…………」

アスカ「どうしたの? 2人とも。さ、食べるわよ」

ミサト「あの、これ。アスカが作ったの?」

アスカ「そうよ。他に誰がいるっていうのよ」

シンジ「アスカ、料理、作れたんだ?」

アスカ「いいえ。ヒカリに教わったの。1週間通いづめちゃったから」

ミサト&シンジ「そ、そうですか」

ミサト「……っは! いけない、危うく現実逃避しそうになったわ!」

アスカ「どういう意味?」

ミサト「いや、あははっ。――シンちゃんの為?」

アスカ「それもあるけど、途中からは楽しくなっちゃって」

シンジ「……そっか。よかったね。アスカ」

アスカ「そうじゃないでしょ! 味みてよ!」

シンジ「あぁ、ごめん。……いただきます」

ズズズッ

シンジ「――うん。お味噌も塩加減もちょうどいい。おいしいよ」

ミサト「あらっ! どれどれぇ? ――ほんとぉ! おいしいじゃないアスカぁ!」

アスカ「まぁ、当たり前よね」

- ミサト宅 リビング 30分後 -

アスカ「シンジ、私教科書忘れたのあるから、あんた少し玄関で待ってて」

シンジ「うん。わかったよ」

アスカ「それと、鞄は私が持ってあげるから」

シンジ「えぇ? そんな。そこまでさせちゃ悪いよ」

アスカ「怪我人なんだから当たり前でしょ。なに遠慮してんのよ」

シンジ「でも、アスカ女の子だし」

アスカ「持てる人が持てばいいの。そういうもんなのよ」

ミサト「シンちゃん。アスカの好意に甘えておきなさい。まだ痺れ、残ってるんでしょ」

シンジ「あぁ……はい」

- ミサト宅 アスカ部屋 -

アスカ「ええと……」ゴソゴソ

ポトッ

アスカ「……あっ」

人形「……」

アスカ「けっこう汚れ、ひどいね。あ、糸もほつれてる」

アスカ「……もう少ししたら綺麗になおしてあげるから。待ってて。ママ」



コンコンッ



アスカ「ん……? 窓?」

マリ『やっほー! ひぃめぇー!』フリフリ


ガラガラッ


アスカ「あんた。ここ何階だと思ってんのよ……いつからベランダにいたの?」

マリ「ついさっき。それよりも、ここ監視されてるから、はいこれ」

アスカ「……なに? イヤホン」

マリ「そそ。有効範囲は狭いんだけど、私が喋ってる声は聞こえるから。つけてね♪」

アスカ「はぁ……。わかった」

マリ「それじゃ、はやく行って。怪しまれない内に」

- 登校中 -

マリ『感度はどうかにゃー? 問題なかったら髪さわってもらっていい?』

アスカ「……シンジ、歩き大丈夫?」サワッ

マリ『おっけーおっけー♪ それじゃ報告したいことがあったのでそのことなんだけど』

シンジ「うん……。大丈夫だよ、ありがとう」

マリ「いやー、実は、あの転校生の霧島マナって子なんだけど、どうやら友達が人質にされてるみたいだよー』

アスカ「それじゃ、行きましょうか」

シンジ「うん」

マリ『それで、パイロットの情報を渡すことが友達の解放に繋がると信じてるみたい。泣けてきちゃうなぁー』

アスカ「…………」スタスタ

マリ『私達ができることと言ったらたいしてないんだけど、できないこともないんだよねぇー』

シンジ「まだ時間には余裕があるね」スタスタ

マリ『でも! ちょっと味方に引きこんでおいた方が後々助かるかなーって打算もあったり! なんだけどー? 姫どうしたい?』

アスカ「そうね。ゆっくり行きましょ」スタスタ

マリ『コンタクトとるかは姫にまかせるね! それじゃまた今度♪』

アスカ「……はぁ」

- 第三新東京都市第壱中学校 昼休み -

トウジ「シンジ、あらためまして、退院おめでとさん」

シンジ「トウジ、ケンスケもお見舞いありがとう」

ケンスケ「いいっていいって」

ヒカリ「鈴原達、なんか一緒に食べるのが普通になってない?」

トウジ「なんや、細かいこと言いなさんな! 委員長!」

ケンスケ「そーそー。大人数で食べた方がおいしいじゃないか!」

シンジ「僕が休んでる間に仲良くなったの?」

アスカ「気がついたら、いつのまにかこいつらがいただけ」

トウジ「女ばっかりじゃ寂しい思うてなぁ!」

アスカ「はぁ。はいはい」

ケンスケ「そ、それよりシンジ、後で話たいことが」

シンジ「ん? なに?」

トウジ「まぁまぁ。後で話するから」

シンジ「……?」

アスカ「もう1人、呼んでもかまわない?」ガタガタッ

ヒカリ「え? アスカ? 誰呼ぶの?」


スタスタ


トウジ「なんや? どこ行く――って」



マナ「…………あの、えっと」

アスカ「お昼休み中にごめんね」

マナ「いえ……」

アスカ「よかったら、一緒にお昼どう?」

マナ「え……でも、この前……」

アスカ「あれは私が悪かった。言いすぎよね。ごめん」

マナ「あ……」

アスカ「友達から、またやり直さない?」

マナ「あの……本当にお邪魔じゃないですか?」

トウジ「あぁ、かまへんかまへん! なぁ! シンジ」

シンジ「うん、僕は休んでたし」

ケンスケ「そこに座りなよ」

ヒカリ「アスカ……」

マナ「どうもありがとうございますっ」

アスカ「敬語もやめやめ!」

マナ「あっ……うんっ!」

アスカ「私のことはアスカって呼んで」

マナ「私っ、マナでいいよ!」

ヒカリ「えへへ……」

アスカ「シンジ、フォークつけておいたからこれ使って」

シンジ「ありがとう」

アスカ「あと、これお茶」スッ

シンジ「あ、うん」

アスカ「飲める?」

シンジ「大丈夫」

ヒカリ&トウジ&ケンスケ&マナ「…………」

アスカ「口元ご飯粒ついてるわよ」

シンジ「え? どこ?」

アスカ「そっちじゃない。こっち」ヒョイ パク

ヒカリ&トウジ&ケンスケ&マナ「お、おぉ」

トウジ「――お前らなんか雰囲気が変わってないか?」

アスカ「そう?」

シンジ「いつも通りだと思うけど」

ケンスケ「介護、なのかなぁ?」

トウジ「ゴリラ女がこんなに世話をするとは……ってやば!」バッ

ヒカリ「(鈴原もこりないわねー)」

ケンスケ「(殴られにいってるんじゃないのかなぁ?)」

マナ「……ご、ゴリラ女?」

シンジ「あ、これおいしい」もぐもぐ

アスカ「うん。これもヒカリに教えてもらったの。ね? ヒカリ」

トウジ「――あ……あれ?」

ヒカリ「へぇっ? あ、あぁ! うん! そうだね!」

ケンスケ「…………な、なにがどうなってるんだぁ?」

アスカ「あんたも、ガキみたいなこといつまでも言ってるんじゃないわよ」

トウジ「は、はぁ……」

ヒカリ「アスカ? 熱ない?」

アスカ「ん? ないわよ?」

シンジ「どうしたの? みんな」

ケンスケ「こ、これが……シンジパワーだとでも言うのか……」

マナ「あの……あはは……」

アスカ「――それはそうと、マナって親の転勤だったわよね」

マナ「そうだよ?」

アスカ「こっちはもう慣れた?」

マナ「……うん。少しだけ。あ、そうだ! アスカと碇くんってパイロットなんだよね⁉︎」

シンジ「そうだけど?」

マナ「かっこいいなぁーっ! 憧れちゃう!」

シンジ「そうかな? 憧れることなんて何もないよ」

マナ「でも、みんなを守ってるから、そういうのってかっこいいよ」

シンジ「そうかな」

マナ「碇くん、今、怪我してるんだよね? 私もなにかあったら協力するから言ってねっ」

シンジ「シンジでいいよ。霧島さん」

マナ「……あ、うん。私もマナでいいから」


ヒカリ「…………」ゴクリ

トウジ「今度こそ雷が落ちるで」

ケンスケ「さて、避難避難――」ガタッ



アスカ「助かる。シンジもなにかあったらマナに――」


トウジ「――だ、誰やお前はっ!!」ビシッ

アスカ「はぁ?」

トウジ「そこはシンジに近づくのは! とか言うんちゃうんかい!」

アスカ「なんでそんなこと言わなきゃいけないのよ?」

ケンスケ「はぁ……?」

ヒカリ「どうなってるの……」

ヒカリ「アスカ……。なにか悪いものでも食べたんじゃ?」

ケンスケ「もしかしてこれは……っ!」

トウジ「相田参謀! なにかわかったんか!」

ケンスケ「いかりぃ! 辛いな! 女心と秋の空って言うよなぁ!」

シンジ「……?」

ケンスケ「きっと心変わりしたんだよ! な⁉︎ そうだ――ぐへっ」ドサッ

アスカ「今のは殴るべきとこよね。……はぁ。なんだそんなこと。シンジのことは好きよ」

トウジ「す、好きってお前、シンジの前で……」

シンジ「あぁ、うん。ありがとう。アスカ」

ヒカリ「――えっ? 碇くん?」

アスカ「この話はこれでおしまい」

ヒカリ「えっ? でも、ちょっとっ」

アスカ「ま、ヤキモチばかりも妬いてられないしね」

- 第三新東京都市 市街地 -

加持「ちょっと慌ただしくなってきたな」

マリ「そぉ? そんなこと感じないけど。平和な日々は心安らぐねぇ」

加持「刺激は好きだろう?」

マリ「むふふ。だぁいせぇかい♪」

加持「もう少し面白くしてやろうじゃないか?」

マリ「わぁぉ! それは誰に? ゲンドウくん? それともゼーレ?」

加持「さて、戦自なんてのはいかがな?」

マリ「なぁるほど~!」

加持「ちっと荒くなるかもしれないが」

マリ「――……面白いなら、いいっ!!!」

- 第壱中学校 屋上 放課後 -

マナ「……はい……はい……あの、今日、登校してきました……はい……」

マナ「了解しました」

プツ

マナ「私がやらなくちゃ――」



マリ「なにを?」ヒョイ



マナ「わきゃぁっ⁉︎」

マリ「あれぇ~? そんなに驚かせちゃった?」

マナ「あ、あなた、い、いつから……」

マリ「いつからがい~ぃ? いや、それにしても名前が1文字違うだけって紛らわしいね」

マナ「……?」

マリ「どうしよっかなぁ~。なんて呼ぼう?」

マナ「――っ!」チャキ

マリ「おぉー。それ戦自の支給品かにゃ?」

マナ「う、動かないで! 動いたら撃つわよ!」

マリ「……君、おもしろいね」

マナ「あなた! 一体何者! 名を名乗りなさい!」

マリ「それはちょっとできないな~。少年兵のお友達はいいのー?」

マナ「――な、なんでそれを知ってるの⁉︎」

マリ「ネタバラシってギリギリまで引っ張った方が面白くない?」

マナ「ふざけないでっ!」

マリ「父親は病院勤務ってことになってるけどそれはウソ。転勤もウソ。あれもこれも……」

マナ「う、撃つわよ!」

だめだ眠い今日はここまで

マリ「それ、USPだよね?」スタスタ

マナ「……動かないでって言ったわよ!」カチャ

マリ「40口径モデルかな。携行するにはちょっと大きすぎない? いつもどこに隠してるの?」

マナ「……っ」カチリ

マリ「手! 震えちゃってるじゃん! 肘はちゃんとあげてもっとよく狙わないとぉ~ブレちゃうよー」

マナ「な、なにを……ち、近づかないで」

マリ「手伝ってあげるよ」ヒョイ

マナ「(そんな、銃口を手で……⁉︎)」

マリ「狙うのは心臓? それとも頭かな? 確実性がほしいなら、ここ。苦しめたいなら、ああ、そんなことはどうだっていいね」

マナ「撃たないとでも思ってるのっ⁉︎」

マリ「ぜんぜん? しっかり撃って。狙うのは眉間にしておこっか♪  ――はい、どうぞ。後は引き金を引くだけ。あ、弾き方はわかる?」

マナ「くっ……あなた、な、なんなの……」

マリ「落ち着いてちょっと話したいだけなんだけどにゃー。どぉ?」

マナ「……わかった。だから、銃から、はやく手を離して」

マリ「ふふん♪ 協力してくれて嬉しいよー」

マナ「――……」ジー

マリ「そんな警戒しなくってもいいってぇ。ここから見る景色、綺麗じゃない?」

マナ「…………」

マリ「第三新東京市。別名、使徒迎撃専用都市。使徒がくるのわかってて人が住んでるって正気とは思えないけど♪」

マナ「…………」

マリ「独り言は得意だからいいけどさぁ。もうちょっと反応があってもいいんじゃん?」

マナ「……目的はなに?」

マリ「おぉー。単刀直入にきたねー。それじゃ、こっちも誠意を持って答えましょう♪ ズバリ、情報交換、しない?」

マナ「情報交換……?」

マリ「協力してくれるなら、お友達。なんとかしてあげてもいいよ?」

マナ「――ほ、ほんと?」

マリ「焦らない焦らない♪ まずはお互いの条件から提示しましょっか♪」

- 第三新東京市 市街地 -

加持「――やはり、ここもダミー会社か」

女「ええ……。これで何社目?」

加持「木を隠すなら森の中、と言うだろ。こちらの目を欺いてるのさ」

女「こちらの動きもかなり制限されてる。下手には動けない」

加持「ま、第三新東京市に住んでるのはほぼネルフ関係者だからな。まわり中敵だらけさ」

女「…………」

加持「直接、戦自に潜入する。仲間達にも伝えておいてくれ」

女「次のコンタクトは――」

加持「追って連絡する。銃を忘れるなよ」

女「了解」スタスタ




加持「――ふぅ。戦自もいいが、アスカが乗り越えたなら、次は、シンジくんだな」

- ネルフ本部 -

マヤ「シミュレーションプラグ。準備完了しました」

リツコ「はじめて」

マヤ「了解。テスト開始します」

オペレーター「A10神経接続、完了」

リツコ「――……これは?」

ミサト「どうしたの?」

マヤ「……? 01番。シンクロ率が上昇しません」

ミサト「居眠りしてるんじゃ?」

リツコ「シンジくん? ちゃんとリラックスして」

シンジ『はい』

リツコ「――マヤ?」

マヤ「駄目です。シンクロ率、25.3%。起動指数、ギリギリです」

ミサト「ちょっと、まずいんじゃないの?」

マヤ「昨日の使徒の時は75%だったのに……」

ミサト「どうなってるの? 火傷のせい?」

リツコ「いいえ。外傷は関係ない。……他の子は正常に計測されてる。シンジくんだけというのがおかしいわね」

ミサト「…………」

マヤ「あっ、待ってください! 01番、シンクロ率45%まで上昇!」

リツコ「……バグかしら」

ミサト「不安定なのは困るわ。原因。突き止めて」

- ネルフ本部 第三通路 自販機前 -

シンジ「ふぅ……」

アスカ「シンジ、どこか体調でも悪いの?」

レイ「…………」

シンジ「いや、そんなことはないんだけど」

アスカ「まぁ、そういう日もあるわよ」

シンジ「――最近、なんだか、デジャヴを感じることが多いんだ」

アスカ「……?」

シンジ「頭の中がモヤモヤしてるような、うまく言えないんだけど……そんな――うっ!」ズキンッ

アスカ「……シンジ? ちょっと! どうしたの⁉︎」


アスカ『バカシンジ!』


シンジ「(な、なんだコレ。アスカ? 早送りされてるみたいに景色が浮かびあがってくる……!)」


アスカ『加持さん。私、汚されちゃった。汚されちゃったよぅ……』

レイ『ひとつになりたいのは、私?』

○○○『……そうしなければ、人類が滅ぶことになる。さぁ、ボクを殺してくれ』


シンジ「――あ、アスカっ! 綾波っ! か、カヲ――!」


アスカ「……な、なに?」

レイ「……?」


シンジ「はっ、え――……?」

アスカ「シンジ、具合が悪いならミサトに――」

シンジ「いや、なんでも、なんでもない」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「シンジくん、具合はどう?」

シンジ「あ、いえ。なんとも」

リツコ「……そう。エヴァとのシンクロが不安定だったみたいだけど、なにか考え事?」

シンジ「…………」

リツコ「アスカのこと考えてたのかしら?」

シンジ「あぁ、いえ。そんなことは……」

リツコ「アスカから何か聞いたりはしてない? 例えば、エヴァのこととか」

シンジ「なにも、聞いてません……」

リツコ「質問を変えましょうか。アスカと寝た?」

シンジ「え、えぇ⁉︎」

リツコ「シンジくんはアスカと違って年頃の男の子ですもの。そういう欲求があるのは理解してるわ」

シンジ「そ、そんなことするわけないじゃないですか!」

リツコ「……そう?」

シンジ「そんなこと聞くの、おかしいですよ」

リツコ「シンジくん。いずれまわりにもわかることなのよ? だったら自分から言ってしまった方がいい」

シンジ「アスカとは……そんなんじゃ、ないですよ」

リツコ「……(口裏を合わせてるのかしら? なにかがあったのは間違いない。人の言うことを素直に聞くのが処世術だと思ってたけど)」

シンジ「……(なんで、こんなに、言いたくないんだろう)」



シンジ&リツコ「……(どうなってるのかしら(だろう))」

- 夜 ミサト宅 -

コトッ

アスカ「はい、シンジ」

ミサト「いやぁ~! アスカったらもう付きっきりじゃなぁ~い! シンちゃん、嬉しい?」

シンジ「あぁ、そうですね」

アスカ「――ミサト」

ミサト「もしかして2人はもうエッチしちゃったりしたのかしらぁ~? それともまだチューまで?」

アスカ「ミサト、それセクハラ」

ミサト「だっはっはっ! お姉さんにも聞かせないよ! 酒の肴にちょーどいいじゃない?」

アスカ「……はぁ。素直に言えば? シンジのシンクロ率の低下の原因。私たちにあると思ってるんでしょ?」

シンジ「そ、そうなんですか?」

ミサト「あらぁ~。バレてた?」

アスカ「遠回しにやるのが大人のやり方よね。それ、傷つけない配慮なのかもしれないけど、不信感を抱くだけよ?」

ミサト「……ごみん。でも、実際のところどうなのか思い当たるとこなら教えてほしいのよ」

アスカ「たった1度のことでしょう⁉︎ 次はうまくいくかもしれないじゃない⁉︎」

ミサト「使徒が来た時に起こってしまえば、1度が命取りになるわ」

シンジ「…………」

ミサト「エヴァに乗るのは子供の玩具でも、遊びでもないのよ」

アスカ「詰問するのが効果的とは思えないって言ってんのよ」

ミサト「…………アスカ、なんだか余裕ができたのね」

アスカ「そう? 今度は私を攻めることにしたの?」

シンジ「ちょっと、考え事をしてただけです」

ミサト「……その言葉に、嘘はない?」

シンジ「はい、だから、アスカを責めないでください」

ミサト「次のシンクロテストの結果、うまくいくといいわね」

アスカ「ミサトっ! いい加減に――!」ガタッ

シンジ「アスカ。いいんだ」

アスカ「…………」

ミサト「ごめんなさい。シンジくんはアスカが来るまではエースだった。だから、期待も大きいのかもしれない」

アスカ「私が倒してあげるわよ」

ミサト「アスカのシンクロ率は高いわ。前回の出撃の時はヒヤッとしたけど今日も安定してたしね」

アスカ「……(まぁ、あれでもシンクロしすぎないようにおさえてるんだけど)」

ミサト「だけど、一人で対処できない状況になった時、シンジくんの助けは必要よ。浅間山のこと、忘れてないわよね?」

アスカ「またそれ? 過去のことに過敏になりすぎよ」

ミサト「防衛本能はそれぐらいがちょうどいいのよ」

アスカ「はぁ、はいはい」

ミサト「とりあえず、この話は次のシンクロテストの結果がでるまでは忘れましょう。もしかしたら、本当にそういう日だっただけなのかもしれないし」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくん。私は、私はあなたにはじめて会った時、あなたが初めてエヴァに乗った時、感動すら覚えたわ」

シンジ「………」

ミサト「何もわからない中学生が、よくわからないモノに乗ったんだもの。勇気も、そして守ってくれたことも賞賛してる」

シンジ「……はい」

ミサト「――私は、シンジくんのこと信じてるからね」

- ミサト宅 シンジ部屋 -

アスカ「はぁ。ミサトの言い方ってもうちょっとなんとかならないのかしら?」

シンジ「…………」

アスカ「まぁ、私たちはパイロットなんだし、言いたいこともわからなくないんだけど、いかにもプレッシャーかけてますって感じすんのよね」

シンジ「アスカ、なんだか、本当に変わったね」

アスカ「……本当は、シンジにいっぱい話たいことあるの」

シンジ「うん?」

アスカ「だけど、今は(誰が見てるかわからないから)話せない。ごめん」

シンジ「うん。いいよ」

アスカ「……シンジ、耳かして」

シンジ「なに?」


アスカ「今度は、どこでしよっか?」コショコショ


シンジ「……っ! あっ、あの……」

アスカ「ま、私はそう思ってるからってこと!」

シンジ「そ、そっか」

アスカ「だけど、意外。シンジ、私達のこと隠してるの? 私から言わないでって言ってなかったのに」コショコショ

シンジ「うん。なんとなく。アスカのことが大切だからかな――いつっ⁉︎」バチン

アスカ「だからさぁ! どうしてそういうこと言えるようになってんのよ!」

シンジ「し、仕方ないだろ! 本当にそう思ってるんだから!」

アスカ「な、な、な、な……(だ、だめ! ここで押し倒しちゃ! た、耐えるのよ!)」

- ネルフ本部 ??? -

委員会02「いかん。いかんよ。これは。由々しき事態だ」

委員会05「弐号機の覚醒はシナリオにない」

ゲンドウ「……これは不慮の事故です。電力が第三者に故意に落とされており、我々の制御下にありませんでした」

委員会06「君はコトの重大さがわかっているのかね。計画にどの程度の時と金をかけたか見当もつかん」

ゲンドウ「ご心配なさらずとも、弐号機は所詮デッドコピーです。オリジナルの初号機にはとるにたりません」

委員会03「しかし、ネズミは始末したのではなかったのか」

ゲンドウ「……想定外でした。背後に誰かついている可能性があります」

委員会02「弐号機の凍結は今はまだできない。量産計画が間に合わないからね。この責任、どう取るつもりかね?」

キール「――もうよい。碇。これまでの功績を評価し今回の失態は許そう。しかし、次はないぞ」

ゲンドウ「…………」

キール「命の選択を迫られているのは貴様も同じだ」

ゲンドウ「…………」






冬月「ふぅ……。これで我々も背水の陣というわけか」

ゲンドウ「わかっていたはずだ。世界を敵にまわすのは容易ではない」

冬月「全面的にぶつかり合うのは避けたいものだな」

ゲンドウ「やむを得ぬ場合は、それも仕方ない」

- 翌日 ミサト宅 -

アスカ「ふ~ふんふ~ん、よっと」

シンジ「アスカ、もうフライパンの扱いもお手の物なんだね」

アスカ「まぁね。もともと器用な私が凄いんだけど」

ミサト「臆せず自分を褒めるのはシンちゃんも見ならったら?」

シンジ「……そうですね」

アスカ「まぁ、シンジはシンジだし。なかなか変わらないところもあるんでしよ」

ミサト「おーおー。熱い熱い。なんだか部屋の温度が上がった気がするわー」

アスカ「またセクハラオヤジ化してる。ミサト、はやくネルフに行っちゃいなさいよ」

ミサト「もうちょっとしてから行くわよん。あ、それとシンジくんは少し学校遅れていくから」

アスカ「……シンクロテストさせるつもり?」

ミサト「まぁ、その、ね」

アスカ「私にも我慢の限界ってもんがあんのよ。ちょっとしつこすぎない?」

ミサト「安心できれば、もう口にはださないわ。今回だけは我慢して」

アスカ「……シンジ、大丈夫?」

シンジ「僕なら大丈夫だよ。シンクロできれば問題ないんだし。アスカ、先に学校行ってて」

アスカ「……わかった……」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「いらっしゃい、シンジくん、あとミサトも」

シンジ「……どうも」

ミサト「また徹夜?」

リツコ「まぁね。原因を特定できない限り、またいつ起こるとも限らないもの」

シンジ「あの、僕のせいで、すみません」

ミサト「シンちゃんは機械じゃないんだもの。リツコの仕事なんだし、そんなに気にしないで」

リツコ「ミサト? あなたもいい加減な人ね」

ミサト「シンジくんのことは、私が1番よくわかってるわ。昨日はちょっと体調が悪かっただけよ」

リツコ「医療スタッフでもないのに?」

ミサト「あら? シンちゃんと一緒のお風呂にもはいってるし、一緒のご飯だって食べてるわよん」

リツコ「今は彼、お風呂にはいれないでしょ? まさか、いれてるんじゃないでしょうね?」

ミサト「ものの例えよ」

リツコ「軽率な言動を碇司令が聞いたら、左遷されるわよ」

ミサト「なんでそこで碇司令がでてくるのぉ?」

リツコ「……っ! とにかく! 真面目にやって!」

カシャ


ミサト「リツコのラボに来客? めずらしー。マヤ――」

ゲンドウ「…………」

ミサト「い、碇司令っ⁉︎」ガタッ

ゲンドウ「…………」

シンジ「と、父さん」

リツコ「はぁ。申し訳ございません。テストは今から行います」

ミサト「す、すぐにとりかかりますっ!」ビシッ


ゲンドウ「…………シンジ」


シンジ「な、なに?」

ゲンドウ「昨日はシンクロが不安定だったと聞いたが」

シンジ「……あぁ、うん」

ゲンドウ「……やる気がないならば、エヴァから降りろ」

シンジ「――っ!」

ゲンドウ「そんな者は必要ない」

シンジ「……な、なんだよそれ。父さんが僕を呼びつけたんじゃないか」

ゲンドウ「…………」

シンジ「昨日はたまたま調子が悪かっただけだよ!」

ゲンドウ「不服ならば出ていけ。目障りだ」

シンジ「……くっ!」

ミサト「あ、あの、碇司令」

ゲンドウ「――葛城一尉。本日付けで三佐へ昇進だ。書面化して通達になる」

ミサト「えっ⁉︎ は、はっ! 了解いたしました!」

ゲンドウ「……以上だ」

- ネルフ本部 -

オペレーター「初号機パイロットエントリー準備完了しました」

リツコ「テストスタート」

オペレーター「テストスタートします。オートパイロット、記憶開始」

マヤ「了解。シミュレーションプラグを挿入」

オペレーター「システムを、模擬体と接続します」

マヤ「シミュレーションプラグ、MAGIの制御下に入りました」

リツコ「どう? シンジくん、なにか違和感はある?」

シンジ『……いえ、なにもありません』

ミサト「さっきの碇司令とのやりとり、影響がないといいけど」

リツコ「この親子はいつものことでしょ」

ミサト「だけど、精神面に関与してるなら影響ないの?」

リツコ「そうね……とりあえず、結果を見ましょう。マヤ、プロセスは?」

マヤ「問題ありません。測定解析、進んでいます。シンクロ率の上昇も順調です」

リツコ「やっぱり、バグだったのかしら」

ミサト「理由は機械じゃ、シンジくんになんだか申し訳ないわね」

リツコ「確定したわけではないわよ。ブラックボックスはまだまだ不特定な部分が多い」

マヤ「シンクロ率、52.3%」

リツコ「昨日のテストよりはいいけれど、70%には届きそうにない?」

マヤ「まだはじまったばかりですから……」

リツコ「では、検証を続けて――」

- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

アスカ「……はぁ」

ヒカリ「アスカ? どうしたの?」

アスカ「うん? なんだか、エヴァパイロット、やめたくなっちゃってさぁ」

マナ「――え?」

アスカ「だってさぁ、事あるごとに言われるのよ? 私達の年齢わかってるのかしらね」

トウジ「まぁ、ミサトさん達も苦労があるんやろ」

アスカ「でもしわ寄せがきてるのは私達なのよ? 子供だからってことだけじゃないのはわかってるけどさ」

ケンスケ「……まぁ、たしかに、そうだよなぁ」

マナ「……アスカたちも色々、あるんだね」

アスカ「マナだってそう思う時ないの?」

マナ「え? わ、私は――」

アスカ「子供に何を背負わせてるのって。そう思うことないの?」

マナ「――っ⁉︎ あ、アスカ⁉︎」

ヒカリ「……?」

アスカ「みんな、いろいろ、あるわよね」

マナ「……っ!あの、アスカ。少し話したい」

アスカ「私も話さないといけないと思ってたわ」

トウジ&ケンスケ「…………はぁ?」

- 第壱中学校 屋上 -

マナ「――アスカは、この間の人と知り合い?」

アスカ「(ここは話を合わせておいた方がいいわね)……そうだけど?」

マナ「確認をとるように言われたの?」

アスカ「直接言われたわけじゃない。ただ、どう思ってるのか確認したかったのよ」

マナ「そんなに簡単な決断じゃないよ」

アスカ「…………」

マナ「ムサシもケイタも救いたいっ! だけど、危険が大きいじゃないっ!」

アスカ「…………」

マナ「うまく逃げられたとしても私達の今後の生活はどうなるの⁉︎」

アスカ「後ろ盾があれば、いいってこと?」

マナ「不安なんだもん! ケイタやムサシが死んじゃったらって!」

アスカ「(いまいち見えてこないわね)」

マナ「……シンジくんは信用できるの?」

アスカ「シンジ? もちろん、信用できるわよ」

マナ「本当にシンジくんが守ってくれるの⁉︎」

アスカ「(――はぁ?)」

マナ「シンジくんなら、できるって話だったじゃない⁉︎」

アスカ「……そうね。シンジなら、可能だわ」

マナ「――……わかった。戦略自衛隊の人達は信用できない。あなた達に賭けてみる」

アスカ「それで?」

マナ「もうすぐ、ロボットは、試運転にはいります」

アスカ「(ロボット?)」

マナ「パイロットには――ッ」



ゴオォォォォッ――



アスカ「うるさっ! なに? 戦闘機?」

マヤ「そんなっ⁉︎ まだ早すぎる!」

アスカ「えっ――?」

- ネルフ本部 発令所 -

マコト「厚木基地方面より、正体不明のアンノウン体が出現!」

ミサト「使徒⁉︎」

シゲル「パターン照合! 違います! 使徒ではありません!」

冬月「……また、厄介ごとか」

ゲンドウ「…………」

ミサト「使徒じゃないなら、私達の出番ではない、わね」

リツコ「そうも言ってられないみたいよ?」

ミサト「――え?」

マコト「戦自より出撃翌要請が来ました!」

ミサト「なんですって――⁉︎」

ゲンドウ「……初号機をただちに出撃させろ」

ミサト「し、しかし、我々の管轄外では⁉︎」

ゲンドウ「構わん。貸しは作っておいた方がいい」

ミサト「りょ、了解!」

- 初号機 エントリープラグ内 通信 -

ミサト『シンジくん、アスカもレイも学校に行ってて間に合わないわ。今回は1人だけで出撃になる』

シンジ「了解。目標は?」

ミサト『情報が錯交しているの。とりあえず、現場に向かって、進行を止めて。できる?」

シンジ「進行を止めるって、ただ、止めればいいんですか?」

ミサト『そうね。できれば無力化してほしいとこだけど、あとは現場の判断で臨機応変にいきましょ』

リツコ『シンジくん。目標は御殿場市方面に向かっている。エヴァの電源はそこまでは届かないのよ』

シンジ「……それじゃ、どうすれば」

ミサト『目標の位置ははっきりとしている。だから迷うことはないわ。電源供給ラインを超えたらアンビリカルケーブルを切断して最速で走って』

シンジ「了解」

リツコ『マヤ、初号機のシンクロ率は?』

マヤ『55%! 行けます!』

ミサト『さあ、シンちゃん、ひさびさの1人舞台よ!』

シンジ「(今は……余計なことは考えずに……)」

- 第壱中学校 屋上 -

マナ「そんな! ケイタァっ!」

アスカ「ちょ、ちょっと、なにがどうなって!」


『緊急警報、緊急警報、住民の皆さんは直ちにシェルターに避難してください』


アスカ「なんで⁉︎」

マナ「………うっ………ぐすっ……」

アスカ「ちょっとあんた! 泣いてちゃわからないじゃない! ってそんなこと言ってる場合じゃなかった、ネルフに急が――」

マナ「シンジくんが助けてくれるんでしょ⁉︎ 本当なのよね⁉︎」ガシッ

アスカ「ちょ、離しなさいってば――」


ガチャ


レイ「……あなた、何してるの」

アスカ「ファースト?」

レイ「緊急招集。碇くんが、初号機でもう出てる」

アスカ「シンジが⁉︎ シンクロは問題なかったのね!」

レイ「……先、行くから」

アスカ「わかったわ! 私もすぐにって! ちょっと!いい加減離して!」

マナ「――私もっ! 私もネルフに連れてって!」

- ネルフ本部 発令所 -

マコト「目標は高速で移動中! 移動速度は、マッハを超えています!」

ミサト「市街地への進入は被害拡大に繋がるわよ。シンジくん。目標の位置をデータで送るわ」

シンジ『了解!』

リツコ「急いでシンジくん。エヴァでも追いつけなくなる」

マヤ「初号機、電源供給ラインを超えます」

ミサト「アンビリカルケーブル切断」

シゲル「アンビリカルケーブルの切断を確認! 内部電源に切り替わります!」

ミサト「加速、開始」

マコト「初号機! 加速状態にはいりました! 速度上昇中! 目標を追跡中!」

シンジ『ミサトさんっ!! これじゃ追いつけない!』

シゲル「目標の速度がはやすぎます! 到達予定時刻、内部電源では間に合いません!」

ミサト「………くっ!」

マコト「厚木基地より再度入電! 目標はできるだ現状維持してほしいとのこと!」

ミサト「なに勝手なこと言ってんのよ! 戦自は!」

シンジ『ぐぅううぁぁぁっ!!』

マヤ「初号機の速度上昇! 初号機もマッハを超えました!」

ミサト「間に合う⁉︎」

リツコ「間に合った所で、電源もなしにどうやって止めるの?」

ミサト「手詰まりじゃない!」

ゲンドウ「……初号機は一旦停止。戦自には現状をそのまま伝えろ」

ミサト「しかし、よろしいんですか?」

ゲンドウ「出撃したという事実があればいい」

ミサト「了解! シンジくん――」

- 初号機 エントリープラグ内 通信 -

ミサト『シンジくん? 聞こえる? 残念だけど、追いつけそうにないわ!』

シンジ「――えっ⁉︎」

ミサト『初号機は戻って。また要請があれば、手を考えましょう!」

シンジ「そんな⁉︎ だってまだ、なにもしてないじゃないですか!」


ドクンッ


シンジ「(うっ、頭が……っ)」ズキンッ


ミサト『アスカ達も合流するから! きっと手はあるわよ!』


ドクンッ


シンジ「(なんだ、コレ。なんなんだよコレ)」ズキンッズキンッ


ミサト『シンジくん? 止まって!』

マヤ『初号機! さらに加速!』

ミサト『シンジくん⁉︎ どうしちゃったのよ⁉︎ シンジ――』


ドクンッ


シンジ「なんでいつも僕たちばっかりこんな目に」

シンジ「…………アスカを、綾波を、カヲルくんを………」

シンジ「みんなを、返せッッ!!!」

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「初号機! 通信切断!」

ミサト「どうなってるの? おかしいところなんて特になかったわよ!」

ゲンドウ「ただちに停止信号をおくれ」

マヤ「了解! 停止信号……ダメです! 受けつけません!」

マコト「初号機! シンクロ率が上昇しています!」

リツコ「なんですって⁉︎」

ゲンドウ「プラグを強制射出しろ」

マヤ「――そんな⁉︎ こちらからの指揮系統を全て拒否⁉︎」

リツコ「そんなこと! ありえないわ!」

マコト「凄まじい速度です! 初号機、アンノウン体と接近! みるみる距離を縮めています!」

冬月「……暴走か?」

ゲンドウ「…………」

マヤ「初号機、活動限界まで1分を切りました! これ以上の追撃は危険です!」

ミサト「まったく! 浅間山からの復帰戦がコレ⁉︎ 」

リツコ「あの時とは状況が違うわ! こちらからの操作を全て受けつけないなんて!」

マコト「――目標と間もなく接触します!」

ミサト「どうするつもり? ――シンジくん」

マヤ「初号機⁉︎ 速度緩めません!」

リツコ「なるほど、体当たりするつもりね」

マヤ「し、しかし、マッハを超える速度で体当たりすれば衝撃が……!」

シゲル「初号機からATフィールドの発生を確認!」

ミサト「ATフィールド⁉︎ 相手が使徒じゃないと有効じゃないんじゃ⁉︎」

リツコ「……そんなことはないわ。無機物にも有効よ」

シゲル「こ、これまでにない! 強力な磁場が発生!」

ゲンドウ「発生源は……」

冬月「初号機だろうな」

マヤ「初号機! 目標と接触!」

ミサト「ど、どうなるの?」

マコト「――初号機に強い衝撃がくわわりました!」

ミサト「それだけ⁉︎ 目標は⁉︎」

シゲル「目標、速度低下! 推進力を失った模様!」

マヤ「初号機! 活動限界まで5.4.3.2――」

ミサト「――どうちゃったのよ、シンジくん」

リツコ「今回は、処置なしとはいかないわよ」

タタタッ

アスカ「はぁっはあっ……ミサトッ! シンジは⁉︎」

レイ「……ふぅ……ふぅ……」

マナ「………はぁ……はぁ……」

ミサト「アスカ、レイ? 部外者を勝手に発令所に――」

アスカ「私が連れてきたのよ! 目標は⁉︎ シンジはどうなったの⁉︎」

ミサト「……目標は停止したわ。シンジくんは、初号機は活動限界で停止してる」

マナ「あのっ! 目標は、大丈夫なんですよね?」

ミサト「日向くん、どう?」

マコト「信号が消えていないことからも、おそらくはたいして損害はないと見受けられます」

マナ「よ、よかったぁ」

ミサト「あなた、どちら様?」

アスカ「私の友達」

ミサト「へぇ……」

リツコ「ミサト、今はそっちよりもシンジくんよ」

ミサト「回収班をすぐに派遣して。戦自はなにか言ってきてる?」

シゲル「管制塔より連絡あり。協力を感謝する、正体不明機は我々で回収するとのことです」

ミサト「ふざけてるわね。こっちには一切情報をよこすつもりないの……」

ゲンドウ「無人機を飛ばせ」

ミサト「了解。UAVをすぐに手配して、それと衛星からの地上写真も」

アスカ「ちょっと待って……シンジになにかあったの?」

ミサト「少なくとも営倉入りになる命令違反はあったわね」

アスカ「はぁ⁉︎ なんでそんなことになってんのよ⁉︎」

- ネルフ本部 医務室 -

ミサト「シンジくんの容体は⁉︎」

リツコ「検査結果はなにも問題ないわよ」

ミサト「……ふぅ……碇司令からは、なにかあった?」

リツコ「今の状態を伝えたら、処置なしと判断されたわ」

ミサト「ん? ちょっとひっかかる言い方ね。検査に問題はなかったんでしょ?」

リツコ「外傷、及び疾病の心配はないと言ったつもりだけど?」

ミサト「……それじゃ、他に問題があるってこと? もしかして精神的なやつ?」

リツコ「遠からずも近からずと言ったところかしらね」

ミサト「もったいぶるじゃない、私は監督者なのよ。いい加減教えなさいよ」

リツコ「シンジくんのことを1番理解しているんでしょ? 当ててみたら?」

ミサト「ぬぐ……っ! あんた、変なところで根に持つわね」

リツコ「すぐに改善できるような症状ではないもの。ミサトで少し遊んでるだけよ」

ミサト「……シンジくんでしょ? だったら、また、乗りたくなくなったとか?」

リツコ「はずれ」

ミサト「……わかったっ! 命令違反で営倉にはいるのを怖がってるとか!」

リツコ「それもはずれ」

ミサト「ん、んん~」

リツコ「……ふぅ。あなた、それでよくシンジくんのこと1番わかってるなんて言えたものね」

ミサト「じゃあなんなのよぉ」

リツコ「シンジくんは――」

- ネルフ本部 女子ロッカールーム -

アスカ「――シンジが記憶喪失ぅ⁉︎」

ミサト「……みたいなのよねぇ」

アスカ「みたいなのよねぇってちょっと⁉︎ そんなにノンビリ構えてる場合⁉︎」

ミサト「私としても困惑しっぱなしなのよ~」

レイ「……碇くんは、どこまでの記憶があるんですか?」

ミサト「リツコによると、エヴァに乗る時、第三新東京都市に来てからの記憶がすっぽりと抜け落ちてるみたい」

アスカ「そんな⁉︎ それじゃ私のこともまったく覚えてないの⁉︎」

ミサト「う~ん、まぁ、そうなっちゃうわよねぇ」

マナ「…………そんな、シンジくんが」

ミサト「とにかく、これからやらなければいけないことが山積みだわ。シンジくんのシンクロテストもそうだけど、戦自の正体不明機のことも気になるし」

マナ「あの、そのことなんですけど……」

ミサト「うん? そういえば、あの時、あなた無事かって言ってわよね」

マナ「はい。私、霧島マナといいます。実は、あの正体不明がなにか知っています!」

ミサト「……詳しく聞かせてもらえるかしら」

マナ「はい、かまいませんけど、あの、安全は保障してもらえますか?」

ミサト「まずは内容を聞いてみないとなんとも。ただ、有用であった場合は出来うる限りのことは協力させてもらうわよ」

アスカ「……そんな、シンジが記憶喪失だなんて」

ミサト「――アスカ? 大丈夫?」

アスカ「シンジに会いに行く! 今は医務室よね⁉︎」

ミサト「いいけど……覚えてないの見てもショック受けないでね?」

アスカ「思い出させてやるわよ!」

- ネルフ本部 医務室 -

アスカ「シンジッ!」

シンジ「……?」

アスカ「大丈夫なの⁉︎」

シンジ「……平気、だけど」

アスカ「……あれ? なんだ、いつもと変わらない――」

シンジ「あの、部屋間違えてませんか?」

アスカ「……っ⁉︎ うそ⁉︎ 本当に忘れちゃったの⁉︎」

シンジ「えっと……?」

アスカ「私よ! 私のこと本当に覚えてないの⁉︎」

シンジ「あの、僕と、どこかで会ったことあった?」

アスカ「――……そ、そんなっ」

シンジ「……?!」


ガチャ


レイ「……碇くん」

シンジ「また? えーと、名前知ってるみたいだけど、どちら様ですか?」

レイ「…………」

アスカ「……ファースト」

レイ「……なに?」

アスカ「ミサトは?」

レイ「転校生と話をしてる」

アスカ「そ。それじゃ、私ミサトのところに行くから」

レイ「碇くんは、もういいの?」

アスカ「どうしてこうなったのか聞かなきゃおさまりつかないでしょ!! あったまきてんのよっ!!!」ガンッ

シンジ「ひっ⁉︎」

レイ「…………」

- ネルフ本部 女子ロッカールーム -

ミサト「つまり、あの正体不明機は戦自が秘密裏に開発したロボットってこと?」

マナ「はい……」

ミサト「ふぅん。でも、一体なんの為に?」

マナ「ネルフへの、対抗兵器なんだと思います。私が聞いた話だと、エヴァじゃなくても使徒と戦えるという話でした」

ミサト「……ま、使徒がきてから戦自はいつも尻拭いだもんね」

マナ「そのパイロットが、私の友人のムサシとケイタです」

ミサト「今回のは暴走か、なんらかの不都合が起きたと見ていいのかしら?」

マナ「おそらくは。テスト試行は近々行われる予定でしたが、本格的な実用化はまだまだ先の話で……」

ミサト「先っていうと、どれぐらい」

マナ「6年後、だったと思います」

ミサト「6年⁉︎ なんとも気の長い話ねぇ~」

マナ「……ですから、パイロットも20歳になるのを想定して現在14歳の両2名が選出されました」

ミサト「まるきり一般人てわけでもないんでしょ?」

マナ「はい。2人は少年兵で。もともと、志願して乗っています」

ミサト「でも、マナちゃんは2人を助けだしたいの?」

マナ「大人たちに都合のいいように利用されてるだけなんですっ! だから目を覚ませないとっ!」

ミサト「……なるほど」

マナ「……あの、どうにか、できそうですか?」

ミサト「ちょっと話が大きすぎて、私じゃなんとも言えないわね……」

カシャ


ミサト「あら、アスカ。 シンちゃんどうだっ――」

ガンッ!!!

マナ「っ⁉︎」

アスカ「……ミサト」

ミサト「なぁに?」

アスカ「今すぐ経緯を話すか殴り合いをするかどっちがいい?」

ミサト「人を殺しそうな迫力ね」

アスカ「望まれればやるわよ。我慢なんかとうに終わってるわ」

ミサト「……わからないって言ったら?」

アスカ「――っざけんじゃないわよっ!! シンジをどうするつもり⁉︎」

ミサト「とりあえず、経過を見るとしか言えないわね」

アスカ「はぁ? 経過を見てそれで記憶が戻るの⁉︎ もっと具体的な対策案がなにかあるでしょ⁉︎」

ミサト「赤木博士からは、すぐに戻るような状況ではないと聞いているわ」

アスカ「ネルフってそんなに無能なの⁉︎ 一流の大学出た秀才達が集まってんでしょ⁉︎ そんな奴らの見解がそれ⁉︎」

ミサト「……アスカ。わめいてもシンジくんの記憶は戻らないわよ」

アスカ「嘆いてんのよ! あんた達のあまりの頼りにならなさに!!」

ミサト「…………」

アスカ「……シンジをかえして……」

ミサト「……シンジくんはいるわよ……」



アスカ「シンジを返しなさいよっ!!!」ガンッ!!

- 帰宅中 -

アスカ「…………」テクテク

マナ「……あの、アスカ」テクテク

アスカ「…………」ピタッ

マナ「わっ」

アスカ「あんた、ミサトに話てよかったの?」

マナ「えっ?」

アスカ「ミサトに話するってことはネルフに話が通るってことよ?」

マナ「え? ――あの、そういう手はずだったはずじゃ?」

アスカ「……詳しく聞きたいけど、監視されてるかも」

マナ「あ、うん。そうよね」

アスカ「歩きながらでいいわ。あんたに話をしたのはメガネでいいわよね」テクテク

マナ「うん。メガネはかけてた」

アスカ「そいつと何か、計画したの?」

マナ「折り合いがついたら、やることを指示されてたの。アスカにネルフに連れていってもらったのもそれが理由」

アスカ「……それならそうと最初から言いなさいよ」

マナ「あの時は、私も気が動転してて……」

アスカ「シンジについては?」

マナ「シンジくんが私達を守ってくれるって、それだけ」

アスカ「……ふぅん」

マナ「あの、シンジくんは、記憶、取り戻せるよね?」

アスカ「取り戻せるわ。取り戻してもらわなきゃこまる」

マナ「……よ、よかった……私も安心できるし……」

アスカ「あんた、シンジのこと心配してるわけじゃないのね」

マナ「あ、ごめん……そんなこと、ないんだけど……」

アスカ「(あのメガネは次いつ現れるのよ⁉︎)」

- 翌日 第壱中学校 ホームルーム前 -

トウジ「記憶喪失ゥ~⁉︎」

ケンスケ「そんな漫画みたいなこと本当にあるのかぁ?」

アスカ「……そうよ」

ヒカリ「碇くん、大丈夫なの?」

アスカ「うん……。外傷はとくにないから」

ヒカリ「アスカ……。辛いね」

アスカ「ありがと。ヒカリ」

トウジ「センセも火傷の次は記憶喪失とか、ほんまエヴァパイロットっちゅーもんは大変やのぉ!」

ケンスケ「記憶は戻りそうなのか?」

アスカ「まだなんとも言えない。でも、取り戻すわよ。私はそう信じてる」

トウジ&ケンスケ&ヒカリ「…………」

アスカ「ま、そういうわけだから。シンジが登校してきてもあんた達、いつも通りやんなさいよ」

トウジ「登校してきて大丈夫なんか?」

アスカ「午前は検査で、今日の昼から来るわよ」

- 第壱中学校 昼休み -

ガラガラ

シンジ「…………」キョロキョロ


アスカ「……っ!」

ヒカリ「あ、い、いかり――」

アスカ「ヒカリ、黙って」

トウジ「なんや、話かけんのかいな?」

アスカ「……覚えてないのが嫌なのよ」

トウジ「シンジはシンジやろ! まったく! よー見ておけ!」ガタッ

ケンスケ「お、おい、トウジ――」


スタスタ


トウジ「よっ! シンジ!」

シンジ「……?」

トウジ「昼から出勤とは社長顔負けやなー! 記憶なくしたって聞いとるが?」

シンジ「あぁ、ってことは、僕が記憶をなくす前の知り合い?」

トウジ「……まぁ、そんなとこや。登校してきて大丈夫なんか?」

シンジ「うん。日常生活の中で思い出すことがあるかもしれないからって赤木博士が」

トウジ「さよか」

シンジ「あの、僕の席ってどこかな?」

トウジ「あぁ、それならあそこやで」

シンジ「ありがとう」

トウジ「なぁ、ほんまにワシたちのこと忘れてしもうたんか?」

シンジ「……うん。ごめん」

トウジ「そうかぁ……。まぁ、そゆこともあるやろ」

シンジ「なかなか、ないと思うけど」

トウジ「…………」チラッ


アスカ&ヒカリ&ケンスケ「…………」ジー


トウジ「(あいつら、そんなに気になるなら話かければええのに、せや!)」

シンジ「……あの、まだなにか用?」

トウジ「なぁ、シンジ。記憶てどこからがないんや?」

シンジ「あ、うん。えっと数ヶ月前からなんだけど。えーと、たしか第三新東京都市にきてすぐから」

トウジ「それなら、シンジに彼女がおるのも覚えないんか?」

シンジ「えぇ⁉︎」

トウジ「ちなみに今も熱々で、昼休みになるといつも一緒に食べてたぐらいなんも?」


アスカ&ケンスケ&ヒカリ「……っ!」ガタッ


シンジ「そんな人が僕にいたの?」

トウジ「誰か知りたいか? ちょい耳貸せ」コショコショ

シンジ「――あっ。そうなんだ」

トウジ「声かけたれ。きっとあいつも待っとるからの」


スタスタ


アスカ「こ、こっちに来るわよ」

ヒカリ「(鈴原にしてはいいことやったかも)」

ケンスケ「よっ。碇。こっちこっち」

シンジ「あっ……。ここでいいんだね」

ケンスケ「記憶喪失とは大変だったな。俺は相田ケンスケって言うんだ」

シンジ「僕は、って、自己紹介の必要はないのか」

ケンスケ「こっちに用があったんだろ?」

シンジ「あ、うん。実は僕に彼女がいるって聞いて」


アスカ「彼女って私、まだ付き合ってるって言ってないのに」コショコショ

ヒカリ「いいじゃないアスカ。碇くんがこうして来てくれたんだもの」コショコショ


シンジ「ええと、あの、うまく言えないんだけど」

アスカ「……ふん、どうせあんたの――」


シンジ「心配かけてごめんね。洞木さん」


ヒカリ「へぇっ?」

アスカ「……ヒカリ?」


シンジ「僕、記憶なくなっちゃったけど、その、なんとかやるから」スッ

ヒカリ「へ? あの? い、碇くん? やだ、手」

アスカ「…………」パクパク

シンジ「どうしたの?」


トウジ「――なはははっ! 大・成・功!」

シンジ「……?」

ヒカリ「すぅ~~~ずぅ~~はぁ~らぁ~~っ!!」

アスカ「あんたの人生も今日で終わりね」

トウジ「なはは……は……なんや。冗談にマジになるなや!」

ヒカリ「やっていいことと悪いことがあるでしょう! 碇くんを騙して!」

ケンスケ「案外、委員長もドキッとしてたりして?」

ヒカリ「な、何言ってるのよ!!」

アスカ「ヒカリ、こいつらそろそろ一度きついのが必要だと思わない――?」

- ネルフ本部 ??? -

冬月「どうなることかと思ったが、我々にとっては良い結果だな」

リツコ「はい。シンジくんの記憶がなくなったことでアスカとの関係がなかったことになったのは僥倖と言えます」

冬月「やはり、あの2人になにかあったのは間違いないのかね?」

リツコ「間違いないかと。報告によるとクラスでも付き合っていると噂になっていたそうですわ」

ゲンドウ「子供の情報収集には子供が一番ということか」

リツコ「一概には言えませんが、往々にして距離感が近い者同士が打ち解けやすいのはたしかです」

冬月「この機会を逃す手はないな。今のうちにレイを近づけるべきか……」

リツコ「手を打ちますか?」

ゲンドウ「ああ……。邪魔がはいらないように警戒をしろ」

リツコ「承知いたしました」

- シンジ 夢の中 -

シンジ(少年)『キミは誰?』

シンジ「碇シンジ。君は?」

シンジ(少年)『ボクもシンジだよ』

シンジ「違うっ! 僕がシンジだ!」

シンジ(少年)『ボクのこと認めるのがこわいんだね』

シンジ「な、なに言ってるんだよ……」

シンジ(少年)『失敗するのがこわい? 自分が傷つくのがこわいんでしょ?』

シンジ「違う。こわくなんかない。僕はもう、逃げないって決めたんだ」

シンジ(少年)『今も逃げてるじゃない』

シンジ「誰から?」

シンジ(少年)『自分から。ボクから。アスカから。綾波から。父さんから。まわりから』

シンジ「違う。逃げてないんだっ!」

シンジ(少年)『逃げてちゃ、守れないよ』

シンジ「逃げてない! 逃げてないんだよ!」

シンジ(少年)『見たくないものは見ない。それもいい。だけど、見なくちゃいけない時がある』

シンジ「なんなんだよお前! 僕の話を聞けよ!」

シンジ(少年)『僕はキミだよ。話を聞いてないのはキミ』

シンジ(少年)『ボクは、子供じゃいられない。まわりが許してくれないんだ』

シンジ「うるさいっ! もうやめてくれよ!」

シンジ(少年)『子供でいたいんだね。なにもわからないふりして、見ないふりしたいんだね』

シンジ「うるさい、うるさい、うるさい! みんな守ってみせる! それでいいじゃないか!」


シンジ(少年)『クスクス。それはできない』パチン


アスカ『シンジ! 私を助けて! ひっ⁉︎』グシャァ

レイ『碇くん! 助けて……‼︎』グシャァ


シンジ「そ、そんなっ⁉︎ アスカッ⁉︎ 綾波⁉︎」


シンジ(少年)『自分を守りたいの?』

シンジ「僕は……僕は……」

シンジ(少年)『見たくないモノから、逃げてちゃだめだ』

シンジ「……ぐっ……なんで僕ばっかりこんな目に!! 見たくないモノを見なくてなにが悪いんだよぉッッッ!!!」

- 第三新東京市立第壱中学校 授業中 -

シンジ「――……はっ!」ガタガタッ

先生「……授業中に居眠りとは、関心しませんな」


クスクス


アスカ「(あのバカっ! なにしてんのよ)」

シンジ「あ……えっと、す、すみません」

先生「授業をすすめてもよろしいですかな?」

シンジ「どうぞ……」スッ

トウジ「センセが居眠りとはめずらしいのー」コショコショ

シンジ「そ、そうかな」

トウジ「なんや? すごい汗かいとるやないか。顔色悪いが、大丈夫か?」

シンジ「いや、なんでもない……えっと、鈴原くん」

トウジ「――トウジや。鈴原くんなんてやめぇ」

シンジ「あっ、ごめん。その、後で記憶の無くなる前の僕のこと教えてもらっていいかな」

トウジ「お安い御用や。ケンスケも一緒に話した方がよさそやな」

ケンスケ「おい、トウジ! 先生が見てるぞ!」コショコショ

トウジ「おぉ、わかった」

- 第三新東京市立第壱中学校 放課後 -

トウジ「おまっとさん」

ケンスケ「よいせっと」

アスカ「…………」むっすぅ

ヒカリ「あはは……」

マナ「…………」

シンジ「あの、こんなに?」

トウジ「まぁ、知っとる人間は多い方がええやろ」

ケンスケ「綾波も誘ったんだけどさぁ」

シンジ「あっ……えっと、綾波さんも仲が良かったの?」

トウジ「うん? まぁ、そやなぁ。他に比べたらセンセはダントツちゃうか」

シンジ「そうなんだ……」

アスカ「シンジ! なんで居眠りなんかしたの⁉︎」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ……」

シンジ「えーと、惣流さんでいいのかな」

アスカ「ちがっ……!」

ヒカリ「アスカって呼んでたよ! 前の碇くん!」

シンジ「あっ、そうなんだ。ごめん。アスカさん」

アスカ「……っ!」

ヒカリ「アスカ……」

トウジ「まぁ、シンジも悪気があるわけやない。記憶がないんや」

ケンスケ「僕たちがいつも通りにしてやらなくちゃなぁ」

トウジ「せや。ゴリラ女もホームルームの時そう言っとったやろ」

シンジ「なんか、色々気を使わせてるみたいだね……」

マナ「あの、シンジくん?」

シンジ「えぇと」

マナ「あ、私、霧島マナっていうの。マナって呼んで」

シンジ「……ごめん。霧島さんも僕と仲良かったの?」

マナ「……うぅん。私、そんなに話したことないの。知り合って間もなかったから」

シンジ「へぇ」

マナ「だから、私だったらフラットに話せると思う。みんなもいい? 足りなかったら補足してくれる?」

トウジ&ケンスケ&アスカ&ヒカリ「…………」コクリ

シンジ「……ありがとう。それで、記憶のなくなる前の僕なんだけど」

マナ「うん。シンジくんはエヴァっていう乗り物のパイロットなのはもう知ってる?」

シンジ「赤木博士からそう聞いた」

アスカ「前のシンジはリツコさんって呼んでたわよ」

シンジ「そうなんだ……。呼び方まで、って、それはそうか」

アスカ「…………」

マナ「は、話を続けるね? それでエヴァのパイロットとしてみんなから頼りにされてたの」

シンジ「頼りに? 僕が?」

マナ「エヴァのパイロットはみんなの生活を守ってくれてるんだもの。友達としても、もちろんだけど」

シンジ「なんだか、実感がわかないや」

マナ「使徒っていう宇宙からきてる怪獣をもう何体も倒してるんだよ?」

シンジ「それも僕が?」

アスカ「私も殲滅してるけど、半分以上はあんたの手柄ね」

トウジ「日本中から電力かき集めたのもあったなぁ」

ケンスケ「ヤシマ作戦だろ? 僕たちも参加した」

ヒカリ「うん……」

マナ「ね? 少なくとも嘘じゃないっていうのは、わかる?」

シンジ「うん、まぁ……」

マナ「シンジくんは、ネルフに通いながら学校生活を送ってたの」

トウジ「この場合、どっちが本業なんやろな?」

ケンスケ「両方だろ」

マナ「それで、その内に、ここにいるみんなと仲良くなっていったの」

シンジ「僕ってどういう性格だった?」

トウジ「まぁ、そやなぁ、一言でいえば……」

ケンスケ「根暗かなぁ……」

シンジ「えぇ……」

アスカ「まぁ、パッと見はさえないやつよね」

ヒカリ「私も最初は関わろうとはしなかったな」

シンジ「……そ、そうなんだ」

トウジ「せやけど、悪いやつやなかったことはたしかや」

ケンスケ「ま、悩みながら前に進もうとしてたしね」

アスカ「かけてほしい言葉をかけてくれたわね」

ヒカリ「私はみんなの話を聞いて……でも、使徒から守ってもらってたから」

シンジ「…………」

マナ「私のこと、マナって呼ぶことからはじめない?」

アスカ「………」ピクッ

シンジ「でも、いいのかな」

マナ「記憶をなくす前に呼んでたわけじゃないから気にしないで。いつまでも霧島さんじゃ距離感じちゃうもの」

シンジ「……わかったよ。マナ」

アスカ「はぁ……。私はアスカ」

シンジ「うん。よろしく、アスカ」

- 帰宅中 -

シンジ「……あの、アスカの家と僕の家って方向同じなの?」

アスカ「えぇ? なにも聞いてないのぉ?」

シンジ「……?」

アスカ「はぁ……。あんたと私、一緒に住んでるのよ」

シンジ「えぇ⁉︎」

アスカ「(シンジのバカっ! どうして思い出さないのよ!)」

シンジ「あの、理由聞いていい?」

アスカ「……エヴァパイロットだからよ」

シンジ「ぱ、パイロット同士って一緒に住むんだね……」

アスカ「詳しいことは、ミサトに聞いて。私はめんどくさいからパス」

シンジ「あ、ごめん。もしかして、僕たちってあんまり仲良くなか………っ!」


バチンッ!!!


アスカ「……あんた……」

シンジ「……いっつぅ~~。なにもいきなりビンタすること――⁉︎」

アスカ「知らないっ! 1人で帰りなさいよ!」


タタタッ


シンジ「……なんで、なんで泣くんだよ……」

-

- ミサト宅 リビング -

ミサト「たっだいま~ん!」

シンジ「あ、おかえりなさい。葛城さん」

ミサト「……ミサト、でいいわよん♪」

シンジ「え? でも……」

ミサト「気にすることないわ。それよりアスカは?」

シンジ「あぁ、部屋から出てこなくて」

ミサト「ふぅ。やっぱりちょっとショックだったか」

シンジ「あの、葛城――」

ミサト「ミサトさん、でしょ?」

シンジ「み、ミサトさん、腕に痺れがあって夕食あんまり作れなかったんですけど、食べますか?」

ミサト「あらぁ? ありがと! アスカも呼んでいらっしゃい!」

シンジ「わかりました。それと、み、ミサトさんの家にはいつまでお邪魔してれば――」

ミサト「シンちゃん? ここはあなたのウチなのよ?」

シンジ「……わ、わかりました」

ミサト「はやく、呼んでいらっしゃい」

>>439は送信ミスです

アスカ「…………」もぐもぐ

シンジ「…………」もぐもぐ

ミサト「(き、気まずいわね)」

アスカ「……ごちそーさま」

ミサト「あら? もう食べたの?」

アスカ「私、部屋に戻ってる」

ミサト「その前にちょっと話ましょ」

アスカ「なに? シンジのことなら――」

ミサト「違う違う。シンジくんのことじゃなくて、あの霧島マナって子」

アスカ「……なに?」

ミサト「諜報部から色々と裏付けがとれたの。あの子の証言は、ほぼ信用できそうよ」

アスカ「それで?」

ミサト「内部告発しちゃったから、あの子を保護対象におくわ。それとロボットについてなんだけど、しばらく経過を見て――」

シンジ「――それじゃダメだ」

ミサト「シンジくん?」

シンジ「アスカ。マナは僕たちが守らないと。ミサトさん。戦自に潜入している諜報部から連絡があったのはいつです?」

アスカ「……シンジ?」

ミサト「は? え、ええと、さっきも言ったとおり、今日だけど?」

シンジ「なら、もう予定はそう遠くない」

ミサト「ちょ、ちょっと? シンジくん? なに言って――」

シンジ「アスカ。少し散歩に行こう」

アスカ「はぁ?


シンジ「え

すんません
iPhoneがアプデしてから誤動作しまくりです
アプリ依存かもしれないですが途中で送信されてます
スルーしてください

アスカ「…………」もぐもぐ

シンジ「…………」もぐもぐ

ミサト「(き、気まずいわね)」

アスカ「……ごちそーさま」

ミサト「あら? もう食べたの?」

アスカ「私、部屋に戻ってる」

ミサト「その前にちょっと話ましょ」

アスカ「なに? シンジのことなら――」

ミサト「違う違う。シンジくんのことじゃなくて、あの霧島マナって子」

アスカ「……なに?」

ミサト「諜報部から色々と裏付けがとれたの。あの子の証言は、ほぼ信用できそうよ」

アスカ「それで?」

ミサト「内部告発しちゃったから、あの子を保護対象におくわ。それとロボットについてなんだけど、しばらく経過を見て――」

シンジ「――それじゃダメだ」

ミサト「シンジくん?」

シンジ「アスカ。マナは僕たちが守らないと。ミサトさん。戦自に潜入している諜報部から連絡があったのはいつです?」

アスカ「……シンジ?」

ミサト「は? え、ええと、さっきも言ったとおり、今日だけど?」

シンジ「なら、もう予定はそう遠くない」

ミサト「ちょ、ちょっと? シンジくん? なに言って――」

シンジ「アスカ。少し散歩に行こう」グイッ

アスカ「はぁ? ちょ、ちょっと! わ、わわっ!」


タタタッ ガチャ バタンッ


ミサト「な、なんなの……?」

とりあえずここまでと報告
画面固まるフリックキー反応しないなどの不具合が多発してまして誤字誘発されてます
他のアプリでもめっちゃくちゃやりずらいのが三日前ぐらいから続いてるのでiPhone自体を修理だすかもです

友人がAppleに直接持っていってくれたおかげで思いの外はやく新品がきたんでぼちぼち投下していきます

- 近くの公園 -

アスカ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、ねぇっ、シンジってば!」

シンジ「強引に連れ出してしまってごめん……。だけど、どうしても伝えたいことがあったんだ」

アスカ「……なに?」

シンジ「このままだとマナは、戦自にさらわれてしまう。僕は、それをどうしても阻止したい」

アスカ「どうしてシンジにそれがわかるのよ?」

シンジ「うまく言葉で説明できない……違う、言っても信じてもらえるかわからないから」

アスカ「話をするまでわからないでしょ? どうして決めつけるのよ!」

シンジ「――そうだね。アスカの言う通りだ。だけど、僕だってこわいんだ。プレッシャーで今にも押しつぶされそうで」

アスカ「シンジ……どうしたの? 記憶が戻ってるの……?」

シンジ「父さんの計画とゼーレの計画。そして今、進行されてるもう一つの計画。それを僕たちはきっと阻止できるはずなんだ! アスカ!」ガシッ

アスカ「……あんたがなにを抱えてるかわからないけど、考えがあるなら話して。私もそれを受け止めてみせるから」スッ

シンジ「……ぐっ」ズキンッ

アスカ「シンジ、お願い。私もあんたの味方でいたい。でもシンジのやりたいことがわからなくちゃどうしたらいいかわからないのよ」スッ

シンジ「マナの友達がのってるロボットを止めなくちゃ……ぐぅぅ」

アスカ「シンジ⁉︎ 頭痛いの⁉︎」

シンジ「綾波にも、父さんの……ダミーには……」

アスカ「シンジ⁉︎ ねぇ! なに言ってるかわからない!」

シンジ「――……はっ!」

アスカ「シンジ……?」

シンジ「――あれ……? アスカ? こんなとこでなにやってるの?」

アスカ「は、はぁ?」

シンジ「というか、なんでここに僕いるんだろう?」

アスカ「どうなってるのこれ……」

- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

リツコ「あら? めずらしい」

アスカ「……ふん」

リツコ「それで、今日は何のご用? カウンセリングにきたのではないみたいだけど」

アスカ「頼るのは癪だけど、意見を聞かせてほしいの」

リツコ「プライドの高いあなたが私を頭をさげるのはよっぽどのことがない限りないはず。他に頼れる人か、専門的な知識がほしいのね」

アスカ「私の分析をするなら帰るわよ」

リツコ「癖みたいなものよ。気にしないで」

アスカ「…………」

リツコ「…………」

アスカ「………ふぅ」

リツコ「コーヒー、飲む? インスタントだけど」

アスカ「(こいつに話しちゃ危険なのかもしれない。だけど、メガネに連絡がつかないから、頼れる人がいない)」

リツコ「いらないみたいね。私は飲むわよ」コポコポ

アスカ「――多重人格ってどういう症状なの?」

リツコ「解離性同一障害ともいうわね。いわゆる精神分裂症とはまた別の症状、で答えになってるかしら」

アスカ「精神病とはまた別ってこと?」

リツコ「アスカは24人のビリーミリガンというダニエルキイスの著書を読んだことがある?」コトッ

アスカ「いいえ」

リツコ「そう。かなり端折っていうと頭の中から別人達の声が聞こえるのが多重人格。精神分裂は外からの声によるものね」ふーっふーっ

アスカ「…………」

リツコ「……あつ。温めすぎたわね」

アスカ「もし、そういう人がいたら特定する方法は?」

リツコ「症状ひとつとっても重い軽いの違いがあるまのよ。重い症状の場合は、側から見てもはっきりとした違いがわかるはず」

アスカ「軽かった場合は?」

リツコ「長い時間をかけて、本当にその症状と合致するのか判断する必要があるわ」

アスカ「…………」

リツコ「シンジくんに疑いでもあるの?」

アスカ「……っ⁉︎ ち、ちがっ! 私はそんなこと一言も!」

リツコ「あなた本人にその心配がなければ、誰のために動くか考えたら自然とそうなるわよ」

アスカ「あっ……」

リツコ「(エリートといえど、根っこの部分はまだまだ子供ね)」





アスカ「……シンジが記憶喪失になって、私のことを覚えていないのがショックなのよ」

リツコ「気持ちはわからないでもないわよ」

アスカ「それで、不安で誰に頼っていいかわからなくて……」

リツコ「そう。夜は寝れてるの?」

アスカ「あんまり……」

リツコ「薬に頼るばかりでは依存してしまうことはおろか、効き目も悪くなる。眠れないのが続くようならいらっしゃい」

アスカ「ありがと、コーヒー少しもらうわね」

リツコ「あっ……」

アスカ「……ぬるぅ~い。もしかして、猫舌?」

リツコ「…………」

アスカ「かわいいとこもあんのね。よく見たら猫のマグカップだし。もしかして家でも、猫飼ってるの?」

リツコ「――はやくさがりなさいっ!」

- 第三新東京都市立第壱中学校 昼休み -

アスカ「ヒカリ、マナ」

ヒカリ&マナ「アスカ?」

マナ「今日はもうネルフはいいの?」

アスカ「あぁ、ちょっと話があっただけだから。それよりも2人とも今は暇?」

ヒカリ「どうしたの? 私達ならお弁当食べ終わって暇してたとこだけど?」

アスカ「それなら、図書室で調べ物手伝ってほしいのよ」

マナ「私は大丈夫だよ」

ヒカリ「私も。鈴原たちにも協力してもらう?」

アスカ「あいつらがいると寄り道しちゃいそうだから今回はパス。私達だけでやりましょ」

マナ「なにを調べるの? テスト範囲でわからないところあった?」

アスカ「マナは知らなかったと思うけど、こう見えて私、大卒なのよ。中学校の授業なんて幼稚なのでわからないことなんかない」

マナ「――えっ? でも、アスカってあんまりテストの成績」

ヒカリ「あ、あの、それはっ!」

アスカ「ヒカリ、なにか言ったの?」

ヒカリ「……あ、ごめん。テスト結果の時の話でアスカが赤点ギリギリだったことだけ」

アスカ「はぁ……。そういうこと」

マナ「えっと……?」

アスカ「日本語が読めなかったの。テストの問題」

マナ「え? じゃあ、それが理由で?」

アスカ「世界共通語は英語なのよ? なんで今さら日本語の読み書きなんか勉強しなくちゃ、だいたい、この教育システム自体に欠陥が――」

ヒカリ「あ、アスカ……」

アスカ「あぁっと、そうそう。そういうわけで、理由は別。とりあえず図書室に移動しましょ」

- 図書室 -

アスカ「それで、調べてほしいのは、多重人格についてなんだけど」

ヒカリ「多重人格? っていうと、何人も何人も別の人格がある人のことだよね?」

アスカ「そう」

マナ「どうして、そんなことを?」

アスカ「まだよくわからないんだけど、昨日、不思議なことがあったの」

ヒカリ&マナ「……?」

アスカ「……シンジが、急に記憶を取り戻したのかと思えば、わけのわからないことを言いだして」

マナ「し、シンジくんの記憶が戻ったの⁉︎」ガタッ

ヒカリ「――ちょ、ちょっとマナ! 静かに! ここ図書室だよ!」ヒソヒソ

アスカ「今思うと、記憶が戻ったのかもあやふやなところがあるの。もしかしたら一時的なものだったのかも……」

マナ「……それで、アスカはシンジくんが多重人格になったんじゃないかって?」

アスカ「一晩考えてみても答えはでなかった。シンジもその時のことはまったく身に覚えがないらしくて、その後はまた、記憶がなくなった状態だったの」

ヒカリ「…………」

アスカ「……お願い。可能性としては、万が一程度なんだと思う。だけどもしそうなら、私はシンジを助けてあげたいの」

マナ「…………」

アスカ「鈴原たちにも言わないで。誰にも。もし多重人格でなければそれはそれでかまわないのよ」

ヒカリ「ふぅ……。わかった。手分けして調べましょ」

マナ「うん。私もできる限りやる」

アスカ「ありがと……」

ヒカリ「アスカは思いこみが激しいところもあるけど、それでもアスカはアスカだもん。ほっとけないよ」

マナ「私は、アスカのこと、まだわからないこと多いけど、心配してるってのは伝わってきたから」

- 厚木基地 某所 -

加持「準備はいいか?」

マリ「いつでもいけるよー。でもさぁ、この旧式の対戦車ライフルって反動凄くて嫌いなんだよねー」カチャ カコン

加持「――飛距離に問題は?」

マリ「素人だと思っちゃ困るなー。目標までの距離と軌道の計算は既に終えてるって。狙った的は外さないってね」ペロリ

加持「そいつはすまなかったな。なにしろ軍資金に乏しいもんでね。満足な装備は用意しやれない」



パタパタパタパタッ



加持「ほら、オスプレイのご登場だぞ。撃ち落としてやれ」

マリ「アイサァー♪」カチャ


マリ「…………よっと」キリキリ カチリッ


加持「――撃て」



マリ「オラァッ!」


バァーーーーーーンッ


フォンフォンフォン ドカーーーンッ


マリ「くぅ~~いっつぅ~。肩痛めるかと思った」

加持「お見事。それじゃ速やかに撤収するぞ、急げ。射撃位置はバレてる」

マリ「人使い荒いなぁ~もう」

- 移動中 車内 -

マリ「はぁ、疲れた~疲れた疲れた疲れたつ~か~れ~たぁ~」

加持「はぁ……人類の明日がかかってるってことわかってる?」

マリ「ゲンドウくんの狙いもゼーレの計画も私にとってはどうだっていいし。私の計画がうまくいけばいいだけ」

加持「さようですか」

マリ「姫に会いにいこっかにゃ~」

加持「おいおい、今マリに抜けてもらっちゃ困るんだが」

マリ「そっちはそっちで勝手にやってよ。私は姫を助けるのも仕事なんだし♪」

加持「しかしだなぁ、さっきのヘリに乗ってたの官房長官だぞ。やつがいなくなったことでロボットの管轄権は国防大臣に引き継がれる」

マリ「それが狙いだったんしょ? なにを今さら」

加持「無能は扱いやすいが、一歩間違えれば、予期せぬ自体を引き起こすことになる。バカとハサミは使いようというが――」

マリ「それなら、尚のことそっちで後は勝手にやって。裏工作は私の分野じゃない。加持くんの得意分野でしょ?」

加持「俺はただの内偵屋さ。元な」

マリ「とにかく! 一度、姫の様子を見にいく。ワンコくんの記憶喪失もちょっと気にかかるし」

加持「……ふぅ、わかった。こっちのことはまかせろ」

- 図書室 -

キーンコーンカーン コーン


ヒカリ「……やっぱりだめね。学校の図書室じゃ」

マナ「うん……。寄贈書ばかりだから、年代が古いものが多いし、専門書は少ないね」

アスカ「私が迂闊だったわ。市立の図書館に行けばもっとたくさんある?」

ヒカリ「そうね……。それだったら、少なくともここよりはあると思う」

マナ「今日の放課後にでも行ってみようか?」

アスカ「2人は時間、大丈夫なの?」

ヒカリ「私は夕飯の時間までに帰れれば」

マナ「うん。私も、あまり遅くならなければ」

アスカ「それじゃ、そうしましょ」

マナ「あの、アスカ」

アスカ「……?」

マナ「シンジくんのどこがそんなによかったの?」

アスカ「愚民を助けるのはエリートの義務……っていうのはウソ」

マナ「…………」

アスカ「なんでだろう。最初に会った時から好きになったのかもしれない。それに、懐かしく感じたっていうか」

マナ「わっ。それって、一目惚れ?」

アスカ「電撃が走ったっていうか、ビビっとこの人っていう感じではないのよ。デジャヴュみたいな」

ヒカリ「……それは、私もはじめて聞いたかも」

アスカ「そうだっけ?」

マナ「シンジくんもそう感じたとかあったの?」

アスカ「シンジに会ったことある?って聞いたら、ないって答えてたから、たぶん、気のせいなんでしょ」

マナ「そうなんだぁ。2人とも感じてたら運命みたいで素敵だなぁ」

ヒカリ「運命⁉︎ マナも少女漫画好き⁉︎」ガバッ

マナ「え? なに?」ビクッ

アスカ「ヒカリのこれは病気みたいなもんだから気にしないで」

- アスカ 夢の中 -

アスカ(少女)『私は一人で生きるの、パパもママもいらない! 一人で生きるの。私はもう泣かないの! 』

アスカ「でも、まだ泣いてる…なぜ、泣いてるの?」

継母『あの子、苦手なんです』

アスカ父『なんだ、弱気とは医者の君らしくないな』

継母『医者も人間ですのよ。前にも言いましたけど』

アスカ父『しかし、君のような女性が子供相手に』

継母『妙に大人で……張り詰めた絶対的な拒絶があって……時々恐いんです。あなた、そう感じたことありません?』

アスカ父『いや、とにかく君は、アスカの母親になったんだ』

継母『その前に、私はあなたの妻になったのよ』

アスカ父『……同時にだろう?』

継母『社会的立場からはそうですわ』

継母『あなたはあの子の父親を辞められないけれど、私はいつでもあの子の母親を辞めることができますのよ』

アスカ「勝手な言い草! 大人はみんな勝手! 私はなんでも1人でできるようになる!」

アスカ(少女)『止めてママ! ママを辞めるのは止めて! 私、ママに好かれるいい子になる! だから、ママを辞めないで! だから私を見て! 止めてママ! 私を殺さないで!」

アスカ「また……私?」

キョウコ『あなたのパパはママが嫌いになったの。いらなくなったの。ううん、最初から好きじゃなかったのよ。最初からいらなかったのよ、きっと』

キョウコ『だから、ママと死にましょう。パパは私たちがいらないもの』

アスカ「私は邪魔なの? いらないの?」

キョウコ「一緒に死んでちょうだい……」

アスカ「いや! 私はママの人形じゃない! 自分で考え、自分で生きるの!」

- 第三新東京都市立第壱中学校 授業中 -

アスカ「んぁ……?」ゴチンッ


シーーン


アスカ「あ、あれ? ここ、教室?」

先生「エヴァのパイロットというのは、居眠りをする癖でもあるのかな?」


クスクス


アスカ「あ、その、すみませぇん……」



トウジ「今度はゴリラ女とはお前ら夫婦は居眠りするのも一緒か!」コショコショ

シンジ「……へ?」

ケンスケ「トウジ、碇は記憶がないんだからそんなこと言っても通じないって」

- 第三新東京都市立図書館 -

アスカ「(なんで、今さらあんな夢。ママは、弐号機にいるってわかったのに……)」

ヒカリ「アスカ、これなんだけど……」スッ

アスカ「(ふっきれたと思ったけど。私の中でまだシコリがあるのかな……)」

ヒカリ「アスカ? 聞いてる?」

アスカ「あ、ご、ごめん。なに?」

ヒカリ「うん。多重人格って後天性の重い症状の一種でもあるみたい」

アスカ「先天性ではないの?」

ヒカリ「どちらのケースもあるって書いてある。ここ見て」ペラッ

アスカ「あんまり日本語読めないのよ」

ヒカリ「あぁ、そっか。ごめんね。えっと、生まれつきじゃない、後天性の場合、強いストレスとかで別の人格を産み出してしまうことがあるらしいの」

アスカ「ふぅん」

ヒカリ「それで、本当かどうかわからないけど、発覚するまでに二桁の人格を産み出してしまう人も少なくないんだって」

アスカ「でもそれは、診断を下した人間の主観である場合もあるわよね」

ヒカリ「うん。統計的にそうなのかわからないけど、それもちょっと怪しいし」

マナ「シンジくんの場合は、どうなんだろうね」

アスカ「多重人格だと前提しても、二桁の人格がいるようには見えないわね」

ヒカリ「アスカが見たのって少なくとももう1人? だけだもんね」

マナ「それなら、二重人格ってことになる?」

アスカ「見えてる範囲で、という話でならそうなるかも」

ヒカリ「あっ、でもここ見ると核となる人格があって、他の人格を隠してしまうケースもあるんって書いてるよ」

アスカ「つまり……」

マナ「わからないってことだね」

ヒカリ「ネルフに相談はできないの? 専門の人いるんじゃ?」

アスカ「午前中にその話をしてみたのよ。だけど、なぜそう思ったのか詳しくは話したくない」

マナ「うぅん」

ヒカリ「私たちだけじゃ限界があるのも事実だし……」

マナ「ねっ? いっそのことシンジくんになにかショックを与えてみたら?」

アスカ「……?」

マナ「ほら、よく漫画とかであるじゃない? 性格がオンオフで切り替わるみたいな」

ヒカリ「そ、それって眼鏡をはずしたら性格が変わる王子様とか、さっそうとピンチを助けてくれる……」

マナ「そ、そうじゃなくて! ただ何もしないよりは試してみる価値あると思うの!」

アスカ「ショックねぇ」

マナ「私たちで変わりばんこに告白でもしてみる?」

アスカ&ヒカリ「えぇ⁉︎」

マナ「……やっぱり、ダメかな?」

アスカ「な、な、な、なんでそんな話になるのよ!」

ヒカリ「そうだよ! それに碇くんはアスカの!」

マナ「でも、それぐらい外部的な衝撃を与えてみないと」

アスカ「そもそも、ショックになるの? 嬉しいだけじゃない?」

ヒカリ「戸惑いの方が強いんじゃないかな……」

マナ「それじゃ、殴ってみる? ガツーンと!」

アスカ「マナって……」

ヒカリ「意外に強引なところあるんだね……」

- ネルフ 本部 ??? -

リツコ「失礼いたします」

ゲンドウ「…………」

リツコ「今は副司令はいらっしゃないんですね」

ゲンドウ「わかっていて来たのだろう」

リツコ「言ってしまわれるのは野暮ですわ」スタスタ

ゲンドウ「レイとシンジの案件についてはどうなっている」

リツコ「ご心配なく、次のプラグテスト日にシンジくんを昏睡状態にさせる予定です」

ゲンドウ「アレは自分がやったという行為に責任を感じるやつだ。昏睡させては意味がない」

リツコ「ご子息のことを理解していらっしゃるのですね。前回、興奮剤を投与したのも自身の意思でやったというのを印象づけるために?」ギシッ

ゲンドウ「……椅子から降りたまえ。今はそんな気分では」

リツコ「――既成事実を作ってしまえばなんら問題はありません。責任を作ることはたやすいことです。例えあの子がどんなに受け身でも、最後に手をだすのは男ですもの」ギシギシッ

ゲンドウ「それならばいい」

リツコ「それとも、あなたが私を犯した時のように衝動的な刹那を体現させたいのですか? 私に性の昂ぶりをぶつけ、汚したように――」プチ プチ

ゲンドウ「…………」

リツコ「――もっと、私を汚して。その手で」パサッ

- ミサト宅 夜 -

ミサト「シンちゃん、怪我の具合はどう?」

シンジ「すこし痒くなってきてますけど、大丈夫です」

アスカ「(ショックねぇ……)」

ミサト「……? アスカ、ぼーっとシンちゃん見てどしたの?」

アスカ「別に……」

ミサト「もしかして、シンちゃんに見とれちゃってたとか?」ニマニマ

アスカ「ミサトのオヤジ化って日に日に深刻になってるわよね」

ミサト「まだ枯れちゃいないわよん」

シンジ「あの、アスカ、後で少し話がしたいんだけどいいかな?」

アスカ「……わかった。急ぎ?」

シンジ「そうじゃないよ。暇な時でいい」

ミサト「(記憶をなくしてもうまくやれそう……かな……)」

- シンジ 部屋 -

アスカ「(なんだか、不思議。記憶をなくしてるシンジと2人になってもぜんぜんドキドキしない)」

シンジ「家で落ち着いて、話をするのって、はじめてじゃないのかもしれないね……」

アスカ「まぁ、そうね。記憶がないあんたとは話をすることあったし」

シンジ「……やっぱり、記憶のない僕と記憶のある僕って違うのかな」

アスカ「…………」

シンジ「そうだよね。やっぱり、僕も実感ができないんだ。みんなの中の僕と今の僕がかけ離れすぎてて」

アスカ「これまでやってきたことは事実よ」

シンジ「そうだとしても、できるとは思わないんだ、僕が」

アスカ「自分で自分の限界を決めつけてるってこと?」

シンジ「…………」

アスカ「(やっぱりこんなの、コイツ、シンジじゃない。ガワだけ)」

シンジ「そうかも、しれない。自信がないのかも」

アスカ「あんたがどう思おうと勝手だけど、私たちには大切な思い出があんのよ。それを他ならないあんたが! 嘘にするな!」ビシ

シンジ「…………」

アスカ「不愉快だわ。話が終わりならでてくけど」

シンジ「あっ、まだ話は終わってなくて、あの、こんなこと言うと怒るかもしれないけど」

アスカ「ウジウジすんな。みっともないのよ。なに? 聞くだけなら聞いてあげる」

シンジ「――エヴァに乗らなくて済む方法ってないかな?」

アスカ「……はぁ?」

シンジ「こ、こわいんだ。エヴァに乗るのが。あんなわけのわからないモノに乗ってなにと戦えっていうのさ」

アスカ「…………」

シンジ「ミサトさんに言うのは最後の手段として、まずはアスカに聞いてみようと思って――」

アスカ「歯くいしばれ」

シンジ「えっ――」


――バチンッ!!!

- ミサト宅 リビング -

ミサト「な、なにごとっ⁉︎」


ガラガラ ピシャンッ!


アスカ「……ふん」

ミサト「あら? アスカ? シンジくんと喧嘩でもしたの?」

アスカ「あんなのシンジじゃない」

ミサト「え?」

アスカ「エヴァに乗りたくないんですってよ」

ミサト「あっちゃぁ~。シンジくんが、聞くまでもないか」

アスカ「どうするつもり? あんなのが実戦にでたところで足手まといになるのは目に見えてるわよ」

ミサト「ふぅ……。シンジくんが記憶喪失になったと聞いた時にこうなることは予想すべきだったわ」

アスカ「ミサトは予想できたっていうの?」

ミサト「こっちに来た頃のシンジくんは、それはもう臆病で、自分を表すのに不器用だったのよ。使徒三体を殲滅するまでにも家出したり色々あったもの」

アスカ「……そういえば、記憶がなくなる前にそうだったって話は少し聞いたことある。命令違反したんでしょ?」

ミサト「二体目の使徒の時かしら。鈴原くんたちをプラグ内に乗せるまではよかったんだけど、その後、私の命令を無視して独断で使徒に向かっていったの」

アスカ「やっぱり、今のシンジとは全然違うじゃない」

ミサト「それがそうでもないのよ。アスカはシンちゃんと会った時にはもう見ていないから、わからないのかもしれないけど」

アスカ「…………」

ミサト「シンジくんは? 部屋にいるの?」

アスカ「思いっきりビンタしたから、気絶してるかも。まだ手がヒリヒリする」

ミサト「あ、あんた。シンジくんはまだ怪我人なのよ?」

アスカ「はん……。死ぬわけじゃないでしょ。それに、私だって世話してあげたいって思ってるわよ。だけど、今のシンジはなんかだめ」

ミサト「うぅ~~ん……」

アスカ「シンジから直接話を聞いてみたら?」

ミサト「前回と同じことになるのは私も避けたいけど、甘やかしすぎるのもシンジくんの為にならないと思うのよね」

アスカ「あっそ。それじゃ、ほっとくの?」

ミサト「ううん、悩みどころではあるわね」

アスカ「なんでもいいけど、パイロットの監督官なんだからなんとかしてよね。記憶取り戻す方法を見つけてくるとかさ」

ミサト「……えぇ」

アスカ「なんかそういう劇薬みたいなのないの?」

ミサト「そんな都合の良いものあったらとっくに使ってる――まてよ」

アスカ「え? 本当になんかあんの?」

ミサト「えぇと、たしか部屋の、アスカちょっちそこで待ってて」

アスカ「……?」

- ミサト宅 シンジ部屋 -

シンジ「むぐっ! むぐぐぐぅ~!(なんで僕が縛られてるんですか!)」

アスカ「とりあえずがんじがらめに縛っておいたけど、こんなもんでいい?」

ミサト「えぇ、かまわないわ」

シンジ「むふむむむぅ!(何考えてるんだこの人たち!)」ジタバタ

アスカ「黙れ、エビ男、暴れんじゃないわよ」グニ

シンジ「むぐっ!(踏むな! なんなんだよ!)」

ミサト「アスカ、シンジくんを座らせる格好にして、背中を壁に立てかけるようにすればいけるでしょ」

アスカ「はいはい。でも、本当に効果あんのぉそれぇ? 入門編って書いてあるけど」

ミサト「催眠術で記憶を呼び覚ますって映画で見たことがあんのよ。だからやってみる価値はあるでしよ」

シンジ「むぐぐぐぅ!(そんなのめちゃくちゃだ!)」

アスカ「おもっ……よっと――っ! はい、おっけー」

ミサト「それじゃぁ、シンちゃんリラックスしてこの5円玉の動きを目だけで追うのよ?」

シンジ「ふぁむむぐっむぐぅ!(リラックスできるわけないだろ!)」

アスカ「さっさとやりなさいよ」

シンジ「ぐむっ……!(仕方ない、今だけ言うことを聞いて、解放されたら出ていこう!)」


ユラ~リ ユラ~リ


ミサト「見つめているとあなたの意識がぼんやりとしてきます。ゆっくり息をすってぇ~はいてぇ~」

アスカ「はぁ……」

シンジ「ふぅー、ふぅー」

ミサト「リラックスしてぇ~。あなたは今は南の島にいます。そこでハンモックに揺られながら、ジュースを飲んでいます」

シンジ「ふーっ、ふーっ(はやく終わってよ!)」

ミサト「シンジくん? ちゃんとリラックスしなきゃだめよ?」

シンジ「…………」コクコク

ミサト「……ふかぁ~いふかぁ~い、海の底をイメージしてください~」

アスカ「…………」ポリポリ

ミサト「ワン、ツー、スリーを合図に指を鳴らします。すると、あなたは意識が落ちます」

シンジ「…………(バレないようにかかったふりしないと!)」

ミサト「ワン、ツー、スリー」パチン

シンジ「…………(指? どこかで聞いたような)」


シンジ(少年)『それはできない』パチン


シンジ「…………(そうだ、たしかあの夢で……あれ……本当に意識が……)」

ミサト「どう? シンちゃん? かかった?」

アスカ「……ミサトが聞いてどうすんのよ」

ミサト「あはは……そっか」

アスカ「だんだんアホらしくなってきたわ。ほら、シンジ、かかったふりしなくていいから」

ミサト「やっぱりだめかぁ~。そうね、もうやめましょうか。シンジくんの口のガムテープはがして紐もほどいてあげて」

アスカ「はいはい」ビリッ

シンジ「…………」ガクッ

アスカ「……? ちょっと? シンジ? かかったふりしなくてもいいのよ? あんなのでかかるわけないんだから」

ミサト「あらぁ? シンちゃんってば演技もできたの?」

シンジ「…………」ダラァ

アスカ「……シンジ? ねぇっ? ちょっと?」ユサユサ

ミサト「え? え? これって……」

アスカ「そ、そんなわけないじゃない! あんなのでかかるなんて聞いたことないわよ!」

ミサト「いやでも、ほら」

アスカ「こ、これは演技よ! そうでしょ⁉︎ こら! 起きろ!」バシバシ

シンジ「…………」グテェ

ミサト「い、息は? してるわよね?」

アスカ「……うん。息はしてる。いい? シンジ? まだ続けるつもりなら思いっきりひっぱたくわよ」

ミサト「ちょっとアスカ」

シンジ「…………」

アスカ「まだ続けるのね。いい根性じゃない。ちょっと今のあんたも見直したわ。いくわよっ!」ブンッ


バチンッ!!!


ミサト「ちょ、ちょっと!」

シンジ「…………」ダラァ

アスカ「おかしい、演技にしても表情が全然かわらないなんて……。これってもしかして……本当に……」

ミサト「うそぉ⁉︎」

アスカ「ミサト! 続けて!」

ミサト「え? どうやって?」

アスカ「はぁ? 続け方書いてるんじゃないの⁉︎」

ミサト「そ、そっか! だってかかると思ってなかったから!」

ミサト「えぇと」ペラペラ

アスカ「まだ⁉︎」

ミサト「急かさないでよ、あったあったここね」

アスカ「……っ」ゴクリ

ミサト「あなたは記憶をなくしてますか? YESなら首を1回、NOなら首を2回縦にふってください」

アスカ「ちょっと、もう少し踏みこんだ質問できないの? 誰でも答えられることじゃない!」

ミサト「最初は軽めの質問からだって書いてるのよ!」

シンジ「…………」コクリ

ミサト&アスカ「頷いた……」

ミサト「続けるわよ――」

――――
―――



ミサト「いくつか簡単な質問はしたし、それじゃぁ、いよいよ、踏みこんだ質問にいくわね」

アスカ「はやく」

ミサト「記憶を取り戻すのは可能ですか?」

シンジ「…………」コクリ

アスカ「どうすれば? 知りたいのは方法なのよ!」

ミサト「質問を変えてみましょう。催眠術で記憶を取り戻すのはできますか?」

シンジ「…………」

アスカ「首をふらない? どっちなの?」

ミサト「シンジくんにもわからないのかも」

アスカ「やってみる?」

ミサト「わからないことをやるのは危険かもしれないわ」

アスカ「ちょっとまってミサト。この質問聞いてみてくれる? シンジは多重人格なのかって」

ミサト「え? シンジくんが?」

アスカ「念のためよ。記憶喪失じゃない場合だって考えられるじゃない」

ミサト「……あなたは多重人格ですか?」

シンジ「…………」コクリコクリ

アスカ「二回……ってことは違うのね! よかったぁ!」

ミサト「肝心の記憶を取り戻す方法がわからないんだから安心できないわよ」

アスカ「ワードを言っていけいばいつかは当たるんじゃない?」

ミサト「そうねぇ。記憶を取り戻す方法はアスカですか?」

アスカ「ちょ、ちょ!」

シンジ「…………」コクリコクリ

ミサト「あらぁ~違うのね。アスカ、ドンマイ」

アスカ「ふざけてるでしょ!今の質問必要あった⁉︎」

ミサト「とにかく思い当たることは全部言っておくべきでしょ。次、私は関係ありますか?」

シンジ「…………」コクリコクリ

ミサト「あらぁ、これも違うのね。一晩ぐらいならシンちゃんと――」

アスカ「ミサト! ぶちのめすわよ!」

ミサト「おぉ、こわ。それじゃエヴァと関係ありますか?」

アスカ「お父さんとかそういうんじゃ――」

シンジ「…………」コクリ

ミサト「そうねぇ、やっぱり……って」



アスカ&ミサト「――……え?」

ミサト「エヴァに関係があるのか……」

アスカ「やっぱり、前の出撃の時になにかあったんじゃないのぉ?」

ミサト「いつも通りだったわよ! 途中からシンジくんがいきなり回線遮断しちゃったけど」

アスカ「その前後は?」

ミサト「エヴァの内部電源内では目標に追いつけそうになかったから、停止するように求めたわ」

アスカ「そしたら?」

ミサト「シンジくん、いきなり回線を切っちゃって」

アスカ「なら、問題はその後ね。中で何かがあったのよ」

ミサト「でも、停止するまで初号機はひたすら目標をおっかけてたし、2分ぐらいの間なのよ?」

アスカ「時間が短いかどうかなんて関係ない。問題は出来事と過ごした密度よ。なにか強烈なことがシンジに起こったんだわ」

ミサト「ふぅん。それで記憶喪失に?」

アスカ「……いえ、そうじゃないのかもしれない」

ミサト「ちょっと、わかるように説明してよ」

アスカ「昨日! 夕食のあと! シンジの様子がおかしかったでしょ」

ミサト「あぁ、そんなこともあったわね」

アスカ「しっかりしてよ。その時のシンジはなにか焦ってたのよねぇ」

ミサト「アスカとシンジくんが2人で出かけた時?」

アスカ「う~ん……(ミサトにやりとりを言えるのはここまでかな……)」

ミサト「記憶が一時的に戻りかけてたのかもしれないわね」

アスカ「きっかけは?」

ミサト「あの時を思い出してみればわかるはず、でしょ?」

アスカ「マナのことよね。でもそれもおかしいわ。シンジは記憶をなくす前も今もマナと特別仲良いってわけじゃないもの」

ミサト「マナちゃんが忘れてるだけでシンジくんと元々知り合いだったとか?」

アスカ「そんな話聞いたことないわよ。ネルフの資料にそんなデータあるの?」

ミサト「あの子の証言を調べる時に身元調査もしたんだけど、たしかに、住んでる所に接点なんかなかったわね」

アスカ「明日、初号機に乗せてみるってっていうのは?」

ミサト「えぇ? シミュレーションプラグじゃなくて初号機に?」

アスカ「当時の条件をできるだけ再現してみたらなにかわかるかもしれないじゃない。シミュレーションプラグの中で起こったわけじゃない」

ミサト「だけど、承認されるかどうか……。エヴァは玩具じゃないのよ」

アスカ「パイロットとして機能しなくなるほうが問題でしょ。適当に理由つけなさいよ」

ミサト「……減俸もありえるかもしれないのよ」

アスカ「そうならないように、言い訳、考えたら?」

ミサト「はぁ……。ペンペン~、おつまみ減ったらごめんねぇ~」

ペンペン「クェッ⁉︎」

アスカ「それはそうと、シンジの催眠そろそろといてあげなきゃ」

ミサト「あぁ、そうだった。それじゃー解くわよ。あなたはぁ~ワンツースリーと言って手を叩いたら目が覚めます」

シンジ「…………」

ミサト「ワン! ツー! スリー!」パンッ

シンジ「…………」

ミサト「あ、あら?」

アスカ「ちょっと?」

ミサト「慌てないの。もっかい。……ワンツースリー!」パンッ

シンジ「…………」グテェ

アスカ「ちょっと! 起きないじゃなぁい!」

ミサト「シンジくん! 起きなさい! 起きて! 起きるのよ!」パンッパンッパンッ

アスカ「ど、どどどどうするのよ⁉︎」

ミサト「シンちゃん⁉︎ 私、左遷は嫌よ! クビも嫌!」パンッ

アスカ「保身に走ってんじゃないわよ!」

ミサト「ネルフにバレたら困るのよ! 起きて!」

アスカ「どうするの⁉︎ 連れてった方がいいんじゃ!」

ミサト「アスカ! チューして!」

アスカ「はぁ⁉︎」

ミサト「眠れるお姫様、じゃないけど。キスで起きるとかあるじゃない!」

アスカ「そんなので起きる⁉︎」

ミサト「アスカが嫌だったら私が……!」グイッ

アスカ「ま、待ちなさいよ!」ガシッ

- ネルフ本部 ??? -

諜報部員「ご報告いたします。葛城三佐宅のご子息の部屋で慌ただしい動きがありますが」

冬月「こちらに映像をまわせ」

諜報部員「了解。そちらに映像をうつします」

ゲンドウ「…………」


ミサト『………!』

アスカ『………!』


冬月「音声は拾えないのか?」

諜報部員「音声は指示がなかったので」

冬月「指示がなくとも盗聴器ぐらい取り付けておけ!」

諜報部員「り、了解。失礼いたしました!」

冬月「……取っ組み合いしてなにをしているんだ? 君の息子は縛られてるようだが」

ゲンドウ「…………」

冬月「やれやれ、おおかた家族ごっこか。このご時世に呑気なものだな」

- ミサト宅 シンジ部屋 -

アスカ「私がやるって! 言ってんでしょぉが!」ググッ

ミサト「だから! はやくやってよ! それでもだめなら私がやるからね!」ググッ

アスカ「だから! なんでそうなるのよ! ネルフに連れてくでしょ普通!」

ミサト「ネルフにバレたくないんだってばぁ! パイロットを催眠術にかけて昏睡状態とか笑い者になるわよぉ!」

アスカ「しかたないでしょ! こうなっちゃったんだからぁ!」

ミサト「いや、いやよ。もう再就職先見つけるのだって厳しいのに」

アスカ「生々しいこと言ってんじゃないわよ!」

ミサト「……わかった。落ち着きましょ。とりあえず、アスカしてみて」

アスカ「落ち着いたら普通やめようとかならないの?」

ミサト「いいから! はやく!」

アスカ「…………わかったわよ。あっち向いてて」

ミサト「はいはい。はやくね」

アスカ「ふぅ……。なんなのよこれ」

ミサト「……どう? やった?」

アスカ「まだ!」

ミサト「はやくね……」

アスカ「……それじゃぁ、いくわよ……」スッ


シンジ「…………」

アスカ「……(ちょっと待って、ここ監視されてるってメガネが言ってなかった?)」

ミサト「まだ? アスカ」

アスカ「(もしそうだとしたら、今って筒抜け⁉︎ なんで気がつかなったのよ!)」

ミサト「どぉ? シンジくん覚めた? 覚めたわよね?」

アスカ「……ミサト」

ミサト「うん?」

アスカ「やったけど、シンジは起きなかった(やってないけど)」

ミサト「あぁ……万事休すだわぁ~」

アスカ「落ち着いて、方法は間違ってない?」

ミサト「たしかにさっきの通り書いてあるわよ」

アスカ「…………」

ミサト「……はぁ。碇司令になんて報告すればいいのよ……」

アスカ「…………」パチン

ミサト「アスカ、指なんか鳴らしても、それは導入の時に」


シンジ「……ん? あれ?」


ミサト「シンジくん⁉︎」

シンジ「僕、いったい……あっ! いっ! なんか頬が痛い……そうだ! これほどいてくださいよ!」

アスカ「…………(指の音に反応したの?)」

シンジ「こんなのめちゃくちゃだ! 僕はもうここを出て行きます!」

ミサト「シ、シンちゃん?」

シンジ「アスカも僕のことが嫌いならそう言えばいいだろ!」

アスカ「……なに?」

シンジ「いきなり縛って身動きするなんて考えられないよ!」

アスカ「誰が誰のこと嫌ってるって?」

ミサト「アスカ! 待ちなさい!」ガシッ

シンジ「アスカに決まってるだろ! いっ⁉︎」

アスカ「あらぁ? シンジ様。次はどこを踏みつけられたいのかしら?」ゲシッ

シンジ「ぐっ……なんなんだよ!」

ミサト「アスカ! 足だけで器用にやらないで!」

アスカ「あんた、ほどいたら出てくの?」

シンジ「出てくよ! 先生のところに帰るんだ!」

ミサト「……シンジくん。そうなったら、監視体制が24時間でつくことになるわよ」

シンジ「それでもここよりはいい!」

アスカ「ミサト、明日、朝イチで初号機に乗せましょ」

ミサト「……や、やっぱり?」

アスカ「そうしなきゃ、碇司令になんて説明するの?」

ミサト「そ、そうよね」

シンジ「な、なに言ってるんだよ! 僕はアレに乗りたくないんだ!」

アスカ「こんなに嫌がってるんだし、碇司令も事情を説明すればわかるわよ」

ミサト「でも、これって大丈夫かしらん?」

アスカ「人間、死ぬ気になればなんでもできるものよ。シンジ、まだ口で嫌がる余裕があるでしょ」

シンジ「そ、そんな……」

ミサト「それもそっか」

シンジ「なんで納得するんですか! ミサトさん!」

アスカ「と、いうわけで」

ミサト「シンジくんはこのまま朝を迎えてもらいましょうか」

シンジ「そんなバカな……こと……」

アスカ「さぁ、シンジぃ~? 気を失うか、寝るかどっちがいいぃ~?」

シンジ「ちょ、ちょっと落ち着いてよ、アスカ」

ミサト「私はなにも見てないなにも見てないなにも見てないなにも…………」

- 翌日 ネルフ本部 格納庫 -

ガラガラガラガラッ

作業員「お疲れ様です、葛城三佐。お急ぎのようで ――」

ミサト「技術班は⁉︎」

作業員「はぁ、まだ時間もはやいので、チラホラ見かける程度ですが……台車に乗ってるのはサードチルドレンですか?」

ミサト「いるだけでかまわないわ!急いでかき集めて! それとプラグエントリー準備!」

作業員「なにも聞いてないですが、上からの承認はおりてるんで?」

ミサト「……せ、せせせ、責任は私が持つわ! つべこべ言わないでさっさとやる!」

作業員「り、了解しまし――」

リツコ「――なんの騒ぎ?」ヒョイ

ミサト「あっちゃぁ~。リツコ。いたのね」

リツコ「エヴァの点検に立ち会っていたのよ。それでミサトは? あら? アスカも?」

アスカ「…………」

リツコ「今日は学校のはずでしょ? テストは……そこでプラグスーツを着てるのはシンジくん⁉︎」

ミサト「……エヴァに少し乗せたいのよ」

リツコ「あなた、一体なに考えてるの! 理由を今すぐ言いなさい!」

ミサト「シンジくんがエヴァに乗るのをこわがってるから、そんなにこわいものじゃないって教えようと思って」

リツコ「気を失ってるんじゃなくて⁉︎」

ミサト「昨日、すこし暴れたのよ~」

リツコ「ミサト⁉︎ だからって気絶させたの⁉︎」

ミサト「ちょっとやり方が強引だっていうのはわかってる」

リツコ「許可できないわ! トラウマになって二度と乗らなくなる!」

ミサト「……これは必要な処置よ。私が、そう判断したの」

リツコ「何様のつもり⁉︎ 碇司令に報告したら厳罰は免れないわよ!」

ミサト「赤木博士。シンジくんの記憶が取り戻せるかもしれないのよ。そうしたら乗らなくなる心配はない」

リツコ「なんの根拠があってそんなことを言うの⁉︎」

ミサト「……その、昨日催眠術にかけたら、そうシンジくんが答えたから」

リツコ「催眠術ですって⁉︎ 素人が⁉︎ かかるはずないじゃない!」

ミサト「かかっちゃったのよぉ! それで、その時にエヴァに原因があるって」

リツコ「その話、本当なの?」

ミサト「まぁ、その、なんつーかね」

リツコ「どっちなのよ……」

ミサト「シンジくんの記憶さえ戻れば何も問題はないのよ! 今回だけは目を瞑って!」

リツコ「……っ! 葛城三佐!」

アスカ「チッ、また押し問答ね。シンジが戻る可能性があるなら賭けてみる。たまにはそういう荒療治やってみてもいいんじゃないの?」

リツコ「あら? 2人で結託したの?」

アスカ&ミサト「はん、まさか」

リツコ「…………」

アスカ「私たちは目的が同じであるという共通意識があるだけよ」

ミサト「普段なら止めるところなんだけど、初号機のパイロットはシンジくんしかいない。私もそう思ってる。だから、アスカのやることに協力してるわ」

リツコ「エヴァに関連があるとしても、プラグに乗せることが解決策とは限らないのよ」

ミサト「悪化を恐れる気持ちはわかる。しかし、研究者としては試してみる価値はあるんじゃなくって?」

リツコ「……(レイとのきっかけを作る為にはどうしても承認できない)」

ミサト「ね? お願い、今回だけでいいから。少しプラグに乗せるだけよ」

リツコ「却下します。くわえて今回のことは碇司令にも報告させてもらうわ」

ミサト「また碇司令? あんた最近、碇司令と距離感近くない?」

リツコ「仕事よ! 公私混同しないでちょうだい!」

ミサト「ふぅん?」

リツコ「碇司令が今日から不在なのが痛いわね」

ミサト「え? 碇司令、いないの?」

リツコ「南極に。今頃は飛行機の中でしょうね……」

ミサト「それじゃあ、不在の時の指揮権は?」

リツコ「それは、ミサトに……あっ」

ミサト「ナァ~~イスタイミングッ!」

リツコ「……はぁ」

ミサト「はいはぁ~い! みなさぁ~ん! サードチルドレンエントリースタンバーイ!」

リツコ「あ、あなたね! 任されてると言っても代理なのよ! わかってるの⁉︎」

ミサト「もちろん、碇司令が戻ってきたら、きちーんとご報告させてもらうわよ? でもそれまでは、私の管轄下よね? あ・か・ぎ・は・か・せ?」

リツコ「…………くっ!」

作業員「葛城三佐ぁ~! 作業にとりかかってもよろしいんですかぁ~?」

ミサト「オッケーですー! パパッと取り替かっちゃってくださーいっ!」

リツコ「失礼するわっ!」

アスカ「どこ行くの? 見てけばいいのに」

リツコ「衛生電話よ! 連絡が届く範囲になったらすぐにでもかけさせてもらうわ!」

ミサト「死の海、南極でしょ? 電波はいらないと思うけど」

リツコ「くっ、ミサト! 覚えておきなさいよ!」コツコツ

- ネルフ本部 発令所 -

マヤ「初号機、エントリースタンバイにはいります」

ミサト「ごめんねぇ~。マヤちゃん、朝早くから」

マヤ「いえ。でも、どうしていきなり?」

ミサト「ま、ちょっとした事情があんのよん。それよりリツコは?」

マヤ「先輩なら衛生電話を持ってラボに引きこもってましたけど」

ミサト「……あはは」

作業員「おーい! パイロット投げるぞー!」

シゲル「MAGI、パイロットの搭乗を確認。LCL加圧スタートします」

マコト「でも、使徒も来てないのにいいんですか?」

ミサト「うっ。みんなして言わないでよ」

マコト「一応、マニュアルでは第二次警戒体制に移行する決まりですが、どうします?」

ミサト「今回はなにもしなくていいわ。シンジくんを乗せるだけだもの」

マコト「了解、あとシンジくんの意識は?」

ミサト&アスカ「あ、忘れてた」

シゲル「えぇ~?」

アスカ「私がいって起こしてこようか?」

ミサト「う~ん。それもひと手間かかっちゃうし、待つわけにもいかないし、ちょっと濃度高めてくれる?」

マコト「えぇ⁉︎ か、葛城さん! シンジくん今記憶ないんでしょ⁉︎ 慣れてないのに大丈夫なんですか⁉︎」

ミサト「ここまでやってしまったら後には引けないわ。シンジくんの根性に賭けましょ」

マヤ「シンジくん、かわいそう……」

シゲル「あ~」

マコト「無茶するなぁ、まったく」

ミサト「……ご、ごほんっ! どうしたの? はやくしなさい!」

- 初号機 エントリープラグ内 -

シンジ「……がはっ!……ぐぅっ……」ゴボゴボゴボゴボ

シンジ「……息が……っ!」

ミサト『おっけー! 日向くん! シンジくんおきたみたいだから元にもどして』

シンジ「……はぁっ……はぁっ……」

ミサト『シンジくん? 聞こえるー?』

シンジ「な、なんですかここっ⁉︎ なんなんですか! どうして僕ここにいるんですか!」

ミサト『そこは初号機の中よ。正確にはエントリープラグ内だけど』

シンジ「どういうことですか! なんで乗ってるんですか! 乗りたくないって言ったでしょ⁉︎」

ミサト『なにも戦わせようってわけじゃないのよ。とりあえず、シンクロしてみるだけだから』

シゲル『電源、はいります』


ブゥーン


シンジ「嫌だ! 僕は降りる! 開けて! 開けてくださいよ!」ドンドンッ

ミサト『かまわないから、シンクロはじめちゃって』

マヤ『りょ、了解。指揮系統からシンクロ、開始します」

シンジ「な、なにやるんですか! や、やめてくださいよ! ミサトさん!」

ミサト『さて、どうなるかしら』

アスカ『変化が起こるといいけど』

- ネルフ 本部 発令所 -

シンジ『ミサトさんっ! おろしてくださいよ!』

ミサト「数値はどう?」

マヤ「シンクロ率、40.2%。3分が経過しましたが状況に変化はありません」

シンジ『このっ!』ガンガンッ

ミサト「……そう。乗せるだけじゃだめなのかしら」

シゲル「しかし、変ですね」

アスカ「なにかあったの⁉︎」

シゲル「あぁ、いや……シンジくんのバイタルが正常値なんです」

ミサト「あれだけ嫌がってるのに?」

シゲル「えぇ、ですから、口では嫌がっても精神では嫌がっていないことになります。むしろいつも通りといった感じですね」

マコト「こちらも、なにか妙です」

ミサト「なに?」

マコト「シンクロ率にまだ余裕があります。テストプラグじゃないのに」

シンジ『ミサトさんっ! ミサトさ……ミサト……ミサ……』

アスカ「……? ねぇ、シンジの様子がなんかおかしい」

ミサト「データはどうなってる?」

シンジ『う……うぅ……うぅ……』

マヤ「なんら異常は……」

ミサト「シンジくん? どうしたの? 気分でも悪いの?」

ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ

ミサト「エマージェンシーコール⁉︎」

アスカ「なにがはじまったの⁉︎」

ミサト「状況は⁉︎」

シンジ『く、クククククッ……』

マコト「パルス逆流! 絶対防衛線を突破します!」

シゲル「す、すべてのメーターが振り切られています! こりゃぁ、まるで、感情の波が押し寄せてるみたいだ」

マヤ「デストルドー反応増大! 危険域に入ります! このままでは自我が持ちません!」

シンジ『血の匂いが……』

ミサト「回路を強制的に切って!」

シンジ『ミサトさん。とれないんですよ』

マコト「エヴァ、信号を拒絶!」

ミサト「初号機の電源は入っていないはずでしょ⁉︎ エントリープラグだけなんじゃないの⁉︎」バンッ

シンジ『はぁ……。もういい』


アスカ「シンジッ!!!」


シンジ『アスカ……?』

アスカ「あんた! なに勝手に記憶喪失になんかなってんのよ! どういうつもり⁉︎」

シンジ『わからないんだ。僕はなにができるのか』

アスカ「あんた何かしたいことがあんでしょ⁉︎ だったらやってみればいいじゃない! やる前から諦めるな!」

シンジ『本当は、自信なんかないんだ』

アスカ「みんなそうなのよ! それでも試して、トライ&エラーで生きてんの! あんたまさか私を置いてどっかに行っちゃう気⁉︎」

ミサト「アスカ、シンジくん記憶もどってるの⁉︎」

リツコ「まさか……」

マヤ「パイロットの精神汚染がはじまっています!」

リツコ「プラグから⁉︎」

マヤ「違います! 初号機からの侵蝕です!」

リツコ「まずいわ!」

アスカ「シンジ! あんた私を守るって言ってくれたじゃない! 全部放り投げるつもり⁉︎」

シンジ『…………』

アスカ「記憶戻ってるんでしょ! うぅん、違う、あんた本当は記憶がなくなってたんじゃない! 多重人格になってたんでもない!」

シンジ『…………』

アスカ「記憶をなくした「ふり」だったんでしょ! 本当は全部覚えてた! 違う⁉︎」

ミサト「なんですって……」

アスカ「思いかえせば全部おかしかったのよ! あんたの行動も記憶をなくしたタイミングもなにもかも!」

マヤ「……? 初号機、侵蝕、止まりました」

リツコ「…………」

アスカ「こわかったんでしょ⁉︎ だってあんた、臆病だから」

シンジ『…………』

アスカ「自分の殻に閉じこもって、エヴァに乗ってからのことをなかったことにした」

リツコ「そうか……」

ミサト「リツコ?」

アスカ「でも、見なくちゃいけないことがあるのもわかってる! だから私達にわざわざヒントを与えてたんでしょ⁉︎」

リツコ「シンジくんは記憶喪失なんかじゃない。現実と虚構の間をせめぎ合っていたのよ。危うい天秤のバランスで成り立っていたんだわ」

ミサト「……でも、演技だけで私達全員の目をごまかせる」

リツコ「嘘に真実を織り交ぜれば判断は鈍り、目が曇る。シンジくんがそのことに気がついていたのかはわからないけど、彼はそれを実践していた」

ミサト「私たちはシンジくんに記憶喪失だと思わせるようにミスリードされてたってこと?」

リツコ「おそらくね。医師の目をごまかせたのも、彼が殻に閉じこもっていたせい。多重人格とはいかないまでも、擬似的な人格を作りあげていたのよ」



アスカ「――なんとか言いなさいよっ!!! バカシンジ!!」

シンジ『やっぱり、すごいや。アスカは』

アスカ「――っ! 私はあんたがなにを言ってるのかほとんどわからない。なにを見なくちゃいけないのかも」

シンジ『そうだね……』

アスカ「だけど、私は今のあんたを見てんのよ! エリート舐めんじゃないわよ!!」

シンジ『……ふぅ。たしかに殻を破ってくれるきっかけがほしかったのかもしれない』

ミサト「シンジくん? ……アスカの言ってることは本当なの?」

シンジ「僕自身、そうなのかわからないところもあるんです。だけど思い当たる節はありますね」

リツコ「無自覚だからできたんでしょうね。中学生がやろうと思ってできることではないわ」

ミサト「……そんな。シンジくん? なにがあったの?」

シンジ『嫌になってしまったんです。なにもかも。守りたい、けど、僕はまた、逃げることを選んでしまった』

アスカ「…………」

シンジ『守れないかもしれないというプレッシャーから。できるかわからないという不安から。見ないようにして我慢してきたけど』

リツコ「……今日、初号機に乗ったのはどういうきっかけが必要だったのか聞いてもいい?」

シンジ『僕の居場所はここしかないって……嫌でも実感できるから』

アスカ「あんたバカァ? 自分の居場所なんて自分で決めるものでしょ」

シンジ『あははっ。そうだね。アスカの言う通りだ』

シゲル「すべての数値が元に戻っています」

ミサト「安定した……?」

リツコ「(まずいわ。アスカとシンジくんの絆は確実に深くなっていっている。これでは碇司令の計画が……)」

アスカ「これぐらいで文句が済むと思ったら大間違いだからねっ! アザのひとつやふたつ覚悟しときなさいよ!」

シンジ『わかったよ。アスカ』

アスカ「ふんっ! べーーーっだ!」

- ネルフ本部 男子シャワールーム -


ザァーーッ


シンジ「ふぅ………」

シンジ「なにもかも、見破られちゃったんだろうな」

シンジ「ロボットに体当たりしたあの時、僕は、全部思い出した。アスカのことも、綾波のことも、マナのことも、そして、カヲルくんのことも」

シンジ「(見なくちゃ、向き合わなくちゃいけないんだ。そう、僕がなぜ知っているのか、僕自身から)」


キュッ キュッ


シンジ「……冷水が気持ちいいや」

- ネルフ本部 第三通路 -

――バチンッ!!

シンジ「……っ」

アスカ「なにも言わないのは褒めてやるわ」

シンジ「なにも言えな――」

バチンッ!!

シンジ「ぐっ……」

アスカ「よくもこのあたしに嘘をついたわね」

シンジ「…………」

アスカ「私は他の誰を騙してても別に責めたりしない。だけど! 私を騙すなんてどういうつもり!」

シンジ「悪かったよ」

アスカ「痛いでしょ! 私だって手がヒリヒリすんのよ! でも、それ以上に、心が痛いの!」

シンジ「…………」

アスカ「子供を言い訳になんでも許されると思う⁉︎ 今回のあんたは自分のことしか考えてなかった! 私のことなんか考えてなかったでしょ⁉︎」

シンジ「そうだね……」

アスカ「ふぅ……ふぅ……」

シンジ「気の済むまで殴っていい、と言いたいところだけど、アスカだって不満があるから殴ったりすんだもんね」

アスカ「…………」

シンジ「アスカがスッキリするならいい。でも、きっと、今回のことは、殴ったところでアスカの気持ちは晴れないと思うんだ」

アスカ「…………」

シンジ「だから、もうこういうことは二度としないよ。ごめんアスカ。僕から言えることはこれだけだ」

アスカ「……それだけ?」

シンジ「僕は完璧なんかじゃないんだ。不器用で下手くそで。でも、もう嘘はつかない。だから、許してほしい」

アスカ「……そんな小難しい話をしてんじゃないのよ。私が許せないのは、あんたが私に嘘ついたこと」

シンジ「うん……」

アスカ「あんたにはあんたのペースがあって、私には私のペースがあんのよ。なにからなにまで同じって話じゃない。意味わかる?」

シンジ「みんな違うよね……」

アスカ「私も日本に来てから多くのことを知ったわ。違うから知ろうとする。わかり合おうとすんのよ。かと言って、完璧にわかり合うなんて無理な話でしょ」

シンジ「僕たちは他人だから」

アスカ「突き詰めるとそうよね。だけど、分かり合えた時、嬉しいって思える。そこに価値があんのよ」

シンジ「うん……」

アスカ「……心配したんだからね……もぅ……バカァ……」

シンジ「ごめん……」

アスカ「あんたの記憶が戻らなかったら今までのこと全部……なくなるんじゃないかって……う……うぅ……」ポロポロ

シンジ「僕が、馬鹿だったんだ」ナデナデ

アスカ「うぅ……ぐす……うっ……」ギュウ

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「いらっしゃい、シンジくん」

ミサト「アスカとは、仲直りできた?」

シンジ「すみません……。みなさんにも迷惑かけました」

ミサト「子供はそれぐらいのが可愛げがあんのよ」ペチン

シンジ「…………」ペコ

リツコ「シンジくん、いくつか質問してもいい?」

シンジ「はい」

リツコ「まず、あなたの記憶喪失についてなんだけど、あれは演技だったと断言していい?」

シンジ「全てが演技というわけではありません。記憶がないと思いこんでいたんでしょうけど」

リツコ「それは、エヴァのせい?」

シンジ「そうですね。戦うのが嫌になったと思います」

リツコ「そういうケースがないわけではないわね」

ミサト「ちょっと、リツコ。なにも今質問しなくっても」

リツコ「人は時間がたてばたつほど記憶が曖昧になっていくのよ。シンジくんは若いからすぐに忘れるってことはないけど、すぐに聞けば鮮明なの」

シンジ「僕はかまいませんよ」

リツコ「もうエヴァに乗るのが嫌じゃないの?」

シンジ「嫌じゃないわけじゃありません。だけど、守りたいものがあるなら、そうも言っていられません」

リツコ「守りたいものとは、アスカのこと?」

シンジ「……みんなです」

ミサト「みんな?」

シンジ「はい。ミサトさんもリツコさんも」

ミサト「ちょっとちょっとシンちゃ~ん! 嬉しいこと言ってくれるじゃない!」

リツコ「ミサト。……生憎だけど、私は子供に守られるつもりはないわ」

シンジ「精神的に守るなんて大層なことを言ってるんじゃないんです。僕はエヴァに乗ることができる。みんなを守ることができるんです」

ミサト「……シンちゃん」

リツコ「ふぅ。たしかにあなたはエヴァのパイロットね。使徒を殲滅して私たちを守ることはできるわ」

シンジ「はい」

リツコ「だから、もう乗るのはためらわないと?」

ミサト「リツコ! いい加減にしてよ! 今の言葉が聞けただけで充分でしょ!」

リツコ「判断するのは私よ」

ミサト「シンジくんは家で休ませるわ!」

リツコ「ミサト? シンジくんに手をだすつもり?」

ミサト「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ! 私はパイロットの監督官です!」

リツコ「あなたは個人的にシンジくんを利用しているだけでしょ」

ミサト「……っ! あんた、なに言って」

リツコ「復讐」


バチンッ!!


リツコ「……っ!」キッ

ミサト「それ以上喋ったらただじゃ済まさないわよ!」

リツコ「あなたもアスカと同じね。お似合いの家族ごっこだわ!」

ミサト「なんですって!」

リツコ「シンジくんは、加持くんの代わりにはならないわよ!」

ミサト「……行くわよ、シンジくん」

シンジ「はい……」

- 車内 移動中 -

ミサト「アスカは先に帰したから、家で待ってると思うわ」

シンジ「はい」

ミサト「今日はみんなでパーっと焼き肉でも食べに行きましょっか?」

シンジ「あの、ミサトさん」

ミサト「ん? なぁに?」

シンジ「さっきの話なんですけど」

ミサト「あぁ、リツコとのこと? シンちゃんは気にする必要ないわよ。私たちああやってたまにぶつかり合うの」

シンジ「そうじゃないんです」

ミサト「ん~?」

シンジ「僕は、ミサトさんとリツコさんの時間を知らないことばっかりだから、わかったようなこと言えません」

ミサト「…………」

シンジ「だけど、みんな違うからぶつかるのはわかります。もう、人の顔色を気にするのはやめようと思うんです」

ミサト「ほぅ」

シンジ「ミサトさんの願いも、平和の先にあることも叶うといいですね」

ミサト「平和の先って?」

シンジ「考えてみたらいいんじゃないですか。使徒がこなくなったら、全部倒したらどうするか」

ミサト「……そうね。そうかもしれない。ま、私はネルフが解体されたらどっかの職員にでもなってるんでしょうけど」

シンジ「はい」

ミサト「ぷっ、ガキがあんまり難しいこと考えてんじゃないわよ。シンジくん、若い内は、なんでもぶつかっていきなさい」

シンジ「そうします」

ミサト「行き先なかったら、シンちゃん、お嫁にもらってくれる?」

シンジ「みんなが驚きますね」

ミサト「だっはっはっ! そりゃそうよね~!」

ちょい質問なんだけども、年齢的に中学生が酒飲んでるとこいれたらまずいんでしょか?

いや、ここで聞かない方がいいのか
ちょと聞いてから続き書きます

問題ないそうなので続けます

一言ご注意

中学生が酒を飲むシーンがあります
現実だと法律的に問題ありますが創作物としてご容赦ください

- ミサト宅 リビング -

ミサト「そいじゃあ! シンちゃんの記憶回復を祝ってぇ! かんぱぁ~い!」コチン

アスカ「ミサトはかこつけて飲みたいだけでしょ」

ミサト「あらハズレ。そうじゃなくても飲むわよ」

アスカ「堂々と言うこと⁉︎」

ミサト「さぁ、お肉焼くからどんどん食べてね! 野菜もちゃんと食べるのよー!」

アスカ「しかも家で焼き肉って……」

シンジ「……ミサトさん、僕にももらってもいいですか?」

ミサト&アスカ「えぇ⁉︎」

シンジ「変かな?」

ミサト「変とかそういう問題じゃないわ! あなたまだ中学生でしょ!」

アスカ「シンジ、グレたの?」

シンジ「少し、どんな味なのかなって興味があって」

ミサト「あぁ~な~る。たしかにそういうことに興味を持つお年頃でもあるわね」

アスカ「苦いわよ?」

シンジ「アスカは飲んだことあるの?」

アスカ「ドイツにいる時に少しだけ。法律ではもちろん禁止だけど、まぁ、ちょこっともらうぐらい誰にでもあるでしょ」

ミサト「シンちゃんも飲んでみたい?」

シンジ「はい」

ミサト「じゃぁ~まぁ、しょうがないっかぁ~。ただし、このことは秘密よ? アスカも言わないでね?」

アスカ「はいはい」

シンジ「ありがとうございます」

ミサト「それじゃコップ、ビールでいいわよね」

シンジ「はい」スッ

ミサト「あら? コップ傾けるの知ってるの?」

シンジ「注いでるの見たことはありますから」

ミサト「それもそっか。これはね、泡をたたせすぎないようにやるのよ。これも社会勉強の内かな」トクトクトクトク

シンジ「………ととっ」

ミサト「はい、どーぞ」

アスカ「シンジのことだから一口で酔っ払うんじゃない?」

シンジ「乾杯」

ミサト「はい、乾杯」コチン

シンジ「……んくっ……んくっ……」ゴクゴク

アスカ「ちょ、ちょっと、シンジ?」

ミサト「シンちゃん? 若いからってイッキは」

シンジ「ふぅ」コトン

アスカ「ぜ、全部飲んじゃった」

ミサト「あららぁ~」

シンジ「悪くない味、ですね」

アスカ「えぇ……」

ミサト「シンちゃんもしかしてイケるクチなの~⁉︎ もう一杯いっとく?」

シンジ「はい」

ミサト「ささ、どーぞ。お酌します」トクトクトクトク

アスカ「ちょっと、シンジ? ミサトもやめなさいよ!」

ミサト「いいじゃない? お酒は無礼講って相場が決まってんのよ。たまには息抜きも、ね?」

アスカ「……たくっ」

シンジ「……んくっ……んくっ……」グビグビ

アスカ「シンジ⁉︎ もうちょっと落ち着いて飲んだら⁉︎」

ミサト「加減がわからないのかしら……」

シンジ「うん、おいしいや」コトン

ミサト「あら、また空……」

シンジ「ミサトさんも注ぎますよ」

ミサト「あ、あらら? そぉ?」

ミサト「碇司令ってお酒強かったっけ?」

シンジ「さぁ、父さんとはほとんど話をしたことがありませんから」

ミサト「あ、そう。遺伝かどうかわからないか」

シンジ「ミサトさん、そっちのワインってどんな味なんですか?」

ミサト「そっちも飲んでみたい?」

アスカ「ミサト! もう止めなさいよ!」

シンジ「アスカも飲んでみる?」

アスカ「あ、あたし⁉︎ 別にいい!」

ミサト「にへへ。アスカもまだまだお子ちゃまなのね」

アスカ「だぁれが⁉︎」

シンジ「なら、飲んでみる?」

アスカ「シンジ? そんなキャラだった?」

シンジ「僕はいつも通りだよ」

ミサト「さぁ、シンちゃんからのお誘いよん?」

アスカ「少しだけ! 少しだけだからね!」

ミサト「まぁ、シンジくんと違ってお子ちゃまのアスカにはうまさがわからないか」

アスカ「満タンにちょうだい!」

ミサト「はいは~い♪ さ、二人ともコップ」

シンジ「――アスカ、アスカ、大丈夫?」

アスカ「ヒック……うるひゃいわねぇ~……こんなのお茶の子さいさいなんだならぁ~」

ミサト「こっちはワイン3杯で酔っ払うのね」

アスカ「体があつぅ~い」

ミサト「このワイン度数高くないんだけど、ゲルマン人の血はどこいったのかしら」

アスカ「あたしはクォーターだって、いってんれひょ」

シンジ「アスカってクォーターだったんだ」

アスカ「そうよ! あ、ひょっか。シンジに言ってなかったんだ」

シンジ「うん、初めて聞いた。ミサトさん、どうぞ」

ミサト「あら、ありがと」

アスカ「はぁ……だめ。まわる、世界がまわる」

ミサト「ここまで出来上がるなんて安上がりね」

アスカ「ねる……もう……ねちゃうんだから……」

シンジ「アスカ、寝るなら部屋で寝なよ」

アスカ「うぅん、むりぃ」

シンジ「はぁ、仕方ないな」ガラ

アスカ「う~ん」

ミサト「お優しいのね」

シンジ「からかわないでくださいよ。ほら、アスカ、肩に捕まって」

アスカ「シンジ~。すきぃ~」

ミサト「ヤる時はゴムつけるのよん」

シンジ「しませんよ! アスカを寝かせたら戻ってきます、よっと」

ミサト「わぉ、お姫様だっこなんてだいたん」

ミサト「……家族ごっこか」

ミサト「ちょっと、無理にはしゃぎすぎちゃったかな。見透かされてないといいけど」


ミサト(少女)『……お父さん……」

ヒデアキ『…………』


ミサト「っと、いけないいけない。何を思い出してんだか」


トタトタ


シンジ「――ミサトさん、アスカ、ベットに寝かせてきましたよ」

ミサト「ご苦労様」

シンジ「あの、そっちのってどんな味なんですか?」

ミサト「ん~? あぁ、これぇ? これはちょっと、シンジくんには早いわよ」

シンジ「少し、飲んでみたいなって。ダメですか?」

ミサト「ウィスキーよ?」

シンジ「知ってます」

ミサト「はぁ……。しょうがない。水割りでいい? えーと、たしか冷蔵庫にかち割りが」ガラ ガチャン

シンジ「はい」

ミサト「気分が悪くなったらすぐに言うのよ。酔いは遅れてやってくる場合もあるから」トクトクトク

シンジ「まだ、大丈夫みたいです」

ミサト「慣れてるわけないのに、本当に強いのね。はい」

シンジ「……」カラン

ミサト「ちょ、ちょっとシンちゃん? なんだか慣れてない?」

シンジ「そうですか?」

ミサト「指でまわすなんて誰に教わったの?」

シンジ「見て覚えたんですよ。マネしたかっただけです」

ミサト「まぁ、そうかも……しれないけど」

シンジ「ミサトさんは飲まないんですか?」

ミサト「の、飲んでるわよ」グビグビ

シンジ「じゃあ、僕も……んっ、甘いんですね」

ミサト「ブランデーだからね。そのお酒、ちょっと高いのよ?」

シンジ「へぇ……」

ミサト「さっきみたいにイッキはしないの?」

シンジ「香りがいいから、少しずつ飲もうかと思って」

ミサト「(ど、堂にはいってる?)」

シンジ「ミサトさん、おつまみはアーモンドでいいですか」ガラ

ミサト「そうね……。結局、あんまり焼き肉食べなかったわね」

シンジ「明日にでも使えますから」

ミサト「…………(この子、なんか急に大人びた? え? でもお酒飲めたからそう思うだけ?)」

シンジ「どうぞ」スッ

ミサト「シンちゃんって主夫向きよね」

シンジ「家事やってればそう思うかもしれませんね」

ミサト「まぁ、なんていうか、気配りとか」

シンジ「顔色伺って生きてきたから、身についただけですよ。ミサトさん、そういうのあんまり好きじゃないでしょ」

ミサト「ぶっ」

シンジ「あぁ、いや、いいんですよ。素直な反応がいいっていうのもわかりますから」カラン

ミサト「…………」ゴクゴク

シンジ「……あ、もうなくなっちゃった」

ミサト「(ぺ、ペースがはやい)」

シンジ「ミサトさん、飲んでます?」

ミサト「飲んでます! そりゃもう!」グビグビ タンッ

シンジ「そっか、じゃあ注ぎますよ。ロックって飲んでみてもいいですか?」

ミサト「えぇ⁉︎」

シンジ「でも高いならもったいないかな」

ミサト「いや、本来の味を楽しむためにはロックが……って、大丈夫?」

シンジ「あれ? そっちのお酒はなんだろう?」

ミサト「そ、それは! 昇進祝いのおふざけでいただいた……」

シンジ「スピリタス?って読むのかな?」

ミサト「シンジくん! それはだめよ! アルコール度数いくつか知ってるの⁉︎」

シンジ「まぁ、試しってことで」

ミサト「ちょ、ちょっと待ちなさい!」ガシッ

シンジ「ミサトさん、飲めないんですか?」

ミサト「くっ、飲めるに決まってるでしょうが!」

ミサト「グラスはちっちゃいのにしなさい!」

シンジ「えーと」

ミサト「指の長さぐらいのやつあるでしょ!」

シンジ「あぁ、これか」カチ

ミサト「本当に無理だったらトイレにかけこむのよ! 瞳孔開いてもだめよ! 吐きなさい!」

シンジ「これって度数そんなに高いんですか?」

ミサト「世界最高度数といわれてるものよ。シンジくん、理科の授業でアルコールランプ使ったことあるでしょ?」

シンジ「あぁ、はい」

ミサト「厳密には違うけど、あれ飲むようなものよ」

シンジ「へぇ……そんなに強いんだ」カシュ

ミサト「や、やめないのね」

シンジ「試しですから。若い内はなんでもでしょ?」トクトク

ミサト「言うじゃない」

シンジ「どうぞ」スッ

ミサト「まぁ、私はへっちゃらだけど」

シンジ「じゃあ、乾杯しますか」

ミサト「……乾杯」

ミサト&シンジ「……んくっ……」タンッ

ミサト「……くぅ……(これは効く)」

シンジ「うん、悪くないな」

ミサト「はぁ⁉︎」

シンジ「さ、もう一杯どうぞ」トクトク

ミサト「(この子、もしかしてザルなの? わ、私が潰される)」

シンジ「どうしたんですか? 手が震えてますけど」

ミサト「中学生にプレッシャーかけられるほど落ちぶれちゃいないわよ! 飲み会で鍛えた社会人舐めんじゃない!」

シンジ「どうぞどうぞ」

ミサト「……ふぅ……んくっ……」グビ タンッ

シンジ「お見事」

ミサト「はぁ……どう? これが社会人の……」

シンジ「……んっ……」グビ タンッ

ミサト「…………」

シンジ「どうしますか? 無理ならやめますけど」

ミサト「上等っ!!!」

中学生でこれだけ飲んだら死ぬだろ

シンジ「――ミサトさん、大丈夫ですか? ミサトさん」

ミサト「はい、葛城ミサト、だいじょーぶであります」

シンジ「寝ますか?」

ミサト「ま、まだ寝ない。でも、もうやめとく」

シンジ「わかりました」グビ

ミサト「シンジくん、あなた本当の本当に強いのね」

シンジ「僕もはじめて知りましたよ」

ミサト「たまには飲みに付き合ってもらうのもいいかも」

シンジ「1人じゃ物足りない時もあるでしょ。そういう時は付き合いますよ」

ミサト「まだ顔は幼いんだけどね……」

シンジ「……」

ミサト「そんなに今回の出来事が大きかったの?」

シンジ「どうかな。自分じゃわからなくて」

ミサト「……今日は酔っ払っちゃったわ。だから今から話をすることは聞き流して」

シンジ「どうぞ」

>>512
まぁ一応創作物ということでひとつ
元がアニメですし、世の中には絶対いないってこともないでしょうから
ロシア辺りにはいるんじゃないかな(偏見)

ミサト「私の父はね、自分の研究、夢の中に生きる人だったわ。そんな父を許せなかった。憎んでさえいたわ」

シンジ「…………」

ミサト「母や私、家族のことなど、構ってくれなかった。周りの人たちは繊細な人だといってた」

ミサト「でも……ほんとは心の弱い、現実から、私たち家族という現実から、逃げてばかりいた人だったのよ。子供みたいな人だったわ」

シンジ「…………」

ミサト「母が父と別れたときも、すぐ賛成した。母はいつも泣いてばかりいたもの」

ミサト「父はショックだったみたいだけど、その時は自業自得だと笑ったわ」

ミサト「けど、最後は私の身代わりになって、死んだの。セカンドインパクトのときにね」

ミサト「私には分からなくなったの。父を憎んでいたのか、好きだったのか」

シンジ「…………」

ミサト「ただ一つはっきりしているのは、セカンドインパクトを起こした使徒を倒す。そのためにネルフへ入ったわ」

ミサト「結局、私はただ父への復讐を果たしたいだけなのかもしれない。父の呪縛から逃れるために」

シンジ「僕はその代行者ってわけですか」

ミサト「…………」

シンジ「ミサトさんが指揮するネルフで僕が使徒を倒す。そうすることで、逃れようとしている」

ミサト「ご明察」

シンジ「いいんじゃないですか、それで」

ミサト「えっ」

シンジ「僕も使徒を倒したい、だから目的は一緒です」

ミサト「…………」

シンジ「僕が嫌々乗っていたり、言われるがまま、乗っていたら、どうして背負わせるのかって話になるんでしょうけど」

ミサト「…………」

シンジ「状況が変わった」

ミサト「……そうね」

シンジ「このアーモンドおいしいですね」

ミサト「ありがと……」

シンジ「女の子ってずるいですよね」

ミサト「お、女の子?」

シンジ「心の中では、感謝してないわけじゃない。けど、はっきりと区切りをつける」ガタッ

ミサト「な、なに?」

シンジ「みんながそうだとは言いませんけど。守らなければいけないルールがありますから」

ミサト「ちょ、ちょっとシンジくん、ちか」

シンジ「ミサトさんは、なにを守りたいんですか?」スッ

ミサト「……やっ……」

シンジ「……さて、寝ますか」

ミサト「………はっ?」

シンジ「僕は部屋に戻ります」

ミサト「えっ、あの、ちょっと」ポケー

- シンジ 部屋 -


ゴロン


シンジ「(ふー、全然酔わなかったな)」

シンジ「(僕の、僕の実年齢はやっぱり……)」

シンジ「(いや、まだ子供でいられるなら子供でいよう。今はそれでいい)」

シンジ「(アスカにも全てを話せるわけじゃない。だから、今はまだ……)」

- ミサト 部屋 -

ミサト「ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って」カリカリ

ミサト「なんであの瞬間私、キスされようとしてた?」

ミサト「はぁ⁉︎ シンジくんに⁉︎」

ミサト「……み、見事に虚をつかれた」

ミサト「うーん、男の子の成長ってすごいのねー」

- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 -

シンジ「おはよう、みんな」

トウジ「シンジ、おはよーさん」

シンジ「トウジ、僕を一発殴ってもらえないかな」

トウジ「はぁ? やぶからぼうになんやねん?」

アスカ「……シンジ、別に言わなくたって」

シンジ「いいんだ。僕がこうしたいだけだから」

ケンスケ「なんだなんだぁ?」

シンジ「トウジもケンスケも、ごめん。僕は記憶喪失じゃなかったんだ」

トウジ&ケンスケ「はぁ⁉︎」

シンジ「演技だったんだ。嫌なことから目を背けるための」

トウジ「演技ってお前、そんなこと、できたんか?」

ケンスケ「そ、そうだよ! とても演技には見えなかったぞ!」

シンジ「嘘をついてたんだ。だから、殴ってほしい」

トウジ「……今の話、ほんまなんか?」

アスカ「全部ってわけじゃないのよ! ただ」

シンジ「アスカ、いいんだ。アスカは僕をかばってるだけだよ」

トウジ&ケンスケ「…………」

トウジ「よし、わかった。ワシも細かいことは嫌いや。そんなワシの性格を知って言うとんのやろ」

シンジ「うん」

トウジ「せやったらワシはシンジの心意気に答えなあかん」

ケンスケ「と、トウジ」

ヒカリ「なに? どうしたの?」

マナ「なにかあったの?」

アスカ「鈴原! あんた!」

トウジ「女はだぁっとれ! これは男同士の会話や! なぁシンジ」

シンジ「うん、そうだね」

ヒカリ「え? アスカ?」

マナ「鈴原くん?」

トウジ「思いっきり行くで。手加減なんか期待すんなや」

シンジ「いいよ」

トウジ「……っ! オラァッ!」


ガンッ ガタガタ


シンジ「いつっ……」

アスカ「シンジ!」

ヒカリ「す、鈴原ぁっ!」

マナ「あ……」

シンジ「いいんだ。洞木さんもマナもごめん。僕、記憶喪失なんかじゃなかったんだ」

ヒカリ「えぇ⁉︎」

マナ「シ、シンジくん……?」

トウジ「これでワシはチャラや!」

- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

トウジ「なんかよーわからんのー」

ケンスケ「つまり、碇は無意識に別人になりきってたってことかぁ?」

アスカ「この単細胞ども。別人じゃないわ。記憶をなくしてたふり」

ヒカリ「そうだったんだ……」

マナ「…………」

シンジ「みんな、ごめん」

トウジ「あぁ、もう謝るのはなしや」

ヒカリ「それだけ、プレッシャーがあったってことだよね。それなら私も、なにも言えないよ」

マナ「……でよ」

ケンスケ「ん?」

マナ「なんでよ! 守ってくれるって約束だったじゃない!」

シンジ「…………」

トウジ「な、なんや?」

アスカ「ちょ、ちょっと、ここ教室」

マナ「私がどんな気持ちで賭けたかわかる⁉︎ ムサシとゲンタの安否がかかってるのに……」

シンジ「守ってみせるよ」

マナ「えっ……」

シンジ「もう逃げないって決めたから」

マナ「だって、シンジくん。一度……」

シンジ「たしかに僕は逃げた。それについては言い訳はしようがない。だけど、まだ取り返しがつく」スッ

マナ「えぅ、あの……手」

シンジ「マナは一度賭けた。後戻りはできないはずだ。だからもう一度、僕に賭けてほしい」ジッ

マナ「えっ、えぇ……」

シンジ「みんな、無事で会えるように、僕は精一杯頑張るよ。だから、もう一度、チャンスがほしいんだ」

マナ「…………」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

シンジ「ダメだって言っても、僕は助ける。一度した約束なんだ、守るよ」

マナ「あ……あの……取り乱してごめんなさい」

ヒカリ「あ、アスカ」コショコショ

アスカ「え、えっ?」

ヒカリ「碇くん、どうしちゃったの?」

アスカ「あー、うーん? えーと」

ヒカリ「ちょ、ちょっとカッコいい……」

アスカ「だ、だめよ! あれは私のだから!」

ヒカリ「あ、ちが、その、雰囲気、大人びてる、余裕を感じるの」


マナ「あの、ごめんなさい。……その、手、離してくれると……」

シンジ「信じてくれて嬉しいよ。ありがとう」

マナ「……か、かっこいぃ」ポー


ヒカリ「マナ、大丈夫かな」

アスカ「な、なにが?」アセアセ

ヒカリ「碇くん、凄く人気でると思うよ。アスカ、しっかりね」

トウジ「ほぇ~。やるもんやのー」

ケンスケ「僕が守ってみせる! キリッ! 言ってみたいなー」

シンジ「トウジ」

トウジ「はいはい、なんや?」

シンジ「今度、一緒にお見舞いに行くよ」

トウジ「あぁー、気を使ってるんやったら……」

シンジ「そうじゃないんだ。親友の妹のお見舞いに行くのそんなに迷惑かな?」

トウジ「…………親友か、へへ、はじめてやな。シンジからそう言ってきたのは」

シンジ「ケンスケのこともそう思ってるよ」

ケンスケ「あぁ? ぼ、僕も?」

シンジ「うん。なにかあったら何でも話そう」

ケンスケ「あ、あぁ……」

トウジ「よしっ! わかった! 親友となったら紹介せんわけにはいかんわな!」

シンジ「うん。何でも、話そう。ぶつかる時があってもいいんだ。仲直りできるから」

トウジ&ケンスケ「……シンジ」

トウジ「おぉ! なんか青春しとる気になってきたぁ!」

ケンスケ「まぁ、この僕に頼みたいことがあったらなんでも言えよな!」

マナ「……シンジくんってかわいい系だったよね……」

ヒカリ「な、なんで? 中心に立つタイプだった?」

アスカ「ま、まぁ、私が育てたっていうのかしら。まったく、シンジもまだまだね」

ヒカリ「アスカ、どんな魔法使ったの……」

シンジ「さ、続き食べよう」

アスカ「……あの、シンジ? なんか急に大人びてない? 背伸びしてんでしょ?」

シンジ「ん? そんなつもりないけど、ハナにつくかな」

アスカ「まぁ、いや! かなりキザ!」

ヒカリ「ちょっとアスカ」

シンジ「そうかな」

アスカ「……そうかなってそれだけぇ?」

シンジ「普通でいるだけだけど、まだ慣れてないんじゃない?」

アスカ「慣れてないっていうか、困惑っていうか」

シンジ「あ、それおいしそうだね。洞木さん」

ヒカリ「こ、これ? 得意なんだ。よかったら食べる? えへへ」

シンジ「そう? じゃあもらお……」

アスカ「人の話聞きなさいよ!」スパーンッ

シンジ「いてて……」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ! 碇くん食べようとしてただけじゃない!」グイッ

シンジ「っとと」

ヒカリ「碇くん、大丈夫?」

アスカ「ヒカリ? なにしてんの?」

ヒカリ「いきなりぶつなんてひどいわよ!」

アスカ「…………」ピクッ

シンジ「いや、僕ならいいんだ」

ヒカリ「でも……」

アスカ「へぇ~~~?」ピクピクッ

シンジ「だって、2人は仲良いじゃないか。洞木さんもアスカのことわかってるはずだよ」

ヒカリ「…………」

アスカ「気に入らない気に入らない! なんかシンジ変よ!」

シンジ「どう言えばいいか」

アスカ「その困ったような感じもムカつくわ! 1人で大人になったつもり⁉︎」

シンジ「(こうなったらアスカは止まらないからなぁ)」

アスカ「私の方が全然っ!」

シンジ「(アスカはプライドが高い。同年代だからこそ負けず嫌い。でも、そこを指摘しても素直に認められない、かといって謝るのも……)」

まぁ、コメントはなんでも嬉しいです
自分用で書いてるのも大きいんであんま荒れないようにお願いします

アスカ「聞いてるの⁉︎」

シンジ「うん、聞いてるよ」

アスカ「へぇ、じゃあなんて言ってた? 今」

シンジ「アスカの方が頭もいいし、僕はアスカにかなわないって思ってるところが多いんだ」

アスカ「そうじゃな……」

シンジ「それに、僕は、アスカと喧嘩したくないんだ」

アスカ「うっ……」

シンジ「ぶつかることが嫌なわけじゃない、ただ、仲良くできるなら、話してわかることならそうしたい」

アスカ「…………」

シンジ「アスカはどうしたい?」

アスカ「私は、1人で大人になってるつもりなのが気に入らない! それだけよ!」

シンジ「僕は、子供だよ。今もどうしていいか一生懸命考えてるんだ」

アスカ「はん。また人の顔色うかがってるじゃない」

シンジ「誰にでもじゃないよ。僕はアスカと向き合いたい。それだけだ」

アスカ「…………」

シンジ「…………」ジッ

アスカ「……ふん」

マナ「……き、気まずいね……」

トウジ「まぁ、シンジは苦労するやろなー」

ケンスケ「僕らもこの空気に慣れた方がいいのかもしれないな」

ヒカリ「…………」

トウジ「およ? 委員長、どないしたんや」

ヒカリ「う、うぅん。なんでもない」

シンジ「アスカ、少し屋上に行かない?」

アスカ「なんで? ここで食べればいいじゃない」

シンジ「少し話したいことがあるんだ」

アスカ「私、わかってると思うけど、今機嫌悪いのよ」

シンジ「そうだね」

アスカ「それでも行きたいわけ?」

シンジ「うん、お願いしたい」

アスカ「……はぁ。わかったわよ」

トウジ「お? ご夫婦で移動か?」

シンジ「うん。ちょっと移動するから」

ケンスケ「いやぁ、碇から愛されてるねぇ~」

アスカ「べ、別にそんなんじゃ!」

シンジ「……さ、行こうか」

アスカ「あ、うん。ちょっと待って」

- 学校 屋上 -

アスカ「それで、話って?」

シンジ「マナのことなんだけど、アスカにも協力してほしいんだ」

アスカ「……具体的になにするの?」

シンジ「そうだな……。まずはロボットの無力化なんだけど」


マリ「やっほ~! おひさぁ~!」ヒョコ


アスカ「あっ! あんた!」

シンジ「……?」

マリ「いやぁ、ちょうどいいところに来てくれたにゃ~。学校の中はガードが固くて」

アスカ「いつもいつも屋上なのも特定されないわけ?」

マリ「ん~? まぁ、そうなったらそうなった時?」

シンジ「アスカ、この人は?」

マリ「あっれぇ~? ひどいなぁ~ワンコくん! 私のこと忘れちゃったの~?」

アスカ「…………」ピクッ

シンジ「……どこかで会った?」

マリ「会った会った! んもー! 更衣室であんなに話したのにー!」

アスカ「ちょっと、なに言ってるわけ?」ピクピクッ

シンジ「更衣室……あぁ、えぇと、マリ、さん?」

マリ「いやぁ~もうちょっと頭の回転はやかったらいいんだけどにゃ~。でも、まっ、及第点♪」

シンジ「アスカと知り合いだったの?」

マリ「いろいろあってねぇ~。改めまして、よろしく♪ ネルフのワンコくんっ♪」

アスカ「ちょっと、現れてほしい時は出てこなくてなにやってたのよ」

マリ「戦自と政府への破壊工作やってたよー。肩がこっちゃった」

アスカ「さ、さらりと言うのね」

マリ「うん。別になんてことないし」

シンジ「…………」

マリ「ごめんねぇ、姫。本当は今日も姫に会いに来たんだけど、今、興味あるのはワンコくんなんだよねぇ」

シンジ「僕?」

マリ「君、雰囲気かわったね?」

シンジ「…………」

マリ「どこまで、思い出したの?」

シンジ「……君は、誰だ?」

マリ「さて、誰でしょ? あれ? 自己紹介してなかった?」

アスカ「……?」

シンジ「僕は、マリという人を知らない」

マリ「そりゃそうだよねぇ~。イレギュラーなんだもの」

シンジ「…………」

マリ「エヴァの呪い。実年齢、違うんでしょ?」

シンジ「……っ!」

アスカ「あんた達、なに言ってるの……?」

シンジ「どこかで落ち着いて話したいって言ったら?」

マリ「おっ♪ ワンコくんがエスコートしてくれるの?」

シンジ「そういうことになるね」

マリ「いやぁ~、心惹かれちゃうなぁ~」

シンジ「駆け引きは好きじゃないんだ」

マリ「私は面白いことだぁ~いすき」

シンジ「僕をからかうのは楽しい?」

マリ「まぁ、退屈しのぎにはなるかにゃ?」

アスカ「んもぉ! こっちの話を聞け!」

マリ「あぁ、ごめんごめん。姫。ワンコくんに夢中になっちゃった」

アスカ「なんの話をしてるの?」

マリ「さぁて? 何の話かにゃ?」

シンジ「…………」

アスカ「し、シンジ?」

マリ「おぉ、ワンコくんそんな目もできるんだ」

シンジ「どっち側?」

マリ「ふふ~ん。どちらでもないって言ったら?」

シンジ「それじゃもう一つだね」

マリ「いいなぁ~その目。ゾクゾクするなぁ~」

アスカ「…………」

マリ「姫がいるから、これ以上踏み込んだ話はできないねぇ~」

アスカ「私が邪魔ってこと⁉︎」

シンジ「……そうじゃないんだ」

マリ「そーそー。色々あるんだよ」

アスカ「いいわ。黙ってるから話しなさいよ。ただし、私もここで聞く」

マリ「助かるぅ~! それじゃワンコくんに質問! 思い出したのはいつ?」

シンジ「つい最近だよ。厚木基地の出撃の時に」

マリ「にゃるほどー、うーん、早すぎるなー。本当はもっと辛い思いをしてもらってからだったんだけど」

シンジ「そうか、だから知ってたんだね」

マリ「ま、そゆこと♪」

シンジ「それで、マリさんはいつから?」

マリ「にゃはは、女性に聞くのは失礼じゃない?」

シンジ「……でも、僕とは違う。だって、僕はマリさんを知らない」

マリ「…………」

シンジ「さっき、イレギュラーといったよね」

マリ「言ったっけ?」

シンジ「……イレギュラー……本来ならいるはずがない……だけど、僕と似ていて僕のことを知ってる……」

マリ「おっおっ? ちょっとヒント与えすぎ?」アセアセ

シンジ「……もうひとつの……協力者がいるね。誰?」

マリ「ちょっとマズったかにゃ」

シンジ「アスカ」

アスカ「……なによ?」

シンジ「マリさんと知り合ったのはいつ?」

アスカ「ん、と、浅間山の出撃のあと」

シンジ「それからマリさんの知り合い誰かいた?」

アスカ「…………」

マリ「(ひめぇ~! 言わないでぇ~!)」ブンブン

アスカ「……はぁ。加持さんよ」

マリ「あちゃぁ」ガックシ

シンジ「加持さんが。…………そうか。だから最初に僕にコンタクトをとってきたのか。わざわざ印象づけるために」ブツブツ

マリ「…………」

シンジ「加持さんは、僕に打ち明けようとしてたのか。でも、なぜ? 味方に引き入れるため?」

マリ「それは違うよ。私たちは姫とワンコくんの味方。引き入れるんじゃなくて、味方なの」

シンジ「…………」

マリ「ゲンドウくんとゼーレ、そして私達。三者の対立構造はやがて激化するよ。それは避けて通れない」

シンジ「……そんなことはさせない」

マリ「んーん、これは既定路線なのよ。決定づけられた運命といっていい」

シンジ「…………」

マリ「運命を仕組まれたチルドレン。そして、ゼーレは裏死海文書を、ゲンドウくんは目的の為に。ワンコくんもわかってるっしょ?」

シンジ「ガフの部屋は開かせない」

マリ「それ、無理。必要なマテリアルは全て揃うよ。そうなったらもう誰にも流れは止められない」

シンジ「全部エゴじゃないか! 認められない!」

マリ「どうするつもり? 相手はネルフ、そして世界政府だよ」

シンジ「………」

マリ「エヴァで世界を滅ぼす? 量産計画が間に合ってない今なら可能かもしれないけど、本末転倒じゃん!」

シンジ「……なんとかしてみせる」

マリ「ワンコく~ん。根性論じゃどうにもならないんだって。妥協案って必要じゃない?」

シンジ「それじゃだめなんだ!」

マリ「ふぅん。それならお手並み拝見しようかな?」

シンジ「…………」

マリ「姫を助けてあげてね」

シンジ「まだ、時間は残されてる」

マリ「あ、もしかしてワンコくんって夏休みの宿題を最終日にやっちゃうタイプ? 時間なんてあっというまにすぎてくよー」

シンジ「アスカにこだわるのはなぜ?」

マリ「さぁて? なんでかな?」

シンジ「…………ふぅ」

マリ「おりょ? 乗ってこない? もっと言葉遊びしよーよー」

シンジ「いや、情報はもう渡すつもりないんだよね」

マリ「せいかぁ~い」

シンジ「だったら、戦自の話をしようか」

マリ「気がついてた?」

シンジ「アスカに先にコンタクトをとってたのは、裏でなにかやってた。それぐらいはわかるよ」

マリ「ま、さっき破壊工作してたって言っちゃたしね」

シンジ「加持さんがルートを用意してくれてるの?」

マリ「アフターケアはおまかせあれ。ワンコくん達はロボットね」

シンジ「流れは同じか」

マリ「今までと同じだよ。おおまかな流れは一緒。だけど、微妙にズレてきてる」

シンジ「うん」

マリ「でも、最後も違うなんて希望は持たないでね。例えばAルートとBルートがあっても辿り着く場所は同じ。収束しちゃうよ」

いずれ明らかになりますのでノーコメントで
今日はこれまでです、また後日

- 放課後 洞木宅 -

アスカ「ごめんね。ヒカリ、いきなり遊びにきて」

ヒカリ「どうしたの? 友達なんだから普通だよ」

アスカ「……うん」

ヒカリ「――碇くんとは一緒に帰らなくてよかったの?」

アスカ「うん、なんか、距離感じちゃってさ。あいつ、どう思う?」

ヒカリ「どうって……?」

アスカ「記憶戻ってからおかしいのよね。少なくとも、私に話してないことあるのはたしかだわ」

ヒカリ「なにかあったの?」

アスカ「昼休みの屋上ですこし。なにを話してるかちんぷんかんぷんだったけど」

ヒカリ「私は……今の碇くん素敵だと思うな」

アスカ「……そうかな」

ヒカリ「人ってまわりの影響で変わっていくものだもの。時には子供になったり、大人になったり。碇くんの変化をアスカが受け止めてあげなくちゃ……かわいそうだよ」

アスカ「そうなのかな……。なんか急すぎてついてけない。私が引っ張ってやってたのに、なかったことにされてるみたいで、1人で抱えこんじゃってさ」

ヒカリ「ふふっ。アスカだって最初の頃と比べてだいぶ変わったんだよ。この短い期間に」

アスカ「あぁ~ぁ、難しい」ゴロン

ヒカリ「難しくしてるのはアスカだと思うな。考えすぎなところ、あると思う。最初の頃のアスカは碇くんのことしか見えてなかった」

アスカ「…………」

ヒカリ「今も、碇くんのこと考えてるのは変わらないんだろうけど、落ち着いて、余裕もできた分、色々と考えすぎてるんだよ」

アスカ「恋愛がめんどくさくなって投げだす人の気持ち、今なら少しわかる」

ヒカリ「まだはやいよ。見切りをつけるのは簡単だけど、焦っちゃだめ。碇くんに色々、助けてもらったんでしょ?」

アスカ「…………うん」

ヒカリ「なんで、アスカばっかり」ボソッ

アスカ「ん? なに?」

ヒカリ「うぅん。なんでもない。とにかく、一度、碇くんと話してみて。じゃないと、本当に碇くん、どこかに行っちゃうかもしれないよ」

アスカ「シンジが、どこかに、ねぇ――」

- 夜 ミサト宅 -

シンジ「おかえり」

アスカ「……ただいま。ミサトは?」

シンジ「今日は、少し遅くなるってさっき連絡があったよ」

アスカ「ふぅん、あっそ」

シンジ「夜ご飯はどうする?」

アスカ「食べる。けど、あぁそうか、私が久しぶりに作ってあげるわ」

シンジ「いいの? 嬉しい」

アスカ「なにがいい?」

シンジ「昨日の肉がたくさんあるから野菜炒めとかどうかな?」

アスカ「いいわよ」

シンジ「あの、アスカ」

アスカ「ん? なに? あ、冷蔵庫にあったプリンなくなってる。ミサトね」ガチャ

シンジ「昼間の屋上のことなんだけど、アスカ、わからないことだらけだと思うんだ」

アスカ「…………」

シンジ「話せる時になったら、最初に言うよ」

アスカ「あたし、メガネにもあんたにもついていけてない」

シンジ「うん」

アスカ「シンジのことは好き。だけど、ワガママになってるのね」

シンジ「…………」

アスカ「前は、シンジに見てもらうことが叶えばなんでもよかった。私だけを見てほしかった。それが全部だった」

シンジ「うん」

アスカ「今は見てもらうだけじゃいや。もっと別のこと、相手に求めることが増えてるってわかる」

シンジ「……それは、なにもおかしいことじゃないよ」

アスカ「嘘をつかれるのはいや。1人で先にいかれるのもいや。私のことを考えてくれないのもいや」

シンジ「ぜ、全部は、時と場合によっては、難しいと思うけど」

アスカ「頭の中でぐるぐる考えても、最後は、あんたのことが好きなのよ。悔しいことにね」

シンジ「僕の方が、アスカに助けてもらってるんだ。今の僕があるのも全部アスカのおかげだよ」

アスカ「…………」

シンジ「本心なんだ。心の底からそう思ってる。これからも、アスカの助けが僕には必要だよ」

アスカ「それで?」

シンジ「お願いだよ。アスカ。どうか、僕のこと見捨てないでほしい」

アスカ「はぁ?」

シンジ「な、なんかおかしなこと言ったかな」

アスカ「普通今の流れで……ま、そっちのがあんたらしいか……」

- ネルフ本部 発令所 -

ミサト「使徒?」

マコト「二分前に突然現れました」

オペレーター「第6サーチ、衛星軌道上へ。接触まで後2分」

シゲル「目標を映像で捕捉」


第10使徒サハクィエル「…………」


職員「おおっ……」

マヤ「お、おっきい」

シゲル「マヤちゃん、今の台詞、もっかい」

マヤ「……不潔」

ミサト「でかすぎない? 常識を疑うわね」

リツコ「見た目から推測すると、重量、質量、共に過去最高でしょうね」

マコト「探査衛星、目標と、接触します。」

オペレーター「サーチスタート。データ送信、開始します」

シゲル「受信確認……過去のデータをモニタリングします」


第10使徒サハクィエル「…………」キィィン ドーン


ミサト「ATフィールドを落とした?」

リツコ「新しい使い方ね」

ミサト「たいした破壊力ね。こんな使い方もあったなんて……」

マヤ「落下のエネルギーをも、利用しています。使徒そのものが爆弾みたいなものですね」

リツコ「とりあえず、初弾は太平洋に大外れ。で、2時間後の第2射がそこ。後は確実に誤差修正してるわ」

ミサト「学習してる、ってことか」

マコト「N2航空爆雷も、効果ありません」

シゲル「以後、使徒の消息は不明です」

ミサト「……来るわね、多分」

リツコ「次はここに、本体ごとね」

ミサト「その時は第3芦ノ湖の誕生かしら?」

リツコ「富士五湖が一つになって、太平洋とつながるわ。本部丸ごとね」

ミサト「碇司令は? まだ連絡つかないの?」

シゲル「衛星通話の有効範囲内ですが、使徒の放つ強力なジャミングのため、連絡不能です」

ミサト「MAGIの判断は?」

マヤ「全会一致で撤退を推奨しています」

リツコ「どうするの? 今の責任者はあなたよ」

ミサト「日本政府各省に通達。ネルフ権限における特別宣言D-17。半径50キロ以内の全市民は直ちに避難。松代にはMAGIのバックアップを頼んで」

マコト「ここを放棄するんですか?」

ミサト「いいえ。ただ、みんなで危ない橋を渡ることはないわ」


放送『政府による特別宣言D-17が発令されました。市民の皆様は速やかに指定の場所へ避難してください』

放送『第6、第7ブロックを優先に、各区長の指示に従い、速やかに移動願います』


リツコ「やるの? 本気で?」

ミサト「ええ、そうよ」

リツコ「あなたの勝手な判断で、エヴァを3体とも棄てる気? 勝算は0.00001%。万に一つもないのよ」

ミサト「ゼロではないわ。エヴァに、いえ、シンジくんたちに賭けるだけよ」

リツコ「――葛城三佐っ!」

ミサト「現責任者は私です!」

ミサト「やることはやっときたいの……。使徒殲滅は私の仕事です」

リツコ「仕事? 笑わせるわね。自分のためでしょ?あなたの使徒への復讐は」

ミサト「そうよ。でもあの子たちなら、シンジくんならきっとやってくれるわよ」

- ネルフ本部 作戦戦術室 -

アスカ「えーっ、手で、受け止める!?」

ミサト「そう。落下予測地点にエヴァを配置、ATフィールド最大で、あなたたちが直接、使徒を受け止めるのよ」

レイ「使徒がコースを大きく外れたら……?」

ミサト「その時はアウト」

アスカ「機体が衝撃に耐えられなかったら?」

ミサト「その時もアウトね」

レイ「……勝算は?」

ミサト「神のみぞ知る、と言ったところかしら」

アスカ「これでうまく行ったら、まさに奇跡ね」

ミサト「奇跡ってのは、起こしてこそ初めて価値が出るものよ」

アスカ「つまり、何とかして見せろ、って事?」

ミサト「すまないけど、ほかに方法がないの。この作戦は」

アスカ「作戦と言えるの!? これが⁉︎」

ミサト「ほんと、言えないわね。だから、いやなら辞退できるわ」

アスカ&レイ&シンジ「…………」

ミサト「みんな、いいのね。一応規則だと遺書を書くことになってるけど、どうする?」

アスカ「別にいいわ。そんなつもりないもの」

ミサト「終わったらステーキおごるから、食べに行きましょ」

レイ「……葛城三佐」

ミサト「ん?」

レイ「私、肉、嫌いです」

ミサト「あぁ、はい」

マヤ「データ、だします。これが最後のデータです。使徒による電波撹乱のため、目標喪失」

ミサト「具体的な話にはいるわ。正確な位置の測定ができないけど、ロスト直前までのデータから、MAGIが算出した落下予想地点が、これよ」

アスカ「こんなに範囲が広いの?」

リツコ「目標のA.T.フィールドをもってすれば、そのどこに落ちても本部を根こそぎえぐることができるわ」

ミサト「ですから、エヴァ全機をこれら三個所、A、B、Cに配置します」

レイ「この配置の根拠は?」

ミサト「勘よ」

アスカ「カン?」

ミサト「そう。女の勘」

アスカ「げぇっ⁉︎ 何たるアバウト、ますます奇跡ってのが遠くなっていくイメージね」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくん、さっきから黙ってるけど、緊張してる?」

シンジ「あ、いえ」

アスカ「ま、シンジは私が守ってあげるから心配ないわ!」

>>542
あぁそういうことではなくQだとエヴァの呪縛でアスカとかも見た目中学生で中身25歳だったから
酒のくだり別におかしくないんじゃないかと

>>552
ご想像におまかせしますよ
ギャグと思うのもよし、自然と思うのもよし

では続けます

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「目標を最大望遠で確認!」

マコト「距離、およそ2万5千!」

ミサト「高高度からきやがったわね……エヴァ全機、スタート位置!」

アスカ&レイ&シンジ『了解!』


ピュイ ピピピ………


シンジ『アラート? この動いてるのなんですか?』

シゲル「厚木基地方面より正体不明の信号が受信! この信号は、前回と同じやつです!」

ミサト「このクソ忙しい時にっ! 距離は⁉︎」

マコト「音速を超えるスピードで接近中! 2分後にこちらに到着します!」

シンジ『――そんなっ⁉︎ 嘘だっ!』

- 初号機 エントリープラグ内 -

ミサト『レイ、アスカ、シンジくん、時間がないわ。今回はあっちは無視して。使徒殲滅を最優先』

シンジ「(そんな、こんな流れ、僕は知らない)」

レイ&アスカ『了解!』

ミサト『シンジくん? どうしたの? 返事は?』

シンジ「ミサトさん! お願いがあります! 僕達の判断に全てをまかせてくれませんか!」

ミサト『シンジくん……?』

シンジ「必ず使徒は止めてみせます! ミサトさん! お願いします!」

ミサト『マナちゃんのことが心配なのね?』

シンジ「……っ! そうです! だから、お願いします!」

ミサト『1人と人類を天秤にはかけられないわ。悪いけど命令は……』

シンジ「くそっ! くそっ!」ガンッ

アスカ『……シンジ、どうしたいの?』

シンジ「アスカ……?」

アスカ『なにか、やりたいことあんでしょ。言ってみなさい』

ミサト『アスカ! エヴァ三機でも成功率は限りなく0なのよ⁉︎』

アスカ『どっちみち死ぬなら同じことでしょ。今さらなにビビってんのよ。賭けるなら最後まで賭けてみなさい』

ミサト『そういうことじゃ……』

シンジ「アスカ! 戦自のロボットを止めに行ってくれ! こっちに向かってるのなら時間はかからないはず、それまでは僕が持ちこたえてみせる!」

レイ『……命令違反』

シンジ「綾波、ごめん。今回は少し痛い思いするかもしれない」

レイ『痛いのは、いい。成功する?』

シンジ「成功させるんだ!」

アスカ『ま、今のタイミングならそのあんたも悪かないかも。ミサト、シンジが熱血してるけど、どうするの?』

ミサト『目標は光学観測による弾道計算しかできないわ。ということは、MAGIが距離1万までは誘導しか無理』

リツコ『予測落下地点に間に合わなくてもアウトよ?』

ミサト『シンジくん、あなたに、人類、いえ、私達の命全てを賭けることになる』


シンジ「それでも僕は、やるって決めたんだ! みんなを守ってみせます!」


ミサト『男はそうでなくっちゃ! 少しでも躊躇ったら撤回させるつもりだったけど、シンジくんの好きな通りやってみなさい!』

リツコ『……はぁ。私達、死んだわね』

シンジ「アスカ! 音速は直線上じゃないと維持できない! レーダーを見ながら最速で走って! 5秒後にカウントする! マヤさん、カウントお願いします!」

アスカ『了解!』

マヤ『り、了解! カウントスタート5秒前』

シンジ「綾波は僕と一緒に使徒を止める落下地点を目視しながらだよ、マコトさん!こちらも10秒後にでます!」

マコト『了解した! カウントスタート10秒前』

マヤ「カウント開始します! 5.4.3.2……弐号機スタート!」

アスカ『……っ!」ドンッドンッドン

シゲル「アンビリカルケーブル切断を確認! 弐号機内部電源に切り替わりました! 厚木基地方面に向かい加速状態に入ります!」

オペレーター『使徒接近中! 高度は2万3000!』

シンジ「(……母さん……)」

マヤ『初号機! シンクロ率が100%を突破!上昇を続けています!』

マコト『5.4.3.2……スタート!』

シンジ「綾波! 行くよ!」ドンッドンッドン

レイ『……っ!』ドンッドンッドン

シゲル『初号機、零号機もアンビリカルケーブル切断を確認! 内部電源に切り替わりました!』

シンジ「ぐぅぅぅ……っ!」

マコト『弐号機もシンクロ率100%を超えました!』

レイ『碇くん! 座標がずれてる!」

シンジ「ミサトさんっ!」

ミサト『緊急コース形成! 107から105! 急いで!』

オペレーター『使徒! 加速! 高度1万5000!』

レイ『――だめ! 碇くん、こっちじゃ間に合わない』

シンジ「僕が間に合う!」キーーン

アスカ『シンジっ!! 死んだら承知しないからね!!」

シンジ「大丈夫だよ! アスカ! 通信する余裕があるかわからない! 遭遇したら動力部だけを狙って止めて!」

アスカ『了解!』

シンジ「――ここだっ!」ズザザザザァ

オペレーター『初号機、確定地点に到達! 高度1万を切りました!』

ミサト『思ったよりもでかい!』

レイ『……っ!』

マヤ『零号機! 速度あがりません! 到達までおよそ30秒!』

レイ『碇くん!』

シンジ「――綾波、気にすることないよ。エヴァは心を写す鏡なんだ」

レイ『……っ』


シンジ「フィールド全開っ!!!」


マコト『初号機と使徒、まもなく接触します!」

マヤ『す、すごい、この数値は』

リツコ『…………』


第10使徒サハクィエル「…………」

シンジ「こいっ! 僕が受け止めてやるっ!」


アスカ『こっちもあと10秒で遭遇する! すれ違いざまに横殴りぶちかましてやる!』

レイ『くっ……』

アスカ『ファースト! 底意地の悪いところ見せてやりなさいよ! あんた! 人形じゃないんでしょ!』

レイ『……私は……私は……』

- ネルフ本部 発令所 -

シンジ『……ぐぅぅぅう……!』ググッ

第10使徒サハクィエル「…………」


マコト「初号機に接触!」

ミサト「シンジくん! レイとアスカが来るまで持ちこたえて!」


シンジ『うあぁあああっ……!」グググゥッ


ドドーンッ!


ミサト「なに⁉︎ 衝撃波⁉︎」

シゲル「初号機より強烈な電磁波を確認! 使徒のATフィールドを中和しています!」

ミサト「ここ地下どれだけだと思って……その余波がここにとどいたの⁉︎」

レイ『フィールド全開!』

シゲル「零号機も速度あがりました!」

リツコ「マヤ、初号機のシンクロ率は?」

マヤ「300%付近です!」

リツコ「……人に戻れなくなるわよ。シンジくん」

ミサト「っ⁉︎ シンジくん! 聞こえる⁉︎」


シンジ『ぐあぁああ……な……なん……ですかぁ……!』グググゥッ

第10使徒サハクィエル『…………!』ググッ


ミサト「それ以上、シンクロ率を上げてはだめよ! 上げられるならだけど!」

マヤ「初号機、左腕、及び右腕損傷!」

レイ『碇くんが見えた! 弐号機は?』

アスカ『――こっちもそろそろ、ロボット見えたぁっ!」

- 第三新東京都市 シェルター内 -

ヒカリ「――鈴原ぁっ! またお菓子持ってきたの⁉︎」

トウジ「ええやないか。これが人生最後のお菓子かもしれへんし」

ケンスケ「ま、シンジたちがなんとかしてくれるさ」

ヒカリ「んもぅ! でもさっきの揺れ凄かったね」

マナ「……私、ちょっと見てくる」

トウジ「はぁ⁉︎ あかん! それはあかんで! 前ワシらそれで死にそうな目に!」

ケンスケ「悪いことは言わないからここにいろって!」

マナ「あなた達は無責任すぎる! シンジくんたちは命をかけてるのよ!」

トウジ「……まぁ……」

ヒカリ「…………」

マナ「なにかできるかじゃない、見に行かなくちゃ。友達がどんな場所で戦ってるのかを」

ケンスケ「…………」

トウジ「……わかった。せやけど、前、ワシらはえらいことしてしもうたからな。今回はシェルターでたとこから眺めるだけや」

ヒカリ「ちょ、ちょっと、だけど、こわいよ」

マナ「……シンジくんたちはもっとこわいよ。目の前にいるんだよ、わけのわからないものが」

ヒカリ「…………」ギュゥ

ケンスケ「少し、見るだけなら――」

- 第三新東京都市 シェルター 外 -


ビュウーーー バタバタバタ


ヒカリ「空が紫……?」

ケンスケ「風が……台風みたいだ!」

トウジ「なんや、なにが起こってるんやこれ」


マナ「――……見て! あっち! 丘の上!」


ケンスケ「あれは……初号機だ!」

トウジ「シンジか! なんで1人しか! 初号機ってあんなに小さかったか?」

ケンスケ「場所が遠いってのもあるけど、体が半分以上埋まってみたいだ!」

マナ「もう1つきてるみたい!」

ヒカリ「……うそ……あの大きいの受け止めるの……碇くん……あんなことしてたの……」

ケンスケ「あっちの機体は綾波だ! うっ! 風を巻き上げてる」

ヒカリ「ゴホゴホッ……アスカは⁉︎」

トウジ「あぁ、えぇと、赤いやつやったよな?」

ケンスケ「見当たらない……」

マナ「なにかあったんだわ、なんだろう」

トウジ「おっ! 綾波もシンジと一緒に押し返すみたいやで! よっしゃー! やったれー!」

ヒカリ「なんで? こわくないの? ……私、こわい」

マナ「ヒカリ?」

ヒカリ「私、戻りたい。ねぇ、もう戻ろう」

マナ「…………」

ヒカリ「私達とは違うんだよ。シンジくん達がすごいっていうのはもうわかったから」

トウジ「委員長、それは違うで」

ケンスケ「シンジ、泣いてたからなぁ」

ヒカリ「えっ」

トウジ「ワシらが前に抜け出した時、シンジ、泣いとったんや」

ヒカリ「あっ……」

マナ「みんなこわいのよ……死ぬのは、痛いのは、誰だってこわい」

- 弐号機 エントリープラグ内 -

アスカ「まったく、邪魔くさいんだからぁっ!」キーーーン

ムサシ『赤い機体、引き返せ。使徒は俺たちが片付ける』

アスカ「通信回線? ってことは、あんたがマナの言ってたやつね!」

ムサシ『マナ⁉︎ マナを知ってるのか⁉︎』

アスカ「おかげで今こっちはいい迷惑よ!」

ムサシ『ま、待て、マナは今――』

アスカ「ごちゃごちゃうっさいわねぇっ! 忙しいのよ! 動力部だけ狙うから大人しくしてなさい!」

ムサシ『――こちらを落とす気か! 前回はうまくやられたが今回はそうやすやすとは!」

アスカ「黙ってろッッ!!!」

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「弐号機、目標とせっしょ――あ、いえ、正体不明機失速! 推進力を失った模様!」

ミサト「ナイスよアスカ!」グッ

アスカ『シンジッ! 私がつくまで持ちこたえてっ!』

リツコ「引き返すのに止まっては駄目! 勢いをたもったまま旋回して!」

アスカ『了解!』

シゲル「弐号機! 速度をたもったまま大きく迂回!」

シンジ『ぐぅぅぅ!』

レイ『……あぅっ!』

マヤ「零号機、脚部損傷!」

リツコ「やはり、エヴァ二体では無理なんだわ」

ミサト「シンジくんのシンクロ率は高いのに……!」ギリッ

リツコ「あの使徒はATフィールドそのものよ。自身を爆弾にして落下してきている。初号機が400%を超えれば可能でしょうけど」

綾波『……っ!』

シゲル「零号機が衝撃に耐えられそうにありません!」

シンジ『綾波……っ! ぐぅぅうああああっ!!!』グググゥッ

マヤ「初号機さらにシンクロ率が上昇! 310.315.320………」

リツコ「やめなさいシンジくん!」


シゲル「し、使徒を押し返しはじめています!」


シンジ『――綾波! 今だっ! プログナイフを!』

綾波『私が離したら……』

シンジ『はやくッッ!!!』

綾波『了解』ジャキン

綾波『……っ!』 ビュン

グサッ

第10使徒サハクィエル「」


ドーーーーンッ



職員「おぉ……っ! やった! やったぁ!」パチパチ

ミサト「ふぅ……」

リツコ「シンジくん? 聞こえる? シンジくん?」

シンジ『はぁはぁ……はい、聞こえてますよ』

リツコ「はぁ。なんとか間に合ったようね」

マヤ「こ、今回は死んじゃうかと思いました」

シゲル「俺も俺も~」

ミサト「シンジくん、アスカ、レイ、よくやったわ」

シンジ『はぁはぁ……』

レイ『碇くん、ごめんなさい』

シンジ『え? どうしたの?』

レイ『私、なんの役にもたたなかった』

シンジ『あははっ。綾波がいたから倒せたんだよ』

アスカ『シンジ! ロボットは止めといたわよ!』

シンジ『アスカもお疲れ様』

アスカ『あんなの雑魚よ。私にも残しておきなさいよねぇ~本命は使徒なんだから』

シンジ『次は、そうする……だけど、少し疲れた。ミサトさん』

ミサト「ん? なに?」

シンジ『回収班がくるまで、少し眠ります。それと、賭けてくれて、ありがとう……』

ミサト「私達はまた、シンジくんに守られたわね。ゆっくり眠りなさい――」

- 東京第三新東京都市 某所 屋上 -

マリ「いま~わたしの~ねがぁ~いごとが~♪」

マリ「――……ふぅん……同時に処理できちゃったかぁ」ペロリ


ゴロン


マリ「どうしよっかなぁ」


加持「――パンツ見えてるぞ」

マリ「うん? どーでもいい」

加持「シンジくんにご執心みたいじゃないか」

マリ「まぁ、流れを止めるつもりみたいだからねぇ」

加持「それが……ダブルブッキングをした理由か」

マリ「試す権利ってあるじゃん?」

加持「女に試されるのはいつものことなんでね」

マリ「まぁ~~全然違うけど、どうしよっかなぁ」

加持「…………」

マリ「私達はワンコくんと姫の味方だけど、私の計画とワンコくんのやりたいこと違うってことなんだよねぇ~……でも、味方。これって矛盾してない?」

加持「…………」

マリ「どうしよっか♪」

加持「なにを考えてる?」

マリ「ワンコくんにさぁ、きつーく睨まれた時、ゾクゾクしちゃってさぁ~。ワクワクしちゃったんだぁ~」

加持「時間は着実に進んでいる。ターニングポイントになる参号機はもうすぐさ」

マリ「――かなぁ~うならば~♪ つば~さぁ~を~…………」

- 南極大陸 戦艦上 -

リツコ『――報告は以上です』

ゲンドウ「そうか」

リツコ『安否の心配はしてくださらないんですのね』

ゲンドウ「結果は聞いた。話せていることが無事の証明になる」

リツコ『ご子息の件はいかがいたしますか?』

ゲンドウ「なぜ、変わった」

リツコ『おそらく、セカンドチルドレンの影響だと推測されますが――』

ゲンドウ「自己犠牲もか」

リツコ『その件に関しては……』

ゲンドウ「ダミーは最終調整段階に入っている」

リツコ『はい、まだいくつかテストは必要ですが、近い内に実用化できます』

ゲンドウ「シンジはそれまでもてばいい」

リツコ『……と、言われますと』

ゲンドウ「洗脳しろ。自己犠牲は必要ない。アレに残る用途は予備の道具としての価値だけだ」

リツコ『し、しかし、どうやって』

ゲンドウ「方法はまかせる。帰国次第、葛城三佐に通達。シンジとセカンドチルドレンの同居を正式に解消する」

リツコ『……人格破綻する可能性が高いですが』

ゲンドウ「かまわん。廃人になってもいい。――以上だ」

プッ

冬月「やりすぎではないのか?」

ゲンドウ「……やりすぎということはない。遅すぎたぐらいだ」

冬月「しかし、ユイくんの息子でもあるんだぞ。廃人にまで追い詰めては……」

ゲンドウ「目的のためだ。犠牲はやむを得ない」

冬月「……うぅむ……」

ゲンドウ「冬月。これまでたくさんのものを犠牲にしてきた。無駄にしないための生贄だ」ニィ

- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

ミサト「――はぁぁあ⁉︎」

リツコ「そんなに大きな声をださなくても聞こえるわよ」

ミサト「だ、だだだぁって! リツコが⁉︎ シンジくんと住むぅっ⁉︎」

リツコ「碇司令の命令でね」

ミサト「な、なんでぇ⁉︎」

リツコ「パイロット2人の面倒を見させるのは負担になると判断されたそうよ」

ミサト「碇司令がぁ? それ本当? 私を気づかってくれたってわけぇ??」

リツコ「もちろん、それは建前。日向くんに仕事を押しつけたのが内部監査員の報告でバレたみたいね」

ミサト「げぇっ⁉︎ まぁじぃ⁉︎」

リツコ「よってミサトはこれからは1人の面倒を見るだけでよく、尚且つデスクワークに専念できるってわけ」

ミサト「あ、あぁ~~それなら、納得」

リツコ「…………」カキカキ

ミサト「でも、シンちゃんは家庭的だから食事の心配ないし、アスカもシンちゃんのこと好きだから、2人で暮らした方がいいんじゃ?」

リツコ「2人きりでいる時間が長くなって子供でも妊娠したらどうするつもり?」

ミサト「あぁ~」

リツコ「コンドームをつけても100%避妊できるってわけではないのよ」

ミサト「それは……たしかに……」

リツコ「ミサトが帰宅しなければ、歯止めがきかなくなる可能性がある。会うなとは言ってないわ。ただ、それは避けるべきよね」

ミサト「そうね。会えないわけじゃないものね……」

リツコ「シンジくん達にはミサトの口から言う?」

ミサト「はぁ……。言いづらいけど、そっちのがいいでしょうね……アスカになんて言われるか……」

リツコ「それも監督官の仕事のうちね。がんばって」

- 第三新東京都市第壱中学校 昼休み 屋上 -

シンジ「――あれ? 洞木さん?」

ヒカリ「碇くん。1人でいるのめずらしいね。アスカ達は?」

シンジ「お昼食べてるよ。洞木さんこそ、こんなところでめずらしいね」

ヒカリ「……うん。なんだか、1人で考え事したくて」

シンジ「そっか。ここっていい場所だよね。誰もいないし、そういう時は」

ヒカリ「みんな使わないもんね。景色もいいんだけど、なんでだろうね」

シンジ「そうだね……言われてみればそうかも」

ヒカリ「碇くんも1人になりたかったの?」

シンジ「少し、考え事してたから。一緒だね」

ヒカリ「うぅん。一緒なんかじゃないよ」

シンジ「ん?」

ヒカリ「はぁ……。実は、昨日ね、鈴原達とシェルターにいる時、少し外に出てみたの。あ、ほんとに出ただけなんだけど」

シンジ「…………」

ヒカリ「碇くんやアスカや綾波さんってあんなのと戦ってたんだね」

シンジ「うん、まぁ」

ヒカリ「選ばれるってだけでも凄いのに、勇気がいるんだなって思った。私達とは違うってこわくなったの。でもそんな時マナに言われたの――」

シンジ「…………」

ヒカリ「――誰だってこわいって。アスカや碇くんたちに申し訳なくなっちゃって」

シンジ「僕たちはエヴァのパイロットだけど、結局は大人の都合で乗ってるんだ。誰でも乗れるわけじゃないから、乗るしかない」

ヒカリ「…………」

シンジ「アスカはプライドを持って乗ってる。綾波は繋がりを求めて。僕はたまらなくこわくて嫌だった」

ヒカリ「……うん」

シンジ「パイロットとしての価値しかないって思うとむなしくてさ」

ヒカリ「でも、みんな感謝してるよ」

シンジ「それでも、僕が望んだわけじゃなかったから。でも、今は違うんだ。自分の意志で乗ってる。パイロットとしての価値しかなくてもそれでいいんだ」

ヒカリ「……どうして?」

シンジ「みんなが、それぞれ違うみんながいるのが当たり前だから」

シンジ「洞木さんは真面目だから、自分を責めることなんかないよ」

ヒカリ「そ、そうかな」

シンジ「うん。僕だってパイロットじゃなかったらシェルターにいる。立場が変われば、その視点でしか物事が見えなくなるから」

ヒカリ「……ちょっと、難しいね、えへへ」

シンジ「あぁ、えっと、その、つまり」

ヒカリ「いいの。言いたいこと、なんとなくわかるから」

シンジ「……そっか。とにかく気にしなくていいよ。アスカともいつも通りいてくれたら喜ぶと思う」

ヒカリ「うん……友達だもの」

シンジ「そうだね……」

ヒカリ「ふぅ……風が気持ちいいね」

シンジ「うん」

ヒカリ「もし、もしもっとはやく碇くんに話かけてたら――」

シンジ「ん?」

ヒカリ「うぅん……なんでもない、なんでも」

- 夜 ミサト宅 -

アスカ「はぁっ⁉︎ どういうことよ⁉︎」バンッ

ミサト「ですからぁ~シンジくんはリツコの家に引っ越しすることになりましたぁ~」

シンジ「……どうして?」

ミサト「あのぅ~わたしのサボりが碇司令にバレたらしくぅ~」

アスカ「なんですってぇ⁉︎ ミサトが馬車馬のごとく働いてきなさいよ! 休日返上で!」

ミサト「……そ、そりはぁ、したくても、したら死んじゃうっていいますかぁ~」

アスカ「許さないわよ!」バンッ

シンジ「でも、僕たちだけでも生活できますよ?」

アスカ「そうよ! 私だって料理覚えたんだし!」

ミサト「そこはねぇ~。シンジくんたちが仲よすぎるのが問題なのよ」

アスカ「はぁ?」

ミサト「その、私がいないことで、子供でも妊娠したら困るっていうか」

シンジ「ぶっ」

アスカ「……あぁ~」

ミサト「歯止めがきかなくなるのを心配してるのよ」

アスカ「まぁ、そうねぇ」

シンジ「いや! そこは否定しようよ!」

アスカ「私に欲情しないの?」

シンジ「いや、そんなことを言ってるわけじゃ」

ミサト「学校でも会うんだし、放課後とかデートする分には何も言わないわ。ただ、その、ね? 連日やっちゃうとゴムしてても妊娠の確率あがるのよ」

アスカ「……私達が我慢したら?」

ミサト「隠れてヤルでしょ? 若さってのはそういうもんよ」

アスカ「(どっちみち監視されてる状況でやるつもりなんかないのに)」

シンジ「僕は1人暮らしでもいいですけど」

ミサト「シンちゃんもせっかく打ち解けやすくなってきてるんだし、もったいない気がすんのよね。リツコもそんなに悪いやつじゃないし」

アスカ「……私はいや!」

シンジ「(また知らない流れだけど、アスカと距離が近づきすぎたのが原因か……それなら、納得できるか)」

ミサト「学校とかでも会えるじゃない! お願いっ!」パンッ

アスカ「嫌よ! なんで⁉︎ なんで毎回毎回こんなに邪魔がはいるの⁉︎ きっと誰かが邪魔しようとしてんじゃないの⁉︎」

ミサト「それは考えすぎよ」

アスカ「だいたいミサトがサボらなければこんなことには……!」

ミサト「サボらなかったら帰ってこれなかったから、結局、同じことよ?」

アスカ「仕事はやく処理できない無能だって言ってんのよ!」

ミサト「お、鬼上司ね……」

シンジ「(どうしようかな。ミサトさんに乗ってもいいけど、アスカの為には反対すべきかな)」

ミサト「シンちゃんはどう?」

アスカ「…………」

シンジ「僕も反対です。アスカと住みたいと思ってます」

ミサト「え、えぇ? シンジくんも?」

アスカ「し、シンジ……」

シンジ「はい、僕たちはパイロット同士ですからなにも起きませんよ」

アスカ「う、嬉しい……」ギュウ

ミサト「抱きついてる状況を見せつけられても?」

シンジ「ちょ! こ、これは! アスカ! 離れて!」

アスカ「……はっ⁉︎……ごほん……」バッ

ミサト「碇司令の決定だから、覆すのは超がつく難易度よ。反対しても保安部を使って力づくでって話もありえるわ」

アスカ&シンジ「…………」

ミサト「正式な辞令が降りるのは碇司令が帰国するまで、今日を含めて2日の猶予がある。だから、それまでに2人で折り合いをつけておいて」

アスカ「なによ、結局お願いって言ってもこうなるんじゃない。拒否権なんかなかったんだわ」

ミサト「……ごめんなさい。穏便にいくならと思ったんだけど」

アスカ「言い訳は聞きたくない」

シンジ「………(リツコさんかぁ、なるべく近づきたくないなぁ)」

- ミサト宅 アスカ部屋 -

ゴソゴソ

シンジ「……あの」

ゴソゴソ

シンジ「アスカ?」

アスカ「(ここでもない、あっちでもない、どこにあんのよ監視カメラは)」

ゴソゴソ

アスカ「シンジ、漫画でも読んでて」

シンジ「うん……」

ゴソゴソ

アスカ「(こういうのってコンセントとかが相場じゃないのぉ⁉︎)」

シンジ「アスカ、少女漫画読むの?」

アスカ「あ? あぁ、それ、ヒカリの」

シンジ「借り物か」ペラッ

バサバサッ ゴトン

アスカ「(ない、ないないないないないない! どこにあんのよ!)」

シンジ「アスカ……離れてくらしても、大丈夫だよ」

アスカ「――いやっ! 絶対にいや!」

シンジ「父さんは、容赦ないから。ミサトさんが言うように取りつく暇もないと思う」

アスカ「それでも嫌なの! 泣きそうになる!」

シンジ「……アスカ、大丈夫」ギュウ

アスカ「シンジは平気なの? 今まで暮らしてきたのに」

シンジ「平気なんかじゃないよ。仕方なくもない。アスカと暮らしたいよ」

アスカ「シンジ」ギュウ

シンジ「僕はアスカのことを守りたいんだ」

アスカ「……うん」

シンジ「逃げても、いいと思ってるんだ。アスカと一緒なら」

アスカ「ほ、本当? そ、そこまで私のことを……?」

シンジ「もちろんだよ」

アスカ「シンジ。ちょっと変わったぐらいでひどいこと言ってごめん。私、なんでもやる」

シンジ「いや、それはいいんだ」

アスカ「違うの。私どうかしてた。殺してやりたい昨日の私」

シンジ「いや、あの」

アスカ「なんで、私のことこんなに求めてくれただなんて。私全然気がついてなかった。シンジ、だって、まだ好きだって言ってくれてないんだもん。ヒカリから告白は聞いたけど、私達の関係だってエッチしたけど、でも――」

シンジ「ちょ! アスカ!」

アスカ「今の言葉で全部どうでもよくなった。全部。簡単だって思われてもいい。シンジのこと好きだから。シンジだから。もっとはやく言ってくれたら昨日の使徒だって、あぁ、あの時の私殺してやりたい。死にたい。でも幸せすぎて死にたくない」

シンジ「……あの?聞こえてる?」

アスカ「ごめん、シンジ、私コロコロ変わってワガママで矛盾しててごめん。でもシンジが私のこと愛してくれるなら、私シンジのことなんでもしてあげる。だから一緒に――」

ピンポーン


シンジ「アスカ、こんな時間に誰だろう?」

アスカ「――えっ?」


ドタドタドタドタ


ミサト「シンジくん! アスカ! って抱き合ってるとこごめん……じゃなかった! すぐ離れて!」

シンジ「み、ミサトさん? なんですか?」

保安部員「失礼します」スッ

アスカ「……っ⁉︎」

保安部員「本日付けでサードチルドレンは赤木博士宅にご移動願います」

ミサト「ちょ、ちょっと! いきなり⁉︎ まだ碇司令帰国してないでしょ⁉︎」

保安部員「たった今、辞令がおりました。文書はおって通達されます」

アスカ「聞いてたのね⁉︎」

ミサト「……?」

アスカ「タイミング! おかしいじゃない!」

保安部員「……荷物は必要ありません。赤木博士宅に後日、配達されます」

アスカ「ミサト! こいつら私達の会話聞いてたのよ! こんなの許されるの⁉︎」

ミサト「あ、アスカ? どういうこと?」

シンジ「まさか、父さんが――?」

アスカ「監視カメラと盗聴器があるんでしょ⁉︎」

保安部員「存じ上げません。上の決定ですので」

アスカ「なんでよ! あんたら考える脳みそないの⁉︎」

保安部員「手段は問わないとの通達です」カチャ

ミサト「――拳銃⁉︎ ちょっと!誰の家で抜いてんのよ!」




アスカ「くっ……!」

ミサト「銃をおろしなさい、腕折るわよ」ガシッ

保安部員「仕事です。葛城三佐」

ミサト「アスカ、監視って本当なの?」

アスカ「状況考えてみなさいよ!」

ミサト「……なにもここまでやらなくてもいいはずよ。命令したのは誰?」

保安部員「答えられません」


リツコ「――ミサト、お邪魔してるわよ」


ミサト「リツコッ⁉︎」

アスカ「やっぱり、あんたの仕業だったのね!」

リツコ「誤解しないでちょうだい。監視をしていたのは認めるわ」

ミサト「どういうこと! 監視カメラがここにあるの⁉︎」

リツコ「盗聴器もね。今、2人は逃げる算段をたてようとしていた。保険をかけていたのよ」

ミサト「監視なんて! 私は聞いてないわ!」

リツコ「あなた、言ったらバレてたでしょう。家族ごっこにうつつをぬかすようじゃ」

ミサト「なんですって!」

リツコ「逃避行なんて許されないわよ。シンジくん、アスカ」

アスカ「とことん趣味の悪い女! 吐き気がするほど嫌いなのよ! 他人の覗きが趣味⁉︎ ぶち殺してやりたいわ!」

リツコ「どうぞ、できるものならね。でも、今は無理なようだけど」

シンジ「…………」

リツコ「シンジくん。アスカを殺人者にしたいの? 逃げた所で、捕まるのは時間の問題よ」

シンジ「父さんの命令ですか?」

リツコ「どうして?」

シンジ「リツコさんがエヴァに乗るのを強制はしない。するならば父さんだ」

ミサト「……リツコ、あんた、まさか、碇司令と……」

リツコ「碇司令はあなたにやる気がないなら乗るなと言ったはずだけど?」

シンジ「それは建前です。僕が乗らなければ、困るのは同じでしょ」

リツコ「…………」

シンジ「僕が行けば、アスカ達の安全は保障されますか?」

アスカ「いやっ! シンジ! それはいや!」

シンジ「アスカ、会えなくなるわけじゃないんだ、大丈夫だよ」

リツコ「賢明な判断ね。あなた達の今後はミサトから聞いた通りまでなら許可します」

シンジ「踏みこむタイミングを狙ってたんでしょ」

ミサト「……っ! リツコ! あんた!」

リツコ「私はミサトほど甘くはないわよ、さ、行きましょうか」

アスカ「シンジ! ごめん! 私があんなこと言ったから! ごめん!」

シンジ「いいんだよ、アスカ。理由なんていくらでも作られたんだろうから。また学校でね」

リツコ「……シンジくん。変わったわね」

シンジ「そうでもありませんよ、行きましょうか。リツコさん――」

こういう場所に投下してるんで反応をまったく期待していないってわけじゃないです
ただ集まったとしてあんまり人がいても様々な意見がでて、叩かれたり荒れたりするのもありえるんでそこは避けたいなと

割合的に自分用が8、反応あったらいいなが2ぐらいが正直なとこです

では続けます

- 車内 移動中 -

リツコ「恨んでる?」

シンジ「いえ、そんなことはないですよ。驚きもありません」

リツコ「それはそれで拍子抜けね。もっとふてくされると思ったけど」

シンジ「怒ってもいいんだと思います。やり方は汚いですから」

リツコ「あなたがアスカと仲良くなりすぎたことがきっかけ。それに伴い様々な問題がでてきたのよ」

シンジ「それも全て、父さん達にとってでしょう」

リツコ「違うわ。人類にとって」

シンジ「そんなのは詭弁です。僕にとっては、アスカと引き剥がされた。その事実しかない」

リツコ「――前回の出撃の時、あなたは人をやめようとしたわね」

シンジ「………」

リツコ「あのまま初号機だけでも第10使徒は殲滅できたでしょう。しかし、残る使徒はどうするつもりだったの?」

シンジ「人をやめるだなんて、そんなつもりはありませんよ」

リツコ「あのまま初号機とのシンクロが進めば、あなたは初号機に取り込まれ、人ならざる者へ、すなわち、擬似神化していたのよ」

シンジ「…………」

リツコ「私達はアスカが原因だと考えている。だからこそ、あなた達2人を引き離すことが人類の為になるわ」

シンジ「僕に、納得してほしいんですか。仕方ないから受け入れろと」

リツコ「いいえ、ただの挨拶よ。これから一緒に住むことになるんだもの。――よろしくね、シンジくん」

- ミサト宅 リビング -

アスカ「……うっ……ぐすっ……ぐすっ……」

ミサト「……アスカ、もう泣きやみなさい」

アスカ「こんなの、おかしいわよ」

ミサト「私も知らなかったのよ。名ばかりの監督官ね。碇司令から任されていたわけではなかったんだわ」

アスカ「赤木博士はシンジをどうするつもりなの」

ミサト「……わからない」

アスカ「ミサトの友達でしょ⁉︎」

ミサト「たしかに、私達は学生時代から続く友人関係よ。少しの衝突では揺るがない自信もあるし、お互いの性格を理解している」

アスカ「だったら! なんとかしてよっ!」

ミサト「でもね、アスカ。だからこそわかることもある。女同士の友人関係が壊れるってわりと一瞬なのよ。なにが原因かわかる?」

アスカ「…………」

ミサト「……男よ。大人になってもそれは変わらないの。恋愛感情は理屈では考えられない。だから、裏切るし、我慢できないの」

アスカ「き、危害を加えることはないわよね? 私達、パイロットなんだもの? そ、そうよね?」

ミサト「私からも調べてみる。もしかしたら、ネルフは、そんなに甘いところじゃないのかもしれないわ」

- リツコ宅 リビング -

リツコ「散らかってるけど、気にしないでね」

シンジ「うわぁ……」

リツコ「間取りはミサトのところとほとんど変わらないわ。空き部屋があるからそこを使ってちょうだい」

シンジ「リツコさんって綾波みたいな無機質な家に住んでるのかと思ってました」

リツコ「お金は私のクレジットカードを渡しておくわね。好きなものを買ってかまわないわよ。……そう見える?」

シンジ「研究者ってイメージが強いからかな。猫グッズがこんなにあるとは、思ってもみませんでした」コトッ

リツコ「シンジくん。初見で女性の部屋を物色するのは感心しないわね」

シンジ「あ、すみません。でも、かわいいところあるんですね」

リツコ「ふぅ。プライベートを垣間見たからと言って舐めないでもらえる? あなたにはなんの感情もない。仕事なのよ」

シンジ「はい、お世話になります」

リツコ「これ、飲んでちょうだい、済んだら寝てかまわないわ」スッ

シンジ「なんですか、これ?」

リツコ「シンクロが高すぎるのを抑制する薬よ。新しく開発されたの。まだ試験薬だけど、効果があるのか治験もかねて」

シンジ「…………」

リツコ「そんなに考えこまなくても大丈夫。気分を高めるのを抑える薬だと思ってちょうだい。アスカにも飲んでもらうし、副作用の心配もないわ」

シンジ「わかりました」

リツコ「(あなたのは特別製だけどね)」

シンジ「水もらいます」

リツコ「どうぞ」

シンジ「…………」ゴク

リツコ「あとは、好きにしてかまわないわ。あぁ、それと、テレビはヘッドホンかイヤホンをして見てね」

- 翌日 リツコ宅 リビング -

ジュージュー

シンジ「――よっと」

ガラッ

リツコ「…………」

シンジ「おはようございます、リツコさん」

リツコ「家庭的だとは聞いていたけど、早起きなのね」

シンジ「あぁ、まぁ日課みたいなものですから」

リツコ「ミサトはズボラだから、苦労したでしょう」

シンジ「えぇ、でも慣れれば普通でしたよ、目玉焼きでよかったですか?」

リツコ「私の分まで?」

シンジ「ついでですよ。それとも朝は食べない主義でした?」

リツコ「いえ、いつもはスティックバーだから」

シンジ「そうですか」コトッ

リツコ「シンジくん、あなた、なにを考えているの?」

シンジ「……?」

リツコ「私と仲良くなろうって魂胆?」

シンジ「いや、そんなつもりは。ただのついでですよ。本当に」

リツコ「……そう。私、犬派じゃないわ。猫派なのよ」

シンジ「はぁ」

リツコ「シンジくんは犬だから、個人的に仲良くなることはないわね」

シンジ「そう、ですね」

リツコ「それだけよ、それじゃいただくわ」

- 第三新東京市第壱中学校 ホームルーム -

アスカ「…………」ソワソワ

ヒカリ「碇くん、まだ来ないね」

マナ「うん、いつもはアスカと一緒なのに。今日は違かったの?」

アスカ「シンジ、引っ越しちゃったのよ。昨日」

トウジ「そらほんまかいな⁉︎」

ケンスケ「1人暮らし?」

アスカ「ネルフの人と一緒」

ヒカリ「そうだったんだ……でも、突然なのね」

アスカ「…………」

トウジ「なんや、1人暮らしだったら遊びいこうと思ったのに」

ケンスケ「新しい人もミサトさんみたいに綺麗な人なのかなぁ~? くぅ~! 碇ぃ、羨ましいぞぉ!」

トウジ「大人の女性の魅力! ワシらにはわかるからなぁ!」

ヒカリ「鈴原と秋田くんってなんでいつもそうなのよ……」

トウジ「そら、ワシらは人の心っちゅーもんがあるからなぁ!」

ケンスケ「そうだよ! 君たちには人を思いやる気持ちというのがないのだろうか!」

マナ「どういうこと?」

トウジ「マジに聞いとるんけぇ? 冷たいやっちゃのぅ」

ケンスケ「ミサトさんだってまだ若いんだぞ! 中学生2人の面倒を見るのがどんなに大変かっ!」

アスカ「……はぁ。逆に私達がミサトの食事の面倒を見てたわよ。あんた達はどうせ性欲の塊なんでしょ、このサル」

トウジ「なんやと? ワシらだけやで、人の心を持っとるんわ」

ケンスケ「そーそー」

アスカ「ふぅん」チラッ

ケンスケ&トウジ「おっ⁉︎」

アスカ「ふん……ちょっとスカートめくったぐらいで反応しちゃって。口だけね」

トウジ「あ、いや、今のは」

ケンスケ「じょ、条件反射ってやつだよ!」

トウジ「せや! それや!」

ヒカリ「本当に最低……」

マナ「……あはは」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「火傷の傷はだいぶ癒えてるわね」

シンジ「はい、痺れもそこまでは。思っていたより支障はありません」

リツコ「シンジくん、口数が増えたわね」

マヤ「あ、それ、私も思いました」

シンジ「自分では、よくわかりません」

リツコ「そう」

マヤ「それより、先輩。さっき、葛城三佐から聞いたんですけど、シンジくんと住み始めたんですか?」

リツコ「ミサトから……。ええ、そうよ」

マヤ「わぁっ! いいなぁ、シンジくん」

シンジ「…………」

リツコ「マヤ、余計なことは慎んで」

マヤ「あ、す、すみません」シュン

リツコ「今日は学校に行かなくてもいいわ。新兵器のテストがあるから、シンジくんにやってもらいます」

シンジ「僕がですか?」

マヤ「伝達です。先の第4使徒で使用されたポジトロンスナイパーライフルの開発が進み小型化運用の目処がたったので、そのテストを行ってください」

シンジ「……わかりました」

リツコ「と、いっても機械が全てをやってくれるからあなたは指示に従って操作すればいいわ。パレットライフルの時と同じ要領ね」

マヤ「陽電子砲の準備は完了しています。ヒトヒトフタマル時より、テスト開始予定です」

シンジ「なぜ、今なんです?」

リツコ「これからの使徒との激化する戦闘に向けて兵器は数多くあった方がいい。それ以上になにがあると思う?」

シンジ「…………」

リツコ「機械に全てをまかせるわけにもいかない。さっきの言葉と矛盾するけれど、マヤ、なぜだかわかる?」

マヤ「プログラム、だからですかね。機械は与えられた行動しかできませんから」

リツコ「MAGIという例外もあるけどね。あれは特別中の特別。臨機応変に対応できるのは、人間の特権なの」

シンジ「決められたパターンしか、行動できないから、人の手でやるわけですか」

リツコ「全ての可能性をあらかじめ入力していれば機械も人間に追いつくことができるでしょうね。しかし、それでは自立思考型のAIでない限り、天文学的数字になってしまう」

マヤ「目標までの距離や弾道の湾曲計算などは機械がやった方が圧倒的に効率がよく、また、はやいですけどね」

シンジ「じゃぁ、結局、僕が覚えるってことですか」

リツコ「そうね。機械の補助と人間の知恵。それらを掛け合わせることでより確実なものへとなっていく」

シンジ「…………」

リツコ「シンジくんは物を覚える時に、読んで覚える、書いて覚える、聞いて覚える、様々な方法があるけど、どれが一番忘れにくい?」

シンジ「どれかな……」

リツコ「中学生には難しかったかしらね。マヤ?」

マヤ「はい。手続き記憶ですね。身体に覚えさせることです」

リツコ「そう。1度、自転車の乗り方を覚えてしまえば、乗れなくなるようなことはないと言われている。どれだけ間隔をあけようと、身体が覚えているということは感覚で覚えていること。つまり、できていた自分をイメージしやすい」

シンジ「操作を身体に染みこませるってわけですか」

リツコ「それも目的のひとつってわけね」

シンジ「……わかりました」

リツコ「今後、シンジくんには実験に積極的に参加してもらいたいんだけど」

シンジ「どうしてですか?」

リツコ「親睦を深めるため、ではどう?」

シンジ「今朝と矛盾してますけど。仲良くならないんじゃなかったんですか?」

リツコ「目的があるなら話は別。ある程度、仲良くなれるかもしれない」

マヤ「先輩がこんなに積極的なのもめずらしいですね」

リツコ「同じ目的があれば、お互いに歩みよろうとするものよ」

レイ「――赤木博士」

リツコ「レイ、いらっしゃい」

シンジ「綾波?」

リツコ「レイも実験に参加してもらうことが多いのよ。これからは、レイと一緒に行動する機会が増えると思うわ」

シンジ「(そうか、そういうことか。父さん……)」

レイ「…………」

リツコ「不満がなければ、話を進めてもかまわないかしら?」

シンジ「拒否権はあるんですか?」

マヤ「あっ……」

リツコ「嫌ならば別の方法を考えるけど、レイ、シンジくんはあなたと行動するのが嫌らしいわよ」

シンジ「…………」

レイ「……はい」

シンジ「ち、違うんだ、僕はそういうわけじゃ」

リツコ「では、話を進めてもかまわないということね?」

マヤ「せ、先輩……」

リツコ「マヤ、目的があるなら手段は選ばない。時には必要なことよ」

マヤ「…………」

リツコ「潔癖症はね、つらいわよ。生きていくのが」

シンジ「……なにをすればいいんです?」

リツコ「零号機と初号機のパーソナルデータがほしいのよ。互換性をたしかめたいの」

- ネルフ本部 第三通路 -

シンジ「(このままじゃだめだ。なんとか、リツコさんを牽制しないと)」

レイ「……碇くん」

シンジ「ん? どうしたの?」

レイ「私と行動するの嫌で、ごめんなさい」

シンジ「あっ! さっきのは、違うんだ! そういうことじゃないんだ!」

レイ「…………」

シンジ「……綾波になにか悪いところがあるわけじゃない。ただ、その、色々納得できないところがあって」

レイ「無理強いされるのが嫌なの?」

シンジ「あぁ、ううん、そういうんじゃないんだけど」

レイ「使徒の時、支えてくれてありがとう」

シンジ「いいよ。僕も綾波がいてくれて助かったから」

レイ「…………」

シンジ「綾波は、父さんとはどう?」

レイ「どうって?」

シンジ「僕よりは一緒にいる機会、多いと思うんだけど。話せてる?」

レイ「良く、してくれてると思う」

シンジ「そっか。それならいいんだ」

レイ「…………」

シンジ「綾波、僕は綾波も助けたい。守りたいんだ、だから、自分の命を簡単に投げ出しちゃだめだよ」

レイ「……碇くんが、私を守る?」

シンジ「守ってもらってばかりだったから、今度は僕が助ける」

レイ「……?」

シンジ「綾波は綾波しかいない」

レイ「私? 私しかいない?」

シンジ「うん」

レイ「違う……だって、私は、3人目だと思うから」

シンジ「殻に閉じこもってちゃだめだ。綾波は人形なんかじゃない。自分で考えられるんだ」

レイ「いか、りくん?」

シンジ「誰も綾波の代わりになんかなれない。いい?」

レイ「あ……う、うん……」

- 第三新東京市第壱中学校 昼休み -

ヒカリ「碇くん、こないね……」

マナ「う、うん……そうだね……」

アスカ「…………」カタカタカタカタ

トウジ「うっさいのー! 貧乏ゆすりやめーや!」

アスカ「……ちっ」ピタ

トウジ「シンジには何の心配もあらへんやろ! ネルフの用事かもしれへんし!」

ケンスケ「一緒に住んでないから予定がわからないんだろぉー?」

ヒカリ「あんたたち! いい加減にしなさいよね!」

トウジ「なんや! たかだか数時間いないぐらいでなんやっちゅーねん!」

ケンスケ「会えないってわけでもあるまいしさぁー」

トウジ「せや! だいたい、一緒に住んどることがおかしかったんや! なぁ⁉︎」

ケンスケ「そーそー」


アスカ「……ふぅ」


ガンッ!!!


トウジ「うぉっ⁉︎」

ケンスケ「お、おい! 椅子が飛んだぞ! 女の脚力で飛ぶもんなのか⁉︎」

ヒカリ「アスカ! だめよ! 落ち着いて!」

マナ「鈴原くんたちも謝って!」

トウジ「ワシらなにも間違ったこと――」

アスカ「…………」

ケンスケ「お、おい、なんかやばいぞ。いつもと違って一言も発しない!」

トウジ「な、なんや? それがなんや!」

ケンスケ「いいか! 本当に人間やばいときは言葉を発しない時なんだよ! ジェットコースターに乗ってる時だって怖かったら喋る余裕ないだろ!」

トウジ「それとこれとは話が」

アスカ「…………」ガシッ

トウジ「い、う、息が……」

ヒカリ「ひっ⁉︎ アスカ首をしめちゃだめ! 相田くんも引き離して!」

ケンスケ「――うぐぐっ、なんでこんなに力が……」

トウジ「……が、がはっ」

マナ「だめ! アスカ! 離して! ……くっ、強い」グイッ

ヒカリ「ちょっと男子達! 見てないで助けて!」

男子生徒「な、なんだあ?」

ヒカリ「アスカを引き離して! はやく!」


トウジ「……ぁっ……あ……」

アスカ「……っ!」ググッ


男子生徒「ちょっと! これマジで力強いぞ! もう1人こい!」グイッ

ケンスケ「うああっ!」グイッ


ガタタッ


トウジ「ひゅーひゅー……か、かはっ……」

アスカ「…………」

ケンスケ「ぜぇぜぇっ、男子3人がかりっておかしいだろ……エヴァのパイロットでこんななのかよ」

ヒカリ「アスカ、平気?」

トウジ「……げほっ……げほっ……」

ケンスケ「お、おい。トウジ? 平気か?」

マナ「鈴原くん? ……気動確保しなきゃ。落ち着いて深呼吸して」

トウジ「……すぅー……はぁー……」

男子生徒「細腕のどこにそんな力が、アニメや漫画の世界じゃあるまいし……」

ケンスケ「僕たちが悪かった。だから、許してくれ」

アスカ「…………」

マナ「……鈴原くん? 意識ある? 聞こえる?」

トウジ「……あ、あぁ……」


ガラガラ


レイ「…………」チラッ

アスカ「……っ! ファースト、ちょっと待って」

レイ「なに?」

アスカ「シンジはどこ?」

レイ「ネルフにいたわ」

アスカ「いたってどういうこと? なんで過去形なの?」

レイ「兵器の試験のため、今はネルフにいない」

アスカ「本当にそれだけ? 他になにか理由ない?」

レイ「……ないわ」

アスカ「じゃあ、今日は学校にこないのね?」

レイ「なぜ?」

アスカ「なぜって、知りたいからよ!」

レイ「答える必要がないわ」

アスカ「……っ!」ギリッ

レイ「…………」

アスカ「ふぅ。私も聞き方が悪かったわ。ただ、知りたいだけ。教えてくれると助かる」

レイ「他に理由はないわ」

アスカ「わかった。ありがとう」

ヒカリ「……アスカ、明日になれば、会えるわよ」

アスカ「そうね、鈴原も、悪かったわね」

トウジ「……あぁ、まぁ……」

ケンスケ「ま、マジで止めなかったらどうなってたんだ?」

アスカ「さあ?」

トウジ「お前、実は体重100キロ超えてるとかあるんか?」

アスカ「はぁ?」

トウジ「どう考えてもおかしいやろが。力あるように見えへんし、持ち上げるのも軽そうやし」

アスカ「ま、ちょっとしたコツがあんのよ」

ケンスケ「こ、コツねぇ」

マナ「アスカ、戦自にはいったら?」

アスカ「はいはい、バカなこといってないで、続き、食べましょ」

- ネルフ本部 発令所 -

放送『弐号機と零号機のアポトーシス作業は、MAGI-SYSTEMの再開後予定通り行います』

シゲル「作業確認。450より670は省略」

マコト「発令所、承認」

リツコ「さすがマヤ、早いわね」

マヤ「それはもう、先輩の直伝ですから」

リツコ「あ、待って、そこ。A8の方が早いわよ。ちょっと貸して」

マヤ「さっすが先輩……」

ミサト「…………」

リツコ「葛城三佐、今日のテストには間に合わせたわよ」

ミサト「了解、ご苦労さま」

リツコ「シンジくんなら、新兵器テストのため技術班と一緒に今頃は二子山よ」

ミサト「聞いてる。ポジトロンライフルの小型化が実現できそうね」

オペレーター「MAGI-SYSTEM、再起動後、自己診断モードに入りました」

マヤ「第127次、定期検診異常無し」

リツコ「了解。お疲れさま。みんな、テスト開始まで休んでちょうだい」

ミサト「リツコ、ちょっと、話、いい?」

リツコ「えぇ、かまわないわよ」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「なんのご用?」

ミサト「短い付き合いじゃないから、単刀直入に言うわ、シンジくんをどうするつもり?」

リツコ「どうもしないわよ。貴重なパイロットですもの。ミサトもそのことは重々承知しているでしょ」

ミサト「見え透いた嘘はいいのよ! あんた! 碇司令と寝たんでしょ⁉︎」バンッ

リツコ「…………」

ミサト「碇司令には、奥さんがいたでしょ⁉︎ ちゃんと応えてくれそうなの⁉︎ 私たちの歳で不倫はズルズルいっちゃうわよ!」

リツコ「本筋からズレてると思うけど? 聞きたいのはシンジくん? それとも私と碇司令の関係?」

ミサト「どっちもよ。碇司令からなにを命令されてるの?」

リツコ「守秘義務があるわ」

ミサト「そう、あんたっていつもそう。なんでそんなに不器用な恋愛ばっかり選ぶの?」

リツコ「余計なお世話よ……っ!」

ミサト「私はあんたのことを思って!」

リツコ「ミサトっ! 自分のことを棚にあげるつもり⁉︎」

ミサト「なんですって!」

リツコ「加地くんから逃げ出したのはあなたでしょ⁉︎ 本当は加地くんは受け入れてくれるつもりでいたのに!」

ミサト「そ、それは……」

リツコ「あなたは父親の怨念にとらわれすぎているのよ! まわりをよくごらんなさい!」

ミサト「……っ! あんたがそれを言う⁉︎ 親についてコンプレックスを持ってるのは同じじゃない!」

リツコ「私は母さんのようにはならないわっ!」

ミサト「いいえ、そうなるわ。あなたの生き方を見てきた私だからわかる」

リツコ「ミサト! 不愉快だわ!」

ミサト「シンジくんをどうするつもりなのよ、愛した男に捧げるつもり?」

リツコ「パイロットなのよ! そんなことするはずないでしょう!」

ミサト「本当にそうかしらね。ただ、乗れればいいと考えてるんじゃないの?」

リツコ「……っ!」

ミサト「碇司令の残酷なやり方は私にだって少しはわかる。だからこそ、あんたと! シンジくんのことが……私は心配なのよ」

リツコ「葛城三佐……もう、さがって」

ミサト「リツコ……」

リツコ「下がりなさいっ!」ガシャンッ

- 第三新東京都市第壱中学校 放課後 屋上 -

アスカ「…………」

マリ「ふぅ、まだ帰らないの?」

アスカ「あんたを待ってたのよ。ようやく現れたわね」

マリ「うーん、私、お便利屋さんじゃないんだけどにゃ~」

アスカ「ありったけの情報を今すぐ渡して。わかるように。シンジを狙ってるのは碇司令なのね?」

マリ「ふぅん」

アスカ「でも、なぜ? どうしてシンジなの? シンジとメガネが話してたことに関係あるんでしょ?」

マリ「さぁ、知らない」

アスカ「知らないってことないでしょ⁉︎ あんたは全部知ってる! 加地さんもあんたから聞いたって言ってた! シンジのことも全部知ってるんでしょ⁉︎」

マリ「それよりもー、大事なのはワンコくんの安否じゃにゃいのー?」

アスカ「シンジに危険でもあるの⁉︎ わからないのよっ! なんにも!」

マリ「…………」

アスカ「知りたくてもわからない、このもどかしさがあんたにわかる⁉︎」

マリ「はぁ……まぁ、そんなマジにならなくても」

アスカ「だったら説明しなさいよ!」

マリ「言えることと言えないことがあってさぁ~」

アスカ「言えることってなに?」

マリ「まず、ワンコくんなんだけど、ちょっとピンチかもしれない」

アスカ「どういうこと?」

マリ「ゲンドウくんがいよいよ本腰あげてきたみたいだから、どうなるかまだわからないけど」

アスカ「……シンジのお父さんなんでしょ?」

マリ「うん。でも家庭によっては様々な事情があるからさぁ。他所は他所、うちはうちって言うじゃん?」

アスカ「シンジと碇司令ってそんなに?」

マリ「うーん、道具と使う者って感じ? ワンコくんはねぇ、あくまで道具なんだよ。ワンコくんも、それに気がついた」

アスカ「それで?」

マリ「それでぇ、ワンコくんは道具で終わるつもりがないみたい」

アスカ「それがシンジのやりたいことってことね」

マリ「まぁ、そーだね。この前話してたのはそのこと。そんなのは無理って私が言ってたの」

アスカ「……私はどうしたらいいの?」

マリ「うーん。自分で考えてみたら?」

アスカ「……っ!」

マリ「姫、なにかを待ってるだけじゃだめだよ。ああしなさい、こうしなさいでは私の操り人形になっちゃうよ?」

アスカ「でも、どうしたらいいかわからない」

マリ「だから、考えるんでしょ? バックアップはしてあげるよ」

アスカ「…………」

マリ「考えて、悩んで、また考えて。それで悔いのない選択をする。私たちができることってそんなに多くないんだよ、姫」

アスカ「…………」

マリ「はぁ、やっぱりこういうのガラじゃにゃいな~。疲れちゃうわ、もう帰っていい?」

アスカ「シンジは、どうなるの?」

マリ「わからないって言ったっしょー。姫がどうするかもわからないけどねー」

- ネルフ本部 ??? -

リツコ「長旅お疲れ様でした。碇司令」

ゲンドウ「報告をしろ」

リツコ「はい。シンジくんは予定よりはやくセカンドチルドレンと引き離しました」

ゲンドウ「…………」

リツコ「現在は私と同居させており、洗脳は準備を進めております」

冬月「時間はどれぐらいかかる」

リツコ「薬剤の投与を開始いたしております。一週間もあれば全て整います」

冬月「まわりに怪しまれてはいないだろうな?」

リツコ「申し訳ありません。葛城三佐が勘づいているようです」

冬月「……ふぅ。どうする? 碇」

ゲンドウ「放っておけ。どうせなにもできん」

リツコ「…………」

ゲンドウ「サードチルドレンは今どこにいる?」

リツコ「兵器テストの為、本日は二子山にて試験を行っておりました。現在はまだネルフ本部にいるかと」

冬月「レイと行動を共にさせていたのか?」

リツコ「本日は同行していませんが、そちらも滞りなく、これから機会は増えるでしょう」

冬月「廃人にさせるのはできれば、避けたいのだが」

リツコ「はい。あくまで可能性のひとつとしてそういう恐れがあるということだけ。シンジくんの洗脳がうまくいけば、レイしか見えなくなるはずです」

ゲンドウ「わかった。シンジをここに呼べ」

- 初号機 格納庫 -

放送『第1ロックボルト固定。排水作業は第2フェーズへ移行します』

シンジ「……ととっ」

ミサト「シンちゃ~ん、お疲れ様!」

シンジ「ミサトさん? どうしてここに」

ミサト「仕事がひと段落した時に、初号機が帰ってきたって連絡あったから様子見にきたのよ」

シンジ「わざわざありがとうございます」

ミサト「どお? 昨日はあれからなにもなかった?」

シンジ「特に、なにもなかったですよ。寝ただけです」

ミサト「なにかあったら、遠慮なく――」

リツコ「シンジくん」

シンジ「リツコさんまで?」

リツコ「碇司令がお呼びです、一緒に行きましょう」

シンジ「父さんが?」

ミサト「リツコ、待って」ガシッ

リツコ「なに? 今急いでるんだけど」

ミサト「私も一緒に行くわ」

リツコ「葛城三佐は呼ばれていないわ」

ミサト「報告したいことがあるからそのついで。行っちゃいけないってことはないでしょ?」

リツコ「はぁ、勝手にしなさい、行きましょう。シンジくん」

シンジ「…………」

- ネルフ本部 ??? -

ゲンドウ「シンジ、そこに座れ」

シンジ「…………」スッ

ミサト「碇司令、ご報告がございます」

冬月「あとにしたまえ」

シンジ「…………」

ゲンドウ「初号機のシンクロ率が300%付近まで上がったと聞いたが」

シンジ「はい」

ゲンドウ「なぜ、そこまで上げることができた」

シンジ「わかりません。無我夢中だったので」

ゲンドウ「初号機はお前が思っているほど軽くはない」

シンジ「…………」

ゲンドウ「初号機を傷つけるな」

ミサト「ま、待ってください! 先の戦闘では初号機の戦果は褒められたものであって――」

ゲンドウ「作戦司令。子供に決定権を与えるとはどういうつもりだ」

ミサト「も、もうしわけありません……!」

シンジ「いいんです、ミサトさん」

ゲンドウ「シンジ……お前の仕事はなんだ」

シンジ「エヴァに乗ることです」

ゲンドウ「そうだ、お前がやる気になる必要はない」

シンジ「――だったら今すぐ僕を降ろせばいいだろっ!! 僕を降ろせばっ!!」

シンジ「父さんは初号機しか頭にないんだろ!!」

ゲンドウ「…………」

シンジ「乗る気になったら乗る気になったで、今度はやる気を出すなだって⁉︎」

ゲンドウ「…………」

ミサト「シンジくん……」

シンジ「乗るしかないんだろ、父さん」

ゲンドウ「そうだ。お前が乗らなければ人類は滅ぶ」

シンジ「だったらひざまづいてお願いしてみろよ!」

リツコ「シンジくん! 口の聞き方に気をつけなさい!」

冬月「…………」

ゲンドウ「葛城三佐。シンジを連れてさがっていい」

シンジ「父さん、僕は初号機に乗る。初号機パイロットだから!」

ゲンドウ「…………」

シンジ「だけど! みんなを守るって決めたんだ!」

ゲンドウ「子供の戯言は充分だ。はやく退がれ」

リツコ「はい。葛城三佐、なにしてるの、さがりなさい!」

シンジ「くそっ! 僕の話を――」

ミサト「シンジくん、行きましょう……」

冬月「――碇、お前の息子は変わったな」

ゲンドウ「ただの稚魚だ。綺麗事を並べているだけにすぎん」

冬月「若さとは、えてしてそういうものではないのかね」

ゲンドウ「理想と現実は違う。到達できないものに時間を割いている余裕はない」

リツコ「…………」

ゲンドウ「赤木博士、シンジの洗脳を優先事項にしろ」

リツコ「了解いたしました」

ゲンドウ「――以上だ」

- 車内 移動中 -

ミサト「……リツコのマンションまで送るわ」

シンジ「ふぅ……ミサトさん、なにか食べて帰りますか?」

ミサト「あ、あら? へこんでないの?」

シンジ「まぁ、いつものことですから」

ミサト「へぇ、シンちゃん! 強くなったじゃない!」

シンジ「(これで、父さんの僕に対する印象は変わらないはずだ)」

ミサト「でも、そっちのがいいかもね。ちょっと心配してたけど」

シンジ「ミサトさんも大変ですね」

ミサト「うん、まぁ、色々あるからね」

シンジ「人間関係って大変ですよね」

ミサト「だっはっは! やだぁ! やめてよー! 面白いこと言うじゃなーい!」

シンジ「そうですか?」

ミサト「シンジくんの口からそういうこと聞くのは意外だわー」

シンジ「僕も思う時あるんです。分かり合えたらいいなって、でも全部は無理ですから」

ミサト「……そうね、みんなそれぞれペースがあって、やりたいことがある。したいようにしたいのはみんな同じだもの」

シンジ「うまくいくといいんですけどね」

ミサト「たまに噛み合う時はあるんだけどね。ボタンのかけ違いをする時もある」

シンジ「仕事だとまた違うんですか?」

ミサト「うん? まぁ、似たようなもんよ。仕事は学校と違って、気の合う仲間だけで集まれるわけじゃないもの。趣味や気性が違う人がいて当たり前なの」

シンジ「そっか。大変そうですね」

ミサト「まぁ、シンちゃんも働くようになればわかるわよ」

シンジ「そうですね」

- 夜 ミサト宅 -

ミサト「たっだいまーん」

ドタドタドタッ

アスカ「ミサト! シンジの様子どうだった⁉︎」

ミサト「シンちゃんなら、なにも心配いらないわ。あの子、前に比べれば本当に強くなったわね」

アスカ「本当⁉︎ なにかされてない⁉︎」

ミサト「今のところは、なにも心配ない。といってもまだ1日目だけど」

アスカ「……よかった。明日は学校にくる?」

ミサト「あっ、そうね。うーんどうかしら」

アスカ「えぇ~~⁉︎ まだなんかあんのぉ⁉︎」

ミサト「リツコがね。マヤちゃんに聞いた話だと実験に協力させれることが多くなるみたい」

アスカ「……赤木博士が?」

ミサト「まぁ、すぐにどうこうって話じゃないと思うけど」

アスカ「シンジが変わったってことがまずいのなら、碇司令達がなんかするんじゃないの?」

ミサト「……アスカ、誰かからなんか聞いた?」

アスカ「う、うぅん。なんとなく、女の勘」

ミサト「そう……。シンジくんの変化は隠そうと思ってもできるほど些細なものではないわ。自己主張しなかった子がするようになった、これだけでも大きな変化だもの」

アスカ「…………」

ミサト「碇司令に見破られてるかもしれないわね」

アスカ「(どうしたらいい、考えなくちゃ)」

ミサト「そんなに深刻そうな顔しないで。アスカがシンちゃんを変えたのよ」

アスカ「わ、私が?」

ミサト「そ。女で男にしてあげたんでしょ。もっと信じて待ってあげなさい」

ミサト「――そうだ。リツコが近くにいるなら、レイと行動を共にすることが多くなるかもしれないわね」

アスカ「ファースト?」

ミサト「ええ。元々、リツコの実験に協力してたのは、レイだから。そこにシンジくんが加わるってことになるんじゃないかしら」

アスカ「ファースト……が……」


レイ『言う必要ないもの』


アスカ「……っ!」ギリッ

ミサト「レイに色々聞いてみたら? 近況わかること増えると思うわよ」

アスカ「……えぇ、わかったわ。そうする」

- リツコ宅 -

シンジ「(どうしようかな、これから。ここも監視されてる可能性があるけど、リツコさんがいるからなぁ)」



ガチャ



シンジ「あ、おかえり――」

レイ「お邪魔します」

シンジ「あ、綾波?」

リツコ「驚いた?」

シンジ「り、リツコさん。どうして綾波が?」

リツコ「たまにこうして連れて帰ってきてるのよ」

シンジ「(嘘だっ! そんなことあるはずない!)」

リツコ「レイ、いつも通りラクにしていいわよ」

レイ「はい」

シンジ「……わかりました。今日は泊まるんですか?」

リツコ「そうね。レイはシンジくんの向かいの部屋を使って」

シンジ「(そこって間取り的にアスカがいた部屋と同じ)」

リツコ「それじゃ、シンジくん、今日の分のお薬」スッ

シンジ「これって、毎日飲むんですか?」

リツコ「常服する薬はなんでもそうだけど、最初から多めに飲ませたりはしないわ。徐々に体を慣らしていくの」

シンジ「…………」

リツコ「アスカには、同じ薬を明日、渡すわよ」

シンジ「本当に気分抑える薬ですか?」

リツコ「そうよ。シンジくんが自力でシンクロ率を操作できるなら飲む必要はないけど」

シンジ「……わかりました」

- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 ホームルーム -

ガラガラ

レイ「…………」

アスカ「ファースト! 待ってたわよ!」

レイ「なに?」

アスカ「……ふぅ。平常心、平常心。シンジのこと考えれば大丈夫」

レイ「…………」

アスカ「昨日、ミサトから聞いたの。赤木博士とシンジ一緒にいること多くなったって」

レイ「えぇ」

アスカ「それで、あんたも一緒にいること増えるって本当?」

レイ「そう命令されてるわ」

アスカ「そっか。命令じゃ仕方ないわよね。シンジの近況のこと、できるだけ教えてほしいんだけど」

レイ「昨日、赤木博士のマンションで一緒にいたわ」

アスカ「……え?」

レイ「碇くんの向かいの部屋で私は寝た」

アスカ「な、なに言って……」

レイ「これから、そうなることが増えるかもしれないわ」

アスカ「…………」

レイ「近況はこれぐらい。席にいっていい?」

アスカ「そこ、私の場所よ」

レイ「……私は、命令されてる」

アスカ「そう、命令じゃ、しかたないわね」

レイ「だけど、碇くんのことを考えると、前より、胸があたたかい」

アスカ「……っ!」

レイ「もう、席にいくわ」

トウジ「お、おい。今の話聞こえたか?」

ケンスケ「聞こえてしまった」

ヒカリ「ど、どうしよう……」

マナ「アスカってもしかして合気道とかやってるのかな」

ヒカリ「マナ、いきなりなに?」

マナ「昨日、男子でも引き剥がせなかったことあったでしょ。コツだって言ってたけど、もしかして重心じゃないかって思って」

トウジ「それよりも今は血の雨がふる心配をやな」

マナ「違うの。アスカが暴れた時、止める方法は必要だよ」

ケンスケ「たしかにそうかもな。でも、ドイツで合気道なんか教わるのか?」

マナ「アスカってエリートなんでしょ? 私から見てもよく足あがってるし、なにか格闘技やってたのは間違いないと思うんだけど」

トウジ「私から見てもって、マナもなんかやっとったんか?」

マナ「あっ! いや、あの、ダンスをすこし」

ヒカリ「碇くん、今日もこないのかな。アスカ、碇くんと話をすれば我慢できると思うんだけど」

ケンスケ「そうかぁ? シンジがいた時も暴走気味なとこあったけど」

ヒカリ「見れば安心できることってあると思うし……」

マナ「見たから不安になるってこともあるけどね……」




トウジ&ケンスケ&ヒカリ&マナ「…………はぁ」

細かく読んだらけっこうちぐはぐだと思うんすけどね
台本形式のSSなんで推敲もあまりしていませんし読んでる人と原作に助けられてる部分が多いと思いますよ

面白かったと思ってもらえるにはラストでの持っていきかたで決まるのかなと思ってます

では続けます

- 夜 リツコ宅 -

シンジ「ただいま……」

レイ「おかえり」

シンジ「リツコさんは?」

レイ「まだ」

シンジ「そっか。……ふぅ。綾波お腹すいてる?」

レイ「いえ。碇くん、疲れてる?」

シンジ「……うん、少しね。色々データがほしいらしくて注文が多いから」

レイ「そう。今日、弐号機の人から近況を聞かれたわ」

シンジ「アスカから?」

レイ「…………」コクリ

シンジ「心配してくれてるんだな……」

レイ「なぜ、嬉しそうな顔をするの?」

シンジ「あぁ、えっと」

レイ「碇くん、弐号機の人を考えると胸があたたかくなるの?」

シンジ「そうだね……。綾波のことを考えてもそうなるよ」

レイ「私も……?」

シンジ「うん。誰かに心配してもらえるのは嬉しい。それは、感情なんだよ」

レイ「感情……」

シンジ「すこしずつでいいんだ。綾波が感じたこと、見たこと、それは綾波だけのものなんだから。他の誰でもない」

レイ「誰でもないこと……」

シンジ「夕飯作ってあげるよ。なにがいい?」

レイ「なんでも、いい」

シンジ「お肉嫌いだったよね、お味噌汁でいいかな」

- 夜 ミサト宅 アスカ部屋 -

ガンッ!!!


アスカ「ふーっ、ふーっ」


レイ『昨日、赤木博士のマンションで一緒にいたわ』


アスカ「嫌なやつっ――」


レイ『碇くんの向かいの部屋で私は寝た』


アスカ「――そこは私の場所だったのにっ!!」ガシャンッ

アスカ「なんで⁉︎ なんでシンジと一緒にいちゃいけないの⁉︎ なんでファーストなの⁉︎」

アスカ「碇司令のお気に入りだから⁉︎ ファーストが! 私はいちゃいけないの⁉︎」

アスカ「……はぁっ……はぁっ……シンジ、会いたい。会いたいよ」

- ミサト宅 リビング -

ガラガラ

アスカ「…………」

ミサト「ふぅ……落ち着いた?」

アスカ「ミサト、明日、私もネルフにいく」

ミサト「その方がいいみたいね。シンジくんの顔を見たら落ち着くわよ」

アスカ「明日も学校に来ないの?」

ミサト「そうね……。明日はオートパイロットのテストになってるから、シンちゃんが代表して参加するみたい」

アスカ「……わかった。それじゃ、放課後にいく」

ミサト「アスカ。物にあたるのはやめなさい」

アスカ「ミサトは知ってたの? ファーストと一緒にいたって」

ミサト「……いいえ、知らなかった。リツコが突然、連れて帰ったらしいの」

アスカ「昨日だけなんでしょ?」

ミサト「……リツコの部屋の鍵をレイも渡されたそうよ」

アスカ「……っ!」ギリッ

ミサト「シンジくんなら大丈夫よ。一緒に暮らしてたアスカがよくわかってるはずでしょ。なにも起きる心配なんかないわ」

アスカ「そういうことじゃないの! 私の場所だったのに!」

ミサト「……まぁ、そうね」

アスカ「でも、まだ2日目だから。わかってるわよ」

ミサト「シンちゃんにもアスカの近況、話しとくわ」

- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

レイ「…………」

リツコ「ふぅん、肢体に異常はない?」

レイ「はい」

リツコ「腕を肩まであげて、手を開いて閉じてみて」

レイ「…………」グー パッ

リツコ「動きに劣化はなさそうね。次の定期検査は3日後よ」

レイ「赤木博士」

リツコ「なに?」

レイ「私、いつまで生きられますか?」

リツコ「……なぜ?」

レイ「次の私に、今の気持ちは引き継がれますか」

リツコ「気味の悪いこと言わないで。あなたはただの器なのよ」

レイ「はい……」

リツコ「近く、話しておいた移植手術が行われるわ」カキカキ

レイ「はい」

リツコ「それと、今日は昼休みに間に合うように学校に行きなさい。これをセカンドチルドレンに届けるように」スッ

レイ「……?」

リツコ「ウォークマンよ。あなたは内容を聞かなくていいわ」

レイ「はい……」

- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

ガラガラ

レイ「…………」

スタスタ

ヒカリ「それでね――」

トウジ「なんや?」

アスカ「……?」

レイ「…………」ピタ

ケンスケ「綾波が僕たちのところに来るなんて……」

アスカ「ファースト、なに?」

レイ「……これ」スッ

アスカ「……なに、これ」

トウジ「ウォークマンやな」

ケンスケ「もしかしてシンジが持ってたやつか?」

アスカ「シンジに頼まれたの⁉︎」

レイ「…………」

ヒカリ「アスカ! よかったね! 碇くんも気にかけてくれてたんだよ!」

マナ「うんっ! そうだねっ!」

アスカ「……シンジ」

トウジ「お熱いこっちゃのー」

ヒカリ「聞いて見たら? なにか録音されてるかもしれないし」

アスカ「うん……でも、聴いていいのかしら」

マナ「いいんだよー! せっかくもらったものなんだから!」

アスカ「そ、そうよね。あ、ファーストも、ありがと……」

レイ「…………」

トウジ「これなら丸く収まりそうやのー。ほんま現金なやっちゃで」

アスカ「それじゃ、ちょっとごめん。イヤホンするから」


カチッ


ジーーーッ



レイ『……男の人は、我慢できない時があるんでしょ?』

シンジ『だめだよ! 僕たち、そんなんじゃ!』

レイ『――碇くん、見て、私、なにもつけてない!』



アスカ「――………っっっ⁉︎」


シンジ『綾波! ベットに乗ったら感染症が……!』


アスカ「…………な、なによこれ…………」

ヒカリ「……? アスカどうしたの?」

トウジ「感動しとるんちゃうか?」


レイ『大丈夫。怖がらなくていい……』


アスカ「――このクソやろうッッッ!!!!」


ガシャガシャガシャガシャガーーーンッ


ケンスケ「うわあああっ⁉︎」

一瞬ギター引き始めたんか思たわ

マナ「な、なに⁉︎」


アスカ「殺してやる! 殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるッッッ!!!」ガンッ

レイ「……あぅっ!」ドサ


ヒカリ「アスカ⁉︎ 鈴原、相田くん!」

トウジ「止まれっ!」グッ

ケンスケ「またかよ!」グッ

マナ「まずい! アスカ、マウントとろうとしてる! 綾波さん下になっちゃだめ! かえして!」


アスカ「このクソビッチ!! よくも、よくも、よくもよくもよくもシンジに!!!」
ガンッガンッ

レイ「かっ……かはっ……」ゴンッゴンッ


トウジ「ケンスケ! 力めいっぱいこめたらんかい!」グィ

ケンスケ「やってるよ!」グィ

マナ「腕を掴んで!」

トウジ「よしきた!」


アスカ「――離せッッ!!」


トウジ「止まれこのじゃじゃ馬!」グィ

>>624
わろた
効果音て難しいですね

だめだ笑ってしまって続きが書けないギターにしか見えなくなってしまった
ちょっとすこし時間おきます

いやいやw
おもしろかったから全然いいんですツボにはいってしまったんで申し訳ない

続けます

アスカ「チッ!」

トウジ「……っ! 肘をつかめばよかったちゅーことか!」

ケンスケ「それでも僕の力じゃ……!」

マナ「綾波さん! 今のうちに!」グィ

レイ「…………」

ヒカリ「だ、大丈夫? 鼻血でてる……これハンカチ」スッ

マナ「水で濡らした方がいいよ」


アスカ「この! 離して! 離してってばぁ!」ブンブン


トウジ「暴れるなっちゅーに!」

ケンスケ「綾波をここから連れ出して!」

マナ「うんっ! わかった!」

ヒカリ「……行こう」


アスカ「まだ、私の話が終わってないのよっ!!」


トウジ「お前話する気ないやろ!」

レイ「…………」カシャ

ヒカリ「それ、碇くんのウォークマン? 壊れちゃったね」

レイ「いい……私が持っていく」スタスタ


アスカ「待てっ!! 逃げるな!」ジタバタ


レイ「ネルフで待ってる」

アスカ「……はぁっ……はぁっ……」

ヒカリ「アスカ、綾波さん、もう行っちゃったよ」

マナ「突然どうしちゃったの? なにか録音されてたの?」

アスカ「……ぅっ……うっ………」

トウジ「な、なんや? 今度は泣き――」

アスカ「いつまでも触んなっ!! うっとうしいわねぇ!!!」

ケンスケ「わぁっ⁉︎」

トウジ「うぉっ⁉︎ わ、悪かったって」

アスカ「……悔しい。こんなことってある?」

ヒカリ「アスカ……」

アスカ「私、ネルフに行く」

マナ「う、うん……」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「――渡せたみたいね」

レイ「ウォークマン、壊れました」

リツコ「シンジくんには新しいのを買ってあげるから、なにも心配ないわよ」

レイ「…………」

リツコ「血がついちゃってるわね。新しい制服なら家にあるから、帰ったら着替えなさい」

レイ「赤木博士」

リツコ「ウォークマンの内容?」

レイ「はい」

リツコ「シンジくんが入院してた時のあなたとの情事のやりとりよ」

レイ「……っ!」

リツコ「アスカは最大級のショックを受けたでしょう。シンジくんはあなたとのことを夢だと思っているし、はじめて知った事実だもの」

レイ「…………」

リツコ「中学校には刺激が強すぎたかしらね。他人に寝取られるのは」

レイ「なぜですか?」

リツコ「アスカはね、あなたの存在に怯えているのよ」

レイ「…………」

リツコ「自分の好きな人を取られてしまうんじゃないか、とね。アスカは自分に自信を持っているけど、それが揺らがないかといえばそうではない」

レイ「…………」

リツコ「今までアスカがいた場所にあなたがはいりこんできた。そこに追い討ちをかけるように、身体の関係があるのがアスカだけではないと知らしめる必要があったの」

レイ「…………」

リツコ「人を信じるって持続させるのが難しいものよ。シンジくんからなにも聞いてないことがアスカの疑心を募らせる」

レイ「でも、碇くんは……」

リツコ「あなたは何も疑問を抱かず、命令に従っていればいい」

レイ「私は……」

リツコ「――さて、アスカが追いかけてくるでしょうね」


カチャ プルルルル


リツコ「私よ。オートパイロットのテストを切り上げて、サードチルドレンを家に帰して。今すぐに……えぇ……そうよ……」

- ネルフ本部 第三通路 -

タタタタッ

アスカ「……はぁっ……はぁっ……」

マヤ「あら? アスカ?」

アスカ「シンジは⁉︎」

マヤ「シンジくんなら、さっき、先輩のマンションに帰ったわよ。テストの疲れがあるだろうって」

アスカ「(……タイミングがよすぎる。操作されてるのね)」

マヤ「シンジくんなら、明日――」

アスカ「いい。赤木博士はどこ?」

マヤ「シンジくんじゃなくて? 先輩なら、ラボで作業を……」


タタタタッ


マヤ「――なんなのよ」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「(まだまだ追い詰めなくちゃね……)」


バンッ!!!


アスカ「……ぜぇ……ぜぇ……」

リツコ「あまり走りすぎると心臓に負担がかかるわよ」

アスカ「お生憎様。ばばあと違って若いから心臓も強いのよ」

リツコ「それは結構。でも誰だって老いるのよ」

アスカ「今の時点で私は十代よ。そんな先の話はそうなってから考えればいい」

リツコ「……それで? なんのご用?」

アスカ「シンジと話させて」

リツコ「もう帰ったわ。話があるなら明日にしなさい」

アスカ「――嘘ね。話をさせる気なんかないんでしょ。最初のデートをするだけならかまわないって話も全部ウソ! 徹底的にやるつもりなのね!!」

リツコ「被害妄想はよくないわよ」

アスカ「だったらシンジと話させてよ!!」

リツコ「今日は、無理と言ったでしょう。明日なら大丈夫よ」

アスカ「明日になって話せるという保証は?」

リツコ「それは約束できないわね」


ガンッ!!


アスカ「もう一度言うわ……。シンジと、話をさせて」

リツコ「シンジくんなら帰宅して、レイと夕食の準備にとりかかっているかしらね」

アスカ「……っ!」

リツコ「2人で仲良く、アスカの存在なんていつのまにやら忘れているかも」

アスカ「煽ってるつもり⁉︎」

リツコ「いいえ、ただの独り言」

アスカ「シンジは、私のこと忘れるはずない」

リツコ「シンジくんからアスカがどうしているか、この2日間、聞かれたことないけど」

アスカ「――嘘よっ!!」

リツコ「事実よ」

アスカ「あんたの言うことなんて信じない!」

リツコ「あんな引き裂かれ方したら普通、聞くものよね」

アスカ「全部嘘なんでしょう!! いい加減にして!!」

リツコ「ウォークマンの中身、どうだった?」

アスカ「……っ!」ギリッ

リツコ「あれ、合成なんかじゃないわよ」

アスカ「……お願いよ……シンジと話させてよ……」ポロポロ

リツコ「できないわ。今日はもう帰りなさい」

アスカ「お願い……少しだけでいいの……」

リツコ「保安部に連絡するわよ」

アスカ「…………」

リツコ「シンジくんのことは、できるなら諦めなさい。足掻いてみてもかまわないけど、その時は誰が相手になるか覚悟しておくことね」

アスカ「……なんでファーストなの……」

リツコ「あなたには関係のないことです」

アスカ「関係あるわ! 私だって、シンジのことが好きなのよ!」

リツコ「純粋ね。痛々しいぐらいに。しかし、叶わない恋もあるということを知る機会よ」

アスカ「私は、諦めないわよ」

リツコ「どうぞ」

アスカ「…………」

リツコ「強気な台詞がいつまで持つか見ててあげるわ。今日、このまま帰って1人になった時に、あなたに孤独感と敗北感が襲うでしょう」

アスカ「……っ!」

リツコ「好きだけで耐えられる?」

アスカ「……耐えてみせる」

リツコ「ラクになる方法は次にいくことよ。忘れないことね」

アスカ「帰るわ」

リツコ「次は、録音じゃなくて、映像であげるわね」

アスカ「うあぁぁあっ!!」ガシッ

リツコ「殴りたければ殴りなさい、そうしてもなにも変わらないのよ。今この瞬間も、シンジくんとレイは2人でいる」

アスカ「……ふー……ふー……」

リツコ「あなたは頭の良い子よ。アスカ」

- 夜 リツコ宅 -

ガチャ

レイ「…………」

シンジ「綾波。おかえり」

レイ「た、ただいま」

シンジ「僕のウォークマン知らない? 探してるんだけど、見つからないんだ」

レイ「わからないわ」

シンジ「うーん、そっか。まだ荷物で届いてないのかな。そんなに多くなかったはずだけど」

レイ「碇くん」

シンジ「ん?」

レイ「悪いことをしているときってザワザワするのね」

シンジ「どうしたんだよ、急に」

レイ「いいえ、私、どうしたらいいのか」

シンジ「……なにかあったの?」

レイ「…………」

シンジ「言いづらいこと?」

レイ「碇くんは、どうしたい?」

シンジ「僕?」

レイ「私は、碇くんが悲しむことはしたくない」

シンジ「……ありがとう。その気持ちだけで充分だよ」

レイ「違うの、私、どうしたいの、言いたくない」

シンジ「綾波……?」

レイ「私、3人目だから、でも道具じゃない、人形じゃない」

シンジ「綾波は綾波だよ。何人目でもそれは変わらない」

レイ「こわいの。なくなってしまうのが、死ぬのがこわい」

シンジ「そうだね。僕も死ぬのはこわいよ」

レイ「そうじゃない。私には代わりがいるもの。器だもの。私の価値はそれだけ――」

シンジ「綾波っ!」ガシッ

レイ「……っ!」ビクッ

シンジ「何人綾波がいようとも、今の綾波は、ここにしかいないんだ。だから、死ぬのがこわいって感じるのは同じだよ」ギュウ

レイ「ぁっ……」

シンジ「大丈夫だよ」

レイ「(……ごめんなさい、弐号機の人、私、言いたくない)」

- ミサト宅 アスカ部屋 -

マリ「窓からお邪魔するよ~ん」

アスカ「…………」

マリ「あっちゃぁ~部屋の中で竜巻でも発生したのかってぐらい荒れてるね」

アスカ「…………」

マリ「おーい、お姫さまぁ~、もしもーし」

アスカ「…………」

マリ「だめだこりゃ。姫って意外に弱っちいよね。あれ? 意外ってこともないか。ま、どっちでもいいか」

アスカ「…………」

マリ「……ワンコくんと綾波シ……っとと、綾波レイのことは、私、知ってたよ」

アスカ「…………」ピクッ

マリ「ワンコくんが入院してる時にさ、逆レイプされかかってたって言ったの覚えてる? あれがウォークマンの中身」

アスカ「……どういうこと?」

マリ「おっ? 反応あった? だからー、ワンコくんを助けたのがわたし! すごいだろー! えっへん!」

アスカ「シンジを襲った?」

マリ「あらら、褒めてくれないのかにゃ。うん、そう。ワンコくん綾波レイに襲われてた。薬盛られてた。赤木リツコに」

アスカ「……っ!」

マリ「許しちゃっていいのかにゃー? 泣き寝入りしちゃうのぉ~?」

アスカ「そう、なんでもありってわけね」

マリ「だから言ってるじゃん、道具なんだって」

アスカ「もっとはやく言いなさいよ!」

マリ「聞かれなかったからさぁー」ブーブー

アスカ「でも……私、今日、あいつの前で泣いちゃった」

マリ「あーらら」

アスカ「かなわないのかもしれない」

マリ「ふぅん……ここにワンコくんからの手紙預かってきてるんだけどにゃー」

アスカ「シンジから⁉︎ 見せて!」

マリ「おっと」バッ

アスカ「なんで渡してくれないの⁉︎」

マリ「諦めるなら見る必要なくない?」

アスカ「……見てから決めてもいいでしょ」

マリ「らしくないにゃー、諦めきれないんでしょー、素直になりなよー」

アスカ「…………」

マリ「負けたからなんだってならないとぉー。負け癖がつくのはね、心が折れた時だよ? あんなのでさぁ、簡単すぎるよひめぇー」

アスカ「なんであんたがやりとり知ってんのよ!」

マリ「いたるところに情報源があるもんで」

アスカ「ちっ」

マリ「プライドが高いエリートって一度の負けで終わっちゃうわけー?」

アスカ「うっさいわねぇ! わかったわよ! 諦めない!」

マリ「それじゃ足りないにゃー」

アスカ「うっとおしい……!」

マリ「ふふん♪ 目を閉じてくださーい」

アスカ「はぁ?」

マリ「いいから、やるやる」

アスカ「……はぁ、閉じたわよ」

マリ「ワンコくんのこと思い浮かべてごらん」

アスカ「…………」

マリ「オーバーザレインボーではじめて会った時のこと、姫に言葉をかけたこと、浅間山で大火傷を負ったこと、はじめてのエッチのこと」

アスカ「……うん」

マリ「どれもこれも姫にとってかけがえのないものだよねぇ」

アスカ「もちろんよ」

マリ「他の人でもいいの?」

アスカ「……いいえ、違うわ。シンジがいてくれたから今の私はいる。シンジじゃないとだめなのよ」

マリ「それじゃ、はいこれ」ピラ

アスカ「……?」

マリ「手紙、読みかったんでしょ?」ヒラヒラ

アスカ「……っ!」バッ


シンジ『アスカ。元気にしてる? まだ短い日数だけど、僕は、アスカに会いたくてたまらないんだ。こんなこと言うのおかしいよね。
離れてくらしてみて、改めて思ったんだ。
僕は、アスカのことが好き、いや、愛してるんだって。
なかなか会えないけど、はやく会いたいと思ってるよ』


アスカ「…………」プルプル

マリ「(ワンコくんの筆跡マネて書いてみたけどどうかにゃ)」

アスカ「メガネ! 今すぐ準備して!!」

マリ「な、なにを?」

アスカ「決まってんでしょ! シンジを助けだすのよ!!」

マリ「お、おぉ~。効果すごいね。どうやって?」

アスカ「乗りこむ! 手榴弾とか用意して!!」

マリ「それで助けた後は逃避行?」

アスカ「あっ……」

マリ「そうなんだよねー。連れ出すこと自体は簡単なんだけど、逃げきるのが難しいんだにゃ」

アスカ「でもこのままだとガードが堅いし……」

マリ「ワンコくんが現状知るだけでも変化あるかな?」

アスカ「それなら、なんとかなりそうね」

マリ「それじゃいこっか、姫」

アスカ「どこに?」

- 空輸機 高度1万5000 -

アスカ「――な、なんなのよこれぇ~~~!!」

マリ「姫、スカイダイビングの経験ないんだっけ? はいこれ、ゴーグル」ヒョイ

アスカ「わっ、とと」パシッ

マリ「私が先導してあげるから、あとについてきて。夜って昼間と比べて難易度高いからね」

アスカ「スカイダイビングは、一度しか……!」

マリ「ぶっつけ本番も大丈夫っしょ♪ ねっ♪」

アスカ「えぇーーーっ⁉︎」

パイロット「まもなく降下予定地点です!」

マリ「はーい! ほら、いくよ! 姫! 王子様の元に!」


ウィーン

ガシャン


アスカ「い、いやぁ~~~! 風が強い~~!」

マリ「しかたないにゃー、手繋いであげるから」

アスカ「えっ⁉︎ ちょ、ちょ! うそっ⁉︎」

マリ「――ワン、ツー、スリー……! ゴー!」

- リツコ宅 シンジ部屋 -

コツンコツン

シンジ「……?」

コツンコツン

シンジ「なんだ? 窓?」

ガララ

マリ「やっ!」

シンジ「ま、マリさん――て、あす……むぐぐ」

マリ「シーっ。声が大きいよ。夜は音が響くから音量さげて」

アスカ「し、シンジ……」

シンジ「わかった、小声で話す」

マリ「ワンコくんに会いに姫が空からやってきたのだ。普通逆だけどね」

シンジ「アスカ、髪がすごいことに――」

アスカ「シンジっ!」ギュウ

シンジ「どうしたの……アスカ」

マリ「あ、ここは監視カメラないから好きなだけ抱き合っていいよ。葛城宅にも、もう監視カメラないからね。言うの忘れてたけど」

マリ「――というわけでぇ、入院中のことは夢ではなかったのだよ」

シンジ「そうだったんだ……父さんとリツコさんが……」

アスカ「……う……ぐすっ……ぐすっ……」ギュウ

シンジ「アスカ、ごめんね。僕、あの時のこと夢だと思ってて」

アスカ「……シンジも男だから……」

シンジ「あの時、綾波には悪いけど、僕、アスカのこと思い浮かべてたんだ」

アスカ「……えっ?」

シンジ「本当だよ。その後、その、アスカとした時も、我慢ができなかった」

アスカ「本当?」

シンジ「うん。本当だよ」

アスカ「シンジ……」

マリ「一発やっといたら?」

シンジ「えぇ?」

マリ「姫、声我慢できる?」

アスカ「え、えぇ?」

マリ「エッチっていうのも欲にまみれてなければ愛情表現だからね。次いつできるかわからないよ?」

シンジ&アスカ「あ……」

マリ「見張っといてあげるからさ、どーぞ」

アスカ「ちょ、ちょっと、あんたもこの部屋にいるの⁉︎」

マリ「だっていなきゃ見張れないじゃーん」

アスカ「人がいる状況とか無理に決まってんでしょ!」

マリ「見ないからさー、そっち」

シンジ「たしかに、次いつ会えるかわからないなら」

アスカ「し、シンジ?」

シンジ「アスカはしなくていいの?」

アスカ「え、えぇ? だって、メガネもいるのよ」

シンジ「うん、だけど気にしないって言ってるから」

マリ「どーぞどーぞ」

アスカ「ぁ……」

シンジ「どうする?」

アスカ「メ、メガネ、絶対こっち見んじゃないわよ」

マリ「はいはーい。でも誰か来た時は別ね」

アスカ「……わかった」

シンジ「アスカ……」

アスカ「ん……待って、シンジ。声我慢できるかわからないから……」

シンジ「うん。わかった。タオルでいい?」

アスカ「う……まかせる」

シンジ「口あけて」

アスカ「あー」

シンジ「……よっ」ギュ ギュ

アスカ「ふー、ふー」

シンジ「きつくない? 声大丈夫そう?」

アスカ「ん」

シンジ「なんか、アスカがタオルくわえてるのってゾクゾクするね」スッ

アスカ「んっ……ふぅ……ふぅ……」

シンジ「耳さわられるの好きだったよね」

アスカ「……ふぅんっ……ふぅ……ふぅ……」

シンジ「アスカ、かわいいよ」

アスカ「ふぅ……ん……ふんふ……」トロン

マリ「はぁ、何回するつもり?」

シンジ「はぁはぁ……」

マリ「途中から姫タオルとれちゃって必死で声我慢してるのはかわいかったけど」

アスカ「ぁ……あ…っ……んっ……」ピクピク

マリ「まだ帰りもあるんだよー? そんなに痙攣してて足腰大丈夫?」

アスカ「み……見ないで……」

マリ「しっかしワンコくんのおっきいね、日本人にしては」

シンジ「そ、そうかな」

マリ「硬さも良さそうだし、姫どうだった? って痙攣してるの見ればわかるかー」

シンジ「アスカ、もう一回したい……」

アスカ「だめよ、シンジ。もうだめ。私壊れちゃうから――」

シンジ「アスカ、僕のアスカ」

アスカ「シンジ。好き。好き。受け入れてあげる。きて、私を壊して。シンジの証つけて……」



マリ「――帰って寝たいなー」

シンジ「アスカ、帰り、大丈夫?」

アスカ「ん。平気」

マリ「もうさー、やりはじめて終わるまで5時間だよー勘弁してよー」

アスカ「悪かったわよ」

マリ「途中で姫失神しちゃってたね」

アスカ「うっ」

マリ「その間もワンコくん腰ふるの止めないし」

シンジ「えぇと」

マリ「まぁ、もう終わったならいいけど。妊娠してたら知らないけどね」

アスカ&シンジ「…………」

マリ「いちおー、薬飲んどきなね、これあげるから」

アスカ「終わった後でいいの?」

マリ「うん、ただ、あんまり身体には良くないよ」

アスカ「わかった」

シンジ「アスカ、次はゴムしよう。薬にはあまり頼りたくないから」

アスカ「うん。そうね」

シンジ「リツコさんは、僕がなんとかする。学校に行けるようにしてみせるよ」

マリ「頑張ってね、あと綾波レイにも気をつけて」

シンジ「綾波は……うん、でもわかった。マリさん、ありがとう」

アスカ「シンジ……。待ってる」

シンジ「うん……アスカ」ギュウ

アスカ「中にだされたのがたれてきてる……」

シンジ「えっ」

アスカ「シンジ、もう一回………」



マリ「もういい! 帰るよ!」

- 翌日 リツコ宅 -

リツコ「おはよう、レイ、シンジくん」

シンジ「おはようございます」

レイ「…………」

シンジ「リツコさん、そろそろ学校に行きたいんですけど」

リツコ「ごめんなさいね。今日もテストよ」

シンジ「毎日テストじゃ、息が詰まっちゃいますよ」

リツコ「そう? ネルフの中でなら自由に生活してかまわないわよ。勉強なら私かマヤが見てあげるし」

シンジ「学校の友達にも会いたいですし」

リツコ「そうね……」

シンジ「どうですか?」

リツコ「一週間たてば、かまわないわよ」

シンジ「どうしてその期日なんです?」

リツコ「特別委員会から監査がはいるのよ。それまでにできるだけのことは処理しておかないとね」

シンジ「(一週間か……)」

リツコ「……どう? それ以降であれば、こちらとしても何も言うことはないわ」

シンジ「3日でお願いします」

リツコ「そんなに行きたい理由でもあるの?」

シンジ「いえ、息抜きがしたいだけですよ。窮屈すぎるのはちょっと……」

リツコ「(準備期間としてはギリギリね)」

レイ「碇くん、昨日、夜中誰かいた?」

シンジ「ん? 誰もいないよ」

レイ「……そう」

リツコ「では、3日で許可します」

シンジ「よかった」

- ミサト宅 -

ミサト「まったく、連絡もよこさないでなにやってたのよ!」

アスカ「だから言ってるじゃない、ちょっと1人になりたかったの」

ミサト「あんたまだ中学生なんだからね! ちったー考えて行動しなさい!」

アスカ「はいはい、わかったわかった」

ミサト「シンちゃんとは昨日も会えなかったでしょ……」

アスカ「そうね」

ミサト「リツコが私を避けてるみたいでね。なんとか会えるようにしてあげるから、もう少し待って」

アスカ「期待しないで待ってるわ」

ミサト「……あんたなんで顔がにやけてんの?」

アスカ「は? なにが?」

ミサト「いや、隠せてないわよ」

アスカ「別に。なんでもない」

ミサト「はぁ……?」

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「シンジくん、ホルモンバランスがおかしいわよ」

シンジ「はい?」

リツコ「若いからあまり自家発電するなとは言わないけど、ほどほどにね」

シンジ「あ、えっと、その、気をつけます」

リツコ「溜まってるの?」

シンジ「いや、そういうわけでは」

マヤ「…………」

リツコ「男子ですもの。恥ずかしがることはないのよ。特にあなたの年齢では正常だと言える」

マヤ「あの、先輩」

リツコ「ふぅん。マヤ、あなたシンジくんとしてみる?」

マヤ「えぇ⁉︎」

リツコ「冗談よ。本気にしたの?」

マヤ「あぁ……なんだぁ。私そういう話題ちょっと苦手で……」

シンジ「これセクハラになりますよ」

リツコ「誰に対して?」

シンジ「僕とマヤさんです」

リツコ「わりと真面目な話なのよ。男性パイロットはシンジくんだけだけど、必要だと決定が降れば女を当てがうわよ」

シンジ「必要ありません」

リツコ「性欲が旺盛だとわかっただけでいいわ」

マヤ「先輩、あのそろそろ今日のテストの話を……」

リツコ「(試してみる価値はあるわね)」

マヤ「先輩?」

リツコ「本日の実験を変更します。B9は省略してサードチルドレンの疲労回復のため午後からに繰り下げて」

シンジ「え? 僕は大丈夫ですよ」

リツコ「テストは行ってもらうわよ。午前は点滴を投与するから休みなさい」

マヤ「了解。では、そのように手続きします」

- ネルフ本部 ??? -

シンジ「(午前中が空いたのはちょうどよかったな……よっと)」タンッ


第2使徒リリス「…………」


シンジ「(やっぱりターミナルドグマにいるのはリリス……)」

シンジ「(ということは、父さんが持っているのはアダムか)」

シンジ「(綾波、3人目だって言ってたもんな。僕が会った2人目の綾波はもう……やめよう。綾波は綾波だ)」

シンジ「(リリスがここにいるならガフの部屋は2つとも空なんだろうな……)」


マリ『マテリアルは揃うよ』


シンジ「(……もう既に遅かったんだ)」



シンジ「――いるんだね、月に。カヲルくん」

- 第三新東京都市第壱中学校 昼休み -

アスカ「あ、これおいしい」

ヒカリ「あ、う、うん。よかったら食べて」

マナ「……アスカ、なにか良いことあったの?」

アスカ「なにが?」

トウジ「あーもう考えるのやめや! やめ! こいつに付き合っとったらこっちの身がもたんわ!」

ケンスケ「はぁ……。なんだったんだよ。昨日のは」

アスカ「別に。なんてことないわよ」

ケンスケ「最近、ブロマイドの売り上げ落ちてきてるしさぁ」

トウジ「そら中身が知れ渡っとるからなぁ。こんな凶暴な女を相手にすんのセンセだけやで」

アスカ「ふん、別にシンジ以外に相手してほしいわけじゃないのよ」

トウジ&ケンスケ「……はぁ」

アスカ「あんた達みたいなバレンタインに義理チョコのひとつも貰えないようなのとシンジを一緒にしないでくれる? 月とスッポンよ」

トウジ「さよーですか」

ケンスケ「僕だって義理チョコぐらい!」

アスカ「家族とかやめてよね。キモいから」

ケンスケ「うっ」

アスカ「はんっ」

マナ「……でも、これで一安心かな」

ガラガラ

レイ「…………」

アスカ「…………」ピクッ

レイ「…………」スタスタ

アスカ「ちょっと待ちなさい、ファースト」

レイ「……なに?」

アスカ「こっちで少し話さない? 鈴原、相田、席あけて」

トウジ「お、おい」

ヒカリ「だ、大丈夫?」

アスカ「暴れないから大丈夫よ。ファースト、座って」

アスカ「話というのはシンジのことなんだけど」

レイ「……あなた、そればっかりね」

アスカ「そうね。それは認める。それで、私はあんたがシンジのことどう思ってるか聞いてないと思って」

レイ「……?」

アスカ「胸があたたかくなるって言ってたわよねぇ。でもそれってライクなの? ラヴなの?」

レイ「…………」

アスカ「命令に従ってるのかそうじゃないか。それによっては今後の付き合い方が変わってくると思うのよ」

レイ「…………」

アスカ「私はあんたとはソリが合わない。あんたも同じでしょ。だから、パイロット同士という繋がりがなければ話をすることもない。だけど、今はパイロットということもあるし、シンジということもある」

レイ「私は、好きとか、よくわからない」

アスカ「自覚がないだけじゃないの?」

レイ「……自覚」

アスカ「気がついていない気持ちってわりとあるのよ。私もシンジのこと好きって認めるまですこしかかったからそれはわかる」

ヒカリ「アスカは好きになるまでがはやかったけどね」

アスカ「ヒカリ」

ヒカリ「あ、ごめん」

レイ「碇くんは、私と対等に向き合ってくれる」

アスカ「私と同じね。それで?」

レイ「碇司令は良くしてくれる。けど、道具」

アスカ「…………」

レイ「碇くんのことはまだ、時間が必要、だと思う」

アスカ「そう。でも、様子じゃ好きになるのは時間の問題ね」

レイ「好き? 私が碇くんを?」

アスカ「その話はいい。あんたには何度か言ってるけど、私はシンジが好きなのよ」

レイ「ええ」

アスカ「あんたにも、誰にも渡すつもりはない。だから、奪いにくるなら私も全部をかけて守ろうとする」

レイ「……そう」

アスカ「あんたはそういうやつだもんね。打てば鳴くわけじゃなく、受け流す。だからあんたと私は絶対に仲良くなれない」

レイ「…………」

アスカ「私にとっては一方的に喋るぐらいでちょうどいいってわかったわ。反応を期待するからイラついてたのね」

レイ「…………」

アスカ「シンジは誰にも渡さない。それだけ。話は終わりよ」

レイ「わかったわ」

ヒカリ「はぁ……」

マナ「色々すごいね……」

トウジ「センセはホンマ伝説の男かもしれへんなー」

- 放課後 バス 車内 -

ヒカリ「(はぁ、この時間のバスってサラリーマンと被っていつも混むからやだなぁ……)」

ヒカリ「(晩御飯なににしようかな。コダマお姉ちゃん今日バイトだっけ)」


ビーッ ガチャン

運転手『発車します』


ヒカリ「…………」

サラリーマン「…………」サワッ

ヒカリ「(……ん?)」

サラリーマン「…………」チョンチョン

ヒカリ「(え、うそ、やだ。痴漢? だ、誰?)」ソォー

サラリーマン「……ふひ」

ヒカリ「(……き、気持ち悪い。……え、こわい)」

サラリーマン「……ふぅ……ふぅ……」チョンチョン

ヒカリ「(やめて、触らないで! だ、だれか!)」

サラリーマン「…………」サワサワ

ヒカリ「(ひっ⁉︎ やだ……スカート……やだやだやぁ)」

ガシッ

サラリーマン「……っ⁉︎」

シンジ「もうやめたほうがいいですよ」

サラリーマン「な、なんだキミは!」

ヒカリ「えっ……碇くん」

シンジ「この人、痴漢です」


ザワザワ


サラリーマン「勝手な言いがかりをつけるな! 失敬な!」

シンジ「洞木さん、大丈夫?」

ヒカリ「あ、う、うん」

シンジ「次の停留所で降りましょう」

サラリーマン「いい加減にしろ!」

シンジ「またするんでしょ? 逃げたら」

サラリーマン「……おい! 運転手! 今すぐ止めろ! 俺は降りる!」

シンジ「……っ!」ググッ

サラリーマン「いっ⁉︎ いだだだっ! ぼ、暴力はやめて!」

運転手「面倒ごとは勘弁してくださいよー、止めますから降りてください」

シンジ「僕も降ります。洞木さん。気をつけて帰ってね」




ヒカリ「……は、はい」ポー

- 第三新東京都市 派出所前 -

サラリーマン「だからぁ! 俺は何度も言ってるだろう! バスに乗ってたらこのガキがいきなり腕掴んできたんだよ!」

シンジ「はぁ……」

警官「しかしですねぇ、バス会社に問い合わせた所、目撃者もいるんですわ」

サラリーマン「こういうのって現行犯が原則だろ! そんなの当てにすんのかよ!」

警官「面倒ごとを嫌う人っつうのも多いもんでね。痴漢被害は見て見ぬふりをするまわりも問題なんですわ」

ヒカリ「あ、あのっ!」

シンジ「――洞木さん?」

ヒカリ「私っ! この人に痴漢されました! 間違いありません!」

警官「少年、この子は?」

シンジ「被害者です」

サラリーマン「ぐっ!」

ヒカリ「……っ!」キッ

警官「よく名乗りでてくれた。勇気がいっただろう。調書を取るから待ってくれ」

- 第三新東京都市 市街地 -

シンジ「よく、あの交番だってわかったね」

ヒカリ「ここらへんだとあそこぐらいしかないから。停留所止まったら追いかけてきたの」

シンジ「でも、大丈夫だったの? わざと呼ばなかったんだけど」

ヒカリ「うん。だって、逃げられたら被害増えるでしょう」

シンジ「そっか」

ヒカリ「碇くんは今帰り?」

シンジ「うん。最近は学校にいってないから、なんだか会うの久しぶりな気がするね」

ヒカリ「えへへ、そうだね。それにしてもびっくりしちゃった。碇くんって大人の人にも物怖じしないとは思わなかったし」

シンジ「あぁ、いや、その、見てられなかったから」

ヒカリ「それに、あんなの、腕掴んで」

シンジ「(ちょ、ちょっとまずかったかな)」

ヒカリ「――漫画の主人公みたい」

シンジ「え?」

ヒカリ「う、うぅん。なんでもない」

シンジ「とりあえず、うちまで送るよ。よければだけど」

ヒカリ「えっ、そんな、悪いよ」

シンジ「さっき、怖い目にあったばかりだろうし、ほっとけないから」

ヒカリ「あ、うん……それじゃお願いしようかな……」

- 洞木宅 ヒカリ部屋 -

ヒカリ「あ、あの、ごめんね。上がってなんて馴れ馴れしくて……」

シンジ「いや、かまわないよ。洞木さん、女の子らしい部屋なんだね」

ヒカリ「あの、あんまりジロジロ見ないで……」

シンジ「ごめん。つい」

ヒカリ「うちは、三姉妹だから、おさがりも多いんだ。私はちょうど真ん中だからコダマお姉ちゃんのおさがり」

シンジ「へぇ、女の子ばかりだと大変そうだね」

ヒカリ「みんなで協力してやってるの。私は家事全般してるけど」

シンジ「洞木さんは料理上手だもんね」

ヒカリ「碇くんも上手だって聞いてるよ。男の人で料理するのって嫌じゃないの?」

シンジ「抵抗はなかったよ。特別上手ってこともないと思うんだけど、人並みにはできるってだけで」

ヒカリ「そうなんだ」

シンジ「トウジには、まだ弁当作ってるんでしょ?」

ヒカリ「うん」

シンジ「そっか。うまくいくといいね」

ヒカリ「でも、鈴原は、今は恋愛に興味ないみたい。妹さんのこともあるし」

シンジ「そうなんだ……」

ヒカリ「あ、ごめんね。お茶もださずに、持ってくるからちょっと待ってて」


トタトタトタトタ


シンジ「普通の一般家庭ってこんな感じなのかな」

シンジ「いや、あのクラスにいる時点で……みんな母親がいないんだ」

シンジ「苦労してるのかも、しれない」

- 洞木宅 台所 -

ヒカリ「麦茶でいいのかな。りょ、緑茶? それともジュースかな?」

ヒカリ「(男の子部屋に上げたのはじめてだからわからない。どうしよう。聞きにいくべきかしら)」


シンジ『もうやめたほうがいいですよ』


ヒカリ「…………」トクトクトクトク


シンジ『この人、痴漢です』


ヒカリ「…………はぁ」ドボドボドボドボ

ヒカリ「つめた……あっ⁉︎ やだ! いけない! フキンどこだっけ!」

- 洞木宅 ヒカリ部屋 -

ヒカリ「おまたせ……」

シンジ「うん」

ヒカリ「ごめんね。待ったでしょ?」

シンジ「大丈夫だけど……すごい量だね」

ヒカリ「あの、わからなかったから緑茶、麦茶、オレンジジュース、アップルジュース持ってきたの」カチャカチャ

シンジ「だ、大丈夫? 重そうだし、受け取るよ」

ヒカリ「いいの、お客様なんだし、あのどれがいい?」

シンジ「それじゃ、アップルジュースで」

ヒカリ「うん、わかった」カチャカチャ

シンジ「洞木さん? 動きがかたいよ?」

ヒカリ「へぇっ⁉︎ な、なにがぁっ⁉︎」

シンジ「いや、なんでもないんだ、ごめん、忘れて」

ヒカリ「あ、うん――あっ⁉︎」


ガチャーーン


シンジ「…………」ビッチョリ

ヒカリ「た、大変! 碇くん! すぐ脱いで!」

シンジ「えぇ⁉︎ いや、大丈夫だよ!」

ヒカリ「制服、染みになる! はやく手洗いしなきゃ!」

シンジ「だって、脱いだら……」

ヒカリ「あっ……!」

シンジ「あの……」

ヒカリ「わ、私のシャツが、えっと、ここのタンスの中に……」

シンジ「…………」

ヒカリ「これ、洗濯してあるやつだから! 柔軟剤使ってるし、変な匂いしないと思うんだけど!」

シンジ「あ、わかった。ありがとう」

ヒカリ「部屋、でてるね! でも、なるべく急いで」



シンジ「――やっぱりすこしピチピチだな」

コンコン

ヒカリ『碇くん? はいってもいい?』

シンジ「どうぞ」

ガチャ

ヒカリ「……ぷっ、あははっ! やだ! すごいサイズ感おかしい」

シンジ「洞木さんが着ろっていったんじゃないか」

ヒカリ「あはっ、あはははっ、ご、ごめんなさい。碇くんって細いから、私のサイズで問題ないかと、あはははっ」

シンジ「はぁ……」

ヒカリ「ご、ごめんね。あ、そうだ。制服、シミ抜きしてくるね。すこし待ってて」

シンジ「洞木さん」

ヒカリ「ん?」

シンジ「カーペットはいいの?」

ヒカリ「あぁ、うん。仕方ないよ。目立たない柄だから、先に制服やっちゃう」

シンジ「……わかったよ。でもどうやって帰ったら」

ヒカリ「ドライヤーで乾かせばそんなに時間かからないと思うよ。あの、ごめんね?」

シンジ「いや、気にしてないよ」

今日はここまで
ずっと見ないふりしてきたんすけど、このスレの1000までに終わらないのが確定してます
しかしこのスレ中に終わらせたい
どーーしても終わらせたくなったら本来予定してるラストとは違い三行で終わらすかもしれまへん

楽しんで書けてるんで次スレは立てるかと思いますけどね、たぶんですけど

では続けます

ブォーーーッ カチッ

ヒカリ「ん……どうかな。だいぶ、乾いたと思うけど」

シンジ「……うん、本当だ。帰るぶんなら問題なさそうだね」

ヒカリ「あっ、そうだ。アイロンもかけなくちゃ」

シンジ「いや、そこまでしてもらうのは悪いよ」

ヒカリ「気にしないで。私、得意なんだ」

シンジ「わかった、洞木さんって本当にいいお嫁さんになりそうだね」

ヒカリ「そ、そうかな……」コトッ

シンジ「うん、家庭的だし。幸せになれそうな気がする」

ヒカリ「こういうの、得意なだけだよ。アスカみたいにかわいくないし、そばかすも……」

シンジ「ん?」

ヒカリ「肌、荒れやすいんだ。アスカはキレイで、本当に羨ましい。綾波さんも白くてお人形さんみたいで……」

シンジ「うーん」

ヒカリ「あ、今かけるね、このアイロン古くて、熱持つまで少し、時間かかるから――」カチッ

シンジ「洞木さんも、かわいいと思うよ」

ヒカリ「えっ?」

シンジ「見た目にコンプレックス持つのちょっとわかるんだ。僕、かわいいって言われることたまにだけど、あるし。そんな時、僕男なのにって思ったりする」

ヒカリ「あっ……ごめん、私さっき。線が細いって」

シンジ「気にしてないんだ。羨ましいって思うことは普通って言いたかっただけで、なんか変な話してごめんね」

ヒカリ「うぅん、私のこと気づかってくれたの?」

シンジ「うん、というか、自信持っていいんだと思う。洞木さんもかわいいよ」

ヒカリ「か、かわいいだなんて、そんなこと、言われたことないからっ!」


ヴィーーンッ ヴィーーンッ


シンジ「……?」

ヒカリ「……? 碇くん?」


ヴィーーンッ ヴィーーンッ


シンジ「洞木さん? なにか聞こえない?」

ヒカリ「ん……? なんだろうね。ほんと、なにか震えてる音がする」

- ネルフ 本部 -

リツコ「レイ、右手を動かすイメージを描いてみて」

レイ「はい」

オペレーター「データ収集、順調です」

リツコ「もう時間が遅くなってるわ……MAGIを通常に戻して。ジレンマか……作った人間の性格が伺えるわね」

マヤ「前任者の、赤木ナオコ博士ですか? 先輩のお母様の」

リツコ「……そうね……私はシステムアップしただけ。基礎理論と本体を作ったのは、母さんよ」


ポチャン ポチャン


リツコ「また水漏れ?」

シゲル「3日前に搬入されたパーツです。ここですね、変質しているのは」

リツコ「第87蛋白壁ね」

マヤ「拡大するとシミのようなものがあります。何でしょうね、これ」

マコト「浸蝕だろ? 温度と伝導率が若干変化しています。無菌室の劣化はよくあるんです。最近」

シゲル「工期が60日近く圧縮されてますから。また気泡が混ざっていたんでしょう。杜撰ですよ、B棟の工事は」

冬月「そこは、使徒が現れてからの工事だからな」

マコト「無理ないっすよ、みんな疲れてますからね」

冬月「明日までに処理しておけ。碇がうるさいからな」

マコト「了解」

冬月「赤木博士、あとはまかせたぞ」スタスタ

リツコ「はい……。テストに支障は?」

マヤ「今のところは何も」

リツコ「では続けて。このテストはおいそれと中断するわけにいかないわ」

マヤ「了解」

オペレーター「シンクロ位置、正常」

マヤ「シミュレーションプラグを模擬体経由でエヴァ本体と接続します」

オペレーター「了解、エヴァ零号機、コンタクト確認」

ビーッ ビーッ


シゲル「シグマユニットAフロアに汚染警報発令!

リツコ「なに⁉︎」

オペレーター「第87蛋白壁が劣化、発熱しています。第6パイプにも異常発生」

マヤ「蛋白壁の浸蝕部が増殖しています。爆発的スピードです!」

リツコ「実験中止、第6パイプを緊急閉鎖!」

マヤ「はい!」


ガシャン ガシャン ガシャン


オペレーター「60、38、39、閉鎖されました! 6の42に浸蝕発生!」

マヤ「だめです、浸蝕は壁伝いに進行しています」


ビーッ ビーッ


リツコ「ポリソーム、用意! レーザー、出力最大! 侵入と同時に、発射!エマージェンシーコール止めて! うるさい!」

マヤ「……浸蝕部、6の58に到達、なにか……ここに、来ます!」



シーーーーーン



リツコ「……?」

レイ「きゃあっ⁉︎」

リツコ「レイ⁉︎ 異常を報告して!」

マヤ「レイの模擬体が、動いています!」

リツコ「まさか⁉︎ レーザーは⁉︎」

マヤ「応答ありません! 浸蝕部、さらに拡大、模擬体の下垂システムを侵しています!」

マヤ「浸蝕部、さらに拡大、模擬体の下垂システムを侵しています!」

リツコ「レイのプラグを緊急射出! レーザーを手動に切り替えて………発射!」

ジュゥ

パキーーン

リツコ「A.T.フィールド!? マヤ、解析急いで!」

マヤ「……っ! 解析パターン出ました!」

リツコ「分析パターン、青。間違いなく、使徒ね」

冬月「使徒? 使徒の侵入を許したのか!?」

リツコ「冬月副司令……申し訳ありません」

冬月「騒しく思い戻ってみれば……言い訳はいい。セントラルドグマを物理閉鎖、シグマユニットと隔離しろ!」

シゲル「セントラルドグマを物理閉鎖、シグマユニットと隔離します!」

冬月「総員退避! ここはこのままで、発令所に急げ!」

- ネルフ本部 発令所 -

『シグマユニットをBフロアより隔離します。全隔壁を閉鎖、該当地区は総員待避』


ゲンドウ「警報を止めろ!」

シゲル「はぁっ……はぁっ……りょ、了解!」

ゲンドウ「誤報だ。探知器のミスだ。日本政府と委員会にはそう伝えろ。他のオペレーターどもは何をやっている!」

シゲル「ま、間もなく」

マヤ&マコト「お、遅れました……!」

ゲンドウ「仕事をしろ!」

マコト「……汚染区域はさらに下降! プリブノーボックスからシグマユニット全域へと広がっています!」

ゲンドウ「汚染はシグマユニットまでで抑えろ。ジオフロントは犠牲にしても構わん。エヴァは?

マヤ「第7ケイジにて待機、パイロットを回収次第、発進できます!」

ゲンドウ「パイロットを待つ必要はない。すぐ地上へ射出しろ」

シゲル&マコト「え?」

ゲンドウ「初号機を最優先だ。そのために他の二機は破棄しても構わん」

マコト「初号機を、ですか?」

シゲル「しかし、エヴァ無しでは、使徒を物理的に殲滅できません!」

ゲンドウ「その前にエヴァを汚染されたらすべて終わりだ。急げ!」


『シグマユニット以下のセントラルドグマは、60秒後に完全閉鎖されます。真空ポンプ作動まで、後30秒です』

- 洞木宅 ヒカリ部屋 -


ヴィーーンッ ヴィーーンッ


シンジ「バイブ音、かな……こっちの方から」

ヒカリ「……?」

シンジ「――ベットの方?」ギシッ

ヒカリ「あっ! い、いいいい碇くんっ! だ、だだだだだめっ!」ガシッ

シンジ「え? う、うわぁ⁉︎」

ヒカリ「違うの、そ、それは違うの。本当になんでもないの。気にしないで。お願い。お願いだから、気にしないで、忘れて。お願い!」ギュウ

シンジ「わ、わかった、わかったから抱きつかないで」

ヒカリ「あ、ごめん! 私、アスカいるのになんでこんなこと! 抱きつくつもりなかったの! 本当にごめん!」バッ

シンジ「あぁ、いいよ――」


ヴィーーンッ ヴィーーンッ

コトッ コロン

ヴィーーンッ ヴィーーンッ


シンジ「……? これ……」

ヒカリ「あ~~~っ! あ、あの、それ違うの! 違うんだってばぁっ!」

シンジ「(ろ、ローター?)」

ヒカリ「……あぁ、終わった……」ヘナヘナ

シンジ「あぁ、えぇと……」

ヒカリ「ごめんなさい……気持ち悪いよね……うっ……ぐすっ……」

シンジ「あぁ、これ玩具なんだね。妹さんの?」

ヒカリ「えぇっ?」

シンジ「違うの?」

ヒカリ「……あ……」

シンジ「(ちょ、ちょっと苦しかったかな)」

ヒカリ「そ、そうなんだっ! もうノゾミったら! し、仕方ないなぁ!」

シンジ「しまった方がいいと思うよ」

ヒカリ「そうだねっ! そうする!」カシャ

シンジ「……そろそろおいとましようかな」

ヒカリ「えっ? あの、アイロン」

シンジ「遅くなっても洞木さんに悪いし、気持ちだけで」

ヒカリ「あ……ごめんね。落ち着いて話せなくて。…………あの、ほ、ほんとに知らないの?」

シンジ「……?」

ヒカリ「し、知らないんだったらいいんだ」ホッ

- 洞木宅 玄関 -

シンジ「(お姉さんのおさがりってことはないだろうし、通販かなにかで買ったんだろうな)」

ヒカリ「あの、碇くん。今日は色々とありがとう。助けてくれて」

シンジ「僕こそ、洞木さん責任感強くて助かったよ」

ヒカリ「……あの、さっきの……もし、知っても……」

シンジ「誰にも言わないよ」

ヒカリ「えっ⁉︎ あ、あのっ!」

シンジ「今日は楽しかった、ありがとう。近い内に学校に行くから」

ヒカリ「……や、優しいんだね……うっ……ぅっ……」グスッ

シンジ「あぁ、あの、大丈夫だよ」ポンッ

ヒカリ「うぅ……ぐすっ……」

シンジ「それじゃ、また」

ヒカリ「うんっ! またね!」

- ネルフ本部 発令所 -

リツコ「ほら、ここが純水の境目、酸素の多いところよ」

マヤ「好みがハッキリしてますね」

シゲル「無菌状態維持のため、オゾンを噴出しているところは汚染されていません」

ミサト「つまり、酸素に弱い、ってこと?」

リツコ「らしいわね」

マコト「オゾン注入、濃度、増加しています」カチカチ

シゲル「効いてる効いてる」

冬月「場所が問題だな」

ゲンドウ「あぁ。アダムに近い」


ピピッ


マヤ「0Aと0Bは回復しそうです」

シゲル「パイプ周り、正常値に戻りました」

マコト「やはり、中心部は強いですね」

冬月「よし、オゾンを増やせ」


リツコ「変ね……」

シゲル「あれ? 増えてるぞ」

マコト「変です……発熱が高まってます」


ビーッ ビーッ


シゲル「汚染域、また拡大しています!」

ゲンドウ「警報を止めろ。二度と鳴らないようにしておけ」

マヤ「了解、だめです、まるで効果が無くなりました!」

マコト「今度はどんどんオゾンを吸っています」

リツコ「オゾン止めて! ……すごい……進化しているんだわ。この短い時間に」

- リツコ宅 夜 -

シンジ「ただいまぁ、あれ? 電気ついてない……綾波? いないの?」


パチッ


加持「よっ。色男」

シンジ「――加持さん?」

加持「久しぶりだな。シンジくん。こうして会って話すのはいつ以来か」

シンジ「本当に久しぶりですね。ネルフは大丈夫なんですか?」

加持「俺が指名手配されてるのを知ってるのかい?」

シンジ「僕も、いろいろと調べてますから」

加持「今頃、ネルフは使徒対応でてんてこ舞いさ。こういう時じゃないと自由に動けないんでね、寄らせてもらった」

シンジ「なにか飲みますか?」

加持「そうだな、タバコ吸ってもいいかい?」

シンジ「かまいませんよ」カチャカチャ

加持「……ふぅー」

シンジ「酒にします?」

加持「いや、やめとくよ。シンジ君に潰されそうだ。酔わないのも体質変化のせいかい?」

シンジ「わかりません。僕自身、まだ全てに慣れたわけじゃないんです」

加持「全てを思い出してもかい?」

シンジ「できることの把握と実感はまた別です。情報が多すぎるんですよ。今はひとつひとつ答え合わせをしています」

加持「…………」

シンジ「あまり見たくないんですよ。僕が人じゃないみたいで」

加持「過去やこれから起こることを知ってる時点で普通ではいられないさ。現実と向き合う覚悟はできたんだろう?」

シンジ「踏ん切りがついていない部分もあります」

加持「そうか」

シンジ「すみません」

加持「シンジくん、俺たちは5年前から秘密裏に準備を進めてきた。君が融合を果たした時に遅くならないためにね。俺たちの計画では不満か?」

シンジ「僕のやりたいことと必ずしも一致するとは限りません」

加持「甘いな。シンジくんは。時には汚れ仕事も必要だぞ」

シンジ「それじゃ父さん達と何も変わらない、それに、そんなのは屁理屈です。僕は僕のやり方でみんなを守ってみせます」

加持「…………」

シンジ「加持さんが、僕が思い出した時に繋がりやすいよう種を蒔いていたのはわかりました。でも、マリさんがわからないんです」

加持「…………」

シンジ「彼女は何者なんですか?」

加持「それは俺の口からは言えない。マリに直接聞いてくれ」

シンジ「なぜ僕と同じ視点なんです。そんなことはありえないはずなのに」

加持「ひとつだけ言えるのは、イレギュラーだからさ」

シンジ「…………」

加持「俺は、マリにセカンドインパクト、E計画、そしてきたるべき人類補完計画の全容を聞いた時、その真相に愕然とした。全ては仕組まれていたことにな」

シンジ「…………」

加持「碇司令やゼーレにとって望むべき補完は初号機による遂行だが、俺たちにとっては、シンジくん。君こそが鍵なのさ」

シンジ「勝手に頼りにされても困ります」

加持「ふー。なぜそんなにはやく記憶を取り戻せた?」

シンジ「……答えようがないんですよ」

加持「マリからも言われたかもしれないが、予定外なのさ。君の覚醒は。俺たちは参号機こそがターニングポイントになると考えている。シンジ君はどうだい? どう乗り切るつもりだ?」

シンジ「考えはあります」

加持「ガフの部屋は空だというのには気がついただろう」

シンジ「…………」

加持「リリスの器たる綾波レイ、そしてアダムの――」

シンジ「やめましょう」

加持「もう一度オーバーザレインボーでしたお願いをしたい。シンジくん、俺たちに協力してくれないか?」

シンジ「…………」

加持「君さえ、君とアスカさえいれば俺たちが汚れ仕事をなんでもやってやる、約束する」

シンジ「――目的のために利用するんでしょ⁉︎ アスカはなぜです? なぜ彼女を巻き込もうとするんですか!」バンッ

加持「必要だからだ。流れは止められない」

シンジ「止めてみせますよ。その為なら、僕はどうなったっていい!」

加持「……わかった。しかし、頭の片隅には置いておてくれ。俺たちは、シンジくんとアスカの味方だということを」

シンジ「いつかは道が違えますよ。その時も味方でいるんですか?」

加持「さぁな。それを決めるのは俺たちじゃない。シンジ君。キミの方さ」

- 翌日 リツコ宅 -

リツコ「…………はぁ」

シンジ「お帰りなさい、リツコさん」

リツコ「あぁ、シンジくん。ごめんなさい、少し休むわね。昨日は使徒の対応で徹夜したのよ」

シンジ「使徒? 使徒って僕たち行かなくてよかったんですか?」

リツコ「えぇ。もう殲滅したから問題ないわ。MAGIを侵食し、内部から支配しようとした使徒だったの」

シンジ「そんな使徒もいるんですね……」

リツコ「あなたは、予定通り、今日は本部にいって。私も午後から合流するわ」

シンジ「綾波は?」

リツコ「レイは、たぶん、ネルフで寝てるんじゃないかしら。あの子もエントリープラグ内で暇疲れしてたはずだから」

シンジ「……わかりました。それじゃ僕は――」

リツコ「……? シンジくん。ちょっと待ちなさい」

シンジ「はい?」

リツコ「私のじゃないタバコの吸い殻があるけど、誰か来てたの?」

シンジ「あぁ、それ加持さんですよ」

リツコ「加持くんが⁉︎ ここに来てたの⁉︎」

シンジ「えぇ、と言ってもすぐに帰りましたけど」

リツコ「なにを話したの?」

シンジ「リツコさんは元気にしているか、とかそんなとこですよ、あとミサトさんのことも」

リツコ「それだけ? あなたに何か話したいことがあると言っていたんじゃなくて?」

シンジ「……いえ? なにかあるんですか?」

リツコ「(加持くんは、シンジくんに何か用があってここに来たはず、なにかを話したがっている節があったし)」

シンジ「細かく聞きたいですか?」

リツコ「そうね、詳しく聞きたいわ」

シンジ「それだったら、リツコさんの部屋に行ってもいいですか?」

リツコ「私の部屋?」

シンジ「一度見てみたいなって。仲良くなりたいから」

リツコ「シンジくん。ふざけないでもらえる」

シンジ「ふざけてなんかいませんよ。僕は本気です」

リツコ「尚更タチが悪いわね。私は仲良くなる気なんてこれっぽっちもないわよ」

シンジ「そうですか? 同じ目的があれば歩みよるんじゃ?」

リツコ「……怒るわよ」

シンジ「それじゃ、僕からの質問にいくつか答えてくれたら、いいですよ」

リツコ「シンジくん。疲れてるのよ、子供の遊びには――」

シンジ「これ、なんですけど」スッ

リツコ「…………」

シンジ「リツコさんが気分を抑えると言った薬、これの効果はなんですか?」

リツコ「そのままよ」

シンジ「嘘はつかないでください。効果はなんですか?」

リツコ「シンジくん、いい加減に――」

シンジ「記憶障害を起こさせる薬であってますか」

リツコ「……っ!」

シンジ「……やりたいことは、なんとなくわかります。父さんの命令ですね」

リツコ「…………」

シンジ「この部屋の配置がミサトさんの所と酷似しているのは、おおかた、ミサトさんとアスカのことをリツコさんと綾波にそっくり置き換える為でしょう。違いますか」

リツコ「シンジくん、なにを言ってるの? そんな薬は存在しないわ」

シンジ「もちろん、薬だけでは無理です。でも、洗脳を行えばどうですか」

リツコ「し、シンジくん。あなた……」

シンジ「僕、ちょっと色々あって、酔わなくなったり、薬に対する抵抗力があがってたり、成分がわかったり、まぁ、いろいろあるんです」

リツコ「な、なにを言ってるの?」

シンジ「リツコさん。すみません。本当は、リツコさんも守りたかった。父さんに協力しないでほしいとお願いしても無理でしょうから、こっちに来てもらっていいですか」

- リツコ 部屋 -

リツコ「シンジくんっ! やめなさい!」ジタバタ

シンジ「昨日、加持さんが帰った後、考えてみたんですよ。たしかに僕は汚れようとはしていない。みんなを守りたいから」ギュッギュッ

リツコ「縄をほどきなさい! 大声あげるわよ!」キッ

シンジ「でも、それじゃ、どうしても無理なんだろうなって思ったのもあるんです。それだったら、せめて、僕が手を汚すべきだろうって……これガムテープです。口塞ぎますね」ベリッ ピト

リツコ「んーっ!」

シンジ「リツコさん、今から僕はリツコさんを犯します」

リツコ「んんっ⁉︎」

シンジ「それから少し、話をしましょう」

リツコ「んんっ! んっ! んーっ!」ジタバタ

シンジ「荒いかもしれません、覚悟してくださいね――」

- 10時間後 リツコ宅 -

ガチャ

レイ「……ただいま」

シンジ「おかえり、綾波」

レイ「碇くん。今日はネルフじゃないの?」

シンジ「リツコさんが熱出して倒れちゃったから、その看病してたんだ」

レイ「……そう」

シンジ「なんか、定期検査? 近いから今日は風邪がうつると悪いみたいで、リツコさんから綾波は自宅にいてほしいって伝言頼まれたけど?」

レイ「今も、部屋で寝てるの?」

シンジ「うん、ようやく寝ついたところだから」

レイ「わかった。他にはなにか伝言ある?」

シンジ「ううん、特にないよ」

レイ「それ、おかゆ?」

シンジ「あぁ、うん。起きたら食べさせようと思って」

レイ「……そう。それじゃ、私、もう行く」

シンジ「もう少しゆっくりしていったら?」

レイ「命令だもの……碇くん、また」

- リツコ 部屋 -

ガラガラ

リツコ「ぁっ……んぁっ……はぁはぁっ……」

シンジ「リツコさん、綾波帰りましたよ」

リツコ「ひっ⁉︎ もう、やめて……もう、いや……」

シンジ「そんなにこわがらなくていいですよ」スッ

リツコ「い、いやっ! さわらないでっ! こないで!」

シンジ「これで時間はたっぷりあります」

リツコ「無理なのよ……っこれ以上は無理……」

シンジ「言葉を発しなくなるまで続けますよ」

リツコ「だ、だれか、たすけ……」

シンジ「――さぁ、リツコさん」

- 翌日 リツコ宅 -

チュンチュン

シンジ「……もう朝か」

リツコ「ぁっ……あっ……」ピクピク

シンジ「リツコさん、僕の目を見てください」

リツコ「…………」

シンジ「目が赤くなってるのわかりますか? あなたにとって父さんはもう不要です。ゴミクズ以下でしかない。代わりに僕がいます」

リツコ「……ぁっ……」

シンジ「僕が守ります。あなたは、いや、あなたにとって僕しかいない」

リツコ「…………はい」

シンジ「復唱してください」

リツコ「……碇司令は、ゴミクズ、私には、シンジくんしか、いない……」

シンジ「そうです。では、そのまま目を瞑って」

リツコ「…………」スッ

シンジ「心地いい眠気があなたを包みます。深く、深く、意識を失っていきます……」

リツコ「……すぅー……」

シンジ「起きた時には、あなたは風邪をひいていたということだけを覚えています」

リツコ「…………」

シンジ「おやすみ、リツコさん」ナデナデ

- ネルフ本部 -

ミサト「リツコは今日も休み?」

マヤ「はい、さっきシンジくんから連絡があってだいぶ熱さがったそうなんですけど」

ミサト「風邪なんてめずらしいわね。先の使徒のやつで糸がきれちゃったか」

マヤ「よっぽど辛いんでしょうね。熱があっても出てきそうですし、先輩なら」

ミサト「そうね……」

マヤ「シンジくん、良い子ですよね。先輩たまに、嫌な当たり方する時あるけど、こんなに献身的に看病するなんて」

ミサト「良い子よ。でも、シンジくんまで休む必要ないと思うけど」

マヤ「あ、それなら問題ないです。先輩が落ち着いたから本日よりテストに復帰するって合わせて連絡ありました」

ミサト「そっか、そろそろシンジくんも学校に行かせてあげたいなー」

マヤ「現在のシンジくんの監督官は先輩ですから、とりあえず、回復してみないことにはなんとも……」

ミサト「マヤちゃんも協力してくれる?」

マヤ「そうですね……後押しだけなら……」

ミサト「ありがとー! 助かるわぁー!」

- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

ヒカリ「はぁ……」

アスカ「ヒカリ? 昨日もずっとため息ばっかりだったけどなんかあったの?」

マナ「そうだよ。2日も引きずるなんて、どうしたの?」

ヒカリ「はぁ……」

アスカ「また聞こえてないわね」

マナ「うーん」

ケンスケ「トウジ? 今日も購買パンか?」

トウジ「おう、委員長が作り忘れたらしくての」

ケンスケ「たしかに、様子がおかしいな、トウジ聞いてみろよ」

トウジ「なんでワシが」

アスカ「この鈍感っ!」スパーンッ

トウジ「いっ⁉︎ おまっ! いつのまにハリセン作っとんねん!」

アスカ「どぉ? これ授業中暇だったから作ってみたのよ」ブンッブンッ

ケンスケ「器用な……よく先生にバレなかったな……」

アスカ「まぁ、なんでもいいからはやく聞いてみなさい。このハリセンが振りかぶられる前にね」

ヒカリ「はぁ……」

トウジ「……ちっ、なぁ! 委員長!」

ヒカリ「はぁ……」

トウジ「おーい! おーい! ブース!」

アスカ「……っ!」スパーンッ

トウジ「なんやねん!」

ヒカリ「(碇くん……)」

トウジ「……ちょい、委員長」チョンチョン

ヒカリ「……? 鈴原。なに?」

トウジ「あー、様子がおかしいみたいやが、なにかあったんか?」

ヒカリ「なんで鈴原がそんなこと気にするの?」

トウジ「なんでって、そらまぁ、弁当作って貰っとるからの」

ヒカリ「……?」

トウジ「なんか、あったんなら、相談のるぞ」

ヒカリ「心配してくれてるの?」

トウジ「まぁ、弁当作ってもらっとるからのー」ポリポリ

ヒカリ「お弁当だけなんだ……」

トウジ「……悪いか?」

ケンスケ「おい、トウジ」

ヒカリ「別にあんたの為に作ってるわけじゃないわよっ!」

トウジ「あぁ、ついでやったのぅ」

ヒカリ「……っ! もういい!」ガタンッ


タタタタッ


アスカ「はぁ……」

マナ「鈴原くん、追いかけなくちゃ」

トウジ「なんでワシが」

アスカ「ヒカリ泣かしたら、あんたとは二度とご飯食べない。たとえシンジの友達でも」

トウジ「ワシが悪いこと言うたわけやないやろ!」

ケンスケ「………トウジ」

マナ「とにかく、追いかけてあげて。ね?」

トウジ「ちっ」ガタッ


タタタタッ


ケンスケ「許してやってくれよ。トウジも悪いやつじゃないんだ」

アスカ「相田の気持ちもわからないでもないわ。でも、ヒカリか鈴原だったら私はヒカリの味方」

ケンスケ「…………」

アスカ「私がなに言いたいかわかるでしょ?」

ケンスケ「あぁ……わかる」

マナ「まだうまくいくってこともあるから……」

- 第三新東京市立第壱中学校 屋上 -

ガチャ

トウジ「…………」

ヒカリ「なにしにきたの?」

トウジ「……みんな心配しとるぞ」

ヒカリ「言われたから来たんだね……」

トウジ「まぁ、それも、ある」

ヒカリ「――鈴原、私、鈴原のこと好きだった。優しいところ」

トウジ「は、はぁ⁉︎ なんでそんなこと……」

ヒカリ「お弁当も鈴原の為に作ってきたの」

トウジ「あ……」

ヒカリ「でも、もうやめるね」

トウジ「…………」

ヒカリ「私、もうやめることにしたから」

トウジ「……なんでそんなこといまさら」

ヒカリ「ううん。言いたかっただけ。今さらだけど、私のために言わなくちゃいけなかったの」

トウジ「…………」

ヒカリ「さ、戻ろう? 私たちこれまで通り、友達だよね?」

トウジ「まぁ、そやな」

トウジ「…………」

- 第三新東京市第壱中学校 教室 -

ヒカリ「あの、アスカ。マナ、ちょっといい?」

アスカ&マナ「…………」コクリ

ヒカリ「鈴原、相田くんと向こう行っててもらえる?」

トウジ「……おう、わかった……」

ケンスケ「おい、トウジ! どうしたんだよ」

トウジ「ケンスケ、今はなんも言わんといてくれ。とりあえず、ワシらは話の邪魔や。今日は屋上にでも行くか」

ケンスケ「……わかったよ」


スタスタ


アスカ「――それで? どうしたの? 大丈夫?」

ヒカリ「うん、平気。不思議と全然悲しくなかった」

マナ「それって……振られた?」

アスカ「あいつっ……!!」ガタッ

ヒカリ「ま、待って! 違う、違うの。私からもうやめるって言った」

アスカ「……え」

ヒカリ「私から好きだったけど、お弁当作るのもうやめるって言っちゃった」

マナ「あ……」

アスカ「ヒカリはそれでいいの?」

ヒカリ「うん。いつまでも続けてもしかたないもの」

マナ「そっか……」

ヒカリ「だから、これまで通り、お友達」

アスカ「しっかたないわねぇ! ヒカリがそう決めたなんなら! 私も賛成よ!」

ヒカリ「アスカ……ありがと、えへへ」

アスカ「じゃあ、ずっとそのこと考えてたのね?」

ヒカリ「え?」

マナ「え? 違うの?」

ヒカリ「あ、うーんと、考えてたのは――」


シンジ『ありがとう、今日は楽しかった』


ヒカリ「……っ!」ボンッ

アスカ「ヒカリ? 顔真っ赤よ?」

- ネルフ本部 -

ミサト「シンちゃーん! お疲れ様!」

シンジ「ミサトさん、どうも」

ミサト「調子はどぉ?」

シンジ「変わりはないですよ。ミサトさんとアスカも元気ですか?」

ミサト「こっちも大丈夫よ」

シンジ「それならよかったです」

ミサト「リツコが熱だしたって聞いてるけど、本当?」

シンジ「はい、もう落ち着いてますから、明日はでてくるって言ってましたよ」

ミサト「そっか。明日、シンジくん、学校行けるように頼んでみるから」

シンジ「ありがとうございます。僕も学校行きたいですし」

ミサト「そうよね。シンジくん、リツコのこと、ずっと看病してくれてたんですってね? ありがとう」

シンジ「立ち上がるのも辛そうだったので、できることをしただけです。インフルエンザかと思ったんですけど、熱が下がったのでその心配もなくて」

ミサト「……本当にありがと。あいつ、一人で抱えこんじゃう所があるから。内心ではシンジくんに感謝してると思うの」

シンジ「いえ、そんな」

ミサト「なんかおごるわよ」

シンジ「大丈夫です。今日は帰っておかゆ作ってあげないと」

ミサト「し、しんちゃ~ん!」ギュウ

シンジ「うわぁ⁉︎ ちょ、ちょっと! ミサトさん、離してくださいよ!」

ミサト「きっと大丈夫よ! リツコもそのうち優しくなるわ!」

- リツコ宅 夜 -

シンジ「……ただいま」

レイ「おかえり」

シンジ「リツコさんの様子はどう?」

レイ「リビングでドラマ見てる」


トタトタ


シンジ「リツコさん、ただいま」

リツコ「あら、おかえりなさい。シンジくん」

シンジ「風邪の具合はどうですか?」

リツコ「起きた時は体がダルかったけど、時間がたつにつれて良くなったわ。薬が効いたみたいね」

シンジ「そうですか」

リツコ「――シンジくん。レイから聞いたわ。ずっと看病してくれてありがとう」

シンジ「いえ、大丈夫ですよ」

リツコ「なんだか、気分もスッキリしてるのよ。シンジくんのおかげね」

レイ「…………」

リツコ「明日に、ゴミ……碇司令に報告があるから、それが終わったら学校に行けるようになるわ。もう少し我慢してちょうだいね」

シンジ「わかりました。すみません」

リツコ「いいのよ。それじゃご飯の支度でもする?」

シンジ「あの、リツコさん」

リツコ「なに?」

シンジ「僕が守りますから」

リツコ「あ、ありがと……」

レイ「……?」

- 翌日 ネルフ本部 ??? -

ゲンドウ「報告しろ」

リツコ「シンジくんの洗脳ですが、完了いたしました」

冬月「なにっ⁉︎ 予定よりずっとはやくないか⁉︎」

リツコ「止むを得ず、私の独断で決行いたしました。経緯は文書でまとめております」

ゲンドウ「うまくいったのか?」

リツコ「はい、徐々にではありますが、レイをアスカと捉え、置き換えていきます」

冬月「すぐにではないのかね?」

リツコ「あまり無理をしないようにとなると、急激な変化は脳への負担になります。まだ時間はありますし、結果が変わらなければ同じことかと」

ゲンドウ「完璧に刷り込ませるにはどれぐらいかかる」

リツコ「長い期間は擁しません。準備期間と同じく一週間もあれば完了いたしますわ」

ゲンドウ「それならばいい」

冬月「ふぅ……これでサードチルドレンとセカンドチルドレンの問題は解決したな」

リツコ「シンジくんは明日から学校に登校させます。接触における変化も見たいので」

ゲンドウ「わかった。さがっていい」

リツコ「(簡単ね。ゴミが)」

- ネルフ本部 ラボ -

ミサト「お邪魔するわよん」

マヤ「…………」ビクビク

リツコ「ミサト? マヤ?」

ミサト「風邪がなおって何よりだわ。けっこう大変だったみたいね」

リツコ「ほとんど意識がなかったわね。記憶もおぼろげよ」

マヤ「そんなに? 病院で検査を受けた方がいいんじゃないですか?」

リツコ「一応、私だって医師のはしくれでもあるのよ。今朝方、メディカルチェックは済ませてある。何も問題なかったわ」

マヤ「それじゃぁ、完全に治ったってことですね」

ミサト「ちょっとまってよぉ~。誰のおかげか忘れてない?」

マヤ「ソ、ソウダー。シンジくんのオカゲダー」

ミサト「若いツバメに看病してもらったご感想は?」ニマニマ

リツコ「……ふぅ。ミサトもあいかわらずね」

ミサト「人間そんな簡単に変わりゃしないわよ」

リツコ「シンジくんには感謝しているわ」

ミサト「おっ?」

マヤ「先輩?」

リツコ「明日から学校に行かせる。これでいい?」

ミサト「リツコぉ~~っ!」ギュウ

リツコ「私、懐かれるのは苦手。猫派なのよ」

- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

アスカ「ヒカリ、それひとつもらっていい?」

ヒカリ「うん、いいよ」

マナ「いいな、私も交換したい」


トウジ「……」もぐもぐ

ケンスケ「なぁ、トウジ。あいつらと一緒に食べないのか?」

トウジ「まぁな」あむっ

ケンスケ「やっぱり昨日なんかあったんじゃ?」

トウジ「なんもない言うとるやろ」

ケンスケ「そんなわけないけどなぁ~」

トウジ「お前もしつこいやっちゃのー。別にええやろ。あいつらと食べへんでも」

ケンスケ「はぁ……碇はまだ来ないのかなぁ……」

- 夜 ミサト宅 -

アスカ「それ本当⁉︎ シンジが明日から学校に来るの⁉︎」

ミサト「そうよ。リツコから許可がでたわ。よかったわね」

アスカ「はぁ~~~長かった」

ミサト「あんた達ぐらいの歳の1日って密度濃いものね」

アスカ「また、ばばくさいことを」

ミサト「ハタチを超えたら時間の流れなんかあっという間なんだからね! 気がつけばもう年末とかあるのよ!」

アスカ「はいはい」

ミサト「まぁ、言ってわかるもんじゃないか」

アスカ「私にだってわかることぐらいあるわよ」

ミサト「なに?」

アスカ「ミサトはね、スレてんのよ」

ミサト「こ、こらっ!」

アスカ「きゃあ! あははっ」

ミサト「……アスカもよく笑うようになったわね」

アスカ「そう?」

ミサト「シンジくんのおかげ?」

アスカ「そうよ。今の私は変わったところも、前の私もそれしかないわ」

ミサト「おーあついあつい」

アスカ「ミサトも次の恋愛見つけたら?」

ミサト「余計なお・せ・わ!」

- 夜 リツコ宅 -

リツコ「シンジくん? 起きてる?」

シンジ「はい、起きてますよ」

リツコ「なんだか、眠れなくて。話し相手になってもらっていいかしら」

シンジ「僕でよければ」

リツコ「少し、勝手に喋らさせてもらってもいい」

シンジ「はい」

リツコ「……ふぅ」

シンジ「…………」

リツコ「私はね、あなたのお父さんにレイプされたことがあるの。碇司令は、私の母とも関係を持っていたけれど」

シンジ「…………」

リツコ「母さんはね、女でありたかったんだと思う。いくつになっても。……私も同じね。研究者という傍で、男日照りな毎日を億劫に過ごしてきた」

シンジ「…………」

リツコ「研究に没頭することで、煩悩を忘れたふりをして、そうしている内に、またズルズルと碇司令と関係を持ってしまった」

シンジ「…………」

リツコ「人間としては失格なんだと思うわ。私も、あなたのお父さんも。笑っちゃうわよね。息子のあなたにこんな話をしてるんだもの」

シンジ「僕は平気ですよ」

リツコ「でも、不思議なの。碇司令を愛していたはずなのに今はゴミクズだと思える。シンジくんが、その、ずっと素敵に見えるの。異性として……」

シンジ「嬉しいです」

リツコ「シンジくんの歳からしたらおばさんでしょ?」

シンジ「いえ、そんなこと。ここ、さわってみてください」

リツコ「……? ……あら……私で?」サワサワ

シンジ「はい。ここは綾波の部屋と近いから、リツコさんの部屋行きませんか」

リツコ「えぇ……」

>>687
オーバーザレインボーってどんな予測変換やねん

ガギエル戦のときの戦艦の名前やないの?

- リツコ宅 リツコ部屋 -

リツコ「――これが、あなたのお父さんの計画の全てよ」

シンジ「人類補完計画は起こすつもりなんですね」

リツコ「えぇ。ゼーレも碇司令も変わらないみたい」

シンジ「リツコさんの担当は?」

リツコ「私は実務的なことを除いた裏方的なことを言えば、レイの管理ね」

シンジ「それだけですか?」

リツコ「シンジくん、さっきからあなた、驚かないのね」

シンジ「まぁ父さんのやることですから」

リツコ「レイは碇司令の奥様、つまり、あなたのお母さんであるユイさんに似せて作られた。まだ奥さんを忘れられないのね、碇司令」

シンジ「出自については?」

リツコ「母さんの実験からスタートしているから、私もわからないことが多いんだけど、魂はリリスのものよ。あの子の肉体と精神はただの器でしかない」

シンジ「…………」

リツコ「ネルフの最深部に磔にされている、第2使徒と融合することによって本来の形になるの」

シンジ「だから、父さんはレイに固執しているんですね」

リツコ「えぇ。奥様とリリスの、いうなればハイブリッドですもの」

シンジ「僕のこと、洗脳されてるって誤魔化してもらえます?」

リツコ「今日済ませてあるわよ。報告と同時にね」

シンジ「ありがとうございます」

リツコ「いいのよ。私にはもうシンジくんしかいないもの」

シンジ「リツコさん……」

リツコ「あっ……元気ね……碇司令とはやっぱり違う……」

>>708
>>709
そうすね
戦艦の名前がオーバーザレインボーです

- 翌日 リツコ宅 -

シンジ「(リツコさんは僕の味方になった。人の感情を暗示まがいとはいえ操作できるなんて、ますます人間じゃなくなってくな……)」

レイ「碇くん」

シンジ「(これで、やってることは結局、父さんと変わらなくなってしまった。僕は、目的の為にリツコさんを利用してるんだ。アスカや、みんなを騙して)」

レイ「…………」

シンジ「(せめて、誠意を尽くそう。父さんとの違いを感じたいからじゃない。僕がそうしたいからそうするんだ)」

レイ「碇くん?」

シンジ「――あ、うん? どうしたの? 綾波」

レイ「今日から、学校、行くんでしょ」

リツコ「えぇ、そうよ」

レイ「私と一緒に行く?」

リツコ「そうね。レイと一緒に行ってもらうわ」

シンジ「わかりました……」

- 第三新東京市立第壱中学校 -

アスカ「…………」ソワソワ

ヒカリ「アスカ、おはよう。今日ははやいね」

アスカ「えぇ、今日からシンジがまた来るからね」

ヒカリ「えっ? 碇くん来られるようになったの?」

アスカ「本当、ようやくよね。ネルフの実験に付き合わさせられてばかりだったから」

ヒカリ「(碇くん、来るんだ……)」

マナ「おはよう、アスカ、ヒカリ」

ヒカリ「マナ、おはよう」

マナ「今日ははやいね」

ヒカリ「同じこと言ってる」

マナ「え?」

ヒカリ「今日から、また碇くんが来るんだって」

マナ「あぁ~そうなんだ」

ガラガラッ

シンジ「なんだか、久しぶりな気がするな」

レイ「私、席に行くから」

シンジ「わかっ――」

アスカ「シンジっ!」ギュウ

マナ「……わぁ……」

ヒカリ「…………」

トウジ「シンジ、おはよーさん」

ケンスケ「待ってたぞ、碇」

シンジ「トウジ、ケンスケ。久しぶりだね」

トウジ「まぁ、そんなでもないけどな。なんだか久しぶり会う気がするのー」

ケンスケ「ほんとほんと。碇もいないとな」

アスカ「お邪魔虫はあっちいって、シッシッ」

ヒカリ「あの、アスカ、みんな見てるよ」

アスカ「別に気にしてないからいいの」ギュウ

ヒカリ「ひっつきすぎだよ……」

アスカ「ヒカリ?」

シンジ「とにかく、席につこうよ」

マナ「碇くん、おかえり」

シンジ「ありがとう、マナ」

- 第壱中学校 昼休み -

アスカ「結局あんた達、シンジの金魚のフンなのよねぇ」

トウジ「なんやと!」

ケンスケ「まぁまぁ」

アスカ「だって、シンジにかこつけてまた私達と机囲んでるじゃない」

トウジ「ふん!」

ヒカリ「あの、碇くん、これ食べる?」

シンジ「いいの?」

ヒカリ「うん、食べて」

アスカ「シンジ、あんまりヒカリのとっちゃかわいそうよ」

シンジ「そうだね。僕は、自分の食べるから洞木さんも食べなよ」

ヒカリ「あ……うん」シュン

マナ「…………」

シンジ「アスカ、少し話たいことがあるんだけど、いいかな?」

アスカ「もちろんいいわよ。今?」

シンジ「食べ終わってからでいいよ」

トウジ「おっ。もう夫婦でデートか」

ヒカリ「…………」

マナ「……ヒカリ?」

シンジ「マナも、例の件で放課後話たいんだけどいいかな?」

マナ「あっ! うん! なにか進展があった⁉︎」

シンジ「そういうわけじゃないんだけど、今後の計画とか話あいたいから」

マナ「わかった!」

- 第三新東京市立第壱中学 屋上 -

アスカ「シンジ、どうしたの?」

シンジ「……会いたかったよ、アスカ」ギュウ

アスカ「あっ……どうしたのよ」ギュウ

シンジ「(アスカ、ごめん。僕はリツコさんと……)」

アスカ「シンジ……私も会いたかった」

シンジ「アスカに話さなきゃならないことがあるんだ」

アスカ「な、なに? まだ結婚は」

シンジ「いや、そうじゃなくて、父さんことでわかったことがあるから」

アスカ「あっ。そ、そうよね。うん、大丈夫。全然、期待なんてしてなかった」

シンジ「……実は、父さんはリツコさんを使って僕のことを洗脳しようとしていたみたいなんだ」

アスカ「えぇ⁉︎ 洗脳⁉︎」

シンジ「アスカとミサトさんがリツコさんと綾波に置き換わるようにね」

アスカ「…………」

シンジ「部屋の間取りもほとんど同じなんだ。だから刷り込ませようとしてたんだと思う」

アスカ「……許せない」

シンジ「アスカにも協力してほしいことがある」

アスカ「なんでも言って!」

シンジ「僕が洗脳にかかってるふりをして、アスカに素っ気なくしても大丈夫?」

アスカ「あっ、そっか、誤魔化す為には、そうなるわよね……」

シンジ「うん。だから事前に話し合いをしたかったんだ。アスカのことは大切だから」

アスカ「シンジ……」

シンジ「アスカが嫌なら別の方法を考えるよ」

アスカ「ううん、それが一番いいと思う。わかった。ただ、サインを決めておきましょ」

シンジ「サイン?」

アスカ「人指し指と薬指でXの文字を作るの。私にだけ見えるようにしたらそれでかまわない。シンジが洗脳にかかってない証拠にもなるし、私もそれで我慢する」

シンジ「わかったよ」

アスカ「もう、洗脳にはかかってることになってるの?」

シンジ「そうだね、かかってることにはなってるけど完全にかかりきるまで一週間てことになってる」

アスカ「それなら、今日は大丈夫だったってことね」

シンジ「うん、でも気をつけるに越したことはないから」

書くこと自体は問題ないすよ
次回あれば初回はやりとりを書きます
なぜいれなかったのか理由は、全体的にワンパターンになりつつあるのであえていれず省略しました

では続けます

- 第三新東京市立第壱中学校 音楽室 放課後 -

マナ「あっ! シンジくん! お待たせ!」

シンジ「待ってたよ、マナ」

マナ「……え?」

シンジ「どうしたの?」

マナ「シンジくん、カラーコンタクトでもいれたの?」

シンジ「え?」

マナ「片目、真っ赤だよ。宝石のルビーみたいですっごくキレイ!」

シンジ「……っ!」バッ

マナ「あ、あれ? どうしたの? なんで隠すの?」

シンジ「夕日のせいじゃないかな?」スッ

マナ「……え……本当だ、元に戻った……でも、さっきはたしかに……」

シンジ「気のせいだよ。それより、学校生活はどう?」

マナ「……そうかな。学校? アスカたちともうまくできてるよ!」

シンジ「仲良くなれたみたいでよかった」

マナ「うん、アスカもね、話したらすごく面白いの。ヒカリは良い子だし」

シンジ「そっか」

マナ「ムサシとケイタの話だったよね?」

シンジ「うん。2人のことは何も心配いらないよ。僕が助けてみせる」

マナ「……シンジくん。ありがとう。私、なにもできないのに」ペコ

シンジ「いいんだ。それより、その後の生活のこと聞いてる?」

マナ「あ……まだなにも……」

シンジ「逃走用のルートは確保されてる。逃げる分には心配いらないよ。ただ――」

マナ「――ここにはもう、いられないんだね」

シンジ「そうなるかもしれない」

マナ「うぅん。はっきり言ってくれていい。シンジくん、優しいから言いずらいよね」

シンジ「…………」

マナ「私ね、助けられても、追求はきっと厳しいものになるってわかってた」

シンジ「たぶん、3人は死んだことになると思う」

マナ「それって、戸籍とかもなくなっちゃうの?」

シンジ「本人としてはね。別人の戸籍が用意されて、別人として生きていく」

マナ「…………」

シンジ「顔がわれてるから、他にどうしようもないんだ。あとは、整形でもするしか……」

マナ「いいの。覚悟はしてたことだから」

シンジ「ごめん」

マナ「謝らないで。助けてくれるだけでも充分だよ……」

シンジ「…………」

マナ「私ね、ずっと自由に憧れてた」

シンジ「自由?」

マナ「うん、籠の中で生活してる鳥みたいに、いつか大空に羽ばたいてみたいって」

シンジ「それは、叶うよ」

マナ「うん! 別人になっても私は私だものっ!」

- 帰宅中 -

マナ「シンジくんと2人で帰るのってはじめてだね!」

シンジ「……そうだね」

マナ「ん~元気ないな、私のこと気にしてくれてるの?」

シンジ「僕が、なにかもっとできることがあるんじやないかって」

マナ「アスカ達と別れるのはさみしいけど……卒業したら、もしかしたら疎遠になることもあるかもしれないよ? だから、先に私が旅立つの。そう考えない?」

シンジ「うん」

マナ「シンジくん、何も怒らないんだね」

シンジ「ん?」

マナ「私がなにを目的に近づこうとしたかも、全部聞いてるんでしょう?」

シンジ「あぁ」

マナ「私は情報、その代わりに助けてもらえる。お互いに有益かもしれないけど、シンジくんにとってなにが得になるの?」

シンジ「損得じゃないよ」

マナ「えっ」

シンジ「助けたいから助ける。僕はそれだけ」

マナ「え? でも、なにか得があるから取り引きっ……シンジくん、もしかして情報いらなかったの?」

シンジ「必要としてる人はいるだろうけど、僕自身は全然」

マナ「えぇっ⁉︎ そんな、だって、それじゃ、話が」

シンジ「いいんじゃないかな。必要としてる人がいれば」

マナ「あっ……」

シンジ「…………」テクテク

マナ「ごめんなさい。もっとはやくにシンジくんに聞くべきだった。勝手なことばかり言って……」

シンジ「いいよ。マナにとっては2人の安全が大切だと思うから」

マナ「うん……」

シンジ「もうすぐ、会えると思うよ」

マナ「うん、ありがとう――。あ、そうだ、あのね、話飛んじゃってもいい?」

シンジ「ん?」

マナ「私、さっきの赤い瞳のことがどうしても頭から離れなくて、あれって綾波さんと似た色だったなって」

シンジ「マナ」

マナ「あ、ん?」

シンジ「こっち見て」ガシッ

マナ「え? し、シンジくん? ……あっ……」

シンジ「赤い目のことは忘れるんだ」

マナ「……はい……」

- リツコ宅 近くの公園 -

マリ「よ~、ワンコくん」

シンジ「マリさん」

マリ「なんだか、悪いことしちゃってるねぇ~」

シンジ「…………」

マリ「その目、使いすぎると、どんどん人に戻れなくなるよ」

シンジ「いいんだ、僕はどうなっ――」


ガンッ!!


シンジ「いつっ!」

マリ「勝手なこと言うなっ! 人の気持ちを操作するなんて最低なことしてるってわかってんだろうな!」

シンジ「僕が手を汚さないと」

マリ「はぁ。ワンコくんにはガッカリだよ。そんなもんなんだね」

シンジ「…………」

マリ「いい? 人には適材適所ってある。手を汚すなら私たちが汚してあげる。ワンコくんはそのままでいな」

シンジ「……なんでだよ……」

マリ「その目使い続けたらワンコくんの感情がなくなるって! 融合が進むと人の感情がなくなるんだよ!」ガシッ

シンジ「そうしなきゃ助けられないんだ! 仕方ないだろう⁉︎」グイッ

マリ「……ゲンドウくんと同じじゃん。ほんと、ガッカリ……」

シンジ「……っ!」

マリ「あんな大層な口きいて、加地くんにちょっとなんか言われたらそうなるんだにゃ~」

シンジ「ぼ、僕だって!」

マリ「せめて姫だけは助けろ!」グイッ

シンジ「……っ! なんでアスカだけなんだよ!」

マリ「自分を守れないやつに、他人なんか守れるはずないじゃん? あはっ。もしかしてまだ大勢を守れるなんて思ってる?」

シンジ「…………」

マリ「私たちは勝手にやるから、ワンコくんもご勝手に~」ヒラヒラ

- 第三新東京市 某所 -

マリ「……はぁ」


コツコツ


加地「余計なことしちまったかな」

マリ「いいんじゃん? あんな程度で揺らぐならどっちみち無理な話なんだし」

加地「えらくご機嫌ななめじゃないか」

マリ「べっつにぃ~かったるいだけ」

加地「人の気持ちを操作する、か。使徒でさえありえないことだな」

マリ「汚いだけだよ。あんなの」

加地「しかし、効果だけを見れば絶大だ。頼りたくなる気持ちもわかる」

マリ「帰っていい~?」

加地「まぁ、待てよ。シンジくんがこのままズルズルと力を使い続ければどれくらいで人じゃなくなる」

マリ「……もって一ヶ月、ってところかにゃ」

加地「見てみたい気もするね。完璧な融合、歴史の創設者誕生の瞬間を」

マリ「次のステージも救済もないよ。そうなれば、一旦、無に帰すだけ」

加地「どっちみち見られないってわけか」

マリ「さてと、帰ろっと」

- リツコ宅 シンジ部屋 -

ハレルヤ、全能者であり、わたしたちの神である主が王となられた。
黙示録19:6

シンジ「………くそっ!」ガンッ

この世の国は、我らの主と、そのメサイアのものとなった。主は世々限りなく統治される。
黙示録11:15

シンジ「くそっ!くそっ!」ガンッガンッ

王の中の王、主の中の主。
黙示録19:16

シンジ「……はぁっはあっ……」

シンジ「なにやってるんだ、僕は!」ガンッ

- 洞木宅 ヒカリ部屋 -

アスカ「なにこれ? 新刊?」

ヒカリ「うん。あんまり人気はないみたいなんだけど絵だけで買っちゃったんだ」

アスカ「ふーん」ペラペラ

ヒカリ「それ、読んでみたら面白いんだよ。優しい青年が女の子を救う話なんだけど」

アスカ「王道ってやつね」

ヒカリ「まだはやいわよ。それでね、なんていうか、普段は頼りないけど、ここぞって時はちゃんと決めるっていうか」

アスカ「だから、王道でしょ」

ヒカリ「んもう! たまには私の話最後まで聞いてよ!」

アスカ「あははっ、ごめんごめん」

ヒカリ「もー」

アスカ「でも、なんとなくこれシンジに似てる気がする」

ヒカリ「えっ? そ、そうかな」

アスカ「まぁ所詮漫画だけどね。他にはっと」

ヒカリ「あ、これもおすすめ」

アスカ「どれどれ」ペラペラ

ヒカリ「それも最近ハマってるんだ、えへへ」

アスカ「……ヒカリ、これ、さっきのやつと何が違うの?」

ヒカリ「ぜ、全然違うじゃない!」

アスカ「そお? どんな所が?」

ヒカリ「顔立ちとか、あと、こっちはみんなを守ろうとするし」

アスカ「付け加えただけじゃない。それに絵のテイストは一緒よ」

ヒカリ「だ、だって、そういう絵が好きなんだもん」

アスカ「前ってもっと元気系が好きだったじゃない。さっきのもこれもかわいい系だし」

ヒカリ「あ、そ、それは……」

アスカ「……?」

ヒカリ「漫画だし! 元気系はもう飽きちゃっただけ!」

アスカ「ま、そういうもんかしらね」

- マナ宅 -

マナ「……もうすぐ、助けられるからね」


ピンポーン


マナ「あ、はーい」


ガチャ


加地「こんばんは」

マナ「えっと……?」

加地「失礼、ネルフ関係者の者です。伝言をお伝えしにきました」

マナ「あ、ネルフの……」

加地「こちらが身分証明書になります」ピラ

マナ「……はい。たしかに、間違いないですね」

加地「玄関先だと話づらい内容なので、上がってもよろしいでしょうか?」

マナ「わかりました、どうぞ」

- マナ宅 リビング -

マナ「粗茶ですが……」コト

加地「おかまいなく。なんの連絡もなく、突然お伺いして申し訳ない。それに不躾にお邪魔までしてしまい……」

マナ「いえ、それで特別監査員の方が私にどんなご用件ですか?」

加地「戦略自衛隊に配属されている少年兵の件です」

マナ「ムサシとケイタに何が⁉︎」

加地「いえ、そういうわけではなく、ロボットについて動きがありまして」

マナ「…………」ホッ

加地「ロボットは試験段階のテストを終え、いよいよ実用化に向けての最終フェイズにはいりました」

マナ「……っ! そんな⁉︎ 早すぎます!」

加地「我々としても困惑しております。お話だと、実用化の目処は6年後だったはずでは?」

マナ「それは間違いありません。技術的にも先を見越して採用された案が数多くあり、パイロットも合わせて選定されました」

加地「つまり、あなたの言葉を信用すれば、未完成品のまま実戦運用されるかもしれないということになりますが」

マナ「……そうなりますね」

加地「しかし、これはあくまで信用すればの話です。ネルフがあなたを保護している理由はご存知ですよね?」

マナ「どういうことですか……」

加地「オフレコの話になりますが、あなたをもう保護できないという意見もでています」

マナ「そんな⁉︎」

加地「情報が間違っていたという事実は、すなわち、あなたの価値の低下を意味する」

マナ「…………」

加地「情報屋というのは信頼が全てです。正確性とね」

マナ「新しい情報があればどうですか?」

加地「まだなにか聞いてないことでも?」

マナ「いえ、私が情報を探ります」

加地「…………」

マナ「それなら、価値はでますか?」

加地「なんでもいいという話ではないんですよ」

マナ「……なにが、必要なんですか」

加地「人事部からはこういう意見もでています。あなたを戦自との交渉に使うと」

マナ「身柄を引き渡すつもりですか⁉︎」

加地「どうでしょうか、この機会に一度戻ってみられては」

マナ「そ……そんな……」

加地「我々が調べた結果、戦自のロボットは対エヴァンゲリオン用に開発された兵器だと判明しました。表向きは対使徒になっていますがね」

マナ「私はエヴァに対抗して開発されたと聞きました」

加地「わかったでしょう。例え新しいネタを仕入れたとしてあなたの情報に信頼性がないんですよ。精査しなければならない。そうなれば、弱者の使い道はひとつ、駒としての役割です」

マナ「……っ!」ギュウ

加地「我々としても残念です」

マナ「……お願いします。助けてください、戻ったら、私はきっと……」

加地「内部告発者の待遇がとうなるかはこちらの関与するところではありません」

マナ「…………」

加地「あなたを助けられるとしたらサードチルドレンでしょうか」

マナ「……え?……シンジくんが……」

加地「彼は碇司令のご子息ですからね。ま、私には関係のないことですが。それでは、失礼します」

あらら>>723からの人物名は誤字です
加地→×
加持→○

- リツコ宅 リビング -

シンジ「…………」

リツコ「シンジくん? どうかしたの?」

シンジ「あ、いえ。リツコさん、最近ははやいですね」

リツコ「あら、帰ってこない方がよかった?」

シンジ「そういうわけじゃないですよ。大人数で食べた方がおいしいですから」

リツコ「ふふっ。気をつかわなくていいのに」

シンジ「嬉しいのが本音ですから、気をつかってるわけじゃありませんよ」

レイ「………」もぐもぐ

リツコ「素直に受け取っておくわね。……レイ」

レイ「はい」

リツコ「明日は予定通り、地下で定期検査を行うわ。碇司令立ち会いのもとでね」

レイ「はい、あの、赤木博士」

リツコ「なに?」

レイ「地下の件、碇くんの前でお話してもいいんですか?」

リツコ「ええ。そのかわりこの事は他言無用よ。例え碇司令相手でもね。できる?」

レイ「……はい」

リツコ「結構。信じましょう」

シンジ「ダミーシステムは綾波をベースに?」

リツコ「そうよ。レイの性格思考プログラムを取り入れてある。エヴァの遠隔操作が目的ね。実用化されれば無人機と同様にパイロットは必要なくなる」

レイ「…………」

シンジ「最終的な目標はやはりはそこですか」

リツコ「パイロットのコアを書き換えるのは大変ですもの。シンクロ率管理ひとつとっても効率的とは言えない。その点、ダミーが掲げるシステムはメリットが大きい」

シンジ「エヴァは何体開発が進められてます?」

リツコ「私が知る範囲だと6体ね。ネルフに配属されてる3体を含めずに」

シンジ「…………」

レイ「あの、赤木博士」

リツコ「どうしたの?」

レイ「いいんですか?」

リツコ「ええ。全て他言無用よ? いい?」

レイ「……はい」

- リツコ宅 レイ部屋 -

シンジ『綾波、ちょっといい?』

レイ「……どうぞ」


ガラガラ


シンジ「お邪魔しま……やっぱり、簡素な部屋なんだね」

レイ「必要ないもの。それで、なに?」

シンジ「あぁ、うん。リツコさんから聞いたんだけど、近く移植手術が行われるんだって?」

レイ「……ええ」

シンジ「そっか。嫌じゃないの? 手術」

レイ「命令には逆らえない。するしかない」

シンジ「うーん、そういうことじゃなくて、綾波がどう感じてるか」

レイ「私が?」

シンジ「うん、なにを移植されるか聞いてる?」

レイ「…………」ふるふる

シンジ「そっか。それじゃ嫌かどうかもわからないね」

レイ「与えられた命令に疑問をもつな。そう教わったわ」

シンジ「僕は教えてるんじゃないんだ。綾波がとう感じるか、それを理解して共有したい」

レイ「共有?」

シンジ「そう、なにを考え、どう感じるか。それを知りたかっただけだよ」

レイ「……私の、考え」

シンジ「僕はなにも命令しない。だから考えを言ってもいいんだよ」

レイ「わからない、嫌なのかも、しれない」

シンジ「そっか、綾波、手をかして」

レイ「……?」スッ

シンジ「…………」ギュウ

レイ「……なに、碇くんの手のひら、熱い」

シンジ「……っ!」グッ

レイ「碇くん、熱でもある?」

シンジ「……ふぅ……熱はない、もういいよ」スッ

レイ「……? 碇くん、汗、かいてる」

シンジ「ちょっとした、おまじないをかけておいたんだ。手術をするのは避けられないかもしれないけど、受けても大丈夫だよ」

レイ「どういう?」

シンジ「気にしなくていいよ」

- 翌日 ネルフ本部 ??? -

ゲンドウ「レイ、調子はどうだ」

レイ「問題ありません」

リツコ「…………」カキカキ

ゲンドウ「赤木博士、アダムの移植手術の件はどうなっている」

リツコ「いつでも開始できますわ。本日、行われますか?」

ゲンドウ「レイの肉体はどれくらいもつ」

リツコ「レイにはすでにリリスの魂がはいっています。そこに胎児とはいえ、アダム本体が移植されるとなると器たる肉体のキャパシティを超えます」

ゲンドウ「具体的にいつまでもつか聞いている」

リツコ「一か月ほどで新しい器が必要になります」

ゲンドウ「老人たちはまだ、我々にアダムとリリスがあると気がついていない。今後気がつかれないためにも、然るべき時までレイの肉体に隠すのは必要なことだ」

リツコ「はい」

ゲンドウ「移植手術を本日執り行え。新しい器については赤木博士に一任する」

リツコ「承知いたしました。手術自体は簡単なものです。日帰りできますわ。ただ、性格について一点。移植することにより、アダムの影響を受けることが考えられます。狂暴性を持つかもしれません」

ゲンドウ「かまわん」

レイ「…………」

ゲンドウ「レイ、上がっていい」

レイ「……はい」

- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み 屋上 -

マナ「ごめんね、急に呼び出して」

アスカ「かまわないわよ」

シンジ「なにかあった?」

マナ「実は、昨日、ネルフの人が家にきて、もう、保護できないって言われたの」

シンジ「なんだって?」

アスカ「情報を渡してるからその見返りに保護してもらえるんじゃなかったの?」

マナ「情報が間違ってたみたい。だから、もう価値はないって言われちゃった……」

アスカ「えぇ……どうするの?」

マナ「この前の、名前聞いてないんだけど、メガネかけてた人となんとか連絡とれないかな?」

アスカ「……私も連絡先知らないのよ」

マナ「そんな……。あの人からネルフに話してって言われたのに……」

アスカ「まぁ、擁護するわけじゃないけど、話したお陰で今まで保護は受けられてたわけでしょ」

マナ「うん……だけど」

シンジ「…………」

マナ「シンジくんのお父さんに頼んだらなんとかならないかな?」

シンジ「え?」

アスカ「ちょっと、マナ」

マナ「お願い。内部告発者が出戻りなんかしたら、生きていけない……」

アスカ「……っ! いい加減にしなさいよ! つらいのがあんただけだと思ってるの⁉︎ シンジの父親はね!」

シンジ「いいんだ。マナ、辛いね。僕の父さんに話してなんとかなるなら、そうしてあげたいけど、僕の頼みは聞いてくれそうもないんだ」

マナ「そ、そうかな? シンジくんがお願いすれば、きっと……親子だもの」

シンジ「うちは、ちょっと違うから」

マナ「私のこと、シンジくん、見捨てるの?」

アスカ「こいつっ……!」

シンジ「アスカ、おさえて。見捨てるつもりはない、なんとか助けたいと思ってるよ」

マナ「だったら、なんとかして! 私、不安なのっ!」

シンジ「…………」

マナ「お願い! できるなら……」

バチンッ!!

アスカ「……あんた、私が思ってたやつと違う」

マナ「なによっ! なんでぶつの⁉︎」キッ

アスカ「わからないの?」

マナ「シンジくんに頼んでなにが悪いのよ!」

アスカ「人って、追い詰められると本性見えるって言うけど、ほんとね」

マナ「アスカ、嫉妬してるの? 私は頼みごとをしてるだけだよ」

アスカ「軽蔑してるだけよ。あんたを」

マナ「嘘。嫉妬してるんだわ。シンジくんが私の頼みごとをきくのが嫌なんでしょ。アスカ、最初の頃、私にシンジくんに近づかないでって言ったし」

アスカ「その件については謝ったわ。あんたも許してくれた。今さら蒸し返すつもり?」

マナ「蒸し返すつもりなんかない! 嫉妬してるって言ってるだけよ!」

アスカ「…………」

マナ「シンジくんが他の子の目にとまるのがこわいの?」

アスカ「ふぅ……。バカね。あんたがシンジを友達としてではなく、利用しようとしてるのに私は怒ってるのよ」

マナ「命がかかってるのよ⁉︎」

アスカ「私たちパイロットは、いつも命をかけてるわ」

マナ「……っ!」

アスカ「シンジを好きな女としても、シンジの友達からでもどっちでもいい。シンジを大切に思ってる身としては、あんたは許せない」

マナ「私のことだって大切にしてくれていいじゃない!」

アスカ「どうして大切にしていないことになるのよ」

マナ「助けてよ!」

シンジ「アスカ、マナ、もういいよ」

アスカ「……わかった」

マナ「シンジくん、お願い、助けて」スッ

アスカ「シンジにさわるな!」バシッ

マナ「……っ!」キッ

シンジ「マナのことは、僕が助ける」

マナ「ほ、本当⁉︎」

アスカ「でも、どうやって? 個人が組織を相手取るには難しいわよ」

シンジ「父さんは無理だけど、頼める人がいないわけじゃないから」

マナ「……ありがとう、シンジくん」

アスカ「シンジがやりたいようにやって。協力して欲しい時は声かけてね」

シンジ「ありがとう、アスカ。とりあえず、マナはこれまで通り生活して。なにか進展があれば、すぐに連絡するよ」

マナ「わかった。あの、本当にありがとう」ペコ

アスカ「お礼なんて言うだけタダですもんねぇ」

マナ「……アスカ、喧嘩売ってるでしょ」

アスカ「どうとでも。最初の頃と違ってずいぶん強気じゃない、戦自隠すために猫かぶってたの?」

マナ「別に。ただやられたらやり返すよ」

アスカ「上等よ。こちとら負けるつもりなんかさらさらないわよ」

シンジ「2人とも、そこまでにしておきなよ」

アスカ「シンジ、先に戻ってて。私はこいつと少し話がある」

マナ「誰がこいつよ」

シンジ「…………」ポリポリ

アスカ「心配しないで、友達だってたまにぶつかりあうの」

マナ「…………」

シンジ「……わかった、僕は先に戻ってる」

アスカ「……さて、2人しかいないわよ」

マナ「だからなに?」

アスカ「猫被る必要ないってこと。それともまだ被る?」

マナ「最初から被ってなんかないわ。嫌味な言い方をされたら誰だってムッとする」

アスカ「私はあんたの言い方にムッとしてんのよ」

マナ「シンジくんはあなただけの物じゃないでしょ⁉︎」

アスカ「利用するつもりしか最初からないくせに」

マナ「そんなことない!」

アスカ「だったらあんたはシンジになにをしてあげるの?」

マナ「できることは、わからないけど、困ってたら助けようって思うよ! それでいいじゃない!」

アスカ「……ふぅ。だめね。やっぱりもう一発ぶたせて」ブンッ

マナ「黙ってさせるわけないよ」パシッ

アスカ「…………」

マナ「クスッ。シンジくんを誘惑しちゃおっかな」

アスカ「なんですって?」

マナ「私、できることないから身体で慰めようかと思う。それもお礼になるし」

アスカ「…………」

マナ「どうせこのまま戻ってもレイプされるかもしれないんだもん。それなら知ってる相手の方がいいな。シンジくんなら優しくしてくれそうだし」

アスカ「あんたの、その全部打算なところが……っ!」

マナ「やっぱり嫉妬なんでしょ?」

アスカ「……もういい」

マナ「逃げるの?」

アスカ「これ以上喋ったらあんたの腐った性根がうつりそうで嫌なだけ」

マナ「なんでそうなるの!」

アスカ「あんた、女すぎるのよ。男がなにを求めてるかわかってる。だから演じことができる。その点は私達似た者同士ね」

マナ「…………」

アスカ「でも、私はあんたみたいに計算で身体を許したりしない。プライドも高い。あんたと同じ状況になってもなりふりかまわず頼ったりしないわ」

マナ「私が弱いって言いたいのね」

アスカ「とてもしたたかだわ。計算できる程度には頭がいいし、ルックスもかわいい」

マナ「…………」

アスカ「誘惑したいならすれば? でも、シンジが乗るとは限らないわよ」

マナ「ふふっ。強がり。本当は不安でいっぱいなくせに。シンジくんのこと信じてる自分が好きなんでしょ」

アスカ「…………」

マナ「私のこと分析していい気にならないでよ! 私だってアスカのこと見てきたんだから!」

アスカ「鏡を見てるみたいで嫌な気分だわ」

マナ「奇遇ね。私も、アスカのことムカつく!」

アスカ「やる気?」

マナ「やったらやり返すってさっき言ったよ」

アスカ「ふん、勝手にすれば」

マナ「勝手にするわよ。シンジくんのこと誘惑してやる」

アスカ「あっそ。シンジのこと傷つけたら許さないわよ」

マナ「喜ぶんじゃないかな? ねえ、アスカ。シンジくんになんで誘惑するか聞かないの?」

アスカ「アホらし。私、先に戻るわよ」

マナ「余裕ぶらないでよ! クラスの男子達に輪姦させるぐらいまた言えば⁉︎」

アスカ「ファーストが私にかわいそうって言った意味が少しわかる。かわいそうね、あんたって」

マナ「……っ!」

- 第壱中学校 教室 -

ヒカリ「アスカ、マナ、黙っちゃってどうしたの?」

アスカ「なんでもないわよ」

マナ「うん! ちょっと考えごとしてただけ」

ヒカリ「そう? 様子おかしいから喧嘩でもしたのかと」

トウジ「こいつと喧嘩したら、マナはか弱いからすぐやられるやろ」

マナ「そんなことないよぉー」

アスカ「…………」

トウジ「いいや! 誰が見ても明らかや! なぁ、ケンスケ」

ケンスケ「まぁそうだろうなー」

マナ「そ、そうかな」

ケンスケ「マナのブロマイドの売り上げは今やアスカをおさえてナンバー2だぞ!」

マナ「えぇ⁉︎ 私の写真なんか売ってるの?」

ケンスケ「小遣い稼ぎにさ。いいだろ? ちょっとぐらい」

マナ「いいけど、今度なにかおごってよね」

ケンスケ「へいへい」

ヒカリ「んもう、鈴原達は本当にバカなんだから」

トウジ「売れるもの売ってなにが悪い!」

マナ「……あはは。でもアスカに勝つなんて思わなかったな」チラッ

アスカ「…………」

トウジ「あ? そらー、ルックスはどっこいやけど、中身がな。マナは男子ウケめっちゃいいし」

マナ「ルックス? そうかな?」

トウジ「ま、まぁ、その、ワシも悪くないと……」もごもご

マナ「嬉しいな! 鈴原くんにそう言ってもらえると!」

トウジ「お、おう」

マナ「シンジくんも、その、私、悪くないと思う?」

シンジ「誰が見てもかわいいと思うよ」

マナ「わぁっ! 嬉しいなー!」ギュウ

ヒカリ「ちょ! ちょっとマナ!」ガタッ

マナ「どうしたの?」

ヒカリ「碇くんには、アスカが。それにひっつきすぎだよ」

アスカ「ヒカリ、いいのよ」

ヒカリ「え? アスカ?」

アスカ「そいつはね、やり返してるつもりなだけ。相手にする必要なんかないわ」

ヒカリ「……やっぱり喧嘩してるんじゃない。でも、碇くんにくっついてていの?」

アスカ「別にぃ」

ヒカリ「私、アスカだから我慢してるのに」ボソ

アスカ「ん?」

ヒカリ「はぁ……。なんでもない」

マナ「ねぇねぇ、シンジくん。これ食べて。あ、食べさせてあげよっか?」

シンジ「いや、悪いからいいよ」

ヒカリ「…………」

マナ「えー、遠慮しなくていいよ。あ、ハシ、私の使う?」

ヒカリ「……ちょっと! マナ!」バンッ

マナ「ひ、ヒカリ?」

ヒカリ「あんまりすぎると迷惑になるよ!」

マナ「……ごめん」シュン

シンジ「(こんなことしてる場合じゃないと思うんだけどなぁ)」

- 女子トイレ -

ヒカリ「アスカ、なにがあったの?」

アスカ「ちょっと言い合いしただけ。そのやり返しにシンジにベタついてる感じ」

ヒカリ「碇くん巻き込まれてるだけじゃない」

アスカ「……そうね。でも、それが女のやり方なのよ」

ヒカリ「2人だけで、話つかなかったの?」

アスカ「もう少し時間がたてば、折り合いがつけられると思うわよ」

ヒカリ「…………」

アスカ「それに、ちょっと事情があって、これからシンジにあんまり話しかけられなくなるし」

ヒカリ「え? ど、どういうこと?」

アスカ「ヒカリにも言えないんだ、ごめん」

ヒカリ「なんだか、私、仲間はずれにされてる気がする……」

アスカ「あ、え? そ、そんなつもりは全然ないわよ!」

- 第壱中学校 授業中 音楽室 -

先生「今日は弦楽器の音についてがテーマです。そこの君。弦楽器というとなにを思い浮かべる」

男子生徒「ギターです」

先生「じゃあそっちの君は」

女子生徒「私はバイオリンです」

先生「2人とも正解だ。他にもピアノなども弦楽器の一種になる。これらの楽器特有の音は、弦の張り方や出し方、箱になるものの空洞によって決まる。この中で弦楽器を弾ける者はいるかな?」


シーーーン


先生「吹奏楽部員は? いないかね?」

シンジ「あの、少しなら」スッ



ザワザワ


トウジ「おっ?」

ケンスケ「え? 弾けるのか?」

ヒカリ「アスカ、碇くん。なにかできるの?」

アスカ「わ、私も知らない。はじめて聞いた」



シンジ「チェロです」

先生「ふむ。たしか、裏にあったな。チューニングはできるかね? メトロノームぐらいしかないが」

シンジ「できますよ」

先生「それでは碇くん、前に来なさい。あとそこの君、裏の準備室にチェロがあるから持ってきたまえ。弓も忘れるなよ」

男子生徒「え? 弓ってなんですか?」

先生「バカモン。そんなことも知らんのか。弾くための細長い棒状のものだ」


アハハハ


男子生徒「だったら最初からそう言ってくれりゃいいじゃないすか」ブツブツ

先生「松脂はここにある。これを使いたまえ」

シンジ「ありがとうございます」



トウジ「ほんまに弾けるんかいな?」

ケンスケ「さぁ? 先生も前にでて弾かせるとか鬼畜だよなぁ。これで下手だったら笑い者だぞ」



先生「練習曲はなにをしていた?」

シンジ「エチュードです。それからベートヴェンのソナタやバッハの無伴奏にはいりました」

先生「ふむ。そこそこできそうだな、楽譜読みで弾いてみたまえ」

シンジ「はい」


カチャ カチャ


シーーーン


ヒカリ「ど、どんな感じになるのかな」

アスカ「シッ。ヒカリ、黙って」



シンジ「…………」スッ


「無伴奏チェロ組曲」第1番ト長調、BWV.1007. 第1楽章プレリュード
(Suiten fur Violoncello solo Nr.1 G-dur, BWV.1007 1.Vorspier)

―――
――



パチパチパチパチッ


トウジ「やるやんけ! めっちゃうまいな!」

ケンスケ「へぇ」

マナ「わぁ……凄かったね」

ヒカリ「ほんと、凄いね、碇くん、こんなこともできたんだ」

アスカ「うん……まぁまぁね」

ヒカリ「惚れ直した?」

アスカ「ちがっ! べ、別に私は!」

ヒカリ「今さら照れなくてもいいのに」

アスカ「はぁ……はいはい」


先生「はいはい、静かに。碇くん、深みがあり、いい音色でした。席に戻ってよろしい」

シンジ「はい」

先生「いいですか、チェロというものは――」

- 放課後 教室 -

女子生徒A「あの、碇くん、音楽の授業の時、かっこよかった」

女子生徒B「うんうん! それでさ、よかったらなんだけど――」

ケンスケ「ちょぉっとまった! マネージャーを通してもらおうか!」

女子生徒B「相田? なんでシャシャリでてくんの?」

ケンスケ「そりゃ親友だからさ!」

トウジ「せや! ワシたちを通してもらわんとのぉ」

女子生徒A「きもーい」

シンジ「僕は先に帰るよ」

女子生徒B「あ、あのっ、碇くんっ」

ヒカリ「ちょっと、迷惑になるよ」

女子生徒A「委員長? いーじゃん別に。減るもんじゃないしさぁ」


アスカ「なにやってんの……?」


女子生徒A&B「げっ」

アスカ「あんた達、ヒカリいじめてんじゃないでしょうね」

女子生徒A「そ、そんなことしてないよ」

女子生徒B「い、碇くん。またねー」ソソクサー

トウジ「アスカの評判にビビっとるなあいつら」

アスカ「私の評判?」

トウジ「この前お前、綾波押し倒して殴ったり男3人がかりじゃないと止められんかったりしたやろ」

ケンスケ「あれ、学年中にひろがっててさぁ」

アスカ「あぁ、そんなこと」

トウジ「それにしても女っちゅうのはほんま現金やのー」

ケンスケ「まぁ、今回は仕方ないんじゃないか。チェロ弾けるなんてなかなかいないだろうしさぁ」

- 放課後 下駄箱 -

女子生徒C「あの、碇くん」

女子生徒D「あのさ、よかったらなんだけど、これから暇?」

シンジ「ええと」



トウジ「――あれ? あそこに見えるのは……なんや? シンジまた捕まっとるで」

マナ「うわぁ……なんか一気に爆発してきたね」

ヒカリ「……かっこよかったもん。弾いてる姿が不自然じゃなかったし王子様みたいだった」

アスカ「…………」

マナ「アスカ、不安でしょ?」

アスカ「あんたがそう感じてほしいんでしょ」

マナ「ふぅん。あの女子生徒Dって男子がすぐヤレるって話てたの聞いたことあるよ」

ヒカリ「やだ……そんな話してるの? 私たちまだ中学生なのに」

マナ「最近は中学生でもあるんだよー。なんかね、キス魔らしいよ、あの子」

アスカ「へー」

マナ「シンジくん、意外とそういうとこ隙だらけ――」


ガンッ!


アスカ「あんたね、私への当てつけにしても、シンジに助けてもらえるって忘れてない?」

マナ「…………」

アスカ「シンジに感謝してるんだったら、やることあるでしょ」

マナ「……そうだね、ごめん」

トウジ「おー、こわ。マナ、気にすることないで」

マナ「今のは、シンジくんに対して私が悪いの」

トウジ「シンジに?」

マナ「うん、ちょっとごめん」タタタッ

マナ「シンジくん、ごめんね。待った?」

シンジ「……マナ?」

女子生徒C「霧島?」

女子生徒D「えー、霧島と約束してたの?」

マナ「そうなんだ、ごめん。ちょっと相談事があって」

シンジ「……あぁ。そゆことか。いや、僕の方こそごめん」

女子生徒D「それじゃ、次は遊びいこうねぇ~」

女子生徒C「またねぇ碇くん」

シンジ「うん、またね」

マナ「…………」

シンジ「マナ、ありが――」

マナ「シンジくん! 無防備すぎ!」

シンジ「えぇ?」

マナ「あのねぇ、世の中には男子だけが悪い人いるわけじゃないんだからね。女子にもいっぱいいるよ」

シンジ「はぁ……」

マナ「さっきの子、良くない噂いっぱいあるから、気をつけて」

シンジ「うん、まぁ、気をつけるよ。でも、マナは大丈夫なの?」

マナ「私は八方美人だから。うまく付き合ってるし、なんとか誤魔化すよ」

ご報告

シンジくんスゲーの一辺倒になりすぎてしまい人間模様がワンパターンになっていると感じています
なので、少し時間を置きたいと思います
別なものをスレ立てして書いてみたいのでトリップつけることにしました

報告その2

新しく立てたスレで書いてたら気分的に少しリフレッシュできたので2つのスレを並行して進めてきます

要するにあっち書いたりこっち書いたりします

あと、やはりどうしてもシンジくんスゲーの流れからは逃れられないのでそっち方面で突っ走ります

では続けます

- ミサト宅 夜 -

ピンポーン

ミサト「はーい」

ガチャ

シンジ「こんばんは。ミサトさん」

ミサト「あら?シンジくん。アスカに会いに来たの?」

シンジ「いえ、そういうわけでもないんですけど、上がってもかまわないですか?」

ミサト「た・だ・い・ま。でしょ? 今はリツコの家に住んでるけと、ここはあなたの家よ」

シンジ「はい……。ただいま、ミサトさん」

ミサト「よろしい♪ それじゃどーぞ」

アスカ「ミサトぉ~? 新聞の勧誘?」

ミサト「シンジくんよー」


ドタドタドタドタッ


アスカ「シンジっ⁉︎」

シンジ「こんばんは。アスカ」

アスカ「我慢できなくなって私に会いに来てくれたのね⁉︎」

シンジ「うん、まぁ、それもあるけど」ポリポリ

アスカ「嬉しい! 私も会いたかった……」

ミサト「さっきまで学校で一緒だったんでしょ」

アスカ「家の中で会えるのはまた違うのよ」

シンジ「アスカ、今日はミサトさんと話しにきたんだ」

アスカ「えぇ~⁉︎ 私に会いに来たんじゃないのぉ⁉︎」

シンジ「もちろんアスカに会いにきたよ。ミサトさんに話があるのも本当だけど」

- ミサト宅 リビング -

ミサト「それで、シンちゃん。話って?」

シンジ「マナのことなんですけど、現状確認しておきたいんです」

アスカ「あぁ、そのことだったの」

ミサト「霧島、マナちゃん? どうしたの? 突然」

シンジ「マナから聞いたんですけど、保護を解除されるかもしれないって」

ミサト「そんな話は初めて聞いたわね……」

アスカ「そうなの?」

ミサト「えぇ。人事からはそういった決定は降りていないはずだけど」

アスカ「それなら簡単ね。ミサトが知らされてないか、マナの勘違いか。このどちらかよ」

ミサト「そうね……。それじゃ、シンちゃんとしては保護が解除されると仮定してそのお話なのかしら?」

シンジ「はい、保護が解除されるなら、野に放たれたウサギと同じですから。いつ襲われるか」

ミサト「……わかったわ。私も人事に確認してみる」

シンジ「あまり時間的猶予があるわけではないので、急かすようで悪いんですが」

ミサト「いいわ。マナちゃんも不安だろうし、ちょっと待ってて」スタスタ


プルルルルッ


ミサト「葛城です……日向くん、ちょっと確認してもらいたいことがあるんだけど」

- 1時間後 リビング -

ミサト「……えぇ……間違いないのね……わかったわ……ありがとう」


ガチャ


アスカ「シンジ、この唐翌揚げどう?」

シンジ「おいしいよ。どんどん料理が上手になってくね」

アスカ「まぁね! どんどん食べてっ!」

ミサト「う~ん」

シンジ「ミサトさん、もう今の電話」

ミサト「えぇ。日向くんからだったわ。急ぎで調べてくれたみたい」

シンジ「それで……?」

ミサト「結果だけを先に言うと、保護解除の動きはたしかにある」

アスカ「…………」もぐもぐ

ミサト「ただ、決定的というわけでもないんだけど」

シンジ「なにか問題が?」

ミサト「えぇ。彼女の持ちこんだ情報に誤りがあったみたい。それで、今後の取り扱いについて様々な意見がでている」

アスカ「ミサトが知らなかったわけね」

ミサト「そうね。まず1つ目はネルフとの関係を断つ。2つ目は戦自との交渉に使う。3つ目はこのままネルフで保護して使う」

シンジ「…………」

ミサト「割合的には4:4:2と言ったところかしら。単純にネルフとの関係をなかったことにするか、戦自との交渉に使うか、この2つで意見が割れてるみたい」

シンジ「価値がないと判断されたわけですか」

ミサト「一般企業でいうところの事実上の戦力外通知ね。つまり、クビ。ネルフとしても自分達で調べた方が都合がいい」

シンジ「なんとかならないですか?」

ミサト「普通の人なら、なんとかすることはできる。だけど、マナちゃんは普通とは違う。情報屋という立場でしょ」

シンジ「…………」

ミサト「ネルフが骨までしゃぶる為に、マナちゃんを戦自に引き渡すというのも納得できる面もあるわ。それで得られるものがあるから」

シンジ「マナを引き渡した場合、ネルフはなにを得るんです」

ミサト「交渉が進む仮定で駆け引きはあるからまだわからないけど、おそらく、ロボットに関することか、それとも使徒が来た時に、これまで以上に戦自が協力してくれるか、どの可能性を考えても、ネルフにとって悪い話ではないわ」





シンジ「流れを変える方法はありますか?」

ミサト「厳しいわね……。マナちゃんが新しい情報を提示したとしても、人事が交渉のテーブルにつくとは限らない」

シンジ「テーブルにつかせるには?」

ミサト「うぅん。私よりもっと上の立場の人間が必要になる。人事の決定に口を挟めるような。それこそ、碇司令や冬月副司令クラスのね」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくんは、マナちゃんを助けたいのね」

アスカ「じゃなかったらこんな話しないでしょ」

ミサト「大人の世界は、時には非情よ。感情だけではない、損得勘定で物事が判断されることもある」

シンジ「わかってます。組織ってそういうものでしょうから」

ミサト「どうするの?」

シンジ「待つだけでは、もったいないですから。父さんに話してみます」

アスカ「し、シンジ⁉︎」ガタッ

ミサト「碇司令が会ってくれるとは限らないわよ?」

シンジ「駄目もとですよ。できることだけやるだけです」

アスカ「……みわかんない」

シンジ「アスカ?」

アスカ「なんでそこまでするの? たしかにかわいそうだけど、あいつがもっと情報を精査してネルフに提示してればこんなことにならなかった」

ミサト「…………」

アスカ「自業自得ってやつよ。あいつからシンジが得られるものなんて何にもないのに」

ミサト「アスカの言うことももっともだわ。シンジくん、あなたが父親に頭を下げるのは生半可ではないでしょう?」

シンジ「いえ、そんな大袈裟な。アスカも」

アスカ「理由を説明して」

シンジ「……マナはきっと助けたいだけなんだよ。友達を」

アスカ「…………」

シンジ「ネルフに亡命みたいな形で逃げこんだのだって友達を助けたい一心だよね」

ミサト「…………」

シンジ「悪い子じゃないと思うんだ。ただ、少し、友達のことになると必死になりすぎてるだけで」

アスカ「あいつは、私たちよりもテストパイロットの友達を選んでるのよ」

シンジ「……そうだね」

アスカ「あいつにとって、シンジも私たちも、友達なんかじゃないわ。本当の友達が戻ってくるまでのただの繋ぎ」

シンジ「わかってる」

アスカ「あいつの中でテストパイロットを助けるまでという線引きがあるから、私たちに本当の意味で友達になりきれないのよ」

ミサト「…………」

アスカ「あいつ、たまに私たちのやりとりを見て寂しそうな顔をするもの。自分でもわかってるんだわ。馴染みきれてないってことに」

シンジ「…………」

アスカ「少し仲良くなったけど、上っ面だけ。だから、いつまでたってもあいつは、転校生の霧島マナなのよ。クラスメイトじゃない」

ミサト「それでも、シンちゃんはいいの?」

シンジ「はい、それでも僕は助けたいと思います」

アスカ「シンジッ!」バンッ

シンジ「アスカ。全部をわかってくれとは言わない。僕たちは突き詰めると他人だから」

アスカ「…………」

シンジ「アスカが僕のことを考えてくれてるって感じる。ありがとう。だけど、守れるなら、守りたいんだ」

アスカ「どうして?」

シンジ「僕は友達と思ってるから。マナがそうじゃなくてもいい」

アスカ「……あんた、本当にバカね」

アスカ「あいつは、シンジに感謝しても、口先だけなのよ。あんたもわかってるんでしょ」

シンジ「いいんだ」

アスカ「はっきり言って、いくらシンジでも理解できない」

ミサト「アスカ……」

シンジ「アスカにはアスカの考えがあるのもわかる」

アスカ「私は! あんたがそこまでやる必要ないって言ってるの!」

シンジ「なにもなにがなんでもって言ってるわけじゃない。できることをやるだけ」

アスカ「それ、本当?」ジトー

シンジ「うん。本当だよ。無理だったら諦める。アスカだったら諦めないけどね」

アスカ「あ……そ、そんなんで誤魔化されると……っ!」

シンジ「アスカ、部屋に行かない?」

ミサト「あらあら」

アスカ「え、えぇ?」

シンジ「少し話たいんだ。だめかな」

アスカ「い、いいけど……」

シンジ「ミサトさん、音楽でも聞いておいてください」

ミサト「……はいはい。シンジくん、女の扱いばかりうまくなってもどっかのバカみたいになるわよ」

- リツコ宅 リビング -

シンジ「……ただいま」

リツコ「あら、シンジくん。今日は遅かったのね」

シンジ「はい、用事があってミサトさんの所に寄ってました」

リツコ「ミサトの? ……あまりアスカと馴れ馴れしいところを見られてはダメよ。例えミサトでもね。そうしないと誤魔化しきれなくなる。人の口に戸は立てられないもの」

シンジ「すみません」

リツコ「アスカに会いに行ったの?」

シンジ「いえ、リツコさんは霧島マナっ子をご存知ですか?」

リツコ「あぁ、戦自の。内部告発をした子よね。資料には目を通してある」

シンジ「その子がネルフの保護下から外されそうで、ミサトさんに相談しに行ってたんです」

リツコ「ふぅん。なにをやらかしたの?」

シンジ「情報の間違いですね。そんな子には思えないんですけど」

リツコ「ありきたりな話ね。情報というものは生き物だから、状況によって変わることもある」

シンジ「なるほど……」

リツコ「例え現時点で間違っていない情報を渡していたとしても、後で変わる可能性もある。しかし、情報をソースとして扱う側には間違った情報はいらないもの」

シンジ「ふぅん。そこで、僕は彼女を助けたいんですが」

リツコ「保護下をはずれる理由と他の話があれば詳しく話してごらんなさい」

シンジ「――というわけなんですが」

リツコ「人事の動きとしては正しいわね。個人なんか考える必要ないもの」

シンジ「やっぱり、リツコさんもそう思いますか」

リツコ「えぇ。ミサトも同意見でしょ。腐っても作戦司令ですからね」

シンジ「腐ってはいないと思いますけど、そこで父さんか冬月副司令に面談したいんです」

リツコ「ふん……はっきりと言ってもかまわないかしら?」

シンジ「はい」

リツコ「話をしても無駄よ」

シンジ「…………」

リツコ「シンジくんになにか好材料があるわけでもない、ただお願いするだけでの状況では碇司令や副司令は会ってさえくれないでしょう」

シンジ「そう、ですよね」

リツコ「霧島マナって子が人事との交渉のテーブルにつくのが難しいのと同様に、シンジくんが碇司令達との交渉のテーブルにつくのもまた、難しい」

シンジ「なんとか、なりませんか?」

リツコ「私も表向きはシンジくんに肩入れしているというのを隠さなければならないのよ。マナって子のために私を危険に晒す気?」

シンジ「…………」

リツコ「私はシンジくんのためなら危険をおかしてもかまわないけれど、誰かれかまわずでは嫌よ? せめて私のためという名目がほしい。私だって女ですもの」

シンジ「たしかに、マナのために、リツコさんを危険には晒せません」

リツコ「マナって子を捨てられる?」

シンジ「……少し、考えてみます」

- リツコ宅 マンション 屋上 -

シンジ「……ふぅ」

マリ「なんか用?」

シンジ「あぁ、やっぱり来てくれた」

マリ「別にワンコくんの為に来たわけじゃないけど」

シンジ「それでいいんだ。少し話ができるなら」

マリ「なに?」

シンジ「この間は、ごめん」

マリ「ワンコくんが謝る相手がいるとすれば私じゃない。もっとも赤木リツコが事実を知ったら謝っても許さないだろうけど」

シンジ「うん、そうだね」

マリ「で?」

シンジ「リツコさんは、このままにする。父さんと添い遂げても、どうせロクなことにはならない」

マリ「……っ! だからいいってわけ⁉︎」

シンジ「そうじゃないよ。僕はリツコさんにしたことを死ぬまで誰にも言わない。やったことの罪悪感を抱えて生きていく」

マリ「人としての意思は? 赤木リツコに選ばせないの?」

シンジ「それは僕のエゴだ。リツコさんには知らないままでいてほしいだけ。どんなに綺麗事を並べても意味がないから」

マリ「…………」

シンジ「僕は、僕のエゴでひとりの人生を僕の思いのままに歪めてしまったんだ」

マリ「あっそ」

シンジ「マナについて話たいことがある」

マリ「その目を使えばいいんじゃん。ゲンドウくんにも使えば?」

シンジ「マナはともかく、父さんに使えば1人では済まない。冬月副司令をはじめとして次から次に使わなけれいけない状況に追い込まれる」

マリ「…………」

シンジ「そうなってもいい。僕なんかどうなってもいいんだから。でも、完全に融合してしまえばなにもかも意味がなくなる」

マリ「ふぅ、まぁそうだね」

シンジ「僕の中にある3つの魂は、本来なら1つの肉体では共存できない。魂に肉体が耐えられないから」

マリ「…………」

シンジ「それが融合してしまえばどうなってしまうのか、僕も、わかるよ」

マリ「ま、気がつけたってことね」

シンジ「うん、今後はできれば協力したい」

マリ「それは、私たちの計画に?」

シンジ「そうじゃない。僕はやっぱり、みんなを守りたい。だから、道が違えるまでの間は共同戦線をとらない?」


マリ「私たちにメリットないじゃん」

シンジ「マリさんや加持さんは僕が目的なんでしょ。アスカもはいってるみたいだけど」

マリ「うーん」

シンジ「共同戦線の間は僕も全面的に協力するよ。といってもこのまま使徒を倒し続けることが、協力になるんだろうけど」

マリ「あぁ、もう! わかったよ! それで? 霧島のなんの話?」

シンジ「あの子も僕も交渉のテーブルにつくことは難しい」

マリ「ま、反則技を使えばできないこともないけどにゃー」

シンジ「僕が人でいられなくなるようなマネはしたくない。だから、別の方法を考えたんだ」

マリ「なに?」

シンジ「使徒とロボットをぶつけてほしい」

マリ「ワンコくん、正気かにゃ? 次の使徒はディラックの海だよ」

シンジ「うん、わかってるよ」

マリ「戦自のロボットなんて一瞬で詰むよ? もちろんパイロットも」

シンジ「うん」

マリ「どうするの?」

シンジ「ロボットの無力化を知らしめたいんだ。使徒にはエヴァしかいないってことを」

マリ「……ワンコくん、その情報は古いよ。ロボットは対使徒じゃない。どういうわけか、対エヴァ用兵器になってる」

シンジ「えぇ?」

マリ「前に話たルートの話覚えてる?」

シンジ「あぁ、AとがBとか?」

マリ「そう、私たちが知るのをAだとすれば、今はBになってる。ロボットもそういう感じ。結末は変わらないけど」

シンジ「うぅん」

マリ「ロボットの無力化を知らしめるならエヴァでやっちゃえば?」

シンジ「それだと、改良をくわえて再チャレンジって話にならないかな」

マリ「予算がある内はそうなるね。だけど結果がでなければ予算を取りずらくはなるよ」

シンジ「そもそも、なんで対エヴァなんだろう」

マリ「メンツだよ。戦自は顔を潰されるのを1番嫌うから」

シンジ「…………」

マリ「え? もう万策尽きたの?」

シンジ「いや、思いついたことがあるんだけど」

マリ「おっ? なに?」

シンジ「やっぱり、使徒にはぶつけよう」

マリ「えぇ? なんで?」

シンジ「ディラックの海に飲みこませる直前に僕が助けて戦自のメンツを潰すんだ」

マリ「……逆撫でしちゃうんじゃないかにゃ?」

シンジ「まだ、終わらないよ。ディラックは海は、とてつもない物だから、それを僕、エヴァが撃破して戦自にネルフには敵わないと思わせるんだ」

マリ「エヴァに対する恐怖心を植え付けるの?」

シンジ「うん、どうかな」

マリ「ふーん…………」

シンジ「もしかしたら、結果が変わるかもしれない」

マリ「え?」

シンジ「さっきの話、AでもBでも結果は1つなんだよね」

マリ「まぁ……」

シンジ「でも、全てがうまくいけば、ロボットはいなくなり、テストパイロットとマナは少年兵としての価値がなくなるかもしれない」

マリ「それは甘いよ。駒はいくらあってもいい。捨て駒にできるからにゃ」

シンジ「でも、そうならない未来を作ることができるかもしれない。ほんのわずかな可能性でも、生みだすきっかけになる」

マリ「…………」

シンジ「どう?」

マリ「そうだねぇ~。ま、考えておくよ。期待はしないでね」

- リツコ宅 シンジ部屋 -

シンジ「(マナに戦自が執着してるのは、少年兵としてよりも情報を持っているからなのかな)」

シンジ「(でも、マナはもう、ネルフに情報を全て渡してるはず。だとすれば、情報源としてマナの存在を戦自が危険視しているわけではない)」

シンジ「(……と、すれば、メンツを潰されたからなのかな。でも、メンツを潰されたからマナに復讐したい、そんな理由で戦自がネルフとの交渉のテーブルにつくだろうか……)」

- 第三新東京都市 某所 -

マリ「やっほー」

加持「お前から会いにくるなんてめずらしいな」

マリ「うん、まぁ、 次の使徒なんだけど、ワンコくんからロボットぶつけないかって提案があってさ」

加持「シンジくんから? ……おおかた、霧島マナ絡みか」

マリ「加持くんがあの子の家に行ったんしょ?」

加持「あぁ、ネルフ関係者と言って偽造の身分証を提示したらあっさり信じたよ。ま、渡してる情報は本物だから信じていいんだがね」

マリ「どーでもいいけど、それ絡みなのは正解」

加持「なぜだ?」

マリ「戦自のメンツを潰すこと、エヴァに恐怖心を与えたいみたい」

加持「ふむ……」

マリ「どうしよっか」

加持「しかし、戦自がロボットを作りはじめるきっかけとなったのは日本政府による意向もあるとちゃんと伝えたのか?」

マリ「あ、忘れちった」

加持「おいおい、まぁ、予算が降りてるのかどこからと考えれば辿り着けるかもしれないが」

マリ「政府がネルフのこと嫌いなんだよね」

加持「利権争いさ。醜いね。ネルフは政府にとって目の上のたんこぶだからな」

マリ「ま、私たちが協力するなら、ワンコくんも協力するって言ってたよ」

加持「ようやくかっ⁉︎」ガタッ

マリ「あくまでも一時的にってだけ。使徒殲滅ぐらいしかないけど」

加持「……ふぅ。ぬかよろこびをさせるなよ」

- 翌日 第三新東京都市立第壱中学校 昼休み 屋上 -

シンジ「マナ、聞きたいことがあるんだ」

マナ「……?」

シンジ「どうして、マナに戦自は執着するの?」

マナ「どういうこと?」

シンジ「考えてもどうしてもわからなかったんだ。裏切った相手を取り戻したいって思う理由が。ネルフに有利につけられてもなぜマナを取り戻したいと戦自は思うの?」

マナ「あぁ……」

シンジ「なにか、心当たりあるんだね?」

マナ「シンジくんは慣例って知ってる?」

シンジ「当たり前に行われてること?」

マナ「うん、ずっと続くしきたりみたいなこと。戦自はね、少し変わってるんだ」

シンジ「……?」

マナ「脱走兵に対して地の果てまで追っかけてくるの。ずっと昔から。敵前逃亡や裏切りは、死ぬよりも罪が重い」

シンジ「だから、マナを取り戻すためなら、ネルフに有利になってもいいの?」

マナ「きっと、交渉を重ねて行く上で落とし所があると思う。私なんか個人だもの。ネルフもきっと私に対した価値がないことわかってる」

シンジ「…………」

マナ「でも、なにも引き換えにできなければ、ネルフの保護下から外れた瞬間、私は戦自に拉致される。そうなれば、ネルフにとって得られるものはなにもない」

シンジ「最初から、お互いに限度が見えてる交渉だってこと?」

マナ「うん。戦自が提示する条件もさして痛手にならず、ネルフが提示する条件もあったらいいなぐらいのもの。予定調和なのよ。それが、理由なんだと思う」

シンジ「(じゃあエヴァに対する恐怖心を植えつけてもロボットを無力化しても、マナは……裏切り者は許されることはない……)」

マナ「私、どうなりそう?」

シンジ「まだわからない。今は色々と手を尽くしてる」

マナ「ありがとう……」

シンジ「いいよ」

マナ「ムサシやケイタを助ける前に、私が、ダメになりそうだね……」

シンジ「そうはならない。マナは友達に会って普通に生活したい。それだけじゃないか」

マナ「うん……」

シンジ「なんとか、してみせるよ」

マナ「ありがとう。本当に、ごめんなさい」

シンジ「(やっぱり、交渉のテーブルにつけるようにするのは必要ってことか……)」

シンジ「ん……?」

マナ「……?」

シンジ「マナ、ロボットの予算てどこから降りてるの?」

マナ「予算? ええと国防費から特別会計されてるはずだよ」

シンジ「国防費の枠の中でやりくりしてるわけじゃないんだ?」

マナ「うん、別に予算が組まれてる」

シンジ「どうしてかな? 国がロボットの製作を援助してるってこと?」

マナ「そうみたい、かなりの金額が動いてるみたいだよ」

シンジ「へえ……ロボットの計画が失敗すれば、それだけ動いてるなら、誰かが責任とらなきゃいけなくなるね」

マナ「……それは間違いないと思うけど。責任のなすりつけ合いがはじまると思うよ」

シンジ「なるほどね……」

マナ「……?」

- 教室 昼休み -

女子生徒F「あ、やっともどってきた。霧島、邪魔」

マナ「きゃっ」

女子生徒D「ねぇねぇ碇くん、たまには私たちと食べようよ」

シンジ「あぁ、うん、でも」

マナ「あの、私、ヒカリ達と食べるね」


タタタッ


トウジ「モテ期到来やな~」

アスカ「…………」もぐもぐ

ケンスケ「アスカはいい気しないんじゃないか?」

アスカ「別に」

ヒカリ「……アスカと碇くん、なにかあったの?」

アスカ「ん?」

ヒカリ「なんか、アスカ、碇くんに冷たい」

マナ「……?」

アスカ「(シンジが洗脳されてるふりだから、とは言えないわよね。本当は昨日、エッチしちゃってるし。あ、ちゃんとサイン送ってくれてる。もう、シンジったら……)」

ヒカリ「喧嘩でもした?」

アスカ「あいつは、ファーストがいるでしょ」

ヒカリ「え? 綾波さん」

アスカ「…………」もぐもぐ

ケンスケ「おぉ、シンジって綾波を選んだのか?」

ヒカリ&マナ「えぇ⁉︎」

ケンスケ「今のってそういうことじゃ?」

アスカ「そうとは言ってないわよ。だけど、なんとなくそう思っただけ」

ヒカリ「あ、アスカ……」

- 授業中 -

シンジ「(まいったな……マナにそれほど価値がないのはネルフも戦自も折り込み済みなのか)」

シンジ「(だから、ネルフ内でもこのまま保護解除するか、取り引きするかで意見が割れてるんだ。取り引きしたところでメリットは微々たるものだから)」

シンジ「(ううん……)」

トウジ「おい、シンジ」コショコショ

シンジ「ん?」

トウジ「アスカとなんかあったんか?」

シンジ「はぁ……トウジ。悪いけど今はそれどころじゃないんだ」

トウジ「……?」

シンジ「マナのこと考えなくちゃいけないから」

トウジ「マナ⁉︎ おまっ! マナやったんか?」

シンジ「……?」

ケンスケ「ダークホースのご登場か……」

- 放課後 教室 -

ケンスケ「碇は?」

トウジ「シンジなら、もうネルフに行きよったで」

ケンスケ「ふーん、それにしても碇がマナをねぇ」

マナ「なんの話っ?」

トウジ&ケンスケ「わあっ⁉︎」

ヒカリ「また悪だくみしてるんでしょう?」

トウジ「そんなことするか!」

ケンスケ「あれ? アスカは?」

ヒカリ「ネルフに行ったよ。テストがあるんだって」

トウジ「……なぁ、霧島。シンジのこと、どう思ってる?」

マナ「シンジくん? え、なに、どして?」

ケンスケ「実は! シンジの頭の中はマナのことで一杯なんだよ!」

マナ「…………あぁ」

ヒカリ「…………」

トウジ「あぁって! なにかシンジから言われたんか⁉︎」

マナ「たぶん、あのことだと思うよ」

ケンスケ「愛の告白か⁉︎」

マナ「あはは。ちが――」

ヒカリ「……そんなわけないじゃない」

トウジ「……?」

ヒカリ「マナに碇くんがそんなこと言うはずない」

マナ「むっ! そりゃないかもしれないけどー」

ヒカリ「わかってるならいいんだ、えへへ」

マナ「だけど! 絶対ないってことも言い切れないと思うけどなー」

ヒカリ「ううん、ないよ。だって、マナはずっと後だもの。アスカよりも私よりもずっと後」

マナ「……? 仲良くなったのが?」

ヒカリ「(好きだって気がつくのに決まってるじゃない! 私にだってわかるよ! 碇くんのこと好きでもなんでもないくせにっ!)……そうだね」

マナ「うーん……そうかもね」

ケンスケ「なんだぁ、碇の告白て話でもないのか」

- ネルフ本部 発令所 -

冬月「昨日キール議長から、計画遅延の文句が来たぞ。相当苛ついてたなぁ。仕舞いにはおまえの解任も仄めかしていたぞ」

ゲンドウ「エヴァ計画もダミープラグに着手している。ゼーレの老人は何が不満なのだ」

冬月「肝心の人類補完計画が遅れてる」

ゲンドウ「全ての計画はリンクしている。問題はない」

冬月「日本政府から支払いはどうなっていると矢の催促も止まらんよ」

ゲンドウ「充分に割り当てられてるはずだが」

冬月「ハゲタカどもはな、金の匂いのするところにはたかるものだ」

ゲンドウ「そういったことは冬月にまかせる」

冬月「また仕事が増えるのか」

ゲンドウ「…………」

冬月「そういえば、明日か。ユイくんの命日は」

- ネルフ本部 ラボ -

アスカ「あ~ぁ、テストテストばっかりで肩がこるわね~」

リツコ「平和を喜んだら?」

アスカ「退屈なのもつまんないじゃない。停滞は」

シンジ「…………」

リツコ「シンジくん? どうかした?」

シンジ「……いえ。少し考え事を」

リツコ「あまり考えすぎないようにね」

レイ「赤木博士、今日はもうテストは終わりですか?」

リツコ「あなた達3人のアンケートをとったら終わり。その為にここに呼んだのよ」

アスカ「アンケートぉ?」

リツコ「チェックシートに該当する項目にレ点をいれていってちょうだい」

アスカ「どれどれぇ……なんだ。なにかと思えば健康チェックシートじゃない」

リツコ「なんだと思ったの?」

アスカ「意外なの期待しただけ」

リツコ「遊びじゃないのよ。終わった子から帰っていいわ」

シンジ「…………」カキカキ

リツコ「シンジくん? 明日は碇司令と会うの?」

アスカ「…………」ピクッ

シンジ「え? 父さんと?」

リツコ「お母様の命日でしょう?」

シンジ「あ、そうか……ありがとうございます。リツコさん」

リツコ「いいえ、ただの確認よ」

- ミサト宅 夜 -

プルルルルッ プルルルルッ

アスカ「ミサトー? 電話ー」

ペンペン「クェー」

アスカ「あ、まだ帰ってないのね」

ガチャ

アスカ「ヘロー、じゃなかった。はい、もしもし」

ヒカリ『もしもし。洞木といいますが……』

アスカ「ヒカリ?」

ヒカリ『あ。……アスカ?』

アスカ「えぇ、そうよ」

ヒカリ『よかった。アスカに電話するの初めてだから少し緊張しちゃった』

アスカ「どうしたの?」

ヒカリ『あのね、明日ってアスカ暇してる?』

アスカ「明日? そうね、明日はなにもないけど」

ヒカリ『よ、よかった。お願いがあるんだけど』

アスカ「――えぇ~~⁉︎ ダブルデートぉ⁉︎」

ヒカリ『うん、コダマお姉ちゃんにどうしてもって頼まれちゃって』

アスカ「断ればいいじゃな~い」

ヒカリ『それが、バイト先で良くしてもらってる人だからって……』

アスカ「これだから日本人は……」

ヒカリ『私とアスカと2人なんだけど』

アスカ「妹を売る姉ってのもどうなのよ」

ヒカリ『そんな、深刻な話じゃないよ。ちょっとお茶して帰るだけ。もちろんお金は男の子達持ち』

アスカ「はぁ……」

ヒカリ『アスカには、碇くんがいるのはわかってるけど、お願い』

アスカ「……わかった。ヒカリの頼みなら。お茶するだけよね」

ヒカリ『ありがとう! うん! そうだよ!』

- 夜 リツコ宅 レイ部屋 -

シュルシュル パサッ

レイ「…………」

シンジ『綾波。はいるよ』

レイ「……っ!」

ガラガラ

シンジ「ん? どうしたの? 手を隠して」

レイ「……見られたくないから」

シンジ「(そうか。アダムのことだな)」

レイ「少し、出ててもらえる」

シンジ「いや、そのことできたんだ」

レイ「……?」

シンジ「手、見せてみて」

レイ「……い、嫌」ギュ

シンジ「大丈夫だよ」スッ

レイ「あっ……」

シンジ「…………」ジー

レイ「あの、碇くん、気持ち悪くない?」

シンジ「そんな。綾波の手じゃないか」

レイ「あ、ありがとう」

シンジ「おまじないはうまくいったみたいだ」

レイ「……?」

シンジ「綾波は少し、気味がわるい模様だと思えばいいよ」

レイ「え……?」

シンジ「それじゃ、確認しにきただけだから」スッ

レイ「(碇くんの手が離れるのが、さみしい?)」

シンジ「おやすみ、綾波」

レイ「……おやすみなさい」

- 翌日 墓地 -

『IKARI・YUI 1977~2004』

シンジ「…………」

ゲンドウ「三年ぶりか。2人でここに立つのは」

シンジ「父さん。来たんだね」

ゲンドウ「ああ。毎年きている」

シンジ「そう、来なかったのは僕だ」

ゲンドウ「…………」

シンジ「今日は少し、父さんと話がしたい」

ゲンドウ「なんだ」

シンジ「母さんのこと、覚えてないんだ。どんな人だったの?」

ゲンドウ「人は思い出を忘れることで生きている。だが、決して忘れてはならないこともある。ユイはそのことを教えてくれた」

シンジ「確認をするために来てるんだね」

ゲンドウ「そうだ。……シンジ。思い出は心の中にある。今は、それでいい」

シンジ「僕は母さんの思い出なんかない。だけど、今の学校で仲の良い友達ができたんだ。だから、思い出が大切だってことも、忘れちゃいけないことがあるのも、わかる気がする」

ゲンドウ「…………」

シンジ「……父さん。お願いがあるんだ」

ゲンドウ「…………」

ピリリリリッ ピッ

ゲンドウ「私だ……あぁ……わかった」

シンジ「…………」

ゲンドウ「シンジ、時間だ」

シンジ「わかったよ……わかった」


シンジ「(なにを期待しようとしてたんだ。僕は)」

- 第三新東京都市 繁華街 -

ヒカリ「今日はありがとね」

アスカ「まぁ、ちょっとお茶して帰るだけなんだし」

男A「お、きたきた」

男B「待ってたよーん」

ヒカリ「おはようございます」

男A「おはよ、そっちの子も」

アスカ「……おはよう」

男B「とりあえず自己紹介は後にして店はいろっか。ほら、あそこ。すぐ目の前にあるとこだよ」

ヒカリ「あ、近いんですね」

男A「まぁね。移動させるのも悪いから近場でセッティングしたんだ」

男B「それじゃはいろー」グイ

アスカ「……っ!」

ヒカリ「あの! 会ったばかりでいきなり手は!」

男B「あ、馴れ馴れしかった? ごめんごめん」パッ

ヒカリ「アスカ、大丈夫?」

アスカ「……平気。行きましょ。店はいるんでしょ」

- 1時間後 喫茶店 -

男B「――やっちゃってさぁ」

男A「ぎゃはは、それお前が悪いんじゃん!」

ヒカリ「あ、そ、そうなんですね」

アスカ「……はぁ」

男B「ちょっと俺ら、トイレ行ってくるわ」

男A「お。そうだな、ちょっと失礼♪」

ガタッ

ヒカリ「……ちょっと、疲れちゃったね」

アスカ「私、あいつらの笑い方嫌い。見てよ、ケーキ、食べ方も汚い」

ヒカリ「うん……。でも、もう少しだと思うから」

アスカ「…………」

ヒカリ「――あれ? 碇くん?」

アスカ「え、えぇ⁉︎」

ヒカリ「ほら、窓の外、歩いてるの……」

アスカ「し、シンジ⁉︎」ガタッ

タタタタッ

ヒカリ「えぇっ⁉︎ アスカ⁉︎ 待って!」

タタタタッ

- 喫茶店 外 -

アスカ「シンジッ!」

シンジ「……?」

アスカ「あんた、こんなとこでなにやってるの?」

シンジ「アスカじゃないか。僕は母さんの墓参りの帰りだよ」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ! ……はぁ……はぁ……」

シンジ「洞木さんも?」

ヒカリ「碇くん、こんにちは。あの、アスカ、戻らないと」

アスカ「……嫌」

ヒカリ「えぇ? もうちょっとだから……」

シンジ「どうしたの?」

ヒカリ「ええと、あのう……」

アスカ「……ヒカリと遊んでただけ」

ヒカリ「あ、アスカ……」

シンジ「だったら、僕のことは気にしなくていいよ」


男A「――なんで外にいるんだよ?」

男B「いないから焦っちゃったよ、俺ら」


シンジ「え?」


アスカ「ちっ……」

ヒカリ「あぁ……」

男A「どっか別のとこいく?」

男B「そいつは友達?」

シンジ「(あぁ、そういえばこんなこともあったようななかったような……)」

アスカ「もうおしまい! 私こっちと遊ぶから!」

ヒカリ「あ、あの、その……」

男A「えぇ? だってまだ1時間だぜ?」

男B「この後もどっか行こうよー」

シンジ「…………」

アスカ「しつこい! タイプじゃないのよ!」

男A「なんだと?」

アスカ「……」キッ

男B「うひゃひゃ、タイプじゃないとか言われてやんの」

アスカ「あんたもよ、このサル」

男B「……あぁん?」

ヒカリ「アスカ! ご、ごめんなさい、私たち、次の予定があるから……」

男A「いいじゃん、別にさ」グイ

ヒカリ「えっ、あのっ、やめて」

男B「そうそう、これからこれから」グイ

アスカ「……っ! 私になに触って」


シンジ「あの、そこまでにしといた方が」


男A&男B「……あぁん?」

アスカ&ヒカリ「…………」


シンジ「2人とも嫌がってますし」


男A「ぷっ、ぎゃははっ」

男B「あー、はいはい。良いとこ見せたいよなぁ~」

シンジ「はぁ」

男A「わかった、わかった。ちょっとそこの路地裏行こうか」

シンジ「いいですよ」

男B「強がるねー、さっさと済ませようぜ」


スタスタ


ヒカリ「……アスカ!」

アスカ「……え?」

ヒカリ「なにボーっとしてるのよ! 碇くんが!」

アスカ「あっ、だって、シンジが入ってくるなんて思わなくて、ヒカリこそ、目が点になってたじゃない」

ヒカリ「男の人2人相手に声かけるなんて思わなかったんだもん!」

アスカ「追いかけるわよ!」

ヒカリ「うん! あ、警察大丈夫かな?」

アスカ「あんなの2人ぐらい私がいれば楽勝よ!」

- 第三新東京都市 繁華街 路地裏 -

アスカ「――シンジッ!」

ヒカリ「碇くん!」

男A「ちょっと待っててねー、すぐ終わるからさ」

アスカ「男2人でなんて卑怯とか思わないの⁉︎」

男B「別にー」

ヒカリ「……っ!」キッ

アスカ「ヒカリ、あんたの姉さんには悪いけど……」

ヒカリ「ううん、いいよ。アスカ、やっちゃって」

男A「なんだぁ?」

タタタタッ

アスカ「このっ!」ブンッ

男A「――ぐっ⁉︎」

男B「うぉ⁉︎ なんだこいつ⁉︎」

アスカ「シッ!」ゴンッ

男B「がはっ!」ドテン

アスカ「……あっけない、シンジ、平気?」

シンジ「まぁ……」ポリポリ

アスカ「あんたねぇ、弱いんだから――⁉︎」


バチバチッ


ヒカリ「アスカッ!!」

アスカ「……っ⁉︎」

男A「……へ、へへ。持っててよかったスタンガン」

男B「いでー」

男A「ほら、立てよ」

アスカ「くっ……雑魚のくせに。油断した」

男A「やってくれたな」

男B「ちっ、高いのにこのズボン。泥ついてるじゃん」

アスカ「ヒカリ、足に力がはいらない、誰か呼んで――」

スッ

男A「逃がすわけないだろー」

ヒカリ「アスカ……」

アスカ「わかった……。私を殴っていいけど、2人のことは……」

男B「殴るだけじゃなぁ?」グイ

ヒカリ「……っ! いや! 離して!」

アスカ「クズね」


シンジ「あの……」


男A「まぁ、俺らもこんなつもりなかったよなぁ」

ヒカリ「……離してってば!」

男B「離さな――あいだだだだっ⁉︎」


シンジ「そこらへんで」グイ


ヒカリ「え?」

男A「なにやってんだよ! はやくふり払え!」

シンジ「洞木さん、アスカのとこに」ググィ

男B「ち、ちが。すげぇ力で」

ヒカリ「あ、う、うん」

タタタタッ

ヒカリ「アスカ? 大丈夫?」

アスカ「…………」

ヒカリ「アスカ?」

アスカ「……あれ、誰?」



ドゴッ バキッ


男A「――ぐはっ!」

男B「」

シンジ「どうします?」



ヒカリ「碇くんって……凄いんだね。前に痴漢から助けてもらったことあるんだけど」

アスカ「……そうなの?」

ヒカリ「うん、だけど、喧嘩、強かったなんて知らなかった」

アスカ「私だって、知らなかったわよ……」

男A&B「」


アスカ&ヒカリ「…………」

シンジ「2人とも、平気?」パンッパンッ

アスカ「あ、はい」

ヒカリ「う、うん」

シンジ「痺れはどう? アスカ」

アスカ「……うぅん、まだ少し痺れるけど、あんまり」

シンジ「洞木さんは、腕、どう?」

ヒカリ「わ、私は、強めに掴まれただけだから」

シンジ「それなら、少し休めば平気そうだね」

アスカ「…………」

シンジ「(やりすぎたかな。でも、保安部はどこまで助けてくれるかわからないからな)」

アスカ「シンジ、あんた、格闘技やってたの?」

シンジ「いや、違うよ。僕は、護身術みたいなもの(ということにしておこう)」

ヒカリ「そうなんだ……かっこいい」

アスカ「……もっとはやく言ってよね。そんなに強いなら」

シンジ「ごめん、隠してるつもりはなかったんだけど」ポリポリ

アスカ「いい。助けてくれてありがと」

シンジ「うん、いいよ」

- 1時間後 繁華街 -

アスカ「疲れた」

ヒカリ「ほんとね。でも碇くんがいてくれてよかった」

シンジ「(あ、思い出した。たしかアスカと誰かがデートした日だったな。でもこんなことにはなってないし、また、ズレてるのか)」

アスカ「……まぁ、そうね」ひょこひょこ

シンジ「アスカ、まだ足痺れてるならおぶろうか?」

アスカ「えぇ?」

ヒカリ「(アスカ、いいなぁ)」

アスカ「い、いい。別に」

シンジ「遠慮することないよ、さ、どうぞ」スッ

アスカ「…………」

ヒカリ「アスカ、甘えたら?」

アスカ「ふん……」ギュウ

シンジ「よっと」

アスカ「おんぶしたりして洗脳のこと、大丈夫なの」コショコショ

シンジ「……いいんだ。アスカの方が大事だから」

アスカ「…………」ギュウ

ヒカリ「あ、そうだ、2人とも、私のうちにこない?」

続けるのが楽しくなくなってきたので、急にですが風呂敷をたたみはじめます。

でははじめます。

- 三ヶ月後 芦ノ湖 -

カヲル「久しぶり、シンジくん」

シンジ「…………」

カヲル「変わらないね、キミは。あの時のまんまだ」

シンジ「やっぱりカヲルくんも覚えているんだね」

カヲル「僕がキミのことを忘れるはずないじゃないか。そして、キミの中に何があるのかも」

シンジ「だったら、どうして! またこっちに来てしまったんだよ!」

カヲル「言ったはずだよ。今度こそ、君だけは幸せにしてみせると」

シンジ「僕の中にアダムとリリスの魂があることは知ってるんだろ⁉︎」

カヲル「わかっているよ」

シンジ「カヲルくんと綾波はもう、縛られる必要なんかないんだ!」

カヲル「残念ながら、そうはならない。キミが消えてしまったら、残された人達はどうなるんだい?」

シンジ「……僕はどうなったっていいんだ」

カヲル「シンジくん、それじゃ残されたヒトがあまりにもかわいそうだ。思い出は枷となって生き続ける。なにより、キミが幸せになれない」

ええ…

シンジ「どうしてだよ!」

カヲル「ヒトは哀れだね。純粋な願いの為におおくのものを犠牲にして、悲しみの連鎖を生み出してしまう」

シンジ「僕が完全に融合すれば、人類補完計画ははじまってしまう。アダムのリリスの融合はきっかけにすぎない」

カヲル「完全なる個体を生み出すための人類補完計画。それはもはや完成しているんだよ、キミこそが、完全な個体なんだ。綾波レイや僕のような片割れとは違ってね」

シンジ「僕がいたってなにも変わらなかったじゃないか!」

カヲル「霧島マヤを鈴原トウジを救えたじゃないか」

シンジ「でも! 融合してしまえば、なにもかも意味がなくなってしまう! マリさんの言った通りだったんだ!」

カヲル「それは違うよ。きっかけは始まりにしか過ぎない。さぁ、フィナーレをはじめよう。すべての願いのために」

- ネルフ本部 発令所 -

ビーッビーッ

ミサト「なにっ⁉︎」

マコト「この信号は……⁉︎ パターン青! 使徒です!」

シゲル「データ受信! 発生源は芦ノ湖です!」

ミサト「そんな⁉︎ 使徒は全部倒したんじゃなかったの⁉︎」

ゲンドウ「…………」

冬月「ゼーレが送りこんだやつか?」

ゲンドウ「老人達は急ぎすぎているようだ」

マヤ「そ、そんな、嘘でしょ⁉︎」

リツコ「マヤ、どうしたの?」

マヤ「この識別信号と登録番号は、い、碇シンジくんのものです」

リツコ「まさか⁉︎」

- 芦ノ湖 -

マリ「ちょぉーっとまったー!」

カヲル「イレギュラーか……」

マリ「気を失ってるワンコくんをどうするつもり?」

カヲル「ボクたちは、人の価値を、可能性を見出さなければならない。その為に、シンジくんの助けが必要だ」

マリ「ワンコくんは自分を犠牲にしようとした! 自分のためにね! このままの幕引きは許さないよ!」

カヲル「キミもわかっているんだろう? ヒトの進化の可能性は行き詰まっていると」

マリ「…………」

カヲル「政治闘争、諸外国で起きる紛争、人類の歴史は血で染め上げられている。限界を感じたのはヒトそのものじゃないか?」

マリ「たしかに、私たちは未熟よ。でも、それでも次の世代に託して不器用でも生きてる!」

カヲル「僕も前回はキミたちに、シンジくんにバトンを託した。だから、その気持ちはわからないでもない」

マリ「だったら、もう一度チャンスちょーだいよ! くれたっていいじゃん!」

カヲル「完全たる個体であるシンジくんがやり直したいと強く願い、実現した世界ですら不可能だったんだよ」

マリ「今のワンコくんなら、きっと次、だいじょーぶ! だから、もう一回サードインパクトを起こす!」

カヲル「……愚かだね、ヒトは同じ過ちを繰り返す」

マリ「考えたけど、世界がそういう流れで出来ちゃってんだもの! ……やっぱり、話だけじゃ通じないかぁ……」

- 芦ノ湖 上空 -

パイロット「投下準備、スタンバイ」

加持「座標は?」

通信士「問題ありません」

加持「それなら、いい。さぁ、五年間、準備してきたものをお披露目する機会だ。俺たちも総力戦を開始するぞ」

パイロット「了解! F-01から0Bへ、目標は芦ノ湖にて視認。繰り返す」

通信士「試作4号機投下、カウント、スタートします。5.4.3」

加持「震えるが来ちまうな。笑っても泣いてもこれで人類の行く末が決まるのか」

- ネルフ本部 -

ミサト「アスカ! レイ! 聞こえてるわね! 目標は現在、芦ノ湖にいるわ!」

アスカ「わかってるわよ!」

レイ「…………」

アスカ「くっ! ラスボスがシンジってわけ⁉︎ そんなのありえないわよ!」

ミサト「わかってる。私たちも、碇司令でさえも驚きを隠せないわ、だから、自分の目で確かめてきて」

レイ「……零号機、でます」

マヤ「了解! カタパルト解放!」

ミサト「頼んだわよ、レイ、アスカ!」ギリっ

>>789
すまない
かなり強引に幕引きします

- 芦ノ湖 -

カヲル「試作4号機か。アダムとリリスより生まれしエヴァンゲリオンシリーズ、リリンもわかってるんだろう? オリジナルには勝てないと」

ドォンッ

ドォンッ

マリ「……動きが、重いっ!」

加持『すまないな、4号機をパクる。それが精一杯だ』

パキーーン

カヲル「…………」

マリ「人類が諦めたら終わる! だったら! 私たちは諦めるわけにゃいかないんだよっ!」

カヲル「悲しいね、君も何十年も変わらない姿のままで……」キュイーーン

マリ「ぐっ!」

- ??? -

委員会04「NERV。われらSEELEの実行機関として結成されし組織」

委員会03「われらのシナリオを実践するために用意されたモノ」

委員会02「だが、今は一個人の占有機関と成り果てている」

委員会06「さよう。われらの手に取り戻さねばならん。

委員会01「契約と約束の日は来た」

キール「アダムとの契約を守る為にNERVとEVAシリーズを本来の姿にしておかねばならん。碇、SEELEへの背任、その責任は取ってもらうぞ」

- ネルフ本部 発令所 -

冬月「どうなっている! 息子が使徒だとはどのシナリオにもないぞ!」

ゲンドウ「慌てることはない。我々人類も使徒だ」

冬月「だが! 俺はこんなことは聞いていない! 碇シンジは何番目の使徒なのだ⁉︎」

ゲンドウ「ゼーレのマテリアルであるロンギヌスの槍は月の外周をまわっている。回収は不可能だ。シンジが何者であれ、殲滅すればいい」

冬月「……ううむっ……」

ゲンドウ「我々に残された時間はもう少ない。シンジが最後の使徒だというのならば、消せば願いが叶う。もうすぐだよ、ユイ……」

オペレーター「目標は移動を開始! 芦ノ湖からこちらに向かっています!」

マコト「これは……⁉︎」

冬月「今度はなんだ?」

シゲル「所属不明機が続々と集結しています、これは、アメリカ、ドイツ?」

ゲンドウ「各ゲートを緊急閉鎖しろ」

マヤ「は?」

ゲンドウ「急げ。全ユニットを緊急閉鎖だ」

- 第三新東京都市 -

アスカ「どぉぅりやぁああ~~っ!」ドォンッ

パキーーン

カヲル「惣流アスカラングレー、君もシンジくんに救われたんだったね」

レイ「くっ!」

カヲル「そして、君も。三人目の綾波レイ」

マリ「ATフィールドが中和できない!」

カヲル「EVAは僕と同じ体でできている。僕もアダムより生まれしものだからね。しかし、僕のATフィールドは強力だ。リリンも知っているんだろう? ATフィールドは心の壁だという事を」

マリ「ひめぇっ!」

アスカ「ちっ! フィフスが使徒だったのね! シンジをどうするつもり⁉︎」

カヲル「……それを教えるつもりはない」


キィーーン


マリ「やばっ!」

- ネルフ本部 発令所 -

リツコ「フィフスの少年が使徒⁉︎ シンジくんは⁉︎」

シゲル「光波、電磁波、粒子も遮断しています! 何もモニターできません!」

ミサト「まさに結界か……」

マヤ「目標およびEVA弐号機、零号機、不明機共にロスト、パイロットとの連絡も取れません!」

ミサト「目指すのはここしかないわ! 防御機能は⁉︎」

シゲル「既に各ユニットは閉鎖済みです!」

冬月「まだ、終わらないか」

ゲンドウ「あぁ。老人達は予定を繰り上げるつもりのようだ」

冬月「まったく、老人には変化についていけんよ」

ゲンドウ「ありのままだ。我々は選択するだけに過ぎない」

カヲル「シンジくん、キミの背負った十字架は僕が引き継ぐ。もうなにも苦しまなくていい」

シンジ「……かはっ……」ビクンッ


アスカ「シンジ⁉︎ ファースト! フィールド全開!」

レイ「零号機、フィールド全開!」

マリ「いったぁ~」

アスカ「メガネ! ぐずぐずするな! 援護!」

マリ「まったく、人使い荒いんだからさぁ~……でも、生きてるって、楽しいから、いい!」


ドンドンドンッ


カヲル「喜び、それは、美しき神々の閃光。見てごらん、シンジくん。キミを助けた人達が君を助けようとしている。キミには未来が必要だ」

シンジ「うぅぅ……」ビクン

カヲル「キミの中のアダムとリリスを僕に渡すんだ」

加持『マリ、ゼーレが動いてきてるぞ。いよいよ本チャンがはじまりそうだ』

マリ「了解! そっちで足止めして!」

加持『長くはもたない! 量産機もそちらに移動している!」

マリ「カシウスの槍は⁉︎」

加持『ロンギヌスと同様、輸送中だ」

マリ「急いでね!」

加持『……マリ』

マリ「なに⁉︎ こっち今それどころじゃないんだけど!」

加持『エヴァの研究者としていた頃の君は、こうなることを望んでいたのか?』

マリ「はぁっ?」

加持『教えてくれ、碇司令と碇ユイ、彼らと同期だったんだろう?』

マリ「私のはじまりは……」

加持『エヴァの呪縛、その真実を知りたい』

マリ「…………」

加持『イレギュラーとして別の時間軸から入りこんだ君は、この世界の全てを知っていた、なぜ知り得た?』

マリ「その話は、生きて帰れたら教えてあげるよ!」

加持『お、おい』


プチッ


アスカ「くっ!」

レイ「……っ!」


マリ「姫達も頑張ってるけど、このままじゃ勝てないないなぁ~。弐号機に乗ってればよかったかにゃ? ま、いってもしかないか。さぁて、こっちも機体捨てる覚悟で突貫するよー!」

シンジ「……か、カヲルくん……⁉︎」

カヲル「気がついたかい? もうすぐ全てが終わる。ボクが世界を作り変えてあげるよ。その世界では、シンジくんは幸せに暮らせる」

シンジ「な、なにを……っ⁉︎」

カヲル「気がついたんだ。ボクがやらなければキミは罪の意識に潰されてしまう。キミはなにも悪くない」

シンジ「……だめだ、カヲルくんの肉体じゃ耐えられい……」

カヲル「あぁ、そんなに悲しまないで。きっとまた会えるよ」



アスカ「シンジィーーっ!!」

シンジ「アスカ⁉︎」


パキーーン


カヲル「キミもしつこい」

アスカ「ふざけんじゃないわよ! こちとら黙って引き下がるような女じゃないんだからぁっ!」ガンッガンッ

カヲル「だが、ボクはキミ達を拒絶する。何者にも邪魔はさせない!」ググッ

レイ「碇くんが、もう! 戦わなくていいようにする!」

カヲル「……っ!」

- ネルフ本部 発令所 -

マコト「大気圏外より高速で飛来する物体を確認!」

冬月「ばかなっ! まさかロンギヌスの槍か!」

ゲンドウ「…………」

冬月「いかんぞ! このままでは、我々の計画は破綻する!」

ゲンドウ「冬月、あとは頼む」

冬月「どこへ行く⁉︎」

ゲンドウ「4人目のレイの元へだ」

冬月「……そうか。ついにその時がきたのだな」

ゲンドウ「ああ。予定より早いが、合わせればいい」

冬月「ユイくんによろしくな」

ゲンドウ「……ありがとうございます……冬月先生」

- ??? -

委員会05「アダムより生まれし存在、分身たる渚カヲル」

委員会03「ロンギヌスの槍もオリジナルが還る」

委員会02「リリスと禁断の融合を。我ら人類に福音をもたらす真の姿に。等しき死と祈りを以て、人々を真の姿に」

キール「人類の可能性はその先にある」

委員会全員「祈りを持って、全てをひとつに」

キール「タブリス。約束は果たした。初号機による遂行を願うぞ」

シンジ「うああああぁぁぁーーーっ!!」ビクンッ

アスカ「シンジィっ! なんで破れないのよ! フィフスからはほとんど攻撃してこないのに!」

レイ「とてつもなく強力、このままじゃ破れない!」

マリ「どいて、どいて!」

アスカ「メガネ⁉︎」


マリ「ゼロ距離ならばっ!」

カヲル「……っ!」

マリ「ぐぅぅっ! こんちくしょぉぉおぉっ!」


ビー、ビー


『自爆装置、作動します』


マリ「ひめぇ! あとよろしくー!」


アスカ「やばい! フィールド全開!」

レイ「……っ!」



ドドォーーーンッ!!

- ネルフ本部 発令所 -

ブーッブーッ

ミサト「なんの警報⁉︎」

マコト「01番ケイジにて初号機が起動!」

リツコ「パイロットもいないのに⁉︎」

マヤ「第1ロックボルト解除! S2機関による起動です! このままでは」

ミサト「作業員を緊急退避させて!」

シゲル「初号機より-値の次元測定値を確認! 数値化できません!」

冬月「アンチATフィールドか。身の丈を過ぎた望みを抱えたのかもしれんな」

ミサト「モニターは⁉︎」

初号機『ウオオオオオォオォオオ』

冬月「我々はどうすればよかったのだ」

アスカ「……メガネは⁉︎」

レイ「プラグの射出を確認してる」

アスカ「よかった、ていうか、シンジまで巻き込まれたらどうするつもりよ!」

レイ「その心配は杞憂」

アスカ「……っ!」


モクモクッ

カヲル「…………」


アスカ「そんな……」


カヲル「もうすぐ初号機と量産機がここにくる。キミたちはそれで終わりだ……!」

- ネルフ本部 地下 -

ゲンドウ「欠けた心、人は心の穴を埋めることはできない」

レイ(4人目)「…………」

ゲンドウ「人類は一つになるべきだ。しかし、それは初号機による遂行ではない」

レイ「…………」

ゲンドウ「サルベージに成功した、ユイの魂がお前の中にある」

レイ「…………」

ゲンドウ「行くぞ。セントラルドグマにリリスがいる」

ベートーヴェン 交響曲第9番 歓喜の歌

Freude schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium,
Wir betreten feuertrunken,
Himmlische dein Heiligtum!

歓喜よ 美しき神々の御光よ
エリュシオン(楽園)の乙女よ
我等は情熱と陶酔の中
天界の汝の聖殿に立ち入らん

|:Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,
Wo dein sanfter Flügel weilt.:|

汝の威光の下 再び一つとなる
我等を引き裂いた厳しい時代の波
すべての民は兄弟となる
汝の柔らかな羽根に抱かれて


アスカ「なに? この曲? どこから?」

カヲル「あぁ、やっぱり、歌はいい」

シンジ「…………」スゥ

レイ「いけない! 碇くんが消えてしまう!」

アスカ「はぁ⁉︎」

レイ「……っ!」キィーーン

カヲル「……そうだったね。キミはボクと同じだった。ボクがアダムの分身であると同様に、キミもリリスの」

レイ「碇くんは、私が守る!」ググッ

かなり雑&端折ってるのに終わらないというね
眠いんで完結は明日に持ち越し
モチベがなくなっちゃってるんでどうしても気分乗らなかったら最悪ダイジェストにします

カヲル「惣流アスカラングレー。キミも覚えているはずだよ」

アスカ「なに言ってんのこいつ!」

カヲル「ただのヒトには、断片的にしか、デジャヴュという形でしか思い出せないんだね。魂に刻まれている記憶をボクが呼び起こしてあげよう」スッ

レイ「させない! ……きゃぁ⁉︎」ガガン

アスカ「ファースト⁉︎」

カヲル「過去を見ずに前には進めない」

レイ「碇くんが積み上げてきたものを、壊させない!」

カヲル「救済と言ってくれ。ボクたちは皆、シンジくんの為に行動しているということを忘れてもらっちゃ困るね」

アスカ「フィフス! さっきからことあるごとにシンジ、シンジって言ってるけど! シンジがなにしたって言うの⁉︎」

カヲル「彼は完全な個体だよ。ボク達、全ての生命体にとって母なる、そして父たる存在」

アスカ「神だとでも思ってんの⁉︎」

カヲル「それ以上さ」

アスカ「だったら! 神様なんてのは万能なんかじゃない! だってシンジは悩んでいたもの! あんたみたいなのが神だって言うほうがしっくりくる!」

カヲル「…………」

アスカ「うらやましいんでしょ⁉︎ 人間らしさを捨てきれない、捨てないことを選んでいるシンジのことが! あんたはうらやましくて、シンジのことがまぶしくて」

カヲル「な、なにを……」

アスカ「シンジの方がよっぽど人間くさいって言ってんのよ! どこからどう見ても不完全じゃない! 試行錯誤してる! あんたみたいにひとつのことが正しいととらわれているわけじゃない!」

カヲル「だまれ」

アスカ「完全なる個体? はんっ! だからなんだっていうの? そんなのは記号よ! 神というモノだって記号だわ! だって神が本当に万能なら私たちがなぜこんなにも悩むの⁉︎」

カヲル「だまれぇ!」

アスカ「シンジを私たちに返して!」

シンジ「…………」

カヲル「ヒトは、時にこんなにも情熱を見せる。生への執着、他人への執着。だが、それでも傷つけ合う」

シンジ「…………」

カヲル「ヒトがそれぞれ違う世界。それがシンジくんの望んでいた世界なのかい?」

シンジ「か、カヲル……」

カヲル「振り上げた拳はおろさなければならない。賽は投げられたんだ」

アスカ「シンジを殺したら私があんたをヤルわよ!」

カヲル「できもしないのに?」

アスカ「ぐううぅぅっ」ボコボコ

カヲル「……暴走させる気か!」

- ネルフ本部 発令所 -

マコト「地下より新たなフィールドが発生!」

ミサト「地下⁉︎ ここから⁉︎」

シゲル「こ、これは……パターン青! 使徒です!」

ミサト「2体目⁉︎」

マヤ「セントラルドグマからです!」

ミサト「まずい! 場所が近すぎる!」

マコト「もう間に合いません!」

ミサト「本部の自爆装置は⁉︎」

リツコ「ミサト⁉︎」

マヤ「そ、そんな⁉︎」

ミサト「みんなごめん……冬月副司令……よろしいですね?」

冬月「……好きにしたまえ」

シゲル「最終安全装置、解除!……ヘブンズドアが開いていきます」

ミサト「日向くん、カウントスタートして」

リツコ「ここまでね」

マコト「……カウントスタートします、マヤちゃん」

マヤ「……うっ……ぅ……」グスグス

- ネルフ本部 セントラルドグマ -

ゲンドウ「レイ、いや。綾波ユイ。リリスと同化して乗っ取れ」

ユイ「…………」

ゲンドウ「そうすれば全てが終わる」

ユイ「…………」スゥ

ゲンドウ「……どうした」

ユイ「あなた、言わなくてごめんなさい。私の身体にはリリスの魂のかけらはない」

ゲンドウ「……っ⁉︎ ユイ⁉︎」

ユイ「行かなくちゃ。シンジが待ってる」



ドドーンッ!!

ゼーレ、連合軍がネルフに向け侵攻開始。

同時刻
ネルフ本部の自爆装置を起動。しかし、MAGIの否決により作動せず。

地下から初号機とリリスが浮上。

第一使徒タブリス(渚カヲル)ロンギヌスの槍を入手。
弐号機、暴走状態へ移行を確認。

量産機6体が第三新東京市上空に現れる。ダミープラグによりオートパイロット化に成功。
ダミープラグの思考回路は渚カヲルをベースにしている。

カシウスの槍が渚カヲルのATフィールドを貫き同目標と量産機は沈黙。EVAシリーズ、並びに初号機を依り代にするゼーレの計画は頓挫する。
カシウスの槍とロンギヌスの槍が揃うことにより碇シンジは完全に融合。同体内に槍を取り込みサードインパクトは起こらず。

弐号機、並びに零号機は激戦の末沈黙。
パイロットの脱出は確認。

碇シンジ、生命の樹になり、再び選択を迫られる。
リリス(ユイ)、碇シンジと同化。トランジスタシスとホメオスタシス(変わろうとする力と維持しようとする力)は崩壊し、魂の均衡は崩れる。

加持率いるレジスタンス部隊も同時に撤退を開始。

- 第三新東京都市 -

シンジ「アスカ、今日から学校だよね」

アスカ「えぇ、そうね」

シンジ「そっか」

アスカ「なぁ~にしみったれた顔してんのよ」

シンジ「いや、そんなつもりは……」

アスカ「あんたは選んだんでしょ、続けること」

シンジ「うん……」

アスカ「それならそれでいいじゃない。私たちはそれでいいの」

シンジ「そうかな」

アスカ「そういうもんなのよ、ほら、さっさと歩く!」

- 第三新東京市 大学 -

リツコ「……ふぅ」

ミサト「あー、どうしよぉ~再就職先」

リツコ「はやく決めたら? 私の研究室に入り浸ってないで」

ミサト「簡単に言わないでよぉ~。今さら事務員なんかしたくないし」

リツコ「軍にでもはいったらいいじゃない。経歴から見れば引く手数多だと思うけど。あぁ、実務能力は別としてね」

ミサト「ぐっ……」

リツコ「もうひとつ、道があると言えばあるわよ」

ミサト「なぁに?」

リツコ「結婚よ。加持くん、待ってるんでしょ?」

ミサト「ぶっ」

リツコ「加持くんは新聞社に決めたんですって? 収入は安定してるんじゃない?」

ミサト「だ、だぁ~れが! あんなやつと!」

- 第三新東京都市 某所 -

加持「結局、俺たちの計画通りにはならなかったな」

マリ「まぁいいんじゃん? ゼーレもゲンドウくんの計画も潰れたんだしさ」

加持「俺たちは、サードインパクトを再び起こそうとした。次にバトンを託してな」

マリ「ゲンドウくんとゼーレはワンコくんが自分たちの望んでいた可能性そのものだと知らなかったもんね」

加持「……この先どうなる?」

マリ「それこそ神のみぞ知るってやつじゃん? わかってたら面白くないし」

加持「俺たちで作っていかなくちゃな」

マリ「人間ってのはね、高め合うこともできるけど、足を引っ張り合うこともできる」

加持「…………」

マリ「なにものにも干渉されない、完璧な世界なんてものは個人の中でしかありえないんだよ」

加持「そうだな……」

マリ「なにが言いたいか本当にわかってんの?」

加持「全てはわからないさ。それも人間、だろ?」

マリ「ふふん、まぁいいよ」



加持「エヴァの呪縛、その答えを聞かせてくれないか」

マリ「んー?」

加持「これからマリはどうするつもりだ」

マリ「さぁて、どうしよっかなー」

加持「おいおい、約束だったじゃないか」

マリ「約束したつもりはないよ?」

加持「……はぁ」

マリ「ひとつ言えることは、ここでの私はイレギュラー。だから私も選ばなくちゃいけない」

加持「なにを?」

マリ「この世界で生きていくかどうか」

加持「はぁ?」

マリ「可能性のひとつってやつだよ♪」

- 第三新東京都市立 第壱中学校 昼休み -

アスカ「ヒカリ、ちょっとそっち詰めて」

ヒカリ「う、うん」

レイ「あ、あの……」

マナ「綾波さんこっちこっち。よいしょ、この並びでいいかな」

トウジ「しっかし、なんでいきなり記念写真なんか」

ケンスケ「碇、もっと笑えよ、かたいぞー」

シンジ「あ、う、うん」

アスカ「まぁ、いいでしょ。私たち大人になってくんだもの。思い出作りは必要よ」

トウジ「たまにはいいか」

ケンスケ「冬休みもどっかいくんだろ?」

アスカ「それはそれ、これはこれよ。思い出はいくつあってもいいじゃない」

トウジ「とかなんとか言いながら、忘れるんちゃうやろな」

アスカ「…………」

トウジ「図星かいっ!」

アスカ「あぁ、細かいことうっさい!」

ケンスケ「そろそろタイマーセットするぞ」


全員「はい、チーズ!」カシャ

これで完結です。
最後は予定していた形ではなかったのでかなり説明不足&雑になりましたが全部回収するとまだ終わらないので割愛します。

長く続けるのはモチベ管理が難しいですね。
次エヴァネタでSSを書くことがあれば100レスぐらいで終わるものを書きたいと思います。

これまで読んでいただきありがとうございました。

いろいろ消化不良あるので答えますよ

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