トール「小林さんを無視し続けたらどうなるか……」 (39)

~自宅~


小林「おーい、トールー」

小林「いないの~?」

トール「……」

小林「何だ、いるじゃん」

トール「……」

小林「買い物行くんでしょ?お醤油が切れてるから一緒に……」

トール「……」

小林「トール?」

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小林「トール、返事してよ、機嫌悪いの?」

トール「……」

小林「はぁ……仕方ない、お醤油は私が買ってくるか」

トール「……」

小林「……じゃ、行ってきます」

~数時間後~

小林「ただいま~」

トール「……」

小林「お醤油、買ってきたよ」

トール「……」

小林「……まだ機嫌が悪いの?」

トール「……」

小林「私、何か変な事したかなあ……」

トール「……」

小林「……そっか」

小林「……うん、何時かこんな時が来るんじゃないかなって思ってた」

トール「……」

小林「トールはさ、ほら、ドラゴンだしさ」

トール「……」

小林「価値観って言うのかな、私たち人間とはやっぱり、会わない事もあるんだと思う」

トール「……」

小林「うん、だから……」

トール「……」

小林「今まで、ありがとうね、トール」

トール「……」

小林「楽しかったよ……」

トール「……」

小林「……」

トール「……」スタスタスタ

小林「あ……」

~外~


トール「……」

トール「……」

トール「……」

トール「え、えぇぇぇぇ……」

トール「ど、どうしてあんな流れになっちゃったんですか……」

トール「こ、小林さん諦めが早すぎますっ!」

トール「もっとこう、涙ながらに私を引き止めるとか!」

トール「服を脱いで身体で私を引き留めようとするとか!」

トール「そ、そんな流れを期待していたのに!」

トール「ど、どうしましょう、雰囲気に流されて無言で出てきてしまいました」

トール「早く、早く戻って誤解を解かないと……!」

~自宅~


カンナ「コバヤシー、トール様は?」

小林「あー、うん……」

カンナ「?」

小林「トールは……ね、帰っちゃった」

カンナ「え……」

小林「あははは……」

カンナ「ど、どうして?どうしてトール様帰っちゃったの?」

小林「うん、多分、愛想を尽かされたんだと思う」

カンナ「そ、そんな事ない、トール様はコバヤシのこと、大好きだった」

小林「けど、私はトールの好意にちゃんと応えてあげられてなかったしさ……」

カンナ「コバヤシ……」

小林「私はさ、甘えてたんだよ、トールに」

小林「トールはさ、私の事を好きだって言ってくれていた」

小林「けど、私は、性別を盾にその事を考えないようにしてた」

小林「トールからしたら、やっぱり辛かったんだと思う」

小林「きっと、知らないうちに傷つけてたんだろうな……」

カンナ「……」

小林「あ、そうだ、カンナちゃんも早く帰らないと」

カンナ「え……」

小林「だって、カンナちゃんは元の世界に戻るのにトールの力が必要なんだろ?」

小林「だったら……」

カンナ「……かえらない」

小林「え?」

カンナ「……」ギュッ

小林「カンナちゃん……」

カンナ「私は、コバヤシと一緒にいる……」ギュー

小林「けど、トールについていかないともう帰れないかもしれないよ?」

カンナ「……いい」

小林「本当に?もうお父さんとお母さんに会えないかもしれないんだよ?」

カンナ「……んぐっ」ウルッ

小林「ほら、泣きそうになった」

カンナ「そんなこと、ないっ」

小林「私の事は心配しなくていいからさ、帰ろう?ね?」ナデナデ

カンナ「……やっ!」ブンブン

小林「もう、どうしてそんな強情なのさ」

カンナ「……だって」ブー

小林「だって?」

カンナ「……私は、誰かの特別になりたかったの」

小林「特別?」

カンナ「そう、トール様にとってのコバヤシみたいな」

カンナ「どんな陣営や種族の壁も越えられるような、特別に」

カンナ「私はコバヤシにそうなってほしかったけど、コバヤシにはトール様がいたから、諦めてた」

小林「カンナちゃん……」

カンナ「けど、けどトール様がコバヤシにとっての特別じゃなかったのなら」

カンナ「私が、私がなりたいの」

カンナ「コバヤシの特別に、私が」

カンナ「ずっと、ずっとそばにいるから、だから……!」

~窓~


トール「……」

トール「……」

トール「……あ、あわわわ、な、なんで、どうして」

トール「どうしてカンナと小林さんがあんな会話してるんですか」

トール「どうして、小林さんもちょっと嬉しそうなんですか」

トール「どうして、カンナの頬はあんなに紅潮してるんですか」

トール「どうして、どうして、どうして、うががががが」

トール「はぁ、はぁ、はぁ、だ、駄目です、自分の頭で処理できません」

トール「ここは誰かに相談を……小林さんから貰っていた携帯で……」ピピピピ


「トール君?どうかしたのかい?」


トール「エヘカトル?実はあれがあれしてこうなって……」


「……トール君」


トール「はい!何か状況を改善する妙案ありますか!?」


「……無理だよ、それは」


トール「え……」


「それはね、やってはいけなかった事なんだ」

「例え何か狙いがあったとしても、やってはいけなかったの」

「例え表面上仲直りできたとしても、トール君のやった事は消えないよ」

「小林さんの心の中で、ずっとしこりとして残り続ける」

「だから……」


ガチャッ


トール「……ファフニールさんに聞いてみましょう」ピピピピ

「殺せ」

「奪った者を殺せ、奪われた者を殺せ」

「何も残すな、それらを記憶している者をすべて殺せ」

「殺し尽くせ」


トール「……」

トール「……」

トール「……」

トール「……ハイ」

~自宅~


小林「うん、判った、特別……というのは正直、まだ判んないけど」

小林「カンナちゃんがここにいてくれるっていうなら、私も嬉しいかな」

カンナ「やったのー」ギュー

小林「あはは、くすぐったいってカンナちゃん」

カンナ「コバヤシコバヤシコバヤシー!」ゴロゴロ

小林「おっと、そろそろ晩御飯の準備しないとね?」

小林「カンナちゃん、何か食べたいものある?」

カンナ「オムライスー」

小林「そっか、トールみたいに上手く作れないかもしれないけど、いいかな?」

カンナ「コバヤシのオムライスがいいー」

小林「……そっか」

小林「じゃ、ちょっと買い物行ってくるから」

小林「大人しく待っててね?」

カンナ「……」

小林「カンナちゃん?」

カンナ「……私も一緒に行く―」

小林「そう?」

カンナ「うん」

小林「よし、カンナちゃん、おんぶしてあげよっか」

カンナ「え、いいの?」

小林「うん、いいよ、だってさっきカンナちゃんから貰った言葉、凄くうれしかったし」

小林「だからそのお礼も込めてね?」

カンナ「わーい!コバヤシだいすきー!」

小林「よいしょっと……」

カンナ「ひくいー」

小林「あはは、ごめんね、背が低くて」

カンナ「でもきもちいいー」

小林「そっか」

カンナ「ご飯食べたらおふろはいろー」

小林「うん、背中洗ったげるね」

カンナ「そのあとは、テレビ見るのー」

小林「今日は洋画やるからね、一緒に見よっか」

カンナ「見ながら抱っこしてほしいー」

小林「いいよ、今日は寒いしね」

カンナ「えへへ」

小林「ふふふ」





トール「……」




トール「……」ピッピッピッ

トール「……あ、もしもし警察ですか、実は誘拐犯の情報を」

トール「はい、はい、幼女を自宅に連れ込んで……いいえ、身内とかじゃないみたいです」

トール「そうです、無理やりです、毎晩裸にして、はい、レズレイプしてるらしいです」

トール「ロリレズレイプです」

トール「ドラゴンロリレズレイプです」


 

ピーポーピーポー


警察A「ほら、早く車に乗れ」

小林「ち、違う!違うんだって!」

カンナ「こ、こばやしー!」

警察B「こんな幼い子をドラゴンロリレズレイプするなんて、何て奴だ」

小林「し、してないって、そんなことしてないから!」

カンナ「コバヤシー!」

警察A「君、大丈夫かい?辛かっただろう?」

カンナ「辛くなかった、コバヤシ優しかった、だから連れていかないで」

警察B「恐らくショックのあまり、状況が出来なくなってるんだろう……可哀想に……」

警察A「君、何か、今何か欲しいものは無いかい?飴くらいなら……」

カンナ「欲しいもの?」

警察A「ああ」

カンナ「じゃあ、コバヤシの子をはらみたいー」

警察A「え……」

警察B「え……」

小林「え……」

カンナ「はらみたいー」

警察A「な、なんてことだ……そんな事を毎晩吹き込まれていたのか!」

小林「ち、違う!違うってば!カンナちゃん、変な事言わないで!」

カンナ「コバヤシの特別になりたい、つまりそういう事なの」

小林「くっ……」

~刑務所~


小林「ああ、なんでこんな事に……」

小林「けど、きっと大丈夫だよね」

小林「カンナちゃんがちゃんと証言してくれたら、きっと冤罪は晴れて……」


看守「おい、ドラゴンペドレズレイプ野郎、新入りだ」

看守「殺人犯らしいからな、精々気をつけろよ」


小林「え……」ビクッ

小林「ど、どうしよう、ちょっと怖いな……」

小林「殺人犯って、どんな人なんだろ……」

トール「はーい♪殺人犯のトールでぇーす♪」

小林「……は」

トール「んふっ♪」

小林「と、トール!?なにやってんの!?」

トール「何って……殺人して監獄に入ってます」

小林「さ、殺人って、なんで!?」

トール「……」

小林「と、トール?」

トール「……小林さんの、為です」

小林「私の、ため?」

トール「はい、小林さんは、ドラゴンペドレズレイプの罪を犯しました」

小林「やってない、やってないからね?」

トール「いえ、一度ついた烙印はもうとる事は出来ません」

トール「小林さんの人生には、一生その烙印が付きまとうんです」

トール「この社会ではそれは致命的な穢れです」

トール「小林さんはもう、墜ちるしかないんです……」

トール「だから、だから、私も……」

トール「私も一緒に、墜ちてあげます」

小林「そんな理由で、そんな理由で人を殺したの?」

トール「そうですよ、私は今までも人間をたくさん殺してきましたから」

トール「今さら一人や二人増えた所で変わりません」

トール「軽蔑しますか?してくれてもいいですよ」

トール「けど、けどね、小林さんにはもう……私しかいないんです」

トール「私に頼る以外にないんです」

トール「でないと、貴女はずっと1人ですから」

トール「人間は一人では生きていけない、肉体的にも精神的にも……違いますか?」

小林「そ、それは……」

トール「……今だから言いますが、小林さんを無視していたのは気を引きたかったからです」

小林「え……」

トール「どうですか、つまらないドラゴンでしょう、私は」

トール「けど、些細な事ですよね、人を殺した事に比べれば」

ザワザワザワ


トール「はい!と言う訳でこの監獄にいる囚人の中での順列を決めまーす!」

トール「1番の上位存在はこちらの小林さんです」

小林「は、ははは……」

モブA「はあ?突然何言ってんの?そんな事認められるはずが……」

トール「はい、ドーン!」


ドガン


モブB「ひっ!い、一発であんなに吹き飛んだ!?」

トール「順列2位は私、トールです♪」

カンナ「3ばんめは私なのー」


「小林さんを無視し続けたらどうなるか……」

「結論、監獄の中でエンジョイする羽目になる」

「トール覚えました!」








 


小林「トールを無視し続けたらどうなるか」



 

~自宅~


トール「小林さーん!買い物行きますけど、何か必要なものあります?」

小林「……」

トール「小林さん?」

小林「……」

トール「疲れてるのかな……じゃ、ちょっと買い物行ってきますね?」

小林「……」

~数時間後~


トール「ただいまかえりました!」

小林「……」

トール(なんだろ、何時もはちゃんとおかえりって言ってくれるのに)

小林「……」

トール「あの、小林さん?もしかして、何か怒ってますか?」

小林「……」

トール「……小林さん」

小林「……」

トール「……」

小林「……」

トール「……もしかして」

トール「もしかして、認識阻害が暴走して、私の姿が小林さんに見えなくなってしまったとか……」

小林「……」

トール「そうです、そうとしか考えられません」

小林「……」

トール「きっと、きっとそうですよね、小林さん」

小林「……」

トール「……ふ、ふふ、こばやし、さん♪」ソーッ

小林「……」

トール「やぁ♪」ダキッ

小林「……」

トール「はぁ、はぁ、小林さん、こばやさしぁん///」スリスリ

小林「……」

トール「いいですよね、直接、直接しちゃってもいいですよね///」ハァハァ

小林「……」

トール「ふふふふふ///」レロォ

小林「……!」ビクッ

トール「はあ、はあ、小林さんの老廃物が、老廃物が///」レロォレロォ

小林「や、やめっ……」

トール「あら?」

小林「……」

トール「おかしいですね、小林さん、今反応しました?」

小林「……」

トール「そうですか、気のせいですか、じゃあ……」モゾモゾ

トール「ふふふふ、じゃあ、こっちのほうの老廃物も、頂いちゃおうかな……」ジュルリ

小林「!?」

トール「小林さんの、お・し・り……」

小林「……」プルプル

トール「いただき、まぁす♪」ペロリ

小林「い、いい加減にしろー!」フガー

トール「きゃあ?」

トール「もう、ちゃんと私の事が見えてるんじゃないですか小林さん」

小林「それゃ見えてるよ!」

トール「がっかりです、折角小林さんに色んな事を出来ると思ってたのに……」

小林「くっ///」

トール「けど、どうして私を無視なんてしてたんです?」

小林「……そりゃあ、私を陥れて刑務所になんて入れられたら無視の一つもしたくなるよ」

トール「もー、あれはエヘカトルに時間を巻き戻してもらってなかった事になったじゃないですか」

トール「ノーカンですよ、ノーカン」

小林「ほんとにそんな事で話が通ると思う?」

トール「はい、すみませんでした、反省してます……」

小林「はぁ……まあ、いいけどさ」

「トールを無視し続けたらどうなるか」

「私がレズレイプされそうになる」

「もう覚えたからな」








おわる

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