ちひろ「プロデューサーさんが背番号1のユニホームを着ている…」 (24)

ちひろ「そして彼は机に突っ伏して、時折鼻を啜る音が聞こえています」


モバP「うう…。うう…」


卯月「何があったんでしょうか…。プロデューサーさんが人目もはばからず泣いているなんて初めてです…」


凛「白いユニフォームと何か関係あるのかな?スーツの上から着ているんだけど…」


未央「なんか本気で泣いているから、声かけずらいね…」


4人「…」


ちひろ「…私が話しかけますね。このままでは業務に支障が来そうですし」


ちひろ「プロデューサーさん。どうしたんですか?職場で泣くなんて…。我慢しきれないことがあったんですか?」


モバP「うう…。うう…」

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卯月「悩みがあるんでしたら私たちが聞きますよ?」


凛「プロデューサーのように上手く出来ないけど、相談に乗るよ」


未央「プロデューサーが悲しんでいると、私たちも悲しいからさ!」


モバP「」つスマホ


ちひろ「携帯を出してきましたね。この画面に表示されているのはスポーツ新聞の記事ですね」


スマホ「ラクテン ゴトウ引退!球団職員として再スタート!」


卯月「ラクテンってなんですか?」


未央「ラクテンって、プロ野球の球団の名前だよ。ラクテンいーぐるすって名前。まークンとか、ノリモトがいる球団だよ」

凛「そのゴトウって選手が引退しているから、人目もはばからず泣いているの?」


モバP「うう…。うっううううう…」


卯月「凛ちゃん!駄目ですよ!泣いている人に高圧的な態度で接しちゃ!余計に泣いてしまいますよ!」


未央「ゴトウって選手は、プロデューサーとどう関係があったの?」


モバP「お、おれのっ…。ぷろやぎゅうを、おりっぐずを、おうえんする、きっがげのひどなんだよ…」


ちひろ「泣きながらも器用に話しますね…。しかし、プロデューサーさんのおりっくす愛は、友紀ちゃんのキャッツ愛に負けないところもありますからね」


卯月「ここに書いてある、『最後の青波戦士』ってどういう意味なんですか?」


未央「私を見ないでよ。しまむー。私だって分からないから…」


凛「だからって私を見ないでよ!」


未央「いや、青ってつくからさ」


卯月「青なら凛ちゃんが詳しそうなので!」

凛「私だって分からないよ。ちひろさん何か知ってる?」


ちひろ「いえ…。プロ野球の何かの隠語何でしょうか?」


モバP「ぞうだよなぁ…。やぎゅうにぎょうみがないひどは、わがんないよなあ…」


凛「プロデューサー…。鼻水なのか涙なのか分かんないくらい顔がひどいよ…」


卯月「プロデューサーさん。鼻かんでください。はい。ちーん」


モバP「ちーん」


未央「しまむー。慣れてるね…。将来は保育士さん?」


卯月「アイドルですよ!未央ちゃん!」


ちひろ「さあ、落ち着きましたか?泣いていた理由を話してください」


モバP「…すまなかった。見苦しい姿を見せてしまって」


凛「ビックリしたよ。あんな姿のプロデューサー見るの初めてだし」

モバP「まあ、ここに書いてあったゴトウという選手が引退。というニュースをみて泣いていたんだ」


未央「ラクテンのゴトウは、ラクテンいーぐるすの?」


モバP「うん。この前戦力外って話があったから薄々覚悟はしていたが、いざ引退と聞くと涙があふれてしまってな…」


卯月「そんなにゴトウって選手は凄い人なんですか?」


モバP「うーん。プロなんだからすごいのは当たり前だけど、目立ってすごい成績は無かった。首位打者とか本塁打王とかなければ、ゴールデングラブも取ったこともない」


未央「うぃきで見たけど、15年のプロ経験で通算で1300試合ほど出てたんだね。ヒットも1200本以上打ってる」


凛「結構すごい人だったんだね。15年もプロの世界で戦える人なんてそういないもんね」


ちひろ「そんな人が引退というのは悲しいですが、『最後の青波戦士』というのは?」


モバP「それを話すには、少し長くなるけどいいかな?」


卯月「良いですよ。ね?みなさん?」


凛「まあ、行きがかり上、ね」


未央「良いよ。未央ちゃんがどーんと聞いてあげる」

モバP「ゴトウは元々、おりっくすにいた選手なんだ。2001年にドラフト10位指名というものすごく低い順位で指名された」


卯月「10位ってそんなにすごく低いんですか?」


モバP「簡単に言えば10順目の指名ということだ。他球団はさほど見向きもしない選手という位置づけになってしまうんだが…。その年、おりっくすは15順目まで指名し、14人の選手を獲得したんだ」


未央「え?まだゴトウよりも後に指名した人もいるの?」


モバP「そういうことだ。当時、おりっくすの指名方針は数撃ちゃ当たる方針で、この中で長く活躍できた選手は、ヒラノとゴトウ。モトヤナギとハヤカワくらいだった」


凛「苦労してたんだね。その様子じゃ、大変だったんじゃないの?」


モバP「と思うだろ?おりっくすはあの稀代の大打者、いちろーを生んだ球団なんだぞ」


未央「え!?いちろーっておりっくす出身だったの?」


卯月「てっきり最初からメジャーで頑張っていたんだと思っていました…」


モバP「今の十代は、そんなもんだよな。今ではおりっくす=Bクラスの球団だが、90年代は黄金時代だったんだ。さっき言ったいちろーとタグチのメジャーでも活躍した二人もいた」


ちひろ「タグチさんなら聞いたことありますね。確か2回ワールドチャンピオンになっていませんでした?」


モバP「チームとしては2度ですが、最後はほぼ出番なしでの優勝なので微妙ですね。――タグチといちろーの他にも素晴らしい選手、オオギ監督という素晴らしい監督がいて95年、96年はパリーグ連覇。日本一にもなったんだ」

ちひろ「特に95年は阪神大震災がありまして、後世に残る名言がんばろうKOBEが生まれましたね」


モバP「しかもリーグ優勝してるんですから、スポーツの、文化の力というのは恐ろしい物でしたね。東日本大震災や、今回の熊本の地震の時も『がんばろう~』が使われましたね」


凛「いちろーは日本でもすごい選手だったんだね。うぃきでみたけど、ずっと首位打者獲ってる」


モバP「そんな有力な選手も海を渡り、優勝経験者も年が経つにつれて退団していく。いちろーとタグチがいなくなって2年。おりっくすは恐ろしいことが起きた」


未央「何が、起きたの?」


モバP「2002年。ゴトウがルーキーの年だな。おりっくすから防御率が良い2人が出てきた。カネダとくーという投手だ。それぞれ2.50と2.52という素晴らしい成績を出した」


卯月「どれくらいすごいんですか?」


モバP「防御率というのは、1試合9回でこの投手は何点失うかという数値だ。この二人は2点、もしくは3点以内に抑える。これは相当優秀な数値だ」


凛「ふーん。そんな優秀な二人がいるということは、おりっくすは相当勝てたんじゃない?」

モバP「9勝16敗」


未央「は?」


モバP「この二人が投げて、カネダは4勝9敗。くでそんは5勝7敗だ。合わせて9勝16敗。7つの負け越しだ」


ちひろ「ダメじゃないですか!」


モバP「この年おりっくすは、歴史的貧打で最下位。優勝したらいおんずと39ゲーム、5位のファイターズからも10ゲーム離されるというぶっちぎりな最下位だ」


凛「全然駄目じゃん…。優勝した時の記憶はどこ行ったの?」


卯月「ゴトウさんはどうだったんですか?」


モバP「ドラ10ルーキーながらも1軍で32試合出場を果たし、ホームランも2本放っている。上々な出だしとなった」


卯月「良かったですね!」


モバP「そして2003年。おりっくすファンは失われまくった1年を目の当たりにするんだ…」

モバP「2003年。その年は投手陣が打たれまくった。0対9とリードしまくった試合が、最終的には12対12で引き分けたり、0対9が11対9で負けたりすることが出てきた」


凛「大問題だね。カネダとくでそんはどこ行ったの?」


モバP「特にほーくすにはメッタメタにやられ、20失点以上の試合を4試合、特に8月1日は29対1という野球では到底出来ない結果を残した」


未央「もうプロなのかもわからない状態だね…」


モバP「暗黒時代だった。この年は1試合でほぼ6点取られるというやられっぷりで負け越し40と優勝チームから33ゲーム離された。5位とも14ゲームというぶっちぎりだった」


ちひろ「暗黒ですね…。さぞ辛かったでしょうね…」


卯月「ご、ゴトウさんはどうでしたか?」


モバP「この年、出場が多くなり99試合出場。本塁打も9本となり、1軍定着まであと一歩というところまで来ていた」


卯月「順調に頭角を現していますね!良いことです!」


モバP「そして2004年。アレが起きてしまいます…」


ちひろ「あっ…」

凛「ちひろさん知っているの?」


ちひろ「球団合併…。おりっくすは今はもうないキンテツと合併してしまうんです。この結果でぶるーうぇーぶとキンテツという名前が消えてしまうんです。代わりにラクテンが生まれることになりました」


モバP「ぶるーうぇーぶだから青波戦士。04年から減り続けて同期入団のヒラノが引退した2年前。ついにゴトウといちろーだけとなってしまったんだ…」


卯月「いちろーさんは、順調にアメリカで記録を作っていきましたが、ゴトウさんはどうでしたか?」


モバP「04年から背番号は1に代わっていた。その後、ゴトウはケガに泣かされるシーズンが1年おきに起きてしまい、中々1軍フルシーズンというわけにはいかなかった。タイトル争いの条件となる規定打席に始めて到達したのは08年だった。その時は14本塁打と長打力もすごかった」


凛「いろいろ苦労しながらもキャリアの階段を上がってきたんだね」


モバP「ゴトウノ持ち味は、その長打力。普通の人なら手を出さないようなコースをホームランにする変態打法と、身体能力を駆使したファインプレーが、すごかった。ゆーちゅーぶにあるはずだから見てほしいね」

モバP「そしてゴトウが輝くシーズンがやってきた。オカダ監督が就任となり、ゴトウは3番に定着することとなった」


未央「おお!ついに来たんだね!」


モバP「10年ではほぼ全試合の143試合に出場。最多の16本塁打11年シーズンではオールスター明けから打ちに打ちまくり、首位打者まであと一歩のリーグ3位の打率をマークし、月間MVPも獲得した。」


卯月「すごいですね!」


モバP「しかし、成績低迷でオカダ監督は12年シーズン終盤に解任。モリワキ監督に代わると、出場機会は半減。そしてその年のオフ、ラクテンにトレードされてしまった」


凛「一応チームの顔だった選手だったんだよね。1年結果が出ないだけで放出って厳しいね…」


モバP「そこがプロのむずかしさだな。楽天移籍1年目では苦戦していたが、2年目はマツイカズオの代役として規定打席にも乗るくらい出場機会を得た。さすがに年齢の衰えもあったが、30代後半とは思えない溌剌としたプレーを見せて安心していたんだ…」

モバP「らくてんは日本一になったシーズンオフの移籍で、翌年は最下位。そして次のシーズンも最下位…。一方おりっくすは2014シーズンは、大躍進を遂げてホークスに薄氷の2位で終えて、翌年は5位…。お互いにBクラスに甘んじるシーズンだった」


卯月「ラクテンに来た直後にAクラスって言うのもなんだか淋しいですね…」


凛「ラクテンとおりっくすはあまり上位にいないイメージだけど、ゴトウがいた時はAクラスあったの?」


モバP「1回だけ。08年シーズンだ。その時も主力として頑張っていたが、ふぁいたーず相手に負けてしまったんだ」


未央「15年やってて、Aクラス1回だけって淋しいね…」


卯月「お、オールスターはどうだったんですか?」


モバP「…出場は1回もない。パリーグの二塁手は結構激戦区でな。ケガがちで春先調子が上がりにくいゴトウにとってはかなりつらかった。プロ通算1000安打以上を記録してオールスターに未選出はわずか2人。その一人も今年、遂に初選出を果たした」


未央「あっ…」


モバP「中々表舞台に縁のないゴトウ…。逆に応援したくなった選手なんだよな…。オールスターもタイトル争いもほぼないが、通算成績は本当に立派だと思うんだよな」

凛「他の球団は獲得しなかったの?」


モバP「…そこはどうなのか分からないが、38歳という年齢がネック過ぎたんだろう。内野と外野全て守れるユーティリティとパンチ力ある打撃で実績も十分だったが…」


卯月「おりっくすは見向きもしなかったんですね」


モバP「主に使うだろう二遊間はニシノとアダチがしっかり確保している。後藤より少し若いハラタクが戦力外になったということは、ゴトウを取る気はなかったと思っていた」



モバP「それに同じ二遊間が守れる選手が戦力外になったのも大きかったな。タナカという選手が出たことで市場価値が下がったのも一因かもしれない」


4人「…」


ちひろ「そのユニホームはおりっくす時代のユニホームなんですね…」


モバP「部屋に飾ってあったが、引退のニュースを見てもう一度着たくなってな…。選手は入る球団、時代を選べないが暗黒時代を引っ張ってきた中心人物として、俺は誰よりも愛着があったと思う」


卯月「おりっくすファンも辞めるんですか?」


モバP「それは辞めない。おりっくすがリーグ優勝して、日本一になるまでは辞めないんだろうな。みくにゃんのファンは辞めるだろうけど」


未央「不憫なみくにゃん…」


モバP「さてと、仕事に戻るか…。俺は輝かしいアイドルたちに囲まれて、輝かしいキャリアを過ごせているんだ。そのことを幸せに思って…」


ちひろ「今日は幸子ちゃんがスカイダイビングの日ですよ!」


幸子「何なんですか!カワイイボクがオチの要因なんて聞いていませんから!」


――劇終!

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