【Elona】 タイトルとか思いつかなかった 【妄想】 (36)


Elonaというフリーゲーム見つけて、触ってみたらすごい面白い世界観だったのでなんか勢いで書いてみる

こんな要素があったらもっと満足なのになーという個人的な願望が混じるので原作に完全準拠とはならなさそう

(書き溜めは)ないです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1480247005

世界観かんたんせつめー

物語の舞台となる時代(シエラ・テール文明というそうです)の前にも、10個くらい文明あるそうですが割愛
神々が大戦争したり、神々が星をまるごと使って実験したら生態系が崩壊したりと色々ハードなことがあったとかなんとか


地球と同じくらいの大きさの星での物語

かつて非常に科学技術の栄えた「レム・イド」と呼ばれる文明がありました

その文明は、「エーテル」と呼ばれる非常に有益な物質を発見し、それを採取するために、エーテルを発生させている森林の木々を伐採し続けました

が、実はエーテルという物質は星の免疫作用を担っており、エーテルを発生させている森林の伐採は星の免疫作用を大きく損ねてしまいました

エーテルが自然環境から減り続けていくなかで、突如「メシェーラ」と呼ばれる凶悪な細菌が発生し、星のあらゆる生命体は大変な被害を受けました

メシェーラの被害は収まらず、長い年月の中でレム・イド文明は滅び、星自身も死に絶えようとしていました

そんな時に、エーテルを大量に発生する森、「ヴィンデ―ルの森」が現れメシェーラは星から駆除されました

しかし、既に星の上にはメシェーラに適応した生物が現れてしまっていました

メシェーラに適応してしまった生物にとってエーテルは劇薬でした

そんななかで、ヴィンデ―ルの森の近くには、エーテルへの適応を残す「エレア」と呼ばれる種族が発生していました

このころにはレム・イド文明に関する知識はほとんど残っておらず、メシェーラに適応した生物たちの生活圏に住む人々にとって森はただただ危険な存在と認識されていました

そしてある日、ヴィンデ―ルの森は急速に拡大を始め、エーテルの被害もそれに合わせて一気に拡大しました

エーテルへ適応できているエレアという種族に対して、メシェーラに適応してしまった人々は、彼らがエーテルを生み出す原因なのではないかと疑い始めました

その不安をザナンという国の皇子が煽り、人々はエレアを絶滅させようと動きだしてしまいました

かくして人々はレム・イド文明が犯した、エーテルの自然環境からの除去という過ちを繰り返そうとしている・・・

(色々調べて書いたけど間違ってる可能性大なので、気になった人はぜひ自分で調べたり、ゲーム遊んでみて)

おはなしの舞台せつめー


メシェーラに適応してしまった人々の生活圏でのおはなし
イェルス、ジューア、ザナンという三つの国を巻き込む戦争が勃発中(という設定)
位置関係は、大陸に位置するジューア国、ジューア国が位置する大陸のすぐそばの島に位置するザナン国、そして広い海を挟んで別の大陸に位置するイェルス国

(大陸 ジューア)~~~海~~~(島 ザナン)~~~~~~海~~~~~~(別の大陸 イェルス)

現在はイェルス国がジューア国対して侵攻中
ザナンはジューアが攻め落とされると自分たちの領土への橋頭保を築かれてしまうので、表向きは中立を装いつつ、裏ではジューア国に対して援助中(という設定)

・イェルス
機械文明の発達した国家
魔術に対しては否定的で、それゆえ魔術研究の盛んなザナンとはたびたび戦争状態に陥る
現在最大レベルの国力を誇る国家であり、勢力拡大にも積極的

・ジューア
元は遊牧民の集まりである広大な国家
「ジューア」という強大な一族が国をまとめてはいるが、本質はたくさんの部族の集まりなので、国としての統率はそれほどとれていない
また、ならず者や犯罪者が国外から流れ込んでくることが多い国であり、治安は良くない

・ザナン
奴隷制、階級制のある排他的な面の強い国家
魔術研究及び医学研究が盛んで、強大な軍隊を有している
島国なため国土は狭いが、国力は高い

ジューア国 イェルス軍第3前哨基地から数キロの草原


「ハァ..ハァ..」ドサッ

一人の戦士が鎧の重みに耐えれないというかのように枯れかけた木の根元に腰を落とす

全身に傷を負っており、その鎧もところどころ損壊してしまっている

「..ハァ....ハァ.....」

日は暮れかかっており、さきほどまで温かく揺れていた草原は、いつしかその中をさまよう者達を呑みこんでしまいそうな暗さを孕みはじめていた

ザッ..ザッ..ザッ..

「..!」

ガササッ..ガサッ..バササッ!

イェルス兵A「っ!見つけたぞっ!みんなここだぁ!」ザッ!

B「そっちか!今行くぞ!」C「絶対に逃がすなよ!」D「お前たち、急ぐぞ!」

A「忌々しいジューアの奇形兵め..昼間はよくもやってくれたじゃないか?」ジャキッ

「あ..や、やめて..」フルフル

残忍な笑みを浮かべた兵士のかまえる槍の穂先は、まっすぐに戦士の心臓を狙っており、少しでも逃げるそぶりを見せればそれがすばやく胸に突き立てられることは疑いようもなかった

戦士に槍を持った兵士が睨みを効かせているうちに、かなり大柄な兵士が草むらをかき分けて姿を現す

A「おう、見つけたぞ、こいつだ」

B「こいつかぁ、白昼堂々うちの物資集積地に一人で侵入してめちゃくちゃにしてくれたの、はっ!」ドゴッ!!

「がっ!..ぐ..ぅ..」

大柄な兵士は軽く助走をつけながら戦士に近付いてきたかと思うと、かなりの勢いで脚を振り抜き、硬い軍靴のつま先で戦士の腹を蹴りつけた

A「ひゅー!さすがだなB、うちの部隊一の健脚は伊達じゃーないぜ」

B「はっはっは!任せとけ、ってぇ!!」ボゴッ!!

兵士2人が戦士の胴体を蹴りつけていると、少し遅れてさらに2人の兵士が現れる

その片方、一兵卒というよりは彼らを率いる将校と言ったほうが良さそうな雰囲気の、眼鏡をかけた男が2人に声をかける

D「なにをやってるんだA、B、やめてやれ」

C「..たしかこいつ殺しちゃだめなんだろ?」

陰鬱そうな表情の小柄な兵士も、低い声でDに賛同を示す

D「あぁそうだ、それにあまり弱らせるのもよくない、拷問できなくなるぞ..っと、よし」

冷静な口調で言いつつ蹴りつけていた二人を引き離し、ぐったりとなった戦士の体を兵士は手際よく縛り上げる

A「おいおいw、少しくらいいいだっろっ!」バキィッ!

B「そうさ、メシ抜きでも10日は生きてるような連中だぞw」ドゴッ!!ドゴッ!!

縛られながらもなんとかお腹は守ろうと体を丸める戦士、すると今度は守りの薄くなった頭部に、容赦なく蹴りが浴びせられる

C「メシ..こいつのせいで俺たちゃこの先1週間はまともなメシにはありつけないのか..はぁ..」

「ぁ..ぅ....」

D「よせよせ!そこまでだ、おいC、馬にこいつをくくりつけるのを手伝ってくれ」

C「へいへい..あぁ、先に報告だけやっといたほうがいいんじゃないか」

D「そうだな、おいA、信号弾を上げといてくれ」

A「おう、わーったよ」

兵士は腰に付けた信号弾の打ち上げ機を手に取ろうとし、そしてよろけてそれを落とした

A「?」

立ちくらみか、いや頭はいつもどおりに周囲の状況を把握できている、ならなぜよろけたのだ

ズゥンッ....!

A「っ..こいつは!」

D「..!みんな馬につかまっ」

次の瞬間、草原に突然開いた大穴が一帯の大地ごと兵士達を呑みこんだ

むせかえりそうな濃い臭い

嗅ぎ慣れた臭い

危険の臭い

「ッ..!ゴボッ、ゴホッゴフォッ..」ビチャビチャ

口一杯にあふれていた自らの血液によって窒息しかけていた戦士はすんでのところで意識をとりもどし、這いつくばったまま激しく咳き込む

意識を失ってどれだけの時間が経ったのだろうか、吐き出した血液はかなり粘ついている

暗い

ただ光が無いというわけではない、光源が無いうえにさらに霧のようなものが漂っているような暗さ

とはいえジッとし続けているのにも限界を感じたのか、戦士はゆっくりと体を起こそうとする

「ぁ..ッ!」ドサッ

そしてようやく戦士は自分の状態を把握した

腹部にぽっかりと、直径30センチほどの穴が開いている

上半身と下半身はもはや背骨だけでつながっていると言ってもいい

その身に籠められていた強力なリジェネレーションの魔法が、なんとか戦士の命の期限を先延ばしにしているが回復には到らない

「..ッ..ッ!」ポロポロ

痛みを打ち消す魔法は発動していないようで、震えながら涙をこぼす戦士、おそらく死んだ方が楽になれるだろう

ボウッ

突如光が戦士を照らす

針のように細くなった瞳孔で光の来る方向に顔だけ向けた戦士の目に映ったのは、頭部から大量の血を滴らせながら松明を掲げるイェルス兵の姿だった

【豆知識 地殻変動】

Elonaのゲーム上の世界においては、「地殻変動」という現象が頻繁に発生します

この現象は大陸全土に渡って発生するのですが、地震のように人々が大きな被害を受けることはなく、ただ地形がわずかに変化するという程度のものです

そしてこの地殻変動によってもたらされる最も大きな地形の変化が「ネフィア」の生成です

ネフィアとは他のゲームにおける「ダンジョン」のようなもので、その内部にはかつて存在した文明の遺産が多く眠っていることが多いです

特徴として、「上に登っていくタイプ」のダンジョンではなく「下に潜っていくタイプ」のものがほとんどというのがあります

とはいえ、この地殻変動はElonaのストーリー上ではそれほど頻繁に起こるものではないそうで、ましてやその生成に巻き込まれるとなると、かなり不運なことです

D「お、お前、そんなになってもまだ生きているのか..化け物め..」

「ゃ..ゃめて..」

D「?..っ!くそっ!血が目に入ってしかたがない!..はぁ、まったく、こんな状況になるとさすがに僕も手近なものに当たり散らしたくなるよ!」

「..!」ビクッ

D「..ただんなことをしても、もう意味がない」

「....」

D「..お前も、僕がなにもしなくとももうじき死ぬみたいだな」ドサッ

兵士は立っているのに疲れたのか戦士のそばに腰をおろす

D「お前を最悪死体でもいいから持ち帰るのが仕事だったんだが..まぁもうどうでもいい..ハッ、しかしネフィアの生成に巻き込まれるとはお互い運がないな」

頭にかなりの傷を負い平常な思考ができていないのか、それとも敵に話しかけていると理解しながら、自らの死を悟りやけくそになっているのか、兵士は戦士に対して早口でペラペラと話しかける

松明の明かりは小刻みに揺れ動き、周囲にふらふらと動く不気味な影を生み出している

「ぁ..ぅ..」

D「まぁ生きていただけマシ..いや、下手に生きていても死までの時間が伸びる分あいつらのほうが幸運か」

ひきつった笑いを浮かべた兵士の松明の光の照らす先には、巨大な岩板の下から生える4本の棒が見える

そこからじわじわと広がる黒い染みも

大きくため息をつきながら兵士は松明を地面に突き立て、そして懐から小さなノートを取り出した

「ぅ..う..」フルフル

D「?..あぁ、これは日記だよ」

D「今日から毎日日記をつけることにしよう、と意気込んだはいいが書くことがなかったんだ、だがさすがに今日くらいは書き込まきゃな、ハハハ、なにしろ..」

「ぅし..ゴボッ!ゴホッ!」

D「ん?どうし」

ボンッ

兵士の頭がはじけ飛んだ

ここはネフィア、そこに危険な存在が多く潜んでいるのはネフィアに潜った経験のある者なら誰しも知っていることではある

意識を取り戻した瞬間から、ナニカがいるというのは2人とも分かっていた

それがとびきり危険なものだったというだけのことで

兵士の頭を脚のひと振りではじき飛ばした影をまとった巨大な獣は、間髪入れずに戦士の頭部もかっさらおうと一瞬で距離を詰める

流れるような動きで振り抜かれる脚

しかしそれが獲物の頭部を捉えることはない

ドゴン!

咄嗟に両腕で前足を受けた戦士は、両腕をずたずたに裂かれながら吹き飛び、壁にたたきつけられた

いつまで経っても夜目の効いてこないこの異様な暗さのせいで、戦士には今自分がどういった空間にいるのかほとんど把握できていなかった

が、壁に叩き付けられたことで、ここがネフィア内に設けられた小さな区画のようだと理解する

ただそれはあまりに遅すぎる情報だった

自分の前足の一撃が止められたことが理解できずにわずかに混乱している獣は、すぐに戦士の方へ意識を向け直し、とどめを刺しにくるだろう

そしてその一撃を受けることは戦士にはもうできない

「ぃゃ..いや..」ブルブル

恐怖と痛みに体を震わせることしかできない

混乱から立ち直ったのか、獣の意識が戦士に向く

一瞬で詰まる距離

戦士の目は振り抜かれるであろう前足の挙動を完璧に捕捉する

グチャッ!!

はじけ飛ぶ肉塊

しかしそれは戦士の頭部ではなく、獣の前足のほうだった

ゴァアアアアアッ!!!

痛みと、そして怒りの雄たけびをあげ飛びすさる獣

??「ちょっと!その人に、手、手、出さないでよ..」

混濁する意識の中で戦士の目が捉えたのは、小柄な少女だった

白いワンピースがこの暗がりの中では異様に目立っている

少女「も、もう安心だから、任せなさい..」

少女の細い腕の先から爆発的な勢いで風が吹き出し、獣に向かう

ゴッ!

イェルスの砲兵隊による砲撃が着弾したかのような、激しい衝撃があふれた

爆風で戦士は数メートル吹っ飛び、またも壁に叩き付けられる

少女「このっ!このぉ!」

連続して発生する衝撃

おそらく獣はもう息絶えているのではないだろうかと思われた

少女もそう思ったのか、ようやく攻撃の手を止める

少女「..ハァ..ハァ、っ、大丈、夫?」

「....」コクコク

傷ついた体をさらに爆風で飛ばされ、戦士はもはや声を出すことさえ億劫になっている

少女「よかった..今、そっちに」

ブシュッ!

少女「え..」

少女の体が崩れ落ちる

真っ先に大地に触れたのは腹だった

それは当然のことで、なぜなら少女の下半身は

グルルルルゥ..

既に獣の腹の中に収まっていたのだから

ドチャッ..

少女「ぐっ..ぁっ..」

グチャグチャ

少女の下半身が咀嚼される音が響く

たしかに放たれた衝撃は獣の前足を吹き飛ばしたが、しかし獣の胴体は足とは比べものにならないほど分厚い、筋肉と骨からなる強固な構造体だった

複数ある足を一本失いはしたが狩りは成功した、獣は満足気に距離をつめる

「ぐっ..ぅう..」グググ

戦士は、ずたずたの両腕に力を込めていた

獣は少女を殺し、そして次に戦士を殺す

それはほとんど確定したことである

戦士の行動に意味がないのは明らかだ

しかし戦士は自身の行動に意味など初めから持ってはいなかった

ズル..ズル....

這い寄ってくる戦士に気づいた少女が、力なく声を発する

少女「ぁ..」

「ゼェ..ゼェ..」グイッ

戦士は大地に倒れたまま、少女を横抱きにして胸にかかえ、自らの背中を獣に向ける

既に獣はその牙を突き立てることのできる間合いに入っている、その筋肉につまったエネルギーを爆発させ、獣が飛ぶ

少女「あっ..」

「...ぁ」

少女「ん、あ、起きた?」

戦士は少女を抱きかかえた姿のまま地面に横たわっていた

少女は戦士のあごの下から声を発する

「ぇ...」

「あぁ、あれならほら、そこ」

少女の指し示す方向を見ると、そこには巨体をビクビクと痙攣させながら横たわる獣の姿があった

戦士が意識を失っていた間になにが起こったのか

とにかく、2人はまだ生きてはいた

「っ...」

全身の傷から、じわじわと痛みが戦士の脳へとのぼりはじめる

少女「?..うわ、あなたの体すごいのね、さっきまで背骨が見えてたのにもう肉で覆われ始めてる」

頭をぐらぐらと揺らされているようなめまいをこらえながら、戦士は尋ねる

「ぁの..あなたは、大丈夫?」

少女「あはは、みんながあなたみたいな体を持っているわけがないじゃない..」

ようやく視界がはっきりとしてきた戦士は、少女の顔が真っ青であり、その目に宿る光が消えかけているのに気づく

少女「あの..そんな悲しそうな顔をされても私が困るんだけど」

「......」

少女「はーぁ、運がなかったなぁ」

少女「せっかく起こしてもらったのにあなたは死にかけだし私もこのざまだし」

腕の中の少女の体から、水のこぼれ落ちるように熱が失われていく

「ごめんなさい..」

少女「いいのよ、別に、どうせ」

ギュッ

少女「ぅぁ..あったか..」

少女の命をつなぎとめる方法を、戦士はなにも思いつけなかった

痛みのあまり回らない頭で戦士に思い付けたのはこのくらいだった

この階層にはあの獣の他には危険な存在はいないのか、それともあの獣以外には二人の気配に気づいていないのか

どちらにせよ、シンッと静まり返った空間はゆっくり、ゆっくりと冷えていく

少女「あっ!」

「!?」ビクッ

少女「あの、思い付いたんだけど、二人でまだ生きれそうな方法」

「え」

少女「あなたにかなり負担がかかるだろうけど、どうする?別に無理になんて言わないんだけれど」

震える少女の絞りだした声に、戦士は小さくうなづいた

少女「あぅ..そこ、違うもうちょっと奥に」

「ハァ..ハァ..」ブルブル

ネフィアの仄暗い一角で、戦士の上で少女が動く

少女「い、痛い、よね」

「だ、大丈夫」

少女「無理しなくていいのよ、ほんとに、その、大丈夫?」

「やっぱ痛い」ポロポロ

戦士は驚愕に包まれていた

これほどの痛みは今まで感じたことがなかった

肉体的な苦痛であれば、仮に死に至るまでそれを与えられ続けても、戦士は精々涙をこぼす程度であっただろう

しかしこの痛みは戦士の脳の中で直接発生しているような、非常に特殊なものだった

少しでも気を抜けば絶叫し、自ら命を絶ってしまうと思われるレベルである

少女「よ、よし、収まった、かな」

少女その声を聞いた瞬間、戦士はまたもや意識を手放した

今回の覚醒は早かった

少女と戦士は、なんともいえない表情で顔を見合わせる

その距離は約15センチであり、ほとんど他人といっていいレベルの二人にとってはあまりに近い距離

しかしそれ以上距離を離そうと思うとのけぞらなくてはいけない

少女「あ、あの..」

「うん..」

少女「なんていえばいいのかしら..よ、よろしく?」

「そ、そうだね、よろしく..」

少女「ちょっと、そんな悲し気な言い方されると私が無理矢理したみたいになるじゃない」

不安気な表情の少女に戦士は焦って否定する

「ち、違うよ、私の方こそこんなことになっちゃってよかったのかなって..」

少女「そ、それならいいけど」

戦士は現在の状況に関して不快感は持っていなかった

ただただ困惑していただけだった

自らの腹部から生えた少女の上半身に

あの時少女のした提案はかなり危険なものだった

戦士のごっそり抉られた腹部に、上半身だけとなった少女を接続しつなぎ合わせることで欠けた部分を補完しあおうというものである

少女が念を押してきた通りすさまじい苦痛を感じはしたものの、今や二人はまさに一心同体であった

少女「そうだ、自己紹介とか、する?」

「あ、うん..」

少女「......」

「......」

少女「あなたからでいいわよ」

「えっ..と、名前と言われても..」

少女「えっ、あなたも無いの?名前」

「も、って」

少女「私もなの、まぁ私はあったかもだけどもう忘れちゃった」

「そう、なんだ」

少女「..私ってあなたの知ってる生物だとなにに似てる?」

「?..うーん」

戦士はあまり多くの生物を見たことがなかった

目の前の少女に似ていると言われても、思い付くのは研究所の学者たちの身に周りの世話をするために奴隷として飼われていた..

「少女、かな」

少女「少女?ふーん、まぁ悪くない響き、かな」

少女「じゃぁ私は今から少女ね、あなたはなんかないの?」

「うーん..」



学者A『..ボディパーツにも異常なし、これですべて問題ないな、予定通り運用試験を開始するか?』

学者B『あぁ、では517年6月2日11時28分現在より流化Ⅱ型の運用試験を開始する』

学者A『了解』



「りゅうか..」

少女「リューカ?じゃぁ、あなたはリューカ!どう?」

「え、あ...うん」

少女「じゃぁ、あらためてよろしく、リューカ」

「よ、よろしく、少女」

数分後


少女「あの..あなたが歩いてくれないと私たち動けないわけだけど」

「ご、ごめんね、足に力がはいら、な..」

リューカの体内に籠められたリジェネ―レーションの魔法を使い果たし、傷もまともになった二人ではあったが、リューカの足はいうことをきかない

少女「まだどこか痛い?」

「う、うーんなんでだろ」

少女「ま、まさか私重い?」

「いやそんなことは..」

もう一度足に力を込めると、今度はなんとか立ち上がることに成功した

少女「できるじゃない!その調子でさっさとここから出ましょ」

「うん、そうだね」

いつまたあの獣の同族に襲われるか分からない

二人は兵士の手から松明を取り、慎重に上への階段を探していた

少女「..ねぇ、リューカはどうしてここに来れたの?」

いつまで警戒しても、危険な存在の出てくる気配がないことに安心したのか、少女が口を開く

「えっ..う、うーん、どこまで言っていいんだろう..」

少女「言いたくないことなの?」

「う、うん、学者さんがこの作戦は極秘作戦だから、囚われたら舌をかみき..あ、これも言っちゃダメだった..」

少女「あはは、あなたに隠し事は無理そうね」

「うぅ..」

少女「いいじゃない、言っちゃえば、私はしばらくあなたから離れられないし」

「えっ..そう、なの?」

少女「あなたと私を結合させるときに持てる力のほとんどを使っちゃったから、私の力が回復するまでは..いつになるか分からないけど..分離できないわよ」

目を若干泳がせた少女から告げられた新たな事実に目を丸くするリューカ

「そう..なんだ」

少女「ぅ..なに?お、怒った?」

「ううん、なんだか、嬉しい、のかな」

少女「?」

「あったかいの、あなたが胸の中にいると」

獣から少女を守ろうと抱きかかえた時から自分のなかに生まれていたものだった

少女「そ、そうなんだ..そう..」

少女はひどく驚いた表情で身をこわばらせていたが、すぐに顔を伏せてしまい、そしてリューカの肩に頭を預けてふっと力を抜いた

じわりと肩口に広がる温かさ

さきほどまで疲れ果て引きづるようだった足取りが、少し軽くなっていた

少女「いや違うわよ」

「..え?」

少女「だーかーら、あなたがここに来た理由を知りたかったんだってば」

「あぁ..」

すぅすぅと眠りに落ちていた少女は、数分の睡眠で満足したのか目を覚ましていた

「えっとね..」

リューカにはもう少女に対してなにかを隠そうという気持ちはなくなっていた

自分がザナンの研究所で作られた兵士であること

ザナンで目を覚まし、いくつかの試験をクリアしたのちすぐにイェルス軍との戦争のためにジューア軍の前線基地まで輸送されたこと

そしてすぐに作戦行動に組み込まれ、3回目の任務の遂行後、離脱する際にイェルス軍兵士に捕まったが、運よくネフィアの生成に巻き込まれたこと

少女「戦争?」

「うん、学者さんはそう言ってたよ」

リューカは戦争がどういうものか分かってはいなかったがとりあえず聞いた単語を伝える

少女は聞いたことしかなかった戦争というものが、実際に起こっていると聞き、実感の沸かないまま言葉をつづける

少女「そっ、かぁ..うーん」

「どうしたの?」

少女「ん?いや、これからどうしようかなって」

「?」

少女「あなたたぶんここから出れたら学者さん?のとこに戻るつもりなんでしょ?」

「うん」

少女「戻る前に、私を分離しないとまずいんじゃない?」

「えっ..」

反射的に思わず抱きしめようとしたリューカの両腕を、少女は慌てて止める

少女「ちょちょちょっ、松明危ないでしょ!」

「あっ..ご、ごめんなさい」

少女「ふぅ...あのね?今聞いた限りだとあなたは兵士なのよね?」

「うん」

少女「で、まだ戦うつもり、なのよね?」

「?..うん」

少女「私とくっついたままじゃ戦えないでしょ..」

「!」

少女「だから..どうしようかなって..」

「大丈夫!」

意外にもリューカの言葉は明るかった

「学者さんたちはとても優しいから、なにか問題があればきっと解決してくれるよ」

その脳裏には、任務から帰るたびに体に異常はないかと事細かに尋ね、リューカがなにか伝えればすぐに対処してくれる学者たちの姿が浮かんでいた

少女「う、うーん、まぁ私一人じゃ分離するにはどれだけ時間かかっちゃうか分からないのは確かだし..でも」

「も、もうちょっと一緒にいようよ..」

少女「...むぅ」

抱きしめられながら囁かれ、少女は流されるように同意した

「くぅ...ぐぬぬぬぬ」

少女「いけそう?」

リューカは顔を真っ赤にしながら渾身の力を振り絞っていた

腕の傷はまだ癒えきっておらず、出血し始めていたが、二人がそれを気に留める様子はない

獣との戦闘の後、二人はそれ以上襲われることは無かった

そしてようやく地表付近まで上がってきたのだが

「ゼェ..こ、これ..ハァ..重い」

地上へ出るための階段は、岩板によって塞がれてしまっていた

リューカはしばらくその岩板と格闘していたが、ついに力尽きる

地面に腰をおろして休むリューカの荒い息遣いを受け止めていた少女だったが、なにか決心したかのように声をあげる

少女「ねぇリューカ、寝っ転がって」

「?」ゴロン

少女「あぁ、ちがうちがう、頭をあの岩板のほうに向けて」

なにをするつもりなのかは分からないが素直に従う

下から見上げていると、少女の長い髪の先端がリューカの鼻さきをくすぐり、思わずくしゃみをしそうになる

しかし少女の顔面に向かってくしゃみをしては怒られるだろうという思いで、なんとかこらえていると

ドンッ!

頭上から岩板に向かって、見覚えのある衝撃波が発され、あっさりと岩板の一部を粉砕した

少女「ゲホッ、ゲホッ..ど、どんなもんよ」ニコッ

あの衝撃波を出すのはかなり消耗するのか、少女が微笑みながら軽く青ざめているのが気にかかったが、ともあれ道は開けた

「..大丈夫?、でもありg..ふぇっくしょん!!」

少女「......」

「あ...」

少女「......」プクッ

階段の上から射しこむ陽光が照らすのは、粉塵の舞う中でどちらからともなく笑い声をあげた、二人の姿だった

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