少女「私が欲しかった物はこんな物なはずがない……」(16)

私の名前は『北野 葉瑠』。 私は生まれつき『感情』と言う物をほとんど所持していない

だから私は、『嬉しい』『恥ずかしい』『寂しい』『楽しい』などの基本的な感情から、『好き』『嫌い』『苦しい』などの感情も持ち合わせていない。 

私が感じることのできる感情はただ一つ……

『悲しい』だけだ

私は『悲しい』と言うことしか感じることができない。 つまり、この世の中は私にとっては生きる地獄に等しい

『楽しい』と感じることは無い癖に、『悲しい』と感じる。

『嬉しい』と感じない癖に、『悲しい』と感じる。

私は『楽しい』や『嬉しい』が、どれだけ素晴らしい感情なのか、わからない。

『好き』や『嫌い』がどんな物なのかも、わからない。

こんな私を、初めて見た人はみんなこう言う『感情が無いってどんな感じなの?』と……

その時、私はいつも決まってこう言う

「私は、感情が無いから、わからない」と

だけど彼だけは違った。 彼だけは私に

「感情なんて要らないさ、必要ない」

って言った。私は彼の言っている意味がわからなかった。 私には感情がないから、なんとも思わないだけなのかもしれない。 彼はこの言葉に続けて

「僕のがあげられるなら、君にあげたいよ……」

と言った。 私は

「……ならちょうだい」

と欲しいと言う感情が無い癖に言った。 

「じゃあ君に、僕の感情をあげよう」

と彼は言った

その日から、私は彼と一番長く行動した。 お昼を食べるにも、帰るにも、どこに行くのにもいつも一緒に行動した。 彼が言った通りなのかどうかわからないが、私は感情と言う物が、できてきた。

初めて『楽しい』と思った時は、とても楽しいと思ったし

『嬉しい』と思った時は、とても嬉かった。

『楽しい』や『嬉しい』が、こんな素晴らしい感情だったのか!!!と気づいた時は『幸せ』と感じた

感情は連鎖のように沸き上がって来た。中には『持ってない方が良かったな』と言う感情もあった。

私は彼と出会って、感情をほぼ全て取り戻した。と言うよりかは『手に入れた』と言った方が正しいのかな?

とにかく、私はほぼ全ての感情を経験した。 灰色だった人生が、彼のおかげで虹色に変わった。 私に感情を与えてくれた彼は、私にとって命を救ってくれた人よりも、恩を感じる。

私は彼が本当に感情を、くれたのかと思った。 でもそれは違った。 彼の感情は、消えることは無かった。

私はまだ経験していない『恋愛』と言う感情に興味があった。 マンガを読むと、『恋愛』と言う感情は、とても素晴らしい物のようだ。 彼もまだ『恋愛』と言う物を体験したことがないらしい。

『恋愛』とはどのような物なのか……

私は、これを考えて一年が経過した。

彼は「警察官になる」と言う夢を実現し、今警察官として働いている。 

私は彼が私の側に居なくなって初めて気がついた

私は彼に『恋愛』つまり『恋い』をしていることに気がついた。 私は彼を見ると、とても胸の鼓動が早くなり、ろれつが回らなくなり、しまいには彼の前だと顔が熱くなってしまう。 私はこれが『恋愛』と言う感情だと気づいたのは、最近のことだ。 私が今まで体験したかった最後の『感情』は、最悪の物だった。

彼のことを考えると、胸が苦しくてつらい。 夜も眠れないし、食事もできない。

私が求めていた感情《物》はこんなに苦しく、つらい感情《物》のはずでは無かったんだ……

こうして私は……

全ての感情を取り戻した。

だけどなんでだろうか?

私は、手に入れたばかりの感情を『要らない』と思ってしまう……

こんなにつらいとわかっていたら、こんな感情《物》なんて彼から貰わなかっただろう……

私は今、彼が前に言っていた

『感情なんて要らないさ、必要ない』

と言うことが良くわかった

そして私は、その彼と同じ道を進むことにした

こんな感情《物》を捨てる方法を彼と探す為に……

       ~fin~

10レス行かなかった……

これでこのSSは終わりです。

読んでくださった方々、本当にありがとうございました。

短かったけど良かった

>>10 ありがとうございます。 次はもう少し長い物を書けるようにがんばります

>>14 ありがとうございます!!! この書き方は、読む人のことを考えるとあまり長くできないんですよね~

>>15 酉ミスです

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