男「ずっと前から好きでした!」 後輩「……誰?」 (983)

男「えっ……」

後輩「どこかでお会いしたことありましたか?」

男「中学の時に同じ部活でしたけど……」

後輩「ということは、陸上部の方ですか?」

男「そうですけど……。僕のこと覚えてない?」

後輩「はい。先輩のことなんて知りません」

男「……」



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後輩「人違いではないですか?」

男「そんなことあるわけない! 後輩さんが忘れているだけだよ!」

後輩「でも、二足歩行している豚なんて忘れることなんてないと思うんですけど」

男「うん。間違いない」

後輩「なにがですか?」

男「絶対、人違いじゃないよ。そんな目で僕を罵ってくれるのは、後輩さんだけだもん」

後輩「先輩って物好きな人ですね。自分を罵倒する人に恋してるなんて」

男「だって、可愛いんだもん」

後輩「顔ですか」

男「やっぱり世の中、見た目こそすべて、見た目こそ正義だよ」

後輩「その価値観はわからなくもないですが、顔の造形だけで好意を寄せられても……」

男「もちろん身体も好きだよ? 陸上部の時、その豊満な胸を揺らしながら走っている後輩さんを見て、なんどトイレに駆け込んだことか」

後輩「ごめんなさい。そもそも先輩に好意を寄せられること自体が生理的に無理でした」

男「……あのさ」

後輩「なんですか?」

男「僕のこと、どうして先輩って呼んでるの? 僕が誰なのかわからないのに」

後輩「……」

男「本当はわかってるんじゃないの。覚えていないふりをして、僕のことを虐めてやろうっていう魂胆なんでしょ?」

後輩「……」

男「ありがとうございます! 最高に興奮してます!」

後輩「こちらこそ、ありがとうございます。おかげで、通報する踏んぎりがつきました」

後輩「ネクタイですよ。うちの学校は学年ごとにネクタイの色が異なるじゃないですか」

男「そうだった……」

後輩「残念でしたね」

男「うん。後輩ちゃんに虐められているわけじゃないんだね……」

後輩「学校中から虐めてもらえるように、これまでの会話を流布しましょうか?」

男「俺は後輩さんに虐めてもらいたいんだ!」

後輩「お断りします」

男「ど、どうして……!」

後輩「むしろ、どうして理由を訊ねるのか不思議です」

男「……突き放して、俺の絶望した顔を見たいパターン?」

後輩「警察に通報して、先輩の顔を一生拝見したくないパターンです」

男「これだけ昔みたいに喋っていたら、俺のこと思い出してこない?」

後輩「これまでの会話は、先輩のことを想起させるためのものだったんですか」

男「うん。陸上部の時とかこんな会話ばっかりしてたよ」

後輩「なるほど。もしかしたら、あんまりにも気持ちが悪いから、先輩のことを記憶から抹消したのかもしれませんね」

男「それで、記憶はサルページされたの?」

後輩「いいえ。今日のことも忘却したいと思うようになりました」

男「……わかった。今日は引き下がるよ」

後輩「……告白してきた割には簡単に諦めるのですね」

男「いいや、俺は諦めない! あの頃のことを思い出してもらう!」

後輩「……そうですか」

男「明日もチャレンジするからね!」

後輩「……明日、会えるといいですね」

男「後輩ちゃんが世界のどこにいても、僕が必ず、逢いに行くから」

後輩「刑務所の中で、無様にもがいていてください」

男「さあ、帰ろう。途中まで送るよ」

後輩「途中まで?」

男「大丈夫。ちゃんと距離はとるよ」

後輩「やめてください。本当に通報しますよ」

男「えー。でも、一緒に帰りたいし……」

後輩「私をストーキングしているだけで、一緒に帰宅していることにはならないでしょう」

男「くっ……。じゃあ、どうしたらいいんだ……」

後輩「距離をあけずに私の家まで送ってくれればいいんです。彼氏なのですから」

男「……かれし? カレシ? 彼氏?」

男「かれしいいいいいいいいいいい!?」

後輩「なんで驚いているんですか。先輩が告白したのでしょう?」

男「え、でも!」

後輩「私は『覚えていない』とは言いましたが、『交際しない』とお断りしていません」

男「だけど、『生理的に無理』って……」

後輩「そういう風に言葉責めされるのが好きなんでしょう?」

男「はい! 大好物です!」

男「遂に俺の気持ちが届いたんだね……!」

後輩「唾棄すべき醜悪な欲望でしたけどね」

男「ありがとう、ありがとう……」ポロポロ

後輩「なんで、泣いてるんですか?」

男「だって、ようやく両想いになれて……」

後輩「いえ、先輩の一方通行の恋のままですよ」

男「えっ」

男「どういうこと!?」

後輩「最近、私の周囲では恋愛がブームでして。毎日のように主張されるんです。誰々が好きだと」

男「まあ、女子トークの王道だもんね」

後輩「ええ。女子らしく牽制しあうんです。『お前、あの男に手出すんじゃねえぞ』、と」

男「う、うん?」

後輩「休み時間に私の胸を盗撮しているような男と交際するわけないのに、どうして脅迫するような行動をするんでしょう。そんなことに精を出すなら、豊胸手術の費用を稼げばいいのに。まあ、まな
板にレーズンがのっているような胸を豊胸するには莫大な費用が掛かると思いますが」

男(やばい、この目はマジなやつだ……!)

>>13 訂正
男「どういうこと!?」

後輩「最近、私の周囲では恋愛がブームでして。毎日のように主張されるんです。誰々が好きだと」

男「まあ、女子トークの王道だもんね」

後輩「ええ。女子らしく牽制しあうんです。『お前、あの男に手出すんじゃねえぞ』、と」

男「う、うん?」

後輩「休み時間に私の胸を盗撮しているような男と交際するわけないのに、どうして脅迫するような行動をするんでしょう。そんなことに精を出すなら、豊胸手術の費用を稼げばいいのに。まあ、まな板にレーズンがのっているような胸を豊胸するには莫大な費用が掛かると思いますが」

男(やばい、この目はマジなやつだ……!)

後輩「私は、先輩と交際することで醜い駆け引きから解放されることを目論んでいるんです」

男「うーん」

後輩「言っておきますけど、先輩に拒否権はありません。先輩が告白したのですから」

男「拒否なんてしないよ。後輩ちゃんと付き合えるなら、どんな形でもいい」

後輩「……変な人」

男「変態って罵られるほうが嬉しいかな!」

男「確認しておきたいんだけどさ。僕のことを好きになる可能性はある?」

後輩「限りなくゼロに近いですけどね」

男「そっか……。うん。可能性があるなら、頑張れる!」

後輩「……先輩が私からに愛想を尽かす可能性の方が高かったりして」

男「サッカーの試合で残り1分で5点差を逆転するくらいの確率であるかもね」

後輩「……なんですか、それ?」

男「可能性はあるけど、実際には起こりえないってことだよ」

翌日 朝
男「おはよう」

後輩「……なにしてるんですか?」

男「迎えに来たんだよ。昨日の別れ際に約束したじゃない」

後輩「確かに私の家の前で待ち合わせをする約束をしましたね」

男「だから約束通り……」

後輩「いま先輩がいるのは、家の居間ですよね?」

男「あはは。そのダジャレ面白いね」

後輩「私のお気に入りのマグカップで、先輩がコーヒーを飲んでいる光景はおぞましいですけどね」

男「いや、後輩さんのお母さんが中に入れって言うもんだから」

後輩「あの人は……!」

男「優しいお母さんだね。後輩さんそっくり」

後輩「それで母はどこに? 姿が見えませんが」

男「あとはお若い二人で楽しんで、だって」

後輩「私の周りにはまともな人はいないんでしょうか」

後輩「お待たせしました」

男「早いね」

後輩「なにがですか?」

男「準備するのがさ。僕の妹なんて1時間くらい掛かるんだ」

後輩「朝の支度にそこまで時間をかける必要ありますか?」

男「そうだよね。ドーラ一味なら40秒で支度するのにね」

後輩「先輩って、妹さんがいらっしゃったんですか」

男「あれ、知らない? 後輩さんと同じ学年だけど」

後輩「……確かに先輩と同じ苗字の方がいますが、先輩の妹さんではないと思います」

男「いやいや。俺の苗字は珍しいから、そうそう同じ苗字の人はいないって」

後輩「では、先輩は養子とか?」

男「なんでよ。僕の家族は全員血が繋がってるからね」

後輩「あんなに可愛らしい人が、先輩の妹なんて到底信じられません」

男「可愛いかなあ? ただ、化粧で誤魔化してるだけだと思うけど」

後輩「豚の癖に、人間の容姿に難癖つけるなんて生意気ですよ」

男「ごちそうさまです!」

後輩「はあ……」

男「……妹が言うんだ。後輩さんみたいになりたいって」

後輩「わたしみたいに?」

男「うん。後輩さんみたいに、クールで美しくて芯の強い女性になりたいらしいよ」

後輩「……それは間違った認識ですね」

男「ごめんね。人の表面だけを見て評価するような奴だから。その裏にある大事なものに目を向けられないんだ」

後輩「まるで、先輩がわたしの内面を把握しているような発言ですね」

男「そういうつもりはなかったんだけどな」

後輩「……私の外見が好きなんでしょう?」

男「そうだよ。僕は後輩ちゃんの外見が好き。これ以上ないくらい愛してる」

後輩「なら、誤解を生むような発言は控えてください……」

男「わかった。気をつけるよ」

後輩「さあ、行きましょう。このままだと本当に遅刻します」

男「うわっ! もうこんな時間なの!?」

後輩「そうですよ、だから……」

男「ほら、俺の自転車で先に行って!」

後輩「……先輩はどうするんですか?」

男「俺は歩いていくよ。別に遅刻してもいいし」

後輩「そんな惰弱な考えは認めません」

男「いや、でも……」

後輩「私の彼氏なのでしょう」

男「うー。わかったよ。走っていくよ」

後輩「豚の走る姿なんて見たくありません」

男「じゃあ、どうしろと……」

後輩「……私のネズミになりなさい」

男「……ああ、そういうこと」

今日はここまでっす

学校 休み時間 3年教室
男友「今日も遅かったな。いっそ、毎日遅刻すればいいのに」

男「うるせー」

男友「まあ、今日はしょうがねえか。失恋した翌日だもんな」

男「いや、付き合うことになったけど」

男友「う、嘘だろ!? あんな綺麗な子がお前のこと好きになるわけがねえ!」

男「俺のこと好きじゃないとか言ってたけどな」

男友「……はあ!?」

男友「意味わかんねえんだけど」

男「俺は後輩さんが好き、後輩さんは俺のこと嫌いではない。だから、付き合う。おわかり?」

男友「あの子は好きでもない変態と付き合うってことか?」

男「お互いに好きだと伝えてないと付き合っちゃいけないのか?」

男友「当たり前だろ!?」

男「お前、高3にもなって、ピュアなこと言ってんじゃねえよ。中学生かよ。そんなんだから、童貞なんだよ」

男友「ど、ど、ど、童貞ちゃうし! って、まさかお前……!」

男「なに? 付き合って初日にヤッたのかって? 馬鹿じゃねえの、お前。結婚するまで体を重ねるわけねえだろ」

男友「てめえもピュアじゃねえかよ。だから童貞なんだよ、お前」

男友「でも、良かったな。どんな形であれ付き合うことができて。中学生からずっと好きだったんだろ?」

男「まあ、そうだな。3年くらい片思いしてることになるな」

男友「もっと早くに告白すればよかったのに」

男「仕方ねえだろ。中学卒業してから会うことがなかったんだから」

男友「在学中に告白すればよかっただろ」

男「卒業式の日にしようしたんだけどな。当日に後輩さんが休んでしまってな。当時の俺は携帯を持ってなかったから、後輩さんとの連絡手段もなくて、もう会うこともないと思ったもんだ」

男友「部活一緒だったんだろ? OBとして顔出すとか方法はあったんじゃねえの」

男「俺が引退してすぐに、彼女は部活をやめた」

男友「OH……」

男友「それで高校で再会するなんて、運命的だな」

男「まあな。でも、驚いたよ。後輩さんがうちの高校に来るなんて。彼女、違う高校にいくために勉強してたから」

男友「中一の時から? どんだけ、レベルの高い高校にいくつもりだったんだよ」

男「東高だよ」

男友「マジで!? 県一の進学校じゃん!」

男「しかも、妹の話じゃ、余裕で入れたんじゃないかって」

男友「凄いな。でもなんで、そんな秀才がうちみたいな中堅高にきたんだ?」

男「たぶん……」

男友「俺と会うために、なんてのは無しだぜ」

男「馬鹿。そこまでうぬぼれてねえよ。俺じゃなくて……」

「なんの話してるのー?」

男「こいつがいるからじゃねえの?」

男友「ああ、なるほどな」

後輩姉「んー?」

後輩姉「ねえねえ、なんの話してたの? わたしも混ぜてよー」

男友「お前の妹の話だよ」

後輩姉「妹ちゃんの?」

男友「男と付き合うことになったんだってさ」

後輩姉「そ、そうなの!?」

男「ああ、うん。昨日、告白してな……」

後輩姉「知らなかった……」

男友「おいおい。お前ら姉妹だろ」

後輩姉「妹ちゃんは、あんまり自分のこと話してくれないから……」

男友「そ、そうなのか……」

男「……」

後輩姉「あの妹ちゃんが男くんと付き合うなんて……」

男友「まあ、安心しろよ。こいつ、お前の妹にぞっこんだから」

後輩姉「そうなの?」

男「……うん」

後輩姉「だよね。そうじゃなきゃ付き合うわけないよね」

男友「……妹はそうでもないらしいけどな」ボソッ

後輩姉「えっ?」

男「なんでもない。こっちの話」

教師「おーい、席につけ」

後輩姉「じゃあ、また後でね!」

男友「俺も席戻るわ」

男「待て」グイッ

男友「なんだよ!」

男「……あいつに余計なこと話すな」

男友「お、おう……」

昼休み 1年教室前
妹「お兄ちゃん?」

男「おー」

妹「……あのさ、ちょっといい?」

男「えっ、いや、用事があるんだけど……」

妹「いいから、こっち来て!」グイッ

妹「後輩さんと一緒に登校してきたらしいじゃない。それも二人乗りで」

男「なんで知ってんだよ?」

妹「うっそ、マジなの……」

男「もう噂になってるのか?」

妹「なってるよ! おかげであたし、休み時間になるたびに質問されるんだからね! お兄さんは、後輩さんとどういう関係なの、って」

男「うっわ……。後輩さんも質問責めされてるのかな……」

妹「いや、後輩さんに、『ご想像におまかせします』って微笑まれたら、それ以上追及できないからね……」

男「美人って得だよな……」

妹「……どうせ、あたしは美人じゃありませんよ」

妹「つーか、あたしの心配してよ。お兄ちゃんのせいで、大変な目に遭ったんだから……」

男「いや、彼氏たるもの、彼女の心配をするのは当然のことだろう」

妹「……えっ、付き合ってんの?」

男「付き合ってもないのに、二人乗りで学校にくるかよ」

妹「あたしはてっきり嫌がる後輩さんを無理やり荷台に乗せたのかと……」

男「お前、まさかそうやって周りに説明したんじゃないだろうな?」

妹「……てへっ」

男「てへっ、じゃねえよ」

男「なんてことしてくれたんだよ……」

男「なんてことしてくれたんだよ……」

妹「だって、お兄ちゃんが後輩さんと付き合うなんて想像できないしー」

男「開き直ってんじゃねえ」

妹「というか、お兄ちゃんの妄想でしょ? うん。そうに決まってる」

男「違うから。俺と後輩さんは相思相愛のラブラブだから」

後輩「名誉棄損で訴えますよ」

後輩「来るのが遅いから、なにをしてるのかと思えば……」

男「ごめん。妹に捕まっちゃってさ。こいつ、いまだに兄離れできなくてね」

妹「や、やめてよ!」ベシッ

男「痛! 叩くなよ!」

妹「後輩さんに変なこと言うからでしょ!」

男「事実だろうが! ホラー映画見た後とか僕のベッドに潜りこんでくるくせに」

妹「あーあーあー! 聞こえなーい! なに言ってるかわからないー!」

後輩「……」

後輩「随分と兄妹仲がよろしいんですね」

妹「違うんですよ! 兄の虚言癖が炸裂しただけです!」

後輩「なるほど。では、すべて先輩の妄想で、事実ではないと?」

妹「そうです! その通りです!」

後輩「そうでしたか……。ご苦労なさっているんですね……」

男「ええ……。信じちゃうの?」

後輩「私と相思相愛などという、虚偽の関係性を流布しようとしていたじゃないですか。その時点で信用はありません」

妹「やっぱり……! ほら、妄想だったんじゃん! お兄ちゃんと後輩さんが付き合うわけないよ!」

後輩「あ、いえ、お兄さんとはお付き合いさせていただいております」

妹「えっ」

男「ねえ、そろそろ行かないと、飯抜きになっちゃうよ」

後輩「そうですね。行きましょうか」

男「また後でな」

後輩「失礼します」

妹「  」ポカーン

校舎裏
男「よし。ここにしよう」

後輩「先輩はいつもこんな人気がないで食べているんですか?」

男「まさか! 普段は教室で食べてるよ」

後輩「では、どうしてここを選んだんです?」

男「恥ずかしいかなって」

後輩「……わたしと食事することが恥ずかしいと?」

男「ち、違うよ! 俺はむしろ光栄というか、幸せというか……」

後輩「なら、明日からは私の教室で食べましょう」

男「いいの……?」

後輩「言いましたよね? 私は愛欲と嫉妬が渦巻く恋愛の駆け引きから解放されたいと。その為には周囲に先輩と交際していることを見せつける必要があるんです」

男「……わかった。明日からはそうしよう」

男「……」モグモグ

後輩「先輩って、いつもおにぎりだけなんですか?」

男「うん。おにぎりなら簡単に作れるしね」

後輩「足りるんですか? 男子高校生に、おにぎり2つは少ないと思います」

男「確かに足りないけどさ、おにぎりを3つも4つも食べたら飽きちゃうし」

後輩「具を変えたりすればいいじゃないですか」

男「えー。面倒くさい」

後輩「はあ……。明日から、お弁当作ってきてあげますよ」

男「いいよ。大変でしょ?」

後輩「冷凍食品を温めるだけですから、そんなに手間はかかりませんよ」

男「でも……」

後輩「これから毎日、私を送迎することになるんですから、その対価として考えてください」

男「……ありがとう」

放課後 校門前
後輩「……」

男「ご、ごめん!」

後輩「……いま、何時だと思ってるんですか?」

男「えっと……、6時です……」

後輩「なにしていたんですか?」

男「その、担任に雑務を押しつけられちゃって、こんな時間に……」

後輩「……そうですか。それは災難でしたね」

男「あ、うん。それはもう……」

後輩「では、行きましょうか」

男「えっ!?」

後輩「なんですか? まだ、頼まれている用事でもあるんですか?」

男「そうじゃなくて、怒ってないの……? てっきり罵られると思ってたんだけど……」

後輩「も、もちろん怒ってます! でも、罵ったりしたら、先輩へのご褒美になってしまうから……」

男「……放置プレイってやつ?」

後輩「そうです! よくわかりませんが、たぶんそれです!」

男「さすが、後輩さん! 僕が興奮するツボをわかってる!」

後輩「ああ、もう! どんなことをしても先輩は悦んでしまうんですね! これではお仕置きになりません!」

後輩「私は本当にお仕置きのつもりだったんです。だから、その……」

男「いいよ。わかってるから」

後輩「……」

男「あの放置プレイは本当に興奮したよ。ありがとう」ナデナデ

後輩「……私に気安く触らないでください」

男「ごめん。お仕置きされたくて、ついね」

後輩「お仕置きされたいなんて、本当に変態さんですね」

男「うん。だから、もう少し撫でるね」ナデナデ

後輩「……後で盛大に罵ってあげますよ」

今日はここまで

男「そうだ。連絡先交換しようよ」

後輩「調子に乗らないでください。先輩の電話番号を登録するなんて、絶対に嫌です」

男「でもさ、今回みたいに待ち合わせに遅れたりするときとか必要だと思うんだ」

後輩「人との約束を踏みにじる前提で提案してくる、その根性」

男「……」

後輩「まず、遅刻しない努力をするべきではないですかね」

男「……」

後輩「……黙ってないで、なんとか言ったらどうです」

男「あ、ごめん。頭を撫でられながら罵ってくる後輩さんに興奮しちゃって」

後輩「離してください!」

男「ああ、至福の時間だった……」

後輩「良かったですね。冥途の土産ができて」

男「うん。いまなら、俺は世界一幸せな男として三途の川を渡ることができる」

後輩「そうですか。なら、もっと長生きしてもらわないといけませんね。幸せな気分であの世に行くなんて認めませんよ」

男「でも、後輩さんと付き合っている限り、僕は幸せだからなあ……」

後輩「だから、長生きしてもらうんです。私が天寿を全うした後、先輩はひとり絶望した生活を送り、地獄に落ちるのです」

男「そんなの耐えられないって!」

後輩「あら。お仕置きされたいのでしょう?」

男「そんな何十年もかけた大掛かりなお仕置きなんて望んでないよ……」

後輩「そろそろ行きましょうか。私、駅前のショッピングモールに用事があるんです」

男「なにか買い物?」

後輩「はい。マグカップを買いに行こうかと」

男「マグカップ?」

後輩「ええ。私のお気に入りのマグカップが豚に舐められてしまったので」

ショッピングモール 雑貨屋
男「ねえ、これって後輩さんのお気に入りのマグカップと同じやつじゃない?」

後輩「いりません。そのマグカップを見るたび、朝の光景がフラッシュバックしそうなので」

男「……ごめん。知らなかったとはいえ、後輩さんが大切にしているものをダメにしてしまって」

後輩「いいですよ。母が私のマグカップに淹れて、先輩に出したんでしょうから」

男「新しく買うマグカップの代金は、僕に支払わせてくれないかな?」

後輩「お断りします。ここで支払うことを許されないほうが、罪悪感が残るでしょう?」

後輩「……先輩?」

男「お会計終わったの?」

後輩「すみません。レジが混んでいて、時間がかかってしまいました」

男「いいよ。大した時間じゃないし」

後輩「先輩はなに見ていたんですか?」

男「腕時計見てたんだ。いま使っているやつの調子がイマイチだからさ」

後輩「そうなんですか。でも、こんな高価なものを買うんですか?」

男「まさか! これはただ見てるだけ。欲しいけど、さすがに手は出せないよ」

男「そうだ。心理テストしてもいい?」

後輩「嫌です」

男「そんな即答で拒否しなくても……」

後輩「私は通俗心理学など信じませんので」

男「お願い! 一回でいいから!」

後輩「……仕方ないですね」

男「ありがとう! じゃあ、質問するね。後輩さんにとって腕時計とはどういう存在?」

後輩「なくてはならないもの、です」

男「!」

後輩「先輩と違って、私は時間に厳しいので、常に身につけていないと不安になってしまうんです。先輩と違って」

男「!!」

後輩「意中の男性に告白された少女漫画のヒロインみたいな顔をしないでくれますか。気持ち悪いです」

後輩「それで、テストの結果はどうなんですか?」

男「聞かないほうがいいと思う……」

後輩「自分からしておいて、それはないでしょう」

男「だけど……」

後輩「もういいです。携帯で調べます」

男「やめておいたほうがいいって!」

後輩「どうせ、卑猥なことなんでしょう?」

男「違うよ! そういう内容じゃない!」

後輩「なら、調べてもいいでしょう?」

男「うっ……」

後輩「先輩がなんと言おうが調べますからね」

男「……僕は止めたからね」







後輩「な、なんですかこれは!?」

男「だから言ったのに……」

後輩「こんなの嘘です! 事実無根です! 私はこんなこと思ってません!」

男「わかってるって。大丈夫だよ」

後輩「嘘です! 顔がにやついています!」

男「ごめんごめん。もともと、こういう顔なんだよ」

後輩「そうですか。なら、顔のつくりを変えましょうね」バシッ

男「痛い! ごちそうさまです!」

後輩「おかわりならたくさんありますよ」

男「もうお腹一杯です!」

男「ふぅ……。次はどうしようか? 何時まででも付き合うよ。僕は後輩さんを守る騎士だからね」

後輩「なんで叩かれたのに、すっきりした顔をしているんですかね……。この後はどこにも寄りませんよ」

男「もう帰るの?」

後輩「当初の予定では映画を観るつもりだったのですが、誰かさんが私を校門の前に2時間も放置したおかげで、その時間はないようです」

男「ご、ごめん……」

後輩「先生に頼まれた正当な用事ですし、今回は見逃してあげます。また今度行きましょう」

男「ちなみになんの映画を観る予定だったの?」

後輩「言いたくありません」

男「えー。後輩さんがどんな映画が好きなのか後学のためにも知っておきたいし、観る前に予習しておきたいんだけどなあ……」

後輩「……ホラー映画です」

男「へ……?」

後輩「……」

男「……そ、そういうことか!」

後輩「どういうことですかね?」

男「うん! 絶対、観に行こう! なんなら、そのあと俺の家に泊まっていってよ!」

後輩「なにを勘違いしているのか知りませんが、卑猥な妄想をやめないと警察に突きだしますよ」

男「他に用事ないならさ、あそこのカフェで奢らせてくれないかな?」

後輩「先輩には、マグカップの件以外にも詫びてほしいことがありすぎるので、コーヒー一杯くらいでは割に合いません」

男「僕、そんなに後輩さんに迷惑かけたかな……」

後輩「自覚ないとは、さすが豚。神経が図太いですね」

後輩「今日は帰りましょう。20時までには帰宅したいので」

男「まだ1時間くらい余裕あるけど……」

後輩「でも、カフェでコーヒーを飲むには時間が足りません」

男「コーヒー一杯なんて、あっという間に飲み終わるよ。ここから後輩さんの家まで、二人乗りをすれば10分くらいで着くし、コーヒー飲んでから帰ろう?」

後輩「二人乗りなんてしませんよ。道路交通法違反です」

男「でも、朝はしたじゃない」

後輩「ネズミが馬となって牽引した馬車に、私は乗っただけです。法律違反にはなりません」

男「そんな無茶苦茶な……」

後輩「よく言いますよ。『シンデレラ、私が無事にお城まで送り届けます』なんて、三文芝居をしていたくせに」

今日はここまで

帰り道
後輩「寒いですね」

男「そうだね。4月になって暖かくなったけど、さすがに夜になると寒いね」

後輩「男子っていいですよね。脚を晒さないで済むんですから。なんか不平等な気がします」

男「でもさ、男がスカート穿いている姿なんて気持ち悪くない?」

後輩「女子がズボンを穿けばいいじゃないですか」

男「そんなもったいないよ! 他のボンレスハムみたいな脚の女はともかく、後輩さんの美脚を見ることができないなんて、人類にとって重大な損失だよ!」

後輩「いまの発言を学校に告発すれば、私はズボンを穿くことを認めてもらえると思います。退学してもお元気で」

男「でも、後輩さんの生脚を、性欲を持てあましている猿どもに見せるのも嫌だな……」

後輩「先輩もその猿の一人にカウントされているんですよね?」

男「いや、僕は豚だからね」

後輩「どうしたら、自分が豚であると勝ち誇ることができるんですか……」

男「他の男とは違うってことさ」

後輩「まあ、雄豚の性欲は底なしらしいですけどね」

男「えっ」

後輩「先輩は、誰よりも変態ですもんね。確かに他の男性とは違いますね」

男「はあ……」

後輩「男子高校生なんて、木の股を見て発情するような動物ですし、自分が変態であるからといって、落ちこむことはありませんよ」

男「それで落ちこんでるわけじゃないんだけどね……」

後輩「なら、他の男性たちとの違いが表現できなかったことが原因ですか?」

男「……うん」

後輩「はあ……。回りくどい表現で例えるのが悪いんです。率直に言えばいいでしょう? 自分は彼氏だと」

男「……自信ないんだ」

後輩「えっ……?」

男「背も低いし、顔も特別整っているわけじゃない。後輩さんのように優しくもない」

後輩「……」

男「そんな僕が、後輩さんの彼氏を名乗っていいのかわからないんだ……」

後輩「正直言って、先輩と交際していることを周囲に自慢しようとは思いません」

男「だよね……」

後輩「しかし、貴方は私の彼氏なのです」

後輩「愚かで低俗な人ではありますが、私が傍に居ることを許した唯一の人間。その時点で他の男性たちとは違います。だから……」

後輩「……もっと自信を持ってください。先輩は特別な地位にいるのですから」

男「後輩さん……」

後輩「さん付けで呼ぶのもやめてください。私より年上なんですから」

男「いいの……? 呼び捨てで呼ばれるのは嫌なんでしょう?」

後輩「……特別に許可します。これで他人との違いが明確になって、先輩も少しは周囲との違いを実感できるでしょう?」

男「……ありがとう、後輩」

後輩「……先輩に、そう呼ばれると気持ち悪いです。先輩の制服に吐いてもいいですか?」ギュ

男「うん。ウエルカムだよ」ナデナデ

後輩「……本当に変な人」ギュウ

後輩「……先輩。お聞きしたいことがあります」

男「なにかな?」

後輩「……中学のころから私に想いを寄せていたんですよね?」

男「うん。後輩が陸上部に入部したその日から好きだったよ」

後輩「……っ!」

男「どうしたの?」

後輩「え、えっと……」

男「……」

後輩「先輩のせいでなにを聞きたかったのか忘れてしまったじゃないですか!」

男「んーと、とりあえず、落ち着こう?」ナデナデ

後輩「やめてください! 先輩に撫でられると、余計に心が乱れます!」

男「まあ、思い出したら聞いてよ。先は長いんだしさ」

後輩「それはどうですかね!」

男「でも、後輩さんが天に召されるまで、僕は傍にいてもいいんでしょう?」

後輩「……さっきは嫌だって言ったくせに」

男「僕を残して逝こうとするからだよ。僕を置いていかないでよ」

後輩「ダメです。これはお仕置きなんです。私がいなくなった後は、先輩は孤独な生活を送らねばなりません」

後輩「……それに先輩だって、私を置いていったじゃないですか」

男「えっ?」

後輩「なんでもないです。とにかく、このお仕置きの内容は変えませんからね」

男「そろそろ行こうか」

後輩「……私の体調は回復していないのですが」ギュウ

男「少し歩いたほうが、気分もよくなるよ。それに、時間も遅いし」

後輩「もうこんな時間なんですか!?」

男「また、ネズミになろうか?」

後輩「だ、大丈夫です! 今日はこの辺でお別れしましょう!」

男「えっ、でも……」

後輩「そうだ。帰る前にこれを渡しておきます」

男「……マグカップ?」

後輩「先輩が舐めまわしたものと同じものです。これを見て罪悪感に苛まれてください。ちなみに、私は今日購入したものを使いますので、お揃いにはなりませんから」

男「ありがとう。大事にするよ」

後輩「ええ。家宝にしてください」

後輩「帰りに車に轢かれないように気をつけてくださいね」

男「大丈夫だよ。それじゃあ、また明日ね」

後輩「はい。お疲れ様でした!」タッタッタ







男「後輩―!」

後輩「はい?」

男「愛してるぞー!」

後輩「!」







男「あれ? どうして引き返してきたの?」

後輩「先輩が変なことを言うから、気持ち悪くなってしまったんですよ! 責任とってください!」ギュウ

男「わかったわかった。落ち着くまで、こうしてようね」ナデナデ

これで第一部は終了です。
第二部は来週末には開始します。

みんなが想像する後輩の容姿を教えてくれると助かる。特に設定はしてないから、今後の参考にしたい。

黒髪セミロング
身長165
ぺったんこ
変猫のあの娘みたいな感じかなぁ

さおりんを160cmにした感じ
オッパイは大きい設定だったよな

コメントありがとう!
みんなセミロングとかショートみたいな短髪を想定してたのか。これを参考にして、作品に反映させるね!
あと昨日、容姿は特に設定していないとかレスしたけど、胸と目については設定してた。
胸は>>104の通り、巨乳。だいたいEくらい。目については、今後明らかにしていきます。
今後ともよろしくお願いいたします!

まな板な妹は登場しますか?

運動しててしかも陸上でロングはないでしょだからショートをイメージするよ

男 自宅
男「ただいま」

妹「おかえりー。今日も遅かったね」

男「お前と違って、俺は後輩とのデートで忙しいんでな」

妹「それ、ストーカーの思考だよ? 女性をつけまわしてるだけなのに、楽しくデートしていると思いこむなんてさ」

男「俺たち、もう一カ月も付き合ってるんだけど」

妹「一方的に想っているだけなのに交際していると妄想する。うん。完全にストーカーだね」

男「いい加減にしろよ。もし、俺がストーカーだとしたら、毎日一緒に登校するわけねえだろ」

妹「どうせ、後輩さんの弱み握って脅しているでしょ」

男「お前なあ……」

妹「あたしが一緒に登校してあげるし、放課後も遊んであげるから、後輩さんにつきまとうのはやめてよ」

男「なにが悲しくて、妹とカップルみたいな真似をしなきゃならんのだ」

妹「じゃあ聞くけど、後輩さんに好きって言われたの?」

男「それは……」

妹「ほらね。言われてないんでしょ? なんなら、会話もないんでしょ?」

男「会話はあるから!」

妹「でも、好意を示されたことはない、と」

男「……」

男「こ、言葉ではないだけで……」

妹「行動で示された?」

男「そう! そうなんだよ。いやー、照れ屋だからな、後輩は」

妹「うちの教室でお弁当を食べている姿を見るかぎり、後輩さんがお兄ちゃんに惚れている様子はないんだけど」

男「なんでだよ。どう見ても」

妹「どう見ても、お兄ちゃんが後輩さんに罵倒されているようにしか見えないんだけど」

男「お前って、本当に見る目ないな。そんなんだから、変な男にしかモテないんだよ、お前」

男「あれはご褒美みたいなものだから」

妹「はあ……?」

男「あんな目で見つめられながら罵られるなんて、最高に興奮するだろ」

妹「……お兄ちゃんって、Mだったの? ずっと、Sだと思ってたんだけど」

男「自分で言うのもアレだけど、俺はSだな」

妹「なのに罵られて興奮するの?」

男「ああ。あの目で罵られるとな」

妹「……よくわかんない」

男「子供のお前にはまだ早いよ」

男「とにかく、俺と後輩は健全な交際だから安心しろ」

妹「別に心配してないし……」

男「そうか。なら、もう口出すな」

妹「……っ!」

男「いちいちうるせえんだよ、お前は」

妹「……か」

男「あ?」

妹「お兄ちゃんの馬鹿!」ベチン

男「○△□×……!!?」

翌日 朝 
男「おはよう!」

後輩「……本当に先輩は時間にルーズですね。時計が読めないほど低能なのですか?」

男「え、えっと……。いつも通りの時間に来たんだけど……」

後輩「そのいつもの時間が遅いのです。私は余裕をもって登校したいんですから、もっと早くに来てください」

男「いまの時間でも充分余裕あるけどね……」

後輩「朝の予鈴と同時に教室に入っている現状なのに、余裕があると?」

男「……それは後輩がゆっくり遠回りしながら登校するからだろう」


後輩「問題ありますか? 私、朝に散歩するのが日課なのです」

男「なにも登校するときにしなくても……」

後輩「では、夜に散歩することにします。夜空を見上げながら歩くなんて、ロマンチックですしね」

男「だ、ダメだよ! 夜道を一人で歩くなんて、変質者に襲われたらどうするのさ!」

後輩「昨日、駅前のショッピングモールから無事に一人で帰宅できたので大丈夫でしょう」

男「あ……」

後輩「21時過ぎでしたので辺りは真っ暗でしたが、私は悠然と歩いて帰宅しました。たった一人で」

男「……ごめんね」

後輩「なんで謝罪するんですか? 私は怒ってなんていませんよ。私を置いていけるほど、先輩は偉くなったのですから。むしろ誇らしいくらいです」

後輩「一人で歩いたほう周囲の景色を楽しめますね」

男「……」

後輩「豚と散歩していると、なにをするのかわからないので気をつかわねばなりませんからね」

男「本当にごめん……」

後輩「やめてください。私が一人になれる時間を作ってくれたことを感謝したいくらいなのです。ここ一が月ほど豚のお世話で疲弊していましたから、久しぶりにゆっくりできて英気を養うことができ
ましたから」

男「そっか……」

後輩「だから、今日からまた豚の飼育に頑張れますからね」

男「……うん。今日は一緒に帰ろうね」ナデナデ

後輩「……もう逃げないように首輪でもしましょうかね」ギュウ

後輩「……先輩」

男「んー?」

後輩「頬が少し腫れてますけど、どうしたんですか?」

男「まあ、ちょっとね」

後輩「どうしようもない豚ですね。人間の言語を教えなければならないのですか? 私は先輩の頬が腫れている理由を聞いているのですが」

男「……妹に叩かれてさ」

後輩「なんてこと……」

男「妹は責めないで! 僕が言いすぎたのが原因だから……」

後輩「責める? 慰めるの間違いでしょう?」

男「……ん?」

後輩「どうせ、先輩が覗きや盗撮のような変態行為を働いたのでしょう?」

男「えー……」

後輩「違うのですか?」

男「当然でしょ!」

後輩「まあ、いくら先輩でもそんなことをするはずがありませんよね」

男「そうだよー。実の妹の裸を見てもなにも楽しくないし。むしろ気持ち悪いよ」

後輩「……」ベシッ

男「痛い! どうして叩く……」

後輩「うるさいですよ。豚くせに」

男「な、なんで……」

後輩「本当に躾がなっていませんね」

男(なんで目がマジなんだ……!?)

>>128 訂正
後輩「一人で歩いたほう周囲の景色を楽しめますね」

男「……」

後輩「豚と散歩していると、なにをするのかわからないので気をつかわねばなりませんからね」

男「本当にごめん……」

後輩「やめてください。私が一人になれる時間を作ってくれたことを感謝したいくらいなのです。ここ一が月ほど豚のお世話で疲弊していた中で、久しぶりにゆっくりできて英気を養うことができ
たわけですから」

男「そっか……」

後輩「だから、今日からまた豚の飼育に頑張れますからね」

男「……うん。今日は一緒に帰ろうね」ナデナデ

後輩「……もう逃げないように首輪でもしましょうかね」ギュウ

後輩「そうでした。先輩は叩かれて興奮してしまう変態でした。これでは躾にはならないですね」

男「あ、あの……」

後輩「先輩、これを見てください」ビラッ

男「なにしてんの!?」

後輩「これで、もう私以外の女性には性的興奮は感じないでしょう?」

男「もともと感じないよ!」

後輩「いいえ。先輩は妹だからしないと言いました。つまり、妹さんでなければ、変態行為をする危険性があります。飼い主として、私以外の女性に興味がなくなるように躾なくてはなりません」

男「だからって、こんな道の真ん中でスカートを捲ることないだろう!?」

後輩「これもお仕置きでもあるのです。彼女が道端でスカートをたくし上げパンティーを晒す。彼氏にとっては屈辱的でしょう?」

男「……」

後輩「しかし、先輩にはこれもご褒美になってしまったようですが」

男「……後輩」

後輩「なんですか? 私が見ている先輩の体の部位を言わせて辱めたいのですか?」

男「それ以上ふざけたこと言ったら、怒るぞ」

後輩「……っ! お、怒ればいいじゃないですか! 私は別に怖くないですよ!」

男「そうか。なら、もう……」クルッ

後輩「わ、私は負けません!」ギュウ

後輩「どうですか!? これで先輩は私に攻撃できませんよ!」

後輩「さあ、降伏してください!」

男「いや、後輩を力づくで振りほどくことできるんだけど」

後輩「逃がしませんよ! 絶対に離さないですから! たとえ、先輩が暴力によって引き剥がそうとしても、私は屈服しません!」

男「……」ナデナデ

後輩「な、なんと無慈悲な攻撃なのでしょう! 私の力が抜けていきます!」

男「離して?」ナデナデ

後輩「い、嫌です! 絶対に逃がしません!」

男「逃げないよ」

後輩「でも……」

男「もう怒ってないから。大丈夫だから」

後輩「……」フッ

男「あんなことしちゃダメだからね?」

後輩「だって……」

男「ダメだよ」

後輩「……二度としません」

男「はい。よくできました」ナデナデ

男「さあ、行こう。遅刻しちゃうよ」

後輩「……」キュ

男「どうした?」

後輩「……シャーペンを貸してください」

男「いいけど……」

後輩「あとで必ずお返しします」

男「……わかった。必ず会いに行くよ」

今日はここまで

次回の投下はもう少し先になりそう。遅筆で申し訳ない。

舞ってる

休み時間 1年生 教室
妹「後輩さん?」

後輩「……なんでしょう?」

妹「元気なさそうだなって思って……」

後輩「すみません。少し考えごとをしていて……」

妹「悩みでもあるの!? あるならなんでも言って! 力になれるかわからないけど……、でも聞いてあげることはできるから!」ガシッ

後輩「い、妹さん、痛いです……」

妹「急に腕を掴んだりしてごめんね……」

後輩「大丈夫ですよ。私を想ってくれてのことでしょうし。それに妹さんのような可憐な女性を至近距離で見つめることができて眼福でした」

妹「や、やめてよ。からかわないでよ……」

後輩「私は正直な気持ちを伝えたまでです」

妹「うぅ……」

後輩「恥じらう妹さんも素敵ですね」ニコッ

妹「!」

後輩「どうしたのですか?」

妹「後輩さんが笑ってる……」

後輩「そんなに私が笑うことが珍しいですか?」

妹「ご、ごめん……」

後輩「いいんです。確かに私は無愛想で感情表現に乏しいですから」

妹「で、でもね、そんなところも素敵なんだよ! クールな感じでさ!」

後輩「……兄妹揃って同じことを言うのですね」

妹「お兄ちゃんも言ってたの?」

後輩「まったく同じ言い回しというわけではありませんけどね」

妹「……ちなみにどんな台詞だったの?」

後輩「確か……」

男『俺は、クールな君のほうが好きだけどね』

後輩「っ!」カァァ

妹「どうしたの?」

後輩「な、なんでもありません!」

妹「それって、最近の話?」

後輩「いえ。中学生の頃です……」

妹「ということは陸上部の時に言われたの?」

後輩「……はい」

妹「あいつがなにを言ったのか予想がついたよ。それに、その発言を聞いて後輩さんがどんな行動をしたのかも」

後輩「な……!」

妹「不本意だけど、あいつの妹だからね。発言や行動の予想はつくよ。そして、相手がどうするのかもね」

後輩「ち、違うのです! あの時の私はどうかしていて……」

妹「後輩さんは悪くないよ。女の子として当然の行動だよ。セクハラ発言されたら誰だってビンタするよ」

後輩「だからちが……えっ、ビンタ?」

妹「お兄ちゃんに胸のことを言われて、ビンタしたんでしょ?」

妹「あの愚兄、もう許さないんだから」

後輩「あの……」

妹「後輩さん!」

後輩「は、はい!」

妹「不快な思いをさせてごめんね」

後輩「いえ、不快というよりも、先輩の言葉のおかげで私は……」

妹「大丈夫、大丈夫だから」ギュ

後輩「妹さん……?」

妹「あいつに脅されているんだよね? あいつに従わなきゃいけないんだよね?」 

後輩「えっと……」

妹「でも、安心して。あたしが後輩さんを守るから」ギュウ

後輩「あ、ありがとうございます……?」

昼休み 3年生教室
男友「今日もあの子とランチか?」

男「そうだけど。なに、羨ましいの?」

男友「そりゃ、あんな美人な子と食事してみたいさ」

男「変わってやんねえぞ」

男友「いいよ。いくら美人でも、罵られながら食事なんてしたくない」

男友「お前もよく我慢してるよな。あんな風に罵られたら、俺ならその場で別れる」

男「そりゃ、他の女が相手ならぶっ飛ばしてるよ」

男友「あの子だと違うのか」

男「ああ。あの目で必死に罵ってくる後輩は愛おしいね」

男友「目?」

男「ごめんごめん。お前、童貞だもんな。女の子と目を合わせることなんてできないよな」

男友「まあ、彼女と長く付き合いたいなら、もう少し会うのを控えるこったな」 

男「なんで?」

男友「会う回数が多いカップルは別れる危険性が高いらしいぞ」

???「……」

男「俺たちはラブラブだから別れねーよ」

???「片方だけのラブでは、ラブラブとは言えないんじゃないですかね」

男「なに言ってんの? 俺もラブなんだけど」

後輩「そうです。先輩が一方的に愛情表現しているだけです」

男「こ、後輩……!」

後輩「どうして、周囲を勘違いさせるようなこと言動をとるのですか?」

後輩「先輩方の会話は嘘にまみれています」

男「そ、そんなこと……!」

男友「諦めろ。彼女がそう言ってんだから、間違いねえよ」

男「貴様……!」

男友「睨むなよ。まあ、これで反省して、自分の発言には気をつけるんだな」

後輩「素晴らしいですね。先輩も友先輩を見習ってください」

男友「いや、俺を見習っても……」

後輩「自分でおっしゃったではありませんか。発言に気をつける、と」

男友「それは男に言ったんだよ」

後輩「そうでしたか。では、私からアドバイスです。今後は豚らしくブヒブヒ鳴いていることですね」

男(や、やばい……)

男友「ぶ、豚らしく……?」

後輩「ええ。信憑性のない都市伝説を、あたかもそれが正確な統計であるような発言をして周囲を混乱させるような輩に人間の言語を使う資格はありません」

後輩「そもそも、二足歩行をしているだけの豚が、人類とコミュニケーションを取ろうとすること自体、大きな間違いですが」

男友「 」

男(め、目がマジなやつだ……)

後輩「友先輩のような、異性と交際することなく人生を終える豚が羨ましいです。だって、会う相手がいないのですから、悲痛な別れを経験することは絶対にありませんもの」

男友「……」

後輩「友先輩のお気持ちはお察しします。先輩に飼い主が現れて悔しいのでしょう? ですが、言葉巧みに先輩を混乱させ、私から遠ざけようとしても無駄です。先輩は私の所有物です。私という名の
檻から逃れることはできません」

男友「…」

後輩「友先輩は虚言を吐く前に、飼育してくれる人を探したほうがいいのでは? まあ、誰も相手にしないとは思いますけど」

男友「 」

男友「……」ボーゼン

男「そ、そのへんでやめておいたほうが……」

後輩「そうですね。豚を諭したところで、無意味ですもんね」

男「あれは諭してたと言えるの……?」

後輩「ええ。私が罵倒するのは先輩だけですから」

男「そういえば、どうして後輩はここに?」

後輩「シャーペンを返しに来たのです」

男「午後の授業はどうするの?」

後輩「鞄の中を探してみたら、奥のほうにありました。だから、もう大丈夫です」

男「そうなんだ。でも、わざわざうちの教室に来なくても……」

後輩「人を待たせておいて、その言い草ですか。偉くなったものですね」

男友「いや、君が来たのは昼休みになって3分も経ってな……」

後輩「豚は鳴いていればいいと教えたでしょう」

男友「……ブヒィ」

男友「ふぅ……」

後輩姉「やっほー」

男友「おう。購買行ってたのか?」

後輩姉「うん。今日も大漁だよー!」

男友「そうか。良かったな」

後輩姉「なんか、スッキリした顔してるね?」

男友「ああ。新境地を開拓してな」

後輩姉「新境地?」

男友「お子ちゃまなお前にはまだ早いよ」

後輩姉「……わかった。香水変えたんでしょ? なんか匂いがいつもと違うもん」クンクン

男友「ええい、離れろ。この短時間で四発とか、姉妹で俺を殺す気か」

後輩姉「妹ちゃんが来てたの?」

男友「ついさっき男と出て行ったんだよ。廊下ですれ違わなかったか?」

後輩姉「……ううん。きっと、わたしを避けて移動したんだと思う」

男友「なんでお前を避ける必要があるの?」

後輩姉「わからない?」

男友「まったくわからん」

後輩姉「だから、友くんは童貞なんだよ。もう少し女の子の心の機微に聡くなったほうがいいよ」

今日はここまで。

>>145
待ってくれてありがとう! おかげで筆が進んだよ! 
次回はもっと早く、かつ長く投稿できるように頑張るね!


必死にSを演じてる後輩を見て悦に浸ってるってのは確かにSだな

なんか、見たいシチュエーションとかあれば教えてください! 文章力とか構成力がないから、組み込めるかわからないけど……

他の娘に告られてる男を目撃してしまい焦る後輩とか見てみたいけど難しいかね

てかそろそろ中学時代何があったのか知りたい

コメントありがとう!
>>172
それならいけると思う! そっくりそのままその展開というわけにはいかないけど。

>>173
まじか。そこを明かすのは、もう少し先のつもりだった。早めたほうがいい?

173とは違うけど1の好きな展開で書いたほうが破綻が無くていいとおもうぞ俺は

細かいサブはともかくメインイベントは1の思い通りにした方が絶対にいい

>>175
>>176
アドバイスありがとう!
展開を変えずに、もう少し情報を開示するようにして過去になにがあったのか想像しやすいようにするよ!

ノンアルコールシャンメリーを飲ませて後輩ちゃんが酔って男に甘える
男はそんな後輩が可愛いから黙ってみてて堪能したらネタばらし
後輩はみるみるうちに顔を赤くして罵倒する、そこからの男のありがとうございます!へと続く
こんな感じですかね?>>183

>>184 
天才か……

はよ

>>189
いま、同じところをグルグル回ってるところ……

例え心の中でなんと思おうがそれは心の中に仕舞っておけよ

続きはよ

>>206
ありがとう。頑張るよ。


あとだいぶ遅くなっちゃったんだけど、返信するね。

>>111
男の妹が貧乳ということでここはひとつ。これから活躍する予定だから。

>>112
ややこしいんだけど、後輩は中学1年の半年間しか陸上をやっていないんだ。男が陸上部を引退した直後に辞めている。

>>170
やめて! 俺を追いつめないで!

なんか質問あれば聞いてください。返信に時間はかかるけど、なるべく返すようにする。

校舎裏
男「今日はここで食べるの?」

後輩「……教室はやめておいたほうがいいかと」

男「どうしてそう思うの?」

後輩「妹さんが、その……私が先輩に脅されて交際していると思いこんでいるようなのです」

男「そういえば、そんなこと言ってたなあ……」

後輩「だから、誤解が解けるまでは、なるべく妹さんの前では会わないほうがいいと思います」

男「そうだね。あいつに邪魔されんのも癪だしね」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

男「ごちそうさま。今日も美味しかったよ」

後輩「お粗末様です。……それで先輩、お話があるのですが」

男「うん?」

後輩「妹さんの件はどうしましょうか?」

男「ほっとけばいいんじゃない」

後輩「そんな無責任な」

男「だって、あいつが僕たちの交際をどう思ってようが、なんの支障もないしね。あんな馬鹿は無視しとけばいいよ」

後輩「私の義妹を馬鹿呼ばわりとはいい度胸してますね」

後輩「妹さんにはちゃんと説明して理解してもらいましょう」

男「昨日の様子だと、そう簡単に納得するとは思えないけどね」

後輩「それは仕方ないですよ」

男「どうして?」

後輩「……妹さんが、私たちの交際を認められない理由なんて一つしかないでしょう?」

男「気付いてたの?」

後輩「ええ。先輩と違って、私は人の心の機微に鋭いので」

男「後輩が気付いてたとは意外だった……」

後輩「……先輩も妹さんの想いに気付いていたのですね」

男「まー、あれだけ露骨だとね」

後輩「それで先輩はどうするつもりなのですか……?」

男「さっきも言ったけど、放置だよ。あいつの気持ちはわからなくもないけど、だからって気を遣おうなんて思わない」

後輩「いいえ。だからこそ、妹さんに認めてもらわねばならないのです」

男「拘るね」

後輩「……妹さんの気持ちは痛いほど理解できますから」

男「ん? どうして後輩が理解できるの?」

後輩「……それを貴方が聞きますか?」

男「へっ?」

後輩「私はあの光景を一生忘れませんよ」

男「ごめん。なんの話なのか、さっぱりわからないんだけど……」

後輩「先輩が浮気者であるというお話です」

男「なに言ってるのさ! 僕は後輩一筋だよ!」

後輩「高校生からですよね?」

男「違うよ! 初めて会ったその時からだよ!」

後輩「……っ! だ、騙されませんよ! 私はこの目で見たのです!」

男「なにを見たっていうのさ?」

後輩「そ、それは……」







???『男くん大好き!』ギュウ

男『……』







後輩「……」グスッ

男「どうしたの!?」

後輩「先輩のばかぁ……」

男「お、落ち着いて」ナデナ

???「そこまでだ」グイッ

男「!」

妹「後輩さんを泣かした挙句、頭を撫でるなんて、この変態どうしてくれよう……!」

妹「こんな人気のないところに後輩さんを連れ込んで、ナニするつもりだったんだ!」

後輩「妹さん……」

妹「ごめんね。あたしが目を離したりしなければ、こんなことにならなかったのに……。やい、変態! どうやって後輩さんを、授業の終了と同時に教室から連れ去ったんだ!」

後輩「や、やめてください!」

男「離せ!」

妹「嫌よ! どうせまた、後輩さんに触れるつもりでしょう!?」

男「文句あんの?」

妹「あるよ! 後輩さんが嫌がってるじゃん!」

後輩「妹さん、落ち着いてください……」

妹「大丈夫。ここはあたしに任せて」

後輩「でも……」

妹「ねっ?」

後輩「……」

妹「これ以上、あんたの好きにはさせないんだから」

男「お前は悪と戦う正義のヒロインかよ」

妹「そう。後輩さんをスト―カーから守るために戦うの」

男「そうか。遂に自重することを覚えたのか。お兄ちゃんは嬉しいよ」

妹「はあ!?」

男「ストーカーって、お前のことだろ?」

妹「こいつ……!」

男「とっとと失せろ。お前にはなにもできやしない」

妹「できるもん! お前を二度と後輩さんに近づけないようにしてやるんだから!」

後輩「!」

男「やれるもんならやってみろ」

妹「あっそ。なら、やってやるわよ!」

後輩「ダ、ダメです!」ギュウ

妹「ななななにしてんの!?」

後輩「先輩が逃げないように拘束しているのです!」

妹「えっ? えっ?」

男「妹が暴走しているだけで、僕は逃げるつもりないんだけどな」

後輩「嘘です! 妹さんが私たちを別れさせようと行動するように誘導しました!」

男「あれは売り言葉に買い言葉というかさ」

後輩「私は騙されません! 騙されないのです!」ギュウウウ

妹「 」ポカーン

男「僕って、そんなに信用ないかな?」

後輩「これまでのご自分の行動を振り返ってみればいいでしょう!?」

男「後輩への忠誠を尽くしていたと思うんだけどなあ」

後輩「どこがですか! 私は常に先輩が離れていくのか……」

男「なに?」

後輩「そ、その……私という飼い主から離れてしまったら、先輩が生きていけないんじゃないかと心配だったんです!」

男「心配してくれてたんだ。ありがとう」

後輩「お礼なんていりません! 私から離れないと誓ってください!」

男「僕は後輩の傍から離れないよ」

後輩「いつまでですか!? 高校卒業するまでですか!?」

男「僕の心臓が動かなくなるまでだよ」

後輩「ダメです!」

男「えー」

後輩「どうして先輩は独りよがりなのですか!」

後輩「先輩の心臓が動かなくなるまで、私の傍にいる? それでは、私が先輩の最後を見届けなくてはいけません!」

後輩「その後、私はどうしたらいいのですか!? 先輩がいない世界をどう生きていけばいいのです!?」

後輩「私を……」

後輩「もう私を一人にしないでください……」

男「ごめんごめん。僕一人で後輩のいない世界を生きていくお仕置きが課せられているんだったね」ナデナデ

後輩「そうです。それまでは私から離れてはならないのです」ギュウウウウウ

男「うん。絶対に離れないよ」

後輩「……信用できません。豚は三歩歩けば忘れてしまいますから」

男「それは鶏だよね」

後輩「と、とにかくです! 先輩には私の所有物だという印をつけることにします!」

男「印?」

後輩「……」チュウウウ

男「!」

後輩「ふぅ……」

男「ななななにしてんの!?」

後輩「首筋に印をつけたのです。これで先輩は鏡を見るたびに、私の所有物であるということを思い出すのです」

男「そんなことしなくても忘れないよ!」

後輩「これはお仕置きでもあるのです。先輩は首筋にあるキースマークを露見しながら授業に出席する。屈辱でしょう?」

男「……なるほど」

後輩「私に虐められて幸せですか?」

男「これ以上ない幸せだね」

後輩「そうでしょうとも。先輩は私に虐められて快感を得る変態さんですからね!」

男「ということだから、僕たちの邪魔をするなよ」

後輩「えっ?」

妹「 」

後輩「――――!」カァァァ

後輩「こ、これは違うのです!」

男「なにも違わないよ。間違っているのは、僕が後輩のストーカー、っていう妹の認識だよ」

男「それとも僕はストーカーなの?」

後輩「それは……」

男「おい愚妹。わかったなら、とっとと消えろ」

妹「……」

後輩「そんな言いかたするなんて、あんまりです!」

男「ここまで厳しく言わないと、こいつはわからないからね」

後輩「それは仕方ないでしょう!? 好きな人に恋人ができたなんて、到底認められるものではありません!」

男「どのみち叶わないことだったんだから、諦めるのは容易なはずだ」

後輩「そうだとしても、妹さんの想いを踏みにじるような真似はしないでください!」

男「じゃあ、妹の想いを受けとめてあげるの?」

後輩「なんで私が……」

男「……やっぱり勘違いしてたのか」

後輩「えっ?」

後輩「どういうことなのですか……?」

男「おい、妹。一回だけチャンスやるよ。今回、ヘタレたら、もう二度とチャンスはやらん」

妹「……」

男「ほーらね。こいつには度胸がないから、なにもできないよ」

男「いくら純粋な想いを持っていても、言葉で伝えられないなら無意味なんだよ」

男「行こう。これ以上、ここにいても無駄だから」

妹「……って」

男「ん?」

妹「待ってよ!」

男「どうしたヘタレ」

妹「私の想いを伝えるわよ! 別にあんたに指図されたからじゃないんだからね!」

後輩「!」

男「そうか頑張れよ、ヘタレ」

後輩「ちょっと……」

妹「あたしは……」

後輩「そ、そうだ……!」

妹「ずっと前から……」

後輩「先輩!」ベチン

男「痛い!」

妹「後輩さんのことが好きでした!」

後輩「せ、先輩は渡しま……えっ? 私?」

後輩「あ、あれ……? 妹さんが好きなのは先輩なんじゃ……」

妹「違うよ! 誰がこんな変態野郎のこと好きになるのさ! あたしは中学の頃から、後輩さん一筋だよ!」

後輩「えっ……」

男「あー、耳が痛い……。やっぱり、勘違いしてたんだね」

男「兄妹間に恋愛感情が発生するわけないじゃん。千葉県民じゃあるまいし」

男「さ、盛大に振ってあげて」

後輩「いや、でも……」

男「そのほうが諦めもつくからさ」

後輩「妹さん、ごめんなさい……」

妹「ううん。こちらこそごめん。気持ち悪かったよね」

後輩「正直、戸惑いましたけど、嬉しかったです」

妹「ありがとう。その言葉だけで生きていけるよ」

後輩「そんな大袈裟な」

妹「大袈裟なんかじゃないよ。好きな人の言葉には、それぐらいの力があるんだよ」

後輩「……確かにそうですね」

妹「これからもお話してくれる?」

後輩「もちろんです! たくさんお話しましょう!」

妹「良かった……! これからもよろしくね!」

後輩「はい! こちらこそです!」ニコッ

妹「……」

後輩「妹さん?」

妹「あ、ごめん。なんでもないよ」

妹「ちょっと、お兄ちゃん借りていいかな?」

後輩「……」チラッ

男「ん?」

妹「大丈夫! こんな男に指一本触れたりしないから!」

後輩「べ、別にいくら触ってもらっても構いませんよ!」

男「本当にいいの?」

後輩「いいったらいいのです!」ベシッ

妹「ごちそうさまです!」

後輩「妹さんにはやってません!」

妹「お兄ちゃん、チャンスくれてありがと」

男「まあ、お前にしては頑張ったんじゃねえの」

妹「……あと、後輩さんの笑顔を引き出してくれて本当にありがとう」

男「……」

妹「もう昨日みたいに早く帰ってこなくていいからね。後輩さんとの時間を大切にしてあげて」

男「……なんの話かさっぱりわかんねえな」

妹「じゃあ、先に教室で待ってるねー!」

後輩「すぐ行きますね!」

妹「お兄ちゃんにはなにもしてないから安心してねー!」

後輩「そ、そんなこと気にしてません!」

妹「あはは。じゃあねー!」

後輩「……先輩たちがずいぶんと長くお話していたので、待ちくたびれてしまいました」ギュ

男「うん。お疲れ様」ナデナデ

後輩「それにしても、とんでもない勘違いをしてしまいました」

男「うん。びっくりしたよ」

後輩「仲がよろしかったので、つい……」

男「兄妹なんて、どこもこんなもんだよ」

後輩「……姉妹だと少し違うのですよ」

男「……」

男「後輩……」

後輩「あの話は忘れてください」

男「えっ?」

後輩「先輩が浮気者だというお話です」

男「ああ、あれか……。もう僕の疑いは晴れたってことでいいのかな?」

後輩「いいえ。晴れるどころか、真っ暗闇の真っ黒です。ですが、過去は変えられません。これから先輩を調教して、私だけを見るようにすればいい話ですから」

後輩「……それにもう、あの時のことは思い出したくもないのです」

男 中学3年生  後輩 中学1年生
昼休み
???『部活終わったら体育館裏に来て』

後輩『なんで私が……』

???『いいの? 男くんも来るのに』

後輩『先輩が……?』

???『待ってるからね』ニヤァ

部活終了後 体育館裏
後輩⦅先輩、もう来てるのかな……⦆

男『なんだよ。こんなところに呼び出して』

後輩『あ、せんぱ……』

???『男くん、大好き!』ギュウ

男『……お、おい!』

後輩『っ!』ダッ

後輩姉『男くんは、わたしのものだからね』ニヤァ

今日はここまで

>>216
待っててくれてありがとう! 

>>172の要望には応えたつもりなんだけど、どうかな?

姉妹に好かれていいな

>>254
兄妹じゃなくて?

姉は真っ黒だったか……

>>259
褐色女子…!

書いてくれー

>>262
絶賛スランプ中

>>260
違う…そうじゃないw
褐色肌の女の子好きなのか

>>265
中学生くらいの子が褐色肌だと興奮するわ。俺、ロリコンじゃないけど。
 

俺は中学生みたいな体の成人でもいけるからロリコンじゃないよ

>>271
でも、顔が老けていた場合はダメなんでしょう?

放課後 校門前
妹「遅い!」

男「はあ……?」

妹「ねえ、後輩さん。こんな時間にルーズ、いや、人生そのものがルーズな男なんか捨てちゃいなよ!」

後輩「え、えっと……」

妹「そんで、あたしと百合百合しよう!」

男「うるせえぞ! ガチレズが!」

男「なんでお前がここにいんだよ」

妹「帰ろうとしたら、後輩さんが校門前で一人佇んでるから心配になって」

男「一緒に待ってたわけか」

妹「そうそう。抱きついてほっぺにキスしたりしてね」

男「人の彼女になにしてんの!?」

妹「あたしたち友達だもん。そんなの挨拶みたいなもんだよ」

男「お前はアメリカ人かよ」

男「部活はどうしたんだよ」

妹「今日はOFFだよ。他の部活が体育館使うんだってさ」

後輩「えっ!?」

妹「どうしたの?」

後輩「あ、いえ……なんでもありません……」

妹「ならいいけど……」

男「……」

男「部活ないなら、さっさと帰れ」

妹「えー。もう少し、後輩さんと一緒にいたいよー。今日はあたしもついて行っていいでしょ?」

男「ダメだ」

妹「そこをなんとか! 一生のお願い!」

後輩「先輩、いいじゃないですか。今日は妹さんも一緒に……」

男「……」グイッ

後輩「先輩……?」

男「悪いが、放課後は後輩を独占させてもらう」

男「それに後輩との時間を大切にしろ、とか昼休みに言ってたよな? 舌の根も乾かないうちになに言ってんだよ」

妹「……わかった。今日はもう帰るよ」

妹「後輩さん、また明日ね……」

後輩「妹さん……」

妹「大丈夫。寂しいけど我慢する。だから、明日は覚悟しておいてね。我慢した分を発散するから」

男「おい!」

後輩「全力で受けとめさせていただきます!」

男「後輩もなに言ってんの!?」

後輩「落ち着いてください。先ほど妹さんがおっしゃったように、友人同士のスキンシップをするだけです」

男「いや、絶対違うって!」

後輩「では、どんなことをすると言うのです?」

男「それは……」

妹「どうせ、エッチな妄想したんでしょ?」

男「……ああ、そうだよ」

後輩「はあ……。先輩はどうしようもない変態さんですね」

妹「本当だよ。あたしはただ、後輩さんを体育倉庫で抱くだけだっての!」

後輩「どうして、わざわざ体育倉庫に行くのですか? 移動する必要はないと思いますが」

妹「あ、後輩さんはそっち系なの? わかった。教室でたくさんイこう!」

後輩「教室で行く?」

男「……おい。いい加減にしねえと、学校に通えないようにするぞ」

妹「ごめんごめん。冗談だよ」

男「お前が言うと、冗談に聞こえねえんだよ。ガチレズ女」

後輩「あの、よくわからないのですが……?」

男「後輩はわからなくていいの」

後輩「……」

妹「大丈夫。そのうち、あたしが手取り足取り教えてあげるから」

男「お前なあ!」

妹「だって、お兄ちゃんに任せてたら、一生知らないで終わりそうじゃん?」

男「余計なお世話だ!」

後輩「……」

移動中
男「あ、あの……」

後輩「なんですか?」

男「どうして怒ってらっしゃる……?」

後輩「なぜ、そんなことを聞くのですか?」

男「なぜって……」

後輩「私がどんなことに憤りを感じているのかなんて、貴方は知らなくてもいいのです」

男「……それが理由か」

男「さっきの話は違うんだよ」

後輩「さっき? ああ、貴方と妹さんが二人の世界に入っていた時ですか」

男「……そんなつもりはなかったんだけどな」

後輩「そうなのですか? まるでカップルのようでしたけど」

男「ごめん……」

後輩「なぜ謝罪するのです? 私にもっと惨めな思いをさせたいのですか?」

後輩「残念ですが、貴方の思い通りにはなりませんよ。貴方の行動で私の感情が揺れ動くことはありませんから」

男「そ、それって、どういうこと……?」

後輩「今後、貴方には無感情で接するということです」

男「……別れるわけではないんだね。良かった」

後輩「頭大丈夫ですか? この状況でよく安堵できますね」

男「だって、後輩から別れを切り出されるかと思ったんだもん……」

後輩「本当に頭大丈夫ですか? 私が貴方から離れるわけないでしょう?」

男「……」

後輩「……」

男「そうだね。そんなことあるわけないよね」

後輩「先ほどの発言を訂正します。貴方のにやけ顔を見ると非常に不愉快です」

後輩「はあ……。貴方に構っていると疲れます」

男「……ねえ、貴方って呼ぶのやめて」

後輩「辞めてほしいのなら、誠意を見せてください」

男「さっきはごめ……」

後輩「謝罪はやめてくださいね。貴方のような豚に謝罪されても、なにも響きませんから」

男「じゃあ、どうしろと……」

後輩「私を満足させればいいのです」ギュ

男「ああ、そういうことね」ナデナデ

後輩「ここまでヒントを出さないとわからないなんて、先輩は彼氏失格です」スリスリ

後輩「ふぅ……」

男「満足した?」

後輩「あの程度で私を満足させられるとでも?」

男「マジか……。30分も撫でてたんだけどな……」

後輩「量より質です。時間ではないのです」

男「具体的には、なにが足りないの?」

後輩「気持ちです。もっと感情をこめなさい」

男「かなり愛情をこめたつもりなんだけど……」

後輩「つもり、でしょう? 私に伝わっていないのですから無意味です」

男「難しいなあ」

後輩「……私のような天邪鬼の相手は大変ですか?」

男「ええ。大変愛おしく感じます」

後輩「……馬鹿。先輩はどうしようもない馬鹿です」

男「そんなに僕って馬鹿かなあ……」

後輩「はい。あまりに馬鹿すぎて、心配で目が離せませんよ」

今日はここまで。
あんまり進まなくて申し訳ない

次回は年明けに投稿します。
よいお年を!

帰り道
後輩「今日も映画を観ることができませんでしたね」

男「……そりゃあ、1時間も道端でイチャイチャしていれば間に合わないよね」

後輩「なにか?」

男「なんでもありません!」

後輩「……まあ、いいでしょう。そんなことよりも、このままでは公開終了になってしまいますよ。なにか手を打たないといけません」

男「まあ、最悪の場合はBDを借りるなりして、観ればいいんじゃない?」

後輩「BDを借りたとしても、観る場所がありません」

男「僕の家でいいじゃん」

後輩「論外です。先輩の家に入ったが最後、私は二度と自宅に帰ることはないでしょう」

男「なんでよ!?」

後輩「病状が悪化していくのに、退院するような人はいないってことですよ」

男「そんなに観たいならさ、明日行こうよ。土曜日だし、ちょうどいいじゃん」

後輩「……貴方は本当に自分勝手な人ですね。私の都合は無視ですか?」

男「予定あるの?」

後輩「先輩と違って、私は忙しいのです」

男「なら、日曜日とか」

後輩「無理です」

男「マジかよ……」ガックシ

後輩「なんで、そんなに落ち込んでいるのですか。これまでだって、休日にあったことはないでしょう?」

男「……どうしても今週末は会いたかったんだもん」

後輩「会いたいのなら、どうして約束を取り付けなかったのですか」

男「後輩も、明日は予定を空けてくれていると思って……」

後輩「私はエスパーではないのです。ちゃんと、言葉で伝えてくれないとわかりませんよ」

男「なんでだろう。確かに正論なんだけど、後輩が言うと、説得力がまるでない」

後輩「そもそも、なぜ明日会いたいのですか?」

男「わかんないか……。まあ、そりゃそうだよね……」

後輩「ウジウジしてないで、ハッキリ言ってくださいよ」

男「……」スッ

後輩「なんですか、これ?」

男「付き合って一ヵ月記念のプレゼントだよ」

男「本当は明日デートしたときに渡すつもりだったんだけどね。念のため、持ってきておいて良かった」

後輩「記念日を覚えていたのですね……」

男「うん。僕にとっては特別な日だからね」

後輩「……私にとっても忘れられない日ですけどね」

男「なら、どうして他に予定を入れちゃうのさ……」

後輩「私の寿命が尽きるまで一緒にいるのですよ? 一カ月経過したくらいでお祝いしてどうするのですか」

後輩「だいたい、交際記念日を祝うというのは、別れずにすんだことを祝うということですよ。私と先輩は離れることがないのですから、祝う必要がありません」

男「いや、付きあえたことを感謝するというかさ……」

後輩「確かに、偶発的に交際したカップルなら、出会えたことに感謝してもいいかもしれません。ですが、先輩は私の男になる運命でしたからね。交際して当然。むしろ遅すぎたくらいかと」

男「……あ、愛情を確かめ合ったりするカップルも多いみたいだよ」

後輩「変なカップルですね。日常の中で相手への愛情を忘れてしまうくらいなら別れてしまえばいいのに」

男「……」

後輩「世の中には脆弱な関係性のカップルが多いのですね。可哀想に」

男「なんで、今日はそんなに強気なのさ……」

後輩「私は常に強気ですけどね。でも、いつもよりも強気なのだとすれば、それは先輩のおかげです」

男「僕……?」

後輩「ええ。妹さんの前で、私から離れないと誓ってくれたので」

男「ずるいよ。自分だけ安心するなんて」

後輩「先輩、開けてもいいですか?」

男「……ねえ、僕の話聞いてる?」

後輩「ああ、話していたのですか? ただ、ブヒブヒ鳴いているのかと」

男「はあ……。開けていいよ。たいしたものじゃないけど」


後輩「これは……」

男「後輩の趣味には合わないかもしれないけど……」

後輩「……なるほど、そういうことですか」

男「えっ……?」

後輩「どうでしょう。似合ってますか?」

男「う、うん。とっても似合ってるよ……」

後輩「ありがとうございます。ずっと肌身離さず身につけますね」 

男「あのさ、なにが『そういうこと」なの?」

後輩「ブレスレットをプレゼントする意味を御存じですか?」

男「……ごめん、わからない」

後輩「『貴方を独占したい』という意味があるそうですよ」

男「なっ……!」

後輩「ありがとうございます。また、私だけ安心させてもらいました」

後輩「先輩はなんと強欲なのでしょう」

男「悪かったね……」

後輩「まったくです。これ以上、先輩に独占されてしまっては、まともに日常生活が送れません」

男「そんなに!?」

後輩「ええ。既に授業に集中できなくなるなど、支障が出始めているのです。これ以上は本当に危険です。私が私でなくなってしまいます」

後輩「……ですが、こんな素敵なブレスレットを頂いたわけですし、ほんの少しくらい独占させてあげましょう」

後輩「どうぞ、私を思う存分抱きしめてください」

男「だ、ダメだよ!」

後輩「なぜですか? 独占したいのでしょう?」

男「肉体的にじゃなくて、精神的にだよ!?」

後輩「これ以上、私の心に入り込む余地などありませんよ。残されているのは肉体だけです」

男「で、でも……」

後輩「そうやって躊躇していると、他の男性に私の身体を奪われてしまうかもしれませんよ?」

男「後輩がそんなことしないって信じてるもん!」

後輩「馬鹿ですね。確かに、誰も、私の心を侵すことはできないでしょう。ですが、力任せに私を肉体を犯すことは誰にだって可能なのですよ」

男「!」

後輩「他の男性によって滅茶苦茶にされてもいいのですか?」

男「ダメ! 絶対ダメ!」ギュウ

後輩「ええ。そうならないように、私を守ってくださいね」ナデナデ

後輩「ここまで言わないと、抱きしめることができないなんて、先輩は本当に根性なしですね」

男「ご主人様を抱きしめるなんて、畏れ多くて」

後輩「そんな軽口を叩いていると、引き剥がしますよ」

男「……後輩のこと、大切にしたいんだ」

後輩「わかってないですね。他の人に滅茶苦茶にされるくらいなら、先輩にされたほうがマシなのですよ」

男「そんなこと言っていいの? 後で後悔しない?」

後輩「私を後悔させないように頑張ってください」

後輩「はい。終わりです」

男「えー。もう終わりなの?」

後輩「これだけ抱きしめても、まだ物足りないとは……。本当に先輩は強欲です」

男「うん。もうそれでいいからさ、あと少しだけ抱きしめさせて」

後輩「ダメです。あと一秒でも抱きしめられたら、私の自我が崩壊してしまいます」

男「いいじゃん。たまに崩壊してるんだし」ギュ

後輩「ど、どういう意味ですか!?」バッ

男「まあ、いいか。安心できたし」

後輩「私の質問に答えてください!」

男「後輩はいつも可愛いけど、物凄く可愛くなる瞬間があるよね、って話」

後輩「絶対に違いますよね!?」

男「それよりさ、こんな時間だけど大丈夫? 門限に間に合う?」

後輩「……今日は大丈夫なのです」

男「あ、そうか。今日はいいのか……」

男「じゃあ、どこかでご飯でも食べる?」

後輩「私はいいですけど、先輩は平気なのですか?」

男「うん。僕には門限ないしね」

後輩「そうですか。では行きましょう」スッ

男「えっ……?」

後輩「抱きしめさせてあげることはできませんが、手を繋ぐくらいならいいでしょう。それとも、手では不服ですか?」

男「ううん。手を繋げるだけでも充分だよ」ギュ

後輩「……先輩」

男「なに?」

後輩「私が必ず幸せにしてあげますからね」







???(……誰だ、あの子と手を繋いで歩いている奴は)

???(俺の宝物を汚しやがって。許さねえ、絶対許さねえぞ)

???(ぶっ殺してやる……!)

今日はここまで。
今年も宜しくお願い致します。

ヤバイ展開はやめてくれよ

>>311
後輩姉「わたしの邪魔をするものは全て排除だよー?」

これはホモだな

>>317
男友「……誰だ、あの子(男)と手を繋いで歩いている奴は」

男友「俺の宝物を汚しやがって。許さねえ、絶対許さねえぞ」

男友「ぶっ殺してやる……!」


こうですか? わかりません!

はよ

>>320
ら、来週までにはなんとかしますから……(震え声)

休み時間 3年生教室 
後輩姉「さっきから、熱心になに読んでるの?」

男友「お、お前には関係ないだろ!」

後輩姉「わたしだけ、仲間外れなんて酷いよ……」

男「いや、俺を仲間にいれんなよ。前の席に座ってるってだけだろ」

後輩姉「男くんは関係ないの?」

男「ああ。教室でエロ本読むような奴なんて知らないね」

男友「読んでねえし!」

後輩姉「友くん、溜まってるんだね……」

男友「だから、違うっての!」

男友「お前らって奴は……!」

男「友は変態だからね。勘違いしても仕方ないね」

後輩姉「だね! ド変態だもんね!」

男友「はあ……。俺はただ、これを読んでるだけだよ」

後輩姉「……バイト情報誌?」

男「なにお前、バイトすんの?」

男友「悪いかよ!?」

男「悪くはないけど、お前のコミュ力じゃ、バイト先の女の子と親密になるなんて無理だと思うぞ」

男友「べ、別にそんなこと考えてねえし!」

後輩姉「どんなバイトがいいとか希望はあるの?」

男友「コンビニがいいかな」

男「やめとけ。お前、客が女だったら、まともに接客できないだろ」

男友「で、できるし!」

男「じゃあ、姉を客だと思って接客してみろよ」

男友「いらっしゃいませ。温めますか?」

後輩姉「普通にできるじゃん」

男友「だろ? 男は俺を馬鹿にしすぎ」

男「ちゃんと、目を合わせて話せ」

男友「……いらしゃいましゅ。あたためらすか……?」

男「はい。不合格」

放課後 帰り道 
後輩「友先輩がバイトですか」

男「実際にやるのかわかんないけどね。まだ、バイト先も決まってないし」

後輩「少なくとも、コンビニで働くのは避けたほうがいいでしょう」

男「だよね。あいつには忠告したんだよ。お前には接客業は向いてない、って」

後輩「その通りです。友先輩に接客された人は非常に不快な思いをされるでしょうから。もし、私が客で、友先輩にお釣りを手渡しされたら、触れられたところを除菌しますよ。それどころか、友先輩
が触った可能性があるその店の商品なんて、購入しようとも思いませんね」

男「あれ、僕が考えていた理由と全然違う……」

男「それにしても、なんで友は、突然バイトする気になったんだろう? 今まで、バイトには興味なさそうだったのに」
後輩「3年生のこの時期にバイトを始めるわけですから、よほどの事情があるのでしょう」

男「親がリストラになったとか?」

後輩「それも考えられる要因ではありますね。ただ、親御さんが無職になったというのであれば、もっとお金を稼げるバイトを選ぶのではないでしょうか?」

男「あー。それもそうか」

後輩「私の推理では、女性関係かと」

男「あいつなら美人局に騙されてもおかしくないか……」

後輩「そうではなく、好きな人ができた、あるいは物好きな女性とお付き合いを始めたのでは?」

男「と、友に限ってそんなことあるわけないよ!」

後輩「美人局に騙されている確率のほうが低いと思いますよ」

後輩「おそらく友先輩は、想いを寄せている女性にプレゼントを贈るために、お金を稼ごうとしているのですよ」

男「そうかなあ……?」

後輩「ええ。間違いありませんよ」

男「どうしてそう思うの?」

後輩「私も同じ理由でバイトをしていたからです。ただ、私の場合は、友先輩と違って、相手から一方的に想いを寄せられているわけですが」

男「へっ……?」

後輩「本当は別れ間際に渡すつもりだったのですが、まあいいでしょう」」

後輩「どうぞ、受け取ってください。たいしたものではありませんけど」

男「これは……?」

後輩「プレゼントですよ。綺麗にラッピングされた箱を見ても、これがなんなのか悟ることができないほどの馬鹿なのですか?」

男「いや、それくらいはわかるけど……今日って、何かの記念日だっけ?」

後輩「交際記念日でも、誕生日でもありません」

男「……ごめん。どうして、プレゼントを貰えるのかわからないや」

後輩「なぜですか? 特別な日にプレゼントを贈るのは当然のことでしょう」

男「でも、記念日じゃないって……」

後輩「ええ。ですが、今日が特別な日であることに違いないでしょう? 私が隣にいるのですから」

男「……それもそうだね」

後輩「納得していただけましたか?」

男「……うん。後輩の言う通りだよ。ありがたく、頂戴いたします」

後輩「なんですか、急に畏まって」

男「ちゃんとしたほうがいいかなって。……じゃあ、早速、開けさせてもらうね」

男「こ、この時計は……!」

後輩「以前、先輩が見ていたものですよ」

男「こ、こんな高価な物をどうやって買ったのさ!?」

後輩「バイトしたのです。この二か月間、土日を全て捧げました」

男「なんで、そこまで……」

後輩「先輩には非常に価値のあるものをもらっていますから、そのお礼です」

男「僕がいうのもなんだけど、そのブレスレットは安物だよ!?」

後輩「そういうことではありません」

後輩「いいから、受け取ってください。私の二か月間を無駄にしたいのですか?」

男「……ありがとう」

後輩「面倒な人ですね。素直に受け取ればいいのに」

男「どうかな……?」

後輩「とてもいいと思いますよ。その時計が」

男「……この時計が似合う男になります」

後輩「ええ。精進してください」

後輩「さて、先輩。時計を贈る意味をご存知ですか?」

男「……それもわからない」

後輩「まったく。本当に先輩は無知ですね。いいですか。時計を贈るというのは……」

後輩「『貴方の時間を束縛したい』という意味があるそうですよ」

男「なっ……」カァァ

後輩「まあ、私の場合は、『束縛したい』という願望ではなく、『束縛します』と宣告しているわけですけど」

後輩「そういうことですので、今週の土曜日からは、休日も私と共に過ごしていただきます」

男「いいんですか!?」

後輩「ええ。今まではバイトの為に会うことを控えていただけですから」

男「つ、遂にこの時がきたのか……! 任せて! 僕が完璧にエスコートするよ!」

後輩「結構です。先輩にエスコートされる筋合いはありません」

男「そんなこと言わないでさ、今回は僕に任せてよ!」

後輩「……わかりました。先輩にお任せします」

男「ありがと! さあ、これから忙しくなるぞー!」

後輩「あの……」

男「どうしたの? どこか行きたいところでもある?」

後輩「いえ、私はどこでも構いません。……そうではなく、たかが休日に会うだけなのですから、もう少し力を抜いてはどうかと。先輩は変に空回りするので」

男「大丈夫だって! 最高のデートにするからさ!」

後輩「……本当に大丈夫なのでしょうか」

今日はここまで

来週までに宣言はなんだったのか

まだか

>>340
申し訳ない……。書いていたものを全て没にした結果、期日を過ぎてしまった。

>>343
今しばらくお待ちください。

今月中にはなんとか……

翌日 朝 
男「おはよう! 爽やかな朝だね!」

後輩「すみません。待たせてしまって」

男「大丈夫だよ! 今来たところだから!」

後輩「……朝からうっとおしいテンションですね」

男「徹夜明けだからね! ナチュラル・ハイってやつだよ!」

後輩「今日は小テストでもあるのですか?」

男「小テストよりも重要な提出物があってね。それを書いてたんだ」

後輩「進路調査票ですか?」

男「ふふふ。土曜日のデートプランだよ!」

後輩「……」

男「後で感想を教えてね!」

後輩「歯を食いしばりなさい」

男「えっ」

後輩「この豚が!」バチン

男「○△□×……!!?」

後輩「言いましたよね。力を抜け、と。これで身体を壊したりしたら、どうするのですか」

男「だ、大丈夫だよ! 授業中に寝ればいいわけで……」

後輩「いいえ。貴方は学校を休み、自宅のベッドで眠るのです」

男「そこまでする必要ないって!」

後輩「その言葉、そっくりそのままお返しします」

待ってました!

男「後輩を一人で学校になんて行かせられないよ!」

後輩「私は幼稚園児ですか。一人で学校にくらい行けますよ」

男「だけど……」

後輩「今日無理をして、土曜日に会えなくなってもいいのですか?」

男「……わかったよ」

男「あのさ、学校行く前にデートプランの感想を教えてくれないかな?」

後輩「後で読んで、明日お伝えしますから」

男「後輩の感想が気になって眠れない……」

後輩「……わかりました。その代わり、ちゃんと寝るのですよ?」

男「うん! ありがと!」

後輩「まったく。世話のかかる人です」

男「えへへ。だって、後輩がどんな反応するか楽しみなんだもん!」

後輩「はいはい。いま読みますから待っててください」

男「どうかな?」

後輩「……」

男「後輩?」

後輩「……」ビリビリ

男「な、なにしてんの!?」

後輩「先輩のご期待に沿って、デートプランが書かれた紙を引き裂いてあげたのです」

男「いくらなんでも、これは酷いよ!」

後輩「すみません。引き裂いてほしくて、こんなふざけたものを書いてきたのかと思ったので」

男「なにが気に入らなかったのさ!?」

後輩「まず朝の集合が駅前というのが気に入りません。駅前まで一人で行けと?」

男「だって、後輩はバスでしょ? 僕は自転車で行くし……」

後輩「私の家に自転車を停めて、一緒にバスで移動すればいいでしょう。それ以外の選択肢なんて存在しませんよ」

後輩「電車で水族館に向かうことになっていますが、何をしに行くのですか?」

男「そりゃあ、観覧ですけど……」

後輩「魚は見るものではなく食べるものです」

男「それ言ったら、水族館なんていらないよね……」

後輩「会話の続かないカップルからは需要があるので、存在してもいいんじゃないですか」

後輩「昼食のお店のチョイスにもセンスのなさが現れています」

男「そのお店はピザが美味しいって話題なんだよ? 後輩、ピザ好きでしょ?」

後輩「ええ。このお店のことは私も承知しています。いつか、一人で行ってみたいと思っています」

男「なんで僕とは行ってくれないのさ!」

後輩「貴方はブヒブヒ鳴きながら、私の料理を食べていればいいのです」

男「……」

男「さ、最後のタワーの展望台から夜景を眺めるのは譲れないからね!」

後輩「そうですか。では、私を一人にするということですね」

男「これもダメなの……」

後輩「当然です。私には夜景を眺める余裕なんてありません」

後輩「先輩だって、他に見なくてはならないものがあると思いますよ」

男「……確かに」

後輩「私を想ってデートプランを立ててくれたのは、充分伝わりました。ですが、先輩は大きな勘違いをしています。私を喜ばせたいのなら、どこかへ出掛ける必要なんてないのです」

後輩「私は、どんなものでも美味しいと感じるでしょうし、ありふれた景色だって綺麗に見えることでしょう」

後輩「先輩と一緒なら、ですが」

男「……僕も後輩が傍にいてくれるなら、そうかもしれない」

後輩「そうでしょうとも。先輩は私に夢中ですからね」

男「デートプランを練り直してくるね」

後輩「ちゃんと睡眠をとって、すっきりした状態で考えてくださいね」

男「うん。そうするよ」

後輩「では、そろそろ学校へ行くので、歯を食いしばりなさい」

男「えっ?」

後輩「この豚が!」ギュウウウ

男「い、痛い! 締めすぎだよ!」

後輩「他に言うことがあるでしょう?」ギュウウウウウウ

男「……一人にさせて、ごめん」

後輩「誠意が足りません」ギュウウウウウウウウ

男「大好きだよ」ナデナデ

後輩「あと20分、この状態を維持したら、許してあげましょう」ギュウウウウウウウウウウウ

今日はここまで

>>354
ありがとう! これからもよろしく!

土曜日 朝 男宅
妹「おはよう」

男「おう。今日は試合か?」

妹「うん。東高と練習試合。……お兄ちゃんはデートだよね?」

男「ああ。愛しの後輩とな」

妹「頑張ってね。あたしが後輩さんの義妹になれるように」

男「……そうだな。そうなれるように頑張るさ」

妹「頼むよー。あたしの娘と後輩さんの娘が恋人になって、そこで遂にあたしたちのDNAが混じりあうという、壮大な計画の成功の鍵はお兄ちゃんが握ってるんだからさ」

男「任せろ。そんな計画、握り潰してやる」

妹「ってかさ、その服で行くつもりなの?」

男「なにか問題ある?」

妹「地味すぎ。デートに行く服装とは思えない」

男「でも、これは後輩のコーディネートなんだけどな。昨日、選んでもらったんだ」

妹「そうなの? うーん。あたしなら、もう少し明るい色を選ぶけどなあ……」

男「なんでも、俺は凝った服装をする必要がないそうだ。無難な服でいい、と」

妹「……ああ、そういうこと。最近、後輩さんがよくデレるようになったね」

男「遠回しすぎて、理解するのに時間がかかるけどな」

男「そろそろ部活に行ったほうがいいんじゃねえの?」

妹「うーん。今日は休んじゃおうかなあ……」

男「……デートの邪魔をしたら、さすがにキレるぞ」

妹「違うよ。そうじゃなくて、純粋に部活に行きたくないんだ」

男「まあ、どうせ試合に出れないだろうし、チームに何も影響はないだろうが、顔は出しておいた方がいいと思うぞ」

妹「1年でレギュラー張ってるんですけど」

男「なら、なおさら行けよ。レギュラーがサボっていいのかよ」

妹「そうなんだけどさあ、なんか副部長が変なんだよね。あたしにやけに優しいというか……」

男「1年でレギュラーのお前に気を遣ってくれてんだろ。いい先輩じゃねえか」

妹「だからってさ、事あるごとに抱きついてきて、キスしようとする? なんか気持ち悪いんだよね……」

男「それ、お前が後輩によくやってることじゃん」

妹「お兄ちゃんから副部長に言ってくれない? 妹に変なことしないでくれ、って」

男「なんで俺が……。そもそも、バスケ部の副部長なんて知らねえし」

妹「いや、副部長とは中学から一緒でしょ? 話したことあるはずだよ。副部長にお兄ちゃんのこと訊かれたことあるし」

男「どんなやつ?」

妹「長身で……」

男「悪いな。身長の高い女なんて興味がないから、覚えてないわ」

妹「どんだけ身長にコンプレックス感じてんのよ……」

妹「まあ、もう少し我慢してみるよ」

男「そうそう。どうせ、そいつはもうじき引退なんだし、それまで辛抱しとけ。せっかく、一年でレギュラー入りしたんだ。頑張れよ」

妹「うん。ありがと。じゃあ、行ってくる」

男「なにかあったら、顧問に相談してみろ」

妹「うーん。今日、ナニかあるのは、お兄ちゃんの方じゃないかな。あ、うまくいかなかったら、あたしが相談に乗ってあげるからね!」

男「余計なお世話だ!」

後輩宅前
男「ど、どうしたの!?」

後輩「これからデートです。先輩もそのつもりで来たのではないのですか?」

男「そういうことではなくて! その服装のこと言ってるの!」

後輩「……似合っていませんか?」

男「似合ってるよ! そりゃあもう、その服は後輩の為にデザインされたんじゃないかって思うくらい似合っているけど!」

後輩「大袈裟ですね。でも、そんな風に褒めてもらえると嬉しいです。ありがとうございます」ニコッ

男「あ、うん……」カァァァ

後輩「では、行きましょう。バスに乗り遅れてしまいますよ」

男「……って、笑顔に騙されないから! なんで中学の制服を着てるのか説明してよ!」

後輩「似合っているのであれば、問題ないでしょう?」

男「大有りだから! 問題しかないから!」

後輩「では、問題点を具体的に挙げてください」

男「周りに中学生とデートしてる変態とか思われちゃうじゃん! 僕は変態だけど、ロリコンじゃないから!」

後輩「変態であることを大声で公言してしまうような人は、周囲にどう思われようが気にすることありませんよ」

後輩「先輩がなにを言おうと、私はこの格好でデートに臨みます」

男「わかった。でも、せめて、理由を教えて?」

後輩「私がそうしたいからです」

男「そう思った理由を訊いてるんだけど」

後輩「……」

男「はぐらかさないで、ちゃんと教えて」

後輩「……中学生の頃に……先輩と……ので……してみたいんです」

男「聞こえない」

後輩「中学生の頃に先輩と制服デートすることに憧れていたのに、することができなかったので、今日してみたいんです!」

男「えっ」

後輩「先輩のばかぁ……」グスッ

男「……」

後輩「もうやだぁ……」

男「ごめんな」

後輩「……先輩なんて知らないもん」

男「頭撫でてやるから」

後輩「やだ。ぎゅーしてくれないと許さない」

男「はいよ」ギュウ

後輩「なでなでは?」

男「わかったよ。甘えん坊さん」ナデナデ

男「……なんか懐かしいな」

後輩「なにが……?」

男「出会ったばかりの頃は、よくこうやって後輩が甘えてきたよな。さすがに抱きしめたことはなかったけど」

後輩「……」

男「今みたいになったのは確か―――」

後輩「刑務所に送られたくなければ、今すぐ離しなさい」

後輩「……」

男「こ、後輩……」

後輩「先輩がなにを言おうと、私はこの格好で臨みます」

男「えっ?」

後輩「先輩がなにを言おうと、私はこの格好で臨みます」

男「……わかった。じゃあ、行こう」

後輩「バスの時間に間に合うといいのですが……」

男「時間が巻き戻ったわけじゃないからね。どうだろうね」

今日はここまでです。

後輩ちゃん男が下手したら逮捕される可能性あるやんww
可愛いからいいけど

>>383
後輩姉「よーし。じゃあ、わたしが通報しちゃうぞー!」

>>384
姉さんひでえww

>>385
後輩姉「本当に酷いのは妹ちゃんだけどね」

姉妹丼と聴いて飛んできますた!!!

>>388
兄妹丼じゃなくて?

ああブラックコーヒーがゲロ甘いよおおおおお

>>391
そろそろ苦いのでも飲む?

もうすぐ最後の更新から一ヶ月ですがまだですか?

>>394
今しばらくお待ちくださいませ。

駅前
男「……本当にここでいいの?」

後輩「くどいですよ。私はここに行きたいのです」

男「後輩がいいなら、いいんだけどさ……」

後輩「さあ、参りましょう!」

男(……初デートで漫画喫茶に行くのは、何か間違っている気がする)

漫画喫茶
男「ごめん。待たせちゃったね」

後輩「大丈夫ですよ」

男「マットタイプの部屋しか空いてなかったけど平気?」

後輩「そのつもりでしたから問題ありません」

男「そ、そうなんだ。じゃあ、ブランケット持ってくるね」

後輩「ブランケット?」

男「いや、ほら……スカートが……」

後輩「だからなんですか? 先輩が見なければいいだけですよね?」

男「そうだけども……」

後輩「まあ、先輩の座る位置から、私の下着が見えることはないと思いますけど」

後輩「ふむ。なかなかの品揃えですね」

男「まあ、漫画喫茶だからね」

後輩「先輩はなにから読みますか?」

男「僕はそうだなあ……これにしようかな」

後輩「……却下です」

男「なんでよ!?」

後輩「こんなライトノベル原作の青春ラブコメ漫画など、読む価値はありません」

男「なんでそんなこと言うのさ! 後輩だって、読めばきっとハマるって!」

後輩「読みません! 水泳部を覗く為に陸上部に入部するような変態が主人公の作品なんて、ろくでもないに決まってます!」

男「……うん?」

後輩「そんな変態に想いを寄せる女の子が何人もいるなんて、リアリティがなさすぎます」

男「……あのさ、後輩って、この作品を読んだことあるの?」

後輩「な、なにを言って……」

男「だって、ライトノベルが原作って知ってるし、主人公が陸上部に所属していた理由を把握してるからさ」

後輩「それは……」

男「……」

後輩「……い、一般常識なのです!」

男「いくらなんでも無理があるよ」

男「そうか。後輩はこの作品を読んだことあるのか」

後輩「一巻だけです! それも、冒頭の数ページだけです!」

男「いつ読んだの?」

後輩「い、いつだっていいでしょう!?」

男「後輩が中学一年生の……そうだな、5月くらいかな」

後輩「……すみません。中学時代の記憶は非常に曖昧なのです。先輩のことを憶えていないくらいですから」

男「ああ、そういえばそんな設定あったね」

後輩「設定とはなんですか!?」

男「まあ、いいや。いろいろ納得できたし」

後輩「私は納得していませんよ!」

男「中学生の頃に僕と何がしたかったんだっけ?」

後輩「さあ、漫画を選びましょう。時間がもったいないです」

男「そうだね! 月……おっと、後輩はどれにする?」ニヤニヤ

後輩「……個室に入ったら、その緩みきった顔を引き締めてあげますよ」

個室
後輩「意外と広いのですね」

男「まあ、こんなもんじゃないかな。マットタイプだし」

後輩「そういうものなのですね」

男「あれ? 座らないの?」

後輩「私に、誰が座ったのかわからない座椅子を利用しろと?」

男「……まさか、寝るの?」

後輩「はあ……。本当に先輩は変態さんですね。こんな個室で寝転ぶわけがないでしょう? はしたない」

男「じゃあ、どうするの?」

後輩「こうするのですよ」スッ

男「……っ!」

後輩「ふう。さすが私専用の座椅子。落ち着きます」

男「僕が落ち着かないよ!」

後輩「いまどきの座椅子は人間の言葉を話すのですね。凄いです」

男「これはキツイって!」

後輩「えー?」フリフリ

男「!」

後輩「苦しそうな顔をしないでください。まるで、私が重いみたいじゃないですか」フリフリ

男「わかった。わかったから、お尻を動かすのやめて……」

後輩「座椅子でどう動こうが私の自由です」フリフリ

男「くぅぅ……」

後輩「先輩は、私を硬い物の上に座らせたりしないですよね?」ニコッ

男「……ごめんなさい。さっきは調子に乗りました。もう許してください」

後輩「先輩が私より優位に立とうなど、千年早いのです」

男「その通りです……」

後輩「さあ、漫画を読みましょう」

男「……えっと、体勢はこのままなの?」

後輩「そうですけど、なにか?」

男「ドキドキして仕方ないんだけど……」

後輩「そうみたいですね。先輩の心臓の鼓動を感じますよ」

男「もうちょっと離れない?」

後輩「はあ……。なら、これでどうですか」ギュウ

男「後輩……」

後輩「先輩だけがドキドキしているわけではないのですよ」

後輩「私だって恥ずかしいです。でも、それでも……」

後輩「先輩と密着していたい、先輩の体温を感じていたいのです」ギュウウウウ

男「……わがまま言ってごめん」ナデナデ

後輩「まったくです。私にここまで言わせるなんて、本当にダメな彼氏です」

後輩「さてと、どれから読みますかね」クルッ

男「……後輩」

後輩「はい? なんでしょう?」

男「大好き」ギュ

後輩「あら、甘えん坊さんですね」

男「そういうのは嫌?」

後輩「安心してください。後ろから抱きしめられて嫌な女の子はいませんから」ポンポン

今日はここまでです

これってある種のヤンデレになってきてるよね

正直、>>98が書き込まれた時は動揺した。書き溜めていたものを全て抹消するほど動揺した。

>>412
マジか……。それは意図と違うから、修正していくわ。

ヤンデレにも色々あるしこれもベクトル違いの一種のヤンデレだと思うがね
ヤンデレは最低限の条件つかなりやすいのは相手を独占して自分に縛り付けたいだからね
そこからどう派生するかだよ

>>418
ありがとう。モヤモヤが晴れたわ。

はよ書かんかーい!

>>421
書いてるよー。

後輩「そろそろ時間ですね」

男「うん……」ゲッソリ

後輩「……私、そんなに重かったですか?」

男「そうじゃなくて、その……我慢疲れというか……」

後輩「なにを我慢していたのです?」

男「……生理現象」

後輩「なるほど。我慢してあの大きさなのですね。先輩はずいぶんとご立派なものをお持ちのようです」

男「えっ」

後輩「アレが標準なんて暴力的すぎます。私には受け止められそうにありません」

男「……」ズーン

後輩「そんな顔をするのはやめてください。折角のデートなのですから」

男「……うん。こんな楽しい日に暗い顔なんてしてちゃダメだよね!」

後輩「そうですよ。はちきれんばかりに膨張した男根を私に押しつけたくらいで、落ちこむことはないのです」

男「やめてよ!!」

男「後輩の意地悪!」

後輩「先輩が怒る理由がわかりません。貴方はセクハラをした加害者ですよ」

男「後輩があんなことしたからでしょ!?」

後輩「面白いことをいいますね。私は座椅子に座っただけです」

男「僕は座椅子じゃない!」」

後輩「いいえ。貴方は私専用の座椅子であり」

後輩「抱き枕でもあり」ギュウ

後輩「私の彼氏なのです」

男「……っ!」カァァ

後輩「異論はありますか?」

男「な、ないです……」

公園
男「ふぅ……。ご馳走様でした」

後輩「はい。お粗末様です」

男「いつも本当にありがとう」

後輩「いいのです。豚に餌をあげるのは、飼い主として当然のことですから」

男「むー」

後輩「なんで不服そうなのですか。罵られるのがお好きなのでしょう」

男「今日は違う言葉が訊きたいの!」

後輩「年下の彼女に甘えるなんて、男として恥ずかしくないのですか?」

男「中学校の制服を着ている彼女とデートしている方がよっぽど恥ずかしいよ」

男「どうしても言ってくれないの……?」

後輩「どうしても訊きたいのですか?」

男「はい! 訊きたいです!」

後輩「そうですか。まあ、言いませんけれど」

男「そ、そんなあ……」シュン

後輩「……っ」ギュ

男「僕が期待しているのは、こういうことじゃないんだけど……」

後輩「……捨てられた子犬みたいな表情をした先輩が悪いのです。そんな顔を見たら、抱きしめたくなってしまいますよ」

後輩「さて、満足しましたか?」

男「抱きしめてもらって嬉しかったけど、言葉も訊きたいなあ……」

後輩「もう少し、我慢してください」

男「後で言ってくれるの?」

後輩「ええ。その代わり、ちゃんとお礼をしてくださいね」

今日はここまで

えぇい、まだか・・・!保守

>>433
遅くなってすまない。来週にはなんとかする。

???
男「……ほ、本当にここに行くの?」

後輩「なんなのですか。今日は水を差すことばかり言って」

男「だって……」

後輩「さっきは、『いいよ。欲しいものがあるなら、買いに行こうよ』とおっしゃっていましたよね?」

男「だって、まさか下着を買いに行くとは思わないでしょ!?」

後輩「何を購入しようが、私の自由です」

男「そうだけど、今じゃなくてもいいよね!?」

後輩「いいえ。今日でなくてはなりません」

男「なんで!? 急いで購入する必要ないよね!?」

後輩「実は……もう下着がないのです」

男「……はい?」

後輩「その……バストが大きくなってしまって、いま着けているブラジャーしか、サイズに合うものがないのです……」

男「な、なんだと……?」

後輩「でも、先輩がそこまで言うのなら仕方ありませんね。明日は、ブラジャーを着けずに学校に登校することにします」

男「買おう! 後輩の胸にジャストフィットするブラジャーを買っちゃおう!」

後輩「どれにしましょうか」

男「……」

後輩「先輩は、フロントホックとスタンダードなホック、どちらがいいですか?」

男「……どっちでもいいんじゃない?」

後輩「なんですか、その非協力的な態度は」

男「どれがいいかなんてわからないし……」

後輩「自分がブラジャーを着けるならどちらがやりやすいのか、という視点で考えてくれればいいです」

男「着ける機会なんてないよ!」

後輩「それはそうですが……」

男「あ、自分が外すなら、って考えればいいのか。それならフロントがいいかな。ホックを外したら直ぐに胸が見えるし」

後輩「貴方には外す機会も訪れませんよ」

後輩「スタンダードなタイプにします」

男「……僕の意見を聞く必要なかったじゃないか」

後輩「あれは意見というより、妄想でしょう」

男「実用的な答えだと思うけどなあ……」

後輩「だから、貴方には外す機会は訪れませんよ」

男「むー」

後輩「むくれてもダメですよ。さて、色はどれに……」

男「白! 絶対に白!」

後輩「そうですか。わかりました」

男「理由は訊かないの?」

後輩「色付きだと透けてしまうから、でしょう?」

男「……ご明察。さすがだね」

後輩「あまり嬉しくないですけどね」

後輩「では、お会計してきます」

男「一着で足りるの?」

後輩「はい。あと、三着ほどありますから」

男「!?」

後輩「あの話を信じるなんて、先輩って純粋ですね」

男「騙すなんて酷いよ!」

後輩「そうでもしないと、先輩はついてきてくれないですし」

男「なんで、僕がついていく必要があるのさ!?」

後輩「貴方ならわかるでしょう」

男「……そりゃあ、わかるけどね」

男「でも、本当に僕は心配したんだからね!」

後輩「まあ、ブラジャーがないとしても、さらしを巻けばいい話ですから」

男「いや、それはダメだよ!」

後輩「なぜですか?」

男「後輩の豊満な胸が押しつぶされてしまうじゃないか!」

後輩「黙りなさい」

男「今のは冗談として」

後輩「冗談には聞こえませんでしたが」

男「さらしなんか巻いたら汗疹ができたりしちゃうじゃん」

後輩「正しく巻けば、そんなことにはなりませんよ」

男「巻いたことあるの!?」

後輩「中学1年生の頃に巻いていました」

男「な、なんで?」

後輩「『この作品面白いから読んでみてよ。特にメインヒロインが可愛いんだ。ロリっ子で、しかも貧乳なんだよ! 最高だよね!』と、私に話しかけてきた、陸上部の先輩がいましてね」

男「……」

後輩「中学一年生にして、Dカップにまで成長していた私への嫌味かと思いましたよ」

男「ま、待った! そんなことないはずだよ!」

後輩「理由を伺いましょう」

男「だって、後輩が走るたびに大きく胸が揺れてたもん! これは間違いないよ! オカズにしたことあるもん!」

後輩「『やっぱり三次元は巨乳だよね!』と、その日たまたまさらしを巻いていなかった私の胸を見つめながら話しかけてきた陸上部の先輩がいましてね」

男「……」

後輩「誰かさんの為に胸を小さく見せようと努力している私への嫌味かと思いましたよ」

後輩「先輩はあの頃から筋金入りの変態さんでしたね」

男「……悪かったね」

後輩「いえ、別に悪くはないでしょう。むしろ、感謝していますよ」

男「僕が変態だったことに?」

後輩「先輩が変態になってくれたことに、です」

男「……何の話かわかんないや」

今日はここまで

後輩「お待たせしました」

男「おかえり。次は雑貨屋だっけ?」

後輩「はい。香水を買おうかと」

男「香水かあ。僕も一緒に買おうかな」

後輩「私は選びませんからね」

男「えっ……」

後輩「はあ……わかりました。私が選んであげますよ」

男「いいの!?」

後輩「そうしないと、先輩が川に飛び込みそうなんですもん」

男「大袈裟だなあ……。そんなことしないよ」

後輩「私が選ばないと宣告した時の先輩の表情の方が、よっぽど大袈裟でしたけどね」

雑貨屋
男「ねえねえ、お揃いにしない?」

後輩「香水がお揃いのカップルなんて気持ち悪いです」

男「……」

後輩「だから、その表情が……」

男「……ねえダメ?」

後輩「だ、ダメです……」

男「どうしても……?」

後輩「もう! 母性本能をくすぐるような顔をするのはやめてくださいよ! 思わず屈してしまいそうになるでしょう!?」

後輩「そもそも、先輩の香水は既に決めているのです!」

男「そうなの?」

後輩「これです」

男「……これ、いま使ってる香水と一緒なんだけど」

後輩「そうですよ。貴方は変える必要がないのです」

男「いやでも……」

後輩「私から安らぎを奪いたいのですか?」

男「……もっと、ストレートに言ってくれればいいのに」

男「わかった。これにする」

後輩「それがいいでしょう」

男「後輩はどれにするの?」

後輩「妹さんからオススメされた物にしようかと」

男「……あいつから?」

後輩「なんでも、百合の香りがするらしいのです」

男「そんなものは捨ててしまえ」







同時刻 体育館
妹「!」ビクッ

部長「どうしたの?」

妹「な、なんでもないです……」

部長「ならいいけど。試合中によそ見しちゃダメだよ」

妹「はい……」

妹(いま感じた殺気はなんだったんだろう……?)

審判「チャージドタイムアウト」

副部長「あー、疲れた」ギュウ

妹「あ、あの……」

副部長「ねえ、後で抱かせてくんない?」

部長「いま、抱きしめてるじゃん」

副部長「ばーか。そういう意味じゃねえよ」

部長「あはは。だよねー」

妹(……いま、20点差で負けてるんだよね?)

顧問「おい! 話を聞かんか!」

副部長「ちっ……」

部長「はーい」

顧問「まったく……。お前たち、西高なんかに20点差もつけられて恥ずかしくないのか!? 特に妹! お前は何回やられれば気が済むんだ!」

妹「すみません……」

副部長「妹のしょげてる顔、マジ最高なんだけど……」

部長「副部長って本当にドSだねー」

顧問「話を聞けーーーーー!」

「ブー」
顧問「ちっ、もう時間か……」

部長「さて、行きますか」

顧問「おい、このままで終わるなよ! 最低でも10点差以内にするんだ! この点差で負けたりしたら罰走だからな!」

部長「あら、ずいぶん弱気だこと。勝たなくていいのかねー」

妹「でも、この点差だと、逆転は難しいんじゃ……」

部長「いや、むしろちょうどいいんじゃないかな」

妹「へ……?」

部長「試合が終わればわかるよ」

今日はここまで

帰り道
男「はぁ……」

後輩「……なにかご不満でも?」

男「ち、違うよ! そうじゃなくて、もうお別れなんだな、って寂しくなっちゃって……」

後輩「先輩は本当にお馬鹿さんですね」

男「なんでよ!? 好きな人と離れるのは辛いじゃん!」

後輩「私、まだ帰りませんよ」

男「へっ……?」

後輩「これくらいで解放するわけないでしょう」

後輩「私についてきてください」

男「どこに行くの?」

後輩「一つくらいは、先輩の希望を汲んであげますよ」

男「……もしかして、夜景を見に行くの?」

後輩「そんなところです」

男「いいの? 行きたくないって言ってたのに……」

後輩「タワーに行きたくないのです。あんな大勢のカップルがいる場所になんて近付きたくありません」

男「……確かに。デートの最後は二人っきりで過ごしたいよね」

後輩「むしろ、最初から最後までそうしたいですね」

後輩「今から行く場所は私たち二人だけで夜空を眺めるには最適なスポットですよ」

男「そっか。じゃあ、たくさんイチャイチャしようね!」

後輩「ええ。そのつもりです」

男「!?」

後輩「さあ、行きますよ」

中学校
後輩「着きましたよ」

男「……ここのどこが夜景スポットなのさ?」

後輩「私は夜景スポットに行くなんて一言も言ってません。二人で夜空を眺めるなら最適、とは言いましたが」

男「それにしたって、この場所は適してないでしょ」

後輩「いいじゃないですか。ここは私たちの母校なのですから」

男「……中学時代のことは忘れたんだよね?」

後輩「そういう設定になっていますね」

男「設定って自分で言っちゃったよ……」

校庭
男「あれ? 屋上に上るんじゃないの?」

後輩「違いますよ。ここで夜空を眺めるのです」

男「ここで……?」

後輩「ええ。とっても素敵な景色を見ることができますよ」

男「そうかなあ……?」

後輩「……」

男「い、いや、後輩と二人なら、そりゃあもう最高の景色だけどね!」

後輩「……まあ、期待はしていませんでしたからいいですけどね。どうせ、先輩からすれば、なんということない出来事だったのでしょうから」

後輩「私はここである男性と二人で寄り添いながら夜空を眺めたことがあるのです。それは、とても美しい景色でした。その時の出来事は、私の胸に深く刻まれています」

男「それって、いつの話……?」

後輩「私が陸上部に入部した初日の夜のことです。その日、私は陸上部の活動が終わった後、体育倉庫の影に隠れて泣いていました」

後輩「下校時刻を過ぎて一時間ほどが経った頃、ある陸上部の先輩が私の横に座り、なぜ泣いているのかと訊ねてきました」

後輩「……その問いに、私はその人を突き飛ばすことによって返答しました。最低ですよね。心配してくれた人を暴力によって遠ざけようとしたのですから」

後輩「それでもその人は、私から離れようとしません。何度も私が泣いている理由を訊ね、しまいには私の髪をそっと撫でてきました」

後輩「普通であれば、恐怖を感じて逃げ出すところです。しかし、あの時の私はどうかしていたのでしょう。その人の問いに答えることにしました。誰からも愛されるような姉と比較をされることがどうしようもなく辛いこと、姉と違い何の才能もない私には生きている価値なんてないのではないかと思い悩んでいること、私が抱えていたことを全て吐き出しました」

後輩「すると……先輩は……」

後輩「『俺は、クールな君のほうが好きだけどね』と微笑みかけてくれたのです」

男「あ……」

後輩「やっと思い出しましたか。この唐変木」

後輩「先輩は本当にどうしようもない人です」

男「なんというか、その……人間、思い出したくないことってあるじゃない」

後輩「私と初めて会話を交わした時のことを思い出したくもないと?」

男「い、いや……あの時、僕がとった行動や言動って、すごく恥ずかしいから」

後輩「まあ、確かに常人には真似できないでしょうね」

男「だから、出来れば忘れて欲しいなあ……」

後輩「忘れられるわけないでしょう。私は、先輩のあの言葉のおかげで、物心ついたときから感じていた劣等感から解放されたのです。そして、なにより」

後輩「生まれて初めて人を好きになれたのですから」

男「……後輩はその時から僕のことが好きだったの?」

後輩「そうですよ?」

男「う、嘘だ! だって、それからしばらく僕と目を合わせようとしなかったし、いくら話しかけても俯いて会話すらしてくれなかったじゃないか!」

後輩「当時の私は誰に対してもそういう対応しかできませんでしたから。まして、初恋の男性となれば、もっと酷くなるでしょうね」

男「だとしても、好きなんだったら、せめて会話くらいしてくれても良かったじゃないか! 僕がどれだけ悩んだのか分かってる!?」

後輩「わかっているつもりです。だから、感謝もしています。もし先輩が今のキャラクターを演じてくれなければ、私は先輩と会話をさえできなかったはずです」

男「……なんの話?」

後輩「気弱な私が少しでも話しやすいように、先輩が変態を演じてくれたという、とても美しいお話ですよ」

男「……」

後輩「さて、そろそろ本題にはいりましょう」

後輩「ここに来たのは、先輩を解放する為です。私の為に、自分を偽り、道化を演じてくれている先輩を解放したいのです」

男「後輩……」

後輩「私はもう、あの頃のような常に他人の顔色を窺い、人とまともに会話もできないような女ではないのです。周りからどんな評価を受けても、先輩の傍にいられるのならそれでいいのです」

後輩「大好きです、先輩。本当は勝ち気で口が悪い貴方を、心の底から愛しています」

男「演技してるって気付いてたのか」

後輩「中学時代は、他の陸上部の方や同級生の人たちへの態度が演技で、私だけに素を見せてくれているとうぬぼれていましたけど、高校で再会した時に私に対して演技しているのだなと気付きました」

男「どこでわかったんだ?」

後輩「再会してしばらく、一人称が『僕』と『俺』で定まっていませんでしたから。それでわかったのです。先輩が無理をして演じてくれていると」

男「……久しぶりだったからな。確かに、何度か間違えた気がする」

後輩「まったく。鍛錬が足りませんよ」

男「だな。後輩と再会した場合を想定して、練習しておくべきだった」

後輩「その通りです。私なんて、受験が終わってから、毎日あのライトノベルを読み込んで復習しておきましたよ」

男「さすが、後輩。用意周到だな」

後輩「ええ。貴方の理想に少しでも近づきたかったですから」

男「後輩も無理しなくていいんだぞ?」

後輩「いえ、私の場合、もはやこの口調が癖になっているので、演技しているというほどではないのです」

男「口調じゃなくてさ、性格の方だよ。だって本当は……」

後輩「それこそ私は無理をしてません。これが素の私です。まあ、先輩に罵声を浴びせていたのは辛かったので今後はできませんが、でもそれ以外の部分はありのままの私です」

男「……」

後輩「さあ、夜空を眺めましょう。二人寄り添って、美しい星空を鑑賞しましょう」

男「ん。じゃあ、俺は座椅子になるよ」

後輩「では、お言葉に甘えて」スッ

男「……」ギュー

後輩「あら、夜空を眺めるのではないのですか?」

男「……あのさ、これだけははっきりさせておきたいことがあるんだけど」

後輩「なんでしょう?」

男「俺は、甘えん坊な後輩もす……」

後輩「な、な、な、なにを言おうとしているのですか!」

男「まだ、話の途中なんだけど」

後輩「だ、だって、先輩が変なことを言おうとするから……」

男「そうか? 普通のことだけど」

後輩「私にとっては普通じゃないのです!」

男「あ、そう。まあ、とにかく最後まで聞いてよ」

後輩「無理、無理です! そんな話は聞けませんよ!」

男「大丈夫だって。死にはしないから」

後輩「いいえ! このままだと、私の心臓がオーバーヒートして緊急停止してしまいます!」

男「仕方ないなあ」ナデナデ

後輩「やめてください! 殺す気ですか!?」

男「殺す気って、お前……落ち着かせようと、頭を撫でてるだけだぞ?」ナデナデ

後輩「落ちつくわけないでしょう!? むしろ、頭部を鈍器で殴りつけているようなものです!」

男「へー」ナデナデ

後輩「も、もうだめ……」

男「どうした?」

後輩「ちからがはいらない……」

男「……鈍器で殴りつけてるって喩えは間違ってなかったのか」

後輩「せんぱいのばかあ……」

男「ごめんごめん。調子に乗りすぎた」

後輩「どうしてくれるんですか。しばらく、動けないじゃないですかあ……」

男「いいじゃん。しばらく、この体勢のまま密着していられるし」

後輩「いいけど、だめなの……」

男「どっちだよ」

後輩「この体勢だとせんぱいの顔が見えないから、だめ。でも、密着してるのは、いいの」

男「……なるほど」

後輩「……」ギュー

男「こっち向いたけど、結局、顔を見てねえじゃねえか」

後輩「……だって、はずかしいんだもん」

男「まあ、それだけ顔が真っ赤じゃなあ」

後輩「わかってるなら、いわないでよ……」

男「意地悪な俺は嫌いか?」

後輩「……だいすき」ギュウウウウ

男「俺も、甘えん坊な後輩が大好きだよ」ナデナデ

男「そろそろ帰るか」

後輩「……」ギュウウウウウ

男「でも、もういい時間だぞ?」

後輩「……」ニコッ

男「へっ?」

後輩「……」チュウウウ

男「!!?」

後輩「もっと、イチャイチャしよう?」

男「す、少しだけな……」





同時刻 ファミレス
部長「いやー、美味しかったねえ」

妹「すみません。奢ってもらって……」

部長「いいよいいよ。お互いに、今日はあんまり早く帰るのもアレだろうしさ」

妹「まあ、確かに……」

部長「それに、今日は妹ちゃんも頑張ったし、これはご褒美だよ」

妹「あたしなんてなにも……」

部長「なに言ってるのさ。西高に逆転勝ちできたのは、妹ちゃんがDFを頑張ってくれたからだよ。いくら点を決めても、DFがザルなら追いつくこともできなかっただろうし」

妹「そうかもしれませんけど。でも、今日のMVPは部長ですよ。ラスト10分であれだけ得点を奪うなんて凄すぎます」

部長「そうかな? たいしたことないと思うけどなあ」

妹「だって、部長がマッチアップしていたのは、西高のキャプテンですよ? あの人、選抜に選ばれていますよね?」

部長「選抜って言ってもたかが地区選抜じゃん」

妹「そりゃ、県選抜の部長と比較したら実力は劣ると思いますけど……」

部長「まあ、今日の彼女は良かったとは思うよ」

妹「ですよね。第3ピリオドまで、部長を抑えこんでましたもん」

部長「本当にしつこいDFだったよ」

妹「……すみません」

部長「いいの。抑えこまれたように見せたのは事実だし」

妹「見せた……?」

部長「いやー。開始から凄い気合が入っててさ、うるさいのなんの。しかも、点が入るたびにドヤ顔してくるんだよ? 20点差がついた時なんて、あいつ絶頂を迎えてたんじゃないかな」

部長「だからこそ、試合が終わった瞬間の、あの女の顔が最高に笑えたんだけどね」

妹「え、えっと……」

部長「もう少し、希望を持たせてやりたかったんだけどね。あの馬鹿顧問がうるさいから、ラスト20秒で逆転することにしたよ。本当は、ブザービーターで終わらせるつもりだったのに」

妹「……まさか、わざと相手にリードさせたんですか?」

部長「あれ、気付かなかったの? 私が、あんなヘタクソにあれだけやられるわけないじゃん。手を抜いてあげてたんだよ」

妹「どうしてそんなことを……」

部長「だってあの子、私に勝とうと必死だったし。夢くらい見させてあげてもいいじゃない? 実際、幸せだったと思うよ。中学からの宿敵である私をあれだけ打ちのめしたわけだから」

部長「さすがにあれだけ挑発的な顔をされると、頭にきたけどね、でも、よかったよ。あの顔が見れたんだから。全てに絶望して、生きる希望を失った、あの醜い顔。写真撮っておけばよかった」

後輩姉(部長)「本当、幸せの絶頂からどん底に落ちる人間って、見ていて楽しいよね」

今日はここまで


雲行きが怪しくなってきましたねぇ…?
俺はどっちも大好物だぜ

あまーい!って言いたかったがそれを超越するくらい姉ちゃん黒すぎる……

姉やるな

コメントありがとう!

>>494
甘い物ばかりだと身体によくないからね。そろそろお口直ししないと。
>>495
黒ギャル……!
>>496
後輩姉はただの寂しい女だと思いますわ。俺が言うのもなんだけど。

これだ。

月曜日 昼休み 3年生教室
後輩姉「やっほー」ギュウ

男「……重い。太ったんじゃねえの、お前?」

後輩姉「酷いこと言うね。ベスト体重を維持してますよーだ」

男「ああ、そう。興味ないけど」

後輩姉「そんなこと言って、本当は私に抱きつかれて興奮している癖に」

男「鉄板のような固い胸を押しつけられても嬉しくねえよ」

男「で、なんの用?」

後輩姉「んーとね」

男「早く言えよ。忙しいんだよ」

後輩姉「もう急かさないでよ。大丈夫だって。あの子はどこにも行かないから」

男「……誰の話かわかんねえな」

後輩姉「私と違って、胸がマシュマロのように柔らかい子の話」

後輩姉「なんで、隠そうとするかな。そんなに私に邪魔されるのが怖いの?」

男「……いいから本題に入れよ」

後輩姉「わかったから、そんなに怖い顔しないでよ。あのさ、来週に球技大会あるじゃない? どの種目に出るのか教えてほしいんだ」

男「そんな下らないことで、俺を引き止めたのか?」

後輩姉「私にとっては重要なの。もし、決めてないのなら、バスケに出ない?」

男「悪いな。バスケ以外の種目って決めてるんだ」

後輩姉「なんで、そんなこと言うの? バスケは面白いよ?」

男「ああ、高身長の奴は楽しいだろうな」

後輩姉「ねー。バスケやろうよー」

男「だいたい、なんで俺にバスケをやってほしいわけ? 間違いなく、俺は戦力にはならねえぞ」

後輩姉「君がサッカーを選んだりしたら、校庭でやることになるでしょ? 私はバスケに出るから、君には体育館にいてほしいの」

男「……そういうことか」

後輩姉「ご理解いただけたようでなによりです」

男「じゃあ、俺はサッカーにするわ」

後輩姉「……ねえ、そこまで私をあの子に会わせたくないの?」

男「別に。ただ、玉入れなんかに興味はねえって話だよ」

後輩姉「ふーん。まあいけどさ。私たちは姉妹だからね。男くんが頑張っても、それは無駄な努力だよ」

男「……じゃあな」スタスタ

後輩姉「……君たちが私をいくら避けても、私から逃げられるわけないのに。本当に馬鹿だなあ」ニヤァ

1年生 教室
男「悪い。待たせた……」

後輩「先輩、大変です!」ギュウ

男「どうした?」

後輩「私の最愛の人が約束の時間を過ぎても現れなかったのです!」ギュウウウウ

男「時間を守れない男とか最低だな」ナデナデ

後輩「まったくです。時計までプレゼントしたというのに、私を一人にするなんて最低ですよね」スリスリ

今日はここまで。

今月中には完結する……つもり

すまん。
8月中に完結するってこと。

後輩「そういえば、来週から球技大会でしたね」

男「後輩はどれに出るんだ?」

後輩「私はですね……」

妹「あたしと一緒にバスケだよねー!」ギュー

男「ちっ……めんどくせえのが来やがった」

妹「ねえ、後輩さん。バスケやろうよー」

後輩「えっと……私が入っても邪魔になるだけですし……」

妹「大丈夫だって。後輩さん、小学生の頃はミニバスをやってたんでしょう?」

後輩「ですが、その……」

男「後輩、言っていいんだぞ。お前なんかと同じ種目なんてお断りだ、って」

後輩「どうして、そういうことを言うのですか。妹さんに失礼ですよ!」

男「むしろ、後輩が妹に甘すぎるんだよ」

妹「だって、あたしたちは友達以上の関係だもん!」

男「まーた、馬鹿なこと言ってるよ……」

後輩「でも、妹さんが言っていることは、あながち間違っていませんよね」

男「なっ……!」

妹「つ、遂にあたしの想いが実ったんだ! ほら、見なさいよ! 後輩さんも認めたじゃない!」

男「そんな馬鹿な……」

妹「あたしたちは特別な関係なのよ!」

後輩「その通りです。妹さんは、私の義妹になる人ですからね」

妹「えっ」

男「ほら、後輩も認めただろ。お前なんて眼中にないって」

妹「……」

後輩「そんなこと言ってませんよ!」

男「いやー。そういう意味だと思うけどなあ」

後輩「違います! 私は妹さんを家族だと言っているのです!」

妹「…」

男「家族なんて大袈裟な。親戚になるってだけでしょ」

後輩「いいえ。確かに血の繋がりはありません。しかし、私と妹さんなら本当の姉妹のような関係になれるのです! そうですよね、妹さん!」

妹「   」

後輩「い、妹さん……?」

男「しばらく、そっとしておいてあげな」

男「で、球技大会の話だけど、俺はサッカーにするつもりけど、後輩はどうする?」

後輩「私はソフトボールにします。そうすれば、先輩の試合が見れますし、空き時間も一緒にいることができますから」

男「そ、そうか……」

後輩「その反応はなんですか? 先輩だって、同じことを考えていたのではないのですか?」

男「そうなんだけども……なんつーか、そこまではっきりと言われると照れるというか……」

後輩「これくらいで照れていては、このさき生きていけませんよ」

後輩「そうと決まれば、今日から特訓ですね」

男「……特訓? なんの?」

後輩「決まっているでしょう? 球技大会に向けてサッカーの特訓をするのです」

男「なんでだよ……。たかが球技大会だぞ? あんなの適当にやっていればいいんだよ」

後輩「私が応援するというのに、適当にプレーするというのですね?」

男「いや、そういうわけじゃないけど……」

後輩「想像してみてください。先輩は残り数分というところで先制点を決めました」

男「……」

後輩「先輩は喜びを爆発させ、応援席にいる最愛の女性の元へ走り出します」

男「……」

後輩「すると、その女性は駆け寄る先輩に抱きつき……」ギュ

後輩「『先輩、素敵です!』と、頬にキスをするのです」チュ

男「さあ、今すぐ特訓を始めようぜ」

後輩「ダメです。放課後からです」ギュウ

男「特訓しよう、と言いだしたのは後輩だぞ」

後輩「言いました。ですが、今はダメです。先輩が素直に特訓する気になっていれば、今からでもよかったのですが」ギュウウ

男「なんだよ、それ……。球技大会で俺に活躍してほしいのなら、ここは快く応じるべきだろう」

後輩「昼休みも後5分だというのに、何を言っているのですか?」ギュウウウ

男「たかが5分、されど5分。短い時間でも集中して練習をすれば、高い効果が得られるはず」

後輩「何を言っているのですか……。ご褒美に目が眩んで、衝動的に練習をしたいという欲求が高まっているだけでしょう」ギュウウウウ

男「そんなこと……あるけど! 確かにそうだけど! でも……」

後輩「5分間くらい、私に抱きしめられていてくださいよ」ギュウウウウウウウウウウ

男「……だから、『今』はダメなのか」

後輩「私が一度抱きついたら、直ぐに離れないことくらい知ってるでしょう?」ギュウウウウウウウウウウウウウウウ

放課後 3年生教室
後輩姉「話は聞かせてもらった!」

男「……なにが?」

後輩姉「ふふふ。さあ、なんでしょう?」

男「じゃあな。俺、用事あるから」

後輩姉「用事? ああ、うちの妹とサッカーの特訓するんだっけね」

男「……なんで知っている」

後輩姉「君たちと違って、私は友達がたくさんいるからねー」

男「……まあいい。俺はサッカー、後輩はソフトボールに出場する。お前の思惑通りにはいかねえよ」

後輩姉「『出場する』って、正式に決まってないでしょう? 君たちが勝手に言っているだけ。こういうのはね、クラスで話し合いをして決めるものなんだよ」

男「そうだけど、個人の希望は尊重されるものだろ」

後輩姉「君は純粋だねえ……」クスッ

後輩姉「知ってる? あのクラスにはね、バスケ部が4人いるの。君の妹も含めて、あの子達は総体予選の登録選手になってる。1年生なのに、上級生を差し置いて登録選手になるなんてたいしたものだよね」

男「何が言いたい?」

後輩姉「問題です。バスケは5人でやらなくてはなりません。彼女たちは4人。さあ、残り1枠を誰が希望するでしょうか?」

後輩姉「誰も希望するわけないよね。足手まといになるのは明白なんだから。折角の球技大会で恥をかきたくないはず」

後輩姉「そんな残り1枠に、バスケ部の4人が誰かを推薦したら、どうなるだろうね」

後輩姉「きっと、周囲は何も文句を言わず、同調すると思う。推薦された人物が他の競技を希望したとしても、それは無視される。誰だって、自分が損したくないからね」

後輩姉「個人の意思なんてものは、集団によって簡単に踏み潰すことができるんだよ」

後輩姉「はい。話は終わりだよ。じゃあ、行ってらっしゃい。残り僅かな恋人関係を楽しんできてね」

男「……そうはさせねえぞ」

後輩姉「そういえば、あのクラスは6限目のLHRで球技大会について話し合うとか言ってたなあ。だから、もう……」

後輩姉「終わってるんじゃない?」ニヤァ

今日はここまで

この姉裏でそうなるようにうまく後輩たちを誘導してそう

姉貴怖え

黒ギャルより黒いと聞いて

>>538
そもそも、バスケ部部長の妹でミニバス経験者だからね。バスケ部じゃないにしろ、誰かに推薦される要素はあるよね。

>>539
怖くない女なんか居ないよ。誰もが打算的で独善的。

>>540
黒人女子!!? ……ごめん。守備範囲外だ。

>>541
黒人どころが全身真っ黒でなにもわからなかったり

>>542
全身黒タイツか。それなら守備範囲内だわ。

1年生 教室
男「後輩!」

後輩「あれ? 先輩、どうしてここに……」

男「大丈夫か!?」ガシッ

後輩「せ、先輩、痛いですよ」

男「わ、悪い……」

後輩「なにかあったのですか?」

男「球技大会の話し合いはどうなった」

後輩「……なんで、そのことを先輩が知っているのですか?」

男「いいから、教えてくれ」

後輩「バスケに出場することになりましたよ。……バスケ部の皆様が推薦してくれたので」

妹「お兄ちゃん、どうしたの? そんな怖い顔して」

男「貴様……!」ギロッ

後輩「言っておきますけど、妹さんは私を推薦していませんよ。むしろ、私の希望を汲むように、と説得しようとしてくれました」

男「本当か?」

妹「えっと……球技大会の話し合いのことだよね? それなら、後輩さんの言っている通りだよ」

後輩「妹さん以外の方が私を推薦したのです」

妹「急にそんなことを言いだしたのかわからないんだけど、どうしても譲れないみたいで……」

男「……あいつが手を回したんだよ」

妹「えっ?」

後輩「……」

男「大丈夫か?」

後輩「先輩がなにを心配しているのかわかりませんが、私は平気ですよ」

男「……」

後輩「バスケ部の皆さんに推薦されたということは、名誉なことですしね。それに妹さんとプレーすることができますし」

妹「そ、そうだよー! お兄ちゃんは心配しすぎなんだよ!」

後輩「本当です。いくら、私のことを世界で、いや宇宙一愛しているからといっても、過保護すぎますよ」

男「そう、だな……」

後輩「まったく。先輩には私しかいないのはわかりますが、もう少し冷静になってほしいものです」

男「……行くぞ」グイッ

後輩「えっ、ちょっと、先輩……?」

校舎裏
後輩「一体、ここでなにをするのですか?」 

男「ここなら、誰も来ない」

男「だから、好きなだけ甘えてもいいよ」

後輩「……っ!」ギュウ

男「よく堪えたな」ナデナデ

後輩「あそこで落ちこんだりしたら、妹さんが責任を感じてしまうと思って……」

男「あいつのこと心配してくれたのか。ありがとう」

後輩「私、うまくやれるでしょうか……」

男「うまくやれなくてもいいんだよ。やろうとしなくていいんだよ。後輩は後輩なんだから」

後輩「でも……」

男「少なくとも、俺は後輩を誰かと比較なんてしない。まあ、比較したところで、後輩の圧勝だしな」

後輩「馬鹿……」ギュウウウウ

同時刻 バスケ部部室
後輩姉「やっほー」

副部長「……おー」

後輩姉「どうしたの? 元気ないね。……というよりも機嫌が悪いってほうが正しいか」

副部長「まだ、妹が来ないんだよ。いつもなら、一番に部室に来てるのに」

後輩姉「あー。それなら、私の妹が悪いかも」

副部長「……お前の妹が?」

後輩姉「うん。たぶん、妹ちゃんに泣きついてるんじゃないかな? 助けてー、って。ほら、うちの妹は甘え上手だからさ」

副部長「なっ……! お前の妹はどうなってんだよ!」

後輩姉「知らないわよ。もう3ヶ月も顔を合わせてないんだから」

副部長「お前等、姉妹じゃねえの……?」

後輩姉「いろいろとあるのよ」

副部長「どうでもいいけど、妹にまでちょっかい出すのなら、しばくからな」

後輩姉「甘い! 副部長は甘い!」

副部長「ああ!?」

後輩姉「本当に欲しいものがあるのなら、どんなことをしてでも奪い取るべきだよ。そんなんだから、先を越されるんだよ! 

副部長「……」

後輩姉「まあ、代替品で満足というのなら、構わないけど」

副部長「……お前の妹だと思って、こっちは引いてたんだけど」

後輩姉「よく言うよ。殺すとか言ってたくせに」

副部長「わかったよ。もう引かねえからな」

後輩姉「そうそう。それでいいの。もっと、欲望に正直にならなきゃ」

副部長「……でも、どうしたらいいんだ?」

後輩姉「君って、たまに乙女になるよねえ……」

副部長「し、仕方ねえだろ……。こういうの苦手なんだよ……」

後輩姉「密室で二人っきりになって、服を脱いで誘惑すればいいんだよ」

副部長「出来ねえよ!」

後輩姉「恥ずかしがってどうする。宝物なんでしょう? 誰にも譲れないのでしょう?」

副部長「だけど、俺の裸なんかみても……」

後輩姉「大丈夫だって。君はとっても魅力的だから」ニヤァ

副部長「本当に成功するんだろうか……」

後輩姉「大丈夫だって。私も協力してあげるからさ」

副部長「……」ジト

後輩姉「そんな人を疑うような目で見ないでよ。私はただ、副部長の恋が成就するのを協力したいんだからさ。私たち、親友でしょう?」

副部長「姉……」

後輩姉「まあ、対価は貰うけどね」

副部長「そんなこったろうと思ったよ……それで、何が欲しいんだよ」

後輩姉「えっとね。副部長の携帯に入ってる……」

副部長「……はあ!?」

後輩姉「いいでしょう? 成功すれば、そんな画像は無用になるんだから」

副部長「まあ、いいけどよ……」

後輩姉「ありがと!」

副部長「……」ジー

後輩姉「なに?」

副部長「お前って、そっちの気があったんだな」

後輩姉「まあ……ね。その画像の人物ではないけど」

夜 後輩宅
後輩姉「ただいまー」

後輩「……」

後輩姉「あら、珍しいじゃない。貴女がお出迎えしてくれるなんて」

後輩「どういうつもりなのですか?」

後輩姉「とりあえず、靴ぐらい脱がせてもらってもいい?」

後輩「いいから、答えてください!」

後輩姉「3ヶ月も私から逃げまわっていたくせに、なんなの? 都合がいい時だけ私に近付かないで」

後輩の部屋
後輩姉「で、なんの話?」

後輩「とぼけないでください。私が球技大会でバスケに出場するように仕向けましたよね」

後輩姉「仕向けてなんかいないよ。ただ、『最後の球技大会で、妹とバスケが出来たら嬉しい』って言っただけ」

後輩「しているじゃないですか!」

後輩姉「なんでよ。貴女をバスケに出場させてなんてお願いしてない。あの子達が勝手にしたことだよ」

後輩「それだけで、あれだけ強硬に主張するとは思えません」

後輩姉「それだけ私を慕ってくれているってことじゃない。もしくは実の妹に逃げまわられている私を可哀想だと思ったのかもね」

後輩姉「だから、私は今回のことには関係ないからね。結果的に利益を得たというだけ」

後輩姉「貴女と勝負をできるという利益をね」

後輩「やっぱり、そうきましたか……」

後輩姉「物分かりがいい妹を持てて幸せだよ」

後輩「……それで何を賭けろと言うのですか?」

後輩姉「私のクラスと試合をして、貴女が10点以上得点を決めたら、男くんと一生関わらないって誓ってあげる」

後輩姉「でも、それが達成できないのなら……」

後輩姉「男くんと別れてもらうよ」

後輩「はあ……。貴女のことだから、そんなことだろうとは思っていましたよ」

後輩姉「で、どうするの?」

後輩「そんな賭けに乗るわけないでしょう。私にメリットがないのですから」

後輩姉「あるでしょう。勝てば、私という邪魔者がいなくなるんだよ」

後輩「既に貴女は存在していないようなものです」

後輩姉「……酷いこと言うね」

後輩「事実ですから」

後輩姉「まあ、そうだよね。事実は伝えないといけないよね。例えば、男くんと私が寝たこととかね」

後輩「そ、それは過去のことです!」

後輩姉「そうだね。男くんのファーストキスの相手も、初めて手を繋いだ相手も、みんな私だけど、中学時代の話だね」

後輩姉「だからこそ、貴女が何をしても、2番目でしかないの。私が使いこんだ中古品を自分仕様に改造しているだけに過ぎない」

後輩「……っ!」

後輩姉「男っていうのは、初めての女の事は一生忘れられないんだよ」

後輩姉「ねえ、私が男くんに抱かれたときのことを話してあげる」

後輩「聞きたくありません!」

後輩姉「そんなこと言わないで、聞いてよ」ドン

後輩「は、離してください!」

後輩姉「こうやってベットに押し倒されて、まず首筋を舐められたの。ねっとりとね」ペロッ

後輩「い、いや……」

後輩姉「次は胸を……」

後輩「やめてください!」ドン

後輩姉「痛いなあ、もう。事実はちゃんと言うべきなんでしょう?」

後輩「……」ギロッ

後輩姉「おー、怖い怖い。まあ、いいや。で、勝負するの?」

後輩姉「しないというのなら、私が男くんに何をしてもいいって黙認するってことだよね? 貴女の目の前で、男くんを犯したっていいんだよ?」

後輩「やれるものなら、やってみればいい。そして、思い知ればいい。先輩が貴女のことなんて、眼中にないことを」

後輩姉「ずいぶん強気だね」

後輩「過去は変えられません。貴女との間にあったことを私がいくら嘆いても、なにも変わりません。だからこそ、私は今の先輩との絆を信じます」

後輩「それに、貴女が実際に行為に及んだとしても、私の先輩への愛は変わりません」

後輩姉「そう……。それだけ、あの男が好きなのね」

後輩「ええ。誰にも渡しません。だから、この勝負はしませんよ」

後輩姉「……」

後輩「さあ、出ていって下さい」

後輩姉「ねえ、この画像を見てくれない?」

後輩「まだ何か……な、なんですか、これは!?」

後輩姉「男くんの妹ちゃんの着替えを盗撮したものだよ」

後輩姉「勝負しないというのなら、この画像をばらまくよ。そうだなあ、ネットに投稿しようかな。住所と名前つきで」

後輩「この悪魔……!」

後輩姉「自分が欲しいものを手に入れる為なら悪魔にだってなるよ」

後輩姉「さあ、どうするの?」

後輩「やりますよ。やればいいのでしょう」

後輩姉「ありがとうー!」

後輩「……絶対に負けません」

後輩姉「一度も私に勝ったことがない貴女が言っても説得力ないわよ」

後輩「この勝負だけは負けられないのです!」

後輩姉「はいはい。じゃあ、私寝るから。せいぜい頑張ってねー」バタン

後輩「……絶対に先輩は渡しませんから」

今日はここまでっす

策士気取りなのに発言と行動が頭悪過ぎない

>>574
それは、作者の頭が悪いからだと思う。

なんかもうアホらしいからさっさと終わればいいんじゃないかな感

>>576
そうだな。HTML化を申請してくるよ。
半年以上付き合ってもらった人たちには申し訳ないけど、ここで終わりにするわ。

HTML化を申請しました。
未完となり申し訳ございません。

今までありがとうございました。

さっさと終わればいい、と言われてまで書きたいとは思わない。

楽しみにしていた方々には本当に申し訳ありませんでした。

翌日 朝 中学校校庭
男「左手はそえるだけ……」シュッ

後輩「……」

男「おっかしいな……。なんで入らないんだ?」

後輩「フォームがめちゃくちゃだからですよ」

男「あ、おはよう」

後輩「……どうして、ここに先輩がいるのか聞いてもいいですか?」

男「球技大会に向けて自主練するかなって思ったから来たんだよ。ほら、ここら辺でバスケットゴールがあるのはここだけだろ」

男「それで、勝負の内容は?」

後輩「そこまでお見通しですか……」

男「まあ、あいつのことだしね」

後輩「姉のクラスと試合をして、私が10点以上決めれば、先輩には近付かないそうです」

男「……決められなかったら?」

後輩「先輩が想像している通りです」

男「……」

男「そんな勝負、どうして受けたんだ。今のままでも、あいつが入ってくる余地なんてないだろう」

後輩「いろいろあるのですよ……」

男「はぁ……。どんな弱みを握られたのかしらんが、そんな勝負は今からでも遅くはないから断ってしまえ」

後輩姉「そんなの私が認めないよ」

後輩&男「!」

後輩姉「まったく……。こんな朝早くからどこに出掛けるのかと思えば、愛しの男くんに泣きつきにいったのね。甘ったれの貴女らしいわ」

後輩「ち、違います! これは……」

後輩姉「なら、私との勝負を断ったりしないよね?」

後輩「……もちろんです」

後輩姉「と、いうことなので、男くんは余計なことを言わないでね。この勝負を邪魔するのなら、全力で報復させてもらうよ」

男「やれるもんならやってみろよ……!」

後輩姉「ほー。なら、実際にやってあげようか?」

後輩「や、やめてください!」

男「後輩……?」

後輩「……先輩には、私から言っておくので、やめてください」

後輩姉「わかった。ちゃんと教育しておいてね」

後輩「はい……」

後輩姉「じゃ、私は朝練あるから先に行くねー」タッタッタッ

後輩「……」

男「何を隠してんだよ?」

後輩「まずはシュート練習から始めましょうか」

男「どうしても言えないのか……?」

後輩「……私が勝てばいいのです。あの女に勝利すれば何もないのです」

後輩「私を信じてください。必ず勝ちますから」

男「わかったよ。じゃあ練習しよう」

後輩「ふぅ……」

男「……後輩って、バスケ上手いんだな」

後輩「いえ、そんなことはありませんよ」

男「でもシュートフォームが綺麗だし、今だって、ほとんど決めてたよな?」

後輩「嫌味ですか? 20本中16本しか入っていませんが」

男「いや、充分凄いって……」

後輩「姉がこの距離からフリーでシュートしたら全部決めていますよ」

男「マジで……?」

後輩「ええ。まあでも、私が10点決めるかどうかが勝負の焦点ですから、あまり関係ないですけどね」

男「そ、そうだよな! あいつが何点決めようが勝負には関係ないよな!」

後輩「向こうもそれがわかっているので、得点に興味はないでしょうけどね」

男「……DFも凄いの?」

後輩「そりゃあ、県選抜ですからね」

男「……」

後輩「そんな絶望した顔をしないでくださいよ。こっちは、これから練習をして差を埋めようとしているのですから」

男「そうだな……。うん。後輩なら大丈夫だよな!」

後輩「はい。任せてください」

男「よーし。じゃあ、俺がDFに入るから、1vs1やろうぜ」

後輩「……バスケやったことあるのですか?」

男「小学生の頃に遊びでやってた。あと、妹の練習に付きあったりもしてたかな。まあ、そこらへんの素人よりはできると思うよ」

後輩「そうですか。では、お願いします」

男「よしこい! 全力で止めてやる!」



昼休み 1年生教室
妹「へー。お兄ちゃんと朝練したんだ」

後輩「はい。おかげで、対人練習ができました」

妹「なるほど。だから、山王戦後半の三井みたいにヘロヘロなのね」

男「……うるせえな」

妹「まあ、運動不足のお兄ちゃんだとそんなもんだよねー」

男「そういう問題じゃなくてだな……なんつーか、格が違うんだよ」

妹「お兄ちゃんは無理をしないでいいからさ。ここはあたしに任せてよ」

男「お前でも相手にならんぞ……」

妹「あんたよりはマシよ。じゃあ後輩さん、明日の朝練からあたしが付き合うからね」

後輩「でも、妹さんは部活の朝練があるのでは……?」

妹「あー。あれは自主練だから大丈夫だよ」

後輩「しかし……」

妹「いいんだって。あたしが後輩さんの力になりたいってだけだからさ!」

後輩「……ありがとうございます」

妹「いーえ。じゃあ、明日からビシバシ指導していくからね!」

後輩「はい! よろしくお願いします!」

男「自信失っても知らねえぞ……」

翌日 朝 中学校
後輩「うーん……」

妹「わー! やっぱり、後輩さん凄い! こんなにシュートフォームが綺麗な人、初めて見たかも!」

後輩「でも、シュートが決まらないのなら意味がありませんから」

妹「……10本中9本入れてるけど?」

後輩「ええ。1本外してしまいました……」

妹「……」

男(ショックだろうな……現役なのに10本中7本しか決められなかったもんなあ……)

妹「じ、じゃあ、1vs1でもやろうか!」

後輩「でも、妹さんの相手になるのかどうか……」

男「そうだな。俺とやってるのを見てから、お前がやるか決めればいいんじゃねえか

妹「素人は黙ってて」

男「……」

妹「とりあえず、やってみようよ。そのほうがアドバイスもしやすいしさ」

妹(DFする振りをして、後輩さんのおっぱいも触りやすいしね……)ムフフ

後輩「私からOFでいいですか?」

妹「うん! そのつもりだったし」

後輩「では……」ダムダム

妹(ああ……バスケしてる後輩さんも素敵……)

後輩「……」スッ

妹「……えっ」

後輩「……」パサッ

男「ナイシュー」

妹「えっ」

妹(め、めっちゃ速かったんだけど……)

後輩「いまのプレーはどうでしたか?」

妹(わかんないよ! 全然見えてないって!)

後輩「私としては、ドリブルのスピードが……」

妹「もう一回、もう一回やろうよ! 今のだけじゃわからないからさ!!」

後輩「は、はい……?」

後輩「……」ダムダム

妹「……」ゴクリ

後輩「……」ピッ

妹「!?」

後輩「……」パサッ

妹「う、嘘でしょ……」

後輩「シュートの軌道が良くないなあ……」

妹「!!?」

妹「い、いまのプレーさあ……」

後輩「えっ? ああ、シュートですよね。次はもう少し腕を閉じてみます」

妹「そこじゃなくて……あたしを抜かないでシュート打ったよね……?」

後輩「はい。寄せが甘かったのでシュートを選択しました」

妹「そ、そうなんだ……」

妹(今の寄せが甘い!? どれだけ詰めればプレッシャー感じるのよ……)

後輩「また私がOFでいいのですか? そろそろ攻守を交代したほうが」

妹「いえ、このままでお願いします!」

後輩「わ、わかりました……」

妹(バスケ部レギュラーのあたしがやられっぱなしで終われないよ! 次こそは必ず止めてみせる!)

後輩「っ!」ダムダム

妹(さっきよりも2歩距離を詰めた。これでシュートの選択肢はないはず。となれば……)

後輩「……」ダッ

妹(ドリブルでしょうね! よし、このまま追い詰めて……)

後輩「……」クルッ

妹「なっ……!」

後輩「……」パサッ

妹(あ、あんなターンについていけるわけないでしょう!?)

後輩「またですか?」

妹「お願いします!」




妹「もう一本!」

後輩「いいですけど……」



妹「も、もう……」

男「もうやめとけ」

妹「……」

後輩「だ、大丈夫ですか?」

男「おい。生きてるか?」

妹「こ、こんなに上手いとは思わなかった……」

男「だから言ったろ。格が違うって」

妹「後輩さん!」

後輩「は、はい!」

妹「ごめんなさい! どさくさに紛れておっぱい触ろうとか考えてごめんなさい! そんなことできるようなレベルじゃありませんでした!」

同時刻 高校 体育館
後輩姉「……ふぅ」

副部長「うす」

後輩姉「あ、副部長、おはよー」

副部長「お前が黙々と自主練してるなんて珍しいな。それも地味なステップワークなんて」

後輩姉「今回は気合が入ってるからさ」

副部長「……まあ、あと二つ勝てば全国だもんな。さすがのお前でも気持ちが入るか」

後輩姉「えっ? なに全国って?」

副部長「だよな……。そのほうがお前らしいよ」

副部長「まあ、怪我しない程度に頑張れよ」

後輩姉「あんがと。副部長はもっと頑張ったほうがいいよ」

副部長「あっ?」

後輩姉「だって、あれから行動してないじゃん」

副部長「し、したよ!」

後輩姉「じゃあ、連絡先聞いたの?」

副部長「それは追々……」

後輩姉「そりゃ、副部長からすれば、スポブラからフリルのついたブラにするのは、大きな変化かもしれないけどさあ……」

副部長「……似合わないか?」

後輩姉「どっちでもいいよ。服を着てたら見えないんだから」

後輩姉「まずは話すところから始めないとダメでしょう。なんで、いきなり身体を晒すことを考えてんのよ」

副部長「だって、お前が服を脱いで誘惑しろって……」

後輩姉「そんなこと言ったっけ?」

副部長「覚えてねえのかよ!?」

後輩姉「あー、言ったかもしれない」

副部長「ほらみろ! これはお前の指示通りなんだよ!」

後輩姉「なんか、ズレているような気がするけど。まあ、いいや。作戦変更ね」

副部長「まだなにもしてないのに!? 恥辱を耐えて下着を買いに行ったのに!?」

後輩姉「それくらいじゃ動じないらしいからさ」

副部長「お、男に聞いたのか!?」

後輩姉「いや。聞いてないけど。というか、男くんの意見なんかどうでもいいんだけど」

副部長「訳が分かんねえよ……」

後輩姉「まあ、私に任せんしゃい。悪いようにはしないから」

副部長「本当に大丈夫なんだろうな……」

後輩姉「大丈夫大丈夫。副部長みたいな無意味なお色気作戦とかしないから」

副部長(こいつ……! いつか、必ずぶっ殺してやる……!)

休み時間 3年生教室
後輩姉「やー!」

男「……」ウゲェ

後輩姉「すごく嫌そうな顔をしてくれてありがとうね」

男「……お前ってさあ、神経が膨張しすぎて切れちゃってんじゃないの?」

後輩姉「なに言ってるのかよくわかんなーい」

男「どの面下げて俺に話し掛けに来てんだ。おかしいぞ、お前。知ってたけど」

後輩姉「そんな頭のおかしい私と会話をしてくれるなんて、男くんは優しいね」

後輩姉「そんな優しい男くんの為に、私も一肌脱ぎました!」

男「そうか。露出狂の変態がいるって通報してやるからな」

後輩姉「本当にここで脱いであげようか?」

男「……なんだよ?」

後輩姉「昼休みに体育館使っていいよ。練習するんでしょ?」

男「なにが目的だ?」

後輩姉「別に何かの企みがあるわけじゃないよ。ただ、あの子がベストの状態で戦いたいだけ」

副部長「……」ドキドキ

後輩姉『いい? 休み時間に私と男くんが話している時に、私に用事がある振りをして会話に混ざってきなさい』

副部長「よーし……」

後輩姉「本当に何もないってば」

男「いーや。お前は信用ならない」

副部長「お、おい!」

後輩姉「おー。副部長ー! ちょうどいいところに来てくれたね!」

男「ん?」ジロッ

副部長「!!!????」バンッ!

後輩姉「……なにやってんの?」

副部長「蚊! 蚊がいた! 机にでっかい蚊がいたんだよ!」

後輩姉「なるほど。それじゃあ、仕方ないね」

男(いや、それでも過剰に叩きすぎだろ?)

副部長「あ、あ、あ、あ、姉よお、今日の部活には参加するよなぁ!?」

後輩姉「うん。大丈夫だよー」

男(なんだこの女。身長だけじゃなく、声までデカすぎだろ……)

後輩姉「そうだ副部長、男くんが昼休みに体育館使いたいんだってさ」

男「一言も言ってねえけど」

後輩姉「使ってもいいよねー」

副部長「お、おう! いいんじゃねえか!」

男「いや、別に俺は使いたいわけじゃ……」

副部長「……!」カァァ

男「は?」

副部長「つ……使えばいいだろおおおおおおおおおお!」ダッ

男「……なんだあいつ」

後輩姉(ダメだ、あいつ。使い物にならない……)

昼休み 1年生教室 
後輩「そうですか、姉が体育館を使えと……」

男「どうする?」

後輩「使わせてもらいましょう。少しでも練習したいですから」

男「大丈夫か? 朝早くからあれだけ練習してるんだし、疲れてるんじゃないか?」

後輩「無理するくらいじゃないと、あの姉には勝てませんよ」

男「……そうか」

後輩「心配してくれてありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですから」

???「そうじゃない。俺は後輩に構ってほしいんだよ」

後輩「へっ?」

妹「ああ、いつもなら後輩に抱きつかれて幸せな時間を過ごしているというのにー」

男「黙れ」ゴンッ

妹「痛い、痛いよー」シクシク

後輩「大丈夫ですか?」ナデナデ

男「……後輩、早く飯食って体育館に行こうぜ」

後輩「その前に妹さんに謝ってください」

妹「そうだそうだ! グーで殴りやがって!」

男「平手打ちだったらいいのか?」

後輩「先輩!」

男「ちっ……。殴ったりして悪かったな」

妹「仕方ないなー。今日のところは許してあげよう」ギュウ

後輩「妹さんは寛大ですね」ナデナデ

男「いつかしばいてやる……」

今日はここまで

妹「ふー。満腹満腹」

男「おい、もういいだろ。後輩から離れろ」

妹「やだー。もっと密着するー」ギュウ

男「……お前、いい加減にしろよ」

妹「なに実の妹に嫉妬してんの? 情けないったらありゃしない」

男「誰がお前なんかに嫉妬なんかするか」

男「後輩はバスケの練習をするんだよ。お前がそんなことしてたら動けないだろ」

妹「そうだった……。後輩さん、ごめんね。忘れてたよ……」

後輩「いいのです。昼練習は明日からやることにしたので」

男「そうなのか?」

後輩「はい。他にやることができたので」

妹「なにをするの?」

後輩「先輩とラン[ピザ]ーするのです」

男「……え?」

後輩「さあ、行きますよ」グイッ

男「お、おい……」

妹(……お兄ちゃん、頑張ってね)

校舎裏
男「どうしたんだよ?」

後輩「ここなら誰も来ませんよ」

後輩「だから、好きなだけ甘えていいですよ」

男「いや、さっきの話を鵜吞みにすんなよ。全部、あいつの妄想だよ」

後輩「では、私が甘えたいので抱きついてもいいですか?」ギュウ

男「……既に抱きついてるじゃねえか」プイッ

後輩「あら、すみません。我慢できなかったもので」

後輩「抱きつかれるよりも、抱きつくほうが私には合っているみたいです。妹さんに抱きつかれていた時より、今のほうが落ち着きます」

男「なら、いつでも抱き枕になってやるよ」

後輩「そんなの嫌です。抱き枕は私を撫でてくれないでしょう」

男「……俺が撫でるのは、鈍器で殴ってるのと一緒なんじゃないのかよ」ナデナデ

後輩「そうなのです。しばらく動けそうにないので、この体勢のままでいてくださいね」ギュウウ

男「……後輩」

後輩「なんでしょう?」

男「なんつーか、その……気を遣わせてごめんな。本当に妬いていたわけじゃないんだよ」

後輩「そんなことはわかっていますよ」

男「えっ、そうなの?」

後輩「当然です。私は先輩の彼女ですからね」

後輩「あまりべったりしなくなったから、物足りないと思っていたのでしょう?」

男「まあ……な。ここ最近の距離感の方が正常なんだ、ってわかってはいるんだが……」

後輩「そんなことありませんよ。私たちがこうやって密着していないなんて異常です。あり得ないです」

後輩「異常な状況を我慢する必要はありません。まあ、先輩はシャイですから、自分から抱きついたりなんてできないでしょうけども」

男「……本当にありがとな。癒されたよ」

後輩「自分だけ癒されるなんて狡いですよ、先輩」

男「そうだな。ごめん」ナデナデ

後輩「んー。あと10分は撫でてもらわないと、許さないです」スリスリ

今日はここまでっす

金曜日 放課後 体育館
妹「あ、あの……」

後輩姉「……ああ、居残ってごめんね」

妹「あ、いえ、それはいいんですけど……そんなにやって大丈夫なのかなって」

後輩姉「むしろ、これくらい追い込まないと」

妹「でも……」

後輩姉「心配してくれてありがとう。でも、本当に大丈夫だから」

妹「部長……」

後輩姉「じゃあ、私はもう少し練習してから帰るから、先に上がっていいよ。片付けもやっておくから」

妹「わかりました。では、お願いします」

後輩姉「はい。お疲れ様」

妹「……日曜日の試合、絶対勝ちましょうね!」

後輩姉「なにそれ?」

妹「えっ」

妹「日曜日に向けて練習してるんじゃないんですか!?」

後輩姉「なにかあったっけ?」

妹「総体予選ですよ!」

後輩姉「あー……そういえば、日曜日だっけ」

妹「ええ……」

後輩姉「確か、中央高とだよね? あんな相手に私が自主練するわけないじゃん」

妹「なら、なんの為に……?」

後輩姉「欲しいものを手に入れる為に、だよ」

後輩姉「もういいかな? そろそろ練習したいから」

妹「あ、はい……。お疲れ様です……」

後輩姉「気を付けて帰ってねー」

後輩姉(日曜日に総体予選か……だから、みんな気合が入っていたのね)

後輩姉(確か準決勝だっけ? いや準々決勝だったような? ……あと二つ勝てば全国、とか言ってたから準決勝か)

後輩姉(もし勝って、決勝進出となると、あのハゲ顧問が球技大会のことを騒ぎそうだな)

後輩姉(……それはそれで面白くなりそうだけど)

男 自宅 
妹「ただいまー」

男「……」

妹「うわっ!? ……なんだ、お兄ちゃんか。なんでそんな所に座ってんの?」

男「もう動けないです……」

妹「はぁ……。とりあえず、玄関から移動しようよ」


リビング
妹「なんでそんなに疲れてるの? 放課後は公園でドリブル練習するだけでしょ?」

男「今日は公園に子供が大勢いたから、走ることになったんだよ」

妹「まったくさあ……。元陸上部なんだから、ちょっと走ったくらいで、そんな状態にならないでよ」

男「……ショッピングモールまで走ったんだぞ」

妹「専門は長距離だったじゃん」

男「そういう問題じゃねえだろ」

男「往復13kmだぞ!? サッカー一試合分は走ってんだからな!」

妹「いいじゃない。後輩さんの揺れ動くおっぱいを見れたんだから」

男「……まあ、堪能させていただきましたね」

妹「見るだけで、触らないあたりがお兄ちゃんらしいね」

妹「あーあ。あたしも後輩さんと放課後に自主練したいなぁ……」

男「お前には部活があんだろ」

妹「それはそうなんだけどさあ……」

男「まあ、気持ちはわからなくもないがな。玉拾いとか声出しをやってるよりは、後輩と一緒に居たいわな」

妹「だから、レギュラーだっつーの!」

男「それ、本当なのかよ? 朝練で後輩に無様にやられてる姿からは想像できないんだけど」

妹「……後輩さんが凄すぎるんだよ。噂では聞いてたけど、まさかあれだけの実力だったとは」

男「噂?」

妹「後輩さん、ミニバスやってたらしいんだけど、めっちゃ上手かったらしいよ」

男「そうなのか?」

妹「だって県選抜だよ? しかも、チームには他に上手い選手なんかいなくて、後輩さんのワンマンチームだったにも関わらず県ベスト4まで行ってるんだから
ね」

男「そりゃ凄い……」

妹「中学でバスケ続けなかったのか、みんな不思議がってたもん」

男「……なんでだろうなあ」

妹「だから、今回の球技大会はバスケ部で話題になってるんだ。あの後輩さんのプレーが見れる、って」

男「そうだな。見て勉強しろよ」

妹「なんでお兄ちゃんがそんなに偉そうにするのかね……」

男「そりゃあ、彼氏ですからね」

妹「はいはい。あと、部長との姉妹対決も注目されてるね」

男「……なあ、正直なところ、あいつに勝てるのか?」

妹「部長のクラスは、部長しかバスケ部いないし、なんとかなると思うよ」

男「いや、そうじゃなくてだな……。後輩はあいつに勝てるか?」

妹「1vs1でってこと? んー。確かに後輩さんは凄いけど、部長はそれよりもスーパーだからなあ……」

男「マジかよ……」

妹「でも、後輩さんにはあたしたちバスケ部4人がいるからね。1vs1では無理でも、コンビネーションで崩せるよ」

男「……そうか。宜しく頼む」

妹「まっかせといてー! あたしと後輩さんのゴールデンコンビぷりを見せてあげるから!」

男「ああ、楽しみにしてるよ」

翌週 月曜日 朝 中学校校庭
後輩「球技大会の出場を辞退ですか?」

妹「ごめんなさい……」

後輩「一体、どうして……」

妹「昨日、総体予選の準決勝だったんだけど、なんとか勝ったのね。そしたら……」

男「土曜日に決勝をやるらしくて、怪我を避けるために、予選に登録されている選手は球技大会には出さないそうだ」 

後輩「……」

妹「まあ、バスケ部が出れないってことは、後輩さんの独り舞台になるだろうから、優勝は間違いないよ!」

後輩「おそらく、そうはならないでしょうね……」

妹「えっ?」

後輩「いえ。なんでもありません」

男「……」

体育教官室
顧問「……話とはなんだ?」

後輩姉「球技大会ですけど、私は出場しますよ」

顧問「馬鹿なことを言うな。全国を賭けた試合を控えているのに、球技大会に出すわけないだろう」

後輩姉「なぜですか?」

顧問「昨日も説明しただろう。球技大会なんてお遊びで怪我をしたらどうする?」

後輩姉「なるほど。お遊びで怪我をしてはいけないということですね?」

顧問「そうだ。わかったのなら、下らない事を言ってないでコンディションを整えろ」

後輩姉「わかりました。では、退部します」

顧問「なっ……!?」

顧問「何を言っているんだ!?」

後輩姉「球技大会に向けてコンディションを整える為に退部を申し出たんですよ。お遊びで怪我をするわけにはいかないですし」

後輩姉「私にとっては、総体なんてどうでもいいんですよ。今回の球技大会こそ、全力を注ぐ価値があるんです」

顧問「ふざけるな! お前は部長だぞ!?」

後輩姉「あんたが勝手に部長したんでしょ」

後輩姉「では、失礼します」

顧問「ま、待て!」

後輩姉「まだ何か?」

顧問「本当に辞めるつもりか……?」

後輩姉「それは先生次第ですね」

顧問「……どうすればいい?」

後輩姉「貴方は髪だけじゃなく、脳までないんですか? 私は、球技大会への出場を認めないなら退部する、と脅しているんですよ。どうすればいいのかなんて、考えなくともわかるでしょう?」

顧問「お前を欠くわけにはいかないんだ……」

後輩姉「なら、答えは一つしかありませんね」

顧問「お前の出場を許可する……」

後輩姉「私だけですか? 他の部員は?」

顧問「それは認めん! お前だけ特別に……」

後輩姉「そうやって、私を依怙贔屓しているから、部員たちの信頼を得られないんですよ」

顧問「だが……」

後輩姉「3年生は最後の球技大会となるので特別に参加を許可する、というのはいかがでしょう? これなら、他の部員たちの不満も抑えられます」

顧問「……わかった。そうしよう」

後輩姉「さすが先生。デコだけじゃなく、心も広いんですね」

顧問「……怪我だけはするなよ」

後輩姉「先生、心配しすぎですよ。そんなんだから、禿げるんですよ」

昼休み 1年生教室
後輩姉「と、いうわけで。私は球技大会に参加しまーす!」

妹「部長だけですか!?」

後輩姉「ううん。3年生全員だよ。最後の球技大会だからなんとかなりませんか、ってお願いしたら先生も認めてくれたよ!」

後輩「……お願いではなく」

男「脅迫だろ……」

後輩姉「そういうことだから、頑張ってね」

後輩「ええ。全力で貴女を叩き潰しますよ」

後輩姉「男くん、君の彼女怖いんだけどー」

男「ああ、恐ろしいくらいに可愛いな」

後輩姉「ふふふ。地獄におとしてあげようか?」

妹(さ、三人とも顔は笑っているのに、目が笑ってない……)ガタガタ

今日はここまで

水曜日 体育館
後輩「……」ダムダム

モブA「も、もうやだぁ……」

後輩「……」スッ


妹「後輩さん、ナイッシュー!」

男友「お前の彼女すげえな……」

男「いや、まだまだだろ」

男友「もう30点も決めてんのに!?」

男「現役バスケ部のご意見は?」

妹「んー。まあ、確かにいつもよりドリブルのキレがないかもね。初戦の緊張もあるんだろうし、これからギアが上がってくるんじゃないかな」

男友(ば、化け物かよ……)

試合終了後
妹「後輩さーん!」ギュウ

後輩「きゃっ!」

妹「お疲れ様!」

後輩「も、もう! 突然抱きつかないでくださいよ! ビックリするじゃないですか!」

男「そうだそうだ。さっさと離れろ」

妹「いーやーだー! あたしが後輩さんのことを癒してあげるんだもん!」

男「お前なあ、いいかげんに……」

後輩「離れるのは貴方です」ギロッ

男「えっ」

妹「そうだそうだ! さっさと離れろ!」

男「えっ……えっ?」

後輩「妹さん、教室に移動しましょう」

妹「いいけど、自販機に寄って飲み物買わない?」

後輩「大丈夫ですよ。気の利く先輩が飲み物を奢ってくれるそうですから」

妹「さっすがー! 女の子の気持ちがわからないくせに、どうでもいいところには気が利くお兄ちゃんは違うなー!」

後輩「では、先輩、十分後に私たちの教室に来てください」

妹「飲み物よろしくね、ごみいちゃん!」

男「……えっ?」

男友「こっち見んな」

10分後 自販機前
男「……」

妹「まだ、こんなところにいるの? 早く行きなよ」

男「どうして、お前がここに……?」

妹「あたしはバスケ部ですからねー。審判しないといけないの」

男「……後輩はまだ怒ってるのか?」

妹「怒ってる? ……あー、さっきのやつか。あれは怒ってるわけではないんじゃないかな」

男「でも、離れろって……」

妹「あのタイミングで近付こうとしたお兄ちゃんが悪い。ほんと、デリカシーがないよね」

男「ええ……」

妹「だいたい、落ちこみたいのはこっちだっつーの」

男「お前は後輩に抱きついて、イチャコラしてたじゃねえかよ」

妹「だからこそ悲しいのよ。あたしはいいけど、お兄ちゃんはダメなんだよ?」

男「そんな特別扱いいらねえよ……」

妹「もうめんどくさいなあ……。こんなところでうじうじしてないで、後輩さんのとこに行って、話すればいいでしょ」

男「でも、近寄ったら怒られるし……」

???「待たせるほうが罪は重いですよ」

男「えっ」

後輩「捕獲です!」ギュ

男「……えっ」

後輩「妹さん、すみません。この唐変木は私のほうで預かりますので、球技大会の運営のほうに戻ってください」

妹「うん。じゃあ、また後でね」

後輩「はい。ありがとうございました」

男「こ、後輩……?」

後輩「……さっきはすみませんでした」ギュウ

男「いや、いいんだけどさ。俺がなにか気に障ることをしてしまったんだろうし。……まあ、かなりショックだったけど」

後輩「ごめんなさい……。あの時の分まで抱きしめますから、許してください」ギュウウウ

男「……後輩が抱きつきたいだけだろ?」

後輩「ええ。ずっとこうしていたいです」

男「一応、理由を訊いてもいいか?」

後輩「単純なことですよ。私は直前まで試合をしていたのですよ? 7月の蒸し暑い天候の中、締め切った体育館でバスケをしていたわけですから、当然、汗をかいていたわけです」

男「ああ、そういうことか……」

後輩「幻滅しました……?」

男「俺が後輩に幻滅したりするわけねえだろ」

後輩「っ……! もう、どうして、そういうことを軽々しく口にするのですか!」

男「だって事実だし」

後輩「もう知らない!」

男「幻滅した?」

後輩「もっと好きになりました! 責任とってください!」ギュウウウウウ

男「ああ、一生かけて責任をとらせてもらうよ」ナデナデ

ここまで

完結楽しみにしてるよ

>>702
ありがとう。頑張ります。

後輩姉「おー。こんなところでイチャイチャしちゃって」

後輩&男「!」

後輩姉「廊下で抱きあうなんて非常識すぎるなあ。場所考えなよ」

後輩「な、なにしにきたのですか! ……ま、まさか!」ギュウ

後輩姉「私は飲み物を買いにきただけ。その男に何かしようってわけじゃないよ」

後輩「……」ギュウウウ

男「大丈夫。何があっても、俺は後輩から離れないよ」ナデナデ

後輩姉「ごめん。男くんに水をぶっかけたいかも」

後輩「……」ジー

後輩姉「なに? 何か飲みたいものでもあるの?」

後輩「ち、違います!」

後輩姉「なら、なんで私のことを見つめてるわけ?」

後輩「貴女のことなんて見ていません!」

後輩姉「じゃあ、私が感じた視線は男くんからかな?」

後輩「なっ!?」

男「大丈夫大丈夫。俺は後輩しか見てないよ」ナデナデ

後輩「そ、そうでしょうね! 先輩は私に夢中ですからね!」ギュウウウウウ

後輩姉「あのさ、イチャつくなら他所でやってくんないかな」

後輩姉「私は気を利かせてここに来てあげたんだよ? 体育館に私がいたら、君たちが来づらいと思って」

男「後輩の試合は終わってんだよ。いま、体育館に行く理由なんてない」

後輩姉「それならそれでいいけど、私と試合する前に敗退した場合も、君たちには別れてもらうからね」

男「そんなことあるわけねえだろ」

後輩「……」

後輩姉「さすが我が妹。私の言いたいことが理解できたようだね」

後輩「ええ。3年2組の試合を偵察しなくていいのか、ということですね」

後輩姉「うん。そういうことだね。あのクラスに誰がいるのかわかっているでしょう?」

後輩「……ええ。把握しています」

男「バスケ部の奴がいるのか?」

後輩姉「君もよく知っている、あの副部長ですよ」

男「誰、そいつ?」

後輩&後輩姉「えっ」

後輩姉「副部長だよ? ほら、ショートカットで身長が高くて、ちょっとつり目な子」

男「特徴を言われても知らんもんは知らん」

後輩「あの、先輩……本当に副部長を知らないのですか?」

男「後輩までなんだよ。そんな女、見たことも話したこともねえよ」

後輩「で、でも、中高一緒ですよね?」

男「そんな奴、中学にはいなかったと思うけど?」

後輩&後輩姉「……」

後輩姉「副部長だよ? ほら、ショートカットで身長が高くて、ちょっとつり目な子」

男「特徴を言われても知らんもんは知らん」

後輩「あの、先輩……本当に知らないのですか?」

男「後輩までなんだよ。そんな女、見たことも話したこともねえよ」

後輩「で、でも、中高一緒ですよね?」

男「そんな奴、中学にはいなかったと思うけど?」

後輩&後輩姉「……」

後輩姉「ち、ちょっと待って。この間、私と話している時に、バスケ部の子が来たよね? その子が副部長なんだけど……」

男「それが目的か」

後輩姉「なにが?」

男「後輩がいない所で俺がお前と会話をしていることをアピールして、俺たちがギクシャクすることを狙ってんだろ?」

後輩姉「……なに言ってんの?」

男「それくらいで揺らぐような脆い関係じゃねえんだよ」

後輩姉「ねえ、この男はなに言ってんの?」

後輩「私にもわかりません……」

後輩姉「まあ、いいや。副部長の話は置いといて、体育館に行ってきなよ。3年2組の試合始まっちゃうよ」

男「誰がお前の指図を受けるか。なあ、後輩」

後輩「……いえ。ここは姉の言う通りです。体育館に向かいましょう」

男「後輩……?」

後輩姉「そのほうがいいだろうね」

後輩「貴女に言われたから、というわけではありませんから。元々、副部長の試合をチェックしておくつもりでしたし」

後輩姉「ふーん。でも、ここでイチャイチャしてたよね? 体育館に向かう気配なんてなかったけど」

後輩「あ、あれは先輩が悪いのです! 私は体育館に移動したかったのに、先輩がここでうな垂れているから……その、つい……」

後輩姉「……」

男「後輩は優しいな。ありがとう」ナデナデ

後輩「もう! 頭を撫でないでくださいよ! 動けなくなるでしょう!?」ギュウ

後輩姉「いいから早く移動しなさいよ。水ぶっかけるわよ」

体育館
妹「あれ? 二人ともどうしたの?」

後輩「3年2組の試合を偵察にきたのです。……もう、試合始まっていますか?」

妹「うん。もう5分くらいかな」

後輩「……ほら、先輩のせいで5分も遅れてしまったじゃないですか」

男「なんでだよ。俺は抱きつかれてただけだぞ」

後輩「抱きつかせたのは貴方でしょう?」

妹「……」

男「妹はどっちが悪いと思う?」

妹「さあ? どっちも爆発すればいいんじゃないかな」

後輩「試合はどういう状況ですか?」

妹「3年2組が一方的に押し込んでるよ。もう15点差くらいかな」

後輩「たった5分でそこまでの点差がつくのですか……」

妹「副部長が凄いんだよ。あんなに気合が入ってる副部長を見たことない」

男「どうせ相手がたいしたことねえんだろ」

副部長(勝つ、勝つ、勝つ! 絶対に俺は勝つんだ!)

副部長(必ずあの女に勝って、男を俺のものに……!)



数日前
副部長『なんだよ、それ……』

後輩姉『だから、私が勝ったら、あのカップルは別れるってことだよ』

副部長『なんでそんなことすんだよ!?』

後輩姉『あれれー? なんで、副部長が怒るの? この話は君にとってもいい話じゃない?』

副部長『そ、そうだけど……』

後輩姉『そんなんじゃ、あの二人が別れても、男くんを捕まえられないよ』

後輩姉『いい? 欲しいものはどんな手を使ってでも、必ず手に入れなければならない。誰かに奪われているのなら、なおさら、手段なんて選んでる場合じゃない』

後輩姉『男くんは宝物なんでしょう? その男くんと手を繋いでいた私の妹を殺してやりたいと思ったんでしょう? なにを躊躇っているの?』

副部長『……俺に、男を振り向かせることできるのかな?』

後輩姉「今は無理ね。彼は、私の妹に夢中だから。でも、その関係が壊れてしまえば、君は必ず勝てる。傷心の男くんに近付いて甘い言葉を囁けば、簡単に落とせる」

副部長『……』

後輩姉『まあ、そうなる為には、私が勝たないといけないんだけどね』

副部長『……いや。お前に出番はない』

後輩姉『えっ?』

副部長『三回戦であの女のクラスと当たるんだよ。その時、俺がこの手で葬ってやる』



副部長(待ってろよ、男。俺が幸せにしてやるからな……)

男「……」ゾクッ

後輩「どうしたのですか?」

男「いや、なんか吐き気が……」

妹「そういえば、妹さんと副部長って、ミニバスで一緒だったんだよね?」

男「そうなの?」

後輩「ええ。私がミニバスに入団したのは4年生なので、1年間だけでしたけどね」

男「その時の実力はどうだったの?」

後輩「チーム内では姉に次いで2番目に上手かったです。地区選抜にも選ばれていたかと」

妹「でも、同じミニバスの子に聞いたことあるんだけど、1vs1やったりすると後輩さんが勝ってたんでしょう?」

後輩「それは、私のようなタイプと相性が悪かっただけですよ。高身長のプレーヤーからすると、身長の低いドリブラーは対応しづらいって言うじゃないです
か」

妹「へー。副部長って、小学生から大きかったんだ」

後輩「ええ。165cmくらいはありましたよ」

妹「わー、凄い! 今のお兄ちゃんと同じじゃん!」

男「馬鹿。俺は166cmだ」

妹「たった1cm大きいだけで、ドヤ顔してんじゃないわよ」

男「1cmだろうとなんだろうと、俺の方が大きいのは間違いないだろ」

妹「だったら、小6当時の身長はどうなのよ」

男「……覚えてねえ」

妹「143cmだよ、おチビちゃん」

後輩「先輩って小学生の頃は身長が小さかったのですね。知りませんでした」

妹「今も、ね」

後輩「……?」

男「……じゃあ、俺は自分の試合に行くから」スタスタ

後輩「先輩……?」

妹「あー……やっぱり、触れちゃいけない話題だったか」

後輩「どういうことですか?」

妹「お兄ちゃん、身長が低いのを気にしてるのよ。そんなの仕方ないことなのにね」

後輩「……」

校庭
後輩「先輩、探しましたよ」

男「悪い。トイレに寄ったりしてたからな」

後輩「許しませんよ。私を置いていくなど、許し難い行動です」

男「……ごめんな。後輩の前で身長の話をされて恥ずかしくてさ」

後輩「恥ずかしいことなんてないでしょう?」

男「でも、俺と後輩は身長が変わらないんだぞ? やっぱり、彼氏としては、思うことはあるよ」

後輩「いいえ。私たちの場合、それが大きなメリットを生んでいます」

後輩「例えば、私たちは同じ目線で歩くことができます。それは、この身長差だからこそです。同じ風景を同じ角度で見ることができるのは、私にとって大きな幸せなのです」

男「……」

後輩「背伸びや屈んだりしなくとも顔がすぐ近くにあるということは、お互いにメリットありますよね」

後輩「……」チュ

男「!」

後輩「だって、なんの負荷もかからずにキスすることができるわけですから」ニコッ

男「……そ、そうかもな」プイッ

後輩「おわかりいただけましたか?」

男「……ありがとう」

後輩「お礼なら言葉よりも態度で示してください」

男「ん……、そうだな」ナデナデ

後輩「……そっちですか?」

男「どれを期待してたんだよ?」

後輩「……」ジー

男「な、なに?」

後輩「根性なし」

男「!?」

今日はここまで

肯定する言葉が含まれてないから、叩きだと誤解されちゃったのかもしれないけど、糖分一極集中とか、副部長云々とかは、なんとなくおもったことを、そのまま書いちゃっただけで、別に流れをどうこうして欲しい訳でもないし、アンチでもないんだ

でも紛らわしかったみたいで、なんか荒らしの一角みたいになっちゃっててゴメン
もう、なるべく黙っときます

あと、応援してる

放課後 バスケ部部室
後輩姉「あーあ。これから練習か。球技大会の後くらい休みにしてほしいよね」

副部長「……お前、何かあったのか?」

後輩姉「なんで?」

副部長「1年がかなりビビってたぞ。球技大会で素人相手に本気を出してたって」

後輩姉「別に本気なんて出してないけどね」

副部長「本気を出さずに無失点ゲームしたのかよ。相手が素人とはいえ、バスケの試合で0-50なんて異常だろ」

後輩姉「いやいや、軽く流したよ。ほんの少し機嫌が悪かっただけでさ」

副部長「相手は災難だったな。機嫌の悪いお前と試合するなんて悪夢だ。想像もしたくない」

後輩姉「私のほうがよっぽど悲惨な目に遭ったから。あの二人の熱い抱擁を目の前で見せつけられたんだよ?」

副部長「それは悪夢だな。想像すると殺意が湧いてくる」

後輩姉「それに引きかえ、君は幸せな時間を過ごしたようだね。男くんの試合を見に行ったんでしょ?」

副部長「もちろん。男の勇姿を目に焼き付けてきたぜ」

後輩姉「で、少しは話すことできたの?」

副部長「……試合終わったら話しかけようとしたんだけどな。ある1年の女子が男に説教を始めたから近寄ることすら出来なかったよ」

後輩姉「そのまま別れてしまえばいいのにね」

副部長「なんなんだよ、あいつ! あんなに一生懸命プレーした男に説教するとかあり得ないだろ!」

後輩姉「君は彼女じゃないんだから、あの子がやることに文句を言っちゃいけないよ」

副部長「だけど、男はあんなに頑張ったのにあんまりじゃないか……俺が彼女だったら、抱きしめて褒めてやるのに……」

後輩姉「君がそんなことをしても、男くんは悪態をつくだけで感謝なんてしないよ」

副部長「いいじゃねえか。ツンデレっぽくて可愛いぜ」

後輩姉「……恋は盲目、だね」

後輩姉「副部長は誤解しているようだけど、実際の彼は口も性格も悪くて、小憎らしいって感じなのよ」

副部長「それは強がってるんだよ。身体も気も小さい男が、周りからなめられないように、虚勢を張っているんだ」

後輩姉「んー……」

副部長「どうだ、可愛いだろ?」

後輩姉「確かに、弱い自分を隠すために強がっている姿は愛おしいと思うよ? でも、男くんはそういうキャラクターではないから。あれは生まれもった性格であって、演じているわけではない」

副部長「なんでわかるんだよ」

後輩姉「そんなの目を見ればわかる」

副部長「……目?」

後輩姉「そう。目は口程に物を言う、って言うでしょう? 虚勢を張っている人は往々にして怯えた目をしてるのよ」

副部長「それはあくまでお前の推察だろ」

後輩姉「じゃあ、男くんが君の言うような性格だとしよう。それでも私は、彼への印象は変わらない」

副部長「だけど、さっき愛おしいって……」

後輩姉「それは別の人物に対しての話」

副部長「……誰だよ?」

後輩姉「さあ、誰でしょうね」



公園
後輩「さあ、誰でしょうね」

男「……」

後輩「試合中に足を捻挫したにも関わらず終了までプレーを続けて、全治3週間の診断を下された大馬鹿者は、誰でしょうね」

男「めんどくさそうな顔をしながら『球技大会なんて適当にこなしておけばいい』とかほざいていた野郎ですかね……」

後輩「先輩は本当にどうしようもない馬鹿です。早々に交代しておけば、軽い捻挫で済んだのに」

男「後輩にいいところを見せたかったんだよ……」

後輩「試合前にこれ以上ないくらいの醜態を晒しておいて、球技大会でちょっといいプレーしたくらいで私が喜ぶでも思っているのですか?」

男「……なあ、俺はあの時、一体なにを間違えたんだ?」

後輩「間違いに気付かないとは、さすが唐変木」

後輩「先輩が痛みに耐えてプレーしている姿を見せられて、私は辛いだけでしたよ」

男「うまく隠せてると思ったんだけどな。現に捻挫してたことに気付いたのは後輩だけだし」

後輩「彼女なのですから当然でしょう。周囲の目は誤魔化せても、私を騙すことなど不可能です」

男「だな。今回のことで、後輩に隠し事ができないのがよくわかったよ」

後輩「なら、もう……あんな無茶はしないでください」ギュ

男「……心配かけてごめんな」ナデナデ

後輩「次はないですからね」ギュウ

後輩「今回のことで身に染みてわかったのではないですか。人間、よくないことを考えているとろくなことにならないのですよ」

男「確かに、キスしてもらうためにゴールを決める、とか邪な考えはダメだよな」

後輩「はっ?」

男「ほら、約束しただろ? 俺がゴールを決めたら、後輩にキスしてもらうって」

後輩「……私が訊いているのは、無茶した理由が私にキスしてもらう為なのか、ということです」

男「そうだけど?」

後輩「……」ギロッ

男「こ、後輩……?」

後輩「キスくらいいくらでもしてあげますよ!」チュウウ

男「!?」

男「お、おい!」

後輩「なんですか!? キスしてほしいのでしょう!?」チュ

後輩「何度だって!」チュ

後輩「してあげますよ!!」チュウウウウウウウウ

男「○△□×!!?」

後輩「あと何回すれば満足なのです!? 100回でも200回でもしますよ!」

男「も、もういいって!」

後輩「そもそも、試合前にキスしていますよね!? 無茶してまでキスしてもらうほど飢えていたはずではありませんけど!」

男「あれは頬っぺたにだったしな……」

後輩「不満だったら、その場で言えばいいでしょう!?」

男「……自分から言うのはアレだし」

後輩「私は、貴方が望むなら唇どころか身体さえ喜んで差し出しますよ! なんなら、証明しましょうか!?」

男「俺が全部悪いです。ごめんなさい……」

男「……自分からはできないから、せめて勝ち取ろうと思ったんだ」

後輩「先輩ってどこまで馬鹿なのですか。貴方は既に私の心を勝ち取っているのですよ。それ以上のことなんてないでしょう」

男「でも……」

後輩「そりゃあ、私だって先輩からキスされたいです。時には不満を覚えますけど、でも先輩が奥手なことは理解しているので我慢はできますよ」

男「……」

後輩「まあ、せめてプロポーズくらいはしてくれないと困りますけど」

男「……ああ。任せてくれ」

後輩「期待はしませんけど、待っていますよ」

後輩「さて、そろそろ帰りますかね」

男「もうこんな時間か……。ごめんな、貴重な練習時間を削ってしまって」

後輩「先輩とたくさんキスできたのでいいですよ」

男「お、お前なあ!」

後輩「別に恥ずかしがることないでしょう。先輩って本当に初心……」

男「どうした?」

後輩「……いえ、なんでもないです」

男「なら、いいけど……」

後輩(こんなに奥手な人が姉を押し倒すなんてことできるの……?)

今日はここまで

>>747
ありがとう。

>>751
嘘乙。更新されたじゃん

翌日 朝 中学校校庭
妹「お兄ちゃんと部長が付き合ってた? なにそれ?」

後輩「知らないのですか……?」

妹「知らないもなにもあの二人は付き合ってないよ」

後輩「で、でも、姉が告白したのは事実なのです!」

妹「部長がお兄ちゃんに? いやー、それはなにかの勘違いだよ」

後輩「この目で見たのです! 間違いありませんよ!」

妹「うーん。それが事実だとしても、お兄ちゃんは受けなかったはずだよ。中学時代から後輩さんに夢中で他の女の子なんて眼中になかったし」

後輩「……私がはっきりしないから、自暴自棄になって姉と……」

妹「あー、ないない。実はお兄ちゃん、昔から部長のこと嫌いでさ。なんかライバル視してるみたい。『あいつには絶対に負けない』って中学の頃は事あるごと
に言ってたし」

後輩「なら、あの話は……」

妹「安心しなよ。お兄ちゃんは後輩さん一筋だって。そんなの後輩さんだってわかってるでしょ?」

後輩「それはそうですけど……」

妹「そんなに気になるなら、本人に直接訊いてみれば? お兄ちゃん、嘘つくのヘタだから誤魔化せないだろうし」

後輩「……検討してみます」

妹「そろそろ練習しようよ。今日は山場なんだし、気合入れていこー!」

後輩「……なんで、あの人がここに」

妹「えっ?」

副部長「……」キョロキョロ

妹「副部長……?」

副部長「お、男はどうしたんだ?」

妹「お兄ちゃんなら捻挫したので家にいますけど」

副部長「そ、そうなのか……」ガックシ

後輩「……」

妹「副部長はどうしてここに?」

副部長「お前を呼びにきたんだよ。朝練に参加しないで、こんなとことで遊んでる場合じゃねえだろ。レギュラーの自覚あんのか」

妹「す、すみません……」

副部長「いいから早く行けよ。時間を無駄にすんな」

妹「……後輩さん、ごめん」

後輩「私は大丈夫ですから、行ってください」

妹「じゃあ、また学校で……」

副部長「行けよ!」

妹「は、はいいいいいいいい!」ダッ

副部長「ちっ……」

後輩「……それで、何の用ですか?」

副部長「さすが出来のいい後輩さん。察しがよろしいようで」

副部長「姉と賭けをしてるそうだな」

後輩「貴女には関係ないでしょう」

副部長「それがあるんだな、これが」

後輩「何があるというのですか」

副部長「男が好きなんだよ。ずっと、ずっと前からな」

後輩「……なるほど。確かに関係ありますね」

副部長「俺がお前らの関係を終わらせてやるよ」

後輩「できるといいですね」

副部長「バスケを投げだしたお前が俺に勝てると本気で思ってるのか?」

後輩「困難なことはわかっています。ですが、なんとしてでも勝たなければならないのです」

副部長「精神論でどうにかできる実力差か?」

後輩「それは……」

副部長「まあ、今回は運がなかったな。俺と当たらなければ、姉を相手に10点決めればいいだけだったのに。そもそもお前のような軟弱な女が男を守ろうなんておこがましいんだがな」

後輩「……守る?」

副部長「そうだ。俺なら、あいつを守れる、幸せにしてやれる。お前じゃ役不足なんだよ」

後輩「……」クスッ

副部長「なんだよ?」

後輩「いえ。貴女は安い女だな、と思いましてね」

副部長「ああ!?」

後輩「だって、そうじゃありませんか。守るとか幸せにするとか一方的に相手を大切にできれば満足なのでしょう? 相手を愛するだけで満足なんて独善的な思考です」

副部長「なら、お前は見返りを求めてんのかよ」

後輩「ええ。私は愛し合いたいですから。もちろん、相手から愛されるように努力しますけどね」

後輩「愛することが目的な貴女には、先輩を振り向かせることはできませんよ」

副部長「ふん。お前たちが別れることになれば、俺にはいくらだってチャンスはあるんだ。じっくり時間をかけて関係を築くさ」

後輩「貴女にチャンスなど訪れません。年下の女に想い人を奪われた負け犬になんて、私は負けませんから」

副部長「ほざいてろ。重圧に負けてバスケを投げ出したお前なんかに負けねえよ」

後輩「……」

副部長「……」

後輩「では、学校で」

副部長「首洗って待っとけよ」

体育館
後輩「……身体を動かしてきます」
男「俺も行くよ」

後輩「いえ。集中したいので、一人でやってきます」スタスタ

男「……後輩、やけにピリピリしてるけど、なんかあったのか?」

妹「なんか悩んでるみたいだよ、お兄ちゃんのせいで」

男「俺? ……なにかしたのか?」

妹「んー。私にはよくわからなかったけど、お兄ちゃんが悪いんじゃないじゃないかなー。うん。絶対にそうだと思う」

男「曖昧なくせに、断定してんじゃねえよ」

後輩姉「おはよー!」

妹「あ、おはようございますー!」

男「面倒なのがきやがった……」

後輩姉「男くんだー。妹ちゃんから聞いたよ。捻挫したんだってー?」ギュウ

男「!?」

後輩姉「大丈夫?」ギュウウウウウウ

男(こ、こいつ……笑顔で捻ったところを踏んでやがる……!)

後輩姉「痛いの?」

男(患部をダイレクトで踏まれてんだからな! 痛いだろうな!)

妹「お兄ちゃん?」

男「別に痛くねえよ……」

後輩姉「そっかあー」ギュウウウウウ

男「暑苦しいから離れろ……」

後輩姉「やーだー」ギュウウウウウウウウウウウウウウウウ

男「頼むから……」

後輩姉「なんでよー。昨日のお礼させてよー」

妹「うちの兄がお世話になったんですか?」

後輩姉「ちょっとね。……男くんと話をしたいから席外してくれる?」

妹「あ、はい……」

後輩姉「昨日は本当にありがとうね」

後輩姉「わざわざ、私の目の前であの子と抱き合ってくれて。おかげで大切なことを思い出せたわ」

後輩姉「君を殺したいほど憎い、ってことをね」ボソッ

男「……っ!」ゾクッ

後輩姉「そういうことだから、行動には気を付けてね」パッ

男「……お前にとやかく言われる筋合いはねえよ」

後輩姉「私はあの子の姉よ。節度ある交際をするように導くのは当然でしょう」

男「導かねえで終わらせようとしてんじゃねえか……」

後輩「……なにをしているのですか」

男「こ、後輩……!」

後輩姉「なんだと思う?」

後輩「なんでもいいですが、私の許可なく先輩に近付かないでください」

後輩姉「あら……」

後輩「目障りです。消えてください」

後輩姉「……そうね。そうするわ」

男「……やけに素直に聞いたな」

後輩「さあ? 私には関係ありませんし」

男「うーん……」

後輩「……」ベシッ

男「な、なんだよ?」

後輩「貴方は私のことだけ見てなさい」

男「お、おう……」





後輩姉「……」

妹「お兄ちゃんと話し終わったんですか?」

後輩姉「……妹ちゃん、中学校で朝練してたら副部長が来たって言ってたよね」

妹「そうですけど……?」

後輩姉「……」

妹「なにかあったんですか?」

後輩姉「あの馬鹿、余計なこと言ったな……」

ここまで。
また21時頃に来ます。

>>769
つーか、Twitterやってない。誤報もいいとこ。

副部長「よお、雑魚。よく逃げなかったじゃねえか」

後輩「……」

副部長「シカトかよ」

後輩「……弱いやつほどよく喋るとはよく言ったものですね」

副部長「なんだと!?」

後輩「では、試合が始まりますので」スタスタ

副部長「ちっ……」

後輩「……」ダムダム


妹「後輩さんはどうやって攻略するんだろう」

男「ドリブルで切り裂く」

妹「はあ……これだから素人は。副部長が守るゴール前でシュートを決めるのは簡単じゃないわよ。まして、シュートを決められるのが後輩さんだけなんだもん。的を絞って守れるから、より後輩さんは難しいよ」


副部長「させるかあ!」

後輩「!」


妹「ほらね。ゴール前には簡単に侵入できる。でも、その後は副部長が手ぐすねを引いて待ち構えているのよ。苦しい体勢に追い込んで、シュートモーションに入ったら、あの身長を活かしてブロックショット決めてくる。……本当に嫌らしいのよ」

男「なら、外から打てばいいじゃねえか」

妹「馬鹿? 現役のバスケ部員だって3Pを決めるのは難しいのに、何年もバスケをやってない後輩さんに決められるはず……」


後輩「……」シュ

副部長&妹「えっ」

「……」パサッ

副部長「……」

妹「……」

後輩「さあ、次です!」

副部長&妹「えっ」

副部長(3Pだと……そんな馬鹿な……)

後輩「……」ダムダム

副部長(そ、そうだ。たまたまに決まってる。何本も決められるはずが……)

後輩「……」シュ

副部長「……」ゴクリ

「……」パサッ

副部長「!?」

男「何が『決めるのは難しい』だ。二本連続で決めてるじゃねえか」

妹「噓でしょ……」

妹「今の2本は大きいよ。これで、副部長はゴール前に留まることができない……」


副部長(……やつが3Pを習得しているなら打たせるのは危険だ。だが、もし俺をゴール前から誘い出すのが目的だとしたら……)

後輩「……」ダムダム

副部長(く、くそったれ……)

後輩「……」ニヤァ


妹「ゴール前を空けて3Pを防ぎにいけば、逆にドリブルするスペースを与えて振り切られるリスクを負うことになる。でも、3Pを決められるのは避けたい」

妹「これで後輩さんが優位になった……」

男「俺は最初から楽勝だって言ってただろ」



後輩「さあ、ラスト2分で10点差です。どうしますか?」ダムダム

副部長「……お前からボールを奪って速攻で8点差だ。まだわからない」

後輩「そうですか。ぜいぜい最後まで足掻いてください」

副部長「男は……俺が守るんだ。俺しか守れないんだ」

後輩「一つだけ言っておきます」スッ

副部長「……っ!」ダッ

後輩「貴方が思っているほど先輩は弱くありませんよ」クルッ

副部長「なっ……」

後輩「……」シュ

「……」パサッ

後輩「奥手ではありますけどね」

妹「これで12点差……」

男「……」

妹「なんで、さっきから黙ってんの?」

男「あいつ、どこかで見たような……」

妹「そりゃ中高一緒なんだし、どっかで顔合わせたことくらいあるでしょ」


副部長「……あいつ、泣いてたんだよ」

後輩「はい?」

副部長「俺があいつと初めて出会ったとき、男は公園の片隅で泣いてたんだ」

副部長「小さい体をさらに小さく丸めて、誰にも負けないってつぶやきながら……」

副部長「……あの時、決めたんだ。俺が守るって。守り抜いてみせるって」

後輩「……」

副部長「だから、お前に負けるわけにはいかないんだ……!」

後輩「貴女の想いはわかりました。しかし、私にとっても先輩は大切な存在なのです」

後輩「譲ることはできません」

副部長「残り2分。俺は最後まで諦めねえぞ」

後輩「望むところです」






試合終了後
妹「お疲れ様!」

後輩「ありがとうございます」

男「圧倒的だったな」

後輩「そうでもなかったですけどね……それより先輩、副部長のことですが」

男「ん?」

副部長(終わった……。なにが男を守るだよ……。男に嫌われるのが怖くて、ずっと逃げてたくせに。なんて傲慢なんだ……)

後輩『相手を愛するだけで満足なんて独善的な思考です』

副部長「……」チラッ

後輩「~~~」

男「~~~」

副部長(どう見ても、男の隣にふさわしくないのは俺のほうだよな……)

男「おい」

副部長「な、な、な……なんで……」カァァ

男「あの時はありがとうな」

副部長「お、覚えてたのか……?」

男「いや、ついさっきまで忘れてた」ドーン

副部長「ああ、そう……」

男「試合見てたけど、それなりに頑張ってたじゃねえか」

副部長「どこがだよ。何年もバスケをやってなかったやつに好き放題やられたんだぞ……」

男「仕方ねえよ。相手が悪い」

副部長「……ああ、お前の彼女は凄いよ」

男「だろ? 自慢の彼女だ」

副部長「そんな風に笑うんだな……」

男「はあ?」

副部長「いや、幸せそうな顔してるからよ」

男「実際、幸せだしな。後輩が傍にいてくれるだけで、俺は生きててよかったって思える」

副部長「……」

後輩『私は愛し合いたいですから。もちろん、相手から愛されるように努力しますけどね』

副部長「……愛し合っているからこそ、そう思えるのかもな」

男「じゃあ、そろそろ戻るわ」

副部長「あ……うん。そうだよな」

男「まあ、こうして再会したのも何かの縁だ。たまには話そうぜ」

副部長「いいのか!?」

男「ダメなのか?」

副部長「いやいやいや! 俺は嬉しいけど!」

男「なら、変なこと聞くなよ」

副部長「ごめん……」

男「じゃあ、またな」

副部長「……うん! またね!」

校舎裏
男「中1の時、仲が悪い同級生がいて、そいつがチビチビうるせえからボコボコにしたことがあってさ。その時にあいつに声をかけられたんだ」

後輩「……公園の隅で小さくなっていたそうですが」

男「制服のÝシャツが破かれたから、隠してたんじゃねえの」

後輩「泣いていたのは?」

男「あー。そのまま家に帰ったら親に怒られるからじゃん?」

後輩「強くなりたいと呟いたのは」

男「一方的に叩きのめせるようになりたいってことじゃね」

後輩「……」

男「いやー。あの時、副部長がYシャツを家に取り行ってくれなかったら、親父に殴られるところだったぜ」

後輩「副部長が不憫でなりません……」

男「あいつと話してみたら、いろいろ思い出したよ。確かに中高一緒だったわ」

後輩「だから言ったではありませんか……」

男「仕方ないじゃん。中三からはあいつと話したことないし」

後輩「その時期に何かあったのですか?」

男「後輩と出会った、だろ?」ニコッ

後輩「……馬鹿」プイッ

バスケ部部室
後輩姉「……残念だったね」

副部長「完敗だったよ……」

後輩姉「君が悪いよ。昨日まで、あの子は勝てるのか半信半疑で精神的に追い込まれていた。でも、君が余計な挑発をしたせいで、絶対に勝つって腹をくくってしまった。試合前のあの子の目を見たときに、副部長の敗北を確信したよ」

副部長「なんであんな馬鹿なことを言ったんだろうな……」

後輩姉「まあ、安心してよ。私が勝つから。そうすれば、副部長にもまだチャンスはあるって」

副部長「もう、いいんだ。たとえ、あの二人が別れたとしても、男の心は手に入らないってわかったから。あの二人の間に入ることなんてできないんだよ」

後輩姉「……なによ、それ」

副部長「わかってるんだろ? あいつの気持ちがお前に向くことがないことくらい」

後輩姉「知らないわよ……」

副部長「なあ、もうやめにしようぜ。しっかり話し合えば、きっと……」

後輩姉「この気持ちを話したところで誰が理解できるの? 誰が認めてくれるの? 現に貴女はわかってないじゃない」

副部長「それは……」

後輩姉「あの二人は一時的に愛し合っているだけよ。恋愛感情なんて記憶と一緒。時間が経つにつれて薄れていくもの」

後輩姉「必ず私のもとに帰ってくるわ。必ずね」

今日はここまで

昼休み 1年生教室
男「……あれ、後輩は?」キョロキョロ

妹「後輩さんなら、お兄ちゃんを迎えに行ったけど……会わなかった?」

男「いや、うちの教室には来なかったが……」

妹「自販機にでも寄ってるのかも。連絡しておけば?」

男「……連絡先知らねえんだよ」

妹「はあ? 現代のカップルでそんなことありえるの?」

男「仕方ねえだろ。俺の電話番号を知ったら、電話代で破産するって言うんだから……」

妹「お兄ちゃんたちだと、実際にとんでもない請求額になりそうなのが面白いよね」

妹「じゃあ、あたしから電話しとくよ」

男「おう。早くしろな」

妹「なんなのよその態度は……ありゃ、電源が入ってないみたい」

男「……何かあったんだろうか」

妹「授業前に電源切って、そのままにしちゃってるんじゃない」

男「それならいいんだが……」

妹「男子に体育館裏に呼び出されて告白されてたりして」

男「ねえよ」

妹「どうかなあ? 後輩さんは美人だからねえ」

男「校内で堂々と俺にキスをする後輩に告白するような馬鹿はいねえよ」

妹「告白と言えば、部長から告白されたことあるの?」

男「……はあ?」

妹「後輩さんが言ってたんだよね。中学生の頃、お兄ちゃんが告白されてる現場を見たって」

男「なんだよ、それ……」

妹「あたしはそんなことあり得ないって言ったんだけど、後輩さんが譲らないんだよね」

男「……」

妹「どうしたの? ……まさか、本当に部長から」

男「後輩、探してくる!」

体育館裏
後輩姉「そっちから来てくれるとは思わなかったわ」

後輩「話があるのです」

後輩姉「私に勝てないと悟って賭けを取り消したいの?」

後輩「勝てないと悟っているのは、貴女のほうでしょう?」

後輩姉「……どういうことかしら」

後輩「貴女と先輩が交際していたという話は嘘ですね」

後輩姉「証拠はあるの?」

後輩「妹さんに確認しました。貴女が先輩と付き合っていた事実はなく、また先輩の家に訪れたことはないということを」

後輩姉「……」

後輩「貴女は私に勝てないと悟り、先輩に交際し、強引に純潔を奪われた等という下卑な嘘を吐いて、私を先輩から遠ざけた。しかし、結局、貴女は先輩を振り
向かせることができなかった」

後輩「今回も一緒です。貴女がどんなに策略を巡らせたところで、先輩の心をつかむことはできませんよ」

後輩姉「色々とおしいわね」

後輩「何がですか!?」

後輩姉「まず、男くんに事実確認をしていない点。第三者の証言より、まず当事者から聞くべきでしょう」

後輩「それは……」

後輩姉「結局、貴女は怖いのよね。彼に話を聞いて私の話が事実だったら、立ち直れないほどのショックを受けてしまうから」

後輩「ち、違います!」

後輩姉「そう。まあ、いいわ。実際、あの男とは何もないし、私は貴女の持つ魅力に勝てないとも思ってる」

後輩「ほ、ほら! やっぱり……」

後輩姉「でも、嘘をついた理由が間違っているわ。私は男くんを振り向かせたいわけじゃない」

後輩「なら、なぜ……」

後輩姉「それは、試合が終わった後のお楽しみ」

後輩「この期に及んで、まだしらばっくれるのですか!?」

後輩姉「ええ。いまはまだ言うべきではないもの」

後輩「ふざけないでください! 3年間も私を欺いておいて、まだ隠すというのですか!」

後輩姉「……3年? いいえ、もっともっと前、私が物心ついたときから、ずっと隠してきたことよ」

後輩「何を言って……」

男「後輩!」

後輩「どうしてここに……」

男「おい。どういうことだ」グイッ

後輩「ちょっと、先輩……」

男「後輩は黙ってろ」

後輩「……」

後輩姉「放してくれないかな。私は妹に呼び出されただけなんだけど」

男「お前が俺に告白した、だって? 笑わせてくれる」

後輩姉「あら、それは事実でしょう?」

男「どこがだ! すぐに冗談だから本気にするなって言ったじゃねえか!」

後輩姉「『告白』という言葉は、隠していた心の中を明かすという意味なのだけど」

男「……っ!」

後輩姉「ほら、事実でしょう?」

後輩姉「もういいかな? 試合の準備したいんだけど」

男「好きにしろよ……」

後輩姉「じゃあ、私は行くよ。二人でいられるのも後僅かなんだし、せいぜい楽しんでね」スタスタ

後輩「先輩……?」

男「……あいつとなんの話をしたんだ?」

後輩「えっと……先輩と姉が交際していた件について……」

男「そんな事実はないからな」

後輩「ええ。先ほど、姉も認めました」

男「そうか……」

後輩「……何を隠しているのですか?」

男「……」

後輩「私には言えないと……?」

男「……後輩は知らないほうがいいんだよ」

後輩「私だって当事者ですよ! 知る権利はあるはずです!」

男「確かにそうかもしれない。でも、少なくとも俺の口から言うべきことじゃないんだ」

後輩「どうしてもですか……」

男「……あいつが打ち明けなければ意味がないから」

後輩「……わかりましたよ」




体育館
後輩姉「さあ、決着をつけましょうか」

後輩「試合が終わったら、貴女が隠していることを洗いざらい話してもらいますからね」

後輩姉「私の話を聞く余裕あるの? 試合に負けたら、愛しの男くんと離れることになるのよ?」

後輩「大丈夫ですよ。私は負けませんから」

後輩姉「……その根拠のない自信をいつまで保てるかしらね」クスッ

今日はここまで

後輩「……」ダムダム

後輩姉「……」


男「後輩が仕掛けないとは意外だな……」

妹「そう? まだ序盤だし、ボールをキープしてリズムを掴みにいくのは当然じゃない?」

男「条件を考えると最初から飛ばしていくかと思ったんだが」

妹「いや、今日2試合目だよ? いくら10分ハーフとはいえ、最初から飛ばしたら体力持たないでしょ。まして、後輩さんはブランクがあるんだし」

妹「むしろ、部長のポジションが不思議だよ」

副部長「確かに」

男「うわっ! お前いたのか!?」

副部長「……さっきから隣にいたよ」

妹「やっぱり、副部長もそう思います? あのポジショニングだと、3Pを打ってくださいって言ってるようなものですよね?」

男「後輩が3Pを打てること知らないんじゃねえの?」

妹「いや、部長、あの試合を見てたからね……」

副部長「……打たせたいんじゃないか」

男「なんのために?」

副部長「それは……」


後輩姉「ほらほら、早くシュートしないとバイオレーション取られちゃうよ」

後輩「ちっ……」スッ

後輩姉「そんなに私と1vs1したいの?」

後輩「うるさいですよ!」ダムダム

後輩姉「隙あり」バシッ

後輩「!?」


妹「後輩さん、どうしたんだろ。今の場面、強引にドリブルで仕掛ける必要なんてないのに……」

副部長(やっぱりか……)

後輩姉「これで先制っと」パサッ

後輩「……っ」

後輩姉「せっかくフリーなんだから、3P狙えばいいのに」

後輩「……切り札は最後までとっておく主義なのです」


副部長「たぶん、後輩は3Pに自信がないんだ」

妹「で、でも、副部長との試合では2本連続で決めましたよ」

副部長「だが、あの2本以降は打ってすらいないだろ?」

妹「あっ……」

副部長「おそらく、あの2本は俺を誘い出すための囮。要は、3Pがあるかもしれない、と俺に思わせられればよくて、決まったらラッキーくらいだったんだろうよ」

副部長「姉はそれをはっきりさせるために、ゴール前に陣取って後輩をフリーにさせてるんだ」

男「何のためにそんなことを……」

副部長「3Pがあるかないかで守備の対応が変わってくるからな。味方は素人でパスを選択しても得点に結びつく可能性は低いうえに、3Pもないのならドリブルだけを気にすればいい」

副部長「ただでさえ1vs1の守備が強い姉を攻略するのは、より困難になったってことだ」

男「でも、後輩のドリブルはわかっていてもそう簡単には止められないだろ。現にお前だって何度も交わされてたじゃねえか」

副部長「俺は相性が悪かったし、本来のポジションではない場所で対応させられたからな。逆に姉は後輩みたいなタイプを得意としてて、1vs1に絶対の自信を持ってる。単純に仕掛けても勝てないだろうよ」


後輩「こんどこそ……」スッ

後輩姉「また1vs1? 3Pはどうしたの?」

後輩「貴女の思惑通りにはいきませんよ!」クルッ

後輩姉「ワンパターンなんだから」バシッ

後輩「なっ……!」


副部長「ほらな?」

男「マジかよ……」

妹「あたしが出てれば、コンビネーションで崩せたのに……」

副部長「無理だ」

妹「あたしたちバスケ部員4人がいれば、いくら部長だって止められないですよ!」

副部長「姉にフェイスガードされてる状態からシュートまで持ち込めると思うか?」

妹「で、でも、スクリーンプレイで何回かはフリーにさせられますし……」

男「それじゃあ足りないんだよ……」

妹「えっ……」

副部長「そういうことだ。当初の予定通り、味方にバスケ部員がいたとしても、10点というのは厳しい条件なんだよ。それが、後輩一人で10点を決めなきゃいけないっていうのは……正直言って不可能だ」

男「後輩……」チラッ


後輩「……」ジー


男(えっ……。めっちゃ俺のこと見てる……)

後輩姉「ミニバス時代と一緒ね。チームメイトに恵まれず、一人で打開することを余儀なくされているんだもの」

後輩「……」ジー

後輩姉「……よそ見なんてしてる余裕あるの?」

後輩「ありますよ?」

後輩姉「今の状況わかってないの?」

後輩「試合そっちのけで副部長と仲睦まじくお話してますね。後でお灸をすえねばなりません」

後輩姉「あの男のことじゃないわよ!」

後輩「さて、落ち着いたところで、そろそろ始めましょうか」

後輩姉「何を言って……」

後輩「Aさん!」シュッ

A子「は、はい!?」パシッ

後輩姉「!」

後輩「ナイスキャッチです! そのままBさんにパスです!」

A子「え、えい」バッ

後輩「Bさん、シュートです!」

B美「はわわ!」スッ

「……」ゴン

B美「ふぇぇ……」

後輩「どんまいです! 切り替えて守備をしましょう!」

後輩姉「……貴女、勝負を投げたの?」

後輩「黙ってプレーできないのですか?」

後輩姉「チームで10点取っても意味ないのよ」

後輩「知ってます」

後輩姉「なら、どうして無意味なことをするの?」

後輩「これはバスケですよ? 5対5で試合をしているのです。他の選手にパスをするのは当然でしょう?」

後輩姉「賭けはどうなったのよ」

後輩「賭けの内容に『貴女を1vs1で抜く』ということは含まれていません」

後輩姉「なるほど。つまり、私には1vs1で勝てないと認めるのね」

後輩「煽ってもなにもないですよ。貴女に勝つことに固執していたあの頃の私ではないのですから」

後輩姉「……」




後輩姉(前半も残り2分……。いつまで仕掛けないつもりなの……)

B美「に、にゃったー! 入ったー!」

後輩「ナイスです!」

後輩姉(……パスを回し始めたことで、他の子たちも動きが良くなってきた。でも、それがなんだというの。最後は貴女が決めなくてはいけないのよ?)

後輩「さあ、前半もあと少しです! 頑張りましょう!」

後輩姉(何を考えているの……?)

副部長「もう残り2分だぞ……いつまでこれを続けるんだ」

妹「……」

男「後輩はいまだに0点……」

妹「足が止まり始めてる」

男&副部長「えっ?」

妹「ほら、3年生は部長以外、足が止まってきてる」

男「……本当だ。まあ、運動部じゃないやつらだし、そんなもんだろ」


後輩(さて、そろそろですかね)

後輩姉「このままだと、10点どころか1点も決められないわよ」

後輩「私より、チームメイトの心配をしたほうがいいのでは?」スッ

後輩姉(ついに仕掛けてきたわね。だけど、私を抜くなんて……)

3年女子「えっ」

後輩姉「ば、ばか、そんなところで突っ立ってんじゃないわよ! 邪魔よ!」

後輩「……」スッ

後輩姉「あっ……」

「……」パサッ

後輩「まずは2点」

男「ラッキーな形だけど、ようやく決まったな」

妹「違うよ。今のは狙ったんだよ。他の3年生に目掛けてドリブルで仕掛けて、その選手が部長の邪魔になるように仕向けたの」

男「そんなこと可能なのか?」

妹「部長以外の選手は疲れて棒立ちだったもん。とっさに対応できるはずないよ」

妹「後輩さんはこれを狙ってたんだよ。部長のチームメイトが、部長の足を引っ張ることをね」

後輩姉「ちっ……」

3年女子「ご、ごめん……」

後輩姉「いいよ、もう。次からは集中しててよ」

3年女子「ごめん……」

後輩姉(もう少しでインターバルだし、ここは全員でゴール前を固めて妹のドリブルするスペースを消して……)

後輩「……」スッ

後輩姉「3P!?」

「……」パサッ

後輩「これで5点」

後輩姉「な、なんで……」

後輩「言ったでしょう? 切り札はとっておくって」

後輩姉「……」


男&妹「……」ジー

副部長「なんだよ!?」

妹「いえ」

男「別にー」

今日はここまで

乙。スポ根も良いが、初期の男と後輩の変態トークが恋しい

>>844
>>88くらいまでのノリかな? いまから組み込むのはちょっと難しいから、別スレを立てて番外編みたいな感じでやるよ。
もちろん、このスレを完結させてからだけど。

インターバル
妹「後輩さーん!!」ギュウ

後輩「だから、突然抱きつくのはやめてくださいよ!」


男「……」グッ

副部長「お前は行かないのか?」

男「相手クラスの奴が行くのはおかしいだろうよ」

副部長「まあ、それもそうだな」


妹「だって、後輩さんのこと大好きなんだもん!!」ギュウウウウウウウ

後輩「もう……」ナデナデ


男「……」ググググッ

副部長「めんどくせえから行ってこいよ」

A子「まさか、私たちがあのバスケ部部長がいるクラスと接戦だなんて……」

B美「ゆ、夢みたいだにゃ……」

妹「みんな頑張ってるもん! 絶対に勝てるよこの試合!」

後輩「……」

妹「後輩さん?」

後輩「えっ……? ああ、はい。勝てますよ、きっと」

B美「後輩さんが言うならいける気がしてきた……」

A子「確かに……」

妹「なによそれ! あたしの言葉が信用できないっての!?」

B美「だって」

A子「ねえ?」

妹「なんだとー!」

後輩「……」フラッ

A子「どうしたの」

後輩「すみません。ちょっと行ってきます」タッタッタ

B美「どこに行くんだにゃ……?」

妹「そんなの決まってるじゃない」

後輩「さあ、お仕置きタイムです!」

男「お、お仕置き? 俺が何をしたって言うんだよ」

後輩「自分の胸に手を当てて考えてみればいいのではないですかね? 試合そっちのけで美女二人に囲まれてにやにやしていたダメ彼氏さん」

男「言いがかりだ! むさくるしい女2人が近くにいただけで俺はなにも……」

後輩「うるさいです! とにかく、私の機嫌を損ねたのは事実なのですから、お仕置きです!」ギュウ

男「……!」

副部長「それのどこがお仕置きだよ」

後輩「後半はちゃんと試合を観てくださいよ!」パッ

男「……わかった」

後輩「そろそろ試合が始まるので……」

男「まー、待てって」グイッ

後輩「な、なんですか?」

男「……」チュ

後輩「なっ……」

男「今回は間違えてないよな?」

後輩「……っ!」

男「好きだよ」

後輩「……やっぱり、先輩には敵わないなあ」

後輩「先輩は凄いです。私がしてほしいこと、かけてほしい言葉がわかるのですから」

男「彼氏だからな。これくらい当然だろ」

後輩「おかげで弱気になっていた心が前向きになりました」

男「そりゃあ良かった」ナデナデ

後輩「……先輩、大好きです。ずっと貴方の傍にいたいです」

男「俺もだよ」

後輩「待っていてください。必ず、勝ちます」

男「ああ。待ってる」

副部長「お、お前よお、少しは周りの目とか気にしろよな」

妹「インターバルとはいえ、試合中だよ。キスするとか信じられないんだけど」

男「仕方ねえだろ。それしか、落ち着かせてやる方法が思い浮かばなかったんだから」

妹「はあ?」

男「いいから、後輩のこと応援してやってくれ」

後輩姉「見せつけてくれるわね」

後輩「羨ましいですか?」

後輩姉「少しは落ち着けたようね。良かった。後半、まともな勝負にならないんじゃないかって心配したのよ」

後輩「……なんの話でしょうか?」

後輩姉「3Pを決めたのに怯えた目で私を見るんだもの。すぐわかったわ。貴女が私に勝てないんじゃないかと弱気になっていることにね」

後輩姉「そりゃそうよね。隙をついて5点を奪えたからいいものの、実力差は明らかなんだから」

後輩姉「5分、いえ3分で立ち直った心を打ち砕いてあげるわ」

後輩「私は諦めません。後半、貴女がどんな策を講じてきても、必ず攻略します」

後輩姉「たかがキスしたくらいで、よくもまあ、そこまで強気になれるわね」

後輩「貴女は知らないでしょうが、好きな人とするキスはそれほどの力があるのですよ」

後輩姉「この試合を勝った後に検証させてもらうわ」

後輩「それはどうですかね。もし勝てたとしても、先輩が貴女に振り向くことはないと思いますが」

後輩姉「それでいいのよ。あの男とキスをするなんておぞましくてたまらないもの」

後輩「はい……?」

後輩姉「さっ、後半を始めましょうか」

後輩「……?」

今日はここまで

後輩姉「……」ダムダム

後輩「……いつまでそうしているつもりですか」

後輩姉「そうね。20秒過ぎくらいまではこうしていようかしら」


男「姉はキープしているばかりで仕掛けてこないな」

副部長「あれはディレイオフェンスだからな」

妹「で、でも、ディレイオフェンスなんて、実力が劣るチームが採る戦術ですよ? 部長がいるのに、そんなことする必要ないですよ」

男「どういう戦術なんだ?」

妹「攻撃時間24秒を目一杯使いながら攻めるの。少しでも時間を稼いで、相手の攻撃回数を減らすためにね」

副部長「つまり、後輩のシュートチャンスを減らせるってことだ」

後輩(ディレイオフェンスをしてくるなんて……)

後輩姉「取りにこなくていいの? 時間なくなっちゃうよ?」ダムダム

後輩「時間がないのは貴女も一緒でしょう」

後輩「それもそうだね。」スッ

後輩(無理にボールを奪いに行って体力を消耗するより)

後輩姉「よいしょっと」パサッ

後輩(速攻を繰り返して攻撃回数を増やすことに専念したほうがいい!)ダッ

後輩姉「そうはさせないよ」

後輩「!」

後輩姉「私のマークを振り切れるかな?」

後輩「フェイスガード……!」

後輩姉「なんで驚いてるのよ。私にフェイスガードされることくらいわかってたでしょ」

後輩姉「まあ、ディレイオフェンスとのコンボは想定してなかっただろうけど」


副部長「これは追い込まれたな。ディレイオェンスをやられて攻撃回数は減り、フェイスガードによってパスを受けることさえままならない」

妹「どうして部長はここまでやるんですか……たかが球技大会なのに……」

副部長「……姉にとっては、これがラストチャンスだからな」

男「……」

後輩姉「さあ、どうする?」

後輩「そんなの決まってます!」ダッ

後輩姉「逃がさないよ」サッ

後輩「もう……」キュッ

後輩「しつこいですよ!」ダッ

後輩姉「ほらほら、もっと頑張ってよ」サッ




副部長「……もう5分以上も後輩はボールに触れてないな」

妹「ボールを受けられる局面を何度も作ってるのに……」

副部長「そうだな。味方が素人集団でなければ、パスをもらえたはずだ」

妹「……これ以上、見てられません。あたしが後輩さんを助けます」

副部長「お前は出場を禁止されてるだろうが。顧問にバレたら総体予選に出れなくなるぞ」

妹「それでもいいです! このまま後輩さんが潰されるのは見てられませんよ!」

男「騒ぐなよ」

妹「だって!」

男「お前が今からコートにたっても勝敗は変わらねえよ」

妹「そんなことないもん! 後輩さんの力になるもん!」

男「馬鹿か。お前の力なんて必要ねえよ。後輩が自信満々に俺に待ってろって言ったんだ。それを信じろ」

後輩「……」ハァハァ

後輩姉「苦しそうね」

後輩「そうですね……さすがにちょっときついです」

後輩姉「私を振り切るために走り回っていたものね」

後輩「……もう5分になりますか」

後輩姉「ええ、そうよ。貴女がボールを触れていない時間はそんなになるのよ」

後輩「残念でしたね」

後輩姉「……なにが?」

後輩「3分で私の心を打ちのめすのではなかったのですか?」

後輩姉「へえ……まだ、勝つつもりなんだ」

後輩「当然です。先輩を待たせているんです。負けるわけにはいきません」

後輩姉「この状況をどうやって打開するつもり?」

後輩「動いて動いてとにかく動き回りますよ」

後輩姉「それは無策と一緒よ」

後輩「仕方ないじゃないですか。用意していた策はことごとく貴女に潰されたのですから。いま出来ることはそれしかありません」

後輩姉「……最後まで体力が持つといいわね」




後輩姉(……残り3分。まだ、ボールにすら触れていない)

A子「ご、ごめん……」

後輩「ドンマイです! 切り替えて守備をしましょう!」

後輩姉(あれだけ動き回っているのだから、相当苦しいはず。……なのにどうして)

後輩「さあ、貴女からボールを奪って速攻です」

後輩姉(この子は諦めないの……)

後輩姉「……もう諦めなさい。この状況を打開するのは無理よ」

後輩「なぜ?」

後輩姉「後半始まってから一度も触ってないのよ!?」

後輩「私と貴女の実力差を考えればあり得ない話ではないです」

後輩姉「そのヘロヘロな状態で何ができるの? 息は上がっていて、まとも走れていない。今の貴女では私に勝てないわよ!」

後輩「そんなのやってみないとわかりませんよ」

後輩姉「その根拠のない自信はどこからくるのよ!?」

後輩「先輩です。先輩が見守っていてくれている、待っていてくれる。だから、私は諦めません」

後輩「貴女は何に怯えているのですか? 試合を有利に進めているのはそちらですよ」

後輩姉「……怯える? この私が?」

後輩「そんな怯えた目で強がられても説得力ないですよ」

後輩姉「ふ、ふざけたこと言わないで!」

後輩「事実ですし」

後輩姉「そんなこと……あるはずないでしょ!」ダッ

後輩「……遅い」サッ

後輩姉「!」スッ

「……」ガゴン

後輩「リバウンド!」

A子「は、はい!」

後輩「ナイスキャッチです!」ダッ

A子「後輩さん!」スッ

後輩「……」パシッ

後輩姉「やらせない!」サッ

後輩「……」ニヤ

後輩姉「!?」ドン

ピィー

審判「アンスポーツマンライクファウル!」

後輩姉「なっ……!」

男「ちっ、いま速攻のチャンスだったのに」

妹「でも、これでフリースロー2本ゲットだよ!」

男「ドリブル中だったからスローインだろ?」

妹「パーソナルファウルならそうだけど、いまのは速攻を意図的にファウルで止めたっていうでアンスポだからフリースローになんの!」

男「つまり……」

妹「2点奪える大チャンスってことだよ!」

後輩姉「パーソナルファウルでしょ!?」

審判「い、いえ、明らかに速攻を潰しにいっていましたし……」

後輩姉「違うわよ! この子が止まったから接触したのよ!」

後輩「抗議してるとテクニカルファウル取られますよ」

後輩姉「こいつ……!」


副部長「……姉らしくないな」

男「そうか? あいつはあんなもんだろ」

妹「部長は、ワンマン速攻でも冷静に対応してファールなんてしないし、もしファールを取られたとしても抗議をするような人じゃないよ」

副部長「フリースローを2本決められたとしても、後輩はまだ2ゴール決めないといけない。慌てることなんてないはずなのに……」

男「まあ、姉妹だからな」

副部長「はあ……?」

男「虚勢を張ってるのは後輩だけじゃないってことさ」

今日はここまで

後輩「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。フリースローを2本とも決めたとしても、まだ3点残っているのですから」

後輩姉「勘違いしないで。私は貴女と違うの。動揺なんてしないし、怯えたりしない」

後輩「諦めない私に怯えて、それを指摘され動揺した人が何を言っているのですか」

後輩姉「……なにその妄想。つまらないわよ」

後輩「この試合を通してわかりました。私と貴女は似ています。自分を偽って、弱さを覆い隠そうとしている」

後輩「でも、私には弱さを受け入れてくれる人がいます。だからもう自分を偽ることはしません」

後輩姉「……」

後輩「では、フリースローを打たねばいけませんので」スタスタ

後輩姉(私たちは似てないよ)

後輩「6点目」スッ

「……」パサッ

妹「ナイシュー!」

後輩姉(貴女は他人に嫌われてしまうのが怖い。でも、私は他人にどう思われたって構わない)

後輩「これで7点」スッ

「……」パサッ

後輩姉(私が嫌われたくないのは、失いたくないのは……)

後輩「さあ、あと3点です」

後輩姉「……ねえ」

後輩「なんですか?」

後輩姉「私ね、好きな人がいるの。その人がいれば他人なんてどうでもいいの」

後輩「せ、先輩は渡しません!」

後輩姉「馬鹿ね。他人なんてどうでもいいって言ってるでしょ」

後輩「えっ……?」

後輩姉「私が好きなのは貴女よ。血のつながっている妹の貴女が愛おしくてたまらないの」

後輩姉「ずっと隠してきたことを話すことができてすっきりしたわ」

後輩「な、なにを言って……」

後輩姉「んじゃ、勝負を再開しようか」ダッ

B美「にゃ……?」

後輩姉「失礼」ベシッ

B美「ふぇぇ!?」

後輩姉「ついてこれるかな?」ダムダム

後輩「は、はやい……!」

後輩姉「よっと」シュ

「……」パサッ

後輩姉「ふぅ……」

後輩「……ディレイオフェンスはどうしたのですか?」

後輩姉「もうそういうのはいいかなって。せっかく、貴女とバスケできるんだもん。目一杯楽しみたいの」

後輩姉「残り2分間、妙な策は一切なし。純粋にバスケの実力で勝負よ」

後輩「わ、私は騙されません!」

後輩姉「なにが?」

後輩「貴女が私のことを好きだなんて……」

後輩姉「好きだよ。世界で一番好き。物心ついたときから妹一筋」

後輩「……っ!」

後輩姉「男くんとの仲を引き裂こうとしたのは、妹を奪われたくないから。今回の勝負だって、貴女を手に入れたいから画策したことなの」

後輩「う、うそ……」

後輩姉「貴女とバスケができて、しかも勝てば、あの冴えないチビ野郎と別れさせることができて一石二鳥! 素晴らしいでしょ?」

後輩「だ、騙されません! 騙されませんよ!」シュッ

「……」ガゴン

後輩「!?」


副部長「シュートフォームがバラバラだ。あれじゃあ入りっこない」

妹「さすがに疲れちゃったのかな……?」

男「……」

後輩姉「ほいっ」シュッ

「……」パサッ

後輩「……」

後輩姉「ほら、早く攻めなよ。時間なくなっちゃうよ」

後輩「……」ギロッ

後輩姉「あー、やっぱり怒ってる?」

後輩「当たり前でしょ、この愚姉! 告白するにしてもタイミングがあるでしょうよ!」

後輩姉「い、いやー、自分を偽ってるとか言われたからさあ……」

後輩「私に責任をおしつけないでください!」

後輩姉「でも、妹が可愛すぎるから好きになっちゃったわけだし、責任がないとは言えないよね」

後輩「馬鹿! 本当にどうしようもない馬鹿です!」

妹「な、なんか揉めてますね」

副部長「そうだな、なにを話してるのかは聞こえないが……」

妹「止めに入りますか?」

男「やめとけ。せっかく姉妹喧嘩してるんだから」

後輩「もういいです! 3点決めて、このくだらない賭けを終わらせます! 話はその後です!」

後輩姉「……話してくれるんだ」

後輩「ええ。試合が終わったら厳しく事情聴取しますから」

後輩姉「そっか。……よし、今後の二人の交際について話し合おうね!」

後輩「そんな話なんてしませんよ!」


男「……」フッ

妹「なに笑ってんの?」

男「良かったなと思ってさ」




試合終了後

妹「す、凄いよ! 部長のマークを振り切って3P決めちゃうなんて!」

後輩「いえ、あれは……」

男「お疲れ様」ポンポン

後輩「先輩……」

男「信じて待っててよかったよ」

後輩「……私、行かなくちゃいけないのです。一緒に来てもらえませんか?」

男「……」

部室
副部長「おい、姉!」

後輩姉「……なに? 負け犬に何か用?」

副部長「いや、お前、最後のは……」

後輩「シュートブロックできました、よね?」

後輩姉「なんで、貴女がここに……」

後輩「試合が終わったら事情聴取するって言いましたよ」

後輩姉「そうだけど……」

後輩「副部長。姉と二人にさせてもらえますか?」

副部長「……わかった。後は頼む」

後輩姉「……男くんはどうしたの?」

後輩「二人で話し合ってこい、って怒られました」

後輩姉「そう……」

後輩「どうして、シュートブロックしなかったのです」

後輩姉「告白したときに気づいたんだ。私はずっと、貴女のことが好きって伝えたかったんだってことに」

後輩姉「だからもう良かったんだ。想いも伝えられたし、きっぱり諦めようって思ったの」

後輩「……一方的に告白をしておいて、返事も聞かずに自己完結させないでくださいよ」

後輩姉「だ、だけど妹は男くんのことが……」

後輩「そうですよ。私は先輩が好きです。あの人がいない人生なんて考えられません」

後輩「でも……」

後輩「私は……お姉ちゃんのことも好きなのです」ポロポロ

後輩姉「妹……」

後輩「ずっとずっとお姉ちゃんが憧れだったの。バスケを始めたのも、お姉ちゃんとプレーしたかったから。お姉ちゃんと一緒に居たかったから」

後輩「なのに、お姉ちゃんは全国大会に行ったのに、私の代は県予選で負けちゃって……どうして私はお姉ちゃんみたいになれないんだろうって悩んで、苦しんで……お姉ちゃんへの劣等感が大きくなって……それでお姉ちゃんを避け始めたの……」

後輩姉「いいよ、いいんだよ。私だって、嫌なことたくさんした、酷いことたくさん言ったもん……」ギュ

後輩「お姉ちゃん、お姉ちゃん……」ギュウ

副部長「……なんとかなったみたいだな」

男「そうみたいだな」

副部長「いいのか、入らなくて? 抱き合ってるみたいだぞ?」

男「バーカ。長い間、仲違いしていた姉妹が仲直りできたんだ。水差すようなマネするかよ」

副部長「それもそうだな」


後輩姉「……ねえ、妹」

後輩「なんですか……?」

後輩姉「仲直りの印にキスしようよ」

後輩「え、えっ?」

後輩姉「大丈夫大丈夫。男くんにバレなきゃ平気だって」


男「ち、ちょっと待て!」バンッ

後輩「せ、先輩……?」

後輩姉「やっぱり盗み聞ぎしてたのね」

男「そうじゃねえよ! 心配だったから、外にいただけで……」

後輩姉「姉妹の会話を盗み聞きするとか悪趣味ー」

男「違うっての!」

後輩「……」ジー

男「な、なんだよ?」

後輩「通報しましょうか?」

男「後輩!?」

後輩「嘘ですよ。心配してくれてありがとうございます」

男「目がマジすぎるって……」

後輩姉「……幸せそうね」フフッ

後輩「幸せです!」ニコッ

後輩姉「見せつけてくれちゃってー」

後輩「そ、そんなつもりは……」

後輩姉「……」ポンポン

後輩「……?」

後輩姉「男くんに幸せにしてもらうのよ」

後輩「~~~~~~! もちろんです!」ギュウ

後輩姉「男くん、私の妹をよろしくね」

男「……ああ。大事にするよ」

今日はここまで。
次回の投下でラストになると思います。

いま後輩と付き合うと、後輩姉と副部長、更に妹がついてくる!ってCMでどう?

>>901
シスコン、俺っ子ヤンキー、ガチレズ。とんでもねえキャラ設定だな。
まともなのが男友しかいねえ……

えっ男友ってまともなの?驚愕の新事実だ…

男友は罵られて喜んでしまっていた気がしたんだが…しかもなんか短時間で姉妹のコンボで大変なコトになってた気がしたんだが…

幻覚だよな、うん
いくら男友でも、そんなコトはないはず

>>903
あ、あくまで相対評価だから……

>>904
必死にSを演じる後輩を見て悦んでる男、他人が苦しむ姿が大好物な後輩姉、ヤンデレ一歩手前の副部長、実の兄の彼女を寝取ろうと画策している妹……男友が一番まともなじゃないか?

日曜日 後輩宅前
男「……」

後輩「す、すみません! 服を選んでいたら遅くなってしまって……」

男「いいよ。そんなに待ってな……」

後輩「どうしたのですか、先輩? 顔真っ赤ですよ?」

男「あ、いや、その……」

後輩「つまり、私の服装がとても良い、ということですか?」

男「……そういうことです」

後輩「先輩って本当に初心ですよねー。そんなに顔真っ赤にするくらい照れちゃうなんて」

男「うるせ……」プイッ

後輩「ちゃんと見てくださいよ。先輩の為にコーディネートしたのですから」

男「……」チラッ

後輩「どうですかー?」ニコッ

男「……っ!」プイッ

後輩「もう! なんで、目を背けるのですか!」

男「全体的に露出度高すぎるんだよ!」

男「スカート短すぎ!」

後輩「そうですか?」

男「そうだよ! 学校だともっと長いだろ!」

後輩「そりゃ校則がありますし」

男「だとしても、今日は短すぎる! 他の男たちにジロジロ見られてもいいのか!?」

後輩「構いませんよ。そのリスクを理解した上でこのスカートを選択したのですから」

男「そこまでして穿く理由はなんだよ!?」

後輩「先輩に喜んでほしいからですけど」

男「……」

後輩「いい加減にしないと、本気で怒りますよ」

男「……ごめん。俺の為にオシャレしてくれたのにな」

後輩「そうですよ。先輩は黙って、私の生足を思う存分堪能すればいいのです」

男「お、お前なあ……!」

後輩「ちなみに、見るだけでは物足りない場合は触っていただいて構いませんからね」

男「そんなことできるわけないだろ!!」

後輩「据え膳食わぬは男の恥ですよ」

男「今日はそういうことしないからな!」

後輩「……どうしてですか」ウルウル

男「こ、後輩……?」

後輩「私に魅力がないからですよね。ごめんなさい……」グスッ

男「違う! そんなことないって! むしろ、魅力的すぎて理性を抑えるのに必死なくらいで……」

後輩「いやいや。先輩がヘタレ童貞で手を出す度胸がないってだけでしょう」

男「貴様……!」

後輩「怒ることないでしょう。事実なのですから」

男「……否定できないのが悲しい」

後輩「否定してもらえない私の方が悲しいですよ」

後輩「先輩がこの調子じゃ、私の初体験はしばらくお預けになりそうですね」

男「……焦ってすることでもないだろ」

後輩「んー。でも、先輩から何もされないっていうのは、正直、寂しいですよ」

男「この前、キスしたよな」

後輩「……っ」カァァ

男「なんで照れるんだよ!」

後輩「なんか思い出したら恥ずかしくなっちゃって……」

男「なーに言ってんだよ。後輩はもっと恥ずかしい状況でキスしてくるだろ」

後輩「そうですけど……でも、あれは不意打ちでしたし……」

男「いやいや。後輩だって毎回不意打ちでしてくるし」

後輩「それに……先輩がかっこよかったですし」

男「……っ」カァァ

後輩「『今度は間違ってないよな?』」ドヤァ

男「やめてくれ!」

後輩「ふっふっふ。私より優位に立とうなど千年早いのです」

男「あー、わかった。俺の負けだ」

後輩「でも、あの時のキスは本当に効果てきめんでしたよ。あれがあったからこそ、私は立ち直ることができたのです」

男「……なら、良かった」

後輩「本当に良かったです」ギュウ

男「おいおい。そろそろ行かないとバスに乗り遅れるぞ」

後輩「私、一度抱きついたら、しばらく離れられないのですよ」

男「わかるけど、バスの時間もあるし」

後輩「先輩が私を満足させてくれれば、離れることができるかもしれません」

男「満足、ねえ……」

後輩「さあ、どうします? 私はこのままでも構いませんよ?」

男「わかったよ。これでいいか?」チュッ

後輩「正解です! よくわかりましたね!」ギュウウウウウウ

男「ああ。後輩の遠回しなおねだりを理解できるのは俺だけだろうよ」ナデナデ

バス車内
男「姉とはうまくやってるか?」

後輩「はい。おかげさまで仲良くやってますよ」

男「学校ではよく喋ってるの見るけど、家ではどうなのかなって思ってたけど、心配なさそうだな」

後輩「大丈夫ですよー。昨日なんて、久しぶりに一緒にお風呂に入ったくらいですし」

男「!!!!??」

男「な、なんだよそれ!?」

後輩「昨日の総体予選で優勝したら、一緒にお風呂入る約束をしていたのです」

男「なんで、そんな約束しちゃうの!?」

後輩「姉妹なわけですし、一緒にお風呂に入るくらい普通じゃないですか」

男「普通の姉妹ならね!? でも、姉は後輩のことが好きなんだぞ!?」

後輩「その話は決着がついたでしょう」

男「そ、そうだけど……」

後輩「まったく。姉妹でお風呂に入って、洗いっこしただけです。先輩がやきもちを妬くような話ではありません」

男「洗いっこ!?」

後輩「先輩はめんどくさいなあ……」

男「だ、だって、俺だってしてないのに……」

後輩「先輩は私とお風呂に入るなんていつでもできるでしょう?」

男「そうなの!?」

後輩「当然でしょう。なんなら、今日にでも私の家で入ります?」

男「え、でも……」

後輩「まあ、先輩の心の準備が整ったら教えてください。私が身体の隅々まで丹念に洗ってあげますから」

男「……そ、そんなことさせられるかああああああ!!!!!!」

後輩「はあ……本当にめんどうな人だなあ……」

映画館
男「この映画でいいのか? ホラー映画もやってるけど」

後輩「ホラー映画を観なくても、いまは気兼ねなく甘えられますから」

男「一時期、ホラー映画に拘っていたのは、やっぱりそういう理由だったのか」

後輩「あの頃は何かしらの理由付けをしないと甘えることができませんでしたから」

男「そうか? 結構、甘えていたような気がするけどな」

後輩「なら、言い換えましょう。あの頃と違って、いつでも先輩と寝ることができますからね」

男「誤解を招く言い方はやめなさい」

後輩「あの話って本当なのですか? ホラー映画を観るたびに、妹さんが先輩のベットに潜り込んでくるというのは」

男「ああ。本当だよ」

後輩「妹さんって意外と甘えん坊ですよね」

男「末っ子だからな。そういう気質はあるかもしれん」

後輩「確かに末っ子は甘え上手って言いますよねー」

男「でも、後輩も末っ子だけど甘えるのが下手だよな。かなり遠回しだし」

後輩「いいのですよ。先輩には通じるのですから」

男「それもそうだな」スッ

後輩「……」

男「手繋ごうぜ」

後輩「……ずるいなあ」ギュ

???
男「……」

後輩「いろいろ種類があるのですねー」

男「なあ……」

後輩「んー? なんですかー? あ、これなんか、先輩に似合うのでは?」

男「この店で何を買うの?」

後輩「えっ? そんなの先輩の下着に決まってるじゃないですか」

男「意味わかんねえよ!」

後輩「この間のデートで私の下着を選んでくれたじゃないですか。だから、そのお返しに私が先輩の下着を選んであげますよ」

男「いいってそんなの!」

後輩「なにを恥ずかしがっているのですか。妻が旦那の下着を買うのは当然のことですよ?」

男「そ、そうだけど、まだ早いだろ!」

後輩「今のうちに慣れておくべきです。それに、私だけに自分好みの下着を着用させるなんて不公平です」

男「後輩が勝手に言い出したんだろ!?」

後輩「なんだかんだいって先輩もノリノリで選んだじゃないですか。フロントホックなら外したら胸がすぐ見えるんでしたっけ?」

男「そ、それは……」

後輩「しかも、透けるのが嫌だとかいって白の下着を強制しましたよね?」

男「……ぐぬぬ」

後輩「えっと、パンツの種類は、ブリーフにトランクス、それにボクサー、か。先輩はどの種類を履いているのですか?」

男「なんだっていいだろ……」

後輩「なるほど。ノーパンですか」

男「違うわ! ボクサーパンツだよ!」

後輩「ボクサーパンツですね。……クマさんが前面にプリントされてるこのパンツとかどうでしょう?」

男「……もういいよそれで」

後輩「でも、脱がしたときに、このクマさんが出てくるのか。笑っちゃいそうだな」

男「お前には恥じらいってものがないのかよ……」

男「わ、悪い」

後輩「どこに行っていたのですか?」

男「えっと……トイレに行っててさ」

後輩「もう。トイレに行くのなら会計が終わるまで待っててくださいよ。パンツを履き替えてもらおうと思ったのに」

男「はあ!?」

後輩「だって、私だけ先輩が選んだ下着を着けているのは不公平でしょう」

男「……えっ。今日、あの下着なの?」

後輩「ええ。お見せしましょうか?」

男「ば、馬鹿! こんな人前で見せるなんて……」

後輩「馬鹿は貴方です。二人っきりの場で見せるに決まっているでしょう」

本屋
男「後輩ってどんなの読むの?」

後輩「ジャンルとか作家関係なく、色々読みますよー。今は森見登美彦にハマってますね」

男「夜は短し歩けよ乙女の人?」

後輩「知っているのですか?」

男「アニメ映画化したじゃん? 小説は読んでないけど、その映画は観たからさ」

後輩「どうでした?」

男「ヒロインの口調が誰かさんに似てるなって思った」

後輩「誰でしょうねえ」

後輩「先輩は学園物が好きなのでしょう?」

男「ラノベの話?」

後輩「いえ。薄い本の話ですけど」

男「……は?」

後輩「妹さんが言ってました。先輩の部屋の本棚の奥には女子高生が滅茶苦茶にされる本がたくさんあるって」

男「な……!?」

後輩「しかも、ヒロインは貧乳ばかりだそうですね」

後輩「そう言われてみれば、ロリっ子の貧乳ヒロインは最高だ、なんて評価してましたよね」

男「ち、違うんだ!」

後輩「伺いましょう」

男「二次元はそういうのが好きなだけだって!」

後輩「ふむ。では、三次元は違うと?」

男「当然だ!」

後輩「その割には私に手を出してきませんよね!」

男「それはただ、俺がヘタレなだけだ!」

後輩「ドヤ顔で宣言することではありませんよ」

帰り道
後輩「楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますね」

男「そうだな……」

後輩「この時間がいつまでも続けばいいのに……」

男「……なあ、ちょっと寄り道していかないか?」

後輩「……! つ、ついに私のアピールが実を結びましたか!」

男「あ、いや、そういうことではなくてだな」

後輩「とりあえず、お母さんに今日は泊ってくるって電話しておきますね!」

男「少し寄るだけだっての!」

後輩「冗談ですよ。先輩にそんな根性があるとは思いませんしー」

男「……根性は正しく使うものなんだよ」

後輩「はいはい。で、どこに行くのです?」

男「俺と後輩の思い出の場所だよ」

中学校 校庭
後輩「なるほど。ここで二人寄り添って星を眺めようと?」

男「まあ、それもあるけど、始めるならここかなって」

後輩「何を始めるのです?」

男「俺と後輩が出会ったこの場所で、新しい関係を始めたいんだ」

男「……」スッ

後輩「えっ、これは……指輪ですか……?」

男「……うん。婚約指輪として受け取ってほしい」

後輩「……!」

男「プロポーズは俺からしてほしいって言ってただろ?」

後輩「……先輩は本当に狡いです……」

男「絶対、後輩を幸せにしてみせる。特別な能力もない俺が言っても説得力がないかもしれないけど」

男「必ず、君を幸せにするから……」




男「これからもずっと俺の傍に居てください!」

後輩「喜んで!」チュッ







END

以上です。
長い間、ありがとうございました。


色々放置しっぱなしな気がしなくもない…

>>934
気になるやつ教えてください

具体的じゃないけど何となくだから気にしなくっていいよ


妹とか後輩姉とか副部長とかのその後が気になる

>>936
なら、いいんだけど……

>>937
お、男友は!? 俺の一番好きなキャラなんだけど……

言っちゃうと球技大会に尺取り過ぎたんじゃないか?という気持ち
そもそも男友が一番好きだと言いながら後半出番なかったよね?

>>939
それはその通りだと思う。
球技大会が男と後輩の初回のデートより先に行う展開を予定してた。球技大会⇒デートで演技を解消するって順。諸々あって入れ替えたんだけど無理が出てきちゃって、話しが纏らなくなってしまった。
男友の出番減もそれが原因。当初の予定のままなら、彼が影の主役になるはずだった。

後半グタグタしすぎた気がする。投稿スピードだけども……
中途半端というか無理やりまとめた感が……

>>941
俺の実力不足と見通しの甘さが招いたことです。本当に申し訳ありませんでした。

上でもあったけど、初期の頃の変態トークを求められてたと思う。読んでくださる皆様が何を期待しているのか、どんな話を読みたいのかをもっと考えるべきだったと猛省しております……

まとめサイトのコメント欄で言われそうだけど「レズ設定とか必要だったのか?」と
無駄なところ多すぎたんじゃない?

>>944
おっしゃる通りです

あと途中で書くのやめますとか言う書き込みはなりすまし?それともガチでやめようと思った?
荒れていたから気になる

俺ガイルと変猫に影響受けすぎちゃう?

>>947
本気で思いました。なりすましではないです。

>>948
その二作品に引きずられたのは否定できない

途中で路線変更しすぎて別人が書いたように感じるけど……>>1だよね?
失礼だと思うけれど、もしも乗っ取りだったら正直に答えてほしい。完結したから誰も文句は言えない

>>950
1です。乗っ取りではないですね。
そうかもしれないと疑われても仕方がない出来ですが……

色々あったけどお疲れ。
とりあえずまとめサイトは見ないほうがいいよ。
コメントが荒れるかもしれないのが予想できてしまうから……

>>952
そうなるのは仕方ないです。
読んでくれた人の意見にはできるだけ目を通しておきたいです。たぶん、相当えげつないこと書かれると思うけど……

追い付いたら終わってた。
作者乙、次回作書くなら絶対読まして貰うわ。

よくぞ完結してくれた!

にしても、宣言通り最後の一回の投下にする為とは言え、ここまでのペースからすると、怒涛の如き勢いにも思える
とにかく、乙でした

>>954
次回作って今回の続き? それとも新作?
どんな形になるにせよ、この作品のリベンジは果たすつもりです。

>>955
最後くらい宣言通りにやりたいな、と。ただ駆け足で終わらせた感は否めない……

とりあえずまとめサイトで多かったのは「長い」

>>957
やっぱり、200くらいでまとめるべきだったか…… 

まとめサイトを見て、これだけは言っておきたいことが一つ。
童貞童貞って言われてるけど、それは違う。
童貞ではない。ちゃんと経験してる非処女ですわ。

>>959
ガチで女だとしても童貞臭する作品たということだろ
事実として認めてくれても「女が書いたとは思えない」とか言われそう

>>960
なるほど……
改善するしかないかあ……

そもそも証明できないのに「私は非処女です」と言っても今の世の中「嘘松乙」で終わるからな……
言わない方がいいよ。読者的にはどうでもいいと思っている人が多いと思うから

>>962
そうか。そうだよね。ごめんなさい。

ここでなら、冷静に話を聞けそうなので相談したいのだけど、このSSの初期のノリで新しく作品を作りたいんだけど、どうかな?

好きにしたらいいと思う
書くのも>>1、どうつくるのも>>1

>>964
今回みたいに読んでくれる人が求めるものとかけ離れたものは作りたくない。
ここのレスとかまとめサイトのコメントを参考に作ってみる。

俺はかけ離れてはいなかったが
そもそもすべての人の求めるものを書くなんて無理だと思うし
読みたい人は読むし、趣味に合わなければ読まなきゃいいしなんだから、外野を気にしすぎない方がいいんじゃないか

エタらず完結させてくれて嬉しい限り
個人的には長いss大好きだからまたこのくらい書いてもらってもモウマンタイ
次作も期待するよ乙

>>966
ありがとう。でも、今回はかなり自分善がりな作品で、読んでくれる人たちに失礼なことをしてしまったから。
球技大会編をラストに持ってきたせいで、後輩と姉の姉妹の確執がメインになってしまった。読んでる人たちが読みたかったのはそういうものではなかったのかなって。
まとめサイトで「序盤はそれなり、終盤はクソ」っていう評価を見たときにそう思った。

>>968
ありがとう。頑張ります。

954だが、どっちだとしても期待してるわ
書くのは>>1だしな

>>970
ありがとう。でも、希望だけでも教えてほしいな

乙でした。
個人的には長くて良かったよ~
途中エタらず完結させてくれてありがとう。

>>972
ありがとう。また、次回作も読んでいただけると幸いです。

次は男友の話を書く。機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

個人的には男友の話なんて興味ない
読者の需要が云々と言うなら、後輩の話書けや
スピンオフ書くんと違うんかい

そういえば、男友って、スペックも背景も全く謎の人物だよね
男を中心に描かれた世界で、割と男の近くにいるにもかかわらず、不自然な程に情報が不足しているという

最大の謎はやはり、何故、(倒錯した方向に)目覚めてしまったのか…は、こじらせたせいだろうから、何故、男の親友ポジションにいるのか…だな

>>975
後輩っていうキャラクターは気に入ってるから、男友の話を書き終わった後に男×後輩を書くよ。
だらだらとイチャイチャするだけの話になるけど。

>>976
う、うーん……正直、そこは考えてなかった。
情報が不足している点については、単純に構成を変えたことによって男友の登場回数が減ったから。申し訳ない……

新スレです。お願いします。
幼馴染「ずっと前は好きだったよ」 男「えっ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521194591/)

後輩と男の中学時代の話です。

後輩と男の中学時代の話です。

男「あれ? 胸が小さくなってない?」後輩「気のせいではないのですか」
男「あれ? 胸が小さくなってない?」後輩「気のせいではないのですか - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1535622680/)

宜しくお願いします。


!orz入れて書けばいいのに

>>981
それを入れると何かが変わるの?
あんまりよく分かんないから教えてほしい

SS速報が落ちている間にブログを作りました。

>>978のSSの連載もそうですが、このSSのリテイクもやってます(>>978の連載優先なのでなかなか進みが悪いですが……)
宜しくお願いします。
http://tmttewdok.livedoor.blog/archives/12532482.html

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年08月15日 (火) 00:05:03   ID: jHOjR4ns

あら書くのやめちまったのか楽しみにしてたんだが残念だな
まぁ本人が書きたくないというのだからその程度なのだろう
次の作品を楽しみにしているよ

2 :  SS好きの774さん   2017年10月26日 (木) 00:46:21   ID: RHrTgNbb

続きが非常に気になります。
素晴らしい物語だと思います。

3 :  SS好きの774さん   2017年12月28日 (木) 02:58:39   ID: wlLoJbgA

ゆっくりでいいから更新してね。
続きが見たい。

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