幼馴染「またフラれたの? 飽きないわね」 男「……うるせえな」 (37)

幼馴染「今回は誰に告白したの?」

男「お前には関係ないだろ」

幼馴染「いいじゃない、教えてくれたって。女さん? 委員長? それとも部長かしら?」

男「いま名前が挙がった人たちには、既にフラれてるよ!」

幼馴染「そうだったわね。ごめんなさい」


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男「絶対、わざとだろ」

幼馴染「違うわよ。それで誰に告白したの?」

男「……言いたくない」

幼馴染「そう。なら、これ以上は追及しないわ」

男「ほー……」

幼馴染「なによ?」

男「いや、こんな簡単に引き下がるとは思わなくてな」

幼馴染「だって、あなたから聞かなくとも、勝手に情報が入ってくるもの」

男「なんでだよ!?」

幼馴染「女子の情報網は侮らないことね」

男「い、いや、俺が告白したところを誰も目撃してないはずだ!」

幼馴染「そうね。放課後の教室なんて、誰も来ないものね」

男「なんで俺の告白スポット知ってるんだよ!」

幼馴染「だから、私の耳に入ってくるって言ってるでしょ、ロマンチストさん」

男「誰が流してんだ! 友か、友だろう!?」

幼馴染「いいえ。友くんは、『俺は知らない。つーか、そんなこと言いふらすなよ』って、あなたを擁護していたわ」

男「なんだよ、それ……」

幼馴染「今回、教室で待ち合わせすることを約束したとき、相手の子がニヤニヤしていなかった?」

男「にやにやっていうか、笑顔で返事してくれたけど……?」

幼馴染「『ワンパターンだな』」

男「!?」

幼馴染「笑顔の裏では、そう思っていたはずよ」


男「あの子から聞いたのか……?」

幼馴染「今回の相手は知らないわ」

男「なんだよ……。焦らせんなよ……」

幼馴染「前回の子から聞いたのよ」

男「う、嘘だろ!?」

幼馴染「本当よ。『よく2回もフラれた場所で告白できるよね。頭おかしいんじゃないの』と言っていたわ」

男「  」

幼馴染「女の子が告白されたことを黙っているわけないでしょう」

男「……みんな知ってるの?」

幼馴染「ええ。学年中に知れ渡ってるわよ。あなたの告白メソッドのすべてが」

男「死にたい……」

幼馴染「……」ベシッ

男「痛い! なんで叩くんだよ! 慰めろよ!」

幼馴染「いやよ。あなたを慰めると、簡単に恋に落ちるみたいだもの」

幼馴染「これに懲りて、もっと腰を据えて恋愛をすることね」

男「恋は鮮度が大事なんだよ……」

幼馴染「あら、私を口説くの?」

男「なんでそうなるんだよ!」

幼馴染「だって、二回目の告白の時に、その台詞を使用したんでしょう?」

男「台詞まで広まってるのかよ……」

幼馴染「大丈夫よ、おそらく台詞を覚えてるのは私しかいないから。言われた本人ですら、もう忘れているわ」

男「なんで、お前は覚えてんだよ……」

幼馴染「あなたを虐めるネタになりそうだったから」

男「お前なあ……」

幼馴染「私に言葉攻めされるの好きでしょう?」

男「……嫌いではない」

幼妹「おねーちゃん!」

幼馴染「妹?」

幼妹「あ、取り込み中?」

幼馴染「この雄豚は気にしないで」

男「誰が豚だ!」

幼妹「そうだよー。確かに豚っぽいけど、一応は直立二足歩行をしているから、人間に分類されるんだし、人権はあるんじゃないかな?」

幼馴染「フォローになってないわよ」

男「……」キュン

幼馴染「……私が言うのもなんだけど、調教されすぎよ、あなた」

幼馴染「それで、なんの用かしら?」

幼妹「えっとね、わたしの友だちがね、お姉ちゃんと同級生の人に告白されたんだって」

幼馴染「あら、そうなの?」

男「……」

幼妹「で、すごく気持ち悪かったから、お姉ちゃんになんとかしてほしいみたい。よくわかんないけど、お姉ちゃんはその人の担当なんでしょう?」

幼馴染「ええ、そうみたいね。非常に不本意なのだけれど」

幼馴染「今度は年下の子なのね……」

男「……ノーコメント」

幼馴染「いまさら隠せないわよ。別にあなたが誰に惚れてもいいわ。でも、周りに迷惑をかけないでほしいの」

男「……今まで俺が告白した人たちから、相談されてたのか?」

幼馴染「というよりも、お願いをされたわ」

男「お願い?」

幼馴染「ええ。はやくバストアップをして頂戴、とね」

男「あいつら、そんなことまで喋ってるのか!?」

幼馴染「むしろ、それが原因で周囲に言いふらしているんじゃないかしら」

男「違うんだ! 俺は、ただ……」

幼馴染「ただ『君の胸を愛してる』のよね」

男「そうだ! 俺はあいつらのおっぱいが好きなんだ!」

幼馴染「よくもまあ、そんな勝ち誇った顔で、馬鹿げたことを宣言できるわね」

男「女のお前にはわからないだろうが、おっぱいは男のロマンなんだよ」

幼馴染「そんなロマンは理解したくないわ」

男「それはお前が貧乳だからだ!」

幼馴染「……私が、この貧相な胸をコンプレックスに感じているから、女性の胸に興奮する世の男たちのロマンを理解したくないと言いたいのね?」

男「そうだ! 言い逃れできないだろ!」

幼馴染「……認めるわ。あなたの言うとおりだわ」

幼馴染「でも……」

男「なんだよ……」

幼馴染「私がコンプレックスに感じるようになったのは、あなたのせいよ」

男「は? なんで俺が……」

幼馴染「そうやって、誤魔化すのはお互いにやめましょう」

男「……」

幼馴染「私たちの意地の張り合いで、周囲に迷惑をかけるのは良くないもの」

幼馴染「君の胸を愛してる、なんてよく言ったものね」

男「うるせ……」

幼馴染「つまり、胸以外は興味がないんでしょう」

男「あんな不細工のどこに惚れればいいんだよ」

幼馴染「あなたが告白した子たちは、整っている部類に入るわよ」

男「……でも、お前より可愛くないし」

幼馴染「告白された人は気づいているのよ。あなたに利用されているだけなんだって」

男「だから、周りに言いふらして、憂さ晴らししてるのか……」

幼馴染「そうよ。だって、許せないじゃない。本当に好きだった人にそんなことされたら」

男「……」

幼馴染「あなたの犯した罪は重いわよ」

男「みんなに謝る……」

幼馴染「やめなさい。そんなことしても、火に油を注ぐだけだわ」

男「でも……」

幼馴染「大丈夫よ。そのうち、彼女たちはあなたのことなんか忘れて、他の男に恋をするのだから」

男「それはそれで悲しいな……」

幼馴染「女とはそういう生き物よ」

幼馴染「それに好きな人の力になれたのだから、彼女たちも報われるでしょう」

男「どういうことだよ……?」

幼馴染「私の負けってことよ」

男「そ、それって……!」

幼馴染「……いえ、やっぱり引き分けということにしましょう」プイッ

男「ええ……?」

男「引き分けってなんだよ……」

幼馴染「あなたの思惑通りになったけれど、最後のところは譲らないということよ」

男「……よくわかんないけど」

幼馴染「なら、私の勝ちね。もう一度、作戦を練り直しなさい」

男「……はあ?」

幼馴染「もう今日は帰ってくれないかしら……」

男「お前がちゃんと説明してくれればな」

幼馴染「いやよ。私が説明する義理はないわ」

男「自分が言い出したことだろ。責任もてよ」

幼馴染「……明日するから」

男「ダメだ」

幼馴染「お互い冷静になってから話しあったほうがいいじゃない……」

男「だからだよ。恋は鮮度が大事なんだからさ、感情が昂ってるときのほうが告白しやすい」

幼馴染「わ、わかっているんじゃない! 狡いわよ!」

男「そうだよ。俺は狡い。そうでもなけりゃ、好きな人の友達に告白して、好きな人を妬かせようなんて思いつかねえだろ」

幼馴染「あなたは本当に最低だわ……」

男「そのほうが効果的だと思ったんだから、仕方ねえだろ」

幼馴染「……そうね。実際に有効だったわ。私、あの子たちを殺してやりたいと思ったもの」

男「あはは。幼ちゃんらしいな」

幼馴染「このタイミングでその呼び方をするのね。本当に狡いわ……」

幼馴染「私の負けよ……。完敗だわ……」

男「良かったよ。苦労した甲斐があった」

幼馴染「……でも、あなたから告白して頂戴」

男「どうしてそこは譲らないの?」

幼馴染「……どうせ、それもわかっているんでしょう?」

男「いや、それは本当にわかんないんだよ。好きな人には自分から告白するって、昔から言ってたし」

幼馴染「……だって、あなたに告白されているあの子たちが羨ましくなってしまったんだもの」

男「お、おまえなあ……!」

幼馴染「だめ……?」

男「ダメっていうか、その……」

幼馴染「お願い……」

男「……明日にしよ?」

幼馴染「やだ! いまがいいの!」ギュウ

男「こんな時に素の幼ちゃんに戻るのは反則だよ……」

幼馴染「わたしが貧乳だからだめなの……?」

男「な、なに言ってんの!?」

幼馴染「巨乳じゃないから、『君の胸を愛してる』って言ってくれないんでしょ……?」

男「その台詞でいいのかよ……」

幼馴染「わたし、頑張ってバストアップするから。男ちゃん好みの胸のサイズにするから……」

幼馴染「だから、お願い……」

男「そうか、なら……って、そういう問題じゃねえよ」

男「いや、あの台詞はさ、あいつらだから言えたんだよ」

幼馴染「……ごめんなさい。やっぱり、わたしのこの胸が……」

男「そういうことじゃなくてさ、あいつらのいいところは胸しかねえし、というか胸しか記憶にないし」

幼馴染「わたしの胸を記憶に残すにはどうしたらいいの!?」

男「おーい」

男「落ち着け」ナデナデ

幼馴染「ん……」

男「幼ちゃんにどんなこと伝えればいいのかわからなくなっただけだよ。幼ちゃんの好きなところがたくさんあるから悩んじゃってさ」

幼馴染「……」

男「でも、シンプルな言葉でいいんだよね。そのほうがきっと伝わる」

幼馴染「……」

男「好きだよ、幼ちゃん。俺とずっと一緒にいてほしい」

幼馴染「仕方ないわね。付き合ってあげるわ」

男「貴様……!」

男「演技だったのか! 騙しやがったな!」

幼馴染「違うわよ。あなたが頭を撫でてくれたから、落ち着いたの」

男「なに、その人格入れ替わりのスイッチ」

幼馴染「あら、素の私のほうが好みなの? 昔は泣き虫な私を疎ましそうに扱っていたのに」

男「そうだっけ?」

幼馴染「そうよ。だから、泣かないように我慢したし、あなたに甘えないようにしたわ」

男「なるほど。それでいまみたいなツンツンキャラになったのか」

幼馴染「ええ。こうみえても努力してるのよ。あなたに釣り合うために」

男「まあでも、たまには甘えていいし、弱音吐いてもいいんだよ。俺だって、あの頃から成長したし」

幼馴染「……歪んだ成長だけれどね」

男「でも、そのおかげで付き合えることになったんだし、いいじゃん」

幼馴染「……そうかもしれないわね」

男「幼ちゃん、これからは気兼ねなく甘えてね。いつでも、ウエルカムだよ!」

幼馴染「甘えないわよ。私は強くなったの。むしろ、あなたが私に甘えるのではなくて?」

男「あはは。そうかもしれないね」








数か月後

男「また、なでなでしてほしいの? 飽きないね」

幼馴染「……うるさいわね」









END

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