佐藤心「バッセン行くぞ☆」 二宮飛鳥「打てる気がしない」 (24)

心「んー」

飛鳥「どうかしたの」

心「なーんかね……身体を動かしたい☆」

梨沙「毎日ダンスやってるじゃない」

心「それはなんていうか、仕事じゃん♪ はぁとは遊びで運動がしたいの♪」

心「プレッシャーやトレーナーのしごきから解放された、自由な心で!」

梨沙「佐藤ォ! 遊んでいる暇があったら身体を休めろォ!」

心「ぎょえっ!」

梨沙「ふふん、似てたでしょ。トレーナーの真似♪」

飛鳥「ベテトレさんの声はびくりとさせられるからね」

心「うるせー☆ たまには気分転換させろー!」

梨沙「パンケーキのお店に連れて行ってくれたら考えてやろう」

心「しょうがないなあ、連れてってやる♪」

飛鳥「いいのか……」

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心「はぁとも甘いもの好きだし☆ 飛鳥ちゃんもでしょ?」

飛鳥「まあ、そうだけど。というか、その流れだとボクもいくのかい」

心「もち☆ はぁとたち、一心同体だろ♪」

飛鳥「いつからそうなったんだ」

梨沙「むしろ、趣味も性格も結構バラバラじゃない?」

心「そういう些細なことは問題じゃないの!」

心「ただひとつ『トップアイドルを目指している』というつながりさえあれば……」キリッ

飛鳥「それで、いくならどこの店?」

梨沙「やっぱ原宿じゃない? パンケーキ有名だし」

心「おい、目背けんな☆」

数日後


梨沙「ちょっと! なんでパンケーキ食べに行くはずがバッティングセンターに来てるのよ!」

心「スイーツ食べる前にはちゃーんと運動してカロリー消費しとかないと♪」

心「それに……パンケーキのお店に連れて行ったら、身体動かす遊びしていいって話だったでしょ?」

梨沙「む、そういえばそうだった……しょうがないわね。お腹すかせるにはちょうどいいわ」

飛鳥「バッティングセンターか。来るのは初めてだ」

心「ちなみに、バットを握ったことは?」

飛鳥「なくはない。体育で少しだけ」

心「じゃあ、とりあえず一番軽いバットね♪ 梨沙ちゃんも」

梨沙「晴に誘われてサッカーは時々やるけど、野球はテレビで見るだけね」

飛鳥「テレビでは見るんだ」

梨沙「パパが野球観戦好きだから。アタシもちょっとは選手知ってるわよ! オオタニとか、ツツゴーとか!」

飛鳥「ボクでも知っているレベルの有名選手だね」

心「よーし! じゃあ早速バッターボックスへGO☆」

心「まずは一番遅い60キロのマシーンでやってみ☆」

飛鳥「………」フーー

飛鳥「構える」

梨沙「構えたわね」

心「飛鳥ちゃん飛鳥ちゃん。バットは真剣じゃないから正面に構えないんだよ?」

心「ていうか身体自体がバティスタ並に正面向いてるぞ♪」

飛鳥「難しいな……」

梨沙「バティスタって?」

心「もう日本にいたのは10年以上前かなあ。帰ったらパパに聞いてみ☆」

梨沙「パパ、知ってるの?」

心「パパさんの年代で野球好きならまず知ってるぞ、たぶん♪」

飛鳥「心さん。打ち方、これでいいかな」

心「ん? んー、もうちょい肘広げたほうがいいかも」

飛鳥「こう?」

心「そうそう、そんな感じ♪」

飛鳥「よし……では、マシンのスイッチを」

ぽちっ


マシーン「ががが」


びゅんっ!


飛鳥「ひぅっ」


ぼとっ


梨沙「60キロでも結構速いんだ……」

心「怖がらなくても大丈夫だぞー、身体のほうに飛んできたりしないから! バット出してけ☆」

飛鳥「……確かに」

飛鳥「よし」


びゅんっ!

びゅんっ!

びゅんっ!


飛鳥「っ!」


ブン!

ブン!

ブン!


心「胸のエンジン今♪ うなりをあげて伝説になる♪」

飛鳥「今はMidnightでなくMorningだ」

梨沙「よそ見してると次のボールが来るわよ」

飛鳥「結局、最後の1球が掠っただけだった」

心「ま、はじめはそんなもんだよ♪ これからこれから☆」

梨沙「じゃ、次アタシね! 運動神経いいから、飛鳥よりはきっと」



びゅん! びゅん! びゅん!


ぶん! ぶん! ぶん!


心「胸のエンジン今♪」

飛鳥「うなりをあげて伝説になる」

梨沙「なんで飛鳥まで歌ってるのよ!」

飛鳥「………いい曲だから?」

梨沙「理由になってない! いい曲だけど!」

心「さーて、じゃあはぁとが二人にお手本を見せてあげよう♪」


カキーン!

カキーン!

カキーン!


梨沙「うまいわね……」

飛鳥「鋭い当たりばかりだ」

心「ふっふっふ♪ これでも昔は長野のマリー・アントワネットと呼ばれたくらいだから☆」

飛鳥「マリー・アントワネットと野球は関係あるのだろうか」

心「細かいことは気にしなーい☆」

梨沙「ハートさん、もっと速い球が出るところいったほうがいいんじゃない?」

心「まあ、いつもはもう少しスピードの出るマシンでやってるんだけどね。でも今日はキミらのコーチもやらないと」

飛鳥「ボクらのことなら気にしなくてもいい。さっきまでで基本はつかんだから」

梨沙「そのうち慣れるわ。ヨユーよ、ヨユー!」

心「そう? でも」

飛鳥「梨沙の面倒はボクが見るさ」

梨沙「飛鳥の面倒はアタシが見るわ」

飛鳥「………」

梨沙「………」

飛鳥・梨沙「「逆だろう(でしょ)」」

心「ぷっ! あははっ……じゃ、お言葉に甘えて、はぁとは向こう行ってくるね♪」

梨沙「いってらっしゃい」

梨沙「と、送り出したはいいんだけど」


ぶんっ!


飛鳥「スイングは間違っていないはずなんだが」


ぶんっ!!


梨沙・飛鳥「当たらない……!」

梨沙「何がいけないのかしら……」



??「もうちょっとバットを短く持ってみたらどうや」

梨沙「え?」

飛鳥「?」

??「あとは、バッターボックスの後ろのほうに立って……最後までボールから目を切らないことやな」

??「まあ、ワイの現役時代は最後までバット短く持たんかったけど」

梨沙「いや、あの。誰?」

飛鳥(中年の男性……でも、ただならぬオーラを感じる)

??「まあまあ、細かいことは気にせんでええで」

??「これでも最近は野球教室でちびっ子たちにいろいろ教えとるんや。コーチには自信あるで?」

15分後


かきーん!


梨沙「あっ」


かきーんっ!


飛鳥「前に飛んだ……」


??「ふたりとも、ええスイングやったで」

梨沙「ありがと! オジサンのおかげで打てるようになったわ!」

??「はは、オジサンか。ワイも年取ったなあ……もう40越えとるし」

飛鳥「………」

梨沙「飛鳥、どうかした?」

飛鳥「いや……どこかで見たことがあるような」

??「昔はプロの球団でブイブイ言わせとったからな」

梨沙「プロだったの!? じゃあ、OBってやつ? いつ引退したの?」

??「いや、まだ引退はせんで」

飛鳥「え?」

??「チームをクビになって、プロの球団には拾われんかったけど、まだまだやれることがぎょうさんあるからな。やりきるまでは生涯現役や」

飛鳥「……あくまで、現役にしがみつく、と」

飛鳥「なぜ……と、聞いてもいいですか」

??「なぜ、か……そうやな」

??「何個か思い当たるものはあるけど……ワイにも、ようわからんのかもしれんな」

梨沙「よくわからないのに続けるの?」

??「不思議か? ま、キミらにもそのうちわかる日が来るかもしれんで」ハハハ

飛鳥「………」

飛鳥(いつか、年月が過ぎていき……ボクにも、限界が訪れるのかもしれない)

飛鳥(その時、ボクはさっぱりアイドルを諦めるのだろうか。それとも、この人のように――)

??「ま、ひとつ言えることがあるとすれば」

梨沙「すれば?」

??「ワイは、野球が好きってことやな」

梨沙「そりゃそうよね。じゃないとクビになってまで続けないわ」

??「ハハ、はっきり言うなぁ」

飛鳥「………」

飛鳥「好き、か」

??「ほな、ワイはそろそろ行くわ」

梨沙「もう行くの? 何か用事?」

??「東京ドームにな。後輩のクライマックス……初の晴れ舞台を見にいくんや」

梨沙「ふーん」

飛鳥「いい結果だといいですね」

??「そうやな。じゃ、ふたりともホームラン目指して頑張れよ」

梨沙「すぐに打ってやるわ!」

??「その意気や」

その後


心「たっだいまー☆ かっとばしてきたぞー!」

梨沙「あ、おかえり」

飛鳥「ボクたちもそれなりに打てるようになってきたよ」

心「おお、すごいね♪ じゃあ、ぼちぼちパンケーキ食べに行く?」

梨沙「待ってたわ!」

飛鳥「お腹の空き具合もちょうどいいか」

心「お店はここからそんなに遠くないから……ところで、梨沙ちゃんが持ってるそのボールは?」

梨沙「あ、これ? さっき、元プロのオジサンがサインしてくれたの」

心「元プロ?」

飛鳥「生涯現役で、今は野球教室を開いているらしい」

心「……ちょっとそのサイン見せて」

梨沙「うん? はい」

心「………」

心「あ、ああ」

飛鳥「心さん?」

心「も、猛牛戦士だ……!! 会いたかった……!!」

梨沙「そんなに有名な選手なの?」

心「有名なんてもんじゃ……もう帰っちゃったの!?」

梨沙「うん。東京ドームに行くって」

心「あ~~~、なんて間が悪いの私……」

飛鳥「一人称が変わるほどのショックらしい」

心「こうなったらパンケーキやけ食いだ! いくぞちびっ子!!」

梨沙「ちびっ子言うなっ!」

飛鳥「………」

飛鳥(考えなければならないことは、たくさんある。そんな気がする)

飛鳥(けれど、今は)


心「最大サイズひとりで食べてやるからな☆」フンス!

梨沙「言っておくけど、残しちゃダメよ。出された料理は全部食べるのがマナーなんだから」

心「わかってるって♪」

梨沙「飛鳥もよっ」


飛鳥「………」

飛鳥「あぁ。理解っているさ」フッ


飛鳥(今は、まだ見ぬ店のパンケーキに思いを馳せるとしよう)




おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます

初のCS進出おめでとうございます

シリーズ前作:佐藤心「らめええええええええん♡」

その他過去作
相葉夕美「花言葉」
モバP「なっちゃんと夏の事務所」
モバP「威勢がいいと異性にモテるらしい?」
などもよろしくお願いします

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