【モバマス】 シンデレラの夜食 (25)

ここは都内の某所にある、美城プロダクション所有の女子寮。
 日々研鑽し、高みを目指すアイドルが、心と体を休ませる憩いの場所。
 今日も可憐なシンデレラたちは、気の向くままに時をすごす・・・・・・


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~奏ルーム~

 
 午後11時、学生が主な住人となっているこの女子寮では、大半が眠りについているこの時間
もうそろそろ自分も床に就こうかしら? と考えていた速水奏は、友人、塩見周子の口から
アイドルらしからぬ、意識の低い言葉を聞いた。

周子「あかん、めっちゃおなかすいたん」

奏「ちょっと……もう夜中よ?明日もあるのだし、いくら太らないからって流石に
  どうかと思うわ。 シンデレラに言うのもおかしい話だけれど、生活バランスの崩れは
  美しさの時計の針を進めてしまうの。 知っているでしょう?」

周子「いややわー。 美しいだなんてそんな褒めんといて~」

奏「そうやって話をはぐらかす癖、あまり良くないと思うわ」

周子「それはお互いさま。 まー、ちょこっとつまむだけやし。 後はお水飲んでごまかすから、ね?」

奏「……ほどほどにね。 周子ちゃん」

周子「はいはーい! 奏ちゃんオヤスミ~」

ガチャ パタン

奏「…………はぁ」

周子「さてさて、奏ママのお許しをもらったしー」

周子(がっつりお腹にたまるものでもたーべよっと)

周子(ピザポテト……ドーナツ……)


???「……」ガサゴソ


周子「いっそコンビニにでも……って、んー?」


???「我が魔翌力の糧と成りえるものは……むぅ、トマト……トマトかぁ……」


周子「おやー? 蘭子ちゃんはなーにしてるのかな~~?」

蘭子「ぴぃぁあ! な、なにごとか!?」

周子「あはは! 良いリアクションどーもー。蘭子ちゃんもおなかすいたん?」

蘭子「ぅう? ……はっ! その声は我が友周子!」

周子「シューコちゃんは虎にされてしまったかー。 ガオー」ガオー

蘭子「がおー」ガオー

周子「それで、蘭子ちゃんもお夜食を探しに来たのかな?」

蘭子「おお、そうであった。 来る祝宴に向けての儀式により、我が魔翌力はすでに枯渇している」

周子「あー、そろそろライブだからねー」

蘭子「うむ。 しかし、デーメーテールの加護厚き聖櫃には既に厄災しか残されておらぬ……」

周子「生トマト食べられないかー」

蘭子「……甘いきゅうりみたいな味がするの」

周子「そっかー。 あっ、ソーセージはっけーん」

蘭子「それは明日の朝ごはんゆえ、地獄の業火に焼かれることになろうぞ」

周子「あー……それはおっかないなぁ……あっ」

蘭子「む、天啓を授かったか?」

周子「確かここらへんに……ん……あった、じゃーん冷凍ピザ~」

蘭子「おお~~~! このような至宝が隠されていようとは!妖狐の幻術侮りがたし!」

周子「いやーすっかり忘れとったわ。 確か、一昨日コストコに行ったときに買ってたんだよねー」

蘭子「褒めて遣わす! 早急に復活の儀を執り行おうではないか!」

周子「まずはオーブンに入れる鉄板と引っ掛け棒さがそっか」

蘭子「うむ!」

周子「さて、準備完了。あとは焼くだけなんだけどー……使い方わかる?」

蘭子「ううん」フルフル

周子「あたし普段は゛あたため゛しか使わないんだよね。よく見たらめっちゃスイッチあるやん……」

蘭子「スチーム……予熱……解凍? わ、わからぬ。特にこの突起など何の為に……」グッグッ

小梅「そ、それは……自動メニューとか、お、温度を……変えられるダイヤル、だよ……」

周子「あーこれ回すやつかー」

小梅「そ、そう……これで200℃、だったかな……えい、スタート……」ピッピッ

蘭子「ほー、後は再誕の時を待つの……み……」


「「「………………」」」


小梅「…………ばぁ」

フギャアアアアアアア!! 
ウワアアアアア!!

~10分後~

小梅「えへぇ……ふ、二人とも……猫みたいな目になってて……か、かわいかった……」

周子「あー……びっくりしたよもー……」

蘭子「流石は死に魅入られしもの。 フフフ……我が心結界をこうも容易く破るとは」

周子「めっちゃ震えてるやん」

小梅「まだ、膝……がくがくしてるね……」

蘭子「もー!」

小梅「えへへ……」

周子「おーおー良い笑顔しちゃってー」

チーン!

周子「よーし、お皿とナイフの用意して、ピザとりにいこかー」

小梅「わぁ……!」

蘭子「誕生の福音!」

周子「意識したらかなりイイ匂いしとるなぁ」

小梅「は、はやく……!出そう……!」ソワソワ

蘭子「冷めないうちに……!」ソワソワ

周子「大丈夫やって。そいじゃーごたいめーん」

パタン

蘭子「おお、燃え盛るマグマにて鍛えられし黄金の……おいしそう……」グー

小梅「ト、トマトとチーズが……とろとろしてる……」クゥ

周子「うはぁ、これはあかん。部屋中がおいしそーな匂いでいっぱいだよ」

蘭子「スー……ハー……」ウットリ

小梅「ホ、ホラー映画と同じくらい楽しみ……し、周子さん、はやく…………あれ……?」 



周子「もう切ったからはよおいでー」



小梅「も、もう準備万端……」

蘭子「い、いつのまに……」



周子「ほらー冷めちゃうよー」



蘭子小梅「「はーい」」テテテ

周子「うっかり八等分に切っちゃったけど、小梅ちゃんは本当に二切れでええの?」

小梅「う、うん……それでも多いくらい……」

蘭子「我が友小梅は、其の器を魔翌力で満たした方がよい。 痩せ過ぎてて……ちょっと心配かな……」

周子「蘭子ちゃんも人のこと言えないくらい細いけどね……っと取り分け終了ー」

小梅「あ、ありがとう……ございます……」

蘭子「感謝の極み!」

周子「どーもー。それじゃあいただきますの前に」

小梅「?」 蘭子「?」

周子「『周子おねーさん大好きー』って言ってみ?」

小梅「な、なんで……!?」 蘭子「ぇえ!?」

周子「いやー、なんかそういう気分? まーお夜食代だと思って、ね!」

蘭子「むぅ……致し方なし」

小梅「わ、わたしも……いい……よ……」

蘭子「しゅ、周子おねえちゃん、だ、大好き……!」ニコ
小梅「しゅーこおねーちゃん……だいすきー……」ニヘェ


周子「ん、おお……なんかええなーこれ。いっぱいおたべー」

蘭子「いただきまーす!んー!」モグモグ

小梅「い、いただきます……」ムグムグ

周子「んーっ、凄くいい気分。 それじゃああたしも」

奏「あら、私も周子お姉ちゃんのこと大好きよ?」ギュッ

周子「!? あー…………か、かなでちゃん……? なんでここにいるん?
   それにお姉ちゃんて、奏ちゃんの方が年上じゃなかったっけ……」

奏「」イラッ

周子(あ、なんか踏んでもた)

奏「ふぅん……? フロア中にピザの匂いをさせておいてよく言ったものね」

周子「いやー……案外近くだと気が付かないと言いますか……ね?」

奏「それに」

周子「そ、それに……?」

奏「このピザ買ったの、私なのよね」

周子「……………………あっ」

奏「思い出したかしら? ついでに、私はまだ17歳って事も思い出してくれると嬉しいわ」ニッコリ

周子「あ、あのー……ご、ごめんね? あっほら! 明日同じの買ってくるから! コストコで! 」

奏「もぅ……仕様がないわね。 許してあげるから、お皿もう一枚持ってきて? あとそこの二人」

  蘭子「!?」ビクッ 小梅「!?」ガタンッ

奏「隠れてなくても怒って……随分と斬新な隠れ方ね……」

  蘭子←丸まって気配を消しているつもり  小梅←椅子の下で死んだふり

周子「奏ちゃーん、見て見てちょっと良いお皿あったよー。 伊万里焼やってー」

奏(まったく……退屈する暇がないわね)

奏「普通ので良いのに……さ、せっかく焼いたのだし、美味しいうちに食べちゃいましょ?」

蘭子「うむ!」

小梅「み、みんな……二枚になったね……」

周子「それじゃああらためて」



     「「「「いただきます!」」」」

ここは都内の某所にある、美城プロダクション所有の女子寮
 青春を謳歌する乙女たちが心を通わせあう憩いの場所
 団欒の声と穏やかな明かり、今日も夜は過ぎていく・・・・・・

おわり

初投稿です。
もし読んでくれた方がいらっしゃるのなら、忌憚のない感想をいただけると嬉しいです。

あっあっ、すごくうれしい
ありがとう……ありがとう……

ありがとう
次からsaga入れます

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