【モバマスSS】 挑戦!イチゴパスタチャレンジ (24)

「ふう…暑い暑い」

外回りから帰還、汗ばんだ身体が冷房によって冷却されていくのに文明の利器の有り難さを感じる

ジャケットをかけようとデスクに向かった所、机の上にそいつが置かれていた

「ん?何だこれ…?」

見た目はパスタだが色が違う。紅いぞ

これはいわゆるイチゴパスタというやつではなかろうか?噂には聞いていたが現物は初めて見る

丁寧にラップをかけられしっかりフォークも用意され、おまけに置き手紙まであるではないか


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1467036188

『おつかれ様ですプロデューサーさん。つかれた時には甘いモノがいいと聞きました。ぜひどうぞ』

イチゴ柄のメモに書かれた文の末尾には橘の文字

つまりこれはありすの手作りという事だ

そもそもコレを作りそうなアイドルは俺の知る限りありすくらいだがな

手間暇かけたのだろうと思うと胸の奥が熱くなった

それはそれとして――

さてどうするか。俺は机の前でしばし思案する

確かに甘いモノは好きだ。パスタもよく食べる。だがこれは予想の範囲外だった

好物どうしを合わせると2倍美味しいと言うのはあくまで理論値であり、実際そう上手くはいかないもの

直感がささやく。(悪いことは言わない。やめておけ)と

だが俺の好奇心がそれら懸念を上回った。何事もチャレンジ、ぜひ食べてみようではないか

それにありすの手作りだし

椅子に座った俺は改めてそいつと向き合ってみる


天然由来、着色料一切無しの淡いピンク色をしたそいつは説明不要の存在感を放っていた

火山の如く皿にそびえ立ち、頂上の生クリームはさながら雲海のよう

噴火口に当たる場所にはブルーベリーと半切りのイチゴ、山の周囲にもハート型のイチゴ


これぞまさにイチゴパスタ。言うなればイチゴパスタの王、キングオブイチゴパスタだ

さてお味はいかがなものだろうか、チュルリと一口




俺はそっとフォークを置いた




不味くはないし、決して食べれない訳でもない。だが……

二口目の手は動かなかった

このまま食べたとウソをついて捨てるなり何なりするのは簡単だろう

しかしそれはプロデューサーとしての前に、まず人として品性を疑うレベルだ

俺は決してありすの気持ちを無駄にしたくはない。何かいい案はないものか




「という訳で加蓮、一緒に考えよう」


「何を?」

「実はかくかくしかじかという訳で」

「ははあ成る程、そういう事ね」


彼女は北条加蓮、俺の担当アイドルの一人だ。

偶然仕事終わりで暇してた所だったので千枝…知恵を借りる事にする


「相談料は新発売のバーガーセットでいいか?」

「え、いいの!?やったぁ!」


交渉成立である。

さて対策を立てる前に、とりあえず加蓮にも試しに食べて貰おう


「どうだ?」

「………」


彼女が無言でフォークを置いた所で楽しい会議の始まりだ

「そう言えばさ、俺が小学生の頃は給食で苦手な物出てきたら全部牛乳で流し込んでたな」

「へぇー。給食かぁ…考えてみたらまともに食べた記憶、殆どないや」


思わぬ地雷を踏んでしまったところで〈飲み物で流し込もう作戦〉を決行すべく給湯室へ移動する


冷蔵庫からいくつか飲み物を持ってくるがダメだった

牛乳は合わない、オレンジジュースは味覚が狂いそうになる、麦茶は言わずもがな

ならばと戸棚を探すこと数分、目当ての紅茶の茶葉を見つけた

桃華が持ってきてくれた物で、一杯で数千円はするらしい

我々庶民には高すぎて良くわからないから戸棚に眠らせていたのだが、今こそ使うべきだろう


「わぁ…いい香り…!」


淹れた途端、事務所がまるでバラ園になったような感覚だ。加蓮もうっとりしながら淹れた紅茶を見つめている

これなら行ける!



「プロデューサー、紅茶が負けちゃうんだけど…」


バラ園は枯れ、代わりにイチゴ畑が口の中に出来た

「焼きそばパンってあるよな。つまりそういう事だ」

「共通点が麺類ってところしか無いんだけど」


サンドイッチにホットドック、パンで挟む事によってそのままより食べやすくなる

ならば焼きそばパンの要領でイチゴパスタパンを作れば解決ではないか?

名づけて〈パスタサンド作戦〉。そうと決まれば早速パンの調達だ

「みちるちゃんからパン貰ってきたよー」

「でかした加蓮!」


偶然みちるが事務所に居て助かった


「うちのプロダクション、人材豊富だよね」

「まあ俺が選んだアイドル達だしな」


焼きそばパンは俺の青春の味、次こそいける!


「パンとイチゴパスタは一緒なのに別々に食べてるみたい…」


イチゴパスタが主張しすぎてまるで水と油のようだ。これは合わない

大抵の物には合うパンでさえ敵わないとはイチゴパスタ、恐るべし


みちるが様子を見に来たので少し食べてもらうことにする

あいつがパンを食べて顔をしかめるなんて場面、今後二度と見れないだろうな

その後もナターリアに寿司にして貰ったりのり子のドーナツに練り込んだりしたが尽く失敗

かな子に至っては見つけるなり喜々とした顔でやって来たが、一口食べた瞬間涙を零しながら帰って行ってしまった

『訓練が足りない、悔しい』とか言ってたが…どういう意味だろう?


「結局さ、普通に食べるのが一番いいと思う」

「…そうだな」

加蓮の言う通りだ。他の食材で誤魔化そうというのが間違いだった

これは言わば俺とイチゴパスタの真剣勝負、このデスクは決戦のリングなのだ


スタドリを飲んで着席、もう一度フォークを手に取る

ゴングは鳴った。もう俺は逃げない、決着をつけるぞ!

それからのプロデューサーさん、ほんとに凄かったんだよ

どれだけ咽てもどれだけ嗚咽しても黙々と食べ続けてさ。私…感動しちゃった

ああ、これが一度やると決めた漢の執念なんだってね。顔は真っ青だったけど


「はぁ…はぁ…やった…勝ったぞ…」

「うん…!勝ったんだよプロデューサー!とりあえず水持ってくるね!」


私が給湯室に入った頃かな、ありすちゃんが事務所に来たんだ

「ただいま帰りました」


そのまま奥に入ってってさ、まあプロデューサーさんに会いに行くじゃん?

プロデューサーって年少組のアイドルの前では自分の弱い所見せないんだよ。余計な心配させたくないからだって

だからさっきまでグッタリしてたのに一瞬でいつものプロデューサーに戻ったんだ

凄いよね、さすが私達のプロデューサーだよ

「ああ、ありすか、お帰り」

「はい、ただいまですプロデューサーさん。…あっ、そのお皿ってもしかして」


まあ当然机の上の皿に気付くわけで、その時のありすちゃんの顔は忘れられないなあ


「プロデューサーさん、ちゃんと全部食べてくれたんですね…!」

もう満面の笑みでさ、見たこと無かったよありすちゃんのあんな笑顔。ほんと可愛い


「お、おう…う、美味かったぞ」


プロデューサーは複雑な顔してたね。嬉しいと苦しいが混じったような感じ?

でもありすちゃんの期待に答えられたんだから結果オーライってやつだね





「じゃあ明日もまた作って来ますね」




プロデューサー、3日間仕事休んだよ




      ~完~

企画投稿用に書きました

デレマスカフェのイチゴパスタは本家と比べるとまだ美味しいらしいです

恐ろしいですね

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