プリンツ・オイゲン「艦娘社会復帰支援センター?」(333)

注意

オリ主が出ますオリ主無双です
そりゃもう

最初に注意書きがあるSSは大体クソ

オイゲン「あのぉ、すみません・・・」

龍驤「はいな、どちらさん?」

オイゲン「ここって、その・・・」

龍驤「ここ?せや。艦娘社会復帰支援センターや。ってことは元艦娘さん?」

オイゲン「はい・・・」

龍驤「ほーん、珍しい。外国の艦娘さんかいな」

龍驤「一応説明しとくわ。ここは元艦娘を人間社会に復帰させる手伝いをする場所や」

龍驤「社会に出たことないのに復帰っちぅんはちとおかしい気もするけど、まぁ細かいことはえぇわ」

オイゲン「人間、社会・・・」

龍驤「ちょっと待ってな。所長呼ぶわ。所長!所長ー!」

所長「・・・うるさいな、聞こえてるよ。お前の声は頭に響くんだよ」

所長「んで、えーっと?」

オイゲン「オイゲンです。プリンツ・オイゲン。ドイツの重巡で・・・」

所長「あぁ、連絡は貰ってる。オイゲンさんね」

所長「うちに重巡の、それもドイツの艦娘が来るのは初めてだな」

龍驤「茶ぁ淹れたったでー。ほい」

オイゲン「・・・」

龍驤「あぁ、しもた。ドイツさんには合わんかったか」

オイゲン「あ、いえ、いただきます・・・」

龍驤「言葉うまいなぁ。ペラペラやんか」

オイゲン「・・・はい、この国に配備されると聞いて、勉強を・・・」

龍驤「そんで解体か」

オイゲン「はい・・・」

オイゲン「私、あの鎮守府では主力の一人なんだと思っていました。つい昨日までは」

所長「記録で見たけどずいぶん出撃してるね。なんでまた急に」

オイゲン「最近出撃ないなって思ってたら、急にアトミラールさんに呼ばれて・・・」

オイゲン「武器を全て外されて、艤装は解体されました・・・」

龍驤「そんでここに案内されたっちぅ訳かいな」

オイゲン「はい・・・」

所長「ドイツの重巡って貴重なんじゃないのか?よくもまぁそんなことしたもんだ」

オイゲン「仲間にも挨拶できず、放り出されて・・・、ビスマルク姉さまにも会えないまま・・・」

龍驤「おぅおぅ、泣きぃや。胸貸したるさかい」

オイゲン「うっ、うっ、うぇぇぇん・・・」

長「さて、オイゲンさん。君には二つの道がある」

所長「一つめは母国に帰ること。当面の資金は国から出るからそれは心配ない」

所長「二つめ、この国に留まり、ここで普通の女の子として暮らしていくこと」

所長「個人的には・・・、二つめをお勧めするけどね」

オイゲン「どうしてですか?」

所長「はっきり言うよ。君の母国ドイツは、元艦娘の受け入れに非常に消極的なんだ」

龍驤「難民は喜んで受け入れるのにな。けったいな話やで」

オイゲン「そんな・・・、どうして・・・」

所長「というか、ドイツはそもそも艦娘自体をよく思っていない」

オイゲン「えっ・・・!?」

所長「まぁあの国にはあの国の事情があるんだろう。昔のことを思い出させる君たちの存在は、面白くないんだろうね」

オイゲン「そんな・・・!私、だって、ドイツのために!あの国のためにここまで来たのに!」

所長「これを見てくれ。ドイツに帰った元艦娘は・・・一人もいないんだ」

所長「それどころか、ドイツの艦娘がここに来てるってことがそもそも異常事態なんだよ」

所長「前例がないんだ。うちでは君が初のケースだ」

龍驤「茶、淹れなおしてくるわ・・・」

オイゲン「そんな・・・」

所長「こういったところに来るのは、いつもは駆逐艦の子たちなんだ」

所長「あと次に多いのが軽巡。たまに重巡も来るけど」

龍驤「駆逐、軽巡は簡単や。あの子らは見た目も幼い。小学生か中学生くらいにしか見えへん」

龍驤「せやから元艦娘の受け入れを表明してくれてる学校に入れて終いや」

所長「ちゃんと生活出来ているか、調査員が抜き打ちで見に行くけどね」

所長「本人と直接面会して、相談事なんかも受けてる」

所長「重巡はちょっと難しい。高校生くらいの見た目の子もいれば、どう見ても大人の艦娘もいる」

龍驤「那智とかそうやったなぁ。あの子は大学行ったんやっけ?」

オイゲン「私は、どうすれば・・・」

所長「今日は疲れたろう。色んなことが一気に起きて」

オイゲン「はい・・・」

所長「しばらくゆっくりしてくといいよ。ここは宿泊施設もあるから」

龍驤「ちょうど部屋余っとるしな」

所長「ゆっくり考えなさい。誰も君を急かさないから」

龍驤「ほな案内したるわ。こっちやでー」

所長「漣!漣!!」

漣「はいはい、なんですかご主人様」

所長「それを止めろ。俺が言わせてるみたいだろ」

漣「気にすんな」

所長「今日から新しい子が入る。食堂にいつもより多く飯を頼んどいてくれ」

漣「ほいさっさ!」

所長「あとお前、いい加減に学校決めろ」

漣「漣がいなくなっちゃったら、ご主人様死んじゃうじゃないですか」

所長「死ぬか、アホ」

龍驤「あーっ!しもた!オイゲンさん布団でも寝られるんか!?」

オイゲン「えっ?フトゥン?」

龍驤「布団や!布団。寝具。寝る時の」

オイゲン「・・・どうでしょうか。分かりません」

龍驤「ベッドなんて高尚なもんないで、ここ。まぁ慣れてもらうしかないなぁ」

オイゲン「はぁ・・・」

初雪「んぁ?だぁれぇ?」

龍驤「初雪ぃ!お前またこないな時間まで寝とったんかいワレ!」

初雪「やぁだ、大きい声出さないでよ・・・」

龍驤「しかもお前、くっさ!臭いわ!風呂入れや!」

初雪「・・・やだ。めんどい」

龍驤「こんガキャァほんま・・・!」

龍驤「えぇか!今夜オイゲンさんと入れ!新しい子やから、風呂の使い方教えたれ!」

初雪「オイゲン?あぁ、ガイジンさんだぁ」

オイゲン「プリンツ・オイゲンです。しばらくここでお世話になります・・・」

初雪「でも、ガイジンさんってみんなでお風呂に入るの嫌がるって聞いたよ?」

龍驤「デタラメ言いなや!」

初雪「・・・ほんとだもん。前の鎮守府でそうだったもん・・・」

龍驤「えっ?そうなんか?」

オイゲン「あっ、私は大丈夫ですよ。慣れてますから。最初はびっくりしましたけど」

初雪「ちっ」

龍驤「聞こえとるわ。ほな今夜絶対入れよ!」

初雪「ふあぁい」

龍驤「ここがオイゲンさんの部屋になるな」

オイゲン「おぉ、ワ・シツ!」

龍驤「外国の艦娘さんにはちとアレやけど、まぁ堪忍してな」

オイゲン「・・・アトミラールさんは、和室が好きな方でした」

龍驤「そらま、この国の人間ならな」

オイゲン「私・・・、どうして捨てられたんでしょうか・・・」

龍驤「・・・うちには分からん。ごめんなぁ」

オイゲン「・・・いえ。ごめんなさい、変なこと言って」

龍驤「一人で寂しゅうなったら言うてや!お酒でもお話でも付き合うさかい!」

オイゲン「ダンケ・・・。ダンケ・シェーン」

長良「買い出し!終わりました!」

所長「ありがとう。今日の炊事当番は誰だ?」

五十鈴「五十鈴たちだけど?」

所長「あぁ、お前たちだったのか。って言ってくれよ。そしたら買い出しは漣にやらせたのに」

漣「えぇ~?漣のぉ細腕じゃあ、こんなに荷物持てませぇん」

長良「大丈夫です!いいトレーニングになりました!」

五十鈴「もう身体鍛える必要ないのに、よくやるわね」

所長「今日からプリンツ・オイゲンっていうドイツの重巡の子が入るから、よろしくな」

五十鈴「ドイツ!?ちょっと!五十鈴たち普通の料理しか出来ないわよ!」

所長「・・・スプーンとフォークを用意してやってくれ」

長良「了解!」

オイゲン「オハシ?ごめんなさい、お箸は使えないです・・・」

所長「あぁ、やっぱり・・・」

所長「スプーンとフォークは用意させてるが・・・、うぅーん」

初雪「それより、さ・・・」

所長「ん?」

初雪「お味噌汁、平気なの?」

オイゲン「あっ・・・、うー・・・」

初雪「なんか、野菜のスープとかの方が、いいよ」

所長「味噌汁も駄目なのか。こりゃもっと考えてやんないとな」

初雪「私に、聞いてくれれば・・・、教えるし」

所長「初雪はすごいな。どれ、頭をなでてやろう」

初雪「いやぁだ、触らないで・・・」

所長「・・・お前の髪、なんでこんなにベトベトしてるんだ・・・」

初雪「触らないでって言ったのに」

オイゲン「・・・」 グゥ キュルル

オイゲン「あっ、いやだ・・・」

初雪「お腹、空いてるの?」

所長「初雪、お前最後に風呂入ったのいつだ?」

オイゲン「・・・はい。今朝から何も食べてなくて」

初雪「パンとか、あるよきっと。食べよ」

オイゲン「うん、はい・・・」

所長「おい初雪。お前なんか少し臭いぞ」

初雪「こっちで、お湯。こっちが、お水」

オイゲン「ふむふむ」

初雪「お湯と、お水、こう混ぜて、温度を調節するの」

オイゲン「ふむふむ、なるほど」

初雪「お風呂は、交代制。時間割、あるから」

オイゲン「これね。ダンケ!」

初雪「はぁ、お風呂入るのめんどくさいなぁ」

オイゲン「せっかく綺麗な黒髪なのに、もったいないよ」

初雪「・・・」

オイゲン「どうしたの?」

初雪「・・・前もそう言われた。前の、鎮守府で」

オイゲン「・・・」

初雪「入ろっか・・・」

 ガラッ

龍驤「おるかー?」

オイゲン「えっ?えっ?なに?」

龍驤「おっしゃおるな。うちも入るわ」

初雪「オイゲンさん、さきにこっちで、かけ湯して」

オイゲン「かけ湯!知ってるわ、大丈夫よ」

龍驤「はぁーさむさむ。せっかく暖かくなってきよっと思たのになぁ」 ペタシペタシ

 ザバーッ

龍驤「よっしゃ。どぼんしよか」

龍驤「熱ぅい!!」

初雪「うるさいなぁ、もう」

オイゲン「ふふふ、あはははっ」

龍驤「お?よーやっと笑ったな?うんうん、笑顔が一番やで」

龍驤「なぁ、オイゲンさん。ここにいる艦娘は、みーんな艤装を解体されてほっぽり出された子たちや」

オイゲン「はい・・・」

龍驤「まぁ例外もおるが、みんな仲間や。同じ」

オイゲン「・・・はい」

龍驤「うちらはそんな子たちをぎょーさん見てきた」

龍驤「もう帰られへんのや。前に進むしかないんや」

初雪「このままここに居たいー。学校なんか行きたくないー」

龍驤「こーゆー奴もおるけどな」

オイゲン「ふふふっ、はい」

龍驤「まぁ、進む前に、ちょっとくらい立ち止まってもバチは当たらへんやろ」

初雪「そうだそうだー」

龍驤「お前は立ち止まりすぎや!」

望月「くっぁー!マジめんどくせぇ!布団重てぇー!」

三日月「ほらモッチー!落っことしちゃうよ!」

望月「オイゲンさんってガイジンなんだろ?布団で大丈夫なのかよー」

三日月「しょうがないでしょ。布団しかないんだもの」

漣「布団で寝られるだけマシっしょ。漣とご主人様なんて、最初は段ボールだったんだから」

望月「うあー、重てぇー!手伝ってよー!」

三日月「手伝ってるじゃない!」

望月「なんで二人分なんだよー!」

漣「龍驤さんの分だからねぇ。一人じゃ最初は寂しいだろって」

漣「モッチーはミカと一緒だったからまだいい方だよ」

漣「よいしょっと。はー、メシ行こうぜー!」

所長「オイゲンさん、ご飯は口に合ったかな?」

オイゲン「口に?」

所長「あー、美味しかったかってこと」

オイゲン「はい、とっても」

所長「そいつはよかった。食べるってのは大事なことだからね」

所長「生きるってのは食べること。食べるってのは生きることだ」

オイゲン「・・・?」

所長「俺たちは、君を決して見捨てない。約束するよ」

オイゲン「・・・はい」

所長「おやすみ、オイゲンさん」

オイゲン「はい、アトミ・・・、いえ、所長さんも」

龍驤「はぁー。風呂入ってご飯食べて、暖かい布団で寝る。最高やね!」

オイゲン「・・・」 モゾモゾ

龍驤「慣れへん?」

オイゲン「変な気分です。つい昨日まではみんなといたのに・・・」

オイゲン「レーベ、マックス・・・、ビスマルクお姉さま」

龍驤「泣きたかったら泣いてもえぇで」

オイゲン「・・・もう泣きませんよ」

龍驤「そか」

龍驤「・・・ここに一人で来た子はな、みんな泣くんや」

龍驤「急に一人ぼっちになってな、夜に泣くんよ」

龍驤「我慢せんでもえぇんやで」

オイゲン「・・・」 グスッ

龍驤「初雪な、あいつな、仲のいい姉がおってん」

オイゲン「姉・・・」

龍驤「白雪言うてな、面倒見のいい子やったらしいで」

龍驤「でもある日、作戦に出たまま帰ってこんかった」

龍驤「初雪が鎮守府追い出されたんは、その直後や」

オイゲン「・・・どうして?」

龍驤「記録は見たけど分からん。本人に聞いても分からんかった」

龍驤「うちの所長な、初雪には甘いねん」

オイゲン「あぁ、なんとなくは・・・」

龍驤「まぁ、艦娘それぞれ、色んな事情があるわな」

オイゲン「あの・・・、聞いてもいいですか?」

龍驤「んー?」

オイゲン「リュージョーさんは、どうして?」

龍驤「・・・昔アホな男がおってな」

龍驤「そいつは普段から艦娘の解体命令を全部無視しとった」

龍驤「戦う為に生まれて、人間の勝手な都合でほおっとくっちぅんが我慢できん男やった」

龍驤「そしたら本人が軍からほおっとかれたわ。笑うやろ」

オイゲン「そんな・・・」

龍驤「・・・部下におった艦娘は信頼の置ける鎮守府に異動させてなそれから、えーっと」

龍驤「・・・なぁ。解体された艦娘って、その後どうなるか分かるか?」

オイゲン「・・・いえ」

龍驤「まだ軍におった頃、戦争が始まった時まで遡って、記録を漁ったんやけどな」

龍驤「外に出ていった艦娘の約三割が、今も行方不明や」

龍驤「・・・これは外に出ていって死んだ艦娘は含まれとらん数字や」

オイゲン「死ん・・・だ?」

龍驤「せや」

龍驤「裏の世界に落ちたか、それともどっかで野垂れ死にしたか」

龍驤「そんな事実を知って、・・・そいつはこの組織を立ち上げた」

オイゲン「それが、支援センター?」

龍驤「せや。軌道に乗るまでに結構かかったわ。苦労したんやで?」

龍驤「まぁそんなアホな男をな、ほっとくっちゅうんは、この美少女艦娘龍驤さんにはでけへんかったっちぅことや」

オイゲン「所長さん!?」

龍驤「あいつな、あいつは艦娘を絶対に見捨てへん」

龍驤「だから・・・、オイゲンさん・・・も、・・・安心して・・・」

龍驤「あかん、もう眠いわ・・・」

龍驤「おやすみ・・・」

オイゲン「・・・グーテ ナハト。リュージョー」 カチッカチッ

龍驤「豆球はつけてぇ・・・」

 ~数日後~

長良「おはよう!オイゲンさん!」

オイゲン「グーテン モーゲン、ナガラ」

長良「ここの生活には慣れた?どう?」

オイゲン「えぇ。みんないい人たちです」

長良「よかった!」

オイゲン「ナガラは、これからどうするんですか?」

長良「え?走りこみ終わったら朝ごはんだよ」

オイゲン「あ、そうじゃなくて」

長良「あぁ、私はね、所長がスポーツが強い学校を探してくれてて・・・」

長良「五十鈴と一緒に行けたらなって」

オイゲン「イスズと。妹だもんね」

長良「血は繋がってないんだけどね。でも妹であることに変わりはないから」

オイゲン「姉妹・・・。いいですね。羨ましい」

長良「・・・?あれ?あの子は・・・?」

オイゲン「え?」

長良「見たことないなぁ。でも艦娘っぽいね」

オイゲン「行きましょう。もしかしたら、私たちと同じかも・・・」

長良「うん。おーい!おーい!」

長良「あっ!」 キョロキョロ

オイゲン「どうしたの?」

長良「そうだ、大井さんはいないんだった」 ホッ

オイゲン「・・・?」

所長「・・・で、君は?」

初月「秋月型駆逐艦、四番艦の初月だ・・・、です」

所長「漣」

漣「なんの連絡もなかったですよ。ほんとですって!」

龍驤「うちも知らんで」

所長「初月さん、君はどうしてここに?」

初月「僕にも分からないんだ・・・。外海で目が覚めて、鎮守府に連れて行かれて、その日の内に解体された・・・」

初月「途方に暮れていると警官がやってきて、ここを教えてくれたんだ」

所長「・・・こいつは・・・まずいぞ」

初月「・・・僕はこれからどうなるんだ?僕はどうして生まれたんだ・・・」

初月「どうして・・・僕は・・・」

所長「漣。天龍と龍田に、センターに誰も入れるなと言っておけ」

漣「ほいさっさ!」

龍驤「なぁ、これって・・・」

所長「あぁ。誤解体だ」

初月「誤解体?」

所長「稀にあるんだ。君は最近登録された新しい艦娘じゃないか?」

初月「そうだが」

龍驤「確かに、うちが現役やった頃は初月なんて艦娘はおらんかったわ」

所長「解体命令が間違って伝わって、本来とは違う艦娘が解体されてしまう」

所長「それが誤解体だ」

初月「それじゃあ僕は・・・なんの為に生まれたんだ・・・」

初月「姉さんたちにも会えず、誰も守れず・・・、なんの為に・・・」

オイゲン「アトミラ・・・所長さん!大変なの!」

所長「あぁ、来たか。こうなるんだよなぁ・・・」

漣「初月さんはこっちこっち!」

初月「え?なんだ?どうしたと言うんだ?」

オイゲン「なんか男の人が来て、ハツヅキを出せって!」

オイゲン「今テンリューとタツタが止めてるの!」

所長「今行く。漣、この子を頼む」

漣「あらほらさっさー!」

五十鈴「・・・久しぶりね。久しぶりって言うのも変だけど」

初月「五十鈴・・・」

五十鈴「会うんだったら・・・、お互い戦場で会いたかったわね」

漣「おろ?知り合い?」

五十鈴「そうね、・・・そうなるわ」

漣「あれ?漣はいない方がいい感じ?」

五十鈴「・・・別にいてもいいけど、面白い話じゃないわよ」

漣「あ、空気嫁ってことですね!といっても漣はご主人様からこの子を任されてますから」

五十鈴「そう。まぁそんなことより・・・」

初月「・・・」 グゥウウ グキュルルル

五十鈴「まずはご飯にしましょ」

書き溜めはここで終わっている・・・

冬イベ中に書いてた話だから今さら感があるんだよなー
でも上げてしまえば書かなきゃいけなくなるだろって

オイゲンは解体堀
初月はRTA解体ね

春イベやってるんで続きはまた今度 おやすみ

デイリー進めながら続き書くかー

初月「・・・なんだこれは。・・・これは、なんだ!?」

五十鈴「なによ?五十鈴が作ったのじゃ不満?」

初月「卵焼きがある!鮭の切り身に!味噌汁に白米だと!!」

漣「ウマー!メシウマだぜ!はーっはっはっ!!」

初月「姉さんたちにも・・・食べさせてやりたかった・・・」

五十鈴「いや、きっと他の鎮守府でたらふく食べてるわよ」

漣「泣いてんじゃねーよ。食えよおい」

五十鈴「んで?あんたこれからどうするの?」

初月「これから、とは?」

五十鈴「艤装解体されたんならもう艦娘には戻れないわ。一般人として生きていく他ないの」

漣「ご主人様に任しときゃ、テキトーな学校探してくれますよ」

初月「・・・学校?」

 ドカドカ

天龍「あー、しっつけぇ奴だったぜ」

龍田「どうして止めちゃうのぉ所長。もう少しでぇ、あの男の首と胴体がサヨナラ出来たのに」

所長「しなくていいから。その薙刀もしまえしまえ」

龍田「綺麗な、真っ赤な華が咲くのよぉ?きっと・・・きっと綺麗・・・」

所長「おい、こいつ大丈夫か?学校でもこんなか?」

天龍「ガッコーじゃ猫被ってっから平気だよ。それよっかメシだメシ。ウインナーもっとつけてくれよ」

漣「おいよー、お疲れさん&久しぶりん」

天龍「漣ぃ、テメーまぁだここにいんのかよ?さっさとガッコー決めろよ」

漣「ご主人様の愛の奴隷、漣ちゃんがいなくなっちゃったらご主人様が死んじゃう!」

所長「死ぬか、アホ」

龍田「わぁい、ご飯ご飯~」

所長「あー、で、初月さん?だったね」

初月「そうだ」

所長「ここは艦娘を人間社会に送り出す手伝いをしてる場所だ。君も他の子たちと同様に――」

初月「本当に戻れないのか!?」

所長「・・・戻りたい?」

初月「当たり前だ!僕は戦うために!守るために生まれてきたんだぞ!!」

天龍「そんなのみんな一緒だろーが。あっ!それ俺のだぞ!」

龍田「天龍ちゃん、私のあげる。はい、アーン」

五十鈴「さっきも言ったけど、艤装解体したならもう戻れないのよ。諦めなさい」

初月「五十鈴はなんでそんなに簡単に言えるんだ!戦いたくないのか!!」

五十鈴「ッ!!出来ないって・・・言ってんでしょうがっ!!」

五十鈴「どうやって戦うの!?艤装が無けりゃ海に出られないのに!ボートにでも乗っていくの!?」

五十鈴「それでどうするの?人間が使ってる武器で攻撃するの?軍から借りる?」

五十鈴「人間の武器があいつ等に通じるんだったら!そもそも艦娘なんて要らないでしょうがっ!!」

ガン! ガン!

長月「うるさいぞ。食堂では静かにしろ」←三角巾にエプロン姿

五十鈴「・・・ごめん」

望月「・・・ちっ。マジめんどくせぇ」←三角巾にエプロン姿

天龍「俺たちも、お前ももう戻れねぇ。どんなに戦いたくてもな」

初月「・・・」

天龍「諦めろったって、そんなすぐにゃ無理だろ。ゆっくり考えるんだな」

天龍「それとな、五十鈴が簡単に諦めたとか、勝手に思ってんじゃねぇぞ」

五十鈴「ちょっと!」

所長「しばらくここにいるといい。ゆっくり、ゆっくり考えなさい。誰も君を急かさないから」

初月「・・・はい」

龍田「天龍ちゃんかっこいい~。はい、アーン」

天龍「やめ、ちょ、やめろよ!あーっ!ケチャップ制服についただろうが!!」

龍驤「あかん。全然釣れへん。今日は坊主やな」

オイゲン「あっ、リュージョーさん。ハツヅキさん来たよ」

初月「・・・あの」

龍驤「なんや食堂で五十鈴とやらかしたらしいな。元気があってえぇこっちゃ」

初月「五十鈴が、あなたに挨拶しろと」

龍驤「うちに?そりゃまた」

長良「龍驤さんは寮母さんみたいなもんだからね」

龍驤「冗談言いなや。こんな可憐な寮母さんがどこにおるんや。おったわ!」

初月「あ、あの・・・」

龍驤「部屋はあとで案内したる。食事も済ませたようやしな」

初月「・・・はい」

龍驤「・・・じゃあまず初月に、最初の任務与えたるわ」

初月「・・・任務!ぜひ!」

龍驤「ほれ」

初月「・・・釣り竿?」

龍驤「今日の晩飯、頑張って釣りや。せやないとえらいことになるで」

初月「これが・・・任務・・・」

オイゲン「大切な任務ですよ、ハツヅキさん」

長良「今夜の当番って、えーっと・・・磯風ぇ!?」

龍驤「大丈夫大丈夫!あいつも成長した!魚焼くくらいなら出来る!」

龍驤「せやから死に物狂いで釣れ!釣りまくるんや!えぇな!厳命やぞ!!」

初月「りょ、了解した!」

龍驤「ほな、また」

 ~夜~

 コンコン

磯波「初雪ちゃん」

初雪「いやぁだ」

磯波「ご飯の時間だから・・・」

初雪「お腹痛い」

磯波「ちゃんと食べないと・・・」

初雪「お腹痛いって言ってるじゃん」

深雪「諦めろよ初雪。な?死なば諸共って言うだろ?大人しく一緒に逝こうぜ」

初雪「一人で行きなよ・・・」

磯波「で、でも磯風さんだって一生懸命練習したって言うし・・・」

深雪「腹痛くったっていいだろー?どうせ腹痛くなるんだからよー」

初雪「なんの慰めにもなってないよ」

深雪「なー、姉妹みたいなもんじゃんあたしら。一緒に死のうぜー」

磯波「深雪ちゃん・・・!」

深雪「あっ・・・」

初雪「・・・姉妹?」

 白雪『初雪ちゃん、まだ寝てるの?』

 白雪『もう!髪の毛ボサボサじゃない!ほら、私がやってあげる』

 白雪『本当は綺麗な髪なのに。もったいないよ』

 白雪『初雪ちゃん』

 白雪『初雪ちゃん、ほら・・・』

初雪(私の姉妹は・・・、本当の姉妹は、白雪だけだよ・・・)

深雪「・・・なぁ、いこうぜ。初雪」

初雪「・・・うん」

 ドカーン!!

所長「・・・おい、爆発音なんて久しぶりに聞いたぞ」

漣「魚焼いてて爆発するってどんなんだよ・・・、ボンバーマンかよ。陸奥さんかよ」

所長「大丈夫か磯風!助けがいるか?」

磯風「ケホッ!問題ない!この磯風!見事討ち取って御覧にいれる!!」

漣「戦国武将かよ。何と戦ってんだよ」

龍驤「しっかし才能あるなぁ自分。めっちゃ大漁やったで」

初月「あぁ、役に立てたのなら嬉しいが・・・」

 ドン! ドドン!

所長「おい、なんで厨房から迫撃砲みたいな音がしてるんだ?」

漣「戦ってるからデショ」

長月「味噌汁はこの長月が作った。米だってたんまり炊いてある。最悪それだけでいけるだろう」

初月「白米と沢庵があれば充分だと思うが」

磯風「討ち取ったりぃぃ!!」

漣「見事首級を挙げたようですよ、御館様」

所長「・・・大儀である」

長月「捌くのは三日月と菊月がやった。問題はないだろう」

龍驤「火を恐れるんやないで。火を支配するんやで」

磯風「心得た!」

龍驤「お、えぇ匂いしてきたやん」

三日月「そーっと、そーっとですよ!裏っ返して!」

磯風「うむ!」

菊月「ほう、いい色だ」

磯風「うむ!」

深雪「やってるー?お、いい匂いしてるなぁ」

龍驤「ほぇ、珍し。初雪も来たんか」

初雪「・・・そんなことよりお腹が空いたよ」

所長「もうちょっとで出来るらしいぞ。配膳しておいてくれ」

磯波「はい」

磯風「うむ!!」

菊月「いや、お前はこっちだ」

磯風「出来たぞ所長。この磯風渾身の焼き魚だ!とくと御賞味あれ!」

所長「いただこう」

所長「・・・いけるやん」

龍驤「ほんま?あ、ほんまや」

所長「美味しいぞ、磯風。本当に美味い」

磯風「そ・・・そうか、よかった・・・」

龍驤「おぉいけるやんほんま!」

磯風「う、うむ!たくさんあるからもっと食べてくれ」

深雪「マジで!ひゃあ、いただきまーす!」

磯波「いただきます」

初雪「・・・ます」

所長「大根おろしとか、ないの?」

初月「・・・」

五十鈴「こんな所にいたの」

初月「五十鈴か・・・。今朝は、済まなかった」

五十鈴「いいわよ別に。あんたと五十鈴の仲でしょ」

初月「ふっ・・・、そうだな」

五十鈴「夜の海は好きじゃないわ。吸い込まれそうで」

初月「・・・だけど、静かだ」

五十鈴「うるさいのがいないからね」

初月「え?」

五十鈴「前に五十鈴がいた鎮守府よ」

初月「あぁ・・・」

五十鈴「五十鈴はね、最初それなりには戦わせてもらえてたわ」

五十鈴「爆雷持って、潜水艦狩りしてた」

五十鈴「でもある日突然ポイよ」

夕立「ポイ?」

五十鈴「そ、ポイ」

初月「ちょっと待て。今の誰だ」

夕立「夕立っぽい!」

五十鈴「あら、夕立じゃない。久しぶり」

夕立「久しぶりっぽい!あなたは新入りさん?」

初月「夕立?白露型か。僕は初月だ。よろしく」

夕立「よろしくっぽい!」

五十鈴「こんな夜更けに感心しないわね。どうしたの?」

夕立「今日は部活で遅くなっちゃったっぽい。だから天龍さんたちに送ってもらいたいっぽい」

五十鈴「天龍?今朝来てたけどもう帰ったわよ」

夕立「えぇ?ここならいるって聞いたっぽい!うーん・・・」

初月「僕が送ろう」

五十鈴「あんたもう艦娘じゃないのよ?忘れたの?その細腕で夕立を守れるの?」

初月「・・・あ」

夕立「仕方ないっぽい!じゃあ龍驤さんに頼むっぽい」

五十鈴「それがいいわ」

夕立「じゃあねー!バイバイっぽいー!」

初月「・・・学校、か」

所長「おはよう、初月さん」

初月「あぁ、おはよう」

所長「少しは落ち着けたかな?」

初月「あぁ、もう大丈夫だ。ありがとう、提督」

所長「俺は提督じゃないよ。初月さん」

初月「あ、済まない・・・。えっと、所長」

漣「ご主人様、お電話が入ってますよ」

所長「誰からだ?」

漣「有澤さんからです」

所長「雷と電に何かあったのか?代わろう」

初月「・・・何故だろう。自然と提督と呼んでしまった」

漣「そりゃそうでしょ。あれでも元提督ですからね」

んー?なんでsageが外れるんだ・・・?

初月「やはりそうなのか。どうりで・・・」

漣「そこそこ偉かったんですよ。まぁ今はただのおっさんですけど」

初月「君は・・・、そういえば君とはきちんと話してなかったな」

漣「そりゃね。そっちはそれどころじゃなかったんだし?気にすんな!」

漣「改めまして自己紹介しましょう!求められれば即参上!夜戦いつでもOK!ご主人様の愛のど、いってぇ!!」

所長「ふざけたこと言ってるな。信じたらどうする」

漣「事実だしぃ。で、有澤さんはなんて?」

所長「あぁ。小学校での三者面談、どうしても出られないから代役をとな」

漣「ありゃりゃ。雷電姉妹もさぞがっかりでしょう」

所長「泣いてらしたぞ。初めての三者面談だというのに、どうしても外せない会議があるそうだ」

漣「ご愁傷様ー」

所長「後ろで雷と電が社長を慰めてる声が聞こえてきてな、いたたまれなかったぞ・・・」

オイゲン「ただいまー。所長さん、頼まれてたCD、これでいいの?」

所長「お帰り、オイゲンさん。あぁこれだこれだ、ありがとう」

オイゲン「アイドル好きなのね?意外ね」

所長「いや、興味はない。でもこの子だけは別だ」

オイゲン「へぇ・・・。ナ・カ・チャン?可愛い子ですね」

所長「アイドルになるのが夢だっていうから、アイドル事務所に放り込んできたんだよ」

漣「ぷはは!あれは傑作でしたね」

所長「そしたらそこの事務所の社長さんが」

漣「ティンときた!」

所長「と突然叫んでな。あれよあれよとアイドルだ」

オイゲン「すごい・・・のかな?すごいのよね、きっと」

初月「僕に聞かれても・・・」

オイゲン「それにしても、ここは色んな艦娘が来ますね」

漣「とっくに新しい生活が決まって出てったってのに、わざわざ訪ねてきますからね」

所長「元気な顔を見られるのは嬉しいよ。向こうもそれを分かってる」

漣「近くに高校に通ってる天龍さんと龍田さんなんてしょっちゅう来ますよ」

オイゲン「この前モッスバーガー?をご馳走になったわ。あれはとても素晴らしいものね!」

白露「イッチバーン!」

漣「早速新しいのが来たし」

所長「白露、おはよう」

白露「えへへ!所長さん、おはよう。はいこれ」

所長「ん?文化祭?」

白露「そう!今度の文化祭で、白露たちでライブやるから絶対来てね!」

所長「日時は、えぇと、行けるな。大丈夫だ」

白露「イチバンに来てね!絶対だよ?」

所長「あぁ、必ず」

オイゲン「みんな所長さんが好きなのね」

漣「有象無象どもが!漣のご主人様に色目使いやがって!」

白露「あ、いたんだ漣ちゃん」

漣「学校はお休み?サボり?ご主人様はサボるような子は嫌いですよ?」

白露「休みに決まってるでしょ。日曜だってば」

所長「曜日感覚がなくなってるな?漣、お前もいい加減――」

漣「あ!ウサミン星から電波が!!行かねば!!」

所長「逃げやがった・・・」

初雪「あ、おはよー」

白露「おっはよー!」

所長「初雪、お前も白露たちと同じ学校に――」

初雪「うっ、静まれ、私の右手・・・」

所長「・・・逃げやがった」

オイゲン「あはははは!!」

初月「くっ、ふふふ・・・」

漣「ふー、危ない危ない。最近ご主人様はすーぐ学校に行かせようとするなぁ」

漣「学校なんかに行ってたら・・・」

古鷹「ご主人様と一緒にいられなくなる?」

漣「そうそう、って古鷹さん!」

古鷹「おはよう。漣ちゃん」

漣「うわー、久しぶりじゃないですか!お元気でしたか!?」

古鷹「うん、元気だよ。でも・・・」

漣「・・・なにかあったんですか?」

古鷹「うん・・・。お願い漣ちゃん。手伝ってほしいの・・・」

加古「くかー、んがー」zzz

漣「・・・あぁ、そゆこと」

漣「砂浜でそのまま寝る?普通」

古鷹「いい天気だぁ!って言って寝転んだと思ったらすぐ・・・」

漣「のび太か!」

漣「起きろホイ!!」

加古「んぁ?あー、あー、あとで古鷹から聞くからさぁ・・・」

漣「おらぁん!!」

加古「スカート引っ張んないでぇえええ!!」

漣「黒かよ!意外に大人っぽいのはいてんな!黒か!大人か!」

古鷹「ほら、加古。起きないと下着まで脱がされるよ」

加古「起き、起き、起きるから、やめろって!」

漣「んっだこの・・・こんな・・・大人の・・・このっ!ショコラがティアラかこの!!」

所長「古鷹、加古。わざわざ来てもらってすまないな」

古鷹「いえ、私たちもみんなに会いたかったですから」

加古「ふあーぁ、まぁ古鷹が行くって言うからさ」

所長「オイゲンさん」

オイゲン「はい」

所長「この子は古鷹、こっちの子が加古。君と同じ、元重巡だ」

加古「うっわ、外国の艦娘?初めて見た」

古鷹「よろしくお願いします」

オイゲン「プリンツ・オイゲンです。ドイツの・・・元重巡です」

所長「まだまだ先の話だけどね、彼女たちが通ってる高校の見学、行ってみないか?」

オイゲン「高校・・・?私が?」

所長「こないだ天龍たちと街に行ったんだろ?まぁ社会に出る予行演習みたいなもんだよ」

オイゲン「学校・・・」

古鷹「私たちが通ってる高校は元艦娘も結構いるんですよ」

加古「ここに来たってことはあたし等の後輩ってこったからねー」

所長「もちろん、オイゲンさんが行ってみたいならって話だ」

所長「ここに来た時も言ったが、君を急かすつもりはないから気楽に考えていいよ」

オイゲン「・・・でも、わざわざ来てくださったんですよね」

古鷹「それは気にしないで。ここに来た理由の半分でしかないから」

加古「あとの半分はみんなの顔を見たかったってだけだしさ」

オイゲン「・・・興味はあります。でも・・・まだ怖いんです」

古鷹「分かりますよ、その気持ち。私たちもそうだったから」

所長「うん、じゃあこの話はこれでいったんおしまいだ」

オイゲン「ごめんなさい」

加古「気にすんなって。来たかったらいつでも言いなよ」

古鷹「そうですよ。これ、青葉から預かった写真です。私たちの学校での」

所長「へぇ、よく撮れてるな。さすが青葉」

オイゲン「一緒にいる人たち、みんな元艦娘ですか?」

加古「そうだよ。こいつも、こいつも、元艦娘。こっちは違うけど」

所長「いい笑顔だ。楽しそうにしてるな」

オイゲン「私も、いつか・・」

所長「こっちは天龍と龍田じゃないか」

古鷹「はい、龍田さんが所属してるなぎなた部が、うちの学校と練習で」

加古「あいつ笑いながら薙刀振り回すから怖いんだよ」

古鷹「これ、全部青葉が撮ったんです。参考になればって」

オイゲン「くれるんですか?」

古鷹「はい。少しでも前に踏み出せるきっかけになればって」

オイゲン「ダンケ・・・」

加古「あー、ありがとう、だっけ?」

オイゲン「はい、ありがとう、ですね」

加古「ま、ゆっくり考えなって。あ、でもあたし等艦娘じゃなくなったから、普通に歳取るからね」

所長「そうだよな。昔ここで面倒見てた軽巡の子が社会人になってたりするからな」

加古「じゃーね、これ全部あげるから。所長、あたしの部屋って空いてんのー?」

所長「寝る気だな、お前」

加古「当たりー。おやすみー」

古鷹「あ、もう!加古ったら。待ってよ、もう」

所長「変わらないな。いや、いいことか」

オイゲン「みんな、楽しそうですね」

所長「オイゲンさんはここに来てどれくらいだっけ?」

オイゲン「3ヶ月、くらいです」

所長「そうか。歳を取ると時が経つのが早くてな」

オイゲン「ナガラもイスズも、学校行くんですよね」

所長「うん。あいつ等の場合は、ちょっと遠い学校だからな」

所長「スポーツ強いとこったら、どうして県外でなぁ」

オイゲン「箸、使えるようになりました。お味噌汁も、もう平気」

所長「うん」

オイゲン「私も・・・前に・・・」

所長「一歩、一歩、ね」

今日はここまで

十二鈴って今の提督はやるんだろうか

今日は扶桑と山城を解体しました

あー、磯風はあれだ
磯波と間違えて解体されたってあれ
みんなも気をつけなよ
ロックは忘れずに


解体後の詳細がSSで書かれるほど近代化改修の闇は深くなる

あー、このSS後悔し始めてる・・・
それぞれ艦娘をピックアップしてオムニバス形式でやるべきだった
ただダラダラと長くなるぞこれ

 ~そんなある日~

 プルルルル・・・ プルルルル・・・

龍驤「はいはい、今出ますよって」

龍驤「もしもしー、こちら艦娘社会復・・・ってあぁお巡りさんやんか。どしてん?」

龍驤「所長?所長は今おれへんよ。うちが代わりに聞くさかい」

龍驤「・・・それ、ほんまか?」

龍驤「分かった。すぐ伝えるわ。ほな、また」

龍驤「・・・あかんなぁこれ。えらいこっちゃで」

所長「農家に被害?作物にか?」

龍驤「せや。んでな、動物の仕業やあらへんっちぅんや」

龍驤「目撃者の話やとな、まぁ夜で暗かったってのもあるんやろうけど」

龍驤「小学生から中学生くらいの女の子二人。ボロボロの制服みたいなん着てたらしいで」

漣「艦娘?」

龍驤「可能性は高いやん?」

所長「・・・解体されて捨てられたのか?いやしかし・・・」

漣「最近はなんの連絡もなかったですよ。初月さん以来平和なもんです」

龍驤「まだそんな騒ぎにはなってへんそうやで。でもこのままやと」

所長「分かった。早速行ってみよう。漣」

漣「ほいさっさ!!」

漣「えーっと、お巡りさんからも被害者宅からも聞いてきましたが、以下の通りです」

漣「この周辺の農家全部やられてるらしいですよ。犯人はやっぱり女の子二人組」

漣「騒ぎになるきっかけは鶏を持ってこうとしたらしいですね」

所長「ノリノリだな?名探偵漣くん」

漣「本当に艦娘だったらまずいっしょ、ご主人様的に。っつか十中八九艦娘ですよ、これ」

所長「あぁ、俺もそう思う。とにかく夜まで待とう。もしかしたらまた来るかもしれないしな」

漣「・・・夜まで?こんな田舎で?二人っきり?」

所長「我慢しろ。仕事だ」

漣「やっべー。今日お気にのイチゴパンツはいてくりゃ良かったわ。ウサちゃんだったわ」

所長「我慢しろ」

漣「っべー。マジべーわ」

漣「・・・ご主人様、静かに」

所長「当たりか?」

漣「電探に感。前方に移動物。数は二」

所長「さすがにこう暗くちゃ見えないな。だがまぁいいさ。手筈通りにな」

漣「ほいさっさ」

漣「動きが雑ぅ。生まれてすぐに放り出されたのかなぁ」

漣「一応警戒してるみたいだけど、まぁ漣にかかれば子猫ちゃんですわ」

所長「漣、照明弾、撃て」

漣「あらほらさっさー!!」

 シュポォン!!

??「なに!?気付かれた!?」

??「ど、どうしよう!?」

??「どうしようって、逃げるしかないでしょ!さっさと走る!!あんたグズなんだから!!」

??「う、うん!」

??「二手に分かれて、いつもの所へ!」

??「うん!」

漣「逃がさないよぉ!漣は、しつこいからっ!!」

??「きゃあっ!!」

所長「ようし、そこまでだ子猫ちゃん。お願いだから追いかけっこは無しだ。歳なんでな」

??「・・・照明弾・・・?艦娘・・・!?・・・陸なのにどうしてっ!!」

漣「やるってんなら漣は――」

??「・・・ッ!どけぇっ!!」

 ドンッ

所長「くそっ、結局追いかけっこか。漣、そっちは任せる」

漣「・・・アイアイサー」

??「いったっ!痛いってば!放しなさいよこのっ!!」

漣「・・・逃げられないって言ってんでしょ?分かんないかな、子猫ちゃん」

??「ふざけんなこのっ!人間にいいように使われてる犬の分際で!!」

漣「大人しくお縄につきなって。悪いようにはしないからさ」

漣「ねぇ、・・・曙ちゃん」

曙「気安く呼んでんじゃないわよ!なにあんた、漣でしょう!?だったら見逃してよ!!」

漣「・・・さて、じゃああっちは朧かな?潮かな?」

潮「いやぁっ!たすっ、助けてぇぇっ!!」

所長「暴れんなよ、暴れんな・・・」

漣「これは事案ですわ」

警官「・・・で、どうします?」

所長「身柄はうちで預かります。後日被害に遭われたお宅に直接謝罪に伺いますので」

警官「・・・まぁ、被害届も出されてませんしね。今回は厳重注意ってことで」

所長「助かります。ほら、お前たちも頭下げろ」

曙「ふんっ」

潮「・・・ごめんなさい」

漣「しっかしまさか姉妹艦とは。まぁ綾波型なんて珍しくもないけど」

所長「で、お前たちだけか?」

曙「・・・」

所長「お前たちが盗んだ食べ物の量。二人だけにしては多い。他に仲間はいないのか?」

曙「・・・喋ると思う?クソ人間が。あたしに気安く話しかけんな」

所長「いるんだな?どこだ?」

潮「あ、あのっ・・・」

曙「潮っ!!」

潮「お、お願いします!潮はどうなってもいいです、いいですから・・・!」

漣「ん?今・・・」

所長「黙ってろ」

潮「朧ちゃんを・・・、朧ちゃんを助けて・・・。お願いします!お願いします!」

所長「どこにいる?案内してくれ」

曙「潮っ!あんた裏切るのっ!!」

潮「だって、だってこのままじゃ!私たちが連れて行かれたら、朧ちゃんがっ!」

漣「ほら、さっさと案内しなって。だーいじょうぶ、うちのご主人様、やる時はやるんだから」

朧「・・・ぅ」

潮「朧ちゃん!?大丈夫?ほら、お水だよ」

朧「ぅ・・・ぁ」

所長「だいぶ衰弱してる・・・。お前たち、どのくらいこんな生活をしていたんだ?」

漣「最初の被害が報告されたのが約半年前ですね」

所長「・・・そんなに」

朧「ぁ・・・ぅ・・・」

曙「・・・もういいでしょ!ほっといてよ!あたし達はここで死ぬ!姉妹三人!ここで!」

所長「誰も死なせない」

曙「・・・っ」

所長「誰も死なせない。誰も見捨てない。信じろったって信じられないだろうから、行動で示す」

漣「しかし漣たちだけで動かすのはちょっと怖いですねぇ。どうします?」

所長「こんなこともあろうかと、助っ人呼んどいて正解だったな」

明石「あのぅ、私まだ医者じゃないんですけど・・・」

漣「現役時代さんざん艦娘直してたでしょ!」

明石「字が違うじゃん。あれは直す。こっちは治すだよ」

所長「どうだ?明石」

明石「はぁ、まぁ診てみますけど。あまり期待しないでね?」

朧「・・・」

明石「極度の栄養失調・・・ですねぇ。あと脱水症状も。・・・多分ね。多分よ?」

所長「ここに置いとくわけにもいかない。運び出せるか?」

明石「・・・やってみましょう。放っておくのも忍びないですしね。同じ、元艦娘ですから」

所長「頼む」

曙「なにあいつ?医者なの・・・?」

漣「工作艦明石だよ。元、が付くけど」

曙「工作艦?」

漣「おや?曙ちゃんがいた鎮守府には居なかったの?」

曙「・・・知らないわよ。あたし達はさっさと捨てられたんだから」

漣「まぁ、今日からうちで世話してあげるよ」

曙「・・・」

潮「あ、あの・・・」

漣「なんだお前、そのおっぱい。本当に漣の姉妹艦か。溺れろ」

潮「ひっ・・・」

所長「辛辣だな」

潮「・・・ここが、支援センター?」

曙「なによ!こんなのがあるんだったらあたし達のあの苦労はなんだったのよっ!」

所長「そう、そこなんだ」

曙「あぁん!?」

所長「艦娘が解体されたら、その地区担当のセンターに連絡が来るはずなんだよ」

所長「今日はどこそこの鎮守府で誰々が解体されましたのでよろしくってな」

漣「まぁ例外もあるんだけどね。磯風さんとか、初月さんみたいな」

所長「お前たち三人、三隻、一斉に解体されたのなら必ず連絡が来るはずなんだ」

漣「龍驤さんもやっぱり連絡はなかったって言ってましたよ」

所長「ってことは不正規に解体されたってことだ。お前たち、どこの鎮守府にいた?」

曙「・・・あたし達は――」

潮「あ、あの・・・、いいのかな。所長さん、放っといて」

漣「今は真面目に仕事モードだからいいのいいの。っつかちょいギレしてるし」

曙「なんであいつがキレてんのよ」

漣「艦娘が雑に扱われてるからでしょ。そういう人なの。漣のご主人様は」

漣「っつか風呂入ろうず。漣汗だくだし、なによりボーノもウッシーも臭い!」

曙「・・・なっ、なんですって!」

潮「うぅ・・・、だって・・・」

漣「ほらほら、泣いてる暇あるんだったら風呂入ろう!すっきりさっぱりしようず!!」

漣「・・・ボーロもすぐ快復するって、お医者さん言ってたじゃん」

漣「大丈夫だって。漣のご主人様、実はけっこーすげー人だから、さ」

潮「・・・うん」

 ~脱衣所~

漣「・・・」 チラッ

曙「・・・なによ」

漣「仲良くやろうぜぇ、ボノちゃあん」

曙「きっも!きもいのよあんた。なによ、ボノだのボーノだの」

漣「・・・」 チラッ

潮「・・・?」

漣「チッ」

潮「う、うぅ・・・」

漣「そっからエネルギー得てんのか?だからピンピンしてんのか?お?」

漣「本当に綾波型か?お?綾波も敷波もそんなねーぞ?お?」

潮「うっ、うぅっ。私だって・・・好きでこんなんなったんじゃ・・・」

曙「虐めんなっての!!」

所長「・・・曙や潮に聞いていた話よりもずっと酷いな」

??「もうすぐ強制捜査が入るってさ。証拠も充分揃ったし、まぁ言い逃れは出来ないだろうね」

所長「あぁ、ありがとう。すまないな、こんな仕事頼んで」

??「いいっていいって。提督は現役時代、散々私に夜戦させてくれたからね」

所長「・・・何も除籍しなくたって」

??「いいのいいの。後輩の子たちも育ったし、私は充分楽しんだからさ」

??「これからは妹の親衛隊でもやりつつ、のんびりやってくよ」

所長「神通にもよろしくな。式には呼んでくれよ?必ず行くから」

??「はいよ。じゃあね、提督」

 コンコン

漣「失礼しまー・・・ってあれ?ご主人様お一人ですか?」

所長「・・・あぁ。どうした?」

漣「いえ、朧が一般病棟に移ったっていうんで、七駆のみんなでお見舞いでも、と」

所長「あぁ、いいぞ。行ってこい。朧もきっと安心するだろう」

曙「・・・あの」

所長「おはよう、曙、潮。どうしたんだ?」

曙「・・・くっ」

潮「ほら、曙ちゃん」

曙「わ、分かってるわよ」

曙「・・・その、あの・・・、あ、あたし達を助けてくれて、その・・・あ」

曙「ありがとう!それだけ!じゃあね、クソ所長!!」

 ガチャッ

漣「ちょれー。マジちょれーなこいつ」

所長「クソ所長って・・・」

潮「もう、曙ちゃん、ちゃんとお礼言うんじゃなかったの?」

曙「言ったわよ!伝わったんだからいいでしょ別に!さっさと病院行くわよ!」

 ワイワイ ガヤガヤ

漣「姦しいこって」

漣「・・・いるんでしょ?川内さん」

川内「おっと、ばれた?」

漣「なんで漣相手に隠れるのさ?久しぶりに会えたってのに」

川内「ふふふ、癖みたいなもんだからね。ク・セ」

川内「それにしてもちゃんと気配消してたのに、まだまだ勘は鈍ってないね」

漣「気配消せても匂い消せてなかったでしょ。香水なんか付けちゃって、現役時代じゃ考えられない」

川内「まぁねー」

川内「・・・ここは賑やかだね」

漣「それがいいことかは分かんないですけどね」

川内「いいことだよ。ここには笑顔がある。未来がある」

漣「・・・そうですね」

川内「漣、あんたさ。いつまでそうやってるの?」

漣「・・・無論、死ぬまで」

川内「真面目な話よ?」

漣「真面目な話ですよ」

川内「・・・そっか。ま、好きにやりな。後悔のないようにね」

漣「はい、川内さんも。って、いねぇし。ニンジャかよ。ニンジャだったわ」

今日はここまで
ちょうど修理終わったので再出撃だ
今日解体したのはまた扶桑と山城でした

>>70
近代化改修はうまい理由が思いつかない
当初解体と同じと考えてたんだけどね(十二鈴とかがそれ)
でもそうしちゃうと空母や戦艦がたくさん放り出されてることになるから
貴重な空母や戦艦が溢れてるってのもね・・・
いや、ゲーム的には溢れちゃうんだけどね

おっ?なんだなんだ? 過度な期待は禁物だぞ
暇つぶしでたらたら書いてるだけなんだからな

書き溜め終了。誤字脱字チェック後に投下するわ

朧「綾波型七番艦の・・・あ、元ですね。元」

龍驤「よろしゅうな。これからうちらが面倒見たるさかい」

所長「もう身体の方は何ともないんだな?」

朧「はい!もう大丈夫です。多分」

漣「多分かよ」

潮「良かったぁ。これで勢揃いだね」

曙「ふん、もう倒れたって面倒見ないからね」

漣「はいはい、ツンデレツンデレ」

曙「なによ?ツンデレって」

龍驤「部屋は三人一緒でえぇか?」

朧「はい。ありがとうございます」

所長「じゃあ曙、潮、案内してあげて」

曙「ついてきなさい、朧」

漣「なんでボーノが偉そうなんだよ。やれやれだぜ」

所長「じゃああとは任せたぞ。俺は雷たちの所に行ってくるからな」

龍驤「はいな。任しとき」

漣「行ってらっしゃいませ。ご主人様」

龍驤「今日の飯炊き誰や?」

漣「磯風さんですわ。今日はカレーに挑戦するそうで」

龍驤「ほーん。まま、あいつも成長しとるし、平気やろ」

龍驤「ところでやな」

漣「はい?」

龍驤「あそこの岸壁で黄昏れてるんは誰や?」

漣「ピンクの髪に制服、いかにも駆逐艦娘ですねぇ」

龍驤「ピンク頭にゃろくなのおらんからな。あれもきっとろくなもんやないで」

漣「お?なんだなんだ?ケンカ売ってんのか?買うぞ」

龍驤「ほな買うてや。一千億円」

漣「たっかーい!!」

龍驤「は、えぇとして」

漣「連絡は貰ってますよ、彼女は陽炎型の――」

不知火「なぜこの不知火が解体されたのでしょう・・・」

不知火「不知火に・・・落ち度など・・・」

漣「まぁこっちに落ち度なんかなくても解体される時はされるからねー」

不知火「・・・何者ですか?所属と艦名を」

龍驤「うちは龍驤。こっちは漣。支援センターのもんや」

不知火「龍驤・・・?赤鬼青鬼も避けて通ると言われたあの」

龍驤「どの龍驤やそれ。こない可愛い艦娘捕まえといて」

不知火「可愛い艦娘?」

漣「・・・」

龍驤「・・・」

龍驤「あかんで漣はん。この子冗談通じひん」

漣「真面目か」

不知火「なんなのですか、あなた達は。用がないのであれば」

漣「だーかーらー、支援センターのもんだって言ってるでしょ?なに?何も聞いてないの?」

不知火「何も聞いていません。目が覚めたと思ったら司令官が不知火を見るなり」

不知火「雪風じゃねぇのかよ、と」

不知火「確かに雪風は自慢の妹です。しかし開口一番にそれはどうなのでしょう」

不知火「不知火に落ち度はないと思うのですが」

龍驤「・・・結構喋るなぁ、自分」

漣「話進まねー。つべこべ言わないで来いホイ!!」

龍驤「丁度いい時に来たなぁ。カレーでも食べながら話しよか」

 ドカーン!!

不知火「何事ですか!?戦闘準備!戦と・・・しまった!艤装がない!」

漣「爆発させないと料理出来ねーのかよ」

龍驤「大丈夫か磯風ー?」

不知火「磯・・・風?」

磯風「うむ、問題ない。まだまだこれからだ」

漣「だから毎回なにと戦ってるんですかねぇ」

磯風「料理は戦いだ」

不知火「磯風!あなたこんな所で何をしているのですか!?」

磯風「おぉ、会ったことはないはずなのに何故か分かるぞ。久しいな、不知火」

不知火「馬鹿な・・・、栄えある陽炎型が二隻揃ってこのような・・・」

磯風「その様子だと解体されたばかりか。まぁ無理もない」

文月「磯風ちゃん、焦げてるよぉ」

磯風「いかん!すぐに戻る!ではな不知火。この磯風のカレー、存分に堪能するがいいぞ」

不知火「陽炎に会わせる顔がありません・・・。なんと言い訳すれば・・・」

漣「その陽炎とやら、うちに居たことあったんだけどねぇ」

龍驤「懐かしいな。立ち直り早い奴で楽やったな」

不知火「こんな・・・陽炎型に落ち度など・・・」

漣「お前これから落ち度くんって呼ぶわ」

文月「出来たねぇ。いい匂いぃ」

磯風「うむ、味見をしてくれ。どうだ?」

文月「いいよぉ。美味しいぃ」

菊月「カレーはいい。大量に作るのも楽だし、まず失敗せん」

磯風「サラダの準備はどうか?」

菊月「問題ない。共に行こう」

漣「メーシ!メーシ!」

菊月「行儀が悪いぞ。新入りたちも呼んできてやったらどうだ」

不知火「磯風!こんなことをしている場合ではありません!鎮守府に戻るのです!」

磯風「龍驤どの、この磯風の魂を込めたカレー。とくと味わってくれ」

龍驤「えぇね、えぇね。ほな、いただきまー・・・」

不知火「磯風っ!!」

 ガシャン

菊月「・・・何をする。牛乳がこぼれたではないか」

文月「ふぇぇ・・・」

磯風「落ち着け不知火。腹が減っては何とやら、だ」

不知火「落ち着いてなどいられません!今すぐに・・・」

文月「ねぇ?こいつやっちゃってい~い?」

龍驤「あかんで」

漣「メシマズぅ・・・」

磯風「落ち着けと言っているのだ。戻っても最早どうにもならんのだからな」

不知火「艤装は無くとも、戦う方法ならあるはずです」

漣「お?どしたん?」

初月「いや、なにか、その、妙に恥ずかしくなってきたんだ・・・」

磯風「ふむ。奴らと戦うのは難しくとも、貢献する方法ならあるだろうな」

不知火「ならば今すぐ!」

龍驤「上達したなぁほんま。磯風、これほんまいけるで」

初月「あぁ、美味しい。姉さんたちにも食べさせてやりたかった」

漣「きっともっといいもん食ってるぞ」

磯風「そうかそうか!いやぁ良かった。そう言って貰えると全てが報われる」

不知火「あなたは・・・、牙を抜かれて、腑抜けになったのですか!」

磯風「不知火よ、この磯風、陽炎型としての矜持を忘れたことなどない」

磯風「最早戦うことは叶わなくなったこの身なれど、魂は常に我が姉妹たちと共にある」

磯風「つもりだ」

漣「つもりかよ」

不知火「もういいでしゅ!失礼します」

龍驤「・・・」

漣「今噛ん・・・」

龍驤「言うな」

磯風「・・・すまないな、みんな。我が姉は生真面目でな。どうか食事を楽しんでくれ」

文月「行ってらっしゃあい」

菊月「早く戻らんとみな食べてしまうからな」

漣「いいねぇ、しびれるねぇ。青春だねぇ」

初月「お代わり」

龍驤「図太くなったなぁ。えぇで、えぇ傾向や」

磯風「不知火!待て!」

不知火「まだ何か用でも?」

磯風「どこへ行くのだ?鎮守府に戻っても、もう受け入れてはもらえまい」

不知火「方法はあるはずです。諦めたあなたには、到底思いつかないでしょうが」

磯風「よせよせ。解体されたその日から、我らは軍属ではなくなった。下手をすると射殺されるぞ」

磯風「同じ艦娘に撃たれるなど、ぞっとしないな」

不知火「・・・ですが」

磯風「それにな、不知火。この磯風がいつ諦めたなどと言った?」

不知火「・・・なにを」

磯風「諦めてなどいないさ。今も」

磯風「この磯風には夢がある」

不知火「料理人にでもなりますか?」

磯風「それもいいな。捨てがたい」

不知火「下らない」

磯風「不知火。私はな、軍に入るぞ」

不知火「・・・」

磯風「それも海軍だ」

不知火「・・・まさか、磯風」

磯風「私は今度こそ護りたい。何の因果か、こうして人の身になってはいるが、それでも護りたいのだ」

磯風「共に戦うことは出来ずとも、戦う者たちを支えることは出来るはずだ」

不知火「支える・・・」

磯風「そうだ。不知火よ、私はいずれ艦娘を率い、この戦争を終わらせよう」

不知火「つまり磯風が・・・、その、司令官、に・・・?」

磯風「笑うか?」

不知火「・・・」

磯風「不知火。一緒に来ないか?陽炎型の名を知らしめるにはこんな方法もあるのだと」

磯風「私とお前の二隻で、いや、二人で。証明してみないか?」

不知火「不知火と、磯風で・・・」

磯風「ふふふ。所長にこの話をしたらな、苦笑いされたぞ」

磯風「あぁ、不知火はまだ会っていなかったな」

磯風「せっかく普通の女の子になれたのに、と。きっと言われるぞ」

不知火「なんと愚かな・・・。他の姉妹が聞いたら、どのような顔をするでしょうか」

磯風「きっと・・・、今の不知火のような顔をするだろうさ」

漣「お帰りんこ」

磯風「ただいま」

漣「チッ」

龍驤「アホ」

磯風「さぁ、不知火」

不知火「・・・先ほどは取り乱して・・・、申し訳ありませんでした」

不知火「これからお世話になります。ご指導、ご鞭撻、その、よろしくお願いします」

龍驤「えぇで。な?文月」

文月「一緒にカレー食べよぉ。そうすれば許してあげるぅ」

不知火「い、いただきます」

所長「・・・本気なんだな?」

磯風「無論だ。磯風はいつだって本気だ」

所長「不知火さんも、それでいいのかな?」

不知火「はい」

所長「・・・馬鹿め。馬鹿者ども。せっかく普通の女の子になれたのに」

磯風「ほらな?」

不知火「くくっ。んっ、ごほん」

所長「分かった。本気でそれを目指すのであれば、全力で支えよう」

所長「無能な俺たち大人の尻拭いを、君たちのような女の子に任せるのは気が引けるが・・・」

磯風「それは違うぞ、所長」

所長「・・・まぁ、これなら俺でも教えられることはあるからな。因果だなぁ」

所長「磯風、不知火さん。君たちが入隊するまでは、俺が徹底的に艦隊運営の方法を叩き込んでやる」

所長「厳しくいくぞ?覚悟しておけ」

磯風「望むところだ」

不知火「よろしくお願いします。では」

 ガチャッ

所長「うちの最短記録だな。来たその日にもう道を決めるだなんて」

所長「さすがは陽炎型、か」

所長「・・・さぁて、っと」

 ~そして~

香取「特別講師の香取です」

鹿島「同じく、鹿島です。艦娘の運用方法、みっちり仕込んじゃいますからね」

大淀「同じく特別講師の大淀です。資材管理、運営の仕方を指導させていただきます」

所長「元艦娘だからな。厳しくいって大丈夫だぞ」

香取「えぇ、それはもう。教鞭の振るい甲斐があるというものです」

磯風「・・・思っていたのと、違う」

不知火「馬鹿な・・・。不知火に、落ち度など・・・」

所長「頼んだぞ、未来の提督さん」

鹿島「この後に大井さん、北上さん、比叡さんも待ってますからね」

大淀「時間がもったいないです。早速いきましょう」

磯風「やっぱり私は料理人になればよかった・・・」

これで今日の投下を終了します
次回は「愛宕、夜の蝶」をお送りします

多分ね

今日はまだ誰も解体していません

見直ししてて思ったんだけどこれからは最後に いったん終わり みたいに書くか
そうすりゃ読んでる人も「あぁ、一区切りついたんだな」って分かりやすくなるだろう
これからそうしよう

ほな、また

昨日は羽黒を二隻解体しました

愛宕編、推敲してから投下やでー

愛宕、夜の蝶

愛宕「お邪魔しまーす」

龍驤「邪魔すんのやったら帰ってー」

愛宕「龍驤さん、おはようございまーす」

龍驤「もうおやつ時やで」

愛宕「だって起きたばっかりなんだもーん」

 バタバタバタバタ ガラッ

漣「なにしに来やがった駄肉ぅぅぅぅ!!」

愛宕「あらぁ、漣ちゃんおはよー」

愛宕「相変わらず――」 チラッ

愛宕「お変わりなくお元気そうでー」

漣「どこ見て言いやがった」

愛宕「所長はいるかしら?」

漣「いません」

龍驤「今ちょっと手ぇ離せんのや。時間あるんやったら待ってたら?」

愛宕「はぁい」

漣「大丈夫?時間ないんじゃないの?漣がご主人様に伝えておくから帰ったら?」

愛宕「大丈夫よ。今日お店お休みだから」

愛宕「それよりも喉乾いちゃったなぁ」

漣「自分の母乳でも飲んでれば?」

愛宕「いやぁだ、まだ出ないわよぉ」

愛宕「所長が協力してくれれば、すぐ出るようになるんだけどなぁ」

漣「夢見てますね。起きてますか?夜型生活でボケてませんか?」

潮「漣ちゃん、さっきのお話なんだけど」

漣「おっ?なんだなんだ?駄肉サンドで漣を溺れさす気か?」

潮「えっ・・・」

朧「なに言ってるの?それよりも炊事当番のことだけど」

愛宕「あらぁ?見慣れない子ね」

潮「あ、あの、潮・・・です。よろしくお願いします」

朧「朧と言います。潮の姉になります。多分」

漣「そういやボーロも結構あるんだよな・・・」

漣「まずいですよ龍驤さん!T字不利ですよ!T字不利!」

龍驤「巻き込まんといて。ほれ愛宕、こんなんしか無かったけど」

愛宕「わーい、龍驤さん大好きー。ありがとー」

漣「ね、愛宕さん。うちの潮を差し出しますから、今日のところは帰ってもらえませんか?」

潮「えっ・・・?」

漣「あのねウッシー。この金髪駄肉はね、夜の世界で男を食い荒らすカマキリなの」

愛宕「頭からガブーッ」

漣「ウッシーの引っ込み思案なところもきっと直るから、学んでどうぞ」

潮「漣ちゃん、私のこと、嫌いなの・・・?」

愛宕「あー!泣かせたー!いーけないんだいけないんだー、所長に言ってやろー」

漣「歳考えろよ駄肉」

愛宕「うふふ。私まだ生まれてからそんなに経ってないからー」

漣「ハタチ扱いになってるでしょ!」

朧「ねぇ、次の炊事当番の話なんだけど」

龍驤「朧ってあれやな。マイペースやな」

愛宕「あー、でもそれもいいわねー。誰かスカウトしてこっかなー」

漣「ね?うちの潮ならほれこの通り、おっぱいもでかいですし」

漣「潤んだ瞳、上目遣い、ばっちりだと思うんですよ」

朧「漣って潮のこと大好きだよね。曙とそーゆーとこ似てるね」

漣「うっせ」

 ワイワイ ガヤガヤ

雷「ね、所長。困ったことがあったら、いつでも雷に頼っていいのよ!」

電「電もお手伝いするのです」

所長「ありがとうな。また遊びにおいで」

愛宕「はぁい、お久しぶりー」

電「あ!愛宕さんなのです」

雷「久しぶりじゃない!」

所長「よぉ愛宕、おはよう」

愛宕「おはようございまーす」

雷「変よ。もうすぐ夕方になるのに、おはようはおかしいわ」

愛宕「いいのよ。オトナの挨拶はいつだっておはようなのよ」

電「愛宕さんはオトナなのです」

所長「じゃあ気をつけて帰りなさい。お父さんによろしくな」

電「はいなのです」

雷「じゃーね所長!会えて嬉しかったわ」

所長「俺もだよ」

愛宕「あら?この子たちだけで大丈夫なの?お家、遠いんじゃ」

漣「社長直々にお迎えが来るんですよ。いいからお前も帰れよ」

愛宕「社長さん、こないだ父の日に似顔絵を描いてもらったんですって」

漣「なんだその泣ける話。っつか社長も店行ってんのかよ」

所長「で、今日はどうしたんだ?」

愛宕「営業に来ただけよ?だって最近全然お店に来てくれないんだもの」

所長「あぁ、そういうことか。いや最近忙しくてな」

漣「ほらもういいでしょ!ご主人様は忙しいんですよ。今日も磯風さんと不知火さんをさんざん泣かせたんですから」

愛宕「あらぁ?女泣かせなのね?」

所長「いや、泣かせたのは香取だからな?俺じゃないぞ」

朧「お店って、なにやってるんですか?」

愛宕「うふふ、夜のオ・ミ・セ」

潮「夜の・・・?」

漣「だから言ったっしょ?男を絡め取って食い荒らす女郎蜘蛛だって」

愛宕「お尻からガブーッ」

愛宕「・・・」 ストン

漣「きいいいいあああああああああ!!!」

潮「ひっ」

漣「さり気なくご主人様の隣に座ってんじゃねーぞ駄肉ううううう!!」

龍驤「めっちゃ自然やったな」

愛宕「煙草は?」

所長「止めたよ」

朧「今日の漣はいつも以上におかしいね。行こう潮」

潮「う、うん」

漣「ご主人様!漣も!漣も座りますぞ!」

所長「え?狭いからいいよ」

愛宕「プークスクス」

漣「ああああああああああああああ!!!」

オイゲン「ただいまー」

愛宕「あら?あらあらあら!?」

漣「陸奥さんかよ」

所長「おかえり、オイゲンさん」

愛宕「あなた、いいわね!いいわ!すごくいい!」

オイゲン「えっ?えっ?どなたですか?」

所長「元高雄型重巡の愛宕だよ。今は外で働いてるんだ」

オイゲン「外で?じゃあ先輩ですね。プリンツ・オイゲンです。よろしくお願いします」

愛宕「ねぇあなた、もうこの先どうするか決めてるの?」

オイゲン「えっ?高校に行くつもりですけど・・・」

愛宕「うちで働かない?あなたなら即トップになれるわ!」

オイゲン「えっ?トップ?」

所長「おいおい、オイゲンさんはまだ色々と学んでる最中なんだから・・・」

愛宕「逸材よ!一目見てピンと来たわ」

オイゲン「いえ、私は・・・」

漣「落ち着け駄肉。オイゲンさんをフーゾクに落とすな」

愛宕「ホステスって言ってほしいわね」

漣「はん、百歩譲ってキャバ嬢っしょ」

オイゲン「仲悪いんですか?あの二人」

龍驤「うんにゃ。仲えぇで、あれでも」

漣「大変っすね、そんな重たいタンクぶら下げて。最近の豊胸手術って凄いんすね」

愛宕「残念、自前なのよ?」

漣「性病とか気をつけて下さいね」

愛宕「そんな心配いらないわ。ねぇ所長?」

所長「ん?うん」

漣「艦娘やめてから老けてきてません?そんなに小じわありましたっけ?」

愛宕「ちゃあんと気を遣ってますー。まだまだピチピチですー」

漣「中古って市場価値どんどん下がってくんでしょ?大変っすね」

愛宕「うふふ。私が中古かどうかは、所長が一番よく知ってるわ。ね?所長」

所長「ん?うん」

龍驤「君な、ろくに話聞いとらんのにテキトーに返事したらあかんで」

愛宕「漣ちゃんは大丈夫なの?トンネル開通工事無期延期してるそうじゃない」

漣「くっ・・・、漣はご主人様に大切にされてますから!」

愛宕「大切にされたまま未開通の終わるのね。プークスクス」

漣「表出ろ駄肉ぅううううう!!」

オイゲン「やっぱり仲悪いんじゃ・・・」

龍驤「いや、それが仲えぇんや。不思議と」

愛宕「あー、楽しかった。じゃあもう帰るわね」

所長「あぁ、近い内に顔出すから」

愛宕「待ってるわ。チュッ」

漣「・・・オイゲンさん、漣の主砲持ってきてくれません?」

龍驤「アホ」

愛宕「じゃあね、漣ちゃん。また来るわね」

漣「菓子のひとつでも持ってこいよ。気が利かねー駄肉だな」

愛宕「ふふっ、そうするわ。じゃあね」

オイゲン「なんか、すごい人でしたね・・・」

所長「うん。彼女も苦労して今の地位を確保したからね」

所長「本当に強い、すごい女の子なんだよ」

龍驤「愛宕の仕事はな、ものすごい重要なんや」

龍驤「前に言うたな。解体された艦娘で、今も行方知れずの子らがおるって」

オイゲン「はい・・・」

龍驤「そん中にはな、風俗で無理やり働かされてる子らもおるんや」

龍驤「愛宕はな、そういった子らを救うために働いとる」

龍驤「自分たちが受け皿になって、掬い上げようとしてるんや」

漣「夜の世界で、男性相手に働く・・・。下に見るつもりはありません」

漣「本人がそれを望んで、その道に行ったのなら」

龍驤「せやな。でもそうじゃない子がおる」

漣「そういった元艦娘たちを見つけて、掬い、救う」

龍驤「簡単なことやないで。ほんま頭が下がるわ」

所長「あとね、副産物としてだが、現役の軍人たちにも愛宕は評判がいいんだよ」

オイゲン「どうしてですか?」

所長「愛宕は元艦娘だからね。艦娘の気持ちをよく理解してる」

所長「自分の部下である艦娘との接し方に悩む司令官は多いのさ」

所長「そんな時、彼女に相談に乗ってもらうんだ」

オイゲン「・・・ふむふむ、なるほど」

所長「色んな、本当に色んな仕事があるんだ。元艦娘だからこそ出来る仕事だってね」

オイゲン「元艦娘、だからこそ・・・」

龍驤「さ、日も暮れてきた。今日も飯炊き誰や?」

オイゲン「私です!」

漣「じゃあ行きましょう。漣も手伝いますよ!」

オイゲン「ダンケ!」

所長「オイゲンさんも本当に明るくなった。あれが本来の彼女なんだろうね」

龍驤「・・・せやな」

所長「どうした?」

龍驤「いや、オイゲンさんはもう心配あらへん。あらへんけどな」

所長「・・・」

龍驤「君もそろそろ覚悟決めぇや。いつまでもいつまでも手元に置いとくわけにいかへんやろ」

所長「あぁ。分かってる」

龍驤「いつか自分の足で立って、自分の足で歩かなあかん」

龍驤「今の状況、決してあの子のためにならんで」

所長「・・・分かってるさ」

所長「分かってるんだ・・・」

いったん終わり

生きる為に犯罪に走らざるおえなかった曙たち
救うために夜の世界に身を投じた愛宕
ある意味一番書きたかった話でした

今日はここまで また次回

乙乙。愛宕泣かせるじゃねえか…
ところで提督候補教育係の香取達は現役の艦娘なんかな?

>>139
そうだよ、現役艦娘

あんだけ推敲してもちらほらと誤字脱字あるなぁ・・・
書き終わってから時間置かないと駄目だな
頭の中に完成した文章があるから発見できない

どうしてみんな白雪の部屋を片付けているの?

どうして白雪の荷物を持っていっちゃうの?

やめてよ それは白雪が大切にしている本なんだよ

持っていかないで 捨てないで

やめろッテ 言ってルのニ

白雪ノ 物ニ 触ルナ 出テイケ

帰レッ!!

初雪「・・・ッ!!」

初雪「はぁ・・・、はぁ・・・、はぁ・・・」

初雪「・・・うっ・・・、うぇっ・・・」

初雪「・・・」

初雪「白雪・・・」

夢を見た

とても悲しくて

とても怖い夢を

次回は「初雪」

姉を喪い、心に深く傷を負った艦娘のお話

皆さん、春イベお疲れ様でした
最後の瞬間まで頑張ってましたが二隻目のゆーちゃんは来てくれませんでした
今回の大規模作戦で解体された艦娘は百隻を超えました

では続きを書く作業を再開するのじゃ

白露「私たち、砲火後ティータイムは、いつまでも、砲火後です!ありがとうございました!!」

 ワー パチパチパチ

 アンコール! アンコール!

白露「みんなありがとう!本当にありがとうー!!」

深雪「ありゃ、アンコールは無しかな」

磯波「時間が押しちゃってるみたいだね」

所長「大したもんだ。いや俺だって若い頃はギターをだな」

深雪「控室行ってみようぜぃ」

磯波「あ、待ってよ深雪ちゃん」

所長「お、おい、置いていかないでくれ。学生ばかりの所におっさんがいるのは居心地が・・・」

白露「わぁ所長!ちゃんと来てくれたんだね!」

所長「約束しただろ?」

夕立「深雪ちゃんも磯波ちゃんも来てくれたっぽい!」

村雨「ありがとうね、わざわざ見に来てくれて」

深雪「自分が通う学校ってやつを見てみたかったしな」

磯波「楽しかったね」

時雨「所長、その包みはなんだい?」

所長「目ざとい奴め。ほら、差し入れだ」

白露「わぁ!ケーキだ!美味しそう~」

夕立「これ!夕立はこれにする!これがいい!!」

時雨「そこは“ぽい”じゃないんだ」

夕立「っぽい!」

所長「いっぱいあるから、焦らなくていいぞ、夕立」

夕立「深雪ちゃんたちは・・・ムグムグ、いつ入学ムグムグっぽい?」

時雨「行儀が悪いよ、夕立」

村雨「龍驤さんに言いつけちゃうわよ」

夕立「ぽい~・・・モグモグ」

深雪「あたしらはいつでもいいんだけどなー」

所長「今書類を作成してるところだからな。出来次第すぐに申請するさ」

磯波「私たちもここに通えるんですね」

白露「早く入学してこないと、白露たち卒業しちゃうからね?」

所長「あぁ。何とか間に合わせたいな」

夕立「そういえば初雪ちゃんは?来てないっぽい」

所長「初雪・・・は」

深雪「誘ったんだけどな。・・・具合悪いらしくってさ」

磯波「う、うん。お腹痛いって。ごめんって謝ってたよ」

村雨「嘘が下手ね。揃いも揃って」

夕立「ぽい~、残念っぽい」

白露「そっか。まだ・・・駄目なんだね」

所長「あぁ。まだ、難しい」

時雨「こればかりは時間が解決してくれることを祈るしかないさ」

所長「何とかしてやりたいんだがな」

時雨「大丈夫だよ、所長。雨は、いつか止むさ」

所長「・・・そうだな」

初月「このハンバーガーというものは、・・・美味しいな」

オイゲン「でしょ?ナゲットもお勧めですよ」

天龍「食わせすぎだろ」

龍田「でも分かるわ~。初月さんってこう、どんどん食べさせてあげたいっていうか」

天龍「いや、分かっけどよ。っつかオイゲン、お前金使いすぎじゃねーか?」

オイゲン「えっ?そうかな」

天龍「今日だってずいぶん買い込んでるじゃねーか。大丈夫かよ」

オイゲン「これは勉強をするためのものだからいいの」

龍田「オイゲンさんって、恩給出てるのよね?」

オイゲン「うん。結構頑張って戦ってたからね」

天龍「じゃあいいか、ってわけにもいかねーんだぜ?生きてくにゃあ何かと金が要るからな」

オイゲン「ちゃんと貯金してるよ。大丈夫!」

初月「僕も学校に行ってみたいな」

天龍「いーんじゃねーか?初月なら中学か?」

龍田「高校でもいいと思うわ~」

オイゲン「私も高校行くって決めたのはいいんだけど、どこの高校にするかはまだ迷ってて」

初月「長良と五十鈴は高校だったか?」

天龍「高校だよ。1年のはずだぜ」

龍田「遠いから滅多に会えなくなっちゃったけどね~」

初月「もしかしたら、僕の姉さんたちもどこかの学校に通っているんだろうか」

天龍「あー、秋月型って貴重だからな・・・、可能性は低いんじゃねーか?」

初月「そうか・・・」

オイゲン「大丈夫ですよ!私たちがいるじゃないですか」

龍田「そうよそうよ~」

初月「そうだな。ありがとう、心強いよ」

天龍「俺たちは実戦に出てねーから、手当が雀の涙なんだよなー」

オイゲン「スズメノナミダ?」

龍田「少ししか貰えないってことよ~」

初月「僕も実戦は知らない。手当は期待できそうにないな」

天龍「まぁバイトだって出来るし、寮だから家賃もかからねぇ。飯ならセンターで食えるしな」

初月「漣がぼやいていたぞ。とっくに出ていったのに、ご飯だけ食べに来るって」

龍田「あらひど~い。ちゃんとお仕事手伝ってるのよ~?」

天龍「そうだぜ?大体お前が来た時だって働いてたんだからな」

オイゲン「働く・・・働か・・・ざ」

初月「働かざる者食うべからず、だ」

オイゲン「それ」

天龍「・・・それで思い出したけどよ。そういやあいつ、恩給貰ってんだよな」

初月「その思い出し方はどうかと思うが・・・」

オイゲン「あいつ・・・?」

天龍「初雪だよ」

初月「そうなのか?」

龍田「実戦経験あるはずよ~。詳しくは知らないけど」

初月「そうなのか。今度聞いてみよう」

天龍「やめときな」

初月「何故だ?」

龍田「私たちの、解体された艦娘同士での暗黙の了解」

天龍「過去には触れない」

オイゲン「アーモクノリョーカイ?」

天龍「むやみに相手の過去をほじくり返すなってことだよ」

オイゲン「ふむふむ、なるほど」

とりあえずここまで
ごちうさ観ながら続き書きます

ゆーちゃんと照月、欲しかったなぁ

1.よっしゃ、ひとまず書き終えたからチェックするか
2.問題なさそうだな、とりあえず一晩寝かせて再チェックだ
3.再チェックしたが所長の過去編いらんだろ、これ・・・。こんなん書くくらいならはよ初雪進めないと・・・
4.書き直そう・・・ ←今ここ

 ~所長室~

 コンコン ガチャ

朧「所長?・・・やっぱりまだ帰ってきてないよ」

曙「ったく、いつまでほっつき歩いてんのよ、あいつ」

潮「漣ちゃんもいないし、龍驤さんもいないし、どうしよう・・・」

曙「このままじゃ埒が明かないわ。鍵探すわよ」

潮「勝手に触ったらまずいんじゃ・・・」

曙「備蓄倉庫の鍵渡してないあいつが悪いんでしょ!知ったこっちゃないわよ」

朧「探そう。このままじゃ晩ご飯に間に合わないよ」

潮「・・・うん。じゃあなるべく散らかさないように・・・」

朧「あれ。あの壁のキーボックスがそうだよ。多分」

潮「でもキーボックスを開ける鍵が分からないよ・・・」

曙「引き出しとかに入ってんじゃないの?全部開けてみなさいよ」

曙「これでもない、これでもない・・・。ったく」

朧「・・・あれ?写真?」

潮「わ、これって所長?若いね」

曙「どれ?あ、本当ね」

朧「隣りにいるのは・・・奥さんかな」

曙「じゃあこっちは娘?ぷっ、見てよこの顔。なんか見覚えあると思ったら」

潮「少し似てるね。初雪ちゃんに」

朧「初雪が小さくなったみたいな感じだね」

曙「はん、そーゆー事」

潮「え?」

曙「あのクソ所長。初雪にはなーんか甘くない?」

朧「そうだね」

曙「飾ってあるんじゃなくてこんな所に写真をしまってるってことは、おおかた三下り半でも突きつけられたんでしょ」

曙「未練がましいったらないわね」

潮「・・・そうなのかな」

龍驤「・・・何しとるんや?」

朧「びっくりした・・・。あの、龍驤さん、朧たち、倉庫の鍵を探してて」

龍驤「そか。うちが予備持っとるから貸すわ」

龍驤「それと、その写真、はよしまいや。勝手に触ったらあかん」

潮「所長の、ご家族ですか?」

龍驤「せや。もうえぇやろ、行くで」

曙「それにしても結婚してたとはね。あんなのでも結婚できるのね」

朧「お元気なんですか?所長のご家族は」

龍驤「・・・」

朧「龍驤さん?」

龍驤「もうおらへん」

潮「・・・え?」

龍驤「変に興味持たれてあちこち聞き回られたら敵わんからな。言うとくわ」

龍驤「所長の奥さんも、お子さんも、もうおらへん。亡くなった」

龍驤「もう十年も前の話や」

曙「はぁ、疲れた。あとは食器洗うくらいね」

不知火「お疲れ様です。後片付けは不知火たちでやっておきましょう」

朧「ありがとう。お願いね」

曙「ところでさ、十年前って何か大きな事件とかあったわけ?」

不知火「十年前・・・。というと」

磯風「有名なのは、北海道の北東沖で起きた海戦だな」

不知火「ですね」

潮「どんな戦いだったのかな」

不知火「戦史で教わった程度しか知りませんが・・・」

龍驤「この国周辺で起きた海戦の中で、最低最悪の結果に終わった戦いや」

朧「龍驤さんって急に現れますよね」

潮「最低最悪って・・・、どんな戦いだったんですか?」

龍驤「敵さんにいいように引っ掻き回されてボロ負け、あげく国内の40%の艦娘を喪ったんや」

曙「国内の40%・・・!?どうしてそんなになるまで?」

磯風「戦力の逐次投入だよ」

不知火「一番やってはいけないことです」

磯風「そして北海道太平洋側の沿岸部も壊滅」

不知火「市民の避難も間に合わず、凄まじい数の死傷者が出たんです」

潮「・・・もしかして、所長のご家族ってその時に?」

龍驤「せや」

龍驤「・・・今でも覚えてる。燃えて崩れた病院。あちこちに立ち込める、死の匂い」

龍驤「当時うちと一緒におった鳳翔、赤城とで・・・、掘り起こしたんや」

龍驤「・・・所長が、初雪に甘いのは知っての通りや。似てるんやろな」

龍驤「生きとれば、今の初雪くらいになっとったかもしれへんって」

不知火「・・・不知火たちが聞いてもいい話だったのですか?」

龍驤「こいつ等にな、変に聞き回られるくらいなら、な」

龍驤「それにほれ、不知火と磯風は所長の・・・教え子やしな」

磯風「・・・そうだな」

朧「・・・ちょっと待って。十年前って・・・龍驤さん、何歳なの?」

龍驤「それ、今聞くことか?」

オイゲン「ハツユキちゃん、どうしたの?そんな所で」

初雪「う、ううん。なんでもない」

オイゲン「まだ食堂にリュージョーさんいるのかな。行く?」

初雪「い、いいよ。私、もう寝る、から」

オイゲン「そう?グーテ ナハト」

初雪「あ、あの」

オイゲン「ん?」

初雪「わ、私にここで会ったってのは、誰にも言わないで・・・」

オイゲン「・・・うん。分かった」

初雪「・・・お休みなさい」

オイゲン「・・・」

 ~翌朝~

漣「・・・漣は、反対です」

龍驤「うちも反対や。この子受け入れる言うんなら、まずあいつを何とかせぇ」

所長「・・・」

龍驤「君の言いたいことは分かる。せやけどこれは無理や」

漣「今はタイミングが悪すぎます。受け入れるべきではありません」

所長「その間、この子は宙ぶらりんのままだ」

漣「お互いのためにも、絶対すべきではありません。他に受け入れ先は無いんですか?」

所長「・・・うちが最後だそうだ」

龍驤「あんな、君はなんや?神様やないんやで?なんでもかんでも救ういうんは無理や」

所長「・・・分かってるさ」

漣「・・・いつか、いつかこうなるとは思っていましたが」

龍驤「うちらの手ぇは二本しかあらへん。あの子もその子も、そっちの子もなんちぅんは傲慢や」

所長「・・・分かってる」

漣「救えるだけ救いたいと願うご主人様の想いには賛成です。だから漣も、龍驤さんも付いてきたんです」

龍驤「せやで。伊達や酔狂で君とおるわけやないんや」

所長「それについては感謝しているさ。お前たちがいなければ・・・」

漣「断るべきです」

所長「受け入れを断られた艦娘がどうなるか、お前たちだって知っているだろう」

龍驤「いつか雨は止む、・・・なんて言うとる場合やなくなった。そういう事や」

龍驤「来るべき時が来たんや・・・」

 ―艦娘保護申請書―

特Ⅰ型駆逐艦 吹雪型二番艦 白雪

今日はここまで

大幅にカットした結果こうなりました
書いてから一日経ってふと「オリキャラの過去なんざ知りたいか?」と疑問に思いこうなったよ
まぁオリキャラって言っても提督だけどさ、艦娘の話だけでよくね?って

頭の中には一言一句間違いなく完成した文章があるから
「自分の手で書いた」目の前の文章が多少の間違った程度じゃ脳がすり合わせてしまうんだろうな

>>182
それな

最終チェック後、投下開始
これで初雪編は終わります

初雪「・・・」

オイゲン「グーテン モーゲン、ハツユキちゃん」

初雪「あ・・・、おはよう」

オイゲン「海なんて眺めてどうしたの?」

初雪「・・・別に」

オイゲン「何か見える?」

初雪「・・・何も、見えないよ」

オイゲン「そうでしょうね」

初雪「・・・所長か龍驤さんに何か言われたの?」

オイゲン「何も」

初雪「・・・そう」

初雪「ねぇ」

オイゲン「んー?」

初雪「人が死んだらさ、天国か地獄に行くんでしょ?」

オイゲン「・・・どうだろうね」

初雪「じゃあ艦娘は?」

初雪「艦娘は・・・、死んだらどこに行くのかな」

オイゲン「・・・ヴァルハラ」

初雪「・・・バル?」

オイゲン「ヴァルハラ、よ。戦士の魂が辿り着く聖なる場所。そこがヴァルハラ」

初雪「・・・艦娘は、そこに行く?」

オイゲン「戦士だからね。きっと」

初雪「私の・・・お姉ちゃんも、白雪も、そこにいるのかな・・・」

オイゲン「私が艦娘だった頃ね、同じ国出身の艦娘たちといつもこう言ってたわ」

オイゲン「ヴァルハラで会いましょうって」

オイゲン「・・・私はもうそこに行けなくなっちゃったけど」

初雪「靖国、みたいなものかな・・・」

オイゲン「ヤスクニ?」

初雪「・・・なんでもないよ」

オイゲン「・・・顔色悪いよ?眠れてないの?」

初雪「オイゲンさんは、大切な誰かを亡くしたことはある?」

オイゲン「・・・戦いで、戦友を何隻か・・・いえ、何人か失ったわ」

初雪「・・・会いたいと思う時はある?」

オイゲン「あるよ」

オイゲン「ハツユキちゃん、本当に顔色悪いよ。もう戻ろう?」

初雪「どうしたら白雪に会えるのかな」

初雪「どこに行ったら会えるのかな」

オイゲン「ハツユキ!」

初雪「っ!・・・突然大きい声出さないでよ」

オイゲン「戻りましょう」

初雪「・・・うん」

所長「初雪は?」

オイゲン「寝かせました。・・・眠れてたらいいけど」

所長「・・・やっぱりあいつは眠れてないのか」

龍驤「朝早くフラフラ歩いてたかと思たら、夕方まで出てこん時もある」

龍驤「おそらく、ここに来てからずーっとろくに眠れてへんのや」

龍驤「最近は特に酷ぅなっとる」

所長「・・・そうか。初雪がうちに来て、そろそろ一年になるのか」

龍驤「逆に言えば白雪が沈んでから、一年になるっちぅことや」

所長「少し出てくる。二人とも初雪を頼む」

龍驤「はいな、任しとき」

オイゲン「どこに行くんですか?」

所長「初雪と白雪がいた、鎮守府に」

提督「・・・扶桑から客だと言われて来てみれば」

所長「お久しぶりです」

提督「わざわざ遠路遥々、何のご用で?」

所長「初雪のことについて」

提督「今さら?だいたい報告書は提出しているはずだが」

所長「直接お話を伺いたく」

提督「本当に今さらだな。・・・初雪に何かあったのか?」

所長「・・・」

提督「話すことなどない。報告書に書いてあることが全てだ」

提督「もういいかな?大規模作戦のあとでてんてこ舞いでね」

所長「彼女は、うちに来てから夜は眠れていないようなのです」

提督「・・・夜?」

所長「少しずつ、少しずつではありましたが元気を取り戻し始めていました」

所長「ですが最近は・・・。まるで・・・」

提督「・・・夜が、闇が怖いんだ。初雪は」

提督「暗い海の底の、深海のような、闇が」

所長「深海・・・?」

提督「立ちっぱなしもなんだ。・・・座ってくれ」

所長「失礼します」

提督「扶桑、執務室に誰も近づけるな。お前も席を外してくれると助かる」

扶桑「はい。それでは失礼いたします」

提督「・・・何から、話そうか・・・」

提督「白雪を失ったあの戦いは、初雪も一緒に出撃していたんだ」

所長「・・・初耳です」

提督「初雪は覚えてないみたいだったからな」

提督「当時旗艦を務めていた艦娘の報告書によれば、完全な奇襲だったそうだ」

提督「最初に初雪が、次に白雪が狙われた」

提督「至近弾の初雪は気絶で済んだが、直撃を食らった白雪は・・・」

提督「艤装の回収すら出来なかった。辺りはすでに日が落ち、危険だと旗艦は判断した」

提督「・・・ときに、所長殿は現役時代に艦娘を沈めたことは?」

所長「あります。一度だけ」

提督「あれは堪える。仲間を失って、それでもなお泣くまいとする彼女たちを見るのは」

所長「同感です」

提督「・・・私が、艦隊が帰投したあとに初めてやった仕事は」

提督「同室の子たちに、白雪の遺品を整理させることだった」

提督「あれを命令するのもきつい。私は二度と御免だな」

所長「・・・はい」

提督「しばらくすると、宿舎から大きな物音が聞こえた」

提督「執務室のここまで、だ」

提督「慌てて宿舎に向かうと、私はそこで信じられないものを見た」

所長「初雪、ですか?」

提督「・・・そうだ。取り押さえようとする艦娘たちを、次々と叩きのめす初雪だ」

提督「こちらの声は聞こえていないようだった。軽巡も、重巡すらも彼女は・・・」

提督「戦艦級の艦娘たちが三隻がかりで、ようやく取り押さえたんだ」

提督「会話は成立しなかった。初雪はただ“白雪の物に触るな。帰れ”と言うだけ」

提督「その時の初雪の・・・、あの目が」

提督「まるで・・・、深海棲艦のように」

所長「・・・」

提督「あなたもかつては艦娘を率いていた身だ。話くらい聞いたことがあるのではないか?」

所長「艦娘の・・・深海化、ですか」

提督「艦娘と深海棲艦は、根本的には同一の存在である」

提督「信じてはいなかったが、な」

提督「私は恐ろしくなった。初雪が、あの初雪が、このままでは本当に仲間を殺してしまうのではないか」

提督「そうなった時、彼女はどうなる?あの子は?」

提督「姉を亡くして、その上で仲間まで手にかけたとしたら・・・」

所長「記録で見ると、白雪と初雪は全く同じ日に建造されているのですね」

提督「ただでさえ姉妹艦としての結び付きが強いのが艦娘だ。同じ日に生まれたとなれば、尚更だ」

提督「私は、怖かったんだ」

提督「・・・だから彼女を」

所長「私があなたの立場なら、きっと同じことをしたでしょう」

提督「・・・あの子は、初雪は、優しい子なんだ。あんなことをするような子ではない」

所長「はい」

提督「恐怖に負けてあの子を手放した私がこんな事を言う権利などない」

提督「ないが、それでも言わせてくれ」

提督「初雪を、頼む。どうか救ってやってくれ」

所長「微力を尽くします。・・・ありがとうございました」


 コンコン

オイゲン「ハツユキちゃ~ん?」

オイゲン「ごめんね、開けるね~」

初雪「・・・」

龍驤「うなされとるな。毎回こんなやったら、そらたまらんわな」

オイゲン「・・・汗もひどいわ」

龍驤「ごめんなぁ。こないなことしか出来へんくて」

オイゲン「なにしてるの?リュージョーさん」

龍驤「・・・おまじないや。ただの、おまじない」

オイゲン「オマジナイ?」

龍驤「・・・せめて、夢の中だけでも」

龍驤「死者を忘れないってことは大切や」

龍驤「せやけど死者に囚われてたらあかん。そんなん、あの子も望んでへんねや」

龍驤「初雪が苦しむ姿を、あの子が望んでるはずないんや」

龍驤「せやろ?初雪」

オイゲン「・・・これなぁに?紙?飛んでる・・・」

龍驤「ヒトガタ、や。オイゲンさん、まだ“視える”んやな」

オイゲン「ううん、なんか、うっすらと。・・・あまり見えないわ」

龍驤「えぇこっちゃ。オイゲンさんにはもう視えんでえぇものやから」

龍驤「ほな、な。初雪」

初雪「・・・うっ」

初雪「重い・・・」

初雪「はっ」

初雪「・・・なんでオイゲンさんがここで寝てるの?」

初雪「オイゲンさん、寝相悪い人だったんだ・・・。重っ」

初雪「・・・」

初雪「・・・トイレ」

初雪「なに?この紙切れ。・・・龍驤さんの?」

初雪「・・・いいや、トイレ行こ」

初雪「・・・もう夜なんだ」

初雪「・・・眠れてた、のかな。分かんないや」

初雪「・・・夜は、嫌だな」

 夜ハ嫌ダ

初雪「夜は嫌だ」

 夜ノ海ハ嫌イダ

初雪「夜の」

 ザブ

初雪「夜の」

 ザブ ザブ

初雪「夜の」

 ザブ ザブ ザブ

初雪「夜の」

 どこに行くんだ?

初雪「白雪がいるところ」

 そこに白雪はいるのか?

初雪「分からない。でもきっと白雪はそこにいるよ」

 暗い海の底にか?

初雪「分からない」

 そんなところで、初雪を待っているのか?

初雪「分からないよ」

 初雪がそこに来ることを、白雪は望んでいるのか?

初雪「えっ・・・」

 そこに白雪はいない
 お前がそんなところに来ることを、白雪が望んでいるはずがない
 そうだろう?

初雪「・・・誰?」

所長「目が覚めたか?初雪。こんな夜中に海水浴とは感心しないな」

初雪「司令官・・・」

所長「残念だが、俺は司令官じゃない」

初雪「あ・・・」

所長「さて、目が覚めたところで一緒に海から出ないか?さすがに海水浴にはまだ早い」

初雪「・・・沈んでしまった艦娘は、どこに行くのかな」

所長「・・・」

初雪「オイゲンさんは、ヴァルハラに行くって言ってた」

所長「ヴァルハラ?・・・金剛もそんなことを言ってたな」

初雪「白雪はそこにいるのかな」

所長「・・・ヴァルハラ、か」

初雪「私は死んだらどうなるんだろう。天国とか、地獄とかに行くのかな」

所長「・・・まぁ、俺は地獄に行くだろうが。初雪は行かなくて大丈夫だろ」

初雪「所長が?どうして?」

所長「艦娘を戦いの道具にして、戦争に駆り出した俺たち軍人が地獄に行かないでどうする」

所長「全部背負って地獄に行かにゃ、行ってやらにゃあ顔向けが出来ん」

初雪「誰に?」

所長「沈んでいった、沈めてしまった、艦娘たちにだ」

初雪「そこに所長の家族はいるの?」

所長「・・・いない。いてたまるか」

初雪「じゃあ所長が地獄に行っちゃったら、奥さんも娘さんも寂しがるよ」

所長「たった今入水自殺しようとした奴に言われるとは思わなかったな」

所長「同じことをそのまま返してやる。海の底に白雪はいない」

所長「お前がそこに行ったって、白雪は悲しむだけだ」

初雪「じゃあどこにいるの?」

所長「どこにもいない」

所長「どこにもいないんだよ」

初雪「奥さんと娘さんに会いたい?」

所長「・・・会いたいさ。今でも」

初雪「一緒だね」

所長「似た者同士だ。俺たちは」

初雪「・・・だから私に、優しくしてくれるの?」

所長「放っておけないのは確かだ。前に進めないお前は、あの時の俺にそっくりだからな」

初雪「ふぁ」

所長「どうした?」

初雪「っくしゅっ」

所長「中に入ろう。風邪をひく」

初雪「所長の部屋、初めて入った」

所長「タオル使え。ほら、着替えも」

初雪「うん」

所長「ホットミルクをご馳走してやろう」

初雪「子供じゃないよ」

所長「子供のセリフだな」

初雪「あ、美味しい」

所長「なぁ」

初雪「なに?」

所長「聞かせてくれ。白雪のこと」

所長「楽しかったこと、大変だったこと、色んなこと」

初雪「・・・私も」

初雪「私も所長の奥さんと、娘さんの話、聞きたい」

初雪「それでね・・・、白雪がね・・・」

初雪「あの時もね、白雪が」

初雪「それから・・・」

所長「・・・眠いか?」

初雪「・・・だい、じょ」

所長「ほら、横になれ」

初雪「やだ・・・、まだ・・・」

所長「聞いてるよ。眠るまで、ずっと」

初雪「・・・この布団、なんか、おじさん臭いよ」

所長「・・・」

初雪「あ、ほんとに傷ついたって顔してるね」

所長「・・・」

龍驤「おはようさん」

所長「・・・あぁ、おはよう」

龍驤「前代未聞やな。艦娘センターの所長が、保護対象連れ込んで添い寝たぁ」

所長「お前が黙ってればバレないさ」

龍驤「・・・よぉ寝とる。おまじないよりもそっちか」

所長「おまじない?」

龍驤「なんでも」

所長「・・・」

龍驤「目ぇは覚めたか?踏ん切りついたか?」

所長「あぁ」

所長「・・・初雪を、閉じ込めていたのは」

所長「俺だったんだな」

龍驤「・・・」

所長「俺が、ずっと」

龍驤「アホが。一年もかけよってからに」

所長「・・・こんなに、弱い人間だったとはな」

龍驤「強いつもりでおったんか?ヘソで茶ぁが沸くで」

所長「・・・結局、救うどころか、俺は」

初雪「違うよ」

龍驤「おはようさん」

初雪「所長はずっと私を守っててくれたよ」

初雪「龍驤さんも」

初雪「漣も」

初雪「オイゲンさんも」

初雪「みんな」

初雪「だから泣かないで」

所長「・・・ごめんな。ごめん」

初雪「大丈夫だよ。ほら、抱きしめてあげる」

龍驤「・・・もうえぇんか?」

初雪「うん。大丈夫」

初雪「だから、許してあげて」

龍驤「初雪に言われたら、そらな」

初雪「怖い夢は見なかった」

初雪「白雪は、笑ってたよ」

龍驤「そか・・・。良かったな」

初雪「うん。だからもう、大丈夫」

オイゲン「グーテン モーゲン」

初雪「おはよう、オイゲンさん」

オイゲン「目が覚めたらハツユキちゃんいないんだもの。リュージョーさん起こして探しちゃったよ」

初雪「ごめんなさい。ありがとう、オイゲンさん」

オイゲン「顔色、良くなったね」

初雪「お腹空いたよ」

オイゲン「いいわね、それじゃ一緒にフリュー シュトゥクね」

初雪「不良所得?」

オイゲン「あー、朝ご飯、よ」

初雪「うん。行こう」

深雪「めっずらしー!朝から初雪が食堂に来るなんて」

磯波「おはよう、初雪ちゃん。オイゲンさんも、えっと、グーテ・・・」

オイゲン「グーテン モーゲン」

深雪「モーゲンモーゲン。初雪、今朝の献立は深雪スペシャルだぜ」

初雪「ただの目玉焼きでしょ」

オイゲン「ヴルストは?」

深雪「ちっちっち、目玉焼きっていったらハムだぜ」

深雪「ハムエッグをご飯の上に乗っけて、醤油をかけて食うのさ!」

初雪「なんでもいいよ。お腹空いたよ」

磯波「座って待っててね。今よそってあげるから」

所長「今まで生きてきて、今日ほど恥ずかしい日はなかったな」

龍驤「中学生くらいの女の子に抱きしめられて泣いてりゃ、そらな」

所長「・・・前を向いて、歩いてきたつもりだったよ」

龍驤「たまには振り向いたってえぇんや」

龍驤「立ち止まっても」

龍驤「せやけど囚われたらあかんねや」

所長「ちっ、俺の半分も生きてないくせに」

龍驤「ドアホ。艦時代から考えたらこっちのセリフや」

所長「それ、ずるいぞ」

所長「で?漣はあそこでなにやってんだ?」

龍驤「けけけ、君の部屋で初雪が一晩過ごしたって教えてやったらあのザマや」

龍驤「膝から崩れ落ちてさめざめと泣きよって、あれや」

所長「なんだよ、今度は漣かよ」

龍驤「忙しゅうなるな?所長はん」

所長「くそっ、立ち止まってる暇もないな」

龍驤「えぇことやんか」

所長「ほら、漣。立て立てこの野郎」

漣「舌を噛んで死にます」

所長「艦娘がそれで死ぬか、アホ」

漣「だったら今すぐ抱いて!ここで!」

所長「よしよし、抱きしめてやるぞ漣」

漣「マジで!言ってみるもん・・・ちょ、いた、苦し」

漣「きつい、きつい、マジ、ご主人様」

漣「おごっごっぐ」

龍驤「良かったなぁ漣。うち涙が出てきたわ。えぇもんやわ」

漣「おま、止めろ、マジきつい、おふ、おふ」

龍驤「ほな、さいならさん」

漣「ふごふご」

所長「ありがとうな、漣。龍驤」

龍驤「はいな。ほな例の件、進めとくで」

漣「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ」

 ~数日後~

白雪「今日からお世話になります。白雪と申します」

所長「よろしく、白雪さん」

漣「綾波型の九番艦、漣だお!」

龍驤「うちは龍驤や。まぁこれから面倒見たるさかい」

所長「それから――」

初雪「初雪、です。よろしく」

深雪「おっす!深雪さまだよ。よろしくな」

磯波「磯波です。よろしくお願いします」

所長「白雪さんと同じ、元吹雪型の子たちだ。君の先輩にあたる」

深雪「艦娘ん時は姉だったけど、ここでは深雪さまの方が先輩だかんな!」

磯波「・・・もう、それはどうでもいいでしょ?」

初雪「・・・」

白雪「あ、あの・・・」

初雪「握手」

白雪「えっ?あっ、はい」

初雪「よろしく。白雪」

白雪「・・・はい!よろしくね、初雪ちゃん」

所長「・・・初雪。白雪さんを案内してあげなさい」

初雪「やだ。めんどい」

所長「・・・」

龍驤「・・・くくっ」

漣「・・・ふっ、うぷぷ」

所長「・・・初雪?」

初雪「はぁい。そんな顔しないでよ、もう」

深雪「こっちだぜ、ついてきな」

磯波「それでは、失礼します」

白雪「失礼いたします」

 ガチャ バタン

龍驤「・・・くくく、うまくやれそうやんか」

漣「変わんねーなー、あんま」

所長「変わるさ。これから、いくらでも」

所長「あの子たちの先は、まだまだ長いんだからな」

初雪編、終わり

これで書き溜めも尽きた

ここから先は艦娘に関する小ネタを二つ三つ書いて
初雪卒業編、オイゲン卒業編書いて、エピローグ書いて終わるつもり

今月中には完結するだろ(慢心)

ほな、また

次回予告

艦娘は人間扱いしてもらえない!?
「艦娘、法律のアレコレ」

艦娘だって穴はあるし、性欲だってあるんですよ!
「艦娘、性のアレコレ」

人間社会に対する広報活動に精を出す、広報艦娘がいるって?
「戦艦長門の憂鬱」

この三本で行く予定です

 ~ある日の繁華街で~

曙「はぁ、はぁ、はぁ」

潮「はっ、はっ、はふっ」

漣「大丈夫かー?深呼吸だぞ深呼吸」

朧「すー、っふぅー」

曙「なん・・・で」

漣「ちょっと走ったくらいでだらしねぇな」

曙「なんであいつ等叩きのめさなかったのよっ!!」

漣「暴力はいけない」

朧「はぁ、落ち着いた。大丈夫?潮」

潮「も・・・もうちょっと・・・」

曙「腹立つわあいつ等!潮にちょっかい出してきて」

漣「まぁこのおっぱいじゃね。仕方ないね」

朧「曙も喧嘩っ早いね。危ないよ、それじゃあ」

曙「潮を助けようとしただけよ!」

潮「ありがとう・・・曙ちゃん。はぁ・・・はぁ・・・」

曙「大体あんた!現役の艦娘でしょ!あんな奴ら簡単に倒せるんじゃないの!?」

漣「やろうと思えば」

曙「だったら!」

漣「でも出来ないの。艦娘だから」

曙「意味分かんない!」

所長「せっかく社会見学に出かけたのに、それで帰ってきたのか」

朧「あのあとに遊ぶって空気じゃなくなったから・・・」

曙「ふんっ」

所長「それで曙はプリプリ怒ってるのか」

潮「あの、潮が、のろのろしてたから・・・」

所長「それは違うよ。運が悪かっただけさ」

漣「まぁ社会に出りゃああんなのもいるって。気にすんな!」

曙「あんたね・・・!」

所長「・・・手は出さなかったのか?」

漣「当然」

曙「それよ!なんでやり返しちゃ駄目なのよ!?」

所長「それは漣が艦娘だからだよ。元艦娘のお前たちと違ってな」

龍驤「漣は今でも艦娘や。うちもやけどな」

龍驤「そんな漣が民間人に手ぇ出してみぃ。大問題になるで」

曙「なんでよ!?振りかかる火の粉を払うだけじゃない!」

龍驤「曙らならそれで済むんやけどな」

皐月「なになに?騒がしいね。なんの話?」

如月「愛宕さんがお菓子持ってきてくれたのよ。お茶にしましょう。いいでしょ?所長」

所長「あぁ、そうだな」

所長「・・・いい機会だ。どれ、いっちょ艦娘に関する法律の話でもするか」

磯風「」

不知火「」

所長「あそこで突っ伏してる奴らはどうしたんだ?」

皐月「大井さんにしごかれたんだってさ」

如月「大変だったみたいよ」

所長「ほらほら、起きろ起きろ。いい機会だから補習授業だ」

如月「はい、甘い物をどうぞ」

磯風「おぉ、甘味・・・、甘味だぞ不知火・・・」

不知火「不知火に・・・甘味など・・・」

所長「よし、みんな座れー」

所長「さて、朧から聞いた話を要約するぞ」

所長「街に出た曙たちが、チンピラに絡まれた」

所長「腕を掴まれた潮を助けようとした曙がチンピラ達と口論になった」

所長「突然、漣が大声で周りに助けを求めたかと思ったら」

所長「朧がチンピラを突き飛ばし、潮を救出。そのあとは走って逃げた、だな?」

漣「そうですよ」

所長「この時、チンピラ達と戦えるのは漣だけ」

所長「でも漣は戦おうとしなかった」

所長「曙はそれが不満だ、と」

曙「そうよ!」

所長「では聞こう。漣のこの時の行動に、間違いはあるか?磯風、不知火さん」

磯風「ない」

不知火「ありません。正しい判断だと思います」

曙「なんでよ!!」

磯風「それは漣が現役の艦娘だからだ」

曙「またそれ?」

磯風「もしも漣が応戦して、相手に怪我でも負わせた日には・・・」

不知火「管理不行き届きで所長が処罰されます」

朧「・・・管理?監督じゃなくて?」

潮「まるで“物”みたい・・・」

龍驤「・・・“物”なんや。艦娘は」

曙「はぁ!?」

漣「艦娘は兵器。艦娘は器物扱いなんだよね。これはどの国でもそうなんだよ?」

曙「どういうことよ!」

所長「まぁ人間側の都合で出来た法律ではあるが、な」

皐月「艦娘を人間と同じようにしちゃ駄目ってこと?」

漣「そうしちゃうと、大きな問題が生じるんですよ」

所長「さて、その問題をオイゲン先生に教えてもらおうか」

オイゲン「はい!グーテン ターク。今日は私が先生役だよ」

龍驤「香取みたいな眼鏡まで用意しよって。やる気満々やな」

オイゲン「私の国ドイツでも、艦娘は兵器として扱われています」

如月「何が問題になるのかしら?」

オイゲン「一番大きいのは年齢ね。艦娘は建造された日から換算すると、ほぼ全員が未成年になってしまいます」

朧「え?艦時代の進水日とかじゃ駄目なんですか?」

オイゲン「そしたら全員お婆ちゃんだよ。定年退職だね」

潮「艦娘だけは例外にすれば・・・」

オイゲン「それも不平等じゃない?人間として扱おうとしながら、年齢に関してだけは例外って」

オイゲン「それじゃ意味ないよ。というか、この年齢こそが最大の問題なんだもの」

所長「なぁ、曙は今は普通の女の子だが、人間の年齢では何歳で登録されてる?」

曙「14歳よ」

所長「うん。元艦娘の子たちは、その見た目から大体の年齢を決められる」

所長「変な話だが・・・

 愛宕「愛宕でーす!年齢はぁ17歳でーす!きゃはっ」

 ・・・みたいなことも、まぁ出来るっちゃあ出来る。やらないけどな」


所長「皐月、朝潮型の子たちは何歳くらいに見える?」

皐月「んーと、でも小学生っぽいよね」

所長「暁型の子はどうだ?」

如月「どう見ても小学生にしか見えないわ」

所長「艦娘を人間として扱った場合、小学生か中学生にしか見えない駆逐艦娘たちを戦場に出すってことになる」

所長「軽巡はどうだ?川内型は?球磨型は?長良型は?」

磯風「・・・」

不知火「どうしました?磯風。大淀さんならいいんじゃないか?みたいな顔をしていますが」

磯風「思っても口に出すな」

オイゲン「天龍型だって、高校生くらいにしか見えないわ。未成年に変わりはないの」

オイゲン「未成年を戦場に出すってね、今の時代じゃ大問題になるのよ」

所長「学徒動員って時代じゃないんだ」

龍驤「まぁ決して楽観視出来る状況でもないんやけどな」

所長「じゃあ大人に見える重巡や空母、戦艦の艦娘のみを使えばいい、となるか?」

所長「それらを掃海や哨戒、輸送や護衛に使う?」

所長「それがどれだけ馬鹿な話か、元艦娘のみんなになら分かるな?」

所長「それにな、艦娘って存在自体、どう考えても非人道的なんだよ」

所長「少女に武器を持たせて戦場に出すんだ。どんな理由をつけても、それが事実だ」

所長「かと言って駆逐艦娘や軽巡艦娘、潜水艦娘を使わない訳にはいかない」

所長「深海棲艦に真正面から対抗出来るのは、艦娘しかいないんだからな」

オイゲン「これが、艦娘が人間扱いされない、出来ない原因なの」

曙「・・・ふん。だから簡単に作って、簡単に捨てられるってわけ?」

所長「・・・そういう奴も出てくるな。だがそれが許されるわけじゃない」

オイゲン「兵器を粗末に扱う軍人なんて殆どいないわ」

オイゲン「粗末に扱った結果・・・、“暴発事故”なんて実例もあるんだからね」

磯風「・・・」

不知火「今のオイゲンさんの笑顔、まるで大淀さんのようだと思っていますね?磯風」

磯風「だから口に出すなというのに」

オイゲン「艦娘は兵器。でも普通の兵器とは決定的に違うところがあるわ」

漣「   心   か   」

オイゲン「そう、心。感情」

漣「・・・」

龍驤「ボケる相手は選ぼうな?悪いクセやで、それ」

所長「喜怒哀楽があり、自分で考え、行動できる兵器。それが艦娘って認識なんだ」

所長「・・・まぁ、人間の都合で無理やり作った基準、法律だからな」

龍驤「しかも戦争初期のドサクサで慌てて作られた、な」

漣「法律にも穴はあるんだお!」

オイゲン「それでもそう決まっている以上、従うしかないの」

漣「・・・」

龍驤「アホ」

所長「さぁ、授業はおしまいだ。解散解散」

 「「「はぁーい」」」 ゾロゾロ

所長「いつかこの子たちの中から・・・、この国の“艦娘法”を変える奴が出るかもなぁ」

龍驤「ふふん、長生きせなあかんな」

所長「・・・そうだな。なに、俺だってまだまだこれからさ」

龍驤「せやな。初雪ももう心配あらへんし」

龍驤「君も、な」

所長「おう。これからも頼むぞ」

龍驤「任しとき」

漣「漣もおりますぞ!ご主人様!!」

所長「もちろんだ。これからも支えてくれ」

漣「へへっ」

曙「めんどくさいのね、人間社会って」

潮「でも覚えなきゃ。人として生きていくなら」

磯風「やらなければならないことは多い」

朧「慣れていかないとね。朧たちも」

皐月「さ、ご飯の準備しないと。僕は文月たちを呼んでくるね」

如月「お願いね、皐月ちゃん」

所長「あっ、そうだ。さっき大淀から電話があってな」

所長「磯風はあとで特別課題を出すそうだ」

磯風「・・・」

不知火「ふっ」

所長「不知火さんも、だそうだ」

不知火「・・・馬鹿な、なぜ・・・。不知火に落ち度は・・・」

龍驤「オチもついたようやな。ほな、また」

 ~そんなある日~

 「ひゃあああああ!!」

漣「黒い悪魔でも出たかな?」

所長「こっちの部屋から聞こえてきたな。なんだなんだ?」

漣「あー、こないだ来た新人の、えっと」

所長「巻雲さん?どうしたんだ?大丈夫か?」 コンコン

巻雲「血が、血が!」

漣「・・・ご主人様。ここは漣にお任せを」

所長「・・・うん、任せる」

漣「察しが良くて助かりますわ、ほほほ」

巻雲「血が、起きたら血が出てて・・・!」

漣「はいはい大丈夫ですよー。巻雲さんは初めてでしたね。びっくりしますよね」

巻雲「ううう、巻雲、病気なんですか?死んじゃうんですか?」

漣「大丈夫だ。問題ない」

漣「はい、巻雲さんにこのしおりをプレゼント」

巻雲「何ですか?“女の子の体のしくみ”?」

漣「ではでは3P目、“フェロモン大爆発!!ぶっちぎりデストロイヤーズ”の項をご覧くださーい」

巻雲「監修、鹿島。絵、秋雲・・・。秋雲!?」

所長「・・・」

龍驤「どしたん?廊下でボサーっと突っ立って」

所長「あそこにポーチが落ちてるな」

龍驤「あん?せやな」

所長「可愛い、いかにも女の子のポーチだな」

龍驤「せやな」

所長「・・・拾ってくれないか」

龍驤「・・・なんや君、いつまで経ってもこーゆーんは苦手やな」

所長「得意な男ってどうなんだ」

龍驤「せやな」

深雪「大丈夫だって。風呂に入りゃあ水圧で出ないから」

初雪「嫌だよ。自分なら入るの?」

深雪「入るわけないだろ!」

磯波「じゃあ言わないで・・・」

白雪「お腹が痛い・・・。痛いです・・・」

曙「くそっ、なんであたしがこんな・・・」

朧「何もしたくない・・・。動きたくない・・・」

潮「どうしよう、落としちゃったかも・・・。誰か貸してぇ・・・」

所長「・・・バーゲンセールか」

龍驤「流血大惨事やな」

所長「・・・しかし、だ。その、毎回思うんだが、みんな一斉になるもんなのか?」

漣「同じ場所で長く共同生活をしていると、周期が被ってくると聞いたことがありますね」

龍驤「ドミトリー効果っちぅやつや」

所長「いや、しかし俺が現役だった頃は・・・」

漣「忘れましたか?鎮守府が小さかった頃はこうでしたよ?」

龍驤「艦娘の数が増えて、宿舎を増設して、待機任務中の子らは専用宿舎にしとったやろ?」

龍驤「あれはこういう風になるんを防ぐ為のもんや」

所長「そうだったのか!?あの時榛名はそんなこと一言も・・・」

漣「言えるわけないでしょ!」

初月「」

オイゲン「」

如月「」

磯風「」

不知火「」

所長「こっちもか。死屍累々だな」

漣「激重かよ。比較的軽い子とかいねーのかよ」

所長「俺、ちょっと出てくるから・・・」

漣「一人でどこ行くんですか?こんな状況で」

所長「分かってくれよ、居づらいんだよ」

長月「ふん、だらしのない」

菊月「全くだ。たかがこの程度で」

皐月「僕まだで良かったぁ」

文月「ねー?」

龍驤「遅かれ早かれお前らもあぁなるんやで」

望月「ちょっと待ってよ。これって炊事当番あたし等になるんじゃ・・・」

三日月「モッチー、諦めようよ」

望月「めんどくせぇー!」

 ~数日後~

曙「なんで毎月こんなもんがあるのよ。めんどくさいわね、人間の体って」

初月「だがまぁ生きてる証拠だ。そう思うと悪くない」

文月「どんな感じなのぉ?やっぱりつらいの?」

曙「お腹の中に鉛が入ってる感じよ」

初月「ふっ、言い得て妙だな。砲弾を腹の中に抱えてる気分だ」

巻雲「初めてだったので死ぬかと思いました・・・」

文月「えぇぇ、嫌だなぁ。あたしなりたくないなぁ」

白雪「私たちは人の体になったから分かりますが、現役の艦娘もそうなんでしょうか」

初雪「そうだよ。艦娘ったって体は人のそれだから」

初雪「絶賛二日目で出撃かかった時はさすがに泣きそうになったよ」

漣「あー、ご主人様の赤ちゃん産みてーなー、漣もなー」

曙「ぶはっ」

巻雲「わっ!、き、汚いですよぉ」

曙「っのバカ!いきなりなに言ってんのよ!あーもう、牛乳が・・・」

初雪「そういえば私がいた鎮守府じゃそんな話聞かなかったけど」

初月「女だらけの職場と言えるあの場所で、あっても良さそうなものだな」

漣「艦娘じゃあしたってしょうがないからねー」

文月「どうしてぇ?」

漣「だってさ、入渠したら“治っちゃう”んだもん」

初雪「・・・怪我扱いなんだ、あれ」

漣「一発で決めてもらって寿退社しかないしなー」

曙「下品よ、あんたさっきから」

漣「出撃したあとってさー、ムラムラすんだよねー」

巻雲「・・・」

漣「興味ありげですねー?」

巻雲「そ、そんなことは・・・」

漣「ねー?ムラムラしたっしょー?」

初雪「・・・さぁ。別に」

文月「なんか向こうが騒がしいよぉ?なにかあったのかなぁ」

白雪「オイゲンさん?どうしたんでしょうか」

オイゲン「あーもう!16歳で登録したのはその為だったのに!」

三日月「この国じゃ飲酒はハタチからなんですよ」

オイゲン「ビールくらいいいじゃない!ねぇ?」

望月「ビール?飲んだことないからなんとも」

オイゲン「艦娘だった時は飲めたのよ。年齢関係ないから、駆逐艦の子すら飲めてたのに」

三日月「そんなに美味しいものなんですか?」

オイゲン「まぁね。そこまで大好き!ってわけじゃないけど、飲めないとなるとますます飲みたいわね」

オイゲン「・・・そうだ!愛宕さんのお店なら」

三日月「駄目ですよ。所長に言いますからね」

オイゲン「そんなぁ!」

漣「・・・那智さんを思い出したわ。あの人酒飲みたいが為にハタチ以上で登録してたし」

曙「・・・那智、さん」

白雪「どうしたんですか?」

曙「・・・なんだろう。なにか・・・ううん、なんでもないわ」

初雪「艦だった頃の記憶が、まだ少し残ってるんだよ」

初月「あぁ、そういえば僕も五十鈴には会ったことがないはずなのに、すぐ分かったな」

漣「ボーノだって初めて漣に会った時、すぐ分かったっしょ?」

曙「そういえばそうね」

巻雲「いいなぁ、姉妹艦がいて」

文月「巻雲ちゃんだっているでしょぉ?」

巻雲「そうですけど・・・、夕雲型は解体されることは少ないらしくて」

初月「僕もそうだ。姉さんたちに会ってみたいな」

曙「・・・、どうでもいいわ。この話はやめやめ」

初雪「いいよ、気を使わなくて」

曙「・・・そんなんじゃ」

漣「ボーノって優しいよね。そーゆーとこ好きだぜ?」

曙「そんなんじゃないわよ!ふん!」

初雪「艦娘ってやっぱり似るのかな。うちにいた曙もそんな感じだったよ」

白雪「そんな感じって?」

初雪「憎まれ口を叩くくせに寂しがり屋で、誰よりも仲間思い」

曙「それは初雪のとこの曙でしょ。あたしじゃないわ」

漣「そうそう、ボーノはボーノだよ」

文月「牛乳美味しいぃ」

初雪(そして文月はいつでも天使)

漣(そして文月はどこでも天使)

深雪「おいーす、風呂沸いたぜー」

文月「あ、じゃあ行くぅ」

磯波「今日は睦月型の子たちからだから、そのあと曙ちゃんたちと私たちで」

曙「了解」

深雪「あー、今日は暑いなー。アイスでも食べたいなー」

初雪「なんでこっち見るのさ」

深雪「恩給貰ってんだろー?奢ってくれてもいいんだぜ?」

初雪「いやぁだ」

初月「実戦経験がない僕たちでは、手当は期待できないからな」

曙「漣だって給料貰ってんでしょ?現役なんだから」

漣「まぁねー。給料っていっても整備費とか維持費って名目だけどね」

曙「あくまでも物扱いってわけね。胸糞悪い話だわ」

初月「そういえば五十鈴も恩給を貰っているはずだな」

漣「実戦経験がある艦娘なら無条件で貰えますからね」

巻雲「じゃあ巻雲も貰えるんでしょうか?」

白雪「実戦経験がお有りなんですか?」

巻雲「ちょっとだけですけど・・・」

初雪「じゃああんまり期待しない方がいいよ」

漣「あれって実働年数と出撃回数で金額が決められますからね」

初雪「あとは、戦績。戦果だね」

曙「ここじゃあオイゲンさんとか相当なもんじゃないの?」

漣「うん。オイゲンさんは凄いよ。よく解体する気になったなって記録見て思ったもん」

深雪「実戦知らないで沈んで、艦娘になっても実戦知らないで解体されたあたしってさー」

深雪「・・・よく考えると不幸じゃね?」

白雪「・・・どうでしょうか」

漣「それは違うよ」

初月「・・・」

漣「だからこれからいっぱい幸せになるんでしょ」

初雪「うん。所長ならそう言うね」

磯波「幸せに?」

巻雲「・・・なれるんでしょうか」

漣「なるんだよ」

曙「あのねぇ、雨風がしのげて、ご飯が食べられてお風呂に入れるってすごいことなんだからね!」

深雪「説得力あんな・・・。サバイバル生活長かった奴は重みが違うぜ・・・」

漣「そんなに急いで答え探さなくたっていいじゃんよ。まだまだ先は長いんだし」

初雪「そうそう。のんびり行った方がいいって」

漣「・・・あなた相当古株ですよね。のんびりしすぎですよね」

初雪「さすがにそろそろまずいかなって」

磯波「一緒の中学校に行こうよ。白雪ちゃんも」

白雪「私も?・・・学校、ですか」

初月「僕は高校に行く。天龍や龍田と同じところに決めたんだ」

巻雲「・・・学校」

曙「あー、あたしはまだかなー。年齢登録だけだし」

漣「巻雲さんは来たばっかりだから、ゆっくり考えてくださいね」

漣「学ばなきゃいけないこと、いっぱいあるんですから」

巻雲「はい!」

龍驤「どしたん?ニヤニヤして気持ち悪いで」

所長「・・・嬉しいんだよ。あぁやって支えあっていくあの子たちが」

所長「つらいことも多いだろうけど、でも楽しいことだってきっと多いさ」

龍驤「漣もえぇこと言うやん。いっぱい幸せに、か」

所長「しかし増えたなぁ、女の子。うちじゃもういっぱいなんじゃないか?」

龍驤「せやな。新しく受け入れるんはちと無理やな」

龍驤「しばらくは大丈夫やろ。解体される艦娘が増えるんは、決まって大規模作戦の時やし」

所長「勝ってんだか負けてんだかよく分からん戦争だよな。どうなってんだか」

龍驤「はっ、磯風と不知火が終わらせてくれることを期待するんやな」

所長「・・・そうするさ」

 ***艦娘のアレコレ、終わり***

今日はここまで
次回は広報として駆り出される艦娘、長門のお話・・・の予定

生臭い話で申し訳ないけど
女の子だらけの職場なら、生理の問題って絶対避けて通れないんだよね
出撃させてたら「あれ?もう疲れたの?」ってことありませんか?
あれはそういうことです
休ませてあげてください

巻雲はオリョール生まれ
バイト艦として出撃経験あり
運良く生き残り、即解体された艦娘です

バイト艦戦法はやったことないけど、巻雲はポコポコ出てくるからね
しょうがないね

 ~そんなある日~

初雪「・・・なに読んでるの?」

深雪「これー」

初雪「なにこれ?MAMOR?雑誌?」

深雪「今回の表紙、長門さんだっていうからさ。買っちゃった」

初雪「あのさ、なんで自分の部屋で読まないの?」

深雪「磯波と白雪が勉強しててさー、居づらくって」

初雪「ロビーとか食堂で読めばいいでしょ。なんで私の部屋で・・・」

深雪「初雪は一人部屋だからいいよなー」

初雪「答えになってないし」

深雪「あーぁ、やっぱ長門さんかっこいいなー」

初雪「そう」

深雪「初雪がいたとこじゃ長門さんはいなかったのか?」

初雪「いたよ。いたけど話したことないし」

深雪「なんでさ?」

初雪「いつもムスーッとした顔してたし、駆逐艦の子たちはみんな怖がってたよ」

深雪「へぇ、まぁ性格も違って・・・って、あれ?」

初雪「なぁに?もう戻るの?そう、良かった。じゃ、私寝るから」

深雪「あれ!窓の外!あれ!長門さんじゃね?」

初雪「・・・ほんとだ」

龍驤「ほい、茶ぁどうぞ」

長門「ありがとう、龍驤さん」

龍驤「おうおう、あの戦艦長門にさん付けされたらうちもなんや偉くなった気ぃするな」

長門「あ、・・・ふふふ、昔の癖だな」

龍驤「いまだにそんなんやと金剛にも言われるやろ」

長門「言われるな。さん付けするな、下に示しが付かない、と」

長門「結構、気を遣うのさ」

龍驤「ごくろーさんやな。さて、と」

所長「すまない、待たせたな」

長門「いや、いいさ」

 ~所長室~

所長「しかし久しぶりだなぁ。最近の活躍はよく耳に、いや、目にしてるよ」

長門「やめてくれ」

龍驤「・・・」

所長「・・・ドアはそのまま閉めなくていいぞ」

龍驤「・・・はいな」 オスナヨ、ゼッタイオスナヨ …モドリタイ

長門「はぁ。昔は良かった」

所長「ははは、あの長門からそんな言葉が出るとは」

長門「本当に懐かしい。充実した日々だった」

長門「毎日毎日、敵戦艦と殴り合ってれば良かったんだからな」

長門「それが今じゃ・・・」

所長「広報艦娘の仕事は退屈か。その制服は似合っているじゃないか」

長門「退屈だ。窮屈な格好して窮屈な場所で」

所長「・・・まぁ、お前たちのあの格好は公の場に出るにはちょっと、な」

長門「そうは言われても最初からあの姿だったんだ。私たちに言われても困る」

長門「文句なら私たちを生み出した“神様”に言ってくれ」

龍驤「島風とか問題になったからなー」

長門「彼女は、まぁ、な。くくく」

所長「長門がそんなんじゃ、同じ任務の陸奥も大和も退屈してそうだな」

長門「武蔵などもっとだ。ストレスが溜まって最近じゃあ表に出たがらないんだ」

龍驤「あらら」

所長「お前の前世、戦艦長門はこの国の宝だったからな。知名度も段違いだし」

長門「今は大和の方が有名だろう?広報なら大和がやればよかったんだ」

所長「・・・大和は顔に出やすいから、全部任せたらパンクするだろ」

龍驤「意外と子供っぽいしな。鳳翔も苦労しとった」

長門「・・・もう長いこと戦場に出ていない。錆びついてしまうよ」

所長「提督殿は?」

長門「我らが提督は今“彼女”に夢中だ」

所長「アイオワ、か。合衆国もよくあの子を寄越したもんだ」

龍驤「アメさんは優勢なんやろか?」

長門「逆だ。帰せなくなったんだよ」

所長「西海岸は、相変わらずか」

所長「・・・さて、そろそろイタズラ鼠たちを入れてやってくれ」

龍驤「はいな。入ってきぃや、初雪、深雪」

深雪「うげ、バレてた」

初雪「だから言ったのに・・・」

龍驤「それと、磯風、不知火」

磯風「気配は消していたつもりだが・・・」

不知火「だから不知火は止めたのです」

所長「・・・そっちは気付かなかったよ。お前たちもか」

長門「ははは、やけに囲まれてると思っていたが」

深雪「あ、あの、この雑誌!」

長門「ん?あぁ、発売されていたのか」

深雪「これに載ってるの、長門さんですよね!?」

長門「まぁこんな仕事をしている長門は私くらいだな」

深雪「すげー!本物だー!本物の戦艦長門だー!」

長門「・・・なんかこういうリアクションは久しぶりだ」

所長「長門は子供たちのヒーローだからな」

長門「・・・戦わないヒーローなど、笑えんな」

龍驤「んで、そっちはなんや?」

磯風「ふっ。この磯風がいずれ艦娘を率いる時に備え、戦艦長門を見ておきたくてな」

長門「ほぅ、元艦娘のお前たちが、艦娘を率いる、か」

長門「・・・いいな、面白い。その時は私を呼ぶがいい」

磯風「あぁ、必ず」

所長「ぜひ呼んでやってくれ。自慢の主砲が錆びついてるそうだからな」

不知火「しかし広報の仕事も重要なものです」

所長「そうだな。地道な、しかし継続していくことに意味がある艦娘PRは大事だ」

初雪「那珂ちゃんがいるんじゃ・・・」

所長「彼女はどちらかというとお茶の間的な、な。」

龍驤「長門はもっと、こう・・・オフィシャルの場というか、かたっ苦しいとこ専門や」

所長「軍としても長門は理想的なんだ。凛とした佇まい、知名度もある」

所長「ピシッとした格好で受け答えする長門は、女性人気も高いんだぞ」

深雪「確かに。この本の写真もかっこいいもんなー」

深雪「あれ?でもその長門さんがなんで所長を訪ねてくるんだよ?」

長門「昔、所長の艦隊に配属されていたんだ」

龍驤「懐かしいなー」

長門「漣は?いないのか?」

龍驤「今は姉妹艦と一緒に街に出とる」

長門「あの子も変わってなさそうだ。はぁ、昔に戻りたい」

所長「戦艦長門が、子供たちの前で弱音を吐かないでくれよ・・・」

長門「所長はまだ予備役扱いなのか?前線に復帰はしないのか?」

所長「無茶言うな。若い世代に任せるよ、そういうのは」

初雪「なんか、私が知ってる戦艦長門とは、全然違うね」

龍驤「同じ艦ってだけやしな。艦娘としては他人やし」

長門「今日はこれでお暇するか」

所長「本当に愚痴を言いにきただけだったんだな」

長門「そうさ。その内きっと、陸奥も大和も武蔵も来るぞ」

所長「茶菓子を用意して待ってるとしよう」

長門「そうしてくれ。ではな」

龍驤「ほな、また」

深雪「あぁ、あの、握手、してくれたらーって・・・」

長門「お安い御用だ。サインもいるか?」

深雪「いる!!」

所長「こういうところはやっぱヒーローだよな」

初雪「帰っちゃった、ね」

所長「・・・苦労してるんだ。長門もな」

初雪「現役艦娘なのに、戦う以外の仕事があるんだね」

所長「・・・現役だからこそ、だな」

初雪「私、生まれ変わっても戦艦にはならないようにするよ」

所長「また艦娘に生まれる気か、お前は」

初雪「ううん。次は・・・」

所長「次は?」

初雪「・・・なんでもない。そんなことよりお腹が空いたよ」

深雪「最近よく食うよな。太るぜ?」

所長「・・・いいことさ。さぁ、飯だ飯だ。食って寝て、明日も生きよう」

初雪「明後日も、明々後日も、弥明後日も、ね」

所長「そうさ。そうやって、続いていくんだ」

 ***戦艦長門の憂鬱、終わり***

テレビなど身近なメディアでは那珂ちゃんが活躍してるけど、
MAMORみたいな雑誌とか新聞とかでは長門たちが起用されてる設定

大和や武蔵は使っていますか?使われていない間はこんな仕事をしてるかも、というお話

艦娘は物として扱われるって話で本当は若葉の出番があったんだ
でも諸事情によりカットになったんだ
若葉は物のように扱われるのが大好きで、
初めては野外で首絞めックスって決めてるようなキメてる子なんだが
諸事情でカットになったんだ

いつかこれでネタを書くんだ・・・

 ~白露たちが通う中学校~

所長「せっかくの休みにすまないな」

白露「ううん、可愛い後輩が増えるかもしれないってんなら大歓迎だよ!」

村雨「同級生になれないのは残念だけど」

所長「お前たちの同級生にしてしまったら、一年経たずに卒業だからな」

所長「それに吹雪型は白露型と比べて、いや、なんでもない」

初雪「エロ親父」

所長「年下に見えるってだけだ」

白雪「私たち吹雪型からすれば、他の駆逐艦はほとんど妹なんですけどね」

白露「嬉しいな!初雪ちゃんも来てくれるなんて」

初雪「暇だっただけだし」

白露「じゃああとは任せて!イッチバンに案内するからね!」

所長「頼んだぞ白露。じゃあ初雪、白雪さん、先輩の言うこと聞いてな」

村雨「ふふふ、まるでお父さんみたいね」

所長「・・・まぁ俺もそういう歳だしな。じゃあな、村雨」

村雨「はぁい」

白雪「行ってらっしゃいませ」

初雪「ちゃんと迎えに来てよ」

所長「はいはい」

白露「はい、じゃあまず最初は白露たちの教室からいっきまーす!」

白雪「お願いします」

長月「遅いぞ、所長」

所長「悪い悪い、じゃあ次は小学校に行こう」

菊月「ふん、別に中学校でも良かったのだがな」

所長「今から行くところは睦月や弥生、卯月が卒業した所だぞ。案内も彼女たちがしてくれる」

皐月「わざわざ来てくれたの?」

文月「わぁ、お姉ちゃんに会えるんだねぇ」

如月「でも卯月ちゃんって、ほとんど解体されない艦娘だって聞いているけど」

所長「あぁ、今まではそうだったんだがなぁ」

三日月「楽しみだね。ねぇモッチー?」

望月「なんだっていいよ、面倒くせぇ」

所長「それじゃ出発するぞー」

睦月「あ、来たよ。あれじゃない?」

弥生「・・・バス。マイクロバス」

睦月「所長、バスも運転できるんだね」

弥生「・・・軍に居れば、免許取得は、楽」

卯月「ぷっぷくぷぅ!うーちゃんの可愛い妹たちが来るぴょん!」

卯月「可愛がってあげるぴょん!泣いたり笑ったりできなくしてやるぴょん!」

睦月「卯月ちゃん?」

卯月「うーちゃん!」

睦月「卯月」

卯月「・・・はい、冗談です」

卯月「・・・所長の前では“にゃあ”とか言って迫るくせに」 ボソッ

睦月「卯月」

卯月「はい、すみません。黙ります」

 ~夕方~

漣「お帰りなさいませ、ご主人様!」

所長「ただいま。はい、みんなもお疲れ様な」

漣「有象無象どもはまずお風呂から入ってやがりくださいませ!」

初雪「扱いひどくない?」

白雪「初雪ちゃん、お風呂行こう?」

初雪「んぁ、面倒くさいなぁ」

白雪「終わったら髪を梳いてあげるから、ほら」

初雪「・・・」

白雪「どうしたの?」

初雪「ふふっ、なんでもない。白雪はやっぱり白雪だね」

漣「どうでした?学校見学は」

所長「あぁ、概ね好評価だったよ」

漣「・・・初雪さんもですか?」

所長「初雪はもう大丈夫さ。心配いらない」

漣「そうですか。・・・寂しいですか?」

所長「そりゃあ寂しいさ。あの子たちがここを出て行くのは喜ばしいことだけど」

所長「でも毎回、いつも寂しくなるな」

漣「・・・漣がそばにいます。いつまでも」

所長「お前も!艦娘辞めて学校行こう!な!」

漣「行きません!漣がいなくなっちゃったらご主人様死んじゃうでしょ!」

所長「死ぬか!アホ!」

漣「せっかくしっとりした空気作ったのに!」

所長「ねっとりの間違いだろ」

漣「ひどい!抱いて!」

龍驤「漫才はそこまでや。睦月型の養子縁組はどうなっとんのや?」

所長「順調だよ、心配するな。審査だって厳しいしな」

龍驤「有澤さんとこのな、雷電姉妹だけじゃってんで暁と響が来たら一報くれと」

所長「ほんっと娘に甘いな、あの人」

漣「正式に養子が決まれば姉妹バラバラになっちゃうのが難点ですけどね」

所長「睦月型は数が多いからな。こればっかりはどうにも、な」

龍驤「あとホレ、オイゲンさんと初月の申請書や。判子頼むわ」

所長「あぁ、確かに」

漣「これも通れば一気に静かになりますね」

所長「・・・またすぐ騒がしくなるさ」

 ***学校へ行こう!、終わり***

如月は個人的には中学生のイメージ
でも艦娘センターにいる睦月型で一人だけ中学校に行くのもなと思って小6設定でいきました
睦月たちも当初は小学生設定だったんだけど、睦月は小学生じゃねぇだろ、と
じゃあ卒業生ってことにして、母校を案内する役にしようかなって配役

今回出てきた子たちがみんな学校に行くようになったら、艦娘センターにいるのは
朧、曙、潮、巻雲だけになるか、なるよね?

本当は「戦艦長門の憂鬱」で夕雲と那珂ちゃんの出番があったはずなんだけど、
それを思い出したのが書き溜め終わって投下した翌日というね
本当は長門vs那珂ちゃん広報艦娘対決とかあったんだよね・・・

没ネタで出番を削られた艦娘

比叡:曙たちの話で登場するはずだった
ブラック鎮守府をどうすべきか比叡に相談してたら、
たまたまその話を聞いたさる”やんごとなき御方”が
「あなたは私の姉のようなもの。力を貸しましょう」と言い出して比叡が大慌てで止める、というもの
あまりにもご都合主義すぎて没に

子日:所長が現役時代に唯一沈めてしまった艦娘
殿を務め、敵艦隊相手にたった一隻で奮戦し、味方の撤退の時間を稼いだ
所長の過去編で登場予定だったけど、「オリキャラの過去編なんかいらんだろ」という理由により没に
「明日はどんな日かなぁ。きっと、いい日」と言って所長の腕の中で息絶えるはずだった
暗い、やっぱ書かなくて正解

金剛、榛名、霧島:所長が現役時代に秘書艦などを務めていた懐刀
別の鎮守府に異動したあと、所長と再会して結婚(ケッコンじゃない)を迫る、という話にする予定だった
ヒロインである漣、龍驤を食ってしまいかねないという理由で没に
その名残で金剛シスターズは名前だけがあちこちに出てくる

若葉:言わずもがな
このネタ全てが没になったため、初春型姉妹全員の出番もカットされた
許してくれ、いつか書くから

・・・供養はこんなもんかな
名前だけ出てきた艦娘は「本当は出したかったんだ!」ってことです

次回は初雪卒業編、オイゲン卒業編、そしてエピローグの予定
前も同じこと書いたね、ごめんね
ほな、また

実は神通の出番もカットされています
>>89で言う「式」とは川内ではなく神通の結婚式のことでした
分かりにくいね

神通は引退後、一般男性と結婚しますが、
元艦娘と一般人の恋愛に焦点を当てた話を展開するつもりでした

今日で最終回
それでは投下します

 ~所長室~

所長「ほら、これがお前たちの証明証だ」

初雪「ん」

磯波「これで私たちも、学校に行けるんですね」

深雪「そういや白雪って主計学校行ってなかったっけ?」

白雪「え?私は行ってないけど・・・」

深雪「あれ?叢雲のやつがそんなことを・・・まぁいっか」

漣「あとはオイゲンさんと初月さんのです」

オイゲン「ダンケ!」

初月「ありがとう。これで僕もいよいよ学生か」

所長「きちんと荷造りはしておけよ」

初雪「ん」

深雪「あたしらいなくなったら寂しくなるだろ?所長」

所長「まぁな。いつまで経っても、別れは慣れないよ」

深雪「へへへ」

所長「なんで笑う」

深雪「いや、分かんない。でもなんか嬉しかったから」

所長「・・・いつでも来ていいんだぞ」

漣「天龍さんや龍田さんみたいにちょくちょく来る人たちだっていますしね」

初月「僕の高校は近い。今度来る時は三人で来よう」

所長「あぁ。待ってるよ」

初雪「オイゲンさんは、ちょっと難しいかもね」

オイゲン「そうね。遠いところだから」

磯波「てっきり古鷹さんたちと同じ高校に行くと思っていました」

オイゲン「うん。きっかけはあそこだったからね、でも・・・」

オイゲン「やりたいこと、見つけたから」

白雪「なんなんですか?」

オイゲン「まだ秘密!」

白雪「気になりますね」

オイゲン「いつか分かるよ」

所長「さぁ、お話はこれで終わりだ。みんな準備だけはちゃんとしておきなさい」

初雪「ん」

磯波「気に入ってるの?それ」

深雪「寮は四人部屋かぁ。まぁちょうどいいか」

初雪「一人がよかった・・・」

 ぞろぞろ バタン

オイゲン「・・・」

初月「どうしたんだ?」

オイゲン「ううん。長かったようで、短かったなって」

初月「家がない僕たちにとって、ここが家だったからな」

オイゲン「そうだね。そしてみんな家族」

初月「家族・・・。あぁ、それはいい響きだな」

オイゲン「リュージョーさんがお母さんで、所長さんがお父さん」

初月「くくっ、漣の前でそれを言うなよ。うるさそうだ」

オイゲン「そうね。ふふふ」

 ~夜~

初雪「・・・」

所長「お嬢さん、こんな夜更けにどちらへ?」

初雪「海水浴にはまだ早い?」

所長「夜でなければよかったけどな」

初雪「入らないよ」

所長「そうか」

初雪「星を見てたの」

所長「今夜はよく見えるな」

初雪「白雪は、今の私を見てどう思うかな」

所長「嬉しいに決まってる」

初雪「本当?」

所長「前に進み始めた今のお前を、誇りに思ってるさ。間違いない」

所長「妹の幸せを喜ばない姉はいないよ」

初雪「娘の幸せを願う父親のように?」

所長「・・・そうだな。みんな、俺の可愛い娘たちだ」

初雪「所長の娘さんが聞いたらヤキモチ焼いちゃうよ」

所長「そうかな?だといいが」

初雪「私、うまくやれるかな・・・」

所長「やれるさ。なんせ俺の娘だからな」

初雪「・・・そっか。ふふっ」

初雪「一年、か。あっという間だったな」

所長「最近はちゃんと眠れているか?」

初雪「大丈夫だよ」

所長「そうか」

初雪「よく食べて、よく眠ってるよ。もう平気」

所長「・・・そうか」

初雪「あ、そうだ。ひとつお願いしていい?」

所長「なんだ?言ってみろ」

初雪「今夜、一緒に寝ていい?」

所長「それは駄目だ」

初雪「ケチ」

 ~オイゲンの部屋~

龍驤「邪魔するで」

オイゲン「邪魔するんなら帰って」

龍驤「言うようになったなぁ」

オイゲン「鍛えられたからね。ところでどうしたの?」

龍驤「最後の夜やし、一緒に寝よ思てな」

オイゲン「・・・私がここに初めて来た時も、リュージョーさんは一緒にいてくれたね」

龍驤「懐かしいやろ。あとこの子たちもお別れ、ちゃんとしたいってな」

オイゲン「わぁ、妖精さん。なぁに?これ。くれるの?」

オイゲン「お守り?ダンケ。ありがとう」

龍驤「・・・どしたん?」

オイゲン「ごめんなさい。あまり、もう見えないの。ごめんね、妖精さん・・・」

龍驤「えぇんや。この子らも分かっとる」

龍驤「個人差も大きいんや。艦娘やめて見えなくなる奴、見える奴、色々おるんや」

オイゲン「でも寂しいわ。あんなに一緒だったのに」

龍驤「いつでもおるよ。見守っとる。見えなくなるってだけや」

オイゲン「うん。・・・忘れないわ、絶対」

龍驤「さて、寝よか」

オイゲン「お布団も慣れたわ。お味噌も、お醤油も」

オイゲン「お箸だってもう使えるもの」

龍驤「うん」

オイゲン「ハツヅキが言ってたの。ここが私たちの家で・・・」

龍驤「うん」

オイゲン「みん・・・な、家族で」

龍驤「・・・泣いてもえぇんやで」

オイゲン「・・・もう泣かないわ。大丈夫」

龍驤「そか」

オイゲン「楽しかったことばかり」

龍驤「そんならえぇんや」

オイゲン「外に出たらきっと、つらいこともあると思うけど」

オイゲン「でも、ここでの思い出がきっと力をくれる」

龍驤「つらくなったらいつでも帰ってきてえぇんやで」

オイゲン「そうするわ」

龍驤「・・・帰れる場所があるってえぇことやろ?」

オイゲン「うん。だから頑張れる」

龍驤「うん、それでえぇんや。うちもやった甲斐があるっちぅもんや・・・」

オイゲン「グーテ ナハト、リュージョー。・・・きっと明日もいい日になるわ」

龍驤「おやすみ・・・」

 ~翌朝~

深雪「よっしゃ、準備OKだぜ!」

磯波「忘れ物はない?大丈夫?」

白雪「最後にもう一度確認しました。大丈夫です」

初雪「今日から寮住まいかぁ」

漣「四人一緒の部屋なんでしょ?平気平気」

深雪「じゃあ行ってくるぜ、所長」

所長「あぁ」

磯波「お世話になりました」

白雪「本当にありがとうございました」

所長「・・・あぁ」

漣「泣くぞ。すぐ泣くぞ。絶対泣くぞほぅら泣くぞ」

所長「茶化すな」

初雪「・・・」

所長「・・・」

初雪「じゃ」

所長「あぁ」

深雪「そんだけかよ、もっとなんかないのかよ」

漣「いいのいいの。あ、ほら、バスが来ましたよ」

磯波「行ってきます」

白雪「落ち着いたら、顔を出しますから」

所長「あぁ。待ってるよ」

深雪「ほら行くぞ、初雪」

初雪「ん」

 ありがとう、お父さん

所長「えっ」

所長「・・・初雪!」

初雪「なぁに?」

所長「・・・いや、なんでもない。行ってこい」

初雪「ん」

白雪「・・・ふふふ」

深雪「顔真っ赤にするくらいなら言わなきゃいいのに」

磯波「ねぇ?」

初雪「うるさいし」

白雪「今度はちゃんと言おうね。初雪ちゃん」

初雪「もう言わないし!」

漣「いってらっしゃーい。もう帰ってくんなよー」

天龍「さて、準備はいいか?」

初月「あぁ、問題ない」

所長「じゃあ初月さんのこと、頼むぞ」

龍田「任せて~」

天龍「なんせこの天龍さまの可愛い後輩だからな」

所長「お前たちになら安心だよ。初月さんもまたおいで」

初月「あぁ。次に来る時は三人で来るさ」

初月「ありがとう、所長。では行ってくる」

所長「しっかりな」

漣「どうせ数日後には顔出すぞ」

龍田「明日来るから~」

漣「それは早すぎじゃね?」

所長「で、オイゲンさんと龍驤はどうした?」

漣「さっきまでバタバタやってましたよ」

龍驤「あっかーん!寝過ごしたぁ!!」

所長「なにやってんだ・・・」

オイゲン「昨日ついついお喋りしちゃって・・・」

漣「バス、もう来てますよ」

龍驤「うへぇ、間に合ってよかったわ」

オイゲン「よし、じゃあここから再出発ね」

漣「ずいぶんと遠くの学校に決めちゃいましたね」

オイゲン「うん。でもやりたいことのために、あそこが一番いいと思ったから」

所長「やりたいこと?なんなんだ?それは」

オイゲン「内緒。でもいつか分かるわ」

所長「そうか。じゃあ楽しみにしていよう」

オイゲン「えぇ。じゃあ行ってきます、所長さん」

所長「行ってらっしゃい。たまには顔出してくれよ」

オイゲン「えぇ、約束するわ」

龍驤「ほな、な。楽しかったで」

オイゲン「私も。ここに来れてよかったわ」

オイゲン「素敵な人たちにいっぱい出会えた」

漣「照れますなぁ、がはは」

所長「お前じゃない。座ってろ」

オイゲン「もちろん、サザナミもよ」

漣「ほら!ほら!」

所長「引っ張るな引っ張るな」

龍驤「バス、待ってるで」

オイゲン「うん、行ってきます!」

所長「元気でなー」

漣「来る時はお土産忘れないでねー!」

オイゲン「いつか帰ってくるわ」

オイゲン「・・・必ず」

 ~それから月日は経って~

所長「さぁて、今日のニュースは、と」

 ・現役女子高生バンド、砲火後ティータイム、メジャーデビューへ!
  デビューシングル「かやくはごはん」 発売決定!!

 ・女子駅伝、長良選手、区間新達成!
  「支えてくれた妹のおかげ」

 ・那珂ちゃん、さいたまハイパーアリーナ2DAYS決定!!

 ・Vやねん!阪神タイガース 胴上げ待ったなし!!

 ・有澤重工、多目的汎用ロボット「雷電」を発表
  独占インタビュー「ヒントをくれたのは娘たち」

 ~教室~

深雪「白雪!頼むよ、宿題見せてくれよー!」

白雪「だから昨日言ったじゃない」

初雪「見せなくていいよ。磯波も見せちゃ駄目だよ」

磯波「ごめんね、深雪ちゃん」

深雪「頼むよー!那智先生のケツバットは嫌なんだよー!!」

初雪「いやぁだ」

深雪「お願いお願いお願い!!」

磯波「あ、深雪ちゃん。那智先生来たよ」

深雪「あわわわわ・・・」

初雪「記録達成だね。おめでとう」

 ~xx年後、東方海域~

磯波「単縦陣だ!単縦陣で行くべきだ!」

不知火「せっかく秋月型がいるんです。輪形陣で行くべきです」

磯波「輪形陣だと!?火力こそパワーだ!単縦陣だ!」

不知火「・・・こいつをCICから叩きだせ!」

磯波「なっ!?なにをする不知火!私は指揮官だぞ!」

長門「早く決めてくれ。敵は待ってはくれんのだぞ・・・」

不知火「輪形陣のまま待機」

長門「了解。戦艦長門、出撃するぞ」

磯波「おのれー!不知火いいい!!」

不知火「・・・はぁ、まったく。何を学んできたのか」

 ~xx年後、東方海域~

磯風「単縦陣だ!単縦陣で行くべきだ!」

不知火「せっかく秋月型がいるんです。輪形陣で行くべきです」

磯風「輪形陣だと!?火力こそパワーだ!単縦陣だ!」

不知火「・・・こいつをCICから叩きだせ!」

磯風「なっ!?なにをする不知火!私は指揮官だぞ!」

長門「早く決めてくれ。敵は待ってはくれんのだぞ・・・」

不知火「輪形陣のまま待機」

長門「了解。戦艦長門、出撃するぞ」

磯風「おのれー!不知火いいい!!」

不知火「・・・はぁ、まったく。何を学んできたのか」

 ~さらにxx年後~

リベ「ひっく、うっ、うえぇぇぇん、うわぁぁぁん」

??「あなたがリベッチオちゃんね?どうしたの?どうして泣いているの?」

リベ「ひぐっ、提督さんが、リベはもういらないって。リベはもう役立たずだって」

??「・・・ひどいことを言う人ね。いいわ、そんな人、私がやっつけてあげるから」

??「私たちのところに行きましょう、リベッチオちゃん。あなたのお友達もたくさんいるわ」

リベ「お姉さんだぁれ?どうしてリベを知ってるの?」

オイゲン「私はオイゲン。あなたと同じ、元艦娘よ」

リベ「リベと、同じ?」

オイゲン「私たちのところにはね、リベッチオちゃんと同じ元艦娘の子がいっぱいいるわ」

オイゲン「お友達だってすぐにたくさん出来るわよ」

リベ「本当?」

オイゲン「えぇ」

龍驤「うちらは君を見捨てへん。何があっても、絶対にな」

漣「さぁさぁ、涙を拭きましょう。これからいっぱい楽しいこともありますから」

オイゲン「お腹、空いてない?」

リベ「うぅ・・・」

オイゲン「まずはご飯を食べましょう。一緒に、ね?」

リベ「・・・うん」

龍驤「ほな行こか。レパートリーにイタリアン増やさなあかんな」

漣「サイゼ行こうぜ」

オイゲン「食べることは生きること、生きることは食べること、よ。リベッチオちゃん」

リベ「うん」

オイゲン「それでは、改めまして――」

オイゲン「ようこそ。艦娘社会復帰支援センターへ」

 ***ご愛読、ありがとうございました。オイゲンちゃんの今後の活躍にご期待ください***

最後の最後でやってしまいましたなぁ・・・
>>315はなしでお願いします
>>316が正しい

まぁ最後にこえkたけど走り切ったからいいか!
よっしゃ!あとがき書くぞ!あとがき書きたくてSS書いてるようなもんだからな!!

>>133も間違い 正しくは

漣「艦娘やめてから老けてきてません?そんなに小じわありましたっけ?」

愛宕「ちゃあんと気を遣ってますー。まだまだピチピチですー」

漣「中古って市場価値どんどん下がってくんでしょ?大変っすね」

愛宕「うふふ。私が中古かどうかは、所長が一番よく知ってるわ。ね?所長」

所長「ん?うん」

龍驤「君な、ろくに話聞いとらんのにテキトーに返事したらあかんで」

愛宕「漣ちゃんは大丈夫なの?トンネル開通工事無期延期してるそうじゃない」

漣「くっ・・・、漣はご主人様に大切にされてますから!」

愛宕「大切にされたまま未開通で終わるのね。プークスクス」

漣「表出ろ駄肉ぅううううう!!」

オイゲン「やっぱり仲悪いんじゃ・・・」

龍驤「いや、それが仲えぇんや。不思議と」

冬イベ中に書いてて、春イベ終わってしまって、夏イベが始まる前に終わらせることができて一安心だわ
すこしでも読んでくれた人の暇つぶしになれたんならそれでいいわ

解体された艦娘をテーマにしたSSはいくつかあるけど、その艦娘を支援する組織の話ってなかったように思うんだよな
あったらごめんね

この設定◯◯と同じじゃね?とか
◯◯さんの作品の劣化コピーじゃねーか!とかあると思う
俺が考えついた設定なんてみんなチラッと脳裏をよぎった設定だろうし

反省点は多いなぁ
もっと短くまとめられなかったのか、とか
設定やキャラにブレが生じたことも残念だ

本当はもっともっとオリ主tueeeeeってやるはずだった
やれやれ、とか言いながらニコポナデポで無双するはずだったんだ
実力が足らんかった・・・

ほな、また別のSSで
おやすみ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年06月08日 (水) 10:54:41   ID: 481_Ugav

ボスの様子を見に行ってくるかな

2 :  SS好きの774さん   2016年06月18日 (土) 13:40:23   ID: 7ocsw4Nn

強いストレスのかかる戦時下の前線任務だと、女性兵士の生理は止まるから問題ないぞ。
人間の身体って良く出来てるんだ。

3 :  SS好きの774さん   2016年06月19日 (日) 18:04:08   ID: ch1eXg3_

漣 「はい、鎮守府調教センターです」

4 :  普通に泣いたやつl   2023年12月07日 (木) 11:12:04   ID: S:_-GPeE

普通に泣きました

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