――――――――――――――――
『あれが……』

　　『おかあさん、あの人………』

　『魔王を倒したって』

　　　『魔王が殺された……』

　『近づいちゃだめ……』

　　　　　　『彼が………』

『あいつが魔王を………』

　『あのひと……』

『王……市民の不安は………』

　　『うむ……………』

　『勇者………悪いが………』す

『市民の………不安が大きくな………』

『仕方のないことなんじゃ………』

　　『わかってくれるな？………』

『あぁ、あれが例の………』

　『………バケモノ』

『バケモノだ…………』

　『バケモノ』

　　　　　『バケモノ』

　　　　『バケモノ』

　　『違う！勇者は………』

　　　　『バケモノじゃ………』

『バケモノ……近づくな………』

　　『出ていってくれ………』

―――――――――――――――――
ﾊﾞｯ

勇者「ハァ、ハァ……」

ﾁｭﾝﾁｭﾝ

勇者「…………」

あの日……魔王を倒した日から1ヶ月の時間が流れた

王国に帰った俺達を待っていたのは盛大な祝福と民の歓声

人々は魔王を倒した俺達を歓迎し、祝杯をあげていたっけ

その宴は数日続き、しばらくはそんな祝福の時間が流れていた

………しばらくして、王国の人々は一抹の不安を覚えはじめる

「魔王を倒す程の力を持った勇者を放っておいて大丈夫なのか」と

――――いつしか、民から向けられる眼は羨望ではなく畏怖、恐怖を抱くものに変わっていった

民から受けるものは祝福ではなく迫害、弾圧に替わり

――――その結果、俺は王国から追放された

勇者「…………」ｸﾞｰ

勇者「はら……へったな……」

ｺﾝｺﾝ

勇者「ん……はいはい」ｶﾞﾁｬ

魔法使い「おはようございます！勇者様！」

勇者「………おはよう、魔法使い」

魔法使い「おやおや？なんだか元気が無いですね？」

勇者「……うん……まあ寝起きだし……」

魔法使い「勇者様は相変わらずねぼすけですね～」

魔法使い「そんな勇者様にはこれ！魔法使い特製オーク肉チーズブレッド&幽霊キノコと狂いキャロットのスープです！」

勇者「………ああ、ありがとう
………いつも悪いな、魔法使い」

魔法使い「いえいえ！勇者様の健康管理も私の役目ですから！」

魔法使い「あ、勇者様の好きなミルクティーも持ってきてますから！
今淹れますね」ｺﾎﾟﾎﾟﾎﾟﾎﾟ

魔法使い「ささ、どうぞ机に座って食べてくださいませ！今回の料理は特に自信作で………」

勇者「…………………」

魔法使い「？どうしたんですか勇者様？
ささ、冷める前に早くお食べください！」

勇者「…あの、さ………魔法使い」

魔法使い「はい？なんでございましょーか！」

勇者「……………」

魔法使い「？」

勇者「…………もう俺に関わるのはよせ」

魔法使い「え……」

勇者「………知ってるだろ、俺が王国から追放されてるの」

魔法使い「………」

勇者「そんな俺と一緒にいたらお前もどんな目に会うかわからない
だからもうやめろ、俺に関わるのは」

魔法使い「……で、でも」

勇者「………こんな目に会うのは俺一人で十分なんだよ
お前を、仲間を巻き込みたくないんだ」

魔法使い「そ…それでも私は勇者様と………」

勇者「……出ていけ」

魔法使い「え…」

勇者「今すぐ出ていけッ！！！！」

魔法使い「ゆ、勇者さ……」

勇者「……出ていってくれ
さあ、早く」

魔法使い「ゆうしゃ、さま……」

勇者「………」

魔法使い「また……きます、ね……」ｶﾞﾁｬ

ﾊﾞﾀﾝ

勇者「……………」

勇者「………………これで、これでいいんだ」

勇者「………」

勇者「………」

もし、もしも
あの時魔王を倒さなければ
あの時剣を握らなければ
あの時戦わなければ
あの時……………勇者にならなければ
あの時…………………いや…………

勇者「俺は………」

勇者「…………間違ってなんか、ない」

そう、いつだって

勇者「全部、全部やらなければならないことだったんだ」

いつだって俺は最善の行動をとってきた
どれだけボロボロに傷つこうが
どれだけの人の血が流れようが
どれだけの人間に裏切られようが

勇者「俺は、俺はいつだって正しかったはずなんだ」

そう、誰かがやるべきこと
誰かがやらなければならないことだった
俺だろうと、俺じゃなかろうと
誰かが背負わなければならなかった

勇者「………ハハ、そうだよな
俺は間違ってない」

そう、さっきの事だって
魔法使いの為にやったことだ
そうさ、俺は間違ってない
いつだって最善の策を撮ってきた俺が
間違っているはずない

勇者「……当たり前だ、今更何考えてんだよ、俺………」

ｸﾞｰ…

………あれ、いつの間にか1時間も経ってんな……
そんな長い間呆けてたのか、俺…………

勇者「……飯、食うか………」ｶﾁｬ

勇者「………」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

勇者「…………冷えちまってるな……
こんだけ時間立ってりゃ当たり前か………」

勇者「なんか……魔法使いに申し訳ないな………」

ハハ……あんなこと言っておきながら今更何言ってんだよ、俺は

ﾓｸﾞﾓｸﾞ

勇者「だけど……相変わらず……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

勇者「…………魔法使いの作る飯は本当に美味いな………どうやってつくってんだろ………」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

勇者「…………」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

勇者「……………」ｺﾞｸｺﾞｸ

勇者「……………………」ﾓｸﾞﾓｸﾞ……

静か、だな………
俺だけしかいないし当たり前なんだが……

勇者「………」ﾓｸﾞﾓｸﾞ　ｺﾞｸｯ

あぁ、なんだか冒険してた頃が懐かしく思えるな………

あの頃の飯の時間は毎日毎日騒がしかったっけな………

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戦士「おいお前ら見ろよ！ゴーストスライム捕まえてきたぞ！早速食おうぜ！」

僧侶「いやいやいやまて戦士
そんなベタベタでドロドロでいかにも体に害しかなさそうなモンスター」

僧侶「食そうとかそれ本気で言ってるのか？」

戦士「ったりめーだろ！俺が嘘ついたことあるか？ねーだろーがよ！」

僧侶「嘘はついてない、か………しょっちゅう言い訳している気はするがな……
まあそれはそれとして、だ
そいつは食えるのか？」

戦士「分からん！！」

僧侶「は？」

戦士「食えるかどうかは分からん！
食用魔獣図鑑にも載ってなかったからな！」

僧侶「よし、捨ててこい」

戦士「は？」

僧侶「捨ててこいと言ってるんだ！
そんな得体の知れないもの食えるわけがないだろう！？」

戦士「んなこと言ったってここ3日くらい俺等ロクに食いもん食ってねぇじゃねぇかよ！
この際贅沢は言ってられねえだろ！！」

僧侶「そんな毒か細菌か得体のしれないものの混じってそうな奴食って全滅するよりはマシだ！！」

戦士「でもよぉ！この辺には中々モンスターも居ねえし食料だって中々手に入んねぇんだぜ！？そう考えたら……」

勇者「まあまあ二人とも落ち着けって」

僧侶「なあ勇者、お前はあんなん食おうとか言わないよな？どう見たって無理だろあれ！！！」

戦士「何言ってんだよ僧侶！な、勇者は俺に賛成だよな？今の状況考えたら贅沢は言ってらんねぇって！」

勇者「う～ん……そうだな………
じゃあここは魔法使いに任せるとしよう！」

魔法使い「ふぇ……ってえ！？わたしですか！？」

勇者「なんたって魔法使いはこの中で1番料理が上手い………ていうか俺ら三人は料理出来ないんだけども………」

勇者「それを差し引いても魔法使いの料理はめちゃくちゃ美味い！！」

僧侶「ああ、たしかにそれはそうだな」

戦士「いやぁ、いつもいつもあんなうまい飯食えて俺達はホント幸せものだよなぁ～」

魔法使い「あ……ありがとうございます……/////」

勇者「そこで、だ
そこのベタベタでドロドロのゴーストスライムを魔法使い調理してもらおうじゃないか！」

3人「！？」

僧侶「ちょちょちょっと待て、結局食うのか！？」ﾊﾞｯ

勇者「まあまあ落ち着いて聞けって
まず調理が終わったら俺が一口食うからそれで何も異常が無かったらお前らも食うってことでどうよ？」

僧侶「いやでも……それだとお前が！」ｱｾｱｾ

勇者「心配すんなって、いざとなれば魔法使いが蘇生術かけてくれるから！」

僧侶「いやだが……あれはこの前5連続で失敗ﾑｸﾞｯ」

勇者「（魔法使いそれトラウマになってんだから言っちゃダメだって！）」ｼｰ

僧侶「（お、おう）……」ｺｸｺｸ

勇者「それにさ、俺大丈夫だと思うんだよね」

僧侶「根拠は？」

勇者「そんなものは無い！」

僧侶「ハァ……ま、いつも通りの返事だな」

勇者「デーモントカゲに噛まれた時だって閻魔バチに刺された時だってドウナルノキノコ食った時だって大丈夫だったし、今回も大丈夫さ」

僧侶「全部結果論だけどな……」

勇者「まあまあいいじゃんいいじゃん！そんな深く考えなくても大丈夫だって！」

戦士「いや～さすが勇者！！お前は男の中の男だぜ！！この野郎！！」

勇者「ハハ、もっと褒めてもいいぞ」

僧侶「こいつら………」

魔法使い「えっと……じ、じゃあとりあえずわたし調理頑張ってみますから！
みなさん少し待っててくださいね！」ﾌﾝｽ

勇者「おう！よろしく頼んだ！」