勇者「世界救いに行ってくる!」 弟「ハンカチ持った?」(110)

勇者「は、何言ってんだ弟…。ハンカチなんかいいよ、今から城行ってくるから」

弟「駄目だよ、姉ちゃん、王様に会いに行くんだから」

勇者「あーもううっさいなぁ…。あんたは女房かよ」

弟「はい、ちゃんと綺麗な白い奴持っていて」ピラッ

勇者「いいって言ってるだろーが!」

弟「素直に言う事聞きなさい」ゴソゴソ

勇者「勝手に荷物に追加すんじゃない!」

弟「あ、そうだ。傘も持っていったほうがいいね。雨降るといけないから」

勇者「遠足じゃねぇんだよ!アホ!!」

弟「僕が作ったお弁当はちゃんと入ってる?」

勇者「入ってるよ!もう私行くからな!」

弟「待って待って。水筒忘れてない?姉ちゃんの好きな紅茶入ってるよ」

勇者「えっ、紅茶が入ってるのか…! って違うわ。しつこいぞ弟」

弟「トイレ行った?」

勇者「行ったよ!どうでもいいだろ!」

弟「あ、そういえば午後から風が強くなるんだt」

勇者「行 っ て き ま す !!」

「あ、待ってってば。やっぱりあれも持っていって…」

バタン

勇者「しつこいぜ、まったく」

村長「ほっほ。お早う、勇者ちゃん」

勇者「おっすジジイ!」

弟「ジジイじゃないでしょ、村長さんでしょ!」

勇者「ひゃっ!?お前いつの間に外に」

村長「ほっほ。相変わらず仲の良いこと」

弟「村長さん、今日で姉も立派な勇者です。今まで見守っていただき、ありがとうございました」ペコ

村長「うむ。こんなめんこい娘がのー。まさか伝説の勇者だったとはのぉ。ま、気をつけて行ってらっしゃい」

勇者「分かった!なーに、すぐ帰ってくる!私がチャッチャと魔王の首とってくるからさぁ」

弟「言葉遣いが悪い」ツネリ

勇者「あでででで、頬をつねるな!馬鹿!」

村長「…なんか哀愁がないのぉ」

弟「いつ何時でも賑やかなのが、姉のとりえですから」

村長「確かに」

勇者「んじゃ、行ってきまーす」タッ

村長「がんばるのじゃぞー」

勇者「おーよ!死なずに待ってろよー!」タタタ

弟「だから言葉遣い!」

勇者「お前どこまで着いてくるんだぁあああああああああ」

弟「僕の勝手でしょ」

勇者「ウゼーー!!旅の清清しさがぶち壊れる!」

弟「うざいとか言ったらいけません」

勇者「ほらっ、もう村の入り口まで着いちゃったぜ」

弟「そうだね」

勇者「これから私は、王都まで一人で旅するんだ。くぅ、ワクワクすんな!」

弟「何言ってんの、姉ちゃん」

勇者「あ?」

弟「一人でって…。僕も行くんだけど」

勇者「」

勇者「あ、ははは弟君またまたご冗談を」

弟「冗談じゃないさ。ほら、僕も装備をつけてきたんだ」

勇者「あははは、本当に弟はブラックジョークが好きだなぁ」

弟「別にブラックでもジョークでもないよ。本気だよ」

勇者「…まじか」

弟「まじだよ」

勇者「…」

勇者「!!」ダッ

弟「!に、逃げるな姉ちゃん!!」

勇者「ふざけんな私は一人で旅すんだよぉおおお!!」ドドド

弟「何がそこまで姉ちゃんを駆り立てるんだよぉおおお」ダダダ

勇者「その言葉、お前にそっくりそのまま返してやるからなぁああ!」ドドド

弟「僕は姉ちゃん一人じゃ心配なんだってばぁああああ」ダダダ

勇者「子供じゃないんだから大丈夫だって!!着いてくるなぁあああ!」ドドド

弟「だが断るぅうううう」ダダダ

勇者「ぜ、ぜはっ…。帰れぇえええ村に帰ってくれぇえええ」ダダダ

勇者「はぁ、はぁ…」ピタ

弟「おいつーいたっと。姉ちゃんスピードはあるけど持久力ないね」

勇者「クソッ、意味分からん…!」ハァハァ

弟「もう、今からだいぶ歩くのに体力使っちゃだめだよ。僕おんぶなんかしないからね」

勇者「お前におんぶしてなんて言わねーし、そもそも帰れ」ゼェゼェ

弟「帰らないってば。しつっこいなぁ」

勇者「お前が…言うな!」ハァハァ

弟「ほら息整えて。顔が青いよ」

勇者「スゥ、ハァ…」

弟「んー、村の外の空気は流石美味しいよね」

勇者「こんな旅立ち嫌だ…」

弟「姉ちゃんらしいや」

勇者「どういう意味だコラ!あと、お前ここからは魔物が出るんだぞ!帰れ!!」

弟「魔物が出るなんて百も承知だよ。帰る理由にはならないよ」

勇者「あああああああああああ!!!!!」

弟「うるさいなぁ、何?情緒不安定なの?」

勇者「お前が帰らないからだろおおおがあああ!!」

弟「いや、だから僕も旅についていくから」

勇者「駄目!ゼッタイ!!」

弟「なんでさ?」

勇者「理由は特に思い浮かばんけど…。な、なんか格好悪いだろ!弟同伴で旅なんて」

弟「全然格好悪くないよ。ウダウダ言ってないで行こう」

勇者「何でお前がリードしてんの!?」

弟「もう面倒くさいなー。じゃあ姉ちゃんが先に歩いて良いよ」

勇者「おう、当たり前だ!私が勇者なんだからな!」

弟「はいはいでしゃばりませんよ」

勇者「ふん!分かればいいんだよ」

弟「じゃ、さっさと関所に向かおうね」

勇者「ああ!」

テクテク

勇者「おうコラちょっと待てや。何丸め込もうとしてんだよ」

弟「姉ちゃんが勝手に乗ってきたんじゃん…」

勇者「あまりに流れがナチュラルすぎたからね!!」

弟「はいはい、口動かさないで足動かして。日が暮れる」

勇者「お前どうしちゃったの…」ゲッソリ

弟「僕は僕のしたいことをやるの。それだけだよ」

勇者「こんな聞き分けない奴だったっけ、お前」

弟「姉ちゃんこそ。そんなに順応能力低かったっけ」

勇者「順応うんぬんじゃねーだろうが!」

弟「わわっ、襟首掴まないでよ」

勇者「もう怒った!このまま村までつれて帰る!そんで旅立ちのところリセットする!」

弟「離せー!うう、この怪力女ー!」

勇者「ぬははは、口は達者でも所詮姉ちゃんには勝てないんだよチービ」

弟「!ね、姉ちゃん離して!!」

勇者「はなさねーよ!なはは、楽勝楽勝」

弟「違うんだってば!後ろ、後ろぉお!」

ガサッ

まものが あらわれた!

勇者「うお!早速かよ」

弟「姉ちゃん危ない!」

勇者「だー、もう!お前はもう後回しだ!」ポイ

弟「あだっ。優しく降ろしてよ!!」

勇者「さぁ勇者の初陣だぜ!」チャキッ

弟「聞いてないし…」

魔物「ピキー!」ピョン

勇者「おっと!」ヒョイ

勇者「中々やるな!でもっ…!」ブン

ゆうしゃの こうげき!

魔物「アベシwww」

まものを やっつけた!

勇者「へへーんだ」ドヤッ

弟「おお、すごいすごい」

勇者「だろっ」

弟「流石姉ちゃんだね!」パチパチ

勇者「そ、そうか?」

弟「うん!剣の振りかたもすっごく綺麗だったし!すごいや!」パチパチ

勇者「ふ、そ、そんなほめるなよ」テレテレ

弟「頼もしいなぁ!僕こんな姉ちゃん持てて、幸せだよっ」

勇者「ば、ばかやろー!照れるって!」ブンブン

弟「この調子だとすぐ関所にもつけるね!さ、行こう!」

勇者「あ、ああ!」テレテレ

弟(姉ちゃん…単純だなぁ)

勇者「せ、折角だからお前も王都までは連れて行ってやるよ!」

弟「ありがとう姉ちゃん!ああ、やっぱり姉ちゃんは心が広いや!」

勇者「い、今頃かよ」ニッコニッコ

弟(うーん、なんとも可愛らしい)

勇者「いっ行くぞ!着いて来い弟!」ニッコニッコ

弟「うん!姉ちゃん!」
……

=関所=

兵「こんちわー。おっ、可愛い嬢ちゃんと僕ちゃんだねぇ」

勇者「おっす!私勇者なんだぜ!王様に呼ばれてるんだ!」

兵「へぇ、そんな若くにかぁ。すごいね、いくつ?」

勇者「あはは、16!!」

兵「へぇー!すっごいなぁ。そっちの君は?」

弟「15ですー」

兵「こりゃすごい。最年少パーティなんじゃないか?」

兵「いやぁ、こんな子供たちが勇者一行とはなぁ…」

勇者「あ、こいつは…」

兵「さ、門を開けるからね。気をつけて行っておいでー」ガラガラ

勇者(こいつは違うのに…)

弟「ふんふーん」

勇者「いいか弟、王都までだからなっ」

弟「はいはいー」

勇者「ったく…。ありがとーな、おっちゃん!行ってくるぜ!」

=王都=

ガヤガヤ

勇者「…ひ、人がこんなに」

弟「流石王都だねぇ、賑やかな事」

勇者「お、おい弟!迷子になるだろ!離れるなよ」ガシッ

弟「僕は大丈夫だよ…。むしろ心配なのは姉ちゃんなんだけど」

勇者「だ、黙れ!」

勇者「うう、早く挨拶してしまおーぜ」

「見て、あの子勇者ちゃんじゃない?」

「本当だー。立派な剣だなぁ」

「お顔もなんて愛らしいのかしらー。あんなに可憐なのに魔王を退治するなんて…」

勇者「み、皆こっちを見てないか」

弟「気のせいだよ姉ちゃん」

「あらっ、隣の男の子は誰かしら…。お仲間かしらね?」

勇者「や、やり辛いぜ…」オドオド

弟「姉ちゃん人見知りなところあるからなぁ」

勇者「人見知りじゃない!注目されるのが苦手なんだっ」

弟「はいはい…」

「やけに仲が良いなぁ、まさか勇者のコレか?」

勇者「!!??」

弟「はいはい、もう行こう姉ちゃん」グイ

勇者「な、何て失礼な奴なんだ…!」

弟「そうだねー。都会には不躾な人がいるもんだね」

勇者「ああ、全くだ!」

=城=

勇者「…」

兵士「お待ちしておりました、勇者様。王様がお待ちです」

勇者「は、はひ」

弟「緊張してやんの」ボソッ

勇者「しっ、してないぃっ」

兵士「…?」

勇者「あ、あぅ、何でも…ないです、すみません」

王「おお、勇者!待っておったぞ!」

勇者「は、はい…」ガチガチ

王「ははは、緊張せずともよい!…うむ?そっちはどなたかな?」

弟「はじめまして王様。僕は、勇者の弟です。ここまでの旅の共をしてまいりました」

王「ほほう、感心な弟じゃのぉ」

弟「お褒めいただき、光栄です」

勇者(クソッ、何であいつあんなにスラスラ喋れるんだよ…)

弟「…」ニヤニヤ

王「ふむ。勇者よ、魔王は日に日に力を拡大しておる」

勇者「はい」

王「しかしお主には、ソレを倒す力量も仲間も、装備もないのじゃ」

勇者「はい…」

王「そこでじゃ、まず手始めに東の町まで行って、魔物騒動を静めてきてはくれんか?」

勇者「東の町、ですか…」

王「うむ。そこでは女子供を攫う魔物がいての…。どうじゃ?やってはくれぬか?」

勇者「はっ、はい!私に任せてくださいっ」

王「おお、流石は勇者。なんと勇気のあることよ」

勇者「え、は、その…」カァ

王「では任せたぞ!勇者よ!」

勇者「はい!」
……


勇者「あ、あー緊張した」ガタガタ

弟「足wwwバンビちゃんかwww」

勇者「う、うるせー!場の空気がものすごかったんだよ!」カクカク

勇者「しかし、やっぱり魔王は遠いな」

弟「どこに居住を構えてるかも分からないしね…。まぁレベルをあげつつコツコツやろう」

勇者「ああ!私、ぜってー強くなって魔王をギタギタにする!」

弟「だから言葉遣いー。全く、さっきはあんなにしおらしかったのに」

勇者「な、殴られたいか…」

弟「カンベンして」

勇者「と、とにかく…。今日はもう遅いし宿を探さなきゃな」

弟「それならとっくの昔に」

勇者「え、何時の間に!!?」

弟「姉ちゃんが門番の顔がいかつくて怖いとか言って、モジモジしてる間に」

勇者「こ、怖いなんて言ってねーし!!」

弟「はいはい…」

勇者「くぅ。ま、まあ礼は言うぜ。ありがとよ」

弟「いえいえ。姉ちゃんじゃ心配だからね」

勇者「ふざっけんな!宿くらいとれるよ!」

弟「さぁどうでしょう」

=宿=

弟「すみませーん。昼間予約してた者なんですけど」

宿屋「ああ、勇者一行様ですねー。どうぞ、お部屋の鍵です」

弟「どうもー」

勇者(綺麗な宿屋だなぁ…。弟、あなどれんな)キョロキョロ

弟「何やってんの、部屋行くよ」

勇者「あ、ああ…。ってお前ちょっと待てよ」

弟「もうー、今度は何さ?」

勇者「なに、お前も泊まるの?」

弟「うん。そのつもりですけど?」

勇者「約束が違うぞ!帰れよ!!」

弟「待ってよ、こんな暗い中じゃ帰れないよ。下手したら死んじゃう」

勇者「く…」

弟「せめて一晩明かさせてよ。ね?」

勇者「しかたねーなぁ…。お前これも計算のうちだろ?」

弟「さあ?」

ガチャ

勇者「ぬぉー!良い部屋じゃねえか!」バタバタ

勇者「きゃっほー!ベッドふわふわだぜー!」ボヨンボヨン

弟「子供だなー、姉ちゃんは」

勇者「えへへへ」ゴロゴロ

弟「あー布団芋虫だ」

勇者「フカフカで気持ち良いぞー!お前もやれ!」

弟「NO THANK YOU」

ガチャ

勇者「ぬぉー!良い部屋じゃねえか!」バタバタ

勇者「きゃっほー!ベッドふわふわだぜー!」ボヨンボヨン

弟「子供だなー、姉ちゃんは」

勇者「えへへへ」ゴロゴロ

弟「あー布団芋虫だ」

勇者「フカフカで気持ち良いぞー!お前もやれ!」

弟「NO THANK YOU」

勇者「わははは!我は布団芋虫星人!」ゴロゴロ

勇者「お前も仲間にしてやろう、生意気な少年よ!」ゴロゴロ

弟「ハイだねー」

勇者「我に貴様の命を献上せよぉおおお」ガバア

弟「おわっぷ、やめなってば!」

勇者「…」

勇者「…」ウトウト

弟「いやいやいや」

勇者「眠い」ゴシゴシ

弟「赤ちゃんか…。いいよ、疲れたろ。寝なよ」

勇者「すまん」ゴロ

弟「おやすみー」

勇者「…ん」

スースー

弟「びっくりするほどフリーダムだな。僕が言えた義理じゃないけど」

勇者「…」スゥスゥ

弟「全く…」ゴソゴソ

弟(明日の準備しないとな)

弟(…東はちょっと寒いらしいな)

弟(セーターも入れといてあげよう。あとホッカイロも)ゴソゴソ

弟(あとは、水筒とお弁当箱を洗って…。紅茶も入れなおそう)

弟(はー手間のかかる姉だこと)

勇者「…」ゴロ

弟「布団蹴るクセ、なくならないねー。よいしょ」ファサ

弟(姉ちゃん、一人で大丈夫かなー)

弟(仲間…とか、やっぱり作りたいよね)

弟(うーん…。姉ちゃん案外奥手だから、できるかどうか)

勇者「…」

弟(ぶっちゃけ可愛いしなー、姉ちゃん…)

弟(変な虫がつきませんよーに)ツン

勇者「む…ん」スゥ

弟(はー、父親みたいだな僕。いや、お母さんか?)

……


ガンガンガン!!!

勇者「んおおおお!!?」ガバッ

弟「グッモーニンマイシスター」

勇者「るせっ、うるせっ!?耳があああ」

弟「このフライパンなかなか良い音出しやがるな」

勇者「あがががが!姉が難聴になったらどうすんだよ!」

弟「大丈夫、僕が姉ちゃんの耳になるよ」キリッ

勇者「意味分かんねーよ…」

弟「早く着替えてご飯をたべる!」

勇者「分かったよ、せかすなよぉ…ったく」

弟「ちゃっちゃとする!」ガンガン

勇者「あががが!やめろってそれぇ!」

勇者「お前もう…やることがもう…」ヌギヌギ

弟「あっちで着替えてよ…」

勇者「別にいいだろーがよ。めんどっちい」ヌギヌギ

勇者「おっしゃ、着替えたぞ!ご飯っごっはん」

弟「はいはい、下の食堂でね」

勇者「お腹すいたぁああー」タタタ

弟「廊下は走っちゃだめですよー」
……


勇者「うまうま」

弟「姉ちゃん、今日はどうするの」

勇者「あん?とりあえず、東の町に行くけど…。意外と近いし、すぐ着くだろ」

勇者「今日は一人でだな。やっと冒険らしくなってきたぜ」

弟「…うん」

勇者「なんだよぉ、暗い顔すんなって。明るく見送ってくれよ」

弟「…僕、やっぱり」

弟「姉ちゃんに…」

勇者「おばちゃーん!!このミートボールお代わり!」

弟「…」

勇者「ん、何か言ったか?」モグモグ

勇者「ここのミートボールやばいな。癖になりそう」

弟「やっぱりさぁ姉ちゃん」

勇者「なんだよ?」

弟「…僕と一緒に旅するの、嫌?」

勇者「え」

弟「…僕、姉ちゃんが心配で…。だから着いていきたいんだけど。やっぱりうざいよね」

勇者「え、えっ」

弟「…だよね、姉ちゃんも一人になりたいよね。お荷物を置いて」

勇者「弟どうしたんだよ…」

弟「…ごめんね、姉ちゃん」

勇者「おいおいおい、だ、誰も嫌とは言ってないだろ…」

弟「…」

勇者「えと、ただ…。わ、私もいい加減弟離れしないとなーって思ってさぁ」

弟「…」

勇者「な、泣いてるのか?」

弟「…」

勇者「おい、弟…悪かったよ、泣くなよ」

弟「…僕、姉ちゃんが…心配で心配で…」

勇者「う、うん。そうか」

弟「…姉ちゃんに何かあったら、お母さんとお父さんに顔向けができない…」

勇者「お、弟…」

弟「でも、もう…帰るよ。姉ちゃんは一人で旅を続けて」

勇者「…」

勇者「ま、待てよ…」

弟「え…?」

勇者「行こうぜ、一緒に!!」

弟「だ、駄目だよ姉ちゃん」

勇者「いいや、やっぱりお前を一人で村に残すなんてできないぜ!決めた!お前は勇者の仲間だ!」

弟「姉ちゃん…」

勇者「いひひ。しょうがねーなー。私もまだ弟離れできねぇや」

勇者「よっしゃあああ!そうと決まったら、お前も準備しろよ!」

弟「…うんっ!」

勇者「さっさと行くぞ!言っとくけど、私は心配されなくても、大丈夫なんだからな!」

弟「うん…ありがとう姉ちゃん」ニコ

勇者「!お、おうよ」

弟(…)

弟(ちょろすぎ…)ニヤア

勇者「ん、どうかしたか弟?」

弟「ううん。勇者の旅についていけるなんて、嬉しくて」

勇者「ふふ、そーかそーか!」ニコニコ

=王都・外=

勇者「うーん、今日は良い天気だなぁ」

弟「幸先が良いね」

勇者「ああ!仲間も出来たしなっ。よろしく頼むぜぇ、弟!」ガシッ

弟「う、うん…」

勇者「よっしゃ行くぜぇえ!」

まもののむれが あらわれた!

勇者「おおい、早速かよ…」

魔物「ピキー!!」

魔物2「ニキーwww」

勇者「に、二体かよっ…ああ、一気に片付けられない!」

弟「ふふん…」ズイ

勇者「おい、邪魔だぞ!危ないから退いとけ弟」

弟「姉ちゃん、僕が何の技術もなしに勇者の仲間になりたがると思ってるの?」

勇者「…あ?」

弟「姉ちゃん、下がってよ」

魔物「ピッキー!!」ダッ

勇者「あっ、危ない!」

弟「…火炎魔法!」

ゴオッ!

魔物「ピキャー!!」

魔物2「ブベラwww」

まもののむれを やっつけた!

勇者「」

弟「ふう、上出来かな」コキ

勇者「おおお前、何時の間にそんな呪文を」

弟「姉ちゃんが剣の練習をしてる間にね」

勇者「ぐ、ぬぬ…!?」

弟「ちなみに属性魔法は、基本全部できるよ。あと回復魔法もね」

勇者「…お前頭良かったもんな」

弟「姉ちゃんは何かできたっけ?」

勇者「…できないれす」

勇者「くそっ、でもレベルが上がったらきっと…」

弟「はいはい頑張ってね」

勇者「う、うるせぇ!何だよお前、剣はできないくせにっ」

弟「まぁ苦手だけども」

勇者「ははん。女々しいやつめ」

弟「確かに、普通逆だよね…性別が」

=東の町=

勇者「おお、中々静かなところだな」

弟「本当だ…。男の人しかいないね」

「おい、女だぞ」

「馬鹿なのか、こんなときに…!正気か!?」

弟「おお、植えた男どもの視線が姉ちゃんに」

勇者「あー、やりにくいなぁ」

弟「此処の魔物は女を攫うんだったっけか。姉ちゃんも気をつけなよ」

勇者「ふん、そんな変態ギタギタにしてやらぁ」

弟「まぁしかし、魔物にも選ぶ権利はあるよね」

勇者「おし、撲殺か刺殺かどっちがいい?」

弟「お助け…」

「あ、あのー」

勇者「ああ?」

弟「ぐぇほっ、姉ちゃん、離してよ死んじゃう」

勇者「おー華麗に散れや」

「あ、あなた方ここらは危険ですので、お引取りを…」

勇者「ああ、魔物の事だろう?安心しろ、私は勇者だからな!」

「え、ええ!!勇者!?」

弟「国王の命により、魔物退治にきました」

勇者「もー安心していいからなっ。私が全部解決してやる」

「なんと…で、では町長のところへご案内しましょう。きっとお喜びになります」

勇者「おう!」

弟「俄然やる気が出てきたね」

=町長宅=

勇者「おっすオラ勇者」

町長「え、こんな娘ッ子が勇者かいな!へぇーこらおもろいw」

勇者「口に気をつけろ。首が落ちるぞ」チャキ

町長「ひ!?」

弟「台詞がくっさいし、刃物はしまおうね。一応町長さんだからね」

勇者「…女だからって馬鹿にすんなよ。お前らより強いんだからな」カシャン

町長「は、はひ…すんませんでしたぁ…」

勇者「そんで、ここでは一体何がおこってんだよ?」

町長「はい…。あれは3月ほど前でした…。いきなりごっつい魔物が攻めてきましてなぁ」

弟「ふんふん」

町長「ほんで、言うんすわ。女を出せーって」

勇者「ほーう…」

町長「一応腕っ節の強い若者が戦ってみましたが、全然でしてな…」

町長「ほんでしかたなく、町一番の美人を出したんすわ…」

勇者「か、かわいそうじゃないかよ!」

町長「「そ、そんなん言われましても…。魔物は女を出さねば、町に手下をけしかけると言ったし…」

弟「まぁ、しょうがないよ。カッカしないで姉ちゃん」

勇者「む…。そんで、続き!」

町長「はぁ…。女を渡した後も、魔物はすぐやってきよるんすわ。そんで、次々に女を…。赤ん坊や老婆まで…」

弟「すばらしい趣味だね」

勇者「???どーいうこどだ、弟?」

弟「男にしか分からないハナシ」

勇者「…んー?」

町長「おかげで町はこの有様ですわ…。もっさい連中しかおらんで」

勇者「ふむ、なるほどなぁ」

弟「魔物の根城がどこかは分かりますか?」

町長「あ、湖の傍の塔ですわ。とうに廃墟になってたんを、勝手に…」

勇者「なるほど、女をいっぱい監禁しておくには丁度良いしな」

町長「全く、うらやまし…いえ、憎たらしい限りで」

勇者「ああ!女ばっかりを狙うなんて卑劣だな!男に失礼じゃないかよ!」

弟「あれれこの子目的がイマイチ分かってないのかなぁ?」

勇者「あーもう怒ったぜ!弟!早速のりこむぜっ」

弟「お暑いこと…。ま、これは緊急事態だね。行こう、姉ちゃん!」

勇者「おい町長、見とけよ!女だって馬鹿にしたこと後悔させてやらぁ」

町長「は、はぁ」

弟「何を後悔するんだよ、何を…」

勇者「うっせえ!行くぞチビ!」ダダダ

弟「待ってよ、もうこの自由人!!」タッ
……

=湖の塔=

勇者「どっひゃー…。でっけえなあ」

弟「本当。それに、古いけどすっごく綺麗な塔だね…」

勇者「よ、よし。初の根城潜入だな。き、気をにゅくな、おとおと!」

弟「その前に落ち着けアンタ」

勇者「わ、私は全然!緊張なんかしてないのだじぇ!!」

弟「無理しなくて良いから…」

勇者「う、うっひゃい!」

勇者「い、行くぜ…」

弟「頑張ろう姉ちゃん」

ギイイ…

勇者「おえっぷ、埃くっさあああ!」

弟「うひー…。ジメジメしてるや」

勇者「ひるむな!進め!進めぇええええええええええ!!!」

弟「うるっさいよ、魔物に気づかれるでしょ」

勇者「ばっちこおおおおおい!!」

まものが あらわれた!

弟「お馬鹿」ツネリ

勇者「あだだだ!痛いよ!つねるなっ!」

まものの こうげき!

勇者「!うわっ…」

ゆうしゃに ダメージをあたえた!

弟「ね、姉ちゃんっ!」

勇者「大丈夫だよ!こんなのかすり傷だぜ」

勇者「うおおおおお!!破ァーー!!」ブン

ザシュッ

まものを やっつけた!

勇者「へん。素早いわりには、弱いんだな」

弟「…ね、姉ちゃん血が…!」

勇者「うお、本当だ。でも滲んでる程度だから、絆創膏でだいじょ」

弟「駄目だよっ!!」

勇者「う、うわっ!?」ビク

弟「…回復魔法!」

ゆうしゃの きずが ぜんかいした!

勇者「大げさだなぁー!こんなちっこい傷で」

弟「跡が残ったらどうするのさっ。姉ちゃんはもっと女の子らしく、そういうの気にしなよ!」

勇者「なっ、なんだと!」

弟「馬鹿……。痛くない?」

勇者「む。お、おう。大丈夫っつってんだろ」

弟「そう、よかった」

弟「もう大声はよそう。ボスの魔物にも気づかれたら、厄介だよ」

勇者「ん。…分かったよ、悪かったな」

弟「勇敢と無鉄砲をはき違えないでよ…?」

勇者「あーはいはい。すいやせんでしたっと」

弟「…はぁ」

勇者「じゃ、まぁ。大人しく行こうぜ」

弟「うん」
……

=2F=

勇者「…お、二階だな…。ここ、崩れたりしないだろうなぁ?」

弟「意外とつくりがしっかりしてるし、大丈夫だよ」

勇者「むー。高いと不安だぜ…おや?」ピタ

弟「ん?どうかした?」

勇者「…なんか、話し声聴こえないか?」

弟「嘘…。魔物かな?」

勇者「いや、人…。女の声だ」

勇者「間違いないぜ!きっと連れ去られた女たちだぜ」

弟「ってことは、ここに牢か何かがあるのか…」

勇者「警戒しねぇとな」

弟「うん。見張りのそこそこ強い魔物がいるはずだから、気をつけて!」

勇者「おうよ」
……


見張り「あー見張り超だりい」

見張り2「分かるー超てそい」

勇者(お、おいっ居たぞっ)コソコソ

弟(死角になる柱に隠れてっ)

勇者(わ、分かった)タタタ

見張り「ってかさー、見張りとかいらなくねえ?いる?」

見張り2「ぶっちゃけいらんと思うわー。こいつらが外に出れるわけないしな」

見張り「だよなー」

勇者(やっぱり、ここに捕らわれてたのか…)

弟(みたいだね…)

見張り「っつーかさぁー。ババアとかブスとかまで連れてきちゃって、オーガ様どういうつもりなの?」

見張り2「分かるー。毎晩とっかえひっかえしてるけど、中々ハマるのがいないんだってよ」

勇者(…??)

弟(こ、子供は聞いちゃいけません)

見張り「あの人の趣味に合う女なんているのかねー」

見張り2「どうかねー。あ、でも町一番の美女は結構今お気に入りらしいぜ」

見張り「ああ、あの短い髪の女かー。なかなかいいよな。おっぱいでかいし」

勇者(…へ、へんた、変態だぁああ)

見張り「小奇麗な部屋に移されちゃってよー」

見張り2「ははは。おう、お前らもマシな暮らしがしたかったら媚びろやー」

ガシャンッ

「きゃっ…!」

「マ、ママー怖いよぉ…」

勇者(…)ギリリ

弟(やれやれ。姉ちゃんの堪忍袋も限界かな)

勇者(もー…許さんぞ、弟!行くぞ!!)

見張り「あー俺最近たまってるわー。ぶっちゃけ誰でも良い」

見張り2「お、やっちゃうか?」ニヤニヤ

「…!!」

見張り「おーいおいー!馬っ鹿、おめぇ…。やっちゃうぅう?」ニヤニヤ

見張り2「ちょっとだけだぞwww」

見張り「おふwwwおっけwww」

勇者「そこまでだぁあああああああああ!!!」

弟「叫ぶなぁああ!!奇襲の意味がねえええ!!!」

見張り「なっ、なんだお前等!?」

勇者「アイアム勇者!!ワッチュアネーーム!!?」ダッ

見張り2「うおおお!!?し、侵入者だぁああ!」

弟「ええい、だまれ!火炎魔法っ!」ゴオッ

見張り「おおおお!?あ、熱っ!!」

勇者「喰らえぇええええええ!!!」ブンッ

ザシュッ

見張り「」

弟「ナイス連携!!」

勇者「へへーんだっ」

見張り2「み、見張りぃーーーーーーーーっ!!」

見張り2「お、お前等ぁああ!!許さんぞぉおおお!」グワッ

勇者「うお!!」ヒョイッ

弟「…剣を使うよ!気をつけてっ!」

勇者「分かってる!」

見張り2「おおおおお!」ブン

勇者「うぐっ!!」ギン

見張り2「う、うおお!女のクセによくやるなっ」ギギギ

勇者「女のクセに、はっ…!余計だっ…!!」ギギギ

見張り2「ふははは、しかし魔物の腕力に適うと思うな!」グッ

勇者「!ぎ、い…っ!」

見張り2「ははははは!死ねぇ!!」グンッ

弟「…凍結魔法っ!」

見張り2「!?」パキキ

見張り2「なっ、なんだこれっ!手が、凍って…!?」

弟「姉ちゃん!!今!!」

勇者「よっしゃあああ!!!」ブン

見張り2「!ちょ、まt」

ザシュッ!

見張り2「」ドサッ

勇者「…見張り2の分際で時間食わせやがって。悔い改めよ」キリッ

弟「全くだね」

勇者「おい、助けに来たぞ!」

「ゆ、勇者様…!」

「ありがとうございます…!」

勇者「皆、ひどいこととかされてないか…?」

「い、いえ…。特に何も」

弟「え?誰もその…性的なこととか…されてません?」

「いいえ…」

勇者「お、弟お前は何を聞いてるんだ、アホ!!」カァア

弟「いやいやいや、女の人って言ったら、ねぇ?」

勇者「何がねえ?だ!お、お前最低だなっ」カアア

弟「何がぁ!?安全確認しただけでしょーが!」

勇者「し、喋るなっ…。もう、さっさと行くぞっ」

弟「すごく納得いかない。何で僕悪い物扱いされてるの…」

勇者「黙れ!…えと、ボスを倒したら開放してやるからなっ。待ってろよ」

「はい、勇者様…!」

弟「何この爪弾き感…」

勇者「全く…そんな変態だとは思わなかったぞ」

弟「姉ちゃんがウブすぎるだけだもん…」

勇者「…な!?と、とにかくだ!ちゃっちゃと魔物を倒してしまうぞ!」

弟「はいはい…」
……

=最上階=

勇者「…ハァハァ」

弟「なんと貧弱な持久力…」

勇者「るせーなっ。太ももにくるんだよ」ゼェゼェ

弟「ともかくここが最上階…。完璧なるボスフラグ」

勇者「いきなりの戦闘イベントに備えて、セーブはお早めに」

弟「まぁ冗談はこのくらいにして」

勇者「はいはい」

勇者「…てかさぁ、ここのフロアなんだかつくりがシンプルだな」

弟「そうだね。動き回らなくて済むよ」

勇者「全く…おっ、弟!見てみろ、部屋があるぞ」

弟「これは…。魔物に気に入られた女の人の部屋なんじゃ」

勇者「なんだって!お、おい!!大丈夫かっ!」ガチャ

弟「ノック!ノーーック!!」

ガチャッ

美女「…ひ」ビク

勇者「あ、安心しろ!私は勇者。助けに来たぞ!」

美女「た、助け…?」

弟「可愛そうに、辛かったでしょう。もう安心ですよ」

美女「…よ、良かった」

勇者「…安心しろ!あの変態はぶっとばしてやるからなっ」

美女「へ、変態?」

弟「女の人とっかえひっかえ、あんなことやそんなことしてたんでしょ?立派な変態でしょう」

勇者「てめーもな」ゴン

弟「あだだ。痛いよ」

美女「…いえ、何もされてませんけど」

弟「…え?」

美女「その…。夜のあれとかは、全く…」

弟「えっ?えっ?」

美女「魔物は非常に紳士的でしたよ?…体に触れてこようともしませんでした」

弟「ど、どういうことだってばよ」

勇者「わ、分からん…」

弟「でも、あなたお気に入りなんでしょ?つまり、そーいう」

美女「分かりません…。私、魔物が憎くて、引き出されたとき暴言を吐いてしまったんですけど」

美女「でも、なぜか…。怒られもせず…」

弟「意味不明なんだけど」

勇者「…なんかよく分からないけど」

弟「だね」

勇者「とりあえず倒しに行こう!」

弟「モヤモヤするけど、まぁそうするしかないね」

勇者「待ってろ、すぐ出してやるからな!」タッ

弟「あーもう、一人で走っていかないでってば!」タッ
……

勇者「…よし、あとはここだけだな」

弟「中央の部屋だね。一際大きいや」

勇者「おし、成敗してやらあ!」ガチャ

ギイイ…

勇者「…」ゴク

弟「…」ゴク

「おお…待っていたぞ、勇者よ…」

勇者・弟「…!」

オーガ「ふふふ、良くぞ来たな」

勇者「で、でけええええ!!鬼だ、鬼さんだぞ弟!!」

弟「オーガだね…!はじめて見た!」

勇者「私は勇者!お前を倒し、女たちを解放する!!」

オーガ「ほう…お前にそんなことができるかな?」

勇者「黙れド変態!お前なんかミンチにしてやる!」

オーガ「…はうっ」ピク

オーガ「ほ、ほーう。女のクセに強気なのだなぁ…?」

勇者「女だとか関係ないぜ!ボコボコにしてやらぁ!」チャキ

オーガ「あ、あうっ」ピク

弟「…何?何でピクピクしてんの?」

勇者「は?ブツブツ言ってないで、さっさと始めるぞ!」

オーガ「わ、我はオーガァアア!!勇者一行、覚悟せよ!」

勇者「おっしゃ来いやあああああ!」

弟「気をつけてっ、姉ちゃん!」

弟「…防御魔法!姉ちゃん、行けっ!」

勇者「うおおおおおぉお!!」ブン

ゆうしゃの こうげき!

オーガ「は、はぁああんっ!」

オーガに ダメージを あたえた!

オーガ「…」ピクピク

勇者「へへっ、体ががら空きだぜ」

オーガ「おっ、おっ、おのれー…」ピクピク

オーガ「生意気な!」ゴオッ

オーガは かなぼうを ふりまわした!

勇者「きゃ!!」ドサッ

弟「姉ちゃん!」

勇者「だ、大丈夫だっ。魔法で防げた!くっそ、許さねー!」

オーガ「…あうう」ピクピク

勇者「この糞鬼がぁあ!私にしりもちつかせてんじゃねーぞ!死ねぇえ!」ブン

オーガ「あっ、あっ」ピクピク

勇者「おらああああ!!」

ザシュ! ザシュ!!

オーガ「あっ、あああーっ」ピクピク

弟「くらえ!氷魔法!」

オーガ「…」

弟「え」

勇者「くらえええええ!十字斬り!」ザクッ

オーガ「うおおおおおん」ピクピク

勇者「もういっちょ!」ブン

弟「姉ちゃんちょっと待って」

勇者「は?何だよ」

弟「いいから。火炎魔法!!」

オーガ「うわ熱っ」

弟「風魔法!!」

オーガ「痛っ」

弟「…」

オーガ「おのれ、雑魚があああ!!」

弟「姉ちゃん、攻撃して」

勇者「?お、おう」ブン

ザシュ!!

オーガ「ああああああああ!!」ビクビク

弟「はい、よっく分かりました」

勇者「え、ね、何がっ?」

オーガ「お、おのれぇえ…」ハァハァ

弟「姉ちゃん、もう良いよ。剣しまって」

勇者「え、なんで…」

弟「い い か ら !!!」

勇者「ひゃ!?な、何だよ…」シャッ

オーガ「あ、や、やめちゃうの…」

弟「おい、オーガ」

オーガ「何だよ雑魚…」

弟「お前……Mだろ」

オーガ「は、はあああああー!?何いってんのかよく分からないやそれ豚語かなにかかな?」

弟「姉ちゃん、殴れ」

勇者「お、おう」ブン

バキッ

オーガ「は、はひゃああああ」ビクビクッ

弟「真症のドMじゃねえか…気持ち悪っ」

オーガ「…」

弟「正体を現したな、変態め」

勇者「どういうことだ、弟?」

弟「つまり、こいつに姉ちゃんの打撃は効かない。むしろご褒美だってこと」

勇者「な、何だって!?」

オーガ「…ふ」

オーガ「ふははは、ふっはははは!!」

弟「…っ」

オーガ「ああ、そのとおおりだよ!俺はMなんだよ!!!」

勇者「!!!」

オーガ「しかし、最初から歪んでいた訳じゃない…。俺は純粋に探していた…自分に合う女を」

弟「それで、あの町を?」

オーガ「ああそうだ…。ちなみに俺はショートカットの子が好きだった…。美女を出されたとき、これだと思ったね」

弟「…」

オーガ「しかし、しかしだ…」

オーガ「彼女には、何か足りなかったのだ…」

勇者「た、足りない?」

オーガ「そう…俺を揺さぶるなにかが…」

オーガ「俺にはそれが何か分からなかった…。何だ、何が足りない」

オーガ「そして俺は自分の心を満たせる女を求め、町に向かった…」

勇者「なんてことを」

オーガ「幼女、清楚、お姉さん、人妻…。果てはババアにデブスにまで手を出した」

弟「なんというチャレンジャー」

オーガ「しかし、誰も俺を満たせなかった」

オーガ「…勇者に出会い、俺は今始めて分かったのだ」

オーガ「気の強い口調、確かな腕力と暴力性、ショートカット、そしてたまに見せる女の子らしさ…」

勇者「…」

オーガ「こ  れ  だ」

弟「爆発魔法!!!!」

オーガ「ぎゃああああああ!?」

弟「何がこれだ!だ!ふざけるなよぉおこのゴミクズがあああ!!」

オーガ「あああお前じゃ全然興奮しない!ゆ、勇者!私を殴ってくれ!!」ガバッ

勇者「きゃ、きゃああ!!」

弟「姉ちゃんに触るなあああああああああああああ!!!」バキッバキッ

オーガ「もう他の女なんていらねえええ!お前だけでいいい!!」ギュウ

勇者「きゃあああ!はな、離せぇええ!!」

弟「死ねぇえええええええ!!あああああああああ!!!!」ゲシッゲシッ

勇者(地獄だ!!ここは地獄だ!!)

オーガ「ハァハァ、ハァハァ」スンスン

弟「匂い嗅ぐなぁああああああ!!」ドガッ

オーガ「ええい、ショタはお呼びでない!」ブン

弟「!」

ドサッ

弟「う、ぐっ…」

勇者「お、弟!?」

弟「…」クタッ

勇者「!!!」

オーガ「ハァハァ、勇者ぁああっ」

勇者「…」

勇者「…し、ね」

ブンッ!!

オーガ「お、おほっ!やる気になったか勇者よ!」

勇者「弟に何してんだ!殺す!」

オーガ「ははは、粋がってもお前の攻撃はただのご褒美!無駄だぞ!」

勇者「はああああ!!」ブン

オーガ「YES!!!!YES!!!!」

勇者「おおおおおお!!」ブン

オーガ「最高だああああ」

勇者「…っ!」

カラン

オーガ「剣を捨てるか!いいぞ!素手も中々趣がある!」

勇者「…っ!!」ガシッ

オーガ「タックルゥウウウ!!新しい!素晴らしい!」

勇者「ぐお、おおおお…!!」

ズズズ…

オーガ「あははは、楽しい!楽しいぞ勇者!!」

勇者「変態がっ…!」グググ

オーガ「言葉攻めか!!飽きないぞぉお!」

勇者「…落ちろ!!!」

オーガ「え」

勇者「あああ!!!」ドゴッ

オーガ「え、ちょ待」

グラ

オーガ「」

勇者「…」

ああああああああ……

勇者「…」

ドサッ

勇者「た、倒した…」

勇者「…お、弟!」タッ

弟「…ねえ、ちゃん」

勇者「大丈夫か!?」

弟「うん…。ごめん、足引張って」

勇者「何言ってるんだよ!よくやってくれたじゃないかよ!」バシバシ

弟「…姉ちゃん…」

勇者「倒したぞ!ボスを!弟と二人でよ!」

弟「…うんっ。おつかれ、姉ちゃん!」

勇者「お疲れ、弟!」

……

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