モバP「生き別れの妹……?」雪美「……そう」 (92)


先日、久方ぶりにBaby Princessの名前を聞きましたので。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460462312

―――マンション P宅前―――

P「……人違いでは?」

雪美「……ううん。私……あなたの……妹……」

P「いや俺、天涯孤独のはずだし……」

雪美「でも……私……」

P「……と、とりあえず中に入って。外、寒いでしょ」

雪美「……お邪魔します……」

書き忘れましたが、Pは高校2年生前後だと思ってください。

―――P宅―――

P「……」

雪美「……」

P「……えーっと……ごめん、名前は?」

雪美「雪美……」

P「雪美ちゃんか。雪美ちゃんはどうして俺の事を兄だと思ったのかな?」

雪美「……お父さんの……手紙……」

P「手紙?」

雪美「うん……これ……」ガサッ

P「なになに……?」

我が愛しき娘へ

もし、生き別れた兄に会いたくなったならば東京都○○区○-○-○のマンションに行け。

そこに俺のただ一人の息子、そしてお前の兄がいるだろう。

あと困ったら俺の書斎の赤いカバーの本を調べなさい。きっと助けになるだろう。


P「確かに親父の字……に、似てるけど……」

雪美「あと……これ……本の向こう側……隠してあった……」トサ

P「ちょっ……なんつー金だよ……俺、束になってるお金なんて初めて見たぞ」

雪美「……手紙……読んで……お母さんに……言って……それで……お金持って……来た」

P「雪美ちゃんのお母さんは止めなかったのか?」

雪美「うん……いってらっしゃい……って……」

P「……どうすりゃいいんだよ俺」ハラリ

雪美「……何か……落ちた……?」

P「え? あ、なんだこれ……」

息子へ。

……できちゃった☆


P「クソ親父ィ!!!」

雪美「っ……?!」ビクッ

P「あ、ご、ごめん。驚かせちゃった?」

雪美「……大丈夫……」

P「……よく見ると続いてるな」

という冗談は置いておこう。

さて、この子は母親は違うものの、正真正銘お前の妹だ。

俺は考えたんだ。俺が死ぬ時、金ならお前にいくらでも残せる。だけど、それは本当にお前のためになるかとな。

そして気づいた。もし俺が死んだ時、お前は本当にひとりぼっちになっちまう事に。

だから、俺はお前に【家族】を残す事にした。お前の母さんも、この子の母さんもその事に関しては了承済みだ。

俺はどれだけお前にクズだと思われても構わない。恨まれても構わない。

だが、この子は大切にしてやってくれ。

この子は、お前の正真正銘の【家族】だから。

P「……」

雪美「……お母さん……言ってた……お父さんは……凄く……凄く……子供思いだって……」

P「……そっか」

雪美「……私……あなたの……妹……信じて……?」

P「……信じるよ。この手紙をもらってなお、親父は許せないけれど。俺は雪美ちゃんが妹だって事は、信じる」

雪美「よかった……」

P「……ええと、それで。雪美ちゃん」

雪美「雪美」

P「……雪美ちゃん」

雪美「私……妹……呼び捨て……」

P「……雪美」

雪美「何……?」

P「雪美の目的は……その、達成、したんだよな?」

雪美「うん……」

P「それじゃあ、ええと、その、凄い聞きづらいんだけどさ。帰る予定はいつになるのかな?」

雪美「……?」

P「いや首を傾げられても」

雪美「……帰らない……よ?」

P「えっ?」

雪美「兄妹は……家族は……一緒に暮らす……当たり前……」

P「……まさか俺の家に?」

雪美「最初から……そのつもり……」

P「……一度、雪美のお母さんと電話させてもらえるかな?」

雪美「うん……」

P「はい。もしもし……はい。ええと……初めまして」

P「はい。……そう、なりますね。雪美の、兄の、Pと申します」

P「あっ、はい。声が似てるですか……ど、どうも」

P「雪美ちゃんは……そうですね。今、俺の家にいます」

P「……その、一緒に住む、と彼女が言っているのですけれども」

P「ええと……お母様はその件については了承していらっしゃる……のですか?」

P「あ、了承していらっしゃる……そう、ですか……」

P「……あの……つかぬことをお聞きしますが……俺を、どうして何一つ疑わないんですか?」

P「親父の息子だから……ですか……」

P「……そんなに親父は……ああいえ、なんでもありません」

P「……わかりました。雪美は、うちで預かります」

P「はい。では……」

P「……親父何者なんだよ」

雪美「……終わった……?」ヒョコ

P「え、ああ、うん。雪美はしばらくうちで預かる事になった」

雪美「一緒に……住んで……いい……?」

P「……そう、だよな。うん。兄妹だし、家族、だもんな。何もおかしな事なんてないよな」

P「突然マンションの隣の住人がいきなり小学校高学年の女の子連れて、『妹です』って言ってもおかしくなんて……」

P「……近辺の人にはちゃんと事情を説明しておこう」

雪美「……」ソワソワ

P「ああごめんな。楽にしていいよ……っつっても、男が今まで一人暮らししてた部屋だから難しいか」

雪美「ううん……男の人にしては……綺麗……お父さんの部屋……紙でいっぱい……」

P「あー。乱読家な上に書類をまともに片付けない人だったからなー……」

雪美「……今日から……ここ……私と……お兄ちゃんの……家……」

P「……まぁ、そうなるな」

雪美「兄妹……家族……私たち……ずっと……一緒……」

P「ずっと一緒かどうかはさて置いて……これからよろしくな。雪美」

雪美「うん……お兄ちゃん……」

P「……」

雪美「……」

P「……」

雪美「……」

P「(気まずい……兄妹って、普段どんな風に暮らしてるんだ……?)」

雪美「……あ」

P「え?」

雪美「そろそろ……ご飯……」

P「もうそんな時間か。雪美が来たのが夕方だったからすっかり油断してた。ちょっと待ってな。なんか作るから」

雪美「大丈夫……私……作る……」

P「作れるのか?」

雪美「花妹修行……してきたから……!」メラメラ

P「は、はないもしゅぎょう……?」

雪美「お兄ちゃんは……すていしてて……大丈夫……」

P「そんな犬みたいに言われても」

雪美「……はうす?」

P「いやここ俺の家だから……」

雪美「違う……」

P「あー……ごめんな。俺と、雪美の家だから」

雪美「……♪」

P「でもやっぱり心配だし、見てて危なそうだったりしたら手伝うからな」

雪美「心配……ないのに……」

P「……実は別の心配事がもう一つあってさ」

雪美「材料確認……」ガパ

P「あー……やっぱりか。昨日お隣の高森さんからもらったカレーが残ってるだけか」

雪美「……大丈夫」

P「え?」

雪美「妹の……私にかかれば……大丈夫」

P「いやでも残り物のカレーとご飯しかないぞ……? カレーあっためれば……」

雪美「甘い……お兄ちゃん……」ゴゴゴ

P「お、おう……」

雪美「カレーは……少し……手間を加えれば……美味しくなる……」

P「そうなのか」

雪美「だから……お兄ちゃんは……すてい……」

P「……わかったよ。なんか手伝いが必要だったら呼んでくれ」

雪美「必要ない……簡単……だから……」

―――10分後―――

雪美「愛妹料理……召し上がれ」

P「カレードリアか! 凄い美味しそうだな」

雪美「マヨネーズとか……チーズとか……乗せて焼くだけ……簡単」

P「なるほどなぁ……あちっと……うん、美味い! いつもと違うのもいいな」

雪美「嬉しい……」

P「料理ができる妹かぁ……まさか、こうして妹ができるなんて思ってもみなかったよ」

雪美「私は……お兄ちゃん……知ってた」

P「そういえばそう言ってたな。どうして知ってたんだ?」

雪美「お父さんが……いつも話してた……」

P「……そっか」

雪美「それに……」

P「それに?」

雪美「……ううん……なんでもない……」

P「何でもないって……」

雪美「秘密……」

P「……うーん」

雪美「……次は……お風呂……?」

P「ああそうだそうだ。雪美は着替えは持ってきてるのか?」

雪美「今は……この服……代え2枚……妹用2枚……あとパジャマだけ……あとで……お母さん……送ってくれる……」

P「なるほどな。そのうち買い物とかにも行かないとな(妹用……?)」

雪美「買い物……兄妹で……?」

P「もちろんだ。じゃあお風呂の順番だけど……」

雪美「私……後でいい……」

P「……世間体的にもそっちのがいいな。じゃあごめん、先に入らせてもらうわ」

雪美「うん……ごゆっくり……」

―――風呂場―――

P「……ちょっと今日は最後に一発でかいのが飛んできたなぁ……」

P「妹……妹、かぁ……」

P「突然言われてもわかんねぇよなぁ……そのうち自然に話せるようになるのかなぁ……」

P「……家族って、何だろうなぁ」

雪美「私と……お兄ちゃんの事……」

P「いやそれはそうなんだけどさ……」

雪美「大丈夫……今度は……離れない……」

P「え? 今度はっとっちょっ?!」

雪美「……」

P「なんでいるんだよ?! しかもスク水で!!」

雪美「兄の……背中……流す……妹の仕事……」

P「違うから! どこからそんな知識持ってきたの!?」

雪美「……秘密」

P「親父だろどうせ?!」

雪美「痛くはない……と思う……」

P「……はぁ。えっと、雪美そういう問題じゃなくてね。妹っていうのは普通そこまでしないんだよ」

雪美「……しないの?」

P「しないよ」

雪美「……練習……したのに」

P「残念ながら無駄になっちゃったね」

雪美「無駄か……どうかは……私が……決める……!」

P「そんなスポンジ構えながら少年漫画の決め台詞みたいに言われても」

雪美「だめ……?」

P「ダメです」

雪美「どうしても……?」

P「どうしても」

雪美「兄妹……なのに……?」ウルウル

P「うぐっ……だ、ダメなんです。おもにお兄ちゃんの事情で」

雪美「家族……なのに……?」

P「……」

雪美「……お兄ちゃん……?」

P「……はー。わかったよ。今回だけ、雪美にお願いするよ。……家族、だもんな」

雪美「うん……頑張る……」

P「(……結局のところ、俺は家族という存在がよくわからないんだ)」

P「(だから、俺には言葉での線引きがわからない。距離感も、よく知らない)」

P「(家族という言葉を使われたら、なんでも許してしまう)」

P「(家族って……何だろうな……少なくとも風呂場で兄の背中をスク水で流す妹という図は間違っている気がしてならない……)」

―――数十分後―――

雪美「……あがった」

P「……そっか」

雪美「……」

P「……」

雪美「……怒ってる……?」

P「え?」

雪美「……無理やり……背中……流した……」

P「ああいやそれは別に気にしてない……けど、今回だけだからな」

雪美「うん……わかってる……妹の仕事……じゃない……」

P「ちょっと、目の前に大きな問題があってな」

雪美「問題……?」

P「ああ。俺には難しいのかちっとも解けやしないんだ」

雪美「どんな……問題……?」

P「……さっきも言ったんだけどさ。家族って、何だろうって」

雪美「……私と」

P「雪美と俺っていうのはちょっと置いといて。他の、たとえば雪美と雪美のお母さんだったらどうだ? 俺とはまた違うだろ?」

雪美「……うん」

P「だけど、それもまた家族だろ? だったら家族って何だろうなって思って……」

雪美「……家族は……」

P「ん?」

雪美「家族は……一緒……ずっと……一緒……」

P「……」

雪美「私は……お兄ちゃんとも……お母さんとも……一緒にいる……だから……家族……」

P「……雪美は頭がいいなぁ」

雪美「……そう……?」

P「ああ。俺は考えつきもしなかったよ。そっか……一緒にいれば、それはもう家族か……」

雪美「うん……」

P「……そういうので、いいんだよな。難しく考える必要なんてなかったんだ」

雪美「問題……解けた……?」

P「ああ。雪美のおかげでな。ありがとな」

雪美「お兄ちゃんを……助けられたなら……嬉しい……」

P「問題も解けたし、今日は寝るか……と思ったけど布団が一つしかないな……雪美」

雪美「……?」

P「俺はソファで寝るから、雪美は布団で寝てていいぞ」

雪美「……どうして……ソファ……?」

P「どうしてって……」

雪美「一緒に……寝る……」

P「……それはですね雪美さん。俺、またあの問題にぶち当たると思うんですよ」

雪美「寝る時も……一緒……家族……」

P「あーそういう……」

雪美「愛する二人は……いつも……一緒……」

P「それはやめなさい」

雪美「……だめ?」

P「……はぁ。ショウガナイナーキョウダケダゾー」

雪美「嬉しい……」

P「オレモウレシイナー……」

雪美「……ふふ」

P「(家族って……家族ってなんだよ……)」

P(子)「ねぇお父さん」

父「ん?」

P(子)「なんで僕には、お母さんがいないの?」

父「……それは」

P(子)「なんでおばあちゃんも、おじいちゃんも、ひいおばあちゃんも、ひいおじいちゃんも、おねえちゃんも、いもうとも、おにいちゃんも、おとうとも、いないの?」

父「……」

P(子)「なんでお父さんだけなの……?」

父「……ごめんな……息子よ」

P(子)「なんでお父さんが謝るの……?」

父「ごめんなぁ……」

P「っ……」

P「嫌な夢見ちまったな……」

雪美「……」ジッ

P「え、あ、おはよう雪美」

雪美「……お兄ちゃん」

P「な、何だ?」

雪美「泣いてる……」

P「え? あれ?」

雪美「怖い夢……見た……?」

P「いや。これは……その」グシグシ

雪美「大丈夫……」ギュッ

P「雪美……?」

雪美「大丈夫……私は……ここにいるから……」

P「……」

雪美「……大丈夫……?」

P「……あ、ああ。うん。大丈夫……だから、手、もうさ」

雪美「……残念」パッ

P「……」

雪美「……朝ごはん……作る……」トテトテ

―――大丈夫? お母さん、いないんでしょう?

―――大丈夫? お父さんは仕事でいないんだっけ。

―――大丈夫? お前一人でさ……

―――ねぇ、大丈夫?

―――大丈夫……私は……ここにいるから……

P「ここにいるから……か」

P「さて、俺も準備しないとな……」

―――数十分後―――

P「そういや雪美、学校はどうするんだ?」

雪美「お母さん……転入の手続き……してくれてる……」

P「じゃあしばらくは俺がいない間は、この家を任せる事になるな」

雪美「お兄ちゃんと……私の家……守る……」グッ

P「……うん。頼んだ。それじゃあ行ってきます」

雪美「行ってらっしゃい……」

雪美「……」

雪美「ベッドの下……」ジッ

雪美「ない……」

雪美「……本棚?」

―――学校―――

P「なんかすげぇ嫌な予感がする」

杏「気のせいでしょ」

P「そうかなぁ」

P「ただいまー」

雪美「おかえりなさい……」トテトテ

P「っ」ビクッ

雪美「……?」

P「あ、ああごめん。驚いちゃって……いつもは返事なんてないからさ」

雪美「……そっか」

P「それより……なんか随分部屋が綺麗になってるんだけど……」

雪美「私……掃除も……得意……」

P「そっかー……ところでさ」

雪美「何……?」

P「随分、本棚の配置が変わってるなーって」

雪美「……燃やした……から」

P「何を?!」

雪美「不適切……書物……」

P「ちょ、ちょっと待ってや雪美さん。そもそもなんで本棚だってわかったの?」

雪美「……お父さんと……一緒」

P「クソ親父ィィィィィイイ!!!」

雪美「大丈夫……少しは……残した……理解ある……妹……」

P「そんなとこで理解得られても困るんですけどねぇ!」


P「うわ妹系のやつしか残ってねぇ……二度と使わないと思うけど……」

雪美「ごはん……食べる……?」

P「んーまだいいかな……」

雪美「……お風呂?」

P「それもまだ早いなー」

雪美「……私?」

P「それは俺が捕まっちゃうなー……」

雪美「……」

P「……テレビでも見るかぁ」

雪美「……」トテトテ

P「ん」

雪美「……」ポス

P「……雪美さん?」

雪美「お兄ちゃんの……膝の上……妹の……特等席……」

P「仕方ないなぁ」

雪美「ふふっ……」

P「……」

雪美「……」

P「……」ナデナデ

雪美「ん……」

P「嫌かな?」

雪美「嫌じゃ……ない……」

P「ならよかった……まだ全然ありがとう言えてなかったからさ」

雪美「お礼……いい……」

P「言わないのは俺が嫌なんだ。ご飯とかも作ってもらってるし、部屋の掃除もしてもらった」

雪美「全部……お兄ちゃんの……ため……」

P「……ありがとな、雪美」

雪美「……うん」

雪美「……また……」

P「ん?」

雪美「頭……撫でてほしい……」

P「……もちろん」

雪美「ふふ……」

P「そうだ。明日は休日だし、どこかに出かけようか。どこがいい?」

雪美「……」

P「すぐには思いつかないかな」

雪美「……ペットショップ……」

P「ペットショップ? 動物好きなのか?」

雪美「猫……好き……」

P「んー……少し遠出して買い物ついでにショッピングモールまで行ってみるか」

雪美「うん……!」

P「必要なものは……やっぱ着替えとか生活用品、布団とかも必要だよな……」

雪美「お兄ちゃんと……お出かけ……」ウキウキ

P「……そんなに嬉しいか?」

雪美「嬉しい……凄く……」

P「ならよかった」

雪美「……あと……寄って欲しい場所……ある……」

P「どこだ? ショッピングモールから遠い場所は……」

雪美「大丈夫……私の家……ショッピングモール……近く……」

P「そうだったのか?」

雪美「うん……じゃないと……一人で来るの……無理」

P「そういやそうか」

雪美「色々……持ってきたい……」

P「わかった。帰りに寄って行こう」

雪美「ありがとう……」

P「お礼を言われるほどじゃないよ」

雪美「ううん……お兄ちゃん……優しい……」

P「優しい? 俺が?」

雪美「突然来た……私……受け入れてくれてる……妹として……どうして……?」

P「……それは」

雪美「……」

P「……なんでだろうな。納得する答えが見つからないけど……でも……」

雪美「でも……?」

P「雪美の言葉を借りるなら……一緒にいたいって思ったんじゃないか?」

雪美「……家族」

P「うん……家族になりたいって……思った。思ったんだよ」

雪美「……大丈夫……今度は……ずっと……家族……」

P「……この前も、そう言ってたけど」

雪美「お風呂……入る……」

P「雪美。俺さ、もしかして」

雪美「……」トテトテ

P「あ……」

P「……もしかして……俺、雪美に会った事がある……?」

―――翌日 ショッピングモール―――

雪美「……」キラキラ

P「……雪美、ここ来るのもしかして初めて?」

雪美「ううん……お母さんと……」

P「その割には凄く楽しそうにしてるけれど……」

雪美「来たの……前だから……それに……今は……お兄ちゃんと……一緒……」

P「……なら、楽しい思い出にしなきゃな」

雪美「……♪」

P「そうだ。手、繋ごう。迷子になっても困るし」

雪美「うん……!」ギュッ

P「まずは何を見に行こっか」

雪美「……お兄ちゃんの……見たいもので……いい」

P「いや今日は雪美のために来たんだし、雪美が決めていいよ」

雪美「……本」

P「本か。じゃあ行くか」

雪美「人……いっぱい……」

P「休日だからなー……しっかり手、握ってるんだぞ」

雪美「……」コクリ

P「何の本買うんだ?」

雪美「猫の……」

P「雪美は本当に猫が好きなんだなぁ」

雪美「可愛い……好き……」

P「なんで猫が好きになったんだ?」

雪美「……きっかけ……秘密」

P「また秘密か」

雪美「大丈夫……すぐわかる……」

P「わかるって……」

雪美「ねーこー……」グイグイ

P「(誤魔化し方下手だな……)」

―――書店―――

P「猫の本は……」

雪美「こっち……」グイ

P「場所知ってるのか?」

雪美「うん……変わって……ないなら……わかる……」

P「本当に猫好きなんだなぁ……」

雪美「ここ……」

P「……猫の本って、飼い方の本の事か」

雪美「うん……」

P「猫飼ってるのか?」

雪美「……」フルフル

P「家が厳しいとか?」

雪美「お母さん……動物……苦手……」

P「それは仕方ないな……」

雪美「だから……本……見てるだけ……」

P「……」

雪美「いつか……飼う……」

P「……そうだな。勉強しておくのはいい事だ」

雪美「名前も……決めてある……」

P「どんな名前だ?」

雪美「ペロ……」

P「……ペロ?」

雪美「うん……」

P「(どっかで聞いた名前だな……ありふれた名前だし、当たり前か)」

雪美「色は……黒……」

P「不吉じゃないか?」

雪美「ペロ……不吉……?」

P「いや、雪美が好きならそれでいいよな。あくまで迷信だし。俺もいいと思うぞ、黒」

雪美「本当……?」

P「ああ。雪美に似合いそうだし」

雪美「似合う……やっぱり……」

P「雪美はお嬢様って感じがするからなぁ」

雪美「……私の家……普通……」

P「雰囲気がだよ。膝の上で黒猫を撫でてるのとか絵になりそう」

雪美「……絵に……なる……お兄ちゃん……描くの……?」

P「それぐらい似合うって事さ。そうだ、もし何だったら、何冊か買っていくか?」

雪美「……いいの?」

P「ああ。俺からのプレゼント……つっても、親父の金だけどさ」

雪美「嬉しい……大事にする……」

P「そうしてくれると俺も嬉しいよ」

雪美「どれに……しよう……」

P「(今度学校行ったら杏辺りに、猫飼ってる奴いないか聞いてみるか……)」

雪美「……これ」

P「もう決めたのか?」

雪美「これ……ペロみたい……」

P「本当だ。黒猫のキャラクターが説明してるな」

雪美「これが……いい……」

P「他に見たい本とかあるか?」

雪美「特に……ない……」

P「ならそれ買った後は……ペットショップ、行ってみるか」

雪美「うん……!」

―――ペットショップ―――

雪美「猫……」キラキラ

P「子猫は可愛いなぁ……」

雪美「ぶち……みけ……」

P「黒以外も欲しくなってきたか?」

雪美「……欲しい……けど……」

P「けど?」

雪美「ペロは……やっぱり……黒……」

P「そこは雪美なりのこだわりってやつか」

雪美「うん……」

P「ちなみに他の動物はどうだ?」

雪美「……猫……」

P「自分の世界に入っちゃってるなこりゃ……」

雪美「あ……黒い猫……いた……」

P「本当だ。まだ生まれて三ヵ月だって」

雪美「ちっちゃい……」

P「俺の掌の上になら乗りそうだな」

雪美「……」ウズウズ

P「……触りたいのか?」

雪美「……」コクコク

P「うーん……すいませーん、ちょっといいですかー?」

―――数分後―――

雪美「……あったかい……」

P「すいません無理言って」

店員「流石に三カ月の子は難しいですけれど、触りたいというお客様もいらっしゃるので大丈夫ですよ」

P「よかったな、雪美」

雪美「うん……ふかふか……」

店員「お子さんですか?」

P「あ、いえ……妹です」

店員「随分お歳が離れていらっしゃるんですね」

P「まぁ……母違いの妹というやつで」

店員「あっ……それは失礼しました」

P「いえ、大丈夫ですよ。俺は気にしてないんで」

店員「そうですか……ではごゆっくり」

P「はい。わざわざありがとうございました」

雪美「ありがとう……ございます……」

P「(母違いって言うのは少し緊張したけど……周りの反応なんてこんなもんか)」

雪美「もふ……もふ……ふふっ」

P「(雪美が楽しそうだし、俺はそれでいいや)」

雪美「……」ナデナデ

P「それにしても凄い落ち着いてるのなその子」

雪美「もしかして……眠い……?」

P「のかもな」

雪美「なら……ばいばい……」

P「いいのか?」

雪美「うん……もう十分……これ以上は……欲しくなる……」

P「……雪美はいい子だな」ナデナデ

雪美「ん……」

P「また来ような」

雪美「うん……!」

―――数時間後―――

P「基本的なものは大体買い揃えられたかな……それにしても親父、こんなお金どこで……」

雪美「荷物……平気……?」

P「これぐらいは大丈夫。重いものとかは家に送ってもらう事にしたし」

雪美「このまま……私の家……」

P「荷物持ったままだと失礼になるかな……雪美の家は、こっから電車使うか?」

雪美「ううん……歩いて……行ける……」

P「なら駅のコインロッカーに荷物を預けてから向かうか」

雪美「……お兄ちゃん」

P「何だ?」

雪美「私の家……お父さんの部屋……入って……」

P「そりゃ……なんで?」

雪美「見せたいもの……ある……」

P「見せたいもの……?」

雪美「うん……私と……お兄ちゃんの……大事なもの……」

P「……なぁ。俺と雪美、前に会った事……あるよな?」

雪美「……秘密」

P「また秘密か」

雪美「私の家……来れば……わかる」

P「……わかったよ。それじゃあ急ごう。日が暮れてからお邪魔するのはしのびない」

雪美「……うん」

―――雪美の家―――

P「本当に俺と同じ名字だ……」

雪美「……お母さん」コンコン

P「インターホン押すか?」

雪美「大丈夫……お母さん……来る……」

雪美母「あら、雪美? お帰りなさい。忘れ物?」

雪美「そう……あと……お兄ちゃん……」

雪美母「お兄ちゃん……って、あら」

P「あ……えっと……初めまして。先日は電話越しでしたけれど、雪美の兄のPです」

雪美母「あらあら……。雪美の母です。娘が先日からお世話になっております」

P「いえいえこちらこそ……親父がご迷惑をかけたみたいで」

雪美母「迷惑なんてとんでもない。あの人にはお世話になりっぱなしのままで……」

P「え……?」

雪美母「立ち話も何ですから、入っていってください。雪美も、ちゃんと服とか選んでおきなさい」

雪美「わかった……」

P「は、はいお邪魔します」

雪美母「それにしても……少し驚いてしまいました」

P「驚いた、ですか?」

雪美母「はい。あの人にとても似ているんですもの」

P「……そう、ですか」

雪美母「……もしかして、お父さんの事、嫌い?」

P「……」

雪美母「……しょうがないですよね。実際、不倫のようなものですから」

P「それは……ええと……」

雪美母「でも、これだけは覚えていてください。あの人は、あなたを何よりも愛していました」

P「……」

雪美母「じゃないと、【家族】を残すだなんて発想には至らないでしょう」

P「……わかっては、いるのですが」

雪美母「それに、私達はそれに合意したんです。ですから、悪いのはあの人だけでなく、私たちも悪いのです」

P「……困ります。そういう言われ方をされてしまうと……」

雪美母「ごめんなさい。意地悪だったかしら」

P「いえ……雪美のお母さんも、親父を愛していたという事は……理解、できましたから」

雪美母「……難しいかもしれませんが、どれだけかかっても構いません。あなたのお父さんの事を、いつか、赦してあげてください」

P「……はい」

雪美母「それではこの話は終わりにしましょう。雪美は何か迷惑をかけたりしていませんか?」

P「え、あー……その……雪美は、妹というものをどこかズレて認識しているような……感じが……」

雪美母「具体的には?」

P「……風呂に乱入してきたり……」

雪美母「殿方はそうすると喜ぶとは教えましたけれど……本当にするとは思いませんでした」

P「はい?」

雪美母「あの、もしかしてノリで持たせてしまったメイド服も着ちゃいました?」

P「いえ、それは見てませんが」

雪美母「よかったです。あれはマンネリ化を防ぐための切り札として持たせましたから」

P「ちょっと待ってください。雪美に変な入れ知恵をしたのはあなたですか?!」

雪美母「変な入れ知恵といいますか……やっぱり、妹という強みは最大限に生かすべきだと私は思うのです」

P「あなた自分の娘に対し何をさせようとしていたんですか?!」

雪美母「知っていますか? 国によっては妹でも結婚できるんですよ?」

P「知ってますが! え、何ですか?! 俺と雪美に恋仲になれと!?」

雪美母「今は流石に難しいですけれど……ゆくゆくは、そうなればいいなと思って色々アタックの仕方を……」

P「何してるの本当に?!」

雪美母「だって……私、息子も欲しかったんですもん……」

P「もんじゃないですよ……あのですね……」

雪美母「何より……ライバルが、余りにも多すぎますし……」

P「……はい? ライ、バル?」

雪美「……お兄ちゃん」グイ

P「お、おう? ちょっと待ってな雪美。今俺は雪美のお母さんと俺の今後にかかわる重要な話し合いをして―――」

雪美「お父さんの部屋……来て」

P「……雪美?」

雪美母「……もしかしてですけれど……なるほど、そういう……確かにそれでしたら、あの人の部屋に行くのがよろしいと思います」

P「いやそれよりも」

雪美母「きっと、あなたにとって一番重要な真実がそこにありますよ」

P「……は、はい」

―――書斎―――

雪美「ここ……」

P「うわー……やっぱ本だらけだなぁ」

雪美「お父さん……本の虫……」

P「確かにその通りだな……それで、見て欲しいものって?」

雪美「その前に……確認……」

P「確認?」

雪美「……本当に……覚えて……ない?」

P「……覚えてないと聞くって事は、やっぱり俺、雪美と会った事あるんだな?」

雪美「……うん」

P「いつだ? 俺はいつ、雪美に……」

雪美「6年前……」

P「……6年前っていうと……雪美は……」

雪美「4歳……でも……私……はっきり……覚えてる……」

P「……」

雪美「お兄ちゃん……いつも……私……守ってくれた……」

P「……なぁ、雪美。もしかして、その時……今と名字……違った……?」

雪美「……佐城」

P「っ……ま、待ってくれ。その時、髪、短かった……よな?」

雪美「……うん」

P「黒猫のキャラクター……ストラップ……あげた、んだよな。俺が、引っ越すときに」

雪美「……うんっ……」

P「だから、黒猫が好きで……」

雪美「今もずっと……大事にしてる……」

P「……名前は……ペロ……」

雪美「……やっと……思い出して……くれた……」ギュッ

P「雪美……そっか……雪美はずっと……ヒントを出し続けてくれたんだな」

雪美「よかった……思い出して……くれなかったら……私……」

P「……ごめんな。雪美」

雪美「いい……思い出して……くれたから……」

P「でも、その時は妹なんて一言も……普通に友達として、遊んでたような……」

雪美「お父さんから……言わないようにって……」

P「別に教えてくれても」

雪美「引っ越し……決まってた……から」

P「……ああ、そっか。引っ越して、みんなと別れるのが嫌で俺、思い出さないように……みんな?」

雪美「……ちっ」

P「え、雪美何今の」

雪美「……何でも……ない……」

P「いや今明らかに舌打ち」

雪美「……お兄ちゃん……みんなまで……思い出した」

P「みんな、そう、みんなだよな。俺、その頃雪美も合わせて色んな子と遊んでた気がするんだ。それこそ、兄妹とか、家族みたいに……だから別れるのが凄い嫌で……」

雪美「見せたいもの……お父さんの……アルバム……」

P「親父のアルバム……」

雪美「……覚悟……いい……?」

P「……なぁ雪美さんや」

雪美「……」

P「俺……何人、妹、いるの?」

雪美「……写真」

P「……」

雪美「……」

P「……」

―――玄関先―――

雪美母「あらあら、お帰りですか?」

P「……はい」

雪美母「……その様子だと……思い出しちゃいました?」

P「……はい」

雪美母「アルバムで確認した感じだとー……少なくともあと十人くらいはいると思います」

P「……はい」

雪美母「でも、雪美が一番最初にあなたに辿り着いて、一番最初にあなたの妹になったのだけは忘れないでくださいね」

P「……はい」

雪美「……最初の……妹……」

P「……うん」

雪美「……ふつつかもの……よろしく……お願いします……」

P「……あの、最後に一つだけ尋ねてもいいですか」

雪美母「はいなんですか?」

P「あの子の母親達も……納得は、してるんですよね」

雪美母「……はい。それはもちろんです」

P「それを踏まえた上で言わせてもらっていいですか」

雪美母「吐き出さないとやってられない事って、ありますからね。どうぞ」

P「……末代まで呪ってやる……」

雪美母「あらあら、それだと呪われる側になっちゃいますね。ふふっ」

―――その日の夜 P宅―――

P「……すげぇ疲れた」

雪美「……ごめんなさい」

P「いや、雪美が謝る必要はないよ……あのクソ親父……」

雪美「……」

P「……これから、どうしようかな」

雪美「他のお姉ちゃん……妹……来るかも……」

P「それは……困るな……色々……」

雪美「……私……出て行く……?」

P「……え? なんで?」

雪美「他の人も……住む……ここ……狭い……」

P「もし仮にそうなったとしても、雪美が出て行く筋合いなんてないよ」

雪美「……本当?」

P「形はどうあれ、雪美は妹だからな」

P「一緒にいたいって、思ったんだよ」

雪美「私……家族……?」

P「……うん。そうだな。雪美は俺の、大切な家族だ」

雪美「……嬉しい」

P「これからも……妹として……よろしくな、雪美」

雪美「うん……!」

P「とは言っても……流石に昨日今日で来るなんて事は」ピンポーン

雪美「……チャイム」

P「きっと宅配便か何かだよ。雪美の荷物が届いたんじゃないかな」

雪美「……その割には……静か……」

P「……マジ?」

雪美「……新しい、家族……」

P「……とりあえず行ってくる」



P「はーい。今出まーす……」

???「……」

P「……えーっと。君は、もしかして、だけど」



P「生き別れの妹……?」


おわり

原作ではあと18人姉か妹がいますが、暇な時間に書いていって少しずつ増やして行ければと思います。

では、ありがとうございました。

地の文があり、作風も全く違いますが過去作も宜しければご一読ください。

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?「フフーン!生き別れのカワイイ妹が来ま」

P「チェンジ」バタンッ

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