エリカ「犬みたいなもんだからしょうがないわよね」 (35)

最初は、妬みと軽蔑だった――

みほ『し、新入生の、西住みほです。よ、よろしくお願いします……』オドオド

エリカ(なんて頼り無さげな……どうせ妹ってだけで贔屓されてきた口でしょ……)

でも、その印象は段々と――

みほ『このまま前進して敵フラッグ車を追い詰めます。パンツァー・フォー!』

エリカ(……戦車に乗ってる時はしっかりしてるのね。実力もあるし――)

マイナスからプラスへと――

みほ『今日の模擬戦、逸見さん達の陽動のおかげでスムーズに動けました。ありがとうございます』ニコッ

エリカ『……ど、どういたしまして』

エリカ(敵だけじゃなく味方の細かい動きまで、全て把握してたの……?)

心からの信頼、そして尊敬へと――

まほ『本日付けで、お前達を副隊長に任命する。一層奮励努力するように』

みほ『頑張ろうね、エリカさん!』

エリカ『ええ、私達で隊長をしっかり支えていきましょう』

変わっていった――

―――――――――――――――――――――――――――――――

※シリアスの皮を被ったガルパンSS

※野球ネタ多し

※キャラ崩壊&ネタ被り上等

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459003277

戦車道新聞
【黒森峰 継続に勝利!
西住姉妹の活躍で熱闘を制す】

サンケイ戦車道
【家元不敵! 007歓迎、姉妹の弱点探して】

日刊戦車道
【Vやねん!黒森峰 10連覇待ったなし!】


みほ『――また私とお姉ちゃんの名前だけ……エリカさんもあんなに活躍したのに……』パサリ

エリカ『いいのよ、私は』

エリカ(私は縁の下の力持ちで構わない)

エリカ(ずば抜けた、私なんかとは比べ物にならない才能の持ち主である西住姉妹)

エリカ(2人が存分に力を奮えるよう、サポートするのが私の役割)

エリカ(私だけに与えられた、私にしかできない役目)

エリカ(誰にも、この居場所は譲らないわ)


そう、信じていた――

戦車道新聞
【プラウダ大逆転優勝! 黒森峰の10連覇阻む】

サンケイ戦車道
【悪夢の敗退、戦犯は西住妹?】

日刊戦車道
【プラウダ奇跡の逆転V特大号】


エリカ『ふざけんじゃないわよッ! みほの気持ちも知らないで、手のひら返しして好き勝手書いてくれちゃって……!』ビリビリビリ

まほ『エリカ……』

エリカ『隊長、みほは!? あの子、きっと落ち込んで……そばに居てあげなきゃ――』

まほ『みほは転校した』

エリカ『――――は? た、隊長……? な、に、言って――』

まほ『……本人の希望で、戦車道クラスの無い大洗女子学園へ――』

エリカ(――――みほ……)

かけがえの無い戦友を失った喪失感

戦車道界から大きな才能が消えた絶望

失意の中で全てを捨てざるを得なかった親友への同情

胸に去来する数々の感情は、しかし1つの思考に押し流された。


エリカ(なんで……なんで私に何も言わずに行ってしまうのよ……! 私達の関係は、その程度の――)


激しい、身を焼くような怒りだった。

積み上がったプラスは、崩れ落ちるようにマイナスへと逆転した。


そして、あの日――


みほ「エリ……逸見さん……」


戦車喫茶で、友人と楽しそうに談笑するみほ。

エリカ(――ふざけんな)

エリカ(ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなッ!)

奴等の前で平静を保てたのは奇跡だった。

その後、隊長に担がれるようにして黒森峰に帰り着くまでの記憶は無い。

私の中で渦巻いた感情が、怒りか、はたまた悲しみか、それは分からない。

鏡の中の私は、目は真っ赤に腫れ上がり、噛み締めた唇からは血が滴っていた。


エリカ(大洗は――アイツだけは絶対に叩き潰す……ッ!)


でも、私が惚れ込んだ彼女は、強かった。


亜美『大洗女子学園の勝利!』


優勝旗を掲げる彼女は紛れもなく、有能で、皆に頼られる、優れた隊長だった。


エリカ(――黒森峰の次期隊長は、誰が何と言おうと、アンタ以外無かった)

エリカ(私は、副隊長としてアンタを――みほを支えていくつもりだった)

エリカ(そして2人で一緒に、史上最強の黒森峰を作り上げて、再び頂点に立つ)

エリカ(それが、私の夢だった……!)

まほ『エリカ……』

エリカ『…………だいぢょう』ズビビ

まほ『……次期隊長の件だが、エリカ、お前が適任だと私は思う』

エリカ『ズズッ…………私には、その肩書きは重すぎます』

まほ『これはチームの総意でもある。皆、エリカならやれると思って――』

エリカ『私には無理です! 隊長や……アイツみたいには出来ない……』

まほ『……みほは大洗で、西住流ではない自分の戦車道を見つけた』

まほ『エリカ、お前もこれからお前だけの戦車道を見つければいい。私やみほに縛られる必要は無いんだ』

エリカ(違う……そうじゃないんです隊長……)

エリカ(私はあなたに憧れ、アイツに惚れ込んだ)

エリカ(ただあなた達の一番近くで、共に立ち、共に戦いたかった)

エリカ(ただ、それだけ。それしかないんです、私には)


私は隊長のポストを固辞するつもりだった。

しかし、それを隊長に伝えようとした矢先――




  秋の日の

  ヴィオロンの

  ためいきの

  ひたぶるに

  身にしみて

  うら悲し




まほ『……エリカ、お前は――』

エリカ『私も行きます! 行かせてください!』

私を捨てたアイツが、私以外の奴等と築き上げた、私とは無関係な居場所を守るために――

私は再び、アイツの下で戦った。

亜美『大洗女子学園の勝利!』

カチューシャ『やったわミホーシャ! っわっとっと……!? ちょっとアンタ! しっかり私を支えなさいよ!』グラグラ

エリカ『……みほ……っ』グスッ


嬉しかった。

勝利をこんなに嬉しく感じるなんて、いつ以来だろうか。


エリカ(やっぱり私は、みほと一緒に戦いたい……!胸を張って堂々と、並んで立っていたい!)

エリカ(その為に、今の私はどうするべきなのか――)


私はその日の夜、次期隊長就任の辞令を拝命した。



そして、2年後の春――

~早稲田大学学園艦~

みほ「えーと……戦車道部の部室は……」ウロウロ

「こっちよ!」

みほ「あっ、ありがとうございます――ってああっ!」

エリカ「久しぶり。高校最後の大会の決勝以来ね」

みほ「エリカさん! エリカさんもここだったんですか! すごい偶然――」

エリカ「偶然なんかじゃないわ」

みほ「えっ?」

エリカ「あなた、戦車道推薦で入ったでしょ? 私も同じ」

みほ「確かに、エリカさんなら、全国で一番基準の高い早稲田の戦車道推薦枠も貰えるよね」

エリカ「……みほが早いうちから早稲田に声掛けられてたのは、まほ先輩から聞いてたわ」

エリカ「だから私は、同じ早稲田の推薦枠をもらうために、死に物狂いで腕を磨いたの」

みほ「なんでそこまで私と――」

エリカ「夢を叶える為よ。ずっと前から願い続けた、私の大きな夢を……ね」

さらに3年後――


みほ「エリカさん!」

エリカ「OK!」

ギャリギャリギャリ!

みほ「5時の方向から来ます!」

敵「Huraggu itadaki daze!」ズガーン

エリカ「させるもんですか!」ギャリッ

ドゴーン シュパッ

敵「Tate ni natta dato!?」

みほ「華さん今!」

華「はい!」

ドゴーン シュパッ

敵「Kuso!」

実況『決まったああああ!! 大学日本代表の優勝!』

実況『今年大学日本一に輝いた早稲田の隊長・副隊長の抜群のコンビネーションで試合を決めました!』

みほ「やった……!」

エリカ「みほぉ!」ダダッ

みほ「エリカさん!」ダキッ

エリカ「やったわ! やったのね私達!」キギュッ

みほ「世界一だよ! 世界一!」ピョンピョン

優花里「みほ殿はすっかりエリカ殿と仲良しコンビですね」

沙織「せっかく高校以来のあんこうチーム再結成なのにー」

華「良いではないですか、微笑ましくて」

麻子「高校時代のツンツンっぷりが嘘のようだな」

みほ「エリカさーん!」

エリカ「みほー!」


私の夢は叶った。

――けれど、私達の物語は、これで終わりではない。



~グランドプリンスホテル新高輪~


司会「それではこれより、日本プロフェッショナル戦車道リーグ、新人選手選択ドラフト会議を開催いたします」


~早稲田大学記者会見場~

みほ「いよいよだね……はあ緊張する……」

エリカ「みほは絶対に呼ばれるんだからどっしり構えてなさいな」

みほ「エリカさんだって。呼ばれないわけがないよ」

エリカ(私もみほも、当然プロ志望。いくつかのチームのスカウトとも色々話をしたりした)

エリカ(いくら大学世界一の称号を手にしたとしても、プロの世界に飛び込めば一人の新人)

エリカ(もちろん不安はある)

エリカ(でもきっと、私達なら大丈夫)

司会『それでは、各チームの第一順選択希望選手の発表に移ります』


司会『第一順選択希望選手・横浜プラネッツ
………………ローズヒップ 車長 神奈川大学』


アナ『横浜は地元の神奈川大学、快足自慢のローズヒップを指名!』



司会『第一順選択希望選手・東北コンドルズ
………………西住 みほ 車長 早稲田大学』


アナ『東北は世代ナンバーワンの呼び声高い西住みほ!』



みほ「ああああ! 呼ばれた! 私の名前! どうしようエリカさん!」

エリカ「どうしようもなにも無いわよ! おめでとうよ!」

司会『第一順選択希望選手・名古屋ワイバーンズ
………………冷泉 麻子 操縦手 東京大学』


アナ『名古屋は注目の東大・冷泉!』



みほ「麻子さんだ!」



司会『第一順選択希望選手・大阪バイソンズ
………………西住 みほ 車長 早稲田大学』


アナ『西住ここで競合確定!』



みほ「あわわわわわ……」

エリカ「落ち着きなさい! 多分まだくるわよ!」

司会『第一順選択希望選手・広島イール
………………西住 みほ 車長 早稲田大学』


アナ『西住さらに3チーム競合!』



司会『第一順選択希望選手・埼玉パンサーズ
………………西住 みほ 車長 早稲田大学』


アナ『まだ増える! 西住4チーム競合!』



司会『第一順選択希望選手・兵庫ティーガーズ
………………西住 みほ 車長 早稲田大学』


アナ『兵庫もきた5チーム目!』

司会『第一順選択希望選手・千葉マリナーズ
………………ナオミ 砲手 サンダース大学』


アナ『千葉は大砲候補の呼び声高いサンダースのナオミ!』



司会『第一順選択希望選手・東京タイタンズ
………………五十鈴 華 砲手 慶應大学』


アナ『西住、冷泉に続き大洗女子出身からは3人目・五十鈴!』

みほ「五十鈴さんタイタンズだよ! 凄い!」



司会『第一順選択希望選手・北海道ソルジャーズ
………………冷泉 麻子 操縦手 東京大学』


アナ『東大・冷泉も競合!』

司会『第一順選択希望選手・東京ペンギンズ
………………西住 みほ 車長 早稲田大学』


アナ『ペンギンズも西住みほでなんと6チーム競合! 昨年の姉・西住まほの5チームを抜いて史上最多です!』

エリカ「去年は車長欲しいチームの指名がダージリン・カチューシャ・ケイ・ミカで割れたのよねー」

みほ「ううぅ……恐れ多すぎるよ……」



司会『第一順選択希望選手・福岡レイヴンズ
………………西住 みほ 車長 早稲田大学』


アナ『福岡も西住で最終的に7チーム競合! 車長が欲しいチームが横浜以外軒並み西住に入れた格好です!』


その後、麻子の指名権は北海道ソルジャーズが獲得し、みほの抽選へ――


司会『それでは、東北コンドルズからくじをお引きください』

エリカ「みほは特に希望チームとかあるの?」

みほ「どこでもいいけど……出来ればお姉ちゃんのいるペンギンズだったら嬉しいかな」

司会『……それでは、中を確認してください』

ペラ ヨッシャー!

アナ『ペンギンズの中真監督早々とガッツポーズ! 西住の指名権はペンギンズです!!』

エリカ「おおお!」

みほ「やったー! お姉ちゃんとチームメイトだ!」

ガヤガヤガヤ

アナ『……おや? 様子がなにか……ティーガーズの本金監督が何やら係員に確認をとっていますが……?』

司会『……えー、ただいま、確認のミスがございました。当たりくじを引いたのは、ティーガーズでした。大変申し訳ありません』

エリみほ「えええええええ!?」

アナ『どうやら中真監督が、外れくじの日本プロ戦車道機構のマークを「指名権確定」のマークと勘違いしたということのようですね』

みほ「なにそれ……」

エリカ「しっかりしなさいよもう!」

記者「西住選手! ただいまのお気持ちをお願いします!」

みほ「え、あ、は、はい……その、ちょっとゴタゴタしましたが、無事に指名を受けることが出来て安心しました」

みほ「ティーガーズでは開幕一軍を目指して、また本金監督を胴上げ出来るように一生懸命頑張ります」

エリカ(……みほはティーガーズか。あとは私がどうなるか……)

エリカ(まあ、4位くらいまでに呼ばれれば御の字って感じかしら)

エリカ(……願わくば、みほと同じ――)

みほ「エリカさんエリカさん!!」

エリカ「な、何よ!」

みほ「見てよほら!」


第一順選択希望選手・埼玉パンサーズ
………………逸見 エリカ 車長 早稲田大学


エリカ「――――!?」

みほ「エリカさんもドラフト1位だよ! しかもパンサーズ! やったね!」

エリカ「私が……1位……」

みほ「当然だよ! エリカさんだもん! おめでとう!」

エリカ「あ、ありがとう……」

みほ「でも……今度はまた高校の頃みたいに敵同士になっちゃうんだね……」

エリカ「――――」

エリカ(……何故かしら)

エリカ(嬉しいはずなのに、どこか喜べない私がいる)

記者「パンサーズに決定おめでとうございます逸見選手! 今のお気持ちは!」

エリカ「今の……気持ち――」

エリカ(私の気持ち……)

エリカ(私が、戦車道をやっているのは、プロになりたかったから?)

エリカ(そうじゃない、私は――)

エリカ「――まず、私を指名していただいたパンサーズの皆様、本当にありがとうございます。私の実力を評価していただき、本当に嬉しく思います」

エリカ「ですが――」

みほ「エリカ、さん……?」

エリカ「――――」

エリカ「――私は、パンサーズへの入団を拒否させていただきます」

みほ「えっ――」

記者「えぇーっ!?」

ドヨドヨドヨドヨ ザワザワザワザワ

記者「ど、どうしてですか!?」

エリカ「――私は、みほと同じチームでのプレーだけを希望します」

みほ「エリカさん……!?」

記者「つまりティーガーズを?」

エリカ「はい」

記者「しかし今年のドラフトではもう……」

エリカ「はい。ですから1年浪人しようと思います」

記者「ですが、それでも来年ティーガーズに指名されない可能性もあるわけですよね?」

エリカ「そうですね。その時は、どうしましょうか……その時考えます」

記者「はあ……ほ、本気なんですよね?」

エリカ「ちょっとストーカーみたいで気持ち悪いと思うかもしれませんが……」


エリカ「でもしょうがないですよね」ニッコリ

エリカ(その後、やっぱりメディアでは色々書かれたし、プロ戦車道界側では憤りの声も聞かれた)

エリカ(ネット掲示板では『レズリン』だの何だの呼ばれている)

エリカ(確かに私の決断は非常識だし、おかしいと思う)

エリカ(でも、私は全く後悔なんかしていない。これこそが、私が貫いてきた信念――私の戦車道だから)

エリカ(それに――)


みほ『エリカさんのこと、ティーガーズで待ってますね!』


エリカ(彼女が待っていてくれるなら、私は頑張れるから)




第一順選択希望選手・兵庫ティーガーズ
………………逸見エリカ 車長 早稲田大学卒



~おしまい~

~おまけ~

ダージリン「今年のカブスのベンチと掛けて」

ダージリン「みほさんの試合を観戦する私ととくわ」

オレンジペコ「『どちらもムネが踊っているわね』とでも仰るおつもりですか?」

ダージリン「…………」

オレンジペコ「…………」

ダージリン「……やるわね」

オレンジペコ「ペコっちです」

~おしまい~

読んでくだすった皆々様ありがとうございました。
レズリンがやりたかっただけなので前半のシリアスは全部ネタフリです。


今まで書いた女子達及び戦車↓
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