みほ「戦車に巣食う怨念」 (38)

それが始まったのは、いつも通りの練習中――

2チームに分かれての模擬戦の最中のことでした――

―――――――――――
※ガルパンSS

※ホラー描写注意。

※キャラ崩壊、公式設定との矛盾は気を付けてるけど、あったらメンゴ。

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-Ⅳ号戦車内-

沙織「ねぇみぽりん」

みほ「どうしました?」

沙織「私達さ、当たり前のように戦車に乗ってるけど、これって実際の戦争で使われてたものなんだよね?」

みほ「う、うん……」

優花里「突然どうされたんですか?」

沙織「いやいや、別に何でもないんだけどね。ふと気になったというか……」

優花里「はあ……まあ兵器は戦場で奮戦してこそ輝くものですから。特にこのⅣ号戦車は傑作ですから、活躍したものかもしれませんよ」

華「……本物の戦場では、特殊カーボンの保護も、戦車道用の砲弾もないんですよね」

優花里「まあ、ええ……」

沙織「……もし装甲を破られたら、とんでもないことになっちゃうよね」

麻子「さっきから何が言いたいんだ」

沙織「その……もしかしたら、昔戦争で、この戦車に乗ってた人が――」

華「……ここで戦死された方がいらっしゃるかもしれないと?」

沙織「う、うん……」

優花里「……この戦車がどのようなルートで大洗にやって来たのかは存じませんが……全くあり得ないとは言えませんね……」

麻子「やめろ! そ、そういう話はするな!」ガタガタ

みほ「そ、そうだよ! 今は練習に集中しましょう」

沙織「そ、そうだね!」

沙織「こちら隊長車。カモさんチーム、現在地はどこですか?」

『もう待ち伏せ位置で準備完了よ!』

沙織「アリクイさんチームは?」

『もうすぐ到着するにゃー』

沙織「了解。ウサギさんチームは?」

『…………』

沙織「ん? どうしたの? もしもーし!」

『……ガ……ガガー……』

みほ「ウサギさんチーム、聞こえたら応答してください。宇津木さん? 澤さん?」

『……ザー……ガガッ…………』

沙織「どうしたんだろう……通信機の故障かな……? メール送ってみるね」

みほ「お願い。でも一応……麻子さん、南西方向に進んでください。ウサギさんの様子を見に行きます」

麻子「了解だ」



『……ザッ…………ガー……』


-M3リー内-

紗希「…………」

あゆみ「ポルシェティーガー、まだいるよー……」

梓「とにかくここは隠れてやり過ごすよ。通信はまだダメ?」

優季「全然通じないよ~……」

あや「携帯は充電切れだしぃ……」

梓「どうしよう……予定の地点までもうすぐなのに……」

桂利奈「抜き足差し足で行く?」

梓「車高があるからこの木立から出たら見つかっちゃう……そしたら作戦が無駄になっちゃうし、通信出来ないから失敗したことも伝えられずにそのまま負けちゃう……」

優季「賞品の干しイモ貰えなくなっちゃう~……」

あゆみ「あれそんなに欲しい?」

桂利奈「……ねー、なんかさー」

梓「何?」

桂利奈「なんかー……鉄臭くない?」

優季「やだな~、戦車が鉄と油臭いのはいつものことだよ~」

桂利奈「そーだけどさー……なんかいつもよりキツくない?」

あゆみ「実は私もずっと思ってた。なんか変だなーって……」

紗希「…………」

DAAAAAN!!

梓「えっ!? あや! なんで撃ったの!?」

あや「えっ!? だって今『撃て』って言ったじゃん!」

梓「言ってないよ!」

優季「ほんとばかだな~あやは~」

あや「ほんとに言ったって!」

あゆみ「あー! ポルシェティーガーこっち来る! 気づかれた!」

梓「大急ぎで逃げて!」

桂利奈「あいー!!」

ギャギャギャギャァァ

紗希「…………」

あや「絶対言ったもん! 私聞いたよ! 『撃て』って言われたよ耳元で!」

梓「言うわけないって……そんなことは後! 今は後ろのポルシェティーガーを牽制して!」

あや「はーい……ってあれ? ねえ、後ろに何もいないよ?」

梓「えっ? ……ほんとだ……ポルシェティーガーがどこにもいない……? 桂利奈、止まって!」

桂利奈「あーい」

優季「レオポンさんどこいっちゃったの~?」

梓「分からない……向こうの戦略かもしれないけど……」

あゆみ「……それで、結局あやはなんで撃ったの?」

あや「だから『撃て』って言われたんだってば!」

「命令したのは梓でしょ!? なんで私が責められるの!?」
「だから私はそんな命令出してないよ!」
「ちょっと2人とも落ち着いて……」
「言い争いしてる場合じゃ……」
「大体、隠れてやり過ごそうとしてるのに普通撃たせるわけないじゃん! あやの馬鹿!」
「私もそう思ったけど命令されたら撃っちゃうでしょ!?」
「だから命令してない!」
「嘘つかないで!」
「痛い! やめて! やめてよ!」
「いいかげんにして!」
「やめてよ2人とも!」

梓「…………」

あや「…………」

あゆみ「もー……変だよ2人とも。どうしたの? いつもはこんなケンカなんかしないじゃん」

桂利奈「ほら! 仲直り!」

梓「……ごめんなさい、熱くなってた」

あや「私も……なんか無性にイライラして……ごめんね」

優季「も~、いくらムカついても暴力はダメだよ~」

梓「暴力……?」

あや「え……?」

優季「え? だってさっき『痛い!』とか『やめて!』とか言ってなかった? どっちか分からないけど~」

あゆみ「私も聞こえた」

桂利奈「うんうん」

梓「いや……私は何もされてないししてないけど……あやは?」

あや「私も別に……」

梓「もしかして、紗希?」

紗希「…………」フルフル

あゆみ「えっ……じゃあ、さっきの声……誰?」

ギャギャギャギャァァ

ウサギさんチーム『!?』

梓「履帯の音!?」

コンコン!

優季「だ、誰かが外からノックしてる……?」

梓「は、はーい?」

??「澤さん! 聞こえてますか? 大丈夫ですか?」

梓「この声は……」ガチャ

みほ「良かった……怪我はない?」

梓「隊長! はあ……びっくりした……」

あゆみ「通信機が通じないこと以外は問題ありません!」

みほ「そう……」ホッ

梓「それで、これからどうしたら……」

みほ「模擬戦は中止です」

梓「え? どうしてですか? 私達まだ――」

みほ「……レオポンさんチームのツチヤさんが意識を失って病院に搬送されたの」

梓「えっ――」

-病院-

ツチヤ「いやぁご心配おかけしまして」

スズキ「まったくだよ」

ナカジマ「ホントにびっくりしたよー」

ホシノ「ひとまず異常無くて良かったねぇ」

みほ「それで、一体何があったんですか?」

ツチヤ「いやー、それが私はほとんど何も覚えてなくてさー」

ナカジマ「大変だったんだから。あの時ねー……」

-回想・ポルシェティーガー内-

ホシノ「なんか見えるー?」

ナカジマ「いやーなんも。木が邪魔でさー」

ツチヤ「ラリーのコースにするにはロケーションばっちりだなぁ」

スズキ「いいねぇ」

DAAAAAN!!

スズキ「うわっ! 撃ってきた! どこから?」

ナカジマ「あそこだ! 3時の方向にM3リー!」

ホシノ「ツチヤ!」

ツチヤ「あいよっ! まてまてーぃ」

ギャギャギャギャッ

ナカジマ「こちらレオポン! ウサギさんチームを追ってるよー」

『りょーかーぃ……ザザッ……仕留められ……いいから……ガー……追い散らしと……深追い厳き……ザー……』

ナカジマ「ありゃー、無線が不調だなぁ。モーターのせいかなー。ホシノ、深追い出来ないから一発で仕留めてよー」

ホシノ「まかしといてー……ってあれ?」

ガガガガッ

ホシノ「ツチヤ? 道から逸れてるよ! そっちじゃないって……ツチヤ?」

ツチヤ「…………」

ナカジマ「ツチヤ! スピード落として! どこに向かってるの!?」

ツチヤ「……きゃ……なきゃ……」ブツブツ

ナカジマ「ツ、ツチヤ……?」

スズキ「なんか様子がおかしいよ……!」

ツチヤ「……やく……なきゃ……」グイッ カチッ

ブォオオオオン ギャギャギャギャァァ

ホシノ「うわぁあ!? モーターのリミッター解除した!?」

スズキ「ツチヤ! ツチヤってば! どうしたのさ!? しっかりしてよ!」

ナカジマ「……ッ! まずいよ!!」

ホシノ「どうしたの!?」

ナカジマ「もう数百メートルこのまま突っ走ると、演習場から飛び出して――海に飛び込んじゃう!」

ホシノ「えええっ!?」

スズキ「ツチヤ!! 止まって! でないと死んじゃうよ!」

ツチヤ「……きゃ……つから……なきゃ……」ブツブツ

ナカジマ「ツチヤ……さっきから何ぶつぶつ言ってるの……?」

ツチヤ「……なきゃ……なきゃ――」









――コイツカラ ニゲナキャ。






ナカジマ「っ!?」ゾクゥ

ホシノ「どうしよう……ツチヤ、目がまともじゃないよー……」

スズキ「……ねえ、この戦車、今ウチらしか乗ってないよね?」

ナカジマ「それがどうしたのさ!」

スズキ「気のせいかなぁ……な、なんか、分かんないんだけど、気配、感じない……?」

ホシノ「な、なんの?」

スズキ「――5人目」

ナカジマ「…………じ、実は、私も、さっきから……」

ホシノ「や、やめてよ……! とにかくツチヤを止めなきゃ! 操縦席から引きずり出して!」

スズキ「さっきからやってるんだけど……びくともしないよ! こんなに力強かったっけ……?」

ナカジマ「ああっ! もう海が目の前だぁ!」

ホシノ「止まって! 止まってよ!! 死にたくないー!」

ギャギャギャギャァァ――

-現在・病院-

みほ「……そ、それで……?」

ナカジマ「もう終わりだと思ったところでエンジンが火を吹いてねー。ギリギリ止まって助かったんだよ」

スズキ「そしたらツチヤが気絶してて、謎の5人目の気配も消えてたんだ」

ホシノ「だからその5人目って何なのさ」

スズキ「だから謎なんだってば」

ツチヤ「……あー、それうっすら覚えてるかも」

みほ「えっ?」

ツチヤ「M3リーを追い始めた辺りかなぁ。突然後ろに気配を感じたんだ。そしたら背筋がゾ~っと冷えて、こりゃヤバイ。とにかくこいつから逃げなきゃ、離れなきゃ……と思った次の瞬間にはこのベッドの上だった」

ナカジマ「ツチヤずっと言ってたもん。『ニゲナキャ……ニゲナキャ……』って。あの顔はゾッとしたよー」

-生徒会室-

みほ「――という話でした」

沙織「ウサギさんもレオポンさんも、ホントの怪談じゃん! 怖いよもー……」

麻子「」ガクガクガクガク

華「麻子さんが白目を剥いてしまっています……」

優花里「もしや、昨日話していた通り、戦死した戦車乗りの祟りでは……」

カエサル「UB-65か……」

杏「いやー、それは無いんじゃないかなー」

典子「というと?」

桃「ポルシェティーガーは、ティーガーⅠとのコンペに敗れて採用されなかった機体であることは知っているな」

優花里「もちろんです! しかしその時点で採用を見越して部品が100台分生産されていて、10台だけ組み上げて訓練用にしたり、後に実戦投入されたりしました。残った90台分の部品は突撃砲に再利用され、そして完成したのがエレファント重駆逐戦車なのです!」

桃「調査したのだが、我が校のポルシェティーガーは当時訓練用として配備されていたもので、実戦には投入されていなかったことが分かった」

杏「実戦デビューしてない戦車に、戦車乗りの幽霊なんて出るのかねー」

典子「なるほど……」

みほ「それに戦車道に使われる戦車は、故障したり改造したりする度に新しい部品と交換したりするから、もう戦時中に使われてた部品なんてほとんど残ってないんじゃないかな」

優花里「もはや元の戦車と同一の車体と言い切れるのか、悩みどころですねぇ」

沙織「石臼の杵ってやつだね」

カエサル「テセウスの船だ」

麻子「石臼に杵は使わないだろう。無駄に頭の良さそうな言葉を使うなよ。馬鹿に見えるぞ」

華「麻子さんが復活しました」

沙織「もー! そこまで言わなくてもいいじゃん!」

そど子「でも実際に怪現象があったわけでしょう? 戦車乗りの幽霊でないなら何だってのよ」

杏「んー……澤ちゃんさ、ウサギさんチームのみんなが聞いた声ってどんなんだったか分かる?」

梓「えっと……具体的には分からないですけど、あやが私の声と勘違いしていたし、女の子の声なんだと思います」

杏「それよ。昔の戦車乗りなら男のはずじゃん? でも女の子ってことは――」

典子「ってことは……?」

みほ「もしかして……」

沙織「この学校の……生徒の霊ってこと……!?」

麻子「結局そっちの話か……」ガクブル

華「学校の怪談寄りになってきましたね」

柚子「……前からおかしいとは思ってたの。つい20年前まで戦車道は行われていたはずなのに、関連資料が悉く処分されてて、どんな車両があるのかすら分からなかった。しかもあそこまで執拗に隠されて……」

杏「『当時の戦車道履修者が、売られるのがイヤで隠した』って話だったけど、戦車は学校、ひいては県の財産だよ。安いもんじゃないし、普通なくなったら探すよね。紛失届すら無いんだから」

みほ「でもそれをしなかった……ということは――」

杏「学校か県の教育委員会か知らないけど、何か隠蔽したいことがあって葬り去った……なーんて勘繰りたくもなるよねん」

沙織「20年前、バレたらまずい『何か』があって、大洗の戦車道が無くなった……」

華「そして隠蔽された戦車には少女の霊が……」

優花里「なんだかサスペンスじみてきましたね」

カエサル「陰謀の香りがするな」

梓「それで、明日からの練習は……?」

みほ「……こんなことがあって、きっとみんな集中出来ないと思うの。ツチヤさんも検査入院中だし、状況の整理がつくまで休みにした方が……」

杏「それがいいね。一応お祓いとか頼んでみるから、まあそれで解決することを祈っててよ。以上、かいさーん」

-戦車ドック-

梓「はぁ……しばらくお休みか……。確かにお化けは怖いけど、戦車に乗れないのは寂しいなぁ……あれっ?」

紗希「…………」

梓(M3リーの脇に紗希が……)

梓「どうしたの? 1人で戦車の様子見にきたの?」

紗希「…………」

梓「しばらくお休みだって。ちょっと前なら喜んでたけど、なんか残念でさ。すっかり私達も戦車道に染まっちゃったよねー」

紗希「…………」

梓「……紗希……?」

紗希「…………さい」

梓「えっ? 何か言った?」

紗希「――――」







「ゴメンナサイ」





――さん! 澤さん! 起きて!

梓「っ……!」ガバッ

みほ「澤さん! 大丈夫? 気分悪くない?」

梓「え……隊長……? ここは……?」

みほ「ドックの中。澤さん、床に倒れてたんだよ。今沙織さんが保険医さん呼びに行ってるから、そのまま安静にしてて」

梓「……私、なんでここに……?」

みほ「覚えていないの?」

梓「えっと……なんとなく、誰かと話してたような……誰だったかな……」

梓(――その後、不可思議な現象が起こることは、一度もありませんでした)

梓(生徒会の調査の結果、20年前の新聞の片隅に、大洗女子で授業中に生徒の死亡事故があったという小さな記事を発見)

梓(さらに当時を知る人に聞き取り調査をしたところ、死亡した生徒は戦車道の受講者で、M3リーに搭乗していたこと)

梓(さらにポルシェティーガーに搭乗していた別の生徒と、恋愛のことで揉めていたこと)

梓(死亡した原因は、ポルシェティーガーの砲撃だったこと)

梓(何故かポルシェティーガーの砲弾に、戦車道用ではない実戦用の実弾が混じっていたこと)

梓(学校は不慮の事故と発表し、そのまま事件のことはうやむやのまま、戦車道が即時廃止されたこと)

梓(……以上のような事実が明らかになりました。でも、私達の身に起こった怪現象が、これらのことに由来するのか、はたまたただの偶然であったのか、それは結局分からず終いでした)

あや「やっと今日から戦車に乗れるね!」

優季「彼氏と久々のデートに行くみたいな気分~」

あゆみ「でも結局お化け騒ぎの原因はよく分かんなかったね」

桂利奈「何も起こんないならそれでいいじゃん!」

梓「ほら、みんな早く乗って! 演習場に行くよ!」

桂利奈「よーし頑張るぞー!」

優季「目指せ重戦車キラ~」

あや「この5人で目指せ最強!」

あゆみ「おー!」

梓「全員乗ったね? じゃあ、パンツァー・フォー!」

-おしまい-

読んでくれた方、ありがとうございました。

エリみほがプリキュアになる話を書いてたんですけどなかなか進まず、
観に行った『残穢』がなまら怖かったので恐怖を昇華したくてホラーっぽいの書いてみました。


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