裕子「私たちの特権」 (192)

――事務所

P「ほいこれ、お前たち1冊ずつな」

裕子「おおっ、プロデューサー! ついにサイキック新曲がきたんですね!」

愛梨「わぁ……すっごくアップテンポな曲ですね」

輝子「よ、よく分からない……歌詞、だな」フヒッ

茜「燃え上がる歌詞!! いや、これは……な、なんでしょう!?」

藍子「うーん……いままで歌ったことがないような曲ですね」

P「明日からスタジオで練習だからな。曲のサンプルももらってるから、レッスンまでに1度は聴いておいてくれよ」ハァ……

愛梨「今日中、ですかぁ?」

P「そうだな……まあレッスンまでに聴いておかなきゃ困るだろ?」

裕子「愛梨ちゃん、何か用事でもあるんですか?」

愛梨「う、ううん……特に、そういうわけじゃないんだけど……」

輝子「ま、まあ……、が、頑張ろう……」

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ガチャッ……

ちひろ「あらみなさん、お揃いですね」

茜「ちひろさん、お疲れ様です!!」

ちひろ「ああ、新曲のお話しですか。レッスン頑張ってくださいね」

藍子「はい。今日はこれで解散ですけど……」

ちひろ「まあ明日から大変でしょうし、今日はゆっくり休んでくださいね。プロデューサーさんも、今日は1日事務所にいるんですよね?」

P「まあ、そうですね……今日は他のメンバーの付き添いもありませんし……」

ちひろ「最近出ずっぱりでしたからね。仕事はしっかりやってもらわないと困りますけど、1日座って休んでください」

P「そうします……ああ……疲れる……」

愛梨「……」

藍子「大丈夫ですか? プロデューサーさん、やっぱり少しお休みを頂いたほうが……」

P「そうしたいんだがな……何だか最近、ボケッとしてしまってるのか物忘れもしてきたような気がするし……」

愛梨「……」ピクッ

藍子「……」ピクッ

輝子「ま、まあ……つ、辛いときも、ある。が、頑張ろう……」

P「そうだな……疲れてるとはいえ、代わりがいるわけじゃないし」

茜「そうですっ! プロデューサー、後で私が疲れた身体をほぐすためのストレッチをしてあげましょう! この後は、トレーニングをやる予定でしたので!!」

P「それは有り難いが、一緒に走るのは勘弁な……茜と一緒に走ると身体がバラバラになりそうだ」

裕子(物忘れが……?)

愛梨「わっ、私、そろそろ帰りますね。Pさん、お疲れ様でしたぁ」

P「お疲れ様。明日は遅れないようにレッスン行ってくれよ」

愛梨「はぁい」

藍子「私も……今日は帰りますね。プロデューサーさん、お疲れ様でした」

P「藍子もお疲れ様」

ガチャッ……バタンッ!

茜「それでは私は、少し走りこみをしてきます! プロデューサー、私が戻ってくるまで事務所にいてくださいね!!」

ガチャッ! バタンッ!!!!

P「うんとも言う前に出て行ったぞ……」

ちひろ「あっ、輝子ちゃん、少しいいですか?」

輝子「な、なんだ、ちひろさん……」

ちひろ「ちょっとお話しが……プロデューサーさん、輝子ちゃんお借りしますね」

P「あ、ええ、構いませんよ」

輝子「それじゃ、プロデューサー……また、あとでな」

ガチャッ……

バタンッ!

裕子「……何だか皆さん、忙しいみたいですねぇ。それにプロデューサーも、ずいぶん疲れているみたいですけど」

P「最近、特に忙しくてな……というか、あまり休めた記憶もないんだが」

P「何だか最近、昼も夜も何したか覚えていない日が多くなってなぁ……頭回って無いんだろうか」ハァ



P『魔法なのかエスパーなのか科学なのかどっちだよ……収録なんだしもうちょっとこう、それっぽく……』

P『……』ウツラ、ウツラ……



裕子「むむむ……それではこの私、エスパーユッコがプロデューサーの疲労の原因を探ってみせましょう!」

P「いや、単に働きすぎなだけだと思うんだが……」


裕子「いえいえ、働くこと以外にも疲労の原因というものはあるはずです」

P「そういうもんか?」

裕子「そうです! スプーンも曲げるためにはサイキックパワーだけでなく事前の仕込みも……はっ!?」

P「俺はスプーンと一緒かよ……」

裕子「い、いえ! これは一般的な例えであってですね! 私のサイキックパワーがあればスプーンどころかフォークでさえも……」

P「どっちも大差ないんだがそれは」

裕子「む、むむむ……プロデューサーもああ言えばこう言う……ま、まあそれは置いておいて……いいですか? こうして私がプロデューサーさんに触れると……」スッ……


『――、――!』


裕子「……」ビクッ!

P「ん、どうした?」

裕子「いっ、いえ! なんでもありません! ちょ、ちょっと今日はサイキックパワーの伝導率が悪いようで……」

P「へいへい……それじゃあ俺は仕事に戻るから、ユッコも遅くならないうちに帰れよ」

裕子「わ、分かりました! あっ、わ、私、ちょっとコンビニ行ってくるので……」

P「外のコンビニか? 車に気をつけていけよ。あ、そうだついでにコーヒー買ってきてくれ。金渡すから」

裕子「あ、後でサイキック徴収しますので大丈夫です! いってきまぁす!」ダダダッ!

ガチャッ!! バタンッ!!

P「忙しないヤツ……はぁ」


……
…………

――外

タッタッタッタ……

裕子「……」ハァ、ハァ……

タッタッタ……

裕子「……」ハァ……ハァ……

裕子「……いまの」スッ



愛梨『あ、あの……と、とりあえず私、飲み物持ってきますから!』

藍子『そ、その前に……休憩してから、帰ろうかなって思ったので……あっ! プロデューサーさん、何か飲みますか?』



裕子「……藍子ちゃん、愛梨ちゃん? どうしてプロデューサーの記憶にお2人が」


――堀裕子は本物のエスパーである。相手に触れることで、触れた人の記憶や思いを読み取ることが出来るのだ。


裕子(お2人とも、プロデューサーと何かあったのでしょうか……? あっ、そういえば今日も2人はすぐ帰ってしまって……)

裕子「そういえば、プロデューサーも……」


P『そうしたいんだがな……何だか最近、ボケッとしてしまってるのか物忘れもしてきたような気がするし……』


<イラッシャイマセー

裕子(ただの疲労なら、物忘れすることなんて……これは、サイキックアイドルであるエスパーユッコが調べてみる必要がありそうですね!)

裕子(とはいえ、どうすれば……)


裕子「……あ、そうだ、プロデューサーにコーヒーを買わないと……忘れてた」コトッ……

裕子「……」

ガサッ……


……
…………

――事務所

ガチャッ!

裕子「サイキックテレポート帰還!!」


P「お帰り。サイキックならせめてドア開けないで入ってみてくれ」

蘭子「む、そなたは異能の使い手……! 闇に飲まれよ!」

裕子「おや、蘭子ちゃんも来てたんですね」

P「ちょっと次の仕事の打ち合わせにな。アニメのアフレコなんだが……」

蘭子「我の祝詞を紡ぐ大いなる写し、それは数多の触媒を通じて広まるであろう!」

裕子「私はあまりアニメを見ないので分かりませんが……それはそうとプロデューサーこれを見てください!」ガサッ!

P「なんだ?」

裕子「知らないんですか? お湯を入れるだけで飲むことが出来るコーンポタージュの元です! あ、プロデューサーのコーヒーはちゃんと買ってきたので……」イソイソ

P「お、おう、そりゃコンポタだっていうのは見れ分かるが……」

裕子「ほらほら、今度私たちで組むユニットも黄色が何となくサイキックイメージカラーになっているじゃないですか! それで飲みたくなったんですよ!」

裕子「と、いうわけでちょっとお湯と沸かしてきますね!」タタタターッ


……
…………

――給湯室

裕子(確かこの辺に……)キョロキョロ

裕子「あっ、あった……さっきプロデューサーに触れたときに見えた、愛梨ちゃんと藍子ちゃんが使ったコップ……」

裕子(お2人が別々の日に、同じようにプロデューサーに飲み物を差し出していた……よくあるお話しかもしれませんが……)

スッ……

裕子「……」


――堀裕子は本物のエスパーである。物体を通じて、それに触れていた人の思いを読み取ることが出来るのだ。



愛梨『Pさん、Pさん……私の言うことを……』サーッ……

藍子『本当なら、こんなことをしなくても……だけど……それでも、いいなら……』サーッ……



裕子「2人の記憶……プロデューサーに、飲ませたものに……何かを流し込んで……」

裕子(これは、まさか……)

<ピーピロリロピーローロー♪

裕子「あ、お湯沸いた」タタタッ

……
…………

―事務所

裕子「いやー、たまに飲むコンポタは美味しいですね!」

P「そーかそーか、それはよかったな」カタカタカタ……

裕子「ところでプロデューサー、最近何か変わったことはありませんか?」

P「変わったこと? なんだ突然……」

裕子「いえいえ、最近とても忙しいとお聞きしたので、忙しいこと以外に変わったことはないのかなーと思いまして」

裕子「うーん……私のサイキックテレパシーによると……他のアイドルたちと何かあったとか!?」

P「何かって、何も無いぞ……」

裕子(まあ、普通何かあったとしてもそんなこと言いませんよね)

P「……うーん、待てよ。そういえば最近、よく藍子が事務所から帰るのを見送っているような」

裕子「それは本当ですか!?」ガタッ!

P「あれ、どうだろ……いや、確かに藍子は事務所に来る用事はそれなりにはあったが……」ウーン……

裕子(……プロデューサーはお2人としたことを覚えていないのでしょうか?)

裕子「今回のユニットの事前打ち合わせとか、そんなお話しを藍子ちゃんとしていたんですか?」

P「いや、確かに藍子に事前に話してはいないな……うん、輝子には話してはいたけど」

カチャッ……

P「そういえば最近、愛梨からの相談事が増えたな」

裕子「愛梨ちゃんが、ですか?」

P「ああ、前からチラホラ相談は受けていたんだけどな。最近はやたらと相談に乗ってくれって言われてるが……」

裕子「なるほど……ちなみに、愛梨ちゃんはどんなお話しをしたんでしょうか?」

P「まてまて、そこまではプライベートに関わる話になるから言えな……ん?」

裕子「おや? どうしましたか?」

P「……いや、話す話さない以前に、この前愛梨からどんな相談をされたか忘れてしまった」

裕子「そ、それはプロデューサーとしてどうなんでしょうか……」

裕子(また……物忘れ?)

P「うーん、いかんな。最近忘れっぽいとは思っていたが……」


裕子(これは……やっぱり少しプロデューサーの様子がおかしい……?)

P「あれー……輝子の炊き込みご飯が美味い記憶はバッチリ残ってるんだけどな……それとは何も関係ないか」ハハッ

裕子(確かにプロデューサーは最近とても忙しそうで……私のお仕事に付き添ってくれる機会も減っていましたけど……)



愛梨『あ、あの……と、とりあえず私、飲み物持ってきますから!』

藍子『そ、その前に……休憩してから、帰ろうかなって思ったので……あっ! プロデューサーさん、何か飲みますか?』



裕子(もう1度、プロデューサーに触れれば何か分かるかも……)スッ……

P「まー、美味いもんの味は中々忘れられないからな。また輝子に作ってもらおうかな……」

裕子「プロデューサー! あのですね、もう1度プロデューサーの――」


ちひろ「ユッコちゃん? どうしたんですか?」


裕子「へっ?」ビクッ!

裕子「ちっ、ちち、ちひろさん?」

P「あ、ちひろさん戻ってきたんですか。随分遅かったですね」

ちひろ「何言ってるんですか。さっきから戻ってきてましたよ! お2人が楽しそうにお話ししていたので、何やってたのかなーと」

裕子「プロデューサーが最近お疲れとのことなので、疲れの元をユッコがサイキックカウンセリングで調べていたところです!」

ちひろ「あら、優しいですねユッコちゃんは。プロデューサーさんも、アイドルに心配ばかり掛けさせちゃダメですよ?」

P「あはは……面目ないです」

ちひろ「それはそうと……もうそろそろで夕方になりますし、ユッコちゃんは帰らなくて大丈夫なんですか?」

裕子「おや? もうそんな時間でしたか」

P「明日からレッスンだろう? ユッコも愛梨や藍子を見習って、早く帰って明日に備えておけよ」

ちひろ「そうですね。ユッコちゃんたちも忙しくなってきますし……あ、プロデューサーさん、ちょっと早いですけど、私も今日は用事があるので先にあがりますね」

P「えええー……最近ちひろさん帰るの早くないですか? 手空いてるなら俺のデスクワークちょっと引き取ってくださいよ……」

ちひろ「私はプライベートで用事があるんですっ、これでも少しはプロデューサーさんの書類、引き取ってるんですからね?」

P「そう言われると……はあ、それじゃあお疲れ様です」

ちひろ「はい、お疲れ様です♪」


P「というわけだ、ちひろさんももう帰るって言ってることだし、ユッコもそろそろ帰りなさい」

ちひろ「まあ私もちょっと明日のスケジュールの確認してからになりますけどね」

裕子(うーん……せっかくサイキック事件の予感がしたのに……)

裕子「そうですね。明日からのレッスンでいきなり体調崩すわけにも行きませんし、帰ります。ところで……」

P「ん?」

裕子「茜ちゃん、事務所を飛び出していったきり戻ってきませんね」

P「あいつどこまで走っていったんだ……」


ちひろ「……」


……
…………

――駅前

裕子「んー……プロデューサーもお忙しいみたいですし、やっぱりここは……」

裕子「愛梨ちゃんか、藍子ちゃんからそれとなくお話しを聞いてみるしかないですかね?」

裕子(とはいえ、あの時見た光景……お2人が話してくれそうなことでも……)

裕子「ここはやはりサイキックバスター……おや?」ピタッ

裕子「あそこにいる人は……」サササッ!



藍子「――、――――」

周子「――――」



裕子(藍子ちゃんに周子ちゃんじゃないですか……あれ? たしか藍子ちゃんは先に事務所を出たはず……)


藍子「――!!」

周子「――――、――」フルフル


裕子(むむむ……なにやらただならぬ雰囲気……)

裕子(おや? 周子ちゃんがあの場を離れていきましたね……)


藍子「……」トボトボ……


裕子(藍子ちゃんも……どうやら帰ってしまうみたいですね)

裕子「一体何が……」


……
…………

――女子寮

裕子「うううーん……むむむむ~!!」

裕子「……ダメだぁ~……サイキック美少女ユッコは探偵じゃないので謎解きは苦手ですよー……」ガクッ

周子「何の謎~?」

裕子「それがですねー、プロデューサーが……ハッ!?」ビクッ!

周子「Pさんがどしたの?」

裕子「し、周子ちゃん! あれ、いつの間に帰ってきてたんですか?」

周子「結構前から寮に戻ってたけど? なんで?」

裕子「い、いえ、今日駅前で周子ちゃんっぽい人を見かけたような気がしたんですよ! あはははは!!」

周子「へー、そうなの?」

裕子「ええもう! それはもう瓜二つといっていいほどで! 私のサイキック記憶力を侮ってはいけませんよ!」

周子「そだねー。確かにあたし今日は駅前にいたみたいだからねー」

裕子「あ、やっぱりそうでしたか」


周子「それでさ、駅前であたしが何やってたか……見てた?」


裕子「えっ? そうですね……あぃ――」ピクッ

裕子(ん……ちょっと待った!)

周子「ん? あー……なに?」

裕子「……あー、えーっと、実は私も急いでサイキック書房に向かっていたので、周子ちゃんが駅前を歩いているのをチラッと見かけただけなんですよ!」

周子「なんだ、そうなんだ」

裕子「ちなみに……周子ちゃんは駅前には何の用事で来ていたんですか? お仕事、シンデレラガールだし忙しいんじゃないですか?」

周子「んー、なんの用事だろね。まあ、駅前に行ったんだよね」

裕子「はあ……?」

周子「おっと……そろそろお風呂空いたかな? それじゃ、あたしはお風呂入ってくるから」ヒラヒラ

裕子「あ、はーい!」

裕子(んー……? 周子ちゃんのお話もよく分かりませんでしたし、やっぱり明日……藍子ちゃんか愛梨ちゃんのどちらかに聞いてみるしかなさそうですね)

裕子「藍子ちゃんは……駅前で見た様子だと、何だか今日は話しかけにくそうですしね」

裕子「さてさて、そうと決まればユッコのサイキックパワーを高めるための訓練でもしておきましょう! ……曲のサンプル聞いた後で」

……
…………

――早朝、女子寮

茜「おおおはようございまぁす!!」

藍子「あ、茜ちゃん、朝からすっごく元気ですね……」

茜「久しぶりの新曲ですからね! こう、燃えたぎってますよ!!」

輝子「き、昨日、曲聞いたけど……け、結構、カワイイ、曲?」

裕子「変な曲でしたよね。ビビッとサイキック電波を受信しそうな曲というか」

茜「はいっ! 私のハートにもビビッ!!!! っと来ましたよ!」

藍子「あははは……それにしても愛梨ちゃん、遅いですね」

裕子「そうですね? せっかく新曲の初レッスンだからみんなでレッスン場に行こうかと思ったんですけど……」

輝子「そ、そうだ……プ、プロデューサーに、で、電話、してみようか……?」

裕子「そうしましょうか。それでは私の高性能サイキックテレパシー糸電話を……」

輝子「す、スマホ、な……」

裕子「そ、そうとも言いますね……えっと、プロデューサーは……」ポチポチー


『お掛けになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか、電源が――』


裕子「ダメですねー。プロデューサー、どこか行ってるのか繋がらないです」

藍子「あらら……」

茜「愛梨ちゃんも電話に出ません!!」ピッ!

輝子「よ、4人でいくか……?」

裕子「そうですねー、そろそろ行かないと遅刻してしまいますし」

藍子「それじゃあ行きましょうか」

茜「はい!!」

輝子「た、太陽の光が……ま、眩しい、ぜ……」

裕子「大丈夫ですか?」

輝子「へ、平気だ……ま、まあ、今回はホントに眩しかったが……」

藍子「夜更かしですか? あまり遅くまで起きてたらダメですよ?」

輝子「ま、まあ、私にも……ちょっとした用事っていうのが、あるからな……」

茜「それじゃあレッスン場まで競争しましょう! ボンバー!!!!」ドドドドドドドッ!!

裕子「むむむっ!? 茜ちゃんが1人爆走してますよ!」チラッ

藍子「わ、私たちは歩いていきましょう……」

裕子(うーん、今日の藍子ちゃんはいつもと変わらないですね……)

……
…………

――レッスン場

愛梨「あっ、みんなおはようございます~」

裕子「愛梨ちゃん! な、なんと、1人だけサイキックテレポートでレッスン場まで来てたんですか!?」

愛梨「え、えへへ♪ 実は……そうだったんです」

茜「どうりで今朝から女子寮にいなかったんですね!! 私も早朝から女子寮の周りを走っていましたが気付きませんでしたよ!」

裕子(……はて?)

輝子「せ、先生は……もう、来てるの……?」

愛梨「まだみたいですよ~。私たちも、レッスンが始まる前に少しだけ声出しておきましょうか?」

裕子(茜ちゃんが早朝から女子寮の周りを走っているのであれば、愛梨ちゃんを見かけてもよさそうな……?)

藍子「そういえば……今朝プロデューサーさんにお電話したら繋がらなかったんです」

愛梨「あっ、Pさんなら事務所にいましたよ~。ちょっと忙しかったみたいですけど……」

輝子「あ、朝早くから仕事だったのか……相変わらず、た、大変そうだな……」

裕子「むむむー……」

……
…………

裕子「わーたーしだけの♪」

茜「特権!! 特権!!!!」

パンパンパンッ!!

先生「日野さん、もうちょっとボリューム下げて」

茜「すみません!!」

――――
――


藍子「特権♪ 特権♪」

愛梨「特権♪ 特権♪」

輝子「ヒィヤッハアアアアアア!!!!」

パンパンパンッ!!

先生「星さん!!」

輝子「ご、ごめんなさい……つい、テンション、あがって……」

――――
――


藍子「たーのしーそうにー♪」

裕子「うーでくんだーりー♪」

愛梨「絶対!絶対!絶対!絶対――」

輝子「む、難しいな、これ……」

――――
――

――数時間後

愛梨「はぁ……」

茜「け、結構ハードな曲ですね!」

輝子「つ、辛いぜ……フヒッ!」

裕子「昨日曲を聞いたときから難しそうな曲だと思っていましたけど……ボロボロでしたね……」


藍子「絶対特権、かぁ……」


裕子(おや?)

茜「愛梨ちゃん! 私、さっきレッスンしたところでよく分からない部分があったので聞いてもいいですか!!」

愛梨「いいですよ~。どの部分ですかぁ?」

輝子「わ、私も……聞いておこう……」


藍子「……」

裕子「藍子ちゃん、大丈夫ですか?」

藍子「あ、裕子ちゃん……ええ、大丈夫ですよ」

裕子(いまなら藍子ちゃんと2人きりでお話できそうですね……)キョロキョロ

裕子(えーと、どうやって切り出せば……)

裕子「あ、藍子ちゃん、今日は……とってもお天気がいいですね!」

藍子「え? ……ええ、今日はとっても……お散歩日和ですね」ニコッ

裕子(ち、ちがーう!! サイキック世間話ではなくて、サイキック事情聴取! 誘導尋問をしたいのに!)

裕子「こ、こーんないい天気だと、悩み事とかも吹き飛んでしまいそうですよねえ!? わ、私には特に悩み事はないんですけど……」

裕子「そ、そのー……藍子ちゃん、もしかして悩み事とかあったりします?」

藍子「……」ピクッ


藍子「……どうしてですか?」

裕子「あ、いえ、ただ何となく……藍子ちゃん、いつもと違うなって思っただけでして……あ、あはは」



藍子「ユッコちゃん、凄いですね。もしかして本当にエスパー……なのかな?」

裕子「と、当然ですよ! なんたってユッコはサイキック美少女アイドルですからね!」

藍子「ふふっ……でも、大丈夫ですよ。ほんのちょっと、悩み事があるだけですから」

裕子「そうですか……ところで、なんですけど」

藍子「はい?」


裕子「……最近、プロデューサーはとっても忙しいですよね? 藍子ちゃん、プロデューサーとお話とか出来ていますか?」

藍子「!」ビクッ!!


藍子「わっ、私は……最近、お仕事以外では、プロデューサーさんとは……あまり……」

裕子「むむ、そうだったんですか……実は私もなんですよ。色々とお話ししておきたいこととかあるんですけど……今後出演する番組の内容とか」

藍子「で、でも、プロデューサーさん、とっても忙しいみたいで……シンデレラガールの周子ちゃんたちの付き添いも、いっぱいあるみたいで……」


愛梨「……」


裕子「そうみたいなんですよね~……プロデューサー、お休みとって無いんでしょうかね? 半日だけのお休みとかも……」

藍子「お休み、しばらくとっていないみたいなんですよね……体調を崩さないか心配しているんですけど……」

裕子(ふむふむ……プロデューサーは長いことをお休みを取っていない、と……)


ガチャッ!


先生「そろそろレッスン、再開しますよ! 休憩時間も終わりです」

輝子「あ……せ、先生、戻ってきた……」

茜「レッスン再開ですね! 残りも頑張って燃え尽きましょう!!」

藍子「も、燃え尽きちゃダメですよ~」

裕子(むむむむ~……)

……
…………

――夕方

輝子「つ、疲れた……」

愛梨「今日は、すっごく大変でしたね……」

藍子「この後はどうしますか?」

茜「私は少しトレーニングをしてきます! 最後まで歌いきれる体力を作っておきませんとね!!」

輝子「私は……マイフレンズたちの世話、あるから……今日は帰ろう……」

藍子「うーん……私は――」

裕子「……あぁ~!! ユッコ、忘れ物しちゃいましたぁ!!」

愛梨「へ? レッスン場にですか? もう鍵閉まっちゃいましたよ?」

裕子「いえいえ、レッスン場にではなく、昨日事務所に来たときにサイキックアイテムを忘れてしまって……ちょっと取りにいかないと!」

藍子「あ、そうなんですか……それじゃあ、私たちは先に帰りましょうか」

裕子「そうしてください! もうすぐで日も落ちますからね! みなさん、それではまた女子寮で!」タタタタッ!!

……
…………

――事務所前

タッ、タッ、タッ、タッ……

裕子(……昨日、プロデューサーは確かに言ってました。藍子ちゃんは事務所に来る用事がそれなりにあったって)

裕子(全部がお仕事かもしれませんが……それにしても、さっきの藍子ちゃんの話しだと、全然プロデューサーと会っていないような口ぶり……)

裕子(最近のプロデューサーは物忘れがちょっと多いだけで、間違ったことは覚えていないはず……とすれば……)


カンッカンッカンッカンッ!!


裕子(やっぱりあの時見た光景、藍子ちゃんと愛梨ちゃんがプロデューサーに飲ませた何かが……!)


バンッ!!


……
…………

――事務所

シーン……

裕子「……おや? 誰もいないですね」キョロキョロ

裕子「この時間、プロデューサーかちひろさんがどちらかはいると思ってたんですが……まあ、ちょうどいいですね!」


裕子(まずは……プロデューサーがいない間にプロデューサーの机の周りでも?)


裕子(……いや、やっぱり給湯室から調べましょう! まだ何か分かるかもしれません)


……
…………

――給湯室

裕子「えっと、えっと……給湯室に来たものの、プロデューサーたちが使っていたコップはどれなんでしょうか?」ウーン……

裕子「食器かごに洗われたコップやお皿……藍子ちゃんは昨日は寮にいたから、やっぱり戸棚のコップを手当たり次第……」

裕子「……あ、そっか。藍子ちゃんがどのコップを使ったかよりも、プロデューサーが普段使っているコップを調べればいいんです!」キョロキョロ

裕子「ありました! 食器かごの中に入っていましたけど……もし藍子ちゃんがプロデューサーのコップを使ってまだ何かをしていたら……」

裕子「それでは……ユッコのサイキックパワーで……」スッ……

裕子「……」


――堀裕子は本物のエスパーである。物体を通じて、それに触れていた人の思いを読み取ることが出来るのだ。


藍子『プロデューサーさん、おはようございます』

P『おはよう藍子。昨日話していた通りの時間に来たな』

藍子『はいっ! それで、お仕事のほうはどうなりましたか? 教えて頂けませんか?』

P『何とか間に合ったよ。今日の分のデスクワークも纏めてメールも夜のうちに出した。付き添いも今日の分は全部キャンセルしておいたよ』


藍子『それじゃあ、いまお茶を用意しますから、そのまま待っててくださいね』

P『ああ、待ってるよ』

藍子『プロデューサーさんがお茶を飲んだ後、私は1度帰りますけど……またお昼頃に事務所に来ますから、事務所で待っていてくださいね?』



裕子(これは……どうしてプロデューサーが藍子ちゃんにお仕事の報告をしているのでしょうか……しかも、早朝に?)

裕子(それに、藍子ちゃんはプロデューサーにお茶を飲ませた後、1度帰ってまたお昼に事務所に……? やっぱり、お仕事の用事以外でも会っていたんですね)

裕子「……とりあえず、藍子ちゃんは私に嘘を付いていたということ……」

裕子「もう1つ、どうしてかプロデューサーからスケジュール聞いて予定を押さえていた……ことがわかりましたね」

裕子「あとは……うーん、サイキック第六感が働いたついでに、お皿も1枚……えいっ!」スッ……


――堀裕子は本物のエスパーである。物体を通じて、それに触れていた人の思いを読み取ることが出来るのだ。


ちひろ『……あら? 私、いつの間に流し台に立って……』

ちひろ『あれー? おかしいなあ……あー……ご飯食べた後の、後片付け……してたんでしたっけ?』

ちひろ『……ま、いっか』


裕子「なんだ、ちひろさんの後片付けだけですか……」

裕子「あと手掛かりになりそうなものは……んー、給湯室はひとまずよさそうですね!」

――事務所

裕子「さてさて、事務所に戻ってきたところで……」

裕子「何があるか……とりあえずプロデューサーの机を触っておきましょうか。事務所にいる間は机に座りっぱなしでしょうし」

裕子「少しでも何かつかめればいいんですが……」スッ……


――堀裕子は本物のエスパーである。物体を通じて、それに触れていた人の思いを読み取ることが出来るのだ。



ちひろ『輝子ちゃーん、いますかぁー?』

輝子『な、なんだ? ちひろさん、元気だな……』


ちひろ『実は……この前輝子ちゃんが食べさせてくれたキノコ、見たこと無いキノコを食べたって知り合いの学者さんに話したら……』

ちひろ『なんでも、輝子ちゃんが育てたキノコに凄く興味があるみたいなんですよ!』

ちひろ『それでですね、できれば……なんですけど、輝子ちゃんが育てているキノコをちょっと分けて頂きたいなーって……』

輝子『あ、あのときは……ぷ、プロデューサーに……元気に、なってもらう……ためだったから……特別だ……』



裕子(おや? ちひろさんの記憶……ああ、プロデューサーの机を思い切り叩いたんですね)

裕子(輝子ちゃんの……キノコ? 見たことも無いキノコで、プロデューサーとちひろさんが食べてる……?)

裕子(キノコ、キノコ……)

裕子(うーん……輝子ちゃんがキノコを育ててるのは当たり前の光景ですよね――)


ガチャッ!!

裕子「!?」ビクッ!

ちひろ「……あら、ユッコちゃんどうしたんですか? こんな時間に……もう夜になりますけど」

裕子「あ、ちひろさんでしたか……い、いえ、ちょっと忘れ物をしちゃって……」

ちひろ「忘れ物ですか? 紛失物置き場には何もありませんでしたけど」

裕子「い、いやぁ~! 実は以前、プロデューサーと作ったサイキック糸電話を事務所に置いたままにしちゃってまして……持って帰ろうかなと」

ちひろ「あら、そうなんですか。それじゃあ、用事が済んだのでしたら早めに帰ったほうがいいですよ? 外も暗くなってきてますし」

裕子(うーん……そうだ、ちひろさんは事務所にいつもいますし、プロデューサーや愛梨ちゃんたちの様子がおかしかったら気付いているはず……!)

裕子「ちひろさん、ちょっといいですか!」

ちひろ「はい?」

裕子「えっとですね……うーん、何から話したらいいものか……」ウーン……

ちひろ「ふふっ、落ち着いて順番に話してくれれば大丈夫ですよ。相談事でしたら聞くだけならできますから」

裕子(サイキックパワーのことは話しても信じてもらえないし、そこは置いといて……)


裕子「そのですね、私のことじゃないんですけど……最近、愛梨ちゃんや藍子ちゃんの様子がちょっとおかしいかなって思ったんです」

ちひろ「……」ピクッ

裕子「エスパーユッコも気付いたのは最近なんですけどね。藍子ちゃん、今日お話を聞いたら何やら色々思いつめていたようで……」

ちひろ「……」

裕子「何か、私たちに隠し事があるみたいなんですけど、教えてくれなかったんです」

ちひろ「……」

裕子「この間も、事務所でプロデューサーと会っているのに、最近はプロデューサーと話していないって言ってましたし……」

裕子「……あのー、ちひろさん、聞いてますか?」


ちひろ「……へえ、そうなんですか」

ちひろ「あ、そろそろ暗くなるから窓の鍵とか閉めなおさないと……ユッコちゃん、そのままお話続けてくださって大丈夫ですよ」

裕子「いいですか? えっとですね、それで、私気になって調べてみようかと思ったんですけど」

ちひろ「ふんふん」ガチャッ、ガチャンッ!

裕子「私もプロデューサーとお会いする機会も最近減ってきていますし、愛梨ちゃんたちと一緒にお仕事したのも久しぶりなので……」

ちひろ「そうですねー」ガチャッ!

裕子「だから、私自身がみなさんの最近の様子が分からないので、どうしたものかなーと」

ちひろ「あ、事務所のドアが半開きに……」バタンッ!  カチャッ

裕子「なのでいつも事務所にいてくださるちひろさんに、何か変わったことが無いかお聞きしたかったんです!」

ちひろ「なるほどー、そうだったんですか」ピタッ

裕子「それでちひろさん、最近プロデューサーたちで変わった様子とかありませんでしたか?」

ちひろ「うーん……どうでしょうね。私はいつもプロデューサーさんとお仕事していますけど、これといって変わったところは無いように見えますけど」

裕子「そうですか……むむむ、やっぱりエスパーユッコに探偵ごっこは難しいですね……」

ちひろ「ふふっ、超能力と探偵は……ちょっと違いますからね」

裕子「でも超能力探偵……いや、サイキック探偵も中々カッコイイと思いませんか!? 新しいアイドルですよ!」

ちひろ「あ、新しすぎですねそれは……あ、そうだ、ユッコちゃん」

裕子「はい?」


ちひろ「せっかくですし、お茶でも飲んで一休みしてから帰りますか? ちょうど私も外から戻ってきたばかりで一休みしたかったので」


-------------------------------------------ここから関係ない話-------------------------------------------

裕子「ここでプロデューサーの皆さんにお知らせです!」

藍子「ただいまスマートフォン向けアプリ、アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージで……」

茜「なんと!! 私たちパッションジュエリーズの5人が主役のイベントが開催されています!!」

愛梨「たーくさんイベントで頑張ってくださったプロデューサーさんには……」

愛梨「なんとイベント限定、この私SR十時愛梨のカードがもらえちゃいますっ」


http://i.imgur.com/GxG5hSz.jpg


裕子「ってあぁー!! サイキック美少女アイドル、この私エスパーユッコが映っていないじゃないですか!」

茜「私と輝子ちゃんは矢印のところに映ってますね!! いまのところ見切れてますけど!! 藍子ちゃんの姿が見えませんよ!」

輝子「ゆ、ユッコちゃんは……イベントを、あ、ある程度遊んでくれたみんなが……もらえるSRで、出てるから……」

裕子「なーんだ。それなら問題ないですね!」

藍子「ちなみに私も、ユッコちゃんのSRのイラストの中にいますよ♪」

裕子「それに近々このユッコ、SSRとしてみなさんの前にテレポーテーションで現れる予定でもありますからね!」

輝子「ほ、ホントかよ……ち、ちなみに、私はちょっと前に出たけど、な……」

愛梨「それではプロデューサーのみなさん、スターライトステージで私たちをプロデュースしてくださいね♪」

輝子「ま……待ってるぜええええヒャッハアアアアアアア!!!!!!」

茜「張り切ってイベントを走りましょう! ボンバー!!!!」


――ちょうど出てきているメンバーがイベント内容と被ったので宣伝です。宣伝するとSSR引けるって聞きました。

-------------------------------------------ここまで関係ない話-------------------------------------------

裕子「いいんですか?」

ちひろ「ええ、ちょうど用意しようと思っていたので、せっかくなら付き合ってくださいよぉ」

裕子「やった! えへへ、事務所戻ってきてよかった~♪」

ちひろ「……それじゃちょっと用意してきますので、座って待っててくださいね」コツ、コツ、コツ……

裕子「はい!」ボフッ!


裕子(んー……ちひろさんから聞ける話もなさそうですし、これはやっぱり藍子ちゃんか愛梨ちゃんに直接聞いてみるしか……)

裕子(あとは、昨日駅前で藍子ちゃんと周子ちゃんのお2人がいたのも……藍子ちゃんの様子も変でしたし、周子ちゃんから何か聞いてみるのも……)


ちひろ「ユッコちゃん、お茶淹れて来ましたよ。どうぞ♪」

裕子「ありがとうございますっ! それではさっそく……」

ちひろ「……」

裕子「あ、そうですちひろさん」ピタッ

ちひろ「はい?」

裕子「今日、プロデューサー事務所にいませんよね? どうしたんですか?」

ちひろ「そうですねえ……今朝は愛梨ちゃんと2人で事務所にいましたけど」

裕子「あっ、それは愛梨ちゃんから聞きましたよ。何でも朝からお仕事だったそうで」

ちひろ「ええ、今日も凛ちゃん連れてテレビ局行ってますよ。凛ちゃん置いてってからは営業に回ってるみたいですけどね」

裕子「むむむむ~……やはりこのままだとプロデューサーも、いつ倒れるか分からないほど働いていますね……」

ちひろ「ちょっと何とかしたいとは思ってるんですけどね……ささっ、ユッコちゃん、お茶が冷めないうちに……」

裕子「おっとそうでした! それでは……」スッ……

カンカンカンカンッ!!!!

裕子「おや?」ピタッ

ちひろ「あら?」ピクッ

ガチャガチャガチャガチャッ!! ガチャン!!

バンッ!!

P「何で鍵掛かってんだ!? そ、そんなことよりちひろさんいますよね!!」

ちひろ「あらプロデューサーさん、そんなに慌ててどうしたんですか?」

裕子「プロデューサー! お帰りなさい!!」

P「ちょっといま、局の○○さんを応接室に通してるんですよ! この前の番組の打ち合わせでウチに来ることになって……」

ちひろ「ええっ、あのお偉いさんですか!? なんでまた突然!?」

P「ほら、この間輝子に出てもらう予定だった番組1本流れたじゃないですか、その埋め合わせで別の番組で枠とってもらえて……」

P「と、とにかく今すぐアイドルの資料を出しておきたいのでちひろさん、ちょ、ちょっと急ぎなので用意するの手伝ってください!」ガタガタッ!!

ちひろ「えええっ!! ちょっとそういうことは先に連絡入れるなりしてくださいよもう!!」バタバタッ!!

P「それがタクシーで一緒に来たので電話するタイミングが……っ」フラッ……

ガッ!!

P「っととととおおおお!?」グラッ……

裕子「あわわわっ!?」バシャッ!!

ドサドサドサッ!!

ちひろ「ちょっ、ちょっとプロデューサーさんにユッコちゃん!? 盛大に転びましたけど大丈夫ですか!?」

裕子「あ、あううう……」

P「す、すまんユッコ……ふらついて足引っ掛けてしまった……」ググッ

裕子「も、もうプロデューサー……最近お疲れなのにそんな慌てるからですよ……さ、サイキック脱出――」グイッ

裕子「……」ピクッ!


――堀裕子は本物のエスパーである。触れた人の記憶や思いを読み取ることが出来るのだ。


P『おおっ!? 輝子、お前料理できたんだなー! この炊き込みご飯めっちゃ美味いぞ!』

ちひろ『プロデューサーさーん、私ご飯食べた後のデザート欲しくなっちゃいました。コンビニで何か買ってきてくれませんか? プロデューサーさんのオゴリで』

P『えー? 飯食った直後だし動きたくないですよ……っていうかちひろさん自分で行ってくださいよ。ていうか何で俺が奢るんですか』

輝子『う……ぷ、プロデューサー……私、ご飯食べた後の、アイス……食べたいから、買ってきてくれないか?』

P『……そうか。輝子の言うことなら仕方が無いな。アイスを買えばいいんだよな?』


裕子(また輝子ちゃんの……見える光景はキノコ料理?)

裕子(あれ? でもいま見えたプロデューサーの様子、まるで……)

P「っと……ユッコ、大丈夫か? お茶ダメにしちゃったな……すまん」ヨイショッ

裕子「……あ、いえいえ! ちひろさんに淹れてもらったお茶ですけど……プロデューサーも疲れてるし仕方が無いですよ」ブンブンブン!

P「悪いな……俺とちひろさんはちょっと仕事で応接室行くから、ユッコも今日は帰りなさい」

裕子「……そうですね、お仕事の邪魔になるといけませんし、サイキック帰宅します」

ちひろ「プロデューサーさん、資料これでいいですか?」タタタッ

P「ああ、すみませんちひろさん……うん、とりあえずいま手が空いてるアイドル分の資料ならこれでいいかな。ありがとうございます」

裕子「それじゃあプロデューサーにちひろさん! ユッコはこれで失礼しますね!」タタタターッ

P「おうお疲れ。次のレッスンもしっかりな」

ちひろ「ユッコちゃん、お疲れ様です」

裕子「はいー!」ガチャッ!

バタンッ!!



ちひろ「……」チッ


……
…………

――夜、女子寮、裕子の部屋

裕子「うーん……よし、いままで手に入れた情報を整理しましょう!」

裕子「えーっと、プロデューサーは最近物忘れが激しい」

裕子「愛梨ちゃんと藍子ちゃんはプロデューサーに何かを盛ろうとした」

裕子「プロデューサーはお2人との会話を覚えていない」

裕子「藍子ちゃんと周子ちゃんは駅前で何やら怪しい様子だった」

裕子「なぜか愛梨ちゃんはお仕事も無いのに今日は朝早くから事務所に行ってた」

裕子「藍子ちゃんは私に、最近プロデューサーとお話出来ていない、と嘘を付いている」

裕子「プロデューサーは輝子ちゃんのキノコご飯をご馳走になってた……い、いいなぁ……」

裕子「そして……」

裕子(私のサイキックパワーで見た光景……)

裕子(藍子ちゃんと、輝子ちゃんのお2人がプロデューサーに……)



藍子『はいっ! それで、お仕事のほうはどうなりましたか? 教えて頂けませんか?』

P『何とか間に合ったよ。今日の分のデスクワークも纏めてメールも夜のうちに出した。付き添いも今日の分は全部キャンセルしておいたよ』

輝子『う……ぷ、プロデューサー……私、ご飯食べた後の、アイス……食べたいから、買ってきてくれないか?』

P『……そうか。輝子の言うことなら仕方が無いな。アイスを買えばいいんだよな?』



裕子「……そう、なぜかプロデューサーさんは、突然藍子ちゃんと輝子ちゃんに言われるがままの行動を取った、ですね」

裕子「うーん……何かピンときそうでこないような……」

裕子「……」

裕子「……」

裕子「……」

ピンッ!

裕子「あっ、催眠術!」

裕子「たとえば、プロデューサーが催眠術を掛けられていたとして、藍子ちゃんや輝子ちゃんに言われるがままの行動を取った」

裕子「そしてどこかのタイミングで催眠術が解けたけど、催眠術を掛けられた間のことは覚えていない……うんうん、サイキックショーでありがちですね!」

裕子「うーん……サイキック美少女ユッコが実在している以上、おかしな話じゃないですけど……」

裕子「……はて? 仮にプロデューサーが催眠術を掛けられていたのが本当だったとして、誰が得するんでしょうか?」

裕子「藍子ちゃんは……プロデューサーとお話する時間がほしい、とか?」

裕子「愛梨ちゃんも同じようなことができたとして……プロデューサーに相談したい時間がほしかった、とか?」

裕子「それくらいだったら直接言えば……ああ、でもお2人はサイキックテレパシーが使えませんからね」

裕子「忙しいプロデューサーの時間を取るのも大変でしょうし……」

裕子「あとは……輝子ちゃんは得することなんてなさそう? いや、実はあったり……いやいや……」ウーン……

裕子「輝子ちゃん、輝子ちゃん……あ――」



ちひろ『……あら? 私、いつの間に流し台に立って……』

ちひろ『あれー? おかしいなあ……あー……ご飯食べた後の、後片付け……してたんでしたっけ?』



裕子「むむむ? 待てよまてよ……ちひろさんもプロデューサーみたいなことが給湯室でおきて……それから……」

裕子「それか……ら……」



ちひろ『実は……この前輝子ちゃんが食べさせてくれたキノコ、見たこと無いキノコを食べたって知り合いの学者さんに話したら……』

ちひろ『なんでも、輝子ちゃんが育てたキノコに凄く興味があるみたいなんですよ!』

ちひろ『それでですね、できれば……なんですけど、輝子ちゃんが育てているキノコをちょっと分けて頂きたいなーって……』



裕子「……ちひろさん?」


裕子「ちひろさんは、プロデューサーと同じく輝子ちゃんのキノコ料理を食べたとして……」

裕子「その後、輝子ちゃんの育てたキノコを欲しがってた」

裕子「しかもプロデューサーは、キノコ料理を食べた直後に輝子ちゃんの言うとおりの行動を取った……」

裕子「……たとえば……たとえば! 輝子ちゃんのキノコが催眠術の元になっていたとして」

裕子「ちひろさんが、そのことに気付いてキノコを欲しがっていたとして……」

裕子「プロデューサーにキノコを食べさせてあげれば、ずっと働いてもらうことが出来る……」

裕子「だけど、キノコを何度も食べさせるわけにはいきませんから……たとえば、薬みたいなものに加工して、それを――」ハッ



愛梨『Pさん、Pさん……私の言うことを……』サーッ……

藍子『本当なら、こんなことをしなくても……だけど……それでも、いいなら……』サーッ……

藍子『プロデューサーさんがお茶を飲んだ後、私は1度帰りますけど……またお昼頃に事務所に来ますから、事務所で待っていてくださいね?』



裕子「……あ、愛梨ちゃんも、藍子ちゃんも……ま、まさか、キノコから作った薬をこっそりプロデューサーに飲ませて……い、言うことをきかせて……」

裕子「そ、それを、ちひろさんが輝子ちゃんからもらったキノコを元に作ったとしたら……!!」



ちひろ『ユッコちゃん、お茶淹れて来ましたよ。どうぞ♪』

ちひろ『ささっ、ユッコちゃん、お茶が冷めないうちに……』



ガタッ!!

裕子「あ、あああ……!!」

裕子「も、もしかして……さっき事務所にいたとき、わ、私、大ピンチだった……?」ガタガタ

裕子(こ、こんなことに気付くくらいなら……ゆ、ユッコはサイキックアホの子でいたかった……!)

裕子「で、でもこんなこと、もし本当だったら……」


<ピンポーン


裕子「!?」ビクッ!

裕子(だ、誰か来た!?)カチャッ……


<ハーイ……ア、チヒロサン?

<コンバンハ、ショウコチャンイマスカ?


裕子「ちっ、ちちちち……!?」

裕子(ま、まさか輝子ちゃんから薬の材料になるキノコを……!?)


<アト、ユッコチャンイマスカ?

<ユッコチャンナラ、オヘヤニイマスヨ


裕子(わ、私を探してる!? も、もしかして……事務所でお茶に混ぜた薬を飲ませられなかったから……!!)

裕子「あ、あわわわわ……!!」パタンッ!


タタタタッ!!

――女子寮、廊下

タタタッ!!

裕子(ひ、1人でいるのはダメです! だ、誰か、誰かに助けを……!!)

<デサー、コノマエノシュウロクデ……

裕子「!?」サササッ!


周子「Pさんがさー、足湯に入ろうとしたら滑って頭からお湯にダイブしちゃってさー」

志希「にゃははは! 相変わらず変なトコでおっちょこちょいだねー」


裕子(し、周子ちゃんに志希ちゃん!? お、お2人は……周子ちゃんは藍子ちゃんと何やら揉めてたし、志希ちゃん=お薬という最悪の怪しい組み合わせじゃないですか!!)

裕子(こ、こっちには逃げれない……だ、誰かの部屋に……!)

タタタッ!

裕子(あ、愛梨ちゃんも、藍子ちゃんもダメ……輝子ちゃんも……そ、そうです!!)


ガチャッ!!

……
…………

――女子寮、茜の部屋

バタンッ!!

裕子「……あ、あっ、あかねちゃ……」ハァ、ハァ……

茜「ゆ……ユッコちゃん!? ど、どうしたんですか突然!!」

裕子「な、何も聞かず……ちょ、ちょっと匿ってください!!」ガラッ!!

茜「な、なんですか!? はっ!? も、もしかして……かくれんぼですね!!」

裕子「そっ、そうなんです! なので、ユッコの居場所を尋ねられたら外に出掛けたと言っておいてください!」

茜「そういうことならお任せください! 私、こう見えても誤魔化すのは得意なんですよ!」

裕子「お、お願いしますね!!」ゴソゴソッ……

裕子(よかった……あ、茜ちゃんは大丈夫そうで……)


茜「さあ、誰が来るか、どんときてください!!」

裕子(誰も来ないでくださいー!)

……
…………

――数分後

コンコンコンコンッ!

裕子(ク、クローゼットの中に隠れたけど……だ、大丈夫ですよね……)ビクッ!

茜「はい! 開いてますよ!」

ガチャッ

ちひろ「こんばんはー。茜ちゃん、夜遅くに失礼しますね」

裕子(ちひろさん!?)ビクッ!

ちひろ「実はユッコちゃんに用事があったんですけど、お部屋にいなかったんです……どこにいるか知ってますか?」

茜「ユッコちゃんですか!」

ちひろ「はい」

裕子(……)ハァ、ハァ、ハァ……

茜「ユッコちゃんはですね! 今日はサイキック講演会があると言ってたのでまだお出かけしてると思います!」

ちひろ「サイキック講演会? なんですかそれ?」

茜「私はサイキッカーじゃないので分かりません! たぶん、ユッコちゃんのようなサイキックな人の講演会だと思いますよ!」

ちひろ「そ、そうですか……」

茜「もしや、ちひろさんも行きたかったのですか!? そのサイキック講演会!」

ちひろ「い、いえ私は……まあ、分からないなら大丈夫です。それじゃあ茜ちゃん、お休みなさい」

茜「はい! お疲れ様です!」

パタンッ……

――数十分後

<ソレジャア、オヤスミナサイ

<チヒロサンモ、キヲツケテカエッテクダサイネー


茜「……ユッコちゃん、ちひろさんは帰ったみたいですよ!」

ガラッ!

裕子「よ、よかったぁ~……」ドサドサッ

茜「それにしても、ちひろさんとかくれんぼをしていたとは!! ……あれ、鬼のちひろさんが負けたとして、そのまま帰ってよかったんでしょうか!?」

裕子「……あ、茜ちゃーん!!」ガバッ!!

茜「わわっ!? ど、どうしたんですかユッコちゃん!?」

裕子「う、ううう……」グスッ、グスッ

茜「ど、どうしたんでしょうか!? ま、まさか、ちひろさんに見つけてもらえなかったことがやっぱり残念で……!!」

裕子「ち、違うんです! 実は……」カクカクシカジカ……

茜「……は? ち、ちひろさんが怪しいキノコで催眠術!?」ボンバーボンバー……

裕子「そ、そうなんです……たぶん」

茜「えーと、えーと……輝子ちゃんはいつもキノコを育てています! ちひろさんがお金に貪欲なのも知っています!」

茜「もしユッコちゃんの言うことがありえるのだとしたら……ちひろさんがそういうことをするのも、納得できますね!!」

裕子「し、信じてくれるんですか!」

茜「私はユッコちゃんがサイキック絡み以外で嘘を付く人だと思ったことは1度もありません! なので、私はユッコちゃんを信じますよ!」

裕子「何か引っ掛かるけど……あ、ありがとうございます!!」

茜「となると、ユッコちゃんは1人で行動するのは非常にマズイですね!! 外に出るときは、なるべく私と一緒に行動しましょう!」

裕子「い、いいんですか?」

茜「ユッコちゃんの安全のためです! 幸いですが、いま私たちは一緒に新曲のレッスンに励んでいます! 普段より長い時間、一緒にいても違和感はないはずです!」

茜「それに、もしそんなヒドイことが事務所で起きているなら……証拠を押さえて何とかしなければなりません!!」

裕子「で、でも愛梨ちゃんや藍子ちゃんは薬を使っていて……輝子ちゃんもキノコを作っている本人だし……さ、サイキックボンバーだけでどうすればいいのか……」

茜「……これは私の思い込みなだけですが、藍子ちゃんたちはちひろさんの仲間ではないでしょう!」

裕子「へ?」

茜「特に、藍子ちゃんとは別のユニットで一緒にお仕事をする機会も多いから分かります! 藍子ちゃんは自分のためだけに悪いことをする人ではありません!」

裕子「ほ、本当にそうなんでしょうか……」

茜「そうです! 私は友達を信じます!」

裕子「……そ、そうですよね……藍子ちゃんも愛梨ちゃんも優しいですし、輝子ちゃんだって……」

茜「となると、私たちはまず藍子ちゃんたちが味方かどうか確かめる必要があります!」

茜「それと、薬の話しが本当だとして、ちひろさんがそれを悪いことに使おうとしているのかも、確かめておきましょう!」

裕子「は、はい! となると……まずは藍子ちゃん、愛梨ちゃんからお話しを聞かなければダメですね……」

茜「私たちのユニットは全員女子寮住まいですが、今日はもう夜も遅いし、ついさっきちひろさんが来たばかりです!」

茜「ユッコちゃんは今日は私の部屋で寝てください! 明日、お2人からお話を聞きましょう!!」

裕子(あ、茜ちゃんが凄く頼もしく見える……!)

裕子「それじゃあ、一晩サイキックお世話になります。1人だと心細くて……」

茜「こういうときはお互い様です! さあ、明日も元気に行動するために早めに寝ましょう!」

裕子「そうですね、早めに寝て明日は朝から……ん?」

裕子(そういえば……)

茜「む……どうしたんですか、ユッコちゃん!?」

裕子「いえ……そういえばですけど、今日は帰ったあとにここで藍子ちゃんや愛梨ちゃんを見かけましたか?」

茜「愛梨ちゃんは台所で見かけました! 藍子ちゃんは……はっ!? 私は見てないです!」

裕子「……」


藍子『プロデューサーさんがお茶を飲んだ後、私は1度帰りますけど……またお昼頃に事務所に来ますから、事務所で待っていてくださいね?』


裕子(あのときサイキックパワーで見えた藍子ちゃん……もしかして……)

茜「ど、どうしました、ユッコちゃん!?」

裕子「……あの、茜ちゃん」

茜「なんでしょう!」

裕子「明日の私たちやプロデューサーの予定なんですけど――」


……
…………

――翌日早朝、事務所前

カンッ、カンッ、カンッ!

藍子「……」キョロキョロ

藍子「……もう、あの薬で最後」ボソッ

藍子「これで、私がプロデューサーさんと一緒にいられるのは――」


ドドドドドドドッ!!!!


藍子「え?」ピクッ

茜「藍子ちゃあああああああん!」ドドドドドドドドッ!!!!

藍子「あっ、茜ちゃん!?」ビクッ!!

茜「はぁ……はぁ……お、おおおはようございます!!」

藍子「お、おはようございます……茜ちゃん、どうしてこんな朝早くから事務所に?」


<ア、アカネチャーン……


茜「はっ!? ゆ、ユッコちゃんを置いてきてしまいました!!」

藍子「ユッコちゃん……?」

裕子「ひい、ひい……あ、朝からのダッシュは……ゆ、ユッコには、サイキック弱いので……」ハァ、ハァ……

藍子「お……お2人ともこんな朝早くからどうしたんですか? あ、もしかしてレッスンがはじまったから、一緒にトレーニングですか?」

茜「本当ならそうしたいところです! けど、今回は別の用事があってここに来ました!」

藍子「別の用事……」

裕子「……藍子ちゃん、単刀直入に聞きます。ユッコのサイキックテレパシーにビンビン反応があるんですが……たった今、プロデューサーに何かしてきましたか?」

藍子「っ!」ビクッ!

裕子「……やっぱり、何かしたんですね」

茜「ほ、本当にユッコちゃんが言ったとおりの……!!」

裕子「あ、いや、ちゃんとした手法とかは分からないんですけどね……」

藍子「わ、私……」プルプル……

裕子「ちょ、ちょっとどこかに移動しましょう! 朝早くからやってるお店……喫茶店とか、どこか座ってお話しできる場所にでも……」

……
…………

――数十分後、某マ○ドナ○ド

茜「コーヒーが苦いです!」ズズー!!

藍子「……どうして、私が今日、朝から事務所に行ったのが分かったんですか?」

裕子「えっと、実は昨日、みんなのスケジュールを見直したんですけど……プロデューサー、今日は午後の予定が何もなかったんですよね」

裕子「藍子ちゃんが……プロデューサーと朝早くお会いした後、お昼に2人でお出かけするつもりだったんですよね?」

藍子「ど、どうして知ってるんですか?」

裕子「あ、ああいや……そ、そう! ユッコのサイキックテレパシーがビビッ! と反応したんです!」

裕子「藍子ちゃんや愛梨ちゃんが、ここ最近プロデューサーに何かしているのを……」

裕子(サイキックパワーのことを話しても信じてもらえないでしょうしね……)

藍子「……はい、そうです。私……プロデューサーさんが比較的お仕事が忙しくない日の前日に、プロデューサーさんにお薬を飲ませていたんです」

茜「ほ、ホントにお薬なんですね……!!」

裕子「そ、その薬は誰からもらったものですか? ちひろさんですか?」

藍子「ち、ちひろさんじゃありませんよ? 私は、周子ちゃんと志希ちゃんから頂いたんですけれど……」

裕子「周子ちゃんと志希ちゃん? ち、ちひろさんじゃないんですか?」

藍子「は、はい……私、お薬を頂くときはちひろさんとは一言もお話ししていませんから……」

裕子(ちひろさんは違う? そんな……でも……)

茜「ちひろさんは何もしていないんでしょうか!?」

裕子「むむむ~……い、いえ、こう考えられます。輝子ちゃんからキノコを頂いているのはちひろさん」

裕子「ちひろさんがキノコを志希ちゃんに渡して薬にしてもらって、それを配っているのが周子ちゃん……であれば……」ウーン……

茜「それは適材適所というヤツですか!」

藍子「あの……どうして輝子ちゃんとちひろさんのお名前が?」

裕子「あ、えっとですね……どうやら、ちひろさんは輝子ちゃんからもらったキノコをもらっているみたいなんです」

裕子「ちひろさんはそのキノコが、食べた相手が何でも言うことを聞く効果のあるキノコだと知っているみたいで……」

茜「そのキノコで作られた薬を、藍子ちゃんが使っていたということです!!」

藍子「え、ええ!? そ、そんな輝子ちゃんが……」

裕子「いえ、たぶんですけど、輝子ちゃんも藍子ちゃんと同じ、悪いことをしようとしたワケじゃないと思うんです」

裕子「藍子ちゃんは、どうしてプロデューサーに薬を使ったんですか?」

藍子「わ、私ですか? 私は……」

藍子「……プロデューサーさん、とても疲れているみたいで……お仕事がたくさんあって、休む時間もなくて……」

藍子「お仕事の少ない日でも、私たちアイドルの付き添いで外に出たまま……事務所にお泊りすることだってたくさんあるみたいで」

藍子「本当は、お休みできる日だって、あるはずなんです。だけど、プロデューサーさんは私たちのことばかり気に掛けて……」

藍子「私たちだけで出来るお仕事があったとしても、一緒にお仕事に来てくださって……プロデューサー、本当にお休みすることがなかったんです」

藍子「だから……どんなに大変なときでも、せめて……私と一緒にいるときだけは、プロデューサーさんが、誰の邪魔も入らないようにお休み出来ればって……」

裕子「……それで、プロデューサーに薬を飲ませて、お仕事の無い時間を無理やり作ってもらってたんですね」

藍子「はい……それで、空いた時間は私がプロデューサーさんを外に連れ出して、誰もいない公園や、落ち着ける場所に行ってたんです」

茜「……な、なんて健気なんでしょうか、藍子ちゃんは……!!」グスッ、グスッ、ズビーッ

裕子「つまり、プロデューサーに危害を加えようとしたかったわけじゃないんですよね?」

藍子「はい……本当は、薬なんて使うのはいけないことだって、わかっていたんですけど……」

裕子「きっと、輝子ちゃんも藍子ちゃんと同じ気持ちだと思うんです」

藍子「輝子ちゃんも……?」

裕子「はい」コクリ

裕子(輝子ちゃんも……)



輝子『あ、あのときは……ぷ、プロデューサーに……元気に、なってもらう……ためだったから……特別だ……』

P『おおっ!? 輝子、お前料理できたんだなー! この炊き込みご飯めっちゃ美味いぞ!』



裕子(サイキックパワーで見えた、輝子ちゃんとプロデューサーの笑顔……きっと、輝子ちゃんも……)

裕子「輝子ちゃんも、プロデューサーに元気になってほしかったんですよ」

藍子「プロデューサーさんに、元気に……」

裕子「これは私の考えなんですけど、きっと輝子ちゃん自身はキノコの効果に気付いていないんです」

裕子「ちひろさんがどこかのタイミングでキノコの効果に気付いて、輝子ちゃんは知らないうちにちひろさんにキノコを渡してしまっているんです」

茜「な、なるほど……それでしたら、輝子ちゃんは利用されているということになりますね!!」

藍子「で、でも、私が頂いたお薬が本当にちひろさんが志希ちゃんに作ってもらったとして……それが、悪いことに繋がっているんでしょうか?」

裕子「えっ?」

藍子「私は、志希ちゃんから最初にお薬を頂いたときにお話しを聞いたんです。私以外にもお薬を使っているアイドルがいて……」

藍子「……みんな、プロデューサーさんに何かしてあげたくても、出来ない人たちばかりだって」


裕子「……確かにその薬があれば、プロデューサーを自由に出来ると思います」

裕子「だけど、それはプロデューサーに何かをしてあげるためではなくて、プロデューサーに何かをしてもらうための薬です!」

藍子「っ!」

裕子「ユッコのサイキックパワーと同じく、気持ちはあるのかもしれません。だけど、薬を飲んだプロデューサーに、気持ちはあるんですか?」

藍子「……プロデューサーさんは……お薬を飲んだときのこと、覚えていない……」

裕子「藍子ちゃんはプロデューサーさんに一緒にいてあげたわけではないんです。薬を使って、プロデューサーに一緒にいてもらったんです」

藍子「……そう、ですね」

茜「あ、藍子ちゃん……!」オロオロ

藍子「……」

裕子「……本当にその薬がプロデューサーのためになるなら、こっそり使うことなんてせず、みんながプロデューサーのために胸を張って使える薬であるはずなんです!」

裕子「だから、その薬は悪い薬なんです。使っちゃいけない薬なんですよ、藍子ちゃん!」

藍子「……はい」コクリ


茜「周子ちゃんと志希ちゃんがこっそり配っているということは、もしかしたら他のアイドルが悪いことに利用されているのかもしれませんね!!」

裕子「そうですね! 愛梨ちゃんも薬を頂いているみたいですけど……そうです藍子ちゃん、周子ちゃんからもらった薬は持っていますか?」

裕子「薬があればそれが物的証拠になります! もしちひろさんや他の誰かが悪いことをしていれば、その現場を押さえてしまえば……」

藍子「ご、ごめんなさい……それが、私が頂いたお薬は、今朝使ったもので最後だったんです……」

茜「な、なんと!?」

裕子「そ、そんな……サイキック紙一重でしたか……」ガクッ

茜「そうです! 藍子ちゃんがまた薬をもらえば……!!」

藍子「そ、それが……もうダメなんです」

裕子「えっ?」

藍子「その……私、昨日周子ちゃんから言われたんです。もうお薬をお渡しすることができないって……」

裕子「う、ううん……どうして薬を渡せなくなったんでしょうか?」

藍子「それが、他の子たちにお薬を渡さなきゃならなくて、私に渡せる分はもうないって……」

茜「薬を配りすぎて無くなったんでしょうか!?」

裕子「うーん、それは無いと思うんですけどね……ちひろさん、昨日も輝子ちゃんにお会いしてキノコをもらってたみたいですし」

茜「はっ!? そ、それは昨日ちひろさんが女子寮に来たときでしょうか!!」

裕子「たぶん……ちょうどそのとき、色々調べていた私をちひろさんが怪しんで探していたみたいなので……」

藍子「ゆ、ユッコちゃん、そんな危ない目に遭ってたんですか?」

茜「わ、私も昨日ユッコちゃんからお話を聞いたんです! 突拍子もないお話でしたけど、藍子ちゃんのお話を聞くとやはり間違いなさそうで……」

裕子「それで、昨日は茜ちゃんのお部屋で一緒に寝てもらったんですけどね……あはは……」

茜「とにかく、これでやっぱり藍子ちゃんが悪い人じゃないということがわかりましたね!」

裕子「ええ、これで藍子ちゃんには心置きなくお話しできますけど……あとは、愛梨ちゃんと輝子ちゃんですね」

藍子「周子ちゃんのお話ですと、愛梨ちゃんも私と同じようにプロデューサーさんに何かしてあげたいと思っているみたいで……」

裕子(となると、やっぱりサイキックパワーで見えた愛梨ちゃんは、プロデューサーに薬を飲ませようとしていたことになりますね……)

茜「愛梨ちゃんはまだ薬を持っているでしょうか!? 輝子ちゃんは、薬の元になるキノコを育てているのであれば、まだお話しを聞くべきじゃなさそうです!!」

裕子「そうですね……まずは、愛梨ちゃんからお話しを聞いてみましょう」

裕子「昨日確認したスケジュールだと、愛梨ちゃんは今日はお仕事は無かったはずですし……」

藍子「それなら、女子寮に戻って愛梨ちゃんにお話しを聞いてみますか?」

裕子「いえ、それはサイキック失策です。女子寮には周子ちゃんもいますし、普段いるか分からないけど、志希ちゃんも女子寮にいますからね」

裕子「愛梨ちゃんには電話お話しして、どこかに来てもらいましょう。なるべく人目の付きやすい場所で、座って話せる場所がいいです」

茜「それなら駅前がよさそうですね! 駅前の喫茶店で愛梨ちゃんをお茶に呼びましょう!」

裕子「はい。正直事務所の近くや、女子寮でこんな話をすると誰に聞かれているか分かったものではないので……」

藍子「それじゃあ、愛梨ちゃんを駅前にお呼びして……そのあとは、どうしましょうか?」

裕子「まずは喫茶店でお話を聞きます。藍子ちゃんのように、私たちにお話していただけるのなら……お薬を持っているなら渡してもらいます」

茜「そのあとは警察ですか!?」

裕子「いえ、実際にちひろさんが悪いことをしているか分かりません。薬を手に入れたうえで、誰かがその薬を使って悪いことをしている現場を押さえないといけません」

藍子「たしかに……この薬は危ない薬ですってお話しを警察の方にしても、信じてくれるとは限りませんからね」

裕子「そうです。なのでもうしばらくは私たちの味方を増やしてから行動しましょう! 周子ちゃんたちが誰に薬を渡しているか分かりませんからね」

茜「わかりました!」

藍子「それじゃあ、私が電話で愛梨ちゃんを誘ってみますね。来てくれるといいんですけど……」ポパピプペ

裕子「これで愛梨ちゃんが、悪いことをしている人じゃなければいいんですけど……」

茜「大丈夫です! 愛梨ちゃんも私たちと同じユニットの仲間です、信じましょう!」


……
…………

――午後、駅前、喫茶店ス○○バ○○ス

茜「愛梨ちゃん、もうそろそろで来る時間ですね!」

藍子「一応、新曲の相談がありますってお話で来てもらうことになってますけど……」

裕子「それ、輝子ちゃんを一緒に連れてこないか心配ですね……あっ」ピクッ


<イラッシャイマセー

愛梨「~♪」


裕子「愛梨ちゃんが来ましたね! どうやら1人のようで……よかった」ホッ

藍子「こっちです、愛梨ちゃん」フリフリ


愛梨「あっ♪」

タタタタッ

茜「おはようございます! 愛梨ちゃん、きてくれてありがとうございます!」

愛梨「おはようございます♪ 私も、お昼は予定が無かったから全然大丈夫ですよ」

裕子「おや? 愛梨ちゃん、ずいぶんご機嫌ですね。何かサイコハッピーなことでもあったんですか?」

愛梨「ちょっと夕方、お出かけする予定なんです♪」

茜「そうだったんですか! それじゃあ、あまりゆっくり出来ませんね!!」

愛梨「えへへっ、まだお昼になったばかりですから、大丈夫ですよ」


藍子(もしかして……)チラッ

裕子(可能性はありますね……今日は藍子ちゃんがプロデューサーのスケジュールを空けておきましたので……)コクリ

裕子「愛梨ちゃん、夕方はどこにお出かけするんですか?」

愛梨「えっ、えっと……ちょっと用事で……」

裕子「そうですか……私たち、夕方に事務所までサイキックテレポーテーションしようかと思っていたんです」

愛梨「えっ……そ、そうだったんですかぁ?」

裕子「……」

藍子「あの、愛梨ちゃん……聞いてもいいですか?」

愛梨「……あっ、な、なんですかぁ? そういえば、新曲のお話しでしたよねっ」

藍子「……周子ちゃんから頂いている、お薬」

愛梨「っ!?」ビクッ!

裕子「……やっぱり、愛梨ちゃんも使っていたんですね」

愛梨「えっ、あ、あの……何のお話しですか? 私、あまり詳しくなくて――」

茜「ユッコちゃんが色々調べたんです! 愛梨ちゃんと藍子ちゃんが、周子ちゃんからもらった薬をプロデューサーに飲ませていることを!!」

愛梨「えっ? あ、藍子ちゃんも……あっ」ハッ!

藍子「……」

裕子「愛梨ちゃん、聞いてください。愛梨ちゃんが使っている薬は、輝子ちゃんが育てたキノコを元にちひろさんと志希ちゃんが作ったものです」

裕子「私は、昨日事務所にいたとき、ちひろさんにその薬を飲まされそうになりました」

愛梨「ち、ちひろさんが……薬を……」

裕子「多分……愛梨ちゃんは、いまのそのお薬を持っていますよね?」

愛梨「……」ゴソゴソッ

スッ……

茜「これが薬……!!」

裕子「その薬の効果、愛梨ちゃんは分かっていますよね? どうやら私は、サイキック捜査をしているところでちひろさんに目を付けられたみたいなんです」

茜「昨日もちひろさんはユッコちゃんを探しにわざわざ夜中に女子寮まで来たんですよ! おそらく、ユッコちゃんの口を封じようとしたのでしょう!」

愛梨「で、でもちひろさんがそんなことしたって――」

裕子「考えてみてください。相手に好きなように命令できる薬……愛梨ちゃんならどう使いますか? 良いことに使うかもしれません。ですが……」

裕子「使う人によっては、平気で悪いことに使える薬でもあるんです」

愛梨「……!」


愛梨『Pさん、Pさん……私の言うことを……』


愛梨「ち、ちがっ……わ、私は……」フルフル

藍子「……違わなくないんです。愛梨ちゃん」

藍子「私、ユッコちゃんに言われて気付いたんです。私も、プロデューサーさんにお薬を使っていました」

藍子「だけど、本当に私自身がプロデューサーさんにしてあげたいこと……それは薬に頼っちゃダメなんだって」

藍子「プロデューサーさんにしてあげたいことも、してもらいたことも、私がハッキリとプロデューサーさんに伝えなきゃダメだったんです」

藍子「そうじゃないと……私の気持ちだけが、一方通行のままだから……」

愛梨「……!!」



愛梨『で、でも、私、そんなワガママ……』

P『愛梨のワガママならいくらでも聞くよ』



茜「愛梨ちゃん、私たちに協力してください!」

裕子「こんな薬、善意で作る人なんているわけがありません。愛梨ちゃんや藍子ちゃんだけじゃない、他のアイドルの誰かがちひろさんに……」

藍子「……ぁっ!」ビクッ!!

茜「ど、どうしたんですか藍子ちゃん!?」グルンッ!

藍子「あ……そ、外、窓の、外に……」

裕子「外……?」チラッ



周子「……」キョロキョロ

裕子「しっ、周子ちゃん!? な、なんでここに……」

茜「わ、私たちにはまだ気付いていないみたいですよ! ですが、ど、どうしましょう!?」

愛梨「……い、や」フルフル

裕子「あ、愛梨ちゃん?」ピクッ

愛梨「わ、私、わた……し……」ブツブツ



P『よくやったな蘭子、おめでとう!』

蘭子『プ、プロデューサーさんが一緒にいてくれたから……えへへ』


P『こういうときくらい素直に喜んでいいと思うぞ? 俺は凛がシンデレラガールになってくれて嬉しいよ』

凛『……ありがと』


P『んー? ああ……いや、周子が今晩デートしてくれって戻ってる途中に何度も言ってきてな』

周子『もしかして愛梨ちゃん、ヤキモチ?』



愛梨「わ、わたし……あ、ああ……い、いやああああっ!!」ガタッ!!

藍子「あ、愛梨ちゃん!」

愛梨「私っ、蘭子ちゃんも、凛ちゃんも……ダメ!! 私が……私だけの!!」タタタタッ!!

茜「愛梨ちゃん! どこいくんですか!?」

藍子「そ、外に周子ちゃんがいるのに……」

裕子「とっ、とにかく私たちも外に!」

茜「はいっ! すみません、お会計お願いしますっ!!」

ガタガタガタッ!!

裕子「……あっ!」ピタッ

……
…………

――駅前

茜「ああっ!? 人混みで酷いです! 愛梨ちゃん、完全に見失っちゃいましたよ!!」

藍子「ど、どうしましょう?」オロオロ

裕子「愛梨ちゃんは薬を使痛がってたように見えます……へ、下手するとちひろさんたちに私たちのことを話されてしまうかも……!」

茜「それはとてもマズイのではないでしょうか!?」

裕子「マズイどころかサイキック崖っぷちですよ!」


周子「およ? みんなこんなとこで何してるのー?」


裕子「ひいいいっ!?」ビクッ!!

茜「うおおおおっ!?」ビクゥッ!

藍子「きゃっ!?」ビクッ!

周子「ちょっ、ちょっと、そんなに驚かなくてもいいじゃん……」

裕子「あ、あ、あああああ……み、みつかっ……」パクパクパク……

周子「あーそっか、今日みんなオフだったっけ? 仲良いねー、昼間からみんなで喫茶店でのんびりゆったりー?」

周子「おっ?」チラッ

藍子「っ!?」ビクッ!

周子「藍子ちゃんも、久しぶりだねー。最近外での収録多かったんでしょ? 女子寮でも顔合わせる機会なかったよねー」

藍子「え……?」

裕子「……ん?」

周子「そうそう聞いてよー。ちょっと前にさ、未央ちゃんと一緒に新曲の収録したんだけどさ、そのとき――」

藍子「……あ、あのっ」

周子「ん、なにー?」

藍子「あの……私たち、一昨日、ここでお会いしてますよね?」

周子「え、なんで? シューコちゃん昨日は足湯ロケに行ってたし藍子ちゃんと会ってないじゃん?」

藍子「え?」

裕子「およ? ……周子ちゃん、昨日……駅前にいたんですよね?」

周子「……あ、そうそう、なんかねー、最近仕事帰りにここ来ること多くてさー」

周子「何か最近忙しくて、駅前来ても何する間もなく帰っちゃうんだけどねー」

裕子(……おかしい)

裕子「あ、あの、周子ちゃん! 一昨日のことですけど、私に聞きましたよね? 駅前で周子ちゃんが何をしてたのか見たかって」

周子「あー、そんなことあったねー。なんかさ、忙しくて頭回ってないみたいで、駅前で何やったか覚えてなくてさ」

藍子「お、覚えてない……?」

茜「覚えてないというのは!?」

>>119訂正

周子「そうそう聞いてよー。ちょっと前にさ、未央ちゃんと一緒に新曲の収録したんだけどさ、そのとき――」

藍子「……あ、あのっ」

周子「ん、なにー?」

藍子「あの……私たち、一昨日、ここでお会いしてますよね?」

周子「え、なんで? シューコちゃん一昨日は足湯ロケに行ってたし藍子ちゃんと会ってないじゃん?」

藍子「え?」

裕子「およ? ……周子ちゃん、一昨日……駅前にいたんですよね?」

周子「……あ、そうそう、なんかねー、最近仕事帰りにここ来ること多くてさー」

周子「何か最近忙しくて、駅前来ても何する間もなく帰っちゃうんだけどねー」

裕子(……おかしい)

裕子「あ、あの、周子ちゃん! 一昨日のことですけど、私に聞きましたよね? 駅前で周子ちゃんが何をしてたのか見たかって」

周子「あー、そんなことあったねー。なんかさ、忙しくて頭回ってないみたいで、駅前で何やったか覚えてなくてさ」

藍子「お、覚えてない……?」

茜「覚えてないというのは!?」

裕子(これはまさか……いや、でも、これは確かめたほうが……)

周子「どしたのみんな? 何かすっごく顔引きつってるけど」

茜「あ、あの……!」

裕子「……周子ちゃん、ちょっといいですか?」

周子「なにー? 何でもいってみなさいな」

裕子「ちょっとこちらに……」

周子「?」

藍子「裕子ちゃん……?」


……
…………

――路地裏

周子「およー? ユッコちゃんはこんな路地裏に女の子を連れ込んで何する気なの?」

藍子「あの、ユッコちゃん……?」

裕子「……ちょっと、お静かに。周子ちゃん、手を出してもらってもいいですか?」

周子「ほいよっ」スッ

裕子「……」スッ……

ギュッ!

裕子「……」


――堀裕子は本物のエスパーである。触れた人の記憶や思いを読み取ることが出来るのだ。


志希『シューコちゃんこれプレゼントだぞしるぶぷれ~』

周子『勝手に人のネタ使っちゃダメじゃない? それに使い方なんか違うよ?』

志希『いやー、気にしたらその頭が滅びゆく草原状態になっちゃうよ~? そんなこといいから、ちょっとこれ飲んでよ新しいクスリ♪』

周子『えー? それ飲んだらあたしの頭ホントにハゲたりしない?』

志希『しないしなーい! むしろふかふかになってもいいんじゃないかな?』

周子『ま、いっか……うーん、味ないね。この飲み薬?』

志希『水にクスリ混ぜたー』

周子『飲み薬じゃなかったかー。一服盛られたかー』

志希『そそそ♪ それでさー、シューコちゃん……ちょっとお願いしてもいい?』



裕子「!?」ビクッ!

周子「え、なに?」

裕子「た、大変です! 周子ちゃんも薬を飲まされていました!!」

茜「えええええ!?」

藍子「そ、それ本当ですか?」

周子「え? 薬? あー……そういえばいつだか、志希ちゃんから何か飲まされたような……でもその後寝ちゃった気が……」

藍子「お、同じです、私がプロデューサーさんに薬を飲ませたときと……飲んだ後に、眠ってしまうのが……」

裕子「……はっ! そ、そうです、客引きです!」

茜「客引き!? なんですかそれは!」

裕子「多分、周子ちゃんはちひろさんと志希ちゃんに命令されていたんです。色んな場所で薬が必要になりそうなアイドルを探せって!」

藍子「そ、そんな大雑把なこと、命令できるんでしょうか……?」

裕子「むむむ~……た、たとえば、駅前でアイドルを探せ、とか、レッスン場でアイドルに話しかけろ、とか……」

裕子「それで、何かの言葉をキッカケにして、薬の話を持ちかける……」

茜「な、なるほど……それくらいなら出来そうですね! 周子ちゃん、何か覚えていますか!?」

周子「え、何の話?」

藍子「あの、周子ちゃん……以前レッスン場で、私にお薬を渡してくれたこと、覚えていますか?」

周子「え? あたし志希ちゃんみたいなことやらないよ? そういうのって志希ちゃんの役でしょ?」

裕子「……そうだ、あとは」ガサッ

茜「おや!? ユッコちゃん、それは……!」

裕子「さっき、ス○バから出て行くときに一緒に持ってきたんです。愛梨ちゃんが置いていったので」

藍子「あ、愛梨ちゃんの持ってきたお薬……」

周子「おーい、もしもーし。シューコちゃん除け者?」

裕子「はい。あとはこれを……同じように……」スッ

裕子(何か分かれば……!)


――堀裕子は本物のエスパーである。物体を通じて、それに触れていた人の思いを読み取ることが出来るのだ。



ちひろ『いやー、ようやく追加分が出来ましたか』

志希『ほいほいっと完成ー。まだまだ稼いじゃう?』

ちひろ『そりゃそうですよ。愛梨ちゃんも蘭子ちゃんも凛ちゃんも、この薬使ってプロデューサーさんとよろしくヤっちゃってくれますからね』

ちひろ『私たちはその様子を録画して金持ちの変態にそれを売り捌いてお金をもらう。シンデレラガールや他のアイドルたちもそれぞれ良い思いができる』

ちひろ『ホント、WINWINな関係ってヤツですよねー。あははははっ! 餌に釣られて盛るだけ盛って、良い身分ですよねえまったく』



裕子「な、な、な、ななななな……!!」プルプルプル……

茜「ゆ、ユッコちゃん!? さっきから、何をしているのでしょうか!」

藍子「あの、大丈夫ですか、ユッコちゃん?」

裕子「……どうやら、ユッコが思っていた以上に愛梨ちゃんたちは大変な目に遭っていたようです」プルプル……

茜「えっ!?」

裕子「そ、その……薬で、プロデューサーや愛梨ちゃんたちを利用して、いわゆる、エ、エッチな、ビデオ……作って、ちひろさん、それを売り捌いて……」プルプル

藍子「……」ポカーン……

茜「は……はああああああああ!?!?」

藍子「そ、それ……ホントに大変なことですよ!? ど、どうしましょう!」

茜「私たちアイドルですよ! そんなものが広まったら、アイドル以前に一生の終わりです!!」

裕子「ど、どうしようと言われましてもサイキック動揺がユッコの中で……」


愛梨『私っ、蘭子ちゃんも、凛ちゃんも……ダメ!! 私が……私だけの!!』


裕子(私だけの……私、だけの……)

裕子「……プロデューサー」ボソッ

茜「へっ、プロデューサー!?」

裕子「……愛梨ちゃんは、きっと事務所に向かっているはずです。さっきス○バでの様子を思い返しても……プロデューサーに会いに行ったんですよ!」

茜「ということは、またプロデューサーに薬を飲ませるつもりなんでしょうか!?」

裕子「か、可能性はあります。なので、先手を打って連絡しましょう! 駅前から事務所までの距離を考えて、愛梨ちゃんはまだ事務所に着いていないはずです!」ポパピプペッ!

prrrrr……

P『はい、Pです。ってユッコだよな。どうした?』

裕子「プロデューサー! いま何をやっていましたか!?」

P『何って……疲れてさっきまで寝てたんだ。もう昼過ぎてるけど、腹減ったし輝子と飯食ってた』

裕子「よかった……ち、ちなみに事務所にちひろさんはいますか?」

P『んー……いや、いないな。輝子、ちひろさん見たか? ……輝子も見てないってさ』

裕子「それならいいです! あの、いまからユッコたちは事務所に行きますから!」

P『え、何か用事か?』

裕子「そうです! なのでプロデューサーさん、ユッコたちが来るまで誰からの飲み物も飲まないでくださいね! いいですか!」

P『なんでだよ』

裕子「なんでもです! 事情は事務所に着いてからお話しします!」ピッ!

藍子「プロデューサーさんは?」

裕子「ちょうど輝子ちゃんと一緒にいるみたいです。ちひろさんはいないみたいなので、急いで事務所に向かってプロデューサーと輝子ちゃんにこのことをお話ししましょう!」

茜「そうですね! それでは事務所までダッシュで!!」

裕子「事務所まで結構な距離ですしユッコたちの体力がもちませんよ! タクシー捕まえましょう、タクシー!」

藍子「そ、それじゃあ通りに出てタクシーを拾いましょう!」

茜「はい! 善は急げです!!」ダダダダダッ!!

裕子「エスパーユッコがタクシー停留所の場所を探し当てますので!!」タタタタッ!

藍子「あ、ま、待ってくださいー!」タタタッ


周子「……え、あたしのこと無視?」


……
…………

――夕方、事務所

ガチャッ!!

裕子「プロデューサー!!」バンッ!!

藍子「プロデューサーさん!」

茜「プロデューサー!!!!」ドドドドドドッ!!


愛梨「あっ……!?」ビクッ

輝子「み、みんな……そんなに慌てて、ど、どうしたんだ……?」

P「……おおユッコ、来たか」


裕子「はぁ、はぁ……ど、どうやら、間に合ったみたいですね」

茜「そうですね! さすが、タクシーは速いですね!!」

藍子「あ、愛梨ちゃん……その飲み物は……」

愛梨「……」

P「ん? ああ、愛梨がお茶用意してくれたんだが……なんだ、お前等も飲むか?」

裕子「い、いえ、飲みません!」

愛梨「う、ううう……」

P「もうそろそろで日が暮れるか……事務所もそろそろ閉めるし、鍵掛けなおしておくか……」

ガチャッ、ガチャンッ!

裕子「あ、愛梨ちゃん、その薬はダメです! 愛梨ちゃんはちひろさんに利用されていたんですよ!」

愛梨「で、でも、私……」

茜「愛梨ちゃんがス○バに忘れていった薬はユッコちゃんが持っています。これは証拠になるんですよ!」

輝子「あ、あれ……プロデューサー……も、もう、事務所、閉めるのか?」

P「ああ」

ガチャンッ!

藍子「愛梨ちゃん、やめましょう……愛梨ちゃんだって、本当はこんなことしちゃダメだって、気付いているんですよね?」

藍子「私だって……結局、プロデューサーさんに薬を使っていたのは、自分のためだったって、気付けましたから……」

愛梨「……」

ガチャッ!

藍子「そ、それに、今日はもう私がプロデューサーさんにお薬を飲ませてしまっています」

藍子「朝に事務所でお薬を飲んでもらって……さっきユッコちゃんが電話して聞いてみたら、起きたばかりだって……」

裕子「……え?」ピクッ

裕子 (そういえばさっき……)


周子『え? 薬? あー……そういえばいつだか、志希ちゃんから何か飲まされたような……でもその後寝ちゃった気が……』

藍子『お、同じです、私がプロデューサーさんに薬を飲ませたときと……飲んだ後に、眠ってしまうのが……』



裕子「……あの、藍子ちゃん」

藍子「は、はい?」

ガチャッ!

裕子「……プロデューサーに薬を飲ませたの、早朝ですよね?」

藍子「は、はい、事務所の前でユッコちゃんたちと会う直前に……」

裕子「朝に薬を飲ませたら、午後まで寝ちゃうものなんですか?」

藍子「……い、いえ、そう言われると、そんなはずじゃあ……」

輝子「プ、プロデューサーなら……私が来たとき、ま、まだ寝てたぞ……?」

茜「えっ!?」

輝子「だ、だって……プロデューサー起こして……さっき、一緒にご飯、食べたし……」


バタンッ!


愛梨「え、それじゃあ……」

藍子「プロ――」クルッ

ドンッ!!

裕子「藍子ちゃん!?」

P「……」ググッ!

藍子「プ、プロデューサー……さん、く、苦しい……」

茜「あ、藍子ちゃん!」

愛梨「え、ええ……?」

輝子「プ、プロデューサー……な、何、やってるんだ……?」

裕子「プロデューサー……プロデューサー! 聞こえますか、ユッコのサイキックテレパシーが聞こえていますか!」


ガチャッ……


ちひろ「何言ってるんだか……」パタンッ!

裕子「ち、ちひろさん!?」

茜「な、なぜちひろさんがここに!?」

ちひろ「おかしなこと言いますね。私が事務所にいるのはいけないことですか?」

ちひろ「あなたたち、ホント馬鹿ですね。ユッコちゃん、女子寮で私がユッコちゃんを探していたこと気付いていたんでしょう?」

ちひろ「ユッコちゃんが見つからないなら、あなたが事務所に来たときのために足止めできるように、プロデューサーさんに協力してもらえばいいだけじゃないですか」ポイッ

ポサッ……

裕子「あ……く、薬……」

茜「そ、そうでした……私たちも、ちひろさんがユッコちゃんの動きに気付いていると分かっていたのに!!」

P「……」グググッ!

藍子「う、ううう……」

ちひろ「はあ……せっかくいい感じにお金稼ぎ出来ていたんですけどねえ……まあ、仕方が無いです。予定していた新ユニットは発表前に解散ということにしましょう」

輝子「ち、ちひろさん……な、何の話……?」

茜「ちひろさんは輝子ちゃんが育てたキノコを使って、相手に好きなように命令できる悪い薬を作っていたんです!!」

輝子「……え」

裕子「ちひろさんは、私たちアイドルの弱みに付け込んで、その薬を使って色々な悪さをしていたんですよ!」

輝子「……な、何、言ってるんだ? わ、私が、ちひろさんにあげたマイフレンズ……と、とっても、栄養が、あるって――」

ちひろ「あー、そんなこと言いましたねー」

輝子「え……」

ちひろ「あのお話し、まだ信じていたんですか? 栄養満点のキノコとか、そんなの私が適当に言った嘘ですよ」

輝子「……う、そ?」ピクッ

ちひろ「あのキノコ、育てている輝子ちゃん本人がキノコの効果を知らないなんて……ホント、こっちもお馬鹿さんですよねえ」

輝子「だ、だって……ち、ちひろさんが、そう……言ったから……」

ちひろ「そんな美味い話あるわけ無いじゃないですか? あっ、輝子ちゃんお馬鹿さんでしたもんねえ。輝子ちゃんがプロデューサーさんが元気になるように必死に育てたキノコが……」

ちひろ「愛梨ちゃんたちがプロデューサーさんと元気にハッスルするために使われていることも知らずに私に渡すんですから、本当に馬鹿もいいところですよねぇ!!」ニヤニヤ

輝子「……!!」

裕子「ち、ちひろさん……」

茜「なんてヒドイことを……ひ、ヒドすぎます!!」

輝子「あ……わ、私……トモダチ、に……元気に、なって、もらいたくて……そ、それで……」

裕子「し、輝子ちゃん……」

輝子「……う、う……うう……」グスッ、グスッ……

ちひろ「ほらほら、そんな事務所の真ん中に突っ立ってないで、もっと奥に行ってください。言うことに従わないと、藍子ちゃんには痛い目にあってもらいますよ?」

ちひろ「プロデューサーさん、藍子ちゃんをもう少しキツく絞めてあげてください」

P「ちひろさんが言うなら……」ギュッ!!

藍子「う、あ……」

茜「藍子ちゃん!」

ちひろ「ほら、さっさと言うとおりにしてください!」

裕子「あ、茜ちゃん、ここは……」スッ……

茜「う、うう……!!」

茜(だ、ダメです……ここでちひろさんを何とかしないといけないのに! でも、怪我をさせてしまうと思うと……!!)

ちひろ「あ、そうです、愛梨ちゃん」

愛梨「!?」ビクッ!

ちひろ「愛梨ちゃんは、私のお薬、とっても好きなんですよね? まだたくさん残っていますし……そうですね、愛梨ちゃんにならお渡しできますよ?」

愛梨「あ……」

裕子「愛梨ちゃん!」

ちひろ「どうです? この薬さえあれば、愛梨ちゃんはプロデューサーさんに何でもしてもらえるんですよ?」

愛梨「わたし……私の……」フラフラ……

茜「ダメです愛梨ちゃん! そんなお話し聞いちゃダメです!」

ちひろ「そうです……愛梨ちゃんは、このお薬も、プロデューサーさんも大好きなんですよね? ほら、まずは1つお渡ししますね」

愛梨「これがあれば、Pさんは、私の……私だけの……」



愛梨『えへへっ、私だけの特権ですっ♪』

愛梨『むーっ、シンデレラガールの特権ですよ!』



裕子「あ、愛梨ちゃん! ダメです、ここでプロデューサーを助けることが出来るのは、私たちだけなんですよ!」

茜「そうです! 悪者のちひろさんを何とかしないと、プロデューサーはずっとこのままなんですよ! 輝子ちゃんだって、悲しんだままなんですよ!」

輝子「うっ、う、ううう……」グスッ、グスッ……

愛梨「で、でも、私は……Pさんと……」

裕子「違います! 薬を使ってプロデューサーがそばにいてくれたとしても、そこにプロデューサーの気持ちはないんです!」

P「……」

藍子「あ、愛梨、ちゃ……」

裕子「いま私たちが何とかしないと、プロデューサーの気持ちはずっと無くなったままなんですよ!」

愛梨「Pさんの、気持ち……」



P『これで愛梨の話を聞かないで家に帰したら俺はプロデューサー失格だよ』

P『愛梨のワガママならいくらでも聞くよ』



愛梨「P、さんの……」

裕子「いまプロデューサーを助けることができるのは、ちひろさんの悪事に気付いた、私たちだけなんですよ!!」

裕子「プロデューサーを助けることができるのは、私たちだけ……私たちの特権なんですよ!!」

愛梨「っ!!」ハッ!



愛梨『……えへへ、私だけの特権……です♪』



愛梨(私の――)

ちひろ「ちょっとあなたたち、さっきからぎゃあぎゃあ煩いですよ! 大人しく――」

愛梨「わあああああああ!!」バッ!

ガシッ!!

ちひろ「ぐっ……な、何を……!!」グググッ!!

愛梨「P、Pさんから……は、離れてくださいっ!」ググッ!

裕子「愛梨ちゃん!」

ちひろ「こ、この……離せ!」ドガッ!

愛梨「きゃっ!?」ドサッ!


ちひろ「っ! プロデューサーさん! 藍子ちゃんはそこらへんに放り投げて、愛梨ちゃんを絞め上げてください!」

P「ちひろさんが言うなら……」ブンッ!

藍子「あぅ……」ドサッ!

茜「藍子ちゃん!」

愛梨「う、ううう……」

輝子「や、やめて……」

P「……」ピクッ

輝子「や……やめて、くれ……プ、プロデューサー……や、やめて……!」

P「……ぐ、ぐ……うう……」グググッ……

茜「プ、プロデューサーさんの様子がおかしいですよ!?」

ちひろ「そんな、どうして!?」


P「う……し、輝子……お、れ……は……」グググッ……

ちひろ「プ、プロデューサーさん! 早く愛梨ちゃんを締め上げてください!」

P「ち、ちひろ、さ……う、ううう……!!」グググッ!

輝子「だ、ダメだ! プロデューサー!!」

P「うううう……」グググッ!

茜「い、一体何が起こってるんでしょうか!?」

裕子「ど、どうしてプロデューサーが突然……」ハッ!



P『何って……疲れてさっきまで寝てたんだ。もう昼過ぎてるけど、腹減ったし輝子と飯食ってた』

輝子『あ、あのときは……ぷ、プロデューサーに……元気に、なってもらう……ためだったから……特別だ……』



裕子「そ、そうです! 輝子ちゃん、きっと輝子ちゃんがプロデューサーにお昼ご飯でキノコ料理を食べさせてあげたんですよ!」

茜「ええ!?」

輝子「そ、そういえば……今日、一緒に食べた……な……」

裕子「だから輝子ちゃんの命令とちひろさんの命令、どっちの命令も聞こうとして苦しんだ状態になっているんですよ! サイキックミラクルです!」

輝子「さ、サイキックじゃないぞ……」

藍子「そ、そんなことより、このままだとちひろさんが……」

ちひろ「くっ、プロデューサーさん、しっかりしてください!」

P「う、ううう……」

茜(い、いまならちひろさんを何とか……で、でも、怪我でもさせてしまったら……!!)ハッ!

茜「そうですユッコちゃん! 愛梨ちゃんが持っていた薬を私に飲ませてください、はやく!!」

裕子「え?」

茜「そして私に命令してください、ちひろさんを倒せと!! 怪我をさせてしまったらと思うと、自分の意思じゃあ上手く身体が動かないんです……! さあ、はやく!!」

裕子「わ、わかりました! 茜ちゃん、この薬を!」ビリッ!

茜「むがっ……み、水が無いと飲みにくい!!」ムグムグ

裕子「飲みましたね!? それじゃあ茜ちゃん、ちひろさんをぶっ飛ばしてください!!」

茜「う、うううう……うおおおおおおボンバー!!!!!!」ドドドドドドドッ!!!!!!

ちひろ「プロデュー……えっ――」


茜「トラーイ!!!」


ドガアアアアアンッ!!!!!! バキバキバキッ!!!!


藍子「あ、茜ちゃん!?」

裕子「頭からちひろさんに突っ込んでいきましたよ!?」

愛梨「あ、茜ちゃん……大丈夫ですか……?」

ガラッ……

茜「……」

輝子「あ、茜……ちゃん……?」

茜「……無事です! 私は大丈夫ですよー!!」

藍子「あ、茜ちゃん……!」タタタタッ

裕子「ちひろさんはどうなりましたか!?」

茜「だいぶのびてます!!」チラッ


ちひろ「……」ピクッ、ピクッ……


輝子「う、腕と足……変な方向に、ま、曲がってないか……?」

茜「気のせいです! あ、ユッコちゃんもう1つ私に命令してください! ちひろさんが逃げ出さないようにしなければいけません!」

裕子「そ、そうですね……この様子じゃ大丈夫だと思いますけど。それじゃあ茜ちゃん、ちひろさんをサイキック縛り上げてください!」

茜「わかりました!」

P「……う」ピクッ

愛梨「Pさん……!」タタタッ

P「あ、あい、り……俺は……」

裕子「プロデューサー!」

藍子「大丈夫ですか? プロデューサーさん」

P「ユッコ、藍子……さっき、輝子の声で、何となく、意識が……迷惑、掛けてたみたいだな……」

輝子「き、聞こえてたのか……よ、よかった……」

P「すまん……俺が情けないばかりに……」

愛梨「大丈夫です……Pさん、Pさん……」ギュッ

裕子「ぷ、プロデューサー……わ、私、結構怖かったんですけど……!」ギュッ!

P「ああ、ありがとう、助けてくれて……」ギュッ……



茜「ユッコちゃん! ちひろさんは縛り上げておきました! どうやら足と腕は折れているみたいなので、これで動くことはできないはずです!!」

裕子「よ、よかった……ありがとうございます、茜ちゃん」

茜「いえいえ、私もユッコちゃんが薬を持っていてくれて助かりました! わたし……ひと、り……じゃ……」フラッ……

藍子「えっ?」

ドサッ!

愛梨「あ、茜ちゃん!?」

茜「……」スー、スー……

裕子「……眠ってますね」

藍子「あ、そっか……お薬を飲んだから、その副作用ですよ」

愛梨「そうですね……薬を飲んだあと、目が覚めてから薬の効果が出るはずなので……」

裕子「……ということは、つまり茜ちゃんは薬の効果が出る前にユッコの命令を聞いていたってことですか?」

輝子「じ、自己暗示、だな……薬を飲んで、薬が効いたって、思い込んで……」

裕子「はあ……中々難しい性分ですね、茜ちゃんも」

藍子「と、とにかく、警察を呼びましょう! いまのうちにちひろさんを捕まえてもらいませんと……」

P「そうだな……俺は、ちひろさんの近くにいないほうがいいか。茜、任せていいか? 俺は警察に連絡してくる」

茜「はい! お任せください!!」

裕子「はぁー……ともあれ、これでようやく終わりですね……」

茜「そうです! 長い1日でしたね!!」

裕子「ホントですね……人生で一番、サイキックデンジャーな1日でしたよ……」


……
…………

>>152訂正

藍子「あ、そっか……お薬を飲んだから、その副作用ですよ」

愛梨「そうですね……薬を飲んだあと、目が覚めてから薬の効果が出るはずなので……」

裕子「……ということは、つまり茜ちゃんは薬の効果が出る前にユッコの命令を聞いていたってことですか?」

輝子「じ、自己暗示、だな……薬を飲んで、薬が効いたって、思い込んで……」

裕子「はあ……中々難しい性分ですね、茜ちゃんも」

藍子「と、とにかく、警察を呼びましょう! いまのうちにちひろさんを捕まえてもらいませんと……」

P「そうだな……俺は、ちひろさんの近くにいないほうがいいか。茜、任せていいか? 俺は警察に連絡してくる」

茜「はい! お任せください!!」

裕子「はぁー……ともあれ、これでようやく終わりですね……」

茜「そうです! 長い1日でしたね!!」

裕子「ホントですね……人生で一番、サイキックデンジャーな1日でしたよ……」

藍子「……って茜ちゃん、もう目が覚めたんですか?」

茜「はい! 鍛えていますから!」


……
…………

あれ、茜ちんの特権は?

――翌日、警察署

早苗「まったくもう、みんなしてこんな危ない目に遭ってるなんて……なんでお姉さんに話してくれなかったの!?」

裕子「ご、ごめんなさい……」

藍子「その……私や、愛梨ちゃんもプロデューサーさんにお薬を使っている立場でしたから……」

愛梨「Pさん、大丈夫かな……」

早苗「さあね、P君は一旦は病院に搬送したけど……あとはちひろさんね」

茜「ちひろさんはどうなるんですか!!」

早苗「……みんなの話を聞く限り、少なくとも児ポ法違反で逮捕ね。蘭子ちゃんや凛ちゃんにしていたことは、児童売春にあたるし」

裕子「そっ、それはプロデューサーはどうなってしまうんですか?」

早苗「どうかしらね……まあ、そのへんは――」

コンコンコンコンッ!

ガチャッ

裕子「ん?」

早苗「あっ、ボス! お久しぶりです」

ボス「おお、早苗か……久しぶりだな。警察を辞めたお前と、この場所で再開するなんてな……」

藍子「ボス?」

早苗「この人のあだ名よ。あたしが警察やってた頃よりずっと前から、部署は違えどみんなからそう言われている人でね。その昔は地獄のなんたらって異名で恐れられてたのよ」

ボス「みなさん、早苗の同僚ですか。部下から話は聞いています。大変な思いをされたようで……」

愛梨「……」

早苗「それにしてもボスが来てくれるなんて、随分仕事熱心じゃないですか?」

ボス「早苗の職場で起きた事件と聞いてな。どうだ、そっちの仕事は?」

早苗「まあまあ、こっちにいた頃よりは華もあるし、気楽でいいですよ。……それでボス、被疑者の処遇と、私たちのプロデューサーのことなんですけど」

ボス「ああ、彼についての事情も聞いた。今回の事件の原因となるキノコについては分析中だが、その効果がこちらで確認できれば、まあ罪に問われることはないだろう」

愛梨「よ、よかったぁ……」

輝子「プロデューサー……む、無罪、か……」

ボス「被疑者については、病院に搬送して治療中だ。後々詳しい話を聞く。今回の事件で使用された薬も、女子寮から発見されているから時間の問題だろう」

ボス「もう1つ、気になっていることだろうが、彼女たち初めとする数名の薬物使用による件だが……」

藍子「……」ピクッ

早苗「あ、やっぱりそうなっちゃう?」

ボス「いや……まだ分からん。ただ女子寮で発見した薬と共に、これが置かれていた」スッ……

裕子「これは?」

ボス「薬を作ったと思われる人物の書置きだ。君たちに向けて書かれている……当の本人は、既に行方をくらました後だったがな」

藍子「志希ちゃん、行方不明なんですか……」

愛梨「見つかるんでしょうか? もう、事務所に戻ってこないのかなぁ……」

茜「悪はそうそう簡単に滅びないということですね!! ところで、紙にはなんと書いてあるのでしょうか!?」

裕子「どれどれ……」カサッ


『あのクスリ、後遺症とかないから心配しなくていーよ。シューコちゃんで実験済だったのだー』


輝子「こ、これだけ……?」

藍子「周子ちゃんはもっと以前から、志希ちゃんにお薬を飲まされていたんですね」

早苗「とはいえ、薬物使用による罪はどうなるんですか? 今回の件、過去の例も聞いたことがないからあたしも分からないんですけど……」

ボス「まあな。正直どう転ぶかは分からないが……まあ、彼女たちの今後やマスコミの報道についても、上手くやるさ」

早苗「さっすがボス! 話しがわかるわねー」

ボス「早苗の新しい職場だからな。それに何より、オレとしても今をときめくアイドルを失うのは惜しいと思っているしな」

愛梨「あ、ありがとうございますっ」

ボス「ところで……堀裕子君、だったかな?」チラッ

裕子「は、はいっ! サイキック美少女アイドルユッコです!」ビシッ!

ボス「今回の事件、キミの証言から事件の真相に辿り着いたと聞いている。警察の立場としては、無茶をすることに感心は出来ないが……大したものだな」

裕子「いえ! これもすべてサイキックパワーのおかげです!」

茜「ユッコちゃん、すごかったんですよ! プロデューサーや藍子ちゃん、輝子ちゃんたちの様子から見事な推理でちひろさんが悪者であることを突き止めたんです!!」

ボス「ふむ……推理力がずば抜けているのか……良さそうな人材じゃないか。将来、刑事という仕事に興味は?」

裕子「へっ?」

早苗「ちょっとボス! 現場に首突っ込んでると思ったら、ユッコちゃんをヘッドハンティングしないでくださいよ!」

ボス「はははっ、いいと思ったんだがな」

裕子「あ、あの! ユッコはサイキック美少女アイドルなので、そこに刑事も付くのは少々大変かなと……」

輝子「さ、サイキック美少女、アイドル刑事……」フヒッ

裕子(まあ、推理力じゃなくて本当にサイキックパワーなんですけどね……)

早苗「もうっ! ホント、ボスは変なところで嗅覚が鋭いんですから……」

ボス「ま、冗談はこれくらいにしておこう。今後については進展次第、追ってこちらから連絡する。早苗、彼女たちを送ってあげてくれないか?」

早苗「ラジャー……ってこれじゃあ現役時代と同じじゃないですか。あたしはもうアイドルなんですよ?」

ボス「ま、たまにはいいだろ」

早苗「まあいいですけど……今度焼肉でも奢ってくださいよ? それじゃあみんな、女子寮に帰りましょうか」


「「「「「はーい」」」」」


……
…………

――その後、事務所

prrrrrr!!

P「はいもしもし……あ、お世話になっております。はい、次の収録の件ですよね? 今日の資料に記載しておりますので……」

prrrrrr!!

P「すいません少々……おーい、誰か電話でてくれないかー!!」

藍子「はーい。……いつもお世話になっております。シンデレラプロダクションです……はい、申し訳ありません、ただいまPは別件で――」


ガチャッ!!


茜「おはようございます! 今日も元気に頑張りましょう!!」

輝子「い、いま電話中……」ヌッ

愛梨「あっ……茜ちゃん、少し静かにしていましょう?」

裕子「相変わらず忙しそうですね、プロデューサーは……」


P「はい、それでは予定通りお伺いしますので……はい、失礼します」ガチャッ

裕子「プロデューサー、また外出ですか?」

P「ああすまん、ちょっと出てくる。夕方頃には戻ってくると思うが……」

愛梨「私たち、夕方前にはレッスンから戻ってきますから、Pさんが帰ってくるまでお留守番してますよ~」

P「頼むよ。帰りは周子たちも拾って戻ってくるから」タタタッ

ガチャッ……バタンッ!

茜「本当にプロデューサーはいつお休みできるんでしょうかね!!」

裕子「あの日からちひろさんも刑務所ですし、なお更人手不足になっちゃいましたね……」

愛梨「私たちも、何かお手伝いできればいいんですけど……」

藍子「い、いまのところは……お客さんのお電話を受けるくらいしかできませんけどね。プロデューサーさん、相変わらず全然お休みを取ってくださらないし……」

裕子「でも聞いた話だと、他所の事務所から事務員の応援が来てくれるみたいですよ? なんでも、ちひろさんみたいに緑色の服を着ている人だとか」

藍子「へえ……」

輝子「キノコー、キノコー……ボッチノコー……」シュッ、シュッ


茜「おや!? 輝子ちゃん、今日もキノコですか!!」

輝子「あ、ああ……毎日、世話しないとな……つ、ついでに、お昼ご飯でも、食べるか……」ブチッ、ブチッ

茜「おおおお!! ちょうど私、事務所に来る前にトレーニングをしてきたばかりなのでお腹が空いていたんですよ!!」

輝子「そ、それは……よかった……」フヒッ

裕子「ん? あれ? 輝子ちゃん、そのキノコ……まさか……」

愛梨「ちひろさんと志希ちゃんがお薬を作るのに使っていたキノコじゃないですか!?」

藍子「な、なんでそのキノコがまだあるんですか? 警察の方が持っていったはずじゃあ……」

輝子「こ、ここに置いてた菌床、そのままだったから……と、とりあえず、育ててた……」

裕子「確かに警察の方は中毒性は無くて、後遺症も無いキノコだったと言ってましたが……これはサイキックデンジャーすぎるのでは……」

輝子「そ、そうか……プロデューサー、マイフレンズで作ったご飯……好きだったんだけど、な……」

愛梨「……」

茜「捕まらないとはいえこの前のこともありますし、キノコのままでも食べた相手に命令できてしまうのはマズイですよ!!」

輝子「た、食べても捕まるわけじゃないし……別にいいと、思ったけど……」


愛梨「……そのキノコ、プロデューサーさんに食べさせたら」

茜「……食べさせたら!?」

藍子「……私たちが、休んでくださいってお願いをすれば」

輝子「や、休んでくれる、な……」

裕子「……ハッ!?」


愛梨「……」

藍子「……」

裕子「……」

茜「……!」

輝子「……と、とりあえず……炊き込みご飯……つ、作る、ぞ……」

「「「「お手伝いします!!」」」」


――わーたーしだけの特権! 特権! 特権! 特権! 特権! です!


――
――――

ユッコや茜ちんの発言や行動は元ネタがあるのですが、そのせいでやたらと察しのいいユッコになってしまいました。特許は誤字です。
投下タイミングがぶつ切り状態だったのはデレステやりながら寝落ちしてただけです。

あとたまに自分で自分の過去作宣伝します。

【安価】凛「ファンタジーな世界で大魔王ちひろを倒す」 (14スレ目>>289辺りまで)
【安価】凛「ファンタジーな世界で大魔王ちひろを倒す」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409753305/)

ちひろ「肝っ玉プロデューサー?」
ちひろ「肝っ玉プロデューサー?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444203190/)

ちひろ「プロデューサーさん、いつまで女装してるんですか?」
ちひろ「プロデューサーさん、いつまで女装してるんですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450018647/)


特権はこれで終わりです。ありがとうございました。

>>164

茜「私だけの特権」


――ラグビー場

<トラーイ!!

茜「うおおおおおおお!!!!」ガタッ!!

P「おー、決まったきまった」

茜「プロデューサー、いまのプレー見ましたか!!!!」

P「おう、ちゃんと見てたぞ」

茜「いやー、やっぱりラグビーはいいですね! プロデューサーと休日にラグビー観戦が出来るのは私だけの特権です!!」



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月28日 (月) 02:45:39   ID: -IUX84en

ハッピエンディングでよかった

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